(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-10-22
(54)【発明の名称】高い熱伝導率を有する複合体及びその複合体の製造方法
(51)【国際特許分類】
C09K 5/14 20060101AFI20241015BHJP
C08L 101/00 20060101ALI20241015BHJP
C08K 3/38 20060101ALI20241015BHJP
【FI】
C09K5/14 E
C08L101/00
C08K3/38
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024522447
(86)(22)【出願日】2022-10-14
(85)【翻訳文提出日】2024-05-01
(86)【国際出願番号】 US2022078170
(87)【国際公開番号】W WO2023064939
(87)【国際公開日】2023-04-20
(32)【優先日】2021-10-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】593150863
【氏名又は名称】サン-ゴバン セラミックス アンド プラスティクス,インコーポレイティド
【氏名又は名称原語表記】SAINT-GOBAIN CERAMICS AND PLASTICS, INC.
【住所又は居所原語表記】One New Bond Street, Worcester, MA 01615, United States of America
(74)【代理人】
【識別番号】110003281
【氏名又は名称】弁理士法人大塚国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ワン,ファ
(72)【発明者】
【氏名】リャン,シュアイ
(72)【発明者】
【氏名】ワトキンズ,ニコラス
(72)【発明者】
【氏名】バザント,マーティン ゼット.
(72)【発明者】
【氏名】プレイン,サラ エリザベス
(72)【発明者】
【氏名】リー,チュアンピン
(72)【発明者】
【氏名】ハンプデン-スミス,マーク
(72)【発明者】
【氏名】カマス,ミスン エヌ.
(72)【発明者】
【氏名】シュライブス,ダニエル
【テーマコード(参考)】
4J002
【Fターム(参考)】
4J002AA001
4J002CP031
4J002DK006
4J002FD206
(57)【要約】
【解決手段】 複合物品は、有機ポリマーと、有機ポリマー全体にわたって分布した六方晶窒化ホウ素(hBN)粒子を含むセラミック粒子とを含む複合体を含み得、hBN粒子の量は、複合体の総体積に基づいて40体積%~90体積%の範囲であり、複合体は、少なくとも15W/mKの面内熱伝導率を有する。複合体内のhBN粒子は、少なくとも50%のマーチ・ドーラス配向パラメータηを有し得る。
【選択図】
図1B
【特許請求の範囲】
【請求項1】
有機ポリマーと、前記有機ポリマー全体に分布した六方晶窒化ホウ素(hBN)粒子を含むセラミック粒子とを含む複合体を含む複合物品であって、
前記hBN粒子の量が、前記複合体の総体積に基づいて40体積%~90体積%の範囲であり、
前記セラミック粒子の少なくとも90体積%が、hBN粒子であり、
前記複合体が、少なくとも13.5W/mKの面内熱伝導率を有する、複合物品。
【請求項2】
前記複合体内の前記hBN粒子の面内マーチ・ドーラス(March-Dollase)配向パラメータηが、少なくとも50%である、請求項1に記載の複合物品。
【請求項3】
前記複合体の面内熱伝導率が、少なくとも16.0W/mKである、請求項1に記載の複合物品。
【請求項4】
前記hBN粒子の長さ対厚さの平均アスペクト比が、少なくとも5である、請求項1~3のいずれか一項に記載の複合物品。
【請求項5】
前記hBN粒子が、少なくとも1ミクロンかつ100ミクロン以下の平均粒径(D50)を有する、請求項1に記載の複合物品。
【請求項6】
前記hBN粒子が、多峰性粒子分布を含む、請求項5に記載の複合物品。
【請求項7】
前記hBN粒子の粒径分布が、第1のピーク最大値を有する第1のピーク及び第2のピーク最大値を有する第2のピークを含み、前記第1のピーク最大値対前記第2のピーク最大値の強度比が、少なくとも2:1かつ10:1以下である、請求項6に記載の複合物品。
【請求項8】
前記第1のピーク最大値と前記第2のピーク最大値との間の距離が、少なくとも20ミクロンかつ70ミクロン以下である、請求項6に記載の複合物品。
【請求項9】
前記第1のピーク最大値が、8ミクロン~13ミクロンの範囲の粒径に対応し、前記第2のピーク最大値が、35~50ミクロンの範囲の粒径に対応する、請求項6に記載の複合物品。
【請求項10】
前記hBN粒子の前記平均粒径(D50)と前記中央粒径との差が少なくとも5ミクロンである、請求項6に記載の複合物品。
【請求項11】
前記複合体の電気体積抵抗率が、少なくとも1.0E+12、又は少なくとも1.0E+13、又は少なくとも1.0E+14である、請求項1に記載の複合物品。
【請求項12】
前記複合体の前記有機ポリマーが、熱可塑性ポリマー又は熱硬化性ポリマーを含む、請求項1に記載の複合物品。
【請求項13】
前記有機ポリマーが、シリコーンポリマー、アクリレートポリマー、ポリウレタン、エポキシドポリマー、ポリアミド、ポリイミド、液晶ポリマー(LCP)、フルオロポリマー、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリアミド、液晶ポリマー(LCP)、ポリアクリロニトリル(PAN)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリエーテルケトンケトン(PEKK)、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリフェニレンオキシド(PPO)、ポリエーテルイミド、熱可塑性エラストマー(TPE、オレフィン系又はスチレン系)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、パーフルオロアルコキシアルカン(PFA)、フッ素化エチレンプロピレン(FEP)、エチレンテトラフルオロエチレン(ETFE)、若しくはこれらの任意のコポリマー、又はこれらの任意の組み合わせを含む、請求項14に記載の複合物品。
