(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-10-23
(54)【発明の名称】レーダーセンサおよび複数層の配列を含む車両アセンブリ
(51)【国際特許分類】
G01S 7/03 20060101AFI20241016BHJP
H01Q 19/06 20060101ALI20241016BHJP
H01Q 15/08 20060101ALI20241016BHJP
H01Q 1/32 20060101ALI20241016BHJP
【FI】
G01S7/03 212
H01Q19/06
H01Q15/08
H01Q1/32 Z
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024519644
(86)(22)【出願日】2022-09-12
(85)【翻訳文提出日】2024-05-27
(86)【国際出願番号】 EP2022075323
(87)【国際公開番号】W WO2023052119
(87)【国際公開日】2023-04-06
(32)【優先日】2021-10-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】391011607
【氏名又は名称】ヴァレオ ビジョン
【氏名又は名称原語表記】VALEO VISION
(74)【代理人】
【識別番号】100107582
【氏名又は名称】関根 毅
(74)【代理人】
【識別番号】100106655
【氏名又は名称】森 秀行
(72)【発明者】
【氏名】ピエール、ルノー
(72)【発明者】
【氏名】ピエール、アルボー
(72)【発明者】
【氏名】フレデリック、アイエツ
【テーマコード(参考)】
5J020
5J046
5J070
【Fターム(参考)】
5J020AA02
5J020BB01
5J020BC03
5J046AB01
5J046MA09
5J070AB24
5J070AD06
5J070AF03
(57)【要約】
本発明は、車両の周囲の対象物体を検出するよう構成されている車両用アセンブリに関し、この車両用アセンブリは、-少なくとも1つの送信アンテナと少なくとも2つの受信アンテナとを含むレーダーセンサと、-複数層の配列であって、(i)前記レーダーセンサに対向して配置され、複数の反射レーダー波に対する出射面(S1)を含む一次層と、(ii)複数の反射レーダー波に対する入射面を含む少なくとも1つの二次層と、(iii)一次層または少なくとも1つの二次層に存在する、少なくとも1つの非平面の所定の形状と、を含む複数層の配列と、を含み、-対象物体の位置に関わらず複数の反射波が少なくとも2つの受信アンテナに同じ入射角で到達するように、一次層の前記出射面は前記少なくとも1つの所定の形状に基づいて計算されることを特徴とする。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両(2)向けの車両用アセンブリ(1)であって、前記車両(2)の周囲の対象物体(3)を検出するよう構成されていて、
- 複数のレーダー波(R1)を送信するよう構成されている少なくとも1つの送信アンテナ(100)と、前記対象物体(3)に反射された複数の反射レーダー波(R2)を受信するよう構成されている少なくとも2つの受信アンテナ(101)とを含むレーダーセンサ(10)と、
- 層状配列(12)であって、
(i)前記レーダーセンサ(10)に対向して設置され、前記複数の反射レーダー波(R2)の出射面(S1)を含む一次層(121)と、
(ii)前記複数の反射レーダー波(R2)の入射面(S2)を含む少なくとも1つの二次層(122)と、
(iii)前記一次層(121)または前記少なくとも1つの二次層(122)に存在する、少なくとも1つの非平面の所定の形状(124)と、
を含む前記層状配列(12)と、
を含み、
- 前記対象物体(3)の位置に関わらず前記複数の反射波(R2)が前記少なくとも2つの受信アンテナ(101)に同じ入射角(a)で到達するように、前記一次層(121)の前記出射面(S1)は前記少なくとも1つの所定の形状(124)に応じて計算されることを特徴とする、
車両用アセンブリ(1)。
【請求項2】
前記一次層(121)と前記少なくとも1つの二次層(122)は、一つの層に統合される、請求項1に記載の車両用アセンブリ(1)。
【請求項3】
前記一次層(121)と前記少なくとも1つの二次層(122)は明確に異なり、異なる屈折率(n1、n2)を有する、請求項1または2に記載の車両用アセンブリ(1)。
【請求項4】
前記一次層(121)の前記出射面(S1)は、前記レーダーセンサ(10)の視野(FOV)内の任意の角度uに対して式A(u,0)=A(u,L)により計算され、Lは前記少なくとも2つの受信アンテナ(101)の間の距離である、請求項1~3のいずれか一項に記載の車両用アセンブリ(1)。
【請求項5】
前記出射面(S1)の形状は有限差分法により求められる、請求項1~4のいずれか一項に記載の車両用アセンブリ(1)。
【請求項6】
前記レーダーセンサ(10)により測定された位相差(Δφ)は、前記車両(2)の処理部(21)の補正関数(f1)により補正される、請求項1~5のいずれか一項に記載の車両用アセンブリ(1)。
【請求項7】
前記層状配列(12)は、ロゴ、またはヘッドランプもしくはテールランプの複数の層を形成する、請求項1~6のいずれか一項に記載の車両用アセンブリ(1)。
【請求項8】
前記所定の形状(124)は、平面状若しくは円錐状の複数の面から作られるレリーフである、請求項1~7のいずれか一項に記載の車両用アセンブリ(1)。
【請求項9】
前記一次層(121)の前記出射面(S1)は部分的に平面状であり、かつ、この平面状の部分に対して後退しているかまたは隆起している部分(125)を含み、この部分(125)が、前記受信アンテナ(101)のそれぞれにより受信された前記複数の反射レーダー波(R2)間の前記位相差(Δφ)において前記所定の形状(124)により引き起こされるシフトを補正するよう構成されている、請求項8に記載の車両用アセンブリ(1)。
【請求項10】
前記一次層(121)は一次屈折率(n1)を有し、前記層状配列(12)はそれぞれ二次屈折率(n2)、三次屈折率(n3)を有する2つの二次層(122a、122b)を含み、前記2つの二次層のうちの一つの層(122b)は前記複数の反射レーダー波(R2)の前記入射面(S2)を含んで前記三次屈折率(n3)を有し、前記入射面(S2)は前記出射面(S1)と部分的に平行であり、前記三次屈折率(n3)は前記一次屈折率(n1)と同じである、請求項1~9のいずれか一項に記載の車両用アセンブリ(1)。
【請求項11】
