(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-10-23
(54)【発明の名称】焼結されたジルコニアビーズ
(51)【国際特許分類】
C04B 35/486 20060101AFI20241016BHJP
C01G 25/02 20060101ALI20241016BHJP
B02C 17/20 20060101ALI20241016BHJP
C04B 35/626 20060101ALI20241016BHJP
C04B 35/64 20060101ALI20241016BHJP
C04B 35/488 20060101ALI20241016BHJP
【FI】
C04B35/486
C01G25/02
B02C17/20
C04B35/626 750
C04B35/64
C04B35/488
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024519127
(86)(22)【出願日】2022-09-26
(85)【翻訳文提出日】2024-05-07
(86)【国際出願番号】 EP2022076706
(87)【国際公開番号】W WO2023052303
(87)【国際公開日】2023-04-06
(32)【優先日】2021-09-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】511104875
【氏名又は名称】サン-ゴバン サントル ド レシェルシュ エ デテュド ユーロペアン
(74)【代理人】
【識別番号】100118599
【氏名又は名称】村上 博司
(74)【代理人】
【識別番号】100160738
【氏名又は名称】加藤 由加里
(74)【代理人】
【識別番号】100166718
【氏名又は名称】石渡 保敬
(72)【発明者】
【氏名】ボウドネ,アンヌ-ロール
(72)【発明者】
【氏名】ベナミュール,ナッシラ
【テーマコード(参考)】
4D063
4G048
【Fターム(参考)】
4D063FF37
4D063GB05
4D063GB07
4G048AA03
4G048AA05
4G048AB01
4G048AC05
4G048AD03
4G048AE05
(57)【要約】
焼結されたビーズであって、該焼結されたビーズが、
酸化物に基づく質量百分率として、以下の化学組成:
ZrO2+HfO2+Y2O3+CeO2:100%までの残り;
0%≦Al2O3≦1.5%;
CaO≦2%;
ZrO2、HfO2、Y2O3、CeO2、Al2O3及びCaO以外の酸化物:≦5%;
ZrO2、HfO2、Y2O3及びCeO2の合計に基づくモル百分率として、
1.3%≦Y2O3≦2.5%、及び
0.1%≦CeO2≦1.7%
である、Y2O3及びCeO2の含量、並びに、
該結晶相に基づく質量百分率として、合計100%に対して、以下の結晶相:
安定化されたジルコニア:100%までの残り;
単斜晶系ジルコニア:≦15%;
安定化されたジルコニア及び単斜晶系ジルコニア以外の結晶相:<7%
を有し、
但し、
Y2O3<1.8%、但し、0.5%≦CeO2、及び/又は、
0.9%<CeO2≦1.7%、及び/又は、
10%<単斜晶系ジルコニア≦15%
である、
前記焼結されたビーズ。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
焼結されたビーズであって、該焼結されたビーズが、
酸化物に基づく質量百分率として、以下の化学組成:
ZrO
2+HfO
2+Y
2O
3+CeO
2:100%までの残り;
0%≦Al
2O
3≦1.5%;
CaO≦2%;
ZrO
2、HfO
2、Y
2O
3、CeO
2、Al
2O
3及びCaO以外の酸化物:≦5%;
ZrO
2、HfO
2、Y
2O
3及びCeO
2の合計に基づくモル百分率として、
1.3%≦Y
2O
3≦2.5%、及び
0.1%≦CeO
2≦1.7%
である、Y
2O
3及びCeO
2の含量、並びに、
該結晶相に基づく質量百分率として、合計100%に対して、以下の結晶相:
安定化されたジルコニア:100%までの残り;
単斜晶系ジルコニア:≦15%;
安定化されたジルコニア及び単斜晶系ジルコニア以外の結晶相:<7%
を有し、
但し、
Y
2O
3<1.8%、但し、0.5%≦CeO
2、及び/又は、
0.9%<CeO
2≦1.7%、及び/又は、
10%<単斜晶系ジルコニア≦15%
である、
前記焼結されたビーズ。
【請求項2】
前記Y
2O
3含量が、ZrO
2、HfO
2、Y
2O
3及びCeO
2の合計に基づくモル百分率として、2.2%以下である、請求項1に記載の焼結されたビーズ。
【請求項3】
前記Y
2O
3含量が、ZrO
2、HfO
2、Y
2O
3及びCeO
2の合計に基づくモル百分率として、1.8%以下である、請求項1又は2に記載の焼結されたビーズ。
【請求項4】
前記焼結されたビーズが、その質量の99%超の酸化物からなり、及び/又は、前記焼結されたビーズについて、
前記Y
2O
3含量が、ZrO
2、HfO
2、Y
2O
3及びCeO
2の合計に基づくモル百分率として、1.4%以上且つ1.7%以下であり、及び/又は、
前記CeO
2含量が、ZrO
2、HfO
2、Y
2O
3及びCeO
2の合計に基づくモル百分率として、0.6%以上且つ1.6%以下であり、及び/又は、
前記Al
2O
3含量が、前記酸化物に基づく質量百分率として、0.2%以上且つ1.2%以下であり、及び/又は、
前記CaO含量が、前記酸化物に基づく質量百分率として、1.0%未満、又は0.2%超であり、及び/又は、
ZrO
2、HfO
2、Y
2O
3、CeO
2、Al
2O
3及びCaO以外の酸化物の前記全含量が、前記酸化物に基づく質量百分率として、2%未満である、
請求項1~3のいずれか1項に記載の焼結されたビーズ。
【請求項5】
前記CeO
2含量が、ZrO
2、HfO
2、Y
2O
3及びCeO
2の合計に基づくモル百分率として、0.8%以上且つ1.5%以下であり、及び/又は、
前記Al
2O
3含量が、前記酸化物に基づく質量百分率として、0.8%以下である、
請求項4に記載の焼結されたビーズ。
【請求項6】
前記焼結されたビーズにおいて、前記結晶相の全量に基づく質量百分率として、
前記単斜晶系ジルコニアの含量が10%以下であり、及び/又は、
前記安定化されたジルコニア及び単斜晶系ジルコニア以外の結晶相の全含量が5%未満である、
請求項1~5のいずれか1項に記載の焼結されたビーズ。
【請求項7】
前記非晶質相の質量が、前記ビーズの質量に対する質量百分率として、実質的にゼロである、請求項1~6のいずれか1項に記載の焼結されたビーズ。
【請求項8】
前記焼結されたビーズにおいて、前記安定化されたジルコニアが実質的に、正方晶系(quadratic)ジルコニアの形態だけで存在し、及び/又は前記安定化されたジルコニアが、Y
2O
3及びCeO
2で安定化されている、請求項1~7のいずれか1項に記載の焼結されたビーズ。
【請求項9】
2μm未満の平均グレインサイズを有し、及び/又は0.20μmの標準偏差を有するグレインサイズ分布を有する、請求項1~8のいずれか1項に記載の焼結されたビーズ。
【請求項10】
0.6μm未満の平均グレインサイズを有し、及び/又は0.15μm未満の標準偏差を有するグレインサイズ分布を有する、請求項9に記載の焼結されたビーズ。
【請求項11】
請求項1~10のいずれか1項に記載のビーズを質量百分率として90%超で含む粉末。
【請求項12】
懸濁装置、粉砕機、及び表面処理機器から選択されるデバイスであって、請求項11のいずれか1項に記載のビーズの粉末を含む前記デバイス。
【請求項13】
請求項1~10のいずれか1項に記載の焼結されたビーズを製造する方法であって、
a)2μm未満のメジアン径と、工程g)の成果に基づいて請求項1~10のいずれか1項に記載の焼結されたビーズを得る為に好適な組成とを有する粒子混合物を調製する工程、
b)任意的に、前記粒子混合物を乾燥させる工程、
c)前記任意的に乾燥された粒子混合物から、出発原料を調製する工程、
d)該出発原料を、生ビーズの形態に形成する工程、
e)任意的に、洗浄する工程、
f)任意的に、乾燥させる工程、
g)1300℃超の焼結温度で焼結して、焼結されたビーズを得る工程
の連続工程を含む、前記方法。
【請求項14】
工程a)において、前記粒子混合物内に導入された1以上の出発材料粉末が、同時ミル粉砕される、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
工程a)において、前記粒子混合物が、0.5μm未満のメジアン径及び/又は2未満の比(D
90-D
10)/D
50を有する、請求項13又は14に記載の方法。
【請求項16】
工程a)において、Y
2O
3、セリア及びコランダムで少なくとも部分的に安定化された該ジルコニア粉末以外の出発材料が、前記粒子混合物内に意図的には導入されない、請求項13~15のいずれか1項に記載の方法。
