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特表2024-538669抗LAG3二重特異性抗体、医薬組成物、及び使用
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-10-23
(54)【発明の名称】抗LAG3二重特異性抗体、医薬組成物、及び使用
(51)【国際特許分類】
   C07K 16/46 20060101AFI20241016BHJP
   C07K 16/28 20060101ALI20241016BHJP
   C07K 16/18 20060101ALI20241016BHJP
   C12N 15/62 20060101ALI20241016BHJP
   C12N 15/13 20060101ALI20241016BHJP
   C12N 15/63 20060101ALI20241016BHJP
   C12N 1/15 20060101ALI20241016BHJP
   C12N 1/19 20060101ALI20241016BHJP
   C12N 1/21 20060101ALI20241016BHJP
   C12N 5/10 20060101ALI20241016BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20241016BHJP
   A61P 35/02 20060101ALI20241016BHJP
   A61P 7/06 20060101ALI20241016BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20241016BHJP
   C12N 15/09 20060101ALN20241016BHJP
【FI】
C07K16/46 ZNA
C07K16/28
C07K16/18
C12N15/62
C12N15/13
C12N15/63 Z
C12N1/15
C12N1/19
C12N1/21
C12N5/10
A61P35/00
A61P35/02
A61P7/06
A61K39/395 D
A61K39/395 N
C12N15/09 Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024520079
(86)(22)【出願日】2022-09-29
(85)【翻訳文提出日】2024-05-28
(86)【国際出願番号】 CN2022122556
(87)【国際公開番号】W WO2023051683
(87)【国際公開日】2023-04-06
(31)【優先権主張番号】202111149114.9
(32)【優先日】2021-09-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TWEEN
(71)【出願人】
【識別番号】524122657
【氏名又は名称】アケソ ホイコー(シャンハイ)カンパニー リミティド
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100117019
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100141977
【弁理士】
【氏名又は名称】中島 勝
(74)【代理人】
【識別番号】100138210
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 達則
(74)【代理人】
【識別番号】100231902
【弁理士】
【氏名又は名称】吉田 李花
(72)【発明者】
【氏名】チャン ポン
(72)【発明者】
【氏名】リー パイヨン
(72)【発明者】
【氏名】シア ユイ
(72)【発明者】
【氏名】ワン チョンミン
【テーマコード(参考)】
4B065
4C085
4H045
【Fターム(参考)】
4B065AA01X
4B065AA57X
4B065AA72X
4B065AA90X
4B065AA90Y
4B065AB01
4B065BA02
4B065CA43
4B065CA44
4C085AA13
4C085AA14
4C085BB11
4C085BB36
4C085BB41
4C085BB43
4C085EE01
4H045AA11
4H045BA41
4H045FA74
4H045GA26
(57)【要約】
生物医学の分野に属する、抗LAG3抗体二重特異性抗体、その医薬組成物、及びその使用が提供される。具体的には、二重特異性抗体は、第1タンパク質機能ドメイン及び第2タンパク質機能ドメインを含み;第1タンパク質機能ドメインはLAG3を標的とし、第2タンパク質機能ドメインはLAG3以外の標的を標的とし;第1タンパク質機能ドメインは、抗LAG3抗体又はその抗原結合性断片であって、重鎖可変領域及び軽鎖可変領域を含み、重鎖可変領域は、配列番号5~7によって表されるアミノ酸配列をそれぞれ有するHCDR1~HCDR3を含む。また、軽鎖可変領域は、配列番号8~10によって表されるアミノ酸配列をそれぞれ有するLCDR1~LCDR3を含む。二重特異性抗体は優れた親和性と特異性を有し、応用性に優れている。
【選択図】 図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1タンパク質機能領域及び第2タンパク質機能領域を含む、二重特異性抗体であって、
前記第1タンパク質機能領域がLAG3を標的とし、
前記第2タンパク質機能領域がLAG3以外の標的(例えば、PD-1)を標的とし、
前記第1タンパク質機能領域が、重鎖可変領域及び軽鎖可変領域を含む、抗LAG3抗体又はその抗原結合性断片であり、
前記重鎖可変領域が、配列番号5~7に記載のアミノ酸配列をそれぞれ有するHCDR1~HCDR3を含み、前記軽鎖可変領域が、配列番号8~10に記載のアミノ酸配列をそれぞれ有するLCDR1~LCDR3を含む、二重特異性抗体。
【請求項2】
前記抗LAG3抗体が、配列番号2に記載のアミノ酸配列を有する重鎖可変領域、及び配列番号4に記載のアミノ酸配列を有する軽鎖可変領域を含む、請求項1に記載の二重特異性抗体。
【請求項3】
前記抗LAG3抗体又はその抗原結合性断片が、Fab、Fab’、F(ab’)、Fd、Fv、dAb、相補性決定領域断片、単鎖可変領域断片、ヒト化抗体、キメラ抗体、及びダイアボディから選択される、請求項1~2のいずれか1項に記載の二重特異性抗体。
【請求項4】
前記抗LAG3抗体が、ヒトLAG3-mFcに対して、0.2nM未満、例えば、0.15nM未満、0.1nM未満、0.08nM未満、0.06nM未満、もしくは0.05nM未満、又はそれ以下のEC50値で結合し;好ましくは前記EC50値が間接ELISAによって測定される、請求項1~3のいずれか1項に記載の二重特異性抗体。
【請求項5】
前記抗LAG3抗体が、マウス以外の種に由来する、例えば、ヒト抗体に由来する非CDR領域を含む、請求項1~4のいずれか1項に記載の二重特異性抗体。
【請求項6】
前記抗LAG3抗体が、ヒト抗体に由来する定常領域を含み;
好ましくは、前記抗体の前記定常領域がヒトIgG1、IgG2、IgG3、又はIgG4の定常領域から選択される、
請求項1~5のいずれか1項に記載の二重特異性抗体。
【請求項7】
前記抗LAG3抗体の重鎖定常領域が、Igガンマ-1鎖C領域(例えば、配列番号39に記載されている)又はIgガンマ-4鎖C領域(例えば、配列番号45に記載されている)であり、前記抗LAG3抗体の軽鎖定常領域が、Igカッパ鎖C領域(例えば、配列番号40に記載されている)である、請求項1~6のいずれか1項に記載の二重特異性抗体。
【請求項8】
請求項1~7のいずれか1項に記載の二重特異性抗体であって、
前記抗LAG3抗体がヒトIgG1サブタイプであり、
ここで、EU番号付けシステムによれば、前記抗体の重鎖定数領域が下記の変異:
L234A及びL235A;
L234A及びG237A;
L235A及びG237A;又は
L234A、L235A、及びG237A、
を有し;
好ましくは、前記抗LAG3抗体が、配列番号11に記載のアミノ酸配列を有する重鎖、及び配列番号12に記載のアミノ酸配列を有する軽鎖を含む、二重特異性抗体。
【請求項9】
請求項1~8のいずれか1項に記載の二重特異性抗体であって、
前記抗LAG3抗体がヒトIgG4サブタイプであり、
ここで、EU番号付けシステムによれば、前記抗体の重鎖定数領域が下記の変異:
F234A及びL235A;
F234A及びG237A;
L235A及びG237A;又は
F234A、L235A、及びG237A、
を有し;
好ましくは、前記抗LAG3抗体が、配列番号13に記載のアミノ酸配列を有する重鎖、及び配列番号12に記載のアミノ酸配列を有する軽鎖を含む、二重特異性抗体。
【請求項10】
好ましくは前記二重特異性抗体がIgG-scFv形態である、請求項1~9のいずれか1項に記載の二重特異性抗体。
【請求項11】
前記第1タンパク質機能領域が抗LAG3抗体であり、前記第2タンパク質機能領域が単鎖可変領域断片である;又は
前記第1タンパク質機能領域が単鎖可変領域断片であり、前記第2タンパク質機能領域がLAG3以外の標的を標的とする抗体である、
請求項1~10のいずれか1項に記載の二重特異性抗体。
【請求項12】
前記第1タンパク質機能領域及び前記第2タンパク質機能領域が直接、又はリンカー断片によって連結しており;
好ましくは、前記リンカー断片が(GGGGS)mであり、mが正の整数、例えば、1、2、3、4、5、もしくは6などである;又は
好ましくは、前記リンカー断片が(GGGGS)nGであり、nが正の整数、例えば、1、2、3、4、5、もしくは6などである、
請求項1~11のいずれか1項に記載の二重特異性抗体。
【請求項13】
前記第1タンパク質機能領域及び前記第2タンパク質機能領域の数が、それぞれ独立に1個、2個、又はそれ以上の個数である、請求項1~12のいずれか1項に記載の二重特異性抗体。
【請求項14】
前記単鎖可変領域断片が、前記抗体の重鎖のC末端に連結している、請求項1~13のいずれか1項に記載の二重特異性抗体。
【請求項15】
LAG3を標的とする第1タンパク質機能領域、及び
PD-1を標的とする第2タンパク質機能領域、
を含む、請求項1~14のいずれか1項に記載の二重特異性抗体であって、
前記第1タンパク質機能領域が抗LAG3抗体であり、前記抗LAG3抗体が免疫グロブリン形態であり;
前記第2タンパク質機能領域が抗PD-1単鎖可変領域断片である、二重特異性抗体。
【請求項16】
前記抗PD-1単鎖可変領域断片が、重鎖可変領域及び軽鎖可変領域を含み、
前記重鎖可変領域が、配列番号26~28に記載のアミノ酸配列をそれぞれ有するHCDR1~HCDR3を含み;及び
前記軽鎖可変領域が、配列番号29~31に記載のアミノ酸配列をそれぞれ有するLCDR1~LCDR3を含む、
請求項15に記載の二重特異性抗体。
【請求項17】
前記抗PD-1単鎖可変領域断片において、
前記重鎖可変領域が、配列番号15に記載のアミノ酸配列を有し、前記軽鎖可変領域が、配列番号17に記載のアミノ酸配列を有する;又は
前記重鎖可変領域が、配列番号19に記載のアミノ酸配列を有し、前記軽鎖可変領域が、配列番号21もしくは配列番号38に記載のアミノ酸配列を有する、
請求項15~16のいずれか1項に記載の二重特異性抗体。
【請求項18】
前記抗PD-1単鎖可変領域断片における前記重鎖可変領域及び前記軽鎖可変領域が直接、又はリンカー断片によって連結しており;
好ましくは、前記リンカー断片が(GGGGS)mであり、mが正の整数、例えば、1、2、3、4、5、もしくは6などである;又は
好ましくは、前記リンカー断片が(GGGGS)nGであり、nが正の整数、例えば、1、2、3、4、5、もしくは6などである、
請求項15~17のいずれか1項に記載の二重特異性抗体。
【請求項19】
請求項15~18のいずれか1項に記載の二重特異性抗体であって、
前記二重特異性抗体が、
LAG3を標的とする第1タンパク質機能領域;及び
PD-1を標的とする第2タンパク質機能領域、
を含み;
前記第1タンパク質機能領域の数が1個であり、前記第2タンパク質機能領域の数が2個であり;
前記第1タンパク質機能領域が免疫グロブリンであり、前記第2タンパク質機能領域が単鎖可変領域断片であり;
前記免疫グロブリンが、配列番号11又は配列番号13に記載のアミノ酸配列を有する重鎖、及び配列番号12に記載のアミノ酸配列を有する軽鎖を含み;
前記単鎖可変領域断片が、配列番号19に記載のアミノ酸配列を有する重鎖可変領域、及び配列番号21又は配列番号38に記載のアミノ酸配列を有する軽鎖可変領域を含み;
前記単鎖可変領域断片が、前記免疫グロブリンの2個の重鎖のC末端に連結しており;
前記第1タンパク質機能領域が、第1リンカー断片を介して前記第2タンパク質機能領域に連結しており;前記単鎖可変領域断片の前記重鎖可変領域が、第2リンカー断片を介して前記単鎖可変領域断片の前記軽鎖可変領域に連結しており;前記第1リンカー断片及び前記第2リンカー断片が同一であるか、あるいは異なっており;
好ましくは、前記第1リンカー断片及び前記第2リンカー断片が、配列番号35~37からそれぞれ独立に選択されるアミノ酸配列を有しており;
好ましくは、前記第1リンカー断片及び前記第2リンカー断片のアミノ酸配列が、配列番号36に記載されている、二重特異性抗体。
【請求項20】
LAG3を標的とする第1タンパク質機能領域、及び
PD-1を標的とする第2タンパク質機能領域、
を含む、請求項1~14のいずれか1項に記載の二重特異性抗体であって、
前記第1タンパク質機能領域が抗LAG3単鎖可変領域断片であり、前記第2タンパク質機能領域が抗PD-1抗体であり、前記抗PD-1抗体が免疫グロブリン形態であり、
前記抗LAG3単鎖可変領域断片が、重鎖可変領域及び軽鎖可変領域を含み、
前記重鎖可変領域が、配列番号5~7に記載のアミノ酸配列をそれぞれ有するHCDR1~HCDR3を含み;及び
前記軽鎖可変領域が、配列番号8~10に記載のアミノ酸配列をそれぞれ有するLCDR1~LCDR3を含む、二重特異性抗体。
【請求項21】
前記抗LAG3単鎖可変領域断片において、
前記重鎖可変領域が配列番号2に記載のアミノ酸配列を有し、
前記軽鎖可変領域が配列番号4に記載のアミノ酸配列を有する、
請求項20に記載の二重特異性抗体。
【請求項22】
前記抗LAG3単鎖可変領域断片における前記重鎖可変領域及び前記軽鎖可変領域が直接、又はリンカー断片によって連結しており;
好ましくは、前記リンカー断片が(GGGGS)mであり、mが正の整数、例えば、1、2、3、4、5、もしくは6などである;又は
好ましくは、前記リンカー断片が(GGGGS)nGであり、nが正の整数、例えば、1、2、3、4、5、もしくは6などである、
請求項20~21のいずれか1項に記載の二重特異性抗体。
【請求項23】
前記抗PD-1抗体が、重鎖可変領域及び軽鎖可変領域を含み、
前記重鎖可変領域が、配列番号26~28に記載のアミノ酸配列をそれぞれ有するHCDR1~HCDR3を含み;及び
前記軽鎖可変領域が、配列番号29~31に記載のアミノ酸配列をそれぞれ有するLCDR1~LCDR3を含む、
請求項20~22のいずれか1項に記載の二重特異性抗体。
【請求項24】
前記抗PD-1抗体において、
前記重鎖可変領域が、配列番号15に記載のアミノ酸配列を有し、前記軽鎖可変領域が、配列番号17に記載のアミノ酸配列を有する;又は
前記重鎖可変領域が、配列番号19に記載のアミノ酸配列を有し、前記軽鎖可変領域が、配列番号21もしくは配列番号38に記載のアミノ酸配列を有する、
請求項20~23のいずれか1項に記載の二重特異性抗体。
【請求項25】
前記抗PD-1抗体の重鎖定常領域が、Igガンマ-1鎖C領域(例えば、配列番号39に記載されている)又はIgガンマ-4鎖C領域(例えば、配列番号45に記載されている)であり、前記抗PD-1抗体の軽鎖定常領域が、Igカッパ鎖C領域(例えば、配列番号40に記載されている)である、請求項22~26のいずれか1項に記載の二重特異性抗体。
【請求項26】
請求項20~25のいずれか1項に記載の二重特異性抗体であって、
前記抗PD-1抗体がヒトIgG1サブタイプであり、
ここで、EU番号付けシステムによれば、前記抗PD-1抗体が下記の変異:
L234A及びL235A;
L234A及びG237A;
L235A及びG237A;又は
L234A、L235A、及びG237A、
を有し;
好ましくは、前記抗PD-1抗体が、配列番号34に記載のアミノ酸配列を有する重鎖、及び配列番号25に記載のアミノ酸配列を有する軽鎖を含む、二重特異性抗体。
【請求項27】
請求項20~25のいずれか1項に記載の二重特異性抗体であって、
前記抗PD-1抗体がヒトIgG4サブタイプであり、
ここで、EU番号付けシステムによれば、前記抗PD-1抗体が下記の変異:
F234A及びL235A;
F234A及びG237A;
L235A及びG237A;又は
F234A、L235A、及びG237A、
を有し;
好ましくは、前記抗PD-1抗体が、配列番号32に記載のアミノ酸配列を有する重鎖、及び配列番号25に記載のアミノ酸配列を有する軽鎖を含む、二重特異性抗体。
【請求項28】
請求項20~27のいずれか1項に記載の二重特異性抗体であって、
前記二重特異性抗体が、
LAG3を標的とする第1タンパク質機能領域、及び
PD-1を標的とする第2タンパク質機能領域、
を含み;
前記第1タンパク質機能領域の数が1個であり、前記第2タンパク質機能領域の数が2個であり;
前記第1タンパク質機能領域が単鎖可変領域断片であり、前記第2タンパク質機能領域が免疫グロブリンであり;
前記単鎖可変領域断片が、配列番号2に記載のアミノ酸配列を有する重鎖可変領域、及び配列番号4に記載のアミノ酸配列を有する軽鎖可変領域を含み;
前記免疫グロブリンが、配列番号34又は配列番号32に記載のアミノ酸配列を有する重鎖、及び配列番号25に記載のアミノ酸配列を有する軽鎖を含み;
前記単鎖可変領域断片が、前記免疫グロブリンの2個の重鎖のC末端に連結しており;
前記第1タンパク質機能領域が、第1リンカー断片を介して前記第2タンパク質機能領域に連結しており;前記単鎖可変領域断片の前記重鎖可変領域が、第2リンカー断片を介して前記単鎖可変領域断片の前記軽鎖可変領域に連結しており;前記第1リンカー断片及び前記第2リンカー断片が同一であるか、あるいは異なっており;
好ましくは、前記第1リンカー断片及び前記第2リンカー断片が、配列番号35~37からそれぞれ独立に選択されるアミノ酸配列を有しており;
好ましくは、前記第1リンカー断片及び前記第2リンカー断片のアミノ酸配列が、配列番号36に記載されており;
好ましくは、前記第1リンカー断片及び前記第2リンカー断片のアミノ酸配列が、配列番号37に記載されている、二重特異性抗体。
【請求項29】
請求項1~28のいずれか1項に記載の二重特異性抗体をコードする、単離核酸分子。
【請求項30】
請求項29に記載の単離核酸分子を含む、組換えベクター。
【請求項31】
請求項29に記載の単離核酸分子又は請求項30に記載の組換えベクターを含む、宿主細胞。
【請求項32】
請求項31に記載の宿主細胞を適した条件下で培養すること、及び細胞培養物から前記二重特異性抗体を単離することを含む、請求項13~30のいずれか1項に記載の二重特異性抗体を調製する方法。
【請求項33】
請求項1~28のいずれか1項に記載の二重特異性抗体を含む医薬組成物であって、前記医薬組成物が任意に、薬理学的に許容される副原料をさらに含む、医薬組成物。
【請求項34】
腫瘍又は貧血を治療及び/又は予防するための薬剤の調製における、請求項1~28のいずれか1項に記載の二重特異性抗体の使用であって、
好ましくは前記腫瘍が、卵巣がん、食道がん、メラノーマ、血液悪性腫瘍、膠芽腫、腎細胞がん、肺がん、前立腺がん、膀胱がん、結腸がん、直腸がん、肝臓がん、消化器がん、乳がん、脳腫瘍、膵臓がん、甲状腺がん、頭頸部がん、及び腎臓がんの1つ又は複数から選択され;
好ましくは、前記肺がんが非小細胞肺がんであり;
好ましくは、前記血液悪性腫瘍が白血病であり;
好ましくは、前記食道がんが食道扁平上皮がんである、二重特異性抗体の使用。
【請求項35】
腫瘍又は貧血の治療及び/又は予防における使用のための、請求項1~28のいずれか1項に記載の二重特異性抗体であって、
好ましくは前記腫瘍が、卵巣がん、食道がん、メラノーマ、血液悪性腫瘍、膠芽腫、腎細胞がん、肺がん、前立腺がん、膀胱がん、結腸がん、直腸がん、肝臓がん、消化器がん、乳がん、脳腫瘍、膵臓がん、甲状腺がん、頭頸部がん、及び腎臓がんの1つ又は複数から選択され;
好ましくは、前記肺がんが非小細胞肺がんであり;
好ましくは、前記血液悪性腫瘍が白血病であり;
好ましくは、前記食道がんが食道扁平上皮がんである、二重特異性抗体。
【請求項36】
腫瘍又は貧血を治療及び/又は予防する方法であって、前記方法が、請求項1~28のいずれか1項に記載の二重特異性抗体の有効量を、それを必要とする対象に投与する工程を含み、
好ましくは前記腫瘍が、卵巣がん、食道がん、メラノーマ、血液悪性腫瘍、膠芽腫、腎細胞がん、肺がん、前立腺がん、膀胱がん、結腸がん、直腸がん、肝臓がん、消化器がん、乳がん、脳腫瘍、膵臓がん、甲状腺がん、頭頸部がん、及び腎臓がんの1つ又は複数から選択され;
好ましくは、前記肺がんが非小細胞肺がんであり;
好ましくは、前記血液悪性腫瘍が白血病であり;
好ましくは、前記食道がんが食道扁平上皮がんである、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は生物医学の分野に属し、抗LAG3二重特異性抗体及びその医薬組成物、並びにそれらの使用に関する。具体的には、二重特異性抗体は抗LAG3/抗PD-1二重特異性抗体である。
【背景技術】
【0002】
腫瘍、特に悪性腫瘍は、今日では、健康を脅かす世界的に深刻な疾患であり、各種疾患の中でも死因の第2位となっている。近年、これら疾患の罹患率が著しく増加している。悪性腫瘍は、治療反応性が悪く、後期の転移率が高く、また、予後が不良であることが特徴である。現在臨床的に採用されている従来の治療方法(例えば、放射線療法、化学療法、及び外科治療など)は、疼痛を大幅に緩和し、生存時間を延長するものであるが、それらの方法には大きな制約があり、それらの有効性をさらに向上させるのは困難である。
【0003】
