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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-10-23
(54)【発明の名称】空間光変調器描画によるエッジ配置
(51)【国際特許分類】
   G03F 7/20 20060101AFI20241016BHJP
【FI】
G03F7/20 501
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024519889
(86)(22)【出願日】2022-09-27
(85)【翻訳文提出日】2024-04-01
(86)【国際出願番号】 EP2022076800
(87)【国際公開番号】W WO2023057259
(87)【国際公開日】2023-04-13
(31)【優先権主張番号】21201227.2
(32)【優先日】2021-10-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】513253940
【氏名又は名称】マイクロニック アクティエボラーグ
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100092624
【弁理士】
【氏名又は名称】鶴田 準一
(74)【代理人】
【識別番号】100114018
【弁理士】
【氏名又は名称】南山 知広
(74)【代理人】
【識別番号】100153729
【弁理士】
【氏名又は名称】森本 有一
(72)【発明者】
【氏名】マルティン グリムトフト
(72)【発明者】
【氏名】ヤーン ステルナル
(72)【発明者】
【氏名】ロベルト エクルンド
(72)【発明者】
【氏名】フレードリク イレーン
(72)【発明者】
【氏名】ポントゥス ステンストレーム
【テーマコード(参考)】
2H197
【Fターム(参考)】
2H197AA28
2H197AA29
2H197BA02
2H197CC05
2H197DA03
2H197DB06
2H197DB23
2H197HA03
(57)【要約】
SLMを用いて描画するための画素データを作成する方法には、パターンを表すデータを取得するステップS10が含まれる。S20にてデータは画素の格子にラスタ化される。ラスタ化は、パターンのエッジを覆う画素にエッジ調整値を割り当てるステップS22を含む。S30にて、ラスタ化されたパターンは、それぞれの放射露光に関連する多数のラスタ化されたパターン平面に分割される。S32にて、完全に覆われた画素の放射露光の合計は、パターンが印刷される基板上の放射線感受性層を活性化するための閾値を超える。S34にて、パターンエッジ画素に対する放射露光の合計は、放射露光の合計が活性化閾値に達する位置を、エッジ調整値に対応する距離だけ移動させるのに充分な量に対応する。S40にて、ラスタ化されたパターン平面を表すデータが出力される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
空間光変調器(2)を用いて描画するための画素データを作成する方法であって、
-ラスタ化モジュール(60)の入力インターフェース(66)によって、印刷されるパターン(30)を表すデータを取得するステップ(S10)と、
-前記ラスタ化モジュール(62)の処理ユニット(62)にて、画素(22)の格子(20)に印刷される前記パターン(30)をラスタ化するステップ(S20)であって、
前記ラスタ化するステップ(S20)は、印刷される前記パターン(30)のエッジ(31)を覆う画素(22C)にエッジ調整値(107)を割り当てるステップ(S22)を含み、
前記エッジ調整値(107)は、印刷される前記パターン(30)によって覆われる隣接画素(22A)を基準とした、前記エッジ(31)が配置される画素幅(108)の一部である、ステップと、
-前記処理ユニット(62)にて、前記ラスタ化されたパターン(15)をn個のラスタ化されたパターン平面(16)に分割するステップ(S30)であって、
前記ラスタ化されたパターン平面(16)はそれぞれ、それぞれの放射露光(102、105、110)に関連付けられ、
印刷される前記パターン(30)によって完全に覆われている画素(22A)に対する前記ラスタ化されたパターン平面(16)の放射露光(102、105、110)の合計は、前記パターン(30)が印刷される基板(10)上の放射線感受性層を活性化するための閾値(101)を超え、
印刷される前記パターン(30)のエッジ(31)に関連する画素(22C)に対する前記ラスタ化されたパターン平面(16)の放射露光(102、105、110)の合計は、放射露光の合計が前記放射線感受性層を活性化するための前記閾値(101)に達する位置を、前記エッジ調整値(107)に対応する距離(Δ)だけ移動させるのに充分な量に対応する、ステップと、
-前記ラスタ化ユニット(60)の出力インターフェース(68)によって、前記n個のラスタ化されたパターン平面(16)を表すデータを出力するステップ(S40)であって、
前記それぞれの放射露光(102、105、110)のうちの少なくとも2つは異なる、ステップと、を含む、方法。
【請求項2】
前記それぞれの放射露光(102、105、110)の全部が異なることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記それぞれの放射露光(102、105、110)の少なくとも大多数が、前記それぞれの放射露光(102、105、110)のうちのもう1つの2倍の放射線量を有することを特徴とする、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記それぞれの放射露光(102、105、110)の少なくとも大多数が、前記それぞれの放射露光(102、105、110)のうちのもう1つと一定の差だけ放射線量が異なることを特徴とする、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項5】
前記放射露光(102、105、110)が、n個のラスタ化されたパターン平面(16)の各シーケンスにわたって非単調に変化することを特徴とする、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項6】
前記それぞれの放射露光(102、105、110)の大多数について、最も近い以前の放射露光(102、105、110)及び最も近い後続の放射露光(102、105、110)の線量が、両方とも高くなるか、両方とも低くなるかのいずれかであることを特徴とする、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
空間光変調器(2)での描画のための方法であって、
-a)印刷されるパターンに関連するn個のラスタ化されたパターン平面(16)を表すデータを取得するステップ(S50)であって、前記ラスタ化されたパターン平面(16)は、請求項1から6のいずれか1項に記載の方法によって取得される、ステップと、
-b)前記第1のラスタ化されたパターン平面(16)のスタンプ領域(14、14´´)に合わせて空間光変調器(2)を配置するステップ(S55)と、
