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特表2024-538523パルス赤外線の照射による膨張性コーティング組成物の硬化
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  • 特表-パルス赤外線の照射による膨張性コーティング組成物の硬化 図1
  • 特表-パルス赤外線の照射による膨張性コーティング組成物の硬化 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-10-23
(54)【発明の名称】パルス赤外線の照射による膨張性コーティング組成物の硬化
(51)【国際特許分類】
   C09D 201/00 20060101AFI20241016BHJP
   C09D 163/00 20060101ALI20241016BHJP
   C09D 7/63 20180101ALI20241016BHJP
   C09D 7/61 20180101ALI20241016BHJP
   C09D 5/18 20060101ALI20241016BHJP
   B05D 3/02 20060101ALI20241016BHJP
   B05D 7/24 20060101ALI20241016BHJP
   H01M 50/204 20210101ALI20241016BHJP
   H01M 10/658 20140101ALI20241016BHJP
   H01M 50/224 20210101ALI20241016BHJP
   H01M 50/227 20210101ALI20241016BHJP
   H01M 50/229 20210101ALI20241016BHJP
   H01M 50/249 20210101ALI20241016BHJP
   H01M 10/625 20140101ALI20241016BHJP
   C23C 26/00 20060101ALI20241016BHJP
   C08J 5/18 20060101ALI20241016BHJP
   C09D 175/04 20060101ALI20241016BHJP
   C09D 179/08 20060101ALI20241016BHJP
   C09D 179/02 20060101ALI20241016BHJP
   C09D 161/24 20060101ALI20241016BHJP
   B05D 5/00 20060101ALN20241016BHJP
【FI】
C09D201/00
C09D163/00
C09D7/63
C09D7/61
C09D5/18
B05D3/02 E
B05D7/24 301L
H01M50/204 401F
H01M10/658
H01M50/224
H01M50/227
H01M50/229
H01M50/249
H01M10/625
C23C26/00 A
C08J5/18 CEY
C08J5/18 CFC
C08J5/18 CFF
C09D175/04
C09D179/08
C09D179/02
C09D161/24
B05D5/00 E
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024516973
(86)(22)【出願日】2022-09-16
(85)【翻訳文提出日】2024-05-14
(86)【国際出願番号】 EP2022075772
(87)【国際公開番号】W WO2023041708
(87)【国際公開日】2023-03-23
(31)【優先権主張番号】63/261,273
(32)【優先日】2021-09-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.KEVLAR
(71)【出願人】
【識別番号】523353812
【氏名又は名称】ピーピージー コーティングス ヨーロッパ ベスローテン フェンノートシャップ
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】弁理士法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】マ、シゥアン
(72)【発明者】
【氏名】モエスター、イヴァン
(72)【発明者】
【氏名】ファン デル リンデン、マリエール ヘレナ アンジェリーナ
(72)【発明者】
【氏名】ライル、スヴェン
(72)【発明者】
【氏名】パーカー、ジェフリー エム.
(72)【発明者】
【氏名】ワルツィンスキー、ジェフリー
【テーマコード(参考)】
4D075
4F071
4J038
4K044
5H031
5H040
【Fターム(参考)】
4D075BB37Z
4D075CA18
4D075EA29
4D075EC41
4F071AA33
4F071AA41
4F071AA42
4F071AA43
4F071AA53
4F071AA60
4F071AA69
4F071AB18
4F071AB26
4F071AB27
4F071AC05
4F071AC12
4F071AC13
4F071AC15
4F071AC19
4F071AE02
4F071AE07
4F071AF47
4F071AF61
4F071AG05
4F071AG13
4F071AH12
4F071AH15
4F071BA02
4F071BB02
4F071BC02
4J038DB061
4J038DH002
4J038DJ012
4J038HA476
4J038HA486
4J038KA03
4J038KA04
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4K044BA18
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4K044BC11
4K044CA53
5H031AA09
5H031EE01
5H031EE03
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5H040AS07
5H040LL01
5H040LL04
5H040LL06
(57)【要約】
本開示は、膨張性コーティング組成物を基材の表面上に塗布するステップ、または膨張性コーティング組成物を自己支持性フィルムもしくはシートに形成するステップと、パルス赤外線を照射して、硬化した膨張性コーティングまたは硬化した自己支持性フィルムもしくはシートを形成するステップと、自己支持性フィルムまたはシートを基材の表面の一部に適用するステップとによって、基材に耐火性を付与する方法に関する。本開示はさらに、膨張性コーティング組成物の使用およびパルス赤外線の使用に関する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材に耐火性を付与する方法であって、
(I)(i)膨張性コーティング組成物を前記基材の表面の一部に塗布するステップ、または(ii)膨張性コーティング組成物を自己支持性フィルムもしくはシートに形成するステップと、
(II)パルス赤外線を(i)塗布された前記膨張性コーティング組成物または(ii)前記自己支持性フィルムもしくはシートに照射して、硬化した膨張性コーティングまたは硬化した自己支持性フィルムもしくはシートを形成するステップと、前記自己支持性フィルムまたはシートを前記基材の表面の一部に適用するステップと、を含む、方法。
【請求項2】
前記膨張性コーティング組成物が、
(a)フィルム形成樹脂と、
(b)架橋剤と、
(c)熱分解時に膨張ガスを提供する化合物と、を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記フィルム形成樹脂(a)が、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリビニル樹脂、尿素-ホルムアルデヒド樹脂、ポリイミド樹脂、メラミン樹脂、ポリエステル樹脂、シアネート樹脂、これらのコポリマー、またはこれらの混合物を含む、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記フィルム形成樹脂(a)が、エポキシ樹脂を含む、請求項2または3に記載の方法。
【請求項5】
前記架橋剤(b)が、ポリアミン、例えば、ポリエーテルアミン、ポリアミド、ポリエポキシド、アミノプラスト樹脂、フェノール樹脂、ポリイソシアネート、ポリチオール、ポリオール、これらのコポリマー、またはこれらの混合物を含む、請求項2~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記架橋剤(b)が、ポリアミンを含む、請求項2~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記熱分解時に膨張ガスを提供する化合物(c)が、メラミン、メラミン誘導体、グアニジン、メチロール化メラミン、ヘキサメトキシメチルメラミン、尿素、ジメチル尿素、ピロリン酸メラミン、ジシアンジアミド、リン酸グアニル尿素、グリシン、アルカリ土類金属炭酸塩、水酸化カルシウム、二水酸化マグネシウム、三水酸化アルミニウム、膨張可能な黒鉛、またはこれらの混合物を含む、請求項2~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記熱分解時に膨張ガスを提供する化合物(c)が、メラミン、メラミン誘導体、メチロール化メラミン、ヘキサメトキシメチルメラミン、ピロリン酸メラミン、またはこれらの混合物を含む、請求項2~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記膨張性コーティング組成物が、エポキシ反応性希釈剤を含む、先行請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記エポキシ反応性希釈剤が、脂肪族アルコールのジグリシジルエーテルを含む、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記膨張性コーティング組成物が、ホスフェート化合物を含む、先行請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記ホスフェート化合物が、リン酸、リン酸一アンモニウムおよびリン酸二アンモニウム、トリフェニルホスフェート、トリス-(2-クロロエチル)ホスフェート、トリス-(2-クロロイソプロピル)ホスフェート、ポリリン酸アンモニウム、ピロリン酸メラミンを含む、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記膨張性コーティング組成物が、ボレート化合物を含む、先行請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記ボレート化合物が、五ホウ酸アンモニウム、ホウ酸、ホウ酸金属塩、酸化ホウ素、ホウ酸ナトリウム、ホウ酸カリウム、ホウ酸アンモニウム、ブチルボレート、フェニルボレート、またはこれらの混合物を含む、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記膨張性コーティング組成物が、アルミニウム化合物を含む、先行請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
前記アルミニウム化合物が、水酸化アルミニウム、酸化アルミニウム、塩化アルミニウム、またはこれらの混合物を含む、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記膨張性コーティング組成物が、シリカ化合物を含む、先行請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
前記シリカ化合物が、フュームドシリカ、石英、またはこれらの混合物を含む、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記膨張性コーティング組成物が、TiOを含む、先行請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
前記膨張性コーティング組成物が、繊維性補強材を含む、先行請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
前記繊維性補強材が、鉱物繊維、セラミック繊維、ガラス繊維、炭素繊維、玄武岩繊維、またはこれらの混合物を含む、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記膨張性コーティング組成物が、0.1mm~15mmの範囲の乾燥フィルム厚さで前記基材に塗布されるか、または前記膨張性コーティング組成物が、0.1mm~15mmの範囲の乾燥フィルム厚さを有する自己支持性フィルムもしくはシートに形成される、先行請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項23】
前記パルス赤外線が、3μm~10μm、例えば、3μm~6μmの範囲のピーク波長を有する、先行請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項24】
前記パルス赤外線が、100μs未満のパルス持続時間で照射される、先行請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項25】
前記パルス赤外線が、5μs~15μs、例えば、8μs~12μs、または10μs~14μsの範囲のパルス持続時間で照射される、先行請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項26】
前記パルス赤外線が、350Hz~450Hz、または400Hz~450Hzのパルス周波数で照射される、先行請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項27】
前記パルス赤外線が、250W/cm~350W/cmの衝撃エネルギーで照射される、先行請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項28】
前記パルス赤外線が、25分未満、または20分未満、または15分未満、または10分未満の時間照射されて、硬化したコーティングまたは硬化した自己支持性フィルムもしくはシートを形成する、先行請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項29】
(II)における前記基材の表面温度が、100℃未満、または90℃未満である、先行請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項30】
