(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-10-23
(54)【発明の名称】KIFC1/HSETによるヒト紡錘体の安定化
(51)【国際特許分類】
C12N 5/075 20100101AFI20241016BHJP
C12N 15/55 20060101ALI20241016BHJP
C12N 5/10 20060101ALI20241016BHJP
C12N 15/12 20060101ALI20241016BHJP
C12N 9/14 20060101ALI20241016BHJP
C12N 15/89 20060101ALI20241016BHJP
G01N 33/53 20060101ALI20241016BHJP
【FI】
C12N5/075
C12N15/55 ZNA
C12N5/10
C12N15/12
C12N9/14
C12N15/89 Z
G01N33/53 D
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024518800
(86)(22)【出願日】2022-07-25
(85)【翻訳文提出日】2024-05-10
(86)【国際出願番号】 EP2022070801
(87)【国際公開番号】W WO2023046335
(87)【国際公開日】2023-03-30
(32)【優先日】2021-09-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
(71)【出願人】
【識別番号】508348956
【氏名又は名称】マックス-プランク-ゲゼルシャフト ツア フェルデルンク デア ヴィッセンシャフテン エー.ファウ.
(74)【代理人】
【識別番号】100102978
【氏名又は名称】清水 初志
(74)【代理人】
【識別番号】100205707
【氏名又は名称】小寺 秀紀
(74)【代理人】
【識別番号】100160923
【氏名又は名称】山口 裕孝
(74)【代理人】
【識別番号】100119507
【氏名又は名称】刑部 俊
(74)【代理人】
【識別番号】100142929
【氏名又は名称】井上 隆一
(74)【代理人】
【識別番号】100148699
【氏名又は名称】佐藤 利光
(74)【代理人】
【識別番号】100188433
【氏名又は名称】梅村 幸輔
(74)【代理人】
【識別番号】100128048
【氏名又は名称】新見 浩一
(74)【代理人】
【識別番号】100129506
【氏名又は名称】小林 智彦
(74)【代理人】
【識別番号】100114340
【氏名又は名称】大関 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100214396
【氏名又は名称】塩田 真紀
(74)【代理人】
【識別番号】100121072
【氏名又は名称】川本 和弥
(74)【代理人】
【識別番号】100221741
【氏名又は名称】酒井 直子
(74)【代理人】
【識別番号】100114926
【氏名又は名称】枝松 義恵
(72)【発明者】
【氏名】シュー メリーナ
(72)【発明者】
【氏名】ソ チュン
【テーマコード(参考)】
4B065
【Fターム(参考)】
4B065AA93X
4B065AB01
4B065AC14
4B065BA03
4B065BA04
4B065BD39
4B065CA31
4B065CA44
(57)【要約】
驚くべきことに、ヒト卵母細胞は、重要な紡錘体関連タンパク質KIFC1/HSETを欠いていることが見いだされた。本出願は、KIFC1/HSETを用いてヒト紡錘体を安定化させる方法を記載する。具体的には、本方法は、(i)KIFC1/HSETタンパク質または(ii)KIFC1/HSETをコードするmRNAをヒト卵母細胞に導入することに関する。さらに、本出願は、天然に存在しないヒト卵母細胞に関し、(i)KIFC1/HSETタンパク質または(ii)KIFC1/HSET mRNAが、天然に存在するヒト卵母細胞に導入され、それにより天然に存在しないヒト卵母細胞を得る。さらに加えて、本出願は、(i)KIFC1/HSETタンパク質または(ii)KIFC1/HSETをコードするmRNAをヒト接合体に導入することによってヒト接合体における有糸分裂中の無秩序かつ/または多極性の紡錘体を有する確率を低下させる方法において使用するための、(i)KIFC1/HSETタンパク質または(ii)KIFC1/HSETをコードするmRNAに関する。さらに、本出願は、(i)KIFC1/HSETタンパク質と(ii)ヒト減数分裂紡錘体またはヒト有糸分裂紡錘体とを含む複合体を開示し、KIFC1/HSETタンパク質は、ヒト卵母細胞または接合体に導入されている。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(i)KIFC1/HSETタンパク質または(ii)KIFC1/HSETをコードするmRNAをヒト卵母細胞に導入するインビトロ法。
【請求項2】
KIFC1/HSETが、ヒト卵母細胞の減数分裂紡錘体を安定化させる、請求項1記載の方法。
【請求項3】
KIFC1/HSETタンパク質が、組換え産生されたKIFC1/HSETタンパク質である、請求項1または2記載の方法。
【請求項4】
ヒト卵母細胞が、天然に存在するものであり、かつ/もしくは、ヒト卵母細胞が、マウス卵母細胞の多くとも2分の1、好ましくは多くとも4分の1、より好ましくは多くとも6分の1、さらにより好ましくは多くとも10分の1、さらにより好ましくは多くとも20分の1、さらにより好ましくは多くとも30分の1、さらにより好ましくは多くとも40分の1、さらにより好ましくは多くとも50分の1、およびさらにより好ましくは多くとも60分の1だけ、KIFC1/HSETを発現し;かつ/または
ヒト卵母細胞が、天然に存在するものであり、かつ/もしくは、ヒト卵母細胞が、HeLa細胞の多くとも2分の1、好ましくは多くとも4分の1、より好ましくは多くとも6分の1、さらにより好ましくは多くとも10分の1、およびさらにより好ましくは多くとも20分の1だけ、KIFC1/HSETを発現する、
先行請求項のいずれか一項記載の方法。
【請求項5】
KIFC1/HSETタンパク質が、組換えKIFC1/HSETタンパク質であり、かつ/または、
KIFC1/HSETタンパク質が、
SEQ ID NO:1(ヒトKIFC1/HSET)に対して少なくとも70%、好ましくは少なくとも75%、より好ましくは少なくとも80%、より好ましくは少なくとも81%、より好ましくは少なくとも82%、より好ましくは少なくとも83%、より好ましくは少なくとも84%、より好ましくは少なくとも85%、より好ましくは少なくとも86%、より好ましくは少なくとも87%、より好ましくは少なくとも88%、より好ましくは少なくとも89%、より好ましくは少なくとも90%、より好ましくは少なくとも91%、より好ましくは少なくとも92%、より好ましくは少なくとも93%、より好ましくは少なくとも94%、より好ましくは少なくとも95%、より好ましくは少なくとも96%、より好ましくは少なくとも97%、より好ましくは少なくとも98%、さらにより好ましくは少なくとも99%同一、および最も好ましくはSEQ ID NO:1に対して100%同一である、配列
を含み、かつ好ましくは前記配列からなり;
特に、KIFC1/HSETが、微小管結合活性、ATP加水分解活性および/または微小管滑り活性を有する、
先行請求項のいずれか一項記載の方法。
【請求項6】
KIFC1/HSETをコードするmRNAが、
SEQ ID NO:1(ヒトKIFC1/HSET)に対して少なくとも70%、好ましくは少なくとも75%、より好ましくは少なくとも80%、より好ましくは少なくとも81%、より好ましくは少なくとも82%、より好ましくは少なくとも83%、より好ましくは少なくとも84%、より好ましくは少なくとも85%、より好ましくは少なくとも86%、より好ましくは少なくとも87%、より好ましくは少なくとも88%、より好ましくは少なくとも89%、より好ましくは少なくとも90%、より好ましくは少なくとも91%、より好ましくは少なくとも92%、より好ましくは少なくとも93%、より好ましくは少なくとも94%、より好ましくは少なくとも95%、より好ましくは少なくとも96%、より好ましくは少なくとも97%、より好ましくは少なくとも98%、さらにより好ましくは少なくとも99%同一、および最も好ましくはSEQ ID NO:1に対して100%同一である配列を含む、好ましくは前記配列からなる、アミノ酸配列
に翻訳され;かつ
特に、翻訳されたKIFC1/HSET mRNAが、微小管結合活性、ATP加水分解活性および/または微小管滑り活性を有する、
先行請求項のいずれか一項記載の方法。
【請求項7】
KIFC1/HSETが導入されたヒト卵母細胞が、KIFC1/HSETが導入されていないヒト卵母細胞と比較して、双極性減数分裂紡錘体を有する確率が高く、好ましくは、KIFC1/HSETが導入されたヒト卵母細胞が、KIFC1/HSETが導入されていないヒト卵母細胞と比較して、双極性減数分裂紡錘体を有する確率が少なくとも5%、好ましくは少なくとも10%、より好ましくは少なくとも15%、より好ましくは少なくとも20%、より好ましくは少なくとも25%、およびさらにより好ましくは少なくとも35%高い、先行請求項のいずれか一項記載の方法。
【請求項8】
(i)KIFC1/HSETタンパク質または(ii)KIFC1/HSETをコードするmRNAが、卵核胞期、減数分裂Iまたは減数分裂IIにおいて導入される、先行請求項のいずれか一項記載の方法。
【請求項9】
(i)KIFC1/HSETタンパク質または(ii)KIFC1/HSET mRNAが、天然に存在するヒト卵母細胞に導入され、それにより天然に存在しない卵母細胞が得られ、特に、KIFC1/HSETタンパク質が、組換え産生されたKIFC1/HSETタンパク質である、
天然に存在しないヒト卵母細胞。
【請求項10】
KIFC1/HSETタンパク質が、組換え産生されたKIFC1/HSETタンパク質である、請求項9記載の卵母細胞。
【請求項11】
(i)KIFC1/HSETタンパク質または(ii)KIFC1/HSETをコードするmRNAが、卵母細胞の減数分裂紡錘体を安定化させる、請求項9または10記載の卵母細胞。
【請求項12】
天然に存在するヒト卵母細胞が、マウス卵母細胞の多くとも2分の1、好ましくは多くとも4分の1、より好ましくは多くとも6分の1、さらにより好ましくは多くとも10分の1、さらにより好ましくは多くとも20分の1、さらにより好ましくは多くとも30分の1、さらにより好ましくは多くとも40分の1、さらにより好ましくは多くとも50分の1、およびさらにより好ましくは多くとも60分の1だけ、KIFC1/HSETを発現し;かつ/または、
天然に存在するヒト卵母細胞が、HeLa細胞の多くとも2分の1、好ましくは多くとも4分の1、より好ましくは多くとも6分の1、さらにより好ましくは多くとも10分の1、およびさらにより好ましくは多くとも20分の1だけ、KIFC1/HSETを発現する、
請求項9~11のいずれか一項記載のヒト卵母細胞。
【請求項13】
(i)KIFC1/HSETタンパク質または(ii)KIFC1/HSETをコードするmRNAをヒト接合体に導入することによって異数性の確率を低下させる方法において使用するための、(i)KIFC1/HSETタンパク質または(ii)KIFC1/HSETをコードするmRNA。
【請求項14】
(i)KIFC1/HSETタンパク質または(ii)KIFC1/HSETをコードするmRNAをヒト接合体に導入することによってヒト接合体における有糸分裂中の無秩序かつ/または多極性の紡錘体を有する確率を低下させる方法において使用するための、(i)KIFC1/HSETタンパク質または(ii)KIFC1/HSETをコードするmRNA。
【請求項15】
(i)KIFC1/HSETタンパク質または(ii)KIFC1/HSETをコードするmRNAが、ヒト接合体の有糸分裂紡錘体を安定化させ、好ましくは、KIFC1/HSETタンパク質が、組換え産生されたKIFC1/HSETタンパク質である、請求項14記載の(i)KIFC1/HSETタンパク質または(ii)KIFC1/HSETをコードするmRNA。
【請求項16】
ヒト接合体が、マウス接合体の多くとも2分の1、好ましくは多くとも4分の1、より好ましくは多くとも6分の1、さらにより好ましくは多くとも10分の1、さらにより好ましくは多くとも20分の1、さらにより好ましくは多くとも30分の1、さらにより好ましくは多くとも40分の1、さらにより好ましくは多くとも50分の1、およびさらにより好ましくは多くとも60分の1だけ、KIFC1/HSETを発現し;かつ/または、
ヒト接合体が、HeLa細胞の多くとも2分の1、好ましくは多くとも4分の1、より好ましくは多くとも6分の1、さらにより好ましくは多くとも10分の1、およびさらにより好ましくは多くとも20分の1だけ、KIFC1/HSETを発現する、
請求項14または15記載の(i)KIFC1/HSETタンパク質または(ii)KIFC1/HSETをコードするmRNA。
【請求項17】
有糸分裂前期、中期、後期、終期またはS期中、より好ましくは有糸分裂前期中に導入される、請求項14~16のいずれか一項記載の(i)KIFC1/HSETタンパク質または(ii)KIFC1/HSETをコードするmRNA。
【請求項18】
有糸分裂紡錘体が安定化されたヒト接合体が、安定化されていない有糸分裂紡錘体よりも双極紡錘体である確率が高く、好ましくは、ここで、安定化されていない紡錘体が、多極性または無秩序な紡錘体であり、好ましくは、ここで、有糸分裂紡錘体の安定化が、蛍光顕微鏡法または偏光顕微鏡法を使用して、紡錘体極性形態によって評価され、より好ましくは、ここで、KIFC1/HSETが導入されていないヒト接合体が、KIFC1/HSETが導入されたヒト接合体と比較して、多極性または無秩序な有糸分裂紡錘体を有する確率が少なくとも5%、好ましくは少なくとも10%、より好ましくは少なくとも15%、より好ましくは少なくとも20%、より好ましくは少なくとも25%、およびさらにより好ましくは少なくとも35%高い、請求項14~17のいずれか一項記載の(i)KIFC1/HSETタンパク質または(ii)KIFC1/HSETをコードするmRNA。
【請求項19】
(i)KIFC1/HSETタンパク質と(ii)ヒト減数分裂紡錘体またはヒト有糸分裂紡錘体とを含む複合体であって、
KIFC1/HSETタンパク質が、インビトロ法によってヒト卵母細胞または接合体に導入可能であり、好ましくは、インビトロ法によってヒト卵母細胞または接合体に導入されており、より好ましくは、KIFC1/HSETタンパク質が、マイクロインジェクションおよび/またはエレクトロポレーションによって、好ましくはマイクロインジェクションによって導入されており、
複合体が、蛍光顕微鏡法によって検出可能であり、特に、紡錘体が、抗アルファ-チューブリン抗体によって検出可能であり、かつ/または、KIFC1/HSETが、抗HSET-C抗体によって検出可能であり、より特定すると、紡錘体が、ラット抗アルファ-チューブリン抗体(MCA78G;Bio-Rad)によって検出可能であり、かつ/または、KIFC1/HSETが、ウサギ抗HSET-C(20790-1-AP;Proteintech)によって検出可能である、
複合体。
【請求項20】
KIFC1/HSETタンパク質が、紡錘体を安定化させ、好ましくは、ここで、安定化された紡錘体が、双極紡錘体であり、より好ましくは、ここで、紡錘体形態が、蛍光顕微鏡法または偏光顕微鏡法によって評価または決定される、請求項19記載の複合体。
【請求項21】
安定化された紡錘体が、多極性または無秩序な紡錘体よりも双極紡錘体である確率が少なくとも5%、好ましくは少なくとも10%、より好ましくは少なくとも15%、より好ましくは少なくとも20%、より好ましくは少なくとも25%、およびさらにより好ましくは少なくとも35%高い、請求項20記載の複合体。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
発明の背景
ヒト卵子における異数性は、異常な胚発生の主要原因であり、流産およびダウン症候群などの遺伝性障害を引き起こす。ヒト卵子の約25~50%が異数性であると推定されており、異数性率は、母体年齢と共に指数関数的に増加する(1)。最近まで、ヒト卵子が、たとえ若年女性でも、そのように異数性になりやすい理由は不明なままであった。本発明者らの生ヒト卵母細胞での減数分裂および染色体分配の先行研究は、ヒト卵母細胞が、減数分裂Iにおいて極めて不安定な紡錘体を構築することが多いことを初めて明らかにした(2)。双極紡錘体は、有糸分裂および減数分裂における染色体分配を駆動し、それらの誤りのない構築が、正確な染色体分配の前提条件である。ヒト卵母細胞では、2つの紡錘体極が、頻繁に広がるかまたは分裂し(2)、無極性または多極性の紡錘体を形成する(2、3)。これらの不安定な紡錘体は、染色体の不整列および誤分配を起こすことが多く(2)、後期Iの三方向分裂(tri-directional division)と関係している(3)。しかしながら、ヒト卵母細胞における紡錘体不安定性の原因は、依然として不明である。さらに最近になって、三倍体のヒト受精卵(接合体)(4、5)だけでなく、二倍体のものも、多極紡錘体を構築し、多極分裂を経る傾向があることが示された(6、7)。それゆえ、紡錘体不安定性の原因を特定することは、ヒト卵子における異数性を低減させるだけでなく生殖補助医療の全体的な治療成績も改善する治療戦略へとつながる可能性がある。
【0002】
紡錘体不安定性は、正常な有糸分裂細胞では極めて稀であり、その異数性率ははるかに低い。有糸分裂細胞は、卵母細胞の紡錘体と異なる方法で紡錘体を構築する。有糸分裂では、2つの中心体が、主要な微小管形成中心(MTOC)として作用し、2つの紡錘体極を形成する(8、9)。標準的な中心体は、微小管核形成および固定を担うタンパク質を含有する中心小体周辺物質に取り囲まれた一対の中心小体からなる(10)。中心体の数は、有糸分裂細胞において厳密に制御されている。通常、中心体は、1回の細胞周期につき1回複製されることで、中心体が2つだけ形成され、それにより、双極紡錘体が構築されることになる(11)。しかしながら、中心体が過剰増幅されるかまたは中心体完全性が失われると、細胞は、多極紡錘体を構築しやすくなる(12)。
【0003】
哺乳動物を含めたほとんどの種の卵母細胞では、中心小体は、卵母細胞発生中に分解し、その結果、中心体が喪失する(13~15)。無中心体の紡錘体極がどのように組織化されるかは、非哺乳動物卵母細胞およびマウス卵母細胞で概ね研究されている。アフリカツメガエル(Xenopus)卵抽出液での初期のインビトロ研究は、マイナス端方向モーターのダイニンが、クロマチンビーズ上に構築された紡錘体の微小管を架橋して滑らせることによって極を組織化することを示した(16、17)。C. エレガンス(C. elegans)卵母細胞では、カタニンMEI-1が、紡錘体極関連タンパク質ASPM-1を動員し(18)、これがさらに、極収束のためにダイニンおよび/またはNUMA関連LIN-5を動員し得る(19、20)。ショウジョウバエ(Drosophila)卵母細胞では、AspおよびNUMA関連Mudは、紡錘体極組織化に必ずしも必要ではなく(21、22)、マイナス端方向モーターのキネシン-14 Ncdが、極収束のために微小管を束ねる(23、24)。マウス卵母細胞では、標準的な中心体は、無中心小体MTOC(aMTOC;微小管形成中心)により機能的に置き換わっている(25)。aMTOCは、中心小体周辺物質の成分の多くを含有し(26)、2つの紡錘体極で環として集合し、マウス卵母細胞での微小管核形成および固定の主要部位となっている(25、27~30)。
【0004】
しかしながら、ヒト、ウシおよびブタを含めた非齧歯類哺乳動物卵母細胞での紡錘体極組織化の機序は、依然として不明である。これらの種では、中心小体周辺物質は、個別のaMTOCに凝集することなく、減数分裂全体を通じて細胞質中に分散したままである(2、31)。これらの卵母細胞の先行研究は、γ-チューブリンおよびNUMAなどの少数のタンパク質の紡錘体極局在を報告したものの(2、32~35)、これらの卵母細胞がどのようにその紡錘体極を構築し、中心体またはaMTOCなしにその紡錘体極性を制御するのかは、依然としてほとんど理解されていない。
【0005】
US 2010/242125 A1は、動物における有糸分裂紡錘体欠陥を改変するための体細胞核移植に関する。体細胞核移植の結果は、インビトロ受精または細胞質内精子注入などの生殖補助医療とは根本的に異なる。体細胞核移植は遺伝学的に同一のヒトをもたらす(すなわち、クローニング)が、生殖補助医療は遺伝学的に異なるヒトをもたらす。したがって、ヒトに対する体細胞核移植は、不妊治療と見なされず、したがって、生殖補助医療の選択肢とならない。
【0006】
Raweらの2005年の表題「Mammalian oocyte maturation and microtubule-associated Proteins dynamics」は、ヒトおよびウシ卵母細胞におけるタンパク質の存在についての予備観測に関する協議要約である。
【0007】
それゆえ、ヒトにおける紡錘体構築の背後にある機序を明らかにすること、特に、ヒト卵母細胞における減数分裂およびヒト接合体における有糸分裂の間のヒト紡錘体安定性を改善することが、当技術分野において必要とされている。前記機序を解読し、紡錘体安定性を改善することは、生殖補助医療にとって大きな進歩となるだろう。
【0008】
本発明は、ヒト卵母細胞が、マウス卵母細胞などの他の卵母細胞およびがん細胞において紡錘体を安定化させるKIFC1/HSETを欠くため、不安定な紡錘体を有することを示す。提示されたデータは、マウス卵母細胞などの他の哺乳動物卵母細胞において紡錘体を安定化させるKIFC1/HSETの非存在が、ヒト卵母細胞における紡錘体不安定性の大きな要因であることを実証する。したがって、ヒト卵母細胞および/またはヒト接合体へのKIFC1/HSETの導入は、紡錘体を安定化させ、それにより、ヒト卵母細胞および/または接合体は、異数性を経験する確率がより低くなる。本発明者らは、驚くべきことに、ヒト卵母細胞が、KIFC1/HSETを欠いていること、ひいては、ヒト卵母細胞にヒトKIFC1/HSETを導入することによって不安定なヒト紡錘体の確率を低下させることができることを実証した。本発明者らは、ヒトKIFC1/HSETの導入によってヒト卵母細胞における不安定な紡錘体を安定化させることができることを示している。
【発明の概要】
【0009】
マウス卵母細胞がKIFC1/HSETを発現することは、当技術分野において繰り返し実証されてきた(83、84)。したがって、また、ヒト卵母細胞もKIFC1/HSETを発現するものと予想されていた。しかしながら、意外なことに、ヒト卵母細胞は、KIFC1/HSETを欠いていることが実証された(
図2Bを参照のこと)。KIFC1/HSETがヒト卵母細胞で発現されるかどうかを確認するために、本発明者らは、マウスおよびヒト卵母細胞に対する過去のプロテオミクス研究のデータ(77、78)を調べた。本発明者らは、KIFC1/HSETがマウスデータセットにおいてのみ検出できることに気付いた。しかしながら、これらの2つの研究についてプロテオームカバレッジに違いがあることから、本発明者らは、哺乳動物卵母細胞および胚の過去のRNA-seq研究のデータ(79~82)を使用して、KIFC1/HSET発現をさらに分析した。マウス、ウシおよびブタ卵母細胞は、顕著な母性KIFC1/HSET mRNAプールを有し、これは受精が起こると枯渇して、胚性KIFC1/HSET mRNAが2~4細胞期以降に発現された(
図5A)。対照的に、KIFC1/HSET mRNAは、参考文献79~82に提示されたデータによると(
図5A)、ヒト卵母細胞および接合体ではほとんど検出できなかったが、胚では2または4細胞期以降に容易に発現された。
【0010】
本発明者らは、その後、卵母細胞および陽性対照としての非同期HeLa細胞においてKIFC1/HSETタンパク質レベルを調べた(
図2BおよびC)。本発明者らは、HeLa細胞、マウス卵母細胞、ウシ卵母細胞およびブタ卵母細胞溶解物においてKIFC1/HSETを容易に検出できたものの(
図2Bおよび
図6F)、同等量のヒト卵母細胞溶解物では、たとえ過剰曝露後でも、本発明者らはKIFC1/HSETを検出できなかった(
図2B)。したがって、本発明者らは、ヒト卵母細胞がKIFC1/HSETを欠いていると結論付ける。
【0011】
ヒト卵母細胞におけるKIFC1/HSETの欠如を模倣するために、本発明者らは、卵胞RNAiおよびTrim-Awayをそれぞれ使用して、aMTOCを含有しないヒト化マウス卵母細胞およびウシ卵母細胞においてKIFC1/HSETを枯渇させた。印象的なことに、KIFC1/HSET枯渇aMTOC不含マウス卵母細胞の約35%が多極紡錘体を構築した(
図2DおよびE)。さらに、KIFC1/HSET枯渇aMTOC不含マウス卵母細胞の約30%が、広がった極を有する円形の紡錘体を構築した(
図2DおよびE)。これらの紡錘体は、生ヒト卵母細胞において過去に観察された「無極性」紡錘体(2)に酷似していた。したがって、aMTOC不含マウス卵母細胞およびウシ卵母細胞におけるKIFC1/HSETの枯渇は、ヒト卵母細胞の紡錘体不安定性を完全に再現する。したがって、KIFC1/HSETの枯渇は、ヒト卵母細胞の紡錘体不安定性を具体的に再現し、KIFC1/HSETの欠如が、ヒト卵母細胞における紡錘体不安定性の大きな要因であることを強く示唆する。
【0012】
KIFC1/HSETの欠如がヒト卵母細胞における紡錘体不安定性の大きな要因であることを確認するために、本発明者らは、
図8においてヒト卵母細胞にKIFC1/HSETを導入し、KIFC1/HSETの導入が、紡錘体極不安定性の持続期間を有意に低減させたことを実証する(
図8C)。本発明者らはまた、注入なしおよびKIFC1/HSETを注入したヒト卵母細胞において、後期開始時の不整列な染色体(
図8D)および遅滞染色体(
図8E)の頻度を定量した。総じて、本発明者らは、KIFC1/HSETの導入が、減数分裂紡錘体を安定化させ、ヒト卵母細胞における異数性のリスクを低減させると推察する。
【0013】
提示されたデータは、ヒト卵母細胞における紡錘体不安定性の長く探求されてきた原因を明らかにする:ヒト卵母細胞は、他の種の卵母細胞中に存在する重要な紡錘体安定化因子であるキネシン-14 KIFC1/HSETを欠いている。本研究および先行研究で示されたように(23、24、83、88~90)、ほとんどの哺乳動物および非哺乳動物卵母細胞は、KIFC1/HSETを発現して、適正な紡錘体構築を促す。ヒト卵母細胞は、KIFC1/HSETを発現しないため、本発明者らは、これらの活性の非存在がその紡錘体を不安定にしていると提案する。
【0014】
ヒト卵母細胞におけるこのKIFC1/HSETの欠如は、ヒト卵母細胞において生じる驚くほど高い異数性率を説明することができる。高い紡錘体欠陥の割合は、
図3GおよびHに示されるように、KIFC1/HSETの、例えばマイクロインジェクションによる導入によって救済することができる。よって、本発明は、KIFC1/HSETのインビトロ補充によってヒト紡錘体を安定化させることに関する。
【0015】
本発明者らの知る限りでは、これは、ヒト卵母細胞がKIFC1/HSETを欠いていることを示す最初の研究である。マウス卵母細胞および接合体のデータセットに主に基づいて、当技術分野では、ヒト卵母細胞にも同様にKIFC1/HSETが存在するものと予想されていた。したがって、上で考察された技術分野に基づけば、当業者には、KIFC1/HSETをヒト卵母細胞または接合体に導入しようという動機がなかった。
【0016】
重要なことに、特許請求の範囲によってさらに定義されるように、ヒト卵母細胞または接合体へのKIFC1/HSETの導入が企図される。導入されると、KIFC1/HSETは、ヒト減数分裂または有糸分裂紡錘体を安定化させる。それにより、不安定な紡錘体を有する確率が低下し、異数性のリスクが低下する。本発明の1つの特別な利点は、KIFC1/HSETがヒト体細胞中に存在することである。よって、KIFC1/HSETは、卵母細胞または接合体による許容性が高い。したがって、本発明は、生殖補助医療のためのKIFC1/HSETタンパク質またはRNAに関する。
【0017】
本明細書に記載される方法は、インビトロ法である。よって、KIFC1/HSETは、エクスビボで導入される。言い換えれば、特許請求の範囲によってさらに定義されるように、KIFC1/HSETは、天然に存在する卵母細胞に導入され、それにより、天然に存在しない卵母細胞が得られる。よって、本発明はまた、特許請求の範囲によってさらに定義されるように、KIFC1/HSETが導入されている天然に存在しない卵母細胞にも関する。さらに、特許請求の範囲によってさらに定義されるように、KIFC1/HSETをヒト接合体に導入することによってヒト接合体における有糸分裂中の無秩序かつ/または多極性の紡錘体を有する確率を低下させる方法において使用するための、KIFC1/HSETも、本明細書において企図される。加えて、KIFC1/HSETは、ヒト減数分裂紡錘体と複合体を形成する。さらに、本発明は、特許請求の範囲によってさらに定義されるように、KIFC1/HSETと有糸分裂紡錘体の複合体形成に関する。
【0018】
KIFC1/HSETは、生殖細胞系列を変更しないまたはゲノムに組み込まれない。代わりに、KIFC1/HSETは、ヒト減数分裂または有糸分裂紡錘体の安定性を支援し、それにより、ヒト染色体の誤りのない分配を支援し、すなわち、異数性を回避する。
【0019】
本発明の範囲は、特許請求の範囲によって定義される。
【発明を実施するための形態】
【0020】
発明の詳細な説明
第1の局面では、(i)KIFC1/HSETタンパク質または(ii)KIFC1/HSETをコードするmRNAをヒト卵母細胞に導入するインビトロ法が開示される。
【0021】
具体的には、KIFC1/HSETは、卵母細胞に、例えばマイクロインジェクションによって導入され得る。「導入すること」という用語は、本明細書において使用される場合、生体分子、例えばKIFC1/HSETを、細胞、例えば卵母細胞または接合体に引き込むことを指す。本明細書において使用される場合の特に好ましい生体分子は、タンパク質またはmRNAである。同様に、ヒト卵母細胞に(i)KIFC1/HSETタンパク質または(ii)KIFC1/HSETをコードするmRNAを補充するインビトロ法も開示される。「補充すること」という用語は、本明細書において使用される場合、生体分子をあるものに加えること、例えば、KIFC1/HSETを卵母細胞に加えることを指す。導入されると、卵母細胞は、KIFC1/HSETを、好ましくは、例えばウェスタンブロットによって検出可能な量まで含む。よって、卵母細胞に導入されている(i)KIFC1/HSETタンパク質または(ii)KIFC1/HSETをコードするmRNAを含む卵母細胞も本明細書に開示される。当然のことながら、当業者は、生体分子を細胞に導入するまたは細胞に生体分子を補充する好適な方法を把握している。例えば、当業者は、当技術分野における標準的なマイクロインジェクション法を把握している。さらに、マイクロインジェクションは、本発明者らによって使用され、実施例2において説明されている(方法および材料を参照のこと)。あるいは、当業者は、当技術分野において記載されているエレクトロポレーション(114)を使用してもよい。
【0022】
本方法はまた、以下の工程を含むインビトロ法としても言及され得る:
(I)(i)KIFC1/HSETタンパク質または(ii)KIFC1/HSETをコードするmRNAを提供する工程、および
(II)(i)KIFC1/HSETタンパク質または(ii)KIFC1/HSETをコードするmRNAをヒト卵母細胞に導入する工程が開示される。
【0023】
本方法を実施する前、ヒト卵母細胞は、天然に存在する卵母細胞であり得る、好ましくは、天然に存在する卵母細胞である。本方法を実施した後、ヒト卵母細胞は、天然にない卵母細胞であり得る、好ましくは、天然にない卵母細胞である。これは、本明細書に示されるデータによって示唆されるように、ヒト卵母細胞が、(i)KIFC1/HSETタンパク質または(ii)KIFC1/HSETをコードするmRNAを欠いているからである。「天然に存在する」という用語は、本明細書において使用される場合、天然起源から生じること、好ましくは、人体を含めた天然から得ることが可能であることを意味する。よって、本明細書において使用される場合の天然に存在する卵母細胞は、KIFC1/HSETが導入されていない卵母細胞である。反対に、本明細書において使用される場合の天然に存在しない卵母細胞は、KIFC1/HSETが導入されている卵母細胞である。よって、「天然に存在する」という用語は、卵母細胞が、卵巣、卵管または子宮などのその天然環境中にあることを意味するわけではない。一般に、卵母細胞は、卵母細胞回収によって得ることが可能であるが、卵母細胞回収それ自体は、本発明の一部ではない。KIFC1/HSETを卵母細胞に導入する方法は、インビトロ法である。
【0024】
一般に、「インビトロ」という用語は、本明細書において使用される場合、人体などの生体の外側のことを意味する。例えば、本方法は、女性から卵母細胞を得た後、その卵母細胞にKIFC1/HSETをマイクロインジェクションすることによって実施され得る。言い換えれば、本明細書に記載される通りの方法は、エクスビボで実施される。このことは、本方法が、生きた対象、例えばヒトに対して実施されないことを意味している。
【0025】
ある態様では、ヒト卵母細胞は、マウス卵母細胞および/またはHeLa細胞より少なくKIFC1/HSETを発現する。ヒト卵母細胞、マウス卵母細胞およびHeLa細胞でのKIFC1/HSETの発現に関して、本明細書の
図2Bを特に参照されたい。「発現」という用語は、本明細書において使用される場合、細胞中のKIFC1/HSETの濃度(単位体積当たりの量)のことを指す。例えば、