【請求項14】
前記有機ポリマーが、シリコーンポリマーを含む、請求項14に記載の複合物品。
【請求項15】
前記複合体が、少なくとも25ミクロンかつ5000ミクロン以下の厚さを有するシートである、請求項1に記載の複合物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、有機ポリマーと、高い配向度で有機ポリマー全体に分散された六方晶窒化ホウ素(hBN)粒子を含むセラミック粒子とを含む複合体、及び複合体を作製する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
熱伝導性ポリマー複合材は、過熱を回避するために熱を放散することによって、動作温度を著しく低下させ、デバイスの寿命を延ばすことができるので、電気デバイスの熱管理に関して様々な産業において重要な役割を果たす。熱伝導性ポリマー複合材が重要な役割を果たす典型的な産業としては、家庭用電化製品(例えば、携帯電話、タブレット)、電気通信インフラストラクチャ(例えば、セルタワー)、LED照明、ハイブリッド、及び電気自動車(電力モジュール)、データセンタ(サーバボード、スイッチ、監視モジュール、及び電源)、並びに太陽電池が挙げられる。
【0003】
熱管理に適した材料の多様性及び効率を更に高める必要がある。
【図面の簡単な説明】
【0004】
本開示は、添付の図面を参照することによって、より良く理解され、その多数の特徴及び利点が当業者に明らかにされ得る。
【0005】
【
図1A】
図1Aは、一実施形態による、小板型hBN粒子を示す線図である。
【
図1B】
図1Bは、一実施形態による、面内配向hBN粒子を有する複合体の横断面の側面図を示す線画を含む。
【
図1C】
図1Cは、一実施形態による、面貫通方向に配向したhBN粒子を有する複合スライスの横断面の側面図を示す線画を含む。
【
図2A】
図2Aは、一実施形態による、面内配向hBN粒子を含む複合体のX線スペクトルを示すグラフを含む。
【
図2B】
図2Bは、マーチ・ドーラス法によるrと配向パラメータηとの関係を示すグラフである。
【
図3A】
図3Aは、一実施形態による、複合体に含有されるhBN粒子の粒子分布を示すグラフを含む。
【
図3B】
図3Bは、比較例の複合体に含まれるhBN粒子の粒子分布を示すグラフを含む。
【発明を実施するための形態】
【0006】
本明細書で使用される場合、「備える(comprises)」、「備える(comprising)」、「含む(includes)」、「含む(including)」、「有する(has)」、「有する(having)」という用語、又はそれらの任意の他の変形は、非排他的な包含を網羅することが意図される。例えば、特徴のリストを含むプロセス、方法、物品、又は装置は、必ずしもそれらの特徴のみに限定されず、明示的に列挙されていないか、又はそのようなプロセス、方法、物品、若しくは装置に固有の他の特徴を含み得る。
【0007】
本明細書で使用される場合、明らかに矛盾する記載がない限り、「又は」は、包含的な又はを指し、排他的な又はを指すものではない。例えば、条件A又はBは、以下のいずれか1つによって満たされる:Aが真であり(又は存在し)、Bが偽である(又は存在しない)、Aが偽であり(又は存在せず)、Bが真である(又は存在する)、及び、AとBとの両方が真である(又は存在する)。
【0008】
また、「1つの(a)」又は「1つの(an)」の使用は、本明細書に記載の要素及び構成成分を説明するために用いられる。これは、単に便宜上、及び本発明の範囲の一般的な意味を与えるために行われる。この記載は、1つ又は少なくとも1つを含むように読まれるべきであり、単数はまた、そうでないことを意味することが明らかでない限り、複数も含む。
【0009】
本開示は、有機ポリマーと、有機ポリマー全体にわたって分布した六方晶窒化ホウ素(hBN)粒子を含むセラミック粒子とを含む複合体を含む複合物品であって、hBN粒子の量が、複合体の総体積に基づいて40体積%~90体積%の範囲であり得、セラミック粒子の少なくとも90体積%が、hBN粒子であってもよく、複合体の面内熱伝導率が、少なくとも13.5W/mKであり得る、複合物品に関する。
【0010】
一実施形態では、複合体の面内熱伝導率は、少なくとも14.0W/mK、又は少なくとも14.5W/mK、又は少なくとも15.0W/mK、又は少なくとも15.5W/mK、又は少なくとも16.0W/mK、又は少なくとも16.5W/mK、又は少なくとも17.0W/mK、又は少なくとも17.5W/mK、又は少なくとも18.0W/mK、又は少なくとも18.5W/mK、又は少なくとも19.0W/mK、又は少なくとも19.5W/mK、又は少なくとも20W/mKであり得る。別の態様では、面内熱伝導率は、40W/mK以下、又は35W/mK以下、又は30W/mK以下、又は25W/mK以下であってもよい。
【0011】
本明細書で使用される場合、hBN粒子という用語は、別段の指示がない限り、
図1Aに示されるように、少なくとも5の長さ対厚さの平均アスペクト比(L/T)を有する小板状hBN粒子に関する。複合体に含まれるhBN粒子は、未改質であっても表面改質されていてもよい。本明細書に具体的に記載されていない場合、hBN粒子という用語は、未改質又は表面改質hBN粒子の両方に関する。
【0012】
本明細書で更に使用される場合、「面内」という用語は、複合体のx-y方向に関する。
図1Bは、hBN粒子(12)が有機ポリマー(14)にわたって分布し、hBN粒子(12)が複合体のx-y方向に配向又は整列され得る(これは本明細書では互換的に「面内」と呼ばれる)複合体の横断面(10)を示す。対照的に、
図1Cは、hBN粒子(12)がz方向に整列された複合材スライスの実施形態を示し、本明細書では複合体の「面貫通」方向又は厚さ方向とも交換可能に呼ばれる。
【0013】
一実施形態では、本開示の複合体は、hBNを含むセラミック粒子と有機ポリマーとを含む混合物を調製することと、混合物の層を型又は支持体に適用することと、hBN粒子の整列手順を実行することと、複合体を形成するために有機ポリマーを固化及び/又は硬化させることとによって作製され得る。hBNと有機ポリマーとの混合物は、液体混合物又は粉末混合物であり得る。
【0014】
一態様では、整列手順は、混合物の層の面内方向(x-y方向)に直交する圧力を加えることを含み得る。
【0015】