(II)における赤外線光源のパルス赤外線放射表面が、5cm~50cm、例えば、5cm~30cm、または5cm~15cm、または10cm~20cm、または15cm~25cmの距離で、硬化する前記コーティング組成物が塗布された前記基材の前記表面、または硬化する前記自己支持性フィルムもしくはシートの表面に対向する、先行請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項31】
前記パルス赤外線が、熱を吸収し、3μm~10μmの範囲のピーク波長を有する赤外線を放射することが可能であるセラミック組成物を含む表面を含む赤外線光源によって提供される、先行請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項32】
前記コーティング組成物または前記自己支持性フィルムもしくはシートが適用される前記基材の前記表面の前記一部が、金属、プラスチック、セラミック、ガラス、木材、紙、板紙、ゴム、皮革、織物、既存のコーティング、またはこれらの混合物から選択される材料を含む、先行請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項33】
パルス赤外線を照射することによって膨張性コーティング組成物を硬化させる方法における膨張性コーティング組成物の使用。
【請求項34】
膨張性コーティング組成物を硬化させる方法におけるパルス赤外線の使用。
【請求項35】
請求項1~32のいずれか一項に記載の方法に従ってコーティングされた基材。
【請求項36】
請求項35に記載の基材を備える、物品。
【請求項37】
前記物品が、電池または電池構成要素を含む、請求項36に記載の物品。
【請求項38】
前記電池が、リチウムイオン電池である、請求項37に記載の物品。
【請求項39】
前記電池が、電気車両用電池または電気車両用電池構成要素を含む、請求項37または38に記載の物品。
【請求項40】
前記電池が、ハウジングを画定する外壁要素と、必要に応じて内壁要素と、を含み、前記膨張性コーティング組成物または自己支持性フィルムもしくはシートが、前記外壁要素のいずれかの外側および/もしくは内側、ならびに/または存在する場合、前記内壁要素のいずれかの任意の側に、少なくとも部分的に適用される、請求項37~39のいずれか一項に記載の物品。
【請求項41】
前記外壁要素および/または内壁要素のうちのいずれかが、複合材、鋼、アルミニウム、ポリカーボネート、またはこれらの組み合わせを含む、請求項40に記載の物品。
【請求項42】
前記電池が、複数の個々の電池セルを含む電池パックであり、前記コーティング組成物または自己支持性フィルムもしくはシートが、前記個々の電池セルのうちの少なくとも2つを、膨張状態および必要に応じて炭化状態において互いに断熱するように位置付けられ、前記電池が、必要に応じて1つもしくは1つより多くの追加の難燃性材料および/または火災軽減手段を含む、請求項37~41のいずれか一項に記載の物品。
【請求項43】
前記電池構成要素が、電極、電池セル、電池シェル、電池モジュール、電池パック、電池ボックス、電池セルケーシング、パックシェル、電池蓋、電池トレイ、熱管理システム、電池ハウジング、モジュールハウジング、モジュール追跡、電池サイドプレート、電池セル筐体、冷却モジュール、冷却管、冷却フィン、冷却プレート、母線、電池フレーム、電気接続、金属ワイヤ、銅もしくはアルミニウム導体もしくはケーブル、またはこれらの任意の組み合わせを含む、請求項37~39のいずれか一項に記載の物品。
【請求項44】
前記物品が、車両を含む、請求項36に記載の方法。
【請求項45】
前記物品が、構造を含む、請求項36に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、膨張性コーティング組成物を基材の表面上に塗布するステップ、または膨張性コーティング組成物を自己支持性フィルムもしくはシートに形成するステップと、パルス赤外線を照射して、硬化した膨張性コーティングまたは硬化した自己支持性フィルムもしくはシートを形成するステップとによって、基材に耐火性を付与する方法に関する。本開示はさらに、膨張性コーティング組成物の使用およびパルス赤外線の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
膨張性コーティングは、日常生活および産業の様々な態様において広く使用されている。膨張性コーティングは、一般に、火災の急速な延焼を遅らせるように、基材の表面の燃焼特性を変化させるために、基材の表面に塗布される。このようなコーティングは、激しい熱に曝露されると炭素質チャーを形成することによって保護する。電池、例えば、リチウムイオン電池、または例えば、ホテル、空港、コンサートホール、またはオフショアサイト、化学プラント、石油掘削装置などの商業施設および交通インフラで使用され、火災時に極端な熱に曝露される構造建築構成要素を含む、多数の基材が膨張性コーティングでコーティングされることで利益を得る可能性がある。しかしながら、膨張性コーティング組成物を硬化させる方法は、かなりの量の時間およびエネルギーを必要とする。
【0003】
したがって、本開示の目的は、基材に耐火性を付与する膨張性コーティングを硬化させるためのより効率的なプロセスを提供することである。硬化した膨張性コーティングの火災性能を維持しながら、エネルギー消費量と処理時間を低減させることを目的とする。
【0004】
この目的は、添付の特許請求の範囲に定義される主題によって解決される。膨張性コーティング組成物にパルス赤外線を照射することによって、硬化時間が有意に低減され得、このような膨張性コーティングの火災性能が維持される。
【発明の概要】
【0005】
本開示は、基材に耐火性を付与する方法であって、(I)(i)膨張性コーティング組成物を基材の表面の一部に塗布するステップ、または(ii)膨張性コーティング組成物を自己支持性フィルムもしくはシートに形成するステップと、(II)パルス赤外線を(i)塗布された膨張性コーティング組成物または(ii)自己支持性フィルムもしくはシートに照射して、硬化した膨張性コーティングまたは硬化した自己支持性フィルムもしくはシートを形成するステップと、自己支持性フィルムまたはシートを基材の表面の一部に適用するステップと、を含む、方法に関する。
【0006】
本開示はまた、本開示の方法に従ってコーティングされた基材に関する。加えて、本開示は、本開示による基材を備える物品を対象とする。
【0007】
本開示はさらに、パルス赤外線を照射することによって膨張性コーティング組成物を硬化させる方法における膨張性コーティング組成物の使用に関する。
【0008】
本開示はまた、膨張性コーティング組成物を硬化させる方法におけるパルス赤外線の使用に関する。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下の詳細な説明の目的のために、本開示が、相反することが明示的に指定されている場合を除き、様々な代替的な変形およびステップシーケンスを想定し得ることを理解されたい。さらに、任意の実施例以外で、または別段の指示がない限り、例えば、本明細書および特許請求の範囲で使用される成分の量を表す全ての数は、「約」という用語によっていかなる場合も修飾されているものとして理解されるべきである。したがって、相反することが示されない限り、以下の明細書および添付の特許請求の範囲に記載される数値パラメータは、本開示によって得られる所望の特性に応じて変動し得る近似値である。少なくとも、かつ、等価物の見解の適用を特許請求の範囲に限定しようとするものではなく、各数値パラメータは、少なくとも報告された有意な桁の数に照らし合わせて、かつ通常の四捨五入技法を適用することによって解釈されるべきである。
【0010】
本開示の広範な範囲を示す数値範囲およびパラメータは近似値ではあるが、特定の例で示される数値は、可能な限り正確に報告される。しかしながら、任意の数値は、それらのそれぞれの試験測定値に見られる標準偏差から必然的に得られる特定の誤差を本質的に含有する。
【0011】
また、本明細書に記載される任意の数値範囲は、その中に包含される全ての部分範囲を含むことを意図していることを理解されたい。例えば、「1~10」の範囲は、記載された最小値1と記載された最大値10との間の(およびそれらを含む)全ての部分範囲、すなわち、1に等しいまたは1を超える最小値と、10に等しいまたは10未満の最大値と、を有することが意図される。
【0012】
本出願では、別段の明記がない限り、単数形の使用は複数形を含み、複数形は単数形を包含する。加えて、本出願では、「および/または」がある特定の場合において明示的に使用され得るが、別段の明記がない限り、「または」の使用は、「および/または」を意味する。さらに、本出願では、「1つの(a)」または「1つの(an)」の使用は、別段の明記がない限り、「少なくとも1つの」を意味する。例えば、「1つの」ポリマー、「1つの」フィルム形成樹脂などは、これらの項目のうちのいずれかのうちの1つまたは1つより多くを指す。
【0013】
本開示は、基材に耐火性を付与する方法に関する。本開示による方法は、(I)(i)膨張性コーティング組成物を基材の表面の一部に塗布するステップ、または(ii)膨張性コーティング組成物を自己支持性フィルムもしくはシートに形成するステップと、(II)パルス赤外線を(i)塗布された膨張性コーティング組成物または(ii)自己支持性フィルムもしくはシートに照射して、硬化した膨張性コーティングまたは硬化した自己支持性フィルムもしくはシートを形成するステップと、自己支持性フィルムまたはシートを基材の表面の一部に適用するステップと、を含む。
【0014】
本明細書で使用される場合、「膨張性コーティング」という用語は、膨張を受けるコーティングを指し、したがって、体積の増加および密度の減少、ならびに熱、例えば、火災中に経験される高温に曝露された場合の炭化をもたらす。本明細書で使用される場合、「自己支持性フィルムまたはシート」という用語は、それ自体を支持し、基材の支持なしにしっかりと保持することが可能であるフィルムまたはシートを指す。
【0015】
本開示によれば、基材に耐火性を付与する方法は、(I)膨張性コーティング組成物を基材の表面の一部に塗布するステップと、(II)パルス赤外線を、塗布された膨張性コーティング組成物に照射して、硬化した膨張性コーティングを形成するステップと、を含む。
【0016】
本開示によれば、膨張性コーティング組成物は、フィルム形成樹脂(a)を含み得る。本明細書で使用される場合、「フィルム形成樹脂」という用語は、組成物中に存在する任意の希釈剤もしくは担体の除去時、または周囲条件、例えば、20~25℃の範囲の温度、もしくは高温、例えば、40~200℃の範囲の温度での硬化時に、基材の水平表面上に自己支持性連続フィルムを形成し得る樹脂を指す。「樹脂」および「樹脂性」などの用語は、「ポリマー」および「ポリマーの」などの用語と互換的に使用される。さらに、「ポリマー」という用語は、本明細書では、当技術分野で一般的な意味で使用され、巨大分子化合物、すなわち、比較的高い分子量(例えば、500Daまたは500Daより大きい)を有する化合物を指し、その構造は、実際にまたは概念的に、比較的低い分子量の化学種に由来する複数の反復単位(「mers」とも称される)を含む。特に指示がない限り、分子量は、重量平均ベース(「M」)であり、ポリスチレン標準物質を使用するゲル浸透クロマトグラフィーによって決定される。
【0017】
周囲条件とは、組成物が、熱の補助、例えば、オーブンでの焼成、強制空気の使用など用いずに硬化することを意味する。
【0018】
任意のフィルム形成組成物が、本発明に従って使用され得る。フィルム形成樹脂は、それ自体と反応し得る、すなわち、自己架橋反応を経ることができるか、または架橋剤と反応し得る。したがって、膨張性コーティング組成物は、フィルム形成樹脂(a)を架橋するのに好適な架橋剤(b)をさらに含み得る。架橋剤は、フィルム形成樹脂と反応することが可能である官能基を含む。
【0019】
本明細書で使用される場合、「架橋」という用語は、構成ポリマー分子のポリマー鎖間の共有結合の形成を指す。「架橋剤(crosslinking agent)」、「硬化剤」、および「架橋剤(crosslinker)」という用語は、本明細書では、互換的に使用される。硬化または架橋反応は、例えば、コーティング組成物を熱または放射線に曝露することによって誘導され得るが、周囲条件で行われて、硬化したコーティングを形成することも可能である。
【0020】
膨張性コーティング組成物に使用されるフィルム形成樹脂(a)のタイプは、任意の既知の種類の樹脂が原則として使用され得るように、特に限定されない。例えば、フィルム形成樹脂(a)は、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリビニル樹脂、尿素-ホルムアルデヒド樹脂、ポリイミド樹脂、メラミン樹脂、ポリエステル樹脂、シアネート樹脂、これらのコポリマー、またはこれらの混合物を含み得る。本開示によれば、フィルム形成樹脂は、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、ポリウレタン樹脂、これらのコポリマー、またはこれらの混合物を含み得る。特に、フィルム形成樹脂は、エポキシ樹脂を含み得る。
【0021】
本開示に従って使用されるフィルム形成樹脂は、互いに反応する、および/または架橋剤の官能基と反応する1つまたは1つより多くの官能基を含み得る。好適な官能基の例としては、ケトン、ヒドラジド、カルボジイミド、オキサゾリン、エポキシ、アミン、ビニル、アミド、カルバメート、尿素、メルカプタン、カルボン酸、(メタ)アクリロイル、イソシアネート、アルコキシシリル、無水物、ヒドロキシル、アルコキシ、およびこれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。
【0022】
互いに反応することが可能である好適な官能基は、例えば、n-メチロールアミド基;シリコーン結合した加水分解性基または縮合性基を有するシラン基、例えば、クロロ基、ヒドロキシ基、アルコキシ基、アセトキシ基、および/またはケトキシモ基;アゾメチン基;アゼチジン基;ならびに熱可逆的なディールス-アルダー反応が可能な基、例えば、フラン/マレイミドを挙げることができる。フィルム形成樹脂が互いに反応することが可能である官能基を含有する場合、それは、自己架橋とみなされ、架橋剤の存在は、膨張性コーティング組成物中に存在する必要はない。
【0023】
フィルム形成樹脂は、自己架橋が可能である官能基と、架橋剤の官能基と反応性である官能基との組み合わせも含有し得る。このような場合、架橋剤が存在する場合があり、硬化時に、フィルム形成樹脂の官能基の自己架橋反応と、架橋剤の官能基とフィルム形成樹脂の官能基との間の反応との2つの架橋機構が起こる。
【0024】
