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特表2024-538607サンプル中のN末端プロホルモンBNP(NT-プロBNP)の濃度を測定するための新規方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-10-23
(54)【発明の名称】サンプル中のN末端プロホルモンBNP(NT-プロBNP)の濃度を測定するための新規方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 30/72 20060101AFI20241016BHJP
   G01N 33/74 20060101ALI20241016BHJP
   G01N 33/483 20060101ALI20241016BHJP
   G01N 33/48 20060101ALI20241016BHJP
   G01N 33/96 20060101ALI20241016BHJP
   G01N 27/62 20210101ALI20241016BHJP
   G01N 33/68 20060101ALI20241016BHJP
   C07K 1/22 20060101ALN20241016BHJP
   C07K 1/13 20060101ALN20241016BHJP
【FI】
G01N30/72 C
G01N33/74 ZNA
G01N33/483 E
G01N33/48 A
G01N33/96
G01N27/62 V
G01N33/68
C07K1/22
C07K1/13
【審査請求】未請求
【予備審査請求】有
(21)【出願番号】P 2024519302
(86)(22)【出願日】2022-10-03
(85)【翻訳文提出日】2024-05-22
(86)【国際出願番号】 EP2022077433
(87)【国際公開番号】W WO2023052642
(87)【国際公開日】2023-04-06
(31)【優先権主張番号】17/492,372
(32)【優先日】2021-10-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】519355677
【氏名又は名称】ゲンティアン アクティーゼルスカブ
【氏名又は名称原語表記】GENTIAN AS
【住所又は居所原語表記】Postboks 733, 1509 Moss, Norway
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100117019
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100141977
【弁理士】
【氏名又は名称】中島 勝
(74)【代理人】
【識別番号】100138210
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 達則
(74)【代理人】
【識別番号】100203828
【弁理士】
【氏名又は名称】喜多村 久美
(72)【発明者】
【氏名】アーリング サンドレハーゲン
(72)【発明者】
【氏名】イングビルド グディム
(72)【発明者】
【氏名】ユーリア ベイクム
(72)【発明者】
【氏名】アルノード ダビド
(72)【発明者】
【氏名】トルステン クニュッテル
【テーマコード(参考)】
2G041
2G045
4H045
【Fターム(参考)】
2G041CA01
2G041EA04
2G041EA12
2G041FA12
2G041FA13
2G041FA23
2G041GA09
2G041HA01
2G041JA02
2G041JA04
2G041JA05
2G041JA09
2G041JA13
2G041LA08
2G045AA13
2G045AA25
2G045BA13
2G045BB03
2G045BB11
2G045CA26
2G045DA36
2G045FA34
2G045FA36
2G045JA02
4H045AA10
4H045AA20
4H045AA30
4H045BA21
4H045BA50
4H045CA40
4H045DA30
4H045EA26
4H045FA16
4H045FA74
4H045GA26
(57)【要約】
親和性精製とその後の消化に供されたサンプルのLC-MS/MS分析を伴った、そのグリコシル化の程度に影響されずに、サンプル中のNT-プロBNPの総量を定量化するための標準法。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
サンプル中のヒトN末端プロホルモンBNP(NT-プロBNP)の濃度を測定する方法であって、以下:
-親和性精製方法を使用して前記サンプルからNT-プロBNPを抽出し、そして、単離し、
-前記単離したNT-プロBNPに、少なくとも1つの標識ペプチド標準を加え、
-前記単離したNT-プロBNPとペプチド標準とを酵素分解にかけ、そして、ペプチドの混合物を生じさせ、そして、
-液体クロマトグラフィー-質量分析法解析とその後の質量分析検出を使用して、得られた混合物中の少なくとも1つのペプチドを検出すること、ここで、検出されるべき前記少なくとも1つのペプチドが、NHLQG(K)(配列番号11)、EVATEGI(R)(配列番号12)、及びMVLYTL(R)(配列番号13)から選択される、
を含むことを特徴とする、方法。
【請求項2】
前記少なくとも1つの標識ペプチド標準が、完全長の遺伝子組み換えNT-プロBNPである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記少なくとも1つのペプチド標準が、以下:
HLQG(K)(配列番号11)、
EVATEGI(R)(配列番号12)、及び
MVLYTL(R)(配列番号13)、
から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記少なくとも1つのペプチド標準が、EVATEGI(R)(配列番号12)である、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記少なくとも1つのペプチド標準が、重水素標識されたEVATEGI(R)(配列番号12)である、請求項3に記載の方法。
【請求項6】
前記親和性精製方法が、前記NT-プロBNPに対する少なくとも1つの抗体を担持する親和性ビーズを利用し、かつ、前記少なくとも1つの抗体が、NTプロBNP分子上の非グリコシル化エピトープに対して高親和性を示す、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記親和性ビーズが、磁気親和性ビーズである、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記少なくとも1つの抗体が、配列番号2及び配列番号3から選択されるアミノ酸配列内のNT-プロBNP上の非グリコシル化エピトープに特異的に結合する、請求項6に記載の方法。
【請求項9】
前記酵素分解が、トリプシン処理である、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記トリプシン処理が、標識された標準及び天然NT-プロBNPをビーズと結合させる間に実施される、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
定量化が、酵素的に消化した遺伝子組み換えNT-プロBNPに対する較正に基づいて実施される、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記方法が、関連濃度のトリプシン処理した標準NT-プロBNPを使用して較正され、かつ、すべての標準が、内部標準を用いてスパイクされる、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記内部標準が、標識された遺伝子組み換え完全長NT-プロBNPである、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
較正物質に対する値の付与、試験、及び/又はサンプル中のヒトN末端プロホルモンBNP(NT-プロBNP)の濃度を測定するアッセイの品質管理において使用する、請求項1~13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
心不全の診断及びモニタリングにおいて使用する、請求項1~13のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この開示は、診断アッセイの分野、そして特に、斯かるアッセイを実施する方法及び試薬、例えば、抗体、免疫粒子、及びキャリブレーターなど、を含めた、サンプル中のN末端プレ-ホルモンBNP(NT-プロBNP)の濃度の測定のための新規アッセイ、に関する。本開示は、特に、サンプル中のN末端プロホルモンBNP(NT-プロBNP)の濃度の測定のための診断アッセイに使用するためのキャリブレーターに値を付与するのに有用な、新しく、かつ、より正確な方法を提供する。
【背景技術】
【0002】
背景
B型ナトリウム利尿ペプチドとしても知られ、BNPと略記される、脳性ナトリウム利尿ペプチドは、増加した心室の血液量、心臓壁の応力によって引き起こされる伸展に対応して心室の心筋細胞によって分泌されるホルモンである。NT-プロBNPは、プロBNPをBNPとNT-プロBNPに切断することによって生じる。図1を参照のこと。
【0003】
BNPとNT-プロBNPを計測することは、心不全の診断とモニタリングにおいて有用である。BNPは生物学的に活性な代謝物であり、及び約20分間の半減期(t1/2)を有し、かつ、腎臓で分解されないので、BNPとNT-プロBNPを直接比較することはできない。それは、インビトロにおいて非常に短時間だけ安定しているにすぎない。
【0004】
しかしながら、NT-プロBNPは安定しており、それは、生物学的に不活性であり、かつ、腎臓で濾過される。その半減期が約1~2時間なので、その血中濃度はBNPのものより高い。BNPと比較して、半減期は腎臓機能に大きく依存している。インビトロにおいて、NT-プロBNPはBNPより安定しているので、2~8℃にて少なくとも3日間保存できる。その結果、プロBNPとNT-プロBNPは、心肥大や左心室心不全などの心筋機能不全に関する絶対的基準の臨床的指標として使用される。
【0005】
