IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ジーイー−ヒタチ・ニュークリア・エナジー・アメリカズ・エルエルシーの特許一覧

特表2024-538601原子炉用多段式環状リニア誘導ポンプ
<>
  • 特表-原子炉用多段式環状リニア誘導ポンプ 図1
  • 特表-原子炉用多段式環状リニア誘導ポンプ 図2
  • 特表-原子炉用多段式環状リニア誘導ポンプ 図3A
  • 特表-原子炉用多段式環状リニア誘導ポンプ 図3B
  • 特表-原子炉用多段式環状リニア誘導ポンプ 図3C
  • 特表-原子炉用多段式環状リニア誘導ポンプ 図4
  • 特表-原子炉用多段式環状リニア誘導ポンプ 図5
  • 特表-原子炉用多段式環状リニア誘導ポンプ 図6
  • 特表-原子炉用多段式環状リニア誘導ポンプ 図7
  • 特表-原子炉用多段式環状リニア誘導ポンプ 図8
  • 特表-原子炉用多段式環状リニア誘導ポンプ 図9
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-10-23
(54)【発明の名称】原子炉用多段式環状リニア誘導ポンプ
(51)【国際特許分類】
   G21C 15/247 20060101AFI20241016BHJP
   G21C 15/00 20060101ALI20241016BHJP
   G21D 1/04 20060101ALI20241016BHJP
   G21D 1/02 20060101ALI20241016BHJP
   F04B 19/04 20060101ALI20241016BHJP
【FI】
G21C15/247
G21C15/00 F
G21D1/04
G21D1/02 L
F04B19/04
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024519258
(86)(22)【出願日】2022-09-26
(85)【翻訳文提出日】2024-05-27
(86)【国際出願番号】 US2022044668
(87)【国際公開番号】W WO2023196007
(87)【国際公開日】2023-10-12
(31)【優先権主張番号】17/490,052
(32)【優先日】2021-09-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】508177046
【氏名又は名称】ジーイー-ヒタチ・ニュークリア・エナジー・アメリカズ・エルエルシー
【氏名又は名称原語表記】GE-HITACHI NUCLEAR ENERGY AMERICAS, LLC
(74)【代理人】
【識別番号】110002789
【氏名又は名称】弁理士法人IPX
(72)【発明者】
【氏名】ローウェン・エリック・ポール
(72)【発明者】
【氏名】マレー・ウィリアム・ロイスドン
【テーマコード(参考)】
3H069
【Fターム(参考)】
3H069AA09
3H069BB11
3H069CC05
3H069DD01
3H069DD25
3H069DD48
3H069EE05
3H069EE47
(57)【要約】
液体金属によって冷却される原子炉であって、該原子炉は、炉心を有する原子炉圧力容器内に、炉心を通って液体金属冷却剤を循環させるように構成された多段式環状リニア誘導ポンプ(ALIP)を有している。該多段式ALIPは、多段式ALIPの別個のそれぞれの段を少なくとも部分的に画定する複数組の誘導コイルを有する。該複数組の誘導コイルは、複数の多相電源の独立した制御に基づいて、炉心を通って液体金属冷却剤の流れを調整可能に制御するために、多段式ALIPの複数の段が、互いに独立して制御されるように、別個のそれぞれの多相電源に電気的に接続されるように構成される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体金属の循環を介して冷却されるように構成された原子炉であって、
原子炉圧力容器と、
前記原子炉圧力容器内にある炉心と、
前記原子炉圧力容器内にある多段式環状リニア誘導ポンプ(ALIP)であって、前記炉心を含む一次冷却剤流路を通って液体金属冷却剤を循環させるように構成された多段式ALIPと
を備え、
前記多段式ALIPは、
長手方向に延在する長手軸を有するポンプケーシングと、
複数の同心環状壁と、
前記多段式ALIPの内部にある複数の誘導コイルと
を有し、
前記ポンプケーシングは、前記多段式ALIPの内部を少なくとも部分的に画定し、
前記同心環状壁は、前記長手軸と同軸に延在し、且つ、前記長手軸と同軸に延在する流れ環状空間を集合的に画定し、
前記複数の誘導コイルは、
それぞれ、前記長手軸を取り囲み、
それぞれ、前記長手軸と同軸の中心軸を有し、
前記長手方向に互いに離間しており、
複数組の誘導コイルを含み、
前記複数組の誘導コイルは、前記多段式ALIPの複数の段のうちの別個のそれぞれの段を少なくとも部分的に画定し、
前記複数組の誘導コイルは、複数の多相電源の独立した制御に基づいて、前記一次冷却剤流路を通して液体金属冷却剤の流れを調整可能に制御するために、前記複数の段が、互いに独立して制御されるように、前記複数の多相電源のうちの別個のそれぞれの多相電源に電気的に接続されるように構成される、原子炉。
【請求項2】
請求項1に記載の原子炉において、
前記複数組の誘導コイルは、第1組の誘導コイルと第2組の誘導コイルとを含み、前記第1組の誘導コイルは、前記複数の段の第1段を少なくとも部分的に画定し、前記第2組の誘導コイルは、前記複数の段の第2段を少なくとも部分的に画定し、
前記第1組および前記第2組の誘導コイルは、前記第1組の誘導コイルのうちの少なくとも1つの誘導コイルが、前記長手方向において、前記第2組の誘導コイルのうちの少なくとも2つの誘導コイルの間に位置するように、前記長手方向において、互いに少なくとも部分的に組み合わされている、原子炉。
【請求項3】
請求項1に記載の原子炉において、
前記複数組の誘導コイルは、第1組の誘導コイルおよび第2組の誘導コイルを含み、前記第1組の誘導コイルは、前記複数の段の第1段を少なくとも部分的に画定し、前記第2組の誘導コイルは、前記複数の段の第2段を少なくとも部分的に画定し、
前記第1組および前記第2組の誘導コイルは、
前記第1組の誘導コイルのうちのいずれの誘導コイルも、前記長手方向において、前記第2組の誘導コイルの少なくとも2つの誘導コイルの間に位置しておらず、かつ
前記第2組の誘導コイルのうちのいずれの誘導コイルも、前記長手方向において、前記第1組の誘導コイルの少なくとも2つの誘導コイルの間に位置しないように、
前記長手方向に互いに離間している、原子炉。
【請求項4】
請求項1に記載の原子炉において、
前記複数組の誘導コイルは、第1組の誘導コイルと第2組の誘導コイルとを含み、前記第1組の誘導コイルは、前記複数の段のうちの第1段を少なくとも部分的に画定し、前記第2組の誘導コイルは、前記複数の段のうちの第2段を少なくとも部分的に画定し、
前記第1組及び前記第2組の誘導コイルは、異なる固有の特性を有し、前記異なる固有の特性は、
誘導コイルの材料構成物、
同じ組の誘導コイルのうちの隣り合う誘導コイルの対向面間の前記長手方向の間隔、
前記長手方向における誘導コイルの厚さ、
前記長手方向に対して垂直に延在する半径方向の誘導コイルの環状厚さ、
誘導コイルの内径、および
誘導コイルの外径
のうちの少なくとも1つを含む、原子炉。
【請求項5】
請求項1に記載の原子炉において、
前記複数組の誘導コイルのうちの所定の組の誘導コイルの少なくとも2つの誘導コイルは、異なる固有の特性を有し、前記異なる固有の特性は、
誘導コイルの材料構成物、
同じ組の誘導コイルのうちの隣り合う誘導コイルの対向面間の前記長手方向の間隔、
前記長手方向における誘導コイルの厚さ、
前記長手方向に対して垂直に延在する半径方向の誘導コイルの環状厚さ、
誘導コイルの内径、および
誘導コイルの外径
のうちの少なくとも1つを含む、原子炉。
【請求項6】
請求項1に記載の原子炉において、
前記多段式ALIPは、前記長手軸と同軸に延在し、且つ、前記同心環状壁に囲まれた中心コアをさらに含み、
前記複数の段は、さらに、
前記中心コアの材料構成物、および
前記長手方向に対して垂直である半径方向における前記中心コアの直径
のうちの少なくとも1つの前記長手方向における変形によって少なくとも部分的に画定される、原子炉。
【請求項7】
請求項1に記載の原子炉において、
前記複数の段は、さらに、
前記同心環状壁の内側環状壁の外径、
前記同心環状壁の外側環状壁の内径、
前記同心環状壁の少なくとも1つの環状壁の厚さ、および
前記流れ環状空間の形状
のうちの少なくとも1つの前記長手方向における変形によって少なくとも部分的に画定される、原子炉。
【請求項8】
請求項1に記載の原子炉において、
各別個の多相電源は、複数の多相電源ケーブルのうちの別個の多相電源ケーブルを介して多相電力を供給するように構成され、
前記複数組の誘導コイルは、前記複数の多相電源ケーブルのうちの別個のそれぞれの多相電源ケーブルに電気的に接続され、
前記複数の多相電源ケーブルは、単一の電源導体ケーブル内に少なくとも部分的に収容されており、
前記単一の電源導体ケーブルは、少なくとも前記多段式ALIPのケーシングと少なくとも前記原子炉圧力容器の外側との間を、前記原子炉圧力容器の外壁にある単一の開口部を介して延在しており、前記複数組の誘導コイルは、前記原子炉圧力容器の前記外壁に設けられた前記単一の開口部を介して、別個のそれぞれの多相電源に電気的に結合されている、原子炉。
【請求項9】
請求項1に記載の原子炉において、
前記一次冷却剤流路を通る前記液体金属冷却剤の前記流れを調整可能に制御するために、前記多段式ALIPの前記複数の段の各段への多相電力の供給を独立して制御するよう、前記複数の多相電源を独立して制御するように構成された制御システムをさらに備えている、原子炉。
【請求項10】
液体金属を循環させるように構成された多段式環状リニア誘導ポンプ(ALIP)であって、
長手方向に延在する長手軸を有するポンプケーシングと、
複数の同心環状壁と、
前記多段式ALIPの内部にある複数の誘導コイルと
を有し、
前記ポンプケーシングは、前記多段式ALIPの内部を少なくとも部分的に画定し、
前記同心環状壁は、前記長手軸と同軸に延在し、且つ、前記長手軸と同軸に延在する流れ環状空間を集合的に画定し、
前記複数の誘導コイルは、
それぞれ、前記長手軸を取り囲み、
それぞれ、前記長手軸と同軸の中心軸を有し、
前記長手方向に互いに離間しており、
複数組の誘導コイルを含み、
前記複数組の誘導コイルは、前記多段式ALIPの複数の段のうちの別個のそれぞれの段を少なくとも部分的に画定し、
前記複数組の誘導コイルは、複数の多相電源の独立した制御に基づいて、前記流れ環状空間を通して前記液体金属の流れを調整可能に制御するために、前記複数の段が、互いに独立して制御されるように、前記複数の多相電源のうちの別個のそれぞれの多相電源に電気的に接続されるように構成される、多段式ALIP。
【請求項11】
請求項10に記載の多段式ALIPにおいて、
前記複数組の誘導コイルは、第1組の誘導コイルと第2組の誘導コイルとを含み、前記第1組の誘導コイルは、前記複数の段の第1段を少なくとも部分的に画定し、前記第2組の誘導コイルは、前記複数の段の第2段を少なくとも部分的に画定し、
前記第1組および前記第2組の誘導コイルは、前記第1組の誘導コイルのうちの少なくとも1つの誘導コイルが、前記長手方向において、前記第2組の誘導コイルのうちの少なくとも2つの誘導コイルの間に位置するように、前記長手方向において、互いに少なくとも部分的に組み合わされている、多段式ALIP。
【請求項12】
請求項10に記載の多段式ALIPにおいて、
前記複数組の誘導コイルは、第1組の誘導コイルおよび第2組の誘導コイルを含み、前記第1組の誘導コイルは、前記複数の段の第1段を少なくとも部分的に画定し、前記第2組の誘導コイルは、前記複数の段の第2段を少なくとも部分的に画定し、
前記第1組および前記第2組の誘導コイルは、
前記第1組の誘導コイルのうちのいずれの誘導コイルも、前記長手方向において、前記第2組の誘導コイルの少なくとも2つの誘導コイルの間に位置しておらず、かつ
前記第2組の誘導コイルのうちのいずれの誘導コイルも、前記長手方向において、前記第1組の誘導コイルの少なくとも2つの誘導コイルの間に位置しないように、
前記長手方向に互いに離間している、多段式ALIP。
【請求項13】
請求項10に記載の多段式ALIPにおいて、
前記複数組の誘導コイルは、第1組の誘導コイルと第2組の誘導コイルとを含み、前記第1組の誘導コイルは、前記複数の段のうちの第1段を少なくとも部分的に画定し、前記第2組の誘導コイルは、前記複数の段のうちの第2段を少なくとも部分的に画定し、
前記第1組及び前記第2組の誘導コイルは、異なる固有の特性を有し、前記異なる固有の特性は、
誘導コイルの材料構成物、
同じ組の誘導コイルのうちの隣り合う誘導コイルの対向面間の前記長手方向の間隔、
前記長手方向における誘導コイルの厚さ、
前記長手方向に対して垂直に延在する半径方向の誘導コイルの環状厚さ、
誘導コイルの内径、および
誘導コイルの外径
のうちの少なくとも1つを含む、多段式ALIP。
【請求項14】
請求項10に記載の多段式ALIPにおいて、
前記複数組の誘導コイルのうちの所定の組の誘導コイルの少なくとも2つの誘導コイルは、異なる固有の特性を有し、前記異なる固有の特性は、
誘導コイルの材料構成物、
同じ組の誘導コイルのうちの隣り合う誘導コイルの対向面間の前記長手方向の間隔、
前記長手方向における誘導コイルの厚さ、
前記長手方向に対して垂直に延在する半径方向の誘導コイルの環状厚さ、
誘導コイルの内径、および
誘導コイルの外径
のうちの少なくとも1つを含む、多段式ALIP。
【請求項15】
請求項10に記載の多段式ALIPにおいて、
前記多段式ALIPは、前記長手軸と同軸に延在し、且つ、前記同心環状壁に囲まれた中心コアをさらに含み、
前記複数の段は、さらに、
前記中心コアの材料構成物、および
前記長手方向に対して垂直である半径方向における前記中心コアの直径
のうちの少なくとも1つの前記長手方向における変形によって少なくとも部分的に画定される、多段式ALIP。
【請求項16】
請求項11に記載の多段式ALIPにおいて、
前記複数の段は、さらに、
前記同心環状壁の内側環状壁の外径、
前記同心環状壁の外側環状壁の内径、および
前記同心環状壁の少なくとも1つの環状壁の異なる厚さ
のうちの少なくとも1つの前記長手方向における変形によって少なくとも部分的に画定される、多段式ALIP。
【請求項17】
請求項10に記載の多段式ALIPを操作する方法であって、
前記流れ環状空間を通して液体金属を流すために、前記複数の多相電源のうちの第1の多相電源を介して、前記複数の段のうちの第1段に第1の多相電力を供給することと、
前記流れ環状空間を通して液体金属の前記流れを調整可能に制御するために、前記複数の多相電源のうちの第2の多相電源を介して、前記複数の段のうちの第2段に、第2の多相電力の別個の供給を独立して制御することと
を備える、方法。
【請求項18】
請求項17に記載の方法において、
前記独立して制御することは、前記第1段への前記第1の多相電力の前記供給を維持しながら、前記第2段への前記第2の多相電力の前記別個の供給を抑制することを含む、方法。
【請求項19】
請求項17に記載の方法において、
前記独立して制御することは、
前記第1段に供給される前記第1の多相電力の周波数とは独立した、前記第2段に供給される前記第2の多相電力の周波数、および
前記第1段に供給される前記第1の多相電力の電流とは独立した、前記第2段に供給される前記第2の多相電力の電流
のうちの少なくとも1つを独立して調整することを含む、方法。
【請求項20】
原子炉内の液体金属冷却剤の流量制御を改善するために原子炉を構成する方法であって、
複数の段を有する多段式ALIPを前記原子炉の原子炉圧力内の一次冷却剤ループに設置することと、
前記多段式ALIPの前記複数の段を、別個のそれぞれの多相電源ケーブルを介して、別個のそれぞれの多相電源に電気的に接続することと、
前記多段式ALIPを電磁ポンプ制御システムに通信可能に結合することと
を備え、
前記多段式ALIPの前記複数の段は、別個のそれぞれの多相電源に電気的に接続されるように構成された別個のそれぞれの組の誘導コイルによって少なくとも部分的に画定され、
前記電磁ポンプ制御システムは、命令プログラムを記憶するメモリと、前記別個のそれぞれの多相電源によって供給される多相電力を独立して制御することに基づいて、前記複数の段のそれぞれの段を独立して制御する命令プログラムを実行するように構成されたプロセッサとを含む、
方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、一般に原子炉に関し、特に液体金属冷却原子炉の炉心を通る液体金属冷却剤の循環を制御することに関する。
【背景技術】
【0002】
原子力発電所に含まれる原子炉は、炉心を通って循環する1つまたは複数の冷却剤への熱伝達によって冷却されるように構成することができる。炉心から熱を除去するために、様々な冷却剤を用いることができる。冷却剤は、水、液体金属、溶融塩、気体物質、これらのいくつかの組み合わせなどを含む1つまたは複数の様々な物質を含むことができる。
【0003】
一部の原子力発電所では、本明細書において一次冷却剤とも呼ばれる、炉心から熱を除去する冷却剤が、熱交換器を通って循環され、本明細書において二次冷却剤とも呼ばれる別の冷却剤に熱を伝達する。場合によっては、該二次冷却剤は、原子力発電所に含まれるタービン装置を循環して発電機を駆動するなどの作業に使用される。一部の原子力発電所では、冷却剤を使用して、脱塩、水素製造などを含む1つ以上の工業プロセスを支援するプロセス熱を提供することができる。
【0004】
原子炉は、液体金属の循環によって冷却されるように構成されている場合もある。そのような原子炉は、本明細書においては液体金属冷却原子炉と同義で呼ばれ、1つまたは複数の液体金属物質が1次冷却剤として循環する一次冷却剤ループを含んでいてもよい。一次冷却剤ループを通って循環するそのような1つ以上の液体金属物質は、原子炉の炉心を少なくとも部分的に通って循環することができ、本明細書では、液体金属冷却剤と呼ばれる。
【0005】
原子炉を通って循環することができる液体金属冷却剤は、導電性液体金属物質を含む場合もある。導電性液体金属物質により冷却されるように構成された液体金属冷却原子炉は、原子炉を通って導電性液体金属冷却剤を循環させるように構成された1つまたは複数の電磁ポンプ(EMP)を含むことができる。
【発明の概要】
【0006】
