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特表2024-538599基板の切断又は分割のための基板の下処理
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-10-23
(54)【発明の名称】基板の切断又は分割のための基板の下処理
(51)【国際特許分類】
   B23K 26/00 20140101AFI20241016BHJP
   B23K 26/364 20140101ALI20241016BHJP
   B23K 26/53 20140101ALI20241016BHJP
   C03B 33/09 20060101ALI20241016BHJP
   B23K 26/38 20140101ALI20241016BHJP
【FI】
B23K26/00 N
B23K26/364
B23K26/53
C03B33/09
B23K26/38
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024519129
(86)(22)【出願日】2022-09-29
(85)【翻訳文提出日】2024-05-24
(86)【国際出願番号】 EP2022077195
(87)【国際公開番号】W WO2023052549
(87)【国際公開日】2023-04-06
(31)【優先権主張番号】21200595.3
(32)【優先日】2021-10-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】517393570
【氏名又は名称】ユニバーシティ オブ ゴールウェイ
(74)【代理人】
【識別番号】110002468
【氏名又は名称】弁理士法人後藤特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】オコナー ジェラルド
(72)【発明者】
【氏名】ファリード ナザール
(72)【発明者】
【氏名】コリンズ アダム
(72)【発明者】
【氏名】オブライエン コーマック
【テーマコード(参考)】
4E168
4G015
【Fターム(参考)】
4E168AD02
4E168AD18
4E168AE01
4E168CB03
4E168CB04
4E168CB07
4E168DA02
4E168DA27
4E168DA40
4E168DA46
4E168DA47
4E168EA14
4E168EA15
4E168JA14
4E168JA15
4E168KA04
4G015FA04
4G015FA06
4G015FB01
4G015FC05
(57)【要約】
本出願は、基板(200)の切断又は分割のための基板(200)の下処理における使用に係る方法(100)に関する。この方法(100)は:基板(200)にレーザビームの複数のパルスを照射するステップであって、パルスは、ナノ秒未満のパルス持続時間及び細長い断面空間プロファイルを有し、並びに、複数のパルスのフルエンスを、基板(200)のシングルショット損傷閾値フルエンス未満であるよう制御するステップ;複数のパルスが切断経路(408)に沿って配置されるよう、レーザビームと基板(200)との間における相対的移動をもたらすステップ(104);並びに、パルスの各々が少なくとも1つの他のパルスと切断経路(408)に沿って空間的に重なるよう、相対的移動を制御するステップ(106)を含む。この方法を実施するよう構成されたレーザシステムを有する装置(600)もまた開示されている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板の切断又は分割のための基板の下処理における使用に係る方法であって:
前記基板にレーザビームの複数のパルスを照射するステップであって、前記パルスは、ナノ秒未満のパルス持続時間及び細長い断面空間プロファイルを有し、並びに、前記複数のパルスのフルエンスを、前記基板のシングルショット損傷閾値フルエンス未満であるよう制御するステップ;
前記複数のパルスが切断経路に沿って配置されるよう、前記レーザビームと前記基板との間における相対的移動をもたらすステップ;並びに
前記パルスの各々が少なくとも1つの他のパルスと前記切断経路に沿って空間的に重なるよう、前記相対的移動を制御するステップ
を含む、方法。
【請求項2】
前記複数のパルスは各々、前記基板の前記シングルショット損傷閾値フルエンスの70%未満、及び、好ましくは、前記基板の前記シングルショット損傷閾値フルエンスの50%未満のフルエンスを有する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記複数のパルスの前記フルエンスは、最大で前記基板の厚さの途中の深さに延びるシード微小亀裂が形成されるよう制御され、及び、好ましくは、前記フルエンスは前記シード微小亀裂が終わる前記深さが最低限となるよう制御される、請求項1又は請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記レーザの照射によりもたらされる切断深さは、前記レーザビームの前記複数のパルスの前記フルエンスに依存し;
前記フルエンスと切断深さとの間における前記依存関係は、フルエンスの減少に伴って前記切断深さが減少する第1のフルエンス範囲、及び、フルエンスの減少に伴って前記切断深さが増加する第2のフルエンス範囲を有し、前記第2のフルエンス範囲は第1のフルエンス範囲よりもフルエンスが低く;並びに
前記複数のパルスの前記フルエンスは、前記第2のフルエンス範囲以下に制御される、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記フルエンスと切断深さとの間における前記依存関係は、フルエンスの減少に伴って前記切断深さが減少する第3のフルエンス範囲を有し、前記第3のフルエンス範囲は前記第2のフルエンス範囲よりもフルエンスが低く;及び
前記複数のパルスの前記フルエンスは前記第3のフルエンス範囲内であるよう制御される、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記複数のパルスの各々の前記細長い形状は主軸及び垂直な副軸を有し、前記細長い形状に係る前記主軸の長さは前記副軸よりも長く、並びに、前記複数のパルスは、各パルスの前記細長い断面の前記主軸が、前記レーザビームと基板との間における相対的移動の前記方向における前記切断経路の前記長さに位置決めされるよう、前記基板に対して配向され、並びに、任意により:
前記切断経路は曲線部分を含み;並びに
前記複数のパルスの前記向きは、好ましくは前記細長い断面空間プロファイルの前記主軸の前記切断経路に対する位置決めを維持するために、前記曲線部分における前記切断経路に沿った位置に応じて変更される、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記複数のレーザパルスの各々の前記細長い断面空間プロファイルを内包する最小の矩形の外接四角形は、2超のアスペクト比を有し、及び、好ましくは3超のアスペクト比であり、及び、さらに好ましくは2~4の範囲内のアスペクト比である、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記レーザビームと前記基板との間における前記相対的移動をもたらすステップは、前記基板を切断するか、又は、分割のために下処理するために、前記切断経路に沿って前記レーザビームを1回だけ移動させるステップを含む、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
請求項1~9のいずれか一項に記載の方法を含む、基板を切断する方法。
【請求項10】
前記基板は、前記切断経路に沿った前記レーザアブレーションによる照射により部分的に切断され、並びに、前記切断する方法は、前記基板に応力を適用して前記切断経路に沿って前記基板を分割するステップをさらに含み、並びに、任意により:
前記応力を前記レーザ照射で適用するステップ;
前記応力を機械的に適用するステップ;
前記応力を、前記基板を折り曲げることにより適用するステップ;
前記応力を、前記基板の局所領域に対して剛性部材を駆動することにより適用するステップ;
前記応力を、前記基板において機械的共振を発生させることにより適用するステップ;
前記応力を熱的に適用するステップ;及び/又は
前記応力を前記基板中に相変化を生じさせることにより適用するステップ
のいずれか1つ以上をさらに含む、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記基板は前記レーザ照射により完全に切断される、請求項9に記載の方法。
【請求項12】
基板の切断又は分割のための基板の下処理における使用に好適な装置であって:
前記基板にレーザビームの複数のパルスを照射し、前記パルスは、ナノ秒未満のパルス持続時間及び細長い断面空間プロファイルを有し、並びに、前記複数のパルスの前記フルエンスは、前記基板のシングルショット損傷閾値フルエンス未満であるよう制御され;
前記複数のパルスが切断経路に沿って配置されるよう、前記レーザビームと前記基板との間における相対的移動をもたらし;
前記パルスの各々が少なくとも1つの他のパルスと前記切断経路に沿って空間的に重なるよう、前記相対的移動を制御する
レーザシステムを備える、装置。
【請求項13】
請求項1~8のいずれか一項に記載の方法を実施するよう構成された、請求項12に記載の装置。
【請求項14】
前記レーザシステムは、前記レーザビームパルスを回転させるよう配置されたビーム回転装置を備え、前記ビーム回転装置はダブプリズムを備える、請求項12又は請求項13に記載の装置。
【請求項15】
前記レーザシステムは前記基板の厚さを部分的に切断するよう配置されており、及び、前記レーザ切断装置はさらに、応力を前記基板に適用して、前記切断経路に沿って前記基板を分割するために配置されており;又は
前記レーザシステムは、前記基板の前記厚さを前記切断経路に沿って完全に切断するよう配置されている、請求項12又は請求項13又は請求項14に記載の装置を備えるレーザ切断装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、基板の切断又は分割のための基板の下処理に用いられる方法及び装置に関する。この方法は基板の切断方法の一部を形成し得、また同様に、この装置はレーザ切断装置の一部を形成し得る。基板はガラス又はセラミックなどの脆性材料であり得る。脆性材料としては、本質的に脆性であるもの、又は、他のプロセス(例えば低温又は応力の適用)により脆性の状態とされたものを含み得る。基板は、例えば200ミクロン未満の厚さを有する薄型材料であり得る。
【背景技術】
【0002】
ガラス又はセラミックなどの薄型基板の切断は、タッチスクリーンディスプレイ及び太陽光発電用途における使用を含む多くの分野において重要である。これらの用途のための薄いガラスの切断に係る公知の技術としては、COレーザ切断、アブレーション/エロージョン技術、並びに、スクライブ&ブレーク技術の使用が挙げられる。しかしながら、これらの技術は一般に、加工速度が遅く、エッジ品質が低いという欠点がある。
【0003】
レーザアブレーションは、レーザエネルギーのビームに露光された後における表面からの物質の放出である。レーザアブレーションを生じさせるためには、材料に適用されるレーザエネルギーがエネルギー閾値を超えている必要がある。この単位面積当りの閾値エネルギーは閾値フルエンスとして知られ、Jcm-2の単位で計測される。
【0004】
レーザエネルギーは断面の空間プロファイルに分布している。典型的には、このプロファイルはガウス分布であり、従って、中心で最も強く、ビームの端で最も弱い。レーザビームの中心において適用されるフルエンスがアブレーション閾値を超えていても、ビームの端部において材料に露光されるフルエンスは典型的には、閾値フルエンス未満である。しかも、レーザビームは材料中を伝播するに伴って吸収されるため、減衰したレーザフルエンスが表面から物質を放出するために十分ではなくなってしまう深さが材料の表面下に存在することとなる。それ故、アブレーションが生じないビーム端部及び表面下の深さにおけるエネルギーでは、材料に望ましくない損傷が生じてしまう可能性がある。この損傷は、微小亀裂の存在、他の欠陥による残留応力、異なる再固化相及び表面化学を含むことが可能である。アブレーション閾値フルエンスが大きいほど、この損傷がレーザ切断、ドリル及びスクライビングプロセスに係る材料及び効果に対して与える影響が大きくなる。
【0005】
この損傷の規模を低減するために、アブレーション閾値フルエンスに近似するレーザフルエンスを用いて、特に、閾値フルエンスを小さなマージンでわずかに超えるプロセスパラメータを用いてプロセスが日常的に開発されており、これにより、過剰エネルギーと、付随する損傷とが最低限に維持されている。
【0006】
アブレーション閾値をわずかに上回るプロセスが用いられる場合であっても、一部の材料は著しく損傷を受けてしまう。この損傷は、薄い誘電体材料における脆性の増加として、金属若しくは高分子材料における熱により影響を受けたゾーンの増加として、セラミックにおける相変化として、又は、半導体における異なるドーピングプロファイルの領域として観察されることが可能である。これらの影響はすべて性能の低下をもたらしてしまう。
【0007】
国際公開第2012006736号(A2)には分割ステップに備えた透明基板の内部加工に係る方法が開示されている。この基板には、基板内でフィラメントが生成されるよう選択されたエネルギー及びパルス持続時間を有するパルスから成る集光レーザビームが照射される。基板をレーザビームと相対的に平行移動させて、基板に照射を行うと共に追加のフィラメントを1つ以上の追加の箇所で生成する。得られたフィラメントは、基板を分割するための内部スクライビング経路を画定するアレイを形成する。このフィラメント技術の目的の一つは、基板の少なくとも一つの表面がアブレーションを実質的に含まないように、基板内にビーム焦点を位置させてフィラメントを生成することである。この技術の欠点は、しかしながら、材料内にフィラメントを生成するために、透明材料での使用についてのみ好適であることである。また、フィラメント技術はより薄い基板については効果が低く、高性能な光学系が必要とされる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本出願は、レーザアブレーションを用いた基板の切断又は分割のための基板の下処理に係る向上した方法及び装置を提供することを目的とする。より具体的には、高度の切断エッジ品質が得られ、及び/又は、加工中に生成される微粒子が低減され、及び/又は、拡張性の高い製造プラットフォームに好適である、薄型基板(例えば、ガラス及びセラミックを含む)の効率的な切断に好適である方法及び装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
第1の態様において、本出願は、基板の切断又は分割のための基板の下処理における使用に係る方法であって、以下のステップ:
基板にレーザビームの複数のパルスを照射するステップであって、パルスは、ナノ秒未満のパルス持続時間及び細長い断面空間プロファイルを有し、並びに、複数のパルスのフルエンスを、好ましくは、基板のシングルショット損傷閾値フルエンス未満であるよう制御するステップ;
複数のパルスが切断経路に沿って配置されるよう、レーザビームと基板との間における相対的移動をもたらすステップ;並びに
パルスの各々が少なくとも1つの他のパルスと切断経路に沿って空間的に重なるよう、相対的移動を制御するステップ
のいずれか1つ以上を含む方法を提供する。
【0010】