非急性症状を患っている患者の心不全を除外するための推奨される基準範囲限度は、それぞれBNP及びNT-プロBNPに関して35ng/L及び125ng/Lである。呼吸困難又は増大した症状を患っている患者の心不全を排除する推奨切り捨て値は、より高く、それぞれBNP及びNT-プロBNPに関して100ng/L及び300ng/Lである。特に、急性心不全に関して、更に特に、より高齢の患者に関して、基準範囲は幅広い、表1を参照のこと:
【0006】
【表1】
(Januzzi et al., NT-proBNP testing for diagnosis and short-term prognosis in acute destabilized heart failure: an international pooled analysis of 1256 patients. Eur Heart J 2006; 27: 330-37)
【0007】
NT-プロBNPは、その非グリコシル化形態で8458Daの質量を有する76アミノ酸のペプチド鎖である。アミノ酸配列は、図2に示されている。2006年以前、プロBNPのグリコシル化は知られていなかった。プロBNPグリコシル化の最初の証拠が、2006年に公開された(Schellenberger, U. et al., The precursor to B-type natriuretic peptide is an O-linked glycoprotein, Arch Biochem Biophys. 2006 Jul 15;451(2):160-6. Epub 2006 Apr 19)。BNPのグリコシル化の存在と大分子量アイソフォームの観察は、血流中のNT-プロBNPの関連形態について多くの混乱を引き起こした。
【0008】
2015年には、サンプルを脱グリコシル化酵素によって前処理したときに、Elecsys(Roche Diagnostics)プラットフォームによるプロBNP IIアッセイを使用して、より高いNT-プロBNP濃度が計測されることが、示された(Rosjo et al., Influence of glycosylation on diagnostic and prognostic accuracy of N-terminal pro-B-type natriuretic peptide in acute dyspnoea: data from the Akershus Cardiac Examination 2 Study, Clin Chem, 2015 Aug;61(8):1087-97. doi: 10.1373/clinchem.2015.239673. Epub 2015 Jun 8.)。
【0009】
内因性プロBNP及びNT-プロBNPの正確なグリコシル化部位は、最近になってようやく特徴づけられた(Halfinger, B. et al., Unravelling the Molecular Complexity of O-Glycosylated Endogenous (N-Terminal) pro-B-Type Natriuretic Peptide Forms in Blood Plasma of Patients with Severe Heart Failure. Clinical Chemistry. 2017, Vol. 63, 1)。
【0010】
NT-プロBNPの検出のためのサンドイッチ免疫アッセイは、市販されており、例えば、天然NT-プロBNPの異なったエピトープを認識し、かつ、同時に前記天然NT-プロBNPに結合できる2つの抗体を使用したサンドイッチアッセイに関するEP1151304(Roche Diagnostics GmbH)に開示されており、ここで、該少なくとも2つの抗体は、N-末端プロBNPのアミノ酸10-50の領域内に結合し、かつ、該抗体は、遺伝子組み換えNT-プロBNPを有する好適な生物体を免疫することによって得られる。
【0011】
EP1625163、EP1625164及びEP2256132(Roche Diagnostics GmbH)は、アミノ酸番号38-43、42-46、39-66、40-47、41-48及び42-49によって定義されたプロBNP分子のエピトープに特異的な抗体を定義する。
【0012】
US9,034,591及びUS9,145,459(HyTest Ltd.)は共に、以下:BNP及びプロBNPの環状構造の領域に特異的な一次抗体又はその結合フラグメント(ここで、該一次抗体又はその結合フラグメントは、BNP、プロBNP、又は一次免疫複合体を形成するようにその領域を含むそのフラグメントに結合する);及び遊離BNP、遊離プロBNP、若しくはその遊離フラグメント、又は遊離一次抗体を認識しないか、或いはそれが一次免疫複合体を認識するより10倍以下の親和性でそれらを認識する二次抗体又はその結合フラグメント(ここで、該二次抗体又はその結合フラグメントは、Ab-BNP2又はAb-BNP4である)を含む、サンプル中のBNP、プロBNP、又はそのフラグメントを検出するための免疫学的アッセイキットに関する。
【0013】
EP2084544B1(HyTest Ltd.)は、BNP免疫学的アッセイの安定した基準に関し、更に、サンプル中のBNP免疫反応性を検出する方法における基準又はキャリブレーターとして、特定のアミノ酸配列、又は5個以下のアミノ酸置換、挿入若しくは欠失だけ異なる配列から成る単離又は遺伝子組み換え又は合成プロBNPから成る群から選択されるペプチドの使用を定義する。
【0014】
EP2251356B1(Nexus DX Inc.)は、アミノ酸残基の特定の範囲内のNT-プロBNPに特異的な単離ポリクローナル抗体、及び別の、アミノ酸残基の特定の範囲内のNT-プロBNPに特異的な単離モノクローナル抗体を使用して、N-末端プロBNPを検出するためのポリクローナル-モノクローナルELISAアッセイに関する。
【0015】
NT-プロBNPを測定するための既存の臨床アッセイとの比較では、既存のアッセイがまだ標準化されておらず、そして、どのアッセイが使用されたかによって、同じサンプルでも異なった値を生じるといったことが明らかになる。例えば、Collin-Chavagnac et al., Head-to-head comparison of 10 natriuretic peptide assays, Clinical Chemistry and Laboratory Medicine, April 2015, Doi: 10.1515/cclm-2014-0592を参照のこと。
【0016】
それにもかかわらず、NT-プロBNPは「心不全における絶対的基準バイオマーカー」と言われている(McKie and Burnett, J Am Coll Cardiol, 2016 Dec 6;68(22):2437-2439)。しかしながら、異なったアッセイを使用することで得られた値間での現状のずれは、満足でるものではないので、NT-プロBNPの濃度を測定するための独立した標準法が必要とされている。
【0017】
US20080312152(Pollit et al.)では、医薬組成物におけるプロBNPの治療的使用を考察し、及び通常バッファー中の高濃度の遺伝子組み換えプロBNPを測定する。Pollitらは、NT-プロBNPの生理量が血漿サンプル中でどのように測定できるか示してもいないし、教示もしていないし、又は示唆もしていない。
【0018】
US20050148024(Buechler)では、プロBNPの分解に注目した測定の方法、そして、サンプル中の1若しくは複数のナトリウム利尿ペプチド又はそれらの断片の存在又は量の測定、様々なナトリウム利尿ペプチドを区別するために設計された方法、を開示する。
【0019】
論文「循環BNP関連のペプチドの多様性及び複雑性を考慮したBNP及びNT-プロBNP免疫アッセイの標準化」では、著者のAlexander G. Semenov and Evgeniya E. Feygina (Semenov, 2018, Advances in Clinical Chemistry, Volume 85, pages 1-30)は、どのようなBNP又はNT-プロBNP基準を較正に使用すべきか、そして、認証された標準物質、並びに標準的な計測手順に対する取り決めが存在していないことに言及している。
【発明の概要】
【0020】
概要
本発明者らは、既存の方法を較正し、精度を確保するための標準的な方法として、又はNT-プロBNPの濃度を正確に測定するための臨床化学における新規方法として、の役割を果たすに好適な堅牢かつ信頼性が高い方法を利用可能にすることによって、上記の問題とその他の問題に対処した。
【0021】
請求項で定義された方法は、高次法又は標準法の資格を得、そして、それが、それ自体が診断法として使用できるが、較正物質に対する値を付与するためにも使用できる高精度法であることを意味している。概して、標準法という用語は、その結果が正確であることが知られている高品質な方法を暗示する。試験法と標準法との間のあらゆる違いは、試験法に課される、すなわち、標準法の正当性は十分に実証されているので、誤差は試験法の結果と考えられる。
【0022】
第一の態様によると、本開示は、サンプル中のヒトN末端プロホルモンBNP(NT-プロBNP)の濃度を測定する方法であって、以下:
-親和性精製方法を使用してサンプルからNT-プロBNPを抽出し、そして、単離し、
-前記単離したNT-プロBNPに、少なくとも1つの標識ペプチド標準を加え、
-前記単離したNT-プロBNPとペプチド標準とを酵素分解にかけ、そして、ペプチドの混合物を生じさせ、そして、
-液体クロマトグラフィー-質量分析法解析とその後の質量分析検出を使用して、得られた混合物中の少なくとも1つのペプチドを検出すること、ここで、検出されるべき前記少なくとも1つのペプチドが、NHLQG(K)(配列番号11)、EVATEGI(R)(配列番号12)、及びMVLYTL(R)(配列番号13)から選択される、
を含む、前記方法を利用可能にする。
【0023】
上記配列では、(K/R)はトリプシン切断部位を意味する。
【0024】
あらゆる上記実施形態との自由な組み合わせが可能である、ある実施形態によると、前記少なくとも1つの標識ペプチド標準は、完全長の遺伝子組み換えNT-プロBNPである。
【0025】
あらゆる上記実施形態との自由な組み合わせが可能である、ある実施形態によると、前記少なくとも1つのペプチド標準は、NHLQG(K)(配列番号11)、EVATEGI(R)(配列番号12)、及びMVLYTL(R)(配列番号13)から選択される。
【0026】
あらゆる上記実施形態との自由な組み合わせが可能である、特定の実施形態によると、前記少なくとも1つのペプチド標準は、EVATEGI(R)(配列番号12)であり、好ましくは重水素標識されたEVATEGI(R)(配列番号12)である。
【0027】