一実施形態では、hBN粒子は、少なくとも5、又は少なくとも7、又は少なくとも10、又は少なくとも20、又は少なくとも30、又は少なくとも40、又は少なくとも50、又は少なくとも60、又は少なくとも70、又は少なくとも80、又は少なくとも90、又は少なくとも100、又は少なくとも110、又は少なくとも120のhBN粒子の長さ(L)対厚さ(T)の平均アスペクト比を有し得る。ある特定の態様では、アスペクト比は、200以下、又は120以下、又は80以下、又は50以下、又は30以下、又は15以下であってもよい。
【0016】
別の実施形態では、hBN粒子は、少なくとも1ミクロン、又は少なくとも3ミクロン、又は少なくとも5ミクロン、又は少なくとも10ミクロン、又は少なくとも15ミクロン、又は少なくとも20ミクロン、又は少なくとも25ミクロン、又は少なくとも30ミクロンの平均粒径(D50)を有してもよい。更なる態様では、hBN粒子は、100ミクロン以下、又は50ミクロン以下、又は45ミクロン以下、又は40ミクロン以下、又は35ミクロン以下、又は30ミクロン以下、又は25ミクロン以下、又は20ミクロン以下、又は10ミクロン以下、又は5ミクロン以下の平均粒径を有してもよい。
【0017】
ある実施形態では、複合体のhBN粒子は、多峰性粒子分布、例えば、2峰性又は3峰性分布を有し得る。特定の態様では、粒子分布は、2峰性粒子分布(PSD)であり得る。
【0018】
一態様では、hBN粒子の粒径分布は、第1のピーク最大値を有する第1のピーク及び第2のピーク最大値を有する第2のピークを含み得、第1のピーク最大値対第2のピーク最大値の強度比は、少なくとも1.5:1、又は少なくとも2:1、又は少なくとも2.5:1、又は少なくとも3.0:1であり得る。別の態様では、第1のピーク最大値対第2のピーク最大値の強度比は、10:1以下、又は7:1以下、又は5:1以下、又は4:1以下、又は3.5:1以下、又は3.0:1以下であってもよい。
【0019】
別の態様では、hBN粒径分布の第1のピーク最大値と第2のピーク最大値との間の距離は、少なくとも20ミクロン、又は少なくとも25ミクロン、又は少なくとも30ミクロン、又は少なくとも35ミクロンであり得る。更なる態様では、第1のピーク最大値と第2のピーク最大値との間の距離は、70ミクロン以下、又は60ミクロン以下、又は50ミクロン以下、又は40ミクロン以下、又は35ミクロン以下であってもよい。
【0020】
更に別の態様では、第1のピーク最大値は、8ミクロン~13ミクロンの範囲のhBN粒径に対応し得、第2のピーク最大値は、35~50ミクロンの範囲のhBN粒径に対応し得る。
【0021】
別の態様では、hBN粒子の平均粒径(D50)と中央粒径との差は、少なくとも2ミクロン、又は少なくとも3ミクロン、又は少なくとも4ミクロン、又は少なくとも5ミクロン、又は少なくとも6ミクロン、又は少なくとも7ミクロン、又は少なくとも8ミクロン、又は少なくとも9ミクロン、又は少なくとも10ミクロンであり得る。更なる態様では、hBN粒子の平均粒径(D50)と中央粒径との差は、20ミクロン以下、又は15ミクロン以下、又は14ミクロン以下、又は13ミクロン以下、又は12ミクロン以下、又は11ミクロン以下、又は10ミクロン以下であってもよい。
【0022】
特定の態様では、hBN粒子の平均粒径(D50)は9ミクロン~13ミクロンの範囲であり得、中央粒径は15ミクロン~25ミクロンの範囲であり得る。
【0023】
別の態様では、hBN粒子分布の80パーセント分布値(D90-D10)は、少なくとも15ミクロン、又は少なくとも20ミクロン、又は少なくとも25ミクロン、又は少なくとも30ミクロン、又は少なくとも35ミクロン、又は少なくとも40ミクロン、又は少なくとも45ミクロン、又は少なくとも50ミクロンであり得る。別の態様では、hBN粒子分布の80パーセント分布値(D90-D10)は、80ミクロン以下、又は70ミクロン以下、又は60ミクロン以下、又は50ミクロン以下、又は45ミクロン以下、又は40ミクロン以下であり得る。
【0024】
有機ポリマーは、熱可塑性ポリマー又は熱硬化性ポリマーであり得る。
【0025】
特定の態様では、有機ポリマーは、官能基を含む重合性ポリマーであり得る。ある特定の態様では、重合性モノマーの硬化が、圧縮成形後及び/又は圧縮成形中に必要とされる場合がある。
【0026】
重合性ポリマーの非限定的な例は、シリコーンポリマー、又はアクリレートポリマー、又はエポキシポリマーを含み得る。
【0027】
ある特定の態様では、重合性ポリマーは、ビニル基を含むシリコーンポリマーであり得る。非限定的な実施形態では、ビニル基を含むシリコーンポリマーは、架橋剤を用いた架橋によって重合され得る。一態様では、ビニル基を含むシリコーンポリマーの架橋剤に対する重量パーセント比は、0.5~5、又は1~3、又は1~2であり得る。
【0028】
特定の態様では、シリコーンポリマーは、少なくとも10,000g/mol、少なくとも100,000g/mol、少なくとも200,000g/mol、少なくとも400,000g/mol、又は少なくとも700,000g/molの分子量を有し得る。他の特定の態様では、シリコーンポリマーの分子量は、1,000,000g/mol以下、又は800,000g/mol以下、又は700,000g/mol以下、又は500,000g/mol以下、又は300,000g/mol以下、又は100,000g/mol以下であってもよい。
【0029】
別の特定の態様では、有機ポリマーは、熱可塑性ポリマーであり得る。熱可塑性ポリマーの非限定的な例は、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリウレタン、ポリアクリレート、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリイミド、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリアミド、液晶ポリマー(LCP)、ポリアクリロニトリル(PAN)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリエーテルケトンケトン(PEKK)、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリフェニレンオキシド(PPO)、ポリエーテルイミド、熱可塑性エラストマー(TPE、オレフィン系又はスチレン系)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)などのフルオロポリマー、パーフルオロアルコキシアルカン(PFA)、フッ素化エチレンプロピレン(FEP)、若しくはエチレンテトラフルオロエチレン(ETFE)、又はそれらの任意のコポリマー、又はそれらの任意の組み合わせを含み得る。
