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特表2024-538620抗SARS-COV-2抗体の二重イムノアッセイのための組成物、キット、および方法
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  • 特表-抗SARS-COV-2抗体の二重イムノアッセイのための組成物、キット、および方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-10-23
(54)【発明の名称】抗SARS-COV-2抗体の二重イムノアッセイのための組成物、キット、および方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 33/53 20060101AFI20241016BHJP
   G01N 33/536 20060101ALI20241016BHJP
   G01N 33/532 20060101ALI20241016BHJP
   G01N 21/78 20060101ALI20241016BHJP
   G01N 21/64 20060101ALI20241016BHJP
【FI】
G01N33/53 N
G01N33/536 E
G01N33/536 D
G01N33/532 B
G01N21/78 C
G01N21/64 F
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024519553
(86)(22)【出願日】2022-08-25
(85)【翻訳文提出日】2024-05-09
(86)【国際出願番号】 US2022075436
(87)【国際公開番号】W WO2023056143
(87)【国際公開日】2023-04-06
(31)【優先権主張番号】63/261,854
(32)【優先日】2021-09-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】508147326
【氏名又は名称】シーメンス・ヘルスケア・ダイアグノスティックス・インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100127926
【弁理士】
【氏名又は名称】結田 純次
(74)【代理人】
【識別番号】100216105
【弁理士】
【氏名又は名称】守安 智
(72)【発明者】
【氏名】ティエ・ウェイ
【テーマコード(参考)】
2G043
【Fターム(参考)】
2G043AA01
2G043BA16
2G043CA04
2G043DA02
2G043EA01
2G043KA02
2G043KA05
2G043LA02
(57)【要約】
サンプル中の抗SARS-CoV-2抗体の存在および/または濃度を検出するための、多重化化学発光検出システムを含むキット、マイクロ流体デバイスおよび方法が開示される。キット、マイクロ流体デバイス、および方法は、異なる波長で発光する2つまたはそれ以上の蛍光分子と組み合わせて、一重項酸素により活性化可能な化学発光化合物を利用する。ある特定の非限定的な実施形態では、キット、マイクロ流体デバイス、および方法は、ワクチン接種に応答して生成された抗SARS-CoV-2抗体と、感染に応答して生成された抗SARS-CoV-2抗体とを区別することができる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
サンプル中の複数の抗SARS-CoV-2抗体の存在および/または濃度を決定するための化学発光検出システムを利用する多重アッセイを実行するためのキットであって:該キットは、
(a)化学発光化合物に直接的または間接的に結合している第1の標的抗原を有する一重項酸素により活性化可能な化学発光化合物と;
活性化された化学発光化合物によって励起される蛍光分子と
を含む組成物と;
(b)化学発光化合物に直接的または間接的に結合している第2の標的抗原を有する一重項酸素により活性化可能な化学発光化合物と;
活性化された化学発光化合物によって励起される蛍光分子であって、(a)の蛍光分子とは異なり、(a)の蛍光分子とは異なる波長で発光する、蛍光分子と
を含む組成物と;
(c)ビオチン化した第1の標的抗原と;
(d)ビオチン化した第2の標的抗原と;
(e)一重項酸素をその励起状態において生成することができる増感剤を含み、増感剤に直接的または間接的に結合しているビオチン特異的結合パートナーを有する組成物と
を含み、
第1の標的抗原は、SARS-CoV-2スパイクタンパク質の少なくとも一部分であり、第2の標的抗原は、スパイクタンパク質以外のSARS-CoV-2タンパク質の少なくとも一部分である、キット。
【請求項2】
第1の標的抗原は、S1タンパク質の受容体結合ドメイン(RBD)を含む、請求項1に記載のキット。
【請求項3】
第2の標的抗原は、SARS-CoV-2ヌクレオカプシドタンパク質の少なくとも一部分である、請求項1に記載のキット。
【請求項4】
第2の標的抗原は、SARS-CoV-2膜タンパク質の少なくとも一部分、またはSARS-CoV-2エンベロープタンパク質の少なくとも一部分である、請求項1に記載のキット。
【請求項5】
(a)および(b)の各々の一重項酸素により活性化可能な化学発光化合物は、一重項酸素との化学反応を起こして、同時または後の発光により分解することができる準安定中間体種を形成する物質である;
増感剤は光増感剤である;ならびに
(e)のビオチン特異的結合パートナーは、アビジン、アビジンの類似体、およびビオチンに対する抗体からなる群から選択される、
のうちの少なくとも1つである、請求項1に記載のキット。
【請求項6】
(a)および(b)の蛍光分子は、各々独立して、テルビウム、ウラン、サマリウム、ユーロピウム、ガドリニウム、およびジスプロシウムからなる群から選択される、請求項1に記載のキット。
【請求項7】
サンプル中の複数の抗SARS-CoV-2抗体の存在および/または濃度を決定するためのマイクロ流体デバイスであって、該マイクロ流体デバイスは、
(i)サンプルが適用される入口チャネルと;
(ii)入口チャネルと流体連絡することができ、
(a)化学発光化合物に直接的または間接的に結合している第1の標的抗原を有する一重項酸素により活性化可能な化学発光化合物と;
活性化された化学発光化合物によって励起される蛍光分子と
を含む組成物と;
(b)化学発光化合物に直接的または間接的に結合している第2の標的抗原を有する一重項酸素により活性化可能な化学発光化合物と;
活性化された化学発光化合物によって励起される蛍光分子であって、(a)の蛍光分子とは異なり、(a)の蛍光分子とは異なる波長で発光する、蛍光分子と
を含む組成物と;
(c)ビオチン化した第1の標的抗原と;
(d)ビオチン化した第2の標的抗原と;
(e)一重項酸素をその励起状態において生成することができる増感剤を含み、増感剤に直接的または間接的に結合しているビオチン特異的結合パートナーを有する組成物と
を含有することができる少なくとも第1の区画と
を含み、
第1の標的抗原は、SARS-CoV-2スパイクタンパク質の少なくとも一部分であり、第2の標的抗原は、スパイクタンパク質以外のSARS-CoV-2タンパク質の少なくとも一部分である、マイクロ流体デバイス。
【請求項8】
第1の標的抗原は、S1タンパク質の受容体結合ドメイン(RBD)を含む、請求項7に記載のマイクロ流体デバイス。
【請求項9】
第2の標的抗原は、SARS-CoV-2ヌクレオカプシドタンパク質の少なくとも一部分である、請求項7に記載のマイクロ流体デバイス。
【請求項10】
第2の標的抗原は、SARS-CoV-2膜タンパク質の少なくとも一部分、またはSARS-CoV-2エンベロープタンパク質の少なくとも一部分である、請求項7に記載のマイクロ流体デバイス。
【請求項11】
(a)~(e)は同じ区画に存在する、請求項7に記載のマイクロ流体デバイス。
【請求項12】
(a)~(e)は2つまたはそれ以上の区画の間で分割される、請求項7に記載のマイクロ流体デバイス。
【請求項13】
(a)および(b)の各々の一重項酸素により活性化可能な化学発光化合物は、一重項酸素との化学反応を起こして、同時または後の発光により分解することができる準安定中間体種を形成する物質である;
増感剤は光増感剤である;ならびに
(e)のビオチン特異的結合パートナーは、アビジン、アビジンの類似体、およびビオチンに対する抗体からなる群から選択される、
のうちの少なくとも1つである、請求項7に記載のマイクロ流体デバイス。
【請求項14】
(a)および(b)の蛍光分子は、各々独立して、テルビウム、ウラン、サマリウム、ユーロピウム、ガドリニウム、およびジスプロシウムからなる群から選択される、請求項7に記載のマイクロ流体デバイス。
【請求項15】
サンプル中の複数の抗SARS-CoV-2抗体の存在および/または濃度を検出するための方法であって、該方法は、
(1)SARS-CoV-2抗体と疑われるサンプルを:
(a)化学発光化合物に直接的または間接的に結合している第1の標的抗原を有する一重項酸素により活性化可能な化学発光化合物と;
活性化された化学発光化合物によって励起される蛍光分子と
を含む組成物;
(b)化学発光化合物に直接的または間接的に結合している第2の標的抗原を有する一重項酸素により活性化可能な化学発光化合物と;
活性化された化学発光化合物によって励起される蛍光分子であって、(a)の蛍光分子とは異なり、(a)の蛍光分子とは異なる波長で発光する、蛍光分子と
を含む組成物;
(c)ビオチン化した第1の標的抗原;
(d)ビオチン化した第2の標的抗原;および
(e)一重項酸素をその励起状態において生成することができる増感剤を含み、増感剤に直接的または間接的に結合しているビオチン特異的結合パートナーを有する組成物
と同時にまたは全体的もしくは部分的に連続して合わせる工程であって、
第1の標的抗原は、SARS-CoV-2スパイクタンパク質の少なくとも一部分であり、第2の標的抗原は、スパイクタンパク質以外のSARS-CoV-2タンパク質の少なくとも一部分である、工程と;
(2)サンプル中の抗SARS-CoV-2-スパイクタンパク質抗体への(a)および(c)の結合を可能にし、サンプル中の第2の標的抗原に対する抗SARS-CoV-2抗体への(b)および(d)の結合を可能にし、(e)への(c)および(d)の結合を可能にする工程であって、(e)への(a)の間接的な結合はスパイクタンパク質複合体の形成を生じ、(e)への(b)の間接的な結合は第2の標的抗原複合体の形成を生じ、スパイクタンパク質複合体および第2の標的抗原複合体の各々において、増感剤が化学発光化合物と近接する、工程と;
(3)増感剤を活性化して一重項酸素を生成する工程であって、スパイクタンパク質複合体および第2の標的抗原複合体に存在する増感剤の活性化は、各複合体に存在する化学発光化合物の活性化を引き起こす、工程と;
(4)(a)の蛍光分子から放出された光の量を測定することによってスパイクタンパク質複合体における活性化された化学発光化合物によって生じる化学発光の量を決定する工程であって、サンプル中の抗SARS-CoV-2-スパイクタンパク質抗体の量は、放出された光の量に比例する、工程と;
