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▶ プレジデント・アンド・フェロウズ・オブ・ハーバード・カレッジの特許一覧

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-10-23
(54)【発明の名称】薬物送達のためのイオン液体
(51)【国際特許分類】
   A61K 47/12 20060101AFI20241016BHJP
   A61K 47/18 20170101ALI20241016BHJP
   A61K 45/00 20060101ALI20241016BHJP
   A61K 38/00 20060101ALI20241016BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20241016BHJP
   A61K 38/28 20060101ALI20241016BHJP
   A61K 31/7034 20060101ALI20241016BHJP
   A61K 31/519 20060101ALI20241016BHJP
   A61K 31/7088 20060101ALI20241016BHJP
   A61K 31/7105 20060101ALI20241016BHJP
   A61K 31/711 20060101ALI20241016BHJP
   A61K 48/00 20060101ALI20241016BHJP
   A61K 9/00 20060101ALI20241016BHJP
   A61K 9/08 20060101ALI20241016BHJP
   A61K 9/10 20060101ALI20241016BHJP
   A61K 38/22 20060101ALI20241016BHJP
   A61P 3/10 20060101ALN20241016BHJP
   C07K 16/00 20060101ALN20241016BHJP
   C07K 14/62 20060101ALN20241016BHJP
   C07K 14/605 20060101ALN20241016BHJP
   C12N 15/113 20100101ALN20241016BHJP
   C12N 15/12 20060101ALN20241016BHJP
【FI】
A61K47/12 ZNA
A61K47/18
A61K45/00
A61K38/00
A61K39/395 A
A61K38/28
A61K31/7034
A61K31/519
A61K31/7088
A61K31/7105
A61K31/711
A61K48/00
A61K9/00
A61K9/08
A61K9/10
A61K38/22
A61P3/10
C07K16/00
C07K14/62
C07K14/605
C12N15/113 Z
C12N15/12
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024520869
(86)(22)【出願日】2022-10-07
(85)【翻訳文提出日】2024-05-21
(86)【国際出願番号】 US2022045977
(87)【国際公開番号】W WO2023059846
(87)【国際公開日】2023-04-13
(31)【優先権主張番号】63/253,623
(32)【優先日】2021-10-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.ノニデット
2.IGEPAL
(71)【出願人】
【識別番号】507244910
【氏名又は名称】プレジデント・アンド・フェロウズ・オブ・ハーバード・カレッジ
(74)【代理人】
【識別番号】100102978
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 初志
(74)【代理人】
【識別番号】100205707
【弁理士】
【氏名又は名称】小寺 秀紀
(74)【代理人】
【識別番号】100160923
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 裕孝
(74)【代理人】
【識別番号】100119507
【弁理士】
【氏名又は名称】刑部 俊
(74)【代理人】
【識別番号】100142929
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 隆一
(74)【代理人】
【識別番号】100148699
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 利光
(74)【代理人】
【識別番号】100188433
【弁理士】
【氏名又は名称】梅村 幸輔
(74)【代理人】
【識別番号】100128048
【弁理士】
【氏名又は名称】新見 浩一
(74)【代理人】
【識別番号】100129506
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 智彦
(74)【代理人】
【識別番号】100114340
【弁理士】
【氏名又は名称】大関 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100214396
【弁理士】
【氏名又は名称】塩田 真紀
(74)【代理人】
【識別番号】100121072
【弁理士】
【氏名又は名称】川本 和弥
(74)【代理人】
【識別番号】100221741
【弁理士】
【氏名又は名称】酒井 直子
(74)【代理人】
【識別番号】100114926
【弁理士】
【氏名又は名称】枝松 義恵
(72)【発明者】
【氏名】ミトラゴトリ サミール
(72)【発明者】
【氏名】キム ジャヨン
(72)【発明者】
【氏名】カレーリ アレクサンダー エム.
【テーマコード(参考)】
4C076
4C084
4C085
4C086
4H045
【Fターム(参考)】
4C076AA11
4C076AA22
4C076AA95
4C076AA99
4C076BB01
4C076BB13
4C076BB16
4C076BB21
4C076BB31
4C076CC30
4C076DD41
4C076DD42
4C076DD43
4C076DD49
4C076FF68
4C084AA02
4C084AA03
4C084AA13
4C084AA17
4C084BA44
4C084DB34
4C084DB37
4C084MA17
4C084MA23
4C084MA52
4C084MA55
4C084MA56
4C084MA63
4C084MA65
4C084MA66
4C084NA13
4C084ZC35
4C085AA13
4C085GG02
4C085GG04
4C085GG05
4C086AA01
4C086AA02
4C086CB05
4C086EA08
4C086MA03
4C086MA05
4C086MA17
4C086MA23
4C086MA52
4C086MA55
4C086MA56
4C086MA63
4C086MA65
4C086MA66
4C086NA13
4C086ZC35
4H045AA10
4H045AA11
4H045AA30
4H045BA10
4H045CA40
4H045DA30
4H045DA37
4H045DA75
4H045EA20
(57)【要約】
本明細書に記載される技術は、イオン液体および薬物送達の方法に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a) 脂肪酸ではないカルボン酸;ならびに
(b) 少なくとも4.0のpKaおよび少なくとも1.0のLogPを有するカルボン酸を含む、疎水性アニオン
のうちの少なくとも1つである、アニオン;
エステル基を含む4級アンモニウムである、カチオン
を含む少なくとも1種のイオン液体を含む、組成物。
【請求項2】
カチオンがアセチルコリンである、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
アニオンが、脂肪酸ではないカルボン酸である、請求項1~2のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項4】
アニオンが、1.0未満のLogPを有する、請求項3に記載の組成物。
【請求項5】
アニオンが、3炭素以下の脂肪族鎖を含む、請求項3~4のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項6】
アニオンが、カルボン酸基(例えばR-COOH基)を1つのみ含む、請求項3~5のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項7】
アニオンが、乳酸;グリコール酸;マロン酸;マレイン酸;グルタル酸;クエン酸;グルコン酸;プロパン酸;およびアジピン酸からなる群より選択される、請求項3~6のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項8】
アニオンがマレイン酸である、請求項3~7のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項9】
アニオンがプロパン酸である、請求項3~8のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項10】
アニオンが、少なくとも4.0のpKaおよび少なくとも1.0のLogPを有するカルボン酸を含む疎水性アニオンであり、かつ、少なくとも4.5のpKaを有する、請求項1~2のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項11】
アニオンが、少なくとも5.0のpKaを有する、請求項10に記載の組成物。
【請求項12】
アニオンが、少なくとも8炭素の炭素鎖を含む、請求項10~11のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項13】
アニオンが、8炭素骨格を有する炭素鎖を含む、請求項10~12のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項14】
アニオンが、ゲラン酸、オクテン酸、オクタン酸、シトロネル酸、デセン酸、(9Z)-オクタデカ-9-エン酸、デカン酸、(9Z,12Z)-オクタデカ-9,12-ジエン酸、(R)-5-(1,2-ジチオラン-3-イル)ペンタン酸、またはヘキセン酸である、請求項10~13のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項15】
アニオンがヘキセン酸である、請求項10~14のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項16】
イオン液体が、約2:1~約1:1のカチオン対アニオンの比を含む、前記請求項のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項17】
イオン液体が、約2:1のカチオン対アニオンの比を含む、前記請求項のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項18】
イオン液体が、1:1未満のカチオン:アニオン比を有する、前記請求項のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項19】
イオン液体が、カチオンが過剰であるカチオン:アニオン比を有する、前記請求項のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項20】
第1のイオン液体、および少なくとも第2のイオン液体を含む、前記請求項のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項21】
第1のイオン液体および第2のイオン液体がそれぞれ異なるアニオンを含む、請求項20に記載の組成物。
【請求項22】
少なくとも1種のイオン液体と組み合わせた少なくとも1種の活性化合物をさらに含む、前記請求項のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項23】
活性化合物がポリペプチドを含む、請求項22に記載の組成物。
【請求項24】
ポリペプチドが抗体または抗体試薬である、請求項23に記載の組成物。
【請求項25】
活性化合物が、450より大きい分子量を有する、請求項22~24のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項26】
活性化合物が、500より大きい分子量を有する、請求項22~25のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項27】
活性化合物が、インスリン、アカルボース、ルキソリチニブ、あるいは、GLP-1ポリペプチドまたはその模倣体もしくは類似体を含む、請求項22~26のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項28】
アニオンが、少なくとも4.0のpKaおよび少なくとも1.0のLogPを有するカルボン酸を含む疎水性アニオンであり、かつ活性化合物が抗体または抗体試薬を含む、請求項22~27のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項29】
アニオンがヘキセン酸であり、かつ活性化合物が抗体または抗体試薬を含む、請求項22~28のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項30】
アニオンが、少なくとも4.0のpKaおよび少なくとも1.0のLogPを有するカルボン酸を含む疎水性アニオンであり、イオン液体が10% w/v未満の濃度で存在し、かつ活性化合物が抗体または抗体試薬を含む、請求項22~29のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項31】
アニオンがヘキセン酸であり、イオン液体が10% w/v未満の濃度で存在し、かつ活性化合物が抗体または抗体試薬を含む、請求項22~30のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項32】
活性化合物が核酸を含む、請求項22に記載の組成物。
【請求項33】
核酸が阻害性核酸である、請求項32に記載の組成物。
【請求項34】
核酸がsiRNA、pDNA、またはmRNAである、請求項32または33に記載の組成物。
【請求項35】
アニオンが、少なくとも4.0のpKaおよび少なくとも1.0のLogPを有するカルボン酸を含む疎水性アニオンであり、かつ活性化合物が核酸を含む、請求項32~34のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項36】
イオン液体が、少なくとも0.1% w/vの濃度である、前記請求項のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項37】
イオン液体が、約10~約70% w/vの濃度である、前記請求項のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項38】
イオン液体が、約30~約50% w/vの濃度である、前記請求項のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項39】
イオン液体が、約30~約40% w/vの濃度である、前記請求項のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項40】
イオン液体が、10% w/v未満の濃度である、前記請求項のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項41】
経皮投与、粘膜への投与、経口投与、皮下投与、皮内投与、非経口投与、腫瘍内投与、または静脈内投与用に製剤化されている、前記請求項のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項42】
皮下投与用に製剤化されている、請求項41に記載の組成物。
【請求項43】
経皮投与用に製剤化されている、請求項41に記載の組成物。
【請求項44】
粘膜が、鼻粘膜、口腔粘膜、または膣粘膜である、請求項41に記載の組成物。
【請求項45】
活性化合物が、1~40 mg/kgの投与量で提供される、前記請求項のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項46】
少なくとも1種の非イオン性界面活性剤をさらに含む、前記請求項のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項47】
薬学的に許容される担体をさらに含む、前記請求項のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項48】
分解性カプセル剤中に提供されている、前記請求項のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項49】
混和物である、前記請求項のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項50】
1種または複数種のナノ粒子中に提供されている、前記請求項のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項51】
活性化合物を含む1種または複数種のナノ粒子を含み、該ナノ粒子が、イオン液体を含む組成物において溶液状態または懸濁液状態である、前記請求項のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項52】
請求項1~51のいずれか一項に記載の組成物を投与する段階を含む、少なくとも1種の活性化合物を対象へ投与する方法。
【請求項53】
組成物が単回投与される、請求項52に記載の方法。
【請求項54】
組成物が複数回投与される、請求項52~53のいずれか一項に記載の方法。
【請求項55】
投与が、経皮投与、粘膜への投与、経口投与、皮下投与、皮内投与、非経口投与、腫瘍内投与、または静脈内投与である、請求項52~54のいずれか一項に記載の方法。
【請求項56】
投与が皮下投与である、請求項52~55のいずれか一項に記載の方法。
【請求項57】
少なくとも1種の活性化合物を対象へ投与する方法において使用するための、請求項1~51のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項58】
単回投与される、請求項57に記載の組成物。
【請求項59】
複数回投与される、請求項57~58のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項60】
投与が、経皮投与、粘膜への投与、経口投与、皮下投与、皮内投与、非経口投与、腫瘍内投与、または静脈内投与である、請求項57~59のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項61】
投与が皮下投与である、請求項57~60のいずれか一項に記載の組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2021年10月8日提出の米国特許仮出願第63/253,623号の、米国特許法第119条(e)に基づく恩典を主張し、その内容は全体として参照により本明細書に組み入れられる。
【0002】
技術分野
本明細書に記載の技術は、活性化合物の安定化および送達のためのイオン液体に関する。
【背景技術】
【0003】
背景
多くの活性化合物、例えば薬学的に活性な化合物の取り込みは、溶媒中で化合物を送達することにより改善できる。しかしながら、そのような溶媒のほとんどは有毒な副作用を示し、かつ/または送達の時点で刺激物質として作用するため、そのようなアプローチはインビボでの使用にはしばしば不適切である。これらの毒性および刺激性の影響は、活性化合物の取り込みまたは性能におけるいかなる増加をも抑えるほど十分に深刻である。
【発明の概要】
【0004】
概要
イオン液体は、薬物送達の障害に対する有望な解消策である。本明細書に記載するのは、例えば、「第1世代」のイオン液体、例えばコリン:ゲラン酸(CAGE)などと比較して、驚くほど改善された薬物送達速度を有する、新規なイオン液体である。本明細書において証明されたように、発明者らは、ある種の活性化合物に対して驚くほど優れた活性化合物取り込み速度を提供するイオン液体の特徴を、特定した。これに基づいて、予想外に高い有効性を有する該イオン液体(IL)に関連する組成物および方法が、本明細書に記載される。
【0005】
任意の態様の1つの局面において、本明細書に記載するのは、少なくとも1種のイオン液体を含む組成物であり、該イオン液体は以下を含む:
a) 脂肪酸ではないカルボン酸;ならびに
b) 少なくとも4.0のpKaおよび少なくとも1.0のLogPを有するカルボン酸を含む、疎水性アニオン
のうちの少なくとも1つである、アニオン;
エステル基を含む4級アンモニウム、例えばアセチルコリンである、カチオン。
【0006】
任意の局面のいくつかの態様において、アニオンは、脂肪酸ではないカルボン酸である。任意の局面のいくつかの態様において、アニオンは1.0未満のLogPを有する。任意の局面のいくつかの態様において、脂肪酸は、3炭素以下の脂肪族鎖を含む。任意の局面のいくつかの態様において、アニオンは、カルボン酸基(例えばR-COOH基)を1つのみ含む。任意の局面のいくつかの態様において、アニオンは、乳酸;グリコール酸;マロン酸;マレイン酸;グルタル酸;クエン酸;グルコン酸;およびアジピン酸からなる群より選択される。任意の局面のいくつかの態様において、アニオンは、プロパン酸;乳酸;グリコール酸;マロン酸;マレイン酸;グルタル酸;クエン酸;グルコン酸;およびアジピン酸からなる群より選択される。任意の局面のいくつかの態様において、アニオンはマレイン酸である。任意の局面のいくつかの態様において、アニオンはプロパン酸である。
【0007】
任意の局面のいくつかの態様において、アニオンは、少なくとも4.0のpKaおよび少なくとも1.0のLogPを有するカルボン酸を含む疎水性アニオンであり、かつ、少なくとも4.5のpKaを有する。任意の局面のいくつかの態様において、アニオンは、少なくとも5.0のpKaを有する。任意の局面のいくつかの態様において、アニオンは、少なくとも8炭素の炭素鎖を含む。任意の局面のいくつかの態様において、アニオンは、8炭素骨格を有する炭素鎖を含む。任意の局面のいくつかの態様において、アニオンは、ゲラン酸、オクテン酸、オクタン酸、シトロネル酸、デセン酸、(9Z)-オクタデカ-9-エン酸、デカン酸、(9Z,12Z)-オクタデカ-9,12-ジエン酸、(R)-5-(1,2-ジチオラン-3-イル)ペンタン酸、またはヘキセン酸である。任意の局面のいくつかの態様において、アニオンはヘキセン酸である。
【0008】
任意の局面のいくつかの態様において、イオン液体は、約2:1~約1:1のカチオン対アニオンの比を含む。任意の局面のいくつかの態様において、イオン液体は、約2:1のカチオン対アニオンの比を含む。任意の局面のいくつかの態様において、イオン液体は、1:1未満のカチオン:アニオン比を有する。任意の局面のいくつかの態様において、イオン液体は、カチオンが過剰であるカチオン:アニオン比を有する。任意の局面のいくつかの態様において、組成物は、第1のイオン液体、および少なくとも第2のイオン液体を含む。任意の局面のいくつかの態様において、組成物は、第1のイオン液体、および少なくとも第2のイオン液体を含み、ここで第1のイオン液体は以下を含む:a) 脂肪酸ではないカルボン酸;およびb) 少なくとも4.0のpKaおよび少なくとも1.0のLogPを有するカルボン酸を含む疎水性アニオン、のうちの少なくとも1つであるアニオン;ならびにエステル基を含む4級アンモニウム(例えばアセチルコリン)であるカチオン。任意の局面のいくつかの態様において、組成物は、第1のイオン液体、および少なくとも第2のイオン液体を含み、ここで各イオン液体は以下を含む:a) 脂肪酸ではないカルボン酸;およびb) 少なくとも4.0のpKaおよび少なくとも1.0のLogPを有するカルボン酸を含む疎水性アニオン、のうちの少なくとも1つであるアニオン;ならびにエステル基を含む4級アンモニウム(例えばアセチルコリン)であるカチオン。任意の局面のいくつかの態様において、第1のイオン液体および第2のイオン液体はそれぞれ、異なるアニオンを含む。
【0009】
任意の局面のいくつかの態様において、組成物は、少なくとも1種のイオン液体と組み合わせた少なくとも1種の活性化合物を、さらに含む。任意の局面のいくつかの態様において、活性化合物はポリペプチドを含む。任意の局面のいくつかの態様において、ポリペプチドは抗体または抗体試薬である。任意の局面のいくつかの態様において、活性化合物は、450より大きい分子量を有する。任意の局面のいくつかの態様において、活性化合物は、500より大きい分子量を有する。任意の局面のいくつかの態様において、活性化合物は、インスリン、アカルボース、ルキソリチニブ、あるいは、GLP-1ポリペプチドまたはその模倣体もしくは類似体を含む。任意の局面のいくつかの態様において、アニオンは、少なくとも4.0のpKaおよび少なくとも1.0のLogPを有するカルボン酸を含む疎水性アニオンであり、かつ活性化合物は抗体または抗体試薬を含む。任意の局面のいくつかの態様において、活性化合物は核酸を含む。任意の局面のいくつかの態様において、核酸は阻害性核酸である。任意の局面のいくつかの態様において、核酸は、siRNA、pDNA、またはmRNAである。任意の局面のいくつかの態様において、アニオンは、少なくとも4.0のpKaおよび少なくとも1.0のLogPを有するカルボン酸を含む疎水性アニオンであり、かつ活性作用物質は核酸である。
【0010】
任意の局面のいくつかの態様において、イオン液体は、少なくとも0.1% w/vの濃度である。任意の局面のいくつかの態様において、イオン液体は、約10~約70% w/vの濃度である。任意の局面のいくつかの態様において、イオン液体は、約30~約50% w/vの濃度である。任意の局面のいくつかの態様において、イオン液体は、約30~約40% w/vの濃度である。任意の局面のいくつかの態様において、イオン液体は、10% w/v未満の濃度である。任意の局面のいくつかの態様において、組成物は、経皮投与、粘膜への投与、経口投与、皮下投与、皮内投与、非経口投与、腫瘍内投与、または静脈内投与用に製剤化される。任意の局面のいくつかの態様において、組成物は、経皮投与用に製剤化される。任意の局面のいくつかの態様において、粘膜は、鼻粘膜、口腔粘膜、または膣粘膜である。任意の局面のいくつかの態様において、活性化合物は、1~40 mg/kgの投与量で提供される。任意の局面のいくつかの態様において、組成物は、少なくとも1種の非イオン性界面活性剤をさらに含む。任意の局面のいくつかの態様において、組成物は、薬学的に許容される担体をさらに含む。任意の局面のいくつかの態様において、組成物は、分解性カプセル剤中に提供されている。任意の局面のいくつかの態様において、組成物は混和物である。任意の局面のいくつかの態様において、組成物は、1種または複数種のナノ粒子中に提供されている。任意の局面のいくつかの態様において、組成物は、活性化合物を含む1種または複数種のナノ粒子を含み、該ナノ粒子は、イオン液体を含む組成物において溶液状態または懸濁液状態である。
【0011】
任意の態様の1つの局面において、本明細書に記載するのは、少なくとも1種の活性化合物を対象へ投与する方法であり、該方法は、本明細書に記載の組成物を投与する段階を含む。任意の態様の1つの局面において、本明細書に記載するのは、少なくとも1種の活性化合物を対象へ投与する方法において使用するための、本明細書に記載の組成物である。任意の局面のいくつかの態様において、組成物は単回投与される。任意の局面のいくつかの態様において、組成物は複数回投与される。任意の局面のいくつかの態様において、投与は、経皮投与、粘膜への投与、経口投与、皮下投与、皮内投与、非経口投与、腫瘍内投与、または静脈内投与である。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1A図1A~1BはIL中のインスリンの安定性を実証する散乱データを示す。
図1B図1Aの説明を参照のこと。
図2図2はIL中のインスリンの2次構造を表す円二色性を示す。
図3図3はIL中のインスリンのインビボ送達を示す。
図4A図4A~4BはIL中の抗体のインビボ送達を示す。
図4B図4Aの説明を参照のこと。
図5図5はIL中の抗体の安定性を示す。
図6図6はmRNAのインビトロトランスフェクションを示す。
図7-1】図7A~7DはSPADE製剤の測定を示す。(図7A)50時間にわたり連続的に振とうしながら37℃で保たれたインスリン-DES製剤の透過率低下の平均。網かけをした灰色の領域は、製剤が不安定とみなされた領域を表す(n=3)。(図7B)28日間にわたり4℃で保たれたインスリン-DES製剤であって、(図7A)において安定であった製剤の透過率低下の平均。網かけをした灰色の領域は、製剤が不安定とみなされた領域を表す(n=3)。(図7C)(B)において安定であったインスリン-DES製剤の、対照と比較した円二色性(n=5)。(図7D)トランズウェル細胞培養インサート上のHUVEC単層を通過したインスリンの移行(n=3)。統計的有意性は、t検定を用いて決定された。*p < 0.05、**p < 0.01。
図7-2】図7-1の説明を参照のこと。
図8-1】図8A~8CはSPADEの作用機序を示す。(図8A)皮下スペースに投与された際の、DESを含まない対照(左)と比較した、SPADE-インスリン(右)の概略図。(図8B)コラーゲンと混合された際の、対照およびSPADE-インスリンについての蛍光偏光(対照はn=6、SPADE-インスリンはn=5)。(図8C)コラーゲンと混合された際のHumalogおよびSPADE-インスリンの、DLSを用いて測定された、時間に対する平均径(n-3)。統計的有意性は、t検定を用いて決定された。*p < 0.05。
図8-2】図8-1の説明を参照のこと。
図9-1】図9A~9EはSPADE-インスリンの薬物動態を示す。(図9A)1 U/kg インスリンの皮下注射(赤色矢印)および採血スケジュール(紫色矢印)を含む、SPADE-インスリン 対 HumalogについてのPK試験の計画。(図9B)PK試験の冒頭60分間の、時間に対する血清中インスリン濃度。(図9C)注射から5分後のAUC。(図9D)注射から10分後のAUC。(図9E)240分後における、各製剤の注射量のうちの吸収されたパーセント(Humalogはn=6、SPADE-インスリンはn=5)。統計的有意性は、t検定を用いて決定された。*p < 0.05。
図9-2】図9-1の説明を参照のこと。
図10-1】図10A~10MはSPADEの安全性評価を示す。(図10A)注射部位の毒性試験(左)および反復投与試験(右)を含む、SPADE 対 生理食塩水対照についての安全性試験の計画。試験は、皮下注射(赤色矢印)、注射部位の組織の採取(黄色矢印)、血液および重要な臓器の採取(緑色矢印)、ならびに安楽死(黒色矢印)を包含するものであった。(図10B~10E)記載される製剤およびタイムポイントにおける、注射部位のH&E画像。スケールバーは200μmである。対照での処置を受けた群(n=4)、およびSPADEでの処置を受けた群(n=5)についての、(図10F)血清中アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ濃度、(図10G)血清中アラニンアミノトランスフェラーゼ濃度群、(図10H)血清中血液尿素窒素濃度、(図10I)血清中クレアチニン濃度、(図10J)白血球数、(図10K)赤血球数、(図10L)血小板数、(図10M)リンパ球数。点線は、関心対象のメトリックについて予想される範囲を表す38。統計的有意性は、t検定を用いて決定された。*p < 0.05。
図10-2】図10-1の説明を参照のこと。
図10-3】図10-1の説明を参照のこと。
図11-1】図11A~11Eは、SPADE-mAbの、安定性、薬物動態、およびバイオアベイラビリティを示す。(図11A)記載されるDES濃度、および37℃での記載されるインキュベーション時間において、SPADE-mAbの安定性を評価するためのSDS-PAGEゲル電気泳動。タンパク質ラダーは、対応する分子量(kDa)を表す。赤色矢印は抗体の凝集体を示す。(図11B)(A)由来の24時間インキュベートされた製剤 対 安定な対照抗体製剤の、円二色性スペクトル。(図11C)10 mg/kg リツキシマブの皮下注射(赤色矢印)および採血スケジュール(紫色矢印)を含む、SPADE-mAb 対 対照についてのPK試験の計画。対照(n=6)およびSPADE-mAb(第21日までn=5、第28日~第49日はn=4)についての49日間の抗体PK試験における、(図11D)時間に対する血清中リツキシマブ濃度、および(図11E)時間に対するAUC。統計的有意性は、t検定を用いて決定された。*p < 0.05。
図11-2】図11-1の説明を参照のこと。
図12A図12A~12Bは、2007年以降にFDAに承認された、新規分子化合物(new molecular entity)(NME)、生物製剤承認申請(biological license application)(BLA)、および抗体の概要を示す。(図12A)NMEおよびBLA(紫色で示される抗体を含む)の2007年以降の承認における傾向。(図12B)2007年以降に承認されたBLAおよび抗体(BLAのサブクラス)の累積数。このデータは、B. HughesおよびA. Mullardによる複数の報告を利用したものである1-15
図12B図12Aの説明を参照のこと。
図13図13は、インスリン-DES製剤および適切な対照についての透過率(%)を示す。点線は80%の透過率を表し、これは、次の試験に進むための最低限の閾値として使用された。
図14図14は、CD実験の過程で試料について測定された、高電圧(V) 対 波長を示す。最大で500 Vという閾値(点線で表される)が、CDスペクトルの完全性を確認するための基準として使用される。
図15図15は、細胞生存率(%) 対 DES濃度(mM)の対数を示す。点線は、生存できる最大濃度(0.15%)を表す。
図16図16は、15分~240分の間のタイムポイントでのインスリンの薬物動態試験についての曲線下面積(AUC)の値を示す。
図17図17~18はさらなる全血解析の結果を示し、これには、様々な白血球のレベル、ヘマトクリット(HCT)、平均赤血球容積(MCV)、平均赤血球ヘモグロビン量(MCH)、平均赤血球ヘモグロビン濃度(MCHC)、およびヘモグロビン(HGB)が含まれる。統計的有意性は、t検定を用いて決定された。*p < 0.05、**p < 0.01、***p < 0.001、****p < 0.0001。
図18図17の説明を参照のこと。
図19図19~21はさらなる血清解析の結果を示し、これには、様々な血清タンパク質、酵素、アルカリホスファターゼ(ALP)、イオン、および他のバイオマーカーが含まれる。クレアチンキナーゼレベルだけは、SPADE群において有意に高かったが、これは、群内の何匹かのマウスにおいて実施された心臓穿刺に関連する放出によるものである可能性がある。統計的有意性は、t検定を用いて決定された。*p < 0.05、**p < 0.01、***p < 0.001、****p < 0.0001。
図20図19の説明を参照のこと。
図21図19の説明を参照のこと。
図22図22は、SPADEの複数回投与を受けたマウスでの毒性試験における、重要な臓器のH&E染色を示す。スケールバーは200μmである。
図23図23は、リツキシマブ試験の冒頭14日間における、AUCの倍率変化(AUC-SPADE-mAb/AUC-対照)を示す。
【発明を実施するための形態】
【0013】
詳細な説明
本明細書に提供されるデータは、ある種のアニオンは、エステル基を含む4級アンモニウム(例えばアセチルコリン)カチオンと組み合わせた場合に、例えばコリンカチオンと比較して、より優れた薬物送達特性を提供することを証明する。特に、多くの薬物が細胞外マトリックスと相互作用するという事実によって、薬物の皮下投与は妨害を受ける。例えば、インスリンは皮下投与後に細胞外マトリックスのコラーゲンおよび他の成分と相互作用して、血流へ送達される薬物の量およびスピードを低下させる。これは、皮下投与されたものの量および速度を低下させてしまう。本明細書において本発明者らは、ある種のイオン液体が、マトリックスとの相互作用を低下させる作用物質として機能することを発見した。つまり、本明細書に記載のある種のイオン液体と組み合わせた薬物を皮下投与すると、薬物と細胞外マトリックスとの相互作用が低下し、そして薬物は、より迅速かつ効率的に血流に進入する。したがって、任意の態様の1つの局面において、本明細書に記載するのは、少なくとも1種のイオン液体を含む組成物であり、該イオン液体は以下を含む:
1) a) 脂肪酸ではないカルボン酸;ならびに
b) 少なくとも4.0のpKaおよび少なくとも1.0のLogPを有するカルボン酸を含む、疎水性アニオン
のうちの少なくとも1つである、アニオン;ならびに
2) エステル基を含む4級アンモニウム(例えばアセチルコリン)である、カチオン。
【0014】
本明細書で使用される「イオン液体(IL)」という用語は、室温で液体状態にある、有機塩を、または有機塩の混合物を指す。このクラスの溶媒は、工業プロセス、触媒反応、薬剤、および電気化学を含めた、様々な分野で有用であることが示されている。イオン液体は、少なくとも1種のアニオン成分、および少なくとも1種のカチオン成分を含む。イオン液体は、追加の水素結合供与体(すなわち、-OH基または-NH基を提供することが可能な任意の分子)を含んでよく、例にはアルコール、脂肪酸、およびアミンが含まれるが、それらに限定されない。少なくとも1種のアニオン成分および少なくとも1種のカチオン成分は、任意のモル比で存在し得る。例示的なモル比(カチオン:アニオン)には、1:1、1:2、2:1、1:3、3:1、2:3、3:2、およびこれらの比の間の範囲が含まれるが、それらに限定されない。イオン液体のさらなる考察については、例えば、Hough, et al, "The third evolution of ionic liquids: active pharmaceutical ingredients", New Journal of Chemistry, 31: 1429 (2007)、およびXu, et al., "Ionic Liquids: Ion Mobilities, Glass Temperatures, and Fragilities", Journal of Physical Chemistry B, 107(25): 6170-6178 (2003)を参照されたい;これらのそれぞれは、その全体が参照により本明細書に組み入れられる。任意の局面のいくつかの態様において、イオン液体または溶媒は、100℃未満で液体として存在する。任意の局面のいくつかの態様において、イオン液体または溶媒は、室温で液体として存在する。
【0015】
本明細書において証明されたように、エステル基を含む4級アンモニウム(例えばアセチルコリン)カチオンと、ある種の物理的特性を有するアニオンとを組み合わせたイオン液体は、例えば、同じアニオンおよびコリンカチオンを含むイオン液体と比較して、より優れているかまたは改善されている薬物送達特性を提供する。いくつかの態様において、薬物送達特性の改善には、積荷分子の変性または分解を、低減することが含まれる。いくつかの態様において、薬物送達特性の改善には、生体関門を通過する能力を増大させること(例えば、透過性を増大させること)が含まれる。任意の局面のいくつかの態様において、薬物送達特性の改善は、インスリンに関するものである。任意の局面のいくつかの態様において、薬物送達特性の改善は、大きいポリペプチド(例えば抗体)である積荷分子に関するものである。任意の局面のいくつかの態様において、薬物送達特性の改善は、核酸である積荷分子に関するものである。
【0016】
任意の局面のいくつかの態様において、本明細書に記載のILのアニオンは、疎水性である。
【0017】
任意の局面のいくつかの態様において、本明細書に記載のILのアニオンは、カルボン酸を含むか、カルボン酸からなるか、またはカルボン酸から本質的になる。任意の局面のいくつかの態様において、本明細書に記載のILのアニオンは、脂肪酸ではないカルボン酸を含むか、該カルボン酸からなるか、または該カルボン酸から本質的になる。
【0018】
カルボン酸は、Rが任意の基であり得る、式Iの構造を有する化合物である。
【0019】
一般に、アニオンはR-X-であり、ここでXはCO2 -、SO3 -、OSO3 2-またはOPO3 2-であり;かつRは置換されていてもよいC1~C10アルキル、置換されていてもよいC2~C10アルケニル、または置換されていてもよいC2~C10アルキニル、置換されていてもよいアリール、または置換されていてもよいヘテロアリールである。
【0020】
