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特表2024-538581量子コンピュータ上で目的ハミルトニアンの固有状態を準備するための方法およびシステム
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  • 特表-量子コンピュータ上で目的ハミルトニアンの固有状態を準備するための方法およびシステム 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-10-23
(54)【発明の名称】量子コンピュータ上で目的ハミルトニアンの固有状態を準備するための方法およびシステム
(51)【国際特許分類】
   G06N 10/20 20220101AFI20241016BHJP
【FI】
G06N10/20
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024518831
(86)(22)【出願日】2022-09-28
(85)【翻訳文提出日】2024-05-27
(86)【国際出願番号】 IB2022059253
(87)【国際公開番号】W WO2023053035
(87)【国際公開日】2023-04-06
(31)【優先権主張番号】63/249,804
(32)【優先日】2021-09-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.FRAM
(71)【出願人】
【識別番号】521227414
【氏名又は名称】ワンキュービー インフォメーション テクノロジーズ インク.
(74)【代理人】
【識別番号】110003797
【氏名又は名称】弁理士法人清原国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ルミュー,ジェシカ
(72)【発明者】
【氏名】シェーラー,アルトゥール
(72)【発明者】
【氏名】ロナウ,プーヤ
(57)【要約】
【解決手段】非古典コンピュータを用いて目的ハミルトニアンの固有状態を準備するための方法およびシステムを開示する。本方法は、初期ハミルトニアンと目的ハミルトニアンの間の反射経路を得ること、反射経路に沿った反射のシーケンスを得るために1つ以上の目的固有状態を用いること、および前記反射経路に沿った反射のシーケンスを実行するために非古典コンピュータを用いることを含んでもよい。本システムは、量子コンピュータと、デジタルコンピュータと、量子コンピュータに命令を与えるため、および量子コンピュータからの量子測定結果を得るための通信インタフェースとからなってもよい。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
非古典コンピュータを用いて目的ハミルトニアンの固有状態を準備するための方法であって、
(a)初期ハミルトニアンと目的ハミルトニアンの間の反射経路を得ること、
(b)前記反射経路に沿った反射のシーケンスを得るために1つ以上の目的固有状態を用いること、および
(c)前記反射経路に沿った前記反射のシーケンスを実行するために非古典コンピュータを用いること
を含む方法。
【請求項2】
前記非古典コンピュータが、量子コンピュータである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
(a)の前に、前記方法が、前記量子コンピュータ上で前記初期ハミルトニアンの固有状態を準備することを含み、前記固有状態が、前記1つ以上の目的固有状態と直交していない、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
(c)の次に、前記方法が、前記量子コンピュータにおいて、前記目的ハミルトニアンの固有基底における測定を行うことを含み、任意選択で、前記目的ハミルトニアンの前記固有基底における前記測定を、前記1つ以上の目的固有状態が達成されていることを確認するために行う、請求項2に記載の方法。
【請求項5】
前記測定が、量子測定である、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記方法が、前記1つ以上の目的固有状態の重ね合せの表示を得ることをさらに含む、請求項4に記載の方法。
【請求項7】
前記1つ以上の目的固有状態の表示が、エネルギー間隔、最低エネルギーを有する複数の固有状態を表す整数、最高エネルギーを有する複数の固有状態を表す整数、ラベル、および目的固有状態を示す2変数関数のうちの少なくとも1つを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
(c)が、前記量子コンピュータにおいて、複数のゲート操作を用いて前記反射のシーケンスを実行することを含む、請求項2に記載の方法。
【請求項9】
前記複数のゲート操作が、位相キックバックを含む、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記複数のゲート操作が、エネルギー比較を含む、請求項8に記載の方法。
【請求項11】
(c)が、前記量子コンピュータにおいて、エネルギー測定を行わずに量子位相推定を行うことを含む、請求項2に記載の方法。
【請求項12】
(c)が、量子ビット化、量子信号処理、および部分エネルギー測定のうちの少なくとも1つを行うことを含む、請求項10に記載の方法。
【請求項13】
前記量子測定が、量子ビット化、量子信号処理、および部分エネルギー測定のうちの少なくとも1つを含む、請求項5に記載の方法。
【請求項14】
前記量子コンピュータが、回路ベースの量子コンピュータ、超伝導量子コンピュータ、イオントラップ型量子コンピュータ、量子ドットコンピュータ、光量子コンピュータ、核磁気共鳴(NMR)量子コンピュータ、固体NMR Kane型量子コンピュータ、ヘリウム上の電子による量子コンピュータ、キャビティ量子電磁力学ベースの量子コンピュータ、分子磁石ベースの量子コンピュータ、フラーレンベースのESR量子コンピュータ、ダイヤモンドベースの量子コンピュータ、ボーズ・アインシュタイン凝縮体ベースの量子コンピュータ、トランジスタベースの量子コンピュータ、希土類金属イオンドープ無機結晶ベースの量子コンピュータ、および金属様カーボンナノスフィアベースの量子コンピュータからなる群のうち少なくとも1つのメンバを含む、請求項2に記載の方法。
【請求項15】
(a)~(c)が、少なくとも1回繰り返される、請求項1に記載の方法。
【請求項16】
(a)~(c)と前記量子コンピュータ上で前記初期ハミルトニアンの前記固有状態を前記準備することとが、少なくとも1回繰り返される、請求項3に記載の方法。
【請求項17】
(a)~(c)と前記目的ハミルトニアンの固有基底における前記測定を前記行うこととが、少なくとも1回繰り返される、請求項4に記載の方法。
【請求項18】
(a)~(c)と前記1つ以上の目的固有状態の重ね合せの表示を前記得ることとが、少なくとも1回繰り返される、請求項6に記載の方法。
【請求項19】
(a)が、ユーザから前記反射経路を受信することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項20】
(b)が、ユーザから前記反射のシーケンスを受信することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項21】
(b)が、前記反射のシーケンスを得るために最適化プロトコルを用いることを含み、前記最適化プロトコルが、勾配ベースの最適化手順およびDFO(derivative free optimization)手順からなる群のうちの少なくとも1つのメンバを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項22】
(b)が、前記反射のシーケンスを得るために最適化プロトコルを用いることを含み、前記最適化プロトコルが、勾配降下法、確率的勾配降下法、最急降下法、ベイズ最適化法、ランダム探索法、および局所探索法からなる群より選択される少なくとも1つの方法に少なくとも部分的に基づいている、請求項1に記載の方法。
【請求項23】
(b)が、前記反射のシーケンスを得るために機械学習手法を用いることを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項24】
(a)もしくは(b)または両方が、前記反射のシーケンス、前記反射経路、または両方を得るために事前情報を用いることを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項25】
(a)が、前記反射経路を得るために断熱性経路を用いることを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項26】
前記目的ハミルトニアンが、最適化問題、kSAT問題、スピングラス問題、および二次制約なし二値最適化問題からなる群のうちの少なくとも1つのメンバを表す、請求項1に記載の方法。
【請求項27】
前記目的ハミルトニアンが、量子多体系、フェルミオン系、およびボソン系のうちの少なくとも1つを表す、請求項1に記載の方法。
【請求項28】
前記目的ハミルトニアンが、少なくとも1つの制約を有する最適化問題を表す、請求項1に記載の方法。
【請求項29】
前記初期ハミルトニアンの前記固有状態が、前記初期ハミルトニアンの基底状態であり、前記基底状態が、前記最適化問題の前記少なくとも1つの制約を表す領域を定義する、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
非古典コンピュータ上で前記初期ハミルトニアンの前記固有状態を前記準備することが、ユニタリ分解から前記固有状態を構築することを含む、請求項3に記載の方法。
【請求項31】
(c)が、前記非古典コンピュータに1つ以上の命令を出すために前記非古典コンピュータに動作可能に接続された古典コンピューティングシステムを用いることを含み、前記1つ以上の命令が、前記反射経路に沿った前記反射のシーケンスを実行するよう構成されている、請求項1に記載の方法。
【請求項32】
(a)の前に、前記方法が、前記目的ハミルトニアンの表示と、前記1つ以上の目的固有状態の表示とを得ることを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項33】
(a)の前に、前記方法が、前記初期ハミルトニアンの表示を得ることを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項34】
前記初期ハミルトニアンの表示が、最適化問題のドメインを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項35】
量子コンピュータ上で目的ハミルトニアンの固有状態を準備するためのシステムであって、
前記量子コンピュータに命令を与えるため、および量子測定結果を得るための通信インタフェースと、
インタフェース、およびプロセッサに動作可能に結合された非一時的なコンピュータ読取り可能な媒体を含むデジタルコンピュータであって、前記非一時的なコンピュータ読取り可能な媒体が命令を含み、前記プロセッサが、前記命令を実行するよう構成されており、前記命令が、少なくとも
(a)初期ハミルトニアンと目的ハミルトニアンの間の反射経路を得、
(b)前記反射経路に沿った反射のシーケンスを得るために1つ以上の固有状態を用い、
(c)前記通信インタフェースを用いて、前記反射経路に沿った反射のシーケンスを実行する命令を前記量子コンピュータに与える命令である、デジタルコンピュータと
を含むシステム。
【請求項36】
非古典コンピュータが、量子コンピュータである、請求項35に記載のシステム。
【請求項37】
前記プロセッサが、前記量子コンピュータ上で前記初期ハミルトニアンの固有状態を準備するために前記命令を実行するよう構成されており、前記固有状態が、1つ以上の目的固有状態と直交していない、請求項36に記載のシステム。
【請求項38】
前記量子コンピュータが、前記目的ハミルトニアンの固有基底における測定を行うよう構成されており、任意選択で、前記目的ハミルトニアンの前記固有基底における前記測定を、1つ以上の目的固有状態が達成されていることを確認するために行う、請求項36に記載のシステム。
【請求項39】
前記測定が、量子測定である、請求項38に記載のシステム。
【請求項40】
前記プロセッサが、前記1つ以上の目的固有状態の重ね合せの表示を得るために前記命令を実行するよう構成されている、請求項38に記載のシステム。