あらゆる上記実施形態との自由な組み合わせが可能である、ある実施形態によると、前記親和性精製方法は、前記NT-プロBNPに対する少なくとも1つの抗体を担持する親和性ビーズを利用し、ここで、前記少なくとも1つの抗体は、NTプロBNP分子上の非グリコシル化エピトープに対して高親和性を示す。好ましくは、前記親和性ビーズは、磁気親和性ビーズである。
【0028】
あらゆる上記実施形態との自由な組み合わせが可能である、ある実施形態によると、前記少なくとも1つの抗体は、配列番号2及び配列番号3から選択されるアミノ酸配列内のNT-プロBNP上の非グリコシル化エピトープに特異的に結合する。
【0029】
あらゆる上記実施形態との自由な組み合わせが可能である、第一の態様のある実施形態によると、前記酵素分解は、トリプシン処理である。好ましくは、前記トリプシン処理は、標識された標準及び天然NT-プロBNPをビーズと結合させる間に実施される。
【0030】
あらゆる上記実施形態との自由な組み合わせが可能である、ある実施形態によると、定量化は、酵素的に消化した遺伝子組み換えNT-プロBNPに対する較正に基づいて実施される。
【0031】
あらゆる上記実施形態との自由な組み合わせが可能である、ある実施形態によると、その方法は、関連濃度のトリプシン処理した標準NT-プロBNPを使用して較正され、そして、ここで、すべての標準が、内部標準を用いてスパイクされる。好ましくは、その内部標準は、標識された遺伝子組み換え完全長NT-プロBNPである。
【0032】
別の態様は、較正物質に値を付与する方法、試験方法、及び/又はサンプル中のヒトN末端プロホルモンBNP(NT-プロBNP)の濃度を測定するアッセイの品質管理方法に関し、ここで、前記方法は、第一の態様とその実施形態に概説したステップを含む。
【0033】
本開示の第三の態様は、心不全の診断とモニタリングに使用する方法に関し、ここで、前記方法は、第一の態様とその実施形態に概説したステップを含む。
【0034】
更なる態様及び実施形態、並びにそれらの利点は、以下の詳細な説明、実施例、並びに添付した請求項及び図面から明らかになる。
【0035】
本発明は、以下の添付図面を参照して、一例として、本明細書に記載される:
【図面の簡単な説明】
【0036】
図1図1は、プロBNPプロセッシングのスキームを示す(起源:TechNotes|ヒトプロBNP、BNP、及びNT-プロBNP、HyTest Ltd., 2019年1月、https://shop.hytest.fi/spree/products/2932/Human_proBNP__BNP_and_NT-proBNP_ TechNotes.pdf?1560757320、2019年8月7日ダウンロード)。プロBNPは、プレ-プロBNP分子の翻訳と、シグナルペプチドの切断の後に形成される。次に、それはいくつかの部位でグリコシル化される。T71グリコシル化の状態が異なったプロBNPの2つのプール:T71にて非グリコシル化及びこの部位でグリコシル化された分子、が形成される。グリコシル化は、プロBNPのその後のプロセッシングを抑制する。T71にてグリコシル化されていないプロBNPのみが、BNPとNT-プロBNPに効果的にプロセッシングされる。非プロセッシングプロBNP、NT-プロBNP及びBNPは、血中に放出される。
【0037】
図2図2は、示された本発明者らによって同定された2つのペプチド:アミノ酸位置8-33(ペプチド1)及び61-74(ペプチド2)、を有するNCBI基準配列P_002512のアミノ酸27-102としてNT-プロBNPのアミノ酸配列を提示する。
【0038】
図3図3は、低濃度領域(0~2000ng/L)における、本明細書で提供された方法を使用して計測したNT-プロBNPの血漿サンプルの濃度と、従来技術(Roche Elecsys(登録商標)NT-プロBNPアッセイ)の一つである市販の方法を使用してサンプルに付与された値との間の相関関係を示すグラフである。
【0039】
図4図4は、より幅広い濃度領域(0~25000ng/L)における、本明細書で提供された方法を使用して計測したNT-プロBNPの血漿サンプルの濃度と、従来技術(Roche Elecsys(登録商標)NT-プロBNPアッセイ)の一つである市販の方法を使用してサンプルに付与された値との間の相関関係を示すグラフである。
【0040】
図5図5は、本明細書で提供された方法を使用して計測されたNT-プロBNPの血漿サンプルの濃度と、別の市販の方法(Siemens ADVIA Centaur(登録商標)Immunoassay System)を使用してサンプルに付与された値との間の相関関係を示すグラフである。
【0041】
図6図6は、本明細書で提供された方法を使用して計測されたNT-プロBNPの血清サンプルの濃度と、別の市販の方法(Siemens IMMULITE Immunoassay System)を使用してサンプルに付与された値との間の相関関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0042】
詳細な説明
本発明がより詳細に説明される前に、本発明の範囲は、添付した請求項とその同等物によってのみ制限されるので、本明細書中に用いられた専門用語が、特定の実施形態を説明することのみを目的として使用され、制限することを意図していないことは理解されるべきである。
【0043】
この明細書及び添付の請求項で使用される場合、単数形の「a」、「an」、及び「the」は、別段文脈が明確に指示しない限り、複数の指示対象を含むことに留意されなければならない。
【0044】
「全血のサンプル」のように「サンプル」という用語は、ヒト又は動物体から採取されたサンプルを指し、そしてそのサンプルは、前記のヒト又は動物体に戻されることはない。針、シリンジ、マイクロキュベットなどの使用を伴った、ヒト又は動物体から採取した血液サンプルを入手及び操作するための標準的な方法が存在する。これらの方法は、当業者にとって周知である。現在最も好ましいタイプのサンプルは、全血のリチウム-ヘパリン処理サンプルである。様々な市販の供給品、例えば、BD, Oakville, Ontario, Canadaから入手可能なBD Vacutainer(登録商標)、から容易に入手可能なスプレーコートリチウム-ヘパリンを含有した数種類の血液採取チューブが存在する。
【0045】
この開示中の「免疫原」という用語は、抗体を産生するのに使用される物質を指し、そして、結合型及び非結合型形態を含む。
【0046】
「...のアミノ酸配列中のNT-プロBNPに特異的に結合する」という用語は、NT-プロBNPの特定のアミノ酸範囲内のアミノ酸だけがその抗体によって特異的に認識され、及び/又はそれに結合することを意味する。言い換えれば、本明細書に記載した抗体は、NT-プロBNPの所定のアミノ酸範囲内のエピトープを特異的に認識し、及び/又は結合する。
【0047】
「エピトープを特異的に認識する」又は「エピトープに特異的に結合する」という用語は、エピトープのアミノ酸のみが抗体への結合に関与することを意味と理解される。従って、「エピトープ」という用語は、抗原決定基、すなわち、抗原の特定の(単数若しくは複数の)部分、例えば、そこに抗体が結合するNT-プロBNPなど(例えば、配列番号2又は3に相当するアミノ酸配列中に見られる部分的な又はすべてのアミノ酸を含むエピトープなど)、を意味する。NT-pro-BNPなどの抗原の他のアミノ酸は、抗体の結合に関与することを求められていない。他の分子と抗体の交差性の欠如は、抗体が高いエピトープ特異性を有することを意味する。
【0048】
更に、「実質的に同じ親和性で結合すること」は、抗体が同じ桁の結合親和力で、例えば、2つ以上の異なるペプチドに結合することを意味すると理解される。本明細書に記載した(単数若しくは複数の)抗体は、別のペプチド又はタンパク質に結合する同じ(単数若しくは複数の)抗体の親和性の少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、又は少なくとも約99%の親和性で、ペプチド、例えば、エピトープマッピングアッセイとの関連において8-merのペプチドに、或いはタンパク質に結合する。
【0049】
本明細書に使用される場合、「少なくとも1つの抗体又は(複数の)抗体」という用語は、ポリクローナル抗体、あらゆるアイソタイプ(IgA、IgG、IgD、IgM、IgY)のモノクローナル抗体の混合物、或いはこれだけに限定されるものではないが、F(ab)、F(ab’)、F(ab’)2、Fvフラグメント、例えば、scFvなどの一本鎖抗体、キメラ抗体、ヒト化抗体及びFab発現ライブラリーを含めた、その抗原結合フラグメントを指す。
【0050】
「抗体の結合フラグメント」又は「抗体フラグメント」という用語は、例えば、完全長の抗体のN末端又はC末端アミノ酸の欠失から生じ、かつ、完全長の抗体とほぼ同じ特異性及び/又はKで同種抗原を結合する能力を維持する、完全長の抗体のフラグメントを指す。
【0051】
抗体の結合特異性及びKを測定するアッセイは、周知であり、当該技術分野で日常的に実施される。斯かるアッセイに関する網羅的な議論に関しては、Harlow et al. (Eds.), Antibodies: A Laboratory Manual; Cold Spring Harbor Laboratory; Cold Spring Harbor, NY (1988), Chapter 6を参照のこと。
【0052】
特異性を計測する1つのアプローチは、ウエスタンブロッティング又はELISAを使用して、その同種抗原及び他の非関連抗原への結合に関して抗体を試験することである。その抗原に対する抗体の結合の親和性を計測する別のアプローチは、例えばBiacore(商標)アッセイプラットフォームとソフトウェア(GE Healthcare)を使用した表面プラズモン共鳴法(SPR)によるものである。
【0053】
その物理的及び化学的特性に関する情報を得るための血液サンプルの臨床検査に関与する、血液検査は今日、医学診断の土台を形成する。何百もの血液学的試験及び手順が、何年にもわたって開発された。試験は元々手動で実施されたが、ひとつずつ、臨床化学の分野では、高度に自動化されるようになった。今日、複数の試験が、自動化された臨床化学分析装置、自動分析器と称されることが多い器具、を使用して、1つの血液サンプルにおいて同時に実施される。
【0054】
現在開示しているアッセイ法は手動で実施されてもよいが、該アッセイは、自動分析器がハイスループットを可能にし、誤差を軽減し、かつ、スタッフ要件を最小限にするから、自動分析器により好ましくは実施される。閉鎖的な、自動化されたサンプル操作法もまた、スタッフが起こり得る血液由来病原体に晒されるリスクを最小限にする。