【請求項17】
前記粒子混合物の粉末の1以上が、前記ビーズにおいて、同じ結晶学的相を有する同じ構成物を同じ量にてもたらす等価な粉末で、少なくとも部分的に置き換えられる、請求項13~16のいずれか1項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、焼結されたジルコニアビーズ、これらのビーズを製造する方法、及びこれらのビーズを、粉砕媒体として若しくは湿式分散剤として又は表面処理の為に使用することに関する。
【背景技術】
【0002】
塗料、インク、染料、磁気ラッカー及び農薬産業は、液体及び固体構成物の分散及び均質化の為にビーズを使用する。
【0003】
鉱物産業では、慣用的なプロセスを介して予め乾式粉砕されている場合がある材料を微粉砕する為、とりわけ炭酸カルシウム、酸化チタン、石こう、カオリン及び鉄鉱石を微粉砕する為に、ビーズを使用する。
【0004】
マイクロ粉砕(microgrinding)の分野において、丸くされた粒砂、ガラスビーズ、金属ビーズ及びセラミックビーズが既知である。
丸くされた粒砂、例えばOttawa砂、は、天然の安価な生成物であるが、現代の加圧高速粉砕機には好適でない。この理由は、砂が脆弱であり、低密度であり、質に変動があり、及び機器に対して摩損性であるからである。
広く使用されているガラスビーズは、より良好な強度及びより低い摩損性を有し、より広い直径範囲で入手可能である。
金属ビーズ、とりわけ鋼ビーズは、処理を受けている生成物に対して不活性度が低く、とりわけ鉱物フィラーの汚染及び塗料の灰色化をもたらし、過度に高密度であり、特別な粉砕機を必要とする。該ビーズは、とりわけ、機器に対して高エネルギー消費量、有意な熱及び高い機械的応力を伴う。
セラミックビーズは、ガラスビーズよりも良好な強度、より高い密度、及び優れた化学不活性度を有する。
【0005】
該ビーズは慣用的に、0.005~10mmのサイズである。
【0006】
以下が識別されうる:
セラミック成分を溶融し、該溶融物質から球形の液滴を形成し、次に上記液滴を固化することによって一般に得られる、溶融させられたセラミックビーズ、及び
セラミック粉末を冷間形成し、続いて高温で燃焼することにより該粉末を凝固させることによって一般に得られる、焼結されたセラミックビーズ。
【0007】
焼結されたビーズは通常、焼結されたビーズとは異なり、結晶グレイン(crystalline grains)の網目構造を充填する、非常に豊富な粒間ガラス相を含む。従って、焼結されたビーズ及び溶融させられたビーズが、それらのそれぞれの施与において直面する問題、並びに該問題を解決する為に採用される技術的解決法は、一般に様々である。更に、製造方法の間の有意差に起因して、溶融させられたビーズを製造する為に開発された組成物は、原則として、焼結されたビーズの製造には好適でなく、その逆もまた同様である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特に粉砕施与の為の、改善された耐摩耗性を有する焼結されたジルコニアビーズが、継続して必要である。
【0009】
本発明の一つの目的は、この必要に、少なくとも部分的に、取り組むことである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本出願人が2021年4月2日に出願した国際特許出願第PCT/EP2021/058816号で請求しているのは、焼結されたビーズであって、
酸化物に基づく質量百分率として、以下の化学組成:
ZrO2+HfO2+Y2O3+CeO2:100%までの残り;
0%≦Al2O3≦1.5%;
CaO≦2%;
ZrO2、HfO2、Y2O3、CeO2、Al2O3及びCaO以外の酸化物:≦5%;
ZrO2、HfO2、Y2O3及びCeO2の合計に基づくモル百分率として、1.8%≦Y2O3≦2.5%及び1.8%≦Y2O3≦2.5%及び0.1%≦CeO2≦0.9%である、Y2O3及びCeO2含量、並びに、
結晶相に基づく質量百分率として、合計100%に対して、以下の結晶相:
安定化されたジルコニア:100%までの残り;
単斜晶系ジルコニア:≦10%;
安定化されたジルコニア及び単斜晶系ジルコニア以外の結晶相:<7%
を有する上記焼結されたビーズに関する。
【0011】
その理由は、本発明者等が、これらの種のビーズが、特に水熱条件(hydrothermal conditions)下で、向上された耐摩耗性を示すことを見出したからである。しかしながら、相補的な詳細な研究により、これらのビーズはまた以下の場合に優れた耐摩耗性を有することが判明した:
1.3%≦Y2O3<1.8%、但し、0.5%≦CeO2≦1.8%、及び/又は、
0.9%<CeO2≦1.8%、及び/又は、
10%<単斜晶系ジルコニア≦15%。
【0012】
それ故に、本発明は、焼結されたビーズであって、該焼結されたビーズが、
前記酸化物に基づく質量百分率として、以下の化学組成:
ZrO2+HfO2+Y2O3+CeO2:100%までの残り;
0%≦Al2O3≦1.5%;
CaO≦2%;
ZrO2、HfO2、Y2O3、CeO2、Al2O3及びCaO以外の酸化物:≦5%
ZrO2、HfO2、Y2O3及びCeO2の合計に基づくモル百分率として、
1.3%≦Y2O3≦2.5%、特には1.3%≦Y2O3<1.8%、及び
0.1%≦CeO2≦1.8%、特には0.5%≦CeO2≦1.8%、特には0.9%<CeO2≦1.8%、好ましくはCeO2≦1.7%
である、Y2O3及びCeO2の含量、並びに、
該結晶相に基づく質量百分率として、合計100%に対して、以下の結晶相:
安定化されたジルコニア:100%までの残り;
単斜晶系ジルコニア:≦15%;
安定化されたジルコニア及び単斜晶系ジルコニア以外の結晶相:<7%
を有し、
但し、
Y2O3<1.8%、但し、0.5%≦CeO2、好ましくは0.8%≦CeO2、及び/又は、
0.9%<CeO2≦1.8%、好ましくはCeO2≦1.7%、及び/又は、
10%<単斜晶系ジルコニア≦15%
である、
上記焼結されたビーズに関する。
【0013】
本発明の詳細な説明の残りにおいてより詳細に示されている通り、予期せぬことに、本発明者等は、このように定義された相補的な組成範囲だけでなく、国際出願番号第PCT/EP2021/058816号において定義された範囲でも、単斜晶ジルコニアの含量が10%超且つ15%以下であることにより、粉砕(grinding)の間に優れた強度を示す焼結されたジルコニアビーズが得られうることが見出された。
【0014】
従って、本発明に従う焼結されたジルコニアビーズは、湿式分散及びマイクロ粉砕への施与に、特には十分に適している。
【0015】
第1の好ましい主な実施態様において、本発明は、焼結されたビーズであって、
酸化物に基づく質量百分率として、以下の化学組成:
ZrO2+HfO2+Y2O3+CeO2:100%までの残り;
0%≦Al2O3≦1.5%;
CaO≦2%;
ZrO2、HfO2、Y2O3、CeO2、Al2O3及びCaO以外の酸化物:≦5%;
ZrO2、HfO2、Y2O3及びCeO2の合計に基づくモル百分率として、
1.3%≦Y2O3<1.8%及び0.5%≦CeO2≦1.8%、好ましくは0.5%≦CeO2≦1.7%、好ましくは0.8%≦CeO2≦1.7%
である、Y2O3及びCeO2の含量、並びに、
該結晶相に基づく質量百分率として、合計100%に対して、以下の結晶相:
安定化されたジルコニア:100%までの残り;
単斜晶系ジルコニア:≦15%、好ましくは≦10%;
安定化されたジルコニア及び単斜晶系ジルコニア以外の結晶相:<7%
を有する、
上記焼結されたビーズに関する。
【0016】
第2の好ましい主な実施態様において、本発明は、焼結されたビーズであって、
酸化物に基づく質量百分率として、以下の化学組成:
ZrO2+HfO2+Y2O3+CeO2:100%までの残り;
0%≦Al2O3≦1.5%;
CaO≦2%;
ZrO2、HfO2、Y2O3、CeO2、Al2O3及びCaO以外の酸化物:≦5%;
ZrO2、HfO2、Y2O3及びCeO2の合計に基づくモル百分率として、
1.3%≦Y2O3≦2.5%、及び
0.9%<CeO2≦1.8%、好ましくは0.9%<CeO2≦1.7%
である、Y2O3及びCeO2の含量、並びに、
該結晶相に基づく質量百分率として、合計100%に対して、以下の結晶相:
安定化されたジルコニア:100%までの残り;
単斜晶系ジルコニア:≦15%、好ましくは≦10%;
安定化されたジルコニア及び単斜晶系ジルコニア以外の結晶相:<7%
を有する、
上記焼結されたビーズに関する。
【0017】
図1は、国際特許出願第PCT/EP2021/058816号の組成範囲10と、本発明の第1及び第2の主な実施態様に従う相補的組成範囲12を示す。
【0018】
第3の主な実施態様において、本発明は、焼結されたビーズであって、
酸化物に基づく質量百分率として、以下の化学組成:
