(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-10-23
(54)【発明の名称】光波長吸収制御が可能なエマルション流体フィルター及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
G02B 5/24 20060101AFI20241016BHJP
B01J 13/00 20060101ALI20241016BHJP
【FI】
G02B5/24
B01J13/00 A
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024518966
(86)(22)【出願日】2022-06-21
(85)【翻訳文提出日】2024-03-27
(86)【国際出願番号】 KR2022008736
(87)【国際公開番号】W WO2023075066
(87)【国際公開日】2023-05-04
(31)【優先権主張番号】10-2021-0146625
(32)【優先日】2021-10-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
(71)【出願人】
【識別番号】314000442
【氏名又は名称】高麗大学校産学協力団
【氏名又は名称原語表記】KOREA UNIVERSITY RESEARCH AND BUSINESS FOUNDATION
【住所又は居所原語表記】145, Anam-ro Seongbuk-gu Seoul 02841, Republic of Korea
(74)【代理人】
【識別番号】100121728
【氏名又は名称】井関 勝守
(74)【代理人】
【識別番号】100165803
【氏名又は名称】金子 修平
(74)【代理人】
【識別番号】100179648
【氏名又は名称】田中 咲江
(74)【代理人】
【識別番号】100222885
【氏名又は名称】早川 康
(74)【代理人】
【識別番号】100140338
【氏名又は名称】竹内 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100227695
【氏名又は名称】有川 智章
(74)【代理人】
【識別番号】100170896
【氏名又は名称】寺薗 健一
(74)【代理人】
【識別番号】100219313
【氏名又は名称】米口 麻子
(74)【代理人】
【識別番号】100161610
【氏名又は名称】藤野 香子
(72)【発明者】
【氏名】カン ヨンテ
(72)【発明者】
【氏名】ソン ミンス
(72)【発明者】
【氏名】イ ジェウォン
(72)【発明者】
【氏名】ジョン ハンソル
【テーマコード(参考)】
2H148
4G065
【Fターム(参考)】
2H148EA01
2H148EA04
2H148EA05
2H148EA07
2H148EA13
4G065AA01
4G065AB01X
4G065AB01Y
4G065AB11X
4G065AB11Y
4G065AB28X
4G065AB28Y
4G065BA03
4G065BA06
4G065BA07
4G065CA02
4G065DA09
(57)【要約】
本発明は‘⊃’字チューブ形状に形成された透明チャンネル、及び前記透明チャンネル内に収容されるエマルション、を含み、前記エマルションは分散された界面活性剤及びオイルを含む、光波長吸収制御が可能であるエマルションスペクトル流体フィルター及びその製造方法を開示する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
‘⊃’字チューブ形状に形成された透明チャンネルと、
前記透明チャンネル内に収容されるエマルションと、を含み、
前記エマルションは、分散された界面活性剤及びオイルを含む、
光波長吸収制御が可能であるエマルションスペクトル流体フィルター。
【請求項2】
前記透明チャンネルは、
断面が‘⊃’字形状の内壁及び
前記内壁の外側に位置し、断面が‘⊃’字形状の外壁を含み、
前記透明チャンネルは、
一端に注入口及び排出口が形成され、他端に湾曲部が形成された、
請求項1に記載の光波長吸収制御が可能であるエマルションスペクトル流体フィルター。
【請求項3】
前記透明チャンネルは、
前記注入口から前記湾曲部側に前記エマルションが移送される第1領域及び
前記第1領域の上部に位置され、前記湾曲部から前記排出口側に前記エマルションが移送される第2領域を含む、
