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特表2024-538458高い熱伝導率を有する複合体及びその複合体の製造方法
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  • 特表-高い熱伝導率を有する複合体及びその複合体の製造方法 図1A
  • 特表-高い熱伝導率を有する複合体及びその複合体の製造方法 図1B
  • 特表-高い熱伝導率を有する複合体及びその複合体の製造方法 図1C
  • 特表-高い熱伝導率を有する複合体及びその複合体の製造方法 図2A
  • 特表-高い熱伝導率を有する複合体及びその複合体の製造方法 図2B
  • 特表-高い熱伝導率を有する複合体及びその複合体の製造方法 図3
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-10-22
(54)【発明の名称】高い熱伝導率を有する複合体及びその複合体の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C09K 5/14 20060101AFI20241015BHJP
   C08L 101/00 20060101ALI20241015BHJP
   C08K 3/38 20060101ALI20241015BHJP
【FI】
C09K5/14 E
C08L101/00
C08K3/38
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024522446
(86)(22)【出願日】2022-10-14
(85)【翻訳文提出日】2024-04-26
(86)【国際出願番号】 US2022078163
(87)【国際公開番号】W WO2023064932
(87)【国際公開日】2023-04-20
(31)【優先権主張番号】63/262,537
(32)【優先日】2021-10-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】593150863
【氏名又は名称】サン-ゴバン セラミックス アンド プラスティクス,インコーポレイティド
【氏名又は名称原語表記】SAINT-GOBAIN CERAMICS AND PLASTICS, INC.
【住所又は居所原語表記】One New Bond Street, Worcester, MA 01615, United States of America
(74)【代理人】
【識別番号】110003281
【氏名又は名称】弁理士法人大塚国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ワン,ファ
(72)【発明者】
【氏名】リャン,シュアイ
(72)【発明者】
【氏名】ワトキンズ,ニコラス
(72)【発明者】
【氏名】バザント,マーティン ゼット.
(72)【発明者】
【氏名】プレイン,サラ エリザベス
(72)【発明者】
【氏名】リー,チュアンピン
(72)【発明者】
【氏名】ハンプデン-スミス,マーク
(72)【発明者】
【氏名】カマス,ミスン エヌ.
(72)【発明者】
【氏名】シュライブス,ダニエル
【テーマコード(参考)】
4J002
【Fターム(参考)】
4J002AA001
4J002BB031
4J002DK006
4J002FD206
4J002GT00
(57)【要約】
【解決手段】 複合物品は、有機ポリマーと、有機ポリマー全体にわたって分布した六方晶窒化ホウ素(hBN)粒子を含むセラミック粒子とを含む複合体を含み得、hBN粒子の量は、複合体の総体積に基づいて20体積%~40体積%の範囲であり、複合体は、少なくとも10W/mKの面内熱伝導率を有する。複合体内のhBN粒子は、少なくとも50%のマーチ・ドーラス配向パラメータηを有し得る。
【選択図】図1B

【特許請求の範囲】
【請求項1】
有機ポリマーと、前記有機ポリマー全体に分布した六方晶窒化ホウ素(hBN)粒子を含むセラミック粒子とを含む複合体を含む複合物品であって、
前記hBN粒子の量が、前記複合体の総体積に基づいて20体積%~40体積%の範囲であり、
前記セラミック粒子の量が、前記複合体の総体積に基づいて50体積%以下であり、
前記複合体が、少なくとも10W/mKの面内熱伝導率を有する、複合物品。
【請求項2】
前記複合体内の前記hBN粒子の面内マーチ・ドーラス(March-Dollase)配向パラメータηが、少なくとも50である、請求項1に記載の複合物品。
【請求項3】
前記hBN粒子の長さ(L)対厚さ(T)の平均アスペクト比が、少なくとも5である、請求項1に記載の複合物品。
【請求項4】
前記hBN粒子が、少なくとも1ミクロンかつ70ミクロン以下の平均粒径(D50)を有する、請求項1に記載の複合物品。
【請求項5】
前記複合体の電気体積抵抗率が、少なくとも1.0E+12である、請求項1に記載の複合物品。
【請求項6】
前記複合体の前記有機ポリマーが、熱可塑性ポリマー又は熱硬化性ポリマーを含む、請求項1に記載の複合物品。
【請求項7】
前記有機ポリマーが、シリコーンポリマー、アクリレートポリマー、ポリウレタン、エポキシドポリマー、ポリアミド、ポリイミド、液晶ポリマー(LCP)、フルオロポリマー、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリアミド、液晶ポリマー(LCP)、ポリアクリロニトリル(PAN)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリエーテルケトンケトン(PEKK)、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリフェニレンオキシド(PPO)、ポリエーテルイミド、熱可塑性エラストマー(TPE、オレフィン系又はスチレン系)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、パーフルオロアルコキシアルカン(PFA)、フッ素化エチレンプロピレン(FEP)、エチレンテトラフルオロエチレン(ETFE)、若しくはこれらの任意のコポリマー、又はこれらの任意の組み合わせを含む、請求項6に記載の複合物品。
【請求項8】
前記有機ポリマーが、シリコーンポリマーを含む、請求項7に記載の複合物品。
【請求項9】
前記hBN粒子の量が、セラミック粒子の総体積に基づいて少なくとも92体積%である、請求項1~8のいずれか一項に記載の複合物品。
【請求項10】
前記hBN粒子の表面が、有機化合物で官能化されている、請求項1に記載の複合物品。
【請求項11】
前記有機化合物が、ポリシロキサン、ポリシラン、シラン、又はそれらの任意の組み合わせから選択される、請求項10に記載の複合物品。
【請求項12】
複合物品を形成する方法であって、
