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特表2024-538454アルツハイマー病を予防又は治療する医薬組成物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-10-22
(54)【発明の名称】アルツハイマー病を予防又は治療する医薬組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/4245 20060101AFI20241015BHJP
   A61K 31/352 20060101ALI20241015BHJP
   A61P 25/28 20060101ALI20241015BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20241015BHJP
   A61K 9/20 20060101ALI20241015BHJP
   A61K 9/48 20060101ALI20241015BHJP
   A61K 9/14 20060101ALI20241015BHJP
【FI】
A61K31/4245
A61K31/352
A61P25/28
A61P43/00 121
A61P43/00 111
A61K9/20
A61K9/48
A61K9/14
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024519863
(86)(22)【出願日】2022-09-30
(85)【翻訳文提出日】2024-03-28
(86)【国際出願番号】 CN2022123274
(87)【国際公開番号】W WO2023051787
(87)【国際公開日】2023-04-06
(31)【優先権主張番号】202111161273.0
(32)【優先日】2021-09-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】511182437
【氏名又は名称】山▲東▼新▲時▼代▲薬▼▲業▼有限公司
【氏名又は名称原語表記】SHANDONG NEW TIME PHARMACEUTICAL CO.,LTD.
【住所又は居所原語表記】No.1,North Outer Ring Road,Feixian Country,Shandong 273400,China
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】▲張▼ ▲貴▼民
(72)【発明者】
【氏名】姚 景春
(72)【発明者】
【氏名】李 ▲紅▼▲華▼
(72)【発明者】
【氏名】▲孫▼ 成宏
(72)【発明者】
【氏名】▲趙▼ 涛
【テーマコード(参考)】
4C076
4C086
【Fターム(参考)】
4C076AA31
4C076AA36
4C076AA53
4C076AA56
4C076BB01
4C076CC01
4C076DD27
4C076DD29
4C076DD37
4C076DD38
4C076DD41
4C076DD46
4C076DD47
4C076DD67
4C076EE08
4C076EE16
4C076EE23
4C076EE31
4C076EE32
4C076EE38
4C076EE42
4C076FF31
4C086AA01
4C086AA02
4C086BA08
4C086BC71
4C086MA02
4C086MA04
4C086MA16
4C086MA21
4C086MA23
4C086MA27
4C086MA35
4C086MA36
4C086MA41
4C086MA43
4C086MA52
4C086NA05
4C086NA14
4C086ZA16
4C086ZC41
(57)【要約】
アルツハイマー病を予防又は治療する医薬組成物及びその使用であって、医薬の技術分野に属する。本発明の医薬組成物は、(Z)-3-(N-(3-ブロモ-4-フルオロフェニル)-N’-ヒドロキシホルムアミド)-4-(2-グアニジルエチル)アミノ)-1,2,5-オキサジアゾールと、アンヒドロイカリチンと、を含有する。薬力学的実験により、医薬組成物は、アルツハイマー病の治療において相乗的な治療効果を達成したことが実証される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(Z)-3-(N-(3-ブロモ-4-フルオロフェニル)-N’-ヒドロキシホルムアミド)-4-(2-グアニジルエチル)アミノ)-1,2,5-オキサジアゾールと、アンヒドロイカリチンと、を含有する、ことを特徴とする医薬組成物。
【請求項2】
(Z)-3-(N-(3-ブロモ-4-フルオロフェニル)-N’-ヒドロキシホルムアミド)-4-(2-グアニジルエチル)アミノ)-1,2,5-オキサジアゾールとアンヒドロイカリチンとの重量比が、(0.5~10):1である、ことを特徴とする請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項3】
(Z)-3-(N-(3-ブロモ-4-フルオロフェニル)-N’-ヒドロキシホルムアミド)-4-(2-グアニジルエチル)アミノ)-1,2,5-オキサジアゾールとアンヒドロイカリチンとの重量比が、(1.6~3.3):1である、ことを特徴とする請求項2に記載の医薬組成物。
【請求項4】
液体製剤、固形製剤又は半固形製剤に調製される、ことを特徴とする請求項1~3のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項5】
前記固形製剤は、錠剤、カプセル剤、顆粒剤、散剤、ペレット剤、又は滴丸剤から選択される、ことを特徴とする請求項4に記載の医薬組成物。
【請求項6】
前記液体製剤は、溶液、乳剤、懸濁剤、又は注射剤から選択される、ことを特徴とする請求項4に記載の医薬組成物。
【請求項7】
アルツハイマー病を予防又は治療する薬物の製造における請求項1~6のいずれか1項に記載の医薬組成物の使用。
【請求項8】
アルツハイマー病患者の認知機能障害を改善する薬物の製造における前記医薬組成物の使用である、ことを特徴とする請求項7に記載の使用。
【請求項9】