請求項2に記載の光波長吸収制御が可能であるエマルションスペクトル流体フィルター。
【請求項4】
前記第1領域で前記内壁の上面に太陽電池が固定される、
請求項3に記載の光波長吸収制御が可能であるエマルションスペクトル流体フィルター。
【請求項5】
前記第1領域で前記エマルションは、前記太陽電池の熱を吸収し、
前記第2領域で前記エマルションは、前記太陽電池側に入射される光で730nm波長以下及び1130nm波長以上の光を吸収する、
請求項4に記載の光波長吸収制御が可能であるエマルションスペクトル流体フィルター。
【請求項6】
前記オイルは、シリコンオイル(Silicone oil)、コーンオイル(corn oil)、ミネラルオイル(Mineral oil(white oil))、潤滑剤(Lubricant)、及び大豆オイル(soybean oil)の中で少なくとも1つを含む、
請求項1に記載の光波長吸収制御が可能であるエマルションスペクトル流体フィルター。
【請求項7】
前記エマルションで前記オイルは、0.05wt%以下に混合される、
請求項6に記載の光波長吸収制御が可能であるエマルションスペクトル流体フィルター。
【請求項8】
前記界面活性剤は、
低HLB界面活性剤と高HLB界面活性剤が混合されて構成され、
Oleic acid(オレイン酸)、Sorbitan trioleate(ソルビタンツリーオレエート)、Sorbitan monooleate(ソルビタンモノオレエート)、(ソルビタンモノステアレート)Sorbitan Monostearate、Sorbitan Monolaurate(ソルビタンモノラウレート)、Polyoxyethylene 5 sorbitan monooleate(ポリオキシエチレンソルビタンモノオレエート)、Triethanolamine oleate(ツリーエタノールアミンオレエート)、Polyoxyethylene 20 sorbitan monostearate(ポリオキシエチレンソルビタンモノステアレート)、Polyoxyethylene 20 sorbitan monooleate(ポリオキシエチレンソルビタンモノオレエート)、Polyoxyethylene 20 sorbitan monolaurate(ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート)、Sodium oleate(ソジウムオレエート)、及びPotasium oleate(ポタシウムオレエート)の中で選択された2つ以上を含む、
請求項1に記載の光波長吸収制御が可能であるエマルションスペクトル流体フィルター。
【請求項9】
前記オイルと前記界面活性剤の混合比率は、2:1乃至8:1範囲を有する、
請求項1に記載の光波長吸収制御が可能であるエマルションスペクトル流体フィルター。
【請求項10】
低HLB界面活性剤と高HLB界面活性剤が混合して、界面活性剤混合流体を生成する段階と、
前記界面活性剤混合流体にオイルを混合して混合流体を生成する段階と、
前記混合流体に水を混合する段階と、を含む、
光波長吸収制御が可能なエマルションの製造方法。
【請求項11】
水を混合する段階の後に、超音波粉砕段階と、をさらに含む、
請求項10に記載の光波長吸収制御が可能であるエマルションの製造方法。
【請求項12】
前記オイルは、Silicone oil、corn oil、Mineral oil(white oil)、Lubricant、及びsoybean oilの中で少なくとも1つを含む、
請求項10に記載の光波長吸収制御が可能であるエマルションの製造方法。
【請求項13】
前記オイルを混合して混合流体を生成する段階で、
前記オイルは、前記エマルション対比0.05wt%以下に混合される、
請求項10に記載の光波長吸収制御が可能であるエマルションの製造方法。
【請求項14】
前記界面活性剤混合流体を生成する段階で、
前記界面活性剤混合流体は、
Oleic acid(オレイン酸)、Sorbitan trioleate(ソルビタンツリーオレエート)、Sorbitan monooleate(ソルビタンモノオレエート)、(ソルビタンモノステアレート)Sorbitan Monostearate、Sorbitan Monolaurate(ソルビタンモノラウレート)、Polyoxyethylene 5 sorbitan monooleate(ポリオキシエチレンソルビタンモノオレエート)、Triethanolamine oleate(ツリーエタノールアミンオレエート)、Polyoxyethylene 20 sorbitan monostearate(ポリオキシエチレンソルビタンモノステアレート)、Polyoxyethylene 20 sorbitan monooleate(ポリオキシエチレンソルビタンモノオレエート)、Polyoxyethylene 20 sorbitan monolaurate(ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート)、Sodium oleate(ソジウムオレエート)、及びPotasium oleate(ポタシウムオレエート)の中で選択された2つ以上を含む、