セラミック粒子と有機ポリマーとの混合物を調製することであって、前記セラミック粒子がhBN粒子を含み、前記hBN粒子の量が前記分散液の総重量に基づいて20~40体積%の範囲であり、セラミック粒子の総量が前記複合体の総体積に基づいて50体積%以下である、調製することと、
前記混合物の層を型又は支持体に適用することと、
hBN粒子の整列手順を行うことと、
複合体を形成するために前記有機ポリマー又は有機重合性材料を固化及び/又は硬化させることと、を含み、
前記複合体の面内熱伝導率が、少なくとも10W/mKである、方法。
【請求項13】
前記混合物を調製する前に、前記hBN粒子を表面官能化することを更に含む、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
表面官能化が、活性化hBN粒子を形成するために前記hBN粒子を剥離及び活性化することと、前記活性化hBN粒子を有機化合物で処理することとを含み、前記有機化合物が、水素化ケイ素基を含むポリシロキサン、又はポリシラン、又はシラン化合物、又はこれらの任意の組み合わせを含む、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記剥離することが、ボールミル粉砕を含み、前記活性化することが、前記hBN粒子の表面上にOH基を導入することを含む、請求項14に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、有機ポリマーと、高い配向度で有機ポリマー全体に分散された六方晶窒化ホウ素(hBN)粒子を含むセラミック粒子とを含む複合体、及び複合体を作製する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
熱伝導性ポリマー複合材は、過熱を回避するために熱を放散することによって、動作温度を著しく低下させ、デバイスの寿命を延ばすことができるので、電気デバイスの熱管理に関して様々な産業において重要な役割を果たす。熱伝導性ポリマー複合材が重要な役割を果たす典型的な産業としては、家庭用電化製品(例えば、携帯電話、タブレット)、電気通信インフラストラクチャ(例えば、セルタワー)、LED照明、ハイブリッド、及び電気自動車(電力モジュール)、データセンタ(サーバボード、スイッチ、監視モジュール、及び電源)、並びに太陽電池が挙げられる。
【0003】
熱管理に適した材料の多様性及び効率を更に高める必要がある。
【図面の簡単な説明】
【0004】
本開示は、添付の図面を参照することによって、より良く理解され、その多数の特徴及び利点が当業者に明らかにされ得る。
【0005】
図1A図1Aは、一実施形態による、小板型hBN粒子を示す線図である。
図1B図1Bは、一実施形態による、面内配向hBN粒子を有する複合体の横断面の側面図を示す線画を含む。
図1C図1Cは、一実施形態による、面貫通方向に配向したhBN粒子を有する複合体の横断面の側面図を示す線画を含む。
図2A図2Aは、一実施形態による、面内配向hBN粒子を含む複合体のX線スペクトルを示すグラフを含む。
図2B図2Bは、マーチ・ドーラス法によるrと配向パラメータηとの関係を示すグラフである。
図3図3は、一実施形態による、剥離及びケイ素化の前後のhBN粒子のIRスペクトルを含む。
【発明を実施するための形態】
【0006】
本明細書で使用される場合、「備える(comprises)」、「備える(comprising)」、「含む(includes)」、「含む(including)」、「有する(has)」、「有する(having)」という用語、又はそれらの任意の他の変形は、非排他的な包含を網羅することが意図される。例えば、特徴のリストを含むプロセス、方法、物品、又は装置は、必ずしもそれらの特徴のみに限定されず、明示的に列挙されていないか、又はそのようなプロセス、方法、物品、若しくは装置に固有の他の特徴を含み得る。
【0007】
本明細書で使用される場合、明らかに矛盾する記載がない限り、「又は」は、包含的な又はを指し、排他的な又はを指すものではない。例えば、条件A又はBは、以下のうちのいずれか1つによって満たされる、すなわち、Aが真であり(若しくは存在する)かつBが偽である(若しくは存在しない)、Aが偽であり(若しくは存在しない)かつBが真である(若しくは存在する)、並びにA及びBの両方が真である(若しくは存在する)。
【0008】
また、「1つの(a)」又は「1つの(an)」の使用は、本明細書に記載の要素及び構成成分を説明するために用いられる。これは、単に便宜上、及び本発明の範囲の一般的な意味を与えるために行われる。この記載は、1つ又は少なくとも1つを含むように読まれるべきであり、単数はまた、そうでないことを意味することが明らかでない限り、複数も含む。
【0009】
本開示は、有機ポリマーと、有機ポリマー全体にわたって分布した六方晶窒化ホウ素(hBN)粒子を含むセラミック粒子とを含む複合体を含む複合物品であって、hBN粒子の量が、複合体の総体積に基づいて20体積%~40体積%の範囲であり得、セラミック粒子の量が、複合体の総体積に基づいて50体積%以下であり得、複合体が少なくとも10W/mKの面内熱伝導率を含み得る、複合物品に関する。
【0010】
本明細書で使用される場合、hBN粒子という用語は、別段の指示がない限り、図1Aにも示されるように、少なくとも5の長さ対厚さの平均アスペクト比(L/T)を有する小板状hBN粒子に関する。
【0011】
本明細書で更に使用される場合、「面内」という用語は、複合体のx-y方向に関する。図1Bは、hBN粒子(12)が複合体のx-y方向に配向され得る(本明細書では整列されているとも呼ばれる)複合体の横断面(10)を示し、これは本明細書では互換的に「面内」と呼ばれる。対照的に、図1Cは、hBN粒子(12)がz方向に整列された複合材スライスの実施形態を示し、本明細書では複合体の「面貫通」方向又は厚さ方向とも交換可能に呼ばれる。
【0012】
一実施形態では、本開示の複合体は、hBNを含むセラミック粒子と有機ポリマーとを含む混合物を調製することと、混合物の層を型又は支持体に適用することと、hBN粒子の整列手順を実行することと、複合体を形成するために有機ポリマーを固化及び/又は硬化させることとによって作製され得る。
【0013】
一態様では、整列手順は、混合物の層の面内方向(x-y方向)に直交する圧力を加えることを含み得る。特定の態様では、圧力は、12インチ×12インチの金属板上に層を形成し、同じサイズの第2の金属板を用いて層に圧力を加えることによって加えることができ、第2の金属板に加えられる重量は、少なくとも40,000lbs、又は少なくとも50,000lbs、又は少なくとも60,000lbs、又は少なくとも70,000lbsであり得る。更なる態様では、第2のプレート上の重量は、150,000lbs以下であってもよい。
【0014】
一実施形態では、本方法は、混合物を調製する前にhBN粒子を表面官能化することを含み得る。表面官能化は、活性化hBN粒子を形成するために活性化hBN粒子を剥離及び活性化すること、並びに活性化hBN粒子を有機化合物で処理することを含み得る。