いくつかの例示的な実施形態によれば、液体金属の循環を介して冷却されるように構成された原子炉は、原子炉圧力容器と、原子炉圧力容器内にある炉心と、原子炉圧力容器内にある多段式環状リニア誘導ポンプ(ALIP)を有することができる。多段式ALIPは、炉心を含む一次冷却剤流路を通って液体金属冷却剤を循環させるように構成され得る。多段式ALIPは、長手方向に延在する長手軸を有し、且つ多段式ALIPの内部を少なくとも部分的に画定するポンプケーシングと、長手軸と同軸に延在し、且つ、長手軸と同軸に延在する流れ環状空間を集合的に画定する複数の同心環状壁と、多段式ALIPの内部にある複数の誘導コイルとを有し、各誘導コイルは、それぞれ長手軸を取り囲んでいる。複数の誘導コイルは、それぞれ、長手軸と同軸の中心軸を有し得る。複数の誘導コイルは、長手方向に互いに離間していてもよい。複数の誘導コイルは、複数組の誘導コイルを含み、多段式ALIPの複数の段のうちの別個のそれぞれの段を少なくとも部分的に画定する複数組の誘導コイルを含み得る。複数組の誘導コイルは、複数の多相電源の独立した制御に基づいて、一次冷却剤流路を通して液体金属冷却剤の流れを調整可能に制御するために、複数の段が、互いに独立して制御されるように、複数の多相電源のうちの別個のそれぞれの多相電源に電気的に接続され得る。
【0007】
複数組の誘導コイルは、第1組の誘導コイルと第2組の誘導コイルとを含むことができる。第1組の誘導コイルは、複数の段の第1段を少なくとも部分的に画定することができる。第2組の誘導コイルは、複数の段の第2段を少なくとも部分的に画定することができる。
【0008】
第1組および第2組の誘導コイルは、第1組の誘導コイルのうちの少なくとも1つの誘導コイルが、長手方向において、第2組の誘導コイルのうちの少なくとも2つの誘導コイルの間に位置するように、長手方向において、互いに少なくとも部分的に組み合わされていてもよい。
【0009】
第1組および第2組の誘導コイルは、第1組の誘導コイルのうちのいずれの誘導コイルも、長手方向において、第2組の誘導コイルの少なくとも2つの誘導コイルの間に位置しておらず、かつ、第2組の誘導コイルのうちのいずれの誘導コイルも、長手方向において、第1組の誘導コイルの少なくとも2つの誘導コイルの間に位置しないように、長手方向に互いに離間していてもよい。
【0010】
第1組及び第2組の誘導コイルは、異なる固有の特性を有することができる。当該異なる固有の特性は、誘導コイルの材料構成物、同じ組の誘導コイルのうちの隣り合う誘導コイルの対向面間の長手方向の間隔、長手方向における誘導コイルの厚さ、長手方向に対して垂直に延在する半径方向の誘導コイルの環状厚さ、誘導コイルの内径、および、誘導コイルの外径のうちの少なくとも1つを含むことができる。
【0011】
複数組の誘導コイルのうちの所定の組の誘導コイルの少なくとも2つの誘導コイルは、異なる固有の特性を有することができる。当該異なる固有の特性は、誘導コイルの材料構成物、同じ組の誘導コイルのうちの隣り合う誘導コイルの対向面間の長手方向の間隔、長手方向における誘導コイルの厚さ、長手方向に対して垂直に延在する半径方向の誘導コイルの環状厚さ、誘導コイルの内径、および、誘導コイルの外径のうちの少なくとも1つを含むことができる。
【0012】
多段式ALIPは、長手軸と同軸に延在し、且つ、同心環状壁に囲まれた中心コアをさらに含むことができる。複数の段は、さらに、中心コアの材料構成物、および、長手方向に対して垂直である半径方向における中心コアの直径のうちの少なくとも1つの長手方向における変形によって少なくとも部分的に画定され得る。
【0013】
複数の段は、さらに、同心環状壁の内側環状壁の外径、同心環状壁の外側環状壁の内径、同心環状壁の少なくとも1つの環状壁の厚さ、および、流れ環状空間の形状のうちの少なくとも1つの長手方向における変形によって少なくとも部分的に画定され得る。
【0014】
各別個の多相電源は、複数の多相電源ケーブルのうちの別個の多相電源ケーブルを介して多相電力を供給するように構成されてもよい。複数組の誘導コイルは、複数の多相電源ケーブルのうちの別個のそれぞれの多相電源ケーブルに電気的に接続されてもよい。複数の多相電源ケーブルは、単一の電源導体ケーブル内に少なくとも部分的に収容されていてもよい。単一の電源導体ケーブルは、少なくとも多段式ALIPのケーシングと少なくとも原子炉圧力容器の外側との間を、原子炉圧力容器の外壁にある単一の開口部を介して延在しており、複数組の誘導コイルは、原子炉圧力容器の外壁に設けられた単一の開口部を介して、別個のそれぞれの多相電源に電気的に結合されている。
【0015】
原子炉は、一次冷却剤流路を通る液体金属冷却剤の流れを調整可能に制御するために、多段式ALIPの複数の段の各段への多相電力の供給を独立して制御するよう、複数の多相電源を独立して制御するように構成された制御システムをさらに含むことができる。
【0016】
いくつかの例示的な実施形態によれば、液体金属を循環させるように構成された多段式環状リニア誘導ポンプ(ALIP)は、長手方向に延在する長手軸を有し、且つ、多段式ALIPの内部を少なくとも部分的に画定するポンプケーシングと、長手軸と同軸に延在し、且つ、長手軸と同軸に延在する流れ環状空間を集合的に画定する複数の同心環状壁と、多段式ALIPの内部にある複数の誘導コイルとを有することができる。各誘導コイルは、それぞれ長手軸を取り囲んでいてもよい。複数の誘導コイルは、それぞれ、長手軸と同軸の中心軸を有していてもよい。複数の誘導コイルは、長手方向に互いに離間していてもよい。複数の誘導コイルは、複数組の誘導コイルを含んでいてもよい。複数組の誘導コイルは、多段式ALIPの複数の段のうちの別個のそれぞれの段を少なくとも部分的に画定してもよい。複数組の誘導コイルは、複数の多相電源の独立した制御に基づいて、一次冷却剤流路を通して液体金属の流れを調整可能に制御するために、複数の段が、互いに独立して制御されるように、複数の多相電源のうちの別個のそれぞれの多相電源に電気的に接続され得る。
【0017】
複数組の誘導コイルは、第1組の誘導コイルと第2組の誘導コイルとを含むことができる。第1組の誘導コイルは、複数の段の第1段を少なくとも部分的に画定し得る。第2組の誘導コイルは、複数の段の第2段を少なくとも部分的に画定し得る。
【0018】
第1組および前記第2組の誘導コイルは、第1組の誘導コイルのうちの少なくとも1つの誘導コイルが、長手方向において、第2組の誘導コイルのうちの少なくとも2つの誘導コイルの間に位置するように、長手方向において、互いに少なくとも部分的に組み合わされ得る。
【0019】
第1組および前記第2組の誘導コイルは、第1組の誘導コイルのうちのいずれの誘導コイルも、長手方向において、第2組の誘導コイルの少なくとも2つの誘導コイルの間に位置しておらず、かつ第2組の誘導コイルのうちのいずれの誘導コイルも、長手方向において、第1組の誘導コイルの少なくとも2つの誘導コイルの間に位置しないように、長手方向に互いに離間されてもよい。
【0020】
第1組及び第2組の誘導コイルは、異なる固有の特性を有することができる。当該異なる固有の特性は、誘導コイルの材料構成物、同じ組の誘導コイルのうちの隣り合う誘導コイルの対向面間の長手方向の間隔、長手方向における誘導コイルの厚さ、長手方向に対して垂直に延在する半径方向の誘導コイルの環状厚さ、誘導コイルの内径、および、誘導コイルの外径のうちの少なくとも1つを含むことができる。
【0021】
複数組の誘導コイルのうちの所定の組の誘導コイルの少なくとも2つの誘導コイルは、異なる固有の特性を有することができる。当該異なる固有の特性は、誘導コイルの材料構成物、同じ組の誘導コイルのうちの隣り合う誘導コイルの対向面間の長手方向の間隔、長手方向における誘導コイルの厚さ、長手方向に対して垂直に延在する半径方向の誘導コイルの環状厚さ、誘導コイル内径、および誘導コイルの外径のうちの少なくとも1つを含むことができる。
【0022】
多段式ALIPは、長手軸と同軸に延在し、且つ、同心環状壁に囲まれた中心コアをさらに含むことができる。複数の段は、さらに、中心コアの材料構成物、および、長手方向に対して垂直である半径方向における中心コアの直径のうちの少なくとも1つの長手方向における変形によって少なくとも部分的に画定される。
【0023】
複数の段は、さらに、同心環状壁の内側環状壁の外径、同心環状壁の外側環状壁の内径、又は、同心環状壁の少なくとも1つの環状壁の異なる厚さのうちの少なくとも1つの長手方向における変形によって少なくとも部分的に画定され得る。
【0024】
いくつかの例示的な実施形態によれば、多段式ALIPを作動させるための方法は、流れ環状空間を通して液体金属を流すために、複数の多相電源のうちの第1の多相電源を介して、複数の段のうちの第1段に第1の多相電力を供給することと、流れ環状空間を通して液体金属の流れを調整可能に制御するために、複数の多相電源のうちの第2の多相電源を介して、複数の段のうちの第2段に、第2の多相電力の別個の供給を独立して制御することとを含むことができる。
【0025】
独立して制御することは、第1段への第1の多相電力の前記供給を維持しながら、第2段への第2の多相電力の別個の供給を抑制することを含み得る。
【0026】
独立して制御することは、第1段に供給される第1の多相電力の周波数とは独立した、第2段に供給される第2の多相電力の周波数、および、第1段に供給される第1の多相電力の電流とは独立した、第2段に供給される第2の多相電力の電流のうちの少なくとも1つを独立して調整することを含み得る。
【0027】
いくつかの例示的な実施形態によれば、原子炉内の液体金属冷却剤の流量制御を改善するために原子炉を構成する方法は、原子炉の原子炉圧力内の一次冷却剤ループに多段式ALIPを設置することを含み得る。多段式ALIPは、別個のそれぞれの多相電源に電気的に接続されるように構成された別個のそれぞれの組の誘導コイルによって少なくとも部分的に画定された複数の段を有することができる。当該方法は、別個のそれぞれの多相電源ケーブルを介して、多段式ALIPの複数の段を、別個のそれぞれの多相電源に電気的に接続することをさらに含むことができる。当該方法は、多段式ALIPを電磁ポンプ制御システムに通信可能に結合することをさらに含んでいてもよく、電磁ポンプ制御システムは、命令プログラムを記憶するメモリと、別個のそれぞれの多相電源によって供給される多相電力を独立して制御することに基づいて、複数の段のそれぞれの段を独立して制御する命令プログラムを実行するように構成されたプロセッサと、を含んでいる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
本明細書における非限定的な実施形態の様々な特徴および利点は、添付図面と共に詳細な説明を検討することで、より明らかになるであろう。添付図面は、例示を目的として提供されているにすぎず、特許請求の範囲を限定すると解釈されるものではない。添付の図面は、別途明示されない限り、縮尺通りに描かれているとみなすべきではない。明確にするために、図面の様々な寸法は誇張されている場合がある。
【0029】
図1図1は、いくつかの例示的な実施形態による、液体金属冷却原子炉を含む原子力発電所の概略図である。
【0030】
図2図2は、いくつかの例示的実施形態による、液体金属冷却原子炉の透視図である。
【0031】
図3A図3Aは、いくつかの例示的な実施形態による、多段式環状リニア誘導ポンプ(ALIP)の平面側断面図である。
【0032】
図3B図3Bは、いくつかの例示的実施形態による、図3Aの断面図線IIIB-IIIB'に沿った多段式ALIPの平面正面断面図である。
【0033】
図3C図3Cは、いくつかの例示的な実施形態による、多段式ALIPの配線図の概略図である。
【0034】
図4図4は、いくつかの例示的実施形態による、ALIPの誘導コイルに供給される電力に基づくALIPの性能を示すグラフである。
【0035】
図5図5は、いくつかの例示的実施形態による多段式ALIPの平面側断面図である。
【0036】
図6図6は、いくつかの例示的実施形態による、多段式ALIPの平面側断面図である。
【0037】
図7図7は、いくつかの例示的実施形態による、多段式ALIPの平面側断面図である。
【0038】
図8図8は、いくつかの例示的な実施形態による、多段式ALIPを操作する方法を示すフローチャートである。
【0039】
図9図9は、いくつかの例示的な実施形態による、原子炉内の液体金属冷却剤の流量制御を改善するために原子炉を構成する方法を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0040】
次に、例示的な実施形態を詳細に参照するが、その一部は添付図面に示されており、同様の参照符号は、全体を通して同様の要素を示す。
【0041】
ある要素または層が別の要素または層に対して「上に(on)ある」、「接続される(connected to)」、「結合される(coupled to)」、または「覆う(covering)」と言及される場合には、他の要素または層に対して直接的に上にあり、接続され、結合され、または覆ってもよいし、あるいは介在する要素または層が存在してもよい。逆に、ある要素が別の要素または層に対して「直接上にある」、「直接接続される」、または「直接結合される」と言及される場合には、介在する要素または層は存在しない。本明細書を通じて、類似する符号は類似する要素を指す。本明細書で使用される場合、「および/または」という用語は、関連する列挙された項目のいずれか及び1つもしくは複数のすべての組み合わせを含む。
【0042】
本明細書では、様々な要素、部品、領域、層、および/またはセクションを第1、第2、第3などの用語を使用して記述するが、それらの要素、部品、領域、層、および/またはセクションが、これらの用語により限定されるものではないことを理解されたい。これらの用語は、1つの要素、部品、領域、層、またはセクションを別の領域、層、またはセクションと区別するためにのみ使用される。したがって、後述する第1の要素、部品、領域、層、またはセクションは、例示的な実施形態の教示から逸脱することなく、第2の要素、部品、領域、層、またはセクションと呼ばれることもある。
【0043】
空間的に相対的な用語(例えば、「真下(beneath)」、「下方(below)」、「下側(lower)」、「上方(above)」、「上側(upper)」など)は、本明細書では、図に示すような、1つの要素または特徴と別の要素または特徴との関係を記述するための説明を容易にするために用いられ得る。空間的に相対的な用語は、図に描かれている向きに加えて、使用または動作中の装置の様々な向きを含むことを意図していることを理解されたい。例えば、図中の装置が上下反転された場合、他の要素または特徴の「下方」または「真下」にあると記述される要素は、他の要素または特徴の「上方」に配される。よって、「下方(below)」という用語は、上および下の両方の方向を含むことができる。本装置は、他の向き(90度回転させた向き、または他の向き)であってもよく、本明細書で使用される空間的に相対的な記述は、それに応じて解釈される。
【0044】
本明細書で用いられる用語は、様々な実施形態を説明するためだけのものであり、例示的な実施形態を限定することを意図するものではない。本明細書で用いられるように、単数形「1つの(a)」、「1つの(an)」および「前記(the)」は、文脈上明らかにそうでないことが示されない限り、複数形も含むものとする。「含む(includes)」、「含んでいる(including)」、「備える(comprises)」および/または「備えている(comprising)」という用語は、本明細書で使用される場合、記載した特徴、整数、ステップ、動作、要素、および/または構成要素が存在することを明示するが、1つまたは複数の他の特徴、整数、ステップ、動作、要素、構成要素、および/またはそれらの組の存在または追加を除外しないことがさらに理解されよう。
【0045】
本明細書では、例示的な実施形態について、例示的な実施形態の理想的な実施形態(および中間構造)の概略図である断面図を参照して説明される。そのため、例えば、製造技術および/または精度などに伴って、図示の形状からの変形が想定される。よって、例示的な実施形態は、本明細書に図示された領域の形状に限定されるものとして解釈されるべきではなく、例えば製造に起因する形状の変更を含むものである。例えば、矩形として示された注入領域は、通常、注入された領域から注入されていない領域への2値変化ではなく、その縁部に丸いもしくは湾曲した特徴および/または注入濃度の勾配を有する。同様に、注入によって形成される埋め込み領域は、埋め込み領域と注入が行われる表面との間の領域にある程度の注入をもたらす場合がある。よって、各図に例示された領域は、性質上概略的なものであり、それらの形状は、装置の領域の実際の形状を示すことを意図しておらず、例示的な実施形態の範囲を限定することを意図したものではない。
【0046】
例示的な実施形態は、以下でより詳細に説明されるユニットおよび/または装置と関連して実施することができる行為および動作の記号表現(例えば、フローチャート、フロー図、データフロー図、構造図、ブロック図などの形態)を参照して説明することができる。特定の態様で説明するが、特定のブロックで指定された機能または動作は、フローチャート、フロー図などで指定されたフローとは異なる方法で実行されてもよい。例えば、2つの連続するブロックで順次実行するように示している機能または動作は、実際には同時に実行されてもよいし、場合によっては逆の順序で実行されてもよい。
【0047】
特に定義されない限り、本明細書で用いられるすべての用語(技術用語および科学用語を含む)は、例示的な実施形態が属する技術分野の当業者によって一般に理解されるものと同じ意味を有する。一般的に使用される辞書で定義されるものを含む用語は、関連する技術分野の脈絡におけるそれらの意味と合致する意味を有するものと解釈されなければならず、本明細書において特に定義されない限り、理念化された意味、または過度に形式的な意味で解釈されないことがさらに理解されるであろう。
【0048】
1つまたは複数の例示的な実施形態によるユニット、システム、および/または装置は、ハードウェア、ソフトウェア、および/またはそれらの組み合わせの1つまたは複数のインスタンスを使用して実現することができる。例えば、ハードウェア装置は、プロセッサ、中央処理ユニット(CPU)、コントローラ、算術論理ユニット(ALU)、デジタル信号プロセッサ、マイクロコンピュータ、フィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)、システムオンチップ(SoC)、プログラマブルロジックユニット、マイクロプロセッサ、または定義された方法で命令に応答し実行することができる任意の他のデバイスなどの処理回路を使用して実現され得るが、これらに限定されない。
【0049】