請求項10に記載の光波長吸収制御が可能であるエマルションの製造方法。
【請求項15】
前記オイルを混合して混合流体を生成する段階で、
前記オイルと前記界面活性剤の混合比率は、2:1乃至8:1範囲を有する、
請求項10に記載の光波長吸収制御が可能であるエマルションの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は光波長吸収制御が可能なエマルションスペクトル流体フィルター及びその製造方法に関するものである。
【0002】
本発明は科学技術情報通信部の集団研究支援(R&D)(課題固有番号:1711119436、研究管理専門機関:韓国研究財団、研究課題名:プラスエネルギービル革新技術研究センター、主管機関:高麗大学校産学協力団、研究期間:2020.07.01~2021.05.31、寄与率:1/1)の一環として遂行した研究から導出されたものである。
一方、本発明の全ての側面で韓国政府の財産利益はない。
【背景技術】
【0003】
太陽光発電は光電効果を利用して光源が供給されれば、半導体を通じて電力が生産される。太陽光パネルは太陽電池からなり、構成する材料によってシリコン半導体と化合物半導体に区分される。
【0004】
現在、太陽光市場に出てくるほとんどの製品はシリコン系列で成された太陽電池であり、その中でも単結晶シリコン太陽電池が主なものであるが、太陽電池は太陽光の全ての波長を利用することではなく、材料ごとに若干差はあるが、単結晶シリコン太陽電池の場合、730nm乃至1130nm波長を利用して電気を生産する。ここで、730nm乃至1130nmを除いた残りの波長の場合には電気生産に関与しなく、太陽電池で構成された全体太陽光パネルの温度を上げる役割をすることになり、この時、太陽光パネルは温度が上がれば、光電効率が低くなる問題点がある。一例として、太陽光パネルの温度が1℃上がる場合、光電効率が0.5%ほど、低下されることができる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、オイルと界面活性剤の構成からなり、化学的に安定して沈殿とそれによる腐食の危険が低く、短波長領域を効果的に吸収するオイルと長波長領域を効果的に吸収する水との混合形態であるので、光電効果に有効な波長を除く、吸収する特性が優れ、オイルが微粒子形態に分散され、低濃度に添加されて水と比較する時、熱伝導率が大きい差がなく、太陽光発電のみならず、光波長フィルターが必要であるところに流路形態に適用して必要に応じて自由にエマルションの注入/排出を通じて利用することが可能な光波長吸収制御が可能なエマルションスペクトル流体フィルター及びその製造方法を提供することにある。
【0006】
一方、本発明で達成しようとする技術的課題は以上で言及した技術的課題に制限されなく、言及しないその他の技術的課題は下の記載から本発明が属する技術分野で通常の知識を有する者に明確に理解されるべきである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の実施形態による光波長吸収制御が可能なエマルションスペクトルエマルションフィルターは‘⊃’字チューブ形状に形成された透明チャンネル、及び前記透明チャンネル内に収容されるエマルション、を含み、前記エマルションは分散された界面活性剤及びオイルを含むことができる。
【0008】
また、前記透明チャンネルは、断面が‘⊃’字形状の内壁及び前記内壁の外側に位置し、断面が‘⊃’字形状の外壁を含み、前記透明チャンネルは、一端に注入口及び排出口が形成され、他端に湾曲部を形成されることができる。
【0009】
また、前記透明チャンネルは、前記注入口から前記湾曲部側にエマルションが移送される第1領域及び前記第1領域の上部に位置され、前記湾曲部から前記排出口側にエマルションが移送される第2領域を含むことができる。
【0010】
