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  • 特表-芳香族ニトロ化合物の接触水素化 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-10-22
(54)【発明の名称】芳香族ニトロ化合物の接触水素化
(51)【国際特許分類】
   C07D 265/30 20060101AFI20241015BHJP
   C07D 413/12 20060101ALI20241015BHJP
   A61K 31/5377 20060101ALI20241015BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20241015BHJP
【FI】
C07D265/30
C07D413/12
A61K31/5377
A61P43/00 111
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024526657
(86)(22)【出願日】2022-11-07
(85)【翻訳文提出日】2024-05-02
(86)【国際出願番号】 EP2022080899
(87)【国際公開番号】W WO2023079128
(87)【国際公開日】2023-05-11
(31)【優先権主張番号】21206827.4
(32)【優先日】2021-11-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】591003013
【氏名又は名称】エフ. ホフマン-ラ ロシュ アーゲー
【氏名又は名称原語表記】F. HOFFMANN-LA ROCHE AKTIENGESELLSCHAFT
(74)【代理人】
【識別番号】110001508
【氏名又は名称】弁理士法人 津国
(72)【発明者】
【氏名】トサッティ,パオロ
【テーマコード(参考)】
4C086
【Fターム(参考)】
4C086AA04
4C086BC73
4C086GA07
4C086GA12
4C086MA01
4C086MA04
4C086NA20
4C086ZC41
(57)【要約】
本発明は、アニリン2(式中、PGは、水素またはアミノ保護基を表す)を製造するための方法であって、

前記アニリン2の大規模製造に適している、方法を提供する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アニリン2(式中、PGは、水素またはBoc(tert-ブトキシカルボニル)、ベンジル、4-メトキシベンジル、ベンズヒドリル、Fmoc(フルオレニルメトキシカルボニル)、Cbz(ベンジルオキシカルボニル)、Moz(p-メトキシベンジルカルボニル)、Troc(2,2,2-トリクロロエトキシカルボニル)、Teoc(2-(トリメチルシリル)エトキシカルボニル)、Adoc(アダマントキシカルボニル)、ホルミル、アセチル、およびシクロブトキシカルボニルから選択されるアミノ保護基を表す)を製造するための方法であって、
【化1】

ニトロアレーン1(式中、PGは、Boc(tert-ブトキシカルボニル)、ベンジル、4-メトキシベンジル、ベンズヒドリル、Fmoc(フルオレニルメトキシカルボニル)、Cbz(ベンジルオキシカルボニル)、Moz(p-メトキシベンジルカルボニル)、Troc(2,2,2-トリクロロエトキシカルボニル)、Teoc(2-(トリメチルシリル)エトキシカルボニル)、Adoc(アダマントキシカルボニル)、ホルミル、アセチル、およびシクロブトキシカルボニルから選択されるアミノ保護基を表す)を水素と
【化2】

(i)遷移金属触媒の存在下;
(ii)非プロトン性溶媒中で
反応させて、前記アニリン2を形成することを含み、前記非プロトン性溶媒が、前記非プロトン性溶媒に対して0.01% wt/wt~0.1% wt/wtの水を含有する、方法。
【請求項2】
前記アミノ保護基がBoc(t-ブトキシカルボニル)である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記ニトロアレーン1がニトロアレーン1aであり、前記アニリン2がアニリン2aである、請求項1または2に記載の方法。
【化3】
【請求項4】
前記ニトロアレーン1がニトロアレーン1bであり、前記アニリン2がアニリン2bである、請求項1または2に記載の方法。
【化4】
【請求項5】
