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特表2024-538453セラミドとパルミチン酸アミドの液体組成物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-10-21
(54)【発明の名称】セラミドとパルミチン酸アミドの液体組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/42 20060101AFI20241011BHJP
   A61K 8/44 20060101ALI20241011BHJP
   A61K 8/63 20060101ALI20241011BHJP
   A61K 8/06 20060101ALI20241011BHJP
   A61Q 19/08 20060101ALI20241011BHJP
   A61K 9/107 20060101ALI20241011BHJP
   A61P 17/00 20060101ALI20241011BHJP
   A61K 47/18 20170101ALI20241011BHJP
   A61K 47/28 20060101ALI20241011BHJP
【FI】
A61K8/42
A61K8/44
A61K8/63
A61K8/06
A61Q19/08
A61K9/107
A61P17/00
A61K47/18
A61K47/28
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024529899
(86)(22)【出願日】2022-11-18
(85)【翻訳文提出日】2024-07-22
(86)【国際出願番号】 IB2022061150
(87)【国際公開番号】W WO2023089557
(87)【国際公開日】2023-05-25
(31)【優先権主張番号】102021000029171
(32)【優先日】2021-11-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IT
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】524189764
【氏名又は名称】ウニファルコ ソチエタ・ペル・アツィオーニ
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【弁理士】
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【弁理士】
【氏名又は名称】松尾 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100106080
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 晶子
(72)【発明者】
【氏名】バラット,ジョバンニ
【テーマコード(参考)】
4C076
4C083
【Fターム(参考)】
4C076AA13
4C076AA17
4C076BB31
4C076CC18
4C076DD51
4C076DD52
4C076DD70
4C076FF16
4C083AA122
4C083AC012
4C083AC072
4C083AC122
4C083AC172
4C083AC252
4C083AC312
4C083AC392
4C083AC422
4C083AC442
4C083AC532
4C083AC641
4C083AC642
4C083AC661
4C083AC662
4C083AC902
4C083AD092
4C083AD152
4C083AD162
4C083AD202
4C083AD352
4C083AD491
4C083AD492
4C083AD662
4C083CC04
4C083CC23
4C083DD23
4C083DD28
4C083DD32
4C083DD33
4C083EE12
4C083EE13
(57)【要約】
a)少なくとも一つのセラミド
b)式(I):
の少なくとも一つのパルミチン酸アミド
及び