図2Bでは、1レーン当たり10~50個のマウス、12個のヒト、ウシまたはブタ卵母細胞を使用した。より好ましくは、ヒト卵母細胞は、KIFC1/HSETタンパク質の濃度に基づき、マウス卵母細胞および/またはHeLa細胞より少なくKIFC1/HSETタンパク質を発現し得る。よって、KIFC1/HSETタンパク質の発現は、単位細胞当たりの総量に基づいて評価されるわけではない。この濃度に基づく手法はまた、本明細書に示される通りのデータにも反映される:異なる種からの卵母細胞溶解物の同等のローディングを確保するために(
図2B)、本発明者らは、すべての標準的なハウスキーピングタンパク質の感度および直線性を上回るオンブロット総タンパク質正規化を実施した(
図6、A~E)。しかしながら、実際には、KIFC1/HSETの発現が全卵母細胞において評価されることは通常なく、これは、分析のために卵母細胞の犠牲が必要であるためである。KIFC1/HSETの有意に低い発現は、ヒト卵母細胞の特徴を表す。
【0026】
具体的には、ヒト卵母細胞は、マウス卵母細胞の多くとも2分の1、好ましくは多くとも4分の1、より好ましくは多くとも6分の1、さらにより好ましくは多くとも10分の1、およびさらにより好ましくは多くとも20分の1、さらにより好ましくは多くとも30分の1、さらにより好ましくは多くとも40分の1、さらにより好ましくは多くとも50分の1、およびさらにより好ましくは多くとも60分の1だけ、KIFC1/HSETを発現し得る。好ましくは、ヒト卵母細胞は、マウス卵母細胞の多くとも2分の1、より好ましくは多くとも4分の1、より好ましくは多くとも6分の1、さらにより好ましくは多くとも10分の1、およびさらにより好ましくは多くとも20分の1、さらにより好ましくは多くとも30分の1、さらにより好ましくは多くとも40分の1、さらにより好ましくは多くとも50分の1、およびさらにより好ましくは多くとも60分の1だけ、KIFC1/HSETタンパク質を発現し得る。当然のことながら、マウス卵母細胞は、本明細書において言及される通り、野生型マウス卵母細胞である。特に、野生型マウス卵母細胞は、天然に存在する卵母細胞、すなわち、天然起源から生じる卵母細胞である。言い換えれば、野生型マウス卵母細胞は、例えばsiRNAまたはTrim-awayによって、特定のタンパク質が枯渇されていない。具体的には、マウス卵母細胞は、KIFC1/HSETが枯渇されていない。本発明者らの実験、例えば
図2Bに提示されたデータによると、本発明者らは、ヒト卵母細胞において、マウス卵母細胞の74分の1のKIFC1/HSETタンパク質の発現を検出することができた。
【0027】
加えて、ヒト卵母細胞は、HeLa細胞の多くとも2分の1、好ましくは多くとも4分の1、より好ましくは多くとも6分の1、さらにより好ましくは多くとも10分の1、およびさらにより好ましくは多くとも20分の1だけ、KIFC1/HSETを発現し得る。好ましくは、ヒト卵母細胞は、HeLa細胞の多くとも2分の1、より好ましくは多くとも4分の1、より好ましくは多くとも6分の1、さらにより好ましくは多くとも10分の1、およびさらにより好ましくは多くとも20分の1だけ、KIFC1/HSETタンパク質を発現し得る。本発明者らの実験、例えば
図2Bに提示されたデータによると、本発明者らは、ヒト卵母細胞において、HeLa細胞の28分の1のKIFC1/HSETタンパク質の発現を検出することができた。
【0028】
例えば、
図2Bに示されるように、KIFC1/HSETの発現は、ウェスタンブロット上のバンド強度によって評価され得る。同意語として、「イムノブロット」という用語を使用してよい。当然のことながら、当業者は、ウェスタンブロットを実施するための標準手順を把握しており、ここで、電気泳動によって分離されたタンパク質が、例えば、PVDFまたはニトロセルロース膜に転写され、標識抗体との反応によって同定される。ウェスタンブロット上のバンド強度は、同じKIF1/HSET抗体を一次抗体として使用することによって評価されてよく、好ましくは、ここで、バンド強度は、ウサギ抗HSET抗体、より好ましくは、ウサギ抗HSET-N抗体ab172620(Abcam)を使用して評価される。当然のことながら、当業者は、KIFC1/HSETに対する一次抗体だけでなく二次抗体も、多くの供給業者から商業的に入手できることを把握している。さらに、当業者は、使用される一次抗体が、ヒトおよびマウスKIFC1/HSETに対して同じまたは類似の親和性を有するように努めることも可能である。例えば、当業者は、総タンパク質の異なる範囲をブロッティングし、KIFC1/HSETのバンド強度を同等の総タンパク質レベルで比較することによって、マウスおよびヒト体細胞における親和性を確認することもできる。
【0029】
好ましい態様では、ウェスタンブロットは、同じ二次抗体、同じブロッキング溶液、同じインキュベーション時間、同じ溶解バッファー、および/または同じ反応バッファーを使用して実施される。例示的な二次抗体は、例えばSigma-Aldrichから、商業的に入手できる抗ウサギ、例えば、抗体A9169であり得る。好適なブロッキング溶液は、5%スキムミルクおよび0.1% tween-20を含むトリス緩衝食塩水(TBS)であり得る。一次および二次抗体との好適なインキュベーション時間は、当業者が容易に決定することができる。例えば、一次抗体とのインキュベーションは、例えば、4℃で一晩かもしくは室温でより短い時間実施されてよく、かつ/または、二次抗体とのインキュベーションは、室温で1時間実施されてよい。好ましい溶解バッファーは、100mM DTTを含む1.333×NuPAGE LDSサンプルバッファー(Thermo Fisher Scientific)である。ヒト卵母細胞、マウス卵母細胞およびHeLa細胞のウェスタンブロットが同じ条件下で実施されることがとりわけ好ましい。
【0030】
KIFC1/HSETの発現は、質量分析法などの当技術分野における代替法によって評価され得る。当業者は、2つの試料中のタンパク質の発現を定量的に判定するための標準手順を把握している。さらに、KIFC1/HSETをコードするmRNAの発現を、当技術分野における標準的な方法、例えば、RNAシーケンシング、ノーザンブロット分析、インサイチューハイブリダイゼーションおよび/または逆転写ポリメラーゼ連鎖反応(RT-PCR)によって評価してもよい(また参考文献119も参照のこと)。
【0031】
キネシン様タンパク質KIFC1は、本明細書において「KIFC1/HSET」と称され、ヒトではKIFC1遺伝子によりコードされるタンパク質であり、そのタンパク質自体、当業者に周知である(87、88)。簡潔に述べると、タンパク質KIFC1/HSETは、キネシン-14ファミリーのメンバーである。KIFC1/HSETは、C末端モータードメイン、超螺旋ストークおよびN末端テールドメインからなる。当技術分野において公知であるように、テールおよびモータードメインは、微小管結合部位を含有する。このキネシンは、微小管のマイナス端方向に移動し、微小管を滑らせるまたは架橋する能力を有する。KIFC1/HSETをコードするmRNAが翻訳されると、KIFC1/HSETは機能的になる。体細胞の有糸分裂という状況下でのKIFC1/HSETの一般的な機能は、当技術分野において公知である。よって、KIFC1/HSETタンパク質は、微小管結合活性、ATP加水分解活性および/または微小管滑り活性を有することが知られており、これらをインビトロで試験することができる。例えば、微小管結合活性は、微小管共ペレット化アッセイによって検出可能であり、ATP加水分解は、ATPaseアッセイによって検出可能であり、かつ/または、微小管滑り活性は、微小管グライディングアッセイ、より好ましくは、生細胞イメージングもしくは免疫蛍光イメージングによって検出可能である。よって、当業者は、KIFC1/HSETの機能性を評価するための多数の方法を把握している。好ましい態様では、KIFC1/HSETタンパク質または翻訳されたKIFC1/HSETをコードするmRNAは、微小管結合活性を有し、これは、(87)Cai S, Weaver LN, Ems-McClung SC, Walczak CE. Kinesin-14 family proteins HSET/XCTK2 control spindle length by cross-linking and sliding microtubules. Mol Biol Cell. 2009 Mar;20(5):1348-59に示されるように、免疫蛍光イメージングによって検出可能である。
【0032】
別の好ましい態様では、KIFC1/HSETは、組換え産生される。あるいは、KIFC1/HSETは、哺乳動物種から抽出され得る。組換えKIFC1/HSETは、当技術分野における標準手順によって産生され得る。例えば、293細胞(例えば、ECACCから)を、KIFC1/HSETの組換え発現に使用してよい。あるいは、CHO細胞、昆虫細胞、酵母細胞または細菌細胞などの他のヒト宿主細胞を、KIFC1/HSETの発現に使用してもよい。さらに、当業者は、タンパク質精製の標準的な方法、例えば、親和性精製と、それに続く、例えばHisTrap FF(GE Healthcare)を使用したAKTA pure(GE Healthcare)を介したサイズ排除クロマトグラフィーと、それに続く、HiLoad 26/600 Superdex 200 pg(GE Healthcare)を使用したサイズ排除クロマトグラフィーを把握している。さらに、当業者は、Hua, K. Jiang, Expression and Purification of Microtubule-Associated Proteins from HEK293T Cells for In Vitro Reconstitution. Methods Mol Biol 2101, 19-26 (2020)に記載されているような組換えタンパク質発現プロトコルを把握している。
【0033】
特に、KIFC1/HSETタンパク質は、ヒトKIFC1/HSETタンパク質または非ヒトKIFC1/HSETタンパク質であり得る。KIFC1/HSETタンパク質がヒトタンパク質であることが好ましい。また、KIFC1/HSETタンパク質が、SEQ ID NO:1(ヒトKIFC1/HSET)に対して少なくとも70%、好ましくは少なくとも75%、より好ましくは少なくとも80%、より好ましくは少なくとも81%、より好ましくは少なくとも82%、より好ましくは少なくとも83%、より好ましくは少なくとも84%、より好ましくは少なくとも85%、より好ましくは少なくとも86%、より好ましくは少なくとも87%、より好ましくは少なくとも88%、より好ましくは少なくとも89%、より好ましくは少なくとも90%、より好ましくは少なくとも91%、より好ましくは少なくとも92%、より好ましくは少なくとも93%、より好ましくは少なくとも94%、より好ましくは少なくとも95%、より好ましくは少なくとも96%、より好ましくは少なくとも97%、より好ましくは少なくとも98%、さらにより好ましくは少なくとも99%同一、および最も好ましくはSEQ ID NO:1に対して100%同一である配列を含み、好ましくは前記配列からなることが好ましい。特に、KIFC1/HSETタンパク質は、微小管結合活性、ATP加水分解活性および/または微小管滑り活性を有し、これらは、任意で、上述したような方法によって試験することができる。
【0034】
KIFC1/HSETをコードするmRNAは、SEQ ID NO:2(ヒトKIFC1/HSET)に対して少なくとも70%、好ましくは少なくとも75%、より好ましくは少なくとも80%、より好ましくは少なくとも81%、より好ましくは少なくとも82%、より好ましくは少なくとも83%、より好ましくは少なくとも84%、より好ましくは少なくとも85%、より好ましくは少なくとも86%、より好ましくは少なくとも87%、より好ましくは少なくとも88%、より好ましくは少なくとも89%、より好ましくは少なくとも90%、より好ましくは少なくとも91%、より好ましくは少なくとも92%、より好ましくは少なくとも93%、より好ましくは少なくとも94%、より好ましくは少なくとも95%、より好ましくは少なくとも96%、より好ましくは少なくとも97%、より好ましくは少なくとも98%、さらにより好ましくは少なくとも99%同一、および最も好ましくはSEQ ID NO:2に対して100%同一である配列を含み得る、好ましくは前記配列からなり得る。特に、翻訳されたKIFC1/HSET mRNAは、微小管結合活性、ATP加水分解活性および/または微小管滑り活性を有し、これらは、任意で、上述したような方法によって試験することができる。
【0035】
別の態様では、KIFC1/HSETをコードするmRNAは、SEQ ID NO:1(ヒトKIFC1/HSET)に対して少なくとも70%、好ましくは少なくとも75%、より好ましくは少なくとも80%、より好ましくは少なくとも81%、より好ましくは少なくとも82%、より好ましくは少なくとも83%、より好ましくは少なくとも84%、より好ましくは少なくとも85%、より好ましくは少なくとも86%、より好ましくは少なくとも87%、より好ましくは少なくとも88%、より好ましくは少なくとも89%、より好ましくは少なくとも90%、より好ましくは少なくとも91%、より好ましくは少なくとも92%、より好ましくは少なくとも93%、より好ましくは少なくとも94%、より好ましくは少なくとも95%、より好ましくは少なくとも96%、より好ましくは少なくとも97%、より好ましくは少なくとも98%、さらにより好ましくは少なくとも99%同一、および最も好ましくはSEQ ID NO:1に対して100%同一である配列を含む、好ましくは前記配列からなる、アミノ酸配列に翻訳される。特に、KIFC1/HSETタンパク質は、微小管結合活性、ATP加水分解活性および/または微小管滑り活性を有し、これらは、任意で、上述したような方法によって試験することができる。
【0036】
KIFC1/HSETタンパク質またはKIFC1/HSETをコードするmRNAはまた、切断型であってもよく、好ましくは、KIFC1/HSETタンパク質またはKIFC1/HSETをコードするmRNAは、N末端切断型であってもよく、より好ましくは、ここで、KIFC1/HSETタンパク質またはKIFC1/HSETをコードするmRNAのN末端テールは、切断型であってもよい。当業者は、タンパク質がその機能を保持するようなタンパク質の好適な切断を決定することが可能である。さらに、当業者は、上述したような方法によってKIFC1/HSETの切断型バージョンの機能を判定することができる。可能な切断について、
図7KおよびLを参照されたい。前記図面は、例えば、SEQ ID No:1の残基1~144のN末端切断を示している。例えば、KIFC1/HSETタンパク質はまた、SEQ ID No:1のアミノ酸1~144および310~673の配列を含む、好ましくは前記配列からなる、融合タンパク質であり得る。前記融合タンパク質は、本発明者らによってなされた、例えば、
図7KおよびLに示される観察によると、十分に機能的である可能性が高い。
【0037】
同様に、KIFC1/HSETをコードするmRNAは、SEQ ID No:2のアミノ酸438~2019の配列、より好ましくはSEQ ID No:2のアミノ酸930~2019の配列を含み得る、好ましくは前記配列からなり得る。
【0038】
KIFC1/HSETタンパク質が非ヒトKIFC1/HSETタンパク質である場合、非ヒトKIFC1/HSETタンパク質は、哺乳動物KIFC1/HSETタンパク質であり得る。任意で、KIFC1/HSETタンパク質は、霊長類、ウシ、ブタおよび齧歯類KIFC1/HSETタンパク質からなる群より選択されてもよく、より好ましくは、KIFC1/HSETタンパク質は、霊長類、ウシ、ブタKIFC1/HSETタンパク質からなる群より選択され、さらにより好ましくは、KIFC1/HSETタンパク質は、霊長類KIFC1/HSETタンパク質である。当業者は、哺乳動物KIFC1/HSET配列を得るために公的に利用可能なデータベースを把握しており、これらを、例えば、https://www.uniprot.org/で探し出すことができる。さらに、ウシ、ブタおよびマウスKIF1/HSETのアミノ酸配列は、SEQ ID NO:3(ウシKIFC1/HSET)、SEQ ID NO:4(ブタKIFC1/HSET)、およびSEQ ID NO:5(マウスKIFC1/HSET)において探し出すことができる。加えて、霊長類KIFC1/HSETのアミノ酸配列は、SEQ ID NO:9(アカゲザル(Rhesus macaque)KIFC1/HSET)において探し出すことができる。当業者は、これらの配列のいずれかと別の配列との配列同一性を検出および/または決定するために、当技術分野における標準ツールを把握している。配列アラインメントツールは、例えば、https://www.ebi.ac.uk/Tools/msa/clustalo/で自由に利用可能であり、これも、配列がアラインされた際の配列同一性の割合を提供する。当技術分野において公知であるように、「同一性パーセント」は、2つのアラインされた配列間で同一であるアミノ酸または核酸の割合のことを指す。
【0039】
好ましい態様では、KIFC1/HSETタンパク質は、SEQ ID NO:9(アカゲザルKIFC1/HSET)に対して少なくとも70%、好ましくは少なくとも75%、より好ましくは少なくとも80%、より好ましくは少なくとも81%、より好ましくは少なくとも82%、より好ましくは少なくとも83%、より好ましくは少なくとも84%、より好ましくは少なくとも85%、より好ましくは少なくとも86%、より好ましくは少なくとも87%、より好ましくは少なくとも88%、より好ましくは少なくとも89%、より好ましくは少なくとも90%、より好ましくは少なくとも91%、より好ましくは少なくとも92%、より好ましくは少なくとも93%、より好ましくは少なくとも94%、より好ましくは少なくとも95%、より好ましくは少なくとも96%、より好ましくは少なくとも97%、より好ましくは少なくとも98%、さらにより好ましくは少なくとも99%同一、および最も好ましくは、SEQ ID NO:9に対して100%同一である。別の好ましい態様では、
【0040】
別の好ましい態様では、KIFC1/HSETタンパク質は、SEQ ID NO:3(ウシKIFC1/HSET)、SEQ ID NO:4(ブタKIFC1/HSET)、およびSEQ ID NO:5(マウスKIFC1/HSET)のいずれかに対して少なくとも70%、好ましくは少なくとも75%、より好ましくは少なくとも80%、より好ましくは少なくとも81%、より好ましくは少なくとも82%、より好ましくは少なくとも83%、より好ましくは少なくとも84%、より好ましくは少なくとも85%、より好ましくは少なくとも86%、より好ましくは少なくとも87%、より好ましくは少なくとも88%、より好ましくは少なくとも89%、より好ましくは少なくとも90%、より好ましくは少なくとも91%、より好ましくは少なくとも92%、より好ましくは少なくとも93%、より好ましくは少なくとも94%、より好ましくは少なくとも95%、より好ましくは少なくとも96%、より好ましくは少なくとも97%、より好ましくは少なくとも98%、さらにより好ましくは少なくとも99%同一、および最も好ましくは、SEQ ID NO:3~5のいずれかに対して100%同一である。
【0041】
さらに別の好ましい態様では、KIFC1/HSETをコードするmRNAは、SEQ ID NO:6(ウシKIFC1/HSET)、SEQ ID NO:7(ブタKIFC1/HSET)およびSEQ ID NO:8(マウスKIFC1/HSET)のいずれかに対して少なくとも70%、好ましくは少なくとも75%、より好ましくは少なくとも80%、より好ましくは少なくとも81%、より好ましくは少なくとも82%、より好ましくは少なくとも83%、より好ましくは少なくとも84%、より好ましくは少なくとも85%、より好ましくは少なくとも86%、より好ましくは少なくとも87%、より好ましくは少なくとも88%、より好ましくは少なくとも89%、より好ましくは少なくとも90%、より好ましくは少なくとも91%、より好ましくは少なくとも92%、より好ましくは少なくとも93%、より好ましくは少なくとも94%、より好ましくは少なくとも95%、より好ましくは少なくとも96%、より好ましくは少なくとも97%、より好ましくは少なくとも98%、さらにより好ましくは少なくとも99%同一、および最も好ましくは、SEQ ID NO:6~8のいずれかに対して100%同一である。
【0042】
減数分裂および有糸分裂中の誤りのない染色体分配のために、当技術分野において公知であるように、双極紡錘体が形成されることが必要である。当業者は、双極紡錘体、すなわち2つの極を有する紡錘体を決定するために、好適な検出法を把握している。さらに、当業者には、本明細書の実施例2、特に
図1、2Dおよび3、4BおよびC、7Bに示されるように、どのように双極紡錘体を検出すればよいかの詳細なデータおよびプロトコルが提供される。よって、当業者は、双極紡錘体、無秩序な紡錘体または多極紡錘体を識別することができる。本明細書において使用される場合の多極紡錘体は、少なくとも3つの極を有する紡錘体のことを指す。
【0043】
特に、KIFC1/HSETが導入されたヒト卵母細胞は、KIFC1/HSETが導入されていないヒト卵母細胞と比較して、双極性減数分裂紡錘体を有する確率が高い可能性がある、好ましくは、その確率が高い。確率の増加は、KIFC1/HSETが導入されていないヒト卵母細胞と比較して、KIFC1/HSETが導入されているより高い割合のヒト卵母細胞が双極紡錘体ヒト卵母細胞を示す場合に想定される。例えば、
図1Gにおけるヒト卵母細胞の約30%が双極紡錘体を示す。ヒト卵母細胞を可能な限り密接に模倣するために、aMTOC不含マウス卵母細胞を作製し、HSETをsiRNAによって枯渇させた。
図2Eに示されるように、前記aMTOC不含かつKIFC1/HSET枯渇マウス卵母細胞は、ヒト卵母細胞を密接に模倣する(約30%の双極紡錘体)。
図3Hでは、ヒト卵母細胞模倣体におけるKIFC1/HSETの再導入(レスキュー実験)が、約96%の双極紡錘体の検出を導くことが実証される。よって、双極紡錘体の割合は、約30%から96%に変化した(すなわち、開始時の割合30%を基準にして66%の差)。言い換えれば、KIFC1/HSETが導入されている
図3Hのヒト卵母細胞模倣体(左バー)は、KIFC1/HSETが導入されていないヒト卵母細胞模倣体よりも双極紡錘体を有する確率が3.2倍高い。実際には、後の段階で卵母細胞がインビトロ受精に使用される場合、確率のパーセントが評価されることは通常なく、これは、分析のために卵母細胞の犠牲が必要であるためである。確率の変化は、KIFC1/HSETがヒト卵母細胞に導入された際のヒト卵母細胞の特徴を表す。
【0044】
提示されたデータに従えば、KIFC1/HSETが導入されたヒト卵母細胞は、KIFC1/HSETが導入されていないヒト卵母細胞と比較して、双極性減数分裂紡錘体を有する確率が少なくとも5%、好ましくは少なくとも10%、より好ましくは少なくとも15%、より好ましくは少なくとも20%、より好ましくは少なくとも25%、およびさらにより好ましくは少なくとも35%高い可能性がある。KIFC1/HSETが導入されたヒト卵母細胞は、KIFC1/HSETが導入されていないヒト卵母細胞と比較して、双極性減数分裂紡錘体を有する確率が少なくとも1.05倍、好ましくは少なくとも1.1倍、より好ましくは少なくとも1.15倍、より好ましくは少なくとも1.2倍、より好ましくは少なくとも1.25倍、およびさらにより好ましくは少なくとも1.35倍高い可能性がある。
【0045】
反対に言えば、KIFC1/HSETが導入されていないヒト卵母細胞は、KIFC1/HSETが導入されたヒト卵母細胞と比較して、双極性減数分裂紡錘体を有する確率が低い可能性がある。具体的には、KIFC1/HSETが導入されていないヒト卵母細胞は、KIFC1/HSETが導入されたヒト卵母細胞と比較して、双極性減数分裂紡錘体を有する確率が少なくとも5%、好ましくは少なくとも10%、より好ましくは少なくとも15%、より好ましくは少なくとも20%、より好ましくは少なくとも25%、およびさらにより好ましくは少なくとも35%低い可能性がある。特に、KIFC1/HSETが導入されたヒト卵母細胞は、KIFC1/HSETが導入されていないヒト卵母細胞と比較して、多極性または無秩序な減数分裂紡錘体を有する確率が低い可能性がある。より好ましくは、KIFC1/HSETが導入されたヒト卵母細胞は、KIFC1/HSETが導入されていないヒト卵母細胞と比較して、多極性または無秩序な減数分裂紡錘体を有する確率が少なくとも5%、好ましくは少なくとも10%、より好ましくは少なくとも15%、より好ましくは少なくとも20%、より好ましくは少なくとも25%、およびさらにより好ましくは少なくとも35%低い可能性がある。
【0046】
例示的なデータが実施例2に提供される。言い換えれば、KIFC1/HSETが導入されていないヒト卵母細胞は、KIFC1/HSETが導入されたヒト卵母細胞と比較して、多極性または無秩序な減数分裂紡錘体を有する確率が高い可能性がある。例えば、KIFC1/HSETが導入されていないヒト卵母細胞は、KIFC1/HSETが導入されたヒト卵母細胞と比較して、多極性または無秩序な減数分裂紡錘体を有する確率が少なくとも5%、好ましくは少なくとも10%、より好ましくは少なくとも15%、より好ましくは少なくとも20%、より好ましくは少なくとも25%、およびさらにより好ましくは少なくとも35%高い可能性がある。さらに、KIFC1/HSETが導入されていないヒト卵母細胞が、KIFC1/HSETが導入されたヒト卵母細胞と比較して、多極性または無秩序な減数分裂紡錘体を有する確率が少なくとも1.05倍、好ましくは少なくとも1.1倍、より好ましくは少なくとも1.15倍、より好ましくは少なくとも1.2倍、より好ましくは少なくとも1.25倍、およびさらにより好ましくは少なくとも1.35倍高い可能性があることが企図される。提供される確率の割合に関して、本開示において使用される場合、確率の割合は、高くても400%であり得る。言い換えれば、提供される確率の割合に関して、本開示において使用される場合、確率の割合は、高くても4倍であり得る。
【0047】
本明細書の様々な図面に示されるように、具体的には、実施例2で言及されるように、双極性減数分裂紡錘体は、蛍光顕微鏡法または偏光顕微鏡法によって評価または検出される。実際には、後の段階で卵母細胞がインビトロ受精に使用される場合、卵母細胞が蛍光顕微鏡法によって評価されることは通常なく、これは、分析のために卵母細胞の犠牲が必要であるためである。確率の変化は、KIFC1/HSETがヒト卵母細胞に導入された際のヒト卵母細胞の特徴を表す。
図8を特に参照されたく、ここで、KIFC1/HSETがヒト卵母細胞に導入され、KIFC1/HSETの導入が紡錘体極不安定性の持続期間だけでなく、不整列な染色体および遅滞染色体の頻度も有意に低減させた。紡錘体極不安定性の有意に短い持続期間に基づき、本明細書に示される通りのデータは、KIFC1/HSETがヒト卵母細胞における減数分裂紡錘体を安定化させることを実証する。同様に、KIFC1/HSETがヒト接合体における有糸分裂紡錘体を安定化させることも予想される。当業者は、紡錘体極不安定性の持続期間をどのように判定すればよいかを把握しており、本明細書の実施例2にさらなる指針が提供される。簡潔に述べると、紡錘体極不安定性の持続期間は、早期紡錘体二極化後の過度の紡錘体極リモデリングの持続期間のことを指す。ヒト卵母細胞の場合、リモデリングは、大部分が紡錘体極の広がりまたは分裂であり、その結果、無極性または多極性の紡錘体をもたらす。始点と終点は、紡錘体が双極性でない最初と最後の時点に基づいて映像から判断される。
【0048】
具体的には、
図8Dは、KIFC1/HSETが導入されていない卵母細胞よりも、KIFC1/HSETが導入されたより多くの卵母細胞が、後期開始時にその染色体を整列させたことを実証する。後期開始は、本発明者らの先行研究で定義されたように(2)、染色体分離が最初に観察される前の時点のことを指す。より具体的には、KIFC1/HSETが導入されていない卵母細胞の44.4%しか後期開始時に整列した染色体を示さなかったが、KIFC1/HSETが導入された卵母細胞の75%が後期開始時に整列した染色体を示した。したがって、開始時の割合44%と比べて30.6%の差があった。言い換えれば、KIFC1/HSETが導入されている
図8Dのヒト卵母細胞は、KIFC1/HSETが導入されていない卵母細胞と比較して、後期開始時に整列した染色体を示す確率が1.7倍(75%/44%)高い。
【0049】
ある態様では、卵母細胞へのKIFC1/HSETの導入は、KIFC1/HSETが導入されていない卵母細胞と比較して、後期開始時に整列した染色体を示す確率を増加させ、好ましくは、ここで、確率は、KIFC1/HSETが導入されていない卵母細胞と比較して、少なくとも5%、より好ましくは10%、さらにより好ましくは20%、さらにより好ましくは30%、およびさらにより好ましくは40%増加する。また、卵母細胞へのKIFC1/HSETの導入が、KIFC1/HSETが導入されていない卵母細胞と比較して、後期開始時に整列した染色体を示す確率を増加させ、好ましくは、ここで、確率が、KIFC1/HSETが導入されていない卵母細胞と比較して少なくとも1.05倍、より好ましくは少なくとも1.1倍、さらにより好ましくは少なくとも1.2倍、さらにより好ましくは少なくとも1.3倍、およびさらにより好ましくは少なくとも1.4倍増加することも企図される。
【0050】
さらに加えて、
図8Eは、KIFC1/HSETが導入されていない卵母細胞よりも、KIFC1/HSETが導入されたより多くの卵母細胞が、染色体を誤りなく分配したことを実証する。一般に、後期中の遅滞染色体は、当技術分野において公知であり、染色体または染色分体が互いに適正に分離していない結果である。染色体または染色分体が後期中に適正に分離しなければ、娘細胞は、間違った数の染色体を継承する可能性がより高くなる。それゆえ、遅滞染色体が、異数性の共通原因である。よって、後期中の遅滞染色体の確率が高いほど、異数性の確率が高くなる。染色体は、後期開始から10分以内または20分以内に中央紡錘体領域を横断できなかった場合に、それぞれ、軽度遅滞型および重度遅滞型として分類され(
図8Eを参照のこと)、これは当技術分野において過去に記載されている(121)。具体的には、KIFC1/HSETが導入されていない卵母細胞の33.3%が遅滞染色体を有していなかった一方で、KIFC1/HSETが導入された卵母細胞の62.5%が遅滞染色体を有していなかった。したがって、開始時の割合33%を基準して29.5%の差があった。言い換えれば、KIFC1/HSETが導入されている
図8Eのヒト卵母細胞は、KIFC1/HSETが導入されていない卵母細胞と比較して、後期開始時に整列した染色体を示す確率が1.9倍(62.5%/33.3%)高い。
【0051】
ある態様では、卵母細胞へのKIFC1/HSETの導入は、KIFC1/HSETが導入されていない卵母細胞と比較して、遅滞染色体のない確率を増加させ、好ましくは、ここで、確率は、KIFC1/HSETが導入されていない卵母細胞と比較して、少なくとも5%、より好ましくは少なくとも10%、さらにより好ましくは少なくとも20%、さらにより好ましくは少なくとも30%、およびさらにより好ましくは少なくとも40%増加する。また、卵母細胞へのKIFC1/HSETの導入が、KIFC1/HSETが導入されていない卵母細胞と比較して、遅滞染色体のない確率を増加させ、好ましくは、ここで、確率が、KIFC1/HSETが導入されていない卵母細胞と比較して少なくとも1.05倍、より好ましくは少なくとも1.1倍、さらにより好ましくは少なくとも1.2倍、さらにより好ましくは少なくとも1.3倍、およびさらにより好ましくは少なくとも1.4倍増加することも企図される。
【0052】
理想的には、卵母細胞へのKIFC1/HSETの導入は、KIFC1/HSETが導入されていない卵母細胞と比較して、双極紡錘体の形成を増加させ得る。言い換えれば、卵母細胞へのKIFC1/HSETの導入は、KIFC1/HSETが導入されていない卵母細胞と比較して、双極紡錘体の形成の確率を増加させ得る。特に、卵母細胞へのKIFC1/HSETの導入後、双極紡錘体の形成の確率は、KIFC1/HSETが導入されていない天然に存在する卵母細胞と比較して増加する。前記確率の増加は、(a)天然に存在するヒト卵母細胞またはKIFC1/HSETが導入されていないヒト卵母細胞と(b)天然に存在しないヒト卵母細胞またはKIFC1/HSETが導入されているヒト卵母細胞との双極紡錘体の形成の割合を比較することによって評価され得る。確率の増加は、(a)天然に存在するヒト卵母細胞またはKIFC1/HSETが導入されていないヒト卵母細胞よりも、(b)天然に存在しないヒト卵母細胞またはKIFC1/HSETが導入されているより高い割合のヒト卵母細胞が双極紡錘体を示す場合に得られる。一般に、また本明細書において使用されるように、ある事象の確率数が高いほど、その事象が起こる可能性が高くなる。KIFC1/HSETは、ヒト卵母細胞の減数分裂紡錘体を安定化させ得る。例えば、減数分裂紡錘体が安定化されたヒト卵母細胞は、安定化されていない減数分裂紡錘体よりも双極紡錘体を有する確率が高い可能性がある。特に、安定化されていない紡錘体は、多極性または無秩序な紡錘体であり得る。例えば、減数分裂紡錘体の安定化は、紡錘体極性形態によって評価または検出してよく、好ましくは、ここで、安定化された減数分裂紡錘体の紡錘体極性形態は、安定化されていない減数分裂紡錘体よりも双極紡錘体である確率が高く、より好ましくは、ここで、安定化されていない紡錘体は、多極性または無秩序なものである。また、上で指摘した通り、かつ本明細書に示されるように、減数分裂紡錘体は、蛍光顕微鏡法または偏光顕微鏡法によって評価され得る。