ソフトウェアは、ハードウェア装置を独立してまたは集合的に指示しまたは構成して所望のように動作させるために、コンピュータプログラム、プログラムコード、命令、またはそれらのいくつかの組み合わせを含むことができる。コンピュータプログラムおよび/またはプログラムコードは、上述したハードウェア装置のうちの1つまたは複数などの、1つまたは複数のハードウェア装置によって実行可能な、プログラムもしくはコンピュータ可読命令、ソフトウェアコンポーネント、ソフトウェアモジュール、データファイル、および/またはデータ構造などを含むことができる。プログラムコードの例には、コンパイラによって生成された機械コード、およびインタプリタを使用して実行されるより高いレベルのプログラムコードの両方が含まれる。
【0050】
例えば、ハードウェア装置がコンピュータ処理装置(例えば、プロセッサ、中央処理ユニット(CPU)、コントローラ、算術論理ユニット(ALU)、デジタル信号プロセッサ、マイクロコンピュータ、マイクロプロセッサなど)である場合には、コンピュータ処理装置は、プログラムコードに従って、算術演算、論理演算、および入出力動作を実行することによって、プログラムコードを実行するように構成することができる。プログラムコードがコンピュータ処理装置にロードされると、コンピュータ処理装置はプログラムコードを実行するようにプログラムされ、それによってコンピュータ処理装置を特殊用途のコンピュータ処理装置に変換することができる。より具体的な例では、プログラムコードがプロセッサにロードされると、プロセッサは、プログラムコードおよびそれに対応する動作を実行するようにプログラムされ、それによって該プロセッサが特殊用用途プロセッサに変換される。
【0051】
ソフトウェアおよび/またはデータは、ハードウェア装置に命令またはデータを提供し、またはハードウェア装置によって解釈されることが可能な任意のタイプの機械、コンポーネント、物理装置もしくは仮想装置、またはコンピュータ記憶媒体もしくは装置に永続的または一時的に具現化されてもよい。ソフトウェアはまた、ネットワーク結合されたコンピュータシステム上に分散されてもよく、その結果、ソフトウェアは分散して格納され、実行される。特に、例えば、ソフトウェアおよびデータは、本明細書で説明される有形または非一時的コンピュータ可読記憶媒体を含む、1つまたは複数のコンピュータ可読記録媒体によって格納されてもよい。
【0052】
1つまたは複数の例示的な実施形態によれば、コンピュータ処理装置は、説明の明瞭性を高めるために、様々な動作および/または機能を実行する様々な機能ユニットを含むものとして説明することができる。しかしながら、コンピュータ処理装置は、これらの機能ユニットに限定されるものではない。例えば、1つまたは複数の例示的な実施形態では、機能ユニットの様々な動作および/または機能は、機能ユニットのうちの他のものによって実行されてもよい。さらに、コンピュータ処理装置は、コンピュータ処理装置の動作および/または機能をこれらの様々な機能ユニットに細分化することなく、様々な機能ユニットの動作および/または機能を実行してもよい。
【0053】
1つまたは複数の例示的な実施形態によるユニットおよび/または装置は、また、1つまたは複数の記憶装置を含むことができる。1つまたは複数の記憶装置は、ランダムアクセスメモリ(RAM)、リードオンリメモリ(ROM)、永久大容量記憶装置(ディスクドライブなど)、ソリッドステート(例えば、NANDフラッシュ)デバイス、および/またはデータを格納し記録することができる任意の他の同様のデータ記憶機構などの、有形または非一時的なコンピュータ可読記憶媒体であってもよい。1つまたは複数の記憶装置は、1つまたは複数のオペレーティングシステムのための、および/または本明細書に記載の例示的な実施形態を実現するための、コンピュータプログラム、プログラムコード、命令、またはそれらのいくつかの組み合わせを格納するように構成されてもよい。コンピュータプログラム、プログラムコード、命令、またはそれらのいくつかの組み合わせは、ドライブ機構を使用して、別々のコンピュータ可読記憶媒体から、1つもしくは複数の記憶装置および/または1つもしくは複数のコンピュータ処理装置にロードすることもできる。そのような別々のコンピュータ可読記憶媒体は、ユニバーサルシリアルバス(USB)フラッシュドライブ、メモリスティック、ブルーレイ/DVD/CD-ROMドライブ、メモリカード、および/または他の同様のコンピュータ可読記憶媒体が含まれ得る。コンピュータプログラム、プログラムコード、命令、またはそれらのいくつかの組み合わせは、ローカルのコンピュータ可読記憶媒体ではなく、ネットワークインターフェースを介してリモートのデータ記憶装置から1つもしくは複数の記憶装置および/または1つもしくは複数のコンピュータ処理装置にロードすることができる。さらに、コンピュータプログラム、プログラムコード、命令、またはそれらのいくつかの組み合わせは、コンピュータプログラム、プログラムコード、命令、またはそれらのいくつかの組み合わせをネットワーク上で転送および/または配信するように構成されたリモートコンピューティングシステムから、1つもしくは複数の記憶装置および/または1つもしくは複数のプロセッサにロードすることができる。リモートコンピューティングシステムは、有線インターフェース、エアインターフェース、および/または任意の他の同様の媒体を介して、コンピュータプログラム、プログラムコード、命令、またはそれらのいくつかの組み合わせを転送および/または配信することができる。
【0054】
1つもしくは複数のハードウェア装置、1つもしくは複数の記憶装置、および/またはコンピュータプログラム、プログラムコード、命令、もしくはそれらのいくつかの組み合わせは、例示的な実施形態の目的のために特別に設計および構成されてもよいし、あるいは、例示的な実施形態の目的のために変更および/または修正された公知の装置であってもよい。
【0055】
コンピュータ処理装置などのハードウェア装置は、オペレーティングシステム(OS)およびOS上で実行される1つもしくは複数のソフトウェアアプリケーションを実行することができる。コンピュータ処理装置はまた、ソフトウェアの実行に応答してデータにアクセスし、データを格納し、操作し、処理し、作成することができる。単純化のために、1つまたは複数の例示的な実施形態を1つのコンピュータ処理装置として例示することができるが、しかし、当業者は、ハードウェア装置が複数の処理要素および複数のタイプの処理要素を含むことができることを理解するであろう。例えば、ハードウェア装置は、複数のプロセッサ、またはプロセッサおよびコントローラを含むことができる。さらに、並列プロセッサなどの他の処理構成も可能である。
【0056】
特定の実施例および図面を参照して説明するが、例示的な実施形態の修正、追加および置換は、当業者による説明に従って様々に行うことができる。例えば、記載した技術は、記載した方法と異なる順序で実行されてもよく、および/または、記載したシステム、アーキテクチャ、装置、回路などの構成要素は、上記の方法とは異なるように接続または組み合わせてもよく、あるいは、結果は、他の構成要素または同等物によって適切に達成されてもよい。
【0057】
本発明の概念は、原子炉の少なくとも一部を通る液体金属冷却剤の流れの制御を改善するように構成された電磁ポンプ(EMP)と、該電磁ポンプを一つ以上含む液体金属冷却原子炉と、電磁ポンプおよび/または原子炉を構成および/または操作する方法と、に関する。
【0058】
本発明の概念のいくつかの例示的な実施形態による電磁ポンプは、環状リニア誘導ポンプ(ALIP)を含む。環状リニア誘導ポンプ(ALIP)は、液体金属冷却剤に電磁力を印加して、液体金属冷却剤をポンプの長さに沿って(例えば、ポンプの長手軸と平行に)流れるようにすることに基づいて液体金属を圧送するように構成された電磁ポンプであってもよい。これは、ポンプの長さに沿って(例えば、ポンプの長手軸と同軸に)延在する流れ環状空間を取り囲むALIPの誘導コイルに、指定されたAC周波数および位相角で交流(AC)電流を印加することに基づいて実行することができる。
【0059】
いくつかの例示的な実施形態では、ALIPは、2つ以上の「段」を含む多段式ALIPであり、2つ以上の段を有することに基づいて、ポンプを通る液体金属冷却剤の流れ、ひいては該ポンプを含む原子炉を通る液体金属冷却剤の流れの制御を柔軟に改善することができるように構成されている。電磁ポンプの性能(例えば、効率および/または圧力出力)は、構成部品の形状、誘導コイルへの電力の印加周波数および/または電力振幅、材料の選択、および流入条件を含む多数の要因に基づいている。多段式ALIPは、液体金属冷却システムにとってより経済的な(例えば、より効率的で、原子炉の冷却要件等に応じて最適化された)液体金属冷却剤の流れを促進するために、パラメータの一部または全部をそれぞれ独立して変化させることができる2つ以上の段を含んでいる。従って、多段式ALIPは、同じ動作範囲内で、動作状態と機能の範囲(例えば、単段式ALIPと比較して、多段式ALIPによって達成され得る離散流量の範囲)を拡大する。
【0060】
本明細書において説明されるように、多段式ALIPの所定の「段」は、多段式ALIPの複数の誘導コイルのうち、別個の特定の多相電源に電気的に接続されるように構成された別個の組の誘導コイル指す、および/または、当該別個の組によって少なくとも部分的に画定される場合がある。従って、多段式ALIPにおける複数の段は、複数の多相電源の独立した制御に基づいて、複数の段が、一次冷却剤流路を通る液体金属冷却剤の流れを調整可能に制御するために、互いに独立して制御されるように構成されるように、複数の多相電源のうちの、別個の、それぞれの多相電源に電気的に接続されるように構成される、別個の、それぞれの組の誘導コイルを指す、および/または、別個の、それぞれの組の誘導コイルによって少なくとも部分的に画定される、と理解されるであろう。
【0061】
段は、特定の多相電源に電気的に接続されるように構成された特定の一組の誘導コイルを含み、および/またはそれによって少なくとも部分的に画定されることに加えて、多段式ALIPの少なくともある部分内の多段式ALIPの構成要素の構造形状の特定の構成を含み、および/またはそれによって少なくとも部分的に画定されてもよい。構成要素のそのような構造形状は、特定の構成要素の厚さ、長さ、幅など、特定の構成要素の組の隣り合う構成要素間の間隔距離(例えば、ポンプの長さに沿った隣り合う誘導コイル間の間隔)、多段式ALIP内の1つまたは複数の構造体によって画定される流路形状(例えば、流路を画定する構造体の形状および/または構造によって画定される滑らかな環状空間またはらせん状の環状空間である流路など)を含み得る。従って、多段式ALIPにおける複数の段は、別個のそれぞれの構造形状を有する構成要素を有する多段式ALIPにおける複数の別個のセクション、領域等によって少なくとも部分的に画定されるものを含むことができ、及び/又は、それによって少なくとも部分的に画定され得る。例えば、多段式ALIPの別々の段における別個の組の誘導コイルは、長手方向に異なる厚さ、ポンプの半径方向に異なる長さまたは厚さ、同じ段内の長手方向に隣り合う誘導コイル間の長手方向に異なる間隔距離などを有することができる。別の例では、多段式ALIPは、多段式ALIPの環状流路を少なくとも部分的に画定する環状壁を有することができ、当該環状壁は、異なる内径、異なる外径、異なる厚さ、または異なる形状を有する別個の部分を有し、それにより、流れ環状空間の異なる形状(例えば、滑らかな環状空間またはらせん状の環状空間)を、多段式ALIPの別個のそれぞれの段に関連したポンプの別個の領域において画定するようにする(例えば、別々の多相電源に電気的に接続されるように構成された別々のそれぞれの組の誘導コイルによって少なくとも部分的に画定される別々の領域に位置させることができる)。別の実施例では、多段式ALIPは、中央コアを有することができ、中央コアは、半径方向に異なる厚さを有する別個の部分を有し、これらの別個の部分は、多段式ALIPの別個のそれぞれの段に関連すると理解することができる(例えば、別個の多相電源に電気的に接続されるように構成された別個のそれぞれの組の誘導コイルによって少なくとも部分的に画定される別個の領域に位置することができる)。
【0062】
段は、特定の多相電源に電気的に接続されるように構成された特定の組の誘導コイルを含み、かつ/またはそれによって少なくとも部分的に画定されることに加えて、多段式ALIPの少なくとも特定の部分内の多段式ALIPの1つまたは複数の構成要素の異なる材料構成物および/または固有の特性を含んでいてもよく、および/またはそれによって少なくとも部分的に画定されてもよい。例えば、多段式ALIPの別々の段のうちの、別々の組の誘導コイルは、異なる材料構成物であってもよい。別の例では、多段式ALIPは、中央コアを有していてもよく、中央コアは、異なる材料構成物を有する別個の部分を有し、これらの別個の部分は、多段式ALIPの別個のそれぞれの段に関連すると理解されてもよい(例えば、別個の多相電源に電気的に接続されるように構成された別個のそれぞれの組の誘導コイルによって少なくとも部分的に画定される別個の領域に位置していてもよい)。
【0063】
例示的な実施形態のいずれかによる多段式ALIPは、追加の設計変数を提供できることが理解されるであろう。当該追加の設計変数により、多段式ALIP内の液体金属冷却剤の圧力上昇および/または流れを制御および/または調整することができ、それには、多段式ALIPの誘導コイルの位相を変化させること、多段式ALIPの誘導コイルの形状および間隔を変化させること、多段式ALIPの別々の段の間および/または段内の各構成要素に使用される材料を変化させること、環状壁の厚さを変化させること、および/または多段式ALIPの長さに沿って上記のいずれかを変化させること、が含まれる。さらに、多段式ALIPは、誘導コイルの別々の段への多相電力の供給のパラメータ(例えば、周波数および/または電力振幅)を独立して制御(例えば、開始または抑制)および/または調整することに基づいて、別々の段(別々の組の誘導コイルを含む)の動作を独立して制御および/または調整することに基づいて制御変数を提供するように構成されてもよい。
【0064】
多段式ALIPでは、異なる段を互いに独立に制御、構成、調整、開始(例えば、始動)、および/または抑制(例えば、停止)できることが理解されるであろう。そして、一つのポンプにそのような複数の段を含むことで、液体金属冷却剤の圧力上昇および/または流れを制御するために変化させることができる上記のパラメータのすべてが、多段式ALIP内の段数(例えば、量)によって乗算され、単一の多段式ALIP内の段の間の相互作用(または相互作用の欠如)に依存してもしなくてもよくなるため、設計空間を大幅に拡大できる。
【0065】
多段式ALIPは、追加的な設計及び制御変数を提供することに基づいて、液体金属冷却剤の流れを制御及び/又は調整することに関して、操作上の柔軟性を改善できることが理解されるであろう。多段式ALIPは、例えば、異なる動作モードで動作するために別々の段を独立に制御(例えば、始動または停止)することに基づいて、異なる段でALIPの長さを通して入口の流速を徐々に上昇させるように構成されることに基づいて、低流量における液体金属冷却剤の流れをよりよく制御するように構成されてもよい。多段式ALIPは、ポンプ効率を高めるために、および/または、より高いポンプ圧力および効率を有するために、スリップを低減するように上述の変数のいずれかを調整するように構成されてもよい。
【0066】
多段式ALIPは、多段式ALIPによって誘導される液体金属冷却剤の非常に高い流量または非常に低い流量における流量および/または圧力上昇制御に関して、より高い制御感度を提供するように構成されるために、別々の段において、および/または単一の段内において、変化した誘導コイル形状(例えば、寸法)を有するように構成され得る。
【0067】
多段式ALIPは、それぞれの段に対応するポンプの別個のセクションにおける液体金属冷却剤の流れに適切であるとみなされるように、印加される多相電力の周波数、電流、および/または電圧を有する、独立に制御可能な段を有するように構成されてもよい。このような制御は、所望に応じて、異なるポンプ段を独立して始動または停止することを含むことができる。
【0068】
複数の段を有する多段式ALIPは、例えば、複数の段が多段式ALIPの長手方向に沿って少なくとも部分的に連続的に配置されている場合、ポンプの長手方向に沿って流れる液体金属冷却剤がポンプ入口から連続的に配置された第1段によって誘導されて既に動作している可能性があるため、より最適化された形状(例えば、寸法)を有する第2段および後続段を有するように構成されてもよい。その結果、多段式ALIPは、多段式ALIPおよび/または多段式ALIPが含まれる原子炉のシステムメンテナンス運転モードにおいて、入口から連続的に配置される後続段が低流量の液体金属冷却剤に使用されるように構成されてもよい。
【0069】
例えば、図4は、(起動時や停止時などにおける)非常に低流量での印加圧力が、ポンプに供給される電力の利用可能な最低動作周波数によって制限されてもよいことを示している。ALIP内の複数の段が、独立して設計され、および/または独立に制御されるように構成されることで、低流量状態下でより正確なポンプ制御を提供するように多段式ALIPを構成することができる。低流量状態は、保守状態中および/またはシステムのスタンバイ加熱状態中に用いられることがある。さらに、単段ポンプに供給される多相電力の周波数を変化させることにより、例えば、図4に示すように、所定の入口流量において印加圧力に明らかな圧力ジャンプをもたらすことができる。多段式ALIPは、その1つまたは複数の段に供給される多相電力の周波数が変更された場合に、印加圧力のジャンプがより小さくなるように構成されてもよく、それにより、多段式ALIPおよび/または多段式ALIPを含む原子炉の運転性能および/または効率が改善される。
【0070】
多段式ALIPは、原子炉に関連する起動及び停止手順(例えば、原子炉の起動及び/又は停止)の間に重要となり得る、より低流量での液体金属冷却剤の流れの制御を改善することができることが理解されるであろう。さらに、多段式ALIPは、ポンプ圧力を変更する場合に、一般的な運用上の柔軟性を向上させることができる。
【0071】
