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特表2024-538579高速飛行体の光学センサに対する空気力学的影響及び大気の影響の波面補正
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  • 特表-高速飛行体の光学センサに対する空気力学的影響及び大気の影響の波面補正 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-10-23
(54)【発明の名称】高速飛行体の光学センサに対する空気力学的影響及び大気の影響の波面補正
(51)【国際特許分類】
   G01S 7/497 20060101AFI20241016BHJP
   G01S 7/481 20060101ALI20241016BHJP
   G01J 9/00 20060101ALI20241016BHJP
   F41G 7/22 20060101ALI20241016BHJP
【FI】
G01S7/497
G01S7/481 A
G01J9/00
F41G7/22
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024518823
(86)(22)【出願日】2022-09-23
(85)【翻訳文提出日】2024-03-26
(86)【国際出願番号】 US2022044535
(87)【国際公開番号】W WO2023064085
(87)【国際公開日】2023-04-20
(31)【優先権主張番号】63/248,623
(32)【優先日】2021-09-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】17/725,872
(32)【優先日】2022-04-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】524059674
【氏名又は名称】レイセオン カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100229448
【弁理士】
【氏名又は名称】中槇 利明
(72)【発明者】
【氏名】ケラー,シーン ディー.
(72)【発明者】
【氏名】ナップ,デイヴィッド ジェイ.
(72)【発明者】
【氏名】レイ,ジョン イー.
【テーマコード(参考)】
5J084
【Fターム(参考)】
5J084BA03
5J084BA20
5J084BA48
5J084BB28
5J084CA03
(57)【要約】
超音速飛行体上のEO/IRセンサのウィンドウ/ドーム(102)に対する空気光学的影響及び空気熱的影響を測定及び補正するためのシステム及び方法。レーザパルスのレンジゲーティングは、空気力学的影響と大気の影響を測定し、分離する。異なる更新レートでの個別の制御アルゴリズムと制御ループにより、制御アルゴリズムが簡素化され、全体的なパフォーマンスが向上する。波面補正を提供する可変形状ミラーとしてチップ/チルト/ピストン機能を有するMEMS MMA(124)を使用すると、全体的なパフォーマンスが向上する。補正されたレーザパルスを使用してターゲットを能動的に照射し、能動的検出及び受動的検出の両方を提供することもできる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
超音速飛行体用の光学センサであって、当該光学センサへの光学ウィンドウが、飛行中に空気光学的影響及び空気熱的影響を受け、当該光学センサは、
クロックと、
前記クロックを基準とするタイミングコードを用いて前記光学ウィンドウを通してレーザパルスを放射するパルスレーザと、
前記光学ウィンドウ上または前記光学ウィンドウの直前の前記空気光学的影響及び空気熱的影響を測定するために短い時間遅延ウィンドウ内にある戻りレーザパルスを検出する、前記クロックを基準とする波面センサと、
光学検出器と、
前記光学ウィンドウを通して受け取った光を前記光学検出器に結合する光路と、
前記光路内に配置された可変形状ミラーと、を備え、前記可変形状ミラーは、前記可変形状ミラーの平面に直交するピストン動作を行うコマンド信号に応答して、前記測定された空気光学的影響及び空気熱的影響に対して前記受け取った光の波面を補正する、