【0030】
一実施形態では、hBN粒子は、それらを有機ポリマーと組み合わせる前に表面官能化され得る。例えば、hBN粒子の表面官能化は、酸素プラズマ処理、又はシラン表面官能化、又はフッ素表面官能化、又はエポキシ表面官能化、又はアミン表面官能化、又はヒドロキシル表面官能化を含み得る。hBN粒子の表面官能化は、有機ポリマー内のhBN粒子のより高い固体充填量を得るために有利であり得る。特定の態様では、表面官能化の前に、hBN粒子を、OH導入化合物による処理によって剥離及び/又は活性化に供し得る。
【0031】
ある特定の態様では、有機ポリマーはシリコーンであり得、hBN粒子は、シランで、又は酸素プラズマ処理を介して、又はフッ素表面官能化を介して表面官能化され得る。シラン化合物の非限定的な例は、SiH4又はアミノシランを含み得る。フッ素表面官能化の例としては、CF4、又はCHF3、SF6、又はC2F6によるプラズマ処理を含み得る。
【0032】
別の態様では、有機ポリマーはエポキシポリマーであり得、hBN粒子はエポキシ化合物、又はアミン、又はヒドロキシル基で表面官能化されていてもよい。エポキシ化合物を導入する非限定的な例は、グリシジルメタクリレートでのプラズマ処理又はアリルグリシジルエーテルでのプラズマ処理であり得る。アミン官能化の例としては、アリルアミン又は3-(アミノプロピル)トリエトキシシランによるプラズマ処理を含み得る。
【0033】
更なる態様では、有機ポリマーはポリエチレンであり得、hBN粒子はフッ素表面官能化又はシラン官能化に供され得る。
【0034】
更に別の態様では、有機ポリマーは、熱可塑性ポリウレタン(TPU)又はポリブチレンテレフタレート(PBT)であり得、hBN粒子は、エポキシ化合物、アミン、又はヒドロキシル基で官能化され得る。特定の更なる態様では、PBTはまた、酸素プラズマ処理、空気プラズマ処理、熱処理と組み合わせたホウ酸/尿素による処理、又は熱処理と組み合わせたホウ酸/メラミンによる処理によって表面官能化され得る。
【0035】
特定の実施形態では、複合体内に含有されるセラミック粒子の大部分、例えば、セラミック粒子の総体積に基づいて少なくとも90体積%、又は少なくとも92体積%、又は少なくとも94体積%、又は少なくとも96体積%、又は少なくとも98体積%、又は少なくとも99体積%は、hBN粒子であり得る。ある特定の実施形態では、セラミック粒子は、hBN粒子から本質的になることができ、hBN粒子から本質的になるとは、本明細書において、hBN粒子ではないセラミック粒子を0.5体積%以下有することを意味する。
【0036】
複合体内のhBN粒子の配向(本明細書ではhBN粒子の交換可能な整列とも呼ばれる)は、X線回折法を行い、マーチ・ドーラス法に従ってX線スペクトルを分析することによって測定され得る(実施例の詳細な説明を参照)。マーチ・ドーラス配向パラメータηは、複合体内に分散したhBN粒子の整列の程度を特徴付けるための適切な定量的表現であり得ることが見出された。良好な整列は、本開示において、少なくとも50%のマーチ・ドーラス配向パラメータηであると考えられる。特定の態様では、複合体中のhBN粒子のマーチ・ドーラス配向パラメータは、少なくとも52%、又は少なくとも54%、又は少なくとも56%、又は少なくとも58%、又は少なくとも60%であり得る。
【0037】
実施例において更に実証されるように、驚くべきことに、複合体に含有されるhBN粒子の特定のサイズ変動が、複合体の熱伝導率の大幅な増加に寄与し得ることが見出された。
【0038】
多くの異なる態様及び実施形態が可能である。それらの態様及び実施形態のいくつかを本明細書に記載する。本明細書を読んだ後、当業者は、それらの態様及び実施形態が例解的であるに過ぎず、本発明の範囲を限定するものではないことを理解するであろう。実施形態は、以下に列挙される実施形態のうちのいずれか1つ以上に従い得る。
【0039】
実施形態
実施形態1.有機ポリマーと、有機ポリマー全体にわたって分布した六方晶窒化ホウ素(hBN)粒子を含むセラミック粒子とを含む複合体であって、hBN粒子の量が、複合体の総体積に基づいて40体積%~90体積%の範囲であり、
セラミック粒子の少なくとも90体積%が、hBN粒子であり、
複合体が、少なくとも13.5W/mKの面内熱伝導率を有する、複合物品。
【0040】
実施形態2.複合体内のhBN粒子の面内マーチ・ドーラス(March-Dollase)配向パラメータηが、少なくとも50%である、実施形態1に記載の複合物品。
【0041】
実施形態3.マーチ・ドーラス(March-Dollase)配向パラメータηが、少なくとも52%、又は少なくとも54%、又は少なくとも56%、又は少なくとも58%、又は少なくとも60%である、実施形態1又は2に記載の複合物品。
【0042】
実施形態4.複合体の面内熱伝導率が、少なくとも14.0W/mK、又は少なくとも14.5W/mK、又は少なくとも15.0W/mK、又は少なくとも15.5W/mK、又は少なくとも16.0W/mK、又は少なくとも16.5W/mK、又は少なくとも17.0W/mK、又は少なくとも17.5W/mK、又は少なくとも18.0W/mK、又は少なくとも18.5W/mK、又は少なくとも19.0W/mK、又は少なくとも19.5W/mK、又は少なくとも20W/mKである、実施形態1~3のいずれか1つに記載の複合物品。
【0043】
実施形態5.複合体の面内熱伝導率が、40W/mK以下、又は35W/mK以下、又は30W/mK以下、又は25W/mK以下である、実施形態1~4のいずれか1つに記載の複合物品。
【0044】
実施形態6.hBN粒子の長さ対厚さの平均アスペクト比が、少なくとも5、又は少なくとも10、又は少なくとも20、又は少なくとも30、又は少なくとも40、又は少なくとも50、又は少なくとも60、又は少なくとも70、又は少なくとも80、又は少なくとも90、又は少なくとも100、又は少なくとも110、又は少なくとも120である、先行する実施形態のいずれか1つに記載の複合物品。