前記医薬組成物は、血清セロトニン及びトリプトファンのレベルを上昇し、血清L-キヌレニン含有量を低下させ、記憶力を向上させる、ことを特徴とする請求項7に記載の使用。
【請求項10】
前記(Z)-3-(N-(3-ブロモ-4-フルオロフェニル)-N’-ヒドロキシホルムアミド)-4-(2-グアニジルエチル)アミノ)-1,2,5-オキサジアゾールとアンヒドロイカリチンとの重量比が、(1.6~3.3):1である、ことを特徴とする請求項7に記載の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医薬の技術分野に属し、アルツハイマー病を治療する医薬組成物に関し、特に(Z)-3-(N-(3-ブロモ-4-フルオロフェニル)-N’-ヒドロキシホルムアミド)-4-(2-グアニジルエチル)アミノ)-1,2,5-オキサジアゾールとアンヒドロイカリチンとを含有する医薬組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
認知症(dementia)は、後天的な認知機能障害を中核とし、患者の日常生活能力、学習能力、仕事能力や社会交流能力の著しい低下をもたらす症候群である。患者の認知機能障害は、記憶、学習、見当識、理解、判断、計算、言語、視空間機能、分析及び問題解決などの能力に関連し、疾患の特定の段階では、精神、行動や性格の異常を伴うことがよくある。認知症は、米国精神医学会の『精神障害の診断と統計マニュアル第5版』(DSM-V:Diagnostic and Statistical Manual of Mental Disorders, 5th edition)において「神経認知障害」として記載されている。世界保健機関の『疾患及び関連する健康問題の国際統計分類第10版改訂』(ICD-10:the International Statistical Classification of Diseases and Related Health Problems 10th Revision)によると、認知症の診断には、病歴の問診と神経心理学的検査に基づく精神機能の低下の確認が必要である。
【0003】
認知症は、主に進行性の記憶喪失と認知機能障害として現れ、患者の日常行動や自己管理能力が著しく低下し、患者の家族に大きな負担を与える。認知症の罹患率は長い間高いままであり、WHOの推計によると、2050年には認知症患者は1億1,000万人を超えると予想されている。認知症の発症機序は、複雑であり、まだ統一的かつ明確な理解には至っていないが、その発症因子には、主に遺伝因子、神経伝達物質や免疫因子などが含まれ、中枢コリン系機能障害、シナプス可塑性機能障害、酸化ストレス、神経炎症反応や興奮毒性などが考えられるが、正確な病因は不明である。
【0004】
臨床的に認知症を引き起こす疾患は数多くあり、分類方法も異なる。変性疾患であるかどうかにより、変性疾患性認知症と非変性性疾患性認知症に分けられ、前者には、主にアルツハイマー病(AD:Alzheimer′s disease)、レビー小体型認知症(DLB:dementia with Lewy body)、パーキンソン病(PDD:Parkinson disease with dementia)や前頭側頭脳変性症(FTLD:frontotemporal lobar degeneration)などが含まれ、後者には、血管性認知症(vascular dementia、V型アルツハイマー病)、正常圧水頭症や、脳損傷、感染症、免疫、腫瘍、中毒や代謝性疾患などその他の疾患によって引き起こされる認知症などが含まれる。
【0005】
老人性認知症としても知られるアルツハイマー病は、中枢神経系の原発性変性疾患であり、主な臨床症状として、進行性の記憶障害、包括的な精神機能の低下、人格の変化、異常な精神行動、及び認知機能障害が見られる。患者の海馬と新皮質のアセチルコリントランスフェラーゼやアセチルコリンが大幅に減少し、皮質コリン作動性ニューロン伝達物質の機能不全が発生し、老人斑、神経原線維もつれ、顆粒細胞変性やβアミロイドペプチド(Aβ)沈着が主な病理学的変化である。この疾患の原因は現時点では不明であるが、遺伝、環境、その他の要因に関連する神経系の変性疾患であると一般に考えられている。
【0006】
アルツハイマー病の理解が深まるにつれて、軽度認知障害(MCI:mild cognitive impairment)と血管性認知障害(VCI:vascular cognitive impairment)の概念が登場した。MCIは、正常な老化とアルツハイマー病の間の認知障害の状態であり、アルツハイマー病の臨床的前駆段階である。平均して、MCIの10%~15%が毎年認知症に進行し、そのほとんどがアルツハイマー病であり、ますます注目を集めており、現在では、アルツハイマー病の早期診断と介入のための重要な研究対象となっている。
【0007】
現在、臨床でアルツハイマー病の治療薬として使用されているのは、コリンエステラーゼ阻害薬とN-メチル-D-アスパラギン酸受容体(NMDAR:N-methyl-D-aspartic acid receptor)遮断薬が主流であるが、これらの薬物は一部の症状を緩和するだけで、アルツハイマー病の病理学的プロセスを改善できない。AβとTauを標的とする治療法は、動物実験では魅力的な開発の将来性を示しているが、臨床試験では繰り返し障害に遭遇し、深刻な変革の問題に直面している。これらの薬物は、消化管や中枢神経系に副作用を引き起こし、薬物依存性につながりやすく、治療効果も十分に明らかではない。したがって、アルツハイマー病の病因を解明し、満たされていない臨床ニーズに対処するための効果的な治療法を見つけることは、社会的意義と経済的価値が大きく、中国国内外の医学研究の重要なテーマとなっている。
【0008】
朱夢琳氏は「イカリチンの抗アルツハイマー病炎症反応の分子メカニズム研究」では、イカリチンはアルツハイマー病炎症モデルにおいて、LPSが誘導するミクログリア細胞の過剰な活性化を阻害し、マウスの学習・記憶能力を改善することができると指摘した。
【0009】