いくつかの態様において、Rは置換されていてもよい直鎖または分枝C1~C9アルキルである。例えば、Rは、C1~C3アルキル、ヒドロキシ(OH)、ハロゲン、オキソ(=O)、カルボキシ(CO2)、シアノ(CN)およびアリールからなる群より独立に選択される1、2、3、4、5または6つの置換基で置換されていてもよい、C1~C9アルキルである。いくつかの態様において、Rは、C1~C3アルキル、ヒドロキシ、カルボキシおよびフェニルからなる群より独立に選択される1、2、3、4または5つの置換基で置換されていてもよい、C1~C6アルキルである。好ましくは、Rは、メチル、エチル、ヒドロキシル、カルボキシ、およびフェニルからなる群より独立に選択される1、2、3、4または5つの置換基で置換されていてもよい、C1~C5アルキルである。Rのための例示的アルキルには、メチル、カルボキシメチル、ヒドロキシメチル、エチル、1-ヒドロキシエチル、2-フェニルエチル、プロピル、プロパ-2-イル、1-メチルプロピル、2-メチルプロピル、3-カルボキシプロピル、2,3-ジカルボキシメチル-2-ヒドロキシプロピル、ブチル、ペンチル、1,2,3,4,5-ペンタヒドロキシペンチル、ヘキシル、2-エチルヘキシルおよびノニルが含まれるが、それらに限定されない。
【0021】
いくつかの態様において、Rは置換されていてもよい直鎖または分枝C2~C8アルケニルである。例えば、Rは、C1~C3アルキル、ヒドロキシ、ハロゲン、オキソ、カルボキシ、シアノおよびアリールからなる群より独立に選択される1、2、3、4、5または6つの置換基で置換されていてもよい、C2~C9アルケニルである。いくつかの態様において、Rは、C1~C3アルキル、ヒドロキシ、カルボキシおよびフェニルからなる群より独立に選択される1、2、3、4または5つの置換基で置換されていてもよい、C2~C6アルケニルである。好ましくは、Rは、メチル、エチル、ヒドロキシル、カルボキシ、およびフェニルからなる群より独立に選択される1、2、3、4または5つの置換基で置換されていてもよい、C1~C5アルケニルである。Rのための例示的アルケニルには、エテニル、2-カルボキシエテニル、1-メチルプロペニルおよび2-メチルプロペニルが含まれるが、それらに限定されない。
【0022】
いくつかの態様において、Rは置換されていてもよいアリールまたはヘテロアリールである。例えば、Rは、C1~C3アルキル、ヒドロキシ、ハロゲン、オキソ、カルボキシ、シアノおよびアリールからなる群より独立に選択される1、2、3、4、5または6つの置換基で置換されていてもよい、アリールまたはヘテロアイル(heteroayl)である。いくつかの態様において、Rは、C1~C3アルキル、ヒドロキシ、カルボキシおよびフェニルからなる群より独立に選択される1、2、3、4または5つの置換基で置換されていてもよい、アリールである。好ましくは、Rは、メチル、エチル、ヒドロキシル、カルボキシ、およびフェニルからなる群より独立に選択される1、2または3つの置換基で置換されたフェニルである。Rのための例示的アリールには、フェニル、2-ヒドロキシフェニル、3-ヒドロキシフェニル、4-ヒドロキシフェニル、ジヒドロキシフェニル、トリヒドロキシフェニル、3,4,5-トリヒドロキシフェニル、および1,1-ビフェン-4-イルが含まれるが、それらに限定されない。
【0023】
いくつかの態様において、XはCO2 -であり、かつRはメチル、カルボキシメチル、ヒドロキシメチル、エチル、1-ヒドロキシエチル、2-フェニルエチル、プロピル、プロパ-2-イル、1-メチルプロピル、2-メチルプロピル、3-カルボキシプロピル、2,3-ジカルボキシメチル-2-ヒドロキシプロピル、ブチル、ペンチル、1,2,3,4,5-ペンタヒドロキシペンチル、ヘキシル、2-エチルヘキシル、ノニル、エテニル、2-カルボキシエテニル、1-メチルプロペニル、2-メチルプロペニル、3,4,5-トリヒドロキシフェニル、または1,1-ビフェン-4-イルである。いくつかの他の態様において、XはOSO3 -であり、かつRはメチル、カルボキシメチル、ヒドロキシメチル、エチル、1-ヒドロキシエチル、2-フェニルエチル、プロピル、プロパ-2-イル、1-メチルプロピル、2-メチルプロピル、3-カルボキシプロピル、2,3-ジカルボキシメチル-2-ヒドロキシプロピル、ブチル、ペンチル、1,2,3,4,5-ペンタヒドロキシペンチル、ヘキシル、2-エチルヘキシル、ノニル、エテニル、2-カルボキシエテニル、1-メチルプロペニル、2-メチルプロペニル、3,4,5-トリヒドロキシフェニル、または1,1-ビフェン-4-イルである。さらにいくつかの他の態様において、XはOPO3 2-またはSO3 -であり、かつRは2-ヒドロキシフェニル、3-ヒドロキシフェニルまたは4-ヒドロキシフェニルである。
【0024】
「アルキル」という用語は、それ自体で、または別の置換基の一部として、特に記載がないかぎり、直鎖(すなわち、非分枝)もしくは分枝炭素鎖(または炭素)、またはその組み合わせを意味し、これは完全飽和、一不飽和または多不飽和であってもよく、指定された数の炭素原子を有する(すなわち、C1~C10は1~10個の炭素を意味する)、一、二、および多価ラジカルを含み得る。アルキルは非環式鎖である。飽和炭化水素ラジカルの例には、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、t-ブチル、イソブチル、sec-ブチル、(シクロヘキシル)メチルなどの基、例えば、n-ペンチル、n-ヘキシル、n-ヘプチル、n-オクチルなどのホモログおよび異性体が含まれるが、それらに限定されない。「アルケニル」は不飽和アルキル基であり、1つまたは複数の二重結合を有するものである。不飽和アルキル基の例には、ビニル、2-プロペニル、クロチル、2-イソペンテニル、2-(ブタジエニル)、2,4-ペンタジエニル、3-(1,4-ペンタジエニル)、ならびに高級ホモログおよび異性体が含まれるが、それらに限定されない。
【0025】
「アリール」という用語は、特に記載がないかぎり、多不飽和、芳香族、炭化水素置換基を意味し、これは単一の環または一緒に縮合された(すなわち、縮合環アリール)もしくは共有結合された複数の環(好ましくは1~3つの環)であり得る。縮合環アリールとは、縮合環の少なくとも1つがアリール環である、一緒に縮合された複数の環を指す。「ヘテロアリール」という用語は、N、O、またはSなどの少なくとも1つのヘテロ原子を含むアリール基(または環)を指し、ここで窒素および硫黄原子は任意に酸化されており、かつ窒素原子は任意に4級化されている。したがって、「ヘテロアリール」という用語は、縮合環ヘテロアリール基(すなわち、縮合環の少なくとも1つがヘテロ芳香環である、一緒に縮合された複数の環)を含む。5,6-縮合環ヘテロアリーレンとは、1つの環が5員を有し、他の環が6員を有し、かつ少なくとも1つの環がヘテロアリール環である、一緒に縮合された2つの環を指す。同様に、6,6-縮合環ヘテロアリーレンとは、1つの環が6員を有し、他の環が6員を有し、かつ少なくとも1つの環がヘテロアリール環である、一緒に縮合された2つの環を指す。また、6,5-縮合環ヘテロアリーレンとは、1つの環が6員を有し、他の環が5員を有し、かつ少なくとも1つの環がヘテロアリール環である、一緒に縮合された2つの環を指す。ヘテロアリール基は、分子の残りに炭素またはヘテロ原子を通じて結合され得る。例示的アリールおよびヘテロアリール基には、フェニル、4-ニトロフェニル、1-ナフチル、2-ナフチル、ビフェニル、4-ビフェニル、ピロール、1-ピロリル、2-ピロリル、3-ピロリル、ピラゾール、3-ピラゾリル、イミダゾール、イミダゾリル、2-イミダゾリル、4-イミダゾリル、ベンズイミダゾリル、ピラジニル、2-オキサゾリル、4-オキサゾリル、2-フェニル-4-オキサゾリル、5-オキサゾリル、3-イソオキサゾリル、4-イソオキサゾリル、5-イソオキサゾリル、チアゾリル、2-チアゾリル、4-チアゾリル、5-チアゾリル、2-フリル、3-フリル、2-チエニル、3-チエニル、ピリジン、2-ピリジル、ナフチリジニル、3-ピリジル、4-ピリジル、ベンゾフェノンピリジル、ピリダジニル、ピラジニル、2-ピリミジル、4-ピリミジル、ピリミジニル、5-ベンゾチアゾリル、プリニル、2-ベンズイミダゾリル、インドリル、5-インドリル、キノリン、キノリニル、1-イソキノリル、5-イソキノリル、2-キノキサリニル、5-キノキサリニル、3-キノリル、6-キノリル、フラン、フリルまたはフラニル、チオフェン、チオフェニルまたはチエニル、ジフェニルエーテル、ジフェニルアミンなどが含まれるが、それらに限定されない。
【0026】
「置換されていてもよい」という用語は、指定の基または部分が無置換であるか、または「置換基」の定義において以下に挙げるか、もしくはそれ以外に指定する置換基の群から独立に選択される1つもしくは複数(典型的には1、2、3、4、5または6つの置換基)で置換されていることを意味する。「置換基」という用語は、置換されている基の任意の原子において置換されている基上に「置換された」基を指す。適切な置換基には、ハロゲン、ヒドロキシ、カルボキシ、オキソ、ニトロ、ハロアルキル、アルキル、アルケニル、アルキニル、アルカリール、アリール、ヘテロアリール、シクリル、ヘテロシクリル、アラルキル、アルコキシ、アリールオキシ、アミノ、アシルアミノ、アルキルカルバノイル(alkylcarbanoyl)、アリールカルバノイル(arylcarbanoyl)、アミノアルキル、アルコキシカルボニル、カルボキシ、ヒドロキシアルキル、アルカンスルホニル、アレーンスルホニル、アルカンスルホンアミド、アレーンスルホンアミド、アラルキルスルホンアミド、アルキルカルボニル、アシルオキシ、シアノまたはウレイドが含まれるが、それらに限定されない。いくつかの場合に、2つの置換基は、それらが結合している炭素と一緒に、環を形成し得る。
【0027】
本明細書において用いられる「脂肪酸」は、Rが飽和または不飽和脂肪族鎖を含む、例えば、Rが式CnH2n+1を有する、カルボン酸を指す。任意の局面のいくつかの態様において、脂肪酸はモノカルボン酸である。脂肪酸は天然または合成であり得る。脂肪酸の脂肪族鎖は飽和、不飽和、分枝、直鎖、および/または環状であり得る。任意の局面のいくつかの態様において、脂肪族鎖は芳香族基を含まない。任意の局面のいくつかの態様において、脂肪族鎖は、アルキルまたはアルケン鎖を含む、それらからなる、またはそれらから基本的になる。
【0028】
脂肪酸ではない例示的カルボン酸には、プロパン酸;乳酸;グリコール酸;マロン酸;マレイン酸;グルタル酸;クエン酸;グルコン酸;およびアジピン酸が含まれ得るが、それらに限定されない。
【0029】
任意の局面のいくつかの態様において、脂肪酸ではないカルボン酸は、乳酸;グリコール酸;マロン酸;マレイン酸;グルタル酸;クエン酸;グルコン酸;またはアジピン酸である。任意の局面のいくつかの態様において、脂肪酸ではないカルボン酸は、マレイン酸である。任意の局面のいくつかの態様において、脂肪酸ではないカルボン酸は、プロパン酸;乳酸;グリコール酸;マロン酸;マレイン酸;グルタル酸;クエン酸;グルコン酸;またはアジピン酸である。任意の局面のいくつかの態様において、脂肪酸ではないカルボン酸は、プロパン酸である。
【0030】
いくつかの態様において、脂肪酸ではないカルボン酸は、直鎖または分枝配置のいずれかで、R基内に5つ以下の炭素を含む。いくつかの態様において、脂肪酸ではないカルボン酸は、直鎖または分枝配置のいずれかで、R基内に3つ以下の炭素を含む。いくつかの態様において、脂肪酸ではないカルボン酸は、R基内にヒドロキシ基を含む。いくつかの態様において、脂肪酸ではないカルボン酸は、R基内に1つまたは複数のカルボン酸を含む。
【0031】
いくつかの態様において、脂肪酸ではないカルボン酸は、直鎖または分枝配置のいずれかで、R基内に5つ以下の炭素を含み、かつR基内にヒドロキシ基を含む。いくつかの態様において、脂肪酸ではないカルボン酸は、直鎖または分枝配置のいずれかで、R基内に3つ以下の炭素を含み、かつR基内にヒドロキシ基を含む。いくつかの態様において、脂肪酸ではないカルボン酸は、直鎖または分枝配置のいずれかで、R基内に1~5つの炭素を含み、かつR基内にヒドロキシ基を含む。
【0032】
いくつかの態様において、脂肪酸ではないカルボン酸は、直鎖または分枝配置のいずれかで、R基内に5つ以下の炭素を含み、かつR基内に1つまたは複数のカルボン酸基を含む。いくつかの態様において、脂肪酸ではないカルボン酸は、直鎖または分枝配置のいずれかで、R基内に3つ以下の炭素を含み、かつR基内に1つまたは複数のカルボン酸基を含む。いくつかの態様において、脂肪酸ではないカルボン酸は、直鎖または分枝配置のいずれかで、R基内に1~5つの炭素を含み、かつR基内に1つまたは複数のカルボン酸基を含む。
【0033】
いくつかの態様において、脂肪酸ではないカルボン酸は、直鎖または分枝配置のいずれかで、R基内に1~5つの炭素を含み、かつR基内に1つのカルボン酸基を含む。いくつかの態様において、脂肪酸ではないカルボン酸は、直鎖または分枝配置のいずれかで、R基内に1~3つの炭素を含み、かつR基内に1つのカルボン酸基を含む。
【0034】
鎖内の炭素の数が本明細書において言及される場合、鎖内(分枝を含む)の炭素の全数を指すことが企図される。直鎖の場合、これは炭素鎖長と同じである。分枝鎖の場合、「鎖長」は分枝鎖の最も長い炭素鎖分枝を指す。
【0035】
いくつかの態様において、アニオンは1つのカルボン酸基を含む。
【0036】
疎水性は、logPの分析によって評価してもよい。「LogP」とは、P(分配係数)の対数を指す。Pは、物質が脂質(油)と水との間でいかにうまく分配するかの尺度である。P自体は定数である。中性分子としての、水相中の化合物の濃度の非混和性溶媒中の化合物の濃度に対する比として定義される。
分配係数、P=[有機]/[水性]、ここで[ ]=濃度
Log P=log10(分配係数)=log10 P
実際には、LogP値は測定条件および分配溶媒の選択に応じて変動することになる。1のLogP値は、化合物の濃度が有機相で水相の10倍高いことを意味する。1のlogP値の増加は、水相と比較して有機相中の化合物濃度の10倍の増加を示す。
【0037】
任意の局面のいくつかの態様において、脂肪酸ではないカルボン酸であるアニオンは、1.0未満のLogPを有する。任意の局面のいくつかの態様において、脂肪酸ではないカルボン酸であるアニオンは、0.80未満のLogPを有する。任意の局面のいくつかの態様において、脂肪酸ではないカルボン酸であるアニオンは、0.75未満のLogPを有する。任意の局面のいくつかの態様において、脂肪酸ではないカルボン酸であるアニオンは、0.50未満のLogPを有する。任意の局面のいくつかの態様において、脂肪酸ではないカルボン酸であるアニオンは、0.25未満のLogPを有する。任意の局面のいくつかの態様において、脂肪酸ではないカルボン酸であるアニオンは、0未満のLogPを有する。
【0038】
任意の局面のいくつかの態様において、本明細書に記載のILのアニオンは、4.0未満のpKaを有する。任意の局面のいくつかの態様において、本明細書に記載のILのアニオンは、4.0未満のpKaおよび1.0未満のLogPを有する。例示的なアニオンが以下の表1に提供される。
【0039】
(表1)
【0040】
任意の局面のいくつかの態様において、アニオンはアルカンである。任意の局面のいくつかの態様において、アニオンはアルケンである。任意の局面のいくつかの態様において、アニオンは単一のカルボキシル基を含む。任意の局面のいくつかの態様において、カルボン酸の炭素鎖は1つまたは複数の置換基を含む。任意の局面のいくつかの態様において、カルボン酸の炭素鎖骨格は1つまたは複数の置換基を含み、ここで各置換基は少なくとも1つの炭素原子を含む。任意の局面のいくつかの態様において、カルボン酸の炭素鎖骨格は1つまたは複数の置換基を含み、ここで少なくとも1つの置換基はメチル基を含む。任意の局面のいくつかの態様において、カルボン酸の炭素鎖骨格は2つの置換基を含み、ここで各置換基は少なくとも1つの炭素原子を含む。任意の局面のいくつかの態様において、カルボン酸の炭素鎖骨格は2つの置換基を含み、ここで1つの置換基はメチル基を含む。任意の局面のいくつかの態様において、カルボン酸の炭素鎖骨格は2つの置換基を含み、ここで各置換基はメチル基を含む。
【0041】
任意の局面のいくつかの態様において、アニオンは無置換アルカンである。任意の局面のいくつかの態様において、アニオンは無置換アルケンである。任意の局面のいくつかの態様において、カルボン酸の炭素鎖骨格は1つまたは複数の置換基を含む。任意の局面のいくつかの態様において、カルボン酸の炭素鎖は1つまたは複数の置換基を含み、ここで各置換基は少なくとも1つの炭素原子を含む。任意の局面のいくつかの態様において、カルボン酸の炭素鎖は1つまたは複数の置換基を含み、ここで各置換基はアルキル、アリール、ヘテロアルカイル(heteroalkayl)、ヘテロアリール、アルカン、またはアルケンである。任意の局面のいくつかの態様において、カルボン酸の炭素鎖は1つまたは複数の置換基を含み、ここで各置換基は無置換アルキル、無置換アリール、無置換ヘテロアルカイル、無置換ヘテロアリール、無置換アルカン、または無置換アルケンである。
【0042】
任意の態様の1つの局面において、本明細書に記載するのは、以下を含むか、以下からなるか、または以下から本質的になる少なくとも1種のイオン液体を含む、組成物である:1) 脂肪酸ではないカルボン酸である、アニオン、および2) エステル基を含む4級アンモニウム(例えばアセチルコリン)である、カチオン。任意の態様の1つの局面において、本明細書に記載するのは、以下を含むか、以下からなるか、または以下から本質的になる少なくとも1種のイオン液体を含む、組成物である:1) 1.0未満のLogPを有するアニオンであって、脂肪酸ではないカルボン酸である、アニオン、および2) エステル基を含む4級アンモニウム(例えばアセチルコリン)である、カチオン。
【0043】
任意の態様の1つの局面において、本明細書に記載するのは、以下を含むか、以下からなるか、または以下から本質的になる少なくとも1種のイオン液体を含む、組成物である:1) 少なくとも4.0のpKaおよび少なくとも1.0のLogPを有するカルボン酸を含む、疎水性アニオン、ならびに2) エステル基を含む4級アンモニウム(例えばアセチルコリン)である、カチオン。任意の態様の1つの局面において、本明細書に記載するのは、以下を含むか、以下からなるか、または以下から本質的になる少なくとも1種のイオン液体を含む、組成物である:1) 少なくとも4.0のpKaおよび少なくとも1.0のLogPを有するカルボン酸を含む、疎水性アニオン、ならびに2) エステル基を含む4級アンモニウム(例えばアセチルコリン)である、カチオン。
【0044】
任意の局面のいくつかの態様において、本明細書に記載のILのアニオンは、疎水性である。任意の局面のいくつかの態様において、本明細書に記載のILのアニオンは、カルボン酸を含む。
【0045】
任意の局面のいくつかの態様において、本明細書に記載のILのアニオンは、少なくとも4.0のpKa、例えば4.0以上のpKaを有する。任意の局面のいくつかの態様において、本明細書に記載のILのアニオンは、少なくとも4.5のpKa、例えば4.5以上のpKaを有する。任意の局面のいくつかの態様において、本明細書に記載のILのアニオンは、少なくとも5.0のpKa、例えば5.0以上のpKaを有する。任意の局面のいくつかの態様において、本明細書に記載のILのアニオンは、少なくとも約4.0のpKa、例えば約4.0以上のpKaを有する。任意の局面のいくつかの態様において、本明細書に記載のILのアニオンは、少なくとも約4.5のpKa、例えば約4.5以上のpKaを有する。任意の局面のいくつかの態様において、本明細書に記載のILのアニオンは、少なくとも約5.0のpKa、例えば約5.0以上のpKaを有する。
【0046】
任意の局面のいくつかの態様において、アニオンは、少なくとも4.895のpKaを有する。任意の局面のいくつかの態様において、アニオンは、4.5~5.5のpKaを有する。任意の局面のいくつかの態様において、アニオンは、4.895~5.19のpKaを有する。
【0047】
任意の局面のいくつかの態様において、アニオンは、少なくとも約4.895のpKaを有する。任意の局面のいくつかの態様において、アニオンは、約4.5~約5.5のpKaを有する。任意の局面のいくつかの態様において、アニオンは、約4.895~約5.19のpKaを有する。
【0048】
任意の局面のいくつかの態様において、本明細書に記載のILのアニオンは、少なくとも1.0のLogP、例えば1.0以上のLogPを有する。任意の局面のいくつかの態様において、本明細書に記載のILのアニオンは、少なくとも2.0のLogP、例えば2.0以上のLogPを有する。任意の局面のいくつかの態様において、本明細書に記載のILのアニオンは、少なくとも2.5のLogP、例えば2.5以上のLogPを有する。任意の局面のいくつかの態様において、本明細書に記載のILのアニオンは、少なくとも2.75のLogP、例えば2.75以上のLogPを有する。任意の局面のいくつかの態様において、本明細書に記載のILのアニオンは、少なくとも約1.0のLogP、例えば約1.0以上のLogPを有する。任意の局面のいくつかの態様において、本明細書に記載のILのアニオンは、少なくとも約2.0のLogP、例えば約2.0以上のLogPを有する。任意の局面のいくつかの態様において、本明細書に記載のILのアニオンは、少なくとも約2.5のLogP、例えば約2.5以上のLogPを有する。任意の局面のいくつかの態様において、本明細書に記載のILのアニオンは、少なくとも約2.75のLogP、例えば約2.75以上のLogPを有する。
【0049】
任意の局面のいくつかの態様において、本明細書に記載のILのアニオンは、少なくとも4.0のpKaおよび少なくとも1.0のLogPを有する。任意の局面のいくつかの態様において、本明細書に記載のILのアニオンは、少なくとも4.0のpKaおよび少なくとも2.0のLogPを有する。任意の局面のいくつかの態様において、本明細書に記載のILのアニオンは、少なくとも4.0のpKaおよび少なくとも2.5のLogPを有する。任意の局面のいくつかの態様において、本明細書に記載のILのアニオンは、少なくとも4.0のpKaおよび少なくとも2.75のLogPを有する。
【0050】
任意の局面のいくつかの態様において、本明細書に記載のILのアニオンは、少なくとも4.5のpKaおよび少なくとも1.0のLogPを有する。任意の局面のいくつかの態様において、本明細書に記載のILのアニオンは、少なくとも4.5のpKaおよび少なくとも2.0のLogPを有する。任意の局面のいくつかの態様において、本明細書に記載のILのアニオンは、少なくとも4.5のpKaおよび少なくとも2.5のLogPを有する。任意の局面のいくつかの態様において、本明細書に記載のILのアニオンは、少なくとも4.5のpKaおよび少なくとも2.75のLogPを有する。
【0051】
任意の局面のいくつかの態様において、本明細書に記載のILのアニオンは、少なくとも5.0のpKaおよび少なくとも1.0のLogPを有する。任意の局面のいくつかの態様において、本明細書に記載のILのアニオンは、少なくとも5.0のpKaおよび少なくとも2.0のLogPを有する。任意の局面のいくつかの態様において、本明細書に記載のILのアニオンは、少なくとも5.0のpKaおよび少なくとも2.5のLogPを有する。任意の局面のいくつかの態様において、本明細書に記載のILのアニオンは、少なくとも5.0のpKaおよび少なくとも2.75のLogPを有する。
【0052】
任意の局面のいくつかの態様において、アニオンは、少なくとも2.75のLogPを有する。任意の局面のいくつかの態様において、アニオンは、少なくとも2.8のLogPを有する。任意の局面のいくつかの態様において、アニオンは、2.5~3.5のLogPを有する。任意の局面のいくつかの態様において、アニオンは、2.8~3.01のLogPを有する。
【0053】
任意の局面のいくつかの態様において、アニオンは、少なくとも約2.75のLogPを有する。任意の局面のいくつかの態様において、アニオンは、少なくとも約2.8のLogPを有する。任意の局面のいくつかの態様において、アニオンは、約2.5~約3.5のLogPを有する。任意の局面のいくつかの態様において、アニオンは、約2.8~約3.01のLogPを有する。
【0054】
任意の局面のいくつかの態様において、カルボン酸は、8炭素を有する炭素骨格鎖を含み、かつ2.8以上のLogPおよび4.8~5.2のpKaを有する。任意の局面のいくつかの態様において、カルボン酸は、2.9以上のLogPおよび4.8~5.1のpKaを有する。
【0055】
アニオンのpKa値およびLogP値は当技術分野において公知である、かつ/または、当業者であれば該値を算出することが可能である。例えば、PubChemおよびSpiderChemは、様々なアニオンについて該値を提供しており、かつ化学品製造業者は典型的には、自身の製品のカタログリストの一部として、該値を提供している。例示的アニオンのpKa値およびLogP値が本明細書の表3に提供される。
【0056】
任意の局面のいくつかの態様において、カルボン酸は、少なくとも6炭素の炭素鎖を含む。任意の局面のいくつかの態様において、カルボン酸は、少なくとも7炭素の炭素鎖を含む。任意の局面のいくつかの態様において、カルボン酸は、少なくとも8炭素の炭素鎖を含む。任意の局面のいくつかの態様において、カルボン酸は、少なくとも9炭素の炭素鎖を含む。任意の局面のいくつかの態様において、カルボン酸は、少なくとも10炭素の炭素鎖を含む。任意の局面のいくつかの態様において、カルボン酸は、少なくとも11炭素の炭素鎖を含む。
【0057】
任意の局面のいくつかの態様において、アニオンはアルカンを含む。任意の局面のいくつかの態様において、アニオンはアルケンを含む。任意の局面のいくつかの態様において、アニオンはカルボキシル基を1つ含む。任意の局面のいくつかの態様において、カルボン酸の炭素鎖は、1つまたは複数の置換基を含む。任意の局面のいくつかの態様において、カルボン酸の炭素鎖骨格は、1つまたは複数の置換基を含み、ここで各置換基は、少なくとも1つの炭素原子を含む。任意の局面のいくつかの態様において、カルボン酸の炭素鎖骨格は、1つまたは複数の置換基を含み、ここで少なくとも1つの置換基は、メチル基を含む。任意の局面のいくつかの態様において、カルボン酸の炭素鎖骨格は、2つの置換基を含み、ここで各置換基は、少なくとも1つの炭素原子を含む。任意の局面のいくつかの態様において、カルボン酸の炭素鎖骨格は、2つの置換基を含み、ここで1つの置換基は、メチル基を含む。任意の局面のいくつかの態様において、カルボン酸の炭素鎖骨格は、2つの置換基を含み、ここで各置換基は、メチル基を含む。
【0058】
任意の局面のいくつかの態様において、アニオンは、無置換アルカンに基づいている。任意の局面のいくつかの態様において、アニオンは、無置換アルケンである。任意の局面のいくつかの態様において、カルボン酸の炭素鎖骨格は、1つまたは複数の置換基を含む。任意の局面のいくつかの態様において、カルボン酸の炭素鎖は、1つまたは複数の置換基を含み、ここで各置換基は、少なくとも1つの炭素原子を含む。任意の局面のいくつかの態様において、カルボン酸の炭素鎖は、1つまたは複数の置換基を含み、ここで各置換基は、アルキル、アリール、ヘテロアルカイル、ヘテロアリール、アルカン、またはアルケンである。任意の局面のいくつかの態様において、カルボン酸の炭素鎖は、1つまたは複数の置換基を含み、ここで各置換基は、無置換アルキル、無置換アリール、無置換ヘテロアルカイル、無置換ヘテロアリール、無置換アルカン、または無置換アルケンである。
【0059】
任意の局面のいくつかの態様において、カルボン酸は、8炭素を有する炭素骨格鎖を含み、任意でモノアルケンであり、かつ任意で2つの置換基を有する。任意の局面のいくつかの態様において、置換基の少なくとも1つはメチル基である。任意の局面のいくつかの態様において、置換基は両方ともメチル基である。任意の局面のいくつかの態様において、カルボン酸は、以下からなる群より選択される:オクタン酸;2-オクテン酸;3-オクテン酸;4-オクテン酸;5-オクテン酸;6-オクテン酸;7-オクテン酸;2,2-ジメチルオクタン酸;2,3-ジメチルオクタン酸;2,4-ジメチルオクタン酸;2,5-ジメチルオクタン酸;2,6-ジメチルオクタン酸;2,7-ジメチルオクタン酸;3,3-ジメチルオクタン酸;3,4-ジメチルオクタン酸;3,5-ジメチルオクタン酸;3,6-ジメチルオクタン酸;3,7-ジメチルオクタン酸;4,4-ジメチルオクタン酸;4,5-ジメチルオクタン酸;4,6-ジメチルオクタン酸;4,7-ジメチルオクタン酸;5,5-ジメチルオクタン酸;5,6-ジメチルオクタン酸;5,7-ジメチルオクタン酸;6,6-ジメチルオクタン酸;6,7-ジメチルオクタン酸;7,7-ジメチルオクタン酸;2,3-ジメチル-2-オクテン酸;2,4-ジメチル-2-オクテン酸;2,5-ジメチル-2-オクテン酸;2,6-ジメチル-2-オクテン酸;2,7-ジメチル-2-オクテン酸;3,4-ジメチル-2-オクテン酸;3,5-ジメチル-2-オクテン酸;3,6-ジメチル-2-オクテン酸;3,7-ジメチル-2-オクテン酸;4,4-ジメチル-2-オクテン酸;4,5-ジメチル-2-オクテン酸;4,6-ジメチル-2-オクテン酸;4,7-ジメチル-2-オクテン酸;5,5-ジメチル-2-オクテン酸;5,6-ジメチル-2-オクテン酸;5,7-ジメチル-2-オクテン酸;6,6-ジメチル-2-オクテン酸;6,7-ジメチル-2-オクテン酸、7,7-ジメチル-2-オクテン酸;2,2-ジメチル-3-オクテン酸;2,3-ジメチル-3-オクテン酸;2,4-ジメチル-3-オクテン酸;2,5-ジメチル-3-オクテン酸;2,6-ジメチル-3-オクテン酸;2,7-ジメチル-3-オクテン酸;3,4-ジメチル-3-オクテン酸;3,5-ジメチル-3-オクテン酸;3,6-ジメチル-3-オクテン酸;3,7-ジメチル-3-オクテン酸;4,5-ジメチル-3-オクテン酸;4,6-ジメチル-3-オクテン酸;4,7-ジメチル-3-オクテン酸;5,5-ジメチル-3-オクテン酸;5,6-ジメチル-3-オクテン酸;5,7-ジメチル-3-オクテン酸;6,6-ジメチル-3-オクテン酸;6,7-ジメチル-3-オクテン酸;7,7-ジメチル-3-オクテン酸;2,2-ジメチル-4-オクテン酸;2,3-ジメチル-4-オクテン酸;2,4-ジメチル-4-オクテン酸;2,5-ジメチル-4-オクテン酸;2,6-ジメチル-4-オクテン酸;2,7-ジメチル-4-オクテン酸;3,3-ジメチル-4-オクテン酸;3,4-ジメチル-4-オクテン酸;3,5-ジメチル-4-オクテン酸;3,6-ジメチル-4-オクテン酸;3,7-ジメチル-4-オクテン酸;4,5-ジメチル-4-オクテン酸;4,6-ジメチル-4-オクテン酸;4,7-ジメチル-4-オクテン酸;5,6-ジメチル-4-オクテン酸;5,7-ジメチル-4-オクテン酸;6,6-ジメチル-4-オクテン酸;6,7-ジメチル-4-オクテン酸;7,7-ジメチル-4-オクテン酸;2,2-ジメチル-5-オクテン酸;2,3-ジメチル-5-オクテン酸;2,4-ジメチル-5-オクテン酸;2,5-ジメチル-5-オクテン酸;2,6-ジメチル-5-オクテン酸;2,7-ジメチル-5-オクテン酸;3,3-ジメチル-5-オクテン酸;3,4-ジメチル-5-オクテン酸;3,5-ジメチル-5-オクテン酸;3,6-ジメチル-5-オクテン酸;3,7-ジメチル-5-オクテン酸;4,4-ジメチル-5-オクテン酸;4,5-ジメチル-5-オクテン酸;4,6-ジメチル-5-オクテン酸;4,7-ジメチル-5-オクテン酸;5,6-ジメチル-5-オクテン酸;5,7-ジメチル-5-オクテン酸;6,7-ジメチル-5-オクテン酸;7,7-ジメチル-5-オクテン酸;2,2-ジメチル-6-オクテン酸;2,3-ジメチル-6-オクテン酸;2,4-ジメチル-6-オクテン酸;2,5-ジメチル-6-オクテン酸;2,6-ジメチル-6-オクテン酸;2,7-ジメチル-6-オクテン酸;3,3-ジメチル-6-オクテン酸;3,4-ジメチル-6-オクテン酸;3,5-ジメチル-6-オクテン酸;3,6-ジメチル-6-オクテン酸;3,7-ジメチル-6-オクテン酸(シトロネル酸);4,4-ジメチル-6-オクテン酸;4,5-ジメチル-6-オクテン酸;4,6-ジメチル-6-オクテン酸;4,7-ジメチル-6-オクテン酸;5,5-ジメチル-6-オクテン酸;5,6-ジメチル-6-オクテン酸;5,7-ジメチル-6-オクテン酸;6,7-ジメチル-6-オクテン酸;2,2-ジメチル-7-オクテン酸;2,3-ジメチル-7-オクテン酸;2,4-ジメチル-7-オクテン酸;2,5-ジメチル-7-オクテン酸;2,6-ジメチル-7-オクテン酸;2,7-ジメチル-7-オクテン酸;4,4-ジメチル-7-オクテン酸;3,4-ジメチル-7-オクテン酸;3,5-ジメチル-7-オクテン酸;3,6-ジメチル-7-オクテン酸;3,7-ジメチル-7-オクテン酸;4,4-ジメチル-7-オクテン酸;4,5-ジメチル-7-オクテン酸;4,6-ジメチル-7-オクテン酸;4,7-ジメチル-7-オクテン酸;5,5-ジメチル-7-オクテン酸;5,6-ジメチル-7-オクテン酸;5,7-ジメチル-7-オクテン酸;6,6-ジメチル-7-オクテン酸;6,7-ジメチル-7-オクテン酸;およびそれらの異性体。任意の局面のいくつかの態様において、カルボン酸は、以下からなる群より選択される:オクタン酸;2-オクテン酸;3-オクテン酸;4-オクテン酸;5-オクテン酸;6-オクテン酸;7-オクテン酸;2,2-ジメチルオクタン酸;2,4-ジメチルオクタン酸;2,5-ジメチルオクタン酸;2,6-ジメチルオクタン酸;2,7-ジメチルオクタン酸;3,3-ジメチルオクタン酸;3,5-ジメチルオクタン酸;3,6-ジメチルオクタン酸;3,7-ジメチルオクタン酸;4,4-ジメチルオクタン酸;4,5-ジメチルオクタン酸;4,6-ジメチルオクタン酸;5,5-ジメチルオクタン酸;5,6-ジメチルオクタン酸;5,7-ジメチルオクタン酸;6,6-ジメチルオクタン酸;7,7-ジメチルオクタン酸;3,7-ジメチル-2-オクテン酸;3,7-ジメチル-3-オクテン酸;3,7-ジメチル-4-オクテン酸;2,7-ジメチル-6-オクテン酸;3,7-ジメチル-6-オクテン酸(シトロネル酸);2,2-ジメチル-7-オクテン酸;2,3-ジメチル-7-オクテン酸;およびそれらの異性体。任意の局面のいくつかの態様において、カルボン酸は、シトロネル酸、オクタン酸、2-オクテン酸、およびそれらの異性体からなる群より選択される。任意の局面のいくつかの態様において、カルボン酸は、シトロネル酸、オクタン酸、またはtrans-2-オクテン酸からなる群より選択される。任意の局面のいくつかの態様において、本明細書で(例えば表3において)使用されるオクテン酸は、trans-2-オクテン酸を指す。
【0060】
任意の局面のいくつかの態様において、カルボン酸は、8炭素を有する炭素骨格鎖を含み、かつ任意でモノアルケンである。任意の局面のいくつかの態様において、カルボン酸の炭素骨格鎖は、置換されていない。任意の局面のいくつかの態様において、カルボン酸は、オクタン酸、2-オクテン酸、3-オクテン酸、4-オクテン酸、5-オクテン酸、6-オクテン酸、7-オクテン酸、およびそれらの異性体からなる群より選択される。いくつかの選択肢において、カルボン酸は、オクタン酸であるか、またはtrans-2-オクテン酸(オクテン酸)である。
【0061】
例示的な非限定的アニオンが以下の表3に提供される。
【0062】
(表3)
【0063】
任意の局面のいくつかの態様において、アニオンは表3より選択される。任意の局面のいくつかの態様において、アニオンは表3のグループ1より選択される。任意の局面のいくつかの態様において、アニオンは表3のグループ2より選択される。任意の局面のいくつかの態様において、アニオンは表3のグループ3より選択される。任意の局面のいくつかの態様において、アニオンは表3のグループ4より選択される。任意の局面のいくつかの態様において、アニオンは表3のグループ5より選択される。任意の局面のいくつかの態様において、アニオンは表3のグループ6より選択される。任意の局面のいくつかの態様において、アニオンは表3のグループ7より選択される。任意の局面のいくつかの態様において、アニオンは表3のグループ8より選択される。任意の局面のいくつかの態様において、アニオンは表3のグループ1~2より選択される。任意の局面のいくつかの態様において、アニオンは表3のグループ1~3より選択される。任意の局面のいくつかの態様において、アニオンは表3のグループ1~4より選択される。任意の局面のいくつかの態様において、アニオンは表3のグループ1~5より選択される。任意の局面のいくつかの態様において、アニオンは表3のグループ1~6より選択される。任意の局面のいくつかの態様において、アニオンは表3のグループ1~7より選択される。任意の局面のいくつかの態様において、アニオンは表3のグループ9より選択される。任意の局面のいくつかの態様において、アニオンは表3のグループ10より選択される。任意の局面のいくつかの態様において、アニオンは表3のグループ9~10より選択される。
【0064】
任意の局面のいくつかの態様において、アニオンは、ゲラン酸、オクテン酸、オクタン酸、シトロネル酸、デセン酸、(9Z)-オクタデカ-9-エン酸、デカン酸、(9Z,12Z)-オクタデカ-9,12-ジエン酸、(R)-5-(1,2-ジチオラン-3-イル)ペンタン酸、またはヘキセン酸である。任意の局面のいくつかの態様において、アニオンはヘキセン酸である。
【0065】
4級アンモニオン(quarternary ammonion)は、構造がNR4 +である正に荷電した多原子イオンであり、各Rは、独立にアルキル基またはアリール基である。「4級アンモニウム」という総称は、NH4 +イオンの4つの水素原子全てが有機基で置換されることによって、水酸化アンモニウムまたはアンモニウム塩から誘導されたとみなすことが可能な、任意の化合物に関連する。例えば、4級アンモニウムはNR4 +という構造を有し、ここで各Rは、以下から独立に選択される:ヒドロキシル、置換されていてもよいC1~C10アルキル、置換されていてもよいC2~C10アルケニル、置換されていてもよいC2~C10アルキニル、置換されていてもよいアリール、または置換されていてもよいヘテロアリール。
【0066】
任意の局面のいくつかの態様において、カチオンは、コリンと等しいかまたはそれよりも大きいモル質量を有し、これは例えば、104.1708 g/molと等しいかまたはそれよりも大きいモル質量である。任意の局面のいくつかの態様において、カチオンは、コリンよりも大きいモル質量、例えば、104.1708 g/molよりも等しいか大きいモル質量を有する。
【0067】
任意の局面のいくつかの態様において、4級アンモニウムの各R基は独立に、アルキル、アルカン、アルケン、またはアリールを含み、R基の少なくとも1つはエステルを含む。任意の局面のいくつかの態様において、4級アンモニウムの各R基は独立に、アルキル、アルカン、またはアルケンを含み、R基の少なくとも1つはエステルを含む。任意の局面のいくつかの態様において、4級アンモニウムの各R基は独立に、アルカンまたはアルケンを含み、R基の少なくとも1つはエステルを含む。任意の局面のいくつかの態様において、4級アンモニウムの各R基は独立に、アルキル、アルカン、アルケン、またはアリールを含み、R基の1つはエステルを含む。任意の局面のいくつかの態様において、4級アンモニウムの各R基は独立に、アルキル、アルカン、またはアルケンを含み、R基の1つはエステルを含む。任意の局面のいくつかの態様において、4級アンモニウムの各R基は独立に、アルカンまたはアルケンを含み、R基の1つはエステルを含む。
【0068】
任意の局面のいくつかの態様において、4級アンモニウムの各R基は独立に、炭素原子10個以下の長さの炭素鎖、例えば、炭素原子10個以下、11個以下、12個以下、13個以下、14個以下、15個以下、16個以下、17個以下、18個以下、19個以下、20個以下、25個以下、または30個以下の長さの炭素鎖を含む。任意の局面のいくつかの態様において、4級アンモニウムの各R基は独立に、炭素原子12個以下の長さの炭素鎖を含む。任意の局面のいくつかの態様において、4級アンモニウムの各R基は独立に、炭素原子15個以下の長さの炭素鎖を含む。任意の局面のいくつかの態様において、4級アンモニウムの各R基は独立に、炭素原子20個以下の長さの炭素鎖を含む。
【0069】
任意の局面のいくつかの態様において、4級アンモニウムの各R基は独立に、炭素原子10個以下の炭素鎖、例えば、炭素原子10個以下、11個以下、12個以下、13個以下、14個以下、15個以下、16個以下、17個以下、18個以下、19個以下、20個以下、25個以下、または30個以下の炭素鎖を含む。任意の局面のいくつかの態様において、4級アンモニウムの各R基は独立に、炭素原子12個以下の炭素鎖を含む。任意の局面のいくつかの態様において、4級アンモニウムの各R基は独立に、炭素原子15個以下の炭素鎖を含む。任意の局面のいくつかの態様において、4級アンモニウムの各R基は独立に、炭素原子20個以下の炭素鎖を含む。
【0070】
任意の局面のいくつかの態様において、4級アンモニウムの各R基は独立に、炭素原子10個以下のアルキル基、例えば炭素原子10個以下、11個以下、12個以下、13個以下、14個以下、15個以下、16個以下、17個以下、18個以下、19個以下、20個以下、25個以下、または30個以下のアルキル基を含み、R基の少なくとも1つはエステルを含む。任意の局面のいくつかの態様において、4級アンモニウムの各R基は独立に、炭素原子12個以下のアルキル基を含む。任意の局面のいくつかの態様において、4級アンモニウムの各R基は独立に、炭素原子15個以下のアルキル基を含む。任意の局面のいくつかの態様において、4級アンモニウムの各R基は独立に、炭素原子20個以下のアルキル基を含み、少なくとも1つのR基はエステルを含む。
【0071】