【0053】
(i)KIFC1/HSETタンパク質または(ii)KIFC1/HSETをコードするmRNAは、様々な時期において導入され得る。特に、KIFC1/HSETは、卵核胞期、減数分裂Iまたは減数分裂IIにおいて導入され得る。当技術分野において公知であるように、卵核胞(GV)は、卵母細胞の核である。卵巣内のすべての卵母細胞は、減数分裂I(MI)の前期の網糸期に停止しており、この減数分裂期は、無傷のGVの存在によって特徴付けられ、組織学および光学顕微鏡法によって形態学的に特定することができる。卵母細胞は、成長しながら、卵形成全体を通じてこの減数分裂停止を維持する。卵母細胞が成熟し始めるにつれ、その核-卵核胞(GV)が崩壊して、染色体が凝縮する、卵核胞崩壊(GVBD)。具体的には、(i)KIFC1/HSETタンパク質または(ii)KIFC1/HSETをコードするmRNAは、卵核胞期中に導入され得る。ある態様では、(i)KIFC1/HSETタンパク質または(ii)KIFC1/HSETをコードするmRNAは、前期網糸期停止、前中期I減数分裂紡錘体形成、中期I、後期I、または終期Iにおいて導入され得る。好ましくは、(i)KIFC1/HSETタンパク質または(ii)KIFC1/HSETをコードするmRNAは、卵核胞期中、前期中、核膜崩壊前、および/または核膜崩壊後であるが受精前に導入され得る。当然のことながら、当業者は、様々な時期を把握しており、これらの時期をインビトロで、例えば光学顕微鏡法によって識別することが可能である。特に、(i)KIFC1/HSETタンパク質または(ii)KIFC1/HSETをコードするmRNAは、前期I網糸期停止中に導入され得る。(i)KIFC1/HSETタンパク質または(ii)KIFC1/HSETをコードするmRNAが前中期IIまたは中期IIにおいて導入されることも好ましい。(i)KIFC1/HSETタンパク質または(ii)KIFC1/HSETをコードするmRNAが中期IIにおいて導入されることがさらにより好ましい。一態様では、(i)KIFC1/HSETタンパク質または(ii)KIFC1/HSETをコードするmRNAは、精子と一緒に卵母細胞に導入される。
【0054】
さらに、(i)KIFC1/HSETタンパク質または(ii)ヒトKIFC1/HSETをコードするmRNAの適量が、ヒト卵母細胞に導入される。当業者は、(i)KIFC1/HSETタンパク質または(ii)ヒトKIFC1/HSETをコードするmRNAの適量を決定することが可能である。例えば、当業者は滴定実験を実施してよく、これが当業者に指針を提供する。さらに、過剰量のKIFC1/HSETが卵母細胞に導入されると、滴定実験は、紡錘体形態異常を検出する場合があり、蛍光顕微鏡法または偏光顕微鏡法によってこれを評価することができる。紡錘体形態異常の1つの兆候は、例えば、
図3Gに示されるように、また本明細書の実施例2に記載されるように、紡錘体微小管の過度の束化である。それと同時に、過少量のKIFC1/HSETの導入は、双極紡錘体を示す確率を改善しない。
【0055】
例示的なKIFC1/HSETタンパク質の適量は、卵母細胞1個当たり1~250pg、好ましくは2~150pg、より好ましくは3~100pg、より好ましくは4~80pg、より好ましくは5~50pg、さらにより好ましくは6~30pg、さらにより好ましくは7~20pg、さらにより好ましくは8~15pg、および最も好ましくは約10pgであり得る。
【0056】
例示的なヒトKIFC1/HSETをコードするmRNAの適量は、卵母細胞1個当たり1~4000fg、好ましくは5~3000fg、より好ましくは20~2500fg、より好ましくは35~2000fg、より好ましくは50~1900fg、さらにより好ましくは60~1700fg、さらにより好ましくは70~1500fg、さらにより好ましくは100~1000fg、および最も好ましくは140~750fgであり得る。
【0057】
本明細書に記載される通りの方法は、ヒトの生殖細胞系列同一性を改変しない。
【0058】
a. インビトロのヒト卵母細胞を提供すること、および
b. (i)KIFC1/HSETタンパク質または(ii)KIFC1/HSETをコードするmRNAをヒト卵母細胞に送達すること
によってヒト卵母細胞の減数分裂紡錘体を安定化させるためのインビトロ法も開示され、それにより、ヒトKIFC1/HSETタンパク質がヒト卵母細胞における減数分裂紡錘体を安定化させる。この方法では、(i)KIFC1/HSETタンパク質または(ii)ヒトKIFC1/HSETをコードするmRNAの送達は、(i)KIFC1/HSETタンパク質または(ii)ヒトKIFC1/HSETをコードするmRNAの導入と同義である。さらに、導入は、上にさらに定義されており、ヒト卵母細胞は、上にさらに定義されており、(i)KIFC1/HSETタンパク質もしくは(ii)KIFC1/HSETをコードするmRNAは、上にさらに定義されており、減数分裂紡錘体の安定化は、上にさらに定義されており、かつ/または、(i)KIFC1/HSETタンパク質もしくは(ii)KIFC1/HSETをコードするmRNAの適量は、さらに上記されている。言い換えれば、上の態様の1つまたは複数を前記方法と組み合わせてよい。
【0059】
また、(i)KIFC1/HSETタンパク質または(ii)KIFC1/HSETをコードするmRNAによってヒト卵母細胞の減数分裂紡錘体を安定化させる方法が開示される。好ましくは、(i)KIFC1/HSETタンパク質または(ii)KIFC1/HSETをコードするmRNAが、ヒト卵母細胞に導入され、好ましくは、ここで、KIFC1/HSETタンパク質は、組換え産生されたKIFC1/HSETタンパク質である。導入、ヒト卵母細胞、減数分裂紡錘体の安定化、および/または(i)KIFC1/HSETタンパク質もしくは(ii)KIFC1/HSETをコードするmRNAの適量に関する好ましい態様は、上に詳述されており、本発明のこの局面に等しく適用される。
【0060】
本発明の特別な利点は、ヒト紡錘体が安定化されることである。この安定化は、異数性のリスクを低減させる。当技術分野においてまた公知であるように、異数性は、細胞中の異常な数の染色体の存在であり、例えば、ヒト細胞は、通常の46個の代わりに45個または47個の染色体を有する。対照的に、任意の完全な染色体セット数を有する細胞は、正倍数体細胞と呼ばれる。よって、異数性は、不適正な染色体分配の結果である。染色体分配における誤りは、異数性、すなわち、細胞または生物体中の染色体数が一倍体ゲノムの倍数から逸脱した状態を導く。減数分裂中の染色体誤分配を通じて生じる異数性は、不妊および遺伝的先天性欠損症の主な原因である。よって、本明細書に開示されるデータに基づいて、安定化されたヒト紡錘体が異数性のリスクを低減させることが予想される。また当データに基づいて、KIFC1/HSETの導入が異数性のリスクを低減させることが予想される。
【0061】
別の局面では、天然に存在しないヒト卵母細胞が開示され、ここで、(i)KIFC1/HSETタンパク質または(ii)KIFC1/HSET mRNAが、天然に存在するヒト卵母細胞に導入されてもよく、それにより天然に存在しない卵母細胞を得る。
【0062】
さらに、天然に存在しないヒト卵母細胞は、(i)KIFC1/HSETタンパク質または(ii)KIFC1/HSET mRNAを含んでもよく、ここで、(i)KIFC1/HSETタンパク質または(ii)KIFC1/HSET mRNAは、卵母細胞に導入されている。さらに、天然に存在しないヒト卵母細胞が本明細書において企図され、ここで、天然に存在しないヒト卵母細胞は、(i)KIFC1/HSETタンパク質または(ii)KIFC1/HSET mRNAが補充されており、それにより天然に存在しない卵母細胞を得る。
【0063】
好ましくは、KIFC1/HSETタンパク質は、組換え産生されたKIFC1/HSETタンパク質である。KIFC1/HSETタンパク質の組換え発現および/またはその機能性を試験するための例示的な方法は、上述されている。また、(i)KIFC1/HSETタンパク質または(ii)KIFC1/HSETをコードするmRNAが、卵母細胞の減数分裂紡錘体を安定化させることが好ましい。上に詳述されたように、天然に存在するヒト卵母細胞は、マウス卵母細胞および/またはHeLa細胞の多くとも2分の1だけ、KIFC1/HSETを発現する。天然に存在するヒト卵母細胞ならびにKIFC1/HSETの発現およびKIFC1/HSETの検出に関する上に提供された情報は、本発明のこの局面に等しく適用される。同様に、KIFC1/HSETタンパク質またはKIFC1/HSETをコードするmRNAに関する機能および構造の情報も、この局面に等しく適用される。導入、ヒト卵母細胞、減数分裂紡錘体の安定化、および/または(i)KIFC1/HSETタンパク質もしくは(ii)KIFC1/HSETをコードするmRNAの適量に関する好ましい態様は、上に詳述されており、本発明のこの局面に等しく適用される。
【0064】
加えて、インビトロのヒト卵母細胞への導入に適した(i)KIFC1/HSETタンパク質または(ii)KIFC1/HSETをコードするmRNAを含む注入用デバイスであって、マイクロインジェクションニードルであるデバイスが本明細書に開示される。(i)KIFC1/HSETタンパク質または(ii)KIFC1/HSETをコードするmRNAが、卵母細胞の減数分裂紡錘体を安定化させることが好ましい。導入、ヒト卵母細胞、減数分裂紡錘体の安定化、および/または(i)KIFC1/HSETタンパク質もしくは(ii)KIFC1/HSETをコードするmRNAの適量に関する好ましい態様は、上に詳述されており、本発明のこの部分に等しく適用される。
【0065】
さらに、インビトロのヒト卵母細胞の減数分裂紡錘体を安定化させるのに適したKIFC1/HSETタンパク質またはKIFC1/HSET mRNAを含む注入用デバイスが本明細書に開示される。(i)KIFC1/HSETタンパク質または(ii)KIFC1/HSETをコードするmRNAが、卵母細胞の減数分裂紡錘体を安定化させることが好ましい。導入、ヒト卵母細胞、減数分裂紡錘体の安定化、および/または(i)KIFC1/HSETタンパク質もしくは(ii)KIFC1/HSETをコードするmRNAの適量に関する好ましい態様は、上に詳述されており、本発明のこの局面に等しく適用される。
【0066】
一般に、(i)KIFC1/HSETタンパク質または(ii)KIFC1/HSETをコードするmRNAをヒト卵母細胞に導入する方法が開示される。(i)KIFC1/HSETタンパク質または(ii)KIFC1/HSETをコードするmRNAが、卵母細胞の減数分裂紡錘体を安定化させることが好ましい。導入、ヒト卵母細胞、減数分裂紡錘体の安定化、および/または(i)KIFC1/HSETタンパク質もしくは(ii)KIFC1/HSETをコードするmRNAの適量に関する好ましい態様は、上に詳述されており、本発明のこの部分に等しく適用される。
【0067】
別の局面では、(i)KIFC1/HSETタンパク質または(ii)KIFC1/HSETをコードするmRNAをヒト接合体に導入することによってヒト接合体における有糸分裂中の無秩序かつ/または多極性の紡錘体を有する確率を低下させる方法において使用するための、(i)KIFC1/HSETタンパク質または(ii)KIFC1/HSETをコードするmRNAが開示される。さらに加えて、(i)KIFC1/HSETタンパク質または(ii)KIFC1/HSETをコードするmRNAをヒト接合体に補充することによってヒト接合体における有糸分裂中の無秩序かつ/または多極性の紡錘体を有する確率を低下させる方法において使用するための、(i)KIFC1/HSETタンパク質または(ii)KIFC1/HSETをコードするmRNAが開示される。
【0068】
さらに、(i)KIFC1/HSETタンパク質または(ii)KIFC1/HSETをコードするmRNAをヒト接合体に導入することによってヒト接合体における有糸分裂中の双極紡錘体を有する確率を増加させるための方法において使用するための、(i)KIFC1/HSETタンパク質または(ii)KIFC1/HSETをコードするmRNAが開示される。加えて、(i)KIFC1/HSETタンパク質または(ii)KIFC1/HSETをコードするmRNAをヒト接合体に補充することによってヒト接合体における有糸分裂中の双極紡錘体を有する確率を増加させるための方法において使用するための、(i)KIFC1/HSETタンパク質または(ii)KIFC1/HSETをコードするmRNAが開示される。
【0069】
理想的には、本方法は、ヒト接合体における有糸分裂中の無秩序かつ/または多極性の紡錘体を抑止する。さらに、(i)KIFC1/HSETタンパク質または(ii)KIFC1/HSETをコードするmRNAをヒト接合体に導入することによって異数性の確率を低下させる方法において使用するための、(i)KIFC1/HSETタンパク質または(ii)KIFC1/HSETをコードするmRNAが開示される。理想的には、本方法は、有糸分裂時の異数性を抑止する。当技術分野において公知であるように、接合体は、雌性配偶子の接合から生じる受精卵細胞である。よって、接合体は、単一細胞である。
【0070】
ある態様では、(i)KIFC1/HSETタンパク質または(ii)KIFC1/HSETをコードするmRNAは、ヒト接合体の有糸分裂紡錘体を安定化させ、好ましくは、ここで、KIFC1/HSETタンパク質は、組換え産生されたKIFC1/HSETタンパク質である。当技術分野から公知の実験と同様に、また本明細書に開示されるように、ヒト有糸分裂紡錘体の安定化は、偏光顕微鏡法によって評価することができる。
【0071】
好ましくは、ヒト接合体が提供される。例えば、実際には、接合体は、インビトロ受精によって、例えば細胞質内精子注入によって得ることができる場合もあり、ここで、インビトロ受精は、本発明の一部は形成しない。
【0072】
好ましい態様では、ヒト接合体は、マウス接合体の多くとも2分の1、好ましくは多くとも4分の1、より好ましくは多くとも6分の1、さらにより好ましくは多くとも10分の1、およびさらにより好ましくは多くとも20分の1、さらにより好ましくは多くとも30分の1、さらにより好ましくは多くとも40分の1、さらにより好ましくは多くとも50分の1、およびさらにより好ましくは多くとも60分の1だけ、KIFC1/HSETを発現する。また、ヒト接合体が、HeLa細胞の多くとも2分の1、好ましくは多くとも4分の1、より好ましくは多くとも6分の1、さらにより好ましくは多くとも10分の1、およびさらにより好ましくは多くとも20分の1だけ、KIFC1/HSETを発現する態様も好ましい。実際には、KIFC1/HSETの発現が接合体において評価されることは通常なく、これは、分析のために接合体の犠牲が必要であるためである。ヒト単為生殖細胞を模倣体として使用することができ、KIFC1/HSETの発現をその中で評価することができる。KIFC1/HSETの発現は、ウェスタンブロット上のバンド強度によって評価され得る。同意語として、「イムノブロット」という用語を使用してよい。当然のことながら、当業者は、ウェスタンブロットを実施するための標準手順を把握している。さらに、KIFC1/HSETを検出するためのウェスタンブロットに関して与えられる詳細は、上述されており、接合体におけるKIFC1/HSETに等しく適用される。
【0073】
KIFC1/HSETの発現は、質量分析法などの当技術分野における代替法によって評価され得る。当業者は、タンパク質の発現を定量的に判定するための標準手順を把握している。さらに、KIFC1/HSETをコードするmRNAの発現を、当技術分野における標準的な方法、例えば、ノーザンブロット分析、インサイチューハイブリダイゼーションおよび/または逆転写ポリメラーゼ連鎖反応(RT-PCR)によって評価してもよい。加えて、(i)KIFC1/HSETタンパク質または(ii)KIFC1/HSETをコードするmRNAの機能および構造に関する本開示に開示される態様も、本発明のこの局面に適用される。
【0074】
好ましい態様では、接合体へのKIFC1/HSETの導入は、KIFC1/HSETが導入されていない接合体と比較して、双極紡錘体を有する確率を増加させる。言い換えれば、双極紡錘体の形成について確率が増加する。双極紡錘体の存在は、蛍光顕微鏡法または偏光顕微鏡法によって評価または検出され得る。本明細書において使用される場合、評価または検出することは、あるものの存在または非存在を、例えば、指定の方法を使用することにより判定する当業者の行為のことを指す。
【0075】
KIFC1/HSETは、マイクロインジェクションまたはエレクトロポレーションによって導入され得る。例えば、当業者は、当技術分野において標準的なマイクロインジェクション法を把握している。さらに、マイクロインジェクションは、本発明者らによって使用され、実施例2において説明されている(方法および材料を参照のこと)。あるいは、エレクトロポレーションを使用してもよく、これも接合体に対して当技術分野において公知である(114)。
【0076】
好ましい態様では、(i)KIFC1/HSETタンパク質または(ii)KIFC1/HSETをコードするmRNAは、有糸分裂中、好ましくは有糸分裂前期、中期、後期、終期またはS期中、より好ましくは有糸分裂前期中に導入される。当然のことながら、当業者は、一般共通知識からこれらの細胞周期の時期を把握しており、またこれらの時期を識別することが可能である(120)。具体的には、(i)KIFC1/HSETタンパク質または(ii)KIFC1/HSETをコードするmRNAは、前核の構築前および/または前核の構築中もしくは存在中に導入され得る。当技術分野において公知であるように、接合体の親染色体は、まず、受精卵の表面近くで2つの別々の前核に被包されるようになる。よって、当業者は、前核の構築の時期ならびに接合体の前核の存在を、例えば偏光顕微鏡法によって決定することが可能である。
【0077】
重要なことに、KIFC1/HSETは、ヒト接合体の有糸分裂紡錘体を安定化させ得る。そのような安定化についてのデータは、
図9に提供しており、これから詳細に考察する。例えば、有糸分裂紡錘体が安定化されたヒト接合体は、安定化されていない有糸分裂紡錘体よりも双極紡錘体を有する確率が高く、好ましくは、ここで、安定化されていない紡錘体は、多極性または無秩序な紡錘体である。当業者は、蛍光顕微鏡法または偏光顕微鏡法を使用して、紡錘体極性形態によって有糸分裂紡錘体の安定化を評価または検出し得る。言い換えれば、KIFC1/HSETが導入されたヒト接合体は、KIFC1/HSETが導入されていないヒト接合体と比較して、双極性有糸分裂紡錘体を形成する確率が高い。具体的には、KIFC1/HSETが導入されたヒト接合体は、KIFC1/HSETが導入されていないヒト接合体と比較して、双極性有糸分裂紡錘体を有する確率が少なくとも5%、好ましくは少なくとも10%、より好ましくは少なくとも15%、より好ましくは少なくとも20%、より好ましくは少なくとも25%、およびさらにより好ましくは少なくとも35%高い。ある態様では、KIFC1/HSETが導入されたヒト接合体は、KIFC1/HSETが導入されていないヒト接合体と比較して、双極性有糸分裂紡錘体を有する確率が少なくとも1.05倍、好ましくは少なくとも1.1倍、より好ましくは少なくとも1.15倍、より好ましくは少なくとも1.2倍、より好ましくは少なくとも1.25倍、およびさらにより好ましくは少なくとも1.35倍高い。
【0078】
双極紡錘体を有する確率に関する上に提供された情報は、本発明のこの局面に等しく適用される。本明細書に開示されるように、当業者は、双極紡錘体の存在を判定する方法を把握している。反対に言えば、KIFC1/HSETが導入されていないヒト接合体は、KIFC1/HSETが導入されたヒト接合体と比較して、双極性有糸分裂紡錘体を有する確率が低い可能性がある。特に、KIFC1/HSETが導入されていないヒト接合体は、KIFC1/HSETが導入されたヒト接合体と比較して、双極性有糸分裂紡錘体を有する確率が少なくとも5%、好ましくは少なくとも10%、より好ましくは少なくとも15%、より好ましくは少なくとも20%、より好ましくは少なくとも25%、およびさらにより好ましくは少なくとも35%低い可能性がある。ある態様では、KIFC1/HSETが導入されたヒト接合体は、KIFC1/HSETが導入されていないヒト接合体と比較して、多極性または無秩序な有糸分裂紡錘体を有する確率が低い。特に、KIFC1/HSETが導入されたヒト接合体は、KIFC1/HSETが導入されていないヒト接合体と比較して、多極性または無秩序な有糸分裂紡錘体を有する確率が少なくとも5%、好ましくは少なくとも10%、より好ましくは少なくとも15%、より好ましくは少なくとも20%、より好ましくは少なくとも25%、およびさらにより好ましくは少なくとも35%低い。反対に言えば、KIFC1/HSETが導入されていないヒト接合体は、KIFC1/HSETが導入されたヒト接合体と比較して、多極性または無秩序な有糸分裂紡錘体を有する確率が高い可能性がある。とりわけ、KIFC1/HSETが導入されていないヒト接合体は、KIFC1/HSETが導入されたヒト接合体と比較して、多極性または無秩序な有糸分裂紡錘体を有する確率が少なくとも5%、好ましくは少なくとも10%、より好ましくは少なくとも15%、より好ましくは少なくとも20%、より好ましくは少なくとも25%、およびさらにより好ましくは少なくとも35%高い可能性がある。ある態様では、KIFC1/HSETが導入されていないヒト接合体は、KIFC1/HSETが導入されたヒト接合体と比較して、多極性または無秩序な有糸分裂紡錘体を有する確率が少なくとも1.05倍、好ましくは少なくとも1.1倍、より好ましくは少なくとも1.15倍、より好ましくは少なくとも1.2倍、より好ましくは少なくとも1.25倍、およびさらにより好ましくは少なくとも1.35倍高い可能性がある。
【0079】
当業者は、紡錘体極性形態によって減数分裂紡錘体の安定化を評価または検出してよく、好ましくは、ここで、安定化された減数分裂紡錘体の紡錘体極性形態は、安定化されていない減数分裂紡錘体よりも双極紡錘体である確率が高い可能性があり、より好ましくは、ここで、安定化されていない紡錘体は、多極性または無秩序な紡錘体であり得る。
【0080】
図8では、KIFC1/HSETがヒト卵母細胞に導入され、ここで、KIFC1/HSETの導入は、紡錘体極不安定性の有意に短い持続期間、不整列な染色体および遅滞染色体のより低い頻度を示した。このデータに基づいて、KIFC1/HSETが接合体において同じ挙動を示すことが予想される。さらに、接合体は、頻繁に多極紡錘体を構築し、これは、生存能力がなく、生殖医療に対して大きな重荷となっている。
図9は、ヒト多極(例えば、3つの前核;3PN)接合体へのKIFC1/HSETタンパク質の導入が、多極紡錘体構築を有意に低減させ、かつ/または、双極紡錘体構築を促進することを実証する(
図9、B~D)。当業者は、3PNが多極紡錘体の一例であることを把握している。さらに、KIFC1/HSETタンパク質の導入は、後期中に遅滞染色体のない接合体頻度を40%から71%に増加させた(
図9F)。これは、77.5%または1.775倍の増加に相当する。したがって、外因性KIFC1を導入することは、双極紡錘体構築の効率を増加させ、ヒト接合体における異数性のリスクを低減させた。さらに、KIFC1/HSETタンパク質の導入は、後期開始時に整列した染色体を示す接合体頻度を20%から57%に増加させた(
図9E)。これは、185%または2.85倍の増加に相当する。よって、KIFC1/HSETの導入は、KIFC1/HSETが導入されていないヒト接合体と比較して、ヒト接合体における紡錘体極不安定性のより短い持続期間、後期開始時に整列した染色体を示すヒト接合体のより高い割合、および遅滞染色体のないヒト接合体のより高い割合を導くことが予想され、示される。
【0081】
ある態様では、KIFC1/HSETが導入されたヒト接合体は、KIFC1/HSETが導入されていない接合体と比較して、後期開始時に整列した染色体を示す確率が少なくとも5%高く、好ましくは、ここで、確率は、KIFC1/HSETが導入されていない接合体と比較して、少なくとも10%、より好ましくは20%、さらにより好ましくは30%、さらにより好ましくは40%、さらにより好ましくは50%、さらにより好ましくは60%、さらにより好ましくは70%、さらにより好ましくは80%、さらにより好ましくは90%、さらにより好ましくは100%、さらにより好ましくは110%、さらにより好ましくは120%、さらにより好ましくは130%、さらにより好ましくは140%、さらにより好ましくは150%、さらにより好ましくは160%、さらにより好ましくは170%、およびさらにより好ましくは180%高い。好ましくは、確率は、高くても800%である。また、KIFC1/HSETが導入されたヒト接合体が、KIFC1/HSETが導入されていない接合体と比較して、後期開始時に整列した染色体を示す確率が少なくとも1.05倍高く、好ましくは、ここで、確率が、KIFC1/HSETが導入されていない接合体と比較して少なくとも1.1倍、より好ましくは少なくとも1.2倍、さらにより好ましくは少なくとも1.3倍、さらにより好ましくは少なくとも1.4倍、さらにより好ましくは少なくとも1.5倍、さらにより好ましくは少なくとも1.7倍、さらにより好ましくは少なくとも1.9倍、さらにより好ましくは少なくとも2.0倍、さらにより好ましくは少なくとも2.2倍、さらにより好ましくは少なくとも2.4倍、さらにより好ましくは少なくとも2.6倍、さらにより好ましくは少なくとも2.7倍、およびさらにより好ましくは少なくとも2.8倍高いことも企図される。
【0082】
別の態様では、KIFC1/HSETが導入されたヒト接合体は、KIFC1/HSETが導入されていない接合体と比較して、遅滞染色体のない確率が少なくとも5%高く、好ましくは、ここで、確率は、KIFC1/HSETが導入されていない接合体と比較して、少なくとも10%、より好ましくは20%、さらにより好ましくは30%、さらにより好ましくは40%、さらにより好ましくは50%、さらにより好ましくは60%、およびさらにより好ましくは70%高い。また、KIFC1/HSETが導入されたヒト接合体が、KIFC1/HSETが導入されていない接合体と比較して、遅滞染色体のない確率が少なくとも1.05倍高く、好ましくは、ここで、確率が、KIFC1/HSETが導入されていない接合体と比較して少なくとも1.1倍、より好ましくは少なくとも1.2、さらにより好ましくは少なくとも1.3倍、さらにより好ましくは少なくとも1.4倍、さらにより好ましくは少なくとも1.5倍、さらにより好ましくは少なくとも1.6倍、およびさらにより好ましくは少なくとも1.7倍高いことも企図される。
【0083】
別の態様では、(i)ヒトKIFC1/HSETタンパク質または(ii)ヒトKIFC1/HSETをコードするmRNAの適量が、ヒト接合体に導入される。上で既に開示されたように、当業者は、例えば滴定実験を実施することによって、適量を決定することが可能である。さらに、過剰量のKIFC1/HSETが卵母細胞に導入されると、滴定実験は、紡錘体形態異常を検出する場合があり、蛍光顕微鏡法または偏光顕微鏡法によってこれを評価することができる。紡錘体形態異常の1つの兆候は、例えば、
図3Gに示されるように、また本明細書の実施例2に記載されるように、紡錘体微小管の過度の束化である。それと同時に、過少量のKIFC1/HSETの導入は、双極紡錘体を示す確率を改善しない。例示的なヒトKIFC1/HSETタンパク質の適量は、接合体1個当たり1~250pg、好ましくは2~150pg、より好ましくは3~100pg、より好ましくは4~80pg、より好ましくは5~50pg、さらにより好ましくは6~30pg、さらにより好ましくは7~20pg、さらにより好ましくは8~15pgの範囲、および最も好ましくは約10pgである。
【0084】
例示的なヒトKIFC1/HSETをコードするmRNAの適量は、接合体1個当たり1~4000fg、好ましくは5~3000fg、より好ましくは20~2500fg、より好ましくは35~2000fg、より好ましくは50~1900fg、さらにより好ましくは60~1700fg、さらにより好ましくは70~1500fg、さらにより好ましくは100~1000fg、および最も好ましくは140~750fgであり得る。
【0085】
加えて、ヒト接合体の有糸分裂紡錘体を安定化させるのに適した方法において使用するための(i)KIFC1/HSETタンパク質または(ii)KIFC1/HSETをコードするmRNAが本明細書に開示される。好ましくは、KIFC1/HSETがヒト接合体に導入される。例えば、および/またはKIFC1/HSETタンパク質は、組換え産生されたKIFC1/HSETタンパク質であり得る。(i)KIFC1/HSETタンパク質もしくは(ii)KIFC1/HSETをコードするmRNAおよび/またはKIFC1/HSETタンパク質もしくは(ii)KIFC1/HSETをコードするmRNAの適量に関係する好ましい態様は、上にさらに定義されている。同様に、(i)KIFC1/HSETタンパク質または(ii)KIFC1/HSETをコードするmRNAの導入、有糸分裂紡錘体の安定化および/またはヒト接合体に関する好ましい態様は、本明細書に開示されており、本発明の前記部分に等しく適用される。
【0086】
理想的には、(i)KIFC1/HSETタンパク質または(ii)KIFC1/HSETをコードするmRNAをヒト接合体に導入することによって異数性の確率を低下させる方法は、生殖補助医療である。同様に、(i)KIFC1/HSETタンパク質または(ii)KIFC1/HSETをコードするmRNAによるヒト接合体の有糸分裂紡錘体を安定化させるのに適した方法も、生殖補助医療であり得る。当業者は、「生殖補助医療」を一般に把握しており、そのような技術が不妊に対処するために主に使用される医学的手技を含むことを知っている。よって、本方法は、インビトロ受精(IVF)、細胞質内精子注入(ICSI)などの手技を伴う。
【0087】
本開示はまた、天然に存在しないヒト接合体に関し、ここで、(i)KIFC1/HSETタンパク質または(ii)KIFC1/HSET mRNAが、インビトロで受精させたヒト接合体に導入され、それにより天然に存在しない接合体を得る。ある態様では、KIFC1/HSETタンパク質は、組換え産生されたKIFC1/HSETタンパク質である。理想的には、(i)KIFC1/HSETタンパク質または(ii)KIFC1/HSETをコードするmRNAは、接合体の有糸分裂紡錘体を安定化させる。さらに、(i)KIFC1/HSETタンパク質もしくは(ii)KIFC1/HSETをコードするmRNAの導入、KIFC1/HSETタンパク質もしくは(ii)KIFC1/HSETをコードするmRNA、有糸分裂紡錘体の安定化、および/またはKIFC1/HSETタンパク質もしくは(ii)KIFC1/HSETをコードするmRNAの適量に関する好ましい態様は、本明細書に開示されており、この態様に等しく適用される。
【0088】
さらに、本開示は、インビトロのヒト接合体への導入に適した(i)KIFC1/HSETタンパク質または(ii)KIFC1/HSETをコードするmRNAを含む注入用デバイスに関する。理想的には、(i)KIFC1/HSETタンパク質または(ii)KIFC1/HSETをコードするmRNAは、接合体の有糸分裂紡錘体を安定化させる。(i)KIFC1/HSETタンパク質もしくは(ii)KIFC1/HSETをコードするmRNAの導入、KIFC1/HSETタンパク質もしくは(ii)KIFC1/HSETをコードするmRNA、有糸分裂紡錘体の安定化、ヒト接合体、および/またはKIFC1/HSETタンパク質もしくは(ii)KIFC1/HSETをコードするmRNAの適量に関する好ましい態様は、上で考察されており、本開示のこの部分に等しく適用される。
【0089】
さらに、本開示は、インビトロのヒト接合体の有糸分裂紡錘体を安定化させるのに適したKIFC1/HSETタンパク質またはKIFC1/HSET mRNAを含む注入用デバイスに関する。KIFC1/HSETタンパク質またはKIFC1/HSET mRNAが、好ましくは、ヒト接合体に導入される。(i)KIFC1/HSETタンパク質もしくは(ii)KIFC1/HSETをコードするmRNAの導入、KIFC1/HSETタンパク質もしくは(ii)KIFC1/HSETをコードするmRNA、有糸分裂紡錘体の安定化、ヒト接合体、および/またはKIFC1/HSETタンパク質もしくは(ii)KIFC1/HSETをコードするmRNAの適量に関する好ましい態様は、上で考察されており、本開示のこの部分に等しく適用される。
【0090】
加えて、本開示は、(i)KIFC1/HSETタンパク質と(ii)ヒト減数分裂紡錘体とを含む複合体に関し、ここで、KIFC1/HSETタンパク質はインビトロ法によって、好ましくはマイクロインジェクションおよび/またはエレクトロポレーションによって、より好ましくはマイクロインジェクションによってヒト卵母細胞に導入可能であり、複合体は蛍光顕微鏡法によって検出可能である。さらに加えて、本開示は、(i)KIFC1/HSETタンパク質と(ii)ヒト有糸分裂紡錘体とを含む複合体に関し、ここで、KIFC1/HSETタンパク質はインビトロ法によって、好ましくはマイクロインジェクションおよび/またはエレクトロポレーションによって、より好ましくはマイクロインジェクションによってヒト接合体に導入可能であり、複合体は蛍光顕微鏡法によって検出可能である。具体的には、本開示は、(i)KIFC1/HSETタンパク質と(ii)ヒト減数分裂紡錘体とを含む複合体に関し、ここで、KIFC1/HSETタンパク質はインビトロ法によってヒト卵母細胞に導入されており、特に、KIFC1/HSETタンパク質はマイクロインジェクションおよび/またはエレクトロポレーションによって、好ましくはマイクロインジェクションによって導入されており、複合体は蛍光顕微鏡法によって検出可能である。同様に、本開示は、(i)KIFC1/HSETタンパク質と(ii)ヒト有糸分裂紡錘体とを含む複合体に関し、ここで、KIFC1/HSETタンパク質はインビトロ法によってヒト接合体に導入されており、特に、KIFC1/HSETタンパク質はマイクロインジェクションおよび/またはエレクトロポレーションによって、好ましくはマイクロインジェクションによって導入されており、複合体は蛍光顕微鏡法によって検出可能である。本明細書に開示されるように、マイクロインジェクションは、好ましくは、本明細書に記載される通りの方法に従って実施される。あるいは、エレクトロポレーションは、例えば(114)に開示されているような方法に従って実施されてよい。
