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特表2024-538549核酸およびポリメラーゼを使用するデータ保存のための組成物、システムおよび方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-10-23
(54)【発明の名称】核酸およびポリメラーゼを使用するデータ保存のための組成物、システムおよび方法
(51)【国際特許分類】
   C07H 21/04 20060101AFI20241016BHJP
   C07H 21/02 20060101ALI20241016BHJP
   C12M 1/00 20060101ALI20241016BHJP
   C12N 15/11 20060101ALN20241016BHJP
   C12Q 1/34 20060101ALN20241016BHJP
   C12Q 1/68 20180101ALN20241016BHJP
   C12Q 1/48 20060101ALN20241016BHJP
【FI】
C07H21/04 Z
C07H21/02 ZNA
C07H21/04
C07H21/04 B
C12M1/00 Z
C12N15/11 Z
C12Q1/34
C12Q1/68
C12Q1/48 Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024518374
(86)(22)【出願日】2022-09-23
(85)【翻訳文提出日】2024-05-15
(86)【国際出願番号】 US2022076976
(87)【国際公開番号】W WO2023049869
(87)【国際公開日】2023-03-30
(31)【優先権主張番号】63/248,407
(32)【優先日】2021-09-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】524035911
【氏名又は名称】ナイオ, インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【弁護士】
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】クール, エリック
【テーマコード(参考)】
4B029
4B063
4C057
【Fターム(参考)】
4B029AA07
4B029AA27
4B029BB20
4B029FA15
4B063QA01
4B063QA13
4B063QQ42
4B063QR08
4B063QR14
4B063QR32
4B063QR58
4B063QR62
4B063QR66
4B063QS03
4B063QS39
4B063QX02
4C057AA30
4C057BB02
4C057DD01
4C057MM01
4C057MM02
4C057MM04
4C057MM05
4C057MM09
(57)【要約】
データ保存のための核酸ポリマーおよび関連する方法が提供される。いくつかの実施形態では、核酸ポリマーはデータに対して書き込み可能であり、他の実施形態では、核酸ポリマーは合成されるときにデータがコード化される。一般に、書き込み可能なポリマーは、データコードを提供することが可能な1またはそれを超える変換可能な残基(例えば、化学的に改変可能な基)ビットを含み得る。様々な方法を利用して、書き込み可能な核酸ポリマーまたはデータコード化核酸ポリマーを生成することができる。様々な方法を利用して、増感剤にコンジュゲートした酵素(例えば、ポリメラーゼ)で光またはレドックス源を介して変換可能な残基を選択的に修飾することによって核酸ポリマーをコード化することができる。コード化された核酸ポリマーを読み取る様々な方法も本明細書に記載される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
データをコード化するための核酸ポリマーであって、
前記核酸ポリマーの主鎖に沿って繰り返し間隔をあけて配置され、前記核酸ポリマーの主鎖に共有結合的に連結された複数の変換可能な残基を含み、
前記複数の変換可能な残基の各々が、第1の状態を有し、前記第1の状態から第2の状態に変換可能であり、前記第1の状態と前記第2の状態とが異なり、
前記複数の変換可能な残基が、前記第1の状態および前記第2の状態で前記核酸ポリマーに共有結合的に連結されており
前記核酸ポリマーが、ポリメラーゼをプライミングするための前記核酸ポリマーの3’末端に配列を含む、データをコード化するための核酸ポリマー。
【請求項2】
前記核酸ポリマーが、一本鎖核酸ポリマーである、請求項1に記載の核酸ポリマー。
【請求項3】
前記配列が、前記核酸ポリマーの3’末端にのみ存在するユニーク配列である、請求項1または2に記載の核ポリマー。
【請求項4】
前記核酸ポリマーが、デオキシリボ核酸(DNA)、リボ核酸(RNA)、ホスホロチオエートDNA、グリセロール核酸(GNA)、トレオース核酸(TNA)、ロックド核酸(LNA)、またはそれらの組み合わせを含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の核酸ポリマー。
【請求項5】
前記核酸ポリマーが、10を超える変換可能な残基を含む、請求項1~4のいずれか一項に記載の核酸ポリマー。
【請求項6】
前記核酸ポリマー中の前記変換可能な残基のヌクレオチドの総数の比が、2~100である、請求項1~5のいずれか一項に記載の核酸ポリマー。
【請求項7】
前記複数の変換可能な残基が、天然に存在しない核酸塩基である、請求項1~6のいずれか一項に記載の核酸ポリマー。
【請求項8】
前記複数の変換可能な残基が、修飾された天然に存在する核酸塩基または天然に存在する核酸塩基の誘導体である、請求項1~6のいずれか一項に記載の核酸ポリマー。
【請求項9】
前記複数の変換可能な残基の各々が、化学的に修飾可能な部分を含む、請求項1~8のいずれか一項に記載の核酸ポリマー。
【請求項10】
前記複数の変換可能な残基の各々が、前記化学的に修飾可能な部分が前記変換可能な残基の塩基に直接結合している、請求項1~9のいずれか一項に記載の核酸ポリマー。
【請求項11】
前記複数の変換可能な残基の各々が、前記化学的に修飾可能な部分がリンカーまたは側鎖なしで前記塩基に結合している、請求項1~9のいずれか一項に記載の核酸ポリマー。
【請求項12】
前記複数の変換可能な残基が、糖を介して前記核酸ポリマーの前記主鎖に共有結合的に連結されている、請求項10または11に記載の核酸ポリマー。
【請求項13】
前記化学的に修飾可能な部分が、光、電圧、酵素剤、化学試薬、または酸化還元剤によって活性化可能であり、それによって前記第1の状態から前記第2の状態に変換される、請求項9~12のいずれか一項に記載の核酸ポリマー。
【請求項14】
前記化学的に修飾可能な部分が光によって活性化可能であり、それによって前記第1の状態から前記第2の状態に変換される、請求項13に記載の核酸ポリマー。
【請求項15】
前記第1の状態から前記第2の状態への前記変換が不可逆反応を介して起こる、請求項13または14に記載の核酸ポリマー。
【請求項16】
前記変換可能な残基が、前記第2の状態への変換後に天然に存在する核酸塩基になる、請求項1~15のいずれか一項に記載の核酸ポリマー。
【請求項17】
前記化学的に修飾可能な部分が修飾可能なフルオロフォアであり、前記核酸ポリマーが複数の修飾可能なフルオロフォアを含む、請求項1~16のいずれか一項に記載の核酸ポリマー。
【請求項18】
前記修飾可能なフルオロフォアが、光によってアンケージドフルオロフォアに変換され得るケージドフルオロフォアを含む、請求項17に記載の核酸ポリマー。
【請求項19】
前記修飾可能なフルオロフォアが、光変換可能なフルオロフォアを含み、前記光変換可能なフルオロフォアが、第1の発光波長を有する第1の構造状態で存在し、光パルスを介して第2の発光波長を有する第2の構造状態に変換され得る、請求項17に記載の核酸ポリマー。
【請求項20】
前記光変換可能なフルオロフォアの前記第1の構造状態から第2の構造状態への前記変換が、第1の波長の光パルスによるものであり、前記光変換可能なフルオロフォアが、第2の波長の光パルスを介して第3の発光波長を有する第3の構造状態に変換され得る、請求項19に記載の核酸ポリマー。
【請求項21】
前記光変換可能なフルオロフォアが、添加剤の存在下で光によって活性化される、請求項20に記載の核酸ポリマー。
【請求項22】
前記光変換可能なフルオロフォアが、光によって不活性化される、請求項21に記載の核酸ポリマー。
【請求項23】
前記光変換可能なフルオロフォアが、添加剤の存在下で光によって不活性化される、請求項20に記載の核酸ポリマー。
【請求項24】
前記光変換可能なフルオロフォアが、ポリメチンシアニン色素を含む、請求項23に記載の核酸ポリマー。
【請求項25】
前記複数の修飾可能なフルオロフォアが、光によって前記ポリマーから放出され得る放出可能なフルオロフォアを含む、請求項17に記載の核酸ポリマー。
【請求項26】
前記複数の修飾可能なフルオロフォアが、光によって退色され得る光退色性フルオロフォアを含む、請求項17に記載の核酸ポリマー。
【請求項27】
前記核酸ポリマーが変換可能な残基の2またはそれを超える異なるセットを含み、変換可能な残基の各セットが、第1の状態を有し、前記第1の状態から第2の状態に変換可能であり、前記第1の状態と前記第2の状態とが異なる、請求項1~26のいずれか一項に記載の核酸ポリマー。
【請求項28】
前記複数の変換可能な残基の各々が、光によって活性化され得る化学的に修飾可能な部分を含む、請求項27に記載の核酸ポリマー。
【請求項29】
前記変換可能な残基の2またはそれを超える異なるセットが、異なる波長の光によって活性化可能である、請求項27に記載の核酸ポリマー。
【請求項30】
変換可能な残基の第1のセットが、第1の波長の光によって活性化可能であり、変換可能な残基の第2のセットが、第2の波長の光によって活性化可能であり、前記第1の波長と前記第2の波長が異なる、29に記載の核酸ポリマー。
【請求項31】
前記化学的に修飾可能な部分が、1またはそれを超える光除去性基を含む、請求項9~30のいずれか一項に記載の核酸ポリマー。
【請求項32】
前記化学的に修飾可能な部分が、脱離基である、31に記載の核酸ポリマー。
【請求項33】
前記変換可能な残基が、
【化22-1】
【化22-2】
から選択される、請求項1~32のいずれか一項に記載の核酸ポリマー。
【請求項34】
前記核酸ポリマー中の前記複数の変換可能な残基の全てが、同じ構造を有する、請求項1~33のいずれか一項に記載の核酸ポリマー。
【請求項35】
前記複数の変換可能な残基が、325nm、360nmまたは400nmの波長の光によって変換され得る、請求項1~34のいずれか一項に記載の核酸ポリマー。
【請求項36】
前記複数の変換可能な残基が、400nm~850nmの波長の光によって変換され得る、請求項1~34のいずれか一項に記載の核酸ポリマー。
【請求項37】
前記複数の変換可能な残基の各々が、酸化還元によって活性化可能な化学的に修飾可能な部分を含む、請求項13に記載の核酸ポリマー。
【請求項38】
前記化学的に修飾可能な部分が、局所的酸化によって活性化され得る、請求項13に記載の核酸ポリマー。
【請求項39】
前記化学的に修飾可能な部分が、電極を使用した酸化によって活性化され得る、請求項13に記載の核酸ポリマー。
【請求項40】
前記複数の変換可能な残基の前記第1の状態および前記第2の状態が、配列決定によって読み取り可能である、請求項1~39のいずれか一項に記載の核酸ポリマー。
【請求項41】
前記複数の変換可能な残基の前記第1の状態および前記第2の状態が、ナノポアシーケンシングによって読み取り可能である、請求項40に記載の核酸ポリマー。
【請求項42】
前記複数の変換可能な残基の前記第1の状態および前記第2の状態が、合成による配列決定によって読み取り可能である、請求項40に記載の核酸ポリマー。
【請求項43】
前記複数の変換可能な残基の各々が、独立して選択的に変換され得る、請求項1~42のいずれか一項に記載の核酸ポリマー。
【請求項44】
前記核酸ポリマーの前記主鎖を介して連結された複数のスペーサー残基を更に含み、前記複数の変換可能な残基の各々が、前記複数のスペーサー残基のうちの1またはそれを超えるスペーサー残基によって分離されている、請求項1~43のいずれか一項に記載の核酸ポリマー。
【請求項45】
前記複数の変換可能な残基間の反復間隔が、前記核酸ポリマー上のデータをコード化するための書き込み機構の分解能に適合する、請求項1~44のいずれか一項に記載の核酸ポリマー。
【請求項46】
前記書き込み機構の前記分解能が、少なくとも1nmである、請求項45に記載の核酸ポリマー。
【請求項47】
前記複数のスペーサー残基が、前記変換可能な残基の読み取りを妨げない、請求項44~46のいずれか一項に記載の核酸ポリマー。
【請求項48】
前記核酸ポリマー中の前記複数のスペーサー残基が、同じスペーサー残基である、請求項44~47のいずれか一項に記載の核酸ポリマー。
【請求項49】
前記複数のスペーサー残基が、2またはそれを超える異なるタイプのスペーサー残基を含む、請求項44~47のいずれか一項に記載の核酸ポリマー。
【請求項50】
前記核酸ポリマーが、スペーサー残基から本質的になる、請求項1~49のいずれか一項に記載の核酸ポリマー。
【請求項51】
前記複数の変換可能な残基の各々が、2、3、4、5、6、7、8、9、10、20、30、40または50個のスペーサー残基によって分離されている、請求項1~50のいずれか一項に記載の核酸ポリマー。
【請求項52】
前記複数のスペーサー残基が、天然に存在する核酸塩基である、請求項44~51のいずれか一項に記載の核酸ポリマー。
【請求項53】
前記核酸ポリマーの前記主鎖に連結された1またはそれを超えるデリミタを更に含む、請求項1~52のいずれか一項に記載の核酸ポリマー。
【請求項54】
前記1またはそれを超えるデリミタの各々が、1またはそれを超える天然に存在する核酸塩基または天然に存在しない核酸塩基を含む、請求項53に記載の核酸ポリマー。
【請求項55】
前記1またはそれを超えるデリミタが、天然に存在する核酸塩基を含む、請求項53または54に記載の核酸ポリマー。
【請求項56】
前記1またはそれを超えるデリミタが、前記核酸ポリマー内の2またはそれを超える隣接するデータフィールドを分離する、請求項53~55のいずれか一項に記載の核酸ポリマー。
【請求項57】
1またはそれを超えるデータタグを更に含む、請求項1~56のいずれか一項に記載の核酸ポリマー。
【請求項58】
前記1またはそれを超えるデータタグが、1またはそれを超える天然に存在する核酸塩基または天然に存在しない核酸塩基を含む、請求項57に記載の核酸ポリマー。
【請求項59】
前記1またはそれを超えるデータタグが、前記核酸ポリマーの5’末端または3’末端に存在する、請求項57または58に記載の核酸ポリマー。
【請求項60】
前記1またはそれを超えるデータタグが、前記核酸ポリマーの合成中、前記複数の変換可能な残基の前記第2の状態への変換中、または前記複数の変換可能な残基が前記第2の状態に変換された後のライゲーションを介して前記核酸ポリマーに組み込まれる、請求項57~59のいずれか一項に記載の核酸ポリマー。
【請求項61】
データ書き込みのためのシステムであって、
書き込み可能な核酸ポリマーであって、前記核酸ポリマーの主鎖に沿って繰り返し間隔をあけて配置され、前記核酸ポリマーの主鎖に連結された複数の変換可能な残基を含み、前記複数の変換可能な残基の各々が、第1の状態を有し、前記第1の状態から第2の状態に変換可能であり、前記第1の状態と前記第2の状態とが異なり、前記複数の変換可能な残基が、前記第1の状態および前記第2の状態で前記核酸ポリマーに共有結合的に連結されており、前記核酸ポリマーが、前記核酸ポリマーの3’末端にポリメラーゼをプライミングするための配列を含む、書き込み可能な核酸ポリマーと、
増感剤とコンジュゲートした酵素であって、前記増感剤がエネルギーを受け取り、前記変換可能な残基に伝達する、酵素と、を含む、システム。
【請求項62】
光または酸化還元エネルギーを提供するためのエネルギー源を更に備える、請求項61に記載のシステム。
【請求項63】
前記エネルギー源が、光を提供する、請求項61または62に記載のシステム。
【請求項64】
前記エネルギー源が、酸化還元エネルギーを提供する、請求項61または62に記載のシステム。
【請求項65】
前記増感剤から前記変換可能な残基へのエネルギーの伝達が、前記変換可能な残基を前記第1の状態から前記第2の状態に変換する、請求項61~64のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項66】
前記変換可能な残基が、
【化23】
から選択される、請求項61~65のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項67】
前記酵素が、前記書き込み可能な核酸ポリマーに結合する、請求項61~66のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項68】
前記酵素が、ポリメラーゼである、請求項67に記載のシステム。
【請求項69】
前記酵素が、核酸ポリメラーゼである、請求項68に記載のシステム。
【請求項70】
前記酵素が、鋳型依存性ポリメラーゼである、請求項68に記載のシステム。
【請求項71】
前記酵素が、鋳型非依存性ポリメラーゼである、請求項68に記載のシステム。
【請求項72】
前記酵素が、ヌクレアーゼである、請求項61~66のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項73】
前記酵素が、ヘリカーゼである、請求項61~66のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項74】
前記酵素が、ニッカーゼである、請求項61~66のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項75】
前記増感剤が、
【化24】
の構造を有する、請求項61~74のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項76】
前記増感剤が、システイン側鎖を介して前記酵素にコンジュゲートされる、請求項61~75のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項77】
プライマーオリゴマーを更に含み、前記プライマーオリゴマーが、前記核酸ポリマーの3’末端の配列に相補的な配列を有する、請求項61~76のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項78】
前記酵素が、前記書き込み可能な核酸ポリマーにデータを書き込むときに、前記書き込み可能な核酸ポリマーに相補的な核ポリマーを産生する、請求項61~77のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項79】
三リン酸残基のセットを更に含む、請求項61~78のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項80】
前記三リン酸残基が、dNTPまたはNTPである、請求項79に記載のシステム。
【請求項81】
前記三リン酸残基が、修飾可能なdNTPまたはNTPである、請求項80に記載のシステム。
【請求項82】
書き込み可能な核酸ポリマー上にデータを書き込む方法であって、
(a)前記核酸ポリマーの主鎖に沿って繰り返し間隔をあけて配置され、前記核酸ポリマーの主鎖に連結された複数の変換可能な残基を含む書き込み可能な核酸ポリマーを溶液中に提供することであって、前記複数の変換可能な残基の各々が、第1の状態を有し、前記第1の状態から第2の状態に変換可能であり、前記第1の状態と前記第2の状態とが異なり、前記複数の変換可能な残基が、前記第1の状態および前記第2の状態において前記核酸ポリマーに共有結合的であり、前記核酸ポリマーが、前記核酸ポリマーの3’末端にポリメラーゼをプライミングするための配列を含む、書き込み可能な核酸ポリマーを溶液中に提供することと、
(b)エネルギーを受け取って、前記変換可能な残基に対して伝達する増感剤とコンジュゲートした酵素を提供することと、
(c)1またはそれを超える前記複数の変換可能な残基を前記第2の状態に選択的に変換し、その結果、データコード化ポリマーを生成することと、を含む、方法。
【請求項83】
前記増感剤から前記変換可能な残基へのエネルギーの伝達が、前記変換可能な残基を前記第1の状態から前記第2の状態に変換する、請求項82に記載の方法。
【請求項84】
前記増感剤から前記変換可能な残基へのエネルギーの伝達が、前記酵素が前記書き込み可能な核酸ポリマーに沿って移動する際に起こる、請求項82または83に記載の方法。
【請求項85】
前記増感剤から前記変換可能な残基へのエネルギーの伝達が、前記酵素が前記書き込み可能な核酸ポリマーの前記変換可能な残基に近接しているときに起こる、請求項82または83に記載の方法。
【請求項86】
1またはそれを超える前記複数の変換可能な残基が、光パルス、電圧パルス、酵素剤、または酸化還元電位によって選択的に前記第2の状態に変換される、請求項82~85のいずれか一項に記載の方法。
【請求項87】
1またはそれを超える前記複数の変換可能な残基が、光によって選択的に前記第2の状態に変換される、請求項86に記載の方法。
【請求項88】
1またはそれを超える前記複数の変換可能な残基が、酸化還元電位によって選択的に前記第2の状態に変換される、請求項86に記載の方法。
【請求項89】
前記酵素が、前記書き込み可能な核酸ポリマーに結合する、請求項82~85のいずれか一項に記載の方法。
【請求項90】
前記酵素が、ポリメラーゼである、請求項89に記載の方法。
【請求項91】
前記酵素が、核酸ポリメラーゼである、請求項90に記載のシステム。
【請求項92】
前記変換可能な残基が、
【化25】
である、請求項82~85のいずれか一項に記載の方法。
【請求項93】
前記増感剤が、
【化26】
の構造を有する、請求項82~92のいずれか一項に記載の方法。
【請求項94】
前記増感剤が、システイン側鎖を介して前記酵素にコンジュゲートされる、請求項82~93のいずれか一項に記載の方法。
【請求項95】
(c’)前記溶液にプライマーオリゴマーを添加することであって、前記プライマーオリゴマーが、前記核酸ポリマーの3’末端の配列に相補的な配列を有する、前記溶液にプライマーオリゴマーを添加すること、を更に含む、請求項82~94のいずれか一項に記載の方法。
【請求項96】
(c’’)前記溶液に三リン酸残基のセットを添加することであって、三リン酸残基の前記セットが、第1の構造を有する三リン酸残基および第2の構造を有する三リン酸残基を含む、前記溶液に三リン酸残基のセットを添加すること、を更に含む、請求項82~95のいずれか一項に記載の方法。
