IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ベーリンガー インゲルハイム インターナショナル ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツングの特許一覧

特表2024-538664敗血症を治療するためのTRPC6阻害化合物
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-10-23
(54)【発明の名称】敗血症を治療するためのTRPC6阻害化合物
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/501 20060101AFI20241016BHJP
   A61P 1/16 20060101ALI20241016BHJP
   A61P 9/00 20060101ALI20241016BHJP
   A61P 11/00 20060101ALI20241016BHJP
   A61P 13/12 20060101ALI20241016BHJP
   A61P 29/00 20060101ALI20241016BHJP
   A61P 31/04 20060101ALI20241016BHJP
   A61P 31/10 20060101ALI20241016BHJP
【FI】
A61K31/501
A61P1/16
A61P9/00
A61P11/00
A61P13/12
A61P29/00
A61P31/04
A61P31/10
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024520006
(86)(22)【出願日】2022-10-14
(85)【翻訳文提出日】2024-04-02
(86)【国際出願番号】 EP2022078609
(87)【国際公開番号】W WO2023062177
(87)【国際公開日】2023-04-20
(31)【優先権主張番号】21202812.0
(32)【優先日】2021-10-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TWEEN
(71)【出願人】
【識別番号】503385923
【氏名又は名称】ベーリンガー インゲルハイム インターナショナル ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100119013
【弁理士】
【氏名又は名称】山崎 一夫
(74)【代理人】
【識別番号】100111796
【弁理士】
【氏名又は名称】服部 博信
(74)【代理人】
【識別番号】100123766
【弁理士】
【氏名又は名称】松田 七重
(74)【代理人】
【識別番号】100179925
【弁理士】
【氏名又は名称】上出 真紀
(72)【発明者】
【氏名】ブーイスー ティエリ
(72)【発明者】
【氏名】ニックリン パウル
【テーマコード(参考)】
4C086
【Fターム(参考)】
4C086AA01
4C086AA02
4C086AA03
4C086BC41
4C086GA07
4C086GA12
4C086MA52
4C086NA14
4C086ZA36
4C086ZA59
4C086ZA75
4C086ZA81
4C086ZB11
4C086ZB32
4C086ZB35
(57)【要約】
本発明は、細菌性又は真菌性の重度の敗血症及び細菌性又は真菌性の敗血症性ショック並びにそれらから生じる状態に関連する障害を有する患者の治療のための方法における使用のための式(I)の化合物、この種の化合物を含有する医薬組成物、並びに細菌性若しくは真菌性の重度の敗血症及び細菌性若しくは真菌性の敗血症性ショック並びにそれらから生じる状態の治療のための医薬品としてのそれらの使用、に関する。(式中、Y、A、及びR1~R7基は、本特許請求の範囲及び本明細書で規定される意味を有する)
(I)
【特許請求の範囲】
【請求項1】
細菌感染又は真菌感染に対する全身性炎症反応を有する患者の治療のための方法における使用のための医薬組成物であって、式(I)の化合物又は薬学的に許容されるその塩を、1種又は複数の薬学的に許容される担体と共に含む、医薬組成物。
【化1】
(式中、
Yは、CH又はNであり、
Aは、CH又はNであり、
R1は、
水素原子が部分的に、若しくは完全にフッ素で置き換えられ得るメチル、エチル、及びプロピル
からなる群から選択され、
又はR1は、ハロゲン、C3-6-シクロアルキル、OC3-6-シクロアルキル、及びアルキル基が1~3個のハロゲンで置換されてもよいOC1-6-アルキル、並びに
ハロゲン及び1~3個のハロゲンで置換されていてもよいC1-6-アルキルからなる群から独立して選択される1~3個の基で置換されていてもよいC3-6-シクロアルキル
からなる群から選択され、
R2は、H、-CH3及び-CH2CH3のようなC1-6-アルキル、OCF3、C3-6-シクロアルキル、OC1-6-アルキル、並びにOC3-6-シクロアルキルからなる群から選択され、
R3は、H、C1-6-アルキル、C3-6-シクロアルキル、及びOC3-6-シクロアルキルからなる群から選択され、R3基のC1-6-アルキル、C3-6-シクロアルキル、OC3-6-シクロアルキルのそれぞれは、ハロゲン、OH、OC1-6-アルキル、SC1-6-アルキル、及びN(C1-6-アルキル)2からなる群からそれぞれ独立して選択される1~3個の基で置換されてもよく;且つR3基のC1-6-アルキルの1~3個の炭素原子は、NH、N(C1-6-アルキル)、O、及びSからなる群から選択される1つ又は2つの部分で置き換えられてもよく、
R4及びR5は、H及びC1-6-アルキルからなる群からそれぞれ独立して選択され、
R3及びR4は、ともにそれらが結合される原子と連結して、N、O、及びSからなる群から選択される1~3個のヘテロ原子を含有してもよい3~9員の炭素環式環を形成することができる、又は
R3及びR5は、ともにそれらが結合される原子と連結して、N、O、及びSからなる群から選択される1~3個のヘテロ原子を含有してもよい3~9員の二環式環を形成することができ、
R6は、H、C1-6-アルキル、CN、CF3、OCF3、C3-6-シクロアルキル、OC1-6-アルキル、及びOC3-6-シクロアルキルからなる群から選択され、
R7は、H及びOC1-6-アルキルからなる群から選択される)
【請求項2】
式(I)のR1が、CF3、OCF3、ハロゲン、OC3-6-シクロアルキル、及び1~3個のハロゲンで置換されていてもよいOC1-6-アルキル、並びに
1~3個のハロゲン基で置換されていてもよいC3-6-シクロアルキル
からなる群から選択され、
式(I)のR2が、OC1-6-アルキルであり、
式(I)のR3が、H及びOH又はOC1-6-アルキルで置換されていてもよいC1-6-アルキルからなる群から選択され、
式(I)のR4が、Hであり、
式(I)のR5が、Hであり、
式(I)のR3及びR4が、ともにそれらが結合される原子と連結して、N及びOからなる群から選択される1~3個のヘテロ原子を含有してもよい3~9員の炭素環式環を形成することができ、又は
式(I)のR3及びR5が、ともにそれらが結合される原子と連結して、N及びOからなる群から選択される1~3個のヘテロ原子を含有してもよい3~9員の二環式環を形成することができ、
式(I)のR6が、H、C1-6-アルキル、OC1-6-アルキル、及びOC3-6-シクロアルキルからなる群から選択され、
式(I)のR7が、H及びOC1-6-アルキルからなる群から選択される、
請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項3】
以下の構造を有する式(I)の化合物又は薬学的に許容されるその塩を含む、請求項1に記載の医薬組成物。
【化2】
(式中、
Yは、CH又はNであり、
R1は:
CF3、ハロゲン、OC3-6-シクロアルキル、及び1~3個のハロゲンで置換されていてもよいOC1-6-アルキル、並びに
非置換のシクロヘキシル又はフッ素(F)、非置換の-CH3、1~3個のフッ素原子で置換されている-CH3、非置換の-CH2CH3、1~5個のフッ素原子で置換されている-CH2CH3、非置換のプロピル、及び1~7個のフッ素原子で置換されているプロピルからなる群から選択される基で置換されているシクロヘキシル
からなる群から選択され、
