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特表2024-538546懸濁液マスサイトメトリーのための空間バーコード化 関連出願の相互参照 本出願は、参照により本明細書に組み込まれる、2021年9月23日に出願された米国仮出願第63/247,611号の利益および優先権を主張する。
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  • 特表-懸濁液マスサイトメトリーのための空間バーコード化  関連出願の相互参照  本出願は、参照により本明細書に組み込まれる、2021年9月23日に出願された米国仮出願第63/247,611号の利益および優先権を主張する。 図1
  • 特表-懸濁液マスサイトメトリーのための空間バーコード化  関連出願の相互参照  本出願は、参照により本明細書に組み込まれる、2021年9月23日に出願された米国仮出願第63/247,611号の利益および優先権を主張する。 図2
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  • 特表-懸濁液マスサイトメトリーのための空間バーコード化  関連出願の相互参照  本出願は、参照により本明細書に組み込まれる、2021年9月23日に出願された米国仮出願第63/247,611号の利益および優先権を主張する。 図5
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-10-23
(54)【発明の名称】懸濁液マスサイトメトリーのための空間バーコード化 関連出願の相互参照 本出願は、参照により本明細書に組み込まれる、2021年9月23日に出願された米国仮出願第63/247,611号の利益および優先権を主張する。
(51)【国際特許分類】
   G01N 27/62 20210101AFI20241016BHJP
   H01J 49/10 20060101ALI20241016BHJP
   H01J 49/40 20060101ALI20241016BHJP
   G01N 33/48 20060101ALI20241016BHJP
   C12Q 1/06 20060101ALI20241016BHJP
【FI】
G01N27/62 F
H01J49/10 500
H01J49/40
G01N33/48 M
G01N33/48 P
C12Q1/06
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024518342
(86)(22)【出願日】2022-09-22
(85)【翻訳文提出日】2024-05-22
(86)【国際出願番号】 US2022044407
(87)【国際公開番号】W WO2023049276
(87)【国際公開日】2023-03-30
(31)【優先権主張番号】63/247,611
(32)【優先日】2021-09-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TRITON
2.TWEEN
(71)【出願人】
【識別番号】522211553
【氏名又は名称】スタンダード バイオツールズ カナダ インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100137969
【弁理士】
【氏名又は名称】岡部 憲昭
(74)【代理人】
【識別番号】100104824
【弁理士】
【氏名又は名称】穐場 仁
(74)【代理人】
【識別番号】100121463
【弁理士】
【氏名又は名称】矢口 哲也
(72)【発明者】
【氏名】トム,コリン
【テーマコード(参考)】
2G041
2G045
4B063
【Fターム(参考)】
2G041DA14
2G041DA16
2G041FA10
2G041FA11
2G041FA12
2G041GA06
2G041KA01
2G045AA24
2G045BA13
2G045BB25
2G045CB01
2G045FA36
2G045FA37
2G045FB07
4B063QA01
4B063QQ05
4B063QS33
4B063QX01
(57)【要約】
本出願の態様は、細胞試料に空間バーコードを適用し、次いで細胞試料に対して懸濁液マスサイトメトリーを実施することを含む。例えば、試料バーコード同位体の公知の分布を含む試料バーコードが、異なる位置にある細胞が固有の組み合わせまたは比のバーコード同位体を受け取るように、試料に適用され、その後、細胞が懸濁され(例えば、組織から解離され)、懸濁液マスサイトメトリーによって処理され得る。バーコード同位体は、本明細書のいくつかの実施形態に記載されているが、濃縮同位体の代わりに、またはそれに加えて、非濃縮元素を使用してもよい。マスサイトメトリー法および試薬を以下に論じ、続いて空間バーコード化およびそのキットのさらなる説明を行う。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
懸濁液マスサイトメトリーの空間バーコード化の方法であって、
a)細胞試料の異なる位置にある細胞が異なる組み合わせまたは比の同位体で標識されるように、前記細胞試料に空間バーコードを適用するステップであって、前記空間バーコードが80amuを超える原子質量を有する濃縮同位体を含む、ステップ;
b)前記細胞試料の空間的にバーコード化された細胞を懸濁するステップ;
c)懸濁された前記細胞を質量タグ付き親和性試薬で染色するステップであって、前記質量タグ付き親和性試薬が、80amuを超える、および前記空間バーコードの前記濃縮同位体の前記原子質量とは別個の原子質量を有する濃縮同位体を含む、ステップ;ならびに
d)前記空間バーコードの前記濃縮同位体および前記質量タグ付き親和性試薬の前記濃縮同位体が細胞ごとに検出されるように、前記細胞を懸濁液マスサイトメトリーによって分析するステップ
を含む、方法。
【請求項2】
前記細胞試料が組織切片である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記組織切片が20ミクロンを超える厚さを有する、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記組織切片が、ホルマリン固定パラフィン包埋(FFPE)組織切片である、請求項2に記載の方法。
【請求項5】
前記細胞試料が生きた固体組織試料である、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記細胞試料が新鮮凍結固体組織試料である、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記細胞試料がオルガノイドである、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記細胞試料が固体組織生検である、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記細胞試料がタンパク質マトリックスに包埋されている、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記空間的にバーコード化された細胞を前記懸濁するステップの前に、前記細胞試料に金属含有バイオセンサまたは金属含有組織化学化合物を適用するステップをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
異なる位置にある前記細胞が、異なる組み合わせの同位体を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
異なる位置にある前記細胞が、異なる比の同位体を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記空間バーコードが、空間バーコード同位体の分布を含む固体支持体であり、前記空間バーコード同位体が、各位置が固有にバーコード化されるように、前記固体支持体の少なくとも一部にわたってパターン化される、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
前記固体支持体がフィルムまたはマトリックスである、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
第1のバーコード同位体が、前記細胞試料中の第1の空間次元に沿って増加する、請求項1に記載の方法。
【請求項16】
第2のバーコード同位体が、前記細胞試料中の第2の空間次元に沿って増加する、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
第3のバーコード同位体が、前記細胞試料中の複数の位置にスポッティングされる、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
少なくとも2つのバーコード同位体が固有の空間分布を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項19】
正規化バーコード同位体が、前記細胞試料の少なくとも一部にわたって均等に分布している、請求項1に記載の方法。
【請求項20】
前記空間バーコードが、前記細胞試料に適用される固体支持体上に配置される、請求項1に記載の方法。
【請求項21】
前記空間バーコードが、マイクロ流体デバイスによって前記細胞試料に適用される、請求項1に記載の方法。
【請求項22】
前記マイクロ流体デバイスが、異なる組み合わせまたは比のバーコード同位体を試料の異なる位置に送達するように構成されたチャネルを含む、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記空間バーコードを適用するステップが、前記細胞試料にわたって少なくとも1つの同位体を拡散させることを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項24】
前記空間バーコードを適用するステップが、前記空間バーコード同位体を前記細胞試料にわたって異なる方向に拡散させることを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項25】
前記空間バーコードを適用するステップが、前記細胞試料を固体支持体と接触させ、次いで、1つまたは複数の空間バーコード同位体の溶液を前記細胞試料からの前記固体支持体の反対側に適用することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項26】
前記固体支持体が、透過性の勾配を提供するゲルまたは多孔質基質である、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
前記空間バーコードが、異なる組み合わせまたは比のバーコード同位体をスポッティングされた固体支持体を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項28】
前記細胞を前記懸濁するステップの前および/または後に、均等な分布の正規化同位体を前記細胞試料に適用するステップをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項29】
前記空間バーコードがチオール反応性部分を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項30】
pHを調整すること、温度を調整すること、または溶液中に過剰の反応性部分を添加することの1つまたは複数によって、前記細胞試料への前記空間バーコードの結合を停止するステップをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項31】
前記反応性部分が、前記空間バーコードと反応するチオールである、請求項30に記載の方法。
【請求項32】
前記反応性部分が、前記反応性部分の前記細胞試料への進入を防止する立体基にコンジュゲートされる、請求項31に記載の方法。
【請求項33】
前記空間バーコードが、前記空間バーコード同位体の前記分布を示す色素またはフルオロフォアを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項34】
