(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-10-23
(54)【発明の名称】書き込み可能・消去可能媒体および手持ち可能な書き込みデバイス
(51)【国際特許分類】
G02F 1/1673 20190101AFI20241016BHJP
【FI】
G02F1/1673
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024516749
(86)(22)【出願日】2022-09-22
(85)【翻訳文提出日】2024-04-23
(86)【国際出願番号】 EP2022076437
(87)【国際公開番号】W WO2023046863
(87)【国際公開日】2023-03-30
(32)【優先日】2021-09-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
(71)【出願人】
【識別番号】524097126
【氏名又は名称】フレシェイプ エス エイ
(74)【代理人】
【識別番号】100125818
【氏名又は名称】立原 聡
(72)【発明者】
【氏名】ヨン-チェン クン
(72)【発明者】
【氏名】ユーハン リウ
【テーマコード(参考)】
2K101
【Fターム(参考)】
2K101AA05
2K101BA02
2K101BB29
2K101BB43
2K101BC03
2K101BC31
2K101BE02
2K101BE61
2K101EB95
2K101EC05
2K101EE12
2K101EJ02
2K101EJ21
2K101EJ32
(57)【要約】
本発明は、書き込み可能・消去可能な受動媒体に視覚表現を生成するための手持ち可能な書き込みツールに関する。本発明は、書き込みツールおよび媒体の組立体を更に提供する。書き込みツールは、非可視光を検出することが可能なセンサーと、ツールの個々のインデューサーエンティティを有効化する、および/または無効化することにより、媒体の画像要素を誘導して視覚表現を生成するように構成されたデータ処理エンティティとを備える。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
書き込み可能・消去可能媒体(20)に視覚表現(50)を生成することに適した手持ち可能な書き込みデバイス(10)であって、前記手持ち可能な書き込みデバイス(10)が、
- 非可視光を検出することが可能なセンサー(21)であって、前記書き込み可能・消去可能媒体に関連した二次元マーカー情報(31、32)に関連した信号を生成するように構成された前記センサー(21)と、
- 複数のインデューサーエンティティ(41、42、…)であって、各前記インデューサーエンティティが、第1の状態である誘導状態と第2の状態であるパッシブ状態との少なくとも2つの状態を独立してとるように構成されており、前記第1の状態にあるとき、前記インデューサーエンティティが、所定の量のエネルギーを所定の方向に向かわせるように構成される、前記複数のインデューサーエンティティ(41、42、…)と、
- 前記第1の状態と前記第2の状態との間でスイッチングするために個々の前記インデューサーエンティティ(41、42、…)に作用するように構成されたデータ処理エンティティ(60)であって、前記データ処理エンティティが、前記センサー(21)により生成された前記信号に基づいて、および、前記書き込み可能・消去可能媒体に生成される前記視覚表現に基づいて、前記インデューサーエンティティに作用するように構成された、前記データ処理エンティティ(60)と、
を備える、手持ち可能な書き込みデバイス(10)。
【請求項2】
前記所定の量のエネルギーは、前記手持ち可能な書き込みデバイス(10)が前記書き込み可能・消去可能媒体に動作可能に配置された状態で、前記書き込み可能・消去可能媒体の画像要素(81)に作用することと、前記画像要素(81)に前記画像要素(81)の位置、構成、配向、および/または光吸収特性を変えさせることとにより、前記書き込み可能・消去可能媒体(20)に当たる可視光の反射に影響を与えることと、前記視覚表現の生成に寄与することとに適したものである、
請求項1に記載の手持ち可能な書き込みデバイス(10)。
【請求項3】
前記センサー(21)により検出され得る前記非可視光を提供するために前記二次元マーカー情報(31、32)により反射される、または吸収される電磁放射波を出射するように構成された光源(70)を更に備える、
請求項1または請求項2に記載の手持ち可能な書き込みデバイス(10)。
【請求項4】
前記データ処理エンティティが、
(i)前記書き込み可能・消去可能媒体における前記手持ち可能な書き込みデバイスの位置、
(ii)前記書き込み可能・消去可能媒体における前記手持ち可能な書き込みデバイスの配向または角度、および、
(iii)前記書き込み可能・消去可能媒体に対する、および、特に前記書き込み可能・消去可能媒体の画像要素に対する、前記インデューサーエンティティのうちの1つ、幾つか、または全ての位置および/または配向、
からなる群から選択された1つまたは複数のものを、前記センサーにより生成された前記信号から特定するように構成された、
請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の手持ち可能な書き込みデバイス(10)。
【請求項5】
前記二次元マーカー情報(31、32)が、可視光に対して透明である、
請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の手持ち可能な書き込みデバイス(10)。
【請求項6】
前記二次元マーカー情報(31、32)が、透明な支持体(30)上に提供される、
請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の手持ち可能な書き込みデバイス(10)。
【請求項7】
前記二次元マーカー情報(31、32)が、複数の二次元のマーカー画像またはコードを含み、前記マーカー画像またはコードが、前記書き込み可能・消去可能媒体の表面(35)にわたって分散されており、前記表面(35)が、前記視覚表現(50)が提供される視認表面に少なくとも部分的に対応する、または重なる、
請求項1から請求項6のいずれか一項に記載の手持ち可能な書き込みデバイス(10)。
【請求項8】
前記マーカー画像またはコードが、アレイを形成している、および/または、行および列状に並んでいる、
請求項7に記載の手持ち可能な書き込みデバイス(10)。
【請求項9】
前記書き込み可能・消去可能媒体に対する前記手持ち可能な書き込みデバイスに関連した位置および/または配向情報、および、特に請求項4における位置情報(i)~(iii)のうちのいずれか1つまたは複数のものを特定するために、前記二次元マーカー情報から反射された、または出射された視認不能な光をキャプチャするときに前記センサーにより生成された前記信号が好ましくは前記データ処理エンティティにより分析されることができるように、前記二次元マーカー情報(31、32)が、複数の二次元のマーカー画像またはコードを含み、各前記マーカー画像またはコードが、特定の前記書き込み可能・消去可能媒体内において固有であり、および/または、各前記マーカー画像またはコードが、非対称である、
請求項1から請求項8のいずれか一項に記載の手持ち可能な書き込みデバイス(10)。
【請求項10】
前記インデューサーエンティティ(41、42、…)が、前記誘導状態にあるとき、磁場、電界、および電磁放射波から選択された1つまたは複数の形態でエネルギーを出射する、
請求項1から請求項9のいずれか一項に記載の手持ち可能な書き込みデバイス(10)。
【請求項11】
適用可能な場合、前記磁場、前記電磁放射波、および前記電界が、画像要素(81)に力または影響を与えるような方向に向けられていることにより、前記視覚表現の生成に寄与する応答を前記画像要素に生成させ、前記応答が、好ましくは、前記画像要素の位置の変化、構成の変化、配向の変化、および/または光吸収特性の変化から選択される、
請求項10に記載の手持ち可能な書き込みデバイス(10)。
【請求項12】
前記誘導状態において、前記インデューサーエンティティ(41、42…)が、
(1)磁場であって、前記画像要素(81)が、有効化された前記インデューサーエンティティにより生成された前記磁場に応答し、および、前記画像要素が、好ましくは、強磁性および/またはフェリ磁性コンポーネントを含む、前記磁場、
(2)電界であって、前記画像要素(81)が、有効化された前記インデューサーエンティティにより生成された前記電界に応答し、および、前記画像要素が、好ましくは、1つまたは複数の電荷をもつコンポーネント、および/または、永久的な、または非永久的な誘導可能な電気双極子を形成するコンポーネントから選択された1つまたは複数のものを備える、前記電界、
(3)電磁放射波であって、前記画像要素(81)が、有効化された前記インデューサーエンティティにより出射された光に応答し、および、前記画像要素が、好ましくは、フォトクロミックおよび/またはフォトエレクトロクロミックコンポーネントを備える、前記電磁放射波、
の形態でエネルギーを出射する、
請求項10または請求項11に記載の手持ち可能な書き込みデバイス(10)。
【請求項13】
