(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-10-23
(54)【発明の名称】ランタニド又はアクチニドの輸送、保管及び/又は取り扱いのための包埋生成物及び製造方法
(51)【国際特許分類】
G21F 1/10 20060101AFI20241016BHJP
G01N 27/62 20210101ALI20241016BHJP
C07F 5/00 20060101ALI20241016BHJP
【FI】
G21F1/10
G01N27/62 V
C07F5/00 D
C07F5/00 E
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024514650
(86)(22)【出願日】2022-09-09
(85)【翻訳文提出日】2024-04-30
(86)【国際出願番号】 EP2022075078
(87)【国際公開番号】W WO2023036917
(87)【国際公開日】2023-03-16
(32)【優先日】2021-09-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】507275338
【氏名又は名称】ザ ヨーロピアン アトミック エナジー コミュニティ(ユーラトム)、リプリゼンテッド バイ ザ ヨーロピアン コミッション
【氏名又は名称原語表記】THE EUROPEAN ATOMIC ENERGY COMMUNITY(EURATOM) represented by The EUROPEAN COMMISSION
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】弁理士法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】トス、カールマーン
(72)【発明者】
【氏名】ブジャク、レナタ
(72)【発明者】
【氏名】エグザルコウ、ヴァシリキ
(72)【発明者】
【氏名】カルロス マルケス、ラモン
(72)【発明者】
【氏名】アレグベ、イェトゥンデ
【テーマコード(参考)】
2G041
4H048
【Fターム(参考)】
2G041AA04
2G041CA01
2G041DA01
2G041DA14
2G041FA19
2G041FA21
2G041JA08
2G041LA08
4H048AA01
4H048AB99
4H048AC93
4H048VB10
(57)【要約】
本発明は、ランタニド、アクチニド、又はそれらの化合物の輸送、保管及び/又は取り扱いに適した包埋生成物に関する。本発明はさらに、包埋生成物を製造するための方法、及びサンプルに含まれる少なくとも1つの分析物の濃度を判定するための方法に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ランタニド、アクチニド、又はそれらの化合物の輸送、保管及び/又は取り扱いに適した包埋生成物であって、前記包埋生成物が、前記包埋生成物の総重量に対して、
-少なくとも60.0重量%(wt.%)のマトリックス材料(MA)であって、前記マトリックス材料(MA)が、前記マトリックス材料(MA)の総重量に対して、単糖類、二糖類、三糖類及び四糖類(以下、糖類(S))からなる群から選択される55.0wt.%を超える少なくとも1つの糖類を含む、マトリックス材料(MA)と、
-少なくとも1つのランタニド、アクチニド、又はそれらの化合物と、
を含み、
前記包埋生成物における、少なくとも1つのランタニド、アクチニド、又はそれらの化合物に対する前記糖類(S)のモル比が1.5より大きい、包埋生成物。
【請求項2】
前記糖類(S)が、単糖類及び二糖類からなる群から選択され、好ましくは、グルコース、マンノース、フルクトース及びスクロースからなる群から選択され、より好ましくは、前記糖類(S)はスクロースである、請求項1に記載の包埋生成物。
【請求項3】
前記マトリックス材料の前記総重量に対する前記糖類(S)の量が60.0wt.%以上であり、好ましくは70.0wt.%以上、好ましくは80.0wt.%以上、より好ましくは90.0wt.%以上であり、より好ましくは前記マトリックス材料が、前記糖類(S)から本質的になる、請求項1又は請求項2に記載の包埋生成物。
【請求項4】
前記包埋生成物が、前記包埋生成物の前記総重量に対して、少なくとも65.0wt.%、又は少なくとも70.0wt.%、又は少なくとも75.0wt.%、又は少なくとも80.0wt.%の前記マトリックス材料(MA)を含む、請求項1から3のいずれか一項に記載の包埋生成物。
【請求項5】
前記包埋生成物における、前記少なくとも1つのランタニド、アクチニド、又はそれらの化合物に対する前記糖類(S)のモル比が、1.8以上、より好ましくは2.0以上、さらにより好ましくは4.0以上である、請求項1から4のいずれか一項に記載の包埋生成物。
【請求項6】
前記包埋生成物が、前記マトリックス材料(MA)及び前記少なくとも1つのランタニド、アクチニド、又はそれらの化合物から本質的になる、請求項1から5のいずれか一項に記載の包埋生成物。
【請求項7】
少なくとも1つのランタニドが、セリウム(Ce)、サマリウム(Sm)、ユウロピウム(Eu)、ガドリニウム(Gd)及びテルビウム(Tb)からなる群から選択され、少なくとも1つのアクチニドが、ウラン(U)及びプルトニウム(Pu)からなる群から選択され、少なくとも1つの化合物が、硝酸ウラニル、硝酸プルトニウム、硝酸プルトニル、硫酸ウラン、硫酸ウラニル、硫酸プルトニウム及び硫酸プルトニルからなる群から選択される、請求項1~6のいずれか1項に記載の包埋生成物。
【請求項8】
前記マトリックス材料(MA)を、前記少なくとも1つのランタニド、アクチニド、又はそれらの化合物と接触させる工程を含む、請求項1から7のいずれか一項に記載の包埋生成物の製造方法。
【請求項9】