前記遷移金属触媒がPt、Pd、Pt-VおよびNiから選択され、前記Pt、Pd、Pt-VおよびNiの各々が固体担体上にあり、好ましくは前記遷移金属触媒がPtO、Pd/C、Pt-V/C、Pt/CおよびラネーNiから選択される、請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記遷移金属触媒がPd/Cである、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記Pd/Cが、木炭に対して5% wt/wtのパラジウム(5% Pd/C)を含有する、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
触媒担持量が、ニトロアレーン1に対して0.1% wt/wt~1% wt/wtである、請求項1から7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記触媒担持量が、ニトロアレーン1に対して0.4% wt/wt~0.6% wt/wt、好ましくは0.5% wt/wt、より好ましくは0.55% wt/wtである、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記非プロトン性溶媒がエーテルである、請求項1から9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記エーテルがtert-ブチルメチルエーテル(TBME)である、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記非プロトン性溶媒が、前記非プロトン性溶媒に対して0.05% wt/wt~0.5% wt/wtの水を含有する、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記微量の水が、前記非プロトン性溶媒に対して0.25% wt/wtである、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
高温で行われる、請求項1から13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記高温が35℃~反応混合物の沸点までである、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記高温が40℃~60℃である、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
高水素圧力で行われる、請求項1から16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
前記高水素圧力が1 barg~10 bargである、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記高水素圧力が3 bargである、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
請求項1から19のいずれか一項に記載の方法に従って製造される場合のアニリン2(式中、PGは、水素またはアミノ保護基を表す)。
【化5】
【請求項21】
5-エチル-4-メチル-N-[4-[(2S)モルホリン-2-イル]フェニル]-1H-ピラゾール-3-カルボキサミド(式IV)、またはその薬学的に許容され得る塩
【化6】
を製造するための方法であって、
請求項1から19のいずれか一項に記載の方法を含む、方法。
【請求項22】
5-エチル-4-メチル-N-[4-[(2S)モルホリン-2-イル]フェニル]-1H-ピラゾール-3-カルボキサミド(式IV)
【化7】
またはその薬学的に許容され得る塩を製造するための、請求項1から19のいずれか一項に記載の方法の使用。
【請求項23】
本明細書において先に記載されるとおりの発明。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アニリン2
【化1】

(式中、PGは、水素またはアミノ保護基を表す)を製造する新規な方法に関する。本発明による方法は、GMP条件下でのアニリン2の大規模製造に特に適している。
【背景技術】
【0002】
アニリン2は、TAAR1の部分的アゴニストであるラルミタロント(式IV)の合成において重要な中間体である(PCT出願国際公開第2017157873号パンフレット)。
【化2】
【0003】
マーケティングプロダクトの場合、医薬品を大量かつ医薬品および医薬部外品の製造管理および品質管理の基準(「GMP」)に従って製造する必要がある。したがって、高収率で安価で安全で再現性のある合成が最も重要である。
【0004】