光学センサ。
【請求項2】
前記波面センサは、前記光学ウィンドウを越えて大気の影響を測定するために、長い時間遅延ウィンドウ内にある戻りレーザパルスを検出する、請求項1に記載の光学センサ。
【請求項3】
前記パルスレーザは、前記長い時間遅延ウィンドウに対する前記レーザパルスを長くするように制御される、請求項2に記載の光学センサ。
【請求項4】
前記長い時間遅延ウィンドウ内に戻されたレーザパルスが、ターゲットの位置を特定するために、前記光学検出器によって補正及び感知される、請求項2に記載の光学センサ。
【請求項5】
前記可変形状ミラーは、(a)ピストンアクチュエータを備えた単一のミラー、(b)それぞれのピストンアクチュエータを備えた複数のセグメント化されたミラー、または(c)それぞれのチップ、チルト、及びピストンアクチュエータを備えた複数のセグメント化されたミラーのうちの1つである、請求項1に記載の光学センサ。
【請求項6】
前記可変形状ミラーは、微小電気機械システム(MEMS)マイクロミラーアレイ(MMA)を備え、
前記MMAは、複数のミラーを備え、前記複数のミラーは、コマンド信号に独立的に応答して、それぞれ第1の軸及び第2の軸を中心としてチップ及びチルトし、3自由度(3DOF)で第3の軸に沿って並進してピストン動作して前記波面を補正する、
請求項1に記載の光学センサ。
【請求項7】
ピストンの前記第3の軸に沿った前記並進の範囲が、前記パルスレーザの波長または受け取った光の中心波長で1波長を超える、請求項6に記載の光学センサ。
【請求項8】
前記ミラーは、チップ及びチルトして局所的な傾斜を制御して収差を低減する、請求項6に記載の光学センサ。
【請求項9】
前記可変形状ミラーは、前記光学ウィンドウの光学的共役位置または光学的共役位置の近くに配置されている、請求項1に記載の光学センサ。
【請求項10】
複数の可変形状ミラーが、異なる波面歪みのソースの異なる光学的共役位置または異なる波面歪みのソースの異なる光学的共役位置の近くに配置されている、請求項1に記載の光学センサ。
【請求項11】
第1の可変形状ミラーが、瞳共役位置に配置され、第2の可変形状ミラーが、前記光路内の中間像共役位置に配置されている、請求項1に記載の光学センサ。
【請求項12】
第1の制御アルゴリズム及び制御ループが、前記空気光学的影響及び空気熱的影響を測定し、遅い更新レートで前記可変形状ミラーを更新し、
第2の制御アルゴリズム及び制御ループが、前記大気の影響を測定し、速い更新レートで前記可変形状ミラーを更新する、
請求項2に記載の光学センサ。
【請求項13】
超音速飛行体用の光学センサであって、当該光学センサへの光学ウィンドウが、飛行中に空気光学的影響及び空気熱的影響を受け、当該光学センサは、
1つまたは複数の光学検出器と、
前記光学ウィンドウを通して戻されたターゲットからの光を前記光学検出器に結合する光路と、
レーザエネルギーを放射するレーザと、
前記レーザエネルギーを結合して前記光学ウィンドウを通して前記光路内を伝播させる前記光路内のビーム結合器と、
戻りレーザエネルギーの一部を分割するビームスプリッタと、
前記光学ウィンドウ上または前記光学ウィンドウの直前での前記空気光学的影響及び空気熱的影響を測定するために、前記戻りレーザエネルギーの前記一部を検出するように構成された波面センサと、
前記波面センサと前記レーザの上流の前記光路に配置された可変形状ミラーと、を備え、前記可変形状ミラーは、コマンド信号に応答して前記可変形状ミラーの平面に直角にピストン動作し、前記放射されたレーザエネルギーの波面を補正し、前記戻されたレーザエネルギー及び受け取った受動光の波面を、前記測定された空気光学的影響と空気熱的影響に対して補正し、
前記1つまたは複数の光学検出器は、前記波面補正されて戻されたレーザエネルギーと波面補正された受け取った受動光の両方を感知して、前記ターゲットの能動画像及び受動画像を形成するように構成されている、
光学センサ。
【請求項14】
前記レーザは、クロックを基準とするタイミングコードを用いてレーザパルスを放射し、
前記波面センサは、空気光学的影響と空気熱的影響を測定するために、短い時間遅延ウィンドウ内にあり、大気の影響を測定して前記能動画像を形成するために、長い時間遅延ウィンドウ内にある、前記クロックを基準とする戻りレーザパルスを検出する、