ZrO2+HfO2+Y2O3+CeO2:100%までの残り;
0%≦Al2O3≦1.5%;
CaO≦2%;
ZrO2、HfO2、Y2O3、CeO2、Al2O3及びCaO以外の酸化物:≦5%;
ZrO2、HfO2、Y2O3及びCeO2の合計に基づくモル百分率として、
1.3%≦Y2O3≦2.5%、及び
0.1%<CeO2≦1.8%
である、Y2O3及びCeO2の含量、
を有し、
但し、Y2O3<1.8%である場合に、0.5%≦CeO2であり、並びに、
該結晶相に基づく質量百分率として、合計100%に対して、以下の結晶相:
安定化されたジルコニア:100%までの残り;
10%<単斜晶系ジルコニア≦15%;
安定化されたジルコニア及び単斜晶系ジルコニア以外の結晶相:<7%
を有する、
上記焼結されたビーズに関する。
【0019】
国際特許出願第PCT/EP2021/058816号のオプション機能が主要な実施態様と技術的に互換性がある限り、その機能は本実施態様に対しても任意的に適用される。
【0020】
主要な実施態様に関係なく、本発明に従う焼結されたジルコニアビーズは、これらの特徴が該主要な実施態様に適合することを条件として、下記の任意の特徴の1以上を有しうる:
該焼結されたビーズは、その質量の99%超の酸化物からなり;
Y2O3の含量は、ZrO2、HfO2、Y2O3及びCeO2の合計に基づくモル百分率として、2.4%未満、好ましくは2.2%未満、好ましくは2.0%未満、好ましくは1.9%未満、好ましくは1.8%、好ましくは1.7%以下であり、及び/又は好ましくは1.4%以上であり;
Y2O3の含量は、ZrO2、HfO2、Y2O3及びCeO2の合計に基づくモル百分率として、1.3%以上、好ましくは1.4%以上、且つ1.8%未満、好ましくは1.7%以下、であり;
CeO2の含量は、ZrO2、HfO2、Y2O3及びCeO2の合計に基づくモル百分率として、0.6%以上、好ましくは0.7%以上、好ましくは0.8%以上、且つ1.7%以下、好ましくは1.6%以下、好ましくは1.5%以下であり;
Al2O3の含量は、前記酸化物に基づく質量百分率として、0.2%以上且つ1.2%以下、好ましくは0.8%以下、又は0.1%未満、であり;
CaOの含量は、前記酸化物に基づく質量百分率として、1.0%未満又は0.2%超であり;
ZrO2、HfO2、Y2O3、CeO2、Al2O3及びCaO以外の酸化物の全含量は、前記酸化物に基づく質量百分率として、2%未満であり;
前記結晶相の全量に基づく質量百分率として、:
前記単斜晶系ジルコニアの含量は10%以下であり、好ましくは8%以下であり、好ましくは5%以下であり;
前記安定化されたジルコニア及び単斜晶系ジルコニア以外の結晶相の全含量は5%未満であり;
前記非晶質相の質量は、前記ビーズの質量に対する質量百分率として、実質的にゼロであり;
前記安定化されたジルコニアは実質的に、正方晶系(quadratic)ジルコニアの形態だけで存在し;
前記安定化されたジルコニアは、Y2O3及びCeO2で安定化されており;
該焼結されたビーズは、2μm未満の平均グレインサイズを有し、及び/又は0.20μm未満の標準偏差を有するグレインサイズ分布を有し;
該焼結されたビーズは、0.6μm未満の平均グレインサイズを有し、及び/又は0.15μm未満の標準偏差を有するグレインサイズ分布を有する。
【0021】
上記されたこれらの任意の特徴は、第3の主な実施態様については、前記焼結されたビーズの組成に関するものを除いて好ましい。
【0022】
特に、第3の主な実施態様において、本発明に従う焼結されたジルコニアビーズはまた、下記の任意且つ好ましい特徴の1以上を有しうる:
Y2O3の含量は、ZrO2、HfO2、Y2O3及びCeO2の合計に基づくモル百分率として、1.9%以上、好ましくは2%以上、及び/又は好ましくは2.4%以下、好ましくは2.2%以下、であり;
CeO2の含量は、ZrO2、HfO2、Y2O3及びCeO2の合計に基づくモル百分率として、0.2%以上、好ましくは0.3%以上、好ましくは0.4%以上、及び/又は0.8%未満、好ましくは0.7%未満、好ましくは0.6%未満であり;
該焼結されたビーズは、その質量の98超、好ましくは99%超、好ましくは99.5%超、好ましくは99.9%超、の酸化物からなり;
Al2O3の含量は、前記酸化物に基づく質量百分率として、0.2%以上、好ましくは0.25%以上、及び好ましくは1.2%、好ましくは1%以下、好ましくは0.8%以下、又は0.1%未満であり;
CaOの含量は、前記酸化物に基づく質量百分率として、1.0%未満又は0.2%超であり;
ZrO2、HfO2、Y2O3、CeO2、Al2O3及びCaO以外の酸化物の全含量は、前記酸化物に基づく質量百分率として、4%未満、好ましくは3%未満、好ましくは2%未満、好ましくは1%未満、好ましくは0.8%未満、好ましくは0.5%未満である。
【0023】
本発明はまた、本発明に従うビーズを質量百分率として90%超、好ましくは95%超、好ましくは実質的に100%、含むビーズ粉末に関する。
【0024】
本発明はまた、懸濁装置(suspension)、粉砕機、及び表面処理機器から選択されるデバイスであって、本発明に従うビーズの粉末を含む該デバイスに関する。
【0025】
本発明はまた、本発明に従う焼結されたジルコニアビーズを製造する方法であって、
a)2μm未満のメジアン径と、工程g)の成果に基づいて本発明に従う焼結されたジルコニアビーズを得るのに好適な組成とを有する粒子混合物を調製する工程、
b)任意的に、上記粒子混合物を乾燥させる工程、
c)上記任意的に乾燥された粒子混合物から、出発原料を調製する工程、
d)該出発原料を、生ビーズの形態に形成する工程、
e)任意的に、洗浄する工程、
f)任意的に、乾燥させる工程、
g)1300℃超の焼結温度で焼結して、焼結されたビーズを得る工程
の連続工程を含む、上記方法に関する。
【0026】
本発明に従う製造方法はまた、以下の任意的な特徴の1以上を有しうる:
工程a)において、上記粒子混合物内に導入された1以上の出発材料粉末は、粉砕され、好ましくは同時ミル粉砕され(co-milled)、
工程a)において、該粒子混合物は、0.5μm未満のメジアン径及び/又は2未満の比(D90-D10)/D50を有し、
工程a)において、Y2O3、セリア及びコランダムで少なくとも部分的に安定化された該ジルコニア粉末以外の出発材料は、該粒子混合物内に意図的には導入されず、
該粒子混合物の粉末の1以上は、上記ビーズにおいて、同じ結晶学的相を有する同じ構成物を同じ量にてもたらす等価な粉末で、少なくとも部分的に置き換えられる。
【0027】
該焼結されたビーズに関して、及びこれらのビーズの組成に関して上記に列挙した任意の特徴及び好ましい特徴はまた、該ビーズを製造する為の工程a)において使用される粒子混合物の任意の特徴及び好ましい特徴である。
【0028】
本発明は最後に、粉砕媒体として、より特には湿式粉砕の為の粉砕媒体として、湿式分散剤として、又は表面処理の為に、本発明に従うビーズ粉末を使用する方法、特には本発明に従う方法によって製造されたビーズ粉末を使用する方法、に関する。
【0029】
定義
【0030】
酸化物含量の合計(即ち、これらの含量が、符号「+」によって関連付けられる式)は、この符号「+」によって関連付けられた2種の酸化物が、必ずしも同時に存在することを暗示しない。
【0031】
語「粒子」は、粉末における個別化された固体生成物を意味する。
【0032】
語「粉末」及び「粒子混合物」は、慣用的に同義である。明確にする為に、本説明における語「粒子混合物」は、本発明に従う方法の工程a)において製造される粉末を示す。
【0033】
慣用的に、語「焼結」は、生粒子の構成物の一部(しかし全てではない)の部分的又は全体的溶融を場合により伴う、1100℃超での熱処理による、該生粒子(顆粒凝集体)の凝固を云う。
【0034】
焼結されたジルコニアビーズの「グレイン」は、焼結によって凝集させられた粒子混合物の粒子からなる。従って、本発明に従う焼結されたビーズは、焼結によって連結させられた複数のグレインの凝集体からなる。該ビーズはまた、非晶質相を含みうる。
【0035】
語「ビーズ」は、真球度が得られたやり方とは無関係に、0.6超の真球度、即ちその最小フェレ直径(smallest Ferret diameter)とその最大フェレ直径(largest Ferret diameter)との比、を有する粒子を意味する。好ましくは、本発明に従うビーズは、0.7超の真球度を有する。
【0036】
ビーズの「サイズ」は、その最小フェレ直径を云う。
【0037】
粉末又は粒子混合物の「パーセンタイル」10(D10と示される)、50(D50と示される)及び90(D90と示される)は、それぞれ該粉末又は該粒子混合物の累積粒径分布曲線上の、それぞれ10質量%、50質量%及び90質量%に等しい百分率に対応する粒径を云い、上記粒径は、昇順でランク付けされる。従って、この定義に従って、該粉末又は粒子混合物における粒子の10質量%は、D10よりも小さいサイズであり、該粒子の90質量%は、D10以上である。パーセンタイルは、例えば、レーザー粒度計を用いて決定されうる。