国際公開第2015086495号パンフレットは、プロトン性溶媒中でのニトロアレーン1の接触水素化を伴う、アニリン2を製造するための方法を開示している。
【化3】
【0005】
しかしながら、国際公開第2015086495号に記載されているように、水素化のためにプロトン性溶媒を使用すると、工業規模でのその後の後処理および単離手順が妨げられることがここで分かった。すなわち、工業規模では、水素化工程の後に前記アニリン2を結晶化し、フィルタにかけることが好ましい。アニリン2の結晶化には、TBMEとヘプタンとの混合物などの非プロトン性溶媒系が必要であることが分かっている。したがって、ニトロアレーン1の水素化がメタノールなどのプロトン性溶媒中で行われる場合、その後の結晶化工程のために溶媒交換が必要である。溶媒交換は、一般に、他の欠点の中でもとりわけ、時間およびエネルギーを消費する(大量の溶媒の蒸留)。
【0006】
さらに、ニトロアレーン1の水素化におけるプロトン性溶媒の使用は、種々の微量の副生成物を生成することが見出されており、これはGMP条件下で作業する場合に非常に問題となる。したがって、例えば、エタノールを(S)-tert-ブチル2-(4-ニトロフェニル)モルホリン-4-カルボキシレート(II)
【化4】
の接触水素化のための溶媒として使用した場合、
とりわけ、(S)-tert-ブチル2-(4-エチルアミノ)モルホリン-4-カルボキシレート(III)
【化5】
が副生成物として観察された。
【0007】
したがって、アニリン2を製造するための新たな方法が必要とされている。
【発明の概要】
【0008】
工業規模で、ニトロアレーン1を非プロトン性溶媒中で水素化して、得られたアニリン2の後処理手順を非常に容易にすることができることがここで分かった。さらに、水素化は、非プロトン性溶媒中で行われる場合、驚くべきことに、いかなる副生成物の形成ももたらさない。
【0009】
したがって、第1の態様では、本発明は、アニリン2(式中、PGは、アミノ保護基を表す)を製造するための方法であって、
【化6】

ニトロアレーン1(式中、PGは、アミノ保護基を表す)を水素と
【化7】

(i)遷移金属触媒の存在下;
(ii)非プロトン性溶媒中で
反応させて、前記アニリン2を形成することを含む方法を提供する。
【0010】
さらなる態様では、本発明は、本明細書に記載される本発明の方法に従って製造される場合のアニリン2(式中、PGは、アミノ保護基を表す)を提供する。
【化8】
【0011】
さらなる態様では、本発明は、5-エチル-4-メチル-N-[4-[(2S)モルホリン-2-イル]フェニル]-1H-ピラゾール-3-カルボキサミド(式IV)またはその薬学的に許容され得る塩を製造するための方法であって、
【化9】
本明細書に記載される本発明の方法を含む、方法を提供する。
【0012】
さらなる態様では、本発明は、5-エチル-4-メチル-N-[4-[(2S)モルホリン-2-イル]フェニル]-1H-ピラゾール-3-カルボキサミド(式IV)またはその薬学的に許容され得る塩を製造するための、本発明による方法の使用を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本明細書の実施例1および2として記載される2つの実験について、8時間にわたる(S)-tert-ブチル2-(4-ニトロフェニル)モルホリン-4-カルボキシレートの(S)-tert-ブチル2-(4-アミノフェニル)モルホリン-4-カルボキシレートへの転化率を時間の関数として示す図。転化率は、反応の過程で消費された水素の量として決定される。水添加剤を使用しなかった場合、図に示されるように、温度を20℃上昇させて、約6時間以内での完全な変換を達成した。
【発明を実施するための形態】
【0014】
定義
本発明の特定の態様、実施形態または実施例に関連して記載される特徴、整数、特色、化合物、化学的部分または基は、それらと両立しない場合を除き、本明細書に記載の任意の他の態様、実施形態または実施例に適用可能であると理解されるべきである。本明細書(任意の添付の特許請求の範囲、および要約を含む)に開示された特徴の全て、および/またはそのように開示された任意の方法もしくはプロセスの工程の全ては、そのような特徴および/または工程の少なくとも一部が相互に排他的である組合せを除き、任意の組合せで組み合わせることができる。本発明は、前述のいずれの実施形態の詳細にも限定されない。本発明は、本明細書(任意の添付の特許請求の範囲、および要約を含む)に開示された特徴の任意の新規なものもしくは任意の新規な組合せ、またはそのように開示された任意の方法もしくはプロセスの工程の任意の新規なものもしくは任意の新規な組合せに及ぶ。
【0015】