光学素子(25)を更に備え、好ましくは、1つまたは複数のレンズ、ミラー、および/またはフィルタを備え、前記光学素子が、前記二次元マーカー情報から反射された、または出射された非可視光を、前記センサー(21)に向けてガイドするように提供されている、
請求項1から請求項12のいずれか一項に記載の手持ち可能な書き込みデバイス(10)。
【請求項14】
消去可能な視覚表現(50)を提供することが可能な書き込み可能・消去可能媒体(20)であって、前記書き込み可能・消去可能媒体(20)が、複数の画像要素(81)を含み、前記画像要素が、前記画像要素の位置、構成、配向、および/または光吸収特性に応じて、前記書き込み可能・消去可能媒体(20)に当たる可視光の反射に影響を与えて前記視覚表現の生成に寄与するものであり、前記書き込み可能・消去可能媒体(20)が、透明な支持体(30)と前記支持体に関連した二次元マーカー情報とを更に備え、前記二次元マーカー情報が、可視光に対して透明である、
書き込み可能・消去可能媒体(20)。
【請求項15】
前記二次元マーカー情報(31、32)が、複数の二次元のマーカー画像および/またはコードを含み、前記マーカー画像および/またはコードが、前記書き込み可能・消去可能媒体の表面(35)にわたって分散されており、前記表面(35)が、視認表面に対応し、または、前記視認表面に少なくとも部分的に重なり、前記視認表面に、前記視覚表現が提供され、および/または、前記視認表面を通して前記視覚表現が前記書き込み可能・消去可能媒体のユーザーに視認可能となる、
請求項14に記載の書き込み可能・消去可能媒体。
【請求項16】
マーカー画像および/またはコードが、前記支持体(30)において、および/または、視認表面にわたって、アレイを形成し、および/または、行および列状に並んでいる、
請求項14または請求項15に記載の書き込み可能・消去可能媒体。
【請求項17】
前記二次元マーカー情報(31、32)が複数の二次元のマーカー画像および/またはコードを含み、各前記マーカー画像および/またはコードが特定の前記書き込み可能・消去可能媒体内において固有であり、および/または、各前記マーカー画像および/またはコードが非対称である、
請求項14から請求項16のいずれか一項に記載の書き込み可能・消去可能媒体。
【請求項18】
請求項1から請求項13のいずれか一項に記載の手持ち可能な書き込みデバイス(10)の制御下で前記視覚表現(50)を表示するように構成された、
請求項14から請求項17のいずれか一項に記載の書き込み可能・消去可能媒体。
【請求項19】
前記二次元マーカー情報を備える透明な前記支持体(30)が、前記書き込み可能・消去可能媒体の一体的な部分である、
請求項14から請求項18のいずれか一項に記載の書き込み可能・消去可能媒体。
【請求項20】
請求項1から請求項14のいずれか一項に記載の手持ち可能な書き込みデバイス(10)と、請求項15から請求項19のいずれか一項に記載の書き込み可能・消去可能媒体(20)とを備える、
組立体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、書き込み可能および消去可能媒体、および、デジタル方式で記憶された、および/または電子的に記憶された情報に基づいて媒体に視覚表現を生成するためのデバイスに関する。本発明は、電子ペーパーの分野に関する。より詳細には、本発明は、視覚表現を生成するための手持ち可能な無線書き込みツール、および書き込み可能および消去可能媒体を提供する。
【背景技術】
【0002】
書き込み可能および消去可能媒体は、ユーザーが概して書き込みツールの支援により視覚表現(グラフィカルまたはテキスト情報)を生成する基材であり、この場合において、視覚表現は消去され得、および新しい視覚表現が生成され得る。黒板は、書き込み可能・消去可能媒体の原形という見方がされ得、ここで、書き込みツールはチョークであり、水などの適切なクリーニング溶媒の支援により黒板をきれいにすることにより媒体が消去される。
【0003】
経時的に摩耗して交換する必要があるチョークといった書き込みツールの欠点、および、媒体に対して消去をするために溶媒を必要とする欠点を回避するような単純な書き込み可能および消去可能媒体が存在する。ユーザーが媒体に情報を書き込むまたは描くことを可能にするよく知られた消去可能媒体は、小さく暗い磁気粒子を含有する濃く不透明な白色液体により充填された基材を備えるMagna Doodleディスプレイである。この場合の書き込みデバイスは、先端を磁石としたスタイラスである。この磁石は、磁石先端部がディスプレイの書き込み面に十分近付いた状態で、暗い粒子に力を加える磁場を生成し、暗い粒子が描画面まで引っ張られることにより視覚効果を生成する。消去の場合、この場合には同じく媒体の背部においてスライドする消去バーの形態をとる磁石により、粒子が描画面から除去される。要約すると、書き込みツールは、磁気画像要素に作用するようにディスプレイ内にエネルギーを向け、これが、媒体における磁気画像要素の位置または配向を変えることにより視覚効果を生成する。
【0004】
Magna Doodleディスプレイは概しておもちゃとして使用され、デジタル方式で記憶された情報を表示するために使用されることはできない。
【0005】
書き込み可能・消去可能ディスプレイに、書き込みツールを使用してユーザーにより直接生成された情報だけでなく、外部ソースからの視覚情報を生成することが望まれる。したがって、合理的な時間効率および再現度で書き込み可能・消去可能媒体に、電子的に記憶された、および/またはデジタル方式で記憶された視覚情報を再現することが目的である。表示プラットフォームにデジタル方式で記憶された視覚情報を生成するための手法は、一度に一筆の書き込みに比べて短時間で全く同じ視覚情報を再現することを可能にするインクジェットまたはレーザープリンターにより紙に印刷することと同程度に単純であり得る。しかし、通常、紙に印刷された視覚情報は消去不可能であり、したがって書き換えられることができない。
【0006】
一般的に使用されるLCD(液晶ディスプレイ)、OLED(有機発光ダイオードディスプレイ)、および、電気泳動ディスプレイは、デジタル方式で記憶された情報を提示するとともに、消去可能な機能を併せて提供し得るディスプレイである。印刷した紙と異なり、例えば数百万個のピクセル制御ユニットを含む受動マトリックスまたは能動マトリックス駆動回路といった内部アドレス指定デバイスが、視覚情報を書き込むために必要とされる。より大きい表示可能面積および表示解像度を実現するために、必要な数のピクセル制御ユニットは更に増加し、このことは、製造の均一性において、より厳しい品質管理、ドライバIC(集積回路)のより高い能力、より複雑なシステムレベル制御を更に必要とし、したがって、製造コストおよび複雑さは単純な線形トレンドより速く増加する。本発明の文脈では、表示可能面積を大きくするための上述の課題が回避され得るように、内部アドレス指定デバイスを含まずに提供され得る書き込み可能・消去可能媒体を提供することが目的である。アドレス指定工程が表示内容を変えるためにしか必要とされないように、双安定な媒体を提供することが目的である。表示可能面積および寸法は好ましくはピクセル制御ユニットの数により制限されず、したがって、表示媒体の形式およびアドレス指定ツールの選択に、より高い柔軟性がある。媒体の製造の複雑さおよび製造コストも低減されなければならない。また一方では、このようなディスプレイは依然として、媒体に視覚表現を生成するための書き込みツールを必要とする。書き込みツールは外部的なものであり得、または、媒体は書き込みツールと一体的に提供され得る。
【0007】
電子的に駆動される書き込み可能・消去可能媒体はeペーパーを包含する。電子ペーパーはおそらくXerox corporationのNick Sheridonにより1970年代に最初に開発された。Gyriconと呼ばれる最初の電子ペーパーは、直径75マイクロメートルから106マイクロメートルの間のポリエチレン球からなる(米国特許第5,389,945号、米国特許第5,389,945号)。各球は、一方側における負に帯電した黒色プラスチックと他方側における正に帯電した白色プラスチックとから構成されている(したがって、各ビーズは双極子である)。球は透明シリコーンシートに埋設されており、球が自由に回転し得るように、各球が油の泡内に浮かべられている。ディスプレイはシリコーンシートの両側に多くの電極を備え、したがって、電界がシートにおける任意の所望の位置に生成され得る。したがって、電極の各ペアに印加される電圧の極性が、白色側または黒色側のどちらが表向きになるかを決定し、したがって、ピクセルに白色の外観または黒色の外観を与える。
【0008】
米国特許第5,389,945号は、ワークステーションに無線により接続されたアドレス指定ペンを使用したGyricon eペーパーディスプレイを開示している。ディスプレイは、ペン速度およびアライメントを追跡するために、ペンにおける適切なセンサーと連携するための位置合わせマークをディスプレイの側部に備える。ペンは調節電極の列を更に含む。アドレス指定ペンがディスプレイシートに対して動かされ、および、アレイにおけるその個々の調節電極における電圧が、リモートワークステーションに現れる書き込まれる文書におけるピクセル情報に従ってスイッチングされるとき、電極と電気伝導グランド平面との間に電界が確立される。電界はGyricon球の配向に影響を与え、したがって、eペーパーにおける視覚表現の生成をもたらす。しかし、このシステムにおいて必要とされる電界を生成するために必要とされる電圧は非常に高く、真の無線ペンを実現することは困難となる。更に、この概念は、媒体の枠における位置合わせマークの存在を必要とする。枠は、表示するために利用可能な表面を小さくし得る。更に、この概念は、ペンが横方向にディスプレイ全体をカバーするほど十分に大きいことを必要とする。言い換えると、この概念は、eペーパーが必然的にペンの長手方向の長さより狭いという点で、ディスプレイ(またはeペーパー)のサイズを制限する。原理的に、センサーが位置合わせマークをキャプチャし得ることを確実なものとするために、ペンが案内されることを必要とする。