【0038】
粒子粉末又は粒子混合物の「メジアン径」は、50パーセンタイル、即ちD50、と呼ばれる。従って、メジアン径は、粉末の粒子又は粒子混合物を、等しい質量の第1の集団と第2の集団に分け、これらの第1の集団及び第2の集団は、それぞれメジアン径以上又はメジアン径未満のサイズを有する粒子だけを含む。
【0039】
焼結されたビーズにおけるグレインの「平均サイズ」は、「平均線形切片」法を用いることによって測定されたサイズである。このタイプの測定法は、ASTM規格E1382において記載されている。
【0040】
語「焼結されたビーズ」は、生ビーズの焼結によって得られた固体ビーズを意味する。
【0041】
「他の酸化物」は好ましくは、「不純物」、即ち出発材料に必然的に導入された不可避の酸化物、である。特に、ナトリウム及び他のアルカリ金属の酸化物は、不純物である。言及されうる例は、Na2O又はK2Oを包含する。しかしながら、酸化ハフニウムは、不純物とはみなされない。5%未満の全不純物含量は、得られる結果を実質的に修正しないと考えられる。
【0042】
本特許出願の文脈において、HfO2は、ZrO2から化学的に解離されないと考えられる。従って、ジルコニアを含む生成物の化学組成において、「ZrO2」又は「ZrO2+HfO2」は、これら2種の酸化物の全含量を云う。本発明に従って、HfO2は、出発原料に意図的には添加されない。従って、HfO2は微量の酸化ハフニウムのみを云うのであり、その理由は、この酸化物がジルコニア供給源に、一般に2%未満の含量で常に自然に存在するからである。
【0043】
明確にする為に、語「ZrO2」(又は「ZrO2+HfO2」)及び「Al2O3」は、該組成物におけるこれらの酸化物の含量を云う為に使用され、「ジルコニア」及び「コランダム」は、それぞれZrO2+HfO2、及びAl2O3からなるこれらの酸化物の結晶相を云う。しかしながら、これらの酸化物は、他の相にも存在しうる。語「ジルコニア」は慣用的に、少量のハフニア相を含み、該相は、X線回折によって識別することができない。
【0044】
語「安定化されたジルコニア」は、正方晶系(quadratic)ジルコニア及び立方晶系(cubic)ジルコニアからなる組み合わせを意味する。
【0045】
語「少なくとも部分的に安定化されたジルコニア」は、部分的に安定化されたジルコニア又は完全に安定化されたジルコニアを意味する。部分的に安定化されたジルコニアは、単斜晶系ジルコニアを含み、結晶相の全量に基づく質量百分率として50%未満の単斜晶系ジルコニア含量を有するジルコニアであり、存在するその他の相は、正方晶相及び/又は立方晶相である。CeO2及びY2O3は、該ジルコニアを安定化するように働くが、該ジルコニアの外側にも存在しうる。
【0046】
語「化合物の粉末」は、90質量%超の上記化合物を含む、95質量%超の粒子を含む粉末を意味する。従って、コランダム粉末は、90質量%超のコランダムを含むところの95質量%超の粒子を含む。「正方晶系ジルコニア粉末」は、90質量%超の正方晶系ジルコニアを含むところの95質量%超の粒子を含む。「安定化されたジルコニア粉末」は、90質量%超の安定化されたジルコニアを含むところの95質量%超の粒子を含む。
【0047】
酸化物の語「前駆体」は、本発明に従う製造方法の焼結工程中に、上記酸化物を提供することができる1以上の構成物を意味する。例えば、水酸化アルミニウムは、アルミナの前駆体である。
【0048】
酸化物の前駆体の量は、焼結の間に上記量の上記酸化物をもたらす場合、上記酸化物の量に「等価」であるとされる。
【0049】
比表面積は、Journal of the American Chemical Society, 60 (1938), pages 309 to 316に記載されているBET(ブルナウアー・エメット・テラー(Brunauer Emmett Teller))法により計算される。
【0050】
焼結されたジルコニア生成物の、特に焼結されたビーズの、語「絶対密度」は、下記の式(1)を用いることによって計算された絶対密度ADを意味する:
AD=100/[(x/3.987)+(100-x)/ADz] (1)
ここで、xは、質量百分率でのアルミナ含量であり、
ADzは、ジルコニアの単位セルの質量を上記単位セルの体積で割ることによって計算された、Y2O3及びCeO2で安定化された該ジルコニアの絶対密度であり、該ジルコニアは、正方晶相においてのみ安定化されると考えられる。該単位セルの体積は、X線回折によって決定されるセルパラメーターを用いることによって計算される。該単位セルの質量は、上記単位セルに存在するZr、O、Y及びCe元素の質量の合計に等しく、Y2O3及びCeO2の全てが、該ジルコニアを安定化すると考えられる。
【0051】
焼結された生成物の、特に焼結されたビーズの、語「嵩密度」は慣用的に、上記焼結された生成物によって占められた体積によって割られた、上記焼結された生成物の質量に等しい比を意味する。該語は、アルキメデスの推力(Archimedes’ thrust)の原理に従って、吸水膨潤(imbibition)によって測定されうる。
【0052】
焼結された生成物の、特に焼結されたビーズの、語「相対密度」は、百分率として表される、絶対密度によって割られた、見かけの密度に等しい比を意味する。
【0053】
別段言及されない限り、全ての平均は、算術平均である。
【0054】
別段言及されない限り、全ての百分率は、酸化物に基づく質量百分率である。
【0055】
語「含む」(include)、「有する」及び「含む」(comprise)は、非限定的な様式で解釈されるべきである。
【0056】
該ビーズの全ての特徴は、実施例について記載されているプロトコルに従って測定されうる。
【0057】
本発明の他の特徴及び利点がまた、下記の詳細な説明を読み且つ添付の図面を検討することで明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【
図1】
図1は、本発明の第1の主な実施態様及び第2の主な実施態様に従う組成範囲を表すグラフであり、国際特許出願第PCT/EP2021/058816号のものであり、x軸は、Y
2O
3の含有量を表し、y軸は、ZrO
2、HfO
2、Y
2O
3及びCeO
2の合計に基づくモル百分率として、CeO
2の含有量を表す。
【発明を実施するための形態】
【0059】
焼結されたジルコニアビーズ
【0060】
本発明に従う焼結されたジルコニアビーズは、その組成に関して注目されるべきである。
【0061】
驚くべきことに、理論的に説明することはできないものの、本発明者等は、Y2O3及びCeO2が、本発明において示されている含量で同時に存在することにより、粉砕の間の優れた耐性が達成可能になることを発見した。
【0062】
本発明に従う焼結されたジルコニアビーズは好ましくは、その質量の98%超、好ましくは99%超、好ましくは99.5%超、好ましくは99.9%超、の酸化物からなる。好ましくは、本発明に従う焼結されたジルコニアビーズは、酸化物から実質的に全体的になる。
【0063】
好ましくは、本発明に従う焼結されたジルコニアビーズは、ZrO2、HfO2、Y2O3及びCeO2の合計に基づくモル百分率として、1.4%以上、及び/又は好ましくは2.4%未満、好ましくは2.2%未満、好ましくは2.0%未満、好ましくは1.9%未満、好ましくは1.8%未満、好ましくは1.7%未満、のY2O3含量を有する。
【0064】
好ましくは、本発明に従う焼結されたジルコニアビーズは、ZrO2、HfO2、Y2O3及びCeO2の合計に基づくモル百分率として、1.3%以上、好ましくは1.4%以上、及び1.8%未満、好ましくは1.7%%未満、のY2O3含量を有する。
【0065】
好ましくは、本発明に従う焼結されたジルコニアビーズは、ZrO2、HfO2、Y2O3及びCeO2の合計に基づくモル百分率として、0.6%以上、好ましくは0.7%以上、好ましくは0.8%以上、及び/又は好ましくは1.7%以下、好ましくは1.6%未満、好ましくは1.5%以下、のCeO2含量を有する。
【0066】
好ましくは、本発明に従う焼結されたジルコニアビーズは、ZrO2、HfO2、Y2O3及びCeO2の合計に基づくモル百分率として、1.4%以上、及び/又は好ましくは2.4%未満、好ましくは2.2%未満、好ましくは2.0%未満、好ましくは1.9%未満、好ましくは1.8%未満、好ましくは1.7%以下、のY2O3含量を有し、並びに0.6%以上、好ましくは0.7%以上、好ましくは0.8%以上、及び/又は好ましくは1.7%以下、好ましくは1.6%以下、好ましくは1.5%以下、のCeO2含量を有する。有利なことには、該焼結されたジルコニアビーズは、粉砕の間に摩耗に対する優れた耐性を有する。
【0067】