R2は、H、-CH3、-CH2CH3、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、及び-O-CH3、-O-CH2CH3、-O-CF3、ヒドロキシメチル、ヒドロキシエチル、及びヒドロキシプロピルのような-OC1-6-アルキルからなる群から選択され、
R6は、水素、非置換のメチル、非置換のエチル、非置換のプロピル、1~3個のフッ素原子で置換されているメチル、1~5個のフッ素原子で置換されているエチル、及び1~7個のフッ素原子で置換されているプロピルからなる群から選択され、
R7は、H及び-OC1-6-アルキルからなる群から選択される)
【請求項4】
以下の構造を有する式(I)の化合物又は薬学的に許容されるその塩を含む、請求項1に記載の医薬組成物。
【化3】
(式中、
R1は、非置換のメチル、エチル、若しくはプロピル、又は1~7個のフッ素原子で置換されているメチル、エチル、若しくはプロピル、又はフッ素であり、
R2は、メトキシ、エトキシ、及びプロポキシのようなOC1-6-アルキルから選択され、
R6は、H、非置換のメチル、非置換のエチル、及び非置換のプロピル、1~3個のフッ素原子で置換されているメチル、1~5個のフッ素原子で置換されているエチル、及び1~7個のフッ素原子で置換されているプロピル;メトキシ、エトキシ、プロポキシ、及びシクリルプロピルオキシからなる群から選択される)
【請求項5】
本説明の表1に示される化合物1~95からなる化合物の群から選択される式(I)の化合物
又は薬学的に許容されるその塩
を含む、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項6】
前記患者の反応が、組織間液の貯留及び/又は低血圧によって特徴づけられる、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項7】
細菌感染又は真菌感染に対する全身性炎症反応を有する患者の治療のための方法における使用のための医薬品であって、請求項1に記載の式(I)の化合物又はその塩を用いて調製される医薬品。
【請求項8】
細菌性若しくは真菌性の重度の敗血症又は細菌性若しくは真菌性の敗血症性ショックを有する患者の治療のための方法における使用のための、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項9】
全体としての組成物の0.1~90質量%の範囲で治療上有効な量の式(I)の化合物又は薬学的に許容されるその塩を含む、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項10】
全体としての組成物の0.5~50質量%の範囲で治療上有効な量の式(I)の化合物又は薬学的に許容されるその塩を含む、請求項9に記載の医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、式(I)の化合物及びその誘導体を使用する、細菌、真菌、又は循環している細菌若しくは真菌の生産物及びそれから生じる状態に対する全身的反応を有する患者の治療のための方法における使用のための化合物、この種の化合物を含有する医薬組成物並びに細菌性若しくは真菌性の重度の敗血症及び細菌性若しくは真菌性の敗血症性ショック並びにそれらから生じる状態の治療のための医薬品としてのそれらの使用に関する。
【化1】
(I)
(式中、Y、A、及びR1~R7基は、本特許請求の範囲及び本明細書で規定される意味を有する)
【背景技術】
【0002】
細菌性若しくは真菌性の重度の敗血症又は細菌性若しくは真菌性の敗血症性ショックにおける血管透過性の上昇は、以下に限定されないが、肺、腎臓、肝臓、及び心臓を含むいくつかの臓器において増大する。これらの臓器における組織間液の貯留は、それらの適切な機能を損ない(例えば、血液量減少、低血圧、不整脈、糸球体濾過の破綻、代謝の障害の原因となる)、臓器不全に続いて死亡を招く。通常の抗生物質は、真菌感染に対して、有効ではないため、使用されない。
敗血症、重度の敗血症、及び敗血症性ショックは、感染に対する全身性炎症反応から生じる障害である(Mitchell M. Levy et al., Crit Care Med. 2003 Apr;31(4):1250-6.を参照)。敗血症は、感染(例えば、細菌性、真菌性、腹部外傷、消化管穿孔)及び全身性炎症反応の両方を有する障害である。これは、腎臓、肝臓、心臓、及び肺のようないくつかの臓器における血管透過性の上昇を招く。重度の敗血症(臓器機能不全を伴う敗血症)は、敗血症によって生じる急性臓器機能不全を伴う敗血症を指す。敗血症性ショックは、他の原因では説明のつかない持続的な低血圧を指す。
細菌性又は真菌性の重度の敗血症及び細菌性の又は真菌性の敗血症性ショックを治療するための方法において使用され得る化合物の必要性がある。
【発明の概要】
【0003】
本発明は、細菌性又は真菌性の重度の敗血症及び細菌性又は真菌性の敗血症性ショック並びにそれらから生じる状態、特に、細菌性又は真菌性の寄生生物感染と関連する状態を有する患者の治療のための方法における使用のための化合物を提供する。
一実施形態において、本発明は、重度の敗血症及びそれから生じる細菌性若しくは真菌性の敗血症性ショックのような細菌感染又は真菌感染に対する全身性炎症反応を有する患者の治療のための方法における使用のための医薬組成物であって、薬学的有効量の式(I)の化合物又は薬学的に許容されるその塩を、1種又は複数の薬学的に許容される担体と共にそれを必要とする患者に投与することを含む、医薬組成物に関する。
【化2】
(式中、
Yは、CH又はNであり;
Aは、CH又はNであり;
R1は、水素原子が部分的に、若しくは完全にフッ素で置き換えられ得るメチル、エチル、及びプロピルからなる群から選択され、
又はR1は、ハロゲン、C3-6-シクロアルキル、OC3-6-シクロアルキル、及びアルキル基が1~3個のハロゲンで置換されてもよいOC1-6-アルキル、並びにハロゲン及び1~3個のハロゲンで置換されていてもよいC1-6-アルキルからなる群から独立して選択される1~3個の基で置換されていてもよいC3-6-シクロアルキルからなる群から選択され、
R2は、H、C1-6-アルキル、OCF3、C3-6-シクロアルキル、OC1-6-アルキル、及びOC3-6-シクロアルキルからなる群から選択され、
R3は、H、C1-6-アルキル、C3-6-シクロアルキル、及びOC3-6-シクロアルキルからなる群から選択され、R3基のC1-6-アルキル、C3-6-シクロアルキル、OC3-6-シクロアルキルのそれぞれは、ハロゲン、OH、OC1-6-アルキル、SC1-6-アルキル、及びN(C1-6-アルキル)2からなる群からそれぞれ独立して選択される1~3個の基で置換されてもよく;且つR3基のC1-6-アルキルの1~3個の炭素原子は、NH、N(C1-6-アルキル)、O、及びSからなる群から選択される1つ又は2つの部分で置き換えられてもよく;
R4及びR5は、H及びC1-6-アルキルからなる群からそれぞれ独立して選択され;
R3及びR4は、ともにそれらが結合される原子と連結して、N、O、及びSからなる群から選択される1~3個のヘテロ原子を含有してもよい3~9員の炭素環式環を形成することができる、又は
R3及びR5は、ともにそれらが結合される原子と連結して、N、O、及びSからなる群から選択される1~3個のヘテロ原子を含有してもよい3~9員の二環式環を形成することができ;
R6は、H、C1-6-アルキル、CN、CF3、OCF3、C3-6-シクロアルキル、OC1-6-アルキル、及びOC3-6-シクロアルキルからなる群から選択され、
R7は、H及びOC1-6-アルキルからなる群から選択される)
【0004】
特定の実施形態において、上記の発明は、前記患者の細菌性又は真菌性の重度の敗血症及び敗血症性ショックが、感染に関連するARDSに関連する、医薬組成物に関する。
別の実施形態において、本発明は、重度の敗血症及び細菌性若しくは真菌性の敗血症性ショックのような細菌感染若しくは真菌感染に対する全身性炎症反応並びに/又はそれらから生じる状態を有する患者の治療のための方法における使用のための式(I)の化合物又は薬学的に許容されるその塩を含む医薬組成物であって、
式(I)のR1は、CF3、ハロゲン、OC3-6-シクロアルキル、及び1~3個のハロゲンで置換されていてもよいOC1-6-アルキル、並びに1~3個のハロゲン基で置換されていてもよいC3-6-シクロアルキルからなる群から選択され、
式(I)のR2は、OC1-6-アルキルであり、
