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特表2024-538455チオール-エン重合のためのビニルスルホニル剤及び関連の使用
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  • 特表-チオール-エン重合のためのビニルスルホニル剤及び関連の使用 図1
  • 特表-チオール-エン重合のためのビニルスルホニル剤及び関連の使用 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-10-22
(54)【発明の名称】チオール-エン重合のためのビニルスルホニル剤及び関連の使用
(51)【国際特許分類】
   B29C 64/112 20170101AFI20241015BHJP
   B33Y 10/00 20150101ALI20241015BHJP
   B33Y 70/00 20200101ALI20241015BHJP
   B33Y 30/00 20150101ALI20241015BHJP
【FI】
B29C64/112
B33Y10/00
B33Y70/00
B33Y30/00
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024522182
(86)(22)【出願日】2022-10-20
(85)【翻訳文提出日】2024-06-05
(86)【国際出願番号】 US2022078455
(87)【国際公開番号】W WO2023070049
(87)【国際公開日】2023-04-27
(31)【優先権主張番号】63/270,122
(32)【優先日】2021-10-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】17/539,517
(32)【優先日】2021-12-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521165035
【氏名又は名称】インクビット, エルエルシー
【氏名又は名称原語表記】INKBIT, LLC
(74)【代理人】
【識別番号】100117606
【弁理士】
【氏名又は名称】安部 誠
(72)【発明者】
【氏名】ツウィディー, スコット
【テーマコード(参考)】
4F213
【Fターム(参考)】
4F213AA34
4F213AB03
4F213AB04
4F213AB06
4F213AB12
4F213AB14
4F213WA25
4F213WB01
4F213WL02
4F213WL12
4F213WL15
4F213WL23
4F213WL25
4F213WL62
(57)【要約】
本開示は、チオール-エン重合用のビニルスルホニル剤を含有する組合せ、造形材料、及びキットに関する。また本開示は、例えば3D印刷における、それらの組合せ、材料、及びキットの使用にも関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
物体を印刷するための方法であって、
(a)(i)ビニルスルホニル剤及び(ii)チオール剤を含む組合せを堆積させるステップと、
(ii)前記堆積された組合せを造形硬化条件にさらすステップと
を含む方法。
【請求項2】
物体を印刷するための方法であって、
(a)(i)ビニルスルホニル剤、(ii)チオール剤、及び(iii)硬化触媒を含む組合せを堆積させるステップと、
(b)前記堆積された組合せを造形硬化条件にさらすステップと
を含む方法。
【請求項3】
物体を印刷するための方法であって、
(a)(i)ビニルスルホニル剤及び(ii)チオール剤を含む造形材料を堆積させるステップと、
(b)前記堆積された造形材料を造形硬化条件にさらすステップと
を含む方法。
【請求項4】
物体を印刷するための方法であって、
(a)(i)ビニルスルホニル剤、(ii)チオール剤、及び(iii)硬化触媒を含む造形材料を堆積させるステップと、
(b)前記堆積された造形材料を造形硬化条件にさらすステップと
を含む方法。
【請求項5】
物体を印刷するための方法であって、
(a)支持材料を堆積させるステップと、
(b)(i)ビニルスルホニル剤及び(ii)チオール剤を含む造形材料を堆積させるステップと、
(c)前記堆積された造形材料を造形硬化条件にさらすステップと
を含む方法。
【請求項6】
物体を印刷するための方法であって、
(a)支持材料を堆積させるステップと、
(b)(i)ビニルスルホニル剤、(ii)チオール剤、及び(iii)硬化触媒を含む造形材料を堆積させるステップと、
(c)前記堆積された造形材料を造形硬化条件にさらすステップと
を含む方法。
【請求項7】
物体を印刷するための組合せであって、
(i)ビニルスルホニル剤と、
(ii)チオール剤と
を含む組合せ。
【請求項8】
物体を印刷するための組合せであって、
(i)ビニルスルホニル剤と、
(ii)チオール剤と、
(iii)硬化触媒と
を含む組合せ。
【請求項9】
物体を印刷するための造形材料であって、
(i)ビニルスルホニル剤と、
(ii)チオール剤と
を含む造形材料。
【請求項10】
物体を印刷するための造形材料であって、
(i)ビニルスルホニル剤と、
(ii)チオール剤と、
(iii)硬化触媒と
を含む造形材料。
【請求項11】
前記印刷はさらに、前記組合せ又は造形材料を堆積させるステップを1回又は複数回繰り返すことを含む、請求項1~10のいずれか一項に記載の方法、組合せ、又は造形材料。
【請求項12】
前記印刷はさらに、
前記堆積された組合せ又は造形材料を光学的に感知することと、
前記感知に従って、前記組合せ又は造形材料の1回又は複数回の堆積の繰り返しを制御することと
を含む、請求項1~11のいずれか一項に記載の方法、組合せ、又は造形材料。
【請求項13】
前記堆積された組合せ又は造形材料の感知は、印刷される前記物体の容積測定及び/又は断層撮影データを捕獲することを含む、請求項1~12のいずれか一項に記載の方法、組合せ、又は造形材料。
【請求項14】
前記組合せ又は造形材料の1回又は複数回の堆積の繰り返しの制御は、アクティブフィードバックループを使用し、前記感知によって生成されたデータに従って、前記組合せ又は造形材料の1回又は複数回の堆積の繰り返しを修正することを含む、請求項1~13のいずれか一項に記載の方法、組合せ、又は造形材料。
【請求項15】
前記組合せ又は造形材料は、増感剤をさらに含む、請求項1~14のいずれか一項に記載の方法、組合せ、又は造形材料。
【請求項16】
前記組合せ又は造形材料は、高靭性化剤をさらに含む、請求項1~15のいずれか一項に記載の方法、組合せ、又は造形材料。
【請求項17】
前記組合せ又は造形材料は、安定剤をさらに含む、請求項1~16のいずれか一項に記載の方法、組合せ、又は造形材料。
【請求項18】
前記組合せ又は造形材料は、表面張力調整剤をさらに含む、請求項1~17のいずれか一項に記載の方法、組合せ、又は造形材料。
【請求項19】
前記組合せ又は造形材料は、着色剤をさらに含む、請求項1~18のいずれか一項に記載の方法、組合せ、又は造形材料。
【請求項20】
前記ビニルスルホニル剤は、2つ以上のビニルスルホニル部分を含む、請求項1~19のいずれか一項に記載の方法、組合せ、又は造形材料。
【請求項21】
前記ビニルスルホニル部分のそれぞれは独立して、
【化1】
(式中、各Rは独立して、H又は置換基である)
である、請求項1~20のいずれか一項に記載の方法、組合せ、又は造形材料。
【請求項22】
前記ビニルスルホニル部分のそれぞれは、
【化2】
である、請求項1~21のいずれか一項に記載の方法、組合せ、又は造形材料。
【請求項23】
前記ビニルスルホニル部分のそれぞれは、
【化3】
である、請求項1~22のいずれか一項に記載の方法、組合せ、又は造形材料。
【請求項24】
前記ビニルスルホニル部分のそれぞれは、
【化4】
である、請求項1~23のいずれか一項に記載の方法、組合せ、又は造形材料。
【請求項25】
前記チオール剤は、2つ以上のチオール部分を含む、請求項1~24のいずれか一項に記載の方法、組合せ、又は造形材料。
【請求項26】
前記硬化触媒は、潜在性触媒である、請求項1~25のいずれか一項に記載の方法、組合せ、又は造形材料。
【請求項27】
前記潜在性触媒は、光潜在性触媒、熱潜在性触媒、又は化学的潜在性触媒である、請求項1~26のいずれか一項に記載の方法、組合せ、又は造形材料。
【請求項28】
前記硬化触媒は、非潜在性触媒である、請求項1~27のいずれか一項に記載の方法、組合せ、又は造形材料。
【請求項29】
前記硬化触媒は、化学放射線によって活性化される、請求項1~28のいずれか一項に記載の方法、組合せ、又は造形材料。
【請求項30】
前記硬化触媒は、増感剤の存在下で化学放射線によって活性化される、請求項1~29のいずれか一項に記載の方法、組合せ、又は造形材料。
【請求項31】
前記硬化触媒は、光開始剤を含む、請求項1~30のいずれか一項に記載の方法、組合せ、又は造形材料。
【請求項32】
前記硬化触媒は、塩基触媒を含む、請求項1~31のいずれか一項に記載の方法、組合せ、又は造形材料。
【請求項33】
前記塩基触媒は、塩基である、請求項1~32のいずれか一項に記載の方法、組合せ、又は造形材料。
【請求項34】
前記塩基触媒は、塩基の前駆体である、請求項1~33のいずれか一項に記載の方法、組合せ、又は造形材料。
