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特表2024-538688ナフトールおよびナフトール誘導体を組み込んだエポキシ硬化剤組成物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-10-23
(54)【発明の名称】ナフトールおよびナフトール誘導体を組み込んだエポキシ硬化剤組成物
(51)【国際特許分類】
   C08G 59/62 20060101AFI20241016BHJP
   C07C 215/50 20060101ALI20241016BHJP
   C07C 213/02 20060101ALI20241016BHJP
   C09D 201/00 20060101ALI20241016BHJP
   C09D 7/63 20180101ALI20241016BHJP
   C09D 163/00 20060101ALI20241016BHJP
   C08G 59/56 20060101ALI20241016BHJP
【FI】
C08G59/62
C07C215/50
C07C213/02
C09D201/00
C09D7/63
C09D163/00
C08G59/56
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024520709
(86)(22)【出願日】2022-09-23
(85)【翻訳文提出日】2024-04-23
(86)【国際出願番号】 EP2022076482
(87)【国際公開番号】W WO2023057234
(87)【国際公開日】2023-04-13
(31)【優先権主張番号】63/252,599
(32)【優先日】2021-10-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】519414848
【氏名又は名称】エボニック オペレーションズ ゲーエムベーハー
【氏名又は名称原語表記】Evonik Operations GmbH
【住所又は居所原語表記】Rellinghauser Strasse 1-11, 45128 Essen, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【弁理士】
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】スディール アナンサチャー
(72)【発明者】
【氏名】ガウリ サンカー ラル
(72)【発明者】
【氏名】ニコラス バーコット
(72)【発明者】
【氏名】ラグラマン ゴヴィンダン カルナカラン
(72)【発明者】
【氏名】シャフィク フェイゼル
(72)【発明者】
【氏名】マイケル クック
【テーマコード(参考)】
4H006
4J036
4J038
【Fターム(参考)】
4H006AA03
4H006AB49
4H006AC52
4H006BN30
4H006BU38
4J036AC01
4J036AD08
4J036AD09
4J036AD11
4J036DB05
4J036DB11
4J036DB14
4J036DB16
4J036DC01
4J036DC02
4J036DC03
4J036DC04
4J036DC05
4J036DC10
4J036DC11
4J036DC40
4J036DC41
4J036GA06
4J036GA29
4J036JA01
4J036JA12
4J036JA13
4J036JA14
4J036JA15
4J038DB001
4J038DB061
4J038EA011
4J038JB07
4J038KA03
4J038KA06
4J038KA08
4J038KA09
4J038KA10
4J038KA19
4J038PB05
4J038PC04
(57)【要約】
本発明は、ナフトールおよびナフトール誘導体と、3つ以上の活性アミン水素を有する少なくとも1つのポリアミンとの組み合わせを含むエポキシ硬化剤組成物、およびエポキシ樹脂用強化剤としての該硬化剤の使用に関する。該硬化剤組成物は、エポキシ樹脂の硬化、強化および/または架橋に使用することができる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)以下の構造(I):
【化1】
[ここで、RおよびRは、互いに独立して、OH、H、C~C10アルキル、C~C10アリール、C~C10アルキルエーテルもしくはC~C10アリールエーテル、NH、Cl、Br、I、NO、HSO、またはX(CH)NHYであり、ここで、Yは、C~C10アルキル、C~C10アリール、またはポリアミンであり、Xは、PhまたはC~Cアルキルであり;R~Rは、H、C~C10アルキル、C~C10アリール、C~C10アルキルエーテルもしくはC~C10アリールエーテル、NH、Cl、Br、I、NO、またはHSOであり;RまたはRのうちの一方は、OHである]
で表される少なくとも1つのナフトールまたはナフトール誘導体と、
(b)3つ以上の活性アミン水素を有する少なくとも1つのポリアミンと
を含む、硬化剤組成物。
【請求項2】
前記少なくとも1つのナフトールまたはナフトール誘導体が、以下の構造(II)~(V):
【化2】
[ここで、R~Rは、H、C~C10アルキル、C~C10アリール、C~C10アルキルエーテルもしくはC~C10アリールエーテル、NH、Cl、Br、I、NO、またはHSOである]
【化3】
[ここで、RおよびR~Rは、H、C~C10アルキル、C~C10アリール、C~C10アルキルエーテルもしくはC~C10アリールエーテル、NH、Cl、Br、I、NO、またはHSOである]
【化4】
[ここで、Yは、C~C10アルキル、C~C10アリール、またはエチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、N-(3-ジメチルアミノプロピル)プロピレンジアミン、ジメチルアミノプロピルアミン、m-キシレンジアミンおよび4,4’-メチレンジシクロヘキシルアミンからなる群から選択されるポリアミンであり、Xは、PhまたはC~Cアルキルである]
および
【化5】
[ここで、Yは、C~C10アルキル、C~C10アリール、またはエチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、N-(3-ジメチルアミノプロピル)プロピレンジアミン、ジメチルアミノプロピルアミン、m-キシレンジアミンおよび4,4’-メチレンジシクロヘキシルアミンからなる群から選択されるポリアミンであり、Xは、PhまたはC~Cアルキルである]
で表される、請求項1記載の組成物。
【請求項3】
前記少なくとも1つのナフトールまたはナフトール誘導体が、4-メチル-1-ナフトール、2-メチル-1-ナフトール、4-アミノ-3-メチル-1-ナフトール、4-メトキシ-1-ナフトール、3-メトキシ-2-ナフトール、5-メトキシ-1-ナフトール、4-クロロ-1-ナフトール、1-クロロ-2-ナフトール、1-ブロモ-2-ナフトールおよび1-ナフトール-4-スルホン酸からなる群から選択される、請求項1または2記載の組成物。
【請求項4】
前記少なくとも1つのナフトール誘導体が、1-ナフトールまたは2-ナフトールをアルデヒドおよびアミンと反応させてマンニッヒ塩基を形成させるマンニッヒ反応により得られる、請求項1または2記載の組成物。
【請求項5】
三フッ化ホウ素アミン錯体、2,4,6-トリ(ジメチルアミノメチル)フェノール、ベンジルジメチルアミン、イミダゾール、硝酸カルシウム、カルボン酸、サリチル酸および硫酸からなる群から選択される少なくとも1つの化合物をさらに含む、請求項1から4までのいずれか1項記載の組成物。
【請求項6】
請求項1から5までのいずれか1項記載の硬化剤組成物の、エポキシ樹脂用強化剤としての使用。
【請求項7】
組成物の製造方法であって、(a)少なくとも1つのナフトールまたはナフトール誘導体を少なくとも1つのポリアミンに溶解させて混合物を形成する工程;および(b)前記混合物をエポキシ樹脂成分と反応させる工程を含む、方法。
【請求項8】
組成物の製造方法であって、(a)少なくとも1つのナフトールまたはナフトール誘導体をエポキシ樹脂成分に溶解させて混合物を形成する工程;および(b)前記混合物を少なくとも1つのポリアミンと反応させる工程を含む、方法。
【請求項9】
前記少なくとも1つのナフトールまたはナフトール誘導体が、以下の構造(I):
【化6】
[ここで、RおよびRは、互いに独立して、OH、H、C~C10アルキル、C~C10アリール、C~C10アルキルエーテルもしくはC~C10アリールエーテル、NH、Cl、Br、I、NO、HSO、またはX(CH)NHYであり、ここで、Yは、C~C10アルキル、C~C10アリール、またはポリアミンであり、Xは、PhまたはC~Cアルキルであり;R~Rは、H、C~C10アルキル、C~C10アリール、C~C10アルキルエーテルもしくはC~C10アリールエーテル、NH、Cl、Br、I、NO、またはHSOであり;RまたはRのうちの一方は、OHである]
で表される、請求項7または8記載の方法。
【請求項10】
前記少なくとも1つのナフトールまたはナフトール誘導体が、以下の構造(II)~(V):
【化7】
[ここで、R~Rは、H、C~C10アルキル、C~C10アリール、C~C10アルキルエーテルもしくはC~C10アリールエーテル、NH、Cl、Br、I、NO、またはHSOである]
【化8】
[ここで、RおよびR~Rは、H、C~C10アルキル、C~C10アリール、C~C10アルキルエーテルもしくはC~C10アリールエーテル、NH、Cl、Br、I、NO、またはHSOである]
【化9】
[ここで、Yは、C~C10アルキル、C~C10アリール、またはエチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、N-(3-ジメチルアミノプロピル)プロピレンジアミン、ジメチルアミノプロピルアミン、m-キシレンジアミンおよび4,4’-メチレンジシクロヘキシルアミンからなる群から選択されるポリアミンであり、Xは、PhまたはC~Cアルキルである]