c)ジ-(フィトステリル-2-オクチルドデシル)-N-ラウロイル-L-グルタメートからなり、式中、Rは、ヒドロキシル基で置換されていてもよいC1~C6直鎖又は分枝アルキルからなる群から選ばれる直鎖又は分枝アルキル、C4~C6シクロアルキルであり、前記成分(a)及び(b)は前記成分(c)中に溶解されている液体組成物。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)少なくとも一つのセラミド
b)式(I):
【化1】
の少なくとも一つのパルミチン酸アミド
及び
c)ジ-(フィトステリル-2-オクチルドデシル)-N-ラウロイル-L-グルタメートからなる液体組成物であって、式中、Rは、ヒドロキシル基で置換されていてもよいC1~C6直鎖又は分枝アルキルからなる群から選ばれる直鎖又は分枝アルキル、C4~C6シクロアルキルであり、前記成分a)及びb)は前記成分c)中に溶解されている液体組成物。
【請求項2】
が、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、n-ペンチル、イソ-ペンチル、エチレン-ヒドロキシ、シクロブチル、シクロペンチル及びシクロヘキシルから選ばれる、請求項1に記載の液体組成物。
【請求項3】
パルミチン酸アミドが、N-イソプロピル-パルミトイルアミド及びパルミトイルエタノールアミド又はそれらの混合物から選ばれる、請求項1又は2に記載の液体組成物。
【請求項4】
前記セラミド又は成分a)が、N-アセチルスフィンゴシン(セラミド2又はNS)又はフィトスフィンゴシンのステアリン酸とのアミド(セラミド3又はNP)から選ばれ、好ましくはフィトスフィンゴシンのステアリン酸とのアミドである、請求項1~3のいずれか1項に記載の液体組成物。
【請求項5】
各成分a)とb)が、前記組合せの総重量に対して0.05~2重量%、好ましくは0.1~1重量%を含む濃度で存在する、請求項1~4のいずれか1項に記載の液体組成物。
【請求項6】
成分a)とb)の重量比が1:2~2:1を含む、請求項1~5のいずれか1項に記載の液体組成物。
【請求項7】
成分a)とb)の重量比が1:1である、請求項1~6のいずれか1項に記載の液体組成物。
【請求項8】
成分b)において、N-イソプロピルパルミトイルアミド及びパルミトイルエタノールアミドの両方が1:2~2:1、好ましくは1:1を含む重量比で存在する、請求項3~7のいずれか1項に記載の液体組成物。
【請求項9】
局所製剤であって、請求項1~8のいずれか1項に記載の液体組成物を前記局所製剤の総重量に対して0.5~10重量%を含む量で含む局所製剤。
【請求項10】
前記液体組成物が、前記局所製剤の総重量に対して1~5重量%の量で含有される、請求項9に記載の局所製剤。
【請求項11】
水中油型エマルションの形態で実質的に親水性である、請求項9又は10に記載の局所製剤。
【請求項12】
油中水型エマルションの形態で実質的に親油性である、請求項9又は10に記載の局所製剤。
【請求項13】
無水形の請求項9又は10に記載の局所製剤。
【請求項14】
皮膚炎症過程の治療及び予防に使用するための請求項9~13のいずれか1項に記載の局所製剤。
【請求項15】
前記皮膚炎症過程が、皮膚炎症性疾患に関連又は関与する、あるいは皮膚老化過程に関連又は関与する、請求項14に記載の局所製剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、セラミドとパルミチン酸アミドに基づく最適化された液体組成物と、皮膚疾患及び/又は炎症老化の根底にある皮膚炎症過程の予防及び抑制に効果的な安定な関連局所製剤に関する。
【背景技術】
【0002】
皮膚の老化は極めて不均質な生理学的過程である。
実際、細胞老化につながる多数の分子機序及び経路が確認ができる。