(5)(b)の蛍光分子から放出された光の量を測定することによって第2の標的抗原複合体における活性化された化学発光化合物によって生じる化学発光の量を決定する工程であって、サンプル中の抗SARS-CoV-2-第2の標的抗原抗体の量は、放出された光の量に比例する、工程と
を含む、方法。
【請求項16】
方法は、さらに、
(6)サンプル中に存在する抗SARS-CoV-2抗体は、工程(4)の結果に基づいてワクチン接種に応答して生成されたと判定し、サンプル中に存在する抗SARS-CoV-2抗体は、工程(5)の結果に基づいて感染に応答して生成されたと判定する工程
を含む、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
工程(2)~(5)を繰り返すことをさらに含む、請求項15に記載の方法。
【請求項18】
第1の標的抗原は、S1タンパク質の受容体結合ドメイン(RBD)を含む、請求項15に記載の方法。
【請求項19】
第2の標的抗原は、SARS-CoV-2ヌクレオカプシドタンパク質の少なくとも一部分である、請求項15に記載の方法。
【請求項20】
第2の標的抗原は、SARS-CoV-2膜タンパク質の少なくとも一部分、またはSARS-CoV-2エンベロープタンパク質の少なくとも一部分である、請求項15に記載の方法。
【請求項21】
(a)および(b)の各々の一重項酸素により活性化可能な化学発光化合物は、一重項酸素との化学反応を起こして、同時または後の発光により分解することができる準安定中間体種を形成する物質である;
(e)の増感剤は光増感剤であり、工程(3)における増感剤の活性化は光による照射を含む;ならびに
(e)のビオチン特異的結合パートナーは、アビジン、アビジンの類似体、およびビオチンに対する抗体からなる群から選択される、
のうちの少なくとも1つである、請求項15に記載の方法。
【請求項22】
サンプルは、全血またはそのいずれかの部分、尿、唾液、痰、脳脊髄液、皮膚、腸液、腹腔内液、嚢胞液、汗、間質液、細胞外液、涙、粘液、膀胱洗浄液、精液、糞便、胸膜液、鼻咽頭液、およびそれらの組合せからなる群から選択される生体サンプルである、請求項15に記載の方法。
【請求項23】
サンプル中の複数の抗SARS-CoV-2抗体の存在および/または濃度を決定するための化学発光検出システムを利用する多重アッセイを実行するためのキットであって:該キットは、
(a)化学発光化合物に直接的または間接的に結合している第1の標的抗原を有する一重項酸素により活性化可能な化学発光化合物と;
活性化された化学発光化合物によって励起される蛍光分子と
を含む組成物と;
(b)化学発光化合物に直接的または間接的に結合している第2の標的抗原を有する一重項酸素により活性化可能な化学発光化合物と;
活性化された化学発光化合物によって励起される蛍光分子であって、(a)の蛍光分子とは異なり、(a)の蛍光分子とは異なる波長で発光する、蛍光分子と
を含む組成物と;
(c)少なくとも1つのビオチン化した抗ヒト免疫グロブリン(Ig)抗体と;
(d)一重項酸素をその励起状態において生成することができる増感剤を含み、増感剤に直接的または間接的に結合しているビオチン特異的結合パートナーを有する組成物と
を含み、
第1の標的抗原は、SARS-CoV-2スパイクタンパク質の少なくとも一部分であり、第2の標的抗原は、スパイクタンパク質以外のSARS-CoV-2タンパク質の少なくとも一部分である、キット。
【請求項24】
第1の標的抗原は、S1タンパク質の受容体結合ドメイン(RBD)を含む、請求項23に記載のキット。
【請求項25】
第2の標的抗原は、SARS-CoV-2ヌクレオカプシドタンパク質の少なくとも一部分である、請求項23に記載のキット。
【請求項26】
第2の標的抗原は、SARS-CoV-2膜タンパク質の少なくとも一部分、またはSARS-CoV-2エンベロープタンパク質の少なくとも一部分である、請求項23に記載のキット。
【請求項27】
(a)および(b)の各々の一重項酸素により活性化可能な化学発光化合物は、一重項酸素との化学反応を起こして、同時または後の発光により分解することができる準安定中間体種を形成する物質である;
増感剤は光増感剤である;ならびに
(d)のビオチン特異的結合パートナーは、アビジン、アビジンの類似体、およびビオチンに対する抗体からなる群から選択される、
のうちの少なくとも1つである、請求項23に記載のキット。
【請求項28】
(a)および(b)の蛍光分子は、各々独立して、テルビウム、ウラン、サマリウム、ユーロピウム、ガドリニウム、およびジスプロシウムからなる群から選択される、請求項23に記載のキット。
【請求項29】
サンプル中の複数の抗SARS-CoV-2抗体の存在および/または濃度を決定するためのマイクロ流体デバイスであって、該マイクロ流体デバイスは、
(i)サンプルが適用される入口チャネルと;
(ii)入口チャネルと流体連絡することができ、
(a)化学発光化合物に直接的または間接的に結合している第1の標的抗原を有する一重項酸素により活性化可能な化学発光化合物と;
活性化された化学発光化合物によって励起される蛍光分子と
を含む組成物と;
(b)化学発光化合物に直接的または間接的に結合している第2の標的抗原を有する一重項酸素により活性化可能な化学発光化合物と;
活性化された化学発光化合物によって励起される蛍光分子であって、(a)の蛍光分子とは異なり、(a)の蛍光分子とは異なる波長で発光する、蛍光分子と
を含む組成物と;
(c)少なくとも1つのビオチン化した抗ヒト免疫グロブリン(Ig)抗体と;
(d)一重項酸素をその励起状態において生成することができる増感剤を含み、増感剤に直接的または間接的に結合しているビオチン特異的結合パートナーを有する組成物と
を含有することができる少なくとも第1の区画と
を含み、
第1の標的抗原は、SARS-CoV-2スパイクタンパク質の少なくとも一部分であり、第2の標的抗原は、スパイクタンパク質以外のSARS-CoV-2タンパク質の少なくとも一部分である、マイクロ流体デバイス。
【請求項30】
第1の標的抗原は、S1タンパク質の受容体結合ドメイン(RBD)を含む、請求項29に記載のマイクロ流体デバイス。
【請求項31】
第2の標的抗原は、SARS-CoV-2ヌクレオカプシドタンパク質の少なくとも一部分である、請求項29に記載のマイクロ流体デバイス。
【請求項32】
第2の標的抗原は、SARS-CoV-2膜タンパク質の少なくとも一部分、またはSARS-CoV-2エンベロープタンパク質の少なくとも一部分である、請求項29に記載のマイクロ流体デバイス。
【請求項33】
(a)~(d)は同じ区画に存在する、請求項29に記載のマイクロ流体デバイス。
【請求項34】
(a)~(d)は2つまたはそれ以上の区画の間で分割される、請求項29に記載のマイクロ流体デバイス。
【請求項35】
(a)および(b)の各々の一重項酸素により活性化可能な化学発光化合物は、一重項酸素との化学反応を起こして、同時または後の発光により分解することができる準安定中間体種を形成する物質である;
増感剤は光増感剤である;ならびに
(d)のビオチン特異的結合パートナーは、アビジン、アビジンの類似体、およびビオチンに対する抗体からなる群から選択される、
のうちの少なくとも1つである、請求項29に記載のマイクロ流体デバイス。
【請求項36】
(a)および(b)の蛍光分子は、各々独立して、テルビウム、ウラン、サマリウム、ユーロピウム、ガドリニウム、およびジスプロシウムからなる群から選択される、請求項29に記載のマイクロ流体デバイス。
【請求項37】
サンプル中の複数の抗SARS-CoV-2抗体の存在および/または濃度を検出するための方法であって、該方法は、
(1)SARS-CoV-2抗体と疑われるサンプルを:
(a)化学発光化合物に直接的または間接的に結合している第1の標的抗原を有する一重項酸素により活性化可能な化学発光化合物と;
活性化された化学発光化合物によって励起される蛍光分子と
を含む組成物;
(b)化学発光化合物に直接的または間接的に結合している第2の標的抗原を有する一重項酸素により活性化可能な化学発光化合物と;
活性化された化学発光化合物によって励起される蛍光分子であって、(a)の蛍光分子とは異なり、(a)の蛍光分子とは異なる波長で発光する、蛍光分子と
を含む組成物;
(c)少なくとも1つのビオチン化した抗ヒト免疫グロブリン(Ig)抗体と;
(d)一重項酸素をその励起状態において生成することができる増感剤を含み、増感剤に直接的または間接的に結合しているビオチン特異的結合パートナーを有する組成物
と同時にまたは全体的もしくは部分的に連続して合わせる工程であって、
第1の標的抗原は、SARS-CoV-2スパイクタンパク質の少なくとも一部分であり、第2の標的抗原は、スパイクタンパク質以外のSARS-CoV-2タンパク質の少なくとも一部分である、工程と;
(2)サンプル中の抗SARS-CoV-2-スパイクタンパク質抗体への(a)および(c)の結合を可能にし、サンプル中の第2の標的抗原に対する抗SARS-CoV-2抗体への(b)および(c)の結合を可能にし、(d)への(c)の結合を可能にする工程であって、(d)への(a)の間接的な結合はスパイクタンパク質複合体の形成を生じ、(d)への(b)の間接的な結合は第2の標的抗原複合体の形成を生じ、スパイクタンパク質複合体および第2の標的抗原複合体の各々において、増感剤が化学発光化合物と近接する、工程と;
(3)増感剤を活性化して一重項酸素を生成する工程であって、スパイクタンパク質複合体および第2の標的抗原複合体に存在する増感剤の活性化は、各複合体に存在する化学発光化合物の活性化を引き起こす、工程と;
(4)(a)の蛍光分子から放出された光の量を測定することによってスパイクタンパク質複合体における活性化された化学発光化合物によって生じる化学発光の量を決定する工程であって、サンプル中の抗SARS-CoV-2-スパイクタンパク質抗体の量は、放出された光の量に比例する、工程と;
(5)(b)の蛍光分子から放出された光の量を測定することによって第2の標的抗原複合体における活性化された化学発光化合物によって生じる化学発光の量を決定する工程であって、サンプル中の抗SARS-CoV-2-第2の標的抗原抗体の量は、放出された光の量に比例する、工程と
を含む、方法。
【請求項38】
方法は、さらに、
(6)サンプル中に存在する抗SARS-CoV-2抗体は、工程(4)の結果に基づいてワクチン接種に応答して生成されたと判定し、サンプル中に存在する抗SARS-CoV-2抗体は、工程(5)の結果に基づいて感染に応答して生成されたと判定する工程
を含む、請求項37に記載の方法。
【請求項39】
方法は、さらに、工程(2)~(5)を繰り返すことを含む、請求項37に記載の方法。
【請求項40】
第1の標的抗原は、S1タンパク質の受容体結合ドメイン(RBD)を含む、請求項37に記載の方法。
【請求項41】
第2の標的抗原は、SARS-CoV-2ヌクレオカプシドタンパク質の少なくとも一部分である、請求項37に記載の方法。
【請求項42】
第2の標的抗原は、SARS-CoV-2膜タンパク質の少なくとも一部分、またはSARS-CoV-2エンベロープタンパク質の少なくとも一部分である、請求項37に記載の方法。
【請求項43】