前記マトリックス材料(MA)と、前記少なくとも1つのランタニド、アクチニド、又はそれらの化合物とが密接に混合され、それによって第1のプレミックスが形成され、次いで、前記第1のプレミックスが、酸性化工程、次いで乾燥工程にさらに供される、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記第1のプレミックスが、硝酸溶液によって、好ましくは1M~8Mの濃度の硝酸溶液によって酸性化される、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記マトリックス材料(MA)及び前記少なくとも1つのランタニド、アクチニド、又はそれらの化合物を容器内に一緒にし、それによって混合物(M)を提供し、次いで、前記混合物(M)を加熱工程に供する、請求項8に記載の方法。
【請求項12】
サンプル(以下、サンプル(SA))に含まれる少なくとも1つの分析物の濃度を判定する方法であって、前記少なくとも1つの分析物が、少なくとも1つのランタニド、アクチニド、又はそれらの化合物からなる群から選択され、前記方法が、前記サンプル(SA)を請求項1から7のいずれか一項に記載の前記包埋材料でスパイクすることを含む、方法。
【請求項13】
前記サンプル(SA)が、環境スワイプ、ワイプ、及び土壌に由来する環境分野のサンプルからなる群から選択される、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記少なくとも1つのランタニド、アクチニド、又はそれらの化合物が、質量分析によってさらに分析される、請求項12又は請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記少なくとも1つのランタニド、アクチニド、又はそれらの化合物が、同位体希釈熱イオン化質量分析(ID-TIMS)によって分析される、請求項14に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ランタニド、アクチニド、又はそれらの化合物の輸送、保管及び/又は取り扱いに適した包埋生成物に関する。本発明はさらに、前記包埋生成物を製造する方法、及びサンプル中の分析物を判定する方法に関し、サンプルは包埋生成物でスパイクされる。
【背景技術】
【0002】
ランタニド、アクチニド、又はそれらの化合物などの、放射性核種及び重金属又はそれらの化合物は、産業の不可欠な要素であり、家庭用及び技術的用途に広く使用されている。それにもかかわらず、それらの既知の毒性は環境汚染のリスクをもたらし、生態学的及び世界的な公衆衛生上の懸念を引き起こしている。したがって、そのような元素の放出及びそれらの使用は強く規制される。この目的のために、現場サンプルが日常的に収集され、そのような元素の存在が、特に定量分析によって制御される。そのような制御は、典型的には、オフサイトで実施され、規制目的のために安全機関によって実施され得る。
【0003】
したがって、輸送及び保管中の前記現場サンプルの保存は、信頼性の高い制御を確実にするために最も重要である。さらに、そのような元素の取り扱いのための対策が講じられなければならない。
【0004】
これは、定量分析が行われる場合に特に当てはまる。実際、定量分析は、特に分析すべき元素が微量である場合、一般に放射性核種及び重金属の場合のように、サンプルの未知の組成物を高精度で判定するために厳密な手順を必要とする。この目的のために、測定検査室は、本質的な品質管理手段及び検証された方法を実施する必要がある。そのような品質管理手段は、機器較正手段として、又はスパイクとして、基準材料又は認証された基準材料の使用を必要とする。そのような基準材料又は認証された基準材料は、正確かつ同等の結果をもたらすための測定検査室向けの基準を提供する。基準材料は、1つ以上の特定の特性に関して十分に均質で安定している材料と呼ばれる。International vocabulary of metrology-Basic and general concepts and associated terms(VIM)JCGM 200:2012によれば、認証された基準材料は、それらの特性のうちの1つ以上が計量的に有効な手順によって特徴付けられるという意味での基準材料である。それらは、その関連する不確実性を伴う特定の特性の値を記載する証明書及び計量トレーサビリティの記載を伴う。参照及び認証された基準材料は、測定におけるそれらの意図された使用に適合するように確立された特性を有する。認証された基準測定は、正確な測定のための計量ツールである。
【0005】
一般に、基準材料は、これらの材料が分析される場所とは異なる専用の場所で製造される。したがって、これらの基準材料は、正確な定量分析を行うために、輸送、保管及び取り扱い中に保存されることも必要である。
【0006】
基準材料を輸送し、保管し、取り扱うための手段は、当技術分野で既知である。
【0007】
例えば、R.Middendorpら(ESARDA Bulletin n°54,June 2017,p.25-30)によって特に述べられているような金属粒子の保管のための媒体を使用することが知られている。この論文は、前記粒子の取り扱い及び保管を単純化する目的で、ウラン微粒子がエタノールに懸濁されることを開示している。このようなエタノール懸濁液の欠点は、数ヶ月の期間にわたってしか安定でないため、より長期間にわたる安定性である。長期安定性は、市場の需要の高まり及び高純度の金属の不足を考慮して重要である。
【0008】
