(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-10-23
(54)【発明の名称】光検出器上でのレーザビームの位置感度を低減するための調整デバイス及びこれを用いる方法
(51)【国際特許分類】
G01J 1/02 20060101AFI20241016BHJP
G01J 1/04 20060101ALI20241016BHJP
G02B 26/08 20060101ALN20241016BHJP
G02B 26/10 20060101ALN20241016BHJP
【FI】
G01J1/02 K
G01J1/04 A
G02B26/08 E
G02B26/10 104Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024517010
(86)(22)【出願日】2022-08-12
(85)【翻訳文提出日】2024-04-16
(86)【国際出願番号】 US2022040159
(87)【国際公開番号】W WO2023043551
(87)【国際公開日】2023-03-23
(32)【優先日】2021-09-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】593141632
【氏名又は名称】エレクトロ サイエンティフィック インダストリーズ インコーポレーテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100109896
【氏名又は名称】森 友宏
(72)【発明者】
【氏名】ザバワ,パトリック
【テーマコード(参考)】
2G065
2H045
2H141
【Fターム(参考)】
2G065AA04
2G065AB05
2G065AB09
2G065BA01
2G065BB05
2G065BB06
2G065BB11
2G065BB32
2G065BB33
2G065BB49
2H045AB01
2H141MA11
2H141MB24
(57)【要約】
システムにおいては、調整デバイスは、ディフューザと、ディフューザ上にレーザエネルギービームを集束するように構成されるレンズと、ディフューザを透過したレーザエネルギービームの少なくとも一部を透過するように構成される絞りとを含む。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ディフューザと、
前記ディフューザ上にレーザエネルギービームを集束するように構成されるレンズと、
前記ディフューザを透過した前記レーザエネルギービームの少なくとも一部を透過するように構成される絞りと
を含む調整デバイスを備える、システム。
【請求項2】
前記調整デバイスは、前記ディフューザと前記レンズとの間に配置される波長板をさらに含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記波長板は四分の一波長板である、請求項2に記載のシステム。
【請求項4】
前記調整デバイスから出力される前記レーザエネルギービームを受けるように配置される光入力部を有する光検出器をさらに備える、請求項1に記載のシステム。
【請求項5】
前記レーザエネルギービームを偏向可能であり、前記調整デバイスの光学的に上流側に配置される偏向器をさらに備える、請求項1に記載のシステム。
【請求項6】
前記ディフューザは非多孔質PTFEから形成される、請求項1に記載のシステム。
【請求項7】
前記ディフューザは多孔質PTFEから形成される、請求項1に記載のシステム。
【請求項8】
前記ディフューザは多孔質PTFE、アルミナ、溶融シリカ、ホワイトガラス、ポリプロピレン又は三酢酸セルロース(TAC)から形成されない、請求項1に記載のシステム。
【請求項9】
前記ディフューザは、電磁スペクトルの紫外(UV)域の波長を有するレーザエネルギーの存在下で蛍光を発しない材料から形成される、請求項1に記載のシステム。
【請求項10】
前記調整デバイスは、カラーフィルタを含まない、請求項1に記載のシステム。
【請求項11】
電磁スペクトルの紫外(UV)域の波長を有するレーザエネルギビームを集束し、
前記集束されたレーザエネルギービームを拡散し、
前記拡散されたレーザエネルギービームの少なくとも一部をアパーチャを通して光検出器上に伝搬させること
を含む、方法。
【請求項12】
前記集束されたレーザエネルギービームを拡散する前に、前記集束されたレーザエネルギービームを波長板を通して伝搬させることをさらに含む、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記波長板は四分の一波長板である、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記レーザエネルギービームを偏向させることをさらに含み、前記レーザエネルギービームを集束することは、前記偏向されたレーザエネルギービームを集束することを含む、請求項11に記載の方法。