【0009】
米国特許第6,498,597号は、円筒ケースに収容された巻物様の柔軟な媒体を開示している。このeペーパーの動作モードは、米国特許第5,389,945号に対して既に説明されているGyricon材料に基づくものと同様である。
【0010】
米国特許第6,806,453号は、局所的な電界に影響されやすい双安定エレクトロクロミック色素を含む紙様の書き換え可能シートにわたるスキャニングのための手持ち式スキャン印刷デバイスを開示している。このシステムの欠点は、デバイスに含まれる印刷ヘッドの位置および配向をデバイスが特定することを可能にする情報を取得するために、元の画像のスキャニングが必要とされることである。結果として、画像はスケール調整されることができず、様々なサイズをもつ書き込み可能シートとともに独立して使用されることができない。
【0011】
米国特許出願公開第2006/0170981号は、書き込みヘッドを使用して双安定媒体に書き込むためのシステムを開示している。書き込みヘッドは、媒体の電極と電気的に接触したときに対応するピクセルをアドレス指定する書き込み電圧を誘起し得る書き込み電極を含むローラーを備える。この教示は、電気的接触、ひいては、書き込みヘッドと媒体との間の電流の流れの確立を必要とする。これは、媒体を、ソイリングおよび湿度に起因して機能を損ないやすいものにする。更に、ローラーベースの書き込みヘッドは、デバイスを、手持ち式デバイスとして実現することを困難にする。
【0012】
Christos Mourouziらの「SweepScreen: Sweeping Programmable Surfaces to Create Low-fi Displays Everywhere」、Proc.CHI2018は、磁気泳動面に画像を生成するために動きセンサーと組み合わされた電磁石の列を備える手持ち式書き込みデバイスを開示している。スマートフォンにケーブルを介して接続されたデバイスは、デバイスの位置を追跡するための光学マウスセンサーを備える。この文献は、組み合わされた写真の生成、および、画像の既に印刷された部分を自動的に検出するカメラを提案している。
【0013】
米国特許出願公開第2020/0201454号は、スタイラスが写真の局所的な消去を可能にすることを可能にするために、ディスプレイに配置されたIRセンサーを備える大面積ディスプレイを開示している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明は、上述の目的を解決する。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明者らは、電子的に記憶された、および/またはデジタル方式で記憶されたデータに基づいて視覚表現を生成するために使用され得る書き込み可能・消去可能媒体および/またはeペーパーディスプレイ、好ましくは受動非発光媒体、および/または書き込みデバイスを提供する目的を達成する。
【0016】
例えば複雑で高コストなマイクロ加工工程を必要とする能動マトリックスまたは受動マトリックスといった内部アドレス指定システムを含まない媒体を提供することが目的である。本発明は、使用される材料に関連した、および、軽量な、および/またはフレキシブルなディスプレイの実現に関連した多くの可能性を提供する媒体を提供する。
【0017】
媒体および書き込みツールの相対的な、および/または絶対的な寸法に関連したいかなる制約も課さずに、書き込みツールによりアドレス指定され得る媒体を提供することが目的である。
【0018】
媒体に視覚表現を生成するための手持ち可能な無線書き込みツールを提供することも本発明の目的である。
【0019】
加えて、特に媒体の表面にわたってペン様ドライバデバイスをユーザーが動かすことにより視覚表現を生成するためのペン様の手持ち可能な書き込みツールとの使用に更に適応され得る書き込み可能・消去可能媒体を提供することが目的である。相対的な印刷方向における自由度の観点、および書き込みツールと媒体との間の角度の観点から、より直感的な動作を提供することが目的である。
【0020】
一態様において、本発明は、書き込み可能・消去可能媒体に視覚表現を生成することに適した書き込みデバイスであって、デバイスが、
- 非可視光を検出することが可能なセンサーであって、書き込み可能・消去可能媒体に関連した二次元マーカー情報に関連した信号を生成するように構成されたセンサーと、
- 複数のインデューサーエンティティ(inducer entities)であって、各インデューサーエンティティが、第1の状態である誘導状態(inducing state)と第2の状態であるパッシブ状態(passive state)との少なくとも2つの状態を独立してとるように構成された、複数のインデューサーエンティティと、
- 第1の状態と第2の状態との間でスイッチングするために個々のインデューサーエンティティに作用するように構成されたデータ処理エンティティであって、データ処理エンティティが、好ましくは、
(1)センサーにより生成された信号および/または書き込み可能・消去可能媒体に生成される視覚表現に基づいて、
(2)センサーにより生成された信号および/または書き込み可能・消去可能媒体に生成される視覚表現を考慮して、および/または、
(3)センサーにより生成された信号および/または書き込み可能・消去可能媒体に生成される視覚表現の関数として、
インデューサーエンティティに作用するように構成された、データ処理エンティティと、
を備える、書き込みデバイスを提供する。
【0021】
一態様において、本発明は、書き込み可能・消去可能媒体に視覚表現を生成することに適した書き込みデバイスであって、デバイスが、
- 非可視光を検出することが可能なセンサーであって、書き込み可能・消去可能媒体に関連した二次元マーカー情報に関連した信号を生成するように構成されたセンサーと、
- 複数のインデューサーエンティティであって、各インデューサーエンティティが、第1の状態である誘導状態と第2の状態であるパッシブ状態との少なくとも2つの状態を独立してとるように構成されており、第1の状態にあるとき、インデューサーエンティティが、所定の量のエネルギーを所定の方向に向かわせるように構成された、複数のインデューサーエンティティと、
- 第1の状態と第2の状態との間でスイッチングするために個々のインデューサーエンティティに作用するように構成されたデータ処理エンティティであって、データ処理エンティティが、センサーにより生成された信号に基づいて、および/または、書き込み可能・消去可能媒体に生成される視覚表現に基づいて、インデューサーエンティティに作用するように構成された、データ処理エンティティと、
を備える、書き込みデバイスを提供する。
【0022】
一態様において、本発明は、本発明の書き込み可能・消去可能媒体に書き込むように、本発明の書き込み可能・消去可能媒体を駆動するように、および/または、本発明の書き込み可能・消去可能媒体をアドレス指定するように構成された書き込みツールを提供する。
【0023】
一態様において、本発明は、本発明の書き込み可能・消去可能媒体にデジタル方式で記憶された視覚情報の視覚表現を生成するように構成された書き込みツールを提供する。
【0024】
一態様において、本発明は、媒体における画像要素の位置、構成、配向、および/または光吸収特性に応じて、書き込み可能・消去可能媒体に当たる可視光の反射および/または透過に影響を与える、および、視覚表現の生成に寄与する、複数の画像要素を含む、書き込み可能・消去可能媒体を提供する。好ましくは、媒体は二次元マーカー情報を更に含む。
【0025】
一態様において、本発明は、消去可能な視覚表現を提供することが可能な書き込み可能・消去可能媒体であって、媒体が、画像要素の位置、構成、配向、および/または光吸収特性に応じて、書き込み可能・消去可能媒体に当たる可視光の反射に影響を与える、および、視覚表現の生成に寄与する、複数の画像要素を含み、媒体が、二次元マーカー情報を更に含み、マーカー情報が、可視光に対して透明な、書き込み可能・消去可能媒体を提供する。
【0026】
一態様において、本発明は、本発明のデバイスにより書き込まれる、アドレス指定される、および/または、駆動されるように構成された書き込み可能・消去可能媒体を提供する。
【0027】
一態様において、本発明は、本発明の書き込みデバイスと書き込み可能・消去可能媒体とを備える組立体を提供する。
【0028】
本発明の更なる態様および好ましい実施形態が、以下の本明細書において、および添付の特許請求の範囲において規定される。本発明の更なる特徴および利点が、以下のように説明される好ましい実施形態の説明から当業者に明らかになる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【