多段式ALIPは、同様の最大流量の液体金属冷却剤を誘導するように構成された単段式ALIPよりも消費電力が少なくなるように構成され得るが、これは、各ポンプ段が独立した制御(例えば、別々の段への電力の供給が独立に制御される)および/または独立して構成された設計変数(例えば、部品形状および/または組成)に基づいてより効率的に動作するように構成され得るためであることが理解されよう。原子炉内の多段式ALIPは、同規模の単段式ALIPよりも高い圧力を生成するように構成することができ、それにより、より高い炉心出力密度をサポートし、原子炉に関連する資本コストを低減する。多段式ALIPは、単段式ALIPと比較して、保守または保温システム機能のための追加の運転モード(例えば、低流量オプション)を提供するように構成することができる。原子炉における多段式ALIPは、改善された運用上の柔軟性及び/又は性能に基づいて、原子炉の起動に関連する原子炉起動時間の短縮を可能にするように構成され得る。
【0072】
図1は、いくつかの例示的な実施形態による、液体金属冷却原子炉を含む原子力発電所の概略図である。
【0073】
原子力発電所100は、液体金属冷却原子炉(本明細書では単に「原子炉」と呼ぶ)110と、一次冷却剤ループ119と、中間冷却剤ループ160と、「N」個の多相電源144-1~144-N(Nは1以上の任意の正の整数)と、EMP制御システム150と、を含む。一次冷却剤ループ119は、「N」個の段330-1~330-Nを有する少なくとも1つの多段式ALIP120を含み、段330-1~330-Nは、それぞれ、多相電力を供給するように構成された別個のそれぞれの多相電源ケーブル146-1~146-N(本明細書では、電力導体、電力線などとも呼ばれる)を介して、別個の、N個の多相電源144-1~144-Nのそれぞれに電気的に接続されている。
【0074】
原子炉110は、原子炉圧力容器111を含む。原子炉圧力容器111は、原子炉炉心112と、外壁111Sによって少なくとも部分的に画定された容積空間内の複数の構成要素とを含む。複数の構成要素は、一次冷却剤ループ119を含む。一次冷却剤ループ119は、原子炉炉心112内の核反応の結果として炉心112で発生した熱を除去するように構成することができる。図1に示す一次冷却剤ループ119は、原子炉炉心112内の核反応の結果として原子炉炉心112で発生した熱を原子炉炉心112から除去するために、原子炉炉心112の少なくとも一部を通って液体金属冷却剤190を循環させるように構成される。このような熱除去は、本明細書では炉心熱除去と呼ぶこともできる。
【0075】
図示するように、一次冷却剤ループ119は、一次熱交換器114を含む。一次熱交換器114は、原子炉炉心112から出る液体金属冷却剤190から別の冷却剤に熱を伝達するように構成されている。他の冷却剤は、中間冷却剤ループ160を循環する。他の冷却剤は、いくつかの例示的な実施形態では、液体金属冷却剤を含むことができる。一次および中間冷却剤ループを循環する液体金属冷却剤は、共通の液体金属物質であってもよいし、異なる液体金属物質であってもよい。
【0076】
一次冷却剤ループ119は、吸引リザーバ116を含む。吸引リザーバ116は、液体金属冷却剤190が炉心で発生熱を中間冷却剤ループ160に伝達した後に、一次熱交換器114から出る液体金属冷却剤190を受け取るように構成されている。
【0077】
一次冷却剤ループ119は、多段式ALIP120を含む。少なくとも1つの多段式ALIP120は、図1に示すように、原子炉110を通して液体金属冷却剤190を循環させるように動作するように構成される。図1は、原子炉110内の1つの多段式ALIP120のみを示しているが、図1に関する以下の説明は、「a」又は「the」多段式ALIP120に言及しているが、複数の多段式ALIP120が原子炉110内に含まれてもよく、複数の多段式ALIP120の少なくとも一部は、原子炉を通して液体金属冷却剤を循環させるために互いに並列又は直列に動作するように構成されてもよく、各多段式ALIP120は、原子炉内の他の多段式ALIP120と同じ又は異なる多相電源144-1~144-Nの組合せに電気的に接続されてもよいことが理解されよう。
【0078】
多段式ALIP120は、吸入オリフィスまたは入口122において、吸入ライン121を介して吸入リザーバ115に結合される。多段式ALIP120は、出口オリフィスまたは出口123において、1つまたは複数の戻りライン124を介して炉心入口プレナム118に結合される。多段式ALIP120は、液体金属冷却剤109の少なくとも一部または全部を炉心入口プレナム118に駆動するように構成され、さらに、少なくとも1つの多段式ALIP120の下流で、圧力ヘッドの少なくとも一部または全部を生成するように構成される。圧力ヘッドは、図示するように、炉心112を通って液体金属冷却剤を循環させる駆動力を提供することができる。
【0079】
図示されるように、原子力発電所100は、「N」個の多相電源144-1~144-Nを含み、ここで「N」は1以上の任意の正の整数である。各多相電源144-1~144-Nは、多相電力(例えば、三相交流電力)を供給するように構成された任意の電源または供給源であってもよい。各多相電源144-1~144-Nは、交流(AC)電源であってもよい。例えば、各多相電源144-1~144-Nは、可変速ドライブとも呼ばれる加減速可能なドライブであってもよく、当該可変速ドライブは、(例えば、発電所の主電源140および/または発電機141から)60HzのAC(「交流」)電力を受け取り、受け取ったAC電力をDC(「直流」)に変換し、次いで、多段式ALIP120の段に供給される多相電力の具体的な(「特定の」)電流および周波数でDC(直流)からAC(交流)に電力を変換するように構成されている。
【0080】
さらに図示するように、多相電源144-1~144-Nは、原子力発電所100の主電源140または発電機141のうちの1つ以上に電気的に結合されている。いくつかの例示的な実施形態では、原子力発電所100は、1つ以上の主電源140または1つ以上の発電機141から、1つ以上の電源144-1~144-Nに、選択的に電力を供給するように構成された1つ以上のスイッチギア装置(図1には図示せず)を含む。発電機141は、燃焼エンジン、燃料電池装置、バッテリ、無停電電源(UPS)、それらのいくつかの組み合わせなどのうちの1つまたは複数を含むことができる。発電所の主電源140は、発電ループ170を循環するプロセス流体に基づいて生成された電力を供給するように構成された電源を含むことができる。
【0081】
いくつかの例示的な実施形態では、多段式ALIP120が、別個のそれぞれの多相電源144-1~144-Nに電気的に接続されるように構成された別個のそれぞれの組の誘導コイルを有するN個の段330-1~330-Nを含む場合、N個の多相電源144-1~144-Nは、別個のそれぞれの多相電源ケーブル146-1~146-N(本明細書では「マルチワイヤ電力線」とも呼ばれる)を介して、多段式ALIP120の別個の段330-1~330-Nに対応する別個のそれぞれの組の誘導コイルに電気的に接続されてもよい。それぞれの別個の多相電力ケーブル146-1~146-Nは、別個の多相電力ケーブル146-1~146-Nを介して多相電力を供給するように構成され得る。各別個の多相電力ケーブル146-1~146-Nは、多段式ALIP120内に延在してよく、多段式ALIP120の別個の段330-1~330-Nに対応し、および/または少なくとも部分的に画定する別個の組の誘導コイルを別々に電気的に結合してよい。したがって、多段式ALIP120の別個の段330-1~330-1を少なくとも部分的に画定する複数の組の誘導コイルは、複数の多相電力ケーブルのうち、別個のそれぞれの多相電力ケーブル146-1~146-Nに電気的に接続されてもよい。
【0082】
図1に示すように、多相電源ケーブル146-1~146-Nは、多段式ALIP120から延びる単一の電源導体180(例えば、本明細書では「電源導体ケーブル」、「導管」、または「延長ケーブル」とも呼ばれる)内に集合的に配置されてもよい(例えば、少なくとも部分的に、または完全に収容されるなど)。電源導体180は、(例えば、多段式ALIP120の少なくともポンプケーシングから)原子炉圧力容器111の外壁111Sの単一の開口部または「貫通部」182を介して、少なくとも原子炉圧力容器111の外側に延びており、それにより、多段式ALIP120の別個のそれぞれの段330-1~330-Nの複数組の誘導コイルが、原子炉圧力容器111の外壁111Sの単一の開口部182を介して、別個のそれぞれの多相電源144-1~144-Nに電気的に結合され得る。その結果、原子炉圧力容器111内の多段式ALIPと原子炉圧力容器111の外側の複数の多相電源144-1~144-Nとの間の電気的接続は、原子炉圧力容器111の側壁を貫通する単一の貫通部182で達成することができ、それにより、単一の多段式ALIP120の代わりに複数の別個の単段式ALIPが吸入ライン121と戻りライン124との間に結合される原子力発電所と比較して、原子炉110の複雑さを低減し、原子炉110の格納性能を向上させることができる。さらに、吸入ライン121と戻りライン124との間に直列に結合された複数の別個のALIPの代わりに多段式ALIP120が使用される例示的な実施形態では、電源導体180は、複数の単段式ALIPを1つまたは複数の多相電源144-1~144-Nに少なくとも部分的に電気的に接続するために使用されるであろう1つ以上の導体よりも全長が短い原子炉圧力容器111の少なくとも外側に、単一の多段式ALIP120を結合することで、電源導体180に起因する原子力発電所100における電気損失を低減することができる。
【0083】
図1には、開口部182を通って延在し、さらに多相電源144-1~144-Nまで延在する電源導体180が図示されているが、電源導体180は、開口部182と多相電源144-1~144-Nのいずれかとの間の原子炉圧力容器111の外側の任意の箇所で終端してもよく、別個の多相電源ケーブル146-1~146-Nは、電源導体180の終端から分岐して、電源導体180の終端から別個のそれぞれの多相電源144-1~144-Nまで独立して延在し続けてもよいことを理解されたい。
【0084】
原子力発電所100は、中間冷却剤ループ160を含む。中間冷却剤ループ160は、一次熱交換器114と中間熱交換器162との間のライン161を通って循環する冷却剤の流れを含む。中間冷却剤ループ160は、一次冷却剤ループ119を通って循環する液体金属冷却剤190から、中間熱交換器162での熱伝達を介して、発電ループ170を通って循環するプロセス流体に炉心放出熱を伝達することができる。いくつかの例示的な実施形態では、中間冷却剤ループを循環する冷却剤は、液体金属冷却剤を含む。中間冷却剤ループを循環する液体金属冷却剤は、一次冷却剤ループ119を循環する液体金属冷却剤190と組成が類似していても異なっていてもよい。
【0085】
原子力発電所100は、熱交換器162を介して中間冷却剤ループ160から熱を受け取り、タービンの駆動を含む動作を行うプロセス流体を循環させるように構成された発電ループ170を含む。タービンは、発電機を作動させることができる。プロセス流体は、1つまたは複数の様々な段階で水を含むことができる。いくつかの実施形態では、発電ループ170は、中間熱交換器162が少なくとも部分的に配置される蒸気発生器を含み、熱交換器162は、中間冷却剤ループ160を循環する冷却剤から蒸気発生器内の水に熱を伝達し、水を蒸発させて蒸気を生成するように構成される。生成された蒸気は、発電機に接続されたタービンを駆動して電力を発生させることを含む作業を行うのに使用することができる。
【0086】
幾つかの例示的な実施形態では、原子炉は、1つ以上の制御システムを含み、該制御システムは、原子炉110内の液体金属冷却剤190の流れ、原子炉110の性能、及び/又は原子炉110の運転効率を調整可能に制御するために、所定の多段式ALIP120内の別々の段(例えば、別々の組の誘導コイル)を独立して及び/又は調整可能に制御することを含む、多段式ALIP120の動作を監視及び/又は制御するように構成されている。図1に示すように、原子炉110は、EMP制御システム150を含むことができる。EMP制御システム150は、1つまたは複数の通信線、送電線などを介して、多相電源144-1~144-Nのうちの1つまたは複数に通信可能に結合151することができる。いくつかの例示的な実施形態では、EMP制御システム150は、1つまたは複数の通信ライン、電力伝送ラインなどを介して、1つまたは複数のセンサデバイス(例えば、吸入ライン121、戻りライン124、及び/又は多段式ALIP120を通る液体金属冷却剤190の流量を示すセンサデータを生成するように構成され得る1つ以上のベンチュリ流量計などの1つ以上の流量計であり得るセンサ192や、吸入ライン121、戻りライン124、及び/又は多段式ALIP120内の1つ又は複数の位置における液体金属冷却剤190の圧力を示すセンサデータを生成するように構成され得る1つ以上の圧力センサ等)、及び/又は例えば多段式ALIP120を含む原子炉圧力容器111内の装置に結合されてもよいが、例示的な実施形態は、これに限定されない。
【0087】
EMP制御システム150は、いくつかの例示的な実施形態では、多相電源144-1~144-N、多段式ALIP120などのうちの1つまたは複数に関連するセンサデータを生成するように構成された1つ以上のセンサ装置(例えば、吸入ライン121、戻りライン124、及び/又は多段式ALIP120を通る液体金属冷却剤190の流量を示すセンサデータを生成するように構成され得る1つ以上のベンチュリ流量計などの1つ以上の流量計であり得るセンサ192や、吸入ライン121、戻りライン124、及び/又は多段式ALIP120内の1つ又は複数の位置における液体金属冷却剤190の圧力を示すセンサデータを生成するように構成され得る1つ以上の圧力センサ等)に結合することができる。
【0088】
EMP制御システム150は、1つ以上の多相電源144-1~144-N、1つ以上のセンサ装置(例えば、吸入ライン121、戻りライン124、及び/又は多段式ALIP120を通る液体金属冷却剤190の流量を示すセンサデータを生成するように構成され得る1つ又は複数のベンチュリ流量計などの1つ又は複数の流量計、のセンサ192吸入ライン121、戻りライン124、及び/又は多段式ALIP120内の1つ又は複数の位置における液体金属冷却剤190の圧力を示すセンサデータを生成するように構成され得る1つ又は複数の圧力センサなど)、多段式ALIP120などに関連する監視情報に基づいて、多段式ALIP120の動作を監視することができる。例えば、EMP制御システム150は、1つ以上のセンサデバイス(例えば、吸入ライン121、戻りライン124、及び/又は多段式ALIP120を通る液体金属冷却剤190の流量を示すセンサデータを生成するように構成され得る、1つ以上のベンチュリ流量計などの1つ以上の流量計であり得るセンサ192や、吸入ライン121、戻りライン124、および/または多段式ALIP120内の1つまたは複数の位置における液体金属冷却剤190の圧力を示すセンサデータを生成するように構成され得る1つまたは複数の圧力センサ、など)によって生成されたセンサデータを受信してもよい。そして、該センサデータは、所定の多相電源144-1~144-Nから所定の多段式ALIP120への電力の流れを示す情報を含んでいてもよい。別の例では、EMP制御システム150は、1つまたは複数のセンサデバイス(例えば、吸入ライン121、戻りライン124、及び/又は多段式ALIP120を通る液体金属冷却剤190の流量を示すセンサデータを生成するように構成され得る、1つ以上のベンチュリ流量計などの1つ以上の流量計であり得るセンサ192や、吸入ライン121、戻りライン124、及び/又は多段式ALIP120内の1つ又は複数の位置における液体金属冷却剤190の圧力を示すセンサデータを生成するように構成され得る1つ又は複数の圧力センサ等)によって生成されたセンサデータを受信することができ、当該センサデータは、所定の多段式ALIP120の1つ又は複数の段によって生成される磁場の強さを示す情報を含んでいてもよい。
【0089】
EMP制御システム150は、多相電源144-1~144-Nのうちの1つ以上による多相電力の供給を独立して制御および/または調整することに基づいて、多段式ALIP120の動作を制御するように、例えば多段式ALIP120を通る液体金属冷却剤の流量を制御するように構成され得る。例えば、多段式ALIP120が、別個の多相電源ケーブル146-1~146-Nを介して別個の多相電源144-1~144-Nに各々独立して電気的に接続される別個のそれぞれの組の誘導コイルを有するおよび/または少なくとも部分的に画定される複数の段を含む場合、EMP制御システム150は、多段式ALIP120の別個の段330-1~330-Nを独立して制御するために、別個の多相電源144-1~144-Nによって供給される多相電力を独立して制御および/または調整することができる。各電源144-1~144-Nのこのような独立制御は、多相電源144-1~144-Nに、それぞれの多相電源ケーブル146-1~146-Nを介して電気的に接続された段330-1~330-Nへの多相電力の供給を開始させることや、電源144-1~144-Nに、多相電源144-1~144-Nによって供給される電力の周波数および/または電流を調整させることや、および/または、電源144-1~144-Nに、それぞれの多相電源ケーブル146-1~146-Nを介して電気的に接続された1つ以上の段への多相電力の供給を抑制させることを含んでいてもよい。このような制御は、メモリに格納されたコードを実行するEMP制御システム150に基づいて、制御信号を生成し、該制御信号を多相電源144-1~144-Nに送信するEMP制御システム150に基づいて実施され得る。
【0090】
EMP制御システム150は、いくつかの例示的な実施形態では、1つまたは複数のコンピュータシステムを含む。コンピュータシステムは、回路の1つまたは複数のインスタンスを含むことができる。回路の1つまたは複数のインスタンスは、メモリの1つまたは複数のインスタンスに結合された1つまたは複数のプロセッサ装置(「プロセッサ」)を含むことができる。1つまたは複数のプロセッサは、1つまたは複数の中央処理ユニット(CPU)を含むことができる。1つまたは複数のプロセッサは、EMP制御システムを実現するように構成することができる。例えば、メモリの1つまたは複数のインスタンス(例えば、1つまたは複数のメモリ)は、命令プログラムを記憶する非一過性のコンピュータ可読媒体(例えば、ソリッド段ドライブ)を含むことができ、1つまたは複数のプロセッサは、例示的な実施形態のいずれかによる方法のいずれかの1つまたは複数の動作を実行するために、非一過性のコンピュータ可読媒体に記憶された命令プログラムを実行するように構成された処理回路を含むことができる。
【0091】