【0015】
一態様では、活性化することは、hBN粒子の外表面にOH基を導入することを含み得る。
【0016】
特定の態様では、剥離は、hBN小板粒子を切断又は剥離して、hBN粒子の表面積を増加させることができる機械的プロセスであり得る。hBN粒子の活性化は、hBN粒子をアルカリ性流体で処理することであり得、これにより、共有結合によってhBN粒子の表面にOH基を導入してもよい。
【0017】
特定の態様では、剥離及び活性化を同時に行うことができる。ある特定の態様では、hBN粒子の剥離は、液体媒体として水酸化ナトリウム水溶液を使用するボールミル粉砕を含み得る。
【0018】
剥離され活性化されたhBN粒子は、更に有機化合物により表面官能化され得る。特定の態様では、有機化合物は、水素化ケイ素基を含むポリシロキサン、又はポリシラン、又はシラン化合物、又はそれらの任意の組み合わせであり得る。
【0019】
ある特定の態様では、シラン化合物をhBN粒子と化学的に反応させることは、ホウ素触媒を使用することを更に含むことができる。非限定的な例では、ホウ素触媒は、トリ(ペンタフルオロフェニル)ボランを含み得る。
【0020】
hBN粒子の剥離及び活性化の後、導入されたOH基と選択された有機化合物との間で化学反応を起こさせて、有機化合物をhBN粒子の表面に共有結合させることができ、これは本明細書においてグラフト化とも呼ばれる。
【0021】
特定の実施形態では、hBN粒子の表面のグラフト化は、有機化合物としてシリコーンヒドリド基を含むポリシロキサンを用いて行われ得る。特定の態様では、複合体は、ポリシロキサンでグラフトされた表面官能化hBN粒子と、有機ポリマーとして、hBN粒子が分布したシリコーンポリマーとを含み得る。
【0022】
表面官能化は、ポリシロキサングラフト化に限定されなくてもよく、剥離hBN粒子の導入されたOH基と反応することができる任意の他のモノマー、オリゴマー、又はポリマーを含み得る。理論に束縛されるものではないが、hBN粒子のグラフト化表面は、粒子を有機ポリマーマトリックスとの相溶性を高め、それによって、より低いプロセス粘度を可能にし、容易な整列及び均質硬化の改善を引き起こし得る。
【0023】
いくつかの態様では、複合体の有機ポリマーは、熱可塑性ポリマー又は熱硬化性ポリマーであり得る。
【0024】
特定の態様では、有機ポリマーは、官能基を含む重合性ポリマーであり得る。ある特定の態様では、重合性モノマーの硬化が、圧縮成形後及び/又は圧縮成形中に必要とされる場合がある。
【0025】
重合性ポリマーの非限定的な例は、シリコーンポリマー、又はアクリレートポリマー、又はエポキシポリマーを含み得る。
【0026】
ある特定の態様では、重合性ポリマーは、ビニル基を含むシリコーンポリマーであり得る。非限定的な実施形態では、ビニル基を含むシリコーンポリマーは、架橋剤を用いた架橋によって重合され得る。一態様では、ビニル基を含むシリコーンポリマーの架橋剤に対する重量パーセント比は、0.5~5、又は1~3、又は1~2であり得る。
【0027】
特定の態様では、シリコーンポリマーは、少なくとも10,000g/mol、少なくとも100,000g/mol、少なくとも200,000g/mol、少なくとも400,000g/mol、又は少なくとも700,000g/molの分子量を有し得る。他の特定の態様では、シリコーンポリマーの分子量は、1,000,000g/mol以下、又は800,000g/mol以下、又は700,000g/mol以下、又は500,000g/mol以下、又は300,000g/mol以下、又は100,000g/mol以下であってもよい。
【0028】
別の特定の態様では、有機ポリマーは、熱可塑性ポリマーであり得る。熱可塑性ポリマーの非限定的な例は、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリウレタン、ポリアクリレート、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリイミド、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリアミド、液晶ポリマー(LCP)、ポリアクリロニトリル(PAN)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリエーテルケトンケトン(PEKK)、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリフェニレンオキシド(PPO)、ポリエーテルイミド、熱可塑性エラストマー(TPE、オレフィン系又はスチレン系)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)などのフルオロポリマー、パーフルオロアルコキシアルカン(PFA)、フッ素化エチレンプロピレン(FEP)、若しくはエチレンテトラフルオロエチレン(ETFE)、又はそれらの任意のコポリマー、又はそれらの任意の組み合わせを含み得る。
【0029】
特定の態様では、複合体は、ポリシロキサンでグラフトされた表面官能化hBN粒子と、有機ポリマーとして、hBN粒子が分布したシリコーンポリマーとを含み得る。
【0030】
別の特定の態様では、hBN粒子は、フッ素表面官能化を介して表面官能化され、シリコーンポリマーと組み合わされ得る。フッ素表面官能化の例としては、CF4、又はCHF3、SF、又はCによるプラズマ処理を含み得る。
【0031】
別の態様では、有機ポリマーはエポキシポリマーであり得、hBN粒子はエポキシ化合物、又はアミン、又はヒドロキシル基で表面官能化されていてもよい。エポキシ化合物を導入する非限定的な例は、グリシジルメタクリレートでのプラズマ処理又はアリルグリシジルエーテルでのプラズマ処理であり得る。アミン官能化の例としては、アリルアミン又は3-(アミノプロピル)トリエトキシシランによるプラズマ処理を含み得る。
【0032】
更なる態様では、有機ポリマーはポリエチレンであり得、hBN粒子はフッ素表面官能化又はシラン官能化に供され得る。
【0033】
更に別の態様では、有機ポリマーは、熱可塑性ポリウレタン(TPU)又はポリブチレンテレフタレート(PBT)であり得、hBN粒子は、エポキシ化合物、アミン、又はヒドロキシル基で官能化され得る。特定の更なる態様では、PBTはまた、酸素プラズマ処理、空気プラズマ処理、熱処理と組み合わせたホウ酸/尿素による処理、又は熱処理と組み合わせたホウ酸/メラミンによる処理によって表面官能化され得る。
【0034】
特定の態様では、本開示の複合体は、少なくとも10W/mKの面内熱伝導率を有し得、hBN粒子の対応する量は、39体積%以下、又は38体積%以下、又は37体積%以下、又は36体積%以下、又は35体積%以下、又は34体積%以下、又は33体積%以下、又は32体積%以下、又は31体積%以下、又は30体積%以下、又は29体積%以下、又は28体積%以下、又は25体積%以下である。