本開示によれば、フィルム形成樹脂は、エポキシ樹脂を含み得る。好適なエポキシ樹脂は、既知の様式で、例えば、エポキシド官能基を含む化合物と、少なくとも2つのヒドロキシル基を含む環状共反応物とを反応させることによって調製され得る。1つのエポキシド官能基を含む好適な化合物の例としては、グリシドール、エピクロロヒドリン、グリシドールアミン、およびこれらの混合物が挙げられるが、これらに限定されない。本明細書で使用される場合、「エポキシ」および「エポキシド」という用語は、互換的に使用される。少なくとも2つのヒドロキシ基を含む好適な環状共反応物の例としては、ビスフェノールA、水和ビスフェノールA、ビスフェノールF、水和ビスフェノールF、ノボラック樹脂(例えば、フェノールノボラック、クレゾールノボラック)、およびこれらの混合物が挙げられるが、これらに限定されない。
【0025】
本開示に使用するのに好適なエポキシ樹脂は、ポリエポキシドを含み得る。ポリエポキシドは、典型的には、少なくとも2つの1,2-エポキシ基を有する。ポリエポキシドのエポキシ当量は、80~600、例えば、100~700の範囲であり得る。エポキシ当量は、ASTM D1652に従った電位差滴定によって決定され得る。エポキシ化合物は、飽和または不飽和の環状、脂肪族、脂環式、芳香族、または複素環式であり得る。エポキシ化合物は、置換基(複数可)、例えば、ハロゲン、ヒドロキシ、およびエーテル基を含み得る。
【0026】
好適なポリエポキシドとしては、ポリフェノールのポリグリシジルエーテル、例えば、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン(ビスフェノールA)、レゾルシノール、ヒドロキノン、ベンゼンジメタノール、フロログルシノール、ビスフェノールF、およびカテコール、またはポリオールのポリグリシジルエーテルを挙げることができるが、これらに限定されない。本明細書で使用される場合、「ポリオール」という用語は、1分子当たり1つより多いヒドロキシル基、例えば、1分子当たり2つ、3つ、4つ、5つ、6つまたは6つより多いヒドロキシル基を有する化合物を指す。好適なポリオールとしては、脂環式ポリオール、例えば、1,2-シクロヘキサンジオール、1,4-シクロヘキサンジオール、2,2-ビス(4-ヒドロキシシクロヘキシル)プロパン、1,1-ビス(4-ヒドロキシシクロヘキシル)エタン、2-メチル-1,1-ビス(4-ヒドロキシシクロヘキシル)プロパン、2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3-tert-ブチルシクロヘキシル)プロパン、1,3-ビス(ヒドロキシメチル)シクロヘキサン、および1,2-ビス(ヒドロキシメチル)シクロヘキサン、または脂肪族ポリオール、例えば、トリヒドロキシメチルペンタンジオール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,2-プロピレングリコール、1,4-ブチレングリコール、1,5-ペンタンジオール、1,2,6-ヘキサントリオール、シクロヘキサンジメタノール、グリセロール、トリメチロールプロパン、水素化ビスフェノールA、水素化ビスフェノールF、またはポリエーテルグリコール、例えば、ポリ(オキサテトラメチレン)グリコール、ポリ(オキシエチレン)グリコール、ポリ(オキシプロピレン)グリコール、およびネオペンタンジオールが挙げられるが、これらに限定されない。
【0027】
さらなる好適なエポキシ樹脂としては、ポリカルボン酸のポリグリシジルエーテルを挙げることができるが、これらに限定されない。本明細書で使用される場合、「ポリカルボン酸」という用語は、1分子当たり1つより多いカルボン酸基、例えば、1分子当たり2つ、3つ、4つ、5つ、6つまたは6つより多いカルボン酸基を有する化合物を指し、対応する酸の無水物を含む。好適なポリカルボン酸は、エポキシ化合物、例えば、エピクロロヒドリンと、脂肪族または芳香族ポリカルボン酸、例えば、シュウ酸、コハク酸、グルタル酸、テレフタル酸、2,6-ナフタレンジカルボン酸、または二量化リノール酸との反応によって形成され得る。このような樹脂は、例えば、Hexion Inc.(USA)からEPIKOTEおよびEPONのラインで市販されている。
【0028】
本開示に従って使用され得る他の好適なエポキシ樹脂は、エポキシ化オレフィン性不飽和脂環式材料、例えば、エポキシ脂環式エーテルおよびエステル、オキシアルキレン基を含有するエポキシ樹脂、エポキシノボラック樹脂を含み得、これらは、エピハロヒドリンを、アルデヒドと、一価または多価のフェノール、例えば、エポキシフェノールノボラック樹脂、またはエポキシクレゾールノボラック樹脂との縮合生成物と反応させることによって調製される。
【0029】
膨張性コーティング組成物のフィルム形成樹脂として可撓性ポリエポキシド樹脂を用いることが有利であり得る。可撓性ポリエポキシド樹脂は、一般に、少量の分岐が許容されるが、本質的に線状樹脂である。可撓性ポリエポキシドの好適な例としては、エポキシ化大豆油、ダイマー酸系材料、例えば、BASF(Germany)から市販されているEPOL 1010樹脂、およびゴム変性ポリエポキシド樹脂、例えば、ビスフェノールAのポリグリシジルエーテルと酸官能性ポリブタジエンとの生成物が挙げられるが、これらに限定されない。可撓性ポリエポキシドの他の好適な例としては、可撓性酸官能性ポリエステルおよびポリエポキシドから調製されるエポキシ官能性付加物を挙げることができる。
【0030】
酸官能性ポリエステルは、少なくとも10mg KOH/g、例えば、140~350mg KOH/g、または180~260mg KOH/gの酸価を有し得る。酸価は、ASTM D974に従って決定され得る。酸官能性ポリエステルは、有機ポリオールを用いる有機ポリカルボン酸またはその無水物のポリエステル化によって調製され得る。ポリカルボン酸およびポリオールは、脂肪族または芳香族二塩基酸およびジオールであり得る。線状ポリエステルは、分岐状ポリエステルよりも好適であり得る。
【0031】
ポリエステルを作製するのに使用され得る好適なポリオールとしては、アルキレングリコール、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、ネオペンチルグリコール、水素化ビスフェノールA、シクロヘキサンジオール、シクロヘキサンジメタノール、カルポラクトンジオール、ヒドロキシアルキル化ビスフェノール;ポリエーテルグリコール、例えば、ポリ(オキシテトラメチレン)グリコール、ポリ(オキシエチレン)グリコール、ポリ(オキシプロピレン)グリコールなど;トリメチロールプロパン;トリメチロールエタン;ペンタエリスリトール;グリセロール;イソソルビド;テトラメチルシクロブテンジオールが挙げられるが、これらに限定されない。ポリエステルを作製するのに使用され得る好適なポリカルボン酸としては、1分子当たり2~36個の炭素原子を有するジカルボン酸または無水物、例えば、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、テトラヒドロフタル酸、ヘキサヒドロフタル酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、マレイン酸、グルタル酸、クロレンド酸、テトラクロロフタル酸、テトラブロモフタル酸、デカン二酸、ドデカン二酸、ロジン酸、ジフェノール酸、没食子酸、および様々なタイプの他のジカルボン酸(例えば、不飽和C18脂肪酸のディールス-アルダー付加物)を挙げることができるが、これらに限定されない。特に、エポキシ官能性付加物を作製するために使用されるポリエステルは、7~16個の炭素原子を有するポリカルボン酸を含むポリカルボン酸成分、およびジエチレングリコールを含むポリオールから調製され得る。
【0032】
代替的または追加的には、フィルム形成樹脂は、アクリル樹脂を含み得る。好適なアクリル樹脂は、ホモポリマーまたはコポリマーであり得、これは、置換または非置換(メタ)アクリル酸および(メタ)アクリレートを含む1つまたは1つより多くのモノマーを重合させることによって得られ得る。本明細書では、「(メタ)アクリル酸」および「(メタ)アクリレート」という用語および同様の用語は、それぞれ、アクリル酸またはアクリレートおよび対応するメタクリル酸またはメタクリレートの両方を指す。好適な(メタ)アクリレートとしては、アルキル(メタ)アクリレート、シクロアルキル(メタ)アクリレート、アルキルシクロアルキル(メタ)アクリレート、アラルキル(メタ)アクリレート、アルキルアリール(メタ)アクリレート、アリール(メタ)アクリレート、および官能基含有(メタ)アクリレートを挙げることができるが、これらに限定されない。本明細書で使用される場合、「官能基」という用語は、水素およびsp炭素原子以外の1つまたは複数の原子を含む基を指す。官能基の例としては、ヒドロキシル、カルボン酸、アミド、イソシアネート、ウレタン、チオール、アミノ、スルホン、スルホキシド、ホスフィン、ホスファイト、ホスフェート、ハロゲン化物などが挙げられるが、これらに限定されない。アクリル樹脂の非限定的な例としては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、4-メチル-2-ペンチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、テトラデシル(メタ)アクリレート、ヘキサデシル(メタ)アクリレート、オクタデシル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、2-フェノキシエチル(メタ)アクリレート、3,3,5-トリメチル-シクロヘキシル(メタ)アクリレート、3-メチルフェニル(メタ)アクリレート、1-ナフチル(メタ)アクリレート、3-フェニル-n-プロピル(メタ)アクリレート、2-フェニル-アミノエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、またはこれらの組み合わせから誘導されるアクリル樹脂が挙げられる。
【0033】
好適なアクリル樹脂は、エポキシ官能性アクリル樹脂を含み得る。エポキシ官能性アクリル樹脂は、(メタ)アクリレートモノマーのフリーラジカル付加重合によって、必要に応じて、ビニルモノマーまたは炭素-炭素二重結合を含む他のモノマーと組み合わせて調製され得、モノマー組成物は、炭素-炭素二重結合を有するエポキシ官能性化合物を含む。
【0034】
好適なエポキシ官能性エチレン性不飽和モノマーとしては、例えば、グリシジル(メタ)アクリレート、アリルグリシジルエーテル、ビニルグリシジルエーテル、ビニルシクロヘキセンオキシド、リモネンオキシド、2-エチルグリシジルアクリレート、2-エチルグリシジルメタクリレート、2-(n-プロピル)グリシジル(メタ)アクリレート、2-(n-ブチル)グリシジル(メタ)アクリレート、グリシジルメチル(メタ)アクリレート、(3’,4’-エポキシヘプチル)-エチル(メタ)アクリレート、6’,7’-エポキシヘプチル)(メタ)アクリレート、アリル-3,4-エポキシヘプチルエーテル、6,7-エポキシヘプチルアリルエーテル、ビニル-3,4-エポキシヘプチルエーテル、3,4-エポキシヘプチルビニルエーテル、6,7-エポキシヘプチルビニルエーテル、o-ビニルベンジルグリシジルエーテル、m-ビニルベンジルグリシジルエーテル、p-ビニルベンジルグリシジルエーテル、3-ビニルシクロヘキセンオキシド、α-メチルグリシジルメタクリレート、3,4-エポキシシクロヘキシルメチル(メタ)アクリレート、およびこれらの組み合わせが挙げられる。
【0035】
エポキシ官能性アクリル樹脂の調製において、追加のモノマー、例えば、エチレン性不飽和ニトリル化合物;ビニル芳香族モノマー;エチレン性不飽和酸のアミド;エチレン性不飽和スルホン酸;エチレン性不飽和リン含有酸;ビニルカルボキシレート;共役ジエン;少なくとも2つのエチレン性不飽和基を有するモノマー;およびこれらの組み合わせが用いられ得る。
【0036】
エチレン性不飽和ニトリルモノマーの好適な例としては、線状または分岐状の配置で、2~4個の炭素原子を含有する、アセチル基によって置換され得る脂肪族ニトリルモノマーを挙げることができるが、これらに限定されない。このようなニトリルモノマーとしては、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、α-シアノエチルアクリロニトリル、フマロニトリル、およびこれらの組み合わせが挙げられ、アクリロニトリルが特に好適である。
【0037】
好適なビニル芳香族モノマーとしては、スチレン、α-メチルスチレン、p-メチルスチレン、t-ブチルスチレン、およびビニルトルエンを挙げることができるが、これらに限定されない。
【0038】
エチレン性不飽和酸の好適なアミドとしては、(メタ)アクリルアミド、およびジアセトンアクリルアミドを挙げることができるが、これらに限定されない。
【0039】
好適なビニルエステルモノマーとしては、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル、安息香酸ビニル、ビニル-2-エチルヘキサノエート、ステアリン酸ビニル、およびバーサチック酸のビニルエステルを挙げることができるが、これらに限定されない。
【0040】
好適なエチレン性不飽和カルボン酸モノマーとしては、モノカルボン酸およびジカルボン酸のモノマー、ならびにジカルボン酸のモノエステルを挙げることができるが、これらに限定されない。3~5個の炭素原子を含有するエチレン性不飽和脂肪族モノカルボン酸もしくはジカルボン酸または無水物が、特に好適である。モノカルボン酸モノマーの例としては、(メタ)アクリル酸、クロトン酸を挙げることができるが、これらに限定されず、ジカルボン酸モノマーの例としては、フマル酸、イタコン酸、マレイン酸、および無水マレイン酸を挙げることができるが、これらに限定されない。他の好適なエチレン性不飽和酸の例としては、ビニル酢酸、ビニル乳酸、ビニルスルホン酸、2-メチル-2-プロペン-1-スルホン酸、スチレンスルホン酸、アクリルアミドメチルプロパンスルホン酸、およびこれらの塩が挙げられる。
【0041】
好適な共役ジエンモノマーとしては、1,3-ブタジエン、イソプレン、2,3-ジメチル-1,3-ブタジエン、2-クロロ-1,3-ブタジエン、1,3-ペンタジエン、1,3-ヘキサジエン、2,4-ヘキサジエン、1,3-オクタジエン、2-メチル-1,3-ペンタジエン、2,3-ジメチル-1,3-ペンタジエン、3,4-ジメチル-1,3-ヘキサジエン、2,3-ジエチル-1,3-ブタジエン、4,5-ジエチル-1,3-オクタジエン、3-ブチル-1,3-オクタジエン、3,7-ジメチル-1,3,6-オクタトリエン、2-メチル-6-メチレン-1,7-オクタジエン、7-メチル-3-メチレン-1,6-オクタジエン、1,3,7-オクタトリエン、2-エチル-1、3-ブタジエン、2-アミル-1,3-ブタジエン、3、7-ジメチル-1,3,7-オクタトリエン、3,7-ジメチル-ジメチル-1,3,6-オクタリエン、3,7,11-トリメチル-1,3,6,10-ドデカテトラエン、7,11-ジメチル-3-メチレン-1,6,10-ドデカトリエン、2,6-ジメチル-2,4,6-オクタトリエン、2-フェニル-1,3-ブタジエン、および2-メチル-3-イソプロピル-1,3-ブタジエン、1,3-シクロヘキサジエン、ならびにこれらの組み合わせを挙げることができるが、これらに限定されない。