超短サブナノ秒パルス持続時間を有する、細長いビーム形状及び空間的に重なるパルスを用いることにより、本発明者らは、新規の低フルエンスレーザアブレーション技術を見出した。レーザパルスのフルエンスを基板のシングルショット損傷閾値フルエンス未満であるよう制御した場合、本方法では、損傷が顕著に低い状態で材料のアブレーションが可能となる。本出願の方法により達成されるこの新規の低エネルギーアブレーションレジームは、公知の加工技術を前提として、予期されない結果である。本出願に係る加工では、著しい熱的に誘起された微小亀裂を伴わずに、ガラス及びセラミック材料などの基板の精密な構造化が可能となる。本発明者らは、低フルエンスでの操作により、材料に適用される熱エネルギーは制限され、その結果、冷却時に材料に発生する熱応力が低減されることを見出した。従って、分割のための基板の切断又は下処理のために材料の向上した加工が提供されている。
【0011】
複数のパルスのフルエンスは、用いられるレーザパルス及び切断される特定の基板に係る対応するシングルショット損傷閾値未満であるよう制御され得る。従って、「対応するシングルショット損傷閾値」とは、本発明者らは、本方法が実施されるものと同じパルス持続時間波長の単一のレーザパルス及び基板について見い出される損傷閾値を意味する。
【0012】
複数のパルスは各々、基板のシングルショット損傷閾値フルエンスの70%未満のフルエンスを有し得る。これにより、有利な切断エッジ品質が得られることが見い出された。より好ましくは、複数のパルスは各々、基板のシングルショット損傷閾値フルエンスの50%未満、及び、さらにより好ましくは30%未満のフルエンスを有し得る。
【0013】
複数のパルスのフルエンスは、最大で基板の厚さの途中の深さに延びるシード微小亀裂が形成されるよう制御され得る。好ましくは、フルエンスは、シード微小亀裂が終わる深さが最低限となるよう制御され得る。シード微小亀裂の形成を低減することにより、レーザエネルギーが代わりに材料の除去に寄与し得る低フルエンスレジームが使用される。これにより、向上した品質の切断エッジがもたらされ得る。
【0014】
レーザの照射によりもたらされる切断深さは、レーザビームの複数のパルスのフルエンスに依存し得る。フルエンスと切断深さとの間における依存関係は、フルエンスの減少に伴って切断深さが減少する一のフルエンス範囲(例えば第1の範囲)を有し得る。
【0015】
フルエンスと切断深さとの間における依存関係は、フルエンスの減少に伴って切断深さが増加するフルエンス範囲(例えば第2の範囲)を有し得る。第2のフルエンス範囲は、第1のフルエンス範囲よりもフルエンスが低くてもよい。複数のパルスのフルエンスは、第2のフルエンス範囲以下に制御され得る。
【0016】
フルエンスと切断深さとの間における依存関係は、フルエンスの減少に伴って切断深さが減少するフルエンス範囲(例えば第3の範囲)を有し得る。第3のフルエンス範囲は、第2の(及び第1の)フルエンス範囲よりもフルエンスが低くてもよい。複数のパルスのフルエンスは、第3のフルエンス範囲内であるよう制御され得る。
【0017】
フルエンスが第2のフルエンス範囲以下であるよう、又は、より好ましくは第3のフルエンス範囲内であるようフルエンスを制御することにより、向上した品質の切断が達成され得る。いくつかの実施形態において、フルエンスは、第3のフルエンス範囲の上限のフルエンスよりもわずかに低くなるよう制御され得る。これにより、さらに向上したエッジ品質がもたらされ得る。
【0018】
細長い断面空間プロファイルは楕円形の形状であり得る。これは、形成により簡素な光学系を必要とし得る。他の細長い形状が使用され得る。
【0019】
複数のパルスの各々の細長い形状は主軸及び垂直な副軸を有し得、細長い形状に係る主軸の長さは副軸よりも長い。複数のパルスは、各パルスの細長い断面の主軸が、レーザビームと基板との間における相対的移動の方向における切断経路の長さに位置決めされるよう、基板に対して配向され得る。換言すると、パルスの細長い形状のもっとも長い長さが、切断経路、又は、レーザパルスが入射される走査方向と位置決めされている。これは、パルス間における重なりを増加させるのに役立ち得る。
【0020】
切断経路は曲線(すなわち非直線)部分を含んでいてもよい。複数のパルスの向きは、曲線部分における切断経路に沿った位置に応じて変更され得る。これは、細長い断面空間プロファイルの主軸の切断経路に対する位置決めを維持するためであり得る。これは、小さい曲率半径を有する曲線切断経路及び複雑な切断形状を達成するために役立ち得る。
【0021】
複数のレーザパルスの各々の細長い断面空間プロファイルを内包する最小の矩形の外接四角形は、2超、好ましくは3超、及び、さらに好ましくは2~4の範囲内のアスペクト比を有し得る。
【0022】
パルス間の重なり度合いは大きくてもよい。重なり度割合(本明細書において定義されている、パラメータ「O」)は90%と等しくてもよい。より好ましくは、この重なりは、95%超、好ましくは98%超であり得る。これにより、切断経路に沿った各点をより多くの数のレーザパルスに露出させることが可能となり得る。重なり度割合は、切断経路に沿った各レーザパルスの空間的長さの割合として、隣接するレーザパルスにおける対応する点間の距離により定義され得る。
【0023】
レーザビームと基板との間における相対的移動をもたらすステップは、基板を切断するか、又は、分割のために下処理するために、切断経路に沿ってレーザビームを1回だけ移動させるステップを含んでいてもよい。これにより、複数のパス間における位置合わせが不要であるために、切断エッジ品質が向上され得る。これは、より薄い材料に特に好適であり得る。しかしながら、マルチパスもいくつかの実施形態において使用され得る。
【0024】
第2の態様は、第1の態様の方法(又は、本明細書において他の箇所に記載されているか、若しくは特許請求されている方法)を含む、基板を切断する方法を提供する。
【0025】
この基板は、切断経路に沿ったレーザによる照射により部分的に切断され得る。この切断方法は、切断経路に沿って基板を分割又は基板を個片化するために応力を適用するステップをさらに含んでいてもよい。これにより、基板を、後に異なるパーツに割ることが可能となる。
【0026】
応力は、レーザ照射(例えば、切断に用いたものと同一のレーザ)で適用し得る。
【0027】
応力は、機械的に適用し得る。応力は、基板を折り曲げることにより適用し得る。応力は、基板の局所領域に対して剛性部材を駆動することにより適用し得る。
【0028】
応力は、基板中において機械的共振を発生させることにより適用し得る。
【0029】
応力は、熱的に適用し得る。
【0030】
応力は、基板中に相変化を生じさせることにより適用し得る。
【0031】
応力は、上記のいずれか1つ以上により適用し得る。
【0032】
基板は、レーザ照射で完全に切断(例えばその厚さ全体にわたって)してもよい。この場合、別途の分割ステップは不要である。
【0033】
第3の態様は、基板の切断又は分割のための基板の下処理における使用に好適な装置であって:
基板にレーザビームの複数のパルスを照射し、パルスは、ナノ秒未満のパルス持続時間及び細長い断面空間プロファイルを有し、並びに、複数のパルスのフルエンスは、好ましくは、基板のシングルショット損傷閾値フルエンス未満であるよう制御され;
複数のパルスが切断経路に沿って配置されるよう、レーザビームと基板との間における相対的移動をもたらし;
パルスの各々が少なくとも1つの他のパルスと切断経路に沿って空間的に重なるよう、相対的移動を制御する
レーザシステムを備える装置を提供する。
【0034】
第3の態様の装置は、第1の態様の方法(又は、本明細書において他の箇所に記載されているか、若しくは特許請求されている方法)を実施するよう構成され得る。
【0035】
レーザシステムは、レーザビームパルスを回転させるよう配置されたビーム回転装置を備えていてもよい。ビーム回転装置はダブプリズムを備えていてもよい。ダブプリズムは回転可能なマウントに設置されていてもよく、及び、ビームレーザビーム経路に沿った軸について回転可能であり得る。ダブプリズムはさらに、楕円ビーム形状にビームを整形するよう配置され得る。