【請求項97】
三リン酸残基の前記セットが、前記第1の構造を有する三リン酸残基の最終濃度が前記第2の構造を有する三リン酸残基の最終濃度よりも低くなるように添加される、請求項96に記載の方法。
【請求項98】
前記第1の構造を有する前記三リン酸残基と前記第2の構造を有する前記三リン酸残基との比が、前記酵素が書き込み可能な核酸ポリマーに沿って移動し、前記第1の構造を有する前記三リン酸残基に相補的な前記鋳型の残基に到達すると、前記酵素の停止をもたらす、請求項96に記載の方法。
【請求項99】
データを核酸ポリマーにコード化する際に使用するための核酸ポリメラーゼであって、
増感剤とコンジュゲートした核酸ポリメラーゼであって、前記増感剤がエネルギーを受け取り、伝達することができる分子である、核酸ポリメラーゼを含む、核酸ポリメラーゼ。
【請求項100】
前記増感剤が、システイン側鎖を介して前記核酸ポリメラーゼにコンジュゲートされる、請求項99に記載の核酸ポリメラーゼ。
【請求項101】
前記増感剤が、光エネルギーを受け取り、伝達することができる分子である、請求項99または100に記載の核酸ポリメラーゼ。
【請求項102】
前記増感剤が、酸化還元エネルギーを受け取り、伝達することができる分子である、請求項99または100に記載の核酸ポリメラーゼ。
【請求項103】
前記増感剤が、
【化27-1】
【化27-2】
の構造を有する、請求項99~102のいずれか一項に記載の核酸ポリメラーゼ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2021年9月24日に出願された米国仮特許出願第63/248,407号の利益を主張する。
【背景技術】
【0002】
背景
DNAは、その周知の生物学的活性に加えて、デジタル情報を記憶する能力についても研究されている。DNAは本質的にデジタルであり、様々な塩基の配列が生物学的データをコード化する。これに着想を得た科学者や技術者は、デジタルデータをDNAに符号化するための戦略に取り組んでいる(例えば、L.Ceze,J.Nivala,and K.Strauss,Nat Rev Genet.2019;20:456-466を参照)。これを達成するための一般的な手法は、化学的または生化学的方法を使用して、データをコード化する任意の配列のDNAの鎖を合成または組み立てることである。データがコード化された後、DNAを配列決定してデータを得るかまたは回復することができる。DNAベースのデータ保存の魅力的な態様は、1つの分子(鎖)に複数のビットを含めることができるため、非常に高密度のデータ保存を実現する可能性を含む。DNAが数十年、または数世紀、またはそれ以上にわたって配列情報を維持することができるが、現在の電子および磁気ストレージは無限に安定ではなく、書き換えを必要とすることから、この技術の第2の利点は、安定性である。
【0003】
核酸はデータ保存の大きな潜在的な供給源であるが、核酸、特にデータ定義配列を合成するプロセスは非効率的であり、したがって核酸をコード化するプロセスは、核酸をデータ保存として利用することに対する実質的な障壁である。DNAにデータを保存するための現在の手法は、デジタル情報をコード化する任意の配列の鎖の化学的または酵素的な合成を伴う(G.M.Church,Y.Gao,and S.Kosuri Science.2012;337:1628;X.Chengtaoら、Nucleic Acids Res.2021;49:5451-5469;およびE.Yooら、Comput Struct Biotechnol J.2021;19:2468-2476を参照)。オリゴヌクレオチド合成装置は、およそ100~200ヌクレオチドまでの長さのDNAを産生することができる。特殊な合成装置は、一度に数百または数千のオリゴヌクレオチドを産生することができ、これは、データ書き込みのスループットの向上を約束する。化学的DNA合成に加えて、ポリメラーゼまたは他の酵素を含む酵素的手法もまた、任意のデータコード配列のDNAを作製するために調査中である。これらは、特殊化されたヌクレオチドを一度に1つずつ、またはDNAの短いセグメントを段階的に付加することを含む。
合成中にDNAにデータをコード化する手法は、収率、鎖長、時間およびコストによって制限される。現在の効率的なDNA合成装置は、約200ヌクレオチドまでの鎖を産生し、したがって分子当たり比較的少量の情報をコード化し、密度を制限する。短い配列を補償するために、多数の異なるオリゴヌクレオチドを合成しなければならない。オリゴヌクレオチド合成は、高い段階的収率を達成するために過剰な試薬を必要とし、試薬および溶媒の高価な消費を必要とする。また、各ヌクレオチド付加についてこれらの高収率を達成するのに時間が必要であり(一般に各工程について1~5分)、これは、より大量のデータをコード化するための長時間の必要性を意味する。開発中の一般的な酵素的手法は、同様に、ヌクレオチドまたはヌクレオチドの群を段階的に付加し、非常に長い鎖を産生し、大量のデータをコード化する能力はまだ大きく改善されていない。酵素的手法も段階的に起こることから、それらはデータコード化の速度にも限界がある。さらに、上記の化学的ヌクレオチド付加戦略および酵素的ヌクレオチド付加戦略の両方が典型的には比較的短い鎖を産生するため、それらは単分子配列決定に理想的ではない可能性があり、代わりに、より大量のそれぞれの書き込み済みのDNAを必要とする配列決定方法に依存し得る。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】L.Ceze,J.Nivala,and K.Strauss,Nat Rev Genet.2019;20:456-466
【非特許文献2】G.M.Church,Y.Gao,and S.Kosuri Science.2012;337:1628
【非特許文献3】X.Chengtaoら、Nucleic Acids Res.2021;49:5451-5469
【非特許文献4】E.Yooら、Comput Struct Biotechnol J.2021;19:2468-2476
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
概要
様々な実施形態は、核酸データ保存のための組成物およびシステム、データ書き込みのための修飾ポリメラーゼ、その使用方法、ならびにその合成方法に関する。いくつかの実施形態では、書き込み可能な核酸ポリマーが生成され、これは数千塩基長であり得、核酸ポリマーの残基に結合した反復する変換可能な残基を含み得る。多くの実施形態において、コンジュゲート化ポリメラーゼを光または酸化還元シグナルと共に使用して、連結された変換可能な残基の化学的改変を介してデータを核酸に書き込む。いくつかの実施形態では、連結された変換可能な残基の局所的な化学的改変を促進するために、増感剤基がポリメラーゼにコンジュゲートされる。いくつかの実施形態では、核酸塩基改変を介して書き込み済みのコードを有する核酸を保存および/または保管する。いくつかの実施形態では、核酸塩基改変を介して書き込み済みのコードを有する核酸は、化学的改変を検出することができる配列決定装置を介して読み取られる。
【0006】
一態様では、データをコード化するための核酸ポリマーであって、核酸ポリマーの主鎖に沿って繰り返し間隔をあけて配置され、核酸ポリマーの主鎖に共有結合的に連結された複数の変換可能な残基を含み、複数の変換可能な残基の各々が、第1の状態を有し、第1の状態から第2の状態に変換可能であり、第1の状態と第2の状態とが異なり、複数の変換可能な残基が、第1の状態および第2の状態で核酸ポリマーに共有結合的に連結されており核酸ポリマーが、ポリメラーゼをプライミングするための核酸ポリマーの3’末端に配列を含む、データをコード化するための核酸ポリマーが本明細書で提供される。
【0007】
いくつかの実施形態では、核酸ポリマーは、一本鎖核酸ポリマーである。
【0008】
いくつかの実施形態では、配列は、核酸ポリマーの3’末端にのみ存在するユニーク配列である。
【0009】
いくつかの実施形態では、核酸ポリマーは、デオキシリボ核酸(DNA)、リボ核酸(RNA)、ホスホロチオエートDNA、グリセロール核酸(GNA)、トレオース核酸(TNA)、ロックド核酸(LNA)、またはそれらの組み合わせを含む。
【0010】
いくつかの実施形態では、核酸ポリマーは、10個を超える変換可能な残基を含む。
【0011】
いくつかの実施形態では、核酸ポリマー中の変換可能な残基のヌクレオチドの総数の比は、2~100である。
【0012】
いくつかの実施形態では、複数の変換可能な残基は、天然に存在しない核酸塩基である。
【0013】
いくつかの実施形態では、複数の変換可能な残基は、修飾された天然に存在する核酸塩基または天然に存在する核酸塩基の誘導体である。
【0014】
いくつかの実施形態では、複数の変換可能な残基の各々は、化学的に修飾可能な部分を含む。
【0015】
いくつかの実施形態では、複数の変換可能な残基の各々は、化学的に修飾可能な部分が変換可能な残基の塩基に直接結合している。
【0016】
いくつかの実施形態では、複数の変換可能な残基の各々は、化学的に修飾可能な部分がリンカーまたは側鎖なしで塩基に結合している。
【0017】
いくつかの実施形態では、複数の変換可能な残基は、糖を介して核酸ポリマーの主鎖に共有結合的に連結されている。
【0018】
いくつかの実施形態では、化学的に修飾可能な部分は、光、電圧、酵素剤、化学試薬、または酸化還元剤によって活性化可能であり、それによって第1の状態から第2の状態に変換される。
【0019】
いくつかの実施形態では、化学的に修飾可能な部分は光によって活性化可能であり、それによって第1の状態から第2の状態に変換される。
【0020】
いくつかの実施形態では、第1の状態から第2の状態への変換は、不可逆反応を介して起こる。
【0021】
いくつかの実施形態では、変換可能な残基は、第2の状態への変換後に天然に存在する核酸塩基になる。
【0022】
いくつかの実施形態では、化学的に修飾可能な部分は修飾可能なフルオロフォアであり、核酸ポリマーは複数の修飾可能なフルオロフォアを含む。
【0023】
いくつかの実施形態では、修飾可能なフルオロフォアは、光によってアンケージドフルオロフォアに変換され得るケージドフルオロフォアを含む。
【0024】
いくつかの実施形態では、修飾可能なフルオロフォアは、光変換可能なフルオロフォアを含み、光変換可能なフルオロフォアは、第1の発光波長を有する第1の構造状態で存在し、光パルスを介して第2の発光波長を有する第2の構造状態に変換され得る。
【0025】
いくつかの実施形態では、光変換可能なフルオロフォアの第1の構造状態から第2の構造状態への変換は、第1の波長の光パルスによるものであり、光変換可能なフルオロフォアが、第2の波長の光パルスを介して第3の発光波長を有する第3の構造状態に変換され得る。
【0026】
いくつかの実施形態では、光変換可能なフルオロフォアは、添加剤の存在下で光によって活性化される。
【0027】
いくつかの実施形態では、光変換可能なフルオロフォアは、光によって不活性化される。
【0028】
いくつかの実施形態では、光変換可能なフルオロフォアは、添加剤の存在下で光によって不活性化される。
【0029】
いくつかの実施形態では、光変換可能なフルオロフォアは、ポリメチンシアニン色素を含む。
【0030】
いくつかの実施形態では、複数の修飾可能なフルオロフォアは、光によってポリマーから放出され得る放出可能なフルオロフォアを含む。
【0031】
いくつかの実施形態では、複数の修飾可能なフルオロフォアは、光によって退色され得る光退色性フルオロフォアを含む。
【0032】
いくつかの実施形態では、核酸ポリマーは変換可能な残基の2またはそれを超える異なるセットを含み、変換可能な残基の各セットは、第1の状態を有し、第1の状態から第2の状態に変換可能であり、第1の状態と第2の状態とは異なる。
【0033】
いくつかの実施形態では、複数の変換可能な残基の各々は、光によって活性化され得る化学的に修飾可能な部分を含む。
【0034】
いくつかの実施形態では、変換可能な残基の2またはそれを超える異なるセットは、異なる波長の光によって活性化可能である。
【0035】
いくつかの実施形態では、変換可能な残基の第1のセットは、第1の波長の光によって活性化可能であり、変換可能な残基の第2のセットは、第2の波長の光によって活性化可能であり、第1の波長と第2の波長は異なる。
【0036】
いくつかの実施形態では、化学的に修飾可能な部分は、1またはそれを超える光除去性基含む。
【0037】
いくつかの実施形態では、化学的に修飾可能な部分は、脱離基である。
【0038】
いくつかの実施形態では、変換可能な残基は、
【化1】
から選択される。
【0039】
いくつかの実施形態では、核酸ポリマー中の複数の変換可能な残基の全てが同じ構造を有する。
【0040】
いくつかの実施形態では、複数の変換可能な残基は、325nm、360nmまたは400nmの波長の光によって変換され得る。
【0041】
いくつかの実施形態では、複数の変換可能な残基は、400nm~850nmの波長の光によって変換することができる。
【0042】
いくつかの実施形態では、複数の変換可能な残基の各々は、酸化還元によって活性化可能な化学的に修飾可能な部分を含む。
【0043】
いくつかの実施形態では、化学的に修飾可能な部分は、局所的酸化によって活性化され得る。
【0044】
いくつかの実施形態では、化学的に修飾可能な部分は、電極を用いた酸化によって活性化することができる。
【0045】
いくつかの実施形態では、複数の変換可能な残基の第1の状態および第2の状態は、配列決定によって読み取り可能である。
【0046】
いくつかの実施形態では、複数の変換可能な残基の第1の状態および第2の状態は、ナノポアシーケンシングによって読み取り可能である。
【0047】
いくつかの実施形態では、複数の変換可能な残基の第1の状態および第2の状態は、合成による配列決定によって読み取り可能である。
【0048】
いくつかの実施形態では、複数の変換可能な残基の各々は、独立して選択的に変換され得る。
【0049】
いくつかの実施形態では、核酸ポリマーは、核酸ポリマーの主鎖を介して連結された複数のスペーサー残基を更に含み、複数の変換可能な残基の各々は、複数のスペーサー残基のうちの1またはそれを超えるスペーサー残基によって分離されている。
【0050】
いくつかの実施形態では、複数の変換可能な残基間の反復間隔は、核酸ポリマー上のデータをコード化するための書き込み機構の分解能に適合する。
【0051】
いくつかの実施形態では、書き込み機構の分解能は少なくとも1nmである。
【0052】
いくつかの実施形態では、複数のスペーサー残基は、変換可能な残基の読み取りを妨げない。
【0053】
いくつかの実施形態では、核酸ポリマー中の複数のスペーサー残基は、同じスペーサー残基である。
【0054】
いくつかの実施形態では、複数のスペーサー残基は、2またはそれを超える異なるタイプのスペーサー残基を含む。
【0055】
いくつかの実施形態では、核酸ポリマーは、スペーサー残基から本質的になる。いくつかの実施形態では、複数の変換可能な残基の各々は、2、3、4、5、6、7、8、9、10、20、30、40または50個のスペーサー残基によって分離されている。
【0056】
いくつかの実施形態では、複数のスペーサー残基は、天然に存在する核酸塩基である。
【0057】
いくつかの実施形態では、核酸ポリマーは、核酸ポリマーの主鎖に連結された1またはそれを超えるデリミタを更に含む。
【0058】
いくつかの実施形態では、1またはそれを超えるデリミタの各々は、1またはそれを超える天然に存在する核酸塩基または天然に存在しない核酸塩基を含む。
【0059】
いくつかの実施形態では、1またはそれを超えるデリミタは、天然に存在する核酸塩基を含む。
【0060】
いくつかの実施形態では、1またはそれを超えるデリミタは、核酸ポリマー内の2またはそれを超える隣接するデータフィールドを分離する。
【0061】
いくつかの実施形態では、核酸ポリマーは、1またはそれを超えるデータタグを更に含む。
【0062】
いくつかの実施形態では、1またはそれを超えるデータタグは、1またはそれを超える天然に存在する核酸塩基または天然に存在しない核酸塩基を含む。
【0063】
いくつかの実施形態では、1またはそれを超えるデータタグは、核酸ポリマーの5’末端または3’末端に存在する。
【0064】
いくつかの実施形態では、1またはそれを超えるデータタグは、核酸ポリマーの合成中、複数の変換可能な残基の第2の状態への変換中、または複数の変換可能な残基が第2の状態に変換された後のライゲーションを介して、核酸ポリマーに組み込まれる。
【0065】
別の態様では、データ書き込みのためのシステムが本明細書で提供され、本システムは、核酸ポリマーの主鎖に沿って繰り返し間隔をあけて配置され、核酸ポリマーの主鎖に連結された複数の変換可能な残基を含む、書き込み可能な核酸ポリマーであって、複数の変換可能な残基の各々が、第1の状態を有し、第1の状態から第2の状態に変換可能であり、第1の状態と第2の状態とが異なり、複数の変換可能な残基が、第1の状態および第2の状態で核酸ポリマーに共有結合的に連結されており、核酸ポリマーが、核酸ポリマーの3’末端にポリメラーゼをプライミングするための配列を含む、書き込み可能な核酸ポリマーと、増感剤とコンジュゲートした酵素であって、増感剤がエネルギーを受け取り、変換可能な残基に伝達する、酵素と、を含む。
【0066】
いくつかの実施形態では、システムは、光または酸化還元エネルギーを提供するためのエネルギー源を更に含む。いくつかの実施形態では、エネルギー源は光を提供する。いくつかの実施形態では、エネルギー源は、酸化還元エネルギーを提供する。いくつかの実施形態では、増感剤から変換可能な残基へのエネルギーの伝達は、変換可能な残基を第1の状態から第2の状態に変換する。いくつかの実施形態では、変換可能な残基は、
【化2】
から選択される。
【0067】
いくつかの実施形態では、酵素は、書き込み可能な核酸ポリマーに結合する。いくつかの実施形態では、酵素は、ポリメラーゼである。いくつかの実施形態では、酵素は、核酸ポリメラーゼである。いくつかの実施形態では、酵素は、鋳型依存性ポリメラーゼである。いくつかの実施形態では、酵素は、鋳型非依存性ポリメラーゼである。いくつかの実施形態では、酵素は、ヌクレアーゼである。いくつかの実施形態では、酵素は、ヘリカーゼである。いくつかの実施形態では、酵素は、ニッカーゼである。いくつかの実施形態では、増感剤は、
【化3】
の構造を有する。
【0068】
いくつかの実施形態では、増感剤は、システイン側鎖を介して酵素にコンジュゲートされる。いくつかの実施形態では、本システムは、プライマーオリゴマーを更に含み、プライマーオリゴマーは、核酸ポリマーの3’末端の配列に相補的な配列を有する。いくつかの実施形態では、酵素は、書き込み可能な核酸ポリマーにデータを書き込むときに、書き込み可能な核酸ポリマーに相補的な核ポリマーを産生する。いくつかの実施形態では、本システムは、三リン酸残基のセットを更に含む。いくつかの実施形態では、三リン酸残基は、dNTPまたはNTPである。いくつかの実施形態では、三リン酸残基は、修飾可能なdNTPまたはNTPである。
【0069】
更に別の態様では、書き込み可能な核酸ポリマー上にデータを書き込むための様々な方法であって、(a)核酸ポリマーの主鎖に沿って繰り返し間隔をあけて配置され、核酸ポリマーの主鎖に連結された複数の変換可能な残基を含む書き込み可能な核酸ポリマーを溶液中に提供することであって、複数の変換可能な残基の各々が、第1の状態を有し、第1の状態から第2の状態に変換可能であり、第1の状態と第2の状態とが異なり、複数の変換可能な残基が、第1の状態および第2の状態において核酸ポリマーに共有結合的であり、核酸ポリマーが、核酸ポリマーの3’末端にポリメラーゼをプライミングするための配列を含む、書き込み可能な核酸ポリマーを溶液中に提供することと、(b)エネルギーを受け取って、変換可能な残基に対して伝達する増感剤とコンジュゲートした酵素を提供することと、(c)1またはそれを超える複数の変換可能な残基を第2の状態に選択的に変換し、その結果、データコード化ポリマーを生成することと、を含む、方法が本明細書に記載される。
【0070】
いくつかの実施形態では、増感剤から変換可能な残基へのエネルギーの伝達は、変換可能な残基を第1の状態から第2の状態に変換する。
【0071】
いくつかの実施形態では、増感剤から変換可能な残基へのエネルギーの伝達は、酵素が書き込み可能な核酸ポリマーに沿って移動する際に起こる。
【0072】
いくつかの実施形態では、増感剤から変換可能な残基へのエネルギーの伝達は、酵素が書き込み可能な核酸ポリマーの変換可能な残基に近接しているときに起こる。
【0073】
いくつかの実施形態では、1またはそれを超える複数の変換可能な残基は、光パルス、電圧パルス、酵素剤、または酸化還元電位によって選択的に第2の状態に変換される。
【0074】
いくつかの実施形態では、1またはそれを超える複数の変換可能な残基は、光によって選択的に第2の状態に変換される。
【0075】
いくつかの実施形態では、1またはそれを超える複数の変換可能な残基は、酸化還元電位によって選択的に第2の状態に変換される。いくつかの実施形態では、酵素は、書き込み可能な核酸ポリマーに結合する。
【0076】
いくつかの実施形態では、酵素は、ポリメラーゼである。いくつかの実施形態では、酵素は、核酸ポリメラーゼである。
【0077】
いくつかの実施形態では、変換可能な残基は、
【化4-1】
【化4-2】
である。
【0078】
いくつかの実施形態では、増感剤は、
【化5】
の構造を有する。
【0079】
いくつかの実施形態では、増感剤は、システイン側鎖を介して酵素にコンジュゲートされる。
【0080】
いくつかの実施形態では、本方法は、(c’)溶液にプライマーオリゴマーを添加することであって、プライマーオリゴマーが、核酸ポリマーの3’末端の配列に相補的な配列を有する、溶液にプライマーオリゴマーを添加すること、を更に含む。
【0081】
いくつかの実施形態では、本方法は、(c’’)溶液に三リン酸残基のセットを添加することであって、三リン酸残基のセットが、第1の構造を有する三リン酸残基および第2の構造を有する三リン酸残基を含む、溶液に三リン酸残基のセットを添加すること、を更に含む。
【0082】
いくつかの実施形態では、三リン酸残基のセットは、第1の構造を有する三リン酸残基の最終濃度が第2の構造を有する三リン酸残基の最終濃度よりも低くなるように添加される。
【0083】
いくつかの実施形態では、第1の構造を有する三リン酸残基と第2の構造を有する三リン酸残基との比は、酵素が書き込み可能な核酸ポリマーに沿って移動し、第1の構造を有する三リン酸残基に相補的な鋳型の残基に到達すると、酵素の停止をもたらす。
【0084】