【0055】
血液サンプルを採血するとき、血液は通常、腕の静脈から抜き取られ、そして、標準化された滅菌血液採取チューブ内に回収される。どの(単数若しくは複数の)成分が分析されるはずかによって、様々なチューブが利用可能である。血液採取チューブは、空であっても、又はバッファーで、若しくは高い頻度で、抗凝血物質があらかじめ充填されていてもよい。抗凝血物質の例としては、クエン酸ナトリウム、リチウム-ヘパリン、及びEDTAが挙げられる。様々な組み合わせもまた可能であり、例えば、ヘパリンナトリウムとEDTAを含むチューブが存在する。Vacutainer(商標)(BD, Becton, Dickinson and Company)は、様々なサイズ、かつ、様々な試薬があらかじめ充填された状態で入手可能な血液採取チューブの一例である。
【0056】
血漿サンプルと血清サンプルの間で区別をする。血漿サンプルが所望されるとき、血液は、抗凝血物質を含むチューブ内に回収され、そして、そのチューブは、混合を確実にするために、充填直後に、約5~10回転倒撹拌される。次に、チューブは、溶血を避けるために室温にて直立位置で保存される。EDTAとリチウム-ヘパリンを含むチューブは、一般に室温にて最長4時間保存できる。或いは、チューブは、後の解析のために急速冷凍され、そして、保存され得る。
【0057】
血清サンプルを入手するために、血液は、空のサンプルチューブ又は凝固活性化因子を含むチューブ内に回収される。充填後に、チューブは、混合を確実にするために、充填直後に、約5~10回転倒撹拌される。次に、チューブは、溶血を避けるために室温にて直立位置で保存される。大抵の場合、血清チューブは、室温にて、遠心分離せずに、最長4時間保存される。研究室に到着した時点で、チューブは、遠心分離される、例えば、2000×gにて10分間遠心分離される。遠心分離に続いて、血球細胞の層は、チューブの底に見られ、そして、上記の流体は血清と呼ばれる。血清は、輸送又は分析までにあらゆる添加剤なしに、分離及び冷蔵保存されなければならない。
【0058】
イムノアッセイ系が、通常、所定の臨床用途の多くの解析技術より洗練した較正プロトコールを必要とすることを、発明者らは指摘する。斯かるアッセイで使用するキャリブレーターは、臨床標本の検体とは著しく異なっていてもよい。臨床標本のものと、キャリブレーター又は基準物質の特性の違いは、検体のためのキャリブレーターの種起源;分子種の保全;較正溶液のマトリックス、及び保存剤の添加、を含んでもよい。
【0059】
脳性ナトリウム利尿ペプチド(BNP)及びBNP前駆体(NT-プロBNP)のN末端フラグメントは、広く使用される心不全(HF)のバイオマーカーである。1988年のBNPの発見以来、多くの取り組みが、信頼できるHF診断のためにBNP及びNT-プロBNPレベルの正確な検出に割り当てられている。その結果、これらのバイオマーカーの測定は、急性及び慢性HFの診断、リスクの層化、及び治療に対する応答のモニタリングのために世界的に受け入れられ、そして、臨床診療に使用されている。BNP及びNT-プロBNPに特異的ないくつかの免疫学的アッセイが現在市販されている。
【0060】
複数の循環BNPフラグメントは、プロBNPやNT-プロBNPと共に、B型ナトリウム利尿ペプチドファミリーを集団的に形成する。BNPの免疫学的アッセイは、様々な抗体、モノクローナルとポリクローナルの両方、及び多様なキャリブレーター物質を利用する。そのため、異なる分析プラットフォームにおいて同一の抗体形状を使用したアッセイに関してでさえ、BNP法間の患者の検査値に実質的な差が存在する。
【0061】
従来の試験では、プロBNP及びNT-プロBNPが、臨床診療においてNPを定量化するのに使用される市販の免疫学的アッセイを妨げ得る、異なる程度までグリコシル化されることを実証した(例えば、Saenger et al., 2017)。これらの免疫学的アッセイがB型ナトリウム利尿ペプチドに対して、並びにそれらのグリコシル化及び非グリコシル化形態と共に、交差反応性を示す程度は、解明すべき重要な問題であるが、なぜなら、これが、患者ケアと密接な関係を有するアッセイの臨床成績に影響し得るからである。更に、現在、主に、使用した抗体の既知の差及び主要な基準的な標準物質の欠如による、BNP又はNT-プロBNPアッセイの標準化又は調和の維持に対するあらゆる正式な取り組みが存在していない。
【0062】
しかしながら、最近の比較研究では、異なるBNP及びNT-プロBNPアッセイ及びプラットフォームの間には顕著な相違があることが示され、そして、測定の結果は十分比較可能であるとはいえない。斯かる比較の一つが、実施例1(Collin-Chavagnac et al., 2015)に示されている。本発明者らは、この有意性と結果を実現し、そして、本明細書と請求項において概説した方法が、有利な解決策を提示する。
【0063】
アッセイ間の等価性のこの不足は、結果の解釈を複雑にしているので、結果として、診断決定に使用する基準範囲限度が、事実上、方法に依存している。結果として、治療法を評価する診断及び決定が変更され得るか、又は患者のサンプルを分析するのにどの方法が使用されたかによって恣意的になりさえもする。現在、どういった種類のBNP又はNT-プロBNP基準を較正に使用すべきかに関していずれの取り決めも出現していないため、認定された基準物質、並びに基準測定手順を欠いている。
【0064】
第一の態様によると、本開示は、サンプル中のヒトN末端プロホルモンBNP(NT-プロBNP)の濃度を測定する方法であって、以下:
-親和性精製方法を使用してサンプルからNT-プロBNPを抽出し、そして、単離し、
-前記単離したNT-プロBNPに、少なくとも1つの標識ペプチド標準を加え、
-前記単離したNT-プロBNPとペプチド標準とを酵素分解にかけ、そして、ペプチドの混合物を生じさせ、そして、
-液体クロマトグラフィー-質量分析法解析とその後の質量分析検出を使用して、得られた混合物中の少なくとも1つのペプチドを検出すること、ここで、検出されるべき前記少なくとも1つのペプチドが、NHLQG(K)(配列番号11)、EVATEGI(R)(配列番号12)、及びMVLYTL(R)(配列番号13)から選択される、
を含む、前記方法を利用可能にする。
【0065】
上記配列では、(K/R)はトリプシン切断部位を意味する。
【0066】
あらゆる上記実施形態との自由な組み合わせが可能である、ある実施形態によると、前記少なくとも1つの標識ペプチド標準は、完全長の遺伝子組み換えNT-プロBNPである。
【0067】
あらゆる上記実施形態との自由な組み合わせが可能である、ある実施形態によると、前記少なくとも1つのペプチド標準は、NHLQG(K)(配列番号11)、EVATEGI(R)(配列番号12)、及びMVLYTL(R)(配列番号13)から選択される。
【0068】
あらゆる上記実施形態との自由な組み合わせが可能である、特定の実施形態によると、前記少なくとも1つのペプチド標準は、EVATEGI(R)(配列番号12)であり、好ましくは重水素標識されたEVATEGI(R)(配列番号12)である。
【0069】
あらゆる上記実施形態との自由な組み合わせが可能である、別の実施形態によると、1つのペプチド標準が、サンプル中のNT-プロBNPの定量化を確認するために定量的に使用される一方で、別のペプチド標準は、それが実際にアッセイで検出及び定量化されるNT-プロBNPであることを確認するために定性的に使用される。
【0070】
あらゆる上記実施形態との自由な組み合わせが可能である、ある実施形態によると、前記親和性精製方法は、前記NT-プロBNPに対する少なくとも1つの抗体を担持する親和性ビーズを利用し、ここで、前記少なくとも1つの抗体は、NTプロBNP分子上の非グリコシル化エピトープに対して高親和性を示す。好ましくは、前記親和性ビーズは、磁気親和性ビーズである。前記少なくとも1つの抗体は、NTプロBNP分子上の非グリコシル化エピトープに対して高親和性を示すモノクローナル及びポリクローナル抗体から選択される。
【0071】
あらゆる上記実施形態との自由な組み合わせが可能である、ある実施形態によると、前記少なくとも1つの抗体は、配列番号2及び配列番号3から選択されるアミノ酸配列内のNT-プロBNP上の非グリコシル化エピトープに特異的に結合する。
【0072】
あらゆる上記実施形態との自由な組み合わせが可能である、第一の態様のある実施形態によると、前記酵素分解は、トリプシン処理である。好ましくは、前記トリプシン処理は、標識された標準及び天然NT-プロBNPをビーズと結合させる間に実施される。
【0073】
あらゆる上記実施形態との自由な組み合わせが可能である、ある実施形態によると、定量化は、酵素的に消化した遺伝子組み換えNT-プロBNPに対する較正に基づいて実施される。
【0074】
あらゆる上記実施形態との自由な組み合わせが可能である、ある実施形態によると、その方法は、関連濃度のトリプシン処理した標準NT-プロBNPを使用して較正され、そして、ここで、すべての標準が、内部標準を用いてスパイクされる。好ましくは、その内部標準は、標識された遺伝子組み換え完全長NT-プロBNPである。
【0075】
これまで、異なるアッセイを用いて得られた結果間の違いのため、NT-プロBNPの真の濃度を測定することが課題であった。先に概説したアプローチがいくつかの利点を有し、その1つが、グリコシル化の違いが結果に影響しないことである。別の利点は、本明細書に開示した方法が顕著に改善された感度を有することである。本発明者らはまた、その方法が、それが異なるオペレーター及び異なる装置によって実施された、様々な場面に対して堅牢であり、かつ、伝達性が高いことを立証した。従って、主張している方法は、新しいアッセイの開発のための、既存のアッセイの較正における、調査の重要なツールとして、及びそれ自体での診断アッセイとして、機能する。
【0076】
本開示の第三の態様は、心不全の診断とモニタリングに使用する方法に関し、ここで、前記方法は、第一の態様とその実施形態に概説したステップを含む。
【0077】
従って、主張している方法は、NT-プロBNPを定量化するための独立したアプローチを提供し、かつ、既存の方法を較正及び標準化する可能性を提示し、そしてそれは、標準物質の製造、品質保証、及び臨床検査室の監視において有用である。言い換えれば、本発明は、既存のアッセイをレベルアップするためのアプローチを提示する。
【0078】