特にR.Jakopicらによって述べられているように、高重合度を有する多糖類、すなわち大型多糖類ベースのマトリックスにウラン及び/又はプルトニウムを包埋することも当技術分野で既知である。Jakopicらは、保管及び輸送中に前記ウラン及び/又はプルトニウムを保存できる大型乾燥スパイクを提供することを目的として硝酸ウラニル及び硝酸プルトニウムを包埋するために、70000の数平均分子量Mnを有するセルロースアセテートブチレート(CAB)(Large-Sized Dried(LSD)スパイクIRMM-1027o、EUR25857EN、2013の調製及び認証)、又は代替的には、セルロースアセテートブチレート/ジオクチルフタレート(CAB/DOP)もしくはカルボキシメチルセルロース(CMC)(Large-Sized Dried(LSD)スパイクIRMM-1027t、EUR29742EN、2019の調製及び認証)などの多糖類ベースのマトリックスを使用することを述べている。しかしながら、前記Large-Sized Driedスパイクの製造プロセスは、特に時間のかかる加熱/乾燥工程を含み、面倒で長い。さらに、そのようなLarge-Sized Driedスパイクの製造工程は、湿度、加熱/乾燥温度及び時間などの実験室条件に非常に敏感であることがわかっており、これは必然的にその再現性に影響を及ぼす。したがって、そのようなLSDスパイクの生産能力は制限される。
【0009】
したがって、ランタニド、アクチニド、又はそれらの化合物の輸送、保管及び/又は取り扱いに適した前記ランタニド、アクチニド、又はそれらの化合物の包埋生成物を提供する必要があり、前記包埋生成物は長期安定性を有するが、それらの製造プロセスは時間効率が高く、再現性が高い。
【発明の概要】
【0010】
本発明者らは、驚くべきことに、上記の必要性を満たし、上記の欠点を克服する改善された包埋生成物を提供することが可能であることを見出した。
【0011】
したがって、本発明の目的は、ランタニド、アクチニド、又はそれらの化合物の輸送、保管及び/又は取り扱いに適した包埋生成物を提供することであり、包埋生成物が、包埋生成物の総重量に対して、
-少なくとも60.0重量%(wt.%)のマトリックス材料(MA)であって、前記マトリックス材料(MA)が、マトリックス材料(MA)の総重量に対して、単糖類、二糖類、三糖類及び四糖類(以下、糖類(S))からなる群から選択される55.0wt.%を超える少なくとも1つの糖類を含む、マトリックス材料(MA)と、
-包埋生成物における、少なくとも1つのランタニド、アクチニド、又はそれらの化合物に対する糖類(S)のモル比が1.5より大きい、少なくとも1つのランタニド、アクチニド、又はそれらの化合物と、
を含む、ランタニド、アクチニド、又はそれらの化合物の輸送、保管及び/又は取り扱いに適した包埋生成物を提供することである。
【0012】
別の態様では、本発明は、上記で詳述したように、包埋生成物の製造方法を提供する。
【0013】
別の態様では、本発明は、サンプル(SA)中の少なくとも1つの分析物の濃度を判定するための方法を提供し、前記サンプル(SA)は、上記で詳述したように、包埋生成物でスパイクされる。
【0014】
別の態様では、本発明は、上記で詳述したように、サンプル(SA)中の分析物の濃度を判定するための方法における、上記で詳述したような包埋生成物の使用を提供する。
【発明を実施するための形態】
【0015】
(発明の詳細な説明)
本発明の文脈内で、「含む(comprising)」という用語は、その後に列挙される手段に限定されると解釈されるべきではなく、他の要素又は工程を排除するものではない。これは、言及された記載された特徴、整数、工程又は成分の存在を指定するものとして解釈される必要があるが、1つ又は複数の他の特徴、整数、工程又は成分、又はそれらのグループの存在又は追加を排除するものではない。したがって、「成分A及びBを含む組成物」という表現の範囲は、成分A及びBのみからなる組成物に限定されるべきではない。それは、本発明に関して、組成物の関連する唯一の成分がA及びBであることを意味する。したがって、「含む(comprising)」及び「含む(including)」という用語は、「から本質的になる(consisting essentially of)」及び「からなる(consisting of)」というより限定的な用語を包含する。
【0016】
本発明者らは、驚くべきことに、マトリックス材料(MA)を含む包埋材料を提供することによって、前記マトリックス材料(MA)が、マトリックス材料(MA)の総重量に対して、単糖類、二糖類、三糖類及び四糖類(以下、糖類(S))からなる群から選択される55重量%を超える少なくとも1つの糖類を含み、包埋材料が優れた安定性を示すことを見出した。換言すれば、それによって得られた包埋材料は、経時的な剥離又は亀裂の兆候を示さない。その結果、少なくとも1つのランタニド、アクチニド、又はそれらの化合物を効率的に包埋し、それによってそれらの浸出を回避することによって、包埋材料が安全な方法で輸送及び取り扱いされ得る。さらに、包埋材料は、より長い時間保管され得、それにより、少なくとも1つのランタニド、アクチニド、又はそれらの化合物の信頼できる供給源を提供することができる。
【0017】
さらに、本発明者らは、驚くべきことに、本発明の包埋生成物が優れた均質性を示すことを見出した。その結果、包埋材料が定量分析において、例えば分析されるサンプルとして、較正平均として、又はスパイクとして使用される場合、定量分析測定値の望ましくないバイアス及び不確実性を効果的に減少させることができる。
【0018】
本発明の文脈内で、「均質性」又は「均質」という表現は、マトリックス材料(MA)中に均一に分布している少なくとも1つのランタニド、アクチニド、又はそれらの化合物を指すことを意図している。換言すれば、均質な包埋生成物は、少なくとも1つのランタニド、アクチニド、又はそれらの化合物の凝集物を示さない。
【0019】
この理論に束縛されるものではないが、本発明による糖類(S)は包埋剤として作用し、ランタニド又はアクチニド又はそれらの化合物が前記糖類(S)と強く相互作用することを可能にすると思われる。結果として、ランタニド、アクチニド、又はそれらの化合物の包埋が非常に有利である。この強い相互作用は、包埋特性を高めるために本発明による糖類(S)などの小分子を使用するように当業者が促されなかったであろうことから、驚くべきことである。対照的に、当業者は、それらの共有結合した単位のためにエントロピー的に有利な包埋特性を提供する高度の重合化合物を選択したであろう。以下の例で詳細に説明するように、糖類(S)は、包埋生成物の安定性及び均質性に明らかなプラスの影響を及ぼすことが明らかである。