近年、長寿に関する多数の研究が老化における慢性的な軽度の炎症の役割に着目し、この現象を炎症老化と呼んでいる[Baylis D,Bartlett DB,Patel HP,Roberts HC.Understanding how we age:insights into inflammaging(老化の仕組みの理解:炎症老化についての洞察).Longev Healthspan.2013 May 2;2(1);Minciullo,P.L.,Catalano,A.,Mandraffino,G.ら.Inflammaging and Anti-Inflammaging:The Role of Cytokines in Extreme Longevity(炎症老化と抗炎症老化:超長寿におけるサイトカインの役割).Arch.Immunol.Ther.Exp.64,111-126(2016)]。
【0003】
最近の科学的エビデンスによれば、炎症老化は主に神経学的疾患及び心臓血管疾患の発生に関与しているとされるが、皮膚を含むすべての器官の細胞にも影響を及ぼしている可能性がある。
【0004】
炎症老化は細胞レベルで確立及び拡大する無症候性の慢性炎症状態で、細胞が体内及び体外攻撃に由来する炎症過程及び防御過程の調節能力を喪失した場合に発生する。
炎症老化の原因は、
・体内:身体的及び精神的ストレス、アンバランスな食事、薬物の長期摂取及びホルモン療法によるフリーラジカルの増加;
・体外:紫外線、環境汚染、ライフスタイル
である。
【0005】
その結果、典型的な皮膚老化の徴候:
・乾燥
・しみ
・しわ
・はり及び弾力性の喪失
・赤み
・落屑
・透明感のなさ
・灼熱感又は皮膚のつっぱり感
の発症が促進される。
【0006】
炎症過程の進行に加えて、皮膚とりわけ敏感な皮膚は、防御能力に乏しいため生理学的に一段と脆弱で、表皮バリアの変化を受けやすい。よって、炎症老化過程が起こりやすくなり、自ら油を注ぐことにもなる。バリアの強化と、その結果としての炎症の低減、つまり炎症誘発性サイトカインの放出の低減は、皮膚老化に対抗するために評価されるべきもう一つの機序であろう。
【0007】
セラミドベースの製品の使用は、表皮バリアの再構築及び保護によって皮膚に効果的に作用するため、皮膚老化の抑制に役立つ。
最先端の技術では、皮膚老化の生理学的過程を積極的に抑制するのに効果的な多数の化粧成分がある。エンドカンナビノイド(内因性カンナビノイド)という用語は、様々なヒト組織に見られる多価不飽和脂肪酸のアミド及びエステルの異種ファミリーを指す。アラキドン酸エタノールアミド(アナンダミド、ANA)と2-アラキドニルグリセロールは間違いなく文献で最も記載の多い二大誘導体である[Sugiura T,Kobayashi Y,Oka S,Waku K.Biosynthesis and degradation of anandamide and 2-arachidonoylglycerol and their possible physiological significance(アナンダミド及び2-アラキドニルグリセロールの生合成及び分解と、考えられるそれらの生理学的意義). Prostaglandins Leukot Essent Fatty Acids 66:173-192]。
【0008】
これらの内因性誘導体は公知のカンナビノイド受容体CB1及びCB2に様々な親和性で結合し、ANAの作用はその細胞外濃度に依存することが示されている。これは、その合成を担う酵素系のほかに細胞内輸送系及び酵素分解系(脂肪酸アミドヒドロラーゼ、FAAH)によっても制御されている。
【0009】
N-イソプロピル-パルミトイルアミド及びパルミトイルエタノールアミドは、重要な炎症性メディエーターと炎症老化のバランスを取るのに重要な役割を果たすことができるエンドカンナビノイド様分子である。
【0010】
フィトステリル/オクチルドデシルラウロイルグルタメート(INCI名)、IUPAC名(ジ-(フィトステリル-2-オクチルドデシル)-N-ラウロイル-L-グルタメート)は、局所用製品を製剤化(配合処方)するための有効成分で、表皮バリアの成分、特に細胞間脂質に類似した化学構造を有するユーダーミック油(eudermic oil)である。
【0011】
セラミド及び/又はエンドカンナビノイド様誘導体を含有する局所用製剤(例えば化粧品又は医療機器)は、バリア生理機能の変化の根底にある炎症過程を抑制するのに非常に効果的でありうる。しかしながら、それらはいずれも難溶性成分であり、安定性と結晶化に懸念があることが知られている。
【0012】
