IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ハンソル ケミカル カンパニー リミテッドの特許一覧 ▶ サムスン・ディスプレイ・カンパニー・リミテッドの特許一覧

特表2024-538522無溶媒型量子ドット組成物およびその製造方法、それを含む硬化膜、カラーフィルタとディスプレイ装置
<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-10-23
(54)【発明の名称】無溶媒型量子ドット組成物およびその製造方法、それを含む硬化膜、カラーフィルタとディスプレイ装置
(51)【国際特許分類】
   G02B 5/20 20060101AFI20241016BHJP
   H10K 50/115 20230101ALI20241016BHJP
   H10K 59/38 20230101ALI20241016BHJP
   H10K 85/60 20230101ALI20241016BHJP
   H10K 85/10 20230101ALI20241016BHJP
   H05B 33/14 20060101ALI20241016BHJP
   G09F 9/30 20060101ALI20241016BHJP
   H01L 29/06 20060101ALI20241016BHJP
   H10K 71/13 20230101ALI20241016BHJP
【FI】
G02B5/20
G02B5/20 101
H10K50/115
H10K59/38
H10K85/60
H10K85/10
H05B33/14 Z
G09F9/30 349A
H01L29/06 601D
H01L29/06 601N
H10K71/13
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024516968
(86)(22)【出願日】2022-09-19
(85)【翻訳文提出日】2024-03-15
(86)【国際出願番号】 KR2022013950
(87)【国際公開番号】W WO2023054952
(87)【国際公開日】2023-04-06
(31)【優先権主張番号】10-2021-0128262
(32)【優先日】2021-09-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】519350498
【氏名又は名称】ハンソル ケミカル カンパニー リミテッド
【氏名又は名称原語表記】HANSOL CHEMICAL CO., LTD.
【住所又は居所原語表記】7-8F, 513, Teheran-ro, Gangnam-gu, Seoul 06169, Republic of Korea
(71)【出願人】
【識別番号】513032220
【氏名又は名称】サムスン・ディスプレイ・カンパニー・リミテッド
【氏名又は名称原語表記】SAMSUNG DISPLAY CO., LTD.
【住所又は居所原語表記】1, Samsung-ro, Giheung-gu, Yongin-si, Gyeonggi-do 17113 Republic of Korea
(74)【代理人】
【識別番号】100077012
【弁理士】
【氏名又は名称】岩谷 龍
(72)【発明者】
【氏名】キム,ギルラン
(72)【発明者】
【氏名】ベ,ユンジュ
(72)【発明者】
【氏名】ジョ,アヨン
(72)【発明者】
【氏名】パク,スルギ
(72)【発明者】
【氏名】ナム,ウンヒ
(72)【発明者】
【氏名】ハ,ソンミン
(72)【発明者】
【氏名】ナム,チュンレ
(72)【発明者】
【氏名】クォン,ソンヨン
(72)【発明者】
【氏名】キム,ブヨン
(72)【発明者】
【氏名】キム,ジンウォン
(72)【発明者】
【氏名】ペク,ヘジン
(72)【発明者】
【氏名】ソン,テヨン
【テーマコード(参考)】
2H148
3K107
5C094
【Fターム(参考)】
2H148AA07
2H148AA09
2H148AA11
2H148AA18
2H148BD25
2H148BE01
2H148BE22
2H148BG02
2H148BG06
2H148BG07
2H148BH28
3K107AA01
3K107AA05
3K107CC45
3K107DD53
3K107DD54
3K107DD55
3K107DD57
3K107DD58
3K107DD60
3K107DD70
3K107EE25
3K107FF03
3K107FF12
3K107FF14
3K107FF15
3K107FF18
3K107GG08
3K107GG28
5C094AA10
5C094AA43
5C094AA44
5C094BA27
5C094BA31
5C094BA43
5C094CA23
5C094ED02
5C094FB01
5C094FB04
5C094JA01
5C094JA08
(57)【要約】
本発明は、無溶媒型量子ドット組成物およびその製造方法、それを含む硬化膜、カラーフィルタとディスプレイ装置に関する。具体的に、本発明による無溶媒型量子ドット組成物は、2種以上のリガンドで表面改質された量子ドットを含み、粘度が低く光特性に優れるだけでなく、量子ドット(QD)の合成後、当該溶液で直ちにリガンド置換して製造することができ、工程が簡素化する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)量子ドットを合成する工程;
(b)前記量子ドットの合成が起こった溶液から前記量子ドットを分離することなく、エチレングリコール構造を含む一次リガンドで量子ドットを一次表面改質する工程;
(c)前記一次表面改質された量子ドットを、下記化学式1で表される二次リガンドで二次表面改質する工程;
[化学式1]
(前記化学式1において、Mは2~4価の金属であり、R~Rは独立して水素又は炭素数3~70の有機基であり、nは2~4の整数である。)
(d)前記(c)工程の生成物から表面改質量子ドットを得る工程;と、
(e)得られた前記表面改質量子ドットを光重合性モノマーに分散させる工程;を含む、
無溶媒型量子ドット組成物の製造方法。
【請求項2】
前記(c)工程の後、
(f)カルボキシル基を含む炭素数3~40の三次リガンドを添加して前記改質量子ドットを三次表面改質する工程;を含む、
請求項1に記載の無溶媒型量子ドット組成物の製造方法。
【請求項3】
前記一次リガンドは、分子量が100g/mol~500g/molであり、エチレングリコール構造を1~5個の繰り返し単位で含むことを特徴とする、
請求項1に記載の無溶媒型量子ドット組成物の製造方法。
【請求項4】
前記化学式1のR~Rの少なくとも1つはエチレングリコール構造を繰り返して含み、
前記R~Rに含まれる全エチレングリコール構造の繰り返し単位の数は2~15であり、
前記エチレングリコール構造の末端にC1~C15の有機基が結合したことを特徴とする、
請求項1に記載の無溶媒型量子ドット組成物の製造方法。
【請求項5】
前記三次リガンドは下記化学式2で表される、
請求項2に記載の無溶媒型量子ドット組成物の製造方法。
[化学式2]
(前記化学式2において、
Lは、単結合であるか、または置換もしくは非置換のC1~C20のアルキレン基、および置換もしくは非置換のC1~C20のアルケニレンからなる群より選択され、
Aは単結合であるか、またはエステル(-C(=O)O-)、エーテル(-O-)、カルボニル(-C(=O)-)、スルホニル(-SO-)、スルフィド(-S)-)及びスルホキシド(-SO-)からなる群より選択される官能基を少なくとも1つ含むC1~C20のアルキレン基又はアルケニレン基であり、
Rは、水素、または置換もしくは非置換のC1~C20のアルキル基および置換もしくは非置換のC1~C20のアルケニル基からなる群より選択される。)
【請求項6】
前記量子ドットと全リガンドとの混合比率は1:1~1:20重量比である、
請求項1または請求項2に記載の無溶媒型量子ドット組成物の製造方法。
【請求項7】
前記溶液に添加される前記一次リガンドと二次リガンドとのモル比が1:1~1:20である、
請求項1に記載の無溶媒型量子ドット組成物の製造方法。
【請求項8】
前記溶液に添加される前記一次リガンド、二次リガンドおよび三次リガンドのモル比は、1:1~20:1~30である、
請求項2に記載の無溶媒型量子ドット組成物の製造方法。
【請求項9】
前記一次リガンドは、メトキシトリエチレングリコールチオグリコール酸(Methoxy triethylene glycol thioglycolate)および2-(2-メトキシエトキシ)酢酸(2-(2-Methoxyethoxy)acetic acid)からなる群より選択される少なくとも1つである、
請求項1に記載の無溶媒型量子ドット組成物の製造方法。
【請求項10】
前記二次リガンドは、亜鉛-(3-メトキシブチル3-メルカプトプロピオン酸)(Zn-(3-methoxybutyl 3-mercaptopropionate))、亜鉛-(3-メトキシブチルチオグリコール酸)(Zn-(3-methoxybutyl thioglycolate))、亜鉛-(2-エチルヘキシルチオグリコール酸)(Zn-(2-ethylhexyl thioglycolate))、亜鉛-(ブチルメルカプトプロピオン酸)(Zn-(butyl mercaptopropionate))、亜鉛-(イソプロピルメルカプトプロピオン酸)(Zn-(isopropyl mercaptopropionate))、亜鉛-(ビス-(ブトキシトリエチレングリコール)メルカプトコハク酸)(Zn-(Bis-(butoxy triethylene glycol)mercapto succinate))および亜鉛-(ポリ(エチレングリコール)メチルエーテル-チオグリコール酸)(Zn-(poly(ethylene glycol)methyl ether-thioglycolate))からなる群より選択される少なくとも1つである、
請求項1に記載の無溶媒型量子ドット組成物の製造方法。
【請求項11】
前記第三次リガンドは、2-カルボキシエチルアクリル酸(2-carboxyethyl acrylate)、モノ-2-(アクリロイルオキシ)エチルコハク酸(mono-2-(acryloyloxy)ethyl succinate)、モノ-2-(メタクリロイルオキシ)エチルコハク酸(mono-2-(methacryloyloxy)ethyl succinate)、モノ-2-(メタクリロイルオキシ)エチルマレイン酸(mono-2-(methacryloyloxy)ethyl maleate)、2-[2-(2-メトキシエトキシ)エトキシ]酢酸(2-[2-(2-methoxyethoxy)ethoxy]acetic acid)および2-(2-メトキシエトキシ)酢酸(2-(2-methoxyethoxy)acetic acid)からなる群より選択される少なくとも1つである、
請求項2に記載の無溶媒型量子ドット組成物の製造方法。
【請求項12】
前記溶液は、脂肪酸、脂肪酸誘導体、量子ドット合成反応の副産物、ジオクチルオクタデセンアミド(dioctyl octadecenamide)、トリオクチルホスフィン(trioctylphosphine)およびその酸化物、n-オクタデセン(n-octadecene)、トリオクチルアミン(Trioctylamine)、金属酢酸(metal acetate)、金属オレイン酸(metal oleate)、トリス(トリメチルシリル)ホスフィン、セレン(Se)、硫黄(S)、セレン-トリオクチルホスフィン、硫黄-トリオクチルホスフィン、塩素塩(chloride salt)および塩化金属(metal chloride)からなる群より選択される少なくとも1つを含むことを特徴とする、
請求項1に記載の無溶媒型量子ドット組成物の製造方法。
【請求項13】
前記光重合性モノマーは、1,6-ヘキサンジオールジアクリル酸(1,6-hexandiol diacrylate)である、
請求項1に記載の無溶媒型量子ドット組成物の製造方法。
【請求項14】
量子ドットおよび光重合性モノマーを含み、
前記量子ドットはエチレングリコール構造を含む一次リガンド;と、
下記化学式1で表される二次リガンド;で表面改質された、無溶媒型量子ドット組成物。
[化学式1]
(前記化学式1において、
Mは2~4価の金属であり、
~Rは、独立して水素又は炭素数3~70の有機基であり、
nは2~4の整数である。)
【請求項15】
前記表面改質量子ドットは、カルボキシル基を含む炭素数3~40の三次リガンドで表面改質された、