細胞を解離するステップの後、および前記細胞を分析するステップの前に、前記細胞を濃縮するステップをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項35】
濃縮するステップが、タンパク質発現に基づいて1つまたは複数のタイプの細胞を濃縮することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項36】
前記懸濁された細胞を染色するステップの前に、前記細胞試料の前記懸濁された細胞に試料バーコードを適用し、前記懸濁された細胞を異なる試料バーコードを含む細胞と組み合わせるステップをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項37】
前記分析するステップから得られたデータセットから、2つの異なる試料バーコードを含むダブレットを除外するステップをさらに含む、請求項36に記載の方法。
【請求項38】
懸濁液マスサイトメトリーによって前記細胞を分析するステップが、前記細胞をICP-MSに導入することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項39】
懸濁液マスサイトメトリーによって前記細胞を分析するステップが、前記細胞をICP-TOF-MSに導入することを含む、請求項38に記載の方法。
【請求項40】
前記細胞を懸濁するステップが、前記細胞を酵素的に処理することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項41】
個々の細胞について検出された前記空間バーコードの前記濃縮同位体に基づいて、細胞に空間座標を割り当てるステップをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項42】
個々の細胞について検出された前記空間バーコードの前記濃縮同位体に基づいて、細胞の互いに対する近接度を計算するステップをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項43】
個々の細胞について検出された前記空間バーコードの前記濃縮同位体に基づいて、細胞の3D空間分布を分析するステップをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項44】
前記細胞試料の細胞を懸濁するステップの前に、前記細胞試料を光学的に画像化するステップをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項45】
画像化するステップが、前記空間バーコードの同位体の前記分布を示す基準点を画像化することを含む、請求項44に記載の方法。
【請求項46】
画像化するステップが、前記細胞試料の連続切片を画像化することを含む、請求項44に記載の方法。
【請求項47】
前記画像化するステップが、前記細胞試料の組織化学染色を画像化することを含む、請求項44に記載の方法。
【請求項48】
前記画像内の関心領域を定義し、懸濁液マスサイトメトリーによって検出された細胞の前記空間バーコードに基づいて前記関心領域内の細胞を識別するステップをさらに含む、請求項44に記載の方法。
【請求項49】
懸濁液マスサイトメトリーのための空間的にバーコード化された細胞試料であって、前記空間バーコードが、80amuを超える原子質量を有する濃縮同位体を含む、細胞試料。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
イメージングマスサイトメトリー(IMC)および懸濁液マスサイトメトリー(SMC)を含むマスサイトメトリーは、質量分析による質量タグの検出を通じて標的分析物の高度に多重化された検出を可能にする。質量タグは、典型的には、抗体などの親和性試薬を介して標的分析物と関連付けられる。質量タグは、他の質量タグの質量標識原子とは区別される標識原子(例えば、濃縮同位体などの単一の同位体)の1つまたは複数のコピーを有し得る。
【0002】
IMCとは異なり、SMCは分析された細胞に関する空間情報を保存せず、IMCに勝るいくつかの利点を有する。例えば、SMCではIMCよりも多数の質量タグが検証されており、より複雑な検出を可能にする。さらに、SMCにおける全細胞の分析は、低発現標的に対するより良好な感度を可能にする。最後に、SMCは、IMCのラスタースキャンがスループットを毎秒数細胞に限定する可能性があるのに対し、細胞が懸濁液中に迅速に導入されるときに数百の細胞の分析を可能にする。
【技術分野】
【0003】
本出願の分野は、懸濁液マスサイトメトリーによる分析のための試料の空間バーコード化に関する。
【図面の簡単な説明】
【0004】
図1】細胞の懸濁液を質量タグ付き抗体で染色し、次いでICP-MSによって分析する懸濁液マスサイトメトリー(SMC)ワークフローを示す。
図2】固体組織切片を質量タグ付き抗体で染色し、次いで、空間情報が保存されるようにLA-ICP-MSによって分析するイメージングマスサイトメトリーワークフローを示す。
図3】バーコード同位体の分布を使用して細胞の空間的位置を標識することができる本出願の例示的な空間バーコードを示す。
図4図3に示す軸に沿った異なる位置における細胞の、異なる組み合わせおよび量のバーコード同位体を示す。
図5】SMCによる分析のための空間情報を保存するために、細胞試料を空間的にバーコード化する方法を示す。
【発明の概要】
【0005】
本出願の態様は、細胞試料に空間バーコードを適用し、次いで細胞試料に対して懸濁液マスサイトメトリーを実施することを含む。例えば、試料バーコード同位体の公知の分布を含む試料バーコードが、異なる位置にある細胞が固有の組み合わせまたは比のバーコード同位体を受け取るように、試料に適用され、その後、細胞が懸濁され(例えば、組織から解離され)、懸濁液マスサイトメトリーによって処理され得る。本出願の態様は以下を含む:
1.懸濁液マスサイトメトリーの空間バーコード化の方法であって、
a)細胞試料の異なる位置にある細胞が異なる組み合わせまたは比の同位体で標識されるように、細胞試料に空間バーコードを適用するステップであって、空間バーコードが80amuを超える原子質量を有する濃縮同位体を含む、ステップ;
b)細胞試料の空間的にバーコード化された細胞を懸濁するステップ;
c)懸濁細胞を質量タグ付き親和性試薬で染色するステップであって、質量タグ付き親和性試薬が、80amuを超える、および空間バーコードの濃縮同位体の原子質量とは別個の原子質量を有する濃縮同位体を含む、ステップ;ならびに
d)空間バーコードの濃縮同位体および質量タグ付き抗体の濃縮同位体が細胞ごとに検出されるように、細胞を懸濁液マスサイトメトリーによって分析するステップ
を含む、方法。
【0006】
2.細胞試料が組織切片である、態様1に記載の方法。
【0007】
3.組織切片が20ミクロンを超える厚さを有する、態様2に記載の方法。
【0008】
4.組織切片がホルマリン固定パラフィン包埋(FFPE)組織切片である、態様2に記載の方法。
【0009】
5.細胞試料が生きた固体組織試料である、態様1に記載の方法。
【0010】
6.細胞試料が新鮮凍結固体組織試料である、態様1に記載の方法。
【0011】
7.細胞試料がオルガノイドである、態様1に記載の方法。
【0012】
8.細胞試料が固体組織生検である、態様1に記載の方法。
【0013】
9.細胞試料がタンパク質マトリックスに包埋されている、態様1に記載の方法。
【0014】
10.空間的にバーコード化された細胞を懸濁するステップの前に、細胞試料に金属含有バイオセンサまたは金属含有組織化学化合物を適用するステップをさらに含む、態様1~9のいずれか1つに記載の方法。
【0015】
11.異なる位置にある細胞が、異なる組み合わせの同位体を含む、態様1~10のいずれか1つに記載の方法。
【0016】
12.異なる位置にある細胞が、異なる比の同位体を含む、態様1~11のいずれか1つに記載の方法。
【0017】
13.空間バーコードが、空間バーコード同位体の分布を含む固体支持体であり、空間バーコード同位体が、各位置が固有にバーコード化されるように、固体支持体の少なくとも一部にわたってパターン化される、態様1~12のいずれか1つに記載の方法。
【0018】
14.固体支持体がフィルムまたはマトリックスである、態様13に記載の方法。
【0019】
15.デバイスがマイクロ流体デバイスを含む、態様1~12のいずれか1つに記載の方法。
【0020】
16.マイクロ流体デバイスが、異なる組み合わせまたは比のバーコード同位体を試料の異なる位置に送達するように構成されたチャネルを含む、態様15に記載の方法。
【0021】
17.第1のバーコード同位体が、細胞試料中の第1の空間次元に沿って増加する、態様1~16のいずれか1つに記載の方法。
【0022】
18.第2のバーコード同位体が、細胞試料中の第2の空間次元に沿って増加する、態様17に記載の方法。
【0023】
19.第3のバーコード同位体が、細胞試料中の複数の位置にスポッティングされる、態様18に記載の方法。
【0024】
20.少なくとも2つのバーコード同位体が固有の空間分布を有する、態様1~16のいずれか1つに記載の方法。
【0025】
21.正規化バーコード同位体が、細胞試料の少なくとも一部にわたって均等に分布している、態様1~20のいずれか1つに記載の方法。
【0026】
22.空間バーコードが、細胞試料に適用される固体支持体上に配置される、態様1~21のいずれか1つに記載の方法。
【0027】
23.空間バーコードが、マイクロ流体デバイスによって細胞試料に適用される、態様1~21のいずれか1つに記載の方法。
【0028】
24.空間バーコードを適用するステップが、細胞試料にわたって少なくとも1つの同位体を拡散させることを含む、態様1~21のいずれか1つに記載の方法。
【0029】
25.空間バーコードを適用するステップが、空間バーコード同位体を細胞試料にわたって異なる方向に拡散させることを含む、態様1~21のいずれか1つに記載の方法。
【0030】
26.空間バーコードを適用するステップが、細胞試料を固体支持体と接触させ、次いで、1つまたは複数の空間バーコード同位体の溶液を細胞試料からの固体支持体の反対側に適用することを含む、態様1~25のいずれか1つに記載の方法。
【0031】
27.固体支持体が、透過性の勾配を提供するゲルまたは多孔質基質である、態様26に記載の方法。
【0032】
28.空間バーコードが、異なる組み合わせまたは比のバーコード同位体をスポッティングされた固体支持体を含む、態様1~22のいずれか1つに記載の方法。
【0033】
29.細胞を懸濁するステップの前および/または後に、均等な分布の正規化同位体を細胞試料に適用するステップをさらに含む、態様1~28のいずれか1つに記載の方法。
【0034】
30.空間バーコードがチオール反応性部分を含む、態様1~29のいずれか1つに記載の方法。
【0035】
31.pHを調整すること、温度を調整すること、または溶液中に過剰の反応性部分を添加することの1つまたは複数によって、細胞試料への空間バーコードの結合を停止するステップをさらに含む、態様1~30のいずれか1つに記載の方法。
【0036】
32.反応性部分が、空間バーコードと反応するチオールである、態様31に記載の方法。
【0037】
33.反応性部分が、反応性部分の細胞試料への進入を防止する立体基にコンジュゲートされる、態様32に記載の方法。
【0038】
34.空間バーコードが、空間バーコード同位体の分布を示す色素またはフルオロフォアを含む、態様1~33のいずれか1つに記載の方法。
【0039】
35.細胞を解離するステップの後、および細胞を分析するステップの前に、細胞を濃縮するステップをさらに含む、態様1~34のいずれか1つに記載の方法。
【0040】
36.濃縮するステップが、タンパク質発現に基づいて1つまたは複数のタイプの細胞を濃縮することを含む、態様1~35のいずれか1つに記載の方法。
【0041】
37.懸濁細胞を染色するステップの前に、細胞試料の懸濁細胞に試料バーコードを適用し、懸濁細胞を異なる試料バーコードを含む細胞と組み合わせるステップをさらに含む、態様1~36のいずれか1つに記載の方法。
【0042】
38.分析するステップから得られたデータセットから、2つの異なる試料バーコードを含むダブレットを除外するステップをさらに含む、態様37に記載の方法。