更に別の態様では、データを核酸ポリマーにコード化する際に使用するための核酸ポリメラーゼであって、増感剤とコンジュゲートした核酸ポリメラーゼであって、増感剤がエネルギーを受け取り、伝達することができる分子である、核酸ポリメラーゼを含む、核酸ポリメラーゼが本明細書で更に提供される。
【0085】
いくつかの実施形態では、増感剤は、システイン側鎖を介して核酸ポリメラーゼにコンジュゲートされる。いくつかの実施形態では、増感剤は、光エネルギーを受容および伝達することができる分子である。いくつかの実施形態では、増感剤は、酸化還元エネルギーを受容および伝達することができる分子である。いくつかの実施形態では、増感剤は、
【化6】
の構造を有する。
【0086】
図面の簡単な説明
説明および特許請求の範囲は、例示的な実施形態として提示され、本開示の範囲の完全な列挙として解釈されるべきではない以下の図およびデータグラフを参照してより完全に理解される。
【図面の簡単な説明】
【0087】
図1図1Aおよび図1Bは、様々な実施形態による書き込み可能な核酸ポリマーの概略図を提供する。
【0088】
図2図2は、様々な実施形態によるローリングサークル反応によるポリメラーゼ伸長を利用した書き込み可能な核酸ポリマーの生成の概略図を提供する。
【0089】
図3図3は、様々な実施形態による、化学合成およびライゲーションを利用した書き込み可能な核酸ポリマーの生成の概略図を提供する。
【0090】
図4図4は、様々な実施形態による、ポリメラーゼ酵素にコンジュゲートされた増感剤を利用するDNA鎖上の変換可能な残基(例えば、化学的に修飾可能な部分を含む残基)を使用したデータの書き込みの概略図を提供する。
【0091】
図5図5A図5Dは、様々な実施形態による、書き込み可能な核酸ポリマーに使用するための様々な光活性の変換可能な残基の分子構造図を提供する。
【0092】
図6図6Aは、様々な実施形態による書き込み可能なポリマーに使用するための様々なケージド基の分子構造図を提供する。図6Bは、様々な実施形態による、書き込み可能な核酸ポリマーで使用するためのデュアルビットの変換可能な残基の概略図を提供する。
【0093】
図7A-D】図7A図7Eは、様々な実施形態による化学的改変を行うための様々な増感剤基の分子構造図を提供する。図7Fは、様々な実施形態による、書き込み可能な核酸ポリマーに使用するための様々な酸化還元活性の変換可能な残基の分子構造図を提供する。
【0094】
図7E-F】図7A図7Eは、様々な実施形態による化学的改変を行うための様々な増感剤基の分子構造図を提供する。図7Fは、様々な実施形態による、書き込み可能な核酸ポリマーに使用するための様々な酸化還元活性の変換可能な残基の分子構造図を提供する。
【0095】
図8図8は、様々な実施形態による書き込み可能なポリマーに使用するための様々な光ケージング基の分子構造図を提供する。
【発明を実施するための形態】
【0096】
詳細な説明
データをコード化する/復号する(例えば、書き込み/読み出し)およびデータを保存するためのデータコード化可能ポリマー(例えば、核酸ポリマー)の組成物ならびにその方法およびシステムが本明細書で提供される。本明細書に記載のポリマー(例えば、核酸ポリマー)の作製方法も本明細書で提供される。
【0097】
ここで図面およびデータに目を向けると、様々な実施形態による、核酸データ保存の組成物、ならびにシステム、使用方法および合成方法が開示されている。いくつかの実施形態では、データ保存システムは、複数の反復した変換可能な残基(例えば、化学的に改変可能な基)を有する書き込み可能な核酸ポリマーを含む。いくつかの実施形態では、データ保存システムは、変換可能な残基の化学的改変を促進するためのポリメラーゼを含む。いくつかの実施形態では、データ保存システムは、変換可能な残基の化学的改変を促進するために増感剤基とコンジュゲートしたポリメラーゼを含む。したがって、書き込み可能な核酸ポリマーは、最初はデータを保存しないがコード化可能である「ブランクテープ」に類似しており、書き込み可能な核酸ポリマーは、ポリメラーゼまたは増感剤コンジュゲートポリメラーゼを利用して1またはそれを超える変換可能な残基を変換する(例えば、化学的に改変する)ことによってコードされ得る。いくつかの実施形態では、反復した変換可能な残基の基の変換(例えば、化学的改変)は、バイナリコードと考えることができ、各変換可能な残基は「ビット」に類似し、変更されていない基は「0」に類似し、変更された基は「1」に類似する。しかしながら、バイナリコードが唯一の可能性ではなく、コードは3進、4進、または他の数値システムコードで書き込むことができ、これは複数のタイプの変換可能な残基を利用して、または変換可能な塩基の状態を更に改変するために複数の書き込みを実行して行うことができることを理解されたい。いくつかの実施形態では、変換可能な残基の変換は安定しているか、または永続的であり、これにより長期保管が可能になる。いくつかの実施形態では、2つの並置された変換可能な残基の組み合わせは、「ビット」を含む。2つの並置された変換可能な残基を利用する実施形態では、一方の基の改変は、バイナリの意味で「0」に類似しており、他方または両方の変換可能な残基の改変は、「1」に類似している。
【0098】
いくつかの実施形態では、「書き込み可能」および「データコード化可能」という用語は、本明細書では互換的に使用される。いくつかの実施形態では、「書き込み」および「データコード化」という用語は、本明細書では互換的に使用される。
【0099】
本明細書で提供されるシステムの他の実施形態では、システムは、変換可能な残基の2またはそれを超えるセット(例えば、異なる構造を有する化学残基、例えば、異なる化学的に修飾可能な部分を有するもの)を含み、残基変換(例えば、残基からのケージ基の除去)は、バイナリコードと考えることができ、各変換可能な残基(または2またはそれを超える変換可能な残基のセット)は、データの「ビット」に類似している。いくつかの実施形態では、変換可能な残基を利用してビットをコード化し、第1の残基構造(すなわち、変換可能な残基の第1のセット)の変換は「0」に近く、対の第2の残基構造(すなわち、変換可能な残基の第2のセット)の変換は「1」に近く、データはポリマーに沿った残基の選択的変換(例えば、核酸ポリマー)によってコード化することができる。いくつかの実施形態では、変換可能な残基の対を利用してビットをコード化し、対の一方の残基の変換は「0」に類似しており、対の両方の残基の変換は「1」に類似しており、データはポリマーに沿った変換可能な残基対変換によってコード化することができる。しかしながら、バイナリコードが唯一の可能性ではなく、コードは3進、4進、または他の数値システムコードで書き込むことができ、これは複数のタイプの変換可能な残基を利用して、または変換可能な残基の状態を更に改変するために複数の書き込みを実行して行うことができることを理解されたい。いくつかの実施形態では、変換可能な残基の変換は安定しているか、または永続的であり、これにより長期保管が可能になる。
【0100】
いくつかの実施形態では、変換可能な残基は、変換可能な核酸塩基である。
【0101】
いくつかの実施形態では、核酸ポリマーは、一本鎖核酸ポリマーまたは二本鎖核酸ポリマーである。いくつかの実施形態では、核酸ポリマーは、一本鎖核酸ポリマーである。いくつかの実施形態では、核酸ポリマーは二本鎖核酸ポリマーである。
【0102】
書き込み可能な核酸ポリマーの組成物に向けられた様々な実施形態が本明細書に記載される。DNA、RNA、ホスホロチオエート(phosphorothiate)DNA、エナンチオ-DNA、グリセロール核酸(GNA)、トレオース核酸(TNA)、2’-フルオロ-DNA、2’-O-メチルRNA、およびロックド核酸(LNA)を含む(これらに限定されない)任意の適切な核酸ポリマーを利用することができる。核酸ポリマーは一本鎖または二本鎖であり得、ポリメラーゼおよび一本鎖または二本鎖鋳型を利用してデータ書き込みを行うことができる。いくつかの実施形態では、書き込み可能な核酸ポリマーは、ポリマー(例えば、核酸ポリマー)主鎖に共有結合的に連結された複数の変換可能な残基(例えば、化学的に修飾可能な部分を含む残基)を含む。特定の実施形態では、変換可能な残基は、1またはそれを超える変換可能な残基の各ビットがコード化に従って独立して選択的に改変され得るように空間分解能を提供するために別々に間隔をあけて配置される。いくつかの実施形態では、ポリマー主鎖を介して連結されたスペーサー残基を利用して、変換可能な残基間に空間を提供する。いくつかの実施形態では、スペーサー残基は、書き込み機構に対して非反応性である。様々な実施形態において、書き込み可能な核酸ポリマーは、各々が核酸塩基の特定の配列によって提供され得る、データを標識するためのデリミタおよび/またはデータタグを更に含み得る。
【0103】
いくつかの実施形態では、「化学的に改変可能な基」および「変換可能な残基」という用語は、本明細書では互換的に使用される。
【0104】
いくつかの実施形態では、DNA、RNA、ホスホロチオエートDNA、グリセロール核酸(GNA)、トレオース核酸(TNA)、ロックド核酸(LNA)、およびそれらの組み合わせを含む(ただし、これらに限定されない)任意の適切な核酸ポリマーを利用することができる。
【0105】
いくつかの実施形態では、複数の変換可能な残基は、酵素によって核酸ポリマーに組み込むことができる。いくつかの実施形態では、複数の変換可能な残基は、酵素によって核酸ポリマーに組み込むことができ、増感剤は酵素にコンジュゲートされる。いくつかの実施形態では、複数の変換可能な残基は、ポリメラーゼによって核酸ポリマーに組み込むことができ、増感剤はポリメラーゼにコンジュゲートされる。いくつかの実施形態では、複数の変換可能なヌクレオチドは、ポリメラーゼによって核酸ポリマーに組み込むことができる。
【0106】
いくつかの実施形態では、複数の変換可能な残基は、天然に存在しない核酸塩基である。いくつかの実施形態では、複数の変換可能な残基は、修飾された天然に存在する核酸塩基または天然に存在する核酸塩基の誘導体である。
【0107】
いくつかの実施形態では、複数の変換可能な残基の各々は、化学的に修飾可能な部分(例えば、修飾可能なフルオロフォア、放出可能なフルオロフォア、除去性光ケージ、除去性クエンチャー、酸化還元修飾可能な分子等)を含む。いくつかの実施形態では、複数の変換可能な残基の各々は、化学的に修飾可能な部分が変換可能な残基の塩基に直接結合している。いくつかの実施形態では、複数の変換可能な残基の各々は、化学的に修飾可能な部分がリンカーなしで塩基に結合している。いくつかの実施形態では、複数の変換可能な残基は、糖を介して核酸の主鎖に共有結合的に連結されている。
【0108】
いくつかの実施形態では、残基変換(すなわち、第1の状態から第2の状態へ)は、残基(例えば、核酸塩基)から1またはそれを超える除去基を除去することによって行われる。いくつかの実施形態では、除去性基はケージング基である。
【0109】
一実施形態では、化学的に修飾可能な部分は光によって活性化可能であり、それによって第1の状態から第2の状態に変換される。いくつかの実施形態では、第1の状態から第2の状態への変換は、不可逆反応を介して起こる。いくつかの実施形態では、変換可能な残基は、第2の状態への変換後にネイティブ核酸塩基になる。いくつかの実施形態では、変換可能な残基は、第2の状態への変換後に天然の核酸塩基になる。一実施形態では、変換可能な残基は、第2の状態への変換後にグアニン、アデニン、チミンまたはシトシンになる。いくつかの実施形態では、ポリマーの主鎖(例えば、核酸ポリマー中のホスフェートおよび糖)は、第1の状態から第2の状態への変換中に変化しないままである。いくつかの実施形態では、化学的に修飾可能な部分は、光、電圧、酵素剤、化学試薬、または酸化還元剤によって活性化可能であり、それによって第1の状態から第2の状態に変換される。いくつかの実施形態では、化学的に修飾可能な部分は、1またはそれを超える光除去性基または光切断性基を含む。
【0110】
いくつかの実施形態では、変換可能な残基は、O6-グアニン、N2-グアニン、N7-グアニン、N6-アデニン、N5-アデニン、O4-チミン、N3-チミン、2-チオ-チミン、4-チオ-チミン、N4-シトシンまたはN3-シトシンからなる群から選択される。
【0111】
いくつかの実施形態では、複数の変換可能な残基の第1の状態および第2の状態は、天然に存在しない核酸塩基および/または修飾された核酸塩基を検出し、区別することができる配列決定方法によって読み取り可能である。いくつかの実施形態では、複数の変換可能な残基の第1の状態および第2の状態は、ナノポアシーケンシングによって読み取り可能である。いくつかの実施形態では、複数の変換可能な残基の第1の状態および第2の状態は、合成による配列決定によって読み取り可能である。いくつかの実施形態では、複数の変換可能な残基が第2の状態に変換されると、複数の変換可能な残基の特性は、第1の状態と比較して修飾される(例えば、サイズの縮小、形状の変更、H結合の修飾、および/またはポリメラーゼ基質能力の修飾を有する)。いくつかの実施形態では、1またはそれを超える複数の変換可能な残基は、第2の状態から第3の状態に変換することができ、1またはそれを超える複数の変換可能な残基は、第3の状態で核酸ポリマーに共有結合的に付着している。いくつかの実施形態では、複数の変換可能な残基の各々は、独立して選択的に変換され得る。
【0112】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載のポリマー(例えば、核酸ポリマー)は変換可能な残基の2またはそれを超える異なるセットを含み、変換可能な残基の各セットは、第1の状態を有し、第1の状態から第2の状態に変換可能であり、第1の状態と第2の状態とは異なる。いくつかの実施形態では、複数の変換可能な残基の各々は、光によって活性化され得る化学的に修飾可能な部分を含み、変換可能な残基の2またはそれを超える異なるセットは、異なる波長の光によって活性化可能である。いくつかの実施形態では、変換可能な残基の第1のセットは、第1の波長の光によって活性化可能であり、変換可能な残基の第2のセットは、第2の波長の光によって活性化可能であり、第1の波長と第2の波長は異なる。
【0113】
特定の実施形態では、変換可能な残基(または変換可能な塩基の対)は、各核酸塩基(または各セットもしくは対)がコード化に従って独立して選択的に変換され得るように、空間分解能を提供するために別々に繰り返し間隔をあけて配置される。いくつかの実施形態では、繰り返し間隔をあけて配置されたは、ほぼ規則的に間隔をあけて配置されたと呼ぶことができる。特定の実施形態では、変換可能な残基は、確率論的にまたは不規則に別々に間隔をあけて配置されているが、データは、核酸塩基を同定し、選択的に変換してコード化されたポリマーを得ることによってコード化される。確率論的にまたは不規則に間隔をあけて配置された変換可能な残基を利用する実施形態のいくつかでは、データコード化機構は、コードに従って正しい変換可能な残基に達するまで、必要に応じて任意の変換可能な残基をスキップすることができる。
【0114】
いくつかの実施形態では、書き込み手順を利用して、データを有する書き込み可能な核酸をコード化する。いくつかの実施形態では、データコード化は、書き込み済みの核酸分子が「ゼロ」および「1」のバイナリコードに類似する、改変されていないおよび改変された配列を含むように、核酸分子の変換可能な残基を選択的に改変することによって実行することができる。いくつかの実施形態では、ビットが2つの変換可能な残基を含む場合、各ビットの変換可能な残基の一方または両方を選択的に改変してコードを生成することによってデータコード化を実行することができ、これを実行してバイナリコードを生成することができる。多くの実施形態において、変換可能な残基は、ポリメラーゼにコンジュゲートされた増感剤と共に、光、電圧、酵素剤、化学試薬、および/または酸化還元剤を介して改変される。
【0115】
本開示で提供される様々な実施形態は、鋳型依存性DNAポリメラーゼおよびコンジュゲート化増感剤を利用して、ポリメラーゼが鋳型に沿って移動する際に核酸塩基における修飾を選択的にコード化する。データをその配列によってDNAに保存する他の鋳型非依存性酵素的手法とは異なり、データはDNA鋳型の特定の修飾物に保存することができる。多くの実施形態において、DNA修飾は、酵素によってコピーされている際にDNAに付与される光または電子または電位パルスによって構造的に切り替わるように設計される。光または電子パルスを使用してDNAの化学的変化を誘導することができ、これらの改変の配列はデータの「ビット」(例えば、1と0のバイナリビット)として機能することができる。酵素の近くのヌクレオチドに光または酸化還元エネルギーを局在化させるのを助けるために、いくつかの実施形態では、ポリメラーゼは、光または電子/ホールからエネルギーを捕捉し(酸化還元)、次いでDNA鋳型の近くの反応性基にエネルギーを伝達する1またはそれを超える増感剤基を含むように修飾される。様々な実施形態はまた、光または酸化還元によって修飾されて局所的な化学的または光学的変化をもたらすことができる基を有するDNA鋳型の設計に関する。ポリメラーゼが鋳型に沿って進行し、デオキシヌクレオシド三リン酸(dNTP)の存在下でコピーを作製すると、多くの実施形態に従って光または酸化還元電位のパルスが印加され、鎖に沿って次々に局所的な化学改変が生じる。構造の配列およびそれらの改変は、デジタルデータをコード化することができる。その後、このデータは、電流変化によるナノポアシーケンシング(例えば、Oxford Nanopore Technologies PromethION、MinIONおよびGridIONシーケンシングプラットフォーム(英国オックスフォード))、プラズモニックナノポアデバイスを使用する光学シーケンシング、ショットガンシーケンシング法、またはPacific Bioscienceの単一分子リアルタイム(SMRT)シーケンシングプラットフォーム(カリフォルニア州メンロパーク)を含むシーケンシング方法によって「読み取り」することができる。また、データを読み取るためにナノポアデバイスを製作または製造することができる。ナノポアは、固体材料から構成され得るか、または1またはそれを超えるタンパク質を含有し得る。
【0116】
いくつかの実施形態では、書き込み済み(コード化された)核酸ポリマーのデータは、標準的な核酸保存プロトコルに従って保存される。例えば、データ書き込み済みの核酸ポリマーは、室温またはより低温(例えば、-20℃)で、乾燥状態、沈殿物として、または適切なヌクレアーゼフリー溶液中で保存することができる。保存された核酸には、(例えば)アルコール、キレート剤およびヌクレアーゼ阻害剤等の安定剤が含まれ得る。
【0117】
いくつかの実施形態では、光または酸化還元改変可能な基(例えば、化学的に修飾可能な部分)を含む反復配列の鋳型DNAが利用される。反復配列鋳型の利点は、それが改変可能な基の予測可能かつ調整可能な間隔を有し、ユーザが改変可能な基に対するDNAポリメラーゼの近接を制御することを可能にすることである。しかし、多くの実施形態において、非反復配列DNAを利用することができ、これは生物学的供給源から得て、後で改変可能な基で標識することができる。非反復DNAの利点は、生物源由来のDNAが非常に長い長さを有することができ、増感ポリメラーゼのユニークなプライマー結合部位として機能することができるユニーク配列を3’末端に含むことができることである。
【0118】
DNAにデータを保存することに加えて、本明細書に開示される様々な方法は、DNAの局所標識、DNA折り畳みおよびナノ構造の形成の制御、DNAとのタンパク質相互作用の制御、ならびにメチル化パターンの改変を含む他の用途にも使用され得る。
【0119】
いくつかの実施形態では、ポリマービーズ、ガラスビーズ、または鉱物固体等の核酸を捕捉および安定化するための固体支持体の使用も企図される。いくつかの実施形態では、書き込み済みの(コード化された)核酸ポリマーに関するデータは、合成による配列決定(SBS)によって復号されるまたは読み取られる。また、いくつかの実施形態では、Oxford Nanopore Technologies PromethION、MinIONおよびGridIONシーケンシングプラットフォーム(英国オックスフォード)またはPacific Bioscienceの単一分子リアルタイム(SMRT)シーケンシングプラットフォーム(カリフォルニア州メンロパーク)等の、修飾および/または非修飾核酸塩基を読み取ることができるシーケンサーを利用して、データを復号または読み取ることができる。
【0120】
本開示は、合成およびデータコード化を別個の工程に分離することによって、従来の核酸データ保存に関連する制限の多くを克服する。本開示は、それ自体はデータをコード化せず、むしろ書き込まれる能力を有する鋳型を提供する書き込み可能な核酸の長い鎖を産生するための分子戦略を提供する。書き込み可能な核酸ポリマーは、データコード化の前に大量に産生することができる。本開示は、第1の状態から第2の状態に切り替えることができ、したがってバイナリコードで「0」および「1」を定義することができるデータの「ビット」として機能する変換可能な残基(および変換可能な残基の対)を含む組成物およびシステムを更に提供する。本開示は更に、本明細書で提供される書き込み可能な核酸ポリマーに単一分子レベルでデータを書き込むための方法を提供し、したがって無視できる量の材料を消費する。データ書き込みは、(例えば)光パルスまたは電圧パルスを利用して、化学的または物理的に達成することができる。最後に、書き込み済みの核酸ポリマーは長いため、短いDNAよりも分子あたりより多くのデータをコード化し、現在の市場に存在する様々なシーケンサーによって効率的かつ迅速に読み取ることができる。本明細書に記載の組成物、システム、および方法は、コストを低下させながら、核酸データをコード化する速度および密度を大幅に増加させる。
データをコード化するための書き込み可能なポリマー
【0121】
一態様では、データをコード化するための核酸ポリマーであって、ポリマーの主鎖に沿って繰り返し間隔をあけて配置され、ポリマーの主鎖に共有結合的に連結された複数の変換可能な残基を含み、複数の変換可能な残基の各々が、第1の状態を有し、第1の状態から第2の状態に変換可能であり、複数の変換可能な残基が、第1の状態および第2の状態でポリマーに共有結合的に連結されている、核酸ポリマーが本明細書で提供される。いくつかの実施形態では、第1の状態と第2の状態とは異なる(例えば、変換可能な残基は、第1の状態および第2の状態にあるときに異なる構造を有する)。いくつかの実施形態では、第1の状態および第2の状態における複数の変換可能な残基は、ポリメラーゼによって読み取り可能である。いくつかの実施形態では、第1の状態および第2の状態の複数の変換可能な残基は、ポリメラーゼによって読み取り可能であり、増感剤基がポリメラーゼにコンジュゲートされて、連結した変換可能な残基の局所的な化学的改変(例えば、異なる構造)を促進する。いくつかの実施形態では、複数の変換可能な残基は、酵素によって複製されるポリマーの主鎖に沿って繰り返し間隔をあけて配置される。いくつかの実施形態では、複数の変換可能な残基は、ポリメラーゼが既存のDNA鎖をコピーする際にポリマーに組み込まれる。