【請求項41】
1つ以上の目的固有状態の表示が、エネルギー間隔、最低エネルギーを有する複数の固有状態を表す整数、最高エネルギーを有する複数の固有状態を表す整数、ラベル、および目的固有状態を示す2変数関数のうちの少なくとも1つを含む、請求項35に記載のシステム。
【請求項42】
前記量子コンピュータが、複数のゲート操作を用いて前記反射のシーケンスを実行するよう構成されている、請求項36に記載のシステム。
【請求項43】
前記複数のゲート操作が、位相キックバックを含む、請求項42に記載のシステム。
【請求項44】
前記複数のゲート操作が、エネルギー比較を含む、請求項42に記載のシステム。
【請求項45】
(c)が、前記量子コンピュータにエネルギー測定を行わずに量子位相推定を行うよう指示する命令を含む、請求項36に記載のシステム。
【請求項46】
(c)が、前記量子コンピュータに量子ビット化、量子信号処理、および部分エネルギー測定のうちの少なくとも1つを行うよう指示する命令を含む、請求項36に記載のシステム。
【請求項47】
前記量子測定が、量子ビット化、量子信号処理、および部分エネルギー測定のうちの少なくとも1つを行うことを含む、請求項45に記載のシステム。
【請求項48】
前記量子コンピュータが、回路ベースの量子コンピュータ、超伝導量子コンピュータ、イオントラップ型量子コンピュータ、量子ドットコンピュータ、光量子コンピュータ、核磁気共鳴(NMR)量子コンピュータ、固体NMR Kane型量子コンピュータ、ヘリウム上の電子による量子コンピュータ、キャビティ量子電磁力学ベースの量子コンピュータ、分子磁石ベースの量子コンピュータ、フラーレンベースのESR量子コンピュータ、ダイヤモンドベースの量子コンピュータ、ボーズ・アインシュタイン凝縮体ベースの量子コンピュータ、トランジスタベースの量子コンピュータ、希土類金属イオンドープ無機結晶ベースの量子コンピュータ、および金属様カーボンナノスフィアベースの量子コンピュータからなる群のうち少なくとも1つのメンバを含む、請求項36に記載のシステム。
【請求項49】
前記プロセッサが、(a)~(c)を行う前記命令を少なくとも1回繰り返すようさらに構成されている、請求項35に記載のシステム。
【請求項50】
前記プロセッサが、(a)~(c)を行う前記命令と前記量子コンピュータ上で前記初期ハミルトニアンの前記固有状態を準備することとを少なくとも1回繰り返すようさらに構成されている、請求項37に記載のシステム。
【請求項51】
前記プロセッサが、(a)~(c)を行う前記命令と前記目的ハミルトニアンの前記固有基底における前記測定を行うこととを少なくとも1回繰り返すようさらに構成されている、請求項38に記載のシステム。
【請求項52】
前記プロセッサが、(a)~(c)を行う前記命令と前記1つ以上の目的固有状態の前記重ね合せの前記表示を得ることとを少なくとも1回繰り返すようさらに構成されている、請求項40に記載のシステム。
【請求項53】
前記プロセッサが、ユーザから前記反射経路を受信するようさらに構成されている、請求項35に記載のシステム。
【請求項54】
前記プロセッサが、ユーザから前記反射のシーケンスを受信するようさらに構成されている、請求項35に記載のシステム。
【請求項55】
前記プロセッサが、前記反射のシーケンスを得るために最適化プロトコルを用いるようさらに構成されており、前記最適化プロトコルが、勾配ベースの最適化手順、DFO(derivative free optimization)手順からなる群のうちの少なくとも1つのメンバを含む、請求項35に記載のシステム。
【請求項56】
前記プロセッサが、前記反射のシーケンスを得るために最適化プロトコルを用いるようさらに構成されており、前記最適化プロトコルが、勾配降下法、確率的勾配降下法、最急降下法、ベイズ最適化法、ランダム探索法、および局所探索法からなる群より選択される少なくとも1つの方法に少なくとも部分的に基づいている、請求項35に記載のシステム。
【請求項57】
前記プロセッサが、前記反射のシーケンスを得るために機械学習手法を用いるようさらに構成されている、請求項35に記載のシステム。
【請求項58】
前記反射のシーケンスおよび前記反射経路のうちの少なくとも一方が、事前情報を用いて得られる、請求項35に記載のシステム。
【請求項59】
前記反射経路が、断熱性経路を用いて得られる、請求項35に記載のシステム。
【請求項60】
前記目的ハミルトニアンが、最適化問題、kSAT問題、スピングラス問題、および二次制約なし二値最適化問題からなる群のうちの少なくとも1つのメンバを表す、請求項35に記載のシステム。
【請求項61】
前記目的ハミルトニアンが、量子多体系、フェルミオン系、およびボソン系のうちの少なくとも1つを表す、請求項35に記載のシステム。
【請求項62】
前記目的ハミルトニアンが、少なくとも1つの制約を有する最適化問題を表す、請求項35に記載のシステム。
【請求項63】
前記初期ハミルトニアンの前記固有状態が、前記初期ハミルトニアンの基底状態であり、前記基底状態が、前記最適化問題の前記少なくとも1つの制約を表す領域を定義する、請求項62に記載のシステム。
【請求項64】
前記プロセッサが、ユニタリ分解から前記固有状態を構築するようさらに構成されている、請求項37に記載のシステム。
【請求項65】
(a)の前に、前記プロセッサが、前記目的ハミルトニアンの表示と、1つ以上の目的固有状態の表示とを得るようさらに構成されている、請求項35に記載のシステム。
【請求項66】
(a)の前に、前記プロセッサが、前記初期ハミルトニアンの表示を得るようさらに構成されている、請求項35に記載のシステム。
【請求項67】
前記初期ハミルトニアンの表示が、最適化問題のドメインを含む、請求項1に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
相互参照
本出願は、2021年9月29日出願の米国仮出願第63/249,804号の利益を主張するものであり、当該文献は、参照により全体として本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
量子コンピュータは典型的に、重ね合せおよびもつれなどの量子力学的現象を利用することで、データを表す量子系上の演算を行う。量子系のハミルトニアンは、該系の合計エネルギーに対応する演算子である。ハミルトニアンは、合計エネルギーレベルに対応する固有状態を有する。量子コンピュータを用いて解くべき問題に対する解法を見つけるためには、正確かつ効率的に固有状態を準備することが有利であり得る。とは言え、古典および量子ハミルトニアンの両方の固有状態の準備は、例えば、古典または非古典目的関数によりNP困難な最適化問題を解くこと、ならびに、化学および材料科学における分子の電子構造量子シミュレーションなどの用途を含む様々な分野において有用であり得る。
【発明の概要】
【0003】
本開示は、量子コンピュータ上で目的ハミルトニアンの固有状態を準備するための方法およびシステムを提供する。本開示は、量子装置を有利に用いることにより、少なくともいくつかの態様において固有状態の準備のための既存の方法を改良してもよい。
【0004】
本開示のシステムおよび方法は、以下の利点のうちの少なくともいくつかを提供する。いくつかの場合、本明細書中で開示される方法およびシステムは、回路ベースの量子コンピューティングにおいて用いてもよく、かつ、スケーラビリティ向上を可能とし得る量子誤り訂正を用いてもよいという利点がある。いくつかの場合、本明細書中で開示される方法およびシステムは、量子ゲートに対するものより誤りが大きく、時間が長い可能性がある中間射影測定を回避し得るという別の利点がある。いくつかの場合、本明細書中で開示される方法およびシステムは、問題のタイプに対して課される制約がより少ないかもしれないという別の利点がある。例えば、非縮退または詳細釣り合い条件を保証する必要性が低減する可能性がある。いくつかの場合、本明細書中で開示される方法およびシステムは、システムの開始状態と準備すべき目的の状態との著しい重複が必要とされないかもしれないという別の利点がある。例えば、重複は、単にゼロでなければよい。いくつかの場合、本明細書中で開示される方法およびシステムは、例えば、量子ビット化などの類似の文脈において複数のツールが統合可能なように、設定がフレキシブルであってもよいという別の利点がある。本明細書中で開示される方法およびシステムは、アルゴリズムのヒューリスティックな実装を容易に、かつ効率よく行うことを可能とするかもしれない。いくつかの場合、本明細書中で開示される方法およびシステムは、既存の方法のいくつかにおいて用いられる射影測定とは対照的に、反射が決定性のものである可能性があるという別の利点がある。いくつかの場合、本明細書中で開示される方法およびシステムは、問題の構造を利用できるかもしれないという別の利点がある。いくつかの場合、本明細書中で開示される方法およびシステムは、反射の数が増えるにつれて、成功確率が高まる可能性があるという別の利点がある。例えば、成功確率は、例えばグローバーのアルゴリズムとは対照的に、周期的でないかもしれない。NP困難な問題を解くのに必要な反射数の平均は、既存の方法と比べて少なくなるかもしれない。
【0005】
ある態様において、本開示は、非古典コンピュータを用いて目的ハミルトニアンの固有状態を準備するための方法を提供する。本方法は、(a)初期ハミルトニアンと目的ハミルトニアンの間の反射経路を得ること、(b)前記反射経路に沿った反射のシーケンスを得るために1つ以上の目的固有状態を用いること、および(c)前記反射経路に沿った前記反射のシーケンスを実行するために非古典コンピュータを用いることを含んでもよい。
【0006】
いくつかの実施形態において、前記非古典コンピュータは、量子コンピュータである。いくつかの実施形態において、(a)の前に、本方法は、前記量子コンピュータ上で前記初期ハミルトニアンの固有状態を準備することを含み、前記固有状態が、前記1つ以上の目的固有状態と直交していない。いくつかの実施形態において、(c)の次に、本方法は、前記量子コンピュータにおいて、前記目的ハミルトニアンの固有基底における測定を行うことを含み、任意選択で、前記目的ハミルトニアンの前記固有基底における前記測定を、前記1つ以上の目的固有状態が達成されていることを確認するために行う。いくつかの実施形態において、前記測定は、量子測定である。いくつかの実施形態において、本方法は、前記1つ以上の目的固有状態の重ね合せの表示を得ることをさらに含む。いくつかの実施形態において、前記1つ以上の目的固有状態の前記表示は、エネルギー間隔、最低エネルギーを有する複数の固有状態を表す整数、最高エネルギーを有する複数の固有状態を表す整数、ラベル、および目的固有状態を示す2変数関数のうちの少なくとも1つを含む。
【0007】
いくつかの実施形態において、(c)は、前記量子コンピュータにおいて、複数のゲート操作を用いて前記反射のシーケンスを実行することを含む。いくつかの実施形態において、前記複数のゲート操作は、位相キックバックを含む。いくつかの実施形態において、前記複数のゲート操作は、エネルギー比較を含む。いくつかの実施形態において、(c)は、前記量子コンピュータにおいて、エネルギー測定を行わずに量子位相推定を行うことを含む。いくつかの実施形態において、(c)は、前記量子コンピュータにおいて、量子ビット化、量子信号処理、および部分エネルギー測定のうちの少なくとも1つを行うことを含む。いくつかの実施形態において、前記量子測定は、量子ビット化、量子信号処理、および部分エネルギー測定のうちの少なくとも1つを行うことを含む。
【0008】
いくつかの実施形態において、前記量子コンピュータは、回路ベースの量子コンピュータ、超伝導量子コンピュータ、イオントラップ型量子コンピュータ、量子ドットコンピュータ、光量子コンピュータ、核磁気共鳴(NMR)量子コンピュータ、固体NMR Kane型量子コンピュータ、ヘリウム上の電子による量子コンピュータ、キャビティ量子電磁力学ベースの量子コンピュータ、分子磁石ベースの量子コンピュータ、フラーレンベースのESR量子コンピュータ、ダイヤモンドベースの量子コンピュータ、ボーズ・アインシュタイン凝縮体ベースの量子コンピュータ、トランジスタベースの量子コンピュータ、希土類金属イオンドープ無機結晶ベースの量子コンピュータ、および金属様カーボンナノスフィアベースの量子コンピュータからなる群のうち少なくとも1つのメンバを含む。
【0009】