および
【化10】
[ここで、Yは、C~C10アルキル、C~C10アリール、またはエチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、N-(3-ジメチルアミノプロピル)プロピレンジアミン、ジメチルアミノプロピルアミン、m-キシレンジアミンおよび4,4’-メチレンジシクロヘキシルアミンからなる群から選択されるポリアミンであり、Xは、PhまたはC~Cアルキルである]
で表される、請求項9記載の方法。
【請求項11】
前記少なくとも1つのナフトールまたはナフトール誘導体が、4-メチル-1-ナフトール、2-メチル-1-ナフトール、4-アミノ-3-メチル-1-ナフトール、4-メトキシ-1-ナフトール、3-メトキシ-2-ナフトール、5-メトキシ-1-ナフトール、4-クロロ-1-ナフトール、1-クロロ-2-ナフトール、1-ブロモ-2-ナフトールおよび1-ナフトール-4-スルホン酸からなる群から選択される、請求項9または10記載の方法。
【請求項12】
前記少なくとも1つのナフトール誘導体が、1-ナフトールまたは2-ナフトールをアルデヒドおよびアミンと反応させてマンニッヒ塩基を形成させるマンニッヒ反応により得られる、請求項9または10記載の方法。
【請求項13】
強化製造物品を製造するための、請求項1から5までのいずれか1項記載の硬化剤組成物と少なくとも1つのエポキシ樹脂成分との使用。
【請求項14】
前記物品が、コーティング、建築製品、床材製品または複合製品である、請求項13記載の使用。
【請求項15】
前記物品が、コーティングである、請求項14記載の使用。
【請求項16】
前記コーティングが、常温で製造される、請求項15記載の使用。
【請求項17】
前記コーティングが、0℃までの常温未満で製造される、請求項15記載の使用。
【請求項18】
前記コーティングが、可撓性エポキシコーティングである、請求項15記載の使用。
【請求項19】
(a)以下の構造(I):
【化11】
[ここで、RおよびRは、互いに独立して、OH、H、C~C10アルキル、C~C10アリール、C~C10アルキルエーテルもしくはC~C10アリールエーテル、NH、Cl、Br、I、NO、HSO、またはX(CH)NHYであり、ここで、Yは、C~C10アルキル、C~C10アリール、またはポリアミンであり、Xは、PhまたはC~Cアルキルであり;R~Rは、H、C~C10アルキル、C~C10アリール、C~C10アルキルエーテルもしくはC~C10アリールエーテル、NH、Cl、Br、I、NO、またはHSOであり;RまたはRのうちの一方は、OHである]
で表される少なくとも1つのナフトールまたはナフトール誘導体と、
(b)3つ以上の活性アミン水素を有する少なくとも1つのポリアミンと、
(c)少なくとも1つの多官能性エポキシ樹脂を含むエポキシ樹脂成分と
の反応生成物を含む、組成物。
【請求項20】
前記少なくとも1つのナフトールまたはナフトール誘導体が、以下の構造(II)~(V):
【化12】
[ここで、R~Rは、H、C~C10アルキル、C~C10アリール、C~C10アルキルエーテルもしくはC~C10アリールエーテル、NH、Cl、Br、I、NO、またはHSOである]
【化13】
[ここで、RおよびR~Rは、H、C~C10アルキル、C~C10アリール、C~C10アルキルエーテルもしくはC~C10アリールエーテル、NH、Cl、Br、I、NO、またはHSOである]
【化14】
[ここで、Yは、C~C10アルキル、C~C10アリール、またはエチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、N-(3-ジメチルアミノプロピル)プロピレンジアミン、ジメチルアミノプロピルアミン、m-キシレンジアミンおよび4,4’-メチレンジシクロヘキシルアミンからなる群から選択されるポリアミンであり、Xは、PhまたはC~Cアルキルである]
および
【化15】
[ここで、Yは、C~C10アルキル、C~C10アリール、またはエチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、N-(3-ジメチルアミノプロピル)プロピレンジアミン、ジメチルアミノプロピルアミン、m-キシレンジアミンおよび4,4’-メチレンジシクロヘキシルアミンからなる群から選択されるポリアミンであり、Xは、PhまたはC~Cアルキルである]
で表される、請求項19記載の組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
エポキシ硬化剤は、産業界の様々な用途で使用されている。これらの用途には工業用塗料や複合材料が含まれる。硬化したエポキシ樹脂系は、最終製品に対し、優れた接着性、耐薬品性、良好な機械的および電気的絶縁特性、ならびに場合によっては耐熱性を与える。硬化したエポキシ樹脂系は、金属やコンクリートの表面、セメント質やセラミック系の基材の保護に特に有用である。
【0002】
エポキシ樹脂を硬質で浸透性のある熱硬化性ネットワークに変換するためには、架橋剤を使用する必要がある。これらの架橋剤、強化剤または硬化剤は広く知られており、エポキシ樹脂の架橋または硬化を促進する。エポキシ樹脂は、アミン、カルボン酸およびメルカプタンと反応して硬化を実施するエポキシ基を有する。硬化は、触媒性硬化剤によって開始される単独重合か、または多官能性硬化剤による重付加/共重合反応によって起こり得る。
【0003】
エポキシコーティングの多くの工業用途では、生産性を向上させるために、迅速な正常復帰が要求される。例えば5℃や場合によっては0℃のような低温での反応性や性能の向上が市場で求められている。これらの温度で使用される現行のエポキシ硬化系は、適切なコーティング性能を提供しない。硬化が遅すぎ、その結果、塗膜は白化、カルバメート化、ウォータースポットなどの欠陥を有する。これは、未反応のアミン系硬化剤が塗膜表面に移行し、大気中の水分や二酸化炭素と反応して油性の白色薄膜を形成することに起因する(カルバメート化)。さらに、硬化が遅いため、塗膜が乾燥または硬化するまでの時間が長くなり、その結果、次のコート剤を施与するまでの時間が長くなる。
【0004】
低温でのエポキシコーティングの硬化速度を高めるために、塗装業者は伝統的にエポキシ促進剤を使用してきた。これらの促進剤には、第三級アミン、フェノール、マンニッヒ塩基などのフェノール誘導体、サリチル酸、p-トルエンスルホン酸、硫酸などの酸が含まれる。これらの促進剤は低レベルでしか使用できず、エポキシ樹脂の単独重合開始による塗膜のもろさなど、いくつかの欠点を有する。また、このクラスの化合物の毒性や変異原性など、フェノールや置換フェノールに関連する安全衛生上の懸念も高まっている。実際に、コーティング材料にフェノールやフェノール誘導体を使用することに対して、専門機関や消費者からの規制圧力が高まっている。
【0005】
当該技術分野では、常温未満(例えば5℃)で硬化速度を高めることができ、かつ現在使用されている材料に対するより安全な代替物を提供することができるエポキシ樹脂用硬化剤組成物が必要とされている。本発明者らはここで、健康や環境に対してより高い安全性を示しつつ優れた硬化速度を提供する、ナフトールおよびナフトール誘導体組成物を開示する。
【0006】
発明の概要
本発明は、ナフトールおよびナフトール誘導体と、3つ以上の活性アミン水素を有する少なくとも1つのポリアミンとの組み合わせを含むエポキシ硬化剤組成物、およびエポキシ樹脂用強化剤としての該硬化剤の使用に関する。該硬化剤組成物は、エポキシ樹脂の硬化、強化および/または架橋に使用することができる。加えて、これらの本発明の組成物は、フェノールまたはフェノール由来のマンニッヒ塩基およびフェナルカミンを含む先行技術の速硬化型エポキシ系よりもはるかに高い速度で、常温(23℃)または5℃でエポキシ塗膜の乾燥硬化を提供することができる。
【0007】
本発明の速硬化型エポキシ硬化系は、フェノールマンニッヒ塩基やサリチル酸のような従来のエポキシ促進剤と比較して、カルバメート化傾向が低く、塗膜の乾燥時間が短いという利点を提供する。さらに、コーティング組成物中のナフトールまたはナフトール誘導体は、塗膜の可撓性を低下させず、硬化度を高める可塑剤として作用する。
【0008】
本発明の一態様は、
(a)以下の構造(I):
【化1】
[ここで、RおよびRは、互いに独立して、OH、H、C~C10アルキル、C~C10アリール、C~C10アルキルエーテルもしくはC~C10アリールエーテル、NH、Cl、Br、I、NO、HSO、またはX(CH)NHYであり、ここで、Yは、C~C10アルキル、C~C10アリール、またはポリアミンであり、Xは、PhまたはC~Cアルキルであり;R~Rは、H、C~C10アルキル、C~C10アリール、C~C10アルキルエーテルもしくはC~C10アリールエーテル、NH、Cl、Br、I、NO、またはHSOであり;RまたはRのうちの一方は、OHである]
で表される少なくとも1つのナフトールまたはナフトール誘導体と、
(b)3つ以上の活性アミン水素を有する少なくとも1つのポリアミンと
を含む硬化剤組成物に関する。
【0009】
好ましくは、一実施形態において、少なくとも1つのナフトールまたはナフトール誘導体は、以下の構造(II)~(V):
【化2】
[ここで、R~Rは、H、C~C10アルキル、C~C10アリール、C~C10アルキルエーテルもしくはC~C10アリールエーテル、NH、Cl、Br、I、NO、またはHSOである]
【化3】
[ここで、RおよびR~Rは、H、C~C10アルキル、C~C10アリール、C~C10アルキルエーテルもしくはC~C10アリールエーテル、NH、Cl、Br、I、NO、またはHSOである]
【化4】
[ここで、Yは、C~C10アルキル、C~C10アリール、またはエチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、N-(3-ジメチルアミノプロピル)プロピレンジアミン、ジメチルアミノプロピルアミン、m-キシレンジアミンおよび4,4’-メチレンジシクロヘキシルアミンからなる群から選択されるポリアミンであり、Xは、PhまたはC~Cアルキルである]