「高圧」という用語は、周囲圧力(すなわち、大気圧)を超える任意の圧力を指す。
【0016】
「高温」という用語は、周囲温度(すなわち、室温)を超える任意の温度を指す。
【0017】
「触媒担持量」という用語は、重量パーセント(「%wt/wt」)で計算した、所与の反応物に対する触媒の量を指す。触媒が湿潤形態、例えば湿潤Pd/Cで提供される場合、触媒担持量は乾燥触媒の量に基づいて計算される。
【0018】
「保護基」(PG)という用語は、化学反応が、合成化学の関連する慣用的な意味において、別の保護されていない反応性部位で選択的に行われ得るように、多官能性化合物中の反応部位を選択的にブロックする基を表す。保護基は適切な時点で除去することができる。例示的なアミノ保護基は、Boc(tert-ブトキシカルボニル)、ベンジル、4-メトキシベンジル、ベンズヒドリル、Fmoc(フルオレニルメトキシカルボニル)、Cbz(ベンジルオキシカルボニル)、Moz(p-メトキシベンジルカルボニル)、Troc(2,2,2-トリクロロエトキシカルボニル)、Teoc(2-(トリメチルシリル)エトキシカルボニル)、Adoc(アダマントキシカルボニル)、ホルミル、アセチル、およびシクロブトキシカルボニルである。さらなる特定のアミノ保護基は、tert-ブトキシカルボニル(Boc)およびフルオレニルメトキシカルボニル(Fmoc)である。より具体的な保護基は、tert-ブトキシカルボニル(Boc)である。例示的な保護基および有機合成におけるそれらの用途は、例えば、全体が参照により本明細書に含まれる、「Protective Groups in Organic Chemistry」、T.W.GreeneおよびP.G.M.Wutts著、第5版、2014年、John Wiley&Sons、ニューヨークに記載されている。
【0019】
製造方法
第1の態様では、本発明は、アニリン2(式中、PGは、アミノ保護基を表す)を製造するための方法であって、
【化10】

ニトロアレーン1(式中、PGは、アミノ保護基を表す)を水素と
【化11】

(i)遷移金属触媒の存在下;
(ii)非プロトン性溶媒中で
反応させて、前記アニリン2を形成することを含む方法を提供する。
【0020】
一実施形態では、本発明は、アニリン2(式中、PGは、水素またはアミノ保護基を表す)を製造するための方法であって、
【化12】

ニトロアレーン1(式中、PGは、アミノ保護基を表す)を水素と
【化13】

(i)遷移金属触媒の存在下;
(ii)非プロトン性溶媒中で
反応させて、前記アニリン2を形成することを含む方法を提供する。
【0021】
一実施形態では、各アミノ保護基が、Boc(tert-ブトキシカルボニル)、ベンジル、4-メトキシベンジル、ベンズヒドリル、Fmoc(フルオレニルメトキシカルボニル)、Cbz(ベンジルオキシカルボニル)、Moz(p-メトキシベンジルカルボニル)、Troc(2,2,2-トリクロロエトキシカルボニル)、Teoc(2-(トリメチルシリル)エトキシカルボニル)、Adoc(アダマントキシカルボニル)、ホルミル、アセチル、およびシクロブトキシカルボニルから独立的に選択される。
【0022】
好ましい実施態様では、アミノ保護基が、Boc(tert-ブチルオキシカルボニル)である。
【0023】
一実施形態では、前記ニトロアレーン1がニトロアレーン1aであり、前記アニリン2がアニリン2aである。
【化14】
【0024】
一実施形態では、前記ニトロアレーン1がニトロアレーン1bであり、前記アニリン2がアニリン2bである。
【化15】
【0025】
好ましい実施形態では、前記ニトロアレーン1が、(S)-tert-ブチル2-(4-ニトロフェニル)モルホリン-4-カルボキシレート(II)である。
【化16】
【0026】
好ましい実施形態では、前記アニリン2が、(S)-tert-ブチル2-(4-アミノフェニル)モルホリン-4-カルボキシレート(I)である。
【化17】
【0027】
一実施形態では、前記遷移金属触媒が、Pt、Pd、Pt-VおよびNiから選択され、前記Pt、Pd、Pt-VおよびNiの各々が固体担体上にある。一実施形態では、前記固体担体が、活性炭、アルミナ、シリカおよびアルミニウム合金から選択される。
【0028】
一実施形態では、前記遷移金属触媒が、PtO、Pd/C、Pt-V/C、Pt/CおよびラネーNiから選択される。
【0029】
好ましい実施形態では、前記遷移金属触媒がPd/Cである。
【0030】
特に好ましい実施形態では、前記遷移金属触媒がPd/Cであり、木炭に対して5% wt/wtのパラジウム(5% Pd/C)を含有する。
【0031】