好ましい実施態様では、本発明に従う焼結されたジルコニアビーズは、該酸化物に基づく質量百分率として、0.2%以上、好ましくは0.25%以上且つ好ましくは1.2%以下、好ましくは1%以下、好ましくは0.8%以下、のAl2O3含量を有する。
【0068】
しかしながら、試験により、Al2O3の存在は必須ではないことが示された。1つの実施態様において、本発明に従う焼結されたジルコニアビーズは、該酸化物に基づく質量百分率として、0.1%未満、0.005%未満、0.003%未満、0.002%未満、又は実質的にゼロ、のAl2O3含量を有する。
【0069】
好ましくは、本発明に従う焼結されたビーズは、該酸化物に基づく質量百分率として、1.5%未満、好ましくは1.0%未満、のCaO含量を有する。
【0070】
1つの実施態様では、本発明に従う焼結されたジルコニアビーズは、該酸化物に基づく質量百分率として、0.1%超、好ましくは0.2%超、好ましくは0.3%超、のCaO含量を有する。
【0071】
好ましくは、本発明に従う焼結されたビーズは、該酸化物に基づく質量百分率として、4%未満、好ましくは3%未満、好ましくは2%未満、好ましくは1%未満、好ましくは0.8%未満、好ましくは0.5%%未満、の全含量の、ZrO2、HfO2、Y2O3、CeO2、Al2O3及びCaO以外の酸化物を有する。好ましくは、本発明に従う焼結されたジルコニアビーズにおいて、ZrO2、HfO2、Y2O3、CeO2、Al2O3及びCaO以外の該酸化物は、不純物である。
【0072】
好ましくは、本発明に従う焼結されたジルコニアビーズにおいて、ZrO2、HfO2、Y2O3、CeO2、Al2O3及びCaO以外の任意の酸化物は、2.0%未満、好ましくは1.5%未満、好ましくは1.0%未満、好ましくは0.8%未満、好ましくは0.5%未満、好ましくは0.3%未満、の量で存在する。
【0073】
本発明に従う焼結されたジルコニアビーズは好ましくは、結晶相の全量に基づく質量百分率として、10%以下、好ましくは8%以下、好ましくは5%以下、好ましくは実質的にゼロ、の含量の単斜晶系ジルコニアを有する。
【0074】
本発明に従う焼結されたジルコニアビーズは好ましくは、結晶相の全量に基づく質量百分率として、6%未満、好ましくは5%未満、又は更には4%未満、の全含量の、安定化されたジルコニア及び単斜晶系ジルコニア以外の結晶相を有する。
【0075】
本発明に従う焼結されたジルコニアビーズにおいて、該ジルコニアは、Y2O3及びCeO2で安定化される。好ましくは、該安定化されたジルコニアは、実質的に正方晶系ジルコニアの形態だけで存在する。
【0076】
好ましくは、本発明に従うジルコニアの該焼結されたビーズにおいて、非晶質相、即ちガラス相(vitreous)、の質量は、前記ビーズの質量に対する質量百分率として、7%未満、好ましくは5%未満、好ましくは実質的にゼロ、である。
【0077】
本発明に従う焼結されたジルコニアビーズは、2μm未満、好ましくは1.5μm未満、好ましくは1μm未満、好ましくは0.9μm未満、好ましくは0.8μm未満、好ましくは0.6μm未満、好ましくは0.5μm未満、且つ好ましくは0.1μm超、好ましくは0.15μm超、の平均グレインサイズを有する。有利なことには、粉砕の間の耐性が改善される。
【0078】
好ましくは、本発明に従う焼結されたジルコニアビーズは、0.20μm未満、好ましくは0.15μm未満、好ましくは0.1μm未満、の標準偏差を有するグレインサイズ分布を有する。
【0079】
好ましい実施態様において、本発明に従う焼結されたジルコニアビーズは、以下を有する:
該酸化物に基づく質量百分率として、下記の化学組成:
ZrO2+HfO2+Y2O3+CeO2:100%までの残り;
0%≦Al2O3≦1.5%、ここで、前記Al2O3含量は好ましくは、0.2%以上、好ましくは0.25%以上且つ好ましくは1.2%以下、好ましくは1%以下、好ましくは0.8%以下、である、
CaO≦2%、ここで、該CaO含量は好ましくは、1.5%未満、好ましくは1.0%未満、である)、
ZrO2、HfO2、Y2O3、CeO2、Al2O3及びCaO以外の酸化物、すなわち「他の酸化物」、≦5%、ここで、「他の酸化物」の含量は好ましくは、4%未満、好ましくは3%未満、好ましくは2%未満、好ましくは1%未満、より好ましくは0.8%未満、好ましくは0.5%未満、である、
ZrO2、HfO2、Y2O3及びCeO2の合計に基づくモル百分率として、該Y2O3含量が1.3%以上、好ましくは1.4%以上、及び1.8%以下、好ましくは1.7%以下であり並びに該CeO2含量が0.6%以上、好ましくは0.7%以上、好ましくは0.8%以上、及び1.7%以下、好ましくは1.6%以下、好ましくは1.5%以下、であるところのY2O3及びCeO2含量、並びに、
結晶相に基づく質量百分率として、合計100%に対して、下記の結晶相:
安定化されたジルコニア:100%までの残り、ここで、該安定化されたジルコニアは、Y2O3及びCeO2で安定化されており、好ましくは実質的に正方晶系ジルコニアの形態だけで存在する、
単斜晶系ジルコニア≦15%、ここで、前記単斜晶系ジルコニアの含量は好ましくは、10%以下、好ましくは8%以下、好ましくは5%以下、好ましくは実質的にゼロ、である、
安定化されたジルコニア及び単斜晶系ジルコニア以外の結晶相、すなわち「他の結晶相」:<7%、ここで、他の結晶相の含量は好ましくは、5%未満、好ましくは実質的にゼロ、である、並びに、
該焼結されたジルコニアビーズの質量に対する質量百分率として、7%未満、好ましくは5%未満、好ましくは実質的にゼロ、の質量の非晶質相。
【0080】
上記好ましい実施態様において、該焼結されたジルコニアビーズは好ましくは、2μm未満、好ましくは1.5μm未満、好ましくは1μm未満、好ましくは0.9μm未満、好ましくは0.8μm未満、好ましくは0.6μm未満未満、好ましくは0.5μm未満、且つ好ましくは0.1μm超、好ましくは0.15μm超、の平均グレインサイズを有する。
【0081】
好ましくは、本発明に従う焼結されたジルコニアビーズは、99%超、好ましくは99.5%超、好ましくは99.6%超、好ましくは99.7%超、好ましくは99.8%超、好ましくは99.9%超、の相対密度を有し、ここで、絶対密度は、既に記載されている方法に従って計算される。
【0082】
本発明に従う焼結されたジルコニアビーズは好ましくは、10mm未満、好ましくは2.5mm未満及び/又は0.005mm超、好ましくは0.01mm超、好ましくは0.02mm超、好ましくは0.03mm超、のサイズを有する。
【0083】
本発明に従う焼結されたジルコニアビーズは好ましくは、0.7超、好ましくは0.8超、好ましくは0.85超、又は更には0.9超、の真球度を有する。
【0084】
本発明に従う焼結されたジルコニアビーズは、本発明に従う製造方法を用いることによって製造されうる。
【0085】
焼結されたジルコニアビーズを製造する方法
【0086】
本発明に従う焼結されたジルコニアビーズを製造する為に、上述され、以下に詳説される工程a)~g)が実施されうる。
【0087】
工程a)において、2μm未満のメジアン径を有する粒子混合物が、調製される。該粒子混合物の組成は、該焼結されたジルコニアビーズが、本発明に従う組成を有するように、それ自体既知の方式で適合させられる。
【0088】
該出発材料粉末は、密に混合される。
【0089】
該出発材料粉末は、生じた粒子混合物が、2μm未満、好ましくは1.5μm未満、好ましくは1μm未満、好ましくは0.8μm未満、好ましくは0.6μm未満、好ましくは0.5μm未満、好ましくは0.4μm未満、好ましくは0.3μm未満、及び/又は好ましくは0.05μm超、のメジアン径を有するように、個々に粉砕されうるか、又は好ましくは同時ミル粉砕されうる。この粉砕は、湿式粉砕でありうる。粉砕又は同時ミル粉砕はまた、密な混合物を得る為に使用されうる。
【0090】
好ましくは、該粒子混合物は、2未満、好ましくは1.5未満、好ましくは1未満、の比(D90-D10)/D50を有する。
【0091】
Y2O3及びCeO2は、ジルコニアの既知の安定剤である。該粒子混合物において、それらは、該ジルコニアを安定化しうるか、又は安定化しえない。しかしながら、本発明に従って、該粒子混合物は、本発明に従う焼結されたジルコニアビーズをもたらすはずである。
【0092】
該粒子混合物において、該ジルコニアは好ましくは、Y2O3で少なくとも部分的に安定化されている。好ましくは次に、CeO2供給源として、CeO2セリア粉末が使用される。上記実施態様において、該ジルコニア粉末は、Y2O3で少なくとも部分的に安定化されており、BET法により計算された、0.5m2/g超、好ましくは1m2/g超、好ましくは1.5m2/g超、及び/又は20m2/g未満、好ましくは18m2/g未満、好ましくは15m2/g未満、の比表面積を有する。有利なことには、一般に懸濁状態での、該任意的な粉砕は、それによって促進される。更に、工程f)の焼結温度は、低減されうる。上記実施態様において、Y2O3で少なくとも部分的に安定化された上記ジルコニア粉末中、該ジルコニアは、実質的に正方晶形態だけで存在する。