【0035】
特定の実施形態では、複合体内に含有されるセラミック粒子の大部分、例えば、セラミック粒子の総体積に基づいて少なくとも90体積%、又は少なくとも92体積%、又は少なくとも94体積%、又は少なくとも96体積%、又は少なくとも98体積%、又は少なくとも99体積%は、hBN粒子であり得る。ある特定の実施形態では、セラミック粒子は、hBN粒子から本質的になることができ、hBN粒子から本質的になるとは、本明細書において、hBN粒子ではないセラミック粒子を0.5体積%以下有することを意味する。
【0036】
複合体内のhBN粒子の配向(本明細書ではhBN粒子の交換可能な整列とも呼ばれる)は、X線回折法を行い、マーチ・ドーラス法に従ってX線スペクトルを分析することによって測定され得る(実施例の詳細な説明を参照)。マーチ・ドーラス配向パラメータηは、複合体内に分散したhBN粒子の整列の程度を特徴付けるための適切な定量的表現であり得ることが見出された。良好な整列は、本開示において、少なくとも50%のマーチ・ドーラス配向パラメータηであると考えられる。特定の態様では、複合体中のhBN粒子のマーチ・ドーラス配向パラメータは、少なくとも52%、又は少なくとも54%、又は少なくとも56%、又は少なくとも58%、又は少なくとも60%であり得る。
【0037】
実施例で更に実証されるように、驚くべきことに、有機化合物による官能化の前のhBN粒子の機械的剥離及び化学的処理の特定の組み合わせが、40体積%未満のhBN濃度において少なくとも10W/mKの熱伝導率をもたらし得ることが見出された。
【0038】
一実施形態では、hBN粒子は、少なくとも5、又は少なくとも7、又は少なくとも10、又は少なくとも20、又は少なくとも30、又は少なくとも40、又は少なくとも50、又は少なくとも60、又は少なくとも70、又は少なくとも80、又は少なくとも90、又は少なくとも100、又は少なくとも110、又は少なくとも120のhBN粒子の長さ(L)対厚さ(T)の平均アスペクト比を有し得る。ある特定の態様では、アスペクト比は、200以下、又は120以下、又は80以下、又は50以下、又は30以下、又は15以下であってもよい。
【0039】
別の実施形態では、hBN粒子は、少なくとも1ミクロン、又は少なくとも3ミクロン、又は少なくとも5ミクロン、又は少なくとも10ミクロン、又は少なくとも15ミクロン、又は少なくとも20ミクロン、又は少なくとも25ミクロン、又は少なくとも30ミクロンの平均粒径(D50)を有してもよい。更なる態様では、hBN粒子は、100ミクロン以下、又は50ミクロン以下、又は45ミクロン以下、又は40ミクロン以下、又は35ミクロン以下、又は30ミクロン以下、又は25ミクロン以下、又は20ミクロン以下、又は10ミクロン以下、又は5ミクロン以下の平均粒径を有してもよい。
【0040】
ある実施形態では、複合体のhBN粒子は、多峰性粒子分布、例えば、2峰性又は3峰性分布を有し得る。特定の態様では、粒子分布は、2峰性粒子分布(PSD)であり得る。
【0041】
一態様では、hBN粒子の粒径分布は、第1のピーク最大値を有する第1のピーク及び第2のピーク最大値を有する第2のピークを含み得、第1のピーク最大値対第2のピーク最大値の強度比は、少なくとも1.5:1、又は少なくとも2:1、又は少なくとも2.5:1、又は少なくとも3.0:1であり得る。別の態様では、第1のピーク最大値対第2のピーク最大値の強度比は、10:1以下、又は7:1以下、又は5:1以下、又は4:1以下、又は3.5:1以下、又は3.0:1以下であってもよい。
【0042】
別の態様では、hBN粒径分布の第1のピーク最大値と第2のピーク最大値との間の距離は、少なくとも20ミクロン、又は少なくとも25ミクロン、又は少なくとも30ミクロン、又は少なくとも35ミクロンであり得る。更なる態様では、第1のピーク最大値と第2のピーク最大値との間の距離は、70ミクロン以下、又は60ミクロン以下、又は50ミクロン以下、又は40ミクロン以下、又は35ミクロン以下であってもよい。
【0043】
更に別の態様では、第1のピーク最大値は、8ミクロン~13ミクロンの範囲のhBN粒径に対応し得、第2のピーク最大値は、35~50ミクロンの範囲のhBN粒径に対応し得る。
【0044】
別の態様では、hBN粒子分布の80パーセント分布値(D90-D10)は、少なくとも15ミクロン、又は少なくとも20ミクロン、又は少なくとも25ミクロン、又は少なくとも30ミクロン、又は少なくとも35ミクロン、又は少なくとも40ミクロン、又は少なくとも45ミクロン、又は少なくとも50ミクロンであり得る。別の態様では、hBN粒子分布の80パーセント分布値(D90-D10)は、80ミクロン以下、又は70ミクロン以下、又は60ミクロン以下、又は50ミクロン以下、又は45ミクロン以下、又は40ミクロン以下であり得る。
【0045】
特定の実施形態では、複合体内に含有されるセラミック粒子の大部分、例えば、セラミック粒子の総体積に基づいて少なくとも90体積%、又は少なくとも92体積%、又は少なくとも94体積%、又は少なくとも96体積%、又は少なくとも98体積%、又は少なくとも99体積%は、hBN粒子であり得る。ある特定の実施形態では、セラミック粒子は、hBN粒子から本質的になることができ、hBN粒子から本質的になるとは、本明細書において、hBN粒子ではないセラミック粒子を0.5体積%以下有することを意味する。
【0046】
驚くべきことに、特定の表面官能化hBN粒子は、少なくとも10W/mKの複合体の熱伝導率を得ることができるように、複合体の総体積に基づいて40体積%以下のhBN濃度で既に高い配向度で有機ポリマー内に分散され得ることが観察された。
【0047】
多くの異なる態様及び実施形態が可能である。それらの態様及び実施形態のいくつかを本明細書に記載する。本明細書を読んだ後、当業者は、それらの態様及び実施形態が例解的であるに過ぎず、本発明の範囲を限定するものではないことを理解するであろう。実施形態は、以下に列挙される実施形態のうちのいずれか1つ以上に従い得る。
【0048】
実施形態
実施形態1.有機ポリマーと、有機ポリマー全体に分布した六方晶窒化ホウ素(hBN)粒子を含むセラミック粒子とを含む複合体を含む複合物品であって、
hBN粒子の量が、複合体の総体積に基づいて20体積%~40体積%の範囲であり、
セラミック粒子の量が、複合体の総体積に基づいて50体積%以下であり、
複合体が、少なくとも10W/mKの面内熱伝導率を有する、複合物品。
【0049】
実施形態2.複合体内のhBN粒子の面内マーチ・ドーラス配向パラメータηが、少なくとも50%、又は少なくとも51%、又は少なくとも52%、又は少なくとも53%、又は少なくとも54%、又は少なくとも55%、又は少なくとも56%、又は少なくとも57%、又は少なくとも58%、又は少なくとも59%、又は少なくとも60%、又は少なくとも61%、又は少なくとも62%、又は少なくとも63%、又は少なくとも64%、又は少なくとも65%である、実施形態1に記載の複合物品。