更に、主張している方法は、顕著に改善された感度を示し、そして、NT-プロBNPなどの大量には存在しないタンパク質を検出及び正確に定量化することを可能にする。また、主張している方法は、異なる方法で得られた結果を再検討及び伝達することを可能にするデータを作り出すのにも使用でき、これにより、彼ら/彼女らの疾病の経過の中で、及び様々な医療サービス提供者と接し、様々な分析を受ける患者の途切れない病歴を作り上げる。
【0079】
とりわけ、本方法は、捉えることが困難なバイオマーカーを検出及び定量化する信頼性の高い方法を利用可能にする。
【0080】
具体的な利点は選別される特徴に関連して提示されており、そして、他の利点は、本発明を例示する以下の実施例の検討により当業者に明らかになる。
【実施例
【0081】
実施例1.既存のNT-プロBNPアッセイの従来技術比較
論説「Head-to-head comparison of 10 natriuretic peptide assays」において、Delphine Collin-Chavagnacらは、10種類の異なる免疫学的アッセイを使用して計測された心不全(HF)患者からの新鮮なサンプル中のNT-プロBNP及びBNPレベルに関する彼らの比較の結果を報告している。NT-プロBNP(CobasH232(登録商標)、Elecsys(登録商標)、Vidas(登録商標)、Vista(登録商標)、XPand(登録商標)、Vitros(登録商標))及びBNP(Triage(登録商標)、Access(登録商標)、CentaurXP(登録商標)、Architect(登録商標))レベルを、それぞれ39個のヘパリンサンプル及び19個のEDTAサンプルで計測した。
【0082】
ピアソン相関係数は、BNPアッセイに関して0.929(Triage(登録商標)-Centaur(登録商標))~0.994(Access(登録商標)-Architect(登録商標))、及びNT-プロBNPアッセイに関して0.972(Vidas(登録商標)-Cobas H232(登録商標))~0.999(Vitros(登録商標)-Vidas(登録商標))の範囲に及んだ。一般的なBablok回帰分析では、BNPアッセイに関して傾き[0.80(Centaur(登録商標)-Triage(登録商標))~1.84(Architect(登録商標)-Centaur(登録商標))]及び切片[-55ng/L(Architect(登録商標)-Centaur(登録商標))~48ng/L(Triage(登録商標)-Access(登録商標))]に有意差を示し、及びNT-プロBNPアッセイ間では低い不均一性を示した[それぞれ傾きと切片について0.83(Vidas(登録商標)-Elecsys(登録商標))~1.20(Vitros(登録商標)-Vidas(登録商標))と-97ng/L(XPand(登録商標)-CobasH232(登録商標))~51ng/L(CobasH232(登録商標)-Elecsys(登録商標))]。
【0083】
一致相関係数では、BNPアッセイの4/6組における低い(ρc<0.90)~中程度(ρc=0.90~0.95)の一致、及びNT-プロBNPアッセイの5/15組におけるほとんど完全(ρc>0.99)な一致を明らかにした。2つのアッセイ間の個々の一致しない結果数を反映する、許容される差の限度は、BNPアッセイに関して15.1%(Access(登録商標)-CentaurXP(登録商標))~34.5%(Triage(登録商標)-Architect(登録商標))、及びNT-プロBNPアッセイに関して10.9%(Vidas(登録商標)-Vitros(登録商標))~55%(CobasH232(登録商標)-Xpand(登録商標))の範囲に及んだ。
【0084】
Collin-Chavagnacらは、彼らの調査が新鮮なサンプル中のBNP及びNT-プロBNPレベルを計測するための異なる技術を使用して得られた結果の伝達性の欠如に重点を置いているとの結論を下し、更に、「個々の基準範囲とHF診断切り捨て値を、それぞれの市販のNP免疫学的アッセイについて評価する必要がある」と付け加えた。著者らは、HF患者を経時的に同じアッセイ(BNP又はNT-プロBNP)を使用して全身的に観察することが望ましいと推奨した(Collin-Chavagnac et al., 前掲)。
【0085】
実施例2.抗体の製造
抗体を、異なる免疫原に対する哺乳類宿主(ウサギ若しくはヤギ)又は鳥類宿主(メンドリ)のいずれかで製造し、そして以下の表2に示したように精製した。
【0086】
【表2】
【0087】
NT-プロBNP及びその変異体(例えば、遺伝子組み換え又は天然、切断又は非切断形態、グリコシル化及び非グリコシル化形態、並びにその組み合わせ)に対する抗体は、哺乳類宿主、例えば、ヤギ若しくはウサギ、又は好ましくは、その場合、抗体が卵黄から単離できる、メンドリのいずれかにおける、当業者に知られている方法に従って製造できる。「ペプチド1」及び「ペプチド2」と指定される2つのペプチドを、合成し(Genscript Biotech (Netherlands) B.V., Leiden, The Netherlands)、>90%のHPLC純度を有する白色の凍結乾燥粉末として送達し、そして、グリコシル化及び非グリコシル化形態で遺伝子組み換え完全長NT-プロBNPに加えて、免疫原として使用した:
HPLGSPGSAS DLETSGLQEQ RNHLQGKLSE LQVEQTSLEP LQESPRPTGV WKSREVATEG IRGHRKMVLY TLRAPR (完全長NT-プロBNP、配列番号1)
SAS DLETSGLQEQ RNHLQGKLSE LQV (配列番号2、ペプチド1、配列番号1のアミノ酸残基8~33)
IRGHRKMVLY TLRA (配列番号3、ペプチド2、配列番号1のアミノ酸残基61~74)
【0088】
短いペプチド、例えば、ペプチド1又はペプチド2など、に対する抗体を生じさせるとき、好ましくは、これらは、免疫原性を増強するために好適な担体に結合される。一例は、哺乳類宿主(ウサギ)の免疫化に使用されるキーホール・リンペット・ヘモシアニン(KLH)である。ポリクローナルウサギ抗体を生じさせるための免疫化及び抗体精製プロトコールは、当業者にとって周知であり、そして、例えば、CBG, Max Planck Institute of Molecular Cell Biology and Geneticsから入手可能である。一般手法はまた、Antibodies: A Laboratory Manual, Edward A. Greenfield (Ed.), Cold Spring Harbor Laboratory, Cold Spring Harbor, N.Y., 2012でも開示される。
【0089】
鳥類免疫グロブリン画分、例えば、このアッセイで使用されるものなど、は、表2に示したとおり、天然又は遺伝子組み換えNT-プロBNP又はその変異体で免疫される、免疫したメンドリからの卵から精製される。抗原及び好適なアジュバント、例えば、完全フロイントアジュバントを、メンドリの乳房組織中に皮下及び/又は筋肉内に注射する。免疫化を、一定の区間、例えば、10日目、20日目及び30日目、にて反復する。抗体は、通常、30日目までに卵中に検出される。
【0090】
卵を回収し、卵黄を卵白から分離し、そして、免疫グロブリン画分を卵黄から分離する。最初のステップとして、脂質及びリポタンパク質を、当業者に知られている適切な方法、例えば、PEG又はデキストランスルファートを使用した沈殿、有機溶媒を使用した可溶化、又は限外濾過を使用して、取り除く。次に、得られた実質的に脂質を含まない溶液を、抗原に対するポリクローナル抗体を含む所望の免疫グロブリン画分を得るために、濃縮及び精製できる。
【0091】
ウサギの免疫を、GenScript Biotech Corp., Piscataway, NJ, USAによって、及びNorwegian Antibodies AS, NABAS, Ås, Norwayによってメンドリの免疫化を実施した。すべての抗体を、Getica AB, Gothenburg, Swedenによって精製される。
【0092】
ヤギIgGを、配列番号2及び配列番号3に従ってペプチドでヤギを免疫し、必要な変更を加えて、同じ方法に従って、InnovaGen AB, Lund, Swedenによって製造した。免疫グロブリンの濃縮及び/又は精製のための方法もまた、当業者にとって周知であり、そして、例えば、PEG若しくは硫酸ナトリウムを使用した沈殿ステップ、又は限外濾過若しくは液体クロマトグラフィーなどの他の周知の方法を含む。より多くのガイダンスに関しては、例えば、Antibodies: A Laboratory Manual, Edward A. Greenfield (Ed.), Cold Spring Harbor Laboratory, Cold Spring Harbor, N.Y., 2012を参照のこと。
【0093】
配列番号2及び配列番号3のペプチドに対するポリクローナル抗体はまた、高親和性(以下の実施例2を参照のこと)及び高特異性を達成し、グリコシル化領域への結合を回避し、そしてそれは、比濁又は比朧環境でもまた高感度での真のNT-プロBNP濃度の計測を可能にする。
【0094】
実施例3.Biacore(商標)親和性分析
本明細書中に開示した実験のための抗体製造における品質保証の一部として、親和性分析を各バッチに関して日常的に実施した。その抗原の抗体の親和性を、Biacore(商標)法と称されることが多い方法で表面プラズモン共鳴法(SPR)によって測定する。SPRは、電気伝導フィルムでコートした、異なる屈折指数の2種類の培地間の表面における平面偏光の全内反射状態下で起こる。サンプルが表面に結合するとき、屈折率は増大し、そして、共鳴角度が変化する。角度を、SPRシグナルとして連続的に観察し、そして、センサーグラムと呼ばれる、時間に対するシグナルのプロットは、サンプルが結合し、そして、表面から解離するとき、屈折指数の変化を示す。
【0095】
分析を、GE Sensor Chip CM5を使用したBiacore X100システムを使用して実施した (すべてGE Healthcare製)。チップには、それにカルボキシル基を有するデキストランマトリックスを有する金表面がある。抗原に対する抗体の親和性を測定するために、チップの表面は活性化され、そして、抗原を共有結合にて表面に結合させる。このプロセスは不可逆的であり、そのため、そのチップは、追加の抗原を必要とすることなく何度か再使用できる。
【0096】
反応速度定数を測定するために、標的抗体を、最初に、PBSに対して透析し、次に、30ナノモル(nM)にHBSで希釈した。希釈系列を、それぞれの標的抗体のために調製した(30nM‐10nM‐3.3nM‐1.1nM及び0.37nM)。濃度を280nmでの吸光分光法によって確認した。