難溶性で非常に不安定な有効成分を含有する化粧品の製剤化(配合処方)は、成分の不安定性、分散問題、品質及び安全性といった技術的課題を製剤業者に突き付けている。
主要な問題は、最終製剤中のこの原料の可溶化にあり、工業規模拡大の生産段階で細心かつ連続的な制御を必要とする。
【0013】
この問題を克服するために、製造法に手を加えて原料の添加段階の順序を変更することは可能であるが、ワックスなどを溶解するのに通常必要な高温での加熱工程は製剤を構成する他の原料の分解を引き起こしかねない。まずまずの妥協策は、溶媒を用いた事前溶解であろう。
【0014】
しかしながら、安全で安定かつ効果的な局所使用のための製品の製剤化(配合処方)につながる適切な溶媒の選択には、製剤業者の側でいくつかの要因:
・基剤(ビヒクル)中での溶媒の挙動
・適用後の忍容性(適用部位の特異な特徴にも関連する)(例えば、皮膚炎で炎症を起こした組織)
・エンドユーザーによるコンプライアンス(製剤化された製品は快適で数回再使用されるものでなければならない)
を慎重に評価することが求められる。
【0015】
JP5432470B2(日本国特許第5432470号)には、脂肪酸のトリグリセリドとフィトステリル誘導体の混合物中に溶解されたセラミドを含有する油性組成物が開示されている。
【0016】
EP3125865(欧州特許第3125865号)には、セラミドとパルミチン酸アミドを含み、モノエチルアミンを他の有効成分及び/又は賦形剤とともにそのまま水中油型エマルション中に分散させた組成物が開示されている。
【0017】
オンラインMINTEL GNPDデータベースの2020年1月20日付XP055926288データベースアクセス番号7199719及び2017年1月1日付XP002781544に、様々な種類のセラミド、セラミドNP及びセチルPGヒドロキシエチルパルミタミドなどの多数の成分を含む2種類のVecuaクリームとナイトクリームが開示されている。
【0018】
Semenzatoらは、“A New Endocannabinoid as Anti-Inflammatory Cosmetic Active:An In vitro study on Reconstructed Skin Model(抗炎症性化粧品有効成分としての新規エンドカンナビノイド:再構築皮膚モデルでのインビトロ研究)”CURR.UPDATES DERMATOL.PROBL.Vol.2019,number 1,3 January 2019.XP055036765に、新規カンナビノイドのイソパルミドが再構築皮膚モデルで抗炎症特性を示すことを開示している。
【0019】
Unifarco Biomedicalウェブサイトには、いくつかの成分の中でもセラミド、イソパルミド及び(ジ-(フィトステリル-2-オクチルドデシル)-N-ラウロイル-L-グルタメート)を含有するCeramage(登録商標)ブランドのデイ(日中用)クリームが開示されている。
【0020】
セラミド及びイソパルミド(ジ-(フィトステリル-2-オクチルドデシル)-N-ラウロイル-L-グルタメート)は、市販製剤中に直接分散されており、液体組成物の形態ではない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0021】
【特許文献1】日本国特許第5432470号
【特許文献2】欧州特許第3125865号
【非特許文献】
【0022】
【非特許文献1】Baylis D,Bartlett DB,Patel HP,Roberts HC.Longev Healthspan.2013 May 2;2(1)
【非特許文献2】Minciullo,P.L.,Catalano,A.,Mandraffino,G.ら.Arch.Immunol.Ther.Exp.64,111-126(2016)
【非特許文献3】Sugiura T,Kobayashi Y,Oka S,Waku K.Prostaglandins Leukot Essent Fatty Acids 66:173-192
【非特許文献4】Semenzatoら,CURR.UPDATES DERMATOL.PROBL.Vol.2019,number 1,3 January 2019.XP055036765