(a)および(b)の各々の一重項酸素により活性化可能な化学発光化合物は、一重項酸素との化学反応を起こして、同時または後の発光により分解することができる準安定中間体種を形成する物質である;
(d)の増感剤は光増感剤であり、工程(3)における増感剤の活性化は光による照射を含む;ならびに
(d)のビオチン特異的結合パートナーは、アビジン、アビジンの類似体、およびビオチンに対する抗体からなる群から選択される、
のうちの少なくとも1つである、請求項37に記載の方法。
【請求項44】
サンプルは、全血またはそのいずれかの部分、尿、唾液、痰、脳脊髄液、皮膚、腸液、腹腔内液、嚢胞液、汗、間質液、細胞外液、涙、粘液、膀胱洗浄液、精液、糞便、胸膜液、鼻咽頭液、およびそれらの組合せからなる群から選択される生体サンプルである、請求項37に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照/参照による組み入れの記述
適用なし。
【0002】
連邦政府の支援による研究または開発に関する記述
適用なし。
【背景技術】
【0003】
医療診断の分野では、多くの異なる形式のアッセイ技術が利用されている。患者が微生物(限定されないが、細菌またはウイルスなど)に感染している疑いがある場合、アッセイは、患者の免疫系によって産生される微生物に対する抗体を検出するために患者からの生体サンプルに対して実施される。
【0004】
患者の血清および血漿中の抗ウイルスまたは抗細菌抗原抗体(限定されないが、IgG、IgM、および/またはIgAなど)の検出が望まれる場合、固定化されたウイルス/細菌抗原および標識されたウイルス/細菌抗原が、多くの場合、アッセイ試薬を配合するために使用される、ブリッジング血清学的アッセイが利用されてきた。別の例では、ラテックス粒子凝集アッセイは、患者サンプル中の抗ウイルス/細菌抗原抗体の存在下で凝集する単一試薬としてウイルス/細菌抗原でコーティングされたラテックス粒子を利用する。
【0005】
商業的に使用されているアッセイの1つの例は、発光酸素チャネリングアッセイ(LOCI(登録商標))技術である。LOCI(登録商標)による進化した化学発光アッセイは、例えば、米国特許第5,340,716号(Ullmanら)に記載されており、その全体の内容は参照によって明示的に本明細書に組み入れる。現在利用可能なLOCI(登録商標)技術は高い感度を有し、いくつかの試薬を使用する。特に、LOCI(登録商標)アッセイは、これらの試薬のうちの2つ(「センシビーズ(sensibead)」および「ケミビーズ(chemibead)」と称される)が、センシビーズおよびケミビーズが互いに近接してシグナルを達成する様式で他の特異的結合パートナーアッセイ試薬によって保持されることを必要とする。ある特定の波長の光に曝露すると、センシビーズは一重項酸素を放出し、2つのビーズが近接している場合、一重項酸素はケミビーズに移動する;これにより化学反応が引き起こされ、その結果、ケミビーズが、異なる波長で測定することができる光を発する。
【0006】
2020年6月、米国食品医薬品局(FDA)は、血液中のIgMおよびIgGを含む全SARS-CoV-2抗体の存在を検出するための、Siemens Healthineers(Tarrytown、NY)によって開発された検査室ベースの全抗体検査の緊急使用許可(EUA)を発行した。このイムノアッセイはLOCI(登録商標)プラットフォームに基づいており、CV2T LOCI(登録商標)イムノアッセイと称されている。
【0007】
SARS-CoV-2ウイルスの表面上のスパイクタンパク質により、ウイルスは複数の臓器および血管に見出されるヒトの細胞に侵入して感染することができる。Siemens Healthineersの全抗体COV2T CV2T LOCI(登録商標)イムノアッセイを、スパイクタンパク質の受容体結合ドメイン(RBD)に対する抗体を検出するように設計した。これらの抗体の一部はSARS-CoV-2ウイルスを中和し、したがって感染を阻止すると考えられている。
【0008】
さらに、広く使用されている、Pfizer/BioNTech、Moderna、Johnson & Johnson(Janssen)、およびOxford-AstraZeneca COVID-19ワクチンを含む、焦点の中にスパイクタンパク質を含むSARS-CoV-2に対する複数のワクチンが開発され、利用されている。したがって、免疫化された患者は現在、SARS-CoV-2スパイクタンパク質に対する抗体を産生している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
したがって、ワクチン接種に応答して産生された抗体と、感染に応答して産生された抗体とを区別することができ、それによって従来技術の不利益および欠点を克服するSARS-CoV-2抗体の存在を検出するための新規かつ改良されたイムノアッセイが当技術分野において必要とされている。本開示が対象とするのは、このようなアッセイ、ならびにこれを含むキットおよびマイクロ流体デバイス、ならびにこれを使用する方法である。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】SARS-CoV-2全(COV2T)アッセイ(Siemens Healthineers、Tarrytown、NY)を概略的に示す。
図2】本開示に従って構築された二重イムノアッセイ形式の非限定的な一実施形態を概略的に示す。図2は利用される試薬を示す。
図3】本開示に従って構築された二重イムノアッセイ形式の非限定的な一実施形態を概略的に示す。図3は抗SARS-CoV-2抗体の存在下で形成される複合体を示す。
図4】本開示に従って構築された二重イムノアッセイ形式の非限定的な別の実施形態を概略的に示す。図4は利用される試薬を示す。
図5】本開示に従って構築された二重イムノアッセイ形式の非限定的な別の実施形態を概略的に示す。図5は抗SARS-CoV-2抗体の存在下で形成される複合体を示す。
【発明を実施するための形態】
【0011】
例示的な言語および結果によって本開示の少なくとも1つの実施形態を詳細に説明する前に、本開示は、その適用において以下の説明に記載される構成の詳細および構成要素の配列に限定されないことは理解されるべきである。本開示は、他の実施形態が可能であるか、または種々の手法で実践もしくは実行することができる。したがって、本明細書に使用される言語は、可能な限り最も広い範囲および意味を与えることを意図し;実施形態は包括的ではなく、例示的であることを意味する。また、本明細書に利用される表現および用語は、説明の目的のためであり、限定的とみなされるべきではないことは理解されるべきである。
【0012】
本明細書で別段に定義されない限り、本開示に関連して使用される科学的および技術的用語は、当業者によって一般的に理解されている意味を有するものとする。さらに、文脈によって別段に必要とされない限り、単数形の用語は複数を含むものとし、複数形の用語は単数を含むものとする。前述の技術および手順は、一般に、当該技術分野において周知であり、本明細書全体を通して引用され、論じられている種々の一般的およびより具体的な参考文献に記載されている従来の方法に従って実施される。本明細書に記載される分析化学、有機合成化学、ならびに医薬品化学および薬化学と関連して利用される命名法、ならびにそれらの実験手順および技術は、当該技術分野において周知であり、一般的に使用されているものである。標準的な技術が化学合成および化学分析のために使用される。
【0013】
本明細書において述べられている全ての特許、公開された特許出願、および非特許刊行物は、本開示が関係する当業者の技術レベルを示す。本出願のいずれかの部分に参照されている全ての特許、公開された特許出願、および非特許刊行物は、各個々の特許または刊行物が参照によって組み入れることを具体的かつ個別に示している場合と同じ程度までそれらの全体を参照によって明示的に本明細書に組み入れる。
【0014】
本明細書に開示される物品、組成物、キット、および/または方法の全ては、本開示に照らして過度の実験をすることなく作製され、実行される。物品、組成物、キット、および/または方法は特定の実施形態に関して記載されているが、本開示の概念、趣旨および範囲から逸脱せずに、物品、組成物、キット、および/または方法に対して、ならびに本明細書に記載される方法の工程または一連の工程において変更を適用することができることは当業者には明らかであろう。当業者に明らかである全てのこのような同様の置換および修飾は、添付の特許請求の範囲によって規定される本開示の趣旨、範囲および概念内であるとみなされる。
【0015】
本開示に従って利用される場合、別段に示さない限り、以下の用語は以下の意味を有すると理解されるべきである:
【0016】
特許請求の範囲および/または明細書において「含む(comprising)」という用語と併せて使用される場合、「1つの(a)」または「1つの(an)」という用語の使用は、「1つ(one)」を意味することがあるが、それはまた、「1つまたはそれ以上」、「少なくとも1つ」および「1つまたは1つより多い」の意味と一致する。したがって、「1つの(a)」、「1つの(an)」および「その」という用語は、文脈が明確に別段を示さない限り、複数の指示対象を含む。したがって、例えば、「化合物」に対する言及は、1つもしくはそれ以上の化合物、2つもしくはそれ以上の化合物、3つもしくはそれ以上の化合物、4つもしくはそれ以上の化合物、またはより多い数の化合物を指すことがある。「複数」という用語は、「2つまたはそれ以上」を指す。
【0017】
「少なくとも1つ」という用語の使用は、1つおよび限定されないが、2、3、4、5、10、15、20、30、40、50、100などを含む1つより多い任意の量を含むと理解されるだろう。「少なくとも1つ」という用語は、それが付されている用語に応じて、100または1000またはそれ以上にまで及ぶことがある;さらに、より高い限界値も満足のいく結果をもたらす可能性があるため、100/1000の量は限定的と考えられるべきではない。さらに、「X、Y、およびZのうちの少なくとも1つ」という用語の使用は、X単独、Y単独、およびZ単独、ならびにX、YおよびZの任意の組合せを含むと理解されるだろう。序数の用語(すなわち、「第1」、「第2」、「第3」、「第4」など)の使用は、2つまたはそれ以上の項目を区別する目的のためのみであり、例えば、任意の順列もしくは順序または1つの項目の別の項目に対する重要性あるいは添加の任意の順序を意味することを意図するものではない。
【0018】
特許請求の範囲における「または」という用語の使用は、選択肢のみを指すように明示的に示されない限りまたは選択肢が相互に排他的でない限り、包括的な「および/または」を意味するために使用される。例えば、条件「AまたはB」は、以下のいずれかによって満たされる:Aは真であり(または存在する)、かつBは偽である(または存在しない)、Aは偽であり(または存在しない)、かつBは真である(または存在する)、およびAとBは両方とも真である(または存在する)。
【0019】