-c)前記第1のラスタ化されたパターン平面(16)に関連する前記放射露光(102、105、110)に対応する放射線量で、前記放射線感受性層を有する基板を露光するステップ(S60)と、
-e)それぞれの関連する放射線量で露光することによって、前記n個のラスタ化されたパターン平面(16)に対して前記ステップb)及びc)を繰り返すステップ(S70)と、
-f)走査スキームに従って追加のスタンプ領域(16)に対して前記ステップb)、c)及びe)を繰り返すステップ(S75)と、を含む、方法。
【請求項8】
-d)前記基板に対して前記空間光変調器(2)を、前記走査方向の前記スタンプ領域(14、14´´)の幅をnで割った値に等しい走査方向の距離だけ走査するステップ(S65)を、さらに含むことを特徴とする、請求項7に記載の方法であって、
前記ステップe)は、前記走査距離に従って移動したそれぞれの前記スタンプ領域(16)を用いて実施され、それによって以前の露光と部分的に重なり合い、
前記ステップf)の繰り返しはステップd)をさらに含む、方法。
【請求項9】
前記ラスタ化されたパターン平面(16)は、少なくとも2つのラスタ化されたパターン平面(16)が、低い方の放射露光(102、105、110)に関連するラスタ化されたパターン平面(16)によって適時に囲まれ、その結果、全画素(22)の放射露光の非単調な時間変化が生じるように、適時に選択されることを特徴とする、請求項7又は8に記載の方法。
【請求項10】
-基板を露光する前記ステップc)の後に、画素(22)の露光レベルを測定するステップと、
-予想される露光レベルからの任意の逸脱を補償するために、前記ラスタ化されたパターン平面(16)の未だ使用されていない部分を調整するステップと、をさらに含むことを特徴とする、請求項7から9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
処理ユニット(62)、メモリ(64)、入力インターフェース(66)及び出力インターフェース(68)を具備する、空間光変調器(2)を用いて描画するための画素データを作成するためのラスタ化モジュール(60)であって、
前記入力インターフェース(66)は、印刷されるパターン(30)を表すデータを取得するように構成され、
前記処理ユニット(62)は、印刷される前記パターン(30)を画素(22)の格子(20)にラスタ化するように構成され、
前記ラスタ化は、印刷される前記パターン(30)のエッジ(31)を覆う画素(22C)へのエッジ調整値(107)の割り当てを含み、
前記エッジ調整値(107)は、印刷される前記パターン(30)によって覆われる隣接画素(22A)を基準とした、前記エッジ(31)が配置される前記画素幅(108)の一部であり、
前記処理ユニット(62)は、前記ラスタ化されたパターン(15)をn個のラスタ化されたパターン平面(16)に分割するようにさらに構成され、
ラスタ化されたパターン平面(16)はそれぞれ、それぞれの放射露光(102、105、110)に関連付けられ、
印刷される前記パターン(30)によって完全に覆われている画素(22A)に対する前記ラスタ化されたパターン平面(16)の放射露光(102、105、110)の合計は、前記パターン(30)が印刷される基板上の放射線感受性層を活性化するための閾値(101)を超え、
印刷される前記パターン(30)のエッジ(31)に関連する画素(22C)に対する前記ラスタ化されたパターン平面(16)の放射露光(102、105、110)の合計は、放射露光の合計が前記放射線感受性層を活性化するための前記閾値(101)に達する位置を、前記エッジ調整値(107)に対応する距離(Δ)だけ移動させるのに充分な量に対応し、
前記出力インターフェース(68)は、前記n個のラスタ化されたパターン平面(16)を表すデータを出力するように構成され、
前記処理ユニット(62)は、前記それぞれの放射露光(102、105、110)のうちの少なくとも2つが異なるように、前記放射露光(102、105、110)を選択するようにさらに構成される、ラスタ化モジュール。
【請求項12】
前記処理ユニット(62)は、前記それぞれの放射露光(102、105、110)の全部が異なるように、前記放射露光(102、105、110)を選択するようにさらに構成されることを特徴とする、請求項11に記載のラスタ化モジュール。
【請求項13】
制御モジュール(82)と、
空間光変調器(2)によってスタンプ領域(14)にパターンを描画するように配置された画像化モジュール(84)であって、前記空間光変調器(2)は、標的表面(10)上のスタンプ領域(14、14´´)内に画素(22)の格子(20)を生成するように配置された、個別に制御可能な素子(4)のアレイ(3)を有し、個々の画素(22)の照明はそれぞれの前記素子(4)によって制御される、画像化モジュール(84)と、を具備する、パターン発生器(80)であって、
前記制御モジュール(82)は、請求項11又は12に記載のラスタ化モジュール(60)から、印刷されるパターン(30)に関連付けられたn個のラスタ化されたパターン平面(16)を表すデータを取得するように構成され、
前記画像化モジュール(84)は、前記第1のラスタ化されたパターン平面(16)のスタンプ領域(14、14´´)に合わせて前記空間光変調器(2)を配置するように構成され、
前記画像化モジュール(84)は、前記第1のラスタ化されたパターン平面(16)に関連する前記放射露光(102、105、110)に対応する放射線量で、前記放射線感受性層を有する基板を露光するように構成され、
前記画像化モジュール(84)は、前記空間光変調器(2)を配置するステップと、それぞれの関連する放射線量で露光することによって、前記n個のラスタ化されたパターン平面(16)を露光するステップとを繰り返すように構成され、
前記画像化モジュール(84)は、走査スキームに従って、前記空間光変調器(2)を配置するステップと、露光するステップと、追加のスタンプ領域(14、14´´)についてこのようなステップを繰り返すステップと、を繰り返すようにさらに構成される、パターン発生器。
【請求項14】
前記制御モジュール(82)は、少なくとも2つのラスタ化されたパターン平面(16)が、低い方の放射露光(102、105、110)に関連するラスタ化されたパターン平面(16)によって適時に囲まれ、その結果、全画素(22)の放射線量の非単調な時間変化がもたらされるように、前記画像化モジュール(84)によって使用されるラスタ化されたパターン平面(16)を適時に選択するようにさらに構成されることを特徴とする、請求項13に記載のパターン発生器。
【請求項15】
-基板を露光した後、画素の露光レベルを測定するように構成された露光レベル測定ユニットをさらに具備する、請求項13又は14に記載のパターン発生器であって、
それによって、前記制御モジュールは、予期される露光レベルからの任意の逸脱を補償するために、前記ラスタ化されたパターン面(16)の未だ使用されていない部分を調整するようにさらに構成される、パターン発生器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本技術は、例えば、マスク描画又は直接描画などの描画に関し、特に、空間光変調器のための方法と配置に概ね関する。