前記所定の形状(124)は、湾曲していて、かつ平滑面である、請求項1~7のいずれか一項に記載の車両用アセンブリ(1)。
【請求項12】
複数のレーダー波(R1)を送信するよう構成されている少なくとも1つの送信アンテナ(100)と、対象物体(3)に反射された複数の反射レーダー波(R2)を受信するよう構成されている少なくとも2つの受信アンテナ(101)とを含むレーダーセンサ(10)に対向して設置される層状配列(12)であって、
-(i)前記レーダーセンサ(10)に対向して設置され、前記複数の反射レーダー波(R2)の出射面(S1)を含む一次層(121)と、
-(ii)前記複数の反射レーダー波(R2)の入射面(S2)を含む少なくとも1つの二次層(122)と、
- 前記一次層(121)または前記少なくとも1つの二次層(122)に存在する、少なくとも1つの非平面の所定の形状(124)と、
を含み、
- 前記対象物体(3)の位置に関わらず前記複数の反射波(R2)が前記少なくとも2つの受信アンテナ(101)に同じ入射角(a)で到達するように、前記一次層(121)の前記出射面(S1)は前記入射面(S2)の前記少なくとも1つの所定の形状(124)に応じて計算されることを特徴とする、
層状配列(12)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は車両用アセンブリに関する。特に自動車の周囲に置かれた物体の検出に適用することができるが、これに限られない。
【背景技術】
【0002】
車両の周囲の物体を検出するよう構成されている車両用アセンブリは、当業者には既知の方法で
- レーダー波を送信するよう構成されている少なくとも1つの送信アンテナと、物体に反射された反射レーダー波を受信するよう構成されている少なくとも2つの受信アンテナとを含み、各受信アンテナにより受信された反射レーダー波の間の位相差を測定するよう構成されているレーダーセンサと、
- 前記レーダーセンサに対向して設置される少なくとも1つの層を含む層状配列と、
を含む。
【0003】
層状配列は、照射されるロゴを形成するか、または、外側レンズを含むヘッドランプの複数の層もしくは外側レンズを含むテールランプの複数の層を形成する。
【0004】
この先行技術の一つの欠点は、車両のヘッドランプまたはテールランプの外側レンズが大きな曲率を持つ場合、これにより物体の角度位置に計算誤差が生じることである。照射されるロゴが起伏部を有する場合、同じことが当てはまる。実際、特定の対象に対しては、反射レーダー波は特定の入射角では2つの受信アンテナに到達しない恐れがある。それゆえ、対象が検出されないか、多数の対象が混同されかねない。
【発明の概要】
【0005】
この文脈では、本発明は上述した欠点の解決を可能とする車両用アセンブリを提供することを目的とする。
【0006】
この目的のため、本発明は車両向けの車両用アセンブリを提供し、前記車両用アセンブリは前記車両の周囲の対象物体を検出するよう構成されて、
- レーダー波を送信するよう構成されている少なくとも1つの送信アンテナと、前記対象物体に反射された反射レーダー波を受信するよう構成されている少なくとも2つの受信アンテナとを含むレーダーセンサと、
- 層状配列であって、
(i)前記レーダーセンサに対向して設置され、反射レーダー波の出射面を含む一次層と、
(ii)反射レーダー波の入射面を含む少なくとも1つの二次層と、
(iii)一次層または少なくとも1つの二次層に存在する、少なくとも1つの非平面の所定の形状と、
を含む層状配列と、を含み、
- 対象物体の位置に関わらず反射波が前記少なくとも2つの受信アンテナに同じ入射角で到達するように、一次層の前記出射面は前記少なくとも1つの所定の形状に応じて計算されることを特徴とする。
【0007】
非限定の実施形態によれば、前記車両用アセンブリはさらに、以下の中から選択される1つまたは複数の追加の特徴を、単独または任意の技術的に可能な組み合わせで含みうる。
【0008】
非限定の一実施形態によれば、前記一次層と前記少なくとも1つの二次層は一つの層に統合される。
【0009】
非限定の一実施形態によれば、前記一次層と前記少なくとも1つの二次層は明確に異なり、異なる屈折率を有する。
【0010】
非限定の一実施形態によれば、一次層の前記出射面は、前記レーダーセンサの視野内の任意の角度uに対して式A(u,0)=A(u,L)により計算され、Lは前記少なくとも2つの受信アンテナの間の距離である。
【0011】
非限定の一実施形態によれば、前記出射面の形状は有限差分法により求められる。
【0012】
非限定の一実施形態によれば、前記レーダーセンサにより測定された前記位相差は、車両の処理部の補正関数により補正される。
【0013】
非限定の一実施形態によれば、層状配列は、ロゴ、またはヘッドランプもしくはテールランプの複数の層を形成する。
【0014】
非限定の一実施形態によれば、所定の形状は、平面状若しくは円錐状の複数の面から作られるレリーフ(浮き彫り形状)である。
【0015】
非限定の一実施形態によれば、一次層の出射面は部分的に平面状であり、かつ、この平面状の部分に対して後退しているかまたは隆起している部分を含み、当該部分は、各受信アンテナにより受信された反射レーダー波間の前記位相差において前記所定の形状により引き起こされるシフトを補正するよう構成されている。
【0016】
非限定の一実施形態によれば、一次層は一次屈折率を有し、前記層状配列はそれぞれ二次屈折率、三次屈折率を有する2つの二次層を含み、前記2つの二次層のうちの一つの層は反射レーダー波の入射面を含んで三次屈折率を有し、前記入射面は前記出射面と部分的に平行であり、三次屈折率は一次屈折率と同じである。
【0017】
非限定の一実施形態によれば、所定の形状は湾曲しており、平滑面である。
【0018】
また、レーダー波を送信するよう構成されている少なくとも1つの送信アンテナと、対象物体に反射された反射レーダー波を受信するよう構成されている少なくとも2つの受信アンテナとを含むレーダーセンサに対向して設置される層状配列も提供され、前記層状配列は、
-(i)前記レーダーセンサに対向して設置され、反射レーダー波の出射面を含む一次層と、
-(ii)反射レーダー波の入射面を含む少なくとも1つの二次層と、
- 一次層または少なくとも1つの二次層に存在する、少なくとも1つの非平面の所定の形状と、
を含み、
- 対象物体の位置に関わらず反射波が前記少なくとも2つの受信アンテナに同じ入射角で到達するように、一次層の前記出射面は前記入射面の前記少なくとも1つの所定の形状に応じて計算されることを特徴とする。
【0019】
本発明およびその様々な用途は、以下の明細書を読み、添付の図を検討することでより良く理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】