および
【化5】
[ここで、Yは、C~C10アルキル、C~C10アリール、またはエチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、N-(3-ジメチルアミノプロピル)プロピレンジアミン、ジメチルアミノプロピルアミン、m-キシレンジアミンおよび4,4’-メチレンジシクロヘキシルアミンからなる群から選択されるポリアミンであり、Xは、PhまたはC~Cアルキルである]
で表される。
【0010】
構造(II)および(III)の化合物は、常法により合成することも、商業的供給源から購入することもでき、一方で、構造(IV)および(V)のナフトール誘導体は、1-ナフトール(α-ナフトール)または2-ナフトール(β-ナフトール)をアルデヒドおよびアミンと反応させてマンニッヒ塩基を形成させるマンニッヒ反応により得られる。
【0011】
好ましくは、1-ナフトールまたは2-ナフトールとの反応に使用されるポリアミン化合物は、アルキレンポリアミン、例えば、エチレンジアミン、ポリアルキレンポリアミン、例えば、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、N-(3-ジメチルアミノプロピル)プロピレンジアミン(DMAPAP)、ジメチルアミノプロピルアミン(DMAPA)、アリールアルキルポリアミン、例えば、m-キシレンジアミン、脂環式ポリアミン、例えば、4,4’-メチレンジシクロヘキシルアミン(PACM)、またはポリエーテルポリアミン、例えば、Jeffamine D230であってよい。
【0012】
本発明の別の態様は、ナフトールおよびナフトール誘導体と、3つ以上の活性アミン水素を有する少なくとも1つのポリアミンと、多官能性エポキシ樹脂との組み合わせを含む組成物に関する。
【0013】
本発明の組成物の製造において、ナフトールまたはナフトール誘導体を、エポキシ樹脂成分と接触させる前にポリアミンに溶解させることができる。あるいは、ナフトールまたは誘導体を樹脂に溶解させることもでき、次いでその混合物をポリアミンで処理する。
【0014】
好ましくは、一実施形態において、本開示の硬化剤組成物は、100%固形分に対して50~500のアミン水素当量(AHEW)を有する。本開示は、別の態様において、アミン-エポキシ組成物およびそれから製造された硬化生成物を提供する。例えば、本開示によるアミン-エポキシ組成物は、少なくとも1つのナフトールまたはナフトール誘導体を含み、かつ少なくとも2つの活性アミン水素原子を有する新規組成物を含む硬化剤組成物と、少なくとも1つの多官能性エポキシ樹脂を含むエポキシ組成物との反応生成物を含む。好ましくは、一実施形態において、ナフトールまたはナフトール誘導体は、硬化剤組成物中のアミンに対して0.5~50重量%である。
【0015】
本開示は、構造(I)~(V)で表されるナフトールまたはナフトール誘導体と、3つ以上の活性アミン水素を有する少なくとも1つのポリアミンとを含む硬化剤組成物の、エポキシ樹脂用強化剤としての使用も提供する。
【0016】
本明細書に開示されるアミン-エポキシ組成物からは、これらに限定されるものではないが、コーティング、プライマー、シーラント、硬化性コンパウンド、建築製品、床材製品および複合製品を含む製造物品が製造される。さらに、このようなコーティング、プライマー、シーラントまたは硬化性コンパウンドは、金属またはセメント質の基材に適用することができる。硬化剤とエポキシ樹脂成分との混合物は、高い光沢性および透明性を有する接触製品を得るために、しばしば「熟成時間」を必要としない。熟成時間またはインキュベーション時間とは、エポキシ樹脂成分とアミンを混合してから生成物を対象基材に施与するまでの時間と定義される。これは、混合物が透明になるのに必要な時間とも定義できる。さらに、新規硬化剤組成物は、より高いアミン-エポキシ反応速度も提供する。これらの固有の特性は、エチレンジアミンやジエチレントリアミンなどのアルキレンポリアミンおよびフェノールから誘導される従来のエポキシ促進剤製品と比較して、カルバメート化傾向が低く、塗膜の乾燥時間が短いという利点を提供する。
【0017】
発明の詳細な説明
本発明の組成物の製造において、ナフトールまたはナフトール誘導体を、エポキシ樹脂成分と接触させる前にポリアミンに溶解させることができる。あるいは、ナフトールまたはナフトール誘導体を樹脂に溶解させることもでき、次いでその混合物をポリアミンで処理する。
【0018】
本発明の一態様は、
(a)以下の構造(I):
【化6】
[ここで、RおよびRは、互いに独立して、OH、H、C~C10アルキル、C~C10アリール、C~C10アルキルエーテルもしくはC~C10アリールエーテル、NH、Cl、Br、I、NO、HSO、またはX(CH)NHYであり、ここで、Yは、C~C10アルキル、C~C10アリールまたはポリアミンであり、Xは、PhまたはC~Cアルキルであり;R~Rは、H、C~C10アルキル、C~C10アリール、C~C10アルキルエーテルもしくはC~C10アリールエーテル、NH、Cl、Br、I、NO、またはHSOであり;RまたはRのうちの一方は、OHである]
で表される少なくとも1つのナフトールまたはナフトール誘導体と、
(b)3つ以上の活性アミン水素を有する少なくとも1つのポリアミンと
を含む硬化剤組成物に関する。
【0019】
好ましくは、一実施形態において、少なくとも1つのナフトールまたはナフトール誘導体は、以下の構造(II)~(V):
【化7】
[ここで、R~Rは、H、C~C10アルキル、C~C10アリール、C~C10アルキルエーテルもしくはC~C10アリールエーテル、NH、Cl、Br、I、NO、またはHSOである]
【化8】
[ここで、RおよびR~Rは、H、C~C10アルキル、C~C10アリール、C~C10アルキルエーテルもしくはC~C10アリールエーテル、NH、Cl、Br、I、NO、またはHSOである]
【化9】
[ここで、Yは、C~C10アルキル、C~C10アリール、またはエチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、N-(3-ジメチルアミノプロピル)プロピレンジアミン、ジメチルアミノプロピルアミン、m-キシレンジアミンおよび4,4’-メチレンジシクロヘキシルアミンからなる群から選択されるポリアミンであり、Xは、PhまたはC~Cアルキルである]
および
【化10】
[ここで、Yは、C~C10アルキル、C~C10アリール、またはエチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、N-(3-ジメチルアミノプロピル)プロピレンジアミン、ジメチルアミノプロピルアミン、m-キシレンジアミンおよび4,4’-メチレンジシクロヘキシルアミンからなる群から選択されるポリアミンであり、Xは、PhまたはC~Cアルキルである]
で表される。
【0020】
構造(II)および(III)のナフトール化合物は、当該技術分野で公知の方法により合成することも、商業的供給源から購入することもできる。これらの化合物の好ましい例としては、4-メチル-1-ナフトール、2-メチル-1-ナフトール、4-アミノ-3-メチル-1-ナフトール、4-メトキシ-1-ナフトール、3-メトキシ-2-ナフトール、5-メトキシ-1-ナフトール、4-クロロ-1-ナフトール、1-クロロ-2-ナフトール、1-ブロモ-2-ナフトール、1-ナフトール-4-スルホン酸などが挙げられる。好ましくは、一実施形態において、少なくとも1つのナフトール化合物は、4-メチル-1-ナフトール、2-メチル-1-ナフトール、4-アミノ-3-メチル-1-ナフトール、4-メトキシ-1-ナフトール、3-メトキシ-2-ナフトール、5-メトキシ-1-ナフトール、4-クロロ-1-ナフトール、1-クロロ-2-ナフトール、1-ブロモ-2-ナフトールおよび1-ナフトール-4-スルホン酸からなる群から選択される。
【0021】
好ましくは、構造(IV)および(V)のナフトール誘導体は、1-ナフトール(α-ナフトール)または2-ナフトール(β-ナフトール)をアルデヒドおよびアミンと反応させてマンニッヒ塩基を形成させるマンニッヒ反応により得られる。好ましくは、一実施形態において、アミンとナフトールとのモル比は、1:1~1:3の範囲内である。好ましくは、別の実施形態において、アミンとナフトールとのモル比は、1:1~1:2の範囲内である。好ましくは、一実施形態において、アミンとアルデヒドとのモル比は、1:1~1:6の範囲内である。好ましくは、別の実施形態において、ナフトールとアルデヒドとのモル比は、1:1~1:3の範囲内である。
【0022】
好ましくは、反応は、ナフトールとアミンを混合し、この混合物を所望の反応温度でアルデヒドで処理することにより一段法で実施される。あるいは、アルデヒドをアミンと混合し、これを反応温度でナフトールで処理することもできる。好ましくは、反応を40℃~150℃で実施することができる。好ましくは、別の実施形態において、反応を80℃~120℃で実施することができる。反応の完了後に水を蒸留することにより生成物が得られる。
【0023】
好ましくは、使用されるアルデヒド化合物は構造式RCOHで表され、ここで、Rは、H、C~C10アルキル、Ph、C~C脂環式基またはそれらの混合物である。適切なアルデヒドは、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒド、ブチルアルデヒド、ペンタナール、ヘキサナール、オクタナール、ヘプタナール、デカナール、ベンズアルデヒド、シクロペンタンカルボキシアルデヒド、シクロヘキサンカルボキシアルデヒドである。好ましいアルデヒドは、ホルムアルデヒドおよびアセトアルデヒドである。好ましくは、ホルムアルデヒドは、水溶液として使用することも、高分子形態のp-ホルムアルデヒドとして使用することもできる。
【0024】