【0122】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載のポリマーは核酸ポリマーであり、複数の変換可能な残基は変換可能な残基である。
【0123】
特定の実施形態では、変換可能な残基は、各残基が独立して変換され得るように空間分解能を提供するために別々に繰り返し間隔をあけて配置される。いくつかの実施形態では、任意の適切なスペーサー(例えば、書き込み不可能、すなわちデータ書き込み機構に反応しない)は、変換可能な残基の間にある。いくつかの実施形態では、ポリマー主鎖によって連結された残基をスペーサーとして利用することができる。いくつかの実施形態では、スペーサーは、書き込み機構および/または書き込みデバイスの空間分解能に従って変換可能な残基の間に間隔をあけて配置される。いくつかの実施形態では、スペーサーは残基であり、これは書き込み機構に対して非反応性であり得る。様々な実施形態では、ポリマーは、データをラベル付けするためのデリミタ記号および/またはデータタグを更に含む。
【0124】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載のポリマー(例えば、核酸ポリマー)は、ポリマーの主鎖を介して連結された複数のスペーサー残基を更に含み、複数の変換可能な残基の各々は、複数のスペーサー残基のうちの1またはそれを超えるスペーサー残基によって分離されている。いくつかの実施形態では、複数の変換可能な残基間の反復間隔は、ポリマー上のデータをコード化するための書き込み機構の分解能に適合する。いくつかの実施形態では、2つの隣接する変換可能な残基間の反復間隔は、データをポリマーにコード化するためのデータコード化機構の分解能に等しいかまたはそれを超える。いくつかの実施形態では、書き込み機構の分解能は少なくとも1nmである。いくつかの実施形態では、複数のスペーサー残基は、変換可能な残基の読み取りを妨げない。いくつかの実施形態では、ポリマー中の複数のスペーサー残基は、同じスペーサー残基である。いくつかの実施形態では、複数のスペーサー残基は、2またはそれを超える異なるスペーサー残基(例えば、異なる天然に存在する核酸塩基等の異なる核酸塩基)を含む。
【0125】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載のポリマー(例えば、核酸ポリマー)は、スペーサー残基から本質的になる。
【0126】
いくつかの実施形態では、複数の変換可能な残基の各々は、2、3、4、5、6、7、8、9、10、20、30、40または50個のスペーサー残基によって分離されている。いくつかの実施形態では、複数の変換可能な残基の各々は、6個のスペーサー残基によって分離されている。いくつかの実施形態では、複数のスペーサー残基は、天然に存在する核酸塩基、天然に存在しない核酸塩基、テトラヒドロフラン無塩基残基、またはエチレングリコール残基である。複数のスペーサー残基は、天然に存在する核酸塩基である。
【0127】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載のポリマー(例えば、核酸ポリマー)は、ポリマーの主鎖に連結された1またはそれを超えるデリミタを更に含む。いくつかの実施形態では、1またはそれを超えるデリミタの各々は、1またはそれを超える天然に存在する核酸塩基または天然に存在しない核酸塩基を含む。いくつかの実施形態では、1またはそれを超えるデリミタは、天然に存在する核酸塩基を含む。いくつかの実施形態では、1またはそれを超えるデリミタは、ポリマー内の2またはそれを超える隣接するデータフィールドを分離する。
【0128】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載のポリマー(例えば、核酸ポリマー)は、1またはそれを超えるデータタグを更に含む。いくつかの実施形態では、1またはそれを超えるデータタグは、1またはそれを超える天然に存在する核酸塩基または天然に存在しない核酸塩基を含む。いくつかの実施形態では、ポリマーは核酸ポリマーであり、1またはそれを超えるデータタグは、核酸ポリマーの5’末端または3’末端に存在する。いくつかの実施形態では、1またはそれを超えるデータタグは、核酸ポリマーが合成される間、複数の変換可能な残基が第2の状態に変換される間、または複数の変換可能な残基が第2の状態に変換された後のライゲーションを介して核酸ポリマーに組み込まれる。
【0129】
いくつかの実施形態では、ポリマーは、任意の数または長さのモノマー単位、例えば、10個程度の短いモノマー単位から100,000個より長いモノマー単位を有することができる。様々な実施形態において、ポリマーは、500を超えるモノマー単位、1,000を超えるモノマー単位、5000を超えるモノマー単位、10,000を超えるモノマー単位、50,000を超えるモノマー単位、または100,000を超えるモノマー単位を有する。
【0130】
いくつかの実施形態では、核酸ポリマーは、10個を超える変換可能な残基を含む。いくつかの実施形態では、核酸ポリマーは、100個を超える変換可能な残基を含む。いくつかの実施形態では、核酸ポリマーは、500個を超える変換可能な残基を含む。いくつかの実施形態では、核酸ポリマーは1,000個を超える変換可能な残基を含む。いくつかの実施形態では、核酸ポリマーは、10,000個を超える変換可能な残基を含む。いくつかの実施形態では、核酸ポリマーは、100,000個を超える変換可能な残基を含む。
【0131】
いくつかの実施形態では、ポリマー(例えば、核酸ポリマー)中の変換可能な残基(例えば、変換可能な核酸塩基)に対するモノマー単位(例えば、ヌクレオチド)の総数の比は、2~100である。いくつかの実施形態では、ポリマー(例えば、核酸ポリマー)中の変換可能な残基に対するモノマー単位(例えば、ヌクレオチド)の総数の比は、2~10である。いくつかの実施形態では、ポリマー(例えば、核酸ポリマー)中の変換可能な残基に対するモノマー単位(例えば、ヌクレオチド)の総数の比は、10~50である。
【0132】
いくつかの実施形態では、ポリマー(例えば、核酸ポリマー)中の変換可能な残基(例えば変換可能な核酸塩基)に対するモノマー単位(例えば、ヌクレオチド)の総数の比は、10~100である。いくつかの実施形態では、ポリマー(例えば、核酸ポリマー)中の変換可能な残基(例えば変換可能な核酸塩基)に対するモノマー単位(例えば、ヌクレオチド)の総数の比は、20~100である。いくつかの実施形態では、ポリマー(例えば、核酸ポリマー)中の変換可能な残基(例えば、変換可能な核酸塩基)に対するモノマー単位(例えば、ヌクレオチド)の総数の比は、20~50である。いくつかの実施形態では、ポリマー(例えば、核酸ポリマー)中の変換可能な残基(例えば変換可能な核酸塩基)に対するモノマー単位(例えば、ヌクレオチド)の総数の比は、100よりも大きい。
書き込み可能な核酸ポリマー
【0133】
特定の実施形態では、本明細書に記載のポリマー(例えば、書き込み可能なポリマー)は核酸ポリマーであり、複数の変換可能な残基は変換可能な残基である。特定の実施形態では、本明細書に記載されるポリマーは、核酸ポリマーの主鎖に沿って繰り返し間隔をあけて配置され、核酸ポリマーの主鎖に共有結合的に連結された複数の変換可能な残基を含み、複数の変換可能な残基の各々は、第1の状態(例えば、第1の状態構造を有する)を有し、第1の状態から第2の状態(例えば、第2の状態構造を有する)に変換することができ、複数の変換可能な残基が、第1の状態および第2の状態で核酸ポリマーに共有結合的に連結されている、核酸ポリマーである。いくつかの実施形態では、第1の状態および第2の状態は異なり、両方ともポリメラーゼによって読み取り可能である。いくつかの実施形態では、第1の状態および第2の状態は異なり、両方ともポリメラーゼによって読み取り可能であり、増感剤基がポリメラーゼにコンジュゲートされて、連結された変換可能な残基(例えば、化学的に改変可能基または第1の状態から第2の状態に変化する構造)の局所的な化学的改変を促進する。いくつかの実施形態では、第2の状態の核酸塩基は、天然核酸塩基である。いくつかの実施形態では、第2の状態の核酸塩基は、スカーレス(scarless)(すなわち、グアニン、アデニン、チミンまたはシトシン等のネイティブ形態の核酸塩基)である。
【0134】
いくつかの実施形態では、未書き込み状態は未変換状態とも呼ばれ、書き込み済みの状態は変換状態とも呼ばれる。
【0135】
本開示の実施形態による化合物は、データビットに類似する、ポリマーに沿って繰り返される複数の変換可能な残基を有する核酸に基づく。各変換可能な残基は、改変されていない状態および少なくとも第1の改変された状態の2またはそれを超える状態で存在することができ、変換可能な残基の改変された状態の集合は、データコード(例えば、バイナリコード)を示す。いくつかの実施形態では、書き込み可能な核酸ポリマーは、変換され得る「未書き込み」状態の複数の変換可能な残基を用いて合成される。いくつかの実施形態では、2つの異なる変換可能な残基が、1ビットをコード化するための対として用いられ、一方の変換は「0」をコード化し、他方または両方の変換は「1」をコード化する。これらの書き込み可能な核酸は、長さが長くなる(例えば、5~50kb、またはそれを超える)ように産生することができ、データ書き込みの前にバルクで製造することができる。
【0136】
いくつかの実施形態では、1ビットのデータをコード化するために、単一の変換可能な残基(例えば、化学的に改変可能な基または変換可能なヌクレオチド)が利用される。いくつかの実施形態では、データのビットのコード化を可能にするために、2またはそれを超える変換可能な残基のセットが利用される。いくつかの実施形態では、1ビットのコード化を可能にするための対として、2つの異なる変換可能な残基の対が使用される。2つの異なる変換可能な残基の対を利用するいくつかの実施形態では、第1の残基の変換は「0」をコード化し、他方の残基の変換は「1」をコード化する。2つの異なる変換可能な残基の対を利用するいくつかの実施形態では、1つの残基の変換は「0」をコード化し、両方の残基の変換は「1」をコード化する。
【0137】
いくつかの実施形態では、書き込み可能な核酸ポリマーは、ポリマー主鎖によって連結された残基に結合した複数の変換可能な残基(例えば、化学的に改変可能な基)を含む。特定の実施形態では、変換可能な残基のビットは、各基が独立して改変され得るように空間分解能を提供するために別々に繰り返し間隔をあけて配置される。空間分解能は、少なくとも部分的に、コンジュゲート化増感剤を有するポリメラーゼに依存する。空間分解能は、実験によって評価および最適化することができる。光増感の距離効果は、文献(例えば、K.A.Ryuら、Nat Rev Chem.2021;5:322-337;and M.Klausenら、Chempluschem.201;84:589-598を参照;その開示内容は参照により本明細書に組み込まれる)に記載されている。変換可能な残基間の任意の適切なスペーサーを利用することができる。いくつかの実施形態では、変換可能な残基が結合していない残基をスペーサーとして利用することができる。二本鎖DNAポリマー中の核酸塩基間の距離は約0.34nmであることから、多数の実施形態によれば、3つのスペーサーが、改変誘導源(alteration-inducing source)の各ナノメートルの空間分解能に対して利用される。いくつかの実施形態では、スペーサーは核酸塩基であり、これは書き込み機構に対して非反応性であり得る。様々な実施形態において、書き込み可能な核酸ポリマーは、各々が残基の特定の配列によって提供され得る、データを標識するためのデリミタおよび/またはデータタグを更に含み得る。
【0138】
いくつかの実施形態では、データコード化可能な核酸ポリマーは、ポリマー主鎖によって連結された複数の変換可能な残基(例えば、変換可能な核酸塩基または化学的に改変可能な基)を含む。特定の実施形態では、変換可能な残基は、確率論的にまたは不規則に間隔をあけて別々に配置されているが、データは、核酸塩基を同定し、選択的に変換してコード化されたポリマーを得ることによってコード化される。確率論的にまたは不規則に間隔をあけて配置された変換可能な残基を利用する実施形態のいくつかでは、データコード化機構は、コードに従って正しい変換可能な残基に達するまで、必要に応じて変換可能な残基をスキップすることができる。特定の実施形態では、変換可能な残基(または変換可能な残基もしくは変換可能な核酸塩基のセット)は、各変換可能な残基(または変換可能な残基の各セット)が独立して変換され得るような空間分解能を提供するために別々に繰り返し間隔をあけて配置される。空間分解能は、少なくとも部分的に、書き込み機構に依存する。例えば、1nmの分解能を有する光学光源およびデバイスを使用して核酸塩基を改変させる場合、各変換可能な残基(または残基の各セット)は、少なくとも1nmだけ分離される必要がある。変換可能な残基(または残基の各セット)間の任意の適切なスペーサーを利用することができる。いくつかの実施形態では、ポリマー主鎖によって連結された残基をスペーサーとして利用することができる。二本鎖DNAポリマー中の残基間の距離は約0.34nmであることから、多数の実施形態によれば、3つのスペーサーが、改変誘導源の各ナノメートルの空間分解能に対して利用される。いくつかの実施形態では、スペーサーは残基(例えば、核酸塩基)であり、これは書き込み機構に対して非反応性であり得る。様々な実施形態において、データコード化可能な核酸ポリマーは、各々が残基の特定の配列によって提供され得る、データを標識するためのデリミタおよび/またはデータタグを更に含み得る。
【0139】
図1Aは、複数の変換可能な残基(例えば、化学的に改変可能な基、または図1Aに示す「A」)を有する書き込み可能な核酸ポリマーの例を示す。書き込み可能な核酸ポリマー(例えば、変換可能な残基を含む核酸ポリマー)は、一本鎖または二本鎖分子として存在することができる反復鎖配列を含む。特に、書き込みは、増感剤とコンジュゲートされたポリメラーゼを利用して行うことができることから、ポリメラーゼおよび反応条件に応じて、ポリメラーゼ媒介書き込みの前に二本鎖分子の2本の鎖の分離を行う必要があり得る。いくつかの実施形態では、繰り返し単位は、残基に結合した変換可能な残基を含む。いくつかの実施形態では、反復単位は、「0」状態から「1」状態への切り替えに類似して、第1の構造状態から第2の構造状態への化学変化を受け得る、天然または天然に存在しない可能性がある変換可能な残基(例えば、化学的に改変可能な基または変換可能な核酸塩基)を含む。いくつかの実施形態では、同じ残基が、変換可能な残基を結合させるために利用される。したがって、変換可能な残基は、適切な空間分解能に従って核酸ポリマー配列中で繰り返される。任意のデータ書き込みの前に、変換可能な残基が最初に変更されていない状態で提供される。いくつかの実施形態では、書き込み可能な核酸ポリマーの反復単位は、複数の変換可能な残基を含むデータフィールドを含み、スペーサー(例えば、図1Bに示す「S」)またはビットを区切るもしくは分離する配列も含み得る。図1Bは、スペーサーによって分離された複数の変換可能な残基を有するデータフィールド配列の例示的な概念を提供する。図示のように、適切な空間分解能を提供する各変換可能な残基の間に3つのスペーサーが利用される。より長いスペーサー配列は、より低いビット書き込み分解能の場合に使用できることが理解される。いくつかの実施形態では、書き込み可能な核酸ポリマーは、データの種類、日付、または他の情報等の文書を示す1またはそれを超える固有のデータタグ配列を含む。固有のデータタグ配列は、書き込み可能なDNAの合成中に書き込まれてもよく、またはデータ書き込みプロセス中に書き込まれてもよく、またはプライマーを介して末端に付加されてもよく、またはデータ書き込み後にライゲーションもしくはポリメラーゼ伸長を介してデータ鎖に付加されてもよい。
【0140】
様々な実施形態において、書き込み可能な核酸ポリマーは、任意の長さ、例えば、15ヌクレオチド程度の短さから100キロベースより長い長さであり得る。様々な実施形態において、書き込み可能な核酸ポリマーは、500ヌクレオチド長より長く、1000ヌクレオチドより長く、5000ヌクレオチドより長く、10,000ヌクレオチドより長く、50,000ヌクレオチドより長く、または100,000ヌクレオチドより長い。最大長さは、DNAの安定性、それらを作製するために使用される方法、および書き込み済みのデータを読み取るために使用される方法によってのみ制限される。より長い鎖は、分子あたりより多くのデータを含むという利点を有する。特に、現在の配列決定技術は、長さが数万~数十万の塩基の核酸鎖を扱うことができる(N Kono and K.Arakawa,Dev Growth Differ.2019;61:316-326;およびQ Chen and Z.Liu,Sensors(Basel).2019;19:1886を参照;その開示内容は参照により本明細書に組み込まれる)。
【0141】
いくつかの実施形態は、残基に結合し、書き込み可能な核酸ポリマーに組み込むことができる変換可能な残基(例えば、化学的に改変可能な基)に関する。様々な実施形態によれば、変換可能な残基は、制御された反応化学によって第1の化学状態から第2の化学状態に変換することができる基である。変換可能な残基を第1の状態から第2の状態に変換するための任意の適切な機構(光パルス、電圧、酵素剤、化学試薬、および/または酸化還元パルスを含むが、これらに限定されない)を利用することができる。残基は、天然に存在する核酸塩基またはヌクレオチド構造に限定されず、デザイナー核酸塩基等の天然に存在しない核酸塩基またはヌクレオチドを具現化し得ることが理解される。
【0142】
いくつかの実施形態では、構造変化は、天然に存在しない核酸塩基(例えば、第1の構造状態の核酸塩基)の天然またはネイティブ核酸塩基(例えば、第2の構造状態の核酸塩基)への変換をもたらす。いくつかの実施形態では、第2の状態の核酸塩基は、天然核酸塩基である。いくつかの実施形態では、第2の状態の核酸塩基は、スカー(scar)を有さない。いくつかの実施形態では、第1の状態の核酸塩基は、化学的に修飾可能な部分(例えば、除去性光ケージ、除去性クエンチャー、放出性フルオロフォア、酸化または還元による構造変化を受けることができる分子)を含む。いくつかの実施形態では、第1の状態の核酸塩基は、核酸塩基の塩基と化学的に修飾可能な部分との間にリンカー(またはリンカー部分)を含まない。いくつかの実施形態では、第1の状態の核酸塩基が第2の状態に変換されると、化学的に修飾可能な部分が除去されて切断され、それにより、第2の状態の核酸塩基は天然またはネイティブ核酸塩基のままになる。いくつかの実施形態では、第1の状態および第2の状態の核酸塩基は、ポリメラーゼによって読み取り可能または認識可能である。いくつかの実施形態では、第1の状態および第2の状態の核酸塩基がポリメラーゼによって読み取り可能または認識可能である場合、増感剤基がポリメラーゼにコンジュゲートされて、連結された変換可能な残基(例えば、第1の状態から第2の状態に変化し得る化学的に改変可能な基または変換可能な核酸塩基)の局所的な化学的改変を促進する。いくつかの実施形態では、書き込み済みの核酸ポリマーが様々な配列決定方法、例えば合成による配列決定(SBS)によって読み取り可能である場合。
【0143】
多数の実施形態はまた、1またはそれを超えるスペーサー(例えば、図1Bに示す「S」)、デリミタ(例えば、図1Aおよび図1Bに示す「DL」)、およびデータタグを更に組み込む書き込み可能な核酸ポリマーに関する。様々な実施形態によれば、スペーサーは、ポリメラーゼにコンジュゲートされたデータ書き込み増感剤の空間分解能に従って、変換可能な残基(例えば、化学的に改変可能な基)間に必要な空間を提供する書き込み可能な核酸ポリマー内に組み込まれた分子残基である。多くの実施形態において、スペーサーは、データがシーケンサーにおいて読み取られるときに、スペーサーが改変された基を読み取る能力を妨げないように、変換可能な残基と区別可能である。いくつかの実施形態では、スペーサーはデータ書き込み機構と反応しない。いくつかの実施形態では、書き込み可能な核酸ポリマーは、各スペーサーについて同じ残基を繰り返し利用する。しかしながら、いくつかの実施形態では、書き込み可能な核酸ポリマーは、スペーサーとして2またはそれを超える異なる残基を利用する。変換可能な残基と区別可能な任意の適切な残基は、天然に存在する核酸塩基、天然に存在しない核酸塩基、テトラヒドロフラン無塩基残基、および/またはエチレングリコール残基を含むスペーサーとして利用され得る。
【0144】
いくつかの実施形態では、スペーサーは、変換可能な残基および/または変換された核酸塩基と区別可能であり、その結果、データがシーケンサーにおいて読み取られるとき、スペーサーは、データをコード化し、コード化されたデータを復号する/読み取る能力を妨げない。いくつかの実施形態では、スペーサーはデータコード化機構と反応しない。
【0145】
様々な実施形態によれば、デリミタは、境界を示す残基である。いくつかの実施形態では、2つの隣接するデータフィールドを分離するためにデリミタが利用される。天然に存在する核酸塩基、天然に存在しない核酸塩基、テトラヒドロフラン無塩基残基、および/またはエチレングリコール残基を含む、変換可能な残基(例えば、化学的に改変可能な基)と区別可能な任意の適切な残基を、デリミタとして利用することができる。
【0146】
別の態様では、書き込み可能な核酸ポリマーを生成するための方法であって、環状一本鎖オリゴヌクレオチド鋳型を提供することであって、環状一本鎖オリゴヌクレオチド鋳型は、変換可能な残基を含む反復データフィールドに相補的である、環状一本鎖オリゴヌクレオチド鋳型を提供することと、核酸プライマー、ポリメラーゼおよび三リン酸ヌクレオチドの存在下で、環状一本鎖オリゴヌクレオチド鋳型をインキュベートすることと、を含み、三リン酸ヌクレオチドが、第1の状態の変換可能な残基を含み、第1の状態から第2の状態に変換することができ、第1の状態と第2の状態とが異なる、方法も本明細書で提供される。
【0147】
いくつかの実施形態では、環状一本鎖オリゴヌクレオチド鋳型は、変換可能な残基に相補的な核酸塩基を含み、相補的核酸塩基は、鋳型と核酸プライマー、ポリメラーゼおよび三リン酸ヌクレオチドとのインキュベーションが、核酸ポリマーの主鎖に沿って繰り返し間隔をあけて配置され、核酸ポリマーの主鎖を介して共有結合的に連結された複数の変換可能な残基を含む核酸ポリマーを提供するように繰り返し間隔をあけて配置されており、複数の変換可能な残基が、第1の状態および第2の状態で核酸ポリマーに共有結合的に連結されている。そのような実施形態では、ポリメラーゼは、本明細書に記載の増感剤にコンジュゲートされ得る。