【0045】
実施形態7.hBN粒子の平均アスペクト比が、200以下、又は120以下、又は80以下、又は50以下、又は30以下、又は15以下である、先行する実施形態のいずれか1つに記載の複合物品。
【0046】
実施形態8.hBN粒子が、少なくとも1ミクロン、又は少なくとも3ミクロン、又は少なくとも5ミクロン、又は少なくとも10ミクロン、又は少なくとも15ミクロン、又は少なくとも20ミクロン、又は少なくとも25ミクロン、又は少なくとも30ミクロンの平均粒径(D50)を有する、先行する実施形態のいずれか1つに記載の複合物品。
【0047】
実施形態9.hBN粒子が、100ミクロン以下、又は50ミクロン以下、又は45ミクロン以下、又は40ミクロン以下、又は35ミクロン以下、又は30ミクロン以下、又は25ミクロン以下、又は20ミクロン以下、又は10ミクロン以下、又は5ミクロン以下の平均粒径を有する、先行する実施形態のいずれか1つに記載の複合物品。
【0048】
実施形態10.hBN粒子が、多峰性粒子分布を有する、先行する実施形態のいずれか1つに記載の複合物品。
【0049】
実施形態11.hBN粒子が、2峰性粒子分布を含む、実施形態10に記載の複合物品。
【0050】
実施形態12.hBN粒子の粒径分布が、第1のピーク最大値を有する第1のピーク及び第2のピーク最大値を有する第2のピークを含み、第1のピーク最大値対第2のピーク最大値の強度比が、少なくとも1.5:1、又は少なくとも2:1、又は少なくとも2.5:1、又は少なくとも3.0:1である、実施形態10~11のいずれか1つに記載の複合物品。
【0051】
実施形態13.hBN粒子の粒径分布が、第1のピーク最大値を有する第1のピーク及び第2のピーク最大値を有する第2のピークを含み、第1のピーク最大値対第2のピーク最大値の強度比が、10:1以下、又は7:1以下、又は5:1以下、又は4:1以下、又は3.5:1以下、又は3.0:1以下である、実施形態10~12のいずれか1つに記載の複合物品。
【0052】
実施形態14.第1のピーク最大値と第2のピーク最大値との間の距離が、少なくとも20ミクロン、又は少なくとも25ミクロン、又は少なくとも30ミクロン、又は少なくとも35ミクロンである、実施形態12又は13に記載の複合物品。
【0053】
実施形態15.第1のピーク最大値と第2のピーク最大値との間の距離が、70ミクロン以下、又は60ミクロン以下、又は60ミクロン以下、又は50ミクロン以下、又は40ミクロン以下、又は35ミクロン以下である、実施形態12~14のいずれか1つに記載の複合物品。
【0054】
実施形態16.第1のピーク最大値が、8ミクロン~13ミクロンの範囲の粒径に対応し、第2のピーク最大値が、35~50ミクロンの範囲の粒径に対応する、実施形態12~15のいずれか1つに記載の複合物品。
【0055】
実施形態17.hBN粒子の平均粒径(D50)と中央粒径との差が、少なくとも2ミクロン、又は少なくとも3ミクロン、又は少なくとも4ミクロン、又は少なくとも5ミクロン、又は少なくとも6ミクロン、又は少なくとも7ミクロン、又は少なくとも8ミクロン、又は少なくとも9ミクロン、又は少なくとも10ミクロンである、実施形態10~16のいずれか1つに記載の複合物品。
【0056】
実施形態18.hBN粒子の平均粒径(D50)と中央粒径との差が、20ミクロン以下、又は15ミクロン以下、又は14ミクロン以下、又は13ミクロン以下、又は12ミクロン以下、又は11ミクロン以下、又は10ミクロン以下である、実施形態10~17のいずれか1つに記載の複合物品又は方法。
【0057】
実施形態19.hBN粒子の80パーセント分布値(D90-D10)が、少なくとも15ミクロン、又は少なくとも20ミクロン、又は少なくとも25ミクロン、又は少なくとも30ミクロン、又は少なくとも35ミクロン、又は少なくとも40ミクロン、又は少なくとも45ミクロン、又は少なくとも50ミクロンである、実施形態10~18のいずれか1つに記載の複合物品。
【0058】
実施形態20.hBN粒子の80パーセント分布値(D90-D10)が、80ミクロン以下、又は70ミクロン以下、又は60ミクロン以下、又は50ミクロン以下、又は45ミクロン以下、又は40ミクロン以下であり得る、実施形態10~19のいずれか1つに記載の複合物品。
【0059】
実施形態21.hBN粒子の粒径のD90値が、少なくとも30ミクロン、又は少なくとも35ミクロン、又は少なくとも40ミクロン、又は少なくとも45ミクロン、又は少なくとも50ミクロン、又は少なくとも55ミクロン、又は少なくとも60ミクロンである、実施形態10~20のいずれか1つに記載の複合物品。
【0060】
実施形態22.hBN粒子の粒径のD90値が、120ミクロン以下、又は110ミクロン以下、又は90ミクロン以下、又は80ミクロン以下、又は70ミクロン以下、又は60ミクロン以下、又は55ミクロン以下である、実施形態10~20のいずれか1つに記載の複合物品。
【0061】
実施形態23.hBN粒子の粒径のD50値が、少なくとも6ミクロン、又は少なくとも7ミクロン、又は少なくとも8ミクロン、又は少なくとも9ミクロン、又は少なくとも10ミクロン、又は少なくとも11ミクロン、又は少なくとも12ミクロン、又は少なくとも13ミクロン、又は少なくとも15ミクロン、又は少なくとも20ミクロンである、実施形態10~22のいずれか1つに記載の複合物品。
【0062】
実施形態24.hBN粒子の粒径のD50値が、40ミクロン以下、又は35ミクロン以下、又は30ミクロン以下、又は25ミクロン以下、又は20ミクロン以下、又は15ミクロン以下である、実施形態10~22のいずれか1つに記載の複合物品。
【0063】
実施形態25.hBN粒子の粒径のD10値が、少なくとも1ミクロン、又は少なくとも2ミクロン、又は少なくとも30ミクロン、又は少なくとも4ミクロン、又は少なくとも5ミクロン、又は少なくとも6ミクロンである、実施形態10~24のいずれか1つに記載の複合物品。
【0064】
実施形態26.hBN粒子の粒径のD10値が、12ミクロン以下、又は10ミクロン以下、又は8ミクロン以下、又は6ミクロン以下、又は4ミクロン以下、又は2ミクロン以下である、実施形態10~24のいずれか1つに記載の複合物品。
【0065】