リンパ球活性化遺伝子3(LAG3)、すなわちCD223は、498アミノ酸から構成されるI型膜貫通タンパク質であり、免疫グロブリンスーパーファミリー(IgSF)のメンバーである。LAG3は主に、活性化CD4 T細胞及びCD8 T細胞で発現している。また、細胞、例えば、ナチュラルキラー(NK)細胞、B細胞、調節性T細胞(Tregs)、及び形質細胞様樹状細胞(pDCs)などにおいてもLAG3が発現している(Ruffo Elisa, Wu Richard C, Bruno Tullia C et al., Lymphocyte-activation gene 3 (LAG3): The next immune checkpoint receptor. [J].Semin Immunol, 2019, 42: 101305.)。
【0004】
LAG3分子遺伝子はヒト第12染色体(20p13.3)上でCD4分子遺伝子に隣接して位置し、両者とも同じエクソンとイントロンを有する。LAG3分子とCD4分子は構造的に類似性が高いが、両者間のアミノ酸配列相同性は20%程度しかない。主要組織適合遺伝子複合体クラスII(MHC II)分子、肝類洞内皮細胞レクチン(LSECtin)分子、及びガレクチン-3分子はLAG3分子に対する関連リガンドである。MHCクラスII分子はLAG3に対する主要リガンドである。MHCクラスII分子に対するLAG3分子の親和性(Kd:60nmol・L-1)はCD4分子のものと比較して100倍であり、このことは、LAG3分子が、MHCクラスII分子への結合に関してCD4分子と効果的に競合し、T細胞活性化を阻害しうるということを示している。
【0005】
腫瘍微小環境内においては、T細胞活性化の24時間後に免疫抑制分子LAG3の発現を検出することができ、これがひいてはT細胞の機能不全又はアポトーシスをもたらす。LAG3分子は、そのD1ドメイン(プロリンに富む1個のループ構造を有する)を介して二量体を形成し、CD4 T細胞活性化の第1シグナル伝達軸(first signaling axis)である「CD3-TCR-MHCII」においてMHCクラスII分子に特異的に結合する。それにより、一方ではT細胞活性化のためのシグナル伝達経路がブロックされ、他方ではLAG3分子の細胞内セグメント(KIEELEモチーフ)が免疫抑制シグナルを生成して、CD4 T細胞の活性を下方制御する。LAG3分子はTreg細胞の分化を促進し、シグナル伝達兼転写活性化因子5の下流シグナル伝達に関与し、それによってTreg細胞の阻害効果を増強することができる。これは、腫瘍が免疫系による殺傷を回避するメカニズムの1つである(Andrews Lawrence P, Marciscano Ariel E, Drake Charles G, et al., LAG3 (CD223) as a cancer immunotherapy target. [J]. Immunol Rev, 2017, 276: 80-96.)。
【0006】
各種悪性腫瘍の腫瘍浸潤CD8 T細胞においてLAG3が過剰発現していることが、複数の研究によって示されている。例えば、卵巣がんにおいては、ニューヨーク食道扁平上皮がん1(NY-ESO-1)抗原特異的腫瘍浸潤CD8 T細胞が、PD-1及びLAG3を高度に発現し、IFN-γ及びTNF-αを産生する能力が減少しており、そのためリンパ球が不活性化されている。ガレクチン-3及びLSECtinは、主にLAG3と相互作用し、CD8 T細胞の活性化と機能を調節する。また、転移性メラノーマの患者から単離されたメラノーマ抗原特異的T細胞は、LAG3並びに他の免疫チェックポイント分子CTLA-4及びTIM-3の発現の有意な上方制御を示す(Liu Hao, Li Xinying, Luo Longlong, et al., Research advances in biological function of lymphocyte activation gene-3 (LAG-3) molecule and clinical application of antibody drugs targeting LAG-3 [J]. Chinese Journal of Pharmacology and Toxicology, 2019, 33(01): 70-78.)。
【0007】
現在、複数のLAG3抗体薬が臨床研究段階に入っており、それらのうち、Bristol Myers Squibb社のレラトリマブは10件の臨床研究が進行中であり、最も進展が見られる。これらの研究の大部分は、腫瘍、例えば、血液悪性腫瘍、メラノーマ、膠芽腫、腎細胞がん、非小細胞肺がん、及び同種のものなどの治療に用いられる、レラトリマブとニボルマブの併用療法を伴う。
【0008】
膜貫通受容体PD-1(プログラム細胞死タンパク質1)はCD28ファミリーのメンバーであり、活性化T細胞、B細胞、及び骨髄細胞で発現している。PD-1、PDL1、及びPDL2の受容体はB7スーパーファミリーのメンバーである。PDL1は、T細胞、B細胞、内皮細胞、及び上皮細胞を含む様々な細胞で発現し、PDL2は、抗原提示細胞、例えば、樹状細胞及びマクロファージなどにおいてのみ発現する。
【0009】
PD-1はT細胞の活性化を下方制御するのに非常に重要な役割を果たしており、PD-1を介したT細胞の下方制御は腫瘍免疫回避の重要なメカニズムの一つである。腫瘍表面に発現するPD-L1は、免疫細胞表面のPD-1に結合し、PD-1/PD-L1シグナル伝達経路を介して、免疫細胞による腫瘍組織の殺傷を阻害することができる。また、PD-L1高発現の腫瘍は、検出が困難ながんと関連している(Hamanishi et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 2007; 104: 3360-5)。PD-1に拮抗してPD-1/PD-L1シグナル伝達経路を阻害する効果的な方法の一つは、抗PD-1抗体のインビボ注射である。
【0010】
PD-1抗体は、広範な抗腫瘍性を示す可能性があり、驚くべき有効性を示すことから、PD-1経路を標的とする抗体は、以下の各種の腫瘍の治療においてブレイクスルーをもたらすと考えられる:非小細胞肺がん、腎細胞がん、卵巣がん、及びメラノーマ(Homet M. B., Parisi G., et al., Anti-PD-1 therapy in melanoma. Semin Oncol., 2015 Jun; 42(3): 466-473)、並びに血液系腫瘍及び貧血(Held SA, Heine A, et al., Advances in immunotherapy of chronic myeloid leukemia CML. Curr Cancer Drug Targets, 2013 Sep; 13(7): 768-74)。
【0011】
二機能性抗体は、二重特異性抗体とも呼ばれ、2つの異なる抗原を同時に標的とする特異的抗体医薬であり、免疫選別(immunosorting)及び精製により製造することができ、又は遺伝子工学によって得ることができる。遺伝子工学は、結合部位の最適化、合成形態、収率、及び同種のものの側面において柔軟性があり、一定の利点を有する。現在、二重特異性抗体は、45を超える形態で存在することが示されている(Muller D, Kontermann RE. Bispecific antibodies for cancer immunotherapy: Current perspectives. BioDrugs 2010; 24: 89-98)。IgG-ScFv形態、すなわちモリソン形態(Coloma MJ, Morrison SL. Design and production of novel tetravalent bispecific antibodies. Nat Biotechnol. Nature Biotechnology, 1997; 15: 159-163)は、天然に存在するIgG形態との類似性、並びに抗体の操作、発現、及び精製における利点から、二機能性抗体の理想的な形態であることが示されている(Miller BR, Demarest SJ, et al., Stability engineering of scFvs for the development of bispecific and multivalent antibodies. Protein Eng Des Sel, 2010; 23: 549-57; Fitzgerald J, Lugovskoy A. Rational engineering of antibody therapeutics targeting multiple oncogene pathways. MAbs, 2011; 3: 299-309)。
【0012】
現在、新規抗LAG3抗体、及びPD-1とLAG3とを同時に標的とする二機能性抗体医薬の開発が必要とされている。
【発明の概要】
【0013】
本願発明者らは鋭意研究を重ね、創造的な努力を行うことにより、抗LAG3抗体を得て、それに基づき、抗LAG3/抗PD-1二重特異性抗体を開発した。本願発明者らは驚くべきことに、本発明の抗LAG3抗体(以下、前記抗体又は本発明の抗体と略す場合がある)及び本発明の抗LAG3/抗PD-1二重特異性抗体(以下、前記二重特異性抗体又は本発明の二重特異性抗体と略す場合がある)が、優れた親和性及び/又は特異性を有し、陽性対照抗体(例えば、ニボルマブ、ペムブロリズマブ、レラトリマブ、及び同種のもの)と比べても、1つ以上の側面においてさらに優れたものであることを見出した。本発明を以下に詳細に説明する。
【0014】
本発明の一態様は、重鎖可変領域及び軽鎖可変領域を含む、抗LAG3抗体又はその抗原結合性断片(an antigen-binding fragment)であって、
前記重鎖可変領域が、配列番号5~7に記載のアミノ酸配列をそれぞれ有するHCDR1~HCDR3を含み、前記軽鎖可変領域が、配列番号8~10に記載のアミノ酸配列をそれぞれ有するLCDR1~LCDR3を含む;
前記重鎖可変領域が、配列番号5~7に記載のアミノ酸配列をそれぞれ有するHCDR1~HCDR3を含み、前記軽鎖可変領域が、配列番号8、配列番号46、及び配列番号47に記載のアミノ酸配列をそれぞれ有するLCDR1~LCDR3を含む;又は
前記重鎖可変領域が、配列番号5~7に記載のアミノ酸配列をそれぞれ有するHCDR1~HCDR3を含み、前記軽鎖可変領域が、配列番号48、配列番号46、及び配列番号10に記載のアミノ酸配列をそれぞれ有するLCDR1~LCDR3を含む、抗LAG3抗体又はその抗原結合性断片に関する。
【0015】
本発明のいくつかの実施形態では、
前記抗体の前記重鎖可変領域が、配列番号2に記載のアミノ酸配列を有し、前記抗体の前記軽鎖可変領域が、配列番号4に記載のアミノ酸配列を有する;
前記抗体の前記重鎖可変領域が、配列番号2に記載のアミノ酸配列を有し、前記抗体の前記軽鎖可変領域が、配列番号42に記載のアミノ酸配列を有する;又は
前記抗体の前記重鎖可変領域が、配列番号2に記載のアミノ酸配列を有し、前記抗体の前記軽鎖可変領域が、配列番号44に記載のアミノ酸配列を有する、
前記抗体又はその抗原結合性断片が提供される。
【0016】
本発明のいくつかの実施形態では、Fab、Fab’、F(ab’)、Fd、Fv、dAb、相補性決定領域断片、単鎖可変領域断片(a single chain fragment variable)、ヒト化抗体、キメラ抗体、及びダイアボディから選択される、前記抗体又はその抗原結合性断片が提供される。
【0017】
本発明のいくつかの実施形態では、前記抗体が、ヒトLAG3-mFcに対して、0.2nM未満、例えば、0.15nM未満、0.1nM未満、0.08nM未満、0.06nM未満、もしくは0.05nM未満、又はそれ以下のEC50値で結合し;好ましくは前記EC50値が間接ELISAによって測定される、前記抗体又はその抗原結合性断片が提供される。
【0018】
本発明のいくつかの実施形態では、前記抗体が、マウス以外の種に由来する、例えば、ヒト抗体に由来する非CDR領域を含む、前記抗体又はその抗原結合性断片が提供される。
【0019】
本発明のいくつかの実施形態では、
前記抗体がヒト抗体に由来する定常領域を含み;
好ましくは、前記抗体の定常領域がヒトIgG1、IgG2、IgG3、又はIgG4の定常領域から選択される、
前記抗体又はその抗原結合性断片が提供される。
【0020】
本発明のいくつかの実施形態では、
前記抗LAG3抗体の重鎖定常領域が、Igガンマ-1鎖C領域(例えば、配列番号39に記載されている)又はIgガンマ-4鎖C領域(例えば、配列番号45に記載されている)であり、前記抗LAG3抗体の軽鎖定常領域が、Igカッパ鎖C領域(例えば、配列番号40に記載されている)である、
前記抗体又はその抗原結合性断片が提供される。
【0021】
本発明のいくつかの実施形態では、
前記抗体がヒトIgG1サブタイプであり;
ここで、EU番号付けシステムによれば、前記抗体の重鎖定数領域は下記の変異:
L234A及びL235A;
L234A及びG237A;
L235A及びG237A;又は
L234A、L235A、及びG237A、
を有し;
好ましくは、前記抗体が、配列番号11に記載のアミノ酸配列を有する重鎖、及び配列番号12に記載のアミノ酸配列を有する軽鎖を含む;
前記抗体又はその抗原結合性断片が提供される。
【0022】
本発明のいくつかの実施形態では、
前記抗体がヒトIgG4サブタイプであり;
ここで、EU番号付けシステムによれば、前記抗体の重鎖定数領域は下記の変異:
F234A及びL235A;
F234A及びG237A;
L235A及びG237A;又は
F234A、L235A、及びG237A、
を有し;
好ましくは、前記抗体が、配列番号13に記載のアミノ酸配列を有する重鎖、及び配列番号12に記載のアミノ酸配列を有する軽鎖を含む;
前記抗体又はその抗原結合性断片が提供される。
【0023】
本発明のいくつかの実施形態では、前記抗LAG3抗体はモノクローナル抗体である。
【0024】
本発明のいくつかの実施形態では、前記抗LAG3抗体は免疫グロブリン形態である。
【0025】
本発明のいくつかの実施形態では、前記抗LAG3抗体は単鎖可変領域断片である。
【0026】
本発明の他の態様は、抗体又はその抗原結合性断片、及び小分子薬を含む、抗体薬物複合体(ADC)であって、前記抗体又はその抗原結合性断片が、本発明のいずれかの実施形態の抗LAG3抗体又はその抗原結合性断片であり;好ましくは前記小分子薬が小分子細胞毒性薬であり;より好ましくは前記小分子薬が抗腫瘍化学療法薬である、抗体薬物複合体に関する。
【0027】
前記化学療法薬は、従来の抗腫瘍化学療法薬、例えば、アルキル化剤、代謝拮抗剤、抗腫瘍抗生物質、植物系抗がん剤、ホルモン、及び免疫剤などであってよい。
【0028】
本発明の1つ又は複数の実施形態では、前記抗体薬物複合体が提供され、前記抗体又はその抗原結合性断片は、リンカーを介して小分子薬に連結されており;前記リンカーは当業者に公知のもの、例えば、ヒドラゾン結合、ジスルフィド結合、又はペプチド結合であってよい。
【0029】
本発明の1つ又は複数の実施形態では、前記抗体又はその抗原結合性断片の前記小分子薬に対するモル比が、1:(2~4)、例えば、1:2、1:3、又は1:4である、前記抗体薬物複合体が提供される。
【0030】
本発明のさらなる他の一態様は、第1タンパク質機能領域及び第2タンパク質機能領域を含む、二重特異性抗体であって、
前記第1タンパク質機能領域がLAG3を標的とし、
前記第2タンパク質機能領域がLAG3以外の標的(例えば、PD-1)を標的とし、
前記第1タンパク質機能領域が本発明のいずれかの実施形態の抗体又はその抗原結合性断片であり;
好ましくは、前記二重特異性抗体がIgG-scFv形態であり;
好ましくは、前記第1タンパク質機能領域が本発明のいずれかの実施形態の抗体であり、前記第2タンパク質機能領域が単鎖可変領域断片である;又は
好ましくは、前記第1タンパク質機能領域が単鎖可変領域断片であり、前記第2タンパク質機能領域が本発明のいずれかの実施形態の抗体である、二重特異性抗体に関する。
【0031】
本発明の二重特異性抗体は、抗LAG3/抗PD-1二重特異性抗体である。
【0032】
本発明のいくつかの実施形態では、
前記第1タンパク質機能領域及び前記第2タンパク質機能領域が直接、又はリンカー断片によって連結しており;
好ましくは、前記リンカー断片が(GGGGS)mであり、mが正の整数、例えば、1、2、3、4、5、もしくは6などである;又は
好ましくは、前記リンカー断片が(GGGGS)nGであり、nが正の整数、例えば、1、2、3、4、5、もしくは6などである;
前記二重特異性抗体が提供される。
【0033】
本発明のいくつかの実施形態では、前記第1タンパク質機能領域及び前記第2タンパク質機能領域の数が、それぞれ独立に1個、2個、又はそれ以上の個数である、前記二重特異性抗体が提供される。
【0034】
本発明のいくつかの実施形態では、前記単鎖可変領域断片が、前記抗体の重鎖のC末端に連結している、前記二重特異性抗体が提供される。
【0035】
本発明のいくつかの実施形態では、
LAG3を標的とする第1タンパク質機能領域;及び
PD-1を標的とする第2タンパク質機能領域、
を含み、
前記第1タンパク質機能領域が本発明のいずれかの実施形態の抗LAG3抗体であり、前記抗LAG3抗体が免疫グロブリン形態であり;
前記第2タンパク質機能領域が抗PD-1単鎖可変領域断片である、
前記二重特異性抗体が提供される。
【0036】
本発明のいくつかの実施形態では、
前記抗PD-1単鎖可変領域断片が、重鎖可変領域及び軽鎖可変領域を含み、
前記重鎖可変領域が、配列番号26~28に記載のアミノ酸配列をそれぞれ有するHCDR1~HCDR3を含み;及び
前記軽鎖可変領域が、配列番号29~31に記載のアミノ酸配列をそれぞれ有するLCDR1~LCDR3を含む、
前記二重特異性抗体が提供される。
【0037】
本発明のいくつかの実施形態では、
前記抗PD-1単鎖可変領域断片において、
前記重鎖可変領域が、配列番号15に記載のアミノ酸配列を有し、前記軽鎖可変領域が、配列番号17に記載のアミノ酸配列を有する;又は
前記重鎖可変領域が、配列番号19に記載のアミノ酸配列を有し、前記軽鎖可変領域が、配列番号21もしくは配列番号38に記載のアミノ酸配列を有する、
前記二重特異性抗体が提供される。
【0038】
本発明のいくつかの実施形態では、
前記抗PD-1単鎖可変領域断片における前記重鎖可変領域及び前記軽鎖可変領域が直接、又はリンカー断片によって連結しており;
好ましくは、前記リンカー断片が(GGGGS)mであり、mが正の整数、例えば、1、2、3、4、5、もしくは6などである;又は
好ましくは、前記リンカー断片が(GGGGS)nGであり、nが正の整数、例えば、1、2、3、4、5、もしくは6などである、
前記二重特異性抗体が提供される。
【0039】
本発明のいくつかの実施形態では、
LAG3を標的とする第1タンパク質機能領域、及び
PD-1を標的とする第2タンパク質機能領域、
を含み;
前記第1タンパク質機能領域の数が1個であり、前記第2タンパク質機能領域の数が2個であり;
前記第1タンパク質機能領域が免疫グロブリンであり、前記第2タンパク質機能領域が単鎖可変領域断片であり;
前記免疫グロブリンが、配列番号11又は配列番号13に記載のアミノ酸配列を有する重鎖、及び配列番号12に記載のアミノ酸配列を有する軽鎖を含み;
前記単鎖可変領域断片が、配列番号19に記載のアミノ酸配列を有する重鎖可変領域、及び配列番号21又は配列番号38に記載のアミノ酸配列を有する軽鎖可変領域を含み;
前記単鎖可変領域断片が、前記免疫グロブリンの2個の重鎖のC末端に連結しており;
前記第1タンパク質機能領域が、第1リンカー断片を介して前記第2タンパク質機能領域に連結しており;前記単鎖可変領域断片の重鎖可変領域が、第2リンカー断片を介して前記単鎖可変領域断片の軽鎖可変領域に連結しており;前記第1リンカー断片及び前記第2リンカー断片が同一であるか、あるいは異なっており;
好ましくは、前記第1リンカー断片及び前記第2リンカー断片が、配列番号35~37からそれぞれ独立に選択されるアミノ酸配列を有しており;
好ましくは、前記第1リンカー断片及び前記第2リンカー断片のアミノ酸配列が、配列番号36に記載されている、
前記二重特異性抗体が提供される。
【0040】
本発明のいくつかの実施形態では、
LAG3を標的とする第1タンパク質機能領域、及び
PD-1を標的とする第2タンパク質機能領域、
を含み、
前記第1タンパク質機能領域が抗LAG3単鎖可変領域断片であり、前記第2タンパク質機能領域が抗PD-1抗体であり、前記抗PD-1抗体が免疫グロブリン形態であり;
前記抗LAG3単鎖可変領域断片が、重鎖可変領域及び軽鎖可変領域を含み;
前記重鎖可変領域が、配列番号5~7に記載のアミノ酸配列をそれぞれ有するHCDR1~HCDR3を含み;
前記軽鎖可変領域が、配列番号8~10に記載のアミノ酸配列をそれぞれ有するLCDR1~LCDR3を含む、
前記二重特異性抗体が提供される。
【0041】
本発明のいくつかの実施形態では、
前記抗LAG3単鎖可変領域断片において、
前記重鎖可変領域が、配列番号2に記載のアミノ酸配列を有し、前記軽鎖可変領域が、配列番号4に記載のアミノ酸配列を有する;
前記重鎖可変領域が、配列番号2に記載のアミノ酸配列を有し、前記軽鎖可変領域が、配列番号42に記載のアミノ酸配列を有する;又は
前記重鎖可変領域が、配列番号2に記載のアミノ酸配列を有し、前記軽鎖可変領域が、配列番号4に記載4のアミノ酸配列を有する、
前記二重特異性抗体が提供される。
【0042】
本発明のいくつかの実施形態では、
前記抗LAG3単鎖可変領域断片における重鎖可変領域及び軽鎖可変領域が直接、又はリンカー断片によって連結しており;
好ましくは、前記リンカー断片が(GGGGS)mであり、mが正の整数、例えば、1、2、3、4、5、もしくは6などである;又は
好ましくは、前記リンカー断片が(GGGGS)nGであり、nが正の整数、例えば、1、2、3、4、5、もしくは6などである、
前記二重特異性抗体が提供される。
【0043】
本発明のいくつかの実施形態では、
前記抗PD-1抗体が、重鎖可変領域及び軽鎖可変領域を含み、
前記重鎖可変領域が、配列番号26~28に記載のアミノ酸配列をそれぞれ有するHCDR1~HCDR3を含み;
前記軽鎖可変領域が、配列番号29~31に記載のアミノ酸配列をそれぞれ有するLCDR1~LCDR3を含む、
前記二重特異性抗体が提供される。
【0044】
本発明のいくつかの実施形態では、
前記抗PD-1抗体において、
前記重鎖可変領域が、配列番号15に記載のアミノ酸配列を有し、前記軽鎖可変領域が、配列番号17に記載のアミノ酸配列を有する;又は
前記重鎖可変領域が、配列番号19に記載のアミノ酸配列を有し、前記軽鎖可変領域が、配列番号21もしくは配列番号38に記載のアミノ酸配列を有する、
