(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-10-23
(54)【発明の名称】セリアック病エピトープ
(51)【国際特許分類】
C07K 7/06 20060101AFI20241016BHJP
C07K 7/08 20060101ALI20241016BHJP
C07K 14/415 20060101ALI20241016BHJP
C12N 15/29 20060101ALI20241016BHJP
C12N 1/15 20060101ALI20241016BHJP
C12N 1/19 20060101ALI20241016BHJP
C12N 1/21 20060101ALI20241016BHJP
C12N 5/10 20060101ALI20241016BHJP
A61P 1/00 20060101ALI20241016BHJP
A61P 1/14 20060101ALI20241016BHJP
A61K 38/16 20060101ALI20241016BHJP
A61K 47/68 20170101ALI20241016BHJP
A61K 48/00 20060101ALI20241016BHJP
A61K 31/7088 20060101ALI20241016BHJP
A61K 35/76 20150101ALI20241016BHJP
A61K 35/12 20150101ALI20241016BHJP
A61K 39/00 20060101ALI20241016BHJP
C12N 15/63 20060101ALN20241016BHJP
【FI】
C07K7/06 ZNA
C07K7/08
C07K14/415
C12N15/29
C12N1/15
C12N1/19
C12N1/21
C12N5/10
A61P1/00
A61P1/14
A61K38/16
A61K47/68
A61K48/00
A61K31/7088
A61K35/76
A61K35/12
A61K39/00 H
C12N15/63 Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】有
(21)【出願番号】P 2024519079
(86)(22)【出願日】2022-09-28
(85)【翻訳文提出日】2024-05-21
(86)【国際出願番号】 GB2022052450
(87)【国際公開番号】W WO2023052759
(87)【国際公開日】2023-04-06
(32)【優先日】2021-09-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
(71)【出願人】
【識別番号】510041810
【氏名又は名称】ネクステラ エーエス
【氏名又は名称原語表記】NEXTERA AS
(74)【代理人】
【識別番号】110001070
【氏名又は名称】弁理士法人エスエス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】レゼット, ゲール オーゲ
【テーマコード(参考)】
4B065
4C076
4C084
4C085
4C086
4C087
4H045
【Fターム(参考)】
4B065AA01X
4B065AA57X
4B065AA72X
4B065AA87X
4B065AB01
4B065BA02
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4H045AA10
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4H045AA30
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4H045BA17
4H045BA18
4H045BA19
4H045CA30
4H045EA22
4H045FA74
(57)【要約】
本発明は、アミノ酸配列PYPQQQQPYを含むたとえばT細胞エピトープなどのエピトープ、または1つ以上のQ残基がE残基に置換されたアミノ酸配列PYPQQQQPYを含むたとえばT細胞エピトープなどのエピトープを含むペプチドを提供し、このペプチドは50アミノ酸以下の長さである。前記ペプチドおよびMHC分子を含むコンジュゲートもしくは複合体、並びに前記ペプチドおよび複合体の、さまざまな治療および診断用の使用も提供される。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アミノ酸配列PYPQQQQPY(SEQ ID NO:8)を含むエピトープ、または
1つ以上のQ残基がE残基に置換されたアミノ酸配列PYPQQQQPY(SEQ ID NO:8)を含むエピトープ
を含むペプチドであって、前記ペプチドが50アミノ酸以下の長さである、ペプチド。
【請求項2】
前記ペプチドが、アミノ酸配列QPQQPYPQQQQPY(SEQ ID NO:20)、PQQPYPQQQQPYGT(SEQ ID NO:24)、もしくはQPQQPYPQQQQPYGTSL(SEQ ID NO:22)、または1つ以上の前記Q残基がE残基に置換されたアミノ酸配列、またはそれと実質的に相同のアミノ酸配列を含み、
前記実質的に相同の配列が1、2、または3アミノ酸の置換、付加、または欠失を有する配列を含む、請求項1に記載のペプチド。
【請求項3】
前記エピトープが、アミノ酸配列PYPQQEQPY(SEQ ID NO:25)、PYPEQEQPY(SEQ ID NO:26)、またはPYPEQQQPY(SEQ ID NO:27)を含む、請求項1または請求項2に記載のペプチド。
【請求項4】
前記ペプチドが、前記アミノ酸配列を脱アミドするトランスグルタミナーゼ2(TG2)によって得ることができる配列を含む、請求項1~3のいずれか一項に記載のペプチド。
【請求項5】
前記ペプチドがアミノ酸配列PYPQQEQPY(SEQ ID NO:25)を含み、
好ましくは前記ペプチドがQPQQPYPQQEQPY(SEQ ID NO:28)、QPQQPYPQQEQPYGTSL(SEQ ID NO:30)、またはPQQPYPQQEQPYGT(SEQ ID NO:29)を含む、請求項1~4のいずれか一項に記載のペプチド。
【請求項6】
前記ペプチドがアミノ酸配列QPQQPYPQQQQPY(SEQ ID NO:20)を含み、かつ、
残基3の前記QがE残基に置換され、かつ/または、
残基10の前記QがE残基に置換され、かつ/または、
残基8の前記QがE残基に置換される;
もしくは、
前記ペプチドがアミノ酸配列PQQPYPQQQQPYGT(SEQ ID NO:24)を含み、かつ、
残基2の前記QがE残基に置換され、かつ/または、
残基9の前記QがE残基に置換され、かつ/または、
残基7の前記QがE残基に置換される;
もしくは、
前記ペプチドがアミノ酸配列QPQQPYPQQQQPYGTSL(SEQ ID NO:22)を含み、かつ、
残基3の前記QがE残基に置換され、かつ/または、
残基10の前記QがE残基に置換され、かつ/または、
残基8の前記QがE残基に置換される;
請求項1~5のいずれか一項に記載のペプチド。
【請求項7】
前記ペプチドが、アミノ酸配列:
QPQQPYPQQEQPY(SEQ ID NO:28)、
QPEQPYPQQEQPY(SEQ ID NO:31)、
QPEQPYPQQQQPY(SEQ ID NO:32)、
QPQQPYPQQEQPYGTSL(SEQ ID NO:30)、
QPEQPYPQQEQPYGTSL(SEQ ID NO:33)、
QPEQPYPQQQQPYGTSL(SEQ ID NO:34)、
PQQPYPQQEQPYGT(SEQ ID NO:29)、
PEQPYPQQEQPYGT(SEQ ID NO:35)、または
PEQPYPQQQQPYGT(SEQ ID NO:36)を含む、請求項1~6のいずれか一項に記載のペプチド。
【請求項8】
前記ペプチドが、アミノ酸配列QPQQPYP(SEQ ID NO:37)またはQPEQPYP(SEQ ID NO:38)を含む、請求項1~7のいずれか一項に記載のペプチド。
【請求項9】
前記ペプチドが、アミノ酸配列QPEQPYPQQEQPY(SEQ ID NO:31)またはQPEQPYPQQEQPYGTSL(SEQ ID NO:33)を含む、請求項8に記載のペプチド。
【請求項10】
前記ペプチドが、位置10または位置10に対応する位置にG残基を含み、
好ましくは前記ペプチドが位置10および11、または位置10および11に対応する位置に残基GおよびTを含む、もしくは、
位置10および13、または位置10および13に対応する位置に残基GおよびLを含み、
前記位置が請求項1において定義される9量体に関して定義される、請求項1~9のいずれか一項に記載のペプチド。
【請求項11】
MHC分子と結合または関連付けされた請求項1~10のいずれか一項において定義されるペプチドを含む、コンジュゲートまたは複合体。
【請求項12】
請求項1~10のいずれか一項において定義されるペプチド、または
請求項11において定義されるコンジュゲートもしくは複合体をコードするヌクレオチド配列を含む、1つ以上の核酸分子。
【請求項13】
請求項12に記載の核酸分子を含む発現ベクター、または前記発現ベクターを含む細胞、もしくは請求項12に記載の核酸分子を含む細胞。
【請求項14】
請求項1~10のいずれか一項において定義されるペプチド、請求項11において定義されるコンジュゲートまたは複合体、請求項12において定義される核酸分子、もしくは請求項13において定義される発現ベクターまたは細胞を含む組成物。
【請求項15】
前記組成物がワクチン組成物である、請求項14に記載の組成物。
【請求項16】
対象におけるセリアック病を診断するための方法であって、前記方法が、
前記対象由来のサンプルと、請求項1~10のいずれか一項において定義されるペプチドまたは請求項11において定義されるコンジュゲートもしくは複合体とを接触させること、および
前記ペプチド、コンジュゲート、もしくは複合体が、前記サンプル中のT細胞と結合するかどうか、または
前記サンプルが前記ペプチド、コンジュゲート、もしくは複合体と結合する抗体を含有するかどうか、を決定することを含み、
前記ペプチド、コンジュゲート、もしくは複合体がT細胞と前記結合すること、または前記サンプル中に前記抗体が前記存在することが、前記対象がセリアック病であること、もしくはセリアック病になりやすいことを示す、方法。
【請求項17】
治療に用いるため、好ましくはセリアック病の処置もしくは予防に用いるため、または
前記ペプチド、コンジュゲート、もしくは複合体に対する対象の寛容化に用いるため、または
前記ペプチド、コンジュゲート、もしくは複合体に対する免疫応答の抑制もしくは低減に用いるための、
請求項1~10のいずれか一項において定義されるペプチド、または請求項11において定義されるコンジュゲートもしくは複合体、または請求項12において定義される核酸分子、または請求項13において定義される発現ベクターもしくは細胞。
【請求項18】
治療に用いるため、好ましくはセリアック病の処置もしくは予防に用いるため、または
前記ペプチド、コンジュゲート、もしくは複合体に対する対象の寛容化に用いるため、または
前記ペプチド、コンジュゲート、もしくは複合体に対する免疫応答の抑制もしくは低減に用いるための、
薬物もしくは組成物の製造における、請求項1~10のいずれか一項において定義されるペプチド、または請求項11において定義されるコンジュゲートもしくは複合体、または請求項12において定義される核酸分子、または請求項13において定義される発現ベクターもしくは細胞の使用。
【請求項19】
対象におけるCeDを処置もしくは予防する方法、または対象の寛容化の方法、または対象における免疫応答を抑制する方法であって、
前記方法が、請求項1~10のいずれか一項において定義されるペプチド、または請求項11において定義されるコンジュゲートもしくは複合体、または請求項12において定義される核酸分子、または請求項13において定義される発現ベクターもしくは細胞の有効量を前記対象に投与するステップを含む、方法。
【請求項20】
請求項1~10のいずれか一項において定義されるペプチド、または請求項11において定義されるコンジュゲートもしくは複合体と特異的に結合する結合タンパク質。
【請求項21】
前記結合タンパク質が、T細胞受容体、または抗体、または抗体の抗原結合ドメインを含む、請求項20に記載の結合タンパク質。
【請求項22】
前記T細胞受容体が可溶性T細胞受容体である、請求項21に記載の結合タンパク質。
【請求項23】
前記結合タンパク質が、細胞、好ましくは真核細胞、より好ましくはT細胞またはNK細胞の表面に発現される、請求項20または請求項21に記載の結合タンパク質。
【請求項24】
前記結合タンパク質が、たとえば細胞毒性部分またはsiRNAなどのペイロードと関連付けられるか、またはエフェクター細胞に対する特異性を有する第2の結合タンパク質と関連付けられる、請求項20~22のいずれか一項に記載の結合タンパク質。
【請求項25】
治療に用いるため、好ましくはセリアック病の処置または予防に用いるための、請求項20~24のいずれか一項に記載の結合タンパク質。
【請求項26】
治療に用いるため、好ましくはセリアック病の処置または予防に用いるための薬物または組成物の製造における、請求項20~24のいずれか一項に記載の結合タンパク質の使用。
【請求項27】
対象におけるセリアック病を処置または予防する方法であって、
前記方法が、請求項20~24のいずれか一項に記載の結合タンパク質の有効量を前記対象に投与するステップを含む、方法。
【請求項28】
請求項20~22のいずれか一項に記載の結合タンパク質を産生する方法であって、
前記方法が、請求項1~10のいずれか一項において定義されるペプチド、または請求項11において定義されるコンジュゲートもしくは複合体の使用を含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は一般的にエピトープ、特にT細胞エピトープの分野に関する。本発明はさらに、前記エピトープを含むペプチドと、前記エピトープまたはペプチドに関する製品またはそれを含む製品とに関する。こうした製品は、特にセリアック病(CeD:celiac disease)の処置または診断における治療および診断に使用される。
【背景技術】
【0002】
セリアック病(CeD)は免疫の介在する障害であり、特にコムギ(グリアジンおよびグルテニン)、オオムギ(ホルデイン)、およびライムギ(セカリン)などの穀類由来の食餌性グルテンタンパク質に対する異常な腸T細胞応答などの免疫反応を伴う。
【0003】
CeDは強力な遺伝的基盤(遺伝的素因)を有し、この疾患の特徴は、HLA-DQ2(特にHLA-DQ2.5だがHLA-DQ2.2も)またはHLA-DQ8分子の状況における脱アミドグルテンペプチドを認識するグルテン反応性CD4 T細胞である(非特許文献1)。
【0004】
よって、この疾患は強いHLA関連性を有し、患者の約90%がHLA-DQ2.5(DQA1*05-DQB1*02)を発現し、残りの患者のほとんどがHLA-DQ8(DQA1*03-DQB1*03:02)またはHLA-DQ2.2(DQA1*02:01-DQB1*02)を発現する。グルテンタンパク質はプロリン含有量が高いためにタンパク質分解耐性であり、結果的に腸内に長い免疫原性ペプチドフラグメントが残る。現在、コムギグルテンに対するT細胞応答は、タンパク質分解耐性α-グリアジン33量体ペプチド内に見出され得るα-グリアジンの2つのエピトープ、DQ2.5-グリア-α1a(PFPQPELPY(SEQ ID NO:4))およびDQ2.5-グリア-α2(PQPELPYPQ(SEQ ID NO:5))、ならびにω-グリアジンの2つのエピトープ、DQ2.5-グリア-ω1(PFPQPEQPF(SEQ ID NO:6))およびDQ2.5-グリア-ω2(PQPEQPFPW(SEQ ID NO:7))に対する反応性に支配されていると考えられている。重要なことに、グルテンペプチドの免疫原性はトランスグルタミナーゼ2(TG2:transglutaminase 2)酵素による翻訳後修飾によって大きく増強され、この酵素は脱アミドによって特定のグルタミン残基(Q)をグルタミン酸(E)に転換する。負に帯電したアンカー残基の導入によって、おそらくはpMHC(ペプチド-主要組織適合複合体(peptide-major histocompatibility complex))の安定性が増加することによって、このペプチドがHLA-DQ2.5結合のためにより適したものとなるだろう。
【0005】
CeDの他の特徴は、自己抗原トランスグルタミナーゼ2(TG2)およびグルテンペプチドに対する抗体である(非特許文献2、非特許文献3)。グルテンペプチド反応性のB細胞およびTG2反応性のB細胞の両方が、グルテン反応性(抗グルテン)CD4+T細胞に対する抗原提示細胞の働きをすることによって、病原性T細胞応答に対する増幅ループに関与すると考えられる。よって、B細胞(抗体)およびT細胞応答の両方がCeDに関与する(非特許文献4、非特許文献5)。
【0006】
CeDにおける免疫応答は、古典的にコムギ、オオムギ、およびライムギ由来のプロリンおよびグルタミンに富むグルテンタンパク質に対して観察されるが、患者によってはカラスムギ(アベニン)にも感受性を示す。CeDは主に小腸に影響し、古典的な症状はたとえば慢性下痢、腹部膨満および疼痛、吸収障害、ならびに食欲不振などの胃腸の問題を含む。しかし、こうした症状は他の疾患および状態にも共通するため、診断が容易でないことがよくある。患者はCeDの診断が得られるまで重篤な症状を有し、長期間にわたって検査を受けることがある。
【0007】
CeDに対する唯一の確立された処置は、生涯にわたってグルテン除去食を順守することであり、それは一般的に腸粘膜の回復をもたらし、症状を改善し、合併症が発生するリスクを低減させる。しかし、こうした除去食は恒常性の再確立の達成が不確実になることに加えて、管理および順守の達成が非常に困難である(非特許文献6)。よって、CeD患者の再燃および再発は極めて一般的である。
【0008】
加えて、CeDは診断が困難である。TG2抗体または抗グルテンペプチド抗体の検出に基づく診断アッセイは極めて疾患特異的であるが、こうしたアッセイにはルーチン的使用を妨げる問題があり(たとえば感度が低いこと、または手順が煩雑であることなど)、これはCeDに罹患した多くの患者が現行の方法を用いて診断され得ないことを意味する。
【0009】
CeDの比率は、世界の異なる地域において少ないところでは300分の1から多いところでは40分の1までさまざまであり、平均すると100人に1人から170人に1人である。しかし、症例の80%は未診断のままであると推定されている。子供も成人もCeDに罹患し得る。
【0010】
よって、CeDに対する改善された治療および診断方法は非常に望ましい。たとえばスクリーニングなどによって、症状のない人々の早期診断が可能になることが理想的であろう。
【0011】
この目的のために、過去数年間にわたって、異常なT細胞応答を引き起こす作用をし得る、すなわちCeDにおける役割を有し得るグルテン由来のT細胞エピトープ(グルテン由来ペプチド)を同定および特徴付けするための研究が行われてきた。CeD患者のCD4+T細胞は、疾患関連のHLA-DQ分子(たとえば上記で考察されたDQ2.5、DQ2.2、およびDQ8など)によって提示されたときにグルテンペプチドを認識するが、健常な対象のものは認識しない。加えて、CeD患者のグルテン反応性T細胞は、抗原ペプチド中の特定のグルタミン(Q)残基が酵素TG2によってグルタミン酸残基(E)に転換されたときに、そのペプチドをかなり良好に認識するようになることがしばしば観察される。こうした転換ペプチドは、脱アミドペプチドまたは脱アミドグルテンペプチドとも呼ばれる。疾患関連HLA-DQ分子によって提示されるグルテンペプチド/エピトープを認識するCD4+T細胞は、疾患のドライバーであると考えられる。
【0012】
グリアジン(α-、γ-、およびω-グリアジン)、グルテニン(高分子量および低分子量グルテニンの両方)、ホルデイン、セカリン、およびアベニンに由来する多くの異なるHLA-DQ拘束性T細胞エピトープが同定されている(非特許文献7)。こうしたT細胞エピトープは9アミノ酸(9量体)のコア領域を有するが、ほとんどのCD4+T細胞は、N末端およびC末端フランキング残基の包含による9アミノ酸より長いペプチドを認識する。加えて、グルテン特異的T細胞応答は一般的に、グルテンの脱アミドに依存するか、または強く促進される。多くの異なるT細胞エピトープが同定されているが、CeD患者に対する治療および診断の選択肢を改善するために他のものを同定することが必要である。これは特に、多くのT細胞によって認識されるエピトープが未知であるため、CD4+T細胞によって認識されるCeD活性グルテンエピトープのプールが完成には程遠いことが広く認識されているためである(非特許文献8)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0013】
【非特許文献1】リンドフォース(Lindfors)ら、2019、ネイチャー・レビューズ・ディジーズ・プライマーズ(Nat.Rev.Dis.Primers)、5(3)
【非特許文献2】オスマン(Osman)ら、クリニカル・アンド・エクスペリメンタル・イムノロジー(Clin.Exp.Immunol.)、2000;121(2):248-254
【非特許文献3】ドルム(Dorum)ら、2016、サイエンティフィック・リポーツ(Sci.Rep.)6、25565
【非特許文献4】ソリッド(Sollid)、2002、上記
【非特許文献5】スタムネス(Stamnaes)およびソリッド、セミナーズ・イン・イムノロジー(Semin.Immuno.)、2015;27(5):343-352)
【非特許文献6】スタムネスら、アドバンスド・サイエンス(Adv Sci)(ヴァインハイム(Weinh))、8巻(4)、2021
【非特許文献7】ソリッドら、2020、イムノジェネティクス(Immunogenetics)72、85-88
【非特許文献8】シャーフ(Sherf)ら、2020年3月17日、フロンティアズ・イン・ニュートリション(Front.Nutr.)
【非特許文献9】ワルコウィアク(Walkowiak)ら、ネイチャー(Nature)、2020、588(7837):277
【非特許文献10】ラキ(Raki)ら、ガストロエンテロロジー(Gastroenterology)、2017、153(3):787
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明は、CeDに関連する新たなT細胞エピトープの同定に基づくものである。驚くべきことに、このエピトープはこれまで古典的な六倍体のパンコムギ(トリチクム・アエスチブム(Triticum aestivum))において見出されていなかったが、二倍体の野生型のコムギ(トリチクム・ウラルツ(Tritcum urartu))に見出される。特に、コムギゲノムのサイズおよび複雑さ、ならびに複数のコムギ系統に対するゲノムアセンブリデータがないことが、六倍体パンコムギにおいて本明細書に開示される新たなエピトープを含むCeD関連エピトープが隠されている原因であり得る(非特許文献9)。おそらく、このことがCeDにおける公知のエピトープ反応性の欠如が支配的であることの根底にあるだろう(非特許文献10)。よってこうしたエピトープは、CeDの治療および診断に対する心躍る新たな機会を提供するものである。
【0015】
このエピトープは従来の技術を用いて同定されたのではなく、免疫優性α-グリアジンエピトープDQ2.5-グリア-α1aと相互作用する能力を有することで選択された抗体がいくつかの特性を示し、さらに調査したところその抗体がCeD患者における別のT細胞エピトープも認識する可能性が示唆されたという驚くべき発見によって同定された。広範囲のデータベース解析とインビトロ検査との混合によって、この抗体がCeDに関連する新たなT細胞エピトープを認識できることが示された。このT細胞エピトープは、9量体コア配列(非脱アミド配列)PYPQQQQPY(SEQ ID NO:8)を有する。その脱アミド形態も提供される。
【0016】
よって1つの態様において、本発明は、アミノ酸配列PYPQQQQPY(SEQ ID NO:8)を含む(またはそれからなる)エピトープ、または1つ以上のQ残基がE残基に置換されたアミノ酸配列PYPQQQQPY(SEQ ID NO:8)を含む(またはそれからなる)エピトープを含む、たとえば単離ペプチドなどのペプチドを提供する。
【0017】
代替的に見て、本発明は、アミノ酸配列PYPQQQQPY(SEQ ID NO:8)を含む、または1つ以上のQ残基がE残基に置換されたアミノ酸配列PYPQQQQPY(SEQ ID NO:8)を含む、たとえば単離ペプチドなどのペプチドを提供する。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】A.HLA-DQ2.5:DQ2.5-グリア-α1a特異的抗体107の結合特性を示す図である。8つの異なるHLA-DQ2.5:グルテンペプチド複合体およびHLA-DQ2.5:CLIP2を特異性分析(n=2)のためのELISAに用いた。pMHC捕捉レベルを照合するために、HLA-DQ2のβ鎖に特異的なmAb2.12.E11を含めた。エラーバーは2つ組の平均±SDを示す。 B.腸生検の形質細胞(PC:Plasma cells)およびB細胞はDQ2.5-グリア-α1aペプチドを提示することを示す図である。未処置セリアック病(UCD:untreated celiac disease)もしくは処置セリアック病(TCD:treated celiac disease)患者または健常対照のいずれかに由来する腸生検から調製した単一細胞懸濁物中のPCおよびB細胞におけるDQ2.5-グリア-α1a提示の検出を行った。マウスIgG2b mAb107を検出に用い、二次抗体単独使用に対する陽性細胞のパーセンテージを決定した。CD19+PCにおける対照患者の層別化を行った。各記号は1つの個体に対応する。
【
図2-1】A.導出物(leads)の生物物理学的特徴付けを示す図である。SPRを用いて、HLA-DQ2.5:DQ2.5-グリア-α1aに対するオフ速度(off-rate)結合に基づいてFabフラグメントをランク付けした。個々のクローンIDが示されている。
【
図2-2】B.導出物(leads)の生物物理学的特徴付けを示す図である。Fabを全長hIgG1に再編成し、関連する可溶性ペプチド:HLA-DQ2.5複合体のパネルに対するELISAで解析した。エラーバーは2つ組の平均±SDを示す。 C.導出物(leads)の生物物理学的特徴付けを示す図である。Bで用いられたそれぞれのペプチドの9量体コアエピトープの配列比較を示す。
【
図3】細胞上のpMHCに対するmAb4.7C結合の評価を示す図である。 A.示されるとおりの共有的に連結されたペプチドによってHLA-DQ2.5を発現するように操作されたマウスA20 B細胞を5μg/mlの抗体によって染色した。 B.注記のとおりの50μMグルテンペプチドをRaji B細胞にインビトロで積載し、5μg/mlの抗体によって染色した(12量体α1aペプチド:QLQPFPQP
ELPY(SEQ ID NO:53);CLIP2ペプチド(MATPLLMQALPMGAL(SEQ ID NO:54)):33量体:LQLQPFPQPELPYPQPELPYPQPELPYPQPQPF(SEQ ID NO:55))。
【
図4-1】A.mAb4.7CのT細胞活性化阻害能力を示す図である。グリアジン特異的SKW3 T細胞の活性化を示す。Raji B細胞にペプチドの段階希釈物を積載し、操作されたグリアジン特異的SKW3 T細胞と共培養した。フローサイトメトリーにおいてCD69
+CD19
-細胞としてT細胞活性化を測定した。エラーバーは2つ組(n=2)の平均±SDを示す。
【
図4-2】B.mAb4.7CのT細胞活性化阻害能力を示す図である。CD69アップレギュレーションによって測定された最大T細胞活性化の60%をもたらすペプチド用量にて、1μMのmAb4.7Cまたは0.1μMのパンHLA抗体をRaji B細胞に加えた後にT細胞とインキュベートした。抗体の存在を伴わないペプチド特異的T細胞活性化に対するT細胞活性化を算出した。
【
図5】pHLA特異的抗体は、CeD患者の小腸生検に由来する細胞におけるグルテンペプチドの提示を検出することを示す図である。未処置HLA-DQ2.5+CeD患者(n=8)(A)または正常な腸組織構造を有する対照(n=3)(B)由来の単一細胞懸濁物を調製した。細胞は、生きた大きいリンパ球CD3-CD11c-CD14-CD38+CD27+CD19+CD45+PCとしてゲートされた(A)。Alexa-546-コンジュゲート二次抗体によって結合されたmIgG2b抗体を検出し、アイソタイプ対照抗体(アイソタイプ)の染色に従って設定されたゲートに基づいて、陽性細胞の頻度を算出した。各グループの平均パーセンテージが水平線として示され、点線はアイソタイプ対照の平均バックグラウンド染色を表す。各々のCeD患者は独自の色で表され、修正されたマーシュスコアによる生検組織構造の変化が示される。
【
図6】トリチクム・アエスチブム(Triticum aestivum)由来のDQ2.5-グリア-α1aと相同のトリチクム・ウラルツ(Triticum urartu)ペプチドの同定を示す図である。ScanPrositeサーチエンジン(https://prosite.expasy.org/scanprosite/)を用いて、トリチクム(Triticum)分類群に対して、p10にプロリンを有さないが好ましくはグリシンを有するDQ2.5-グリア-α1a相同ペプチドをサーチすることによって、UniprotエントリーA0A0E3SZN6_TRIUAとして注記される祖先コムギ種トリチクム・ウラルツ(Triticum urartu)のペプチドを同定した。位置p6およびp10を明瞭にするために四角で囲んでいる(A)。UniprotエントリーA0A0E3SZN6_TRIUAの完全なアミノ酸配列を示す(B)。DQ2.5-グリア-α1a相同ペプチドの仮説的な9量体コアが下線付きの太字で強調されている。
【
図7】A0A0E3SZN6_TRIUAエピトープ候補に対する抗体結合の評価を示す図である。A0A0E3SZN6_TRIUAペプチドを、比較のために相同のDQ2.5-グリア-α1aおよびDQ2.5-グリア-α2エピトープならびに対応するp4およびp6位置のQln(Q)からGlu(E)への交換に対してアライメントした。公知のP位置が示されており、特にDQ2.5-グリア-α1aエピトープは人工的なp10グリシン伸長を含有する(A)。記載されるとおり、示されるペプチド(50μM)をヒトDQ2.5
+Raji細胞にパルスし、FACSにおいて抗体結合を検査した(B)。
【
図8-1】A.A0A0E3SZN6_TRIUAエピトープ候補の生理的な関連形態に対する抗体結合の評価を示す図である。T.ウラルツ(Urartu)A0A0E3SZN6_TRIUA配列をトリプシンおよびキモトリプシンによってインシリコ消化し、その関連消化フラグメントを下線で示している。 B.A0A0E3SZN6_TRIUAエピトープ候補の生理的な関連形態に対する抗体結合の評価を示す図である。T.アエスチブム(aestivum)Q9M4L6_WHEAT(コムギ)配列をトリプシンおよびキモトリプシンによってインシリコ消化し、その関連消化フラグメントを下線で示している。
【
図8-2】C.A0A0E3SZN6_TRIUAエピトープ候補の生理的な関連形態に対する抗体結合の評価を示す図である。比較のために、関連配列を相同のDQ2.5-グリア-α1aおよびDQ2.5-グリア-α2エピトープならびにp6位置のQln(Q)からGlu(E)への交換に対してアライメントした。公知のP位置が示される。 D.A0A0E3SZN6_TRIUAエピトープ候補の生理的な関連形態に対する抗体結合の評価を示す図である。記載されるとおり、示されるペプチドをヒトDQ2.5
+Raji細胞にパルスし(50μM)、FACSにおいて抗体結合を検査した。
【