任意の局面のいくつかの態様において、4級アンモニウムの各R基は独立に、アルカン、アルケン、アリール、ヘテロアリール、アルキル、またはヘテロアルキルを含み、R基の少なくとも1つはエステルを含む。任意の局面のいくつかの態様において、4級アンモニウムの各R基は独立に、無置換アルカン、無置換アルケン、無置換アリール、無置換ヘテロアリール、無置換アルキル、または無置換ヘテロアルキルを含み、R基の少なくとも1つはエステルを含む。任意の局面のいくつかの態様において、4級アンモニウムの各R基は独立に、無置換アルカンを含み、R基の少なくとも1つはエステルを含む。任意の局面のいくつかの態様において、4級アンモニウムの各R基は独立に、無置換アルケンを含み、R基の少なくとも1つはエステルを含む。任意の局面のいくつかの態様において、4級アンモニウムの各R基は独立に、1つまたは複数の置換基を含み、R基の少なくとも1つはエステルを含む。
【0072】
任意の局面のいくつかの態様において、4級アンモニウムの少なくとも1つのR基は、ヒドロキシ基を含み、R基の少なくとも1つは、エステルを含む。任意の局面のいくつかの態様において、4級アンモニウムの1つのR基は、ヒドロキシ基を含み、R基の少なくとも1つは、エステルを含む。任意の局面のいくつかの態様において、4級アンモニウムのR基の1つのみがヒドロキシ基を含み、該R基の少なくとも1つはエステルを含む。
【0073】
任意の局面のいくつかの態様において、4級アンモニウムの3つのR基はメチルであり、かつ1つのR基はエステルを含み、これは、例えばアセチルコリンである。任意の局面のいくつかの態様において、カチオンは、アセチルコリンを含むか、アセチルコリンからなるか、またはアセチルコリンから本質的になる。
【0074】
任意の局面のいくつかの態様において、カチオンはコリンではない。
【0075】
カチオンおよびアニオンの非限定的な例示的組み合わせが、以下の表2に提供される。
【0076】
(表2)
【0077】
任意の局面のいくつかの態様において、イオン液体は、CAGE(コリンおよびゲラネート)ではない。任意の局面のいくつかの態様において、イオン液体のカチオンは、コリンではない。任意の局面のいくつかの態様において、イオン液体のアニオンは、ゲラネートでもゲラン酸でもない。
【0078】
任意の局面のいくつかの態様において、組成物は、第1のイオン液体、および少なくとも第2のイオン液体を含む。本明細書に記載のイオン液体の任意のものの、2種類、3種類、4種類、5種類、またはそれより多い種類の組み合わせが企図される。
【0079】
組成物が2種以上のイオン液体を含む任意の局面のいくつかの態様において、第1のイオン液体および第2のイオン液体は同じカチオン、例えばアセチルコリンを有する。組成物が2種以上のイオン液体を含む任意の局面のいくつかの態様において、第1のイオン液体および第2のイオン液体は異なるアニオンを有する。例えば、第1のイオン液体および第2のイオン液体はそれぞれ、以下から選択される異なるアニオンを含み得る:乳酸;グリコール酸;マロン酸;マレイン酸;グルタル酸;クエン酸;グルコン酸;アジピン酸;ゲラン酸、オクテン酸、オクタン酸、シトロネル酸、デセン酸、(9Z)-オクタデカ-9-エン酸、デカン酸、(9Z,12Z)-オクタデカ-9,12-ジエン酸、(R)-5-(1,2-ジチオラン-3-イル)ペンタン酸、およびヘキセン酸。いくつかの態様において、第1のイオン液体および第2のイオン液体はそれぞれ、以下から選択される異なるアニオンを含み得る:プロパン酸;乳酸;グリコール酸;マロン酸;マレイン酸;グルタル酸;クエン酸;グルコン酸;アジピン酸;ゲラン酸、オクテン酸、オクタン酸、シトロネル酸、デセン酸、(9Z)-オクタデカ-9-エン酸、デカン酸、(9Z,12Z)-オクタデカ-9,12-ジエン酸、(R)-5-(1,2-ジチオラン-3-イル)ペンタン酸、およびヘキセン酸。組成物が2種以上のイオン液体を含む任意の局面のいくつかの態様において、第1のイオン液体はマレイン酸アニオンを有し、かつ第2のイオン液体はヘキセン酸アニオンを有する。組成物が2種以上のイオン液体を含む任意の局面のいくつかの態様において、第1のイオン液体はプロパン酸アニオンを有し、かつ第2のイオン液体はヘキセン酸アニオンを有する。組成物が2種以上のイオン液体を含む任意の局面のいくつかの態様において、第1のイオン液体はマレイン酸アニオンを有し、かつ第2のイオン液体はプロパン酸アニオンを有する。
【0080】
非限定例として、ヘキセン酸アニオンを含むイオン液体と、マレイン酸アニオンを含むイオン液体との組み合わせが、本明細書において企図される。さらなる非限定例として、プロパン酸アニオンを含むイオン液体と、マレイン酸アニオンを含むイオン液体との組み合わせが、本明細書において企図される。さらなる非限定例として、プロパン酸アニオンを含むイオン液体と、プロパン酸アニオンを含むイオン液体との組み合わせが、本明細書において企図される。
【0081】
非限定例として、アセチルコリン・ヘキセン酸と、アセチルコリン・マレイン酸との組み合わせが、本明細書において企図される。さらなる非限定例として、アセチルコリン・プロパン酸と、アセチルコリン・マレイン酸との組み合わせが、本明細書において企図される。さらなる非限定例として、アセチルコリン・プロパン酸と、アセチルコリン・プロパン酸との組み合わせが、本明細書において企図される。
【0082】
2種以上のイオン液体を含む任意の局面のいくつかの態様において、第1のイオン液体は、CAGE(コリンおよびゲラネート)ではない。2種以上のイオン液体を含む任意の局面のいくつかの態様において、第1のイオン液体のカチオンは、コリンではない。2種以上のイオン液体を含む任意の局面のいくつかの態様において、第1のイオン液体のアニオンは、ゲラネートでもゲラン酸でもない。
【0083】
組成物が2種以上のイオン液体を含む任意の局面のいくつかの態様において、第2のイオン液体は、コリンおよびゲラン酸(CAGE)である。組成物が2種以上のイオン液体を含む任意の局面のいくつかの態様において、第1のイオン液体は、アセチルコリンおよびヘキセン酸であり、かつ第2のイオン液体は、CAGEである。組成物が2種以上のイオン液体を含む任意の局面のいくつかの態様において、第1のイオン液体は、アセチルコリンおよびマレイン酸であり、かつ第2のイオン液体は、CAGEである。組成物が2種以上のイオン液体を含む任意の局面のいくつかの態様において、第1のイオン液体は、アセチルコリンおよびプロパン酸であり、かつ第2のイオン液体は、CAGEである。
【0084】
任意の局面のいくつかの態様において、ILは、少なくとも0.01% w/vの濃度である。任意の局面のいくつかの態様において、ILは、少なくとも0.05% w/vの濃度である。任意の局面のいくつかの態様において、ILは、少なくとも0.1% w/vの濃度である。任意の局面のいくつかの態様において、ILは、少なくとも0.2% w/vの、少なくとも0.3% w/vの、少なくとも0.4% w/vの、少なくとも0.5% w/vの、少なくとも1% w/vの、またはより高い濃度である。任意の局面のいくつかの態様において、ILは、約0.01% w/v~約1% w/vの濃度である。任意の局面のいくつかの態様において、ILは、0.01% w/v~1% w/vの濃度である。任意の局面のいくつかの態様において、ILは、約0.05% w/v~約0.5% w/vの濃度である。任意の局面のいくつかの態様において、ILは、0.05% w/v~0.5% w/vの濃度である。
【0085】
任意の局面のいくつかの態様において、ILは、10% w/v未満の濃度である。任意の局面のいくつかの態様において、ILは、0.01% w/v~10% w/vの濃度である。任意の局面のいくつかの態様において、ILは、0.05% w/v~10% w/vの濃度である。任意の局面のいくつかの態様において、ILは、0.5% w/v~10% w/vの濃度である。任意の局面のいくつかの態様において、ILは、1% w/v~10% w/vの濃度である。
【0086】
任意の局面のいくつかの態様において、ILは少なくとも25%w/wの濃度である。任意の局面のいくつかの態様において、ILは水中で少なくとも25%w/wの濃度である。任意の局面のいくつかの態様において、ILは生理食塩水または生理的に適合する緩衝液中で少なくとも25%w/wの濃度である。
【0087】
任意の局面のいくつかの態様において、ILは約5%w/wから約75%w/wの濃度である。任意の局面のいくつかの態様において、ILは5%w/wから75%w/wの濃度である。任意の局面のいくつかの態様において、ILは水、生理食塩水または生理的に適合する緩衝液中で約5%w/wから約75%w/wの濃度である。任意の局面のいくつかの態様において、ILは水、生理食塩水または生理的に適合する緩衝液中で5%w/w~75%w/wの濃度である。
【0088】
任意の局面のいくつかの態様において、ILは少なくとも約0.1%w/wの濃度である。任意の局面のいくつかの態様において、ILは少なくとも0.1%w/wの濃度である。任意の局面のいくつかの態様において、ILは約10%w/wから約70%w/wの濃度である。任意の局面のいくつかの態様において、ILは10%w/wから70%w/wの濃度である。任意の局面のいくつかの態様において、ILは約30%w/wから約50%w/wの濃度である。任意の局面のいくつかの態様において、ILは30%w/wから40%w/wの濃度である。任意の局面のいくつかの態様において、ILは約30%w/wから約50%w/wの濃度である。任意の局面のいくつかの態様において、ILは30%w/wから40%w/wの濃度である。
【0089】
任意の局面のいくつかの態様において、ILの%w/w濃度は水、生理食塩水、または生理的に適合する緩衝液中の%w/w濃度である。
【0090】
任意の局面のいくつかの態様において、ILは100%w/wまたは100%w/vである。
【0091】
いくつかの態様において、ILは無水塩、例えば、水に希釈または溶解していないイオン液体である。いくつかの態様において、ILは水溶液として提供される。
【0092】
任意の局面のいくつかの態様において、ILは少なくとも25%w/wの濃度であり、少なくとも1:3のカチオン:アニオンの比を有する。任意の局面のいくつかの態様において、ILは水中で少なくとも25%w/wの濃度であり、少なくとも1:3のカチオン:アニオンの比を有する。任意の局面のいくつかの態様において、ILは少なくとも25%w/wの濃度であり、1:3または1:4のカチオン:アニオンの比を有する。任意の局面のいくつかの態様において、ILは水中で少なくとも25%w/wの濃度であり、1:3または1:4のカチオン:アニオンの比を有する。任意の局面のいくつかの態様において、ILはゲル、またはずり減粘ニュートンゲルである。
【0093】
任意の局面のいくつかの態様において、ILは約10:1から約1:10のカチオン:アニオンの比を有する。任意の局面のいくつかの態様において、ILは10:1から1:10のカチオン:アニオンの比を有する。任意の局面のいくつかの態様において、ILは約5:1から約1:5のカチオン:アニオンの比を有する。任意の局面のいくつかの態様において、ILは5:1から1:5のカチオン:アニオンの比を有する。任意の局面のいくつかの態様において、ILは約2:1から約1:4のカチオン:アニオンの比を有する。任意の局面のいくつかの態様において、ILは2:1から1:4のカチオン:アニオンの比を有する。任意の局面のいくつかの態様において、ILは約2:1から約1:10のカチオン:アニオンの比を有する。任意の局面のいくつかの態様において、ILは約2:1から約1:1のカチオン:アニオンの比を有する。任意の局面のいくつかの態様において、ILは2:1から1:10のカチオン:アニオンの比を有する。任意の局面のいくつかの態様において、ILは2:1から1:1のカチオン:アニオンの比を有する。任意の局面のいくつかの態様において、ILはより多くのアニオン量があるようなカチオン:アニオンの比、例えば、1:1未満の比を有する。任意の局面のいくつかの態様において、ILは過剰のアニオンがあるようなカチオン:アニオンの比を有する。任意の局面のいくつかの態様において、ILは約1:1から約1:10のカチオン:アニオンの比を有する。任意の局面のいくつかの態様において、ILは1:1から1:10のカチオン:アニオンの比を有する。任意の局面のいくつかの態様において、ILは約1:1から約1:4のカチオン:アニオンの比を有する。任意の局面のいくつかの態様において、ILは1:1から1:4のカチオン:アニオンの比を有する。任意の局面のいくつかの態様において、ILは約1:1から約1:3のカチオン:アニオンの比を有する。任意の局面のいくつかの態様において、ILは1:1から1:3のカチオン:アニオンの比を有する。任意の局面のいくつかの態様において、ILは約1:1から約1:2のカチオン:アニオンの比を有する。任意の局面のいくつかの態様において、ILは1:1から1:2のカチオン:アニオンの比を有する。任意の局面のいくつかの態様において、ILは約1:1、1:2、1:3、または1:4のカチオン:アニオンの比を有する。任意の局面のいくつかの態様において、ILは1:1、1:2、1:3、または1:4のカチオン:アニオンの比を有する。任意の局面のいくつかの態様において、ILは約1:1未満のカチオン:アニオンの比を有する。任意の局面のいくつかの態様において、ILは1:1未満のカチオン:アニオンの比を有する。理論に縛られたくはないが、カチオンに対してより高い量のアニオンを有する組成物は、より大きい疎水性を示す。
【0094】
任意の局面のいくつかの態様において、ILは、カチオンが過剰であるカチオン:アニオン比を有する。
【0095】
任意の局面のいくつかの態様において、例えば、1つまたは複数の核酸分子をILと組み合わせて提供する場合、カチオン:アニオンの比は1:1より大きく、例えば、1:2より大きい、約1:2から約1:4、または1:2から1:4である。
【0096】
任意の局面のいくつかの態様において、ILは少なくとも20mMの濃度である。任意の局面のいくつかの態様において、ILは少なくとも約20mMの濃度である。任意の局面のいくつかの態様において、ILは少なくとも25mMの濃度である。任意の局面のいくつかの態様において、ILは少なくとも約25mMの濃度である。任意の局面のいくつかの態様において、ILは少なくとも50mMの濃度である。任意の局面のいくつかの態様において、ILは少なくとも約50mMの濃度である。任意の局面のいくつかの態様において、ILは少なくとも100mM、500mM、1M、2M、3Mまたはそれ以上の濃度である。任意の局面のいくつかの態様において、ILは少なくとも約100mM、500mM、1M、2M、3Mまたはそれ以上の濃度である。
【0097】
任意の局面のいくつかの態様において、ILは約50mMから約4Mの濃度である。任意の局面のいくつかの態様において、ILは50mMから4Mの濃度である。任意の局面のいくつかの態様において、ILは約500mMから約4Mの濃度である。任意の局面のいくつかの態様において、ILは500mMから4Mまでの濃度である。任意の局面のいくつかの態様において、ILは約1Mから約4Mの濃度である。任意の局面のいくつかの態様において、ILは1Mから4Mの濃度である。任意の局面のいくつかの態様において、ILは約2Mから約4Mの濃度である。任意の局面のいくつかの態様において、ILは2Mから4Mの濃度である。
【0098】
任意の局面のいくつかの態様において、組成物または製剤中のIL濃度は約0.1mM~20mMである。任意の局面のいくつかの態様において、組成物または製剤中のIL濃度は約0.5mM~20mM、0.5mM~18mM、0.5mM~16mM、0.5mM~14mM、0.5mM~12mM、0.5mM~10mM、0.5mM~8mM、1mM~20mM、1mM~18mM、1mM~16mM、1mM~14mM、1mM~12mM、1mM~10mM、1mM~8mM、2mM~20mM、2mM~18mM、2mM~16mM、2mM~14mM、2mM~12mM、2mM~10mM、2mM~8mM、4mM~20mM、4mM~18mM、4mM~16mM、4mM~12mM、4mM~10mM、4mM~8mM、6mM~20mM、6mM~18mM、6mM~14mM、6mM~12mM、6mM~10mM、6mM~8mM、8mM~20mM、8mM~18mM、8mM~16mM、8mM~14mM、8mM~12mM、8mM~10mM、10mM~20mM、10mM~18mM、10mM~16mM、10mM~14mM、10mM~12mM、12mM~20mM、12mM~18mM、12mM~16mM、12mM~14mM、14mM~20mM、14mM~18mM、14mM~16mM、16mM~20mM、16mM~18mM、または18mM~20mMである。任意の局面のいくつかの態様において、組成物または製剤中のIL濃度は約1mM、約2mM、約3mM、約4mM、約5mM、約6mM、約7mM、約8mM、約9mM、約10mM、約11mM、約12mM、約13mM、約14mM、約15mM、約16mM、約17mM、約18mM、約19mMまたは約20mMである。
【0099】
本明細書に記載の組成物または組み合わせは、本明細書に記載の構成要素の任意の種類の1、2、3つ、またはそれ以上を含み得ることが具体的に企図される。例えば、組成物は、複数の異なるイオン液体の混合物、溶液、組み合わせ、もしくは乳濁液(例えば、本明細書に記載の異なるイオン液体)、および/または複数の異なる非イオン性界面活性剤の混合物、溶液、組み合わせ、もしくは乳濁液、および/または複数の異なる活性化合物の混合物、溶液、組み合わせ、または乳濁液を含むことができる。
【0100】
任意の局面のいくつかの態様において、1つまたは複数のILは、少なくとも1つの化合物と組み合わせることができる。本明細書で使用される場合、「と組み合わせた」は、任意の分子的または物理的配置で同じ製剤中、例えば混和物中、溶液中、混合物中、懸濁液中、コロイド中、エマルション中に存在する2つ以上の物質を指す。製剤は、均質または不均質な混合物であり得る。いずれかの局面のいくつかの態様において、活性化合物はILとともに溶液状態、混合物状態、混和物状態、懸濁液状態などで、超構造、例えばナノ粒子、リポソーム、ベクター、細胞、足場などにより含まれ得る。
【0101】
本明細書で使用される場合、「活性化合物」または「活性作用物質」は、標的細胞または標的生物に効果を及ぼす任意の作用物質である。「化合物」および「作用物質」という用語は、普通は存在しないか、または細胞、組織、もしくは対象に投与および/または提供されるレベルでは存在しない任意の実体を指す。作用物質は、以下を含む群より選択できる:化学物質;小さい有機または無機分子;シグナル伝達分子;核酸配列;核酸類似体;タンパク質;ペプチド;酵素;アプタマー;ペプチド模倣体、ペプチド誘導体、ペプチド類似体、抗体;細胞内抗体(intrabody);生体高分子、細菌、植物、菌類、または動物の細胞もしくは組織などの生物材料から作られた抽出物;天然または合成の組成物またはその機能的断片。いくつかの態様において、作用物質は、合成および天然の非タンパク質性実体を含むがこれらに限定されない、任意の化学物質、実体、または部分である。作用物質は、所望の活性および/または特性を有することが知られ得るか、または多様な化合物のライブラリから選択できる。本明細書に記載される方法での使用が企図される活性化合物の非限定的な例には、小分子、ポリペプチド、核酸、化学治療/化学療法化合物、抗体、抗体試薬、ワクチン、GLP-1ポリペプチドもしくはその模倣体/類似体、インスリン、アカルボース、リツキシマブ、またはルキソリチニブが含まれる。
【0102】
本明細書に記載される場合、核酸分子は、ベクター、発現ベクター、阻害性核酸、アプタマー、鋳型分子もしくはカセット(例えば、遺伝子編集用)、またはターゲティング分子(例えば、CRISPR-Cas技術用)、または細胞への送達が望まれる任意の他の核酸分子であり得る。核酸分子は、RNA、DNA、またはそれらの合成もしくは修飾バージョンであり得る。任意の局面のいくつかの態様において、核酸は、阻害性核酸、例えばsiRNAである。任意の局面のいくつかの態様において、核酸は、siRNA、pDNA、またはmRNAである。任意の局面のいくつかの態様において、核酸は、ローブ型(robed)核酸である。
【0103】
いずれかの態様の1つの局面において、本明細書に記載されるのは、本明細書に記載のとおりに1つまたは複数のILと組み合わせた核酸分子を細胞と接触させる工程を含む、核酸分子を細胞へ送達する方法である。いずれかの局面のいくつかの態様において、細胞は対象中の細胞であり、接触工程は、1つまたは複数のILと組み合わせた核酸分子を対象に投与する工程を含む。いずれかの局面のいくつかの態様において、細胞はインビトロ、インビボ、またはエクスビボである。いずれかの局面のいくつかの態様において、細胞は真核生物である。いずれかの局面のいくつかの態様において、細胞は哺乳動物細胞である。いずれかの局面のいくつかの態様において、細胞は上皮細胞、例えば腸上皮細胞である。任意の局面のいくつかの態様において、細胞は、表皮細胞である。
【0104】
本明細書で使用される場合、「小分子」という用語は、ペプチド、ペプチド模倣体、アミノ酸、アミノ酸類似体、ポリヌクレオチド、ポリヌクレオチド類似体、アプタマー、ヌクレオチド、ヌクレオチド類似体、1モル当たり約10,000グラム未満の分子量を有する有機または無機化合物(すなわち、ヘテロ有機および有機金属化合物を含む)、1モル当たり約5,000グラム未満の分子量を有する有機または無機化合物、1モル当たり約1,000グラム未満の分子量を有する有機または無機化合物、1モル当たり約500グラム未満の分子量を有する有機または無機化合物、ならびにそのような化合物の塩、エステル、および他の薬学的に許容される形態を含み得るがこれらに限定されない化学作用物質を指す。
【0105】
任意の局面のいくつかの態様において、活性化合物は治療化合物または薬物、例えば、対象における少なくとも1つの状態の処置のために治療的に有効な作用物質または化合物であり得る。治療的化合物は様々な状態に対して当技術分野において公知で、例えば、ウェブ上のdrugs.comで入手可能なデータベースまたはウェブ上のcatalog.data.gov/dataset/drugsfda-databaseで入手可能なFDA承認化合物のカタログを参照されたく;これらはそれぞれその全体が参照により本明細書に組み入れられる。
【0106】
非限定例として、本明細書における活性化合物/治療化合物としての使用に適した例示的抗体および/または抗体試薬には下記が含まれる:アブシキシマブ;アダリムマブ;アドリムマブ-atto(adlimumab-atto);ado-トラスツズマブ;ado-トラスツズマブエムタンシン;アレムツズマブ;アリロクマブ;アテゾリズマブ;アベルマブ;バシリキシマブ;ベリムマブ;ベバシズマブ;ベズロトクスマブ;ブリナツモマブ;ブレンツキシマブ;ブレンツキシマブベドチン;ブロダルマブ;カナキヌマブ;カプロマブ;カプロマブペンデチド;セルトリズマブ;セルトリズマブペゴル;セツキシマブ;ダクリズマブ;ダラツムマブ;デノスマブ;ジヌツキシマブ;デュピルマブ;デュルバルマブ;エクリズマブ;エロツズマブ;エボロクマブ;エタネルセプト;エタネルセプト-szzs;ゴリムマブ;イブリツモマブ;イブリツモマブチオウキセタン;イダルシズマブ;インフリキシマブ;インフリキシマブ-abda;インフリキシマブ-dyyb;イピリムマブ;イキセキズマブ;メポリズマブ;ナタリズマブ;ネシツムマブ;ニボルマブ;オビルトキサキシマブ;オビヌツズマブ;オクレリズマブ;オファツムマブ;オララツマブ;オマリズマブ;パリビズマブ;パニツムマブ;ペムブロリズマブ;ペルツズマブ;ラムクリウマブ(ramucriumab);ラニビズマブ;ラキシバクマブ;レスリズマブ;リツキシマブ;セクキヌマブ;シルツキシマブ;トシリズマブ;トラスツズマブ;ウステキヌマブ;ベドリズマブ;サリルマブ;グセルクマブ;イノツズマブオゾガマイシン;イノツズマブ;アダリムマブ-adbm、ゲムツズマブオゾガマイシン;ゲムツズマブ;ベバシズマブ-awwb;ベンラリズマブ;エミシズマブ;エミシズマブ-kxwh;トラスツズマブ-dkst;インフリキシマブ-qbtx;イバリズマブ;イバリズマブ-uiyk;チルドラキズマブ;チルドラキズマブ-asmn;ブロスマブ;ブロスマブ-twza;エレヌマブ;エレヌマブ-aooe;トシツモマブ;モガムリズマブ;モキセツモマブ;モキセツモマブパスードトクス;セミプリマブ;ポラツズマブ;カツマキソマブ;ポラツズマブベドチン;および前述のものの一部を組み合わせることにより作製した二重特異性抗体を含む、その組み合わせ。
【0107】
非限定例として、本明細書における活性化合物/治療化合物としての使用に適した例示的阻害性核酸には下記が含まれる:パチシラン;および前述のものの一部を組み合わせることにより作製した二重特異性抗体を含む、その組み合わせ。
【0108】
本明細書で使用される場合、「化学療法剤」という用語は、異常な細胞増殖によって特徴付けられる疾患の治療において治療的有用性を有する任意の化学的または生物学的作用物質を指す。そのような疾患は、腫瘍、新生物、およびがんならびに過形成増殖によって特徴付けられる疾患を含む。これらの作用物質は、継続した増殖のためにがん細胞が依存する細胞活性を阻害するように機能し得る。すべての態様のいくつかの局面において、化学療法剤は細胞周期阻害剤または細胞分裂阻害剤である。本発明の方法において有用な化学療法剤の範疇には、アルキル化/アルカロイド剤、代謝拮抗剤、ホルモンもしくはホルモン類似体、および多岐にわたる抗腫瘍薬が含まれる。これらの作用物質のほとんどは、がん細胞に対して直接的または間接的に傷害性である。1つの態様において、化学療法剤は放射性分子である。
【0109】
いずれかの局面のいくつかの態様において、活性化合物は、疎水性分子、例えば、エストラジオール、テストステロン、コルチコステロン、パクリタキセル、ドキソルビシン、シスプラチン、および/またはカンプトテシンである。いずれかの局面のいくつかの態様において、活性化合物は、親水性分子である。
【0110】
いずれかの局面のいくつかの態様において、活性化合物はポリペプチドである。任意の局面のいくつかの態様において、活性化合物は抗体または抗体試薬である。本明細書において用いられる「抗体試薬」という用語は、少なくとも1つの免疫グロブリン可変ドメインまたは免疫グロブリン可変ドメイン配列を含み、所与の抗原に特異的に結合するポリペプチドを指す。抗体試薬は、抗体または抗体の抗原結合ドメインを含むポリペプチドを含み得る。いくつかの態様において、抗体試薬はモノクローナル抗体またはモノクローナル抗体の抗原結合ドメインを含むポリペプチドを含み得る。例えば、抗体は重(H)鎖可変領域(本明細書ではVHと略される)および軽(L)鎖可変領域(本明細書ではVLと略される)を含み得る。別の例において、抗体は2つの重(H)鎖可変領域および2つの軽(L)鎖可変領域を含む。「抗体試薬」という用語は、抗体の抗原結合断片(例えば一本鎖抗体、FabおよびsFab断片、F(ab')2、Fd断片、Fv断片、scFv、およびドメイン抗体(dAb)断片ならびに完全抗体を包含する。
【0111】
任意の局面のいくつかの態様において、活性化合物は約450よりも大きい分子量を有する。任意の局面のいくつかの態様において、活性化合物は約500よりも大きい分子量を有する。任意の局面のいくつかの態様において、活性化合物は450よりも大きい、例えば、450よりも大きい、500よりも大きい、550よりも大きい、600よりも大きい、1000よりも大きい、またはそれ以上の分子量を有する。任意の局面のいくつかの態様において、活性化合物は極性である。
【0112】
いくつかの態様において、阻害性核酸はNFKBIZ阻害性核酸であり、例えば、NFKBIZ mRNAに結合して、NFKBIZの発現を阻害する。本明細書において用いられる「NFKBIZ」または「NFKB阻害剤ゼータ」は、NF-κB複合体の制御において重要な役割を果たす、核因子κB(IκB)タンパク質IκBζの阻害剤を指す。これは、炎症シグナル伝達、好中球走化性、および白血球活性化に関与する、TNF-α、IL-17A、およびIL-36誘発性乾癬関連遺伝子産物の直接転写活性化因子である。したがって、本明細書において提供するのは、例えば、NFKBIZの阻害剤、例えば、NFKBIZ阻害性核酸である活性作用物質を含む、本明細書に記載の組成物を投与することによる、乾癬の処置法である。いくつかの種からのNFKBIZの配列は当技術分野において公知で、例えば、ヒトNFKBIZ配列はNCBIデータベースにおいて64332 Gene ID(例えば、mRNAs NM_001005474.3(SEQ ID NO: 5)およびNM_031419.4(SEQ ID NO: 6))の下で入手可能である。当業者であれば、例えば、本明細書において前述した自動化ツールを用いて、NFKBIZ阻害性核酸を容易に設計することができる。NKFBIZ阻害性核酸は、例えば、Dharmacon(Lafayette、CO)からカタログ番号J-040680-06-0050で市販もされている。
【0113】
いくつかの態様において、阻害性核酸はTNF-α阻害性核酸であり、例えば、TNF-α mRNAに結合して、TNF-αの発現を阻害する。本明細書において用いられる「腫瘍壊死因子α」または「TNF-α」は、自己免疫疾患、乾癬、および他の状態に関係があるとされる、炎症性サイトカインを指す。したがって、本明細書において提供するのは、例えば、TNF-αの阻害剤、例えば、TNF-α阻害性核酸である活性作用物質を含む、本明細書に記載の組成物を投与することによる、炎症状態(例えば、乾癬)の処置法および/または炎症を低減もしくは阻害する方法である。いくつかの種からのTNF-αの配列は当技術分野において公知で、例えば、ヒトTNF-α配列はNCBIデータベースにおいて7124 Gene ID(例えば、mRNA NM_000594.4(SEQ ID NO: 7))の下で入手可能である。当業者であれば、例えば、本明細書において前述した自動化ツールを用いて、TNF-α阻害性核酸を容易に設計することができる。TNF-α阻害性核酸は、例えば、Dharmacon(Lafayette、CO)からカタログ番号J-010546-09-0002、J-010546-10-0002、J-010546-11-0002、およびJ-010546-12-0002で市販もされている。
【0114】
いくつかの態様において、阻害性核酸はIL-17阻害性核酸であり、例えば、IL-17 mRNAに結合して、IL-17の発現を阻害する。本明細書において用いられる「インターロイキン17」または「IL-17」は、自己免疫疾患、乾癬、関節リウマチ、多発性硬化症、および他の状態に関係があるとされる、T細胞を活性化することにより産生される炎症性サイトカインを指す。したがって、本明細書において提供するのは、例えば、IL-17の阻害剤、例えば、IL-17阻害性核酸である活性作用物質を含む、本明細書に記載の組成物を投与することによる、炎症状態(例えば、乾癬)の処置法および/または炎症を低減もしくは阻害する方法である。いくつかの種からのIL-17の配列は当技術分野において公知で、例えば、ヒトIL-17配列はNCBIデータベースにおいて3605 Gene ID(例えば、mRNA NM_002190.3(SEQ ID NO: 8))の下で入手可能である。当業者であれば、例えば、本明細書において前述した自動化ツールを用いて、IL-17阻害性核酸を容易に設計することができる。IL-17阻害性核酸は、例えば、Dharmacon(Lafayette、CO)からカタログ番号J-007937-05-0002、J-007937-06-0002、J-007937-07-0002、およびJ-007937-08-0002で市販もされている。
【0115】
任意の態様の1つの局面において、本明細書において提供するのは、それを必要としている対象における、炎症状態の処置法および/または炎症を低減する方法であって、少なくとも1つのILおよび少なくとも1つの抗炎症剤を含む、本明細書に記載の組成物を対象に投与する段階を含む方法である。任意の局面のいくつかの態様において、抗炎症剤は、1つまたは複数の炎症性遺伝子産物、例えば、IL-17、TNF-α、および/またはNFKBIZを標的とする阻害性核酸である。
【0116】
本明細書において用いられる「炎症」は、病原体、損傷細胞、または刺激物質などの、有害な刺激に対する複雑な生体反応を指す。炎症は、有害な刺激を除去し、また組織の治癒プロセスを開始するための、生物による防護的試みである。したがって、「炎症」という用語は、炎症性サイトカイン、炎症メディエーターの産生および/またはそのようにして産生されたサイトカインの作用によって起こる、関連する下流の細胞事象、例えば、発熱、液体貯留、膨潤、膿瘍形成、および細胞死を引き起こす、任意の細胞プロセスを含む。炎症は、急性反応(すなわち、炎症プロセスが活性である反応)および慢性反応(すなわち、遅い進行および新しい結合組織の形成によって特徴づけられる反応)の両方を含み得る。急性および慢性炎症は、関与する細胞の種類によって区別してもよい。急性炎症は多形核好中球を含むことが多いが;慢性炎症は通常はリンパ組織球性および/または肉芽腫性反応によって特徴づけられる。
【0117】
炎症状態は、炎症組織(例えば、リンパ球、好中球、マクロファージ、好酸球、肥満細胞、好塩基球および樹状細胞などの白血球の浸潤物)または疾患状態の異常な臨床的および組織学的特徴を誘発または寄与する炎症プロセスによって特徴づけられる、任意の疾患状態である。炎症状態には、皮膚の炎症状態、肺の炎症状態、関節の炎症状態、腸の炎症状態、眼の炎症状態、内分泌系の炎症状態、心血管系の炎症状態、腎臓の炎症状態、肝臓の炎症状態、中枢神経系の炎症状態、または敗血症関連状態が含まれるが、それらに限定されない。いくつかの態様において、炎症状態は創傷治癒に関連する。いくつかの態様において、本明細書に記載の方法に従って処置される炎症は、皮膚炎症;物質乱用または薬物依存によって引き起こされる炎症;感染に関連する炎症;角膜の炎症;網膜の炎症;脊髄の炎症;器官再生に関連する炎症;および肺炎症であり得る。
【0118】
いくつかの態様において、炎症状態は皮膚の炎症状態である。この局面のいくつかの態様において、炎症状態は自己免疫疾患である。
【0119】
皮膚の炎症状態の非限定例には、乾癬、例えばスウィート症候群、壊疽性膿皮症、角膜下膿疱性皮膚症、時給制隆起性紅斑、ベーチェット病または急性全身性発疹性膿疱症、水疱性障害、乾癬、膿疱性病変を生じる状態、ざ瘡、尋常性ざ瘡、皮膚炎(例えば接触性皮膚炎、アトピー性皮膚炎、脂漏性皮膚炎、湿疹性皮膚炎、亀裂性湿疹(eczema craquelee)、光アレルギー性皮膚炎、光毒性皮膚炎、植物性光皮膚炎、放射線皮膚炎、うっ滞性皮膚炎またはアレルギー性接触皮膚炎)、湿疹、外傷に起因する潰瘍およびびらん、火傷、皮膚または粘膜の虚血、いくつかの形態の魚鱗癬、表皮水疱症、肥厚性瘢痕、ケロイド、自然老化の皮膚変化、光老化、皮膚の機械的剪断に起因する摩擦水疱、コルチコステロイドの局所使用に起因する皮膚萎縮、および粘膜の炎症(例えば、口唇炎、唇あれ、鼻刺激、粘膜炎および外陰膣炎)が含まれ得る。
【0120】
いくつかの態様において、炎症状態は自己免疫疾患であり得る。自己免疫疾患の非限定例には、1型糖尿病;全身性エリテマトーデス;関節リウマチ;乾癬;炎症性腸疾患;クローン病;および自己免疫性甲状腺炎が含まれ得る。
【0121】
非限定例として、炎症状態は、肺の炎症状態、例えば喘息、気管支炎、慢性気管支炎、細気管支炎、肺炎、副鼻腔炎、肺気腫、成人呼吸窮迫症候群、肺炎症、肺線維症、および嚢胞性線維症(これは、胃腸管または他の組織に追加的または代替的に関与し得る)であり得る。非限定例として、炎症状態は、関節の炎症状態、例えば関節リウマチ、リウマチ性脊椎炎、若年性関節リウマチ、骨関節炎、痛風性関節炎、感染性関節炎、乾癬性関節炎、および他の関節炎状態であり得る。非限定例として、炎症状態は、消化管または腸の炎症状態、例えば炎症性腸疾患、クローン病、潰瘍性大腸炎および遠位直腸炎であり得る。非限定例として、炎症状態は、眼の炎症状態、例えばドライアイ症候群、ブドウ膜炎(虹彩炎を含む)、結膜炎、強膜炎、および乾性角結膜炎であり得る。非限定例として、炎症状態は、内分泌系の炎症状態、例えば自己免疫性甲状腺炎(橋本病)、バセドウ病、I型糖尿病、ならびに副腎皮質の急性および慢性炎症であり得る。非限定例として、炎症状態は、心血管系の炎症状態、例えば冠動脈梗塞損傷、末梢血管疾患、心筋炎、血管炎、狭窄の血管再生、アテローム性動脈硬化症、およびII型糖尿病に関連する血管疾患であり得る。非限定例として、炎症状態は、腎臓の炎症状態、例えば糸球体腎炎、間質性腎炎、ループス腎炎、およびウェゲナー病に続発する腎炎、急性腎炎に続発する急性腎不全、閉塞後症候群および尿細管虚血であり得る。非限定例として、炎症状態は、肝臓の炎症状態、例えば肝炎(ウイルス感染、自己免疫応答、薬物処置、毒素、環境因子から、または原発性障害の二次的結果として生じる)、胆道閉鎖症、原発性胆汁性肝硬変および原発性硬化性胆管炎であり得る。非限定例として、炎症状態は、中枢神経系の炎症状態、例えば多発性硬化症およびアルツハイマー病またはHIV感染に関連する認知症などの神経変性疾患であり得る。非限定例として、炎症状態は、中枢神経系の炎症状態、例えばMS;すべてのタイプの脳炎および髄膜炎;急性播種性脳脊髄炎;急性横断性脊髄炎;視神経脊髄炎;限局性脱髄症候群(例えば、バロー同心円性硬化症およびMSのマールブルグ変異型);進行性多巣性白質脳症;亜急性硬化性全脳炎;急性出血性白質脳炎(ハースト病);ヒトTリンパ好性ウイルス1型関連骨髄症/熱帯性痙性不全対麻痺症(tropical spactic paraparesis);デビック病;ヒト免疫不全ウイルス脳症;ヒト免疫不全ウイルス空胞性脊髄症;末梢神経障害;ギランバレー症候群および他の免疫媒介性神経障害;ならびに重症筋無力症であり得る。非限定例として、炎症状態は、敗血症関連状態、例えば全身性炎症反応症候群(SIRS)、敗血症性ショックまたは多臓器機能障害症候群(MODS)であり得る。炎症状態のさらなる非限定例には、エンドトキシンショック、歯周病、多発性軟骨炎;関節周囲障害;膵炎;全身性エリテマトーデス(system lupus erythematosus);シェーグレン症候群;血管炎サルコイドーシスアミロイドーシス;アレルギー;アナフィラキシー;全身性肥満細胞症;骨盤内炎症性疾患;多発性硬化症;多発性硬化症(MS);セリアック病、ギランバレー症候群、硬化性胆管炎、自己免疫性肝炎、レイノー現象、グッドパスチャー症候群、ウェゲナー肉芽腫症、リウマチ性多発性筋痛症、側頭動脈炎/巨細胞性動脈炎、慢性疲労症候群CFS)、自己免疫性アジソン病、強直性脊椎炎、急性播種性脳脊髄炎、抗リン脂質抗体症候群、再生不良性貧血、特発性血小板減少性紫斑病、重症筋無力症、オプソクローヌス・ミオクローヌス症候群、視神経炎、オード甲状腺炎(Ord's thyroiditis)、天疱瘡、悪性貧血、イヌの多発性関節炎、ライター症候群、高安動脈炎、温式自己免疫性溶血性貧血、線維筋痛症(FM)、自己炎症性PAPA症候群、家族性地中海熱、リウマチ性多発性筋痛症、結節性多発動脈炎、チャーグ・ストラウス症候群;線維化肺胞炎、過敏性肺炎、アレルギー性アスペルギルス症、特発性肺好酸球増加症、閉塞性細気管支炎性基質化肺炎;蕁麻疹;ルポイド肝炎;家族性感冒自己炎症性症候群、マックル・ウェルズ症候群、新生児期発症多臓器性炎症性疾患、移植片拒絶(同種移植片拒絶および移植片対宿主病を含む)、耳炎、慢性閉塞性肺疾患、副鼻腔炎、慢性前立腺炎、再灌流傷害、珪肺症、炎症性筋障害、過敏症および片頭痛が含まれる。いくつかの態様において、炎症状態は、感染、例えば、ウイルス、細菌、真菌、寄生虫またはプリオン感染に関連する。いくつかの態様において、炎症状態はアレルギー反応に関連する。いくつかの態様において、炎症状態は汚染物質(例えば、アスベスト症、珪肺症、またはベリリウム症)に関連する。
【0122】
いくつかの態様において、炎症状態は、局所の状態、例えば、発疹またはアレルギー反応であり得る。いくつかの態様において、炎症は創傷に関連する。
【0123】
抗炎症剤は当技術分野において公知であり、非限定例として、非ステロイド性抗炎症薬(NSAID-アスピリン、イブプロフェン、またはナプロキセンなど);糖質コルチコイド(例えば、コルチゾール、プレドニゾン、プレドニゾロン、メチルプレドニゾロン、デキサメタゾン、ベタメタゾン、トリアムシノロン、およびベクロメタゾン)を含むコルチコステロイド;メトトレキセート;スルファサラジン;レフルノミド;抗TNF薬;シクロホスファミド;消炎促進薬(pro-resolving drug);ミコフェノレート;またはアヘン剤(例えば、エンドルフィン、エンケファリン、およびダイノルフィン)、ステロイド、鎮痛薬、バルビツール酸塩、オキシコドン、モルヒネ、リドカイン、および炎症性遺伝子産物の阻害剤(例えば、本明細書において前述した阻害性核酸)が含まれ得る。炎症性遺伝子は当技術分野において公知であり、非限定例として、NKFBIZ、TNF-α、IL-17、IL-36(IL-37α、IL-36β、およびIL-36γ)、IL-22、IL-17C、CXCL8、CCL20、IL23A、DEFB4、およびLCN2が含まれる。
【0124】
本明細書において用いられる「組成物」は、特に記載がないかぎり、任意のIL、ILの組み合わせ、または1つもしくは複数のILと1つもしくは複数の本明細書に記載の活性作用物質との組み合わせを指す。
【0125】
任意の局面のいくつかの態様において、少なくとも1つのILおよび任意で活性化合物を含む本明細書に記載の組成物または組み合わせは、経口、皮下、経皮、腫瘍内、静脈内、皮内、または非経口製剤として製剤化することができる。任意の局面のいくつかの態様において、本明細書に記載の組成物または組み合わせは、粘膜、例えば、鼻、口腔、または膣の膜への送達のために製剤化することができる。任意の局面のいくつかの態様において、経口製剤は、少なくとも1つのILおよび任意で活性化合物を含む組成物を含む、分解性カプセル剤であり得る。
【0126】