【0097】
抗体を、Biacore X100 Control Softwareを使用して、Biacore X100システムにより分析し、そのシステムで実行したとき、それに、連続的に(最も希釈したものから始まる)逆順で抗体希釈系列を注入し、そして最終ステップとして、表面を、グリシン(pH1.5)を用いて再生した。反応速度定数を、1:1反応速度モデルに基づくBiacore X100 Evaluation Softwareを使用して、センサーグラムから抽出した。Biacore(商標)分析の典型的な結果を以下の表3にまとめる:
【0098】
【表3】
【0099】
結果は、免疫プロトコール及び精製がNT-プロBNPに特異的に結合し、かつ、2.0E-09M未満の遺伝子組み換えNT-プロBNPに対するKを示す抗体を一貫して生じさせたことを示した。
【0100】
臨床化学分析装置(MindrayBS-400)により実施したとき、親和定数を、スパン応答及びアッセイの感度に対してプロットした。これは、スパン、感度及び解離定数との間に明確な相関関係を示した。
【0101】
同じペプチドに対して精製した、ヤギ抗血清由来の配列番号2のペプチドに対するIgG抗体を、配列番号2のペプチドを用いたBiacore(商標)チップに対して試験した。平衡解離定数をK=2.64E-09Mと決定した。
【0102】
同じペプチドに対して精製した、ヤギ抗血清由来の配列番号3のペプチドに対するIgG抗体を、配列番号3のペプチドを用いたBiacore(商標)チップに対して試験した。平衡解離定数をK=9.72E-09Mと決定した。
【0103】
同様に、ウサギ抗血清由来の配列番号3のペプチドに対するIgG抗体を、配列番号3のペプチドを用いたBiacore(商標)チップに対して試験した。平衡解離定数をK=6.54E-09及び5.23E-09Mと決定した。
【0104】
実施例4.エピトープマッピング
エピトープマッピングを、直鎖に関するライブラリーを使用した、Pepscan Presto BV, Lelystad, The Netherlandsによって実施し、そして、ヒドロゲルでコートした固体支持体上に合成したペプチドアレイを環状にした。マッピング技術は、1984年に最初に公開された(Geysen et al., Use of peptide synthesis to probe viral antigens for epitopes to a resolution of a single amino acid, PNAS, July 1, 1984 81 (13) 3998-4002、参照によって援用した)。ニワトリ及びウサギ抗体は、Gentian ASによって提供され、そして、マッピングは、NT-プロBNP配列の26残基の長いセグメント、第8~33位、配列SASDLETSGLQEQRNHLQGKLSELQV(配列番号2と同一)に注目した。
【0105】
ペプチドの合成:標的分子のエピトープを再構成するために、ペプチドベースのペプチド模倣体に関するライブラリーを、Fmocベースの固相ペプチド合成を使用して合成した。アミノ官能化ポリプロピレン支持体を、専用の親水性ポリマー配合物を用いてグラフトし、その後、N-ヒドロキシベンゾトリアゾール(HOBt)と共にジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC)を使用してt-ブチルオキシカルボニル-ヘキサメチレンジアミン(BocHMDA)と反応させ、続いて、トリフルオロ酢酸(TFA)を使用したBoc基の切断によって得た。標準的なFmoc-ペプチド合成を、特注の修飾JANUS液操作ステーションによって補助したアミノ官能化固体支持体上でのペプチドの合成に使用した(Timmerman et al., (2007) Functional reconstruction and synthetic mimicry of a conformational epitope using CLIPS(商標) technology, J. Mol. Recognit. 20:283-299; and Langedijk et al. (2011) Helical peptide arrays for lead identification and interaction site mapping, Analytical Biochemistry 417:149-155、参照により援用する)。
【0106】
第一のセットでは、標的配列(配列番号2)由来の5~24の範囲に及ぶ長さの線状ペプチドを、1残基のオフセットを用いて合成した。第二のセットでは、長さ7~27の制約ペプチドを、1残基のオフセットを2つのCys残基の間に配置したNTプロBNPの標的配列由来の長さ5~25残基の線状ペプチドから開始して合成した。ループ類似体を作製するために、Cys残基をmP2 CLIPSによって連結した。
【0107】
それぞれの合成ペプチドへの抗体の結合をELISAで試験した。ペプチドアレイを、一次抗体溶液と共に4℃にて一晩インキュベートした。洗浄後に、ペプチドアレイを、適切な抗体ペルオキシダーゼ複合体の1/1000希釈物と共に、25℃にて1時間インキュベートした。洗浄後に、ペルオキシダーゼ基質2,2’-アジノ-ジ-3-エチルベンズチアゾリンスルホナート(ABTS)と20μl/mlの3% H2O2を加えた。1時間後に、発色現像を計測した。発色現像を、電荷結合素子(CCD)-カメラ及び画像処理システムを用いて定量化した。
【0108】
この試験で同定した主要なエピトープ候補を、以下の表に示す:
【0109】
【表4】
【0110】
エピトープマッピングでは、抗体がNT-プロBNP分子の正しい部分に結合することを確認した。
【0111】
実施例5.磁気親和性ビーズの調製
表面エポキシ基を含有する直径2.8μmの超常磁性ビーズをこの実施例向けに選択した。10mgのDynabeads(商標)M-270 Epoxyを、チューブの中に計り取った。500μLの蒸留水は加えた。混合物を、30秒間ボルテックス処理し、そして、超音波処理プローブで20秒間超音波処理した。磁気ラックにチューブを置くことによって、上清を取り除いた。これをもう一度繰り返した。
【0112】
ヤギ抗NT-プロBNP抗体とウサギ抗NT-プロBNP抗体(実施例2に示したとおり製造)を、別々にDynabeads(登録商標)上にコートした。同じコーティング処理手順を、両方のバッチに使用した。抗体は、コーティング前に、0.1Mリン酸ナトリウムバッファー、pH7.4にバッファー交換した。合計250μLの、0.1Mのリン酸ナトリウムバッファー、pH7.4中の100μgの抗体をビーズと反応させた。ビーズを、5秒間ボルテックス処理し、その後、250μLの、0.1M リン酸ナトリウムバッファーpH7.4中の3M 硫酸アンモニウム[(NH)SO]を加えた。混合物を、5秒間ボルテックス処理し、そして、混合しながら37℃にて一晩インキュベートした。
【0113】
粒子混合物をローラーミキサーで室温にて3時間混合し、その後、上清を取り除き、そして、ビーズを500μLの100mMのグリシンpH11.3バッファー中で洗浄し、5秒間ボルテックス処理し、磁石上で分離し(1分間)、そして、上清を取り除いた。次に、ビーズを、500μLの200mM Glycine pH2.8中で洗浄し、そして、同じ手順を続けた。次に、500μLのHCl-15mM Trisバッファー、140mMのNaCl pH7.6をビーズに加え、そして、そのビーズをローラーミキサー上に15分間乗せ、磁石上で分離し(1分間)、そして、上清を取り除いた。最後に、500μLの15mM Tris-HClバッファー、140mMのNaCl pH7.6をビーズに加え、そのビーズを、ミキサーに乗せて、37℃にて一晩インキュベートした。次の朝に、ビーズをローラーミキサー上に8時間乗せ、磁石上で分離し(1分間)、そして、上清を取り除いた。Dynabeads(登録商標)を、10mg/mLの終濃度まで、15mMのTris-HClバッファー、140mMのNaCl pH7.6中に懸濁した。
【0114】
実施例6.標準物の調製
キャリブレーターマトリックスは、ヒト又は動物血清又は血漿材料由来の血清又は血漿材料、或いは既知量の抗原を含む緩衝液によって構成され得、そして該抗原は、任意選択で担体タンパク質に結合させた、ペプチド1(配列番号2)、ペプチド2(配列番号3)などのヒト、遺伝子組み換え、又は合成NT-プロBNP又はその断片であり得る。キャリブレーター材料は、塩溶液、例えば、PEG-6000(又は他のPEG材料)や保存料などの可溶性重合体を更に含み得る。
【0115】
キャリブレーターの組成物は、アッセイ方法が本明細書に記載した標準法を使用して得られた値に対応する結果を作り出すまで調整され得、ここで、キャリブレーターの濃度は、NT-プロBNP分子上の非グリコシル化エピトープに特異的に結合する抗体を使用した免疫学的アッセイベースの方法によって付与される。
【0116】
キャリブレーター物質の濃度付与は、従来技術、例えば、Blirup-Jensen, S. et al., Protein Standardization IV: Value Transfer Procedure for the Assignment of Serum Protein Values from a Reference Preparation to a Target Material, Clin Chem Lab Med 2001; 39(11): 1110-1122において十分に説明されている。
【0117】
遺伝子組み換えNTプロBNP(8NT2、HyTest)を、溶液中でトリプシン処理した;25μlの、100mMの重炭酸アンモニウム中のNTプロBNP標準を、2.5μlの200mMのジチオスレイトール(DTT)を用いて還元した、25μlのTrifluoroetanol(TFE)を用いて90℃にて20分間変性させ;そして、10μlの200mM ヨードアセトアミド(IAA)を用いて暗所内、室温にて1時間アルキル化した。その後、2.5μlの200mM DTTを加えて、余分なIAAを取り除き、次に、その混合物を暗所内、室温にて1時間静置した。
【0118】
TFE濃縮物を、25mMの重炭酸アンモニウムで6倍に希釈した。トリプシン(シークエンシンググレード、Promega)を重炭酸アンモニウムで希釈し、そして、1:35のタンパク質対酵素比にて加えた。消化を37℃にて一晩実施し、2μlのギ酸の添加によって止め、その後、得られたペプチドを、C18 SEPカラムにより脱塩した。
【0119】