いくつかの実施形態において、(a)~(c)は、少なくとも1回繰り返される。いくつかの実施形態において、(a)~(c)と前記量子コンピュータ上で前記初期ハミルトニアンの前記固有状態を前記準備することとは、少なくとも1回繰り返される。いくつかの実施形態において、(a)~(c)と前記目的ハミルトニアンの固有基底における前記測定を前記行うこととは、少なくとも1回繰り返される。いくつかの実施形態において、(a)~(c)と前記1つ以上の目的固有状態の重ね合せの表示を前記提供することとは、少なくとも1回繰り返される。いくつかの実施形態において、(a)は、ユーザから前記反射経路を受信することを含む。いくつかの実施形態において、(b)は、ユーザから前記反射のシーケンスを受信することを含む。いくつかの実施形態において、(b)は、前記反射のシーケンスを得るために最適化プロトコルを用いることを含み、前記最適化プロトコルが、勾配ベースの最適化手順およびDFO(derivative free optimization)手順からなる群のうちの少なくとも1つのメンバを含む。
【0010】
いくつかの実施形態において、(b)は、前記反射のシーケンスを得るために最適化プロトコルを用いることを含み、前記最適化プロトコルが、勾配降下法、確率的勾配降下法、最急降下法、ベイズ最適化法、ランダム探索法、および局所探索法からなる群より選択される少なくとも1つの方法に少なくとも部分的に基づいている。いくつかの実施形態において、(b)は、前記反射のシーケンスを得るために機械学習手法を用いることを含む。いくつかの実施形態において、(a)もしくは(b)または両方は、前記反射のシーケンス、前記反射経路、または両方を得るために事前情報を用いることを含む。いくつかの実施形態において、(a)は、前記反射経路を得るために断熱性経路を用いることを含む。いくつかの実施形態において、前記目的ハミルトニアンは、最適化問題、kSAT問題、スピングラス問題、および二次制約なし二値最適化問題からなる群のうちの少なくとも1つのメンバを表す。
【0011】
いくつかの実施形態において、前記目的ハミルトニアンは、量子多体系、フェルミオン系、およびボソン系のうちの少なくとも1つを表す。いくつかの実施形態において、前記目的ハミルトニアンは、少なくとも1つの制約を有する最適化問題を表す。いくつかの実施形態において、前記初期ハミルトニアンの前記固有状態は、前記初期ハミルトニアンの基底状態であり、前記基底状態が、前記最適化問題の前記少なくとも1つの制約を表す領域を定義する。いくつかの実施形態において、非古典コンピュータ上で前記初期ハミルトニアンの固有状態を前記準備することは、ユニタリ分解から前記固有状態を構築することを含む。いくつかの実施形態において、(c)は、前記非古典コンピュータに1つ以上の命令を出すために前記非古典コンピュータに動作可能に接続された古典コンピューティングシステムを用いることを含み、前記1つ以上の命令が、前記反射経路に沿った前記反射のシーケンスを実行するよう構成されている。いくつかの実施形態において、(a)の前に、本方法は、前記目的ハミルトニアンの表示と、前記1つ以上の目的固有状態の表示とを得ることを含む。いくつかの実施形態において、(a)の前に、本方法は、前記初期ハミルトニアンの表示を得ることを含む。いくつかの実施形態において、前記初期ハミルトニアンの前記表示は、最適化問題のドメインを含む。
【0012】
別の態様において、本開示は、量子コンピュータ上で目的ハミルトニアンの固有状態を準備するためのシステムを提供する。本システムは、前記量子コンピュータに命令を与えるため、および量子測定結果を得るための通信インタフェースと、インタフェース、およびプロセッサに動作可能に結合された非一時的なコンピュータ読取り可能な媒体を含むデジタルコンピュータであって、前記非一時的なコンピュータ読取り可能な媒体が命令を含み、前記プロセッサが、前記命令を実行するよう構成されており、前記命令が、少なくとも(a)初期ハミルトニアンと目的ハミルトニアンの間の反射経路を得、(b)前記反射経路に沿った反射のシーケンスを得るために1つ以上の固有状態を用い、(c)前記通信インタフェースを用いて、前記反射経路に沿った反射のシーケンスを実行する命令を前記量子コンピュータに与える命令である、デジタルコンピュータとを含む。
【0013】
いくつかの実施形態において、前記非古典コンピュータは、量子コンピュータである。いくつかの実施形態において、前記プロセッサは、前記量子コンピュータ上で前記初期ハミルトニアンの固有状態を準備するために前記命令を実行するよう構成されており、前記固有状態は、前記1つ以上の目的固有状態と直交していない。いくつかの実施形態において、前記量子コンピュータは、前記目的ハミルトニアンの固有基底における測定を行うよう構成されており、任意選択で、前記目的ハミルトニアンの前記固有基底における前記測定を、前記1つ以上の目的固有状態が達成されていることを確認するために行う。いくつかの実施形態において、前記測定は、量子測定である。いくつかの実施形態において、前記プロセッサは、前記1つ以上の目的固有状態の重ね合せの表示を得るために前記命令を実行するよう構成されている。いくつかの実施形態において、前記1つ以上の目的固有状態の前記表示は、エネルギー間隔、最低エネルギーを有する複数の固有状態を表す整数、最高エネルギーを有する複数の固有状態を表す整数、ラベル、および目的固有状態を示す2変数関数のうちの少なくとも1つを含む。
【0014】
いくつかの実施形態において、前記量子コンピュータは、複数のゲート操作を用いて前記反射のシーケンスを実行するよう構成されている。いくつかの実施形態において、前記複数のゲート操作は、位相キックバックを含む。いくつかの実施形態において、前記複数のゲート操作は、エネルギー比較を含む。いくつかの実施形態において、(c)は、前記量子コンピュータにエネルギー測定を行わずに量子位相推定を行うよう指示する命令を含む。いくつかの実施形態において、(c)は、前記量子コンピュータに量子ビット化、量子信号処理、および部分エネルギー測定のうちの少なくとも1つを行うよう指示する命令を含む。いくつかの実施形態において、前記量子測定は、量子ビット化、量子信号処理、および部分エネルギー測定のうちの少なくとも1つを行うことを含む。
【0015】
いくつかの実施形態において、前記量子コンピュータは、回路ベースの量子コンピュータ、超伝導量子コンピュータ、イオントラップ型量子コンピュータ、量子ドットコンピュータ、光量子コンピュータ、核磁気共鳴(NMR)量子コンピュータ、固体NMR Kane型量子コンピュータ、ヘリウム上の電子による量子コンピュータ、キャビティ量子電磁力学ベースの量子コンピュータ、分子磁石ベースの量子コンピュータ、フラーレンベースのESR量子コンピュータ、ダイヤモンドベースの量子コンピュータ、ボーズ・アインシュタイン凝縮体ベースの量子コンピュータ、トランジスタベースの量子コンピュータ、希土類金属イオンドープ無機結晶ベースの量子コンピュータ、および金属様カーボンナノスフィアベースの量子コンピュータからなる群のうち少なくとも1つのメンバを含む。
【0016】
いくつかの実施形態において、前記プロセッサは、(a)~(c)を行う前記命令を少なくとも1回繰り返すようさらに構成されている。いくつかの実施形態において、前記プロセッサは、(a)~(c)を行う前記命令と前記量子コンピュータ上で前記初期ハミルトニアンの前記固有状態を準備することとを少なくとも1回繰り返すようさらに構成されている。いくつかの実施形態において、前記プロセッサは、(a)~(c)を行う前記命令と前記目的ハミルトニアンの固有基底における前記測定を行うこととを少なくとも1回繰り返すようさらに構成されている。いくつかの実施形態において、前記プロセッサは、(a)~(c)を行う前記命令と前記1つ以上の目的固有状態の重ね合せの表示を得ることとを少なくとも1回繰り返すようさらに構成されている。いくつかの実施形態において、前記プロセッサは、ユーザから前記反射経路を受信するようさらに構成されている。いくつかの実施形態において、前記プロセッサは、ユーザから前記反射のシーケンスを受信するようさらに構成されている。いくつかの実施形態において、前記プロセッサは、前記反射のシーケンスを得るために最適化プロトコルを用いるようさらに構成されており、前記最適化プロトコルは、勾配ベースの最適化手順、DFO(derivative free optimization)手順からなる群のうちの少なくとも1つのメンバを含む。
【0017】
いくつかの実施形態において、前記プロセッサは、前記反射のシーケンスを得るために最適化プロトコルを用いるようさらに構成されており、前記最適化プロトコルは、勾配降下法、確率的勾配降下法、最急降下法、ベイズ最適化法、ランダム探索法、および局所探索法からなる群より選択される少なくとも1つの方法に少なくとも部分的に基づいている。いくつかの実施形態において、前記プロセッサは、前記反射のシーケンスを得るために機械学習手法を用いるようさらに構成されている。いくつかの実施形態において、前記反射のシーケンスおよび前記反射経路のうちの少なくとも一方は、事前情報を用いて得られる。いくつかの実施形態において、前記反射経路は、断熱性経路を用いて得られる。いくつかの実施形態において、前記目的ハミルトニアンは、最適化問題、kSAT問題、スピングラス問題、および二次制約なし二値最適化問題からなる群のうちの少なくとも1つのメンバを表す。いくつかの実施形態において、目的ハミルトニアンは、量子多体系、フェルミオン系、およびボソン系のうちの少なくとも1つを表す。
【0018】
いくつかの実施形態において、前記目的ハミルトニアンは、少なくとも1つの制約を有する最適化問題を表す。いくつかの実施形態において、前記初期ハミルトニアンの前記固有状態は、前記初期ハミルトニアンの基底状態であり、前記基底状態が、前記最適化問題の前記少なくとも1つの制約を表す領域を定義する。いくつかの実施形態において、前記プロセッサは、ユニタリ分解から前記固有状態を構築するようさらに構成されている。いくつかの実施形態において、(a)の前に、前記プロセッサは、前記目的ハミルトニアンの表示と、前記1つ以上の目的固有状態の表示とを得るようさらに構成されている。いくつかの実施形態において、(a)の前に、前記プロセッサは、前記初期ハミルトニアンの表示を得るようさらに構成されている。いくつかの実施形態において、前記初期ハミルトニアンの前記表示は、最適化問題のドメインを含む。
【0019】
別の態様において、本開示は、非古典コンピュータを用いて目的ハミルトニアンの固有状態を準備するための方法を提供する。本方法は、(a)目的ハミルトニアンの表示と1つ以上の目的固有状態の表示とを得ること、(b)初期ハミルトニアンの表示を得ること、(c)初期ハミルトニアンと目的ハミルトニアンの間の反射経路を得ること、(d)反射経路に沿った反射のシーケンスを得るために1つ以上の目的固有状態の表示を用いること、および(e)反射経路に沿った反射のシーケンスを実行するために非古典コンピュータを用いることを含んでもよい。
【0020】
いくつかの実施形態において、非古典コンピュータは、量子コンピュータである。いくつかの実施形態において、(c)の前に、本方法は、量子コンピュータ上で初期ハミルトニアンの固有状態を準備することを含み、上記固有状態が、1つ以上の目的固有状態と直交していない。いくつかの実施形態において、(e)の次に、本方法は、目的ハミルトニアンの固有基底における測定を、1つ以上の目的固有状態が達成されていることを確認するために行うことを含む。いくつかの実施形態において、測定は、量子測定である。いくつかの実施形態において、本方法は、1つ以上の目的固有状態の重ね合せの表示を提供することをさらに含む。いくつかの実施形態において、1つ以上の目的固有状態の表示は、エネルギー間隔、最低エネルギーを有する複数の固有状態を表す整数、最高エネルギーを有する複数の固有状態を表す整数、ラベル、および目的固有状態を示す2変数関数のうちの少なくとも1つを含む。いくつかの実施形態において、ゲート操作を用いて反射のシーケンスを実行する。いくつかの実施形態において、ゲート操作は、位相キックバックを含む。いくつかの実施形態において、ゲート操作は、エネルギー比較を含む。いくつかの実施形態において、上記反射のシーケンスを実行することは、エネルギー測定を行わない量子位相推定を含む。いくつかの実施形態において、上記反射のシーケンスを実行することは、量子ビット化、量子信号処理、および部分エネルギー測定のうちの少なくとも1つを含む。いくつかの実施形態において、上記量子測定を行うことは、量子ビット化、量子信号処理、および部分エネルギー測定のうちの少なくとも1つを含む。いくつかの実施形態において、量子コンピュータは、回路ベースの量子コンピュータ、超伝導量子コンピュータ、イオントラップ型量子コンピュータ、量子ドットコンピュータ、光量子コンピュータ、核磁気共鳴量子コンピュータ、固体NMR Kane型量子コンピュータ、ヘリウム上の電子による量子コンピュータ、キャビティ量子電磁力学ベースの量子コンピュータ、分子磁石ベースの量子コンピュータ、フラーレンベースのESR量子コンピュータ、ダイヤモンドベースの量子コンピュータ、ボーズ・アインシュタイン凝縮体ベースの量子コンピュータ、トランジスタベースの量子コンピュータ、希土類金属イオンドープ無機結晶ベースの量子コンピュータ、および金属様カーボンナノスフィアベースの量子コンピュータからなる群のうちの少なくとも1つのメンバを含む。