図9-1】A.A0A0E3SZN6_TRIUAタンパク質のインビトロキモトリプシンタンパク質分解の評価を示す図である。T.アエスチブム(aestivum)Q9M4L6_WHEAT(A)タンパク質を大腸菌(E.coli)で産生して親和性精製した後に、インビトロキモトリプシン消化および得られたペプチドセグメント(D)の質量分析を行った。パネルA:Q9M4L6_WHEATのSDS-PAGEおよびウエスタンブロット解析。レーンM
1:タンパク質マーカー、ジェンスクリプト(GenScript)、Cat.No.M00516、レーンM
2:タンパク質マーカー、ジェンスクリプト、Cat.No.M00521、レーン1:BSA(2.00μg)、レーン2:Q9M4L6_WHEAT(還元条件、2.00μg)、レーン3:Q9M4L6_WHEAT(非還元条件、2.00μg)、レーン4:Q9M4L6_WHEAT(還元条件)、レーン5:Q9M4L6_WHEAT(非還元条件)、一次抗体:マウス抗His mAb(ジェンスクリプト、Cat.No.A00186)。 B.A0A0E3SZN6_TRIUAタンパク質のインビトロキモトリプシンタンパク質分解の評価を示す図である。T.ウラルツ(Urartu)A0A0E3SZN6_TRIUA(B)タンパク質を大腸菌(E.coli)で産生して親和性精製した後に、インビトロキモトリプシン消化および得られたペプチドセグメント(E)の質量分析を行った。パネルB:A0A0E3SZN6_TRIUAのSDS-PAGEおよびウエスタンブロット解析。レーンM1:タンパク質マーカー、ジェンスクリプト、Cat.No.M00516、レーンM2:タンパク質マーカー、ジェンスクリプト、Cat.No.M00521、レーン1:BSA(2.00μg)、レーン2:A0A0E3SZN6_TRIUA(還元条件、2.00μg)、レーン3:A0A0E3SZN6_TRIUA(還元条件)、一次抗体:マウス抗His mAb(ジェンスクリプト、Cat.No.A00186)。
【
図9-2】C.A0A0E3SZN6_TRIUAタンパク質のインビトロキモトリプシンタンパク質分解の評価を示す図である。T.アエスチブム(aestivum)Q9FUW7_WHEAT(C)タンパク質を大腸菌(E.coli)で産生して親和性精製した後に、インビトロキモトリプシン消化および得られたペプチドセグメント(F)の質量分析を行った。パネルC:Q9FUW7_WHEATのSDS-PAGEおよびウエスタンブロット解析。レーンM
1:タンパク質マーカー、ジェンスクリプト、Cat.No.M00516、レーンM
2:タンパク質マーカー、ジェンスクリプト、Cat.No.M00521、レーン1:BSA(2.00μg)、レーン2:Q9FUW7_WHEAT(還元条件、2.00μg)、レーン3:Q9FUW7_WHEAT(還元条件)、一次抗体:マウス抗His mAb(ジェンスクリプト、Cat.No.A00186)。 D.A0A0E3SZN6_TRIUAタンパク質のインビトロキモトリプシンタンパク質分解の評価を示す図である。T.アエスチブム(aestivum)Q9M4L6_WHEAT(A)タンパク質を大腸菌(E.coli)で産生して親和性精製した後に、インビトロキモトリプシン消化および得られたペプチドセグメント(D)の質量分析を行った。関連エピトープの予想される9量体コア領域が一覧で示される。
【
図9-3】E.A0A0E3SZN6_TRIUAタンパク質のインビトロキモトリプシンタンパク質分解の評価を示す図である。T.ウラルツ(Urartu)A0A0E3SZN6_TRIUA(B)タンパク質を大腸菌(E.coli)で産生して親和性精製した後に、インビトロキモトリプシン消化および得られたペプチドセグメント(E)の質量分析を行った。関連エピトープの予想される9量体コア領域が一覧で示される。 F.A0A0E3SZN6_TRIUAタンパク質のインビトロキモトリプシンタンパク質分解の評価を示す図である。T.アエスチブム(aestivum)Q9FUW7_WHEAT(C)タンパク質を大腸菌(E.coli)で産生して親和性精製した後に、インビトロキモトリプシン消化および得られたペプチドセグメント(F)の質量分析を行った。関連エピトープの予想される9量体コア領域が一覧で示される。
【
図10-1】A.A0A0E3SZN6_TRIUAエピトープ候補に対するCeD由来グルテンペプチド特異的B細胞受容体(BCR:B cell receptor)の結合の評価を示す図である。実証済みのT.アエスチブム(aestivum)オメガQ9FUW7_WHEATおよびT.ウラルツ(urartu)A0A0E3SZN6_TRIUAエピトープ候補配列と比較されたCeDプロトタイプのグルテン特異的BCR 1E01/1E03の共通エピトープを示す。 B.A0A0E3SZN6_TRIUAエピトープ候補に対するCeD由来グルテンペプチド特異的B細胞受容体(BCR)の結合の評価を示す図である。実証済みのT.アエスチブム(aestivum)オメガQ9FUW7_WHEATおよびT.ウラルツ(urartu)A0A0E3SZN6_TRIUAエピトープ候補配列と比較されたCeDプロトタイプのグルテン特異的BCR 1E01/1E03の共通エピトープを示す。 C.A0A0E3SZN6_TRIUAエピトープ候補に対するCeD由来グルテンペプチド特異的B細胞受容体(BCR)の結合の評価を示す図である。記載されるとおり、再編成された可溶性IgGの形態で、ELISAにおける固定ペプチドに対する結合について、1E01/1E03 BCRを検査した。
【
図10-2】D.A0A0E3SZN6_TRIUAエピトープ候補に対するCeD由来グルテンペプチド特異的B細胞受容体(BCR)の結合の評価を示す図である。ペプチド捕獲(catcher)ELISAにおける反応性PC2およびA0A0E3SZN6ペプチドに対する1E03 BCR結合力の比較のためのEC50決定を示す。
【
図11-1】A.昆虫細胞において産生される組み換え可溶性pHLAの産生を示す図である。15aa合成リンカー(GAGSLVPRGSGGGGS(SEQ ID NO:56))を用いて共有結合されたグリアジンペプチドを備えたHLA-DQ2.5外部ドメインの可溶性組み換えバージョンは、ジェンスクリプトによってSf9昆虫細胞を用いて生成され、本質的に記載されるとおりにビオチン化された(カルステンら、ジャーナル・オブ・イムノロジー(J Immunol)、2001、167:4861)。等量のタンパク質をSDS PAGEおよびウエスタンブロットによって評価することで、完全性を評価した。それぞれのバージョンにおいて、次のグリアジンペプチドが用いられた。(A)QLQPFPQPELPY(SEQ ID NO:53)。パネルA:DQB1*0201:DQ25_glia_a1a_DQA1*0501のSDS-PAGEおよびウエスタンブロット解析。レーンM
1:タンパク質マーカー、ジェンスクリプト、Cat.No.M00516、レーンM
2:タンパク質マーカー、ジェンスクリプト、Cat.No.M00521、レーン1:BSA(2.00μg)、レーン2:DQB1*0201:DQ25_glia_a1a_DQA1*0501(還元条件、2.00μg)、レーン3:DQB1*0201:DQ25_glia_a1a_DQA1*0501(還元条件)、一次抗体:マウス抗His mAb(ジェンスクリプト、Cat.No.A00186)、一次抗体:マウス抗FLAG mAb(ジェンスクリプト、Cat.No.A00187)、一次抗体:ストレプトアビジン(Streptavadin)-HRP(ジェンスクリプト、Cat.No.M00091)。
【
図11-2】B.昆虫細胞において産生される組み換え可溶性pHLAの産生を示す図である。15aa合成リンカー(GAGSLVPRGSGGGGS(SEQ ID NO:56))を用いて共有結合されたグリアジンペプチドを備えたHLA-DQ2.5外部ドメインの可溶性組み換えバージョンは、ジェンスクリプトによってSf9昆虫細胞を用いて生成され、本質的に記載されるとおりにビオチン化された(カルステンら、ジャーナル・オブ・イムノロジー(J Immunol)、2001、167:4861)。等量のタンパク質をSDS PAGEおよびウエスタンブロットによって評価することで、完全性を評価した。それぞれのバージョンにおいて、次のグリアジンペプチドが用いられた。(B)QPEQPYPQQEQPY(SEQ ID NO:31)。パネルB:DQB1*0201:DQ25_glia_a1a_mutant_DQA1*0501のSDS-PAGEおよびウエスタンブロット解析。レーンM
1:タンパク質マーカー、ジェンスクリプト、Cat.No.M00516、レーンM
2:タンパク質マーカー、ジェンスクリプト、Cat.No.M00521、レーン1:BSA(2.00μg)、レーン2:DQB1*0201:DQ25_glia_a1a_mutant_DQA1*0501(還元条件、2.00μg)、レーン3:DQB1*0201:DQ25_glia_a1a_mutant_DQA1*0501(還元条件)、一次抗体:マウス抗His mAb(ジェンスクリプト、Cat.No.A00186)、一次抗体:マウス抗FLAG mAb(ジェンスクリプト、Cat.No.A00187)、一次抗体:ストレプトアビジン(Streptavadin)-HRP(ジェンスクリプト、Cat.No.M00091)。
【
図11-3】C.昆虫細胞において産生される組み換え可溶性pHLAの産生を示す図である。15aa合成リンカー(GAGSLVPRGSGGGGS(SEQ ID NO:56))を用いて共有結合されたグリアジンペプチドを備えたHLA-DQ2.5外部ドメインの可溶性組み換えバージョンは、ジェンスクリプトによってSf9昆虫細胞を用いて生成され、本質的に記載されるとおりにビオチン化された(カルステンら、ジャーナル・オブ・イムノロジー(J Immunol)、2001、167:4861)。等量のタンパク質をSDS PAGEおよびウエスタンブロットによって評価することで、完全性を評価した。それぞれのバージョンにおいて、次のグリアジンペプチドが用いられた。(C)PQPELPYPQPE(SEQ ID NO:57)。パネルC:DQB1*0201:DQ25_glia_a2_DQA1*0501のSDS-PAGEおよびウエスタンブロット解析。レーンM
1:タンパク質マーカー、ジェンスクリプト、Cat.No.M00516、レーンM
2:タンパク質マーカー、ジェンスクリプト、Cat.No.M00521、レーン1:BSA(2.00μg)、レーン2:DQB1*0201:DQ25_glia_a2_DQA1*0501(還元条件、2.00μg)、レーン3:DQB1*0201:DQ25_glia_a2_DQA1*0501(還元条件)、一次抗体:マウス抗His mAb(ジェンスクリプト、Cat.No.A00186)、一次抗体:マウス抗FLAG mAb(ジェンスクリプト、Cat.No.A00187)、一次抗体:ストレプトアビジン(Streptavadin)-HRP(ジェンスクリプト、Cat.No.M00091)。 D.昆虫細胞において産生される組み換え可溶性pHLAの産生を示す図である。BCRおよびT細胞エピトープ候補配列の両方を含むT.ウラルツ(urartu)A0A0E3SZN6_TRIUA同定配列の脱アミドバージョン(A0A0E3SZN6_p-2E_p6E_medium)をここでDQ2.5-グリア-NTP-001として再注記する。
【
図12-1】A.昆虫細胞において産生された組み換え可溶性pHLA(rs-pHLA:recombinant soluble pHLA)に対する抗体結合の評価を示す図である。示されるペプチドを備えたHLA-DQ2.5のビオチン化可溶性組み換えバージョンをニュートラアビジン(neuravidin)コーティングしたウェルに固定して、ELISAにおける示された抗体(mAb)との反応性を評価した。立体構造特異的なパン(pan-)HLA-DQ(mAb SPVL3)およびパンHLA-DR(mAb L243)の使用によるrs-pHLAの検出を示す。 B.昆虫細胞において産生された組み換え可溶性pHLA(rs-pHLA)に対する抗体結合の評価を示す図である。示されるペプチドを備えたHLA-DQ2.5のビオチン化可溶性組み換えバージョンをニュートラアビジン(neuravidin)コーティングしたウェルに固定して、ELISAにおける示された抗体(mAb)との反応性を評価した。立体構造特異的なパンHLA-DQ(mAb SPVL3)およびパンHLA-DR(mAb L243)の使用によるrs-pHLAの検出を示す。
【
図12-2】C.昆虫細胞において産生された組み換え可溶性pHLA(rs-pHLA)に対する抗体結合の評価を示す図である。示されるペプチドを備えたHLA-DQ2.5のビオチン化可溶性組み換えバージョンをニュートラアビジン(neuravidin)コーティングしたウェルに固定して、ELISAにおける示された抗体(mAb)との反応性を評価した。立体構造特異的なパンHLA-DQ(mAb SPVL3)およびパンHLA-DR(mAb L243)の使用によるrs-pHLAの検出を示す。 D.昆虫細胞において産生された組み換え可溶性pHLA(rs-pHLA)に対する抗体結合の評価を示す図である。示されるペプチドを備えたHLA-DQ2.5のビオチン化可溶性組み換えバージョンをニュートラアビジン(neuravidin)コーティングしたウェルに固定して、ELISAにおける示された抗体(mAb)との反応性を評価した。TCR様mAb107、4.7C、および3.C11それぞれの使用による個々のrs-pHLAの検出を示す。
【
図12-3】E.昆虫細胞において産生された組み換え可溶性pHLA(rs-pHLA)に対する抗体結合の評価を示す図である。示されるペプチドを備えたHLA-DQ2.5のビオチン化可溶性組み換えバージョンをニュートラアビジン(neuravidin)コーティングしたウェルに固定して、ELISAにおける示された抗体(mAb)との反応性を評価した。TCR様mAb107、4.7C、および3.C11それぞれの使用による個々のrs-pHLAの検出を示す。 F.昆虫細胞において産生された組み換え可溶性pHLA(rs-pHLA)に対する抗体結合の評価を示す図である。示されるペプチドを備えたHLA-DQ2.5のビオチン化可溶性組み換えバージョンをニュートラアビジン(neuravidin)コーティングしたウェルに固定して、ELISAにおける示された抗体(mAb)との反応性を評価した。TCR様mAb107、4.7C、および3.C11それぞれの使用による個々のrs-pHLAの検出を示す。
【
図13】CeD患者由来のTCR再構築SKW3 T細胞を用いたT細胞活性化の評価を示す図である。 (A)Raji B細胞にDQ2.5-グリア-α1aペプチド(N-QLQPFPQPELPY-C(SEQ ID NO:53))の段階希釈物を積載し、操作されたグリアジン特異的SKW3 T細胞と共培養した。フローサイトメトリーにおけるCD69+CD19-細胞としてT細胞活性化を測定した。 (B)Raji B細胞に10μMの示されるペプチドを積載し、操作されたグリアジン特異的SKW3 T細胞と共培養した。フローサイトメトリーにおけるCD69+CD19-細胞としてT細胞活性化を測定した。以下のペプチドが使用された。それぞれDQ2.5-グリア-α2(N-PQPELPYPQPE-C(SEQ ID NO:57))、A0A0E3SZN6_p4Q_p6Q_medium(N-QPQQPYPQQQQPY-C(SEQ ID NO:20))、A0A0E3SZN6_p4Q_p6E_medium(N-QPQQPYPQQEQPY-C(SEQ ID NO:28))、A0A0E3SZN6_p4E_p6E_medium(N-QPQQPYPEQEQPY-C(SEQ ID NO:58))、A0A0E3SZN6_p6E_long(N-QPQQPYPQQEQPYGTSL-C(SEQ ID NO:30))。ペプチド非依存性の最大T細胞活性化を評価するための陽性対照としてホルボールミリステートアセテート(PMA:Phorbol myristate acetate)が用いられ、それぞれペプチドの不在下でSKW3およびRaji細胞を共培養することによって、非活性化T細胞に対するベースライン閾値が設定された。
【
図14】PBMCを用いたCD4 T細胞ペプチド刺激能力の細胞内IFNγフロー評価を示す図である。確認済みの健常対照(HC:healthy controls)およびCeD患者由来の凍結保存されたHLA-DQ2.5タイプのPBMCを購入し(ヘマケア(HemaCare)-Cellero)、自己インビトロT細胞ペプチド刺激アッセイに続くフローにおける細胞内IFNγ染色に用いた。(A)CeDドナー595由来のPBMCを用いて、抗IFNγ-PEを用いてCD3/CD4 T細胞に対する細胞内IFNγベースライン検出ゲートを設定した。(BおよびC)Aに示されるCD4+/IFNγ+(B)およびCD4-/IFNγ+(C)ゲートにおける細胞内IFNγ検出を表す棒グラフである。CeDドナー595およびHC575由来のPBMCを20μMのDQ2.5-グリア33量体(N-LQLQPFPQPQLPYPQPQLPYPQPQLPYPQPQPF-C(SEQ ID NO:59))およびA0A0E3SZN6_p6E_long(N-QPQQPYPQQEQPYGTSL-C(SEQ ID NO:30))によって48時間刺激した後に、細胞内T細胞IFNγ検出を行った。
【
図15】PBMCを用いたCD4 T細胞ペプチド刺激能力の細胞内IFN-γフロー評価を示す図である。確認済みの健常対照(HC)およびCeD患者由来の凍結保存されたHLA-DQ2.5タイプのPBMCを購入し(ヘマケア-Cellero)、自己インビトロT細胞ペプチド刺激アッセイに続くフローにおける細胞内IFN-γ染色に用いた。
図14と同様に、抗IFN-γ-PEを用いてCD3/CD4 T細胞に対する細胞内IFN-γベースライン検出ゲートを設定した。CeDドナー(585、595、および600)およびHC(557および558)由来のPBMCを20μMのDQ2.5-グリア33量体(N-LQLQPFPQPQLPYPQPQLPYPQPQLPYPQPQPF-C(SEQ ID NO:59))およびA0A0E3SZN6_p6E_long(N-QPQQPYPQQEQPYGTSL-C(SEQ ID NO:30))によって48時間刺激した後に、細胞内T細胞IFN-γ検出を行った(AおよびB)。値は平均値および±SEMとして提示される。
【発明を実施するための形態】
【0019】
よって、本発明のペプチドは上記の9アミノ酸配列(9量体)を含み、これはコア配列またはコアエピトープ配列とみなされ得る。しかし、こうしたコア配列がMHC分子に関連するとき、すなわちペプチド-MHC(p-MHC:peptide-MHC)複合体が関与するときは、9量体のN末端および/またはC末端のフランキング残基も相互作用のために典型的に重要である。よって、たとえば上記の9量体を有し、かつN末端および/またはC末端に追加のアミノ酸を有するペプチドなどの、より長い配列を有するペプチドも予期される。任意の適切な数の追加フランキングアミノ酸残基が含まれ得る。たとえば、そのペプチドがたとえばHLA-DQ2.5またはHLA-DQ2.2などのMHC分子に関連付けられるか、またはそれと複合体を形成するか、またはそれと結合する能力を有するときに、こうした追加の残基が含まれ得る。好ましい例は、上記の9量体のN末端および/またはC末端にたとえば1、2、3、または4など最大4つのアミノ酸残基を有する配列を含む。他の好ましい例は、上記の9量体の位置9ならびに位置8および9がそれぞれYまたはPY残基によって終結する配列、すなわちC末端に任意のフランキング残基を有さない配列を含む。
図9Eにいくつかの例示的配列が示される。
【0020】
9量体に直接隣接(フランキング)する2つの残基、すなわち位置-1または10(9量体の9つのアミノ酸をN末端からC末端へ位置1~9と呼ぶとき)は、ペプチドとMHC分子との相互作用、たとえばペプチドとMHC分子のペプチド結合溝との相互作用などにとって特に重要であり得る。よって、本発明の好ましいペプチドは、位置-1のQ残基および/または位置10のG残基を含んでもよく、たとえばアミノ酸配列QPYPQQQQPY(SEQ ID NO:9)、PYPQQQQPYG(SEQ ID NO:10)、もしくはQPYPQQQQPYG(SEQ ID NO:11)、またはその脱アミドバージョンなどを含んでもよい。ペプチドのこうした脱アミドバージョンまたは形態においては、任意の1つ以上のQ残基がE残基に置換され得るが、脱アミド(またはE残基の位置決め)のために好ましい好都合の位置が下線で示される。
【0021】
本発明の他の好ましいペプチドは、9量体のN末端のQQおよび/または9量体のC末端のGTを含んでもよい。たとえば、こうしたペプチドはアミノ酸配列QQPYPQQQQPY(SEQ ID NO:12)、PYPQQQQPYGT(SEQ ID NO:13)、もしくはQQPYPQQQQPYGT(SEQ ID NO:14)、またはその脱アミドバージョンを含む。いくつかの実施形態において、QQPYPQQQQPY(SEQ ID NO:12)、もしくはQQPYPQQQQPYG(SEQ ID NO:15)、またはその脱アミドバージョンを含むペプチドが好ましい。ペプチドのこうした脱アミドバージョンまたは形態においては、任意の1つ以上のQ残基がE残基に置換され得るが、脱アミド(またはE残基の位置決め)のために好ましい好都合の位置が下線で示される。例示的ペプチドにおいて、Q残基をE残基で置換するためにこれらの位置の一方または両方が脱アミド(または別様に提供)されてもよい。
【0022】
本発明の他の好ましいペプチドは、9量体のN末端のPQQおよび/または9量体のC末端のGTSを含んでもよい。たとえば、こうしたペプチドはアミノ酸配列PQQPYPQQQQPY(SEQ ID NO:16)、PYPQQQQPYGTS(SEQ ID NO:17)、もしくはPQQPYPQQQQPYGTS(SEQ ID NO:18)、またはその脱アミドバージョンを含む。いくつかの実施形態において、PQQPYPQQQQPY(SEQ ID NO:16)、もしくはPQQPYPQQQQPYG(SEQ ID NO:19)、またはその脱アミドバージョンを含むペプチドが好ましい。ペプチドのこうした脱アミドバージョンまたは形態においては、任意の1つ以上のQ残基がE残基に置換され得るが、脱アミド(またはE残基の位置決め)のために好ましい好都合の位置が下線で示される。例示的ペプチドにおいて、Q残基をE残基で置換するためにこれらの位置の一方または両方が脱アミド(または別様に提供)されてもよい。
【0023】
本発明の他の好ましいペプチドは、9量体のN末端のQPQQおよび/または9量体のC末端のGTSLを含んでもよい。たとえば、こうしたペプチドはアミノ酸配列QPQQPYPQQQQPY(SEQ ID NO:20)、PYPQQQQPYGTSL(SEQ ID NO:21)、もしくはQPQQPYPQQQQPYGTSL(SEQ ID NO:22)、またはその脱アミドバージョンを含む。いくつかの実施形態において、QPQQPYPQQQQPY(SEQ ID NO:20)、QPQQPYPQQQQPYG(SEQ ID NO:23)、またはその脱アミドバージョンを含むペプチドが好ましい。ペプチドのこうした脱アミドバージョンまたは形態においては、任意の1つ以上のQ残基がE残基に置換され得るが、脱アミド(またはE残基の位置決め)のために好ましい好都合の位置が下線で示される。例示的ペプチドにおいて、Q残基をE残基で置換するためにこれらの位置の一方または両方が脱アミド(または別様に提供)されてもよい。
【0024】
上記の1、2、3、または4フランキング残基の例の組み合わせも提供される。よってたとえば、N末端またはC末端の1フランキング残基と、他方の末端の上述のフランキング残基の2、3、または4とを組み合わせることができ、あるいはN末端またはC末端の2フランキング残基と、他方の末端の上述のフランキング残基の1、3、または4とを組み合わせることができ、あるいはN末端またはC末端の3フランキング残基と、他方の末端の上述のフランキング残基の1、2、または4とを組み合わせることができ、あるいはN末端またはC末端の4フランキング残基と、他方の末端の上述のフランキング残基の1、2、または3とを組み合わせることができる。
【0025】
本発明の他の例示的ペプチドは、9量体のN末端のみに追加のアミノ酸を含む。
本発明のペプチドは、一般的に最大50アミノ酸の長さ(または50アミノ酸以下の長さ)である。よって好ましいペプチドは、最大で50、45、40、38、36、35、34、33、32、31、30、29、28、27、26、25、24、23、22、21、20、19、18、17、16、15、14、13、12、11、10、または9アミノ酸(またはそれ以下)の長さであるか、またはそれらの長さである。本発明のこの態様において、上記で概説されたたとえばコアT細胞エピトープ配列などのコア9量体エピトープ配列またはその脱アミド形態が包含されるように、ペプチドの最小の長さは9アミノ酸である。よって、好ましいペプチドは、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、または20アミノ酸の長さであるか、あるいは少なくともその長さである。たとえば9から50、45、40、35、30、または25アミノ酸の長さなど、たとえば10、11、12、13、14、15、16、または17から50、45、40、35、30、25、または20アミノ酸の長さなどである。他の好ましいペプチドは最大15アミノ酸の長さ、たとえば9~15アミノ酸の長さなど、たとえば13アミノ酸の長さなどである。他の好ましいペプチドは最大20アミノ酸の長さ、たとえば9~20アミノ酸の長さなど、たとえば17アミノ酸の長さなどである。他の好ましいペプチドは最大25または30アミノ酸の長さ、たとえば9~25または9~30アミノ酸の長さなど、たとえば13または17アミノ酸の長さなどである。他の好ましいペプチドは最大40アミノ酸の長さ、たとえば9~40または9~38アミノ酸の長さなど、たとえば
図9Eに示されるとおりの長さなどであり、
図9Eは本発明のいくつかの例示的ペプチドの配列も示す。その脱アミド(またはE残基含有)バージョンが好ましいことがある。
【0026】
よって、本発明の実施形態は、アミノ酸配列PYPQQQQPY(SEQ ID NO:8)を含む(またはそれからなる)エピトープか、または1つ以上のQ残基がE残基に置換されたアミノ酸配列PYPQQQQPY(SEQ ID NO:8)を含む(またはそれからなる)エピトープを含む、たとえば単離ペプチドなどのペプチドを提供し、このペプチドは50アミノ酸以下の長さであり、上記および本明細書の他の場所に記載される好ましい長さおよび好ましい例示的な配列を有する。
【0027】
当然のことながら、本発明によるペプチドまたは単離ペプチドは、本発明のペプチドおよびエピトープが見出され得るトリチクム・ウラルツ(Triticum urartu)由来の全長オメガグリアジンタンパク質(すなわち、野生型または自然に生じるオメガグリアジントリチクム・ウラルツ(Triticum urartu)タンパク質)、または任意のその他の全長(野生型または自然に生じる)グリアジンタンパク質、またはオメガグリアジンファミリーの任意のその他の全長(野生型または自然に生じる)タンパク質、または任意のその他の全長(野生型または自然に生じる)タンパク質を含まない。よって、本発明によるペプチドまたは単離ペプチドは全長のSEQ ID NO:1(Uniprotデータベースのエントリー番号A0A0E3SZN6(https://www.uniprot.org/uniprotA0A0E3SZN6)またはUniparcアクセッション番号:UPI000618D06Aに対応するを含まない。
【0028】
本発明のペプチドまたは単離ペプチドはCeDに関連することが提案されるため、それらのペプチドはグルテンタンパク質またはグリアジンタンパク質に見出され得るか、またはそれに由来し得る。したがって、こうした配列は一般的に自然に生じる配列であり、たとえば自然に生じる配列のフラグメントまたはその脱アミドバージョンなどである。
【0029】
よって、本発明のペプチドまたは単離ペプチドは、たとえば、グルテンまたはグリアジンタンパク質の領域またはフラグメント(またはエピトープ)など、たとえば全長(野生型または自然に生じる)オメガグリアジントリチクム・ウラルツ(Triticum urartu)タンパク質(例、本明細書の他の場所に記載されるもの)あるいは代替的なグルテンまたはグリアジンタンパク質における同等または類似の配列などの、たとえば全体または全長のグルテンまたはグリアジンタンパク質の領域またはフラグメント(またはエピトープ)などに対応する(または本質的に対応する)。本発明のいくつかのペプチドは、それ自体が自然に生じる(すなわち、自身の自然に生じる対応物を有するか、またはたとえば自然に生じるフラグメントなどの自然に生じるものである)と考えられる。しかし、本発明のいくつかのペプチドは、それ自体が自然に生じない(すなわち、自身の自然に生じる対応物を有さないか、またはたとえば自然に生じるフラグメントではないなど、自然に生じるものではない)。よって、本発明のいくつかのペプチド(または前記ペプチドを含む複合体もしくはコンジュゲート)は人工ペプチド、または合成ペプチド、または人造ペプチド、または非天然ペプチドとみなされ得る。
【0030】
この文脈における「対応する」は、単離ペプチドのアミノ配列(SEQ ID NO:)が、野生型(または自然に生じる)オメガグリアジントリチクム・ウラルツ(Triticum urartu)タンパク質(SEQ ID NO:1)の同等の領域またはエピトープのアミノ酸配列と一致することを意味する。「本質的に対応する」は、ペプチドのアミノ酸配列(SEQ ID NO:)が、野生型(または自然に生じる)オメガグリアジントリチクム・ウラルツ(Triticum urartu)タンパク質(SEQ ID NO:1)の同等の領域またはエピトープの配列に基づく(またはそれに由来する、またはその修飾された形態の)ものであるとして同定可能であることを意味する。たとえば、野生型(または自然に生じる)オメガグリアジントリチクム・ウラルツ(Triticum urartu)タンパク質の同等の領域またはエピトープに「本質的に対応する」配列を有するペプチドは、野生型(または自然に生じる)オメガグリアジントリチクム・ウラルツ(Triticum urartu)タンパク質の同等の領域またはエピトープの配列に対応する(すなわち、正確に対応する)ペプチドと比較して、典型的に1つ以上(例、1、2、3、4、または5、好ましくは1、2、または3)アミノ酸の置換、付加、または欠失を有する。よって、野生型(または自然に生じる)オメガグリアジントリチクム・ウラルツ(Triticum urartu)タンパク質の同等の領域またはエピトープに「本質的に対応する」配列を有するペプチドは、本明細書の他の場所において定義される「実質的に相同の」ペプチド配列とみなされてもよい。
【0031】
本発明の好ましいペプチドは、アミノ酸配列QPQQPYPQQQQPY(SEQ ID NO:20)(13量体)、PQQPYPQQQQPYGT(SEQ ID NO:24)(14量体)、もしくはQPQQPYPQQQQPYGTSL(SEQ ID NO:22)(17量体)、または前記配列において1つ以上の前記Q残基がE残基に置換されたものを含む。
【0032】
本明細書の他の場所で言及されるとおり、CeDに関連するペプチドまたはエピトープは、一般的にQがE残基に変更された1つ以上の残基を含有する。こうしたE含有配列はいくつかの態様において好ましく、それは本明細書において脱アミドペプチド、脱アミドバージョン、もしくは脱アミド形態、またはその他の類似もしくは同等の用語でも呼ばれる。よって、1つ以上またはすべてのQ残基がE残基に置換された(またはQ残基の代わりにE残基が存在する)ペプチド配列が本発明によって予期される。よって、本明細書に記載される9量体コア配列(PYPQQQQPY(SEQ ID NO:8))を参照すると、この9量体の位置4、5、6、または7における(または対応する)1、2、3、または4つのQ残基がE残基に置換され得る。しかし、9量体コア配列を参照すると、本発明の好ましいペプチドは、位置6のQ残基がE残基に置換されたものである。本発明の他のペプチドは、位置4のQ残基がE残基に置換されたものである。本発明の他のペプチドは、位置6のQ残基および位置4のQ残基がE残基に置換されたものである。この9量体がもっと長いペプチド内に存在するとき、E残基の適切な位置は、配列内のどこに9量体が存在するかに従って調整される。言い換えると、これらの位置(および、別様に示されているときを除き、本明細書に記載されるその他のアミノ酸の位置)は9量体コア配列に関連して定義され、それより長いペプチド配列は、9量体における上述の位置に対応する位置(例、位置6および/もしくは位置4、または位置6および/もしくは位置4に対応する位置)にE残基を有する。