【0093】
セリア及び/又はイットリア及び/又はジルコニア前駆体がまた、該粒子混合物において使用されうる。
【0094】
該セリア及び/若しくは該セリア前駆体、並びに/又は該イットリア及び/若しくは該イットリア前駆体は、焼結後に該ジルコニアが少なくとも部分的に安定化されるように、粉末の形態で、即ち該ジルコニアとは別個の形態で、該粒子混合物に部分的に又は完全に組み込まれうる。この実施態様では、該イットリアの粉末メジアン径及び/若しくはイットリア前駆体メジアン径、並びに/又はセリア粉末メジアン径及び/若しくは該セリア前駆体のメジアン径は好ましくは、1μm未満、好ましくは0.5μm未満、より好ましくは0.3μm未満、である。それによって有利なことに、該ジルコニアの安定化効率は、焼結の間に改善される。
【0095】
1つの実施態様において、該粒子混合物は、安定化された又は安定化されていないジルコニア及びイットリア及び/又はセリアが、密に混合されている粒子を含む。このような密な混合物は、例えば供沈殿、熱加水分解又は噴霧によって得られ、任意的に熱処理によって凝固させられうる。上記粒子混合物において、イットリア及び/又はセリアは、当量の1以上の前駆体で置き換えられうる。
【0096】
好ましくは、該粒子混合物は、いかなるイットリア前駆体も含まない。
【0097】
好ましくは、該粒子混合物は、いかなるセリア前駆体も含まない。
【0098】
好ましくは、該粒子混合物は、いかなるジルコニア前駆体も含まない。
【0099】
好ましくは、該粒子混合物は、いかなる単斜晶系ジルコニア粉末も含まない。
【0100】
好ましくは、第1の主な実施態様及び第2の主な実施態様について、並びにこれらの特徴がこれらの実施態様に適合する限りにおいて、該Y2O3含量は、前記粒子混合物中に存在するZrO2、HfO2、Y2O3及びCeO2の合計に基づくモル百分率として、1.4%以上、及び/または好ましくは2.4%以下、好ましくは2.2%未満、好ましくは2.0%未満、好ましくは1.9%未満、好ましくは1.8%未満、又は好ましくは1.7%以下、である。
【0101】
好ましくは、第1の主な実施態様及び第2の主な実施態様について、並びにこれらの特徴がこれらの実施態様に適合する限りにおいて、該Y2O3含量は、前記粒子混合物中に存在するZrO2、HfO2、Y2O3及びCeO2の合計に基づくモル百分率として、1.3%以上、好ましくは1.4%以上、及び1.8%未満、好ましくは1.7%以下、である。
【0102】
好ましくは、第1の主な実施態様及び第2の主な実施態様について、並びにこれらの特徴がこれらの実施態様に適合する限りにおいて、該CeO2含量は、前記粒子混合物中に存在するZrO2、HfO2、Y2O3及びCeO2の合計に基づくモル百分率として、0.6%以上、好ましくは0.7%以上、好ましくは0.8%以上、及び/又は1.7%以下、1.6%以下、好ましくは1.5%以下、である。
【0103】
好ましくは、第1の主な実施態様及び第2の主な実施態様について、並びにこれらの特徴がこれらの実施態様に適合する限りにおいて、前記粒子混合物中に存在するZrO2、HfO2、Y2O3及びCeO2の合計に基づくモル百分率として、該Y2O3含量は、1.4%以上、及び/又は好ましくは2.4%以下、好ましくは2.2%未満、好ましくは2.0%未満、好ましくは1.9%未満、好ましくは1.8%未満、好ましくは1.7%以下、であり、並びに前記CeO2含量は、0.6%以上、好ましくは0.7%以上、好ましくは0.8%以上、及び/又は好ましくは1.7%以下、好ましくは1.6%以下、好ましくは1.5%以下、である。有利には、前記粒子混合物から得られる焼結されたジルコニアビーズは、粉砕の間に優れた耐性を有する。
【0104】
好ましくは、第1の主な実施態様及び第2の主な実施態様について、並びにこれらの特徴がこれらの実施態様に適合する限りにおいて、前記粒子混合物中に存在するZrO2、HfO2、Y2O3及びCeO2の合計に基づくモル百分率として、該Y2O3含量は、1.3%以上、好ましくは1.4%以上、及び1.8%未満、好ましくは1.7%以下、であり、並びにCeO2含量は、0.6%以上、好ましくは0.7%以上、好ましくは0.8%以上、及び好ましくは1.7%以下、好ましくは1.6%以下、好ましくは1.5%以下、である。
【0105】
好ましい実施態様において、該粒子混合物は、該粒子混合物の質量に基づく質量百分率として、0.2%以上、好ましくは0.25%以上且つ好ましくは1.2%以下、好ましくは1%以下、好ましくは0.8%以下、の量のアルミナ粉末を含む。有利なことには、それによって、該粒子混合物の易焼結性が改善される。該アルミナは、当量の前駆体で完全に又は部分的に置き換えられうる。好ましくは、該粒子混合物は、いかなるアルミナ前駆体も含まない。より好ましくは、該アルミナは、本質的にコランダムの形態で存在し、該コランダムは好ましくは、5μm未満、好ましくは3μm未満、好ましくは1μm未満、のメジアン径を有する。
【0106】
しかしながら、試験により、アルミナの存在は必須ではないことが示された。1つの実施態様において、該アルミナ含量は特に、該粒子混合物の質量に基づく質量百分率として、0.1%未満、0.05%未満、0.03%未満、0.01%未満、又は実質的にゼロ、でありうる。
【0107】
1つの実施態様において、該粒子混合物は、
Y2O3で少なくとも部分的に安定化されたジルコニア、
セリア、
コランダム
の粉末を含む。
【0108】
該酸化物を提供する該粉末は好ましくは、ZrO2、HfO2、Y2O3、CeO2、Al2O3及びCaO以外の酸化物の全含量が、該酸化物に基づく質量百分率として、5%未満になるように選択される。
【0109】
好ましくは、Y2O3、セリア及びコランダムで少なくとも部分的に安定化されたジルコニアの粉末以外の出発材料は、該粒子混合物に意図的には導入されず、存在するその他の酸化物は、不純物である。
【0110】
好ましくは、使用される粉末は、それぞれ5μm未満、好ましくは3μm未満、好ましくは2μm未満、好ましくは1μm未満、好ましくは0.7μm未満、好ましくは0.6μm未満、好ましくは0.5μm未満、好ましくは0.4μm未満、又は更には0.3μm未満、のメジアン径を有する。
【0111】
該実施態様に関わらず、上述された該粒子混合物の該粉末の1以上は、等価な粉末で、即ち本発明に従うビーズの製造中に、上記ビーズにおいて同量の同じ構成物(同じ組成、同じ結晶学的相)をもたらす粉末で、少なくとも部分的に置き換えられうる。
【0112】
任意的な工程b)において、該粒子混合物は、特にそれが湿式粉砕で得られた場合又は少なくとも1種の出発材料粉末が湿式粉砕によって得られた場合、例えばオーブン内で又は噴霧によって乾燥させられうる。好ましくは、該乾燥工程の温度及び/又は期間は、該粒子混合物の残留含水量が、2%未満、又は更には1.5%未満、になるように適合させられる。
【0113】
工程c)において、工程a)の最後又は工程b)の最後に得られた粒子混合物、及び任意的に、溶媒、好ましくは水、を含む出発原料は好ましくは、室温で調製され、その量は、工程d)の形成方法に適合させられる。
【0114】
当業者に周知の通り、該出発原料は、工程d)の該形成方法に適合させられる。
【0115】
特に、該形成することは、ゲル化プロセスから生じうる。この目的を達成する為に、溶媒、好ましくは水、が好ましくは、懸濁物を生成する為に該出発原料に添加される。
【0116】
該懸濁物は好ましくは、50%~70%の質量による固体含量を有する。
【0117】
該懸濁物はまた、以下の構成物の1以上を含みうる:
該固体に基づく質量百分率として、0~10%の量の分散剤、
該固体に基づく質量百分率として、0~3%の量の表面張力調整剤、
該固体に基づく質量百分率として、0~2%の量のゲル化剤(gelling agent)、又は「ゲル化作用剤(gellant)」。
【0118】
分散剤、表面張力調整剤及びゲル化剤は、当業者に周知である。
【0119】
言及されうる例は、
分散剤として、ポリメタクリル酸ナトリウム又はアンモニウムのファミリー、ポリアクリル酸ナトリウム又はアンモニウムのファミリー、クエン酸塩の、例えばアンモニウムの、ファミリー、リン酸ナトリウムのファミリー、及び炭酸エステルのファミリー、
表面張力調整剤として、脂肪族アルコール等の有機溶媒、
ゲル化剤として、天然多糖類
を包含する。
【0120】
該粒子混合物は好ましくは、ボールミル(ball mill)内で水及び分散剤(dispersants)/解膠剤(deflocculants)の混合物に添加される。撹拌後、ゲル化剤が既に溶解させられた水が添加されて、懸濁物が得られる。
【0121】