【0148】
いくつかの実施形態では、反復データフィールドは、スペーサー核酸塩基を更に含み、三リン酸ヌクレオチドは、三リン酸スペーサーヌクレオチドを更に含む。
【0149】
別の態様では、書き込み可能な核酸ポリマーを生成するための方法であって、複数のオリゴマーを化学合成することであって、各オリゴマーが、核酸ポリマー主鎖に沿って繰り返し間隔をあけて配置され、核酸ポリマー主鎖を介して連結された複数の変換可能な残基を含み、複数の変換可能な残基の各々が、第1の状態を有し、第1の状態から第2の状態に変換することができ、複数の変換可能な残基が、第1の状態および第2の状態で核酸ポリマーに共有結合的に付着しており、第1の状態と第2の状態が異なる、複数のオリゴマーを化学合成することと、複数のオリゴマーをライゲーションして、書き込み可能な核酸ポリマーを形成することとを含む、方法も本明細書で提供される。
【0150】
いくつかの実施形態では、複数のオリゴマーの各々は、核酸ポリマーの主鎖を介して連結された複数のスペーサー残基を含み、複数の変換可能な残基の各々は、複数のスペーサー残基のうちの1またはそれを超えるスペーサー残基によって分離されている。いくつかの実施形態では、ライゲーション工程は化学的ライゲーションを介する。いくつかの実施形態では、ライゲーション工程は、酵素的ライゲーションを介する。いくつかの実施形態では、相補的DNAスプリントが、ライゲーション工程で使用される。
【0151】
いくつかの実施形態では、本方法は、ライゲーション工程の前にオリゴマーに対する複数の相補体をアニーリングすることを更に含む。
【0152】
いくつかの実施形態では、データタグは、特定のデータを示す一連の残基(典型的には4またはそれを超える残基)である。例えば、データタグは、データの種類、日付、データソース、または任意の他の情報を示すことができる。天然に存在する核酸塩基、天然に存在しない核酸塩基、テトラヒドロフラン無塩基残基、および/またはエチレングリコール残基を含む、変換可能な残基(例えば、化学的に改変可能な基)と区別可能な任意の適切な残基を、データタグ残基として利用することができる。
【0153】
書き込み可能な核酸は、長い核酸ポリマーを生成するための任意の適切な方法によって生成することができる。一般に、様々な実施形態によれば、ポリメラーゼ伸長または化学合成を利用して、書き込み可能な核酸ポリマーを生成する。ポリメラーゼ伸長が利用される場合、ポリメラーゼによって重合され得る適切な残基が利用される。そのような態様では、増感剤がポリメラーゼにコンジュゲートされ得る。化学合成が利用される場合、より広い範囲の残基が取り込みのために利用可能であるが、一般に、合成はより短い核酸鎖(例えば、10~200残基)をもたらし、それは一緒に連結されてより長い核酸ポリマーを生成することができる。ポリメラーゼ法およびライゲーション法の両方が、一本鎖状態または二本鎖状態のいずれかで反復書き込み可能ポリマーを構築することができることが理解される。いくつかの実施形態では、化学的に修飾可能な部分は、ポリマーに組み込む前に残基(例えば、変換可能な残基モノマー)に結合される。いくつかの実施形態では、変換可能な残基(例えば、化学的に改変可能な基)は、合成後のポリマーの反復した変換可能な残基または他の残基のセットに結合している。
【0154】
図2には、ポリメラーゼ伸長を利用した書き込み可能な核酸の生成例が提供され、この図は特に酵素ローリングサークル反応法を示す。特定の実施形態では、環状一本鎖DNAオリゴヌクレオチドを鋳型として利用する(M.G.Mohsen and E.T.Kool,Acc Chem Res.2016;49:2540-2550;その開示は参照により本明細書に組み込まれる)。環状一本鎖DNAオリゴヌクレオチドは、結合した(または結合するための)変換可能な残基を有する残基を含む反復データフィールドに相補的である。様々な実施形態において、環状一本鎖DNAオリゴヌクレオチドは、スペーサー、デリミタおよび/またはデータタグを更に含む。様々な実施形態では、環状DNAサイズは、20~10,000ヌクレオチド長、好ましくは20~200ヌクレオチド長、より好ましくは45~95ヌクレオチド長である。
【0155】
反復データフィールドをコード化する核酸サークル鋳型が構築されると、それは、核酸プライマー、ポリメラーゼ、ポリメラーゼ活性を支持するための適切な緩衝液、および核酸ポリマーを生成するために適切なヌクレオシド三リン酸と共にインキュベートされる。プライマーがサークルに結合し、ポリメラーゼがサークルの長い反復相補体を産生する。ローリングサークル核酸合成は、何千ものヌクレオチドで進行し、長いDNAリピートを生成することが実証されている(M.M.Aliら、Chem Soc Rev.2014;43:3324-41;およびM.G.Mohsen and E.T.Kool,Acc Chem Res.2016 Nov 15;49(11):2540-2550を参照(その開示内容は参照により本明細書に組み込まれる))。いくつかの実施形態では、プライマーの離れた5’末端に含まれ得、DNA環と非相補的なままであるデータタグが利用される。この場合のローリングサークルDNA合成は、5’末端に結合したデータタグを有する反復核酸ポリマーをもたらす。書き込み可能な核酸ポリマーが二本鎖であることが望ましい場合、反復データフィールドに相補的なプライマーをポリメラーゼおよび第1のポリマーに相補的なヌクレオチドと共に使用して、相補鎖を生成することができる。
【0156】
図3は、書き込み可能な核酸を生成するための化学合成およびライゲーション方法を示す。いくつかの例では、書き込み可能な核酸に組み込むためのヌクレオチドは、効率的なポリメラーゼ基質、特に多くの天然に存在しない核酸塩基ではなく、ポリメラーゼを有効に使用して核酸ポリマーの長い鎖を生成する能力を妨げる。化学合成およびライゲーション手法では、短い書き込み可能な核酸ポリマーをDNA合成装置上で構築し、これはホスホラミダイト合成プロトコルを利用して行うことができ、典型的には10~200ヌクレオチドのポリマー長をもたらす。ライゲーションを補助するために、いくつかの実施形態では、短合成ポリマーは、5’-リン酸基および未変性の3’-ヒドロキシル基を更に含む。ATP(例えば、T4 DNAリガーゼ)の存在下でのDNAリガーゼ酵素は、短いポリマーを一緒につなぎ合わせて、長い反復ポリマーを生成する。いくつかの実施形態では、反応性末端にハイブリダイズすることができる相補的な「スプリント」核酸オリゴヌクレオチドを利用してライゲーションを補助する。
【0157】
いくつかの実施形態では、二本鎖書き込み可能核酸を生成するために、5’-リン酸基を含む核酸相補体が合成される。ライゲーションの前に、補体鎖は書き込み可能な核酸とハイブリダイズする。いくつかの実施形態では、補体鎖のハイブリダイゼーションは、リガーゼ酵素およびATPを利用して二本鎖書き込み可能核酸ポリマーに効率的に連結することができる粘着末端を有する二本鎖をもたらす。
【0158】
リガンド由来ポリマー分子は、ある範囲のポリマー長をもたらし得る。いくつかの実施形態では、可変長のポリマーの混合物がデータコード化に使用される。いくつかの実施形態では、特定の長さが富化および/または単離され(例えば、電気泳動によって)、データコード化に使用される。
【0159】
いくつかの実施形態は、熱安定性ポリメラーゼ(例えば、サーモコッカス・リトラリス(Thermococcus litoralis)由来のDNAポリメラーゼ)を使用した反復拡大による書き込み可能な核酸ポリマーのポリメラーゼ拡大に関する。そのような実施形態では、増感剤を熱安定性ポリメラーゼにコンジュゲートさせることができる。反復領域のポリメラーゼ拡大に関する更なる詳細については、J.S.Hartig and E.T.Kool(J.S.Hartig and E.T.Kool,Nucleic Acids Res.2005;33:4922-7、その開示は参照により本明細書に組み込まれる)を参照されたい。
【0160】
様々な実施形態によれば、連結されるデータフィールドDNAの末端が、不十分なハイブリダイゼーションまたは酵素を妨害する天然に存在しない構造のためにリガーゼ酵素基質として非効率的である場合、良好なハイブリダイゼーション/ライゲーションを確実にするために天然核酸塩基をライゲーション部位に付加することができる。いくつかの実施形態では、化学的ライゲーションを利用して、書き込み可能な核酸ポリマーを生成する。化学的ライゲーションは、臭化シアンを用いて、カルボジイミド試薬を用いて、または一方の核酸ポリマー鎖末端上のホスホロチオエート基および他方の核酸ポリマー鎖末端上の(例えば)ヨウ化物等の脱離基の求核反応によって達成することができる。化学的ライゲーションは、リン酸末端とヒドロキシル末端とのつなぎ合わせを含むが、反応は、5’-リン酸および3’-ヒドロキシル、または3’-リン酸および5’-ヒドロキシルを用いて行われてもよい。そのような化学的ライゲーションの方法が記載されている(E.T.Kool,Acc Chem Res.1998;31:502-510;C.Obianyorら、Chembiochem.2020;21:3359-3370;およびY.Xu and E.T.Kool,Nucleic Acids Res.1999;27:875-81;その開示内容は参照により本明細書に組み込まれる)。
【0161】
データをコード化するための核酸ポリマーであって、核酸ポリマーの主鎖に沿って繰り返し間隔をあけて配置され(例えば、ほぼ規則的に間隔をあけて配置され)、核酸ポリマーの主鎖に共有結合的に連結された複数の変換可能な残基を含み、複数の変換可能な残基の各々が、第1の状態を有し、第1の状態から第2の状態に変換可能であり、第1の状態と第2の状態とが異なり、複数の変換可能な残基が、第1の状態および第2の状態で核酸ポリマーに共有結合的に連結されており、核酸ポリマーが、ポリメラーゼをプライミングするための核酸ポリマーの3’末端に配列を含む、データをコード化するための核酸ポリマーの様々な実施形態が本明細書に記載される。いくつかの実施形態では、核酸ポリマーは、一本鎖核酸ポリマーである。いくつかの実施形態では、配列は、核酸ポリマーの3’末端にのみ存在するユニーク配列である。いくつかの実施形態では、核酸ポリマーは、デオキシリボ核酸(DNA)、リボ核酸(RNA)、ホスホロチオエートDNA、グリセロール核酸(GNA)、トレオース核酸(TNA)、ロックド核酸(LNA)、またはそれらの組み合わせを含む。いくつかの実施形態では、核酸ポリマーは、10個を超える変換可能な残基を含む。いくつかの実施形態では、核酸ポリマー中の変換可能な残基のヌクレオチドの総数の比は、2~100である。いくつかの実施形態では、複数の変換可能な残基は、天然に存在しない核酸塩基である。いくつかの実施形態では、複数の変換可能な残基は、修飾された天然に存在する核酸塩基または天然に存在する核酸塩基の誘導体である。いくつかの実施形態では、複数の変換可能な残基の各々は、化学的に修飾可能な部分を含む。いくつかの実施形態では、複数の変換可能な残基の各々は、化学的に修飾可能な部分が変換可能な残基の塩基に直接結合している。いくつかの実施形態では、複数の変換可能な残基の各々は、化学的に修飾可能な部分がリンカーまたは側鎖なしで塩基に結合している。いくつかの実施形態では、複数の変換可能な残基は、糖を介して核酸ポリマーの主鎖に共有結合的に連結されている。いくつかの実施形態では、化学的に修飾可能な部分は、光、電圧、酵素剤、化学試薬、または酸化還元剤によって活性化可能であり、それによって第1の状態から第2の状態に変換される。いくつかの実施形態では、化学的に修飾可能な部分は光によって活性化可能であり、それによって第1の状態から第2の状態に変換される。いくつかの実施形態では、第1の状態から第2の状態への変換は、不可逆反応を介して起こる。いくつかの実施形態では、変換可能な残基は、第2の状態への変換後に天然に存在する核酸塩基になる。いくつかの実施形態では、核酸ポリマーは変換可能な残基の2またはそれを超える異なるセットを含み、変換可能な残基の各セットは、第1の状態を有し、第1の状態から第2の状態に変換可能であり、第1の状態と第2の状態とは異なる。いくつかの実施形態では、複数の変換可能な残基の各々は、光によって活性化され得る化学的に修飾可能な部分を含む。いくつかの実施形態では、変換可能な残基の2またはそれを超える異なるセットは、異なる波長の光によって活性化可能である。いくつかの実施形態では、変換可能な残基の第1のセットは、第1の波長の光によって活性化可能であり、変換可能な残基の第2のセットは、第2の波長の光によって活性化可能であり、第1の波長と第2の波長は異なる。いくつかの実施形態では、化学的に修飾可能な部分は、1またはそれを超える光除去性基を含む。いくつかの実施形態では、化学的に修飾可能な部分は、脱離基である。いくつかの実施形態では、変換可能な残基は、
【化7】
である。
【0162】
いくつかの実施形態では、核酸ポリマー中の複数の変換可能な残基の全てが同じ構造を有する。いくつかの実施形態では、複数の変換可能な残基は、325nm、360nmまたは400nmの波長の光によって変換され得る。いくつかの実施形態では、複数の変換可能な残基は、400nm~850nmの波長の光によって変換することができる。いくつかの実施形態では、複数の変換可能な残基の各々は、酸化還元によって活性化可能な化学的に修飾可能な部分を含む。いくつかの実施形態では、化学的に修飾可能な部分は、局所的酸化によって活性化され得る。いくつかの実施形態では、化学的に修飾可能な部分は、電極を用いた酸化によって活性化することができる。いくつかの実施形態では、複数の変換可能な残基の第1の状態および第2の状態は、配列決定によって読み取り可能である。いくつかの実施形態では、複数の変換可能な残基の第1の状態および第2の状態は、ナノポアシーケンシングによって読み取り可能である。いくつかの実施形態では、複数の変換可能な残基の第1の状態および第2の状態は、合成による配列決定によって読み取り可能である。いくつかの実施形態では、複数の変換可能な残基の各々は、独立して選択的に変換され得る。いくつかの実施形態では、核酸ポリマーは、核酸ポリマーの主鎖を介して連結された複数のスペーサー残基を更に含み、複数の変換可能な残基の各々は、複数のスペーサー残基のうちの1またはそれを超えるスペーサー残基によって分離されている。いくつかの実施形態では、複数の変換可能な残基間の反復間隔は、核酸ポリマー上のデータをコード化するための書き込み機構の分解能に適合する。いくつかの実施形態では、書き込み機構の分解能は少なくとも1nmである。いくつかの実施形態では、複数のスペーサー残基は、変換可能な残基の読み取りを妨げない。いくつかの実施形態では、核酸ポリマー中の複数のスペーサー残基は、同じスペーサー残基である。いくつかの実施形態では、複数のスペーサー残基は、2またはそれを超える異なるタイプのスペーサー残基を含む。いくつかの実施形態では、核酸ポリマーは、スペーサー残基から本質的になる。いくつかの実施形態では、複数の変換可能な残基の各々は、2、3、4、5、6、7、8、9、10、20、30、40または50個のスペーサー残基によって分離されている。いくつかの実施形態では、複数のスペーサー残基は、天然に存在する核酸塩基である。いくつかの実施形態では、核酸ポリマーは、核酸ポリマーの主鎖に連結された1またはそれを超えるデリミタを更に含む。いくつかの実施形態では、1またはそれを超えるデリミタの各々は、1またはそれを超える天然に存在する核酸塩基または天然に存在しない核酸塩基を含む。いくつかの実施形態では、1またはそれを超えるデリミタは、天然に存在する核酸塩基を含む。いくつかの実施形態では、1またはそれを超えるデリミタは、核酸ポリマー内の2またはそれを超える隣接するデータフィールドを分離する。いくつかの実施形態では、核酸は、1またはそれを超えるデータタグを更に含む。いくつかの実施形態では、1またはそれを超えるデータタグは、1またはそれを超える天然に存在する核酸塩基または天然に存在しない核酸塩基を含む。いくつかの実施形態では、1またはそれを超えるデータタグは、核酸ポリマーの5’末端または3’末端に存在する。いくつかの実施形態では、1またはそれを超えるデータタグは、核酸ポリマーの合成中、複数の変換可能な残基の第2の状態への変換中、または複数の変換可能な残基が第2の状態に変換された後のライゲーションを介して、核酸ポリマーに組み込まれる。
【0163】
増感剤とコンジュゲートした核酸ポリメラーゼを含み、増感剤が光または酸化還元エネルギーを捕捉および伝達することができる分子である、データを核酸ポリマーにコード化する際に使用するためのポリメラーゼの様々な実施形態が本明細書に記載される。いくつかの実施形態では、増感剤は、システイン側鎖を介してポリメラーゼにコンジュゲートされる。いくつかの実施形態では、増感剤は、
【化8】
の構造を有する。
【0164】
別の態様では、本明細書で提供される書き込み可能または書き込み済みポリマー(例えば、核酸ポリマー)を書き込むまたは読み取るためのシステムおよび方法が本明細書で提供される。
【0165】
別の態様では、データ書き込みのためのシステムであって、ポリマーの主鎖に沿って繰り返し間隔をあけて配置され、ポリマーの主鎖に共有結合的に連結された複数の変換可能な残基を含む、書き込み可能なポリマーであって、複数の変換可能な残基の各々が、第1の状態を有し、第1の状態から第2の状態に変換することができ、第1の状態および第2の状態が異なり、第1の状態および第2の状態における複数の変換可能な残基がポリメラーゼによって読み取り可能であり、複数の変換可能な残基が、第1の状態および第2の状態においてポリマーに共有結合的に連結されて結合している、書き込み可能なポリマーと、書き込み可能なポリマーにデータを書き込むデータ書き込みデバイスと、を備えるシステムが本明細書で提供される。
【0166】
いくつかの実施形態では、書き込み可能なポリマーは、書き込み可能な核酸ポリマーであり、複数の変換可能な残基は、変換可能な核酸塩基である。いくつかの実施形態では、データ書き込みデバイスはナノポアを含む。いくつかの実施形態では、データ書き込みデバイスは、光パルス、電圧パルス、酵素剤または酸化還元剤によって複数の変換可能な残基を第2の状態に変換する。いくつかの実施形態では、データ書き込みデバイスは、光パルスによって複数の変換可能な残基を第2の状態に変換する。いくつかの実施形態では、データ書き込みデバイスは光照射デバイスを含む。
【0167】
データ書き込みのためのシステムの様々な実施形態が本明細書で提供され、本システムは、核酸ポリマーの主鎖に沿って繰り返し間隔をあけて配置され(例えば、ほぼ規則的に間隔をあけて配置された)、核酸ポリマーの主鎖に連結された複数の変換可能な残基を含む、書き込み可能な核酸ポリマーであって、複数の変換可能な残基の各々が、第1の状態を有し、第1の状態から第2の状態に変換可能であり、第1の状態と第2の状態とが異なり、複数の変換可能な残基が、第1の状態および第2の状態で核酸ポリマーに共有結合的に連結されており、核酸ポリマーが、核酸ポリマーの3’末端にポリメラーゼをプライミングするための配列を含む、書き込み可能な核酸ポリマーと、増感剤とコンジュゲートした酵素であって、増感剤がエネルギーを受け取り、変換可能な残基に伝達する、酵素と、を含む。いくつかの実施形態では、システムは、光または酸化還元エネルギーを提供するためのエネルギー源を更に含む。いくつかの実施形態では、エネルギー源は光を提供する。いくつかの実施形態では、エネルギー源は、酸化還元エネルギーを提供する。いくつかの実施形態では、増感剤から変換可能な残基へのエネルギーの伝達は、変換可能な残基を第1の状態から第2の状態に変換する。いくつかの実施形態では、変換可能な残基は、
【化9-1】
【化9-2】
である。
【0168】
いくつかの実施形態では、酵素は、書き込み可能な核酸ポリマーに結合する。いくつかの実施形態では、酵素は、ポリメラーゼである。いくつかの実施形態では、酵素は、核酸ポリメラーゼである。いくつかの実施形態では、酵素は、鋳型依存性DNAポリメラーゼである。いくつかの実施形態では、酵素は、鋳型非依存性DNAポリメラーゼである。いくつかの実施形態では、酵素は、ヌクレアーゼである。いくつかの実施形態では、酵素は、ヘリカーゼである。いくつかの実施形態では、酵素は、ニッカーゼである。いくつかの実施形態では、増感剤は、
【化10-1】
【化10-2】
の構造を有する。
【0169】
いくつかの実施形態では、増感剤は、システイン側鎖を介して酵素にコンジュゲートされる。いくつかの実施形態では、本システムは、プライマーオリゴマーを更に含み、プライマーオリゴマーは、核酸ポリマーの3’末端の配列に相補的な配列を有する。いくつかの実施形態では、酵素は、書き込み可能な核酸ポリマーにデータを書き込むときに、書き込み可能な核酸ポリマーに相補的な核ポリマーを産生する。いくつかの実施形態では、本システムは、三リン酸残基のセットを更に含む。いくつかの実施形態では、三リン酸残基は、dNTPまたはNTPである。いくつかの実施形態では、三リン酸残基は、修飾可能なdNTPまたはNTPである。
【0170】
更に別の態様では、書き込み可能なポリマー上にデータを書き込むための方法であって、ポリマーの主鎖に沿って繰り返し間隔をあけて配置され、ポリマーの主鎖を介して共有結合的に連結された複数の変換可能な残基を含む、書き込み可能なポリマーを提供することであって、複数の変換可能な残基の各変換可能な残基が第1の状態を有し、第1の状態から第2の状態に変換することができ、第1の状態と第2の状態が異なり、第1の状態および第2の状態の複数の変換可能な残基がポリメラーゼによって読み取り可能である、書き込み可能なポリマーを提供することと、データ書き込みデバイスを利用して、データコード化ポリマーが生成されるように、1またはそれを超える複数の変換可能な残基を第2の状態に選択的に変換することとを含む、方法が提供される。そのような実施形態では、増感剤がポリメラーゼにコンジュゲートされ得る。
【0171】
本明細書に記載の様々な実施形態は、核酸ポリマーに対するデータの書き込みおよび読み出しに関する。いくつかの実施形態では、ポリマーに沿って繰り返し間隔をあけて配置された変換可能な残基を有する書き込み可能な核酸ポリマーが提供される。提供される書き込み可能な核酸ポリマーはまた、本明細書に記載されるように、スペーサー、デリミタ、およびデータタグを有し得る。様々な実施形態によれば、核酸ポリマーにデータを書き込むために、個々の鎖がナノポアを有するデバイスを通過する。ナノポアを有するデバイスは、変換可能な残基を第1の状態から第2の状態に選択的に変換する方法を更に提供する。変換可能な残基を変換するために、光パルス、電圧パルス(voltage pules)、酵素剤、化学試薬、および/または酸化還元剤を含む(ただし、これらに限定されない)いくつかのシステム、デバイス、および/または方法を利用することができる。DNAを通過させ、局在化光パルスでコード化するためのナノポアデバイスの例は、実施例で提供される実施例に記載されている。