【背景技術】
【0002】
高品質のパターン印刷を得るために、空間光変調器(SLM)、例えば、デジタルマイクロミラーデバイス(DMD)、液晶ディスプレイ(LCD)、回折格子ライトバルブ(GLV)、平面ライトバルブ(PLV)、マイクロシャッターアレイ(MSA)、アナログ空間光変調器(ASLM)及び/又は液晶オンシリコン(LCS)を使用することが多い。SLMは、標的表面上のスタンプ領域内に画素の格子を生成するために配置された個別に制御可能な素子のアレイを有する。SLMでは、SLM内の制御可能な素子のパターンを、放射線感受性被覆を有する基板の一部の露光に変換することになる。SLMは1回の動作中に基板に対して連続的に移動し、連続する短い放射線パルスがSLMの制御可能素子アレイを照射することができる。これにより、光を反射するか透過する制御可能な素子の瞬間的なパターンが基板の一部の領域に「スタンプ」されることになる。次に、光を制御する制御可能素子のパターンは、次の放射線パルスを導入する前に、変更されてもよく、基板表面はパターン化された露光で徐々に覆われる。この露光は、二元的な性質を有する。即ち、露光は、放射線感受性被覆の特性を変化させるのに充分なものであるか、そうではないかのいずれかである。換言すれば、放射線が閾値レベルを超えると、放射線感受性被覆は反応することになる。各制御可能素子は、マシン画素と呼ばれる基板の特定の領域に対応する。
【0003】
印刷される構造を、マシン画素のマシン格子上にマッピングすることができる。印刷される構造内に完全に収まるマシン画素には全面露光が割り当てられ、マシン画素のあらゆる部分の放射線レベルが閾値レベルを超えることが保証される。印刷される構造の完全に外側にあるマシン画素には露光が割り当てられず、マシン画素のあらゆる部分の放射線レベルが閾値レベルよりも低いことが保証される。
【0004】
印刷される構造のエッジを覆うマシン画素の場合、状況はこれより多少複雑なものになる。印刷される構造によって覆われている隣接するマシン画素から、一部の放射線がエッジに関連するマシン画素にも入ることになる。しかし、この放射線レベルは閾値よりも低く、任意の「露光されない」隣接マシン画素に向かって低下する。しかし、低めの放射露光の放射線をエッジ関連マシン画素に追加することによって、構造で覆われたマシン画素に最も近い総線量が閾値を超える可能性がある。これにより、閾値を超えた基板の領域のエッジが、露光されていない隣接マシン画素に向かって移動することになる。このようにして、追加の放射露光を適応させることにより、マシン画素のサイズよりもかなり優れたエッジ配置の精度が達成される可能性がある。
【0005】
SLM描画にて放射線のオン/オフ原理を使用する場合、問題が発生する。追加の露光を複数回の露光によって提供し、それによって、総放射線量が変化する場合がある。しかし、要求されたエッジ配置が大幅に異なる可能性がある場合、個々のエッジ関連マシン画素に適合した異なる追加の放射露光を提供するには、多数の追加露光が必要になる場合がある。露光が追加されるたびに、全体的な製造速度が低下する。
【0006】
このため、SLMの正確なエッジ配置のための改善された方法と配置が必要である。
【発明の概要】
【0007】
本技術の一般的な目的は、空間光変調器のエッジ配置を改善することである。
【0008】
上記の目的は、独立請求項に記載の方法及び装置によって達成される。好ましい実施形態を従属請求項にて定義する。
【0009】
一般的に言えば、第1の態様では、空間光変調器を用いて描画するための画素データを作成する方法には、ラスタ化モジュールの入力インターフェースによって、印刷されるパターンを表すデータを取得するステップが含まれる。印刷されるパターンは、ラスタ化モジュールの処理ユニットにて画素の格子にラスタ化される。ラスタ化するステップは、印刷されるパターンのエッジを覆う画素にエッジ調整値を割り当てるステップを含む。エッジ調整値は、印刷されるパターンによって覆われる隣接画素を基準とした、エッジが配置される画素幅の一部である。ラスタ化されたパターンは、処理ユニット内で、n個のラスタ化されたパターン平面に分割される。ラスタ化されたパターン平面のそれぞれは、それぞれの放射露光に関連付けられている。印刷されるパターンによって完全に覆われる画素のラスタ化されたパターン平面の放射露光の合計は、パターンが印刷される基板上の放射線感受性層を活性化するための閾値を超える。印刷されるパターンのエッジに関連付けられた画素のラスタ化されたパターン平面の放射露光の合計は、放射露光の合計が放射線感受性層を活性化するための閾値に達する位置を、エッジ調整値に対応する距離だけ移動させるのに充分な量に対応する。n個のラスタ化されたパターン平面を表すデータを、ラスタ化ユニットの出力インターフェースによって出力する。それぞれの放射露光のうちの少なくとも2つは異なる。
【0010】
第2の態様では、空間光変調器を用いて描画するための方法には、印刷されるパターンに関連するn個のラスタ化されたパターン平面を表すデータを取得するステップa)が含まれる。ラスタ化されたパターン平面は、第1の態様による方法によって取得される。ステップb)では、空間光変調器を、第1のラスタ化されたパターン平面のスタンプ領域に従って配置する。ステップc)では、放射線感受性層を有する基板を、第1のラスタ化されたパターン平面に関連する放射露光に対応する放射線量で露光する。ステップe)では、ステップb)及びc)は、それぞれ関連する放射露光で露光することによって、n個のラスタ化されたパターン平面に対して繰り返される。ステップf)では、ステップb)、c)及びe)は、走査スキームに従って追加のスタンプ領域に対して繰り返される。
【0011】
第3の態様では、空間光変調器を用いて描画するための画素データを作成するためのラスタ化モジュールが、処理ユニット、メモリ、入力インターフェース及び出力インターフェースを備える。入力インターフェースは、印刷されるパターンを表すデータを取得するように構成される。処理ユニットは、印刷されるパターンを画素の格子にラスタ化するように構成される。ラスタ化するステップは、印刷されるパターンのエッジを覆う画素にエッジ調整値を割り当てるステップを含む。エッジ調整値は、印刷されるパターンによって覆われる隣接画素を基準とした、エッジが配置される画素幅の一部である。処理ユニットは、ラスタ化されたパターンをn個のラスタ化されたパターン平面に分割するようにさらに構成される。ラスタ化されたパターン平面のそれぞれは、それぞれの放射露光に関連付けられている。印刷されるパターンによって完全に覆われる画素のラスタ化されたパターン平面の放射露光の合計は、印刷されるパターンが印刷される基板上の放射線感受性層を活性化するための閾値を超える。印刷されるパターンのエッジに関連付けられた画素のラスタ化されたパターン平面の放射露光の合計は、放射露光の合計が放射線感受性層を活性化するための閾値に達する位置を、エッジ調整値に対応する距離だけ移動させるのに充分な量に対応する。出力インターフェースは、n個のラスタ化されたパターン平面を表すデータを出力するように構成される。処理ユニットは、それぞれの放射露光のうちの少なくとも2つが異なるように放射露光を選択するようにさらに構成される。