【0033】
よって、本発明の好ましいペプチドは、配列PYPQQEQPY(SEQ ID NO:25)、PYPEQEQPY(SEQ ID NO:26)、またはPYPEQQQPY(SEQ ID NO:27)を含む。
【0034】
本明細書の他の場所に記載されるとおり、CeD患者においてトランスグルタミナーゼ2(TG2)酵素は、CeDの進行中に観察されるグルテン由来配列の生理的脱アミドを担うと考えられている。よって、TG2酵素によって脱アミドされた配列を含むペプチドか、またはTG2脱アミドによって得ることができる配列を含むペプチドか、またはTG2酵素によって脱アミドされた配列に対応する配列を含むペプチドが好ましい。よってこれらの配列は、本発明の例示的な好ましい脱アミドペプチドを表す。TG2酵素はQXP残基を基質として用いて、脱アミド反応によってこの配列をEXPに転換し得る(ソリッド、2002、ネイチャー・レビューズ・イムノロジー(Nature Reviews Immunology)2:647-655)。よって、上述の非脱アミド(健常または野生型)9量体PYPQQQQPY(SEQ ID NO:8)における位置6のQ残基は、CeD患者において脱アミドされる可能性が最も高い残基である。よって、配列PYPQQEQPY(SEQ ID NO:25)を含むペプチドが特に好ましい。こうしたペプチドの具体例は、QPQQPYPQQEQPY(SEQ ID NO:28)、PQQPYPQQEQPYGT(SEQ ID NO:29)、またはQPQQPYPQQEQPYGTSL(SEQ ID NO:30)を含むペプチドである。
【0035】
これらのより長いペプチド、QPQQPYPQQEQPY(SEQ ID NO:28)、PQQPYPQQEQPYGT(SEQ ID NO:29)、またはQPQQPYPQQEQPYGTSL(SEQ ID NO:30)、および本発明のその他のより長いペプチドのいくつかには、TG2酵素に対するさらなる古典的基質(QXP配列/モチーフ)が存在し、すなわちここでは配列QQPが脱アミドされてEQPとなり得る。このモチーフは上記の配列に示されており、脱アミドされてE残基となり得るQが下線で示される。ここでも、この位置にE残基を有するペプチドがいくつかの態様において好ましい。
【0036】
他の実施形態において、本発明のペプチドは配列QPQQPYPQQQQPY(SEQ ID NO:20)を含み、ここで残基3の前記QがE残基に置換され、かつ/または(たとえばT細胞エピトープなどの本発明のエピトープのコア9量体における位置6に対応する)残基10の前記QがE残基に置換される。任意選択で、または付加的に、(たとえばT細胞エピトープなどの本発明のエピトープのコア9量体における位置4に対応する)残基8の前記QがE残基に置換される。
【0037】
よっていくつかの実施形態において、本発明のペプチドは配列PQQPYPQQQQPYGT(SEQ ID NO:24)を含み、ここで残基2の前記QがE残基に置換され、かつ/または(たとえばT細胞エピトープなどの本発明のエピトープのコア9量体における位置6に対応する)残基9の前記QがE残基に置換される。任意選択で、または付加的に、(たとえばT細胞エピトープなどの本発明のエピトープのコア9量体における位置4に対応する)残基7の前記QがE残基に置換される。
【0038】
他の実施形態において、本発明のペプチドは配列QPQQPYPQQQQPYGTSL(SEQ ID NO:22)を含み、ここで残基3の前記QがE残基に置換され、かつ/または(たとえばT細胞エピトープなどの本発明のエピトープのコア9量体における位置6に対応する)残基10の前記QがE残基に置換される。任意選択で、または付加的に、(たとえばT細胞エピトープなどの本発明のエピトープのコア9量体における位置4に対応する)残基8の前記QがE残基に置換される。
【0039】
こうした実施形態の好ましい例は、次の配列を含むペプチドである。
QPQQPYPQQEQPY(SEQ ID NO:28)、
QPEQPYPQQEQPY(SEQ ID NO:31)、
QPEQPYPQQQQPY(SEQ ID NO:32)、
QPQQPYPQQEQPYGTSL(SEQ ID NO:30)、
QPEQPYPQQEQPYGTSL(SEQ ID NO:33)、
QPEQPYPQQQQPYGTSL(SEQ ID NO:34)、
PQQPYPQQEQPYGT(SEQ ID NO:29)、
PEQPYPQQEQPYGT(SEQ ID NO:35)、または
PEQPYPQQQQPYGT(SEQ ID NO:36)。
【0040】
これらのペプチドにおいて2番目の下線の残基が、たとえばT細胞エピトープ9量体などの本発明のエピトープのコア9量体における位置6に対応する。
他の具体例は、たとえばT細胞エピトープ9量体などの本発明のエピトープのコア9量体における位置4に対応する位置に追加のE残基を含む上記ペプチドを含んでもよく、またはたとえばT細胞エピトープ9量体などの本発明のエピトープのコア9量体における位置4に対応する位置に唯一のE残基が存在する上記ペプチドを含んでもよい(言い換えると、上記に挙げられた9つのペプチドにおける下線の残基が両方ともQ残基であり、たとえばT細胞エピトープ9量体などの本発明のエピトープのコア9量体における位置4に対応する位置がE残基である。
【0041】
本明細書の他の場所で言及されるとおり、CeDはB細胞およびT細胞応答の両方を伴うと考えられている。本明細書には、本発明のたとえばT細胞エピトープなどの新たに同定されたエピトープのコア9量体を含むペプチドが記載される。しかし、上記および本明細書の他の場所に記載されるペプチドのいくつかは、たとえばB細胞エピトープなどとして作用し得る第2のエピトープQPQQPYP(SEQ ID NO:37)も含有する。こうしたエピトープ、またはたとえばこのB細胞エピトープの位置1、3、もしくは4(またはこれらの位置に対応する位置)のQ残基の1つ、2つ、もしくは3つなどの1つ以上のQ残基がE残基に置換された、こうしたエピトープの脱アミドバージョン(またはQ残基の代わりにE残基が存在するバージョン)を含むか、またはさらに含むペプチドが好ましい。
【0042】
たとえばB細胞エピトープなどのこのエピトープの配列QPQQPYP(SEQ ID NO:37)の位置3のQ残基が、TG2酵素に対する基質となる可能性が最も高い(それはTG2酵素に対する古典的QXPモチーフであるモチーフQQPの中に存在し、EQPに転換されるはずである)。よって、CeDの進行におけるTG2の提案される役割のため、本発明のペプチドに見出される特に好ましい第2のエピトープまたはB細胞エピトープ配列は、配列QPEQPYP(SEQ ID NO:38)を含む。
【0043】
よって、本発明の代替的な態様は、配列QPQQPYP(SEQ ID NO:37)または上述のとおりのその脱アミドバージョン(またはQ残基の代わりにE残基が存在するバージョン)、特にQPEQPYP(SEQ ID NO:38)を有する、たとえばB細胞エピトープなどのエピトープを提供する。たとえばB細胞エピトープなどのこのエピトープの配列QPQQPYP(SEQ ID NO:37)、または上述のとおりのその脱アミドバージョン、特にQPEQPYP(SEQ ID NO:38)を含むペプチド配列は、さらなる態様を提供する。
【0044】
たとえば本明細書において定義されるとおり、本発明のいくつかのペプチドは、たとえばT細胞エピトープなどの第1またはコア9量体含有エピトープと、たとえばB細胞エピトープなどの第2のエピトープとの両方を含む。好ましいこうしたペプチドは、たとえばT細胞エピトープなどの第1のエピトープと、たとえばB細胞エピトープなどの第2のエピトープとを重複して有する。言い換えると、こうした実施形態において、第1のエピトープまたはT細胞エピトープのアミノ酸残基の少なくとも1つが、第2のエピトープまたはB細胞エピトープの一部も形成し、逆も同様である。たとえば、本発明の特に好ましいペプチドにおいて、第2の(またはB細胞)エピトープの末端部のPYP残基は、第1の(またはT細胞)エピトープの一部も形成し、たとえば第1の(またはT細胞)エピトープの最初の3つのアミノ酸を提供する。こうした実施形態の好ましい例は、次の配列を含むペプチドである。
【0045】
QPQQPYPQQEQPY(SEQ ID NO:28)、
QPEQPYPQQEQPY(SEQ ID NO:31)、
QPEQPYPQQQQPY(SEQ ID NO:32)、
QPQQPYPQQEQPYGTSL(SEQ ID NO:30)、
QPEQPYPQQEQPYGTSL(SEQ ID NO:33)、または
QPEQPYPQQQQPYGTSL(SEQ ID NO:34)。
【0046】
この実施形態による特に好ましいペプチドは、配列QPEQPYPQQEQPY(SEQ ID NO:31)またはQPEQPYPQQEQPYGTSL(SEQ ID NO:33)を含む。他の例は、配列QPEQPYPQQEQPYG(SEQ ID NO:39)、またはその一方もしくは両方のE残基の代わりにQ残基を有するバージョンを含む。
【0047】
食餌性グルテンは、摂取されるとたとえば小腸内腔などの腸空間内のプロテアーゼによって分解されて、部分的に消化されたグルテンペプチドまたはタンパク質分解耐性ペプチドが形成される。次いで、CeD進行の機構の一部として、たとえば小腸の固有層などにおいてTG2によるこれらのペプチドの脱アミドが起こり得る。こうした脱アミドペプチドをT細胞およびB細胞が認識することが、CeDに関与すると考えられる。よって、本発明のいくつかの実施形態において、好ましいペプチドは、こうした自然に生じる(天然)ペプチド、たとえば自然に生じる部分的に消化されたグルテンペプチドまたは自然に生じるタンパク質分解耐性ペプチド(またはその脱アミドバージョン、特にその自然に生じる脱アミドバージョン)などを含有するか、または含むか、またはそれからなるか、またはそれに対応する。本発明のペプチドのトリプシン消化解析は、ペプチド配列QPQQPYPQQQQPY(SEQ ID NO:20)および/もしくはQPQQPYPQQQQPYGTSL(SEQ ID NO:22)、またはその自然に生じる変異体、たとえば実質的に相同の配列であって、たとえば実質的に相同の配列の最終(またはC末端)アミノ酸として(第1の配列の末端部に示される)YもしくはPYを有するもの、または実質的に相同の配列の最終(またはC末端)アミノ酸として(第2の配列の末端部に示される)LまたはSLを有するものなどが、小腸内で自然に生じる(または生成される)可能性が最も高いことを示した。よっていくつかの実施形態において、これらの配列、またはこれらの配列を含む(またはそれからなる)配列、またはたとえばトリプシンおよび/もしくはキモトリプシン消化などのトリプシン消化によって生成(例、インビトロ)もしくは予期(例、インシリコ)される配列、またはその自然に生じる変異体(または本明細書の他の場所に記載されるその脱アミドバージョン)が好ましい。
図9Eに例示的なペプチド配列が示されており、これらの配列を有するペプチドまたはこれらの配列を含む(またはそれからなる)ペプチドは例示的配列であり、特にたとえば
図9Eまたは本明細書の他の場所に記載されるものなどの残基PYまたはYで終わる(または終結する)ペプチドである。特に、こうしたペプチドの脱アミド(またはE残基含有)バージョンが提供され、好ましくはそのE残基は本明細書の他の場所に記載される位置に存在し、その位置はたとえば
図9Eに示される9量体コア配列に関する位置6、-2、および4のうちの1つ以上、たとえば位置6および/または-2などである。
【0048】
本発明の好ましいペプチドまたはエピトープは、単離ペプチドまたはエピトープである。本発明の好ましいエピトープは、T細胞エピトープまたはB細胞エピトープ、特にT細胞エピトープである。よって、本発明の好ましいペプチドは、T細胞エピトープまたはB細胞エピトープの配列を含むか、または含有するか、またはそれからなるか、またはそれに対応する。本発明の他の好ましいペプチドは、T細胞エピトープおよびB細胞エピトープを含有する配列を含むか、または含有するか、またはそれからなるか、またはそれに対応する。
【0049】
本明細書において用いられる「T細胞エピトープ」という用語は、適切なMHC/HLA分子、ここではHLA-DQ2.5またはHLA-DQ2.2分子の抗原ペプチド溝と結合するか、関連付けられるか、複合体を形成するか、またはそこで提示されることが可能なアミノ酸配列を示す。加えてこうしたT細胞エピトープは、前記HLA分子と関連付けられるときに、T細胞受容体によって認識または結合されることによって、たとえばT細胞の増殖を刺激するなどの、T細胞の活性化またはT細胞反応性の促進を行い得る。これらのT細胞は、本明細書においてグルテン特異的(またはグルテン反応性)T細胞またはグルテン特異的(またはグルテン反応性)CD4+T細胞と呼ばれることもある。T細胞エピトープのコア領域の典型的な長さは、9アミノ酸である。
【0050】
本明細書において用いられる「B細胞エピトープ」という用語は、抗体分子(またはB細胞受容体)によって認識または結合され得るアミノ酸配列を示す。こうした抗体分子は、B細胞上に(B細胞受容体として)存在するか、または可溶性の形態で存在し得る。たとえばB細胞エピトープの長さなど、抗体に認識または結合されるペプチド配列の長さは、非常に可変である。上述のとおり、本明細書に記載される特定のB細胞エピトープは7アミノ酸を含むが、B細胞エピトープはこれより短くも長くもなり得る。
【0051】
たとえばT細胞エピトープなどの本発明のペプチドまたはエピトープは、グリアジン-オメガ(ω)ペプチドまたはエピトープと分類され得る。たとえばT細胞エピトープなどの本発明のペプチドまたはエピトープは、好ましくはDQ2.5拘束性である。言い換えると、それらはMHCクラスII/HLA分子HLA-DQ2.5と結合するか、または関連付けられるか、またはそれによって提示されることが可能なペプチドまたはエピトープである。代替的または付加的に、たとえばT細胞エピトープなどの本発明のペプチドまたはエピトープは、DQ2.2拘束性であり得る。言い換えると、それらはMHCクラスII/HLA分子HLA-DQ2.2と結合するか、または関連付けられるか、またはそれによって提示されることが可能なペプチドまたはエピトープである。よって本発明のペプチドまたはエピトープは、MHCクラスII/HLA分子HLA-DQ2.5またはHLA-DQ2.2、好ましくはHLA-DQ2.5と複合体(pMHC複合体)を形成し得る。
【0052】
HLA-DQ2.5(DQA1*05およびDQB1*02によってコードされる)は、CeDとの強い関連性を有する特定のタイプのMHCクラスII分子である。HLA-DQ2.2(DQA1*02:01-DQB1*02によってコードされる)は、CeDとの関連性を有する別の特定のタイプのMHCクラスII分子である。
【0053】
HLA-DQ2.5はα鎖(典型的にα1ドメインおよびα2ドメインを有し、典型的にDQA1*05によってコードされる)と、β鎖(典型的にβ1ドメインおよびβ2ドメインを有し、典型的にDQB1*02によってコードされる)とを含む。HLA-DQ2.5のα鎖およびβ鎖のアミノ酸配列は、本明細書に示されている(α鎖配列はSEQ ID NO:2に示され、β鎖配列はSEQ ID NO:3に示される)。
【0054】
HLA-DQ2.5(またはHLA-DQ2.2)は、たとえばα-グリアジンまたはω-グリアジンのペプチドまたはエピトープなどのグリアジンペプチドまたはエピトープをT細胞(例、CD4+T細胞)に提示し得る。HLA-DQ2.5(またはHLA-DQ2.2)によって提示される好ましいペプチドまたはエピトープは、本明細書に記載される本発明のペプチドまたはエピトープ、たとえばT細胞エピトープなどである。本発明のさまざまな脱アミドDQ2.5エピトープおよびペプチドのアミノ酸配列は、本明細書の他の場所に提供されている。本発明のDQ2.5エピトープおよびペプチドのこれらの脱アミド形態は、DQ2.5エピトープおよびペプチドのCeD関連形態と考えられてもよく、それらは一般的に好ましい。
【0055】
たとえばQPQQPYPQQQQPY(SEQ ID NO:20)、PQQPYPQQQQPYGT(SEQ ID NO:24)、またはQPQQPYPQQQQPYGTSL(SEQ ID NO:22)(または本明細書に記載されるその脱アミドバージョン)などのペプチドなど、本発明のより長いペプチドはHLA-DQ2.5(またはHLA-DQ2.2)に関連付けられ(または結合し)得るが、HLA-DQ2.5(またはHLA-DQ2.2)分子(すなわちMHC分子)の結合溝(または結合ポケットまたはペプチド溝、または抗原ペプチド溝)は、所与のときに単一の9量体エピトープ(例、DQ2.5-コアエピトープPYPQQQQPY(SEQ ID NO:8)、または本明細書に記載される脱アミドされた同等の配列)しか提示または収容できない。どのエピトープがHLA-DQ2.5(またはHLA-DQ2.2)によって提示されるかは、より長いペプチドがHLA-DQ2.5(またはHLA-DQ2.2)と結合(関連付け)される「レジスタ」(または位置)によって決定される。
【0056】
本発明のたとえばDQ2.5エピトープまたはペプチドなどのエピトープまたはペプチドの非疾患関連形態(または「天然」形態または非脱アミド形態または「健常」形態)は、配列PYPQQQQPY(SEQ ID NO:8)を含む。
【0057】
本発明のたとえばDQ2.5エピトープまたはペプチドなどのエピトープまたはペプチドの好ましい疾患関連形態(脱アミド形態またはCeD関連形態または病原性形態)は、配列PYPQQEQPY(SEQ ID NO:25)を含む。
【0058】
加えて、エピトープの非疾患関連形態は、たとえばタンパク質分解耐性のより長いペプチドなどのより長いペプチド上に存在してもよく、このより長いペプチドは配列QPQQPYPQQQQPY(SEQ ID NO:20)もしくはQPQQPYPQQQQPYGTSL(SEQ ID NO:22)、またはその自然に生じる変異体を含む(またはそれからなる)。
【0059】
同様に、エピトープの疾患関連形態も、たとえばタンパク質分解耐性のより長いペプチドなどのより長いペプチド上に存在してもよく、それは配列QPQQPYPQQQQPY(SEQ ID NO:20)もしくはQPQQPYPQQQQPYGTSL(SEQ ID NO:22)の脱アミド形態、またはその自然に生じる変異体、たとえば次のものなどを含み(またはそれからなり)得る。
【0060】
QPQQPYPQQEQPY(SEQ ID NO:28)、
QPEQPYPQQEQPY(SEQ ID NO:31)、
QPEQPYPQQQQPY(SEQ ID NO:32)、
QPQQPYPQQEQPYGTSL(SEQ ID NO:30)、
QPEQPYPQQEQPYGTSL(SEQ ID NO:33)、
QPEQPYPQQQQPYGTSL(SEQ ID NO:34)、
または本明細書の他の場所に記載されるその他のE残基含有ペプチド、または上記のいずれかの自然に生じる変異体。
【0061】
本明細書において提供される任意の配列と実質的に相同の配列を含むペプチドまたはエピトープも提供される。
【0062】
本発明のペプチド配列の文脈において、所与のアミノ酸配列と「実質的に相同の」配列は、その所与のアミノ酸配列と比較したときに1、2、3、4、5、または6(好ましくは1、2、または3)アミノ酸の置換または欠失または付加を含有する配列を有する配列またはそれを含む配列であるか、あるいはその所与のアミノ酸配列に対する少なくとも60%、70%、80%、85%、88%、90%、92%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%の配列同一性を有する配列であるか、あるいはその所与のアミノ酸配列の少なくとも6つの連続するアミノ酸を有する配列であってもよい。
【0063】
いくつかの好ましい実施形態において、本発明のペプチドと「実質的に相同の」アミノ酸配列は、所与のペプチドのアミノ酸配列と比較したときに1、2、または3アミノ酸の置換または付加または欠失(好ましくは1つまたは2つ、より好ましくは1つ)を有する配列を有する配列であるか、あるいはそれを含む配列である。
【0064】
本発明のペプチドと「実質的に相同の」アミノ酸配列は、単離ペプチドの少なくとも6つの連続するアミノ酸を含む(またはそれからなる)配列(あるいは単離ペプチドの少なくとも7、少なくとも8、少なくとも9、少なくとも10、少なくとも11、少なくとも12、少なくとも15、少なくとも20、少なくとも25、もしくは少なくとも30の連続するアミノ酸を含むか、またはそれからなる配列)を含む。適切なHLA分子によって提示され、かつT細胞受容体によって認識または結合されるT細胞エピトープのコア領域の典型的な長さは、9アミノ酸である。たとえばB細胞エピトープの典型的な長さなど、抗体によって認識または結合されるペプチド/タンパク質配列の典型的な長さは、6または7アミノ酸以上であろう。本明細書の他の場所に記載されるとおり、T細胞および/またはB細胞エピトープを含むペプチド、たとえば配列PYPQQQQPY(SEQ ID NO:8)および/もしくはQPQQPYP(SEQ ID NO:37)、またはその脱アミドバージョン(両方とも存在するときは、これらの配列が重複し得る)を含むペプチドなどが好ましい。よって、本発明の他の例示的ペプチドは、本明細書に記載されるT細胞および/またはB細胞エピトープを含む配列と実質的に相同の配列を含む。
【0065】
本発明の代替的なペプチドまたは実質的に相同のペプチドは、9アミノ酸より長く、かつ9量体コア配列PYPQQQQPY(SEQ ID NO:8)を含む配列を含む。言い換えると、好ましい実質的に相同のペプチドは、本明細書において定義されるとおりのペプチド配列を有するが、たとえば本明細書に記載されるアミノ酸の置換、欠失、または付加(例、1、2、または3つの変更、好ましくは1または2、より好ましくは1)などのアミノ酸の変動は、9量体コア配列の外側に位置する。こうしたペプチドに対する適切な長さは、本明細書の他の場所に記載される。
【0066】
アミノ酸配列の変更は、保存的または非保存的アミノ酸によるものであり得る。好ましくは、前記変更はアミノ酸置換である。好ましくは、前記変更は保存的アミノ酸置換である。
【0067】
本明細書において用いられる「保存的アミノ酸置換」は、アミノ酸残基が、類似の側鎖を有する別のアミノ酸残基によって置換されるものである。類似の側鎖を有するアミノ酸残基のファミリーは当該技術分野において定義されており、それは塩基性側鎖(例、リジン、アルギニン、ヒスチジン)、酸性側鎖(例、アスパラギン酸、グルタミン酸)、非荷電極性側鎖(例、アスパラギン、グルタミン、セリン、スレオニン、チロシン、システイン)、非極性側鎖(例、グリシン、システイン、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、プロリン、フェニルアラニン、メチオニン、トリプトファン)、ベータ分岐側鎖(例、スレオニン、バリン、イソロイシン)、および芳香族側鎖(例、チロシン、フェニルアラニン、トリプトファン、ヒスチジン)を含む。
【0068】
「実質的に相同の」という用語は、本発明のアミノ酸配列と実質的に同じやり方で実質的に同じ機能を行う、本発明のアミノ酸配列の修飾物または化学的同等物も含む。たとえば、本発明によって包含される任意の実質的に相同のペプチドは、典型的には必要に応じてT細胞エピトープおよび/またはB細胞エピトープとして作用する能力を保持するべきである。T細胞エピトープの場合、こうした実質的に相同のペプチドは、たとえばMHCクラスII/HLA分子、特にHLA-DQ2、たとえばHLA-DQ2.5(またはHLA-DQ2.2)などと結合するか、または関連付けられる能力を保持する。
【0069】
代替的に、または付加的に(好ましくは付加的に)、こうした実質的に相同のペプチドは、T細胞受容体(T cell receptor)(好都合には非修飾または非変異配列と結合するか、またはそれを認識するTCR)と結合するか、それと相互作用するか、もしくはそれに認識される能力、および/または、たとえばT細胞の増殖もしくは炎症性サイトカイン産生などのT細胞応答を活性化もしくは刺激する能力を有する。
【0070】
B細胞エピトープの場合、こうした実質的に相同のペプチドは、たとえば抗グルテンまたは抗グリアジン(例、抗T.ウラルツ(Urartu)オメガグリアジン)抗体またはB細胞受容体、特に本発明のペプチド(例、非修飾または非変異ペプチド)と結合するかまたはそれを認識し得る抗体(またはBCR)に結合される能力を保持する。
【0071】
代替的に、または付加的に、こうした実質的に相同のペプチドは、自身に対して(または対抗して)、たとえばT.ウラルツ(Urartu)のオメガグリアジンなどのオメガグリアジンと結合する抗体が生成(または産生)され得るようなペプチドまたはエピトープとして作用する能力を保持する。
【0072】
本発明の実質的に相同のペプチドの上記の機能特性は、本発明の非修飾または野生型または親ペプチド配列と比較することによって好都合に評価され得る。典型的に、実質的に相同のペプチドのこうした機能特性は、非修飾、野生型、または親ペプチド配列によって観察されるものと(またはそれと比較されるときに)少なくとも同じ量、レベル、または程度まで観察されるだろう。
【0073】
(例、「実質的に相同の」配列を生成するための)アミノ酸の上述の操作を実行する方法は、当業者に周知である。
好ましくは、本発明のこうしたペプチドまたは実質的に相同のペプチドは、本明細書に記載されるコア9量体の位置6に対応する位置に、Qまたは好ましくはE残基を保持する。
【0074】
本発明の他の好ましいペプチドまたは実質的に相同のペプチドは、本明細書に記載されるコア9量体に関する位置10か、または位置10に対応する位置にG残基を含む。例示的なこうした配列は、位置10にG残基を含むか、または位置10および11にそれぞれGT残基を含むか、または位置10および13にそれぞれGおよびL残基を含むか、または位置10、11、12、および13(または対応する位置)にそれぞれGTSL残基を含むだろう。
【0075】
本発明の他の好ましいペプチドまたは実質的に相同のペプチドは、自然に生じるペプチド(またはそれと実質的に相同の配列)を含む。特に、本発明の好ましいペプチドは、小腸において見出されるペプチドに対応するもの、たとえば胃腸管内のプロテアーゼの作用によって得られるかまたは得ることができる、自然に生じるタンパク質分解フラグメント(またはタンパク質分解耐性ペプチド)などである。好ましい自然に生じるペプチド(または実質的に相同のペプチド)の配列を確認するために、たとえばトリプシン消化を実行することなどによって、こうしたプロテアーゼの作用をインビトロで模倣できる。こうした研究によって、本発明の好ましいペプチドまたは実質的に相同のペプチドは、最終(またはC末端)アミノ酸としてYまたはPYを有することが示される。本発明の他の好ましいペプチドまたは実質的に相同のペプチドは、最終(またはC末端)アミノ酸としてLまたはSLを有する。Y残基は、たとえば本明細書に記載される9量体コアの位置9(または位置9に対応する位置)などに見出され得る。L残基は、たとえば本明細書に記載される9量体コアに関する位置13(または位置13に対応する位置)などに見出され得る。よって、これらの位置にこれらの残基を有するペプチドが好ましく、他の位置は変異アミノ酸配列を有してもよく、たとえば他の位置は任意のアミノ酸を含み得る。より好ましいペプチドは、9量体コアも含有する。
【0076】
本発明の他の好ましいペプチドまたは実質的に相同のペプチドは、9量体コアの位置4、5、6、および7に対応する位置にQまたはE残基を有し、好ましくは位置9(または対応する残基)にY残基を有する。本明細書の他の場所に記載されるとおり、こうしたペプチドにおける位置4または6、好ましくは6のE残基が好ましく、この場合の例示的な位置4~7(または対応する残基)はQQEQまたはEQEQである。
【0077】
本発明の他の好ましいペプチドまたは実質的に相同のペプチドは、第1のエピトープもしくはT細胞エピトープの位置-2に対応する位置か、または第2のエピトープもしくはB細胞エピトープの位置3に対応する位置に、Qまたは好ましくはE残基を含む。好ましい実施形態において、このQまたはE残基は、第1(T細胞)および第2(B細胞)のエピトープの両方において同じ残基である。
【0078】
本発明の他の好ましいペプチドまたは実質的に相同のペプチドは、第1のエピトープもしくはT細胞エピトープの位置2に対応する位置か、または第2のエピトープもしくはB細胞エピトープの位置6に対応する位置にY残基を含む。好ましい実施形態において、このY残基は、第1(T細胞)および第2(B細胞)のエピトープの両方において同じ残基である。
【0079】
本発明の他の好ましいペプチドまたは実質的に相同のペプチドは、1つ以上の位置においてグルタミン酸(E)残基の代わりにアスパラギン酸(D)残基を有し得る。
疑念を回避するために、本明細書における本発明のペプチドなどの脱アミドバージョンまたは形態への言及は、任意のプロセスによって生成されるこうした形態のペプチドを含んでおり、すなわちそれはQ残基の脱アミドによって特定の位置に生成されたE残基のみを示すものではなく(適切であればそのようにペプチドが生成され得るが)、たとえばそれらのE残基を有するペプチドの合成または組み換えによる作製などの任意の適切な手段によって、1つ以上の位置のQ残基の代わりにE残基が存在するペプチドまたはアミノ酸配列を示す。よって、本明細書において最も広く用いられるペプチドの脱アミドバージョンまたは形態への言及は、元のペプチド配列に存在する1つ以上のQ残基の場所に、すなわちその代わりに存在する1つ以上のE残基を有する配列を示す。
【0080】
相同性(例、配列の同一性)は、任意の好都合な方法によって評価されてもよい。しかし、配列間の相同性(例、同一性)の程度を決定するためには、たとえばClustal W(トンプソン(Thompson)、ヒギンズ(Higgins)、ギブソン(Gibson)、ヌクレイック・アシッズ・リサーチ(Nucleic Acids Res.)、22:4673-4680、1994)などの、配列のマルチプルアライメントを行うコンピュータプログラムが有用である。もし所望であれば、Clustal Wアルゴリズムと、BLOSUM62スコアリングマトリックス(ヘニコフ(Henikoff)およびヘニコフ、米国科学アカデミー紀要(Proc.Natl.Acad.Sci.USA)、89:10915-10919、1992)ならびにギャップ開始ペナルティ10およびギャップ伸長ペナルティ0.1とを共に用いることによって、一方の配列の全長の少なくとも50%がアライメントに含まれている2つの配列間の最高オーダのマッチを得ることができる。配列をアライメントするために用いられ得る他の方法は、ニードルマン(Needleman)およびブンシュ(Wunsch)のアライメント法(ニードルマンおよびブンシュ、ジャーナル・オブ・モレキュラー・バイオロジー(J.Mol.Biol.)、48:443、1970)がスミス(Smith)およびウォーターマン(Waterman)(スミスおよびウォーターマン、アドバンシズ・イン・アプライド・マスマティクス(Adv.Appl.Math.)、2:482、1981)によって改訂されて、2つの配列間の最高オーダのマッチが得られ、かつ2つの配列間の同一アミノ酸の数が決定されるようになったものである。2つのアミノ酸配列間の同一性のパーセンテージを算出するための他の方法は、当該技術分野において一般的に認識されており、それはたとえば、カリロ(Carillo)およびリプトン(Lipton)(カリロおよびリプトン、SIAMジャーナル・オン・アプライド・マスマティクス(SIAM J.Applied Math.)、48:1073、1988)に記載されるもの、および「計算分子生物学(Computational Molecular Biology)」、レスク(Lesk)、e.d.オックスフォード大学出版局(Oxford University Press)、ニューヨーク(New York)、1988、「バイオコンピューティング:インフォマティクスおよびゲノミクスプロジェクト(Biocomputing:Informatics and Genomics Projects)」に記載されるものなどを含む。