【請求項35】
前記組合せ又は材料は、着色剤をさらに含む、請求項1~34のいずれか一項に記載の方法、組合せ、又は造形材料。
【請求項36】
前記造形材料は、造形堆積条件下で堆積される、請求項1~35のいずれか一項に記載の方法、組合せ、又は造形材料。
【請求項37】
前記造形材料は、造形硬化条件下で硬化される、請求項1~36のいずれか一項に記載の方法、組合せ、又は造形材料。
【請求項38】
前記造形硬化条件は、放射線を含む、請求項1~37のいずれか一項に記載の方法、組合せ、又は造形材料。
【請求項39】
前記硬化条件は、高温をさらに含む、請求項1~38のいずれか一項に記載の方法、組合せ、又は造形材料。
【請求項40】
前記硬化した造形材料は、チオール-エンポリマーを含む、請求項1~39のいずれか一項に記載の方法、組合せ、又は造形材料。
【請求項41】
本明細書に記載される方法によって作製された硬化造形材料。
【請求項42】
物体を印刷するためのシステムであって、
(i)プリンタと、
(ii)請求項1~41のいずれか一項に記載の組合せ又は造形材料と
を含むシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本出願は、2022年10月21日に出願された米国仮特許出願第63/270,122号及び2021年1月1日に出願された米国非仮特許出願17/539,517号に対する優先権及びその利益を主張するものであり、これらのそれぞれの内容は、全ての目的のために参照によってその全体が本明細書中に援用される。
【背景技術】
【0002】
3D印刷としても知られている付加製造は、一般に所望の3D仕様、例えばソリッドモデルに一致するようにコンピュータ制御プロセスに従って部品を製造するための比較的幅広い種類の技術を指す。このような3D印刷のためにいくつかの異なる種類の材料が使用されており、異なる材料は、異なる製造技術に対応する利点及び/欠点を提供する。例えば材料の調査は、Ligon et al.(Chemical Reviews 117(15):10212-10290(2017))において見出すことができる。
【0003】
ある種類の製造技術では、インクジェット印刷技術を用いて、部分的に製造された物体上に堆積させるために材料が噴射される。噴射された材料は、通常、堆積された直後にUV硬化され、硬化した材料の薄層が形成される。精密な製造を達成するために、いくつかの技術は、例えば、表面形状を制御するために機械的ローラー又は「プラナライザー」を用いて正確な層間構造を維持する機械的アプローチを使用し、それにより、製造された物体の正確さが制御される。したがって、平坦化を可能にし、正確に製造された物体を得るために、急速な硬化は重要な特徴である。しかしながら、このようなインクで結果として得られる材料特性は不十分なことがある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
3D印刷においてインクとして使用され得る新規材料が必要とされている。本開示は、この必要性に対処する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
いくつかの態様において、本開示は、本明細書に開示される組合せ、造形材料、又はキットを使用して、物体を印刷する(例えば、3D印刷)ための方法を提供する。
【0006】
いくつかの態様において、本開示は、物体を印刷する(例えば、3D印刷)ための方法であって、
(a)(i)ビニルスルホニル剤及び(ii)チオール剤を含む組合せを堆積させる(例えば、噴射する)ステップと、
(ii)堆積された組合せを造形硬化条件にさらすステップと
を含む方法を提供する。
【0007】
いくつかの態様において、本開示は、物体を印刷する(例えば、3D印刷)ための方法であって、
(a)(i)ビニルスルホニル剤、(ii)チオール剤、及び(iii)硬化触媒を含む組合せを堆積させる(例えば、噴射する)ステップと、
(b)堆積された組合せを造形硬化条件にさらすステップと
を含む方法を提供する。
【0008】
いくつかの態様において、本開示は、物体を印刷する(例えば、3D印刷)ための方法であって、
(a)(i)ビニルスルホニル剤及び(ii)チオール剤を含む造形材料を堆積させる(例えば、噴射する)ステップと、
(b)堆積された造形材料を造形硬化条件にさらすステップと
を含む方法を提供する。
【0009】
いくつかの態様において、本開示は、物体を印刷する(例えば、3D印刷)ための方法であって、
(a)(i)ビニルスルホニル剤、(ii)チオール剤、及び(iii)硬化触媒を含む造形材料を堆積させる(例えば、噴射する)ステップと、
(b)堆積された造形材料を造形硬化条件にさらすステップと
を含む方法を提供する。
【0010】
いくつかの態様において、本開示は、物体を印刷する(例えば、3D印刷)ための方法であって、
(a)支持材料を堆積させる(例えば、噴射する)ステップと、
(b)(i)ビニルスルホニル剤及び(ii)チオール剤を含む造形材料を堆積させる(例えば、噴射する)ステップと、
(c)堆積された造形材料を造形硬化条件にさらすステップと
を含む方法を提供する。
【0011】
いくつかの態様において、本開示は、物体を印刷する(例えば、3D印刷)ための方法であって、
(a)支持材料を堆積させる(例えば、噴射する)ステップと、
(b)(i)ビニルスルホニル剤、(ii)チオール剤、及び(iii)硬化触媒を含む造形材料を堆積させる(例えば、噴射する)ステップと、
(c)堆積された造形材料を造形硬化条件にさらすステップと
を含む方法を提供する。
【0012】
いくつかの態様において、本開示は、物体を印刷する(例えば、3D印刷)ための、本明細書に開示される組合せ、造形材料、又はキットを提供する。
【0013】
いくつかの態様において、本開示は、物体を印刷する(例えば、3D印刷)ための組合せであって、
(i)ビニルスルホニル剤と、
(ii)チオール剤と
を含む組合せを提供する。
【0014】
いくつかの態様において、本開示は、物体を印刷する(例えば、3D印刷)ための組合せであって、
(i)ビニルスルホニル剤と、
(ii)チオール剤と、
(iii)硬化触媒と
を含む組合せを提供する。
【0015】
いくつかの態様において、本開示は、物体を印刷する(例えば、3D印刷)ための造形材料であって、
(i)ビニルスルホニル剤と、
(ii)チオール剤と
を含む造形材料を提供する。
【0016】
いくつかの態様において、本開示は、物体を印刷する(例えば、3D印刷)ための造形材料であって、
(i)ビニルスルホニル剤と、
(ii)チオール剤と、
(iii)硬化触媒と
を含む造形材料を提供する。
【0017】
いくつかの態様において、本開示は、物体を印刷する(例えば、3D印刷)ためのキットであって、
(i)ビニルスルホニル剤、及び
(ii)チオール剤
を含む造形材料と、
支持材料と
を含むキットを提供する。
【0018】
いくつかの態様において、本開示は、物体を印刷する(例えば、3D印刷)ためのキットであって、
(i)ビニルスルホニル剤、
(ii)チオール剤、及び
(iii)硬化触媒
を含む造形材料と、
支持材料と
を含むキットを提供する。
【0019】
いくつかの態様において、本開示は、本明細書に記載される硬化造形材料を提供する。
【0020】
いくつかの態様において、本開示は、本明細書に記載される方法によって作製される硬化造形材料を提供する。
【0021】
いくつかの態様において、本開示は、物体を印刷する(例えば、3D印刷)ためのシステムであって、
(i)プリンタ(例えば、インクジェットプリンタ)と、
(ii)本明細書に開示される組合せ、造形材料、又はキットと
を含むシステムを提供する。
【0022】
他に定義されない限り、本明細書で使用される全ての技術及び科学用語は、本開示が属する技術分野の当業者によって一般的に理解されるのと同じ意味を有する。本明細書において、文脈が明らかに他に指示しない限り、単数形は複数も含む。本明細書に記載されるものと同様又は同等の方法及び材料を本開示の実施又は試験で使用することができるが、適切な方法及び材料が以下に記載される。本明細書で言及される全ての刊行物、特許出願、特許及び他の参考文献は、参照によって援用される。本明細書で引用される参考文献は、特許請求される本発明の先行技術であると承認されるものではない。矛盾がある場合は、定義を含む本明細書が優先されることになる。加えて、材料、方法及び実施例は単なる例示であり、限定することは意図されない。本明細書に開示される化合物の化学構造と名称とに矛盾がある場合、化学構造が優先されることになる。
【0023】
本開示の他の特徴及び利点は、以下の詳細な記載及び特許請求の範囲から明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】例示的な3Dプリンタの概略図である。
図2】代替の例示的な3Dプリンタの概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