該形成が、押出しによって行われる場合、熱可塑性ポリマー又は熱硬化性ポリマーは、該出発原料に添加されうるが、該出発原料は好ましくは、いかなる溶媒も含有していない。
【0122】
工程d)において、焼結されたビーズの製造の為の、既知の任意の慣用的形成プロセスが実施されうる。
【0123】
これらのプロセスの中でも、
例えば造粒機、流動床造粒機又は造粒ディスクを使用する、造粒プロセス、
ゲル化プロセス、
射出成形又は押出しプロセス、及び
加圧プロセス
に言及されうる。
【0124】
ゲル化プロセスにおいて、上述の懸濁物の液滴は、該懸濁物を、較正済みオリフィスに通して流すことによって得られる。該オリフィスを出る液滴は、ゲル化溶液(該ゲル化剤と反応するように適合させられた電解質)の浴に落下させられ、そこで該液滴は、実質的に球形の形状を回復した後に、硬化する。
【0125】
任意的な工程e)において、先の工程で得られた生ビーズは洗浄され、例えば水で洗浄される。
【0126】
任意的な工程f)において、該任意的に洗浄された生ビーズは乾燥させられ、例えばオーブン内で乾燥させられる。
【0127】
工程g)において、該任意的に洗浄された及び/又は乾燥された生ビーズは、焼結される。好ましくは、該焼結は、空気中で、好ましくは電気炉内で、好ましくは大気圧で、実施される。
【0128】
工程g)の焼結は好ましくは、1330℃を上回り、好ましくは1350℃を上回り、且つ好ましくは1600℃未満、好ましくは1550℃未満、好ましくは1500℃未満、好ましくは1450℃、の温度で実施される。
【0129】
定常温度段階での保持時間は好ましくは、1時間超、及び/又は好ましくは10時間未満、好ましくは7時間未満、好ましくは5時間未満、好ましくは3時間未満、である。好ましくは焼結時間は、1~3時間である。
【0130】
得られた該焼結されたジルコニアビーズは好ましくは、0.005mm超、好ましくは0.1mm超、好ましくは0.15mm超、且つ10mm未満、好ましくは5mm未満、好ましくは2.5mm未満、の最小直径を有する。
【0131】
本発明に従う焼結されたジルコニアビーズは、粉砕の為、とりわけ湿式粉砕の為、の薬剤として、又は湿式分散の為の薬剤として、特には十分に適している。従って本発明はまた、本発明に従うビーズ、又は本発明に従う方法に従って製造されたビーズの粉末の、粉砕の為、とりわけ湿式粉砕の為、の薬剤としての、又は湿式分散の為の薬剤としての使用に関する。
【0132】
本発明に従う焼結されたジルコニアビーズの特性、及びそれらの生成し易さにより、該ジルコニアビーズは、他の施与の為、とりわけ表面処理の為に、好適になる(特に、本発明に従う焼結されたビーズをスプレーすることによって)。
【0133】
従って、本発明はまた、懸濁装置、粉砕機及び表面処理機器から選択されたデバイスであって、本発明に従うビーズの粉末を含む上記デバイスに関する。
【0134】
実施例
【0135】
測定プロトコール
【0136】
下記の方法は、特に本発明に従う、焼結されたビーズ又は焼結されたビーズの混合物の特性を決定する為に使用されうる。
【0137】
ビーズの真球度(sphericity)を決定する為に、最小及び最大フェレ直径が、Horiba社によって販売されているCamsizer XT機で測定される。
【0138】
該焼結されたビーズに存在する結晶相の定量化は、該ビーズに対して直接実施され、上記ビーズは、自己接着性炭素ペレットに結合しており、従って、上記ペレットの表面は、最大量のビーズで被覆されている。
【0139】
該焼結されたビーズ中に存在する結晶相は、X線回折によって、例えば銅XD管を備えた、Panalytical社製のX’Pert PRO回折計を使用して、測定される。該回折パターンは、この装置を、5°~100°の角度範囲2θにわたって、工程サイズ0.017°及び計数時間150秒/工程で使用して取得される。フロントオプティクスは、使用された固定された1/4°のプログラム可能な発散スリット、0.04ラジアンのSollerスリット、10mmに等しいマスク及び1/2°の固定された発散防止スリットを含む。該試料は、優先配向を制限する為に、それ自体を中心として回転させられる。リアオプティクスは、使用された固定された1/4°のプログラム可能な発散防止スリット、0.04ラジアンのSollerスリット及びNiフィルタを含む。
【0140】
次に、該回折パターンは、EVAソフトウェア及びICDD2016データベースを使用して質的に分析される。
【0141】
存在する相がハイライトされると、該回折パターンが、High Score Plusソフトウェアを用いて、リートベルト精密化法によって以下の戦略に従って定量的に分析される:
バックグラウンドシグナルの精密化が、「処理」機能、「バックグラウンド決定」を使用し、以下の:「曲げ因子」を0にし、「粒度」を40にする選択を用いて実施される、
慣用的に、該ハイライトされた定量化可能な存在する相のICDDシートが選択され、従って該精密化の考慮に入れられる、
次に、自動精密化が、「入手可能なバックグラウンドを使用」を用いて予め決定されたバックグラウンドシグナルを選択することによって、及び「自動:オプション相フィット-デフォルトリートベルト」モードを選択することによって実施される、
次に、全ての該選択された相の「B全体」パラメーターの手動精密化が、同時に実施される、
最後に、正方晶系ジルコニア及び立方晶系ジルコニア相のCaglioti Wパラメーターの同時の手動精密化が、自動機能がそれを実施しなかった場合に実施される。この場合、「W」は、上記ジルコニア相の為に選択され、該精密化が、再び実施される。該2回目の精密化の「適合度」パラメーターが、該1回目の精密化の該パラメーターよりも低い場合だけ、結果が保持される。
【0142】
該焼結されたビーズに存在する非晶質相の量は、X線回折によって、例えば銅XD管を備えた、Panalytical社製のX’Pert PRO回折計を使用して、測定される。該回折パターンは、該ビーズに存在する結晶相の該決定と同じやり方で、この装置を使用して取得され、該分析された試料は、粉末形態である。施与された該方法は、酸化亜鉛及び粉砕された焼結されたビーズの試料の質量に基づいて20%に等しい量の、既知の量の完全に結晶性の標準、この場合は酸化亜鉛ZnO粉末、を添加することにある。該酸化亜鉛粉末の最大サイズは、1μmであり、該焼結されたビーズは、40μm未満の最大粉末サイズを得る為に粉砕される。
【0143】
最大ZnO粒径は、微小吸収(microabsorption)効果を制限する為に、該High Score Pluソフトウェア内に入力される。
【0144】
百分率としての非晶質相の含量は、次式を使用して計算され、ここで、QZnOは、該回折パターンから決定されたZnOの量である:
非晶質相の含量=100*(100/(100-20))*(1-(20/QZnO))。
【0145】
例えば、QZnOが22%に等しい場合には、非晶質相の含量は、100×(100/(100-20))×(1-(20/22))=11.4%に等しい。
【0146】
該焼結されたビーズの嵩密度は、静水力学的計量法によって測定される。
【0147】
少なくとも部分的に安定化されたジルコニアの絶対密度を計算する為に必要とされる単位セルパラメーターは、特徴付けられることになる試料の表面に対して、X線回折によってBruker D8 Endeavor機を使用して決定される(該試料は粉末に粉砕されていない)。該回折パターンの取得に必要とされる該パラメーターは、該結晶相の該定量化の為に必要とされる該回折パターンの取得の為に使用されるパラメーターと同一である。
【0148】
単位セルパラメーターa及びcは、https://www.ill.eu/sites/fullprof/で入手可能なFullprofソフトウェアを使用して該回折パターンの精密化を実施した後に、擬フォークトプロファイル(npr=5を用いる)を使用して決定され、該精密化されたパラメーターは、
「SyCos」関数を使用する該試料の変位、
「Shape 1」関数を使用する擬フォークト関数のローレンツ/ガウス割合、
半値幅パラメーターU、V、W、
「Asy1」及び「Asy2」関数を使用する歪度パラメーター、
ベースライン点
であり、P 42/n m c (137)である、部分的に置換された正方晶系ジルコニア単位セルの空間群は、置換されていない正方晶系ジルコニア単位セルの空間群と同一であると考えられる。
【0149】
該焼結されたビーズの化学分析は、含量が0.5%を超えない元素について、誘導結合プラズマ(ICP:Inductively Coupled Plasma)分光法によって測定される。その他の元素の含量を決定する為に、分析されることになる該焼結されたビーズ材料の液滴が、上記材料を溶融させることによって作製され、次に、蛍光X線によって化学分析が実施される。
【0150】