請求項13に記載の光学センサ。
【請求項15】
超音速飛行体用の光学センサであって、当該光学センサへの光学ウィンドウが、飛行中に空気光学的影響及び空気熱的影響を受け、当該光学センサは、
光学検出器と、
前記光学ウィンドウを通して受け取った光を前記光学検出器に結合する光路と、
前記光路内に配置された微小電気機械システム(MEMS)マイクロミラーアレイ(MMA)と、を備え、前記MMAは、複数のミラーを備え、前記複数のミラーは、コマンド信号に独立的に応答して、それぞれ第1の軸及び第2の軸を中心としてチップ及びチルトし、3自由度(3DOF)で第3の軸に沿って並進してピストン動作して、前記受け取った光の波面を前記光学検出器によって測定された空気光学的影響及び空気熱的影響に対して補正する、
光学センサ。
【請求項16】
ピストンの前記第3の軸に沿った前記並進の範囲が、前記受け取った光の中心波長で1波長を超える、請求項15に記載の光学センサ。
【請求項17】
前記ミラーがチップ及びチルトして局所的な傾斜を制御して収差を低減する、請求項15に記載の光学センサ。
【請求項18】
前記MEMS MMAに対するコマンド信号が、(a)前記超音速飛行体の速度によってインデックス付けされたルックアップテーブル(LUT)、または、(b)前記光学検出器への前記光路に組み込まれていてもいなくてもよく、かつ、前記超音波飛行体上でも前記超音波飛行体外であってもよい波面センサを備えた、連続波(CW)またはパルスレーザによって提供され得る、請求項15に記載の光学センサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の参照)
本出願は、2021年9月27日に提出された米国仮出願第63/248,623号に対する優先権の利益を主張する、2022年4月21日に提出された米国特許出願第17/725,872号に対する優先権の利益を主張するものであり、それらのそれぞれの全内容は、参照により組み込まれる。
【0002】
(技術分野)
本発明は、高解像度の電気光学赤外線(EO/IR)センサを備えた超音速飛行体に搭載された光学感知システムに関し、より具体的には、機体のウィンドウ上またはその直前での空気力学的影響(光学的及び熱的)を感知してそれらの影響を補正するためのシステム及び方法に関する。このシステムは、飛行体とターゲットの間の乱流などの大気の影響を測定して補償するように構成することもできる。
【背景技術】
【0003】
ミサイル、ロケット、誘導発射体、ドローン、有人航空機などの飛行体は、EO/IRセンサを使用して、ターゲット上の目標点を検出、追跡、分類、選択する。センサの視野(FOV)内のターゲットの実際の位置が、EO/IRセンサによって検出されたターゲットの位置に非常に近いことが重要である。センサの光学的に透明なウィンドウ/ドーム上またはその直前での空気力学的影響、またはセンサとターゲット間の大気の影響(例えば、乱流)などの特定の飛行中の条件は、システムのパフォーマンスに影響を与えるターゲットの位置に誤差を引き起こす可能性がある。
【0004】
空気力学的影響には、空気光学的影響と空気熱的影響が含まれる。空気光学的影響は、飛行体の周囲の空気の温度と圧力の違いによる屈折率の変動によって引き起こされ、これは、空気の圧縮や、厚い境界層からの乱流、ドームの物理的な歪み、衝撃波、プラズマ、大気の乱流などの飛行体の周囲の乱流によって引き起こされる可能性がある。これらの屈折率の変化は、波面歪みと呼ばれる波面全体にわたる位相差を生じさせることで、この空気を通過する光に影響を与え、これにより、像面で焦点を結ぶ光が広がり、歪む。波面の歪みにより、EO/IRセンサに入る光の見かけの到達角度も変化する可能性がある。空気熱的影響は、高速で動作する飛行体による空気の圧縮によるウィンドウ/ドーム及び光学システムの加熱によって引き起こされる。ウィンドウが加熱されると、屈折率が変化し、ウィンドウの形状に歪みが生じる。これにより、波面全体に位相差が生じ、像面で焦点を結ぶ光が広がったり歪んだりするため、ウィンドウや光学系を通過する光に影響を及ぼす。ウィンドウの加熱による波面の歪みや形状の歪みも、EO/IRセンサに入る光の見かけの到達角度を変える可能性がある。
【0005】