任意の局面のいくつかの態様において、本明細書に記載の組成物または組み合わせであって、少なくとも1種のILおよび任意で活性化合物を含む組成物または組み合わせは、皮下製剤、経皮製剤、または局所製剤として製剤化されてよい。任意の局面のいくつかの態様において、本明細書に記載の組成物または組み合わせであって、少なくとも1種のILおよび核酸を含む組成物または組み合わせは、皮下製剤、経皮製剤、または局所製剤として製剤化されてよい。任意の局面のいくつかの態様において、本明細書に記載の組成物または組み合わせであって、少なくとも1種のILおよび核酸を含む組成物または組み合わせは、皮膚疾患を処置する方法において使用するための、皮下製剤、経皮製剤、または局所製剤として製剤化されてよく、該皮膚疾患は例えば、乾癬、基底細胞がん、扁平上皮がん、アトピー性皮膚炎、脱毛症、または加齢などである。任意の局面のいくつかの態様において、本明細書に記載の組成物または組み合わせであって、少なくとも1種のILおよび任意で活性化合物を含む組成物または組み合わせは、局所製剤として製剤化されてよい。任意の局面のいくつかの態様において、本明細書に記載の組成物または組み合わせであって、少なくとも1種のILおよび核酸を含む組成物または組み合わせは、局所製剤として製剤化されてよい。任意の局面のいくつかの態様において、本明細書に記載の組成物または組み合わせであって、少なくとも1種のILおよび核酸を含む組成物または組み合わせは、皮膚疾患を処置する方法において使用するための局所製剤として製剤化されてよく、該皮膚疾患は例えば、乾癬、基底細胞がん、扁平上皮がん、アトピー性皮膚炎、脱毛症、または加齢などである。
【0127】
任意の局面のいくつかの態様において、本明細書に記載の組成物または組み合わせであって、少なくとも1種のILおよびsiRNAを含む組成物または組み合わせは、皮下製剤、経皮製剤、または局所製剤として製剤化されてよい。任意の局面のいくつかの態様において、本明細書に記載の組成物または組み合わせであって、少なくとも1種のILおよびsiRNAを含む組成物または組み合わせは、皮膚疾患を処置する方法において使用するための、皮下製剤、経皮製剤、または局所製剤として製剤化されてよく、該皮膚疾患は例えば、乾癬、基底細胞がん、扁平上皮がん、アトピー性皮膚炎、脱毛症、または加齢などである。任意の局面のいくつかの態様において、本明細書に記載の組成物または組み合わせであって、少なくとも1種のILおよびsiRNAを含む組成物または組み合わせは、局所製剤として製剤化されてよい。任意の局面のいくつかの態様において、本明細書に記載の組成物または組み合わせであって、少なくとも1種のILおよびsiRNAを含む組成物または組み合わせは、皮膚疾患を処置する方法において使用するための局所製剤として製剤化されてよく、該皮膚疾患は例えば、乾癬、基底細胞がん、扁平上皮がん、アトピー性皮膚炎、脱毛症、または加齢などである。
【0128】
任意の局面のいくつかの態様において、本明細書に記載の組成物または組み合わせであって、少なくとも1種のILおよびpDNAを含む組成物または組み合わせは、皮下製剤、経皮製剤、または局所製剤として製剤化されてよい。任意の局面のいくつかの態様において、本明細書に記載の組成物または組み合わせであって、少なくとも1種のILおよびpDNAを含む組成物または組み合わせは、皮膚疾患を処置する方法において使用するための、皮下製剤、経皮製剤、または局所製剤として製剤化されてよく、該皮膚疾患は例えば、乾癬、基底細胞がん、扁平上皮がん、アトピー性皮膚炎、脱毛症、または加齢などである。任意の局面のいくつかの態様において、本明細書に記載の組成物または組み合わせであって、少なくとも1種のILおよびpDNAを含む組成物または組み合わせは、局所製剤として製剤化されてよい。任意の局面のいくつかの態様において、本明細書に記載の組成物または組み合わせであって、少なくとも1種のILおよびpDNAを含む組成物または組み合わせは、皮膚疾患を処置する方法において使用するための局所製剤として製剤化されてよく、該皮膚疾患は例えば、乾癬、基底細胞がん、扁平上皮がん、アトピー性皮膚炎、脱毛症、または加齢などである。
【0129】
任意の局面のいくつかの態様において、本明細書に記載するのは、本明細書に記載の少なくとも1つのILおよび少なくとも1つの活性化合物を含む組成物である。任意の局面のいくつかの態様において、本明細書に記載するのは、本明細書に記載の少なくとも1つのILおよび少なくとも1つの活性化合物から本質的になる組成物である。任意の局面のいくつかの態様において、本明細書に記載するのは、本明細書に記載の少なくとも1つのILおよび少なくとも1つの活性化合物からなる組成物である。任意の局面のいくつかの態様において、本明細書に記載の少なくとも1つのILを含む組成物および少なくとも1つの活性化合物を単剤療法として投与し、例えば、その条件に対する別の処置は対象に投与しない。
【0130】
任意の態様の1つの局面において、本明細書に記載するのは、少なくとも1つの活性化合物を本明細書に記載の少なくとも1つのILと組み合わせて含む薬学的組成物である。いくつかの態様において、薬学的組成物は、本明細書に記載の少なくとも1つのILおよび1つまたは複数の活性化合物を含む。いくつかの態様において、薬学的組成物は、本明細書に記載の少なくとも1つのILおよび1つまたは複数の活性化合物から本質的になる。いくつかの態様において、薬学的組成物は、本明細書に記載の少なくとも1つのILおよび1つまたは複数の活性化合物からなる。いくつかの態様において、薬学的組成物は、本明細書に記載の少なくとも1つのILおよび1つまたは複数の活性化合物の水溶液から本質的になる。いくつかの態様において、薬学的組成物は、本明細書に記載の少なくとも1つのILおよび1つまたは複数の活性化合物の水溶液からなる。
【0131】
本明細書に記載の組成物、製剤、および組み合わせは、本明細書に記載の少なくとも1つのIL、例えば、1つのIL、2つのIL、3つのIL、またはそれ以上を含み得る。任意の局面のいくつかの態様において、本明細書に記載の組成物、製剤、または組み合わせは、本明細書に記載の少なくとも1つのILおよびCAGE(コリンおよびゲラネート)を含み得る。
【0132】
任意の局面のいくつかの態様において、少なくとも1つの活性化合物および少なくとも1つのイオン液体は、少なくとも1つの非イオン性界面活性剤とのさらなる組み合わせである。本明細書において用いられる「非イオン性界面活性剤」とは、正味イオン電荷を欠き、水性媒質中で目に見える程度に分離しない界面活性剤を指す。非イオン性界面活性剤の特性は、分子内の親水性基と疎水性基の割合に大きく依存する。親水性基にはオキシエチレン基(--OCH2 CH2--)およびヒドロキシ基が含まれる。脂肪酸などの疎水性分子中でこれらの基の数を変化させることにより、モノステアリン酸グリセリンなどの強疎水性および水不溶性化合物から、マクロゴールなどの強親水性および水溶性化合物までの範囲の物質が得られる。これら2つの極端なタイプの間には、マクロゴールエステルおよびエーテルならびにソルビタン誘導体などの、親水性および疎水性基の割合がより均一に均衡のとれたものが含まれる。適切な非イオン性界面活性剤は、Martindale, The Extra Pharmacopoeia, 28th Edition, 1982, The Pharmaceutical Press, London, Great Britain, pp. 370 to 379において見いだされ得る。非イオン性界面活性剤の非限定例には、ポリソルベート、Tween(商標)、エチレンオキシドおよびプロピレンオキシドのブロック共重合体、脂肪酸およびそれらの誘導体のグリコールおよびグリセリルエステル、脂肪酸のポリオキシエチレンエステル(マクロゴールエステル)、脂肪酸およびそれらの誘導体のポリオキシエチレンエーテル(マクロゴールエーテル)、ポリビニルアルコール、およびソルビタンエステル、ソルビタンモノエステル、脂肪アルコールおよびポリエチレングリコールから生成されるエーテル、ポリオキシエチレン-ポリプロピレングリコール、アルキルポリグリコシド、セトマクロゴール1000、セトステアリルアルコール、セチルアルコール、コカミドDEA、コカミドMEA、デシルグルコシド、デシルポリグルコース、モノステアリン酸グリセロール、IGEPAL CA-630、イソセテス-20、ラウリルグルコシド、マルトシド、モノラウリン、マイコスブチリン、ノニデットP-40、ノノキシノール-9、ノノキシノール、NP-40、オクタエチレングリコールモノドデシルエーテル、N-オクチルβ-D-チオグルコピラノシド、オクチルグルコシド、オレイルアルコール、PEG-10ヒマワリグリセリド、ペンタエチレングリコールモノドデシルエーテル、ポリドカノール、ポロクサマー、ポロクサマー407、ポリエトキシル化獣脂アミン、ポリリシノール酸ポリグリセロール、ソルビタン、ソルビタンモノラウレート、ソルビタンモノステアレート、ソルビタントリステアレート、ステアリルアルコール、サーファクチン、トリトンX-100などが含まれる。任意の局面のいくつかの態様において、少なくとも1つの非イオン性界面活性剤は中性親水性ヘッド基を有する。
【0133】
本明細書において用いられる「ポリソルベート」とは、脂肪酸でエステル化されたエトキシル化ソルビタン(ソルビトールの誘導体)に由来する界面活性剤を指す。ポリソルベートの一般的な商標名には、Scattics(商標)、Alkest(商標)、Canarcel(商標)、およびTween(商標)が含まれる。例示的ポリソルベートには、ポリソルベート20(ポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノラウレート)、ポリソルベート40(ポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノパルミテート)、ポリソルベート60(ポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノステアレート)、およびポリソルベート80(ポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノオレエート)が含まれる。
【0134】
任意の局面のいくつかの態様において、少なくとも1つの非イオン性界面活性剤(例えば、少なくとも1つのポリソルベート)は約0.1%~約50%w/vの濃度で存在する。任意の局面のいくつかの態様において、少なくとも1つの非イオン性界面活性剤(例えば、少なくとも1つのポリソルベート)は0.1%~50%w/vの濃度で存在する。任意の局面のいくつかの態様において、少なくとも1つの非イオン性界面活性剤(例えば、少なくとも1つのポリソルベート)は約1%~約5%w/vの濃度で存在する。任意の局面のいくつかの態様において、少なくとも1つの非イオン性界面活性剤(例えば、少なくとも1つのポリソルベート)は1%~5%w/vの濃度で存在する。任意の局面のいくつかの態様において、少なくとも1つの非イオン性界面活性剤(例えば、少なくとも1つのポリソルベート)は約3%~約10%w/vの濃度で存在する。任意の局面のいくつかの態様において、少なくとも1つの非イオン性界面活性剤(例えば、少なくとも1つのポリソルベート)は3%~10%w/vの濃度で存在する。任意の局面のいくつかの態様において、少なくとも1つの非イオン性界面活性剤(例えば、少なくとも1つのポリソルベート)は約5%w/v未満の濃度で存在する。任意の局面のいくつかの態様において、少なくとも1つの非イオン性界面活性剤(例えば、少なくとも1つのポリソルベート)は5%w/v未満の濃度で存在する。
【0135】
任意の局面のいくつかの態様において、本明細書に記載の少なくとも1つの活性化合物と少なくとも1つのILの組み合わせは、1つまたは複数のナノ粒子中に提供される。任意の局面のいくつかの態様において、本明細書に記載の少なくとも1つの活性化合物と少なくとも1つのILの組み合わせは、活性化合物を含むナノ粒子を含み、ナノ粒子は、本明細書に記載の少なくとも1つのILを含む組成物中での溶液または懸濁液の状態にある。
【0136】
いずれかの局面のいくつかの態様において、本明細書に記載される組成物、例えば少なくとも1つのILおよび活性化合物を含む組成物は、薬学的に許容される担体をさらに含み得る。本明細書で使用される場合、「薬学的に許容される」、「生理学的に忍容される」という用語およびそれらの文法上のバリエーションは、組成物、担体、希釈剤、および試薬を指す場合、互換的に使用され、吐き気、めまい、胃の不調などの望ましくない生理学的効果を産生することなく、材料を哺乳動物へまたは哺乳動物上に投与できることを表す。薬学的に許容される担体は、そのように望まれない限り、それと混和されている作用物質に対する免疫応答の上昇を促進しない。その中に溶解または分散された有効成分を含む薬理学的組成物の調製は、当技術分野においてよく理解されており、製剤に基づいて限定される必要はない。通常そのような組成物は、液体溶液または懸濁液のいずれかとして注射可能なように調製されるが、使用前に液体中で溶解に適切または懸濁液に適切な固体の形態でも調製し得る。調製物は乳化することもでき、またはリポソーム組成物として提示することもできる。活性成分は、薬学的に許容され、活性成分と適合する賦形剤と、本明細書に記載される治療的方法での使用に適切な量で混合できる。適切な賦形剤には、例えば水、生理食塩水、デキストロース、グリセロール、エタノールなど、およびそれらの組み合わせが含まれる。さらに、所望の場合、組成物は、活性成分の効き目を増強する湿潤剤もしくは乳化剤、pH緩衝剤などの少量の補助物質を含み得る。本開示の治療組成物は、その中の成分の薬学的に許容される塩を含み得る。薬学的に許容される塩には、例えば塩酸もしくはリン酸などの無機酸、または酢酸、酒石酸、マンデル酸などの有機酸と形成される(ポリペプチドの遊離アミノ基と形成される)、酸付加塩が含まれる。遊離カルボキシル基と形成された塩は、例えばナトリウム、カリウム、アンモニウム、カルシウム、または水酸化第二鉄などの無機塩基、およびイソプロピルアミン、トリメチルアミン、2-エチルアミノエタノール、ヒスチジン、プロカインなどの有機塩基からも由来し得る。生理学的に忍容される担体は、当技術分野において周知である。例示的な液体担体は、有効成分および水に加えて材料を含まないか、または生理学的pH値のリン酸ナトリウム、生理学的食塩水、または両方、例えばリン酸緩衝生理食塩水などの緩衝液を含む無菌水溶液である。さらに加えて、水性担体は複数の緩衝塩ならびに塩化ナトリウムおよび塩化カリウム、デキストロース、ポリエチレングリコール、および他の溶質などの塩を含み得る。液体組成物は、水に加えておよび水を除外して、液相も含み得る。そのような追加の液相の例は、グリセリン、綿実油などの植物油、および水油エマルションである。本明細書に記載される方法で使用される、特定の障害または病状の治療に効果がある活性作用物質の量は、障害または病状の本質に依存し、標準的な臨床技術によって決定できる。適切な薬学的担体は、技術の本分野における標準的な参照テキストであるRemington's Pharmaceutical Sciences, A. Osolに記載されている。例えば、注射による投与に適切な非経口組成物は、1.5重量%の活性成分を0.9%塩化ナトリウム溶液に溶解することで調製される。
【0137】
薬学的担体の文脈における「担体」という用語は、治療薬が一緒に投与される希釈剤、アジュバント、賦形剤、または媒体を指す。そのような薬学的担体は、落花生油、大豆油、鉱油、ゴマ油などの、石油、動物、植物、または合成起源のものを含む、水および油などの無菌液体であり得る。薬学的組成物が静脈内投与される場合は、水が好ましい担体である。生理食塩水溶液ならびにデキストロース水溶液およびグリセロール溶液も、特に注射可能な溶液のための液体担体として使用できる。適切な薬学的賦形剤には、デンプン、グルコース、ラクトース、スクロース、ゼラチン、麦芽、米、小麦粉、チョーク、シリカゲル、ステアリン酸ナトリウム、グリセロールモノステアレート、タルク、塩化ナトリウム、乾燥スキムミルク、グリセロール、プロピレン、グリコール、水、エタノールなどが含まれる。所望の場合、組成物は、少量の湿潤剤もしくは乳化剤、またはpH緩衝剤も含み得る。これらの組成物は、溶液、懸濁液、エマルション、錠剤、丸薬、カプセル、粉末、徐放性製剤などの形態をとり得る。組成物は、トリグリセリドなどの昔ながらの結合剤かつ担体を用いて、坐剤として製剤化できる。経口製剤は、薬学的グレードのマンニトール、ラクトース、デンプン、ステアリン酸マグネシウム、サッカリンナトリウム、セルロース、炭酸マグネシウムなどの標準的な担体を含み得る。適切な薬学的担体の例は、Remington's Pharmaceutical Sciences, 18th Ed., Gennaro, ed. (Mack Publishing Co., 1990)に説明されている。製剤は投与方式に適したものであるべきである。
【0138】
薬学的に許容される担体および希釈剤には、生理食塩水、水性緩衝溶液、溶媒および/または分散媒質が含まれる。そのような担体および希釈剤の使用は、当技術分野において周知である。薬学的に許容される担体としての役目を果たすことができる材料のいくつかの非限定的な例には、以下が含まれる:(1)ラクトース、グルコース、およびスクロースなどの糖;(2)トウモロコシデンプンおよびジャガイモデンプンなどのデンプン;(3)セルロースおよびその誘導体、例えばカルボキシメチルセルロースナトリウム、メチルセルロース、エチルセルロース、微結晶性セルロース、および酢酸セルロース;(4)粉末トラガント;(5)麦芽;(6)ゼラチン;(7)ステアリン酸マグネシウム、ラウリル硫酸ナトリウム、タルクなどの潤滑剤;(8)カカオバターおよび坐剤ワックスなどの賦形剤;(9)落花生油、綿実油、ベニバナ油、ゴマ油、オリーブ油、トウモロコシ油、および大豆油などの油;(10)プロピレングリコールなどのグリコール;(11)グリセリン、ソルビトール、マンニトール、およびポリエチレングリコール(PEG)などのポリオール;(12)オレイン酸エチルおよびラウリン酸エチルなどのエステル;(13)寒天;(14)水酸化マグネシウムおよび水酸化アルミニウムなどの緩衝剤;(15)アルギン酸;(16)発熱物質を含まない水;(17)等張生理食塩水;(18)リンゲル液;(19)エチルアルコール;(20)pH緩衝溶液;(21)ポリエステル、ポリカーボネートおよび/またはポリ無水物;(22)ポリペプチドおよびアミノ酸などの増量剤(23)血清アルブミン、HDL、およびLDLなどの血清成分;(22)エタノールなどのC2~C12アルコール;ならびに(23)薬学的製剤に使用される他の非毒性適合性物質。湿潤剤、着色剤、離型剤、コーティング剤、甘味剤、香味剤、芳香剤、防腐剤、および抗酸化剤も製剤中に存在し得る。「賦形剤」、「担体」、「薬学的に許容される担体」などの用語は、本明細書において互換的に使用される。いくつかの態様において、担体は活性化合物の分解を阻害する。「薬学的に許容される担体」という用語は、組織培養培地を除く。
【0139】
任意の局面のいくつかの態様において、本明細書に記載の組成物、例えば、本明細書に記載の少なくとも1つのILおよび活性化合物を含む組成物を、経口、皮下、静脈内、皮内、または非経口製剤として製剤化することができる。任意の局面のいくつかの態様において、経口製剤は、本明細書に記載の組成物、例えば、本明細書に記載の少なくとも1つのILおよび活性化合物を含む組成物を含む分解性カプセル剤であり得る。
【0140】
本明細書に記載の任意の局面のいくつかの態様において、活性化合物の生物学的活性は、少なくとも1つのIL非存在下での活性と比較して改善または安定化される。本明細書に記載の任意の局面のいくつかの態様において、ILは、少なくとも1つのILが存在しない対照と比較して、皮膚を通過しての活性化合物の浸透性を大きく増強する。
【0141】
任意の態様の1つの局面において、本明細書に記載するのは、本明細書に記載の少なくとも1つのILでコーティングされたカテーテルを用いて、対象に少なくとも活性化合物を投与する方法である。任意の態様の1つの局面において、本明細書に記載するのは、本明細書に記載の少なくとも1つのILでコーティングされたカテーテルを体内に配置することによって体液を採取する方法である。
【0142】
任意の態様の1つの局面において、本明細書に記載の組成物または組み合わせは、例えば、疾患の処置のための、少なくとも1つの活性化合物の投与法または送達法のためのものである。任意の態様の1つの局面において、本明細書に記載するのは、少なくとも1つの活性化合物を投与する方法であって、活性化合物を本明細書に記載の少なくとも1つのILと組み合わせて投与する段階を含む方法である。任意の態様の1つの局面において、本明細書に記載するのは、少なくとも1つの活性化合物を投与することによる疾患の処置法であって、活性化合物を本明細書に記載の少なくとも1つのILと組み合わせて投与する段階を含む方法である。
【0143】
本明細書に記載の方法によって処置される疾患は、例えば、がん(乳がん、白血病、リンパ腫、B細胞慢性リンパ球性白血病、膠芽腫、がん腫、尿路上皮がん、肺がん、結腸直腸がん、リンパ芽球性白血病、リンパ球性白血病、肉腫、黒色腫、前立腺がん、骨髄腫、多発性骨髄腫、非ホジキンリンパ腫)、神経芽細胞腫、糖尿病、感染症、炎症、炎症性疾患(例えば、関節リウマチ、若年性特発性関節炎、乾癬性関節炎、強直性脊椎炎、クローン病、潰瘍性大腸炎、プラーク乾癬)、自己免疫疾患、アトピー性皮膚炎、消化器炎症、炎症性腸疾患(IBD)、コレステロール血症、冠状動脈疾患、喘息、移植/臓器拒絶、全身性エリテマトーデス、多発性硬化症、骨粗鬆症などであり得る。
【0144】
いくつかの態様において、本明細書に記載の方法は、状態を有する、または有すると診断された対象を、例えば、少なくとも1つのILおよび活性化合物を含む、本明細書に記載の組成物で処置することに関する。状態、例えば、糖尿病を有する対象は、現行の糖尿病診断法を使用して医師によって特定することができる。これらの状態を特徴付け、診断を助ける、糖尿病の症状および/または合併症は、当技術分野において周知で、体重減少、遅い治癒、多尿、多飲、多食(polyphagiam)頭痛、皮膚のかゆみ、および疲労が含まれるが、それらに限定されない。例えば、糖尿病の診断に役立ち得る検査には、血液検査(例えば、空腹時グルコースレベル)が含まれるが、それに限定されない。糖尿病の家族歴、または糖尿病の危険因子(例えば、太りすぎ)への暴露は、対象が糖尿病を有する可能性があるかどうかを判定する、または糖尿病の診断を行う際にも役立ち得る。
【0145】
本明細書に記載の組成物および方法は、本明細書に記載の状態を有する、または有すると診断された対象に投与することができる。いくつかの態様において、本明細書に記載の方法は、本明細書に記載の状態の症状を軽減するために、本明細書に記載の組成物、例えば本明細書に記載の少なくとも1つのILおよび活性化合物を含む組成物の有効量を対象に投与する段階を含む。本明細書において用いられる「症状を軽減すること」とは、状態に関連する任意のマーカーまたは症状を改善することである。同等の未処理対照と比較して、そのような低減は、任意の標準の技術で測定して、少なくとも5%、10%、20%、40%、50%、60%、80%、90%、95%、99%またはそれ以上である。本明細書に記載の組成物を対象に投与するための様々な手段は当業者には公知である。そのような方法には、経口、非経口、静脈内、筋肉内、皮下、経皮、気道(エアロゾル)、肺、皮膚、注射、または腫瘍内投与が含まれるが、それらに限定されない。投与は局所または全身であり得る。
【0146】
任意の局面のいくつかの態様において、投与は経皮投与である。任意の局面のいくつかの態様において、投与は経皮投与、粘膜(例えば、鼻粘膜、口腔粘膜、または膣粘膜)への投与、経口投与、皮下投与、皮内投与、非経口投与、腫瘍内投与、または静脈内投与である。
【0147】
経口投与は、錠剤(割線またはコーティング錠を含むが、それらに限定されない)、丸剤、カプレット、カプセル剤、チュアブル錠、粉末パケット、カシェ剤、トローチ、ウエハー、エアロゾルスプレー、または水性液体、非水性液体、水中油乳剤、もしくは油中水乳剤中のシロップ剤、エリキシル剤、液剤もしくは懸濁剤などであるが、それらに限定されない、液体を提供することを含み得る。経口製剤は、錠剤(割線またはコーティング錠を含むが、それらに限定されない)、丸剤、カプレット、カプセル剤、チュアブル錠、粉末パケット、カシェ剤、トローチ、ウエハー、エアロゾルスプレー、または水性液体、非水性液体、水中油乳剤、もしくは油中水乳剤中のシロップ剤、エリキシル剤、液剤もしくは懸濁剤などであるが、それらに限定されない、液体などであるが、それらに限定されない、分離した剤形を含み得る。そのような組成物は、CAGEの所定量および少なくとも1つの活性化合物を含み、当業者には周知の調剤法によって調製され得る。一般に、Remington: The Science and Practice of Pharmacy, 21st Ed., Lippincott, Williams, and Wilkins, Philadelphia PA. (2005)参照。
【0148】
任意の態様の1つの局面において、本明細書に記載するのは、皮下、皮内または静脈内投与による少なくとも1つの活性化合物の送達法であって、活性化合物を本明細書に記載の少なくとも1つのILと組み合わせて投与する段階を含む方法である。任意の局面のいくつかの態様において、皮下、皮内または静脈内投与は、注射、カテーテル、ポートなどを介した投与を含む。
【0149】
任意の態様の1つの局面において、本明細書に記載するのは、少なくとも1つの活性化合物の非経口送達法であって、活性化合物を本明細書に記載の少なくとも1つのILと組み合わせて非経口投与する段階を含む方法である。いくつかの態様において、非経口投与は、腫瘍、例えば、がん腫瘍への送達を含む。任意の局面のいくつかの態様において、本明細書に記載の組成物または組み合わせは、非経口剤形であり得る。非経口剤形の投与は、典型的には、汚染物質に対する患者の自然な防御を迂回するため、非経口剤形は、好ましくは、患者への投与前に無菌であるか、または滅菌可能である。非経口剤形の例には、注射可能な液剤、注射用の薬学的に許容される媒体中に溶解または懸濁可能な乾燥製剤、注射可能な懸濁剤、および乳剤が含まれるが、それらに限定されない。加えて、DUROS(登録商標)型の剤形および用量ダンピング(dose-dumping)を含むが、それらに限定されない、制御放出非経口剤形を、患者の投与のために調製することができる。
【0150】
少なくとも1つのIL(例えばCAGE)を範囲内に開示する少なくとも1つの活性化合物と組み合わせて含む組成物の非経口剤形を提供するために使用し得る適切な媒体は、当業者には周知である。例には:滅菌水;米国薬局方注射用水;食塩液;グルコース溶液;塩化ナトリウム注射液、リンゲル注射液、デキストロース注射液、デキストロースおよび塩化ナトリウム注射液、ならびに乳酸加リンゲル液などであるが、それらに限定されない水性媒体;エチルアルコール、ポリエチレングリコール、およびプロピレングリコールなどであるが、それらに限定されない、水混和性媒体;およびトウモロコシ油、綿実油、落花生油、ゴマ油、オレイン酸エチル、ミリスチン酸イソプロピル、および安息香酸ベンジルなどであるが、それらに限定されない、非水性媒体が含まれるが、それらに限定されない。本明細書に開示される組成物中の成分の溶解性を変更または改変する化合物を、通常および制御放出非経口剤形を含む、本開示の非経口剤形中に組み込むこともできる。
【0151】
通常の剤形は一般に、製剤からの急速または即時薬物放出を提供する。薬物の薬理学および薬物動態に依存して、通常の剤形の使用は、患者の血液および他の組織中の薬物濃度の広い変動につながり得る。これらの変動は、投与頻度、作用発現、有効性の持続時間、治療的血中レベルの維持、毒性、副作用などのいくつかのパラメータに影響を及ぼし得る。本明細書で前述したとおり、少なくとも1つのILを少なくとも1つの活性化合物と組み合わせて含む組成物は、制御放出製剤を用いる一定の理由を排除することができるが、この方法および組成物は、いくつかの態様において制御放出製剤中で利用し得ることが本明細書において企図される。例えば、制御放出製剤を、薬物の作用発現、作用の持続時間、治療ウィンドウ内の血漿レベル、およびピーク血中レベルを制御するために使用することができる。特に、制御または持続放出剤形または製剤を、薬物の過少量投与(すなわち、最小治療レベルを下回る)ならびに薬物の毒性レベル超過の両方から起こり得る、潜在的な副作用および安全性の懸念を最小限に抑えながら、薬物の最大の有効性を確実に達成するために使用することができる。いくつかの態様において、少なくとも1つのILを少なくとも1つの活性化合物と組み合わせて含む組成物は、持続放出製剤で投与することができる。
【0152】
放出制御薬学的製品は、それらの非放出制御対応物によって達成されるよりも薬物療法を改善させるという共通の目標を有する。理想的には、医学的治療において最適に設計された放出制御調製物の使用は、最小限の量の時間で病状を治癒または制御するために使用される最小限の薬物物質によって特徴付けられる。放出制御製剤の利点には、以下が含まれる:1)薬物の活性の延長;2)投与頻度の低減;3)患者のコンプライアンスの向上;4)より少ない総薬物の使用;5)局所的または全身的な副作用の低減;6)薬物の蓄積の最小化;7)血中レベルの揺らぎの低減;8)治療の有効性の改善;9)薬物活性の相乗作用または喪失の低減;および10)疾患または病状の制御速度の改善。Kim, Cherng-ju, Controlled Release Dosage Form Design, 2 (Technomic Publishing, Lancaster, Pa.: 2000)。
【0153】
ほとんどの放出制御製剤は、所望の治療効果を即座に産生する量の薬物(活性成分)を最初に放出し、長期間にわたってこの治療効果または予防効果のレベルを維持するように、他の量の薬物を徐々にかつ継続的に放出するように設計されている。体内でこの一定レベルの薬物を維持するためには、代謝されて体から排泄されている薬物の量に置き換わる速度で薬物が剤形から放出されなければならない。活性成分の放出制御は、pH、イオン強度、浸透圧、温度、酵素、水、および他の生理学的条件または化合物を含むがこれらに限定されない様々な条件によって刺激され得る。
【0154】
本開示の塩および組成物での使用のために、様々な公知の放出制御または持続放出剤形、製剤、およびデバイスを適合させることができる。例として米国特許第3,845,770号;米国特許第3,916,899号;米国特許第3,536,809号;米国特許第3,598,123号;米国特許第4,008,719号;米国特許第5674,533号;米国特許第5,059,595号;米国特許第5,591,767号;米国特許第5,120,548号;米国特許第5,073,543号;米国特許第5,639,476号;米国特許第5,354,556号;米国特許第5,733,566号;および米国特許第6,365,185 B1号に説明されているものが含まれるがこれらに限定されず、これらのそれぞれは参照により本明細書に組み込まれる。所望の放出プロファイルを様々な割合で提供するために、例えばヒドロキシプロピルメチルセルロース、他のポリマーマトリックス、ゲル、透過膜、浸透圧システム(OROS(登録商標)(Alza Corporation, Mountain View, Calif. USAなど))、またはそれらの組み合わせを使用して、1つまたは複数の有効成分の徐放または制御放出を提供するために、これらの剤形を使用できる。
【0155】
本明細書で使用される「有効量」という用語は、疾患または障害の少なくとも1つまたは複数の症状を緩和するのに必要な組成物の量を指し、所望の効果をもたらすための薬理学的組成物の十分な量に関する。したがって、「治療的有効量」という用語は、典型的な対象に投与された場合に特定の効果をもたらすのに十分な組成物の量を指す。本明細書で使用される有効量は、様々な文脈において、疾患の症状の発症を遅らせ、症状疾患の経過を改変し(例えば、疾患の症状の進行を遅延させるが、これに限定されない)、または疾患の症状を逆転させるのに十分な量も含む。したがって、正確な「有効量」を特定することは、一般的に実行可能ではない。しかしながら、任意の所与の場合について、当業者はルーチン的な実験だけを使用して適した「有効量」を決定できる。
【0156】
有効量、毒性、および治療的有効性は、例えばLD50(集団の50%に致死的な用量)およびED50(集団の50%に治療効果がある用量)を決定するために、細胞培養または実験動物において標準的な薬学的手順によって決定できる。投与量は、使用される剤形および利用される投与経路に応じて変わり得る。毒性と治療効果との間の用量比は治療指数であり、LD50/ED50の比率として表すことができる。大きい治療指数を呈する組成物および方法が好ましい。治療的有効用量は、細胞培養アッセイから最初に推定できる。また、細胞培養または適した動物モデルにおいて決定されたIC50(すなわち、症状の半最大阻害を達成する活性化合物の濃度)を含む循環血漿濃度範囲を達成するために、動物モデルで用量を策定できる。血漿中のレベルは、例えば高速液体クロマトグラフィーによって測定できる。任意の特定の投与量の効果は適切なバイオアッセイ、例えば、中でも血中グルコースのアッセイによってモニターできる。投与量は医師によって決定されることができ、観察された治療効果に合わせて必要に応じて調整され得る。
【0157】
本明細書で使用される場合、「糖尿病」は、膵臓によるインスリン分泌の欠乏または欠如によって特徴付けられる代謝性疾患である真性糖尿病を指す。本明細書全体を通して使用される場合、本明細書で別に特定されない限り、「糖尿病」は1型、2型、3型、および4型糖尿病を含む。糖尿病の開始は、通常、遺伝的原因と環境的原因の組み合わせが原因であり、異常に高い血糖値(高血糖症)という結果になる。糖尿病の最もよく見られる2つの形態は、インスリンの産生の下落(1型において)またはインスリンに対する体の応答の下落(2型および妊娠性において)のいずれかが原因である。どちらも高血糖症につながり、糖尿病の急性徴候:過剰な尿の産生、結果として代償性口渇および水分摂取の増加、霧視、原因不明の体重減少、嗜眠、およびエネルギー代謝の変化を主に引き起こす。糖尿病は多くの合併症を引き起こし得る。疾患が適当に制御されていないと急性合併症(低血糖症、ケトアシドーシス、または非ケトン性高浸透圧性昏睡)が生じることがある。重い長期的合併症(すなわち、慢性の副作用)は、心血管疾患(リスクの倍増)、慢性腎不全、網膜の損傷(失明につながり得る)、神経の損傷(数種類に及ぶ)、ならびにインポテンスおよび創傷治癒不良を引き起こすことのある微小血管の損傷を含む。創傷の治癒不良、特に足の創傷治癒不良は、壊疽そしておそらく切断につながり得る。いくつかの態様において、糖尿病は2型糖尿病であり得る。2型糖尿病(非インスリン依存性糖尿病(NIDDM)または成人発症型糖尿病)は、主としてインスリン抵抗性(インスリンに対する体の応答の下落)、相対的なインスリン欠乏、および高血糖症によって特徴付けられる代謝障害である。いくつかの態様において、対象は前糖尿病であり得、これは例えば空腹時血糖の上昇または食後血糖の上昇を有するとして特徴付けることができる。
【0158】
グルカゴン様ペプチド-1(GLP-1)は、ヒトにおいて食物摂取および空腹感を低減することが知られており、グルコース恒常性に寄与するプログルカゴン遺伝子の転写産物に由来するインクレチンである。GLP-1模倣体は、現在2型糖尿病の治療に使用されている。最近の臨床試験において、これらの治療がグルコース恒常性を改善するだけでなく、体重減少の誘導にも成功することが示された。本明細書で使用される場合、「GLP-1ポリペプチド」はGLP-1の様々なプレおよびプロペプチドならびに切断産物を指し、例えばヒトの場合はGLP-1(1-37)(SEQ ID NO: 2)、GLP-1(7-36)(SEQ ID NO: 3)、およびGLP-1(7-37)(SEQ ID NO: 4)などである。いくつかの態様において、GLP-1ポリペプチドは、GLP-1(7-36)および/またはGLP-1(7-37)またはヒト以外の種に由来する相互に関連したポリペプチドであり得る。GLP-1ポリペプチドの配列は、当技術分野において多数の種について知られており、例えばヒトGLP-1(NCBI Gene ID: 2641)ポリペプチド(例えば、NCBI Ref Seq: NP_002045.1;SEQ ID NO: 1)およびSEQ ID NO: 2~4などである。いくつかの態様において、GLP-1のプレまたはプロペプチド、例えばグルカゴンプレプロタンパク質(例えば、SEQ ID NO: 1)を、本明細書に記載される方法または組成物で使用できる。本明細書に記載されるいずれかのポリペプチドの天然対立遺伝子または変異体も、本明細書に記載される方法および組成物で使用することが具体的に企図される。
【0159】
様々なGLP-1模倣体が当技術分野において公知であり、糖尿病の治療に使用されている。GLP-1模倣体(または類似体)は、エキセンディン-4(ヒトGLP-1と相同性を有するドクトカゲ属(Heloderma)トカゲポリペプチド)およびその誘導体、DPP-IV耐性となるように修飾されたGLP-1類似体、または、例えば半減期を延長するために、様々なさらなる作用物質にコンジュゲートされたヒトGLP-1ポリペプチドを含み得る。GLP-1模倣体/類似体は、例えばエクセナチド、リキシセナチド、デュラグルチド、セマグルチド、アルビグルチド、LY2189265、リラグルチド、およびタスポグルチドを含み得る。そのような分子の例ならびにそれらの製造および活性のさらなる考察は、当技術分野において、例えばGupta. Indian J. Endocrinol Metab 17:413-421 (2013);Garber. Diabetes Treatments 41:S279-S284 (2018);米国特許公開第US 2009/0181912号;および国際特許公報第WO 2011/080103号に見出すことができ、これらのそれぞれは全体として参照により本明細書に組み込まれる。
【0160】
いずれかの局面のいくつかの態様において、活性化合物は、化学療法剤またはがんの治療に有効な薬剤であることができる。本明細書で使用される場合、「がん」という用語は、一般的に異常な細胞が制御なく分裂し、近くの組織に侵入し得る疾患または病状の部類に関する。がん細胞は、血液およびリンパ系を通じて体の他の部分にも展開し得る。いくつかの主な種類のがんが存在する。上皮性悪性腫瘍は、皮膚または内臓を裏打ちもしくは覆う組織で発生するがんである。非上皮性悪性腫瘍は、骨、軟骨、脂肪、筋肉、血管、または他の結合組織もしくは支持組織で発生するがんである。白血病は、骨髄などの造血組織で発生するがんで、多数の異常な血液細胞の産生および血液への侵入を引き起こす。リンパ腫および多発性骨髄腫は、免疫系の細胞で発生するがんである。中枢神経系がんは、脳および脊髄の組織で発生するがんである。
【0161】
いずれかの局面のいくつかの態様において、がんは原発性がんである。いずれかの局面のいくつかの態様において、がんは悪性がんである。本明細書で使用される場合、「悪性」という用語は、腫瘍細胞群が1つまたは複数の制御されない増殖(すなわち、正常限界を超える分裂)、侵入(すなわち、隣接組織への侵入および破壊)、ならびに転移(すなわち、リンパまたは血液を介した体内の他の場所への展開)を見せるがんを指す。本明細書で使用される場合、「転移する」という用語は、体の一部分から別の部分へのがんの展開を指す。展開した細胞によって形成された腫瘍は、「転移性腫瘍」または「転移がん」と呼ばれる。転移性腫瘍は、元の(原発性の)腫瘍中の細胞に似た細胞を含む。本明細書で使用される場合、「良性」または「非悪性」という用語は、より大きく増殖してもよいが体の他の部分には展開しない腫瘍を指す。良性腫瘍は自己限定的であり、通常は侵入または転移しない。
【0162】
「がん細胞」または「腫瘍細胞」は、がん性増殖または組織の個々の細胞を指す。腫瘍は一般的に、細胞の異常増殖によって形成される腫脹または病変を指し、良性、前悪性、または悪性であってよい。ほとんどのがん細胞は腫瘍を形成するが、白血病などのいくつかは必ずしも腫瘍を形成しない。腫瘍を形成するがん細胞については、がん(細胞)および腫瘍(細胞)という用語が互換的に使用される。
【0163】
本明細書で使用される場合、「新生物」という用語は、組織の任意の新しくかつ異常な増殖、例えば、その増殖が正常組織の増殖を超過および非協調的である異常な組織塊を指す。したがって、新生物は良性新生物、前悪性新生物、または悪性新生物であり得る。
【0164】
がんまたは腫瘍を有する対象は、対象の体内に存在する客観的に測定可能ながん細胞を有する対象である。この定義に含まれるのは、悪性で活発に増殖するがん、ならびに潜在的に休眠中の腫瘍もしくは微小転移巣である。元の場所から遊走して他の重要な臓器に播種したがんは、罹患した臓器の機能劣化を通じて最終的に対象の死亡につながり得る。
【0165】
がんの例には、上皮性悪性腫瘍、リンパ腫、芽細胞腫、非上皮性悪性腫瘍、白血病、基底細胞がん、胆道がん;膀胱がん;骨がん;脳およびCNSがん;乳がん;腹膜のがん;子宮頸がん;絨毛がん;結腸および直腸がん;結合組織がん;消化器系のがん;子宮内膜がん;食道がん;眼がん;頭頸部のがん;胃がん(胃腸がんを含む);膠芽腫(GBM);肝がん;肝細胞がん;上皮内新生物;腎臓がんまたは腎がん;喉頭がん;白血病;肝臓がん;肺がん(例えば、小細胞肺がん、非小細胞肺がん、肺の腺がん、および肺の扁平上皮がん);ホジキンリンパ腫および非ホジキンリンパ腫を含むリンパ腫;黒色腫;骨髄腫;神経芽細胞腫;口腔がん(例えば唇、舌、口、および咽頭);卵巣がん;膵臓がん;前立腺がん;網膜芽細胞腫;横紋筋肉腫;直腸がん;呼吸器系のがん;唾液腺がん;肉腫;皮膚がん;扁平上皮がん;胃がん;精巣がん;甲状腺がん;子宮または子宮内膜がん;泌尿器系のがん;外陰がん;ならびに他の上皮性悪性腫瘍および非上皮性悪性腫瘍;ならびにB細胞リンパ腫(低悪性度/濾胞性非ホジキンリンパ腫(NHL);小リンパ球性(SL)NHL;中悪性度/濾胞性NHL;中悪性度びまん性NHL;高悪性度免疫芽球性NHL;高悪性度リンパ芽球性NHL;高悪性度小型非切れ込み核細胞性NHL;巨大腫瘤病変NHL;マントル細胞リンパ腫;AIDS関連リンパ腫;およびワルデンストレームマクログロブリン血症を含む);慢性リンパ球性白血病(CLL);急性リンパ芽球性白血病(ALL);有毛細胞性白血病;慢性骨髄芽球性白血病;および移植後リンパ増殖性疾患(PTLD)、ならびに母斑症、浮腫(脳腫瘍に関連するものなど)、およびメイグス症候群に関連する異常な血管増殖が含まれるが、これらに限定されない。