図1】
図1は、本発明の実施形態による手持ち可能なデバイスの概略図である。
【
図2】
図2は、本発明の実施形態による媒体の概略的な上から見下ろした図であり、例示を目的としてマーカーコードが視認可能に示され、および拡大されている。
【
図3】
図3は、
図2の書き込み可能・消去可能媒体、および、書き込み可能・消去可能媒体の画像要素に対して動作可能に配置された
図1の手持ち可能なデバイスのインデューサーエンティティを示す概略断面図である。
【
図4】
図4は、本発明の実施形態による、媒体における視覚情報の生成を示す。
【
図5】
図5は、本発明の実施形態による手持ち可能なデバイスにおける、個別にアドレス指定可能なインデューサーエンティティの配置を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、本発明のデバイスの好ましい実施形態が、本発明の範囲を限定するという意図は一切伴わずに本発明を示すために説明される。
【0031】
本発明は、書き込み可能・消去可能媒体のための書き込みデバイスに関し、および、書き込みデバイスにより書き込まれ得る媒体に関する。
【0032】
「媒体」という用語は本発明の文脈では、視覚表現が表示され得る表面を備える、ディスプレイ、スクリーン、プラットフォーム、eペーパー、および任意の他の種類の基材を包含する。好ましくは、媒体は、概して滑らかな、および好ましくは平らな、および/または平坦なディスプレイ表面を備える。媒体は、柔軟な、および/または湾曲した媒体でもあってもよい。
【0033】
「視覚表現」という用語は、例えば文字、語句、数、サイン、テキストなどの画像、グラフ、線、および書き込まれた情報を含むグラフィカル情報を包含する。「視覚表現」は好ましくは、人の目により視認可能であり、および識別可能であり、したがって、可視スペクトルにおける光を反射する、または出射する。「視覚表現」は好ましくは、本発明のデバイスにおいて電子的な、および/またはデジタルデータの形態により提供され、および/または存在し、および、このようなデータに基づいてデバイスにより生成される。本発明は書き込み可能・消去可能媒体に関するので、媒体に生成された視覚表現は好ましくは、書き込み可能であり、および/または消去可能である。
【0034】
本発明のデバイスおよび/またはツールにより生成された視覚表現は好ましくは、安定であり、半安定であり、および/または双安定である。視覚表現が生成された後、視覚表現は、好ましくは画像または情報媒体の所望の目的を満たすほど十分に長い期間にわたって可視状態に、および/または読取り可能なままである。例えば、生成された後、視覚表現は好ましくは30秒間から48時間以上、好ましくは1分から24時間以上、より好ましくは5分から12時間以上、最も好ましくは10分から6時間以上存在する。
【0035】
「書き込み可能・消去可能な」という用語は、視覚表現が示され得ること、および、媒体から消去され得ること、例えばキャンセルされること、またはクリアされること、および、その後に新しい他の、および/または同じ視覚表現が示され得ることを表す。媒体は、反復的な書き込みおよび消去のために使用され得、したがって、好ましくは書き換え可能である、および/または再消去可能である。媒体における視覚表現の生成は、好ましくは本発明の書き込みツールにより行われる、媒体に書き込むこと、媒体に印刷すること、媒体にアドレス指定すること、および/または媒体を駆動することと考えられ得る。
【0036】
図1は、本発明の実施形態による書き込みツール10の実施形態を示す。実際に書き込みツールは視覚表現を生成するために媒体に含まれる画像エンティティに作用するように構成されているので、書き込みツールは、「書き込みデバイス」、「アドレス指定デバイス」、「印刷デバイス」、または「ドライバ」とも呼ばれ得る。
【0037】
書き込みツール10は好ましくは、デジタルの情報および/または電子的な情報、好ましくはデジタル方式で記憶された、および/または電子的に記憶された情報を使用するように、および、媒体に対応する視覚表現を生成するためにその情報に基づいて媒体に作用するように構成される。デジタル方式で記憶された情報を書き込む、消去する、および書き換える能力に起因して、本発明の媒体は、電子ペーパーまたはeペーパーとも呼ばれ得る。
【0038】
書き込みツール10は好ましくは無線である。書き込みツール10は好ましくは、無線通信モジュールまたはユニット61を備える。更に、書き込みツールは好ましくは、例えば電池または太陽電池セル(図示されていない)といった電気エネルギーの内部供給源を備える。
【0039】
書き込みツール10は好ましくは手持ち可能である、および/または手持ち式である。書き込みツール10は好ましくはユーザーの手に保持されることに適応され、したがって、ユーザーは、
図4に示されているように、および本明細書において以下でより詳細に説明されるように、媒体の上で書き込みツール10を動かし、および好ましくはスライドさせ得る。したがって、書き込みツール10は、好ましくは比較的軽い重さ、例えば1kg以下、好ましくは500g以下、より好ましくは100g以下をもつ。例えば、書き込みツールは10gから100gの重さをもつ。好ましくは、書き込みツールは平均的な人により、および好ましくは更には子供により手軽に操作され得、更に、任意の時点での、例えば外出中での使用のためにユーザーにより携帯されやすい。
【0040】
書き込みツール10は、
図1および
図4に示されるように長尺バーの形態により実現され得るが、それを手による操作に適したものにする任意の形状をもってもよい。例えば、書き込みツールは、手の把持に適応された、および手持ちによる使用を円滑にする人間工学的に適応された外形をもち得る。
【0041】
書き込みツール10は、ツールが媒体に視覚表現を書き込むために使用されるとき、媒体の媒体表面35に接触しており、媒体の媒体表面35の非常に近傍にあり、または、媒体の媒体表面35から所定の最大動作距離内にあることを意図した下側の、好ましくは実質的に平坦な表面11を更に備える。媒体に視覚表現を書き込むためにデバイスが使用されるときのデバイスの位置は、媒体に対するデバイスの「動作上の」および/または「動作可能な」位置でもある。この位置において、デバイスの平らな下面11は概して媒体の上面35にできる限り近くにあり、表面11および35は実質的に平行に広がっている。
【0042】
本明細書における他の場所で説明されるように、書き込みデバイスが媒体に直接接触していない状態での動作可能な位置が更に存在し得る。例えば、書き込みデバイスが媒体から離隔した状態での、および/または、書き込みデバイスの下面11が特に媒体の視認表面35に対して傾いたある角度で配置された状態での、動作可能な位置が存在し得る。
【0043】
書き込みツールはケーシング12を備え、内部コンポーネントは概してケーシング内部に組み込まれ、および/または、ケーシングにより、またはケーシング内に保持されることに留意されたい。下面11はケーシングの一部と考えられ得る。
【0044】
書き込みツールは好ましくは、1つまたは複数のセンサー21を備える。センサーは好ましくは、例えばUV(紫外線)および/または赤外線(IR)などの非可視光をキャプチャに適している。実施形態において、1つまたは複数のセンサーが排他的にUV光を、排他的にIR光を、または、排他的にIRおよびUV光をキャプチャする。
【0045】
本明細書の目的では、UV光は10nmから400nmまでの波長をもつ光である。
【0046】
本明細書の目的では、IR光は700nmから1mmより長い波長をもつ光である。
【0047】
本明細書の目的では、可視光は、400nmから700nmより長い波長をもつ光である。
【0048】
センサーは好ましくは2D画像センサーである。センサー(または幾つかのセンサー)が好ましくは、二次元(2D)パターンをキャプチャすること、および2Dパターンに関連した信号を生成することに適している。以下でより詳細に説明されるように、2Dパターンは好ましくは媒体に関連したマーカー情報である。
【0049】
実施形態において、センサー21はCMOSまたはCCD画像センサーから選択される。
【0050】
実施形態において、ツールは光学素子25を備える。光学素子は、表面からセンサーに向かって反射された光をガイドする、方向付けする、集束させる、および/またはフィルタリングするために提供される。光学素子は好ましくは、媒体におけるマーカーの画像が、センサーにより明確に、および/または効果的にキャプチャされ得るように配置される。光学素子は、レンズ、ミラー、および光フィルタからなる群から選択された1つまたは複数のものを含み得る。光学素子により方向付けされた光は好ましくは、媒体に関連したマーカー情報から反射された、または出射された非可視光を包含する。光学素子は好ましくは、使用中に媒体の媒体表面35の近くにある、および好ましくは媒体の媒体表面35に接触した下面11における開口またはウィンドウに当たる光をキャプチャするように配置される。
【0051】
実施形態において、書き込みデバイスは好ましくは光源70を備える。好ましくは、光源は、非可視光、好ましくはIRおよび/またはUV光、より好ましくは排他的にIRおよび/またはUV光を出射する。デバイス10が媒体の表面35に動作可能に配置されたとき(