出願番号201310362101.9の発明特許は、イカリチンが血液脳関門を通過し、GSK-3の活性を阻害することにより、β-cateninの核移行を促進し、Tauタンパク質のリン酸化を低下させ、ニューロン細胞の活性を保護し、神経原線維もつれを阻害することにより、アルツハイマー病の予防・治療作用を発揮することを開示している。
【発明の概要】
【0010】
アルツハイマー病に有効な治療薬を見つけるために、本発明者は、革新的に(Z)-3-(N-(3-ブロモ-4-フルオロフェニル)-N’-ヒドロキシホルムアミド)-4-(2-グアニジルエチル)アミノ)-1,2,5-オキサジアゾール(化合物I)とアンヒドロイカリチンとを併用してアルツハイマー病を治療する。
【0011】
薬力学的実験により、本発明の薬物組成物は、アルツハイマー病マウス及びVDラットの認知機能障害を相乗的に改善し、血清セロトニン及びトリプトファンレベルを上昇し、L-キヌレニンの発生を阻害し、記憶力を向上させることが実証された。これに基づいて、本発明は、アンヒドロイカリチンと化合物Iを活性成分として含有する医薬組成物を提供する。
【0012】
さらに、本発明の医薬組成物では、化合物Iとアンヒドロイカリチンとの重量比の範囲が(0.5~10):1である。特に、化合物Iとアンヒドロイカリチンとの重量比が(1.6~3.3):1である場合、アルツハイマー病に対する治療効果により優れる。
【0013】
これに基づいて、本発明は、(Z)-3-(N-(3-ブロモ-4-フルオロフェニル)-N’-ヒドロキシホルムアミド)-4-(2-グアニジルエチル)アミノ)-1,2,5-オキサジアゾールと、アンヒドロイカリチンと、を含有する、医薬組成物を提供する。
【0014】
本発明のいくつかの実施形態では、(Z)-3-(N-(3-ブロモ-4-フルオロフェニル)-N’-ヒドロキシホルムアミド)-4-(2-グアニジルエチル)アミノ)-1,2,5-オキサジアゾールとアンヒドロイカリチンとの重量比が、(0.5~10):1である。
【0015】
本発明のいくつかの実施形態では、(Z)-3-(N-(3-ブロモ-4-フルオロフェニル)-N’-ヒドロキシホルムアミド)-4-(2-グアニジルエチル)アミノ)-1,2,5-オキサジアゾールとアンヒドロイカリチンとの重量比が、(1~5):1である。
【0016】
本発明の一実施形態では、(Z)-3-(N-(3-ブロモ-4-フルオロフェニル)-N’-ヒドロキシホルムアミド)-4-(2-グアニジルエチル)アミノ)-1,2,5-オキサジアゾールとアンヒドロイカリチンとの重量比が、(1.6~3.3):1である。
【0017】
本発明のいくつかの実施形態では、(Z)-3-(N-(3-ブロモ-4-フルオロフェニル)-N’-ヒドロキシホルムアミド)-4-(2-グアニジルエチル)アミノ)-1,2,5-オキサジアゾールとアンヒドロイカリチンとの重量比が、(2~3):1である。
【0018】
本発明のいくつかの実施形態では、(Z)-3-(N-(3-ブロモ-4-フルオロフェニル)-N’-ヒドロキシホルムアミド)-4-(2-グアニジルエチル)アミノ)-1,2,5-オキサジアゾールとアンヒドロイカリチンとの重量比が、1.6:1である。
【0019】
薬効実施例1本発明に係る化合物Iとアンヒドロイカリチンとを含有する医薬組成物がアルツハイマー病モデルマウスに与える影響の試験の結果、本発明に係る化合物Iとアンヒドロイカリチンとを含有する医薬組成物は、アルツハイマー病モデルマウスの平均探索時間、作業記憶エラー頻度や参照記憶エラー頻度を顕著に低下させ、マウスの認知機能障害を顕著に改善し、アルツハイマー病モデルマウスの血清セロトニン、トリプトファンレベルを明らかに上昇し、アルツハイマー病モデルマウスの血清L-キヌレニンレベルを低下させることは明らかになった。本発明の医薬組成物は、モノアミン神経伝達物質の合成を効果的に調節し、体内のトリプトファン生体内代謝を阻害し、学習・記憶能力を改善する。
【0020】
本発明は、アルツハイマー病治療薬の製造における、本発明に係る化合物Iとアンヒドロイカリチンとを含有する医薬組成物の使用を提供する。
【0021】
本発明は、アルツハイマー病患者の認知機能障害を改善する薬物の製造における、本発明に係る化合物Iとアンヒドロイカリチンとを含有する医薬組成物の使用を提供する。
【0022】
本発明に係る化合物Iとアンヒドロイカリチンとを含有する医薬組成物は、血清セロトニン及びトリプトファンレベルを上昇し、血清L-キヌレニン含有量を低下させ、記憶力を向上させる。
【0023】
本発明は、(Z)-3-(N-(3-ブロモ-4-フルオロフェニル)-N’-ヒドロキシホルムアミド)-4-(2-グアニジルエチル)アミノ)-1,2,5-オキサジアゾール(化合物I)とアンヒドロイカリチンとを含有する医薬組成物を提供する。複数の投与経路に適するという本発明の組成物の物理的及び化学的性質から、この医薬組成物は、公知の医薬組成物の製造方法によって製造することができる。本発明の組成物を1種又は複数種の薬学分野に許容される固体又は液体賦形剤又は/又は助剤と組み合わせて、ヒトや動物による使用に適した任意の剤形にしてもよい。
【0024】
本発明の医薬組成物は、単位用量の形態で投与することができ、投与経路は、経口投与、腸管投与などの消化管投与を主としてもよい。しかし、本発明の組成物には、非腸管投与に適した物理的及び化学的性質を有することから、非腸管投与の形態、例えば、静脈注射、筋肉注射、皮下注射、腹腔内注射や、鼻腔、口腔粘膜、眼、肺及び気道投与、皮膚への塗布なども許容される。その中で、アルツハイマー病を治療する使用においては、通常の錠剤やカプセル剤などの一般的な経口製剤の形態で、特別な処理なしに経口で直接投与される(非常に使いやすい)剤形にしてもよいし、注射剤を含む他の剤形の製剤にして、他の様々な投与経路と方法を採用してもよいことはその優れた優位性である。
【0025】
本発明の医薬組成物は固形製剤に製造され、固形経口製剤は、錠剤、カプセル剤、顆粒剤、又は丸剤である。錠剤としては、通常錠、コーティング錠、糖衣錠、フィルムコーティング錠、腸溶性コーティング錠、多層錠、分散錠、徐放錠などが含まれる。本発明の医薬組成物は、持ち運びに便利であり、投与が容易であり、患者に受け入れやすいという利点を有する。
【0026】