好ましくは、1-ナフトールまたは2-ナフトールとの反応に使用されるアミン化合物は、アルキレンポリアミン、例えば、エチレンジアミン、ポリアルキレンポリアミン、例えば、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、N-(3-ジメチルアミノプロピル)プロピレンジアミン(DMAPAPA)、ジメチルアミノプロピルアミン(DMAPA)、またはアリールアルキルポリアミン、例えば、m-キシレンジアミン、または脂環式ポリアミン、例えば、4,4’-メチレンジシクロヘキシルアミン(PACM)、またはポリエーテルポリアミン、例えば、Jeffamine D230であってよい。
【0025】
別の実施形態において、硬化剤組成物は、ナフトールまたはナフトール誘導体に加えて、別のエポキシ促進剤をさらに含む。好ましくは、このさらなる実施形態において、硬化剤組成物は、三フッ化ホウ素アミン錯体、置換フェノール、例えば、2,4,6-トリ(ジメチルアミノメチル)フェノール、第三級アミン、例えば、ベンジルジメチルアミン、またはイミダゾール、硝酸カルシウム、カルボン酸、サリチル酸および硫酸からなる群から選択される少なくとも1つの化合物をさらに含む。
【0026】
本開示は、構造(I)~(V)で表されるナフトールまたはナフトール誘導体と、3つ以上の活性アミン水素を有する少なくとも1つのポリアミンとを含む硬化剤組成物の、エポキシ樹脂用強化剤としての使用も提供する。
【0027】
本開示はまた、組成物の製造方法であって、(a)少なくとも1つのナフトールまたはナフトール誘導体を少なくとも1つのポリアミンに溶解させて混合物を形成する工程;および(b)混合物をエポキシ樹脂成分と反応させる工程を含む方法も対象とする。好ましくは、少なくとも1つのナフトールまたはナフトール誘導体は、構造(I)で表される。好ましくは、少なくとも1つのナフトールまたはナフトール誘導体は、構造(II)~(V)で表される。好ましくは、少なくとも1つのナフトールは、4-メチル-1-ナフトール、2-メチル-1-ナフトール、4-アミノ-3-メチル-1-ナフトール、4-メトキシ-1-ナフトール、3-メトキシ-2-ナフトール、5-メトキシ-1-ナフトール、4-クロロ-1-ナフトール、1-クロロ-2-ナフトール、1-ブロモ-2-ナフトール、および1-ナフトール-4-スルホン酸からなる群から選択される。好ましくは、少なくとも1つのナフトール誘導体は、1-ナフトールまたは2-ナフトールをアルデヒドおよびアミンと反応させてマンニッヒ塩基を形成させるマンニッヒ反応により得られる。
【0028】
本開示はまた、組成物の製造方法であって、(a)少なくとも1つのナフトールまたはナフトール誘導体をエポキシ樹脂成分に溶解させて混合物を形成する工程;および(b)混合物を少なくとも1つのポリアミンと反応させる工程を含む方法も対象とする。好ましくは、少なくとも1つのナフトールまたはナフトール誘導体は、構造(I)で表される。好ましくは、少なくとも1つのナフトールまたはナフトール誘導体は、構造(II)~(V)で表される。好ましくは、少なくとも1つのナフトールは、4-メチル-1-ナフトール、2-メチル-1-ナフトール、4-アミノ-3-メチル-1-ナフトール、4-メトキシ-1-ナフトール、3-メトキシ-2-ナフトール、5-メトキシ-1-ナフトール、4-クロロ-1-ナフトール、1-クロロ-2-ナフトール、1-ブロモ-2-ナフトール、および1-ナフトール-4-スルホン酸からなる群から選択される。好ましくは、少なくとも1つのナフトール誘導体は、1-ナフトールまたは2-ナフトールをアルデヒドおよびアミンと反応させてマンニッヒ塩基を形成させるマンニッヒ反応により得られる。
【0029】
本開示はまた、アミン-エポキシ組成物およびそれから製造された硬化生成物を提供する。本発明の別の態様は、
(a)以下の構造(I):
【化11】
[ここで、RおよびRは、互いに独立して、OH、H、C~C10アルキル、C~C10アリール、C~C10アルキルエーテルもしくはC~C10アリールエーテル、NH、Cl、Br、I、NO、HSO、またはX(CH)NHYであり、ここで、Yは、C~C10アルキル、C~C10アリールまたはポリアミンであり、Xは、PhまたはC~Cアルキルであり;R~Rは、H、C~C10アルキル、C~C10アリール、C~C10アルキルエーテルもしくはC~C10アリールエーテル、NH、Cl、Br、I、NO、またはHSOであり;RまたはRのうちの一方は、OHである]
で表される少なくとも1つのナフトールまたはナフトール誘導体と、
(b)3つ以上の活性アミン水素を有する少なくとも1つのポリアミンと、
(c)少なくとも1つの多官能性エポキシ樹脂を含むエポキシ樹脂成分と
の反応生成物を含む組成物に関する。
【0030】
好ましい実施形態において、組成物は、
(a)少なくとも1つのナフトールまたはナフトール誘導体であって、該少なくとも1つのナフトールまたはナフトール誘導体は、以下の構造(II)~(V):
【化12】
[ここで、R~Rは、H、C~C10アルキル、C~C10アリール、C~C10アルキルエーテルもしくはC~C10アリールエーテル、NH、Cl、Br、I、NO、またはHSOである]
【化13】
[ここで、RおよびR~Rは、H、C~C10アルキル、C~C10アリール、C~C10アルキルエーテルもしくはC~C10アリールエーテル、NH、Cl、Br、I、NO、またはHSOである]
【化14】
[ここで、Yは、C~C10アルキル、C~C10アリール、またはエチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、N-(3-ジメチルアミノプロピル)プロピレンジアミン、ジメチルアミノプロピルアミン、m-キシレンジアミンおよび4,4’-メチレンジシクロヘキシルアミンからなる群から選択されるポリアミンであり、Xは、PhまたはC~Cアルキルである]
および
【化15】
[ここで、Yは、C~C10アルキル、C~C10アリール、またはエチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、N-(3-ジメチルアミノプロピル)プロピレンジアミン、ジメチルアミノプロピルアミン、m-キシレンジアミンおよび4,4’-メチレンジシクロヘキシルアミンからなる群から選択されるポリアミンであり、Xは、PhまたはC~Cアルキルである]
で表されるものとする少なくとも1つのナフトールまたはナフトール誘導体と、
(b)3つ以上の活性アミン水素を有する少なくとも1つのポリアミンと、
(c)少なくとも1つの多官能性エポキシ樹脂を含むエポキシ樹脂成分と
の反応生成物を含む。
【0031】
3つ以上の活性アミン水素を有する好ましいポリアミンとしては、ジエチレントリアミン(DETA)、トリエチレンテトラミン(TETA)、テトラエチレンペンタミン(TEPA)、ペンタエチレンヘキサミン(PEHA)、ヘキサメチレンジアミン(HMDA)、1,3-ペンタンジアミン(DYTEK(商標)EP)、2-メチル-1,5-ペンタンジアミン(DYTEK(商標)A)、トリアミノノナン、N-(2-アミノエチル)-1,3-プロパンジアミン(N-3-アミン)、N,N’-1,2-エタンジイルビス-1,3-プロパンジアミン(N-アミン)、またはジプロピレントリアミン;アリール脂肪族ポリアミン、例えば、m-キシリレンジアミン(mXDA)、p-キシリレンジアミン;脂環式ポリアミン、例えば、1,3-ビス(アミノメチル)シクロヘキシルアミン(1,3-BAC)、イソホロンジアミン(IPDA)、4,4’-メチレンビスシクロヘキサンアミン、1,2-ジアミノシクロヘキシルアミン(DCHA)、アミノプロピルシクロヘキシルアミン(APCHA)、メチレン架橋ポリ(脂環式-芳香族)アミン、例えば、MPCA、芳香族ポリアミン、例えば、m-フェニレンジアミン、ジアミノジフェニルメタン(DDM)、またはジアミノジフェニルスルホン(DDS);複素環ポリアミン、例えば、N-アミノエチルピペラジン(NAEP)、または3,9-ビス(3-アミノプロピル)2,4,8,10-テトラオキサスピロ(5,5)ウンデカン;ポリアルコキシポリアミンであって、アルコキシ基が、オキシエチレン、オキシプロピレン、オキシ-1,2-ブチレン、オキシ-1,4-ブチレン、またはそれらのコポリマーであってよいもの、例えば、4,7-ジオキサデカン-1,10-ジアミン、1-プロパンアミン、3,3’-(オキシビス(2,1-エタンジイルオキシ))ビス(ジアミノプロピル化ジエチレングリコールANCAMINE1922A)、ポリ(オキシ(メチル-1,2-エタンジイル))、α-(2-アミノメチルエチル)ω-(2-アミノメチルエトキシ)(JEFFAMINE D 230、D-400)、トリエチレングリコールジアミンおよびオリゴマー(JEFFAMIN EXTJ-504、JEFFAMINE XTJ-512)、ポリ(オキシ(メチル-1,2-エタンジイル))、α,α’-(オキシジ-2,1-エタンジイル)ビス(ω-(アミノメチルエトキシ))(JEFFAMINE XTJ-511)、ビス(3-アミノプロピル)ポリテトラヒドロフラン350、ビス(3-アミノプロピル)ポリテトラヒドロフラン750、ポリ(オキシ(メチル-1,2-エタンジイル))、α-ヒドロ-ω-(2-アミノメチルエトキシ)エーテルおよび2-エチル-2-(ヒドロキシメチル)-1,3-プロパンジオール(3:1)(JEFFAMINE T-403)、ならびにジアミノプロピルジアミノプロピルジプロピレングリコールが挙げられる。
【0032】
その他の好ましいポリアミン補助硬化剤としては、アミドアミンやポリアミドがある。ポリアミドは、二量化脂肪酸(ダイマー酸)とポリエチレンアミンとの反応生成物から構成され、通常は、分子量および粘度の制御に役立つモノマー脂肪酸が一定量含まれている。「二量化」または「ダイマー」または「重合」脂肪酸とは、不飽和脂肪酸から得られる重合酸を指す。これらは、T. E. Breuer, “Dimer Acids”, J. I.Kroschwitz (ed.), Kirk-Othmer Encyclopedia of Chemical Technology, 4th Ed., Wiley, New York, 1993,Vol. 8, pp. 223-237に、より完全に記載されている。ポリアミドの製造にも用いられる一般的な単官能性不飽和C-6~C-20脂肪酸としては、トール油脂肪酸(TOFA)または大豆脂肪酸などが挙げられる。