いくつかの例示的な実施形態では、多段式ALIP120は、EMP制御システム150が、別個の多相電源144-1~144-Nによって別個の段330-1~330-Nに対応する及び/又は少なくとも部分的に画定する別個の組の誘導コイルに独立して供給される多相電力を独立して制御することに基づいて多段式ALIP120の別個の段を独立して制御することに基づき、流量に対してより柔軟な制御を適用することができるため、一次冷却剤ループ119内の液体金属冷却剤流量に対する柔軟性及び制御を改善できる。加えて、本明細書に記載されるように、別個の段は、多段式ALIP120の様々な構成要素の様々な異なる形状及び/又は固有の特性に関連付けられてもよく、したがって、異なる段を制御することは、液体金属冷却剤190の流れに対して異なる効果を有することができ、故に、各異なる段は、液体金属冷却剤190の流れに対して異なる効果を誘発するように制御され得る。多段式ALIP120の別個の段に独立して供給される多相電力の様々な構成(例えば、パラメータ)は、多段式ALIP120によって誘導され得る液体金属冷却剤190の別個の離散的な流量の増加した範囲(例えば、増加した量)を含む、EMP制御システム150によって達成され得る多段式ALIP120の動作状態の範囲を増加させることができる。その結果、一次冷却剤ループ119の運転性能及び/又は効率、ひいては原子炉110及び原子力発電所100の全体としての運転性能及び/又は効率は、多段式ALIP120によって可能となる液体金属冷却剤190の流れに対する制御の改善に基づいて改善され得る。
【0092】
いくつかの例示的な実施形態では、中間冷却剤ループ160は、一次冷却剤ループ119に含まれるように図示されている1つ以上の多段式ALIP120を有する。中間冷却剤ループ160に含まれる多段式ALIP120は、一次冷却剤ループ119に含まれる多段式ALIP120と同様に動作するように構成することができる。中間ループに含まれる1つまたは複数の多段式ALIP120の組は、原子炉圧力容器111の内部または外部に配置されてもよい。
【0093】
本明細書で言及されるように、液体金属冷却剤は、ナトリウム、水銀、鉛、ビスマス、またはスズのうちの1つまたは複数を含む、1つまたは複数の様々な液体金属物質を含んでもよい。1つ以上の液体金属物質は、多段式ALIP120が液体金属冷却剤を循環させるように構成されるような、導電性金属物質であってもよい。
【0094】
図2は、いくつかの例示的な実施形態による液体金属冷却原子炉の透視図である。図2に示す原子炉110は、図1に示す原子炉110を含む、本明細書に含まれる原子炉の実施形態のいずれにも含まれ得る。
【0095】
図2に示すように、原子炉110は、原子炉圧力容器111を含むことができ、原子炉圧力容器111内に、複数の多段式ALIP120の組をさらに含むことができるが、いくつかの例示的な実施形態では、単一の多段式ALIP120だけが原子炉圧力容器111内に含まれ得ることを理解されたい。図2に示すように、原子炉110が複数のALIP120を含む場合、ALIP120は、別個の並列の戻りライン124に並列に結合されてもよく、各多段式ALIP120が一次冷却剤ループ119を通る液体金属冷却剤190の別個の部分の並列の流れを誘導するように、一次冷却剤ループ119内で並列に動作するように構成されてもよい。
【0096】
図2に示す多段式ALIP120の各々は、互いに構造的に同一であっても異なっていてもよい。例えば、多段式ALIP120は、同一の構成の段、構成要素の構造、および/または同一の構成要素固有の特性を有してもよい。いくつかの例示的な実施形態では、多段式ALIPは、異なる段、構成要素の構造、および/または異なる構成要素固有の特性を有してもよい。
【0097】
図3Aは、いくつかの例示的な実施形態による、多段式ALIP120の平面側断面図である。図3Bは、いくつかの例示的な実施形態による、図3Aに示す断面図線IIIB-IIIB'に沿った多段式ALIP120の平面正面断面図である。図3Cは、いくつかの例示的な実施形態による、多段式ALIPの配線図の概略図である。
【0098】
図3A~3Bに示す多段式ALIP120は、図1および/または図2に示す1つまたは複数の多段式ALIP120を含む本明細書に含まれる多段式ALIP120のいずれかに含まれ得る。図3Cに示された配線図は、少なくとも図3A~3Bに示された多段式ALIP120を含む例示的な実施形態のいずれかに従った多段式ALIP120の配線図であってよい。
【0099】
図3A~3B(及び図5~6)に示す多段式ALIP120は、2段ALIP(例えば、N=2であるN個の段ジ330-1~330-Nを有する多段式ALIP120)として図示されているが、例示的な実施形態はこれに限定されず、任意の2段の多段式ALIP120および任意の段の多段式ALIP120に関する本明細書の説明は、2段を超える段(例えば、N>2である330-1~330-N)および任意の段を有する任意の多段式ALIP120に適用され得る。
【0100】
図3A~3Bを参照すると、多段式ALIP120は、中心長手軸を有し、かつ長手方向に延びるポンプケーシング302(外側ケーシング、ケーシング構造などとも呼ばれる)を含むことができる。図3A~3Bに示すように、ポンプケーシング302は、多段式ALIP120の内部空間を部分的にまたは完全に画定(例えば、少なくとも部分的に画定)することができる。さらに図示されるように、ポンプケーシング302の中心長手軸は、多段式ALIP120の長手軸306と近軸であってもよく、および/または同軸であってもよい(例えば、多段式ALIP120の長手軸306と同一であってもよく、および/または少なくとも部分的に画定してもよい)。
【0101】
ポンプケーシング302は、多段式ALIP120の対向する長手方向端部で開口していてもよいが、いくつかの例示的な実施形態では、ポンプケーシング302は、単独でまたはポンプケーシング302が結合される1つ以上の構造体との組み合わせで、多段式ALIP120の入口122および出口123を画定するポンプケーシング302内の開口を除いて、内部空間の対向する長手方向端部を部分的にまたは完全に密閉してもよいことを理解されたい。例えば、図3Aに示すように、多段式ALIP120は、流れ環状空間312の入口側長手方向端部への1つ以上の開口部を除いて、多段式ALIP120の入口側の長手方向端部を構造的に囲む入口側の構造体302-1を含むことができ、ここで、1つ以上の開口部(例えば、1つ以上の円弧状および/または環状開口部)は、流れ環状空間312への、しいては多段式ALIP120への入口122を少なくとも部分的に画定する。別の実施例では、図3Aに示すように、多段式ALIP120は、流れ環状空間312の出口側の長手方向端部への1つ以上の開口部を除いて多段式ALIP120の出口側の長手方向端部を構造的に囲む出口側の構造体302-2をさらに含むことができ、ここでは、1つ以上の開口部(例えば、1つ以上の円弧状開口部および/または環状開口部)は、流れ環状空間312への、しいては多段式ALIP120への出口123を少なくとも部分的に画定する。ポンプケーシング302、入口側構造302-1、および/または出口側構造302-2は、例えばステンレス鋼(例えば、304ステンレス鋼)、炭素鋼などの1つまたは複数の金属材料から構成されてもよい。いくつかの例示的な実施形態では、ポンプケーシング302、入口側構造302-1、および/または出口側構造302-2は、一緒に結合される別個の材料片であってもよいし、単一の一体的な材料片の別個の部分であってもよい。
【0102】
図3A~3Bに示すように、多段式ALIP120は、長手軸306と同軸に延在している同心環状壁310を有することができ、該同心環状壁310は、さらに多段式ALIP120の長さ(例えば、図3Aに示さすような全長)に沿って長手軸306と同軸に延在している流れ環状空間312を集合的に画定している。図示されるように、同心環状壁310は、外側環状壁310-1および内側環状壁310-2を含み得る。図示されるように、内側環状壁310-2の外側表面および外側環状壁310-1の内側表面は、集合的に、これらの表面間の環状空間、すなわち「環状部」としての流れ環状空間312を画定する。図3A~3Bに示すように、同心環状壁310はそれぞれ円筒管であってもよいが、例示的実施形態は、これに限定されない。外側環状壁310-1および内側環状壁310-2はそれぞれ、例えばステンレス鋼(例えば、304ステンレス鋼)、炭素鋼などの金属材料から構成されてもよい。
【0103】
さらに図3A~3Bを参照すると、多段式ALIP120は、多段式ALIP120の内部空間内に複数の誘導コイル320を含むことができる。図示されるように、各誘導コイル320は、長手軸306を取り囲み、長手軸306と同軸である中心軸を有する。図3Aに示すように、各誘導コイル320は、長手方向390において互いに離間している(例えば、互いに直接接触しないように隔離される)。いくつかの例示的な実施形態において、誘導コイル320は、多段式ALIP120のステータの「ソレノイド」と称されてもよい。誘導コイル320はそれぞれ、銅、銀などを含む1つ以上の導電性材料(例えば、1つ以上の導電性材料の巻線)を備えていてもよい。
【0104】
図3A~3Bにさらに示すように、多段式ALIP120は、外側環状壁310-1に対して長手軸306から半径方向遠位に位置する外側コア322-1と、内側環状壁310-2に対して長手軸306から半径方向近位に位置する中央コア322-2とを有するステータコア322を含むことができる。ステータコア322は、例えば磁性鉄などの1つまたは複数の磁性材料を備えている。外側コア322-1および中央コア322-2は、同じ材料構成物で構成されていてもよいし、異なる材料構成物で構成されていてもよい。例えば、外側コア322-1および中央コア322-2は、それぞれ鉄(例えば、磁性鉄)から構成されてもよいが、例示的な実施形態はこれに限定されない。例えば、外側コア322-1または中央コア322-2の少なくとも一方は、いくつかの例示的な実施形態において、少なくとも部分的にステンレス鋼から構成されてもよい。
【0105】
図3A~3Bに示すように、外側コア322-1は、例えば図3Bに示す8つのブロック構造326-1~326-8などのような複数のブロック構造を有することができる(外側コア322-1のブロック構造の数量は8つに限定されず、任意の数量であり得る)。外側コア322-1のブロック構造は、各々が、多段式ALIP120の長さに沿って長手軸306に対して同軸に延び、かつ、長手軸306の周りに少なくとも部分的に方位角方向に離間している線状ビームまたはロッド状構造(例えば、図3Aおよび図3Cに示すような線状ビームまたはロッド状ブロック構造326-1~326-8)であってもよい。いくつかの例示的な実施形態では、外側コア322-1は、1つまたは複数の円弧状構造、または外側環状壁310-1の外面の一部または全周に延在する単一の円筒状構造から構成されてもよい。しかしながら、複数の、離間しているブロック構造(例えば、326-1~326-8)を有する外側コア322-1は、一体成型の円筒構造である外側コア322-1に関連して、多段式ALIP120内に軽量化を提供することができる。
【0106】
図3Aおよび図3Cに示すように、いくつかの例示的な実施形態では、中心コア322-2は、長手軸306の周りに延び、さらに長手軸306と同軸に長手方向に延在する特異な円筒構造を備えていてもよい。
【0107】
図示されているように、外側コア322-1の各ブロック構造(例えば、326-1~326-8)は、少なくとも長手方向390および長手軸306から遠位の半径方向において、別個の誘導コイル320をその間に受容し、包囲するように構成された長手方向に間隔を空けた歯構造324を含むことができる。
【0108】
少なくとも図3A及び図3Cに示すように、いくつかの例示的な実施形態では、中央コア322-2は、長手軸306と同軸に延びる(例えば、多段式ALIP120の半径方向中心に位置する)中央空間328(例えば、中央空隙)を画定する1つ以上の内側円筒側壁面を有する中空円筒構造であってよい。中央空間328は、多段式ALIP120のためのケーブル配線を収容する(例えば、格納する)ように構成されてもよく、また、多段式ALIP120などに冷却を提供するために熱交換流体(例えば、ヘリウムのような冷却剤ガス)をそこに導くように構成されてもよい。いくつかの例示的な実施形態において、中央コア322-2は、中央空間328が多段式ALIP120に存在しないことがあるように、内側環状壁310-2の内径によって画定される空間の一部または全部を占める中実円筒形構造であってもよい。
【0109】
図3Aおよび図3Cに示すように、ポンプケーシング302の内側表面と、誘導コイル320および/または外側コア322-1の外側表面(例えば、ポンプケーシング302と誘導コイル320および外側コア322-1との対向する表面)とは、集合的に、外側環状空間304(例えば、外側空隙)を少なくとも部分的に画定する。該外側環状空間304は、外側コア322-1と誘導コイル320の周囲(例えば、そこから半径方向遠位)に延在し、さらに、ポンプケーシング302の内側表面と、誘導コイル320および/又は外側コア322-1の外面との間に延在する。外側環状空間304は、多段式ALIP120の冷却を提供するために、多段式ALIP120を通して熱交換流体(例えば、ヘリウムガス、空気などの冷却剤流体)を導くように構成され得る。例えば、図3Aに示すように、多段式ALIP120は、ポンプケーシング302を通り、多段式ALIP120の一方の長手方向端部に近接する外側環状空間304への冷却剤流体入口382を含むことができ、多段式ALIP120は、ポンプケーシング302を通り、多段式ALIP120の他方の長手方向端部に近接する外側環状空間304への冷却剤流体出口384をさらに含むことができる。冷却剤流体入口382及び冷却剤流体出口384は、原子力発電所100の冷却剤ループ(図示せず)に連結されてもよい。冷却剤ループは、冷却剤流体(例えば、ヘリウムガス)を、冷却剤流体入口382を介して外側環状空間304に循環させ、冷却剤流体入口382から冷却剤流体出口384まで外側環状空間304を通過させ、冷却剤流体出口384を介して多段式ALIP120から出るように構成されてもよい。冷却剤流体は、冷却剤流体出口384を介して多段式ALIP120から出る際に、冷却剤流体が冷却剤流体入口382と冷却剤流体出口384との間の外側環状空間304を通って流れている間に、多段式ALIP120から冷却剤流体に吸収される熱を除去するために熱交換器を通して循環されてもよい。また、冷却剤流体は、熱交換器から冷却剤流体入口382に戻るように(例えば、ポンプを通して)循環されてもよい。冷却剤ループは、少なくとも部分的に原子炉圧力容器111の外側に延びていてもよい(例えば、前述の熱交換器は原子炉圧力容器111の外側に配置されていてもよい。また、冷却剤ループは、外壁111Sを貫通する1つ以上の貫通部を介して、原子炉圧力容器111内の多段式ALIP120と圧力容器の外側にある熱交換器との間で冷却剤流体を循環させてもよい)。
【0110】
さらに図3A~3Bを参照すると、内側環状壁310-2、中央コア322-2、および多段式ALIP120内の内側環状壁310-2から半径方向内側に位置する任意の構造体は、外側環状壁310-1、外側コア322-1、誘導コイル320、ポンプケーシング302、および多段式ALIP120の内側環状壁310-2から半径方向外側に位置するあらゆる構造物に、1つまたは複数の支持リブ388(「竹馬」とも呼ばれる)を介して構造的に連結することができる。該支持リブ388は、外側環状壁310-1および内側環状壁310-2を互いに構造的に連結するために、流れ環状空間312内の同心環状壁310の間で半径方向外側に延びており、それにより、多段式ALIP120の中央/コア部分を多段式ALIP120の外側部分に構造的に結合し、そうすることで、外側部分(例えば、外側環状壁310-1、外側コア322-1、誘導コイル320、ポンプケーシング302など)に関連して、中央/コア部分(例えば、内側環状壁310-2、中心コア322-2など)を構造的に安定化させ支持する。
【0111】
いくつかの例示的な実施形態では、支持リブ388はさらに、外側コア322-1とポンプケーシング302との間の外側環状空間304を通って延在し、ポンプケーシング302に対して少なくとも外側コア322-1を構造的に安定させ支持することができる。
【0112】
いくつかの例示的な実施形態では、支持リブ388は、多段式ALIP120から省略されてもよい。ポンプケーシング302は、長手軸306を有するポンプケーシング302の円筒部分に結合される入口側構造302-1および出口側構造302-2を含むことができ、入口側構造302-1および出口側構造302-2は、多段式ALIP120の外側部分(例えば、外側環状壁310-1、外側コア322-1、および/または誘導コイル320)および多段式ALIP120の中心/コア部分(例えば、内側環状壁310-2および/または中心コア322-2)の一方または両方に構造的に接続可能であり、それにより、入口側構造302-1および出口側構造302-2は、多段式ALIP120の外側部分および中心/コア部分を互いに対して構造的に結合し、安定化し、支持することができる。
【0113】
さらに図3A~3Bを参照すると、多段式ALIP120は、多段式ALIP120の長さ(例えば、長手方向390)を通って流れる液体金属冷却剤109に電磁力を加えることに基づいて、流れ環状空間312を通して液体金属冷却剤190を汲み上げる(例えば、流れを誘導する)ように構成することができる。これは、特定の周波数及び位相角で誘導コイル320に多相電力を印加する(例えば、供給する)ことに基づいて実行することができる。例えば、本明細書で説明する多相電力は、例えば三相交流電力などの交流電力を含むことができ、この交流電力は、流れ環状空間312を取り囲む誘導コイル320に特定の交流周波数および位相角度で印加することができる。
【0114】
図3Aに示す配線図によって示すように、特定の、電気的に接続された多相電源からの多相電力の固定相が、各誘導コイル320に印加されてもよい。図3Aに示すように、誘導コイル320の組320-1が多相電力ケーブル146-1を介して多相電力供給源144-1に電気的に接続され、当該多相電力供給源144-1が三相交流電力である多相電力を供給する場合、組320-1内の所定の誘導コイルの位相は、同じ組320-1に含まれる(例えば、同じ多相電源144-1に電気的に接続されている)長手方向に隣り合う前の誘導コイル(長手方向390と反対の方向)の位相であってよい。該位相は、60度または120度を加えたものであり、長手方向390において、所定の組320-1内の誘導コイル320のシーケンスが360度の交流周期を完了できるようにする。この360度の交流周期を完了するコイルの集合は、極(τ)または「スロット」と呼ばれる。極の長さは、極ピッチ(τp)と呼ばれる。