式(I)のR3は、H及びOH又はOC1-6-アルキルで置換されていてもよいC1-6-アルキルからなる群から選択され、
式(I)のR4は、Hであり、
式(I)のR5は、Hであり、
式(I)のR3及びR4は、ともにそれらが結合される原子と連結して、N及びOからなる群から選択される1~3個のヘテロ原子を含有してもよい3~9員の炭素環式環を形成することができ、又は
式(I)のR3及びR5は、ともにそれらが結合される原子と連結して、N及びOからなる群から選択される1~3個のヘテロ原子を含有してもよい3~9員の二環式環を形成することができ、
式(I)のR6は、H、C1-6-アルキル、OC1-6-アルキル、及びOC3-6-シクロアルキルからなる群から選択され、
式(I)のR7は、H及びメトキシのようなOC1-6-アルキルからなる群から選択される、
医薬組成物に関する。
【0005】
追加の実施形態において、本発明は、細菌性若しくは真菌性の重度の敗血症及び細菌性若しくは真菌性の敗血症性ショック並びに/又はそれらから生じる状態を有する患者の治療のための方法における使用のための式(I)の化合物又は薬学的に許容されるその塩を含む医薬組成物であって、
AはCHであり、且つYはNであるか、又は
AはCHであり、且つYはCHであるか、又は
AはNであり、且つYはCHである、
医薬組成物に関する。
【0006】
さらに追加の実施形態において、本発明は、細菌性若しくは真菌性の重度の敗血症及び細菌性若しくは真菌性の敗血症性ショック並びに/又はそれらから生じる状態を有する患者の治療のための方法における使用のための式(I)の化合物を含む医薬組成物であって、式(I)の化合物が以下の構造又は薬学的に許容されるその塩を有する、医薬組成物に関する。
【0007】
【化3】
(式中、
Yは、CH又はNであり、
R1は、CF3、ハロゲン、OC3-6-シクロアルキル、1~3個のハロゲンで置換されていてもよいOC1-6-アルキル、及び非置換のシクロヘキシル又はフッ素(F)、非置換の-CH3、1~3個のフッ素原子で置換されている-CH3、非置換の-CH2CH3、1~5個のフッ素原子で置換されている-CH2CH3、非置換のプロピル、及び1~7個のフッ素原子で置換されているプロピルからなる群から選択される基で置換されているシクロヘキシルからなる群から選択され、
R2は、H、-CH3、-CH2CH3、-シクロプロピル、-シクロブチル、-シクロペンチル、-シクロヘキシル、並びに-O-CH3、-O-CH2CH3、O-CF3、ヒドロキシメチル、ヒドロキシエチル、及びヒドロキシプロピルのようなOC1-6-アルキルからなる群から選択され、
R6は、H(ヒドロゲン)、非置換のメチル、非置換のエチル、非置換のプロピル又は1~3個のフッ素原子で置換されているメチル、1~5個のフッ素原子で置換されているエチル、及び1~7個のフッ素原子で置換されているプロピルからなる群から選択され、
R7は、H及びOC1-6-アルキルからなる群から選択される)
【0008】
別の実施形態において、本発明は、細菌性若しくは真菌性の重度の敗血症及び細菌性若しくは真菌性の敗血症性ショック並びに/又はそれらから生じる状態を有する患者の治療のための方法における使用のための、以下の構造を有する式(I)の化合物又は薬学的に許容されるその塩を含む医薬組成物に関する。
【化4】
(式中、
R1は、非置換のメチル、エチル、若しくはプロピル又は1~7個のフッ素原子で置換されているメチル、エチル、若しくはプロピル、又はフッ素であり、
R2は、メトキシ、エトキシ、又はプロポキシのようなOC1-6-アルキルであり、
R6は、H、非置換のメチル、非置換のエチル、及び非置換のプロピル、1~3個のフッ素原子で置換されているメチル、1~5個のフッ素原子で置換されているエチル、及び1~7個のフッ素原子で置換されているプロピル;メトキシ、エトキシ、プロポキシ、及びシクリルプロピルオキシからなる群から選択される)
【0009】
別の実施形態において、本発明は、細菌性若しくは真菌性の重度の敗血症及び細菌性若しくは真菌性の敗血症性ショック並びに/又はそれらから生じる状態を有する患者の治療における使用のための、以下の構造を有する式(I)の化合物又は薬学的に許容されるその塩を含む医薬組成物に関する。
【化5】
(式中、
R1は、非置換のメチル、エチル、若しくはプロピル又は1~7個のフッ素原子で置換されているメチル、エチル、若しくはプロピル、又はフッ素であり、
R2は、メトキシ、エトキシ、及びプロポキシのようなOC1-6-アルキルから選択され、
R6は、H、非置換のメチル、非置換のエチル、及び非置換のプロピル、1~3個のフッ素原子で置換されているメチル、1~5個のフッ素原子で置換されているエチル、及び1~7個のフッ素原子で置換されているプロピル;メトキシ、エトキシ、プロポキシ、及びシクリルプロピルオキシからなる群から選択される)
【0010】
別の実施形態において、本発明は、細菌性若しくは真菌性の重度の敗血症及び敗血症性ショック並びに/又はそれらから生じる状態を有する患者の治療のための方法における使用のための式(I)の化合物又は薬学的に許容されるその塩を含む医薬組成物であって、
YはCHであり、且つAはNであり、
R1は、Cl、F、メトキシ、イソプロポキシ、トリフルオロメチル、ジフルオロメトキシ、シクロプロピルオキシを表し、
R2は、メトキシ又はエトキシであり、
R3、R4、及びR5は、それぞれHであり、
R6は、H、メチル、メトキシ、又はエトキシであり、
R7は、Hである、
医薬組成物に関する。
【0011】
別の実施形態において、本発明は、細菌性若しくは真菌性の重度の敗血症及び敗血症性ショック並びに/又はそれらから生じる状態を有する患者の治療のための方法における使用のための式(I)の化合物又は薬学的に許容されるその塩を含む医薬組成物であって、
YはCHであり、且つAはCHであり、
R1は、Cl、F、メトキシ、トリフルオロメチルを表し、
R2は、メトキシ又はエトキシであり、
R3、R4、及びR5は、それぞれHであり、
R6は、H、メチル、メトキシ、又はエトキシであり、
R7は、Hである、
医薬組成物に関する。
【0012】
別の実施形態において、本発明は、細菌性若しくは真菌性の重度の敗血症及び敗血症性ショック並びに/又はそれらから生じる状態を有する患者の治療のための方法における使用のための式(I)の化合物又は薬学的に許容されるその塩を含む医薬組成物であって、
YはNであり、且つAはCHであり、
R1は、H又はフルオロを表し、
R2は、メトキシであり、
R3は、H、2-ヒドロキシメチル、及びヒドロキシエチルからなる群から選択され、
R4は、Hであり、
R5は、Hであり、
R3及びR4は、連結してスピロ環式環を形成してもよいか、
又は
R3及びR5は、ともにそれらが結合される原子と連結して、二環式環を形成してもよく、
R6は、H及びメトキシからなる群から選択され、
R7は、Hである、
医薬組成物に関する。
別の実施形態において、本発明は、細菌性若しくは真菌性の重度の敗血症及び敗血症性ショック並びに/又はそれらから生じる状態を有する患者の治療のための方法における使用のための式(I)の化合物又は薬学的に許容されるその塩を含む医薬組成物であって、
R1は、ハロゲン及びC3-6-シクロアルキルからなる群から独立して選択される1~3個の基で置換されていてもよいC1-6-アルキルであり、
R2は、OC1-6-アルキルであり、
R3、R4、及びR5は、それぞれHであり、
R6は、H、C1-6-アルキル、及びOC1-6-アルキルからなる群から選択され、
R7は、Hである、
医薬組成物に関する。
【0013】
別の実施形態において、本発明は、細菌性若しくは真菌性の重度の敗血症及び敗血症性ショック並びに/又はそれらから生じる状態を有する患者の治療のための方法における使用のための式(I)の化合物又は薬学的に許容されるその塩を含む医薬組成物であって、
R1は、エチル、プロピル、イソプロピル、イソブチル、シクロプロピルメチル、シクロブチルメチル、2,2-ジメチルプロピル、1-メチルシクロプロピルメチル、1-フルオロメチルシクロプロピルメチル、1-シクロプロピルエチル、2-シクロプロピルエチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、2,2-ジフルオロシクロブチルメチル、3,3-ジフルオロシクロブチルメチル、3-(トリフルオロメチル)シクロブチルメチル、及び3,3,3-トリフルオロ-2-メチル-プロピルからなる群から選択される基を表し、