実施形態27.hBN粒子の平均粒径(D50)が9ミクロン~13ミクロンの範囲であり、中央粒径が15ミクロン~25ミクロンの範囲である、実施形態10~26のいずれか1つに記載の組成物。
【0066】
実施形態28.前記複合体の電気体積抵抗率が、少なくとも1.0E+12、又は少なくとも1.0E+13、又は少なくとも1.0E+14である、先行する実施形態のいずれか1つに記載の複合物品。
【0067】
実施形態29.複合体の有機ポリマーが、熱可塑性ポリマー又は熱硬化性ポリマーを含む、先行する実施形態のいずれか1つに記載の複合物品。
【0068】
実施形態30.有機ポリマーが、シリコーンポリマー、アクリレートポリマー、ポリウレタン、エポキシドポリマー、ポリアミド、ポリイミド、液晶ポリマー(LCP)、フルオロポリマー、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリアミド、液晶ポリマー(LCP)、ポリアクリロニトリル(PAN)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリエーテルケトンケトン(PEKK)、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリフェニレンオキシド(PPO)、ポリエーテルイミド、熱可塑性エラストマー(TPE、オレフィン系又はスチレン系)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、パーフルオロアルコキシアルカン(PFA)、フッ素化エチレンプロピレン(FEP)、エチレンテトラフルオロエチレン(ETFE)、若しくはこれらの任意のコポリマー、又はこれらの任意の組み合わせを含む、実施形態29に記載の複合物品。
【0069】
実施形態31.有機ポリマーが、シリコーンポリマーを含む、先行する実施形態のいずれか1つに記載の複合物品。
【0070】
実施形態32.有機ポリマーが、シリコーンポリマーから本質的になる、実施形態24に記載の複合物品。
【0071】
実施形態33.シリコーンポリマーが、少なくとも10,000g/mol、少なくとも100,000g/mol、少なくとも200,000g/mol、少なくとも400,000g/mol、又は少なくとも700,000g/molの分子量を有する、実施形態24又は25のいずれか1つに記載の複合物品。
【0072】
実施形態34.シリコーンポリマーが、1,000,000g/mol以下、又は800,000g/mol以下、又は700,000g/mol以下、又は500,000g/mol以下、又は300,000g/mol以下、又は100,000g/mol以下の分子量を有する、実施形態24~26のいずれか1つに記載の複合物品。
【0073】
実施形態35.前記複合体が、界面活性剤を更に含む、先行する実施形態のいずれか1つに記載の複合物品。
【0074】
実施形態36.界面活性剤の量が、複合体の総重量に基づいて、少なくとも0.1重量%、少なくとも0.5重量%、又は少なくとも1重量%、又は少なくとも2重量%、又は少なくとも3重量%、又は少なくとも4重量%である、実施形態35に記載の複合物品。
【0075】
実施形態37.界面活性剤の量が、複合体の総重量に基づいて、7重量%以下、又は5重量%以下、又は3重量%以下、又は2重量%以下である、実施形態35に記載の複合物品。
【0076】
実施形態38.界面活性剤が、ポリシロキサンである、実施形態35~37のいずれか1つに記載の複合物品。
【0077】
実施形態39.複合体のセラミック粒子が、セラミック粒子の総体積に基づいて92体積%、又は少なくとも94体積%、少なくとも96体積%、若しくは少なくとも98体積%、若しくは少なくとも99体積%のhBN粒子を含む、先行する実施形態のいずれか1つに記載の複合物品。
【0078】
実施形態40.複合体のセラミック粒子が、hBN粒子から本質的になる、先行する実施形態のいずれか1つに記載の複合物品。
【0079】
実施形態41.hBN粒子の表面が、官能化化合物を含む、先行する実施形態のいずれか1つに記載の複合物品。
【0080】
実施形態42.官能化化合物が、シラン化合物、又はエポキシ化合物、又はアミン化合物、又はフッ素化合物、又はヒドロキシル基を含む、実施形態41に記載の複合物品。
【0081】
実施形態43.複合体が、少なくとも25ミクロン、又は少なくとも50ミクロン、又は少なくとも100ミクロン、又は少なくとも300ミクロン、又は少なくとも500ミクロン、又は少なくとも1000ミクロン、又は少なくとも5000ミクロンの厚さを有するシートである、先行する実施形態のいずれか1つに記載の複合物品。
【0082】
実施形態44.複合体が、10000ミクロン以下、又は5000ミクロン以下、又は1000ミクロン以下の厚さを有するシートである、先行する実施形態のいずれか1つに記載の複合物品。
【0083】
実施形態45.複合物品を形成する方法であって、
セラミック粒子と有機ポリマーとの混合物を調製することであって、セラミック粒子が、セラミック粒子の総体積に基づいて少なくとも90体積%のhBN粒子を含み、hBN粒子の量が、混合物の総体積に基づいて40体積%~90体積%の範囲である、ことと、
混合物の層を型又は支持体に適用することと、
hBN粒子の整列手順を行うことと、
複合体を形成するために有機ポリマーを固化及び/又は硬化させることと、
複合体の面内熱伝導率が、少なくとも13.5W/mKである、方法。
【0084】
実施形態46.整列手順が、混合物の層に圧力を加えることを含む、実施形態43に記載の方法。
【0085】
実施形態47.圧力が、固化及び/又は硬化後の複合体の面内マーチ・ドーラス配向パラメータの程度が少なくとも50%であるように調整される、実施形態44に記載の方法。
【0086】
実施形態48.圧力が、少なくとも2MPa、又は少なくとも100MPa、又は少なくとも500MPaである、実施形態44又は45に記載の方法。
【0087】
実施形態49.有機ポリマーが、官能基を含む重合性ポリマーである、実施形態43~46のいずれか1つに記載の方法。
【0088】
実施形態50.重合性ポリマーが、シリコーンポリマー、又はアクリレートポリマー、又はエポキシポリマーを含む、実施形態47に記載の方法。
【0089】
実施形態51.重合性ポリマーが、ビニル基を含むシリコーンポリマーである、実施形態48に記載の方法。
【0090】