【0172】
いくつかの実施形態では、書き込み可能なポリマーは、書き込み可能な核酸ポリマーであり、複数の変換可能な残基は、変換可能な核酸塩基である。いくつかの実施形態では、データ書き込みデバイスはナノポアを含み、方法は、書き込み可能なポリマーを書き込みデバイスのナノポアに通過させることを更に含み、ナノポアは、複数の1またはそれを超える変換可能な残基を第2の状態に変換することを含む。
【0173】
いくつかの実施形態では、ナノポアは、変換可能な残基を第1の状態から第2の状態に選択的に変換するための光パルスまたは酸化還元エネルギーを提供するプラズモニックナノポアである。いくつかの実施形態では、データ書き込みデバイスは、プラズモニックウェルまたはチャネルを含み、方法は、書き込み可能なポリマーをデータコード化デバイスのプラズモニックウェルまたはチャネルに転写することを更に含み、プラズモニックウェルまたはチャネルは、変換可能な残基を第1の状態から第2の状態に選択的に変換するために光パルスまたは酸化還元エネルギーを提供する。いくつかの実施形態では、データ書き込みデバイスは、光パルス、電圧パルス、酵素剤、または酸化還元剤によって変換可能な残基を第2の状態に選択的に変換する。いくつかの実施形態では、データ書き込みデバイスは、変換可能な残基を光パルスによって第2の状態に選択的に変換する。
【0174】
いくつかの実施形態では、変換可能な残基は、第2の状態への変換後に天然に存在する核酸塩基になる。
【0175】
いくつかの実施形態では、複数の変換可能な残基(例えば、化学的に改変可能な基を含む残基)は、2またはそれを超える変換可能な残基を含み、第1のタイプの変換可能な残基は、第1の波長の光によって活性化可能であり、第2のタイプの変換可能な残基は、第2の波長の光によって活性化可能である。いくつかの実施形態では、複数の変換可能な残基間の反復間隔は、変換可能な残基を選択的に変換するためのデータ書き込みデバイスの分解能に適合する。いくつかの実施形態では、選択的変換工程は、書き込み可能なポリマーの特定の配置を必要としない。いくつかの実施形態では、変換可能な残基の第2の状態への変換は、データコード化ポリマー上で不均一である。いくつかの実施形態では、変換可能な残基の第2の状態への変換は、データコード化ポリマー上の特定の位置に限定されない。
【0176】
いくつかの実施形態では、本方法は、固体支持体上で書き込み可能なポリマー(例えば、書き込み可能なDNA)を延伸またはコーミングすることを更に含む。
【0177】
いくつかの実施形態では、本方法は、色素を用いて変換可能な残基の位置を可視化することを更に含む。
【0178】
いくつかの実施形態では、本方法は、書き込み可能なポリマーを局所的に照射することを更に含む。いくつかの実施形態では、局所照射は、誘導放出抑制(STED)レーザーを使用する。
【0179】
いくつかの実施形態では、本方法は、2またはそれを超える書き込み可能なポリマーからの2またはそれを超えるデータフィールドをエンドツーエンドでつなぎ合わせ、2またはそれを超えるデータフィールドを含む結合ポリマーをもたらすことを更に含む。
【0180】
いくつかの実施形態では、本方法は、書き込みデバイスのナノポアを通る書き込み可能なポリマーの通過速度を制御することを更に含む。
【0181】
いくつかの実施形態では、複数の書き込み可能なポリマーがデータ書き込みデバイスを通過して、同じデータを書き込む(例えば、データ冗長性を生成する)。
【0182】
いくつかの実施形態では、本明細書で提供される書き込み可能な核酸ポリマー上のデータをコード化するために、様々な実施形態によれば、個々のポリマーは、変換可能な残基を制御可能かつ選択的に変換してデータコード(例えば、バイナリデータコード)をコード化することができるように、繰り返しポリマーに衝突する光エネルギーまたは酸化還元エネルギーを有する。
【0183】
ナノポアを有するデバイスが記載されているが、変換可能な残基をデータコードに従って制御可能かつ選択的に変換することができる任意のデバイス。いくつかの実施形態では、デバイスは、変換可能な残基を制御可能かつ選択的に変換するためにプラズモニックチャネルまたはプラズモニックウェルを利用する。
【0184】
書き込み可能な核酸ポリマー上にデータを書き込むための様々な方法であって、(a)核酸ポリマーの主鎖に沿って繰り返し間隔をあけて配置され、核酸ポリマーの主鎖に連結された複数の変換可能な残基を含む書き込み可能な核酸ポリマーを溶液中に提供することであって、複数の変換可能な残基の各々が、第1の状態を有し、第1の状態から第2の状態に変換可能であり、第1の状態と第2の状態とが異なり、複数の変換可能な残基が、第1の状態および第2の状態において核酸ポリマーに共有結合的に連結されており、核酸ポリマーが、核酸ポリマーの3’末端にポリメラーゼをプライミングするための配列を含む、書き込み可能な核酸ポリマーを溶液中に提供することと、(b)エネルギーを受け取って、変換可能な残基に対して伝達する増感剤とコンジュゲートした酵素を提供することと、(c)1またはそれを超える複数の変換可能な残基を第2の状態に選択的に変換し、その結果、データコード化ポリマーを生成することと、を含む、方法が本明細書に記載される。いくつかの実施形態では、増感剤から変換可能な残基へのエネルギーの伝達は、変換可能な残基を第1の状態から第2の状態に変換する。いくつかの実施形態では、増感剤から変換可能な残基へのエネルギーの伝達は、酵素が書き込み可能な核酸ポリマーに沿って移動する際に起こる。いくつかの実施形態では、増感剤から変換可能な残基へのエネルギーの伝達は、酵素が書き込み可能な核酸ポリマーの変換可能な残基に近接しているときに起こる。いくつかの実施形態では、1またはそれを超える複数の変換可能な残基は、光パルス、電圧パルス、酵素剤、または酸化還元電位によって選択的に第2の状態に変換される。いくつかの実施形態では、1またはそれを超える複数の変換可能な残基は、光によって選択的に第2の状態に変換される。いくつかの実施形態では、1またはそれを超える複数の変換可能な残基は、酸化還元電位によって選択的に第2の状態に変換される。いくつかの実施形態では、酵素は、書き込み可能な核酸ポリマーに結合する。いくつかの実施形態では、酵素は、ポリメラーゼである。いくつかの実施形態では、酵素は、核酸ポリメラーゼである。
【0185】
核酸ポリマー上にデータを書き込むための様々な方法であって、(a)核酸ポリマーの3’末端にポリメラーゼをプライミングするための配列を含む鋳型核酸ポリマーを溶液中に提供することと、(b)エネルギーを受け取って伝達することができる増感剤とコンジュゲートされたポリメラーゼを提供することと、(c)複数の変換可能なデオキシヌクレオシド三リン酸(dNTP)を提供することであって、変換可能なdNTPの各々が、第1の状態にある化学的に修飾可能な部分を含み、第1の状態から第2の状態に変換することができ、第1の状態と第2の状態が異なる、複数の変換可能なデオキシヌクレオシド三リン酸(dNTP)を提供することと、(d)ポリメラーゼ(例えば、合成反応)によって変換可能なdNTPを溶液中に組み込み、その一方、増感剤にエネルギーを提供することによって組み込まれた複数の変換可能なdNTPの1またはそれを超えるdNTPを第2の状態に選択的に変換して、それによって、鋳型核酸ポリマーに相補的なデータコード化核酸ポリマーを生成することと、を含む方法が本明細書に記載される。いくつかの実施形態では、変換可能なdNTPは、鋳型核酸ポリマーに相補的な生成されたデータコード化核酸ポリマーの変換可能な残基になる。いくつかの実施形態では、増感剤は、供給されたエネルギーを受け取り、組み込まれた変換可能なdNTP(すなわち、変換可能な残基)に伝達し、変換可能な残基を第1の状態から第2の状態に変換する。いくつかの実施形態では、ポリメラーゼが変換可能な残基に近接している場合、変換可能な残基は選択的に転換される。いくつかの実施形態では、変換可能なdNTPが核酸ポリマー中の変換可能な残基になるように組み込まれると、変換可能な残基は同時に選択的に変換される。いくつかの実施形態では、1またはそれを超える複数の変換可能な残基は、光パルス、電圧パルス、酵素剤、または酸化還元電位によって選択的に第2の状態に変換される。いくつかの実施形態では、1またはそれを超える複数の変換可能な残基は、光によって選択的に第2の状態に変換される。いくつかの実施形態では、1またはそれを超える複数の変換可能な残基は、酸化還元電位によって選択的に第2の状態に変換される。
【0186】
核酸ポリマー上にデータを書き込むための様々な方法であって、(a)エネルギーを受け取って伝達することができる増感剤とコンジュゲートされたポリメラーゼを提供することと、(b)プライマーおよび複数の変換可能なデオキシヌクレオシド三リン酸(dNTP)を提供することであって、変換可能なdNTPの各々が、第1の状態にある化学的に修飾可能な部分を含み、第1の状態から第2の状態に変換することができ、第1の状態と第2の状態が異なる、プライマーおよび複数の変換可能なデオキシヌクレオシド三リン酸(dNTP)を提供することと、(c)ポリメラーゼ(例えば、合成反応)によって溶液中に変換可能なdNTPを組み込み、その一方、エネルギーを増感剤に供給することによって組み込まれた複数の変換可能なdNTPの1またはそれを超えるdNTPを第2の状態に選択的に変換して、それによってデータコード化核酸ポリマーを生成することとを含む、方法が本明細書に記載される。いくつかの実施形態では、変換可能なdNTPは、生成されたデータコード化核酸ポリマーの変換可能な残基になる。いくつかの実施形態では、ポリメラーゼは鋳型非依存性ポリメラーゼである。一実施形態では、ポリメラーゼは、ターミナルデオキシヌクレオチジルトランスフェラーゼ(TdT)である。いくつかの実施形態では、増感剤は、供給されたエネルギーを受け取り、組み込まれた変換可能なdNTP(すなわち、変換可能な残基)に伝達し、変換可能な残基を第1の状態から第2の状態に変換する。いくつかの実施形態では、ポリメラーゼが変換可能な残基に近接している場合、変換可能な残基は選択的に転換される。いくつかの実施形態では、変換可能なdNTPが核酸ポリマー中の変換可能な残基になるように組み込まれると、変換可能な残基は同時に選択的に変換される。いくつかの実施形態では、1またはそれを超える複数の変換可能な残基は、光パルス、電圧パルス、酵素剤、または酸化還元電位によって選択的に第2の状態に変換される。いくつかの実施形態では、1またはそれを超える複数の変換可能な残基は、光によって選択的に第2の状態に変換される。いくつかの実施形態では、1またはそれを超える複数の変換可能な残基は、酸化還元電位によって選択的に第2の状態に変換される。いくつかの実施形態では、酵素は、書き込み可能な核酸ポリマーに結合する。
【0187】
いくつかの実施形態では、変換可能な残基は、
【化11】
から選択される。
【0188】
いくつかの実施形態では、増感剤は、
【化12】
から選択される構造を有する。
【0189】
いくつかの実施形態では、増感剤は、システイン側鎖を介して酵素にコンジュゲートされる。いくつかの実施形態では、本方法は、(c’)溶液にプライマーオリゴマーを添加することであって、プライマーオリゴマーが、核酸ポリマーの3’末端の配列に相補的な配列を有する、溶液にプライマーオリゴマーを添加すること、を更に含む。いくつかの実施形態では、本方法は、(c’’)溶液に三リン酸残基のセットを添加することであって、三リン酸残基のセットが、第1の構造を有する三リン酸残基および第2の構造を有する三リン酸残基を含む、溶液に三リン酸残基のセットを添加すること、を更に含む。いくつかの実施形態では、三リン酸残基のセットは、第1の構造を有する三リン酸残基の最終濃度が第2の構造を有する三リン酸残基の最終濃度よりも低くなるように添加される。いくつかの実施形態では、第1の構造を有する三リン酸残基と第2の構造を有する三リン酸残基との比は、酵素が書き込み可能な核酸ポリマーに沿って移動し、第1の構造を有する三リン酸残基に相補的な鋳型の残基に到達すると、酵素の停止をもたらす。
ポリメラーゼにコンジュゲートした増感剤を用いた核酸へのデータ書き込み
【0190】
いくつかの実施形態は、ポリメラーゼにコンジュゲートされた増感剤を利用して核酸ポリマー上にデータを書き込むことに関する。多くの実施形態において、ポリマーに沿って繰り返し間隔をあけて配置された変換可能な残基を含む書き込み可能な核酸ポリマーが提供される。提供される書き込み可能な核酸ポリマーはまた、本明細書に記載されるように、スペーサー、デリミタ、およびデータタグを有し得る。様々な実施形態によれば、核酸ポリマーにデータを書き込むために、ポリマーは、コンジュゲート化増感剤、dNTPおよびプライマーを含むポリメラーゼを含む緩衝溶液中で提供される。多くの実施形態において、コンジュゲート化増感剤を有するポリメラーゼは、第1の状態から第2の状態への変換可能な残基の改変を選択的に行うために、光または酸化還元源と共に利用される。コンジュゲート化増感剤および光パルスまたは酸化還元を有するポリメラーゼを用いてコード化するデータの例は、実施例で提供される実施例に記載されている。
【0191】
いくつかの実施形態では、コンジュゲート化増感剤を有するポリメラーゼが書き込み可能な核酸ポリマーに沿って移動すると、増感剤分子は、光または酸化還元と併せて、変換可能な残基を選択的に改変する。例えば、コンジュゲートされた光増感剤を有するポリメラーゼがその基に到達すると、変換可能な残基が光パルスを介して第2の状態に改変される場合、必要な光が提供され(例えば、必要な波長および強度)、増感剤の分解能内の変換可能な残基のみが改変される。変換可能な残基が第1の状態のままである場合、コンジュゲートされた光増感剤を有するポリメラーゼが基に到達すると、必要な条件で光が提供されず、基は変換されない。多くの実施形態において、増感剤が局所的な変換可能な残基のみを変換することを確実にするために、変換可能な残基を、増感剤の分解能に従ってスペーサーに隣接させることができる。
【0192】
特定の実施形態では、書き込み可能な核酸ポリマーがナノポアを通過すると、デバイスは、変換可能な残基を変換するための機構を選択的に提供する。例えば、核酸ポリマーがナノポアを通過する際に、核酸塩基が光パルスを介して第2の状態に変換される場合、デバイスは、変換される変換可能な残基にのみ接触するように光を提供することができる。核酸塩基が第1の状態のままである場合、デバイスは、変換可能な残基が変換せずにナノポアを通過するように光を提供しない。多くの実施形態において、デバイスが単一の核酸塩基のみを変換することを確実にするために、変換可能な残基を、デバイスの書き込み分解能に従ってスペーサーに隣接させることができる。例えば、1nmの分解能を有する光学光源およびデバイスを使用して核酸塩基を改変させる場合、変換可能な各変換可能な塩基は、少なくとも1nmだけ分離される必要がある。
【0193】
特定の実施形態では、核酸ポリマーがナノポアを通過する際に、核酸塩基が光パルスを介して第2の状態に変換される場合、デバイスは、変換される変換可能な残基のセットにのみ接触するように光を提供することができる。核酸塩基が初期状態のままである場合、デバイスは、変換可能な残基が変換せずにナノポアを通過するように光を提供しない。多くの実施形態において、デバイスが核酸塩基のセットのみを変換することを確実にするために、変換可能な残基のセットを、デバイスの書き込み分解能に従ってスペーサーに隣接させることができる。
【0194】
いくつかの実施形態では、デバイスが単一の核酸塩基(または核酸塩基のセット)のみを変換することを確実にするために、デバイスは核酸塩基を変換するための2またはそれを超える機構、すなわち、第1の核酸塩基構造を変換することができるが、第2の核酸塩基構造を変換することができない第1のシステム、方法、またはデバイス、および第2の核酸塩基構造を変換することができるが、第1の核酸塩基構造を変換することができない第2のシステム、方法、またはデバイスを利用する。例えば、デバイスは、第1の波長が第1の核酸塩基構造を変換することができるが第2の核酸塩基構造を変換することができず、第2の波長が第2の核酸塩基構造を変換することができるが第1の核酸塩基構造を変換することができないように、エネルギーを提供するために2つの波長の光を利用することができる。
【0195】
いくつかの実施形態では、デバイスが単一の核酸塩基(または核酸塩基のセット)のみを変換することを確実にするために、デバイスは、核酸塩基を変換するための2またはそれを超えるシステム、方法、またはデバイス、すなわち、第1の核酸塩基構造を変換することができるが、第2の核酸塩基構造を変換することができない第1の機構、ならびに第1の核酸塩基構造および第2の核酸塩基構造の両方を対として併せて変換することができる第2の機構を利用する。例えば、デバイスは、第1の波長が第1の核酸塩基構造を変換することができるが第2の核酸塩基構造を変換することができず、第2の波長が第1の核酸塩基構造と第2の核酸塩基構造の両方を対として併せて変換することができるように、エネルギーを提供するために2つの波長の光を利用することができる。
【0196】
多くの実施形態において、書き込みデバイスは、核酸ポリマーにデータを書き込むためのコードを提供される。したがって、書き込みデバイスは、バイナリコードにおいて「1」に類似するポリマーの様々な核酸塩基を選択的に変換し、一方、「0」に類似するポリマーの核酸塩基は、変換することなく細孔を選択的に通過することができる。核酸ポリマーにデータコードを書き込んだ後、核酸分子を保存するための任意の適切な方法、システム、またはデバイスによって保存することができる。例えば、データ書き込み済みの核酸ポリマーは、室温またはより低温(例えば、-20℃)で、乾燥状態、沈殿物として、または適切なヌクレアーゼフリー溶液中で保存することができる。保存された核酸には、(例えば)アルコール、キレート剤およびヌクレアーゼ阻害剤等の安定剤が含まれ得る。
【0197】
いくつかの実施形態では、本明細書で提供されるポリマー(例えば、核酸ポリマー)は、標準的な核酸保存プロトコルの下で保存することができる。いくつかの実施形態では、ポリマーは、室温またはより低い温度(例えば、-20℃)で適切なヌクレアーゼフリー溶液中に保存することができる核酸ポリマーである。いくつかの実施形態では、ポリマーは、安定剤なしで室温で保存することができる。
【0198】
多くの実施形態において、データコード化デバイスは、核酸ポリマーにデータを書き込むためのコードを提供される。したがって、いくつかの実施形態では、コード化デバイスは、コードに従ってポリマーの様々な核酸塩基を選択的に変換する。孤立性核酸塩基をビットとして使用するいくつかの実施形態では、データは、核酸塩基の一部を変換することを選択し、他を選択的に変換しないことによってコード化され、変換された核酸塩基および変換されていない核酸塩基のバイナリコードをもたらす。孤立性核酸塩基をビットとして使用するいくつかの実施形態では、データは、核酸塩基の一部を第1の変換された構造に選択的に変換し、他のものを第2の変換された構造に選択的に変換することによってコード化され、変換された核酸塩基のバイナリコードが得られ、任意の未変換の核酸塩基は、未コードのままであり、データコードを復号するために利用されない。
【0199】
ビットをコード化するために核酸塩基のセットを利用するいくつかの実施形態では、各セットは少なくとも2つの変換可能な残基を含み、コード化デバイスは、いくつかのセットの第1の核酸塩基を選択的に変換構造に変換し、他のセットの第2の核酸塩基を選択的に変換構造に変換し、バイナリコードをもたらす。ビットをコード化するために核酸塩基のセットを利用するいくつかの実施形態では、各セットは少なくとも2つの変換可能な残基を含み、コード化デバイスは、いくつかのセットの第1の核酸塩基を変換構造に選択的に変換し、他のセットの両方の核酸塩基を変換構造に選択的に変換し、バイナリコードをもたらす。
【0200】
増感剤とコンジュゲートし、核酸ポリマーに沿って移動することができる任意の適切な核酸ポリメラーゼを利用することができる。理論的には、任意の核酸ポリメラーゼを利用することができる。使用され得るポリメラーゼの例としては、(限定されないが)Taq DNAポリメラーゼ、KlenTaq DNAポリメラーゼ、DNA Pol IのKlenow断片(Kf)、T7 DNAポリメラーゼ、T4 DNAポリメラーゼ、KOD DNAポリメラーゼ、9oN DNAポリメラーゼ、Phi29 DNAポリメラーゼ、Bst DNAポリメラーゼ、HIV逆転写酵素、Vent DNAポリメラーゼ、およびSuperScriptポリメラーゼが挙げられる。多くの実施形態において、増感剤基は、DNAと接触している場合、DNAの10Å以内の任意の利用可能なアミノ酸にコンジュゲートされる。利用可能な酸は、ポリメラーゼが依然として効率的に核酸鋳型を重合することができるようにコンジュゲートすることができる任意のアミノ酸である。ポリメラーゼおよび増感剤のコンジュゲーションに関する更なる考察については、例えば、A.F.Garnderら、Front Mol Biosci.2019;6:28;およびA.Hottin and A.Marx,Acc Chem Res.2016;49:418-27を参照;その開示内容は参照により本明細書に組み込まれる。
【0201】
多くの実施形態において、光源は、核酸ポリマーにデータを書き込むための提供されたコードと連携して機能する。したがって、光源は、ポリマーの様々な変換可能な残基を選択的に変換するために必要な光を提供する。核酸ポリマーにデータコードを書き込んだ後、核酸分子を保存するための任意の適切な方法、システム、またはデバイスによって保存することができる。例えば、データ書き込み済みの核酸ポリマーは、室温またはより低温(例えば、-20℃)で、乾燥状態、沈殿物として、または適切なヌクレアーゼフリー溶液中で保存することができる。保存された核酸には、(例えば)アルコール、キレート剤およびヌクレアーゼ阻害剤等の安定剤が含まれ得る。
【0202】
いくつかの実施形態では、核酸ポリマーは、単一分子レベルでデータを最も効率的に保存し、最も高い潜在的な情報密度を提供する。しかしながら、いくつかの実施形態では、データ保存のより良好な精度のためにデータの冗長性が必要とされる場合、複数の核酸ポリマーを使用して、複数の各ポリマー上に同じデータを冗長に書き込むことができる。誤り訂正アルゴリズムは、デジタルデータ保存のために既に十分に開発されており、これらのアルゴリズムのいくつかは、本手法で適用することができる(Liら、IEEE Transactions on Emerging Topics in Computing.2021;9:651-663を参照;その開示は参照により本明細書に組み込まれる)。
【0203】