また、前記第1領域で前記内壁の上面に太陽電池が固定されることができる。
【0011】
また、前記第1領域で前記エマルションは前記太陽電池の熱を吸収し、前記第2領域で前記エマルションは前記太陽電池側に入射される光で730nm波長以下及び1130nm波長以上の光を吸収することができる。
【0012】
また、前記オイルはSilicone oil、corn oil、Mineral oil(white oil)、Lubricant、及びsoybean oilの中で少なくとも1つを含むことができる。
【0013】
また、前記エマルションで前記オイルは0.05wt%以下に混合されることができる。
【0014】
また、前記界面活性剤は低HLB界面活性剤と高HLB界面活性剤が混合されて構成され、Oleic acid(オレイン酸)、Sorbitan trioleate(ソルビタンツリーオレエート)、Sorbitan monooleate(ソルビタンモノオレエート)、(ソルビタンモノステアレート)Sorbitan Monostearate、Sorbitan Monolaurate(ソルビタンモノラウレート)、Polyoxyethylene 5 sorbitan monooleate(ポリオキシエチレンソルビタンモノオレエート)、Triethanolamine oleate(ツリーエタノールアミンオレエート)、Polyoxyethylene 20 sorbitan monostearate(ポリオキシエチレンソルビタンモノステアレート)、Polyoxyethylene 20 sorbitan monooleate(ポリオキシエチレンソルビタンモノオレエート)、Polyoxyethylene 20 sorbitan monolaurate(ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート)、Sodium oleate(ソジウムオレエート)、及びPotasium oleate(ポタシウムオレエート)の中で選択された2つ以上を含むことができる。
【0015】
また、前記オイルと前記界面活性剤の混合比率は2:1乃至8:1範囲を有することができる。
【0016】
また、本発明の実施形態による光波長吸収制御が可能なエマルションの製造方法は低HLB界面活性剤と高HLB界面活性剤が混合して、界面活性剤混合流体を生成する段階、前記界面活性剤混合流体にオイルを混合して混合流体を生成する段階、及び前記混合流体に水を混合する段階、を含むことができる。
【0017】
また、水を混合する段階の後に、超音波粉砕段階、をさらに含むことができる。
【0018】
また、前記オイルはSilicone oil、corn oil、Mineral oil(white oil)、Lubricant、及びsoybean oilの中で少なくとも1つを含むことができる。
【0019】
また、前記オイルを混合して混合流体を生成する段階で、前記オイルは前記エマルション対比0.05wt%以下に混合されることができる。
【0020】
また、前記界面活性剤混合流体を生成する段階で、前記界面活性剤混合流体はOleic acid(オレイン酸)、Sorbitan trioleate(ソルビタンツリーオレエート)、Sorbitan monooleate(ソルビタンモノオレエート)、(ソルビタンモノステアレート)Sorbitan Monostearate、Sorbitan Monolaurate(ソルビタンモノラウレート)、Polyoxyethylene 5 sorbitan monooleate(ポリオキシエチレンソルビタンモノオレエート)、Triethanolamine oleate(ツリーエタノールアミンオレエート)、Polyoxyethylene 20 sorbitan monostearate(ポリオキシエチレンソルビタンモノステアレート)、Polyoxyethylene 20 sorbitan monooleate(ポリオキシエチレンソルビタンモノオレエート)、Polyoxyethylene 20 sorbitan monolaurate(ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート)、Sodium oleate(ソジウムオレエート)、及びPotasium oleate(ポタシウムオレエート)の中で選択された2つ以上を含むことができる。
【0021】
また、前記オイルを混合して混合流体を生成する段階で、前記オイルと前記界面活性剤の混合比率は2:1乃至8:1範囲を有することができる。