【0166】
「がん細胞」は、必ずしも新しい遺伝材料の取り込みを伴わない自然発生的または誘導性の表現型変化を有する、インビボ、エクスビボのいずれかもしくは組織培養中の、がん性、前がん性、または形質転換細胞である。形質転換は、形質転換ウイルスによる感染および新しいゲノム核酸の組み込み、または外因性核酸の取り込みに起因し得るが、自然発生的または発がん物質への曝露に続いて、これにより内因性遺伝子が突然変異することにも起因し得る。形質転換/がんは、例えばヌードマウスなどの適切な動物宿主における形態学的変化、細胞の不死化、異常な増殖制御、病巣形成、足場非依存性、悪性腫瘍、増殖の接触阻害および密度制限の喪失、増殖因子または血清非依存性、腫瘍特異的マーカー、侵襲性または転移、および腫瘍増殖に関連する。
【0167】
いずれかの局面のいくつかの態様において、本明細書に記載される組成物、例えば本明細書に記載される少なくとも1つのILを少なくとも1つの活性化合物と組み合わせて含む組成物は、例えば病状についての別の治療を対象に行わない、単剤療法として投与される。
【0168】
いずれかの局面のいくつかの態様において、本明細書に記載される方法は、第2の作用物質および/または治療を、本明細書に記載される組成物、例えば本明細書に記載される少なくとも1つのILを少なくとも1つの活性化合物と組み合わせて含む組成物中で、もしくは別の製剤としてのいずれかにおいて、例えば併用療法の一部として対象に投与することをさらに含み得る。例えば、がん治療のための第2の作用物質および/または治療の非限定的な例は、放射線療法、手術、ゲムシタビン、シスプラスチン、パクリタキセル、カルボプラチン、ボルテゾミブ、AMG479、ボリノスタット、リツキシマブ、テモゾロミド、ラパマイシン、ABT-737、PI-103;チオテパおよびCYTOXAN(登録商標)シクロスホスファミドなどのアルキル化剤;ブスルファン、インプロスルファン、およびピポスルファンなどのスルホン酸アルキル;ベンゾドパ、カルボコン、メツレドパ、およびウレドパなどのアジリジン;アルトレタミン、トリエチレンメラミン、トリエチレンホスホラミド、トリエチレンチオホスホラミド、およびトリメチルオロメラミンを含むエチレンイミンおよびメチルアメラミン;アセトゲニン(特にブラタシンおよびブラタシノン);カンプトテシン(合成類似体トポテカンを含む);ブリオスタチン;カリスタチン;CC-1065(そのアドゼレシン、カルゼレシン、およびビゼレシン合成類似体を含む);クリプトフィシン(特にクリプトフィシン1およびクリプトフィシン8);ドラスタチン;デュオカルマイシン(合成類似体、KW-2189およびCB1-TM1を含む);エレウテロビン;パンクラティスタチン;サルコジクチン;スポンギスタチン;クロラムブシル、クロルナファジン、クロロホスファミド、エストラムスチン、イホスファミド、メクロレタミン、メクロレタミンオキシド塩酸塩、メルファラン、ノベムビチン、フェネステリン、プレドニムスチン、トロホスファミド、ウラシルマスタードなどのナイトロジェンマスタード;カルムスチン、クロロゾトシン、フォテムスチン、ロムスチン、ニムスチン、およびラニムスチン(ranimnustine)などのニトロスウレア(nitrosurea);エンジイン抗生物質(例えばカリケアマイシン、特にカリケアマイシンガンマ1IおよびカリケアマイシンオメガI1(例えば、Agnew, Chem. Intl. Ed. Engl., 33: 183-186 (1994)を参照)などの抗生物質;ダイネマイシンAを含むダイネマイシン;クロドロネートなどのビスホスホネート;エスペラマイシン;ならびにネオカルジノスタチン発色団および関連クロモプロテインエンジイン抗生物質発色団)、アクラシノマイシン、アクチノマイシン、オートラマイシン、アザセリン、ブレオマイシン、カクチノマイシン、カラビシン、カミノマイシン、カルジノフィリン、クロモマイシン(chromomycinis)、ダクチノマイシン、ダウノルビシン、デトルビシン、6-ジアゾ-5-オキソ-L-ノルロイシン、ADRIAMYCIN(登録商標)ドキソルビシン(モルホリノ-ドキソルビシン、シアノモルホリノ-ドキソルビシン、2-ピロリノ-ドキソルビシン、およびデオキシドキソルビシンを含む)、エピルビシン、エソルビシン、イダルビシン、マルセロマイシン、マイトマイシンCなどのマイトマイシン、ミコフェノール酸、ノガラマイシン、オリボマイシン、ペプロマイシン、ポトフィロマイシン、ピューロマイシン、ケラマイシン、ロドルビシン、ストレプトニグリン、ストレプトゾシン、ツベルシジン、ウベニメクス、ジノスタチン、ゾルビシン;メトトレキサートおよび5-フルオロウラシル(5-FU)などの代謝拮抗物質;デノプテリン、メトトレキサート、プテロプテリン、トリメトレキサートなどの葉酸類似体;フルダラビン、6-メルカプトプリン、チアミプリン、チオグアニンなどのプリン類似体;アンシタビン、アザシチジン、6-アザウリジン、カルモフール、シタラビン、ジデオキシウリジン、ドキシフルリジン、エノシタビン、フロクスウリジンなどのピリミジン類似体;カルステロン、ドロモスタノロンプロピオネート、エピチオスタノール、メピチオスタン、テストラクトンなどのアンドロゲン;アミノグルテチミド、ミトタン、トリロスタンなどの抗副腎;フロリン酸などの葉酸補充物質;アセグラトン;アルドホスファミドグリコシド;アミノレブリン酸;エニルウラシル;アムサクリン;ベストラブシル;ビサントレン;エダトラキサート;デフォファミン;デメコルシン;ジアジコン;エルフォルミチン;酢酸エリプチニウム;エポチロン;エトグルシド;硝酸ガリウム;ヒドロキシ尿素;レンチナン;ロニダイニン;メイタンシンおよびアンサマイトシンなどのメイタンシノイド;ミトグアゾン;ミトキサントロン;モピダンモール;ニトラエリン;ペントスタチン;フェナメット;ピラルビシン;ロソキサントロン;ポドフィリン酸;2-エチルヒドラジド;プロカルバジン;PSK(登録商標)多糖類複合体(JHS Natural Products, Eugene, Oreg.);ラゾキサン;リゾキシン;シゾフラン;スピロゲルマニウム;テヌアゾン酸;トリアジコン;2,2',2”-トリクロロトリエチルアミン;トリコテセン(特にT-2毒素、ベラクリンA、ロリジンA、およびアンギジン);ウレタン;ビンデシン;ダカルバジン;マノムスチン;ミトブロニトール;ミトラクトール;ピポブロマン;ガシトシン;アラビノシド(「Ara-C」);シクロホスファミド;チオテパ;タキソイド、例えばTAXOL(登録商標)パクリタキセル(Bristol-Myers Squibb Oncology, Princeton, N.J.)、ABRAXANE(登録商標)パクリタキセルのクレモフォールフリーでアルブミン操作されたナノ粒子製剤(American Pharmaceutical Partners, Schaumberg, Ill.)、およびTAXOTERE(登録商標)ドキセタキセル(Rhone-Poulenc Rorer, Antony, France);クロランブシル;GEMZAR(登録商標)ゲムシタビン;6-チオグアニン;メルカプトプリン;メトトレキサート;シスプラチン、オキサリプラチン、およびカルボプラチンなどの白金類似体;ビンブラスチン;白金;エトポシド(VP-16);イホスファミド;ミトキサントロン;ビンクリスチン;NAVELBINE.RTM.ビノレルビン;ノバントロン;テニポシド;エダトレキサート;ダウノマイシン;アミノプテリン;ゼローダ;イバンドロネート;イリノテカン(カンプトサール、CPT-11)(イリノテカンとともに5-FUおよびロイコボリンの治療計画を含む);トポイソメラーゼ阻害剤RFS 2000;ジフルオロメチルオルニチン(DMFO);レチノイン酸などのレチノイド;カペシタビン;コンブレタスタチン;ロイコボリン(LV);オキサリプラチン治療計画(FOLFOX)を含むオキサリプラチン;ラパチニブ(Tykerb.RTM.);細胞増殖を低減するPKC-アルファ阻害剤、Raf阻害剤、H-Ras阻害剤、EGFR阻害剤(例えば、エルロチニブ(Tarceva(登録商標)))およびVEGF-A阻害剤ならびに上記のいずれかの薬学的に許容される塩、酸、または誘導体を含み得る。加えて、治療方法は放射線または放射線療法の使用をさらに含み得る。さらに、治療方法は外科的治療の使用をさらに含み得る。
【0169】
一定の態様において、本明細書に記載の組成物、例えば、本明細書に記載の少なくとも1つのILを少なくとも1つの活性化合物と組み合わせて含む組成物の有効用量を、患者に1回投与することができる。一定の態様において、本明細書に記載の組成物、例えば、本明細書に記載の少なくとも1つのILを少なくとも1つの活性化合物と組み合わせて含む組成物の有効用量を、患者に繰り返し投与することができる。全身投与の場合、対象に本明細書に記載の組成物、例えば、本明細書に記載の少なくとも1つのILを少なくとも1つの活性化合物と組み合わせて含む組成物の治療量、例えば0.1mg/kg、0.5mg/kg、1.0mg/kg、2.0mg/kg、2.5mg/kg、5mg/kg、10mg/kg、15mg/kg、20mg/kg、25mg/kg、30mg/kg、40mg/kg、50mg/kg、またはそれ以上を投与することができる。任意の局面のいくつかの態様において、少なくとも1つの活性化合物は約1.0~40.0mg/kgの用量で組み合わせ中に存在する。任意の局面のいくつかの態様において、少なくとも1つの活性化合物は1.0~40.0mg/kgの用量で組み合わせ中に存在する。任意の局面のいくつかの態様において、少なくとも1つの活性化合物は約1.0~20.0mg/kgの用量で組み合わせ中に存在する。任意の局面のいくつかの態様において、少なくとも1つの活性化合物は1.0~20.0mg/kgの用量で組み合わせ中に存在する。
【0170】
いくつかの態様において、活性化合物はインスリンであり、インスリンの濃度または投与量は約1U/kg~約20U/kgであり得る。いくつかの態様において、活性化合物はインスリンであり、インスリンの濃度または投与量は1U/kg~20U/kgであり得る。いくつかの態様において、活性化合物はインスリンであり、インスリンの濃度または投与量は20U/kg未満であり得る。いくつかの態様において、活性化合物はインスリンであり、インスリンの濃度または投与量は約2U/kg~約10U/kgであり得る。いくつかの態様において、活性化合物はインスリンであり、インスリンの濃度または投与量は、2U/kg~10U/kgであり得る。いくつかの態様において、活性化合物はインスリンであり、インスリンの濃度または投与量は、約2U/kg~約5U/kgであり得る。いくつかの態様において、活性化合物はインスリンであり、インスリンの濃度または投与量は、2U/kg~5U/kgであり得る。いくつかの態様において、活性化合物はインスリンであり、インスリンの濃度または投与量は、約5U/kg~約10U/kgであり得る。いくつかの態様において、活性化合物はインスリンであり、インスリンの濃度または投与量は5U/kg~10U/kgであり得る。いくつかの態様において、活性化合物はインスリンであり、インスリンの濃度または投与量は、2U/kg、5U/kg、または10U/kgであり得る。
【0171】
任意の態様の1つの局面において、本明細書に記載するのは、それを必要とする対象における疾患の処置法であって、対象に本明細書に記載の少なくとも1つのILと組み合わせた活性化合物を注射により罹患組織中へ投与することによる方法である。いくつかの態様において、罹患組織は病変細胞を含む組織である。いくつかの態様において、罹患組織は疾患の症状を示す組織である。適切な罹患組織の非限定例には、腫瘍組織、脂肪組織(fat tissue)、脂肪組織(adipose tissue)などが含まれる。任意の局面のいくつかの態様において、疾患は組織の増殖、例えば、不要な、異常な、または病的な組織の増殖に起因する疾患である。組織の増殖に起因する疾患は、健康な対象における組織の種類について正常なものとは異なる、組織の増殖の速度、組織の増殖の場所、または組織の増殖のパターン/構造によって引き起こされるか、または特徴付けられる任意の疾患であり得る。そのような疾患の非限定例は、腫瘍、がん、脂肪/肥満、および/または過形成である。任意の局面のいくつかの態様において、そのような疾患は、腫瘍、がん、脂肪/肥満、および/または過形成である。
【0172】
酵素阻害剤は、糖尿病を含めたいくつかの病態のための処置の選択肢であり、糖尿病においては、例えば、インスリン分解酵素阻害剤、ACE阻害剤、およびα-グルコシダーゼ阻害剤は、全て治療アプローチとして研究されている。したがって、安全であって効果的な酵素阻害剤は、いくつかの病態の処置において関心の対象となっている。理論に拘束されることを希望するものではないが、本明細書に記載のILは酵素阻害活性を示すことが可能であることが、企図される。したがって、任意の態様の1つの局面において、本明細書に記載するのは、それを必要とする対象において、糖尿病、潰瘍、がん、または線維症を処置する方法であり、該方法は、本明細書に記載の少なくとも1種のILを含む組成物を、対象に投与する段階を含む。いくつかの態様において、組成物は、治療的に活性なさらなる作用物質を含まない。
【0173】
線維症病態に対しては、細胞外マトリックスにとって好ましい様式で、瘢痕組織の蓄積を低下させることによって細胞外マトリックスを産生させることおよび/または維持することが、有益である。本明細書で使用される場合、「線維症」とは、臓器または組織の正常な構成要素としての、線維組織の形成ではなく、修復または反応のプロセスとしての、線維組織の形成を指す。線維症は、線維芽細胞の蓄積と、任意の特定の組織における正常な沈着を上回るコラーゲンの沈着とによって、特徴付けられる。線維症は、炎症の、刺激の、または治癒の結果として、生じ得る。線維症病態の処置を必要とする対象とは、線維症病態を有するか、または線維症病態を有すると診断されているか、または線維症病態を有するリスクのある、任意の対象である。線維症病態の非限定例には以下が含まれるが、これらに限定されない:肺線維症;瘢痕;皮膚の瘢痕;外傷;創傷;慢性創傷(例えば糖尿病患者におけるもの)、角膜欠損;角膜潰瘍;角膜創傷;糖尿病性潰瘍;潰瘍;敗血症;関節炎;特発性肺線維症;嚢胞性線維症;肝硬変;心内膜心筋線維症;縦隔線維症;骨髄線維症;後腹膜線維症;進行性塊状線維症;腎性全身性線維症;クローン病;ケロイド;強皮症;全身性強皮症;関節線維症;癒着性関節包炎;肺線維症;肝線維症;腎線維症;心線維症;血管線維症;皮膚線維症;眼線維症;骨髄線維症;喘息;サルコイドーシス;COPD;気腫;住血吸虫症(nschistomasomiasis);胆管炎;糖尿病性腎症;ループス腎炎;血管形成術後の動脈再狭窄;アテローム性動脈硬化症;熱傷瘢痕;肥厚性瘢痕;腎性線維化性皮膚症;白内障術後;増殖性硝子体網膜症;ペロニー病;デュピュイトラン拘縮;皮膚筋炎;および移植片対宿主病。
【0174】
本明細書で使用される場合、「潰瘍」とは、身体の膜の破損または破壊を指す。いくつかの態様において、潰瘍は、罹患組織の炎症および/または壊死によって引き起こされ得る。潰瘍は、皮膚潰瘍(例えば、褥瘡、糖尿病性潰瘍、潰瘍性皮膚炎等)、角膜潰瘍、口腔潰瘍、消化性潰瘍、静脈性潰瘍、ストレス潰瘍、または潰瘍性大腸炎であり得る。
【0175】
いくつかの態様において、最初の処置計画の後、処置をより低頻度で行うことができる。例えば、隔週で3か月間の処置の後、6か月間または1年間以上、処置を月に1回繰り返すことができる。本明細書に記載の方法による処置は、状態のマーカーまたは症状のレベルを、少なくとも10%、少なくとも15%、少なくとも20%、少なくとも25%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、もしくは少なくとも90%またはそれ以上低減させることができる。
【0176】
本明細書に記載の組成物の投与量は、医師が決定することができ、観察された処置効果に合わせて適宜調整し得る。処置の期間および頻度に関して、熟練した臨床医は、処置がいつ治療的な恩恵をもたらすかを決定し、投与量を増加もしくは減少させるか、投与頻度を増加もしくは減少させるか、処置を中断するか、処置を再開するか、または処置計画に他の変更を加えるかを決定するために、対象をモニターすることが典型的である。投薬スケジュールは、活性化合物に対する対象の感受性などの、いくつかの臨床因子に応じて、週に1回から毎日まで変わり得る。活性物質の所望の用量または量は1回で投与することができ、または部分用量、例えば、2~4つの部分用量に分割し、一定の期間にわたって、例えば、1日を通して適切な間隔で、または他の適切なスケジュールで投与することができる。いくつかの態様において、投与は慢性的、例えば、数週間または数か月の期間にわたって毎日1つまたは複数の用量および/または処置で行い得る。投薬および/または処置スケジュールの例は、1週間、2週間、3週間、4週間、1か月、2か月、3か月、4か月、5か月、もしくは6か月、またはそれ以上の期間にわたって、毎日、1日2回、1日3回、または1日4回以上の投与である。本明細書に記載の組成物、例えば、少なくとも1つのILを少なくとも1つの活性化合物と組み合わせて含む組成物は、一定の期間にわたって、例えば5分間、10分間、15分間、20分間、または25分間の期間にわたって投与することができる。
【0177】
本明細書に記載の方法による、本明細書に記載の組成物の投与についての投与量範囲は、例えば、活性化合物の形態、その効力、および本明細書に記載の状態の症状、マーカー、または指標を低減させたいと所望する程度、例えば、症状またはマーカーについて所望される低減のパーセンテージに依存する。投与量は、有害副作用を引き起こすほど多くすべきでない。一般に、投与量は患者の年齢、状態、および性別によって変動し、当業者によって決定され得る。任意の合併症の場合、投与量は個々の医師が調整することもできる。
【0178】
例えば、本明細書に記載の状態の処置において記載される組成物の有効性、または本明細書に記載の応答を誘導するための組成物の有効性は、熟練した臨床医が決定することができる。しかしながら、本明細書に記載の状態の徴候または症状の1つまたは複数が有益な様式で変更されるか、他の臨床的に認められている症状が改善もしくは寛解さえするか、または所望の応答が、例えば、本明細書に記載の方法による処置後に少なくとも10%誘導されれば、「有効な処置」という用語が本明細書において用いられる場合に、処置は「有効な処置」と考えられる。有効性は、例えば、本明細書に記載の方法によって処置した状態のマーカー、指標、症状、および/もしくは発生率、または任意の他の適切な測定可能なパラメータを測定することで評価することができる。有効性は、入院によって評価される個人の悪化の欠如、または医学的介入の必要性の欠如(すなわち、疾患の進行が停止)によっても測定することができる。これらの指標を測定する方法は、当業者には公知で、かつ/または本明細書に記載されている。処置には、個人または動物(いくつかの非限定例にはヒトまたは動物が含まれる)における疾患の任意の処置が含まれ、かつ下記が含まれる:(1)疾患を阻害する、例えば、症状(例えば、疼痛または炎症)の悪化を予防する;または(2)疾患の重症度を軽減する、例えば、症状の後退を引き起こす。疾患の処置のための有効量は、それを必要とする対象に投与する場合、その疾患について、有効な処置という用語が本明細書で定義されるように、有効な処置をもたらすのに十分な量を意味する。作用物質の有効性は、状態または所望の応答の物理的指標を評価することで決定することができる。そのようなパラメータの任意の1つ、またはパラメータの任意の組み合わせを測定することで投与および/または処置の有効性をモニターすることは、十分に当業者の能力の範囲内である。有効性は、本明細書に記載の状態の動物モデル、例えば、糖尿病またはがんの処置において評価することができる。実験動物モデルを使用する場合、マーカーにおいて統計的に有意な変化が観察される場合に、処置の有効性が証明される。
【0179】
本明細書に記載の組成物、例えば、少なくとも1つのILを少なくとも1つの活性化合物と組み合わせて含む組成物の所与の用量の評価を可能にする、インビトロおよび動物モデル検定を本明細書で提供する。
【0180】
任意の局面のいくつかの態様において、本明細書に記載の少なくとも1つのILを、例えば、活性化合物と組み合わせて含む組成物が投与される対象は、肥満、過剰体重を有する、有すると診断された、または肥満、過剰体重の処置もしくは体重増加の予防を必要とする対象である。いくつかの態様において、対象は過体重である。本明細書に記載の方法は、肥満の処置、体重増加の低減、体重増加の防止、体重減少の促進などの方法を含む。そのような方法は、例えば、代謝の健康を促進し、審美的理由のために追求され、かつ/または高いBMIもしくは体重を有する患者に対して禁忌である外科的介入のために患者を準備させることができる。いくつかの態様において、例えば、対象が過体重および/または肥満である場合、体重減少は医学的に必要であり得、かつ/または医学的に指示され得る。いくつかの態様において、例えば、体重減少が医学的に必要であり、かつ/または医学的に指示されているかどうかにかかわらず、対象が減量を所望する場合、減量は美容目的であり得る。
【0181】
「肥満」という用語は、体内の過剰な脂肪を指す。肥満は、当業者に認められ利用されている任意の尺度によって決定することができる。現在のところ、認められている肥満の尺度は肥満度指数(BMI)であり、これは、メートルでの身長の2乗に対するキログラムでの体重の尺度である。一般に、20歳を超える成人については、約18.5~24.9の間のBMIが正常とみなされ、約25.0~29.9の間のBMIは過体重とみなされ、約30.0以上のBMIは肥満とみなされ、かつ約40以上のBMIは病的な肥満とみなされる。(例えば、Gallagher et al. (2000) Am J Clin Nutr 72:694-701を参照されたい。)これらのBMI範囲は、疾患のリスク増加に対する体重の影響に基づいている。高いBMIおよび肥満に関連するいくつかの一般的な状態には、心血管疾患、高血圧(すなわち、高血圧症)、骨関節症、がん、および糖尿病が含まれる。BMIは体脂肪と相関するが、BMIと実際の体脂肪との間の関係は年齢および性別によって異なる。例えば、同じBMIの場合、女性は男性よりも高い体脂肪率を有する可能性がより高い。さらに、正常、過体重、および肥満を区別するBMI閾値は、他の因子の中でも、例えば年齢、性別、民族性、健康度、および体型によって変動し得る。いくつかの態様において、肥満を有する対象は、本明細書に記載の処置を行う前に、少なくとも約25kg/m2の肥満度指数を有する対象であり得る。いくつかの態様において、肥満を有する対象は、本明細書に記載の処置を行う前に、少なくとも約30kg/m2の肥満度指数を有する対象であり得る。
【0182】
任意の局面のいくつかの態様において、本明細書に記載の少なくとも1つのILを、例えば、少なくとも1つの活性化合物と組み合わせて含む組成物が投与される対象は、代謝障害またはメタボリックシンドロームを有する、有すると診断された、またはその処置を必要とする対象である。「代謝障害」という用語は、例えば、インスリン抵抗性などの、グルコース調節または血糖制御が障害または改変されていることに関連するか、またはそれによって深刻化する任意の障害を指す。そのような障害には、肥満;過剰な脂肪組織;糖尿病;脂肪肝疾患;非アルコール性脂肪肝疾患;メタボリックシンドローム;異脂肪血症;高血圧症;高血糖症;および心血管疾患が含まれるが、それらに限定されない。「メタボリックシンドローム」は代謝障害とは異なり、一緒に発生すると心血管疾患および糖尿病を発症するリスクを増加させる、医学的障害の組み合わせを指す。メタボリックシンドロームのいくつかの定義が、例えば、American Heart AssociationおよびInternational Diabetes Foundationによって確立されている。ほんの一例として、WHOはメタボリックシンドロームを糖尿病、耐糖能異常、空腹時血糖異常またはインスリン抵抗性のいずれか1つ、ならびに:140/90mmHg以上の血圧、脂質異常症、中心性肥満、および微量アルブミン尿のうちの2つの存在と定義している。いくつかの態様において、代謝障害は、下記からなる群より選択され得る:肥満;過剰な脂肪組織;糖尿病;および心血管疾患。
【0183】
多くの活性化合物、例えば、薬学的に活性な化合物の取り込みは、溶媒中で化合物を送達することにより改善することができる。しかしながら、そのような溶媒のほとんどは有毒な副作用を示し、かつ/または送達の時点で刺激物質として作用するため、そのようなアプローチはインビボでの使用にはしばしば不適切である。本明細書に記載するのは、改善された送達動態とともに低い毒性を提供し得る方法および組成物である。
【0184】
便宜上、本明細書、実施例、および添付の特許請求の範囲において用いられるいくつかの用語および語句の意味を以下に提供する。特に記載がないかぎり、または文脈から暗示される場合を除き、以下の用語および語句は、以下に提供する意味を含む。本発明の範囲は特許請求の範囲によってのみ限定されるため、本定義は特定の態様の説明を助けるために提供され、特許請求の範囲に係る発明を限定することを意図しない。特に定義されていない限り、本明細書において用いられるすべての技術および科学用語は、本発明が属する分野の当業者によって一般に理解されるのと同じ意味を有する。当技術分野における用語の用法と本明細書で提供されるその定義との間に明らかな矛盾がある場合、本明細書内で提供される定義が優先されるものとする。
【0185】
便宜上、本明細書において、明細書、実施例、および添付の特許請求の範囲で使用される一定の用語をここに収集する。
【0186】
カルボン酸は、式RCOOHを有するカルボニル担持官能基であり、ここでRは脂肪族、ヘテロ脂肪族、アルキル、またはヘテロアルキルである。
【0187】
好ましい態様において、直鎖または分岐鎖アルキルは、その骨格内に30以下の炭素原子(例えば、直鎖の場合はC1~C30、分岐鎖の場合はC3~C30)、より好ましくは20以下の炭素原子を有する。同様に、好ましいシクロアルキルは、その環構造内に3~10個の炭素原子、より好ましくは環構造内に5、6または7個の炭素を有する。本明細書、実施例、および特許請求の範囲の全体にわたって用いられる「アルキル」(または「低級アルキル」)という用語は、「無置換アルキル」および「置換アルキル」の両方を含むことが意図され、後者は、炭化水素骨格の1つまたは複数の炭素上の水素を置換する1つまたは複数の置換基を有するアルキル部分を指す。
【0188】
炭素数が特に指定されない限り、本明細書において用いられる「低級アルキル」は、前述の定義のとおりであるが、その骨格構造内に1~10個の炭素、より好ましくは1~6個の炭素原子を有するアルキル基を意味する。同様に、「低級アルケニル」および「低級アルキニル」は、同様の鎖長を有する。本出願全体を通して、好ましいアルキル基は低級アルキルである。好ましい態様において、本明細書でアルキルと示される置換基は低級アルキルである。
【0189】
置換アルキルの置換基には、ハロゲン、ヒドロキシ、ニトロ、チオール、アミノ、アジド、イミノ、アミド、ホスホリル(ホスホネートおよびホスフィネートを含む)、スルホニル(スルフェート、スルホンアミド、スルファモイルおよびスルホネートを含む)、およびシリル基、ならびにエーテル、アルキルチオ、カルボニル(ケトン、アルデヒド、カルボキシレート、およびエステルを含む)、-CF3、-CNなどが含まれ得る。
【0190】
本明細書において用いられる「アルケニル」という用語は、少なくとも1つの炭素-炭素二重結合を有する、不飽和直鎖、分岐鎖または環状炭化水素ラジカルを指す。CxアルケニルおよびCx~Cyアルケニルが典型的に用いられ、ここでXおよびYは鎖内の炭素原子数を示す。例えば、C2~C6アルケニルには、1~6炭素および少なくとも1つの二重結合の鎖を有するアルケニル、例えば、ビニル、アリル、プロペニル、イソプロペニル、1-ブテニル、2-ブテニル、3-ブテニル、2-メチルアリル、1-ヘキセニル、3-ヘキセニル、3-ヘキセニルなど)が含まれる。別のラジカルと共に表されるアルケニル(例えば、アリールアルケニルのように)は、示された数の原子を有する、直鎖または分岐、アルケニル二価ラジカルを意味する。アルケニルの骨格は、任意にN、O、またはSなどの1つまたは複数のヘテロ原子を挿入することができる。
【0191】
本明細書において用いられる「アルキニル」という用語は、少なくとも1つの炭素-炭素三重結合を有する、不飽和炭化水素ラジカルを指す。CxアルキニルおよびCx~Cyアルキニルが典型的に用いられ、ここでXおよびYは鎖内の炭素原子数を示す。例えば、C2~C6アルキニルには、1~6炭素および少なくとも1つの三重結合の鎖を有するアルキニル、例えば、エチニル、1-プロピニル、2-プロピニル、1-ブチニル、イソペンチニル、1,3-ヘキサ-ジイン-イル、n-ヘキシニル、3-ペンチニル、1-ヘキセン-3-イニルなどが含まれる。別のラジカルと共に表されるアルキニル(例えば、アリールアルキニルのように)は、示された数の原子を有する、直鎖または分岐、アルキニル二価ラジカルを意味する。アルキニルの骨格は、任意にN、O、またはSなどの1つまたは複数のヘテロ原子を挿入することができる。
【0192】
本明細書において用いられる「ハロゲン」または「ハロ」という用語は、フッ素、塩素、臭素およびヨウ素から選択される原子を指す。用語「ハロゲン放射性同位体」または「ハロ同位体」は、フッ素、塩素、臭素およびヨウ素から選択される原子の放射性核種を指す。単離された群またはより大きな群の一部としての「ハロゲン置換部分」または「ハロ置換部分」とは、そのような用語が本出願において定義される、1つまたは複数の「ハロ」原子で置換された、本明細書に記載の脂肪族、脂環式、または芳香族部分を意味する。例えば、ハロ置換アルキルには、ハロアルキル、ジハロアルキル、トリハロアルキル、ペルハロアルキルなどが含まれる(例えばハロ置換(C1~C3)アルキルには、クロロメチル、ジクロロメチル、ジフルオロメチル、トリフルオロメチル(-CF3)、2,2,2-トリフルオロエチル、ペルフルオロエチル、2,2,2-トリフルオロロ-1,1-ジクロロエチルなどが含まれる)。
【0193】
「シクリル」または「シクロアルキル」という用語は、3~12個の炭素、例えば、3~8個の炭素、および例えば、3~6個の炭素を有する、飽和および部分不飽和環状炭化水素基を指す。CxシクリルおよびCx~Cyシクリルが典型的に用いられ、ここでXおよびYは環系における炭素原子数を示す。シクロアルキル基はさらに、例えば、1、2、3、または4つの置換基で任意に置換され得る。シクリル基の例には、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロペンテニル、シクロヘキシル、シクロヘキセニル、2,5-シクロヘキサジエニル、シクロヘプチル、シクロオクチル、ビシクロ[2.2.2]オクチル、アダマンタン-l-イル、デカヒドロナフチル、オキソシクロヘキシル、ジオキソシクロヘキシル、チオシクロヘキシル、2-オキソビシクロ[2.2.1]ヘプト-1-イルなどが含まれるが、それらに限定されない。
【0194】
用語「ヘテロシクリル」は、単環式の場合は1~3個のヘテロ原子、二環式の場合は1~6個のヘテロ原子、または三環式の場合は1~9個のヘテロ原子を有し、該ヘテロ原子はO、N、またはSから選択される(例えば、単環式、二環式、または三環式の場合はそれぞれ、炭素原子および1~3個、1~6個、または1~9個のN、O、またはSのヘテロ原子を有する)、非芳香族5~8員単環式、8~12員二環式、または11~14員三環式環系を指す。CxヘテロシクリルおよびCx~Cyヘテロシクリルが典型的に用いられ、ここでXおよびYは環系における炭素原子数を示す。いくつかの態様において、各環の1、2または3個の水素原子は置換基によって置換され得る。例示的ヘテロシクリル基には、ピペラジニル、ピロリジニル、ジオキサニル、モルホリニル、テトラヒドロフラニル、ピペリジル、4-モルホリル、4-ピペラジニル、ピロリジニル、ペルヒドロピロリジニル、1,4-ジアザペルヒドロエピニル、1,3-ジオキサニル、1,4-ジオキサニルなどが含まれるが、それらに限定されない。
【0195】
「二環式」および「三環式」という用語は、縮合、架橋、または一重結合によって連結された多環式環集合体を指す。本明細書において用いられる「縮合環」という用語は、両方の環に共通の環原子が互いに直接結合している、二環式構造を有する化合物を形成するように、別の環に結合している環を指す。一般的な縮合環の非排他的な例には、デカリン、ナフタレン、アントラセン、フェナントレン、インドール、フラン、ベンゾフラン、キノリンなどが含まれる。縮合環系を有する化合物は、飽和、部分飽和、シクリル、ヘテロシクリル、芳香族、ヘテロ芳香族などであり得る。
【0196】
「ヘテロアリール」という用語は、単環式の場合は1~3個のヘテロ原子、二環式の場合は1~6個のヘテロ原子、または三環式の場合は1~9個のヘテロ原子を有し、該ヘテロ原子はO、N、またはSから選択される(例えば、単環式、二環式、または三環式の場合はそれぞれ、炭素原子および1~3個、1~6個、または1~9個のN、O、またはSのヘテロ原子を有する)、芳香族5~8員単環式、8~12員縮合二環式、または11~14員縮合三環式環系を指す。CxヘテロアリールおよびCx~Cyヘテロアリールが典型的に用いられ、ここでXおよびYは環系における炭素原子数を示す。ヘテロアリールには、ベンゾ[b]フラン、ベンゾ[b]チオフェン、ベンズイミダゾール、イミダゾ[4,5-c]ピリジン、キナゾリン、チエノ[2,3-c]ピリジン、チエノ[3,2-b]ピリジン、チエノ[2,3-b]ピリジン、インドリジン、イミダゾ[l,2a]ピリジン、キノリン、イソキノリン、フタラジン、キノキサリン、ナフチリジン、キノリジン、インドール、イソインドール、インダゾール、インドリン、ベンズオキサゾール、ベンゾピラゾール、ベンゾチアゾール、イミダゾ[l,5-a]ピリジン、ピラゾロ[1,5-a]ピリジン、イミダゾ[l,2-a]ピリミジン、イミダゾ[l,2-c]ピリミジン、イミダゾ[l,5-a]ピリミジン、イミダゾ[l,5-c]ピリミジン、ピロロ[2,3-b]ピリジン、ピロロ[2,3cjピリジン、ピロロ[3,2-c]ピリジン、ピロロ[3,2-b]ピリジン、ピロロ[2,3-d]ピリミジン、ピロロ[3,2-d]ピリミジン、ピロロ[2,3-b]ピラジン、ピラゾロ[1,5-a]ピリジン、ピロロ[l,2-b]ピリダジン、ピロロ[l,2-c]ピリミジン、ピロロ[l,2-a]ピリミジン、ピロロ[l,2-a]ピラジン、トリアゾ[l,5-a]ピリジン、プテリジン、プリン、カルバゾール、アクリジン、フェナジン、フェノチアゼン、フェノキサジン、l,2-ジヒドロピロロ[3,2,1-hi]インドール、インドリジン、ピリド[l,2-a]インドール、2(lH)-ピリジノン、ベンズイミダゾリル、ベンゾフラニル、ベンゾチオフラニル、ベンゾチオフェニル、ベンゾキサゾリル、ベンゾキサゾリニル、ベン図チアゾリル、ベンズトリアゾリル、ベンズテトラゾリル、ベンジイソキサゾリル、ベンズイソチアゾリル、ベンズイミダゾリニル、カルバゾリル、4aH-カルバゾリル、カルボリニル、クロマニル、クロメニル、シンノリニル、デカヒドロキノリニル、2H,6H-1,5,2-ジチアジニル、ジヒドロフロ[2,3b]テトラヒドロフラン、フラニル、フラザニル、イミダゾリジニル、イミダゾリニル、イミダゾリル、1H-インダゾリル、インドレニル、インドリニル、インドリジニル、インドリル、3H-インドリル、イサチノイル、イソベンゾフラニル、イソクロマニル、イソインダゾリル、イソインドリニル、イソインドリル、イソキノリニル、イソチアゾリル、イソキサゾリル、メチレンジオキシフェニル、モルホリニル、ナフチリジニル、オクタヒドロイソキノリニル、オキサジアゾリル、1,2,3-オキサジアゾリル、1,2,4-オキサジアゾリル、1,2,5-オキサジアゾリル、1,3,4-オキサジアゾリル、オキサゾリジニル、オキサゾリル、オキセパニル、オキセタニル、オキシインドリル、ピリミジニル、フェナントリジニル、フェナントロリニル、フェナジニル、フェノチアジニル、フェノキサチニル、フェノキサジニル、フタラジニル、ピペラジニル、ピペリジニル、ピペリドニル、4-ピペリドニル、ピペロニル、プテリジニル、プリニル、ピラニル、ピラジニル、ピラゾリジニル、ピラゾリニル、ピラゾリル、ピリダジニル、ピリドオキサゾール、ピリドイミダゾール、ピリドチアゾール、ピリジニル、ピリジル、ピリミジニル、ピロリジニル、ピロリニル、2H-ピロリル、ピロリル、キナゾリニル、キノリニル、4H-キノリジニル、キノキサリニル、キヌクリジニル、テトラヒドロフラニル、テトラヒドロイソキノリニル、テトラヒドロピラニル、テトラヒドロキノリニル、テトラゾリル、6H-1,2,5-チアジアジニル、1,2,3-チアジアゾリル、1,2,4-チアジアゾリル、1,2,5-チアジアゾリル、1,3,4-チアジアゾリル、チアントレニル、チアゾリル、チエニル、チエノチアゾリル、チエノオキサゾリル、チエノイミダゾリル、チオフェニルおよびキサンテニルから誘導されるものが含まれるが、それらに限定されない。いくつかの例示的ヘテロアロール基には、ピリジル、フリルまたはフラニル、イミダゾリル、ベンズイミダゾリル、ピリミジニル、チオフェニルまたはチエニル、ピリダジニル、ピラジニル、キノリニル、インドリル、チアゾリル、ナフチリジニル、2-アミノ-4-オキソ-3,4-ジヒドロピテリジン-6-イル、テトラヒドロイソキノリニルなどが含まれるが、それらに限定されない。いくつかの態様において、各環の1、2、3、または4個の水素原子は置換基によって置換され得る。
【0197】
本明細書において用いられる「置換された」という用語は、置換部分上の1つまたは複数の水素原子の、アルキル、アルケニル、ヘテロシクロアルキル、アルコキシ、アリールオキシ、ヒドロキシ、アミノ、アミド、アルキルアミノ、アリールアミノ、シアノ、ハロ、メルカプト、ニトロ、カルボニル、アシル、アリールおよびヘテロアリール基から独立に選択されるが、それらに限定されない、置換基による独立の置き換えを指す。
【0198】
本明細書において用いられる「置換された」という用語は、置換部分上の1つまたは複数(典型的には1、2、3、4、または5個)の水素原子の、「置換基」の定義において以下に挙げる、またはそれ以外に指定する置換基の群より独立に選択される置換基による独立の置き換えを指す。一般に、非水素置換基は、置換されると指定される所与の部分の原子に結合し得る任意の置換基であり得る。置換基の例には、アシル、アシルアミノ、アシルオキシ、アルデヒド、脂環式、脂肪族、アルカンスルホンアミド、アルカンスルホニル、アルカリール、アルケニル、アルコキシ、アルコキシカルボニル、アルキル、アルキルアミノ、アルキルカルバノイル、アルキレン、アルキリデン、アルキルチオ、アルキニル、アミド(amide)、アミド(amido)、アミノ、アミノ、アミノアルキル、アラルキル、アラルキルスルホンアミド、アレーンスルホンアミド、アレーンスルホニル、芳香族、アリール、アリールアミノ、アリールカルバノイル、アリールオキシ、アジド、カルバモイル、カルボニル、カルボニル類(ケトン、カルボキシ、カルボキシレートを含む、CF3、シアノ(CN)、シクロアルキル、シクロアルキレン、エステル、エーテル、ハロアルキル、ハロゲン、ハロゲン、ヘテロアリール、ヘテロシクリル、ヒドロキシ、ヒドロキシ、ヒドロキシアルキル、イミノ、イミノケトン、ケトン、メルカプト、ニトロ、オキサアルキル、オキソ、オキソアルキル、ホスホリル(ホスホネートおよびホスフィネートを含む)、シリル基、スルホンアミド、スルホニル(スルフェート、スルファモイルおよびスルホネートを含む)、チオール、およびウレイド部分が含まれるが、それらに限定されず、そのそれぞれは置換されていても、または無置換でもよい。いくつかの場合に、2つの置換基が、それらが結合している炭素と共に、環を形成することもできる。
【0199】
アリールおよびヘテロアリールは、1つまたは複数の位置で1つまたは複数の置換基、例えば、ハロゲン、アルキル、アラルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、ヒドロキシル、アミノ、ニトロ、スルフヒドリル、イミノ、アミド、ホスフェート、ホスホネート、ホスフィネート、カルボニル、カルボキシル、シリル、エーテル、アルキルチオ、スルホニル、ケトン、アルデヒド、エステル、ヘテロシクリル、芳香族またはヘテロ芳香族部分、-CF3、-CNなどで置換されていてもよい。
【0200】
本明細書において用いられる「アルコキシル」または「アルコキシ」と言う用語は、それに結合した酸素ラジカルを有する、前述の定義のアルキル基を指す。代表的なアルコキシル基には、メトキシ、エトキシ、プロピルオキシ、tert-ブトキシ、n-プロピルオキシ、イソプロピルオキシ、n-ブチルオキシ、イソブチルオキシなどが含まれる。「エーテル」とは、酸素によって共有結合された2つの炭化水素である。したがって、アルキルをエーテルにするアルキルの置換基は、-O-アルキル、-O-アルケニル、および-O-アルキニルの1つで表し得るなどの、アルコキシルであるか、またはそれに似る。アロキシは、-O-アリールまたはO-ヘテロアリールで表すことができ、ここでアリールおよびヘテロアリールは以下の定義のとおりである。アルコキシおよびアロキシ基は、アルキルについて前述したとおりに置換され得る。