経口投与又は他の経路による投与は、新たな技術を用いて製造された種々の液体剤形、固体剤形、又は半固体剤形を含む他の投与剤形を用いることもできる。液体剤形は、溶液剤(真の溶液とコロイド溶液を含む)、乳剤(O/W型、W/O型、及びマルチエマルションを含む)、懸濁剤、注射剤(水注射剤、粉末注射剤や輸液を含む)、点眼剤、点鼻剤、ローション剤や塗布剤などであってもよく、固体剤形は、錠剤(通常錠、腸溶性錠、トローチ錠、分散錠、咀嚼錠、発泡錠、口腔内崩壊錠を含む)、カプセル剤(ハードカプセル、ソフトカプセル、腸溶性カプセルを含む)、顆粒剤、散剤、ペレット剤、滴丸剤、座薬、膜剤、パッチ剤、エアロゾル(パウダースプレー)剤、スプレー剤などであってもよく、半固体剤形は、軟膏剤、クリーム剤、ゲル剤、ペースト剤などであってもよい。
【0027】
本発明の医薬組成物は、一般的な製剤としてもよく、徐放性製剤、放出制御製剤、標的製剤、各種粒子状ドラッグデリバリーシステムとしてもよい。
【0028】
本発明の組成物を錠剤にするためには、希釈剤、バインダ、湿潤剤、崩壊剤、潤滑剤、流動助剤を含む、関連分野で公知の種々の賦形剤を広く使用することができる。希釈剤は、デンプン、デキストリン、ショ糖、ブドウ糖、乳糖、マンニトール、ソルビトール、キシリトール、微結晶セルロース、硫酸カルシウム、リン酸水素カルシウム、炭酸カルシウムなどであってもよい。湿潤剤は、水、エタノール、イソプロパノールなどであってもよい。バインダは、デンプンパルプ、デキストリン、シロップ、蜂蜜、グルコース溶液、微結晶セルロース、アラビアガムパルプ、ゼラチンパルプ、カルボキシメチルセルロースナトリウム、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、エチルセルロース、アクリル樹脂、カルボマー、ポリビニルピロリドン、ポリエチレングリコールなどであってもよい。崩壊剤は、乾燥澱粉、微結晶セルロース、低置換ヒドロキシプロピルセルロース、架橋ポリビニルピロリドン、架橋カルボキシメチルセルロースナトリウム、カルボキシメチルスターチナトリウム、炭酸水素ナトリウムとクエン酸、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ドデシルスルホン酸ナトリウムなどであってもよい。潤滑剤及び流動助剤は、タルク粉末、シリカ、ステアリン酸塩、酒石酸、流動パラフィン、ポリエチレングリコールなどであってもよい。
【0029】
錠剤はまた、糖衣錠、フィルムコーティング錠、腸溶性コーティング錠、又は二層及び多層錠などのコーティング錠にさらに製剤化することもできる。
【0030】
投与単位をカプセル剤にするために、本発明の医薬組成物を希釈剤及び流動助剤と混合し、その混合物をハードカプセル又はソフトカプセルに直接入れることができ、また、本発明の医薬組成物を希釈剤、バインダ、崩壊剤とともに顆粒又はペレットにしてから、ハードカプセル又はソフトカプセルに入れることもできる。本発明の医薬組成物の錠剤を製造するために使用される希釈剤、バインダ、湿潤剤、崩壊剤、及び流動助剤は、本発明の医薬組成物のカプセル剤を製造するために使用することもできる。
【0031】
本発明の医薬組成物を注射剤に製造するために、水、エタノール、イソプロパノール、プロピレングリコール又はそれらの混合物を溶媒として、製薬分野で一般的に使用される可溶化剤、共溶媒、pH調整剤、浸透圧調整剤を適量で加えることができる。可溶化剤や共溶媒は、ポロクサマー、レシチン、ヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリンなどであってもよく、pH調整剤は、リン酸塩、酢酸塩、塩酸塩、水酸化ナトリウムなどであってもよく、浸透圧調整剤は、塩化ナトリウム、マンニトール、グルコース、リン酸塩、酢酸塩などであってもよい。凍結乾燥粉末注射剤を製造する場合、マンニトール、ブドウ糖などを補助剤として添加することもできる。
【0032】
さらに、剤形に特別なニーズがある場合には、着色剤、保存剤、香料、矯味剤又は他の添加剤を医薬製剤に添加することもできる。
【0033】
本発明の医薬組成物は、医薬目的を達成し、治療効果を高めるために、公知の任意の投与方法、適用方法により投与、使用することができる。
【0034】
本発明の前記化合物Iは、その薬学的に許容される塩を含む。
【0035】
本明細書で使用される用語「薬学的に許容される塩」とは、特定の化合物の遊離酸及び遊離塩基の生物学的効力を保持し、かつ生物学的又はその他の点で悪影響を及ぼさない塩を意味する。本願の化合物はまた、薬学的に許容される塩を含む。薬学的に許容される塩とは、母体化合物中の塩基性基を塩の形に変換することを意味する。薬学的に許容される塩には、アミン(アミノ)基のような塩基性基の無機又は有機酸塩類が含まれるが、これらに限定されない。本願の薬学的に許容される塩は、溶媒系中で、母体化合物中の塩基性基と1~4当量の酸とを反応させることにより、母体化合物から合成することができる。適切な塩としては、Remingtong’s Pharmaceutical Scicences, 17th ed., Mack Publishing Company, Easton, Pa., 1985, p. 1418、及びJournal of Pharmaceutical Science, 66, 2(1977)に記載の1種又は複数種が挙げられる。
【0036】
本明細書で使用される用語「治療」及び他の類似の同義語は、疾患又は病症の症状を緩和、軽減又は改善すること、疾患又は病症を抑制すること、例えば、疾患又は病症の進行を阻止すること、疾患又は病症を緩和すること、疾患又は病症を好転させること、疾患又は病症から生じる症状を緩和すること、又は疾患又は病症の症状を中止すること、他の症状を予防すること、症状をもたらす潜在的な代謝原因を改善又は予防することを含み、さらに、この用語は予防の目的を含む。この用語には、治療効果及び/又は予防効果を得ることも含まれる。前記治療効果とは、治療対象の潜在的疾患の治癒又は改善を意味する。さらに、潜在的疾患に関連する1つ又は複数の生理学的症状の治癒又は改善も治療効果であり、例えば、患者が潜在的疾患の影響を受けている可能性があるにもかかわらず、患者の状態の改善が観察される。予防効果の場合、前記組成物は、特定の疾患に罹患する危険性を有する患者に投与されてもよいし、当該疾患の診断がなされていないにもかかわらず、当該疾患の1つ又は複数の生理学的症状を有する患者に投与されてもよい。