【0091】
ヒト減数分裂および有糸分裂紡錘体は、当業者に公知である。ヒト有糸分裂紡錘体は、広く研究されており、一般的に、紡錘体微小管、キネシンおよびダイニン分子モーターを含む関連タンパク質、凝縮染色体、ならびに中心体を含む。有糸分裂紡錘体における微小管および関連タンパク質のより詳細な構成は、当業者に公知であり、例えば、参考文献116に詳述されている。全体的に見て、減数分裂紡錘体および有糸分裂紡錘体は、同様の方法で組織化されることが想定される。しかしながら、中心体が、有糸分裂紡錘体の2つの極を形成する微小管核形成の主要部位であるものの、ヒト減数分裂紡錘体は、中心小体を欠いている(115)。さらに、ヒト卵母細胞は、マウス卵母細胞において主要な形成中心である重要なaMTOC(無中心小体微小管形成中心)を伴わない非常に長いプロセスで紡錘体を構築する。当業者は、これらの違いを把握している(115)。
【0092】
例えば、当業者は、紡錘体が抗アルファ-チューブリン抗体によって検出可能であることを把握している。さらに、当業者はまた、KIFC1/HSETが抗HSET-C抗体によって検出可能であることも知っている。当業者は、減数分裂または有糸分裂紡錘体ならびにKIFC1/HSETを検出するために市販されている様々な抗体を把握している。例えば、紡錘体は、本明細書において、例えば実施例2で使用されるように、ラット抗アルファ-チューブリン抗体(MCA78G;Bio-Rad)によって検出可能であり、かつ/または、KIFC1/HSETは、ウサギ抗HSET-C(20790-1-AP;Proteintech)によって検出可能である。複合体の形成は、卵母細胞または接合体において検出可能であることが留意される。しかしながら、複合体の形成が評価されることは通常なく、これは、イメージングのために卵母細胞または接合体の犠牲が必要であるためである。代わりに、単為生殖細胞またはaMTOC不含かつKIFC1/HSET枯渇マウス卵母細胞を模倣体として使用することができ、複合体の形成をその中で評価することができる。
【0093】
複合体は、蛍光顕微鏡法および/または偏光顕微鏡法によって特異的に検出され得る。理想的には、KIFC1/HSETタンパク質は、組換え産生されたKIFC1/HSETタンパク質である。KIFC1/HSETタンパク質を組換え産生する方法は、本明細書に開示されており、本開示のこの部分に等しく適用される。さらに、KIFC1/HSETタンパク質に関する好ましい態様も本明細書に開示されており、また本出願のこの部分に等しく適用される。理想的には、KIFC1/HSETタンパク質は、ヒト減数分裂または有糸分裂紡錘体を安定化させる。複合体は、減数分裂または有糸分裂紡錘体を安定化させ得る。好ましい態様では、安定化された紡錘体は、多極性または無秩序な紡錘体よりも双極紡錘体である確率が少なくとも5%、好ましくは少なくとも10%、より好ましくは少なくとも15%、より好ましくは少なくとも20%、より好ましくは少なくとも25%、およびさらにより好ましくは少なくとも35%高い。ある態様では、複合体は、減数分裂または有糸分裂紡錘体を安定化させる。好ましい態様では、安定化された紡錘体は、多極性または無秩序な紡錘体よりも双極紡錘体である確率が少なくとも1.05倍、好ましくは少なくとも1.1倍、より好ましくは少なくとも1.15倍、より好ましくは少なくとも1.2倍、より好ましくは少なくとも1.25倍、およびさらにより好ましくは少なくとも1.35倍高い。
【0094】
理想的には、複合体形成は、複合体形成なしよりも双極紡錘体である確率が高い減数分裂または有糸分裂紡錘体を導き得る。言い換えれば、複合体形成時に、減数分裂または有糸分裂紡錘体は、複合体形成なしよりも増加した安定性を有し得る。紡錘体の増加した安定性は、双極紡錘体の形成の確率を多極性または無秩序な紡錘体と比較することによって評価され得る。紡錘体の増加した安定性は、双極紡錘体の確率が、複合体形成が起こらなかった卵母細胞または接合体と比較して増加したときに存在し得る。ある態様では、紡錘体の安定化は、紡錘体極性形態によって評価される。安定化されていない紡錘体は、多極性または無秩序な紡錘体であり得る。上で述べたように、複合体形成は、蛍光顕微鏡法または偏光顕微鏡法で評価可能であり得る。
【0095】
さらに加えて、本開示は、(i)KIFC1/HSETタンパク質または(ii)KIFC1/HSETをコードするmRNAをヒト単為生殖細胞に導入するインビトロ法に関する。当技術分野において公知であるように、単為生殖細胞は、未受精卵母細胞から産生される生物体であり、卵細胞が分裂するように人工的に活性化しても初期胚段階を超えて発達できない。よって、単為生殖細胞は、強力な研究用ツールである。(i)KIFC1/HSETタンパク質または(ii)KIFC1/HSETをコードするmRNAに関係する好ましい態様は、本明細書に開示されており、本発明のこの部分に等しく適用される。好ましい態様では、(i)ヒトKIFC1/HSETタンパク質または(ii)ヒトKIFC1/HSETをコードするmRNAの適量が、ヒト単為生殖細胞に導入され得る。前記適量は、蛍光顕微鏡法または偏光顕微鏡法を使用して、紡錘体形態異常を検出する滴定実験によって評価され得る。例えば、ヒトKIFC1/HSETタンパク質の適量は、1単為生殖細胞当たり1~250pg、好ましくは2~150pg、より好ましくは3~100pg、より好ましくは4~80pg、より好ましくは5~50pg、さらにより好ましくは6~30pg、さらにより好ましくは7~20pg、さらにより好ましくは8~15pgの範囲、および最も好ましくは約10pgである。例示的なヒトKIFC1/HSETをコードするmRNAの適量は、1単為生殖細胞当たり1~4000fg、好ましくは5~3000fg、より好ましくは20~2500fg、より好ましくは35~2000fg、より好ましくは50~1900fg、さらにより好ましくは60~1700fg、さらにより好ましくは70~1500fg、さらにより好ましくは100~1000fg、および最も好ましくは140~750fgであり得る。好ましい態様では、単為生殖細胞へのKIFC1/HSETの導入は、KIFC1/HSETが導入されていない単為生殖細胞と比較して、双極紡錘体を有する確率を増加させる。とりわけ好ましい態様では、KIFC1/HSETは、ヒト単為生殖細胞の有糸分裂紡錘体を安定化させる。別の好ましい態様では、有糸分裂紡錘体が安定化されたヒト単為生殖細胞は、安定化されていない有糸分裂紡錘体よりも双極紡錘体である確率が高く、好ましくは、ここで、安定化されていない紡錘体は、多極性または無秩序な紡錘体である。当業者は、紡錘体を検出する方法、例えば紡錘体形態を評価する方法を把握している。例えば、双極紡錘体は、蛍光顕微鏡法または偏光顕微鏡法によって評価または検出され得る。KIFC1/HSETが導入されたヒト単為生殖細胞は、KIFC1/HSETが導入されていないヒト単為生殖細胞と比較して、双極性有糸分裂紡錘体を有する確率が高い。具体的には、KIFC1/HSETが導入されたヒト単為生殖細胞は、KIFC1/HSETが導入されていないヒト単為生殖細胞と比較して、双極性有糸分裂紡錘体を有する確率が少なくとも5%、好ましくは少なくとも10%、より好ましくは少なくとも15%、より好ましくは少なくとも20%、より好ましくは少なくとも25%、およびさらにより好ましくは少なくとも35%高い可能性がある。また、KIFC1/HSETが導入されたヒト単為生殖細胞が、KIFC1/HSETが導入されていないヒト単為生殖細胞と比較して、双極性有糸分裂紡錘体を有する確率が少なくとも1.05倍、好ましくは少なくとも1.1倍、より好ましくは少なくとも1.15倍、より好ましくは少なくとも1.2倍、より好ましくは少なくとも1.25倍、およびさらにより好ましくは少なくとも1.35倍高いことも企図される。
【0096】
反対に言えば、KIFC1/HSETが導入されていないヒト単為生殖細胞は、KIFC1/HSETが導入されたヒト単為生殖細胞と比較して、双極性有糸分裂紡錘体を有する確率が低い可能性がある。具体的には、KIFC1/HSETが導入されていないヒト単為生殖細胞は、KIFC1/HSETが導入されたヒト単為生殖細胞と比較して、双極性有糸分裂紡錘体を有する確率が少なくとも5%、好ましくは少なくとも10%、より好ましくは少なくとも15%、より好ましくは少なくとも20%、より好ましくは少なくとも25%、およびさらにより好ましくは少なくとも35%低い可能性がある。さらに、KIFC1/HSETが導入されたヒト単為生殖細胞は、KIFC1/HSETが導入されていないヒト単為生殖細胞と比較して、多極性または無秩序な有糸分裂紡錘体を有する確率が低い可能性がある。具体的には、KIFC1/HSETが導入されていないヒト単為生殖細胞は、KIFC1/HSETが導入されたヒト単為生殖細胞と比較して、多極性または無秩序な有糸分裂紡錘体を有する確率が少なくとも5%、好ましくは少なくとも10%、より好ましくは少なくとも15%、より好ましくは少なくとも20%、より好ましくは少なくとも25%、およびさらにより好ましくは少なくとも35%高い可能性がある。さらに、KIFC1/HSETが導入されていないヒト単為生殖細胞は、KIFC1/HSETが導入されたヒト単為生殖細胞と比較して、多極性または無秩序な有糸分裂紡錘体を有する確率が少なくとも1.05倍、好ましくは少なくとも1.1倍、より好ましくは少なくとも1.15倍、より好ましくは少なくとも1.2倍、より好ましくは少なくとも1.25倍、およびさらにより好ましくは少なくとも1.35倍高い可能性がある。
図8では、KIFC1/HSETがヒト卵母細胞に導入され、ここで、KIFC1/HSETの導入は、極不安定性の有意に短い持続期間、不整列な染色体および遅滞染色体のより低い頻度を示した。このデータに基づいて、KIFC1/HSETがヒト単為生殖細胞において同じ挙動を示すことが予想される。よって、KIFC1/HSETの導入が、ヒト単為生殖細胞において極不安定性の有意に短い持続期間を導くことが予想される。ある態様では、KIFC1/HSETが導入されていないヒト単為生殖細胞は、KIFC1/HSETが導入されていない単為生殖細胞と比較して、後期開始時に整列した染色体を示す確率が少なくとも5%高く、好ましくは、ここで、確率は、KIFC1/HSETが導入されていない単為生殖細胞と比較して、少なくとも少なくとも10%、より好ましくは少なくとも20%、さらにより好ましくは少なくとも30%、およびさらにより好ましくは少なくとも40%高い。また、KIFC1/HSETが導入されていないヒト単為生殖細胞が、KIFC1/HSETが導入されていない単為生殖細胞と比較して、後期開始時に整列した染色体を示す確率が少なくとも1.05倍高く、好ましくは、ここで、確率が、KIFC1/HSETが導入されていない単為生殖細胞と比較して、少なくとも1.1倍、より好ましくは少なくとも1.2倍、さらにより好ましくは少なくとも1.3倍、およびさらにより好ましくは少なくとも1.4倍高いことも企図される。別の態様では、KIFC1/HSETが導入されていないヒト単為生殖細胞は、KIFC1/HSETが導入されていない単為生殖細胞と比較して、遅滞染色体のない確率が少なくとも5%高く、好ましくは、ここで、確率は、KIFC1/HSETが導入されていない単為生殖細胞と比較して、少なくとも10%、より好ましくは20%、さらにより好ましくは30%、およびさらにより好ましくは40%高い。また、KIFC1/HSETが導入されていないヒト単為生殖細胞が、KIFC1/HSETが導入されていない単為生殖細胞と比較して、遅滞染色体のない確率が少なくとも1.05倍高く、好ましくは、ここで、確率が、KIFC1/HSETが導入されていない単為生殖細胞と比較して、少なくとも1.1倍、より好ましくは少なくとも1.2、さらにより好ましくは少なくとも1.3倍、およびさらにより好ましくは少なくとも1.4倍高いことも企図される。
【0097】
最後に、本開示は、ヒト単為生殖細胞に関し、ここで、(i)KIFC1/HSETタンパク質または(ii)KIFC1/HSET mRNAが、ヒト単為生殖細胞に導入されている。好ましい態様では、(i)KIFC1/HSETタンパク質または(ii)KIFC1/HSET mRNAは、インビトロのヒト単為生殖細胞に導入されている。KIFC1/HSETタンパク質は、組換え産生されたKIFC1/HSETタンパク質であることがさらに好ましい。例えば、ヒト単為生殖細胞は、マウス単為生殖細胞の多くとも2分の1、好ましくは多くとも4分の1、より好ましくは多くとも6分の1、さらにより好ましくは多くとも10分の1、およびさらにより好ましくは多くとも20分の1、さらにより好ましくは多くとも30分の1、さらにより好ましくは多くとも40分の1、さらにより好ましくは多くとも50分の1、およびさらにより好ましくは多くとも60分の1だけ、KIFC1/HSETを発現し得る。また、ヒト単為生殖細胞が、HeLa細胞の多くとも2分の1、好ましくは多くとも4分の1、より好ましくは多くとも6分の1、さらにより好ましくは多くとも10分の1、およびさらにより好ましくは多くとも20分の1だけ、KIFC1/HSETを発現することも企図される。KIFC1/HSETの発現ならびにKIFC1/HSETを検出する方法に関して、本明細書に提供される情報は、本発明の前記部分に等しく提供される。例えば、KIFC1/HSETの発現は、同じKIF1/HSET抗体を一次抗体として使用したウェスタンブロット上のバンド強度によって評価されてよく、好ましくは、ここで、バンド強度は、ウサギ抗HSET抗体、より好ましくは、ウサギ抗HSET-N抗体ab172620(Abcam)を使用して評価される。ウェスタンブロットに関する好ましい態様は、本明細書に詳述されており、等しく適用される。
【0098】
本明細書におけるすべての態様に関して、KIFC1/HSETタンパク質またはKIFC1/HSETをコードするmRNAは、インビトロで合成されていてよい。当業者は、タンパク質およびmRNAをインビトロで合成するためのいくつかの方法を把握している。さらに、KIFC1/HSETは、供給業者から注文しても、または社内の実験室において得てもよい。本明細書の実験の部は、KIFC1/HSETを発現および精製してインビトロで合成されたKIFC1/HSETを得る方法に関する豊富なデータを提供する。
【0099】
本発明は、以下の態様によってさらに説明される。
【0100】
1. (i)KIFC1/HSETタンパク質または(ii)KIFC1/HSETをコードするmRNAをヒト卵母細胞に導入するインビトロ法。
【0101】
2. ヒト卵母細胞が、天然に存在するものであり、かつ/または、ヒト卵母細胞が、マウス卵母細胞の多くとも2分の1、好ましくは多くとも4分の1、より好ましくは多くとも6分の1、さらにより好ましくは多くとも10分の1、さらにより好ましくは多くとも20分の1、さらにより好ましくは多くとも30分の1、さらにより好ましくは多くとも40分の1、さらにより好ましくは多くとも50分の1、およびさらにより好ましくは多くとも60分の1だけ、KIFC1/HSETを発現する、態様1の方法。
【0102】
3. ヒト卵母細胞が、天然に存在するものであり、かつ/または、ヒト卵母細胞が、HeLa細胞の多くとも2分の1、好ましくは多くとも4分の1、より好ましくは多くとも6分の1、さらにより好ましくは多くとも10分の1、およびさらにより好ましくは多くとも20分の1だけ、KIFC1/HSETを発現する、態様1または2の方法。
【0103】
4. KIFC1/HSETの発現が、同じKIF1/HSET抗体を一次抗体として使用したウェスタンブロット上のバンド強度によって評価され、好ましくは、ここで、バンド強度が、ウサギ抗HSET抗体、より好ましくは、ウサギ抗HSET-N抗体ab172620(Abcam)を使用して評価される、態様2または3の方法。
【0104】
5. ウェスタンブロットが、同じ二次抗体、同じブロッキング溶液、同じインキュベーション時間、同じ溶解バッファー、および/または同じ反応バッファーを使用して実施され、好ましくは、ウェスタンブロットが、同じ条件下で実施される、態様2~4のいずれかにの方法。
【0105】
6. KIFC1/HSETの発現が、質量分析法によって評価される、態様2~5のいずれかの方法。
【0106】
7. KIFC1/HSETタンパク質または翻訳されたKIFC1/HSETをコードするmRNAが、微小管結合活性、ATP加水分解活性および/または微小管滑り活性を有し、好ましくは、ここで、微小管結合活性が、微小管共ペレット化アッセイによって検出可能であり、ATP加水分解が、ATPaseアッセイによって検出可能であり、かつ/または、微小管滑り活性が、微小管グライディングアッセイ、より好ましくは、生細胞イメージングもしくは免疫蛍光イメージングによって検出可能であり、より好ましくは、KIFC1/HSETタンパク質または翻訳されたKIFC1/HSETをコードするmRNAが、微小管結合活性を有し、これが、Cai S, Weaver LN, Ems-McClung SC, Walczak CE. Kinesin-14 family proteins HSET/XCTK2 control spindle length by cross-linking and sliding microtubules. Mol Biol Cell. 2009 Mar;20(5):1348-59に示されるように、免疫蛍光イメージングによって検出可能である、先行態様のいずれかの方法。
【0107】
8. KIFC1/HSETタンパク質が、組換え産生されたKIFC1/HSETタンパク質である、先行態様のいずれかの方法。
【0108】
9. KIFC1/HSETタンパク質が、ヒトKIFC1/HSETタンパク質または非ヒトKIFC1/HSETタンパク質である、先行態様のいずれかの方法。
【0109】
10. KIFC1/HSETタンパク質が、ヒトKIFC1/HSETタンパク質である、態様9の方法。
【0110】
11. KIFC1/HSETタンパク質が、SEQ ID NO:1(ヒトKIFC1/HSET)に対して少なくとも70%、好ましくは少なくとも75%、より好ましくは少なくとも80%、より好ましくは少なくとも81%、より好ましくは少なくとも82%、より好ましくは少なくとも83%、より好ましくは少なくとも84%、より好ましくは少なくとも85%、より好ましくは少なくとも86%、より好ましくは少なくとも87%、より好ましくは少なくとも88%、より好ましくは少なくとも89%、より好ましくは少なくとも90%、より好ましくは少なくとも91%、より好ましくは少なくとも92%、より好ましくは少なくとも93%、より好ましくは少なくとも94%、より好ましくは少なくとも95%、より好ましくは少なくとも96%、より好ましくは少なくとも97%、より好ましくは少なくとも98%、さらにより好ましくは少なくとも99%同一、および最も好ましくはSEQ ID NO:1に対して100%同一である配列を含み、好ましくは前記配列からなり;特に、KIFC1/HSETが、微小管結合活性、ATP加水分解活性および/または微小管滑り活性を有する、先行態様のいずれかの方法。
【0111】
12. KIFC1/HSETをコードするmRNAが、SEQ ID NO:2(ヒトKIFC1/HSET)に対して少なくとも70%、好ましくは少なくとも75%、より好ましくは少なくとも80%、より好ましくは少なくとも81%、より好ましくは少なくとも82%、より好ましくは少なくとも83%、より好ましくは少なくとも84%、より好ましくは少なくとも85%、より好ましくは少なくとも86%、より好ましくは少なくとも87%、より好ましくは少なくとも88%、より好ましくは少なくとも89%、より好ましくは少なくとも90%、より好ましくは少なくとも91%、より好ましくは少なくとも92%、より好ましくは少なくとも93%、より好ましくは少なくとも94%、より好ましくは少なくとも95%、より好ましくは少なくとも96%、より好ましくは少なくとも97%、より好ましくは少なくとも98%、さらにより好ましくは少なくとも99%同一、および最も好ましくはSEQ ID NO:2に対して100%同一である配列を含み、好ましくは前記配列からなり;特に、翻訳されたKIFC1/HSET mRNAが、微小管結合活性、ATP加水分解活性および/または微小管滑り活性を有する、先行態様のいずれかの方法。
【0112】
13. KIFC1/HSETをコードするmRNAが、
SEQ ID NO:1(ヒトKIFC1/HSET)に対して少なくとも70%、好ましくは少なくとも75%、より好ましくは少なくとも80%、より好ましくは少なくとも81%、より好ましくは少なくとも82%、より好ましくは少なくとも83%、より好ましくは少なくとも84%、より好ましくは少なくとも85%、より好ましくは少なくとも86%、より好ましくは少なくとも87%、より好ましくは少なくとも88%、より好ましくは少なくとも89%、より好ましくは少なくとも90%、より好ましくは少なくとも91%、より好ましくは少なくとも92%、より好ましくは少なくとも93%、より好ましくは少なくとも94%、より好ましくは少なくとも95%、より好ましくは少なくとも96%、より好ましくは少なくとも97%、より好ましくは少なくとも98%、さらにより好ましくは少なくとも99%同一、および最も好ましくはSEQ ID NO:1に対して100%同一である配列を含む、好ましくは前記配列からなる、アミノ酸配列
に翻訳され;
特に、翻訳されたKIFC1/HSET mRNAが、微小管結合活性、ATP加水分解活性および/または微小管滑り活性を有する、
先行態様のいずれかの方法。
【0113】
14. KIFC1/HSETタンパク質またはKIFC1/HSETをコードするmRNAが、切断型であり、好ましくは、KIFC1/HSETタンパク質またはKIFC1/HSETをコードするmRNAが、N末端切断型であり、より好ましくは、ここで、KIFC1/HSETタンパク質またはKIFC1/HSETをコードするmRNAのN末端テールが、切断型である、先行態様のいずれかの方法。
【0114】
15. KIFC1/HSETタンパク質が、融合タンパク質であり、これが、SEQ ID No:1のアミノ酸1~144および310~673の配列を含む、好ましくは前記配列からなる、先行態様のいずれかの方法。
【0115】
16. KIFC1/HSETをコードするmRNAが、SEQ ID No:2のアミノ酸438~2019の配列、より好ましくはSEQ ID No:2のアミノ酸930~2019の配列を含む、好ましくは前記配列からなる、先行態様のいずれかの方法。
【0116】
17. KIFC1/HSETタンパク質が、非ヒトKIFC1/HSETタンパク質であり、好ましくは、ここで、非ヒトKIFC1/HSETタンパク質が、哺乳動物KIFC1/HSETタンパク質であり、より好ましくは、KIFC1/HSETタンパク質が、霊長類、ウシ、ブタおよび齧歯類KIFC1/HSETタンパク質からなる群より選択され、より好ましくは、KIFC1/HSETタンパク質が、霊長類、ウシ、ブタKIFC1/HSETタンパク質からなる群より選択され、さらにより好ましくは、KIFC1/HSETタンパク質が、霊長類KIFC1/HSETタンパク質である、先行態様のいずれかの方法。
【0117】
18. KIFC1/HSETタンパク質が、SEQ ID NO:3(ウシKIFC1/HSET)、SEQ ID NO:4(ブタKIFC1/HSET)、およびSEQ ID NO:5(マウスKIFC1/HSET)のいずれかに対して少なくとも70%、好ましくは少なくとも75%、より好ましくは少なくとも80%、より好ましくは少なくとも81%、より好ましくは少なくとも82%、より好ましくは少なくとも83%、より好ましくは少なくとも84%、より好ましくは少なくとも85%、より好ましくは少なくとも86%、より好ましくは少なくとも87%、より好ましくは少なくとも88%、より好ましくは少なくとも89%、より好ましくは少なくとも90%、より好ましくは少なくとも91%、より好ましくは少なくとも92%、より好ましくは少なくとも93%、より好ましくは少なくとも94%、より好ましくは少なくとも95%、より好ましくは少なくとも96%、より好ましくは少なくとも97%、より好ましくは少なくとも98%、さらにより好ましくは少なくとも99%同一、および最も好ましくは、SEQ ID NO:3~5のいずれかに対して100%同一である、先行態様のいずれかの方法。
【0118】
19. KIFC1/HSETをコードするmRNAが、SEQ ID NO:6(ウシKIFC1/HSET)、SEQ ID NO:7(ブタKIFC1/HSET)およびSEQ ID NO:8(マウスKIFC1/HSET)のいずれかに対して少なくとも70%、好ましくは少なくとも75%、より好ましくは少なくとも80%、より好ましくは少なくとも81%、より好ましくは少なくとも82%、より好ましくは少なくとも83%、より好ましくは少なくとも84%、より好ましくは少なくとも85%、より好ましくは少なくとも86%、より好ましくは少なくとも87%、より好ましくは少なくとも88%、より好ましくは少なくとも89%、より好ましくは少なくとも90%、より好ましくは少なくとも91%、より好ましくは少なくとも92%、より好ましくは少なくとも93%、より好ましくは少なくとも94%、より好ましくは少なくとも95%、より好ましくは少なくとも96%、より好ましくは少なくとも97%、より好ましくは少なくとも98%、さらにより好ましくは少なくとも99%同一、および最も好ましくは、SEQ ID NO:6~8のいずれかに対して100%同一である、先行態様のいずれかの方法。
【0119】
20. 卵母細胞へのKIFC1/HSETの導入が、KIFC1/HSETが導入されていない卵母細胞と比較して、双極紡錘体の形成を増加させる、先行態様のいずれかの方法。
【0120】
21. 卵母細胞へのKIFC1/HSETの導入が、KIFC1/HSETが導入されていない卵母細胞と比較して、後期開始時に整列した染色体を示す確率を増加させ、好ましくは、ここで、確率が、KIFC1/HSETが導入されていない卵母細胞と比較して、少なくとも5%、より好ましくは少なくとも10%、さらにより好ましくは少なくとも20%、さらにより好ましくは少なくとも30%、およびさらにより好ましくは少なくとも40%増加する、先行態様のいずれかの方法。
【0121】
22. 卵母細胞へのKIFC1/HSETの導入が、KIFC1/HSETが導入されていない卵母細胞と比較して、遅滞染色体を有しない確率を増加させ、好ましくは、ここで、確率が、KIFC1/HSETが導入されていない卵母細胞と比較して、少なくとも5%、より好ましくは少なくとも10%、さらにより好ましくは少なくとも20%、さらにより好ましくは少なくとも30%、およびさらにより好ましくは少なくとも40%増加する、先行態様のいずれかの方法。
【0122】
23. KIFC1/HSETが、ヒト卵母細胞の減数分裂紡錘体を安定化させる、先行態様のいずれかの方法。
【0123】
24. 減数分裂紡錘体が安定化されたヒト卵母細胞が、安定化されていない減数分裂紡錘体よりも双極紡錘体を有する確率が高く、好ましくは、ここで、安定化されていない紡錘体が、多極性または無秩序な紡錘体である、態様23の方法。
【0124】
25. 減数分裂紡錘体が、蛍光顕微鏡法または偏光顕微鏡法によって評価される、態様21、22または24のいずれかの方法。
【0125】
26. 減数分裂紡錘体の安定化が、紡錘体極性形態によって評価または検出され、好ましくは、ここで、安定化された減数分裂紡錘体の紡錘体極性形態が、安定化されていない減数分裂紡錘体よりも双極紡錘体である確率が高く、より好ましくは、ここで、安定化されていない紡錘体が、多極性または無秩序な紡錘体である、態様23~25のいずれかの方法。
【0126】
27. 紡錘体極性形態が、蛍光顕微鏡法または偏光顕微鏡法によって評価または検出される、態様26の方法。
【0127】
28. KIFC1/HSETが導入されたヒト卵母細胞が、KIFC1/HSETが導入されていないヒト卵母細胞と比較して、双極性減数分裂紡錘体を有する確率が高い、先行態様のいずれかの方法。
【0128】
29. KIFC1/HSETが導入されたヒト卵母細胞が、KIFC1/HSETが導入されていないヒト卵母細胞と比較して、双極性減数分裂紡錘体を有する確率が少なくとも5%、好ましくは少なくとも10%、より好ましくは少なくとも15%、より好ましくは少なくとも20%、より好ましくは少なくとも25%、およびさらにより好ましくは少なくとも35%高い、先行態様のいずれかの方法。
【0129】
30. KIFC1/HSETが導入されていないヒト卵母細胞が、KIFC1/HSETが導入されたヒト卵母細胞と比較して、双極性減数分裂紡錘体を有する確率が低い、先行態様のいずれかの方法。
【0130】
31. KIFC1/HSETが導入されていないヒト卵母細胞が、KIFC1/HSETが導入されたヒト卵母細胞と比較して、双極性減数分裂紡錘体を有する確率が少なくとも5%、好ましくは少なくとも10%、より好ましくは少なくとも15%、より好ましくは少なくとも20%、より好ましくは少なくとも25%、およびさらにより好ましくは少なくとも35%低い、先行態様のいずれかの方法。
【0131】
32. KIFC1/HSETが導入されたヒト卵母細胞が、KIFC1/HSETが導入されていないヒト卵母細胞と比較して、多極性または無秩序な減数分裂紡錘体を有する確率が低い、先行態様のいずれかの方法。
【0132】
33. KIFC1/HSETが導入されたヒト卵母細胞が、KIFC1/HSETが導入されていないヒト卵母細胞と比較して、多極性または無秩序な減数分裂紡錘体を有する確率が少なくとも5%、好ましくは少なくとも10%、より好ましくは少なくとも15%、より好ましくは少なくとも20%、より好ましくは少なくとも25%、およびさらにより好ましくは少なくとも35%低い、先行態様のいずれかの方法。
【0133】
34. KIFC1/HSETが導入されていないヒト卵母細胞が、KIFC1/HSETが導入されたヒト卵母細胞と比較して、多極性または無秩序な減数分裂紡錘体を有する確率が高い、先行態様のいずれかの方法。
【0134】
35. KIFC1/HSETが導入されていないヒト卵母細胞が、KIFC1/HSETが導入されたヒト卵母細胞と比較して、多極性または無秩序な減数分裂紡錘体を有する確率が少なくとも5%、好ましくは少なくとも10%、より好ましくは少なくとも15%、より好ましくは少なくとも20%、より好ましくは少なくとも25%、およびさらにより好ましくは少なくとも35%高い、先行態様のいずれかの方法。
【0135】
36. 双極性減数分裂紡錘体が、蛍光顕微鏡法または偏光顕微鏡法によって評価または検出される、態様28~35のいずれかの方法。
【0136】
37. (i)KIFC1/HSETタンパク質または(ii)KIFC1/HSETをコードするmRNAが、卵核胞期、減数分裂Iまたは減数分裂IIにおいて導入される、先行態様のいずれかの方法。
【0137】
38. (i)KIFC1/HSETタンパク質または(ii)KIFC1/HSETをコードするmRNAが、卵核胞期、前期網糸期停止、前中期I減数分裂紡錘体形成、中期I、後期I、または終期Iにおいて導入される、態様37の方法。
【0138】
39. (i)KIFC1/HSETタンパク質または(ii)KIFC1/HSETをコードするmRNAが、卵核胞期、前期中、核膜崩壊前、および/または核膜崩壊後であるが受精前に導入される、態様37の方法。
【0139】
40. (i)KIFC1/HSETタンパク質または(ii)KIFC1/HSETをコードするmRNAが、前期I網糸期停止中に導入される、態様37の方法。
【0140】
41. (i)KIFC1/HSETタンパク質または(ii)KIFC1/HSETをコードするmRNAが、前中期IIまたは中期IIにおいて導入される、態様37の方法。
【0141】
42. (i)KIFC1/HSETタンパク質または(ii)KIFC1/HSETをコードするmRNAが、中期IIにおいて導入される、態様41の方法。
【0142】
43. (i)KIFC1/HSETタンパク質または(ii)KIFC1/HSETをコードするmRNAが、精子と一緒に卵母細胞に導入される、態様42の方法。
【0143】
44. (i)KIFC1/HSETタンパク質または(ii)ヒトKIFC1/HSETをコードするmRNAの適量が、ヒト卵母細胞に導入される、先行態様のいずれかの方法。
【0144】
45. 適量が、蛍光顕微鏡法または偏光顕微鏡法を使用して、紡錘体形態異常を検出する滴定実験によって評価される、態様44の方法。
【0145】
46. ヒトKIFC1/HSETタンパク質の適量が、卵母細胞1個当たり1~250pg、好ましくは2~150pg、より好ましくは3~100pg、より好ましくは4~80pg、より好ましくは5~50pg、さらにより好ましくは6~30pg、さらにより好ましくは7~20pg、さらにより好ましくは8~15pgの範囲、および最も好ましくは約10pgである、態様44または45の方法。
【0146】
47. ヒトの生殖細胞系列同一性を改変しない、先行態様のいずれかの方法。
【0147】
48. (i)KIFC1/HSETタンパク質または(ii)KIFC1/HSETをコードするmRNAが、マイクロインジェクションまたはエレクトロポレーション、好ましくはマイクロインジェクションによって導入される、先行態様のいずれかの方法。
【0148】
49.