実施形態52.混合物が、分散液を本質的に含まない、実施形態43~49のいずれか1つに記載の方法。
【0091】
実施形態53.混合物が、乾燥粉末混合物である、実施形態43に記載の方法。
【0092】
実施形態54.混合物を調製する前に、hBN粒子を表面官能化することを更に含む、実施形態43~51のいずれか1つに記載の方法。
【0093】
実施形態55.hBN粒子の表面官能化が、酸素プラズマ処理、又はシラン表面官能化、又はフッ素表面官能化、又はエポキシ表面官能化、又はアミン表面官能化、又はヒドロキシル表面官能化を含む、実施形態52の方法。
【0094】
実施形態56.表面官能基化が、シラン表面官能基化を含み、有機ポリマーが、シリコーンポリマーを含む、実施形態53に記載の方法。
【実施例】
【0095】
以下の非限定的な実施例は、本発明を例示する。
【0096】
実施例1
hBN-シリコーン複合体の調製
hBN粒子試料を、シリコーンゴム(AB specialty Andigum H110-0)及び架橋剤の2,4-ジクロロベンゾイルペルオキシド(ポリジメチルシロキサン中50%;Gelest)と混合することによって混合物を調製した。架橋剤対シリコーンの重量%比は、約1~1.5であった。混合物は、2重量%のSiltechシリコーン界面活性剤及び3重量%のEvonik VS10000を更に含有した。分散液の混合は、ブラベンダー混合物中、室温で約40分間行った。実施例1の全ての実験において、hBNの量は、液体混合物の総体積に基づいて64体積%であった。
【0097】
実施された一連の実験において、hBN粒子は、異なる平均(D50)粒径を有するhBN粉末の組み合わせを使用することによって変化した。以下のhBN粉末:5.5ミクロンのD50サイズを有するhBN-1、16ミクロンのD50サイズを有するhBN-2、及び30ミクロンのD50サイズを有するhBN-3を使用した。これらも表1にまとめる。
【表1】
【0098】
hBN含有ポリマー混合物を調製した後、2枚の金属板の間に化合物を挟み、次いで2~110MPaの圧力で20分間、約0.35mmの所定の厚さにプレスすることによって、複合体を作製した。具体的には、2枚の12インチ×12インチの金属板の間で、60,000ポンドの重量をかけてプレスを行った。所望のシート厚さを有するスペーサとしてシムを含有する2枚の金属板の間で混合物をプレスすることによって、所定の厚さを得た。冷間プレス後、プレスされたシート(シート)を、シリコーンポリマーを硬化させるために120℃のオーブン中で4分間硬化させた。
【0099】
表2にまとめたデータから、hBNの総量が68体積%であり、hBN1、hBN2、及びhBN3の粉末の組み合わせでは、18.3W/mKの高い熱伝導率が達成されたことが分かる。対照的に、hBN1とhBN2との組み合わせ(比較試料C1)、又は粉末hBN1のみ(比較試料C2)を使用すると、測定された熱伝導率ははるかに低かった。理論に束縛されるものではないが、試料E1のhBN粉末の組み合わせの驚くべき利点は、形成された複合体内のhBN粒子の最適化された整列及び改善された充填密度に関連し得る。
【0100】
hBN1/hBN2/hBN3の1:1:1混合物についての粒径分布(PSD)測定のグラフを
図3Aに示す。PSDは2峰性分布であることが分かる。第1のピーク最大値は10.1ミクロンであり、これは11.5ミクロンのD50粒子サイズに非常に近いが、第2のピークは更に離れて44.9ミクロンに位置する。第1のピークと第2のピークとの強度比は、2.98~1.0である。
【0101】
対照的に、比較試料C1のPSD(
図3Bを参照)は、単峰性分布を示し、D50値及びD中央値は互いに非常に近い(1.3ミクロン)。
【表2】
【0102】
実施例2
液体混合物中のhBNの総量を変化させる以外は、試料E1について実施例1に記載したように実験を行う。総hBN量は、45体積%(試料E2)、55体積%(試料E3)、及び70体積%(試料E5)である。熱伝導率が測定されており、15W/mKより大きいと予想される。
【0103】
実施例3
有機ポリマーをTPU(試料E5)及びBMP(試料E6)に変更した以外は、試料E1について実施例1に記載したように実験を行う。熱伝導率が測定されており、15W/mKより大きいと予想される。
【0104】
実施例4
試料E1について実施例1で得られた複数の複合シートを、硬化前にシートの多層スタックに加える。スタックは、圧力を加えることによって圧縮処理され、その後、シリコーンポリマーの硬化を行うために熱処理される。
【0105】
プレスされ硬化された多層積層体から、厚さ0.5mmの複合材スライスをダイヤモンドワイヤで切断する。複合材スライスは、熱伝導率についてその厚さ方向(z)で分析される。複合材スライスの厚さ方向(z方向、面貫通方向とも呼ばれる)全体にわたる熱伝導率が測定されており、試料E1の多層複合体の面内熱伝導率の少なくとも90%であると予想される。面貫通方向に配向したhBN粒子(14)を有する複合材スライスの図を
図1Cに示す。
【0106】
熱伝導率の測定
熱伝導率は、過渡平面光源デバイス(TPS 2500 S、Hot Disk Instruments)を使用して測定した。機器及び測定は、試験材料の2つの試料の間に温度センサを配置し、試験試料の表面に熱パルスを導入し、温度変化を測定し、それに基づいて熱伝導率を計算することによって設計される。温度センサは、Paton-insulated Hot Disk(登録商標)センサモデル5501(半径6.4mm)であった。熱パルスを60~150mWの範囲で3~15秒間変化させて、導電率値がパルスパラメータとは無関係に一定のままであることを確実にした。測定は、Hot Disk(登録商標)からのHot Disk Thermal Constants Analyser Instruction Manual(2015-04-15)に従って行った。面内熱伝導率の測定にはスラブモジュールを使用し、面貫通熱伝導率の測定には異方性法を適用した。
【0107】
マーチ・ドーラス配向パラメータηの測定