【0081】
一般的に、こうした計算のためにコンピュータプログラムが使用されることとなる。配列対を比較およびアライメントするプログラム、たとえばALIGN(マイヤーズ(Myers)およびミラー(Miller)、CABIOS、4:11-17、1988)、FASTA(ピアソン(Pearson)およびリップマン(Lipman)、米国科学アカデミー紀要(Proc.Natl.Acad.Sci.USA)、85:2444-2448、1988;ピアソン、メソッズ・イン・エンザイモロジー(Methods in Enzymology)、183:63-98、1990)、およびギャップド(gapped)BLAST(アルツシュール(Altschul)ら、ヌクレイック・アシッズ・リサーチ(Nucleic Acids Res.)、25:3389-3402、1997)、BLASTP、BLASTN、またはGCG(デバロー(Devereux)、ヘベルリ(Haeberli)、スミシーズ(Smithies)、ヌクレイック・アシッズ・リサーチ(Nucleic Acids Res.)、12:387、1984)などもこの目的のために有用である。さらに、欧州バイオインフォマティクス研究所(European Bioinformatics institute)のDaliサーバは、タンパク質配列の構造に基づくアライメントを提供する(ホルム(Holm)、トレンズ・イン・バイオケミカル・サイエンシズ(Trends in Biochemical Sciences)、20:478-480、1995;ホルム、ジャーナル・オブ・モレキュラー・バイオロジー(J.Mol.Biol.)、233:123-38、1993;ホルム、ヌクレイック・アシッズ・リサーチ(Nucleic Acid Res.)、26:316-9、1998)。
【0082】
基準点を提供するために、(たとえばインターネット上のGENESTREAMネットワークサーバ、IGH、モンペリエ(Montpellier)、フランス(France)にて利用可能なものなどの)デフォルトパラメータを有するALIGNプログラムを用いて、少なくとも60%、70%、80%、85%、88%、90%、92%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%の相同性、配列同一性などを有する本発明による配列が決定されてもよい。
【0083】
いくつかの実施形態において、本発明は、本明細書に開示されるたとえば単離ペプチドなどのペプチドの配列(またはそれと実質的に相同の配列)の伸長または切断されたバージョンを含む(またはそれからなる)、たとえば単離ペプチドなどのペプチドを提供する。
【0084】
本発明のペプチドは、本明細書に開示されるペプチド配列の伸長バージョンか、または本明細書に開示されるペプチド配列と実質的に相同のアミノ酸配列の伸長バージョンを含んでも(またはそれからなっても)よい。たとえば、1つ以上の追加のアミノ酸(例、少なくとも2、少なくとも3、少なくとも4、少なくとも5、少なくとも6、少なくとも7、少なくとも8、少なくとも9、少なくとも10、少なくとも15、少なくとも20、もしくは少なくとも25のアミノ酸、または1~5もしくは1~10もしくは1~20のアミノ酸)が、ペプチド配列(またはそれと実質的に相同の配列)の一方の末端部または両方の末端部に存在してもよい。
【0085】
本明細書において定義される本発明のペプチドまたはエピトープまたはコンジュゲートまたは複合体をコードするヌクレオチド配列を含む(またはそれからなる)核酸分子、あるいはそれと実質的に相同の核酸分子は、本発明のさらなる態様を形成する。本発明の核酸分子を含むベクターもしくは発現ベクター、または前記発現ベクターもしくは核酸分子を含むたとえば宿主細胞などの細胞は、さらなる態様を形成する。前記ベクターまたは細胞は、たとえば治療または診断用の使用および方法などにおいて、本明細書に記載される本発明のさまざまな態様における核酸分子の代替物として用いられ得る。
【0086】
本明細書において核酸配列に関連して用いられる「実質的に相同の」という用語は、出発核酸配列に対する少なくとも65%、70%、または75%、好ましくは少なくとも80%、さらにより好ましくは少なくとも85%、90%、95%、96%、97%、98%、または99%の配列同一性を有する配列を含む。
【0087】
本明細書において用いられる「核酸配列」または「核酸分子」という用語は、自然に生じる塩基と、糖と、糖間(骨格)リンケージとで構成されるヌクレオシドまたはヌクレオチド単量体の配列を示す。この用語は、自然に生じない単量体またはその一部分を含む修飾または置換配列も含む。本発明の核酸配列は、デオキシリボ核酸配列(DNA:deoxyribonucleic acid)またはリボ核酸配列(RNA:ribonucleic acid)であってもよく、アデニン、グアニン、シトシン、チミジン、およびウラシルを含む自然に生じる塩基を含んでもよい。この配列は修飾塩基も含有してもよい。こうした修飾塩基の例は、アザおよびデアザアデニン、グアニン、シトシン、チミジン、およびウラシル;ならびにキサンチンおよびヒポキサンチンを含む。核酸分子は、二本鎖であっても一本鎖であってもよい。核酸分子は、全体的または部分的に合成または組み換えであってもよい。
【0088】
ここに記載されるか、または本明細書の他の場所に記載される所望の配列をコードするために、1つ以上の核酸分子が用いられてもよい。
【0089】
本発明の実施形態において、本明細書に記載されるペプチドもしくはエピトープもしくはコンジュゲートもしくは複合体のアミノ酸配列、またはそれと実質的に相同の配列からなるか、または本質的にそれからなるペプチドもしくはタンパク質、あるいは前記ペプチドもしくはエピトープもしくはコンジュゲートもしくは複合体をコードする核酸分子、またはそれと実質的に相同の核酸分子は、本発明のさらなる態様を形成する。
【0090】
本発明のさらなる態様は、本発明のペプチドまたはエピトープを含むコンジュゲート(または複合体)を提供する。典型的に、このコンジュゲート(または複合体)は、たとえばCD4+T細胞などのT細胞にペプチドまたはエピトープを提示するように構成される。典型的に、このコンジュゲート(または複合体)は、T細胞受容体にペプチドまたはエピトープを提示するように構成される。このコンジュゲート(または複合体)は、第2の構成要素または別の実体と結合(coupled)(例、連結または接続または接合またはコンジュゲートまたは結合(bonded))されるか、または別様に関連付けられた、本明細書の他の場所において定義された本発明の少なくとも1つのペプチドまたはエピトープを含んでもよい。
【0091】
例示的なコンジュゲート(または複合体)は、本発明のペプチドまたはエピトープが、MHC分子、典型的にはMHCクラスII分子(HLA分子)にたとえば物理的に結合されるなどして結合されて、ペプチド-MHC(p-MHC)コンジュゲート/複合体を形成したものを含んでもよい。こうした結合は、当該技術分野において公知であり報告されている方法によって達成され得る。たとえば、本発明のペプチドまたはエピトープは、たとえばペプチドまたは他のリンカーまたはリンケージの手段(例、化学リンカーまたはリンケージ)などを介して、MHCまたはMHCクラスII分子のαまたはβ鎖(またはそのフラグメントもしくは変異体、たとえば機能フラグメントもしくは変異体など、たとえば切断フラグメントもしくは変異体など)に結合され得る。よって、こうしたリンカーまたはリンケージは典型的に人工、合成、または自然に生じないリンカーまたはリンケージである。たとえば非天然配列または人工配列などの適切な配列を有するペプチドリンカーは、好ましくは好都合に遺伝子融合物として提供され得る。代替的に、こうしたリンケージを提供するために、たとえばソルターゼAなどのクリックケミストリーの適用が用いられ得る。
【0092】
こうした結合または結合手段は、典型的かつ好都合には永続的な、共有結合の、または不可逆的なリンケージを介して実行され得る。同様に、前記結合はたとえば物理的関連付けなどの関連付けを介してもよく、ここではたとえば本発明のペプチドまたはエピトープが、物理的リンケージによって接合されることなく、たとえばMHC分子などの別の実体または第2の構成要素と結合または関連付けされ得る。よって、本発明の遊離または単離ペプチドは、好都合にMHC分子に積載(loaded)または結合され得る。
【0093】
MHCまたはMHCクラスII分子の例示的な機能フラグメントまたは変異体は、本発明のペプチドまたはエピトープと結合するか、または別様に関連付けられる能力を保持するものである。たとえば、いくつかの操作されたHLA変異体、たとえば切断変異体などが当該技術分野において報告されており、これらのいずれかが用いられてもよい。
【0094】
本明細書の他の場所と同様に、こうしたコンジュゲート(または複合体)で用いるために好ましいMHCクラスII分子は、HLA-DQ2分子(またはその鎖もしくはフラグメント)、特にHLA-DQ2.5分子またはHLA-DQ2.2分子(またはその鎖もしくはフラグメント)である。よってこうした分子はMHCまたはHLA分子、たとえばHLA-DQ2.5分子などを含み、それは本発明のたとえばω-グリアジンエピトープなどのたとえばグリアジンエピトープなどのペプチドまたはエピトープを提示(または「積載」)する。別の言い方をすると、こうしたコンジュゲートはHLA-DQ2.5-ペプチドまたはHLA-DQ2.2-ペプチドコンジュゲート/複合体(pMHC)であってもよく、ここで本発明のペプチドまたはエピトープは抗原結合溝において提示される(または抗原結合溝に収容される)。クラスII MHC分子を含有するこうしたpMHC複合体、たとえばHLA-DQ2.5-ペプチドまたはHLA-DQ2.2-ペプチド複合体などもpMHCIIと呼ばれ得る。こうしたpMHC複合体は、たとえば単離または組み換え分子(例、組み換え可溶性pMHCまたはpHLA分子)などとして可溶性の形態で生成されてもよいし、別の実体または担体または調合物に関連付けられるか、またはその上もしくは中に積載されてもよく、たとえば本明細書の他の場所に記載されるナノ粒子または他の固体支持体などの固体支持体にコーティングまたは付着されてもよいし、たとえば組み換え発現などによって細胞において発現されてもよいし、他の粒子、担体、または調合物、たとえば脂質ベースの粒子、担体、または調合物など、たとえばリポソームまたはミセルなどに関連付けられてもよい。こうしたpMHCを含有する実体(以下および本明細書の他の場所に記載される多量体を含む)は、たとえばT細胞アネルギーの誘導などのために治療的に用いられてもよいし、本明細書の他の場所に記載される診断の適用または検出方法において、たとえばT細胞の検出(例、染色)など、またはたとえばT細胞の活性化などのために用いられてもよい。
【0095】
上述のとおり、本発明のコンジュゲートまたは複合体は、たとえばMHC分子などの第2の実体に結合された、本発明の2つ以上のペプチドまたはエピトープを含有し得る。よって、たとえば2、3、または4以上のペプチド-MHC複合体(pMHC)などを有するペプチド-MHC(pMHC)多量体を含むコンジュゲートまたは複合体が提供される。特に好ましい多量体コンジュゲートは、たとえばそれぞれ2つまたは4つのペプチド-MHCコンジュゲート/複合体が単一の複合体または分子中に一緒に提供されている分子などの、二量体または四量体の形態を取る。2つ以上のペプチド-MHC複合体を有するこれらのコンジュゲートに対して、任意の適切な構造または設計が用いられてもよく、当該技術分野において適切な形式が報告されている(たとえば、二量体はクレメンテ-カサレス(Clemente-Casares)ら、2002、ネイチャー・イムノロジー(Nature Immunology)3、383-391に記載されている)。加えて四量体は、たとえば各pMHC複合体をビオチン含有部分に接合し、ビオチン-ストレプトアビジン相互作用を用いて4つの別個のpMHC複合体を一緒に接合して四量体を形成する形式(たとえば、カルステン(Quarsten)ら、ジャーナル・オブ・イムノロジー(J.Immunol.)、2001、167(9)、4861-8などを参照)など、当該技術分野において報告されている任意の形式を取り得る。こうした多量体のコンジュゲートにおいて、コンストラクトの各pMHCアーム、たとえば各個別のpMHC複合体などが、たとえばCD4+T細胞の表面上などのT細胞受容体と結合する能力を保持していることが好ましい。
【0096】
他のコンジュゲートは、本発明のペプチドまたはエピトープと、ペプチド担体とを含んでもよく、ここで前記ペプチドまたはエピトープは前記ペプチド担体と結合する。ペプチド担体は、典型的に免疫原性を増強するか、または免疫原性を増強するように選択され得る。よって、ペプチドまたはエピトープに対する抗原応答を誘導することが望まれるときは、こうしたコンジュゲートが特に有用である。したがってこうしたコンジュゲートは、本発明のペプチドまたはエピトープに対する抗体を生成または産生するのに適している。本明細書の他の場所に記載されるとおり、本発明のペプチドまたはエピトープと結合または特異的に結合し得るこうした抗体は、本発明のさらなる実施形態を提供する。
【0097】
こうしたコンジュゲートまたは複合体をコードする1つ以上の核酸分子も提供される。
【0098】
上記に示されるとおり、いくつかの実施形態において、本発明のペプチド(またはコンジュゲートまたは複合体、たとえばpMHCなど)は、固体支持体(例、粒子または平面状の支持体、たとえばビーズまたはマイクロビーズまたはナノ粒子またはプレートまたはマイクロタイタープレートなど)の上に存在し(すなわち付着または結合され)てもよい。よって1つの態様において、本発明は固体支持体を提供し、その固体支持体に本発明のペプチドまたはコンジュゲートまたは複合体が付着される(直接的または間接的に付着される)。典型的には、複数のコピーが付着されることとなる。こうした固体支持体は、インビトロ診断適用に使用するために特に好適であるか、またはそこで用いられる。
【0099】
上記に示され、かつ本明細書の他の場所に記載されるとおり、いくつかの実施形態において、本発明のペプチド(またはコンジュゲートまたは複合体、たとえばpMHCなど)は、たとえばリポソームまたはミセルなどの脂質ベースの調合物または担体など、他の実体、調合物、または担体と関連付けられて存在してもよい。よって、本発明のペプチド、コンジュゲート、または複合体を含む、たとえば脂質ベースの担体または調合物などの担体または調合物は、さらなる態様を形成する。
【0100】
さらなる態様は、本発明のペプチドまたはエピトープまたはコンジュゲートまたは複合体を含むか、提示するか、または積載する抗原提示細胞(APC:antigen presenting cell)またはその他の細胞を提供する。こうした実施形態において、本発明のペプチドまたはエピトープは典型的に、細胞表面上に位置するか、または細胞表面に関連付けられる。こうした細胞を調製する任意の適切な方法が用いられ得る。よって、ペプチドまたはエピトープと結合し得るMHCクラスII分子を細胞が自身の表面上に自然に発現するか、または含むとき、その細胞に本発明のペプチドまたはエピトープを外部から積載し得る。代替的に、たとえば組み換え手段などによって、本発明のペプチドまたはエピトープを発現するように細胞を操作し得る。たとえば、表面上に適切なpMHC(例、本発明のpMHCコンジュゲートまたは複合体)の発現をもたらすコンストラクトによって細胞をトランスフェクトしてもよく、たとえばこうした細胞は本発明の核酸分子を含み得る。本明細書の他の場所に記載されるとおり、こうした細胞は、たとえばT細胞アネルギーの誘導などのために治療的に用いられ得る。
【0101】
任意の適切な細胞型が用いられ得る。好ましいAPCは、樹状細胞、マクロファージ、またはBリンパ球、特に形質細胞の形態を取ることがある。
【0102】
本発明のさらなる態様は、本発明のペプチドまたはエピトープまたは複合体またはコンジュゲートと結合するか、または特異的に結合する結合タンパク質を提供する。特に、本発明のペプチドまたはエピトープまたは複合体またはコンジュゲートと特異的に結合する結合タンパク質が好ましい。本発明の脱アミド(またはE残基含有)ペプチドまたはエピトープまたは複合体またはコンジュゲートと結合するか、または特異的に結合する結合タンパク質も提供され、それはいくつかの態様において好ましい。
【0103】
いくつかの実施形態において、前記結合タンパク質は細胞(細胞表面)上に存在するかまたは発現され、たとえば前記結合タンパク質を含むかまたは発現するたとえばT細胞またはNK細胞などのたとえば真核細胞などの細胞などであってもよく、たとえばCAR T細胞またはTCR T細胞またはTCR-NK細胞またはCAR-NK細胞などであってもよい。
【0104】
よって、本発明のさらなる態様は、たとえばT細胞またはNK細胞などの真核細胞などの細胞の表面上に本発明の結合タンパク質を発現させる方法を提供する。前記方法は、前記結合タンパク質をコードする核酸分子またはコンストラクトを細胞に提供して、細胞の表面上で前記結合タンパク質の発現が起こることを可能にするステップを好都合に含んでもよい。
【0105】
本発明の結合タンパク質はCeDに関連するペプチドおよびエピトープを標的にし得るため、いくつかの実施形態において、本発明の結合タンパク質は、たとえば他の有用な治療用の実体または部分などの他の実体と関連付けられるか、またはコンジュゲート(付着)されてもよい。
【0106】
たとえば、本発明の結合タンパク質(例、抗体またはT細胞受容体)は、たとえば抗体薬物コンジュゲート(ADC:antibody drug conjugate)などの形態で、毒性もしくは細胞毒性部分か、またはたとえばsiRNA分子などのたとえば抑制性RNA分子などの何らかの他のペイロードとコンジュゲートまたは関連付けされてもよい。いくつかの実施形態において、たとえば抗体分子などの本発明の結合タンパク質は、標的細胞に内部移行され得るか、または標的細胞への内部移行を可能にする。本発明の結合タンパク質はAPC上のpMHC複合体を標的にし得るため、次いでその結合タンパク質が内部移行されるとき、これはペイロードが標的細胞に入ることを確実にする好都合なやり方を提供する。よって、選択されるペイロードに依存して、(例、ペイロードが細胞毒性分子または適切な抑制性RNA/siRNA分子であるときに)pMHC標的を発現するAPC(例、CeDに関連するAPC)を死滅させるかもしくは除去することができ、または(例、ペイロードが抑制性RNA/siRNAであるときに)遺伝子もしくはタンパク質レベルを変更できる。したがって、こうしたコンジュゲートは、たとえばCeDの処置などにおいて、本明細書に記載されるとおりに治療的に使用される。
【0107】
代替的に、本発明の結合タンパク質(例、抗体、たとえばTCR様抗体など、またはT細胞受容体)は、たとえばエフェクター細胞などの別の実体に対する特異性を有する第2の結合タンパク質とコンジュゲートまたは関連付けされてもよく、次いでその実体が補充され得る。第2の結合タンパク質が特異性を有する適切なエフェクター細胞は、たとえばT細胞またはNK細胞などの任意のタイプの細胞であり得る。よって、本発明の結合タンパク質を含む二重特異性分子、たとえば二重特異性抗体および細胞エンゲージャーなど、たとえば二重特異性T細胞エンゲージャー分子(BiTE:bispecific T cell engager molecules)なども提供される。たとえば抗体またはT細胞受容体などの適切な第2の結合タンパク質は、標的とされる実体またはエフェクター細胞に依存して容易に選択可能であり、その例は当該技術分野において周知であり、報告されている。たとえば、標的がT細胞またはNK細胞であるとき、たとえば抗体またはT細胞受容体などの第2の結合タンパク質は、必要に応じてT細胞表面タンパク質(例、CD3またはCD16、たとえば抗CD3または抗CD16ユニットなど、たとえば抗CD3または抗CD16抗体などの形態で)またはNK細胞表面タンパク質(例、NKG2D、たとえば抗NKG2Dユニットなど、たとえば抗NKG2D抗体などの形態で)と結合するように選択される。
【0108】
加えて、本発明の結合タンパク質は、検出され得るか、または検出を可能にする実体、たとえば標識またはその他の検出可能な部分に関連付けられ得る実体などに関連付けまたはコンジュゲート(付着)され得る。こうした標識された結合タンパク質または検出可能な結合タンパク質(例、抗体)は、次いで本発明のペプチド、エピトープ、またはpMHC複合体を検出するために使用されてもよく、たとえばMHC分子に関連する本発明のペプチドまたはエピトープを表示するAPCを検出するためなどに用いられてもよい。加えて、本発明の結合タンパク質は、たとえば抗原提示細胞の表面などにおけるCeDに関連するペプチド、エピトープ、またはpMHC複合体を標的にし得るため、このたとえば抗体などの結合タンパク質を用いて、T細胞(例、グルテン特異的T細胞または病原性T細胞)とpMHC複合体との相互作用を遮断または阻害することによって、T細胞の活性化または増殖を阻害または低減し得る。
【0109】
よって、本発明の結合タンパク質も治療的に使用され、たとえば本明細書の他の場所に記載されるものなどの治療法に用いられ得る。
【0110】
好ましいこうした結合タンパク質は、T細胞受容体(TCR)である。前記T細胞受容体は細胞上に存在してもよく、たとえば自身の表面上に前記T細胞受容体を含むかまたは発現するたとえば真核細胞などの細胞などであってもよく、たとえばT細胞か、またはたとえば組み換え手段などによってTCRを発現するNK細胞もしくはその他の細胞型などであってもよく、または前記T細胞受容体は可溶性T細胞受容体(TCR)であってもよく、たとえば組み換え手段などによって産生された細胞膜に関連付けられないTCRなどであってもよい。よって、本発明のさらなる実施形態は、本発明のペプチドまたはエピトープまたは複合体またはコンジュゲートと結合または特異的に結合し得る細胞表面TCRを有するかまたは発現する、たとえばT細胞またはNK細胞などの細胞を提供する。他の実施形態は、本発明のペプチドまたはエピトープまたは複合体またはコンジュゲートと結合または特異的に結合し得る可溶性TCRを提供する。特に、本発明のpMHC複合体または分子と結合または特異的に結合し得るTCRまたはT細胞が好ましい。特異的結合を示すTCRまたはT細胞も好ましい。TCRのフラグメントも、たとえば本発明のpMHC複合体または分子と結合または特異的に結合する能力などの機能活性を保持するものは含まれる。本発明の脱アミド(またはE残基含有)ペプチドまたはエピトープまたは複合体またはコンジュゲートと結合または特異的に結合するTCRも提供され、それはいくつかの態様において好ましい。
【0111】
別の好ましい結合タンパク質は、本発明のペプチドまたはエピトープまたは複合体またはコンジュゲートと特異的に結合する抗体もしくは抗体の抗原結合ドメインであるか、またはそれを含む。pMHCまたはpHLA複合体と結合または特異的に結合する抗体または抗体の抗原結合ドメインは、TCR様抗体と呼ばれることがある。本発明のペプチドまたはエピトープ、特に本発明のT細胞エピトープを含むペプチド、たとえば9量体コア配列を有する本発明のT細胞エピトープを含むが、本発明のB細胞エピトープは含まないペプチドなど(例、たとえばpMHCなどの複合体またはコンジュゲートとは対照的な、ネイキッド、単離、または非複合型の形態のもの)と結合(または特異的に結合)する抗体または抗体の抗原結合ドメインであるか、またはそれを含む結合タンパク質も提供される。本発明の複合体またはコンジュゲート(例、ネイキッド、単離、または非複合型の形態の本発明のペプチドとは対照的な、pMHCの形態の本発明のペプチド)と結合(または特異的に結合)する抗体または抗体の抗原結合ドメインであるか、またはそれを含む結合タンパク質も提供される。こうした実施形態において、pMHCの前記ペプチドは、好ましくは本発明のT細胞エピトープを含み、たとえば9量体コア配列を有する本発明のT細胞エピトープを含むが、本発明のB細胞エピトープは含まない。
【0112】
こうした結合タンパク質は細胞上に存在してもよく、たとえば自身の表面上に前記抗体または抗体の抗原結合ドメインを含むかまたは発現するたとえば真核細胞などの細胞などであってもよく、たとえばT細胞などであってもよく、たとえばCAR T細胞の形態などであってもよく、またはこうした結合タンパク質は可溶性もしくは単離結合タンパク質であってもよく、たとえば組み換え手段などによって産生された細胞膜に関連付けられない抗体または抗体の抗原結合ドメインなどであってもよい。
【0113】
好ましくは、抗体の抗原結合ドメインを含む結合タンパク質は、抗体またはその抗原結合フラグメントである。
【0114】
当業者に理解されることとなるとおり、「抗体」という用語によって包含される免疫学的結合試薬は、全抗体、二量体、三量体、および多量体の抗体;二重特異性抗体;キメラ抗体;組み換えおよび操作された抗体、ならびにそのフラグメントを含むすべての抗体およびその抗原結合フラグメントを含むか、またはそれに及ぶ。
【0115】
よって「抗体」という用語は、1つ以上のCDRを含む抗原結合領域と、フレームワーク(FR:framework)領域(または1つ以上のVHおよび/もしくはVL領域)とを有する任意の抗体様分子を示すために用いられ、この用語は、たとえばFab’、Fab、F(ab’)2などの抗原結合ドメインを含む抗体フラグメント、単一ドメイン抗体(DAB:domain antibodies)、TandAb二量体、Fv、scFv(単鎖(single chain)Fv)、dsFv、ds-scFv、Fd、直鎖状抗体、ミニボディ、ダイアボディ、二重特異性抗体フラグメント、バイボディ(bibody)、トリボディ(scFv-Fab融合体、それぞれ二重特異性または三重特異性);sc-ダイアボディ;カッパ(ラムダ)ボディ(scFv-CL融合体);BiTE(二重特異性T細胞エンゲージャー、T細胞を誘引するためのscFv-scFvタンデム);DVD-Ig(二重可変ドメイン(dual variable domain)抗体、二重特異性形式);SIP(小免疫タンパク質(small immunoprotein)、ミニボディの一種);SMIP(「小モジュラー免疫医薬品(small modular immunopharmaceutical)」scFv-Fc二量体;DART(ds安定化ダイアボディ「二重親和性再標的化(Dual Affinity ReTargeting)」);および小抗体模倣物を含む。
【0116】
本明細書において、本発明のペプチドまたはエピトープまたは複合体またはコンジュゲートの文脈において用いられる「特異的に結合する」または「特異的に認識する」という用語は、本発明のペプチドまたはエピトープ、たとえば配列PYPQQQQPY(SEQ ID NO:8)もしくはその脱アミド(またはE残基含有)バージョンを含むペプチドまたはエピトープなど、あるいは本発明の複合体またはコンジュゲート、たとえばHLA-DQ2.5またはHLA-DQ2.2に積載または提示された本発明の前記ペプチドまたはエピトープを含む複合体またはコンジュゲートなどと結合することができ、かつ他のペプチド、たとえば他のネイキッド、単離、もしくは非コンジュゲートのペプチド、またはHLA-DQ2.5もしくはHLA-DQ2.2に積載もしくは提示された他のペプチド(例、他のセリアック病関連ペプチド、または他のグリアジンもしくはグリアジン由来ペプチド、またはグリアジン由来ペプチドの変異体、または他のグルテン由来ペプチド)と交差反応しない(または結合しない)か、または有意に交差反応しない(または有意に結合しない)ような結合タンパク質(例、TCR、抗体、または抗体の抗原結合ドメイン)を意味する。好ましくは、結合タンパク質(例、TCR、抗体、または抗体の抗原結合ドメイン)は、DQ2.5:DQ2.5-グリア-α1aと交差反応しない(または結合しない)か、または有意に交差反応しない(または有意に結合しない)。他の好ましい結合タンパク質(例、TCR、抗体、または抗体の抗原結合ドメイン)は、本明細書に記載されるB細胞エピトープを含むが、本発明のコア9量体T細胞エピトープを含まないペプチド、たとえば本明細書に記載されるB細胞エピトープを含むネイキッド、単離、もしくは非コンジュゲートのペプチドか、またはたとえばHLA-DQ2.5もしくはHLA-DQ2.2などのMHC分子(pMHC)に積載もしくは提示された本明細書に記載されるB細胞エピトープを含むが、本発明のコア9量体T細胞エピトープを含まないペプチドなどと交差反応しない(または結合しない)か、または有意に交差反応しない(または有意に結合しない)。
【0117】
HLA-DQ2.5:DQ2.5-グリア-α1aは、DQ2.5-グリア-α1aエピトープ(PFPQPELPY(SEQ ID NO:4))を提示(または「積載」)するHLA-DQ2.5分子を意味する。別の言い方をすると、HLA-DQ2.5:DQ2.5-グリア-α1aは、DQ2.5-グリア-α1aエピトープを抗原結合溝において提示する(または抗原結合溝に収容する)HLA-DQ2.5-ペプチド複合体(pMHC)を意味する。
【0118】
他の好ましい結合タンパク質(例、TCR、抗体、または抗体の抗原結合ドメイン)は、本発明の脱アミド(またはE残基含有)ペプチドに対して特異的である。こうした結合タンパク質は、単独(ネイキッドまたは単離の形態)であっても、MHC分子と関連付けられたときでも、本発明の脱アミド(またはE残基含有)ペプチドと結合するが、本発明のペプチドの非脱アミド形態または健常形態とは交差反応しない(または結合しない)か、または有意に交差反応しない(または有意に結合しない)。
【0119】
いくつかの実施形態において、本発明の結合タンパク質、特に抗体または抗体の抗原結合ドメインは、自身の抗原(例、本発明のペプチドまたはエピトープを含む本明細書に記載されるpMHC)に対して、1nM以下(例、1pM~1nM、または10pM~1nM、または20pM~1nM、または50pM~1nM、または100pM~1nM、または1pM~500pM、または10pM~500pM、または20pM~500pM、または50pM~500pM、または100pM~500pM、または1pM~100pM、または10pM~100pM、または20pM~100pM、または50pM~100pM)、好ましくは900pM以下、800pM以下、700pM以下、600pM以下、500pM以下、400pM以下、300pM以下、200pM以下(例、200、190、180、170、160、150、140、130、120、110、100、90、80、70、60、50、45、40、35、30、25、20、15、または10pM以下)、または100pM以下(例、90、80、70、60、50、45、40、35、30、25、20、15、または1pM以下)の結合親和性(KD)で結合する。好ましくは、上述の結合親和性および親和性の範囲の値は、抗原結合タンパク質がscFv形式またはFab形式または全抗体形式であるときに適用される。
【0120】
結合親和性(KD)は、当業者に周知であろう任意の適切な技術によって測定され得る。好都合な技術は、たとえばBIAcoreなどの表面プラズモン共鳴(SPR:surface plasmon resonance)の使用であろう。
【0121】
よって、本発明の結合タンパク質は、本発明のペプチドまたはエピトープに見出される残基を認識するか、またはそれと結合する。よって、結合タンパク質はそのペプチドまたはエピトープの外側のいくつかの残基とも接触または相互作用することがあるが、本発明の結合タンパク質は、たとえば空のMHC分子またはペプチドを積載していないMHC分子などの単独のMHC分子とは結合しない。