【0201】
本明細書において用いられる「アラルキル」という用語は、アリール基(例えば、芳香族またはヘテロ芳香族基)で置換されたアルキル基を指す。
【0202】
本明細書において用いられる「アルキルチオ」という用語は、それに結合した硫黄ラジカルを有する、前述の定義のアルキル基を指す。好ましい態様において、「アルキルチオ」部分は、-S-アルキル、-S-アルケニル、および-S-アルキニルの一つによって表される。代表的なアルキルチオ基には、メチルチオ、エチルチオなどが含まれる。用語「アルキルチオ」は、シクロアルキル基、アルケンおよびシクロアルケン基、およびアルキン基も包含する。「アリールチオ」は、アリールまたはヘテロアリール基を指す。
【0203】
「スルフィニル」という用語は、ラジカル-SO-を意味する。スルフィニルラジカルは、様々な置換基でさらに置換されて、スルフィン酸、スルフィンアミド、スルフィニルエステル、スルホキシドなどを含む、異なるスルフィニル基を形成し得ることに留意されたい。
【0204】
「スルホニル」という用語は、ラジカル-SO2-を意味する。スルホニルラジカルは、様々な置換基でさらに置換されて、スルホン酸(-SO3H)、スルホンアミド、スルホネートエステル、スルホンなどを含む、異なるスルホニル基を形成し得ることに留意されたい。
【0205】
「チオカルボニル」という用語は、ラジカル-C(S)-を意味する。チオカルボニルラジカルは、様々な置換基でさらに置換されて、チオ酸、チオアミド、チオエステル、チオケトンなどを含む、異なるチオカルボニル基を形成し得ることに留意されたい。
【0206】
本明細書において用いられる「アミノ」という用語は、-NH2を意味する。「アルキルアミノ」という用語は、窒素に結合した少なくとも1つの直鎖または分岐不飽和脂肪族、シクリル、またはヘテロシクリルラジカルを有する、窒素部分を意味する。例えば、代表的なアミノ基には、-NH2、-NHCH3、-N(CH3)2、-NH(C1~C10アルキル)、-N(C1~C10アルキル)2などが含まれる。用語「アルキルアミノ」は、「アルケニルアミノ」、「アルキニルアミノ」、「シクリルアミノ」、および「ヘテロシクリルアミノ」を含む。「アリールミノ」という用語は、窒素に結合した少なくとも1つのアリールラジカルを有する、窒素部分を意味する。例えば、-NHアリール、および-N(アリール)2。「ヘテロアリールアミノ」という用語は、窒素に結合した少なくとも1つのヘテロアリールラジカルを有する、窒素部分を意味する。例えば、-NHヘテロアリール、および-N(ヘテロアリール)2。任意に、2個の置換基は窒素と共に環を形成することもできる。特に記載がないかぎり、アミノ部分を含む本明細書に記載の化合物は、その保護誘導体を含むことができる。アミノ部分に適した保護基には、アセチル、tertブトキシカルボニル、ベンジルオキシカルボニルなどが含まれる。
【0207】
「アミノアルキル」という用語は、1つまたは複数の置換または無置換窒素原子(-N-)がアルキル、アルケニル、またはアルキニルの炭素原子の間に位置する場合を除く、前述の定義のアルキル、アルケニル、およびアルキニルを意味する。例えば、(C2~C6)アミノアルキルとは、2~6個の炭素および炭素原子の間に位置する1つまたは複数の窒素原子を含む鎖を指す。
【0208】
「アルコキシアルコキシ」という用語は、-O-(アルキル)-O-(アルキル)、例えば-OCH2CH2OCH3などを意味する。「アルコキシカルボニル」という用語は、-C(O)O-(アルキル)、例えば-C(=O)OCH3、-C(=O)OCH2CH3などを意味する。「アルコキシアルキル」という用語は、-(アルキル)-O-(アルキル)、例えば--CH2OCH3、-CH2OCH2CH3などを意味する。「アリールオキシ」という用語は、-O-(アリール)、例えば-O-フェニル、-O-ピリジニルなどを意味する。「アリールアルキル」という用語は、-(アルキル)-(アリール)、例えばベンジル(すなわち、-CH2フェニル)、-CH2-ピリンジニルなどを意味する。「アリールアルキルオキシ」という用語は、-O-(アルキル)-(アリール)、例えば-O-ベンジル、-O-CH2-ピリジニルなどを意味する。「シクロアルキルオキシ」という用語は、-O-(シクロアルキル)、例えば-O-シクロヘキシルなどを意味する。「シクロアルキルアルキルオキシ」という用語は、-O-(アルキル)-(シクロアルキル、例えば-OCH2シクロヘキシルなどを意味する。「アミノアルコキシ」という用語は、-O-(アルキル)-NH2、例えば-OCH2NH2、-OCH2CH2NH2などを意味する。「モノまたはジアルキルアミノ」という用語は、それぞれ-NH(アルキル)または-N(アルキル)(アルキル)、例えば-NHCH3、-N(CH3)2などを意味する。「モノまたはジアルキルアミノアルコキシ」という用語は、それぞれ-O-(アルキル)-NH(アルキル)または-O-(アルキル)-N(アルキル)(アルキル)、例えば-OCH2NHCH3、-OCH2CH2N(CH3)2などを意味する。「アリールアミノ」という用語は、-NH(アリール)、例えば-NH-フェニル、-NH-ピリジニルなどを意味する。「アリールアルキルアミノ」という用語は、-NH-(アルキル)-(アリール)、例えば-NH-ベンジル、-NHCH2-ピリジニルなどを意味する。「アルキルアミノ」という用語は、-NH(アルキル)、例えば-NHCH3、-NHCH2CH3などを意味する。「シクロアルキルアミノ」という用語は、-NH-(シクロアルキル)、例えば-NH-シクロヘキシルなどを意味する。「シクロアルキルアルキルアミノ」という用語は、-NH-(アルキル)-(シクロアルキル)、例えば-NHCH2-シクロヘキシルなど。
【0209】
本明細書で提供されるすべての定義に関して、定義は、指定されたもの以外のさらなる置換基が含まれ得るという意味で、開放形式であると解釈されるべきであることに留意されたい。したがって、C1アルキルは、炭素原子が1つあることを示すが、炭素原子上の置換基が何であるかを示すものではない。したがって、C1アルキルはメチル(すなわち、-CH3)ならびにCRaRbRcを含み、ここでRa、Rb、およびRcはそれぞれ独立に水素または炭素に対してアルファの原子がヘテロ原子またはシアノである任意の他の置換基であり得る。したがって、CF3、CH2OHおよびCH2CNはすべてC1アルキルである。
【0210】
特に記載がないかぎり、本明細書に示す構造は、1つまたは複数の同位体濃縮原子の存在だけが異なる化合物を含むことが意図される。例えば、重水素またはトリチウムによる水素原子の置き換え、または13C-もしくは14C-濃縮炭素による炭素原子の置き換えを除いて、本構造を有する化合物は本発明の範囲内である。
【0211】
本明細書において用いられる「異性体」という用語は、同じ分子式を有するが、構造が異なる化合物を指す。立体配置および/または立体構造のみが異なる異性体は、「立体異性体」と呼ばれる。「異性体」という用語は、鏡像異性体を指すためにも使用される。
【0212】
「鏡像異性体」という用語は、互いの鏡像であり、重ね合わせ不可能である、分子異性体の対の1つを記載するために用いられる。鏡像異性体を指定またはそれに言及するために使用される他の用語には、「立体異性体」(キラル中心の周りの異なる配置または立体化学のため;すべての鏡像異性体はステレオ異性体であるが、すべての立体異性体が鏡像異性体ではない)または「光学異性体」(純粋な鏡像異性体の光学活性のため、これは異なる純粋な鏡像異性体が異なる方向で平面偏光を回転させる能力である)が含まれる。鏡像異性体は一般に、融点および沸点などの同じ物理的性質を有し、また、同じ分光的性質も有する。鏡像異性体は、平面偏光とのそれらの相互作用に関して、および生物活性に関して、互いに異なり得る。
【0213】
「ラセミ混合物」、「ラセミ化合物」または「ラセミ体」という用語は、1つの化合物の2つの鏡像異性体の混合物を指す。理想的なラセミ混合物は、(+)鏡像異性体の旋光度が(-)鏡像異性体の旋光度を相殺するような、化合物の両方の鏡像異性体の50:50混合物があるものである。
【0214】
ラセミ混合物に関して使用する場合の「分割すること」または「分割」という用語は、ラセミ体のその2つの鏡像形態(すなわち、(+)および(-);または(R)および(S)形態)への分離を指す。この用語はまた、ラセミ体の1つの異性体の生成物への鏡像選択的変換を指すこともできる。
【0215】
「鏡像異性体過剰率」または「ee」という用語は、一方の鏡像異性体が他方より過剰に生成される反応生成物を指し、モルまたは重量または体積比F(+)およびF(-)(F(+)およびF(-)の合計=1)で示す組成の、(+)-および(-)-鏡像異性体の混合物と定義される。鏡像異性体過剰率は*F(+)-F(-)*と定義され、鏡像異性体過剰率パーセントは100×*F(+)-F(-)*による。鏡像異性体の「純度」は、そのeeまたはパーセントee値(%ee)によって記載される。
【0216】
「精製された鏡像異性体」または「純粋な鏡像異性体」または「分割された鏡像異性体」または「鏡像異性体過剰の化合物」のいずれで表されていても、この用語は、一方の鏡像異性体の量が他方の量を超えることを示すことが意図される。したがって、鏡像異性体製剤に言及する場合、主要な鏡像異性体のパーセント(例えば、モルまたは重量または体積)および(または)主要な鏡像異性体の鏡像異性体過剰率パーセントの両方(またはいずれか)を使用して、その製剤が精製された鏡像異性体製剤を表すかどうかを判定してもよい。
【0217】
異性体の「鏡像異性純度」または「鏡像異性体純度」という用語は、精製された鏡像異性体の定性的または定量的尺度を指し;典型的には、測定値はeeまたは鏡像異性体過剰率に基づいて表す。
【0218】
「実質的に精製された鏡像異性体」、「実質的に分割された鏡像異性体」「実質的に精製された鏡像異性体製剤」という用語は、一方の鏡像異性体が他方よりも濃縮されており、より好ましくは、他の鏡像異性体が鏡像異性体または鏡像異性体製剤の20%未満、より好ましくは10%未満、より好ましくは5%未満、さらにより好ましくは、2%未満である、製剤(例えば、非光学活性の出発原料、基質、または中間体から誘導される)を示すことが意図される。
【0219】
「精製された鏡像異性体」、「分割された鏡像異性体」および「精製された鏡像異性体製剤」という用語は、一方の鏡像異性体(例えば、R-鏡像異性体)が他方よりも濃縮されており、より好ましくは、他の鏡像異性体(例えば、S-鏡像異性体)が製剤の30%未満、好ましくは20%未満、より好ましくは10%未満(例えば、この特定の場合に、R-鏡像異性体はS-鏡像異性体を実質的に含まない)、より好ましくは5%未満、さらにより好ましくは、2%未満である、製剤(例えば、非光学活性の出発原料、基質、または中間体から誘導される)を示すことが意図される。精製された鏡像異性体は、他の鏡像異性体を実質的に含まずに合成してもよく、または精製された鏡像異性体は、立体優先的手順で合成し、続いて分離段階を行ってもよく、または精製された鏡像異性体は、ラセミ混合物から誘導してもよい。
【0220】
「鏡像選択性」という用語は、記号「E」によって示される鏡像異性体比とも呼ばれ、ラセミ基質から、生成物ラセミ混合物中の他の鏡像異性体に対して、一方の鏡像異性体を生成する酵素の選択的能力を指し;すなわち、酵素が鏡像異性体を区別する能力の尺度である。非選択的反応はEが1であるが、Eが20以上の分割は一般に合成または分割において有用と考えられる。鏡像選択性は、問題の鏡像異性体間の変換速度の差にある。鏡像異性体の一方が濃縮された反応生成物が得られ;逆に、残りの基質は他方の鏡像異性体が濃縮されている。実際的な目的のために、一般には一方の鏡像異性体が大過剰で得られるのが望ましい。これは、一定程度の変換で変換工程を終了することにより達成される。
【0221】
CAGE(コリンおよびゲラネート)は、陽イオンであるコリン(例えば、式XIを参照)と陰イオンであるゲラネートまたはゲラン酸(例えば、式XIIおよびXIIIを参照)とを含むイオン液体である。CAGEの調製は、例えば国際特許公開WO 2015/066647に記載されているとおりであることができ、これは全体として参照により本明細書に組み込まれ、または本明細書の実施例に記載されているとおりであり得る。
【0222】
「減少する」、「低減した」、「低減」、または「阻害する」という用語はすべて、本明細書において統計的に有意な量の減少を意味するために使用される。いくつかの態様において、「低減する」、「低減」または「減少する」または「阻害する」は、参照レベル(例えば、所与の治療または作用物質の非存在)と比較して少なくとも10%の減少を通常意味し、例えば少なくとも約10%、少なくとも約20%、少なくとも約25%、少なくとも約30%、少なくとも約35%、少なくとも約40%、少なくとも約45%、少なくとも約50%、少なくとも約55%、少なくとも約60%、少なくとも約65%、少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約98%、少なくとも約99%、またはそれより大きい減少を含み得る。本明細書で使用される場合、「低減」または「阻害」は、参照レベルと比較して完全な阻害または低減を包含しない。「完全阻害」は、参照レベルと比較して100%の阻害である。減少は、好ましくは、所与の障害のない個体について正常範囲内として認められるレベルまで下げることができる。
【0223】
「増加した」、「増加」、「増強する」、または「活性化する」という用語はすべて、本明細書において静的に有意な量の増加を意味するために使用される。いくつかの態様において、「増加した」、「増加する」、「増強する」、または「活性化する」という用語は、参照レベルと比較して少なくとも10%の増加、例えば少なくとも約20%、または少なくとも約30%、または少なくとも約40%、または少なくとも約50%、または少なくとも約60%、または少なくとも約70%、または少なくとも約80%、または少なくとも約90%の増加、または100%を含むそれ以下の増加、または参照レベルと比較して10~100%の間の任意の増加、または少なくとも約2倍、または少なくとも約3倍、または少なくとも約4倍、または少なくとも約5倍、または少なくとも約10倍の増加、または参照レベルと比較して2倍から10倍以上の間の任意の増加を意味し得る。マーカーまたは症状の文脈では、「増加」はそのようなレベルにおける統計的に有意な増加である。
【0224】
本明細書で使用される場合、「対象」はヒトまたは動物を意味する。通例、動物は霊長類、げっ歯類、家畜、または狩猟動物などの脊椎動物である。霊長類にはチンパンジー、カニクイザル、クモザル、およびアカゲザルなどのマカクが含まれる。げっ歯類にはマウス、ラット、ウッドチャック、フェレット、ウサギ、およびハムスターが含まれる。家畜および狩猟動物にはウシ、ウマ、ブタ、シカ、バイソン、バッファロー、イエネコなどのネコ種、イヌ、キツネ、オオカミなどのイヌ種、ニワトリ、エミュー、ダチョウなどの鳥種、ならびにマス、ナマズ、およびサケなどの魚が含まれる。いくつかの態様において、対象は哺乳動物、例えば霊長類、例えばヒトである。「個体」、「患者」、および「対象」という用語は、本明細書では互換的に使用される。
【0225】
好ましくは、対象は哺乳動物である。哺乳動物は、ヒト、非ヒト霊長類、マウス、ラット、イヌ、ネコ、ウマ、またはウシであり得るが、これらの例に限定されない。ヒト以外の哺乳動物は、本明細書に記載される病状の動物モデルを表す対象として有利に使用できる。対象は男性/雄または女性/雌であり得る。
【0226】
対象は、治療を必要とする病状またはそのような病状に関連する1つまたは複数の合併症であると以前に診断されているか、または悩まされていると特定されているか、または有するものであることができ、任意で、その病状または病状に関連する1つまたは複数の合併症について既に治療を受けたものであり得る。あるいは、対象はその病状または病状に関連する1つまたは複数の合併症を有すると以前に診断されていないものでもあり得る。例えば、対象はその病状または病状に関連する1つまたは複数の合併症についての1つまたは複数のリスク因子を呈するもの、またはリスク因子を呈さない対象であり得る。
【0227】
特定の病状について治療を「必要とする対象」は、その病状を有するか、その病状を有すると診断されたか、またはその病状を発症するリスクがある対象であり得る。
【0228】
本明細書で使用される場合、「タンパク質」および「ポリペプチド」という用語は、隣接する残基のアルファアミノ基とカルボキシ基との間のペプチド結合によって互いに接続された一連のアミノ酸残基を表すために本明細書において互換的に使用される。「タンパク質」および「ポリペプチド」という用語は、そのサイズまたは機能に関係なく、修飾アミノ酸(例えば、リン酸化、糖化、グリコシル化など)およびアミノ酸類似体を含む、アミノ酸のポリマーを指す。「タンパク質」および「ポリペプチド」はしばしば比較的大きいポリペプチドに関して使用される一方で、「ペプチド」という用語はしばしば小さいポリペプチドに関して使用されるが、当技術分野におけるこれらの用語の用法は重複する。「タンパク質」および「ポリペプチド」という用語は、遺伝子産物およびその断片を指す場合、本明細書において互換的に使用される。したがって、例示的なポリペプチドまたはタンパク質には、遺伝子産物、天然のタンパク質、ホモログ、オルソログ、パラログ、断片および他の同等物、変異体、断片、ならびに前述のものの類似体が含まれる。
【0229】
本明細書に記載される様々な態様において、記載された特定のポリペプチドのいずれかの変異体(天然またはその他)、対立遺伝子、ホモログ、保存的修飾変異体、および/または保存的置換変異体が包含されることがさらに企図される。アミノ酸配列に関して、当業者は、コードされた配列中の単一のアミノ酸または少ないパーセンテージのアミノ酸を改変する、核酸、ペプチド、ポリペプチド、またはタンパク質配列への個々の置換、欠失、または付加は、改変が化学的に類似したアミノ酸とのアミノ酸の置換という結果になりかつポリペプチドの所望の活性が保持される「保存的修飾変異体」であることを認識する。そのような保存的修飾変異体は、本開示と一貫した多型変異体、種間ホモログ、および対立遺伝子に追加され、これらを除くものではない。
【0230】
所与のアミノ酸は、ある脂肪族残基で別のものを置換する(例えば、Ile、Val、Leu、またはAlaを互いに置換する)、またはある極性残基で別のものを置換する(例えば、LysおよびArg;GluおよびAsp;またはGlnおよびAsnの間)など、類似した生理化学的特徴を有する残基で置き換えることができる。他のそのような保存的置換、例えば類似した疎水性特徴を有する領域全体の置換は周知である。保存的アミノ酸置換を含むポリペプチドは、本明細書に記載されるアッセイのいずれか1つにおいて試験し、所望の活性、例えば、天然または参照ポリペプチドの活性および特異性が保持されていることを確認できる。
【0231】
アミノ酸は、それらの側鎖の特性における類似性によってグループ化することができる(A. L. Lehninger, in Biochemistry, second ed., pp. 73-75, Worth Publishers, New York (1975)において):(1)非極性:Ala(A)、Val(V)、Leu(L)、Ile(I)、Pro(P)、Phe(F)、Trp(W)、Met(M);(2)非荷電極性:Gly(G)、Ser(S)、Thr(T)、Cys(C)、Tyr(Y)、Asn(N)、Gln(Q);(3)酸性:Asp(D)、Glu(E);(4)塩基性:Lys(K)、Arg(R)、His(H)。あるいは、天然の残基は、共通する側鎖の特性に基づいてグループに分類できる:(1)疎水性:ノルロイシン、Met、Ala、Val、Leu、Ile;(2)中性親水性:Cys、Ser、Thr、Asn、Gln;(3)酸性:Asp、Glu;(4)塩基性:His、Lys、Arg;(5)鎖配向に影響を与える残基:Gly、Pro;(6)芳香族:Trp、Tyr、Phe。非保守的置換は、これらのクラスの1つのメンバーを別のクラスに交換することを伴う。特定の保存的置換には、例えばAlaをGlyまたはSerに;ArgをLysに;AsnをGlnまたはHisに;AspをGluに;CysをSerに;GlnをAsnに;GluをAspに;GlyをAlaまたはProに;HisをAsnまたはGlnに;IleをLeuまたはValに;LeuをIleまたはValに;LysをArg、Gln、またはGluに;MetをLeu、Tyr、またはIleに;PheをMet、Leu、またはTyrに;SerをThrに;ThrをSerに;TrpをTyrに;TyrをTrpに;および/またはPheをVal、Ile、またはLeuにすることが含まれる。
【0232】
いくつかの態様において、本明細書に記載されるポリペプチド(またはそのようなポリペプチドをコードする核酸)は、本明細書に記載されるアミノ酸配列の1つの機能的断片であり得る。本明細書で使用される場合、「機能的断片」は、本明細書で以下に記載されるアッセイによって野生型参照ポリペプチドの活性の少なくとも50%を保持するペプチドの断片または区分である。機能的断片は、本明細書に開示される配列の保存的置換を含み得る。
【0233】
いくつかの態様において、本明細書に記載されるポリペプチドは、本明細書に記載される配列の変異体であり得る。いくつかの態様において、変異体は保存的修飾変異体である。保存的置換変異体は、例えば、天然ヌクレオチド配列の突然変異によって得ることができる。本明細書で称される「変異体」は、天然または参照ポリペプチドと実質的に相同であるが、1つまたは複数の欠失、挿入、または置換のために天然または参照ポリペプチドのものとは異なるアミノ酸配列を有するポリペプチドである。変異体ポリペプチドをコードするDNA配列は、天然または参照DNA配列と比較した場合、1つまたは複数のヌクレオチドの付加、欠失、または置換を含むが、活性を保持する変異体タンパク質またはその断片をコードする配列を包含する。多種多様な、PCRに基づく部位特異的変異誘発アプローチが当技術分野において公知であり、当業者によって適用され得る。
【0234】
変異アミノ酸またはDNA配列は、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、またはそれを超えて、天然または参照配列と同一であり得る。天然配列と突然変異配列との間の相同性の度合い(同一性率)は、例えばワールドワイドウェブ上でこの目的のために広く使用される自由に利用可能なコンピュータープログラム(例えば、デフォルト設定のBLASTpまたはBLASTn)を用いて2つの配列を比較することで決定できる。
【0235】
いずれかの局面のいくつかの態様において、変異体は、本明細書で提供される参照配列の1つに対して少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%以上の配列相同性を有し、その参照配列の野生型活性、例えばインクレチン活性を保持するポリペプチドであり得る。いずれかの局面のいくつかの態様において、変異体は、本明細書で提供される天然の参照配列の1つに対して少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%以上の配列相同性を有し、その参照配列の野生型活性、例えばインクレチン活性を保持するポリペプチドであり得る。いずれかの局面のいくつかの態様において、変異体は、本明細書で提供される参照配列の1つに対して少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%以上の配列相同性を有し、その参照配列の野生型活性、例えばインクレチン活性を保持する天然のポリペプチドであり得る。
【0236】
天然アミノ酸配列の改変は、当業者に公知の多数の技術のいずれかによって達成できる。突然変異は、例えば天然配列の断片へのライゲーションを可能にする制限部位の側面に位置する突然変異配列を含むオリゴヌクレオチドを合成することにより、特定の遺伝子座に導入できる。ライゲーション後に、結果として得られた再構築配列は、所望のアミノ酸の挿入、置換、または欠失を有する類似体をコードする。あるいは、必要な置換、欠失、または挿入によって改変された特定のコドンを有する改変ヌクレオチド配列を提供するために、オリゴヌクレオチド指定部位特異的突然変異誘発手順を使用できる。そのような改変を加えるための技術はとてもよく確立されており、例えばWalderら(Gene 42:133, 1986);Bauerら(Gene 37:73, 1985);Craik(BioTechniques, January 1985, 12-19);Smithら(Genetic Engineering: Principles and Methods, Plenum Press, 1981);ならびに米国特許第4,518,584号および第4,737,462号に開示されたものを含み、これらは全体として参照により本明細書に組み込まれる。ポリペプチドの正しいコンフォメーションの維持に関与しない任意のシステイン残基も、分子の酸化安定性の改善および異常な架橋の予防のために、一般的にはセリンで置換できる。逆に、システイン結合をポリペプチドに追加して、その安定性を改善し、またはオリゴマー化を促進することができる。
【0237】
本明細書で使用される場合、「抗体」という用語は、免疫グロブリン分子および免疫グロブリン分子の免疫学的に活性な部分、すなわち抗原に免疫特異的に結合する抗原結合部位を含む分子を指す。この用語は、例えば免疫グロブリン分子、モノクローナル抗体、キメラ抗体、CDR移植抗体、ヒト化抗体、Fab、Fab'、F(ab')2、Fv、ジスルフィド結合Fv、scFv、単一ドメイン抗体(dAb)、ダイアボディ、多重特異性抗体、二重特異性抗体(dual specific antibody)、抗イディオタイプ抗体、二重特異性抗体(bispecific antibody)、それらの機能的に活性なエピトープ結合部分、および/または二機能性ハイブリッド抗体を含む、2つの免疫グロブリン重鎖および2つの免疫グロブリン軽鎖からなる抗体、ならびに完全長抗体およびその抗原結合部分を含む様々な形態も指す。各重鎖は、重鎖の可変領域(ここではHCVRまたはVHと略される)および前記重鎖の定常領域で構成される。重鎖定常領域は、3つのドメインCH1、CH2、およびCH3からなる。各軽鎖は、軽鎖の可変領域(ここではLCVRまたはVLと略される)および前記軽鎖の定常領域で構成される。軽鎖定常領域はCLドメインからなる。VHおよびVL領域は、相補性決定領域(CDR)と称され、フレームワーク領域(FR)と称される保存領域が織り交ざった超可変領域にさらに分割されてよい。したがって、各VHおよびVL領域は、N末端からC末端へと次の順序:FR1、CDR1、FR2、CDR2、FR3、CDR3、FR4で配置された3つのCDRおよび4つのFRからなる。この構造は、当業者には周知である。
【0238】
本明細書で使用される場合、「抗体試薬」という用語は、少なくとも1つの免疫グロブリン可変ドメインまたは免疫グロブリン可変ドメイン配列を含み、所与の抗原に特異的に結合するポリペプチドを指す。抗体試薬は、抗体または抗体の抗原結合ドメインを含むポリペプチドを含み得る。いくつかの態様において、抗体試薬はモノクローナル抗体またはモノクローナル抗体の抗原結合ドメインを含むポリペプチドを含み得る。例えば、抗体は重(H)鎖可変領域(本明細書ではVHと略される)および軽(L)鎖可変領域(本明細書ではVLと略される)を含み得る。別の例において、抗体は2つの重(H)鎖可変領域および2つの軽(L)鎖可変領域を含む。「抗体試薬」という用語は、抗体の抗原結合断片(例えば一本鎖抗体、FabおよびsFab断片、F(ab')2、Fd断片、Fv断片、scFv、およびドメイン抗体(dAb)断片ならびに完全抗体を包含する。
【0239】
抗体および/または抗体試薬は、免疫グロブリン分子、モノクローナル抗体、キメラ抗体、CDR移植抗体、ヒト化抗体、完全ヒト抗体、Fab、Fab'、F(ab')2、Fv、ジスルフィド結合Fv、scFv、単一ドメイン抗体、ダイアボディ、多重特異性抗体、二重特異性抗体(dual specific antibody)、抗イディオタイプ抗体、二重特異性抗体(bispecific antibody)、およびそれらの機能的に活性なエピトープ結合部分を含み得る。
【0240】
本明細書において用いられる「ナノボディ」または単一ドメイン抗体(sdAb)という用語は、ラクダおよびヒトコブラクダから得られた抗体の小さい単一可変ドメインを含む抗体(VHH)を指す。ラマ種(アルパカ(Lama paccos)、ラマ(lama glama)、ビクーニャ(lama vicugna))などの新世界メンバーを含む、ラクダおよびヒトコブラクダ(フタコブラクダ(Camelus baclrianus)およびヒトコブラクダ(Calelus dromaderius))科のメンバーから得られた抗体タンパク質は、サイズ、構造の複雑さ、およびヒト対象に対する抗原性に関して特徴付けられている。天然に見出される哺乳類のこの科からの一定のIgG抗体は軽鎖を欠き、したがって他の動物由来の抗体の、2つの重鎖および2つの軽鎖を有する典型的な4鎖四級構造と構造的に区別される。PCT/EP93/02214(1994年3月3日公開のWO 94/04678;これはその全体が参照により本明細書に組み入れられる)を参照されたい。
【0241】
VHHとして同定された小さい単一可変ドメインであるラクダ抗体の領域は、標的に対して高い親和性を有する小さなタンパク質を生成するための遺伝子工学により得て、「ラクダナノボディ」として公知の低分子量抗体由来タンパク質を得ることができる。1998年6月2日発行の米国特許第5,759,808号を参照されたく;Stijlemans, B. et al., 2004 J Biol Chem 279: 1256-1261;Dumoulin, M. et al., 2003 Nature 424: 783-788;Pleschberger, M. et al. 2003 Bioconjugate Chem 14: 440-448;Cortez-Retamozo, V. et al. 2002 Int J Cancer 89: 456-62;およびLauwereys, M. et al. 1998 EMBO J. 17: 3512-3520も参照されたく;そのそれぞれは全体が参照により本明細書に組み入れられる。ラクダ抗体および抗体断片の改変ライブラリは、例えば、Ablynx, Ghent, Belgiumから市販されている。非ヒト起源の他の抗体と同様に、ラクダ抗体のアミノ酸配列は、組み換えによって改変されて、より厳密にヒト配列に類似した配列を得ることができ、すなわち、ナノボディを「ヒト化」することができる。したがって、ヒトに対するラクダ抗体の天然の低抗原性をさらに低下させることができる。
【0242】
ラクダナノボディはヒトIgG分子の約10分の1の分子量を有し、タンパク質はわずか数ナノメートルの物理的直径を有する。小さいサイズの1つの意義は、ラクダナノボディはより大きい抗体タンパク質には機能的に不可視の抗原部位に結合可能であることであり、すなわち、ラクダナノボディは古典的な免疫学的技術を用いると不明瞭な抗原を検出する試薬として、および可能性のある治療剤として有用である。したがって、小さいサイズのもう一つの意義は、ラクダナノボディは標的タンパク質の溝または狭い裂け目の特定の部位に結合した結果として阻害することができ、したがって、古典的な低分子量薬物の機能に、古典的な抗体よりも厳密に類似した能力ではたらき得る。低分子量および小さいサイズはさらに、非常に耐熱性であり、極端なpHおよびタンパク質分解性消化に対して安定で、抗原性が低い、ラクダナノボディをもたらす。2004年8月19日公開の米国特許出願第20040161738号を参照されたく;これはその全体が参照により本明細書に組み入れられる。ヒトに対する低い抗原性と組み合わせたこれらの特徴は、大きい治療可能性を示す。
【0243】
任意の局面のいくつかの態様において、活性化合物は抗体または抗体試薬を含み、かつアニオンは、少なくとも4.0のpKaおよび少なくとも1.0のLogPを有するカルボン酸を含む疎水性アニオンである。任意の局面のいくつかの態様において、活性化合物は抗体または抗体試薬を含み、かつアニオンはヘキセン酸である。
【0244】
任意の局面のいくつかの態様において、活性化合物は核酸を含み、かつアニオンは、少なくとも4.0のpKaおよび少なくとも1.0のLogPを有するカルボン酸を含む疎水性アニオンである。任意の局面のいくつかの態様において、活性化合物は核酸を含み、かつアニオンはヘキセン酸である。
【0245】
任意の局面のいくつかの態様において、活性化合物は、阻害性核酸、siRNA、pDNA、またはmRNAを含み、かつアニオンは、少なくとも4.0のpKaおよび少なくとも1.0のLogPを有するカルボン酸を含む疎水性アニオンである。任意の局面のいくつかの態様において、活性化合物は、阻害性核酸、siRNA、pDNA、またはmRNAを含み、かつアニオンはヘキセン酸である。
【0246】
本明細書で使用される場合、「核酸」または「核酸配列」という用語は、リボ核酸、デオキシリボ核酸、またはそれらの類似体の単位が組み込まれた任意の分子、好ましくはポリマー分子を指す。核酸は一本鎖または二本鎖のいずれかであり得る。一本鎖核酸は変性二本鎖DNAの1本の核酸鎖であり得る。あるいは、いかなる二本鎖DNAにも由来しない一本鎖核酸であり得る。1つの局面において、核酸はDNAであり得る。別の局面において、核酸はRNAであり得る。適切なDNAは、例えばcDNAを含み得る。適切なRNAは、例えばmRNAを含み得る。
【0247】
本明細書において用いられる「阻害性核酸」は、標的の発現を阻害し得る核酸分子、例えば、二本鎖RNA(dsRNA)、阻害性RNA(iRNA)などを指す。任意の局面のいくつかの態様において、阻害性核酸はサイレンシングRNA(siRNA)、マイクロRNA(miRNA)、または低分子ヘアピン型RNA(shRNA)であり得る。阻害性核酸は、例えば、酵素との組み合わせで、標的の挿入、欠失、挿入欠失、および/または変異を誘導し、それにより標的の発現を阻害するよう機能する、ガイド配列分子(例えば、ガイドRNA)も含み得る。
【0248】
二本鎖RNA分子(dsRNA)は、RNA干渉(RNAi)として知られる高度に保存された調節機構において遺伝子発現を遮断することが示されている。本明細書に記載される阻害性核酸は、長さが30ヌクレオチド以下、すなわち長さが15~30ヌクレオチド、一般的に長さが19~24ヌクレオチドであり、標的とされるmRNA転写物の少なくとも一部分に実質的に相補的な領域を有するRNA鎖(アンチセンス鎖)を含み得る。これらのiRNAを使用すると、mRNA転写物を標的とした分解が可能になり、標的の発現および/または活性の減少という結果になる。
【0249】
本明細書で使用される場合、「iRNA」という用語は、RNA(または本明細書で以下に記載されるような修飾核酸)を含み、RNA誘導サイレンシング複合体(RISC)経路を介してRNA転写物を標的とした切断を媒介する作用物質を指す。いずれかの局面のいくつかの態様において、本明細書に記載されるiRNAは、標的の発現および/または活性の阻害をもたらす。いずれかの局面のいくつかの態様において、細胞を阻害剤(例えばiRNA)と接触させると、細胞中の標的mRNAレベルにおいて、iRNAが存在しない場合に細胞中で見出される標的mRNAレベルの少なくとも約5%、約10%、約20%、約30%、約40%、約50%、約60%、約70%、約80%、約90%、約95%、約99%、100%を含むそれ以下の減少という結果になる。いずれかの局面のいくつかの態様において、阻害剤(例えばiRNA)を対象に投与すると、対象中の標的mRNAレベルにおいて、iRNAが存在しない場合に対象中で見出される標的mRNAレベルの少なくとも約5%、約10%、約20%、約30%、約40%、約50%、約60%、約70%、約80%、約90%、約95%、約99%、100%を含むそれ以下の減少という結果になる。
【0250】
いずれかの局面のいくつかの態様において、iRNAはdsRNAであり得る。dsRNAは、dsRNAが使用される条件下でハイブリダイズして二重鎖構造を形成するのに十分に相補的な2本のRNA鎖を含む。dsRNAの一方の鎖(アンチセンス鎖)は、標的配列に実質的に相補的な、および一般的に完全に相補的な相補性領域を含む。標的配列は、標的の発現の間に形成されたmRNAの配列に由来することができ、例えば、それは1つまたは複数のイントロン境界に及ぶことができる。他方の鎖(センス鎖)は、適切な条件下で組み合わせた場合、2本の鎖がハイブリダイズして二重鎖構造を形成するような、アンチセンス鎖に相補的な領域を含む。一般的に、二重鎖構造は、長さが15および30塩基対を含む15~30塩基対の間、より一般的には長さが18および25塩基対を含む18~25塩基対の間、さらにより一般的には長さが19および24塩基対を含む19~24塩基対の間、最も一般的には長さが19および21塩基対を含む19~21塩基対の間である。同様に、標的配列に対する相補性領域は、長さが15および30塩基対を含む15~30塩基対の間、より一般的には長さが18および25塩基対を含む18~25塩基対の間、さらにより一般的には長さが19および24塩基対を含む19~24塩基対の間、最も一般的には長さがヌクレオチド長で19および21塩基対を含む19~21塩基対の間である。いずれかの局面のいくつかの態様において、dsRNAは、長さが15および20ヌクレオチドを含む15~20ヌクレオチドの間であり、別の態様において、dsRNAは、長さが25および30ヌクレオチドを含む25~30ヌクレオチドの間である。当業者が認識するように、切断のための標的となるRNAの標的とされる領域は、ほとんどの場合、より大きいRNA分子の部分であり、しばしばmRNA分子である。関連する場合、mRNA標的の一「部分」は、RNAi指定切断(RNAi-directed cleavage)(すなわち、RISC経路を通じた切断)の基質となるのに十分な長さのmRNA標的の連続する配列である。9塩基対という短い二重鎖を有するdsRNAが、ある状況下では、RNAi指定RNA切断を媒介し得る。ほとんどの場合、標的は少なくとも15ヌクレオチド長、好ましくは15~30ヌクレオチド長である。
【0251】
阻害性核酸のタイプの例示的態様には、例えば、siRNA、shRNA、miRNA、および/またはamiRNAが含まれ得、これらは当技術分野において周知である。当業者であれば、例えば、一般に利用可能な設計ツールを用いて、標的遺伝子または遺伝子産物(例えば、mRNA)の核酸配列を標的とするためのさらなるsiRNA、shRNA、またはmiRNAを設計し得るであろう。siRNA、shRNA、またはmiRNAは一般に、Dharmacon(Layfayette、CO)またはSigma Aldrich(St. Louis、MO)などの会社により作製される。
【0252】
いずれかの局面のいくつかの態様において、iRNAのRNA、例えばdsRNAは、安定性または他の有益な特徴を増強するために化学的に修飾される。本明細書に記載される核酸は、“Current protocols in nucleic acid chemistry,” Beaucage, S.L. et al. (Edrs.), John Wiley & Sons, Inc., New York, NY, USAに記載されるような、当技術分野においてよく確立されている方法によって合成および/または修飾されてよく、これは参照により本明細書に組み込まれる。修飾は、例えば(a)末端修飾、例えば5'末端修飾(リン酸化、コンジュゲーション、逆結合(inverted linkage)など)、3'末端修飾(コンジュゲーション、DNAヌクレオチド、逆結合など)、(b)塩基修飾、例えば安定化塩基、不安定化塩基、またはパートナーの拡張レパートリーと塩基対を形成する塩基での置換、塩基の除去(脱塩基ヌクレオチド)、または共役塩基、(c)糖修飾(例えば2’位または4’位)または糖の置換、ならびに(d)ホスホジエステル結合の修飾または置換を含む骨格修飾、を含む。本明細書に記載される態様において有用なRNA化合物の具体例は、修飾骨格を含むか、または天然のヌクレオシド間結合を含まないRNAが含まれるが、これらに限定されない。修飾骨格を有するRNAは、とりわけ、骨格にリン原子を有さないものが含まれる。この明細書の目的のために、および当技術分野においてときどき参照されるように、それらのヌクレオシド間骨格にリン原子を有さない修飾RNAもオリゴヌクレオシドとみなされ得る。いずれかの局面のいくつかの態様において、修飾RNAは、そのヌクレオシド間骨格にリン原子を有する。
【0253】