図1は、本発明の非限定の一実施形態に係る車両用アセンブリの模式図であり、前記車両用アセンブリはレーダーセンサおよび層状配列を含む。
【
図2】
図2は、非限定の第1実施形態の非限定の第1変形に係る
図1の車両用アセンブリの層状配列にぶつかる、
図1の車両用アセンブリのレーダーセンサにより送信されたレーダー波に対応する2つの反射レーダー波の模式図であり、前記層状配列は第1層と第2層を含み、第1層と第2層は明確に異なる。
【
図3】
図3は、非限定の第1実施形態の非限定の第2変形に係る
図1の車両用アセンブリの層状配列にぶつかる、
図1の車両用アセンブリのレーダーセンサにより送信されたレーダー波に対応する2つの反射レーダー波の模式図であり、前記層状配列は第1層と第2層を含み、第1層と第2層は明確に異なる。
【
図4】
図4は、非限定の第2実施形態に係る
図1の車両用アセンブリの層状配列にぶつかる、
図1の車両用アセンブリのレーダーセンサにより送信されたレーダー波に対応する2つの反射レーダー波の模式図であり、前記層状配列は第1層、第2層、および第3層を含み、第1層、第2層、および第3層は明確に異なる。
【
図5】
図5は、非限定の第3実施形態に係る
図1の車両用アセンブリの層状配列にぶつかる、
図1の車両用アセンブリのレーダーセンサにより送信されたレーダー波に対応する2つの反射レーダー波の模式図であり、前記層状配列は第1層と第2層を含み、第1層と第2層は統合されている。
【
図6】
図6は、第1層および第2層を含み第1層と第2層は統合されている層状配列に対して、非限定の一実施形態に係る
図1の車両用アセンブリの層状配列の出射面を後述する前記層状配列の入射面に応じて計算することを可能とする図である。
【0021】
構造または機能の点でまったく同じで、様々な図に現れる要素は、特に指示がない限り同じ参照番号で指定されている。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明に係る車両2向けの車両用アセンブリ1について、
図1~
図6を参照して説明する。非限定の一実施形態では、車両2は自動車である。自動車とは、任意の種類の原動機付き車両を意味する。この実施形態は、明細書の残りの部分において非限定の例であるとみなされる。したがって、明細書の残りの部分を通して車両2は自動車2とも呼ばれる。自動車2は処理部21を含む。非限定の一実施形態では、この処理部21は後述されるレーダーセンサ10に統合される。検討される非限定の例では、処理部21はレーダーセンサ10および車両用アセンブリ1の外側に置かれる。
【0023】
車両用アセンブリ1は、自動車2の周囲にある対象3とも呼ばれる物体3を検出するよう構成される。
図1に示されるように、車両用アセンブリ1(車両配列1とも呼ばれる)は、
- レーダー波R1、R2をそれぞれ送信、受信するよう構成されているレーダーセンサ10と、
- 層状配列12と、
を含む。
【0024】
これらの要素については後述する。
【0025】
レーダーセンサ10については後述する。
図1に示されるように、レーダーセンサ10は層状配列12に対向して設置される。非限定の一実施形態では、レーダーセンサ10はミリ波(24GHz~300GHz)、低テラヘルツ波(300MHz~81GHz)、またはマイクロ波(1GHz~300GHz)のレーダーセンサである。非限定の一つの変形では、レーダーセンサ10は76GHz~81GHzのレーダー周波数で動作する。非限定の一実施形態では、レーダー波R1は100MHz~5GHzの周波数帯域で送信される。したがって、非限定の一例では、レーダーセンサ10が77GHzのレーダー周波数、すなわち3.95mmの波長λで1GHzの周波数帯域で動作する場合、レーダーセンサ10は76.5GHz~77.5GHzの周波数帯域で動作する。それゆえ、レーダー波R1は76.5GHz~77.5GHzの周波数範囲、すなわち波長λが3.87mm~3.92mmの範囲で送信される。したがって、非限定の別の例では、レーダーセンサ10が78.5GHzのレーダー周波数で5GHzの周波数帯域で動作する場合、レーダーセンサ10は76GHz~81GHzの周波数帯域で動作する。それゆえ、レーダー波R1は76GHz~81GHzの周波数範囲、すなわち波長λが3.701mm~3.945mmの範囲で送信される。
【0026】
図1に示されるように、レーダーセンサ10は視野FOVを有する。送信されたレーダー波R1は入射角θ’で層状配列12にぶつかる。非限定の一実施形態では、入射角θ’は0°~±30°である。それゆえ、視野FOVは-30°~+30°の間で変化する。視野FOVの中心は、車両軸線Axとも呼ばれる車両の前後軸線に対して0°の角度にある。それゆえ、非限定の別の実施形態では、視野FOVは-90°~+45°の間で変化する。視野FOVの中心は車両軸線Axに対して-45°の角度にあり、層状配列12へのレーダー波R1の入射角θ’は0°に近いままである(車両用アセンブリ1は車両軸線Axに対して約45°に位置する)。
【0027】
非限定の一実施形態では、レーダーセンサ10は自動車2のヘッドランプの中、テールランプの中、またはロゴ(任意選択で照射される)の中に設置される。
【0028】
レーダーセンサ10は、レーダー波R1を送信することで自動車2の外の環境を走査するよう構成される。したがって、
図1に示されるように、レーダーセンサ10は、
- 一次レーダー波R1、または送信されたレーダー波R1とも呼ばれるレーダー波R1を送信するよう構成されている少なくとも1つの送信アンテナ100と、
- 二次レーダー波R2、または反射レーダー波R2とも呼ばれるレーダー波R2を受信するよう構成されている少なくとも2つの受信アンテナ101と、
を含む。
【0029】
レーダーセンサ10は、一次レーダー波R1を生成するよう構成されている少なくとも1つの送信機103と、受信した二次レーダー波R2を見返りに処理するよう構成されている少なくとも1つの受信機104とをさらに含む。非限定の一実施形態では、一つの電子部品を送信機能と受信機能の両方に使用することが可能である。それゆえ、1つまたは複数の送受信機が存在する。前記送信機103は、後で送信アンテナ100により送信される一次レーダー波R1を生成し、このレーダー波は、自動車2の外の環境にある物体3(ここでは図示されている非限定の例における歩行者)に遭遇すると、前記物体3に反射される。このように反射されたレーダー波は、レーダーセンサ10へと送り返される波である。これらの波は、受信アンテナ101により受信される二次レーダー波R2である。これらの波は、レーダーセンサ10の方向に送り返されるレーダー波である。レーダーセンサ10は、各受信アンテナ101により受信される反射レーダー波R2の間の位相差Δφを測定するよう構成される。反射レーダー波R2の伝搬は、スネルの法則により説明されることが思い出されるであろう。非限定の一実施形態では、一次レーダー波R1および二次レーダー波R2は無線周波数波である。非限定の一実施形態では、レーダーセンサ10は複数の送信機103および複数の受信機104を含む。