請求項14に記載の無溶媒型量子ドット組成物。
【請求項16】
前記量子ドットの表面改質は、量子ドットの合成が起こった溶液中で行われることを特徴とする、
請求項14または請求項15に記載の無溶媒型量子ドット組成物。
【請求項17】
前記一次リガンドは、分子量が100g/mol~500g/molであり、エチレングリコール構造を1~5個の繰り返し単位で含むことを特徴とする、
請求項14に記載の無溶媒型量子ドット組成物。
【請求項18】
前記化学式1中のR~Rの少なくとも1つはエチレングリコール構造を繰り返して含み、
前記R~Rに含まれる全エチレングリコール構造の繰り返し単位の数は2~15であり、
前記エチレングリコール構造の末端にC1~C15の有機基が結合したことを特徴とする、
請求項14に記載の無溶媒型量子ドット組成物。
【請求項19】
前記三次リガンドは、下記化学式2で表される、
請求項15に記載の無溶媒型量子ドット組成物。
[化学式2]
(前記化学式2において、
Lは、単結合であるか、または置換もしくは非置換C1~C20のアルキレン基および置換もしくは非置換C1~C20のアルケニレンからなる群より選択され、
Aは単結合であるか、またはエステル(-C(=O)O-)、エーテル(-O-)、カルボニル(-C(=O)-)、スルホニル(-SO-)、スルフィド(-S)-)及びスルホキシド(-SO-)からなる群より選択される官能基を少なくとも1つ含むC1~C20のアルキレン基又はアルケニレン基であり、
Rは、水素であるか、または置換もしくは非置換のC1~C20のアルキル基および置換もしくは非置換のC1~C20のアルケニル基からなる群より選択される。)
【請求項20】
前記一次リガンドは、メトキシトリエチレングリコールチオグリコール酸(Methoxy triethylene glycol thioglycolate)および2-(2-メトキシエトキシ)酢酸(2-(2-Methoxyethoxy)acetic acid)からなる群より選択される少なくとも1つである、
請求項14に記載の無溶媒型量子ドット組成物。
【請求項21】
前記二次リガンドは、亜鉛-(3-メトキシブチル3-メルカプトプロピオン酸)(Zn-(3-methoxybutyl 3-mercaptopropionate))、亜鉛-(3-メトキシブチルチオグリコール酸)(Zn-(3-methoxybutyl thioglycolate))、亜鉛-(2-エチルヘキシルチオグリコール酸)(Zn-(2-ethylhexyl thioglycolate))、亜鉛-(ブチルメルカプトプロピオン酸)(Zn-(butyl mercaptopropionate))、亜鉛-(イソプロピルメルカプトプロピオン酸)(Zn-(isopropyl mercaptopropionate))、亜鉛-(ビス-(ブトキシトリエチレングリコール)メルカプトコハク酸)(Zn-(Bis-(butoxy triethylene glycol)mercapto succinate))および亜鉛-(ポリ(エチレングリコール)メチルエーテル-チオグリコール酸)(Zn-(poly(ethylene glycol)methyl ether-thioglycolate))からなる群より選択される少なくとも1つである、
請求項14に記載の無溶媒型量子ドット組成物。
【請求項22】
前記第三次リガンドは、2-カルボキシエチルアクリル酸(2-carboxyethyl acrylate)、モノ-2-(アクリロイルオキシ)エチルコハク酸(mono-2-(acryloyloxy)ethyl succinate)、モノ-2-(メタクリロイルオキシ)エチルコハク酸(mono-2-(methacryloyloxy)ethyl succinate)、モノ-2-(メタクリロイルオキシ)エチルマレイン酸(mono-2-(methacryloyloxy)ethyl maleate)、2-[2-(2-メトキシエトキシ)エトキシ]酢酸(2-[2-(2-methoxyethoxy)ethoxy]acetic acid)および2-(2-メトキシエトキシ)酢酸(2-(2-methoxyethoxy)acetic acid)からなる群より選択される少なくとも1つである、
請求項15に記載の無溶媒型量子ドット組成物。
【請求項23】
前記Mは、Mg、Ca、Sc、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Ga、Ge、Sr、Mo、Pd、Cd、InまたはSnである、
請求項14に記載の無溶媒型量子ドット組成物。
【請求項24】
前記MはZnである、
請求項14に記載の無溶媒型量子ドット組成物。
【請求項25】
前記一次リガンドと二次リガンドとのモル比は1:1~1:20である、
請求項14に記載の無溶媒型量子ドット組成物。
【請求項26】
前記一次リガンド、二次リガンドおよび三次リガンドのモル比は、1:1~20:1~30である、
請求項15に記載の無溶媒型量子ドット組成物。
【請求項27】
前記量子ドットとリガンドとの組成比は1:1~1:20重量比である、
請求項14または請求項15に記載の無溶媒型量子ドット組成物。
【請求項28】
前記光重合性モノマーは(メタ)アクリレート系のモノマーである、
請求項14に記載の無溶媒型量子ドット組成物。
【請求項29】
前記光重合性モノマーは1,6-ヘキサンジオールジアクリル酸(1,6-hexandiol diacrylate)である、
請求項14に記載の無溶媒型量子ドット組成物。
【請求項30】
粘度が30cps以下である、
請求項14または請求項15に記載の無溶媒型量子ドット組成物。
【請求項31】
インクジェットプリントに使用される、
請求項14または請求項15に記載の無溶媒型量子ドット組成物。
【請求項32】
請求項14または請求項15に記載の無溶媒型量子ドット組成物を用いて製造した硬化膜。
【請求項33】
前記無溶媒型量子ドット組成物を10±0.5μm厚でコーティングしたとき、絶対量子効率が30%以上である、
請求項32に記載の硬化膜。
【請求項34】
請求項14または請求項15に記載の無溶媒型量子ドット組成物を含む、カラーフィルタ。
【請求項35】
請求項34に記載のカラーフィルタを含むディスプレイ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無溶媒型量子ドット組成物およびその製造方法、それを含む硬化膜、カラーフィルタとディスプレイ装置に関する。具体的には、本発明の無溶媒型量子ドット組成物は、2種以上のリガンドで表面改質した量子ドットを含み、粘度が低く光特性に優れるだけでなく、量子ドット(QD)合成後に当該溶液で直ちにリガンド置換して製造することができるため、工程が簡素化する。
【背景技術】
【0002】
量子ドット(Quantum dot、QD)はいわゆる半導体ナノ結晶(semiconductor nanocrystals)であり、物質種類の変化がなくても粒径別に異なる波長の光が発生して様々な色を出すことができ、従来の発光体より色純度、光安定性が高いという長所があるため、次世代の発光素子として注目されている。
【0003】
特に、ディスプレイ分野で新たなトレンドとして位置づけられた量子ドットは、TV、LEDの他に様々なディスプレイ、電子素子などで適用可能である。CdSe、InPなどに代表される量子ドットは発光効率(Quantum Yield)面で急速に発展し、発光効率が100%に近い合成法が紹介されている。これに基づいて、現在量子ドットシートを適用したテレビが商用化されている。次の段階で、量子ドットを既存のLEDテレビのカラーフィルタ層に含ませて(顔料、染料は排除)、カラーフィルタ層でのフィルタ方式ではなく、自発光バージョンへの量子ドットテレビが開発されている。このような量子ドットテレビ開発の核心は、量子ドットが画素を構成する工程及び製造工程において量子ドットの光効率をどれだけ維持できるかに焦点が当てられている。
【0004】
一方、カラーフィルタ用の素材は高感度、基板への付着力、耐化学性、耐熱性などが要求される。従来のディスプレイに適用されるカラーフィルタは、一般にフォトレジスト組成物を用いてフォトマスクを適用した露光工程を経て所望のパターンを形成し、続いて現像工程を経て非露光部を溶解して除去するパターニング工程により形成された。
【0005】
近年、画素に用いられる材料の高級化とこれによる費用上昇を解決するため、従来のようにスピンコートやスリットコーティングを施してパターニングを進めるよりも、所望の部分のみに材料を使用して材料の使用を最大限に抑える方法が関心を受けている。最も代表的な方法としてインクジェット法があり、インクジェット法は所望の画素にのみ材料を使用するため、不要な材料の無駄を防止することができる。
【0006】
しかしながら、インクジェット法で用いられる量子ドット組成物は、粘度が100cps以下、好ましくは50cps以下であることが要求されるので、粘度を低くするために溶媒が含まれた。このように量子ドット組成物が溶媒を含むことで、硬化後の厚さのばらつきが大きすぎたり、膜厚を厚くすることに限界があり、有機溶媒の使用による環境汚染の恐れがあった。
【0007】
そこで、本出願人であるハンソルケミカルカンパニーリミテッドは、無溶媒型量子ドット組成物およびその製造方法、それを含む硬化膜、カラーフィルタとディスプレイ装置を出願した(韓国出願第10-2021-0011711号)。これは溶媒を含有しなくても粘度が低く、光特性に優れた量子ドット組成物およびその製造方法に関する発明であった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
前記の先出願発明は、その製造過程において、量子ドット表面でのリガンド置換のため他の従来方法と同様に、分離精製した量子ドットパウダーを使用する必要があった。合成した量子ドットを分離精製するために少なくとも2回以上の遠心分離工程が必要であり、工程が少し複雑で、それによる追加費用の問題が見出された。
【0009】
そこで、本発明が解決しようとする課題は、量子ドットが合成された溶液を遠心分離などの分離精製工程なしにそのままリガンド置換工程で利用し、工程を簡素化し、それに伴う費用を低減し、優れた光効率及びより低粘度を有する無溶媒型量子ドット組成物とその製造方法を提供することである。
【0010】
本発明で解決しようとする他の課題は、前記無溶媒型量子ドット組成物を含む硬化膜、カラーフィルタとディスプレイ装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記課題を解決するための本発明の一態様によれば、
(a)量子ドットを合成する工程;
(b)前記量子ドットの合成が起こった溶液から前記量子ドットを分離することなく、エチレングリコール構造を含む一次リガンドで量子ドットを一次表面改質する工程;
(c)前記一次表面改質された量子ドットを、下記化学式1で表される二次リガンドで二次表面改質する工程;
[化学式1]
(前記化学式1において、
Mは2~4価の金属であり、R~Rは独立して水素又は炭素数3~70の有機基であり、nは2~4の整数である。)
【0012】
(d)前記工程(c)の生成物から表面改質量子ドットを得る工程;と、
(e)得られた前記表面改質量子ドットを光重合性モノマーに分散させる工程:を含む、無溶媒型量子ドット組成物の製造方法を提供する。
【0013】
好ましくは、前記(c)工程の後、
(f)カルボキシル基を含む炭素数3~40の三次リガンドを添加して前記改質量子ドットを三次表面改質する工程;を含む、無溶媒型量子ドット組成物の製造方法を提供する。
【0014】
好ましくは、前記一次リガンドは、その分子量が100g/mol~500g/molであり、エチレングリコール構造を1~5個の繰り返し単位で含むことを特徴とする、無溶媒型量子ドット組成物の製造方法を提供する。
【0015】
好ましくは、前記化学式1のR~Rの少なくとも1つは、エチレングリコール構造を繰り返して含み、
前記R~Rに含まれる全エチレングリコール構造の繰り返し単位の数は2~15であり、
前記エチレングリコール構造の末端にC1~C15の有機基が結合したことを特徴とする、無溶媒型量子ドット組成物の製造方法を提供する。
【0016】
好ましくは、前記三次リガンドは、下記化学式2で表される、無溶媒型量子ドット組成物の製造方法を提供する。
[化学式2]
(前記化学式2において、
Lは、単結合であるか、または置換もしくは非置換のC1~C20のアルキレン基、および置換もしくは非置換のC1~C20のアルケニレンからなる群より選択され、