理論に束縛されることは望まないが、本開示は、3D印刷に適し得る組合せ、造形材料、又はキットの発見に関する。いくつかの実施形態では、本組合せ、材料、又はキットは、印刷される物体の表面形状を制御するためにどんな接触も必要としない3D印刷プロセス、例えば、非接触(例えば、光学)フィードバックアプローチを用いる3D印刷プロセスを可能にし得る。いくつかの実施形態では、本組合せ、材料、又はキットは、チオール-エン重合を伴う3D印刷プロセスを可能にし得る。いくつかの実施形態では、本組合せ、材料、又はキットは、異なるアルケニルモノマーを含有する組合せ、材料、又はキットと比較して、より高度のチオール-エン重合を可能にし得る。いくつかの実施形態では、本組合せ、材料、又はキットは、放射線の非存在下でチオール-エン重合を可能にし得る。
【0026】
物体の印刷方法
いくつかの態様において、本開示は、本明細書に開示される組合せ、造形材料、又はキットを使用して、物体を印刷する(例えば、3D印刷)ための方法を提供する。
【0027】
いくつかの態様において、本開示は、物体を印刷する(例えば、3D印刷)ための方法であって、
(a)(i)ビニルスルホニル剤及び(ii)チオール剤を含む組合せを堆積させる(例えば、噴射する)ステップと、
(ii)堆積された組合せを造形硬化条件にさらすステップと
を含む方法を提供する。
【0028】
いくつかの態様において、本開示は、物体を印刷する(例えば、3D印刷)ための方法であって、
(a)(i)ビニルスルホニル剤、(ii)チオール剤、及び(iii)硬化触媒を含む組合せを堆積させる(例えば、噴射する)ステップと、
(b)堆積された組合せを造形硬化条件にさらすステップと
を含む方法を提供する。
【0029】
いくつかの態様において、本開示は、物体を印刷する(例えば、3D印刷)ための方法であって、
(a)(i)ビニルスルホニル剤及び(ii)チオール剤を含む造形材料を堆積させる(例えば、噴射する)ステップと、
(b)堆積された造形材料を造形硬化条件にさらすステップと
を含む方法を提供する。
【0030】
いくつかの態様において、本開示は、物体を印刷する(例えば、3D印刷)ための方法であって、
(a)(i)ビニルスルホニル剤、(ii)チオール剤、及び(iii)硬化触媒を含む造形材料を堆積させる(例えば、噴射する)ステップと、
(b)堆積された造形材料を造形硬化条件にさらすステップと
を含む方法を提供する。
【0031】
いくつかの態様において、本開示は、物体を印刷する(例えば、3D印刷)ための方法であって、
(a)支持材料を堆積させる(例えば、噴射する)ステップと、
(b)(i)ビニルスルホニル剤及び(ii)チオール剤を含む造形材料を堆積させる(例えば、噴射する)ステップと、
(c)堆積された造形材料を造形硬化条件にさらすステップと
を含む方法を提供する。
【0032】
いくつかの態様において、本開示は、物体を印刷する(例えば、3D印刷)ための方法であって、
(a)支持材料を堆積させる(例えば、噴射する)ステップと、
(b)(i)ビニルスルホニル剤、(ii)チオール剤、及び(iii)硬化触媒を含む造形材料を堆積させる(例えば、噴射する)ステップと、
(c)堆積された造形材料を造形硬化条件にさらすステップと
を含む方法を提供する。
【0033】
いくつかの態様において、本開示は、物体を印刷する(例えば、3D印刷)ための、本明細書に開示される組合せ、造形材料、又はキットを提供する。
【0034】
いくつかの態様において、本開示は、物体を印刷する(例えば、3D印刷)ための組合せであって、
(i)ビニルスルホニル剤と、
(ii)チオール剤と
を含む組合せを提供する。
【0035】
いくつかの態様において、本開示は、物体を印刷する(例えば、3D印刷)ための組合せであって、
(i)ビニルスルホニル剤と、
(ii)チオール剤と、
(iii)硬化触媒と
を含む組合せを提供する。
【0036】
いくつかの態様において、本開示は、物体を印刷する(例えば、3D印刷)ための造形材料であって、
(i)ビニルスルホニル剤と、
(ii)チオール剤と
を含む造形材料を提供する。
【0037】
いくつかの態様において、本開示は、物体を印刷する(例えば、3D印刷)ための造形材料であって、
(i)ビニルスルホニル剤と、
(ii)チオール剤と、
(iii)硬化触媒と
を含む造形材料を提供する。
【0038】
いくつかの態様において、本開示は、物体を印刷する(例えば、3D印刷)ためのキットであって、
(i)ビニルスルホニル剤、及び
(ii)チオール剤
を含む造形材料と、
支持材料と
を含むキットを提供する。
【0039】
いくつかの態様において、本開示は、物体を印刷する(例えば、3D印刷)ためのキットであって、
(i)ビニルスルホニル剤、
(ii)チオール剤、及び
(iii)硬化触媒
を含む造形材料と、
支持材料と
を含むキットを提供する。
【0040】
いくつかの実施形態では、印刷はさらに、組合せ又は造形材料を堆積させるステップを1回又は複数回繰り返すことを含む。
【0041】
いくつかの実施形態では、印刷はさらに、堆積された組合せ又は造形材料を光学的に感知することと、感知に従って、組合せ又は造形材料の1回又は複数回の堆積の繰り返しを制御することとを含む。
【0042】
いくつかの実施形態では、堆積された組合せ又は造形材料の任意選択的な感知は、材料が少なくとも部分的に硬化したときに実施される。
【0043】
いくつかの実施形態では、組合せ又は造形材料の堆積の繰り返しのそれぞれは、組合せ又は造形材料の既に堆積された層が少なくとも部分的に硬化されたときに実施される。
【0044】
いくつかの実施形態では、印刷はさらに、組合せ又は造形材料の機械的、熱的、及び/又は光学的特性のうちの1つ又は複数を増強する薬剤を堆積させることを含む。
【0045】
いくつかの実施形態では、堆積された材料の感知は、印刷される物体の表面を捕獲することを含む。
【0046】
いくつかの実施形態では、堆積された組合せ又は造形材料の感知は、印刷される物体の容積測定及び/又は断層撮影データを捕獲することを含む。
【0047】
いくつかの実施形態では、組合せ又は造形材料の1回又は複数回の堆積の繰り返しの制御は、アクティブフィードバックループを使用し、感知によって生成されたデータに従って、組合せ又は造形材料の1回又は複数回の堆積の繰り返しを修正することを含む。
【0048】
いくつかの実施形態では、組合せ又は造形材料の1回又は複数回の堆積の繰り返しの制御は、印刷される物体の表面の測定に基づく。
【0049】
いくつかの実施形態では、組合せ又は造形材料の1回又は複数回の堆積の繰り返しの制御は、印刷される物体の容積測定/断層撮影データの測定に基づく。
【0050】
いくつかの実施形態では、印刷はさらに、組合せ又は造形材料を加熱し、それにより組合せ又は造形材料の硬化を促進することを含む。
【0051】
組合せ、造形材料、及びキット
いくつかの実施形態では、組合せ、造形材料、又はキットは、増感剤をさらに含む。
【0052】
いくつかの実施形態では、組合せ、造形材料、又はキットは、高靭性化剤をさらに含む。
【0053】
いくつかの実施形態では、組合せ、造形材料、又はキットは、安定剤をさらに含む。
【0054】
いくつかの実施形態では、組合せ、材料、又はキットは、表面張力調整剤をさらに含む。
【0055】
いくつかの実施形態では、組合せ、材料、又はキットは、着色剤をさらに含む。
【0056】
ビニルスルホニル剤
「ビニルスルホニル剤」という用語は、本明細書で使用される場合、ビニルスルホニル部分(例えば、
【化1】
)を含む薬剤を指すことが理解される。
【0057】
いくつかの実施形態では、ビニルスルホニル剤は、2つ以上のビニルスルホニル部分(例えば、
【化2】
)を含む。
【0058】
いくつかの実施形態では、ビニルスルホニル剤は、モノマー(例えば、チオール-エン重合用)である。
【0059】
いくつかの実施形態では、ビニルスルホニル剤は、オリゴマー(例えば、チオール-エン重合用)である。
【0060】
いくつかの実施形態では、ビニルスルホニル剤はポリマーである。
【0061】
いくつかの実施形態では、ビニルスルホニル部分のそれぞれは独立して、
【化3】
(式中、各Rは独立して、H又は置換基である)
である。
【0062】
いくつかの実施形態では、少なくとも1つのビニルスルホニル部分は、
【化4】
である。
【0063】
いくつかの実施形態では、少なくとも1つのビニルスルホニル部分は、
【化5】
である。
【0064】
いくつかの実施形態では、少なくとも1つのビニルスルホニル部分は、
【化6】
であり、少なくとも1つのビニルスルホニル部分は、
【化7】
である。
【0065】
いくつかの実施形態では、少なくとも1つのビニルスルホニル部分は、
【化8】
である。
【0066】
いくつかの実施形態では、ビニルスルホニル部分のそれぞれは、
【化9】
である。
【0067】
いくつかの実施形態では、ビニルスルホニル部分のそれぞれは、
【化10】
である。
【0068】
いくつかの実施形態では、ビニルスルホニル部分のそれぞれは、
【化11】
である。
【0069】
チオール剤
「チオール剤」という用語は、本明細書で使用される場合、チオール部分(例えば、
【化12】
)を含む薬剤を指すことが理解される。
【0070】
いくつかの実施形態では、チオール剤は、2つ以上のチオール部分(例えば、
【化13】
)を含む。
【0071】
いくつかの実施形態では、チオール剤は、モノマー(例えば、チオール-エン重合用)である。
【0072】
いくつかの実施形態では、チオール剤は、オリゴマー(例えば、チオール-エン重合用)である。
【0073】
いくつかの実施形態では、チオール剤はポリマーである。
【0074】
硬化触媒