a. インビトロのヒト卵母細胞を提供すること、および
b. (i)KIFC1/HSETタンパク質または(ii)KIFC1/HSETをコードするmRNAをヒト卵母細胞に送達すること
によって、ヒト卵母細胞の減数分裂紡錘体を安定化させるためのインビトロ法であって、
ヒトKIFC1/HSETタンパク質がヒト卵母細胞における減数分裂紡錘体を安定化させる、
インビトロ法。
【0149】
50. (i)KIFC1/HSETタンパク質または(ii)ヒトKIFC1/HSETをコードするmRNAの送達が、(i)KIFC1/HSETタンパク質または(ii)ヒトKIFC1/HSETをコードするmRNAの導入と同義であり、ここで、導入が、態様20~22、37~43もしくは48のいずれかにさらに定義されており、ヒト卵母細胞が、態様2~6および28~36のいずれかにさらに定義されており、KIFC1/HSETタンパク質もしくは(ii)KIFC1/HSETをコードするmRNAが、態様7~19のいずれかにさらに定義されており、減数分裂紡錘体の安定化が、態様23~27のいずれかにさらに定義されており、かつ/または、(i)KIFC1/HSETタンパク質もしくは(ii)KIFC1/HSETをコードするmRNAの適量が、態様44~46のいずれかにさらに定義されている、態様49の方法。
【0150】
51. (i)KIFC1/HSETタンパク質または(ii)KIFC1/HSET mRNAが、天然に存在するヒト卵母細胞に導入され、それにより天然に存在しない卵母細胞を得る、
天然に存在しないヒト卵母細胞。
【0151】
52. KIFC1/HSETタンパク質が、組換え産生されたKIFC1/HSETタンパク質である、態様51の卵母細胞。
【0152】
53. 天然に存在するヒト卵母細胞が、マウス卵母細胞の多くとも2分の1、好ましくは多くとも4分の1、より好ましくは多くとも6分の1、さらにより好ましくは多くとも10分の1、およびさらにより好ましくは多くとも20分の1、さらにより好ましくは多くとも30分の1、さらにより好ましくは多くとも40分の1、さらにより好ましくは多くとも50分の1、およびさらにより好ましくは多くとも60分の1だけ、KIFC1/HSETを発現する、態様51または52の卵母細胞。
【0153】
54. 天然に存在するヒト卵母細胞が、HeLa細胞の多くとも2分の1、好ましくは多くとも4分の1、より好ましくは多くとも6分の1、さらにより好ましくは多くとも10分の1、およびさらにより好ましくは多くとも20分の1だけ、KIFC1/HSETを発現する、51~53態様のいずれかの卵母細胞。
【0154】
55. KIFC1/HSETの発現が、同じKIF1/HSET抗体を一次抗体として使用したウェスタンブロット上のバンド強度によって評価され、好ましくは、ここで、バンド強度が、ウサギ抗HSET抗体、より好ましくは、ウサギ抗HSET-N抗体ab172620(Abcam)を使用して評価される、態様53~54のいずれかの卵母細胞。
【0155】
56. ウェスタンブロットが、同じ二次抗体、同じブロッキング溶液、同じインキュベーション時間、同じ溶解バッファー、および/または同じ反応バッファーを使用して実施され、好ましくは、ウェスタンブロットが、同じ条件下で実施される、態様53~55のいずれかの卵母細胞。
【0156】
57. KIFC1/HSETの発現が、質量分析法によって評価される、態様53~56のいずれかの卵母細胞。
【0157】
58. (i)KIFC1/HSETタンパク質または(ii)KIFC1/HSETをコードするmRNAが、卵母細胞の減数分裂紡錘体を安定化させる、態様51~57のいずれかの卵母細胞。
【0158】
59. 導入が、態様20~22、37~43もしくは48のいずれかにさらに定義されており、ヒト卵母細胞が、態様2~6および28~36のいずれかにさらに定義されており、KIFC1/HSETタンパク質もしくは(ii)KIFC1/HSETをコードするmRNAが、態様7~19のいずれかにさらに定義されており、減数分裂紡錘体の安定化が、態様23~27のいずれかにさらに定義されており、かつ/または、(i)KIFC1/HSETタンパク質もしくは(ii)KIFC1/HSETをコードするmRNAの適量が、態様44~46のいずれかにさらに定義されている、態様51~58のいずれかの卵母細胞。
【0159】
60. インビトロのヒト卵母細胞への導入に適した(i)KIFC1/HSETタンパク質または(ii)KIFC1/HSETをコードするmRNAを含む注入用デバイスであって、マイクロインジェクションニードルである、デバイス。
【0160】
61. (i)KIFC1/HSETタンパク質または(ii)KIFC1/HSETをコードするmRNAが、卵母細胞の減数分裂紡錘体を安定化させる、態様60の注入用デバイス。
【0161】
62. 導入が、態様20~22、37~43もしくは48のいずれかにさらに定義されており、ヒト卵母細胞が、態様2~6および28~36のいずれかにさらに定義されており、KIFC1/HSETタンパク質もしくは(ii)KIFC1/HSETをコードするmRNAが、態様7~19のいずれかにさらに定義されており、減数分裂紡錘体の安定化が、態様23~27のいずれかにさらに定義されており、かつ/または、(i)KIFC1/HSETタンパク質もしくは(ii)KIFC1/HSETをコードするmRNAの適量が、態様44~46のいずれかにさらに定義されている、態様60または61の注入用デバイス。
【0162】
63. インビトロのヒト卵母細胞の減数分裂紡錘体を安定化させるのに適したKIFC1/HSETタンパク質またはKIFC1/HSET mRNAを含む注入用デバイス。
【0163】
64. KIFC1/HSETタンパク質またはKIFC1/HSET mRNAが、ヒト卵母細胞に導入される、態様63の注入用デバイス。
【0164】
65. 導入が、態様20~22、37~43もしくは48のいずれかにさらに定義されており、ヒト卵母細胞が、態様2~6および28~36のいずれかにさらに定義されており、KIFC1/HSETタンパク質もしくは(ii)KIFC1/HSETをコードするmRNAが、態様7~19のいずれかにさらに定義されており、減数分裂紡錘体の安定化が、態様23~27のいずれかにさらに定義されており、かつ/または、(i)KIFC1/HSETタンパク質もしくは(ii)KIFC1/HSETをコードするmRNAの適量が、態様44~46のいずれかにさらに定義されている、態様62または63の注入用デバイス。
【0165】
66. (i)KIFC1/HSETタンパク質または(ii)KIFC1/HSETをコードするmRNAをヒト卵母細胞に導入する方法であって、好ましくは、ここで、KIFC1/HSETタンパク質が、組換え産生されたKIFC1/HSETタンパク質である、方法。
【0166】
67. (i)KIFC1/HSETタンパク質または(ii)KIFC1/HSETをコードするmRNAが、卵母細胞の減数分裂紡錘体を安定化させる、態様66の方法。
【0167】
68. 導入が、態様20~22、37~43もしくは48のいずれかにさらに定義されており、ヒト卵母細胞が、態様2~6および28~36のいずれかにさらに定義されており、KIFC1/HSETタンパク質もしくは(ii)KIFC1/HSETをコードするmRNAが、態様7~19のいずれかにさらに定義されており、減数分裂紡錘体の安定化が、態様23~27のいずれかにさらに定義されており、かつ/または、(i)KIFC1/HSETタンパク質もしくは(ii)KIFC1/HSETをコードするmRNAの適量が、態様44~46のいずれかにさらに定義されている、態様66または67の方法。
【0168】
69. (i)KIFC1/HSETタンパク質または(ii)KIFC1/HSETをコードするmRNAによってヒト卵母細胞の減数分裂紡錘体を安定化させる方法。
【0169】
70. (i)KIFC1/HSETタンパク質または(ii)KIFC1/HSETをコードするmRNAが、ヒト卵母細胞に導入され、好ましくは、ここで、KIFC1/HSETタンパク質が、組換え産生されたKIFC1/HSETタンパク質である、態様69の方法。
【0170】
71. 導入が、態様20~22、37~43もしくは48のいずれかにさらに定義されており、ヒト卵母細胞が、態様2~6および28~36のいずれかにさらに定義されており、KIFC1/HSETタンパク質もしくは(ii)KIFC1/HSETをコードするmRNAが、態様7~19のいずれかにさらに定義されており、減数分裂紡錘体の安定化が、態様23~27のいずれかにさらに定義されており、かつ/または、(i)KIFC1/HSETタンパク質もしくは(ii)KIFC1/HSETをコードするmRNAの適量が、態様44~46のいずれかにさらに定義されている、態様69または70の方法。
【0171】
72. (i)KIFC1/HSETタンパク質または(ii)KIFC1/HSETをコードするmRNAをヒト接合体に導入することによってヒト接合体における有糸分裂中の無秩序かつ/または多極性の紡錘体を有する確率を低下させる方法において使用するための、(i)KIFC1/HSETタンパク質または(ii)KIFC1/HSETをコードするmRNA。
【0172】
73. (i)KIFC1/HSETタンパク質または(ii)KIFC1/HSETをコードするmRNAをヒト接合体に導入することによって異数性の確率を低下させる方法において使用するための、(i)KIFC1/HSETタンパク質または(ii)KIFC1/HSETをコードするmRNA。
【0173】
74. (i)KIFC1/HSETタンパク質または(ii)KIFC1/HSETをコードするmRNAが、ヒト接合体の有糸分裂紡錘体を安定化させ、好ましくは、KIFC1/HSETタンパク質が、組換え産生されたKIFC1/HSETタンパク質である、態様72または73の(i)KIFC1/HSETタンパク質または(ii)KIFC1/HSETをコードするmRNA。
【0174】
75. ヒト接合体が、天然に存在するものであり、かつ/または、ヒト接合体が、マウス接合体の多くとも2分の1、好ましくは多くとも4分の1、より好ましくは多くとも6分の1、さらにより好ましくは多くとも10分の1、およびさらにより好ましくは多くとも20分の1、さらにより好ましくは多くとも30分の1、さらにより好ましくは多くとも40分の1、さらにより好ましくは多くとも50分の1、およびさらにより好ましくは多くとも60分の1だけ、KIFC1/HSETを発現する、態様72~74のいずれかの(i)KIFC1/HSETタンパク質または(ii)KIFC1/HSETをコードするmRNA。
【0175】
76. ヒト接合体が、天然に存在するものであり、かつ/または、ヒト接合体が、HeLa細胞の多くとも2分の1、好ましくは多くとも4分の1、より好ましくは多くとも6分の1、さらにより好ましくは多くとも10分の1、およびさらにより好ましくは多くとも20分の1だけ、KIFC1/HSETを発現する、態様75~77のいずれかの(i)KIFC1/HSETタンパク質または(ii)KIFC1/HSETをコードするmRNA。
【0176】
77. KIFC1/HSETの発現が、同じKIF1/HSET抗体を一次抗体として使用したウェスタンブロット上のバンド強度によって評価され、好ましくは、ここで、バンド強度が、ウサギ抗HSET抗体、より好ましくは、ウサギ抗HSET-N抗体ab172620(Abcam)を使用して評価される、態様77または78の(i)KIFC1/HSETタンパク質または(ii)KIFC1/HSETをコードするmRNA。
【0177】
78. ウェスタンブロットが、同じ二次抗体、同じブロッキング溶液、同じインキュベーション時間、同じ溶解バッファー、および/または同じ反応バッファーを使用して実施され、好ましくは、ウェスタンブロットが、同じ条件下で実施される、態様77~79のいずれかの(i)KIFC1/HSETタンパク質または(ii)KIFC1/HSETをコードするmRNA。
【0178】
79. KIFC1/HSETの発現が、質量分析法によって評価される、態様77~80のいずれかの(i)KIFC1/HSETタンパク質または(ii)KIFC1/HSETをコードするmRNA。
【0179】
80. 態様7~19のいずれかにさらに定義されている、態様72~79のいずれかの(i)KIFC1/HSETタンパク質または(ii)KIFC1/HSETをコードするmRNA。
【0180】
81. 接合体へのKIFC1/HSETの導入が、KIFC1/HSETが導入されていない接合体と比較して、双極紡錘体の形成を増加させ、好ましくは、ここで、双極紡錘体が、蛍光顕微鏡法または偏光顕微鏡法によって評価または検出される、態様72~80のいずれかの(i)KIFC1/HSETタンパク質または(ii)KIFC1/HSETをコードするmRNA。
【0181】
82. マイクロインジェクションまたはエレクトロポレーションによって、好ましくはマイクロインジェクションによって導入される、態様72~81のいずれかの(i)KIFC1/HSETタンパク質または(ii)KIFC1/HSETをコードするmRNA。
【0182】
83. 有糸分裂中、好ましくは有糸分裂前期、中期、後期、終期またはS期中、より好ましくは有糸分裂前期中に導入される、態様72~82のいずれかの(i)KIFC1/HSETタンパク質または(ii)KIFC1/HSETをコードするmRNA。
【0183】
84. 前核の構築前および/または前核の構築中もしくは存在中に導入される、態様72~83のいずれかの(i)KIFC1/HSETタンパク質または(ii)KIFC1/HSETをコードするmRNA。
【0184】
85. KIFC1/HSETが、ヒト接合体の有糸分裂紡錘体を安定化させる、態様72~84のいずれかの(i)KIFC1/HSETタンパク質または(ii)KIFC1/HSETをコードするmRNA。
【0185】
86. 有糸分裂紡錘体が安定化されたヒト接合体が、安定化されていない有糸分裂紡錘体よりも双極紡錘体である確率が高く、好ましくは、ここで、安定化されていない紡錘体が、多極性または無秩序な紡錘体である、態様85の(i)KIFC1/HSETタンパク質または(ii)KIFC1/HSETをコードするmRNA。
【0186】
87. 有糸分裂紡錘体の安定化が、蛍光顕微鏡法または偏光顕微鏡法を使用して、紡錘体極性形態によって評価または検出される、態様85または86の(i)KIFC1/HSETタンパク質または(ii)KIFC1/HSETをコードするmRNA。
【0187】
88. KIFC1/HSETが導入されたヒト接合体が、KIFC1/HSETが導入されていないヒト接合体と比較して、双極性有糸分裂紡錘体を有する確率が高い、態様72~87のいずれかの(i)KIFC1/HSETタンパク質または(ii)KIFC1/HSETをコードするmRNA。
【0188】
89. KIFC1/HSETが導入されたヒト接合体が、KIFC1/HSETが導入されていないヒト接合体と比較して、双極性有糸分裂紡錘体を有する確率が少なくとも5%、好ましくは少なくとも10%、より好ましくは少なくとも15%、より好ましくは少なくとも20%、より好ましくは少なくとも25%、およびさらにより好ましくは少なくとも35%高い、態様72~88のいずれかの(i)KIFC1/HSETタンパク質または(ii)KIFC1/HSETをコードするmRNA。
【0189】
90. KIFC1/HSETが導入されていないヒト接合体が、KIFC1/HSETが導入されたヒト接合体と比較して、双極性有糸分裂紡錘体を有する確率が低い、態様72~89のいずれかの(i)KIFC1/HSETタンパク質または(ii)KIFC1/HSETをコードするmRNA。
【0190】
91. KIFC1/HSETが導入されていないヒト接合体が、KIFC1/HSETが導入されたヒト接合体と比較して、双極性有糸分裂紡錘体を有する確率が少なくとも5%、好ましくは少なくとも10%、より好ましくは少なくとも15%、より好ましくは少なくとも20%、より好ましくは少なくとも25%、およびさらにより好ましくは少なくとも35%低い、態様72~90のいずれかの(i)KIFC1/HSETタンパク質または(ii)KIFC1/HSETをコードするmRNA。
【0191】
92. KIFC1/HSETが導入されたヒト接合体が、KIFC1/HSETが導入されていないヒト接合体と比較して、多極性または無秩序な有糸分裂紡錘体を有する確率が低く、好ましくは、KIFC1/HSETが導入されたヒト接合体が、KIFC1/HSETが導入されていないヒト接合体と比較して、多極性または無秩序な有糸分裂紡錘体を有する確率が少なくとも5%、好ましくは少なくとも10%、より好ましくは少なくとも15%、より好ましくは少なくとも20%、より好ましくは少なくとも25%、およびさらにより好ましくは少なくとも35%低い、態様72~91のいずれかの(i)KIFC1/HSETタンパク質または(ii)KIFC1/HSETをコードするmRNA。
【0192】
93. KIFC1/HSETが導入されていないヒト接合体が、KIFC1/HSETが導入されたヒト接合体と比較して、多極性または無秩序な有糸分裂紡錘体を有する確率が高く、好ましくは、KIFC1/HSETが導入されていないヒト接合体が、KIFC1/HSETが導入されたヒト接合体と比較して、多極性または無秩序な有糸分裂紡錘体を有する確率が少なくとも5%、好ましくは少なくとも10%、より好ましくは少なくとも15%、より好ましくは少なくとも20%、より好ましくは少なくとも25%、およびさらにより好ましくは少なくとも35%高い、態様72~92のいずれかの(i)KIFC1/HSETタンパク質または(ii)KIFC1/HSETをコードするmRNA。
【0193】
94. KIFC1/HSETが導入されたヒト接合体が、KIFC1/HSETが導入されていない接合体と比較して、後期開始時に整列した染色体を示す確率が少なくとも5%高く、好ましくは、ここで、確率が、KIFC1/HSETが導入されていない接合体と比較して、少なくとも少なくとも10%、より好ましくは少なくとも20%、さらにより好ましくは少なくとも30%、さらにより好ましくは少なくとも40%、さらにより好ましくは50%、さらにより好ましくは60%、さらにより好ましくは70%、さらにより好ましくは80%、さらにより好ましくは90%、さらにより好ましくは100%、さらにより好ましくは110%、さらにより好ましくは120%、さらにより好ましくは130%、さらにより好ましくは140%、さらにより好ましくは150%、さらにより好ましくは160%、さらにより好ましくは170%、およびさらにより好ましくは180%高い、態様72~93のいずれかの(i)KIFC1/HSETタンパク質または(ii)KIFC1/HSETをコードするmRNA。
【0194】
95. KIFC1/HSETが導入されたヒト接合体が、KIFC1/HSETが導入されていない接合体と比較して、遅滞染色体を有しない確率が少なくとも5%高く、好ましくは、ここで、確率が、KIFC1/HSETが導入されていない接合体と比較して、少なくとも10%、より好ましくは少なくとも20%、さらにより好ましくは少なくとも30%、およびさらにより好ましくは少なくとも40%、さらにより好ましくは50%、さらにより好ましくは60%、およびさらにより好ましくは70%高い、態様72~94のいずれかの(i)KIFC1/HSETタンパク質または(ii)KIFC1/HSETをコードするmRNA。
【0195】
96. 減数分裂紡錘体の安定化が、紡錘体極性形態によって評価または検出され、好ましくは、ここで、安定化された減数分裂紡錘体の紡錘体極性形態が、安定化されていない減数分裂紡錘体よりも双極紡錘体である確率が高く、より好ましくは、ここで、安定化されていない紡錘体が、多極性または無秩序な紡錘体である、態様74~95のいずれかの(i)KIFC1/HSETタンパク質または(ii)KIFC1/HSETをコードするmRNA。
【0196】
97. (i)ヒトKIFC1/HSETタンパク質または(ii)ヒトKIFC1/HSETをコードするmRNAの適量が、ヒト接合体に導入される、態様72~96のいずれかの(i)KIFC1/HSETタンパク質または(ii)KIFC1/HSETをコードするmRNA。
【0197】
98. 適量が、蛍光顕微鏡法または偏光顕微鏡法を使用して、紡錘体形態異常を検出する滴定実験によって評価される、態様97の(i)KIFC1/HSETタンパク質または(ii)KIFC1/HSETをコードするmRNA。
【0198】
99. ヒトKIFC1/HSETタンパク質の適量が、接合体1個当たり1~250pg、好ましくは 2~150pg、より好ましくは3~100pg、より好ましくは4~80pg、より好ましくは5~50pg、さらにより好ましくは6~30pg、さらにより好ましくは7~20pg、さらにより好ましくは8~15pgの範囲、および最も好ましくは約10pgである、態様97または98の(i)KIFC1/HSETタンパク質または(ii)KIFC1/HSETをコードするmRNA。
【0199】
100. ヒト接合体の有糸分裂紡錘体を安定化させるのに適した方法において使用するための(i)KIFC1/HSETタンパク質または(ii)KIFC1/HSETをコードするmRNA。
【0200】
101. (i)KIFC1/HSETタンパク質または(ii)KIFC1/HSETをコードするmRNAがヒト接合体に導入され、好ましくは、ここで、KIFC1/HSETタンパク質が、組換え産生されたKIFC1/HSETタンパク質である、態様100の(i)KIFC1/HSETタンパク質または(ii)KIFC1/HSETをコードするmRNA。
【0201】
102. KIFC1/HSETタンパク質もしくは(ii)KIFC1/HSETをコードするmRNAが、態様7~19のいずれかにさらに定義されており、かつ/または、KIFC1/HSETタンパク質もしくは(ii)KIFC1/HSETをコードするmRNAの適量が、態様97~99のいずれかにさらに定義されている、態様100または101の(i)KIFC1/HSETタンパク質または(ii)KIFC1/HSETをコードするmRNA。
【0202】
103. (i)KIFC1/HSETタンパク質または(ii)KIFC1/HSETをコードするmRNAの導入が、態様82~84のいずれかにさらに定義されている、態様100~103のいずれかの(i)KIFC1/HSETタンパク質または(ii)KIFC1/HSETをコードするmRNA。
【0203】
104. 有糸分裂紡錘体の安定化が、態様85~87のいずれかにさらに定義されており、かつ/または、ヒト接合体が、態様75~79および88~95のいずれかにさらに定義されている、態様100~104のいずれかの(i)KIFC1/HSETタンパク質または(ii)KIFC1/HSETをコードするmRNA。
【0204】
105. (i)KIFC1/HSETタンパク質または(ii)KIFC1/HSET mRNAが、インビトロで受精させたヒト接合体に導入され、それにより天然に存在しない接合体を得る、
天然に存在しないヒト接合体。
【0205】
106. KIFC1/HSETタンパク質が、組換え産生されたKIFC1/HSETタンパク質である、態様105の接合体。
【0206】
107. (i)KIFC1/HSETタンパク質または(ii)KIFC1/HSETをコードするmRNAが、接合体の有糸分裂紡錘体を安定化させる、態様105または106の接合体。
【0207】
108. (i)KIFC1/HSETタンパク質もしくは(ii)KIFC1/HSETをコードするmRNAの導入が、態様82~84のいずれかにさらに定義されており、KIFC1/HSETタンパク質もしくは(ii)KIFC1/HSETをコードするmRNAが、態様7~19のいずれかにさらに定義されており、有糸分裂紡錘体の安定化が、態様85~87のいずれかにさらに定義されており、ヒト接合体が、態様75~79および88~95のいずれかにさらに定義されており、かつ/または、KIFC1/HSETタンパク質もしくは(ii)KIFC1/HSETをコードするmRNAの適量が、態様90~92のいずれかにさらに定義されている、態様105~107のいずれかの接合体。
【0208】
109. インビトロのヒト接合体への導入に適した(i)KIFC1/HSETタンパク質または(ii)KIFC1/HSETをコードするmRNAを含む注入用デバイス。
【0209】
110. (i)KIFC1/HSETタンパク質または(ii)KIFC1/HSETをコードするmRNAが、接合体の有糸分裂紡錘体を安定化させる、態様103の注入用デバイス。
【0210】
111. (i)KIFC1/HSETタンパク質もしくは(ii)KIFC1/HSETをコードするmRNAの導入が、態様82~84のいずれかにさらに定義されており、KIFC1/HSETタンパク質もしくは(ii)KIFC1/HSETをコードするmRNAが、態様7~19のいずれかにさらに定義されており、有糸分裂紡錘体の安定化が、態様84~87のいずれかにさらに定義されており、ヒト接合体が、態様75~79および88~95のいずれかにさらに定義されており、かつ/または、KIFC1/HSETタンパク質もしくは(ii)KIFC1/HSETをコードするmRNAの適量が、態様97~99のいずれかにさらに定義されている、態様103~105のいずれかの注入用デバイス。
【0211】
112. インビトロのヒト接合体の有糸分裂紡錘体を安定化させるのに適したKIFC1/HSETタンパク質またはKIFC1/HSET mRNAを含む注入用デバイス。
【0212】
113. KIFC1/HSETタンパク質またはKIFC1/HSET mRNAが、ヒト接合体に導入される、態様107の注入用デバイス。
【0213】
114. (i)KIFC1/HSETタンパク質もしくは(ii)KIFC1/HSETをコードするmRNAの導入が、態様82~84のいずれかにさらに定義されており、KIFC1/HSETタンパク質もしくは(ii)KIFC1/HSETをコードするmRNAが、態様7~19のいずれかにさらに定義されており、有糸分裂紡錘体の安定化が、態様84~87のいずれかにさらに定義されており、ヒト接合体が、態様75~79および88~95のいずれかにさらに定義されており、かつ/または、KIFC1/HSETタンパク質もしくは(ii)KIFC1/HSETをコードするmRNAの適量が、態様97~99のいずれかにさらに定義されている、態様107~109のいずれかの注入用デバイス。
【0214】
115. (i)KIFC1/HSETタンパク質と(ii)ヒト減数分裂紡錘体またはヒト有糸分裂紡錘体とを含む複合体であって、
KIFC1/HSETタンパク質が、インビトロ法によってヒト卵母細胞または接合体に導入可能であり、好ましくは、インビトロ法によってヒト卵母細胞または接合体に導入されており、より好ましくは、KIFC1/HSETタンパク質が、マイクロインジェクションおよび/またはエレクトロポレーションによって、好ましくはマイクロインジェクションによって導入されており、
蛍光顕微鏡法によって検出可能である、複合体。
【0215】
116. 紡錘体が、抗アルファ-チューブリン抗体によって検出可能であり、かつ/または、KIFC1/HSETが、抗HSET-C抗体によって検出可能であり、より特定すると、紡錘体が、ラット抗アルファ-チューブリン抗体(MCA78G;Bio-Rad)によって検出可能であり、かつ/または、KIFC1/HSETが、ウサギ抗HSET-C(20790-1-AP;Proteintech)によって検出可能である、態様115の複合体。
【0216】
117. 蛍光顕微鏡法または偏光顕微鏡法によって検出可能である、態様115または116の複合体。
【0217】
118. KIFC1/HSETタンパク質が、態様4~8、11、12、14、および15のいずれかにさらに定義されており、好ましくは、KIFC1/HSETタンパク質が、組換え産生されたKIFC1/HSETタンパク質である、態様115~117のいずれかの複合体。
【0218】
119. KIFC1/HSETタンパク質が、紡錘体を安定化させ、好ましくは、ここで、安定化された紡錘体が、双極紡錘体であり、より好ましくは、ここで、紡錘体が、蛍光顕微鏡法または偏光顕微鏡法によって評価または検出される、態様115~118のいずれかの複合体。
【0219】
120. 紡錘体の安定化が、紡錘体極性形態によって評価され、好ましくは、ここで、安定化された紡錘体の紡錘体極性形態が、安定化されていない紡錘体よりも双極紡錘体である確率が高く、より好ましくは、ここで、安定化されていない紡錘体が、多極性または無秩序な紡錘体である、態様115~119のいずれかの複合体。
【0220】
121. 紡錘体極性形態が、蛍光顕微鏡法または偏光顕微鏡法によって評価または検出されている、態様119の複合体。
【0221】
122. 安定化された紡錘体が、多極性または無秩序な紡錘体よりも双極紡錘体である確率が少なくとも5%、好ましくは少なくとも10%、より好ましくは少なくとも15%、より好ましくは少なくとも20%、より好ましくは少なくとも25%、およびさらにより好ましくは少なくとも35%高い、態様115~121の複合体。
【0222】
123. (i)KIFC1/HSETタンパク質または(ii)KIFC1/HSETをコードするmRNAをヒト単為生殖細胞に導入するインビトロ法。
【0223】
124. (i)KIFC1/HSETタンパク質または(ii)KIFC1/HSETをコードするmRNAが、態様7~19のいずれかにさらに定義されている、態様123の方法。
【0224】
125. (i)ヒトKIFC1/HSETタンパク質または(ii)ヒトKIFC1/HSETをコードするmRNAの適量が、ヒト単為生殖細胞に導入される、態様123または124の方法。
【0225】
126. 適量が、蛍光顕微鏡法または偏光顕微鏡法を使用して、紡錘体形態異常を検出する滴定実験によって評価される、態様125の方法。
【0226】
127. ヒトKIFC1/HSETタンパク質の適量が、卵母細胞1個当たり1~250pg、好ましくは2~150pg、より好ましくは3~100pg、より好ましくは4~80pg、より好ましくは5~50pg、さらにより好ましくは6~30pg、さらにより好ましくは7~20pg、さらにより好ましくは8~15pgの範囲、および最も好ましくは約10pgである、態様125または126の方法。
【0227】
128. 単為生殖細胞へのKIFC1/HSETの導入が、KIFC1/HSETが導入されていない単為生殖細胞と比較して、双極紡錘体の形成を増加させ、好ましくは、ここで、双極紡錘体が、蛍光顕微鏡法または偏光顕微鏡法によって評価または検出される、態様123~127のいずれかの方法。
【0228】
129. KIFC1/HSETが、ヒト単為生殖細胞の有糸分裂紡錘体を安定化させる、態様123~128のいずれかの方法。
【0229】
130. 有糸分裂紡錘体が安定化されたヒト単為生殖細胞が、安定化されていない有糸分裂紡錘体よりも双極紡錘体である確率が高く、好ましくは、ここで、安定化されていない紡錘体が、多極性または無秩序な紡錘体である、態様129のいずれかの方法。
【0230】
131. 有糸分裂紡錘体の安定化が、蛍光顕微鏡法または偏光顕微鏡法を使用して、紡錘体極性形態によって評価または検出される、態様129または130の方法。
【0231】
132. KIFC1/HSETが導入されたヒト単為生殖細胞が、KIFC1/HSETが導入されていないヒト単為生殖細胞と比較して、双極性有糸分裂紡錘体を有する確率が高い、態様129~131のいずれかの方法。
【0232】
133. KIFC1/HSETが導入されたヒト単為生殖細胞が、KIFC1/HSETが導入されていないヒト単為生殖細胞と比較して、双極性有糸分裂紡錘体を有する確率が少なくとも5%、好ましくは少なくとも10%、より好ましくは少なくとも15%、より好ましくは少なくとも20%、より好ましくは少なくとも25%、およびさらにより好ましくは少なくとも35%高い、態様129~132のいずれかの方法。
【0233】
134. KIFC1/HSETが導入されていないヒト単為生殖細胞が、KIFC1/HSETが導入されたヒト単為生殖細胞と比較して、双極性有糸分裂紡錘体を有する確率が低く、好ましくは、KIFC1/HSETが導入されていないヒト単為生殖細胞が、KIFC1/HSETが導入されたヒト単為生殖細胞と比較して、双極性有糸分裂紡錘体を有する確率が少なくとも5%、好ましくは少なくとも10%、より好ましくは少なくとも15%、より好ましくは少なくとも20%、より好ましくは少なくとも25%、およびさらにより好ましくは少なくとも35%低い、態様129~133のいずれかの方法。
【0234】
135. KIFC1/HSETが導入されたヒト単為生殖細胞が、KIFC1/HSETが導入されていないヒト単為生殖細胞と比較して、多極性または無秩序な有糸分裂紡錘体を有する確率が低く、好ましくは、KIFC1/HSETが導入されていないヒト単為生殖細胞が、KIFC1/HSETが導入されたヒト単為生殖細胞と比較して、多極性または無秩序な有糸分裂紡錘体を有する確率が少なくとも5%、好ましくは少なくとも10%、より好ましくは少なくとも15%、より好ましくは少なくとも20%、より好ましくは少なくとも25%、およびさらにより好ましくは少なくとも35%高い、態様129~134のいずれかの方法。
【0235】
136. KIFC1/HSETが導入されたヒト単為生殖細胞が、KIFC1/HSETが導入されていない単為生殖細胞と比較して、後期開始時に整列した染色体を示す確率が少なくとも5%高く、好ましくは、ここで、確率が、KIFC1/HSETが導入されていない単為生殖細胞と比較して、少なくとも10%、より好ましくは少なくとも20%、さらにより好ましくは少なくとも30%、およびさらにより好ましくは少なくとも40%高い、態様129~135のいずれかの方法。
【0236】
137. KIFC1/HSETが導入されたヒト単為生殖細胞が、KIFC1/HSETが導入されていない単為生殖細胞と比較して、遅滞染色体を有しない確率が少なくとも5%高く、好ましくは、ここで、確率が、KIFC1/HSETが導入されていない単為生殖細胞と比較して、少なくとも10%、より好ましくは少なくとも20%、さらにより好ましくは少なくとも30%、およびさらにより好ましくは少なくとも40%高い、態様129~136のいずれかの方法。
【0237】
138. ヒト単為生殖細胞であって、(i)KIFC1/HSETタンパク質または(ii)KIFC1/HSET mRNAが該単為生殖細胞に導入されている、ヒト単為生殖細胞。
【0238】
139. (i)KIFC1/HSETタンパク質または(ii)KIFC1/HSET mRNAが、インビトロのヒト単為生殖細胞に導入されており、好ましくは、ここで、KIFC1/HSETタンパク質が、組換え産生されたKIFC1/HSETタンパク質である、態様138の単為生殖細胞。
【0239】
140. ヒト単為生殖細胞が、マウス単為生殖細胞の多くとも2分の1、好ましくは多くとも4分の1、より好ましくは多くとも6分の1、さらにより好ましくは多くとも10分の1、およびさらにより好ましくは多くとも20分の1、さらにより好ましくは多くとも30分の1、さらにより好ましくは多くとも40分の1、さらにより好ましくは多くとも50分の1、およびさらにより好ましくは多くとも60分の1だけ、KIFC1/HSETを発現する、態様138または139の単為生殖細胞。
【0240】
141. ヒト単為生殖細胞が、HeLa細胞の多くとも2分の1、好ましくは多くとも4分の1、より好ましくは多くとも6分の1、さらにより好ましくは多くとも10分の1、およびさらにより好ましくは多くとも20分の1だけ、KIFC1/HSETを発現する、態様138~140のいずれかの単為生殖細胞。
【0241】
142. KIFC1/HSETの発現が、同じKIF1/HSET抗体を一次抗体として使用したウェスタンブロット上のバンド強度によって評価され、好ましくは、ここで、バンド強度が、ウサギ抗HSET抗体、より好ましくは、ウサギ抗HSET-N抗体ab172620(Abcam)を使用して評価される、態様140または141の単為生殖細胞。
【0242】
143. ウェスタンブロットが、同じ二次抗体、同じブロッキング溶液、同じインキュベーション時間、同じ溶解バッファー、および/または同じ反応バッファーを使用して実施され、好ましくは、ウェスタンブロットが、同じ条件下で実施される、態様140~142のいずれかの単為生殖細胞。
【0243】
144. KIFC1/HSETの発現が、質量分析法によって評価される、態様140~143のいずれかの単為生殖細胞。
【0244】
145. (i)KIFC1/HSETタンパク質または(ii)KIFC1/HSETをコードするmRNAが、単為生殖細胞の有糸分裂紡錘体を安定化させる、態様138~144のいずれかの単為生殖細胞。
【0245】