R2は、メトキシであり、
R3、R4、及びR5は、それぞれHであり、
R6は、H、メチル、及びメトキシからなる群から選択され、
R7は、Hである、
医薬組成物に関する。
【0014】
別の実施形態において、本発明は、細菌性若しくは真菌性の重度の敗血症及び敗血症性ショック並びに/又はそれらから生じる状態を有する患者の治療のための方法における使用のための式(I)の化合物又は薬学的に許容されるその塩を含む医薬組成物であって、
YはCHであり、且つAはNであり、
R1は、プロピル、イソプロピル、イソブチル、シクロプロピルメチル、シクロブチルメチル、2,2-ジメチルプロピル、1-シクロプロピルエチル、2-シクロプロピルエチル、及びシクロヘキシルからなる群から選択される基を表し、
R2は、メトキシであり、
R3、R4、及びR5は、それぞれHであり、
R6は、H、メチル、及びメトキシからなる群から選択され、
R7、はHである、
医薬組成物に関する。
【0015】
別の実施形態において、本発明は、細菌性若しくは真菌性の重度の敗血症及び敗血症性ショック並びに/又はそれらから生じる状態を有する患者の治療のための方法における使用のための式(I)の化合物又は薬学的に許容されるその塩を含む医薬組成物であって、
YはCHであり、且つAはCHであり、
R1は、エチル、プロピル、イソプロピル、イソブチル、シクロプロピルメチル、シクロブチルメチル、2,2-ジメチルプロピル、1-メチルシクロプロピルメチル、1-フルオロメチルシクロプロピルメチル、1-シクロプロピルエチル、2-シクロプロピルエチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、2,2-ジフルオロシクロブチルメチル、3,3-ジフルオロシクロブチルメチル、3-(トリフルオロメチル)シクロブチルメチル、及び3,3,3-トリフルオロ-2-メチル-プロピルからなる群から選択される基を表し、
R2は、メトキシであり、
R3、R4、及びR5は、それぞれHであり、
R6は、H、メチル、及びメトキシからなる群から選択され、
R7は、Hである、
医薬組成物に関する。
【0016】
別の実施形態において、本発明は、細菌性若しくは真菌性の重度の敗血症及び敗血症性ショック並びに/又はそれらから生じる状態を有する患者の治療のための方法における使用のための式(I)の化合物又は薬学的に許容されるその塩を含む医薬組成物であって、
R3及びR4は、それらが結合される原子と連結して、3員の炭素環式環を形成する、
医薬組成物に関する。
別の実施形態において、本発明は、細菌性若しくは真菌性の重度の敗血症及び敗血症性ショック並びに/又はそれらから生じる状態を有する患者の治療のための方法における使用のための式(I)の化合物又は薬学的に許容されるその塩を含む医薬組成物であって、
R3及びR5は、それらが結合される原子と連結して、3~9員の二環式環であって、N及びOからなる群から独立して選択される1~2個のヘテロ原子を含有してもよい二環式環を形成する、
医薬組成物に関する。
【0017】
別の実施形態において、本発明は、細菌性若しくは真菌性の重度の敗血症及び敗血症性ショック並びに/又はそれらから生じる状態を有する患者の治療のための方法における使用のための式(I)の化合物又は薬学的に許容されるその塩を含む医薬組成物であって、
Yは、CHであり、
Aは、Nであり、
R2は、OCH3であり、且つ
R3、R4、R5、及びR7は、それぞれHである、
医薬組成物に関する。
別の実施形態において、本発明は、細菌性若しくは真菌性の重度の敗血症及び敗血症性ショック並びに/又はそれらから生じる状態を有する患者の治療のための方法における使用のための式(I)の化合物であって、
R1は、メチル、エチル、若しくはプロピル又は1~7個のフッ素原子で置換されているメチル、エチル、若しくはプロピル、CF3、ハロゲン、C3-6-シクロアルキル、OC3-6-シクロアルキル、及び1~3個のハロゲンで置換されていてもよいOC1-6-アルキルからなる群から独立して選択される1~3個の基で置換されていてもよいフェニルであり、且つ
R6は、H又はOCH3である、
化合物、又は薬学的に許容されるその塩に関する。
【0018】
別の実施形態において、本発明は、細菌性若しくは真菌性の重度の敗血症及び敗血症性ショック並びに/又はそれらから生じる状態を有する患者の治療のための方法における使用のための式(I)の化合物又は薬学的に許容されるその塩を含む医薬組成物であって、
R1は、非置換のフェニル又は非置換のメチル、非置換のエチル、非置換のプロピル、1~3個のフッ素原子で置換されているメチル、1~5個のフッ素原子で置換されているエチル、1~7個のフッ素原子で置換されているプロピル、ハロゲン、OC3-6-シクロアルキル、及び1~3個のハロゲンで置換されていてもよいOC1-6-アルキルからなる群から独立して選択される1~3個の基で置換されているフェニルからなる群から選択され、
R2は、OCH3又はOCH2CH3であり、
R3、R4、R5、R6、及びR7は、それぞれHである、
医薬組成物に関する。
別の実施形態において、本発明は、細菌性若しくは真菌性の重度の敗血症及び敗血症性ショック並びに/又はそれらから生じる状態を有する患者の治療のための方法における使用のための式(I)の化合物又は薬学的に許容されるその塩を含む医薬組成物であって、
R1は、非置換のフェニル又はCF3、ハロゲン、OC3-6-シクロアルキル、非置換のOC1-6-アルキル、及びアルキル部分が1~3個のハロゲンで置換されているOC1-6-アルキルから独立して選択される1~3個の基で置換されているフェニルからなる群から選択され、
R2は、OCH2CH3のOCH3であり、
R3、R4、R5、及びR7は、それぞれHであり、
R6は、CH3又はOCH3であり、
Yは、CHであり、且つ
Aは、Nである、
医薬組成物に関する。
【0019】
別の実施形態において、本発明は、細菌性若しくは真菌性の重度の敗血症及び敗血症性ショック並びに/又はそれらから生じる状態を有する患者の治療のための方法における使用のための式(I)の化合物又は薬学的に許容されるその塩を含む医薬組成物に関する。
別の実施形態において、本発明は、細菌性若しくは真菌性の重度の敗血症及び細菌性若しくは真菌性の敗血症性ショック並びに/又はそれらから生じる状態を有する患者の治療のための方法における使用のための式(I)の化合物を含む医薬組成物であって、化合物が、以下の表1に示される化合物1~95の化合物の群又は薬学的に許容されるその塩から選択される、医薬組成物に関する。
細菌性若しくは真菌性の重度の敗血症及び敗血症性ショック並びに/又はそれらから生じる状態を有する患者の治療のための方法における使用のための式(I)の化合物又は薬学的に許容されるその塩を含む医薬組成物は、薬学的に許容される賦形剤も含む。
【0020】
以下の表1は、本明細書に記載される医薬組成物に使用され得る具体的な化合物を示す。
【表1】

































【図面の簡単な説明】
【0021】
図1.1】マウスCLPモデルの肺-乾燥組織におけるWO2019/161010の化合物2の効果に関するグラフ。
図1.2】マウスCLPモデルの肝臓-乾燥組織におけるWO2019/161010の化合物2の効果に関するグラフ。
図1.3】マウスCLPモデルの腎臓-乾燥組織におけるWO2019/161010の化合物2の効果に関するグラフ。
図1.4】マウスCLPモデルの心臓-乾燥組織におけるWO2019/161010の化合物2の効果に関するグラフ。
図2.1】マウスCLPモデルの肺-乾燥組織における化合物17の効果に関するグラフ。
図2.2】マウスCLPモデルの肝臓-乾燥組織における化合物17の効果に関するグラフ。
図2.3】マウスCLPモデルの腎臓-乾燥組織における化合物17の効果に関するグラフ。
図2.4】マウスCLPモデルの心臓-乾燥組織における化合物17の効果に関するグラフ。
図3.1】化合物17を用いた前処置を行わない場合か、又は前処置を行った場合(+)におけるLPS処置後のBALF中の総タンパク質の量に関するグラフ。
図3.2】化合物17を用いた前処置を行わない場合か、又は前処置を行った場合(+)におけるLPS処置後のBALF中の総タンパク質の量に関するグラフ。
図3.3】化合物17を用いた前処置を行わない場合か、又は前処置を行った場合(+)におけるLPS処置後のBALF中の総タンパク質のパーセントに関するグラフ。