【0122】
いくつかの実施形態において、結合タンパク質は、抗体もしくはその抗原結合フラグメントではないか、またはそれを含まない。他の実施形態において、結合タンパク質は、抗体の抗原結合ドメインではないか、またはそれを含まない。
【0123】
いくつかの実施形態において、結合タンパク質は、前記結合タンパク質がα1aグリアジンペプチドを提示するHLA-DQ2.5:DQ2.5と結合しないという条件付きで、抗体もしくは抗体の抗原結合ドメインであるか、またはそれを含む。他の実施形態において、前記結合タンパク質は、α1aグリアジンペプチドを提示するHLA-DQ2.2とも結合しない。
【0124】
いくつかの実施形態において、結合タンパク質は、前記結合タンパク質がα1aグリアジンペプチドを提示するHLA-DQ2.5:DQ2.5と結合する抗体または抗原結合タンパク質またはドメインではないという条件付きで、抗体または抗原結合タンパク質(または抗体の抗原結合ドメイン)であるか、あるいはそれを含み、前記抗体または抗原結合タンパク質(または抗体の抗原結合ドメイン)は少なくとも1つの軽鎖可変ドメインと、少なくとも1つの重鎖可変ドメインとを含み、各ドメインは3つの相補性決定領域(CDR:complementarity determining regions)を含み、前記抗体または抗原結合タンパク質またはドメインは、
アミノ酸配列GDSVSSNSAA(SEQ ID NO:40)、または前記配列に関する1、2、もしくは3アミノ酸の置換、付加、もしくは欠失を含有する配列を含む可変重鎖(VH:variable heavy)CDR1と、
アミノ酸配列TYYRSKWYN(SEQ ID NO:41)、または前記配列に関する1、2、もしくは3アミノ酸の置換、付加、もしくは欠失を含有する配列を含む可変重鎖(VH)CDR2と、
アミノ酸配列ARDX4X5X6GWX9X10YGMDV(SEQ ID NO:42)を含む可変重鎖(VH)CDR3であって、ここで
X4が任意のアミノ酸であってもよく、好ましくはSまたはR(SEQ ID NO:43)であり、
X5が任意のアミノ酸であってもよく、好ましくはSまたはT(SEQ ID NO:43)であり、
X6が任意のアミノ酸であってもよく、好ましくはSまたはT(SEQ ID NO:43)であり、
X9が任意のアミノ酸であってもよく、好ましくはHまたはNまたはG(SEQ ID NO:43)であり、
X10が任意のアミノ酸であってもよく、好ましくはPまたはA(SEQ ID NO:43)である、可変重鎖(VH)CDR3と、
アミノ酸配列HDISSY(SEQ ID NO:44)、または前記配列に関する1、2、もしくは3アミノ酸の置換、付加、もしくは欠失を含有する配列を含む可変軽鎖(VL:variable light)CDR1と、
アミノ酸配列AAS(SEQ ID NO:45)、または前記配列に関する1アミノ酸の置換、付加、もしくは欠失を含有する配列を含む可変軽鎖(VL)CDR2と、
アミノ酸配列QX2LNSYPLX9X10(SEQ ID NO:46)を含む可変軽鎖(VL)CDR3であって、ここで
X2が任意のアミノ酸であってもよく、好ましくはDまたはQ(SEQ ID NO:47)であり、
X9が任意のアミノ酸またはアミノ酸なしであってもよく、好ましくはアミノ酸なしまたはL(SEQ ID NO:47)であり、
X10が任意のアミノ酸またはアミノ酸なしであってもよく、好ましくはアミノ酸なしまたはT(SEQ ID NO:47)である、可変軽鎖(VL)CDR3とを含む。
【0125】
他の実施形態において、α1aグリアジンペプチドを提示するHLA-DQ2.5:DQ2.5と結合し、かつ上記のCDRの1つ以上(例、1、2、3、4、5、または6つすべて)を含む抗体または抗原結合タンパク質(または抗体の抗原結合ドメイン)も、本発明の範囲から除外される。
【0126】
一般的に、いくつかの実施形態において、上記で定義されたCDR領域を有する抗体分子は、本発明の範囲から除外される。
【0127】
いくつかの実施形態において、結合タンパク質は、前記結合タンパク質がα1aグリアジンペプチドを提示するHLA-DQ2.5:DQ2.5と結合する抗体または抗原結合タンパク質(または抗体の抗原結合ドメイン)ではないという条件付きで、抗体または抗原結合タンパク質(または抗体の抗原結合ドメイン)であるか、あるいはそれを含み、前記抗体または抗原結合タンパク質(または抗体の抗原結合ドメイン)は少なくとも1つの軽鎖可変ドメインと、少なくとも1つの重鎖可変ドメインとを含み、各ドメインは3つの相補性決定領域(CDR)を含み、前記抗体または抗原結合タンパク質(または抗体の抗原結合ドメイン)は、
アミノ酸配列GDSVSSNSAA(SEQ ID NO:40)、または前記配列に関する1、2、もしくは3アミノ酸の置換、付加、もしくは欠失を含有する配列を含む可変重鎖(VH)CDR1と、
アミノ酸配列TYYRSKWYN(SEQ ID NO:41)、または前記配列に関する1、2、もしくは3アミノ酸の置換、付加、もしくは欠失を含有する配列を含む可変重鎖(VH)CDR2と、
アミノ酸配列ARDX4X5X6GWX9X10YGMDV(SEQ ID NO:42)を含む可変重鎖(VH)CDR3であって、ここで
X4が任意のアミノ酸であってもよく、好ましくはSまたはR(SEQ ID NO:43)であり、
X5が任意のアミノ酸であってもよく、好ましくはSまたはT(SEQ ID NO:43)であり、
X6が任意のアミノ酸であってもよく、好ましくはSまたはT(SEQ ID NO:43)であり、
X9が任意のアミノ酸であってもよく、好ましくはHまたはNまたはG(SEQ ID NO:43)であり、
X10が任意のアミノ酸であってもよく、好ましくはPまたはA(SEQ ID NO:43)であり、
より好ましくは前記(VH)CDR3がアミノ酸配列ARDSSSGWHPYGMDV(SEQ ID NO:48)を含む、可変重鎖(VH)CDR3と、
アミノ酸配列HDISSY(SEQ ID NO:44)、または前記配列に関する1、2、もしくは3アミノ酸の置換、付加、もしくは欠失を含有する配列を含む可変軽鎖(VL)CDR1と、
アミノ酸配列AAS(SEQ ID NO:45)、または前記配列に関する1アミノ酸の置換、付加、もしくは欠失を含有する配列を含む可変軽鎖(VL)CDR2と、
アミノ酸配列QDLNSYPL(SEQ ID NO:49)、または前記配列に関する1、2、もしくは3アミノ酸の置換、付加、もしくは欠失を含有する配列を含む可変軽鎖(VL)CDR3とを含む。
【0128】
他の実施形態において、α1aグリアジンペプチドを提示するHLA-DQ2.5:DQ2.5と結合し、かつ上記のCDRの1つ以上(例、1、2、3、4、5、または6つすべて)を含む抗体または抗原結合タンパク質(または抗体の抗原結合ドメイン)も、本発明の範囲から除外される。
【0129】
一般的に、いくつかの実施形態において、上記で定義されたCDR領域を有する抗体分子は、本発明の範囲から除外される。
【0130】
いくつかの実施形態において、結合タンパク質は、前記結合タンパク質がα1aグリアジンペプチドを提示するHLA-DQ2.5:DQ2.5と結合する抗体または抗原結合タンパク質(または抗体の抗原結合ドメイン)ではないという条件付きで、抗体または抗原結合タンパク質(または抗体の抗原結合ドメイン)であるか、あるいはそれを含み、前記抗体または抗原結合タンパク質(または抗体の抗原結合ドメイン)は少なくとも1つの軽鎖可変ドメインと、少なくとも1つの重鎖可変ドメインとを含み、各ドメインは3つの相補性決定領域(CDR)を含み、前記抗体または抗原結合タンパク質(または抗体の抗原結合ドメイン)は、
アミノ酸配列GDSVSSNSAA(SEQ ID NO:40)、または前記配列に関する1、2、もしくは3アミノ酸の置換、付加、もしくは欠失を含有する配列を含む可変重鎖(VH)CDR1と、
アミノ酸配列TYYRSKWYN(SEQ ID NO:41)、または前記配列に関する1、2、もしくは3アミノ酸の置換、付加、もしくは欠失を含有する配列を含むVH CDR2と、
アミノ酸配列ARDRTTGWHPYGMDV(SEQ ID NO:50)、または前記配列に関する1、2、もしくは3アミノ酸の置換、付加、もしくは欠失を含有する配列を含むVH CDR3と、
アミノ酸配列HDISSY(SEQ ID NO:44)、または前記配列に関する1、2、もしくは3アミノ酸の置換、付加、もしくは欠失を含有する配列を含む可変軽鎖(VL)CDR1と、
アミノ酸配列AAS(SEQ ID NO:45)、または前記配列に関する1アミノ酸の置換、付加、もしくは欠失を含有する配列を含むVL CDR2と、
アミノ酸配列QDLNSYPL(SEQ ID NO:49)、または前記配列に関する1、2、もしくは3アミノ酸の置換、付加、もしくは欠失を含有する配列を含むVL CDR3とを含む。
【0131】
他の実施形態において、α1aグリアジンペプチドを提示するHLA-DQ2.5:DQ2.5と結合し、かつ上記のCDRの1つ以上(例、1、2、3、4、5、または6つすべて)を含む抗体または抗原結合タンパク質(または抗体の抗原結合ドメイン)も、本発明の範囲から除外される。
【0132】
一般的に、いくつかの実施形態において、上記で定義されたCDR領域を有する抗体分子は、本発明の範囲から除外される。
【0133】
次のCDR配列の6つすべてを有する抗体:
【0134】
【0135】
は、本明細書において107抗体とも呼ばれる。こうした抗体(またはこれらのCDR配列の6つすべてを有する他の結合タンパク質)、たとえば表1において定義される抗体など、たとえば表1に要約されたVHおよびVLドメインを有するか、または表1に要約されたその他の配列の1つ以上を有する抗体などは、本発明の範囲から除外される。
【0136】
他の実施形態において、表1中の所与のアミノ酸配列に対する少なくとも60%、70%、80%、85%、88%、90%、92%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%の配列同一性を有するVHおよび/またはVLドメインを有する抗体(または他の結合タンパク質)は除外され、あるいは表1の6つのCDRのセット(組み合わされたセット)、すなわち全体としてのCDRのセットに対する少なくとも60%、70%、80%、85%、88%、90%、92%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%の配列同一性を有する6つのCDRドメインのセットを有する抗体(または他の結合タンパク質)は除外される。
【0137】
他の実施形態において、表1中の所与のアミノ酸配列に対する60%、70%、80%、85%、88%、90%、92%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%未満の配列同一性を有するVHおよび/またはVLドメインを有する抗体(または他の結合タンパク質)が提供され、あるいは表1の6つのCDRのセット(組み合わされたセット)、すなわち全体としてのCDRのセットに対する60%、70%、80%、85%、88%、90%、92%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%未満の配列同一性を有する6つのCDRドメインのセットを有する抗体(または他の結合タンパク質)が提供される。
【0138】
次のCDR配列の6つすべてを有する抗体:
【0139】
【0140】
は、本明細書において4.7C抗体とも呼ばれる。こうした抗体(またはこれらのCDR配列の6つすべてを有する他の結合タンパク質)、たとえば表2において定義される抗体など、たとえば表2に要約されたVHおよびVLドメインを有するか、または表2に要約されたその他の配列の1つ以上を有する抗体などは、本発明の範囲から除外される。
【0141】
他の実施形態において、表2中の所与のアミノ酸配列に対する少なくとも60%、70%、80%、85%、88%、90%、92%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%の配列同一性を有するVHおよび/またはVLドメインを有する抗体(または他の結合タンパク質)は除外され、あるいは表2の6つのCDRのセット(組み合わされたセット)、すなわち全体としてのCDRのセットに対する少なくとも60%、70%、80%、85%、88%、90%、92%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%の配列同一性を有する6つのCDRドメインのセットを有する抗体(または他の結合タンパク質)は除外される。
【0142】
他の実施形態において、表2中の所与のアミノ酸配列に対する60%、70%、80%、85%、88%、90%、92%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%未満の配列同一性を有するVHおよび/またはVLドメインを有する抗体(または他の結合タンパク質)が提供され、あるいは表2の6つのCDRのセット(組み合わされたセット)、すなわち全体としてのCDRのセットに対する60%、70%、80%、85%、88%、90%、92%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%未満の配列同一性を有する6つのCDRドメインのセットを有する抗体(または他の結合タンパク質)が提供される。
【0143】
他の実施形態において、国際公開第2019/158602号に記載される抗体(または他の結合タンパク質)は除外される。
【0144】
他の実施形態において、次のVH:
EVQLVESGGGLVKPGGSLRLSCAASGFTFSNAWFNWVRQAPGKGLEWVGRIKTNTDGGTTDYAAPVKGRFTISRDDSKNTLYLQMNSLKTEDTAVYYCTTGEPLVNHITILDYWGQGTLVTVSS(SEQ ID NO:51)、
および/もしくは次のVL:
DIVMTQSPDSLAVSLGERATINCKSSQSVLYSSNNKNYLAWYQQKPGQPPKLLIYWASTRESGVPDRFSGSGSGTDFTLTISSLQAEDVAVYYCQQYYRTPPLTFGGGTKVEIK(SEQ ID NO:52)を有する抗体(または他の結合タンパク質)、
または本明細書において1E03と呼ばれる抗体は、本発明の範囲から除外される。
【0145】
他の実施形態において、所与のアミノ酸配列に対する少なくとも60%、70%、80%、85%、88%、90%、92%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%の配列同一性を有するVHおよび/またはVLドメインを有する抗体(または他の結合タンパク質)は除外される。
【0146】
他の実施形態において、所与のアミノ酸配列に対する60%、70%、80%、85%、88%、90%、92%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%未満の配列同一性を有するVHおよび/またはVLドメインを有する抗体(または他の結合タンパク質)が提供される。
【0147】
本発明の好ましい例示的なペプチドまたはエピトープまたは複合体またはコンジュゲートは、本明細書の他の場所に記載されており、本発明の結合タンパク質に関するこれらの態様を準用する。たとえば、いくつかの実施形態において、本発明の脱アミド(またはE残基含有)ペプチドまたはペプチド複合体(例、pMHC)と結合または特異的に結合する、たとえば抗体もしくは抗体の抗原結合ドメインを含む結合タンパク質、またはTCRなどの結合タンパク質が好ましい。
【0148】
本発明の結合タンパク質をコードする1つ以上の核酸分子も提供される。
【0149】
本発明のさらなる態様は、本発明のたとえば抗体、抗体の抗原結合ドメインを含む結合タンパク質、TCR(またはT細胞)などの結合タンパク質を産生(または作製または単離または同定または生成)する方法を提供し、前記方法は本発明のペプチドまたはエピトープまたはコンジュゲートまたは複合体(例、pMHC複合体)を使用する。代替的に見ると、本発明は、本発明のたとえば抗体、抗体の抗原結合ドメインを含む結合タンパク質、TCR(またはT細胞)などの結合タンパク質の同定(または単離または生成または産生)のために本発明のペプチドまたはエピトープまたはコンジュゲートまたは複合体(例、pMHC複合体)を使用することを提供する。
【0150】
よって本発明のさらなる態様は、本発明の抗体、あるいは本発明のペプチドまたはエピトープまたはコンジュゲートまたは複合体に結合し得る抗体を産生(または作製または単離または同定または生成)する方法を提供し、この方法は、本発明のペプチド(またはエピトープまたは複合体またはコンジュゲート)によってヒト以外の動物(例、ウサギ)を免疫化するステップを含む。好ましい方法は、前記動物から本発明のペプチド(またはエピトープまたは複合体またはコンジュゲート)に対して生成(または産生)された抗体を得るステップ、ならびに任意選択で、抗体産物の精製のステップ、および/または抗体もしくは産物(またはその抗原結合フラグメント)を、たとえば担体もしくは賦形剤など、たとえば薬学的に許容できる担体もしくは賦形剤などの少なくとも1つの追加の構成要素を含む組成物に配合するステップを含む。
【0151】
本発明のさらなる態様は、ハイブリドーマ技術(例、従来のハイブリドーマ技術)において本発明のペプチド、エピトープ、複合体、またはコンジュゲートを使用することによって、本発明の抗体、あるいは本発明のペプチドまたはエピトープまたはコンジュゲートまたは複合体に結合し得る抗体を産生(または作製または単離または同定または生成)する方法を提供する。代替的に見ると、本発明は、ハイブリドーマ技術を用いて、本発明の抗体、あるいは本発明のペプチドまたはエピトープまたはコンジュゲートまたは複合体に結合し得る抗体を同定(または単離または生成または産生)するために本発明のペプチド、エピトープ、複合体、またはコンジュゲートを使用することを提供する。いくつかの実施形態において、ヒト以外の動物(例、マウス)が本発明のペプチド、エピトープ、複合体、またはコンジュゲートによって免疫化され、前記免疫化された動物(例、マウス)から脾臓細胞が単離されて、HGPRT発現を欠いた骨髄腫細胞(例、マウス骨髄腫細胞)(こうした骨髄腫細胞はHAT含有培地で増殖できない)と融合され、ヒポキサンチン、アミノプテリン、およびチミン(HAT:hypoxanthine,aminopterin and thymine)含有培地を用いてハイブリッド(すなわち融合またはハイブリドーマ)細胞が選択される。融合細胞のみがHAT含有培地で増殖する。
【0152】
本発明のさらなる態様は、本発明の抗体、あるいは本発明のペプチドまたはエピトープまたはコンジュゲートまたは複合体に結合し得る抗体を同定(または単離または生成)する方法を提供し、この方法は、本発明のペプチドまたはエピトープまたはコンジュゲートまたは複合体(例、pMHC複合体)を使用して、たとえば(ファージディスプレイ抗体ライブラリーによる)ファージディスプレイ技術などを用いて、抗体ライブラリーをスクリーニングする。
【0153】
代替的に見ると、本発明は、(ファージディスプレイ抗体ライブラリーによる)ファージディスプレイ技術を用いて、本発明の抗体、あるいは本発明のペプチドまたはエピトープまたはコンジュゲートまたは複合体に結合し得る抗体を同定(または単離または生成または産生)するために、本発明のペプチドまたはエピトープまたはコンジュゲートまたは複合体を使用することを提供する。適切なファージディスプレイ技術およびライブラリーは、当該技術分野において周知でありかつ標準的である。たとえばいくつかの実施形態において、本発明のペプチド、エピトープ、複合体、またはコンジュゲート(典型的には、たとえばビーズまたはマイクロビーズまたはプレートまたはマイクロタイタープレートなどの固体支持体に固定されたもの)と、ファージ表面に抗体またはたとえばscFvもしくはFabフラグメントなどの抗体フラグメントのライブラリーを表示(または提示または発現)するファージディスプレイライブラリー(例、バクテリオファージライブラリー、典型的にはたとえばM13またはfdファージライブラリーなどの繊維状バクテリオファージライブラリー)とを接触させる。任意の好適なファージディスプレイ抗体ライブラリーが用いられてもよく、当業者はこれらに精通している(加えて、たとえば商業的に入手可能なファージディスプレイ抗体ライブラリーなどが存在する)。次いで、結合ファージを溶出し、そのファージの核酸(または表示抗体をコードする核酸の少なくとも一部分)を単離および配列決定することによって、表示抗体の同一性が容易に決定されてもよい。いくつかの実施形態において、結合ファージの溶出後に、結合ファージの表示抗体を同定する前に、1つ以上(例、1、2、3、4、または5以上)の接触および溶出の追加ラウンドが行われる。こうした追加ラウンドは、典型的にライブラリーをさらに強化する。
【0154】
本発明の抗体またはT細胞/TCR、あるいは本発明のペプチドまたはエピトープまたはコンジュゲートまたは複合体と結合し得る抗体を同定(または単離または生成)するための代替的なスクリーニング法は、本発明のペプチドまたはエピトープまたはコンジュゲートまたは複合体(例、pMHC複合体)を用いて、抗体またはT細胞/TCRの他の適切な供給源、たとえば対象由来の、特にたとえばCeD対象などのヒト対象由来の適切な抗体またはT細胞含有サンプルなどに対して、本発明のペプチドまたはエピトープまたはコンジュゲートまたは複合体(例、pMHC複合体)と結合または特異的に結合し得る抗体またはT細胞/TCRをスクリーニングすることを含んでもよい。適切な例示的サンプルは、本明細書の他の場所に記載される。代替的に、こうした標的を同定するためにNGSおよびバイオインフォマティクスを用いた配列に基づくスクリーニング法が用いられ得る(たとえばナニーニ(Nannini)ら、2021、MAbs.13(1):1864084などを参照)。
【0155】
こうした方法において用いるために好ましいコンジュゲートまたは複合体は、pMHC複合体またはコンジュゲートである。こうした方法によって生成される本発明の好ましい抗体またはT細胞/TCRは本明細書の他の場所に記載されており、それはたとえば本発明のペプチドまたはエピトープまたはコンジュゲートまたは複合体(例、pMHC複合体)に特異的に結合する抗体またはT細胞/TCRなどである。
【0156】
さらなる態様は、本発明のペプチドまたはエピトープまたはコンジュゲートまたは複合体(例、pMHC複合体)を認識または特異的に認識する、たとえば本発明の結合タンパク質などの、たとえば抗体、または抗体の抗原結合ドメインを含むタンパク質、またはT細胞/TCRなどの結合タンパク質を用いて、前記ペプチドまたはエピトープまたはコンジュゲートまたは複合体(例、pMHC複合体)を検出する方法を提供する。前記方法はたとえば、結合タンパク質とペプチド、エピトープ、コンジュゲート、または複合体との複合体の形成を可能にするために有効な条件下で、前記ペプチド、エピトープ、コンジュゲート、または複合体を含有する可能性のあるサンプルと前記結合タンパク質とを接触させることと、そうして形成された複合体を検出することとを含む。
【0157】
別の態様において、本発明は、本発明のペプチド(またはコンジュゲートまたは複合体)か、あるいはこうしたペプチドまたはコンジュゲートまたは複合体をコードする核酸分子(または複数の分子)か、あるいは本発明のペプチド、コンジュゲート、または複合体を提示または積載する細胞またはその他の媒体(例、本明細書に記載される固体支持体、粒子/ナノ粒子、脂質ベースまたはその他の調合物)を含む組成物を提供する。こうした組成物は、好適な希釈剤、担体、賦形剤、および/または保存剤(例、薬学的に許容できる希釈剤、担体、賦形剤、および/または保存剤)をさらに(例、混合物中に)含んでもよい。よって、いくつかの実施形態において、前記組成物は薬学的に許容できる組成物である。
【0158】
いくつかの実施形態において、本発明のペプチドまたはエピトープは、たとえば単離または「遊離」ペプチドまたはエピトープなどとして、「ネイキッドの」非コンジュゲートまたは非複合型の形態で使用(例、治療または検出または診断のために使用)される。
【0159】
本発明による組成物は、たとえば、経口、鼻腔、非経口、静脈内(intravenal)、局所、または直腸内投与のために好適な形態などで提供されてもよい。好ましい実施形態において、本発明による組成物は、静脈内(intravenal)投与のために好適な形態で提供される。いくつかの実施形態において、本発明による組成物は、腹腔内(i.p.:intraperitoneal)投与のために好適な形態で提供される。いくつかの実施形態において、本発明による組成物は、注射のために好適な形態で提供される。
【0160】
本明細書において定義される活性化合物は、たとえば錠剤、コーティングされた錠剤、点鼻薬、溶液、エマルション、ナノ調合物(ナノ粒子)、リポソーム、粉末、カプセル、または徐放性形態などの、従来の薬理学的投与形態で提供されてもよい。これらの形態の調製のために、従来の医薬賦形剤および通常の生産方法が使用されてもよい。
【0161】
注射溶液は、従来の方式で、たとえばp-ヒドロキシ安息香酸などの保存剤か、またはたとえばEDTAなどの安定剤を加えることなどによって生産されてもよい。次いで、その溶液が注射バイアルまたはアンプルに充填されてもよい。
【0162】
点鼻薬は、同様に水溶液として調合されて、エアロゾル噴霧剤と共に、または手動圧縮のための手段を備えられて、噴霧容器に詰められてもよい。
【0163】
本発明の医薬組成物(調合物)は、好ましくは任意の好適な手段によって非経口投与される。静脈内投与が好ましい。いくつかの実施形態において、投与は腹腔内(i.p.)投与である。非経口投与は、シリンジによる皮下、筋肉内、または静脈内注射によって行われてもよい。代替的に、非経口投与は、注入ポンプによって行われ得る。さらなる選択肢は、点鼻薬または肺(pulmonal)スプレーの形態の、ペプチドまたはペプチド含有複合体もしくはコンジュゲートの投与のための粉末または液体であり得る組成物である。加えてさらなる選択肢として、本発明のペプチドまたはペプチド含有複合体もしくはコンジュゲートは、たとえばパッチ、任意選択でイオン導入パッチなどによって経皮投与されることも、またはたとえば頬側などから経粘膜投与されることもあり得る。
【0164】
好適な投与単位は、当業者によって決定され得る。
たとえば医薬組成物などのこの組成物は、同時投与レジメンまたは組み合わせ(併用療法)レジメンの状況におけるさらなる活性成分(例、本明細書の他の場所に記載されるもの)を付加的に含んでもよい。たとえば、本発明の治療方法および使用は、CeDの処置または予防のために有用な任意のその他の適切な治療管理体制または治療剤と組み合わせて用いられてもよい。
【0165】
本発明のペプチド、エピトープ、複合体、またはコンジュゲートか、あるいはこうした実体をコードする核酸分子か、あるいは本発明の本明細書の他の場所に記載される細胞または他の媒体か、あるいはこうしたペプチド、エピトープ、複合体、コンジュゲート、核酸分子、または本明細書の他の場所に記載される細胞もしくは他の媒体を含む組成物または調合物の1つ以上を含むワクチンは、本発明のさらなる態様を形成する。こうしたワクチンまたはワクチン組成物、調合物、もしくは媒体は、任意選択で薬学的に許容できる担体および/またはアジュバントをさらに含む。
【0166】
本発明のエピトープまたはペプチドまたは複合体またはコンジュゲート、特に本発明のさまざまな脱アミド(またはE残基含有)エピトープまたはペプチドまたは複合体またはコンジュゲートはセリアック病と関連付けられ得るため、こうしたエピトープまたはペプチドまたは複合体またはコンジュゲート(あるいはより具体的には、こうしたエピトープまたはペプチドまたは複合体またはコンジュゲートの検出)はCeDの診断に使用され得る。
【0167】
本発明はさらに、対象におけるCeDを診断するための方法を提供し、前記方法は、対象由来のサンプルと、本発明のペプチドまたはエピトープまたは複合体またはコンジュゲートとを接触させることと、前記ペプチドまたはエピトープまたは複合体またはコンジュゲートが前記サンプル中のT細胞と結合する(またはそれに認識される)かどうか、あるいは前記サンプルが前記ペプチドまたはエピトープまたは複合体またはコンジュゲートと結合(またはそれを認識)する抗体を含有するかどうかを決定することとを含み、前記ペプチドまたはエピトープまたは複合体またはコンジュゲートとT細胞との結合(またはT細胞の活性化)、あるいは(たとえば、前記抗体と前記ペプチドまたはエピトープまたは複合体またはコンジュゲートとの結合などによって決定される)サンプル中の前記抗体の存在は、その対象がCeDであるか、またはCeDになりやすいことを示す。
【0168】
よって、こうした方法または診断方法を用いて、対象におけるCeDの進行を決定またはモニタすることもでき、ここで前記ペプチドまたはエピトープまたは複合体またはコンジュゲートとT細胞との結合、またはサンプル中の前記抗体の存在は、CeDが存在する(またはなおも存在する)ことを示す。典型的に、こうした方法は異なる時点におけるサンプルの解析を含み、前記ペプチドまたはエピトープまたは複合体またはコンジュゲートとT細胞との結合(またはT細胞の活性化)、あるいは(たとえば、前記抗体と前記ペプチドまたはエピトープまたは複合体またはコンジュゲートとの結合などによって決定される)サンプル中の前記抗体の存在が、前回の時点における同じ対象に対する前回の結果と比較して低減していること、好ましくは測定可能な程度または有意に低減していることを示す結果は、CeDが改善していることを示す。
【0169】
同様に、こうした方法を用いて、たとえば本発明のCeD治療法または任意のその他の形態のCeD治療法などのCeD治療法の有効性を決定またはモニタし得る。
【0170】
よって、こうした方法または診断方法を用いて、対象におけるCeD治療法の有効性を決定またはモニタすることもでき、ここで前記ペプチドまたはエピトープまたは複合体またはコンジュゲートとT細胞との結合(またはT細胞の活性化)、あるいは(たとえば、前記抗体と前記ペプチドまたはエピトープまたは複合体またはコンジュゲートとの結合などによって決定される)サンプル中の前記抗体の存在は、CeDが存在する(またはなおも存在する)ことを示す。典型的に、こうした方法は、たとえば処置の前後および/または処置後のいくつかの時点などの異なる時点におけるサンプルの解析を含み、前記ペプチドまたはエピトープまたは複合体またはコンジュゲートとT細胞との結合(またはT細胞の活性化)、あるいは(たとえば、前記抗体と前記ペプチドまたはエピトープまたは複合体またはコンジュゲートとの結合などによって決定される)サンプル中の前記抗体の存在が、前回の時点における同じ対象に対する前回の結果と比較して低減していること、好ましくは測定可能な程度または有意に低減していることを示す結果は、CeDが改善しているか、または効果的に処置されていることを示す。
【0171】
こうした方法または診断方法は、インビトロで好都合に実行され得るが、任意の適切な方法またはアッセイが用いられ得る。適切なインビトロアッセイは、たとえば本発明のペプチドまたはエピトープ、あるいはその適切な複合体またはコンジュゲート、たとえばpMHC分子などを固体支持体に固定し、たとえばELISAアッセイなどの適切な技術によってT細胞または抗体の結合を検出することなどによって実行され得る。同様に、こうした固体支持体を用いてT細胞の活性化を検出することもできる(たとえば、フリック(Frick)ら、2020、ヨーロピアン・ジャーナル・オブ・イムノロジー(European J.Imm.)50(1):142-145などを参照)。T細胞の活性化を測定することは、T細胞と本発明のペプチドまたはエピトープまたは複合体またはコンジュゲートとの結合を測定するための別の好都合なやり方である。こうした活性化を測定するための適切な方法は当業者に周知であり、これらの方法のいずれかが用いられてもよい。
【0172】
一実施形態において、本発明は対象におけるCeDを診断する方法を提供し、この方法は次のステップを含む。