X線回折分析を行って、複合体内のhBN粒子の配向(本明細書では整列とも呼ばれる)の程度を判定した。面内配向したhBN小板の場合、対象となる主面は、表面に平行な面内方向((002)面など)であった。最初に、2D XRDスペクトルを、10°~80°の範囲の角度位置で工程スキャンモードで集束Cu Kα線(λ=1.5418Å)を用いてBruker D8回折計で試料のスポット回折後に得た。その後、1次元(1D)XRDスペクトルを、Bruker製のEVAソフトウェアの内蔵機能を使用して2Dスペクトルの積分によって得た。リートベルト(Rietveld)ピークフィッティング法を用いて、配向hBNパターンの(002)ピーク強度を非配向hBNデータベースパターンと比較して、配向の定量化可能な測定値を得た。(002)ピークを示すXRDスペクトルを
図2Aに示す。より多くの(002)hBN面が表面に平行に整列するにつれて、(002)実験ピークの相対強度は、データベースピークと比較して上昇する。
【0108】
Bruker製のTopas定量ソフトウェアを使用して、XRDパターンのピークフィッティングを行った。Topasソフトウェアは、マーチ・ドーラス関数W(α)を使用してマーチ・ドーラスパラメータを決定するための組み込み改良機能を有する。以下の式(1)を参照されたい。
【数1】
式中、W(α)は好ましい方向に配向された結晶子の割合であり、αは結晶子面(hkl)法線と好ましい配向方向との間の角度であり、rはマーチ・ドーラスパラメータである。
【0109】
マーチ・ドーラスパラメータrの関数としての優先配向度η(r)は、以下の式(2)に従って計算され得る。
【数2】
【0110】
図2Bに示すグラフは、マーチ・ドーラスパラメータrと、本明細書では「マーチ・ドーラス配向パラメータη」とも呼ばれる優先配向度η(r)との間の関係を示す。グラフ中の実線は、実際に測定された曲線を示し、破線は、曲線を簡略化された線形傾向線に変換したものである。
【0111】
電気体積抵抗率の測定
試料の電気抵抗率をASTM D257に従って測定した。
【0112】
hBN粒子の粒径分布の測定
hBN粒子の粒径分布は、Horiba製のLaser Scattering Particle Size Distribution Analyzer LA-950を使用して、レーザー散乱によって測定した。中心サイズ(D50)及び平均サイズという表現は、HORIBAマニュアル定義に従って使用される。
【0113】
前述の明細書では、特定の実施形態を参照して概念を記載してきた。しかしながら、当業者であれば、以下の特許請求の範囲に掲げる本発明の範囲から逸脱することなく、様々な修正及び変更を行うことができることを理解する。そのため、明細書及び図面は、限定的な意味ではなく、例解的な意味で考慮されるべきであり、全てのそのような修正は、本発明の範囲内に含まれることが意図される。
【手続補正書】
【提出日】2024-05-01
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
有機ポリマーと、前記有機ポリマー全体に分布した六方晶窒化ホウ素(hBN)粒子を含むセラミック粒子とを含む複合体を含む複合物品であって、
前記hBN粒子の量が、前記複合体の総体積に基づいて40体積%~90体積%の範囲であり、
前記セラミック粒子の少なくとも90体積%が、hBN粒子であり、
前記複合体が、少なくとも13.5W/mKの面内熱伝導率を有する、複合物品。
【請求項2】
前記複合体内の前記hBN粒子の面内マーチ・ドーラス(March-Dollase)配向パラメータηが、少なくとも50%である、請求項1に記載の複合物品。
【請求項3】
前記複合体の面内熱伝導率が、少なくとも16.0W/mKである、請求項1に記載の複合物品。
【請求項4】
前記hBN粒子の長さ対厚さの平均アスペクト比が、少なくとも5である、請求項1に記載の複合物品。
【請求項5】
前記hBN粒子が、少なくとも1ミクロンかつ100ミクロン以下の平均粒径(D50)を有する、請求項1に記載の複合物品。
【請求項6】
前記hBN粒子が、多峰性粒子分布を含む、請求項5に記載の複合物品。
【請求項7】
前記hBN粒子の粒径分布が、第1のピーク最大値を有する第1のピーク及び第2のピーク最大値を有する第2のピークを含み、前記第1のピーク最大値対前記第2のピーク最大値の強度比が、少なくとも2:1かつ10:1以下である、請求項6に記載の複合物品。
【請求項8】
前記第1のピーク最大値と前記第2のピーク最大値との間の距離が、少なくとも20ミクロンかつ70ミクロン以下である、請求項7に記載の複合物品。
【請求項9】
前記第1のピーク最大値が、8ミクロン~13ミクロンの範囲の粒径に対応し、前記第2のピーク最大値が、35~50ミクロンの範囲の粒径に対応する、請求項7に記載の複合物品。
【請求項10】
前記hBN粒子の前記平均粒径(D50)と中央粒径との差が少なくとも5ミクロンである、請求項5に記載の複合物品。
【請求項11】
前記複合体の電気体積抵抗率が、少なくとも1.0E+12、又は少なくとも1.0E+13、又は少なくとも1.0E+14である、請求項1に記載の複合物品。
【請求項12】
前記複合体の前記有機ポリマーが、熱可塑性ポリマー又は熱硬化性ポリマーを含む、請求項1に記載の複合物品。
【請求項13】
前記有機ポリマーが、シリコーンポリマー、アクリレートポリマー、ポリウレタン、エポキシドポリマー、ポリアミド、ポリイミド、液晶ポリマー(LCP)、フルオロポリマー、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリアミド、液晶ポリマー(LCP)、ポリアクリロニトリル(PAN)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリエーテルケトンケトン(PEKK)、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリフェニレンオキシド(PPO)、ポリエーテルイミド、熱可塑性エラストマー(TPE、オレフィン系又はスチレン系)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、パーフルオロアルコキシアルカン(PFA)、フッ素化エチレンプロピレン(FEP)、エチレンテトラフルオロエチレン(ETFE)、若しくはこれらの任意のコポリマー、又はこれらの任意の組み合わせを含む、請求項12に記載の複合物品。
【請求項14】
前記有機ポリマーが、シリコーンポリマーを含む、請求項13に記載の複合物品。
【請求項15】
前記複合体が、少なくとも25ミクロンかつ5000ミクロン以下の厚さを有するシートである、請求項1に記載の複合物品。
【国際調査報告】