【発明の効果】
【0022】
本発明の実施形態によれば、オイルと界面活性剤の構成からなり、化学的に安定して沈殿とそれによる腐食の危険が低く、短波長領域を効果的に吸収するオイル誇張波長領域を効果的に吸収する水との混合形態であるので、光電効果に有効な波長を除く、吸収する特性が優れて光電効率を向上させることが可能である。
【0023】
また、本発明の実施形態によれば、オイルが微粒子形態に分散され、低濃度に添加されて水と比較する時、熱伝導率が大きい差がなく、太陽光発電のみならず、光波長フィルターが必要であるところに流路形態に適用して必要に応じて自由にエマルションの注入/排出を通じて利用することが可能である。
【0024】
一方、本発明で得ることができる効果は以上で言及した効果によって制限されなく、言及しないその他の効果は下の記載から本発明が属する技術分野で通常の知識を有する者に明確に理解するべきである。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】本発明の一実施形態による光波長吸収制御が可能なエマルションスペクトルエマルションフィルターが適用された状態を概略的に示した断面図である。
【
図2】太陽光の波長別の出力密度を示したグラフである。
【
図3】本発明の一実施形態によるエマルションを製造する方法を説明するための流れ図である。
【
図4】本発明の一実施形態によるエマルションの特性を示したグラフである。
【
図5】本発明の一実施形態によるエマルションの特性を示したグラフである。
【
図6】本発明の一実施形態によるエマルションの特性を示したグラフである。
【
図7】比較例にしたがうエマルションの特性を示したグラフである。
【
図8】比較例にしたがうエマルションの特性を示したグラフである。
【
図9】本発明の一実施形態による流体フィルター及び比較例にしたがうエマルションの特性を比較して示したグラフである。
【
図10】本発明の一実施形態による流体フィルター及び比較例にしたがうエマルションの特性を比較して示したグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明の実施形態を添付された図面を参照してさらに詳細に説明する。本発明の実施形態は様々な形態に変形することができ、本発明の範囲が以下の実施形態に限定されることとして解釈されてはならない。本実施形態は当業界で平均的な知識を有する者に本発明をさらに完全に説明するために提供されることである。したがって、図面での要素の形状はより明確な説明を強調するために誇張されている。
【0027】
本発明が解決しようとする課題の解決方案を明確にするための発明の構成を本発明の好ましい実施形態に基づいて添付図面を参照して詳細に説明し、図面の構成要素に参照番号を付与することにおいて同一構成要素に対しては、たとえ他の図面上にあっても同一の参照番号を付与し、当該図面に対する説明の時、必要である場合、他の図面の構成要素を引用することができることを予め明らかにする。
【0028】
図1は本発明の一実施形態による光波長吸収制御が可能なエマルションスペクトルエマルションフィルターが適用された状態を概略的に示した断面図である。
【0029】
図1を参照すれば、本発明の一実施形態による光波長吸収制御が可能なエマルションスペクトルエマルションフィルターは断面が‘⊃’字チューブ形状に形成された透明チャンネルの内部にエマルションが流入されて構成されることができる。
【0030】
透明チャンネルは断面が‘⊃’字形状の内壁、内壁の外側に位置し、断面が‘⊃’字形状の外壁及び内壁と外壁を連結する連結側壁(図示せず)で構成されることができる。ここで、透明チャンネルは透過度が優れ、熱伝導率が優れた材料で構成されることが好ましく、本発明でこれを限定することではない。
【0031】
透明チャンネルは一側に注入口と排出口を有し、一側と反対になる他側に湾曲部を有して断面が‘⊃’字形状に形成されることができる。ここで、注入口と排出口の中で少なくとも一つにはポンプ(図示せず)が連結されて、エマルションをポンピングして強制的な流れを生成することができる。
【0032】
即ち、透明チャンネル内で注入口を通じて流入されたエマルションは湾曲部を経て流れ方向が反転された状態に排出口を通じて排出されることができる。
【0033】
具体的に、透明チャンネルは注入口から湾曲部側にエマルションが一側に移送される第1領域と、第1領域の上部に位置され、湾曲部から排出口側にエマルションが他側に移送される第2領域を含む。