【0012】
第4の態様では、パターン発生器が制御モジュール及び画像化モジュールを備える。画像モジュールは、空間光変調器によってスタンプ領域にパターンを描画するように配置される。空間光変調器は、標的表面上のスタンプ領域内に画素の格子を生成するように配置された個別に制御可能な素子のアレイを有する。個々の画素の照明を、それぞれの素子によって制御する。制御モジュールは、第3の態様に従って、印刷されるパターンに関連付けられたn個のラスタ化されたパターン平面を表すデータをラスタ化モジュールから取得するように構成される。画像化モジュールは、第1のラスタ化されたパターン平面のスタンプ領域に合わせて空間光変調器を配置するように構成される。画像化モジュールは、第1のラスタ化されたパターン平面に関連付けられた放射露光に対応する放射線量で、放射線感受性層を有する基板を露光するように構成される。画像化装置は、空間光変調器の配置と、それぞれ関連する放射線量で露光することによるn個のラスタ化されたパターン平面の露光とを繰り返すように構成される。画像化装置は、走査スキームに従って、空間光変調器の配置と、露光と、追加のスタンプ領域に対するその繰り返しと、を繰り返すようにさらに構成される。
【0013】
提案された技術の利点の1つには、さらに正確なエッジ配置を達成することができることが挙げられる。他の利点については、詳細な説明を読めば理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0014】
本発明は、その追加の目的及び利点とともに、以下の説明を参照することによって添付の図面とともに最もよく理解される可能性がある。
図1図1は、SLMに基づくパターン生成器を概略的に示す。
図2図2は、標的表面の一部を概略的に示す。
図3図3は、スタンプ領域が移動した状態の標的表面の一部を概略的に示す。
図4図4は、標的表面での放射線量を示す図である。
図5図5は、パターンが画素境界と一致しない標的表面の一部を概略的に示す。
図6図6は、標的表面での部分的放射線量を伴う放射線量を示す図である。
図7図7は、放射線量とエッジ移動との関係を示す図である。
図8図8は、一連のラスタ化されたパターン平面による照射を概略的に示す。
図9図9は、図8の照射の最終結果を概略的に示す。
図10図10は、SLMによる描画用の画素データを作成する方法の一実施形態のステップの流れ図である。
図11図11は、SLMによる描画方法の一実施形態のステップの流れ図である。
図12図12は、多数のラスタ化されたパターン平面に対する一連の放射露光の実施形態を示す図である。
図13図13は、多数のラスタ化されたパターン平面に対する一連の放射露光の実施形態を示す図である。
図14図14は、多数のラスタ化されたパターン平面に対する一連の放射露光の実施形態を示す図である。
図15図15は、多数のラスタ化されたパターン平面に対する一連の放射露光の実施形態を示す図である。
図16図16は、ラスタ化モジュールの一実施形態を概略的に示す。
図17図17は、パターン生成システムの一実施形態を概略的に示す。
図18図18は、パターン生成器の一実施形態を概略的に示す。
【発明を実施するための形態】
【0015】
図面全体を通じて、類似する素子又は対応する素子には同一の参照番号を使用する。
【0016】
提案された技術をさらによく理解するには、空間光変調器(SLM)のいくつかの原理の簡単な概要から始めると有用な場合がある。
【0017】
図1は、SLM2に基づくパターン生成器1を概略的に示す。SLM2はここでは、個別に制御可能な素子4、この実施形態では、放射線反射素子のアレイ3として示している。アレイ3に入射する光5を反射して、標的表面10に向かう一連の露光ビーム6とする。標的表面10は、典型的には、標的支持体12によって支持される。SLM2の個々の素子4は、反射を許容するか、反射を抑制するように制御可能である。SLM2の素子4をこのほか、無効に設定し、それによりアレイ3の活性部分を低減してもよい。
【0018】
SLM2の活性部分から出た光は標的表面10に向かい、その標的表面上に画素22の格子20を形成する。画素22、即ち、撮像素子は一体となってスタンプ領域14を形成する。これにより、個々の画素22のそれぞれの照明は、SLM2のそれぞれの素子4によって制御される。典型的には、SLM格子20に関してスタンプ領域14の公称光学的スケーリングが存在する。この公称スケーリングは、異なる距離などの異なる設計パラメータと通常の光学系とによって決定される均一なスケーリングである。そのような公称スケーリングを達成するための配置は当業者には周知であり、これ以上は考察しない。
【0019】
アレイ3に入射する光5は、あらゆる個別に制御可能な素子4が本質的に同一の当初の線量を受けるという意味で均一である。このため、素子4の制御は、個々の画素22ごとにオン/オフ動作を提供することになるが、標的表面10に到達する任意の光の線量測定は、入射光5の線量によって決定される。標的表面10のさまざまな領域のさまざまな露光の間でこの入射光5の線量を制御することにより、さまざまな位置にてさまざまな放射線量を達成することができる。しかし、素子4が「オン」であるあらゆる位置には、各露光に対して同一の線量が供給されることになる。
【0020】
SLM2の素子4の個別設定に従ってスタンプ領域14を露光した後、スタンプ領域14を移動することができる。これは、典型的には、標的支持体12に対してSLM2を機械的に移動させることによって、標的支持体12、SLM2又はその両方を移動させることによって実施されてもよい。スタンプ領域14の移動は、少なくとも部分的に光学的手段によって実施されてもよい。
【0021】
相対移動は、1つの露光の1つのスタンプ領域14が他の以前のスタンプ領域14と端と端が接するように配置されるような方法で実施されてもよい。しかし、このほか、相対移動により、さまざまな露光のスタンプ領域14間に重なりが生じる場合もある。そのような重なりは、例えば、エッジ効果を軽減するために、スタンプ領域14のエッジ領域にのみ関係する可能性がある。しかし、他の用途では、使用する重複部分を大きくすることができ、その結果、複数の露光戦略が得られる。これは、本技術で使用され、以下でさらに詳細に考察する。
【0022】
背景技術で説明したように、SLM2はさまざまな方法で構成することができる。SLM2の動作の詳細は、素子4の個別制御が提供され、SLM2が標的表面10上のスタンプ領域14内に画素22の格子20を生成する限り、本発明の考え方にとって決定的に重要なものではない。
【0023】
図2は、標的表面10の一部を概略的に示す。SLMの現在位置のスタンプ領域14を、画素22の格子20として示す。画素22は、第1の方向101に第1のピッチD1で設けられ、第2の方向102に第2のピッチD2で設けられる。この図では、説明の目的で画素の数が少なくなっている。現在の状況では、SLMの素子のいくつかは放射線をスタンプ領域14に向けることを可能にし、黒としてマークされる。SLMでの素子の選択は、印刷される予定のパターン30を表す印刷データに従って実施される。対象とするパターン30は、参考として点線で示しているにすぎず、スタンプ領域14に物理的に存在するわけではない。しかし、パターン30内の項目に対応する画素22が照明されるのに対し、パターン30内の項目間の領域に対応する画素22は照明されないことが容易にわかる。現在のスタンプ領域14の外側の対象とするパターン30の領域は、斜線でマークされており、前後の印刷ステップによって処理されることになる。