修飾RNA骨格は、例えばホスホロチオエート、キラルホスホロチオエート、ホスホロジチオエート、ホスホトリエステル、アミノアルキルホスホトリエステル、3'-アルキレンホスホネートおよびキラルホスホネートを含むメチルおよび他のアルキルホスホネート、ホスフィネート、3'-アミノホスホルアミデートおよびアミノアルキルホスホルアミデートを含むホスホルアミデート、チオノホスホルアミデート、チオノアルキルホスホネート、チオノアルキルホスホトリエステル、および通常の3'-5'結合を有するボラノホスフェート、これらの2'-5'結合類似体、ならびにヌクレオシド単位の隣接対が3'-5'から5'-3'または2'-5'から5'-2'に結合している、逆の極性を有するもの)を含み得る。様々な塩、混合塩、および遊離酸の形態も含まれる。その中にリン原子を含まない修飾RNA骨格は、短鎖アルキルまたはシクロアルキルヌクレオシド間結合、混合ヘテロ原子およびアルキルまたはシクロアルキルヌクレオシド間結合、または1つまたは複数の短鎖ヘテロ原子または複素環ヌクレオシド間結合によって形成される骨格を有する。これらには、モルホリノ結合(一部はヌクレオシドの糖部分から形成される);シロキサン骨格;スルフィド、スルホキシド、およびスルホン骨格;ホルムアセチルおよびチオホルムアセチル骨格;メチレンホルムアセチルおよびチオホルムアセチル骨格;アルケン含有骨格;スルファメート骨格;メチレンイミノおよびメチレンヒドラジノ骨格;スルホネートおよびスルホンアミド骨格;アミド骨格;他の、混合N、O、S、およびCH2の成分部分を有するもの、ヘテロ原子骨格を有するオリゴヌクレオシド、および特に-CH2-NH-CH2-、-CH2-N(CH3)-O-CH2-[メチレン(メチルイミノ)またはMMI骨格として知られる]、-CH2-O-N(CH3)-CH2-、-CH2-N(CH3)-N(CH3)-CH2-および-N(CH3)-CH2-CH2-[ここで、天然ホスホジエステル骨格は-O-P-O-CH2-として表される]、を有するものが含まれる。
【0254】
iRNAでの使用に適切または企図される他のRNA模倣体では、ヌクレオチド単位の糖およびヌクレオシド間結合の両方、すなわち骨格が、新規の基によって置き換えられる。塩基単位は、適した核酸標的化合物とのハイブリダイゼーションのために維持される。そのようなオリゴマー化合物の1つである、優れたハイブリダイゼーション特性を有することが示されているRNA模倣体は、ペプチド核酸(PNA)と称される。PNA化合物では、RNAの糖骨格が、アミド含有骨格、特にアミノエチルグリシン骨格で置き換えられる。核酸塩基は保持され、骨格のアミド部分のアザ窒素原子に直接的または間接的に結合している。
【0255】
iRNAのRNAは、1つまたは複数のロックド核酸(LNA)を含むようにも修飾され得る。ロックド核酸は、リボース部分が2'および4'炭素を接続する追加の橋を含む、修飾リボース部分を有するヌクレオチドである。この構造は、リボースを3'-エンド構造コンフォメーション中に効果的に「ロック」する。ロックド核酸をsiRNAに追加すると、血清中のsiRNAの安定性が増加し、非特異的な効果が低減することが示されている(Elmen, J. et al., (2005) Nucleic Acids Research 33(1):439-447;Mook, OR. et al., (2007) Mol Canc Ther 6(3):833-843;Grunweller, A. et al., (2003) Nucleic Acids Research 31(12):3185-3193)。
【0256】
修飾RNAは、1つまたは複数の置換糖部分も含み得る。本明細書に記載されるiRNA、例えばdsRNAは、2'位に以下の1つを含み得る:OH;F;O-、S-、もしくはN-アルキル;O-、S-、もしくはN-アルケニル;O-、S-、もしくはN-アルキニル;またはO-アルキル-O-アルキル、ここで、アルキル、アルケニル、およびアルキニルは、置換または非置換C1~C10アルキルまたはC2~C10アルケニルおよびアルキニルであってよい。例示的な適切な修飾は、O[(CH2)nO]mCH3、O(CH2).nOCH3、O(CH2)nNH2、O(CH2)nCH3、O(CH2)nONH2、およびO(CH2)nON[(CH2)nCH3)]2、ここでnおよびmは1~約10である。いずれかの局面のいくつかの態様において、dsRNAは2'位に以下の1つを含む:C1~C10低級アルキル、置換低級アルキル、アルカリル、アラルキル、O-アルカリルまたはO-アラルキル、SH、SCH3、OCN、Cl、Br、CN、CF3、OCF3、SOCH3、SO2CH3、ONO2、NO2、N3、NH2、ヘテロシクロアルキル、ヘテロシクロアルカリル、アミノアルキルアミノ、ポリアルキルアミノ、置換シリル、RNA切断基、レポーター基、インターカレーター、iRNAの薬物動態特性を改善するための基、またはiRNAの薬力学的特性を改善するための基、および類似した特性を有する他の置換基。いずれかの局面のいくつかの態様において、修飾は2'メトキシエトキシ(2'-O-CH2CH2OCH3、2'-O-(2-メトキシエチル)または2'-MOEとしても知られる)(Martin et al., Helv. Chim. Acta, 1995, 78:486-504)、すなわちアルコキシ-アルコキシ基を含む。別の例示的な修飾は、本明細書の以下の実施例に記載されるように、2'-ジメチルアミノオキシエトキシ、すなわち2'-DMAOEとしても知られるO(CH2)2ON(CH3)2基、ならびに本明細書の以下の実施例にも記載される2'-ジメチルアミノエトキシエトキシ(当技術分野において2'-O-ジメチルアミノエトキシエチルまたは2'-DMAEOEとしても知られる)、すなわち2'-O-CH2-O-CH2-N(CH2)2である。
【0257】
他の修飾は、2'-メトキシ(2'-OCH3)、2'-アミノプロポキシ(2'-OCH2CH2CH2NH2)および2'-フルオロ(2'-F)を含む。類似した修飾は、iRNAのRNA上の他の位置、特に3'末端ヌクレオチド上または2'-5'結合dsRNA中の糖の3'位および5'末端ヌクレオチドの5'位にも加え得る。iRNAは、ペントフラノシル糖の代わりにシクロブチル部分などの糖模倣体も有してよい。
【0258】
阻害性核酸は、核酸塩基(当技術分野において、しばしば単に「塩基」と称される)の修飾または置換も含み得る。本明細書で使用される場合、「非修飾」または「天然」の核酸塩基は、プリン塩基アデニン(A)およびグアニン(G)、ならびにピリミジン塩基チミン(T)、シトシン(C)、およびウラシル(U)を含む。修飾核酸塩基は、5-メチルシトシン(5-me-C)、5-ヒドロキシメチルシトシン、キサンチン、ヒポキサンチン、2-アミノアデニン、6-メチルならびにアデニンおよびグアニンの他のアルキル誘導体、2-プロピルならびにアデニンおよびグアニンの他のアルキル誘導体、2-チオウラシル、2-チオチミンおよび2-チオシトシン、5-ハロウラシルおよびシトシン、5-プロピニルウラシルおよびシトシン、6-アゾウラシル、シトシンおよびチミン、5-ウラシル(プソイドウラシル)、4-チオウラシル、8-ハロ、8-アミノ、8-チオール、8-チオアルキル、8-ヒドロキシル アナル(8-hydroxyl anal)他の8-置換アデニンおよびグアニン、5-ハロ、特に5-ブロモ、5-トリフルオロメチルならびに他の5-置換ウラシルおよびシトシン、7-メチルグアニンおよび7-メチルアデニン、8-アザグアニンおよび8-アザアデニン、7-デアザグアニンおよび7-ダアザアデニン(7-daazaadenine)および3-デアザグアニンおよび3-デアザアデニンなどの他の合成および天然核酸塩基を含む。これらの核酸塩基のいくつかは、本発明で特徴とされる阻害性核酸の結合親和性を増加させるのに特に有用である。これらは、2-アミノプロピルアデニン、5-プロピニルウラシル、および5-プロピニルシトシンを含む、5-置換ピリミジン、6-アザピリミジンならびにN-2、N-6、および0-6置換プリンを含む。5-メチルシトシン置換は、核酸二重鎖の安定性を0.6~1.2℃増加させることが示されており(Sanghvi, Y. S., Crooke, S. T. and Lebleu, B., Eds., dsRNA Research and Applications, CRC Press, Boca Raton, 1993, pp. 276-278)、さらにいっそう特に2'-O-メトキシエチル糖修飾と組み合わせた場合、例示的な塩基置換である。
【0259】
上記に記載された修飾核酸、骨格、および核酸塩基の調製は、当技術分野において周知である。
【0260】
本発明で特徴とされる阻害性核酸の別の修飾は、iRNAの活性、細胞分布、薬物動態特性、または細胞取り込みを増強する1つまたは複数のリガンド、部分、またはコンジュゲートを阻害性核酸へ化学的に結合させることを伴う。そのような部分には、コレステロール部分(Letsinger et al., Proc. Natl. Acid. Sci. USA, 1989, 86: 6553-6556)、コール酸(Manoharan et al., Biorg. Med. Chem. Let., 1994, 4: 1053-1060)、チオエーテル、例えばベリル-S-トリチルチオール(Manoharan et al., Ann. N.Y. Acad. Sci., 1992, 660:306-309;Manoharan et al., Biorg. Med. Chem. Let., 1993, 3:2765-2770)、チオコレステロール(Oberhauser et al., Nucl. Acids Res., 1992, 20:533-538)、脂肪族鎖、例えばドデカンジオールまたはウンデシル残基(Saison-Behmoaras et al., EMBO J, 1991, 10:1111-1118;Kabanov et al., FEBS Lett., 1990, 259:327-330;Svinarchuk et al., Biochimie, 1993, 75:49-54)、リン脂質、例えばジヘキサデシル-rac-グリセロールまたはトリエチルアンモニウム1,2-ジ-O-ヘキサデシル-rac-グリセロ-3-ホスホネート(Manoharan et al., Tetrahedron Lett., 1995, 36:3651-3654;Shea et al., Nucl. Acids Res., 1990, 18:3777-3783)、ポリアミンまたはポリエチレングリコール鎖(Manoharan et al., Nucleosides & Nucleotides, 1995, 14:969-973)、またはアダマンタン酢酸(Manoharan et al., Tetrahedron Lett., 1995, 36:3651-3654)、パルミチル部分(Mishra et al., Biochim. Biophys. Acta, 1995, 1264:229-237)、またはオクタデシルアミンもしくはヘキシルアミノ-カルボニルオキシコレステロール部分(Crooke et al., J. Pharmacol. Exp. Ther., 1996, 277:923-937)などの脂質部分が含まれるが、これらに限定されない。
【0261】
本明細書に記載の様々な局面のいくつかの態様において、阻害性核酸はガイド核酸(gNA)である。本明細書において用いられる「ガイド核酸」、「ガイド配列」、「crRNA」、「ガイドRNA」、「シングルガイドRNA」、「gRNA」または「CRISPRガイド配列」という用語は、ポリヌクレオチド標的に対する酵素、例えば、CRISPR/CasシステムのCas DNA結合タンパク質の特異性を決定する配列を含む核酸を指す。gNAは、標的核酸配列とハイブリダイズし、酵素、例えば、ヌクレアーゼの標的核酸配列への配列特異的結合を導くのに十分な、標的核酸配列との少なくとも部分的な相補性を有するポリヌクレオチド配列を含み得る。
【0262】
いくつかの態様において、gNAによって導かれる酵素は、遺伝子編集タンパク質、例えば、ニックまたは二本鎖切断を所望の認識部位に誘導する任意のヌクレアーゼである。このような酵素は天然または改変されたものであり得る。これらの切断は、次いで、2つの方法の1つで細胞によって修復され得る:非相同末端結合および相同性指向修復(相同組換え)。非相同末端接合(NHEJ)では、二本鎖切断は、切断末端同士の直接ライゲーションによって修復される。したがって、新しい核酸材料が部位に挿入されることはないが、いくらかの核酸材料が失われ、欠失を生じ得る。相同性指向修復では、切断された標的DNA配列と相同性を有するドナーポリヌクレオチドを、切断された標的DNA配列の修復のための鋳型として使用することができ、ドナーポリヌクレオチドから標的DNAへの遺伝情報の伝達が引き起こされる。したがって、新しい核酸材料が部位に挿入/コピーされ得る。NHEJおよび/または相同性指向修復による標的DNAの改変を、遺伝子補正、遺伝子置換、遺伝子タグ付け、導入遺伝子挿入、ヌクレオチド欠失、遺伝子破壊、遺伝子変異などに用いることができる。
【0263】
1つの態様において、遺伝子編集タンパク質はCRISPR関連ヌクレアーゼである。天然の原核生物CRISPR関連ヌクレアーゼシステムは、一定の長さの介在可変配列を有する短い反復配列(すなわち、規則的に間隔をあけた短い逆方向反復のクラスター)およびCRISPR関連(「Cas」)ヌクレアーゼタンパク質のアレイを含む。転写されたCRISPRアレイのRNAは、Casタンパク質のサブセットによって小さいガイドRNAにプロセシングされ、これは一般に以下で論じるように2つの構成要素を有する。タイプI、タイプIIおよびタイプIIIの少なくとも3つの異なるシステムがある。RNAから成熟crRNAへのプロセシングに関与する酵素は、3つのシステムで異なる。天然原核生物システムにおいて、ガイドRNA(「gRNA」)は、CRISPR RNA(「crRNA」)およびトランス作動性RNA(「tracrRNA」)と呼ばれる2つの短い非コードRNA種を含む。例示的システムにおいて、gRNAはヌクレアーゼ、例えば、Casヌクレアーゼと複合体を形成する。gRNA:ヌクレアーゼ複合体は、gRNAの一部に相補的な配列である、プロトスペーサー隣接モチーフ(「PAM」)およびプロトスペーサーを有する標的ポリヌクレオチド配列に結合する。gRNA:ヌクレアーゼ複合体による標的ポリヌクレオチドの認識および結合は、標的の切断を誘導する。
【0264】
任意のCRISPR関連ヌクレアーゼを、本発明のシステムおよび方法において使用することができる。CRISPRヌクレアーゼシステムは、当業者には公知で、例えばCas9、Cas12、Cas12aなどであり、特許/出願8,993,233、US 2015/0291965、US 2016/0175462、US 2015/0020223、US 2014/0179770、8,697,359;8,771,945;8,795,965;WO 2015/191693;US 8,889,418;WO 2015/089351;WO 2015/089486;WO 2016/028682;WO 2016/049258;WO 2016/094867;WO 2016/094872;WO 2016/094874;WO 2016/112242;US 2016/0153004;US 2015/0056705;US 2016/0090607;US 2016/0029604;8,865,406;8,871,445を参照されたく;これらはそれぞれその全体が参照により本明細書に組み入れられる。ヌクレアーゼは、ファージCasヌクレアーゼ、例えばCasΦであることもできる(例えば、Pausch et al. Science 369: 333-7 (2020);これはその全体が参照により本明細書に組み入れられる)。
【0265】
全長ガイド核酸鎖は任意の長さであり得る。例えば、ガイド核酸鎖は約5、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、35、40、45、50、75、もしくはそれ以上のヌクレオチド長であるか、または約5、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、35、40、45、50、75、もしくはそれ以上よりも多いヌクレオチド長であり得る。本明細書に記載の様々な局面のいくつかの態様において、核酸鎖は約75、50、45、40、35、30、25、20、15、12、またはそれ以下よりも少ないヌクレオチド長である。例えば、ガイド核酸配列は10~30ヌクレオチド長である。
【0266】
標的核酸に相補的な配列に加えて、いくつかの態様において、gNAは足場配列も含む。標的核酸に相補的な配列および足場配列の両方をコードするgNAの発現は、標的核酸への結合(ハイブリダイズ)および標的核酸へのエンドヌクレアーゼの動員の両方の二重機能を有し、これは部位特異的CRISPR活性をもたらし得る。いくつかの態様において、このようなキメラgNAは、シングルガイドRNA(sgRNA)と呼ばれ得る。
【0267】
本明細書に記載の様々な局面のいくつかの態様において、ガイド核酸は、ガイド設計ツール(例えば、Benchling(商標);Broad Institute GPP(商標);CasOFFinder(商標);CHOPCHOP(商標);CRISPOR(商標);Deskgen(商標);E-CRISP(商標);Geneious(商標);GenHub(商標);GUIDES(商標)(例えば、ライブラリ設計のため);Horizon Discovery(商標);IDT(商標);Off-Spotter(商標);およびSynthego(商標);これらはウェブ上で入手可能である)を用いて設計される。
【0268】
本明細書で使用される「ベクター」という用語は、宿主細胞への送達のために、または異なる宿主細胞間の移動のために設計された核酸構築物を指す。本明細書中で使用される場合、ベクターは、ウイルス性または非ウイルス性であり得る。「ベクター」という用語は、正しい制御要素と関連した場合に複製することができ、遺伝子配列を細胞に移動できる任意の遺伝要素を包含する。ベクターは、クローニングベクター、発現ベクター、組換えベクター、プラスミド、ファージ、トランスポゾン、コスミド、染色体、ウイルス、ビリオンなどを含み得るが、これらに限定されない。
【0269】
本明細書で使用される場合、「発現ベクター」という用語は、ベクター上の転写調節配列に結合した配列からのRNAまたはポリペプチドの発現を指示するベクターを指す。発現される配列は、必ずしもではないが、しばしば細胞にとって異種である。発現ベクターは追加の要素を含んでよく、例えば発現ベクターは2つの複製系を有してよく、したがってそれが2つの生物、例えば発現のためにヒト細胞において、ならびにクローニングおよび増幅のために原核生物宿主において維持されることを可能にする。「発現」という用語は、該当する場合、例えば転写、転写プロセシング、翻訳、ならびにタンパク質の折り畳み、修飾、およびプロセシングを含むが、これらに限定されない、RNAおよびタンパク質の産生、ならびに必要に応じてタンパク質の分泌に関与する細胞過程を指す。「発現産物」は、遺伝子から転写されたRNA、および遺伝子から転写されたmRNAの翻訳によって得られたポリペプチドを含む。「遺伝子」という用語は、適した調節配列に機能的に連結された場合にインビトロまたはインビボでRNAに転写(DNA)される核酸配列を意味する。遺伝子は、コード領域の前後の領域、例えば5'非翻訳(5' UTR)または「リーダー」配列および3' UTRまたは「トレーラー」配列、ならびに個々のコード区分(エクソン)の間の介在配列(イントロン)を含んでも含まなくてもよい。
【0270】
本明細書で使用される場合、「ウイルスベクター」という用語は、ウイルス起源の少なくとも1つの要素を含み、ウイルスベクター粒子にパッケージされる能力を有する核酸ベクター構築物を指す。ウイルスベクターは、非必須ウイルス遺伝子の代わりに本明細書に記載されるようなポリペプチドをコードする核酸を含み得る。ベクターおよび/または粒子は、インビトロまたはインビボのいずれかで細胞中に任意の核酸を移動させる目的で利用されてよい。ウイルスベクターの多数の形態が当技術分野において公知である。
【0271】
「組換えベクター」によって意味するのは、インビボで発現することができる異種核酸配列または「導入遺伝子」を含むベクターである。本明細書に記載されるベクターは、いくつかの態様において、他の適切な組成物および療法と組み合わせられることを理解されたい。いくつかの態様において、ベクターはエピソーム性である。適切なエピソームベクターの使用により、対象において、染色体DNA外に高コピー数で関心対象のヌクレオチドを維持し、それにより染色体組み込みの潜在的な影響を排除する手段が提供される。
【0272】
本明細書で使用される場合、「治療する」、「治療」、「治療している」、または「改良」という用語は、例えば本明細書に記載される病状または疾患などの、疾患または障害に関連する病状の進行または重症度を逆転、緩和、改良、阻害、遅延、または停止することが目的である治療的処置を指す。「治療している」という用語は、病状、疾患、または障害の少なくとも1つの不利益な影響または症状を低減または緩和していることを含む。1つまたは複数の症状または臨床マーカーが低減されれば、治療は一般的に「有効」である。あるいは、疾患の進行が低減または停止されれば、治療は「有効」である。すなわち、「治療」には症状またはマーカーの改善だけでなく、治療を行わない場合に予期されるものと比較した、症状の進行もしくは悪化の中止または少なくとも遅延も含まれる。有益または望ましい臨床結果は、検出可能であろうと検出不可能であろうと、1つまたは複数の症状の緩和、疾患の程度の下落、疾患の状態の安定化(すなわち悪化しない)、疾患の進行の遅れまたは遅延、疾患状態の改良または一時緩和、(部分であろうと完全であろうと)寛解、および/または死亡率の減少を含むが、これらに限定されない。疾患の「治療」という用語は、疾患の症状または副作用の軽減をもたらすこと(対症療法を含む)も含む。
【0273】
本明細書で使用される場合、「薬学的組成物」という用語は、薬学的に許容される担体、例えば製薬業界において広く使用される担体と組み合わせた活性作用物質を指す。「薬学的に許容される」という語句は、健全な医学的判断の範囲内で、合理的な利益/リスク比に見合った、過剰な毒性、刺激、アレルギー反応、もしくは他の問題または合併症を伴わない、ヒトおよび動物の組織と接触して使用するのに適切な化合物、材料、組成物、および/または剤形を指すために本明細書で使用される。いずれかの局面のいくつかの態様において、薬学的に許容される担体は、水以外の担体であり得る。いずれかの局面のいくつかの態様において、薬学的に許容される担体は、クリーム、エマルション、ゲル、リポソーム、ナノ粒子、および/または軟膏であり得る。いずれかの局面のいくつかの態様において、薬学的に許容される担体は、人工的または操作された担体、例えば有効成分が自然界で生じることが見出されない担体であり得る。
【0274】
本明細書で使用される場合、「投与」という用語は、所望の部位での少なくとも部分的な作用物質の送達という結果になる方法または経路により、本明細書に開示されるような化合物を対象中に配置することを指す。本明細書に開示される化合物を含む薬学的組成物は、対象において有効な治療という結果になる任意の適した経路によって投与できる。
【0275】
本明細書において用いられる「接触」とは、少なくとも1つの細胞に作用物質を送達、または曝露するための任意の適切な手段を指す。例示的送達法には、細胞培養培地への直接送達、灌流、注射、または当業者には周知の他の送達法が含まれるが、それらに限定されない。いくつかの態様において、接触は、物理的な人間の活動、例えば、注射;分配、混合、および/もしくはデカントの行為;ならびに/または送達装置もしくは機械の操作を含む。
【0276】
「有効量」という用語は、病状に関連する症状の少なくともいくらかの改良をもたらすのに十分な組成物の量を意味する。1つの態様において、「有効量」は、病状を有する対象において、病状のマーカーまたは症状を減少させる組成物の量を意味する。
【0277】
「統計的に有意な」または「有意に」という用語は統計的有意性を指し、一般的に、2つの標準偏差(2SD)より大きい差を意味する。
【0278】
作業例以外において、または別段の指示がない限り、本明細書で使用される成分量または反応条件を表すすべての数は、すべての場合に「約」という用語で修飾されると理解されるべきである。パーセンテージに関連して使用される場合、「約」という用語は±1%を意味し得る。
【0279】
本明細書で使用される場合、「含んでいる」または「含む」という用語は、必須であろうとなかろうと特定されていない要素を包含する可能性があるものの、本発明に必須の方法および組成物ならびにその各々の成分に関して使用される。本明細書で使用される場合、「含んでいる」という用語は、提示された定義済みの要素に加えて、他の要素も存在できることを意味する。「含んでいる」の使用は、限定というよりはむしろ包含を示す。
【0280】
「からなる」という用語は、本明細書に記載される組成物、方法、およびその各々の成分を指し、その態様の説明に記載されていない任意の要素を含まない。
【0281】
本明細書で使用される場合、「から本質的になる」という用語は、所与の態様に必要な要素を指す。この用語は、本発明のその態様の基本的および新規または機能的な特徴に実質的に影響を与えない追加の要素の存在を可能にする。
【0282】
本明細書において用いられる「特異的結合」という用語は、第1の実体が第2の標的実体に、非標的である第3の実体に結合するよりも大きい特異性および親和性で結合する、2つの分子、化合物、細胞および/または粒子の間の化学的相互作用を指す。いくつかの態様において、特異的結合は、第1の実体の第2の標的実体に対する親和性を指し、これは第3の非標的実体に対する親和性よりも少なくとも10倍、少なくとも50倍、少なくとも100倍、少なくとも500倍、少なくとも1000倍またはそれ以上である。所与の標的に特異的な試薬は、使用している検定の条件下でその標的に特異的な結合を示すものである。
【0283】
「ある(a)」、「ある(an)」、および「その(the)」という単数形の用語は、文脈が他に明確に示さない限り、複数の指示対象を含む。同様に、「または」という言葉は、文脈が他に明確に示さない限り、「および」を含むことを意図している。本開示の実施または試験において、本明細書に記載されるものと類似したまたは同等の方法および材料を使用できるが、適切な方法および材料は以下に記載されている。「例えば(e.g.)」という略語はラテン語のexempli gratiaに由来し、本明細書では非限定的な例を示すために使用される。したがって、「例えば(e.g.)」という略語は、「例えば」という用語と同義である。
【0284】
本明細書に開示される本発明の代替要素または態様のグループ化は、限定として解釈されるべきではない。各グループのメンバーは、個別にまたはグループの他のメンバーもしくは本明細書に見出される他の要素との任意の組み合わせで、言及および主張されることができる。グループの1つまたは複数のメンバーは、利便性および/または特許性の理由により、グループに包含させ、またグループから削除することができる。そのような任意の包含または削除が生じた場合、本明細書において、明細書は修正されたグループを含むとみなされ、添付の特許請求の範囲で使用されるすべてのマーカッシュグループの書面による記載を充足する。
【0285】
本明細書で別段の定義がない限り、本出願に関連して使用される科学用語および技術用語は、本開示が属する当技術分野における当業者によって広く理解される意味を有するものとする。本発明は、本明細書に記載される特定の方法論、プロトコル、および試薬などに限定されず、したがって変わり得ることが理解されるべきである。本明細書で使用される専門用語は、特定の態様を説明することだけを目的とし、本発明の範囲を限定することを意図するものではなく、これは特許請求の範囲によって専ら定義される。免疫学および分子生物学における一般用語の定義は、The Merck Manual of Diagnosis and Therapy, l9th Edition, published by Merck Sharp & Dohme Corp., 2011 (ISBN 978-0-911910-19-3);Robert S. Porter et al. (eds.), The Encyclopedia of Molecular Cell Biology and Molecular Medicine, published by Blackwell Science Ltd., 1999-2012 (ISBN 9783527600908);およびRobert A. Meyers (ed.), Molecular Biology and Biotechnology: a Comprehensive Desk Reference, published by VCH Publishers, Inc., 1995 (ISBN 1-56081-569-8);Immunology by Werner Luttmann, published by Elsevier, 2006;Janeway's Immunobiology, Kenneth Murphy, Allan Mowat, Casey Weaver (eds.), Taylor & Francis Limited, 2014 (ISBN 0815345305, 9780815345305);Lewin's Genes XI, published by Jones & Bartlett Publishers, 2014 (ISBN-1449659055);Michael Richard Green and Joseph Sambrook, Molecular Cloning: A Laboratory Manual, 4th ed., Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, N.Y., USA (2012) (ISBN 1936113414);Davis et al., Basic Methods in Molecular Biology, Elsevier Science Publishing, Inc., New York, USA (2012) (ISBN 044460149X);Laboratory Methods in Enzymology: DNA, Jon Lorsch (ed.) Elsevier, 2013 (ISBN 0124199542);Current Protocols in Molecular Biology (CPMB), Frederick M. Ausubel (ed.), John Wiley and Sons, 2014 (ISBN 047150338X, 9780471503385)、Current Protocols in Protein Science (CPPS), John E. Coligan (ed.), John Wiley and Sons, Inc., 2005;およびCurrent Protocols in Immunology (CPI) (John E. Coligan, ADA M Kruisbeek, David H Margulies, Ethan M Shevach, Warren Strobe, (eds.) John Wiley and Sons, Inc., 2003 (ISBN 0471142735, 9780471142737)に見出すことができ、これらの内容は全体として参照により本明細書に組み込まれる。
【0286】
当業者は、使用する化学療法剤を容易に特定できる(例えば、Physicians' Cancer Chemotherapy Drug Manual 2014, Edward Chu, Vincent T. DeVita Jr., Jones & Bartlett Learning;Principles of Cancer Therapy, Chapter 85 in Harrison's Principles of Internal Medicine, 18th edition;Therapeutic Targeting of Cancer Cells: Era of Molecularly Targeted Agents and Cancer Pharmacology, Chs. 28-29 in Abeloff s Clinical Oncology, 2013 Elsevier;およびFischer D S (ed): The Cancer Chemotherapy Handbook, 4th ed. St. Louis, Mosby-Year Book, 2003を参照されたい)。
【0287】
他の用語は、本発明の様々な局面の説明内において、本明細書で定義される。
【0288】
本出願の全体を通して引用される、参考文献、発行された特許、公開された特許出願、および同時係属中の特許出願を含む、すべての特許および他の出版物は、例えば、本明細書に記載される技術に関連して使用されてもよい、そのような出版物に記載される方法論を説明および開示する目的のために、参照により本明細書に明白に組み込まれる。これらの出版物は、本出願の出願日よりも前のそれらの開示について専ら提供される。これに関して、先行発明という理由で、または他のいかなる理由によっても、そのような開示に先行する権利が本発明者らに与えられないことを承認するものと解釈されるべきではない。これらの書類の内容に関する日付または表示に関するすべての陳述は、本出願人らが利用可能な情報に基づいており、これらの書類の日付または内容の正確さに関するいかなる承認も構成しない。
【0289】
本開示の態様の説明は、包括的であることも、または開示された精密な形態に本開示を限定することも意図しない。本開示の具体的な態様および例は、例示を目的として本明細書に記載されるが、関連技術分野における当業者が認識するように、本開示の範囲内で様々な同等の修正が可能である。例えば、方法の工程または機能は所与の順序で示されるが、代替となる態様では機能を異なる順序で実行してもよいか、または機能は実質的に同時に実行されてもよい。本明細書で提供される本開示の教示は、必要に応じて、他の手順または方法に適用できる。本明細書に記載される様々な態様を組み合わせて、さらなる態様を提供することができる。本開示の局面は、もし必要であれば、上記の参考文献および出願の組成物、機能、および概念を使用するために修正することができ、本開示のなおさらなる態様を提供することができる。さらに、生物学的な機能の同等性を考慮すれば、種類または量において生物学的または化学的作用に影響を与えずに、タンパク質構造にいくつかの変化を加えることができる。詳細な説明に照らして、これらのおよび他の変化を本開示に加えることができる。そのような修正はすべて、添付の特許請求の範囲の範囲内に含まれることが意図される。
【0290】
前述の態様のいずれかの具体的な要素を、他の態様の要素と組み合わせるか、または置換することができる。さらに、本開示の特定の態様に関連する利点を、これらの態様の文脈において説明してきたが、他の態様もそのような利点を呈してよく、かつ必ずしもすべての態様がそのような利点を呈して本開示の範囲内にある必要はない。
【0291】
いくつかの態様において、本技術は、以下の番号が付けられた項のいずれかによって定義されうる:
1. (a) 脂肪酸ではないカルボン酸;ならびに
(b) 少なくとも4.0のpKaおよび少なくとも1.0のLogPを有するカルボン酸を含む、疎水性アニオン
のうちの少なくとも1つである、アニオン;
アセチルコリンである、カチオン
を含む少なくとも1種のイオン液体を含む、組成物。
2. アニオンが、脂肪酸ではないカルボン酸である、項1の組成物。
3. アニオンが、1.0未満のLogPを有する、項2の組成物。
脂肪酸が、3炭素以下の脂肪族鎖を含む、項2~3のいずれかの組成物。
4. アニオンが、カルボン酸基(例えばR-COOH基)を1つのみ含む、項2~3のいずれかの組成物。
5. アニオンが、乳酸;グリコール酸;マロン酸;マレイン酸;グルタル酸;クエン酸;グルコン酸;およびアジピン酸からなる群より選択される、項2~4のいずれかの組成物。
6. アニオンがマレイン酸である、項2~5のいずれかの組成物。
7. アニオンが、少なくとも4.0のpKaおよび少なくとも1.0のLogPを有するカルボン酸を含む疎水性アニオンであり、かつ、少なくとも4.5のpKaを有する、項1の組成物。
8. アニオンが、少なくとも5.0のpKaを有する、項7の組成物。
9. アニオンが、少なくとも8炭素の炭素鎖を含む、項7~8のいずれかの組成物。
10. アニオンが、8炭素骨格を有する炭素鎖を含む、項7~9のいずれかの組成物。
11. アニオンが、ゲラン酸、オクテン酸、オクタン酸、シトロネル酸、デセン酸、(9Z)-オクタデカ-9-エン酸、デカン酸、(9Z,12Z)-オクタデカ-9,12-ジエン酸、(R)-5-(1,2-ジチオラン-3-イル)ペンタン酸、またはヘキセン酸である、項7~10のいずれかの組成物。
12. アニオンがヘキセン酸である、項7~10のいずれかの組成物。
13. イオン液体が、約2:1~約1:1のカチオン対アニオンの比を含む、前記項のいずれかの組成物。
14. イオン液体が、約2:1のカチオン対アニオンの比を含む、前記項のいずれかの組成物。
15. イオン液体が、1:1未満のカチオン:アニオン比を有する、前記項のいずれかの組成物。
16. イオン液体が、カチオンが過剰であるカチオン:アニオン比を有する、前記項のいずれかの組成物。
17. 第1のイオン液体、および少なくとも第2のイオン液体を含む、前記項のいずれかの組成物。
18. 第1のイオン液体および第2のイオン液体がそれぞれ異なるアニオンを含む、項17の組成物。
19. 少なくとも1種のイオン液体と組み合わせた少なくとも1種の活性化合物をさらに含む、前記項のいずれかの組成物。
20. 活性化合物がポリペプチドを含む、項19の組成物。
21. ポリペプチドが抗体または抗体試薬である、項20の組成物。
22. 活性化合物が、450より大きい分子量を有する、項19~21のいずれかの組成物。
23. 活性化合物が、500より大きい分子量を有する、項19~22のいずれかの組成物。
24. 活性化合物が、インスリン、アカルボース、ルキソリチニブ、あるいは、GLP-1ポリペプチドまたはその模倣体もしくは類似体を含む、項19~23のいずれかの組成物。
25. アニオンが、少なくとも4.0のpKaおよび少なくとも1.0のLogPを有するカルボン酸を含む疎水性アニオンであり、かつ活性化合物が抗体または抗体試薬を含む、項19~23のいずれかの組成物。
26. 活性化合物が核酸を含む、項19の組成物。
27. 核酸が阻害性核酸である、項26の組成物。
28. 核酸がsiRNA、pDNA、またはmRNAである、項27の組成物。
29. アニオンが、少なくとも4.0のpKaおよび少なくとも1.0のLogPを有するカルボン酸を含む疎水性アニオンであり、かつ活性化合物が核酸を含む、項26~28のいずれかの組成物。
30. イオン液体が、少なくとも0.1% w/vの濃度である、前記項のいずれかの組成物。
31. イオン液体が、約10~約70% w/vの濃度である、前記項のいずれかの組成物。
32. イオン液体が、約30~約50% w/vの濃度である、前記項のいずれかの組成物。
33. イオン液体が、約30~約40% w/vの濃度である、前記項のいずれかの組成物。
34. 経皮投与、粘膜への投与、経口投与、皮下投与、皮内投与、非経口投与、腫瘍内投与、または静脈内投与用に製剤化されている、前記項のいずれかの組成物。
35. 経皮投与用に製剤化されている、項34の組成物。
36. 粘膜が、鼻粘膜、口腔粘膜、または膣粘膜である、項34の組成物。
37. 活性化合物が、1~40 mg/kgの投与量で提供される、前記項のいずれかの組成物。
38. 少なくとも1種の非イオン性界面活性剤をさらに含む、前記項のいずれかの組成物。
39. 薬学的に許容される担体をさらに含む、前記項のいずれかの組成物。
40. 分解性カプセル剤中に提供されている、前記項のいずれかの組成物。
41. 混和物である、前記項のいずれかの組成物。
42. 1種または複数種のナノ粒子中に提供されている、前記項のいずれかの組成物。
43. 活性化合物を含む1種または複数種のナノ粒子を含み、該ナノ粒子が、イオン液体を含む組成物において溶液状態または懸濁液状態である、前記項のいずれかの組成物。
44. 項1~43のいずれかの組成物を投与する段階を含む、少なくとも1種の活性化合物を対象へ投与する方法。
45. 組成物が単回投与される、項44の方法。
46. 組成物が複数回投与される、項44~45のいずれかの方法。
47. 投与が、経皮投与、粘膜への投与、経口投与、皮下投与、皮内投与、非経口投与、腫瘍内投与、または静脈内投与である、項44~46のいずれかの方法。
48. 少なくとも1種の活性化合物を対象へ投与する方法において使用するための、項1~43のいずれかの組成物。
49. 単回投与される、項48の組成物。
50. 複数回投与される、項48~49のいずれかの組成物。
51. 投与が、経皮投与、粘膜への投与、経口投与、皮下投与、皮内投与、非経口投与、腫瘍内投与、または静脈内投与である、項48~50のいずれかの組成物。
【0292】
いくつかの態様において、本技術は、以下の番号が付けられた項のいずれかによって定義されうる:
1. (a) 脂肪酸ではないカルボン酸;ならびに
(b) 少なくとも4.0のpKaおよび少なくとも1.0のLogPを有するカルボン酸を含む、疎水性アニオン
のうちの少なくとも1つである、アニオン;
エステル基を含む4級アンモニウムである、カチオン
を含む少なくとも1種のイオン液体を含む、組成物。
2. カチオンがアセチルコリンである、項1の組成物。
3. アニオンが、脂肪酸ではないカルボン酸である、項1~2のいずれかの組成物。
4. アニオンが、1.0未満のLogPを有する、項3の組成物。
5. アニオンが、3炭素以下の脂肪族鎖を含む、項3~4のいずれかの組成物。
6. アニオンが、カルボン酸基(例えばR-COOH基)を1つのみ含む、項3~5のいずれかの組成物。
7. アニオンが、乳酸;グリコール酸;マロン酸;マレイン酸;グルタル酸;クエン酸;グルコン酸;プロパン酸;およびアジピン酸からなる群より選択される、項3~6のいずれかの組成物。
8. アニオンがマレイン酸である、項3~7のいずれかの組成物。
9. アニオンがプロパン酸である、項3~8のいずれかの組成物。
10. アニオンが、少なくとも4.0のpKaおよび少なくとも1.0のLogPを有するカルボン酸を含む疎水性アニオンであり、かつ、少なくとも4.5のpKaを有する、項1~2のいずれかの組成物。