既存のほとんどの飛行体は、十分な速度(例えば、超音速)で飛行していないか、十分な解像度のEO/IRイメージングシステムを備えていないため、空気力学的または大気の影響が補正を必要とするほど、または全体的なシステム設計においてコスト/体積/重量を正当化するほど重大ではない。いくつかの高速システムでは、機体速度の関数であるルックアップテーブル(LUT)を使用して、読み取られた画像から得られたターゲットデータを検索し、ソフトウェアで補正を適用する。光学システムは、速度の関数として空気光学的影響と空気熱的影響を推定するようにモデル化されている。ソフトウェアソリューションにより、重量、体積、コストが大幅に増加することはない。しかしながら、飛行体の実際の状況と飛行経路は、モデルで表現できるよりも複雑である可能性がある。これにより、ターゲット位置やターゲット速度などのターゲット状態情報の推定品質が低下する可能性がある。結局のところ、LUTは「モデル」であり、測定値ではない。センサの解像度を低下させる光波面歪みの影響は、通常、高速飛行体に搭載されている場合は対処されないため、システムパフォーマンスの誤差バジェット内に収める必要がある。
【発明の概要】
【0006】
以下は、本発明のいくつかの態様の基本的な理解を提供するための、本発明の概要である。この要約は、本発明の重要または重大な要素を特定すること、または本発明の範囲を詳細に描写することを意図していない。その唯一の目的は、本発明のいくつかの概念を、後で提示される、より詳細な説明及び特許請求の範囲の定義の序文として、簡略化された形で提示することである。
【0007】
本発明は、超音速飛行体上のEO/IRセンサのウィンドウ/ドームに対する空気光学的影響及び空気熱的影響を測定及び補正するためのシステム及び方法を提供する。
【0008】
一実施形態では、超音速飛行体用の光学センサであって、センサへの光学ウィンドウが飛行中に空気光学的影響及び空気熱的影響を受ける光学センサは、クロックを基準とするタイミングコードを用いて光学ウィンドウを通してレーザパルスを放射するパルスレーザと、光学ウィンドウ上またはその直前の空気光学的影響及び空気熱的影響を測定するために短い時間遅延ウィンドウ内にある戻りレーザパルスを検出する、クロックを基準とする波面センサと、光学検出器と、光学ウィンドウを通して受け取った光を光学検出器に結合する光路と、光路内に配置された可変形状ミラーであって、ミラーの平面に直交するピストン動作を行うコマンド信号に応答して、測定された空気光学的影響及び空気熱的影響に対して受け取った光の波面を補正する前記可変形状ミラーと、を含む。
【0009】
異なる実施形態では、波面センサは、光学ウィンドウを越えて大気の影響を測定するために、長い時間遅延ウィンドウ内にある戻りレーザパルスを検出する。SNRを改善するために、長い時間遅延ウィンドウに対するパルスを長くすることができる。
【0010】
長い時間遅延ウィンドウ内に戻されたレーザパルスは、ターゲットの位置を特定するために、光学検出器によって補正及び感知され得る(「アクティブイメージング」)。第1の制御アルゴリズム及び制御ループは、空気光学的影響及び空気熱的影響を測定し、遅い更新レートで可変形状ミラーを更新し、第2の制御アルゴリズム及び制御ループは、大気の影響を測定し、速い更新レートで可変形状ミラーを更新する。制御アルゴリズムとループを分離すると、アルゴリズムが簡素化され、パフォーマンスが向上する。
【0011】
異なる実施形態では、可変形状ミラーは、(a)ピストンアクチュエータを備えた単一のミラー、(b)それぞれのピストンアクチュエータを備えた複数のセグメント化されたミラー、または(c)それぞれのチップ、チルト、及びピストンアクチュエータを備えた複数のセグメント化されたミラーのうちの1つである。一構成では、可変形状ミラーは、複数のミラーであって、コマンド信号に独立的に応答して、それぞれ第1の軸及び第2の軸を中心としてチップ及びチルトし、3自由度(3DOF)で第3の軸に沿って並進してピストン動作して波面を補正する、複数のミラーを含む、微小電気機械システム(MEMS)マイクロミラーアレイ(MMA)を備える。このデバイスは、レーザの波長または受け取った光の中心波長で1波長を超えるピストンの第3の軸に沿った並進範囲を可能にする。このデバイスにより、チップ及びチルトして局所的な傾斜を制御して収差を低減できる。