【0030】
アンテナ100とも呼ばれる送信アンテナ100は、送信機103により生成される一次レーダー波R1を送信するよう構成される。アンテナ101とも呼ばれる受信アンテナ101は二次レーダー波R2を受信し、後でこの二次レーダー波R2を処理する受信機104へこの二次レーダー波R2を伝えるよう構成される。位相差Δφとも呼ばれる位相シフトΔφが受信アンテナ101により受信される二次レーダー波R2の間に存在し、自動車2の外の環境に位置する物体3の自動車2に対する角度位置Posは位相シフトΔφから推定することができる。それゆえ、レーダーセンサ10は、各受信アンテナ101により受信される二次レーダー波R2の間のこの位相差Δφを測定するよう構成される。非限定の実施形態では、アンテナ100、101はパッチアンテナまたはスロットアンテナである。
【0031】
非限定の一実施形態では、アンテナ100、101、送信機103、および受信機104はプリント回路基板105上に配置される。非限定の一実施形態では、プリント回路基板は、プリント回路基板アセンブリ(PCBA)、またはフレキシブルプリント回路基板(フレックスボード)である。
【0032】
レーダーセンサ10は、送信機103および受信機104を制御するよう構成されている電子制御装置106をさらに含む。そのようなレーダーセンサは当業者には既知であるため、本明細書でより詳細に説明されることはない。
【0033】
層状配列12については後述する。
図2~
図5に示されるように、層状配列12は、
- 一次層121と、
- 少なくとも1つの二次層122と、
を含む。
【0034】
非限定の実施形態では、層状配列12は、自動車2のロゴ(任意選択で照射される)を形成するか、または自動車2のヘッドランプもしくはテールランプの層、たとえば外側レンズ、または外側レンズとマスクと呼ばれる装飾部品を形成する。
【0035】
一次層121はレーダーセンサ10に対向して設置され、反射レーダー波R2の出射面S1を含む。非限定の一実施形態では、一次層121はプラスチックで作られる。出射面S1は一次層121の(屈折率n1を有する)材料と(屈折率n0の)空気の間の光屈折界面を形成する。
【0036】
前記二次層122は反射レーダー波R2の入射面S2を含む。反射レーダー波R2は入射角θで入射面S2にぶつかる。入射角θは屈折角βに対応する。入射角θは、反射レーダー波R2が入射面S2に接する場所に応じて変動する。したがって、図において第1反射レーダー波R2は入射角θ0で示され、第2反射レーダー波R2は入射角θで示されている。入射面S2は二次層122の(屈折率n2を有する)材料と(屈折率n0の)空気の間の光屈折界面を形成する。
【0037】
図2~
図4に示される非限定の第1実施形態では、一次層121と前記少なくとも1つの二次層122は明確に異なり、それぞれ異なる屈折率n1、n2を有する。
【0038】
図5に示される非限定の第2実施形態では、一次層121と前記少なくとも1つの二次層122は一つの層に統合され、それゆえ単一の層を形成する。
【0039】
二次層122は所定の形状124を含むことが分かるであろう。これは3D形状である。所定の形状124は、しばしばスタイル上の理由で自動車メーカーにより設定され、それゆえ自動車2に関係している。
【0040】
非限定の第1実施形態では、所定の形状124は、(
図3または
図4に示される)平面または円錐状の面で形成されるロゴの起伏部である。それゆえロゴは浮き出ている。ロゴは任意選択で照射される。
図3および
図4の非限定の例では、起伏部124は台形である。(示されていない)非限定の別の例では、起伏部124はピラミッド形状でありうる。
図3に示される非限定の第1変形では、前記所定の形状124は二次レーダー波R2の入射面S2の一部を形成する。
図4に示される非限定の第2変形では、前記所定の形状124は二次レーダー波R2の入射面S2の一部を形成していない。
【0041】
非限定の第2実施形態では、所定の形状124は、テールランプまたはヘッドランプの(
図2または
図5に示される)平滑面である。平滑とは、角部が含まれず、浮き出ているわけでもない、つまり凹凸がないことを意味する。
【0042】
層状配列12の非限定の3つの実施形態について、それぞれ
図2、
図3、
図4、そして最後に
図5を参照して後述する。
【0043】
図2および
図3に示される非限定の第1実施形態では、層状配列12は2つの層、すなわち、
- 一次層121と、
- 二次層122と、を含み、一次層121と二次層122は明確に異なる。
【0044】
この非限定の第1実施形態によれば、一次層121と二次層122は隣接しており、接合面126により境界される。
【0045】
図2に示される非限定の第1変形では、二次層122は平滑面である所定の形状124を有する。非限定の一例では、平滑面は湾曲している。この場合、入射角θ0は、異なる場所で入射面S2にぶつかる2つの反射レーダー波R2に対する入射角θとは概して異なる。それゆえ二次層122は曲率半径Rを有する。この場合、非限定の一実施形態では、層状配列12はテールランプまたはヘッドランプである。一次層121は二次層122を支えることのできる基板であり、二次層122はテールランプまたはヘッドランプの外側レンズである。所定の形状124は二次レーダー波R2の入射面S2の一部を形成する。
【0046】
図3に示される非限定の第2変形では、二次層122は起伏部である所定の形状124を有する。非限定の一例では、起伏部124は台形である。この場合、非限定の一実施形態では、層状配列12はロゴである。非限定の第2変形では、接合面126は入射面S2の形状に追従する。それゆえ、接合面126は入射面S2と平行に広がる。所定の形状124は二次レーダー波R2の入射面S2の一部を形成する。この場合、入射角θ0は、異なる場所で入射面S2にぶつかる2つの反射レーダー波R2に対する入射角θとは概して異なる。
【0047】
図4に示される非限定の第2実施形態では、層状配列12は、
- 一次層121と、
- 第1二次層122aと、
- 第2二次層122bと、を含み、一次層121、第1二次層122a、および第2二次層122bは明確に異なる。
【0048】