【請求項15】
前記レーザエネルギービームを拡散することは、非多孔質PTFEから形成されるディフューザを用いて前記レーザエネルギービームを拡散することを含む、請求項11に記載の方法。
【請求項16】
前記レーザエネルギービームを拡散することは、多孔質PTFEから形成されるディフューザを用いて前記レーザエネルギービームを拡散することを含む、請求項11に記載の方法。
【請求項17】
前記レーザエネルギービームを拡散することは、多孔質PTFE、アルミナ、溶融シリカ、ホワイトガラス、ポリプロピレン又は三酢酸セルロース(TAC)から形成されないディフューザを用いて前記レーザエネルギービームを拡散することを含む、請求項11に記載の方法。
【請求項18】
前記レーザエネルギービームを拡散することは、電磁スペクトルの紫外(UV)域の波長を有するレーザエネルギーの存在下で蛍光を発しない材料から形成されるディフューザを用いて前記レーザエネルギービームを拡散することを含む、請求項11に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願に対する相互参照
本出願は、2021年9月17日に提出された米国仮特許出願第63/245,631号の利益を主張し、その内容は、参照によりその全体が組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
背景
I.技術分野
本発明の実施形態は、光検出器上の偏向器によって誘導される高強度紫外(UV)ビームの位置感度を低減するための手法に関するものである。より具体的には、本発明の実施形態は、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)ディフューザによりレンズを用いて位置感度を低減するためのシステムに関するものである。
【0003】
II.関連技術の説明
レーザエネルギーの正確な測定は、プリント回路基板(PCB)にビアを穿孔するように設計されたレーザ加工システムのようなレーザ加工システムにおける能動的なパワー制御のために非常に重要である。そのようなレーザ加工システムにおいては、
図1を参照すると、(1以上のレーザパルスの形態の)レーザエネルギーは、一般的に、レーザエネルギーが伝搬するビーム経路116中にビームスプリッタ(例えば、
図1に示されるような部分反射ミラー102)を配置することにより測定される。レーザエネルギーの大部分は、ビームスプリッタによって主ビーム経路104aに沿った方向に(例えば、レーザ加工システムのスキャンヘッドに向けて)導かれ、レーザエネルギーの残りの部分は、副ビーム経路104bに沿った方向に光検出器106に向けて(具体的には光検出器106の光入力部106aに向けて)導かれる。このようにして、光検出器106でレーザエネルギーを測定しつつ、スキャンヘッドに導かれるレーザエネルギーを用いてワークピース(例えばPCB)を加工することができる。光検出器106の光入力部106aに入射するレーザエネルギーに応答して光検出器106により生成される信号をコントローラのようなデバイスに送信することができ、そこで(例えばレーザパワーの変化を補償するための)リアルタイムパルスエネルギー制御やシステム較正などのような様々な機能をサポートするために信号を処理することができる。
【0004】
また、レーザ加工システムが、ワークピースの加工中にレーザエネルギービームがこれに沿って伝搬するビーム軸の位置を(例えば、音響光学偏向器(AOD)やガルバノメータミラーなど、あるいはこれらを任意に組み合わせたもののようなビーム偏向器を用いて)変更することによってビーム経路104をスキャンあるいは偏向することは一般的である。ビーム経路104が偏向されると、主ビーム経路104a及び副ビーム経路104bも偏向される。副ビーム経路104bが偏向されると、副ビーム経路104bに沿って伝搬するレーザエネルギーが光検出器106の光入力部106aに入射する位置が変化する。
【0005】
しかしながら、光検出器106で得られる測定値は、典型的には、光検出器106に入射するレーザエネルギーの位置又は角度によって変化する。このため、光検出器106の光入力部106aに入射するレーザエネルギーの移動により測定誤差が生じ得ることになり、この測定誤差は誤ったパワー制御、システム較正などを引き起こし得る。このような影響を最小限にするために、積分球及び透過アルミナディフューザのような調整デバイスを用いることをはじめとしていくつかの解決策が実施されている。しかしながら、多くの調査の後、本発明者は、レーザエネルギーが電磁スペクトルの紫外(UV)領域の波長を有する場合に、これらのデバイスの光出力が経時的に変化すること(本明細書において「スループット流動性(throughput transience)」と呼ばれる現象)を見出した。スループット流動性は、ワークピースに対して誤ったパワーをレーザ加工システムに照射させることになり好ましくない。UV光は多くの材料や汚染物質に簡単に吸収されるので、このスループット流動性の根本原因は、使用される調整デバイスの種類に応じて変化し得る。