146. 有糸分裂中の無秩序かつ/または多極性の紡錘体を有する確率を低下させる方法が生殖補助医療である、態様72~99のいずれかの(i)KIFC1/HSETタンパク質または(ii)KIFC1/HSETをコードするmRNA。
【0246】
147. ヒト接合体の有糸分裂紡錘体を安定化させる方法が生殖補助医療である、態様100~104のいずれかの(i)KIFC1/HSETタンパク質または(ii)KIFC1/HSETをコードするmRNA。
【0247】
148. KIFC1/HSETタンパク質またはKIFC1/HSETをコードするmRNAが、インビトロで合成されている、態様1~48、66~71および123~137のいずれかの方法、態様51~59のいずれかの卵母細胞、態様60~65および109~114のいずれかのデバイス、態様72~104のいずれかの(i)KIFC1/HSETタンパク質または(ii)KIFC1/HSETをコードするmRNA、態様115~122のいずれかの複合体ならびに態様138~145のいずれかの単為生殖細胞。
【0248】
当然のことながら、本明細書に開示される通りのすべての態様は、単独でまたは他の態様との組み合わせで適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0249】
【
図1A】ヒト卵母細胞は、ダイニン-ダイナクチンにより紡錘体極を収束するが、紡錘体を安定化させる追加的機序を欠いている。(A)減数分裂の異なる時期で固定されたヒト卵母細胞の免疫蛍光画像。緑色、ダイナクチン(P150);マゼンタ、微小管(α-チューブリン);青色、染色体(ヘキスト)。(B)ヒトMI紡錘体の免疫蛍光画像。黄色、NUMA;マゼンタ、ダイナクチン(P150);シアン、LIS1。グラフは、黄色矢印の方向に沿って紡錘体極を横断するNUMA、ダイナクチンおよびLIS1の蛍光プロファイルである。(C)BSAまたはP150-CC1-His(ダイニン阻害剤)で処理したヒト卵母細胞からのMI紡錘体の免疫蛍光画像。緑色、NUMA;マゼンタ、微小管(α-チューブリン);青色、染色体(ヘキスト)。差し込み図は、破線の箱で記された領域の拡大図である。(D)対照およびダイニン阻害ヒトMI卵母細胞において脱収束している紡錘体極の手動スコアリング(フィッシャーの正確検定、***)。(E)NUMA枯渇またはダイニン阻害ヒトおよびaMTOC不含マウス卵母細胞からのMI紡錘体の免疫蛍光画像。灰色、微小管(α-チューブリン);疑似カラー、方向性。(F)NUMA枯渇またはダイニン阻害ヒトおよびaMTOC不含マウスMI卵母細胞における紡錘体中間帯構成の手動スコアリング(フィッシャーの正確検定、****)。(G)固定されたヒトおよびaMTOC不含マウスMI卵母細胞における紡錘体極性の手動スコアリング(フィッシャーの正確検定、****)。(H)参考文献(2)からの生ヒト卵母細胞および本研究からのaMTOC不含マウス卵母細胞における紡錘体極性の手動スコアリング(フィッシャーの正確検定、****)。分析した卵母細胞の数をイタリック体で記述している。スケールバー、5μm。
【
図2A】ヒト卵母細胞は、紡錘体安定化因子キネシン-14 KIFC1/HSETを欠いている。(A)NUMAおよび20個の候補タンパク質の1個を共枯渇させたaMTOC不含マウス卵母細胞からのMI紡錘体の免疫蛍光画像。灰色、微小管(α-チューブリン);疑似カラー、方向性。紡錘体を構築しなかった卵母細胞について、染色体は、黄色の破線によって輪郭が描かれている。(B)HeLa細胞、ヒト卵母細胞およびマウス卵母細胞溶解物のオンブロットNo-Stainタンパク質染色およびイムノブロット。ロードされたHeLa細胞溶解物の量または卵母細胞の数を各レーンの上に表示している。対応するロードされたタンパク質の量を各レーンの下に表示している。黒色の矢印は、各タンパク質に対応するバンドを指している。(C)対照、KIFC1/HSET枯渇およびmClover3-HSET過剰発現マウス卵母細胞のイムノブロット。ロードされた卵母細胞の数をイタリック体で記述している。黒色の矢印は、各タンパク質に対応するバンドを指している。(D)対照およびKIFC1/HSET枯渇aMTOC不含マウス卵母細胞からのMI紡錘体の免疫蛍光画像。緑色、NUMA;マゼンタ、微小管(α-チューブリン);青色、染色体(ヘキスト)。矢印は、明確に定義された紡錘体極を強調している。破線は、明確に定義されていない紡錘体極を強調している。(EおよびF)対照およびKIFC1/HSET枯渇aMTOC不含マウスMI卵母細胞における紡錘体極性の手動スコアリング(フィッシャーの正確検定、****)および自動定量化。分析した卵母細胞の数をイタリック体で記述している。スケールバー、5μm。
【
図3A】適切なレベルのKIFC1/HSETの架橋および滑り活性が、aMTOC不含マウス卵母細胞における適正な双極紡錘体構築に必要である。(A)野生型およびaMTOC不含マウス卵母細胞のタイムラプス動画からの静止画像。緑色、mClover3-HSET;マゼンタ、微小管(mScarlet-MAP4-MTBD);青色、染色体(H2B-miRFP)。時間は、NEBD後の時間:分として与えられる。(B)野生型およびaMTOC不含マウス卵母細胞からのMI紡錘体上のKIFC1/HSETの静止画像。グラフは、黄色矢印の方向に沿って紡錘体を横断するKIFC1/HSETの蛍光プロファイルである。(C)野生型およびaMTOC不含マウスMI卵母細胞における細胞質に対する紡錘体極でのKIFC1/HSET濃縮の定量化。(D)野生型およびaMTOC不含マウスMI卵母細胞における紡錘体極での光退色したKIFC1/HSETの回復。(E)野生型およびaMTOC不含マウスMI卵母細胞における紡錘体中間帯での光退色したKIFC1/HSETの回復。(F)野生型およびaMTOC不含マウス卵母細胞からのMI紡錘体の異なる領域でのKIFC1/HSETの半減期。(G)HSET-WTまたはHSET(N593K)で救済されたKIFC1/HSET枯渇aMTOC不含マウス卵母細胞からのMI紡錘体の免疫蛍光画像。灰色、GFP-HSET;緑色、NUMA;マゼンタ、微小管(α-チューブリン);青色、染色体(ヘキスト)。(H)HSET-WTおよびHSET(N593K)で救済されたaMTOC不含マウスMI卵母細胞における紡錘体極性の手動スコアリング(フィッシャーの正確検定、****)。(I)HSET-WTで救済されたaMTOC不含マウス卵母細胞からの双極性MI紡錘体におけるKIFC1/HSET対α-チューブリン強度比の定量化。エラーバー(斜線部)はSDを表す。分析した卵母細胞の数をイタリック体で記述している。スケールバー、5μm。
【
図4A】紡錘体不安定性は、ウシおよびブタ卵母細胞における減数分裂Iの一般的特徴ではない。(A)ウシおよびブタ卵母細胞における減数分裂の異なる時期のタイミングの定量化。(B)安定した紡錘体を構築しているウシおよびブタ卵母細胞のタイムラプス動画からの静止画像。緑色、微小管(EGFP-MAP4);マゼンタ、染色体(H2B-mCherry)。時間は、核膜崩壊(NEBD)後の時間:分として表示される。(C)不安定な紡錘体を構築しているウシおよびブタ卵母細胞のタイムラプス動画からの静止画像。緑色、微小管(EGFP-MAP4);マゼンタ、染色体(H2B-mCherry)。時間は、紡錘体不安定性の開始後の時間:分として表示される。破線は、安定した紡錘体極を強調している。矢印は、不安定な紡錘体極を強調している。(D)ウシおよびブタ卵母細胞における紡錘体安定性の手動スコアリング。分析した卵母細胞の数をイタリック体で記述している。スケールバー、5μm。
【
図5A】KIFC1/HSET mRNAは、ヒト卵母細胞においてほとんど検出できないが、他の哺乳動物種の卵母細胞ではそうではない。(A)マウス、ウシ、ブタおよびヒトからの卵母細胞および着床前胚におけるKIFC1/HSET mRNAの発現。(B)マウス、ウシ、ブタおよびヒトからの卵母細胞および着床前胚におけるNUMAおよびZP3 mRNAの発現。
【
図6A】ウシおよびブタ卵母細胞におけるKIFC1/HSETタンパク質のオンブロット総タンパク質正規化および発現の検証。(A)標準的なハウスキーピングタンパク質についてのHeLa細胞、ヒト卵母細胞およびマウス卵母細胞溶解物のイムノブロット。ロードされたHeLa細胞溶解物の量または卵母細胞の数を各レーンの上に表示している。黒色の矢印は、各タンパク質に対応するバンドを指している。(B)異なる量のHeLa細胞溶解物または異なる数のマウス卵母細胞における標準的なハウスキーピングタンパク質の強度の定量化。(C)
図2BにおけるオンブロットNo-Stainタンパク質染色についての検量線。(D)HeLa細胞、マウス卵母細胞、ウシ卵母細胞およびブタ卵母細胞溶解物のオンブロットNo-Stainタンパク質染色。「M」は、マウス卵母細胞を示し;「B」は、ウシ卵母細胞を示し;「P」は、ブタ卵母細胞を示している。ロードされたHeLa細胞溶解物の量または卵母細胞の数を各レーンの上に表示している。対応するロードされたタンパク質の量を各レーンの下に表示している。(E)(D)におけるオンブロットNo-Stainタンパク質染色についての検量線。(F)HeLa細胞、マウス卵母細胞、ウシ卵母細胞およびブタ卵母細胞溶解物のイムノブロット。「M」は、マウス卵母細胞を示し;「B」は、ウシ卵母細胞を示し;「P」は、ブタ卵母細胞を示している。ロードされたHeLa細胞溶解物の量または卵母細胞の数を各レーンの上に表示している。黒色の矢印は、各タンパク質に対応するバンドを指している。
【
図7A】aMTOC不含マウス卵母細胞およびウシ卵母細胞におけるKIFC1/HSETの特性評価。(A)対照およびKIFC1/HSET枯渇aMTOC不含マウスMI卵母細胞におけるNUMA群の総体積の定量化。(B)対照およびKIFC1/HSET枯渇ウシ卵母細胞からのMI紡錘体の免疫蛍光画像。緑色、微小管(α-チューブリン);マゼンタ、染色体(ヘキスト)。矢印は、紡錘体極を強調している。(C)対照およびKIFC1/HSET枯渇ウシ卵母細胞における紡錘体極性の手動スコアリング(フィッシャーの正確検定、****)。紡錘体は、黄色の破線によって輪郭が描かれている。(D)プレインキュベートなしまたはHSETペプチドとプレインキュベートしたHSET-C抗体で染色したウシ卵母細胞からのMI紡錘体の免疫蛍光画像。灰色、KIFC1/HSET;マゼンタ、染色体(ヘキスト)。(E)対照およびKIFC1/HSET枯渇ウシ卵母細胞のイムノブロット。ロードされた卵母細胞の数をイタリック体で記述している。黒色の矢印は、各タンパク質に対応するバンドを指している。(F)対照およびKIFC2+3枯渇aMTOC不含マウス卵母細胞からのMI紡錘体の免疫蛍光画像。緑色、NUMA;マゼンタ、微小管(α-チューブリン);青色、染色体(ヘキスト)。(G)対照およびKIFC2+3枯渇aMTOC不含マウスMI卵母細胞における紡錘体極性の手動スコアリング(フィッシャーの正確検定、N.S.)。(H)野生型およびaMTOC不含マウスMI卵母細胞における紡錘体極での光退色したMAP4-MTBDの回復。(I)野生型およびaMTOC不含マウスMI卵母細胞における紡錘体中間帯での光退色したMAP4-MTBDの回復。(J)野生型およびaMTOC不含マウス卵母細胞からのMI紡錘体の異なる領域でのα-チューブリンおよびMAP4-MTBDの半減期。(K)本研究で使用したKIFC1/HSETおよびKIFC1/HSET変異体における種々のドメインの図解。(L)HSET(Δモーター)、HSET(Δテール)またはHSET(モーター)を発現するaMTOC不含マウス卵母細胞からのMI紡錘体の免疫蛍光画像。緑色、GFP-HSET;マゼンタ、NUMA;灰色、微小管(α-チューブリン);青色、染色体(ヘキスト)。(M)aMTOCの非存在下での紡錘体極組織化および安定性についての機構モデル。詳細についてはテキストを参照されたい。分析した卵母細胞の数をイタリック体で記述している。スケールバー、5μm。
【
図8A】KIFC1/HSETのマイクロインジェクションは、ヒト卵母細胞における紡錘体極不安定性を救済する。(A)注入なしおよびmClover3-HSETを注入したヒト卵母細胞における紡錘体構築のタイムラプス動画からの静止画像。緑色、微小管(5'-SiR-チューブリン);マゼンタ、染色体(SPY555-DNA)。矢印は、紡錘体極を強調している。時間は、微小管核形成開始後の時間:分として表示される。スケールバー、5μm。(B)注入なしおよびmClover3-HSETを注入したヒト卵母細胞における早期紡錘体二極化の時間の定量化。(C)注入なしおよびmClover3-HSETを注入したヒト卵母細胞における極不安定性の持続期間の定量化。(D)注入なしおよびmClover3-HSETを注入したヒト卵母細胞における不整列な染色体の手動スコアリング。(E)注入なしおよびmClover3-HSETを注入したヒト卵母細胞における遅滞染色体の手動スコアリング。
【
図9-1】外因性KIFC1の導入は、ヒト接合体における双極紡錘体構築および正確な染色体分配を促進する。(A)ヒト卵母細胞および着床前胚におけるKIFC1発現レベル。(B)注入なしおよびKIFC1を注入したヒト3前核(3PN)接合体のタイムラプス動画からの静止画像。緑色、微小管(5-SiR-CTX);マゼンタ、染色体(SPY555-DNA)。時間は、核膜崩壊後の時間:分として与えられる。(C)注入なしおよびKIFC1を注入したヒト3PN接合体における中期中の紡錘体極の数の定量化。*P<0.05;P=0.0176。(D)注入なしおよびKIFC1を注入したヒト3PN接合体における後期中の紡錘体極の数の定量化。**P<0.01;P=0.048。(E)注入なしおよびKIFC1を注入したヒト3PN接合体における後期開始時の染色体誤分配の定量化。(F)注入なしおよびKIFC1を注入したヒト3PN接合体における後期中の染色体誤分配の定量化。スケールバーは、5μmである。
【実施例】
【0250】
以下の実施例は、本発明をさらに例証することを意図しているが、それに限定されるわけではない。実施例は、技術的特徴を説明し、本発明はまた、このセクションに提示される技術的特徴の組み合わせにも関する。
【0251】
実施例1
NUMAは、ヒト卵母細胞において紡錘体極を収束するのに必要である
ヒト卵母細胞において減数分裂Iの間に紡錘体極がどのように組織化されるかを調査するために、本発明者らは、さらなる研究に8個の候補タンパク質を選んだ。紡錘体極構築は、微小管架橋タンパク質による平行微小管の束化を必要とする(36、37)。加えて、微小管マイナス端が、マイナス端結合タンパク質によって、MTOCに固定され、かつ/または安定化され得る(36、37)。それゆえ、本発明者らは、4つのマイナス端結合タンパク質(γ-チューブリン、CAMSAP3、KANSL3およびMCRS1)と4つの微小管架橋タンパク質(ASPM、EG5、NUMAおよびTPX2)が多様な生物由来の有糸分裂細胞(36、37)および卵母細胞(2、18~20、26、28、32~35)において紡錘体極と会合することが示されていることから、ヒト卵母細胞におけるこれらのタンパク質の局在を分析した。
【0252】
一般的なマイナス端キャップとして(38)、γ-チューブリンがヒト卵母細胞の紡錘体極で濃縮し(データ示さず)、これは、極での微小管マイナス端の濃縮と一致した。対照的に、CAMSAP3、KANSL3、MCRS1およびASPMは、紡錘体にわずかに局在するだけで、極では濃縮しておらず(データ示さず)、このことは、これらが、ヒト卵母細胞における紡錘体極の組織化にとって重要である可能性が低いことを示唆している。注目すべきことに、EG5およびTPX2は、紡錘体極でびまん性の染色を示したが(データ示さず)、NUMA染色は、個々の微小管束のマイナス端が収束する極の最も端の領域に限定された(データ示さず)。紡錘体の縦方向のイメージングは、NUMAが紡錘体極で微小管マイナス端と特異的に会合し(データ示さず)、このことからNUMAがヒト卵母細胞において極収束を媒介する良好な候補であることを確認した。
【0253】
本発明者らは、減数分裂の異なる時期でのNUMA局在をさらに分析し、NUMA局在が、早期、紡錘体二極化の前、中期II停止までの極の指標となることを見いだし(データ示さず)、ヒト卵母細胞で極が形成されるとすぐにNUMAが動員されることを示唆した。興味深いことに、二方向後期I段階にある卵母細胞において2つのNUMA群が検出され、三方向後期I段階にある卵母細胞では3つのNUMA群が検出された(データ示さず)。これらの観察は、ヒト卵母細胞における紡錘体極の組織化にNUMAが関係しているというさらなる証拠を提供する。
【0254】
NUMAが紡錘体極組織化に必要であるかどうかを直接調べるために、本発明者らは、ヒト卵母細胞においてNUMAタンパク質を枯渇させた。完全に成長した卵母細胞では、ほとんどのタンパク質が既に合成かつ蓄積されており、RNAiが役立たない(39)。それゆえ、本発明者らは、Trim-Away(40)を使用して、NUMAタンパク質の急性分解を引き起こした。NUMAは、対照卵母細胞では核膜崩壊(NEBD)前に核で濃縮しており、この濃縮は、NUMAのTrim-Awayによって失われた(データ示さず)。NEBD後、NUMA枯渇卵母細胞はもはや、紡錘体極にNUMAを有しておらず、重要なことに、極は、完全に脱収束された状態になった(データ示さず)。したがって、NUMAは、ヒト卵母細胞における極収束に必要である。
【0255】
マウス卵母細胞における紡錘体構築のヒト化
本発明者らはまた、ヒト卵母細胞のようにaMTOCを欠くウシおよびブタ卵母細胞でもNUMA局在を調査した。NUMAは、これらの非齧歯類哺乳動物卵母細胞において、微小管マイナス端で同様に濃縮していた(データ示さず)。その一方で、マウス卵母細胞では、NUMAは紡錘体極でほとんど濃縮しておらず、その染色は、aMTOC染色と大部分が重なった(データ示さず)。NUMAがまたマウス卵母細胞において微小管マイナス端を識別するかを確認するために、本発明者らは、それぞれ低温処理(41)および急性NDC80/HEC1枯渇(42)によって、動原体微小管または極間微小管を濃縮した。動原体微小管と極間微小管は共に、NUMAおよびaMTOCで終結し(データ示さず)、このことは、マウス卵母細胞においてNUMAが微小管をaMTOCに固定することと一致した(28)。
【0256】
aMTOCは、マウス卵母細胞の紡錘体極でいくつかの調節キナーゼを濃縮する(26)。本発明者らは、aMTOCの機能に不可欠なキナーゼであり(43、44)、NUMAをリン酸化できる(45)AURAが、マウス卵母細胞の微小管マイナス端でNUMA濃縮を負に調節すると考えた。本発明者らの仮説と整合して、AURA阻害剤MLN8237での構成的処理は、紡錘体内のNUMA強度の手動スコアリングおよび標準偏差の有意な増加(データ示さず)によって明らかなように、マウス卵母細胞の紡錘体極で増加したNUMA濃縮を導いた(データ示さず)。同様の濃縮が、中期Iのマウス卵母細胞にMLN8237を急性添加したときに観察された(データ示さず)。重要なことに、MLN8237で処理したマウス卵母細胞のライブイメージングは、NUMAが、紡錘体体積の減少前に濃縮するようになることを示し(データ示さず)、このことは、この再分配が、紡錘体寸法の変化の間接的結果ではないことを示している。NUMA濃縮がAURA依存性リン酸化によって調節されるかを確認するために、本発明者らは、卵胞RNAiによって内因性NUMAを枯渇させ(39)、AURAリン酸化部位S1969に変異を有するNUMAを再発現させた。S1969A変異は、有糸分裂細胞においてAURA阻害を表現型模写することが示されている(46)。リン酸化模倣NUMA(S1969D)ではなく、リン酸化欠損NUMA(S1969A)が、マウス卵母細胞の紡錘体極で有意に濃縮していた(データ示さず)。総じて、本発明者らは、AURAリン酸化が、マウス卵母細胞の微小管マイナス端でNUMA濃縮を負に調節すると推察する。
【0257】
未成熟ヒト卵母細胞は、大量に入手することができず、そのことが、紡錘体極の組織化および減数分裂I中の紡錘体不安定性の原因の機構解明を困難にしている。マウス卵母細胞は、容易に入手可能であり、減数分裂を通じて同期的に発達し、卵胞RNAiなどの遺伝学的ツールにより操作できるため、ヒト様紡錘体構築プロセスを有する「ヒト化」マウス卵母細胞は、ヒト卵母細胞の有用なモデルであろう。AURA阻害剤で処理したマウス卵母細胞が、ヒト卵母細胞で観察された紡錘体極でのNUMA濃縮を表現型模写すると仮定して、本発明者らは、aMTOCおよび関連するAURAを同時除去することによってマウス卵母細胞における紡錘体構築をヒト化できると推論した。この目的のために、本発明者らは、Trim-Awayを使用して、aMTOCの不可欠な足場成分であるPCNTを枯渇させた(47、48)(データ示さず)。PCNT枯渇マウス卵母細胞は、aMTOCの除去の成功と一致して、CEP192、CDK5RAP2およびγ-チューブリンなどのaMTOC成分の細胞質分散を呈した(データ示さず)。重要なことに、紡錘体微小管関連AURAではなく、aMTOC関連AURAが、PCNT枯渇マウス卵母細胞(簡略化するために、本明細書において以降aMTOC不含マウス卵母細胞と称される)において選択的に除去された(データ示さず)。
【0258】
本発明者らは、補完的アプローチを使用して、aMTOC不含マウス卵母細胞における紡錘体構築のヒト化を確認した。第一に、ヒト卵母細胞における紡錘体構築は、染色体および小さなグアノシントリホスファターゼRanによって媒介される(2)。この経路では、Ran-GTPの染色体を中心とした勾配が、インポーチンへの阻害性結合から紡錘体構築因子を局所的に遊離させることによって染色体近傍で微小管核形成を促進する(49)。本発明者らは、aMTOC不含マウス卵母細胞において、微小管核形成が、ヒト卵母細胞と同様に(2)染色体周辺で起こることを見いだした(データ示さず)。さらに、RanT24Nによるドミナントネガティブ阻害は、aMTOC不含マウス卵母細胞において微小管核形成を抑止した(データ示さず)。したがって、aMTOC不含マウス卵母細胞における紡錘体構築は、ヒト卵母細胞のように、Ran経路に依存的である。第二に、いくつかのマイナス端結合タンパク質および紡錘体極関連タンパク質の局在パターンは、今回、aMTOC不含マウス卵母細胞およびヒト卵母細胞において類似したものであった(データ示さず)。特に、NUMAは、低温処理、急性NDC80/HEC1枯渇および免疫電子顕微鏡法によって確認されたように(データ示さず)、aMTOC不含マウス卵母細胞の微小管マイナス端で高度に濃縮していた(データ示さず)。NUMAは、紡錘体極で、ヒト卵母細胞およびaMTOC不含マウス卵母細胞において類似のレベルで濃縮しており(データ示さず)、ライブイメージングは、NUMAが、aMTOC不含マウス卵母細胞およびヒト卵母細胞において減数分裂全体を通じて類似の局在パターンを有することを実証した(データ示さず)。最後に、本発明者らは、Trim-Awayを使用して、NUMAが、aMTOC不含マウス卵母細胞において紡錘体極を収束するのに必要であるかどうかを調べた。野生型マウス卵母細胞では、NUMAの撹乱が、過収束した紡錘体極をもたらし、これがaMTOCの凝集と同時に起こる(27、28)。代わりに、aMTOC不含マウス卵母細胞におけるNUMAの枯渇は、紡錘体極形態の手動スコアリングおよび微小管パッキング指数(紡錘体内に微小管がどれくらい密にパッキングされているかの尺度である)の有意な減少によって明らかなように(データ示さず)、ヒト卵母細胞と同様に脱収束した紡錘体極を引き起こした(データ示さず)。総じて、これらの結果は、aMTOCおよび関連するAURAキナーゼの同時除去が、マウス卵母細胞における紡錘体構築プロセスをヒト化することを強く裏付けている。
【0259】
NUMAは、aMTOCの非存在下で、微小管依存的な安定した足場を形成する
NUMAは、紡錘体極微小管を体細胞では中心体に固定し(9、50)、野生型マウス卵母細胞ではaMTOCに固定する(28)が、これらの安定した足場は、ヒト卵母細胞またはaMTOC不含マウス卵母細胞には存在しない。興味深いことに、非リン酸化NUMAは、インビトロでオリゴマーへと自己集合することができ(51、52)、上記データは、aMTOC不含マウス卵母細胞が、その紡錘体極に非リン酸化NUMAを含有することを示唆している(データ示さず)。それゆえ、本発明者らは、aMTOCの非存在下で、非リン酸化NUMAがオリゴマー化して紡錘体極で安定した足場を形成するという仮説を立てた。
【0260】
この仮説は、NUMAが、野生型マウス卵母細胞と比較してaMTOC不含マウス卵母細胞でより低い回転率を有すると予測する。NUMAの動態を調べるために、本発明者らは、有糸分裂細胞における紡錘体極でのγ-チューブリン動態の先行研究(53)と同様にして、対照およびaMTOC不含マウス卵母細胞において極近位、極遠位または細胞質領域でNUMAを光活性化した。極近位領域の光活性化は、aMTOC不含マウス卵母細胞において寿命の長いNUMA集団を明らかにしたが、野生型マウス卵母細胞ではそうではなかった(データ示さず)。対照的に、極遠位領域の光活性化は、野生型とaMTOC不含の両マウス卵母細胞において全く異なる寿命の短いNUMA集団を明らかにした(データ示さず)。野生型とaMTOC不含の両マウス卵母細胞において動原体微小管に沿ってNUMAが検出されたため(データ示さず)、本発明者らは、この寿命の短い集団が、動原体微小管上で最近報告された一過性の動的なNUMA架橋(54、55)に相当するものと提案する。興味深いことに、aMTOC不含マウス卵母細胞の細胞質中の光活性化されたNUMAは、極遠位領域でのみ取り込まれ(データ示さず)、このことは、aMTOCの非存在下における紡錘体極でのNUMAの低い回転率をさらに裏付けた。
【0261】
有糸分裂細胞では、紡錘体極にあるNUMAは、微小管脱重合が起こると、不溶性の凝集体を形成する(56~59)。aMTOC不含マウス卵母細胞においてNUMAが類似の細胞質凝集体を形成するかどうかを調べるために、本発明者らは、ノコダゾールまたは長期低温処理で紡錘体微小管を急性的に脱重合させた。しかしながら、NUMAは、微小管脱重合が起こると細胞質中心として持続することができず(データ示さず)、このことは、紡錘体極でのNUMA間の会合が圧倒的に微小管依存的であることを示唆している。総じて、本発明者らは、aMTOCの非存在下で、NUMAが紡錘体極で微小管依存的な安定した足場を形成すると結論付ける。
【0262】
NUMAおよびダイニン-ダイナクチン-LIS1は、aMTOCの非存在下で、微小管マイナス端を密集させる
次に、本発明者らは、安定的に会合されたNUMAが紡錘体極をどのように組織化するのかを解明するためにaMTOC不含マウス卵母細胞を活用した。NUMAは、異なる系で異なる機序によって紡錘体極を組織化することが提案されている。例として、アフリカツメガエル卵抽出液における精核での紡錘体構築の間、ダイニンおよびその補因子ダイナクチンが、NUMAをカーゴとして極の方へ輸送する。結果として、NUMAは、紡錘体極に蓄積して微小管を架橋する(60)。加えて、NUMAは、ダイニン-ダイナクチンが遊離微小管を捕捉することを助け、それらを紡錘体極の方へ共輸送することができる(61)。その一方で、NUMAは、HeLa細胞抽出液での星状体構築およびアフリカツメガエル卵抽出液でのクロマチンビーズ上の紡錘体構築の間に、ダイニン-ダイナクチンとは無関係に微小管と会合することが示されている(17、62)。この概念は、NUMAが、ダイニン-ダイナクチンとは無関係に、新しく生成された微小管マイナス端に局在することを実証している、最近の有糸分裂細胞でのレーザーアブレーション研究によって裏付けられている(63)。代わりに、NUMAは、微小管マイナス端に対するカーゴアダプターとして働き、ダイニン-ダイナクチンを動員して、マイナス端を紡錘体極の方へ並べ替えると提案されている(63~65)。
【0263】
NUMAがaMTOCの非存在下でどのように極収束を駆動するのかを理解するために、本発明者らは、aMTOC不含マウス卵母細胞において、内因性NUMAを枯渇させ、4つの異なるNUMA変異体を再発現させた(データ示さず)。ダイニン-ダイナクチンと相互作用できないNUMA(ΔN)およびNUMA(SpM-4A)(66、67)は、微小管マイナス端に結合するが、極収束を救済できなかった(データ示さず)。微小管先端に結合できないNUMA(ΔMTBD1)(68、69)は、微小管マイナス端で濃縮せず、極収束を回復させることができなかった(データ示さず)。しかしながら、微小管を束ねることができないNUMA(ΔMTBD2)(46)は、微小管マイナス端に結合して、極収束を部分的に回復させた(データ示さず)。統合したこれらの結果は、aMTOCの非存在下での紡錘体極収束が、NUMAの微小管架橋活性に部分的にしか依存せず、微小管マイナス端およびダイニン-ダイナクチンへのその結合に圧倒的に依存することを示唆している。これらの観察と整合して、本発明者らは、NUMAが、aMTOC不含マウス卵母細胞の紡錘体極でダイニン-ダイナクチンに接近していることを見いだした(データ示さず)。
【0264】
NUMAによって媒介される紡錘体極収束におけるダイニン-ダイナクチンの役割を調べるために、本発明者らは、ドミナントネガティブ阻害を実施した。本発明者らは、ダイニンに結合して(70)ダイナクチンのARP1フィラメントとの相互作用を撹乱するタンパク質断片P150-CC1(データ示さず)、または内因性NUMAとオリゴマー化しないがダイニン-ダイナクチンとの相互作用を撹乱するNUMA-N(66)を異所的に発現させた。P150-CC1またはNUMA-Nを発現するaMTOC不含マウス卵母細胞は、類似の表現型を呈した:NUMAは、微小管マイナス端に結合したままであったが、紡錘体極は、脱収束状態になった(データ示さず)。加えて、本発明者らが、NUMAが微小管マイナス端と既に安定的に会合していた中期IのaMTOC不含マウス卵母細胞に組換えP150-CC1またはNUMA-Nを急性注入したときも(データ示さず)、紡錘体極は、脱収束状態になった(データ示さず)。したがって、NUMAは、ダイニン-ダイナクチンとは無関係に微小管マイナス端に結合するが、ダイニン-ダイナクチンなしに紡錘体極を収束または維持するには不十分である。
【0265】
最近の研究は、完全に活性化されたダイニン複合体の構築が、マウス卵母細胞にも存在する(26)追加の補因子LIS1(71)を必要とすることを示している。興味深いことに、ダイニンおよびダイナクチンと同様に、LIS1は、aMTOC不含マウス卵母細胞において紡錘体極に局在する(データ示さず)。LIS1が極収束にも必要であるかどうかを調べるために、本発明者らは、Trim-Awayを使用した(データ示さず)。LIS1の構成的および急性枯渇は共に、ダイニン-ダイナクチン阻害を表現型模写し、aMTOC不含マウス卵母細胞において紡錘体極の脱収束を導いた(データ示さず)。ダイニン、ダイナクチンおよびLIS1が実体として機能するかどうかを判定するために、本発明者らは、中期I中の極向き輸送をノコダゾールで急性撹乱することによって(72)、個々の成分を妨害し、動原体でのその蓄積を調べた。P150-CC1媒介阻害とNUMA枯渇ではなくLIS1枯渇はそれぞれ、aMTOC不含マウス卵母細胞においてダイニン、ダイナクチンおよびLIS1の局在を崩壊させた(データ示さず)。統合したこれらの結果は、安定的に会合されたNUMAが、ダイニン-ダイナクチン-LIS1複合体と一緒に、aMTOCの非存在下で微小管マイナス端を密集させることを示唆している。
【0266】
実施例2
ダイニン-ダイナクチンは、ヒト卵母細胞において紡錘体極を組織化する
aMTOC不含マウス卵母細胞における知見がヒト卵母細胞に置き換えられるかどうかを調べるために、本発明者らは、最初に、ヒト卵母細胞において減数分裂の異なる時期でのダイナクチンの局在を分析した。ダイナクチンは、早期紡錘体構築中に動員されなかったが、中期紡錘体が構築される前に優先的に動原体および紡錘体微小管に局在した(
図1A)。中期IおよびIIでは、ダイナクチンは、紡錘体極で最も顕著に検出された(
図1、AおよびB)。注目すべきことに、ダイナクチンは、aMTOC不含マウス卵母細胞におけるその局在(データ示さず)と整合して、紡錘体極でLIS1およびNUMAに接近していた(
図1B)。
【0267】
本発明者らは、次いで、P150-CC1を使用してヒト卵母細胞においてダイニン-ダイナクチンを阻害した。印象的なことに、ダイニン阻害ヒト卵母細胞において、NUMAは、微小管マイナス端に結合したままで、紡錘体極は、脱収束状態になり(
図1、CおよびD)、このことは、aMTOC不含マウス卵母細胞における観察を再現した(データ示さず)。したがって、本発明者らは、ダイニン-ダイナクチンおよびおそらくLIS1が、ヒト卵母細胞での極収束に必要であると結論付ける。
【0268】
ヒト卵母細胞は、紡錘体安定化因子キネシン-14 KIFC1/HSETを欠いている
本発明者らは、NUMA枯渇またはダイニン阻害を受けたヒト卵母細胞中の脱収束した紡錘体の約40%が、中間帯微小管を整列させることができなかったことに気付いた(
図1、EおよびF)。興味深いことに、本研究における固定されたヒト卵母細胞(
図1G)および先行研究における生ヒト卵母細胞(2)からの未処理紡錘体の同様の部分が多極性を呈した(
図1H)。それに対して、aMTOC不含マウス卵母細胞では中間帯微小管の不整列および紡錘体不安定性は全く観察されなかった(
図1、E~H)。
【0269】
紡錘体不安定性が、aMTOCを欠く非齧歯類哺乳動物卵母細胞の一般的特徴であるかどうかを判定するために、本発明者らは、ウシおよびブタ卵母細胞において紡錘体構築のライブイメージングを実施した。これらの卵母細胞は、ヒト卵母細胞と同様の紡錘体構築期を通じて発達した(
図4、AおよびB)。しかしながら、本発明者らは、ヒト卵母細胞の82%(2)(
図1G)と比較して、ウシ卵母細胞の3.1%およびブタ卵母細胞の4.4%でしか不安定な紡錘体極を観察できなかった(
図4、CおよびD)。本発明者らは、第一に、ヒト卵母細胞における紡錘体不安定性がaMTOCの非存在によるものではなく、第二に、他の哺乳動物卵母細胞では追加的機序が紡錘体を安定化させなければならないと推察する。それゆえ、本発明者らは、ヒト卵母細胞がマウス、ウシおよびブタ卵母細胞中に存在するタンパク質を欠いており、このタンパク質の非存在が中間帯微小管の不整列および紡錘体不安定性を導くという仮説を立てた。
【0270】
本発明者らは、aMTOC不含マウス卵母細胞の中間帯微小管の不整列および紡錘体不安定性を防ぐタンパク質を同定するために、RNAiスクリーンを設計した。具体的には、本発明者らは、卵胞RNAiを使用して、aMTOC不含マウス卵母細胞においてNUMAと20個の候補タンパク質の1個を共枯渇させた。候補タンパク質に、微小管架橋紡錘体構築因子(DLG5/HURPおよびTPX2)(49)、紡錘体二極化に関係するタンパク質(HAUS6、KIF15/HKLP2およびKIF11/EG5)(73、74)、微小管動態に関係するタンパク質(KIF2A、KIF18A、CENPE、CLASP1およびCLASP2)(75)、架橋線維および中央紡錘体に関係するタンパク質(CYK4、PRC1、KIF4A、KIF12、KIF14、KIF20A/MKLP2、KIF20B/MPP1およびKIF23/MKLP1)(76)ならびにダイニンとは関係のない紡錘体極関連タンパク質(ASPMおよびKIFC1/HSET)(37)を含めた。NUMAとDLG5/HURP、TPX2またはHAUS6を共枯渇させた卵母細胞は、紡錘体を構築せず、NUMAと1個を除いた他のすべてのタンパク質を共枯渇させた卵母細胞は、中間帯微小管が整列された紡錘体を構築した(
図2A)。興味深いことに、紡錘体微小管の方向性分析によって確認されたように(
図2A)、NUMAとキネシン-14 KIFC1/HSETを共枯渇させた卵母細胞だけが、中間帯微小管を整列させなかった。
【0271】
KIFC1/HSETがヒト卵母細胞で発現されるかどうかを確認するために、本発明者らは、マウスおよびヒト卵母細胞に対する過去のプロテオミクス研究のデータ(77、78)を調べた。本発明者らは、KIFC1/HSETがマウスデータセットにおいてのみ検出できることに気付いた。しかしながら、これらの2つの研究についてプロテオームカバレッジに違いがあることから、本発明者らは、哺乳動物卵母細胞および胚の過去のRNA-seq研究のデータ(79~82)を使用して、KIFC1/HSET発現をさらに分析した。マウス、ウシおよびブタ卵母細胞は、顕著な母性KIFC1/HSET mRNAプールを有し、これは受精が起こると枯渇し、胚性KIFC1/HSET mRNAが2~4細胞期以降に発現された(
図5A)。対照的に、KIFC1/HSET mRNAは、引用された参考文献によると(
図5A)、ヒト卵母細胞および接合体ではほとんど検出できなかったが、胚では2または4細胞期以降に容易に発現された。異なる哺乳動物種の卵母細胞間のそのような遺伝子発現の不一致は、NUMAまたは保存された透明帯タンパク質ZP3では観察されなかった(