この場合、非限定の一例では、層状配列12はロゴである。この場合、一次層121は第1二次層122aを保持するものとしても機能する光学層であり、第1二次層122aは薄膜であり、第2二次層122bは外側レンズである。反射レーダー波R2の入射面S2は、第2二次層122bの一部を形成する。
【0049】
第1二次層122aは、一次層121と第2二次層122bの間に設置される。一次層121と第1二次層122aは隣接しており、接合面126により境界される。第1二次層122bと第2二次層122bは隣接しており、接合面127により境界される。
【0050】
第1二次層122aは所定の形状124aを含む。第2二次層122aは第1二次層124aのもの124aとまったく同じ所定の形状124bを含む。所定の形状124aは接合面126に沿って延びる。所定の形状124bは接合面127に沿って延びる。非限定の一実施形態では、所定の形状124aおよび124bは起伏部である。非限定の一例では、これらの起伏部124a、124bは台形である。接合面127は接合面126に追従する。それゆえ、接合面127は接合面126と平行に広がり、起伏部124a、124bは直接互いに向き合う。所定の形状124a、124bのどちらも入射面S2の一部を形成していないことが分かるであろう。
【0051】
一次層121は一次屈折率n1を有する。第1二次層122aは二次屈折率n2を有する。第2二次層122bは三次屈折率n3を有する。入射面S2は出射面S1と部分的に平行であり、三次屈折率n3は一次屈折率n1と同じである。これにより、反射レーダー波R2がそれぞれ入射面S2にぶつかる際の入射角θ0、θと同じ入射角a=a0、aで出射面S1から出てくることが可能となり、このため、部分的に平面状の出射面S1を有することが可能となる。これにより、後述される位相シフト補正を実現することが可能となる。
【0052】
図4に示されるように、非限定の一実施形態では、入射面S2は平面状である。この場合、入射角θ0は、異なる場所で入射面S2にぶつかる2つの反射レーダー波R2に対する入射角θと等しい。
【0053】
図5に示される非限定の第3実施形態では、層状配列12は、
- 一次層121と、
- 二次層122と、を含み、一次層121と二次層122は統合されている。
【0054】
入射面S2は出射面S1と平行ではない。
【0055】
図5に示される非限定の一変形では、所定の形状124は平滑面である。非限定の一例では、平滑面は湾曲しており、曲率半径Rを有する。この場合、非限定の一実施形態では、それゆえ単一の層のみを含む層状配列12はテールランプまたはヘッドランプの外側レンズである。(示されていない)非限定の別の変形では、所定の形状124は起伏部である。この場合、関連のある図は
図3と同じになるであろうが、接合面126はなく、n2=n1である。
【0056】
一次層121の出射面S1は、対象物体3がどんな位置であっても反射波R2が2つの受信アンテナ101に同じ入射角で到達するように、入射面S2に応じて計算される。
【0057】
出射面S1の形状を求めるために、以下の計算が行われる。計算は受信アンテナ101を含む水平面内で行われるのが分かるであろう。具体的には、問題のレーダーセンサ10は対象物体3の方位角を求めるが、仰角は求めないので、低い仰角の視野FOVを有する。入射面S2、出射面S1、および所定の形状124は曲率ゼロを有していると推定され、実際には
図6のAZ-AY平面に対して垂直な垂直部分において小さい曲率を有する必要がある。言い換えると、その有益な部分は、AZ-AY平面に対して垂直な軸を有して任意の直角断面を有する、円筒形状の面であると推定される。
【0058】
- gは求められている出射面S1の形状であって、出射面S1のすべての点が座標系Ay-Azで座標(y,z=g(y))を有するような関数とし、
- fは所定の形状124であって、所定の形状124のすべての点が座標系Ay-Azで座標(y,z=f(y))を有するような関数とし、
- dは任意の距離である実数とする。
【0059】
y1とy2は車両軸線Axに対して垂直な水平軸線AYに沿った座標の斉次関数であり、Aは次式の解とする。
【0060】
y1(u,d)は次式の解である。
【数1】
したがってy1はgにより決まる式の解である。
【0061】
【0062】
【0063】
【0064】
f(これは所定の形状124を記述する)が設定されると、なんらかの解が存在する場合は、gはレーダーセンサ10の視野FOV内のすべての角度uに対するA(u,0)=A(u,L)(微分方程式)の解となる。
【0065】
式A(u,0)=A(u,L)を解くために、有限差分法もしくは有限要素法、またはステップバイステップ法が非限定の実施形態で使用される。式を解くための有限差分法については後述する。
【0066】
実際には、χ0=A(a0,0)およびχ=A(a,L)が以下のように計算される。
【0067】
計算について説明するため、レーダーセンサ10の受信アンテナ101、および一次層121と二次層122が統合されて屈折率がn1=n2である層状配列12を示している
図6を参照する。計算のため、受信アンテナ101は点状であるとみなす。受信アンテナ101の間は距離Lだけ互いから離れている。座標系Y、Zはレーダーセンサ10の視軸と平行なZ、および軸線AZに対して垂直な軸線AYと共に使用される。受信アンテナ101のうちの一方は横座標y=0に置かれ、他方は横座標y=-Lに置かれる。
図6は、一次反射レーダー波R21とも呼ばれる、横座標y=-Lの101(a0,-L)で示される受信アンテナ101により受信される反射レーダー波R21と、二次反射レーダー波R22とも呼ばれる、横座標y=0の101(a,0)で示される他方の受信アンテナ101により受信される別の反射レーダー波R22とを示している。
【0068】
以降の様々な計算のために、以下の表記が用いられる:
- g:求められている出射面S1の形状、
- f:所定の形状124、
- χ0:入射面S2にぶつかる反射レーダー波R21のZ軸と平行な垂直線に対する角度であり、χ0の方位は前記角度を示す図中の矢印により与えられる、
- χ:入射面S2にぶつかる他方の反射レーダー波R22のZ軸と平行な垂直線に対する角度であり、χの方位は前記角度を示す図中の矢印により与えられる。この角度χは対象物体3の入射角、または目標角度と呼ばれ、
- a0:受信アンテナ101(a0,-L)により受信される一次反射レーダー波R21のZ軸と平行な垂直線に対する角度であり、a0はχ0やχのような向きになっている、
- a:受信アンテナ101(a,0)により受信される二次反射レーダー波R22のZ軸と平行な垂直線に対する角度であり、a0=aであり、aはχ0やχのような向きになっている、