【0037】
本明細書で使用される用語「有効量」、「治療有効量」又は「薬学的有効量」とは、投与すると治療対象の疾患又は病症の1又は複数の症状をある程度緩和するのに十分な、少なくとも1つの活性物質(例えば、本願の化合物)の量を意味する。その結果は、徴候、症状、又は病因の減少及び/又は緩和、又は生物系の他の所望の変化であり得る。例えば、治療のための「有効量」は、本明細書に開示された化合物を含む組成物の、臨床的に有意な症状緩和効果を提供するために必要な量である。任意の個体症例に適した有効量は、用量漸増試験などの技術を用いて決定することができる。
【0038】
本発明による化合物Iとアンヒドロイカリチンとを含有する医薬組成物は、従来技術に対して、以下のような技術的な優位性を持つ。
【0039】
1.本発明に係る化合物Iとアンヒドロイカリチンとを含有する医薬組成物は、アルツハイマー病の治療、認知機能障害の改善において相乗的な技術的効果を達成させる。
【0040】
2.本発明に係る化合物Iとアンヒドロイカリチンとを含有する医薬組成物は、血清セロトニン及びトリプトファンのレベルを顕著に上昇し、トリプトファン代謝を阻害し、L-キヌレニンレベルを低下させ、記憶力を向上させる。
【0041】
3.本発明に係るアンヒドロイカリチンは、従来の漢方薬イカリソウから抽出される天然漢方薬単体であり、人体に対する毒性や副作用が低く、患者への投薬安全性及び投薬コンプライアンスを著しく向上させることができ、さらに患者の治療効果及び生活の質を大幅に向上させることができる。さらに、本発明に係る化合物Iとアンヒドロイカリチンとを含有する医薬組成物は、アルツハイマー病の治療効果を達成しつつ、薬物の使用量を低減することができ、薬物の毒性や副作用を低減することができ、安全性が高い。
【発明を実施するための形態】
【0042】
ここで、以下の実施例によって本発明をさらに説明するが、本発明の適用範囲は以下の実施例に限定されるものではなく、以下の実施例は本発明のいかなる形式上の制限でもなく、当業者にとっては、本発明の技術的本質に基づいて本発明の技術的解決手段の範囲内で行われるいかなる修正、置換なども、本発明の技術的解決手段の保護範囲内にある。
【0043】
イカリソウフラボノイド成分は、植物イカリソウでは、ほとんどが配糖体の形で存在するが、アンヒドロイカリチンは、植物中の含有量が非常に少なく、直接単離・精製することが困難であるため、イカリソウフラボノイド配糖体中のグリコシド結合を加水分解することにより得ることができる。イカリインを原料としてアンヒドロイカリチンを製造する方法としては、酵素分解法、酸分解法、酵素分解・酸分解併用法などが挙げられる。グリコシド結合を加水分解する方法としては、次のような方法が報告されている。(1)酸加水分解やアルカリ加水分解などの化学的方法:酸加水分解法では、通常、塩酸、硫酸や硝酸が使用され、アルカリ加水分解法では、通常、水酸化ナトリウムや水酸化カリウムが使用される。この方法では、主にイカリインの3-ラムノースグリコシド結合と7-グルコシド結合を加水分解してアンヒドロイカリチンを取得する。これらの研究では、反応基質としてイカリインが使用される。(2)生物変換法:細菌、カビ、酵母の発酵による酵素産生の誘導剤としてイカリソウを使用し、カビ含有液を調製し、この菌液を用いてイカリソウフラボノイド配糖体を低グリコシド又はアグリコンに変換する。イカリソウフラボノイド配糖体には多くの種類があり、そのグリコシド結合構造は非常に複雑で、主にα-L-ラムノースグリコシド結合、β-D-グルコシド結合、β-D-キシロースグリコシド結合などの単糖グリコシド結合、及びこれらから構成される二糖グリコシド結合で構成されている。発明の名称が「アンヒドロイカリチンの製造方法」の中国特許CN201711485889.7はアンヒドロイカリチンの製造方法を提供している。上記の複数の製造方法によれば、アンヒドロイカリチンを製造することができる。
【0044】
本発明におけるアンヒドロイカリチンは、イカリインを原料として製造してもよく、化学合成方法により製造されてもよく、市販品として購入してもよい。
【0045】
実施例1 本発明の医薬組成物の通常の錠剤
【0046】
アンヒドロイカリチン 3.2g
【0047】
化合物I 10.6g
【0048】
デンプン 140g
【0049】
デキストリン 120g
【0050】
50%エタノール 適量
【0051】
ステアリン酸マグネシウム 1.0g
【0052】
製造プロセス
アンヒドロイカリチン、化合物I、デンプン、デキストリンを処方量で秤量し、均一に混合した。適量の50%エタノールを混合粉末に加え、均一に混合し、軟材にし、18メッシュのナイロンスクリーンにかけて、湿潤顆粒にし、60℃程度で乾燥し、乾燥顆粒の水分を1.5%以下に制御し、20メッシュのスクリーンで整粒し、次に、ステアリン酸マグネシウムと均一に混合し、打錠した。
【0053】
実施例2 本発明の医薬組成物のカプセル剤
【0054】
アンヒドロイカリチン 10.6g
【0055】
化合物I 5.3g
【0056】
微結晶セルロース 300g
【0057】
微粉末シリカゲル 12g
【0058】
製造プロセス
アンヒドロイカリチン、化合物I、微結晶セルロース、微粉末シリカゲルを粉砕して、100メッシュのスクリーンにかけ、均一に混合し、カプセルに直接詰めた。
【0059】
実施例3 本発明の医薬組成物の分散錠剤
【0060】
アンヒドロイカリチン 1.6g
【0061】
化合物I 16g
【0062】
ヒドロキシメチルセルロースカルシウム 15g
【0063】
微結晶セルロース 140g
【0064】
10%デンプンパルプ 適量
【0065】
架橋ポリビニルピロリドン 15g
【0066】
ステアリン酸マグネシウム 6g
【0067】
製造プロセス