図5B)。
【0272】
本発明者らは、その後、卵母細胞および陽性対照としての非同期HeLa細胞においてKIFC1/HSETタンパク質レベルを調べた(
図2、BおよびC)。異なる種からの卵母細胞溶解物の同等のローディングを確保するために、本発明者らは、すべての標準的なハウスキーピングタンパク質の感度および直線性を上回るオンブロット総タンパク質正規化を実施した(
図6、A~E)。本発明者らは、HeLa細胞、マウス卵母細胞、ウシ卵母細胞およびブタ卵母細胞溶解物においてKIFC1/HSETを容易に検出できたものの(
図2Bおよび
図6F)、同等量のヒト卵母細胞溶解物では、たとえ過剰曝露後でも、本発明者らはKIFC1/HSETを検出できなかった(
図2B)。したがって、本発明者らは、ヒト卵母細胞がKIFC1/HSETを欠いていると結論付ける。
【0273】
aMTOC不含マウス卵母細胞およびウシ卵母細胞におけるKIFC1/HSETの枯渇は、ヒト卵母細胞の紡錘体不安定性を完全に再現する
ヒト卵母細胞におけるKIFC1/HSETの欠如を模倣するために、本発明者らは、卵胞RNAiおよびTrim-Awayをそれぞれ使用して、aMTOC不含マウス卵母細胞およびウシ卵母細胞においてKIFC1/HSETを枯渇させた。印象的なことに、卵母細胞1個当たりのNUMA群数の有意な増加によって確認されたように(
図2F)、KIFC1/HSET枯渇aMTOC不含マウス卵母細胞の約35%が多極紡錘体を構築した(
図2、DおよびE)。さらに、KIFC1/HSET枯渇aMTOC不含マウス卵母細胞の約30%が、広がった極を有する円形の紡錘体を構築した(
図2、DおよびE)。これらの紡錘体は、生ヒト卵母細胞において過去に観察された「無極性」紡錘体(2)に酷似していた。NUMA群の総体積の定量化は、対照とKIFC1/HSET枯渇卵母細胞との間に有意差がないことを明らかにし(
図7A)、このことは、これらの極欠陥が、追加のNUMA群のデノボ構築よりむしろNUMA群の合体の失敗によって引き起こされることを示唆している。同様に、KIFC1/HSET枯渇ウシ卵母細胞の約60%および25%が、それぞれ、多極紡錘体または広がった極を有する紡錘体を構築した(
図7、B~E)。対照的に、キネシン-14ファミリーの他のメンバーであるKIFC2およびKIFC3の共枯渇は、aMTOC不含マウス卵母細胞において多極紡錘体または広がった極を有する円形の紡錘体をもたらすことはなかった(
図7、FおよびG)。したがって、KIFC1/HSETの枯渇は、ヒト卵母細胞の紡錘体不安定性を具体的に再現し、KIFC1/HSETの欠如が、ヒト卵母細胞における紡錘体不安定性の大きな要因であることを強く示唆する。
【0274】
KIFC1/HSETは、減数分裂I中の野生型マウス卵母細胞での安定した紡錘体極に必ずしも必要ではない(83、84)。aMTOCの非存在下でのKIFC1/HSETの機能を理解するために、本発明者らは、最初に、野生型およびaMTOC不含マウス卵母細胞においてmClover3-HSETの局在を比較した。先行研究(83)と一致して、KIFC1/HSETは、野生型マウス卵母細胞において紡錘体全体にわたって均一に局在していた(
図3、AおよびB)。対照的に、aMTOC不含マウス卵母細胞では、KIFC1/HSETは、二極化前の形成中の紡錘体で、その後は極で濃縮していた(
図3、A~C)。蛍光退色後回復解析は、野生型およびaMTOC不含マウス卵母細胞が、同様の可動性KIFC1/HSETの部分を有するが、紡錘体極でのKIFC1/HSETの回転率は、aMTOCの非存在下で2倍遅いことを明らかにした(
図3、D~F)。対照的に、aMTOCの喪失は、紡錘体中間帯におけるKIFC1/HSETの回転率にも、微小管レポーターMAP4-MTBDの回転率にも影響を及ぼさなかった(
図7、H~J)。全体的に見て、データは、紡錘体極でのKIFC1/HSETの動態がaMTOCの喪失によって特異的に変更されることと、極でのKIFC1/HSET蓄積がaMTOCの非存在下で紡錘体を安定化させ得ることとを示唆している。
【0275】
キネシン-14ファミリメンバーKIFC2およびKIFC3とは異なり、KIFC1/HSETは、そのテールに微小管結合ドメインを独自に保有する(85)。このドメインは、保存された微小管結合モータードメインと一緒に、KIFC1/HSETが架橋および/または滑動を介して微小管を組織化することを可能にする(86)。KIFC1/HSETにおける種々のドメインの必要条件を調査するために、本発明者らは、aMTOC不含マウス卵母細胞において一連の切断変異体を発現させた(
図7K)。注目すべきことに、aMTOC不含マウス卵母細胞におけるKIFC1/HSETの紡錘体局在は、そのモータードメインではなく、テールドメインに圧倒的に依存した(
図7L)。モーター活性が、aMTOC不含マウス卵母細胞におけるKIFC1/HSETの機能に不要かどうかを調べるために、本発明者らは、卵胞RNAiによって内因性KIFC1/HSETを枯渇させ、野生型HSETまたは微小管を架橋するが滑らせることができないHSET(N593K)(87)を用いて発現を回復させた。野生型HSETを発現するaMTOC不含マウス卵母細胞の大半が双極紡錘体を構築したのに対し、HSET(N593K)で救済された卵母細胞のほぼすべてが無秩序な紡錘体を構築した(
図3、GおよびH)。これらの無秩序な紡錘体は、いくつかの弱く会合した微小管束から構成されており(
図3G)、このことは、架橋された微小管を双極紡錘体に整列させるのに、KIFC1/HSETの滑り活性が必要であることを示している。加えて、本発明者らは、野生型HSETで救済された卵母細胞の約25%が、双極紡錘体を構築したが、NUMAを欠いた収束が不十分な極を有していたことに気付いた(
図3G);HSET対α-チューブリン強度比の定量化は、ほぼ2倍のHSETがこれらの紡錘体上に集積したことを明らかにした(
図3I)。これらのデータは、KIFC1/HSETの過剰発現が、NUMA媒介極収束を妨害し得ることを示唆している。総じて、本発明者らは、適切なレベルのKIFC1/HSETの架橋および滑り活性が、aMTOCの非存在下での適正な双極紡錘体構築に必要であると推察する。
【0276】
KIFC1/HSETのマイクロインジェクションは、ヒト卵母細胞における紡錘体極不安定性を救済する
KIFC1/HSETの欠如がヒト卵母細胞における紡錘体不安定性の大きな要因であることを確認するために、本発明者らは、
図8においてヒト卵母細胞にKIFC1/HSETを導入した。生細胞イメージングを使用して微小管および染色体の動態を可視化するために、それぞれ5’-SiR-チューブリンおよびSPY555-DNAでヒト卵母細胞を染色した。KIFC1/HSETの導入が、微小管核形成開始後の早期紡錘体二極化の時間を有意に変更させることはなかった(注入なしの卵母細胞で2.4時間、注入した卵母細胞で2.65時間;p=0.7197)(
図8B)一方で、KIFC1/HSETの導入は、紡錘体極不安定性の持続期間を有意に低下させた(注入なしの卵母細胞で10.3時間、注入した卵母細胞で3.4時間;p<0.0001)(
図8C)。本発明者らはまた、注入なしおよびKIFC1/HSETを注入したヒト卵母細胞において、後期開始時の不整列な染色体(
図8D)および遅滞染色体(
図8E)の頻度を定量した。KIFC1/HSETの導入は、後期開始時に整列した染色体を示すヒト卵母細胞の割合を44.4%から75%に、遅滞染色体のないヒト卵母細胞の割合を33.3%から62.5%に増加させた。総じて、本発明者らは、KIFC1/HSETの導入が、減数分裂紡錘体を安定化させ、ヒト卵母細胞における異数性のリスクを低減させると推察する。
【0277】
外因性KIFC1を導入することは、ヒト接合体において双極紡錘体構築および正確な染色体分配を促進する
本発明者らは、ヒト卵母細胞が天然にKIFC1を欠損していることと、ヒト卵母細胞へのKIFC1の導入が紡錘体を安定化させ紡錘体多極性を低減させることとを、上で示した。また、ヒト受精卵(接合体)中の紡錘体も、しばしば多極性であることが報告されている(6、7、122)。公開されているRNAシーケンシングデータセットを解析することによって、本発明者らは、KIFC1が、2細胞期以降のヒト胚においてのみより高く発現されることを見いだし(
図9A)、このことは、ヒト接合体における紡錘体構築もKIFC1欠損によって影響を受け得ることを示唆している。したがって、本発明者らは、外因性KIFC1の導入が、ヒト接合体における紡錘体構築および染色体分配の忠実度を増加させるかどうかを、ヒト3前核(3PN)接合体を使用することによって調べた。(6、7、122)の接合体と同様に、これらの接合体は、頻繁に多極紡錘体を構築した。ヒト3PN接合体へのmClover3-KIFC1タンパク質の導入は、多極紡錘体構築を有意に低減させ、双極紡錘体構築を促進した(
図9、B~D)。さらに、mClover3-KIFC1タンパク質の導入は、後期開始時に整列した染色体を示す接合体頻度を20%から57%に(
図9E)、後期中に遅滞染色体のない接合体頻度を40%から71%に増加させた(
図9F)。したがって、外因性KIFC1を導入することは、双極紡錘体構築の効率を増加させ、ヒト接合体における異数性のリスクを低減させた。
【0278】
考察
提示されたデータは、ヒト卵母細胞における紡錘体不安定性の長く探求されてきた原因を明らかにする:ヒト卵母細胞は、他の種の卵母細胞中に存在する重要な紡錘体安定化因子であるキネシン-14 KIFC1/HSETを欠いている。本研究および先行研究で示されたように(23、24、83、88~90)、ほとんどの哺乳動物および非哺乳動物卵母細胞は、KIFC1/HSETを発現して、適正な紡錘体構築を促す。本発明者らは、aMTOCの非存在下で、KIFC1/HSETが、哺乳動物卵母細胞において、2つの紡錘体極で密集した微小管マイナス端の合体を確実にすることを報告する(
図7M)。紡錘体安定化は、極での平行微小管に沿った静的な架橋の形成および中間帯における逆平行微小管の整列を介して達成される可能性が高い。ヒト卵母細胞は、KIFC1/HSETを発現しないため、本発明者らは、これらの活性の非存在がその紡錘体を不安定にしていると提案する。
【0279】
データはまた、異なる哺乳動物卵母細胞における紡錘体極組織化のさらに際だった違いを明らかにする。aMTOCは、マウス卵母細胞における紡錘体極の組織化を支配するが(25、27~30)、NUMA挙動の適応が、非齧歯類哺乳動物卵母細胞におけるaMTOCの非存在を補完する。aMTOCの非存在下で、NUMAは、微小管マイナス端で強く濃縮し、それに安定的に会合されることになる。そのマルチモジュラー性のおかげで、NUMAは、マイナス端で微小管を架橋することができ、重要なことに、マイナス端方向のダイニン複合体をエンゲージすることができる。これらの特徴のすべてが、安定的に会合されたNUMAによる紡錘体極での微小管マイナス端の密集を可能にし(
図7M)、aMTOCの微小管固定機能に取って換わる。微小管を固定することに加えて、aMTOCは、微小管核形成を促進する(25、27、30)。しかしながら、非齧歯類哺乳動物卵母細胞での微小管核形成のためのRan経路の重要な必要条件(2、31)と整合して、NUMAは、微小管の核形成も、微小管造核剤との相互作用もしない(データ示さず)。
【0280】
アフリカツメガエル卵抽出液、ショウジョウバエS2細胞および非哺乳動物卵母細胞では、ダイニンおよびKIFC1/HSETは、極収束において同様の役割を有するように見える(23、24、89~94)。興味深いことに、NUMA-ダイニンおよびKIFC1/HSETの撹乱は、aMTOCを欠く哺乳動物卵母細胞において全く異なる表現型をもたらし、このことは、これらが、紡錘体極で非重複的な役割を有することを示唆している。ダイニンとKIFC1/HSETは共に、微小管架橋および滑り活性を有するマイナス端方向モーターであるものの、その異なる役割は、減数分裂紡錘体上でのその異なる分布によって説明され得る。NUMA-ダイニンは、微小管マイナス端に拘束され、よって、より局所的に作用するが、KIFC1/HSETは、紡錘体の極領域全体に局在し、よって、より大域的に作用する。
【0281】
2つの中心体を有する正常な有糸分裂細胞では、KIFC1/HSETは、双極紡錘体構築にほとんど必要ない(87、95~97)。対照的に、過剰な中心体を有する有糸分裂細胞は、余分な中心体を2つの紡錘体極に密集させて紡錘体多極性を抑止するために、KIFC1/HSETを必要とする(95、96、98、99)。よって、KIFC1/HSETは、過剰な中心体が頻繁に観察されるがんを処置するための選択的標的として提案されている(100)。本研究では、本発明者らは、KIFC1/HSETが、aMTOCを欠く哺乳動物卵母細胞でも紡錘体多極性を抑止することを実証する。このことは、これらの卵母細胞における紡錘体極組織化が、中心体(101)およびaMTOC(29)の数を調節する機序などの紡錘体双極性を強制する追加的機序の非存在のために、本質的にエラーが起こりやすい可能性があることを示唆している。したがって、KIFC1/HSETは、がん細胞および非齧歯類哺乳動物卵母細胞で形成される余分な紡錘体極を密集させるために追加で必要とされる。
【0282】
受精が起こると、非齧歯類哺乳動物の卵は、精子から中心体を再獲得する(15)。非齧歯類哺乳動物接合体は、中心体の紡錘体を構築するものの、中心体が常に紡錘体極と強固に会合するとは限らないこと(6、102~108)または2個超の中心体が存在すること(109~113)を考えれば、KIFC1/HSETが依然として双極紡錘体構築に必要であり得る。ヒト接合体は、多極紡錘体の出現率が高く(5~7)、KIFC1/HSET mRNAのレベルが低い。興味深いことに、紡錘体は、ヒトの2細胞期胚ではほとんど双極性である(7)。この多極紡錘体の急な縮小は、2細胞期以降のKIFC1/HSET mRNAの上昇と同時に起こる。注目すべきことに、ウシ卵母細胞は、KIFC1/HSETを発現し、多極紡錘体は、ウシ接合体において稀である(107、108)。したがって、母性KIFC1/HSET発現の差も、ヒト接合体が他の哺乳動物接合体よりも多極紡錘体を構築しやすい理由を説明し得る。
【0283】
さらに、本発明者らは、外因性KIFC1/HSETを導入することが、双極紡錘体構築の効率を増加させ、ヒト接合体における異数性のリスクを低減させることを示した。
【0284】
本明細書に示されるデータに基づき、本発明者らは、KIFC1/HSETを、ヒト卵母細胞および/または接合体における紡錘体不安定性に対抗するための治療薬候補として提案する。KIFC1/HSET枯渇卵胞から成長させたaMTOC不含マウス卵母細胞でのKIFC1/HSETの再発現は、紡錘体不安定性を抑制し、このことは、KIFC1/HSETが、卵胞形成後にその機能を発揮することを暗示している。したがって、完全に成長したヒト卵母細胞および/または接合体中の紡錘体は、KIFC1/HSETを導入することによって安定化されることが提案される。
【0285】
材料および方法
マウス卵母細胞および卵胞の調製および培養
マウスはすべて、マックスプランク生物物理化学研究所の動物施設(Animal Facility of the Max Planck Institute for Biophysical Chemistry)にある特定病原体除去環境で、欧州実験動物学会連合(The Federation of European Laboratory Animal Science Associations)の指針および推奨に従って管理した。
【0286】
卵母細胞は、8~12週齢のFVB/N雌マウスの卵巣から単離した。中心核を有する直径約75μmの完全に成長した卵母細胞を、250μM ジブチリル環状AMP(dbcAMP)(Sigma-Aldrich)を補充した自家製のフェノールレッド不含M2中のパラフィン油(ACROS Organics)下、37℃で前期停止に維持した。減数分裂を再開させるために、卵母細胞を37℃のdbcAMP不含M2中に放出した。
【0287】
卵胞は、5%ウシ胎児血清(FBS)(Gibco)および0.1×ペニシリンG/ストレプトマイシン(Sigma-Aldrich)を補充したGlutaMAX含有HEPES緩衝MEM(Gibco)中に10~12日齢の(C57BL/6J×CBA)F1雌マウスから機械的に単離した。中心卵母細胞を有する直径約100μmの凝集卵胞を、12mmのTranswell-COLコラーゲンコート0.4μm孔PTFEメンブレンインサート(Corning)上、5% FBS、0.03μg/ml ヒツジ卵胞刺激ホルモン(National Hormone and Peptide Program)、1×インスリン/トランスフェリン/亜セレン酸ナトリウム(Sigma-Aldrich)および0.1×ペニシリンG/ストレプトマイシンを補充したGlutaMAXおよびヌクレオシド含有MEMアルファ(Gibco)中、37℃/5% CO2で培養した。インサートを取り囲む培地の半分を3日毎に交換した。培養の10~12日後、インビトロで成長させた卵母細胞を剥離し、4mg/ml ウシ血清アルブミン(BSA)(Sigma-Aldrich)の代わりに10% FBSを補充した改変M2中で成熟させた。
【0288】
ウシおよびブタ卵母細胞の調製および培養
卵巣はすべて、地元畜殺場から入手した。ウシおよびブタの卵巣は、回収後1~3時間以内にサーモフラスク(thermo-flask)に入れて実験室に輸送し、温かい0.9% NaClで十分に洗浄した。1mlシリンジに固定した17ゲージ針を用いた胞状卵胞の吸引によって、卵丘-卵母細胞複合体(COC)を収集した。ウシ卵巣の吸引液20ml毎に、5000IU/ml ヘパリン(Merck Millipore)140μlを追加で加えた。ウシおよびブタCOCを沈殿させ、次いで、それぞれ39℃のHEPES緩衝Medium 199(Sigma-Aldrich)およびPOE-CM(Cosmo Bio)で十分に洗浄した。均質な細胞質を有する完全に成長した卵母細胞といくつかの凝集卵丘細胞の層だけを実験に選んだ。減数分裂の進行をより同期させるために、卵母細胞を、dbcAMPの代わりに10μM RO-3306(Sigma-Aldrich)を補充した培地中で前期停止に維持した。減数分裂を再開させるために、ウシおよびブタ卵母細胞を、それぞれ39℃/5% CO2でRO-3306不含BO-IVM(IVF Bioscience)およびPOM(Cosmo Bio)中に放出した。
【0289】
ヒト卵母細胞の調製および培養
本研究での未受精のヒト卵母細胞の使用は、英国国立研究倫理局(UK's National Research Ethics Service)によりREC参照番号11/EE/0346(IRAS Project ID 84952)で、ニーダーザクセン州医師会(Arztekammer Niedersachsen)(ニーダーザクセン州の倫理委員会)により参照番号15/2016で承認された。卵母細胞は、ボーンホールクリニック(Bourn Hall Clinic)またはゲッティンゲン不妊治療センター(Kinderwunschzentrum Gottingen)またはベルリン不妊治療センター(Fertility Center Berlin)で生殖補助医療の一部として細胞質内精子注入(ICSI)のための卵巣刺激を受けた患者から採取した。ICSIの時点で未成熟であり、したがって医療処置に適していない卵母細胞だけを、本研究で使用した。すべての患者が、余分の卵母細胞を本研究で使用することに同意した。卵母細胞を過去に記載されているように培養した(1)。簡潔に述べると、卵巣から回収後3~5時間以内に、卵母細胞を、37℃の10% FBSを補充したG-MOPS(Vitrolife)中のパラフィン油下に移した。インキュベーター内部に設置されたPrimo Vision EVO+顕微鏡(Vitrolife)を使用して、核膜崩壊(NEBD)のタイミングをモニタリングした。形態学的に正常で卵巣から回収後24時間以内にNEBDを起こした卵母細胞だけを本研究で使用した。
【0290】
発現構築物、メッセンジャーRNA(mRNA)合成、組換えタンパク質発現および精製
mRNA合成のための構築物を作製するために、本発明者らは、過去に公開されているコード配列をmClover3(2)、mPA-GFP(3)およびmScarlet(4)と融合させ、それらをpGEMHE(5)中にサブクローニングして、mClover3-HSET(OriGene)、mScarlet-MAP4-MTBD(6)、mClover3-NUMAおよびmPA-GFP-NUMA(M. Mancini、未公開)を得た。pGEMHE-mClover3-HSET(Δモーター)、pGEMHE-mClover3-HSET(Δテール)、pGEMHE-mClover3-HSET(モーター)、pGEMHE-mClover3-HSET(N593K)、pGEMHE-mClover3-NUMA(S1955D)、pGEMHE-mClover3-NUMA(S1955A)、pGEMHE-mClover3-NUMA(ΔN)、pGEMHE-mClover3-NUMA(SpM-4A)、pGEMHE-mClover3-NUMA(ΔMTBD1)、pGEMHE-mClover3-NUMA(ΔMTBD2)、pGEMHE-mClover3-NUMA-N、pGEMHE-EGFP-P150(ΔMTBD)、pGEMHE-EGFP-P150(ΔABD)およびpGEMHE-EGFP-P150-CC1は、pGEMHE-mClover3-HSET、pGEMHE-mClover3-NUMAおよびpGEMHE-EGFP-P150(6)から、Q5 Site-Directed Mutagenesis Kit(NEB)を使用して構築した。mClover3-HSETは、pGEMHE-mClover3-HSETからpQE-TriSystem-His-Strep2(Qiagen)中にサブクローニングした。MBPは、pET-21a(+)/MBP-His(M. J. Fox Foundation、未公開)からpET28a(+)中にサブクローニングした。NUMA-Nは、pGEMHE-mClover3-NUMA-NからpET28a(+)中にサブクローニングした。HLTV-hTRIM21(7)、pET28a(+)-P150-CC1-His(8)、pGEMHE-AURA-meGFP(6)、pGEMHE-mScarlet-CEP192(6)、pGEMHE-H2B-mCherry(9)、pGEMHE-H2B-miRFP(6)、pGEMHE-meGFP-MAP4(9)、pGEMHE-mClover3-MAP4-MTBD(6)、pGEMHE-3×CyOFP-MAP4-MTBD(6)、pGEMHE-bTRIM21(6)およびpGEMHE-mTRIM21(6)も使用した。mRNAはすべて、過去に記載されているように合成および定量した(7)。
【0291】
組換えHis-NUMA-N、P150-CC1-HisおよびhTRIM21を、過去に記載されているように(7)、NiCo21(DE3)(NEB)またはOverExpress C41(DE3)(Sigma-Aldrich)中に発現させ、そこから精製した。簡潔に述べると、これらを、最初に、HisTrap FF(GE Healthcare)を使用したAKTA pure(GE Healthcare)で親和性精製し、続いて、HiLoad 26/600 Superdex 200 pg(GE Healthcare)を使用したサイズ排除クロマトグラフィーを行った。組換えHis-Strep2-mClover3-HSETを、過去に記載されているように(10)、293細胞(ECACC)中に発現させ、そこから精製した。
【0292】
低分子干渉RNA(siRNA)
すべてのsiRNAは、Qiagenから購入した。本研究で使用したsiRNAの配列を表S1に列記した。AllStars Negative Control(Qiagen)を対照として使用した。
【0293】
RNAのマイクロインジェクション
未成熟マウス卵母細胞に、3.5plのmRNAを過去に記載されているようにマイクロインジェクションした(9)。AURA-meGFP mRNAを69.7ng/μlのニードル濃度で、mScarlet-CEP192 mRNAを165.8ng/μlで、H2B-miRFP mRNAを28.4ng/μlで、mClover3-HSET mRNAを111.1ng/μlで、mClover3-HSET(Δモーター)mRNAを224ng/μlで、mClover3-HSET(Δテール)mRNAを334ng/μlで、mClover3-HSET(モーター)mRNAを278.8ng/μlで、mClover3-MAP4-MTBD mRNAを83.5ng/μlで、3×CyOFP-MAP4-MTBD mRNAを166.4ng/μlで、mScarlet-MAP4-MTBD mRNAを83.5ng/μlで、MBP mRNAを500ng/μlで、mClover3-NUMA mRNAを165.9ng/μlで、mClover3-NUMA(ΔN)mRNAを470.4ng/μlで、mPA-GFP-NUMA mRNAを400ng/μlで、mClover3-NUMA-N mRNAを500ng/μlで、EGFP-P150(ΔMTBD)mRNAを720ng/μlで、EGFP-P150(ΔABD)mRNAを583.8ng/μlで、EGFP-P150-CC1 mRNAを448.3ng/μlで、P150-CC1 mRNAを500ng/μlで、およびmTRIM21 mRNAを421ng/μlでマイクロインジェクションした。放出前に3~4時間、卵母細胞にmRNAを発現させた。
【0294】
マウスの卵胞に、3.5plのsiRNAを2μMのニードル濃度で過去に記載されているようにマイクロインジェクションした(11)。レスキュー実験のために、インビトロで成長させた卵母細胞に、3.5plのmRNAをマイクロインジェクションした。mClover3-HSET mRNAを275ng/μlのニードル濃度で、mClover3-HSET(N593K)mRNAを275ng/μlで、mClover3-NUMA(S1955D)mRNAを400ng/μlで、mClover3-NUMA(S1955A)mRNAを400ng/μlで、mClover3-NUMA(SpM-4A)mRNAを400ng/μlで、mClover3-NUMA(ΔMTBD1)mRNAを400ng/μlで、およびmClover3-NUMA(ΔMTBD2)mRNAを400ng/μlでマイクロインジェクションした。放出前に3~4時間、卵母細胞にmRNAを発現させた。
【0295】
2plのmRNAをマイクロインジェクションする前に、未成熟ウシおよびブタ卵母細胞を取り囲む卵丘細胞を135μm EZ-Tip(CooperSurgical)で完全に剥離した。ウシ卵母細胞に、meGFP-MAP4およびH2B-mCherry mRNAを、それぞれ54ng/μlおよび5ng/μlのニードル濃度でマイクロインジェクションした。ブタ卵母細胞に、meGFP-MAP4およびH2B-mCherry mRNAを、それぞれ30ng/μlおよび3ng/μlのニードル濃度でマイクロインジェクションした。放出前に3時間、卵母細胞にmRNAを発現させた。
【0296】
タンパク質のマイクロインジェクション
未成熟マウス卵母細胞に、12plの組換えHis-RanT24N(Cytoskeleton)を2mg/mlのニードル濃度でマイクロインジェクションした。対照として相当量のBSAをマイクロインジェクションした。
【0297】
マウス減数分裂I(MI)卵母細胞に、7plの組換えP150-CC1-HisまたはHis-NUMA-Nを、それぞれ50mg/mlおよび15mg/mlのニードル濃度でマイクロインジェクションした。対照として相当量のBSAをマイクロインジェクションした。
【0298】
ヒト卵母細胞に、NEBDの直後に10~15plの組換えHis-P150-CC1を47.85mg/mlのニードル濃度で0.03% NP-40と共にマイクロインジェクションした。対照として相当量のBSAをマイクロインジェクションした。
【0299】
未成熟ヒト卵母細胞に、11plの組換えmClover3-HSETを0.87mg/mlのニードル濃度で0.05% NP-40と共にマイクロインジェクションした。
【0300】
マウス、ウシおよびヒト卵母細胞でのTrim-Away
親和性精製した抗体だけを、本研究においてTrim-Away媒介タンパク質枯渇に使用した(12)。マウスモノクローナル抗HEC1(sc-515550;Santa Cruz Biotechnology)、ウサギ抗HSET-C(20790-1-AP;Proteintech)、マウスモノクローナル抗LIS1(H00005048-M03;Abnova)、ウサギポリクローナル抗NUMA(ab97585;Abcam)およびマウスモノクローナル抗PCNT(611814;BD Biosciences)を過去に記載されているように精製した(7)。使用した対照IgGは、正常マウスIgG(12-371;Millipore)および正常ウサギIgG(12-370;Millipore)であった。
【0301】
未成熟マウス卵母細胞での構成的Trim-Awayのために、3.5plのmRNAおよび3.5plの抗体を過去に記載されているように同時注入した(7)。すべての抗体を1~2mg/mlのニードル濃度で0.1% NP-40と共にマイクロインジェクションした。卵母細胞を放出する前に3~4時間、標的タンパク質を枯渇させた。マウスMI卵母細胞での急性Trim-Awayのために、最初に、未成熟卵母細胞に3.5plのmRNAをマイクロインジェクションし、次いで、3時間後に放出させた。放出の約6時間後、標的タンパク質を急性的に枯渇させるために、卵母細胞に3.5plの抗体をさらにマイクロインジェクションした。
【0302】
未成熟ウシ卵母細胞での構成的Trim-Awayのために、最初に、部分的に剥離した卵母細胞に、3.5plのbTRIM21 mRNAを1400ng/μlのニードル濃度でマイクロインジェクションし、mRNAを12時間発現させた。放出前に、卵母細胞を完全に剥離し、7plの抗体を2.5mg/mlのニードル濃度で0.05% NP-40と共にさらにマイクロインジェクションした。
【0303】
未成熟ヒト卵母細胞での構成的Trim-Awayのために、最初に、卵母細胞に、10~15plの組換えHis-Lipoyl-TRIM21を4.125mg/mlのニードル濃度で0.0375% NP-40と共にマイクロインジェクションした。3~4時間後、卵母細胞に、続いて、12plの抗体を2.5mg/mlのニードル濃度で0.03% NP-40と共に注入した。
【0304】
薬物添加
すべての薬物をDMSO(Sigma-Aldrich)中に1000×原液として調製した。紡錘体微小管を急性的に脱重合させるために、放出の約6時間後にノコダゾール(Sigma-Aldrich)を終濃度10μMまで加えた。AURAを構成的に阻害するために、未成熟マウス卵母細胞を、500nM MLN8237(Selleckchem)を含有するdbcAMP不含M2中に放出した。AURAを急性的に阻害するために、放出の約6時間後にMLN8237を終濃度500nMまで加えた。
【0305】
免疫蛍光法
マウスMI紡錘体を得るために、卵母細胞を、dbcAMP不含培地に放出後、37℃で約7時間インキュベートした。ブタおよびウシMI紡錘体を得るために、卵母細胞を、RO-3306不含培地に放出後、39℃/5% CO2でそれぞれ約11時間および12時間インキュベートした。ヒトMI紡錘体を得るために、卵母細胞を、NEBD後、37℃で約14時間および15時間インキュベートした。免疫蛍光分析に使用したいずれの卵母細胞も、固定する前にライブイメージングに進めることはしなかった。
【0306】
卵母細胞を、100mM HEPES(pH 7.0、KOHで滴定)、50mM EGTA(pH 7.0、KOHで滴定)、10mM MgSO4、2%メタノール不含ホルムアルデヒドおよび0.5% Triton X-100中、37℃で15~60分間固定した。固定した卵母細胞および細胞を、リン酸緩衝食塩水(PBS)0.5% triton X-100含有(PBT)中に4℃で一晩抽出し、5% BSA含有PBT(PBT-BSA)中にて4℃で一晩ブロッキングした。すべての抗体インキュベーションを、PBT-BSA中10μg/mlにて4℃で一晩(一次抗体について)または20μg/mlにて室温で1時間(二次抗体について)実施した。
【0307】
使用した一次抗体は、ウサギ抗ASPM(NB100-2278;Novus Biological)、ラット抗α-チューブリン(MCA78G;Bio-Rad)、ウサギ抗CAMSAP3(13)、ウサギ抗CDK5RAP2(ABE236;Merck Millipore)、ウサギ抗CEP192(18832-1-AP;Proteintech)、ウサギ抗DHC(12345-1-AP;Proteintech)、ウサギ抗EG5(NB500-181;Novus Biologicals)、ヤギ抗GFP(600-101-215;Rockland Immunochemicals)、ウサギ抗γ-チューブリン(T3559;Sigma-Aldrich)、マウス抗HEC1、ウサギ抗HSET-C、ウサギ抗KANSL3(HPA035018;Sigma-Aldrich)、ウサギ抗KIF2A(NB500-180;Novus Biologicals)、マウス抗LIS1、ウサギ抗MCRS1(HPA039057;Sigma-Aldrich)、ウサギ抗NUMA、ウサギ抗NUMA(ab84680;Abcam)、マウス抗P150(612708;BD Biosciences)、マウス抗PCNTおよびウサギ抗TPX2(NB500-179;Novus Biological)であった。使用した二次抗体は、Alexa Fluor 488-、594-または647コンジュゲートAffiniPure Fab Fragment抗ヤギ、抗ウサギおよび抗ラット(Jackson ImmunoResearch Europe)、Alexa Fluor 568コンジュゲートNano-Secondary抗マウスIgG1および抗マウスIgG2b(ChromoTek)、ならびにAtto 488コンジュゲートFluoTag-X2抗マウスIgG2a/b(NanoTag Biotechnologies)であった。DNAをヘキスト33342(Molecular Probes)で染色した。
【0308】
低温処理
非動原体微小管を選択的に脱重合させるために、マウスMI卵母細胞を、氷上で15分間インキュベートし、ルーチン免疫蛍光法用として直ちに固定した。すべての紡錘体微小管を脱重合させるために、マウスMI卵母細胞を、氷上で1時間インキュベートし、ルーチン免疫蛍光法用として直ちに固定した。
【0309】
ウシおよびブタ卵母細胞の光学透明化
卵母細胞を、ルーチン免疫蛍光法用として、固定し、抽出し、ブロッキングした。一次抗体とインキュベーションする前に、ウシおよびブタ卵母細胞中の脂肪滴を、cOmplete EDTA不含プロテアーゼ阻害剤カクテル(Roche)を補充した400mM NaCl、50mM Tris(pH 7.2)、5mM CaCl2および0.2%タウロコール酸ナトリウム中、4000U/mlのカンジダ・ルゴーセ(Candida rugose)由来リパーゼ(Sigma-Aldrich)により室温で20~40分間透明化した。
【0310】
ペプチドプレインキュベーションアッセイ
卵母細胞を、ルーチン免疫蛍光法用として、固定し、抽出し、ブロッキングした。マウスモノクローナル抗HEC1、ウサギポリクローナル抗HSET、マウスモノクローナル抗LIS1およびウサギポリクローナル抗NUMAを、卵母細胞に適用する前に、それぞれ、組換えHEC1(Proteintech)、組換えHis-Strep2-mClover3-HSET(自家製)、組換えLIS1(Abnova)および組換えHis-NUMA-N(自家製)と過去に記載されているようにプレインキュベートした(7)。
【0311】
共焦点および超解像顕微鏡法