- α0:出射面S1にぶつかる一次反射レーダー波R21のZ軸と平行な垂直線に対する角度であり、α0はχ0やχのような向きになっている。反射レーダー波R21は第1受信アンテナ101により受信されるものであり、
- α:出射面S1での二次反射レーダー波R22のZ軸と平行な垂直線に対する角度であり、αはχ0やχのような向きになっている。他方の反射レーダー波R22は第2受信アンテナ101により受信されるものであり、
- μ10:出射面S1と受信アンテナ101(a0,-L)の間の一次反射レーダー波R21が辿る光路とも呼ばれる経路であり、言い換えると、図において出射面S1と受信アンテナ101(a0,-L)の間の一次反射レーダー波R21に沿った距離である。この経路は空中を辿り、
- μ20:入射面S2と出射面S1の間の一次反射レーダー波R21が辿る光路とも呼ばれる経路であり、言い換えると、図において入射面S2と出射面S1の間の一次反射レーダー波R21に沿った距離である。この経路は(二次層122と統合されている)一次層121の中を辿り、
- μ1:出射面S1と受信アンテナ101(a,0)の間の二次反射レーダー波R22が辿る光路とも呼ばれる経路であり、言い換えると、図において出射面S1と受信アンテナ101(a,0)の間の二次反射レーダー波R22に沿った距離である。この経路は空中を辿り、
- μ2:入射面S2と出射面S1の間の二次反射レーダー波R22が辿る光路とも呼ばれる経路であり、言い換えると、図において入射面S2と出射面S1の間の二次反射レーダー波R22に沿った距離である。この経路は(二次層122と統合されている)一次層121の中を辿り、
- μ3:2つの反射レーダー波R21、R22に共通な法線の間の入射面S2との最初の接点から始まる、二次反射レーダー波R22が辿る経路である。この経路は空中を辿る。言い換えると、μ3は2つの反射レーダー波R21、R22に対するまったく同じ位相基準へ反射レーダー波R21、R22が戻る経路の差分であり、すなわち位相差はΔφ=0である。
【0069】
一対の受信アンテナ101のうちのより大きなy(ここではy=0)の受信アンテナ101を中心とする座標系AY、AZにおいて、z=f(y)を入射面S2の式とし、z=g(y)を出射面S1の式とする。関数fは、上で示されたように従来から製造会社に課されている所定の形状124であるため、既知である。関数gは求められている。反射レーダー波R21、R22が受信アンテナ101へ到達するように出射面S1が正確に形作られていれば、所与の角度aに対してgを支援する任意のyに対してχ0=χとなる。関数gを規定する一組の横座標yがgを支援することが分かるであろう。
【0070】
これは、光線R21、R22が同じ対象物体3から来ていて、同じ平面波を形成していることを意味する。そうでないなら、出射面S1は正確に配置されておらず、χ0≠χとなる。これは、反射レーダー波R21、R22が同じ対象物体3から来ていないことを意味する。レーダーセンサ10は間違った方向へと導かれ、正しくない対象物体3を検出する可能性がある。
【0071】
関数fおよびgの導関数はf’およびg’と表される。次のように表すことができる:
【数5】
および
【数6】
【0072】
【0073】
【0074】
この式は式[1]として言及される。さらに、μ10は次式の解である。
【数9】
【0075】
Lは2つの受信アンテナ110の間の間隔(距離)である。そして、
【数10】
【0076】
【0077】
【0078】
gがわかれば、任意のyに対して条件χ0=χを満足させるのは可能であるとみなせるかもしれない。
【0079】
逆に言うと、この条件χ0=χによりgを求めることができる。
【0080】
非限定の一実施形態では、gは有限差分法により近似的に求められる。有限差分法の非限定の一例については後述する。
【0081】
gを支援する横座標y1~ym(すなわち、yiでi=1~m、mは整数)の有限な部分集合が選ばれて、値gi=g(yi)が求められる。これによりサンプリング、あるいは換言すると離散化を行うことができる。これを行うため、gのyiに関する微分の近似値g’iを選ぶ必要がある。非限定の一実施形態では、近似値g’iは以下と等しい。
【数13】
【0082】
g’により、所与の横座標yに対して、表面S1に対する法線の方向を求めることが可能となり、この方向は層状配列12を通る反射レーダー波R2の伝搬を計算するのに必要となる。
【0083】
したがって、この式に基づいて、χ0=χに近づくまでgiの値が選ばれる。上述された式A(u,0)=A(u,L)は、選ばれたすべての点giに対してこのように解かれる。言い換えると、χ0=χはすべての点yiに対して最小化される。それゆえ、このように選ばれたgiのすべての値に対するgがわかる。
【0084】
次に、gを支援する点giに対応するgiの値が選ばれたら、関数gは点giとg’iの間で横座標yiにおいて補間される。
【0085】
非限定の一変形では、gおよびg’は点(yi,gi)および(yi,g’i)を通過する線形区分関数により近似しうる。非限定の別の変形では、gおよびg’はスプライン曲線または任意の他の形態の補間により近似しうる。
【0086】
その結果、すべてのyiに対して任意のgiの値の組で条件χ0=χを満足させることができる。
【0087】
そしてgを推定するということは、すべてのyiに対して条件χ0=χを最も満足させられる{gi,i=1~m}の組を見つけることを意味する。
【0088】
測定基準Mが選ばれたら、問題は、多くの既知の最適化アルゴリズムが存在する中で、変数(ここではgi)の有限な組に対して一つの最適化を行うこととなる。非限定の実施形態では、疑似アニーリング法または直線探索法を使用することができて、これらの方法では、与えられた入射面と平行な線が開始点として用いられる。それゆえ、入射面S2と平行な面のgiが最適化を開始するために用いられる。
【0089】
非限定の一実施形態では、測定基準Mは、すべてのyi(i=1~m、mは整数)に対するχ0とχの差分の絶対値の合計である。したがって、
【数14】
【0090】
すべての点yiにより決まるこの測定基準は、最小化する必要がある。それゆえ、具体的には、giの値を見つけるために、この測定基準Mを最小化する必要がある。
【0091】
横座標yiが有限の支持体上で等間隔であれば、giは徐々にg(yi)へ向かい、mは徐々に無限大へと向かう。言い換えると、サンプルが一定の間隔だけ離れていれば、多くの点yiが存在すると解は収束へ向かう。giは離散化された近似解であり、g(yi)が厳密な解である。所与の精度を実現するのに必要とされる点yiの最小の個数mは、補間の近似値(すなわちg’i)と選ばれた選択基準Mにより決まることが分かるであろう。非限定の別の実施形態では、測定基準Mは、すべてのyi(i=1~m、mは整数)に対するχ0とχの差分の二乗の合計の平方根である。