本明細書で使用される場合、「1つの実施形態」、「ある実施形態」、「いくつかの実施形態」、「1つの例」、「例えば」または「ある例」に対するいずれかの言及は、実施形態に関連して記載される特定の要素、機能、構造または特性が少なくとも1つの実施形態に含まれることを意味する。例えば、明細書の種々の場所における「いくつかの実施形態において」または「1つの例」という語句の出現は、必ずしも全てが同じ実施形態を参照しているわけではない。さらに、1つまたはそれ以上の実施形態または例に対する言及は、全て、特許請求の範囲を限定するものではないと解釈されるべきである。
【0020】
本出願全体を通して、「約」という用語は、値が組成物/装置/デバイスについての誤差の固有の変動、値を決定するために用いられる方法、または研究対象の間に存在する変動を含むことを示すために使用される。例えば、限定するものではないが、「約」という用語が利用される場合、指定された値は、特定された値から、プラスマイナス20パーセント、または15パーセント、または12パーセント、または11パーセント、または10パーセント、または9パーセント、または8パーセント、または7パーセント、または6パーセント、または5パーセント、または4パーセント、または3パーセント、または2パーセント、または1パーセントだけ変化することがあり、このような変動は、開示された方法を実施するのに適切であり、当業者によって理解されている通りである。
【0021】
本明細書および特許請求の範囲において使用される場合、「含む(comprising)」(ならびに「含む(comprise)」および「含む(comprises)」のような含む(comprising)の任意の形)、「有する(having)」(ならびに「有する(have)」および「有する(has)」のような有する(having)の任意の形)、「含む(including)」(ならびに「含む(includes)」および「含む(include)」のような含む(including)の任意の形)、または「含有する(containing)」(ならびに「含有する(contains)」および「含有する(contain)」のような含有する(containing)の任意の形)という単語は、包括的であるかまたは無制限であり、追加の、引用されていない要素または方法ステップを排除しない。
【0022】
本明細書で使用される場合、「またはそれらの組合せ」という用語は、この用語に先立って列挙された項目の全ての順列および組合せを指す。例えば、「A、B、Cまたはそれらの組合せ」は、A、B、C、AB、AC、BCまたはABCの少なくとも1つを含むことを意図し、特定の文脈において順序が重要である場合、BA、CA、CB、CBA、BCA、ACB、BACまたはCABも、含むことを意図する。この例に引き続いて、BB、AAA、AAB、BBC、AAABCCCC、CBBAAA、CABABBなどのような、1つまたはそれ以上の項目または用語の繰り返しを含有する組合せも明示的に含まれる。当業者は、文脈からそうでないことが明らかでない限り、典型的には、いかなる組合せにおいても項目または用語の数に制限がないことを理解するであろう。
【0023】
本明細書で使用される場合、「実質的に」という用語は、それに引き続いて記載される事象もしくは状況が完全に起きるか、またはそれに引き続いて記載される事象もしくは状況が大いにもしくはかなりの程度起きることを意味する。例えば、特定の事象または状況と関連する場合、「実質的に」という用語は、それに引き続いて記載される事象または状況が時間の少なくとも80%、または時間の少なくとも85%、または時間の少なくとも90%、または時間の少なくとも95%に起きることを意味する。「実質的に隣接している」という用語は、2つの項目が互いに100%隣接していること、または2つの項目が互いに近接している範囲内であるが、互いに100%隣接していないこと、または2つの項目のうちの1つの一部が他の項目に100%隣接していないが、他の項目に近接している範囲内であることを意味することがある。
【0024】
本明細書で使用される場合、「会合する」および「連結する」という語句は、2つの部分の互いに直接的な会合/結合および2つの部分の互いに間接的な会合/結合の両方を含む。会合/連結の非限定的な例には、例えば、直接結合によるもしくはスペーサー基を介した1つの部分の別の部分への共有結合、直接的なもしくは両部分に結合している特異的結合対メンバーによる1つの部分の別の部分への非共有結合、1つの部分の別の部分への溶解もしくは合成によるような1つの部分の別の部分への組み込み、および1つの部分の別の部分への被覆が含まれる。
【0025】
「類似体」および「誘導体」という用語は、本明細書では交換可能に使用され、その構造において所与の化合物と同じ基本的な炭素骨格および炭素官能基を含むが、それらに対する1つまたはそれ以上の置換も含有することができる物質を指す。本明細書で使用される場合、「置換」という用語は、化合物上の少なくとも1つの置換基の残基Rによる置き換えを指すと理解されるだろう。
【0026】
本明細書で使用される場合、「サンプル」という用語は、本開示に従って利用することができる任意の種類の生体サンプルを含むと理解されるだろう。利用することができる流体生体サンプルの例には、限定されないが、全血またはそのいずれかの部分(すなわち、血漿または血清)、尿、唾液、痰、脳脊髄液(CSF)、皮膚、腸液、腹腔内液、嚢胞液、汗、間質液、細胞外液、涙、粘液、膀胱洗浄液、精液、糞便、胸膜液、鼻咽頭液、それらの組合せなどが含まれる。
【0027】
「ビオチン特異的結合パートナー」または「標的検体特異的結合パートナー」という用語において本明細書で特に(限定するものではないが)使用される場合、「特異的結合パートナー」という用語は、それぞれビオチンまたは標的検体と特異的に会合することができる任意の分子を指すことが理解されるであろう。例えば、限定するものではないが、結合パートナーは、抗体、受容体、リガンド、アプタマー、分子インプリントポリマー(すなわち、無機マトリクス)、それらの組合せまたは誘導体、およびビオチンまたは標的検体にそれぞれ特異的に結合することができる任意の他の分子であってもよい。
【0028】
「抗体」という用語は、最も広い意味において本明細書で使用され、例えば、インタクトなモノクローナル抗体およびポリクローナル抗体、多重特異性抗体(例えば、二重特異性抗体)、検体結合の所望の生物活性を示す抗体断片およびそのコンジュゲート(例えば、限定されないが、Fab、Fab’、F(ab’)2、Fv、scFv、Fd、ダイアボディ、一本鎖抗体、ならびにインタクトな抗体の可変領域の少なくとも一部を保持する他の抗体断片およびそのコンジュゲート)、抗体置換タンパク質またはペプチド(すなわち、操作された結合タンパク質/ペプチド)、ならびにそれらの組合せまたは誘導体を指す。抗体は、任意の種類またはクラス(例えば、IgG、IgE、IgM、IgDおよびIgA)またはサブクラス(例えば、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA1およびIgA2)であってもよい。
【0029】
本明細書で使用される場合、「ハプテン」という用語は、抗体(しかしこれに限定されない)などの標的検体特異的結合パートナーが認識することができる小さなタンパク質性または非タンパク質の抗原決定基(または「エピトープ」)を指す。本明細書で使用される場合、「ポリハプテン」という用語は、合成分子に結合している複数のエピトープ/抗原決定基を含む合成分子を指すことが理解されるであろう。
【0030】
「検体」は、抗体(しかしこれに限定されない)などの検体特異的結合パートナーが認識することができる巨大分子である。検体およびハプテンの両方は、少なくとも1つの抗原決定基または「エピトープ」を含み、これは検体特異的結合パートナー(すなわち、抗体)に結合する抗原またはハプテンの領域である。典型的には、ハプテン上のエピトープは分子全体である。
【0031】
本開示のある特定の非限定的な実施形態は、サンプル中の抗SARS-CoV-2抗体を検出するための多重アッセイ、ならびにそれを含むキットおよびそれを使用する方法を対象とする。いくつかのアッセイの実施形態では、シグナル産生システム(sps)メンバーは、例えば、光増感剤などの増感剤、および2つまたはそれ以上の化学発光蛍光分子組成物を含む(ここで、第1の化学発光組成物は、抗SARS-CoV-2-スパイクタンパク質抗体の存在に関連するシグナルを生成し、一方、少なくとも第2の化学発光組成物は、スパイクタンパク質以外の別のSARS-CoV-2タンパク質(SARS-CoV-2ヌクレオカプシドタンパク質、エンベロープタンパク質、または膜タンパク質などであるが、これらに限定されない)に対する抗SARS-CoV-2抗体の存在に関連するシグナルを生成する);これらのアッセイの実施形態では、増感剤の活性化により、化学発光組成物を活性化する生成物が生じ、それによって検出される結合している抗SARS-CoV-2抗体の量に関連する検出可能なシグナルが生成される。本開示が基づくことができるアッセイプラットフォームの例示的(しかし非限定的)な実施形態は、発光酸素チャネリングアッセイ(Luminescence Oxygen Channeling Assay)(LOCI(登録商標);Siemens Healthcare Diagnostics Inc.、Tarrytown、NY)である。LOCI(登録商標)アッセイは、例えば、米国特許第5,340,716号(Ullmanら)に記載されており、それらの全体の内容は参照によって明示的に本明細書に組み入れる。
【0032】
本開示のある特定の非限定的な実施形態は、サンプル中の複数の抗SARS-CoV-2抗体の存在および/または濃度を決定するための化学発光検出システムを利用する多重アッセイを実行するためのキットを対象とする。キットは、(a)化学発光化合物に直接的または間接的に結合している第1の標的抗原を有する一重項酸素により活性化可能な化学発光化合物と、活性化された化学発光化合物によって励起される蛍光分子とを含む組成物と;(b)化学発光化合物に直接的または間接的に結合している第2の標的抗原を有する一重項酸素により活性化可能な化学発光化合物と、活性化された化学発光化合物によって励起される蛍光分子であって、(a)の蛍光分子とは異なり、(a)の蛍光分子とは異なる波長で発光する、蛍光分子とを含む組成物と;(c)ビオチン化した第1の標的抗原と;(d)ビオチン化した第2の標的抗原と;(e)一重項酸素をその励起状態において生成することができる増感剤を含み、増感剤に直接的または間接的に結合しているビオチン特異的結合パートナーを有する組成物とを含み;第1の標的抗原は、SARS-CoV-2スパイクタンパク質の少なくとも一部分であり、第2の標的抗原は、スパイクタンパク質以外のSARS-CoV-2タンパク質の少なくとも一部分である。
【0033】
SARS-CoV-2スパイクタンパク質の全てまたは任意の部分は、本開示に従って第1の標的抗原として利用することができる。ある特定の非限定的な実施形態では、第1の標的抗原は、S1タンパク質の受容体結合ドメイン(RBD)の少なくとも一部分(しかしこれに限定されない)などのSARS-CoV-2 S1タンパク質の少なくとも一部を含む。
【0034】