いくつかの実施形態では、硬化触媒は、潜在性触媒である。
【0075】
いくつかの実施形態では、潜在性触媒は、光潜在性触媒、熱潜在性触媒、又は化学的潜在性触媒である。
【0076】
いくつかの実施形態では、硬化触媒は非潜在性触媒である。
【0077】
いくつかの実施形態では、硬化触媒(例えば、潜在性触媒)は、照射によって活性化される。
【0078】
いくつかの実施形態では、硬化触媒(例えば、潜在性触媒)は、化学放射線によって活性化される。
【0079】
いくつかの実施形態では、硬化触媒(例えば、潜在性触媒)は、増感剤の存在下で化学放射線によって活性化される。
【0080】
いくつかの実施形態では、硬化触媒(例えば、潜在性触媒)は、UV又は可視光によって活性化される。
【0081】
いくつかの実施形態では、硬化触媒(例えば、潜在性触媒)は、増感剤の存在下でUV又は可視光によって活性化される。
【0082】
いくつかの実施形態では、硬化触媒は光開始剤を含む。
【0083】
いくつかの実施形態では、活性化されると、硬化触媒(例えば、光開始剤)は、ラジカルを発生する。
【0084】
いくつかの実施形態では、活性化されると、硬化触媒(例えば、光開始剤)は、塩基(例えば、カルベン塩基)を発生する。
【0085】
いくつかの実施形態では、活性化されると、硬化触媒(例えば、光開始剤)は、求核剤(例えば、ホスフィン求核剤)を発生する。
【0086】
いくつかの実施形態では、硬化触媒は、塩基触媒を含む。
【0087】
いくつかの実施形態では、塩基触媒は、塩基又は塩基の前駆体である。
【0088】
いくつかの実施形態では、塩基触媒は、塩基、例えば、有機塩基又は無機塩基である。
【0089】
いくつかの実施形態では、塩基触媒は、アミンである。
【0090】
いくつかの実施形態では、塩基触媒は、塩基の前駆体である。
【0091】
いくつかの実施形態では、活性化されると、硬化触媒は塩基に変換されるか、又は塩基を放出する。理論に束縛されることは望まないが、塩基触媒(例えば、活性化時)は、塩基(例えば、チオール剤の脱プロトン化用)及び/又は求核剤(例えば、ビニルスルホニル剤の活性化用)として機能し得ることが理解される。
【0092】
着色剤
いくつかの実施形態では、組合せ、材料、又はキットは、着色剤をさらに含む。
【0093】
いくつかの実施形態では、着色剤は、顔料、染料、又はこれらの組合せを含む。
【0094】
いくつかの実施形態では、着色剤は、顔料を含む。
【0095】
いくつかの実施形態では、顔料は、有機顔料、無機顔料、又はこれらの組合せである。
【0096】
いくつかの実施形態では、着色剤は、染料を含む。
【0097】
いくつかの実施形態では、染料は、有機染料、無機染料、又はこれらの組合せである。
【0098】
理論に束縛されることは望まないが、顔料又は染料は、印刷中に堆積された材料の光感知(例えば、走査)を可能にし得ることが注目される。いくつかの実施形態では、顔料又は染料を含有する組合せ又は造形材料は着色され、それにより、堆積された材料のその色による光感知(例えば、走査)が可能になる。いくつかの実施形態では、顔料又は染料を含有する組合せ又は造形材料は無色であるが蛍光性であり、それにより、堆積された材料のその蛍光による光感知(例えば、走査)が可能になる。
【0099】
造形材料の特性
いくつかの実施形態では、造形材料は、約100℃の温度で測定したときに、約150cp以下、約140cp以下、約130cp以下、約120cp以下、約110cp以下、約100cp以下、約90cp以下、約80cp以下、約70cp以下、約60cp以下、又は約50cp以下の粘度を有する。
【0100】
いくつかの実施形態では、造形材料は、約80℃の温度で測定したときに、約120cp以下、約110cp以下、約100cp以下、約90cp以下、約80cp以下、約70cp以下、約60cp以下、又は約50cp以下の粘度を有する。
【0101】
いくつかの実施形態では、造形材料は、約100℃の温度で測定したときに、約33±20mN/m、約33±15mN/m、約33±10mN/m、約33±9mN/m、約33±mN/m、約33±7mN/m、約33±6mN/m、約33±5mN/m、約33±4mN/m、約33±3mN/m、約33±2mN/m、又は約33±1mN/m(例えば、約33mN/m)の表面張力を有する。
【0102】
いくつかの実施形態では、造形材料は、約80℃の温度で測定したときに、約33±20mN/m、約33±15mN/m、約33±10mN/m、約33±9mN/m、約33±mN/m、約33±7mN/m、約33±6mN/m、約33±5mN/m、約33±4mN/m、約33±3mN/m、約33±2mN/m、又は約33±1mN/m(例えば、約33mN/m)の表面張力を有する。
【0103】
造形材料の堆積及び硬化
いくつかの実施形態では、造形材料は、造形堆積条件(例えば、造形噴射条件)下で堆積される(例えば、噴射される)。
【0104】
いくつかの実施形態では、造形材料は、造形硬化条件下で硬化される。
【0105】
いくつかの実施形態では、造形材料は、造形堆積条件(例えば、造形噴射条件)下で液体である。
【0106】
いくつかの実施形態では、造形材料はワックスである。
【0107】
いくつかの実施形態では、造形材料は、造形堆積条件の温度と同じであるか又はそれよりも低い融点を有する。
【0108】
いくつかの実施形態では、堆積されると、造形材料は固体に変換される(例えば、相変化を介して)。
【0109】
いくつかの実施形態では、堆積されると、造形材料は、硬化によって固体に変換される。
【0110】
いくつかの実施形態では、造形材料は、支持材料に対して実質的に安定している(例えば、化学的及び/又は物理的に)。
【0111】
いくつかの実施形態では、造形材料は、支持硬化条件下で実質的に安定している(例えば、化学的及び/又は物理的に)。
【0112】
いくつかの実施形態では、造形材料は、硬化支持材料に対して実質的に安定している(例えば、化学的及び/又は物理的に)。
【0113】
いくつかの実施形態では、活性化されると、硬化触媒は造形材料を硬化させるが、支持材料を硬化させない。
【0114】
いくつかの実施形態では、造形硬化条件は放射線を含む。
【0115】
いくつかの実施形態では、造形硬化条件は化学放射線を含む。
【0116】
いくつかの実施形態では、放射線はUV又は可視光である。
【0117】
いくつかの実施形態では、硬化条件はさらに、高温を含む。
【0118】
いくつかの実施形態では、造形硬化条件は、実質的に空気(例えば、酸素)を含まない。
【0119】
いくつかの実施形態では、造形硬化条件は、実質的に水を含まない。
【0120】
いくつかの実施形態では、硬化造形材料は、硬化支持材料に対して実質的に安定している(例えば、化学的及び/又は物理的に)。
【0121】
いくつかの実施形態では、硬化造形材料は、支持除去条件下で実質的に安定している(例えば、化学的及び/又は物理的に)。
【0122】
いくつかの実施形態では、硬化造形材料は、チオール-エンポリマーを含む。
【0123】
硬化造形材料
いくつかの態様において、本開示は、本明細書に記載される硬化造形材料を提供する。
【0124】
いくつかの態様において、本開示は、本明細書に記載される方法によって作製される硬化造形材料を提供する。
【0125】
いくつかの実施形態では、硬化造形材料は、約40℃~約200℃のガラス転移温度(Tg)を有する。
【0126】
いくつかの実施形態では、硬化造形材料は、約95±50℃、約95±40℃、約95±30℃、約95±20℃、約95±15℃、約95±10℃、又は約95±5℃のガラス転移温度(Tg)を有する。
【0127】
いくつかの実施形態では、硬化造形材料は、約0.5MPa~約70MPaの引張強度を有する。
【0128】
いくつかの実施形態では、硬化造形材料は、約5%~約1000%の破断伸びを有する。
【0129】
いくつかの実施形態では、硬化造形材料は、約20A~約80Dのショア硬度を有する。
【0130】
支持材料の堆積及び硬化
いくつかの実施形態では、支持材料は、支持堆積条件(例えば、支持噴射条件)下で堆積される(例えば、噴射される)。
【0131】
いくつかの実施形態では、支持材料は、支持硬化条件下で硬化される。
【0132】
いくつかの実施形態では、支持材料又は硬化支持材料は、支持除去条件下で除去される。
【0133】
いくつかの実施形態では、支持材料は、支持堆積条件(例えば、支持噴射条件)下で液体である。
【0134】
いくつかの実施形態では、支持材料はワックスである。
【0135】
いくつかの実施形態では、支持材料は、支持堆積条件の温度と同じであるか又はそれよりも低い融点を有する。
【0136】
いくつかの実施形態では、堆積されると、支持材料は固体に変換される(例えば、相変化を介して)。
【0137】
いくつかの実施形態では、堆積されると、支持材料は、冷却によって固体に変換される。
【0138】
いくつかの実施形態では、堆積されると、支持材料は、硬化によって固体に変換される。
【0139】
いくつかの実施形態では、支持材料はUV硬化性である。
【0140】
いくつかの実施形態では、支持材料は熱硬化性である。
【0141】
いくつかの実施形態では、支持硬化条件は、照射(例えば、可視光又はUV)を含む。
【0142】
いくつかの実施形態では、支持硬化条件は高温を含む。
【0143】