Aは単結合であるか、またはエステル(-C(=O)O-)、エーテル(-O-)、カルボニル(-C(=O)-)、スルホニル(-SO2-)、スルフィド(-S)-)及びスルホキシド(-SO-)からなる群より選択される官能基を少なくとも1つ含むC1~C20のアルキレン基又はアルケニレン基であり、
Rは、水素、または置換もしくは非置換のC1~C20のアルキル基および置換もしくは非置換のC1~C20のアルケニル基からなる群より選択される。)
【0017】
好ましくは、前記量子ドットと全リガンドとの混合比率は、1:1~1:20重量比である、無溶媒型量子ドット組成物の製造方法を提供する。
【0018】
好ましくは、前記溶液に添加される一次リガンドと二次リガンドとのモル比は、1:1~1:20である、無溶媒型量子ドット組成物の製造方法を提供する。
【0019】
好ましくは、前記溶液に添加される一次リガンド、二次リガンドおよび三次リガンドのモル比は、1:1~20:1~30である、無溶媒型量子ドット組成物の製造方法を提供する。
【0020】
好ましくは、一次リガンドは、メトキシトリエチレングリコールチオグリコール酸(Methoxy triethylene glycol thioglycolate)および2-(2-メトキシエトキシ)酢酸(2-(2-Methoxyethoxy)acetic acid)からなる群より選択される少なくとも1つである、無溶媒型量子ドット組成物の製造方法を提供する。
【0021】
好ましくは、前記二次リガンドは、亜鉛-(3-メトキシブチル3-メルカプトプロピオン酸)(Zn-(3-methoxybutyl 3-mercaptopropionate))、亜鉛-(3-メトキシブチルチオグリコール酸)(Zn-(3-methoxybutyl thioglycolate))、亜鉛-(2-エチルヘキシルチオグリコール酸)(Zn-(2-ethylhexyl thioglycolate))、亜鉛-(ブチルメルカプトプロピオン酸)(Zn-(butyl mercaptopropionate))、亜鉛-(イソプロピルメルカプトプロピオン酸)(Zn-(isopropyl mercaptopropionate))、亜鉛-(ビス-(ブトキシトリエチレングリコール)メルカプトコハク酸)(Zn-(Bis-(butoxy triethylene glycol)mercapto succinate))および亜鉛-(ポリ(エチレングリコール)メチルエーテル-チオグリコール酸)(Zn-(poly(ethylene glycol)methyl ether-thioglycolate))からなる群より選択される少なくとも1つである、無溶媒型量子ドット組成物の製造方法を提供する。
【0022】
好ましくは、前記三次リガンドは、2-カルボキシエチルアクリル酸(2-carboxyethyl acrylate)、モノ-2-(アクリロイルオキシ)エチルコハク酸(mono-2-(acryloyloxy)ethyl succinate)、モノ-2-(メタクリロイルオキシ)エチルコハク酸(mono-2-(methacryloyloxy)ethyl succinate)、モノ-2-(メタクリロイルオキシ)エチルマレイン酸(mono-2-(methacryloyloxy)ethyl maleate)、2-[2-(2-メトキシエトキシ)エトキシ]酢酸(2-[2-(2-methoxyethoxy)ethoxy]acetic acid)および2-(2-メトキシエトキシ)酢酸(2-(2-methoxyethoxy)acetic acid)からなる群より選択される少なくとも1つである、無溶媒型量子ドット組成物の製造方法を提供する。
【0023】
好ましくは、前記溶液は、脂肪酸、脂肪酸誘導体、量子ドット合成反応の副産物、ジオクチルオクタデセンアミド(dioctyl octadecenamide)、トリオクチルホスフィン(trioctylphosphine)およびその酸化物、n-オクタデセン(n-octadecene)、トリオクチルアミン(Trioctylamine)、金属酢酸(metal acetate)、金属オレイン酸(metal oleate)、トリス(トリメチルシリル)ホスフィン、セレン(Se)、硫黄(S)、セレン-トリオクチルホスフィン、硫黄-トリオクチルホスフィン、塩素塩(chloride salt)および塩化金属(metal chloride)からなる群より選択される少なくとも1つを含むことを特徴とする、無溶媒型量子ドット組成物の製造方法が提供される。
【0024】
好ましくは、光重合性モノマーは、1,6-ヘキサンジオールジアクリル酸(1,6-hexandiol diacrylate)である、無溶媒型量子ドット組成物の製造方法を提供する。
【0025】
本発明の他の態様では、
量子ドットおよび光重合性モノマーを含み、
前記量子ドットはエチレングリコール構造を含む一次リガンド;と、
下記化学式1で表される二次リガンド;で表面改質された、無溶媒型量子ドット組成物を提供する。
[化学式1]
(前記化学式1において、
Mは2~4価の金属であり、
~Rは、独立して水素又は炭素数3~70の有機基であり、
nは2~4の整数である。)
【0026】
好ましくは、前記表面改質量子ドットは、カルボキシル基を含む炭素数3~40の三次リガンドで表面改質された、無溶媒型量子ドット組成物を提供する。
【0027】
好ましくは、前記量子ドットの表面改質は、量子ドットの合成が起こった溶液中で行われることを特徴とする、無溶媒型量子ドット組成物を提供する。
【0028】
好ましくは、前記一次リガンドは、分子量が100g/mol~500g/molであり、エチレングリコール構造を1~5個の繰り返し単位で含むことを特徴とする、無溶媒型量子ドット組成物を提供する。
【0029】
好ましくは、前記化学式1中のR~Rの少なくとも1つは、エチレングリコール構造を繰り返し含み、
前記R~Rに含まれる全エチレングリコール構造の繰り返し単位の数は2~15であり、
前記エチレングリコール構造の末端にC1~C15の有機基が結合したことを特徴とする、無溶媒型量子ドット組成物を提供する。
【0030】
好ましくは、前記三次リガンドは、下記化学式2で表される無溶媒型量子ドット組成物を提供する。
[化学式2]
(前記化学式2において、
Lは、単結合であるか、または置換もしくは非置換されたC1~C20のアルキレン基および置換もしくは非置換されたC1~C20のアルケニレンからなる群より選択され、
Aは単結合であるか、またはエステル(-C(=O)O-)、エーテル(-O-)、カルボニル(-C(=O)-)、スルホニル(-SO-)、スルフィド(-S)-)及びスルホキシド(-SO-)からなる群より選択される官能基を少なくとも1つ含むC1~C20のアルキレン基又はアルケニレン基であり、
Rは、水素であるか、または置換もしくは非置換のC1~C20のアルキル基および置換もしくは非置換のC1~C20のアルケニル基からなる群より選択される。)
【0031】
好ましくは、前記一次リガンドは、メトキシトリエチレングリコールチオグリコール酸(Methoxy triethylene glycol thioglycolate)および2-(2-メトキシエトキシ)酢酸(2-(2-Methoxyethoxy)acetic acid)からなる群より選択される少なくとも1つである、無溶媒型量子ドット組成物が提供される。
【0032】
好ましくは、二次リガンドは、亜鉛-(3-メトキシブチル3-メルカプトプロピオン酸)(Zn-(3-methoxybutyl 3-mercaptopropionate))、亜鉛-(3-メトキシブチルチオグリコール酸)(Zn-(3-methoxybutyl thioglycolate))、亜鉛-(2-エチルヘキシルチオグリコール酸)(Zn-(2-ethylhexyl thioglycolate))、亜鉛-(ブチルメルカプトプロピオン酸)(Zn-(butyl mercaptopropionate))、亜鉛-(イソプロピルメルカプトプロピオン酸)(Zn-(isopropyl mercaptopropionate))、亜鉛-(ビス-(ブトキシトリエチレングリコール)メルカプトコハク酸)(Zn-(Bis-(butoxy triethylene glycol)mercapto succinate)2)および亜鉛-(ポリ(エチレングリコール)メチルエーテル-チオグリコール酸)(Zn-(poly(ethylene glycol)methyl ether-thioglycolate))からなる群より選択される少なくとも1つである、無溶媒型量子ドット組成物を提供する。
【0033】
好ましくは、前記三次リガンドは、2-カルボキシエチルアクリル酸(2-carboxyethyl acrylate)、モノ-2-(アクリロイルオキシ)エチルコハク酸(mono-2-(acryloyloxy)ethyl succinate)、モノ-2-(メタクリロイルオキシ)エチルコハク酸(mono-2-(methacryloyloxy)ethyl succinate)、モノ-2-(メタクリロイルオキシ)エチルマレイン酸(mono-2-(methacryloyloxy)ethyl maleate)、2-[2-(2-メトキシエトキシ)エトキシ]酢酸(2-[2-(2-methoxyethoxy)ethoxy]acetic acid)および2-(2-メトキシエトキシ)酢酸(2-(2-methoxyethoxy)acetic acid)からなる群より選択される少なくとも1つである、無溶媒型量子ドット組成物を提供する。
【0034】
好ましくは、前記Mが、Mg、Ca、Sc、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Ga、Ge、Sr、Mo、Pd、Cd、InまたはSnである、無溶媒型量子ドット組成物を提供する。
【0035】
好ましくは、前記MがZnである無溶媒型量子ドット組成物を提供する。
【0036】
好ましくは、前記一次リガンドと二次リガンドのモル比が、1:1~1:20である、無溶媒型量子ドット組成物を提供する。
【0037】
好ましくは、前記一次リガンド、二次リガンドおよび三次リガンドのモル比が、1:1~20:1~30である、無溶媒型量子ドット組成物を提供する。
【0038】
好ましくは、前記量子ドットとリガンドの組成比が1:1~1:20重量比である、無溶媒型量子ドット組成物を提供する。
【0039】
好ましくは、前記光重合性モノマーが(メタ)アクリレート系のモノマーである、無溶媒型量子ドット組成物を提供する。
【0040】
好ましくは、前記光重合性モノマーが1,6-ヘキサンジオールジアクリル酸(1,6-hexandiol diacrylate)である、無溶媒型量子ドット組成物を提供する。
【0041】
好ましくは、粘度が30cps以下である、無溶媒型量子ドット組成物を提供する。
【0042】
好ましくは、インクジェットプリントに使用される、無溶媒型量子ドット組成物が提供される。
【0043】
好ましくは、前記無溶媒型量子ドット組成物を用いて製造された硬化膜を提供する。
【0044】
好ましくは、前記無溶媒型量子ドット組成物を10±0.5μmの厚さでコーティングしたとき、絶対量子効率が30%以上である硬化膜を提供する。
【0045】
好ましくは、前記無溶媒型量子ドット組成物を含むカラーフィルタを提供する。
【0046】
好ましくは、前記カラーフィルタを含むディスプレイ装置を提供する。
【発明の効果】
【0047】
従来は量子ドット合成後の追加工程により量子ドットを分離精製することなく量子ドット合成のための溶媒及びその残留物が存在する状態で直ちにリガンドを投入して量子ドット表面を改質することが困難であったが、本発明による無溶媒型量子ドット組成物とその製造方法はこれを可能にする利点があり、したがって工程簡略化と費用低減が達成される。
【0048】
本発明による無溶媒型量子ドット組成物は、溶媒を含まなくても量子ドットとモノマーとの混和性が優秀である。また、本発明による無溶媒型量子ドット組成物は、光特性に優れ、粘度が低いため、インクジェットプリント用に使用することができる。
【発明を実施するための形態】
【0049】
以下、本発明について説明する。
本明細書で使用される全ての用語(技術的および科学的用語を含む)は、他の定義がない限り、本発明が属する技術分野における通常の知識を有する者が共通に理解できる意味で使用する。また、一般的に使用される辞書で定義されている用語は、特に明確な定義がない限り、理想的または過度に解釈されない。
【0050】
また、本明細書の全体において、ある部分がある構成要素を「含む」と言う場合、特に反対の記載がない限り、他の構成要素を除外するのではなく、他の構成要素をさらに含み得ることを意味する。