前記二重特異性抗体が提供される。
【0045】
本発明のいくつかの実施形態では、前記抗PD-1抗体の重鎖定常領域が、Igガンマ-1鎖C領域(例えば、配列番号39に記載されている)又はIgガンマ-4鎖C領域(例えば、配列番号45に記載されている)であり、前記抗PD-1抗体の軽鎖定常領域が、Igカッパ鎖C領域(例えば、配列番号40に記載されている)である、前記二重特異性抗体が提供される。
【0046】
本発明のいくつかの実施形態では、
前記抗PD-1抗体がヒトIgG1サブタイプであり、
ここで、EU番号付けシステムによれば、前記抗PD-1抗体は下記の変異:
L234A及びL235A;
L234A及びG237A;
L235A及びG237A;又は
L234A、L235A、及びG237A、
を有し;
好ましくは、前記抗PD-1抗体が、配列番号34に記載のアミノ酸配列を有する重鎖、及び配列番号25に記載のアミノ酸配列を有する軽鎖を含む、
前記二重特異性抗体が提供される。
【0047】
本発明のいくつかの実施形態では、
前記抗PD-1抗体がヒトIgG4サブタイプであり、
ここで、EU番号付けシステムによれば、前記抗PD-1抗体は下記の変異:
F234A及びL235A;
F234A及びG237A;
L235A及びG237A;又は
F234A、L235A、及びG237A、
を有し;
好ましくは、前記抗PD-1抗体が、配列番号32に記載のアミノ酸配列を有する重鎖、及び配列番号25に記載のアミノ酸配列を有する軽鎖を含む、
前記二重特異性抗体が提供される。
【0048】
本発明のいくつかの実施形態では、
LAG3を標的とする第1タンパク質機能領域、及び
PD-1を標的とする第2タンパク質機能領域、
を含み;
前記第1タンパク質機能領域の数が1個であり、前記第2タンパク質機能領域の数が2個であり;
前記第1タンパク質機能領域が単鎖可変領域断片であり、前記第2タンパク質機能領域が免疫グロブリンであり;
前記単鎖可変領域断片が、配列番号2に記載のアミノ酸配列を有する重鎖可変領域と、配列番号4に記載のアミノ酸配列を有する軽鎖可変領域とを含み;
前記免疫グロブリンが、配列番号34又は配列番号32に記載のアミノ酸配列を有する重鎖、及び配列番号25に記載のアミノ酸配列を有する軽鎖を含み;
前記単鎖可変領域断片が、前記免疫グロブリンの2個の重鎖のC末端に連結しており;
前記第1タンパク質機能領域が、第1リンカー断片を介して前記第2タンパク質機能領域に連結しており;前記単鎖可変領域断片の重鎖可変領域が、第2リンカー断片を介して前記単鎖可変領域断片の軽鎖可変領域に連結しており;前記第1リンカー断片及び前記第2リンカー断片が同一であるか、又は異なっており;
好ましくは、前記第1リンカー断片及び前記第2リンカー断片が、配列番号35~37からそれぞれ独立に選択されるアミノ酸配列を有しており;
好ましくは、前記第1リンカー断片及び前記第2リンカー断片のアミノ酸配列が、配列番号36に記載されている、
前記二重特異性抗体が提供される。
【0049】
本発明のいくつかの実施形態では、
1個の免疫グロブリン分子が2個の単鎖可変領域断片分子に連結しており;
好ましくは、前記2個の単鎖可変領域断片分子が同一である、
前記二重特異性抗体が提供される。
【0050】
本発明のさらなる他の一態様は、本発明のいずれかの実施形態の抗LAG3抗体、又は本発明のいずれかの実施形態の二重特異性抗体をコードする単離核酸分子に関する。
【0051】
本発明のさらなる他の一態様は、本発明の単離核酸分子を含む組換えベクターに関する。
【0052】
本発明のさらなる他の一態様は、本発明の単離核酸分子又は本発明の組換えベクターを含む、宿主細胞に関する。
【0053】
本発明のさらなる他の一態様は、本発明のいずれかの実施形態の抗体もしくはその抗原結合性断片、又は本発明のいずれかの実施形態の二重特異性抗体を調製する方法であって、本発明の宿主細胞を適した条件下で培養すること、及び細胞培養物から前記抗体もしくはその抗原結合性断片又は二重特異性抗体を単離することを含む、方法に関する。
【0054】
本発明のさらなる他の一態様は、本発明のいずれかの実施形態の抗体もしくはその抗原結合性断片、本発明のいずれかの実施形態の抗体薬物複合体、又は本発明のいずれかの実施形態の二重特異性抗体を含む医薬組成物であって、前記医薬組成物が任意に、薬理学的に許容される副原料をさらに含む、医薬組成物に関する。
【0055】
本発明のさらなる他の一態様は、腫瘍又は貧血を治療及び/又は予防するための薬剤の調製における、本発明のいずれかの実施形態の抗体もしくはその抗原結合性断片、本発明のいずれかの実施形態の抗体薬物複合体、又は本発明のいずれかの実施形態の二重特異性抗体の使用であって、
好ましくは前記腫瘍が、卵巣がん、食道がん、メラノーマ、血液悪性腫瘍、膠芽腫、腎細胞がん、肺がん、前立腺がん、膀胱がん、結腸がん、直腸がん、肝臓がん、消化器がん、乳がん、脳腫瘍、膵臓がん、甲状腺がん、頭頸部がん、及び腎臓がんの1つ又は複数から選択され;
好ましくは、前記肺がんが非小細胞肺がんであり;
好ましくは、前記血液悪性腫瘍が白血病であり;
好ましくは、前記食道がんが食道扁平上皮がんである;
抗体もしくはその抗原結合性断片、抗体薬物複合体、又は二重特異性抗体の使用に関する。
【0056】
前記の本発明のいずれかの実施形態の抗体もしくはその抗原結合性断片、本発明のいずれかの実施形態の抗体薬物複合体、又は本発明のいずれかの実施形態の二重特異性抗体は、腫瘍又は貧血の治療及び/又は予防において使用するためのものであって、
好ましくは、前記腫瘍は卵巣がん、食道がん、メラノーマ、血液悪性腫瘍、膠芽腫、腎細胞がん、肺がん、前立腺がん、膀胱がん、結腸がん、直腸がん、肝臓がん、消化器がん、乳がん、脳腫瘍、膵臓がん、甲状腺がん、頭頸部がん、及び腎臓がんの1つ又は複数から選択され;
好ましくは、前記肺がんは非小細胞肺がんであり;
好ましくは、前記血液悪性腫瘍は白血病であり;
好ましくは、前記食道がんは食道扁平上皮がんである。
【0057】
本発明のさらなる他の一態様は、腫瘍又は貧血を治療及び/又は予防する方法であって、本発明のいずれかの実施形態の抗体もしくはその抗原結合性断片、本発明のいずれかの実施形態の抗体薬物複合体、又は本発明のいずれかの実施形態の二重特異性抗体の有効量を、それを必要とする対象に投与する工程を含み、
好ましくは前記腫瘍が、卵巣がん、食道がん、メラノーマ、血液悪性腫瘍、膠芽腫、腎細胞がん、肺がん、前立腺がん、膀胱がん、結腸がん、直腸がん、肝臓がん、消化器がん、乳がん、脳腫瘍、膵臓がん、甲状腺がん、頭頸部がん、及び腎臓がんの1つ又は複数から選択され;
好ましくは、前記肺がんが非小細胞肺がんであり;
好ましくは、前記血液悪性腫瘍が白血病であり;
好ましくは、前記食道がんが食道扁平上皮がんである、方法に関する。
【0058】
本発明において、他に定義されない限り、本明細書内で使用される科学及び技術用語は、当業者が一般的に理解する意味を有する。また、本明細書で使用される細胞培養、分子遺伝学、核酸化学、及び免疫学の実験室操作は、対応する分野で広く使用されるルーチン手順である。一方、本発明の理解を促すために、関連のある語の定義及び説明を以下に提供する。
【0059】
本明細書で使用されるEC50という語は、最大効果の50%に対する濃度、すなわち、最大効果の50%を引き起こしうる濃度のことを指す。
【0060】
本明細書で使用される「抗体」という語は、一般に2対のポリペプチド鎖からなる(それぞれの対が1本の「軽」(L)鎖と1本の「重」(H)鎖を有する)免疫グロブリン分子のことを指す。抗体軽鎖はκ及びλ軽鎖へと分類される。重鎖はμ、δ、γ、α、又はεへと分類される。抗体のアイソタイプはIgM、IgD、IgG、IgA、及びIgEとして定義される。軽鎖及び重鎖において、可変領域と定常領域は、約12以上のアミノ酸の「J」領域によって連結しており、重鎖はさらに、約3以上のアミノ酸の「D」領域を含む。各重鎖は、重鎖可変領域(VH)及び重鎖定常領域(CH)からなる。重鎖定常領域は、3つのドメイン(CH1、CH2、及びCH3)からなる。各軽鎖は、軽鎖可変領域(VL)及び軽鎖定常領域(CL)からなる。軽鎖定常領域は1つのドメイン、CLからなる。抗体の定常領域は、免疫系の各種細胞(例えば、エフェクター細胞)の、古典的な補体系の第1成分(C1q)への結合を含む、免疫グロブリンの宿主組織又は因子への結合を媒介することができる。VH及びVL領域は、超可変領域(相補性決定領域(CDR)と呼ばれる)にさらに細かく分けることができ、超可変領域間にはフレームワーク領域(FR)と呼ばれる保存的な領域が分布している。各VH及びVLは、アミノ末端からカルボキシル末端に向けて次の順番で並んだ、3つのCDRと4つのFRからなる:FR1、CDR1、FR2、CDR2、FR3、CDR3、及びFR4。各重鎖/軽鎖ペアの可変領域(VH及びVL)は、抗原結合部位を形成する。領域又はドメインに対するアミノ酸の割り当ては、Bethesda M.d., Kabat Sequences of Proteins of Immunological Interest (National Institutes of Health, (1987及び1991))もしくはChothia & Lesk J. Mol. Biol., 1987; 196:901-917;Chothia et al., Nature, 1989; 342:878-883、又はIMGT番号付けシステムの定義、Ehrenmann F, Kaas Q, Lefranc M P., IMGT/3Dstructure-DB and IMGT/DomainGapAlign: a database and a tool for immunoglobulins or antibodies, T cell receptors, MHC, IgSF and MhcSF[J]., Nucleic acids research, 2009; 38(suppl_1):D301-D307における定義を参照、に基づいて行われる。
【0061】
特に、重鎖はさらに、3個を超える、例えば、6個、9個、又は12個などのCDRを有していてもよい。例えば、本発明の二重特異性抗体では、重鎖は1個のScFvに連結したC末端を有するIgG抗体の重鎖であってよく、この場合、重鎖は9個のCDRを含む。
【0062】
「抗体」という語は、抗体を製造するためのいかなる特定の方法によっても限定されない。例えば、抗体には、組換え抗体、モノクローナル抗体、及びポリクローナル抗体が含まれる。抗体は、IgG(例えば、サブタイプIgG1、IgG2、IgG3、もしくはIgG4)、IgA1、IgA2、IgD、IgE、又はIgMなどの、各種アイソタイプの抗体であってよい。
【0063】
本明細書で使用される「mAb」及び「モノクローナル抗体」という語は、高度に相同な抗体のグループに由来する、すなわち、自然に生じうる天然の変異を例外として同一の抗体分子のグループに由来する、抗体又は抗体の断片のことを指す。モノクローナル抗体は、ある抗原上の単一のエピトープに対して高度に特異的である。モノクローナル抗体と異なり、ポリクローナル抗体は、通常、ある抗原上の異なるエピトープを一般に認識する少なくとも2つ以上の異なる抗体を含む。モノクローナル抗体は一般に、Kohler et al.(Kohler G, Milstein C. Continuous cultures of fused cells secreting antibody of predefined specificity [J]. Nature, 1975; 256(5517): 495)によって最初に報告されたハイブリドーマ技術を用いて取得することができるが、組換えDNA技術を用いても取得することができる(例えば、米国特許第4816567号明細書を参照)。
【0064】
本明細書で使用される「ヒト化抗体」という語は、ヒト免疫グロブリン(レセプター抗体)のCDRの全体又は部分を非ヒト抗体(ドナー抗体)のCDRで置き換えた場合に得られる抗体又は抗体断片のことを指し、ドナー抗体は、期待される特異性、親和性、又は反応性を有する非ヒト(例えば、マウス、ラット、もしくはウサギ)抗体であってよい。さらに、レセプター抗体のフレームワーク領域(FR)におけるいくつかのアミノ酸残基も、対応する非ヒト抗体のアミノ酸残基又は他の抗体のアミノ酸残基に置換し、抗体の性能をさらに改善又は最適化することができる。ヒト化抗体のさらなる詳細については、例えば、Jones et al., Nature, 1986; 321:522-525、Reichmann et al., Nature, 1988; 332:323-329、Presta, Curr. Op. Struct. Biol., 1992; 2:593-596;及びClark, Immunol. Today, 2000; 21:397-402を参照のこと。いくつかのケースでは、抗体の抗原結合性断片はダイアボディであり、V及びVドメインが単一のポリペプチド鎖上に発現する。しかし、使用されるリンカーは短いため、同一鎖上の2つのドメインのペアリングは起こりえない。そのため、ドメインは他の鎖上の相補ドメインとペアリングすることとなり、2個の抗原結合部位が生成する(例えば、Holliger P. et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 1993; 90:6444-6448及びPoljak R.J. et al., Structure, 1994; 2:1121-1123を参照)。
【0065】
本明細書で使用される「単鎖可変領域断片(ScFv)」という語は、抗体重鎖可変領域(V)及び抗体軽鎖可変領域(V)がリンカーによって連結した分子のことを指す。V及びVドメインはペアを成し、それらドメインが単一ポリペプチド鎖を生成することを可能にするリンカーによって一価の分子が形成される(例えば、Bird et al., Science, 1988; 242:423-426及びHuston et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 1988; 85:5879-5883を参照)。このようなscFv分子は次の一般構造を有していてよい:NH2-V-リンカー断片-V-COOH、又はNH2-V-リンカー断片-V-COOH。従来技術の適切なリンカーは、GGGGSアミノ酸配列の反復、又はそのバリアントからなる。例えば、(GGGGS)4のアミノ酸配列を有するリンカーを用いてもよく、そのバリアントを用いてもよい(Holliger et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 1993; 90:6444-6448)。本発明において使用できる他のリンカーが、Alfthan et al., Protein Eng., 1995; 8:725-731、Choi et al., Eur. J. Immunol., 2001; 31:94-106、Hu et al., Cancer Res., 1996; 56:3055-3061、Kipriyanov et al., J. Mol. Biol., 1999; 293:41-56、及びRoovers et al., Cancer Immunology, Immunotherapy, 2001, 50(1):51-59.に記載されている。
【0066】
本明細書で使用される「単離される」という語は、天然状態から人為手段によって取得されることを指す。特定の「単離される」物質又は成分が天然に存在する場合に、その天然環境において変化が生ずることであってもよく、天然環境から単離されることであってもよく、その両者であってもよい。例えば、単離されていない特定のポリヌクレオチド又はポリペプチドが特定の動物生体中に天然に存在し、このような天然状態から高純度の同一のポリヌクレオチド又はポリペプチドが単離された場合、それを単離ポリヌクレオチド又はポリペプチドと呼ぶ。「単離される」という語は、前記物質の活性に影響を及ぼさない、人工もしくは合成物質、又は他の不純物の存在を除外するものではない。
【0067】
本明細書で使用される「ベクター」という語は、ポリヌクレオチドを挿入することができる核酸ビヒクルのことを指す。ベクターが、挿入されたポリヌクレオチドにコードされるタンパク質の発現を可能にする場合、そのベクターは、発現ベクターと呼ばれる。ベクターは、ベクターによって運ばれる遺伝物質エレメントが宿主細胞で発現できるように、形質転換、形質導入、又はトランスフェクションによって宿主細胞に導入することができる。ベクターは当業者に周知であり、例として、プラスミド;ファージミド;コスミド;人工染色体、例えば、酵母人工染色体(YAC)、細菌人工染色体(BAC)、又はP1由来人工染色体(PAC)など;ファージ、例えば、ラムダファージ又はM13ファージなど;及び動物ウイルスが挙げられるが、これらに限定されない。ベクターとして使用しうる動物ウイルスとしては、レトロウイルス(レンチウイルスを含む)、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス、ヘルペスウイルス(例えば、単純ヘルペスウイルスなど)、ポックスウイルス、バキュロウイルス、パピローマウイルス、及びパポバウイルス(例えば、SV40など)が挙げられるが、これらに限定されない。ベクターは、発現を調節するための各種エレメントを含んでいてよく、それらの例として、プロモーター配列、転写開始配列、エンハンサー配列、選択エレメント、及びレポーター遺伝子が挙げられるが、これらに限定されない。さらに、ベクターは、複製開始部位を含んでいてもよい。
【0068】
本明細書で使用される「宿主細胞」という語は、そこにベクターを導入できる細胞のことを指し、例として、原核細胞、例えば、E. coliもしくはBacillus subtilisなど;真菌細胞、例えば、酵母細胞もしくはAspergillusなど;昆虫細胞、例えば、S2 Drosophila細胞もしくはSf9など;又は動物細胞、例えば、線維芽細胞、CHO細胞、GS細胞、COS細胞、NSO細胞、HeLa細胞、BHK細胞、HEK293細胞、もしくはヒト細胞などが挙げられるが、これらに限定されない。
【0069】
本明細書で使用される「特異的結合」という語は、2つの分子間の非無作為的な結合反応、例えば、抗体とその標的となる抗原との間の反応などのことを指す。いくつかの実施形態において、ある抗原に特異的に結合する抗体(又はある抗原に対して特異的な抗体)とは、抗体が約10-5M未満、例えば、約10-6M、10-7M、10-8M、10-9M、もしくは10-10M未満、又はそれ以下の親和性(K)で抗原に結合することを意味する。
【0070】
本明細書で使用される「K」という語は、特異的抗体-抗原相互作用の解離平衡定数のことを指し、抗体と抗原との間の結合親和性を説明するために使用される。解離平衡定数が小さいことは、抗体-抗原結合が強く、抗体と抗原との間の親和性が高いことを表す。一般に、抗体は、約10-5M未満、例えば、約10-6M、10-7M、10-8M、10-9M、もしくは10-10M未満、又はそれ以下の解離平衡定数(K)で抗原(例えば、PD-1タンパク質)に結合する。Kは、当業者に公知の方法、例えば、Fortebio分子相互作用機器の使用、を用いて決定することができる。
【0071】
本明細書で使用される「モノクローナル抗体」という語と「mAb」という語は同一の意味を有し、互換的に用いることができる。「ポリクローナル抗体」という語と「pAb」という語は同一の意味を有し、互換的に用いることができる。また、本明細書において、アミノ酸は通常、当該分野で公知の1文字及び3文字略号を使用して表される。例えば、アラニンはA又はAlaで表すことができる。
【0072】
本明細書で使用される「薬理学的に許容される担体及び/又は賦形剤」という語は、対象及び活性成分に薬理学的及び/又は生理学的に適合した担体及び/又は賦形剤のことを指す。このような担体及び/又は賦形剤は当該分野で周知であり(例えば、Remington’s Pharmaceutical Sciences, edited by Gennaro AR, 19th Ed., Pennsylvania, Mack Publishing Company, 1995を参照)、例として、pH調整剤、界面活性剤、アジュバント、及びイオン強度増強剤が挙げられるが、これらに限定されない。例えば、pH調整剤の限定されない例として、リン酸緩衝液が挙げられ;界面活性剤の限定されない例として、陽イオン、陰イオン、又は非イオン界面活性剤、例えば、Tween-80などが挙げられ;イオン強度増強剤の限定されない例として、塩化ナトリウムが挙げられる。
【0073】
本明細書で使用される「有効量」という語は、所望の効果を得るのに、又は少なくとも部分的に得るのに充分な量のことを指す。例えば、疾患(例えば、腫瘍)に対する予防的有効量とは、その疾患(例えば、腫瘍)の発症を予防、抑止、又は遅延するのに充分な量のことを指し、治療有効量とは、その疾患に罹患している患者において、疾患又はその合併症を治癒又は少なくとも部分的に抑止するのに充分な量のことを指す。そのような有効量を決定することは、疑いもなく当業者の能力の範囲内である。例えば、治療目的における有効量は、治療しようとする疾患の重症度;患者自身の免疫系の全体的な状態;年齢、体重、及び性別などの患者の一般的な条件;投与経路;並びに同時に行われる他の治療、などによって決まる。
【0074】
本明細書において、PD-1タンパク質のアミノ酸配列(NCBI GenBank:NM_005018)といった場合、それは全長PD-1タンパク質、又はPD-1の細胞外断片であるPD-1 ECD、又はPD-1 ECDを含む断片のことも含んでおり、また、全長PD-1タンパク質の融合タンパク質又はPD-1 ECDの融合タンパク質、例えば、マウス又はヒトIgGのFcタンパク質断片(mFcもしくはhFc)と融合した断片のことも包含する。しかし、PD-1タンパク質のアミノ酸配列において、(置換、欠失、及び/又は付加を含むがそれらに限定されない)突然変異又は変異が、その生物学的機能に影響を与えることなく天然に生じうること、又は人工的に導入されうることを当業者は理解するであろう。したがって、本発明において、「PD-1タンパク質」という語は、それらの天然又は人工的なバリアントを含む、すべてのこのような配列を包含するものとする。また、PD-1タンパク質の配列断片について記述する際、それらの天然又は人工的なバリアント内の対応する配列断片のことも含んでいる。
【0075】