【0050】
実施形態3.hBN粒子の長さ対厚さの平均アスペクト比が、少なくとも5、又は少なくとも10、又は少なくとも20、又は少なくとも30、又は少なくとも40、又は少なくとも50、又は少なくとも60、又は少なくとも70、又は少なくとも80、又は少なくとも90、又は少なくとも100、又は少なくとも110、又は少なくとも120である、先行する実施形態のいずれか1つに記載の複合物品。
【0051】
実施形態4.hBN粒子の平均アスペクト比が、200以下、又は120以下、又は80以下、又は50以下である、先行する実施形態のいずれか1つに記載の複合物品。
【0052】
実施形態5.hBN粒子が、少なくとも1ミクロン、又は少なくとも3ミクロン、又は少なくとも5ミクロン、又は少なくとも10ミクロン、又は少なくとも15ミクロン、又は少なくとも20ミクロン、又は少なくとも25ミクロン、又は少なくとも30ミクロン、又は少なくとも35ミクロンの平均粒径(D50)を有する、先行する実施形態のいずれか1つに記載の複合物品。
【0053】
実施形態6.hBN粒子が、100ミクロン以下、又は70ミクロン以下、又は50ミクロン以下、又は45ミクロン以下、又は40ミクロン以下、又は35ミクロン以下、又は30ミクロン以下、又は25ミクロン以下、又は20ミクロン以下、又は10ミクロン以下、又は5ミクロン以下の平均粒径を有する、先行する実施形態のいずれか1つに記載の複合物品。
【0054】
実施形態7.hBN粒子が、多峰性分布を有する、先行する実施形態のいずれか1つに記載の複合物品。
【0055】
実施形態8.hBN粒子が、3つの異なる粒径範囲の組み合わせを含む、実施形態7に記載の複合物品。
【0056】
実施形態9.hBN粒子が、3~7ミクロンの平均粒径を有するhBN粒子の第1の部分と、12~20ミクロンの平均粒径を有するhBN粒子の第2の部分と、25~35ミクロンの平均粒径を有するhBN粒子の第3の部分とを含む、実施形態7又は8に記載の複合物品。
【0057】
実施形態10.第1の部分対第2の部分及び第3の部分の体積比が、0.7:1.0:1.3~1.3:1.0:0.7、又は0.8:1.0:1.2~1.2:1.0:0.8、又は0.9:1.0:1.1~1.1:1.0:0.9の範囲である、実施形態9に記載の複合物品。
【0058】
実施形態11.前記複合体の電気体積抵抗率が、少なくとも1.0E+12、又は少なくとも1.0E+13、又は少なくとも1.0E+14である、先行する実施形態のいずれか1つに記載の複合物品。
【0059】
実施形態12.複合体の有機ポリマーが、熱可塑性ポリマー又は熱硬化性ポリマーを含む、先行する実施形態のいずれか1つに記載の複合物品。
【0060】
実施形態13.前記有機ポリマーが、シリコーンポリマー、アクリレートポリマー、ポリウレタン、エポキシドポリマー、ポリアミド、ポリイミド、液晶ポリマー(LCP)、フルオロポリマー、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリアミド、液晶ポリマー(LCP)、ポリアクリロニトリル(PAN)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリエーテルケトンケトン(PEKK)、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリフェニレンオキシド(PPO)、ポリエーテルイミド、熱可塑性エラストマー(TPE、オレフィン系又はスチレン系)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、パーフルオロアルコキシアルカン(PFA)、フッ素化エチレンプロピレン(FEP)、エチレンテトラフルオロエチレン(ETFE)、若しくはこれらの任意のコポリマー、又はこれらの任意の組み合わせを含む、実施形態14に記載の複合物品。
【0061】
実施形態14.有機ポリマーが、シリコーンポリマーを含む、先行する実施形態のいずれか1つに記載の複合物品。
【0062】
実施形態15.有機ポリマーが、シリコーンポリマーから本質的になる、実施形態16に記載の複合物品。
【0063】
実施形態16.シリコーンポリマーが、少なくとも10,000g/mol、少なくとも100,000g/mol、少なくとも200,000g/mol、少なくとも400,000g/mol、又は少なくとも700,000g/molの分子量を有する、実施形態16又は17のいずれか1つに記載の複合物品。
【0064】
実施形態17.シリコーンポリマーが、1,000,000g/mol以下、又は800,000g/mol以下、又は700,000g/mol以下、又は500,000g/mol以下、又は300,000g/mol以下、又は100,000g/mol以下の分子量を有する、実施形態16~18のいずれか1つに記載の複合物品。
【0065】
実施形態18.前記複合体が、界面活性剤を更に含む、先行する実施形態のいずれか1つに記載の複合物品。
【0066】
実施形態19.前記界面活性剤の量が、少なくとも0.1重量%かつ5重量%以下である、実施形態17に記載の複合物品。
【0067】
実施形態20.界面活性剤がポリシロキサンである、実施形態27又は28に記載の複合物品。
【0068】
実施形態21.hBN粒子の量が、セラミック粒子の総体積に基づいて92体積%、又は少なくとも94体積%、少なくとも96体積%、若しくは少なくとも98体積%、若しくは少なくとも99体積%である、先行する実施形態のいずれか1つに記載の複合物品。
【0069】
実施形態22.複合体のセラミック粒子が、hBN粒子から本質的になる、先行する実施形態のいずれか1つに記載の複合物品。
【0070】
実施形態23.hBN粒子の量が、複合体の総体積に基づいて39体積%以下、又は38体積%以下、又は37体積%以下、又は36体積%以下、又は35体積%以下である、先行する実施形態のいずれか1つに記載の複合物品。
【0071】
実施形態24.hBN粒子の量が、複合体の総体積に基づいて少なくとも21体積%、又は少なくとも22体積%、又は少なくとも23体積%、又は少なくとも24体積%、又は少なくとも25体積%、又は少なくとも26体積%、又は少なくとも27体積%、又は少なくとも28体積%、又は少なくとも29体積%、又は少なくとも30体積%、又は少なくとも31体積%、又は少なくとも32体積%、又は少なくとも33体積%、又は少なくとも34体積%である、先行する実施形態のいずれか1つに記載の複合物品。
【0072】