【発明の概要】
【0023】
出願人は、今回驚くべきことに、セラミド及びパルミチン酸アミドとも、フィトステリル/オクチルドデシルラウロイルグルタメート(INCI名)、IUPAC名(ジ-(フィトステリル-2-オクチルドデシル)-N-ラウロイル-L-グルタメート)と混合することにより、一段階で溶解できることを見出した。二つの成分を完全に可溶化できるので、局所使用のための組成物に含めるのに適切な安定な液体組成物を作り出すのに寄与する。
【0024】
そこで、本発明の目的は、
a)少なくとも一つのセラミド
b)式(I):
【0025】
【化1】
【0026】
の少なくとも一つのパルミチン酸アミド
及び
c)ジ-(フィトステリル-2-オクチルドデシル)-N-ラウロイル-L-グルタメート
からなる液体組成物である。上記式中、Rは、ヒドロキシル基で置換されていてもよいC1~C6直鎖又は分枝アルキルからなる群から選ばれる直鎖又は分枝アルキル、C4~C6シクロアルキルであり、また前記成分(a)及び(b)は前記成分(c)中に溶解されている。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1図1は、本発明による組成物に使用できるいくつかのセラミドの化学式を示す。
図2図2は、様々な油での0.3%セラミド3の可溶化試験の写真を示す。
図3図3は、様々な油での0.3%N-イソプロピル-パルミトイルアミド(イソパルミド)の可溶化試験の写真を示す。
図4図4は、様々な油での0.3%パルミトイルエタノールアミド(パルミタミドMEA又はPMEA)の可溶化試験の写真を示す。
図5図5は、N-イソプロピル-パルミトイルアミド(イソパルミド)及びセラミド3の濃度を上昇させての本特許の対象の液体組成物の可溶化試験の写真を示す。
図6図6は、パルミトイルエタノールアミド(PMEA)及びセラミド3の濃度を上昇させての本特許の対象の液体組成物の可溶化試験の写真を示す。
図7図7は、N-イソプロピル-パルミトイルアミド(イソパルミド)、パルミトイルエタノールアミド(PMEA)及びセラミド3の濃度を上昇させての本特許の対象の液体組成物の可溶化試験の写真を示す。
図8A図8Aは、イソパルミド、セラミド及びジ-(フィトステリル-2-オクチルドデシル)-N-ラウロイル-L-グルタメートの混合物を、Ceramage化粧製剤中のそれらの重量比で製造した場合の写真を示す。
図8B図8Bは、イソパルミド、セラミド及びジ-(フィトステリル-2-オクチルドデシル)-N-ラウロイル-L-グルタメートの混合物を、Ceramage化粧製剤中のそれらの重量比で製造した場合の写真を示す。
図8C図8Cは、イソパルミド、セラミド及びジ-(フィトステリル-2-オクチルドデシル)-N-ラウロイル-L-グルタメートの混合物を、Ceramage化粧製剤中のそれらの重量比で製造した場合の写真を示す。
図9A図9Aは、混合物の室温で48時間後の写真を示す。
図9B図9Bは、混合物の室温で48時間後の写真を示す。
【発明を実施するための形態】
【0028】
本発明の目的のために、“含む”及び“含有する”という語の定義は、前記定義語の後に記載されている成分に加えて更なる成分の可能性を提供する。
反対に、本発明の目的のために、“からなる”という語の定義は、前記定義語の後に列挙されている成分以外の更なる成分の可能性を排除する。
【0029】
本発明において、
(a)少なくとも一つのセラミド
(b)式(I):
【0030】
【化2】
【0031】
の少なくとも一つのパルミチン酸アミド
(c)ジ-(フィトステリル-2-オクチルドデシル)-N-ラウロイル-L-グルタメート(前記成分(a)及び(b)が溶解されている)
からなる液体組成物について記載する。
【0032】
本発明の目的のために、式(I)のパルミチン酸アミドにおいて、Rは、ヒドロキシル基で置換されていてもよいC1~C6直鎖又は分枝アルキルからなる群から選ばれる直鎖又は分枝アルキル、C4~C6シクロアルキルであると規定される。特に、Rは、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、n-ペンチル、イソ-ペンチル、エチレン-ヒドロキシ、シクロブチル、シクロペンチル及びシクロヘキシルから選ばれる。