【0033】
さらに好ましいポリアミン補助硬化剤としては、フェナルカミンや、フェノール化合物とポリアミンとホルムアルデヒドとのマンニッヒ塩基が挙げられる。
【0034】
好ましくは、一実施形態において、ナフトールまたはナフトール由来のマンニッヒ塩基とポリアミン補助硬化剤との重量比は、1:1~1:0.05である。別の好ましい実施形態において、ナフトールまたはナフトール由来のマンニッヒ塩基とポリアミン補助硬化剤との重量比は、1:0.75~1:0.25である。
【0035】
好ましくは、一実施形態において、本開示のアミン-エポキシ組成物は、エポキシ樹脂成分中のエポキシ基と硬化剤組成物中のアミン水素との、1.5:1~0.7:1の範囲の化学量論比を有する。好ましくは、一実施形態において、そのようなアミン-エポキシ組成物は、1.5:1、1.4:1、1.3:1、1.2:1、1.1:1、1:1、0.9:1、0.8:1、または0.7:1の化学量論比を有することができる。別の好ましい実施形態において、化学量論比は、1.3:1~0.7:1、または1.2:1~0.8:1、または1.1:1~0.9:1の範囲である。
【0036】
好ましくは、一実施形態において、本開示の硬化剤組成物は、100%固形分に対して50~500のアミン水素当量(AHEW)を有する。本開示は、別の態様において、アミン-エポキシ組成物およびそれから製造された硬化生成物を提供する。例えば、本開示によるアミン-エポキシ組成物は、少なくとも1つのナフトールまたはナフトール誘導体を含み、かつ少なくとも2つの活性アミン水素原子を有する新規組成物を含む硬化剤組成物と、少なくとも1つの多官能性エポキシ樹脂を含むエポキシ樹脂成分との反応生成物を含む。
【0037】
好ましくは、一実施形態において、ナフトールまたはナフトール誘導体は、硬化剤組成物中のアミンに対して0.5~50重量%である。好ましい実施形態において、アミンに対して5~30重量%を使用することができる。別の好ましい実施形態において、アミンに対するナフトールまたはナフトール誘導体の比率は、10~30重量%である。
【0038】
好ましいナフトール化合物は、ナフトールマンニッヒ塩基、1-ナフトール(α-ナフトール)および2-ナフトール(β-ナフトール)である。
【0039】
本開示はまた、強化製造物品を製造するための、上記の硬化剤と少なくとも1つのエポキシ樹脂成分との使用を含む。好ましくは、そのような物品としては、これらに限定されるものではないが、コーティング、プライマー、シーラント、硬化性コンパウンド、建築製品、床材製品、複合製品、ラミネート、ポッティングコンパウンド、グラウト、充填剤、セメント質グラウト、またはセルフレベリング床材を挙げることができる。製造物品を製造するために、追加の成分または添加剤を本開示の組成物とともに使用することができる。さらに、このようなコーティング、プライマー、シーラント、硬化性コンパウンドまたはグラウトは、金属またはセメント質の基材に施与することができる。好ましくは、物品はコーティングである。好ましくは、一実施形態において、コーティングは可撓性エポキシコーティングである。好ましくは、一実施形態において、コーティングは常温で製造される。好ましくは、別の実施形態において、コーティングは、0℃までの常温未満で製造される。
【0040】
エポキシ硬化剤を固体のナフトール、例えば2-ナフトールで封入することも、一液型(1K)エポキシ硬化剤に有用な技術を提供する。このような適用は、フェノール-ホルムアルデヒド樹脂とエポキシアミン硬化剤との組み合わせについて知られている。固体のナフトール化合物でアミンを封入することで、1Kエポキシ系をより速く/より低温で硬化させることができる。
【0041】
エポキシ樹脂成分と硬化剤組成物との相対的な選択量は、例えば、最終用途の物品、その所望の特性、ならびに最終用途の物品の製造に使用される製造方法および製造条件によって変わり得る。例えば、特定のアミン-エポキシ組成物を使用するコーティング用途では、硬化剤組成物の量に対してより多くのエポキシ樹脂を組み込むことにより、乾燥時間は長くなるが、硬度が増加し、光沢によって測定される外観が改善されたコーティングが得られる場合がある。本開示のアミン-エポキシ組成物は、エポキシ樹脂成分中のエポキシ基と硬化剤組成物中のアミン水素との、1.5:1~0.7:1の範囲の化学量論比を有する。例えば、そのようなアミン-エポキシ組成物は、1.5:1、1.4:1、1.3:1、1.2:1、1.1:1、1:1、0.9:1、0.8:1、または0.7:1の化学量論比を有することができる。別の態様では、化学量論比は、1.3:1~0.7:1、または1.2:1~0.8:1、または1.1:1~0.9:1の範囲である。
【0042】
本開示のアミン-エポキシ組成物は、硬化剤組成物と、少なくとも1つの多官能性エポキシ樹脂を含むエポキシ樹脂成分との反応生成物を含む。本明細書で使用される多官能性エポキシ樹脂とは、1分子当たり2個以上の1,2-エポキシ基を含む化合物を表す。好ましくは、エポキシ樹脂成分は、芳香族エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、脂肪族エポキシ樹脂、グリシジルエステル樹脂、チオグリシジルエーテル樹脂、N-グリシジルエーテル樹脂、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される。
【0043】
本開示における使用に適した好ましい芳香族エポキシ樹脂は、二価フェノールのグリシジルエーテルを含む、多価フェノールのグリシジルエーテルを含む。さらに好ましいのは、レゾルシノール、ヒドロキノン、ビス-(4-ヒドロキシ-3,5-ジフルオロフェニル)-メタン、1,1-ビス-(4-ヒドロキシフェニル)-エタン、2,2-ビス-(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)-プロパン、2,2-ビス-(4-ヒドロキシ-3,5-ジクロロフェニル)プロパン、2,2-ビス-(4-ヒドロキシフェニル)-プロパン(商業的にはビスフェノールAとして知られている)、ビス-(4-ヒドロキシフェニル)-メタン(商業的にはビスフェノールFとして知られており、様々な量の2-ヒドロキシフェニル異性体を含み得る)など、またはそれらの任意の組み合わせのグリシジルエーテルが挙げられる。さらに、以下の構造:
【化16】
[ここで、R’は、二価フェノールの二価炭化水素基、例えば上に列挙した二価フェノールの二価炭化水素基であり、pは、0~7の平均値である]の高度二価フェノールも本開示において有用である。この式による材料は、二価フェノールとエピクロルヒドリンとの混合物を重合することによって、または二価フェノールのジグリシジルエーテルと二価フェノールとの混合物を高次化することによって製造することができる。任意の所与の分子においてpの値は整数であるが、材料は必ず混合物であり、この混合物は、pの平均値が必ずしも整数とは限らないことを特徴とする。本開示の一態様では、pの平均値が0~7である重合体材料を使用することができる。
【0044】
本開示の一態様において、少なくとも1つの多官能性エポキシ樹脂は、好ましくは、ビスフェノール-Aのジグリシジルエーテル(DGEBA)、DGEBAの高次化または高分子量バージョン、ビスフェノール-Fのジグリシジルエーテル、ノボラック樹脂のジグリシジルエーテル、またはそれらの任意の組み合わせである。DGEBAの高分子量バージョンまたは誘導体は、過剰のDGEBAをビスフェノール-Aと反応させてエポキシ末端生成物を得る高次化プロセスによって製造される。このような生成物のエポキシ当量(EEW)は、450から3000以上の範囲にある。これらの生成物は室温で固体であるため、しばしば固形エポキシ樹脂と呼ばれる。
【0045】
好ましい実施形態において、少なくとも1つの多官能性エポキシ樹脂は、以下の構造:
【化17】
[ここで、R’’は、HまたはCHであり、pは、0~7の平均値である]で表されるビスフェノール-Fまたはビスフェノール-Aのジグリシジルエーテルである。DGEBAは、上記の構造[ここで、R’’はCHであり、pは0である]で表される。DGEBAまたは高次化DGEBA樹脂は、その低コストと高性能特性との組み合わせゆえに、コーティング配合物にしばしば使用される。EEWが174~250、より一般的には185~195の範囲の市販グレードのDGEBAが容易に入手可能である。これらの低分子量では、エポキシ樹脂は液体であり、しばしば液状エポキシ樹脂と呼ばれる。純粋なDGEBAはEEWが174であるため、ほとんどのグレードの液状エポキシ樹脂はわずかに高分子量であることが当業者には理解できる。EEWが250~450であり、また提案された方法により製造された樹脂は、室温で固体と液体との混合物であるため、半固形エポキシ樹脂と呼ばれる。160~750の固形分に基づくEEWを有する多官能性樹脂は、本開示において有用である。別の態様では、多官能性エポキシ樹脂は、170~250の範囲のEEWを有する。
【0046】
脂環式エポキシ化合物の例としては、これらに限定されるものではないが、少なくとも1つの脂環式環を有するポリオールのポリグリシジルエーテル、またはシクロヘキセン環もしくはシクロペンテン環を含む化合物を酸化剤でエポキシ化することによって得られるシクロヘキセンオキシドもしくはシクロペンテンオキシドを含む化合物が挙げられる。いくつかの具体例としては、これらに限定されるものではないが、水素化ビスフェノールAジグリシジルエーテル;3,4-エポキシシクロヘキシルメチル-3,4-エポキシシクロヘキシルカルボキシレート;3,4-エポキシ-1-メチルシクロヘキシル-3,4-エポキシ-1-メチルヘキサンカルボキシレート;6-メチル-3,4-エポキシシクロヘキシルメチル-6-メチル-3,4-エポキシシクロヘキサンカルボキシレート;3,4-エポキシ-3-メチルシクロヘキシルメチル-3,4-エポキシ-3-メチルシクロヘキサンカルボキシレート;3,4-エポキシ-5-メチルシクロヘキシルメチル-3,4-エポキシ-5-メチルシクロヘキサンカルボキシレート;ビス(3,4-エポキシシクロヘキシルメチル)アジペート;メチレンビス(3,4-エポキシシクロヘキサン);2,2-ビス(3,4-エポキシシクロヘキシル)プロパン;ジシクロペンタジエンジポキシド;エチレン-ビス(3,4-エポキシシクロヘキサンカルボキシレート);ジオクチルエポキシヘキサヒドロフタレート;およびジ-2-エチルヘキシルエポキシヘキサヒドロフタレートが挙げられる。