図4.1】マウスCLPモデルにおける生存率に対するWO2019/161010の化合物2の効果に関するグラフ。
図4.2】マウスCLPモデルにおける生存率に対する化合物17の効果に関するグラフ。
【発明を実施するための形態】
【0022】
実施例2の図2.1~2.4及び実施例3の図3.1~3.3は、化合物17が、WO/2029/161010の化合物2と同様に、血管漏出を顕著に低下させることを示す図である。
表1に示された化合物は、WO2019/081637及びWO2019/161010に記載されている手順に従って調製され得る。
本発明は、敗血症、細菌性若しくは真菌性の重度の敗血症、又は細菌性若しくは真菌性の敗血症性ショックのような細菌感染若しくは真菌感染に対する全身性炎症反応又はそれから生じる状態であって、感染に関連するARDS、重症急性呼吸器症候群(SARS)、及び中東呼吸器症候群(MERS)からなる群から選択される状態を有する患者の治療のための方法における使用のための表1に表示された化合物1~95及び薬学的に許容されるその塩のいずれかを含む医薬組成物に関する。
【0023】
特定の実施形態において、表1に表示された化合物6、16、17、29、31、33、34、40、41、44、49、54、56、57、66、80、83、85、87、88、及び90並びに薬学的に許容されるその塩のいずれか1種は、患者に投与される医薬組成物に含まれる。
上記で開示された表1の化合物1~95のうちの1種又は複数を用いた治療における使用のための任意の化合物を含む医薬組成物は、European second medical use format
「疾患Yの療法における使用のための化合物Xを含む医薬組成物」
において、対応する実施形態を有すると理解され、ここで、化合物Xは、式(I)の化合物又は上記で開示された化合物1~95のうちの1種又は複数を表し、疾患Yは、細菌性若しくは真菌性の敗血症、細菌性若しくは真菌性の重度の敗血症、又は細菌性若しくは真菌性の敗血症性ショックと関連する障害を表す。
別の実施形態において、本発明は、細菌性若しくは真菌性の重度の敗血症及び敗血症性ショック並びに/又はそれらから生じる状態の治療における使用のための、上記で定義された式(I)の化合物を含む医薬組成物に関する。
【0024】
一般的定義
本明細書で具体的に定義されていない用語は、本開示及び本文脈を踏まえて、当業者によってそれらに与えられるであろう意味を与えられるべきである。しかし、本明細書で使用する場合、反対に指定されない限り、以下の用語は示された意味を有し、以下の慣例は準拠される。
以下で定義される基、ラジカル、又は部分において、炭素原子の数は、その基を先行して指定されることが多く、例えば、C1-6-アルキルは、1~6個の炭素原子を有するアルキル基又はラジカルを意味する。一般に、HO、H2N、(O)S、(O)2S、NC(シアノ)、HOOC、F3C、又は同様のものといった基において、当業者は、その基自体の自由原子価から該分子へのラジカル結合ポイントを見出すことができる。2つ以上のサブ基を含む組み合わされた基に関して、最後に名称が付いているサブ基は、ラジカル結合ポイントであり、例えば、置換基「アリール-C1-3-アルキル」は、C1-3-アルキル-基に結合されているアリール基を意味し、その後半部分は、該置換基が結合されるコア又は基に結合される。
【0025】
化合物が、化学名の形で、且つ式として表示されている場合で、何らかの矛盾があった場合は、式が優先される。
本明細書で使用する場合、「置換されている」という用語は、指定された原子上の1個又は複数の任意の水素が、指定された原子の通常の原子価を上回ることがなく、その置換によって安定した化合物が得られる場合は、示唆された基からの選択物で置き換えられることを意味する。
特に指示がない限り、本明細書及び添付の特許請求の範囲全体を通して、所定の化学式又は化学名は、互変異性体及び全ての立体異性体、光学異性体、及び幾何異性体(例えば、エナンチオマー、ジアステレオマー、E/Z異性体など)並びにそれらのラセミ体、加えて個々のエナンチオマーが異なる割合の混合物、ジアステレオマーの混合物、又は前述の形態のいずれかの混合物を包含するものであり、このような異性体及びエナンチオマーには、さらに薬学的に許容されるそれらの塩を含む塩並びに、例えば、遊離化合物の溶媒和物又はその化合物の塩の溶媒和物を含む水和物のようなそれらの溶媒和物も存在する。
【0026】
「薬学的に許容される」という語句は、医学的良識の範囲内で、ヒト及び動物の組織と接触する使用に適し、過度の毒性、刺激、アレルギー反応、又は他の問題若しくは合併症を伴うことなく、妥当な利益/リスク比に見合った化合物、材料、組成物、及び/又は剤形を指すために、本明細書で用いられている。
本明細書で使用する場合、「薬学的に許容される塩」は、開示される化合物の誘導体であって、その親化合物が、酸性塩又は塩基性塩を形成することによって変形されている、誘導体を指す。薬学的に許容される塩の例には、以下に限定されないが、アミンのような塩基性残基の無機酸塩又は有機酸塩;カルボン酸のような酸性残基のアルカリ塩又は有機塩;などが含まれる。
【0027】
例えば、このような塩には、酢酸塩、アスコルビン酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、安息香酸塩、ベシル酸塩、重炭酸塩、重酒石酸塩、臭化物/臭化水素酸塩、エデト酸塩、カンシル酸塩、炭酸塩、塩化物/塩酸塩、クエン酸塩、エジシル酸塩、エタンジスルホン酸塩、エストル酸塩、エシル酸塩、ギ酸塩、フマル酸塩、グルセプト酸塩、グルコン酸塩、グルタミン酸塩、グリコール酸塩、グリコリルアルサニル酸塩(glycollylarsnilates)、ヘキシルレゾルシン酸塩、ヒドラバミン、ヒドロキシマレイン酸塩、ヒドロキシナフトエ酸塩、ヨウ化物、イソチオン酸塩、乳酸塩、ラクトビオン酸塩、リンゴ酸塩、マレイン酸塩、マンデル酸塩、メタンスルホン酸塩、臭化メチル、メチル硝酸塩、メチル硫酸塩、粘液酸塩、ナプシル酸塩、硝酸塩、シュウ酸塩、パモ酸塩、パントテン酸塩、フェニル酢酸塩、リン酸塩/二リン酸塩、ポリガラクツロン酸塩、プロピオン酸塩、サリチル酸塩、ステアリン酸塩、塩基性酢酸塩、コハク酸塩、スルファミド、硫酸塩、タンニン酸塩、酒石酸塩、テオクル酸塩、トルエンスルホン酸塩、トリエチオジド、トリフルオロ酢酸塩、アンモニウム、ベンザチン、クロロプロカイン、コリン、ジエタノールアミン、エチレンジアミン、メグルミン、及びプロカインが含まれる。さらに、薬学的に許容される塩は、アルミニウム、カルシウム、リチウム、マグネシウム、カリウム、ナトリウム、亜鉛などのような金属からのカチオン(Pharmaceutical salts, Birge, S.M. et al., J. Pharm. Sci., (1977), 66, 1-19も参照)、又はアンモニア、L-アルギニン、カルシウム、2,2’-イミノビスエタノール、L-リジン、マグネシウム、N-メチル-D-グルカミン、カリウム、ナトリウム、及びトリス(ヒドロキシメチル)-アミノメタンからのカチオンを用いて形成され得る。
【0028】
ハロゲンという用語は、一般に、フッ素、塩素、臭素、及びヨウ素を意味する。
「C1-n-アルキル」という用語は、nが、2、3、4、5、又は6からなる群から選択される整数、好ましくは、4又は6であり、単独で、又は別のラジカルと組み合わせてのいずれかで、1~n個のC原子を有する非環状、飽和、分枝状、又は直鎖状の炭化水素ラジカルを意味する。例えば、「C1-5-アルキル」という用語は、そのラジカルであるH3C-、H3C-CH2-、H3C-CH2-CH2-、H3C-CH(CH3)-、H3C-CH2-CH2-CH2-、H3C-CH2-CH(CH3)-、H3C-CH(CH3)-CH2-、H3C-C(CH32-、H3C-CH2-CH2-CH2-CH2-、H3C-CH2-CH2-CH(CH3)-、H3C-CH2-CH(CH3)-CH2-、H3C-CH(CH3)-CH2-CH2-、H3C-CH2-C(CH32-、H3C-C(CH32-CH2-、H3C-CH(CH3)-CH(CH3)-、及びH3C-CH2-CH(CH2CH3)-を包含する。
「C3-n-シクロアルキル」という用語は、nが、4~nの整数であり、単独で、又は別のラジカルと組み合わせてのいずれかで、3~n個のC原子を有する環状、飽和、非分枝状の炭化水素ラジカルを意味する。例えば、C3-7-シクロアルキルという用語は、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、及びシクロヘプチルを含む。