【0006】
例えば、UVレーザエネルギービームは、積分球の内部のコーティング材料を直接破壊し得るか、さらに/あるいはこれを浄化するように作用し得る。これは、内部のコーティング材料がPTFEである場合においても、そのようなPTFEコーティングは、揮発性有機化合物(VOC)による汚染を受けやすい多孔質焼結材料(これは溶融させることのない樹脂材料の加熱及び圧縮を伴う)であるため、問題になることが明らかになっている。レーザエネルギービーム中の光子は、典型的には、積分球を出るまでに複数回反射するので、そのような多孔質PTFEコーティングを有する積分球の光出力は、コーティング材料の表面反射率のわずかな変化に対しても大きく変化し得る。積分球の光出力は、(典型的にはUV光への数時間から数日の露光の後にのみ)時間とともに安定し得るが、再汚染によりこの問題が再び起こり得る。
【0007】
バルク透過ディフューザは、積分球のような複数回の反射に依存していないが、表面又はバルク透過の変化によりUV光に露光された際にスループット流動性を依然として生じ得る。また、適切なフィルタにより蛍光信号を除去することができるが、ディフューザを形成する材料に応じて長く続く蛍光発光が存在し得る。また、レーザエネルギーの強度が高まると、これらの影響も拡大する。離間して積み上げられたバルク透過ディフューザを用いることは、レンズを用いた集束に代わり得るものであるが、この設計は他の欠点(コンパクト性の欠如及び位置感度)を有する。
【発明の概要】
【0008】
概要
一実施形態は、概して、ディフューザと、上記ディフューザ上にレーザエネルギービームを集束するように構成されるレンズと、上記ディフューザを透過したレーザエネルギービームの少なくとも一部を透過させるように構成される絞りとを含む調整デバイスとして特徴付けることができる。
【0009】
他の実施形態は、概して、電磁スペクトルの紫外(UV)領域の波長を有するレーザエネルギービームを集束し、上記集束されたレーザエネルギービームを拡散し、上記拡散されたレーザエネルギービームの少なくとも一部をアパーチャを通じて光検出器上に伝搬させることを含む方法として特徴付けることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図面の簡単な説明
【
図1】
図1は、光検出器を含むビーム経路を示す模式図である。
【
図2】
図2は、本発明のある実施形態による調整デバイスを示す断面斜視図であり、この調整デバイスは
図1に示されるビーム経路中に配置され得る。
【発明を実施するための形態】
【0011】
詳細な説明
以下、添付図面を参照しつつ実施形態の例を説明する。明示的に述べている場合を除き、図面においては、構成要素、特徴、要素などのサイズや位置などやそれらの間の距離は、必ずしも縮尺通りではなく、また理解しやすいように誇張されている。
【0012】
明細書において使用される用語は、特定の例示的な実施形態を説明するためだけのものであり、限定を意図しているものではない。本明細書で使用される場合には、内容が明確にそうではないことを示している場合を除き、単数形は複数形を含むことを意図している。さらに、「備える」及び/又は「備えている」という用語は、本明細書で使用されている場合には、述べられた特徴、整数、ステップ、動作、要素、及び/又は構成要素の存在を特定するものであるが、1つ以上の他の特徴、整数、ステップ、動作、要素、構成要素、及び/又はそのグループの存在又は追加を排除するものではないことを理解すべきである。特に示している場合を除き、値の範囲が記載されているときは、その範囲は、その範囲の上限と下限の間にあるサブレンジだけではなく、その上限及び下限を含むものである。特に示している場合を除き、「第1」や「第2」などの用語は、要素を互いに区別するために使用されているだけである。例えば、あるノードを「第1のノード」と呼ぶことができ、同様に別のノードを「第2のノード」と呼ぶことができ、あるいはこれと逆にすることもできる。本明細書において使用されるセクション見出しは、特に言及している場合を除いて、整理のためだけのものであり、述べられた主題を限定するものと解釈すべきではない。
【0013】
特に示されている場合を除き、「約」や「その前後」などは、量、サイズ、配合、パラメータ、及び他の数量及び特性が、正確ではなく、また正確である必要がなく、必要に応じて、あるいは許容誤差、換算係数、端数計算、測定誤差など、及び当業者に知られている他のファクタを反映して、概数であってもよく、さらに/あるいは大きくても小さくてもよいことを意味している。
【0014】