【0012】
異なる実施形態では、可変形状ミラーは、光学ウィンドウの光学的共役位置(波面歪みのソース)またはその近くに(センサ内の実装が許す限り)配置される。複数の可変形状ミラーを、異なる波面歪みのソースの異なる光学的共役位置の近くに配置することができる。第1の可変形状ミラーは光路内の瞳共役位置に配置され、第2の可変形状ミラーは中間像共役位置に配置され得る。
【0013】
一実施形態では、超音速飛行体用の光学センサであって、センサへの光学ウィンドウが飛行中に空気光学的影響及び空気熱的影響を受ける光学センサは、1つまたは複数の光学検出器と、光学ウィンドウを通して戻されたターゲットからの光を光学検出器に結合する光路とを備える。レーザは、レーザエネルギーを結合して光学ウィンドウを通して光路内を伝播させる光路内のビーム結合器に、レーザエネルギーを放射する。光路内の波面センサは、光学ウィンドウ上またはその直前での空気光学的影響及び空気熱的影響を測定するために、戻りレーザエネルギー(ビームスプリッタによって分割される)を検出する。波面センサとレーザの上流の光路に配置された可変形状ミラーは、コマンド信号に応答してミラーの平面に直角にピストン動作し、放射されたレーザエネルギーの波面を補正し、戻されたレーザエネルギー及び受け取った受動光の波面を、測定された空気光学的影響と空気熱的影響に対して補正する。1つまたは複数の光学検出器は、波面補正されて戻されたレーザエネルギーと波面補正された受け取った受動光の両方を感知して、ターゲットの能動画像及び受動画像を形成するように構成されている。一構成では、レーザはクロックを基準とするタイミングコードを用いてレーザパルスを放射し、波面センサは、機体のウィンドウ及び機体のウィンドウ付近の空気光学的影響と空気熱的影響を測定するために、短い時間遅延ウィンドウ内にあるクロックを基準とする戻りレーザパルスを検出する。レーザは長い時間遅延ウィンドウでパルスを放射し、機体のウィンドウを越えた光路からの大気の影響も測定する。一構成では、ジンバルを使用してレーザと光路をポインティングする。
【0014】
一実施形態では、超音速飛行体用の光学センサであって、センサへの光学ウィンドウが飛行中に空気光学的影響及び空気熱的影響を受ける光学センサは、光学検出器と、光学ウィンドウを通して受け取った光を光学検出器に結合する光路と、光路内に配置されたMEMS MMAとを含む。MMAは、複数のミラーであって、コマンド信号に独立的に応答して、それぞれ第1の軸及び第2の軸を中心としてチップ及びチルトし、3自由度(3DOF)で第3の軸に沿って並進してピストン動作して、受け取った光の波面を測定された空気光学的影響及び空気熱的影響に対して補正する、複数のミラーを備える。MMAは、受け取った光の中心波長で1波長を超えるピストンの第3の軸に沿った並進範囲を可能にする。MMAにより、チップ及びチルトして局所的な傾斜を制御して収差を低減できる。MEMS MMAに対するコマンド信号は、(a)速度によってインデックス付けされたLUT、(b)検出器への光路に組み込まれていてもいなくてもよく、かつ、飛行体上でも飛行体外であってもよい波面センサを備えた、CWまたはパルスレーザによって提供される。
【0015】
本発明のこれら及び他の特徴及び利点は、添付の図面と併せた、好ましい実施形態の次の詳細な説明から当業者に明らかとなろう。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】送信ビームが波面測定及び補正、ならびに能動的検出及び受動的検出の両方のソースとして使用される、光学センサである。
図2】超音速飛行体とターゲットとの間の空気力学的影響及び大気の影響を示す図である。
図3】レーザビームが受動検出器の光路に折り返され、レーザ戻りが波面センサに分割され、可変形状ミラーが制御されて能動戻り光または受動光の波面を、空気力学的影響及び大気の影響に対して補正する、簡略化された光学概略図である。
図4】パルスレーザがレンジゲートされ、ウィンドウ/ドーム上またはその直前での空気力学的影響と、機体とターゲットの間の大気の影響を個別に測定する図である。
図5】別個の制御アルゴリズム及び制御ループが、遅い空気力学的影響及びより速い大気の影響にそれぞれ対処するために可変形状ミラーの補正を更新するように構成されている実施形態である。