【0033】
好ましくは、式(I)のパルミチン酸アミドは、N-イソプロピル-パルミトイルアミド及びパルミトイルエタノールアミド又はそれらの混合物から選ばれる。
本発明の対象である液体組成物において、セラミド又は成分a)は、N-アセチルスフィンゴシン(セラミド2又はNS)又はフィトスフィンゴシンのステアリン酸とのアミド(セラミド3又はNP)から選ばれ、好ましくはフィトスフィンゴシンのステアリン酸とのアミドである。
【0034】
本発明の目的のために、成分a)とb)の重量比は1:2~2:1を含み、好ましくは成分(a)と(b)の前記重量比は1:1である。
好ましくは、本発明の対象である液体組成物の場合、成分b)は、イソパルミドとPMEAの両方を1:2~2:1、さらに好ましくは1:1の重量比で含有する。
【0035】
本発明の目的のために、成分a)とb)は、前記組合せ(association)の総重量に対して7重量%以下、好ましくは0.05~6重量%、さらに好ましくは0.05~2重量%、なおさらに好ましくは0.1~1重量%を含む濃度で存在する。
【0036】
本発明で記載される液体組成物は、局所用製剤に組み込むことができ、前記液体組成物は、前記局所製剤の総重量に対して0.5~10重量%、さらに好ましくは1~5重量%を含む量で含有される。
【0037】
本発明の対象である液体組成物を含む局所製剤は、水中油型エマルションの形態でありうるので、この場合実質的に親水性である。あるいは油中水型エマルションで実質的に親油性であっても、又は無水製剤で親油性であってもよい。
【0038】
本発明に記載される液体組成物を含む局所製剤は、皮膚炎症過程、特に炎症老化に関連する皮膚炎症過程の治療及び予防に使用できる。
皮膚炎症過程とは、出願人は、アトピー性皮膚炎(DIC、DAC)、乾癬、脂漏性皮膚炎、ニキビ、酒さ、光線角化症及び魚鱗癬などの皮膚疾患によって発症するもの及び/又は前記皮膚疾患に関連するものも指している。
【0039】
以下は、本発明で達成することを可能にした、出願人が従った手順である。
1.可溶化剤の選択:プロトタイプの製造
サンプルは、可溶化試験及び安定性試験を実施するのに足る標準量の50gで製造された。調査された有効成分の濃度範囲及びサンプル製造法は、各原料の技術データシートを検証しながら精読(クリティカルリーディング)した後、確立された。この研究の初期の目的は、製剤業者の日常業務において可溶化の問題を示すセラミド、N-イソプロピル-パルミトイルアミド(イソパルミド)及びパルミトイルエタノールアミド(パルミタミドMEA又はPMEA)など一部の原料の可溶化剤を特定することであった。
【0040】
製造したサンプルの経時的安定性を評価するために、遠心試験を実施した。これは、強力な機械的ストレス条件後に沈降及び相分離といった何らかの不安定性の影響を検出することを可能にする方法である。
【0041】
表1に、各プロトタイプの名称とセラミド、イソパルミド及びPMEAの相対濃度、そしてスクリーニングとして最初に使用された様々な原料を示す。
表1 可溶化剤選択のための体系
【0042】
【表1】
【0043】
観察されるように、可溶化剤としてフィトステリル/オクチルドデシルラウロイルグルタメートを使用するだけで、セラミド3、イソパルミド及びPMEAを個別に可溶化することができる。
【0044】
2.混合物の分析の体系
研究下のすべての原料(セラミド及びパルミチン酸アミド)に共通する単一の可溶化剤を使用できることが思いがけず確認された後、セラミドとパルミチン酸アミドの組合せを含有する溶液の挙動を、本特許の対象である液体組成物の各成分の組合せ及び濃度を変えながら分析するための体系を樹立した。
【0045】
表2 フィトステリル/オクチルドデシルラウロイルグルタメート中に可溶化されたセラミド3とイソパルミドの濃度を上昇させた場合の体系
【0046】
【表2】
【0047】
表3 フィトステリル/オクチルドデシルラウロイルグルタメート中に可溶化されたセラミド3とPMEAの濃度を上昇させた場合の体系
【0048】
【表3】
【0049】