該焼結されたビーズの平均グレインサイズは、「平均線形切片」法により測定される。このタイプの方法は、ASTM規格E1382に記載されている。この規格に従って、分析ラインが、該焼結されたビーズの画像上に引かれ、次に、各分析ラインに沿って、上記分析ラインに交差する2つの連続グレイン境界の間の、「切片」として既知の長さが測定される。
【0151】
次に、該切片「I」の平均長「l’」が決定される。
【0152】
該切片は、焼結されたビーズ試料の走査電子顕微鏡法によって得られた画像で測定され、上記断面は、前もって鏡の質になるまで研磨されており、次に該グレイン境界を曝露する為に、焼結温度よりも50℃低い温度で熱的にエッチングされている。該画像を撮影する為に使用される拡大率は、1つの画像においておよそ100個のグレインを可視化するように選択される。焼結されたビーズ1つ当たり、5つの画像が撮影される。
【0153】
焼結されたビーズの平均グレインサイズ「d」は、関係式:d=1.56×l’によって与えられる。この式は、論文"Average Grain Size in Polycrystalline Ceramics" M.I. Mendelson, J. Am. Ceram. Soc. Vol. 52, No. 8, pages 443-446の式(13)から取られる。
【0154】
グレインサイズ分布の標準偏差は、切片分布「l」の標準偏差の1.56倍である。
【0155】
粉末又は粒子混合物の比表面積は、Journal of the American Chemical Society, 60 (1938), pages 309 to 316に記載されているBET(ブルナウアー・エメット・テラー(Brunauer Emmett Teller))法により測定される。
【0156】
該粉末及び粒子混合物の10、50及び90パーセンタイルは慣用的に、Horiba社によって販売されているLA950V2モデルレーザー粒度計を使用して測定される。
【0157】
「遊星ボールミルによる摩耗率」(planetary wear)を決定する為に、0.9~1.1mmのサイズを有する試験ビーズ20ml(メスシリンダーを使用して測定された体積)が秤量され(質量m0)、RetschのブランドPM400急速遊星型ミルの、高密度の焼結されたアルミナで覆われた125mlの容量を有する4つのボウルのうちの1つに導入される。Presi炭化ケイ素(23μmのメジアン径D50を有する)2.2g及び水40mlが、該ビーズを既に含有している同じボウルに添加される。該ボウルは閉じられ、1分毎に回転方向を逆にされて1.5時間にわたって400rpmで回転させられる(遊星運動)。次に、残留炭化ケイ素及び粉砕の間の摩耗によって除去されたいかなる材料をも除去する為に、該ボウルの内容物が、100μmのふるい上で洗浄される。100μmのふるいでふるい分けした後、該ビーズは、オーブン内で100℃で3時間乾燥させられ、次に秤量される(質量m1)。上記ビーズ(質量m1)は、該ボウルの1つにSiC懸濁物と共に再び導入され(前と同じ濃度及び量)、前回と同一の新たな粉砕サイクルを受ける。次に、残留炭化ケイ素及び粉砕の間の摩耗によって除去されたいかなる材料をも除去する為に、該ボウルの該内容物が、100μmのふるい上で洗浄される。100μmのふるいでふるい分けした後、該ビーズは、オーブン内で100℃において3時間乾燥させられ、次に秤量される(質量m2)。上記ビーズ(質量m2)は、該ボウルの1つにSiC懸濁物と共に再び導入され(前と同じ濃度及び量)、前回と同一の新しい粉砕サイクルを受ける。次に、残留炭化ケイ素及び粉砕の間の摩耗によって除去されたいかなる材料をも除去する為に、該ボウルの該内容物が、100μmのふるい上で洗浄される。100μmのふるいでふるい分けした後、該ビーズは、オーブン内で100℃において3時間乾燥させられ、次に秤量される(質量m3)。
【0158】
遊星ボールミルによる摩耗率(PW:planetary wear)は、百分率(%)として表され、該ビーズの初期質量に対する該ビーズの質量喪失、即ち100(m2-m3)/(m2)に等しく、該PWの結果が、下記の表2において与えられている。
【0159】
製造プロトコル
【0160】
焼結されたビーズは、下記を使用して調製された:
10m2/gほどの比表面積及び0.3μm未満のメジアン径を有する、2.5%のY2O3モル含量を含む、イットリアが付加された(yttriated)ジルコニア粉末(実施例1の為)、
10m2/gほどの比表面積及び0.3μm未満のメジアン径を有する、3%のY2O3モル含量を含む、イットリアが付加されたジルコニア粉末(実施例2の為)、
10m2/gほどの比表面積及び0.3μm未満のメジアン径を有する、2%のY2O3モル含量を含む、イットリアが付加されたジルコニア粉末(実施例3~5の為)、
10m2/gほどの比表面積及び0.3μm未満のメジアン径を有する、1%のY2O3モル含量を含む、イットリアが付加されたジルコニア粉末(実施例3~5の為)、
99%超の純度及び10μm未満のメジアン径を有するCeO2セリア粉末(実施例3~5の為)、
99%超の純度及び0.5μm未満のメジアン径を有するアルミナ粉末(実施例1~5の為)。
【0161】
下記の表1は、工程a)において得られた実施例の粒子混合物をまとめたものである。
【0162】
【0163】
工程a)において、様々な粉末が混合され、次に、0.3μm未満のメジアン径を有する粒子混合物が得られるまで、湿式同時ミル粉砕された。
【0164】
次に、工程b)において、該粒子混合物が乾燥された。
【0165】
次に、工程c)において、実施例毎に、固体に基づく質量百分率として、1%のカルボン酸エステル分散剤、3%のカルボン酸分散剤及び0.4%のゲル化剤、即ちアルギン酸ファミリーの多糖体、を含む水性懸濁物からなる出発原料が、工程b)の成果に基づいて得られた該乾燥粒子混合物から調製された。該出発原料の良好な均質性を得る為に、この調製の為にボールミルが使用された。まず、該ゲル化剤を含有する溶液が形成された。該粒子混合物及び該分散剤が、逐次的に水に添加された。次に、該ゲル化剤を含有する該溶液が添加された。こうして得られた混合物が、8時間撹拌された。該粒径は、Horiba社によって販売されているLA950V2モデルレーザー粒度計を使用してチェックされ(メジアン径<0.3μm)、次に、固体含量68%、及びLV3スピンドルを有するブルックフィールド粘度計を20rpmに等しい速度で使用して測定された5000センチポアズ未満の粘度、を有する水性懸濁物を得る為に、所定量の水が添加された。次に、該懸濁物のpHは、強塩基で任意的に調整した後、約9になった。
【0166】
工程d)において、該懸濁物は、較正済みの孔に、焼結後にこれらの実施例の為に約1mmのサイズのビーズを得る為の流速で通された。懸濁物の液滴が、電解質(二価のカチオン塩)ベースのゲル化浴に落下させられて、該ゲル化剤と反応した。
【0167】
該生ビーズは、収集され、工程e)において水で洗浄され、次に水分を除去する為に、工程f)において80℃で乾燥された。
【0168】
次に、工程g)において、該ビーズは、焼結炉に移され、そこで以下のサイクルで焼結された:
100℃/時間で500℃まで加熱、
500℃で2時間維持、
100℃/時間で1425℃まで加熱、
1425℃で2時間維持、
自然冷却により温度を低下。
【0169】
結果
【0170】
得られた結果は、下記の表2において並べられている。
【0171】
【0172】
該実施例の該焼結されたビーズは、酸化物から実質的に全体的になり、5質量%未満の量の非晶質相を有する。
【0173】
該実施例の該ビーズ粉末は、0.9超の平均真球度を有する。
【0174】
本発明外の実施例2は、従来技術の代表であり、本発明に従う実施例3との比較の為の基礎として与えられており、これら2つの実施例のY2O3+CeO2総モル含量は実質的に同一である。
【0175】
本発明外の実施例1は、本発明に従う実施例4との比較のベースとして与えられており、これら2つの実施例のY2O3+CeO2総モル含量は、実質的に同一である。
【0176】
本発明外の実施例2と本発明に従う実施例3とを比較すると、実施例3に従うビーズは、実施例2のビーズよりも、遊星ボールミルによる摩耗率PWが11.8%低いことを示す。
【0177】
本発明外の実施例1と本発明に従う実施例4とを比較すると、実施例1に従うビーズは、実施例4のビーズよりも、遊星ボールミルによる摩耗率PWが12.5%低いことを示す。
【0178】
本発明外の実施例2と本発明に従う実施例5とを比較すると、実施例5によるビーズは、実施例2のビーズよりも11.8%少ない遊星ボールミルによる摩耗率PWを示し、これらの実施例は、ZrO2+HfO2+Y2O3+CeO2のモル含量を基準として、Y2O3+CeO2のモル含量が夫々3%及び3.73%である。
【0179】
現時点で明らかなように、本発明は、顕著な遊星ボールミルによる摩耗率PWを示す焼結されたジルコニアビーズを提供する。
【0180】
しかしながら、本発明は上述された実施態様のみに限定されるものではないことが理解されるであろう。
【国際調査報告】