【0021】
いくつかの実施形態において、(c)~(e)は、複数回繰り返される。いくつかの実施形態において、(c)~(e)と量子コンピュータ上で初期ハミルトニアンの固有状態を準備することとは、複数回繰り返される。いくつかの実施形態において、(c)~(e)と1つ以上の目的固有状態が達成されていることを確認するために目的ハミルトニアンの固有基底における測定を行うこととは、複数回繰り返される。いくつかの実施形態において、(c)~(e)と1つ以上の目的固有状態の重ね合せの表示を提供することとは、複数回繰り返される。いくつかの実施形態において、反射経路は、ユーザから得られる。いくつかの実施形態において、反射のシーケンスは、ユーザから得られる。いくつかの実施形態において、反射のシーケンスは、勾配ベースの最適化手順およびDFO(derivative free optimization)手順からなる群のうちの少なくとも1つのメンバを含む最適化プロトコルを用いて得られる。いくつかの実施形態において、反射のシーケンスは、勾配降下法、確率的勾配降下法、最急降下法、ベイズ最適化法、ランダム探索法、および局所探索法からなる群より選択される少なくとも1つの方法に基づく最適化プロトコルを用いて得られる。いくつかの実施形態において、反射のシーケンスは、機械学習手法を用いて得られる。
【0022】
いくつかの実施形態において、反射のシーケンスおよび反射経路の少なくとも一方は、事前情報を用いて得られる。いくつかの実施形態において、反射経路は、断熱性経路を用いて得られる。いくつかの実施形態において、目的ハミルトニアンは、最適化問題、kSAT問題、スピングラス問題、および二次制約なし二値最適化問題からなる群のうちの少なくとも1つのメンバを表す。いくつかの実施形態において、目的ハミルトニアンは、量子多体系、フェルミオン系、およびボソン系のうちの少なくとも1つを表す。いくつかの実施形態において、目的ハミルトニアンは、少なくとも1つの制約を有する最適化問題を表す。いくつかの実施形態において、初期ハミルトニアンの固有状態は、初期ハミルトニアンの基底状態であり、さらにここで、本基底状態は、最適化問題の上記少なくとも1つの制約を表す領域を定義する。いくつかの実施形態において、量子コンピュータ上で初期ハミルトニアンの固有状態を上記準備することは、ユニタリ分解からの構築を含む。いくつかの実施形態において、(e)は、反射経路に沿った反射のシーケンスを実行する非古典コンピュータ命令を出すために非古典コンピュータに動作可能に接続された古典コンピューティングシステムを用いることを含む。いくつかの実施形態において、初期ハミルトニアンの表示は、最適化問題のドメインを含む。
【0023】
別の態様において、本開示は、量子コンピュータ上で目的ハミルトニアンの固有状態を準備するためのシステムを提供する。本システムは、(a)量子コンピュータに命令を与えるため、および量子測定結果を得るための通信インタフェースと、(b)インタフェース、およびプロセッサに動作可能に結合された非一時的なコンピュータ読取り可能な媒体を含むデジタルコンピュータであって、上記非一時的なコンピュータ読取り可能な媒体が命令を含み、上記プロセッサが、上記命令を実行するよう構成されており、上記命令が、少なくとも、目的ハミルトニアンの表示と1つ以上の目的固有状態の表示とを得、初期ハミルトニアンの表示を得、初期ハミルトニアンと目的ハミルトニアンの間の反射経路を得、上記反射経路に沿った反射のシーケンスを得、通信インタフェースを用いて、反射のシーケンスを実行する命令を量子コンピュータに与え、目的ハミルトニアンの固有基底における量子測定を行い、通信インタフェースを用いて量子コンピュータからの1つ以上の目的固有値の重ね合せを得る命令である、デジタルコンピュータとを含んでもよい。
【0024】
本開示の別の態様は、1つ以上のコンピュータプロセッサと、それに結合されたコンピュータメモリとを含むシステムを提供する。コンピュータメモリは、1つ以上のコンピュータプロセッサによる実行にあたり、上記または本明細書中の別の箇所の方法のいずれかを実施する機械実行可能なコードを含む。
【0025】
本開示の追加の態様および利点は、当業者にとって以下の詳細な説明から容易に明らかになるだろう。以下の詳細な説明では、本開示の例示的な実施形態のみが示され、かつ説明されている。認識されることとなるだろうが、本開示は、他の種々の実施形態が可能であり、そのいくつかの詳細は、様々な自明な点における修正が可能であり、これらはすべて本開示から逸脱することなく行える。よって、図面および説明は、本質的に例示的と考えられるべきであり、限定的とは考えられるべきでない。
【0026】
参照による組み込み
本明細書において記載される公報、特許および特許出願はすべて、個々の公報、特許または特許出願のそれぞれが、参照により組み込まれると具体的かつ個別に示された場合と同程度に、参照により本明細書に組み込まれる。参照により組み込まれた公報、特許または特許出願が本明細書中に含まれる開示と矛盾する程度まで、本明細書は、あらゆるそのような矛盾する題材に取って代わり、かつ/または、優先するよう意図されている。
【図面の簡単な説明】
【0027】
本発明の新規な特徴は、添付の請求項において特定して記載されている。例示的な実施形態を記載する以下の詳細な説明を参照することにより、本発明の特徴および利点がよりよく理解されるであろう。当該実施形態では、本発明の原理が利用されており、付随する図面(本明細書中で「図(Figure)」および「図(FIG.)」とも記載する)は以下の通りである。
図1】量子コンピュータ上で目的ハミルトニアンの固有状態を準備するためのシステムの図である。
図2】量子コンピュータ上で目的ハミルトニアンの固有状態を準備するための方法のフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
本明細書中で本発明の様々な実施形態を示し、説明したが、そのような実施形態がほんの一例として与えられていることは、当業者であれば自明のことであろう。本発明から逸脱することなく、数多くの変形、変更、および置換えが当業者に想定されるであろう。本明細書中で説明した本発明の実施形態の様々な代案が、使用されてもよいことを理解されたい。
【0029】
「at least(少なくとも)」、「greater than(より大きい)」または「greater than or equal to(以上)」という用語が一連の2つかそれより多くの数値のうちの最初の数値に付随するときは常に、「少なくとも」、「より大きい」または「以上」という用語は、上記一連の数値のうちの各数値に適用される。例えば、1、2、または3以上は、1以上、2以上、または3以上と同等である。
【0030】
「no more than(を超えない)」、「less than(未満)」または「less than or equal to(以下)」という用語が一連の2つかそれより多くの数値のうちの最初の数値に付随するときは常に、「を超えない」、「未満」または「以下」という用語は、上記一連の数値のうちの各数値に適用される。例えば、3、2、または1以下は、3以下、2以下、または1以下と同等である。
【0031】
本明細書中の特定の発明の実施形態は、数値範囲を想定している。範囲が存在するとき、当該範囲は、範囲の端点を含む。これに加えて、当該範囲内のすべての部分範囲および値は、明示的に記載されているかのように存在している。
【0032】
「about(約)」または「approximately(およそ)」という用語は、例えば測定系の限界など、どのように値を測定または判定するかに部分的に依存する、特定の値に対する許容可能な誤差範囲内を意味してもよい。例えば、「約」は、当該技術分野における慣例により標準偏差が1以内またはそれより大きいことを意味してもよい。あるいは、「約」は、ある所与の値の20%以下、10%以下、5%以下、または1%以下の範囲を意味してもよい。本出願および請求の範囲においてある特定の値が説明される場合、別の意味が記されていない限り、「約」という用語が当該特定の値に対する許容可能な誤差範囲内を意味していることが想定され得る。
【0033】
本明細書中で使用されるとき、コンピューティングまたは計算の文脈において用いられる「古典の(classical)」という用語は、一般に、量子力学的重ね合せおよび量子力学的もつれを使用することなく離散ビットを用いた2進値を用いて行われる計算を指す。古典コンピュータは、量子力学的重ね合せおよび量子力学的もつれを使用することなく離散ビット(例えば、複数の0や1)を使用するコンピュータなどのデジタルコンピュータであってもよい。
【0034】
本明細書中で使用されるとき、コンピューティングまたは計算の文脈において用いられる「非古典の(non-classical)」という用語は、一般に、古典的コンピューティングのパラダイム外の計算手順を行うためのいずれかの方法またはシステムを指す。
【0035】
本明細書中で使用されるとき、「量子デバイス(quantum device)」という用語は、一般に、量子力学的重ね合せおよび量子力学的もつれなどの量子力学的現象のいずれかを用いて計算を行うためのデバイスまたはシステムを指す。
【0036】
本明細書中で使用されるとき、「量子計算(quantum computation)」、「量子手順(quantum procedure)」、「量子演算(quantum operation)」および「量子コンピュータ(quantum computer)」 という用語は、一般に、量子デバイスにより表されるヒルベルト空間上の(量子チャネル上のユニタリ変換または完全正定値トレース保存(CPTP)写像などの)量子力学的演算を用いた計算を行うためのいずれかの方法またはシステムを指す。
【0037】
本明細書中で使用されるとき、「量子ビット(qubit)」という用語は、一般に、その量子状態が2次元の複素単位ベクトルである量子情報処理の単位を指す。これら2次元は、典型的に、「0」および「1」と呼ばれる。量子誤り訂正が用いられるとき、論理的量子ビットは、1つのフォールトトレラントな量子ビットをコード化する一組の物理的量子ビットを指す。
【0038】
本明細書中で使用されるとき、「データ量子ビット(data qubit)」という用語は、一般に、量子計算のための量子情報をコード化するために用いられる量子ビットのうちの1つを指す。上記は、入力の一部または出力状態の一部を含んでいてもよい。量子誤り訂正が用いられるとき、それは論理的量子ビットを指し、そうでなければ、物理的量子ビットを指す。
【0039】
本明細書中で使用されるとき、「レジスタ(register)」という用語は、一般に、量子計算を行うために用いられる一組の量子ビットを指す。異なるレジスタは、計算の異なる部分を指していてもよい。
【0040】
本明細書中で使用されるとき、「量子ゲート(quantum gate)」は、一般に、量子ビットの量子状態に対するユニタリ演算によって表され得る量子ビットの操作を指す。
【0041】
本明細書中で使用されるとき、「量子ゲート操作(quantum gate operation)」という用語は、一般に、1つの量子ゲート、量子ゲートのシーケンス、または量子ゲートと量子ビットの量子状態に対して等長写像を行う量子測定との組合せを指す。
【0042】
本明細書中で使用されるとき、「補助量子ビット(ancilla qubit)」という用語は、一般に、量子ゲート操作をより効率的に行う、または、中間計算を行うために用いられる追加の量子ビットのうちの1つを指す。量子誤り訂正が用いられるとき、それは論理的量子ビットを指し、そうでなければ、物理的量子ビットを指す。
【0043】
本明細書中で使用されるとき、「最適化問題(optimization problem)」という用語は、一般に、所与のドメイン上で定義される目的関数を最小化または最大化することを伴ういずれかの問題を指す。
【0044】