(a)前記対象から得られた検査サンプルと、本発明のペプチドまたはエピトープまたは複合体またはコンジュゲートの1つ以上とを接触させるステップ。
【0173】
さらなる実施形態において、本発明は対象におけるCeDを診断する方法を提供し、この方法は次のステップを含む。
(a)前記対象から得られた検査サンプルと、本発明のペプチドまたはエピトープまたは複合体またはコンジュゲートの1つ以上とを接触させるステップ、
(b)前記ペプチドまたはエピトープまたは複合体またはコンジュゲートと結合(またはそれを認識)する検査サンプル中のT細胞または抗体の存在および/または量を測定するステップ、ならびに任意選択で、
(c)検査サンプル中のT細胞または抗体の存在および/または量を対照と比較するステップ。
【0174】
上記の方法において、前記接触させるステップは、T細胞-ペプチド/エピトープ/複合体/コンジュゲートまたは抗体-ペプチド/エピトープ/複合体/コンジュゲートの複合体の形成(例、検出可能な形成)を可能にする条件下で実行される。適切な条件は、当業者によって容易に決定され得る。
【0175】
上記の方法において、たとえば血液または血清サンプル、生検細胞、CeDの罹患が疑われる組織もしくは器官(例、小腸)または組織切片由来の材料などの、任意の適切な検査サンプルまたは生物学的サンプルが用いられてもよい。
【0176】
上記の方法の特定のものにおいて、検査サンプル中に任意の量のT細胞-ペプチド/エピトープ/複合体/コンジュゲートまたは抗体-ペプチド/エピトープ/複合体/コンジュゲートの複合体が存在することは、CeDの存在を示すことになるだろう。好ましくは、陽性の診断を行うための検査サンプル中のT細胞-ペプチド/エピトープ/複合体/コンジュゲートまたは抗体-ペプチド/エピトープ/複合体/コンジュゲートの複合体の量は、適切な対照サンプルにおいて見出される量(対照値またはレベル)よりも大きく、好ましくは測定可能な程度または有意に大きい。より好ましくは、有意に大きいレベルは統計的に有意であり、好ましくは確率値<0.05を有する。統計的有意性を決定する適切な方法は、当該技術分野において周知であり、かつ実証されており、これらの方法のいずれかが用いられてもよい。
【0177】
適切な対照サンプルは、当業者によって容易に選択され得る。たとえば、CeDの診断の場合における適切な対照は、たとえば健常な対象などのCeDでない対象由来のサンプルであろう。加えて、適切な対照「値」または「レベル」は、すべての検査において対照「サンプル」を実行することなく、たとえば当該技術分野において公知の正常または健常な対象に対する範囲を参照することなどによって容易に決定され得る。よって、対照値またはレベルは、適切な対照対象またはサンプルにおけるレベルに対応してもよく、たとえば対照または参照集団において見出されるカットオフレベルまたは範囲などに対応してもよい。代替的に、前記対照値またはレベルは、より早期の時点で測定された同じ個々の対象または前記対象由来のサンプルにおけるレベルに対応してもよい(例、その対象の「ベースライン」レベルとの比較)。このタイプの対照レベル(すなわち、個々の対象由来の対照レベル)は、たとえば対象のモニタリングを伴う実施形態などにおいて、レベルの変化を見出すために健常または病気の個体における連続的または定期的な測定が行われるような本発明の実施形態に対して、特に有用である。これに関して、適切な対照値またはレベルは、一般的な対照(例、健常)集団において見出される対照またはカットオフレベルではなく、その個体自身のベースライン、安定、ゼロ、または前回のレベル(必要に応じて)であり得る。対照レベルは「正常」レベルまたは「参照」レベルと呼ばれることもある。対照レベルは個別の数であっても、範囲であってもよい。
【0178】
比較のための対照値またはレベルは、適切な対照対象のセットを検査することによって導出され得るが、本発明の方法は、本発明の方法の一部として対照対象に能動的な検査を行うことを必ずしも伴わず、一般的には過去に対照対象から決定された、本発明の方法を行う人物にとって既知の対照レベルとの比較を伴うだろう。
【0179】
一実施形態において、セリアック病を診断する方法はインビトロの方法である。
一実施形態において、セリアック病を診断する方法はインビボの方法である。
代替的に見ると、本発明は、対象におけるセリアック病をスクリーニングするための方法を提供する。
【0180】
いくつかの実施形態において、本発明のエピトープまたはペプチドまたは複合体またはコンジュゲートは、コンパニオン診断薬として用いられ得る。
【0181】
本発明はさらに、対象由来のサンプルにおける、本発明のペプチドまたはエピトープまたは複合体またはコンジュゲートと結合するT細胞または抗体の存在または量(レベル)を検出または決定または測定する方法を提供する。たとえば、前記方法は、対象由来のサンプルと、本発明のペプチドまたはエピトープまたは複合体またはコンジュゲートとを接触させることと、前記ペプチドまたはエピトープまたは複合体またはコンジュゲートが前記サンプル中のT細胞と結合する(またはそれに認識される)かどうか、あるいは前記サンプルが前記ペプチドまたはエピトープまたは複合体またはコンジュゲートと結合(またはそれを認識)する抗体を含有するかどうかを決定することとを含む。
【0182】
代替的に見ると、本発明は、対象由来のサンプルにおける、本発明のペプチドまたはエピトープまたは複合体またはコンジュゲートと結合するT細胞または抗体の存在または不在またはレベルまたは量を分析する方法を提供する。たとえば、前記方法は、対象由来のサンプルと、本発明のペプチドまたはエピトープまたは複合体またはコンジュゲートとを接触させることと、前記ペプチドまたはエピトープまたは複合体またはコンジュゲートが前記サンプル中のT細胞と結合する(またはそれに認識される)かどうか、あるいは前記サンプルが前記ペプチドまたはエピトープまたは複合体またはコンジュゲートと結合(またはそれを認識)する抗体を含有するかどうかを決定することとを含む。
【0183】
本発明はさらに、サンプルにおける本発明のペプチドまたはエピトープまたは複合体またはコンジュゲートの存在、不在、量(またはレベル)を検出または決定または測定するための方法を提供する。たとえばこうした方法は、たとえば対象由来のサンプルなど、たとえば生物学的サンプルなどのサンプルが本発明のペプチドまたはエピトープまたは複合体またはコンジュゲートを含有するかどうか、あるいは前記ペプチドまたはエピトープの量(またはレベル)を検出することなどを含んでもよい。
【0184】
本明細書におけるCeDの診断方法に関する特徴および考察は、上記の本発明の検出方法などに準用され得る。
【0185】
診断、モニタリング、決定、分析、スクリーニング、または検出に関する上記の実施形態において、本発明のエピトープまたはペプチドまたは複合体またはコンジュゲートは、T細胞または抗体に結合するために好適な任意の適切な形式、たとえば測定可能または検出可能な結合を可能にするために好適な形式などで提供され得る。よって、前記ペプチドまたはエピトープはネイキッド、遊離、または単離ペプチドとして提供され得る。しかし、エピトープまたはペプチドを、たとえばpMHC複合体またはコンジュゲートなどとして提供される1つ以上のMHC分子との複合体またはコンジュゲート(例、単離または合成または組み換えによって生成された複合体またはコンジュゲート)として提供することも、たとえばpMHCのたとえば四量体などの多量体などの複数のpMHC複合体が存在するより大きな複合体として提供することも有用であり得る。適切なpMHC含有複合体は、本明細書の他の場所に記載される。本明細書の他の場所に記載されるとおり、ペプチドまたは複合体は、固体支持体または他の担体に好都合に付着されてもよく、あるいはたとえばpMHCなどとして細胞の表面に発現されるか、または細胞の表面に積載されてもよく、たとえばすでに適切なMHC分子を発現している細胞に本発明のペプチドまたはエピトープが積載されてもよい。
【0186】
上記の実施形態において、ペプチドまたはエピトープまたは複合体またはコンジュゲートとT細胞との結合は、ペプチドまたはエピトープまたは複合体またはコンジュゲートと、たとえばT細胞の表面上にあるか、または可溶性もしくは組み換え体の形式などのTCRとの結合も含む。結合を検出するやり方として、(例、たとえば実施例などに記載されるとおりにたとえばフローサイトメトリーなどを用いてたとえばIL-2レベル、細胞内IFN-ガンマなどの適切なマーカーをモニタリングすること、またはたとえばフローサイトメトリーなどを用いて他の適切なサイトカインレベルをモニタリングすること、またはたとえば実施例などに記載されるとおりにたとえばフローサイトメトリーなどを用いてCD69の存在/アップレギュレーション、たとえばCD19陰性集団におけるCD69アップレギュレーションなどを評価することなどによって)T細胞の活性化が測定され得る。
【0187】
診断または検出に関する上記の実施形態において、本発明のエピトープまたはペプチドまたは複合体またはコンジュゲートは典型的にCeDに関連するエピトープであるため、これらは典型的に脱アミドバージョン(またはE残基含有バージョン)である。
【0188】
診断または検出に関する上記の実施形態(または本明細書に記載される任意のその他の適切な実施形態)において、本発明のエピトープまたはペプチドまたは複合体またはコンジュゲートは、たとえば検出可能な標識などによって標識されるか、または別様に修飾されてもよく、言い換えると標識または修飾されたエピトープまたはペプチドまたは複合体またはコンジュゲートであり得る。本明細書に記載される本発明の結合タンパク質も、たとえば検出可能な標識などによって標識されてもよく、言い換えると標識された結合タンパク質であり得る。
【0189】
本発明はさらに、たとえば食品または他の摂取可能な材料などの組成物がCeDを引き起こし得るかどうかを決定するための方法を提供し、前記方法は、前記組成物における本発明のペプチドまたはエピトープの存在を検出するステップを含む。本発明のペプチドまたはエピトープが、特に測定可能または有意なレベルで存在することは、その組成物がCeDを引き起こし得ることを示す。
【0190】
本発明のさらなる態様は、治療に用いるための、本明細書において定義される本発明のペプチドまたはエピトープまたは複合体またはコンジュゲート(あるいは前記ペプチドまたはエピトープまたは複合体またはコンジュゲートをコードする核酸分子)を提供する。たとえば、エピトープ特異的免疫療法は、CD4+T細胞を標的にして改変するために、抗原全体の代わりにペプチドを用いる抗原特異的免疫療法の形態である。
【0191】
本明細書において用いられる「治療(法)(therapy)」は、任意の医学的状態の処置を意味する。本発明による疾患または状態の処置(たとえば、前から存在する疾患の処置など)は、前記疾患または状態の治癒、あるいは疾患または疾患の症状の任意の低減または軽減(例、疾患の重症度の低減)を含む。本発明(prevent invention)の治療方法および使用は、疾患の予防および疾患の積極的処置(たとえば、前から存在する疾患の処置など)のために好適である。よって、こうした処置は予防的(すなわち予防するもの)、治療的(または治療的であることを意図した処置)、または緩和的(すなわち、ある状態の症状を単に制限、軽減、または改善するために設計された処置)であってもよい。
【0192】
好ましくは、本明細書において定義される本発明のペプチドまたはエピトープまたは複合体またはコンジュゲートは、CeDの処置または予防に用いるためのものである。
よって1つの態様において、本発明は、CeDの処置または予防に用いるための、本明細書において定義される本発明のペプチドまたはエピトープ(例、本発明の遊離または単離ペプチドまたはエピトープ)を提供する。
【0193】
別の態様において、本発明は、治療に用いるため、特にCeDの処置または予防に用いるための本発明のコンジュゲートまたは複合体、特に本発明のエピトープまたはペプチドとMHC分子とのコンジュゲートまたは複合体(pMHC)を提供する。
【0194】
本明細書に記載される実施形態において、前記ペプチドまたはエピトープまたはコンジュゲートまたは複合体をコードする核酸分子が治療のために同様に用いられてもよい。
【0195】
本明細書に記載される、たとえば治療的な使用などのインビボの方法および使用は、一般的にヒトにおいて行われる。
【0196】
よって、本明細書において用いられる「動物」または「患者」または「対象」という用語は、典型的にはヒトを意味する。
【0197】
本発明の治療方法および使用は、任意の適切な形態を取ってもよく、そのいくつかが以下に考察される。加えて、本発明のペプチドまたはエピトープまたはコンジュゲートまたは複合体(あるいは前記ペプチドまたはエピトープまたは複合体またはコンジュゲートをコードする核酸分子)の任意の適切な調合物(医薬調合物)が用いられてもよく、その例が本明細書の他の場所に記載される。
【0198】
本発明の治療方法および使用は、ワクチン接種または寛容化治療の形態を取り得る。
たとえば、本発明のペプチドは、遊離もしくは単離ペプチドとして、またはMHC分子と関連付けられる(pMHC)ときに、対象をグルテンまたはグリアジンタンパク質に対して寛容化するために用いられてもよく、それはたとえば免疫応答を抑制または低減することなど、たとえば前記ペプチドに対するT細胞応答(例、CD4および/またはCD8 T細胞応答)または抗体(B細胞)応答の生成を低減させることなどであり得る。よって、さらなる態様は、対象のグルテンまたはグリアジンペプチドに対する寛容化に用いるため、または免疫応答の抑制もしくは低減に用いるための本発明のペプチド、エピトープ、コンジュゲート、または複合体(あるいは前記ペプチドまたはエピトープまたは複合体またはコンジュゲートをコードする核酸分子)を提供する。
【0199】
次いで、こうした寛容化または抑制の方法を用いて、CeDを処置または予防し得る。
寛容化は、たとえば本発明のエピトープまたはペプチドを認識するT細胞および/またはB細胞などの免疫系による、そのエピトープまたはペプチドの認識の減少をもたらす。よって、こうした寛容化の後は、エピトープに応答するT細胞活性が減少するか、またはT細胞が非応答性(アネルギー)になる。代替的または付加的に、こうした寛容化の後は、エピトープが存在するときにそのエピトープに対して産生される抗体の量が減少する。こうした寛容化は、Treg細胞(例、抗原/エピトープ特異的またはグルテン特異的Treg細胞)の産生または誘導も伴うことによって、免疫応答をさらに抑制し得る。
【0200】
こうした使用において、本発明のペプチドおよびエピトープは寛容化の状況において免疫系に提示され、たとえばこうしたエピトープは抗原(エピトープ)特異的Treg(グルテン特異的Treg)の生成および増殖を促進して、免疫寛容を誘導し得る。こうした状況において免疫系に抗原(例、本発明のペプチドまたはエピトープ)を提示する方法は、当該技術分野において公知であり報告されている。これに関して、本発明のペプチドまたはエピトープは、遊離または単離ペプチドの形態(例、ペプチド自体としての形態、たとえばゴエル(Goel)ら、ランセット・ガストロエンテロロジー・アンド・ヘパトロジー(Lancet Gastroenterol.Hepatol.)、2017、2(7):479-493などを参照)であってもよいし、たとえばpMHC分子などの形態(たとえばクレメンテ-カサレスら、2002、上記などを参照)であってもよい。
【0201】
本発明のペプチドおよびエピトープは、グルテンタンパク質由来であり(またはそれと非常に類似しており)、CeDと関連付けられ(または関連付けられるペプチドと非常に類似しており)、HLA-DQ2.5および/またはHLA-DQ2.2と結合でき、かつそれら(あるいは実質的に相同のペプチドまたはエピトープ)はグルテン特異的またはグルテン反応性CD4+T細胞に認識され得るため、本発明のこうしたペプチドまたはエピトープまたは複合体またはコンジュゲートを用いてこうしたT細胞と連結して、さらなる抗原の刺激に対するそれらの応答性を低くするか、または非応答性にし得る。
【0202】
こうした方法において、たとえば、ペプチドまたはエピトープまたは複合体またはコンジュゲートを、たとえば予め定められた最大許容用量、または徐々に増加する用量などのさまざまな用量で無グルテン食のCeD患者に投与した後に、彼らをグルテンに挑戦(チャレンジ)させ得る。最初の投与は、経口グルテンチャレンジと同様の症状をもたらすことがある。しかし、より遅い投与またはその後の投与において、最終的にこうした症状は存在しなくなるはずであり、たとえばプラセボ様の症状のみが観察されるか、または症状が観察されなくなるだろう。
【0203】
こうした方法において、グルテン特異的CD4+T細胞はアネルギーに追い込まれ、これはそれらのグルテン特異的CD4+T細胞が抗原に応答することをやめるか、または抗原に対して非応答性となり、たとえばインターフェロン-γなどの炎症性サイトカインを産生しないか、または産生のレベルが有意に低減することなどを意味する。
【0204】
こうした方法に対して、本発明のペプチドまたはエピトープまたは複合体またはコンジュゲートを単独で用いることもできるし、たとえば本発明の他のペプチドまたはエピトープ(例、こうしたペプチドの混合物、たとえば2、3、4、または5つのこうしたペプチドの混合物など)などの他のT細胞エピトープまたはペプチドか、あるいは当該技術分野において公知であり報告されている異なるT細胞エピトープまたはペプチド、特にCeDに関連付けられるかまたは特異的な他のT細胞エピトープまたはペプチド(例、非特許文献7に記載されるもの)と組み合わせて用いることもできる。こうしたT細胞エピトープまたはペプチドは、CeD特異的T細胞と連結(または結合、またはそれを活性化)する能力(または機能)を有する。
【0205】
本発明のペプチドまたはエピトープまたは複合体またはコンジュゲートを含むこうした組成物は、寛容化ワクチンまたはワクチン組成物とみなすことができ、CeDを処置または予防するために使用され得る。よって、本発明のペプチドまたはエピトープまたは複合体またはコンジュゲートを含むたとえばワクチン組成物などの組成物は、本発明のさらなる態様を形成する。
【0206】
他の寛容化治療は、ナノ粒子または他のタイプのナノ調合物の使用を伴い得る(たとえば、クレメンテ-カサレスら、2016、ネイチャー(Nature)530、434-4402;フライターグ(Freitag)ら、2020、ガストロエンテロロジー(Gastroenterology)158(6):1667-1681などを参照)。たとえば、ナノ粒子を、本発明のペプチドまたはエピトープの、たとえば単離、遊離、または非複合型のペプチドなどとして単独のものか、またはMHC分子、特にMHCクラスII分子と関連付けたものによってコーティングまたは関連付けし得る。言い換えると、ナノ粒子は、本発明のペプチドまたはエピトープか、あるいはpMHC分子によってコーティングまたは関連付けされ、このpMHC分子におけるペプチド(p)は本発明のペプチドまたはエピトープであり、MHC分子は前記ペプチドまたはエピトープと結合し得るものである。したがって典型的に、本発明におけるこうしたMHC分子はHLA-DQ2分子、特にHLA-DQ2.5またはHLA-DQ2.2である。pMHC分子のこうした記載は、本明細書の他の場所に記載される本発明の他の態様および実施形態に対して適切である。
【0207】
こうしたナノ粒子の投与によって、抗原特異的Treg(たとえばTR1様細胞など)の生成および増殖を促進でき、次いで抗原特異的Tregはたとえば、自己抗原積載APC、特に本発明のエピトープまたはペプチドを積載または提示するMHCクラスII分子を含むAPCを抑制するように作用し得る。よって、前記ナノ粒子は免疫応答を抑制するように作用し得る。
【0208】
よって、上述のとおりの、単独であるかまたはMHC分子、特にMHCクラスII分子と関連付けられた本発明のペプチドまたはエピトープによってコーティングまたは関連付けされたこうしたナノ粒子、あるいは本発明のペプチドもしくはエピトープか、またはpMHCによってコーティングされたナノ粒子であって、このpMHCにおけるペプチド(p)が本発明のペプチドまたはエピトープであり、MHC分子が前記ペプチドまたはエピトープと結合し得るものである、ナノ粒子は、本発明のさらに好ましい態様を形成する。
【0209】
他のタイプの調合物、たとえば医薬調合物または医薬担体など、たとえばナノ調合物などを、ナノ粒子の代わりに同様に用いることができ、たとえばリポソームまたはミセルなどの脂質ベースの調合物などが用いられ得る。こうした調合物の内部またはコアに、本発明のペプチドまたはエピトープ、たとえば遊離または単離ペプチドまたはエピトープなど、あるいは上記および本明細書の他の場所に記載されるpMHC複合体が積載され得る。同様に、本発明の前記ペプチドまたはエピトープあるいはpMHC複合体を、脂質構造の外表面と関連付けまたはコンジュゲートし得る。寛容を促進するための他の実体も脂質調合物(または実際には本発明の他の調合物)に含まれてもよい。当業者に公知であるとおり、ミセルは水性の液体中の界面活性剤(例、脂肪酸)の凝集体であり、界面活性剤の親水性の頭部が凝集体の表面を形成し、疎水性の尾部がコアを形成する。リポソームは、水性のコアを包囲する脂質二重層によって形成される球形の小胞である。
【0210】
リポソームおよびミセルは、当該技術分野において公知の任意の方法を用いて合成されてもよい。リポソーム合成および薬物積載のための好適な方法は、たとえばアクバルザデ(Akbarzadeh)ら、ナノスケール・リサーチ・レターズ(Nanoscale Res Lett)8(1):102、2013などに記載されている。たとえばレウレン(Reulen)ら、バイオコンジュゲート・ケミストリー(Bioconjug Chem)18(2):590-596、2007;またはクン(Kung)およびレデマン(Redemann)、バイオキミカ・エ・バイオフィジカ・アクタ(Biochim Biophys Acta)862(2):435-439、1986に教示される方法などの当該技術分野において公知の方法を用いて、リポソームおよびミセルが適切なタンパク質とコンジュゲートされてもよい。
【0211】
一般的に、本発明のペプチドがpMHC形式で用いられるとき、複数のpMHC単位(多量体)を含む形式が作製されてもよく、それが好ましいときがある。たとえば、二量体または四量体pMHC形式が当該技術分野において公知であり、たとえば検出、診断、および治療の適用などにおいて好都合に用いられ得る。
【0212】
よって、本発明のさらなる態様は、治療、好ましくはCeDの処置または予防に用いるための薬物または組成物の製造における、本発明のペプチドまたはエピトープまたは複合体またはコンジュゲート(あるいは前記ペプチドまたはエピトープまたは複合体またはコンジュゲートをコードする核酸分子)の使用を提供する。
【0213】
本発明のさらなる態様は、たとえば本発明のペプチドまたはエピトープまたは複合体またはコンジュゲートに対する対象の寛容化における使用、あるいは前記ペプチドまたはエピトープまたは複合体またはコンジュゲートに対する免疫応答の抑制または低減のための使用などのための、ワクチン接種または寛容化治療のための薬物または組成物の製造における、前記ペプチドまたはエピトープまたは複合体またはコンジュゲート(あるいは前記ペプチドまたはエピトープまたは複合体またはコンジュゲートをコードする核酸分子)の使用を提供する。
【0214】
本発明のさらなる態様は、対象におけるCeDを処置または予防する方法を提供し、前記方法は、本発明のペプチドまたはエピトープまたは複合体またはコンジュゲート(あるいは前記ペプチドまたはエピトープまたは複合体またはコンジュゲートをコードする核酸分子)の有効量を前記対象に投与するステップを含む。
【0215】
本発明のさらなる態様は、対象におけるワクチン接種または寛容化治療の方法を提供し、前記方法は、本発明のペプチドまたはエピトープまたは複合体またはコンジュゲート(あるいは前記ペプチドまたはエピトープまたは複合体またはコンジュゲートをコードする核酸分子)の有効量を前記対象に投与するステップを含む。
【0216】
本発明のさらなる態様は、本発明のペプチドまたはエピトープまたは複合体またはコンジュゲートに対する対象の寛容化の方法を提供し、前記方法は、前記対象に本発明のペプチドまたはエピトープまたは複合体またはコンジュゲート(あるいは前記ペプチドまたはエピトープまたは複合体またはコンジュゲートをコードする核酸分子)の有効量を前記対象に投与するステップを含む。
【0217】
本発明のさらなる態様は、本発明のペプチドまたはエピトープまたは複合体またはコンジュゲートに対する対象の免疫応答を抑制または低減する方法を提供し、前記方法は、前記対象に本発明のペプチドまたはエピトープまたは複合体またはコンジュゲート(あるいは前記ペプチドまたはエピトープまたは複合体またはコンジュゲートをコードする核酸分子)の有効量を前記対象に投与するステップを含む。
【0218】
前記方法または使用は、好ましくはそれを必要とする対象に、医薬的または生理的または治療的な有効量の本発明の前記ペプチドまたはエピトープまたは複合体またはコンジュゲート(あるいは前記ペプチドまたはエピトープまたは複合体またはコンジュゲートをコードする核酸分子)を投与することを伴う。
【0219】
「医薬的または生理的または治療的な有効量」は、対象の状態に対する利益を示すか、または対象における関連する生理的効果、たとえば免疫応答の寛容化もしくは低減などを示すために十分な量を意味する。ある量が、対象の状態に対する利益または対象における関連する生理的効果を示すために十分であるかどうかは、対象自身または医師が決定してもよい。
【0220】
本明細書の他の場所に記載される本発明の代替的な好ましい実施形態および特徴は、本発明の処置および使用のこれらの方法に同様に適用される。
いくつかの実施形態(例、検出の方法、診断または治療方法)において、対象(例、ヒト対象)は、CeDが進行するリスクがあるか、またはCeDが出現するリスクがある対象、たとえば健常な対象もしくはセリアック病の任意の症状を表していない対象など、または任意のその他の適切な「リスクがある」対象、たとえばCeD患者の第一度近親者、またはたとえばI型糖尿病、選択的IgA欠乏症、自己免疫性甲状腺炎、シェーグレン症候群、ダウン症候群、アジソン病、ターナー症候群、もしくはウィリアムズ症候群などの関連する高リスク障害のある対象などである。他の実施形態において、対象(例、ヒト対象)は、CeDである対象、またはCeDである(またはそれが進行している)疑いがある対象、またはCeDである(またはそれが進行している)可能性がある対象である。
【0221】
いくつかの実施形態において、(例、検出、診断、または治療に対する)適切な対象は、HLA-DQ2.5またはHLA-DQ2.2陽性の対象である。
いくつかの態様において、本発明の方法(例、検出、診断、または治療方法)は、たとえばCeDが進行するリスクがある対象、またはセリアック病が出現するリスクがある対象、またはセリアック病である対象、またはセリアック病である(またはそれが進行している)疑いがある対象、またはCeDである(またはそれが進行している)可能性がある対象などの対象(例、ヒト対象)を選択する最初のステップをさらに含んでもよい。たとえば、対象(または対象由来のたとえば組織生検もしくは血液/血清サンプルなどのサンプル)が1つ以上のCeDマーカーまたはリスク因子に対して陽性であることなどに基づいて、対象が選択されてもよい。
【0222】
いくつかの態様において、たとえば本発明のペプチドまたはエピトープの使用(または異なるT細胞エピトープもしくはペプチド、特にCeDに関連するかもしくは特異的な代替的T細胞エピトープもしくはペプチドの使用)など、たとえば本明細書に記載される治療方法または任意のその他の適切な治療方法などの使用による治療法によってCeDを処置するステップをさらに含む、本発明の診断(または類似の)方法が提供される。たとえば、本発明の診断(または類似の)方法の結果が対象におけるCeDを示す(例、CeD陽性の診断が行われる)とき、次いで治療法によってCeDを処置する追加のステップが行われ得る。適切な治療方法は当該技術分野において報告されており、それは無グルテン食(GFD:gluten-free diet)か、またはたとえばリツキシマブなどの抗CD20抗体などによる抗体治療法を含む。
【0223】
他の態様において、本発明の診断(または類似の)方法は、CeDに対する適切な他の追加の診断方法と共に用いられ得る。たとえば当該技術分野において報告されている、たとえばTG2抗体の測定もしくは評価、またはCeDに関連する他のグルテンペプチドに対する抗体の測定もしくは評価、または小腸組織学的技術もしくは生検の使用を含むCeDの血清学的検査など、任意のこうした追加の方法が用いられてもよい。
【0224】
他の態様において、本発明の治療方法は、CeDに対する適切な他の追加の治療方法と共に用いられ得る。たとえば当該技術分野において報告されている、たとえば無グルテン食(GFD))、またはたとえばリツキシマブなどの抗CD20抗体などによる抗体治療法、または(本明細書の他の場所に記載される)異なるT細胞エピトープもしくはペプチド、特にCeDに関連するかもしくは特異的な代替的T細胞エピトープもしくはペプチドの使用による治療法など、任意のこうした追加の方法が用いられてもよい。いくつかの実施形態において、本発明の治療方法は、偶発的なグルテン曝露後のレスキュー治療法として用いられ得る。
【0225】
本発明はさらに、本発明のペプチド、エピトープ、複合体、コンジュゲート(例、pMHCコンジュゲート)、ワクチン、結合タンパク質、もしくは組成物の1つ以上か、またはこうした実体をコードする核酸分子の1つ以上を含むキットを含む。
【0226】
好ましくは前記キットは、たとえば本明細書に記載される治療または検出または診断方法などの本明細書に記載される方法および使用における使用のためか、あるいは本明細書に記載されるインビトロアッセイまたは方法における使用のためのものである。好ましくは前記キットは、本発明に従ってキットの構成要素を使用するための適切な指示を含む。好ましくは前記キットは、本明細書の他の場所に記載される疾患の処置もしくは診断のためか、または検出方法のためのものであり、任意選択で、こうした疾患の処置もしくは診断または検出のためにキットの構成要素を使用するための指示を含む。
【0227】
加えて、本明細書において定義される本発明のペプチドまたはエピトープまたは複合体またはコンジュゲートは、インビトロまたはインビボの適用およびアッセイに対する分子ツールとして用いられてもよい。
【0228】
よって、本発明のさらなる態様は、本明細書において定義される本発明のペプチドまたはエピトープまたは複合体またはコンジュゲートを含む試薬と、たとえばインビトロまたはインビボアッセイなどにおける分子ツールとしてのこうしたペプチドまたはエピトープまたは複合体またはコンジュゲートの使用とを提供する。特に好ましい分子ツールおよび試薬は、本明細書に記載されるMHC分子に関連付けられた本発明のペプチドまたはエピトープ(pMHC分子)を含むか、またはそれからなっていてもよく、そのpMHC分子は、たとえば二量体または四量体の形態などの多量体の形態であってもよい。
【0229】
本出願全体にわたって用いられる「a」および「an」という用語は、以後に上限が具体的に記述されている場合を除いて、「少なくとも1つ」、「少なくとも第1」、「1つ以上」、または「複数」の参照される構成要素またはステップを意味するという意味で使用される。したがって、本明細書において用いられる「エピトープ(an epitope)」、または「ペプチド(a peptide)」などは、「少なくとも第1のエピトープ」または「少なくとも第1のペプチド」を意味する。任意の単一の薬剤の量に関する動作可能な限界および組み合わせのパラメータは、当業者が本開示に照らして知ることとなるだろう。
【0230】
加えて、本明細書において「含む(comprise)」、「含む(comprises)」、「有する(has)」、もしくは「有する(having)」という用語、またはその他の同等の用語が用いられるとき、いくつかのより具体的な実施形態において、これらの用語は「からなる」もしくは「から本質的になる」という用語、またはその他の同等の用語を含む。特定のステップを含む方法は、適切な場合に、これらのステップからなる方法も含む。