【0043】
39.懸濁液マスサイトメトリーによって細胞を分析するステップが、細胞をICP-MSに導入することを含む、態様1~38のいずれか1つに記載の方法。
【0044】
40.懸濁液マスサイトメトリーによって細胞を分析するステップが、細胞をICP-TOF-MSに導入することを含む、態様39に記載の方法。
【0045】
41.細胞を懸濁するステップが、細胞を酵素的に処理することを含む、態様1~40のいずれか1つに記載の方法。
【0046】
42.細胞を懸濁するステップが、細胞に剪断力を適用することを含む、態様1~41のいずれか1つに記載の方法。
【0047】
43.個々の細胞について検出された空間バーコードの濃縮同位体に基づいて、細胞に空間座標を割り当てるステップをさらに含む、態様1~42のいずれか1つに記載の方法。
【0048】
44.個々の細胞について検出された空間バーコードの濃縮同位体に基づいて、細胞の互いに対する近接度を計算するステップをさらに含む、態様1~43のいずれか1つに記載の方法。
【0049】
45.個々の細胞について検出された空間バーコードの濃縮同位体に基づいて、細胞の3D空間分布を分析するステップをさらに含む、態様1~44のいずれか1つに記載の方法。
【0050】
46.細胞試料の細胞を懸濁するステップの前に、細胞試料を光学的に画像化するステップをさらに含む、態様1~45のいずれか1つに記載の方法。
【0051】
47.画像化するステップが、空間バーコードの同位体の分布を示す基準点を画像化することを含む、態様46に記載の方法。
【0052】
48.画像化するステップが、細胞試料の連続切片を画像化することを含む、態様46または47に記載の方法。
【0053】
49.画像化するステップが、細胞試料の組織化学染色を画像化することを含む、態様46~48のいずれか1つに記載の方法。
【0054】
50.画像内の関心領域を定義し、懸濁液マスサイトメトリーによって検出された細胞の空間バーコードに基づいて関心領域内の細胞を識別するステップをさらに含む、態様46~49のいずれか1つに記載の方法。
【0055】
51.関心領域内で識別された細胞の空間的関係を分析するステップをさらに含む、態様50に記載の方法。
【0056】
52.80amuを超える原子質量を有する濃縮同位体を含む複数のバーコード;および
空間的に配置された様式で細胞試料に空間バーコードを適用するように構成されたデバイス
を含む、懸濁液マスサイトメトリーのための空間バーコードキット。
【0057】
53.デバイスが固体支持体を含み、濃縮同位体が、各位置が固有にバーコード化されるように、固体支持体の少なくとも一部にわたってパターン化される、態様52に記載のキット。
【0058】
54.固体支持体がフィルムを含む、態様53に記載のキット。
【0059】
55.バーコードがフィルムの表面に吸着されている、態様54に記載のキット。
【0060】
56.バーコードが固体支持体上にスポッティングされ、任意選択的にバーコードが固体支持体上で乾燥される、態様54に記載のキット。
【0061】
57.固体支持体がゲルを含む、態様52に記載のキット。
【0062】
58.固体支持体が、透過性の勾配を提供するゲルまたは多孔質基質である、態様52に記載のキット。
【0063】
59.固体支持体が、密度および/または厚さの勾配を含むゲルである、態様52に記載のキット。
【0064】
60.デバイスがマイクロ流体デバイスを含む、態様52に記載のキット。
【0065】
61.マイクロ流体デバイスが、異なる組み合わせまたは比のバーコードを試料の異なる位置に送達するように構成されたチャネルを含む、態様60に記載のキット。
【0066】
62.異なる濃縮同位体またはそれらの組み合わせもしくは比を含むバーコードが別々に包装される、態様52~61のいずれか1つに記載のキット。
【0067】
63.バーコードが濃縮同位体の固有の組み合わせで包装されている、態様52~62のいずれか1つに記載のキット。
【0068】
64.バーコードが濃縮同位体の固有の比で包装されている、態様52~62のいずれか1つに記載のキット。
【0069】
65.バーコードが有機溶媒に懸濁されている、態様52~64のいずれか1つに記載のキット。
【0070】
66.有機溶媒がDMSOである、態様65に記載のキット。
【0071】
67.バーコードが小分子バーコードを含む、態様52~66のいずれか1つに記載のキット。
【0072】
68.小分子バーコードが、500ダルトン未満の分子量を有する、態様67に記載のキット。
【0073】
69.小分子バーコードがシスプラチンまたはその誘導体を含む、態様67に記載のキット。
【0074】
70.バーコードと反応する停止試薬をさらに含む、態様65~69のいずれか1つに記載のキット。
【0075】
71.バーコードが細胞結合部分およびバーコード結合部分を含み、バーコード結合部分が、バーコード上の部分に選択的に結合する、態様65~70のいずれか1つに記載のキット。
【0076】
72.細胞結合部分が、細胞膜に包埋された脂質である、態様71に記載のキット。
【0077】
73.細胞結合部分が、細胞表面上のタンパク質に結合する抗体である、態様71に記載のキット。
【0078】
74.バーコード結合部分がアビジンまたはビオチンである、態様71に記載のキット。
【0079】
75.バーコード結合部分が、バーコードのオリゴヌクレオチド配列の少なくとも10ヌクレオチドに相補的なオリゴヌクレオチド配列である、態様74に記載のキット。
【0080】
76.バーコード結合部分が、歪み促進クリック化学基である、態様に記載のキット。
【0081】
77.バーコードがチオール反応性部分を含む、態様52~70のいずれか1つに記載のキット。
【0082】
78.バーコードがアミン反応性部分を含む、態様52~70のいずれか1つに記載のキット。
【0083】
79.バーコードがマレイミド官能化有機金属を含む、態様52~78のいずれか1つに記載のキット。
【0084】
80.有機金属が有機テルルである、態様79に記載のキット。
【0085】
80.態様52~80のいずれか1つに記載のキットを使用する、態様1~51のいずれか1つに記載の方法。
【0086】
82.懸濁液マスサイトメトリーのための空間的にバーコード化された細胞試料であって、空間バーコードが、80amuを超える原子質量を有する濃縮同位体を含む、細胞試料。
【発明を実施するための形態】
【0087】
本出願の態様は、細胞試料に空間バーコードを適用し、次いで細胞試料に対して懸濁液マスサイトメトリーを実施することを含む。例えば、試料バーコード同位体の公知の分布を含む試料バーコードが、異なる位置にある細胞が固有の組み合わせまたは比のバーコード同位体を受け取るように、試料に適用され、その後、細胞が懸濁され(例えば、組織から解離され)、懸濁液マスサイトメトリーによって処理され得る。バーコード同位体は、本明細書のいくつかの実施形態に記載されているが、濃縮同位体の代わりに、またはそれに加えて、非濃縮元素を使用してもよい。マスサイトメトリー法および試薬を以下に論じ、続いて空間バーコード化およびそのキットのさらなる説明を行う。
【0088】
マスサイトメトリー
本明細書で使用される場合、マスサイトメトリーは、単一の細胞分解能で複数の区別可能な質量タグを同時に検出することなどによって、細胞試料の個々の細胞内の質量タグを検出する任意の方法である。マスサイトメトリーには、懸濁液マスサイトメトリーおよびイメージングマスサイトメトリー(IMC)が含まれる。マスサイトメトリーは、レーザ放射、イオンビーム放射、電子ビーム放射および/または誘導結合プラズマ(ICP)の1つまたは複数によって細胞試料の質量タグを霧化およびイオン化することができる。マスサイトメトリーは、飛行時間型(TOF)または磁気セクタ質量分析(MS)などによって、単一細胞から別個の質量タグを同時に検出することができる。マスサイトメトリーの例としては、細胞が流入する懸濁液マスサイトメトリー、ならびに、細胞試料(例えば、組織切片)が、例えばレーザアブレーション(LA-ICP-MS)または一次イオンビーム(例えば、SIMSの場合)によってサンプリングされるICP-MSおよびイメージングマスサイトメトリーが挙げられる。
【0089】
質量タグは、元素分析の前にサンプリング、霧化およびイオン化され得る。例えば、生物学的試料中の質量タグは、レーザビーム、イオンビームまたは電子ビームなどの放射線によってサンプリング、霧化および/またはイオン化されてもよい。代替的または追加的に、質量タグは、誘導結合プラズマ(ICP)などのプラズマによって霧化およびイオン化されてもよい。懸濁液マスサイトメトリーでは、質量タグを含む全細胞をICP-TOF-MSなどのICP-MSに流すことができる。イメージングマスサイトメトリーでは、放射線の一形態により、質量タグを含む、組織試料などの固体生物学的試料の一部(例えば、関心対象の画素、領域)を除去する(および任意選択的にイオン化および霧化する)ことができる。IMCの例には、質量タグ付き試料のLA-ICP-MSおよびSIMS-MSが含まれる。特定の態様では、イオン光学は、質量タグの同位体以外のイオンを枯渇させることができる。例えば、イオン光学は、より軽いイオン(例えば、C、N、O)、有機分子イオンを除去することができる。ICP用途では、イオン光学は、高域四重極フィルタなどを介して、Arおよび/またはXeなどのガスを除去することができる。特定の態様では、IMCは、細胞または亜細胞分解能を有する質量タグ(例えば、質量タグに関連付けられた標的)の画像を提供することができる。
【0090】
蛍光免疫組織化学法と同様に、マスサイトメトリー(イメージングマスサイトメトリーを含む)ワークフローは、抗体および/または他の親和性試薬で染色する前の細胞(例えば、組織)の固定および/または透過処理を含み得る。蛍光法とは対照的に、マスサイトメトリーでは、質量タグ(例えば、細胞に対して内因性ではない重金属を含む)は、抗体などの親和性試薬を介して標的分析物と関連付けられる。イメージングマスサイトメトリーは、蛍光顕微鏡法と同様に、試料を熱などの条件に曝露して、親和性試薬による結合のために標的分析物を曝露する抗原回収ステップを含み得る。結合しなかった親和性試薬は、典型的には、質量分析による質量タグの検出前に洗い流される。留意すべきことに、元素分析などの他の検出方法(例えば、発光分光法またはX線分散分光法)も本出願の範囲内である。
【0091】
マスサイトメトリーのためのさらなる試薬としては、化学的特性に基づいて構造(例えば、DNA、細胞膜、階層)に結合する金属含有バイオセンサ(例えば、低酸素、タンパク質合成、細胞周期および/または細胞死などの条件下で沈着または結合する)および/または金属含有組織化学化合物が挙げられる。そのようなさらなる試薬は、細胞を懸濁して固体細胞試料を形成する前に適用され得るか、または既に空間的にバーコード化されている懸濁細胞に適用され得る。さらに、他の試料または実験条件でプールする前に特定の試料または実験条件を標識するために、質量タグ(例えば、本出願のまたは他の質量タグ)を組み合わせて固有の試料バーコードを提供することができる。
【0092】
本明細書に記載の方法および装置を使用して、RNAおよび/またはタンパク質含有量の分析のために、本明細書で論じた生物学的試料中の細胞が調製され得る。特定の態様では、細胞は、ハイブリダイゼーションステップの前に固定および透過処理される。細胞は、固定および/または透過処理されたものとして提供されてもよい。細胞は、ホルムアルデヒド、グルタルアルデヒドなどの架橋固定剤によって固定することができる。代替的または追加的に、細胞は、エタノール、メタノールまたはアセトンなどの沈殿固定剤を使用して固定されてもよい。細胞は、ポリエチレングリコール(例えば、Triton X-100)、ポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノラウレート(Tween-20)、サポニン(両親媒性グリコシドの群)などの洗剤、またはメタノールもしくはアセトンなどの化学物質によって透過処理することができる。特定の場合には、固定および透過処理は、同じ試薬または試薬のセットを用いて実施され得る。固定および透過処理技術は、Jamurらによって「Permeabilization of Cell Membranes」(Methods Mol.Biol.,2010)で論じられている。