【0042】
代替的または追加的には、フィルム形成樹脂は、ポリウレタン樹脂を含み得る。好適なポリウレタン樹脂は、既知の様式で、例えば、ポリイソシアネートとポリオールとを反応させることによって調製され得る。本明細書で使用される場合、「ポリイソシアネート」という用語は、1分子当たり1つより多いイソシアネート基、例えば、1分子当たり2つ、3つ、4つ、5つ、6つまたは6つより多いイソシアネート基を有する化合物を指す。好適なポリイソシアネートとしては、脂肪族ポリイソシアネート、例えば、2,2,4-トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、2,4,4-トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、1,6-ヘキサメチレンジイソシアネート;脂環式ポリイソシアネート、例えば、イソホロンジイソシアネート、および4,4’-メチレン-ビス(シクロヘキシルイソシアネート);芳香族ポリイソシアネート、例えば、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、トルエンジイソシアネート、1,2,4-ベンゼントリイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネート、およびポリメチレンポリフェニルイソシアネート;ならびにこれらの組み合わせが挙げられる。好適なポリオールの非限定的な例は、上に記載されたポリオールである。具体的には、ポリエステルポリオールまたはアクリルポリオールを、ポリイソシアネートと、OH/NCO当量比が1:1を超えるように反応させ、生成物中に遊離ヒドロキシル基が存在するように調製されるポリウレタンが好適である。本開示に従って使用され得る好適なポリウレタン樹脂は、Covestro(Germany)から入手可能であるDesmodur N 3300と、アルキレングリコール、例えば、エチレングリコールまたはプロピレングリコールとの反応生成物によって例示され得る。
【0043】
代替的または追加的には、フィルム形成樹脂は、ポリビニル樹脂を含み得る。好適なポリビニル樹脂は、ホモポリマーまたはコポリマーであり得、これは、ビニル芳香族化合物、例えば、スチレンおよびビニルトルエン;ニトリル、例えば、(メタ)アクリロニトリル;ビニルおよびビニリデンハロゲン化物、例えば、塩化ビニル、およびフッ化ビニリデン;ならびにビニルエステル、例えば、酢酸ビニルを含む1つまたは1つより多くのモノマーを重合させることによって得られ得る。本開示に従って使用され得る好適なポリビニル樹脂は、AGC Chemicals Europe,Ltd.(Netherlands)から入手可能な商標LUMIFLON(商標)のビニル樹脂によって例示され得る。
【0044】
代替的または追加的には、フィルム形成樹脂は、尿素-ホルムアルデヒド樹脂を含み得る。好適な尿素-ホルムアルデヒド樹脂は、既知の様式で、例えば、ホルムアルデヒドと尿素との縮合によって調製され得る。尿素-ホルムアルデヒド樹脂の好適な例としては、BASF(Germany)から市販されている商標Kaurit(登録商標)の尿素-ホルムアルデヒド樹脂、およびHexion Inc.(USA)から市販されている商標Casco(登録商標)Resin、例えば、Casco(登録商標)Resin CR-5Hの尿素-ホルムアルデヒド樹脂を挙げることができるが、これらに限定されない。
【0045】
代替的または追加的には、フィルム形成樹脂は、ポリイミド樹脂を含み得る。好適なポリイミド樹脂は、既知の様式で、例えば、ポリ無水物とポリアミンとを反応させることによって、またはポリ無水物とポリイソシアネートとを反応させることによって調製され得る。好適なポリ無水物、およびポリイソシアネートは、上に記載されたものである。本明細書では、「ポリアミン」という用語は、1分子当たり1つより多いアミン基、例えば、1分子当たり2つ、3つ、4つ、5つ、6つまたは6つより多いアミン基を有する化合物を指す。好適なポリアミンとしては、脂肪族ジアミン、例えば、1,2-エタンジアミン、1,2-プロパンジアミン、1,3-プロパンジアミン、1,2-ブタンジアミン、1,3-ブタンジアミン、1,4-ブタンジアミン、1,3-ペンタンジアミン、1,5-ペンタンジアミン、1,6-ヘキサンジアミン、2-メチル-1,5-ペンタンジアミン、2,5-ジメチルヘキサン-2,5-ジアミン、2,2,4-トリメチル-1,6-ヘキサンジアミン、2,4,4-トリメチル-1,6-ヘキサンジアミン、1,7-ヘプタンジアミン、1,8-オクタンジアミン、1,9-ノナンジアミン、1,10-デカンジアミン、3,3-アミノ-ビス-プロピルアミン、トリエチレンテトラアミン、およびテトラエチレンペンタアミン;脂環式ジアミン、例えば、2,4’-ジアミノジシクロヘキシルメタン、4,4’-ジアミノジシクロヘキシルメタン、3,3’-ジメチル-4,4’-ジアミノジシクロヘキシルメタン、イソホロンジアミン、1,3-ビス(アミノエチル)シクロヘキサン、ビス(4-アミノシクロヘキシル)メタン-アミノエチルピペラジン、および3,3’-ジエチル-4,4’-ジアミノジシクロヘキシルメタン;ならびに芳香族ジアミン、例えば、1,2-ベンゼンジアミン、1,3-ベンゼンジアミン、1,4-ベンゼンジアミン、1,5-ナフタレンジアミン、1,8-ナフタレンジアミン、2,4-トルエンジアミン、2,5-トルエンジアミン、2,6-トルエンジアミン、キシリレンジアミン、4,4’-ジアミノジフェニルメタン、4,4’-ジアミノ-3,3’-ジエチルジフェニルメタン、ジアミノジフェニルスルホン、および3,3′-ジメチル-4,4′-ビフェニルジアミン、ならびにポリアミンと脂肪族脂肪酸との反応生成物、例えば、BASF(Germany)から市販されている商標VERSAMIDの一連の材料が挙げられるが、これらに限定されない。ポリイミド樹脂の好適な例としては、Huntsman Corp.(USA)から市販されている商標Kerimid(登録商標)のポリイミド樹脂、例えば、701 A N-70、Kerimid 8292 N-75、およびKerimid 8292 NPM 60を挙げることができるが、これらに限定されない。
【0046】
代替的または追加的には、フィルム形成樹脂は、メラミン樹脂を含み得る。好適なメラミン樹脂は、既知の様式で、例えば、メラミンとホルムアルデヒドとを反応させることによって調製され得る。メラミン樹脂の好適な例としては、Allnex(Germany)から市販されているCYMEL 1156を挙げることができるが、これらに限定されない。
【0047】
代替的または追加的には、フィルム形成樹脂は、ポリエステル樹脂を含み得る。好適なポリエステル樹脂は、既知の様式で、例えば、ポリオールとポリカルボン酸との縮合によって、またはラクトンの開環重合によって調製され得る。好適なポリオールの非限定的な例は、上に記載されたポリオールであり、ポリカルボン酸の非限定的な例は、上に記載されたポリカルボン酸である。好適なラクトンとしては、β-プロピオラクトン、γ-ブチロラクトン、δ-バレロラクトン、ε-カプロラクトン、α-アンジェリカラクトン、およびこれらの混合物を挙げることができるが、これらに限定されない。本開示に従って使用され得る好適なポリエステル樹脂は、Allnex Germany GmbH(Germany)から市販されている商標SETAL(登録商標)のポリエステル樹脂、例えば、SETAL(登録商標)1715 VX-74、SETAL(登録商標)91703 SS-53、およびSETAL(登録商標)91715 SS-55によって例示され得る。
【0048】
代替的または追加的には、フィルム形成樹脂は、シアネート樹脂を含み得る。好適なシアネート樹脂は、Huntsman Corp.(USA)から市販されている商標AroCy(登録商標)のシアネート樹脂、例えば、AroCy L-10、AroCy XU 366、AroCy 371、またはArocy XU 378によって例示され得る。
【0049】
本開示によれば、フィルム形成樹脂としては、例えば、US 5,108,832、またはUS 5,070,119に開示されているように、エポキシ樹脂とアクリル樹脂、またはエポキシ樹脂とポリウレタン樹脂との組み合わせを挙げることができる。
【0050】
膨張性コーティング組成物は、任意の好適な量でフィルム形成樹脂(a)を含み得る。例えば、膨張性コーティング組成物は、5重量%もしくは5重量%を超える、例えば、8重量%もしくは8重量%を超える、または10重量%もしくは10重量%を超える、または12重量%もしくは12重量%を超える、または15重量%もしくは15重量%を超えるフィルム形成樹脂(a)を含み得る。膨張性コーティング組成物は、例えば、40重量%もしくは40重量%未満、例えば、35重量%もしくは35重量%未満、または32重量%もしくは32重量%未満、または30重量%もしくは30重量%未満、または28重量%もしくは28重量%未満、または25重量%もしくは25重量%未満のフィルム形成樹脂を含み得る。膨張性コーティング組成物は、例えば、上で言及された値のうちのいずれかの間の範囲、例えば、5~40重量%、または8~35重量%、または10~35重量%、または10~30重量%、または10~28重量%、または12~25重量%の量でフィルム形成樹脂(a)を含み得る。重量割合は、膨張性コーティング組成物の総固体重量に基づく。
【0051】
上述したように、膨張性コーティング組成物はまた、架橋剤(b)も含み得る。任意の好適な架橋剤(b)が本開示に従って使用され得、それは、当業者によって、フィルム形成樹脂の官能基と反応するように選定される。本開示によれば、架橋剤(b)は、ポリアミン、例えば、ポリエーテルアミン、ポリアミド、ポリエポキシド、アミノプラスト樹脂、フェノール樹脂、ポリイソシアネート、ポリチオール、ポリオール、これらのコポリマー、またはこれらの混合物を含み得る。架橋剤(b)は、特に、ポリアミンを含み得る。
【0052】
架橋剤は、潜在性またはブロック架橋剤であり得、フィルム形成樹脂の官能基と反応する架橋剤の官能基は、硬化条件、例えば、高温、例えば、120℃を超える温度でのブロックを解除する反応で生成または復元される。このようなタイプの好適な架橋剤は、例えば、ブロックポリイソシアネートである。本明細書で使用される場合、「ポリイソシアネート」という用語は、ブロックポリイソシアネート、ならびに遊離ポリイソシアネートを含むことが意図される。潜在性またはブロック架橋剤は、特に、塗布および硬化の前に十分な貯蔵安定性および可使時間を確保するための単一成分組成物を提供するのに好適である。好適なブロック剤の例としては、高温、例えば、120℃を超える温度でブロックを解除する材料、例えば、1~6個の炭素原子を有する低級脂肪族アルコール、例えば、メタノール、エタノール、およびn-ブタノール;脂環式アルコール、例えば、シクロヘキサノール;芳香族アルキルアルコール、例えば、フェニルカルビノールおよびメチルフェニルカルビノール;ならびにフェノール化合物、例えば、フェノール自体、ならびに置換基がコーティング操作に影響を及ぼさない、例えば、クレゾールおよびニトロフェノールの置換フェノールが挙げられる。グリコールエーテルも、ブロック剤として使用され得る。好適なグリコールエーテルとしては、エチレングリコールブチルエーテル、ジエチレングリコールブチルエーテル、エチレングリコールメチルエーテル、およびプロピレングリコールメチルエーテルが挙げられる。他の好適なブロック剤としては、オキシム、例えば、メチルエチルケトキシム、アセトンオキシム、およびシクロヘキサノンオキシム;ラクタム、例えば、イプシロン-カプロラクタム;ピラゾール、例えば、ジメチルピラゾール;ならびにアミン、例えば、ジブチルアミンが挙げられる。
【0053】
架橋剤(b)は、ポリアミンを含み得る。本明細書では、「ポリアミン」という用語は、1分子当たり1つより多いアミン基、例えば、1分子当たり2つ、3つ、4つ、5つ、6つまたは6つより多いアミン基を有する化合物を指す。好適な架橋剤としては、例えば、脂肪族ポリアミン、芳香族ポリアミン、ポリアミンアミド、ポリエーテルアミン、ポリシロキサンアミン、ポリスルフィドアミン、またはこれらの組み合わせを挙げることができる。
【0054】
好適なポリアミンとしては、脂肪族ジアミン、例えば、1,2-エタンジアミン、1,2-プロパンジアミン、1,3-プロパンジアミン、1,2-ブタンジアミン、1,3-ブタンジアミン、1,4-ブタンジアミン、1,3-ペンタンジアミン、1,5-ペンタンジアミン、1,6-ヘキサンジアミン、2-メチル-1,5-ペンタンジアミン、2,5-ジメチルヘキサン-2,5-ジアミン、2,2,4-トリメチル-1,6-ヘキサンジアミン、2,4,4-トリメチル-1,6-ヘキサンジアミン、1,7-ヘプタンジアミン、1,8-オクタンジアミン、1,9-ノナンジアミン、1,10-デカンジアミン、3,3-アミノ-ビス-プロピルアミン、トリエチレンテトラアミン、およびテトラエチレンペンタアミン;脂環式ジアミン、例えば、2,4’-ジアミノジシクロヘキシルメタン、4,4’-ジアミノジシクロヘキシルメタン、3,3’-ジメチル-4,4’-ジアミノジシクロヘキシルメタン、イソホロンジアミン、1,3-ビス(アミノエチル)シクロヘキサン、ビス(4-アミノシクロヘキシル)メタン-アミノエチルピペラジン、および3,3’-ジエチル-4,4’-ジアミノジシクロヘキシルメタン;ならびに芳香族ジアミン、例えば、1,2-ベンゼンジアミン、1,3-ベンゼンジアミン、1,4-ベンゼンジアミン、1,5-ナフタレンジアミン、1,8-ナフタレンジアミン、2,4-トルエンジアミン、2,5-トルエンジアミン、2,6-トルエンジアミン、キシリレンジアミン、4,4’-ジアミノジフェニルメタン、4,4’-ジアミノ-3,3’-ジエチルジフェニルメタン、ジアミノジフェニルスルホン、および3,3′-ジメチル-4,4′-ビフェニルジアミン、ならびにポリアミンと脂肪族脂肪酸との反応生成物、例えば、BASF(Germany)から市販されている商標VERSAMIDの一連の材料が挙げられるが、これらに限定されない。
【0055】
加えて、上記の任意のポリアミンの付加物が使用され得る。ポリアミンの付加物は、ポリアミンを、好適な反応性化合物、例えば、エポキシ樹脂と反応させることによって形成され得る。この反応は、硬化剤中の遊離アミンの含有量を減少させ、低温および/または高湿度環境でより有用となる。