さらに特に好ましい実施形態では、前記遷移金属触媒が、Evonik Noblyst(登録商標)P1093 5% Pd/Cである。
【0032】
一実施形態では、触媒担持量が、ニトロアレーン1に対して0.1% wt/wt~1% wt/wtである。
【0033】
好ましい実施形態では、触媒担持量が、ニトロアレーン1に対して0.4% wt/wt~0.6% wt/wtである。
【0034】
特に好ましい実施形態では、触媒担持量が、ニトロアレーン1に対して0.5% wt/wtである。
【0035】
さらに特に好ましい実施形態では、触媒担持量が、ニトロアレーン1に対して0.55% wt/wtである。
【0036】
一実施形態では、前記非プロトン性溶媒がエーテルである。
【0037】
好ましい実施形態では、前記エーテルがtert-ブチルメチルエーテル(TBME)である。
【0038】
ニトロアレーン1を水素化してアニリン2を形成するために非プロトン性溶媒を使用すると、国際公開第2015086495パンフレットに記載されている方法で観察された課題が解決されたが、反応は遅く、高い反応温度を必要とすることが分かった。驚くべきことに、反応混合物に微量の水を添加すると、ニトロアレーン1のアニリン2への転化率が劇的に増加した(図1)。さらに、完全な変換を達成するためにはより低い温度が必要であった。
【0039】
したがって、一実施形態では、前記非プロトン性溶媒が、微量の水を含有する。
【0040】
一実施形態では、前記微量の水が、非プロトン性溶媒に対して0.01% wt/wt~0.1% wt/wtである。
【0041】
好ましい実施形態では、前記微量の水が、非プロトン性溶媒に対して0.05% wt/wt~0.5% wt/wtである。
【0042】
特に好ましい実施形態では、前記微量の水が、非プロトン性溶媒に対して0.25% wt/wtである。
【0043】
一実施形態では、本発明の方法が高温で行われる。
【0044】
一実施形態では、前記高温が35℃~反応混合物の沸点までである。
【0045】
好ましい実施形態では、前記高温が40℃~60℃である。
【0046】
一実施形態では、本発明の方法が高水素圧力で行われる。
【0047】
一実施形態では、前記高水素圧力が1barg~10bargである。
【0048】
好ましい実施形態では、前記高水素圧力が3bargである。
【0049】
一実施形態では、
(i)遷移金属触媒がPt、Pd、Pt-VおよびNiから選択され、前記Pt、Pd、Pt-VおよびNiの各々が固体担体上にあり、好ましくは前記遷移金属触媒がPtO、Pd/C、Pt-V/C、Pt/CおよびラネーNiから選択され;
(ii)触媒担持量が、ニトロアレーン1に対して0.1% wt/wt~1% wt/wtであり;
(iii)非プロトン性溶媒がエーテルであり;
(iv)非プロトン性溶媒が、非プロトン性溶媒に対して0.01% wt/wt~0.1% wt/wtの水を含有し;
(v)方法が、35℃~反応混合物の沸点の間および
(vi)1barg~10bargの水素圧力で行われる。
【0050】
好ましい実施形態では、
(i)遷移金属触媒がPd/Cであり;
(ii)触媒担持量が、ニトロアレーン1に対して0.4% wt/wt~0.6% wt/wt、特に0.55% wt/wtであり;
(iii)非プロトン性溶媒がtert-ブチルメチルエーテル(TBME)であり;
(iv)非プロトン性溶媒が、非プロトン性溶媒に対して0.05% wt/wt~0.5% wt/wtの水を含有し;
(v)方法が、40℃~60℃および
(vi)3bargの水素圧力で行われる。
【0051】
特に好ましい実施形態では、本発明による方法が以下である。
【化18】
【0052】
一態様では、本発明は、本発明の方法に従って製造される場合のアニリン2(式中、PGは、水素またはアミノ保護基を表す)を提供する。
【化19】
【0053】
一態様では、本発明は、本発明の方法に従って製造される場合のアニリン2(式中、PGは、アミノ保護基を表す)を提供する。
【化20】
【0054】
さらなる態様では、本発明は、5-エチル-4-メチル-N-[4-[(2S)モルホリン-2-イル]フェニル]-1H-ピラゾール-3-カルボキサミド(式IV)またはその薬学的に許容され得る塩を製造するための方法であって、本発明による方法を含む、方法を提供する。
【0055】
さらなる態様では、本発明は、5-エチル-4-メチル-N-[4-[(2S)モルホリン-2-イル]フェニル]-1H-ピラゾール-3-カルボキサミド(式IV)またはその薬学的に許容され得る塩を製造するための、本発明による方法の使用を提供する。
【実施例