【0020】
前述のように、本発明による包埋生成物のマトリックス材料(MA)は、マトリックス材料(MA)の総重量に対して、単糖類、二糖類、三糖類及び四糖類(以下、糖類(S))からなる群から選択される55重量%を超える少なくとも1つの糖類を含む。
【0021】
本発明の文脈内で、「単糖類、二糖類、三糖類及び四糖類からなる群より選択される少なくとも1つの糖類(以下、糖類(S))」という表現は、1つの糖類(S)又は2つ以上の糖類(S)を示すことを意図している。糖類(S)の混合物が使用されてもよい。
【0022】
本文の残りの部分では、「糖類(S)」という表現は、本発明の目的のために、複数形及び単数形の両方で理解される。
【0023】
本発明の文脈内で、本明細書で使用される「糖類」という用語は、当技術分野で一般的に知られている最も広い意味を有し得る。
【0024】
包埋生成物に含まれるマトリックス材料(MA)の糖類(S)は、1つの炭水化物単位又は2つ以上の炭水化物単位を含有してもよく、前記2つ以上の炭水化物単位は、互いに同一であっても独立して異なっていてもよい。一例として、2つの炭水化物単位を含有する糖類は二糖と呼ばれ、2つの類似する炭水化物単位を含有する糖類はホモ二糖と呼ばれ、2つの異なる炭水化物単位を含有する糖類はヘテロ二糖と呼ばれる。炭水化物単位は、糖類(S)の親水性を調節するために置換されてもよい。
【0025】
好ましくは、上で定義したように、包埋生成物に含まれるマトリックス材料(MA)の糖類(S)は親水性である。
【0026】
上で定義したように、包埋生成物に含まれるマトリックス材料(MA)の糖類(S)はまた、それぞれペントース及びヘキソースと呼ばれる5個又は6個の炭素原子を含有する1つ又は複数の炭水化物単位を含有してもよい。
【0027】
ペントースの非限定的な例としては、少なくとも1つのハロ、C1-6アルキル又はC1-6アルコキシ置換基で置換されていてもよいリボース、アラビノース、アラブロース、リキソース、リキロース、リブロース、キシロース及びキシルロースが挙げられ得る。
【0028】
ヘキソースの非限定的な例としては、少なくとも1つのハロ、C1-6アルキル又はC1-6アルコキシ置換基で置換されていてもよいアロース、アルトロース、フルクトース、ガラクトース、グルコース、グロース、イドース、マンノース、プシコース、ソルボース、タガトース及びタロースが挙げられ得る。
【0029】
本発明の好ましい実施形態によれば、包埋生成物に含まれるマトリックス材料(MA)の糖類(S)は、単糖類及び二糖類からなる群から選択される。
【0030】
好ましい単糖類は、グルコース、マンノース、フルクトース、ガラクトース、リボース、アラビノース及びキシロースからなる群から選択され、より好ましくは糖類(S)は、グルコース、マンノース及びフルクトースからなる群から選択される。
【0031】
好ましい二糖は、スクロース、ラクトース、マルトース、トレハロース及びセロビオースからなる群から選択され、より好ましくはスクロース、ラクトース及びマルトースからなる群から選択される。スクロースが特に好ましい。
【0032】
本発明のより好ましい実施形態によれば、包埋生成物に含まれるマトリックス材料(MA)の糖類(S)は、グルコース、マンノース、フルクトース及びスクロースからなる群から選択される。スクロースが特に好ましい。
【0033】
マトリックス材料(MA)は、少なくとも1つの追加の化合物をさらに含んでもよく、ただし、前記少なくとも1つの追加の化合物は、上記で詳述したように、糖類(S)の包埋特性を妨げないことを条件とし、また、マトリックス材料(MA)の総重量に対するwt.%で表される少なくとも1つの追加の化合物の量は、マトリックス材料(MA)中の糖類(S)の量よりも低いことを条件とする。
【0034】
本発明の文脈内で、「少なくとも1つの追加の化合物」という表現は、1つの追加の化合物又は2つ以上の追加の化合物を示すことを意図している。前記追加の化合物は、酸化防止剤、着色剤又は安定剤として使用され得る。
【0035】
本文の残りの部分では、表現「追加の化合物」は、本発明の目的のために、複数形及び単数形の両方で、すなわち、本発明による包埋生成物中のマトリックス材料(MA)が1つの追加の化合物又は2つ以上の追加の化合物をさらに含むことが理解される。
【0036】
適切な追加の化合物の非限定的な例としては、二酸化ケイ素、ブチル化ヒドロキシトルエン(BHT)、ビスフェノールA-ビス(ジフェニルホスフェート)(BDP)などの不活性な追加の化合物、又はポリビニルアルコール(PVA)などの非糖類ベースの追加の化合物が挙げられ得る。
【0037】
本発明の好ましい実施形態によれば、包埋生成物のマトリックス材料(MA)中の糖類(S)の量は、マトリックス材料の総重量に対して、60.0wt.%以上であり、好ましくは70.0wt.%以上、好ましくは80.0wt.%以上、より好ましくは90.0wt.%以上、より好ましくは95.0wt.%以上、より好ましくはマトリックス材料は、上で定義した糖類(S)から本質的になる。
【0038】
本発明の文脈内で、「糖類(S)から本質的になる」という用語は、上記で定義されたように、マトリックス材料(MA)に含まれる糖類(S)とは異なる任意の追加の成分が、マトリックス材料の総重量に対して最大1.0wt.%、又は最大0.5wt.%、又は最大0.1wt.%の量で存在することを理解されたい。
【0039】
前述のように、包埋生成物の総重量に対する本発明の包埋生成物は、少なくとも60.0wt.%のマトリックス材料(MA)を含む。
【0040】
好ましくは、本発明の包埋生成物は、包埋生成物の総重量に対して、少なくとも65.0wt.%、又は少なくとも70.0wt.%、又は少なくとも75.0wt.%、又は少なくとも80.0wt.%のマトリックス材料(MA)を含む。
【0041】
マトリックス材料(MA)の量の上限は、包埋生成物の総重量に対して、特に限定されないが、有利には99.0wt.%以下、又は97.0wt.%以下、又は95.0wt.%以下のマトリックス材料であることがさらに理解される。