【0024】
特定の用途では、照明はパターン30に対する負の対応であることがあり得る、即ち、意図されたパターンの外側の画素22のみが照明されることがわかるであろう。しかし、これは「負の」パターン30に似たものであろう。
【0025】
図3を参照すると、スタンプ領域14が照明されている場合、次の露光が実施される前にスタンプ領域14の移動を実施してもよい。図3では、次の位置の例を14´´で示している。パターン30の一部が依然として次のスタンプ領域14´´によって覆われており、SLMが許容する場合には、その部分は追加の照射線量を受ける可能性がある。以前に照明されていたパターンの他の部分が、新たなスタンプ領域14´´の外側になることになる。同じように、パターン30の以前は照射領域の外側にあった部分が、今度は新たなスタンプ領域14´´の内側に入ることになる。このようにして、標的表面10の表面全体を覆うことができ、各画素22は、画素22がスタンプ領域によって覆われるとき、線量の合計である照射線量を達成することになる。
【0026】
換言すれば、スタンプ領域14がスタンプ領域14の幅の一部のみを移動する多重露光により、標的表面10の各点が複数回露光される場合がある。このほか、同一のスタンプ領域14の複数回の露光を、即ち、露光間にいかなる移動も実施せずに実施することが可能である。
【0027】
印刷されるパターンを、典型的には、画素22の格子20にラスタ化する。各画素は、1回又は複数回の露光から放射線に対して露光するように意図されている。印刷されるパターンによって完全に覆われた画素の場合、このような露光からの線量の合計は、画素表面全体にわたって上記パターンが印刷される基板上の放射線感受性層を活性化するための閾値を超えるように構成される。このようにして、画素は「露光」されるようになる。
【0028】
これを、図4の図表に概略的に示す。多数の画素に対する1次元の放射線量102を示している。第1の群の画素22Aを、印刷されるパターンによって全体的に覆い、SLMの対応する素子を「オン」にすることによって総線量を達成する。第2の群の画素22Bを、印刷されるパターンの外側に位置づけ、SLMの対応する素子は「オフ」位置にされる。放射線のエンベロープは完全に鮮明ではないため、放射線を照射することを意図していない画素22Bの領域にもある程度の放射線量が現れることになる。しかし、放射線量102の大きさは、基板上の放射線感受性層の活性化レベル101よりも低いため、放射線を照射することを意図していない画素22Bに「プリント」が現れないことになる。放射線量の形状は説明のために概略的に描いたものであり、実際の測定例とは一致していないことに留意されたい。
【0029】
これは、印刷されるパターンのエッジが画素の格子と一致する限り、良好に機能する。しかし、一般的な場合では、印刷するパターンを画素の格子に合わせて位置決めすることができるかどうかはわからない。図5は、印刷されるパターン30のエッジ31が、ラスタ化されたパターン15の格子20の画素の中央に位置する例を示す。全面的に覆われた画素22A、完全に空の画素22B及び部分的に覆われた画素22Cがある。全面的に覆われた画素22Aと完全に空の画素22Bは容易に提供される。部分的に覆われた画素22Cについては、追加の措置を講じる必要がある。ここでは、スタンプ領域14が、ラスタ化されたパターン15のサブ領域であり、完全なパターン30を印刷するには、いくつかのスタンプ領域14を印刷する必要がある。
【0030】
画素サイズよりも高い精度でエッジ配置を実現する1つの手法には、全面的に覆われた画素の放射線量よりも低い部分放射線量によって画素を照射することが挙げられる。図6に概略的に示すように、部分的に覆われた画素22Cでの少量の放射線量105が、隣接する全面的に覆われた画素22Aによって供給される放射線量102に追加されることになる。このような線量の合計はグラフ103によって示しており、この合計は点106にて基板上の放射線感受性層の活性化レベル101に達することになる。このため、この点106の右側の画素22Cの部分は「露光される」ことになるのに対し、この点106の左側の画素22Cの部分は「露光されない」ことになる。換言すれば、印刷されるパターンのエッジは距離Δだけ移動したことになる。
【0031】
距離Δは、パターンエッジの位置に対応することが好ましい。印刷される上記パターンによって覆われている隣接画素22Aを基準として、エッジ調整値107を上記エッジが配置される画素幅108の一部として定義することができる。
【0032】
このため、図7の図表に示すように、画素内で許容される追加の放射線量と、当該画素内へのエッジ調整値との間には関係104が存在する。この関係104は、SMLの実際の放射線量分布に依存するが、各装備又は各タイプの装備に対して容易に較正されてもよい。図7の曲線は説明のみを目的としており、実際の測定された関係に対応するものではないことに留意されたい。これは、画素の放射線量を変更することによって、隣接する画素に向かってエッジを移動させ得ることを意味する。
【0033】
上述したように、格子内の全画素には、本質的に同一の放射線量が供給される。しかし、多重露光を利用することにより、異なる画素にて放射線量の差が生じる場合がある。非常に基本的な見解では、同一のスタンプ領域は複数回露光することができるが、画素の選択は異なる。例えば、同一の画像化領域の5回の露光が同一の衝突放射露光で実施される場合、異なる画素には最大利用可能線量の0%、20%、40%、60%、80%又は100%が供給され、それに応じてエッジ位置をずらすことができる。
【0034】
この多重露光の原理はこのほか、前述の部分的に重複する露光と併用しても良好に機能する。図8では、印刷されるパターン30を、各露光の間に基板に対して移動する連続スタンプ領域14内で露光する。塗りつぶされた四角は、その時々に露光を許可するように制御される画素を示す。この例では、パターン30の各場所は最大6回の露光によって露光される。このため、スタンプ領域14は、ラスタ化されたパターン平面16の選択された領域であり、一体となってラスタ化されたパターンを形成する。このため、6回の露光は、それぞれのラスタ化されたパターン平面16によって制御される。これは、6回目の露光ごとのスタンプ領域14が同一のラスタ化されたパターン平面16から選択されることを意味する。画素では、エッジ移動が実施される場合、即ち、一部のパターンのみが、対応する画素を覆う場合は、その画素は、ある露光では露光されるが、他の露光では露光されない。最終結果を図9に概略的に示す。ここで、パターン30の中央部分に対応する画素、即ち、画素がパターン30によって全面的に覆われている部分は、黒い領域として示している。パターン30のエッジのいくつかの画素では、ハッチングで示すように、提供される放射線量が低くなる。このようなエッジ画素の放射線量は、当初のパターン30と一致するエッジ移動を引き起こすように適合される。小さなエッジ移動が少量の追加放射線量によって引き起こされ、これより大きなエッジ移動は、これより大きな追加放射線量によって引き起こされる。