【0093】
誘導結合プラズマ(ICP)は、電磁誘導によって(すなわち、時変磁場によって)生成される電流によってエネルギーが供給されるプラズマ源の一タイプである。ICPの産業規模の用途には、マイクロマシニング(例えば、エッチングまたはクリーニング)または廃棄物処理が含まれる。そのような用途は、ICPトーチ内にプラズマを生成しない可能性があり、ICP負荷コイルを使用しない可能性があり、大気条件下で動作しない可能性があり、および/または試料の原子分析に適した規模ではない可能性がある(例えば、生成されるプラズマは、ICP分析器のプラズマよりも少なくとも1桁大きい可能性がある)。したがって、産業用ICPの物理学は、ICPトーチを使用するICP分析とは異なり、本開示の態様の範囲外であり得る。本明細書では、ICP分析器などのICPトーチを使用するシステムおよび方法が論じられる。
【0094】
ICP質量分析計(ICP-MS)の概観は、Montaser,Akbar,ed.Inductively coupled plasma mass spectrometry.John Wiley&Sons,1998に提供されており、これは、渦流および点火の説明を含む。試料導入およびICPトーチの考慮事項は、光学発光分光法としても知られる原子発光分光法(AES)と同様であり、原子発光分光法も本出願の範囲内である。本明細書で使用される場合、原子分光法は、原子分析と同一であり、原子質量分析(ICP-MSなど)またはICP-AESを含み得る。適切な試料には、生物学的試料、地質学的試料および製造物品が含まれる。特定の態様では、生物学的試料は、生体分子および/または汚染物質(例えば、金属毒素)、または細胞(例えば、懸濁液中または組織切片中)もしくはビーズ(例えば、生体分子をアッセイするために使用される)などの粒子を含む流体であり得る。
【0095】
本出願の態様は、質量分析による細胞またはビーズ中の質量タグの検出である、マスサイトメトリーのためのICPトーチシステムおよび方法を含む。マスサイトメトリーは、米国特許出願公開第20050218319号明細書、米国特許出願公開第20160195466号明細書および米国特許出願公開第20190317082号明細書で論じられており、これらは参照によりその全体が組み込まれる。マスサイトメトリーは、懸濁粒子(例えば、細胞またはビーズ)、または組織切片から生成されたレーザアブレーションプルームなどの固体試料から生成された粒子に関するものであり得る。懸濁液マスサイトメトリーでは、質量タグを含む細胞またはビーズの懸濁液が原子質量分析によって分析される。レーザアブレーション(LA)ICP-MSによるイメージングマスサイトメトリーは、米国特許出願公開第20160056031号明細書および米国特許出願公開第20140287953号明細書に記載されており、これらは参照により本明細書に組み込まれる。LA-ICP-MSによるイメージングマスサイトメトリーは、Giesen,Charlotteらによって、「Highly multiplexed imaging of tumor tissues with subcellular resolution by mass cytometry.」(Nature methods 11.4(2014):417-422)にも記載されている。
【0096】
質量タグは、親和性試薬(例えば、抗体、オリゴヌクレオチド、アビジン、または標的生体分子に特異的に結合する他の生体分子)に結合した金属タグであり得る。例えば、金属ナノ粒子または金属キレート化ポリマーを親和性試薬に(例えば、共有結合的に)付着させることができ、次いで、これを試料に適用する。適切な質量タグは、米国特許出願公開第20040072250号明細書および米国特許出願公開第20080003616号明細書に記載されており、これらは参照によりその全体が組み込まれる。特定の態様では、いくつかの質量タグは、金属含有薬物または組織化学染色などの親和性試薬に結合されない。
【0097】
懸濁液マスサイトメトリー(SMC)では、細胞の懸濁液を質量タグ付き親和性試薬(例えば、抗体)で染色し、質量分析によって分析する。特定の態様では、染色した細胞をICP-MSシステムに流し、そこで細胞を霧化およびイオン化し、続いて図1に示す飛行時間型質量分析計または磁気セクタ質量分析などによって質量タグを同時に分析する。プラズマ中のアルゴン二量体の存在により、80を超える原子質量を有する濃縮同位体を有する質量タグを使用することができ、より軽いイオンをイオン光学によって濾過して取り除くことができる。例示的な懸濁液マスサイトメトリーシステムを含むマスサイトメトリーシステムは、米国特許出願公開第20120056086号明細書に記載されており、これは参照により本明細書に組み込まれる。CyTOFシステムは、Fluidigmから市販されているマスサイトメーターであり、図1に示すICP-TOF-MSを使用する。
【0098】
IMCでは、組織試料は、例えば1~10μmの範囲内、例えば2~6μmの厚さを有する切片であってもよい。場合によっては、樹脂包埋組織ブロックから切断した試料など、500nm、200nm、100nmまたは50nm未満の厚さの超薄切片を使用してもよい。そのような切片を調製するための技術は、脱水ステップ、固定、包埋、透過処理、切片化などを含む、例えばマイクロトームを使用するIHCの分野から周知である。したがって、組織を化学的に固定し、次いで切片を所望の平面で調製することができる。凍結切片化またはレーザ捕捉顕微解剖も、組織試料を調製するために使用することができる。試料は、例えば、試薬が細胞内標的を標識することを可能にするために透過処理され得る。抗原回収後(例えば、加熱による)であっても、親和性試薬による分析物へのアクセスが立体的に障害されることがある。したがって、より小さな親和性試薬および特定の質量タグが、親和性試薬がその標的分析物にアクセスすることを最も可能にする場合がある。IMCは、図2に示すように、レーザアブレーションICP-MSによって実施することができる。
【0099】
IMCとは異なり、SMCは分析された細胞に関する空間情報を保存せず、IMCに勝るいくつかの利点を有する。例えば、SMCではIMCよりも多数の質量タグが検証されており、より複雑な検出を可能にする。さらに、SMCにおける全細胞の分析は、低発現標的に対するより良好な感度を可能にする。最後に、SMCは、IMCのラスタースキャンがスループットを毎秒数細胞に限定する可能性があるのに対し、細胞が懸濁液中に迅速に導入されるときに数百の細胞の分析を可能にする。
【0100】
質量タグ
質量タグは、親和性試薬(例えば、抗体、オリゴヌクレオチド、アビジン、または標的生体分子に特異的に結合する他の生体分子)に結合した金属タグであり得る。例えば、金属ナノ粒子または金属キレート化ポリマーを親和性試薬に(例えば、共有結合的に)付着させることができ、次いで、これを試料(例えば、細胞試料)に適用する。適切な質量タグは、米国特許出願公開第20040072250号明細書および米国特許出願公開第20080003616号明細書に記載されており、これらは参照によりその全体が組み込まれる。特定の態様では、いくつかの質量タグは、金属含有薬物または組織化学染色などの親和性試薬に結合されない。質量タグは、細胞試料からの内因性元素および/またはICPからのアルゴン二量体とは分離して検出され得る80amuを超える濃縮同位体などの濃縮同位体を含み得る。
【0101】
本明細書においてマスサイトメトリーの文脈で使用される場合、シグナル増幅は、30個を超える、50個を超える、100個を超える、200個を超える、または500個を超える(例えば、濃縮同位体の)標識原子と、標的分析物(すなわち、親和性試薬によって結合された標的分析物の単一の例)との会合である。特定の態様では、標識原子は、ランタニドまたは遷移金属などの重金属であり得る。特定の態様では、シグナル増幅は、2個、5個、10個または20個を超える標的分析物に対して実施され得る。特定の態様では、シグナル増幅は、親和性試薬への質量タグの分岐コンジュゲーション、高感度ポリマー、大きな質量タグ粒子、質量タグナノ粒子および/またはハイブリダイゼーションスキームの使用を含み得る。特定の態様では、シグナル増幅は、質量タグポリマーを使用する。
【0102】
本明細書に記載されるように、シグナル増幅は、多数の標識原子を含む質量タグの使用によるもの、および/またはより多数の質量タグと単一の標的分析物との会合によるもの(ハイブリダイゼーションベースのシグナル増幅および/または分岐したヘテロ官能性リンカーを介した親和性試薬への質量タグのコンジュゲーションなどによる)であり得る。特定の態様では、単一の質量タグは、30個、50個、100個、200個、500個または1000個を超える標識原子を有し得る。特定の態様では、質量タグの流体力学的直径は、20nm未満、15nm未満、10nm未満、5nm未満、3nm未満または2nm未満など、小さくてもよい。流体力学的直径は、1000nm未満、500nm未満、100nm未満、50nm未満、20nm未満または10nm未満であってもよい。EMなどの技術を使用してサイズを識別することができ、光散乱を使用して、本明細書に記載のより大きな質量タグなどの質量タグの流体力学的直径を識別することができる。さらに、サイズ排除およびイオン交換(例えば、アニオン交換)クロマトグラフィーを含むクロマトグラフィー法を使用して、本明細書に記載のより小さな質量タグなどの質量タグを特徴付けることができる。
【0103】
様々な適切なコンジュゲーション手段が当技術分野で公知である。例えば、質量タグは、共有結合(例えば、アミン化学、チオール化学、リン酸化学、酵素反応、酸化還元反応(金属ハロゲン化物などを用いる)および親和性中間体(例えば、ストレプトアビジンまたはビオチン)、または歪み促進クリック化学もしくは金属触媒クリック化学などのクリック化学の形態)などを介して、生物学的活性材料にコンジュゲートされ得る。特定の態様では、本明細書に記載のコンジュゲーション方法は、質量タグ付きオリゴヌクレオチドを親和性試薬-オリゴヌクレオチドコンジュゲートと間接的に会合させるためにハイブリダイゼーションスキームが使用される場合など、オリゴヌクレオチドを親和性試薬にコンジュゲートさせるために使用され得る。
【0104】
質量タグは、共有結合(例えば、アミン化学、チオール化学、リン酸化学、酵素反応、または歪み促進クリック化学もしくは金属触媒クリック化学などのクリック化学の形態)などを介して、生物学的活性材料にコンジュゲートされ得る。生物学的活性材料は、親和性試薬(抗体またはその断片、アプタマー、レクチンなど)、または内因性標的(例えば、DNAまたはRNA)もしくは中間体(例えば、抗体-オリゴヌクレオチド中間体および/またはオリゴヌクレオチドのハイブリダイゼーションスキーム)にハイブリダイズするオリゴヌクレオチドプローブであり得る。本明細書に記載されるように、適切な付着化学(attachment chemistry)としては、カルボキシル-アミン反応性化学(例えば、カルボジイミドとの反応など)、アミン反応性化学(例えば、NHSエステル、イミドエステル、ペンタフルオロフェニルエステル、ヒドロキシメチルホスフィンなどとの反応など)、スルフヒドリル反応性化学(例えば、マレイミド、ハロアセチル(ブロモ-またはヨード-)、ピリジルジスルフィド、チオスルホネート、ビニルスルホンなどとの反応など)、アルデヒド反応性化学(例えば、ヒドラジド、アルコキシアミンなどとの反応など)、ヒドロキシル反応性化学(例えば、イソチオシアネートとの反応など)が挙げられ得る。代替的な付着の方法としては、歪み促進クリック化学(DBCO-アジドまたはTCO-テトラジンなどによる)などのクリック化学が挙げられる。
【0105】
ポリマーは、生物学的活性材料を結合するように官能化され得る。特定の態様では、ポリマーは、チオール反応性化学、アミン反応性化学またはクリック化学によって官能化され得る。例えば、ポリマーは、チオール反応性のために(例えば、TCEP還元などによって還元される抗体のFc部分のチオール基に付着するためのマレイミド基を介して)官能化され得る。コンジュゲーションのタイプおよびコンジュゲーション条件(例えば、還元剤の濃度)は、親和性試薬の完全性を維持するために親和性試薬のタイプに基づいて異なり得る。