図3)、源70により出射された光が、媒体内に、または媒体上に含まれるマーカー情報31により反射されたとき、光学システム25に向けられるように、およびセンサー21にガイドされるように、光源70および光学素子25が好ましくはデバイスに配置される。
【0052】
好ましくは、光源およびセンサーは書き込みデバイスの一体的な部分である。
【0053】
例えばデバイスが直射日光の存在下で使用されるときといった、マーカー情報31により反射された環境からの十分な光が存在する状況では、光源は必要とされない場合があり得ることに留意されたい。しかし、デバイスは好ましくは全ての状況において動作可能であるように構成されているので、センサーが全ての状況において解釈可能な信号を生成するように、十分な光が反射されることを確実なものとするために、光源が好ましくは存在する。
【0054】
書き込みツールは好ましくは、例えばマイクロプロセッサおよび/またはCPU(中央処理ユニット)63と、特に例えばRAMおよび/またはROMメモリなどのデジタル方式で記憶される情報のためのメモリを包含するメモリ62とを備えるデータ処理エンティティ60を備える。メモリに記憶された情報は好ましくは、媒体に表示される視覚表現に関連する。メモリ62は更に、ツールに取り外し可能に接続された、または挿入された、例えばUSBスティックまたはメモリカードといった、例えば外部メモリの形態をとる取り外し可能なメモリであり得る。
【0055】
別の実施形態では、本発明は、視覚表現が生成される間に、視覚表現に対応したデジタルおよび/または電子データがリアルタイムに無線伝送により通信され、したがって、本発明のデバイスに必ずしも記憶されず、または部分的にのみ記憶されることを包含する。データは例えば、ワークステーションの無線モジュールから、または、データが例えば無線伝送により送信され得る任意の他の源から送信され得る。
【0056】
好ましくは、本デバイスは、デバイスを動作させるためのソフトウェアおよび/またはファームウェアを備える。
【0057】
実施形態において、データ処理エンティティは(i)書き込み可能・消去可能媒体における手持ち可能なデバイスの位置、(ii)書き込み可能・消去可能媒体における手持ち可能なデバイスの配向または角度、および、(iii)書き込み可能・消去可能媒体に関連した、および特に書き込み可能・消去可能媒体の画像要素に関連したインデューサーエンティティのうちの1つ、幾つか、または全ての位置および/または配向、からなる群から選択された1つまたは複数のものを、センサーにより生成された信号から特定するように構成されている。
【0058】
好ましくは、参照される位置は書き込み可能・消去可能媒体に対する書き込みデバイスの絶対位置である。好ましくは、位置は相対位置、すなわち書き込みデバイスの以前の位置に対して特定された位置ではない。
【0059】
マーカー情報は好ましくは2D情報であるので、データ処理エンティティは好ましくは媒体に対する、および特に媒体の視認表面に対する書き込みデバイスの距離および/または角度を更に特定するように構成される。インデューサーエンティティ、およびインデューサーエンティティにより使用される手法またはエネルギーに応じて、インデューサーエンティティおよび画像要素が一方と他方との関係で動作可能な位置にある限り、書き込みデバイスが表面からある距離にある状態で画像が生成されてもよい。しかし媒体の視認表面11における書き込みデバイス10のスライドは、例えば書き込みデバイスと媒体との間の直接的な物理的な接触を伴うことが好ましいが、書き込みおよび/または消去は、書き込みデバイスと媒体とが一方と他方との関係においてある距離ぶん離隔している状態で、特に直接的な接触を伴わずに、書き込みデバイスと媒体との間の他の相対位置において行われてもよい。
【0060】
デバイスは好ましくは、デバイスが視覚表現を生成するために媒体における特定の(動作可能な)位置にあるとき、どのインデューサーエンティティがどれくらいの期間にわたって有効化される、および/または無効化される必要があるかを特定することが可能なアルゴリズムを備える。デバイスが媒体の上でユーザーにより動かされるとき(
図4)、アルゴリズムがどの時点でどのインデューサーエンティティを有効化するか、および/または無効化するかを特定するとも言うことができる。
【0061】
CPUおよび/またはデバイスは好ましくは、好ましくはツールの下面11付近に提供されたインデューサーエンティティ41、42、43などを制御するために、センサー21から受信された信号、および、視覚表現に関連したデジタル情報を使用するように構成される。参照符号64は、インデューサーエンティティのアクティビティを制御するためのデータバスおよび/または電線を示す。
【0062】
インデューサーエンティティは、データ処理エンティティ60により制御されるように、すなわち、有効化されるように、および無効化されるように、例えば、オンおよび/またはオフにスイッチングされるように構成される。各インデューサーエンティティは、第1の有効化された状態および/または誘導状態において、および第2のパッシブ状態または非誘導状態において、他のユーザーエンティティから独立して存在し得る。
【0063】
本発明のデバイスは好ましくは、複数のインデューサーエンティティを備える。好ましくは、本デバイスは、5個から10000個のインデューサーエンティティ、より好ましくは7個から5000個のインデューサーエンティティ、および更により好ましくは10個から2000個のインデューサーエンティティを備える。好ましい実施形態において、本デバイスは、20個から500個のインデューサーエンティティを備える。
【0064】
実施形態において、本デバイスは、25個以上の、好ましくは30個以上の、および最も好ましくは50個以上のインデューサーエンティティを備える。
【0065】
有効状態(active state)にあるとき、インデューサーエンティティは好ましくは、既定の方向に、特に使用中に媒体表面35の近くにある、または更には媒体表面35に接触したデバイスの下面11に隣接した方向に、既定量のある形態のエネルギーを出射する。既定量のエネルギーは好ましくは、媒体に入ることに適しており、および媒体に含まれる画像要素に作用することに適しており、および、画像要素に応答を生成させることに適しており、この応答が媒体により反射される、または出射される光に好ましく影響を与える。
【0066】
デバイス10のインデューサーエンティティが媒体における画像要素に作用する上述の工程は、媒体における視覚表現の生成である書き込み工程を提供する。所望の視覚表現を生成するために、視覚表現を生成するために使用される(例えば視認可能にされる)特定の画像要素に対してある空間位置に特定のインデューサーエンティティがあるとき、ツールは好ましくは、特定のインデューサーエンティティを有効化し、その空間位置は、インデューサーエンティティが画像エンティティに作用する、および/または、画像エンティティの応答を誘導し、以て、視覚表現に寄与する視覚効果を生成することを可能にする。空間位置は概して、インデューサーエンティティと画像要素との間の距離、インデューサーエンティティの相対位置または配向、および、インデューサーエンティティから出射される特定の形態のエネルギーに依存する。
【0067】
上記の説明によると、「所定の方向における所定の量のエネルギー」という表現は概して、有効化されたとき、インデューサーエンティティが、本明細書において説明されているように、媒体における特定の位置に存在する1つまたは複数の画像要素に、視覚表現の生成に寄与する応答を生成するように構成されることを意味することを意図したものである。
【0068】
インデューサーエンティティが画像要素に作用するとき、後者は概してその位置、構成、配向、および/または光吸収特性を変えられ、以て媒体に当たる可視光の変調(例えば反射)に影響を与え、視覚表現の生成に寄与する。
【0069】
本発明の文脈では、「所定の方向における所定の量のエネルギー」は、有効化されたときに、画像要素の方向に、電磁力を生成する、および/または調節する、および/または、電磁エネルギーを出射するインデューサーエンティティの能力を表す。好ましくは、誘導状態にあるとき、インデューサーエンティティは、磁場、電磁放射波、および電界から選択された1つまたは複数の形態でエネルギーを出射する。
【0070】
実施形態において、インデューサー要素は好ましくは、磁場、電界、および電磁放射波から選択された1つまたは複数のものを生成するように、または調節するように構成される。
【0071】
好ましくは、適用可能な磁場、電界、および電磁放射波は、画像要素に力または影響を与えるために、このような手法により、および/または、このような方向に方向付けられ、以て、画像要素の応答を誘導し、応答は視覚表現の生成に寄与する。
【0072】
上記の説明から明らかなように、有効化されたインデューサー要素により与えられたエネルギーおよび/または力に応答するように、画像要素が選択される。有効化されたインデューサー要素に対する画像要素の応答は、画像要素の位置、構成、配向、および/または光吸収特性の変化から選択された1つまたは複数のものである。
【0073】
画像要素の位置、構成、および/または光吸収特性の変化は、所望の視覚効果が媒体に生成されるようにされている。画像要素の応答は、以て、書き込み可能・消去可能媒体に当たる可視光の反射に影響を与え、以て、視覚表現の生成に寄与する。