【0035】
図10は、例えば、マスク描画又は直接描画など、空間光変調器による描画用の画素データを作成する方法の一実施形態のステップの流れ図を示す。ステップS10では、印刷されるパターンを表すデータを取得する。ステップS20では、印刷されるパターンは画素の格子にラスタ化される。このプロセスでは、ステップS22に示すように、ラスタ化は、印刷されるパターンのエッジを覆う画素へのエッジ調整値の割り当てを含む。エッジ調整値は、印刷されるパターンによって覆われる隣接画素を基準とした、エッジが配置される画素幅の一部である。換言すれば、エッジ調整値は、全面的に覆われた画素の最も近いパターンエッジが、部分的に覆われた画素の領域全体にわたってどの程度移動する必要があるかを示す。
【0036】
ステップS30では、ラスタ化されたパターンは、n個のラスタ化されたパターン平面に分割される。これにより、ラスタ化された各パターン平面は、次のパターン描画中の多重露光プロセスの1回の露光に関連付けられる。そのような多重露光プロセスは、全体的に重複する露光又は部分的に重複する露光によって実施されてもよい。ラスタ化されたパターン平面のそれぞれは、それぞれの放射露光に関連付けられる。これに対するさまざまな代替案については、以下でさらに詳細に考察する。ラスタ化されたパターン平面への分割は、ステップS32に示すように、印刷されるパターンによって完全に覆われる画素のためのラスタ化されたパターン平面の放射露光の合計が、パターンが印刷される基板上の放射線感受性層を活性化するための閾値を超えるように、実施される。同じように、ラスタ化されたパターン平面への分割は、ステップS34に示すように、印刷されるパターンのエッジに関連付けられた画素のためのラスタ化されたパターン平面の放射露光の合計が、総放射露光が放射線感受性層を活性化するための閾値に達する位置を、エッジ調整値に対応する距離だけ移動させるのに充分な量に対応する。ステップS40では、n個のラスタ化されたパターン平面を表すデータを出力する。次に、このデータは、空間光変調器を用いた描画方法で利用することができる。
【0037】
図11は、マスク描画又は直接描画など、空間光変調器での描画方法の一実施形態のステップの流れ図を示す。ステップS50では、印刷されるパターンに関連するn個のラスタ化されたパターン平面を表すデータを取得する。ラスタ化されたパターン平面は、例えば、上記で提示した技術による方法によって取得される。ステップS55では、空間光変調器を、第1(一番目または最初)のラスタ化されたパターン平面のスタンプ領域に合わせて配置する。ステップS60では、放射線感受性層を有する基板が、第1(一番目または最初)のラスタ化されたパターン平面に関連付けられた放射露光に対応する放射線量で露光される。
【0038】
一実施形態では、ラスタ化されたパターン平面に合わせた露光は、基板上の同一の領域にて実施される。そのような実施形態では、ステップS70にて、n個のラスタ化されたパターン平面についてステップS55及びS60の繰り返しを実施する。n個のラスタ化されたパターン平面に対する繰り返しは、それぞれに関連する放射線量で露光することによって実施される。
【0039】
別の実施形態では、追加のステップS65が導入される。このステップでは、空間光変調器は、走査方向のスタンプ領域の幅をnで割った値に等しい走査方向の距離だけ基板に対して走査される。この実施形態では、これにより、ステップS70は、走査距離に応じてそれぞれのスタンプ領域を移動させた状態で実施され、これにより以前の露光と部分的に重なり合う。
【0040】
ステップS75では、ステップS55、S60及びS70と、該当する場合にはステップS65とを、走査スキームに従って追加のスタンプ領域に対して繰り返す。
【0041】
ラスタ化されたパターン平面のそれぞれの放射露光が等しい場合、ラスタ化パターン平面の数nにより、各画素に対する総放射線量のn個の異なる等距離レベルを達成することが可能になる。これは、単一画素の幅内でパターンエッジをn個の異なる位置に移動可能であることを意味する。しかし、ラスタ化されたパターン平面の数を増やすと、印刷速度も低下することになる。ラスタ化されたパターン平面の数が2倍に増大すると、即ち、エッジ位置の精度が2倍に増大する場合、印刷速度も2分の1に低下することになる。
【0042】
しかし、ラスタ化されたパターン平面の放射露光が異なることを許容することによって、達成可能なエッジ位置移動の数の増大を達成することができる。図12は、一連のラスタ化されたパターン平面のさまざまな放射露光110を示す図である。ラスタ化されたパターン平面1~3を最大の放射露光に関連付け、ラスタ化されたパターン平面4~7を低減された放射露光に関連付ける。全画素をあらゆるラスタ化されたパターン平面によって照明するため、各画素が「オン」になるラスタ化されたパターン平面は、どのエッジ移動が必要かに応じて選択される場合がある。図12に提示した一連のラスタ化されたパターン平面の放射露光では、計62回の異なるエッジ移動を選択する場合がある。
【0043】
さまざまなラスタ化されたパターン平面に関連付けられた放射露光は、当業者にはそれぞれが知られているさまざまな方法によって変化させることができる。選択肢の1つには、光強度フィルタを使用することが挙げられる。これとは別に、音響光学変調器又は電気光学変調器を使用することができる。一部のレーザではこのほか、レーザ出力の直接変調が可能である。このほか、強度に影響を及ぼす他のタイプの方法を使用することができる。このような方法自体は当業者には周知であるため、これ以上詳細には説明しない。
【0044】
しかし、さらに正確なエッジ移動を実現するように順応させるには、いくつかの犠牲が伴う。いくつかのラスタ化されたパターン平面で利用可能な最大放射露光は、達成可能なものよりも少ないため、あらゆるラスタ化されたパターン平面を合わせた利用可能な総線量は減少する。この総線量の損失を補償するには、利用可能な最大放射露光を増大させるか、露光時間を延長する必要がある。最大放射露光を増大させると、典型的には、コストが高くなる。露光時間の増大も、全体のスループットを低下させるため望ましくない。このため、放射露光スキームの選択は、当該用途に合わせて選択する必要があり、典型的にはエッジ移動の精度と放射装備の利用度との間の妥協案である。
【0045】
一実施形態では、それぞれの放射露光のうちの少なくとも2つが異なる。異なる放射露光ごとに、選択可能なエッジ移動の数が増大し、最も効率的なセットアップでは最大2倍になる。
【0046】
エッジ移動に非常に高い精度を必要とするが、放射電力の利用度の影響を受けにくい用途では、異なる放射露光の数を増大させることが好ましい。図13は、所与の数のラスタ化されたパターン平面について選択可能なエッジ移動の数を最大化する、一連のラスタ化されたパターン平面のさまざまな放射露光を示す図である。この実施形態では、それぞれの放射露光はいずれも異なる。
【0047】