図6】Aは、チップ/チルト/ピストン(「TTP」)MEMS MMAの既知の実施形態の図であり、Bは、レーザビームを走査及び補正するためにチップ、チルト及びピストンを行うように作動する単一のミラーの既知の実施形態の図である。
図7】MEMS MMAピストンを使用して一次波面補正を実行し、チップ/チルトを使用して局所的な傾斜補正を提供して収差を低減する図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明は、超音速飛行体上のEO/IRセンサのウィンドウ/ドームに対する空気光学的影響及び空気熱的影響を測定及び補正するためのシステム及び方法を提供する。マッハ1を超える飛行速度(超音速)と最新のEO/IRセンサの高解像度では、センサのウィンドウ/ドームに対する空気力学的影響(空気光学的影響及び空気熱的影響)がさらに悪化し、より高解像度のセンサではその影響がさらに問題となる。ウィンドウ/ドームを超えてターゲットまでの大気の影響も、高解像度のセンサに大きな影響を与える。
【0018】
ここで図1及び図2を参照すると、ミサイル、ロケット、発射体などの超音速飛行体10には、ジンバル式光学センサ14が設けられている。ジンバル式光学センサは、レーザビーム16をシーン18に向けて照射し、シーン18は光を反射してレーザ戻り20を生成し、これがセンサの望遠鏡によって収集される。センサの視野(FOV)22内では、受動放射または可視反射24もセンサの望遠鏡によって収集される。ジンバルは、ターゲット28を検出するために、より広い動的視野26にわたってレーザビーム16及びセンサFOV22を走査する。レーザビーム、したがって戻り光は、受動光と同じ帯域にある場合も、異なる帯域にある場合もある。例えば、受動光は近赤外(NIR)帯域の一部に広がっている場合があり、レーザビームはNIR帯域の特定の波長(複数可)の周囲の非常に狭い帯域(数nm)を占める可能性がある。あるいは、受動光がNIR帯域の一部に広がっている場合があり、レーザビームが可視帯域の特定の波長(複数可)周辺の狭い帯域を占める可能性がある。帯域内及び帯域外の能動光と受動光の他の組み合わせも存在する。センサはレーザ戻りを感知しないように構成されていてもよい。
【0019】
波面センサは、光学ウィンドウ/ドーム34上またはその直前での空気光学的影響30及び空気熱的影響32、ならびに場合によってはウィンドウ/ドームを越えてターゲット28までの大気の影響36(例えば、乱流)を測定するために、レーザ戻り20を検出する。光路内に配置された可変形状ミラーは、コマンド信号に応答してミラーの平面に直角にピストン動作し、測定された空気光学的影響及び空気熱的影響、ならびに場合によっては大気の影響に対して受け取った光の波面を補正する。
【0020】
一構成では、レーザはクロックを基準とするタイミングコードを用いてレーザパルスを放射し、波面センサは、空気光学的影響と空気熱的影響を測定するために、短い時間遅延ウィンドウ内にあり、大気の影響を測定して能動画像を形成するために、長い時間遅延ウィンドウ内にある、クロックを基準とする戻りレーザパルスを検出する。一構成では、ジンバルを使用してレーザと光路をポインティングする。
【0021】
一構成では、可変形状ミラーは、コマンド信号に独立的に応答して、それぞれ第1の軸及び第2の軸を中心としてチップ及びチルトし、3自由度(3DOF)で第3の軸に沿って並進してピストン動作して、受け取った光の波面を測定された空気光学的影響及び空気熱的影響に対して補正する複数のミラーを備える、MEMS MMAである。MMAは、レーザの波長または受け取った光の中心波長で1波長を超えるピストンの第3の軸に沿った並進範囲を可能にする。MMAにより、チップ及びチルトして局所的な傾斜を制御して収差を低減できる。
【0022】
ここで図3図4及び図5を参照すると、センサへの光学ウィンドウ/ドーム102が飛行中に空気光学的影響及び空気熱的影響を受ける、超音速飛行体用の光学センサ100の実施形態は、1つまたは複数の光学検出器104と、光学ウィンドウ/ドーム102を通して戻されたターゲットからの光を1つまたは複数の光学検出器に結合する複数の光学素子を含む光路106とを含む。光路は、2軸ジンバルを介して動的視野(FOR)上をポインティングするように適切にルーティングされる。あるいは、飛行体を操縦することによってポインティングを達成することもできる。光路106は、光学ウィンドウ/ドーム102の後ろに位置する集束素子103、視野レンズ光学素子105、及び中間後素子105を検出器104に中継する光学素子107及び109を含む。