【0034】
ここで、上部方向は光が流入される方向として定義されることができる。
【0035】
一方、図示しなかったが、透明チャンネルは閉じた構造で形成され、一側には冷却ユニット(図示せず)とポンプ(図示せず)が形成されて、冷却されたエマルションを湾曲部側に強制移送した後、湾曲部を経たエマルションを透明チャンネル内で循環させることができる。
【0036】
第1領域で内壁の外面(
図1の上面)には太陽電池が配置されることができる。
【0037】
一方、第1領域の内壁の上面には太陽電池が結合して固定される固定部(図示せず)を含むことができる。
【0038】
ここで、内壁の外面は透明チャンネルの中心軸に向かう面として定義されることができる。
【0039】
注入口を通じて注入されるエマルションは太陽電池より低い温度を有することができ、第1領域で熱伝導を通じてエマルションは太陽電池を冷却させることができる。
【0040】
第1領域で太陽電池の熱を吸収したエマルションは湾曲部を経て第2領域に流入されることができ、第2領域でエマルションは太陽光の中で有効波長(730nm~1130nm)を除いた波長帯域(730nm未満、1130nm超過)の光を吸収することができる。
【0041】
図2は太陽光の波長別の出力密度を示したグラフである。
【0042】
ここで、
図2を共に参照すれば、有効波長は光電効果に有効な波長として定義されることができ、一例として本発明では単結晶シリコン太陽電池の場合、電気を生産する波長帯域である730nm乃至1130nm波長として定義されることができる。一方、有効波長である730nm乃至1130nmを除いた残りの波長の場合には電気生産に関与しなく、太陽電池で構成された全体太陽光パネルの温度を高めることができる。
【0043】
即ち、第2領域に存在するエマルションは太陽電池の温度上昇に影響を与える波長帯域(730nm未満、1130nm超過)の光を吸収して、太陽電池の光電効率を維持しながら、温度が上昇することを抑制することができる。
【0044】
エマルションは水ベースのオイルと界面活性剤を含む混合物形態で構成されることができる。
【0045】
図3は本発明の一実施形態によるエマルションを製造する方法を説明するためのフローチャートである。
【0046】
図3を参照すれば、本発明の一実施形態によるエマルションを製造する方法はまず、オイルのHLB値を基準に低HLB界面活性剤と高HLB界面活性剤を混合する。
【0047】
ここで、一般的なオイルのHLB値は6~12の間であるので、低HLB界面活性剤HLB値が0~6の間で定義され、高HLB界面活性剤HLB値が12~18の間で定義される。
【0048】
界面活性剤はHLB値が低い順番にOleic acid(オレイン酸)、Sorbitan trioleate(ソルビタンツリーオレエート)、Sorbitan monooleate(ソルビタンモノオレエート)、(ソルビタンモノステアレート)Sorbitan Monostearate、Sorbitan Monolaurate(ソルビタンモノラウレート)、Polyoxyethylene 5 sorbitan monooleate(ポリオキシエチレンソルビタンモノオレエート)、Triethanolamine oleate(ツリーエタノールアミンオレエート)、Polyoxyethylene 20 sorbitan monostearate(ポリオキシエチレンソルビタンモノステアレート)、Polyoxyethylene 20 sorbitan monooleate(ポリオキシエチレンソルビタンモノオレエート)、Polyoxyethylene 20 sorbitan monolaurate(ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート)、Sodium oleate(ソジウムオレエート)、Potasium oleate(ポタシウムオレエート)を含むことができるが、本発明がこれに限定されることではない。
【0049】
オイルと混合する前に必ず界面活性剤同士を混合して適正HLB値を有する界面活性剤混合流体がされるようにし、この流体にオイルを混合する。
【0050】
ここで、オイルごとにHLB値が定められている。例えば、シリコンオイルのHLB値が11であれば、2種の界面活性剤を混ぜてHLB 11である界面活性剤を生成することが好ましい。このように2つの界面活性剤を混ぜてオイルと同一のHLB値を作った時、この時のHLB値を適正HLB値とする。
【0051】