この実施形態では、放射露光がいずれも、最も弱いものを除いて、それぞれの放射露光のうちのもう1つの2倍の線量を有する。この実施形態は、エッジ移動がまったくない場合と「最大限の移動」、即ち、最大照射画素の場合との間の62の異なる中間エッジ移動を提供する。しかし同時に、印刷速度は6分の1に低下し、放射効率は33%にまで低下する。この手法により、テスト実行で優れたエッジ位置決め精度が得られることが明らかになった。比較すると、同一の放射露光でラスタ化されたパターン平面が6つある場合、異なる中間エッジ移動は5つだけになるほか、印刷速度も6分の1に低下するが、利用可能な放射電力を100%利用する。
【0048】
1つを除いた放射露光がいずれも、それぞれの放射露光のうちのもう1つの2倍の放射線量を有していない実施形態でも、異なる放射露光間の線量関係が2に等しいという概念は、多くの場合有利である。このため、一実施形態では、それぞれの放射露光の少なくとも大多数が、それぞれの放射露光のうちのもう1つの2倍の放射線量を有する。そのような実施形態の一例が、図12に示すセットである。この実施形態は、62の可能な中間エッジ移動を提供し、印刷速度は7分の1に低下するが、利用可能な放射電力の56%を利用する。
【0049】
図13の実施形態の別の欠点には、露光に関しては、1つ又は少数のラスタ化されたパターン平面が非常に優勢であることが挙げられる。そのような高出力露光に対してパルスエネルギーが変動するか、線量の実際の配置がほんの少しずれたりした場合、最終結果は大きな影響を受けることになる。換言すれば、動作妨害に対する感度が高い可能性がある。ほぼ同程度の大きさのいくつかのパルスが一体となって主要な放射部分を生成することにより、単一の予測不可能な妨害に対する感度が低下する。そのような理由により、図12の実施形態のような実施形態が好まれる場合がある。しかし、放射露光分布の選択は、その分布が適用される用途の要求を考慮して実施されることが好ましい。
【0050】
さらに別の手法では、異なる放射露光の間の一定の差が使用される。換言すれば、一実施形態では、それぞれの放射露光の少なくとも大多数が、それぞれの放射露光のうちのもう1つと一定の差だけ放射線量が異なっている。そのような一定の差による利点には、利用可能な各エッジ移動が露光のいくつかの異なる組み合わせによって達成可能であることが挙げられる。これは、放射露光又はラスタ化されたパターン平面の選択が他の要求によっても決定され得るいくつかの用途では有益になる可能性がある。図14は、そのような実施形態を示している。ここでは、放射露光がいずれも一定の差によって相互に関連付けられている。この実施形態は、54の可能な中間エッジ移動を提供し、印刷速度は10分の1に低下するが、利用可能な放射電力の55%を利用する。
【0051】
線量レベルの選択の別の態様には、放射露光の順序が挙げられる。放射電力にわずかな変動が存在する場合、放射電力の一時的な偏差が1つ又は少なくともごく一部の高線量のラスタ化されたパターン平面にのみ影響を及ぼすように、高線量を有するラスタ化されたパターン平面を適時に分離することが賢明である可能性がある。
【0052】
同じように、以下でさらに考察するように、測定された露光に基づく補正を実施する場合、シーケンス全体で利用可能な異なる大きさの放射露光を計画することが推奨される。
【0053】
図15は、最も高い線量を有するラスタ化されたパターン平面がシーケンス全体にわたって広がっている実施形態を示す。このため、この手法は、n個のラスタ化されたパターン平面のシーケンスごとに放射露光が非単調に変化する解決策を提示する。全く同一のシーケンス内で、連続するラスタ化されたパターン平面間で線量の増大と減少の両方が存在する。
【0054】
放射露光を分散するために使用される別の原則には、高レベルの1回の線量がこれより低いレベルの2回の線量で囲まれるほか、好ましくは、低レベルの1回の線量がこれより高いレベルの2回の線量で囲まれる多数の例を作成することが挙げられる。換言すれば、一実施形態では、それぞれの放射露光の大多数について、最も近い以前の放射露光及び最も近い後続の放射露光の線量は、両方とも高くなるか、両方とも低くなるかのいずれかである。
【0055】
実際の描画を実施する場合、これにより、放射露光が高線量と低線量との間で頻繁に変化することになる。換言すれば、描画方法の一実施形態では、ラスタ化されたパターン平面は、少なくとも2つのラスタ化されたパターン平面が、低い方の放射露光に関連するラスタ化されたパターン平面によって適時に囲まれるように、適時に選択され、その結果、全画素に対する放射露光の非単調な時間変化がもたらされる。
【0056】
SLMを利用する今日の多くのパターン発生器では、画素の露光レベルを実際に測定する可能性が提供されている。これは、従来技術にてそれ自体知られており、パターン発生器の実際の構成に依存する。このため、そのような測定の詳細についてはこれ以上考察しない。まさに、当業者であれば、そのような測定を実施可能な知識とスキルを有していると想定される。
【0057】
そのような場合に、本技術をさらに活用してもよい。画素の露光レベルを、ラスタ化されたパターン平面のうちの1つによって基板を露光するステップの後に測定する。予想される露光からの逸脱が検出された場合、任意の残りのラスタ化されたパターン平面の計画を変更してもよい。換言すれば、測定と評価が充分に速く、測定された画素を照射するために使用されるラスタ化されたパターン平面が残っている場合、補償措置を実施してもよい。次に、残りのラスタ化されたパターン平面とそのそれぞれの放射露光を、当該画素の残りの要求露光にできるだけ近づけるために再結合してもよい。換言すれば、ラスタ化されたパターン平面の未だ使用されていない部分を、予想される露光レベルからの任意の逸脱を補償するために調整する。上記で考察した高線量と低線量のラスタ化されたパターン平面の混合は、問題の画素に対して「オン」又は「オフ」となるラスタ化されたパターン平面の適切な調整再配置を見つけることができるため、そのような場合に有益である。
【0058】
測定された露光が予想される露光よりも低い場合、代わりに、例えば、1回の戻り動作中に露光の調整を実施してもよい。しかし、検出された露光が高すぎる場合は、そのように調整することはできない。
【0059】
本発明の考え方はあらゆる種類の描画方法に適用可能であるが、当初の対象技術分野はリソグラフィシステム又はフォトマスクリソグラフィシステムへの応用であった。このため、好ましい実施形態では、パターン発生器はリソグラフィシステム又はフォトマスクリソグラフィシステムである。マスク描画システムでは、エッジ位置への要求は典型的にはきわめて高いが、実際の印刷速度はそれほど重要ではない。これは、本発明の考え方がマスク描画システムに特に有利に適用されることを意味する。しかし、同一の原理が、例えば、異なるタイプの直接印刷にも有用であることに留意されたい。
【0060】