【0056】
本開示によれば、ポリアミンは、ポリエーテルアミン、例えば、Huntsman Corp.(USA)から市販されているJeffaminesを挙げることができ、Jeffamine D-230、Jeffamine D-400、Jeffamine 600、Jeffamine 1000、Jeffamine 2005、およびJeffamine 2070が挙げられるが、これらに限定されない。
【0057】
代替的または追加的には、架橋剤(b)は、ポリアミドを含み得る。好適なポリアミドは、ポリアミンとポリカルボン酸とを反応させることによって、またはラクタムの開環重合によって調製され得る。好適なポリオールの非限定的な例は、上に記載されたポリオールであり、好適なポリアミンの非限定的な例は、上に記載されたポリアミンである。好適なラクタムとしては、β-プロピオラクタム、γ-ブチロラクタム、δ-バレロラクタム、ε-カプロラクタム、およびこれらの混合物を挙げることができるが、これらに限定されない。具体的には、ポリアミドは、ダイマー脂肪酸とポリエチレンアミンとの反応生成物、および少量のモノマー脂肪酸を含有し得る。ダイマー脂肪酸は、モノマー脂肪酸のオリゴマー化によって調製される。ポリエチレンアミンは、任意の高級ポリエチレンアミン、例えば、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタアミンであり得、最も一般的に使用されるのは、ジエチレントリアミンである。架橋剤としてポリアミドが使用される場合、1つまたは1つより多くの望ましい特性、例えば、耐食性、耐水性、および/または良好な可撓性を膨張性コーティングに付与し得る。
【0058】
代替的または追加的には、架橋剤(b)は、ポリエポキシドを含み得る。好適なポリエポキシドの非限定的な例は、上に記載されたポリエポキシドである。
【0059】
代替的または追加的には、架橋剤(b)は、アミノプラスト樹脂を含み得る。好適なアミノプラスト樹脂は、アルデヒド、例えば、ホルムアルデヒドと、1分子当たり少なくとも2つのアミンまたはアミド基を含む化合物との縮合反応から得られ得る。アルデヒドの好適な例としては、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、クロトンアルデヒド、およびベンズアルデヒドが挙げられるが、これらに限定されない。少なくとも2つのアミンまたはアミド基を含む化合物の好適な例としては、メラミン、尿素、およびベンゾグアナミンが挙げられるが、これらに限定されない。好適には、アミノプラスト樹脂は、典型的には、アルコール、例えば、メタノール、エタノール、ブタノール、またはこれらの混合物でエーテル化され得る。本開示に従って使用され得る好適なアミノプラスト樹脂は、Prefere Resin Holding GmbH(Germany)から市販されているMaprenal(登録商標)Amino Resin、例えば、Maprenal MF 612/70B、Maprenal MF 613/71B、およびMaprenal MF 650/55IB、Allnex Industries(Germany)から市販されているCymel(登録商標)Amino Crosslinkers、例えば、Cymel 303、Cymel 202、Cymel 1161、Cymel 325、およびCymel 1133、Allnex(Germany)から市販されているSetamine(登録商標)アミノ樹脂、例えば、Setamine US-138 BB-70、およびSetamine US-146 BB-72によって例示され得る。
【0060】
代替的または追加的には、架橋剤(b)は、フェノプラスト樹脂を含み得る。好適なフェノプラスト樹脂は、フェノールとホルムアルデヒドとの酸触媒(ノボラック)または塩基触媒(レゾール)付加重合のいずれかによって得られ得る。本開示に従って使用され得る好適なフェノプラスト樹脂は、EPON(商標)Epoxy Novolac樹脂、例えば、Hexion Inc.(USA)から市販されているEPON(商標)Resin SU-8によって例示され得る。
【0061】
代替的または追加的には、架橋剤(b)は、ポリイソシアネートを含み得る。好適なポリイソシアネートの非限定的な例は、上に記載されたポリイソシアネートである。
【0062】
代替的または追加的には、架橋剤(b)は、ポリチオールを含み得る。好適なポリチオールとしては、ポリスルフィドチオール、ポリエーテルチオール、ポリエステルチオール、ペンタエリトリトール系チオール、またはこれらの組み合わせを挙げることができるが、これらに限定されない。特に好適なポリチオールは、Akzo Nobel Functional Chemicals GmbH&Co.KG(Germany)から市販されているThioplast G4である。
【0063】
代替的または追加的には、架橋剤(b)は、ポリオールを含み得る。好適なポリオールの非限定的な例は、上に記載されたポリオールである。
【0064】
上で言及されたように、フィルム形成樹脂(a)がエポキシ樹脂を含む場合、架橋剤(b)は、ポリアミン、ポリチオール、またはこれらの組み合わせを含み、具体的には、フィルム形成樹脂(a)がエポキシ樹脂を含む場合、架橋剤(b)は、ポリアミンを含む。
【0065】
膨張性コーティング組成物は、任意の好適な量で架橋剤(b)を含み得る。例えば、膨張性コーティング組成物は、5重量%もしくは5重量%を超える、例えば、8重量%もしくは8重量%を超える、または10重量%もしくは10重量%を超える、または12重量%もしくは12重量%を超える、または15重量%もしくは15重量%を超える架橋剤(b)を含み得る。膨張性コーティング組成物は、例えば、40重量%もしくは40重量%未満、例えば、35重量%もしくは35重量%未満、または32重量%もしくは32重量%未満、または30重量%もしくは30重量%未満、または28重量%もしくは28重量%未満、または25重量%もしくは25重量%未満のフィルム形成樹脂を含み得る。膨張性コーティング組成物は、例えば、上で言及された値のうちのいずれかの間の範囲、例えば、5~40重量%、または8~35重量%、または10~35重量%、または10~30重量%、または10~28重量%、または12~25重量%の量で架橋剤(b)を含み得る。重量割合は、膨張性コーティング組成物の総固体重量に基づく。
【0066】
膨張性コーティング組成物は、熱分解時に膨張ガスを提供する化合物(c)をさらに含み得る。膨張ガスは、高温、例えば、150℃超、または火炎に曝露される場合、膨張性組成物を発泡および膨張させる役割を果たす。この膨張の結果として、形成されるチャーは、下地基材を断熱および保護する役割を果たす厚いマルチセル材料である。本開示の膨張性組成物で使用され得る膨張ガスの任意の好適な供給源は、窒素含有材料などである。好適な窒素含有材料としては、メラミン、リン酸塩、グアニジン、メチロール化メラミン、ヘキサメトキシメチルメラミン、尿素、ジメチル尿素、ピロリン酸メラミン、ジシアンジアミド、グアニル尿素ホスフェート、およびグリシンが挙げられるが、これらに限定されない。二酸化炭素を遊離させる材料などの他の従来の膨張ガスの供給源も使用され得る。二酸化炭素を遊離させる材料の好適な例は、アルカリ土類金属、例えば、炭酸カルシウムまたは炭酸マグネシウムである。加熱時の分解の際に水蒸気を放出する化合物、例えば、水酸化カルシウム、二水酸化マグネシウム、または三水酸化アルミニウムも使用され得、膨張可能な黒鉛も使用され得る。このような化合物の他の例はまた、ボレート供給源、例えば、ホウ酸、ならびにホウ酸誘導体、例えば、ホウ酸エステルおよび金属ホウ酸塩である。具体的には、熱分解時に膨張ガスを提供する化合物(c)は、メラミン、メラミン誘導体、グアニジン、メチロール化メラミン、ヘキサメトキシメチルメラミン、尿素、ジメチル尿素、ピロリン酸メラミン、ジシアンジアミド、グアニル尿素ホスフェート、グリシン、アルカリ土類金属炭酸塩、水酸化カルシウム、二水酸化マグネシウム、三水酸化アルミニウム、膨張可能な黒鉛、またはこれらの混合物を含み得る。
【0067】
例えば、熱分解時に膨張ガスを提供する化合物(c)、例えば、メラミンは、本開示の膨張性コーティング組成物中で、1重量%もしくは1重量%を超える、例えば、2重量%もしくは2重量%を超える、または3重量%もしくは3重量%を超える量で使用され得る。本開示による組成物は、熱分解時に膨張ガスを提供する化合物(c)を、例えば、10重量%もしくは10重量%未満、または8重量%もしくは8重量%未満、または7重量%もしくは7重量%未満、または5重量%もしくは5重量%未満の量で含み得る。組成物は、熱分解時に膨張ガスを提供する化合物(c)を、上で言及された値のうちのいずれかの間の範囲、例えば、1~10重量%、または2~7重量%の量で含み得る。重量割合は、膨張性コーティング組成物の総固体重量に基づく。
【0068】
本開示の膨張性コーティング組成物は、特に、(a)フィルム形成樹脂、(b)架橋剤、および(c)熱分解時に膨張ガスを提供する化合物を含む。本開示によれば、化合物(a)~(c)は、互いに異なる。
【0069】
本開示の膨張性コーティング組成物は、エポキシ反応性希釈剤をさらに含み得る。好適には、エポキシ反応性希釈剤は、組成物の粘度を低下させるように動作可能である。
【0070】
好適なエポキシ反応性希釈剤は、任意の好適な方法によって生成され得る。このようなエポキシ反応性希釈剤は、脂肪族エポキシド官能基を含む化合物、例えば、ジグリシジルエーテルと、脂肪族アルコールまたはポリオールとの反応から形成され得る。エポキシド官能基を含む好適な化合物の例としては、モノグリシジルエーテル、ジグリシジルエーテル、トリグリシジルエーテル、およびこれらの混合物を挙げることができるが、これらに限定されない。好適なアルコールおよびポリオールの例としては、ヘキサンジオール、ブタンジオール、グリセロール、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタン、ペンタエリスリトール、ネオペンチルグリコール、およびこれらの混合物を挙げることができるが、これらに限定されない。具体的には、エポキシ反応性希釈剤は、脂肪族アルコールのジグリシジルエーテルを含み得る。好適には、エポキシ反応性希釈剤は、ヘキサンジオールのジグリシジルエーテルおよび/またはネオペンチルグリコールのジグリシジルエーテルを含み得る。
【0071】
本開示の膨張性コーティング組成物は、存在する場合、反応性エポキシ希釈剤を、1重量%もしくは1重量%を超える、例えば、2重量%もしくは2重量%を超える、または3重量%もしくは3重量%を超える、または4重量%もしくは4重量%を超える、5重量%もしくは5重量%を超える、または6重量%もしくは6重量%を超える量で含み得る。膨張性コーティング組成物は、存在する場合、反応性エポキシ希釈剤を、30重量%もしくは30重量%未満、例えば、20重量%もしくは20重量%未満、または15重量%もしくは15重量%未満、または10重量%もしくは10重量%未満の量で含み得る。膨張性コーティング組成物は、存在する場合、反応性エポキシ希釈剤を、上で言及された値のうちのいずれかの間の範囲、例えば、1~30重量%、例えば、2~20重量%、または3~15重量%、または5~10重量%の量で含み得る。重量割合は、膨張性コーティング組成物の総固体重量に基づく。
【0072】
本開示の膨張性コーティング組成物は、ホスフェート化合物をさらに含み得る。本明細書で使用される場合、「ホスフェート化合物」という用語は、任意のリン含有材料を指し、これは、リン酸もしくはその縮合生成物もしくは脱水生成物(酸化物を含む)、または前述のいずれかの塩、エステル、アミドもしくは他の誘導体を含む。ホスフェート化合物は、様々な材料、例えば、リン酸、モノおよびジアンモニウムホスフェート、トリフェニルホスフェート、トリス-(2-クロロエチル)ホスフェート、トリス-(2-クロロイソプロピル)ホスフェート、ポリリン酸アンモニウム、ピロリン酸メラミン、およびこれらの組み合わせを含み得る。ポリリン酸アンモニウムは、式(NHn+23n+1で表され得、式中、nは、少なくとも2の整数であり、好適には、nは、少なくとも50の整数である。
【0073】
本開示の膨張性コーティング組成物は、存在する場合、ホスフェート化合物を、15重量%もしくは15重量%を超える、例えば、20重量%もしくは20重量%を超える、または25重量%もしくは25重量%を超える、または30重量%もしくは30重量%を超える、35重量%もしくは35重量%を超える、または40重量%もしくは40重量%を超える量で含み得る。膨張性コーティング組成物は、存在する場合、ホスフェート化合物を、55重量%もしくは55重量%未満、例えば、50重量%もしくは50重量%未満、または45重量%もしくは45重量%未満、または40重量%もしくは40重量%未満、または35重量%もしくは35重量%未満の量で含み得る。膨張性コーティング組成物は、存在する場合、ホスフェート化合物を、上で言及された値のうちのいずれかの間の範囲、例えば、15~55重量%、例えば、20~50重量%、または25~40重量%、または40~55重量%の量で含み得る。重量割合は、膨張性コーティング組成物の総固体重量に基づく。リンは、膨張性組成物中でチャー促進剤として機能すると考えられている。
【0074】
本開示の膨張性コーティング組成物は、ボレート化合物をさらに含み得る。本明細書で使用される場合、「ボレート化合物」という用語は、任意のホウ素含有材料を指し、これは、ホウ酸もしくはその縮合生成物もしくは脱水生成物(酸化物を含む)、または前述のいずれかの塩もしくはエステルを含有する。本開示によれば、ボレート化合物は、五ホウ酸アンモニウム、ホウ酸、ホウ酸亜鉛などの金属ホウ酸塩、酸化ホウ素、ホウ酸ナトリウム、ホウ酸カリウム、ホウ酸アンモニウム、ブチルボレートおよびフェニルボレートなどのボレートエステル、またはこれらの混合物を含み得る。
【0075】
本開示の膨張性コーティング組成物は、存在する場合、ボレート化合物を、5重量%もしくは5重量%を超える、例えば、6重量%もしくは6重量%を超える、または7重量%もしくは7重量%を超える、または8重量%もしくは8重量%を超える、9重量%もしくは9重量%を超える、または10重量%もしくは10重量%を超える量で含み得る。膨張性コーティング組成物は、存在する場合、ボレート化合物を、35重量%もしくは35重量%未満、例えば、30重量%もしくは30重量%未満、または25重量%もしくは25量%未満、または20重量%もしくは20重量%未満の量で含み得る。膨張性コーティング組成物は、存在する場合、ボレート化合物を、上で言及された値のうちのいずれかの間の範囲、例えば、5~35重量%、または5~30重量%、または9~15重量%の量で含み得る。重量割合は、膨張性コーティング組成物の総固体重量に基づく。
【0076】