【0036】
第4の態様は、第3の態様の装置を備えるレーザ切断装置を提供する。
【0037】
レーザシステムは、基板の厚さを部分的に切断するよう配置されていてもよく、及び、レーザ切断装置はさらに、応力を基板に適用して、切断経路に沿って基板を分割するために配置されていてもよい。
【0038】
レーザシステムは、基板の厚さを切断経路に沿って完全に切断するよう配置され得る。
【0039】
当業者は、相互に排他的である場合を除き、上記の態様のいずれか1つに関連して記載されている特徴は、いずれかの他の態様にも適用し得ることを理解するであろう。
【0040】
ここで、本発明の実施形態を、添付の図面を参照して単なる一例として説明する。
【図面の簡単な説明】
【0041】
図1図1は、実施形態に係る、基板の切断方法又は分割/個片化のための基板の下処理方法を示す。
図2図2は、図1に記載の方法による加工後における基板の切断エッジを示す。
図3a図3aは、レーザ出力の関数としての図1の方法で用いたレーザパルスの切断深さのプロットを示す。
図3b図3bは、図3aに対応するレーザフルエンスの関数としての図1の方法で用いたレーザパルスの切断深さのプロットを示す。
図4図4は、図3に示されている種々のレーザ出力における基板の切断エッジの図を示す。
図5図5は、図1の方法において用いられるレーザパルスの空間プロファイルを示す。
図6図6は、曲線部分を有する切断経路に沿ってレーザパルスが照射されている基板の平面図を示す。
図7図7は、図1の方法において用いられるレーザパルスの空間的重なりを示す。
図8図8は、図1の方法を含む、基板を切断する方法を示す。
図9図9は、実施形態に係る装置の概略図を示す。
図10図10は、基板の標準的な切断エッジと、本出願の方法を用いて切断された基板とのそれぞれの比較を示す。
図11図11は、基板の標準的な切断エッジと、本出願の方法を用いて切断された基板とのそれぞれの比較を示す。
図12図12は、本出願の方法を用いて切断された基板の拡大図を示す。
図13図13は、本出願の方法を用いて切断された基板の切断エッジの他の図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0042】
図1及び2は、本出願の実施形態に係る方法100を示す。この方法は、基板200の加工を含む。この方法は、基板200の切断、又は、個別のパーツへの分割又は個片化(例えばスクライビングによる)のための基板200の下処理における使用に好適である。図2は、形成された切断エッジを示すための切断された後の基板200の断面を示す。この方法は、個別のパーツに分離されるよう基板を厚さ方向に完全に切断するために用いられ得、又は、基板が個片化/分割されて切断を完了するために下処理されるよう基板を厚さ方向に部分的に切断するために用いられ得る。
【0043】
方法200は一般に、その表面に指向されたレーザビームを用いて基板200を加工するステップを含む。基板200は好ましくは脆性であり、例えばガラス又はセラミックであり得る。基板が既に脆性ではない場合、脆性とされてもよい(一時的又は永久的に)。これは、冷却により、又は、応力の印加を介して行われ得る。いくつかの実施形態において、基板は、レーザビームの照射時には脆性ではなくてもよいが、後の分割ステップにおいて個別の断片に割ることが可能であるよう脆性とされてもよい。この方法は、例えば200ミクロン未満、又は、好ましくは100ミクロン未満の厚さ(T)を有する薄型基板の切断に好適であり得る。しかしながら、他の基板材料及び厚さが使用されてもよい。
【0044】
方法100は、基板200にレーザビームの複数のパルスを照射するステップ102を含む。パルスは、ピコ秒以下のオーダー(すなわち、1ナノ秒未満の持続時間を有する)の超短レーザパルスである。いくつかの実施形態において、1ピコ秒未満(例えば、フェムト秒以下のオーダー)のパルスなどのより短い持続時間のパルスを使用し得る。レーザパルスは、細長いビームプロファイルを有する。すなわち、これらは、基板の平面内に細長い断面空間プロファイルを有する。いくつかの実施形態において、ビーム形状は、後述するように、楕円形であることが好ましい。
【0045】
方法100はさらに、レーザビームと基板200との間に相対的移動をもたらすステップ104を含む。これにより、基板の表面上に延びる切断経路に沿って複数のパルスが位置されることとなる。切断経路は、基板が切断される切断ライン、又は、基板が個別の断片に別々に分割される切断ラインを定義する。相対的移動は、ガルバノメータステージ又は同様のものを使用して、静止して保持されている基板200の表面上でレーザビームを走査することでもたらし得る。他の実施形態において、レーザビームを固定しながら基板を動かしてもよく、又は、両方の方法を組み合わせて用いてもよい。
【0046】
レーザビームからのパルスが切断経路に沿って空間的に重なるよう相対的移動は制御される106。具体的には、パルスの各々は、少なくとも1つの他のパルスと切断経路に沿って空間的に重なる。方法100では従って、表面上をレーザビームを走査するに伴って、切断経路上における各点が複数のパルスに曝露されるように、表面に連続する細長い(例えば楕円形の)パルスを印加する。重なり度合いは、後述するように、異なる実施形態において様々であり得る。その細長い形状の長軸が切断経路と位置合わせされるよう、レーザパルスは基板に対して位置合わせされる。これにより、細長いパルスの使用と共に、パルス間におけるより大きな空間的重なりを達成することが可能となる。
【0047】
基板に照射される複数のパルスのレーザフルエンスは、基板のシングルショット損傷閾値フルエンス未満であるよう制御される。複数のパルスのフルエンスは、用いられるレーザパルス及び切断される特定の基板に係る対応するシングルショット損傷閾値未満となるよう制御される。「対応するシングルショット損傷閾値」とは、本発明者らは、従って、上記のステップ102において基板に照射されるものと同じパルス持続時間及び波長の単一のレーザパルスが、方法100によって加工されている同一の基板に適用される場合に観察される損傷閾値を意味する。
【0048】
レーザアブレーション閾値は、材料の除去を生じさせるために必要な最低エネルギーである。この除去は、レーザによって十分なエネルギーが材料に加えられて材料が解離されるアブレーションによるもの、又は、材料が本質的に溶融及び気化する熱によるもの、又は、この2つの組み合わせによるものであり得る。損傷閾値は、アブレーション閾値に関連するが、アブレーション閾値とは異なる。損傷閾値は、材料の外観に望ましくない変化を引き起こすために必要な最低レーザエネルギーである。基板に係る損傷閾値は、アブレーション閾値よりも一般的に低く、時としてかなり低い。本出願において、シングルショット損傷閾値は、基板上において永久的な損傷が観察可能となる、基板に照射されるフルエンスの閾値として定義される。フルエンスは、公知の方法に従うレーザ出力の適切な制御によって制御することが可能である。
【0049】
損傷閾値は以下の関係を用いて決定し得る。
=2ω ln(φ/φth)(A)
式中、φ=2Ep/πω 及びφthは、それぞれ、印加されるフルエンス及び損傷閾値フルエンスであり、ωは焦点におけるガウス型ビームのビームウエスト半径であり、Eはレーザエネルギーであり、及び、Dは、基板表面に形成されたクレータの実測された直径である。損傷閾値を決定するために、様々なレベルのパルスエネルギー(すなわち、様々な印加フルエンス)を有する集光レーザビーム(対応する波長及びパルス持続時間を有する)によって、基板の平坦なサンプルに一連のクレータがアブレーションされる。各クレータの直径は光学顕微鏡を用いて計測される。印加されたフルエンスの自然対数に対してクレータ直径の二乗をプロットすることにより、損傷閾値フルエンスは、データ(例えば最良適合直線を用いて)を外挿してD=0における印加されたフルエンスを見い出すことにより決定される。これは、切片の負の指数を最良適合線の傾きで除することによって行い得る。D=0におけるフルエンスは、基板上における何らかの永久的な損傷を観察可能であるフルエンス値として定義される損傷閾値に対応する。