本明細書において、リンパ球活性化遺伝子3(LAG3)のアミノ酸配列といった場合、それは全長LAG3タンパク質、又はLAG3の細胞外断片であるLAG3 ECD、又はLAG3 ECDを含む断片のことも含んでおり、また、全長LAG3タンパク質の融合タンパク質又はLAG3 ECDの融合タンパク質、例えば、マウス又はヒトIgGのFcタンパク質断片(mFcもしくはhFc)と融合した断片のことも包含する。しかし、LAG3タンパク質のアミノ酸配列において、(置換、欠失、及び/又は付加を含むがそれらに限定されない)突然変異又は変異が、その生物学的機能に影響を与えることなく天然に生じうること、又は人工的に導入されうることを当業者は理解するであろう。したがって、本発明において、「LAG3タンパク質」という語は、それらの天然又は人工的なバリアントを含む、すべてのこのような配列を包含するものとする。また、LAG3タンパク質の配列断片について記述する際、それらの天然又は人工的なバリアント内の対応する配列断片のことも含んでいる。
【0076】
本発明において、「第1」(例えば、第1タンパク質機能領域)及び「第2」(例えば、第2タンパク質機能領域)という語は、特に断りのない限り、表現上の区別又は明瞭性のために用いられ、典型的な順序の意味は有しない。
【発明の効果】
【0077】
本発明の有益な効果
本発明は、以下の効果のいずれか1つ以上を達成する:
(1)本発明の抗LAG3抗体が、優れた親和性と特異性を有すること;
(2)本発明の二重特異性抗体(例えば、BS-PL021A、BS-PL022B、又はBS-PL023C)が、LAG3に特異的に結合することができ、LAG3のMHC IIへの結合を効果的にブロックすることができ、生物におけるLAG3の免疫抑制を特異的に緩和できること;
(3)本発明の二重特異性抗体(例えば、BS-PL021A、BS-PL022B、又はBS-PL023C)が、PD-1に特異的に結合することができ、PD-1のPDL1への結合を効果的にブロックすることができ、生物におけるPD-1の免疫抑制を特異的に緩和し、免疫応答を活性化できること;
(4)本発明の二重特異性抗体における第1タンパク質機能領域及び第2タンパク質機能領域が、相乗効果を有すること;
(5)本発明の二重特異性抗体、特にBS-PL022Bが、Fc受容体FcγRI、FcγRIIb、FcγRIIa_H131、FcγRIIIa_V158、及び/又はFcγRIIIa_F158に対するその結合活性を完全に取り除いたものであり、且つそのADCC活性又はADCP活性をさらに完全に取り除いたものであること;並びに
(6)本発明の二重特異性抗体、特にBS-PL022Bが、補体C1qに対するその結合活性を完全に取り除いたものであり、且つそのCDC活性をさらに取り除いたものであること。
【図面の簡単な説明】
【0078】
図1図1は、BS-PL021A、BS-PL022B、BS-PL023C、Bs-PLV02、及び14C12H1L1(hG1TM)の、抗原PD-1-mFcに対する結合活性を、間接ELISAによって分析した結果である。
【0079】
図2図2は、BS-PL021A、BS-PL022B、BS-PL023C、BS-PLV02、レラトリマブ、及びH7L8(hG1WT)の、抗原LAG3-mFcに対する結合活性を、間接ELISAによって分析した結果である。
【0080】
図3図3は、ヒトPD-1-mFc-ビオチンへの結合に関してヒトPDL1-mFcと競合する、抗LAG3/抗PD-1二重特異性抗体の活性を、競合ELISAによって分析した結果である。
【0081】
図4図4は、抗LAG3/抗PD-1二重特異性抗体の、293T-PD1膜表面上のPD-1に対する結合活性を、FACSによって分析した結果である。
【0082】
図5図5は、抗LAG3/抗PD-1二重特異性抗体の、293T-LAG3膜表面上のLAG3に対する結合活性を、FACSによって分析した結果である。
【0083】
図6図6は、細胞膜表面上の抗原PD-1への結合に関してPDL1と競合する、抗LAG3/抗PD-1二重特異性抗体の活性を、競合フローサイトメトリーによって分析した結果である。
【0084】
図7図7は、細胞膜表面上の抗原MHC IIへの結合に関してLAG3と競合する、抗LAG3/抗PD-1二重特異性抗体の活性を、競合フローサイトメトリーによって分析した結果である。
【0085】
図8A図8Aは、MHC IIへのLAG3の結合をブロックする抗LAG3/抗PD-1二重特異性抗体の分析の結果である。
【0086】
図8B図8Bは、MHC IIへのLAG3の結合をブロックする抗LAG3/抗PD-1二重特異性抗体の分析の結果である。
【0087】
図9A図9Aは、PD-L1へのPD-1の結合をブロックする抗LAG3/抗PD-1二重特異性抗体の分析の結果である。
【0088】
図9B図9Bは、PD-L1へのPD-1の結合をブロックする抗LAG3/抗PD-1二重特異性抗体の分析の結果である。
【0089】
図10A図10Aは、MHC IIへのLAG3の結合とPD-L1へのPD-1の結合を同時にブロックする抗LAG3/抗PD-1二重特異性抗体の分析の結果である。
【0090】
図10B図10Bは、MHC IIへのLAG3の結合とPD-L1へのPD-1の結合を同時にブロックする抗LAG3/抗PD-1二重特異性抗体の分析の結果である。
【0091】
図11図11は、抗LAG3/抗PD-1二重特異性抗体のブリッジングアッセイ(bridging assay)の結果である。
【0092】
図12A図12Aは、IFN-γ分泌の促進における抗LAG3/抗PD-1二重特異性抗体の生物学的活性を、混合リンパ球反応(MLR)によって分析した結果を示す。
【0093】
図12B図12Bは、IL-2分泌の促進における抗LAG3/抗PD-1二重特異性抗体の生物学的活性を、混合リンパ球反応(MLR)によって分析した結果を示す。
【0094】
図13図13は、FcγRIに対する、BS-PL022Bの親和性定数の分析の結果である。
【0095】
図14図14は、FcγRIに対する、H7L8(hG1WT)の親和性定数の分析の結果である。
【0096】
図15図15は、FcγRIIIa_V158に対する、BS-PL022Bの親和性定数の分析の結果である。
【0097】
図16図16は、FcγRIIIa_V158に対する、H7L8(hG1WT)の親和性定数の分析の結果である。
【0098】
図17図17は、FcγRIIIa_F158に対する、BS-PL022Bの親和性定数の分析の結果である。
【0099】
図18図18は、FcγRIIIa_F158に対する、H7L8(hG1WT)の親和性定数の分析の結果である。
【0100】
図19図19は、FcγRIIa_H131に対する、BS-PL022Bの親和性定数の分析の結果である。
【0101】
図20図20は、FcγRIIa_H131に対する、H7L8(hG1WT)の親和性定数の分析の結果である。
【0102】
図21図21は、FcγRIIbに対する、BS-PL022Bの親和性定数の分析の結果である。
【0103】
図22図22は、FcγRIIbに対する、H7L8(hG1WT)の親和性定数の分析の結果である。
【0104】
図23図23は、C1qに対する、BS-PL022Bの親和性定数の分析の結果である。
【0105】
図24図24は、C1qに対する、H7L8(hG1WT)の親和性定数の分析の結果である。
【0106】
図25図25は、BS-PL022Bに対するADCP効果分析の結果である。
【0107】
図26図26は、CT26腫瘍を移植したBALB/c-hPD1/hLAG3マウスモデルにおける、抗LAG3/抗PD-1二重特異性抗体の有効性である。P<0.05、**P<0.01、***P<0.001;アイソタイプ対照群との比較(二元配置分散分析)。
【0108】
図27図27は、CT26腫瘍を移植したBALB/c-hPD1/hLAG3マウスモデルの体重に対する、抗LAG3/抗PD-1二重特異性抗体の効果である。
【発明を実施するための形態】
【0109】
詳細な説明
本発明の実施形態を、実施例を参照しながら以下に詳細に説明する。当業者は、以下の実施例が本発明の単なる例証のためのものであり、本発明の範囲を限定するものと解釈すべきではないと理解するであろう。具体的な技術又は条件が記載されていない実施例は、当該分野の文献に記載された技術又は条件(例えば、Molecular Cloning: A Laboratory Manual, authored by J. Sambrook et al., and translated by Huang Peitang et al., third edition, Science Pressを参照)に従い、又は添付の使用説明書に従い、行われる。使用する試薬又は機器の製造者が記載されていない場合、それらは市販の従来の製品である。例えば、MDA-MB-231細胞及びU87-MG細胞はATCCより購入可能であった。
【0110】
BALB/cマウスは、Guangdong Medical Laboratory Animal Centerより購入した。
【0111】
ニボルマブは、BMSより、ロット番号ABA0330にて購入した。ニボルマブは抗PD-1抗体である。
【0112】
ペムブロリズマブは、MSD Ireland(カーロー)より、ロット番号S023942にて購入した。ペムブロリズマブは抗PD-1抗体である。
【0113】
陽性対照抗体であるレラトリマブは、米国特許出願公開第20160326248(A1)号明細書に示される配列を有し、そのうち重鎖アミノ酸配列はこの特許文献の配列番号1に示されており、軽鎖アミノ酸配列はこの特許文献の配列番号2に示されている。レラトリマブは抗LAG-3抗体である。
【0114】
細胞株293T-PD1は、Akeso Biopharma社によって構築された。細胞株293T-PD1は、第3世代レンチウイルス系(例えば、A Third Generation Lentivirus Vector with a Conditional Packaging System. Dull T, Zufferey R, Kelly M, Mandel RJ, Nguyen M, Trono D, and Naldini L., J Virol., 1998. 72(11): 8463-8471を参照)を用いて、HEK293T細胞のウイルス感染によって製造された。ここで使用されたレンチウイルス発現ベクターは、plenti6.3/V5-PD1FL-BSD(PD1、Genebank ID:NM_005018;ベクターplenti6.3/V5-BSD、Invitrogen社より購入、カタログ番号K5315-20)であった。
【0115】
細胞株293T-LAG3は、Akeso Biopharma社によって構築された。細胞株293T-LAG3は、第3世代レンチウイルス系(例えば、A Third Generation Lentivirus Vector with a Conditional Packaging System. Dull T, Zufferey R, Kelly M, Mandel RJ, Nguyen M, Trono D, and Naldini L., J Virol., 1998. 72(11): 8463-8471を参照)を用いて、HEK293T細胞のウイルス感染によって製造された。ここで使用されたレンチウイルス発現ベクターは、plenti6.3/V5-huLAG3FL-BSD(LAG3、Genebank ID:NM_002277.4;ベクターplenti6.3/V5-BSD、Invitrogen社より購入、カタログ番号K5315-20)であった。
【0116】
細胞株Raji-PDL1は、Akeso Biopharma社によって構築された。細胞株Raji-PDL1は、第3世代レンチウイルス系(例えば、A Third Generation Lentivirus Vector with a Conditional Packaging System. Dull T, Zufferey R, Kelly M, Mandel RJ, Nguyen M, Trono D, and Naldini L., J Virol., 1998. 72(11): 8463-8471を参照)を用いて、Raji細胞のウイルス感染によって製造された。ここで使用されたレンチウイルス発現ベクターは、plenti6.3/V5-PDL1(PDL1、Genebank ID:NP_054862.1;ベクターplenti6.3/V5、Invitrogen社より購入、カタログ番号K5315-20)であった。
【0117】
細胞株Jurkat-NFAT-PD1-LAG3は、Akeso Biopharma社によって構築された。細胞株Jurkat-NFAT-PD1-LAG3は、第3世代レンチウイルス系(例えば、A Third Generation Lentivirus Vector with a Conditional Packaging System. Dull T, Zufferey R, Kelly M, Mandel RJ, Nguyen M, Trono D, and Naldini L., J Virol., 1998. 72(11): 8463-8471を参照)を用いて、PD-1エフェクター細胞(CPM、製造者:Promega社、カタログ番号J112A)のウイルス感染によって調製された。ここで使用されたレンチウイルス発現ベクターは、pCDH-huLAG3FL-RFP-NEO(LAG3、Genebank ID:NM_002277.4;ベクターpCDH-CMV-MCS-EF1-RFP+Neo、Youbio社より購入、カタログ番号VT9005)であった。
【0118】
細胞株CHO-K1-PD1は、Akeso Biopharma社によって構築された。細胞株CHO-K1-PD1は、第3世代レンチウイルス系(例えば、A Third Generation Lentivirus Vector with a Conditional Packaging System. Dull T, Zufferey R, Kelly M, Mandel RJ, Nguyen M, Trono D, and Naldini L., J Virol., 1998. 72(11): 8463-8471を参照)を用いて、CHO-K1細胞のウイルス感染によって調製された。ここで使用されたレンチウイルス発現ベクターは、pCDH-CMV-PD-1FL-Puro(PD1、Genebank ID:NM_005018;ベクターpCDH-CMV-Puro、Youbio社より購入、カタログ番号VT1480)であった。
【0119】
細胞株CHO-K1-LAG3は、Akeso Biopharma社によって構築された。細胞株CHO-K1-LAG3は、第3世代レンチウイルス系(例えば、A Third Generation Lentivirus Vector with a Conditional Packaging System. Dull T, Zufferey R, Kelly M, Mandel RJ, Nguyen M, Trono D, and Naldini L., J Virol., 1998. 72(11): 8463-8471を参照)を用いて、CHO-K1細胞のウイルス感染によって製造された。ここで使用されたレンチウイルス発現ベクターは、plenti6.3/V5-huLAG3FL-BSD(LAG3、Genebank ID:NM_002277.4;ベクターplenti6.3/V5-BSD、Invitrogen社より購入、カタログ番号K5315-20)であった。
【0120】
細胞株Jurkat-NFAT-CD64-CD32Rは、Akeso Biopharma社によって構築された。細胞株Jurkat-NFAT-CD64-CD32Rは、第3世代レンチウイルス系(例えば、A Third Generation Lentivirus Vector with a Conditional Packaging System. Dull T, Zufferey R, Kelly M, Mandel RJ, Nguyen M, Trono D, and Naldini L., J Virol., 1998. 72(11): 8463-8471を参照)を用いて、Jurkat細胞のウイルス感染によって調製された。ここで使用されたレンチウイルス発現ベクターは、pCDH-NFAT-Hygro(ベクターpCDH-Hygro、pCDH-CMV-MCS-EF1-Puro(Youbio社より購入、カタログ番号VT1480)をもとに本願発明者らの研究室において改変により取得)、pcDH-hFCGR1AFL-Neo(ベクターpCDH-Neo、pCDH-CMV-MCS-EF1-Puro(Youbio社より購入、カタログ番号VT1480)をもとに本願発明者らの研究室において改変により取得)、及びpCDH-hFCGR2A(H167)-puro(hFCGR2A(H167)、Genebank ID:P12318;ベクターpCDH-CMV-MCS-EF1-Puro、Youbio社より購入、カタログ番号VT1480)であった。
【0121】
細胞株CHO-K1-PD1-LAG3は、Akeso Biopharma社によって構築された。細胞株CHO-K1-PD1-LAG3は、第3世代レンチウイルス系(例えば、A Third Generation Lentivirus Vector with a Conditional Packaging System. Dull T, Zufferey R, Kelly M, Mandel RJ, Nguyen M, Trono D, and Naldini L., J Virol., 1998. 72(11): 8463-8471を参照)を用いて、CHO-K1細胞のウイルス感染によって調製された。ここで使用されたレンチウイルス発現ベクターは、pCDH-hPD1-FL-puro(PD-1、Genebank ID:NM_005018;ベクターpCDH-CMV-MCS-EF1-Puro、Youbio社より購入、カタログ番号VT1480)及びplenti6.3/V5-huLAG3FL-BSD(LAG3、Genebank ID:NM_002277.4;ベクターplenti6.3/V5-BSD、Invitrogen社より購入、カタログ番号K5315-20)であった。
【実施例
【0122】
調製例1:抗LAG3抗体の設計及び調製
1.抗体の設計
本願発明者らは、創意により、公知のLAG3タンパク質配列(NCBI参照配列:NP_002277.4)及びその三次元結晶構造などに基づき、一連の抗体配列を設計した。広範なスクリーニングと試験により、LAG3に特異的に結合するヒト化モノクローナル抗体を最終的に取得し、それぞれH7L8、H7L9、及びH7L10と命名した。モノクローナル抗体の重鎖及び軽鎖可変領域のアミノ酸配列、及びそれらのコード配列は、次の通りである。
【0123】
H7L8の重鎖可変領域H7vのヌクレオチド配列(360bp):
CAGGTGCAGCTGCAGCAGTGGGGAGCTGGACTGCTGAAACCTAGCGAGACACTGAGCCTGACCTGTGCTGTGTACGGCGGATCTATCAGCGATTACTACTGGAACTGGATCAGGCAGCCCCCTGGAAAGGGACTGGAATGGATCGGAGAGATCAACCACAGGGGCACCACCAACTCCAATCCCTCTCTGAAGAGCAGGGTGACACTGAGCCTCGACACAAGCAAGAATCAGTTCAGCCTGAAGCTGAGGTCCGTGACCGCTGCTGATACAGCTGTGTACTACTGTGCCTTCGGCTACAGCGATTACGAGTACGATTGGTTCGACCCTTGGGGCCAGGGAACACTGGTTACAGTGAGCTCC(配列番号1)
【0124】
H7L8の重鎖可変領域H7vのアミノ酸配列(120aa):
QVQLQQWGAGLLKPSETLSLTCAVYGGSISDYYWNWIRQPPGKGLEWIGEINHRGTTNSNPSLKSRVTLSLDTSKNQFSLKLRSVTAADTAVYYCAFGYSDYEYDWFDPWGQGTLVTVSS(配列番号2)
【0125】
H7L8の軽鎖可変領域L8vのヌクレオチド配列(321bp):
GAGATCGTTCTGACCCAGAGCCCAGCTACACTGAGCCTGTCTCCTGGAGAGAGGGCTACACTGTCCTGCAGAGCTAGCCAGACCATCAGCAGCTACCTGGCTTGGTACCAGCAGAAGCCTGGCCAAGCTCCAAGGCTGCTGATCTACGACGCCTCTAATAGGGCCACCGGCATCCCTGCTAGATTCTCTGGAAGCGGCAGCGGAACCGACTTTACACTGACAATCAGCTCCCTGGAGCCCGAGGATTTCGCTGTTTACTACTGTCAGCAGCGCAGCAACTGGCCCATCACATTCGGACAGGGCACAAATCTGGAGATCAAG(配列番号3)
【0126】
H7L8の軽鎖可変領域L8vのアミノ酸配列(107aa):
EIVLTQSPATLSLSPGERATLSCRASQTISSYLAWYQQKPGQAPRLLIYDASNRATGIPARFSGSGSGTDFTLTISSLEPEDFAVYYCQQRSNWPITFGQGTNLEIK(配列番号4)
【0127】
H7L9の重鎖可変領域H7vのヌクレオチド配列は、配列番号1のH7L8の重鎖可変領域H7vのヌクレオチド配列と同一である。
【0128】
H7L9の重鎖可変領域H7vのアミノ酸配列は、配列番号2のH7L8の重鎖可変領域H7vのアミノ酸配列と同一である。
【0129】
H7L9の軽鎖可変領域L9vのヌクレオチド配列(321bp):
GAGATCGTTCTGACCCAGAGCCCAGCTACACTGAGCCTGTCTCCTGGAGAGAGGGCTACACTGTCCTGCAGAGCTAGCCAGACCATCAGCAGCTACCTGGCTTGGTACCAGCAGAAGCCTGGCCAAGCTCCAAGGCTGCTGATCTACGACGGCTCTAATAGGGCCACCGGCATCCCTGCTAGATTCTCTGGAAGCGGCAGCGGAACCGACTTTACACTGACAATCAGCTCCCTGGAGCCCGAGGATTTCGCTGTTTACTACTGTCAGCAGCGCAGCAACTGGCCCCTCACATTCGGACAGGGCACAAATCTGGAGATCAAG(配列番号41)
【0130】
H7L9の軽鎖可変領域L9vのアミノ酸配列(107bp):