同位体標識(重水素標識)ペプチド標準を、発明者らからの指示に従ってThermoFisherに注文した。重ペプチドNHLQG(K)(配列番号11)は標識リジン(+8Da)を含有し、重ペプチドEVATEGI(R)(配列番号12)は標識アルギニン(+10Da)を含有し、及び重ペプチドMVLYTL(R)(配列番号13)は標識アルギニン(+10Da)を含有した。或いは、Promise Proteomics, Grenoble Cedex, France製の重標識(15N)完全長NTプロBNPを、較正及びサンプル対照に使用した。
【0120】
脱塩ペプチド及び標識ペプチド標準を、真空遠心分離によって乾燥状態まで乾燥させ、そして、冷凍保存した。
【0121】
血漿又は血清サンプルは、複数の生物活性成分を含有する、非常に複雑な環境であり、そして更に、図1で見ることができるように、BNPは多くの分子形態を有する。3つの特定のペプチド標準の同定は、定量化の主な標準として1つを使用すること、及び実際にそれが検出及び定量化されるNT-プロBNPである、第二の質的確認のために1又は2つを使用することを可能にする。
【0122】
実施例7.NT-プロBNPの親和性捕獲及びその後の酵素分解によるサンプル調製
サンプル調製を、先に実施例4で記載したとおり調製した、磁気親和性ビーズ(Dynabeads(登録商標))を使用した血漿/血清サンプルからのNT-プロBNPの親和性精製によって実施した。ビーズを、使用前にPBSで洗浄した。ウサギ抗体及びヤギ抗体を担持するビーズの両方を(別々に)使用した。
【0123】
血漿サンプルを次のようにして加工した;血漿(0.5ml)を、25μlのDynabeads(登録商標)と混合し、ミキサー上に乗せ、そして、4℃にて一晩インキュベートした。インキュベーションに続いて、ビーズを、磁気ラックに乗せ、そして、上清を取り除いた。その後、ビーズを、PBS(V=1ml×2)で洗浄し、その後、1mlの50mM 重炭酸アンモニウムで洗浄した。
【0124】
トリプシン処理を、いくつかの変更点;親和性ビーズ(炭酸アンモニウム中のビーズ100μl)に結合させたNT-プロBNPを、5μlの200mM ジチオスレイトール(DTT)を用いて60℃、800rpmにて15分間還元し;及び15μlの200mM ヨードアセトアミド(IAA)を用いて暗所内、室温にて15分間アルキル化した、を伴った、先に記載したプロトコール[Levernas et al., To elute or not to elute in immunocapture bottom-up LC-MS, J Chromatogr B Analyt Technol Biomed Life Sci. 2017;1055-1056:51-60]に従って、100μlの50mM重炭酸アンモニウム中のビーズ上で実施した。その後、5μlの200mM DTTを添加して、余分なIAAを取り除いた。トリプシン(シークエンシンググレード、Promega)を重炭酸アンモニウムで希釈し、そして、過剰量で、すべてのタンパク質が分解されるのを保証する比にて加えた。
【0125】
消化を、37℃にて一晩実施した。磁気ビーズの入ったチューブを、磁気ラックに置き、そして、トリプシン分解ペプチド溶液を、新しいチューブに移し、5000rpmにて2分間遠心分離して、すべての残った微量粒子を沈殿させた。トリプシン分解ペプチド溶液を、新しいチューブに移し、そして、2μlのギ酸を加えた。得られたペプチドを、C18 SEPカラムにより脱塩した。
【0126】
実施例8.ペプチドの浄化
次に、実施例6に示したとおり調製した(標準サンプルと親和性サンプルの両方から)得られたペプチドを、C18スピンカラム(C 18 Spin Columns (Pierce, Rockford, USA))で脱塩した。次に、C18スピンカラムを、2×200μLの50% ACNで洗浄し、そして、使用前に2×200μLの、5% ACN中の0.5% TFAで状態を整えた。サンプル<30μgの総タンパク質)をスピンカラムに加えた後に、それらを2×200μLの0.5% TFA中の5% ACNで洗浄して脱塩した。ペプチドを、二分割した、0.1% FAを伴った20μLの70% ACNで溶出した。溶出液を、真空遠心分離によって乾燥状態まで乾燥させ、そして、再構成及び分析まで冷凍保存した。
【0127】
或いは、標準及びサンプルの両方からのペプチドを、C18 Bond Elut LRC-C18 SEPカラム(Agilent Technologies Inc., USA)により脱塩した。カラムを、2mlの50% ACNで洗浄し、使用前に2mlの、0.5% TFAを伴った5% ACNで状態を整えた。サンプル(400μlのトリプシン処理したペプチドと0.8mlのHO)をスピンカラムに加えた後に、それらを1mlの、0.5%のTFAを伴った5% ACNで洗浄して脱塩し、そして、3~5分間乾燥させた。ペプチドを、四分割した0.5mlの又はに分割した0.7mlの、0.1% FAを伴った70% ACNで溶出した。溶出液を、真空遠心分離によって乾燥状態まで乾燥させ、そして、再構成及び分析まで冷凍保存した。
【0128】
実施例9.LC-MS/MSアッセイの実施
免疫捕獲ボトムアップ液体クロマトグラフィー質量分析法の総説に関しては、例えば、Pitt, James J., Principles and Applications of Liquid Chromatography Mass Spectrometry in Clinical Biochemistry, Clin Biochem rev, 2009 Feb ; 30(1): 19-34、及びStillesby Levernaes et al., To elute or not elute in immunocapture bottom-up LC MS, Journal of Chromatography B, Volumes 1055-1056, 15 June 2017, Pages 51-60を参照されたく、その内容を参照により本明細書に援用する。
【0129】
この解析法は、次の3つのペプチド:NHLQG(K)(配列番号11)、EVATEGI(R)(配列番号12)、及びMVLYTL(R)(配列番号13)、を包含した
【0130】
対応する重ペプチドを定量化に使用した。酸化型ペプチドのシグナルもまた、その方法で観察した。
【0131】
LC-MS/MS分析用の20個のサンプルを、重ペプチドを添加した25μlの20% ACNで再構成した。重ペプチドを、EVATEGIR/MVLYTR(配列番号5及び6)では0.005pmol/μl、及びNHLQGK(配列番号4)では0.05pmol/μlの濃度まで加えた。
【0132】
15N完全長NT-プロBNPを使用するとき、ビーズでの親和性精製前に、標準を血漿に加え、そして、サンプルと一緒にトリプシン処理した。
【0133】
LC-MS分析を、Agilent 1200 Series LC/MSシステム(Agilent Technologies Inc., Palo Alto, CA, USA)により実施した。そのシステムは、G4220Aバイナリポンプ、G4226Aオートサンプラ、G1316Cカラムサーモスタット、及びG6490三連四重極質量分析計を含んだ。
【0134】
LC-MS分析を、Ascentis Express Phenyl Hexyl(2.1×150mm、2.1μm)、並びに溶出液Aとして25mMのギ酸及び溶出液Bとしてアセトニトリルを使用した勾配溶出を利用した逆相モードで実施した。勾配を、1.8分間の1% 溶出液Bにて開始し、その後、Bのパーセンテージを3.7分間かけて65%まで高め、1分間にわたり65%で一定に維持し、そしてその後、システム平衡化のために開始状態に戻した。流量は0.3ml/分であり、及びカラム温度は20℃にて維持した。すべての分析を、陽性モードのエレクトロスプレーイオン化(ESI)を用いて実施した。質量分析検出を、多重反応モニタリング(MRM)モードで実施した。使用したMRMの設定については表5を参照のこと。
【0135】
【表5】
【0136】
略語:CE=衝突エネルギー、セルacc=セル加速電圧、機器の設定:Fragmentor 380 V。ガス温度(℃):150、ガス流量(l/分):20、ネブライザ(psi):50、シースガス温度(℃):300、シースガス流量(l/分):11、キャピラリ(V):3500、ノズル電圧/電荷(V):0。
【0137】
*酸化ペプチド。サンプル検査中の酸化を評価するために観察した。利用可能な特定の標準はなかった。
【0138】
3つのトリプシン分解ペプチド、NHLQG(K)、EVATEGI(R)及びMVLYTL(R)(それぞれ配列番号11、12及び13)を、内部標準N15標識NT-プロBNPを起源とする対応する重ペプチド(重-N標識)と併せて観察した。ペプチドMVLYTL(R)に関して、そのペプチドの酸化バリアント及び重標識ペプチドの対応する酸化バージョンのMRM遷移もまたその方法で観察した。複数の遷移を、最も多く定量化に使用されている各ペプチドについて観察し、及び追加の遷移を、定性のために使用した。0.1~1000ng/mlのNT-pro-BNPのトリプシン処理標準を較正に使用した。
データ分析と定量化
【0139】
データ分析を、Agilent MassHunter Qualitative and Quantitative分析ソフトウェアを使用して実施した。定量化は、0-4-8-16-24-32ng/mlにて血漿中にスパイクしたトリプシン処理した標準NT-プロBNPに対する較正に基づいた。サンプル定量化もまた、標準添加の結果に基づいて実施した。すべての標準及びサンプルを、24ng/mlの内部標準(15N-標識NTプロBNP)でスパイクした。3つのペプチド(NHLQG(K)、EVATEGI(R)及びMVLYTL(R))を観察した。重ペプチド(15N-標識NTプロBNPからの15N-標識)を内部標準として使用した。ペプチドEVATEGI(R)及びMVLYTL(R)は、最良の応答を有することが示された。それらは、1及び0.5ng/mlのNT-ProBNPに対応するLOD/LOQ、並びに500ng/mlに対する線形応答を示した。定量化をEVATEGI(R)ペプチド(配列番号12)に基づいておこなった。複数の遷移を、最も多く定量化に使用されている各ペプチドについて観察し、及び追加の遷移を、定性、すなわち、正しい/選択した(かつ、同じm/zを有する関係しないペプチドではない)ペプチドが計測される検定、のために使用した。ここで、ペプチドNHLQG(K)(配列番号11)は、定性に使用しただけである。
【0140】
20個のサンプルプールの評価からの結果を、従来技術の方法で得られた結果を、本願で開示した方法で得られた結果と比較した、以下の表6に示す。最後の列には、結果間の比を示し、そして、本願に開示したものが一貫してより高い測定値をもたらし、かつ、その差は、より低いNT-プロBNP濃度にてより顕著であることを示している。