処方量のアンヒドロイカリチン、化合物Iを100メッシュのスクリーンにかけ、ヒドロキシメチルセルロースカルシウム、架橋ポリビニルピロリドン、微結晶セルロースを80メッシュのスクリーンにかけ、均一に混合した後、適量の10%デンプンパルプを加えて造粒し、ステアリン酸マグネシウムを加えて、打錠した。
【0068】
実施例4 本発明の医薬組成物の顆粒剤
【0069】
アンヒドロイカリチン 10g
【0070】
化合物I 16g
【0071】
デンプン 200g
【0072】
デキストリン 50g
【0073】
ショ糖粉末 50g
【0074】
80%エタノール 適量
【0075】
製造プロセス
アンヒドロイカリチン、化合物I、デンプン、デキストリン、ショ糖粉末を処方量で秤量し、均一に混合した。適量の80%エタノールを混合粉末に加え、均一に混合し、軟材にし、18メッシュのナイロンスクリーンにかけて、湿潤顆粒にし、60℃程度で乾燥し、20メッシュのスクリーンで整粒し、個包装した。
【0076】
実施例5 本発明の医薬組成物の徐放性錠剤
【0077】
アンヒドロイカリチン 21.2g
【0078】
化合物I 10.6g
【0079】
ヒドロキシプロピルメチルセルロース 80g
【0080】
5%ポリビニルピロリドン水溶液 適量
【0081】
乳糖 85g
【0082】
微粉末シリカゲル 10g
【0083】
製造プロセス
処方量のアンヒドロイカリチン、化合物I、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、乳糖を均一に混合し、5%ポリビニルピロリドン水溶液を加えて造粒し、40~80℃で乾燥し、乾燥顆粒を整粒し、乾燥顆粒に処方量の微粉末シリカゲルを加え、均一に混合し、異状に打錠した。
【0084】
実施例6 本発明の医薬組成物の滴丸剤
【0085】
アンヒドロイカリチン 10g
【0086】
化合物I 16g
【0087】
ポリエチレングリコール-6000 72.5g
【0088】
ポリエチレングリコール-1000 25.0g
【0089】
製造プロセス
100メッシュのスクリーンにかけた処方量のアンヒドロイカリチン、化合物Iを、水浴で加熱して溶融した処方量のポリエチレングリコール6000、ポリエチレングリコール1000を含有する混合液に加え、十分に撹拌して均一にし、滴下瓶に入れ、95±2℃の条件で滴下製造し、4~6mLのメチルシリコーンオイルを容れたガラス製凝縮カラムに滴下し、成形後、取り出し、付着したメチルシリコーンオイルを吸収紙に吸い取った。
【0090】
実施例7 本発明の医薬組成物の腸溶性ソフトカプセル剤
【0091】
内容物処方
【0092】
アンヒドロイカリチン 1.6g
【0093】
化合物I 16g
【0094】
無水エタノール 10g
【0095】
ポリオキシエチレンヒマシ油 50g
【0096】
中鎖脂肪酸グリセリド 20g
【0097】
壁材処方
【0098】
ゼラチン 10g
【0099】
グリセリン 5g
【0100】
精製水 10g
【0101】
腸溶性コーティング液処方
【0102】
Eudragit L30D-55 100g
【0103】
クエン酸トリエチル 10g
【0104】
タルク粉末 7.5g
【0105】
精製水 200g
【0106】
製造プロセス
中鎖脂肪酸グリセリド、ポリオキシエチレンヒマシ油、1,2-プロピレングリコール、無水エタノールを処方量で秤量し、混合した後、均一に撹拌し、その後、化合物I及びアンヒドロイカリチンを加えて溶解し、任意に超音波処理して溶解を促進し、清澄濃縮液として、化合物Iとアンヒドロイカリチンとのマイクロエマルジョン濃縮物を得た。以上で得られたマイクロエマルジョン濃縮物に水を加えて、1:10~20の重量比で清澄溶液となるまで濃縮すると、ソフトカプセルのマイクロエマルジョン内容物を得た。ゼラチン、グリセリン、精製水を処方量で秤量し、均一に混合した後、プレスして壁材にし、次に、Eudragit L30D-55、クエン酸トリエチル、タルク粉末、精製水を処方量で秤量し、均一に混合し、腸溶性コーティング液を得る。化合物Iとアンヒドロイカリチンとを含有するソフトカプセルマイクロエマルジョン内容物を壁材で包み、ソフトカプセルにし、ソフトカプセル上に腸溶性コーティングを施して、腸溶性ソフトカプセルを得た。
【0107】
実施例8 本発明の医薬組成物の通常の錠剤
【0108】
アンヒドロイカリチン 10g
【0109】
化合物I 16g
【0110】
デンプン 260g
【0111】
デキストリン 220g
【0112】
50%エタノール 適量
【0113】
ステアリン酸マグネシウム 1.8g
【0114】
製造プロセス
アンヒドロイカリチン、化合物I、デンプン、デキストリンを処方量で秤量し、均一に混合した。適量の50%エタノールを混合粉末に加え、均一に混合し、軟材にし、18メッシュのナイロンスクリーンにかけて、湿潤顆粒にし、60℃程度で乾燥し、乾燥顆粒の水分を1.5%以下に制御し、20メッシュのスクリーンで整粒し、次に、ステアリン酸マグネシウムと均一に混合し、打錠した。
【0115】
実施例9 本発明の医薬組成物のカプセル剤
【0116】
アンヒドロイカリチン 10g
【0117】
化合物I 16g
【0118】
微結晶セルロース 500g
【0119】
微粉末シリカゲル 20g
【0120】
製造プロセス
アンヒドロイカリチン、化合物I、微結晶セルロース、微粉末シリカゲルを粉砕して、100メッシュのスクリーンにかけ、均一に混合して、カプセルに直接詰めた。
【0121】
実施例10 本発明の医薬組成物の顆粒剤
【0122】
アンヒドロイカリチン 10.6g
【0123】
化合物I 5.3g
【0124】
デンプン 120g
【0125】
デキストリン 30g
【0126】
ショ糖粉末 300g
【0127】
80%エタノール 適量
【0128】
製造プロセス
アンヒドロイカリチン、化合物I、デンプン、デキストリン、ショ糖粉末を処方量で秤量し、均一に混合した。適量の80%エタノールを混合粉末に加え、均一に混合し、軟材にし、18メッシュのナイロンスクリーンにかけて、湿潤顆粒にし、60℃程度で乾燥し、20メッシュのスクリーンで整粒し、個包装した。
【0129】