【0050】
損傷閾値フルエンスの決定において用いられるビームウエストωを算出するために、以下の関係を使用し得る。
=2ω ln(E) (数1)
これは、スポット直径Dと、パルスエネルギーEと、焦点ωにおけるガウス型ビームのビームウエスト半径との関係を定義する。パルスエネルギーの自然対数に対してクレータ直径の二乗をプロットすることにより、ビームウエストをデータに適合する直線傾きから決定することが可能である(J.M.Liu,Simple technique for measurements of pulsed Gaussian-beam spot sizes,Opt.Lett.7(1982)196-198を参照のこと)。次いで、関係(A)を利用して損傷閾値フルエンスを見い出すために、印加されたフルエンスを、算出したビームウエスト及び各パルスに係る既知のパルスエネルギーを用いて、上記の関係を用いて見い出すことが可能である。
【0051】
本発明者らは、持続時間がサブナノ秒であり、細長く、空間的に重なり、及び、基板に係る対応するシングルショット損傷閾値よりも低いフルエンスで基板にレーザパルスを照射することにより、低フルエンス加工レジームが見出されることを見出した。基板がこのレジームで加工される場合、本発明者らは、ガラス及びセラミック材料などの基板の精密な構造化がもたらされることを見出した。低フルエンスでの操作により、本発明者らは、材料に適用される熱エネルギーが低減し、次いで、材料の切断に十分な(又は、切断経路に沿った分割を達成するために十分な)効果を材料にもたらしつつ、冷却時に材料に生成される熱応力が低減されることを見出した。
【0052】
方法200は、従来技術の方法をよりも多くの利点を提供することが見い出された。この段落において記載されている利点のいずれか1つ以上が、種々の実施形態により提供され得る。有利には、重なり合った細長い(好ましくは楕円形の)パルスの使用は、損傷のない側壁を有する切断経路を画定することが見い出された。基板は、部分的にアブレーションされ、次いで、機械力の適用によって分離可能である。従って、レーザ切断された部品は、個片化が必要となるまで可撓性材料中に保持されることが可能である。本出願の方法は、レーザにより生成されるデブリが最低限であることが見い出された。本方法は柔軟であり、パーツの内側でパーツを切断することができる。この方法は低出力であり、現在市場に存在する多くの高繰返しレーザを用いる実装に好適である。本出願の方法は、応力を伴わない薄い可撓性材料の切断に特に有用である。この方法はまた、無応力下での破壊(stress-free fracture)が問題となる材料にも有用である。この方法は、切断パーツに関連する明らかな表面リップが存在しないよう構成可能である。これにより、特定の用途においてパーツを積み重ねることが可能となる。最後に、この方法は、他のプロセスと比較して生成されるデブリが低減されることが見い出された。
【0053】
いくつかの実施形態において、複数のパルスは、対応するシングルショット損傷閾値よりも著しく低いフルエンスを有する。レーザパルスは、これらの各々が、基板の対応するシングルショット損傷閾値フルエンスの70%未満のフルエンスを有するよう制御され得る。他の実施形態において、フルエンスは、対応するシングルショット損傷閾値の50%未満、及び、好ましくは、基板の対応するシングルショット損傷閾値フルエンスの30%未満であるよう制御され得る。これにより、材料における熱加熱効果がさらに低減して、向上した切断エッジ品質を提供することが可能となり得る。
【0054】
図2は、基板200における方法100の効果を示す。図2は、レーザビームパルスが照射された後の材料の切断エッジを示す。レーザビームは図2にLで示した方向から基板の表面201に照射されている。レーザパルスの印加によって、レーザ(例えばアブレーション)による材料の除去によって深さCDまで切断された基板の第1の領域又は切断ゾーン202が形成される。本実施形態において、この領域は、基板の厚さT(すなわち、レーザビームが照射された方向における厚さ)に途中まで延在する。レーザパルスの印加により、切断領域202の境界から始まる領域204内において、基板にシード微小亀裂がさらに形成され得る。レーザパルスのフルエンスは、微小亀裂が延在する深さ(すなわち領域204の深さD)が低減されるように制御し得る。例えば、複数のパルスのフルエンスは、最大で基板の厚さの途中の深さまで(すなわち、未切断厚さT2の途中まで)にのみ延びるシード微小亀裂が形成されて、無微小亀裂領域206が残されるよう制御され得る。より好ましくは、フルエンスは、シード微小亀裂が終わる深さが最低限となるよう、及び、さらに好ましくは、微小亀裂がほとんど又は全く形成されない(すなわち、深さDが実質的にゼロである)よう制御され得る。微小亀裂が形成される程度を低減することにより、切断品質を向上させることが可能である。以下において考察されているとおり、本発明者らは、微小亀裂が最低限とされるか又は排除されるレベルまでフルエンスを制御し、これにより、シード微小亀裂の形成ではなくアブレーションに対してレーザパルスのエネルギーをより寄与させることが可能であることを見出した。
【0055】
いくつかの実施形態において、微小亀裂は、基板の厚さTの1/10未満、好ましくは厚さTの1/15未満、及び、より好ましくは基板の厚さTの1/10未満に延在し得る。例えば、基板の厚さは100ミクロンであり得、微小亀裂は、10ミクロン未満、好ましくは6.7ミクロン未満、及び、さらにより好ましくは5ミクロン未満の深さに延在し得る。
【0056】
図3aは、切断深さ(CD)のレーザフルエンスに対する依存関係を示す。図3aにおいて、レーザフルエンスは、レーザフルエンスに比例するレーザ出力として表記されている。同一の関係が、切断深さをレーザフルエンスの関数としてプロットした図3bに示されている。図3a及び3bに示すとおり、切断深さは、基板に照射されるレーザビームの複数のパルスのフルエンスに依存する。本発明者らは、フルエンスと切断深さとの間における依存関係が、フルエンスの減少に伴って切断深さが減少する第1のフルエンス範囲302を有することを見出した。この範囲においては、想定されるとおり、レーザビームによるアブレーションは、フルエンスの減少に伴って減少する。フルエンスのさらなる減少に伴って切断深さが増加する第2のフルエンス範囲304が存在している。図3に示されているとおり、第2のフルエンス範囲では、第1のフルエンス範囲よりもフルエンスが低い。第2のフルエンス範囲の下では、フルエンスの減少に伴って切断深さが再度減少する第3のフルエンス範囲306が存在する。切断深さは、見かけ上又は予想される閾値アブレーション閾値(線308により示される)において、ゼロになるまで減少し続けるのではなく、切断深さは、フルエンスのさらなる減少にも関わらず、再度増加することが予想外に見い出された。この切断深さの増加は、フルエンスの第2の範囲304を通じて、第2の領域と第3の領域との境界でピークに達するまで続き、その後、フルエンスが減少し続けるに伴って再度減少する。本発明者らは、印加レーザフルエンスが見かけ上のレーザアブレーション閾値フルエンスよりも低減された場合に、方法200の使用により、予期しないレーザアブレーションレジームがもたらされることを見出した。第2のフルエンス範囲304におけるアブレーション深さの増加は、本方法において用いられる超短パルスで予期されるものではない。
【0057】