【0092】
このようにして、反射レーダー波R2が2つの受信アンテナ101へ到達できるようにする出射面S1の形状gが見つかる。したがって、レーダーセンサ10が間違った対象物体3を見ることはない。
【0093】
一次層121と前記少なくとも1つの二次層122が明確に異なる層状配列、および一次層121と複数の二次層122を含む層状配列12に同じ推論を適用しうることが分かるであろう。
【0094】
二次層122の所定の形状124のために、レーダーセンサ10により測定される2つの反射レーダー波R2の間の位相差Δφはレーダーセンサ10に対する従来の式、すなわちΔφ0=2πLsin(a)/λには従わず、むしろ以下のもっと複雑な法則に従うことが分かるであろう。レーダーセンサ10の軸線(
図6ではAZで表される)に対して角度方向χに置かれる対象に対しては、レーダーセンサ10は以下の位相シフトΔφを測定する:
【数15】
【0095】
この式は式[2]として言及される。それゆえ、従来の式で位相シフトΔφから推定される対象の方位角の測定値は、位相シフトΔφが従来の式には従わないので誤っていることになる。
【0096】
次のように表すことができる:
【数16】
【数17】
ここで
【数18】
【数19】
【0097】
それゆえ、レーダーセンサ10は目標角度ea(y)とも呼ばれる対象物体3の入射角を提供する:
【数20】
【0098】
この式は式[3]として言及される。
【0099】
この誤った測定値を補正するため、非限定の一実施形態では、処理部21は補正関数f1を入射角ea(y)へ適用して、レーダーセンサ10により測定された位相差Δφに由来する誤差を補正するよう構成される。
【0100】
式[1]から、fとf’は分かる。αおよびμ2はgにより決まる。gは所与のyに対して分かる。それゆえ、処理部21は上述されたようにχ(y)を計算することができる。式[2]では、Δφはgおよびfにより決まる。それゆえ、処理部21はΔφ(y)を計算して、レーダーセンサ10により提供されることになる目標角度ea(y)(式[3])を計算することができる。したがって、処理部21は補正関数f1(EA)=χ(ea-1(EA))を提供し、ここでEAはレーダーにより返される目標角度位置であり、f1(EA)はこの対象の真方位角である。
【0101】
非限定の一実施形態では、処理部21はさらに、対象物体3の角度位置Posを補正後の位相差Δφから計算するよう構成される。
【0102】
要素12は概して方位角χの所与の目標に対して、前記要素12が存在しない場合、または要素12が平行な平面状の面だけで構成される場合に存在するであろう位相差とは異なる、各受信アンテナ101により受信された二次レーダー波R2の間にΔφ0=2π((Lsin(χ))/λ)となる位相差Δφを作り出すことが分かるであろう。実際の位相差Δφは、上の式[2]により与えられる。レーダーセンサ10は、位相差Δφ0に基づいてχを計算する。2π(補正値)を法としてΔφ-Δφ0=0が保証できるのであれば、レーダーは関数f1を呼び出す必要なしにχを正確に測定する。この補正は、2つの受信アンテナ101のうちの一つにより受信される反射レーダー波R2のうちの一つが辿る光路を変更することで実現しうる。実現すべき光路変更は以下と等しい:c=(((Δφ-Δφ0)+n*2π)/2π)*λ、(nは整数)。計算後に出射面S1の一部分が平面状または円錐状となる場合(図では断面が直線部分)、光路の変更は、(1-n1)*cに等しい長さだけこの部分を通る波R2の方向にこの部分を移動させる(並進させる)ことで実現することができる。
【0103】
非限定の第1実施形態では、出射面S1が部分的に平面状である場合(
図3および
図4)、一次層121の出射面S1は前記シフトを補正するように配置される。この補正により、2つの受信アンテナ101のうちの一つへの反射レーダー波R2の光路を短縮することが可能となる。したがって、反射レーダー波R2が通過する、出射面S1により表される最後の光屈折界面の配置により、シフトを補正することが可能となる。この目的のため、出射面S1は、反射レーダー波R2のうちの一つが前記出射面S1と交差する場所に位置する、補正部125と呼ばれる部分125を含む。部分125のこの配置によりシフトは補正される。この部分は、更なる位相シフトを補正する領域である。出射面S1は部分的に平面状であり、この平面状の部分に対して後退しているかまたは隆起している部分125を含む。つまり、部分125は、一次層121の材料の中へ窪んでいるかまたは出射面S1の平面部分に対して突出している。前述した後退しているかまたは隆起している部分125は、前記レーダーセンサ10の2つの受信アンテナ101のうちの一つにより受信される反射レーダー波R2のうちの一つの経路上にあるような位置とされる。それゆえ、この反射レーダー波R2の光路は、レーダーによる方位角角度χの計算を可能とする、各受信アンテナ101により受信される反射レーダー波R2の間の位相差Δφと位相差Δφ0の間のシフトが補正されるように変更される。
【0104】
したがって、
図3に示される非限定の実施形態では、部分125は浮き出ていて、断面は台形である。点線で描かれている出射面S1の一部は、補正がなくて部分125が存在しなかったら出射面S1であったであろう場所を、部分125と同じ場所に示していることが分かるであろう。
【0105】
したがって、
図4に示される非限定の実施形態では、部分125は浮き出ていて、断面は矩形である。点線で描かれている出射面S1の一部は、補正がなくて部分125が存在しなかったら出射面S1であったであろう場所を、部分125と同じ場所に示していることが分かるであろう。第2二次層122bの入射面S2は、部分125を含む出射面S1と平行である。図示されているケースではn1=n3という事実を考慮していることが分かるであろう。
【0106】
複数の二次層122がある場合は、位相差Δφの計算のために等価屈折率が規定されることが分かるであろう。したがって、これらの様々な二次層122は単一の均質な二次層とみなされることがあり、部分125はこの均質な二次層に応じて調整される。
【0107】
非限定の第2実施形態では、出射面S1が連続的で非平面である場合、すなわち、連続的で湾曲している場合(
図2および
図5)、シフトは処理部21の補正関数により補正される。具体的には、この場合は、部分125を用いて出射面S1を変更することでは補正は実現できない。
【0108】
したがって、シフトは、部分125を用いて出射面S1を不連続的にする、もしくは深さ125を調整することで物理的に補正されるか、または、処理部21によりデジタル的に補正される。