【0029】
「アルキル」、「アルキレン」、又は「シクロアルキル」基(飽和又は不飽和)に付けられた「ハロ」という用語によるものは、1個又は複数の水素原子が、フッ素、塩素、又は臭素の中から、好ましくは、フッ素及び塩素の中から選択されるハロゲン原子、特に好ましくは、フッ素であるハロゲン原子で置き換えられているようなアルキル又はシクロアルキルである。例には:H2FC-、HF2C-、F3C-が含まれる。同様に、アリール基(例えば、フェニル)に付けられた「ハロ」という用語は、1個又は複数の水素原子が、フッ素、塩素、又は臭素の中から、好ましくは、フッ素及び塩素の中から選択されるハロゲン原子、特に好ましくは、フッ素であるハロゲン原子で置き換えられていることを意味する。
単独で、又は別のラジカルと組み合わせてのいずれかで使用される「炭素環式」という用語は、3~9個の炭素原子並びに任意で、N、O、及びSからなる群から選択されるヘテロ原子からなる単環式、二環式、又は三環式環構造を意味する。「炭素環式」という用語は、完全に飽和された環系を指し、縮合系、架橋系、及びスピロ環式系を包含する。
【0030】
上記の用語のうちの多くは、式又は基の定義で繰り返し使用されてもよく、それぞれの場合において、互いに独立して上記の意味のうちの1つを有する。
特に指示がない限り、本明細書及び添付の特許請求の範囲全体を通して、所定の化学式又は化学名は、互変異性体及び全ての立体異性体、光学異性体、及び幾何異性体(例えば、エナンチオマー、ジアステレオマー、E/Z異性体など)並びにそれらのラセミ体、加えて個々のエナンチオマーが異なる割合の混合物、ジアステレオマーの混合物、又は前述の形態のいずれかの混合物を包含するものであり、このような異性体及びエナンチオマーには、さらに薬学的に許容されるそれらの塩を含む塩並びに、例えば、遊離化合物の溶媒和物又はその化合物の塩の溶媒和物を含む水和物のようなそれらの溶媒和物も存在する。
表1の化合物のいくつかは、2つ以上の互変異性型で存在し得る。本発明は、全てのこのような互変異性体を使用するための方法を含む。
【0031】
加えて、細菌性又は真菌性の重度の敗血症及び敗血症性ショックを有する患者の治療のための方法における使用のための式(I)の化合物のプロドラッグの使用は、本発明の範囲内である。プロドラッグには、本発明の化合物を生成するために、単純な化学的変換で変更される化合物が含まれる。単純な化学的変換には、加水分解、酸化、及び還元が含まれる。具体的には、プロドラッグが患者に投与された場合、そのプロドラッグは、上記で開示された化合物に変換されることがあり、それによって望ましい薬理学的効果をもたらす。
本出願の上記明細書中で開示された全ての化合物に関して、命名法がその構造と矛盾する場合、該化合物は、その構造によって定義されると理解されるべきである。
【0032】
治療的使用の方法
本明細書に開示される化合物は、細菌性及び真菌性の重度の敗血症並びに敗血症性ショックを治療するために、特に有効である。
一実施形態において、本発明は、細菌性及び真菌性の重度の敗血症並びに敗血症性ショックを有する患者の治療であって、それを必要とする患者に、薬学的有効量の上記で定義された式(I)の化合物又は表1の化合物1~95から選択される化合物、しかし好ましくは、表1に表示された化合物6、16、17、29、31、33、34、40、41、44、49、54、56、57、66、80、83、85、87、88、及び90から選択される化合物、又は薬学的に許容されるその塩を投与することによる治療のための方法における使用のための式(I)の化合物を提供する。
【0033】
急性呼吸窮迫症候群(ARDS)、肺の血管透過性の上昇を特徴とする肺炎、及び/又は肺水腫の最も一般的な原因である敗血症を治療するという観点から、本発明は、ARDSを有する患者の治療であって、それを必要とする患者に、薬学的有効量の上記で定義された式(I)の化合物又は化合物1~95からなる群から選択される化合物、しかし好ましくは、表1に表示された化合物6、16、17、29、31、33、34、40、41、44、49、54、56、57、66、80、83、85、87、88、及び90からなる群から選択される化合物、又は薬学的に許容されるその塩を投与することによる治療のための方法における使用のための式(I)の化合物も提供する。
別の実施形態において、本発明は、細菌感染から生じる呼吸器障害又は状態であって、肺の血管透過性亢進、肺(肺)水腫、肺虚血再灌流、急性呼吸窮迫症候群(ARDS)、急性肺障害(ALI)、及び重症急性呼吸器症候群(SARS)からなる群から選択される呼吸器障害又は状態の治療であって、それを必要とする患者に、薬学的有効量の上記で定義された式(I)の化合物又は化合物1~95からなる群から選択される化合物、しかし好ましくは、表1に表示された化合物6、16、17、29、31、33、34、40、41、44、49、54、56、57、66、80、83、85、87、88、及び90から選択される化合物、又は薬学的に許容されるその塩を投与することによる治療に関する。
【0034】
細菌性又は真菌性の重度の敗血症及び細菌性又は真菌性の敗血症性ショックの治療における使用のために、本発明の化合物は、全体としての組成物の0.1~90質量%の範囲、好ましくは、全体としての組成物の0.5~50質量%の範囲で治療上有効な量の本発明による化合物、又は薬学的に許容されるその塩を含む組成物のような任意の従来方法による任意の従来の医薬剤形の医薬組成物によって投与されてもよい。従来の剤形は、典型的に、特定の選択された剤形に適した薬学的に許容される担体を含む。投与経路には、以下に限定されないが、静脈内、筋肉内、皮下、関節滑液嚢内、点滴、舌下、経皮、経口、局所、又は吸入によるものが含まれる。好ましい投与様式は、経口及び静脈内である。
【0035】
本発明の化合物は、単独で、又は式(I)の化合物の安定性を増強し、特定の実施形態において、それらを含有する医薬組成物の投与を容易にし、溶解又は分散の増強をもたらし、阻害活性を増強し、補助療法を可能にするなどのアジュバントと組み合わせて、他の有効成分を含んで投与されてもよい。一実施形態において、例えば、本発明の複数の化合物が投与され得る。好都合にも、このような組合せ療法は、従来の治療薬の投与量よりも低い投与量を用いるため、それらの薬剤が、単剤療法として使用される場合に生じる可能性がある毒性及び有害な副作用を回避する。本発明の化合物は、単独の医薬組成物中に、従来の治療薬又は他のアジュバントと物理的に組み合わされてもよい。好都合にも、前記化合物は、次に、単独の剤形で一緒に投与されてもよい。いくつかの実施形態において、このような化合物の組合せを含む医薬組成物は、少なくとも約5%、しかしより好ましくは、少なくとも約20%の本発明の化合物(w/w)又はその組合せを含有する。本発明の化合物の最適な割合(w/w)は変動する可能性があり、当業者の知識の範囲内である。代替として、本発明の化合物及び従来の治療薬又は他のアジュバントは、個別に(連続的に、又は並行してのいずれかで)投与されてもよい。個別の投与では、その投与レジメンにおけるより柔軟な対応が許されている。
【0036】
上記の通り、本発明の化合物の剤形は、当業者に知られており、該剤形に適した薬学的に許容される担体及びアジュバントを含んでもよい。これらの担体及びアジュバントには、例えば、イオン置換体、アルミナ、ステアリン酸アルミニウム、レシチン、血清タンパク質、緩衝物質、水、塩又は電解質、及びセルロース系物質が含まれる。好ましい剤形には、錠剤、カプセル剤、カプレット剤、液剤(liquid)、液剤(solution)、懸濁剤、乳剤、トローチ剤、シロップ剤、再構成可能な散剤、顆粒剤、坐剤、及び経皮貼付剤が含まれる。このような剤形を調製するための方法は知られている(例えば、H.C. Ansel and N.G. Popovish, Pharmaceutical Dosage Forms and Drug Delivery Systems, 5th ed., Lea and Febiger (1990)参照)。本発明の化合物に関する投与量レベル及び必要条件は、特定の患者に適した利用可能な方法及び技術から、当業者によって選択されてもよい。いくつかの実施形態において、投与量レベルは、70kgの患者に対して、約1~1000mg/投与の範囲である。1日あたり1回投与で十分であるが、1日あたり5回投与まで行われてもよい。経口投与では、最大2000mg/日が必要とされることがある。当業者が理解しているであろう通り、特定の要因に応じて、より低いか、又はより高い用量が必要とされることがある。例えば、具体的な投与量及び治療レジメンは、患者の全般的健康プロファイル、患者の障害の重症度及び経過、又はその素因、並びに治療担当医の判断のような要因に左右されるであろう。