1つの特定の(しかし非限定的な)実施形態では、第1の標的抗原は、SARS-CoV-2スパイクタンパク質のS1サブユニットの受容体結合ドメイン(RBD)である。RBD S1抗原は、当該技術分野において公知である任意の供給源から得られる。例えば(限定する目的ではないが)、特定の抗原は、GenScript(Piscataway、NJ);Meridian Life Sciences,Inc.(Memphis、TN);Sino Biological US Inc.(Wayne、PA);ACRO Biosystems(Newark、DE);Biorbyt,LLC(St.Louis、MO);Icosagen,AS(San Francisco、CA);およびBios Pacific Inc.(Emeryville、CA)から市販されている。
【0035】
別のSARS-CoV-2タンパク質の全てまたは任意の部分は、第2の標的抗原として利用することができる。ある特定の非限定的な実施形態では、第2の標的抗原は、SARS-CoV-2ヌクレオカプシドタンパク質の少なくとも一部分、SARS-CoV-2膜タンパク質の少なくとも一部分、またはSARS-CoV-2エンベロープタンパク質の少なくとも一部分を含む。
【0036】
化学発光化合物(化学発光物質(chemiluminescer))は、化学的に活性化可能であり、そのような活性化の結果として、ある特定の波長で光を発する化合物である。例示を目的とし、限定ではない化学発光物質の例には:一重項酸素または過酸化物と反応してヒドロペルオキシドまたはジオキセタンを形成することができるオレフィン、これはケトンまたはカルボン酸誘導体に分解することができる;光の作用によって分解することができる安定なジオキセタン;一重項酸素と反応してジケトンを形成することができるアセチレン;(限定されないが)ルミノールのようなアゾ化合物またはアゾカルボニルを形成することができるヒドラゾンまたはヒドラジド;および例えば、エンドペルオキシドを形成することができる芳香族化合物が含まれる。活性化反応の結果として、化学発光物質は直接的または間接的に発光を引き起こす。
【0037】
ある特定の実施形態では、一重項酸素により活性化可能な化学発光化合物は、一重項酸素との化学反応を起こして、同時または後の発光により分解することができる準安定中間体種を形成する物質であり得る。化学発光化合物を含む組成物は活性化された化学発光化合物によって直接励起される;あるいは組成物は活性化された化学発光化合物によって励起される少なくとも1つの蛍光分子をさらに含んでもよい。
【0038】
増感剤は、化学発光化合物の活性化のための、例えば、一重項酸素のような反応中間体を生じる、分子、通常、化合物である。一部の非限定的な実施形態では、増感剤は光増感剤である。(例えば、酵素および金属塩によって)化学的に活性化される(chemi-activated)他の増感剤には、例を目的とし、限定ではない、外部光源によって活性化されてまたは活性化されずに一重項酸素を生じることができる他の物質および組成物が含まれる。例えば、ある特定の化合物は、過酸化水素の一重項酸素および水への変換を触媒することが示されている。他の増感剤物質および組成物の非限定的な例には:アルカリ土類金属Ca、SrおよびBaの酸化物;d配置の3A、4A、SAおよび6A族の元素の誘導体;アクチニドおよびランタニドの酸化物;ならびに酸化剤ClO、BrO、Au3+、IO およびIO ;ならびに特に、モリブデン酸イオン、ペルオキソモリブデン酸イオン、タングステン酸イオンおよびペルオキソタングステン酸イオン、ならびにアセトニトリルが含まれる。それらの全体を参照によって明示的に本明細書に組み入れる以下の参考文献は、本開示の範囲内でもある増感剤物質および組成物に関するさらなる開示を提供する:Aubry、J.Am.Chem.Soc.、107:5844~5849(1985);Aubry、J.Org.Chem.、54:726~728(1989);BohmeおよびBrauer、Inorg.Chem.、31:3468~3471(1992);NiuおよびFoote、Inorg.Chem.、31:3472~3476(1992);Nardelloら、Inorg.Chem.、34:4950~4957(1995);AubryおよびBouttemy、J.Am.Chem.Soc.、119:5286~5294(1997);ならびにAlmeidaら、Anal.Chim.Acta、482:99~104(2003);これらの各々の全体の内容は参照によって明示的に本明細書に組み入れる。
【0039】
光増感剤の範囲内には、真の増感剤ではないが、熱、光、電離放射線または化学活性化による励起で一重項酸素の分子を放出する化合物も含まれる。このクラスの化合物のメンバーには、例えば(限定する目的ではないが)、1,4-ビスカルボキシエチル-1,4-ナフタレンエンドペルオキシド;9,10-ジフェニルアントラセン-9,10-エンドペルオキシド;および5,6,11,12-テトラフェニルナフタレン5,12-エンドペルオキシドのようなエンドペルオキシドが含まれる。加熱またはこれらの化合物による光の直接吸収は一重項酸素を放出する。
【0040】
光増感剤は、例えば、光による励起による一重項酸素の生成によって光活性化合物を活性化するための増感剤である。光増感剤は光活性化可能であり、例えば、色素および芳香族化合物を含み、通常、複数の共役二重または三重結合を有する、通常、共有結合原子からなる化合物である。化合物は、励起波長において、500M-1cm-1より大きい、または5,000M-1cm-1より大きい、または50,000M-1cm-1より大きい、その吸収最大における吸光係数で、(限定されないが)約300nm~約1,000nmの範囲または約450nm~950nmの範囲のような約200nm~約1,100nmの波長範囲の光を吸収すべきである。光増感剤は比較的光安定性であるべきであり、一重項酸素と効率的に反応しなくてもよい。例示を目的とし、限定ではない、光増感剤の例には:アセトン;ベンゾフェノン;9-チオキサントン;エオシン;9,10-ジブロモアントラセン;メチレンブルー;(限定されないが)ヘマトポルフィリンのようなメタロ-ポルフィリン;フタロシアニン;クロロフィル;ローズベンガル;およびバックミンスターフラーレン;ならびにこれらの化合物の誘導体が含まれる。
【0041】
特に、本開示に従って利用することができる化学発光化合物および光増感剤の非限定的な例は米国特許第5,340,716号(Ullmanら)に記載されており、その全体の内容は参照によって明示的に本明細書に組み入れる。
【0042】
当該技術分野において公知であるか、またはそうでなければ本明細書に企図される任意のビオチン特異的結合パートナーは、本開示に従って利用することができる。ある特定の非限定的な実施形態では、ビオチン特異的結合パートナーはビオチンに対する抗体である。他の非限定的な実施形態では、ビオチン特異的結合パートナーはアビジンまたはその類似体である。
【0043】
当該技術分野において公知であるか、またはそうでなければ本明細書に企図される任意のアビジン類似体は、アビジンまたはアビジン類似体が:(1)増感剤と会合することができ;(2)ビオチン化した検体特異的結合パートナーに結合することができ;(3)サンプル中に存在し得るビオチンに結合することができる限り、本開示に従って利用することができる。本開示に従って利用することができるアビジン類似体の非限定的な例には、Kangら(J Drug Target(1995)3:159~65)に開示されているものが含まれ、その全体の内容は参照によって明示的に本明細書に組み入れる。アビジン類似体の特定の非限定的な例には、アビジン、ストレプトアビジン、トラプトアビジン、中性アビジン、ニュートラライトアビジン(Neutralite avidin)、ニュートラアビジン(Neutravidin)、ライト-アビジン(Lite-avidin)、スクシニル化アビジン、修飾もしくは遺伝子操作されたアビジンの他の形態、上記のいずれかのエステル、塩および/または誘導体などが含まれる。
【0044】
活性化された化学発光化合物によって励起され、特定の検出可能な波長で発光することができる当該技術分野において公知の任意の蛍光分子は、各蛍光分子によって生成されるシグナルが、利用される他の蛍光分子によって生成されるシグナルから検出可能である限り、(a)および(b)(および存在する場合、(e))の蛍光分子として本開示に従って利用することができる。すなわち、(a)の蛍光分子は、(b)の蛍光分子が発光する波長と十分に異なる波長で発光しなければならず、それによって2つのシグナルは、同時に検出される場合、互いに区別される。ある特定の(しかし非限定的な)例において、本開示に従って利用される各蛍光分子は、独立して、テルビウム、ウラン、サマリウム、ユーロピウム、ガドリニウムおよびジスプロシウムからなる群から選択される。例えば(限定するものではないが)、同時に検出された場合に互いに区別することができる2つまたは3つのシグナルの生成に関して、テルビウムは約545nmの波長で発光し、ウランは約612nmの波長で発光し、サマリウムは約645nmの波長で発光する。
【0045】
本開示のある特定の非限定的な実施形態は、(c)および(d)のビオチン化した抗原が、少なくとも1つのビオチン化した抗ヒト免疫グロブリン(Ig)抗体と置き換えられていることを除いて、本明細書上記に記載されるものと同一のキットを対象とする。したがって、このキットにおいて、試薬(a)および(b)は上記のキットと同一であり、次いで、キットは、(c)少なくとも1つのビオチン化した抗ヒト免疫グロブリン(Ig)抗体;および(d)増感剤を含み、増感剤に結合しているビオチン特異的結合パートナーを有する組成物(すなわち、上記の(e)と同一の組成物)をさらに含む。上記のキットと同様に、第1の標的抗原はSARS-CoV-2スパイクタンパク質の少なくとも一部分であり、第2の標的抗原はスパイクタンパク質以外のSARS-CoV-2タンパク質の少なくとも一部分である。
【0046】
抗ヒトIg抗体は、当該技術分野において公知であるか、またはそうでなければ本明細書に企図される任意のヒト免疫グロブリン分子の任意の部分に特異的に結合し得る。例えば(限定する目的ではないが)、抗体は、ヒトIgG、IgE、IgM、IgD、および/もしくはIgA、ならびに/またはそれらの任意の部分(限定されないが、抗ヒトガンマ鎖、抗ヒトH+L、抗ヒト軽鎖など)を対象とすることができる。抗ヒトIg抗体(抗ヒトIgG、抗ヒトIgM、および/または抗ヒトIgA抗体、ならびに2つまたはそれ以上のヒト免疫グロブリン抗体を認識する抗体を含むが、これらに限定されない)は当該技術分野で周知であり、広く市販されており、膨大に研究されている。例えば(限定する目的ではないが)、抗ヒトIgGモノクローナル抗体および/またはポリクローナル抗体のいくつかの商業的供給源には、Rockland Immunochemicals,Inc.(Pottstown、PA);USBiological Life Sciences(Swampscott、MA);Santa Cruz Biotechnology,Inc.(Dallas、TX);Jackson Immuno Research Labs,Inc.(West Grove、PA);Thermo Fisher Scientific(Waltham、MA);およびSigma-Aldrich Corp.(St.Louis、MO)が含まれる。しかしながら、このリストは包括的なものではなく、本開示に従って利用することができる抗ヒトIg抗体の多くのさらなる商業的供給源が存在する。したがって、当業者であれば、本開示に従って利用することができる様々な抗ヒトIg抗体を明確かつ一義的に同定および選択することができるため、抗ヒトIg抗体またはその特徴のさらなる説明は必要ないと考えられる。