本開示の膨張性コーティング組成物は、アルミニウム化合物をさらに含み得る。本明細書で使用される場合、「アルミニウム化合物」という用語は、任意のアルミニウム含有材料を指す。典型的には、アルミニウム化合物は、無機アルミニウム化合物を含み得る。好適なアルミニウム化合物は、水酸化アルミニウム、酸化アルミニウム(アルミナ)、アルミニウム塩、例えば、塩化アルミニウム、およびこれらの組み合わせを含み得る。例えば、アルミニウム化合物は、水酸化アルミニウムおよび/または酸化アルミニウムを含み得る。
【0077】
本開示の膨張性コーティング組成物は、存在する場合、アルミニウム化合物を、0.1重量%もしくは0.1重量%を超える、例えば、0.2重量%もしくは0.2重量%を超える、または0.3重量%もしくは0.3重量%を超える、または0.5重量%もしくは0.5重量%を超える、または1重量%もしくは1重量%を超える、3重量%もしくは3重量%を超える、または5重量%もしくは5重量%を超える量で含み得る。膨張性コーティング組成物は、存在する場合、アルミニウム化合物を、10重量%もしくは10重量%未満、例えば、9重量%もしくは9重量%未満、または8重量%もしくは8重量%未満、または5重量%もしくは5重量%未満、または3重量%もしくは3重量%未満、または1重量%もしくは1重量%未満、または0.7重量%もしくは0.7重量%未満の量で含み得る。膨張性コーティング組成物は、存在する場合、アルミニウム化合物を、上で言及された値のうちのいずれかの間の範囲、例えば、0.1~10重量%、または0.2~8重量%、または0.3~1重量%の量で含み得る。重量割合は、膨張性コーティング組成物の総固体重量に基づく。
【0078】
本開示の膨張性コーティング組成物は、シリカ化合物をさらに含み得る。本明細書で使用される場合、「シリカ化合物」という用語は、任意のケイ素含有材料を指し、これは、ケイ酸、その縮合生成物もしくは脱水生成物(酸化物を含む)、または前述のいずれかの塩もしくはエステルを含有する。好適なシリカ化合物は、ヒュームドシリカ、もしくは石英、もしくはシリカを含有する物質、例えば、ベントンもしくはカオリン、またはこれらの混合物を含み得る。
【0079】
本開示の膨張性コーティング組成物は、存在する場合、シリカ化合物を、重量%もしくは0.1重量%を超える、例えば、0.2重量%もしくは0.2重量%を超える、または0.3重量%もしくは0.3重量%を超える、0.4重量%もしくは0.4重量%を超える、または0.5重量%もしくは0.5重量%を超える量で含有し得る。膨張性コーティング組成物は、存在する場合、シリカ化合物を、5重量%もしくは5重量%未満、例えば、3重量%もしくは3重量%未満、または2重量%もしくは2量%未満、または1重量%もしくは1重量%未満、または0.8重量%もしくは0.8重量%未満の量で含み得る。膨張性コーティング組成物は、存在する場合、シリカ化合物を、上で言及された値のうちのいずれかの間の範囲、例えば、0.1~5重量%、または0.4~1重量%の量で含み得る。重量割合は、膨張性コーティング組成物の総固体重量に基づく。
【0080】
本開示の膨張性コーティング組成物は、ボレート化合物、アルミニウム化合物、またはシリカ化合物を含み得る。したがって、本開示の膨張性コーティング組成物は、例えば、ボレート化合物、アルミニウム化合物、またはシリカ化合物のうちの1つを含有し得る。例えば、膨張性コーティング組成物は、ボレート化合物を含み得る。代替的に、膨張性コーティング組成物は、アルミニウム化合物またはシリカ化合物を含み得る。一方、膨張性コーティング組成物はまた、ボレート化合物、アルミニウム化合物、および/またはシリカ化合物のうちの2つまたは2つより多くの組み合わせも含み得る。例えば、本開示による膨張性コーティング組成物は、アルミニウム化合物およびシリカ化合物、またはボレート化合物およびアルミニウム化合物、またはボレート化合物およびシリカ化合物を含み得る。膨張性コーティング組成物は、ボレート化合物、アルミニウム化合物、およびシリカ化合物を含み得る。
【0081】
本開示の膨張性コーティング組成物は、二酸化チタン(TiO)をさらに含み得る。本開示による膨張性コーティング組成物は、存在する場合、TiOを、5重量%もしくは5重量%を超える、例えば、6重量%もしくは6重量%を超える、または7重量%もしくは7重量%を超える、または8重量%もしくは8重量%を超える、9重量%もしくは9重量%を超える、または10重量%もしくは10重量%を超える量で含み得る。膨張性コーティング組成物は、存在する場合、TiOを、20重量%もしくは20重量%未満、例えば、19重量%もしくは19量%未満、または18重量%もしくは18量%未満、または17重量%もしくは17重量%未満、または15重量%もしくは15重量%未満、または13重量%もしくは13重量%未満、または10重量%もしくは10重量%未満の量で含み得る。膨張性コーティング組成物は、存在する場合、TiOを、上で言及された値のうちのいずれかの間の範囲、例えば、5~20重量%、または5~10重量%、または10~18重量%の量で含み得る。重量割合は、膨張性コーティング組成物の総固体重量に基づく。
【0082】
具体的には、膨張性コーティング組成物は、TiOおよびホスフェート供給源と併せて、ボレート化合物、アルミニウム化合物、またはシリカ化合物を上記の範囲で含み得る。このような膨張性コーティング組成物は、特に、基材への望ましい接着性と併せて、望ましいチャー形成を有する膨張性コーティングを与える。「望ましいチャー形成」とは、チャーが直接的な火炎吹き付けによって容易にひび割れたりまたは除去されたりすることがないことを意味し、チャーの厚さとコーティングフィルムの厚さとの間の比である膨張係数は、5~25、例えば、7~20であり得る。「望ましい接着性」とは、直接的な火炎吹き付け中、チャーが実質的にそのままであり、火災試験中またはその後に、基材からのチャーの明らかな脱離が起こらないことを意味する。
【0083】
本開示によれば、膨張性コーティング組成物は、当技術分野における任意の標準的な手段、例えば、エレクトロコーティング、スプレー塗布、静電スプレー塗布、ディッピング、ローリング、ブラッシングなどによって、基材の表面の一部に塗布され得る。本発明の膨張性コーティング組成物は、必要に応じて様々な乾燥フィルム厚さ(「DFT」)を提供するために塗布され得る。膨張性コーティング組成物は、基材の表面の一部に塗布されて、0.1~15mm、例えば、0.2~14mm、または0.5~13mm、または0.5~12mm、または0.7~10mmの範囲の乾燥コーティング厚さを得ることができる。厚さは、DIN EN ISO 2178:2016に従って決定され得る。本明細書で使用される場合、「乾燥コーティング厚さ」は、基材の表面の一部に塗布され、コーティングが硬化した後に基材の上で測定されるコーティングの厚さである。所望の乾燥フィルム厚さ(「DFT」)は、用途に依存して様々であり得る。建築構造構成要素に使用する場合、0.1~15mm、例えば、0.3~1mm、または3~15mmの範囲のDFTが好適であり得る。リチウム電池に使用する場合、0.2~5mm、例えば、0.2~1mm、または1~5mmの範囲のDFTが好適であり得る。
【0084】
代替的に、本発明の膨張性コーティング組成物は、自己支持性フィルムまたはシートに形成される。一般に、本開示の膨張性コーティング組成物は、当業者に周知の任意の技術、例えば鋳造成形プロセスによって、メッシュにコーティングを含浸させることなどによってフィルムまたはシートに形成され得る。フィルムまたはシートは、基材に硬化した膨張性自己支持性フィルムまたはシートを適用する前に、硬化した膨張性自己支持性フィルムまたはシートを形成するために硬化し得る。形成ステップ後、未硬化フィルムまたはシートが基材に適用され、次いで、その後硬化して、本開示に従って硬化した膨張性層を得ることは、本開示の範囲内でもある。フィルムまたはシートは、接着剤を通して基材に適用され得る。膨張性コーティング組成物は、0.1~15mm、例えば、0.2~14mm、または0.5~13mm、または0.5~12mm、または0.7~10mmの範囲の乾燥フィルム厚さを有する自己支持性フィルムまたはシートに形成され得る。
【0085】
本開示の膨張性コーティング組成物は、膨張性コーティングでの使用に好適な1つまたは1つより多くの追加の添加剤をさらに含み得る。このような添加剤の例としては、亜鉛供給源、酸供給源、補強性充填材、炭素供給源、無機充填材、レオロジー添加剤、有機溶媒、顔料、泡安定剤、およびこれらの組み合わせが挙げられる。
【0086】
亜鉛供給源は、チャー中の小さなセル構造の形成に寄与し得る。チャーの小さなセルは、基材のより良い断熱を与え、より良好にチャーの完全性を保ち、基材に接着し得る。したがって、チャーのひび割れおよび基材からの破断が最小限に抑えられ、下地基材に対してより強い保護手段が与えられる。亜鉛供給源の好適な例としては、酸化亜鉛、亜鉛塩、例えば、ホウ酸亜鉛、およびリン酸亜鉛、炭酸亜鉛、ならびに亜鉛金属を挙げることができるが、これらに限定されない。
【0087】
酸供給源の好適な例としては、リン酸アンモニウム、ポリリン酸アンモニウム、二リン酸二アンモニウム、五ホウ酸二アンモニウム、リン酸生成材料、ホウ酸、金属または有機ボレート、およびこれらの組み合わせを挙げることができるが、これらに限定されない。
【0088】
本膨張性コーティング組成物の成分の多くは、組成物中の1つより多い機能の役割を果たし得ることを理解されたい。例えば、リン化合物、亜鉛供給源、ボレート化合物、および熱分解時に膨張ガスを提供する化合物は、各々、別個の供給原材料によって提供され得るか、または代替的に、単一の材料が、これらの成分のうちの1つより多くの成分の供給源であり得る。例えば、ピロリン酸メラミンは、リンおよび膨張ガスの両方の供給源を提供し得、ホウ酸亜鉛は、亜鉛供給源およびボレート供給源を提供し得、リン酸亜鉛は、亜鉛供給源およびホスフェート供給源を提供し得る。
【0089】
補強性充填材は、他の充填材よりも好適であり得る繊維性補強材およびプレートレット補強材を含む、従来利用されている多数の材料の中から選定され得る。繊維性補強材の例としては、ガラス繊維、セラミック繊維、例えば、酸化アルミニウム/酸化ケイ素、黒鉛繊維、鉱物繊維、および玄武岩繊維が挙げられる。プレートレット補強材としては、ハンマーミルガラスフレーク、雲母、および珪灰石が挙げられる。他の好適な充填材としては、金属酸化物、粘土、タルク、シリカ、珪藻土、LAPINUS繊維、および様々な顔料が挙げられる。補強性充填材は、結果として生じるチャーが硬質でかつ均一であるように、チャー形成の前およびその間、防火組成物の膨張を制御するのを補助すると考えられる。存在する場合、補強性充填材、例えば、ガラス繊維および/または鉱物繊維は、通常、膨張性コーティング組成物中に、5.0重量%もしくは5.0重量%未満、例えば、4重量%もしくは4量%未満、例えば、3重量%もしくは3重量%未満の量で存在する。本開示による膨張性コーティング組成物は、補強性充填材を、例えば、0.1重量%もしくは0.1重量%を超える、例えば、0.2重量%もしくは0.2重量%を超える、0.5重量%もしくは0.5重量%を超える、または1重量%もしくは1重量%を超える量で含み得る。膨張性コーティング組成物は、補強性充填材を、上で言及された値のうちのいずれかの間の範囲、例えば、0.1~5.0重量%、または1~4重量%の量で含み得る。重量割合は、膨張性コーティング組成物の総固体重量に基づく。
【0090】
本開示の膨張性コーティング組成物は、繊維性補強材をさらに含み得る。本開示によれば、繊維性補強材は、鉱物繊維、セラミック繊維、ガラス繊維、炭素繊維、玄武岩繊維、またはこれらの混合物を含み得る。本開示による膨張性コーティング組成物は、存在する場合、繊維性補強材を、0.1重量%もしくは0.1重量%を超える、例えば、0.2重量%もしくは0.2重量%を超える、または0.5重量%もしくは0.5重量%を超える、または0.7重量%もしくは0.7重量%を超える、1重量%もしくは1重量%を超える、または1.5重量%もしくは1.5重量%を超える量で含み得る。膨張性コーティング組成物は、存在する場合、繊維性補強材を、5.0重量%もしくは5.0量%未満、例えば4.5重量%もしくは4.5重量%未満、または4.0重量%もしくは4.0重量%未満、または3.5重量%もしくは3.5量%未満、または3.0重量%もしくは3.0重量%未満、または2.5重量%もしくは2.5重量%未満の量で含み得る。膨張性コーティング組成物は、存在する場合、繊維性補強材を、上で言及された値のうちのいずれかの間の範囲、例えば、0.5~5.0重量%、または0.7~4.0重量%、または1.0~3.0重量%の量で含み得る。重量割合は、膨張性コーティング組成物の総固体重量に基づく。
【0091】
本開示の膨張性コーティング組成物はまた、様々な従来の添加剤、例えば、レオロジー添加剤、有機溶媒、泡安定剤、顔料、火炎拡散制御剤なども含有し得る。これらの成分は、必要に応じて、様々な量で添加され得る。典型的には、追加の添加剤が使用される場合、それらは、1重量%もしくは1重量%を超える、例えば、2重量%もしくは2重量%を超える、または5重量%もしくは5重量%を超える、または10重量%もしくは10重量%を超える総量で存在する。追加の添加剤は、存在する場合、例えば、本開示による膨張性コーティング組成物中に、20重量%もしくは20重量%未満、例えば、15重量%もしくは15重量%未満、または12重量%もしくは12重量%未満の量で存在し得る。膨張性コーティング組成物は、必要に応じた追加の添加剤を、上で言及された値のうちのいずれかの間の範囲、例えば、1~20重量%、例えば、2~20重量%、または5~15重量%の量で含み得る。重量割合は、膨張性コーティング組成物の総固体重量に基づく。
【0092】
膨張性コーティング組成物は、1つの成分(「1K」)、または多成分組成物、例えば、2つの成分(「2K」)もしくは2つより多い成分のいずれかであり得る。本明細書で使用される場合、「1K組成物」とは、全てのコーティング成分が、製造後、貯蔵中などに同じ容器内に維持される組成物を指す。1K組成物は、基材に塗布され得、任意の従来の手段、例えば、加熱、強制空気などによって硬化し得る。膨張性コーティング組成物はまた、多成分であり得、これは、種々の成分が塗布の直前まで別個に維持される組成物として理解されるであろう。例えば、本組成物は、2Kシステムとして包装され得、フィルム形成樹脂が第一包装(A)に、したがって架橋剤が第二包装(B)に包装され得、これによって、コーティング組成物に使用される他の成分は全て、包装(A)または包装(B)のいずれか、あるいは両方で任意の組み合わせで使用されるか、または一部もしくは全てが1つまたは1つより多くのさらなる包装(C)であり得る。個々のパッケージは、膨張性組成物を使用する前に混合される。具体的には、膨張性コーティング組成物は、2成分(「2K」)コーティング組成物であり得る。
【0093】