EIVLTQSPATLSLSPGERATLSCRASQTISSYLAWYQQKPGQAPRLLIYDGSNRATGIPARFSGSGSGTDFTLTISSLEPEDFAVYYCQQRSNWPLTFGQGTNLEIK(配列番号42)
【0131】
H7L10の重鎖可変領域H7vのヌクレオチド配列は、配列番号1のH7L8の重鎖可変領域H7vのヌクレオチド配列と同一である。
【0132】
H7L10の重鎖可変領域H7vのアミノ酸配列は、配列番号2のH7L8の重鎖可変領域H7vのアミノ酸配列と同一である。
【0133】
H7L10の軽鎖可変領域L10vのヌクレオチド配列(321bp):
GAGATCGTTCTGACCCAGAGCCCAGCTACACTGAGCCTGTCTCCTGGAGAGAGGGCTACACTGTCCTGCAGAGCTAGCCAGTCCATCAGCAGCTACCTGGCTTGGTACCAGCAGAAGCCTGGCCAAGCTCCAAGGCTGCTGATCTACGACGGCTCTAATAGGGCCACCGGCATCCCTGCTAGATTCTCTGGAAGCGGCAGCGGAACCGACTTTACACTGACAATCAGCTCCCTGGAGCCCGAGGATTTCGCTGTTTACTACTGTCAGCAGCGCAGCAACTGGCCCATCACATTCGGACAGGGCACAAATCTGGAGATCAAG(配列番号43)
【0134】
H7L10の軽鎖可変領域L10vのアミノ酸配列(107bp):
EIVLTQSPATLSLSPGERATLSCRASQSISSYLAWYQQKPGQAPRLLIYDGSNRATGIPARFSGSGSGTDFTLTISSLEPEDFAVYYCQQRSNWPITFGQGTNLEIK(配列番号44)
【0135】
抗体H7L8のCDRのアミノ酸配列は次の通りである(IMGT番号付けシステムによる):
HCDR1: GGSISDYY(配列番号5);
HCDR2: INHRGTT(配列番号6);
HCDR3: AFGYSDYEYDWFDP(配列番号7);
LCDR1: QTISSY(配列番号8);
LCDR2: DAS(配列番号9);及び
LCDR3: QQRSNWPIT(配列番号10)。
【0136】
抗体H7L9のCDRのアミノ酸配列は次の通りである(IMGT番号付けシステムによる):
HCDR1: GGSISDYY(配列番号5);
HCDR2: INHRGTT(配列番号6);
HCDR3: AFGYSDYEYDWFDP(配列番号7);
LCDR1: QTISSY(配列番号8);
LCDR2: DGS(配列番号46);及び
LCDR3: QQRSNWPLT(配列番号47)。
【0137】
抗体H7L10のCDRのアミノ酸配列は次の通りである(IMGT番号付けシステムによる):
HCDR1: GGSISDYY(配列番号5);
HCDR2: INHRGTT(配列番号6);
HCDR3: AFGYSDYEYDWFDP(配列番号7);
LCDR1: QSISSY(配列番号48);
LCDR2: DGS(配列番号46);及び
LCDR3: QQRSNWPIT(配列番号10)。
【0138】
2.ヒト化抗体H7L8(hG1WT)の発現及び精製
H7L8(hG1WT)の重鎖cDNA配列(可変領域のコード配列を配列番号1に示した;定常領域はIgガンマ-1鎖C領域、配列番号39であった)及び軽鎖cDNA配列(可変領域のコード配列を配列番号3に示した;定常領域はP01834.1(ヒトIgカッパ鎖C領域、配列番号40)であった)を別々にpUC57simpleベクター(GenScript社製)にクローニングし、プラスミドpUC57simple-H7及びpUC57simple-L8をそれぞれ得た。プラスミドpUC57simple-H7及びpUC57simple-L8をそれぞれ消化した(HindIII及びEcoRI)。重鎖及び軽鎖を電気泳動で単離し、別々にpcDNA3.1ベクターにサブクローニングし、組換えプラスミドを抽出して293F細胞にコトランスフェクトした。細胞培養7日後に培地を高速遠心分離で分離し、上清を濃縮して、HiTrap MabSelect SuReカラム上にロードした。タンパク質を、溶出緩衝液を用いてワンステップで溶出した。標的試料を単離し、緩衝液をPBSへと交換した。
【0139】
H7L8(hG1WT)の重鎖定常領域のアミノ酸配列
ASTKGPSVFPLAPSSKSTSGGTAALGCLVKDYFPEPVTVSWNSGALTSGVHTFPAVLQSSGLYSLSSVVTVPSSSLGTQTYICNVNHKPSNTKVDKKVEPKSCDKTHTCPPCPAPELLGGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSHEDPEVKFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQYNSTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKALPAPIEKTISKAKGQPREPQVYTLPPSRDELTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFFLYSKLTVDKSRWQQGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSPGK(配列番号39)
【0140】
H7L8(hG1WT)の軽鎖定常領域のアミノ酸配列
RTVAAPSVFIFPPSDEQLKSGTASVVCLLNNFYPREAKVQWKVDNALQSGNSQESVTEQDSKDSTYSLSSTLTLSKADYEKHKVYACEVTHQGLSSPVTKSFNRGEC(配列番号40)
【0141】
3.ヒト化抗体H7L8(hG1TM)の設計
本願発明者らは、H7L8(hG1WT)をもとに、重鎖において234位(EU番号付けシステムによる;以下同様)のロイシンからアラニンへの点変異(L234A)、235位のロイシンからアラニンへの点変異(L235A)、及び237位のグリシンからアラニンへの点変異(G237A)を導入することにより、定常領域の変異を有するヒト化抗体H7L8(hG1TM)を得た。H7L8(hG1TM)の重鎖H7(hG1TM)のアミノ酸配列を配列番号11に示し、軽鎖L8のアミノ酸配列を配列番号12に示す。
【0142】
ヒト化抗体H7L8(hG1TM)は、上記工程2に記載の方法によって調製した。
【0143】
H7L8(hG1TM)の重鎖H7(hG1TM)のアミノ酸配列
QVQLQQWGAGLLKPSETLSLTCAVYGGSISDYYWNWIRQPPGKGLEWIGEINHRGTTNSNPSLKSRVTLSLDTSKNQFSLKLRSVTAADTAVYYCAFGYSDYEYDWFDPWGQGTLVTVSSASTKGPSVFPLAPSSKSTSGGTAALGCLVKDYFPEPVTVSWNSGALTSGVHTFPAVLQSSGLYSLSSVVTVPSSSLGTQTYICNVNHKPSNTKVDKKVEPKSCDKTHTCPPCPAPEAAGAPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSHEDPEVKFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQYNSTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKALPAPIEKTISKAKGQPREPQVYTLPPSRDELTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFFLYSKLTVDKSRWQQGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSPGK(配列番号11)
【0144】
H7L8(hG1TM)の軽鎖L8のアミノ酸配列
EIVLTQSPATLSLSPGERATLSCRASQTISSYLAWYQQKPGQAPRLLIYDASNRATGIPARFSGSGSGTDFTLTISSLEPEDFAVYYCQQRSNWPITFGQGTNLEIKRTVAAPSVFIFPPSDEQLKSGTASVVCLLNNFYPREAKVQWKVDNALQSGNSQESVTEQDSKDSTYSLSSTLTLSKADYEKHKVYACEVTHQGLSSPVTKSFNRGEC(配列番号12)
【0145】
4.ヒト化抗体H7L8(hG4DM)の設計
本願発明者らは、H7L8(hG1WT)をもとに、Igガンマ-4鎖C領域を重鎖定常領域として用い、重鎖定常領域において234位にフェニルアラニンからアラニンへの点変異(F234A)を、また、235位にロイシンからアラニンへの点変異(L235A)を導入し、一方で抗体可変領域を変化させないことにより、定常領域の変異を有するヒト化抗体H7L8(hG4DM)を得た。H7L8(hG4DM)の重鎖のアミノ酸配列を配列番号13に示し、軽鎖のアミノ酸配列を配列番号12に示す。
【0146】
H7L8(hG4DM)の重鎖H7(hG4DM)のアミノ酸配列:
QVQLQQWGAGLLKPSETLSLTCAVYGGSISDYYWNWIRQPPGKGLEWIGEINHRGTTNSNPSLKSRVTLSLDTSKNQFSLKLRSVTAADTAVYYCAFGYSDYEYDWFDPWGQGTLVTVSSASTKGPSVFPLAPCSRSTSESTAALGCLVKDYFPEPVTVSWNSGALTSGVHTFPAVLQSSGLYSLSSVVTVPSSSLGTKTYTCNVDHKPSNTKVDKRVESKYGPPCPPCPAPEAAGGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSQEDPEVQFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQFNSTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKGLPSSIEKTISKAKGQPREPQVYTLPPSQEEMTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFFLYSRLTVDKSRWQEGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSLGK(配列番号13)
【0147】
H7L8(hG4DM)の軽鎖L8のアミノ酸配列は、配列番号12のH7L8(hG1TM)の軽鎖のアミノ酸配列と同一である。
【0148】
5.ヒト化抗体H7L8(hG4WT)、H7L9(hG4WT)、及びH7L10(hG4WT)の発現及び精製
H7L8(hG4WT)、H7L9(hG4WT)、及びH7L10(hG4WT)の重鎖cDNA配列(可変領域のコード配列を配列番号1に示した;定常領域は配列番号45のIgガンマ-4鎖C領域であった)、H7L8(hG4WT)の軽鎖cDNA配列(可変領域のコード配列を配列番号3に示した;定常領域は配列番号40のヒトIgカッパ鎖C領域であった)、H7L9(hG4WT)の軽鎖cDNA配列(可変領域のコード配列を配列番号42に示した;定常領域は配列番号40のヒトIgカッパ鎖C領域であった)、並びにH7L10(hG4WT)の軽鎖cDNA配列(可変領域のコード配列を配列番号44に示した;定常領域は配列番号40のヒトIgカッパ鎖C領域であった)を別々にpUC57simpleベクター(GenScript社製)にクローニングし、プラスミドpUC57simple-H7、pUC57simple-L8、pUC57simple-L9、及びpUC57simple-L10をそれぞれ得た。プラスミドpUC57simple-H7、pUC57simple-L8、pUC57simple-L9、及びpUC57simple-L10をそれぞれ消化した(HindIII及びEcoRI)。重鎖及び軽鎖を電気泳動で単離し、別々にpcDNA3.1ベクターにサブクローニングし、組換えプラスミドを抽出して293F細胞にコトランスフェクトした。細胞培養7日後に培地を高速遠心分離で分離し、上清を濃縮して、HiTrap MabSelect SuReカラム上にロードした。タンパク質を、溶出緩衝液を用いてワンステップで溶出した。標的試料を単離し、緩衝液をPBSへと交換した。
【0149】
H7L8(hG4WT)、H7L9(hG4WT)、又はH7L10(hG4WT)の重鎖定常領域のアミノ酸配列
ASTKGPSVFPLAPCSRSTSESTAALGCLVKDYFPEPVTVSWNSGALTSGVHTFPAVLQSSGLYSLSSVVTVPSSSLGTKTYTCNVDHKPSNTKVDKRVESKYGPPCPPCPAPEFLGGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSQEDPEVQFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQFNSTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKGLPSSIEKTISKAKGQPREPQVYTLPPSQEEMTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFFLYSRLTVDKSRWQEGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSLGK(配列番号45)
【0150】
H7L8(hG4WT)、H7L9(hG4WT)、又はH7L10(hG4WT)の軽鎖定常領域のアミノ酸配列:
RTVAAPSVFIFPPSDEQLKSGTASVVCLLNNFYPREAKVQWKVDNALQSGNSQESVTEQDSKDSTYSLSSTLTLSKADYEKHKVYACEVTHQGLSSPVTKSFNRGEC(配列番号40)
【0151】
調製例2:抗PD-1抗体14C12及びそのヒト化抗体14C12H1L1の設計及び調製
抗PD-1抗体14C12及びそのヒト化抗体14C12H1L1の、重鎖及び軽鎖のアミノ酸配列とコードヌクレオチド配列は、中国特許出願公開第106967172(A)号明細書(又は第106977602(A)号明細書)における14C12及び14C12H1L1のそれらと、それぞれ同一である。
【0152】
(1)14C12の重鎖及び軽鎖可変領域配列
14C12の重鎖可変領域のヌクレオチド配列:(354bp)
GAGGTCAAACTGGTGGAGAGCGGCGGCGGGCTGGTGAAGCCCGGCGGGTCACTGAAACTGAGCTGCGCCGCTTCCGGCTTCGCCTTTAGCTCCTACGACATGTCATGGGTGAGGCAGACCCCTGAGAAGCGCCTGGAATGGGTCGCTACTATCAGCGGAGGCGGGCGATACACCTACTATCCTGACTCTGTCAAAGGGAGATTCACAATTAGTCGGGATAACGCCAGAAATACTCTGTATCTGCAGATGTCTAGTCTGCGGTCCGAGGATACAGCTCTGTACTATTGTGCAAACCGGTACGGCGAAGCATGGTTTGCCTATTGGGGACAGGGCACCCTGGTGACAGTCTCTGCC(配列番号14)
【0153】
14C12の重鎖可変領域のアミノ酸配列:(118aa)
EVKLVESGGGLVKPGGSLKLSCAASGFAFSSYDMSWVRQTPEKRLEWVATISGGGRYTYYPDSVKGRFTISRDNARNTLYLQMSSLRSEDTALYYCANRYGEAWFAYWGQGTLVTVSA(配列番号15)
【0154】
14C12の軽鎖可変領域のヌクレオチド配列:(321bp)
GACATTAAGATGACACAGTCCCCTTCCTCAATGTACGCTAGCCTGGGCGAGCGAGTGACCTTCACATGCAAAGCATCCCAGGACATCAACACATACCTGTCTTGGTTTCAGCAGAAGCCAGGCAAAAGCCCCAAGACCCTGATCTACCGGGCCAATAGACTGGTGGACGGGGTCCCCAGCAGATTCTCCGGATCTGGCAGTGGGCAGGATTACTCCCTGACCATCAGCTCCCTGGAGTATGAAGACATGGGCATCTACTATTGCCTGCAGTATGATGAGTTCCCTCTGACCTTTGGAGCAGGCACAAAACTGGAACTGAAG(配列番号16)
【0155】
14C12の軽鎖可変領域のアミノ酸配列:(107aa)
DIKMTQSPSSMYASLGERVTFTCKASQDINTYLSWFQQKPGKSPKTLIYRANRLVDGVPSRFSGSGSGQDYSLTISSLEYEDMGIYYCLQYDEFPLTFGAGTKLELK(配列番号17)
【0156】
(2)ヒト化モノクローナル抗体14C12H1L1の、重鎖及び軽鎖可変領域配列、並びに重鎖及び軽鎖配列
14C12H1L1の重鎖可変領域14C12H1vのヌクレオチド配列:(354bp)
GAAGTGCAGCTGGTCGAGTCTGGGGGAGGGCTGGTGCAGCCCGGCGGGTCACTGCGACTGAGCTGCGCAGCTTCCGGATTCGCCTTTAGCTCCTACGACATGTCCTGGGTGCGACAGGCACCAGGAAAGGGACTGGATTGGGTCGCTACTATCTCAGGAGGCGGGAGATACACCTACTATCCTGACAGCGTCAAGGGCCGGTTCACAATCTCTAGAGATAACAGTAAGAACAATCTGTATCTGCAGATGAACAGCCTGAGGGCTGAGGACACCGCACTGTACTATTGTGCCAACCGCTACGGGGAAGCATGGTTTGCCTATTGGGGGCAGGGAACCCTGGTGACAGTCTCTAGT(配列番号18)
【0157】
14C12H1L1の重鎖可変領域14C12H1vのアミノ酸配列:(118aa)
EVQLVESGGGLVQPGGSLRLSCAASGFAFSSYDMSWVRQAPGKGLDWVATISGGGRYTYYPDSVKGRFTISRDNSKNNLYLQMNSLRAEDTALYYCANRYGEAWFAYWGQGTLVTVSS(配列番号19)
【0158】
14C12H1L1の軽鎖可変領域14C12L1vのヌクレオチド配列:(321bp)
GACATTCAGATGACTCAGAGCCCCTCCTCCATGTCCGCCTCTGTGGGCGACAGGGTCACCTTCACATGCCGCGCTAGTCAGGATATCAACACCTACCTGAGCTGGTTTCAGCAGAAGCCAGGGAAAAGCCCCAAGACACTGATCTACCGGGCTAATAGACTGGTGTCTGGAGTCCCAAGTCGGTTCAGTGGCTCAGGGAGCGGACAGGACTACACTCTGACCATCAGCTCCCTGCAGCCTGAGGACATGGCAACCTACTATTGCCTGCAGTATGATGAGTTCCCACTGACCTTTGGCGCCGGGACAAAACTGGAGCTGAAG(配列番号20)
【0159】
14C12H1L1の軽鎖可変領域14C12L1vのアミノ酸配列:(107aa)
DIQMTQSPSSMSASVGDRVTFTCRASQDINTYLSWFQQKPGKSPKTLIYRANRLVSGVPSRFSGSGSGQDYTLTISSLQPEDMATYYCLQYDEFPLTFGAGTKLELK(配列番号21)
【0160】
14C12H1L1の重鎖14C12H1のヌクレオチド配列:(1344bp)
GAAGTGCAGCTGGTCGAGTCTGGGGGAGGGCTGGTGCAGCCCGGCGGGTCACTGCGACTGAGCTGCGCAGCTTCCGGATTCGCCTTTAGCTCCTACGACATGTCCTGGGTGCGACAGGCACCAGGAAAGGGACTGGATTGGGTCGCTACTATCTCAGGAGGCGGGAGATACACCTACTATCCTGACAGCGTCAAGGGCCGGTTCACAATCTCTAGAGATAACAGTAAGAACAATCTGTATCTGCAGATGAACAGCCTGAGGGCTGAGGACACCGCACTGTACTATTGTGCCAACCGCTACGGGGAAGCATGGTTTGCCTATTGGGGGCAGGGAACCCTGGTGACAGTCTCTAGTGCCAGCACCAAAGGACCTAGCGTGTTTCCTCTCGCCCCCTCCTCCAAAAGCACCAGCGGAGGAACCGCTGCTCTCGGATGTCTGGTGAAGGACTACTTCCCTGAACCCGTCACCGTGAGCTGGAATAGCGGCGCTCTGACAAGCGGAGTCCATACATTCCCTGCTGTGCTGCAAAGCAGCGGACTCTATTCCCTGTCCAGCGTCGTCACAGTGCCCAGCAGCAGCCTGGGCACCCAGACCTACATCTGTAACGTCAACCACAAGCCCTCCAACACCAAGGTGGACAAGAAAGTGGAGCCCAAATCCTGCGACAAGACACACACCTGTCCCCCCTGTCCTGCTCCCGAACTCCTCGGAGGCCCTAGCGTCTTCCTCTTTCCTCCCAAACCCAAGGACACCCTCATGATCAGCAGAACCCCTGAAGTCACCTGTGTCGTCGTGGATGTCAGCCATGAGGACCCCGAGGTGAAATTCAACTGGTATGTCGATGGCGTCGAGGTGCACAACGCCAAAACCAAGCCCAGGGAGGAACAGTACAACTCCACCTACAGGGTGGTGTCCGTGCTGACAGTCCTCCACCAGGACTGGCTGAACGGCAAGGAGTACAAGTGCAAGGTGTCCAACAAGGCTCTCCCTGCCCCCATTGAGAAGACCATCAGCAAGGCCAAAGGCCAACCCAGGGAGCCCCAGGTCTATACACTGCCTCCCTCCAGGGACGAACTCACCAAGAACCAGGTGTCCCTGACCTGCCTGGTCAAGGGCTTTTATCCCAGCGACATCGCCGTCGAGTGGGAGTCCAACGGACAGCCCGAGAATAACTACAAGACCACCCCTCCTGTCCTCGACTCCGACGGCTCCTTCTTCCTGTACAGCAAGCTGACCGTGGACAAAAGCAGGTGGCAGCAGGGAAACGTGTTCTCCTGCAGCGTGATGCACGAAGCCCTCCACAACCACTACACCCAGAAAAGCCTGTCCCTGAGCCCCGGCAAA(配列番号22)