表4 フィトステリル/オクチルドデシルラウロイルグルタメート中に可溶化されたセラミド3、イソパルミド及びPMEAの濃度を上昇させた場合の体系
【0050】
【表4】
【0051】
例示目的で、本発明による液体組成物を含有する下記の化粧製剤を報告する。
製剤1 O/Wエマルション
【0052】
【表5】
【0053】
製剤2 セラム
【0054】
【表6】
【0055】
製剤3 洗浄剤
【0056】
【表7】
【0057】
製剤4 O/Wエマルション
製剤4は、製剤1と同じ成分を同じ量で含有するが、唯一の違いはPROT.31の液体組成物が製剤1で使用されたPROT.21の液体組成物と同じ量で使用されていることである。
【0058】
製剤5 セラム
製剤5は、製剤2と同じ成分を同じ量で含有するが、唯一の違いはPROT.31の液体組成物が製剤2のセラムの液体組成物21と同じ量で使用されていることである。
【0059】
製剤6 洗浄剤
製剤6は、製剤3と同じ成分を同じ量で含有するが、唯一の違いはPROT.31の液体組成物が製剤3のセラムの液体組成物PROT.21と同じ量で使用されていることである。
【0060】
製剤7 O/Wエマルション
製剤7は、製剤1と同じ成分を同じ量で含有するが、唯一の違いはPROT.40の液体組成物が製剤1で使用された液体組成物PROT.21と同じ量で使用されていることである。
【0061】
製剤8 セラム
製剤8は、製剤2と同じ成分を同じ量で含有するが、唯一の違いはPROT.40の液体組成物が製剤2のセラムの液体組成物PROT21と同じ量で使用されていることである。
【0062】
製剤9 洗浄剤
製剤9は、製剤3と同じ成分を同じ量で含有するが、唯一の違いはPROT.40の液体組成物が製剤3のセラムの液体組成物PROT.21と同じ量で使用されていることである。
【0063】
製剤10 O/Wエマルション
製剤10は、製剤1と同じ成分を同じ量で含有するが、唯一の違いはPROT.41の液体組成物が製剤1で使用された液体組成物Prot.21と同じ量で使用されていることである。
【0064】
製剤11 セラム
製剤11は、製剤2と同じ成分を同じ量で含有するが、唯一の違いは液体組成物PROT.41が製剤2のセラムの液体組成物PROT.21と同じ量で使用されていることである。
【0065】
製剤12 洗浄剤
製剤12は、製剤3と同じ成分を同じ量で含有するが、唯一の違いはPROT.41の液体組成物が製剤3のセラムの液体組成物PROT.21と同じ量で使用されていることである。
【0066】
Ceramageとの比較試験
本開示の技術の状態で予想される通り、本特許出願の所有者によって製造された市販品Ceramageは、請求項1に請求されている液体組成物と同じ成分を含有するが、Ceramageに使用されている濃度では液体組成物を生み出すことはできない。
【0067】
実際、Ceramage製品では、成分a)、b)及びc)の濃度は次の通りである。
セラミド0.3%、イソパルミド0.5%及びジ-(フィトステリル-2-オクチルドデシル)-N-ラウロイル-L-グルタメート0.5%。
【0068】
次に、上記化合物の100gの混合物を、Ceramage中の3種類の化合物の重量比を尊重して製造した。
従って、この混合物中のセラミドの含有量は23g、イソパルミドならびにジ-(フィトステリル-2-オクチルドデシル)-N-ラウロイル-L-グルタメートの含有量はそれぞれ38.5gであった。
【0069】
ジ-(フィトステリル-2-オクチルドデシル)-N-ラウロイル-L-グルタメートと比較してイソパルミドならびにセラミドがそのように高濃度では、前述の成分の液体粗製物を得ることはできない。実際、これらの3成分の混合物は、100℃で磁気撹拌下に維持しても、不均質な懸濁液を生じる(図8(A)及び8(B)参照)。ひとたび磁気撹拌が停止し、温度が数度下がると、既に固化傾向にある(図8(C))。
【0070】
室温で48時間後、混合物は図9(A)及び9(B)に示されているように完全に固化し、後者の写真には結晶形成と共に気泡が固化混合物内に見える。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8A
図8B
図8C
図9A
図9B
【国際調査報告】