【0109】
もちろん、本発明の説明は上述された実施形態、および上述された分野に限定されない。したがって、非限定の別の実施形態では、レーダーセンサ10は2つ以上の送信アンテナ100と3つ以上の受信アンテナ101とを含む。したがって、非限定の別の実施形態では、層状配列12は3つ以上の二次層122を含む。したがって、層状配列12は他の二次層122を含みうる。したがって、非限定の例では、他の二次層122は可視領域において散乱する層、および/もしくは反射する層、ならびに/または不透明な層である。したがって、非限定の別の実施形態では、処理部21により計算される補正関数f1の代わりに、処理部21により用いられる補正表を得るためにレーダーセンサ10が使用される前に、校正を行うことができる。校正は、対象物体3を様々な所定の角度において、レーダーセンサ10により測定された、二次層122の所定の形状124による誤差を含むこれらの角度の値を記録することで実施される。したがって、非限定の一例では、補正表は所定の角度の値と、レーダーセンサ10により測定された対応する角度の値を含み、処理部21は補正に適用される値の差分を計算する。非限定の別の例では、補正表は所定の角度の値と、適用されるべき対応する補正値を含む。
【0110】
したがって、記載された本発明は、具体的には以下の利点を有する:
- 層状配列12内の層の3D形状の影響を受けずに対象物体3の角度位置Posの計算を可能とする、
- レーダーセンサ10が正しくない対象物体を検出するのを防ぐ、
- レーダーセンサ10による位相シフトΔφの測定における誤差の補正を可能とする。
【手続補正書】
【提出日】2024-08-26
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両(2)向けの車両用アセンブリ(1)であって、前記車両(2)の周囲の対象物体(3)を検出するよう構成されていて、
- 複数のレーダー波(R1)を送信するよう構成されている少なくとも1つの送信アンテナ(100)と、前記対象物体(3)に反射された複数の反射レーダー波(R2)を受信するよう構成されている少なくとも2つの受信アンテナ(101)とを含むレーダーセンサ(10)と、
- 層状配列(12)であって、
(i)前記レーダーセンサ(10)に対向して設置され、前記複数の反射レーダー波(R2)の出射面(S1)を含む一次層(121)と、
(ii)前記複数の反射レーダー波(R2)の入射面(S2)を含む少なくとも1つの二次層(122)と、
(iii)前記一次層(121)または前記少なくとも1つの二次層(122)に存在する、少なくとも1つの非平面の所定の形状(124)と、
を含む前記層状配列(12)と、
を含み、
- 前記対象物体(3)の位置に関わらず前記複数の反射波(R2)が前記少なくとも2つの受信アンテナ(101)に同じ入射角(a)で到達するように、前記一次層(121)の前記出射面(S1)は前記少なくとも1つの所定の形状(124)に応じて計算されることを特徴とする、
車両用アセンブリ(1)。
【請求項2】
前記一次層(121)と前記少なくとも1つの二次層(122)は、一つの層に統合される、請求項1に記載の車両用アセンブリ(1)。
【請求項3】
前記一次層(121)と前記少なくとも1つの二次層(122)は明確に異なり、異なる屈折率(n1、n2)を有する、請求項
1に記載の車両用アセンブリ(1)。
【請求項4】
前記一次層(121)の前記出射面(S1)は、前記レーダーセンサ(10)の視野(FOV)内の任意の角度uに対して式A(u,0)=A(u,L)により計算され、Lは前記少なくとも2つの受信アンテナ(101)の間の距離である、請求項
1に記載の車両用アセンブリ(1)。
【請求項5】
前記出射面(S1)の形状は有限差分法により求められる、請求項
1に記載の車両用アセンブリ(1)。
【請求項6】
前記レーダーセンサ(10)により測定された位相差(Δφ)は、前記車両(2)の処理部(21)の補正関数(f1)により補正される、請求項
1に記載の車両用アセンブリ(1)。
【請求項7】
前記層状配列(12)は、ロゴ、またはヘッドランプもしくはテールランプの複数の層を形成する、請求項
1に記載の車両用アセンブリ(1)。
【請求項8】
前記所定の形状(124)は、平面状若しくは円錐状の複数の面から作られるレリーフである、請求項
1に記載の車両用アセンブリ(1)。
【請求項9】
前記一次層(121)の前記出射面(S1)は部分的に平面状であり、かつ、この平面状の部分に対して後退しているかまたは隆起している部分(125)を含み、この部分(125)が、前記受信アンテナ(101)のそれぞれにより受信された前記複数の反射レーダー波(R2)間の前記位相差(Δφ)において前記所定の形状(124)により引き起こされるシフトを補正するよう構成されている、請求項8に記載の車両用アセンブリ(1)。
【請求項10】
前記一次層(121)は一次屈折率(n1)を有し、前記層状配列(12)はそれぞれ二次屈折率(n2)、三次屈折率(n3)を有する2つの二次層(122a、122b)を含み、前記2つの二次層のうちの一つの層(122b)は前記複数の反射レーダー波(R2)の前記入射面(S2)を含んで前記三次屈折率(n3)を有し、前記入射面(S2)は前記出射面(S1)と部分的に平行であり、前記三次屈折率(n3)は前記一次屈折率(n1)と同じである、請求項
1に記載の車両用アセンブリ(1)。
【請求項11】
前記所定の形状(124)は、湾曲していて、かつ平滑面である、請求項
1に記載の車両用アセンブリ(1)。
【請求項12】
複数のレーダー波(R1)を送信するよう構成されている少なくとも1つの送信アンテナ(100)と、対象物体(3)に反射された複数の反射レーダー波(R2)を受信するよう構成されている少なくとも2つの受信アンテナ(101)とを含むレーダーセンサ(10)に対向して設置される層状配列(12)であって、
-(i)前記レーダーセンサ(10)に対向して設置され、前記複数の反射レーダー波(R2)の出射面(S1)を含む一次層(121)と、
-(ii)前記複数の反射レーダー波(R2)の入射面(S2)を含む少なくとも1つの二次層(122)と、
- 前記一次層(121)または前記少なくとも1つの二次層(122)に存在する、少なくとも1つの非平面の所定の形状(124)と、
を含み、
- 前記対象物体(3)の位置に関わらず前記複数の反射波(R2)が前記少なくとも2つの受信アンテナ(101)に同じ入射角(a)で到達するように、前記一次層(121)の前記出射面(S1)は前記入射面(S2)の前記少なくとも1つの所定の形状(124)に応じて計算されることを特徴とする、
層状配列(12)。
【国際調査報告】