いくつかの実施形態において、複数のパルスのフルエンスは、第1の依存関係範囲302のフルエンスより低い値であるよう制御され得る。換言すると、フルエンスは、切断深さが増加するフルエンス未満(第1の範囲302の下限)であるよう制御される。より好ましくは、フルエンスは、第3のフルエンス範囲306内であるよう制御され得る。さらにより好ましくは、フルエンスは、第3のフルエンス範囲306の上限、すなわち、図3で310で示す領域のフルエンスよりもわずかに低くなるよう制御され得る。これにより、最良のエッジ品質がもたらされることが見い出された。
【0058】
図3a及び3bに示す例において、方法100は、細長いレーザパルスのフルエンスをおよそ2.5J/cmに等しくなるよう制御するステップを含み得る。この例において、レーザ繰り返し率は5kHzであり、パルスは、楕円(L)の長軸に沿って93μm及び短軸(W)に沿って33μmの楕円形状を有する。従って、楕円の面積は以下のとおり見い出すことが可能である:
面積=π×L×W=9641μm
パルスエネルギー(EP)は、レーザ出力/繰り返し率=600nW/5kHz=120μJにより得られる。フルエンスは従って以下のとおりである:

(数2)
この例において、基板に対する対応するシングルショット損傷閾値は3.55J/cmであり、これは、図3bでφthで示されている破線により示されている。この実施形態から分かるとおり、より一般的には、フルエンスは、単一の損傷閾値未満であるよう制御され得る。上記の例において、向上した切断をもたらすために、フルエンスは、領域310内において損傷閾値以下に設定される。この例から分かるとおり、フルエンスは対応するシングルショット損傷閾値フルエンスのおよそ70%に制御される。
【0059】
図3aにおける種々の値のレーザフルエンスを用いて形成された基板における結果を図4に示す。図4は、図3に示されている点A~Gにおけるレーザフルエンスで得られた基板の切断エッジの画像を示す。図4は従って、フルエンスの減少に伴って切断エッジがどのように変化するかを示す。図4中の画像は図2におけるものに対応する図を示し、同様に、微小亀裂が形成されている領域、及び、微小亀裂を含まない領域であって、レーザにより切断された基板の厚さの領域を示す。画像Aに示されているとおり、より高いフルエンスでは、切断されていない厚さに延在する微小亀裂を伴って、微小亀裂が多く存在している。画像BからDで、切断深さに沿った微小亀裂の深さが低減している。画像EとFとの間では、レーザフルエンスが減少しているにもかかわらず切断深さは増加が見られる。本発明者らは、これは、少なくとも部分的に、レーザビームのエネルギーがシード微小亀裂の形成よりもアブレーションに寄与しているためであることを見出した。画像G及びHは、フルエンスがさらに減少するに伴って、切断深さが減少し続けることを示す。
【0060】
ここで図5を参照すると、方法200において用いられるレーザビームの空間ビームプロファイル400の例示が示されている。ビームプロファイルは、基板の表面の平面で、すなわち、ビームの断面で示されている。ビームプロファイルは細長い形状であると共に、本実施形態において楕円形の形状をしている。楕円形形状は、撮像光学系(例えばアナモルフィックプリズム対)を用いてより容易に生成され得る。しかしながら、他の細長い形状が使用され得、他の実施形態において、ビームプロファイルは一般に矩形又は長円形であり得る。
【0061】
ビームプロファイルの細長さの程度は、ビームプロファイル400を完全に内包可能である最小の外接四角形402のアスペクト比(長さ(L)/幅(W))を参照することにより特徴付けられ得る。円形又はガウシアンビームに対する最小外接四角形はゼロとなる。より高いアスペクト比は細長さの程度が大きいことを示す。一実施形態において、複数のレーザパルスの各々の細長い断面空間プロファイルを含む最小の矩形の外接四角形402は、2より大きいアスペクト比を有する。他の実施形態において、アスペクト比は、好ましくは3超であり得る。さらに好ましくは、アスペクト比は2~4の範囲内であり得る。下記のとおり、ビーム形状のアスペクト比を高くすることにより、パルス間における空間的重なりを大きくし得る。
【0062】
複数のパルスの各々の細長い形状は、主軸406及び副軸404により特徴付けられ得る。副軸404は主軸406に対して垂直であり、細長い形状に係る主軸406の長さは副軸404よりも長い。細長い形状が楕円である場合、これらの軸は、楕円を定義する通常の副軸及び主軸に相当し得る。切断経路を基準とした細長いビームプロファイルの向きは、副軸及び主軸を用いて定義し得る。複数のパルスは、各パルスの細長い断面の主軸406がレーザビームと基板との間における相対的移動の方向における切断経路の長さと位置合わせされるよう、基板に対して配向され得る。上記のとおり、これにより、重なり度合いを増大させることが可能となる。
【0063】
いくつかの実施形態において、レーザパルスの細長いプロファイルの向きは切断経路の長さに沿って様々であり得る。これにより、ビームの主軸を、切断経路が直線から変化する場合に切断経路と位置合わせされたままとすることが可能となり得る。これを図6に示すが、ここでは、基板200が、複数のレーザビームパルス400(図中では、そのうちの1つのみに符号が付されている)により、切断経路406に沿って切断されている状態が示されている。この例において、切断経路408は、曲線又は非直線部分412、並びに、2つの直線部分410及び414を含む。曲線部分412において、複数のパルスの向きは、切断経路408に沿った位置に応じて変えられる。この向きは、細長い断面空間プロファイルの主軸406の切断経路408に対する位置決めが維持されるよう変更される。方法を用いて、本発明者らは、曲線経路は、1~2mmの曲率半径などの5mm未満の曲率半径で切断可能であることを見出した。直線部分410,414においては、切断経路に対するビームプロファイルの向きは一定に維持される。図6は、方法200により達成可能である切断経路408の1つの例示的な例として理解されるべきであり、レーザビームパルスと基板との間における好適な相対的移動により任意の形状の切断経路が可能である。例えば、直線部分がなくてもよく、又は、曲線部分がなくてもよい。
【0064】
いくつかの実施形態において、レーザビームと基板200との間に相対的移動をもたらすステップ104は、基板を切断するか又は分割のために下処理するために、レーザビームを切断経路に沿って1回だけ移動させるステップを含む。基板200は従って、レーザビームのシングルパスに露光される。これにより、切断経路は、基板の表面上におけるレーザビームの以前のパスとの再度の位置合わせが不要であるため、最終切断のエッジ品質の向上がもたらされ得る。このシングルパス法はより薄い材料に特に好適であり得る。他の実施形態においては、切断経路に係るレーザのマルチパスも使用し得る。
【0065】
図7は、基板200の表面に入射する複数のレーザビームパルスの重なりを示す。図7は、切断経路408に沿った一連の楕円形パルス400a~dの空間断面を示す。この図から分かるとおり、重なり度合いは連続するパルス間で大きなものであり得る。重なりでは、基板に入射されるレーザスポットが、どの程度直前のレーザスポットと空間的に重なっているかの尺度が得られる。これは、重なり度割合、又は、ショット/面積(SPA)で計測可能である。重なり度割合Oは、以下の式を用いて定義され得る:

(数3)
式中、dはレーザスポット直径であり、sはレーザマークの速度(すなわち、基板に対してレーザスポットが移動する速度)であり、及び、Qはレーザ繰り返し率(すなわち、1秒当りのレーザパルスの数)である。スポット直径dは、切断経路と位置決めされるスポットの細長い形状の軸の直径である(図7に示すとおり)。
【0066】
ショット数/面積(SPA)はSPA=(100/(100-重なり度割合))により得られる。本発明者らは、レーザ走査方向に位置決めされた細長いビーム形状の長軸を走査する場合、楕円形(又は他の細長い)形状のレーザスポットは空間的に重なるパルスを提供する可能性が高いことを認識した。