一方、単一界面活性剤を含むエマルションは安定性が良くないので、複合界面活性剤の使用がエマルションの安定性を向上させることができる。エマルションの場合、水と油が混ざることと高い安定性が要求されるので、複合界面活性剤を使用することが好ましい。
【0052】
オイルはシリコンオイル(Silicone oil)、コーンオイル(corn oil)、ミネラルオイル(Mineral oil(white oil))、潤滑剤(Lubricant)及び大豆オイル(soybean oil)等粘性を有する形態の流体の中で少なくとも1つを含むことができる。
【0053】
ここで、オイルは常温で液相を維持する成分であることが好ましい。即ち、オイルは植物性オイルであることが好ましい。動物性オイルは常温で固体として存在して、液相として存在しにくく、使用しにくい。また、植物性オイルの中でもココナッツオイルのような場合は常温で固体であるので、使用できない。
【0054】
この時、オイルの量は界面活性剤混合流体の2~8倍まで質量比に添加可能である。即ち、オイルと界面活性剤混合流体の混合比率は2:1乃至8:1範囲に設定されることができる。
【0055】
ここで、オイルと界面活性剤混合流体の混合比率が2:1未満である場合、混合過程で非活用界面活性剤が多くなって界面活性剤間の凝集が発生する問題が発生することができ、オイルと界面活性剤混合流体の混合比率が8:1超過である場合、混合過程でオイルは分散させる界面活性剤の不足による残りのオイル間の凝集が発生する問題が発生することができる。
【0056】
界面活性剤はオイルが水と分離されなく、液滴形態に分散させるために添加したことである。
【0057】
界面活性剤は陰イオン界面活性剤、陽イオン界面活性剤、非イオン界面活性剤、陽性界面活性剤で成される群から選択されるいずれか1つ以上であり得る。
【0058】
このような区分は親水性基の種類に応じて分けたのであり、陰イオン界面活性剤は長鎖の原子団(疎水性部分)が陰イオンになる界面活性剤を言い、石鹸、ホスフェートエステル、スルファート、スルホネート等があり、陽イオン界面活性剤は長鎖が陽イオンになる界面活性剤を言い、第4級アンモニウム塩、アミン塩、ピリジン塩等がある。また、非イオン界面活性剤は電荷を帯びる基を有しない界面活性剤を言い、ポリエチレン、グリコール、多価アルコール、脂肪酸エチレンオキサイド等があり、陽性界面活性剤は分子内に陽イオンと陰イオンを同時に有している界面活性剤を言い、pHの支配を受け、アミノ酸型、ベタイン型などがある。
【0059】
一方、HLB(Hydrophilic Lipophilic Balance、親水性親油性均衡)は界面活性剤の親水性と親油性の程度を数値で示したことであり、HLBは親油性が最大のものから1で始まるが、広く使われている界面活性剤はHLBがほとんど1から20の間にある。具体的に、界面活性剤混合物のHLB値は下記の[数1]によって得ることができる。
【数1】
【0060】
例えば、シリコンオイルのHLB=11であれば、surfactantA;Polyoxyethylene 5 lauryl etherのHLB=10、surfactant B;Polyoxyethylene 10 cetyl etherのHLB=12であることを利用して、1:1の比率に2つの界面活性剤を混合すれば、シリコンオイルのHLBのような値である11を得ることができる。
【0061】
その後の段階では、オイルと界面活性剤混合流体の混合物は水と混合する。この時、攪拌を同伴して超音波粉砕機を用いてこそ微粒子状に均一にオイルが分散され、二重ジャケットビーカーに冷却水を流して超音波粉砕機を使用する間に流体の温度が上がることを防止してこそ効果的に超音波粉砕効果を示すことができる。
【0062】
製造過程の時、流体間又は流体と粒子間混合(撹拌)する方法としては機械式撹拌、超音波粉砕、磁力攪拌を活用することができ、オイル/界面活性剤を水に混合する段階では超音波粉砕を通じて微粒子形状に維持することができる。
【0063】
ここで、最終的にオイルを水に添加する時にオイルの濃度は0.05質量分率の以下に添加してこそ微粒子形状に維持されるオイルによる過度の濁度を防止することができる。
[実施例]
【0064】
エマルション製造の実施例を示し、オイルの種類はシリコンオイル(0.05g)を選択し、低HLB界面活性剤Span80(0.00625g)、高HLB界面活性剤はTween80(0.00625g)を選定して進行した。
【0065】