【0042】
本発明者らは、上記で詳述したようなマトリックス材料(MA)、特に上記で詳述したような糖類(S)がその包埋の役割を果たすためには、包埋生成物における、少なくとも1つのランタニド、アクチニド、又はそれらの化合物に対する糖類(S)のモル比が、1.5超、好ましくは1.8以上、より好ましくは2.0以上、さらにより好ましくは4.0以上であることがさらに必要とされることを見出した。
【0043】
少なくとも1つのランタニド、アクチニド、又はそれらの化合物に対する糖類(S)のモル比の上限は、特に限定されないが、有利には15.0未満、又は13.0未満、又は10.0未満であることがさらに理解される。
【0044】
本発明の文脈内で、「少なくとも1つのランタニド、アクチニド、又はそれらの化合物」という表現は、「1つのランタニドもしくは2つ以上のランタニド、又は1つのアクチニドもしくは2つ以上のアクチニド、又はそれらの1つの化合物又はそれらの2つ以上の化合物」を示すことを意図している。ランタニドの混合物、アクチニドの混合物、又はそれらの化合物の混合物が使用され得る。
【0045】
本文の残りの部分では、「ランタニド」、「アクチニド」、及び「それらの化合物」という表現は、本発明の目的のために、複数形及び単数形の両方で理解される。
【0046】
上記で定義されたランタニド、アクチニド、又はそれらの化合物は、市販されていてもよく、NBL PO CRM 116-A濃縮ウラン又はCETAMA MP 2プルトニウム基準材料などの認証された基準材料に由来してもよく、又は標準溶液の使用又は標準金属もしくはそれらの化合物の溶解などの当業者に既知の従来の方法を使用して調製されてもよく、又は環境、生物、又は食品分野のサンプルなどの現場サンプルに由来してもよい。
【0047】
上記で定義したように、ランタニド、アクチニド、又はそれらの化合物が市販されているか、又は従来の方法を使用して調製される場合、本発明による包埋生成物は、好ましくは、上記で詳述したように、マトリックス材料(MA)と、ランタニド、アクチニド、又はそれらの化合物とから本質的になる。
【0048】
ランタニド、アクチニド、又はそれらの化合物が現場サンプルに由来する場合、前記現場サンプルは、当業者に知られている任意の技術に従って、例えば、参照により本明細書に組み込まれる、IAEA SAFEGUARDS GLOSSARY 2001,June 2002 IAEA/NVS/3に記載されているような、核防護装置内で環境スワイプサンプルを採取する技術によって、あるいは、放射線防護の文脈でサンプルを採取することによって、又は植生、土壌もしくは水もしくは臨床サンプルをサンプリングすることによって、サンプリング及び調製され得る。上記で詳述したように、少なくとも1つのランタニド、アクチニド、又はそれらの化合物が現場サンプルに由来する場合、包埋材料が、包埋生成物の総重量に対して10.0wt.%未満、1.0wt.%未満、又は0.5wt.%以下の量の不純物をさらに含み得ることは言うまでもなく、前記不純物の性質はサンプリング技術に依存する。
【0049】
本発明による包埋材料中のランタニド、アクチニド、又はそれらの化合物は、前記ランタニド、アクチニド、又はそれらの化合物のすべての既知の同位体を含み、前記同位体は放射性又は非放射性であり得る。
【0050】
ランタニドの非限定的な例としては、ランタン(La)、セリウム(Ce)、プラセオジム(Pr)、ネオジム(Nd)、プロメチウム(Pm)、サマリウム(Sm)、ユウロピウム(Eu)、ガドリニウム(Gd)、テルビウム(Tb)、ジスプロシウム(Dy)、ホルミウム(Ho)、エルビウム(Er)、ツリウム(Tm)及びイッテルビウム(Yb)が挙げられる。
【0051】
好ましくは、ランタニドは、セリウム(Ce)、サマリウム(Sm)、ユウロピウム(Eu)、ガドリニウム(Gd)、及びテルビウム(Tb)からなる群から選択される。
【0052】
アクチニドの非限定的な例としては、アクチニウム(Ac)、トリウム(Th)、プロアクチニウム(Pa)、ウラン(U)、ネプツニウム(Np)、プルトニウム(Pu)、アメリシウム(Am)、キュリウム(Cm)、ベルケリウム(Bk)、カリホルニウム(Cf)、アインステイニウム(Es)、フェルミウム(Fm)、メンデレビウム(Md)、ノベリウム(No)、及びローレンシウム(Lr)が挙げられる。
【0053】
好ましくは、アクチニドは、ウラン(U)及びプルトニウム(Pu)からなる群から選択される。
【0054】
本明細書で使用される「ランタニド又はアクチニドの化合物」という表現は、そのような化合物が存在し得る形態の当技術分野で一般に理解されている最も広い意味を有し得、特に、塩、酸化物、炭化物、それらの錯体又はそれらの混合物を含み得、ランタニド又はアクチニドの前記化合物中の前記ランタニド又はアクチニドは、当業者に知られている任意の酸化状態にあり得る。
【0055】
有利には、前記塩の対イオンは、ハロゲン化物、硝酸塩、硫酸塩、炭酸塩及び水酸化物の中から選択される。
【0056】
前記塩の非限定的な例としては、硝酸セリウム、塩化鉄(II)、水酸化ガドリニウム、塩化ガドリニウム、硫酸ガドリニウム、硝酸ガドリニウム、塩化アメリシウム、硝酸アメリシウム、六フッ化ウラン、硝酸ウラニル、硝酸プルトニウム、硝酸プルトニル、硫酸ウラン、硫酸ウラニル、硫酸プルトニウム、及び硫酸プルトニルが挙げられる。
【0057】
最も好ましい塩は、硝酸ウラニル、硝酸プルトニウム、硝酸プルトニル、硫酸ウラン、硫酸ウラニル、硫酸プルトニウム、硫酸プルトニル等のアクチニド塩である。硝酸ウラニル及び硝酸プルトニウムが特に好ましい。
【0058】
前記酸化物の非限定的な例としては、酸化アメリシウム、酸化ウラン及び酸化プルトニウムが挙げられ得る。
【0059】
前記錯体の非限定的な例としては、ガドリニウムキレート、ウラノセン及びシクロオクタテトラエン及びシクロペンタジエン錯体が挙げられ得る。
【0060】