本明細書中で使用されるとき、「最適化プロトコル(optimization protocol)」という用語は、一般に、最適化問題を正確に、または近似的に解くためのプロトコル、アルゴリズム、または方法を指す。
【0045】
古典および量子ハミルトニアンの両方の固有状態の準備は、様々な分野において重要であり得る。それを用いて、統計的ゼロ知識複雑性クラスにおける問題を解いてもよい(例えば、Aharonovらによる「Adiabatic quantum state generation and statistical zero knowledge(断熱的量子状態生成および統計的ゼロ知識)」、STOC’03:Proceedings of the thirty-fifth annual ACM symposium on Theory of computing(第35回計算理論に関するACM年次シンポジウム会報)、pp.20-29、2003年を参照のこと。該文献は、あらゆる目的のために参照により本明細書中に組み込まれる。)。それを用いて、近似計算を行ってもよい(例えば、Hanらによる「Approximate computing: An emerging paradigm for energy-efficient design(近似計算:省エネルギー設計のための新たなパラダイム)」、2013 18th IEEE European Test Symposium(ETS)(第18回IEEE欧州テストシンポジウム(ETS))、IEEE、2013年を参照のこと。該文献は、あらゆる目的のために参照により本明細書中に組み込まれる。)。固有状態の準備は、例えば量子線形系を解くためのサブルーチンとして用いられてもよい(例えば、Anらによる「Quantum linear system solver based on time-optimal adiabatic quantum computing and quantum approximate optimization algorithm(時間最適断熱的量子コンピューティングおよび量子近似最適化アルゴリズムに基づく量子線形系ソルバ)」、arXiv:1909.05500、2019年を参照のこと。該文献は、あらゆる目的のために参照により本明細書中に組み込まれる。)。固有状態の準備は、量子探索の一部としてまたは置き換えて用いられてもよい(例えば、Groverによる「A fast quantum mechanical algorithm for database search(データベース検索のための高速量子力学的アルゴリズム)」、Proceedings of the twenty-eighth annual ACM symposium on Theory of computing(第28回計算理論に関するACM年次シンポジウム会報)、pp.212-219、1996年、およびBrassardらによる「An exact quantum polynomial-time algorithm for Simon’s problem(サイモン問題のための正確な量子多項式時間アルゴリズム)」、Proceedings of the Fifth Israeli Symposium on Theory of Computing and Systems(第5回計算およびシステムの理論に関するイスラエルシンポジウム会報)、IEEE、1997年を参照のこと。上記文献はそれぞれ、あらゆる目的のために参照により本明細書中に組み込まれる。)。それは、例えばデータベースを作成または削減するか、または直接解法を見い出すためのアルゴリズムの前処理として用いられてもよい。それは、量子メトロポリスサンプリングのために用いられてもよい(例えば、Temmeらによる「Quantum Metropolis sampling(量子メトロポリスサンプリング)」、ネイチャー471、pp.87-90、2011年を参照のこと。該文献は、あらゆる目的のために参照により本明細書中に組み込まれる。)。ここで、アルゴリズムは、ハミルトニアンの固有状態からの直接のサンプリングを可能とする。それはまた、NP困難な問題を解くために用いられてもよい(例えば、Kaminskyらによる「Scalable architecture for adiabatic quantum computing of NP-hard problems(NP困難な問題の断熱的量子コンピューティングのためのスケーラブルなアーキテクチャ)」、Quantum computing and quantum bits in mesoscopic systems(メソスコピック系における量子コンピューティングおよび量子ビット)、pp.229-236、2004年を参照のこと。該文献は、あらゆる目的のために参照により本明細書中に組み込まれる。)。量子シミュレーションは、量子多体固有状態において量子コンピュータを初期化するための固有状態の準備を用いてもよい(例えば、Whitfieldらによる「Simulation of electronic structure Hamiltonians using quantum computers(量子コンピュータを用いた電子構造ハミルトニアンのシミュレーション)」、Molecular Physics(分子物理学)109:5、pp.735-750、2011年を参照のこと。該文献は、あらゆる目的のために参照により本明細書中に組み込まれる。)。
【0046】
固有状態の準備のための様々なアルゴリズムおよびヒューリスティックスが存在する。例えば、グローバーのアルゴリズム(量子探索用、例えば、Groverによる「A fast quantum mechanical algorithm for database search(データベース検索のための高速量子力学的アルゴリズム)」、Proceedings of the twenty-eighth annual ACM symposium on Theory of computing(第28回計算理論に関するACM年次シンポジウム会報)、pp.212-219、1996年を参照のこと。該文献は、あらゆる目的のために参照により本明細書中に組み込まれる。)、時間依存ハミルトニアンの瞬時ハミルトニアンの固有状態が断熱的発展により準備される断熱的状態準備(連続量子コンピューティング用、例えば、Farhiらによる「Quantum computation by adiabatic evolution(断熱的発展による量子計算)」、arXiv:quant-ph/0001106、2000年を参照のこと。該文献は、あらゆる目的のために参照により本明細書中に組み込まれる。)、発展の代わりに、断熱的経路の離散化からの射影測定が用いられてもよい離散断熱的状態準備(例えば、Lemieuxらによる「Resource estimate for quantum many-body ground-state preparation on a quantum computer(量子コンピュータ上の量子多体基底状態準備のためのリソース推定)」、Physical Review(物理レビュー)A103、no.5:052408、2021年を参照のこと。該文献は、あらゆる目的のために参照により本明細書中に組み込まれる。)、射影測定の代わりの位相ランダム化による固有パス横断(例えば、Boixoらによる「Quantum state preparation by phase randomization(位相ランダム化による量子状態準備)」、arXiv:0903.1652、2009年を参照のこと。該文献は、あらゆる目的のために参照により本明細書中に組み込まれる。)または反射もしくはグローバーの反復と射影とを交互に入れ替えることによる固有パス横断(例えば、Boixoらによる「Fast quantum algorithms for traversing paths of eigenstates(固有状態のパスを横断するための高速量子アルゴリズム)」、arXiv:1005.3034、2010年を参照のこと。該文献は、あらゆる目的のために参照により本明細書中に組み込まれる。)、一連の角度により定義されたユニタリ演算子および射影測定もまた用いられる量子近似最適化アルゴリズム(例えば、Farhiらによる「A quantum approximate optimization algorithm(量子近似最適化アルゴリズム)」、arXiv:1411.4028、2014年を参照のこと。該文献は、あらゆる目的のために参照により本明細書中に組み込まれる。)、ならびに可逆的マルコフ連鎖により定義される反射のシーケンスからの安定状態が準備される量子ウォーク(例えば、Lemieuxらによる「Efficient Quantum Walk Circuits for Metropolis-Hastings Algorithm(メトロポリス・ヘイスティングス法のための効率的な量子ウォーク回路)」、Quantum4、p.287、2020年を参照のこと。該文献は、あらゆる目的のために参照により本明細書中に組み込まれる。)である。
【0047】
しかしながら、上述の方法は、少なくともいくつかの欠点がある可能性がある。グローバーのアルゴリズムの成功確率は、周期的であるかもしれず、例えば、反復数を増加させることにより、成功確率が低下するかもしれない。連続量子コンピューティングにおいて、量子誤り訂正は、より良好なスケーラビリティには有用でないかもしれない。射影測定により、上述の方法のいずれかの中間工程において、波動関数が崩壊して望ましくないサブスペースとなるかもしれない。
【0048】
変分パラメータの最適化により、バレンプラトーの指数関数的減衰が生じるかもしれず、このことは、所望のレベルの正確性のためにリソースの指数関数的成長を要することとなる。固有状態の横断パスには、状態間のかなりの程度の重複が必要かもしれない。量子メトロポリス・ヘイスティングス法により解かれた問題は、詳細釣り合い条件に従っていなければならないかもしれない。
【0049】
本明細書中で、上に明示した欠点のうちの少なくとも1つを克服し得る改良した方法およびシステムへの必要性が認識されている。
【0050】
量子デバイス
本明細書中に開示する技術には、いかなる種類の量子コンピュータも適している可能性がある。量子プロセッサまたは量子コンピュータは、1つ以上の断熱的量子コンピュータ、量子ゲートアレイ、一方向量子コンピュータ、トポロジカル量子コンピュータ、量子チューリング機械、超伝導ベースの量子コンピュータ、イオントラップ型量子コンピュータ、原子トラップ型量子コンピュータ、光格子、量子ドットコンピュータ、スピンベースの量子コンピュータ、空間ベースの量子コンピュータ、Loss-DiVincenzo量子コンピュータ、核磁気共鳴(NMR)ベースの量子コンピュータ、溶液状態NMR量子コンピュータ、固体NMR量子コンピュータ、固体NMR Kane型量子コンピュータ、ヘリウム上の電子による量子コンピュータ、キャビティ量子電磁力学ベースの量子コンピュータ、分子磁石量子コンピュータ、フラーレンベースの量子コンピュータ、線形光量子コンピュータ、ダイヤモンドベースの量子コンピュータ、窒素-空孔(NV)ダイヤモンドベースの量子コンピュータ、ボーズ・アインシュタイン凝縮体ベースの量子コンピュータ、トランジスタベースの量子コンピュータ、および希土類金属イオンドープ無機結晶ベースの量子コンピュータを含んでいてもよい。量子プロセッサまたは量子コンピュータは、量子アニーラ、イジングソルバ、光パラメトリック発振器(OPO)、およびゲートモデル量子コンピュータのうちの1つ以上を含んでいてもよい。
【0051】
量子プロセッサまたは量子コンピュータは、1つ以上の量子ビットを含んでいてもよい。1つ以上の量子ビットは、超伝導量子ビット、イオントラップ型量子ビット、原子トラップ型量子ビット、光子量子ビット、量子ドット量子ビット、電子スピンベースの量子ビット、核スピンベースの量子ビット、分子磁石量子ビット、フラーレンベースの量子ビット、ダイヤモンドベースの量子ビット、窒素-空孔(NV)ダイヤモンドベースの量子ビット、ボーズ・アインシュタイン凝縮体ベースの量子ビット、トランジスタベースの量子ビット、または希土類金属イオンドープ無機結晶ベースの量子ビットを含んでいてもよい。
【0052】