共焦点イメージングについて、卵母細胞を、#1.0カバースリップ付きの35mmディッシュ内、2μlのM2培地(生マウス卵母細胞について)中または1%ポリビニルピロリドンおよび0.5mg/ml BSAを含むPBS中(固定した卵母細胞について)のパラフィン油下でイメージングした。画像は、環境インキュベーターボックスおよび40× C-Apochromat 1.2 NA水浸対物レンズを備えたLSM780、LSM800、LSM880またはLSM980共焦点レーザー走査顕微鏡(Zeiss)で取得した。一般的に、染色体を中心とした体積50μm×50μm×37.5μmまたは35μm×35μm×37.5μmを記録した。タイムラプスイメージングに、LSM800のカスタムメイドマクロ(Zeiss)またはLSM880のMyPiC(14)を使用して時間分解能5~15分で自動3Dトラッキングを実装した。mClover3、meGFP、mPA-GFP、Alexa Fluor 488およびAtto 488は、488nmのレーザー線で励起させ、493~571nmで検出した。CyOFPは、488nmのレーザー線で励起させ、571~638nmで検出した。mScarlet、mCherryおよびAlexa Fluor 568は、561nmのレーザー線で励起させ、571~638nmで検出した。Alexa Fluor 594は、594nmのレーザー線で励起させ、605~638nmで検出した。miRFPおよびAlexa Fluor 647は、633nmのレーザー線で励起させ、638~700nmで検出した。対照および実験群の画像は、同じ顕微鏡で同一のイメージング条件下で取得した。いくつかの画像について、ガウシアンフィルターでショットノイズを減少させた。Airyscan画像は、LSM880またはLSM980共焦点レーザー走査顕微鏡のAiryscanモジュールを使用して取得し、取得後にZEN(Zeiss)で処理した。イメージング条件(レーザー出力、ピクセル滞留時間および検出器ゲイン)が光毒性(ライブイメージングについて)、光退色または飽和を引き起こさないように注意を払った。
【0312】
光活性化
蛍光消失の分析のために、mPA-GFP-NUMAをmScarlet-MAP4-MTBDおよびH2B-miRFPと共発現する卵母細胞を、折れない(unbroken)マイクロインジェクションニードルを用いてステージ上で回転させ、減数分裂紡錘体をイメージング面に沿って得た。長方形のROIを選び出し、第5時点以降に405nmのレーザー線を最大出力で使用して光活性化させた。
【0313】
蛍光退色後回復
蛍光退色後回復の分析のために、mClover3-HSETをmScarlet-MAP4-MTBDおよびH2B-miRFPと共発現する卵母細胞を、折れないマイクロインジェクションニードルを用いてステージ上で回転させ、減数分裂紡錘体をイメージング面に沿って得た。長方形のROIを選び出し、第5時点以降に488および561nmのレーザー線を最大出力で使用して光退色させた。
【0314】
免疫電子顕微鏡法および相関集束イオンビーム走査電子顕微鏡法(FIB-SEM)
NUMAの免疫電子顕微鏡法のために、mClover3-NUMAを発現するマウスMI卵母細胞に、7plの0.167mg/ml 2nm Immunogold(Aurion)コンジュゲートGFP VHH(Chromotek)を0.1% NP-40と共にマイクロインジェクションした。100mM HEPES(pH 7.0、KOHで滴定)、50mM EGTA(pH 7.0、KOHで滴定)、10mM MgSO4、3% EM等級グルタルアルデヒドおよび0.5%メタノール不含ホルムアルデヒド中での37℃で1時間の固定の前に、卵母細胞をランダムに分散させ、Cell-Tak Cell and Tissue Adhesive(Corning)を使用してhigh Grid-500 35mmμ-Dish(iBidi)に吸着させた。最適に配向された紡錘体を有する卵母細胞を事前選択するために、卵母細胞を、ヘキスト33322で染色し、共焦点レーザー走査顕微鏡で撮影した。電子顕微鏡染色の前に、R-Gent SE-EM(Aurion)で銀増感を行った。
【0315】
すべての後続処理工程は、電子レンジ(Ted Pella)内で実施し、卵母細胞は、各染色工程の間に、250Wで40秒間、水で3回洗浄した。最初に、卵母細胞を0.1Mリン酸バッファー(pH 7.4)中2%四酸化オスミウム-1.5%フェロシアン化カリウムにより100Wで12分間(電子レンジサイクルは2分毎にオンオフ)染色した。次いで、卵母細胞を1%チオカルボヒドラジド(Sigma-Aldrich)と100Wで12分間(電子レンジサイクルは2分毎にオンオフ)インキュベートし、2%四酸化オスミウム水溶液により100Wで12分間(電子レンジサイクルは2分毎にオンオフ)染色した。卵母細胞をさらに、1%酢酸ウラニル水溶液により100Wで12分間(電子レンジサイクルは2分毎にオンオフ)および0.02M硝酸鉛-0.03Mアスパラギン酸(pH 5.5)により100Wで12分間(電子レンジサイクルは2分毎にオンオフ)染色した。その後、卵母細胞を、濃度勾配エタノール系列(10、30、50、75、90、100および100%)中にて250Wで40秒間脱水し、エタノール中の濃度勾配系列(25、50、75、90、100および100%)のDurcupan樹脂(Sigma-Aldrich)に250Wで3分間浸透させた。
【0316】
浸透させた卵母細胞を過去に記載されているように最小量の樹脂で包埋した(15)。上部に卵母細胞が包埋されたポリマーカバースリップを、ジグソーを使用して培養皿から切り取り、銀充填EPO-TEK EE129-4接着剤(Electron Microscopy Sciences)を使用してSEM stub(Science Services)に吸着させ、60℃で一晩硬化させた。高真空スパッタコーターEM ACE600(Leica)を電流35mAで使用して、試料に10nmの金層を被覆した。その後、試料をCrossbeam 540 FIB-SEM(Zeiss)内に入れた。均一なミリングを確保するため、また表面を保護するために、関心対象領域の上部に電流3nAで500nmの白金層を堆積させた。Atlas 5(Atlast 3D、Carl Zeiss Microscopy)を使用して、3Dデータセットを収集した。事前選択した卵母細胞を電流15nAに曝し、電流7nAを使用して切断面を研磨した。画像は、ミリング電流として700pA(5nm z-step)を使用し、グリッド電圧450V(x-yにおけるピクセルサイズ5nm)でESB検出器を用いて、1.5kVで取得した。
【0317】
取得後、最初にFijiのLinear Stack Alignment with SIFT(NIH)を使用して画像を整列させた。次いで、データセットを切り取り、反転させて、Fijiの1シグマのガウシアンフィルターで平滑化した。微小管を良好に可視化するために、データセットをさらにFijiの局所的コントラスト強調(CLAHE)に供した。使用した具体的なパラメーターは、ブロックサイズについて127、ヒストグラムのビン数について256、および最大傾斜について1.25とした。イメージング面に沿った紡錘体を得るために、得られた画像スタックをFijiのInteractive Stack Rotationで回転させ、再スライスした。
【0318】
イムノブロッティング
1レーン当たり10~50個のマウス卵母細胞、12個のヒト、ウシまたはブタ卵母細胞をタンパク質不含培地中で十分に洗浄し、タンパク質不含培地4μlに移した。次いで、100mM DTTを含む1.333×NuPAGE LDSサンプルバッファー(Thermo Fisher Scientific)12μlを加え、混合物を直ちに液体窒素中で瞬間凍結させた。0.125~2.5μgの非同期HeLa全細胞溶解物(NBP2-10274;Novus Biologicals)を陽性対照として使用した。
【0319】
95℃で5分間の加熱の前に、さらに2回、試料を37℃で融解させ、液体窒素中で瞬間凍結させた。1.0mm厚の17ウェルNuPAGE 4~12% Bis-Trisタンパク質ゲル(Thermo Fisher Scientific)上で、NuPAGE MOPS SDS Running Buffer(Thermo Fisher Scientific)を用いて試料を分割した。SDS不含Towbinバッファーを用いて、200mAにて氷上で2時間タンパク質を0.45μm PVDFメンブレン上に転写した。ブロッキングの前に、ブロットをNo-Stain Protein Labeling Reagent(Thermo Fisher Scientific)で染色した。ブロッキングおよび抗体インキュベーションを、5%スキムミルクおよび0.1% tween-20を含むトリス緩衝食塩水(TBS)中で実施した。使用した一次抗体は、ラット抗α-チューブリン、マウス抗β-アクチン(ab8226;Abcam)、マウス抗β-チューブリン(T8328;Sigma-Aldrich)、ウサギ抗γ-チューブリン、ウサギ抗GAPDH(ab181602;Abcam)、マウス抗HEC1、ウサギ抗HSET-N(ab172620;Abcam)、ウサギ抗HSET-C、マウス抗LIS1、ウサギ抗NUMAおよびウサギ抗PCNT(ab4448;Abcam)であった。使用した二次抗体は、HRPコンジュゲート抗マウス(P0447;Dako)、抗ウサギ(A9169;Sigma-Aldrich)および抗ラット(sc-2032;Santa Cruz Biotechnology)であった。SuperSignal West Femto Maximum Sensitivity Substrate(Thermo Fisher Scientific)でブロットを発色させ、Amersham Imager 600(GE Healthcare)で記録した。曝露時間に飽和が起こらないように注意を払った。
【0320】
一般的定量化
生きたマウス、ウシおよびブタ卵母細胞、ならびに固定されたヒトおよびマウス紡錘体のタイムラプス動画を、Imaris(Bitplane)を使用して3Dで解析した。減数分裂の時期を判定するため、また紡錘体不安定性をスコア化するために、減数分裂進行のタイミングをNEBDのタイミングに対して定量化した。NEBDは、微分干渉像において核と細胞質との間の鮮明な境界線が消失した時点(マウス卵母細胞について)またはH2Bチャネルにおいて核が崩壊を開始した時点(ウシおよびブタ卵母細胞について)として定義した。紡錘体極は、主要な微小管塊から顕著に突き出たMAP4またはMAP4-MTBDまたはα-チューブリン強度の領域として定義した。
図1Dでは、すべての微小管端が極で収束した双極紡錘体を有する卵母細胞を、収束極を有するものとしてスコア化した。微小管端が極で収束しなかった双極紡錘体を有する卵母細胞を、未収束極を有するものとしてスコア化した。マウス卵母細胞について、未収束極はさらに、軽度未収束極(部分的に分離された微小管端を有する)および重度未収束極(完全に分離された微小管端を有する)に分類した。
図4Dでは、紡錘体が樽形の双極性形態および検出可能な紡錘体軸を維持したウシおよびブタ卵母細胞を、安定した紡錘体極を有するものとしてスコア化した。紡錘体がその初期の双極性を喪失し、極の動的なリモデリングを経た卵母細胞を、不安定な紡錘体極を有するものとしてスコア化した。
図1Gおよび7Cでは、紡錘体が2つの極を有しており、2より大きい長さ対幅比を有した卵母細胞を、双極紡錘体を有するものとしてスコア化した。紡錘体が2つの極を有しており、2より小さい長さ対幅比を有した卵母細胞を、広がった極を有する紡錘体を有するものとしてスコア化した。紡錘体が2個超の極を有していた卵母細胞を、多極紡錘体を有するものとしてスコア化した。
図1Hでは、紡錘体が2個の明確に定義された極を有していたマウス卵母細胞を、双極紡錘体を有するものとしてスコア化した。紡錘体が2個の明確に定義されていない極を有していたマウス卵母細胞を、無極性/円形の紡錘体を有するものとしてスコア化した。紡錘体が2個超の極を有していたマウス卵母細胞を、多極紡錘体を有するものとしてスコア化した。
図2E、3Hおよび7Gでは、紡錘体が凝集NUMA群を両極に有していたマウス卵母細胞を、正常な双極紡錘体を有するものとしてスコア化した。紡錘体がリボン様NUMA群を両極に有していたマウス卵母細胞を、広がった極を有する円形の紡錘体を有するものとしてスコア化した。紡錘体がNUMA群を2個超の極に有していたマウス卵母細胞を、多極紡錘体を有するものとしてスコア化した。紡錘体がその樽形を喪失しているがいくつかの弱く会合した微小管束を含有するマウス卵母細胞を、無秩序な紡錘体を有するものとしてスコア化した。
【0321】
細胞質に対する紡錘体極でのタンパク質濃縮の定量化
半紡錘体を横断するラインプロファイルをZENで紡錘体軸に沿って作成し、平均蛍光強度をExcel(Microsoft)にエクスポートした。同じ卵母細胞の細胞質中の同等のROIの強度を差し引いて、細胞質のバックグラウンドを補正した。次いで、バックグラウンド補正したデータを各ラインプロファイルの最小強度によって正規化した(細胞質強度)。細胞質に対する紡錘体極での濃縮を、各ラインプロファイルの最大強度によって表した。
【0322】
紡錘体の3D再構成による紡錘体等値面内の蛍光強度の標準偏差(SD)および微小管パッキング指数の自動定量化
異なる免疫蛍光実験から紡錘体(抗α-チューブリンで標識された)を再現性よく再構成するために、過去に記載されたMATLABスクリプト(6)をImarisでの自動サーフェス生成に使用した。使用した具体的なパラメーターは、平滑化サイズについて0.1(微小管パッキング指数では)または1.0(紡錘体等値面内の蛍光強度のSDでは)μm、バックグラウンド減算なし、面オブジェクトの最小および最大予想総体積についてそれぞれ500~750および1000~1750μm3とした。紡錘体等値面についての蛍光強度のSD、体積およびオブジェクト指向最小境界ボックスの体積を、Excelにエクスポートした。紡錘体等値面の体積をオブジェクト指向最小境界ボックスの体積で割ることによって微小管パッキング指数を算出した。
【0323】
紡錘体の3D再構成による平均蛍光強度および体積の手動定量化
Imarisのサーフェス関数(Surface function)を使用して手動セグメンテーションを実施した。急性MLN8237添加実験について、mClover3-NUMAをサーフェスディテール1μmで平滑化し、バックグラウンド減算後、オブジェクトに適合する最大球の直径として0.747μmで閾値設定した。紡錘体(3×CyOFP-MAP4-MTBDで標識された)をサーフェスディテール1μmで平滑化し、絶対強度で閾値設定した。HSET/KIFC1枯渇実験について、NUMA(抗NUMAで標識された)をサーフェスディテール0.5μmで平滑化し、バックグラウンド減算後、オブジェクトに適合する最大球の直径として0.5μmで閾値設定した。各卵母細胞における細胞質バックグラウンドに応じて、対応するチャネルに好適な閾値を選んだ。タイムラプス動画について、時系列全体で閾値を維持した。平均蛍光強度および等値面の体積をExcelにエクスポートした。タイムラプス動画について個々のデータセットを正規化するために、すべての平均強度を定常状態の平均強度の平均値で割った。
【0324】
蛍光退色後回復実験の定量化
Icyの剛体レジストレーションを使用して軽微な一時的ドリフトを補正した。光退色域の経時的な平均強度を、さらなる処理のためにFijiからExcelにエクスポートした。最初に、卵母細胞外の領域の強度を差し引くことによってデータをバックグラウンドに対して補正した。次いで、バックグラウンド補正したデータを退色前時点の強度(F0)に正規化した。時間に対する強度(F)のプロットを、OriginPro(OriginLab)の単一指数関数[F(t)=c-F∞e-t/τ(式中、cはオフセットであり、F∞は、平衡後に回復した最大強度の大きさであり、τは時定数である)]に適合させた。最大回復の半減期(t1/2)および可動性部分を、それぞれ、τ×ln(2)およびF∞/(F0-F')(式中、F'は光退色直後に測定された最小強度である)によって決定した。
【0325】
光活性化実験の定量化
Icyの剛体レジストレーションを使用して軽微な一時的ドリフトを補正した。光活性化域の経時的な平均強度を、さらなる処理のためにFijiからExcelにエクスポートした。最初に、光活性化前の光活性化領域の強度を差し引くことによってデータを細胞質バックグラウンドに対して補正した。次いで、バックグラウンド補正したデータを最初の活性化後時点の強度に正規化した。時間に対する強度のプロットを、OriginProの線形関数(y=mx+c、式中、mは傾斜であり、cはy切片である)または一成分指数関数[y=Ae(c-x)/τ(式中、cはオフセットであり、Aは成分比であり、τは時定数である)]に適合させた。減衰の半減期(t1/2)を-0.5/mまたはτ×ln(2)によって算出した。
【0326】
方向性解析
紡錘体内の微小管の方向性をFijiのOrientationJを使用して解析した。使用した具体的なパラメーターは、ローカルウィンドウについて9ピクセル、勾配についてガウシアン、カラーサーベイについてHSB、Hueについてオリエンテーション、飽和についてコヒーレンシー、および輝度について原画像とした。出力画像を、結果の良好な可視化のために反転させた。
【0327】
過去に公開されたRNA-seqデータの再分析
マウス(16)、ウシ(17)、ブタ(18)およびヒト(16、19)由来の卵母細胞および着床前胚についての過去に公開されたバルクおよび単一細胞RNA-seqデータセットをGene Expression Omnibus(NIH)からダウンロードした。同じデータセットからの異なる試料間の遺伝子発現レベルを比較するために、マッピングされたリード100万当たりの転写物1キロベース当たりのリード数(Reads Per Kilobase of transcript per Million reads mapped)(RPKM)またはマッピングされたリード100万当たりの転写物1キロベース当たりの断片数(Fragments Per Kilobase of transcript per Million reads mapped)(FPKM)を100万当たりの転写物量(Transcripts Per Million)(TPM)に変換した。TPMは、不変的性質を順守し、試料中の転写物の平均相対RNAモル濃度に比例するので、RPKMおよびFPKMよりも良好に転写物存在量を遺伝子レベルで表すことが示されている(20、21)。
【0328】
統計解析
試料サイズの事前決定に統計解析を使用しなかった。平均(平均値)およびSDをExcelで算出した。対応のない両側スチューデントのt検定(絶対値について)および両側フィッシャーの正確検定(カテゴリー値について)に基づく統計的有意性を、正規分布および類似分散を想定して、Prism(GraphPad)で算出した。すべてのボックスプロットは、中央値(水平の黒線)、平均値(小さな黒四角)、第25および第75パーセンタイル(箱印)、第5および第95パーセンタイル(ひげ印)ならびに第1および第99パーセンタイル(×印)を示す。すべてのデータは、少なくとも2つの独立した実験からのものである。P値は、*P<0.05、**P<0.01、***P<0.001および****P<0.0001として表される。有意でない値は、N.Sとして表される。
【0329】
ヒト接合体の調製および培養
本研究でのヒト3PN接合体の使用は、ニーダーザクセン州医師会により参照番号Bo/46/2020で承認された。接合体は、ゲッティンゲン不妊治療センターおよびベルリン不妊治療センターで生殖補助医療を受けた患者から採取した。すべての患者が、3PN接合体を本研究で使用することに同意した。ゲッティンゲン不妊治療センターで採取された接合体について、接合体は、G-1 PLUS培地(Vitrolife)中のパラフィン油下にて37℃および5% CO2で培養した。ベルリン不妊治療センターで採取された接合体について、接合体は、Vit Kit-Freeze(FUJIFILM Irvine Scientific)を使用してCryolock(FUJIFILM Irvine Scientific)で凍結した。凍結融解された接合体の生存および発生率を最大にするために、接合体を、1M D-(+)-トレハロース(Sigma-Aldrich)を含有する予温したG-MOPS PLUS(Vitrolife)1ml中にて37℃で1分間融解させた。次いで、接合体を、0.5M D-(+)-トレハロースを含有するG-MOPS PLUS 300μlに室温で3分間、0.25M D-(+)-トレハロースを含有するG-MOPS PLUS 300μlに室温で5分間、およびG-MOPS PLUS 300μlに室温で2分間移した。回収した接合体を、10% FBSを補充したG1-PLUS中のパラフィン油下にて37℃および5% CO2で培養した。ヒト接合体の染色およびマイクロインジェクションは、ヒト卵母細胞について上述したように実施した。
【0330】
【0331】
【0332】
【配列表】
【手続補正書】
【提出日】2024-08-15
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(i)KIFC1/HSETタンパク質または(ii)KIFC1/HSETをコードするmRNAをヒト卵母細胞に導入する
、生殖補助医療のためのインビトロ法。
【請求項2】
KIFC1/HSETが、ヒト卵母細胞の減数分裂紡錘体を安定化させる、請求項1記載の方法。
【請求項3】
KIFC1/HSETタンパク質が、組換え産生されたKIFC1/HSETタンパク質である、請求項1または2記載の方法。
【請求項4】
ヒト卵母細胞が、天然に存在するものであり、かつ/もしくは、ヒト卵母細胞が、マウス卵母細胞の多くとも2分の1、好ましくは多くとも4分の1、より好ましくは多くとも6分の1、さらにより好ましくは多くとも10分の1、さらにより好ましくは多くとも20分の1、さらにより好ましくは多くとも30分の1、さらにより好ましくは多くとも40分の1、さらにより好ましくは多くとも50分の1、およびさらにより好ましくは多くとも60分の1だけ、KIFC1/HSETを発現し;かつ/または
ヒト卵母細胞が、天然に存在するものであり、かつ/もしくは、ヒト卵母細胞が、HeLa細胞の多くとも2分の1、好ましくは多くとも4分の1、より好ましくは多くとも6分の1、さらにより好ましくは多くとも10分の1、およびさらにより好ましくは多くとも20分の1だけ、KIFC1/HSETを発現する、
請求項1または2記載の方法。
【請求項5】
KIFC1/HSETが導入されたヒト卵母細胞が、KIFC1/HSETが導入されていないヒト卵母細胞と比較して、双極性減数分裂紡錘体を有する確率が高く、好ましくは、KIFC1/HSETが導入されたヒト卵母細胞が、KIFC1/HSETが導入されていないヒト卵母細胞と比較して、双極性減数分裂紡錘体を有する確率が少なくとも5%、好ましくは少なくとも10%、より好ましくは少なくとも15%、より好ましくは少なくとも20%、より好ましくは少なくとも25%、およびさらにより好ましくは少なくとも35%高い、
請求項1または2記載の方法。
【請求項6】
(i)KIFC1/HSETタンパク質または(ii)KIFC1/HSETをコードするmRNAが、卵核胞期、減数分裂Iまたは減数分裂IIにおいて導入される、
請求項1または2記載の方法。
【請求項7】
(i)KIFC1/HSETタンパク質または(ii)KIFC1/HSETをコードするmRNAをヒト接合体に導入することによって異数性の確率を低下させる方法において使用するための、(i)KIFC1/HSETタンパク質または(ii)KIFC1/HSETをコードするmRNA。
【請求項8】
(i)KIFC1/HSETタンパク質または(ii)KIFC1/HSETをコードするmRNAが、ヒト接合体の有糸分裂紡錘体を安定化させ、好ましくは、KIFC1/HSETタンパク質が、組換え産生されたKIFC1/HSETタンパク質である、請求項
7記載の(i)KIFC1/HSETタンパク質または(ii)KIFC1/HSETをコードするmRNA。
【請求項9】
ヒト接合体が、マウス接合体の多くとも2分の1、好ましくは多くとも4分の1、より好ましくは多くとも6分の1、さらにより好ましくは多くとも10分の1、さらにより好ましくは多くとも20分の1、さらにより好ましくは多くとも30分の1、さらにより好ましくは多くとも40分の1、さらにより好ましくは多くとも50分の1、およびさらにより好ましくは多くとも60分の1だけ、KIFC1/HSETを発現し;かつ/または、
ヒト接合体が、HeLa細胞の多くとも2分の1、好ましくは多くとも4分の1、より好ましくは多くとも6分の1、さらにより好ましくは多くとも10分の1、およびさらにより好ましくは多くとも20分の1だけ、KIFC1/HSETを発現する、
請求項
7または8記載の(i)KIFC1/HSETタンパク質または(ii)KIFC1/HSETをコードするmRNA。
【請求項10】
有糸分裂前期、中期、後期、終期またはS期中、より好ましくは有糸分裂前期中に導入される、請求項
7または8記載の(i)KIFC1/HSETタンパク質または(ii)KIFC1/HSETをコードするmRNA。
【請求項11】
有糸分裂紡錘体が安定化されたヒト接合体が、安定化されていない有糸分裂紡錘体よりも双極紡錘体である確率が高く、好ましくは、ここで、安定化されていない紡錘体が、多極性または無秩序な紡錘体であり、好ましくは、ここで、有糸分裂紡錘体の安定化が、蛍光顕微鏡法または偏光顕微鏡法を使用して、紡錘体極性形態によって評価され
る、請求項
7または8記載の(i)KIFC1/HSETタンパク質または(ii)KIFC1/HSETをコードするmRNA。
【請求項12】
KIFC1/HSETが導入されていないヒト接合体が、KIFC1/HSETが導入されたヒト接合体と比較して、多極性または無秩序な有糸分裂紡錘体を有する確率が少なくとも5%、好ましくは少なくとも10%、より好ましくは少なくとも15%、より好ましくは少なくとも20%、より好ましくは少なくとも25%、およびさらにより好ましくは少なくとも35%高い、請求項11記載の(i)KIFC1/HSETタンパク質または(ii)KIFC1/HSETをコードするmRNA。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0019
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0019】
本発明の範囲は、特許請求の範囲によって定義される。
[本発明1001]
(i)KIFC1/HSETタンパク質または(ii)KIFC1/HSETをコードするmRNAをヒト卵母細胞に導入するインビトロ法。
[本発明1002]
KIFC1/HSETが、ヒト卵母細胞の減数分裂紡錘体を安定化させる、本発明1001の方法。
[本発明1003]
KIFC1/HSETタンパク質が、組換え産生されたKIFC1/HSETタンパク質である、本発明1001または1002の方法。
[本発明1004]
ヒト卵母細胞が、天然に存在するものであり、かつ/もしくは、ヒト卵母細胞が、マウス卵母細胞の多くとも2分の1、好ましくは多くとも4分の1、より好ましくは多くとも6分の1、さらにより好ましくは多くとも10分の1、さらにより好ましくは多くとも20分の1、さらにより好ましくは多くとも30分の1、さらにより好ましくは多くとも40分の1、さらにより好ましくは多くとも50分の1、およびさらにより好ましくは多くとも60分の1だけ、KIFC1/HSETを発現し;かつ/または
ヒト卵母細胞が、天然に存在するものであり、かつ/もしくは、ヒト卵母細胞が、HeLa細胞の多くとも2分の1、好ましくは多くとも4分の1、より好ましくは多くとも6分の1、さらにより好ましくは多くとも10分の1、およびさらにより好ましくは多くとも20分の1だけ、KIFC1/HSETを発現する、
先行本発明のいずれかの方法。
[本発明1005]
KIFC1/HSETタンパク質が、組換えKIFC1/HSETタンパク質であり、かつ/または、
KIFC1/HSETタンパク質が、
SEQ ID NO:1(ヒトKIFC1/HSET)に対して少なくとも70%、好ましくは少なくとも75%、より好ましくは少なくとも80%、より好ましくは少なくとも81%、より好ましくは少なくとも82%、より好ましくは少なくとも83%、より好ましくは少なくとも84%、より好ましくは少なくとも85%、より好ましくは少なくとも86%、より好ましくは少なくとも87%、より好ましくは少なくとも88%、より好ましくは少なくとも89%、より好ましくは少なくとも90%、より好ましくは少なくとも91%、より好ましくは少なくとも92%、より好ましくは少なくとも93%、より好ましくは少なくとも94%、より好ましくは少なくとも95%、より好ましくは少なくとも96%、より好ましくは少なくとも97%、より好ましくは少なくとも98%、さらにより好ましくは少なくとも99%同一、および最も好ましくはSEQ ID NO:1に対して100%同一である、配列
を含み、かつ好ましくは前記配列からなり;
特に、KIFC1/HSETが、微小管結合活性、ATP加水分解活性および/または微小管滑り活性を有する、
先行本発明のいずれかの方法。
[本発明1006]
KIFC1/HSETをコードするmRNAが、
SEQ ID NO:1(ヒトKIFC1/HSET)に対して少なくとも70%、好ましくは少なくとも75%、より好ましくは少なくとも80%、より好ましくは少なくとも81%、より好ましくは少なくとも82%、より好ましくは少なくとも83%、より好ましくは少なくとも84%、より好ましくは少なくとも85%、より好ましくは少なくとも86%、より好ましくは少なくとも87%、より好ましくは少なくとも88%、より好ましくは少なくとも89%、より好ましくは少なくとも90%、より好ましくは少なくとも91%、より好ましくは少なくとも92%、より好ましくは少なくとも93%、より好ましくは少なくとも94%、より好ましくは少なくとも95%、より好ましくは少なくとも96%、より好ましくは少なくとも97%、より好ましくは少なくとも98%、さらにより好ましくは少なくとも99%同一、および最も好ましくはSEQ ID NO:1に対して100%同一である配列を含む、好ましくは前記配列からなる、アミノ酸配列
に翻訳され;かつ
特に、翻訳されたKIFC1/HSET mRNAが、微小管結合活性、ATP加水分解活性および/または微小管滑り活性を有する、
先行本発明のいずれかの方法。
[本発明1007]
KIFC1/HSETが導入されたヒト卵母細胞が、KIFC1/HSETが導入されていないヒト卵母細胞と比較して、双極性減数分裂紡錘体を有する確率が高く、好ましくは、KIFC1/HSETが導入されたヒト卵母細胞が、KIFC1/HSETが導入されていないヒト卵母細胞と比較して、双極性減数分裂紡錘体を有する確率が少なくとも5%、好ましくは少なくとも10%、より好ましくは少なくとも15%、より好ましくは少なくとも20%、より好ましくは少なくとも25%、およびさらにより好ましくは少なくとも35%高い、先行本発明のいずれかの方法。
[本発明1008]
(i)KIFC1/HSETタンパク質または(ii)KIFC1/HSETをコードするmRNAが、卵核胞期、減数分裂Iまたは減数分裂IIにおいて導入される、先行本発明のいずれかの方法。
[本発明1009]
(i)KIFC1/HSETタンパク質または(ii)KIFC1/HSET mRNAが、天然に存在するヒト卵母細胞に導入され、それにより天然に存在しない卵母細胞が得られ、特に、KIFC1/HSETタンパク質が、組換え産生されたKIFC1/HSETタンパク質である、
天然に存在しないヒト卵母細胞。
[本発明1010]
KIFC1/HSETタンパク質が、組換え産生されたKIFC1/HSETタンパク質である、本発明1009の卵母細胞。
[本発明1011]
(i)KIFC1/HSETタンパク質または(ii)KIFC1/HSETをコードするmRNAが、卵母細胞の減数分裂紡錘体を安定化させる、本発明1009または1010の卵母細胞。
[本発明1012]
天然に存在するヒト卵母細胞が、マウス卵母細胞の多くとも2分の1、好ましくは多くとも4分の1、より好ましくは多くとも6分の1、さらにより好ましくは多くとも10分の1、さらにより好ましくは多くとも20分の1、さらにより好ましくは多くとも30分の1、さらにより好ましくは多くとも40分の1、さらにより好ましくは多くとも50分の1、およびさらにより好ましくは多くとも60分の1だけ、KIFC1/HSETを発現し;かつ/または、
天然に存在するヒト卵母細胞が、HeLa細胞の多くとも2分の1、好ましくは多くとも4分の1、より好ましくは多くとも6分の1、さらにより好ましくは多くとも10分の1、およびさらにより好ましくは多くとも20分の1だけ、KIFC1/HSETを発現する、
本発明1009~1011のいずれかのヒト卵母細胞。
[本発明1013]
(i)KIFC1/HSETタンパク質または(ii)KIFC1/HSETをコードするmRNAをヒト接合体に導入することによって異数性の確率を低下させる方法において使用するための、(i)KIFC1/HSETタンパク質または(ii)KIFC1/HSETをコードするmRNA。
[本発明1014]
(i)KIFC1/HSETタンパク質または(ii)KIFC1/HSETをコードするmRNAをヒト接合体に導入することによってヒト接合体における有糸分裂中の無秩序かつ/または多極性の紡錘体を有する確率を低下させる方法において使用するための、(i)KIFC1/HSETタンパク質または(ii)KIFC1/HSETをコードするmRNA。
[本発明1015]
(i)KIFC1/HSETタンパク質または(ii)KIFC1/HSETをコードするmRNAが、ヒト接合体の有糸分裂紡錘体を安定化させ、好ましくは、KIFC1/HSETタンパク質が、組換え産生されたKIFC1/HSETタンパク質である、本発明1014の(i)KIFC1/HSETタンパク質または(ii)KIFC1/HSETをコードするmRNA。
[本発明1016]
ヒト接合体が、マウス接合体の多くとも2分の1、好ましくは多くとも4分の1、より好ましくは多くとも6分の1、さらにより好ましくは多くとも10分の1、さらにより好ましくは多くとも20分の1、さらにより好ましくは多くとも30分の1、さらにより好ましくは多くとも40分の1、さらにより好ましくは多くとも50分の1、およびさらにより好ましくは多くとも60分の1だけ、KIFC1/HSETを発現し;かつ/または、
ヒト接合体が、HeLa細胞の多くとも2分の1、好ましくは多くとも4分の1、より好ましくは多くとも6分の1、さらにより好ましくは多くとも10分の1、およびさらにより好ましくは多くとも20分の1だけ、KIFC1/HSETを発現する、
本発明1014または1015の(i)KIFC1/HSETタンパク質または(ii)KIFC1/HSETをコードするmRNA。
[本発明1017]
有糸分裂前期、中期、後期、終期またはS期中、より好ましくは有糸分裂前期中に導入される、本発明1014~1016のいずれかの(i)KIFC1/HSETタンパク質または(ii)KIFC1/HSETをコードするmRNA。
[本発明1018]
有糸分裂紡錘体が安定化されたヒト接合体が、安定化されていない有糸分裂紡錘体よりも双極紡錘体である確率が高く、好ましくは、ここで、安定化されていない紡錘体が、多極性または無秩序な紡錘体であり、好ましくは、ここで、有糸分裂紡錘体の安定化が、蛍光顕微鏡法または偏光顕微鏡法を使用して、紡錘体極性形態によって評価され、より好ましくは、ここで、KIFC1/HSETが導入されていないヒト接合体が、KIFC1/HSETが導入されたヒト接合体と比較して、多極性または無秩序な有糸分裂紡錘体を有する確率が少なくとも5%、好ましくは少なくとも10%、より好ましくは少なくとも15%、より好ましくは少なくとも20%、より好ましくは少なくとも25%、およびさらにより好ましくは少なくとも35%高い、本発明1014~1017のいずれかの(i)KIFC1/HSETタンパク質または(ii)KIFC1/HSETをコードするmRNA。
[本発明1019]
(i)KIFC1/HSETタンパク質と(ii)ヒト減数分裂紡錘体またはヒト有糸分裂紡錘体とを含む複合体であって、
KIFC1/HSETタンパク質が、インビトロ法によってヒト卵母細胞または接合体に導入可能であり、好ましくは、インビトロ法によってヒト卵母細胞または接合体に導入されており、より好ましくは、KIFC1/HSETタンパク質が、マイクロインジェクションおよび/またはエレクトロポレーションによって、好ましくはマイクロインジェクションによって導入されており、
複合体が、蛍光顕微鏡法によって検出可能であり、特に、紡錘体が、抗アルファ-チューブリン抗体によって検出可能であり、かつ/または、KIFC1/HSETが、抗HSET-C抗体によって検出可能であり、より特定すると、紡錘体が、ラット抗アルファ-チューブリン抗体(MCA78G;Bio-Rad)によって検出可能であり、かつ/または、KIFC1/HSETが、ウサギ抗HSET-C(20790-1-AP;Proteintech)によって検出可能である、
複合体。
[本発明1020]
KIFC1/HSETタンパク質が、紡錘体を安定化させ、好ましくは、ここで、安定化された紡錘体が、双極紡錘体であり、より好ましくは、ここで、紡錘体形態が、蛍光顕微鏡法または偏光顕微鏡法によって評価または決定される、本発明1019の複合体。
[本発明1021]
安定化された紡錘体が、多極性または無秩序な紡錘体よりも双極紡錘体である確率が少なくとも5%、好ましくは少なくとも10%、より好ましくは少なくとも15%、より好ましくは少なくとも20%、より好ましくは少なくとも25%、およびさらにより好ましくは少なくとも35%高い、本発明1020の複合体。
【国際調査報告】