【0231】
本発明のエピトープ、ペプチド、複合体、コンジュゲート、結合タンパク質、核酸分子、およびたとえばAPCなどの細胞は、ヒトもしくは動物の体内、またはヒトもしくは動物の身体に由来する組織サンプル内にインサイツで存在し得る任意のこうした構成要素と区別される限りにおいて、一般的に「単離」または「精製」された分子である。しかし、その配列は、ヒトまたは動物の身体において見出される配列に対応するか、または実質的に相同であってもよい。よって、核酸分子または配列およびタンパク質、ペプチド、またはポリペプチド、たとえばエピトープなどを参照して本明細書において用いられる「単離」または「精製」という用語は、たとえば(実際にそれらが自然に生じるときは)ヒトまたは動物の身体から単離または精製されるなどした、自身の天然の環境から単離、精製されるか、またはそれを実質的に含まないときのこうした分子を示すか、あるいは技術的プロセスによって生成されたとき、すなわち組み換えおよび合成によって生成された分子を含むときのこうした分子を示す。
【0232】
本明細書に記載される「増加」または「増強」という用語(または同等の用語)は、適切な対照と比較したときの任意の測定可能な増加または上昇を含む。適切な対照は当業者に容易に識別され、その適切な例が本明細書に記載される。好ましくは、適切な対照レベルまたは値と比較したときにその増加は有意となり、たとえば臨床的または統計的に有意となり、たとえば確率値≦0.05などを有する。
【0233】
本明細書に記載される「減少」または「低減」という用語(または同等の用語)は、適切な対照と比較したときの任意の測定可能な減少または低減を含む。適切な対照は当業者に容易に識別され、その適切な例が本明細書に記載される。好ましくは、適切な対照レベルまたは値と比較したときにその減少は有意となり、たとえば臨床的または統計的に有意となり、たとえば確率値≦0.05などを有する。
【0234】
対象の検査グループ間の差、または特定のパラメータのレベルもしくは値の差の統計的有意性を決定する方法は、当該技術分野において周知であり、かつ実証されている。たとえば、一般的に本明細書において減少または増加は、たとえば必要に応じてスチューデントt-検定、マンホイットニーU順位和検定、カイ2乗検定またはフィッシャーの正確確率検定、一元ANOVAまたは二元ANOVA検定などの有意性検定を用いた統計的比較によって確率値≦0.05が示されるときに、統計的に有意とみなされる。
【0235】
本明細書に開示されるいくつかのヌクレオチドおよびアミノ酸配列ならびにそれらの配列識別子(SEQ ID NO)のリスト
本明細書におけるすべてのヌクレオチド配列は、この技術分野の慣例に従って5’から3’に記述される。本明細書におけるすべてのアミノ酸配列は、この技術分野の慣例に従ってN末端からC末端に記述される。
【0236】
トリチクム・ウラルツ(Tritium urartu)オメガグリアジンのアミノ酸配列(SEQ ID NO:1)
UPI000618D06A(A0A0E3SZN6)オメガ-グリアジントリチクム・ウラルツ(Triticum urartu)
MKTFLIFVLLAMAMNIATAARQLNPSNKELQSPQQSFSHQQQPFLQEPYPQQPYPSQQPYPSQQPFPTPQQQFSQQSQQPFPQTQQSFPLQPQQPFPQQPQQPFPQPQLPFPQQPEQIIPQQPQQPFPLQPQQPFPQQPQQPFPQPQQPISVQPQQPFPQQSQQSQQPFPQPQQLFLELQQPIHQQPQQPFPQQPQQPFPQQPQQPFPQQPQQPFPLQPQQPFPQQPQQSFLLGPQQPFPQQPQQSQQSFPQPQPQQPQQPSIMQPQQPLPQRPQQPFLLPQQQLSQQPEQTISQQPQQPHQPQQPYPQQQQPYGTSLTSIGGQ
HLA-DQ2.5MHC分子の成熟α鎖(SEQ ID NO:2)(IMGT-HLAアリル名:DQA1*05:01:01:01)
IVADHVASYGVNLYQSYGPSGQYTHEFDGDEQFYVDLGRKETVWCLPVLRQFRFDPQFALTNIAVLKHNLNSLIKRSNSTAATNEVPEVTVFSKSPVTLGQPNILICLVDNIFPPVVNITWLSNGHSVTEGVSETSFLSKSDHSFFKISYLTLLPSAEESYDCKVEHWGLDKPLLKHWEPEIPAPMSELTETVVCALGLSVGLVGIVVGTVFIIRGLRSVGASRHQGPL
HLA-DQ2.5MHC分子の成熟β鎖(SEQ ID NO:3)(IMGT-HLAアリル名:DQB1*02:01:01)
RDSPEDFVYQFKGMCYFTNGTERVRLVSRSIYNREEIVRFDSDVGEFRAVTLLGLPAAEYWNSQKDILERKRAAVDRVCRHNYQLELRTTLQRRVEPTVTISPSRTEALNHHNLLVCSVTDFYPAQIKVRWFRNDQEETAGVVSTPLIRNGDWTFQILVMLEMTPQRGDVYTCHVEHPSLQSPITVEWRAQSESAQSKMLSGIGGFVLGLIFLGLGLIIHHRSQKGLLH
【0237】
【0238】
【0239】
【0240】
【0241】
【0242】
【0243】
【0244】
【0245】
ここで以下の図面を参照して、以下の非限定的な実施例において本発明がさらに説明される。
【実施例】
【0246】
実施例1。セリアック病に関連する新たなT細胞エピトープの同定
材料および方法
ヒトPBMC、ペプチド、および選択された抗体
確認済みのセリアック病(CeD)患者および健常対照(HC)由来の凍結HLAタイプの精製ヒトPBMCをヘマケア-Cellero(https://cellero.com/)より購入した。
【0247】
すべてのペプチドは、≧85%の純度にてジェンスクリプト(http://www.genscript.com)より購入した。パン抗DQ(SPV-L3)およびパン抗DR(L243)抗体は、それぞれベックマン・コールター(Beckman-Coulter)およびサーモ・サイエンティフィック(Thermo Scientific)より購入した。
【0248】
組み換えpHLAの発現、精製、および検証
T細胞エピトープDQ2.5-グリア-α1a(QLQPFPQPELPY(SEQ ID NO:53)、下線は9量体コア配列)、DQ2.5-グリア-α2(PQPELPYPQPE(SEQ ID NO:57))、DQ2.5-グリア-NTP-001(QPEQPYPQQEQPY(SEQ ID NO:31))を含有する共有結合されたグルテン由来ペプチドを有する組み換えHLA-DQ2.5分子は、ジェンスクリプト(http://www.genscript.com)によって、本質的に前に記載されるとおりに生成され(カルステン、H.ら、2001、上記)、親和性精製および組み換えタンパク質検出を促進するためにαおよびβ鎖にC末端FLAGおよびHISタグが付加された。簡潔にいうと、Sf9昆虫細胞が産生した可溶性のインビボビオチン化された組み換えpMHCは、抗FLAGを用いて親和性精製され、濃縮され、分子量および純度測定のための標準的なプロトコルを用いて、SDS-PAGEおよびウエスタンブロットによってタンパク質が解析された。
【0249】
組み換え抗体の発現、精製、および検証
組み換えヒトIgG1タンパク質は、ジェンスクリプト(http://www.genscript.com)によって生成された。簡潔にいうと、遺伝子合成によってそれぞれの抗体可変(V:variable)遺伝子が作製され、真核生物発現ベクターpcDNA3.4中のヒト定常重鎖(H:heavy)および軽鎖(L:light)遺伝子にインフレームでクローニングされた。Expi293F細胞においてタンパク質が産生され、プロテインAおよびSECにて親和性精製された後に、分子量および純度測定のための標準的なプロトコルを用いて、SDS-PAGEおよびウエスタンブロットが行われた。クローン107および4.7Cに対するV遺伝子が表1および表2にそれぞれ示されており、PDB ID 5IHZおよび5IK3由来のクローン1002-1E01および1002-1E03に対するものがそれぞれ示される(スニル(Snir)ら、2017、JCIインサイト(JCI Insight)、2(16):e93961)。
【0250】
エピトープ候補パターンのサーチおよび同定
DQ.2.5-グリア-α1aエピトープ(PFPQPELPY(SEQ ID NO:4))と異なるが類似性を有する推定的なグリアジン由来配列を同定するために、ScanPrositeツール(https://prosite.expasy.org/scanprosite/)を用いてUniProtKBタンパク質データベースをサーチした。DQ.2.5-グリア-α1aエピトープの保存された主要残基以外は異なるモチーフが用いられ、いくつかのサーチでは9量体コアを越えたN末端およびC末端配列の長さの変動も可能にされた。より具体的には、p1のプロリン(P)、p6のグルタミン(Q)、p9のチロシン(Y)を固定し、p9のY(下線)の後の位置p10におけるPは不可とした。サーチの出力に集中するために、出力をトリチクム(Triticum)分類群に制限した。推定的ヒットの14量体ペプチドを合成し、記載されるとおりにRaji細胞に積載されたときの107および4.7C抗体との結合を検査した。いくつかの場合に、位置的な脱アミドを模倣するためにペプチド合成においてQ残基をグルタミン酸(E)と交換した。
【0251】
組み換えグリアジンの発現、精製、および検証
組み換えコムギグリアジンタンパク質は、ジェンスクリプト(http://www.genscript.com)によって本質的に記載されるとおりに生成された(アレンツ-ハンセン(Arentz-Hansen)EHら、ガット(Gut)2000;46:46-51)。簡潔にいうと、それぞれのグリアジン遺伝子(UniprotコードQ9M4L6、Q9FUW7、およびA0A0E3SZN6)を遺伝子合成によって作製してC末端HISタグを付加し、細菌発現ベクターpET17bにインフレームでクローニングした。大腸菌(E.coli)BL21(DE3)pLysS細胞においてタンパク質を産生させて、全細胞可溶化物から、エタノール沈殿および塩析による2段階精製を用いた変性条件下で精製した後、分子量および純度測定のための標準的なプロトコルを用いてSDS-PAGEおよびウエスタンブロットを行った。
【0252】
ELISA
以下のとおりにペプチド捕捉ELISAを行った。簡潔にいうと、96ウェルのMaxiSorpマイクロタイタープレート(ヌンク(Nunc))を4℃にて一晩ニュートラアビジン(NeutrAvidin)(アビディティ(Avidity)、5μg/ml PBS溶液)でコーティングした後に、2%ビオチンフリー脱脂粉乳のPBS溶液(w/v)でブロッキングした。さまざまなペプチド(すべてビオチン化N末端GSGSGS伸長を伴って合成された)をPBSTM(PBSに2%ビオチンフリー脱脂粉乳(w/v)および0.05%Tween-20(v/v)を加えたもの)で10μg/mlに希釈し、ニュートラアビジンにおいて捕捉した。1E01/1E03抗体をPBSTMで5μg/mlに希釈し、ウェルに添加し、それぞれいずれかのポリクローナルウサギ抗ヒト(シグマ(Sigma)、1:10000)のPBSTM溶液によって検出し、それぞれTMB溶液(カルバイオケム(Calbiochem))を加えた後に620nm(HCl添加の場合は450nm)にて吸光度読取りを行うことによって現像した。アッセイは2つ組のウェルによってRTにて行った。各層の間に、プレートをPBSTで3~5x洗浄した。
【0253】
以下のとおりにpHLA特異的ELISAを行った。簡潔にいうと、96ウェルのMaxiSorpマイクロタイタープレート(ヌンク)を4℃にて一晩ニュートラアビジン(アビディティ、5μg/ml PBS溶液)でコーティングした後に、2%ビオチンフリー脱脂粉乳のPBS溶液(w/v)でブロッキングした。さまざまなビオチン化pHLAをPBSTMで20μg/mlに希釈し、ニュートラアビジンにおいて捕捉した。さまざまな抗体をPBSTMで5μg/mlに希釈し、ウェルに添加し、それぞれポリクローナルウサギ抗ヒト(シグマ、1:10000)または抗マウスIgG-HRP(シグマ、1:2000)のいずれかのPBST溶液によって検出し、それぞれTMB溶液(カルバイオケム)を加えた後に620nm(HCl添加の場合は450nm)にて吸光度読取りを行うことによって現像した。アッセイは2つ組のウェルによってRTにて行った。各層の間に、プレートをPBSTで3~5x洗浄した。
【0254】
グリアジンタンパク質消化および質量分析(MS:mass spectrometry)
組み換えグリアジンを本質的に記載されるとおりにインビトロでキモトリプシン消化した(モルバーグ(Molberg)Oら、メソッズ・イン・モレキュラー・メディシン(Methods Mol Med.)2000;41:105-24)。簡潔にいうと、約1mgの組み換えグリアジンを、200:1(w:w)のキモトリプシン(シグマ)によって0.1M NH4HCO3および2M尿素の溶液中で37℃にて24時間消化した後に、95℃にて5分間の酵素不活性化を行い、さらに本質的に記載されるとおりのMS解析に向かわせた(非特許文献3)。MS解析は、オスロ大学(UiO:University of Oslo)のバイオサイエンス学部(Department of Biosciences)のプロテオミクスコア施設によって行われた。PEAKS studioソフトウェア(バイオインフォマティクス・ソリューションズ社(Bioinformatics Solutions Inc.))を用いて、それぞれのグリアジンUniprotアクセッションコードによって作成された顧客データベース(databased)に対してサーチすることによって、MSスペクトルを解析した。
【0255】
ヒトSKW3 T細胞のレトロウイルストランスダクションおよびフローサイトメトリー
T細胞受容体(TCR)が再構築されたSKW3クローンSKW3-380およびSKW3-364が報告されている(フリックR.ら、2021、サイエンス・イムノロジー(Sci.Immunol.)6(62):eabg4925)。PFB ID 4OZI由来のTCR V遺伝子配列を用いて、本質的に同じやり方でSKW3-S2細胞が生成された(ピーターセン(Petersen)ら、ネイチャー・ストラクチュラル・アンド・モレキュラー・バイオロジー(Nat Struct Mol Biol)2014、21(5)、480-488)。簡潔にいうと、ジェンスクリプト(http://www.genscript.com)によって、遺伝子合成によってヒト/マウスキメラTCRとしてTCR V遺伝子配列が再構築され、pMSCV(クロンテック・ラボラトリーズ(Clontech Laboratories))にクローニングされた。Retro-Xユニバーサル・パッケージング・システム(Universal Packaging System)(クロンテック)を用いて、製造者の指示に従って、SKW3ヒトT細胞(CLSセル・ラインズ・サービス社(CLS Cell Lines Service GmbH))のレトロウイルストランスダクションを行った。標準的な細胞増殖と、H57-Alexa647(サーモ・フィッシャー・サイエンティフィック(Thermo Fisher Scientific))抗体染色によって評価されたTCR発現レベルに基づくFACSAria IIサイトメーター(BDバイオサイエンス(BD Biosciences))を用いたFACSソーティングとによって、安定で均質なTCR発現SKW3 T細胞が得られた。本質的に記載されるとおりに、抗原提示細胞としてRaji細胞を用いて、TCRトランスダクションSKW3細胞のペプチド特異的活性化を検証した(フリック、R.ら、2021、上記)。抗ヒトCD69-APC(BDバイオサイエンス)抗体染色によって評価されたCD69アップレギュレーションによって、T細胞活性化を測定した。データはBD Accuri C6サイトメーター(BDバイオサイエンス)において取得され、FlowJoソフトウェアV10(ツリー・スター(Tree Star))を用いて解析された。
【0256】
T細胞の活性化および阻害アッセイ
T細胞活性化アッセイのために、50,000のRaji B細胞を定められた量のDQ2.5-グリア-α1a(QLQPFPQPELPY(SEQ ID NO:53))ペプチドと共にRPMI/10%FCS中で37℃/ONにてインキュベートし、その後洗浄して残りの遊離ペプチドを除去し、40,000のSKW3 T細胞を加えた。細胞を37℃/ONにて培養した後にフローサイトメトリーで解析した。対照として、PMAおよびイオノマイシン(eバイオサイエンス(eBioscience)、1:500)を含有する細胞刺激カクテル(Cell Stimulation Cocktail)を、SKW3 T細胞のみを含有するウェルに加えた。T細胞活性化における確立された用量反応に基づいて、(CD19neg集団に対するCD69アップレギュレーションとして測定された)約60%のT細胞活性化をもたらすことが推定されるペプチド濃度を阻害アッセイのために選択した。上記と同様のペプチドとのONインキュベーションおよび洗浄に続いて、1μM(最終濃度)の4.7Cまたは3.C11のいずれかをRaji細胞に加えた後、T細胞を加えてONインキュベーションを続けた。結果としてもたらされたT細胞活性化を上記と同様に測定した。対照Abとして、0.1μM(最終濃度)のパン抗DRまたはパン抗DQのいずれかを並行して加えた。
【0257】
ペプチド活性化PBMCの細胞内IFN-γフローサイトメトリー検出
バイオレジェンド(BioLegend)(https://www.biolegend.com/)による試薬および標準的プロトコルに従って、ペプチド刺激PBMCの細胞内IFN-γを評価した。簡潔にいうと、凍結保存されたヒトHLA-DQ2.5+PBMC(ヘマケア-Cellero)を穏やかに解凍して氷冷PBS中で洗浄した後、RPMI1640に10%FCS(v/v)を補充したものに再懸濁し、その後1mlの体積(約2×107細胞)を24ウェルマイクロタイタープレート(ヌンク)にアリコートした。1セットのウェルは、いずれかの20μMのペプチド(A0A0E3SZN6_p6E_long(QPQQPYPQQEQPYGTSL(SEQ ID NO:30))または33量体(LQLQPFPQPELPYPQPELPYPQPELPYPQPQPF(SEQ ID NO:55))のいずれか)を受け取った。残りの細胞は、ペプチドを何ら受け取らなかった。細胞を標準状態で37℃にて36時間増殖させた後に、ブレフェルジン(Brefaldin)A(バイオレジェンド)およびモネンシン(バイオレジェンド)を加えて、インキュベーションをさらに12時間続けた。次いで、フローによって細胞の細胞内IFN-γを評価した。データはBD Accuri C6サイトメーター(BDバイオサイエンス)において取得され、FlowJoソフトウェアV10(ツリー・スター)を用いて解析された。
【0258】
結果
我々は過去にHLA-DQ2.5:DQ2.5-グリア-α1aと結合し得るペプチド-MHC(p-MHC)抗体を同定しており、すなわちこの抗体は、セリアック(coeliac)病(CeD)関連のグリア-α1aエピトープ(PFPQPQLPY(SEQ ID NO:60))と関連付けられたときのMHCクラスII分子HLA-DQ2.5と結合でき、すなわちこの抗体はpMHC複合体と結合し得る。
【0259】
この抗体(107抗体と呼ばれる)は、CeD患者から得られたサンプルと特異的に反応し、かつHLA特異的な方式で反応することが示されており、すなわちこの抗体はCeD特異的であり、かつHLA分子HLA-DQ2.5に対しても特異的である(
図1を参照)。
【0260】
この抗体の親和性成熟バージョンも生成され(4.7C抗体と呼ばれる)、これはpMHC複合体との結合に対して親抗体107よりも高い親和性を有する(
図2を参照)。
【0261】
細胞表面pMHCの検出
上記の実験は、可溶性の組み換えpMHC分子との結合を評価することによって行われた。しかし、4.7C抗体は、α1aペプチドおよび対照ペプチドと共有的に連結されたHLA-DQ2.5の形態のpMHC複合体を表面上に組み換え発現するように操作された抗原提示細胞(A20マウスB細胞)にも良好かつペプチド特異的に結合する能力を示した(
図3A)。最小のα1aペプチド(下線)を含有する12量体ペプチドが用いられた(QLQ
PFPQPELPY(SEQ ID NO:53))。この実験においては、CeD関連の形態のエピトープ、すなわちQ残基ではなくEを含有するエピトープ(PFPQPQLPY(SEQ ID NO:60)に対するPFPQP
ELPY(SEQ ID NO:4))が用いられた。
【0262】
興味深いことに、最小エピトープを含有する同じ12量体を可溶性ペプチドとして外部から積載された(すなわちペプチドパルス細胞)、生理的レベルの天然MHC発現を有するヒト抗原提示細胞(Raji細胞)に対して抗体4.7Cを検査したとき、その結合は顕著に弱くなった(
図3B)。加えて、グルテン33量体ペプチドが外部から積載されたとき、この抗体はこれらの抗原提示細胞との結合を示さなかった(
図3B)。自然に生じるフラグメントであると考えられ、かつCeDに強く関連するα-グリアジン33量体(LQLQPFPQPELPYPQPELPYPQPELPYPQPQPF(SEQ ID NO:55))は、1コピーの最小α1aエピトープと、DQ2.5-グリア-α2エピトープの3つの重複するコピーとを含む。組み換え発現されたα1aペプチドに対する結合の結果を与えられたとき、これらの結果は驚くべきものであった。しかし、これに対する理由となり得るものがいくつか存在し、それは外来性ペプチドの積載後の12量体または33量体とHLA-DQ2.5との相互作用が十分に安定でない可能性があること、または天然のRaji細胞がpMHCを組み換えによって過剰発現する細胞ほど多くのMHCを発現しないために細胞表面上のpMHC複合体がかなり少ない(より低密度のpMHC発現)だろうという事実を含む。これらの交絡パラメータの可能性にもかかわらず、33量体はもっと短いペプチドよりも良好にHLA分子に結合することが公知であり、これはたとえばT細胞活性化アッセイ(グンナーセン(Gunnarsen)ら、2017、JCIインサイト(JCI Insight);2(17):e95193)などにおいても明らかであり、よって12量体と比較したときに、33量体は12量体よりも良好な染色を示すであろうことが期待されたが、そうではなかった。
【0263】
T細胞活性化の阻害
DQ2.5-α1aに対して特異的なTCRを発現するヒトT細胞株(SKW380)を用いて、抗体4.7CがインビトロでT細胞活性化を阻害する能力も検査した。定められた量の刺激グリアジンペプチド(QLQPFPQPELPY(SEQ ID NO:53))を積載したRaji細胞をSKW380 T細胞と共培養し、フローサイトメトリーを用いてSKW380細胞におけるCD69発現を決定することによってT細胞活性化を測定した(
図4A)。60%のT細胞活性化を誘導するペプチド濃度を以後の実験のために選択し、その実験ではペプチド積載Raji細胞を抗体と共にインキュベートしたところにSKW380 T細胞を添加することによって、それらの抗体のT細胞阻害能力を評価した(
図4B)。
【0264】
T細胞活性化の約20%の阻害が観察され、この阻害は特異的なものであったが、その阻害レベルはもっと高くなることが期待されただろう。
【0265】
ヒト小腸生検材料の染色
未処置の確認済みのHLA-DQ2.5+のCeD患者および対照対象の炎症粘膜から得られた小腸生検サンプルに由来するCD19+CD45+形質細胞を検査したとき、高親和性(4.7C)および親(107)抗体はCeD材料の良好な染色を示し、それらの抗体がCeD患者由来の細胞におけるHLA-DQ2.5関連のグルテンペプチド提示を検出していることが示された(
図5、各患者が別個の円として示される)。
【0266】
これらのデータは、過去に報告された107抗体の広範囲の特徴付け、ならびにそれが完全な疾患、HLA、およびエピトープに対して類似のCeD患者の材料におけるペプチド提示を特異的に検出する能力と完全に一致した(ホイダール(Hoydahl)ら、2019、ガストロエンテロロジー(Gastroenterology)156(5)、1428-1439)。
【0267】
興味深いことに、4.7C抗体はDQ2.5-グリア-α1aエピトープに対するより高親和性の結合のために選択された(
図2A)にもかかわらず、患者サンプルにおける染色のレベルは2つの抗体に対してほぼ同様であった(
図5A)。
【0268】
新たなT細胞エピトープ配列の可能性の調査
この結合挙動の明らかな相違およびT細胞活性化を阻害する能力が期待よりも低かったことに対するより良好な洞察を得るために、抗体4.7Cおよび107がCeD患者における追加のペプチド配列/T細胞エピトープも認識し得る可能性があるかどうかが考えられた。
【0269】
たとえば、行われた実験をより注意深く検討したとき、ペプチドパルス実験に用いられた12量体はC末端部に9量体の最小T細胞エピトープを有し、すなわち(QLQPFPQPELPY(SEQ ID NO:53))であったのに対し、33量体配列はより長く、C末端部に追加の配列を有する(LQLQPFPQPELPYPQPELPYPQPELPYPQPQPF(SEQ ID NO:55))ことが注目された。位置10以降(すなわち、9量体の最小T細胞エピトープPFPQPELPY(SEQ ID NO:4)の後の位置)の残基がペプチドに結合する抗体の能力に影響しているかもしれない可能性、およびCeDに関連しているがC末端部に(P以外の)代替残基が存在するような類似のT細胞エピトープ配列も抗体が認識し得るかもしれない可能性があるという仮説が立てられた。
【0270】
たとえば、他の結合調査では、最小DQ2.5-グリア-α1aエピトープのC末端から伸長するp10に自然に生じるProを有するものと比較して、位置10のGly(G)残基が4.7Cおよび107抗体との良好なレベルの抗体結合をもたらすことが示された(データは示さず)。
【0271】
まとめると、2つの抗体107および4.7Cそれぞれの結合特性を記述するデータは、それら両方が、可溶性組み換えpHLAおよびCeD患者材料由来の細胞を含む細胞上のpHLAとしてのDQ2.5-グリア-α1aペプチドエピトープと特異的に結合する能力を有することを明瞭に示した。しかしこのデータは、コムギα-グリアジン由来の重要であると予想される33量体ペプチドも含む、自然に生じるプロリン残基がp10位置を占めるペプチドバージョンに存在するときのエピトープと結合する能力をどちらの抗体も有さないことも示した(ドルムら、ジャーナル・オブ・イムノロジー(J Immunol)2014年11月1日、193(9)4497-4506)。CeDのエピトープの病識にはギャップがあることが認識されており、エピトープ解明において患者反応性の最大50%しか占めることができない(非特許文献10)。したがって、107および4.7C抗体の特異的かつ明確に定義された結合プロファイルに照らすと、それらがまだ発見されていないグルテンエピトープに付加的に結合したことによって、幾分の予期されない類似の患者材料の染色レベルがもたらされた可能性が出てきた。
【0272】
このことを試行および調査するために、元々の9量体T細胞エピトープ配列PFPQPQLPY(SEQ ID NO:60)(および脱アミドバージョンPFPQPELPY(SEQ ID NO:4))と共に、Raji細胞ペプチドパルス実験に用いられた12量体配列QLQPFPQPELPY(SEQ ID NO:53)(および天然/健常バージョンQLQPFPQPQLPY(SEQ ID NO:61))、およびたとえばT細胞反応性に対するp7のロイシンの明確な不変要件などのエピトープの特定の位置に共有される公知の重要性に基づくこれらの配列に対するさまざまなアミノ酸の変更を用いて、データベースサーチを行った(ピーターセンら、ネイチャー・ストラクチュラル・アンド・モレキュラー・バイオロジー(Nat Struct Mol Biol)2014、21(5)、480-488;ダハル-コイララ(Dahal-Koirala)ら、ムコサル・イムノロジー(Mucosal Immunol)9、587-596、2016)。特に、天然に存在するグリアジンペプチド(すなわち、コムギ由来のペプチド)の中で、α1a9量体/12量体と類似しているが位置10の伸長部に代替残基(すなわちプロリン以外)を有するもの、したがって抗体107および4.7Cによる良好な結合をもたらす可能性があり得るものを見出すことに焦点を合わせた。
【0273】
この作業の実行中に、多くの候補配列を同定および除外した。たとえば、位置10にチロシン、セリン、およびアラニン残基を有する候補配列は、4.7C抗体との有意な結合を何ら示さないことが観察された。これらの観察は、概説された既知の結合プロファイルによって裏付けられた。
【0274】
最終的に、UniProtナレッジベース(Knowledge Base)(https://www.uniprot.org/)のよりリベラルなScanProsite(https://prosite.expasy.org/scanprosite/)パターン(patter)サーチを通じて、いくつかのさらなる候補配列が同定され、それらの候補配列は9量体との類似性がより低く(しかしなおも妥当であり)、認識されるエピトープの立体構造にとって重要であり得るものとして同定された位置9のY残基を有するが、加えて位置10にG残基を有する。これらの候補をさらに4.7C抗体との結合について検査し、これらの配列の1つが特に有望な結果を示した。
【0275】
この候補ペプチド(
図6A)は、赤色野生ヒトツブコムギ(red wild einkorn)と名付けられた野生形態のコムギにおけるオメガグリアジンタンパク質の一部として見出される(トリチクム・ウラルツ(Triticum uratu)、UniProtKB ID:A0A0E3SZN6_TRIUA、SEQ ID NO:1、
図6B)。
【0276】
このペプチドは、α1a9量体/12量体といくらかの類似性を示したが、それに加えて9量体配列に関する位置10にG残基を有する。この配列はコア9量体PYPQQ
QQPY(SEQ ID NO:8)(
図6A)を有した。
【0277】
この配列は、α1aエピトープといくらかの類似性を有し(実際にはオメガグリアジンと分類されるが)、かつコムギの形態で天然に生じるため、CeD T細胞エピトープの候補となり得ると考えられた。加えて、CeD患者においてTG2酵素(QXPモチーフを標的とする、ソリッドら、2002、ネイチャー・レビューズ・イムノロジー(Nat Rev Immunol)2、647-655)によってE残基に脱アミド修飾される標的となり得るグルタミン(Q)残基が存在した。9量体の位置6(上記の下線部)および
図6Aを参照されたい。しかし、他の点では、この配列は古典的または公知のCeD T細胞エピトープに対応しない。実際に、認識されたT細胞エピトープ予測因子(NetMHCIIpan4.0)をこのT.ウラルツ(Urartu)配列に対して使用しても、この配列がHLA-DQ2.5結合ペプチドであると予測されなかった。
【0278】
このペプチドの4つの異なる形態(
図7Aを参照)を、上述のとおりにRaji細胞に積載し、FACSによって107および4.7C抗体の両方の結合を評価することによって検査した(
図7B)。評価されたペプチドは、i)PQQPYPQQQQPYGT(SEQ ID NO:24)(A0A0E3SZN6_p4Q_p6Qまたは「QQ」と呼ばれ、候補T細胞エピトープ9量体の位置4および6にQ残基を含有する天然/健常形態のペプチドに対応する);ii)PQQPYPEQQQPYGT(SEQ ID NO:62)(A0A0E3SZN6_p4E_p6Qまたは「EQ」と呼ばれ、候補T細胞エピトープ9量体の位置4にQ残基ではなくEを含有する形態のペプチドに対応する);iii)PQQPYPQQEQPYGT(SEQ ID NO:29)(A0A0E3SZN6_p4Q_p6Eまたは「QE」と呼ばれ、候補T細胞エピトープ9量体の位置6にQ残基ではなくEを含有する形態のペプチドに対応する);iv)PQQPYPEQEQPYGT(SEQ ID NO:63)(A0A0E3SZN6_p4E_p6Eまたは「EE」と呼ばれ、候補T細胞エピトープ9量体の位置4および6にQ残基ではなくEを含有する形態のペプチドに対応する)であった。どちらの抗体もQEおよびEEペプチドとは良好に結合するが、QQおよびEQ形態とは結合しないことが示された(