【0074】
書き込むときに、有効化されたインデューサー要素が、限られた、好ましくは既定数の画像要素に作用し、これらの画像要素が媒体における特定の位置に存在するように、書き込みツールおよび媒体が構成されていることに留意されたい。概して、有効化されたとき、インデューサー要素により出射されたエネルギーまたは力は、インデューサー要素に最も近い限られた数の画像要素における応答を誘導するためだけに十分であり、および/または、それは、インデューサー要素に対して特定の、好ましくは所定の位置および/または配向にあり、その位置は誘導位置と呼ばれ得る。
【0075】
実施形態において、インデューサーエンティティは、磁場の形態でエネルギーを出射する(または磁場を生成する)。この場合において、画像要素は好ましくは磁場に応じたものとなる。好ましくは、画像要素は、強磁性および/またはフェリ磁性コンポーネントを備える。
【0076】
実施形態において、インデューサーエンティティは、電界の形態でエネルギーを出射する(または電界を生成する)。この場合において、画像要素は好ましくは電界に応じたものとなる。好ましくは、画像要素は1つまたは複数の電荷をもつ材料から選択され、材料は1つまたは複数の永久的な、または非永久的な電気双極子を備える。非永久的な双極子は、電気双極子を形成するために概して電界により誘導され得る材料である。更に、非永久的な電気双極子は、電界の存在下においてそれらの配向を調節し、したがって、本発明により使用され得る。
【0077】
実施形態において、インデューサーエンティティは、電磁放射波の形態でエネルギーを出射する(または電磁放射波を生成する)この場合において、画像要素は好ましくは電磁放射波に応じたものとなる。好ましくは、画像要素は、フォトクロミック、フォトエレクトロクロミック、蛍光、および/または燐光コンポーネントから選択された1つまたは複数のものを備える。
【0078】
好ましくは、有効状態において、インデューサーエンティティにより与えられるエネルギーまたは力は、好ましくは所望の視覚効果をもたらす所望の応答を画像要素に生成させることに適している。上述のように、視覚効果は好ましくは安定している、半安定している、および/または双安定である。
【0079】
完全性を期すために、インデューサーエンティティが有効化されていない、非有効化されている、または無効化されている場合、インデューサーエンティティがこのような画像エンティティに対して動作可能な距離または配向にあるときでも、その非有効化された、または無効化されたインデューサーエンティティにより放射され得る電磁力、エネルギー、または光は、好ましくは、媒体に画像エンティティの視覚的に認識可能な応答を誘導するほど十分ではないと説明される。好ましい実施形態では、非有効化された、または無効化されたインデューサーエンティティは、当てはまる場合、電界、有効な磁場から選択された1つまたは複数のものを生成せず、および/または、電磁放射波を出射しない。
【0080】
インデューサーエンティティが磁場の形態でエネルギーを出射するとき、インデューサーエンティティは、例えば永久磁石および/または電磁石を備え得る。例えば、インデューサーエンティティが永久磁石を備える場合、インデューサーエンティティの有効化は、デバイス10の下面11のより近くに永久磁石を移送することであり得、その結果、下面においてツールから出る磁場が媒体に含まれる強磁性および/またはフェリ磁性画像要素に作用するほど十分に強くなる。この構成において、デバイス10は好ましくは、画像要素に作用するほど十分なエネルギーを生成するために、永久磁石に作用するための、例えば磁石を引くための、および押すための機械システムを備える。
【0081】
導入部で言及されているMagna Doodleディスプレイは、永久磁石の磁場の影響下で生成される視覚表現の例である。
【0082】
インデューサー要素が電磁石を備える実施形態では、インデューサー要素は、単に電磁石構成におけるコア材料を囲むコイルを通る電流をガイドすることによりオンおよびオフにスイッチングされ得る。
【0083】
インデューサーエンティティが画像要素に作用する電界を生成するように構成された実施形態では、インデューサー要素は好ましくは、オンおよびオフにスイッチングされ得る電極を備える。電極はアレイの形態で提供され得る。電界に反応する画像要素の例として、各ビーズに双極子モーメントを与える表面電荷をもつ球形ビーズに基づくGyricon eペーパーディスプレイシステムが挙げられ得る。このようなビーズの製造は、米国特許第6,097,531号において説明されている。ビーズは油を充填されたカプセル内に提供され、ビーズは電界に応じて回転し得る。回転位置に応じて、ビーズは、媒体の視認表面に特定の色、黒色、または白色を露出し得る。
【0084】
インデューサーエンティティが画像要素に作用する電磁放射波を生成するように構成された実施形態では、インデューサー要素は好ましくは光源を備え、画像要素は好ましくは、フォトクロミック、フォトエレクトロクロミック、蛍光、および/または燐光材料から選択された1つを備える。したがって、インデューサー要素の光源により照射されたとき、画像要素は所望の色特性を変える、および/または示す。例えば、画像要素は、画像要素に衝突する光の波長に応じて色を変え、または発し得る。フォトクロミック媒体を開示している例示的な文書は、JP2004-258474である。
【0085】
本明細書の目的では、黒色と白色とが色と考えられる。
【0086】
本例では、画像要素は分子および粒子から選択され得るので、各画像要素のサイズは特に限定されないことに留意されたい。所望の解像度に応じて、比較的小さい、好ましくは人の目が独立したエンティティとして区別し得るものの境界に近い画像要素を含むことが好ましい。実施形態において、本発明の画像要素は、0.5nm(分子の場合)から1.5mm、好ましくは1nmから1mm、更により好ましくは5nmから0.5mmの範囲内の最大寸法をもつ。
【0087】
画像要素が、例えば強磁性体またはフェリ磁性粒子、および/または、永久的な、または非永久的な双極子モーメントをもつ、および/または電荷をもつ粒子といった粒子である場合、粒子の寸法は好ましくは、ナノおよびマイクロ粒子から選択され、好ましくは1nmから200μm、好ましくは0.5μmから100μm、最も好ましくは1μmから50μmの範囲内である。実施形態において、粒子は1μm~10μmの平均寸法をもつ。
【0088】
本明細書で明らかなように、有効化されたインデューサーエンティティに対する1つの画像要素の応答は、人の目で認識可能な媒体における変化を生じさせるほど十分ではないものであり得る。したがって、
図3に示されているように、有効化されたインデューサーエンティティは概して複数の画像要素において応答を生成する。当業者は、例えば磁界および/または電界の大きさおよび/または電磁放射波の強度といった、出射されるエネルギー量を調節することにより、媒体の画像要素におけるインデューサーエンティティにより生成される応答を調節し得ることに留意されたい。
【0089】
本発明は、書き込みツール10(
図4)によりアドレス指定されたとき、または駆動されたとき、視覚表現50を表示するように構成された媒体20を更に提供する。
【0090】
好ましい実施形態では、媒体20はマーカー情報を含む。マーカー情報は好ましくは2Dマーカー情報である。
【0091】
2Dマーカー情報は好ましくは、
図2に示されているように、複数のマーカー画像またはコード31、32、…の形態により提供される。マーカー画像またはコード31、32は、例えばQRコードの形態で、または、任意の他の適切な2D表現、画像、サイン、または形状の形態で提供され得る。
【0092】
好ましくは、マーカー情報は透明な支持体30上に提供される。好ましくは、透明な支持体は、媒体の視認表面35の少なくとも一部を提供する。好ましくは、二次元マーカー情報を備える透明な支持体は、媒体の一体的な部分である。実施形態において、支持体は媒体の視認表面を提供する。
【0093】
実施形態において、例えば画像またはコードといったマーカー情報は、書き込み可能・消去可能媒体の表面35にわたって分散されており、表面35は視認表面35に対応し、または視認表面35と少なくとも部分的に重なり、視認表面35上に視覚表現が提供され、および/または、視認表面35を通して視覚表現が媒体のユーザーに視認可能となる。
【0094】
好ましい実施形態では、マーカー情報31、32、…は永久的であり、および/または、誘導可能画像要素81、82…から独立している。好ましくは、例えば画像またはコードといったマーカー情報は、ツールの使用中に生成も誘導もされない。好ましくは、マーカー情報は、好ましくは媒体の耐用期間にわたって所与の媒体に対して不変のまま、および/または同一のまま留まる。
【0095】
図2に示されている実施形態では、特に画像またはコードといったマーカー情報は、一緒にアレイを形成し、および/または、視認表面にわたって行および列状に並んでおり、ラインおよび/または行は好ましくはアレイを形成する。好ましくは、アレイ内の隣接した画像またはコードは、一定の距離ぶん離隔している。言い換えると、アレイの同じラインおよび/または行における1つのコードから次のコードまでの距離は、好ましくは一定に留まる。