前記炭化物の非限定的な例としては、炭化ウラン、炭化トリウム、炭化プルトニウム、炭化ネオジム、炭化ガドリニウム及び炭化サマリウムが挙げられる。
【0061】
包埋生成物の製造方法
上記で詳述したように、包埋生成物の製造方法も本発明の一態様である。
【0062】
上記のすべての定義、選好及び好ましい実施形態は、以下に説明するように、すべてのさらなる実施形態にも適用されることがさらに理解される。
【0063】
本発明の包埋生成物は、当該技術で既知の種々の方法により調製されることができる。包埋生成物を製造するために、いくつかの方法が適切に使用され得る。
【0064】
本発明の一実施形態では、上記で詳述したように、包埋生成物の製造方法は、最初に、上記で詳述したようにマトリックス材料(MA)を上記で詳述したように少なくとも1つのランタニド、アクチニド、又はそれらの化合物と接触させる工程を含む。
【0065】
接触は、一般的な慣行に従って当業者に既知の任意の方法によって行うことができることが理解される。
【0066】
本発明の包埋生成物の製造方法の好ましい実施形態によれば、マトリックス材料(MA)は、少なくとも1つのランタニド、アクチニド、又はそれらの化合物と密接に混合される。
【0067】
密接な混合は、従来のミキサー及びブレンダー、高密度ミキサー及び電気撹拌機を使用して行われ得る。
【0068】
さらに、上記で詳述したように、マトリックス材料(MA)と1つのランタニド、アクチニド、又はそれらの化合物との密接な混合の任意の順序が許容されることが理解される。当業者は、特に最適な時間、速度、ならびに重量、体積及びバッチ量を使用するなど、一般的な慣行に従って前記密接な混和を行うことが理解される。
【0069】
必要に応じて、マトリックス材料(MA)、及び上記で詳述したような少なくとも1つのランタニド、アクチニド、又はそれらの化合物は、上記で詳述したように最初に密接に混合されることができ、それによって第1のプレミックスを形成することができ、次いで、前記第1のプレミックスは、酸性化工程、次いで乾燥工程にさらに供される。
【0070】
第1のプレミックスの酸性化工程は、上記で詳述したように、少量の酸を使用することによって、技術的に単純で、環境的及び経済的に実行可能な方法で行われ得る。酸性化中に使用されるこのような少量の酸は、乾燥時間を短縮することができる一方で、依然として優れた包埋生成物を提供するという利点を有する。さらに、そのような少量の酸は、湿度、乾燥温度及び時間などの実験室条件への影響を制限することによって、包埋生成物をより再現可能な方法で製造することを可能にすることがわかった。
【0071】
本発明者らはまた、本発明の方法による乾燥前の第1のプレミックスの酸性化工程が包埋生成物の安定性をさらに改善することを見出した。したがって、包埋生成物は、ランタニド、アクチニド、又はそれらの化合物の優れた輸送、保管及び/又は取り扱いを示す。
【0072】
ガラスバイアル内で実施した場合、本発明の方法による第1のプレミックスの酸性化工程は、発泡体の形態の前記包埋生成物の形成を可能にし、前記発泡体は前記ガラスバイアルの内壁に接着することが実際に見出された。結果として、包埋生成物の付着は、包埋材料の剥離を制限し、その輸送が促進される。
【0073】
上記で詳述したように、包埋生成物の改善された安定性に加えて、包埋生成物は優れた均質性も示す。この理論に束縛されるものではないが、発泡体の形態の包埋生成物の形成は、上記で詳述したように、本発明の方法の乾燥工程の前に、ランタニド、アクチニド、又はそれらの化合物がマトリックス材料(MA)中に均一に分布することを可能にすると推測される。
【0074】
本発明の包埋生成物の製造方法による酸性化工程は、特に最適なpH、時間、温度、圧力、体積及びバッチ量を使用するなどの一般的な慣行に従って、当業者に既知の任意の方法又は技術によって行うことができる。
【0075】
適切な酸性化としては、塩酸及び硝酸の溶液などの酸性溶液が挙げられ得る。
【0076】
好ましくは、第1のプレミックスは酸性溶液によって酸性化され、それによって得られる前記酸性化された第1のプレミックスは、0.0~7.0、より好ましくは0.1~5.0、より好ましくは0.5~4.0、より好ましくは1.0~3.0のpH値を有する。
【0077】
好ましくは、第1のプレミックスは硝酸溶液によって酸性化される。より好ましくは、第1のプレミックスは硝酸溶液によって酸性化され、前記硝酸溶液は1M~8Mの濃度である。
【0078】
上記で詳述したように、第1のプレミックスの乾燥は、存在するあらゆる残留水の除去をもたらし、それにより、上記で詳述したように、マトリックス材料(MA)中の、上記で詳述したような1つのランタニド、アクチニド、又はそれらの化合物の改善された包埋を提供する。
【0079】
乾燥は、有利には、上記で詳述したように、本発明の包埋生成物が実質的に水を含まなくなるまで、すなわち、包埋生成物が、包埋生成物の総重量に対して最大10.0wt.%、又は最大5.0wt.%、又は最大1.0wt.%の水を含むまで行われることが理解される。
【0080】
乾燥は、特に最適な時間、温度、圧力、体積及びバッチ量を使用するなどの一般的な慣行に従って、当業者に既知の任意の方法又は技術によって行われ得る。
【0081】
乾燥の好適な方法又は技術としては、大気圧下、減圧下又は加圧下での加熱乾燥(例えば、乾燥がグローブボックス内で行われる場合)、熱風乾燥、減圧下での乾燥、赤外線乾燥、凍結乾燥、高温水蒸気を用いた高湿乾燥等が挙げられる。好ましくは、加熱乾燥が使用される。
【0082】
乾燥は、30℃~150℃、又は40℃~100℃、又は50℃~90℃の温度など、上記で詳述したように包埋生成物の成分のいずれかの分解温度よりも低い温度で行われることが理解される。
【0083】
あるいは、マトリックス材料(MA)及び少なくとも1つのランタニド、アクチニド、又はそれらの化合物を容器内に一緒にし、それによって混合物(M)を得ることができ、次いで、前記混合物(M)を加熱工程に供する。
【0084】