いくつかの実施形態では、支持硬化条件は、実質的に空気(例えば、酸素)を含まない。
【0144】
いくつかの実施形態では、支持硬化条件は、実質的に水を含まない。
【0145】
いくつかの実施形態では、硬化支持材料は、造形材料に対して実質的に安定している(例えば、化学的及び/又は物理的に)。
【0146】
いくつかの実施形態では、硬化支持材料は、造形硬化条件下で実質的に安定している(例えば、化学的及び/又は物理的に)。
【0147】
いくつかの実施形態では、硬化支持材料はポリマーを含む。
【0148】
いくつかの実施形態では、支持除去条件は、溶媒を添加することを含み、それにより、硬化支持材料を溶解させる。
【0149】
いくつかの実施形態では、支持除去条件は、硬化支持材料を機械的に除去することを含む。
【0150】
いくつかの実施形態では、支持除去条件は、支持材料を固体から液体へ変換する(例えば、相変化を介して)ことを含む。
【0151】
印刷のためのシステム
いくつかの態様において、本開示は、物体を印刷する(例えば、3D印刷)ためのシステムであって、
(i)プリンタ(例えば、インクジェットプリンタ)と、
(ii)本明細書に開示される組合せ、造形材料、又はキットと
を含むシステムを提供する。
【0152】
本開示の材料に適した用途及びシステムは、例えば、米国仮特許出願第62/777,422号明細書及びPCT出願第PCT/US2019/065436号明細書(参照によって本明細書中に援用される)に記載されている。
【0153】
いくつかの実施形態では、プリンタ(例えば、インクジェットプリンタ)は、1つ又は複数のプリンタジェットと、光フィードバックスキャナと、噴射されたインクの光フィードバックに従って、1つ又は複数のプリンタジェットからのインクの放出を制御するコントローラとを含む。
【0154】
いくつかの実施形態では、プリンタ(例えば、インクジェットプリンタ)はさらに、装填された印刷ヘッド(例えば、インクが装填された印刷ヘッド)を含む。
【0155】
いくつかの実施形態では、システムはさらに、インクの堆積層を硬化させるように構成された光源(例えば、UVランプ又は可視光ランプ)を含む。
【0156】
いくつかの実施形態では、システムはさらに、非一時的な機械可読媒体上に記憶された命令を含むソフトウェアを含み、前記命令に実行により、本明細書に記載される印刷ステップのうちの1つ又は複数の制御が起こる。
【0157】
以下の説明は、例えば、図1に示される噴射ベースの3Dプリンタ100を使用する、付加製造のための例示的なシステムに関する。プリンタ100はジェット120(インクジェット)を使用して、部分的に製造された物体層上に堆積させるための材料を放出する。図1に示されるプリンタでは、物体は造形プラットフォーム上で製造され、造形プラットフォームは、連続層を形成するためにラスター様パターンでジェットに対して移動するように制御され、この例では、ジェットと部分的に製造された物体表面との所望の分離を維持するためにジェットに対して移動するようにも制御される。図示されるように、複数のジェット122、124が存在し、1つのジェット122は、支持材料を放出して物体の支持構造142を形成するために使用され、もう1つのジェット124は、造形材料を放出して物体144自体を形成するために使用される。紫外線照射などの励起信号によって硬化が引き起こされる材料の場合、硬化信号発生器170(例えば、UVランプ)は、材料が物体上に噴射された直後に、その硬化を引き起こす。他の実施形態では、例えば、各材料に対して別のジェットを用いて、複数の異なる材料が使用され得る。さらに他の実行では、励起信号(例えば、光、RFなど)は必ずしも使用されず、むしろ例えば、噴射前に複数の成分を混合することによって、或いは物体上で混ざり合って硬化を引き起こす別々の成分を噴射することによって、硬化は化学的に引き起こされる。いくつかの例では、付加堆積が完了した後、例えば、物体をさらにUV放射にさらすことによって、物体はさらなる硬化(例えば、硬化を完了させるため)を受けてもよいことに注意されたい。
【0158】
センサー160は、表面形状(例えば、部分的に製造された物体の厚さ/深さを特徴付ける深さマップ)、表面下(例えば、堆積層を例えば数十又は数百層含む表面近傍)の特徴のうちの1つ又は複数を含む、部分的に製造された物体の物理的特徴を決定するために使用される。感知され得る特徴は、材料の密度、材料の識別、及び硬化状態のうちの1つ又は複数を含むことができる。光コヒーレンス断層撮影法(OCT)、レーザープロフィロメトリー、及び/又は異なる材料を区別するために使用され得るマルチスペクトル光感知を含む、種々のタイプの感知を使用することができる。図示されるプリンタでは、センサーは、物体から又は物体において、発光(例えば、蛍光)及び/又は反射、散乱、又は吸収を引き起こし得る信号を出力する。センサー出力信号は、物体の上部(すなわち、最後に堆積された部分)から提供され得るが、いくつかの実施形態では、センサー出力信号は、物体の下方又は他の方向から得られてもよい。
【0159】
インクジェット技術を用いる精密な付加製造では、これまでに使用されてきた機械的アプローチを必要とすることなく、材料の堆積を適合させて正確な物体構造を達成するために、光走査ベースのフィードバックの使用が導入されている。例えば、このような光フィードバック技術は、米国特許第10,252,466号明細書及び同第10,456,984号明細書(参照によって援用される)に記載されている。しかしながら、恐らく、光フィードバックで達成可能な精度が達成されないアプローチ、又は急速に硬化するインクと共に機械的アプローチを使用するアプローチが比較的簡単であるために、光フィードバックベースのプリンタは、3D印刷への一般的な商業的アプローチではない。さらに、噴射付加製造に適した多くの製造材料は、不適切な光信号強度が走査中の材料から伝播する可能性があるので、光走査には直接的には適さない。例えば、材料は、本来実質的に透明であり、製造される物体の正確な特徴付けを得るために適切に捕獲すべき入射光を反映しないこともある。しかしながら、光増強成分を製造材料中に適切に取り込むことにより、堆積された材料を走査する能力を高めることができる。適切な光増強成分に関するさらなる詳細は、PCT出願第PCT/US2019/59300号明細書(参照によって本明細書中に援用される)において見出すことができる。
【0160】
製造される物体の表面形状を制御するために接触を必要としないことにより、このアプローチは、製造プロセス中のフィードバックに従って堆積プロセスを制御する利点を維持しながら、比較的遅い組成物の硬化(例えば、インクジェット3D印刷で通常使用されるアクリレート組成物と比較して)を許容する。このアプローチは、精密な物体を製造し、且つ製造される物体の材料特性から、例えば、少なくとも部分的に遅い硬化の結果であり得る等方性特性、及び従来の噴射アクリレートを使用して達成することができない可能性のある柔軟な構造による利益を得るための方法を提供する。さらに、走査後の進行中の硬化が、例えば収縮のために、部品の形状を変化させる可能性のある場合、制御プロセスにおいて予測技術(例えばPCT出願第PCT/US2019/59567号明細書(参照によって本明細書中に援用される)に記載されるように、例えば機械学習アプローチを使用)を使用してこのような変化を予測し、カチオン性組成物を精密噴射製造アプローチにさらに適応させることができる。
【0161】
コントローラ110は、製造される物体のモデル190を使用し、モーションアクチュエータ150(例えば、3度の動きを提供する)を用いて造形プラットフォーム130の動きを制御し、センサー160によって決定される物体の特徴の非接触フィードバックに従ってジェット120からの材料の放出を制御する。フィードバック配置の使用は、噴射の固有の予測できない様相(例えば、噴射オリフィスの目詰まり)と、例えば、噴射材料の流動、混合、吸収、及び硬化を含む、堆積後の予測できない材料変化とを補償することによって精密な物体を製造することができる。
【0162】
図1に示されるプリンタは単なる例示であって、限定するものではないことが理解される。使用され得る他のプリンタ配置は、例えば、米国特許第10,252,466号明細書及び同第10,456,984号明細書、米国特許出願公開第2018/0056582号明細書、並びにSitthi-Amorn et al.(ACM Transactions on Graphics 34(4):129(2015))に記載されている。
【0163】
代替的な製造プロセスでは、付加製造段階と、それに続くか又はそれと重複する部品硬化段階とにより、物体の部品のための造形材料に2つの異なる機構:相変化機構及び重合機構が付与される。
【0164】
相変化機構は付加製造段階の間に生じ、液体から非液体(例えば、少なくとも部分的に固体、半固体、及び/又は準固体)への造形材料の相変化を引き起こす。ここで、相変化は一般に、重合によるものではない。この非液体形態において、造形材料は、その後に材料をその上に増加的に堆積させるために十分に凝固されている(例えば、非液体造形材料は、例えば、造形材料と支持材料との間の混合を防止するために、増加的に付加される材料の重量及び/又は材料が噴射されるときのその力を支持することができる)。
【0165】