【0067】
いくつかの実施形態において、重なり度割合Oは90%と等しくてもよい。より好ましくは、重なりは95%より大きくてもよく、好ましくは98%より大きくてもよい。これにより、切断経路に沿った各点を多数のレーザパルスに露光させることが可能となり得る。
【0068】
本発明者らは、細長い(好ましくは楕円形)パルスを用いることで、例えばパルスの長い(主)軸を切断経路の方向に位置決めして走査した場合に、切断経路に沿ってパルスの空間的重なりがより大きくなることを見出した。これにより、円形のレーザスポットを用いた場合と比して、単位面積当りで基板に印加されるレーザパルスの数が増加する。換言すると、スポット間の重なりを増やすことが可能であるため、レーザパルスが円形である場合と比して、切断経路に沿ってビームが走査されると、切断経路における各点はより多くの数のパルスからの光を受光し得る。
【0069】
本発明者らは、細長いパルス(好ましくは楕円形)を使用することにより、その材料におけるレーザの吸収ゾーン中における、切断経路に沿った基板における各レーザパルスによる応力サイクルの増加がもたらされ得ることを見出した。これは、次いで、各レーザパルスによって引き起こされる各応力サイクルにおける漸増的な亀裂成長をもたらす。より多くのサイクルは、疲労メカニズムによる破壊をもたらし得る。これは、セラミック基板における粒体/粒界破壊、及び、ガラス基板における微小亀裂をもたらすことが見い出された。その結果、レーザ切断ゾーンにおけるフォトメカニカル断片化がもたらされる。その後に機械的応力が印加されることで、完全な破壊と、後述のとおり、切断経路に沿った基板の分離をもたらすことが可能である。
【0070】
細長いビーム形状を用いることで可能であるより大きな重なり度合いにより、マクロスケールで応力サイクルが増加すると共に熱応力が低減することが、本発明者らによって見い出された。低いフルエンスとの組み合わせにより、切断ゾーンの下端における微小亀裂が低減される。これの効果により、少なくとも部分的に、本出願の方法によって、破壊においてより滑らかなエッジを達成することが可能となる。
【0071】
上記のとおり、方法100は、基板を切断するステップ又は分割のために基板を下処理するステップを含み得る。複数のパルスを基板に照射するステップで、所定の切断深さ(例えば、図2に示す切断深さCD)を達成することが可能である。いくつかの実施形態において、基板の厚さはレーザにより完全に切断することが可能である。換言すると、基板の全厚Tは、レーザパルスにより切断される。本実施形態において、別途の分割ステップは不要である。他の実施形態において、基板はレーザパルスで部分的に切断され得る(例えば、切断深さは基板の全厚未満)。このような実施形態においては、基板に力を加えて、切断が完了して切断経路により画定された基板のパーツを分離する。いくつかの実施形態において、基板をパーツに分離するために必要な応力はレーザパルスによって印加される。レーザの印加による応力は、レーザアブレーション中に誘発される蒸気反跳圧/熱応力からもたらされると考えられる。この方法を用いることで、切断深さが材料の厚さの途中までのみであっても、レーザを用いて基板を完全に切断し得る。
【0072】
いくつかの実施形態において、上記の方法100は、別途の分割ステップが提供される基板を切断する方法500に組み込まれ得る。このような方法の一例が図8に示されており、ここでは、切断経路に沿ったレーザパルスの印加により基板が部分的に(例えば、基板の厚さの途中まで)切断される、図1のステップ102、104及び106が含まれる。方法500はさらに、応力を基板に加えて切断経路に沿って基板を分割するステップ502を含む。応力は個別のプロセスの一部として適用され得、例えば、基板は、レーザを用いて加工され、次いで、異なる器具を用いて、後の時間及び場所で切断経路に沿って分離されてもよい。基板は従って、いくつかの実施形態において、切断は第三者により達成可能であるよう、レーザを用いて加工された後に供給され得る。
【0073】
一実施形態において、引張応力は、基板200の平面内で、例えばレーザパルスにより画定される1つ以上の切断経路408に対して垂直に、反対方向に等しい力を加えることにより適用される。或いは、又は、加えて、せん断応力を適用してもよい。反対方向に等しい力は、基板200の平面に対して垂直に、及び、切断経路408の対向する側に適用可能である。或いは、又は、加えて、反対方向に等しい力は、基板200の平面内であるが、切断経路408の対向する側に適用可能である。
【0074】
一連の実施形態において、応力は機械的に適用されてもよい。応力は、例えば基板200の平面中に延びる軸で、例えば切断経路408に平行な軸で基板200を折り曲げることにより適用され得る。
【0075】
いくつかの実施形態において、応力印加器は、基板200の局所領域に対して剛性部材を駆動することにより基板200に対して応力を適用するよう構成されている。剛性部材により加えられた圧力が引張応力を生じさせて、基板がレーザによって部分的に切断された切断経路408に沿って亀裂を伝搬させるよう、基板200を拘束する拘束装置が配置され得る。
【0076】
一実施形態において、応力は、基板に機械的共振を発生させることにより適用される。機械的共振は、周期的な力を基板200に適用することにより生成され得る。周期的な力は、基板200の固有共振周波数と同じ又は近似する周波数を含んでいてもよい。一実施形態において、機械的共振は周期的に切り替えられるエアジェットを用いて生成される。このアプローチは、何らかの追加の装置を基板200に直接接触させる必要がないために有利であり得る。或いは、又は、加えて、機械的共振は、音響波を基板に印加することにより生成し得る。或いは、又は、加えて、機械的共振は、基板と接触する1つ以上の電気的に作動可能な要素を作動させることにより生成し得、電気的に作動可能な要素の各々は、作動時に周期的な力を基板に印加する。電気的に作動可能な要素は例えば圧電デバイスを含んでいてもよい。
【0077】
ある実施形態において、応力はレーザアブレーションにより加えられる。レーザアブレーションによる応力は蒸気反跳圧/熱応力に起因して生じると考えられる。
【0078】
他の実施形態において、応力は熱的に適用され得る。例えば、ある実施形態において、基板200は、要素(例えばPET又は金属層)に搭載又は取り付けられる。加熱器により要素を加熱してもよい。要素の熱膨張が、基板200に適用される引張応力を生じさせる。引張応力は、切断経路408に沿った亀裂伝搬を生じさせ得る。
【0079】
他の実施形態において、応力はレーザを用いて熱的に適用される。この種の実施形態においては、少なくとも1つのレーザスポットが切断経路の両側の各々に適用される。レーザスポットは切断経路408と平行に走査される。レーザスポットが基板200を局所的に加熱し、これにより、基板200の膨張が引き起こされる。次いで、基板200はレーザスポットの後で冷却されて、基板200の収縮が生じる。本実施形態において、加熱レーザは、基板の部分的な切断に用いられるレーザとは別のものであり得る。
【0080】
他の実施形態において、応力は、基板内で相変化を生じさせることにより適用される。例えば、一部の基板(形状記憶合金など)は、相転移温度未満における冷却で変形可能である。冷却された材料に引張応力が印加されると、膨張によって変形が生じる。一実施形態において、基板は、基板の相転移未満の温度で本明細書に記載の方法を用いてレーザパルスを照射することにより加工され得る。次いで、この方法は、その変形(例えば膨張又は収縮)が拘束されるよう好適な固定具を用いて基板を固定するステップをさらに含んでいてもよい。次いで、この方法は、基板を相転移温度超に加熱するステップを含んでいてもよい。次いで、基板は、その高温構造への収縮による変形から拘束される。引張応力が材料中においてもたらされることとなり、これがレーザによって切断経路に沿って既にスクライブされた材料を分割するよう構成可能である。