【0106】
例えば、ポリマー質量タグ(例えば、金属キレート化ペンダント基などの複数の金属結合基を含む)は、マレイミドなどのチオール反応性基で官能化され得る。特定の態様では、親和性試薬は、ポリマーへのコンジュゲーションのためのチオールを提供するために還元され得る(例えば、TCEP還元によって)、システインを含み得る。しかしながら、親和性試薬上のシステインがアクセス可能ではない可能性があるか、システインの破壊が親和性試薬の親和性を低減する可能性があるか、または還元ステップが親和性試薬の親和性を低減する可能性がある。そのような場合、親和性試薬上の他の官能基は、チオールまたはシステインを既に含む親和性試薬上であっても、コンジュゲーションの前にチオール化され得る。例えば、組換え抗体が、より小さくなるように(例えば、立体障害を低減し、それによって結合を改善するために)設計される場合があり、したがって、Fc領域上にアクセス可能なシステインを有さない場合がある。そのような場合、アミンは、スクシンイミジルアセチルチオアセテートとの反応、それに続く50mMヒドロキシルアミンまたはヒドラジンによるアセチル基の除去などによって、間接的にチオール化され得る。別の例では、アミンは、スクシンイミジル3-(2-ピリジルジチオ)プロピオネートとの反応、それに続くDTTまたはTCEPによる3-(2-ピリジルジチオ)プロピオニルコンジュゲートの還元によって間接的にチオール化することができる。還元により、2-ピリジンチオン発色団が放出され、これを使用してチオール化度を決定することができる。あるいは、チオールは、シスタミンとのEDAC媒介反応、それに続くDTTまたはTCEPによるジスルフィドの還元によってカルボン酸基に組み込むことができる。最後に、チオールを含まないタンパク質中のトリプトファン残基をメルカプトトリプトファン残基に酸化することができ、次いで、これをヨードアセトアミドまたはマレイミドを含む質量タグにコンジュゲートすることができる。特定の態様では、チオール化について記載される還元ステップは、スキップされてもよく、または、マレイミド官能化質量タグポリマーが親和性試薬の還元システインではなくチオール化部分にコンジュゲートされるように、還元システインのチオールへのコンジュゲーションに必要とされるよりも緩やかであってもよい。特定の態様では、非ペプチドベースの親和性試薬(オリゴヌクレオチドなど)は、より弾力的であり得、コンジュゲーションは、25mM以上または50mM以上のTCEPまたはDTT濃度での還元を含み得る。特定の態様では、非ペプチドベースの親和性試薬のコンジュゲーションは、熱または凍結による変性など、より厳しい温度を含み得る。
【0107】
特定の態様では、親和性試薬(オリゴヌクレオチドまたはペプチドなど)は、ポリマー質量タグのサイズの50%以内など、小さくてもよい。これは、より良好な組織浸透および/または立体障害の低減を提供し得るが、濾過ステップにおける質量タグ付き親和性試薬の精製を複雑にし得る。したがって、質量タグは、親和性に基づく精製を可能にすることができるエピトープを提示するように修飾され得る。特定の態様では、
歪み促進反応などの様々な異なる金属触媒を含まないクリック化学反応を、本開示の特定の態様に従って使用することができる。
【0108】
本出願の質量タグは、例えば金属キレート化ペンダント基にロードされた、またはポリマーの骨格に組み込まれた複数の標識原子を含むポリマーを含む。特定の態様では、質量タグ付きポリマーは、元素または同位体組成とは別々に提供されてもよい(例えば、質量タグポリマーのキレート剤にロードすることができるか、または質量タグポリマーのキレート剤に既にロードされている)。質量タグ付きポリマーは、抗体またはその断片などの親和性試薬に付着して提供され得る。特定の態様では、質量タグポリマーは、10個を超える、20個を超える、30個を超える、50個を超える、100個を超える、または200個を超える(例えば、濃縮同位体などの単一の同位体の)標識原子を有し得るか、または(例えば、キレート化によって)それらと結合することができる。高感度ポリマーは、(例えば、平均して)30個を超える、50個を超える、100個を超える、または200個を超える標識原子を有し得るか、またはそれらと結合することができる。
【0109】
高感度ポリマーは、線状または分岐であり得る。分岐ポリマーは、樹枝状ポリマー(例えば、少なくとも第2、第3または第4世代の分岐を含む)または星状ポリマー(例えば、中心コアから広がる少なくとも3つの線状ポリマーを含む)であり得る。特定の態様では、高感度ポリマーは、金属キレート化ペンダント基に加えて、キレート剤を有さない溶解度増強ペンダント基(例えば、PEGなどの極性基を有する)を含み得る。
【0110】
本明細書で使用される場合、キレート剤は、金属原子を一緒に配位する(例えば、安定して配位する)配位子の群を指す。キレート剤は、ポリマーのペンダント基上に存在してもよく、および/またはポリマー骨格に組み込まれてもよい。特定の態様では、キレート剤は、ポリマーのペンダント基に含まれる。
【0111】
特定の態様では、ポリマーは、ヒドロキサメート(本明細書ではヒドロキサム酸と交換可能に使用される)、アザマクロサイクル、フェノキシアミン、サロフェン、シクラムおよび/またはそれらの誘導体などの配位子を含む1つまたは複数のペンダント基を含み得る。ポリマーは、当技術分野で公知のキレート剤またはその誘導体を含み得、これには、ヒドロキサメート、アザマクロサイクル、フェノキシアミン、サロフェンまたはシクラムが含まれる。特定の態様では、本出願のキレート剤は、ジルコニウムまたはハフニウム原子上の6つ以上、6つを超える、または8つの部位を配位することができる。例えば、キレート剤は、ジルコニウムまたはハフニウムの少なくとも1つと八配位錯体を形成し得る。例えば、ジルコニウムおよびハフニウムの少なくとも1つは、ポリマーのペンダント基と八配位錯体を形成し得る。
【0112】
特定の態様では、ポリマーのキレート剤は、DFOおよび/またはその誘導体などのヒドロキサメート基を含む。代替的または追加的に、ポリマーは、1,4,7,10-テトラアザシクロドデカン-1,4,7,10-四酢酸(DOTA)キレート剤またはその誘導体などのアザマクロサイクルを含み得る。特定の実施形態では、キレート剤は、DOTAM、DOTPおよびDOTA(例えば、ジルコニウムまたはハフニウム同位体がロードされるか、またはそれらとは別々に提供される)の1つを含み得る。特定の態様では、キレート剤は、DOTAと比較してジルコニウムまたはハフニウムの結合が改善された(およびランタニドへの結合が潜在的に低減された)DOTA誘導体である。例えば、DOTA誘導体は、ジルコニウムおよび/またはハフニウム原子上の8つの視域を配位することができ、ジルコニウムおよび/またはハフニウムの結合(例えば、安定した結合)を補助する配位子間の間隔を任意選択的に含むことができる。例えば、DOTA誘導体は、ランタニド同位体と比較してジルコニウムおよび/またはハフニウムへの結合が増加し得る。
【0113】
ナノメートル規模の金属クラスタなどの金属ナノ粒子質量タグは、高密度の標識原子を提供するが、いくつかの欠点を有する。親和性試薬に付着させるための不活性表面を有するナノ粒子の官能化は非自明であり、通常、親和性試薬のための複数の付着部位をもたらす。小さなナノ粒子(例えば、10nm未満または5nm未満)の合成は困難であり得、立体障害、貧弱な溶解性、貧弱なコロイド安定性(凝集)および非特異的結合をもたらす。金属クラスタナノ粒子の合成は、困難であり得る(例えば、高温を必要とする場合があり、合成条件に敏感である場合がある)。ナノ粒子は、サイズが均一でない場合がある。
【0114】
特定の態様では、金属ナノ粒子は、有機安定剤などの安定剤の存在下、中程度の温度(例えば、摂氏100度未満、摂氏50度未満または摂氏37度未満)で合成され得る。例えば、金属ナノ粒子は、量子ドットであってもよい。特定の態様では、有機安定剤は、システインなどのチオール基を含み得る。
【0115】
特定の態様では、安定剤は、キャッピング剤として作用し得る。安定剤は、ポリマー上にあってもよく、ナノ粒子は、ポリマー上で合成されてもよい。ポリマーのサイズは、ナノ粒子のサイズを限定(例えば、制御)し得る。粒子は、安定剤の複数の例を提示する線状または分岐部分を含み得る。粒子は、ポリマー(ポリマー上で合成されたナノ粒子を含む)を単一の親和性試薬に付着させるための付着基をさらに含み得る。質量タグは、1.5、1.2または1.1未満の多分散性指数などの低い多分散性を有し得る。したがって、ナノ粒子は、サイズが均一であり得る(例えば、1.5、1.2または1.1未満の多分散性指数を有し得る)。ナノ粒子の大部分は、1~10nm、1~5nm、1~3nm、1~2nm、2~5nm、2~3nmの直径などの小さい直径を有し得る。ナノ粒子は、カドミウムまたはテルルなどの複数の同位体を有する元素のナノ粒子であってもよいが、非天然組成の同位体(カドミウムまたはテルルの濃縮同位体など)を有してもよい。ナノ粒子は、単分散であり得る。特定の態様では、ポリマーは、複数のナノ粒子を含み得る。特定の態様では、ポリマー上の播種ナノ粒子成長速度は、成長速度よりも遅くてもよい。ナノ粒子の急速な成長は、ポリマーが他のポリマー上で成長するナノ粒子と会合しないように、ポリマー上の安定化基を消費し得る。ポリマーは、ポリマーが成長するにつれて複数のポリマーが同じナノ粒子と会合する速度を低下させるために分散され得る。特定の態様では、予め形成された(予め播種された)ナノ粒子が、ポリマー上でのナノ粒子の成長前にポリマーと混合され得る。特定の態様では、ポリマーは、10~10000、10~1000、10~100、10~50、20~500または20~100の例の安定剤を有し得る。特定の態様では、ポリマーは、10未満、または単一の例のみの安定剤を有してもよく、溶液中に存在する安定剤は、ポリマー上でのナノ粒子成長を可能にし得る。ポリマー上のナノ粒子の合成中に、ポリマーに対する同じまたは異なる安定剤を溶液中に提供することができる。
【0116】
前述のように、小さなカドミウム(CdSe、CdSおよびCdTe)ナノ粒子は、チオール-アルコールまたはチオール-酸安定剤の存在下で形成され得る。システイン安定化単分散CdsSナノ粒子の合成には、このようなナノ粒子を播種してもよい。大きなポリ(システイン)ポリマー上での金ナノ粒子の合成および会合は、均一なサイズ、単分散性、または金ナノ粒子の安定剤もしくはキャッピング剤として作用するシステインを示さずに報告されている。留意すべきことに、これらのナノ粒子の合成は、中程度の温度で実施された。
【0117】
態様には、濃縮同位体を含み、ポリシステインポリマーなどのチオール提示ポリマー上で合成されたCdまたはCdTeナノ粒子、および親和性試薬の質量タグとしてのそのようなナノ粒子の使用が含まれる。特定の態様では、親和性試薬自体がチオール基(例えば、還元抗体によって提示される)などの安定化剤を提供してもよく、ナノ粒子は、親和性試薬上で直接合成されてもよい。チオール基が親和性試薬の結合部位に近接していないことを前提として、直接合成は、ナノ粒子が結合を立体的に妨げないようにし得る。
【0118】
親和性試薬および親和性試薬としての小部分
親和性試薬は、親和性(例えば、三次構造)またはハイブリダイゼーションなどによって、その標的分析物に非共有結合的に結合することができる。本開示の特定の態様はまた、本開示の質量タグ付き親和性試薬を使用して試料(例えば、細胞試料)を標識する方法を提供し、任意選択的に、複数のそのような質量タグ付き親和性試薬を使用して試料を標識する方法であり、例えば、質量タグ付き親和性試薬は、異なるタイプの親和性試薬、例えば、抗体親和性試薬(複数の抗体親和性試薬を含む)、核酸親和性試薬(複数の核酸親和性試薬を含む)、レクチン(複数のレクチンを含む)、糖(複数の糖を含む)およびDNAインターカレータ(複数のDNAインターカレータを含む)を含む。同様に、本開示の特定の態様は、試料を標識するための本開示の質量タグ付き親和性試薬の使用、例えば、試料を標識するための複数のそのような質量タグ付き親和性試薬の使用を含み、例えば、質量タグ付き親和性試薬は、異なるタイプの親和性試薬、例えば、抗体親和性試薬(複数の抗体親和性試薬を含む)、核酸親和性試薬(複数の核酸親和性試薬を含む)、レクチン(複数のレクチンを含む)、糖(複数の糖を含む)およびDNAインターカレータ(複数のDNAインターカレータを含む)を含む。したがって、本開示の特定の態様はまた、本開示に従って標識された試料、例えば本開示の質量タグ付き親和性試薬で標識された試料、任意選択的に複数のそのような質量タグ付き親和性試薬で標識された試料を提供し、例えば質量タグ付き親和性試薬は、異なるタイプの親和性試薬、例えば抗体親和性試薬(複数の抗体親和性試薬を含む)、核酸親和性試薬(複数の核酸親和性試薬を含む)、レクチン(複数のレクチンを含む)、糖(複数の糖を含む)およびDNAインターカレータ(複数のDNAインターカレータを含む)を含む。