本明細書中の説明に従って、適切な量子コンピュータは、それぞれが参照により全体として組み込まれる関連する参照を含む非限定的な実施例により、超伝導量子コンピュータ(小型の超伝導回路として実装された量子ビット―ジョセフソン接合)(Clarkeらによる「Superconducting quantum bits(超伝導量子ビット)」、ネイチャー453、no.7198、pp.1031-1042、2008年)、イオントラップ型量子コンピュータ(イオントラップ状態として実装された量子ビット)(Kielpinskiらによる「Architecture for a large-scale ion-trap quantum computer(大規模イオントラップ量子コンピュータ)」、ネイチャー417、no.6890、pp.709-711、2002年)、光格子量子コンピュータ(光格子にトラップされた中性原子の状態で実装された量子ビット)(Deutschらによる「Quantum computing with neutral atoms in an optical lattice(光格子内の中性原子による量子コンピューティング)」、Fortschritte der Physik:Progress of Physics(物理学の進歩)48、no.9-11、pp.925-943、2000年)、スピンベースの量子ドットコンピュータ(トラップされた電子のスピン状態として実装された量子ビット)(Imamogluらによる「Quantum information processing using quantum dot spins and cavity QED(量子ドットスピンおよびキャビティQEDを用いた量子情報処理)」、Physical Review Letters83、no.20、p.4204、1999年)、空間ベースの量子ドットコンピュータ(二重量子ドットにおける電子位置として実装された量子ビット)(Fedichkinらによる「Novel coherent quantum bit using spatial quantization levels in semiconductor quantum dot(半導体量子ドットにおける空間量子化レベルを用いた新規なコヒーレント量子ビット)」、arXiv:quant-ph/0006097、2000年)、結合量子細線(量子ポイントコンタクトにより結合された量子細線対として実装された量子ビット)(Bertoniらによる「Quantum logic gates based on coherent electron transport in quantum wires(量子細線におけるコヒーレントな電子輸送に基づく量子論理ゲート)」、Physical Review Letters84、no.25、p.5912、2000年)、核磁気共鳴量子コンピュータ(核スピンとして実装され、かつ電波により探索された量子ビット)(Coryらによる「Nuclear magnetic resonance spectroscopy:An experimentally accessible paradigm for quantum computing(核磁気共鳴分光法:量子コンピューティングのための実験的にアクセス可能なパラダイム)」、arXiv:quant-ph/9709001、1997年)、固体NMR Kane型量子コンピュータ(シリコン中のりんドナーの核スピン状態として実装された量子ビット)(Kaneによる「A silicon-based nuclear spin quantum computer(シリコンベースの核スピン量子コンピュータ)」、ネイチャー393、no.6681、pp133-137、1998年)、ヘリウム上の電子による量子コンピュータ(電子スピンとして実装された量子ビット)(Lyonによる「Spin-based quantum computing using electrons on liquid helium(液体ヘリウム上の電子を用いたスピンベースの量子コンピューティング)」、arXiv:cond-mat/0301581、2006年)、キャビティ量子電磁力学ベースの量子コンピュータ(高フィネス共振器に結合されたトラップされた原子の状態として実装された量子ビット)(Burellによる「An Introduction to Quantum Computing using Cavity QED concepts(キャビティQEDの概念を用いた量子コンピューティング入門)」、arXiv:1210.6512、2012年)、分子磁石ベースの量子コンピュータ(スピン状態として実装された量子ビット)(Leuenbergerらによる「Quantum Computing in Molecular Magnets(分子磁石における量子コンピューティング)」、arXiv:cond-mat/0011415、2001年)、フラーレンベースの電子スピン共鳴(ESR)量子コンピュータ(フラーレンに収容された原子または分子の電子スピンとして実装された量子ビット)(Harneitによる「Quantum Computing with Endohedral Fullerenes(内包フラーレンによる量子コンピューティング)」、arXiv:1708.09298、2017年)、線形光量子コンピュータ(ミラー、ビームスプリッタおよび移相器などの線形光学素子を介した種々のモードの光の処理状態として実装された量子ビット)(Knillらによる「Efficient linear optics quantum computation(効率的な線形光学量子計算)」、arXiv:quant-ph/0006088、2000年)、ダイヤモンドベースの量子コンピュータ(ダイヤモンド中の窒素-空孔(NV)中心の電子または核スピンとして実装された量子ビット)(Nizovtsevらによる「A quantum computer based on NV centers in diamond:optically detected nutations of single electron and nuclear spins(ダイヤモンド中のNV中心に基づく量子コンピュータ:単電子および核スピンの光検出ニューテーション)」、Optics and spectroscopy(光学および分光学)99、no.2、pp.233-244、2005年)、ボーズ・アインシュタイン凝縮体ベースの量子コンピュータ(二成分ボーズ・アインシュタイン凝縮体として実装された量子ビット)(Byrnesらによる「Macroscopic quantum computation using Bose-Einstein condensates(ボーズ・アインシュタイン凝縮体を用いた巨視的量子計算)」、arXiv:quantum-ph/1103.5512、2011年)、トランジスタベースの量子コンピュータ(ナノフォトニックキャビティに結合された半導体として実装された量子ビット)(Sunらによる「A single-photon switch and transistor enabled by a solid-state quantum memory(固体量子メモリにより有効化される単一光子スイッチおよびトランジスタ)」、arXiv:quant-ph/1805.01964、2018年)、希土類金属イオンドープ無機結晶ベースの量子コンピュータ(希土類イオンドープ無機結晶中の原子の基底状態の超微細準位として実装された量子ビット)(Ohlssonらによる「Quantum computer hardware based on rare-earth-ion-doped inorganic crystals(希土類イオンドープ無機結晶に基づく量子コンピュータハードウェア)」、Optics Communications(光学通信)201、no.1-3、pp.71-77、2002年)、および金属様カーボンナノスフィアベースの量子コンピュータ(伝導カーボンナノスフィア中の電子スピンとして実装された量子ビット)(Nafradiらによる「Room temperature manipulation of long lifetime spins in metallic-like carbon nanospheres(金属様カーボンナノスフィア中の長寿命スピンの室温操作)」、arXiv:cond-mat/1611.07690、2016年)を含んでいてもよい。
【0053】
古典コンピュータ
いくつかの場合、本明細書中で説明されるシステム、媒体、ネットワーク、および方法は、古典コンピュータ(例えば、デジタルコンピュータ)、またはその使用を含む。いくつかの場合、古典コンピュータは、デジタルコンピュータを含んでいてもよい。いくつかの場合、古典コンピュータは、古典コンピュータの機能を実行する1つ以上のハードウェア中央処理装置(CPU)を含む。いくつかの場合、古典コンピュータは、実行可能な命令を行うよう構成されたオペレーティングシステム(OS)をさらに含む。いくつかの場合、古典コンピュータは、コンピュータネットワークに接続されている。いくつかの場合、古典コンピュータは、ワールドワイドウェブにアクセスするようにインターネットに接続されている。いくつかの場合、古典コンピュータは、クラウドコンピューティングインフラストラクチャに接続されている。いくつかの場合、古典コンピュータは、イントラネットに接続されている。いくつかの場合、古典コンピュータは、データ記憶デバイスに接続されている。
【0054】
いくつかの場合、古典コンピュータは、コンピュータネットワークに接続されている。いくつかの場合、古典コンピュータは、ワールドワイドウェブにアクセスするようにインターネットに接続されている。いくつかの場合、古典コンピュータは、1つ以上のコンピュータサーバに接続されており、該サーバは、クラウドコンピューティングインフラストラクチャなどの分散コンピューティングを可能とすることができる。いくつかの場合、古典コンピュータは、イントラネットおよび/もしくはエクストラネットまたはインターネットと通信しているイントラネットおよび/もしくはエクストラネットと接続されている。いくつかの場合、古典コンピュータは、データ記憶デバイスに接続されている。いくつかの場合、ネットワークは、電気通信および/またはデータネットワークである。いくつかの場合、ネットワークは、ピアツーピアネットワークであり、該ネットワークにより、コンピュータシステムに結合されているデバイスが、クライアントまたはサーバとして動作し得る。
【0055】
本明細書中の説明に従って、適切な古典コンピュータは、非限定的な実施例により、サーバコンピュータ、デスクトップコンピュータ、ラップトップコンピュータ、ノート型コンピュータ、サブノート型コンピュータ、ネットブックコンピュータ、ネットパッドコンピュータ、セットトップコンピュータ、メディアストリーミングデバイス、ハンドヘルドコンピュータ、インターネット機器、携帯スマートフォン、タブレットコンピュータ、パーソナルデジタルアシスタント、ゲーム機、および伝達手段を含んでいてもよい。スマートフォンは、本明細書中で説明される方法およびシステムとともに用いるのに適しているかもしれない。いくつかの場合、コンピュータネットワーク接続性を有する選択されたテレビ、ビデオプレーヤ、およびデジタル音楽プレーヤは、本明細書中で説明されるシステムおよび方法における使用に適しているかもしれない。適切なタブレットコンピュータは、ブックレット、スレート、およびコンバーチブル構成を有するタブレットコンピュータを含んでいてもよい。
【0056】
いくつかの場合、古典コンピュータは、実行可能な命令を行うよう構成されたオペレーティングシステムを含む。オペレーティングシステムは、例えば、プログラムおよびデータを含むソフトウェアであって、デバイスのハードウェアを管理し、かつアプリケーションの実行用のサービスを提供するソフトウェアであってもよい。適切なサーバオペレーティングシステムは、非限定的な実施例により、FreeBSD、OpenBSD、NetBSD(登録商標)、Linux(登録商標)、Apple(登録商標)Mac OS X Server(登録商標)、Oracle(登録商標)Solaris(登録商標)、Windows Server(登録商標)、およびNovell(登録商標)NetWare(登録商標)を含む。適切なパーソナルコンピュータのオペレーティングシステムは、非限定的な実施例により、Microsoft(登録商標)Windows(登録商標)、Apple(登録商標)Mac OS X(登録商標)、Apple(登録商標)macOS(登録商標)、UNIX(登録商標)、およびGNU/Linux(登録商標)などのUNIX様オペレーティングシステムを含んでいてもよい。いくつかの場合、オペレーティングシステムは、クラウドコンピューティングにより提供される。適切な携帯スマートフォンのオペレーティングシステムは、非限定的な実施例により、Nokia(登録商標)Symbian(登録商標)OS、Apple(登録商標)iOS(登録商標)、Research In Motion(登録商標)BlackBerry OS(登録商標)、Google(登録商標)Android(登録商標)、Microsoft(登録商標)Windows Phone(登録商標)OS、Microsoft(登録商標)Windows Mobile(登録商標)OS、Linux(登録商標)、およびPalm(登録商標)WebOS(登録商標)を含んでいてもよい。適切なメディアストリーミングデバイスのオペレーティングシステムは、非限定的な実施例により、Apple TV(登録商標)、Roku(登録商標)、Boxee(登録商標)、Google TV(登録商標)、Google Chromecast(登録商標)、Amazon Fire(登録商標)、およびSamsung(登録商標)HomeSync(登録商標)を含んでいてもよい。適切なゲーム機のオペレーティングシステムは、非限定的な実施例により、Sony(登録商標)PS3(登録商標)、Sony(登録商標)PS4(登録商標)、Microsoft(登録商標)Xbox 360(登録商標)、Microsoft(登録商標)Xbox One(登録商標)、Nintendo(登録商標)Wii(登録商標)、Nintendo(登録商標)Wii U(登録商標)、およびOuya(登録商標)を含んでいてもよい。