当業者に既知の任意の容器、例えばガラスバイアルなどを本発明の文脈で使用することができることが理解される。
【0085】
この理論に束縛されるものではないが、加熱する工程は、マトリックス材料(MA)の溶融を促進し、したがってマトリックス材料(MA)が少なくとも1つのランタニド、アクチニド、又はそれらの化合物を均質な方法で包埋することを可能にすると推測される。
【0086】
加熱の好適な方法又は技術としては、大気圧下、減圧下又は加圧下での乾式加熱(例えば、加熱がグローブボックス内で行われる場合)、熱風加熱、赤外線乾燥、高温水蒸気を用いた高湿加熱などが挙げられる。好ましくは、大気圧下、減圧下又は加圧下での乾式加熱が使用される。
【0087】
加熱は、30℃~150℃、又は40℃~100℃、又は50℃~90℃の温度など、上記で詳述したように包埋生成物の成分のいずれかの分解温度よりも低い温度で行われることが理解される。
【0088】
所望であれば、加熱工程の前に、上記で詳述したように混合物(M)が酸性化工程に供される。
【0089】
本発明の別の態様は、サンプル(以下、サンプル(SA))に含まれる少なくとも1つの分析物の濃度を判定する方法であって、分析物が、上記で詳述したように、少なくとも1つのランタニド、アクチニド、又はそれらの化合物からなる群から選択され、前記方法が、上記で詳述したように、サンプル(SA)を包埋材料でスパイクすることを含む、方法である。
【0090】
上記のようなすべての定義及び選好は、以下に説明するように、すべてのさらなる実施形態に等しく適用されることがさらに理解される。
【0091】
本発明の文脈内で、「少なくとも1つの分析物」という表現は、1つの分析物又は2つ以上の分析物を示すことを意図している。
【0092】
本文の残りの部分では、「分析物」という表現は、本発明の目的のために、複数形及び単数形の両方で理解される。
【0093】
本発明の文脈内で、「スパイク」又は「スパイク」という表現は、当技術分野で知られているその意味を指す。特に、スパイクは、分析される試料へのスパイク材料に含まれる既知の量又は濃度の分析物の添加を指すことが当業者に知られている。これにより、スパイクは、較正によって分析物を定量することを可能にする。
【0094】
換言すれば、包埋生成物(すなわち、スパイク材料)に含まれる既知の量又は濃度の少なくとも1つのランタニド、アクチニド、又はそれらの化合物が、上で定義したようにサンプル(SA)に添加される。
【0095】
本発明者らは、上記で詳述したように、サンプル(SA)中の分析物の濃度を判定する方法において本発明の包埋材料を使用してサンプル(SA)をスパイクする場合、前記包埋材料が、サンプル(SA)中の前記分析物の濃度の定量的かつ高精度の判定を可能にすることを見出した。
【0096】
好適なサンプル(SA)としては、環境、生物、又は食品分野のサンプルが挙げられ得る。
【0097】
環境分野のサンプルの非限定的な例としては、環境スワイプ、ワイプ、及び土壌に由来する現場サンプルが挙げられ得る。
【0098】
生物分野のサンプルの非限定的な例としては、植生に由来する現場サンプルが挙げられ得る。
【0099】
食品分野のサンプルの非限定的な例としては、工業エリアに由来する現場サンプルが挙げられる。
【0100】
好ましくは、本発明の分析物の濃度を判定する方法のサンプル(SA)は、環境スワイプ、ワイプ及び土壌に由来する環境分野のサンプルからなる群から選択される。
【0101】
サンプル(SA)中の分析物の濃度を判定する方法の好ましい実施形態によれば、ランタニド、アクチニド、又はそれらの化合物は、質量分析によってさらに分析される。
【0102】
当業者に知られている、サンプル(SA)中の分析物の濃度を判定するための任意の質量分析技術(ここで、試料(SA)がスパイクされる)を使用することができる。
【0103】
試料(SA)中の分析物の濃度を判定するための質量分析技術の非限定的な例としては、同位体希釈熱イオン化質量分析法(ID-TIMS)、化学摩耗熱イオン化質量分析法(CA-TIMS)、及びマルチコレクタ誘導結合質量分析法(MC-ICP-MS)、セクタフィールドICP-MS、又はレーザーアブレーション誘導結合プラズマ質量分析法(LA-ICP-MS)が挙げられ得る。
【0104】
好ましくは、サンプル(SA)は、同位体希釈熱イオン化質量分析法(ID-TIMS)又はマルチコレクタ誘導結合質量分析法(MC-ICP-MS)によって、より好ましくは同位体希釈熱イオン化質量分析法(ID-TIMS)によって分析される。
【0105】
当業者は、特に最適な時間、速度、重量、体積及びバッチ量を使用するなどの一般的な慣行に従って前記技術を実行することが理解される。
【0106】
本発明者らはまた、本発明によるサンプル(SA)中の分析物の濃度を判定するための方法において包埋材料が使用される場合、前記包埋材料が正のバイアス又は負のバイアスを介して望ましくない干渉を引き起こさないことを見出した。
【0107】
さらに、本発明者らは、本発明の分析物の濃度を判定するための方法における包埋生成物が、ISO規格ISO 17025:2017及びISO 17034:2016などの国際文書規格に設定された要件に準拠していることを見出した。
【0108】
本発明の別の態様は、上記で詳述したように、サンプル(SA)中の分析物の濃度を判定するための方法における、上記で詳述したような包埋生成物の使用である。
【0109】
上記のようなすべての定義及び選好は、以下に説明するように、すべてのさらなる実施形態に等しく適用されることがさらに理解される。
【0110】
本発明の別の態様は、上記で詳述したような包埋生成物の、基準材料としての、特に認証された基準材料としての使用である。
【0111】
上記のようなすべての定義及び選好は、以下に説明するように、すべてのさらなる実施形態に等しく適用されることがさらに理解される。
【実施例】
【0112】
ここで、本発明をより詳細に説明するが、その目的は単なる例示であり、本発明の範囲を限定することを意図するものではない。