まず、Span80(0.00625g)とTween80(0.00625g)を攪拌器内で、400rpmで30分間撹拌した。
【0066】
その後、攪拌器内にシリコンオイル(0.05g)を添加した後、400rpmで30分間撹拌した。
【0067】
その後、攪拌器内に水(99.9375g)を添加した後、400rpmで30分間撹拌した後、超音波粉砕機(20Hz)を利用して25℃で1時間撹拌した。
[比較例]
【0068】
透明チャンネルに流入される流体を水及びナノエマルションを利用した。
【0069】
ナノエマルションは水に固体ナノ粒子を分散させたものである。
[特性評価]
【0070】
図4は本発明のために検討したオイルと水の各々の光透過度を示したことであって、水は730nm以下の波長で高い透過度を示す反面、オイルは全て低い透過度を示した。また、1130nm以上の波長ではエマルションスペクトル流体フィルターのベースになる水の透過度が最も低いので、適合であることを示した。
【0071】
図5はシリコンオイルの添加濃度に応じて光透過度を示したことであって、オイルの添加濃度が増加するほど、光透過度が全ての波長で全体的に低くなることを確認することができる。
図5を参照すれば、0.05wt%がオイル添加した限界濃度で見ることができる。
【0072】
図6は0.05wt%のシリコンオイルが添加されたエマルションスペクトル流体フィルターの熱安定性評価結果を示した。エマルションの場合、温度変化に応じてオイルと界面活性剤との間の相互作用が変化して分散が破壊されることができる。太陽電池の温度を冷却する技術の適用なしで太陽光に露出されれば、80乃至90℃まで上がることができるので、この温度で温度安定性が重要である。
【0073】
本発明の場合、0.05wt%の添加濃度で制限したので、水が蒸発する温度直前の98度まで分散破壊によるオイル分離が確認されず、熱的に優れた安定性を示した。
【0074】
図7は比較例のナノ流体の場合、紫外線波長と赤外線波長を全て吸収することができるが、流体中に固体粒子があるので、電気エネルギー生産に必要である波長を吸収することができ、流体が流れる時、沈殿物が生じる問題が発生することができる。
【0075】
一方、
図7で、AはOleylamine(C
18H
37N)流体であり、B-DはOleylamineにCu
9S
5を様々な濃度で添加したことである。
【0076】
この場合、固体ナノ粒子は水より伝導熱伝達が促進されて太陽光パネル下部側に直接接触する時、熱を効果的に下げることができるが、上部側に流入される時、光電効果に必要である波長も一部吸収する問題と長期間使用する時、粒子が沈殿される問題がある。
【0077】
図8は各オイルごと0.05wt%を水に分散した時、(実施例)の光透過度及び水(比較例)の光透過度を示したことと0.05wt%のオイル添加のみで730nm以下の波長で低い透過度を示した。本発明の実施例ではシリコンオイルを選択して細部実験を進行した。
【0078】
図9はシリコンオイルの添加濃度に応じる熱伝導率を示したことであって、シリコンオイルの熱伝導率が水より低いことに拘らず、添加濃度が水と類似な水準であることを示した。即ち、太陽パネルに接触して熱交換の時、水と類似な結果を期待することができる。
【0079】
図10は流体フィルターを太陽電池パネル上に配置した時、各オイル別に太陽電池パネルの温度上昇変化を確認したグラフである。
【0080】
何も適用しなかった時は空気(air)のみがある状態で一般的な場合であり、60分後に57.7℃に到達し、水を適用した場合、56.2℃で1.5℃の冷却効果を示したが、オイルスペクトル流体フィルターを適用すれば、水より効果が増加してシリコンオイルの場合、53.6℃に最大4.1℃の冷却効果を示すことを確認することができる。
【0081】
以上の詳細な説明は本発明を例示するものである。また、前述した内容は本発明の好ましい実施形態を例として説明することであり、本発明は多様な他の組合、変更、及び環境で使用することができる。即ち、本明細書に開示された発明の概念の範囲、前述した開示内容と均等な範囲、及び/又は当業界の技術又は知識の範囲内で変更又は修正が可能である。前述した実施形態は本発明の技術的思想を具現するための最善の状態を説明することであり、本発明の具体的な適用分野及び用途で要求される様々な変更も可能である。したがって、以上の発明の詳細な説明は開示された実施状態に本発明を制限しようとする意図ではない。添付された請求の範囲は他の実施状態も含むことと解析されなければならない。
【国際調査報告】