【0023】
パルスレーザ108(UV、IR、可視)は、ビーム結合器112を介して光路に結合され、光学ウィンドウ/ドームを通して送信されるレーザパルス110を放射する。レーザパルスは、クロック114を基準とするタイミングコードを含む。クロックを基準とする波面センサ116は、光路内でビームスプリッタ118に対して配置され、光学ウィンドウ上またはその直前での空気光学的影響及び空気熱的影響を測定するために短い時間遅延ウィンドウ120内にある戻りレーザパルスを検出し、ウィンドウ/ドームを越えてターゲットまでの大気の影響を測定するために長い時間遅延ウィンドウ122内にある戻りレーザパルスを検出する。短い時間遅延ウィンドウと長い時間遅延ウィンドウは、レンジゲーティング用のレーザパルス110のより短い往復時間とより長い往復時間にそれぞれ対応する。可変形状ミラー124は、光路内に配置され、ミラーコントローラ126からのコマンド信号に応答してミラーの平面に直角にピストン動作し、測定された空気光学的影響及び空気熱的影響に対して受け取った光の波面を補正する。簡単にするために、可変形状ミラー124は展開された光学レイアウトで描かれている。それはミラーまたはミラー要素を能動的に関節運動させることにより、波面に位相補正を適用できる折り曲げミラーとして機能する。プロセッサ128は、波面測定値を受信し、ミラーコントローラに提供される作動コマンド信号を計算する。
【0024】
異なる実施形態では、可変形状ミラー124は、ウィンドウの光学的共役位置(波面歪みのソース)またはその近くに(センサ内の実装が許す限り)配置される。複数の可変形状ミラー124を、波面歪みの異なるソースの異なる光学的共役位置またはその近くに配置することができる。第1の可変形状ミラーは光路内の瞳共役位置に配置され、第2の可変形状ミラーは中間像共役位置に配置され得る。
【0025】
長い時間遅延ウィンドウ内に戻されたレーザパルスは、ターゲットの位置を特定するために、可変形状ミラーによって補正されて光学検出器によって感知され得る(「アクティブイメージング」)。
【0026】
一実施形態では、ウィンドウ/ドームを通るレーザの単一点測定値を、ウィンドウ/ドーム全体にわたる幾何学的形状、材料、温度勾配、圧縮影響などに基づいてモデルと比較することができる。例えば、あるモデルでは、機体の前縁付近が遠い縁部に比べて熱くなる、ウィンドウの線形加熱を記述する可能性がある。解析モデルは、迎角と大気条件を仮定して、高速飛行中のウィンドウの加熱を予測できる。特定の時点でウィンドウを通る波面を直接測定することで、これをモデルと比較して、どの条件がウィンドウのこの部分を通るこの波面(熱変動)を作成するかを判断し、その結果、ウィンドウ上の光フットプリントの外側の他の場所にあるウィンドウの温度と形状を予測することができる。
【0027】
ここで図5を参照すると、第1の制御ループ140は、空気光学的影響及び空気熱的影響の短い時間遅延ウィンドウの測定値を受信し(141)、遅い更新レートで空気力学的影響の制御アルゴリズムを適用して波形共役を計算し(142)、コマンド信号を更新して可変形状ミラーを遅い更新レートで作動させ(143)、第2の制御ループ145は、大気の影響の長い時間遅延ウィンドウの測定値を受信し(146)、速い更新レートで空気力学的影響の制御アルゴリズムを適用して波形共役を計算し(147)、コマンド信号を更新して可変形状ミラーを速い更新レートで作動させる(148)。制御アルゴリズムとループを分離すると、アルゴリズムが簡素化され、パフォーマンスが向上する。制御アルゴリズムの一方または両方は、例えば、比例積分微分(PID)制御ループアルゴリズムであってもよい。
【0028】