【0037】
本発明の化合物は、単独で、又は1種若しくは複数の追加の治療剤と組み合わせて使用されてもよい。追加の治療剤の非限定的な例には:
ハイドロキシクロロキン又はクロロキンであって、それぞれアジスロマイシンを伴うか、又は伴わないハイドロキシクロロキン又はクロロキンのような抗マラリア薬、
カンデサルタン、エプロサルタン、カンデサルタン、イルベサルタン、ロサルタン、オルメサルタン、テルミサルタン、バルサルタン、アジルサルタン、及びオルメサルタンメドキソミルのようなアンジオテンシンII受容体拮抗薬(アンジオテンシン受容体遮断薬(ARB))、
アンジオテンシン変換酵素阻害薬(例えば、ベナゼプリル、カプトプリル、エナラプリル、フォシノプリル、リシノプリル、モエキシプリル、及びペリンドプリル)、
抗凝固薬(例えば、ダビガトラン、actylise、ワーファリン、ヘパリン、及びアセチルサリチル酸)、
アルファ-グルコシダーゼ阻害薬(例えば、ミグリトール及びアカルボース)、アミリン類似体(例えば、プラムリンチド)、ジペプチジルペプチダーゼ4阻害薬(例えば、アログリプチン、シタグリプチン、サキサグリプチン、及びリナグリプチン)、インクレチンミメティクス(例えば、リラグルチド、エキセナチド、リラグルチド、エキセナチド、デュラグルチド、アルビグルチド、及びリキシセナチド)、インスリン、メグリチニド(例えば、レパグリニド及びナテグリニド)、ビグアナイド(例えば、メトホルミン);SGLT-2阻害薬(例えば、カナグリフロジン、エンパグリフロジン、及びダパグリフロジン)、スルホニルウレア系(例えば、クロルプロパミド、グリメピリド、グリブリド、グリピジド、グリブリド、トラザミド、及びトルブタミド)、及びチアゾリジンジオン(例えば、ロシグリタゾン及びピオグリタゾン)のような抗糖尿病薬;CGRP拮抗薬(オルセゲパント、バクゼゲパント、又はザベゲパントなど)、
短時間作用型及び長時間作用型ベータ作動薬(例えば、アルブテロール、レバルブテロール、サルメテロール、フォルモテロール、アルフォルモテロール、ビランテロール、インダカテロール、及びオロダテロール)並びに短時間及び長時間作用型抗コリン作動薬(イプラトロピウム、チオトロピウム、ウメクリジニウム、グリコピロレート(glycopyrrolatei)、及びアクリジニウム)を含む気管支拡張薬、
フルチカゾン及びブデソニドのようなステロイド;並びに
デキサメタゾン(Dex)、プレドニゾン、メチルプレドニゾロン、及びヒドロコルチゾン(hydrocortisonea)のような副腎皮質ステロイド
が含まれてもよい。
【0038】
さらに別の実施形態において、本発明の化合物は、血液学的悪性疾患の治療に対して承認されたか、又は開発後期段階にあるTKIのような免疫調節作用をもたらす種々のキナーゼ阻害薬(A. P. Kater et al., Blood Adv. 2021 Feb 9; 5(3): 913-925)と組み合わせて使用されてもよい。
追加の実施形態において、本発明の化合物は、機械的換気を必要とする患者は、肺線維症を発症する傾向があることから、ニンテダニブ又はピルフェニドンのような抗線維化薬と組み合わせて使用されてもよい。
【0039】
医薬の組合せの組合せ治療として使用される場合、本発明の化合物及び1種又は複数の追加の薬剤は、同じ剤形又は異なる剤形で投与され得る。本発明の化合物及び1種又は複数の追加の薬剤は、レジメンの一環として、同時に、又は個別に投与され得る。
R1~R7基が上記の意味を有する式(I)の化合物は、驚くべきことに、細菌、真菌、又は循環している細菌若しくは真菌の生産物に対する全身的反応(細菌性又は真菌性の敗血症)を有する患者を治療するために使用され得ることが見出された。このため、本発明による化合物は、細菌性又は真菌性の重度の敗血症の治療のために使用されてもよい。
【実施例
【0040】
マウスにおけるCLP誘発性の複数菌による敗血症
盲腸結紮穿刺(CLP)は、麻酔下にある動物の腹腔内に糞便内容物を押し出すことからなる複数菌による敗血症のモデルである。2つのモデルが実施された:
- 肺、肝臓、腎臓、及び心臓の組織における血管透過性亢進を測定するための24時間継続するCLPの急性モデル。血管透過性亢進は、前記組織へと静脈内注射され、拡散され、蓄積されたエバンスブルーの血管外遊出によって追跡された。血管透過性亢進は、乾燥組織100mg中のエバンスブルーのμgとして表記された。
- 8日間継続するCLPの慢性モデル。0日目にCLPを実施し、生存率を連続8日間追跡する。
CLPの急性モデル:血管透過性亢進
ケタミン(80mg kg-1、腹腔内)及びキシラジン(10mg kg-1、腹腔内)を用いてマウスに麻酔をかけた。1~1.5cmの腹部正中切開を行い、盲腸の位置を確認し、4-0絹製縫合糸を用いて盲腸の遠心極と基底部の間の半分の位置を固く結紮した(軽度グレード)。中等度結紮後に、21ゲージ針を用いて、盲腸を1回完全に穿刺した。小量の糞便を押し出し、創部の開存を確保した。次に、盲腸を、腹部内の元の位置に置き、腹部を、重ねて縫合して閉じた。陰性対照動物に対して、偽手術を実施した:偽の手術を施された動物は、同じ開腹術を受けたが、盲腸結紮も穿刺も行われなかった。前記動物を、手術後直ちに、1mLの皮下通常生理食塩水を用いて蘇生し、ケージに戻した。実験を、CLPの24時間後に終了した。
【0041】
(実施例1)
CLPの急性モデルにおけるWO2019/161010の化合物2の効果:
WO2019/161010の化合物2又はその溶媒(0.5%natrosol 0.010%Tween80)を、30mg/kgで予防的にCLPの2時間前及びCLPの8時間後又は10若しくは30mg/kgで治療的にCLPの2時間後及び8時間後のいずれかで、経口投与した(5mL/kg)。デキサメタゾンを、10mg/kgでCLPの1時間前に経口投与した。各群にはマウス10匹が含まれた。
【化6】
【0042】
エバンスブルー色素(40mg/kgで0.1mL)を、CLPの24時間後、安楽死の30分前に、それぞれ尾静脈から注射した。肺、腎臓、肝臓、及び心臓の組織を採取し、エバンスブルーをホルムアミド中に抽出した。エバンスブルー色素の濃度を、検量線から算出し、μg/100mg肺乾燥組織として表記した。このデータを、市販のソフトウェア(Prism、バージョン8.3.0;GraphPad Software Inc.、San Diego、CA)を使用して解析した。一元配置分散分析(ANOVA)を用い、続くDunnett検定によって、異なる群を比較した(例えば、CLP群を処置群と比較した)。全てのデータを、平均±SEMとして表記した。有意性の限界を、0.05未満のp値とした(p<0.05)。
肺において、CLP溶媒-処置群のエバンスブルー濃度(37μg/100mg乾燥組織)は、偽群のエバンスブルー(15μg/100mg乾燥組織)よりも有意に高い(p<0.05)(図1.1)。WO2019/161010の化合物2は、予防形式(30mg/kgで87%抑制)又は治療形式(10mg/kgで87%抑制及び30mg/kgで100%)のいずれかで、エバンスブルー濃度を有意に低下させた(p<0.05)(図1.1)。デキサメタゾンは、本モデルにおける肺の血管透過性を低下させることはできなかった(図1.1~1.4)。
【0043】
肝臓において、CLP溶媒-処置群のエバンスブルー濃度(106μg/100mg乾燥組織)は、偽群のエバンスブルー(52μg/100mg乾燥組織)よりも有意に高い(p<0.05)(図1.2)。WO2019/161010の化合物2は、予防形式(30mg/kgで71%抑制)又は治療形式(30mg/kgで88%)のいずれかで、エバンスブルー濃度を有意に低下させた(p<0.05)(図1.2)。デキサメタゾンは、本モデルにおける肺の血管透過性を低下させることはできなかった(図1.1)。
腎臓において、CLP溶媒-処置群のエバンスブルー濃度(97μg/100mg乾燥組織)は、偽群のエバンスブルー(53μg/100mg乾燥組織)よりも有意に高い(p<0.05)(図1.3)。WO2019/161010の化合物2は、予防形式(30mg/kgで84%抑制)又は治療形式(30mg/kgで98%抑制)のいずれかで、エバンスブルー濃度を有意に低下させた(p<0.05)(図1.3)。デキサメタゾンは、本モデルにおける肺の血管透過性を低下させることはできなかった(図1.3)。