実施形態25.複合体の熱伝導率が、少なくとも10.5W/mK、又は少なくとも11.0W/mK、又は少なくとも11.5W/mK、又は少なくとも12W/mK、又は少なくとも12.5W/mK、又は少なくとも13.0W/mK、又は少なくとも13.5W/mK、又は少なくとも14W/mK、又は少なくとも14.5W/mK、又は少なくとも15.0W/mK、又は少なくとも15.5W/mK、又は少なくとも16W/mK、又は少なくとも16.5W/mK、又は少なくとも17.0W/mK、又は少なくとも17.5W/mK、又は少なくとも18W/mK、又は少なくとも18.5W/mK、又は少なくとも19.0W/mK、又は少なくとも19.5W/mK、又は少なくとも20W/mKである、先行する実施形態のいずれか1つに記載の複合物品。
【0073】
実施形態26.複合体の熱伝導率が、40W/mK以下、又は30W/mK以下、又は20W/mK以下である、先行する実施形態のいずれか1つに記載の複合物品。
【0074】
実施形態27.hBN粒子の表面が、有機化合物で官能化されている、先行する実施形態のいずれか1つに記載の複合物品。
【0075】
実施形態28.有機化合物が、ポリシロキサン、ポリシラン、シラン、又はこれらの任意の組み合わせから選択される、実施形態27に記載の複合物品。
【0076】
実施形態29.有機化合物が、ポリシロキサンである、実施形態28に記載の複合物品。
【0077】
実施形態30.有機化合物が、hBN粒子の表面に共有結合している、実施形態27~29のいずれか1つに記載の複合物品。
【0078】
実施形態31.ポリシロキサンが、少なくとも100かつ100,000以下の分子量を有する、実施形態25~26のいずれか1つに記載の複合物品。
【0079】
実施形態32.有機化合物が、フッ素含有化合物、エポキシ化合物、又はアミンを含む、実施形態27に記載の複合物品。
【0080】
実施形態33.複合物品を形成する方法であって、
セラミック粒子と有機ポリマーとの混合物を調製することであって、セラミック粒子がhBN粒子を含み、hBN粒子の量が分散液の総重量に基づいて20~40体積%の範囲であり、セラミック粒子の総量が複合体の総体積に基づいて50体積%以下である、調製することと、
混合物の層を型又は支持体に適用することと、
hBN粒子の整列手順を行うことと、
複合体を形成するために有機ポリマー又は有機重合性材料を固化及び/又は硬化させることと、を含み、
複合体の面内熱伝導率が、少なくとも10W/mKである、方法。
【0081】
実施形態34.混合物を調製する前に、hBN粒子を表面官能化することを更に含む、実施形態33に記載の方法。
【0082】
実施形態35.表面官能化が、活性化hBN粒子を形成するためにhBN粒子を剥離及び活性化することと、活性化hBN粒子を有機化合物で処理することとを含む、実施形態34に記載の方法。
【0083】
実施形態36.活性化が、hBN粒子の外表面にOH基を導入することを含む、実施形態35に記載の方法。
【0084】
実施形態37.剥離及び活性化が同時に行われる、実施形態34又は35に記載の方法。
【0085】
実施形態38.剥離が、ボールミル粉砕を含む、実施形態34~37のいずれか1つに記載の方法。
【0086】
実施形態39.有機化合物が、水素化ケイ素基を含むポリシロキサン、又はポリシラン、又はシラン化合物、又はそれらの任意の組み合わせである、実施形態35~38のいずれか1つに記載の方法。
【0087】
実施形態40.処理することは、hBN粒子を有機化合物と化学的に反応させることを含む、実施形態39に記載の方法。
【0088】
実施形態41.hBN粒子を有機化合物と化学的に反応させることが、ホウ素触媒を使用することを含む、実施形態40に記載の方法。
【0089】
実施形態42.ホウ素触媒が、トリ(ペンタフルオロフェニル)ボランを含む、実施形態41に記載の方法。
【0090】
実施形態43.整列手順が、混合物の層に圧力を加えることを含む、実施形態33~42のいずれか1つに記載の方法。
【0091】
実施形態44.圧力が、硬化後の複合体の面内マーチ・ドーラス配向パラメータの程度が少なくとも50%であるように調整される、実施形態43に記載の方法。
【0092】
実施形態45.圧力が、少なくとも2MPa、又は少なくとも100MPa、又は少なくとも500MPaである、実施形態43又は44に記載の方法。
【実施例
【0093】
以下の非限定的な実施例は、本発明を例示する。
【0094】
実施例1
活性化hBN粉末の調製
【0095】
シラン官能化のための出発材料として使用するための活性化hBN(表面にOH基を含有するhBN)を調製するために、異なる処理を行った。
【0096】
一連の実施された実験の全てにおいて、30ミクロンの平均粒径及び8~10のアスペクト比を有するhBN粒子を出発材料として使用し、シランによる表面官能化を行う前に、hBN粒子の外表面にOH基を導入することと組み合わせて、異なるタイプの剥離に供した。
【0097】
NaOHによる剥離及び活性化(試料BN1)
ジルコニアビーズを入れたPQ-N4遊星ボールミル(Across International)を用いてhBN粉末を剥離処理した。hBN粉末対ジルコニアビーズの比は、約50:1であった。粉砕のために、200gのhBN粉末を500mLの2MのNaOHと混合し、200rpmで12時間粉砕した。その後、ミルの速度を400rpmに増加させ、更に12又は24時間粉砕した。粉砕後、ジルコニアビーズを除去し、hBN小板を希HCl溶液ですすぎ、中性pHが得られるまで真空濾過によって水で洗浄した。最終粉末を50~60℃の真空オーブンで乾燥させた。
【0098】
中性溶媒中での剥離(試料BN2)
中性水(脱イオン水)を使用したことを除いて、試料BN1を作製するために上記と同じ実験を行った。
【0099】
超音波処理及びポリドーパミン(PDA)処理(試料BN3)
200gのhBN粉末及び300mLのイソプロピルアルコール(IPA)をFlackTek Speedmixer中で一緒に混合し、続いて30分間超音波処理して剥離を行った。
【0100】
hBN粒子の表面上にヒドロキシル基を導入するために、剥離されたhBNを更にPDA官能化に供した。
【0101】
PDA官能化は、20gの剥離hBNを8gのドパミン塩酸塩、300mLのトリス緩衝溶液(10mM、pH8.5)、及び100mLのエタノール溶液の溶液中に浸漬することによって行った。混合物を遮光下、室温で12時間撹拌した。処理されたhBN粉末を4000rpmで15分間遠心分離することによって分離し、脱イオン水及びエタノールで洗浄し、60℃で12時間乾燥させた。
【0102】
プラズマ活性化(試料BN4)
hBN粉末のプラズマ処理は、Diener Electronics社製のPico-SR-PCCE-C低圧プラズマリアクタを用いて行った。酸素プラズマ処理中に、ヒドロキシル基がhBN板の表面上にグラフトされることが知られている。
【0103】
プラズマ処理は、50%O/50%空気混合物中の15gのhBNのバッチサイズで、0.3mbarの圧力、100Wの電力で12分間行った。プラズマガス中のヒドロキシル形成のために水蒸気を導入するために、O2と空気の組み合わせを選択した。
【0104】
グリシジルメタクリレートプラズマ重合(試料BN5)