【0047】
脂肪族エポキシ化合物の例としては、これらに限定されるものではないが、脂肪族ポリオールまたはそのアルキレンオキシド付加物のポリグリシジルエーテル、脂肪族長鎖多塩基酸のポリグリシジルエステル、グリシジルアクリレートまたはグリシジルメタクリレートをビニル重合して合成したホモポリマー、グリシジルアクリレートまたはグリシジルメタクリレートと他のビニルモノマーとをビニル重合して合成したコポリマーなどが挙げられる。具体例としては、これらに限定されるものではないが、ポリオールのグリシジルエーテル、例えば、1,4-ブタンジオールジグリシジルエーテル;1,6-ヘキサンジオールジグリシジルエーテル;グリセリンのトリグリシジルエーテル;トリメチロールプロパンのトリグリシジルエーテル;ソルビトールのテトラグリシジルエーテル;ジペンタエリスリトールのヘキサグリシジルエーテル;ポリエチレングリコールのジグリシジルエーテル;およびポリプロピレングリコールのジグリシジルエーテル;エチレングリコール、プロピレングリコール、トリメチロールプロパン、グリセリンなどの脂肪族ポリオールに、1つまたは2つ以上のタイプのアルキレンオキシドを付加して得られるポリエーテルポリオールのポリグリシジルエーテルが挙げられる。
【0048】
グリシジルエステル樹脂は、分子内に少なくとも2つのカルボキシル酸基を有するポリカルボン酸化合物とエピクロロヒドリンとを反応させることによって得られる。このようなポリカルボン酸の例としては、脂肪族、脂環式、芳香族ポリカルボン酸が挙げられる。脂肪族ポリカルボン酸の例としては、シュウ酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、セバシン酸、スベリン酸、アゼライン酸、または二量化もしくは三量化リノール酸が挙げられる。脂環式ポリカルボン酸には、テトラヒドロフタル酸、4-メチルテトラヒドロフタル酸、ヘキサヒドロフタル酸または4-メチルヘキサヒドロフタル酸が挙げられ、芳香族ポリカルボン酸には、フタル酸、イソフタル酸またはテレフタル酸が挙げられる。
【0049】
チオグリシジルエーテル樹脂は、例えば、エタン-1,2-ジチオールやビス(4-メルカプトメチルフェニル)エーテルなどのジチオールから誘導される。
【0050】
N-グリシジル樹脂は、エピクロロヒドリンと、少なくとも2個のアミン水素原子を含むアミンとの反応生成物の脱塩素化によって得られる。このようなアミンは、例えば、アニリン、n-ブチルアミン、ビス(4-アミノフェニル)メタン、m-キシリレンジアミンまたはビス(4-メチルアミノフェニル)メタンである。しかし、N-グリシジル樹脂には、トリグリシジルイソシアヌレート、シクロアルキレン尿素のN,N’-ジグリシジル誘導体、例えばエチレン尿素または1,3-プロピレン尿素、およびヒダントインのジグリシジル誘導体、例えば5,5-ジメチルヒダントインも挙げられる。
【0051】
1つ以上の実施形態について、樹脂成分は、反応性希釈剤をさらに含む。反応性希釈剤とは、硬化プロセス中に強化剤成分との化学反応に関与して硬化組成物中に取り込まれる化合物であり、単官能性エポキシドである。反応性希釈剤は、様々な用途において硬化性組成物の粘度および/または硬化特性を変化させるために使用することもできる。用途によっては、反応性希釈剤は、硬化性組成物の流動特性に影響を与え、ポットライフを延長し、かつ/または接着特性を改善するために、より低い粘度を付与することができる。例えば、粘度を低下させることにより、容易な施与を許容しつつ、配合物または組成物中の顔料のレベルを増加させることができ、また高分子量のエポキシ樹脂の使用も可能となる。したがって、少なくとも1つの多官能性エポキシ樹脂を含むエポキシ成分が、単官能性エポキシドをさらに含むことは、本開示の範囲に包含される。モノエポキシドの例としては、これらに限定されるものではないが、スチレンオキシド、シクロヘキセンオキシド、およびフェノール、クレゾール、tert-ブチルフェノール、他のアルキルフェノール、ブタノール、2-エチルヘキサノール、C4~C14アルコールなどのグリシジルエーテル、またはそれらの組み合わせが挙げられる。多官能性エポキシ樹脂はまた、溶液またはエマルション中に存在することもでき、その際、希釈剤は、水、有機溶媒またはそれらの混合物である。多官能性エポキシ樹脂の量は、エポキシ成分の50重量%~100重量%、50重量%~90重量%、60重量%~90重量%、70重量%~90重量%、場合によっては80重量%~90重量%の範囲であり得る。1つ以上の実施形態において、反応性希釈剤は、樹脂成分の総重量の60重量%未満である。
【0052】
特に適切な多官能性エポキシ化合物は、ビスフェノール-Aおよびビスフェノール-Fのジグリシジルエーテル、ビスフェノール-Aおよびビスフェノール-Fの高次化ジグリシジルエーテル、ならびにエポキシノボラック樹脂である。エポキシ樹脂は、単一の樹脂であってもよいし、相互に相容性のあるエポキシ樹脂の混合物であってもよい。
【0053】
本開示の組成物は、様々な製造物品の製造に使用することができる。物品の製造中または最終用途に向けた要求に応じて、特定の特性を調整するために様々な添加剤を配合物および組成物において使用することができる。これらの添加剤としては、これらに限定されるものではないが、溶媒(水を含む)、促進剤、可塑剤、充填剤、繊維、例えばガラス繊維もしくは炭素繊維、顔料、顔料分散剤、レオロジー調整剤、チキソトロピー剤、流動助剤もしくはレベリング助剤、界面活性剤、消泡剤、殺生物剤、またはそれらの任意の組み合わせが挙げられる。組成物または配合物には、当該技術分野で公知の他の混合物または材料が含まれてもよく、これらが本開示の範囲に包含されることが理解される。
【0054】
本開示はまた、本明細書に開示される組成物を含む製造物品を対象とする。例えば、物品は、硬化剤組成物とエポキシ組成物との反応生成物を含むアミン-エポキシ組成物を含むことができる。硬化剤組成物は、ナフトールまたはナフトール由来のマンニッヒ塩基を含むことができる。エポキシ樹脂成分は、少なくとも1つの多官能性エポキシ樹脂を含むことができる。任意に、作製される物品の製造に使用される組成物または配合物中には、所望の特性に依存して様々な添加剤が存在することができる。これらの添加剤としては、これらに限定されるものではないが、溶媒(水を含む)、促進剤、可塑剤、充填剤、繊維、例えばガラス繊維もしくは炭素繊維、顔料、顔料分散剤、レオロジー調整剤、チキソトロピー剤、流動助剤もしくはレベリング助剤、界面活性剤、消泡剤、殺生物剤、またはそれらの任意の組み合わせが挙げられる。これらの添加剤の選択および量は、配合者の任意である。
【0055】
別の実施形態において、ナフトールまたはナフトール由来のマンニッヒ塩基促進剤硬化性組成物は、他のエポキシ硬化促進剤と組み合わせることができる。好ましくは、使用できる代表的な促進剤としては、三フッ化ホウ素アミン錯体、置換フェノール、例えば、2,4,6-トリ(ジメチルアミノメチル)フェノール、第三級アミン、例えば、ベンジルジメチルアミンおよびイミダゾールが挙げられる。硝酸カルシウム、カルボン酸、サリチル酸、硫酸など。
【0056】
本開示による物品としては、これらに限定されるものではないが、コーティング、プライマー、シーラント、硬化性コンパウンド、建築製品、床材製品、複合製品、ラミネート、ポッティングコンパウンド、グラウト、充填剤、セメント質グラウト、またはセルフレベリング床材が挙げられる。これらのアミン-エポキシ組成物をベースとするコーティングは、特定の用途に必要に応じて水や有機溶媒などの希釈剤を含むことができる。コーティングは、ペイントやプライマー用途に使用するために、様々な種類やレベルの顔料を含むことができる。アミン-エポキシコーティング組成物は、金属基材上に施与される保護コーティングに使用するために、40~400μm(マイクロメートル)、好ましくは80~300μm、より好ましくは100~250μmの範囲の厚さを有する層を含む。さらに、床材製品または建築製品に使用するために、コーティング組成物は、製品のタイプおよび要求される最終特性に応じて、50~10,000μmの範囲の厚さを有する層を含む。限られた機械的抵抗性および耐薬品性を提供するコーティング製品は、50~500μm、好ましくは100~300μmの範囲の厚さを有する層を含み、一方で、高い機械的抵抗性および耐薬品性を提供する例えばセルフレベリング床材のようなコーティング製品は、1,000~10,000μm、好ましくは1,500~5,000μmの範囲の厚さを有する層を含む。
【0057】
当業者にはよく知られているように、適切な表面処理を施せば、本発明のコーティングの施与には様々な基材が適している。このような基材としては、これらに限定されるものではないが、コンクリート、様々な種類の金属や合金、例えば鋼やアルミニウムが挙げられる。本開示のコーティングは、船舶、橋梁、工業プラントおよび設備、ならびに床材を含む大型金属物体またはセメント質基材の塗装またはコーティングに適している。
【0058】
本発明のコーティングは、スプレー、刷毛、ローラー、ペイントミットなどを含む任意の数の技法によって施与することができる。本発明の非常に高い固形分含量または100%固形分のコーティングを施与するためには、複数成分のスプレー施与装置を使用することができ、その場合、アミンおよびエポキシ成分は、スプレーガンに至るライン、スプレーガン自体、またはスプレーガンを出るときに2つの成分を一緒に混合することによって混合される。この技法を用いると、配合物のポットライフに関する制限を緩和することができ、ポットライフは通常、アミン反応性と固形分含量との双方が増加するにつれて短くなる。各成分の粘度を低下させ、それによって施与のし易さを向上させるために、加熱された複数成分の装置を使用することができる。