【0161】
14C12H1L1の重鎖14C12H1のアミノ酸配列:(448aa)
EVQLVESGGGLVQPGGSLRLSCAASGFAFSSYDMSWVRQAPGKGLDWVATISGGGRYTYYPDSVKGRFTISRDNSKNNLYLQMNSLRAEDTALYYCANRYGEAWFAYWGQGTLVTVSSASTKGPSVFPLAPSSKSTSGGTAALGCLVKDYFPEPVTVSWNSGALTSGVHTFPAVLQSSGLYSLSSVVTVPSSSLGTQTYICNVNHKPSNTKVDKKVEPKSCDKTHTCPPCPAPELLGGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSHEDPEVKFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQYNSTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKALPAPIEKTISKAKGQPREPQVYTLPPSRDELTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFFLYSKLTVDKSRWQQGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSPGK(配列番号23)
【0162】
14C12H1L1の軽鎖14C12L1のヌクレオチド配列:(642bp)
GACATTCAGATGACTCAGAGCCCCTCCTCCATGTCCGCCTCTGTGGGCGACAGGGTCACCTTCACATGCCGCGCTAGTCAGGATATCAACACCTACCTGAGCTGGTTTCAGCAGAAGCCAGGGAAAAGCCCCAAGACACTGATCTACCGGGCTAATAGACTGGTGTCTGGAGTCCCAAGTCGGTTCAGTGGCTCAGGGAGCGGACAGGACTACACTCTGACCATCAGCTCCCTGCAGCCTGAGGACATGGCAACCTACTATTGCCTGCAGTATGATGAGTTCCCACTGACCTTTGGCGCCGGGACAAAACTGGAGCTGAAGCGAACTGTGGCCGCTCCCTCCGTCTTCATTTTTCCCCCTTCTGACGAACAGCTGAAATCAGGCACAGCCAGCGTGGTCTGTCTGCTGAACAATTTCTACCCTAGAGAGGCAAAAGTGCAGTGGAAGGTCGATAACGCCCTGCAGTCCGGCAACAGCCAGGAGAGTGTGACTGAACAGGACTCAAAAGATAGCACCTATTCCCTGTCTAGTACACTGACTCTGTCCAAGGCTGATTACGAGAAGCACAAAGTGTATGCATGCGAAGTGACACATCAGGGACTGTCAAGCCCCGTGACTAAGTCTTTTAACCGGGGCGAATGT(配列番号24)
【0163】
14C12H1L1の軽鎖14C12L1のアミノ酸配列:(214aa)
DIQMTQSPSSMSASVGDRVTFTCRASQDINTYLSWFQQKPGKSPKTLIYRANRLVSGVPSRFSGSGSGQDYTLTISSLQPEDMATYYCLQYDEFPLTFGAGTKLELKRTVAAPSVFIFPPSDEQLKSGTASVVCLLNNFYPREAKVQWKVDNALQSGNSQESVTEQDSKDSTYSLSSTLTLSKADYEKHKVYACEVTHQGLSSPVTKSFNRGEC(配列番号25)
【0164】
抗体14C12及び14C12H1L1のCDRは次のものと同一である(IMGT番号付けシステムによる):
HCDR1: GFAFSSYD(配列番号26)
HCDR2: ISGGGRYT(配列番号27)
HCDR3: ANRYGEAWFAY(配列番号28)
LCDR1: QDINTY(配列番号29)
LCDR2: RAN(配列番号30)
LCDR3: LQYDEFPLT(配列番号31)
【0165】
14C12H1L1(M)の重鎖及び軽鎖可変領域配列
14C12H1L1(M)は、14C12H1L1をもとに、フレームワーク領域(軽鎖)の特定のアミノ酸を変異させることによって得られた。
【0166】
14C12H1L1(M)の重鎖可変領域14C12H1(M)は、14C12H1L1の重鎖可変領域14C12H1と同一である。すなわち、両者は配列番号19のアミノ酸配列を有する。
【0167】
14C12H1L1(M)の軽鎖可変領域14C12L1(M):
DIQMTQSPSSMSASVGDRVTFTCRASQDINTYLSWFQQKPGKSPKTLIYRANRLVSGVPSRFSGSGSGQDYTLTISSLQPEDMATYYCLQYDEFPLTFGAGTKLELKR(配列番号38)
【0168】
調製例3:ヒト化抗体14C12H1L1(hG4DM)の設計
本願発明者らは、14C12H1L1をもとに、Igガンマ-4鎖C領域を重鎖定常領域として用い、重鎖定常領域において234位にフェニルアラニンからアラニンへの点変異(F234A)を、また、235位にロイシンからアラニンへの点変異(L235A)を導入し、一方で抗体可変領域を変化させないことにより、定常領域の変異を有するヒト化抗体14C12H1L1(hG4DM)を得た。14C12H1L1(hG4DM)の重鎖14C12H1(hG4DM)のアミノ酸配列を配列番号32に示し、軽鎖のアミノ酸配列を配列番号25に示す。
【0169】
14C12H1L1(hG4DM)の重鎖のアミノ酸配列
EVQLVESGGGLVQPGGSLRLSCAASGFAFSSYDMSWVRQAPGKGLDWVATISGGGRYTYYPDSVKGRFTISRDNSKNNLYLQMNSLRAEDTALYYCANRYGEAWFAYWGQGTLVTVSSASTKGPSVFPLAPCSRSTSESTAALGCLVKDYFPEPVTVSWNSGALTSGVHTFPAVLQSSGLYSLSSVVTVPSSSLGTKTYTCNVDHKPSNTKVDKRVESKYGPPCPPCPAPEAAGGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSQEDPEVQFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQFNSTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKGLPSSIEKTISKAKGQPREPQVYTLPPSQEEMTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFFLYSRLTVDKSRWQEGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSLGK(配列番号32)
【0170】
14C12H1L1(hG4DM)の軽鎖のアミノ酸配列は、配列番号25の14C12H1L1の軽鎖14C12L1のアミノ酸配列と同一である。
【0171】
調製例4:ヒト化抗体14C12H1L1(hG1TM)の配列設計
本願発明者らは、ヒト化抗体14C12H1L1をもとに、重鎖のヒンジ領域において、EU番号付けシステムに従い、234位のロイシンからアラニンへの点変異(L234A)、235位のロイシンからアラニンへの点変異(L235A)、及び237位のグリシンからアラニンへの点変異(G237A)を導入することにより、ヒト化変異体14C12H1L1(hG1TM)を得た。
【0172】
14C12H1L1(hG1TM)の重鎖14C12H1(hG1TM)のヌクレオチド配列:(1344bp)
GAAGTGCAGCTGGTCGAGTCTGGGGGAGGGCTGGTGCAGCCCGGCGGGTCACTGCGACTGAGCTGCGCAGCTTCCGGATTCGCCTTTAGCTCCTACGACATGTCCTGGGTGCGACAGGCACCAGGAAAGGGACTGGATTGGGTCGCTACTATCTCAGGAGGCGGGAGATACACCTACTATCCTGACAGCGTCAAGGGCCGGTTCACAATCTCTAGAGATAACAGTAAGAACAATCTGTATCTGCAGATGAACAGCCTGAGGGCTGAGGACACCGCACTGTACTATTGTGCCAACCGCTACGGGGAAGCATGGTTTGCCTATTGGGGGCAGGGAACCCTGGTGACAGTCTCTAGTGCCAGCACCAAAGGGCCCAGCGTGTTTCCTCTCGCCCCCTCCTCCAAAAGCACCAGCGGAGGAACCGCTGCTCTCGGATGTCTGGTGAAGGACTACTTCCCTGAACCCGTCACCGTGAGCTGGAATAGCGGCGCTCTGACAAGCGGAGTCCATACATTCCCTGCTGTGCTGCAAAGCAGCGGACTCTATTCCCTGTCCAGCGTCGTCACAGTGCCCAGCAGCAGCCTGGGCACCCAGACCTACATCTGTAACGTCAACCACAAGCCCTCCAACACCAAGGTGGACAAGAAAGTGGAGCCCAAATCCTGCGACAAGACACACACCTGTCCCCCCTGTCCTGCTCCCGAAGCTGCTGGAGCCCCTAGCGTCTTCCTCTTTCCTCCCAAACCCAAGGACACCCTCATGATCAGCAGAACCCCTGAAGTCACCTGTGTCGTCGTGGATGTCAGCCATGAGGACCCCGAGGTGAAATTCAACTGGTATGTCGATGGCGTCGAGGTGCACAACGCCAAAACCAAGCCCAGGGAGGAACAGTACAACTCCACCTACAGGGTGGTGTCCGTGCTGACAGTCCTCCACCAGGACTGGCTGAACGGCAAGGAGTACAAGTGCAAGGTGTCCAACAAGGCTCTCCCTGCCCCCATTGAGAAGACCATCAGCAAGGCCAAAGGCCAACCCAGGGAGCCCCAGGTCTATACACTGCCTCCCTCCAGGGACGAACTCACCAAGAACCAGGTGTCCCTGACCTGCCTGGTCAAGGGCTTTTATCCCAGCGACATCGCCGTCGAGTGGGAGTCCAACGGACAGCCCGAGAATAACTACAAGACCACCCCTCCTGTCCTCGACTCCGACGGCTCCTTCTTCCTGTACAGCAAGCTGACCGTGGACAAAAGCAGGTGGCAGCAGGGAAACGTGTTCTCCTGCAGCGTGATGCACGAAGCCCTCCACAACCACTACACCCAGAAAAGCCTGTCCCTGAGCCCCGGCAAA(配列番号33)
【0173】
14C12H1L1(hG1TM)の重鎖14C12H1(hG1TM)のアミノ酸配列:(448aa)
EVQLVESGGGLVQPGGSLRLSCAASGFAFSSYDMSWVRQAPGKGLDWVATISGGGRYTYYPDSVKGRFTISRDNSKNNLYLQMNSLRAEDTALYYCANRYGEAWFAYWGQGTLVTVSSASTKGPSVFPLAPSSKSTSGGTAALGCLVKDYFPEPVTVSWNSGALTSGVHTFPAVLQSSGLYSLSSVVTVPSSSLGTQTYICNVNHKPSNTKVDKKVEPKSCDKTHTCPPCPAPEAAGAPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSHEDPEVKFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQYNSTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKALPAPIEKTISKAKGQPREPQVYTLPPSRDELTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFFLYSKLTVDKSRWQQGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSPGK(配列番号34)
【0174】
14C12H1L1(hG1TM)の軽鎖のヌクレオチド配列を、配列番号24に示す。
【0175】
14C12H1L1(hG1TM)の軽鎖のアミノ酸配列は、配列番号25の14C12H1L1の軽鎖14C12L1のアミノ酸配列と同一である。
【0176】
調製例5:抗LAG3/PD-1二機能性抗体の設計及び調製
1.配列設計
本発明の二機能性抗体BS-PL021A、Bs-PL022B、BS-PL023C、及びBs-PLV02の構造は、モリソン形態(IgG-scFv)、すなわち、IgG抗体の2個の重鎖のC末端がそれぞれ他の抗体のscFv断片に連結したものである。重鎖及び軽鎖の主な組成設計は以下の表1に示す通りである。
【表1】
【0177】
上記表1において:
(1)リンカー断片(GGGGS)3のアミノ酸配列:
GGGGSGGGGSGGGGS(配列番号35)
リンカー断片(GGGGS)4のアミノ酸配列:
GGGGSGGGGSGGGGSGGGGS(配列番号36)
リンカー断片(GGGGS)4Gのアミノ酸配列:
GGGGSGGGGSGGGGSGGGGSG(配列番号37)
(2)右下隅の「v」という表示のあるものは、対応する重鎖の可変領域、又は対応する軽鎖の可変領域を表す。「v」という表示のないものについては、対応する重鎖又は軽鎖は定常領域を含んだ全長である。上記調製例に記載の対応する配列は、これらの可変領域又は全長のアミノ酸配列、及びそれらをコードするヌクレオチド配列を表す。
【0178】
2.抗体の発現及び精製
Bs-PL021A、Bs-PL022B、Bs-PL023C、及びBs-PLV02の重鎖cDNA配列及び軽鎖cDNA配列を、pUC57simpleベクター(GenScript製)に別々にクローニングし、プラスミドpUC57simple-Bs-PL021AH/pUC57simple-Bs-PL021AL、pUC57simple-Bs-PL022BH/pUC57simple-Bs-PL022BL、pUC57simple-Bs-PL023CH/pUC57simple-Bs-PL023CL、pUC57simple-Bs-PLV02H/pUC57simple-Bs-PLV02L、及びpUC57simple-Bi-PGV02/pUC57simple-Bi-PGV02をそれぞれ得た。
【0179】
前記プラスミドpUC57simple-Bs-PL021AH/pUC57simple-Bs-PL021AL、pUC57simple-Bs-PL022BH/pUC57simple-Bs-PL022BL、pUC57simple-Bs-PL023CH/pUC57simple-Bs-PL023CL、pUC57simple-Bs-PLV02H/pUC57simple-Bs-PLV02L、及びpUC57simple-Bi-PGV02/pUC57simple-Bi-PGV02を、それぞれ消化した(HindIII及びEcoRI)。重鎖及び軽鎖を電気泳動で単離し、別々にpcDNA3.1ベクターにサブクローニングし、組換えプラスミドを抽出して293F細胞にコトランスフェクトした。細胞培養7日後に培地を高速遠心分離で分離し、上清を濃縮して、HiTrap MabSelect SuReカラム上にロードした。タンパク質を、溶出緩衝液を用いてワンステップで溶出した。標的試料を単離し、緩衝液をPBSへと交換した。
【0180】
調製例6:融合タンパク質PD-1-mFc、PD-1-hFc、及びPDL1-hFcの調製
融合タンパク質PD-1-mFc、PD-1-hFc、及びPDL1-hFcの調製、並びにSDS-PAGE電気泳動による検出を、中国特許出願公開第106632674(A)号明細書の調製例1の全体を参照することにより行った。
【0181】
この調製例の融合タンパク質PD-1-mFc、PD-1-hFc、及びPDL1-hFcのアミノ酸配列及びコードヌクレオチド配列は、中国特許出願公開第106632674(A)号明細書の調製例1におけるPD-1-mFc、PD-1-hFc、及びPDL1-hFcのものとそれぞれ同一である。
【0182】
融合タンパク質PD-1-mFc、PD-1-hFc、及びPDL1-hFcは、このようにして得られた。
【0183】
調製例7:ヒト抗鶏卵リゾチーム抗体の調製
ヒト抗鶏卵リゾチームIgG(抗HEL、又はヒトIgG;hIgGと略記する)抗体の配列を、“Affinity maturation increases the stability and plasticity of the Fv domain of anti-protein antibodies”と題したAcierno et al.による報告の研究(Acierno et al., J Mol Biol., 2007; 374(1): 130-46)における、Fab F10.6.6配列の可変領域配列から得た。調製法は次のとおりであった:
【0184】
Nanjing Genscript Biology社への委託により、ヒトIgG抗体の重鎖及び軽鎖(完全配列又は可変領域)遺伝子のアミノ酸のコドン最適化及び遺伝子合成を行った。“Guide to Molecular Cloning Experiments (Third Edition)”に紹介されている標準的な技術を参照することにより、また、標準的な分子クローニング技術、例えば、PCR、酵素消化、DNAゲル抽出、ライゲーション形質転換、コロニーPCR、又は酵素消化識別などを使用することにより、重鎖及び軽鎖遺伝子を、哺乳類発現系の抗体重鎖発現ベクター及び抗体軽鎖発現ベクターにそれぞれサブクローニングした。組換え発現ベクターの重鎖及び軽鎖遺伝子をさらにシーケンシングして分析を行った。配列が正確であることを確認した後、エンドトキシンフリーの発現プラスミドを大量又は中程度の量を調製した。組換え抗体を発現させるために、重鎖及び軽鎖発現プラスミドをHEK293細胞に対して一過性トランスフェクションした。7日間の培養後、細胞培養培地を回収し、rProtein Aカラム(GE)を用いて親和性精製行った。得られた抗体試料の品質を、SDS-PAGE及びSEC-HPLCの標準的な分析技術を用いて測定した。
【0185】
実験例1:抗LAG3/抗PD-1二重特異性抗体の抗原に対する結合活性のELISAによる分析
1.BS-PL021A、BS-PL022B、BS-PL023C、Bs-PLV02、及び14C12H1L1(hG1TM)の抗原PD-1-mFcに対する結合活性の間接ELISAによる分析
手順は以下の通りであった:
【0186】
ELISAプレートを0.5μg/mLのヒトPD-1-mFcでコートし、4℃で一晩インキュベートした。その後、抗原でコートされたELISAプレートをPBSTで1回洗浄し、ブロッキング溶液として1% BSAを含むPBS溶液を用いて37℃にて2時間ブロッキングした。ブロッキング後、ELISAプレートをPBSTで3回洗浄した。PBST溶液で段階希釈した抗体(抗体の希釈勾配を表2に示す)を加えた。試験抗体を含むELISAプレートを37℃で30分間インキュベートし、その後、PBSTで3回洗浄した。洗浄後、1:5000の割合で希釈したHRP標識ヤギ抗ヒトIgG FC(H+L)(Jackson社、カタログ番号109-035-098)二次抗体のワーキング溶液を加え、次いでプレートを37℃で30分間インキュベートした。インキュベート後、プレートをPBSTで4回洗浄し、TMB(Neogen社、308177)を暗所で加えて5分間発色させた後、停止溶液を加えて発色反応を停止させた。ELISAプレートを直ちにELISAプレートリーダーに入れ、ELISAプレート中の各ウェルのOD値を450nmで読み取った。SoftMax Pro 6.2.1により、データの分析と加工を行った。
【0187】
分析結果を表2及び図1に示す。
【表2】
【0188】
図1から明らかなように、BS-PL021A、BS-PL022B、BS-PL023C、Bs-PLV02、及び14C12H1L1(hG1TM)は、抗原ヒトPD-1-mFcに対して用量依存的に効果的に結合することができた。結合した抗体の吸光度の定量分析に基づき、カーブフィッティング計算によって得られた抗体BS-PL021A、BS-PL022B、BS-PL023C、Bs-PLV02、及び14C12H1L1(hG1TM)(対照)の結合効率EC50値は、それぞれ0.066nM、0.074nM、0.046nM、0.103nM、及び0.02nMであった。
【0189】
この結果は、同一の実験条件下で、BS-PL021A、BS-PL022B、及びBS-PL023CのPD-1-mFcに対する結合活性が、陽性対照14C12H1L1(hG1TM)の同じ標的に対する結合活性に実質的に匹敵するものであったことを示しており、BS-PL021A、BS-PL022B、BS-PL023C、及びBs-PLV02が、PD-1-mFcに対して効果的に結合する活性を有していたことが示唆された。
【0190】
2.BS-PL021A、BS-PL022B、BS-PL023C、Bs-PLV02、レラトリマブ、及びH7L8(hG1WT)の抗原LAG3-mFcに対する結合活性の間接ELISAによる分析
手順は以下の通りであった:
【0191】
ELISAプレートを2μg/mLのヒトLAG3-mFc(Akeso Biopharma社、ロット番号20200417)でコートし、4℃で一晩インキュベートした。その後、抗原でコートされたELISAプレートをPBSTで1回洗浄し、ブロッキング溶液として1% BSAを含むPBS溶液を用いて37℃にて2時間ブロッキングした。ブロッキング後、ELISAプレートをPBSTで3回洗浄した。PBST溶液で段階希釈した抗体(抗体の希釈勾配を表3に示す)を加えた。試験抗体を含むELISAプレートを37℃で30分間インキュベートし、その後、PBSTで3回洗浄した。洗浄後、1:5000の割合で希釈したHRP標識ヤギ抗ヒトIgG FC(H+L)(Jackson社、カタログ番号109-035-098)二次抗体のワーキング溶液を加え、次いでプレートを37℃で30分間インキュベートした。インキュベート後、プレートをPBSTで4回洗浄し、TMB(Neogen社、308177)を暗所で加えて5分間発色させた後、停止溶液を加えて発色反応を停止させた。ELISAプレートを直ちにELISAプレートリーダーに入れ、ELISAプレート中の各ウェルのOD値を450nmで読み取った。SoftMax Pro 6.2.1により、データの分析と加工を行った。
【0192】
分析結果を表3及び図2に示す。
【表3】