【0057】
いくつかの場合、古典コンピュータは、記憶および/またはメモリデバイスを含む。いくつかの場合、記憶および/またはメモリデバイスは、一時的または永久的にデータまたはプログラムを記憶するために用いられる1つ以上の物理的装置である。いくつかの場合、記憶および/またはメモリデバイスは、古典コンピュータの外部の、例えば、イントラネットまたはインターネットを介して古典コンピュータと通信しているリモートサーバ上に位置している1つ以上のさらなるデータ記憶装置を有していてもよい。いくつかの場合、デバイスは、揮発性メモリであり、かつ記憶されている情報を維持するために電力を必要とする。いくつかの場合、デバイスは、不揮発性メモリであり、かつ記憶されている情報を古典コンピュータに電力供給されていないときに保持する。いくつかの場合、不揮発性メモリは、フラッシュメモリを含む。いくつかの場合、不揮発性メモリは、ダイナミックランダムアクセスメモリ(DRAM)を含む。いくつかの場合、不揮発性メモリは、強誘電体ランダムアクセスメモリ(FRAM)を含む。いくつかの場合、不揮発性メモリは、相変化ランダムアクセスメモリ(PRAM)を含む。いくつかの場合、デバイスは、非限定的な実施例により、CD-ROM、DVD、フラッシュメモリデバイス、磁気ディスクドライブ、磁気テープドライブ、光ディスクドライブ、およびクラウドコンピューティングベースのストレージを含む記憶デバイスである。いくつかの場合、記憶および/またはメモリデバイスは、本明細書中に開示されているものなどのデバイスの組合せである。
【0058】
いくつかの場合、古典コンピュータは、ユーザに視覚的情報を送信するためのディスプレイを含む。いくつかの場合、ディスプレイは、陰極線管(CRT)である。いくつかの場合、ディスプレイは、液晶ディスプレイ(LCD)である。いくつかの場合、ディスプレイは、薄膜トランジスタ液晶ディスプレイ(TFT-LCD)である。いくつかの場合、ディスプレイは、有機発光ダイオード(OLED)ディスプレイである。いくつかの場合、OLEDディスプレイは、パッシブマトリクスOLED(PMOLED)またはアクティブマトリクスOLED(AMOLED)ディスプレイである。いくつかの場合、ディスプレイは、プラズマディスプレイである。いくつかの場合、ディスプレイは、ビデオプロジェクタである。いくつかの場合、ディスプレイは、本明細書中に開示されているものなどのデバイスの組合せである。
【0059】
いくつかの場合、古典コンピュータは、ユーザから情報を受信するための入力デバイスを含む。いくつかの場合、入力デバイスは、キーボードである。いくつかの場合、入力デバイスは、非限定的な実施例により、マウス、トラックボール、トラックパッド、ジョイスティック、ゲームコントローラ、またはスタイラスを含むポインティングデバイスである。いくつかの場合、入力デバイスは、タッチスクリーンまたはマルチタッチスクリーンである。いくつかの場合、入力デバイスは、声またはその他の音声入力を取り込むためのマイクロフォンである。いくつかの場合、入力デバイスは、動きまたは視覚的入力を取り込むためのビデオカメラまたはその他のセンサである。いくつかの場合、入力デバイスは、Kinect、Leap Motionなどである。いくつかの場合、入力デバイスは、本明細書中に開示されているものなどのデバイスの組合せである。
【0060】
ここで図1を参照すると、量子コンピュータ上で目的ハミルトニアンの固有状態を準備するためのシステムの図が示される。本システムは、デジタルコンピュータ100と、非古典コンピュータ(例えば、量子コンピュータ、量子コンピューティングデバイスなど)104とを含む。デジタルコンピュータ100は、少なくとも1つの処理デバイス106と、表示デバイス108と、入力デバイス110と、通信ポート114と、処理デバイス106により実行可能なコンピュータプログラムを含むメモリ112とを含む。デジタルコンピュータ100は、本明細書中で開示されているいずれかのデジタルコンピュータなどの様々な種類のものであってもよい。
【0061】
さらに図1を参照すると、量子コンピュータ104は、量子メモリ124を有する量子プロセッサ120を含む。いくつかの場合、量子コンピュータ104は、量子測定読出しのための読出し制御システム122を含む。量子コンピュータ104は、読出し制御システム122と通信ポート114との間での接続によりデジタルコンピュータ100に動作可能に接続されている。量子コンピュータ104は、本明細書中の他の箇所に開示されているいずれかの量子デバイスなどのいずれかの量子コンピュータを含んでいてもよい。
【0062】
いくつかの場合、デジタルコンピュータ100は、通信ポート114および読出し制御システム122を用いて量子コンピュータ104に命令を与えるために用いられる。
【0063】
ここで図2を参照すると、量子コンピュータ上で目的ハミルトニアンの固有状態を準備するための方法のフロー図が示される。
【0064】
処理動作202に従って、目的ハミルトニアンの表示と、1つ以上の目的固有状態の表示とが得られる。目的ハミルトニアンの表示は、様々な種類のものであってもよい。いくつかの場合、目的ハミルトニアンの表示は、エネルギーのオブザーバブルを表す数学演算子である。
【0065】
1つ以上の目的固有状態は、様々な種類のものであってもよい。いくつかの場合、1つ以上の目的固有状態の表示は、エネルギー間隔を介して表される。いくつかの場合、1つ以上の目的固有状態の表示は、最低エネルギーを有する1つ以上の固有状態を表す整数である。いくつかの場合、1つ以上の目的固有状態の表示は、最高エネルギーを有する1つ以上の固有状態を表す整数である。いくつかの場合、1つ以上の目的固有状態の表示は、ラベルを用いて表される。
【0066】
一例では、目的ハミルトニアンは、k体イジングハミルトニアン
【0067】
【数1】
(zは、量子ビットiに作用するパウリ
【0068】
【数2】
演算子であり、Jは、最大kスピンの所与の項に関わる集合Ωに対する結合項である)であってもよく、目的状態は、目的ハミルトニアンの基底状態とすることができる。
【0069】
いくつかの場合、目的ハミルトニアンは、制約を有する最適化問題を表してもよい。いくつかの場合、目的ハミルトニアンは、充足可能性問題を表してもよい。例えば、充足可能性問題は、連言標準形(CNF)における充足可能性であってもよい。CNF SAT問題の一種は、kSAT問題であってもよい。kSAT問題は、リテラルの数kを有していてもよい。SAT問題は、1とkとの間の複数のリテラルが真でなければならないように構成されてもよい。例えば、kSAT問題は、3SAT問題であってもよい。いくつかの場合、数kは、約2、約3、約4、約5、約6、約7、約8、約9、約10、約30、約50、またはそれより大きくてもよい。一例では、目的ハミルトニアンは、MAX-SAT問題を表してもよい。SAT問題は、無制限SAT問題、one-in-three 3SAT問題、線形SAT問題、HORNSAT、XOR-SATなどであってもよい。MAX-SAT問題は、kSAT問題の一般化であってもよい。MAX-SAT問題は、一組の変数により充足されねばならない制約の数を最大化することに関していてもよい。
【0070】
いくつかの場合、目的ハミルトニアンは、最適化問題を表してもよい。最適化問題の例は、kSAT問題、スピングラス問題、および二次制約なし二値最適化問題を含む。いくつかの場合、目的ハミルトニアンは、量子多体系を表していてもよい。いくつかの場合、目的ハミルトニアンは、フェルミオン系を表していてもよい。いくつかの場合、目的ハミルトニアンは、ボソン系を表していてもよい。
【0071】
目的ハミルトニアンの表示および1つ以上の目的固有状態の表示は、様々な手法で得られ得る。いくつかの場合、目的ハミルトニアンの表示および1つ以上の目的固有状態の表示は、図1に関して本明細書中で開示されているいずれかのデジタルコンピュータ100などのデジタルコンピュータを用いて得られてもよい。いくつかの場合、目的ハミルトニアンの表示および1つ以上の目的固有状態の表示は、デジタルコンピュータ100のメモリ112に記憶されてもよい。いくつかの場合、目的ハミルトニアンの表示および1つ以上の目的固有状態の表示は、デジタルコンピュータ100に動作可能に結合された遠隔処理装置から得られてもよい。
【0072】
一例では、kSAT問題は、対応するk体イジングハミルトニアンの基底状態エネルギーを見つけることにより解かれ得る。例えば、3SAT問題において、すべての節
【0073】
【数3】
(vはブール変数であり、正のリテラルとも呼ばれる)について、項z+z+z+z+z+z+zが加算される。奇数のリテラルが負であれば、対応する項は、減算される。例えば、
【0074】
【数4】
【0075】
【数5】
は負のリテラル、例えば、変数vの否定である)は、項z-z-z-z-z+z+zにつながる。それぞれの充足された節は、1のエネルギー減少量に相当する。したがって、節数の負数と等しい基底状態エネルギーは、充足可能なインスタンスに相当し、それより大きなエネルギーについては充足不可能であろう。
【0076】
さらに図2を参照すると、処理動作204に従って、初期ハミルトニアンの表示が得られる。初期ハミルトニアンの表示は、様々な手法で得られ得る。いくつかの場合、初期ハミルトニアンの表示は、図1に関して本明細書中で開示されているいずれかのデジタルコンピュータ100などのデジタルコンピュータを用いて得られてもよい。いくつかの場合、初期ハミルトニアンの表示は、デジタルコンピュータ100のメモリ112に記憶されてもよい。いくつかの場合、初期ハミルトニアンの表示は、デジタルコンピュータ100に動作可能に結合された遠隔処理装置から得られてもよい。
【0077】
初期ハミルトニアンの表示は、様々な種類のものであってもよい。いくつかの場合、初期ハミルトニアンの表示は、エネルギーのオブザーバブルを表す自己共役演算子である。
【0078】
いくつかの場合、計算基底において対角である古典目的ハミルトニアンに対して、横磁場ハミルトニアン
【0079】
【数6】
を用いてもよく、ここでxは、量子ビットiに作用するパウリ
【0080】
【数7】
演算子である。横磁場ハミルトニアンの基底状態は、サイズnの系に対する計算基底
【0081】
【数8】
のすべての状態の等しい重ね合せであってもよく、ゆえに、目的ハミルトニアンのすべての固有状態との重複がゼロでないことが保証され得る。
【0082】
さらに図2を参照すると、処理動作206に従って、量子コンピュータ上で初期ハミルトニアンの固有状態が準備される。いくつかの場合、初期ハミルトニアンの準備された固有状態は、1つ以上の目的固有状態とは直交していない。初期ハミルトニアンの固有状態は、量子コンピュータ上での準備が容易であるようなものであってもよい。量子コンピュータは、図1に関して本明細書中で開示されているいずれかの量子コンピュータ104などの様々な種類のものであってもよい。
【0083】
いくつかの場合、アダマールゲート
【0084】
【数9】
を各量子ビットに適用することで、ゼロ状態
【0085】
【数10】
の量子ビットから横磁場ハミルトニアンの基底状態を準備してもよい。
【0086】