【0059】
建築および床材用途には、本開示のアミン-エポキシ組成物を、コンクリートまたは建築業界で一般的に使用される他の材料と組み合わせて含む組成物が含まれる。本開示の組成物の用途としては、これらに限定されるものではないが、プライマー、深部浸透プライマー、コーティング、硬化性コンパウンドおよび/または、参照により本明細書に組み込まれるASTM C309-97で参照されるような、新しいもしくは古いコンクリート用のシーラントとしての使用が挙げられる。プライマーまたはシーラントとして、本開示のアミン-エポキシ組成物は、コーティングを適用する前に、接着結合を改善するために表面に適用することができる。コンクリートおよびセメント質用途に関連する場合、コーティングは、表面に施与して保護層または装飾層または塗膜を形成するために使用される薬剤である。ひび割れ注入剤およびひび割れ充填剤も、本明細書に開示した組成物から製造することができる。本開示のアミン-エポキシ組成物は、コンクリートミックスのようなセメント質材料と混合して、ポリマーセメントまたは改質セメント、タイルグラウトなどを形成することができる。本明細書に開示されるアミン-エポキシ組成物を含む複合製品または物品の非限定的な例としては、テニスラケット、スキー板、自転車フレーム、航空機の翼、ガラス繊維強化複合材料および他の成形品が挙げられる。
【0060】
本開示の硬化剤組成物の特定の使用において、コーティングは、コンクリートや金属表面のような様々な基材に、低温で、高い硬化速度および良好なコーティング外観で施与することができる。これは、良好な美観が望まれるトップコートの施与において特に重要であり、良好な塗膜外観を有する迅速な低温硬化が依然として克服されていないという当業界における長年の課題に対する解決策を提供する。低温での硬化速度が高いと、運転や設備の停止時間を短縮することができ、また屋外用途の場合には、寒冷地での作業シーズンを延長することができる。
【0061】
速硬化型エポキシ硬化剤により、アミン硬化型エポキシコーティングを短時間で高度に硬化させることができる。塗膜の硬化速度は、塗膜が乾燥する時間を測定する塗膜セッティングタイム(TFST)によってモニタリングされる。塗膜セッティングタイムは、4段階に分類される:第1段階、セット・トゥ・タッチ;第2段階、タックフリー;第3段階、ドライ・ハード;第4段階、ドライ・スルー。第3段階の乾燥時間は、塗膜の硬化および乾燥の速さを示す。速硬化型常温硬化コーティングの場合、第3段階の乾燥時間は、4時間未満または3時間未満であり、または好ましくは2時間未満である。低温または常温未満での硬化とは、通常、常温未満の硬化温度、10℃または5℃、または場合によっては0℃を指す。速硬化型低温硬化の場合、5℃での第3段階の乾燥時間は6時間未満であり、第3段階の乾燥時間が4時間未満、好ましくは3時間未満である値に対して、顕著な生産性の利点がもたらされる。
【0062】
塗膜がどの程度硬化するかは、硬化度によって測定される。硬化度は、当業者にはよく知られているDSC(示差走査熱量測定)法を用いて測定されることが多い。完全に硬化するコーティングは、常温(25℃)で7日後に少なくとも85%、または少なくとも90%、または少なくとも95%の硬化度を有する。完全に硬化するコーティングは、5℃で7日後に少なくとも80%、または少なくとも85%、または少なくとも90%の硬化度を有する。
【0063】
速硬化型低温エポキシ硬化剤の多くは、エポキシ樹脂を迅速に硬化させることができる。しかし、特に10℃や5℃の低温ではエポキシ樹脂と硬化剤との相容性が低いため、樹脂と硬化剤との間に相分離が生じ、硬化剤が塗膜表面に移行し、その結果、塗膜のべたつきや曇りに現れるように外観が劣悪になる。エポキシ樹脂と硬化剤との相容性が良好であると、耐カルバメート化性が良好であり、塗膜外観が良好である透明な光沢のある塗膜が得られる。本開示の硬化剤組成物は、高い硬化速度と、良好な相容性と、高い硬化度との組み合わせを提供する。
【実施例
【0064】
本発明の様々な態様は、単独で用いることも組み合わせて使用することもできる。本発明の特定の態様を以下の実施例により説明する。これらの実施例は、添付の特許請求の範囲を限定するものではない。
【0065】
(実施例1)
ホルムアルデヒドおよびトリエチレンテトラミン(TETA)からの2-ナフトールマンニッヒ塩基の合成
導入口、添加漏斗および温度プローブを備えた3ツ口1L丸底フラスコに、2-ナフトール(1.0モル)およびトリエチレンテトラミン(g、1.0モル)を装入した。この混合物を80℃に加熱した。ホルムアルデヒドの37%溶液(81g、37重量%、30g、1.0モル)を加えて、反応温度を80~90℃に保持した。添加後、この混合物を90~95℃で1時間保持した。水を120℃で蒸留し、生成物を薄褐色の液体として得た。この生成物を常温まで冷却し、エポキシ硬化性能を試験した。
【0066】
性能試験
特に指定がない限り、上記の実施例で示した各成分を、標準的なビスフェノール-Aベースのエポキシ樹脂(Epon 828、DER 331型)、EEW 190のエポキシ成分と混合することによって、硬化剤混合物を製造した。次に、これらを1:1(アミン:エポキシ当量)の化学量論的レベルで混合した。
【0067】
塗膜セッティングタイム
ASTM D5895に準拠し、Beck-Koller記録計を用いて、乾燥時間または塗膜セッティングタイム(TFST)を測定した。Birdアプリケーターを用いて、WFT(wet film thickness)150μmの湿潤膜厚でアミン-エポキシ塗膜を標準ガラスパネル上に生成し、乾燥膜厚±100μmを得た。これらの塗膜を、Lunaire(TPS)の環境チャンバー内で、23℃および5℃で相対湿度(RH)60%にて硬化させた。
【0068】
示差走査熱量測定
試料1~2mgの硬化キネティクス、反応性およびTgを理解するために、DSCを用いて熱試験を行った。
【0069】
粘度硬化プロファイル
粘度硬化プロファイルを作成するために、Brookfield粘度計およびWingatherソフトウェアを使用してレイテンシー実験を行った。
【0070】
【表1】
【0071】
(実施例2)
対照硬化剤:A1-対照
窒素導入口、添加漏斗および温度プローブを備えた3ツ口丸底フラスコに、ノニルフェノール50グラムおよび2-アミノメチルピペラジン50グラムを装入した。この混合物を40Cに加熱し、均質な混合物が得られるまで撹拌した。
【0072】
配合硬化剤:A1-試験体
導入口、添加漏斗および温度プローブを備えた3ツ口1/2L丸底フラスコに、2-ナフトール50グラムおよびアミノエチルピペラジン50グラムを装入した。この混合物を40Cに加熱し、2-ナフトールがアミントエチルピペラジンに溶解するまで撹拌した。対照硬化剤A-1-対照および配合硬化剤A-1試験体の性能特性の比較を表2に示す。
【0073】
(実施例3)
対照硬化剤-A2-対照
窒素導入口、添加漏斗および温度プローブを備えた3ツ口丸底フラスコに、M-キシレンジアミン26.3グラム、ノニルフェノール5グラム、トリメチルヘキサメチレンジアミン25.3グラム、およびp-tert-ブチルフェノール43.4グラムを装入した。この混合物を加熱し、p-tert-ブチルフェノールが完全に溶解するまで撹拌した。
【0074】
配合硬化剤-A2-試験体
導入口、添加漏斗および温度プローブを備えた3ツ口1/2L丸底フラスコに、2-ナフトールおよびイソホロンジアミン35グラム、およびトリメチルヘキサメチレンジアミン25.3グラムを装入した。この混合物を40Cに加熱し、2-ナフトールがアミン混合物に完全に溶解するまで撹拌した。対照硬化剤A-2対照および配合硬化剤A-2試験体の性能特性の比較を表2に示す。
【0075】
(実施例4)
対照硬化剤-A2-比較
窒素導入口、添加漏斗および温度プローブを備えた3ツ口丸底フラスコに、M-キシレンジアミン26.3グラム、ノニルフェノール5グラム、トリメチルヘキサメチレンジアミン25.3グラム、およびp-tert-ブチルフェノール43.4グラムを装入した。この混合物を加熱し、p-tert-ブチルフェノールが完全に溶解するまで撹拌した。
【0076】
配合硬化剤-A3-試験体
導入口、添加漏斗および温度プローブを備えた3ツ口1/2L丸底フラスコに、2-ナフトール43.4グラム(0.34モル)、m-キシレンジアミン(0.23モル)、およびトリメチルヘキサメチレンジアミン25.3グラム(0.16モル)を装入した。この混合物を40Cに加熱し、2-ナフトールがアミン混合物に完全に溶解するまで撹拌した。対照硬化剤A-2対照および配合硬化剤A-3試験体の性能特性の比較を表2に示す。
【0077】
(実施例5)
配合硬化剤-A4-試験体
導入口、添加漏斗および温度プローブを備えた3ツ口1/2L丸底フラスコに、Evonik Corporationから市販されているフェナルカミン硬化剤Sunmide CX-1151を65グラム装入し、2-ナフトールを35グラム加えて40Cに加熱し、2-ナフトールがフェナルカミン硬化剤に完全に溶解するまで撹拌した。実施例5で配合した硬化剤の性能特性の比較をSunmide CX1151硬化剤と比較して表3に示す。
【0078】
(実施例6)
配合硬化剤-A5-試験体
導入口、添加漏斗および温度プローブを備えた3ツ口1/2L丸底フラスコに、Evonik Corporationから市販されているトリエチレンテトラミンベースのポリアミド硬化剤Ancamide350Aを65グラム装入し、2-ナフトールを33.4グラム加えて40Cに加熱し、2-ナフトールがポリアミドに完全に溶解するまで撹拌した。配合した硬化剤A5の性能特性をAncamide350Aと比較し、表3に示した。
【0079】