本明細書において、「下方」、「下」、「下側」、「上方」、及び「上側」などの空間的に相対的な用語は、図に示されるような、ある要素又は特徴の他の要素又は特徴に対する関係を述べる際に説明を容易にするために使用され得るものである。空間的に相対的な用語は、図において示されている方位に加えて異なる方位を含むことを意図するものであることは理解すべきである。例えば、他の要素又は特徴の「下方」又は「下」にあるとして説明される要素は、図中の対象物が反転した場合には、他の要素又は特徴の「上方」を向くことになる。このように、「下方」という例示的な用語は、上方及び下方の方位の双方を含み得るものである。対象物が他の方位を向く場合(例えば90度回転される場合や他の方位にある場合)には、本明細書において使用される空間的に相対的な記述子はこれに応じて解釈され得る。
【0015】
図面を通して同様の数字は同様の要素を意味している。このため、同一又は類似の数字は、対応する図面で言及又は説明されていない場合であっても、他の図面を参照して述べられることがある。また、参照番号の付されていない要素であっても、他の図面を参照して述べられることがある。
【0016】
本開示の趣旨及び教示を逸脱することなく、多くの異なる形態及び実施形態が考えられ、本開示を本明細書で述べた実施形態の例に限定して解釈すべきではないことは理解できよう。むしろ、これらの例及び実施形態は、本開示が完全かつすべてを含むものであって、本開示の範囲を当業者に十分に伝えるように提供されるものである。
【0017】
本発明の実施形態による調整デバイスは、上記で述べた従来の調整デバイスに関する問題及び欠点を克服するために、光検出器106の光入力部106aの光学的に上流側に配置され得る。
図1で200で示される調整デバイスは、ビームスプリッタ(すなわち
図1に示される部分反射ミラー102)と光検出器106の光入力部106aとの間の副ビーム経路104b中に配置され得る。このため、調整デバイス200は、副ビーム経路104bに沿って伝搬するレーザエネルギーを受けることができ、以下でより詳細に述べるように、このレーザエネルギーを修正あるいは調整することができる。調整されたレーザエネルギーは、光検出器106の光入力部106aに伝搬するように調整デバイス200から出力される。ビームスプリッタは、部分反射ミラー102として設けられるものとして述べられているが、ビームスプリッタは、ビームスプリッティングキューブ、又はこれに類するもの、あるいはこれらを任意に組み合わせたもののような1以上の他の構成要素として設けられてもよいことは理解できよう。
【0018】
図1には示されていないが、AOD、ガルバノメータミラーなど、又はこれらを任意に組み合わせたもののようなビーム偏向器をビームスプリッタ102の光学的に上流側に設けて(例えばビームスプリッタ102に対して)ビーム経路104をスキャンあるいは偏向することができる。ビーム経路104が偏向される場合には、主ビーム経路104a及び副ビーム経路104bも偏向される。副ビーム経路104bが偏向される場合には、副ビーム経路104bに沿って伝搬するレーザエネルギーが光検出器106の光入力部106aに入射する位置が変化する。
【0019】
加えて、
図1には示されていないが、ビーム経路104に沿って伝搬することとなるレーザエネルギービームを生成するためにレーザ源を設けることができる。本明細書で例示的に述べられる実施形態によれば、レーザエネルギービームは、電磁スペクトルの紫外(UV)域における1以上の波長を有し、パルス持続時間、パルス繰り返し率、パルスエネルギーなどのような特性を有する一連のレーザパルスとして表される。この特性により、レーザパルスは、(例えば内部にビアを形成するために)プリント回路基板、集積回路基板などのワークピースを加工(例えば加熱、溶融、気化、アブレートなど)するのに好適なものとなる。
【0020】
図2を参照すると、調整デバイス200は、光セル202、スペーサ204、及び絞りダイアフラムアセンブリ206を含み得る。光セル202は、レンズ208、ディフューザ210、レンズマウント212、レンズスペーサ214及びレンズリング216を含み得る。図示されているように、レンズ208、ディフューザ210及び絞りダイアフラムアセンブリ206の光軸は同一線上にあり、すなわち、これらの構成要素は、同一の光軸(本明細書では「調整デバイス200の光軸」という)を共有している。調整デバイス200の光軸は、ビーム経路104の「中心」位置(すなわち、スキャンヘッドを通過するレーザエネルギーがワークピースに投影されるスキャン領域の中心でワークピースを照射することとなるビーム経路104の位置)に位置合わせされていてもよい。
【0021】