【0047】
組成物/キット/マイクロ流体デバイス/方法のアッセイ成分/試薬は、それらが本開示に従って機能することを可能にする任意の形態で提供される。例えば、限定の目的ではないが、試薬の各々は、液体形態で提供され、キット内にバルクおよび/または単一のアリコート形態で配置される。あるいは、特に(しかし非限定的な)実施形態では、試薬の1つまたはそれ以上は、単一のアリコートの凍結乾燥試薬の形態でキット内に配置される。マイクロ流体デバイスにおける乾燥試薬の使用は米国特許第9,244,085号(Samproni)に詳細に記載されており、それらの全体の内容は参照によって明示的に本明細書に組み入れる。
【0048】
本明細書上記で詳細に記載されるアッセイ成分/試薬に加えて、キットは、本明細書に記載されるか、またはそうでなければ企図される特定のアッセイのいずれかを行うための他の試薬をさらに含有してもよい。これらのさらなる試薬の性質は特定のアッセイ形式に依存し、それらの同定は十分に当業者の技術の範囲内である;したがってそれらのさらなる説明は必要ないと考えられる。また、キットに存在する成分/試薬の各々は別個の容器/区画にあってもよいか、または種々の成分/試薬が、成分/試薬の交差反応および安定性に応じて、1つもしくはそれ以上の容器/区画内に合わせられる。さらに、キットは、成分/試薬が配置されているマイクロ流体デバイスを含んでもよい。
【0049】
キット内の種々の成分/試薬の相対量は、アッセイ方法の間に発生することを必要とする反応を十分に最適化し、さらに、アッセイの感度を十分に最適化する濃度の成分/試薬を提供するために広範に変更することができる。適切な状況下で、キット内の成分/試薬の1つまたはそれ以上は凍結乾燥粉末のような乾燥粉末として提供することができ、キットは乾燥試薬を溶解するための賦形剤をさらに含んでもよい;このように、本開示に従って方法またはアッセイを実施するための適切な濃度を有する試薬溶液はこれらの成分から得ることができる。陽性および/または陰性対照もキットに含むことができる。さらに、キットは、キットの使用方法を説明している書面の説明書のセットをさらに含んでもよい。この性質のキットは、本明細書に記載されるか、またはそうでなければ企図される方法のいずれかにおいて使用することができる。
【0050】
本開示のある特定のさらなる非限定的な実施形態は、本明細書上記に記載されるキットのいずれかの成分を含むマイクロ流体デバイスを対象とする。特に、ある特定の非限定的な実施形態は、サンプル中の複数の抗SARS-CoV-2抗体の存在および/または濃度を決定するためのマイクロ流体デバイスを含む。マイクロ流体デバイスは、(i)サンプルが適用される入口チャネルと;(ii)入口チャネルと流体連絡することができる少なくとも第1の区画とを含む。(ii)の区画は、本明細書上記に記載される第1のキットの試薬(a)~(e)(ここで、(c)および(d)はビオチン化した抗原である)、または本明細書上記に記載される第2のキットの試薬(a)~(d)(ここで、(c)は少なくとも1つのビオチン化した抗ヒトIg抗体である)を含有する。
【0051】
本明細書上記に詳細に記載されるか、または本明細書において別様で企図される、一重項酸素により活性化可能な化学発光化合物、増感剤、蛍光分子、標的抗原、ビオチン特異的結合パートナー、および抗ヒトIg抗体のいずれも、本開示のマイクロ流体デバイスに利用することができる。
【0052】
例えば、ある特定の(しかし非限定的な)実施形態では、(a)および(b)の一重項酸素により活性化可能な化学発光化合物は、一重項酸素と化学反応を起こして、同時または後の発光により分解することができる準安定中間体種を形成する物質である。
【0053】
特定の(しかし非限定的な)実施形態では、第1の標的抗原は、SARS-CoV-2 S1タンパク質の少なくとも一部分、例えばそのRBD(しかしこれに限定されない)である。
【0054】
特定の(しかし非限定的な)実施形態では、第2の標的抗原は、SARS-CoV-2ヌクレオカプシドタンパク質の少なくとも一部分、SARS-CoV-2エンベロープタンパク質の少なくとも一部分、またはSARS-CoV-2膜タンパク質の少なくとも一部分である。
【0055】
特定の(しかし非限定的な)実施形態では、増感剤は光増感剤である。
【0056】
特定の(しかし非限定的な)実施形態では、(iii)のビオチン特異的結合パートナーは、アビジンもしくはその類似体であるか、またはビオチンに対する抗体である。
【0057】
特定の(しかし非限定的な)実施形態では、(a)および(b)の蛍光分子は、各々独立して、テルビウム、ウラン、サマリウム、ユーロピウム、ガドリニウム、およびジスプロシウムからなる群から選択される。例えば(限定するものではないが)、テルビウムは約545nmの波長で発光し、ウランは約612nmの波長で発光し、サマリウムは約645nmの波長で発光する。
【0058】
ある特定の非限定的な実施形態では、(ii)の要素(a)~(e)または(a)~(d)(キットに依存する)の全てが同じ区画に存在する。代替的な非限定的な実施形態では、要素(a)~(e)または(a)~(d)(キットに依存する)は、2つまたはそれ以上の区画の間で分割される。
【0059】
デバイスは、本開示に従ってそのデバイスが機能することを可能にする、区画の任意の配列およびそれらの間の種々の成分の分配を提供することができる。
【0060】
マイクロ流体デバイスの区画のいずれかは、試薬を使用するまで、実質的に気密環境でその中に配置される試薬を維持するために封止され;例えば、凍結乾燥試薬を含有する区画は試薬のあらゆる意図的でない再構成を阻止するために封止される。入口チャネルおよび区画、ならびに2つの区画は互いに「流体連絡することができる」と記載され;この語句は、区画の各々を常に封止することができるが、2つの区画はそれらの中またはそれらの間に形成される封止が破壊されるとそれらの間に流体が流れることができることを示す。
【0061】
本開示のマイクロ流体デバイスは、当該技術分野において公知であるか、またはそうでなければ本明細書に企図される任意の他の所望の機能を提供することができる。例えば、限定する目的ではないが、本開示のマイクロ流体デバイスは読み取りチャンバをさらに含んでもよく;読み取りチャンバは本明細書上記に記載される試薬を含有する区画のいずれかであってもよいか、または読み取りチャンバは前記区画と流体連絡することができる。マイクロ流体デバイスは、(限定されないが)洗浄溶液、希釈溶液、賦形剤、干渉溶液、陽性対照、陰性対照、品質管理などの他の溶液を含有する1つまたはそれ以上のさらなる区画をさらに含むことができる。これらのさらなる区画は他の区画の1つまたはそれ以上と流体連絡することができる。例えば、マイクロ流体デバイスは洗浄液を含有する1つまたはそれ以上の区画をさらに含んでもよく、これらの区画はデバイスのいずれかの他の区画と流体連絡することができる。別の例では、マイクロ流体デバイスは1つまたはそれ以上の乾燥試薬を溶解するための賦形剤を含有する1つまたはそれ以上の区画をさらに含んでもよく、区画はデバイスのいずれかの他の区画と流体連絡することができる。なおさらなる例では、マイクロ流体デバイスは希釈液を含有する1つまたはそれ以上の区画を含んでもよく、区画はデバイスのいずれかの他の区画と流体連絡することができる。
【0062】
特定の非限定的な実施形態はまた、サンプル中のビオチンおよび少なくとも1つの追加の標的検体の存在および/または濃度を検出するための方法を対象とする。方法は以下の工程を含む。
【0063】
第1の工程では、抗SARS-CoV-2抗体を含有すると疑われるサンプルを、本明細書上記に記載される第1のキットの組成物(a)~(e)、または本明細書上記に記載される第2のキットの組成物(a)~(d)と同時にまたは全体的もしくは部分的に連続して合わせる。
【0064】
第2の工程では、成分を一緒にインキュベートして、サンプル中の抗SARS-CoV-2スパイクタンパク質抗体(すなわち、第1の標的抗原がS1のRBDである場合、抗SARS-CoV-2-RBD抗体)への(a)および(c)の結合を可能にし、サンプル中の第2の標的抗原に対する抗SARS-CoV-2抗体への(b)および(d)の結合を可能にし、(e)への(c)および(d)の結合を可能にする。(e)への(a)の間接的な結合はスパイクタンパク質複合体の形成を生じ、(e)への(b)の間接的な結合は第2の標的抗原複合体の形成を生じる。スパイクタンパク質複合体および第2の標的抗原複合体の各々において、増感剤は化学発光化合物と近接する。
【0065】
第3の工程では、増感剤を活性化して一重項酸素を生成し、スパイクタンパク質複合体および第2の標的抗原複合体に存在する増感剤の活性化は、各複合体に存在する化学発光化合物の活性化を引き起こす。
【0066】
第4の工程では、スパイクタンパク質複合体における活性化された化学発光化合物によって生じる化学発光の量は、(a)の蛍光分子から放出された光の量を測定することによって決定され、サンプル中の抗SARS-CoV-2スパイクタンパク質抗体の量は、放出された光の量に比例する。
【0067】
第5の工程では、第2の標的抗原複合体における活性化された化学発光化合物によって生じる化学発光の量は、(b)の蛍光分子から放出された光の量を測定することによって決定され、サンプル中の抗SARS-CoV-2-第2の標的抗原抗体の量は、放出された光の量に比例する。
【0068】
ある特定の(しかし非限定的な)実施形態では、方法は、サンプル中に存在する抗SARS-CoV-2抗体が、工程(4)の結果に基づいてワクチン接種に応答して生成されたと判定し、サンプル中に存在する抗SARS-CoV-2抗体が、工程(5)の結果に基づいて感染に応答して生成されたと判定する、第6の工程をさらに含んでもよい。
【0069】
ある特定の(しかし非限定的な)実施形態では、工程(2)~(5)を1回またはそれ以上繰り返してもよい。
【0070】
本明細書上記に詳細に記載されるか、または本明細書において別様で企図される、一重項酸素により活性化可能な化学発光化合物、増感剤、蛍光分子、標的抗原、ビオチン特異的結合パートナー、および抗ヒトIg抗体のいずれも、本開示の方法に利用することができる。
【0071】
例えば、ある特定の(しかし非限定的な)実施形態では、(a)および(b)の一重項酸素により活性化可能な化学発光化合物は、一重項酸素と化学反応を起こして、同時または後の発光により分解することができる準安定中間体種を形成する物質である。
【0072】
特定の(しかし非限定的な)実施形態では、第1の標的抗原は、SARS-CoV-2 S1タンパク質の少なくとも一部分、例えば、そのRBD(しかしこれに限定されない)である。
【0073】