コード化データが合成による配列決定(SBS)によって復号される様々な実施形態において、データの冗長性、したがって複数の各ポリマー上の同じデータを有することが望ましい場合がある。例えば、O6-ニトロベンジル-グアニン等の核酸塩基構造を使用する場合、構造はSBSを使用してAとGの混合物として読み取られるため、構造がO6-ニトロベンジル-グアニン、グアニン、またはアデニンであるかどうかを解釈するために、構造を読み取る冗長性が必要となるであろう。
【0204】
別の態様において、データがコード化されたポリマーからデータを読み取るための方法であって、ポリマーの主鎖に沿って繰り返し間隔をあけて配置され、ポリマーの主鎖を介して共有結合的に連結された変換可能な残基を含むデータがコード化されたポリマーを提供することであって、変換可能な残基の第1のサブセットが第1の状態にあり、変換可能な残基の第2のサブセットが第2の状態にあり、第1の状態と第2の状態が異なり、第1の状態と第2の状態の複数の変換可能な残基がポリメラーゼによって読み取り可能である、データがコード化されたポリマーを提供することと、データがコード化された書き込み可能なポリマーをデータ読み取りデバイスに通して、データがコード化されたポリマー上のコード化されたデータを読み取ることと、を含む方法も本明細書で提供される。
【0205】
いくつかの実施形態では、書き込み可能なポリマーは、書き込み可能な核酸ポリマーであり、複数の変換可能な残基は、変換可能な残基である。いくつかの実施形態では、第1の状態の変換可能な残基は、光を介して第2の状態に変換することができる。いくつかの実施形態では、データ読み取りデバイスはナノポアを含む。いくつかの実施形態では、データ読み取りデバイスは配列決定デバイスである。いくつかの実施形態では、配列決定デバイスは合成デバイスによる配列決定である。
【0206】
いくつかの実施形態では、方法は、書き込み可能なポリマーの通過中に電解質の電流を測定することを更に含む。
【0207】
いくつかの実施形態では、本方法は、書き込み可能なポリマーの通過中に測定された電解質の電流に基づいて、複数の変換可能な残基の各々が第1の状態または第2の状態にあるかどうかを判定することを更に含む。
【0208】
いくつかの実施形態では、本方法は、データがコード化されたポリマーをデータ読み取りデバイスに再通して、データで符号化されたポリマー上のコード化データを再読み取りすることを更に含む。
【0209】
いくつかの実施形態では、本方法は、データがコード化されたポリマーの複数のコピー上のコード化データを比較することによってデータがコード化されたポリマー上のコード化データを検証および補正することを更に含む。
【0210】
別の態様では、データでコードされた核酸ポリマーからデータを読み取りまたは復号するための方法も本明細書で提供され、本方法は、
データがコード化された核酸ポリマーの複数の冗長コピーであって、
複数の変換された核酸塩基であって、各変換された核酸塩基が第1の核酸塩基構造を含み、第1の変換された核酸塩基が第1の状態から第2の状態に変換されており、第1の状態と第2の状態とが異なる、複数の変換された核酸塩基と、
複数の変換可能な残基であって、各変換可能な残基が第2の核酸塩基構造および直接連結された脱離基を含み、変換可能な残基が第1の状態で提供され、第2の脱離基を第2の核酸塩基構造から放出することによって第1の状態から第2の状態に変換することができ、第1の状態と第2の状態が異なる、複数の変換可能な残基とを含み、
変換された核酸塩基および変換可能な残基が、核酸ポリマー主鎖を介して連結されている、データがコード化された核酸ポリマーの複数の冗長コピーを提供することと、
核酸ポリマーの複数の冗長コピーの各冗長コピーを配列決定することと、を含む。
【0211】
いくつかの実施形態では、本方法は、複数の変換された核酸塩基および複数の変換可能な残基を検出することと、検出された複数の変換された核酸塩基に基づいてデータを復号することとを含む。
【0212】
いくつかの実施形態では、第1の状態および第2の状態の複数の変換された核酸塩基は、ポリメラーゼによって読み取り可能である。いくつかの実施形態では、第1の状態および第2の状態における複数の変換可能な残基は、ポリメラーゼによって読み取り可能である。いくつかの実施形態では、複数の変換された核酸塩基および複数の変換可能な残基は、データがコード化された核酸ポリマーの冗長コピーの配列決定結果に基づいて検出される。
【0213】
図4は、様々な実施形態による、DNAポリメラーゼおよび増感剤基を介したデータ書き込みの概略図を提供する。多くの実施形態において、DNAポリメラーゼ酵素は、光または酸化還元シグナルの捕捉に対して非常に感受性である「アンテナ」または増感剤基(図4において「S」と記されている)とコンジュゲートされる。いくつかの実施形態では、修飾可能なDNA鋳型が提供される。修飾可能なDNA鋳型は、光励起および/または酸化還元(これらの修飾可能な化学基は星形によって表され、その中の改変可能な光ケージド基は図4では「PC」と略記される)によって構造的に切り替えることができる鎖に沿った修飾可能な化学基(例えば、変換可能な残基または酸化還元改変可能な分子の化学的に修飾可能な部分)を含む。いくつかの実施形態では、光パルスまたは酸化還元を利用して、修飾可能な化学基を選択的に修飾して、修飾基の連続パターン(例えば、バイナリコード)を得る。連続パターンを得るために、多くの実施形態によれば、DNAポリメラーゼには、酵素が一端で開始することを可能にするプライマー、ならびにDNA合成を支援する緩衝液中で鎖に沿って進行するのに十分なdNTPが提供される。合成が開始されると、酵素を含有する溶液は、LEDもしくはレーザーを介して光のパルスに、または電極を介して酸化還元電位のパルスに曝露される。ポリメラーゼのコンジュゲート化増感剤はこのエネルギーを捕捉し、このエネルギーはパルスの時点に酵素に最も近いDNA鋳型中の基に伝達される。ポリメラーゼが鋳型に沿って移動する際のエネルギーの差動パルスは、修飾可能な基に対する一連の化学変化をもたらす。ポリメラーゼが鋳型に沿って更に進むにつれて、必要な光が提供されないため、いくつかの化学基は変化しないままであった。いくつかの実施形態では、ポリメラーゼは、dNTPの濃度を制御することによって配列中の特定のヌクレオチドにおいて休止するように誘導することができる。例えば、他のものと比較してdGTPの濃度を低下させると、鋳型中のシトシン残基で酵素が休止する。したがって、いくつかの実施形態では、ポリメラーゼおよび増感剤がその位置に局在して局所的な修飾可能な化学基に対する化学的変化を誘導するように、特定の位置の配列での休止を誘導するために、1またはそれを超えるdNTPを他のdNTPよりも低い濃度に保つ。
【0214】
いくつかの実施形態は、残基に結合し、書き込み可能な核酸ポリマーに組み込むことができる変換可能な残基(例えば、化学的に改変可能な基または化学的に修飾可能な部分を含む残基)に関する。化学的に改変可能な基は、様々な実施形態によれば、増感剤と組み合わせた制御された反応化学によって第1の化学状態から第2の化学状態に変換することができる基である。核酸塩基を第1の状態から第2の状態に変換するための任意の適切な機構(光パルス、電圧、酵素剤、化学試薬、および/または酸化還元を含むが、これらに限定されない)を利用することができる。残基は、天然に存在する核酸塩基に限定されず、デザイナー核酸塩基等の天然に存在しない核酸塩基も具現化し得ることが理解される。
【0215】
図5A図5Dは、様々な実施形態による、鋳型DNAに組み込むことができる変換可能な残基(例えば、化学的に改変可能な基)の例を提供する。変換可能な残基は、光励起または酸化還元によって切断され得る化学結合を含む。ここに示される例には、ケージドDNA塩基、ケージドフルオロフォア、および放出可能な蛍光クエンチャーが含まれる。図5Aは、光切断可能なケージング基を含む変換可能な残基の例を提供する。ケージング基の除去により、アミン置換DNA塩基が得られる。図5Bは、光切断可能なクエンチャーを含有する変換可能な残基の例を提供する。クエンチャー基の除去により、アミン置換DNA塩基が得られる。図5Cは、光切断可能なケージおよびフルオロフォアを含有する変換可能な残基の例を提供する。ケージング基を除去すると、DNA塩基上に蛍光標識が生じる。図5Dは、光切断可能なケージを含む変換可能な残基の例を提供する。ケージング基の除去により、ネイティブDNA塩基が得られる。
【0216】
様々な光除去性基を変換可能な残基に組み込むことができる(例えば、D.D.Young and A.Deiters,Org Biomol Chem.2007;5:999-1005;およびY.Wu,Z.Yang,and Y.Lu,Curr Opin Chem Biol.2020;57:95-104を参照;その開示内容は参照により本明細書に組み込まれる)。いくつかの例が提供されるが、様々な実施形態に従って、任意の適切な光除去性基および他の核酸塩基が使用され得ることが理解される。
【0217】
図6Aは、変換可能な残基を有する残基の例を提供する。図6Bは、様々な実施形態に従って、データをコード化するために光シグナルによって改変され得るDNA鋳型鎖を提供する。変換可能な残基を有する残基は、(例えば)天然のDNA塩基等の改変不可能な残基によって別々に間隔をあけて配置され得ることに留意されたい。変換可能な残基の間隔は、酵素が鋳型に沿って移動するときに、酵素が光または酸化還元のパルスのための単一の変換可能な残基の近くにあることを確実にするのに役立ち得る。多くの実施形態において、鋳型DNAは、これらの基が独立して改変され、同時に改変されないように、変換可能な残基を規則的に間隔をあけて配置させる反復配列を用いて調製される。いくつかでは、2つの変換可能な残基が互いに非常に近くに(例えば、6塩基対以内に)配置され、それによって、それらの基がタンデムで利用され、増感酵素によって同時に改変される(図6Bを参照)。
【0218】
図7A図7Fは、様々な実施形態による、DNAポリメラーゼ酵素にコンジュゲートすることができる増感剤分子の例を提供する。増感剤分子は、化学的改変の触媒を助けるためのアンテナとして使用することができる。酵素にコンジュゲートされると、増感剤分子は光または酸化還元エネルギーを効率的に捕捉し、次いでこのエネルギーをDNA鋳型上の変換可能な残基に伝達する。図7A図7Dに提供される例は、システイン側鎖にコンジュゲートさせることができるチオール反応性分子であるが、他のタイプのコンジュゲーション方法が当技術分野で公知である。図7Aは、Ru-tris(BiPy)増感剤(S.Pierceら、Inorg Chem.2020;59:14866-14870;およびJ.B.Edson,L.P.Spencer,and J.M.Boncella,Org Lett.2011;13:6156-9;その開示内容は参照により本明細書に組み込まれる)の例を提供する。図7Bは、モノマーチオキサンテノン増感剤(D.Wollら、Helv Chim Acta.2004;87:28-45;およびK.A.Ryuら、Nat Rev Chem.2021;5:322-337;その開示内容は参照により本明細書に組み込まれる)の例を提供する。図7Cは、オリゴマー増感剤を組み立てるためにDNA合成装置で使用することができるホスホラミダイトモノマーの例を提供する。図7Dは、単一の増感剤よりも多くの光子を捕捉することができるオリゴマーアンテナの例を提供する。ここではいくつかの例が提供されているが、複数のタイプの増感剤のいずれか1つが企図される(例えば、K.A.Ryuら、Nat Rev Chem.2021;5:322-337;and M.Klausenら、Chempluschem.201;84:589-598を参照;その開示内容は参照により本明細書に組み込まれる)。
【0219】
図7Eは、単独または群のいずれかでポリメラーゼ酵素にコンジュゲートすることができる酸化還元増感剤構造の例を提供する。溶液中の電極を介して酸化または還元電位を印加すると、増感剤分子が酸化または還元される。次いで、この生成された酸化還元電位は、DNA中の化学的に改変可能な近くの基に転移され、化学的変化をもたらす。図7Fは、DNAに組み込むことができる酸化還元改変可能な基の例を提供する。これらの酸化還元改変可能な基は、ポリメラーゼ酵素がDNA鋳型に沿って移動する際に、ポリメラーゼ酵素にコンジュゲートされた近くの酸化還元増感剤によって修飾することができる。多数の酸化還元切断可能リンカーを利用することができ、その多くは当技術分野で公知である(例えば、R.Camble,R.Garner,and G.T.Young,J Chem Soc C.1969;1911-1916;and J.B.Edson,L.P.Spencer、およびJ.M.Boncella,Org Lett.2011;13:6156-9を参照;その開示内容は参照により本明細書に組み込まれる)
【0220】
多くの実施形態において、書き込み済みの核酸ポリマー上のデータを読み取るために、天然に存在しないおよび/または改変された核酸塩基を読み取ることができる任意の適切なシーケンサーを利用することができる。市販のナノポアシーケンサーの例には、Oxford Nanopore Technologies PromethION、MinION、およびGridIONシーケンシングプラットフォーム(英国オックスフォード)ならびにPacific Bioscienceの単一分子リアルタイム(SMRT)シーケンシングプラットフォーム(カリフォルニア州メンロパーク)が含まれる。あるいは、データを読み取るためにナノポアデバイスを製作または製造することができる。ナノポアは、固体材料から構成され得るか、または1またはそれを超えるタンパク質を含有し得る。
修飾可能なフルオロフォア
【0221】
様々な実施形態による、ポリマー、使用方法および合成方法を利用するデータ保存の組成物およびシステムが本明細書に記載される。いくつかの実施形態では、データ保存システムは、1またはそれを超える変換可能な残基を有する書き込み可能なポリマーを含む。いくつかの実施形態では、変換可能な残基は、変換可能なヌクレオチドを含む。いくつかの実施形態では、データ保存システムは、変換可能な1またはそれを超える残基を有する書き込み可能な(すなわち、データコード化可能な)ポリマーを含む。したがって、書き込み可能な核酸ポリマーは、コード化可能なブランクテープに類似しており、書き込み可能な核酸ポリマーは、その1またはそれを超える核酸塩基を変換することによってコード化される。変換可能な残基の変換は、バイナリコードと考えることができ、各変換可能な残基は「ビット」に類似し、変換されていない変換可能な残基は「0」に類似し、変換された変換可能な残基は「1」に類似する。しかしながら、バイナリコードが唯一の可能性ではなく、コードは3進、4進、または他の数値システムコードで書き込むことができ、これは複数のタイプの変換可能な残基を利用して、または変換可能な残基の状態を更に改変するために複数の書き込みを実行して行うことができることを理解されたい。いくつかの実施形態では、変換可能な残基の変換は安定しているか、または永続的であり、これにより長期保管が可能になる。いくつかの実施形態では、2つの変換可能な残基の組み合わせは、「ビット」を含む。
【0222】
いくつかの実施形態では、第1の蛍光状態は、ブランク状態(例えば、未書き込み状態)、「0」状態、または「1」状態を含む。いくつかの実施形態では、第2の蛍光状態は、ブランク状態(例えば、未書き込み状態)、「0」状態、または「1」状態を含む。いくつかの実施形態では、第3の蛍光状態は、ブランク状態(例えば、未書き込み状態)、「0」状態、または「1」状態を含む。いくつかの実施形態では、ブランク状態を含む第1の蛍光状態は、「1」状態を含む第2の蛍光状態に変換され得る。いくつかの実施形態では、「1」状態を含む第1の蛍光状態は、「0」状態を含む第2の蛍光状態に変換され得る。
【0223】
いくつかの実施形態では、第1の状態から第2の状態への変換可能な残基の変換は、書き込みデバイスによって実行される。いくつかの実施形態では、書き込みデバイスは、光衝突モジュール(例えば、光源)を備える。いくつかの実施形態では、状態(例えば、第1の状態、第2の状態、第3の状態等....)は、読み取りデバイスまたはユニットによって検出される。いくつかの実施形態では、読み取りユニットは書き込みデバイスを備える。いくつかの実施形態では、読み取りユニットは、(蛍光)検出デバイスを備える。いくつかの実施形態では、読み取りユニットは分析モジュールを含む。
【0224】
いくつかの実施形態では、変換可能な残基の変換は、フルオロフォアの光活性化、フルオロフォアの不活性化(例えば、光による)、フルオロフォアの放出、ケージドフルオロフォアのアンケージング、クエンチャー(例えば、変換可能な残基からのクエンチャー放出)によるフルオロフォアのクエンチング、およびフルオロフォアの光退色を含む、蛍光状態の任意の検出可能な変化を含む。
【0225】
いくつかの実施形態では、変換可能な残基は、フルオロフォアを含み得る。いくつかの実施形態では、フルオロフォアは、修飾可能なフルオロフォアを含み得る。いくつかの実施形態では、変換可能な残基は、脱離基を含み得る。いくつかの実施形態では、脱離基は、クエンチャーまたはケージ(例えば、光除去性(photo-removeable)基または光切断性基)であり得る。いくつかの実施形態では、フルオロフォアは、脱離基を含む。いくつかの実施形態では、フルオロフォアの脱離基は、ケージであり得る。いくつかの実施形態では、フルオロフォアは、ケージドフルオロフォア(例えば、ケージを含むフルオロフォア)であり得る。いくつかの実施形態では、ケージは、修飾可能なフルオロフォアの脱離基であり得る。いくつかの実施形態では、変換可能な残基は、変換可能なフルオロフォアであり得る。いくつかの実施形態では、変換可能な残基は脱離基を含み、脱離基はクエンチャーであり得る。
【0226】
いくつかの実施形態では、変換可能な残基は、光によって活性化され得る修飾可能なフルオロフォアを含む。いくつかの実施形態では、修飾可能なフルオロフォアは、添加剤(例えば、ホスフィン)の存在下で光によって活性化され得る。いくつかの実施形態では、変換可能な残基は、光によって不活性化され得る修飾可能なフルオロフォアを含む。いくつかの実施形態では、修飾可能なフルオロフォアは、添加剤(例えば、ホスフィン)の存在下で光によって不活性化され得る。
【0227】
いくつかの実施形態では、変換可能な残基は、光によってポリマーから放出され得る放出可能なフルオロフォアを含む。
【0228】
いくつかの実施形態では、変換可能な残基は、光によって光退色させることができる光退色性フルオロフォアを含む。
【0229】
ポリマーの主鎖に沿って繰り返し間隔をあけて配置され、ポリマーの主鎖に共有結合的に連結された複数の変換可能な残基を含む、データをコード化するための(書き込み可能な)ポリマーのための様々な組成物、システム、作製方法および使用方法が本明細書に記載され、複数の変換可能な残基の各変換可能な残基は、第1の蛍光状態を有し、第1の蛍光状態から第2の蛍光状態に変換することができ、第1の蛍光状態と第2の蛍光状態とは異なり、複数の変換可能な残基の全てまたはサブセットの各々が、化学的に修飾可能な部分(例えば、修飾可能なフルオロフォア)を含み、複数の変換可能な残基が、第1の蛍光状態および第2の蛍光状態でポリマーに共有結合している。
【0230】
いくつかの実施形態では、複数の変換可能な残基の変換可能な残基の各々は、ポリマーの主鎖に沿って繰り返し間隔をあけて配置されており、繰り返し間隔をあけて配置されていることは、ほぼ規則的に間隔をあけて配置されると称され得る。
【0231】
いくつかの実施形態では、変換可能な残基(例えば、修飾可能なフルオロフォアを含む残基または放出可能なクエンチャーを含む残基)は、書き込み可能な「ビット」と呼ばれ、改変された残基(例えば、改変された化学的に改変可能な基または改変された発光を有する変換フルオロフォア)は、書き込み済み「ビット」と呼ばれる。
【0232】
いくつかの実施形態では、「書き込み可能」および「データコード化可能」という用語は、本明細書では互換的に使用される。いくつかの実施形態では、「書き込み」および「データコード化」という用語は、本明細書では互換的に使用される。
【0233】
いくつかの実施形態では、「脱離基」および「除去性基」という用語は、本明細書では互換的に使用される。いくつかの実施形態では、変換可能な残基に言及する場合「対」および「一対(duad)」という用語は、本明細書では互換的に使用される。本明細書で使用される場合、「一対」は、本明細書に記載のポリマー(例えば、核酸ポリマー)において互いに十分に近接して位置し、両方が単一の書き込み作用または書き込み事象(例えば、同じ光パルスまたは同じ電圧パルス)にさらされる一対の(a pair of)異なる変換可能な残基(例えば、書き込み可能なビット)を指す。したがって、一対(duad)を含む変換可能な残基は、書き込み動作または書き込み事象の分解能よりも近くてもよい。
【0234】
いくつかの実施形態では、1またはそれを超える変換可能な残基は、1またはそれを超える化学的に修飾可能な部分(例えば、修飾可能なフルオロフォア)を含む。したがって、書き込み可能なポリマーは、コード化可能なブランクテープに類似しており、書き込み可能なポリマーは、フルオロフォアをオン/オフにすることまたは変換することによってコード化され、これは、フルオロフォアを修飾することができる任意の方法によって行うことができる。様々な実施形態では、フルオロフォアは、利用される修飾機構に応じて、アンケージング、アンクエンチング、および/または光変換によって修飾される。フルオロフォア修飾は、修飾可能なフルオロフォアが「ビット」に似ているバイナリコードと考えることができ、フルオロフォアの1つの状態は「0」に類似しており、フルオロフォアの第2の状態は「1」に類似している。例えば、一例では、ケージドフルオロフォアは「0」に類似し得、アンケージドフルオロフォアは「1」に類似し得る。しかしながら、バイナリコードが唯一の可能性ではなく、コードは3進、4進、または他の数値システムコードで書き込むことができ、これは複数のタイプのフルオロフォアを利用して、またはフルオロフォアの状態を更に改変するために複数の書き込み/修飾を実行して行うことができることを理解されたい。フルオロフォアの修飾は、安定であっても永続的であってもよく、これにより、特に暗所の保存場所に保持されている場合、長期保管が可能になる。いくつかの実施形態では、2つの一意に識別可能なフルオロフォアの組み合わせは「ビット」を含む。例えば、ケージドフルオロフォアおよびクエンチされたフルオロフォアは、単一ビットであるように利用することができ、第1の蛍光発光強度または波長を有するアンケージドフルオロフォアは「0」に類似し得て、第2の蛍光発光強度または波長を有するクエンチされていないフルオロフォアは「1」に類似し得る。
番号付き実施形態
1.データをコード化するための核酸ポリマーであって、