【0119】
特定の態様では、親和性試薬は、抗体(例えば、抗体断片、ナノボディ、または合成抗体)上の誘導体、核酸アプタマー、および非免疫グロブリンタンパク質(例えば、アビジン)、ペプチド(例えば、核酸に結合するジンクフィンガーまたは小ペプチドもしくは小分子に結合する受容体結合ドメインなどのタンパク質の結合ドメインに一致するか、またはそれらに由来する)、またはそれらの対応する分析物であり得る。そのような場合、親和性試薬は、従来の抗体よりも小さい小部分であり得る。例えば、小部分親和性試薬は、分子量が50kDa未満、30kDa未満、20kDa未満、10kDa未満または5kDa未満であり得る。小部分親和性試薬は、本明細書で論じる欠点なしに、より大きな質量タグを可能にし得る。小部分親和性試薬は、細胞または組織によりよく透過することができ、例えば、組織のより深い染色を可能にする。
【0120】
異なる親和性試薬は、コンジュゲーション方法および質量タグによって異なって衝突され得る。したがって、本発明の態様は、同じ試料の分析における異なる親和性試薬に対する異なるシグナル増幅方法の使用を含む。異なる親和性試薬は、異なるタイプの親和性試薬(例えば、オリゴヌクレオチド対抗体)、異なる抗体アイソタイプ(IgM、ならびにIgG1、IgG2aおよびIgG2bのような異なるアイソタイプ)、または同じ親和性試薬タイプであるが異なる標的分析物を有するものであり得る。異なるコンジュゲーション方法は、チオール反応性化学を使用して親和性試薬を質量タグにコンジュゲートする場合の異なるストリンジェンシーの還元を含む。異なる質量タグは、異なる高感度ポリマー(例えば、異なるキレート化基、ポリマーサイズ、ポリマー形状および/または異なる組成の溶解度増強基を有する)を含む。例えば、より少ない付着部位(例えば、チオール基)を提示する親和性試薬には、より高いストリンジェンシーコンジュゲーション(例えば、還元)を使用することができる。本出願のキットは、(例えば、異なる標識原子を有することに加えて)異なるポリマー構造を有する質量タグにコンジュゲートされた複数の異なる親和性試薬を含む。
【0121】
特定の態様では、異なる親和性試薬(異なる抗体免疫グロブリンクラスを含む)を異なる質量タグにコンジュゲートしてもよく、または異なる条件下で化学的に同一または類似の質量タグにコンジュゲートしてもよい。例えば、チオール反応性化学が使用される場合、特定の抗体は、(例えば、TCEPによる)還元に対して異なって応答し得る。したがって、複数の親和性試薬は、異なるコンジュゲーションプロトコルによって同じ質量タグポリマー構造(異なる同位体が潜在的にロードされている)にコンジュゲートされ得る。
【0122】
質量タグ付きの小部分親和性試薬は、スピン濾過などのFPLC以外の方法によって精製されてもよい。特定の態様では、親和性試薬に結合した質量タグ(または質量タグの総量)は、親和性試薬自体のサイズの少なくとも20%、30%、50%または80%であり得、これは、スピン濾過を可能にし得る。特定の態様では、質量タグ付き抗体は、スピン濾過によって精製され得る。
【0123】
細胞試料
細胞試料は、無傷の全細胞を有する任意の生物学的試料であり得る。例えば、細胞試料は、20umを超える、30umを超える、または50umを超える厚さを有する組織切片などの組織切片であり得る。組織切片は、ホルマリン固定パラフィン包埋(FFPE)組織切片またはマトリゲルなどのマトリックスに包埋された組織切片など、固定されてもよい。あるいは、組織切片は、瞬間凍結組織切片など、新鮮凍結されてもよい。組織切片は、空間バーコードを適用する前に調製され得る。
【0124】
細胞試料は、オルガノイドもしくは組織生検などの生きた固体組織試料、またはマウスモデルなどの対象から採取された器官もしくはその一部であり得る。
【0125】
細胞試料は、FFPEによって、またはMatrigel(Corning Life Sciencesによって提供される基底膜マトリックス)などのマトリックスに包埋されて、固定されてもよい。
【0126】
細胞試料は、細胞試料に対する金属含有バイオセンサまたは金属含有組織化学化合物などのマスサイトメトリー試薬(例えば、空間的にバーコード化された細胞を懸濁するステップの前に適用される)を含み得る。金属は、80amuを超える原子質量を有してもよく、同位体的に濃縮されてもよい。
【0127】
空間バーコード化
本出願の態様は、上記の懸濁液マスサイトメトリーを実施する前に、細胞試料に空間バーコードを適用することを含む。
【0128】
特定の態様では、懸濁液マスサイトメトリーの空間バーコード化の方法は、細胞試料の異なる位置にある細胞が異なる組み合わせまたは比の同位体(すなわち、バーコード同位体)で標識されるように、細胞試料に空間バーコードを適用するステップであって、空間バーコードが80amuを超える原子質量を有する濃縮同位体を含む、ステップ;細胞試料の空間的にバーコード化された細胞を懸濁するステップ;懸濁細胞を質量タグ付き親和性試薬で染色するステップであって、質量タグ付き親和性試薬が、80amuを超える、および空間バーコードの濃縮同位体の原子質量とは別個の原子質量を有する濃縮同位体を含む、ステップ;ならびに空間バーコードの濃縮同位体および質量タグ付き抗体の濃縮同位体が細胞ごとに検出されるように、細胞を懸濁液マスサイトメトリーによって分析するステップの1つまたは複数を含み得る。
【0129】
態様は、厚い組織切片などの全細胞を含む固体試料に空間バーコードを適用することを含む。試料中の位置に基づいて細胞をバーコード化した後、細胞を解離し、Maxparコンジュゲート抗体で染色し、懸濁液マスサイトメトリーによって分析する。各細胞上の空間バーコードを使用して、各細胞が試料内のどこにあったかを識別することができる。
【0130】
組織をその後にIMCの代わりに懸濁液マスサイトメトリー(SMC)で分析するために単一細胞に解離することができるように、組織試料を空間的にバーコード化するための方法およびキットが本明細書に記載される。試料はSMCで取得されるため、試料スループットが増加し、シグナル感度が増加し、SMCに利用可能な質量タグ試薬が増加する。空間的にバーコード化された試料は、解離前に光学画像に対してレンダリングすることができ、元の組織内の細胞の位置を識別することが可能になる。
【0131】
この解決策は、IMCへのアクセスがなく、預けた凍結組織試料に対して高パラメータ分析を実施したい顧客に補完的なワークフローを提供することができる。現在、SMCで取得された解離組織試料には、課題があり得る。ユーザは、典型的には、染色および取得のために最初に機械的および酵素的に単一細胞に解離される新鮮な組織を染色することに依存する。それにもかかわらず、この従来のワークフローは、元の組織構造に関連して分析された細胞の位置に関するいかなる空間情報も維持しない。空間バーコード化により、SMCの顧客は、空間情報を維持しながら組織切片試料を分析することができる。これがSMCで取得されるため、IMCと比較してスループット、感度および利用可能な質量チャネルが増加するという利点がある。
【0132】
本明細書では、単一細胞の解離および懸濁液マスサイトメトリーでの分析のワークフロー(例えば、LA-ICP-MSワークフローとは対照的である)を可能にするために、組織試料を2次元または3次元で空間的にバーコード化するための手段について説明する。空間バーコードは、各細胞に関する空間情報を保持する。この手法は、(検証される質量タグが少ない)従来のLA-ICP-MS IMCワークフローと比較して、細胞スループットを100倍増加させ、感度を10倍増加させ(細胞全体が分析されるため)、細胞のセグメント化を不要にし、複雑さ(利用可能な質量タグの数)を50%増加させる可能性を有する。
【0133】
FFPE試料は単一細胞に解離することがより困難であるため、理想的な試料タイプは、FFPE試料とは反対の新鮮な組織である。とはいえ、Miltenyi GentleMACSおよび他の試料調製溶液が、FFPE組織解離に適し得る。
【0134】
試料タイプ
開発すべき一態様は、試料を空間的にバーコード化するための方法およびキットである。これらの例では、試料が厚い(例えば、厚さ50~200um)、新鮮なまたは固定された組織切片であると仮定し、空間バーコードを適用するための3つの可能な方法を探索する。これは、以下のセクション5.v)の特徴1および2に関する。一般に、バーコードは、空間的に組織化された様式で試料に適用され、試料内に拡散することが可能になる。試料の表面を横切るバーコードの拡散速度は、バーコードが細胞に結合するか、またはそうでなければ細胞によって保持される速度よりも遅くなければならない。試料をマトリックス(Matrigelなど)に固定することにより、この拡散速度をさらに制御することができる。
【0135】
空間バーコード試薬
いくつかの試薬(例えば、細胞に結合する、同位体的に濃縮されたモノアイソトピック金属試薬)は、適切な空間バーコードであり得る。
【0136】
特定の態様では、空間バーコード試薬は、細胞表面に結合または包埋することができる。例えば、脂質官能化ポリマー質量タグを細胞表面に包埋することができる。あるいは、脂質官能化オリゴヌクレオチドを第1のステップで細胞表面に包埋することができ、第2のステップで脂質オリゴヌクレオチドにハイブリダイズさせることができる。脂質包埋およびオリゴヌクレオチドハイブリダイゼーションのこのような動態は、比較的速い(数分程度)。例えば、脂質-オリゴヌクレオチドを細胞と会合させるためにGartner研究室によって出版されたMULTI-seq論文を参照されたい(McGinnis,C.S.,Patterson,D.M.,Winkler,J.et al.MULTI-seq:sample multiplexing for single-cell RNA sequencing using lipid-tagged indices.Nat Methods 16,619-626(2019))。抗体染色はより遅いが、細胞を抗体-オリゴヌクレオチドコンジュゲートで染色する第1のステップに続いて、質量タグ付きオリゴヌクレオチドの空間バーコードを抗体-オリゴヌクレオチドにハイブリダイズさせる第2のより速いステップを行うことができる。
【0137】
細胞をパターン化して、ビオチン/アビジンまたはオリゴヌクレオチドなどの分子をバーコードの付着部位として提示することができる。例えば、抗体混合物(例えば、抗CD45および共通の表面マーカーに対する他の抗体)を、遅い(例えば、1時間を超える)インキュベーションステップで試料に適用することができる。抗体に予めコンジュゲートしたストレプトアビジンは、ビオチン化金属バーコードが速い(例えば、2~10分)インキュベーションステップで付着するための付着部位を提供し得る。
【0138】
アビジン(例えば、ニュートラアビジンまたはストレプトアビジン)へのビオチン結合を使用して、空間バーコードを迅速に適用することができる。例えば、ビオチン(またはアビジン)は、抗体または脂質コンジュゲートによって細胞表面に結合させることができ、その後、アビジン(またはビオチン)官能化バーコード化試薬を試料に適用することができる。
【0139】
質量タグ付き抗体は細胞を染色するのがより遅いであろうが、質量タグ付き抗体を使用して空間バーコードを直接適用することができるように、抗体のサイズは試料を通る遅い拡散をもたらし得る。とはいえ、抗体染色の浸透深さは、小分子空間バーコードが好ましいように、低い可能性がある(例えば、マイクロメートル程度)。
【0140】