【0115】
誘導コイル320への多相電力の供給は、ポンプの長さ(例えば、長手方向390)に沿って流れ環状空間312内の液体金属冷却剤190に特定の圧力上昇を引き起こすために、例えば供給される多相電力の周波数、電力振幅(例えば、電流および/または電圧)、および/または位相角度を制御することに基づいて制御することができる。各誘導コイル320の電気位相が、特定の導体146の別個のワイヤへの接続に基づいて固定され、内部構成要素がポンプケーシング302内で静止している状態で、圧力上昇は、電気的に接続された多相電源から誘導コイル320に供給される多相電力の周波数、電力振幅(例えば、電流および/または電圧)、および/または位相角度を制御および/または調整することに基づいて制御することができる。
【0116】
ポンプ性能曲線は、所望の圧力上昇を与えるために、入口122を介してポンプに流入する液体金属冷却剤の所定の入口質量流量で、どのような設定(例えば、多相電力周波数、電力振幅(例えば、電流および/または電圧)、位相角度など)を使用すべきかを説明するために、これらの値(場合によっては、これらの値の比)を指定する。これらのポンプ性能曲線は、工学解析ソフトウェアを用いて解析的に決定してもよいし、試験ポンプの測定を通じて実験的に決定してもよい。
【0117】
例えば、いくつかの例示的な実施形態による、ALIPの誘導コイルに供給される電力に基づくALIPの性能を示すグラフである図4は、体積流量が与えられた場合、多段式ALIP120内の液体金属冷却剤190に所望の圧力上昇を提供するために、誘導コイル320の所定の組に供給される多相電力(例えば、三相交流電力)の印加電流、電圧、および/または周波数を調整することができることを示している。これは、多相電源144-1~144-Nによって供給される電力の電流および周波数の変化が、その同じ多相電源144-1~144-Nに電気的に接続されるすべての誘導コイル320に適用されるためである。したがって、ALIPの流量動作範囲および感度は、多相電源ケーブル146-1~146-Nを介して各誘導コイル320が電気的に接続される多相電源に基づく。
【0118】
さらに図3A~3Bを参照すると、誘導コイル320は、誘導コイル320の複数の「N」組の320-1~320-Nを含んでいてもよく、「N」は任意の正の整数である。図3A~3Cに示すように、Nは2に等しくてもよいが、例示的な実施形態はこれに限定されない。さらに示すように、誘導コイル320の各別個の組320-1、320-2は、多段式ALIP120の別個のそれぞれの段(例えば、第1段330-1および第2段330-2)に含まれ、また、当該別個の段少なくとも部分的に画定できる。
【0119】
例えば、図3Aに示すように、誘導コイル320の組320-1、320-2は、複数の多相電源144-1~144-Nのうちの別個の、それぞれの(例えば、異なる)多相電源144-1、144-2に電気的に接続されるように構成されてもよく、それにより、多段式ALIP120の別個の、第1および第2段330-1、330-2を少なくとも部分的に画定できる。誘導コイル320の別個の組320-1、320-2によって少なくとも部分的に画定された別個の段330-1、330-2は、それぞれの多相電源ケーブル146-1、146-2を介してそれに電気的に接続された別個の独立した多相電源144-1、144-2の独立した制御および/または調整に基づいて、互いに独立して制御されるように構成され、流れ環状空間312を通り、しいては多段式ALIP120が結合された一次冷却剤ループ119を通る液体金属冷却剤190の流れを調整可能に制御することができる。
【0120】
例えば、図3Aに示すように、多段式ALIP120の第1段330-1を少なくとも部分的に画定する組320-1は、第1多相電源ケーブル146-1を介して第1多相電源144-1に電気的に接続され(例えば、第1の多相電源144-1から三相交流電力のA相、B相、C相を供給する三相導体)を介して第1の多相電源144-1に電気的に接続され、したがって、第1の多相電源144-1から供給される電力を独立して制御することに基づいて独立して制御され得る(例えば、段330-1に含まれない他のコイル320から独立して制御される)。
【0121】
さらに、組320-2は、多段式ALIP120の第2段330-2を少なくとも部分的に画定し、第2多相電源ケーブル146-2(例えば、第2多相電源144-2から三相交流電力の相A'、B'、C'を送出する別個の三相導体)を介して別個の(例えば、異なる)第2多相電源144-2に電気的に接続される誘導コイル320を含む。図示するように、組320-2内の所定の誘導コイルの位相は、同じ組320-2に含まれる(例えば、同じ多相電源144-2に電気的に接続される)長手方向の前に隣り合う誘導コイル(長手方向390とは反対の方向)の位相に、60度または120度を加えたものであってもよく、それにより、360度の交流周期を完了するために、所定の組320-1内の誘導コイル320の長手方向390におけるシーケンスを可能にする。この360度の交流周期を完了するコイルの集合は、極(τ)または「スロット」と呼ばれる。極の長さは、極ピッチ(τp)と呼ばれる。
【0122】
別個の段330-1、330-2に含まれる誘導コイル320の組320-1、320-2は、異なる多相電源144-1、144-2に電気的に接続されているため、各組、またはそれによって少なくとも部分的に画定される段に供給される電力は、他方の組、または段に供給される電力から独立して制御および/または調整され得る。従って、別個の段330-1、330-2は、各段に供給される電力の独立した制御および/または調整を介して、多段式ALIP120の長手方向390の長さに沿った圧力上昇に対する制御の柔軟性および/または細分性を改善することができるように、独立して制御されてもよく、それによって、多段式ALIP120が誘導した液体金属冷却剤190の流量に対する制御を改善することができる。このように改善された制御によって、多段式ALIP120の運転効率及び/又は全体的な性能を改善することができる。
【0123】
さらに図3A~3Bを参照すると、いくつかの例示的な実施形態において、多段式ALIP120は、別個の組の誘導コイル320-1、320-2によって少なくとも部分的に画定される少なくとも2つの段330-1、330-2を含み、誘導コイルの別個の組320-1、320-2、しいては段330-1、330-2は、長手方向390において少なくとも部分的に互いに交錯している。図示するように、例えば、別個の段330-1、330-2の誘導コイル320は、第1段330-1の組320-1のコイル320(第1の多相電源144-1に電気的に接続される)と第2段330-2の組320-2のコイル320(第2の多相電源144-2に電気的に接続される)との間で、長手方向390において交互に配置され得る。その結果、および図3Aに示すように、誘導コイルの1つの組(例えば、第1組320-1)の少なくとも1つの誘導コイル320は、長手方向390において、誘導コイルのうちの異なる組(例えば、第2の組320-2)の少なくとも2つの誘導コイル320の間に位置することができる。
【0124】
誘導コイルの組320-1、320-2によって少なくとも部分的に画定される段330-1、330-2の交錯配置は、多段式ALIP120の全長に沿って長手方向390の圧力上昇に対する制御を改善することができる。
【0125】
ここで図3Cおよび図4を参照すると、多相電力(例えば、三相交流電力)は、各誘導コイル320の位相及び電流方向が固定されている、又は予め決定されている、多段式ALIP120の1つ又は複数の段330-1、330-2に印加することができ、それにより、誘導コイル320の1つ又は複数の組への多相電力の印加は、誘導コイル320に、入口122から出口123までの長手方向390において流れ環状空間312に位置する液体金属冷却剤190の連続的な流れを誘導する進行電磁(EM)波を発生させる。誘導コイル320の1つまたは複数の組320-1、320-2、ひいては別個の1つまたは複数の段330-1、330-2に印加される多相電力は、誘導コイルの1つまたは複数の組320-1、320-2に電気的に接続されるそれぞれの1つまたは複数の多相電源144-1、144-2の制御を介してEMP制御システム150によって設定(例えば、制御および/または調整)され得る特定の周波数および電力振幅(例えば、電流および/または電圧)を有することができる。したがって、1つまたは複数の多相電源144-1、144-2によって供給される多相電力の周波数および/または電力振幅(例えば、電圧および/または電流)は、制御および/または調整(例えば、開始、調整、および/または抑制)され得る。多段式ALIP120の誘導コイル320の1つまたは複数の組(したがって、1つまたは複数の段)に印加される多相電力の周波数および/または電力振幅のこのような制御および/または調整は、例えば、図4のチャートに示すように、液体金属冷却剤190をそこにポンピングする(例えば、流れを誘導する)際の多段式ALIPの性能を変化させる。
【0126】
さらに図3A~3Cを参照すると、多段式ALIP120は、多段式ALIP120内の長手方向390に沿った流れ環状空間312内の液体金属冷却剤190の圧力上昇を制御可能に調整するためのさらなる柔軟性を可能にするが、これは、異なる誘導コイル320が、(例えば、EMP制御システム150によって)独立して制御可能である別個のそれぞれの多相電源144-1、144-2に独立して電気的に接続される誘導コイル320の異なる組の320-1、320-2を有する及び/又は少なくとも部分的に画定される異なる段330-1、330-2に分かれることに基づき、それにより、多段式ALIPの誘導コイル320の別個の段への多相電力のそれぞれの供給が、互いに独立して制御および/または調整可能となり、それによって、多段式ALIP120の性能を調整可能に制御するための能力を改善する。例えば、1つの段330-1が開始(例えば、始動)される一方で、別の段330-2が該1つの段330-1とは独立して調整または抑制(例えば、停止)されてもよい。
【0127】
図3A~3Cに示すように、別個の段330-1、330-2の誘導コイル320は、長手方向390において少なくとも部分的に交錯していてもよく、誘導コイル320の位相は変化してもよい。
【0128】
図3Aおよび図3Cに示すように、多段式ALIP120は、誘導コイルの別個のそれぞれの組320-1、320-2を有する、および/または少なくとも部分的にそれによって画定される、交錯された段330-1、330-2を有する2段ALIPであってもよい。その場合、多相電源ケーブル146-1を介して多相電源144-1からA相の電力を受けるように構成された組320-1の誘導コイル320が、多相電源ケーブル146-2を介して多相電源144-2からA'相の電力を受けるように構成された組320-2の誘導コイル320と交錯される。また、その場合、それぞれの多相電源144-1、144-2からそれぞれのB、B'相およびC、C'相の電力を受けるように構成された組320-1、320-2の誘導コイル320が同様に構成されている。
【0129】
このような構成において、いくつかの例示的な実施形態では、多段式ALIP120は、多相電源144-1、144-2から供給される多相電力が同じ周波数および電力振幅を有する動作モードで動作することができ、その結果、誘導コイルの組320-1、320-2、しいては段330-1、330-2が、単一の三相電源を受ける単段式ALIPと同様に動作する。多段式ALIP120は、誘導コイルの組320-2に供給される多相電力が調整または抑制され得る別の動作モードでも動作され得る(例えば、EMP制御システム150が多相電源144-2に、多相電源ケーブル146-2を介して誘導コイル320の組320-2への電力供給を調整または抑制させることに基づく)。このような動作モードでは、誘導コイルの組320-1に供給される電力の位相は、組320-1の極τの長さを伸ばすように調整されてもよく、これは、組320-1に印加される電力の周波数または電力振幅(例えば、電圧および/または電流)を変更することなく実行されてもよい。その結果、流れ環状空間312を通る液体金属冷却剤190の流量は、組320-1の能動コイルに供給される周波数又は電力振幅を変更することなく、極を長くするために位相を伸ばすことに基づいて減少させられてもよい。したがって、そのような運転モードは、多段式ALIP120の低流量運転モードであってもよい。
【0130】
図3A~3Bは、単一のステータを有する多段式ALIP120を示しているが、いくつかの例示的な実施形態では、多段式ALIPは複数のステータ(例えば、二重ステータALIP)を含み得ることを理解されたい。多段式ALIP120の様々な段(例えば、別個のそれぞれの多相電源に電気的に接続されるように構成された複数組の誘導コイル)に関する本明細書の説明は、マルチステータ多段式ALIP120の各ステータに独立して適用することができる。例えば、内側ステータおよび外側ステータを有する多段式ALIP120は、外側ステータに複数のコイル段を有してもよく、内側ステータに同量または異なる量のコイル段(単一のコイル段または複数のコイル段を含む)を有してもよいが、例示的な実施形態はこれに限定されない。
【0131】
図5は、いくつかの例示的な実施形態による多段式ALIPの平面側断面図である。図5の多段式ALIPの配線図は、図3Cに示す配線図と同じであってもよいことを理解されたい。図3A~3Cに示した多段式ALIP120のいくつかの要素は、図5には示されていないが(例えば、冷却剤流体入口382、冷却剤流体出口384、入口側構造302-1、出口側構造302-2、支持リブ388など)、図5に示した多段式ALIP120は、図3A~3Cに示したものと同じ構造(例えば、冷却剤流体入口382、冷却剤流体出口384、入口側構造302-1、出口側構造302-2、支持リブ388、入口122、出口123など)のいくつか、あるいは全てを含んでいてもよく、あるいは、それらを含んでいなくてもよい。
【0132】
図5を概して参照すると、いくつかの例示的な実施形態において、多段式ALIP120は、多段式ALIP120の別個の段における誘導コイル320の位置決め、間隔、形状、及び/又は固有の特性の構成及び/又は変形に基づいて、そこを通る液体金属冷却剤190の流れの調整可能な制御を改善するように構成できる。誘導コイルの位置決め、間隔、形状、及び/又は本質的特性におけるそのような構成及び/又は変形は、別個の段330-1、330-2における誘導コイルの別個の組320-1、320-2を調整可能に独立して制御することに基づき、液体金属冷却剤190の流量の制御における柔軟性を改善できる。
【0133】
図5を参照すると、いくつかの例示的な実施形態では、誘導コイル320の別個のそれぞれの組320-1、320-2を有する多段式ALIP120の別個の段330-1、330-2は、その誘導コイル320のそれぞれの組320-1、320-2の長手方向の境界によって画定される長手方向390の境界(例えば、長手方向の境界)を有することができる。従って、図5に示すように、各別個の段(例えば、330-1、330-2)は、誘導コイルの別個の組(例えば、320-1、320-2)によって少なくとも部分的に画定されることに加えて、別個の段のそれぞれの組の誘導コイル320によって、少なくとも長手方向390において少なくとも部分的に画定される、多段式ALIP120の別個のそれぞれのセクション610-1、610-2を含み、さらに、多段式ALIP120内の前記長手方向の境界の間に位置する構成要素(例えば、ポンプケーシング302、ステータコア322、同心環状壁310など)の一部または全部を含む、と理解され得る。別個の段は、段の誘導コイルのそれぞれの組の長手方向境界によって画定される多段式ALIP120のそのような別個のセクションに含まれる多段式ALIPの任意の構成要素(例えば、中央コア332-2、同心環状壁310など)の任意の部分を含むとさらに理解され得る。
【0134】
図5を参照すると、いくつかの例示的な実施形態において、誘導コイル320の別個の、それぞれの組320-1、320-2によって少なくとも部分的に画定される、多段式ALIP120の異なる段330-1、330-2は、長手方向390に互いに離間することができ、それにより、第1段330-1(例えば、誘導コイルの組320-1の)のうちのいずれの誘導コイル230も、長手方向390において、第2段330-2(例えば、誘導コイルの組320-2の)の少なくとも2つの誘導コイルの間に位置せず、第2段330-2(例えば、誘導コイルの組320-2の)のうちのいずれの誘導コイル320も、長手方向390において、第1段330-1(例えば、誘導コイルの組320-1の)の少なくとも2つの誘導コイルの間に位置しない。図示するように、誘導コイルの組320-1、320-2を有する段330-1、330-2は、長手方向の間隔距離502だけ、多段式ALIP120内の長手方向390において互いに離間されていてもよい。長手方向の間隔距離502は、多段式ALIP120の別個の段330-1、330-2を構成するように(例えば、予め)設定されてもよく、それにより、長手方向390に沿った異なる位置で、流れ環状空間312を通る液体金属冷却剤190の流量を調節可能に制御する。
【0135】
図5に示すように、多段式ALIP120における別個の段330-1、330-2間の長手方向390における長手方向の間隔距離502(例えば、隙間)は、長手方向390における磁界504-1、504-2の間に間隔が存在するように、別個の段330-1、330-2によって生成される磁界504-1、504-2の磁気再接続(干渉)を低減、制限、または防止することができる。その結果、隣接する段間の長手方向390における間隔距離502を有する多段式ALIP120は、各別個の段が別個の独立したALIPとして動作し得る、同一の装置において、直列の複数の独立したALIPとして動作するように構成され得る。
【0136】
さらに図5を参照すると、いくつかの例示的な実施形態では、多段式ALIP120内の別個の段330-1、330-2の誘導コイル320は、誘導コイル320の別個の段330-1、330-2を独立して制御することによって液体金属冷却剤190の流量を異なって制御することができ、それにより多段式ALIP120が液体金属冷却剤190の流量の制御の柔軟性を改善できるように、異なる形状特性(例えば、異なる形状、または寸法)を有することができる。
【0137】