図16では、SLMを用いて描画するための画素データを作成するためのラスタ化モジュール60の一実施形態を示している。上記で説明したように、SLMは、標的表面上のスタンプ領域内に画素の格子を生成するように配置された個別に制御可能な素子のアレイを有し、個々の撮像素子の照明をそれぞれの素子によって制御する。ラスタ化モジュールは、処理ユニット62、メモリ64、入力インターフェース66及び出力インターフェース68を備える。入力インターフェース66は、印刷されるパターンを表すデータを取得するように構成される。印刷されるパターンを表すデータは、メモリ64に保存されることが好ましい。処理ユニット62は、印刷されるパターンを画素の格子にラスタ化するように構成される。ラスタ化は、印刷されるパターンのエッジを覆う画素へのエッジ調整値の割り当てを含む。エッジ調整値は、印刷されるパターンによって覆われる隣接画素を基準とした、エッジが配置される画素幅の一部である。ラスタ化を実施するための処理ユニットに対する命令を、メモリ64に検索可能な方法で保存することが好ましい。処理ユニット62は、ラスタ化されたパターンをn個のラスタ化されたパターン平面に分割するようにさらに構成される。ラスタ化されたパターン平面のそれぞれを、それぞれの放射露光に関連付ける。印刷されるパターンによって完全に覆われる画素のためのラスタ化されたパターン平面の放射線量の合計は、パターンが印刷される基板上の放射線感受性層を活性化するための閾値を超える。さらに、印刷されるパターンのエッジに関連付けられた画素のためのラスタ化されたパターン平面の放射露光の合計は、放射露光の合計が放射感応層を活性化するための閾値に達する位置を、エッジ調整値に対応する距離だけ移動させるのに充分な量に対応する。出力インターフェース68は、n個のラスタ化されたパターン平面を表すデータを出力するように構成される。
【0061】
一実施形態では、処理ユニット62は、それぞれの放射露光のうちの少なくとも2つが異なるように放射露光を選択するようにさらに構成される。
【0062】
追加の実施形態では、処理ユニット62は、それぞれの放射露光の全部が異なるように放射露光を選択するようにさらに構成される。
【0063】
一実施形態では、処理ユニット62は、それぞれの放射露光の少なくとも大多数が、それぞれの放射露光のうちのもう1つの2倍の放射線量を有するように放射露光を選択するようにさらに構成される。
【0064】
一実施形態では、処理ユニット62は、それぞれの放射露光の少なくとも大多数が、それぞれの放射露光のうちのもう1つに対して一定の差だけ放射線量が異なるように、放射露光を選択するようにさらに構成される。
【0065】
一実施形態では、処理ユニット62は、n個のラスタ化されたパターン平面のシーケンスごとに非単調に変化するように放射露光を選択するようにさらに構成される。
【0066】
追加の実施形態では、それぞれの放射露光の大多数について、最も近い以前の放射露光及び最も近い後続の放射露光の線量は、両方とも高くなるか、両方とも低くなるかのいずれかである。
【0067】
図17は、ラスタ化モジュール60及びパターン生成器80を備えるパターン生成システム70の一実施形態を示す。この実施形態では、ラスタ化モジュール60は、印刷されるパターンに関連付けられたn個のラスタ化されたパターン平面を表すデータを提供する。本実施形態では、ラスタ化モジュール60を別個のユニットとして示している。次に、ラスタ化されたパターンは、通信接続61又は無線による代替手段によってパターン発生器80に転送することができる。これとは別に、ラスタ化されたパターンを表すデータは、アクセスのためにパターン生成器80に物理的にもたらされるデータ記憶ユニット内のラスタ化モジュール60によって提供することができる。
【0068】
しかし、他の実施形態では、点線で示すように、ラスタ化モジュール60はパターン生成器80の一部として提供されてもよく、処理能力は好ましくはパターン生成器80とラスタ化モジュール60によって共有される。次に、ラスタ化モジュール60からパターン発生器80へのラスタ化されたパターンの転送が内部手段によって実施される。
【0069】
図18は、パターン生成器80の一実施形態を概略的に示す。パターン発生器80は、制御モジュール82及び画像化モジュール84を備える。画像化モジュール84は、パターンをスタンプ領域に描画するように配置される。画像化モジュールはSLM2を備える。SLM2は、標的表面10上のスタンプ領域内に画素の格子を生成するために配置された個別に制御可能な素子4のアレイ3を有する。個々の撮像素子の照明は、制御モジュール82からの命令に基づいて、それぞれの素子4によって制御される。
【0070】
制御モジュール82は、印刷されるパターンに関連付けられたn個のラスタ化されたパターン平面を表すデータをラスタ化モジュールから取得するように構成される。上記で説明したように、このラスタ化されたパターンは、上記でさらに説明した原理に従って、内部線源又は外部線源からさまざまな方法で提供することができる。
【0071】
画像化モジュール84は、第1(一番目または最初)のラスタ化されたパターン平面のスタンプ領域に合わせてSLMを配置するように構成される。画像化モジュール84は、第1(一番目または最初)のラスタ化されたパターン平面に関連付けられた放射露光に対応する放射線量で、放射線感受性層を有する基板を露光するように構成される。画像化モジュール84は、SLMの配置と、それぞれ関連する放射線量で露光することによるn個のラスタ化されたパターン平面の露光と、を繰り返すように構成される。画像化モジュール84は、走査スキームに従って追加のスタンプ領域に対してSLMの配置、露光及びその繰り返しを繰り返すようにさらに構成される。
【0072】
一実施形態では、画像化装置は、走査方向のスタンプ領域の幅をnで割った値に等しい走査方向の距離だけ、基板に対して空間光変調器を走査するようにさらに構成される。SLMの配置と露光の繰り返しは、走査距離に応じてそれぞれのスタンプ領域をずらした状態で実施され、それによって、以前の露光と部分的に重なり合う。SLMの配置、露光及びその繰り返しは、ラスタ化されたパターン平面ごとの空間光変調器の走査の繰り返しをさらに含む。
【0073】
一実施形態では、制御モジュール82は、画像化モジュール84によって使用されるラスタ化されたパターン平面を適時に選択するようにさらに構成され、その結果、少なくとも2つのラスタ化されたパターン平面が、低い方の放射露光に関連するラスタ化されたパターン平面によって適時に囲まれ、その結果、全画素の放射露光の非単調な時間変化がもたらされる。
【0074】
一実施形態では、パターン発生器は、基板を露光した後に画素の露光レベルを測定するように構成された露光レベル測定ユニットをさらに備える。制御モジュール82は、予想される露光レベルからの任意の逸脱を補償するために、ラスタ化されたパターン平面の未だ使用されていない部分を調整するようにさらに構成される。
【0075】
上述の実施形態は、本発明のいくつかの実例として理解されるべきである。本発明の範囲から逸脱することなく、実施形態に対してさまざまな修正、組み合わせ及び変更を施し得ることが当業者には理解されよう。特に、技術的に可能な場合には、異なる実施形態での異なる部分解決策を他の構成で組み合わせることができる。しかし、本発明の範囲は、添付の特許請求の範囲によって規定される。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
【国際調査報告】