【0193】
図2から明らかなように、BS-PL021A、BS-PL022B、BS-PL023C、Bs-PLV02、レラトリマブ、及びH7L8(hG1WT)は、抗原ヒトLAG3-mFcに対して用量依存的に効果的に結合することができた。各用量に対する吸光度を表3に示す。結合した抗体の吸光度の定量分析に基づき、カーブフィッティング計算によって得られた抗体BS-PL021A、BS-PL022B、BS-PL023C、Bs-PLV02、レラトリマブ(陽性対照)、及びH7L8(hG1WT)(対照)の結合効率EC50値は、それぞれ0.073nM、0.081nM、0.377nM、0.685nM、0.106nM、及び0.045nMであった。
【0194】
上記実験結果は、同一の実験条件下で、BS-PL021A、BS-PL022B、及びH7L8(hG1WT)がLAG3-mFcに効果的に結合する活性を有していたこと、並びに、BS-PL021A、BS-PL022B、及びH7L8(hG1WT)のヒトLAG3-mFcに対する結合活性が、陽性薬物レラトリマブの同じ標的に対する活性よりも強かったこと、特に、H7L8(hG1WT)のヒトLAG3-mFcに対する結合活性が、陽性薬物レラトリマブの同じ標的に対する活性よりも有意に強かったことを示している。
【0195】
実験例2:ヒトPD-1-mFc-ビオチンへの結合に関してヒトPDL1-mFcと競合する抗LAG3/抗PD-1二重特異性抗体の活性の、競合ELISAによる分析
ELISAプレートを2μg/mLのヒトPDL1-mFc(PD-L1 Genbank ID:NP_054862.1、mFc 配列番号)でコートし、4℃で一晩インキュベートした。インキュベート後、ELISAプレートを、1%BSAを含むPBS溶液で37℃にて2時間ブロッキングした。ブロッキング後、プレートを3回洗浄し、乾燥した。抗体を、希釈プレート上で3倍の希釈率で段階希釈し、80nM(最終濃度40nM)を開始濃度として7種の濃度にした。また、ブランク対照を設定した。その後、1.2μg/mL(最終濃度0.6μg/mL)のヒトPD-1-mFc-ビオチン溶液を等量加え、希釈済み抗体とよく混合した。その後、混合物を室温で10分間インキュベートした。その後、コートしたELISAプレートに反応後の混合物を加え、ELISAプレートを37℃で30分間インキュベートした。インキュベート後、プレートをPBSTで3回洗浄し、乾燥した。SA-HRP(KPL、14-30-00)ワーキング溶液を加え、プレートを37℃で30分間インキュベートした。インキュベート後、プレートを4回洗浄し、乾燥した。次いで、TMB(Neogen、308177)を暗所で加えて5分間発色させた後、停止溶液を加えて発色反応を停止させた。ELISAプレートを直ちにELISAプレートリーダーに入れ、ELISAプレート中の各ウェルのOD値を450nmで読み取った。SoftMax Pro 6.2.1により、データの分析と加工を行った。
【0196】
分析結果を図3に示す。全用量に対するOD値を表4に示す。結合した抗体の吸光度の定量分析に基づき、カーブフィッティングを行い、ヒトPD-1-mFc-ビオチンとそのリガンドであるヒトPDL1-mFcの結合をブロックする、抗体の競合結合効率EC50値を得た(表4)。
【表4】
【0197】
結果は、BS-PL021A、BS-PL022B、BS-PL023C、Bs-PLV02、及び14C12H1L1(hG1TM)(対照)が、抗原ヒトPD-1-mFc-ビオチンのそのリガンドであるヒトPDL1-mFcに対する結合を、用量依存的に、効果的にブロックできたことを示しており、BS-PL021A、BS-PL022B、BS-PL023C、Bs-PLV02、及び14C12H1L1(hG1TM)が、ヒトPD-1-mFc-ビオチンのそのリガンドであるヒトPDL1-mFcに対する結合をブロックする際のEC50値は、それぞれ3.031nM、3.462nM、2.982nM、5.045nM、及び2.606nMであった。ヒトPD-1-mFc-ビオチンのそのリガンドであるヒトPDL1-mFcに対する結合をブロックする、BS-PL021A、BS-PL022B、及びBS-PL023Cの効率は、14C12H1L1(hG1TM)の効率に実質的に匹敵するものであった。
【0198】
実験例3:抗LAG3/抗PD-1二重特異性抗体の結合活性のFACSによる分析
1.抗LAG3/抗PD-1二重特異性抗体の、293T-PD1膜表面上のPD-1に対する結合活性の、FACSによる分析
対数増殖期の293T-PD1細胞を回収し、V底96ウェルプレートに3×10細胞/ウェルで移した。その後、各ウェルに100μLの1% PBSAを加え、混合物を350×gで5分間遠心分離し、次いで上清を除去した。PBSAで希釈した抗体100μL(それぞれ、300nM、100nM、33.3nM、11.1nM、3.7nM、1.23nM、0.123nM、及び0.0123nMの最終濃度)を加えた。混合物を穏やかに均一に混ぜ、氷上で1時間インキュベートした。各ウェルに100μLの1% PBSAを加え、混合物を350×gで5分間遠心分離し、次いで上清を除去した。その後、プレートを200μLの1% PBSAで2回洗浄した。400倍希釈したFITC標識ヤギ抗ヒトIgG二次抗体(Jackson社、カタログ番号109-095-098)を加え、再懸濁させた。混合物をよく混ぜ、暗所にて氷上で0.5時間インキュベートした。各ウェルに100μLの1% PBSAを加え、混合物を350×gで5分間遠心分離し、次いで上清を除去した。その後、プレートを200μLの1% PBSAで2回洗浄した。400μLの1% PBSAを各ウェルに加えて細胞ペレットを再懸濁し、混合物をフローサイトメトリーチューブに移してFACSCaliburアッセイを行った。
【0199】
実験結果を表5及び図4に示す。14C12H1L1(hG1TM)、BS-PL021A、BS-PL022B、Bs-PLV02、Bi-PGV02、ニボルマブ、及びペムブロリズマブが、いずれも293T-PD1細胞膜表面上のPD-1受容体に特異的に結合できたことが示された。
【表5】
【0200】
同一の実験条件下において、14C12H1L1(hG1TM)、BS-PL021A、BS-PL022B、Bs-PLV02、Bi-PGV02、ニボルマブ、及びペムブロリズマブの、293T-PD1細胞への結合のEC50値は、それぞれ5.351nM、6.851nM、6.066nM、6.866nM、7.206nM、3.073nM、及び3.970nMであった。上記実験結果は、同一の実験条件下において、14C12H1L1(hG1TM)、BS-PL021A、BS-PL022B、Bs-PLV02、及びBi-PGV02の、293T-PD1細胞への結合活性が、対照抗体ニボルマブ及びペムブロリズマブに匹敵するものであったことを示しており、14C12H1L1(hG1TM)、BS-PL021A、BS-PL022B、Bs-PLV02、及びBi-PGV02が、293T-PD1細胞膜表面上のPD-1に対して効果的に結合する活性を有することが示唆された。
【0201】
2.抗LAG3/抗PD-1二重特異性抗体の、293T-LAG3細胞膜表面上のLAG3に対する結合活性のFACSによる分析
対数増殖期の293T-LAG3細胞を従来のパンクレアチンで消化し、V底96ウェルプレートに3×10細胞/ウェルで移した。その後、各ウェルに100μLの1% PBSAを加え、混合物を350×gで5分間遠心分離し、次いで上清を除去した。1% PBSAで希釈した抗体100μL(それぞれ、300nM、100nM、33.3nM、11.1nM、3.7nM、1.23nM、0.123nM、0.0123nM、及び0.00123nMの最終濃度)を加えた。混合物をよく混ぜ、氷上で1時間インキュベートした。各ウェルに100μLの1% PBSAを加え、混合物を350×gで5分間遠心分離し、次いで上清を除去した。その後、プレートを200μLの1% PBSAで2回洗浄した。300倍希釈したFITC標識ヤギ抗ヒトIgG二次抗体(Jackson社、カタログ番号109-095-098)を加え、再懸濁させた。混合物をよく混ぜ、暗所にて氷上で0.5時間インキュベートした。各ウェルに500μLのPBSAを加え、混合物を350×gで5分間遠心分離し、次いで上清を除去した。その後、プレートを200μLの1% PBSAで2回洗浄した。300μLの1% PBSAを各ウェルに加えて細胞ペレットを再懸濁し、混合物をフローサイトメトリーチューブに移してFACSCaliburアッセイを行った。
【0202】
実験結果を表6及び図5に示す。
【表6】
【0203】
結果は、同一の実験条件下で、BS-PL022B及びレラトリマブの、293T-LAG3細胞膜表面上のLAG3への結合のEC50値が、それぞれ3.213nM及び4.113nMであり、BS-PL022Bの293T-LAG3細胞膜表面上のLAG3への結合活性が、レラトリマブよりも高かったことを示唆している。
【0204】
上記実験結果は、同じ標的に対するBS-PL022B及び陽性薬物レラトリマブが、293T-LAG3細胞膜表面上のLAG3に特異的に用量依存的に結合できたことを示しており、BS-PL022Bが、293T-LAG3細胞膜表面上のLAG3に効果的に結合する活性を有していたこと、そして、その結合能がレラトリマブよりも強かったことが示唆された。
【0205】
実験例4:抗LAG3/抗PD-1二重特異性抗体の、細胞膜表面上の抗原に対する競合的結合
1.細胞膜表面上の抗原PD-1への結合に関してPDL1と競合する、抗LAG3/抗PD-1二重特異性抗体の活性の競合フローサイトメトリーによる分析
293T-PD1細胞を従来法で消化し、V底96ウェルプレートに3×10細胞/ウェルで移した。その後、各ウェルに100μLの1% PBSAを加え、混合物を遠心分離及び洗浄した。対応する段階希釈した抗体(それぞれ、300nM、100nM、33.3nM、11.1nM、3.7nM、1.23nM、0.123nM、及び0.0123nMの最終濃度)を、それぞれ試料あたり100μL加え、混合物を氷上で30分間インキュベートした。100μLのPDL-1-mFcを各ウェルに加え、混合物をよく混ぜて最終濃度20nMにした。その後、氷上で1時間インキュベートし、350×gで5分間遠心分離した後、上清を除去して200μLの1% PBSAで2回洗浄した。100μLの400倍希釈のFITCヤギ抗マウスIgG/IgM抗体(BD社、カタログ番号555988)を加え、一方で100μLの1% PBSAをブランク試料に加えた。混合物をよく混ぜ、暗所にて氷上で30分間インキュベートし、洗浄及び遠心分離を行った。細胞を再懸濁し、フローサイトメーター上の試験用サンプルローディングチューブに移した。
【0206】
結果を図6に示し、試料のEC50値を表7に示す。蛍光定量分析及びカーブフィッティングにより、抗体ニボルマブ、ペムブロリズマブ、14C12H1L1(hG1TM)、及びBS-PL022Bの競合結合EC50値は、それぞれ、3.608nM、2.769nM、2.511nM、及び5.123nMと算出された。
【表7】
【0207】
結果は、293T-PD1宿主細胞表面上のPD-1へのPD-L1の結合を、抗体BS-PL022Bが用量依存的に、効果的にブロックできたことを示す。
【0208】
2.細胞膜表面上の抗原MHC IIへの結合に関してLAG3-mG1Fcと競合する、抗LAG3/抗PD-1二重特異性抗体の活性の競合フローサイトメトリーによる分析
実験設計に従い、各抗体及びLAG3-mG1Fcを希釈し、1:1の割合で均一に混合して、LAG3-mG1Fc(Akeso Biopharma社製;ロット番号20190508)の最終濃度が3nMとなり、抗体の最終濃度が300nM、100nM、33.3nM、11.1nM、3.7nM、1.23nM、0.123nM、0.0123nM、及び0.00123nMとなるようにした。その後、混合物を氷上で30分間インキュベートした。Raji細胞(Cell Resource Center, Shanghai Institutes for Biological Sciences, Chinese Academy of Sciences;カタログ番号TCHu 44)を回収し、V底96ウェルプレートに各試料300,000細胞となるように播種して、1% PBSAを加えた。混合物を500×gで5分間遠心分離して、上清を除去した。各ウェルの細胞を、100μLの抗体-タンパク質プレインキュベーション溶液中に再懸濁した。ブランク対照(細胞+PBSA+PBSA)、陰性対照(細胞+PBSA+二次抗体)、及びアイソタイプ対照をデザインした。系を暗所にて氷上で1時間インキュベートした。その後、100μLの1% PBSAを加え、混合物を500×gで5分間遠心分離し、次いで上清を除去した。各ウェルに200μLの1% PBSAを加えて細胞を再懸濁し、懸濁物を500×gで5分間遠心分離し、次いで上清を除去して1回洗浄した。100μLのAPCヤギ抗マウスIgG二次抗体(BioLegend社、カタログ番号405308)(1:300の割合で希釈)を各ウェルに加えて細胞を再懸濁し、一方でブランク対照を100μLの1% PBSA中に再懸濁した。系を暗所にて氷上で30分間インキュベートした。その後、100μLの1% PBSAを加え、混合物を500×gで5分間遠心分離し、次いで上清を除去した。各ウェルに200μLの1% PBSAを加えて細胞を再懸濁し、懸濁物を500×gで5分間遠心分離し、次いで上清を除去して1回洗浄した。200μLの1% PBSAを各ウェルに加えて細胞を再懸濁し、懸濁物をフローサイトメーター上の試験用サンプルローディングチューブに移した。
【0209】
結果を図7及び表8に示し、試料のEC50値を表中に示す。蛍光定量分析及びカーブフィッティングにより、抗体レラトリマブ及びBS-PL022Bの競合結合EC50値は、それぞれ、0.9689nM及び1.306nMと算出された。
【表8】
【0210】
結果は、Raji宿主細胞の表面上のMHC IIへのLAG-3の結合を、抗体BS-PL022Bが用量依存的に、効果的にブロックできたことを示す。
【0211】
実験例5:抗LAG3/抗PD-1二重特異性抗体のブロッキング分析
1.LAG3のMHC IIへの結合をブロックする抗LAG3/抗PD-1二重特異性抗体の分析
Jurkat-NFAT-PD1-LAG3細胞(Akeso Biopharma社による構築、P9、生存率:97.75%)及びRaji細胞(Cell Resource Center, Shanghai Institutes for Biological Sciences, Chinese Academy of Sciences;カタログ番号TCHu 44)を回収し、110×gで5分間遠心分離し、次いで上清を除去した。その後、細胞を1640培地(10% FBS含有)中に再懸濁し、計数した。前記Jurkat-NFAT-PD1-LAG3細胞を、黒底96ウェルプレート(Corning社;モデル番号3916)に、10×10細胞/ウェル(25μL/ウェル)播種した。実験設計に従い、抗体(それぞれ900nM、300nM、100nM、33.3nM、3.3nM、0.3nM、0.03nM、及び0.003nMの最終濃度)を30μL/ウェル加え、混合物を5% COインキュベーター内で、37℃で30分間プレインキュベートした。SEE(ブドウ球菌エンテロトキシンE)(最終濃度0.05ng/mL、Toxin Technology社、カタログ番号ET404)及びRaji細胞を5% COインキュベーター内で、37℃で30分間インキュベートした。30分間のインキュベート後、Raji細胞を、前記96ウェルプレートに2×10細胞/ウェル(25μL/ウェル)加え、各ウェルの最終容量を80μLとした。混合物をよく混ぜ、5% COインキュベーター内で、37℃で16時間インキュベートした。その後、プレートを取り出し、室温に戻した。Bright-Glo(商標)Luciferase Assay System(Promega社、カタログ番号E2650)を80μL/ウェル加え、混合物を暗所で2分間インキュベートした。その後、RLU値を読み取った。
【0212】
結果を図8A図8B、及び表9に示す。
【表9】
【0213】
結果は、MHC IIへのLAG3の結合をブロックする、Bs-PLV02、Bi-PGV02、BS-PL022B、及びレラトリマブのEC50値(nM)が、それぞれ1.21nM、1.483nM、0.9762nM、及び8.563nMであったことを示す。Bs-PLV02、Bi-PGV02、及びBS-PL022Bは、陽性対照抗体レラトリマブと比べ、MHC IIへのLAG3の結合をブロックする能力が高かった。
【0214】
2.PD-1のPD-L1への結合をブロックする抗LAG3/抗PD-1二重特異性抗体の分析
PDL1 aAPC/CHO-K1細胞(Promega社、カタログ番号J1081A)を、平底96ウェル黒色プレート(Corning社;モデル番号3916)に4×10細胞/ウェル(100μL/ウェル)播種し、一晩培養した(細胞増殖用培地中:Ham F-12+10% FBS)。翌日、プレート内の培地を除去し、PD1エフェクター細胞(Promega社、カタログ番号J1121A)を5×10細胞/ウェル(40μL/ウェル)(培地:1640+10% FBS)加えた。抗体(それぞれ、1000nM、300nM、100nM、33.3nM、11.1nM、3.7nM、1.23nM、0.123nM、及び0.0123nMの最終濃度)を40μL/ウェル加え、また、アイソタイプ対照及び陰性対照群を設定した。最終容量は80μL/ウェルであった。プレートをインキュベーター内に置き、6時間インキュベートした。その後、プレートを取り出し、室温に戻した。Bright-Glo(商標)Luciferase Assay System(Promega社、カタログ番号E2650)を80μL/ウェル加え、混合物を暗所で2分間インキュベートした。その後、RLU値を読み取った。
【0215】
結果を図9A図9B、及び表10に示す。
【表10】
【0216】
結果は、PD-L1へのPD-1の結合をブロックする、ニボルマブ、ペムブロリズマブ、14C12H1L1(hG1TM)、及びBS-PL022BのEC50値(nM)が、それぞれ4.089nM、1.281nM、5.219nM、及び20.01nMであったことを示す。結果は、ニボルマブ、ペムブロリズマブ、14C12H1L1(hG1TM)、及びBS-PL022Bが、いずれも、PD-L1へのPD-1の結合をブロック可能であったことを示している。
【0217】
3.MHC IIへのLAG-3の結合とPD-L1へのPD-1の結合を同時にブロックする抗LAG3/抗PD-1二重特異性抗体の分析
Jurkat-NFAT-PD1-LAG3細胞及びRaji-PDL1細胞を回収し、110×gで5分間遠心分離した後、上清を除去した。その後、細胞を1640培地(10% FBS含有)中に再懸濁し、計数した。
【0218】
前記Jurkat-NFAT-PD1-LAG3細胞を、黒底96ウェルプレート(Corning社;モデル番号3916)に、10×10細胞/ウェル(25μL/ウェル)播種した。実験設計に従い、抗体(それぞれ3000nM、1000nM、300nM、30nM、3nM、0.3nM、0.03nM、及び0.003nMの最終濃度)を30μL/ウェル加え、混合物を5% COインキュベーター内で、37℃で30分間プレインキュベートした。SEE(ブドウ球菌エンテロトキシンE)(最終濃度0.1ng/mL)をRaji-PDL1細胞に加え、混合物を5% COインキュベーター内で、37℃で30分間インキュベートした。30分間のインキュベート後、Raji-PDL1細胞を、前記96ウェルプレートに3×10細胞/ウェル(25μL/ウェル)加え、各ウェルの最終容量を80μLとした。混合物をよく混ぜ、5% COインキュベーター内で、37℃で15時間インキュベートした。その後、プレートを取り出し、室温に戻した。Bright-Glo(商標)Luciferase Assay System(Promega社、カタログ番号E2650)を80μL/ウェル加え、混合物を暗所で5分間インキュベートした。その後、RLU値を読み取った。
【0219】
結果を図10A図10B、及び表11に示す。
【表11】
【0220】
結果は、PD-L1へのPD1の結合とMHC IIへのLAG3の結合を同時にブロックする、ペムブロリズマブ、レラトリマブ、14C12H1L1(hG1TM)、14C12H1L1(hG1TM)+レラトリマブ、及びBS-PL022BのEC50値(nM)が、それぞれ24.01nM、5.525nM、44.86nM、29.75nM、及び16.21nMであったことを示す。ペムブロリズマブ、レラトリマブ、14C12H1L1(hG1TM)、14C12H1L1(hG1TM)+レラトリマブ、及びBs-PL022Bは、いずれも、PD-L1へのPD-1の結合とMHC IIへのLAG3の結合を同時にブロック可能であり、Bs-PL022Bのブロッキング能は、他の抗体よりも高かった。
【0221】
実験例6:抗LAG3/抗PD-1二重特異性抗体のブリッジングアッセイ
CHO-K1細胞(Cell Resource Center, Institute of Basic Medical Sciences, Chinese Academy of Medical Sciences、カタログ番号3111C0001CCC000004)、CHO-K1-PD1細胞(Akeso Biopharma社による構築)、及びCHO-K1-LAG3細胞(Akeso Biopharma社による構築)を従来法で消化し、170×gで5分間遠心分離した後、上清を除去した。その後、完全培地中に細胞を再懸濁して計数を行い、細胞生存率を決定した。CHO-K1-PD1細胞はCFSE(CFSE Cell Division Tracker Kit、Biolegend社、カタログ番号423801)(処理濃度1μM、1mL/10×10細胞)によって染色し、CHO-K1-LAG3細胞はFar red(Thermofisher社、カタログ番号C34564)(処理濃度0.3μM、1mL/10×10細胞)によって染色し、CHO-K1細胞はFar red又はCFSEによって染色した。細胞をインキュベーター内で20分間インキュベートして染色を行った。完全培地を加えることによって染色を停止し、混合物を170×gで5分間遠心分離し、次いで上清を除去した。追加の完全培地を加え、混合物をインキュベーター内で10分間インキュベートし、170×gで5分間遠心分離を行った後、上清を除去し、1回洗浄した。その後、細胞を完全培地中に再懸濁し、計数した。染色後、CHO-K1-PD1、CHO-K1-LAG3、及びCHO-K1細胞を、別々にV底96ウェルプレートに1.5×10細胞/ウェル移し、緩衝液(PBS+1%ヒト血清)(ヒト血清はZhongKeChenYu Biotech社製;カタログ番号168014-100mL)を加えた。混合物を遠心分離し、次いで上清を除去した。実験設計に従い、抗体(それぞれ30nM、3nM、1nM、0.3nM、及び0.1nMの最終濃度)をCHO-K1-PD1細胞に100μL/ウェル加え、緩衝液又は抗体(それぞれ30nM、3nM、1nM、0.3nM、及び0.1nMの最終濃度)をCHO-K1-LAG3細胞に100μL/ウェル加え、そして、緩衝液をCHO-K1細胞に100μL/ウェル加えた。その後、系を氷上で60分間インキュベートした。