(実施例7)
配合硬化剤-A6-試験体
導入口、添加漏斗および温度プローブを備えた3ツ口1/2L丸底フラスコに、Evonik Corporationから市販されているエチレンジアミンベースの市販のフェナルカミン硬化剤であるSunmide CX105を65グラム装入し、2-ナフトールを30グラム)加え、40Cに加熱して、2-ナフトールがフェナルカミンに完全に溶解するまで撹拌した。配合硬化剤A-6-試験体の性能特性をSunmide CX105フェナルカミン硬化剤と比較し、表3に示す。
【0080】
(実施例8)
配合硬化剤-A7-試験体
導入口、添加漏斗および温度プローブを備えた3ツ口1/2L丸底フラスコに、Evonik Corporationから市販されているAncamine 2280脂環式硬化剤を70グラム装入し、組成物040-141(A2)を30グラム加え、40Cに加熱して、2-ナフトールが脂環式硬化剤に完全に溶解するまで撹拌した。実施例8の配合硬化剤A-7の性能特性をAncamine A2280と比較し、表3に示す。
【0081】
適用例および性能試験
性能試験
特に指定がない限り、上記の実施例で示した各成分を、標準的なビスフェノール-Aベースのエポキシ樹脂(Epon 828、DER 331型)、EEW 190のエポキシ成分と混合することによって、硬化剤混合物を製造した。次に、これらを1:1(アミン:エポキシ当量)の化学量論的レベルで混合した。
【0082】
配合硬化剤例A1~A9について以下の適用試験を行い、結果を表2および表3に示す。
塗膜セッティングタイム-ASTM D 5895
ゲル化時間-ASTM D 2471
ペルソーズ硬さ-ASTM D 4366
ショアD硬さ ASTM-D2240
【0083】
【表2】
【0084】
配合硬化剤A-1試験体~A-3-試験体は、対照と比較してゲル化時間および塗膜セッティングタイムの増加を提供する。配合硬化剤は、MEKダブルラビング耐性の向上を示しており、これは、配合硬化剤とエポキシ樹脂との反応の程度が、対照と比較してはるかに高いことを示している。ペルソーズ硬さのデータも、配合硬化剤の反応の程度が高いことを裏付けている。
【0085】
【表3】
【0086】
試験体A4~A7の試料は、2-ナフトールを含まない試料と比較して、塗膜セッティングタイムが非常に短い。
【0087】
(実施例9)
以下の実施例では、2-ナフトールをアミン側に添加する代わりに、エポキシ樹脂側に添加する場合について説明する。
【0088】
ベース樹脂の製造-(DER 354試験体)(ナフトールを含まない化合物の比較)
導入口、添加漏斗および温度プローブを備えた3ツ口1/2L丸底フラスコに、エポキシ当量228のビスフェノールFジグリシジルエーテルエポキシ樹脂75グラムを装入した。2-ナフトール25グラムを加え、40Cに加熱し、2-ナフトールが樹脂に完全に溶解するまで撹拌した。次いで、本実施例で説明したDER 354試験体樹脂を、表1に示すDER 354ビスフェノール樹脂に加える。樹脂配合番号B1~B5の2-ナフトール全体の重量パーセントおよびエポキシ当量を表4に示す。
【0089】
【表4】
【0090】
配合樹脂の適用および性能試験-試料-B1~B5
DER 354(試験体樹脂)を表4に記載の標準ビスフェノールFジグリシジルエーテルエポキシ樹脂と混合し、次いで(1)脂環式硬化剤(Ancamine 2791)、(2)脂肪族エポキシ硬化剤(Ancamine 2739)および(3)ポリアミドエポキシ硬化剤(Ancamide 2769)で硬化させた。(1)脂環式硬化剤(A 2791)、(2)脂肪族硬化剤(A 2739)および(3)ポリアミド硬化剤(A 2769)を用いて常温および低温で硬化させた場合のDER 354試験体樹脂の塗膜セッティングタイムを表5に示す。
【0091】
【表5】
【0092】
樹脂側に2-ナフトールを添加すると、異なるアミン系硬化剤で硬化させた場合に、同じ硬化剤で硬化させたニート樹脂の塗膜セッティングタイムと比較して、塗膜セッティングタイムが大幅に短縮される。
【0093】
以下の実施例では、可撓性エポキシコーティングにおける2-ナフトールの添加について説明する。
【0094】
(実施例10(配合硬化剤)(C1)(K-54のみとのデータ比較))
導入口、添加漏斗および温度プローブを備えた3ツ口1/2L丸底フラスコに、60グラムのAncamide 910ポリアミド硬化剤、10グラムのAncamine 2716変性ポリアミン硬化剤、15グラムのAncamine 2914UF、10グラムのAncamine K54、および5グラムの2-ナフトールを装入し、40Cに加熱して、2-ナフトールが硬化剤ブレンドに完全に溶解するまで撹拌した。
【0095】
(実施例11(配合硬化剤)(C2)(K-54のみとの比較))
導入口、添加漏斗および温度プローブを備えた3ツ口1/2L丸底フラスコに、70グラムのAncamide 910ポリアミド硬化剤、10グラムのAncamine 2716変性ポリアミン硬化剤、10グラムのAncamine K54、および10グラムの2-ナフトールを装入し、40Cに加熱して、2-ナフトールが硬化剤ブレンドに完全に溶解するまで撹拌した。
【0096】
(実施例12(配合硬化剤)(C3))
導入口、添加漏斗および温度プローブを備えた3ツ口1/2L丸底フラスコに、70グラムのAncamide 910ポリアミド硬化剤、10グラムのPriamine 1071(Croda)硬化剤、10グラムのAncamine 2914UF、および10グラムの2-ナフトールを装入し、40Cに加熱して、2-ナフトールが硬化剤ブレンドに完全に溶解するまで撹拌した。
【0097】
(実施例13(配合硬化剤)(C4))
導入口、添加漏斗および温度プローブを備えた3ツ口1/2L丸底フラスコに、65グラムのAncamide 910ポリアミド硬化剤、20グラムのAncamine 2914UF硬化剤、10グラムのAncamine K54、および5グラムの2-ナフトールを装入し、40Cに加熱して、2-ナフトールが硬化剤ブレンドに完全に溶解するまで撹拌した。
【0098】
(実施例14(配合硬化剤)(C5))
導入口、添加漏斗および温度プローブを備えた3ツ口1/2L丸底フラスコに、60グラムのAncamide 910ポリアミド硬化剤、ジエチレントリアミンとクレシルグリシジルエーテル(Epodil 742)との付加物から構成される10グラムの硬化剤、10グラムのAncamine 2914UF、および20グラムの2-ナフトールを装入し、40Cに加熱して、2-ナフトールが硬化剤ブレンドに完全に溶解するまで撹拌した。
【0099】
(実施例15(配合硬化剤)(C6)(ナフトールの有無による比較))
導入口、添加漏斗および温度プローブを備えた3ツ口1/2L丸底フラスコに、70グラムのAncamide 910ポリアミド硬化剤、10グラムのTomamine PA-14、10グラムのAncamine K54、および10グラムの2-ナフトールを装入し、40Cに加熱して、2-ナフトールが硬化剤ブレンドに完全に溶解するまで撹拌した。
【0100】
適用および性能試験
特に指定がない限り、上記の実施例で示した各成分を、標準的なビスフェノール-Aベースのエポキシ樹脂(Epon 828、DER 331型)、EEW 190のエポキシ成分と90:10の重量比でブレンドして混合することによって、硬化剤混合物を製造した。次に、これらを1:1(アミン:エポキシ当量)の化学量論的レベルで混合した。
【0101】
配合硬化剤例C1~C5について以下の適用試験を行い、結果を表6に示す。
1.粘度を、スタンドアローン型のサーモセルアクセサリー付きBrookfield粘度計(ASTM D-2196)を用いて測定した。
2.塗膜セッティングタイムを、ASTM D-5895を用いて6ミルの厚さで測定した。
3.ゲル化時間を、ASTM D-2471を用いて測定した。
4.ショアD硬さを、ASTM D-2240を用いて測定した。
5.ダイC引裂強さを、ASTMD-624を用いて測定した。
6.トラウザー法引裂強さを、ASTM D-1938を用いて測定した。
7.乾燥および湿潤コンクリートに対する接着力を、ASTM D-7234を用いて測定した。
・湿潤コンクリートを、適用前にコンクリートブロックを半分まで24時間水に浸すことにより準備した。
8.引張特性を、ASTM D-638を用いて測定した。
【0102】
【表6-1】
【0103】
【表6-2】
【0104】
適用および性能試験
特に指定がない限り、実施例C6で示した各成分を、標準的なビスフェノール-Fベースのエポキシ樹脂(DER 354型樹脂)、EEW 175のエポキシ成分(R1)、Epodil 748(R2)、Ancarez 2364(R3)、およびAncarez 2364とEpodil 748との組み合わせ(R4)と90:10の重量比でブレンドして混合することによって、硬化剤混合物を製造した。次に、これらを、指定された化学量論的レベル(アミン:エポキシ当量)を用いて混合した。
【0105】
配合硬化剤例C6および樹脂R1~R4について以下の適用試験を行い、結果を表7に示す。
1.粘度を、スタンドアローン型のサーモセルアクセサリー付きBrookfield粘度計(ASTM D-2196)を用いて測定した。
2.塗膜セッティングタイムを、ASTM D-5895を用いて6ミルの厚さで測定した。
3.ゲル化時間を、ASTM D-2471を用いて測定した。
4.ショアD硬さを、ASTM D-2240を用いて測定した。
5.ウォータースポット試験-内部試験
6.カルバメート化試験-内部試験
7.細孔抵抗-S412パネルでの電気インピーダンス分光測定
8.衝撃試験-S412パネルにて;直接衝撃試験ASTM-G14および逆衝撃試験ASTM D2794
9.耐摩耗性-ASTM D4060 CS 17 ホイール、1Kg
10.引張特性を、ASTM D-412Cを用いて測定した。
11.1/4インチ熱間圧延鋼サンドブラスト基材に対するドリー引き剥がし試験-ASTM D4541
【0106】
【表7-1】
【表7-2】
【国際調査報告】