【0051】
なお、本明細書中、「(メタ)アクリレート」はアクリレートおよびメタクリレートを表し、「(メタ)アクリル」はアクリルおよびメタクリルを表し、「(メタ)アクリロイル」はアクリロイルおよびメタクリロイルを意味する。
【0052】
なお、本明細書中において、「単量体」と「モノマー」は同じ意味である。本発明における単量体は、オリゴマーおよびポリマーと区別され、重量平均分子量が1,000以下の化合物をいう。本明細書中において、「光重合性モノマー」とは、重合反応に関与する官能基、例えば(メタ)アクリレート基をいう。
【0053】
本明細書中の「置換」とは、化合物または官能基中の水素がC1~C30のアルキル基、C2~C30のアルケニル基、C2~C30のアルキニル基、C1~C30のアルコキシ基、C1~C30のヘテロアルキル基、C3~C30のヘテロアルキルアリール基、C3~C30のシクロアルキル基、C3~C15のシクロアルケニル基、C6~C30のシクロアルキニル基、C2~C30のヘテロシクロアルキル基、ハロゲン(-F、-Cl、-Brまたは-I)、ヒドロキシ基(-OH)、ニトロ基(-NO)、シアノ基(-CN)、エステル基(-C(=O)OR)、ここでRはC1~C10アルキル基またはアルケニル基である)、エーテル基(-O-R、ここでRはC1~C10アルキル基またはアルケニル基である)、カルボニル(-C(=O)-R、ここでRはC1~C10アルキル基またはアルケニル基である)、カルボキシル基(-COOH)とこれらの組み合わせで選択された置換基で置換されたことを意味する。
【0054】
本明細書中の「有機基」とは、C1~C30の直鎖または分岐鎖アルキル基、C2~C30の直鎖または分岐鎖アルケニル基、C2~C30の直鎖または分岐鎖アルキニル基を意味する。また、前記アルキル基、アルケニル基、アルキニル基はそれぞれ置換もしくは非置換のものであり得る。
【0055】
本明細書中の「アルキル」は、炭素数1~40の直鎖または側鎖の飽和炭化水素に由来する1価の置換基を意味する。例えば、メチル、エチル、プロピル、イソブチル、sec-ブチル、ペンチル、iso-アミル、ヘキシルなどがあるが、これらに限定されない。
【0056】
本明細書中の「アルケニル」とは、炭素-炭素の二重結合を1個以上有する炭素数2~40の直鎖または側鎖の不飽和炭化水素に由来する1価の置換基を意味する。例えば、ビニル(vinyl)、アリル(allyl)、イソプロペニル(isopropenyl)、2-ブテニル(2-butenyl)などがあるが、これらに限定されない。
【0057】
<無溶媒型量子ドット組成物>
本発明の一実施形態に係る量子ドット組成物は、無溶媒型量子ドット組成物であり、具体的に溶媒を含まなくても低粘度を有し、光特性に優れ、インクジェットプリントに適用することができる。
【0058】
具体的には、量子ドットおよび光重合性モノマーを含み、前記量子ドットはエチレングリコール(ethylene glycol)構造を含む一次リガンドおよび下記化学式1で表される二次リガンドで表面改質された無溶媒型量子ドット組成物を提供する。
【0059】
また、量子ドットおよび光重合性モノマーを含み、前記量子ドットは、エチレングリコール構造を含む一次リガンド、下記化学式1で表される二次リガンドおよびカルボキシル基を含む炭素数3~40の三次リガンドで表面改質された、無溶媒型量子ドット組成物を提供する。
[化学式1]
(前記化学式1において、Mは2~4価の金属であり、R~Rは独立して水素又は炭素数3~70の有機基であり、nは2~4の整数である。)
【0060】
また、前記無溶媒型量子ドット組成物の前記量子ドットの表面改質は、量子ドットの合成が起こった溶液中で行われることを特徴とする。
【0061】
以下、前記量子ドット組成物の組成を具体的に示す。
量子ドット
量子ドット(Quantum Dot、QD)は、ナノサイズの半導体物質であり、サイズおよび組成に応じて異なるエネルギーバンドギャップを有し、したがって様々な発光波長の光を放出する。
【0062】
この量子ドットは均質な(homogeneous)単層構造;コア-シェル(core-shell)の形態、勾配(gradient)構造などの多層構造;または、それらの混合構造であり得る。シェルが複数の層である場合、各層は互いに異なる成分、例えば(準)金属酸化物を含むことができる。
【0063】
量子ドット(QD)は、II-VI族化合物、III-V族化合物、IV-VI族化合物、IV族元素、IV族化合物およびそれらの組み合わせから自由に選択することができる。量子ドットがコア-シェル形態である場合、コアとシェルはそれぞれ以下の例示成分から自由に構成することができる。
【0064】
例えば、II-VI族化合物は、CdO、CdS、CdSe、CdTe、ZnO、ZnS、ZnSe、ZnTe、HgS、HgSe、HgTe、MgSe、MgSおよびそれらの混合物からなる群より選択される二元素化合物;CdSeS、CdSeTe、CdSTe、ZnSeS、ZnSeTe、ZnSTe、HgSeS、HgSeTe、HgSTe、CdZnS、CdZnSe、CdZnTe、CdHgS、CdHgSe、CdHgTe、HgZnS、HgZnSe、HgZnTe、HgZnSe、MgZnS及びそれらの混合物からなる群より選択される三元素化合物;とCdZnSeS、CdZnSeTe、CdZnSTe、CdHgSeS、CdHgSeTe、CdHgSTe、HgZnSeS、HgZnSeTe、HgZnSTeおよびそれらの混合物からなる群より選択される四元素化合物からなる群より選択することができる。
【0065】
他の例として、III-V族化合物は、GaN、GaP、GaAs、GaSb、AlN、AlP、AlAs、AlSb、InN、InP、InAs、InSbおよびそれらの混合物からなる群より選択される二元素化合物;GaNP、GaNAs、GaNSb、GaPAs、GaPSb、AlNP、AlNAs、AlNSb、AlPAs、AlPSb、InNP、InNAs、InNSb、InPAs、InPSbおよびそれらの混合物からなる群より選択される三元化合物;と、GaAlNP、GaAlNAs、GaAlNSb、GaAlPAs、GaAlPSb、GaInNP、GaInNAs、GaInNSb、GaInPAs、GaInPSb、InAlNP、InAlNAs、InAlNSb、InAlPAs、InAlPSbおよびそれらの混合物からなる群より選択される四元素化合物からなる群より選択することができる。
【0066】
他の例として、IV-VI族化合物は、SnS、SnSe、SnTe、PbS、PbSe、PbTeおよびそれらの混合物からなる群より選択される二元素化合物;SnSeS、SnSeTe、SnSTe、PbSeS、PbSeTe、PbSTe、SnPbS、SnPbSe、SnPbTeおよびそれらの混合物からなる群より選択される三元化合物;と、SnPbSSe、SnPbSeTe、SnPbSTeおよびそれらの混合物からなる群より選択される四元素化合物からなる群より選択することができる。
【0067】
他の例として、第IV族元素は、Si、Geおよびそれらの混合物からなる群より選択することができる。IV族化合物は、SiC、SiGeおよびそれらの混合物からなる群より選択される二元素化合物であり得る。
【0068】
前記の二元素化合物、三元素化合物または四元素化合物は、均一な濃度で粒子内に存在するか、または濃度分布が部分的に異なる状態に分けられて同じ粒子内に存在するものであり得る。また、一方の量子ドットが他方の量子ドットを囲むコア/シェル構造を有しても良い。コアとシェルの界面は、シェルに存在する元素の濃度が中心に向かって低くなる濃度勾配(gradient)を有し得る。
【0069】
量子ドットの形態は、当分野で一般的に使用される形態であれば特に限定されない。例えば、球状、棒状(rod)、ピラミッド状、円盤状(disc)、多枝状(multi-arm)、または立方体(cubic)のナノ粒子、ナノチューブ、ナノワイヤ、ナノ繊維、ナノ板状粒子などの形態のものを使用することができる。
【0070】
また、量子ドットのサイズは特に制限されず、当分野で公知の通常の範囲内で適宜調節することができる。例えば、量子ドットの平均粒径(D50)は約2~10nmであり得る。このように量子ドットの粒径が約2~1nmの範囲に制御されると、所望の色の光を放出することができる。例えば、InPを含有する量子のドットコア/シェルの粒径が約5~nmの場合、約520~550nmの波長の光を放出し、一方、InPを含む量子のドットコア/シェルの粒径が約7~8nmの場合、約620~640波長の光を放出することができる。例えば、青色発光QD(Quantum dot)としては、非カドミウム(Cd)系III-V族QD(例えば、InP、InGaP、InZnP、GaN、GaAs、GaP)を用いることができる。
【0071】
また、前記量子ドットは、約40nm以下の発光波長スペクトルの半値幅(width of half maximum、FWHM)を有し、この範囲で色純度や色再現性を向上させることができる。また、この量子ドットによって発光する光は全方向に放出されるため、視野角が向上する。
【0072】
本発明の一実施形態によれば、前記量子ドットの含有量は、前記無溶媒型量子ドット組成物の全重量を基準に1~60重量%、好ましくは20~50重量%である。
【0073】
リガンド
本発明に係る無溶媒型量子ドット組成物において、リガンドは量子ドットの表面改質の役割をする。量子ドットは疎水性を有する表面特性により光重合性モノマーに対する分散に障壁が存在するが、適切なリガンドで量子ドットの表面を改質することで光重合性モノマーに対する量子ドットの混和性が向上する。
【0074】
本発明の一実施形態によれば、前記リガンドは、エチレングリコール構造を含む一次リガンドと、下記化学式1で表される二次リガンドとを含み得る。
【0075】
本発明の一実施形態によれば、前記リガンドは、エチレングリコール構造を含む一次リガンド、下記化学式1で表される二次リガンド、およびカルボキシル基を含む炭素数3~40の三次リガンドを含み得る。
【0076】
前記一次リガンドは量子ドットの合成が起こった溶液中に投入され、疎水性の量子ドットの表面を一番最初に改質して量子ドット表面が若干の極性を有することになり、一般的に疎水性の量子ドットの合成溶液内でその後の二次リガンドと三次リガンドの置換が容易になる。
[化学式1]
【0077】
前記化学式1において、Mは2~4価の金属であり、R~Rは独立して水素又は炭素数3~70の有機基であり、nは2~4の整数である。
【0078】
一般的に量子ドットを製造する際に使用する溶媒は疎水性を帯びることもあり(例えば、1-オクタデセン、n-オクタデセン、トリオクチルアミンなどの溶媒を使用)、量子ドットの合成が起こった溶液中には様々な合成残留物(例えば、オレイン酸など脂肪酸、オレイン酸オクチル(octyl oleate)などの脂肪酸誘導体、ジオクチルオクタデセナミド(dioctyl octadecenamide)などの副産物、トリオクチルホスフィン(trioctylphosphine)およびその酸化物、n-オクタデセン(n-octadecene )またはトリオクチルアミン(Trioctyl amine)などの溶媒、メタルアセテート(metal acetate)、メタルオレート(metal oleate)、トリス(トリメチルシリル)ホスフィン、Se、S、Se-トリオクチルホスフィン、S-トリオクチルホスフィン、塩化物塩(chloride salt)、金属塩化物metal chloride)が混在しているため、量子ドットを分離精製しない状態で直ちに金属-チオール系リガンドを含むほとんどのリガンドで量子ドットの表面を改質することは困難であった。しかし、本発明の一実施例は、量子ドットが合成された溶液中でエチレングリコール構造を含む一次リガンドで量子ドットを改質すると、量子ドットが合成された後に残留不純物が存在する溶液でも金属-チオール系のリガンドが含まれた他のリガンドの改質が容易に可能である。
【0079】
前記一次リガンドは、好ましくは分子量が100g/mol~500g/molであり、さらに好ましくは分子量が100g/mol~500g/molでありながら、エチレングリコール構造を1~5個の繰り返し単位で含むことを特徴とする。具体的には、メトキシトリエチレングリコールチオグリコール酸 (Methoxy triethylene glycol thioglycolate、以下、MTEGT)および2-(2-メトキシエトキシ)酢酸(2-(2-Methoxyethoxy)acetic acid、以下、MEAA)からなる群より選択される少なくとも1つを使用することができ、好ましくはMTEGTを使用することができる。一次リガンドの分子量が大きすぎると、一次表面改質が不利になる恐れがある。