本発明者らは、本発明に係る化合物Iとアンヒドロイカリチンとを含有する医薬組成物のアルツハイマー病の治療効果を検証するために、関連する薬力学的試験研究を実施した。なお、下記の薬力学的試験により選択された医薬品が、本発明の代表的な処方及びその製造方法により得られた医薬品である。本発明に含まれる他の処方及び製造方法により得られる医薬品については、本発明者らは、同様に薬力学的実験を行い、実験の結果、他の処方及び製造方法により得られる医薬品には同一又は類似の効果があることが示されたが、紙面の制限により、ここでは1つ1つ挙げない。また、下記の薬力学的実験では、代表的な動物モデルの一部のみを例として本発明の有効性を検証する。
【0130】
薬効実施例1 本発明に係る化合物Iとアンヒドロイカリチンとを含有する医薬組成物がアルツハイマー病モデルマウスに与える影響
【0131】
アルミニウムが動物の脳内に病理学的変化を誘導することはすでに報告されているが、用量と時間は様々であり、用量は10.8~500mg・kg-1であり、時間は6週間から3カ月である。動物は長期にD-ガラクトースを注射した後、後者の代謝産物であるガラクトールは更に代謝されないため、細胞内に蓄積し、浸透圧に影響し、細胞の腫脹、代謝障害、生体内の活性酸素の増加、細胞膜脂質の損傷を招き、体の複数の臓器やシステムの機能低下を招き、これらの現象は、すべて加齢による変化と非常に似ている。D-ガラクトースはまた、ニューロンの数の減少、脳組織中のスーパーオキシドディスムターゼ活性の低下、マロンジアルデヒドやリポフスチンのレベルの上昇を含む、脳ニューロンの一連の変性変化を引き起こす。
【0132】
8アーム迷路の各アームの端には給餌装置があり、動物の餌取りの戦略、すなわち各アームに進入する回数、時間、正解回数、エラーの回数、ルートなどのパラメータを分析することにより、実験動物の空間記憶能力を反映することができる。8アーム迷路は比較的簡単で操作が容易で、短期の作業記憶と長期の参照記憶を区別できるため、学習・記憶認知実験の機能評価に広く使用されている。8アーム迷路の主な分析指標は、名称、群分け、作業記憶エラーレイテンシ、参照記憶エラーレイテンシ、正解合計回数、アーム進入合計回数、作業記憶エラー数、参照記憶エラー数、正解レイテンシ、正解率、作業記憶エラー率、参照記憶エラー率、最初のエラーまでの正解回数、テスト時間、軌跡グラフなどである。
【0133】
動物の迷路操作に影響を与える主な要因は、迷路又は観察者に対する恐怖と、動物の探索習慣、迷路のアームに置かれていることが知られている餌のドライブとの2つがある。過度の恐怖により、動物は迷路を探索できなくなり、探索せずに迷路内の特定の場所に常に留まるようになる。餌への渇望がなくなっても同様の結果が生じる可能性があり、動物を撫でる回数を増やしたり、必要に応じて迷路アームの側壁を上げると、動物の恐怖を軽減することができる。餌によるドライブ効果が不十分な場合は、餌の量を減らすことができるが、体重や全身状態を同時に監視する必要がある。
【0134】
8アーム迷路を使用して学習・記憶をテストしたところ、D-ガラクトースとAlClが実際にマウスの学習・記憶の低下を引き起こす可能性があることが示され、アルツハイマー病モデルの作成に成功した。
【0135】
1.実験動物
【0136】
体重20~22gのSPFグレード昆明マウス100匹(半雄半雌)、済南朋悦実験動物繁殖有限公司より提供(動物証明書番号:SCXK(魯)20190003)。マウスは、温度20~26℃、湿度40~70%、明暗サイクル 12:12時間のように厳密に管理された環境条件を備えたSPFレベルの動物飼育室で飼育され、成長及び繁殖飼料は自由に摂食させた。
【0137】
2.主な機器、試薬
【0138】
化合物I、山東新時代薬業有限公司より提供
【0139】
アンヒドロイカリチン、山東新時代薬業有限公司より提供
【0140】
8アーム迷路
【0141】
高速液体クロマトグラフ
【0142】
3.実験方法及び実験の群分け
【0143】
まず、すべてのマウスは8アーム迷路で訓練された。8アーム迷路実験は、動物の学習・記憶能力を評価するために一般的に使用されるモデルである。動物を適応的に1週間飼育した後、動物の体重を測定し、24時間絶食させた。その後、毎日の訓練後に通常餌を制限的に給与し、正常に摂食させたマウスの体重の80%~85%を維持した。2日目に、餌ペレット(動物1匹あたり4~5個、直径約3~4mm)を各アームと迷路の中央領域に振りかけた。次に、4匹の動物を同時に迷路の中央に置いた(各アームへのドアを開いた状態)。10min自由に摂食、探索させた。3日目に、2日目の訓練を繰り返した。このプロセスにより、動物は強いストレス条件なしで迷路環境に慣れるようになる。4日目から、動物を個別に訓練した。アームごとに、外側の餌箱の近くに餌ペレットを1つ置き、動物を自由に摂食させた。餌ペレットを食べた後、又は10min後に動物を取り出した。5日目には、餌箱に餌を入れ、前日の訓練を1日2回繰り返した。6日目後、4つのアームをランダムに選択し、各アームに餌ペレットを1つ置き、各アームのドアを閉め、動物を迷路の中央に置き、30s後、アームのドアを開いて、動物には、迷路内を自由に移動させ、動物が4つのアームにおける餌ペレットを食べ終わるまで餌ペレットを摂取させた。10min経っても餌ペレットが食べられない場合、実験は終了した。1日2回、1時間以上の間隔をあけて訓練した。5回の連続訓練の作業記憶エラーがゼロで、参照記憶エラーが1回を超えない場合、モデリングを開始した。
【0144】
学習基準を満たすマウスを選別し、そのうち10匹を正常群、10匹をモデル群、残りを実験群として無作為に選択した。同量の生理食塩水を腹腔内注射し、同量の再蒸留水を胃内投与した正常群を除き、他の群にはD-ガラクトース(500mg/kg/d)を腹腔内注射し(生理食塩水で調製)、また、AlCl(20mg/kg/d)(再蒸留水で調製)を胃内投与した。
【0145】
各実験群には実験の群分けと投与量に従って1日1回胃内投与し、正常群とモデル群には同量の精製水を8週間連続して胃内投与した。実験群のマウスは、アンヒドロイカリチン低用量群と高用量群、化合物I低用量群と高用量群、組成物群A、B、C、Dという合計8群に分けられ、1群につき10匹とした。各群と各群の投与量は次のとおりである。