膨張性コーティング組成物は、厚い材料の形態、例えば、マスティックであり得る。組成物は、無溶媒であり、スプレー塗布されることが特に好適である。所望の場合、希釈は、様々な従来の溶媒、例えば、キシレン、塩化メチレン、または1,1,1-トリクロロエタンで達成され得る。
【0094】
膨張性コーティング組成物は、当技術分野における任意の標準的な手段、例えば、ロボットによる塗布を含む、エレクトロコーティング、スプレー塗布、静電スプレー塗布、ディッピング、ローリング、ブラッシングなどによって塗布され得る。
【0095】
上で言及されたように、本開示の方法では、膨張性コーティング組成物は、パルス赤外線を照射することによって硬化する。本明細書で使用される場合、「パルス」という用語は、時間制限された部分で放射される放射線(パルス)を指す。「赤外線」という用語は、780nm~1mmの範囲の波長を有する電磁放射線を指す。したがって、「パルス赤外線」という用語は、パルスで照射される、赤外線スペクトル範囲の波長を有する電磁放射線を指す。パルスは、パルス周波数でパルス持続時間を有する。
【0096】
「硬化する」、「硬化した」という用語、または同様の用語は、本明細書に記載される膨張性コーティング組成物に関連して使用される場合、コーティング組成物を形成する成分の少なくとも一部が硬化して、コーティングを形成することを意味する。パルス赤外線は、膨張性コーティング組成物に照射されて、少なくとも部分的に硬化した膨張性コーティングまたは少なくとも部分的に硬化した膨張フィルムもしくはシートを形成し得る。本明細書で使用される場合、「少なくとも部分的に硬化した」という用語は、膨張性コーティング組成物の成分の反応性基の少なくとも一部の反応が起こることを意味する。本開示によれば、パルス赤外線は、膨張性コーティング組成物に照射されて、完全硬化した膨張性コーティングまたは完全硬化した膨張フィルムもしくはシートを形成し得る。さらなる硬化が、コーティング特性、例えば、硬化したコーティングまたは硬化した自己支持性フィルムもしくはシートの硬度において有意なさらなる改善をもたらさない場合、完全硬化が達成される。硬化したコーティングまたは硬化した自己支持性フィルムもしくはシートの硬度は、ショア硬度によって、例えば、40~90の範囲のショアDデュロメータを使用して室温でのショアD硬度を決定すること、または少なくとも50のショアAデュロメータを使用して室温でのショアA硬度を決定することなどによって決定され得る。
【0097】
本開示によれば、パルス赤外線は、50分未満、または40分未満、または35分未満、または30分未満、または25分未満、または20分未満、または15分未満、または10分未満の時間照射されて、硬化したコーティングまたは硬化した自己支持性フィルムもしくはシートを形成し得る。本開示によれば、パルス赤外線は、少なくとも2分、または少なくとも4分、または少なくとも5分、または少なくとも6分、または少なくとも8分の時間照射されて、硬化したコーティングまたは硬化した自己支持性フィルムもしくはシートを形成し得る。本開示によれば、パルス赤外線は、上で言及された値のうちのいずれかの間の範囲、例えば、2分~50分、または2分~35分、または2分~30分、または4分~25分、または5分~20分、または6~15分、または8分~10分照射されて、硬化したコーティングまたは硬化した自己支持性フィルムもしくはシートを形成し得る。オーブンでの膨張性コーティング組成物の硬化と比較して、より短い硬化時間が達成され、エネルギー節約をもたらし得る。この方法はさらに、長い予熱期間を設けることなく、スイッチオン後すぐに赤外線放射体が活性化し、所望の部分領域(例えば、膨潤性コーティング組成物が塗布された基材)のみが加熱されるため、高い効率を提供する。
【0098】
パルス赤外線放射を使用すると、コーティング組成物へのエネルギーの伝達は、主に熱対流または熱伝導によって実現されるのではなく、電磁波が光波と同じ方法および同じ速度で伝播するため、光速の赤外線スペクトル範囲の非可視電磁波によって実現される。赤外線は、基材の表面に迅速かつ効果的に透過し、塗布された膨張性コーティング組成物または形成された自己支持性フィルムもしくはシートの急速な硬化を確実にする。これは、高エネルギー密度を有する放射線の伝達を可能にし、したがって、本開示によるコーティング組成物のエネルギー的に非常に効率的な硬化を可能にする。低温でのより速く、よりエネルギー効率の高い硬化が達成され得る。
【0099】
本開示によれば、塗布された膨張性コーティング組成物に(II)中のパルス赤外線を照射して、硬化した膨張性コーティングを形成する間の基材の表面温度は、100℃未満、または90℃未満であり得る。本開示によれば、塗布された膨張性コーティング組成物に(II)中のパルス赤外線を照射して、硬化した膨張性コーティングを形成する間の基材の表面温度は、少なくとも60℃、例えば、少なくとも70℃であり得る。塗布された膨張性コーティング組成物に(II)中のパルス赤外線を照射して、硬化した膨張性コーティングを形成する間の基材の表面温度は、60℃~100℃、例えば、70℃~90℃の範囲であり得る。基材の表面温度は、DIN EN 60584-1:2014によって決定され得る。
【0100】
本開示によるパルス赤外線は、少なくとも3μmのピーク波長を有し得る。本明細書で使用される場合、「ピーク波長」という用語は、パルス赤外線放射の最大放射波長を指す。本開示の方法で使用されるパルス赤外線は、10μmもしくは10μm未満、例えば、6μmもしくは6μm未満、または4μmもしくは4μm未満のピーク波長を有し得る。本出願の方法で使用されるパルス赤外線は、上で言及された値のうちのいずれかの間の範囲、例えば、3μm~10μm、または3μm~6μm、または3μm~4μmであり得る。
【0101】
本開示によれば、パルス赤外線は、少なくとも5μs、例えば、少なくとも8μs、または少なくとも10μsのパルス持続時間で照射され得る。本明細書で使用される場合、「パルス幅」とも称される「パルス持続時間」という用語は、パルス赤外線のパルスの半値全幅(FWHM)振幅を指す。パルス赤外線は、100μsもしくは100μs未満、例えば、75μsもしくは75μs未満、または50μsもしくは50μs未満、または25μsもしくは25μs未満、または15μsもしくは15μs未満、または14μsもしくは14μs未満、または12μsもしくは12μs未満のパルス持続時間で照射され得る。本開示によるパルス赤外線は、上で言及された値のうちのいずれかの間の範囲、例えば、5μs~12μs、または8μs~12μs、または10μs~12μs、または5μs~14μs、または8μs~14μs、または10μs~14μs、または5μs~15μs、または8μs~15μs、または10μs~15μs、または5μs~25μs、または8μs~25μs、または10μs~25μs、または5μs~50μs、または8μs~50μs、または10μs~50μs、または5μs~75μs、または8μs~75μs、または10μs~75μs、または5μs~100μs、または8μs~100μs、または10μs~100μsのパルス持続時間で照射され得る。
【0102】
特に、硬化したコーティングまたは硬化した自己支持性フィルムもしくはシートを形成するために照射される、本開示によるパルス赤外線は、3μm~10μm、例えば、3μm~6μmの範囲のピーク波長を、100μs未満、例えば、25μs未満、または14μs未満のパルス持続時間で有し得る。
【0103】
本開示によるパルス赤外線は、少なくとも350Hz、例えば、少なくとも370Hz、または少なくとも390Hz、または少なくとも400Hzのパルス周波数で照射され得る。本明細書で使用される場合、「パルス周波数」という用語は、パルス赤外線の1秒当たりのパルス数を指す。本開示によるパルス放射線は、450Hzもしくは450Hz未満、例えば、430Hzのパルス周波数で照射され得る。パルス赤外線は、350Hz~450Hz、例えば、350Hz~430Hz、または370Hz~450Hz、または370Hz~430Hz、または390Hz~450Hz、または390Hz~430Hz、または400Hz~450Hz、または400Hz~430Hzの範囲のパルス周波数で照射され得る。本開示によれば、パルス赤外線は、上で言及された値のうちのいずれかの間の範囲、例えば、350Hz~450Hz、または370Hz~450Hz、または390Hz~450Hz、または400Hz~450Hzのパルス周波数で照射され得る。
【0104】
本開示によるパルス赤外線は、少なくとも250W/cm、例えば、少なくとも270W/cm、または少なくとも290W/cmの衝撃エネルギーで照射され得る。本明細書で使用される場合、「衝撃エネルギー」という用語は、単位面積当たりの表面によって受ける電磁放射線の総放射電力を指す。本開示によるパルス放射線は、350W/cmもしくは350W/cm未満、例えば、330W/cmもしくは330W/cm未満、または320W/cmもしくは320W/cm未満の衝撃エネルギーで照射され得る。パルス赤外線は、上で言及された値のうちのいずれかの間の範囲、例えば、250W/cm~350W/cm、または250W/cm~330W/cm、または250W/cm~320W/cm、または270W/cm~350W/cm、または270W/cm~330W/cm、または270W/cm~320W/cm、または290W/cm~350W/cm、または290W/cm~330W/cm、または290W/cm~320W/cmの衝撃エネルギーで照射され得る。
【0105】
本開示によれば、パルス赤外線は、セラミック組成物を含む表面を含む赤外線光源によって提供され得る。セラミック組成物は、熱を吸収し、具体的には、上で言及された範囲のピーク波長を有するパルス赤外線を放射することが可能であり得る。本開示によれば、赤外線光源は、熱を吸収し、パルス赤外線を放射することが可能であるセラミック組成物を含む表面を含み得る。好適には、赤外線光源は、熱を吸収し、3μm~10μmの範囲のパルス赤外線を放射することが可能であるセラミック組成物を含む表面を含み得る。セラミック組成物によって生成されたパルス赤外線の使用は、本開示による膨張性コーティング組成物の硬化に好影響を提供し得る。
【0106】
硬化のために、赤外線光源の赤外線放射表面は、硬化する膨張性コーティング組成物が塗布された基材の表面、または硬化する自己支持性フィルムもしくはシートの表面に対向し得る。本明細書では、赤外線光源の赤外線放射表面と、硬化する膨張性コーティング組成物が塗布された基材の表面、または自己支持性フィルムもしくはシートの表面との間の距離は、少なくとも5cm、例えば、少なくとも10cm、または少なくとも15cmの距離であり得る。本明細書では、赤外線光源の赤外線放射表面と、硬化する膨張性コーティング組成物が塗布された基材の表面、または自己支持性フィルムもしくはシートの表面との間の距離は、50cmもしくは50cm未満、例えば、45cmもしくは45cm未満、または40cmもしくは40cm未満、または35cmもしくは35cm未満、または30cmもしくは30cm未満、または25cmもしくは25cm未満、または20cmもしくは20cm未満、または15cmもしくは15cm未満の距離であり得る。赤外線光源の赤外線放射表面は、硬化する膨張性コーティング組成物が塗布された基材の表面、または自己支持性フィルムもしくはシートの表面と、上で言及された値のうちのいずれかの間の範囲、例えば、5cm~50cm、または5cm~30cm、または5cm~15cm、または10cm~20cm、または15cm~25cmの距離で対向し得る。
【0107】
本開示によれば、赤外線光源は、硬化する膨張性コーティング組成物が塗布された基材の表面、または自己支持性フィルムもしくはシートの表面に、少なくとも一方の側から対向し得る。本開示の少なくとも1つまたは1つより多くの赤外線光源は、硬化する膨張性コーティング組成物が塗布された基材、または自己支持性フィルムもしくはシートの表面を、少なくとも一方の側から囲み得る。赤外線光源の好適な配置は、例えば、EP 1 690 842 A1(特に、段落[0044]~[0049])およびWO 2011/015164(特に、12~13ページ)に記載されている。本開示による赤外線光源は、任意の所望の形状、例えば、ロッド、管、平坦なプレートまたは湾曲したプレートの形状を有し得る。
【0108】
赤外線光源は、セラミック組成物を直接または間接的に加熱するための熱源をさらに含み得る。熱源からの熱伝達は、熱源とセラミック組成物との間の、放射線伝達、対流、接触伝達、または熱伝導性材料を介した伝達を含む、様々な熱伝達方法を含み得る。赤外線光源は、熱吸収および/または熱源からセラミック組成物への熱伝達のための担体材料をさらに含み得る。担体材料は、以下の材料:Fe、SiO、3Al・2SiO、および/もしくは2Al・1SiO(ムライト)、Al、またはCuのうちの1つまたは1つより多くを含み得る。さらに、赤外線光源は、反射体デバイスを含み得る。セラミック組成物は、赤外線光を生成し得、とりわけ、望ましくない方向に赤外線光を放射し得る。1つまたは1つより多くの反射体を含み得る反射体デバイスは、望ましくない方向に放射された赤外線を反射し、特定の領域、例えば、硬化するコーティング組成物が塗布された基材の表面、または硬化する自己支持性フィルムもしくはシートの表面に、当該赤外線を再誘導するために適用され得る。
【0109】
本開示によるセラミック組成物は、(a)(a-i)アルカリ土類元素、遷移金属元素、ランタニドおよびアクチニドからなる群から選択される金属元素、ならびに(a-ii)酸素を含む金属酸化物成分と、(b)3Al・2SiOおよび/または2Al・SiO(ムライト)を含むムライト残余成分と、を含み得る。金属酸化物成分(a)の好適な例としては、Cr、ZrO、Ho、Fe、LaCrO、CeO、Y、YCrO、Gd、MgAl、MgCrO、CaCrO、YCrO、CuO、La、CuCrO、およびFeCrOが挙げられるが、これらに限定されない。セラミック組成物は、金属酸化物成分(a)およびムライト残余成分(b)からなり得る。
【0110】