【0141】
【表6】
【0142】
臨床的に関連する範囲である、従来技術の分析(Roche Elecsys(登録商標)NT-プロBNPアッセイ)で測定される100~2000ng/L、の範囲内では、結果は、図3に示したように、線形相関(R=0.9689)を示す。グラフは、市販のアッセイが、言及した濃度において、NT-プロBNPの濃度を一貫して過小評価し、かつ、比較では、線形相関(R=0.9689)を示す、ことを示している。
【0143】
20個のサンプルすべてに関して、従来技術の分析によって測定された100~14000ng/Lの区間において、相関関係はまだ、非常に良好である(R=0.9622)。
【0144】
3つのサンプルに関して、方法の安定性を、連続した2日間に同じサンプルの分析をおこなうことによって試験した。結果を、表7に示す:
【0145】
【表7】
【0146】
結果から分かるように、方法は、臨床的に関連する範囲内で再現性が高く、かつ、安定していた。
【0147】
優先年度の間、より幅広い濃度領域(0~25000ng/L)に及ぶより多くのサンプルを調査し、そして、特許権を請求する方法と、製造業者の取扱説明書に従って実施した市販のアッセイ(Roche Elecsys(登録商標)NT-プロBNPアッセイ)を用いて得られた結果を比較した。結果を図4に示す。このグラフは、図3に示した結果を裏付けているが、市販のアッセイと本明細書で提供した方法との間の濃度測定がより高濃度において収束することもまた明らかにする。両方法は、幅広い濃度領域にわたって良好な(多項)一致を示す(R=0.9491)。
【0148】
実施例10.血漿サンプルと血清サンプルとの比較分析
本発明の方法の有用性を調査するために、血漿サンプルと血清サンプルの両方を、一方ではSiemens ADVIA Centaur(登録商標)Immunoassay System(血漿サンプル向け)、及びもう一方ではSiemens IMMULITE Immunoassay System(血清サンプル向け)を使用して分析した。両アッセイを、製造業者の取扱説明書に従って実施した。結果を、本明細書で特許権を請求するLC-MS/MS法を使用して測定した濃度と比較した。
【0149】
図5は、Siemens ADVIAアッセイが低濃度領域のNT-プロBNPの濃度を過小評価したが、特許権を請求する方法を使用して測定した濃度との比較では、線形相関を示す(R=0.9964)ことを示している。
【0150】
図6は、別の市販の方法、Siemens IMMULITEを使用した血清サンプルの結果を示している。グラフは、図5に示した結果を裏付けて、市販のアッセイによる低濃度領域におけるNT-プロBNP濃度の過小評価を同様に示しているが、異なるサンプルタイプに関する高濃度における、市販の方法と本明細書に示した方法との間の結果の修飾も示している。両方法は、幅広い濃度領域にわたって良好な(多項)一致を示す(R=0.9751)。
【0151】
実施例11.方法の堅牢性の実証
本明細書に開示した方法を、本明細書で「1」及び「2」と表示する地理的に異なる地域において段取りし、そして、各地域における2人のオペレーターを訓練して、分析を実施させた。第一の地域では、計測を、衝突誘起解離のためのセルとして機能するようにそれらの間に(質量分解しない)高周波のみの四重極を備えた、2つ直列した四重極質量分析器から成る液体クロマトグラフィー-エレクトロスプレーイオン化タンデム質量分析計であるLC-ESI-Triple Quadrupole装置(Agilent, USA)を使用しておこなった。第二の地域では、ナノLC-ESI-Orbitrap装置(Thermo Fisher Scientific, USA)を使用した。
【0152】
最初の比較では、異なる濃度(Roche法を使用して測定)を有する4つの血漿サンプルを、両方の地域で計測し、そして、その計測を、各地域において2人のオペレーターによって独立しておこなった。オペレーターをA、B、C及びDと表した。結果を表8に示す。
【0153】
【表8】
【0154】
全体的に見て、結果は、本明細書に開示したアッセイが、堅牢であり、安定していて、かつ、サンプル中のNT-プロBNPの総量を検出できること、すなわち、該方法が、そのグリコシル化の程度にかかわらずNT-プロBNPを検出することを示している。
【0155】
発明者らは、ともにキャリブレーターサンプル及び試験又は患者サンプル中のNT-プロBNP濃度を検出するための、NT-プロBNPの非グリコシル化エピトープに特異的に結合する抗体の使用を伴った、異なる免疫学的アッセイベースの標準法を使用したNT-プロBNPの分離と定量化に基づいて、著しく高い濃度のNT-プロBNPが試験又は患者サンプルにおいて検出されることを、ここで示した。これは、グリコシル化の程度や他の不定要因にかかわらずNT-プロBNPの「真」の濃度になるように保持される。従って、より信頼性が高く、かつ、グリコシル化に影響されないアッセイ原理を開発し、そして、その有用性と堅牢性を確認した。
【0156】
本明細書に開示した方法は、既存のアッセイを較正又は認証(validate)するのに使用できるか、又は臨床化学において独立型の方法として使用される。これは、心不全、特に鬱血性心不全に関する信頼性が高く、かつ、正確な診断を可能にする。更に、このアプローチが比濁分析や混濁分析に適切であることが示された場合、これは、心不全の又は心不全に関する高いリスクの診断、心不全を患っている又は心不全に関する高いリスクを有する対象のモニタリング、或いは心不全の重症度の評価のための、心不全を患っていることが疑われた前記対象の体液のサンプル中のNT-プロBNPの濃度を測定することによる、自動化された、費用対効果が高く、なおかつ、信頼性が高い方法の可能性を開く。
【0157】
更なる詳細化なしに、当業者は、実施例を含めた本説明を使用して、その最大限の範囲まで本発明を利用すると考えられる。また、本発明は、その好ましい実施形態に関して説明されたが、それは、本明細書に添付した請求項に規定したベストモードを構成する。
【0158】
よって、種々の態様及び実施形態を本明細書中に開示したが、その一方で、他の態様及び実施形態は当業者に明らかであろう。本明細書に開示した種々の態様及び実施形態は、以下の請求項によって示される真の範囲及び要旨の、例示を目的とするものであって、制限することを意図していない。
【0159】
参照文献
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図1
図2
図3
図4
図5
図6
【配列表】
2024538607000001.xml
【手続補正書】
【提出日】2023-06-30
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
サンプル中のヒトN末端プロホルモンBNP(NT-プロBNP)の濃度を測定する方法であって、以下:
-親和性精製方法を使用して前記サンプルからNT-プロBNPを抽出し、そして、単離すること、ここで、前記親和性精製方法が、前記NT-プロBNPに対する少なくとも1つの抗体を担持する親和性ビーズを利用し、かつ、前記少なくとも1つの抗体が、NTプロBNP分子上の非グリコシル化エピトープに対して高親和性を示す、
-前記単離したNT-プロBNPに、少なくとも1つの標識ペプチド標準を加えること、
-前記単離したNT-プロBNPとペプチド標準とを酵素分解にかけ、そして、ペプチドの混合物を生じさせること、ここで、前記酵素分解が、トリプシン処理であり、かつ前記トリプシン処理が、標識された標準及び天然NT-プロBNPを前記親和性ビーズと結合させる間に実施される、そして、
-液体クロマトグラフィー-質量分析法解析とその後の質量分析検出を使用して、得られた混合物中の少なくとも1つのペプチドを検出すること、ここで、検出されるべき前記少なくとも1つのペプチドが、NHLQG(K)(配列番号11)、EVATEGI(R)(配列番号12)、及びMVLYTL(R)(配列番号13)から選択される、
を含むことを特徴とする、方法。
【請求項2】
前記少なくとも1つの標識ペプチド標準が、完全長の遺伝子組み換えNT-プロBNPである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記少なくとも1つのペプチド標準が、以下:
HLQG(K)(配列番号11)、
EVATEGI(R)(配列番号12)、及び
MVLYTL(R)(配列番号13)、
から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記少なくとも1つのペプチド標準が、EVATEGI(R)(配列番号12)である、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記少なくとも1つのペプチド標準が、重水素標識されたEVATEGI(R)(配列番号12)である、請求項3に記載の方法。
【請求項6】
前記親和性ビーズが、磁気親和性ビーズである、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記少なくとも1つの抗体が、配列番号2及び配列番号3から選択されるアミノ酸配列内のNT-プロBNP上の非グリコシル化エピトープに特異的に結合する、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
定量化が、酵素的に消化した遺伝子組み換えNT-プロBNPに対する較正に基づいて実施される、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記方法が、関連濃度のトリプシン処理した標準NT-プロBNPを使用して較正され、かつ、すべての標準が、内部標準を用いてスパイクされる、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記内部標準が、標識された遺伝子組み換え完全長NT-プロBNPである、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
較正物質に対する値の付与、試験、及び/又はサンプル中のヒトN末端プロホルモンBNP(NT-プロBNP)の濃度を測定するアッセイの品質管理において使用する、請求項1~10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
心不全の診断及びモニタリングにおいて使用する、請求項1~10のいずれか一項に記載の方法。
【国際調査報告】