グリシジルメタクリレート(GMA)は、プラズマ強化化学蒸着(PECVD)によって重合することができるエポキシ官能性モノマーである。40W以上の電力を加えることにより、エポキシド環の開環及びヒドロキシル基の生成が促進される。
【0105】
hBN粉末のプラズマ活性化は、空気ガスを用いて、100Wの電力、0.3mbarの圧力で5分間行った。
【0106】
実施例2
Piers-Rubinsztajn反応による活性化hBN粒子の官能化
実施例1の活性化hBN粉末試料(BN1、BN2、BN3、BN4、及びBN5)を、以下の手順に従ってPiers-Rubinsztajn反応によるケイ素化による官能化に供した。50gの活性化hBN粉末を、N2雰囲気下で還流冷却器を備えた500mL丸底フラスコ中の300mL無水トルエン中に分散させ、これに、1mLトルエン中の30mgの触媒トリス(ペンタフルオロフェニル)ボラン-B(C-を撹拌下で添加した。更に、フラスコは、ガラスビーズの界面での反応を促進し、剥離中に形成されたhBNスタックを破壊するために、ガラスビーズ(番号40、直径6mm)を含んでいた。触媒を添加した後、4.0mLの水素化ケイ素(Gelest製のDMS-H11)を反応混合物にゆっくり添加し、続いて60℃の温度で12時間撹拌を続けた。
【0107】
その後、反応混合物を濾過し、シリコーン化hBN粒子をトルエン及びIPAで洗浄して、非グラフト化シリコーンを除去した。
【0108】
シリコーン鎖がhBN粒子上にグラフトされたことの証明として、DRIFT IR測定を、シリコーン処理されたBN1粉末試料を用いて行った。IRスペクトル(図3、スペクトル3を参照)は、グラフト反応によって予想されるSi-CH及びSi-0-Siの特徴的なピークを明確に示しており、これによってグラフト化の成功が確認された。比較すると、図3に示すIRスペクトル1及び2は、官能化前のhBN粒子から作製されたものであり、官能化前(1)と、官能化前かつ剥離及び活性化後(2)のものである。
【0109】
hBN-シリコーン複合体を形成する実験に使用した異なるタイプのhBN粉末の概要を表1に示す。
【0110】
hBN-シリコーン複合体の調製
活性化されたhBN粉末試料のケイ素化を行った後、hBN粒子を分散させるためのマトリックスとしてシリコーンポリマーを用いて複合体を調製した。
【0111】
以下の手順を行った。34体積%のhBN粒子試料を、シリコーンゴム(AB specialty Andigum H110-0)及び架橋剤の2,4-ジクロロベンゾイルペルオキシド(ポリジメチルシロキサン中50%;Gelest)と混合することによって混合物を調製した。架橋剤対シリコーンの重量%比は約1~1.5であった。混合物は、2重量%のSiltechシリコーン界面活性剤及び3重量%のEvonik VS10000を更に含有した。分散液の混合は、ブラベンダー混合物中、室温で約40分間行った。
【0112】
調製されたhBN分散液から、分散液混合物の層を金属板上に注ぎ、34~46MPaの圧力を20分間加えることによって所定の厚さにプレスすることで、複合体を作製した。具体的には、2枚の12インチ×12インチの金属板の間で、60,000ポンドの重量をかけてプレスを行った。所望のシート厚さ0.32mmを有するスペーサとしてシムを含有する2枚の金属板の間で混合物をプレスすることによって、所定の厚さを作製した。冷間プレス後、プレスされた材料(シート)を120℃のオーブンで4分間硬化させた。
【0113】
表2は、製造された試料の概要を提供し、hBN活性化のタイプ、及び形成された複合体の測定された熱伝導率を示す。
【表1】
【0114】
表2にまとめられたデータは、hBN粉末がNaOH溶液の存在下でボールミル中で剥離を介して活性化された場合、熱伝導率の驚くべき増加が達成され得ることを示す。これは、効率的なケイ素化を行うための最良の活性化であると思われ、更に、シリコーンポリマーを有するhBN含有複合体の形成に強い影響を有し、得られた複合体は高い熱伝導率を有する。
【0115】
試料E1では、複合体の総体積に基づきわずか約34体積%のhBN量で、10.8W/mKの高い熱伝導率を有する材料を得ることができた。
【0116】
実施例3
hBNについて異なる体積量を使用することを除いて、試料E1についての実施例2と同じ方法で複合体を形成する。体積量は、25体積%、30体積%、及び38体積%で変化する。熱伝導率が測定され、マーチ・ドーラス配向パラメータが測定されている。
【0117】
実施例4
有機ポリマーとして低ポリエチレンを使用すること以外は、実施例2の試料E1と同様にして複合体を形成する。熱伝導率及びマーチ・ドーラス配向パラメータが測定される。
【0118】
実施例5
試料E1について実施例2で得られた複数の複合シートを、硬化前にシートの多層積層体に加える。積層体は、圧力を加えることによって圧縮処理され、その後、シリコーンポリマーの硬化を行うために熱処理される。
【0119】
プレスされ硬化された多層積層体から、厚さ0.5mmの複合材スライスをダイヤモンドワイヤで切断する。複合材スライスは、熱伝導率についてその厚さ方向(z)で分析される。複合材スライスの厚さ方向(z方向、面貫通方向とも呼ばれる)全体にわたる熱伝導率が測定されており、試料E1の多層複合体の面内熱伝導率の少なくとも90%であると予想される。面貫通方向に配向したhBN粒子(14)を有する複合材スライスの図を図1Cに示す。
【0120】
熱伝導率の測定
熱伝導率は、過渡平面光源デバイス(TPS 2500 S、Hot Disk Instruments)を使用して測定した。機器及び測定は、試験材料の2つの試料の間に温度センサを配置し、試験試料の表面に熱パルスを導入し、温度変化を測定し、それに基づいて熱伝導率を計算することによって設計される。温度センサは、Paton-insulated Hot Disk(登録商標)センサモデル5501(半径6.4mm)であった。熱パルスを60~150mWの範囲で3~15秒間変化させて、導電率値がパルスパラメータとは無関係に一定のままであることを確実にした。測定は、Hot Disk(登録商標)からのHot Disk Thermal Constants Analyser Instruction Manual(2015-04-15)に従って行った。面内熱伝導率の測定にはスラブモジュールを使用し、面貫通熱伝導率の測定には異方性法を適用した。
【0121】
マーチ・ドーラス配向パラメータηの測定