特定の(しかし非限定的な)実施形態では、第2の標的抗原は、SARS-CoV-2ヌクレオカプシドタンパク質の少なくとも一部分、SARS-CoV-2エンベロープタンパク質の少なくとも一部分、またはSARS-CoV-2膜タンパク質の少なくとも一部分である。
【0074】
ある特定の(しかし非限定的な)実施形態では、増感剤は光増感剤であり、工程(3)における増感剤の活性化は、光による照射(例えば、限定されないが、約680nmでの照射)を含む。
【0075】
特定の(しかし非限定的な)実施形態では、(a)および(b)の蛍光分子は、各々独立して、テルビウム、ウラン、サマリウム、ユーロピウム、ガドリニウム、およびジスプロシウムからなる群から選択される。例えば(限定するものではないが)、テルビウムは約545nmの波長で発光し、ウランは約612nmの波長で発光し、サマリウムは約645nmの波長で発光する。
【0076】
抗SARS-CoV-2抗体の存在および/または濃度についてのアッセイが望まれる任意のサンプルを、本開示の方法に従ってサンプルとして利用することができる。サンプルの非限定的な例には、限定されないが、全血またはそのいずれかの部分(すなわち、血漿または血清)、尿、唾液、痰、脳脊髄液(CSF)、皮膚、腸液、腹腔内液、嚢胞液、汗、間質液、細胞外液、涙、粘液、膀胱洗浄液、精液、糞便、胸膜液、鼻咽頭液、およびそれらの組合せのような生体サンプルが含まれる。特定の非限定的な例には、溶解全血細胞および溶解赤血球が含まれる。
【0077】
上述のように、方法の種々の成分は、(同時にまたは連続してのいずれかで)組み合わせて提供される。方法の種々の成分が連続して添加される場合、成分の添加の順序を変更させてもよく;当業者は、アッセイへの異なる成分の添加の特定の所望の順序を決定することができる。添加の最も簡単な順序は、もちろん、全ての材料を同時に添加し、それらから生成されたシグナルを決定することである。あるいは、成分の各々、または成分のグループを連続して合わせることができる。ある特定の実施形態では、インキュベーション工程は1つまたはそれ以上の追加の後に含まれる。
【0078】
代替的な(しかし非限定的な)実施形態では、方法の工程(1)は、最初にサンプルをビオチン化した試薬(すなわち、2つのビオチン化した標的抗原または少なくとも1つのビオチン化した抗ヒトIg抗体)と合わせ、それをインキュベートした後、一重項酸素により活性化可能な化学発光化合物を含む組成物および増感剤を含む組成物を添加することを含む。あるいは、方法の工程(1)は、最初に、サンプル、ビオチン化した試薬(すなわち、2つのビオチン化した標的抗原または少なくとも1つのビオチン化した抗ヒトIg抗体)、および一重項酸素により活性化可能な化学発光化合物を含む組成物を合わせ、それをインキュベートした後、増感剤を含む組成物を添加することを含んでもよい。
【0079】
本開示の特定の実施形態は、LOCI(登録商標)アッセイ形式を有するものとして記載されているが、本開示はまた、ワクチン接種に応答して生成されたSARS-CoV-2抗体の区別により、感染に応答して生成されたSARS-CoV-2抗体が区別されることが望まれる他のアッセイ形式(ならびにこれを実行するキット、マイクロ流体デバイス、および方法)も対象とすることが理解される。例えば(限定するものではないが)、本開示はまた、異なる波長でシグナルを生成する異なる酵素に連結している異なる抗体(しかしこれに限定されない)などの異なるシグナル分子が、本明細書上記に記載される化学発光化合物含有組成物の代わりに利用されるアッセイ形式も含む。
【実施例
【0080】
実施例を本明細書以下に提供する。しかしながら、本開示は、その適用において、本明細書に開示される特定の実験、結果、および実験手順に限定されないことは理解されるべきである。むしろ、実施例は種々の実施形態の1つとして単に提供され、包括的ではなく、例示的であることを意図する。
【実施例1】
【0081】
2020年6月に、米国食品医薬品局(FDA)は、血液中のIgM、IgA、およびIgGを含むSARS-CoV-2抗体の存在を検出するための、Siemens Healthineers(Malvern、PA)によって開発された実験室ベースの全抗体検査の緊急使用許可(EUA)を発行した。SARS-CoV-2ウイルスの表面上のスパイクタンパク質により、ウイルスは複数の臓器および血管に見出されるヒトの細胞に侵入して感染することができる。Siemens Healthineersの全抗体COV2Tアッセイを図1に示し、スパイクタンパク質のRBDに対する抗体を検出するように設計した。これらの抗体の一部はSARS-CoV-2ウイルスを中和し、したがって感染を阻止すると考えられている。SARS-CoV-2に対して開発中の複数の可能性のあるワクチンは、それらの焦点の中にスパイクタンパク質を含む。
【0082】
図1のアッセイ形式は、SARS-CoV-2抗原を両方とも含有する2つの試薬を利用する:第1の試薬は、SARS-CoV-2スパイクタンパク質のS1サブユニット(S1のRBD)のフルオレセイン標識化受容体結合ドメインと予備形成した抗FITCケミビーズを含み、第2の試薬は、S1のビオチン化したRBDのユニバーサルのストレプトアビジンによりコーティングしたセンシビーズの結合によって形成されている。
【0083】
本開示のイムノアッセイ形式は、(i)第2のケミビーズに結合している異なるSARS-CoV-2タンパク質からの第2の抗原を有する第2のケミビーズ、およびそれと会合している異なる蛍光分子、ならびに(ii)ストレプトアビジンによりコーティングしたセンシビーズと相互作用するためのビオチン化した第2の抗原を添加する。このように、2つのLOCI(登録商標)イムノアッセイは、サンプルとの単一の反応で行われる。
【0084】
この実施例では、患者のサンプル中のSARS-CoV-2からの抗ヌクレオカプシド(NC)および抗スパイクタンパク質抗体を同時に検出するための二重イムノアッセイの使用を記載している。患者のサンプル中に存在する抗SARS-CoV-2抗体が感染および/またはワクチン接種によって生成されたかどうか、ならびに各抗体の力価を報告するためにソフトウェアアルゴリズムも開発した。
【0085】
この実施例では、図2に示すように、LOCIアッセイを以下の試薬を用いて構築した:
【0086】
第一に、通常の方法でストレプトアビジンによりコーティングしたユニバーサルのセンシビーズ。
【0087】
第二に、2種類のビオチン化したSARS-CoV-2ウイルス抗原を作製した:ビオチン化したヌクレオカプシドタンパク質またはその一部分(ビオチン-NC);およびビオチン化したスパイクタンパク質またはその一部分(S1またはそのRBDであり得る=ビオチン-RBDは本明細書ではこの成分を表すために使用される)。
【0088】
第三に、2種類のケミビーズ(CB)を作製した:テルビウム(TCB)で染色され、ヌクレオカプシドタンパク質またはその一部分でコーティングしたCB(NC-TCB);およびユーロピウム(ECB)で染色され、スパイクタンパク質またはその一部分でコーティングしたCB(RBD-ECB)。色素および抗原のこれらの特定の組合せは、単に例示のみを目的としていることに留意されたい。任意のケミビーズ色素を任意の抗原タンパク質とともに利用してもよい。唯一の要件は、存在する2つのケミビーズが、異なる波長で蛍光を発する異なる色素を有することである。
【0089】
抗原が結合したケミビーズは、上述の市販の全SARS-CoV-2アッセイで利用されるケミビーズと同じ方法で(すなわち、S1のフルオレセイン標識化RBDを抗FITCケミビーズにコンジュゲートさせることによって)形成することができる。あるいは、抗原をケミビーズの表面に直接コンジュゲートさせてもよい。
【0090】
2種類のケミビーズの蛍光分子(すなわち、テルビウムおよびユーロピウム、または他の蛍光分子)は互いに異なり、異なる波長で発光する;このように、第1の標的抗原に対する抗体を含有する複合体は、第2の標的抗原に対する抗体を含有する複合体とは異なる波長で検出されるため、両方のSARS-CoV-2抗原に対する抗体のアッセイは、同じ反応容器内で同時に実行することができる。あるいは、2つの抗体アッセイは、同じ反応容器内であるが、連続して実行することができる(すなわち、異なる波長でのシグナル測定のために単一の反応容器を2つの異なる検出器に通すことによって)。
【0091】
非限定的な一実施形態では、以下の反応順序が使用される。しかしながら、試薬の添加の順序は当業者によって容易に変更および最適化されることが理解されるであろう。したがって、以下の反応順序は、単に例示のみを目的としており、本開示の方法を限定するものではない。
【0092】
ビオチン化した第1および第2の標的抗原(すなわち、ビオチン-NCおよびビオチン-RBD)を、抗SARS-CoV-2抗体(抗SC2 Ab)を含有すると疑われる患者サンプルと合わせた。次いで2つのケミビーズ(すなわち、NC-TCBおよびRBD-ECB)を添加し、反応混合物をインキュベートしてサンドイッチ形成を可能にした。ヌクレオカプシドタンパク質に対する抗SARS-CoV-2抗体(aNC-Ab)が存在する場合、以下のサンドイッチが形成された:
ビオチン-NC::aNC-Ab::NC-TCB。
S1のRBDに対する抗SARS-CoV-2抗体(aRBD-Ab)が存在する場合、以下のサンドイッチが形成された:
ビオチン:RBD::aRBD-Ab::RBD-ECB。
【0093】
次いでセンシビーズ(SB)を過剰に添加し、反応混合物をインキュベートし、その結果、上記で形成されたサンドイッチがセンシビーズによって捕捉された。ヌクレオカプシドタンパク質に対する抗SARS-CoV-2抗体(aNC-Ab)が存在する場合、以下の複合体が形成された:
SB::ビオチン-NC::aNC-Ab::NC-TCB。
S1のRBDに対する抗SARS-CoV-2抗体(aRBD-Ab)が存在する場合、以下の複合体が形成された:
SB::ビオチン-RBD::aRBD-Ab::RBD-ECB。
【0094】
センシビーズは、それに結合している複数のビオチン特異的結合パートナーを有するユニバーサルの試薬であることに留意されたい。したがって、すぐ上の2つのサンドイッチ複合体は、2つの別個の異なるサンドイッチ複合体であるとして本明細書上記に記載されているが、理論的には、2種類のサンドイッチ(すなわち、ビオチン化した標的抗原::抗SARS-CoV-2抗体::標的検体によりコーティングしたケミビーズ)が同じセンシビーズに結合し得る可能性がある。
【0095】
反応混合物が標的抗体の存在下で上記2つの複合体の形成を可能にするのに十分な時間インキュベートされると(図3に示したように)、化学発光反応が680nmの励起光によって引き起こされて、一重項酸素()を放出する。反応混合物では、(i)および(ii)の一方または両方が起こり得る:
(i)SB::ビオチン-NC::aNC-Ab::NC-TCB複合体が存在する場合、空間的な近接性により、一重項酸素がセンシビーズからケミビーズに拡散し、545nmで光子放出を引き起こし、これは545nmで光を受けるように調整されたPMTによって検出することができる(これはスピンフィルターを有する場合であり得る);および