例えば、図5に示すように、誘導コイル320の別個の、それぞれの組320-1、320-2を有する(例えば、少なくとも部分的に画定される)別個の段330-1、330-2を備える多段式ALIP120において、別個の組320-1、320-2(故に、別個の段330-1、330-2を少なくとも部分的に画定する)の誘導コイル320は、同じ組の誘導コイル320の隣り合う誘導コイルの対向する面の間に、長手方向390における別個の、それぞれの(例えば、異なる)長手方向の間隔320-1-LS、320-2-LSを有し得る。別の実施例では、別個の組320-1、320-2(しいては別個の段330-1、330-2を少なくとも部分的に画定する)の誘導コイル320は、長手方向390において、別個の、それぞれの(例えば、異なる)誘導コイルの長手方向の厚さ320-1-LT、320-2-LTを有してもよい。別の実施例では、別個の組320-1、320-N(しいては別個の段330-1、330-2を少なくとも部分的に画定する)の誘導コイル320は、長手方向390に対して垂直に延在する半径方向において、本明細書では同義的に環状厚さとも呼ばれる、別個の、それぞれの(例えば、異なる)コイル半径方向厚さ320-1-RT、320-2-RTを有してもよい。別の実施例では、別個の組320-1、320-2(しいては別個の段330-1、330-2を少なくとも部分的に画定する)の誘導コイル320は、長手方向390に対して垂直に延在する半径方向において、別個の、それぞれの(例えば、異なる)誘導コイル内半径320-1-IR、320-2-IRを有してもよい。別の実施例では、別個の組320-1、320-N(したがって、別個の段330-1、330-2を少なくとも部分的に画定する)の誘導コイル320は、長手方向390に対して垂直に延在する半径方向において、別個の、それぞれの(例えば、異なる)誘導コイルの外側半径320-1-OR、320-2-ORを有してもよい。別の実施例では、別個の組320-1、320-Nの誘導コイル320は、別個のそれぞれの(例えば、異なる)誘導コイル材料構成物(例えば、銅、銀など)を有していてもよい。
【0138】
図5に示すように、多段式ALIPの別個の段330-1、330-2は、異なる誘導コイル材料構成物を含む異なる固有の特性、同じ組の誘導コイルの隣り合う誘導コイルの対向面間の長手方向における異なる間隔、長手方向における異なる誘導コイル厚さ、異なる誘導コイルの、長手方向に対して垂直に延在する半径方向の環状厚さ、異なる誘導コイルの内径、および/または異なる誘導コイルの外径、うちの少なくとも一つ、あるいは全てを有する誘導コイル320の別個のそれぞれの組320-1、320-2を有していてもよく、及び/または、それによって少なくとも部分的に画定されてもよいことを理解されたい。
【0139】
図5に示すように、多段式ALIP120の別個の段のコイル形状および長手方向間隔は、多段式ALIP120の異なるセクション(例えば、異なる段の異なる長手方向セクション610-1、610-2)における様々な異なる特定の流れ状況に適応するように多段ALIP120を構成するために変更され得る。その場合、各別個の長手方向セクション610-1、610-2は、そのセクションを少なくとも部分的に画定する誘導コイル320のそれぞれの組320-1、320-2の独立した制御に基づいて(例えば、誘導コイルのそれぞれの組に供給される多相電力の独立した制御および/または調節を介して)独立して制御され得る。各セクションの独立制御(例えば、各段の誘導コイル320の独立制御)は、多段式ALIP120が非定常状態流量条件下でより優れた動作の柔軟性を提供できるようにする。
【0140】
図6は、いくつかの例示的な実施形態による多段式ALIPの平面側断面図である。図6の多段式ALIPの配線図は、図3Cに示す配線図と同じであってもよいことが理解されよう。図3A~3Cに示された多段式ALIP120のいくつかの要素は図6に示されていないが(例えば、冷却剤流体入口382、冷却剤流体出口384、入口側構造体302-1、出口側構造体302-2、支持リブ388、電源導体180など)、図6に示された多段式ALIP120は、図3A~3Cに示すものと同じ構造体(例えば、冷却剤流体入口382、冷却剤流体出口384、入口側構造302-1、出口側構造302-2、支持リブ388、入口122、出口123、電源導体180など)の一部、又は全部を含んでいてもよく、あるいは、それらを含んでいなくてもよいことが理解されよう。
【0141】
図6を概して参照すると、いくつかの例示的な実施形態において、多段式ALIP120の別個の段は、中心コア322-2の材料構成物、または長手方向390に対して垂直な方向における中心コア322-2の直径のうちの少なくとも一方の長手方向における変形によって、少なくとも部分的に画定されてもよい。
【0142】
図6に示すように、例えば、多段式ALIP120が2つの段330-1、330-2を含む例示的な実施形態において、中央コア322-2は、別々の段330-1、330-2に含まれる、複数の、長手方向に分離された中央コア部622-1~622-2を含んでもよい。図示するように、別個の中央コア部622-1、622-2は、異なる半径、したがって異なる直径628-1、628-2を有してもよい。いくつかの例示的な実施形態において、別個の中央コア部622-1、622-2は、同一または異なる材料構成物を有してもよく、同一または異なる直径628-1、628-2、同一または異なる外径、別個のコア部622-1、622-2がそれぞれの中央空間328を画定する例示的な実施形態において同一または異なる内径、別個のコア部622-1、622-2の同一または異なる半径方向の厚さ或いは環状厚さ、それらの任意の組み合わせなどを有してもよい。例えば、中央コア部622-1は、磁性鉄から構成されてもよく、また、中央コア部622-2はステンレス鋼から構成されてもよい。
【0143】
図6に示すように、また、少なくとも図3Aおよび図3Cに示す例示的な実施形態とは異なり、中央コア322-2は、図6に示すように、中央空間328が多段式ALIP120に存在しないように、1つまたは複数の中実円筒形構造を含んでもよい(例えば、別個の中央コア部622-1および622-2は、それぞれ中実円筒形構造であってもよい)。しかしながら、例示的な実施形態はこれに限定されず、いくつかの例示的な実施形態において、中央コア部622-1および622-2の一方または両方は、段330-1および330-2の1つまたは複数のセクション610-1および610-2の半径方向中心に中央空間328を画定する中空の円筒構造であってもよい。中央コア部622-1および622-2の両方が、段330-1および330-2の両方のセクション610-1および610-2の半径方向中心にそれぞれの中央空間328を画定する場合、別個の中央コア部622-1および622-2によって画定される中央空間328は、同じ直径を有してもよいし、異なる直径を有してもよい。
【0144】
さらに図6を参照すると、いくつかの例示的な実施形態において、多段式ALIP120の別個の段330-1、330-2は、同心環状壁310の内側環状壁310-2の外径632および/または内径、同心環状壁310の外側環状壁310-1の内径634および/または外径、同心環状壁310の少なくとも1つの環状壁の半径方向厚さ636、638、または流れ環状空間312の形状のうちの少なくとも1つの長手方向390における変形によって少なくとも部分的に画定され得る。
【0145】
図6に示すように、同心環状壁310と、該同心環状壁310によって画定される流れ環状空間312とは、多段式ALIP120の別個の段330-1、330-2を少なくとも部分的に画定する多段式ALIP120の2つ以上の別個の長手方向セクション610-1~610-2を少なくとも部分的に画定すると理解され得る。別個の長手方向セクション610-1、610-2は、多段式ALIP120の別個のそれぞれの段330-1、330-2内に部分的にまたは完全に包含されてもよいが、例示的な実施形態はこれに限定されない。
【0146】
さらに図6を参照すると、別個のセクション610-1、610-2(本明細書では多段式ALIP120の長手方向セクションとも呼ばれる)は、本明細書で説明されるような中心コア322-2の変形に加えて、またはそれとは別に、同心環状壁310の異なる構造形状を特徴として備えることができる。その結果、いくつかの例示的な実施形態において、流れ環状空間312は、多段式ALIP120の別々のセクション610-1、610-2において異なる特性を有することができ、また、多段式ALIP120の別々の段330-1、330-2において異なる流れ形状を特徴として備えることができる。
【0147】
いくつかの例示的な実施形態では、別個のセクション610-1、610-2は、外側環状壁310-1の同じまたは異なる内径634-1、634-2、および/または内側環状壁310-2の同じまたは異なる外径632-1、632-2を有していてもよい。例えば、図6に示すように、セクション610-1,610-2において、外側環状壁310-1は、セクション610-1,610-2の両方においてほぼ同じ内径634を有する(例えば、634-1=634-2)が、内側環状壁310-2は、セクション610-2における外側よりもセクション610-1における外側の方が小さい外径632を有する(例えば、632-1<632-2)。その結果、流れ環状空間312の環状又は半径方向の厚さ640は、第1のセクション610-1における厚さ640-1が、第2のセクション610-2における厚さ640-2よりも大きくなる。その結果、第1のセクション610-1における断面流面積は、第2のセクション610-2における断面流面積よりも大きくなり得る。
【0148】
図6にさらに示すように、外側および内側環状壁310-1、310-2は、同心環状壁310が、滑らかな環状体である第1セクション610-1(例えば、流れ環状空間312-1)における流れ環状空間312の流れ環状体形状を画定するように、第1セクション610-1において滑らかな対向円筒側壁を有してもよい。加えて、図6に示すように、外側環状壁310-1は、同心環状壁310が螺旋(つる巻き)環状である第2セクション610-2(例えば、流れ環状空間部312-2)における流れ環状空間312の流れ環状体形状を画定するように、第2セクション610-1における外側環状壁310-1の内面に渦巻きまたはつる巻きパターンを確立する1つまたは複数の螺旋(つる巻き)突起602または溝を含むことができる。図6は、第2のセクション610-2における流れ環状空間312の螺旋(つる巻き)環状体流れ形状に寄与する構造的特徴を有する外側環状壁310-1のみを図示しているが、内側環状壁部310-2は、追加的または代替的にそのような構造的特徴を含んでもよいことが理解されるであろう。
【0149】
さらに図6を参照すると、長手方向に隣接するセクション610-1、610-2の間の移行領域604は、第1のセクション610-1の特徴と第2のセクション610-2の特徴との間で長手方向390に移行する構造的特徴を有することができる。例えば、図6において、移行領域604は、中心コア322-2の直径および材料構成物の変化に加えて、外径632-1と外径632-2との間の内側環状壁310-2の外径632の変形、その結果としての流れ環状空間312の半径方向厚さ640の変形を含んでいる。長手方向390における移行領域604の長手方向境界は、段の長手方向境界(例えば、移行領域604の出口に近接した長手方向境界に示すように)および/または同心環状壁310、中心コア322-2、および/または流れ環状空間312の構造特性のうちの1つの変形が始まる長手方向境界(例えば、移行領域604の入口に近接した長手方向境界に示すように)によって画定され得る。図6にさらに示すように、移行領域604は、第1または第2のセクション610-1、610-2のうちの1つに含まれ、すなわち、段330-1、330-2のうちの1つの内部に含まれると理解され得る。
【0150】
さらに図6を概して参照すると、一組の誘導コイル320-1を含み、磁性鉄中心コア部622-1と滑らかな環状流形状を有する流れ環状空間部312-1を画定する同心環状壁310とを有する第1セクション610-1をさらに含む第1段330-1において、多段式ALIP120は、第1段330-1を通って流れる液体金属冷却剤190の流速が入口122から長手方向390に増加する単段式ALIPと同様に動作及び挙動するように構成され得る。誘導コイルの組320-2を含み、ステンレス鋼中央コア部622-2と、螺旋状(つる巻き状)環流形状を有する流れ環状空間部312-2を画定する同心環状壁310とを有する第2セクション610-2をさらに含む第2段330-2において、第2セクション610-2は、出口123において液体金属冷却剤190の旋回を誘導するように構成されたコークスクリューらせん形状(例えば、つる巻き流れ形状)をなぞるように構成されてもよく、流れ環状体半径方向厚さ640は、液体金属冷却剤190を第2段330-2の誘導コイル320に近づけるために、より小さい厚さ640-2に減少される。
【0151】
さらに、図6に示すように、第2段330-2に含まれる組320-2の誘導コイル320は、第1段330-1のコイル320よりも長手方向の厚さ320-2-LTが増加し、長手方向の間隔320-2-LSが減少しているので、第2段330-2のコイル320は、より強い磁界を維持するように構成される。さらに、ステンレス鋼中央コア部622-2は、磁性鉄中央コア部622-1よりも弱い透磁率を有していてもよく、これにより、第2段の磁界を出口123の方向ではなく渦流の方向にポンピングするように良好に形成することができる。渦流は、冷却を考慮して出口123で望まれる場合があり、開放プール液体金属原子炉の渦形成及びキャビテーションを回避するために、入口122では望まれない場合がある。図6に示す多段式ALIP120において、別個のセクション610-1、610-2を、独立して制御可能な別個の段330-1、330-2に、部分的にまたは全体的に含めることは、多段式ALIP120の各別個の段330-1、330-2における液体金属冷却剤190のポンピングおよび液体金属冷却剤190の渦巻きの最適化を可能にするように多段式ALIP120を構成することができる。
【0152】
図7は、いくつかの例示的な実施形態による多段式ALIPの平面側断面図である。図7の多段式ALIPの各段の配線図は、図3Cに示すいずれかの段の配線図と同じであってもよいことが理解されよう。図3A~3Cに示された多段式ALIP120のいくつかの要素は図7に示されていないが(例えば、冷却剤流体入口382、冷却剤流体出口384、入口側構造302-1、出口側構造302-2、支持リブ388、電源導体180など)、図7に示された多段式ALIP120は、図3A~3Cに示されたものと同じ構造(例えば、冷却剤流体入口382、冷却剤流体出口384、入口側構造302-1、出口側構造302-2、支持リブ388、入口122、出口123、電源導体180など)のうちのいくつか、又は全てを有していてもよく、或いは、それらを有していなくてもよい。
【0153】
図7に示す多段式ALIP120は、3段ALIP(例えば、N=3のN段330-1~330-Nを有する多段式ALIP120)として図示されているが、例示的な実施形態はこれに限定されず、任意の3段多段式ALIP120およびその任意の段に関する本明細書の説明は、2段以上(例えば、N≧2の330-1~330-N)およびその任意の段を有する任意の多段式ALIP120に適用することができる。
【0154】
図7を概して参照すると、いくつかの例示的な実施形態では、多段式ALIP120の所定の段内の誘導コイル320の1つ以上の形状特性および/または固有の特性は、多段式ALIP120の長手方向390に沿って、所定の段の少なくとも2つの誘導コイル320の間で変化し得る。いくつかの例示的な実施形態では、段に関連する形状特性は、固有の特性と互換的に呼ばれることがある。そのような変化する固有の特性は、所定の段の少なくとも2つの誘導コイル320(例えば、以下のような、同じ多相電源に電気的に接続されるように構成された少なくとも2つの誘導コイル)の間の変形を含んでいてもよく、当該変形には、誘導コイル320の材料構成物、同じ組の誘導コイル320の隣り合う誘導コイル320の対向面間の長手方向390における間隔、長手方向における誘導コイルの厚さ、長手方向390に対して垂直に延びる半径方向における誘導コイルの環状厚さ、誘導コイルの内径、または誘導コイルの外径、のうちの少なくとも1つが含まれ得る。このような変形は、数学的関数に近似或いは一致してもしなくてもよい。
【0155】
例えば、図7に示すように、多段式ALIP120が3つの段330-1、330-2、330-3を含むように示されている場合、多段式ALIP120の第3の段330-3は、一定の半径方向厚さ320-3-RT、長手方向厚さ320-3-LT、およびその間の間隔320-3-LSを有する誘導コイル320の第3の組320-3を含む。
【0156】
別の実施例では、多段式ALIP120の第1段330-1は、誘導コイル320の第1組320-1を含み、該第1組320-1は、一定の長手方向厚さ320-1-LTおよびその間の間隔320-1-LSを有するが、長手方向390において長手方向に隣り合う誘導コイル320の間で変化する可変半径方向厚さ320-1-RTを有している。図示されるように、半径方向厚さ320-1-RTの長手方向390における変形は、数学的関数、例えば、放物線の形状に従った入口122からの所定の誘導コイル320の長手方向390における距離の関数として、組320-1における所定の誘導コイル320の半径方向厚さを変化させる放物線関数702に近似していてもよい。
【0157】
別の実施例では、多段式ALIP120の第2段330-2は、それぞれの半径方向の厚さ320-2-RT、長手方向の間隔320-2-LS、および/または長手方向の厚さ320-2-LTを有する誘導コイル320の第2組320-2を含む。誘導コイル320のこのような厚さおよび間隔の変形は、基準点(例えば、入口122)からの長手方向390の距離に基づく数学的関数に近似してもよいし、任意および/またはランダムであってもよい。
【0158】
さらに、いくつかの例示的な実施形態では、誘導コイル320の材料構成物は、所定の段(例えば、同一の多相電源に電気的に接続されるように構成された)内の誘導コイル320の間で異なっていてもよい。
【0159】
さらに図7を参照すると、いくつかの例示的な実施形態では、中心コア322-2の直径628および/または同心環状壁310の1つ以上の外径/内径は、直径が基準点(例えば、入口122)からの長手方向390における距離の関数として変化する数学的関数に従って、長手方向390に沿って連続的に変化してもよい。図7に示すように、中心コア322-2の直径628および内側環状壁310-2の外径632は、入口122からの長手方向390における距離の数学的関数に従って変化してもよく、一方、外側環状壁310-1の内径634は、流れ環状空間312の半径方向厚さ640、及びその結果の断面流面積が入口122からの長手方向390の距離の数学的関数に従って長手方向390に変化するように、長手方向390において固定、または一定であってもよい。