【0080】
前記二次リガンドは、金属塩とチオール系化合物とを反応させて形成された金属-チオール系の化合物であり得る。
【0081】
前記二次リガンドのMは2~4価の金属である。例えば、前記Mは、2族~14族の金属であり、Mg、Ca、Sc、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Ga、Ge、Sr、Y、Zr、Nb、Mo、Tc、Ru、Rh、Pd、Cd、InまたはSnであり、好ましくはZnである。前記化学式1において、nはMの価数によって決定され、2~4の整数である。
【0082】
前記二次リガンドを表す化学式1においてR~Rの少なくとも1つは、エチレングリコール構造を繰り返して含み、前記R~Rに含まれるエチレングリコール構造の総繰り返し単位の数は2~15であり、前記エチレングリコール構造の末端にC1~C15の有機基が結合したことを特徴とする。
【0083】
また、前記化学式1において、R~Rの少なくとも1つは、炭素数3~20の有機基であり得る。例えば、エステル(-C(=O)O-)、エーテル(-O-)、カルボニル(-C(=O)-)、カルボキシル基(-C(=O)-OH)、スルホニル(-SO-)、スルフィド(-S-)およびスルホキシド(-SO-)、アルコキシ基(C2n+1O-)、ヒドロキシ基(-OH)からなる群より選択される官能基を少なくとも1つ含む炭素数3~20のアルキレン基またはアルケニレン基であり得る。具体的に、Rはエステル(-C(=O)O-)官能基を含む炭素数4~15の有機基であり、RおよびRは水素からなり得る。
【0084】
前記二次リガンドのチオール基(Thiol group)は、量子ドット表面との親和性(affinity)に優れるため、量子ドットの光重合性モノマーに対する分散性を向上させる。また、前記二次リガンドは、チオール基だけでなく、エステル、エーテル、カルボニル、カルボキシル基、アルコキシ基、シクロアルキル基またはヒドロキシ基を含むことで、表面改質された量子ドットの、疎水性を有する極性モノマーに対する分散性を最大化する。さらに、そのような量子ドットを含む量子ドット組成物は、ディスプレイ工程に有利な特性(例えば、低粘度)を有する。一方、炭素数が3以下のチオール系化合物を用いる場合、量子ドットの表面改質は可能であるが、表面改質された量子ドットの高い極性により一般的な溶媒及びモノマーに対する分散が困難な問題が発生する恐れがある。
【0085】
前記二次リガンドは、具体的には、亜鉛-(3-メトキシブチル3-メルカプトプロピオン酸)(Zn-(3-methoxybutyl 3-mercaptopropionate))、亜鉛-(3-メトキシブチルチオグリコール酸)(Zn-(3-methoxybutyl thioglycolate))、亜鉛-(2-エチルヘキシルチオグリコール酸)(Zn-(2-ethylhexyl thioglycolate))、亜鉛-(ブチルメルカプトプロピオン酸)(Zn-(butyl mercaptopropionate))、亜鉛-(イソプロピルメルカプトプロピオン酸)(Zn-(isopropyl mercaptopropionate))、亜鉛-(ビス-(ブトキシトリエチレングリコール)メルカプトコハク酸)(Zn-(Bis-(butoxy triethylene glycol)mercapto succinate))および亜鉛-(ポリ(エチレングリコール)メチルエーテル-チオグリコール酸)(Zn-(poly(ethylene glycol)methyl ether-thioglycolate))からなる群より選択される1つ以上であり得る。
【0086】
前記三次リガンドは、炭素数が3~40であり、カルボキシル基を含むことができる。さらに、本発明の一実施形態によれば、前記第三次リガンドはチオール基を含まなくてもよい。
【0087】
本発明の一実施形態によれば、前記三次リガンドは下記化学式2で表される。
[化学式2]
【0088】
前記化学式2において、
Lは、単結合であるか、または置換もしくは非置換されたC1~C20のアルキレン基および置換もしくは非置換されたC1~C20のアルケニレンからなる群より選択され、
Aは単結合であるか、またはエステル(-C(=O)O-)、エーテル(-O-)、カルボニル(-C(=O)-)、スルホニル(-SO-)、スルフィド(-S)-)及びスルホキシド(-SO-)からなる群より選択される官能基を少なくとも1つ含むC1~C20のアルキレン基又はアルケニレン基であり、
Rは、水素であるか、または置換もしくは非置換されたC1~C20のアルキル基および置換もしくは非置換C1~C20のアルケニル基からなる群より選択される。
【0089】
好ましくは、前記三次リガンド中のAはエステル(-COO-)、エーテル(-O-)、またはそれらの組み合わせを含む。また、前記Aは、C2~C15のアルキレン基またはアルケニレン基、好ましくはC2~C10のアルキレン基またはアルケニレン基である。
【0090】
前記三次リガンドは具体的に、2-カルボキシエチルアクリル酸(2-carboxyethyl acrylate)、モノ-2-(アクリロイルオキシ)エチルコハク酸(mono-2-(acryloyloxy)ethyl succinate)、モノ-2-(メタクリロイルオキシ)エチルコハク酸(mono-2-(methacryloyloxy)ethyl succinate)、モノ-2-(メタクリロイルオキシ)エチルマレイン酸(mono-2-(methacryloyloxy)ethyl maleate)、2-[2-(2-メトキシエトキシ)エトキシ]酢酸(2-[2-(2-methoxyethoxy)ethoxy]acetic acid)および2-(2-メトキシエトキシ)酢酸(2-(2-methoxyethoxy)acetic acid)からなる群より選択される少なくとも1つである。
【0091】
一般にチオール系のリガンドは量子ドット表面との反応性が高いことが知られている。しかし、チオール系のリガンドのみを含む量子ドット組成物は、有害な臭い(気体)が発生したり、粘度が上昇して貯蔵安定性が低下するという問題があり、インクジェット用組成物への使用には適さなかった。本発明による量子ドット組成物は、チオール系のリガンドを含む二次リガンドとチオール基を含まない三次リガンドを併用することにより、低粘度および優れた貯蔵安定性(熱処理前後のQE値の変化程度)を示した。また、前記三次リガンドは、エステル(-C(=O)O-)、エーテル(-O-)、カルボニル(-C(=O)-)、カルボキシル基(-C(=O)-OH)など)の官能基を含むことにより、光重合性モノマーに対する分散性が優秀である。一方、三次リガンドの炭素数が16個以上である場合、量子ドットの表面改質が行われないことや、一般的な溶媒およびモノマーに対する分散性が阻害される問題が発生することがある。
【0092】
前記一次リガンドと二次リガンドの両方がエチレングリコール構造を繰り返して含む場合は、そうでない場合に比べて、インク組成物の粘度および光特性に優れることがある。これは、エチレングリコールの構造的特徴上、親水性が強いため、組成物中でのQDの分散性がより向上するからであると考えられる。
【0093】
本発明の一実施形態によれば、前記一次リガンドと二次リガンドとのモル比は、1:1~20、好ましくは1:1~10モル比、さらに好ましくは1:1~5モル比であるが、これに限定されない。
【0094】
また、本発明の一実施形態によれば、前記一次リガンド、二次リガンドと三次リガンドとのモル比は、1:1~20:1~30、好ましくは1:1~10:1~15モル比であり、より好ましくは1:1~5:1~8であるが、これに限定されない。
【0095】
また、本発明の一実施形態によれば、前記量子ドットとリガンドとの混合比率は、1:1~20重量比、好ましくは1:1~10重量比、さらに好ましくは1:5~10で得る。ここで、前記リガンドとは、一次リガンドと二次リガンドの和または一次リガンド、二次リガンドと三次リガンドの和を意味する。
【0096】
光重合性モノマー
本発明による量子ドット組成物において、光重合性モノマーは、量子ドット(QD)が分散する剤形、すなわち高分子マトリックスの全体の架橋密度を制御してマトリックスの構造および諸物性を発現する役割をする。また、柔軟性(flexibility)、他の材料との接着性および接着性を改善することができる。
【0097】
前記光重合性モノマーは(メタ)アクリレート系のモノマーを含むことができる。使用可能なモノマーは、当分野で一般的に使用されるモノマーであれば特に制限なく使用することができる。
【0098】
一例では、(メタ)アクリレート系のモノマーは、(メタ)アクリル基、ビニル基およびアリル基の少なくとも1つを含むことができる。具体的には、1,6-ヘキサンジオールジアクリレート(1,6-hexanediol diacrylate)、1,6-シクロヘキサンジオールジアクリレート(1,6-cyclohexanediol diacrylate)、2,2-ジメチル-1,3-プロパンジオールジアクリレート(2,2-dimethyl-1,3-propanediol diacylate)、ジエチレングリコールジアクリレート(diethylene glycol diacrylate)、ジプロピレングリコールジアクリレート(Dipropylene glycol diacrylate)、1,3-ブチレングリコールジメタクリレート(1,3-butylene glycol dimethacrylate)、トリメチロールプロパントリメタクリレート(trimethylolpropane trimethacrylate)、イソボニルアクリレート(isobornyl acrylate)、イソボニルメタクリレート(isobornyl methacrylate)、テトラヒドロフリルアクリレート(tetrahydrofuryl acrylate)、アクリロイルモルホリン(Acryloyl morpholine)、2-フェノキシエチルアクリレート(2-phenoxyethyl acrylate)、トリプロピレングリコールジアクリレート(tripropylene glycol diacrylate)、トリメチロールプロパントリアクリレート(trimethylolpropane triacrylate)、ペンタエリスリトールモノ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート(pentaerythritol triacrylate)、ペンタエリスリトールトリメタクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(dipentaerythritol hexaacrylate)およびジペンタエリスリトールヘキサメタクリレートなどがある。これらは単独で用いてもよいし、2種以上を混合して使用してもよい。本発明における光重合性モノマーとしての1,6-ヘキサンジオールジアクリレート(1,6-hexanediol diacrylate)は、無溶媒型量子ドット組成物の粘度特性を達成するのに好ましい。
【0099】
本発明における(メタ)アクリルアミド系モノマーの含有量は、前記無溶媒型量子ドット組成物の総重量を基準に、35~80重量%、好ましくは45~70重量%である。
【0100】
光開始剤
本発明に係る無溶媒型量子ドット組成物において、光開始剤は紫外線(UV)などの光源により励起されて光重合の開始の役割をする成分として、当該分野の従来の光重合光開始剤を制限なく使用することができる。一例として、アセトフェノン系化合物、ベンゾフェノン系化合物、チオキサントン系化合物、ベンゾイン系化合物、トリアジン系化合物、オキシム系化合物などを用いることができる。
【0101】