【0096】
好ましくは、単位長さ当たりのマーカー密度は、媒体におけるアドレス指定可能な画像ピクセル(または、他の画像ユニット、ドット、区画など(参照符号85、86および
図3の説明を参照されたい))の単位長さ当たりの密度以上である。媒体のマーカーの密度は、書き込みツールおよび媒体のシステムが生成し得る画像の品質を決定する。
【0097】
好ましい実施形態では、各マーカーコードおよび/または画像は非対称である。これは好ましくはマーカーコードの2D態様にも当てはまる。好ましくは、マーカーコードおよび/または画像は、それが提供される2D表面における対称性のaxeを含まない。
【0098】
好ましい実施形態では、各マーカーコードおよび/または画像は、特定の書き込み媒体内において固有である。各マーカーコードおよび/または画像は、好ましくは、マーカーコードおよび/または画像を(頭の中で)回転させたときでも、他のいずれのマーカーコードおよび/または画像とも合同になるように移動させられることができない固有の非対称な画像を含む。これは好ましくは、マーカーコードの2D態様に当てはまる。したがって、所与の幾何学的2D配置体(例えばQRコード)は、各媒体に一度だけ現れ、したがって、媒体における書き込みツールの位置および配向は、ただ1つのマーカー31、32などに基づいて特定され得る。言い換えると、任意のマーカー要素31は、媒体の任意の他のマーカー要素32と完全に異なる。
【0099】
別の実施形態では、一緒に取得された複数のマーカー要素が媒体における固有の2D配置体を提供し、書き込みツールは、例えば書き込みデバイスが静止状態にあるとき、または動いているときに同時に、または比較的短い期間内に複数のマーカー要素をキャプチャすることが可能な1つまたは複数のセンサーを備える。
【0100】
図3は、動作原理を示すために、本発明の実施形態の、書き込みツールから得られる選択されたコンポーネントおよび媒体を示す。
【0101】
示される実施形態では、媒体20は上面35を含み、上面35は更に媒体のディスプレイ表面であり、ディスプレイ表面を通して視覚表現が表示され、および媒体のユーザーより視認可能である。示される実施形態では、上面35は透明基材30の上面であり、その基材は好ましくは可視光に対して透明であるが、IRおよびUV光に対して透明である必要はない。
【0102】
マーカー情報31、32、…は好ましくは基材30に提供される。この実施形態によると、マーカー情報は媒体の視認表面35に直接提供される。
【0103】
ある実施形態(図示せず)において、マーカー情報は透明基材の下側に提供され、基材の反対にある上側は媒体の視認表面35を提供する。この実施形態では、透明基材の下側は好ましくはデバイスの内側に向けられるのに対し、上側は外向きに配向される。このような実施形態において、または更には他の場合において、基材30は更に、書き込みツールの光源70により照射される光(
図1)に対して、および、マーカー情報31、32、…から反射されてセンサー21によりキャプチャされる非可視光(例えばUV、IR)に対して透明である。
【0104】
マーカー情報は、基材30、好ましくは透明基材に印刷され、または刻まれ得る。
【0105】
マーカー情報31、32、…は好ましくは可視光に対して透明であるが、好ましくは非可視光を反射する、および/または吸収する。好ましくは、マーカー情報は、例えばUVおよび/またはIR光といった非可視光を反射する、または出射する。最も好ましくは、マーカー情報は、排他的にUVおよび/またはIR光を反射する、または出射する。
【0106】
図1および
図3を考慮して理解され得るように、書き込みツール10が媒体の上で動かされたとき、書き込みツール10のセンサー20が、マーカー情報により反射された、および/または出射された光に関連した信号を生成する。これらの信号は、媒体のディスプレイ表面における書き込みツールの位置および配向、ひいては更に、媒体における誘導エンティティ(inducing entities)41、42、43…の特定の位置および/または配向、および、特に媒体に含まれる画像エンティティ81または区画85、86に対する誘導エンティティの相対位置を特定するために、データ処理エンティティ60により、例えばデータ処理エンティティに含まれるアルゴリズムにより解釈される。媒体に生成される視覚表現に関連した情報に基づいて、書き込みツール10、および特にデータ処理エンティティ60が、画像要素81を、または区画内に提供された画像要素群を有効化させるために、適切な時期に、および/または、誘導エンティティ41、42が適切な位置にあるときに、誘導エンティティ41、42を有効化する、および/または無効化する。
【0107】
図3に示されている実施形態では、インデューサーエンティティ41、42は電磁石であり、オンにスイッチングされたとき、インデューサーエンティティ41、42は、強磁性および/またはフェリ磁性粒子の形態をとる画像要素81を含む媒体20の内部に侵入する磁場90を生成する。示される実施形態では、これらの強磁性および/またはフェリ磁性粒子は暗いか、または黒色であり、磁場90の影響を受けて視認可能なディスプレイ表面31の方向に引き付けられる。そのようになるとき、それらが、視認表面に色付けされた、暗い、または黒色のスポットを生成するために、白色の、またはクリアな粒子82を押しのける。
【0108】
別の実施形態では、強磁性および/またはフェリ磁性粒子は、クリアな、または白色の、好ましくは半透過性の基質を横断して動き得る。基質は、実質的に不動であり得る。
【0109】
図3に示される実施形態において、画像要素81、82は、空間的に規定された、および/または制限された区画、空洞、ユニットブロック、画像ドット、および/またはピクセル85、86内に提供される。区画は好ましくは個別にアドレス指定可能な画像ドットまたはユニットを提供する、および/または規定する。好ましくは、区画のサイズは一定であり、および/または、ある距離にわたる区画の密度(単位長さ当たりの区画数)は媒体において一定である。
【0110】
区画の1つの目的は、より長い距離のスケールで画像要素の非一様な空間分布をもたらし得る長距離にわたる画像要素の横方向の空間的な動きを制限することである。横壁は、区画のその寸法内における画像要素の量が一定であることを確実なものとすることができ、したがって、画像ドットの達成可能なカラーコントラストが保証され得る。横壁を含まない媒体の場合、画像要素は、磁場の引力に起因して特定の局所的な領域に過度に蓄積し得、幾つかの領域が画像要素を含まない状態をもたらし、結果として、生成された視覚表現の画像品質も低下させられる。
【0111】
図3では、書き込みツール10の下面11は、媒体の基材30と直接的な物理的な接触をしていないように示されている。ツール10は、媒体の上面から離れた所定の、好ましくは一定の距離に下側11を維持するために、例えばデバイスの下側11の幾つかの位置に装着された間隔維持要素(図示されていない)を備え得る。このような間隔維持要素は、媒体上のデバイスのスライドに有利に働く低摩擦材料を含む転がるボールまたはスライドする要素により提供され得る。別の実施形態では、デバイス10の下面11は、媒体の上面上で、基材30上で、および/または、マーカー31、32上で直接スライドする。
【0112】
別の実施形態では、下面11は、インデューサーエンティティ41、42が画像要素81を依然としてアドレス指定し得る設計上の最大動作距離内で、基材30から離れており、下面は基材30に平行とは限らない。この実施形態によると、各インデューサーと対応するアドレス指定している画像要素81との間の距離情報が、画像センサー21によりキャプチャされたマーカー画像の変形に基づいて、記憶されたアルゴリズムにより計算される。例えば、書き込みツール10が媒体表面35から離れている場合、キャプチャされたマーカー画像は、書き込みツール10が媒体表面35に近いときのマーカー画像より小さい。ツール10の下面11が媒体表面35に平行でない場合、キャプチャされたマーカー画像は、書き込みツールが表面35に対してより大きく傾斜している方向においてより小さい寸法を示す。この実施形態は例えば、インデューサー要素が電磁放射波の形態でエネルギーを出射する実施形態に適用され得、この電磁放射波は、書き込みデバイスが媒体から離れた規定の動作距離にある場合でも画像要素における応答を誘導することに適している。
【0113】
図4は、書き込みデバイス10を使用することによる、および、好ましくは媒体20のディスプレイ表面35上を手動でデバイスをスライドさせることによる視覚表現50(本例ではテキスト)の生成を示す。書き込みデバイスのインデューサーエンティティ41、42は概略的にのみ示されている。デバイス10におけるデータ処理エンティティが媒体におけるデバイスの位置を特定しながら、デバイスがインデューサーエンティティ41、42を有効化し、インデューサーエンティティ41、42が媒体20の上で動くときに、インデューサーエンティティ41、42が媒体の画像エンティティに作用して視覚表現50を生成する。
【0114】