【0222】
100μLの緩衝液を加え、混合物を350×gで5分間遠心分離した後、上清を除去し、200μLの緩衝液で2回洗浄した。各ウェル内のCHO-K1-LAG3及びCHO-K1細胞を別々に100μLの緩衝液中に再懸濁し、懸濁物を、対応するCHO-K1-PD1試料ウェルに1.5×10細胞/ウェルで移した。混合物をよく混ぜ、その後、暗所にて氷上で40分間インキュベートした。200μLの緩衝液を各ウェルに加えて細胞を再懸濁し、懸濁物をフローサイトメーター上の試験用サンプルローディングチューブに移した。
【0223】
結果を図11に示す。アイソタイプ対照との比較を行ったところ、抗LAG3/抗PD-1二重特異性抗体は、CHO-K1-PD1及びCHO-K1-LAG3細胞に同時に結合し、2種類の細胞を架橋(bridging)することができたのに対し、14C12H1L1(hG1TM)及びレラトリマブは、併用した場合でさえもこの効果を有しなかった。
【0224】
実験例7:IFN-γ及びIL-2分泌の促進における抗LAG3/抗PD-1二重特異性抗体の生物学的活性の混合リンパ球反応(MLR)による分析
1.Raji-PDL1混合リンパ球反応系でのIFN-γ分泌の促進における、抗LAG3/抗PD-1二重特異性抗体の生物学的活性の分析
Raji-PDL1細胞を従来通り継代培養した。PBMCを融解して10mLの1640完全培地中で培養し、0.5μg/mLのSEB(ブドウ球菌エンテロトキシンB)(Dianotech社;カタログ番号S010201)で2日間刺激した。前記Raji-PDL1細胞を、最終濃度2μg/mLのMMC(Stressmarq社;カタログ番号SIH-246-10MG)で処理し、5% COインキュベーター内で、37℃で1時間インキュベートした。SEBで2日間刺激したPBMC、及びMMCで1時間処理したRaji-PDL1細胞を回収し、PBSで2回洗浄した。その後、これら2種の細胞を完全培地に再懸濁し、計数し、U字型96ウェルプレート(Corning社、モデル番号3799)に10×10細胞/ウェルでそれぞれ加え、同時培養を行った。実験設計に従い、抗体(それぞれ300nM、30nM、及び3nMの最終濃度)を加えてインキュベーター内で3日間細胞を同時培養した。3日後、細胞を1200rpmで5分間遠心分離し、細胞培養上清を回収して、ELISAによるIFN-γの分析を行った。
【0225】
図12Aに示すように、ヒトPBMCとRaji-PDL1細胞の混合培養により、PBMCにおけるIFN-γの分泌が有意に促進され、また、混合培養系への抗体の添加により、PBMCにおいてIFN-γのさらなる分泌を有意に誘導することができた。IFN-γ分泌を促進する活性の程度については、抗体BS-PL022Bは、PD-1を単一の標的とする抗体14C12H1L1(hG1TM)及びLAG-3を単一の標的とする対照抗体レラトリマブよりも、優れたものであった。14C12H1L1(hG1TM)とレラトリマブの併用と比較した場合においてさえも、BS-PL022Bは、2種の異なる抗体濃度水準(30nM及び300nM)において、IFN-γ分泌を促進する能力がより高かった。
【0226】
2.Raji-PDL1混合リンパ球反応系でのIL-2分泌の促進における、抗LAG-3/抗PD-1二重特異性抗体の生物学的活性の分析
Raji-PDL1細胞を従来通り継代培養した。PBMCを融解して10mLの1640完全培地中で培養し、0.5μg/mLのSEB(ブドウ球菌エンテロトキシンB)(Dianotech社;カタログ番号S010201)で2日間刺激した。前記Raji-PDL1細胞を、最終濃度2μg/mLのMMC(Stressmarq社;カタログ番号SIH-246-10MG)で処理し、5% COインキュベーター内で、37℃で1時間インキュベートした。SEBで2日間刺激したPBMC、及びMMCで1時間処理したRaji-PDL1細胞を回収し、PBSで2回洗浄した。その後、これら2種の細胞を完全培地に再懸濁し、計数し、U字型96ウェルプレート(Corning社、モデル番号3799)に10×10細胞/ウェルでそれぞれ加え、同時培養を行った。実験設計に従い、抗体(それぞれ300nM、30nM、及び3nMの最終濃度)を加えて3日間細胞を同時培養した。3日後、細胞を1200rpmで5分間遠心分離し、細胞培養上清を回収して、ELISAによるIL-2の分析を行った。
【0227】
図12Bに示すように、ヒトPBMCとRaji-PDL1細胞の混合培養により、PBMCにおけるIL-2の分泌がある程度促進された。また、混合培養系への抗体の添加により、PBMCにおいてIL-2のさらなる分泌を有意に誘導することができ、それは有意な用量依存的関係を示した。IL-2分泌を促進する活性の程度については、PD-1を単一の標的とする抗体14C12H1L1(hG1TM)及びLAG-3を単一の標的とする対照抗体レラトリマブと比べ、BS-PL022Bは、3種の異なる抗体濃度水準において、IL-2分泌を促進する能力がより高かった。14C12H1L1(hG1TM)とレラトリマブの併用と比較した場合においてさえも、BS-PL022Bは、3種の異なる抗体濃度水準において、IL-2分泌を促進する能力がより高かった。
【0228】
実験例8:Fc受容体FcγRIに対する、BS-PL022Bの親和性の分析
Fc受容体FcγRI(CD64としても知られる)は、IgG抗体のFc断片に結合することができ、抗体依存性細胞媒介性細胞傷害(ADCC)に関与している。Fc受容体への治療抗体の結合能は、抗体の安全性と有効性に影響を与えると思われる。この実験において、FcγRIに対するBS-PL022Bの親和性定数をFortebio Octetシステムを用いて測定し、抗体のADCC活性を評価した。
【0229】
FcγRIに対する対応する抗体の親和性定数をFortebio Octetシステムによって測定した方法を、以下に簡単に記載する。試料希釈緩衝液は、pH7.4のPBS中の0.02% Tween-20及び0.1% BSAの溶液であった。1μg/mLの濃度のFcγRI溶液(Sinobio社より購入)をHIS1Kセンサーに加え、FcγRIをセンサー表面に50秒間固定した。FcγRIへの抗体の結合及び解離定数の両者を、3.12~50nM(2倍段階希釈)の抗体濃度の緩衝液中で測定した。試料プレートの振とう速度は1000rpmであり、温度は30℃であり、フリーケンシー(frequency)は5.0Hzであった。データは1:1モデルフィッティング(model fitting)で分析し、親和性定数を得た。
【0230】
FcγRIに対するBS-PL022Bの親和性定数の分析結果を、表12及び図13~14に示す。
【表12】
N/Aは、抗体が結合しなかったか、又は抗原に対するシグナルが極めて弱かったため、結果の分析が行われず、対応するデータが得られなかったことを示す。
【0231】
結果は、H7L8(hG1WT)がFcγRIに6.59E-09Mの親和性定数で結合できたこと、そして、BS-PL022BについてはFcγRIに結合しなかった、又は結合シグナルが極めて弱かったため、結果の分析が行われず、対応するデータが得られなかったことを示す。
【0232】
結果は、FcγRIに対するBS-PL022Bの結合活性が効果的に排除されたことを示す。
【0233】
実験例9:Fc受容体FcγRIIIa及びそのサブタイプに対する、BS-PL022Bの親和性の分析
(1)FcγRIIIa_V158に対する、BS-PL022Bの親和性定数の分析
Fc受容体FcγRIIIa_V158(CD16a_V158としても知られる)は、IgG抗体のFc断片に結合し、ADCC効果を媒介することができる。この実験において、FcγRIIIa_V158に対するBS-PL022Bの親和性定数をFortebio Octetシステムを用いて測定し、抗体のADCC活性を評価した。
【0234】
対応する抗体の親和性定数をFortebio Octetシステムによって測定した方法を、以下に簡単に記載する。試料希釈緩衝液は、pH7.4のPBS中の0.02% Tween-20及び0.1% BSAの溶液であった。5μg/mLのFcγRIIIa_V158を、HIS1Kセンサー上に60秒間固定した。センサーを緩衝液中で60秒間平衡化し、センサー上の固定化FcγRIIIa_V158の、31.25~500nM(2倍段階希釈)の濃度の抗体に対する結合を60秒間測定した。緩衝液中で抗体を60秒間解離させた。試料プレートの振とう速度は1000rpmであり、温度は30℃であり、フリーケンシーは5.0Hzであった。データは1:1モデルフィッティングで分析し、親和性定数を得た。
【0235】
FcγRIIIa_V158に対するBS-PL022Bの親和性定数の分析結果を、表13及び図15~16に示す。
【表13】
N/Aは、抗体が結合しなかったか、又は抗原に対するシグナルが極めて弱かったため、結果の分析が行われず、対応するデータが得られなかったことを示す。
【0236】
結果は、H7L8(hG1WT)がFcγRIIIa_V158に8.77E-08Mの親和性定数で結合できたこと、そして、BS-PL022BについてはFcγRIIIa_V158に結合しなかった、又は結合シグナルが極めて弱かったため、結果の分析が行われなかったことを示す。
【0237】
結果は、FcγRIIIa_V158に対するBS-PL022Bの結合活性が効果的に排除されたことを示す。
【0238】
(2)FcγRIIIa_F158に対する、BS-PL022Bの親和性定数の分析
Fc受容体FcγRIIIa_F158(CD16a_F158としても知られる)は、IgG抗体のFc断片に結合し、ADCC効果を媒介することができる。この実験において、FcγRIIIa_F158に対するBS-PL022Bの親和性定数をFortebio Octetシステムを用いて測定し、抗体のADCC活性を評価した。
【0239】
FcγRIIIa_F158に対するTF01の親和性定数をFortebio Octetシステムによって測定した方法を、以下に簡単に記載する。試料希釈緩衝液は、pH7.4のPBS中の0.02% Tween-20及び0.1% BSAの溶液であった。5μg/mLのFcγRIIIa_F158を、HIS1Kセンサー上に120秒間固定した。センサーを緩衝液中で60秒間平衡化し、センサー上の固定化FcγRIIIa_F158の、31.25~500nM(2倍希釈)の濃度の抗体に対する結合を60秒間測定した。緩衝液中で抗体を60秒間解離させた。試料プレートの振とう速度は1000rpmであり、温度は30℃であり、フリーケンシーは5.0Hzであった。データは1:1モデルフィッティングで分析し、親和性定数を得た。
【0240】
FcγRIIIa_F158に対するBS-PL022Bの親和性定数の分析結果を、表14及び図17~18に示す。
【表14】
N/Aは、抗体が結合しなかったか、又は抗原に対するシグナルが極めて弱かったため、結果の分析が行われず、対応するデータが得られなかったことを示す。
【0241】
結果は、H7L8(hG1WT)がFcγRIIIa_F158に3.64E-07Mの親和性定数で結合できたこと、そして、BS-PL022BについてはFcγRIIIa_F158に結合しなかった、又は結合シグナルが極めて弱かったため、結果の分析が行われず、対応するデータが得られなかったことを示す。
【0242】
結果は、FcγRIIIa_F158に対するBS-PL022Bの結合活性が効果的に排除されたことを示す。
【0243】
実験例10:Fc受容体FcγRIIa及びそのサブタイプに対する、BS-PL022Bの親和性の分析
(1)FcγRIIa_H131に対する、BS-PL022Bの親和性定数の分析
Fc受容体FcγRIIa_H131(CD32a_H131としても知られる)は、IgG抗体のFc断片に結合することができ、抗体依存性細胞貪食(ADCP)又は抗体依存性細胞媒介性細胞傷害(ADCC)に関与している。Fc受容体への治療抗体の結合能は、抗体の安全性と有効性に影響を与えると思われる。この実験において、FcγRIIa_H131に対するBS-PL022Bの親和性定数をFortebio Octetシステムを用いて測定し、Fc受容体に対する試験抗体の結合能を評価した。
【0244】
FcγRIIa_H131に対するBS-PL022Bの親和性定数をFortebio Octetシステムによって測定した方法を、以下に簡単に記載する。試料希釈緩衝液は、pH7.4のPBS中の0.02% Tween-20及び0.1% BSAの溶液であった。5μg/mLのFcγRIIa_H131を、NTAセンサー上に約1.0nmの固定高で固定した。センサーを緩衝液中で60秒間平衡化し、センサー上の固定化FcγRIIa_H131の、12.5~200nM(2倍段階希釈)の濃度の抗体に対する結合を60秒間測定した。緩衝液中で抗体を60秒間解離させた。試料プレートの振とう速度は1000rpmであり、温度は30℃であり、フリーケンシーは5.0Hzであった。データは1:1モデルフィッティングで分析し、親和性定数を得た。
【0245】
FcγRIIa_H131に対するBS-PL022Bの親和性定数の分析結果を、表15及び図19~20に示す。
【表15】
N/Aは、抗体が結合しなかったか、又は抗原に対するシグナルが極めて弱かったため、結果の分析が行われず、対応するデータが得られなかったことを示す。
【0246】
結果は、H7L8(hG1WT)がFcγRIIa_H131に1.78E-07Mの親和性定数で結合できたこと、そして、BS-PL022BについてはFcγRIIa_H131に結合しなかった、又は結合シグナルが極めて弱かったため、結果の分析が行われず、対応するデータが得られなかったことを示す。
【0247】
結果は、FcγRIIa_H131に対するBS-PL022Bの結合活性が効果的に排除されたことを示す。
【0248】
実験例11:FcγRIIbに対する、BS-PL022Bの親和性定数の分析
Fc受容体FcγRIIb(CD32bとしても知られる)は、IgG抗体のFc断片に結合することができる。この実験において、FcγRIIbに対する試験抗体の親和性定数をFortebio Octetシステムを用いて測定し、Fc受容体に対するBS-PL022Bの結合能を評価した。
【0249】
FcγRIIbに対するBS-PL022Bの親和性定数をFortebio Octetシステムによって測定した方法を、以下に簡単に記載する。試料希釈緩衝液は、pH7.4のPBS中の0.02% Tween-20及び0.1% BSAの溶液であった。5μg/mLのFcγRIIbを、NTAセンサー上に約1.0nmの固定高で固定した。センサーを緩衝液中で60秒間平衡化し、センサー上の固定化hFCGR2B-hisの、12.5~200nM(2倍段階希釈)の濃度の抗体に対する結合を60秒間測定した。緩衝液中で抗体を60秒間解離させた。試料プレートの振とう速度は1000rpmであり、温度は30℃であり、フリーケンシーは5.0Hzであった。データは1:1モデルフィッティングで分析し、親和性定数を得た。
【0250】
FcγRIIbに対するBS-PL022Bの親和性定数の分析結果を、表17及び図21~22に示す。
【表16】
N/Aは、抗体が結合しなかったか、又は抗原に対するシグナルが極めて弱かったため、結果の分析が行われず、対応するデータが得られなかったことを示す。
【0251】
結果は、H7L8(hG1WT)がFcγRIIbに1.21E-07Mの親和性定数で結合できたこと、そして、BS-PL022BについてはFcγRIIbに結合しなかった、又は結合シグナルが極めて弱かったため、結果の分析が行われず、対応するデータが得られなかったことを示す。
【0252】
結果は、FcγRIIbに対するBS-PL022Bの結合活性が効果的に排除されたことを示す。
【0253】
実験例12:C1qに対する、BS-PL022Bの親和性の分析
血清補体C1qは、IgG抗体のFc断片に結合し、CDC効果を媒介することができる。C1qに対する治療抗体の結合能は、抗体の安全性と有効性に影響を与えると思われる。この実験において、C1qに対するBS-PL022Bの親和性定数をFortebio Octetシステムを用いて測定し、抗体のCDC活性を評価した。
【0254】
C1qに対する対応する抗体の親和性定数をFortebio Octetシステムによって測定した方法を、以下に簡単に記載する。試料希釈緩衝液は、pH7.4のPBS中の0.02% Tween-20及び0.1% BSAの溶液であった。50μg/mLの各抗体を、FAB2Gセンサー上に約2.0nmの固定高で固定した。センサーを緩衝液中で60秒間平衡化し、センサー上の固定化抗体の、0.625~10nM(2倍段階希釈)の濃度の抗原C1qに対する結合を60秒間測定した。抗原-抗体を緩衝液中で60秒間解離させた。試料プレートの振とう速度は1000rpmであり、温度は30℃であり、フリーケンシーは5.0Hzであった。データは1:1モデルフィッティングで分析し、親和性定数を得た。データ取得ソフトウェアはFortebio Data Acquisition 7.0であり、データ分析ソフトウェアはFortebio Data Analysis 7.0であった。
【0255】
C1qに対するBS-PL022Bの親和性定数の分析結果を、表18及び図23~24に示す。
【表17】
N/Aは、抗体が結合しなかったか、又は抗原に対するシグナルが極めて弱かったため、結果の分析が行われず、対応するデータが得られなかったことを示す。
【0256】
結果は、H7L8(hG1WT)がC1qに1.75E-09Mの親和性定数で結合できたこと、そして、BS-PL022BについてはC1qに結合しなかった、又は結合シグナルが極めて弱かったため、結果の分析が行われず、対応するデータが得られなかったことを示す。
【0257】
結果は、C1qに対するBS-PL022Bの結合活性が効果的に排除されたことを示す。
【0258】
実験例13:CHO-K1-PD1-LAG3の抗体依存性細胞貪食におけるBS-PL022Bの活性
Jurkat-NFAT-CD64-CD32R細胞(Akeso Biopharma社による構築)及びCHO-K1-PD1-LAG3細胞(Akeso Biopharma社による構築)を従来法で回収し、110×gで5分間遠心分離した後、上清を除去した。その後、細胞を1640+4% FBS中に再懸濁し、計数した。細胞生存率を決定し、細胞濃度を調整した。実験設計に従い、試験抗体を1640+4% FBSを用いて50nM、5nM、及び0.5nM(使用濃度10nM、1nM、及び0.1nM、又は5nM、0.5nM、及び0.05nM)に希釈し、対照抗体を50nM(使用濃度10nM)に希釈した。Jurkat-NFAT-CD64-CD32R細胞懸濁液を、96ウェル黒色プレートに40μL/試料(40,000細胞/ウェル)加えた。Jurkat-NFAT-CD64-CD32R細胞を既に含む前記試料に、標的細胞CHO-K1-PD1-LAG3を40μL/試料(40,000細胞/ウェル)加えた。抗体を対応する試料に20μL/ウェル加え、混合物をよく混ぜた。ブランク対照及びアイソタイプ対照も設定した。その後、プレートをインキュベーター内で5時間インキュベートし、Bright-GloTM Luciferase Assay System(Promega社、カタログ番号E2650)を試料に50μL/ウェル加えた。混合物をよく混ぜ、プレートの読み取りを行った。
【0259】
結果を図25に示す。
【0260】
結果は、14C12H1L1(G1WT)+H7L8(hG1WT)、及びニボルマブ+レラトリマブが同一濃度でADCP効果を有していたのに対し、BS-PL022BがADCP効果を有しなかったことを示す。
【0261】
実験例14:腫瘍細胞を皮下移植したマウスモデルにおける、抗LAG3/抗PD-1二重特異性抗体の薬力学的評価
抗LAG3/抗PD-1二重特異性抗体の抗腫瘍活性をインビボで測定するため、まず、CT26結腸がん細胞(GemPharmatech社より購入)を7.1~7.3週齢のメスのBALB/c-hPD1/hLAG3マウス(GemPharmatech社より購入)の右後肢大腿に皮下接種した。移植の日をD0と定義した。投与経路は腹腔内注射(ip)であり、週に2回(BIW)、計6回の投与を行った。モデリングと具体的な投与レジメンを表18に示す。投与後、各群の腫瘍の長さ及び幅を測定し、腫瘍容積を算出した。
【表18】
【0262】
結果を図26に示す。結果は、アイソタイプ対照抗体と比べ、抗LAG3/抗PD-1二重特異性抗体BS-PL022B及び陽性対照抗体レラトリマブの両者が、マウスにおける腫瘍の成長を効果的に阻害できたことを示す。結果は、抗LAG3/抗PD-1二重特異性抗体BS-PL022Bが、陽性対照抗体レラトリマブよりも有意に優れた抗腫瘍効果を有していたことを示す。
【0263】
さらに、図27に示すように、試験薬物BS-PL022Bは担がんマウスの忍容性が高く、各群で担がんマウスの体重への影響は見られなかった。
【0264】
本発明の具体的な実施形態を詳細に記載したが、当業者は、開示されたあらゆる教示に従い、それらの詳細に対して各種改変及び置換を行いうること、そして、これらの変更が全て本発明の保護範囲内に含まれることを理解するであろう。本発明の完全な範囲が、添付の請求の範囲及びその任意の等価物によって提供される。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8A
図8B
図9A
図9B
図10A
図10B
図11
図12A
図12B
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
図24
図25
図26
図27
【配列表】
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【国際調査報告】