更新レートの速度は、時間に対する波面の歪みの相対的な変化を指す。波面歪みが航空機のEO/IRシステムのパフォーマンスに影響を与える場合、変化はさまざまな時間スケールで発生する。ウィンドウの空気力学的な加熱は数秒間にわたって発生し得る。ウィンドウ表面の空気力学的加熱と変形により、加熱速度とウィンドウを通るセンサの視野角の変化速度に応じて変化する対応する光路差が生じる。他の収差は比較的急速に変化する可能性がある。具体的には、乱流内の空気には、流れの速度に応じて非常に急速に変化する密度と温度の変動がある可能性がある。より大きな程度のゆっくりと変化する光路歪み(例えば、空気力学的影響)に応答する比較的遅い光学補正ループと、より小さな程度の高速変化する光路歪み(例えば、大気の影響)に応答する高速光学補正ループを有することが有利となり得る。これにより、可変形状ミラーやMMAなどの補正コンポーネントの時間帯域幅と光路差のダイナミックレンジを、光学歪みを引き起こす物理プロセスと一致させることができる。
【0029】
異なる実施形態では、可変形状ミラーは、(a)ピストンアクチュエータを備えた単一のミラー、(b)それぞれのピストンアクチュエータを備えた複数のセグメント化されたミラー、または(c)それぞれのチップ、チルト、及びピストンアクチュエータを備えた複数のセグメント化されたミラーのうちの1つである。一構成では、可変形状ミラーは、コマンド信号に独立的に応答して、それぞれ第1の軸及び第2の軸を中心としてチップ及びチルトし、3自由度(3DOF)で第3の軸に沿って並進してピストン動作して、受信した光の波面を測定された空気光学的影響及び空気熱的影響に対して補正する複数のミラーを含む、MEMS MMAを備える。このデバイスは、レーザの波長または受け取った光の中心波長で1波長を超えるピストンの第3の軸に沿った並進範囲を可能にする。このデバイスにより、チップ及びチルトして局所的な傾斜を制御して収差を低減できる。
【0030】
図6A図6Bに最もよく示されているように、例示的なMEMS MMA150は、3DOFで光の方向を変えるための複数の独立的かつ連続的に制御可能なミラー152を備える。各ミラーは少なくとも「チップ」(X軸を中心とした回転)、「チルト」(Y軸を中心とした回転)、及び「ピストン」(XY平面に垂直なZ軸に沿った並進)が可能であり、ここで、X、Y、Zは3次元空間の直交軸である。
【0031】
MEMS MMAは、好ましくは、少なくとも-15°×+15°の範囲でチップ及びチルトして+/-30°×30°の範囲で操縦し、少なくとも+/-15ミクロン(いずれかの方向に少なくとも1/2波長)のピストンを、少なくとも1KHz(<1ミリ秒)の速度でピストン動作(並進動作)することができる。さらに、MEMS MMAは、十分な数のミラー、ミラーのサイズ/解像度、フィルファクタ、動作範囲、応答時間、応答精度、及びアレイ全体にわたる均一性を備えていなければならない。
【0032】
そのようなMEMS MMAの1つは、「Flexure-Based, Tip-Tilt-Piston Actuation Micro-Array」と題する米国特許第10,444,492号に記載されており、これは参照により本明細書に組み込まれる。該492号特許の図1~3に示されているように、このMEMS MMAは、たわみ部154を使用して、正三角形の3つの支点(または頂点)で各ミラー152を支持している。3つの異なる支点のペアにより、XY平面内で互いに60度の3つの軸が画定される。各ミラーは、アクチュエータ156に応答して、XYZ空間内でチップ、チルト、及びピストンを行うために各軸を中心として旋回する。このMEMS MMAは現在、「光をデジタルで制御する」ためにBright Siliconテクノロジーにより商品化されている。
【0033】
図7に示すように、ミラー152は、アレイの平面に対して垂直に並進してピストンを行い(158)、光(レーザパルスまたは受動的に受け取った光)の波面160を補正する。ミラーは、チップ/チルトして隣接するミラー間の不連続性から生じる収差を低減するために局所的な傾斜を提供することもできる。
【0034】
本発明の幾つかの例示的な実施形態が示され説明されたが、当業者は多数の変形例及び代替の実施形態を考えつくであろう。そのような変形例及び代替の実施形態が企図されており、添付の特許請求の範囲に定義されるような本発明の趣旨及び範囲から逸脱することなく作られ得る。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
【国際調査報告】