重合機構は、硬化段階の間に、物体の付加製造の後、又は少なくとも部分的にその後に生じる。この機構は、重合プロセスによって造形材料を硬化させる。いくつかの例では、重合機構は、物体の付加製造が完了した後に開始される。他の例では、重合機構は、付加製造が完了する前に開始され、例えば、相変化機構の間に開始される(例えば、両方の機構が同時に開始されるか、又は相変化機構の間に重合機構が開始される)。
【0166】
硬化段階で造形材料が十分に硬化(例えば、十分に重合)して、モールドの除去が可能になったら、製造プロセスは、モールドを除去するための部品除去段階に入る。モールドを除去すると、製造された部品が得られる。
【0167】
図2を参照すると、この代替製造プロセスは、図2に示される噴射ベースの3Dプリンタ200を使用する。非常に一般的に、製造プロセスは、3つの時間相:付加製造段階、部品硬化段階、及び部品除去段階を含む。以下により詳細に記載されるように、いくつかの例では、部品硬化段階は完全に付加製造段階の後に起こる。他の例では、付加製造段階及び部品硬化段階は部分的に重複する。
【0168】
付加製造段階において、付加製造は、部品212の形状を画定するキャビティ(例えば、閉鎖構造又は開放容器)を形成する固体(例えば、硬化した)モールド構造211を含む物体204を製造するために使用され、キャビティは、部品212の形状の半固体の未硬化又は部分硬化材料が充填される。固体モールド構造211及び/又は半固体材料は層ごとに付加されて、物体204を形成する。
【0169】
付加製造段階の完了後の時点でその少なくとも一部が起こる部品硬化段階において、充填されたモールド構造211を含む物体204は、キャビティ内の材料を重合させるために硬化プロセスを受ける。
【0170】
付加製造段階及び部品硬化段階において、部品212を形成するために使用される材料(「造形材料と呼ばれることもある)は、2つの異なる機構:相変化機構及び重合機構を受ける。
【0171】
相変化機構は付加製造段階の間に生じ、液体から非液体(例えば、少なくとも部分的に固体、半固体、及び/又は準固体、ここで、これらの3つの用語は、本明細書では互換的に使用され得る)への造形材料の相変化を引き起こす。この非液体形態において、造形材料は、その後に材料をその上に増加的に堆積させるために十分に凝固されている(例えば、非液体造形材料は、増加的に付加される材料の重量又は力を支持することができる)。
【0172】
重合機構は、硬化段階の間に、物体204の付加製造の後、又は少なくとも部分的にその後に生じる。この機構は、重合プロセスによって造形材料を硬化させる。いくつかの例では、重合機構は、物体の付加製造が完了した後に開始される。他の例では、重合機構は、付加製造が完了する前に開始され、例えば、相変化機構の間に開始される(例えば、両方の機構が同時に開始されるか、又は相変化機構の開始後及びその間に重合機構が開始される)。
【0173】
部品除去段階において、固体モールド構造211が除去され、部品212が得られる。いくつかの例では、部品除去段階は、部品硬化段階の後に起こる。しかしながら、他の例では、部品除去段階は、部品硬化段階と重複し得る(例えば、部品212はまだ硬化中であるが、固体モールド構造211から除去するために十分に硬化している)。
【0174】
プリンタ
付加製造段階において、プリンタ200は、ジェット202(インクジェット)を使用して、層の堆積のための材料を放出し、物体204を形成する(図2には部分的に製造されたものが示される)。図2に示されるプリンタの場合、物体204は造形プラットフォーム206上で製造され、造形プラットフォームは、連続層を形成するためにラスター様パターンでジェットに対して(すなわち、x-y平面に沿って)移動するように制御され、この例では、ジェットと、部分的に製造された物体204の表面との所望の分離を維持するためにジェットに対して(すなわち、z-軸に沿って)移動するようにも制御される。
【0175】
図示されるように、複数のジェット208、210が存在し、例えば、第1のジェット208は、モールド材料213を放出して物体204の固体(例えば、硬化又は半硬化)モールド構造211を形成するために使用され、第2のジェット210は、造形材料214を放出して物体204の未硬化又は部分硬化した半固体(例えば、ゲル又はワックス)部品212を形成するために使用される。モールド材料213及び造形材料214の特性のさらなる詳細は以下に記載される。
【0176】
センサー216(スキャナと呼ばれることもある)は、製造中の物体204に対して(例えば、上に)配置され、部分的に製造された物体の物理的特徴を決定するために使用される。例えば、センサー216は、表面形状(例えば、部分的に製造された物体の厚さ/深さを特徴付ける深さマップ)及び表面下特徴(例えば、堆積層を例えば数十又は数百層含む表面近傍)の1つ又は複数を測定する。感知され得る特徴は、材料の密度、材料の識別、及び硬化状態のうちの1つ又は複数を含むことができる。非常に一般的に、センサー216からの測定値は、三次元(すなわち、x、y、z)座標系に関連し、ここで、x軸及びy軸は、造形表面の平面内の空間軸として扱われ、z軸は、高さ軸である(すなわち、物体が製造されるにつれて大きくなる)。
【0177】
いくつかの例では、付加製造のためのデジタルフィードバックループとの関連で、付加製造システムは、層を印刷することによって物体を造形する。センサー216は、プリンタ200が1つ又は複数の層を印刷した後に、3D走査情報を捕獲する。例えば、センサー216は、部分的な物体(又は空の造形プラットフォーム)を走査し、次に、プリンタは、材料の層を印刷する。次に、センサー216は、(部分的に造形された)物体を再度走査する。センサー216によって感知される新しい深さは、大体、古い深さから層の厚さを引いた距離にあるはずである(これは、センサー216が造形される物体の上部に配置され、物体が最下層から最上層へ造形され、センサー216と造形プラットフォームとの間の距離が変化しないことを仮定する)。光コヒーレンス断層撮影法(OCT)又はレーザープロフィロメトリーなどの種々のタイプの感知を使用して、製造される物体に関する深さ及び体積の情報を決定することができる。
【0178】
コントローラ218は、製造される物体のモデル220を使用し、モーションアクチュエータ222(例えば、3度の動きを提供する)を用いて造形プラットフォーム206の動きを制御し、センサー216によって決定される物体の特徴の非接触フィードバックに従ってジェット202からの材料の放出を制御する。
【0179】
定義
組合せ、材料、又はキットが「Xを含む」又は「少なくとも1つのXを含む」と記載される場合、このような語句は、その組合せ、材料、又はキットが少なくとも1つのXを含有することを指すことを意図するが、この語句は、組合せ、材料、又はキットがただ1つのXを含むことに限定することを意図しないと理解される。すなわち、本開示において、「Xを含む」及び「少なくとも1つのXを含む」という用語は互換性である。
【0180】
本明細書で使用される場合、「化学放射線」という用語は、光化学反応を生じさせることができる電磁放射線を指す。いくつかの実施形態では、化学放射線は、UV又は可視光である。
【0181】
本明細書で使用される場合、「光開始剤」という用語は、放射線(例えば、UV又は可視光)に曝露されたとき、又は活性化された増感剤に曝露されたときに、反応種(例えば、ラジカル、カチオン、アニオン)を生成する薬剤を指す。
【0182】
本明細書で使用される場合、「増感剤」という用語は、光化学プロセスにおいて別の薬剤(例えば、光開始剤)の化学変化(例えば、ラジカル、カチオン、又はアニオン)を生じさせる薬剤(例えば、化合物)を指す。
【0183】
本明細書で使用される場合、「高靭性化剤」という用語は、材料(例えば、高分子材料)がエネルギーを吸収し、破壊することなく塑性的に変形する能力を増強する薬剤を指す。いくつかの実施形態では条件(例えば、硬化条件)にさらされたときに、高靭性化剤は、材料(例えば、硬化材料)がエネルギーを吸収し、破壊することなく塑性的に変形する能力を増強する。
【0184】
本明細書で使用される場合、「顔料」という用語は、着色、黒色、白色、又は蛍光微粒子の有機又は無機固体を指す。いくつかの実施形態では、顔料は、それが取り込まれる媒体又は基材中に溶解せず、本質的に物理的及び化学的に影響を受けない。いくつかの実施形態では、顔料は、光の選択的吸収及び/又は散乱によって外観を変化させる。いくつかの実施形態では、顔料は、例えば、インク又は他の高分子材料の製造におけるような適用のために媒体又は基材中に分散される。いくつかの実施形態では、顔料は、着色プロセスを通して結晶又は微粒子構造を保持する。
【0185】
本明細書で使用される場合、「染料」という用語は、光の選択的吸収によって基材に色を付与する強着色又は蛍光有機物質を指す。いくつかの実施形態では、染料は可溶性であり、及び/又は吸収、溶解、及び機械的保持によって、或いはイオン性又は共有結合性の化学結合によって少なくとも一時的に任意の結晶構造を破壊する適用プロセスを経る。
【0186】
本明細書で使用される場合、「粘度」という用語は、組成物(例えば、本開示の材料)が所与の速度の変形に抵抗する能力を指す。
【0187】
本明細書で使用される場合、「表面張力」という用語は、組成物(例えば、本開示の材料)の表面が可能な最小表面積に収縮する傾向を指す。いくつかの実施形態では、表面張力は、単位長さ当たりの力、又は単位面積当たりのエネルギーの次元で測定される。