一実施形態においては、調整デバイス200は、まず(例えば、レンズマウント212の第1の端部をスペーサ204の第1の端部に又はその逆にねじ込むことにより)レンズマウント212をスペーサ204に取り付け、(例えば、レンズマウント212の第1の端部とは反対側のレンズマウント212の第2の端部を通して、ディフューザ210がレンズマウント212の第1の端部でフランジに当接するように)ディフューザ210をレンズマウント212に挿入し、(例えば、レンズマウント212の第2の端部を通して、レンズスペーサ214がディフューザ210に当接するように)レンズスペーサ214をレンズマウント212に挿入し、(例えば、レンズマウント212の第2の端部を通して、レンズ208がレンズスペーサ214に当接するように)レンズ208をレンズマウント212に挿入し、(例えば、レンズリング216をレンズマウント212の第2の端部に又はその逆にねじ込むことにより)レンズリング216をレンズマウント212の第2の端部に取り付け、(例えば、スペーサ204の第2の端部を絞りダイアフラムアセンブリ206の端部に又はその逆にねじ込むことにより)絞りダイアフラムアセンブリ206をスペーサ204の第2の端部に取り付けることにより組み立てることができる。調整デバイス200は他の所望な又は好適な方法により組み立てられてもよく、また、調整デバイス200は、本明細書で述べられているものよりも多くの構成要素、それらよりも少ない構成要素又はそれらとは異なる構成要素を含んでいてもよいことは理解できよう。
【0022】
レンズ208は、入射レーザエネルギービーム(例えば、電磁スペクトルのUV域の波長を有するレーザエネルギービーム(本明細書では単に「UVレーザエネルギー」ともいう))を集束するように構成される。この場合において、ディフューザ210は、レンズ208の焦点に位置していない。例えば、レンズ208に対面するディフューザ210の面は、焦点の光学的に上流側又は焦点の光学的に下流側に位置し得る。レンズ208に対面するディフューザ210の面をレンズ208の焦点に直接配置することにより望ましくない問題(例えば、より小さな表面積にわたる平均化、より高いレーザ強度など)が生じることがある。しかしながら、(例えば、レンズ208が比較的弱く、比較的大きな焦点を生成するような、あるいはこれに類するような)ある実施形態においては、レンズ208に対面するディフューザ210の面をレンズ208の焦点に直接置くことができる。レーザエネルギービームを集束することにより、ビーム経路104の偏向によるディフューザ210におけるレーザエネルギービームの移動を減少させ又は最小限にすることができる。図示されているように、レンズ208は、両凸レンズのような集束レンズである。
【0023】
ディフューザ210は、入射した集束UVレーザエネルギービームを拡散するように構成される。本明細書に開示される実施形態によれば、ディフューザ210は、非多孔質PTFE材料(当該技術分野においては高濃度PTFEとしても知られている)のメンブレンから形成される。非多孔質PTFEメンブレンは、(当該技術分野において知られているように、樹脂材料の溶融及び圧縮を伴う)平衡成形材料であり、必要に応じてスカイブされ(skived)、押し出され、切断などされて必要な又は所望の寸法を有するディフューザを作製することができる(概して、ディフューザ210の前面及び後面は少なくとも実質的に平坦である)。同一の厚さにおいては、非多孔質PTFE材料から形成されるメンブレンは、多孔質PTFE材料から形成されるメンブレンよりも多くのUVレーザエネルギーを透過することが本発明者によって見出されている。本発明者は、非多孔質PTFE材料の選択が、高強度UVレーザエネルギービームの存在下で長い時間にわたって安定した光出力を実現する(すなわち最小スループット流動性)ために非常に重要であると判断している。
【0024】
ディフューザ210としての使用に好適な非多孔質PTFE材料(又は非多孔質PTFE以外の任意の材料)の選択に関して重要となる特性としては、ランバート散乱を呈すること、疎水性である(湿度に耐性があり、本質的に吸水性又は濡れ性を呈さない)こと、汚染物に耐性があること、清浄にしやすいこと、化学的に不活性である(温度及び湿度の変化があるシステム環境において長い時間にわたって表面又はバルク特性に本質的な変化がない)こと、入力光パワーに対して線形応答を呈し、著しく低いUV吸収率を呈すること、典型的に使用されるフルエンスレベルでUVレーザエネルギー(例えば355nm)に対する高い損傷閾値を呈すること、及び所望の減衰及び拡散を有するために低い透過性(例えば10%~20%又はその前後)を呈することが挙げられる。また、ディフューザ材料は、カラーフィルタの必要性をなくすために、レーザエネルギー(例えば355nm)の存在下において蛍光を発しないことが非常に望ましい。蛍光は、吸収を示すものであり、典型的に光検出器106により生成される出力信号の立ち上がり時間/立ち下がり時間に悪影響を与えるであろう長く続く現象であるので避けるべきである。
【0025】