【0160】
図7に示すように、また、少なくとも図3Aおよび図3Cに示す例示的な実施形態を含むいくつかの例示的な実施形態とは異なり、中央コア322-2は、図7に示すように、中央空間328が多段式ALIP120に存在しないように、1つまたは複数の中実円筒形構造を含んでいてもよい。しかしながら、例示的な実施形態はこれに限定されず、いくつかの例示的な実施形態では、中央コア322-2は、多段式ALIP120の半径方向中心に中央空間328を画定する中空の円筒構造であってもよい。中央空間328は、入口122と出口123との間で、長手方向390において中央コア322-2の全長を通って延在してもよく、また、中央空間328は、長手方向390において多段式ALIP120の長さに沿って固定または可変の直径を有してもよい。中央空間328は、中央コア322-2が長手方向390において多段式ALIP120の長さに沿って変化する直径628を有する例示的な実施形態においても、長手方向390における多段式ALIP120の長さに沿って固定された直径を有していてもよい。
【0161】
図7に示すように、多段式ALIP120は、隣接する段330-1、330-2、330-3の間(例えば、隣接する組320-1、320-2、320-3の間)に長手方向の間隔距離502を有することができる。別個の隣接する組の段間の長手方向の間隔距離502(例えば、組320-1と320-2とによって画定される段330-1と330-2との間の間隔距離、組320-2と320-3とによって画定される段330-2と330-3との間の間隔距離など)は、長手方向390において同じ大きさを有してもよいし、長手方向390において異なる大きさを有してもよい(例えば、組320-1と320-2は、長手方向390において、組320-2と320-3との間の長手方向の間隔距離502よりも互いに近接していてもよいし、長手方向390において離れていてもよい)。
【0162】
図8は、いくつかの例示的な実施形態による、多段式ALIPを操作するための方法を示すフローチャートである。図8に示す方法は、例示的な実施形態のいずれかによる任意の多段式ALIP120に関して実施されてよい。図8に示す方法は、図1に示すEMP制御システム150のようなEMP制御システム150によって、少なくとも部分的に実施可能であり、また、図1に示すような1つまたは複数の多相電源144-1~144-Nに関しても、少なくとも部分的に実施され得る。
【0163】
図8に示すように、本方法は、S802-1~S802-Nにおいて、多段式ALIP120のN段の各々について、Nは任意の正の整数であり、多段式ALIP120のN段の各々に供給される多相電力の供給を、別個の、それぞれの(例えば、異なる)多相電源(例えば、144-1~144-N)から独立して制御および/または調整することを含み得る。
【0164】
例えば、段数Nが2以上である場合、本方法は、S802-1において、複数の多相電源のうちの第1の多相電源144-1を介して、多段式ALIP120の複数の段のうちの第1段330-1に第1の多相電力を供給し、流れ環状空間312を通して液体金属冷却剤190を流すことを含むことができ、また、S802-2において、複数の多相電源のうちの第2の多相電源144-2を介して、複数の段のうちの第2段330-2への第2の多相電力の別個の供給を独立して制御して、流れ環状空間312を通る液体金属冷却剤190の流れを調整可能に制御することを含み得る。
【0165】
次に、S802-Nにおいて、多段式ALIP120のN段目を独立して制御する単一の動作について説明するが、動作S802-Nに関して説明したように動作S804-N~S818-Nの説明は、S802-1~S802-Nのいずれかの動作に等しく適用され得ることが理解されよう(例えば、S804-Nの説明は、S804-1に適用されてもよく、S806-Nの説明は、S806-1に適用されてもよく、S808-Nの説明は、S808-1に適用されてもよく、S810-Nの説明は、S810-1に適用されてもよく、S812-Nの説明は、S812-1に適用されてもよく、S814-Nの説明は、S814-1に適用されてもよく、S816-Nの説明は、S816-1に適用されてもよく、および/または、S818-Nの説明は、S818-1に適用されてもよい)。
【0166】
S804-Nにおいて、動作S802-Nは、N番目の多相電源144-Nから多段式ALIP120のN番目の段への多相電力の供給を開始する(例えば、始動する)かどうかを決定することを含み得る。そうである場合、S806-Nにおいて、N番目の多相電源144-NにN番目の段への多相電力の供給を開始させるために、制御信号が生成され、N番目の多相電源144-Nに送信されてもよい。制御信号は、EMP制御システム150によって生成および送信され得る。制御信号は、N番目の多相電源144-Nに、特定の(例えば、所定の)周波数、電力振幅(例えば、電圧および/または電流)、位相などを有する多相電力の供給を開始させることができる。
【0167】
S808-Nにおいて、動作S802-Nは、N番目の多相電源144-Nによって多段式ALIP120のN段目に供給される多相電力の周波数を調整するかどうかを決定することを含む。その場合、S810-Nにおいて、N番目の多相電源144-Nに、N番目の段に供給されている多相電力の供給周波数を調整させるために、制御信号が生成され、N番目の多相電源144-Nに送信されてもよい。制御信号は、EMP制御システム150によって生成され送信されてもよい。制御信号は、N番目の多相電源144-Nに、多相電力の供給の周波数を新たな特定の周波数に調整させることができる。
【0168】
S812-Nにおいて、動作S802-Nは、N番目の多相電源144-Nによって多段式ALIP120のN段目に供給される多相電力の電力振幅(例えば、電圧および/または電流)を調整するかどうかを決定することを含む。その場合、S814-Nにおいて、N番目の多相電源144-Nに、N番目の段に供給されている多相電力の供給の電力振幅(例えば、電圧および/または電流)を調整させるための制御信号が生成され、N番目の多相電源144-Nに送信されてもよい。制御信号は、EMP制御システム150によって生成および送信されてもよい。制御信号は、N番目の多相電源144-Nに、多相電力の供給の電力振幅(例えば、電圧および/または電流)を新たな特定の電力振幅(例えば、電圧および/または電流)に調整させることができる。
【0169】
S816-Nにおいて、動作S802-Nは、N番目の多相電源144-Nから多段式ALIP120のN番目の段への多相電力の供給を抑制する(例えば、停止する)かどうかを決定することを含み得る。その場合、S818-Nにおいて、N番目の多相電源144-NにN番目の段への多相電力の供給を抑制させるための制御信号が生成され、N番目の多相電源144-Nに送信されてもよい。制御信号は、EMP制御システム150によって生成および送信されてもよい。制御信号は、N番目の多相電源144-Nに、多段式ALIP120のN番目の段への多相電力の供給を抑制させることができる。
【0170】
図8に示す方法の動作のいずれかは、任意の順序で実行されてもよく、また、S802-1~S802-nのいずれかで実行される動作は、同時に実行されることを含め、互いに関して任意の順序で実行されてもよいことが理解されるであろう。例えば、本方法は、第1段への第1多相電力の供給を維持しながら、S818-Nにおいて第2段への第2多相電力の供給を抑制することを含んでもよい(例えば、S816-1=NO)。別の実施例では、本方法は、S810-Nにおいて、第1段に供給される第1多相電力の周波数とは独立して、第2段に供給される第2多相電力の周波数を調整すること、またはS814-Nにおいて、第1段に供給される第1多相電力の電流とは独立して、第2段に供給される第2多相電力の電流を調整することの少なくとも一方を含み得る。別の実施例では、本方法は、第1および第2の多相電源供給の両方(例えば、S802-1またはS802-Nのいずれか)を互いに独立して同時に調整することを含み得る。
【0171】
いくつかの例示的な実施形態において、動作S802-1~S802-Nのいずれかの動作S804~S818は、互いに独立して実行されてもよいことが理解されるであろう。いくつかの例示的な実施形態において、多段式ALIPの段のうちの1つ(例えば、S804-N~S818-Nのうちの1つ)を制御する動作は、多段式ALIPの段のうちの別の1つ(例えば、S804-1~S818-1のうちの1つ)に対して実行される動作に基づいて実行されてもよい。例えば、いくつかの例示的な実施形態において、S816-1における、同じ多段式ALIPの第1段を「停止する」ために第1段への電力の供給を抑制する(例えば、多段式ALIPを低流量モードに切り替える)決定に応じて、N段目に供給される電力の周波数を調整するための決定が、S808-NおよびS810-Nにおいて行われてもよい。
【0172】
いくつかの例示的な実施形態では、図8に示すような決定および/または動作の各々は、ユーザインターフェース(例えば、キーボード、ボタン、タッチスクリーン、マウスなど)および/または通信インターフェース(例えば、無線ネットワーク通信受信機)を介して入力コマンドを受信することに応答して実行されてもよく、および/または1つ以上のセンサデバイス(例えば、吸入ライン121、戻りライン124、及び/又は多段式ALIP120を通る液体金属冷却剤190の流量を示すセンサデータを生成するように構成され得る1つ以上のベンチュリ流量計などの1つ以上の流量計であってもよいセンサ192や、吸入ライン121、戻りライン124、及び/又は多段式ALIP120内の1つ以上の位置における液体金属冷却剤190の圧力を示すセンサデータを生成するように構成され得る1つ以上の圧力センサなど)から受信したセンサデータを処理することに応答して実行されてもよい。
【0173】
いくつかの例示的な実施形態において、多段式ALIP120の段に供給される多相電力の周波数および/または電力振幅の調整は、特定の周波数および/または電力振幅を決定することと、多相電源に特定の周波数および/または電力振幅を有する多相電力を段に供給させるように多相電源を制御することとを含み得る。特定の周波数および/または電力振幅を決定することは、段に供給されるべき多相電力の特定の周波数および/または電力振幅を指定する入力コマンドを受信することに応答してもよく、および/または1つまたは複数のセンサデバイス(例えば、吸入ライン121、戻りライン124、および/または多段式ALIP120を通る液体金属冷却剤190の流量を示すセンサデータを生成するように構成され得る1つまたは複数のベンチュリ流量計などの1つまたは複数の流量計であり得るセンサ192や、吸入ライン121、戻りライン124、および/または多段式ALIP120等内の1つまたは複数の位置における液体金属冷却剤190の圧力を示すセンサデータを生成するように構成され得る1つまたは複数の圧力センサなど)から受信したセンサデータを処理することに応答してもよい。
【0174】
入力コマンド及び/又はセンサデータは、少なくとも多段式ALIP120を通る液体金属冷却剤の所望の又は目標流量及び/又は圧力上昇分布、少なくとも多段式ALIP120及び/又は一次冷却剤ループ119を通る液体金属冷却剤の実際の流量及び/又は圧力上昇分布等を決定するために処理されてもよい。いくつかの例示的な実施形態において、実際の流量及び/又は圧力上昇分布がセンサデータの処理に基づいて決定される場合、目標流量及び/又は圧力上昇分布は、実際の流量及び/又は圧力上昇分布を、メモリ及び/又はデータベースに記憶され得る所望の、閾値の、又は目標とする流量及び/又は圧力上昇分布と比較することに基づいて決定されてもよい。当該比較は、実際の流量および/または圧力上昇分布が1つまたは複数の閾値流量および/または圧力上昇分布を超えるという判定に基づいて、新たな目標流量および/または圧力上昇分布を決定することを含んでもよい。
【0175】
特定の周波数および/または電力振幅を決定することは、例えば、入力コマンドに応答して、および/または受信したセンサデータの処理に応答して(例えば、少なくとも多段式ALIP120および/または一次冷却剤ループ119などを通る液体金属冷却剤の所望の、目標の、および/または実際の流量および/または圧力上昇分布を決定することに応答して)、多段式ALIP内の実際の、目標の、および/または所望の液体金属冷却剤190の流量および/または圧力上昇分布を、関連する液体金属冷却剤190の流量及び/又は圧力上昇分布を実施するために、多段式ALIPの1つ以上の段、又は全ての段に供給されるべき多相電力の特定のパラメータ(例えば、周波数及び/又は電力振幅、開始状態又は抑制状態等)と関連付ける経験的に生成されたルックアップテーブルにアクセスすることを含むことができる。いくつかの例示的な実施形態において、ルックアップテーブルは、所望の、および/または目標の液体金属流量および/または圧力上昇分布を実施するために多段式ALIPの対応する1つまたは複数、またはすべての段に1つ以上の特定の多相電源によって供給されるべき多相電力の特定のパラメータ(例えば、周波数および/または電力振幅、開始状態または抑制状態など)を特定するために、多段式ALIPにおける、所望の、目標の、および/または実際の液体金属冷却剤190の流量および/または圧力上昇分布の入力を受信することに応答して、アクセスされ得る。所望のおよび/または目標の液体金属流量および/または圧力上昇分布を実施するための動作S802-1~S802-Nのいずれかの動作S804~S818は、1つまたは複数の特定の多相電源に制御信号を送信して、1つまたは複数の特定の多相電源に、所望および/または目標の液体金属流量および/または圧力上昇分布を実施するために、1つまたは複数の特定の多相電源によって、多段式ALIPの対応する1つまたは複数、またはすべての段に供給される多相電力の特定のパラメータ(例えば、周波数および/または電力振幅、開始状態または抑制状態など)に従って、多段式ALIPの対応する1つまたは複数、またはすべての段に供給される多相電力を調整させる。
【0176】
図9は、いくつかの例示的な実施形態による、原子炉内の液体金属冷却剤の流量制御を改善するために原子炉を構成する方法である構成S900を示すフローチャートである。該構成は、図1に示す原子炉110を含む、本明細書に含まれる原子炉の任意の例示的な実施形態に関して実施され得る。
【0177】
S902において、構成S900は、原子炉圧力容器111内の一次冷却剤ループ119に多段式ALIP120を設置することを含み得る。多段式ALIP120は、例示的な実施形態のいずれかによる多段式ALIP120のいずれかであってよい。当該設置は、人間の操作者によって実施されてもよい。このような設置は、多段式ALIP120の入口122を一次冷却剤ループ119の吸込ライン121に接続し、多段式ALIP120の出口123を一次冷却剤ループ119の戻りライン124に接続することを含むことができる。当該設置は、多段式ALIP120を原子炉圧力容器111、炉心入口プレナム118、原子炉炉心112、一次熱交換器114、吸引リザーバ116、またはそれらの任意の組合せに構造的に接続するために、多段式ALIP120のポンプケーシング302を原子炉110の構造支持部材に接続することを含むことができる。
【0178】
S904において、構成S900は、多段式ALIP120を、多段式ALIP120のN段に対応する複数の多相電源144-1~144-Nに電気的に結合し、それにより多段式ALIP120のN段を、多相電源144-1~144-Nの別個のそれぞれの電源に電気的に接続することを含み得る。この結合は、人間の操作者によって実施されてもよい。S904における電気的結合は、多段式ALIP120の誘導コイル320の組320-1~320-Nを別個のそれぞれの多相電源ケーブル146-1~146-Nに電気的に接続することを含むことができ、そこでは、別個のそれぞれの多相電源ケーブル146-1~146-Nが、原子炉圧力容器111の外壁111Sを貫通する単一の貫通部182を介して、多段式ALIP120から原子炉圧力容器111の少なくとも外側に、単一の電源導体180、または延長コードを介して延在する。多相電源ケーブル146-1~146-Nの各々は、別個の多相電源144-1~144-Nを多段式ALIP120の別個の段に接続するように構成することができる。
【0179】
S906において、構成S900は、多段式ALIP120を1つまたは複数のEMP制御システムに結合(例えば、電気的に結合および/または通信可能に結合)することを含み得る。この結合は、人間の操作者によって実施されてもよい。この結合は、多段式ALIP120を、1つまたは複数の通信回線を介してEMP制御システム150の1つまたは複数の部分に通信可能に結合することと、電源144-1~144-NをEMP制御システム150に電気的に結合することとを含み、それによってEMP制御システム150を、1つまたは複数の通信回線、電力線などを介して多相電源144-1~144-Nを経由して多段式ALIP120に間接的に通信可能に結合することを含み得る。EMP制御システム150は、命令プログラムを記憶するメモリ(例えば、ソリッドステートドライブまたはSSD)と、別個のそれぞれの多相電源144-1~144-N)によって供給される多相電力を独立して制御することに基づいて、複数の段の各段を独立して制御する命令プログラムを実行するように構成されたプロセッサ(例えば、中央プロセッサユニットまたはCPU)とを含むことができる。
【0180】
多くの例示的な実施形態を本明細書に開示してきたが、他の変形例も可能であることを理解されたい。そのような変形例は、本開示の趣旨および範囲からの逸脱とみなすべきではなく、当業者にとって自明であろうそのような変更のすべては、以下の請求項の範囲内に含まれることが意図される。さらに、プロセスが本明細書に開示されているが、記載したプロセスの要素は、異なる要素の選択、それらのいくつかの組み合わせなどを使用して、異なる順序で実施されてもよいことを理解されたい。例えば、開示されたプロセスのいくつかの例示的な実施形態は、図示され記載されたプロセスよりも少ない要素を使用して実施されてもよく、開示されたプロセスのいくつかの例示的な実施形態は、図示され記載されたプロセスよりも多くの要素を使用して実施されてもよい。
図1
図2
図3A
図3B
図3C
図4
図5
図6
図7
図8
図9
【国際調査報告】