前記核酸ポリマー主鎖に沿って繰り返し間隔をあけて配置され、前記核酸ポリマー主鎖を介して連結された化学的に改変可能な基を有する複数の残基を有し、前記複数の変換可能な核酸塩基の各化学的に改変可能な基は、第1の状態を有して提供され、前記第1の状態から第2の状態に変更することができ、
前記核酸ポリマーが、ポリメラーゼをプライミングするためのユニーク配列を有する3’-テイルを含み、前記3’-テイルの前記ユニーク配列が、前記核酸ポリマーの前記3’-テイルにのみ存在する、データをコード化するための核酸ポリマー。
2.前記核酸ポリマー主鎖を介して連結された複数のスペーサー残基を更に含み、前記複数のスペーサー残基の1またはそれを超えるスペーサー残基のセットが、前記化学的に改変可能な基を有する前記複数の残基の各化学的に改変可能な基の間にあり、前記化学的に改変可能な基を有する前記複数の残基の間に反復間隔を提供する、実施形態1に記載の核酸ポリマー。
3.前記化学的に改変可能な基を有する前記複数の残基間の前記反復間隔が、前記核酸ポリマーに関するデータをコード化するための増感剤の分解能に適合する、実施形態1または2に記載の核酸ポリマー。
4.前記核酸ポリマー主鎖に連結されたデリミタ残基またはデータタグ残基を更に含む、実施形態1、2または3に記載の核酸ポリマー。
5.前記化学的に改変可能な基を有する複数の残基のうちの化学的に改変可能な基を有する残基が、
【化13-1】
【化13-2】
から選択される、実施形態1~4のいずれか1つに記載の核酸ポリマー。
6.前記核酸ポリマーが、DNA、RNA、ホスホロチオエート(phosphorothiate)DNA、エナンチオ-DNA、グリセロール核酸(GNA)、トレオース核酸(TNA)、2’-フルオロ-DNA、2’-O-メチルRNA、またはロックド核酸(LNA)の残基を組み込む、実施形態1~5のいずれか1つに記載の核酸ポリマー。
7.前記化学的に改変可能な基を有する複数の残基が全て同じ構造を有する、実施形態1~6のいずれか1つに記載の核酸ポリマー。
8.データを核酸ポリマーにコード化する際に使用するためのポリメラーゼであって、
増感剤とコンジュゲートした核酸ポリメラーゼを含み、前記増感剤が、光または酸化還元エネルギーを捕捉および伝達することができる分子である、ポリメラーゼ。
9.前記増感剤が、システイン側鎖を介して前記ポリメラーゼにコンジュゲートされている、実施形態8に記載のポリマー。
10.前記増感剤が、
【化14-1】
【化14-2】
から選択される構造を有する、実施形態8または9に記載のポリメラーゼ。
11.核酸へのデータ書き込みのためのシステムであって、書き込み可能な核酸ポリマーであって、前記核酸ポリマー主鎖に沿って繰り返し間隔をあけて配置され、前記核酸ポリマー主鎖を介して連結された化学的に改変可能な基を有する複数の残基を含み、前記複数の変換可能な核酸塩基の各化学的に改変可能な基は、第1の状態を有して提供され、前記第1の状態から第2の状態に変更することができる、書き込み可能な核酸ポリマーと、
光または酸化還元エネルギーを供給するためのエネルギー源と、
増感剤とコンジュゲートした核酸ポリメラーゼと、を含み、前記増感剤が、光または酸化還元エネルギーを捕捉および伝達することができる分子である、システム。
12.前記化学的に改変可能な基を有する複数の残基のうちの化学的に改変可能な基を有する残基が、
【化15-1】
【化15-2】
から選択される、実施形態11に記載のシステム。
13.前記核酸ポリマーが、前記核酸ポリマー主鎖を介して連結された複数のスペーサー残基を更に含み、前記複数のスペーサー残基の1またはそれを超えるスペーサー残基のセットが、前記化学的に改変可能な基を有する前記複数の残基の各化学的に改変可能な基の間にあり、前記化学的に改変可能な基を有する前記複数の前記残基の間に反復間隔を提供する、実施形態11または12に記載のシステム。
14.化学的に改変可能な基を有する前記複数の前記残基間の前記反復間隔が、前記核酸ポリマーに関するデータをコード化するための増感剤の分解能に適合する、実施形態11、12、または13に記載のシステム。
15.化学的に改変可能な基を有する前記複数の残基が全て同じ構造を有する、実施形態11~14のいずれか1つに記載のシステム。
16.前記増感剤が、
【化16-1】
【化16-2】
から選択される構造を有する、実施形態11~15のいずれか1つに記載のシステム。
17.前記核酸ポリマーが、前記核酸ポリメラーゼをプライミングするためのユニーク配列を有する3’-テイルを含み、前記3’-テイルの前記ユニーク配列が、前記核酸ポリマーの前記3’-テイルにのみ存在する、実施形態11~16のいずれか1つに記載のシステム。
18.プライマーオリゴマーを更に含み、前記プライマーオリゴマーが、前記核酸ポリマーの前記3’-テイルの前記ユニーク配列に相補的な配列を有する、実施形態17に記載のシステム。
19.三リン酸残基を更に含む、実施形態11~18のいずれか1つに記載のシステム。
20.前記三リン酸残基が、dNTPまたはNTPである、実施形態19に記載のシステム。
21.コード化された核酸ポリマーであって、
前記核酸ポリマー主鎖に沿って繰り返し間隔をあけて配置され、前記核酸ポリマー主鎖を介して連結された複数の残基を含み、前記複数の残基の各残基が、改変されていない化学的に改変可能な基または改変された化学的に改変可能な基を有し、改変されていないおよび改変された化学的に改変可能な基の配列が、データのコードを表す、コード化された核酸ポリマー。
22.各改変された化学的に改変可能な基が、ポリメラーゼにコンジュゲートされた増感剤を介した光または酸化還元エネルギーによって改変されていない状態から改変された状態に改変された、実施形態21に記載のコード化された核酸ポリマー。
23.改変されていない化学的に改変可能な基を有する前記残基が、
【化17】
から選択される、実施形態21または22に記載のコード化された核酸ポリマー。
24.改変されていない化学的に改変可能な基を有する前記残基が、それぞれ同じ構造を有する、実施形態21、22または23に記載のコード化された核酸ポリマー。
25.改変された化学的に改変可能な基を有する前記残基が、それぞれ同じ構造を有する、実施形態21~24のいずれか1つに記載のコード化された核酸ポリマー。
26.光エネルギーを利用して書き込み可能な核酸ポリマー上にデータをコード化する方法であって、
前記核酸ポリマー主鎖に沿って繰り返し間隔をあけて配置され、前記核酸ポリマー主鎖を介して連結された化学的に改変可能な基を有する複数の残基を含む、書き込み可能な核酸ポリマー鋳型を含む溶液を提供することであって、前記複数の変換可能な核酸塩基の各化学的に改変可能な基は、第1の状態を有して提供され、前記第1の状態から第2の状態に改変することができる、書き込み可能な核酸ポリマー鋳型を含む溶液を提供することと、
前記溶液に、増感剤分子とコンジュゲートされた核酸ポリメラーゼを添加することと、
光エネルギーを選択的にパルスすることであって、前記パルスした光エネルギーが、前記核酸ポリメラーゼが前記書き込み可能な核酸ポリマー鋳型に沿って移動する際に、前記増感剤分子によって捕捉され、前記増感剤分子から前記増感剤分子の近くの前記化学的に改変可能な基を有する残基に伝達することで、前記複数の化学的に改変可能な基のサブセットを前記第2の状態に改変し、その結果、データコード化核酸ポリマーが生成される、光エネルギーを選択的にパルスすることと、を含む、方法。
27.前記化学的に改変可能な基を有する前記複数の残基のうちの前記化学的に改変可能な基を有する前記残基が、
【化18】
から選択される、実施形態26に記載の方法。
28.書き込み可能な核酸ポリマー鋳型が、前記核酸ポリマー主鎖を介して連結された複数のスペーサー残基を更に含み、前記複数のスペーサー残基の1またはそれを超えるスペーサー残基のセットが、前記化学的に改変可能な基を有する前記複数の残基の各化学的に改変可能な基の間にあり、前記化学的に改変可能な基を有する前記複数の前記残基の間に反復間隔を提供する、実施形態26または27に記載の方法。
29.前記増感剤分子が、
【化19】
から選択される構造を有する、実施形態26、27、または28に記載の方法。
30.書き込み可能な核酸ポリマー鋳型が、前記核酸ポリメラーゼをプライミングするためのユニーク配列を有する3’-テイルを含み、前記3’-テイルの前記ユニーク配列が、前記核酸ポリマーの前記3’-テイルにのみ存在する、実施形態26~29のいずれか1つに記載の方法。
31.プライマーオリゴを前記溶液に添加することを更に含み、前記プライマーオリゴマーが、前記核酸ポリマーの前記3’-テイルの前記ユニーク配列に相補的な配列を有する、実施形態30に記載の方法。
32.前記溶液に三リン酸残基のセットを添加することであって、三リン酸残基の前記セットが、第1の構造を有する三リン酸残基および第2の構造を有する三リン酸残基を含む、前記溶液に三リン酸残基のセットを添加すること、を更に含む、実施形態26~31のいずれか1つに記載の方法。
33.三リン酸残基の前記セットが、前記第1の構造を有する三リン酸残基の最終濃度が前記第2の構造を有する三リン酸残基の最終濃度よりも低くなるように添加される、実施形態32に記載の方法。
34.前記第1の構造を有する前記三リン酸残基と前記第2の構造を有する前記三リン酸残基との比が、ポリメラーゼが書き込み可能な核酸ポリマー鋳型に沿って移動し、前記第1の構造を有する前記三リン酸残基に相補的な前記鋳型の残基に到達すると、前記ポリメラーゼの停止をもたらす、実施形態33に記載の方法。
35.酸化還元電位を利用して書き込み可能な核酸ポリマー上にデータをコード化する方法であって、
前記核酸ポリマー主鎖に沿って繰り返し間隔をあけて配置され、前記核酸ポリマー主鎖を介して連結された化学的に改変可能な基を有する複数の残基を含む、書き込み可能な核酸ポリマー鋳型を含む溶液を提供することであって、前記複数の変換可能な核酸塩基の各化学的に改変可能な基が、第1の状態を有して提供され、前記第1の状態から第2の状態に変更することができる、書き込み可能な核酸ポリマー鋳型を含む溶液を提供することと、
前記溶液に、増感剤分子とコンジュゲートされた核酸ポリメラーゼを添加することと、
前記溶液と接触している電極を用いて酸化還元電位を選択的に提供することであって、前記酸化還元電位が、前記核酸ポリメラーゼが前記書き込み可能な核酸ポリマー鋳型に沿って移動する際に、前記増感剤分子によって捕捉され、前記増感剤分子から前記増感剤分子の近くの前記化学的に改変可能な基を有する残基に伝達することで、前記複数の化学的に改変可能な基のサブセットを前記第2の状態に改変し、その結果、データコード化核酸ポリマーが生成される、前記溶液と接触している電極を用いて酸化還元電位を選択的に提供することと、を含む、方法。
36.前記化学的に改変可能な基を有する前記複数の残基のうちの前記化学的に改変可能な基を有する前記残基が、
【化20】
から選択される、実施形態35に記載の方法。
37.書き込み可能な核酸ポリマー鋳型が、前記核酸ポリマー主鎖を介して連結された複数のスペーサー残基を更に含み、前記複数のスペーサー残基の1またはそれを超えるスペーサー残基のセットが、前記化学的に改変可能な基を有する前記複数の残基の各化学的に改変可能な基の間にあり、前記化学的に改変可能な基を有する前記複数の前記残基の間に反復間隔を提供する、実施形態35または36に記載の方法。
38.前記増感剤分子が、
【化21】
から選択される構造を有する、実施形態35、36、または37に記載の方法。
39.書き込み可能な核酸ポリマー鋳型が、前記核酸ポリメラーゼをプライミングするためのユニーク配列を有する3’-テイルを含み、前記3’-テイルの前記ユニーク配列が、前記核酸ポリマーの前記3’-テイルにのみ存在する、実施形態35~38のいずれか1つに記載の方法。
40.プライマーオリゴを前記溶液に添加することを更に含み、前記プライマーオリゴマーが、前記核酸ポリマーの前記3’-テイルの前記ユニーク配列に相補的な配列を有する、実施形態39に記載の方法。
41.前記溶液に三リン酸残基のセットを添加することであって、三リン酸残基の前記セットが、第1の構造を有する三リン酸残基および第2の構造を有する三リン酸残基を含む、前記溶液に三リン酸残基のセットを添加すること、を更に含む、実施形態35~40のいずれか1つに記載の方法。
42.三リン酸残基の前記セットが、前記第1の構造を有する三リン酸残基の最終濃度が前記第2の構造を有する三リン酸残基の最終濃度よりも低くなるように添加される、実施形態41に記載の方法。
43.前記第1の構造を有する前記三リン酸残基と前記第2の構造を有する前記三リン酸残基との比が、ポリメラーゼが書き込み可能な核酸ポリマー鋳型に沿って移動し、前記第1の構造を有する前記三リン酸残基に相補的な前記鋳型の残基に到達すると、前記ポリメラーゼの停止をもたらす、実施形態42に記載の方法。
【実施例
【0235】
ポリマーを利用するデータ保存のための組成物、システム、および方法の様々な例が本明細書に記載される。書き込み可能な核酸ポリマーの例、そのようなポリマーを産生する方法、データを書き込む方法、およびデータを読み取る方法が提供される。
実施例1:1またはそれを超える光増感剤基で修飾されたDNAポリメラーゼの調製
【0236】
DNAポリマー上の変換可能な残基に励起エネルギーを選択的に集中させるために、ポリメラーゼを光増感剤基とコンジュゲートさせる。DNAポリメラーゼBSTは、結合するときにDNAの近くの構造ドメイン中の位置845のシステイン変異体として調製される。これを光増感剤基としてのチオキサンテノンのマレイミドコンジュゲート(図7B参照)と反応させ、サイズ排除スピンカラムによってコンジュゲート化酵素を過剰の増感剤から精製する。別の実験では、ポリメラーゼCys変異体を図7Dの八量体増感剤試薬と反応させる。タンパク質の質量分析は、これら2つの調製物についての共役基の付加質量を明らかにし、吸収分光法により、両方の場合において単数または複数の増感剤基の吸光度の追加を確認する。プライマー、Mg2+およびdNTPの存在下でDNA鋳型をコピーする試験により、修飾酵素がDNAの合成において活性のままであることが確認される。
実施例2:鋳型コピー中にDNAの構造変化を生じさせるための光パルスおよび増感ポリメラーゼの使用
【0237】
反復配列中に複数の光ケージング基を含むDNA鋳型を実験前に調製する。光ケージング基NPP(図8)は、配列中のデオキシウリジンのアミノプロピニル側鎖に連結されている。DNA鋳型の3’末端にはポリ(dT)テイルがあり、プライマーが結合するための固有の部位を提供する。溶液(5mM MgCl2を含むpH7.5緩衝液)中で、ポリ(dA)プライマーおよび増感剤修飾DNAポリメラーゼを鋳型に添加する。鋳型コピー反応は、鋳型相補的dNTP(それぞれ200uM)の添加によって開始される。次いで、溶液を、照射間の間隔を10秒として、380~420nMで5回の100ミリ秒パルスの光に曝露する。対照実験は、増感剤基を欠くポリメラーゼを含む。実験は、異なる強度の光で繰り返され、ポリメラーゼが増感剤を有さない場合には鋳型DNAのアンケージングをほとんどまたは全く達成しないが、ポリメラーゼが増感剤を有する場合にはDNAに沿った部位でアンケージングを達成することを目的とする。最適な光強度を用いた実験は、DNA鋳型が増感ポリメラーゼでコピーされた場合、DNA鋳型から5個のケージング基の喪失をもたらす。光の4回または3回のパルスを使用する更なる実験は、それぞれDNAからの4個および3個の基の喪失を明らかにする。パルス間のタイミングを改変した更なる実験は、短すぎず、したがって有効なビット書き込み工程を欠くか、または長すぎて多くの未書き込みビットをスキップする理想的なタイミングを明らかにする。
実施例3:鋳型コピー中にDNAの光学的変化を生じさせるための光パルスおよび増感ポリメラーゼの使用
【0238】
ポリマー中のチミジンに結合した複数の光ケージドフルオロフォアを含むDNA鋳型を実験前に調製する。光ケージング基であるDMNPE(図8)は、フルオロフォア上に存在し、それらを暗くする。DNA鋳型の3’末端にはポリ(dA)テイルがあり、プライマーが結合するための固有の部位を提供する。溶液(5mM MgClを含むpH7.5緩衝液)中で、ポリ(dT)プライマーおよび増感剤修飾DNAポリメラーゼを鋳型に添加する。鋳型コピー反応は、鋳型相補的dNTP(それぞれ500uM)の添加によって開始される。次いで、溶液を、照射間の間隔を10秒として、およそ380~420nMで5回の100ミリ秒パルスの光に曝露する。対照実験は、増感剤基を欠くポリメラーゼを含む。実験は、異なる強度の光で繰り返され、ポリメラーゼが増感剤を有さない場合には鋳型DNAのアンケージングをほとんどまたは全く達成しないが、ポリメラーゼが増感剤を有する場合にはDNAフルオロフォアに沿った部位でアンケージングを達成することを目的とする。最適な光強度を用いた実験は、DNA鋳型が増感ポリメラーゼでコピーされたときにDNA鋳型から5個のケージング基の放出をもたらし、これは蛍光および質量分析によって観察することができる。4回または3回の光パルスを使用する更なる実験は、それぞれDNAから4個および3個の基の喪失を明らかにし、4個および3個のフルオロフォア基をアンケージングする。
実施例4:鋳型コピー中にDNAに二重光学変化を生じさせるための二波長光パルスおよび増感ポリメラーゼの使用
【0239】
配列中の近くのヌクレオチドに複数の二重光ケージドクマリンおよびTokyo greenフルオロフォアを含むDNA一本鎖鋳型を実験前に調製する。光ケージング基、NPPおよびCoum(図8)は、フルオロフォアに連結され、それらを暗くする。DNA鋳型の3’末端にはポリ(dT)テイルがあり、プライマーが結合するための固有の部位を提供する。溶液(5mM MgClを含むpH7.5緩衝液)中で、ポリ(dA)プライマーおよび増感剤修飾DNAポリメラーゼを鋳型に添加する。この場合、ポリメラーゼは、2つの増感剤、Ru(トリス)BiPyおよびチオキサンテノンで修飾される。鋳型コピー反応は、鋳型相補的dNTP(それぞれ500uM)の添加によって開始される。次いで、この溶液を、照射間の間隔を10秒として、100ミリ秒のLED光パルスに曝露する。対照実験は、増感剤基を欠くポリメラーゼを含む。実験は、異なる強度の光で繰り返され、ポリメラーゼが増感剤を有さない場合には鋳型DNAのアンケージングをほとんどまたは全く達成しないが、ポリメラーゼが増感剤を有する場合にはDNAフルオロフォアに沿った部位でアンケージングを達成することを目的とする。最適な光強度を用いた実験では、DNA鋳型が増感ポリメラーゼでコピーされた場合、DNA鋳型からのケージング基の喪失がもたらされ、これは蛍光および質量分析によって観察することができる。500nmの光パルスのみを使用する更なる実験は、Coumケージング基の喪失をもたらし、ポリメラーゼ増感部位で青色蛍光をもたらす。逆に、380nmの光の使用は、Coum基とNPP基の両方のアンケージングをもたらし、両方のフルオロフォアにおいて蛍光をもたらす。それらは近くにあるため、クマリン蛍光エネルギーの一部は近くのTokyo greenに提供され、その蛍光を増強する。第3の実験では、パルスは500nmおよび365nmの光で交互に実行されている。これは、アンケージングの交互の結果をもたらし、これは、書き込み済みのDNA鎖に沿って交互に青色蛍光および緑色蛍光発光をもたらす。
実施例5:DNAの構造変化を生じさせるための電極および酸化還元増感ポリメラーゼの使用
【0240】
反復配列を有する複数の酸化還元感受性ケージング基を含有するDNA鋳型を実験前に調製する。酸化還元感受性基であるピコリルメチル(図5A)は、配列中のデオキシウリジンのアミノプロピニル側鎖に連結されている。DNA鋳型の3’末端にはポリ(dT)テイルがあり、プライマーが結合するための固有の部位を提供する。溶液(5mM MgClを含むpH7.5緩衝液)中で、ポリ(dA)プライマーおよび酸化還元増感剤修飾DNAポリメラーゼを鋳型に添加する。鋳型コピー反応は、鋳型相補的dNTP(それぞれ200uM)の添加によって開始される。次いで、溶液を、メチレンブルーを還元するのに十分な電位で、パルス間の間隔を10秒として、電圧電位の5回の100ミリ秒パルスに曝露する(J.D.Mahlum,M.A.Pellitero,and N.Arroyo-Curras,J Phys Chem C.2021;125:9038-9049;およびD.Kang,et al.,Anal Chem.2009;81:9109-13;その開示内容は参照により本明細書に組み込まれる)。対照実験は、増感剤基を欠くポリメラーゼを含む。実験は、DNA鋳型が増感ポリメラーゼでコピーされた場合、DNA鋳型から5個のケージング基の喪失をもたらす。4回または3回の電圧パルスを使用する更なる実験は、それぞれDNAから4個および3個の基の喪失をもたらす。
実施例6:オリゴマー増感剤を作製するためのDNA合成装置の使用
【0241】
チオキサンテノンに基づくモノマー光増感剤は、第一級ヒドロキシル基上にジメトキシトリチル基および第二級ヒドロキシル上にホスホラミダイト基を用いて調製される(図4C)。このモノマーを0.1Mで乾燥アセトニトリルに溶解し、DNA合成装置のモノマー試薬ポートに入れる。合成装置には、3’-ホスフェート-ON固体支持体が更に供給される。次いで、試薬を使用して、標準的なDNA合成サイクルを用いて八量体オリゴマーを合成する。カップリング収率が低い場合、延長された結合時間が使用される。合成の最後の工程で、(TFA保護基を有する)5’-アミンホスホラミダイト試薬をカップリングさせる。最終オリゴマーは、標準的なDNA脱保護プロトコルに従ってアンモニアで脱保護され、HPLCによって精製され、質量分析によって特徴付けられる。この生成物をマレイミドNHSエステルと反応させて、DNAポリメラーゼ変異体上のシステイン基を誘導体化する準備ができているチオール反応性化合物を提供する(図4Dの構造を参照)。
実施例7:ポリメラーゼコピーおよびパルス光修飾のための修飾可能なDNAの調製
【0242】
50ntの環状DNAオリゴヌクレオチドを、反復配列(GTTATTTTTT)5を用いて調製する。これは、配列(AAAAAATAAC)nの反復DNAポリマーをコード化する。ケージドフルオロフォアを含む2つのヌクレオチド:Coumケージドクマリンで置換されたデオキシウリジンおよびDNPEケージドTokyo green(図8)で置換されたデオキシシチジンを実験のために更に調製する。これらは、ヌクレオシド三リン酸形態で調製され、2つのケージドヌクレオチドを提供する。相補的プライマー、未修飾BST3.0 DNAポリメラーゼ、dATPおよび2つのケージドヌクレオシド三リン酸をポリメラーゼ支持緩衝液中でインキュベートする。これにより、各反復単位中に2つの修飾ヌクレオチドを含む長い反復DNA一本鎖のローリングサークル合成がもたらされる。PAGEゲル分析により、生成物の修飾鎖中の1000ヌクレオチドまたはそれを超える長さが確認される。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7A
図7B
図7C
図7D
図7E-F】
図8
【国際調査報告】