(例えば、5nsから35nsの範囲のパルス持続時間を有するレーザパルスとして表される)355nmでのレーザエネルギーについての好適に高い損傷閾値の例は、0.2J/cm2(又はその前後)から0.1J/cm2(又はその前後)の範囲であるが、特定の損傷閾値は特定の使用例に基づいて変化し得ることは理解すべきである。
【0026】
当業者は、ディフューザ材料の透過率はその厚さと、時としてディフューザにより拡散されるレーザエネルギーの波長に依存することを理解すべきである。さらに、透過率は、一般的に、ディフューザ材料の厚さmmごとのディフューザ材料の実効光学濃度(OD)の逆数に対応し得る。この場合において、ディフューザ材料は、0.3又はその前後のOD/mmを有し得る。ディフューザ材料がレーザエネルギーを好適に反射及び拡散できる限りにおいて0.3よりも高いOD/mmも許容可能であることは理解すべきである。
【0027】
上述した光学特性を考えると、ディフューザ210は、アルミナ、溶融シリカ、ホワイトガラス、ポリプロピレン、三酢酸セルロース(TAC)などから形成されないことは理解できよう。
【0028】
スペーサ204により、ディフューザ210を透過し、拡散されたUVレーザエネルギービームは、絞りダイアフラムアセンブリ206のアパーチャ206aに到達する前にある程度の距離を伝搬することが可能になる。
【0029】
絞りダイアフラムアセンブリ202はアパーチャ206aを規定しており、拡散されたUVレーザエネルギービームはアパーチャ206aを通って伝搬することができる。その後、アパーチャ206aを通って伝搬するUVレーザエネルギーは、副ビーム経路104bに沿って光検出器106の光入力部106aまで伝搬することができる。
【0030】
上述したように構成される調整デバイス200においては、入力レーザ偏光角(直線偏光であることが想定される)に対して小さいが顕著な感度が存在することに留意すべきである。これは、ビーム偏向器(例えばAOD)がビーム経路104を偏向するように作動されるので、フレネルの式により述べることができる入射角の変化により生じる。この感度は、(偏向のない)レーザエネルギービームが調整デバイス200の光軸に対してずれ、ビーム経路104がレーザエネルギービームの偏光軸に平行な方向に沿ってスキャンされるときに最大となる。ディフューザ210に入射するレーザエネルギービームの偏光軸がディフューザ210での入射面に直交する場合には、入射角が大きくなるとディフューザ210の透過が減少する。これに対して、偏光がディフューザ210の入射面に平行である場合には、入射角が大きくなるとディフューザ210の透過が増加する。実際には、後者の場合は、入射角が大きくなると透過する光エネルギーを減少させる感度の他のソースを相殺する傾向にあるが、前者はこれに追加する傾向にある。この設計に対して考えられる変更は、レーザエネルギーの直線偏光を円偏光に変換するために、ディフューザ210の光学的に上流側にλ/4波長板を追加することである。これは、ずれとスキャン角度の任意の組み合わせに対して偏光感度をおよそ相殺するであろう。また、スペーサ204の長さは、角度感度又はずれ感度を低減するように設定され得る。
【0031】
ディフューザ210の材料に関する上記の議論にかかわらず、清浄できること、汚染の受けやすさ、位置/角度に対する透過の変化が問題とならないのであれば、ディフューザ210が多孔質PTFE材料のメンブレンから形成され得ることは認識すべきである。
【0032】
調整デバイス200がUVレーザエネルギーとの使用について述べられてきたが、電磁スペクトルの可視域、近赤外(IR)域及び/又は中IR域の波長を有するレーザエネルギーとの使用についても(例えばレンズ208の材料を適切に選択することにより)調整デバイス200の設計を所望の形又は好適な形で変更することができることは理解できよう。また、~250nmと短い波長のレーザエネルギーについてのディフューザ210の材料として使用される場合にも好適である(~250nmよりも短い波長ではディフューザ210の吸収及び加速劣化が起こりやすい)ことに留意すべきである。
【0033】
上記は、本発明の実施形態及び例を説明したものであって、これに限定するものとして解釈されるものではない。いくつかの特定の実施形態及び例が図面を参照して述べられたが、当業者は、本発明の新規な教示や利点から大きく逸脱することなく、開示された実施形態及び例と他の実施形態に対して多くの改良が可能であることを容易に認識するであろう。したがって、そのような改良はすべて、特許請求の範囲において規定される本発明の範囲に含まれることを意図している。例えば、当業者は、そのような組み合わせが互いに排他的になる場合を除いて、いずれかの文や段落、例又は実施形態の主題を他の文や段落、例又は実施形態の一部又は全部の主題と組み合わせることができることを理解するであろう。したがって、本発明の範囲は、以下の特許請求の範囲とこれに含まれるべき請求項の均等物とによって決定されるべきである。
【国際調査報告】