この構成において、利点は、書き込みデバイス10が完全に自由に動くものであり、または自由に移動可能であり、他のどのベースステーションおよびデバイスにも接続されていないことである。デバイスは、デバイスの横枠に提供されたマーカーを必要とせず、および、媒体またはその枠上のどこかに提供された何らかの特定の開始点を必要としない。ドライバデバイス10は、したがって、任意の形状サイズまたは形態をもち得、特に、媒体20のそれぞれの側部28、29のうちの任意の1つより小さいものであり得る最大幅Lをもち得る。更に、本発明のデバイスを使用すると、書き込み工程は、媒体の任意の位置において任意に開始され得る。書き込み可能な表面媒体のサイズに関連した情報は、例えばマーカー情報においてコード化され得、または、書き込みデバイスにユーザーによる入力として入力され得る。
【0115】
更に、従来技術において説明されている書き込み可能・消去可能媒体とは対照的に、本発明のデバイスは、視覚表現が媒体に再現されることができる前に視覚表現が最初に読み取られる初期読み取りまたはスキャニングステップを必要としない。
【0116】
複数のインデューサーのおかげにより、書き込みツールは、デバイスが媒体に対して書き込みモードで動くとき(
図4)、媒体の連続的な、および/または連続したエリアに書き込むように、または印刷するように構成される。ユーザーがデバイス10を動かすとき、既に書き込まれている媒体のエリアが、デバイスにより再度少なくとも部分的にカバーされる可能性がある。言い換えると、視覚表現を書き込むとき媒体の上でユーザーにより手動で動かされるデバイスによりカバーされるエリアは重なり得、および/または、(消去後に書き換える(同じエリアが論理的に更に再度カバーされる)こととは対照的に)1つの視覚表現の書き込みにおいて、および/または、1回の書き込み工程において、特定のエリアがデバイスにより繰り返しカバーされ得る。
【0117】
好ましい実施形態では、本デバイスは、既に書き込まれている媒体のエリア、ピクセル、ドット、区画などをデバイスに記憶させるアルゴリズムおよび/またはコンピュータコードを含み、および/または使用し、同じエリア、ピクセル、ドット、区画などの再印刷をそれぞれ回避する。この手法により、書き込み工程は、最適な解像度で、視覚表現の情報ロスを伴わずに実行され得る。書き込みデバイスが、
図5を参照して説明されているように非常に狭い距離をカバーし得る多くのインデューサーを備える場合、このようなアルゴリズムおよび/またはコードが特に役立つ。
【0118】
本発明の媒体は好ましくは書き込み可能・消去可能であり、したがって、書き込みデバイス10の作用により生成された任意の視覚表現50が消去され得る。消去メカニズムは使用される画像要素およびインデューサーエンティティのシステムに依存する。例えば、画像要素が電界に応答する場合、視覚表現を生成するために使用される場とは逆の極性をもつ電界が、視覚表現を消去するために使用される。
【0119】
磁場に応答する書き込み可能・消去可能媒体の消去は、媒体の裏側において動かされる永久磁石により実行され得る。より概括的には、永久磁石は、書き込みデバイスにより誘導された方向とは反対方向に画像要素を引き付けるために使用され得る。画像要素が、極の両側または異なる側に異なる色をもつ永久磁石を備える実施形態では、消去は、逆の極性をもつ永久磁石または電磁石を使用して画像要素を反転させることにより実現され得る。書き込みデバイスが電磁石を備える場合、電磁石のコイルワイヤを通って流れる電流の方向を変えることにより、磁石の極性が反転させられ得、書き込みデバイスが視覚表現を消去するためにも使用され得る。画像要素が画像に寄与するときに、より整然としたおよび/または集まった状態をとる実施形態では、永久磁石は画像要素を分散させ得る。
【0120】
画像要素が電磁放射波に応答する場合、特に画像要素がフォトクロミック材料である場合、消去は、インデューサーエンティティにより出射された光により引き起こされた色変化を反転させることに適した光で媒体を照射することにより実現され得る。
【0121】
画像要素がフォトエレクトロクロミック材料である場合、消去は電気的手段により、例えば、フォトエレクトロクロミック材料から光生成された電子を除去することに適した電極を提供すること、および電位を与えることにより実現され得る。
【0122】
幾つかの実施形態では、媒体は、特に消去のために提供された電極を更に備え得る。
【0123】
図1、
図3、および
図4では、書き込みツールのインデューサーエンティティ41、42…は、直線上で1つのインデューサーエンティティが別のものに隣合うように、線形アレイを形成するように示されている。もちろん、書き込みツールはこのような配置に限定されず、インデューサー要素は書き込みツール内に任意の所望の手法により位置し得る。好ましくは各インデューサーエンティティとそれに最も近く近接したものとの間に所定の距離、およびある実施形態では一定の距離が存在することに留意されたい。この実施形態によると、好ましくはインデューサーエンティティ間に所定の一定の距離が存在する。
【0124】
実施形態において、書き込みツールのインデューサーエンティティは好ましくは、所与の最小距離ぶん離隔している。これは、1つのインデューサーエンティティにより生成された応答が、別のインデューサーエンティティの動作のための場に広がらないことを確実なものとする。例えば、
図3を参照すると、(示されているように)インデューサーエンティティ42が有効化されているがエンティティ41は有効化されていないとき、インデューサーエンティティ42が、インデューサーエンティティ41により近い画像要素における応答を生成しないように、インデューサーエンティティ41および42間の距離が選択される。
図3では、有効化されたインデューサーエンティティ42は区画85に存在する画像エンティティにおける目立った応答を誘導しないように、インデューサーエンティティ41から十分に離れている。また一方では、単位長さ当たりのインデューサー密度の数値は印刷された画像のDPI(1インチ当たりのドット数)を反映するので、生成された視覚表現の適切な画像品質を実現するために、隣接したインデューサー間の距離は十分近くなければならない。
【0125】
誘導方法が磁場を使用して実施される実施形態では、書き込みツールは、好ましくはロッド形またはU字形またはそれらのバリエーションといった、異なる考えられる形態をとる電磁石のアレイを備え得る。誘導方法が磁場を使用する別の実施形態では、書き込みツールは、永久磁石を含むアクチュエータのアレイを備え得、この場合において、各アクチュエータは媒体の近くに、または媒体から離れるように永久磁石を前後に動かし得る。
【0126】
誘導方法が電界を使用して実施される実施形態では、書き込みツールは、導電材料から作られた電極のアレイを備え得る。
【0127】
誘導方法が電磁放射波を使用して実施される実施形態では、書き込みツールは、例えばレーザーのアレイ、レーザーダイオードアレイ、発光ダイオード(LED)のアレイ、または、有機発光ダイオード(OLED)のアレイといった、独立して制御される光源のアレイを備え得る。誘導方法が電磁放射波を使用して実施される別の実施形態では、書き込みツールは、例えば液晶光弁のアレイを含む光源、または、デジタルマイクロミラーデバイス(DMD)を含む光源といった1つまたは複数の光源および空間光変調方法を備え得る。
【0128】
図5は、別の実施形態による書き込みツール10の下側11の平面図であり、平行線52、52、53上のインデューサーエンティティ41、42、49などの配置を示す。これらの線の各々におけるインデューサーエンティティは、隣接した線上のインデューサーエンティティに対してそれぞれの線に沿って距離(d)ぶんずらされていることが示されている。書き込みツール10内におけるインデューサーエンティティのこの特定の配置は、2つインデューサー間の最小の可能な物理的間隔(S)を考慮して、より精度の高い、より高い分解能の視覚表現の生成を可能にする。インデューサーが1Dアレイにより構成される場合、インデューサー自体のサイズに起因して、単位長さ当たりのインデューサー密度の最大値が存在する。したがって、印刷された視覚表現の画像品質は、インデューサーの密度により制限される。同じインデューサーサイズに基づいて画像品質を高めるために、
図5における構成、または、同じ概念に基づく他の同様のものが実装され得る。印刷工程中、書き込みツールは原則として、その長軸に直交する方向に沿って移動するので、長軸上におけるインデューサーの間隔の投影長である距離(d)は、視覚表現を再現するためにどれほど近い2つのドットが印刷され得るかを規定する。距離(d)は原則として、(S)より小さいが0より大きい任意の値であり得る。距離(d)が任意の2つの隣接したマーカー31、32の間の距離、および/または、所望のDPIをもつ視覚表現の隣接したピクセル間の距離より依然として大きい実施形態では、媒体の同じ領域にわたる書き込みツール10の複数回の動きに付随して視覚表現の既に印刷されたピクセルを書き込みツール10に記憶させるアルゴリズムが、視覚表現における許容可能な最小の情報ロスを伴って書き込みを完了させ得る。
【0129】
本発明の好ましい実施形態の幾つかが上述のように説明されており、および具体的に例示されているが、本発明がこのような実施形態に限定されることは意図されていない。後述の特許請求の範囲に記載されているように、本発明の範囲および趣旨から逸脱せずに、実施形態に対して様々な変形がなされ得る。以下で、本発明の例が開示されている。これらの例は例示だけを目的としており、本発明の範囲を限定することを意図したものではない。
【国際調査報告】