使用可能な光開始剤の非限定的な例として、Ethyl(2,4,6-trimethylbenzoyl)phenylphosphinate、Irgacure 184、Irgacure 369、Irgacure 651、Irgacure 819、Irgacure 907、ベンジオンアルキルベンゾンエーテル(Benzionalkylether)、ベンゾフェノン(Benzophenone)、ベンジルジメチルカタール(Benzyl dimethyl katal)、ヒドロキシシクロヘキシルフェニルアセトン(Hydroxycyclohexyl phenyl acetone)、クロロアセトフェノン(Chloroacetophenone)、1,1-ジクロロアセトフェノン(1,1-Dichloroacetophenone)、ジエトキシアセトフェノン(Diethoxy acetophenone)、ヒドロキシアセトフェノン(Hydroxy Acetophenone)、2-クロロチオキサントン(2-Chloro thioxanthone)、2-ETAQ(2-EthylAnthraquinone)、1-ヒドロキシ-シクロヘキシル-フェニル-ケトン(1-Hydroxy-cyclohexyl-phenyl-ketone)、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニル-1-プロパノン(2-Hydroxy-2-methyl-1-phenyl-1-propanone)、2-ヒドロキシ-1-[4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル]-2-メチル-1-プロパノン(2-Hydroxy-1-[4-(2-hydroxyethoxy)phenyl]-2-methyl-1-propanone)、メチルベンゾイルホメート(methylbenzoylformate)などがある。これらを単独で使用したり、2種以上混用することができる。
【0102】
前記光開始剤の含有量は、当技術分野で公知の範囲内で適宜調整することができる。一例として、当該無溶媒型量子ドット組成物の総重量を基準にして0.01~10重量%であり、好ましくは0.1~5重量%である。前記光開始剤の含有量が前記範囲に該当する場合、マトリックスの物性が低下することなく光重合反応を十分に行われる。
【0103】
拡散剤
本発明による無溶媒型量子ドット組成物において、拡散剤は光変換材料に吸収されない光を反射し、前記反射された光を光変換材料が再吸収できるようにする。すなわち、拡散剤は光変換材料に吸収される光の量を増加させ、光変換効率が増加する。
【0104】
前記拡散剤は、当技術分野で公知の拡散剤成分を制限なく使用することができる。そのような拡散剤は、粉末などの固形粉の形態であってもよく、拡散剤が分散した分散液であってもよい。
【0105】
使用可能な拡散剤の非限定的な例には、硫酸バリウム(BaSO)、炭酸カルシウム(CaCO)、二酸化チタン(TiO)、ジルコニア(ZrO)またはそれらの組み合わせが含まれる。また、拡散剤の平均粒径や形状は特に限定されず、当分野で公知の構成内で適宜選択することができる。一例として、平均粒径(D50)は150nm~250nmであり、具体的には180nm~230nmであり得る。前記拡散剤の平均粒径が前記範囲内であると、より優れた光拡散効果を有し、光変換効率が向上する。
【0106】
前記拡散剤の含有量は当技術分野で公知の範囲内で適宜調整することができる。一例として、当該無溶媒型量子ドット組成物の総重量を基準にして0.01~10重量%であり、好ましくは0.1~5重量%である。拡散剤の含有量が前記範囲に該当する場合、マトリックスの物性が低下することなく光変換効率の向上効果を示す。
【0107】
重合禁止剤
本発明に係る無溶媒型量子ドット組成物において、重合禁止剤は、ラジカルと反応して重合反応を起こすことができない低反応性のラジカル又は化合物を形成する物質であって、光重合反応の速度を調節する。
【0108】
前記重合禁止剤は、当該分野で公知の物質を制限なく使用することができる。例えば、重合禁止剤としては、キノン系化合物、フェノールもしくはアニリン系化合物、芳香族ニトロおよびニトロソ化合物を用いることができる。具体的には、ヒドロキノン(HQ)、メチルヒドロキノン(THQ)、ヒドロキノンモノメチルエーテル(MEHQ)およびヒドロキノンモノエチルエーテル(EEHQ)、1,4-ベンゾキノン(BQ)、2,5-ジフェニルベンゾキノン(DPBQ)、メチル-1,4-ベンゾキノン(MBQ)、フェニル-1,4-ベンゾキノン(PBQ);2,6-ジ-tert-ブチル-4-メチルフェノール(BHT)、2,6-ジフェニル-4-オクタデシルオキシフェノール、カテコール;フェノシアジン、ビス(α-メチルベンジル)フェノシアジン、3,7-ジオクチルフェノシアジン、ビス(α、α-ジメチルベンジル)フェノシアジン;ジメチルジチオカバミン酸、ジエチルジチオカバミン酸、ジプロピルジチオカバミン酸、ジブチルジチオカバミン酸、ジフェニルジチオカバミン酸などがある。これらを単独で使用したり、2種以上混用することができる。
【0109】
前記重合禁止剤の含有量は、当技術分野で公知の範囲内で適宜調整することができる。一例として、当該無溶媒型量子ドット組成物の総重量を基準にして0.01~2重量%であり、好ましくは0.05~1重量%である。
【0110】
安定剤
本発明に係る無溶媒型量子ドット組成物において、安定剤は量子ドットの安定性および分散性を向上させるために添加する。安定剤は量子ドットのシェル表面に置換され、溶剤に対する量子ドットの分散安定性を向上させて量子ドットを安定化させる。
【0111】
使用可能な安定剤は、当技術分野で量子ドットの安定性および分散性を向上させる物質であれば制限なく使用することができ、例えばチオール系安定剤を使用することができる。前記チオール系安定剤は、光重合性モノマーに対する量子ドットの分散性を向上させる。また、チオール系安定剤にあるチオール基は、光重合性モノマーのアクリル基と反応して共有結合を形成することにより量子ドット組成物の耐熱性を向上させる。
【0112】
前記チオール系安定剤は7以上の炭素原子を有してもよく、その構造に応じて末端に2~10個、例えば2~6個のチオール基(-SH)を有するが、これに特に限定されない。使用可能なチオール系安定剤の非限定的な例としては、ペンタエリスリトールテトラキス(3-メルカプトプロピオネート)(pentaerythritol tetrakis(3- mercaptopropionate))、トリメチロールプロパントリス(3-メルカプトプロピオネート)(trimethylolpropane tris(3-mercaptopropionate))、ペンタエリスリトールテトラキス(メルカプトアセテート)(Pentaerythritol tetrakis(mercaptoacetate))、トリメチロールプロパントリス(2-メルカプトアセテート)(trimethylolpropane tris(2-mercaptoacetate)、グリコールジ-3-メルカプトプロピオネート(Glycol di-3-mercaptopropionate)、またはそれらの混合物などがある。
【0113】
その他の添加剤
前述の成分に加えて、本発明の量子ドット組成物は、本発明の効果を阻害しない範囲で当技術分野で公知の添加剤を制限なく使用することができる。この場合、添加剤の含有量は当技術分野で公知の範囲内で適宜調整することができる。
【0114】
使用可能な添加剤の一例として、シラン系化合物、シロキサン系化合物、酸化防止剤、重合抑制剤、潤滑剤、表面調整剤、界面活性剤、付着促進剤、消泡剤、スリップ剤、溶剤、湿潤剤、光安定剤、汚れ防止剤、柔軟剤、増粘剤、ポリマーなどがある。これらは単独で使用したり、2種以上を混用することもできる。
【0115】
シラン系化合物はマトリックスに接着性を与える役割をし、シロキサン系化合物は濡れ性(wetting性)を与える役割をする。このようなシラン系化合物とシロキサン系化合物は、当分野で公知の成分を制限なく使用することができる。
【0116】
酸化防止剤は、熱や光照射による退色およびオゾン、活性酸素、NOx、SOx(Xは整数)などの様々な酸化性ガスによる退色を抑制し、本発明では、酸化防止剤を添加することでマトリックスの着色防止や分解による膜厚さの減少を低減する。使用可能な酸化防止剤の例として、ヒドラジド類、ヒンダードアミン系酸化防止剤、含窒素複素環メルカプト系化合物、チオエーテル系酸化防止剤、ヒンダードフェノール系酸化防止剤、アスコルビン酸類、硫酸亜鉛、チオシアン酸塩類、チオ尿素誘導体、糖類、亜硝酸塩、亜硫酸塩、チオ硫酸塩、ヒドロキシルアミン誘導体などがある。
【0117】
レベリング剤は、前記量子ドット組成物を被覆するときに平坦で滑らかにコートされるようにレベリングし、組成物内の接着力をより高める目的で含まれる。前記レベリング剤としては、アクリル系、シリコーン系などを単独または2種以上混合して含むことができる。一例として、ポリエーテル変性ポリジメチルシロキサンを含むことができ、前記ポリエーテル鎖中に(メタ)アクリロイル基を加えて含むことができる。
【0118】
界面活性剤は、前記量子ドット組成物の混和および塗布均一性のために含まれる。前記界面活性剤として、当該分野で公知の従来のカチオン性、アニオン性、非イオン性界面活性剤を用いることができ、例えば、フッ素系界面活性剤、シリコーン系界面活性剤およびフッ素シリコン系界面活性剤のうち1種以上を用いることができる。
【0119】
光安定剤は、紫外線吸収剤としてマトリックスの耐候性を高める効果がある。柔軟剤は、乾燥したポリマーマトリックス内のクラック発生を緩和するためのものであり、硬化したマトリックス内のクラック発生を緩和して耐衝撃性および耐屈曲性を改善する。
【0120】
本発明に係る無溶媒型量子ドット組成物は、2種以上のリガンドで表面改質された量子ドットおよび前記リガンド置換量子ドットとの混和性に優れた光重合性モノマーを含む。
【0121】
前述した本発明に係る無溶媒型量子ドット組成物は、光吸収率、光変化率などの光特性に優れ、低粘度を達成することができる。具体的に、常温(25℃)での粘度は30cps以下、好ましくは28cps以下、より好ましくは25cps以下である。粘度を適切な範囲で調整することにより、前記無溶媒型量子ドット組成物は優れた作業性と工程性を有するだけでなく、高温での保存安定性に優れる。また、本発明による無溶媒型量子ドット組成物は、低粘度が達成されるため、インクジェットプリントに使用することができる。
【0122】
<無溶媒型量子ドット組成物の製造方法>
本発明の一実施形態によれば、無溶媒型量子ドット組成物の製造方法は、(a)量子ドットを合成する工程、(b)前記量子ドットの合成が起こった溶液から前記量子ドットを分離することなく、エチレングリコール構造を含む一次リガンドで前記量子ドットを一次表面改質する工程、(c)一次表面改質された量子ドットを下記化学式1で表される二次リガンドで二次表面改質する工程、(d)前記(c)工程の生成物を分離して表面改質量子ドットを得る工程と、(e)得られた表面改質量子ドットを光重合性モノマーに分散させる工程とを含む。
[化学式1]
(前記化学式1において、Mは2~4価の金属であり、R~Rは独立して水素又は炭素数3~70の有機基であり、nは2~4の整数である。)
【0123】
また、前記(c)工程の後、
(f)カルボキシル基を含む炭素数3~40の三次リガンドを添加して前記改質量子ドットを三次表面改質する工程を含むことができる。
【0124】
前記(c)工程で二次リガンドによる量子ドットの改質は、一次リガンドで量子ドットを改質した後に行われることが好ましい。
【0125】
ここで、量子ドット、一次リガンド、二次リガンド、三次リガンド、および光重合性モノマーに関することは前述の通りである。また、量子ドットの製造方法は、従来の多数の文献に知られている方法(例えば、高温注入法、微小流体反応器方法、マイクロ波照射(microwave irradiation)を用いた方法など)を用いることができる。本発明では、量子ドットの製造方法ではなく、量子ドットの製造溶液状態におけるリガンドの組成およびその改質方法に特徴があるので、これについて具体的に説明する。
【0126】
具体的に、前記(b)工程は、前記量子ドットが合成された溶液の温度を下げて約80℃に維持した状態で、一次リガンドをシクロヘキシラセテート(cyclohexylacetate)で20重量%に希釈した溶液を入れて約5時間攪拌して一次改質する。そして、前記(c)工程は、温度を約30℃に下げた状態で、前記二次リガンドをシクロヘキシラセテート(cyclohexylacetate)で20wt%に希釈した溶液を投入し、約90分間攪拌して量子ドットの表面を二次改質する工程である。また、(c)工程の後、冷却して再び温度を約30℃に下げた状態で三次リガンドを投入し30分~3時間反応させて量子ドットの表面を改質する工程を含んでもよい。
【0127】
前記量子ドットの表面改質工程は、2ステップまたは3ステップに分けて量子ドットの表面改質を行い、一次リガンド、二次リガンドおよび三次リガンド間の反応による付加生成物の形成を防止することができ、一次リガンドが疎水性の量子ドットと先に反応して疎水性を弱めることにより、全体的に疎水性である量子ドット合成溶液内でも二次リガンドおよび三次リガンドとの反応が進められ、量子ドットの表面が改質されながらも、その後の光重合性モノマーでの分散性が向上する。