【0188】
本明細書で使用される場合、「硬化」という用語は、材料中でポリマーを形成する及び/又は既存のポリマーを連結することによって材料を変換し、それにより、硬化した材料を生成するプロセスを指す。いくつかの実施形態では、変換は、放射線(例えば、UV又は可視光)によって開始される。
【0189】
本明細書で使用される場合、「ノッチ付きアイゾット衝撃強度」という用語は、固体材料の耐衝撃性を測定する機械的特性を指す。いくつかの実施形態では、これは、枢動するアームを特定の高さ(一定のポテンシャルエネルギー)まで上昇させてから解放する方法によって測定される。アームが振り下ろされてノッチ付きサンプルに衝突し、試料が破壊される。サンプルに吸収されたエネルギーは、サンプルに衝突した後、アームの振れの高さから計算される。ノッチ付きサンプルは一般的に、衝撃エネルギー及びノッチ感度を決定するために使用される。ノッチ付きアイゾット衝撃強度は、ノッチで損失される単位断面積当たりのエネルギー(例えば、kJ/m)に関連する。いくつかの実施形態では、ノッチ付きアイゾット衝撃強度は、ASTM D256によって測定される。
【0190】
本明細書で使用される場合、「ガラス転移温度」又は「Tg」という用語は、参照される材料がガラス転位を受ける温度、すなわち、非晶質材料(又は半結晶性材料内の非晶質領域)における硬くて比較的脆い「ガラス状」の状態から粘性又はゴム状の状態への転移を受ける温度を指す。いくつかの実施形態では、ガラス転移温度は、示差走査熱量測定(DSC)によって測定される。
【0191】
本明細書で使用される場合、「引張強度」という用語は、破断する前に、材料が伸ばされる又は引っ張られる間に耐えることができる最大応力を指す。いくつかの実施形態では、引張強度は、ASTM D412、ASTM D624、又はASTM D638によって測定される。
【0192】
本明細書で使用される場合、「破断伸び」という用語は、制御された温度で試験試料が破断した後の、増大した長さと初期長さとの比を指す。いくつかの実施形態では、破断伸びは、ASTM D412、ASTM D624、又はASTM D638によって測定される。
【0193】
本明細書で使用される場合、「ヤング率」という用語は、固体材料の剛性を測定する機械的特性を指す。ヤング率は、一軸変形の線形弾性状態における材料の応力(単位面積当たりの力)とひずみ(比例変形)との間の関係に関連する。いくつかの実施形態では、ヤング率は、ASTM D412、ASTM D624、又はASTM D638によって測定される。
【0194】
本明細書で使用される場合、「ショア硬度」という用語は、ショアデュロメーターによって測定される材料の硬度を指す。いくつかの実施形態では、ショア硬度は、タイプA、B、C、D、DO、E、M、O、OO、OOO、OOO-S、又はRのショアデュロメーターによって測定される。
【0195】
本明細書で使用される場合、「約」という用語は、関連技術分野の当業者によって認識される任意の通常の変動をカバーする範囲を指す。いくつかの実施形態では、「約」という用語は、他に明言されない限り、又は文脈から他に明らかでない限り、記載された基準値のいずれかの方向(より大きい又はより小さい)において、25%、20%、19%、18%、17%、16%、15%、14%、13%、12%、11%、10%、9%、8%、7%、6%、5%、4%、3%、2%、1%、又はそれ以下に含まれる値(このような数値が可能な値の100%を超え得る場合を除く)の範囲を指す。
【0196】
本明細書で使用される場合、「誘導体」という用語は、基準化合物と比較して共通のコア構造を有する、及び/又は基準化合物と1つ又は複数の特性を共有する化合物を指す。いくつかの実施形態では、誘導体は、基準化合物と比較して、本明細書に記載される種々の基で置換されている。
【0197】
本明細書で使用される場合、「置換」という用語は、指定された原子の通常の原子価を超えないこと、そして置換により安定した化合物が得られることを条件として、指定された原子上の任意の1つ又は複数の水素原子が、示された基からの選択で置換されることを指す。置換基がオキソ又はケト(すなわち、=O)である場合、その原子上の2つの水素原子が置換される。ケト置換基は、芳香族部分には存在しない。環二重結合は、本明細書で使用される場合、2つの隣接する環原子の間に形成される二重結合(例えば、C=C、C=N又はN=N)である。「安定な化合物」及び「安定な構造」は、有効な治療薬への反応混合物及び材料からの有用な純度までの単離を乗り切るのに十分にロバストである化合物を示すことを意味する。このような置換基は、例えば、アルキル、アルケニル、アルキニル、ハロゲン、ヒドロキシル、アルキルカルボニルオキシ、アリールカルボニルオキシ、アルコキシカルボニルオキシ、アリールオキシカルボニルオキシ、カルボキシラート、アルキルカルボニル、アリールカルボニル、アルコキシカルボニル、アミノカルボニル、アルキルアミノカルボニル、ジアルキルアミノカルボニル、アルキルチオカルボニル、アルコキシル、ホスファート、ホスホナト、ホスフィナト、アミノ(アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、アリールアミノ、ジアリールアミノ及びアルキルアリールアミノを含む)、アシルアミノ(アルキルカルボニルアミノ、アリールカルボニルアミノ、カルバモイル及びウレイドを含む)、アミジノ、イミノ、スルフヒドリル、アルキルチオ、アリールチオ、チオカルボキシラート、スルファート、アルキルスルフィニル、スルホナト、スルファモイル、スルホンアミド、ニトロ、トリフルオロメチル、シアノ、アジド、ヘテロシクリル、アルキルアリール、又は芳香族若しくはヘテロ芳香族部分を含むことができる。
【0198】
本明細書で使用される場合、「A、B、又はCのうちの1つ又は複数」、「1つ又は複数のA、B、又はC」、「A、B、及びCのうちの1つ又は複数」、「1つ又は複数のA、B、及びC」、「A、B、及びCからなる群から選択される」、「A、B、及びCから選択される」などという表現は互換的に使用され、他に記載されない限り、全てが、A、B、及び/又はCからなる群からの選択、すなわち、1つ又は複数のA、1つ又は複数のB、1つ又は複数のC、又はこれらの任意の組合せを指す。
【0199】
本明細書で使用される全ての割合及び比率は、他に記載されない限り、重量によるものである。本開示の他の特徴及び利点は、種々の実施例から明らかである。提供される実施例は、本開示の実施において有用な種々の構成要素及び方法論を説明する。実施例は、特許請求される本開示を限定しない。本開示に基づいて、当業者は、本開示の実施に有用な他の構成要素及び方法論を特定及び使用することができる。
【0200】
本明細書で引用される全ての刊行物及び特許文書は、このような刊行物又は文書のそれぞれが参照によって本明細書中に援用されることが具体的且つ個別に示されたかのように、参照によって本明細書中に援用される。刊行物及び特許文書の引用は、いずれかが関連の先行技術であるとの承認であることは意図されず、その内容又は日付に関しての承認を構成するものでもない。本発明はここで書面による記載によって説明されてきたが、当業者は、本発明が様々な実施形態で実施可能であること、そして前述の説明及び以下の実施例が例示を目的とし、限定するものではないことを認識するであろう。
【実施例
【0201】
実施例1.例示的な材料の調製
例示的な材料は、以下に示されるDMPDVSA及びSiTSHを用いて調製される。
【化14】
【0202】
材料の特性は、表Aに示される。可変マイクロフィラーを用いた粘度は、200s-1のせん断速度で測定される。
【0203】
【表1】
【0204】
例示的な実施形態
本開示の態様は、以下の番号付けされた実施形態を参照してさらに説明される:
1. 物体を印刷するための方法であって、
(a)(i)ビニルスルホニル剤及び(ii)チオール剤を含む組合せを堆積させるステップと、
(ii)堆積された組合せを造形硬化条件にさらすステップと
を含む方法。
2. 物体を印刷するための方法であって、
(a)(i)ビニルスルホニル剤、(ii)チオール剤、及び(iii)硬化触媒を含む組合せを堆積させるステップと、
(b)堆積された組合せを造形硬化条件にさらすステップと
を含む方法。
3. 物体を印刷するための方法であって、
(a)(i)ビニルスルホニル剤及び(ii)チオール剤を含む造形材料を堆積させるステップと、
(b)堆積された造形材料を造形硬化条件にさらすステップと
を含む方法。
4. 物体を印刷するための方法であって、
(a)(i)ビニルスルホニル剤、(ii)チオール剤、及び(iii)硬化触媒を含む造形材料を堆積させるステップと、
(b)堆積された造形材料を造形硬化条件にさらすステップと
を含む方法。
5. 物体を印刷するための方法であって、
(a)支持材料を堆積させるステップと、
(b)(i)ビニルスルホニル剤及び(ii)チオール剤を含む造形材料を堆積させるステップと、
(c)堆積された造形材料を造形硬化条件にさらすステップと
を含む方法。
6. 物体を印刷するための方法であって、
(a)支持材料を堆積させるステップと、
(b)(i)ビニルスルホニル剤、(ii)チオール剤、及び(iii)硬化触媒を含む造形材料を堆積させるステップと、