【0113】
原料:
以下の材料を商業的に購入し、精製せずに実験に使用した:D-(+)-スクロース(Merck、ダルムシュタット、ドイツ)、D-(+)-グルコース(Merck)、D-(+)-マンノース(99.5%以上、VWR、ルーヴェン、ベルギー)、D-(-)-フルクトース(Molekula、ミュンヘン、ドイツ)、SiO2(VWR)、Ce(NO3)3.6H2O(Sigma-Aldrich、Overijse、ベルギー)。
【0114】
既知量の認証されたウランインゴット(EC NRM 101、ヘール、ベルギー及びNBL PO CRM 116-Aレモント州、米国)を約6M硝酸(Merck)溶液に溶解し、続いて55~60℃で溶媒を蒸発させることによって、UO2(NO3)2を社内で調製した。
【0115】
既知量の認証されたプルトニウムインゴット(CETAMA MP2、CEA Marcoule、フランス)を約6M塩酸溶液(Suprapur(登録商標)、Merck)に溶解し、続いて55~60℃で溶媒を蒸発させることによって、Pu(NO3)4を社内で調製した。
【0116】
例1~5及び8(E1~E5及びE8)ならびに比較例CE1~CE3の包埋生成物(C)の一般的な製造手順:
例1~5(E1~E5)及び比較例CE1の各包埋生成物を、表1に記載され列挙されたランタニド、アクチニド、又はそれらの化合物(本質的に及び量)を含むバイアルにおいて、表1に記載され列挙された糖類(S)(本質的に及び量)を密接に混合することによって調製した。HNO3の数滴の2M溶液を各バイアルに添加した。溶液又は混合物を、室温より高く、包埋生成物の化合物のいずれかの分解点より低い温度まで加熱し、溶媒を、発泡体が形成されるまで、そしてバイアルの内壁に凝縮が見られなくなるまで蒸発させた。
【0117】
例8(E8)ならびに比較例CE2及びCE3の各包埋生成物を、表2に記載され列挙されたランタニド、アクチニド、又はそれらの化合物(本質的に及び量)を含むバイアルにおいて、表2に記載され列挙された糖類(S)及び追加の化合物(本質的に及び量)を密接に混合することによって調製した。HNO3の数滴の2M溶液を各バイアルに添加した。溶液又は混合物を、室温より高く、包埋生成物の化合物のいずれかの分解点より低い温度まで加熱し、溶媒を、発泡体が形成されるまで、そしてバイアルの内壁に凝縮が見られなくなるまで蒸発させた。
【0118】
例1~5及び8(E1~E5及びE8)ならびに比較例CE1~CE3の包埋生成物の安定性及び均質性の評価:
例1~5及び例8(E1~E5及びE8)ならびに比較例1~3(CE1~CE3)による包埋生成物を、一般的な手順に従って製造した。
【0119】
UO2(NO3)2及びPu(NO3)4の放射能のために、わずかに加圧下(約70mbar)で、例1及び2(E1-E2)及び比較例1(CE1)をグローブボックス内で乾燥させた。
【0120】
例3~5及び8(E3~E5及びE8)ならびに比較例2~3(CE2~CE3)を大気圧下で乾燥させた。
【0121】
例1-2(E1-E2)及び比較例1(E1)、ならびに例3-5及び8(E3-E5及びE8)及び比較例2-3(CE2-CE3)による包埋生成物の圧力差は、前記包埋生成物の乾燥時間に実質的に影響しないと推測される。
【0122】
例E1~E5及びE8ならびに比較例CE1~CE3の各包埋生成物の安定性及び均質性を評価した。
【0123】
安定性は、最大3年の期間にわたってバイアル内の包埋生成物の視覚的手段によって評価した。包埋生成物の剥離がないこと、及び経時的な亀裂がないことは、包埋生成物の優れた安定性を示し、表1及び表2において「+」記号によって示されている。反対に、包埋生成物に剥離及び/又は亀裂がある場合は、表1及び表2において「-」記号によって示されている。
【0124】
均質性はまた、バイアル内の包埋生成物の視覚的手段によって評価した。生成物の構造の均一性、その色及び巨視的レベルでの潜在的な凝集体形成を検査した。包埋生成物の優れた均質性を示す色の不一致及び/又は凝集体の形成がないことは、表1及び表2において「+」記号で示されている。反対に、包埋生成物に色の不一致及び/又は凝集体形成がある場合は、表1及び表2において「-」記号によって示されている。
【表1】
【表2】
【0125】
表1の結果は、マトリックス材料(MA)としてのスクロースと、本発明による量の硝酸ウラニル(UO2(NO3)2)及び硝酸プルトニウム(Pu(NO3)4)とからなる包埋生成物が、3年までの期間にわたって優れた安定性及び優れた均質性を示すことを示している(例E1及びE2)。
【0126】
対照的に、スクロース(S)対硝酸ウラニル(UO2(NO3)2)及び硝酸プルトニウム(Pu(NO3)4)のモル比が1.4であり、したがって特許請求の範囲から外れている、比較例CE1による包埋生成物は、1年以内にその剥離をもたらし、これはその不十分な安定性を示す。また、本来、サンプルのオレンジ色は均一ではなく、包埋生成物の不均一な分布を示していた。
【0127】
表1の結果は、本発明による多種多様な糖類(S)、すなわちスクロース、フルクトース、マンノース、及びグルコース、ならびにランタニド、アクチニド、又はそれらの化合物の多種多様な化合物が、前記包埋生成物の安定性及び均質性を損なうことなく使用され得ることをさらに示す。
【0128】
表2の結果は、包埋生成物が糖類(S)としてのスクロース、追加の化合物としての二酸化ケイ素(SiO2)、及びCe(NO3)3.6H2Oからなる場合、マトリックス材料(MA)中の糖類(S)の量が特許請求の範囲内にあるとき(E8)、優れた安定性及び均質性を示したことを示している。
【0129】
対照的に、マトリックス材料(MA)の総重量に対する包埋生成物中の糖類(S)の量が特許請求の範囲外である場合(CE2:21wt.%及びCE3:51wt.%)、前記包埋生成物は、数日以内に不完全な包埋又は部分的な剥離のいずれかを示し、これは安定性が低いことを示している。さらに、巨視的レベルで凝集体の形成が観察された。
【国際調査報告】