セラミック組成物は、セラミック組成物の総重量に基づいて、少なくとも0.1重量%、例えば、少なくとも0.5重量%、例えば、少なくとも1.0重量%、例えば、少なくとも5.0重量%の金属酸化物成分(a)を含み得る。セラミック組成物は、セラミック組成物の総重量に基づいて、70.0重量%もしくは70.0量%未満、例えば、60.0重量%もしくは60.0重量%未満、例えば、50.0重量%もしくは50.0重量%未満、例えば、40.0重量%もしくは40.0重量%未満、例えば、30.0重量%もしくは30.0量%未満、例えば、20.0重量%もしくは20.0重量%未満の金属酸化物成分(a)を含み得る。セラミック組成物は、セラミック組成物の総重量に基づいて、0.1~70.0重量%、または0.5~70.0重量%、または1.0~70.0重量%、または5.0~70.0重量%、または0.1~60.0重量%、または0.5~60.0重量%、または1.0~60.0重量%、または5.0~60.0重量%、または0.1~50.0重量%、または0.5~50.0重量%、または1.0~50.0重量%、または5.0~50.0重量%、または0.1~40.0重量%、または0.5~40.0重量%、または1.0~40.0重量%、または5.0~40.0重量%、または0.1~30.0重量%、または0.5~30.0重量%、または1.0~30.0重量%、または5.0~30.0重量%、または0.1~20.0重量%、または0.5~20.0重量%、または1.0~20.0重量%、または5.0~20.0重量%の範囲で金属酸化物成分(a)を含み得る。本開示によれば、セラミック組成物は、セラミック組成物の総重量に基づいて、0.1~70.0重量%、例えば、0.5~60.0重量%、例えば、0.5~50.0重量%、例えば、1.0~40.0重量%、例えば、1.0~30.0重量%、例えば、5.0~20.0重量%の範囲で金属酸化物成分(a)を含み得る。
【0111】
セラミック組成物は、セラミック組成物の総重量に基づいて、少なくとも30.0重量%、例えば、少なくとも40.0重量%、例えば、少なくとも50.0重量%、例えば、少なくとも60.0重量%、例えば、少なくとも70.0重量%、例えば、少なくとも80.0重量%のムライト残余成分(b)を含み得る。セラミック組成物は、セラミック組成物の総重量に基づいて、99.9重量%もしくは99.9重量%未満、99.5重量%もしくは99.5重量%未満、例えば、99.0重量%もしくは99.0量%未満、例えば、95.0重量%もしくは95.0重量%未満のムライト残余成分(b)を含み得る。セラミック組成物は、セラミック組成物の総重量に基づいて、30.0~99.9重量%、または30.0~99.5重量%、または30.0~99.0重量%、または30.0~95.0重量%、または40.0~99.9重量%、または40.0~99.5重量%、または40.0~99.0重量%、または40.0~95.0重量%、または50.0~99.9重量%、または50.0~99.5重量%、または50.0~99.0重量%、または50.0~95.0重量%、または60.0~99.9重量%、または60.0~99.5重量%、または60.0~99.0重量%、または60.0~95.0重量%、または70.0~99.9重量%、または70.0~99.5重量%、または70.0~99.0重量%、または70.0~95.0重量%、または80.0~99.9重量%、または80.0~99.5重量%、または80.0~99.0重量%、または80.0~95.0重量%の範囲でムライト残余成分(b)を含み得る。本開示によれば、セラミック組成物は、セラミック組成物の総重量に基づいて、30.0~99.9重量%、または40.0~99.9重量%、または50.0~99.5重量%、または60.0~99.0重量%、または70.0~95.0重量%、または80.0~95.0重量%の範囲でムライト残余成分(b)を含み得る。
【0112】
セラミック組成物は、当業者に既知の標準的なセラミック処理手順によって処理され得る。本開示によるセラミック組成物は、従来の粉砕手順、例えば、アーク粉砕によって、微細粉末に粉砕され、均質性が達成されるまで混合され、典型的には、2.600℃の温度で溶融し得る。溶解は、酸化雰囲気、例えば、空気中で行われ得る。得られた溶融材料は、例えば、100~250μmの範囲の粒度に粉砕され得、次いで、粉末は、所望の形状に形成され得る。セラミック組成物を処理する好適な手順は、例えば、WO 99/01401 A1に開示されている。セラミック組成物を形成するプロセスは、プレスを使用してセラミック組成物を高圧処理し、セラミック組成物から生成される物体の形成された本体を成形することを含み得る。セラミック組成物を物体に成形するプロセスは、さらなる温度処理、例えば、焼結プロセス、および必要に応じてさらなる加圧プロセスをさらに含み得る。任意の物体を形成するためのセラミック組成物の成形は、標準的な成形手順、例えば、機械的処理、粉末プロセス、またはセラミック射出成形を含み得る。したがって、セラミック組成物は、標準的なセラミック形成手順によって、ほぼ任意の形状に形成され得る。
【0113】
本開示によれば、膨張性コーティング組成物または硬化した自己支持性フィルムもしくはシートは、当該技術分野で既知の任意の基材、例えば、自動車基材、海洋基材、工業基材、重機、包装基材、材木、木製フローリングおよび家具、アパレル、ハウジングおよび回路基板を含み、コンピュータ、ノートブック、スマートフォン、タブレット、テレビ、ゲーム機器、コンピュータ機器、コンピュータアクセサリー、MP3プレーヤーなどのためのハウジングなどのコンシューマーエレクトロニクスを含むエレクトロニクス、ガラスおよび透明品、ゴルフボールなどのスポーツ用品などに適用され得る。膨張性コーティング組成物が塗布される基材は、金属、プラスチック、セラミック、ガラス、木材、紙、板紙、ゴム、皮革、織物、既存のコーティング、またはこれらの混合物から選択される材料を含み得る。
【0114】
基材は、構造体の一部または車両の一部であり得る。本明細書で使用される場合、「構造物」は、建物、橋梁、交通インフラ、石油掘削装置、石油プラットフォーム、給水塔、送電塔、支持構造物、風力タービン、壁、桟橋、ドック、堤防、ダム、輸送用コンテナ、トレーラー、電池構成要素、電池、および腐食性環境に曝露される任意の金属構造物の任意の部分を指す。本明細書で使用される場合、「車両」は、最も広い意味で、全タイプの車両、例えば、限定されないが、車、トラック、バス、トラクター、ハーベスター、重機、バン、ゴルフカート、オートバイ、自転車、鉄道車両、地下鉄車両、飛行機、ヘリコプター、全サイズのボートなどを指す。基材は、電池の一部または電池構成要素の一部であり得る。
【0115】
本開示はさらに、本開示の方法に従ってコーティングされた基材に関する。
【0116】
加えて、本開示は、本開示の方法に従ってコーティングされた基材を備える物品を対象とする。
【0117】
本開示による物品は、電池または電池構成要素を含み得る。電池は、例えば、電気車両用電池であり得る。本発明によれば、電池は、リチウムイオン電池であり得る。本明細書で使用される場合、「電池構成要素」という用語は、電池、例えば、リチウムイオン電池内に見られる任意の構成要素を指す。本開示によれば、電池構成要素は、電気車両用電池構成要素であり得る。電池構成要素は、電極、電池セル、電池シェル、電池モジュール、電池パック、電池ボックス、電池セルケーシング、パックシェル、電池蓋、電池トレイ、熱管理システム、電池ハウジング、モジュールハウジング、モジュール追跡、電池サイドプレート、電池セル筐体、冷却モジュール、冷却管、冷却フィン、冷却プレート、母線、電池フレーム、電気接続、金属ワイヤ、銅もしくはアルミニウム導体もしくはケーブル、またはこれらの任意の組み合わせを含み得る。
【0118】
電池は、ハウジングを画定する外壁要素と、必要に応じて、内壁要素と、を含み得、膨張コーティング組成物または自己支持フィルムもしくはシートは、外壁要素のいずれかの外側および/もしくは内側、ならびに/または存在する場合、内壁要素のいずれかの任意の側に、少なくとも部分的に適用される。外壁要素および/または内壁要素は、複合材、鋼、アルミニウム、ポリカーボネート、またはこれらの組み合わせを含み得る。
【0119】
電池、具体的にはリチウムイオン電池は、複数の個々の電池セルを含む電池パックであり得、膨張性コーティング組成物または自己支持性フィルムもしくはシートは、2つの電池セル間など、個々の電池セルのうちの少なくとも2つを、膨張状態、および必要に応じて炭化状態において互いに断熱するように位置付けられる。電池は、電池内および/または電池の周辺などに、1つまたは1つより多くの追加の難燃性材料および/または火災軽減手段をさらに含み得る。例えば、1つまたは1つより多く追加の難燃性材料および/または火災軽減手段が、電池セル間、または電池ハウジングの周囲もしくは内部の周りに巻き付けられ得るか、または別の様式で位置付けられ得る。難燃性材料および/または火災軽減手段の好適な例は、ガラス繊維、鉱物ウール、シリカ、シリカ繊維、アルミナ、Kevlar、Nomex、ケイ酸カルシウム、ケイ酸カルシウム繊維、またはこれらの組み合わせを含み、これらの例は、例えば、シートまたは他の自己支持形態であり得る。発泡体、例えば、難燃剤を有するポリウレタン/ポリ尿素発泡体も使用され得る。物理的障壁、例えば、電池セル間に介在する冷却フィン、マイカボード、エアロゲルブランケット、鉱物/ガラス/炭素繊維含有ブランケット、またはこれらの組み合わせも用いられ得る。
【0120】
本開示による物品は、電池または電池構成要素であり得る。
【0121】
電池を備える物品およびその使用者に対する防火を提供するために、コーティング組成物または自己支持性フィルムもしくはシートを、電池と物品との間の電池に隣接する物品の一部に適用して、物品を電池から断熱することも本発明の範囲内である。このような場合では、従来の電池または本開示による電池が用いられ得る。物品は、例えば、携帯電話、タブレット、またはラップトップコンピュータであり得る。
【0122】
代替的に、物品は、車両、例えば、ハイブリッドもしくは電気自動車、バス、またはトラックを含み得る。このような車両では、電池、特にリチウムイオン電池を、電池の重量により、車両本体、例えば車体の床部分の下に、平坦な電池パックとして位置付けることが一般的である。このような場合では、膨張性コーティングまたは自己支持性フィルムもしくはシートは、電池と車両本体との間の電池に隣接する車両の床部分に適用され得る。これによって、電池の熱暴走または電池火災の場合に、車体、特に乗客キャビンは、火災が乗客キャビンに広がらないように硬化した膨張性コーティングまたは自己支持性フィルムもしくはシートによって保護され、このような出来事が発生した場合に、乗客が車両から安全に脱出するのに十分な時間を有するように、乗客キャビンの温度上昇が長期間にわたって制限される。代替的に、物品は、構造体を含み得る。
【0123】
さらに、本開示は、パルス赤外線を照射することによって、膨張性コーティング組成物を硬化させる方法における、本開示による膨張性コーティング組成物の使用に関する。本開示はさらに、膨張性コーティング組成物を硬化させる方法における、パルス赤外線の使用に関する。
【0124】
本明細書で使用される場合、別途明示的に指定されない限り、値、範囲、量、または割合を表すものなどの全ての数は、用語が明示的に現れなくても、「約」という語によって前置きされているかのように読み取られ得る。
【0125】
以下の実施例は、本開示を例示するためのものと意図され、決して本開示を限定するものと解釈されるべきではない。
【図面の簡単な説明】
【0126】
図1】パルス赤外線を使用し、20cmの距離から50%の電力で14分間(a)、30cmの距離から100%の電力で7分間(b)、およびオーブン加熱を使用し、90℃で25分間(c)によって硬化した膨張性コーティングを示す。
図2】(a)オーブン加熱を使用し、90℃で120分間、(b)パルス赤外線を使用し、20cmの距離から50%の電力で30分間、(c)パルス赤外線を使用し、30cmの距離から100%の電力で20分間、および(d)室温で、10日間で硬化した膨張性コーティングの1200℃で5分後のチャー形成を示す。
【実施例
【0127】
膨張性コーティング組成物の調製
コーティング配合物を、表1(ベース配合)および表2(硬化剤配合)に示される成分を使用して調製した。
【表1】


【表2】

【0128】
配合物のためのベースを、配合物中の粒子のサイズが100ミクロン未満になるまで、2000~3000rpmの回転速度、および80~90mmの分散プレート直径で、0.75~1kWのBrook Cromptonモータを備えた分散機で、全ての成分を分散させることによって調製した。コーティング配合物のための硬化剤を、配合物中の粒子のサイズが100ミクロン未満になるまで、2000~3000rpmの回転速度、および80~90mmの分散プレート直径で、0.75~1kWのBrook Cromptonモータを備えた分散機で、全ての成分を分散させることによって調製した。塗布直前に、ベースおよび硬化剤を、表1および2に示される相対量で混合した。ベースおよび硬化剤を、混合物の色が均質で塊がなくなるまで、混合器またはスパチュラによって混合した。コーティング配合物を、エアレススプレー塗布を用いて、150x75x1.2mmのアルミニウムパネル上に塗布した。
【0129】
パルス赤外線および従来の硬化を使用したコーティングされた基材の硬化
上記に示された膨張性コーティング組成物でコーティングされた基材を、SPS Group GmbH(Germany)から市販されているパルス赤外線光源IR.X Infrarot Modul D2を使用して硬化させた。表3に示されるように、パルス赤外線光源の以下の設定を適用した。
【表3】
【0130】
パルス赤外線光源は、表4に示されるように、様々な距離で硬化するコーティング組成物が塗布された基材に対向していた。光源IR.X Infrarot Modul D2は、100%の電力が適用された場合、2000Wの電力を有する。したがって、50%の電力は、1000Wの電力を表す。
【表4】

【0131】
硬化時間は、取り扱うために十分に乾燥している硬化したコーティングを達成する時間を表す。取り扱うために十分に乾燥しているとは、コーティングされた表面またはフィルムが、一般的な取り扱い圧力に供された場合、望ましくないマーク、剥離、ゆるみ、しわ、または他の形態の歪みを示さず、その値が55を超える必要があるショアA硬度試験機によって決定され得ることを意味する。厚さを、DIN EN ISO 2178:2016に従って決定した。
【0132】
従来の硬化は、オーブン内の加熱された空気を90℃で30分間使用することによって達成され、その後、コーティングは取り扱うために十分に乾燥している。硬化時間は、硬化したコーティングを達成するために有意に長かった。
【0133】
硬化した膨張性コーティングの火災試験
150x75x1.2mmのアルミニウムパネル上に塗布し、パルス赤外線によって硬化させ、ならびにオーブンを使用して硬化させ、室温(約25℃)で硬化させたコーティングを、1200±50℃のトーチ火力に対する10分間の試験を行った。アルミニウムパネルの裏面の温度を監視した。さらに、膨張係数が決定され、これは、火災試験前のチャーの厚さと硬化したコーティングとの間の比を示す。結果は、以下の表5に要約される。
【表5】

【0134】
上記の結果から分かるように、パルス赤外線を使用した硬化は、従来の硬化した膨張性コーティングと比較して膨張性コーティングの同様の火災性能をもたらす。硬化したコーティングの火災性能を維持しながら、硬化時間が有意に短縮され得る。
図1
図2
【国際調査報告】