【0081】
他の態様において、本出願は、基板の切断又は分割のための基板の下処理における使用に好適である、例えばレーザ加工装置といった装置を提供する。この装置は、上記の方法200、又は、本明細書において開示若しくは特許請求されているいずれかの他の方法実施形態を実施するために構成されていればよい。
【0082】
装置600の一実施形態を図9に示す。装置600は、レーザ源602、ビーム整形装置604、ビーム回転装置606及びビーム投射装置608を一般的に備えるレーザシステムを備える。このレーザシステムは、図9に示されているとおり、切断経路408に沿って複数のレーザパルスを基板200に照射するよう構成されている。レーザ源602からのレーザ放射線は、図9に示されているとおり、基板表面上に投射されるよう、ビーム整形装置、ビーム回転装置及びビーム投射装置に指向されている。1つ以上の鏡又は他の光学要素を設けてレーザ放射線をレーザシステムを通るよう指向させてもよい。図9は単なる概略図として理解されるべきであり、他の配置及び光学的レイアウトも可能である。
【0083】
レーザ源は、複数のレーザパルスをもたらすためのレーザであり得る。例えば、レーザ源は、チタン-サファイアレーザなどの超短パルスレーザ、又は、増幅器を伴う他の超高速レーザを備えていてもよい。他の実施形態において、他の好適な種類のレーザが、特定の基板材料の加工に必要とされるレーザフルエンスレベルに従って用いられ得る。
【0084】
ビーム整形装置604は、ビームを細長い形状に整形するために配置されている。ここで説明されている実施形態において、ビーム整形装置は、レーザからの円形ビームから楕円形ビームプロファイルを形成するために配置された一対のアナモルフィックプリズムを備える。他の実施形態においては、所望の細長いビームプロファイルを達成するよう構成されたビーム整形光学系を含んでいてもよい他の種類のビーム整形装置が用いられてもよい。例えば、矩形のビームプロファイルが、技術分野において公知である好適な光学系によって提供され得る。
【0085】
レーザシステムはさらに、レーザビームパルスを回転するよう配置されたビーム回転装置606を備える。これにより、細長いビームプロファイルの長軸を切断経路408と位置決めさせることが可能となり得る。いくつかの実施形態において、ビーム回転装置606は、非直線の経路を切断可能であるよう上記の切断経路の長さ方向に沿って長軸の位置決めを変更可能であるよう、ビームの回転を変更するよう配置され得る。ここで説明されている実施形態において、ビーム回転装置はダブプリズムを備える。ダブプリズムは、細長いビームをレーザの走査方向に従って回転可能であるよう、好適なプログラム可能なステージに設置し得る。ダブプリズムが用いられる場合、これは、ビームを回転させると共に細長いビームプロファイルを得る両方のために設置し得る。従って、個別のビーム整形光学系はいくつかの実施形態において不要であり得る。ビーム整形装置は従って、ビームを回転させるためにも配置し得る。他の実施形態において、他のビーム回転装置が用いられてもよい。
【0086】
上記のとおり基板が照射されるよう、ビーム投射装置608は、レーザパルスを基板の表面上に投射又は指向させるよう配置されている。投射デバイス608は、固定された基板に対してレーザビームを動かすことにより、基板に対するレーザビームの相対的移動が達成されるよう配置し得る。本実施形態において、ビーム投射装置608はガルバノメータシステムを備える。しかしながら、他の種類のビーム投射装置を用いて基板に対してレーザビームを指向させてもよい。
【0087】
他の実施形態において、ビーム投射装置608は、固定又は静止状態でレーザビームを基板200の表面上に投射してもよい。このような実施形態における相対的移動は、基板200の移動によって達成され得る。いくつかの実施形態において、加工装置600は基板200用の可動マウントを備えていてもよい。可動マウントは、レーザビームに対する基板200の制御された移動を達成するよう配置されたCNCステージ等を備えていてもよい。さらに他の実施形態において、ビーム投射装置608は、基板用の可動マウントと組み合わせてビームを移動させるよう配置され得る。
【0088】
このレーザシステムはさらに、基板の表面上にレーザビームを集束させるよう配置されたレンズ610を備える。これにより所望のスポットサイズが達成され得る。他の実施形態においては、必要に応じて、他の集束又はビーム整形光学系が設けられていてもよい。
【0089】
加工システム600はさらに、図9に示されているシステムの種々の構成要素(及び、設けられている場合、基板用の可動マウント)を制御するよう配置された制御器(図示せず)を備えていてもよい。この制御器は、装置600を制御して、基板を切断又は所望の切断経路に沿って切断するために基板を下処理するよう構成されたコンピュータデバイスであり得る。
【0090】
いくつかの実施形態において、装置600は、基板を切断経路に沿って切断するよう設置されたレーザ切断システムの一部を形成し得る。一実施形態において、レーザシステムは、上記のとおり、切断経路に沿って基板をその厚さに完全に切断するよう配置されている。他の実施形態において、レーザシステムは、レーザパルスを用いて基板をその厚さに部分的にのみレーザ切断するよう配置され得る。このような実施形態において、レーザ切断装置はさらに、基板を切断経路に沿って分割するよう基板に応力を加えるために設置されている。いくつかの実施形態において、応力は、上記のとおり切断レーザ602により印加され得る。さらに他の実施形態において、レーザ切断装置は、追加のレーザなどの応力を適用する追加の構成要素、又は、上記のとおり応力を適用する機械的デバイスを備えていてもよい。
【0091】
実装例及び結果
上記の実施形態の非限定的な実装の一例において、増幅卓上型超短パルスレーザシステムを用いて超短レーザパルスを形成し、これを100μmの厚さを有するホウケイ酸ガラス基板の表面上に指向させた。パルス持続時間は500fsであり、レーザ波長は1034nmであり、及び、レーザの繰り返し率は5kHzであった。レーザパルスは、その最長の軸に沿って93μmの直径(1/e直径)を有する楕円形断面を有していた。主軸及び副軸間で3:1の比を用いた。レーザスポットの空間的重なりは92~95%であった。この例におけるレーザパルスエネルギーはパワーメータを用いて計測した。この例におけるレーザフルエンスは2.49Jcm-2に制御した。この例における基板に係るシングルショット損傷閾値は3.55Jcm-2である。これは上記に定義した方法を用いて計測した。本段落におけるパラメータは単なる例示として理解されるべきであり、他の基板で本方法を実施するために適宜変更が可能である。
【0092】
図10及び11は、上記の例を使用して切断した基板の切断エッジに係る結果の比較を示す。図10は、製造業者から供給された基板における標準的な切断エッジを示す。図11は本出願の方法を用いた切断の結果を示す。図12は、セラミック基板を切断するために本出願の方法を用いて切断した基板の切断エッジのSEM拡大画像を示す。図13は、ガラス基板の切断エッジの画像を示す。これらの図から分かるとおり、高品質の切断エッジが提供され、裏面の損傷が最低限とされている。
【0093】
特許請求の範囲から逸脱することなく、種々の変更が当業者には明らかであろう。上記の実施形態は単なる例示として理解されるべきである。本開示に係る態様又は実施形態の任意の特徴は、個別に、又は、本開示の同一若しくは異なる態様若しくは実施形態の任意の他の特徴と組み合わせて採用され得、本開示は、本明細書に開示されている任意の特徴又は特徴の組み合わせを含む。
図1
図2
図3a
図3b
図4A
図4B
図4C
図4D
図4E
図4F
図4G
図4H
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
【国際調査報告】