(c)堆積された造形材料を造形硬化条件にさらすステップと
を含む方法。
7. 物体を印刷するための組合せであって、
(i)ビニルスルホニル剤と、
(ii)チオール剤と
を含む組合せ。
8. 物体を印刷するための組合せであって、
(i)ビニルスルホニル剤と、
(ii)チオール剤と、
(iii)硬化触媒と
を含む組合せ。
9. 物体を印刷するための造形材料であって、
(i)ビニルスルホニル剤と、
(ii)チオール剤と
を含む造形材料。
10. 物体を印刷するための造形材料であって、
(i)ビニルスルホニル剤と、
(ii)チオール剤と、
(iii)硬化触媒と
を含む造形材料。
11. 印刷はさらに、組合せ又は造形材料を堆積させるステップを1回又は複数回繰り返すことを含む、先行する実施形態のいずれか1つの方法、組合せ、又は造形材料。
12. 印刷はさらに、
・堆積された組合せ又は造形材料を光学的に感知することと、
・感知に従って、組合せ又は造形材料の1回又は複数回の堆積の繰り返しを制御することと
を含む、先行する実施形態のいずれか1つの方法、組合せ、又は造形材料。
13. 堆積された組合せ又は造形材料の感知は、印刷される物体の容積測定及び/又は断層撮影データを捕獲することを含む、先行する実施形態のいずれか1つの方法、組合せ、又は造形材料。
14. 組合せ又は造形材料の1回又は複数回の堆積の繰り返しの制御は、アクティブフィードバックループを使用し、感知によって生成されたデータに従って、組合せ又は造形材料の1回又は複数回の堆積の繰り返しを修正することを含む、先行する実施形態のいずれか1つの方法、組合せ、又は造形材料。
15. 組合せ又は造形材料は、増感剤をさらに含む、先行する実施形態のいずれか1つの方法、組合せ、又は造形材料。
16. 組合せ又は造形材料は、高靭性化剤をさらに含む、先行する実施形態のいずれか1つの方法、組合せ、又は造形材料。
17. 組合せ又は造形材料は、安定剤をさらに含む、先行する実施形態のいずれか1つの方法、組合せ、又は造形材料。
18. 組合せ又は造形材料は、表面張力調整剤をさらに含む、先行する実施形態のいずれか1つの方法、組合せ、又は造形材料。
19. 組合せ又は造形材料は、着色剤をさらに含む、先行する実施形態のいずれか1つの方法、組合せ、又は造形材料。
20. ビニルスルホニル剤は、2つ以上のビニルスルホニル部分を含む、先行する実施形態のいずれか1つの方法、組合せ、又は造形材料。
21. ビニルスルホニル部分のそれぞれは独立して、
【化15】
(式中、各Rは独立して、H又は置換基である)
である、先行する実施形態のいずれか1つの方法、組合せ、又は造形材料。
22. ビニルスルホニル部分のそれぞれは、
【化16】
である、先行する実施形態のいずれか1つの方法、組合せ、又は造形材料。
23. ビニルスルホニル部分のそれぞれは、
【化17】
である、先行する実施形態のいずれか1つの方法、組合せ、又は造形材料。
24. ビニルスルホニル部分のそれぞれは、
【化18】
である、先行する実施形態のいずれか1つの方法、組合せ、又は造形材料。
25. チオール剤は、2つ以上のチオール部分を含む、先行する実施形態のいずれか1つの方法、組合せ、又は造形材料。
26. 硬化触媒は、潜在性触媒である、先行する実施形態のいずれか1つの方法、組合せ、又は造形材料。
27. 潜在性触媒は、光潜在性触媒、熱潜在性触媒、又は化学的潜在性触媒である、先行する実施形態のいずれか1つの方法、組合せ、又は造形材料。
28. 硬化触媒は、非潜在性触媒である、先行する実施形態のいずれか1つの方法、組合せ、又は造形材料。
29. 硬化触媒は、化学放射線によって活性化される、先行する実施形態のいずれか1つの方法、組合せ、又は造形材料。
30. 硬化触媒は、増感剤の存在下で化学放射線によって活性化される、先行する実施形態のいずれか1つの方法、組合せ、又は造形材料。
31. 硬化触媒は、光開始剤を含む、先行する実施形態のいずれか1つの方法、組合せ、又は造形材料。
32. 硬化触媒は、塩基触媒を含む、先行する実施形態のいずれか1つの方法、組合せ、又は造形材料。
33. 塩基触媒は、塩基である、先行する実施形態のいずれか1つの方法、組合せ、又は造形材料。
34. 塩基触媒は、塩基の前駆体である、先行する実施形態のいずれか1つの方法、組合せ、又は造形材料。
35. 組合せ又は材料は、着色剤をさらに含む、先行する実施形態のいずれか1つの方法、組合せ、又は造形材料。
36. 造形材料は、造形堆積条件下で堆積される、先行する実施形態のいずれか1つの方法、組合せ、又は造形材料。
37. 造形材料は、造形硬化条件下で硬化される、先行する実施形態のいずれか1つの方法、組合せ、又は造形材料。
38. 造形硬化条件は、放射線を含む、先行する実施形態のいずれか1つの方法、組合せ、又は造形材料。
39. 硬化条件は、高温をさらに含む、先行する実施形態のいずれか1つの方法、組合せ、又は造形材料。
40. 硬化した造形材料は、チオール-エンポリマーを含む、先行する実施形態のいずれか1つの方法、組合せ、又は造形材料。
41. 本明細書に記載される方法によって作製された硬化造形材料。
42. 物体を印刷するためのシステムであって、
(i)プリンタと、
(ii)先行する実施形態のいずれか1つの組合せ又は造形材料と
を含むシステム。
43. 物体を印刷するための方法であって、
(a)(i)ビニルスルホニル剤及び(ii)チオール剤を含む組合せを堆積させるステップと、
(b)堆積された組合せを硬化条件にさらすステップと
を含む方法。
44. 組合せは、(iii)硬化触媒をさらに含む、実施形態43の方法。
45. ステップ(a)は、(i)ビニルスルホニル剤及び(ii)チオール剤を含む造形材料を堆積させるステップを含む、実施形態43の方法。
46. 造形材料は、(iii)硬化触媒をさらに含む、実施形態45の方法。
47. 組合せを堆積させるステップを1回又は複数回繰り返すことをさらに含む、実施形態43の方法。
48. 堆積された組合せを光学的に感知することと、
感知に従って、組合せの1回又は複数回の堆積の繰り返しを制御することと
をさらに含む、実施形態47の方法。
49. 堆積された組合せの感知は、印刷される物体の容積測定及び/又は断層撮影データを捕獲することを含む、実施形態48の方法。
50. 組合せの1回又は複数回の堆積の繰り返しの制御は、アクティブフィードバックループを使用し、感知によって生成されたデータに従って、組合せの1回又は複数回の堆積の繰り返しを修正することを含む、実施形態48の方法。
51. 組合せは、増感剤を含む、実施形態43の方法。
52. 組合せは、高靭性化剤をさらに含む、実施形態43の方法。
53. 組合せは、安定剤をさらに含む、実施形態43の方法。
54. 組合せは、表面張力調整剤をさらに含む、実施形態43の方法。
55. 組合せは、着色剤をさらに含む、実施形態43の方法。
56. ビニルスルホニル剤は、2つ以上のビニルスルホニル部分を含む、実施形態43の方法。
57. ビニルスルホニル部分のそれぞれは独立して、
【化19】
(式中、各Rは独立して、H又は置換基である)
である、実施形態55の方法。
58. ビニルスルホニル部分のそれぞれは、
【化20】
である、実施形態55の方法。
59. ビニルスルホニル部分のそれぞれは、
【化21】
である、実施形態55の方法。
60. ビニルスルホニル部分のそれぞれは、
【化22】
である、実施形態55の方法。
61. チオール剤は、2つ以上のチオール部分を含む、実施形態43の方法。
62. 硬化触媒は、潜在性触媒である、実施形態44の方法。
63. 潜在性触媒は、光潜在性触媒、熱潜在性触媒、又は化学的潜在性触媒である、実施形態62の方法。
64. 硬化触媒は、非潜在性触媒である、実施形態44の方法。
65. 硬化触媒は、化学放射線によって活性化される、実施形態44の方法。
66. 硬化触媒は、増感剤の存在下で化学放射線によって活性化される、実施形態44の方法。
67. 硬化触媒は、光開始剤を含む、実施形態44の方法。
68. 硬化触媒は、塩基触媒を含む、実施形態44の方法。
69. 塩基触媒は、塩基である、実施形態68の方法。
70. 塩基触媒は、塩基の前駆体である、実施形態68の方法。
71. 実施形態43の方法によって作製された硬化材料。
72. チオール-エンポリマーを含む、実施形態71の硬化材料。
73. ビニルスルホニル剤は、
【化23】
を含む、実施形態1~20、25~56及び61~72のいずれか1つの方法、組合せ、造形材料、硬化材料、又はシステム。
【0205】
等価物
本開示の1つ又は複数の実施形態の詳細は、上記の添付の説明に記載されている。本明細書に記載されるものと同様又は同等の任意の方法及び材料を本開示の実施又は試験で使用することができるが、好ましい方法及び材料がここで記載される。本開示の他の特徴、目的、及び利点は、本記載及び特許請求の範囲から明らかになるであろう。本明細書及び特許請求の範囲において、文脈が明らかに他に指示しない限り、単数形は複数の指示対象を含む。他に定義されない限り、本明細書で使用される全ての技術及び科学用語は、本開示が属する技術分野の当業者によって一般的に理解されるのと同じ意味を有する。本明細書で引用される全ての特許及び刊行物は、参照によって援用される。
【0206】
前述の記載は説明のためだけに提示されたものであり、本開示を開示された正確な形態に限定することは意図されない。
図1
図2
【国際調査報告】