【0146】
アンヒドロイカリチン低用量群:アンヒドロイカリチン3.2mg/(kg.d)を胃内投与
【0147】
アンヒドロイカリチン高用量群:アンヒドロイカリチン21.2mg/(kg.d)を胃内投与
【0148】
化合物I低用量群:化合物I 0.6mg/(kg.d)を胃内投与
【0149】
化合物I高用量群:化合物I 32mg/(kg.d)を胃内投与
【0150】
組成物A群:化合物I 5.3mg/(kg.d)+アンヒドロイカリチン1.6mg/(kg.d)の用量で胃内投与
【0151】
組成物B群:化合物I 5.3/mg/(kg.d)+アンヒドロイカリチン10.6mg/(kg.d)の用量で胃内投与
【0152】
組成物C群:化合物I 16mg/(kg.d)+アンヒドロイカリチン1.6mg/(kg.d)の用量で胃内投与
【0153】
組成物D群:化合物I 16mg/(kg.d)+アンヒドロイカリチン10mg/(kg.d)の用量で胃内投与
【0154】
統計方法はSPSS19.0統計ソフトで分析し、計量資料は
【数1】
で表され、t検定と分散分析を採用し、P<0.05は、差に統計学的意義がある。
【0155】
3.1 行動学的実験
【0156】
各群のマウスを8アーム迷路の中心に置いて実験を行い、作業記憶エラー、参照記憶エラー、アーム進入合計回数、及びテスト時間を記録した。
【0157】
記録された作業記録エラー、参照記録エラー、アーム進入合計回数、及びテスト時間に基づいて、作業記憶エラー頻度、参照記憶エラー頻度、及び平均探索時間を計算した。
【0158】
作業記憶エラー頻度=作業記憶エラー数/アーム進入合計回数
【0159】
参照記憶エラー頻度=参照記憶エラー数/アーム進入合計回数
【0160】
平均探索時間=テスト時間/アーム進入合計時間
【0161】
3.2 血清の製造
【0162】
最後の投与後、8アーム迷路テストに合格した各群のマウスの各眼球から2mlの血液を試験管に採取し、4℃で一晩放置し、翌日上清を採取して、使用に備えた。
【0163】
高速液体クロマトグラフィーを用いて血清中のトリプトファン、L-キヌレニン及びセロトニンの含有量を検出した。
【0164】
4.実験結果
【0165】
4.1 行動学的実験の結果
【0166】
【表1】
【0167】
注:モデル群と比較すると、P<0.05、++P<0.01、+++P<0.001
【0168】
化合物I低用量群と比較すると、P<0.05、&&P<0.01、&&&P<0.001
【0169】
化合物I高用量群と比較すると、P<0.05、★★P<0.01、★★★P<0.001
【0170】
アンヒドロイカリチン低用量群と比較すると、P<0.05、**P<0.01、***P<0.001
【0171】
アンヒドロイカリチン高用量群と比較すると、P<0.05、##P<0.01、###P<0.001
【0172】
組成物群Aと比較すると、P<0.05、△△P<0.01、△△△P<0.001
【0173】
組成物群Bと比較すると、P<0.05、◇◇P<0.01、◇◇◇P<0.001
【0174】
組成物群Cと比較すると、P<0.05、○○P<0.01、○○○P<0.001
【0175】
実験の結果、本発明に係る化合物Iとアンヒドロイカリチンとを含有する医薬組成物は、アルツハイマー病モデルマウスの平均探索時間、作業記憶エラー頻度及び参照記憶エラー頻度を有意に低減し、マウスの認知機能障害を有意に改善し、化合物I高用量群及び低用量群、アンヒドロイカリチン高用量群及び低用量群よりも優れた効果を有することが明らかになった。
【0176】
組成物群B及びCと比較して、組成物群Dはマウスの認知機能障害の改善に優れた効果を有し、組成物群Aは次善の効果を有する。
【0177】
4.2 血清トリプトファン、L-キヌレニン、及びセロトニンの含有量
【0178】
【表2】
【0179】
注:モデル群と比較すると、P<0.05、++P<0.01、+++P<0.001
【0180】
化合物I低用量群と比較すると、P<0.05、&&P<0.01、&&&P<0.001
【0181】
化合物I高用量群と比較すると、P<0.05、★★P<0.01、★★★P<0.001
【0182】
アンヒドロイカリチン低用量群と比較すると、P<0.05、**P<0.01、***P<0.001
【0183】
アンヒドロイカリチン高用量群と比較すると、P<0.05、##P<0.01、###P<0.001
【0184】
組成物群Aと比較すると、P<0.05、△△P<0.01、△△△P<0.001
【0185】
組成物群Bと比較すると、P<0.05、◇◇P<0.01、◇◇◇P<0.001
【0186】
組成物群Cと比較すると、P<0.05、○○P<0.01、○○○P<0.001
【0187】
実験の結果、本発明に係る化合物Iとアンヒドロイカリチンとを含有する医薬組成物は、アルツハイマー病モデルマウスの血清セロトニン及びトリプトファンのレベルを有意に上昇し、アルツハイマー病モデルマウスの血清L-キヌレニンのレベルを有意に低下させ、化合物I高用量群及び低用量群よりも優れた効果を有することが明らかになった。
【0188】
組成物群B及びCと比較して、組成物群Dは血清セロトニン及びトリプトファン含有量を増加させ、L-キヌレニン含有量を減少させる効果がより優れているが、組成物群Aは次善の効果を有する。本発明に係る化合物Iとアンヒドロイカリチンとを含有する組成物は、モノアミン神経伝達物質の合成を効果的に調節し、トリプトファン生体内代謝を阻害し、学習・記憶能力を向上させることができる。
【0189】
本発明に係る化合物Iとアンヒドロイカリチンとを含有する医薬組成物は、アルツハイマー病モデルに対して顕著な治療効果を示し、アルツハイマー病モデルの認知機能障害を顕著に改善し、記憶力を向上させる。化合物Iとアンヒドロイカリチンという2種類の活性成分は相乗的に効果を高め、アルツハイマー病の治療に顕著な効果を発揮した。
【0190】
上記の実施例は、本発明のいかなる形式上の制限でもなく、当業者にとっては、本発明の技術的本質に基づいて本発明の技術的解決手段の範囲内で行われたいかなる修正、置換等も、本発明の技術的解決手段の保護範囲内にある。
【国際調査報告】