【0056】
本発明は、以下の実施例を参照することによってより十分に理解される。しかしながら、特許請求の範囲は、実施例の範囲に限定されるものと解釈されるべきではない。
【0057】
以下の略語を、本文中で使用する:
TBME tert-ブチルメチルエーテル
内部温度
barg barゲージ
【0058】
実施例1
微量の水を含有する溶媒中での(S)-tert-ブチル2-(4-アミノフェニル)モルホリン-4-カルボキシレート(I)の調製
【化21】
(S)-tert-ブチル2-(4-ニトロフェニル)モルホリン-4-カルボキシレート(II)(50.0g)、TBME(500mL、5ppm未満の水を含有)および水(877μL)をオートクレーブ反応器に装入し、不活性条件下、湿潤5% Pd/C(Evonik Noblyst(登録商標)P1093、582mg-乾燥ベースで275mgに相当)を混合物に添加する。反応器を密封し、気相をアルゴンで洗浄することによって再び不活性にする。気相を水素で5回洗浄し、圧力を解放する。反応器を撹拌下でT=40±2℃に加熱し、次いで、3bargの水素に加圧する。反応転化率の尺度として水素消費量を経時的に記録しながら、一定の内部温度(T=40±2℃)および水素圧力(P=3barg)を維持しながら撹拌を6時間継続する。6時間後、温度をT=60±2℃に上昇させ、反応をこの温度で18時間継続する。この時間の後、反応器をT=20±5℃に冷却し、撹拌を停止し、圧力を慎重に解放し、反応器をアルゴンで不活性にする。反応混合物をフィルタにかけ、合計180mLのTBMEを使用して不均一触媒を除去し、反応器および濾過ケークを洗浄する。得られた溶液を、溶媒を周囲圧力で蒸留することによって約140mLまで濃縮し、次いで、T=50±2℃に冷却する。n-ヘプタン(75mL)を30分以内に濃縮溶液に添加し、得られた溶液に(S)-tert-ブチル2-(4-アミノフェニル)モルホリン-4-カルボキシレート(5mLのn-ヘプタン中スラリーとして250mg)を播種する。得られた混合物をT=50±2℃で30分以上撹拌し、次いで、T=50±2℃を維持しながらさらなるn-ヘプタン(125mL)を30分以内に添加する。混合物を撹拌下で3時間以内にT=20±3℃に冷却し(冷却勾配:10℃/時間)、撹拌をこの温度で12時間以上継続する。得られた懸濁液をフィルタにかけ、濾過ケークをn-ヘプタン(80mL)とTBME(40mL)の混合物で洗浄する。湿潤ケークを一定重量に達するまで真空下50±3℃で乾燥させると、標記化合物(40.2g)が白色固体として得られる。
【0059】
実施例2
脱水溶媒中での(S)-tert-ブチル2-(4-アミノフェニル)モルホリン-4-カルボキシレート(I)の調製
【化22】
(S)-tert-ブチル2-(4-ニトロフェニル)モルホリン-4-カルボキシレート(II)(50.0g)およびTBME(100mL、5ppm未満の水を含有)をオートクレーブ反応器に装入し、不活性条件下、湿潤5% Pd/C(Evonik Noblyst(登録商標)P1093、116mg-乾燥ベースで55mgに相当)を混合物に添加する。反応器を密封し、気相をアルゴンで洗浄することによって再び不活性にする。気相を水素で5回洗浄し、圧力を解放する。反応器を撹拌下でT=40±2℃に加熱し、次いで、3bargの水素に加圧する。反応転化率の尺度として水素消費量を経時的に記録しながら、一定の内部温度(T=40±2℃)および水素圧力(P=3barg)を維持しながら撹拌を5時間継続する。5時間後、温度をT=60±2℃に上昇させ(温度を上昇させると、水素のより速い消費が決定され、これは6.5時間以内に完了した)、反応をこの温度で18時間継続する。この時間の後、反応器をT=20±5℃に冷却し、撹拌を停止し、圧力を慎重に解放し、反応器をアルゴンで不活性にする。反応混合物をフィルタにかけ、合計50mLのTBMEを使用して不均一触媒を除去し、反応器および濾過ケークを洗浄する。得られた溶液を、溶媒を周囲圧力で蒸留することによって約25mLまで濃縮し、次いで、T=50±2℃に冷却する。n-ヘプタン(50mL)を1時間以内に濃縮溶液に添加する。得られた混合物を撹拌下で5時間以内にT=0±3℃に冷却し(冷却勾配:10℃/時間)、撹拌をこの温度で12時間以上継続する。n-ヘプタン(20mL)をT=0±3℃で30分以内に添加し、混合物を0℃でさらに4時間撹拌する。得られた懸濁液をフィルタにかけ、濾過ケークをn-ヘプタン(40mL)で洗浄する。湿潤ケークを一定重量に達するまで真空下50±3℃で乾燥させると、標記化合物(8.29g)が白色固体として得られる。
図1
【国際調査報告】