X線回折分析を行って、複合体内のhBN粒子の配向(本明細書では整列とも呼ばれる)の程度を判定した。面内配向したhBN小板の場合、対象となる主面は、表面に平行な面内方向((002)面など)であった。最初に、2D XRDスペクトルを、10°~80°の範囲の角度位置で工程スキャンモードで集束Cu Kα線(λ=1.5418Å)を用いてBruker D8回折計で試料のスポット回折後に得た。その後、1次元(1D)XRDスペクトルを、Bruker製のEVAソフトウェアの内蔵機能を使用して2Dスペクトルの積分によって得た。リートベルト(Rietveld)ピークフィッティング法を用いて、配向hBNパターンの(002)ピーク強度を非配向hBNデータベースパターンと比較して、配向の定量化可能な測定値を得た。(002)ピークを示すXRDスペクトルを図2Aに示す。より多くの(002)hBN面が表面に平行に整列するにつれて、(002)実験ピークの相対強度は、データベースピークと比較して上昇する。
【0122】
Bruker製のTopas定量ソフトウェアを使用して、XRDパターンのピークフィッティングを行った。Topasソフトウェアは、マーチ・ドーラス関数W(α)を使用してマーチ・ドーラスパラメータを決定するための組み込み改良機能を有する。以下の式(1)を参照されたい。
【数1】
式中、W(α)は好ましい方向に配向された結晶子の割合であり、αは結晶子面(hkl)法線と好ましい配向方向との間の角度であり、rはマーチ・ドーラスパラメータである。
【0123】
マーチ・ドーラスパラメータrの関数としての優先配向度η(r)は、以下の式(2)に従って計算され得る。
【数2】
【0124】
図2Bに示すグラフは、マーチ・ドーラスパラメータrと、本明細書では「マーチ・ドーラス配向パラメータη」とも呼ばれる優先配向度η(r)との間の関係を示す。グラフ中の実線は、実際に測定された曲線を示し、破線は、曲線を簡略化された線形傾向線に変換したものである。
【0125】
電気体積抵抗率の測定
試料の電気抵抗率をASTM D257に従って測定した。
【0126】
hBN粒子の粒度分布の測定
hBN粒子の粒度分布は、Horiba製のLaser Scattering Particle Size Distribution Analyzer LA-950を使用して、レーザー散乱によって測定した。中心サイズ(D50)及び平均サイズという表現は、HORIBAマニュアル定義に従って使用される。
【0127】
前述の明細書では、特定の実施形態を参照して概念を記載してきた。しかしながら、当業者であれば、以下の特許請求の範囲に掲げる本発明の範囲から逸脱することなく、様々な修正及び変更を行うことができることを理解する。そのため、明細書及び図面は、限定的な意味ではなく、例解的な意味で考慮されるべきであり、全てのそのような修正は、本発明の範囲内に含まれることが意図される。

図1A
図1B
図1C
図2A
図2B
図3
【手続補正書】
【提出日】2024-04-26
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
有機ポリマーと、前記有機ポリマー全体に分布した六方晶窒化ホウ素(hBN)粒子を含むセラミック粒子とを含む複合体を含む複合物品であって、
前記hBN粒子の量が、前記複合体の総体積に基づいて20体積%~40体積%の範囲であり、
前記セラミック粒子の量が、前記複合体の総体積に基づいて50体積%以下であり、
前記複合体が、少なくとも10W/mKの面内熱伝導率を有する、複合物品。
【請求項2】
前記複合体内の前記hBN粒子の面内マーチ・ドーラス(March-Dollase)配向パラメータηが、少なくとも50である、請求項1に記載の複合物品。
【請求項3】
前記hBN粒子の長さ(L)対厚さ(T)の平均アスペクト比が、少なくとも5である、請求項1に記載の複合物品。
【請求項4】
前記hBN粒子が、少なくとも1ミクロンかつ70ミクロン以下の平均粒径(D50)を有する、請求項1に記載の複合物品。
【請求項5】
前記複合体の電気体積抵抗率が、少なくとも1.0E+12である、請求項1に記載の複合物品。
【請求項6】
前記複合体の前記有機ポリマーが、熱可塑性ポリマー又は熱硬化性ポリマーを含む、請求項1に記載の複合物品。
【請求項7】
前記有機ポリマーが、シリコーンポリマー、アクリレートポリマー、ポリウレタン、エポキシドポリマー、ポリアミド、ポリイミド、液晶ポリマー(LCP)、フルオロポリマー、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリアミド、液晶ポリマー(LCP)、ポリアクリロニトリル(PAN)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリエーテルケトンケトン(PEKK)、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリフェニレンオキシド(PPO)、ポリエーテルイミド、熱可塑性エラストマー(TPE、オレフィン系又はスチレン系)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、パーフルオロアルコキシアルカン(PFA)、フッ素化エチレンプロピレン(FEP)、エチレンテトラフルオロエチレン(ETFE)、若しくはこれらの任意のコポリマー、又はこれらの任意の組み合わせを含む、請求項6に記載の複合物品。
【請求項8】
前記有機ポリマーが、シリコーンポリマーを含む、請求項7に記載の複合物品。
【請求項9】
前記hBN粒子の量が、セラミック粒子の総体積に基づいて少なくとも92体積%である、請求項1に記載の複合物品。
【請求項10】
前記hBN粒子の表面が、有機化合物で官能化されている、請求項1に記載の複合物品。
【請求項11】
前記有機化合物が、ポリシロキサン、ポリシラン、シラン、又はそれらの任意の組み合わせから選択される、請求項10に記載の複合物品。
【請求項12】
複合物品を形成する方法であって、
セラミック粒子と有機ポリマーとの混合物を調製することであって、前記セラミック粒子がhBN粒子を含み、前記hBN粒子の量が前記分散液の総重量に基づいて20~40体積%の範囲であり、セラミック粒子の総量が前記複合体の総体積に基づいて50体積%以下である、調製することと、
前記混合物の層を型又は支持体に適用することと、
hBN粒子の整列手順を行うことと、
複合体を形成するために前記有機ポリマー又は有機重合性材料を固化及び/又は硬化させることと、を含み、
前記複合体の面内熱伝導率が、少なくとも10W/mKである、方法。
【請求項13】
前記混合物を調製する前に、前記hBN粒子を表面官能化することを更に含む、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
表面官能化が、活性化hBN粒子を形成するために前記hBN粒子を剥離及び活性化することと、前記活性化hBN粒子を有機化合物で処理することとを含み、前記有機化合物が、水素化ケイ素基を含むポリシロキサン、又はポリシラン、又はシラン化合物、又はこれらの任意の組み合わせを含む、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記剥離することが、ボールミル粉砕を含み、前記活性化することが、前記hBN粒子の表面上にOH基を導入することを含む、請求項14に記載の方法。

【国際調査報告】