あるいは、空間バーコード試薬は、細胞上または細胞内で反応して、細胞に共有結合し得る。例えば、シスプラチンまたはチオール反応性のためにマレイミドで官能化された質量タグ(例えば、TeMal、SeMal、またはマレイミド官能化DOTA金属キレート)を空間バーコードとして使用することができる。例えば、全オルガノイドのバーコード化に対する2020年のNature論文を含む、NitzグループによるTeMal出版物を参照されたい(Qin,X.,Sufi,J.,Vlckova,P.et al.Cell-type-specific signaling networks in heterocellular organoids.Nat Methods 17,335-342(2020))。
【0141】
上記のように、TeMalに加えて、またはTeMalの代わりに、シスプラチンなどの他の有機金属または小分子を使用してもよい。あるいは、官能化金属キレート(マレイミド官能化DOTA-ランタニドキレートなど)を使用することができる。細胞が固定されていることを前提として、Fluidigmによって提供される現在のパラジウムバーコード試薬(例えば、DMSO溶液中)を使用することができる。イリジウムなどの別の試薬も、固定および/または透過処理された細胞で作用し得る。上記のTeMalの例と同様に、バーコード化試薬の少なくとも2つのモノアイソトピック形態は、試料の各位置が固有の組み合わせ/比のモノアイソトピックバーコード試薬を有するように、一緒に空間バーコードを提供することができる。
【0142】
膜への脂質包埋、細胞表面に付着した標的オリゴヌクレオチドへのオリゴヌクレオチドハイブリダイゼーション(例えば、抗体-オリゴヌクレオチドまたは脂質-オリゴヌクレオチドコンジュゲートで染色することによる)、および特に細胞上または細胞内のタンパク質との反応(例えば、TeMal、SeMal、シスプラチンまたはマレイミド-DOTAによる)は、文献に基づいて、数分で試料をバーコード化すると予想され;バーコード分子(例えば、オリゴヌクレオチド、脂質またはTeMalベース)が試料全体にわたって拡散すると予想されるよりも速い。立体基をバーコード試薬に付着させること、および/または試料をマトリックス(例えば、Matrigel)に包埋することにより、拡散を遅くすることができる一方、pHまたは温度などの条件を調整することにより、結合速度を制御することができる。したがって、バーコードは、試料の個別の位置に適用することができる。
【0143】
空間バーコードの適用
本発明は、全細胞を含む厚い組織切片(例えば、20μm~200μmの厚さ)を通って拡散する、TeMalなどの小分子バーコード化試薬を使用し得る。以下は、バーコードをそのような試料に空間的に適用することができる方法の3つの別個の例である。スポッティング、拡散およびマイクロ流体送達を単独でまたは任意の組み合わせで使用して、空間バーコードを作成し、および/またはそれを細胞試料に適用することができる。
【0144】
スポッティング
バーコードを表面上に乾燥させることができる場合(例えば、溶液で適用し、次いで、蒸発させる)、またはバーコードをゲル(例えば、ヒドロゲル、マトリゲル、ポリアクリルアミドまたはゼラチンなどのマトリックス)によって保持することができる場合、またはバーコードをフィルムなどの表面に吸着させることができる場合、スポッティング手法を使用することができる。一般に、この手法は、200um以下の間隔、100um以下の間隔、または50um以下の間隔で、別々の混合物(各々が異なる組み合わせの量のバーコード化同位体を有する)をスポットすることができる。xおよびy方向に最も遠いスポットが両方の同位体の大部分を有するように、1つの同位体濃度は、第1の次元(例えば、x軸)に沿ったスポットで増加させることができ、別の同位体濃度は、第2の次元(例えば、y軸)に沿ったスポットで増加させることができる。特定のスポットは、スポットの位置を識別するために固有の同位体またはそれらの組み合わせを有することができる。組織切片を表面に適用し、バーコードを濡らし、バーコードが組織切片に拡散するのを可能にすることができる。スポット間の細胞は、各スポットから部分的バーコード化を得ることができ、(例えば、スポットが100um離れている場合でも)細胞位置を100umよりも良好な精度で識別することを可能にする。
【0145】
拡散
第1および第2のバーコード化同位体を含む2つの別々の溶液をそれぞれ、表面の別々の縁部(例えば、x軸およびy軸を提供する角を共有する縁部)に適用し、表面にわたって拡散させることができる。原理は薄層クロマトグラフィーと同様であり得る。拡散は試料中で起こり得るか、または拡散は、バーコード化試薬を吸着するためのコーティングを有するフィルムの表面にわたって起こり得る(その後、フィルムを試料に適用することができる)。あるいは、2つの溶液はそれぞれ、異なる時点で組織切片自体の異なる縁部に直接適用され得る。細胞上の特定のバーコード同位体の量が細胞の位置に直接関連し得るので、CyTOFによって提供される線形シグナルがここでは利点であることに留意されたい。
【0146】
スポッティングまたは拡散のいずれかの例では、試料への適用直前にバーコード化試薬を表面に適用する(例えば、フィルムまたはゲル)ことができるか、または溶液を蒸発させてバーコードを表面に静止させたままにすることができることに留意されたい。バーコードを乾燥させること、またはDMSOなどの非水溶液中にバーコードを保存することは、保存中の反応性を低減し(例えば加水分解を防止する)、より長い貯蔵寿命を可能にし得る。
【0147】
図3は、細胞試料を直接標識するか、または細胞試料に直接適用することができる固体支持体を調製するための、スポッティングと拡散との組み合わせを示す。第1および第2の同位体は、X軸およびY軸に沿って増加してもよく、別の同位体は、点(puncti)(スポット)でパターン化されてもよく、別の同位体は、正規化に使用することができるように試料にわたって均一に分布してもよい(例えば、異なる細胞がバーコードの異なる取り込みを示す場合)。
【0148】
図4は、図3に標識された軸に沿った細胞の位置に応じた異なるバーコード同位体に対する予想シグナル強度を示す。懸濁液マスサイトメトリーによる分析後、バーコード同位体に対するこれらのシグナル強度を使用して、細胞の位置(例えば、組織から解離される前のその位置)を識別することができる。
【0149】
マイクロ流体送達
バーコードは、マイクロ流体送達システムによって試料に空間的に適用され得る。例えば、この2019 Cell論文(Liu et al.,「High-Spatial-Resolution Multi-Omics Atlas Sequencing of Mouse Embryos via Deterministic Barcoding in Tissue,」Cell(2020))の以下の図2Aは、列および行に沿ってバーコード化溶液を適用するためのマイクロ流体デバイスの使用を示す。マイクロ流体チャネルは、幅が10μm、25μmまたは50μmであり得る。太字のグリッドパターンは、この論文のバーコード化試薬が巨大分子(抗体またはオリゴヌクレオチド)を含むという事実に起因する。設計によって、少なくとも一部のバーコード化試薬は、反応前に組織切片の他方の側に拡散する。したがって、本発明のバーコード化試薬は、以下に示す赤色で示されるチャネルマーキングと緑色で示されるチャネルマーキングとの間で拡散する。
【0150】
分析
空間バーコード化の後、細胞を固体試料(例えば、厚い組織切片)から解離し、質量タグ付き抗体で染色し、次いで懸濁液マスサイトメトリーによって分析することができる。
【0151】
IMCと同様に、本明細書に記載の空間バーコード化手法は、光学画像(例えば、同じ組織切片または後続の組織切片の組織化学染色の明視野画像)の共位置合わせ(coregistration)と組み合わせることができる。空間バーコードチャネルの外側の質量チャネルは、金属含有センサ(例えば、TeloxまたはTePhe)、Cell-ID試薬(例えば、生存率のためのシスプラチン)、RNA検出(例えば、タンパク質検出に加えて)、試料バーコード化、ならびに現在のMaxpar抗体およびパネル(例えば、細胞表面マーカーおよび細胞内シグナル伝達マーカー)のいずれかに使用することができる。
【0152】
空間バーコード情報は、いくつかの方法で使用することができる。例えば、細胞は、依然としてFCS発現または同様のワークフローによって分類され得る。空間バーコードは、細胞の座標位置、または他の細胞に対する細胞の相対位置を識別するために使用することができる。異なる細胞タイプの互いに対する相対的な近接度を計算することができる。ユーザは、関心領域(例えば、組織切片を解離する前に得られた共位置合わせ画像における)を定義し、そのROI内の細胞が提供され得る。バイオインフォマティクスを使用して、試料にわたる一般的に均等な細胞分布の仮定に基づいて、各細胞について決定された位置を調整することもできる。
【0153】
空間的に配置された金属(例えば、金属同位体)バーコードは、適用時に固体組織試料(例えば、新鮮な凍結組織)をインプリントする。
【0154】
上記で提供された3つの例によって示されるように、組織試料にバーコードを空間的に適用する様々な方法がある。さらに、上記の同位体または同位体の組み合わせを含む異なる軸および/または点(または他の基準点)にわたる同位体の勾配などの利益を提供するいくつかのパターンがある。さらなる一例では、点は交互であり得る(例えば、2つの異なる同位体間で切り替わるチェッカー盤パターンにおいて)。論じられているように、同位体は、バーコードシグナルの正規化のために試料にわたって均等な濃度で適用され得る。同位体を試料の反対面に適用して、より良好な3D空間分析を可能にすることができる。TeMalと反応するチオール化試薬などの停止試薬を、組織切片の上方の溶液中に適用して、組織切片から逃げる任意のバーコード化試薬と反応させることができ、これにより、組織から拡散し、次いで異なる位置で組織に再侵入した試薬からの標的バーコード化が低減される。過剰なバーコード化試薬を除去するために洗浄を実施してもよい。
【0155】
バーコードは、色素もしくはフルオロフォアを含むか、または色素もしくはフルオロフォアと混合していてもよく、その結果、光学インタロゲーションは、試料のどの部分がどのバーコードを受け取ったかを識別することができる。例えば、実施例3に示すマイクロ流体送達は、バーコードに沿ってフルオロフォアを適用することができ、バーコード化された試料の光学顕微鏡画像は、画像内の位置に細胞をマッピングするために空間マスサイトメトリーデータと共位置合わせすることができる。
【0156】
TeMalは、小分子(組織中に拡散する)であり、低い毒性で生細胞を標識することが示されており、生細胞または固定細胞に使用することができ、全オルガノイドに作用することが示されているので、理想的なバーコードであり得る。トルエンなどの溶媒を蒸発させることなどによって、保存中の加水分解または酸化のリスクなしに、試料に適用するためにTeMalを表面上で乾燥させるか、または表面に吸着させることが可能であり得る。しかしながら、安定性のためにTeMalを液体中(例えば、DMSO中)に保存する必要がある場合、TeMalは、試料への適用直前に表面上に空間的に配置されるか、または直接適用され得る(例えば、実施例3に記載されるような試料に対するマイクロ流体ワークフローにおいて)。別の代替では、保護されたマレイミドを含むTeMal誘導体が空間的に配置されてもよく(例えば、ゲルまたはフィルム上に)、適用前または適用中に、逆Diels-Alder反応によって脱保護され得る。
【0157】
バーコードは、理想的には、細胞と迅速に(数分程度で)反応するかまたは会合し、組織内に深く拡散する(例えば、数分程度で100umの組織にわたって拡散するが、試料全体にわたってあまりにも急速に拡散することはない)。条件は、バーコード化反応の速度を変化させるために(例えば、溶液の酸性度は、TeMalが細胞をバーコード化する速度に影響を及ぼし得る)、または拡散速度を変化させるために(例えば、立体基としてバーコード試薬に添加することにより、必要に応じて試料中の拡散速度を遅くすることができる)調整することができる。
【0158】
TeMalバーコード化試薬
有機テルル(TeMal)およびシスプラチンのバーコード化試薬は、Qin,Xiaoらによる試料バーコードオルガノイドの文脈で記載されている(「Cell-type-specific signaling networks in heterocellular organoids.」Nature methods 17.3(2020):335-342)。