図7B)。T細胞9量体エピトープの位置6にEを含有するペプチドの方がCeDの患者に見出されやすいと考えられる。なぜなら、この残基は古典的なTG2標的配列であるQXP(ここではQQP)の一部だからである。特に、古典的なDQ2.5-グリア-α1aエピトープ、およびp10グリシン伸長を含有する人工バージョンをこのアッセイの対照として含めた。予期されたとおり、抗体は人工バージョンに結合したのに対し、古典的形態には低レベルの結合が見られた。相同のDQ2.5-グリア-α2エピトープに対する結合は観察されなかった。
【0279】
T.ウラルツ(uratu)配列のインシリコのトリプシン/キモトリプシン消化を行うことによって、CeD患者に存在すると考えられるバージョンであるこのペプチドのより生理的に現実的な形態と抗体とがどのように反応するかも評価した(
図8A)。対照として、33量体ペプチドをコードするT.アエスチブム(aestivum)α-グリアジン配列を並行して含ませた(
図8B)。これによって、2つの生理的形態であり得る配列、QPQQPYPQQQQPY(SEQ ID NO:20)(本明細書において「中間(medium)」ペプチドと呼ばれることもある)およびQPQQPYPQQQQPYGTSL(SEQ ID NO:22)(本明細書において「長(long)」ペプチドと呼ばれることもある)が同定された。これら2つのペプチドを、上述のRajiペプチド積載アッセイにおいて検査した(p4Q_p6Q medium、p4Q_p6E medium、およびp4Q_p6E long(
図8C)、CeD患者に見出されるTG2活性(QXP)であり得るものに従ったGln(Q)からGlu(E)への置換を有する。
【0280】
実際に、107および4.7C抗体の両方が、これらの生理的に関連すると予想されるペプチドのEバージョンと良好に結合することが示され、p6脱アミド9量体は結合を示さなかったため、この結合にとっては長さが重要であった(
図8D)。重要なことに、アイソタイプが一致したDQ2.5-グリア-α2特異的3.C11抗体はT.ウラルツ(Urartu)配列のいずれにも何ら結合を示さず、107および4.7Cの特異的結合が証明された(
図8D)。ここで興味深いのは、両方のp6脱アミド形態による結果が107および4.7C抗体に対して示した結合のレベルが、CeD患者由来の材料(CD19+形質細胞の形態の抗原提示細胞)に対してこれらの抗体を検査したときに観察されたレベルを反映することである(
図1および
図5)。よって、CeDに関連する定義された9量体コアPYPQQQQPY(SEQ ID NO:8)を有する新たなT細胞エピトープが、このエピトープを含有するより長いCeD関連ペプチドと共に同定されたと考えられる。
【0281】
胃および膵臓の酵素によるコムギの腸タンパク質分解は不均一であり、予測される酵素特異性は消化における実際の変化を部分的にしか反映していないことが十分に確証されている。よって、タンパク質フラグメント化パターンがどのようなものか、より現実的な概念を得るために、A0A0E3SZN6_TRIUA、ならびに主要コムギω-グリアジンQ9FUW7_WHEATおよびα-グリアジンQ9M4L6_WHEATタンパク質を作製して(
図9A~C)、本質的に記載されるとおりにインビトロキモトリプシン消化を行った(アレンツ-ハンセンEHら、ガット(Gut)2000;46:46-51およびモルバーグ(Molberg)Oら、メソッズ・イン・モレキュラー・メディシン(Methods Mol Med.)2000;41:105-24)。次いで、これらのタンパク質消化物を本質的に記載されるとおりに質量分析によって解析した(ドルムら、2014、上記)、
図9D~F。
【0282】
実際に、α-グリアジン対照タンパク質Q9M4L6_WHEATはフラグメント化されて、十分に特徴付けられた33量体マルチエピトープセグメント(シャン(Shan)Lら、サイエンス(Science)2002、297(5590):2275-9)を含むさまざまなより小さいペプチドフラグメントとなった(
図9D)。観察された広範囲のタンパク質分解は、過去の報告(ドルムら、2014、上記)とよく一致する。A0A0E3SZN6_TRIUAの同じタンパク質分解に取り組んだところ、このタンパク質もさまざまなより小さいペプチドにフラグメント化された(
図9E)。重要なことに、この仮定された新規9量体コアペプチドの破壊的処理は観察されず、調査された複数の種は、前の解析(
図8)においてすでに見られたものと一致するHLA-DQ2.5結合能力を有することが期待された。A0A0E3SZN6_TRIUAから同定された最小タンパク質分解セグメントは、仮定されたA0A0E3SZN6_p4Q_p6Q_medium13量体ペプチドに対応した(
図8Cおよび
図9E)。トリチクム・ウラルツ(Triticum urartu)は、現代の六倍体トリチクム・アエスチブム(Triticum aestivum)コムギ作物の二倍体Aゲノム祖先であるため(マークセン(Marcussen)ら、2014、サイエンス(Science):345(6194)、1250092)、A0A0E3SZN6_TRIUAをコードする遺伝子は非常に複雑な栽培作物のゲノムの一部として見出され、したがってヒト消費に対する関連食物源を表している可能性が高い(アペルス(Appels)ら、2018、サイエンス(Science)361(6403)、eaar7191およびユハス(Juhasz)ら、2018、サイエンス・アドバンシス(Science Advances)4(8)、eaar8602)。実際に、食物源解析によるシグネチャーモチーフは、こうした構成要素としてA0A0E3SZN6を指し示している(スパダ(Spada)ら、2020、フロンティアズ・イン・ニュートリション(Front.Nutr.)7:98)。したがって、主要な公知のω-グリアジンは、HLAに結合する9量体コアを構築するために必要な9つの残基のうちの8つしかコードしていないために、エピトープの遺伝源となり得ないことが分かる(
図9F)。
【0283】
A0A0E3SZN6_TRIUA MS解析(
図9E)において、多くのペプチドがDQ2.5-グリア-α1aエピトープ(
図7)に対する効率的な4.7C結合のために必須と思われるp10Gly残基を欠いていることにも我々は気付いた。よってこれらのデータは、これら2つのペプチドがHLA溝において異なる形状を取り、加えて異なる方式で4.7C抗体にデコードされることを強く示した。その後、アラニン走査実験によってこれを確認した。
【0284】
大規模な実験的証拠によって、ヒト免疫系がどのようにCeDにおける病原性グルテンペプチドを提示する能力を取得するかに対する2つの主要な機構が示されている(非特許文献1)。これらの観察は、B細胞がこの疾患において有すると考えられる中心的役割を裏付けるものであり、その役割は主に2つのカテゴリ、すなわち組織トランスグルタミナーゼ2(TG2)とグリアジン特異的B細胞とに分けられる。後者に関して、これらのグリアジンペプチド特異的B細胞のB細胞受容体(BCR)の広範囲の特徴付けによって、特に高頻度の配列モチーフ(QPQQPFP(SEQ ID NO:64))が同定されており、この配列モチーフは、オメガグリアジン型であることが最も多いペプチドの一部であり(非特許文献3)、かつCD4
+T細胞エピトープのN末端伸長を形成する。T.アエスチブム(aestivum)Q9M4L6_WHEATおよびT.ウラルツ(Urartu)A0A0E3SZN6_TRIUAタンパク質の両方のインシリコ(
図8)およびMS解析(
図9)に基づいて、このBCR共通配列を欠いたQ9M4L6_WHEATのα-グリアジン配列とは対照的に、A0A0E3SZN6_TRIUAのω-グリアジン配列は、自身のN末端に密接に関係するQPQQPYP(SEQ ID NO:37)モチーフを有し、(T細胞エピトープと重複する)BCRエピトープのQ/E位置はHLA9量体コアに従って注記されるときの位置p-2に対応することに我々は注目した。したがって、A0A0E3SZN6_TRIUAエピトープがこうしたBCRに対する標的として働く能力を有するかどうかを調査するために、2つのCeD患者由来のプロトタイプ抗グリアジンペプチドBCR(1002-1E01および1002-1E03と名付けた)を可溶性抗体として再構築し、本質的に記載されるとおりに、ELISAにおいてそれらとニュートラアビジン固定ペプチドとの結合を検査した(
図10)(スニルら、2017、JCIインサイト(JCI Insight)、2(16):e93961)。
【0285】
選択された2つのBCRは広範囲に報告されており、標的配列に対するそれらの結合プロファイルは異なる(
図10A)。重要なことに、公知のQPQQPFP(SEQ ID NO:64)モチーフの重要な特徴は、TG2による脱アミド修飾によってQPEQPFP(SEQ ID NO:65)となることであり、これは健常個体とCeDの個体とを分離するシグネチャー特徴である。2つのBCRはこのTG2修飾のための要件が異なっており、したがって我々のアプローチを実証するために、我々はこの位置にGln(Q)またはGlu(E)のいずれかを有する2つの陽性対照(positive control)ペプチドを含めた(PC1およびPC2、
図10B)。実際にその結果は適切なPCに対するBCRの強い反応性を示し(
図10C)、1002-1E03抗体はA0A0E3SZN6_TRIUAエピトープに対して明らかに同等に良好な結合を示したが、p-2にGlu(E)を有するものとしか結合しなかった。1002-1E01抗体はPCペプチドとのみ反応し、これはこの抗体が位置p2のPhe(F)を強く要求することが実証されていることによって説明されるだろう。よって我々の結果によって、A0A0E3SZN6_TRIUA T細胞エピトープが、CeD患者に繰り返し共有されるTG2感受性プロトタイプのグリアジンペプチド特異的BCRに対する優れた標的として働くN末端QPEQPYP(SEQ ID NO:38)伸長を有することが実際に確認された(スニルら、2017、上記)。A0A0E3SZN6_TRIUA配列に見られるものと比較して記載されるBCRエピトープに相違があり、前者においてはPhe(F)残基がTyr(Y)と交換されていることを考慮するとき、1002-1E03抗体がいずれかの配列に対する優先傾向を有するかという疑問が生じた。よって、我々は抗体の段階希釈物で実験を繰り返して、個々のEC50を推定した。実際に、その結果は両方の配列が同等に良好に認識されることを示した(
図10D)。
【0286】
まとめると、これらの結果は、A0A0E3SZN6_TRIUA BCRエピトープが、T細胞エピトープの効果的な提示およびそれによるB細胞へのT細胞支援の確立によって強力な抗体応答の生成をもたらし得る、よく実証された機構を指し示す。この発見は、107および4.7C抗体を使用した我々の患者染色データ(
図1および
図5)が、CeD患者の炎症性の腸における支配的なグルテンペプチド提示細胞としてB細胞およびその形質細胞(PC)の子孫を同定していることの妥当性をさらに強化するものである。B細胞がCeDの特徴であるGI組織破壊における必須の役割を果たすことは、CeDにおいて見られる絨毛萎縮を繰り返す唯一のマウスCeDモデルにおいてさらに強力な証拠が得られ、ここではB細胞の欠乏によってグルテンに誘発される萎縮が完全に抑制された。まとめると、我々のデータは、CeDにおける病原性グルテンエピトープとなるための要件を満たすために必要な主な重要構成要素を完全に概括しており、かつA0A0E3SZN6_TRIUA配列タンパク質を食物源として指し示している。
【0287】
組み換え可溶性pHLA分子の産生
組み換え可溶性pHLA(rs-pHLA)は免疫学的研究において有益な試薬であるが、HLAクラスIとは異なり、これらの試薬は一般的にHLAクラスIIに対して製造することがまだ非常に困難であり、HLA-DQは部分的に未知の理由からこの方式が特に困難であることが実証されている(デービス(Davis)ら、2011、ネイチャー・レビューズ・イムノロジー(Nat.Rev.Imm.)、11、551-558)。他の報告において、天然のHLA-DQ2.5は非常に狭いペプチドレパートリーを有し、異なる表現型は、ペプチドをHLAと生産的に組み合わせ得るための特別な要件を指し示すことが十分に実証されている(ファラング(Fallang)ら、2009、ネイチャー・イムノロジー(Nat.Imm.)、10、1096-1101およびバーグセング(Bergseng)、E.ら、2015、イムノジェネティクス(Immunogenetics)67、73-84)。A0A0E3SZN6_TRIUA T細胞エピトープ候補をさらに検証するために、我々は本質的に前に記載されるとおりにrs-pHLA複合体を生成しようとした(カルステンら、ジャーナル・オブ・イムノロジー(J Immunol)、2001、167:4861)。その性能を評価するために、DQ2.5-グリア-α1aおよびDQ2.5-グリア-α2 T細胞エピトープをそれぞれ有する2つのすでに報告されているバージョンを含めた。
【0288】
実際に、合成リンカーを用いてT細胞エピトープとHLAβ鎖のN末端とを共有結合すること、およびSf9昆虫細胞において操作されたインビボビオチン化と同時に発現させることを含むこの方法によって、3つのrs-pHLA複合体すべてを産生することが可能であった。これらの発現培養物から親和性精製(FLAGタグ精製)された材料の収量および純度は、予期されたとおりに各ペプチド変異体間で変動したが、全体としてはこうした分子に対して見られる通常の範囲内であった(
図11D)。よって、本発明のT細胞エピトープ(DQ2.5-グリア-NTP-001)を含有するpHLAを含むこれらの分子をかなり良好な均質性になるように作製するための純粋な(sheer)能力(
図11A~C)は、HLA-DQ2.5の状況における真のT細胞エピトープであることを強く示している。
【0289】
これらのrs-pHLA複合体の完全性をさらに評価するために、選択された十分に実証済みのパンHLAおよびTCR様抗体のパネルに対して、本質的に記載されるとおりにニュートラアビジン捕捉ELISA結合実験を行った(フリックR.ら、2021、サイエンス・イムノロジー(Sci.Immunol.)6(62):eabg4925)。3つのバージョンすべてが立体構造特異的パンDQ抗体SPV-L3に対する良好かつ濃度依存性の結合を示したのに対し、立体構造特異的パンDR抗体L243に対するこうした結合は見られず(
図12A~C)、正しく折り畳まれた分子が強く示された。ここで生成されたバージョンと非常に類似したHLA-DQ2.5:DQ2.5-グリア-α1aのrs-pHLAを用いて、2つのTCR様抗体107および4.7Cを生じさせ、ELISAにおいてこの複合体との結合を検査したときに、実際に予期されるとおりの非常に特異的かつ濃度依存性の結合が示され(
図12D)、これは前の実験と一致し(
図1Aおよび
図2B)、かつ高親和性の4.7Cが低親和性の母クローン107よりも上位であるという結合序列とも一致した。この結合プロファイルは、HLA-DQ2.5:DQ2.5-グリア-NTP-001によって繰り返されたときによく反映された(
図12E)。これとは対照的に、自身のHLA-DQ2.5:DQ2.5-グリア-α2標的(
図12F)とのみ特異的に結合する3.C11抗体によるこれらの複合体との結合は見られなかった。集合的に、これらの結果は、3つのHLA複合体すべてが正しく折り畳まれて、厳密に立体構造依存性のリガンドのみに結合することを示す。
【0290】
よって、実際にDQ2.5-グリア-NTP-001(A0A0E3SZN6_p-2E_p6E_medium)エピトープ候補は、2つの他の公知の免疫優性CeDエピトープDQ2.5-グリア-α1aおよびDQ2.5-グリア-α2と同等に、HLA-2.5の状況において完全に機能するインタクトrs-pHLAIIとして正常に産生されるための厳密な要件を満たすものと我々は結論付ける。
【0291】
T細胞活性化
上述の一連の実験を通じてデータが明確に示すのは、新規のDQ2.5-グリア-NTP-001ペプチドが、CeD患者材料において観察されるTCR様抗体の反応性の供給源となること(
図5)、およびCeD病原性の一部として十分に実証された抗DGP BCRともクロストークするHLA-DQ2.5拘束性のCeD特異的T細胞エピトープを含有することによってこれを行うことの両方に対する厳密な要件のセットを満たすことである。我々は現時点で、高度に制御された方式でT細胞反応性の可能性を評価することを可能にするであろうCeD組織由来の定義されたT細胞クローン(TCC:T cell clones)をまだ同定していない。しかし、かなり多くのCeD TCCが幾分乱交雑であり、複数のグルテンエピトープと容易に交差反応することが十分に実証されている(例、ダハル-コイララ、S.ら、2016、上記)。過去の研究により、我々はSKW-3再構築物としてこうしたTCCのパネルを有する(フリックら、2021、上記、およびピーターセンら、2014、上記)。したがって我々は、こうしたSKW-3細胞に対するT細胞活性化アッセイにおいて異なるバージョンのA0A0E3SZN6ペプチドを検査することを選択した。2つの公知のDQ2.5-グリア-α1a反応性クローン380およびS2ならびにDQ2.5-グリア-α2反応性364を含めた。特に、380クローンは2つの密接に関係するエピトープDQ2.5-グリア-α1aおよびDQ2.5-グリア-ω1を区別しないことが公知である(グンナーセンら、2017、上記)。我々は最初にDQ2.5-グリア-α1aに対するS2および380のペプチド感受性および特異性を推定し、両方とも特異的であることが確認され、S2クローンの方が幾分感受性が高かった(
図13A)。
【0292】
次いで、
図8Cで概説されたとおりに、今度はさまざまなA0A0E3SZN6バージョンのパネルを用いてアッセイを繰り返した。これらのペプチドはいずれも何ら反応性を示さなかったのに対し、すべての対照ペプチドはT細胞を容易に活性化した(
図13B)。集合的に、これはA0A0E3SZN6由来のペプチドが新規のT細胞エピトープを表すという見解を再び支持するものである。
【0293】
CeD特異的T細胞の普及率は、異なる患者間ならびに各患者における空間的(組織対末梢)および時間的(時間)勾配において変動する。しかし、たとえ高炎症性状態であってもその絶対頻度は低いことが十分に実証されている(リスネス(Risnes)ら、ジャーナル・オブ・クリニカル・インベスティゲーション(J Clin Invest.)2018;128(6):2642-2650)。最大で1~2%以下の組織存在量を有するこれらのT細胞の30~50%は未知の反応性を有する(非特許文献10およびチャオ(Qiao)S-Wら、2021、フロンティアズ・イン・イムノロジー(Front.Immunol.)12:646163)。さらに、これらの細胞のいくつかは低頻度で血液と腸との間を移動するため、我々は、確認済みのCeD患者または健常対照(HC)のいずれかに由来するHLA-DQ2.5タイプの末梢血単核球(PBMC:peripheral blood mononuclear cells)を用いてA0A0E3SZN6由来候補に対する明らかなCeD特異的反応性を検出できるかどうかを評価するために、非常に感受性の高い細胞内IFNγサイトカインフローアッセイを用いることを選択した(
図14)。
【0294】
PBMC中のT細胞の総量は、45~75%の間で変動する。よって、最初に任意の外来性ペプチド不在下のCeD PBMC T細胞(CD3+/CD4+)におけるベースラインIFN-γ検出レベルを確立した(
図14A)。次いで、T.アエスチブム(aestivum)α-グリアジン由来の十分に特徴付けられた脱アミド33量体ペプチドか、またはT.ウラルツ(urartu)A0A0E3SZN6ω-グリアジンの脱アミドされた長いバージョンのいずれかの存在下のHLA-DQ2.5陽性CeD(ドナー595)およびHC(ドナー557)由来の48時間培養されたCeDおよびHC PBMCを用いた(
図14B)。実際に、ここでCeD材料における両方のペプチドに向けてIFN-γ陽性CD4 T細胞の明らかな増殖が見られたのに対し、HCにおいてはこうした増殖が見られなかった(
図14B)。この明確な増殖は、A0A0E3SZN6ペプチドと比較して33量体の方がわずかに高かった(平均4.2%対2.8%)。特に、CD3+/CD4-細胞集団においては、INF-γ陽性細胞のこの明確な増殖が見られなかった(
図14C)。
【0295】
応答の個々の変動をよりよく理解するために、3人の異なるCeDドナーおよび2人のHCをカバーする拡張した数のPBMCサンプルによって実験を繰り返した(
図15)。グルテンエピトープに対するT細胞の応答および振幅はCeD個体間で変動することが周知であり、腸生検材料と比較して血液中の応答は通常、T細胞存在量が少ないためにより可変であるため、この実験は重要である。最初に、CeDドナー595におけるペプチド特異的応答が確認され、こうしたアッセイにおいては絶対応答にしばしば変動が見られるにもかかわらず、ペプチド反応性の序列は本質的に同一のままであった(
図15A)。さらに、ここで実際にCeDドナー依存性のペプチド反応性の変動も観察され、ドナー600はA0A0E3SZN6ペプチドを優先するように見え、ドナー595は両方に対してほぼ等しく(統計的差異なし)、ドナー585はT.アエスチブム(aestivum)α-グリアジン由来の公知の33量体を優先するように見えた(
図15A)。よって、これら2つのエピトープはどちらもドナー特異的応答を示し、検査されたPBMC材料の各々2/3に存在した。重要なことに、2つのHCにおいて応答は見られなかった(
図15B)。まとめると、これらのデータは、T.ウラルツ(urartu)A0A0E3SZN6配列が、T.アエスチブム(aestivum)α-グリアジン由来の33量体ペプチドと同等に、CeDに拘束されると考えられるHLA-DQ2.5の状況における真のT細胞エピトープであることを強く示唆する。
【配列表】
【手続補正書】
【提出日】2023-08-25
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アミノ酸配列PYPQQQQPY(SEQ ID NO:8)を含むエピトープ、または
1つ以上のQ残基がE残基に置換されたアミノ酸配列PYPQQQQPY(SEQ ID NO:8)を含むエピトープ
を含むペプチドであって、前記ペプチドが
最大で40アミノ酸の長さである、ペプチド。
【請求項2】
前記ペプチドが、アミノ酸配列QPQQPYPQQQQPY(SEQ ID NO:20)、PQQPYPQQQQPYGT(SEQ ID NO:24)、もしくはQPQQPYPQQQQPYGTSL(SEQ ID NO:22)、または1つ以上の前記Q残基がE残基に置換されたアミノ酸配列、またはそれと実質的に相同のアミノ酸配列を含み、
前記実質的に相同の配列が1、2、または3アミノ酸の置換、付加、または欠失を有する配列を含
み、
前記アミノ酸の置換、付加、または欠失が、請求項1において定義されるコア配列PYPQQQQPYの外側に位置する、請求項1に記載のペプチド。
【請求項3】
前記エピトープが、アミノ酸配列PYPQQEQPY(SEQ ID NO:25)、PYPEQEQPY(SEQ ID NO:26)、またはPYPEQQQPY(SEQ ID NO:27)を含む、請求項1または請求項2に記載のペプチド。
【請求項4】
前記ペプチドが、前記アミノ酸配列を脱アミドするトランスグルタミナーゼ2(TG2)によって得ることができる配列を含む、請求項1~3のいずれか一項に記載のペプチド。
【請求項5】
前記ペプチドがアミノ酸配列PYPQQEQPY(SEQ ID NO:25)を含み、好ましくは前記ペプチドがQPQQPYPQQEQPY(SEQ ID NO:28)、QPQQPYPQQEQPYGTSL(SEQ ID NO:30)、またはPQQPYPQQEQPYGT(SEQ ID NO:29)を含む、請求項1~4のいずれか一項に記載のペプチド。
【請求項6】
前記ペプチドがアミノ酸配列QPQQPYPQQQQPY(SEQ ID NO:20)を含み、かつ、
残基3の前記QがE残基に置換され、かつ/または、
残基10の前記QがE残基に置換され、かつ/または、
残基8の前記QがE残基に置換される;
もしくは、
前記ペプチドがアミノ酸配列PQQPYPQQQQPYGT(SEQ ID NO:24)を含み、かつ、
残基2の前記QがE残基に置換され、かつ/または、
残基9の前記QがE残基に置換され、かつ/または、
残基7の前記QがE残基に置換される;
もしくは、
前記ペプチドがアミノ酸配列QPQQPYPQQQQPYGTSL(SEQ ID NO:22)を含み、かつ、
残基3の前記QがE残基に置換され、かつ/または、
残基10の前記QがE残基に置換され、かつ/または、
残基8の前記QがE残基に置換される;
請求項1~5のいずれか一項に記載のペプチド。
【請求項7】
前記ペプチドが、アミノ酸配列:
QPQQPYPQQEQPY(SEQ ID NO:28)、
QPEQPYPQQEQPY(SEQ ID NO:31)、
QPEQPYPQQQQPY(SEQ ID NO:32)、
QPQQPYPQQEQPYGTSL(SEQ ID NO:30)、
QPEQPYPQQEQPYGTSL(SEQ ID NO:33)、
QPEQPYPQQQQPYGTSL(SEQ ID NO:34)、
PQQPYPQQEQPYGT(SEQ ID NO:29)、
PEQPYPQQEQPYGT(SEQ ID NO:35)、または
PEQPYPQQQQPYGT(SEQ ID NO:36)を含む、請求項1~6のいずれか一項に記載のペプチド。
【請求項8】
前記ペプチドが、アミノ酸配列QPQQPYP(SEQ ID NO:37)またはQPEQPYP(SEQ ID NO:38)を含む、請求項1~7のいずれか一項に記載のペプチド。
【請求項9】
前記ペプチドが、アミノ酸配列QPEQPYPQQEQPY(SEQ ID NO:31)またはQPEQPYPQQEQPYGTSL(SEQ ID NO:33)を含む、請求項8に記載のペプチド。
【請求項10】
前記ペプチドが、位置10または位置10に対応する位置にG残基を含み、
好ましくは前記ペプチドが位置10および11または位置10および11に対応する位置に残基GおよびTを含む、もしくは、
位置10および13、または位置10および13に対応する位置に残基GおよびLを含み、
前記位置が請求項1において定義される9量体に関して定義される、請求項1~9のいずれか一項に記載のペプチド。
【請求項11】
MHC分子と結合または関連付けされた請求項1~10のいずれか一項において定義されるペプチドを含む、コンジュゲートまたは複合体。
【請求項12】
請求項1~10のいずれか一項において定義されるペプチド、または
請求項11において定義されるコンジュゲートもしくは複合体をコードするヌクレオチド配列を含む、1つ以上の核酸分子。
【請求項13】
請求項12に記載の核酸分子を含む発現ベクター、または前記発現ベクターを含む細胞、もしくは請求項12に記載の核酸分子を含む細胞。
【請求項14】
請求項1~10のいずれか一項において定義されるペプチド、請求項11において定義されるコンジュゲートまたは複合体、請求項12において定義される核酸分子、もしくは請求項13において定義される発現ベクターまたは細胞を含む組成物。
【請求項15】
前記組成物がワクチン組成物である、請求項14に記載の組成物。
【請求項16】
対象におけるセリアック病を診断するための方法であって、前記方法が、
前記対象由来のサンプルと、請求項1~10のいずれか一項において定義されるペプチドまたは請求項11において定義されるコンジュゲートもしくは複合体とを接触させること、および
前記ペプチド、コンジュゲート、もしくは複合体が、前記サンプル中のT細胞と結合するかどうか、または
前記サンプルが前記ペプチド、コンジュゲート、もしくは複合体と結合する抗体を含有するかどうか、を決定することを含み、
前記ペプチド、コンジュゲート、もしくは複合体がT細胞と前記結合すること、または前記サンプル中に前記抗体が前記存在することが、前記対象がセリアック病であること、もしくはセリアック病になりやすいことを示す、方法。
【請求項17】
治療に用いるため、好ましくはセリアック病の処置もしくは予防に用いるため、または
前記ペプチド、コンジュゲート、もしくは複合体に対する対象の寛容化に用いるため、または
前記ペプチド、コンジュゲート、もしくは複合体に対する免疫応答の抑制もしくは低減に用いるための、
請求項1~10のいずれか一項において定義されるペプチド、または請求項11において定義されるコンジュゲートもしくは複合体、または請求項12において定義される核酸分子、または請求項13において定義される発現ベクターもしくは細胞。
【請求項18】
治療に用いるため、好ましくはセリアック病の処置もしくは予防に用いるため、または
前記ペプチド、コンジュゲート、もしくは複合体に対する対象の寛容化に用いるため、または
前記ペプチド、コンジュゲート、もしくは複合体に対する免疫応答の抑制もしくは低減に用いるための、
薬物もしくは組成物の製造における、請求項1~10のいずれか一項において定義されるペプチド、または請求項11において定義されるコンジュゲートもしくは複合体、または請求項12において定義される核酸分子、または請求項13において定義される発現ベクターもしくは細胞の使用。
【請求項19】
対象におけるCeDを処置もしくは予防する方法、または対象の寛容化の方法、または対象における免疫応答を抑制する方法であって、
前記方法が、請求項1~10のいずれか一項において定義されるペプチド、または請求項11において定義されるコンジュゲートもしくは複合体、または請求項12において定義される核酸分子、または請求項13において定義される発現ベクターもしくは細胞の有効量を前記対象に投与するステップを含む、方法。
【請求項20】
請求項11において定義されるコンジュゲートもしくは複合体と特異的に結合する結合タンパク質。
【請求項21】
前記結合タンパク質が、T細胞受容体、または抗体、または抗体の抗原結合ドメインを含む、請求項20に記載の結合タンパク質。
【請求項22】
前記T細胞受容体が可溶性T細胞受容体である、請求項21に記載の結合タンパク質。
【請求項23】
前記結合タンパク質が、細胞、好ましくは真核細胞、より好ましくはT細胞またはNK細胞の表面に発現される、請求項20または請求項21に記載の結合タンパク質。
【請求項24】
前記結合タンパク質が、たとえば細胞毒性部分またはsiRNAなどのペイロードと関連付けられるか、またはエフェクター細胞に対する特異性を有する第2の結合タンパク質と関連付けられる、請求項20~22のいずれか一項に記載の結合タンパク質。
【請求項25】
治療に用いるため、好ましくはセリアック病の処置または予防に用いるための、請求項20~24のいずれか一項に記載の結合タンパク質。
【請求項26】
治療に用いるため、好ましくはセリアック病の処置または予防に用いるための薬物または組成物の製造における、請求項20~24のいずれか一項に記載の結合タンパク質の使用。
【請求項27】
対象におけるセリアック病を処置または予防する方法であって、
前記方法が、請求項20~24のいずれか一項に記載の結合タンパク質の有効量を前記対象に投与するステップを含む、方法。
【請求項28】
請求項20~22のいずれか一項に記載の結合タンパク質を産生する方法であって、
前記方法が
、請求項11において定義されるコンジュゲートもしくは複合体の使用を含む、方法。
【手続補正書】
【提出日】2024-06-12
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】配列表
【補正方法】変更
【補正の内容】
【配列表】
【国際調査報告】