いくつかの場合、初期ハミルトニアンの固有状態は、ユニタリ分解を用いて準備される。初期ハミルトニアンは、ユニタリ分解から構築されてもよい。ユニタリ分解手順の一例は、Krol,A.M.らによる「Efficient decomposition of unitary matrices in quantum circuit compilers(量子回路コンパイラにおけるユニタリ行列の効率的分解)」、arXiv:2101.02993(2021)に見られる場合があり、該文献は、あらゆる目的のために参照により本明細書中に組み込まれる。状態
【0087】
【数11】
と目的状態との重複がゼロでない場合、初期ハミルトニアンを
【0088】
【数12】
と定義してもよく、ここで、
【0089】
【数13】
は恒等作用素である。ユニタリ分解は、初期ハミルトニアンの構築のために、および初期状態
【0090】
【数14】
をフォーム
【0091】
【数15】
のユニタリにより準備するために用いてもよく、ここで、第2項は、演算のユニタリ性を確保する必要があり、
【0092】
【数16】
である。
【0093】
いくつかの場合、初期ハミルトニアンの固有状態は、初期ハミルトニアンの基底状態である。いくつかの場合、基底状態は、最適化問題の制約を表す領域を定義してもよい。例えば、MAX2SAT問題において、そのような制約は、2つの特定の変数vとvとがともに真であり得ないものであってもよい。(横磁場ハミルトニアンの基底状態などの)すべての状態の等しい重ね合せから始める代わりに、v=v=1である初期重ね合せの状態を排除してもよい。その後、基底状態が制約により定義されている初期ハミルトニアンを構築してもよい。
【0094】
処理動作208に従って、初期ハミルトニアンと目的ハミルトニアンの間の反射経路が得られる。反射経路は、様々な手法で得られ得る。いくつかの場合、反射経路は、図1に関して本明細書中で開示されているいずれかのデジタルコンピュータ100などのデジタルコンピュータを用いて得られてもよい。いくつかの場合、反射経路は、デジタルコンピュータ100のメモリ112に記憶されてもよい。いくつかの場合、反射経路は、デジタルコンピュータ100に動作可能に結合された遠隔処理装置から得られてもよい。
【0095】
いくつかの場合、反射経路は、ユーザから得られる。いくつかの場合、反射経路は、断熱性経路を用いて得られる。いくつかの場合、反射経路は、事前情報を用いて得られる。
【0096】
反射は、所与の正規直交基底の状態のサブセットの相を変化させる量子ゲート操作であってもよい。いくつかの場合、各反射は、位相キックバックなどのゲート操作を用いて実行される。反射は、射影測定を(マルチ)制御NOT(CNOT)ゲートと入れ替えることにより実行してもよく、ここで、制御量子ビットは、1つ以上のデータ量子ビットであり、目的量子ビットは、マイナス状態の補助量子ビット
【0097】
【数17】
である。X測定を行うことにより、-1の固有値に相当する結果につながり得る。マイナス位相は、重ね合せにおける対応する状態に移送されてもよく、その結果所望の反射となる。いくつかの場合、反射は、エネルギー測定を行わずに、エネルギー閾値とのエネルギー比較を行うことにより、量子位相推定を用いて実行してもよい。例えば、反射のシーケンスが、断熱性経路の離散化であれば、ハミルトニアンのべき乗の(測定を行わない)位相推定を行うことにより、量子レジスタにエネルギー値が記憶され得る。エネルギーがエネルギー閾値より上、下、またはそれらの間であるとき、逆相を算術演算により状態に加算してもよく、このことにより、所望の反射を得ることができる。いくつかの場合、反射Rは、固有状態
【0098】
【数18】
のラベルの組
【0099】
【数19】
に対して定義された2変数関数
【0100】
【数20】
を用いることにより実行されてもよく、ここで、該2変数関数は、反射がそれの周りで実行される状態を示すようなものである。すなわち、
【0101】
【数21】
である。いくつかの場合、反射は、量子ビット化を用いて実行されてもよい。したがって、それぞれの反射は、ハミルトニアン自体の代わりに量子ビット化されたハミルトニアンの固有状態の周りで実行される。いくつかの場合、固有状態を示す関数は、量子信号処理を用いて計算される。
【0102】
反射経路は、実数の有界区間から、初期ハミルトニアンと目的ハミルトニアンの両方を含むヒルベルト空間まで定義された連続関数であってもよい。例えば、aを区間の下限と定め、bを区間の上限と定める。すると、反射経路は、連続関数f(x)であり、その結果、f(a)は初期ハミルトニアンと等しく、f(b)は目的ハミルトニアンと等しくなる。反射経路は、アルゴリズムの反射のシーケンスを定義するために用いられてもよい。
【0103】
例えば、kSAT問題を解くための反射経路は、横磁場ハミルトニアンと対応するk体イジングハミルトニアンの間の線形補間、例えば、0と1の間のwに対する
【0104】
【数22】
であってもよい。
【0105】
さらに図2を参照すると、処理動作210に従って、反射経路に沿った反射のシーケンスが得られてもよい。反射のシーケンスは、様々な手法で得られ得る。いくつかの場合、反射のシーケンスは、図1に関して本明細書中で開示されているいずれかのデジタルコンピュータ100などのデジタルコンピュータを用いて得られてもよい。いくつかの場合、反射のシーケンスは、デジタルコンピュータ100のメモリ112に記憶されてもよい。いくつかの場合、反射のシーケンスは、デジタルコンピュータ100に動作可能に結合された遠隔処理装置から得られてもよい。いくつかの場合、反射のシーケンスは、ユーザから得られてもよい。いくつかの場合、反射のシーケンスは、勾配ベースの最適化手順またはDFO(derivative free optimization)手順などの最適化プロトコルを用いて得られてもよい。最適化プロトコルは、量子アルゴリズムの古典的シミュレーションか、量子計算から得られた結果のいずれかに対して用いてもよい。プロトコルは、システムの最終エネルギーのサンプルを用いて計算されたコスト関数を最適化してもよい。その後、反射経路、反射経路の離散化、反射を定義する(固有)状態、またはそれぞれの反射に対するエネルギー閾値を更新してもよい。いくつかの場合、反射のシーケンスは、最適化プロトコルを用いて得られる。例えば、最適化プロトコルは、勾配降下法、確率的勾配降下法、最急降下法、ベイズ最適化法、ランダム探索法、および局所探索法からなる群より選択される方法に少なくとも部分的に基づいていてもよい。いくつかの場合、反射のシーケンスは、機械学習手法を用いて得られる。機械学習手法は、例えば、反射経路、反射経路の離散化、反射を定義する(固有)状態、またはそれぞれの反射に対するエネルギー閾値を見つけるために、特定のクラスの問題について訓練されることが可能である。いくつかの場合、反射のシーケンスは、事前情報を用いて得られてもよい。
【0106】
反射のシーケンスは、反射経路上の選択されたそれぞれのハミルトニアンのいくつかの固有状態の周りの反射として定義されてもよい。例えば、kSAT問題を解くために、反射経路の一定のステップ離散化を選択してもよい。反射は、それぞれの瞬間ハミルトニアンの基底状態に関して実行されてもよい。例えば、反射経路
【0107】
【数23】
について、w={0.25,0.5,0.75}に対応する瞬間ハミルトニアンは、最適化プロトコルにより最適化される3つの反射のシーケンスまたは反射経路の離散化の初期推測を定義してもよい。
【0108】
さらに図2を参照すると、処理動作212に従って、量子コンピュータを用いて反射経路に沿った反射のシーケンスが実行されてもよい。量子コンピュータは、図1に関して本明細書中で開示されているいずれかの量子コンピュータ104などの様々な種類のものであってもよい。
【0109】
処理動作214に従って、目的ハミルトニアンの固有基底における量子測定が行われてもよい。量子測定は、量子ビットの状態を表す数値結果をもたらす物理系の(例えば、量子ビットの)操作であってもよい。量子測定は、目的固有状態が達成されていることを確認するために行ってもよい。処理動作202に従って得られた1つ以上の目的固有状態の表示を用いて、目的固有状態が達成されていることを確認してもよい。例えば、固有状態がエネルギーのオブザーバブルに対応するとき、量子位相推定を行ってもよい。これは、補助量子ビットのレジスタを用いて目的ハミルトニアンのそれぞれの固有状態の(計算基底における)エネルギーを計算してもよい。測定の前に、2つのレジスタをもつれ合わせてもよく、ここで、第2のレジスタは、第1のレジスタにおける固有状態に対応するエネルギーを含む。エネルギーレジスタ(例えば、第2のレジスタ)を測定することにより、状態を対応する固有状態へと崩壊させてもよい。エネルギーは、計算基底で得られてもよく、目的の固有状態が得られていることを検証するために用いられてもよい。いくつかの場合、量子測定(例えば、量子位相推定)は、エネルギー測定または部分エネルギー測定を実行するために、
【0110】
【数24】
などのユニタリ演算子を実行することにより行ってもよく、ここでHtargetは目的ハミルトニアンである。いくつかの場合、ユニタリ演算子は、トロッタリゼーション(Trotterization)または量子ビット化を用いて実行してもよい。いくつかの場合、目的固有状態の表示がラベルを用いて表されているとき、目的固有状態を示す2変数関数
【0111】
【数25】
を用いてもよい(例えば、yが目的固有状態のうちの1つであるときg(y)=1、そうでないときg(y)=0)。関数計算の結果は、補助量子ビットを用いて記憶および測定してもよい。そのような関数は、量子信号処理を用いて計算してもよい。目的固有状態が達成されているか否かを確認するために、図1に関して本明細書中で開示されているいずれかのデジタルコンピュータ100などのデジタルコンピュータを用いてもよい。目的固有状態が達成されていれば、方法は、処理動作216へ進む。目的固有状態が達成されていなければ、方法は、処理動作206へ戻る。
【0112】
いくつかの場合、(反射を実行するための、または処理動作214を行うための測定などの)エネルギーの測定は、部分エネルギー測定と入れ替えてもよい。
【0113】
さらに図2を参照すると、処理動作216に従って、1つ以上の目的固有状態の重ね合せの表示が得られる。1つ以上の目的固有状態の重ね合せの表示は、様々な手法で得られ得る。いくつかの場合、1つ以上の目的固有状態の重ね合せの表示は、図1に関して本明細書中で開示されているいずれかの量子コンピュータ104などの量子コンピュータを用いて得られてもよい。いくつかの場合、1つ以上の目的固有状態の重ね合せは、図1に関して本明細書中で開示されている量子メモリ124などの量子メモリに記憶してもよい。いくつかの場合、1つ以上の目的固有状態の重ね合せは、量子コンピュータ104に動作可能に結合された遠隔処理装置により得られてもよい。
【0114】
いくつかの場合、1つ以上の目的固有状態の重ね合せの表示は、部分情報を含むか、または、1つ以上の目的固有状態の重ね合せの近似が得られる。部分情報は、様々な手法で得られ得る。これは、エネルギー、ラベル、または重ね合せをサンプリングすることにより得られるいずれかの情報などのプロセスのいずれかの出力を含むが、これらに限定されない。いくつかの場合、部分情報は、図1に関して本明細書中で開示されているいずれかのデジタルコンピュータ100などのデジタルコンピュータを用いて得られてもよい。いくつかの場合、部分情報は、デジタルコンピュータ100のメモリ112に記憶されてもよい。いくつかの場合、部分情報は、デジタルコンピュータ100に動作可能に結合された遠隔処理装置により得られてもよい。
【0115】
本明細書中で本発明の好適な実施形態を示し、説明したが、そのような実施形態がほんの一例として与えられていることは、当業者にとって自明のことであろう。本発明が明細書中に記載された特定の実施例により限定されることは、意図されていない。前述の明細書を参照して本発明を説明したが、本明細書中の実施形態の説明および例示は、限定的な意味で解釈されるものではない。本発明から逸脱することなく、数多くの変形、変更、および置換えがここで当業者に想定されるであろう。さらに、本発明のすべての態様は、様々な条件および変数に依拠する本明細書中に記載の特定の描写、構成または相対比率に限定されないことは理解されるものとする。本明細書中で説明した本発明の実施形態の様々な代案は、本発明を実施するにあたり使用されてもよいことを理解されたい。よって、本発明は、そのような代案、修正、変形または均等物のいずれかをも包含するものと考えられている。以下の請求項は、本発明の範囲を規定し、それら請求項の範囲およびその均等物内の方法および構成は、本発明の範囲に包含されると意図されている。
図1
図2
【国際調査報告】