【0159】
空間バーコード化のためのさらなる態様
空間バーコード化SMC方法に対する追加のステップが、本明細書に記載される。1つまたは複数のそのようなステップが、任意の方法に含まれてもよく、または本出願の任意のキットによって可能にされてもよい。
【0160】
解離後、目的の細胞を濃縮することができる。例えば、細胞MACSselectビーズを使用して、染色またはマスサイトメトリーによる分析の前に、目的の特定の細胞タイプを発現する細胞を濃縮することができる。
【0161】
空間バーコード化は、異なる試料タイプまたは処理条件をバーコード化するために、および/または紛らわしいまたは誤った空間バーコード化読み出しにつながるダブレットを低減するためになど、試料バーコード化と組み合わせることができる。
【0162】
細胞を懸濁する前に、酵素基質であるテルロフェンなどのバイオセンサを試料に適用することにより、組織微小環境のさらなるインタロゲーションが可能になる。
【0163】
任意選択的に比色組織化学染色および/または基準点と組み合わせた光学顕微鏡による共位置合わせ(明視野、蛍光、共焦点または光音響など)は、SMCによって分析された細胞を組織形態または関心領域に関連させることを可能にし得る。
【0164】
2Dまたは3D座標は、空間バーコードチャネルからのシグナルに基づいて細胞に提供することができ、任意選択的に統合されて、細胞ゲーティングなどの細胞タイプ分析を行う。異なる細胞タイプ間の近接度スコアが決定され得る。ユーザは、ROIを定義し、さらなる分析のためにそのROI内の細胞を識別することができる。
【0165】
試料のいくつかの細胞または領域がバーコード同位体の強度と位置との間に一貫した関係を有さない場合、そのような細胞事象は、SMCデータセットから除去され得る(例えば、試料の縁部で細胞事象を除去することによって)。
【0166】
基準点または色素を使用して、バーコード同位体の分布を識別することができる。例えば、同位体に沿って適用され、試料を通る同様の拡散特性を有する色素を使用して、空間バーコードが試料に適切に適用されたときを決定し、および/またはSMCによって検出された細胞事象を試料から得られた画像と共位置合わせするのを助けることができる。
【0167】
空間バーコード力学の制御
デバイス、試薬および方法ステップは、細胞試料への空間バーコードの適用をさらに制御することができる。一般に、空間バーコードは、細胞試料中で局所的に(例えば、試料全体にわたって均質に拡散するよりも速く)反応し得る。
【0168】
化学勾配の適用は、生物工学において周知である。特定の態様では、2つ以上のバーコード同位体は、同じポイントまたは縁部から拡散する(または適用される)が、異なる時間にわたって異なる距離にわたって勾配を生成し得る。代替的または追加的に、2つ以上のバーコード同位体は、異なる拡散速度または反応速度を有し得る。
【0169】
強度は、拡散および反応(例えば、共有結合、親和性結合、または細胞による取り込み)の関数であり得る。拡散は、温度、媒体(例えば、試料が包埋されているマトリックスの密度)、またはバーコード自体の立体障害(例えば、立体基の付加は拡散速度を低下させ得る)によって制御され得る。反応速度は、温度もしくはpH、またはバーコードと混合した化学物質もしくは補因子によって制御され得る。
【0170】
ゲル(例えば、ヒドロゲル、マトリゲル、ポリアクリルアミドまたはゼラチン)の密度勾配または厚さ勾配を使用して、どの程度のバーコードがゲルによって保持されるかを制御することができ、次いで、ゲルを細胞試料に適用して、1つまたは複数のバーコード同位体の勾配を送達することができる。
【0171】
受動拡散または能動流を使用して、空間バーコード同位体勾配を制御することができる。
【0172】
SMCステップのための細胞の解離(懸濁)の前および/または後に、正規化同位体を細胞試料に適用することができる。
【0173】
例えば、バーコード同位体の3D分布を提供するために、異なるバーコード化同位体を試料の両側に適用することができる。
【0174】
空間バーコード固体支持体は、空間バーコードが起こるときに試料が画像化および/またはさらに調製され得るような顕微鏡スライドであり得る。そのようなスライドは、本明細書で論じられるように、共位置合わせのための基準点を有し得る。
【0175】
停止試薬または停止ステップは、バーコードと反応する過剰な試薬および/またはpHもしくは温度の変化を含み得る。立体的に障害された停止試薬は、組織から出るバーコードを捕捉することができる(例えば、チオールを提示する立体試薬は、組織を出るTeMalを捕捉することができる)。
【0176】
特定の態様では、空間バーコードの少なくとも90%は、細胞試料への適用の5分後、10分後または20分後までに組織と反応する。
【0177】
懸濁液マスサイトメトリーのための空間バーコードを作製する方法は、溶液中の空間バーコード同位体を固体支持体全体に分布させることと、溶媒を蒸発させることとを含み得、空間バーコード同位体は、同位体的に濃縮されており、固体支持体の異なる位置は、異なる組み合わせおよび/または比の空間バーコード同位体を含む。
【0178】
特定の態様では、分布させることは、空間バーコード同位体をスポッティングすることを含み得る。分布させることは、固体支持体にわたって1つまたは複数の空間バーコード同位体を拡散させることを含み得る。
【0179】
溶媒は、室温において水よりも蒸気圧の高い有機溶媒である。例えば、溶媒はトルエンであってもよい。
【0180】
態様はまた、本明細書に記載の方法またはキットのいずれかによって空間的にバーコード化された細胞試料を含む。
【0181】
キット
マスサイトメトリーのためのキットは、本明細書に記載の1つまたは複数の試薬またはデバイスを含み得る。上記の構成要素の任意の組み合わせがキットで提供され得る。例えば、懸濁液マスサイトメトリーのための空間バーコードキットは、80amuを超える原子質量を有する濃縮同位体を含む複数のバーコードと、空間的に配置された様式で細胞試料にバーコードを適用するように構成されたデバイスとを含み得る。
【0182】
この場合、デバイスは、フィルムまたはゲル(例えば、ヒドロゲル、ポリアクリルアミドまたはゼラチンなどのマトリックス)などの固体支持体を含み得る。空間バーコード同位体は、各位置が固有にバーコード化されるように、固体支持体の少なくとも一部にわたってパターン化され得る。
【0183】
この場合、デバイスは、例えば、異なる組み合わせおよび/または比のバーコードを試料の異なる位置に送達するように構成されたチャネルを含むマイクロ流体デバイスを含み得る。
【0184】
異なる濃縮同位体を含むバーコードは、別々に、固有の組み合わせの濃縮同位体において、または固有の比の濃縮同位体において包装され得る。
【0185】
この場合、バーコードは乾燥されるか、またはDMSOなどの溶媒に懸濁され得る。
【0186】
本明細書に記載の方法のいずれも、ステップを実施するように構成することができる1つまたは複数のプロセッサを含むコンピュータシステムで、全体的または部分的に実施することができる。したがって、実施形態は、それぞれのステップまたはそれぞれのステップ群を実施する異なる構成要素を潜在的に有する、本明細書に記載の方法のいずれかのステップを実施するように構成されたコンピュータシステムを対象とし得る。番号付けされたステップとして提示されているが、本明細書の方法のステップは、同じ時間に、または異なる時間に、または論理的に可能な異なる順序で実施することができる。さらに、これらのステップの一部は、他の方法からの他のステップの一部と共に使用されてもよい。また、ステップの全部または一部は、任意選択であってもよい。さらに、本方法のいずれかのステップのいずれかは、モジュール、ユニット、回路、またはこれらのステップを実施するためのシステムの他の手段を用いて実施することができる。
【0187】
本開示を読めば当業者には明らかなように、本明細書に記載および図示された個々の実施形態の各々は、本開示の範囲または趣旨から逸脱することなく、他のいくつかの実施形態のいずれかの特徴から容易に分離または組み合わせられ得る個別の構成要素および特徴を有する。
【0188】
本開示の例示的な実施形態の上記の説明は、例示および説明の目的で提示されており、本開示の実施形態を作成および使用する方法の完全な開示および説明を当業者に提供するために記載されている。網羅的であること、または本開示を記載された正確な形態に限定することは意図されておらず、また、それらは、実験が実施されたすべてのまたは唯一の実験であることを表すことも意図されていない。本開示は、理解を明確にするために例示および例としてある程度詳細に記載されているが、本開示の教示に照らして、添付の特許請求の範囲の趣旨または範囲から逸脱することなく、特定の変更および修正を行うことができることは、当業者には容易に明らかである。
【0189】
したがって、上記は単に本発明の原理を例示するものである。当業者は、本明細書に明示的に記載または示されていないが、本発明の原理を具体化し、その趣旨および範囲内に含まれる様々な構成を考案することができることが理解されよう。さらに、本明細書に列挙されたすべての例および条件付き言語は、主に、そのような具体的に列挙された例および条件に限定されない本開示の原理を理解する際に読者を助けることを意図している。さらに、本発明の原理、態様および実施形態、ならびにその特定の例を列挙する本明細書のすべての記述は、その構造的および機能的等価物の両方を包含することを意図している。さらに、そのような等価物は、現在知られている等価物および将来開発される等価物の両方、すなわち、構造にかかわらず同じ機能を実施する開発された任意の要素を含むことが意図される。したがって、本発明の範囲は、本明細書に示され記載される例示的な実施形態に限定されることを意図しない。むしろ、本発明の範囲および趣旨は、添付の特許請求の範囲によって具体化される。
【0190】
「a」、「an」または「the」の列挙は、特に反対のことが示されない限り、「1つまたは複数」を意味することを意図している。「または」の使用は、特に反対のことが示されない限り、「包括的または」を意味し、「排他的または」を意味しないことが意図される。「第1の」構成要素への言及は、必ずしも第2の構成要素が設けられることを必要としない。さらに、「第1の」または「第2の」構成要素への言及は、明示的に述べられない限り、言及される構成要素を特定の位置に限定しない。「に基づいて」という用語は、「少なくとも部分的に基づいて」を意味することを意図している。
【0191】
特許請求の範囲は、任意選択であり得る任意の要素を除外するように起草され得る。したがって、この記述は、特許請求の範囲の要素の列挙、または「否定的な」限定の使用に関連して、「もっぱら」、「のみ」などの排他的な用語を使用するための先行詞としての役割を果たすことを意図している。
【0192】
値の範囲が提供される場合、その範囲の上限と下限との間の、文脈上明確に指示されない限り、下限の単位の10分の1までの各介在値も具体的に開示されることが理解される。記述された範囲内の任意の記述された値または介在する値と、その記述された範囲内の任意の他の記述された値または介在する値との間のより小さい各範囲は、本開示の実施形態内に包含される。これらのより小さい範囲の上限および下限は、独立して範囲に含まれてもよく、または除外されてもよく、いずれかの、もしくは両方の限界がより小さい範囲に含まれるかまたはいずれの限界もより小さい範囲に含まれない各範囲もまた、記述された範囲内の任意の具体的に除外された限界を条件として、本開示内に包含される。記述された範囲が限界の一方または両方を含む場合、それらの含まれる限界の一方または両方を除外した範囲も本開示に含まれる。
【0193】
本明細書で言及されるすべての特許、特許出願、刊行物、および説明は、あたかも各個々の刊行物または特許が参照により組み込まれることが具体的かつ個々に示されているかのように、その全体が参照により本明細書に組み込まれ、刊行物が引用される関連する方法および/または材料を開示および説明するために参照により本明細書に組み込まれる。先行技術であると認められるものはない。
図1
図2
図3
図4
図5
【国際調査報告】