【0128】
一方、前記量子ドットに前記二次リガンドと三次リガンドを同時に投入する場合、二次リガンドのチオール基と三次リガンドのアクリレートとの間のチオール-エン(thiol-ene)反応により付加生成物が形成され得る。付加生成物は、表面改質された量子ドットを光重合性モノマーに分散させるとき、量子ドット組成物の粘度を向上させる。
【0129】
また、前記量子ドットの表面改質工程は、前記一次表面改質された量子ドットに前記二次リガンドと三次リガンドを同時に投入し、25℃~100℃で30分~3時間反応して量子ドットの表面を改質する工程でる。
【0130】
前記の方法で量子ドットの表面を改質した後、表面改質された量子ドットは遠心分離によって得ることができる。さらに、無溶媒型量子ドット組成物は、得られた表面改質量子ドットを重合性モノマーに分散させて製造することができる。
【0131】
<硬化膜、カラーフィルタとディスプレイ装置>
本発明は、前述した無溶媒型量子ドット組成物を含む硬化膜を提供する。本発明による硬化膜は、光特性に優れ、具体的には光吸収率が75%以上、好ましくは78%以上である。また、硬化膜は、光変換率が25%以上、具体的には29%以上である。また、10±0.5μm厚でコートした場合、絶対量子効率が30%以上である。
【0132】
前記硬化膜は、前記無溶媒型量子ドット組成物を基板上にインクジェット噴射方法で塗布してパターンを形成する工程;前記パターンを硬化する工程を含めて製造することができる。
【0133】
本発明は、前述の無溶媒型量子ドット組成物を含むカラーフィルタを提供する。カラーフィルタは、背面光源から出る白色光から画素単位で赤、緑、青の3色を抽出して液晶ディスプレイでカラーを表現できるようにする薄膜フィルムの形態の光学部品である。
【0134】
このようなカラーフィルタは、染色法、顔料分散法、印刷法、電着法などの方法で製造することができる。また、量子ドット組成物を含むカラーフィルタは、インクジェット法により製造することができる。インクジェット法は所望の画素にのみ材料を使用するため、不必要に材料が無駄になるのを防止する。
【0135】
さらに、本発明は、前述の量子ドット組成物を含むディスプレイ装置を提供する。ここで、ディスプレイ装置は、液晶ディスプレイ装置(LCD)、電界発光ディスプレイ装置(EL)、プラズマディスプレイ装置(PDP)、電界放出ディスプレイ装置(FED)、有機発光素子(OLED)などがあるが、これに限定されない。
【0136】
以下、実施例により本発明をより詳細に説明する。しかしながら、以下の実施例は本発明を例示だけであり、本発明の範囲は実施例に限定されない。
【0137】
[量子ドット(QD)の合成例]
1)200mlフラスコで亜鉛アセテートおよびオレイン酸を1-オクタデセン(octadecene)に溶解し、真空下で約120℃に加熱した後、常温に冷やしてオレイン酸亜鉛(zinc oleate)溶液を得る。
【0138】
2)反応フラスコで前記オレイン酸亜鉛と共に酢酸インジウム(Indium acetate)およびラウリン酸を真空下で約120℃に加熱する。インジウムとラウリン酸のモル比は約1:3である。約1時間後、反応器内の雰囲気を窒素に転換する。反応フラスコ内温度を約250℃に上げながらトリス(トリメチルシリル)ホスフィン(tris(trimethylsilyl)phosphine:TMSP)とトリオクチルホスフィン(以下、TOP)の混合溶液及び選択に応じて前記オレイン酸亜鉛溶液を前記反応器内へ迅速に注入する。反応の進行中、前記反応フラスコにオレイン酸インジウム溶液、TMSP混合溶液およびオレイン酸亜鉛を順次注入する。総反応時間は約30分とする。
【0139】
3)Seを約120℃でTOPに分散させてSe/TOP溶液を準備する。また、SをTOPに分散させてS/TOP溶液を準備する。
【0140】
4)酢酸亜鉛(zinc acetate)とオレイン酸を300mLの反応器でトリオクチルアミン(TOA)に溶解し、約120℃で約10分間真空処理して亜鉛前駆体を得る。窒素(N)で前記フラスコ内を置換した後、約280℃に昇温し、所定の時間温度を維持する。
【0141】
5)製造されたInZnPコアと製造したSe/TOPを所定の割合で添加した後、約300℃以上の高温で加熱し反応させてZnSe含有層を形成する。
【0142】
6)Se前駆体が消耗した時点で、S/TOPと約0.07mmolのZnClを同時に注入する。合計1時間反応してZnS含有層を形成する。
【0143】
7)InZnP/ZnSe/ZnS(core/shell/shell)の量子ドットが作られる。最終生成物として疎水性のTOA溶媒に分散した前記量子ドットと反応残留物(オレイン酸、TOPなど)などの不純物を含む溶液が得られる。
【0144】
[製造例1]一次リガンドの製造
1)チオグリコール酸0.271mol、トリエチレングリコールモノメチルエーテル0.276mol、p-トルエンスルホン酸モノヒドレート(触媒)0.027molをシクロヘキサン350mlに混合し、窒素環境で約18時間約80℃で反応させる。
2)反応が終了したら、シクロヘキサンを除去し、クロロホルムに溶解する。
3)NaHCO水溶液で中和後、MgSOで不純物を除去する。
4)残留溶媒を除去して、Methoxy triethylene glycol thioglycolate(以下、MTEGTまたは一次リガンドと呼ぶ)を得る。
【0145】
[製造例2-1]二次リガンド2-1の製造
1)メルカプトコハク酸(Mercaptosuccinic acid)0.271mol、トリエチレングリコールブチルエーテル(Triethylene glycol butyl eter)0.276mol、p-トルエンスルホン酸モノヒドレート(触媒)0.027molをシクロヘキサン350mlに混合し、窒素環境で約18時間約80反応させる。
2)反応が終了したら、シクロヘキサンを除去し、クロロホルムに溶解する。
3)NaHCO水溶液で中和後、MgSOで不純物を除去する。
4)残留溶媒を除去して、Bis-(ブトキシトリエチレングリコール)メルカプトサクシネート(以下、BTEGMSという)を得る。
5)ZnClとBTEGMSとを約1:3のモル比で反応させ、二次リガンド2-1としてZn-(BTEGMS)を得る。
【0146】
[製造例2-2]二次リガンド2-2の製造
1)チオグリコール酸0.271mol、ポリ(エチレングリコール)メチルエーテル550(数平均分子量550g/mol)0.276mol、p-トルエンスルホン酸モノヒドレート0.027molをシクロヘキサン350mlに混合し窒素環境で約18時間約80℃で反応させる。
2)反応が終了したら、シクロヘキサンを除去し、クロロホルムに溶解する。
3)NaHCO水溶液で中和後、MgSOで不純物を除去する。
4)残留溶媒を除去してPEG550-チオグリコレート(以下、PEG550-Tという)を得る。
5)ZnClとPEG550-Tとを約1:3のモル比で反応させ二次リガンド2-2としてZn-(PEG550-T)を得る。
【0147】
[製造例2-3]二次リガンド2-3の製造
丸いフラスコに塩化亜鉛(ZnCl)と下記化学式A-1で表される化合物を約1:3モル比で酢酸シクロヘキシル(Cyclohexyl acetate)に入れた後、約60℃で熱攪拌により溶解する。その後、真空状態で約2時間HClを除去して二次リガンド2-3を製造した。
[A-1]
【0148】
[製造例2-4]二次リガンド2-4の製造
製造例2-3で化学式A-1で表される化合物の代わりに下記化学式A-2で表される化合物を使用することを除いて、製造例2-3と同様にして二次リガンド2-4を製造した。
[A-2]
【0149】
[製造例2-5]二次リガンド2-5の製造
製造例2-3で化学式A-1で表される化合物の代わりに下記化学式A-3で表される化合物を使用することを除いて、製造例2-3と同様にして二次リガンド2-5を製造した。
[A-3]
【0150】
[製造例2-6]二次リガンド2-6の製造
製造例2-3で化学式A-1で表される化合物の代わりに下記化学式A-4で表される化合物を使用することを除いて、製造例2-3と同様にして二次リガンド2-6を製造した。
[A-4]
【0151】
[製造例2-7]二次リガンド2-7の製造
製造例2-3で化学式A-1で表される化合物の代わりに下記化学式A-5で表される化合物を使用することを除いて、製造例2-3と同様にして二次リガンド2-7を製造した。
[A-5]
【0152】
[製造例3-1]三次リガンド3-1の製造
丸いフラスコに下記化学式B-1で表される化合物を酢酸シクロヘキシル(Cyclohexyl acetate)に20重量%で入れた後、常温で約1時間撹拌して三次リガンド3-1を製造した。
[B-1]
【0153】
[製造例3-2]三次リガンド3-2の製造
製造例3-1で化学式B-1で表される化合物の代わりに、下記化学式B-2で表される化合物を使用することを除いて、製造例3-1と同様にして三次リガンド3-2を製造した。
[B-2]
【0154】
[製造例3-3]三次リガンド3-3の製造
製造例3-1で化学式B-1で表される化合物の代わりに、下記化学式B-3で表される化合物を使用することを除いて、製造例3-1と同様にして三次リガンド3-3を製造した。
[B-3]
【0155】
[製造例3-4]三次リガンド3-4の製造
製造例3-1で化学式B-1で表される化合物の代わりに、下記化学式B-4で表される化合物を使用することを除いて、製造例3-1と同様にして三次リガンド3-4を製造した。
[B-4]
【0156】
[製造例3-5]三次リガンド3-5の製造
製造例3-1で化学式B-1で表される化合物の代わりに、下記化学式B-5で表される化合物を使用することを除いて、製造例3-1と同様にして三次リガンド3-5を製造した。
[B-5]
【0157】
[製造例3-6]三次リガンド3-6の製造
製造例3-1で化学式B-1で表される化合物の代わりに、下記化学式B-6で表される化合物を使用することを除いて、製造例3-1と同様にして三次リガンド3-6を製造した。
[B-6]
【0158】
<実施例1>量子ドット組成物の製造
1-1.量子ドットの製造
前記量子ドット(QD)の合成例に従ってInZnP/ZnSe/ZnSの量子ドットを合成する。量子ドットが合成された溶液から量子ドットを分離精製する過程を実施しない。
【0159】
1-2.量子ドットの表面改質
1)前記量子ドットが合成された溶液(約300g)の温度を下げて約80℃に維持した状態で、前記製造例1によるMTEGT(一次リガンド)を酢酸シクロヘキシル(Cyclohexyl acetate)で20wt%に希釈した溶液6.2gを入れて約5時間撹拌し、前記量子ドットを一次表面改質した。
2)前記一次表面改質された量子ドットを含む溶液の温度を約30℃に下げ、前記製造例2-1による二次リガンド2-1(Zn-(BTEGMS))を酢酸シクロヘキシル(Cyclohexyl acetate)で20wt%に希釈した溶液0.8gを入れて約90分攪拌し、二次表面改質した。
3)室温に冷却して反応を終了する。
【0160】
1-3.量子ドット-モノマー分散液の調製
1)前記表面改質が完了した量子ドットを含む溶液をヘキサンとアセトンで遠心分離して量子ドットパウダーを得る。
2)前記量子ドットパウダーを1,6-ヘキサンジオールジアクリル酸(hexandiol diacrylate)で50重量%に分散させてQD分散液1を製造した。
【0161】
1-4.QDインク(QD ink)組成物の製造
1)拡散剤でTiOパウダーを1,6-ヘキサンジオールジアクリレートで約50wt%に分散させ、粒度分布における90%粒子径(D90)サイズが300nmを超えないようにしてTiO分散液を準備した。
2)QD分散液180g、TiO分散液8g、TPO-L1g、1,6-ヘキサンジオールジアクリレート11gを混合してQDインク(組成物1)を製造した。
【0162】
<実施例2>量子ドット組成物の製造
1-1.量子ドットの製造
実施例1と同様である。
【0163】
1-2.量子ドットの表面改質
1)製造例3-2による三次リガンド3-2(モノ(2-アクリロイルロキシエチル)サクシネート、MEAS)を準備する。
2)実施例1と同様に量子ドットを2回表面改質する。
3)二次改質された量子ドットを含む溶液の温度を再び約30℃に下げ、前記溶液に約1.19gのMEASを入れて約90分間撹拌し、量子ドットを三次表面改質した。