心臓において、CLP溶媒-処置群のエバンスブルー濃度(39μg/100mg乾燥組織)は、偽群のエバンスブルー(22μg/100mg乾燥組織)よりも有意に高い(p<0.05)(図1.4)。WO2019/161010の化合物2は、治療形式(30mg/kgで94%抑制)で、エバンスブルー濃度を有意に低下させた(p<0.05)(図1.4)。デキサメタゾン(Dex)は、本モデルにおける肺の血管透過性を低下させることはできなかった(図1.4)。
【0044】
(実施例2)
CLPの急性モデルにおける化合物17の効果
WO2019/161010の化合物2に使用されたのと同じ実験条件下で、化合物17もCLPのマウスモデルで試験した。この実験において、WO2019/161010の化合物17及び化合物2を、治療形式でCLPの2時間後及び8時間後に経口投与した。
肺において、CLP溶媒-処置群のエバンスブルー濃度(61μg/100mg乾燥組織)は、偽群のエバンスブルー(15μg/100mg乾燥組織)よりも有意に高い(p<0.05)(図2.1)。化合物17は、エバンスブルー濃度を、用量依存的に(1mg/kgで65%抑制、3mg/kgで90%、及び10mg/kgで100%)有意に低下させた(p<0.05)(図2.1)。WO2019/161010の化合物2は、肺組織におけるエバンスブルー濃度を、30mg/kgで94%と有意に低下させた(図2.1)。
【0045】
肝臓において、CLP溶媒-処置群のエバンスブルー濃度(11μg/100mg乾燥組織)は、偽群のエバンスブルー(4μg/100mg乾燥組織)よりも有意に高い(p<0.05)(図2.2)。化合物17は、エバンスブルー濃度を、10mg/kgで48%と有意に低下させた(p<0.05)。WO2019/161010の化合物2は、エバンスブルー濃度を、30mg/kgで58%と有意に低下させた(図2.2)。
腎臓において、CLP溶媒-処置群のエバンスブルー濃度(22μg/100mg乾燥組織)は、偽群のエバンスブルー(10μg/100mg乾燥組織)よりも有意に高い(p<0.05)(図2.3)。化合物17は、エバンスブルー濃度を、10mg/kgで95%と有意に低下させた(p<0.05)(図2.3)。WO2019/161010の化合物2は、エバンスブルー濃度を、30mg/kgで90%と有意に低下させた(図2.3)。
【0046】
心臓において、CLP溶媒-処置群のエバンスブルー濃度(18μg/100mg乾燥組織)は、偽群のエバンスブルー(8μg/100mg乾燥組織)よりも有意に高い(p<0.05)(図2.4)。化合物17は、エバンスブルー濃度を、3mg/kgで100%及び10mg/kgで120%と有意に低下させた(p<0.05)(図2.4)。WO2019/161010の化合物2は、エバンスブルー濃度を、30mg/kgで100%と有意に低下させる(図2.4)。
【0047】
(実施例3)
マウスモデルにおけるLPS誘発性の血管漏出の減少
マウスを、チャンバーに入れ、リポ多糖(LPS、エンドトキシンとして知られており、大腸菌(Escherichia Coli)のようなグラム陰性菌の外膜で発見された)エアゾール(0.8mg/mL)に30分間曝露させる(又はリン酸緩衝生理食塩水、溶媒としてPBS)。TRPC6阻害薬である化合物17を、LPS誘発の12時間前及び2時間前に経口投与する。マウスを、LPSエアゾール曝露終了の4時間後に安楽死させる。該化合物の血漿曝露量のための血液を採取し、該肺を0.8mLのPBSで洗浄する。その気管支肺胞洗浄液を、500回転/分で10分間遠心分離し、660nmの吸光度を用いたLowry測定に従った総タンパク質の測定のために、この上清を採取する。マウスLPS実験は、2回繰り返され、各実験のデータは、最初の実験を図3.1に、2回目の実験を図3.2に示される。図3.3は、LPS群のパーセントで表記された2つの実験の平均値を表す。該実験の終了時に測定される化合物の血漿濃度は、in vitroパッチクランプIC50(19nM)、IC75(48nM)、IC90(104nM)の倍数として表記される。
【0048】
LPSエアゾール誘発性の肺水腫は、気管支肺胞洗浄液タンパク質(BALFタンパク質)の顕著な蓄積を特徴とする。これらのタンパク質の発生源は、血管透過性亢進による血液からのアルブミン及び損傷を受けた肺胞細胞の膜からのタンパク質である。LPS群において、BALFタンパク質(280~310μg/mL BALF、図3.1及び図3.2)は、PBS群におけるBALFタンパク質(170~180μg/mL BALF、図3.1及び図3.2)よりも有意に多い。投与された化合物17は、3mg/kg経口投与で56%、また10mg/kg経口投与で62%のBALFタンパク質濃度を有意に低下させた(図3.3)。
【0049】
図3.1及び図3.2は、以下の表形式スキームに従って評価された、化合物17を用いた前処置を行わない場合か、又は前処置を行った場合(+)におけるLPS(リポ多糖)処置後のBALF(気管支肺胞洗浄液)中の総タンパク質の量を、且つ図3.3は、前記総タンパク質のパーセントを示す。
【表2】
【0050】
(実施例4)
CLPの慢性モデル:生存率
0日目に、ケタミン(80mg kg-1、腹腔内)及びキシラジン(10mg kg-1、腹腔内)を用いてマウスに麻酔をかけた。1~1.5cmの腹部正中切開を行い、盲腸の位置を確認し、4-0絹製縫合糸を用いて盲腸の遠心極と基底部の間の半分の位置を固く結紮した(軽度グレード)。中等度結紮後に、21ゲージ針を用いて、盲腸を1回完全に穿刺した。小量の糞便を押し出し、創部の開存を確保した。次に、盲腸を、腹部内の元の位置に置き、腹部を、重ねて縫合して閉じた。陰性対照動物に対して、偽手術を実施した:偽の手術を施された動物は、同じ開腹術を受けたが、盲腸結紮も穿刺も行われなかった。前記動物を、手術後直ちに、1mLの皮下通常生理食塩水を用いて蘇生し、ケージに戻した。
【0051】
WO2019/161010の化合物2又はその溶媒(0.5%natrosol 0.010%Tween80)を、30mg/kgでCLPの2時間後及び1日目~6日目まで1日1回、経口投与した(5mL/kg)。抗アドレノメデュリン抗体であるアドレシズマブを、4mg/kgでCLPの1時間前に、1回だけ静脈内投与した。各群にはマウス10匹が含まれた。
偽群では、8日間にわたって死亡は全く観察されなかったが、CLP群では、3日目に全てのマウスの死亡が確認された。WO2019/161010の化合物2は、8日目における生存率が50%であり、死亡率を有意に低下させた(8日目に、マウス10匹中5匹が生存中)(図4.1)。アドレシズマブは、8日目における生存率が30%であり、死亡率を有意に低下させた(8日目に、マウス10匹中3匹が生存中)。WO2019/161010の化合物2の生存率は、アドレシズマブの生存率よりも有意に優れていた。
図4.1は、マウスCLPモデルにおける生存率に対する、WO2019/161010の化合物2の効果を、偽効果及びアドレシズマブの効果と比較している。
【0052】
第2の実験において、化合物17又はその溶媒(0.5%natrosol 0.010%Tween80)を、経口投与した(5mL/kg)。化合物17を、2つの群に10mg/kgで投与した。第1の群には、化合物17を、CLPの2時間後及び1日目~6日目まで1日2回、投与した。第2の群には、化合物17を、CLPの24時間後及び2日目~6日目まで1日2回、投与した。各群にはマウス10匹が含まれた。
偽群では、8日間にわたって死亡は全く観察されなかったが、CLP群では、8日目までにマウス2匹のみが生存していた。CLPの2時間後に投与された化合物17は、8日目における生存率が60%であり、死亡率を有意に低下させた(8日目に、マウス10匹中6匹が生存中)(図4.2)。該化合物をCLPの24時間後に投与した場合、生存率は、依然として50%であった(8日目に、マウス10匹中5匹が生存中)。
図4.2は、マウスCLPモデルにおける生存率に対する、化合物17の効果を、偽効果と比較している。
図1.1】
図1.2】
図1.3】
図1.4】
図2.1】
図2.2】
図2.3】
図2.4】
図3.1】
図3.2】
図3.3】
図4.1】
図4.2】
【国際調査報告】