(ii)SB::ビオチン-RBD::aRBD-Ab::RBD-ECB複合体が存在する場合、空間的な近接性により、一重項酸素がセンシビーズからケミビーズに拡散し、612nmで光子放出を引き起こし、これは612nmで光を受けるように調整されたPMTによって検出することができる(これは現在のLOCI PMT検出である)。
【0096】
典型的には、2つの基本的なシナリオが検出される:(ii)単独からのシグナルまたは(i)および(ii)からのシグナルの組合せ。(i)の複合体によって生成されたシグナルが、単独または(ii)との組合せで検出された場合、抗体は感染によるものである。(ii)の複合体によって生成されたシグナルのみが存在する場合、抗体はワクチン接種によるものである。
【0097】
非限定的な一実施形態では、(i)および(ii)の2種類の複合体によって生成されたシグナルは次いで、機器のソフトウェアにプログラムされた以下のアルゴリズムに入力される:
(a)612nmのシグナルのみが受信された場合、アッセイは抗SARS-CoV-2 RBD抗体のみを検出し、抗体はワクチン接種によるものである。
(b)545nmのシグナルのみが受信された場合、アッセイは抗SARS-CoV-2 NC抗体のみを検出し、抗体は感染によるものであり、感染の初期段階によるものである可能性が高い。
(c)612nmおよび545nmの両方のシグナルが検出された場合、抗体の少なくとも一部は感染によるものである。例えば(限定するものではないが)、以下のシナリオを提示することができる:
1)612nmのシグナルが545nmのシグナルよりも強い場合、患者は感染のみ、またはワクチン接種および感染の両方から生成された抗体を有する可能性がある。
2)612nmのシグナルが545nmのシグナルほど強くないか、またはそれよりも弱い場合、患者は感染を有する。
【0098】
ある特定の非限定的な条件下では、上記のように(b)と(c)を区別する情報を出力することが望ましい場合がある。他の非限定的な条件下では、(a)のシグナルと(b)/(c)の組合せのみをそれぞれ区別するサンプルの「感染なし」と「感染」状況のみを報告することが望ましい場合がある;すなわち、サンプル中のあらゆる抗SARS-CoV-2 NC抗体の検出は、サンプルの「感染」状況の報告を出力すべきである。
【0099】
ビオチン化した標的抗原(すなわち、ビオチン-NCおよびビオチン-RBD)の使用が本明細書上記に記載されているが、これらの2つのビオチン化した試薬は、二重イムノアッセイ形式における代替として1つまたはそれ以上のビオチン化した抗ヒトIg抗体と置き換えることができることが理解されるであろう。
【0100】
SARS-CoV-2 Sタンパク質のRBD部分は、患者からの中和抗体がRBDに結合して、RBDがヒトの細胞膜上のACE2(受容体)に結合するのを阻止するため、上記の実施例で利用されている;したがって、RBDをウイルス抗原として利用するイムノアッセイは、スパイクタンパク質のRBDに対する患者の抗体を検出する。2021年に緊急使用許可(EUA)として米国において認可されたPfizer-BioNTechおよびModerna COVID-19ワクチンの両方は、Sタンパク質全体から作製されている。そのため、本開示の範囲は、本明細書に記載される二重イムノアッセイのいずれにおいても、抗原としてのSタンパク質全体の使用を含む。しかしながら、他のウイルスに対するSタンパク質全体の相同性のために、Sタンパク質全体ではなくCoV-2 RBDを抗原として使用することで、より特異的なシグナルが見られる場合がある。
【0101】
テルビウムおよびユーロピウムを含有するケミビーズが本明細書上記に記載されているが、より広い範囲にわたって異なる波長で蛍光を発する蛍光分子の組合せを使用してもよいことは理解されるであろう。例えば、645nmで光子を放出するサマリウム色素(SCB)で染色したケミビーズをECBの代わりに使用することができ、それに応じてPMTを調整することができる。
【0102】
さらに、本開示の多重アッセイは、3つまたはそれ以上のSARS-CoV-2標的検体に対する抗体を同時に検出するように適合することができる。検出される標的検体に対する追加の抗体の各々に関して、ケミビーズ抗原およびビオチン化抗原のような追加の成分が添加され、同様の追加の成分に存在する蛍光分子は、第1および第2の蛍光分子とは異なり、別個に検出可能な波長で発光するという点で第1および第2の蛍光分子とは異なる。このように、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、10個、またはそれ以上のSARS-CoV-2標的抗原に対する抗体を、検出するために使用されるケミビーズの各々が、異なり、別々に検出可能な波長で各々発光する異なる蛍光分子を含有する限り、単一の反応で検出することができる;このように、単一の反応でいくつの異なる抗体を検出することができるかという制限因子は、本明細書に記載されるように機能する利用可能な蛍光分子の数である。
【0103】
本開示の二重イムノアッセイ形式は、患者の抗SARS-CoV-2抗体が感染によるかワクチン接種によるかを判定するのに有用である。このアッセイ形式はまた、感染のないヒトだけでなく、過去にCOVID-19に感染したヒトにおいてもワクチン接種が有効であるかどうかを判定するのにも有用である。
【実施例2】
【0104】
この実施例の二重イムノアッセイは、上記の実施例1に記載されるアッセイ形式と同様である。しかしながら、このイムノアッセイ形式は、ビオチン化した標的抗原を利用する代わりに、少なくとも1つのビオチン化した抗ヒト免疫グロブリン抗体を利用して、代わりにサンプル中の抗SARS-CoV-2抗体と結合させて、それぞれのケミビーズとサンドイッチを形成し、次いで形成されたサンドイッチをセンシビーズによって捕捉するという点で異なる。
【0105】
この実施例では、図4に示すように、LOCIアッセイは以下の試薬を用いて構築した:
【0106】
第一に、実施例1に記載されるようにユニバーサルのセンシビーズを得た。
【0107】
第二に、実施例1に記載されるように2種類のケミビーズを作製した(NC-TCBおよびRBD-ECB)。
【0108】
第三に、少なくとも1つのビオチン化した抗ヒトIg抗体を作製した。
【0109】
非限定的な一実施形態では、以下の反応順序が使用される。しかしながら、試薬の添加の順序は当業者によって容易に変更および最適化されることが理解されるであろう。したがって、以下の反応順序は、単に例示のみを目的としており、本開示の方法を限定するものではない。
【0110】
少なくとも1つのビオチン化した抗ヒトIg抗体(抗hIg Ab)を、抗SARS-CoV-2抗体(抗SC2 Ab)を含有すると疑われる患者サンプルと合わせた。次いで2つのケミビーズ(すなわち、NC-TCBおよびRBD-ECB)を添加し、反応混合物をインキュベートしてサンドイッチ形成を可能にした。ヌクレオカプシドタンパク質に対する抗SARS-CoV-2抗体(aNC-Ab)が存在する場合、以下のサンドイッチが形成された:
ビオチン-抗hIg Ab::aNC-Ab::NC-TCB。
S1のRBDに対する抗SARS-CoV-2抗体(aRBD-Ab)が存在する場合、以下のサンドイッチが形成された:
ビオチン-抗hIg Ab::aRBD-Ab::RBD-ECB。
【0111】
次いでセンシビーズ(SB)を過剰に添加し、反応混合物をインキュベートし、その結果、上記で形成されたサンドイッチがセンシビーズによって捕捉された。ヌクレオカプシドタンパク質に対する抗SARS-CoV-2抗体(aNC-Ab)が存在する場合、以下の複合体が形成された:
SB::ビオチン-抗hIg Ab::aNC-Ab::NC-TCB。
S1のRBDに対する抗SARS-CoV-2抗体(aRBD-Ab)が存在する場合、以下の複合体が形成された:
SB::ビオチン-抗hIg Ab::aRBD-Ab::RBD-ECB。
【0112】
センシビーズは、それに結合している複数のビオチン特異的結合パートナーを有するユニバーサルの試薬であることに留意されたい。したがって、すぐ上の2つのサンドイッチ複合体は、2つの別個の異なるサンドイッチ複合体であるとして本明細書上記に記載されているが、理論的には、2種類のサンドイッチ(すなわち、ビオチン化した抗ヒトIg抗体::抗SARS-CoV-2抗体::標的検体によりコーティングしたケミビーズ)が同じセンシビーズに結合し得る可能性がある。
【0113】
反応混合物が標的抗体の存在下で上記2つの複合体の形成を可能にするのに十分な時間インキュベートされると(図5に示したように)、化学発光反応が680nmの励起光によって引き起こされて、一重項酸素()を放出する。反応混合物では、(i)および(ii)の一方または両方が起こり得る:
(i)SB::ビオチン-抗hIg Ab::aNC-Ab::NC-TCB複合体が存在する場合、空間的な近接性により、一重項酸素がセンシビーズからケミビーズに拡散し、545nmで光子放出を引き起こし、これは545nmで光を受けるように調整されたPMTによって検出することができる(これはスピンフィルターを有する場合であり得る);および
(ii)SB::ビオチン-抗hIg Ab::aRBD-Ab::RBD-ECB複合体が存在する場合、空間的な近接性により、一重項酸素がセンシビーズからケミビーズに拡散し、612nmで光子放出を引き起こし、これは612nmで光を受けるように調整されたPMTによって検出することができる(これは現在のLOCI PMT検出である)。
【0114】
(i)および(ii)の2種類の複合体によって生成されたシグナルは次いで、機器のソフトウェアにプログラムされた以下のアルゴリズムに入力される:
(a)612nmのシグナルのみが受信された場合、アッセイは抗SARS-CoV-2 RBD抗体のみを検出し、抗体はワクチン接種によるものである。
(b)545nmのシグナルのみが受信された場合、アッセイは抗SARS-CoV-2 NC抗体のみを検出し、抗体は感染によるものであり、感染の初期段階によるものである可能性が高い。
(c)612nmおよび545nmの両方のシグナルが検出された場合、以下のシナリオ:
1)612nmのシグナルが545nmのシグナルよりも強い場合、患者はワクチン接種および感染の両方から生成された抗体を有する。
2)612nmのシグナルが545nmのシグナルほど強くないか、またはそれよりも弱い場合、患者は感染を有する。
【0115】
テルビウムおよびユーロピウムを含有するケミビーズが本明細書上記に記載されているが、より広い範囲にわたって異なる波長で蛍光を発する蛍光分子の組合せを使用することができることは理解されるであろう。例えば、645nmで光子を放出するサマリウム色素(SCB)で染色したケミビーズをECBの代わりに使用することができ、それに応じてPMTを調整することができる。
【0116】
このように、本開示に従って、本明細書上記に示した目的および利点を完全に満たす、組成物、キット、およびデバイス、ならびにそれらを製造し、使用する方法が提供される。本開示は、本明細書上記に示した具体的な図面、実験、結果、および言語と併せて記載してきたが、多くの代替、修飾、および変更が当業者には明らかであることは自明である。したがって、本開示の趣旨および広い範囲内である全てのこのような代替、修飾、および変更を包含することを意図する。
図1
図2
図3
図4
図5
【国際調査報告】