4)常温に冷却して反応を終了する。
【0164】
1-3.量子ドット-モノマー分散液の調製
実施例1と同様の方法でQD分散液2を製造した。
【0165】
1-4.QDインク組成物の製造
実施例1と同様の方法で製造するが、QD分散液1の代わりにQD分散液2を混合してQDインク(組成物2)を製造した。
【0166】
<実施例3>量子ドット組成物の製造
1-1.量子ドットの製造
実施例1と同様である。
【0167】
1-2.量子ドットの表面改質
Zn-(BTEGMS)の代わりにZn-(PEG550-T)(二次リガンド2-2)を用いたことを除いて実施例1と同様に実施する。
【0168】
1-3.量子ドット-モノマー分散液の調製
実施例1と同様の方法でQD分散液3を製造した。
【0169】
1-4.QDインク組成物の製造
実施例1と同様の方法で製造し、QD分散液1の代わりにQD分散液3を混合してQDインク(組成物3)を製造した。
【0170】
<実施例4>量子ドット組成物の製造
1-1.量子ドットの製造
実施例1と同様である。
【0171】
1-2.量子ドットの表面改質
Zn-(BTEGMS)の代わりにZn-(PEG550-T)(二次リガンド2-2)を用いたことを除いて実施例2と同様に実施する。
【0172】
1-3.量子ドット-モノマー分散液の調製
実施例1と同様の方法でQD分散液4を製造した。
【0173】
1-4.QDインク組成物の調製
実施例1と同様の方法で製造し、QD分散液1の代わりにQD分散液4を混合してQDインク(組成物4)を製造した。
【0174】
<実施例5>量子ドット組成物の製造
1-1.量子ドットの製造
実施例1と同様である。
【0175】
1-2.量子ドットの表面改質
Zn-(PEG550-T)(二次リガンド2-2)を酢酸シクロヘキシル(Cyclohexyl acetate)で20重量%に希釈した溶液を1.56g使用したことを除いて、実施例3と同様に実施する。
【0176】
1-3.量子ドット-モノマー分散液の調製
実施例1と同様の方法でQD分散液5を製造した。
【0177】
1-4.QDインク組成物の製造
実施例1と同様の方法で製造し、QD分散液1の代わりにQD分散液5を混合してQDインク(組成物5)を製造した。
【0178】
<実施例6>量子ドット組成物の製造
1-1.量子ドットの製造
実施例1と同様である。
【0179】
1-2.量子ドットの表面改質
Zn-(PEG550-T)(二次リガンド2-2)を酢酸シクロヘキシル(Cyclohexyl acetate)で20重量%に希釈した溶液を1.56g使用したことを除いて実施例4と同様に実施する。
【0180】
1-3.量子ドット-モノマー分散液の調製
実施例1と同様の方法でQD分散液6を製造した。
【0181】
1-4.QDインク組成物の製造
実施例1と同様の方法で製造し、QD分散液1の代わりにQD分散液6を混合してQDインク(組成物6)を製造した。
【0182】
<比較例1>量子ドット組成物の製造
1-1.量子ドットの製造
実施例1と同様である。
【0183】
1-2.量子ドットの表面改質
前記量子ドットが合成された溶液(約300g)の温度を下げて約50℃に維持した状態で、2-(2-メトキシエトキシ)酢酸 (2-(2-Methoxyethoxy)acetic acid、以下、MEAAという)を酢酸シクロヘキシル(Cyclohexyl acetate)で20wt%に希釈した溶液6.4gを入れて、約5時間撹拌し前記量子ドットを表面改質した。室温に冷却して反応を終了した。
【0184】
1-3.量子ドット-モノマー分散液の調製
実施例1と同様の方法でQD比較分散液1を製造した。
【0185】
<比較例2>量子ドット組成物の製造
1-1.量子ドットの製造
実施例1と同様である。
【0186】
1-2.量子ドット表面マテリアルステップ
MEAAの代わりにMTEGTを用いたことを除いて、比較例1と同様に量子ドットを改質した。
【0187】
1-3.量子ドット-モノマー分散液の調製
実施例1と同様の方法でQD比較分散液2を製造した。
【0188】
1-4.QDインク組成物の製造
実施例1と同様の方法で製造し、QD分散液1の代わりにQD比較分散液2を混合してQDインク(比較組成物2)を製造した。
【0189】
<比較例3>量子ドット組成物の製造
1-1.量子ドットの製造
実施例1と同様に量子ドットを調製し、合成された量子ドットを含む溶液を常温に冷却してエタノールとアセトンで遠心分離し、量子ドットパウダーを得る。
【0190】
1-2.量子ドットの表面改質
1)前記量子ドットパウダーを酢酸シクロヘキシル(Cyclohexyl acetate)で約20重量%に分散させる。
2)分散した前記量子ドット溶液(約100g)の温度を約60℃に昇温させて維持し、Zn-(BTEGMS)(二次リガンド2-1)を約15gを注入して約3時間攪拌し、一次表面改質した。
3)続いて、MEAS(三次リガンド3-2)をシクロヘキシル(Cyclohexyl acetate)で約20重量%に希釈した溶液100gを入れ、約3時間攪拌して、二次表面改質した。
4)室温に冷却して反応を終了する。
【0191】
1-3.量子ドット-モノマー分散液の調製
実施例1と同様の方法でQD比較分散液3を製造した。
【0192】
1-4.QDインク組成物の製造
実施例1と同様の方法で製造し、QD分散液1の代わりにQD比較分散液3を混合してQDインク(比較組成物3)を製造した。
【0193】
<比較例4>量子ドット組成物の製造
1-1.量子ドットの製造
比較例3と同様である。
【0194】
1-2.量子ドットの表面改質
一次表面改質工程でZn-(BTEGMS)(二次リガンド2-1)の代わりにZn-(PEG550-T)(二次リガンド2-2)約30gを用いたことを除いて、比較例3と同様である。
【0195】
1-3.量子ドット-モノマー分散液の調製
実施例1と同様の方法でQD比較分散液4を製造した。
【0196】
1-4.QDインク組成物の製造
実施例1と同様の方法で製造し、QD分散液1の代わりにQD比較分散液4を混合してQDインク(比較組成物4)を製造した。
【0197】
実施例1~6および比較例1~4をまとめて以下の表1に示す。
【0198】
【表1】
【0199】
<試験例1>QD分散液の分散性、絶対量子効率(QE)、発光波長及び半値幅の測定
実施例1~6及び比較例1~4で得たQD分散液1~6とQD比較分散液1~4のQD沈殿可否を見て分散性を確認し、QD分散液の絶対量子効率QE(大塚、QE-2000)、波長および半値幅を測定した。その結果を下記の表2に示す。
【0200】
【表2】
【0201】
前記表2に示すように、量子ドットが合成された溶液にMEAA1種のみを使用した場合(QD比較分散液1)、リガンド置換後にモノマーとの極性が合わなくQDの分散性が低下して沈殿の発生が確認された。その他には沈殿物がなく(Clear)、分散性が良好であった。
【0202】
リガンドを1種のみ使用したQD比較分散液1と2を比較すると、QD比較分散液2のみが分散可能であったが、これはMEAA(QD比較分散液1)よりもMTEGT(QD比較分散液2)で繰り返されるエチレングリコール構造が多くて、QD表面がより親水性に改質され、それにより分散性が向上したと判断される。
【0203】
一次リガンド(MTEGT)を1種のみ使用したQD比較分散液2と比較して、QD分散液1~6のようにリガンドを2種以上使用した場合、QE値が全て99.4%以上であるため、リガンドを2種以上使用した場合に絶対量子効率がもう少し優秀であることが確認された。
【0204】
量子ドットの合成後で直ちにリガンド置換を行った場合(QD分散液1~6)と合成後に分離精製されたQDにリガンド置換を行った場合(QD比較分散液3及び4)とを比較すると、QE値の有意な差がないか、より優れていることが確認された。同様に、QD分散液/比較分散液はいずれも発光波長が約523~524nmであり、半値幅は39~40nmで、ほぼ同様の値を有することが確認された。
【0205】
従って、本発明によれば、QD合成後に直ちにリガンド置換が可能であり、それに伴うQD分散性及びQEが低下せず、波長及び半値幅値が類似し、分離精製されたQDにリガンド置換を実施した場合に比べて、性能上の有意な差がないか、より優れていた。
【0206】
<試験例2>製造された組成物の粘度、光吸収率およびQE確認
実施例1~6及び比較例2~4で製造されたQDインク組成物/比較組成物の粘度を粘度計(RheoStress MARS-40、HAAKE社)を用いて常温(25℃)で100rpmで2分間測定し、その結果を以下の表3に示した。
【0207】
実施例1~6及び比較例2~4で製造されたQDインク組成物/比較組成物をスピンコート法(スピンコート機、ミカサ社、Opticoat MS-A150)でガラス基板上に10μm厚で塗布し、395nmUVを照射し、4000mJ(83℃、4秒)で露光して硬化膜を作製した。積分球装置(QE-2100、大塚電子(otsuka electronics))に2cm×2cmの単膜試片をロードし、初期光吸収率を測定してQEを測定(大塚、QE-2000)した。その後、窒素雰囲気下180℃で30分間熱処理(Post-Bake)した後、QEを測定した。その結果を下記の表3に示す。
【0208】
【表3】
【0209】
前記表3に記載はないが、MTEGT(一次リガンド)で一次表面改質せず、量子ドットが合成された溶液で直ちにZn-(BTEGMS)(二次リガンド2-1)で表面改質した場合には量子ドットの表面改質は行われなかった。したがって、二次又は三次の表面改質が可能になるためにはMTEGTによる一次表面改質が必須であると考えられる。
【0210】
前記表3に示すように、2種以上のリガンドを用いた組成物1~6がリガンド1種のみを用いた比較組成物2より熱処理前後におけるQE値の差が少なく、外部熱源に対する安定性(信頼性)に優れ、QD組成物を用いた製品生産に必要な後続の熱処理工程でQD性能が良好に維持できることが確認された。
【0211】
この特性は、金属が結合していない一次リガンド(MTEGT)よりも金属が結合した二次リガンド(Zn-(BTEGMS)、Zn-(PEG550-T))がQDとの結合力がもっと大きく、QD表面で安定的に結合しリガンドの脱離が減少するためであると判断される。
【0212】
リガンド2種を用いた組成物1、3、5とリガンド3種を用いた組成物2、4、6をそれぞれ対応して比較すると、組成物2、4、6がより低粘度を有し、熱処理前後のQE値の差がより少ないことを確認した。これらの特性は、三次リガンドを追加すると、QD表面で結合せず単に物理的に付着した一次または二次リガンドの脱離を誘導し、リガンド同士またはリガンドと1,6-ヘキサンジオールジアクリル酸(1,6-hexandiol diacrylate)の間の凝集(aggregation)を防止するためであると思われる。
【0213】
二次リガンド2-2を用いた組成物3および4は、組成物1、2に比べて粘度が25cps以上で多少高く、熱処理前後のQD値が差もより大きい。これは、二次リガンド2-2としてZn-(PEG550-T)の分子量が多少高くて、相対的にQD表面で結合した二次リガンド2-2のモル当量が組成物1、2に比べて少なくなるためであると思われる。
【0214】
これらの問題を解決するため、組成物5および6は組成物3、4とリガンドの構成は同じであるが、二次リガンド2-2を2倍で添加してQDを改質した。組成物5および6は、組成物3および4とそれぞれ対応して比較すると、粘度がより低くなり光吸収率が向上し、熱処理前後のQE値の維持程度が非常に向上することを確認した。また、組成物5と6を比較すると、三次リガンドで三次改質まで実施した組成物6がより優れた粘度及び光特性を示した。したがって、本分野の通常の技術者は、必要な粘度、QE値の信頼性などを考慮して、二次リガンドの添加量および三次リガンドの添加可否などを調整することができる。
【0215】
QD合成後の当該溶液で直ちにリガンド置換を実施した組成物1、2、5及び6の粘度、光吸収率及びQE値(UV硬化、硬化及び熱処理)は、分離精製されたQDを用いた比較組成物3、4と同様であるか、またはより良いことが確認された。したがって、QD合成後に該当溶液中で直ちにリガンド置換が可能であり、それによって組成物の粘度をさらに低くすることができ、光吸収率およびQEが低下しないことが確認された。
【0216】
本発明は、前記実施例に限定されなく、本発明の技術的要旨を超えない範囲内で様々な変更または変形ができることは、本発明が属する技術分野の当業者にとって自明である。
【国際調査報告】