11. アニオンが、少なくとも5.0のpKaを有する、項10の組成物。
12. アニオンが、少なくとも8炭素の炭素鎖を含む、項10~11のいずれかの組成物。
13. アニオンが、8炭素骨格を有する炭素鎖を含む、項10~12のいずれかの組成物。
14. アニオンが、ゲラン酸、オクテン酸、オクタン酸、シトロネル酸、デセン酸、(9Z)-オクタデカ-9-エン酸、デカン酸、(9Z,12Z)-オクタデカ-9,12-ジエン酸、(R)-5-(1,2-ジチオラン-3-イル)ペンタン酸、またはヘキセン酸である、項10~13のいずれかの組成物。
15. アニオンがヘキセン酸である、項10~14のいずれかの組成物。
16. イオン液体が、約2:1~約1:1のカチオン対アニオンの比を含む、前記項のいずれかの組成物。
17. イオン液体が、約2:1のカチオン対アニオンの比を含む、前記項のいずれかの組成物。
18. イオン液体が、1:1未満のカチオン:アニオン比を有する、前記項のいずれかの組成物。
19. イオン液体が、カチオンが過剰であるカチオン:アニオン比を有する、前記項のいずれかの組成物。
20. 第1のイオン液体、および少なくとも第2のイオン液体を含む、前記項のいずれかの組成物。
21. 第1のイオン液体および第2のイオン液体がそれぞれ異なるアニオンを含む、項20の組成物。
22. 少なくとも1種のイオン液体と組み合わせた少なくとも1種の活性化合物をさらに含む、前記項のいずれかの組成物。
23. 活性化合物がポリペプチドを含む、項22の組成物。
24. ポリペプチドが抗体または抗体試薬である、項23の組成物。
25. 活性化合物が、450より大きい分子量を有する、項22~24のいずれかの組成物。
26. 活性化合物が、500より大きい分子量を有する、項22~25のいずれかの組成物。
27. 活性化合物が、インスリン、アカルボース、ルキソリチニブ、あるいは、GLP-1ポリペプチドまたはその模倣体もしくは類似体を含む、項22~26のいずれかの組成物。
28. アニオンが、少なくとも4.0のpKaおよび少なくとも1.0のLogPを有するカルボン酸を含む疎水性アニオンであり、かつ活性化合物が抗体または抗体試薬を含む、項22~27のいずれかの組成物。
29. アニオンがヘキセン酸であり、かつ活性化合物が抗体または抗体試薬を含む、項22~28のいずれかの組成物。
30. アニオンが、少なくとも4.0のpKaおよび少なくとも1.0のLogPを有するカルボン酸を含む疎水性アニオンであり、イオン液体が10% w/v未満の濃度で存在し、かつ活性化合物が抗体または抗体試薬を含む、項22~29のいずれかの組成物。
31. アニオンがヘキセン酸であり、イオン液体が10% w/v未満の濃度で存在し、かつ活性化合物が抗体または抗体試薬を含む、項22~30のいずれかの組成物。
32. 活性化合物が核酸を含む、項22の組成物。
33. 核酸が阻害性核酸である、項32の組成物。
34. 核酸がsiRNA、pDNA、またはmRNAである、項32または33の組成物。
35. アニオンが、少なくとも4.0のpKaおよび少なくとも1.0のLogPを有するカルボン酸を含む疎水性アニオンであり、かつ活性化合物が核酸を含む、項32~34のいずれかの組成物。
36. イオン液体が、少なくとも0.1% w/vの濃度である、前記項のいずれかの組成物。
37. イオン液体が、約10~約70% w/vの濃度である、前記項のいずれかの組成物。
38. イオン液体が、約30~約50% w/vの濃度である、前記項のいずれかの組成物。
39. イオン液体が、約30~約40% w/vの濃度である、前記項のいずれかの組成物。
40. イオン液体が、10% w/v未満の濃度である、前記項のいずれかの組成物。
41. 経皮投与、粘膜への投与、経口投与、皮下投与、皮内投与、非経口投与、腫瘍内投与、または静脈内投与用に製剤化されている、前記項のいずれかの組成物。
42. 皮下投与用に製剤化されている、項41の組成物。
43. 経皮投与用に製剤化されている、項41の組成物。
44. 粘膜が、鼻粘膜、口腔粘膜、または膣粘膜である、項41の組成物。
45. 活性化合物が、1~40 mg/kgの投与量で提供される、前記項のいずれかの組成物。
46. 少なくとも1種の非イオン性界面活性剤をさらに含む、前記項のいずれかの組成物。
47. 薬学的に許容される担体をさらに含む、前記項のいずれかの組成物。
48. 分解性カプセル剤中に提供されている、前記項のいずれかの組成物。
49. 混和物である、前記項のいずれかの組成物。
50. 1種または複数種のナノ粒子中に提供されている、前記項のいずれかの組成物。
51. 活性化合物を含む1種または複数種のナノ粒子を含み、該ナノ粒子が、イオン液体を含む組成物において溶液状態または懸濁液状態である、前記項のいずれかの組成物。
52. 項1~51のいずれかの組成物を投与する段階を含む、少なくとも1種の活性化合物を対象へ投与する方法。
53. 組成物が単回投与される、項52の方法。
54. 組成物が複数回投与される、項52~53のいずれかの方法。
55. 投与が、経皮投与、粘膜への投与、経口投与、皮下投与、皮内投与、非経口投与、腫瘍内投与、または静脈内投与である、項52~54のいずれかの方法。
56. 投与が皮下投与である、項52~55のいずれかの方法。
57. 少なくとも1種の活性化合物を対象へ投与する方法において使用するための、項1~51のいずれかの組成物。
58. 単回投与される、項57の組成物。
59. 複数回投与される、項57~58のいずれかの組成物。
60. 投与が、経皮投与、粘膜への投与、経口投与、皮下投与、皮内投与、非経口投与、腫瘍内投与、または静脈内投与である、項57~59のいずれかの組成物。
61. 投与が皮下投与である、項57~60のいずれかの組成物。
【0293】
本明細書に記載される技術を、以下の実施例によってさらに例示するが、これらの実施例は決してさらなる限定であると解釈されるべきではない。
【実施例
【0294】
実施例1
本明細書においてイオン液体は、以下の表記を用いて参照される:x% CA y:z、ここでxは、製剤におけるイオン液体の体積パーセント(例えば、水における体積パーセント)であり、Cはカチオンであり、Aはアニオンであり、かつy:zとの比は、カチオン対アニオンの比である。
【0295】
コリン・グリコール酸中に、およびアセチルコリン・グリコール酸中に、100 U/mL(3.4 mg/mL)としてインスリンが製剤化され、そして安定性が試験された(図1)。製剤の長期間にわたる評価は、光散乱を定量することによって実施された。540 nmにおいて吸光度を測定することにより、インスリンモノマーが経時的に凝集していくかどうかが評価された。データは、散乱が経時的にどのように変化したか(上のパネル)、ならびに生理食塩水と比較して、製剤の透明度がどのように変化したか(下のパネル、および製剤の理想的な透明度)を評価するための、2つの様式で解析された。理想的な製剤は、正規化された散乱の変化が全くないかまたはほとんどなく、かつ、インスリンを含まない生理食塩水(0.036の吸光度)と比較して、散乱の変化が10%に等しい0.1未満である、と理解され得る。データは、アセチルコリンバージョンの深共晶溶媒が、適切な保存条件において、より長い期間(28日間)にわたってインスリンのより優れた安定性をもたらすことを示している。
【0296】
インスリンの2次構造を評価するために、円二色性が使用された(図2)。室温における1時間のインキュベーション後に、および37℃(生理的温度)における1時間のインキュベーション後に、実験が実施された。これは、皮下注射に関連する熱変化がインスリンの構造に影響を及ぼし得るかどうかを評価するために行われた。2次構造において有意な変化がない場合、深共晶溶媒の実験群の曲線は、生理食塩水の陰性対照が描く曲線と一致するはずである。「aCG」とはアセチルコリン・グリコール酸を指し、かつ「aCH」とはアセチルコリン・ヘキセン酸を指す。インスリンの濃度はおよそ6 U/mL(0.2 mg/mL)であった。
【0297】
インビボPKデータは、アセチルコリンの深共晶溶媒が、コリンカチオンを有するILよりも迅速なインスリン送達方法を提供することを示している(図3)。ラットは皮下注射を受け、そして血清のインスリンレベルが、0分、15分、30分、60分、120分、180分、および240分のタイムポイントで、ELISAを用いて測定された。平均最大血清中濃度(Cmax)、および平均最大血清中濃度の時間(Tmax)は、図3のデータ表に記載されている。アセチルコリン・ヘキセン酸の群は、コリンを使用したバリアントと比べて、20%高いCmaxを有していた。また、アセチルコリン・グリコール酸の群は、コリンを使用したバリアントと比べて、Cmaxにおける50%の増加、および15分早いTmaxを有していた。これらのデータは両方とも、アセチルコリンが、皮下注射直後の血清中へのインスリンの吸収を増加させるのに役立つことを示している。インスリンの濃度は、非絶食ラットにおいて1 U/kgであった。
【0298】
次に、抗体の送達が試験された。生理食塩水中の、またはアセチルコリン・ヘキセン酸中の、10 U/kgの用量の抗体が、ウィスターラットに投与された。インビボPKデータは、アセチルコリンの深共晶溶媒が、モノクローナル抗体のバイオアベイラビリティの増加を可能にすることを示している(図4)。ラットは皮下注射を受け、そして血清のリツキシマブ(抗CD20抗体)レベルが、0時間、1時間、2時間、5時間、8時間、11時間のタイムポイント、および1日、2日、3日、4日、7日、10日、14日、21日のタイムポイントで、ELISAを用いて測定された。図4の左パネルから理解されるように、生理食塩水対照およびアセチルコリンDES製剤の平均血清中濃度のピークは、それぞれ6,415 ng/mLおよび10,893 ng/mLである。このリードのピーク濃度の増加は、第4日以降のAUCがより大きいことから示されるように、血中にモノクローナル抗体がより多く蓄積されることを可能にする。第21日におけるAUCは、アセチルコリンDES群において、生理食塩水対照よりも103%大きいものであった。
【0299】
次に、抗体の安定性が試験された。抗体の安定性を評価するために、円二色性およびSDS-PAGEが使用された(図5)。円二色性(図5、左)は、「新鮮」な抗体対照と比較した際に、抗体の2次構造が、アセチルコリン・ヘキセン酸DES製剤によって影響を受けないことを示している。加えて、SDS-PAGEが使用されて、アセチルコリンが凝集を引き起こすかどうか(抗体のような、大きなβシート生物製剤にとって特に重要である)が評価された。この場合もやはり、アセチルコリンDES製剤は、対照と同じであることが確認された。CDおよびSDS-PAGEは両方とも、室温で1時間インキュベートした後で実施された。
【0300】
インビトロにおける、ILによるmRNAの送達が評価された。インビトロでのトランスフェクション実験は、樹状細胞株においてmRNAナノ粒子を用いて実施されたが、該実験は、アセチルコリン・ヘキセン酸DESが、mRNAでの処理を増強することが可能であることを示すものである。粒子を「コート」するために、粒子はアセチルコリンDES溶液とインキュベートされた。細胞は、粒子と4時間インキュベートした後で、フローサイトメトリーを用いて解析された。GFPを発現する細胞のパーセントが増加した点は、アセチルコリンDESが、細胞への送達を増加させたことを示している。平均蛍光強度がより高い点は、アセチルコリンDESが、GFPの発現増加を支援したことを示している。
【0301】
実施例2
特に、糖尿病、自己免疫疾患、がん、および代謝性疾患を処置するための治療薬の中で、タンパク質は最も一般的な治療薬である。そのほとんどが注入用である、現行のタンパク質療法は、広く使用されているにもかかわらず、いくつかの制約を抱えている。大きなタンパク質、例えばモノクローナル抗体(mAb)などは、皮下注射後の吸収に乏しいという問題を抱えており、そのため、静脈内注射によって投与することを強いられている。小さなタンパク質、例えばインスリンなどでさえも、糖尿病の効果的な管理における制約となる、薬物動態が遅いという問題を抱えている。本明細書に記載するのは、皮下注射後のタンパク質の吸収を改善するための、汎用性のある戦略を提供する、深共晶ベースの製剤である。このリード製剤は、皮下注射の後で、mAbの吸収をおよそ200%増強した。該組成物はまた、速効型インスリンの現行のゴールドスタンダードであるHumalogよりも速やかな、皮下注射されたインスリンの全身吸収を可能にするものであった。皮下吸収に対する深共晶の有益な効果は、タンパク質と皮下マトリックスとの相互作用、特にコラーゲンとの相互作用を低下させる能力によって媒介されることが、力学的な試験により明らかにされる。試験はまた、本発明者らの深共晶製剤が、皮下注射に関して安全であることを確認するものであった。本明細書に記載の、深共晶ベースの製剤は、治療用タンパク質の皮下注射のための、新たな可能性を切り拓くものである。
【0302】
組み換えタンパク質生物製剤は、過去40年間で臨床現場において最も広く使用されている治療薬である。この15年だけで、86種類のモノクローナル抗体(mAb)または抗体コンジュゲートを含めた、127種類の治療用タンパク質が承認されており、かつそれらは、FDAが承認した全治療薬のほぼ25%を占めている(図12A)。生物製剤が承認される速さは、ここ数年の間にさらに加速してきている(図12B1。その一方で、生物製剤の送達ロジスティクスについては、イノベーションが限られているように見受けられる。その明らかな制約にもかかわらず、多くのmAbは静脈内(IV)投与によって送達されている。皮下投与(SC)は、医療機関で行う数時間かかるIV注入を、自宅で行う短時間の注射へと転換するため、IV送達と比べてより優れた代替手段を提供する。これは、処置のコストを低下させ、かつ医療リソースにおける負担を軽減する2,3。SC注射はまた、IV投与と比較して、疼痛を軽減し、かつ感染症の可能性、特に敗血症の可能性を減少させる4。これらの恩恵は、自己投与、これはIV投与の使用よりもSC投与の使用が好ましいが、このような自己投与の潜在能力と組み合わされて、患者コンプライアンスの増強、およびより優れた疾患管理をもたらす5-7。これらの利点にもかかわらず、皮下注射後のmAbのバイオアベイラビリティが不十分であるため、mAbについての皮下注射の使用は限定的である。皮下投与された生物製剤は、該部位の毛細血管または毛細リンパ管への脈管内侵入によって全身循環に到達する前に、皮下組織を横切らなくてはならないが、これは、脂肪細胞、線維芽細胞、および免疫細胞が含まれ、かつコラーゲン、エラスチン、およびフィブロネクチンを含めた細胞外マトリックス(ECM)タンパク質が含まれる、該製剤を損ない得る細胞環境8である。より小さい生物製剤、例えばインスリン(MWはおよそ6 kDa)は、毛細血管内へと流れ、一方でより大きいタンパク質、例えばmAb(MWはおよそ150 kDa)は、毛細リンパ管内へと流れる9
【0303】
インスリンおよびmAbは、それらの皮下注射後の吸収を改善するための方法の開発において、注目を集めている。これらの取り組みは、タンパク質改変と製剤エンジニアリングという、2つの群に分類することが可能である。実質的な取り組みは、その作用の持続期間が、長い、中間の、短い、または迅速なタイムスケールとなるように制御するための、新規なインスリン類似体を開発する点に集中している。多くの学術研究の取り組みは、インスリンを持続放出するための戦略を開発する点に集中しており、速効型インスリン製剤は、比較的研究が進んでいない状態である10。速効型インスリンは、血中グルコースの測定とインスリンの全身作用との間の時間を短縮することによって、高血糖エピソードを軽減することが可能であるため、糖尿病の管理のために特に重要である。これは、クローズドフィードバック応答を有する連続的インスリンポンプにとって、特に有益である11。臨床承認されているインスリン類似体である、Humalog(インスリン リスプロ)は、そのモノマー構造を維持しつつ速やかな吸収を誘導するための、インスリン配列の操作を利用している12。標的となったアミノ酸変異は、インスリンのオリゴマー、すなわちダイマーおよびヘキサマーの安定性を低下させ、それにより、全身循環へと容易に吸収されることが可能なモノマー側へと、平衡をシフトさせる13。mAbの薬物動態を改善するために、タンパク質エンジニアリングベースのアプローチもまた試みられている。例えば、mAbの皮下吸収を増加させるために、Fc領域の改変が試みられている14,15
【0304】
タンパク質エンジニアリングベースの戦略は、薬物動態をタンパク質の設計に組み込むという利点を提供する一方で、該戦略はまた、設計上の制約という問題も抱えており、かつ、タンパク質の生物学的活性と薬物動態との間で妥協することもしばしば必要になる。一方、製剤エンジニアリングは、タンパク質の薬物動態を制御するための、別のアプローチを提供するものである。これらの取り組みは、2つの原理に基づいている:皮下コンパートメントにおける、タンパク質凝集の低減、およびマトリックスの酵素分解である。Mannら16は、インスリンの凝集を低下させ、かつインビボにおいて皮下注射後にインスリンピークまでの時間を短縮させる、ポリマー賦形剤を開発した。これらの試験は、Humalogと比較して、64%早いインスリンの吸収を報告した。ポリ(エチレングリコール)(PEG)17-19との、およびトレハロースグリコポリマー20とのコンジュゲーションもまた、速効型インスリン製剤においてインスリンモノマーを安定化するために使用されているが、これらは、薬物動態に対して負の影響を有する可能性がある。
【0305】
いくつかの抗体送達システムが文献に記述されているが、多くは持続放出に注目したものであり、しかも皮下スペース以外のスペースにおけるものである21。そのため、皮下注射後にmAbの全身吸収を改善するための取り組みは、バイオアベイラビリティを改善する点にはさほど集中しておらず、製剤濃度の限界および注射量の限界を押し上げる点に、より集中している22。わずかな例外の1つは、ECMを分解する酵素である、組み換えヒアルロニダーゼの使用であり、該酵素は、バイオアベイラビリティを改善するために、mAbと合剤にされる23。ヒアルロニダーゼベースの5つのmAb製品が、FDAの承認を受けている:リツキサン・ハイセラ、ハーセプチン・ハイレクタ、ダラザレックス・ファスプロ、フェスゴである。
【0306】
本明細書に記載するのは、新規な作用機序によって皮下での薬物動態を改善するための、生体適合性である深共晶の使用であり、これは、生物製剤のための皮下製剤の改善に寄与する、新規なツールを追加するものである。他の多くの生体関門とは異なり、皮下スペースにおける輸送関門は、あまり理解が進んでいない。細胞外間隙における皮下ECMタンパク質の中で、I型コラーゲンは最も多量に存在し24、注射された生物製剤との非特異的な相互作用によって、吸収に対する関門となっている24。皮下注射されたタンパク質製剤は、ECMタンパク質と相互作用し、そしてそのような相互作用は、全身循環への吸収の、遅延または低下をもたらす。本発明者らは以前に、イオン液体(IL)および深共晶溶媒(DES)が、広範囲にわたる血清タンパク質と基質との相互作用を低下させる潜在能力を有することを示している25。この独特な能力を活用して、本発明者らは、イオン液体および深共晶は、注射されたタンパク質と、皮下のECMマトリックスにおけるタンパク質との相互作用を弱めることもまた可能である、という仮説を立てた。本明細書においてこのアプローチは、深共晶を用いたタンパク質の皮下投与(Subcutaneous Protein Administration using Deep Eutectics)(SPADE)と称される。本明細書に記載するのは、SPADE製剤のスクリーニング、ならびに、インスリンおよびリツキシマブのそれぞれについて皮下注射の速度および皮下注射のバイオアベイラビリティを改善する、該製剤の能力である。本試験はまた、リードSPADE製剤が、コラーゲンとのタンパク質相互作用を低下させ、かつ、反復投与によって確認されたように、該製剤が安全に注射されることをも、証明している。
【0307】
結果
DES使用時のインスリンの安定性
以前に記述されたように26、カチオン対アニオンの比を1対2として塩メタセシス反応を用いて、10種類のDESが合成された(国際特許公報第2019/099837号;同2020/180534号;同2020/205409号;および同2021/102084号もまた参照されたい、これらのそれぞれはその全体が参照により本明細書に組み入れられる)。カチオン:アニオン比が1である組成物はILと称され、かつ、該比が等しくない組成物はDESと称される。これらのDESは、化学的特性、特に疎水性に関して広い範囲を示すように設計されたが、これは、この疎水性というパラメータが、皮下組織における移行とそれに続く吸収とに影響を及ぼすDESの能力に対し、重要な決定因子となることが予想されるためである。2種類のカチオンとして、コリンおよびアセチルコリンが試験されたが、これはコリンが、イオン液体の以前の研究において一般的に利用されているカチオンであるためである25-32。アセチルコリンは、より疎水性のカチオンである。これらのカチオンは続いて、分子量、炭素鎖長、および疎水性が広範囲にカバーされる5種類のアニオンである、グリコレート、ラクテート、プロピオネート、ヘキセノエート、およびゲラネートと対形成された(表4)。10種類のDES(略称は表5に記す)のライブラリを合成した後、1Dプロトン核磁気共鳴(NMR)が使用されて、それらの構造が確認された(データは示さない)。10種類のDESは次に、滅菌生理食塩水中の0.5%溶液として製剤化され、これら製剤は、中性pHにおいて、100 U/mLのレギュラーインスリン(臨床製剤において一般的に使用される濃度)を容易に溶解した。
【0308】
インスリンが成功裏に溶解したことは、製剤の濁度によって決定され、これは、540 nmにおける吸光度を透過率に変換することによって評価された16。成功とされた製剤について、パーセント透過率の閾値は80%にセットされたが、これは、該値が臨床コンパレーター(Humalog)の平均透過率であったためである。透過率の値が低いことは、不溶性のインスリン凝集体を示すものである。2つを除いた全ての製剤が、この基準を満たしていた(図13)。残りのDES製剤をさらにスクリーニングするため、ストレス負荷エイジング試験が実施されて、振とうしながら37℃で50時間にわたり、それら製剤の安定性が決定された。50時間の期間中の任意の時点における、10%を上回る透過率の低下は、CG、aCG、CL、およびaCLにおいて観察されたため(図7A)、これらの製剤はさらなる実験からは除外されて、見込みのある4つの製剤が、さらなる実験用に残された(CP、aCP、CH、およびaCH)。
【0309】
最終的なスクリーニングが実施されて、コールドチェーンでの安定性が評価され、そしてモノマーのコンフォメーションの安定性が確認された。コールドチェーン、すなわち2~8℃での冷蔵は、アンフォールディングや凝集を防止して、タンパク質生物製剤を安定させるために重要であり、かつ、保存期間を延長するために広く使用されている33。4℃で28日間にわたりインキュベートされたCP、aCP、CH、およびaCHの製剤のうち、プロピオネートベースのDES製剤は両方とも、第14日~第21日における10%を上回る透過率の低下を根拠とする、凝集を生じたが、一方でヘキセノエートベースのDESは両方とも、第28日まで安定であった(図7B)。ヘキセノエートベースの製剤の安定性は、円二色性(CD)を用いてタンパク質の2次構造を評価することによって、さらに確認された。2種類のリード製剤であるCHおよびaCHとともに37℃で2時間インキュベートされたインスリンのCDスペクトルは、リン酸ナトリウム緩衝液に溶解された対照インスリンのものと一致していたが、これは、いずれのDES製剤も、生理的温度であってかつ薬理学的に適切なタイムスケールにおいて、タンパク質の著しいアンフォールディングを誘導しなかったことを示している(図7C)。CDスペクトルの完全性はまた、インスリンの適切なCD波長に対して、500 V未満に維持された高電圧を測定することによっても確認された(図14)。
【0310】
CHとaCHという2種類のリードから、製剤をさらに選択するため、内皮を通過してのインスリンの移行に対する該リードの効果が、インビトロで測定された。毛細血管の内皮細胞は、血管からの流出に対する関門を提供しており、かつ、内皮を通過しての移行に対する、DESの有益な効果は、薬物動態をさらに改善する可能性がある。この可能性を評価するため、インビトロにおけるヒト臍帯静脈内皮細胞(HUVEC)を通過してのインスリンの移行が、トランズウェル透過性アッセイを用いて測定された。インビトロ忍容性試験に基づき、0.15% v/vの、またはおよそ4.3 mMのDESが、これらの試験において使用された(図15)。HUVEC単層は、ゼラチンコートされたトランズウェル上に形成され、そしてヘキスト33342(核)およびアクチン488(細胞骨格)を用いて蛍光イメージングすることによって確認された(データは示さない)。CHと比較してaCHは、血管透過性の増強を示した(図7D)。安定性実験および移行実験の組み合わせに基づき、これ以降の試験のためのリード組成物として、aCHが選択された。
【0311】
SPADEは、治療用タンパク質とECMコラーゲンとの間の相互作用を防止する
タンパク質とECMとの相互作用を弱めるSPADEの能力は、リードDESであるaCHを用いて評価された。仮説が立てられた機序の概略図が、図8Aに示される。SPADE(右)については、投与された治療用タンパク質と、皮下の細胞外タンパク質、例えばコラーゲンなどとの非特異的結合を低下させて、タンパク質生物製剤のより迅速であってかつより高度な吸収を可能にする、という仮説を立てている。この仮説を試験するため、蛍光偏光法(FP)が実施され、そして動的光散乱法(DLS)が利用されて、コラーゲンとインスリンとの結合の程度が決定された。FPは、小分子間の相互作用を解析するための、またはペプチドペイロードとそのタンパク質標的との結合を解析するための、リガンド結合アッセイとして広く使用されており34,35、これは、蛍光標識されている分子であってタンパク質が結合している分子は、より遅く回転し、そして平行方向に発光して、より高い偏光値を生じさせる、という原理に基づいている36。aCH中かまたは生理食塩水(対照)中のいずれかに製剤化されたCy5.5標識インスリンと、ヒトI型コラーゲンとを混合した直後に、FPが実施された。得られた偏光値は、対照と比較して、aCHが、インスリンとコラーゲンとの非特異的な結合を阻害することを示すものであった(図8B)。平均偏光は、SPADE群と比べて、対照群において1.5倍高かった。FPの結果をさらに確認し、そしてHumalogと比較するため、DLSが使用されて、インスリン製剤をコラーゲンと混合した後の平均粒子径(z-avg)が測定されたが、この際、残った未結合のインスリン分子がより少なく、かつコラーゲン単独かまたはコラーゲン・インスリン複合体が検出されるのであれば、インスリンが結合しているコラーゲンについてのz-avgは増加するであろう。Humalogとコラーゲンの混合物、およびSPADE-インスリンとコラーゲンの混合物の両方について、開始時の平均z-avgはおよそ100 nmであった。Humalog群は、全体的な経時変化としてz-avgの増加を示し、60分間で5000 nmを上回る値に到達した。対照的に、SPADE-インスリン群は、同じ時間でおよそ100 nmにとどまった(図8C)。FPおよびDLSからの結果は、インスリン分子とコラーゲンとの間の非特異的結合をSPADEが減少させる点を、強く支持しており、ここでコラーゲンは、ECMの一部として皮下スペースに広範に存在するものである。
【0312】
SPADEはインスリンの薬物動態を増強する
1 U/kg SPADE-インスリンの薬物動態は、ラットにおいて等量のHumalogと比較されたが、ここでHumalogは、速効型インスリン類似体の、臨床上のゴールドスタンダードである。試験計画は図9Aに詳述される。Humalogと比較して、SPADE-インスリンは、皮下組織からのインスリン吸収が有意に早まっていた(図9B)が、この点は、Humalogと比較して、SPADE-インスリンの注射から5分後の血清中インスリンレベルが1.6倍高いことによって示される。加えて、血流中のインスリンの蓄積を定量するために、各タイムポイントにおいて曲線下面積(AUC)が算出された。累積AUCもまた、Humalogを注射されたラットと比較して、SPADE-インスリンでの処置を受けたラットにおいて、5分の時点で有意に1.6倍増加した(図9C)。累積AUCは、Humalogでの処置を受けた群と比べて、10分の時点で(図9D)、および試験範囲の全体にわたって(図16)、SPADE-インスリンでの処置を受けた群において大きいままであった一方で、5分という初期のタイムポイントにおいて、インスリンの吸収が統計的に有意に高かった、という点は、SPADE-インスリン中のaCHが、投与直後に重要な役割を果たしており、かつ、治療効果までの時間遅延がより短いことが確実な超速効型インスリンを必要とする患者に、恩恵をもたらし得ることを示唆している。統計的な差はないものの、注射量のうちのパーセントとして表されるバイオアベイラビリティは、Humalog群と比べて、SPADE-インスリン群においてより高いこともまた、見いだされた(図9E)。
【0313】
SPADEは非毒性でありかつ反復投与時に安全である
局所(注射部位)毒性および全身毒性を試験するため、生理食塩水(対照)を投与されたBALB/cマウス、およびSPADE単独を投与されたBALB/cマウスを用いて、2種類の異なる試験が実施された。第1の試験では4つのコホートが使用されて、ヘマトキシリン・エオシン染色(H&E)を用いて、皮下投与の24時間後および7日後の注射部位における毒性が試験された(図10A)。2種類の製剤の注射部位の間には、いずれのタイムポイントにおいても注目すべき差異は存在しなかった(図10B~10E)。SPADEの注射部位の切片と対照の注射部位の切片とを比較した際に、ヘマトキシリン染色の間にも、核パターンの間にも、注目すべき差異は存在しない37。加えて、組織病理学者による組織試料の盲検化解析において、炎症、浮腫、ネクローシス、線維症、または変性に関し、毒性の徴候がないことが確認された。
【0314】
本発明者らは次に、SPADEの反復投与による全身毒性を試験した。血液および主要な臓器は、生理食塩水(対照)かSPADE単独の製剤の1日1回の4回の皮下注射が終わってから24時間後に解析された。重要な肝機能マーカーである、アスパラギン酸トランスアミナーゼ(AST)およびアラニントランスアミナーゼ(ALT)の2つは、許容範囲内であった(図10F~10G)38。ASTおよびALTは両方とも、肝細胞の細胞質に見いだされる転移酵素であって、肝細胞が損傷を受けた際に血清中に放出される酵素であり、したがって、予想される範囲外へのレベルの上昇は、肝機能の異常を意味する39。加えて、腎機能マーカーである、血液尿素窒素(BUN)およびクレアチニンの2つもまた、雌BALB/cマウスについての許容範囲内であった(図10H~10I)38。尿素およびクレアチニンは両方とも、腎臓の糸球体によって血清からろ過されるため、BUNおよびクレアチニンの血清中レベルは、糸球体のろ過速度のマーカーであり、かつそのレベルの上昇は、腎機能不全を意味する40。SPADEでの処置を受けたマウスの、他の生化学的マーカーについては、許容範囲内であったか、または生理食塩水対照との統計的な差はなかったかの、いずれかであった(図17~18)。全血解析は、SPADEが優れた忍容性を有すること、および反復投与の際に、有意な全身性の免疫応答は生じなかったことを示すものであった。白血球数、赤血球数、血小板数、およびリンパ球数は全て、許容範囲内であったか、または生理食塩水対照との統計的な差はない外側値であった(図10J~10M)。この試験において測定された他の末梢細胞については、許容範囲内であったか、または生理食塩水対照との統計的な差はなかった(図19~21)。SPADEの反復投与を受けたマウスの組織病理学的解析によって、全身毒性もまた評価された。H&E染色は、脾臓、肺、腎臓、肝臓、および心臓を含めた重要な臓器において、SPADEマウスと対照マウスとの間で著しい差異がないことを示すものであった(図22)。これらの知見はまた、組織病理学者による盲検化解析によっても確認された。
【0315】
SPADEはリツキシマブのバイオアベイラビリティを増強する
皮下投与からの吸収がより大きいことで恩恵を受け得る大きなタンパク質生物製剤、すなわちモノクローナル抗体であるリツキシマブ(SPADE-mAb)の吸収をも、SPADEが増強することが可能であるかどうかについての研究が、本明細書に記載される。臨床上、インスリンと比較して、皮下用抗体製剤にはより高い用量が必要とされるため、本発明者らは、リツキシマブを有する安定なSPADE製剤のためのDES濃度を、SDS-PAGEおよびCDを用いて最初に評価した。製剤は、様々なDES濃度および一定のリツキシマブ濃度において調製され、そして37℃で、2時間にわたり、および24時間にわたり、インキュベートされた。インキュベーション後、試料は、リン酸ナトリウムを用いて透析されてDESが除去され、そして得られた試料は、紫外・可視分光光度法によって同じ濃度に希釈されて、その後、SDS-PAGEおよびCD解析に供された。10% (v/v) DESにおいては、潜在的な凝集に起因するより大きいオーダーの分子量の種を示すものである、さらなる薄いバンドがゲル上に存在するが、本発明者らは、この10% (v/v) DESを除いて、全てのDES製剤濃度が安定であったことを決定した(図11A)。さらに確認するため、このCDが使用されて、24時間インキュベートされた試料の2次構造が評価された。CDの結果はSDS-PAGEの結果と一致していて、10% (v/v) DES製剤は、対照と比較した際に平均楕円率のシフトを示した一方で、他のDES濃度では、このシフトは生じなかった(図11B)。このシフトは、SDS-PAGEゲル中に観察された凝集を引き起こした可能性のある、ミスフォールディングを示している。これらの安定性試験は、5% (v/v) aCHが、SPADE-mAb製剤のための適切な濃度であることを示すものであった。
【0316】
図11Cに示される実験計画にしたがって薬物動態試験が実施され、そしてその血清中リツキシマブレベルがELISAによって定量された。SPADEについての血清中リツキシマブレベルは、投与から1時間後に有意に高く、かつ、11時間の時点と第7日の時点を除いて、第14日までそのまま持続した(図11D)。血清中リツキシマブ濃度の平均ピークは、6.41 ug/mLの対照と比べて、SPADE-mAb群においてより高く、10.89 ug/mLであり、かつ該ピークは、第7日であった対照と比べて、SPADE-mAb群においてより早く、第3日に生じた。AUCもまた、試験の全てのタイムポイントにおいて、統計的により大きいものであった(図11E)。各タイムポイントについての有意値は、表6に見いだすことができる。試験のエンドポイントにおいて、SPADEでの処置を受けた群のAUCは217.11 mg/mL*日であったが、これは、対照と比べて2.12倍大きい。AUCもまた、より後期のタイムポイントと比較して、より初期のタイムポイントにおいて、対照を上回る倍増を有していたが、これは、SPADE-mAbが、SPADE-インスリンの場合と同様に、抗体の初期の吸収速度をも改善することを示すものである(図23)。
【0317】
考察
本明細書に記載するのは、治療用タンパク質生物製剤の皮下送達を改善するための、深共晶溶媒ベースの製剤化戦略である、SPADEの開発である。SPADEについて以下が証明される:i) SPADEは、インスリンとともに、および抗体とともに、安定的に製剤化することが可能である点、ii) SPADEは、安全で非毒性である製剤戦略である点、ならびにiii) SPADEは、治療用タンパク質とコラーゲンECMタンパク質との間の非特異的結合による相互作用を防止することによって、インスリンの薬物動態およびモノクローナル抗体のバイオアベイラビリティを改善する点。SPADEは、容易な手法で合成することが可能な深共晶溶媒を利用しているが、これは、単純であってかつ拡張性のある製剤化を可能にする。SPADEは、ヒトへの曝露についての履歴が既知である生体適合性イオンから調製されるため、その安全性プロファイルは向上している。
【0318】
速効型インスリンは、血中グルコースの測定とインスリンの全身作用との間の時間を短縮し、かつこれは、正常血糖を維持する能力を改善する。これは、特にインスリンの連続的な皮下注入(インスリンポンプ)を使用する患者にとって、大きな差異となり得、1日のうちのより長い時間において、血中グルコースレベルを標的範囲内に収めることを可能にする11。臨床現場では、吸収速度を改善するためにインスリン類似体が使用されている一方で、学術界における意義深い研究もまた、ポリマー賦形剤16およびポリペプチド賦形剤41、ポリマーコンジュゲーション19、ならびにタンパク質合剤42に集中している。これらの戦略はインビボでの成功を示しているが、DESおよびILは、より少ないステップとより少ないコストで容易に大規模製造されて、より単純な速効型インスリン製剤を提供することが可能であるため、好ましい代替手段を提供するものである。
【0319】
SPADE製剤は、タンパク質とコラーゲンとの相互作用を低下させるだけでなく、製剤中のタンパク質間相互作用を低下させる潜在能力を有している。この点はおそらく、臨床製剤が比較的薄い(例えば3.47 mg/mLまたは100 U/mL)インスリンのような治療用タンパク質にとっては、それほど重要ではない。しかしながら、そのような相互作用は、はるかに高い濃度、例えば100 mg/mLよりも大きいかまたはそれと等しい濃度などを採用するmAb製剤においては、重大な役割を担う可能性がある。SPADEは、mAb間相互作用を低下させ、かつmAb製剤の安定性を改善するための、新規なツールを提供することが可能である。
【0320】
SPADEはリツキシマブの吸収を、生理食塩水を用いて製剤化されたリツキシマブと比較して、112%増加させた(AUCとして測定)。Kaganら23によって実施された試験においては、ラットは10 mg/kgのリツキシマブを背部に投与され、ヒアルロニダーゼが使用されて、リツキシマブの吸収が91%増加した。類似のヒアルロニダーゼは、複数のmAbに関してすでに臨床使用されているため、SPADEのこの高い有効性は、臨床使用についてのその潜在能力を支持するものである。さらに、SPADEは、5.8~150 kDaという、タンパク質生物製剤の幅広いサイズにわたって吸収を増加させる能力が証明されたため、他のタンパク質生物製剤、ペプチド、および核酸についての、皮下製剤戦略を提供することが可能である。
【0321】
材料および方法
材料
重炭酸コリン、塩化アセチルコリン、乳酸、グリコール酸、プロピオン酸、trans-2-ヘキサン酸、ゲラン酸、凍結乾燥レギュラーインスリン、ゼラチン粉末、Millicellトランズウェルインサート、塩酸、および水酸化ナトリウムは、全てSigma Aldrich (St. Louis, MO)から購入した。0.2 M リン酸ナトリウム緩衝液は、Boston BioProducts, Inc. (Milford, MA)から購入した。HUVEC細胞、増殖培地、および添加物は、ATCC (Manassas, VA)から購入した。CellTiter 96(登録商標)Aqueous One Solution Cell Proliferation Assay(MTS)は、Promoega (Madison, WI)から購入した。ヒトI型コラーゲンは、Advanced BioMatrix (Carlsbad, CA)から購入した。Cy 5.5蛍光標識インスリンは、Nanocs Inc. (New York, NY)から購入した。SDS-PAGE用ラダー(Precision Plus Protein(商標)All Blue Prestained Protein Standards #1610373)、レムリー緩衝液、トリス/グリシン/SDS泳動用緩衝液、クマシーブルー色素、Mini-PROTEAN Tetra垂直型電気泳動槽、および電源装置は、全てBio-Rad Life Sciences (Hercules, CA)から購入した。リツキシマブのバイオシミラーは、BioXCell (Lebanon, NH)から購入した。インスリンのELISAおよびインスリン リスプロのNL-ELISAは、Mercodia Inc. (Winston Salem, NC)から購入した。リツキシマブのELISAは、Eagle Biosciences (Amherst, NH)から購入した。
【0322】
方法
深共晶溶媒の合成および製剤の調製
深共晶溶媒は、以前に記述されたように合成された26,32。手短に述べると、所望のアニオンの弱酸は、丸底フラスコ中で最小限の量の超純水に溶解された。溶液は、オイルバスを用いて、コリンベースのDESの場合には40℃に、アセチルコリンベースのDESの場合には65℃に、かくはんしながら加熱された。丸底フラスコがあふれるのを防ぐため、カチオンの前駆物質は、1:2のカチオン:アニオン比でゆっくりと添加された。混合物は一晩、完全に反応させた。過剰な水は、最初はロータリーエバポレーターを用いて3時間にわたり、次に60℃にセットしたバキュームオーブンを用いて2日間にわたり、除去された。その後、核磁気共鳴(Bruker AVANCE NEO 400)を用いて構造が確認された25,32,43。インスリン製剤を調製するため、凍結乾燥インスリンが生理食塩水中に懸濁された。十分な量のDESが添加され、そして、この添加ではインスリンが溶解しなかった場合には、1 M 塩酸が添加されてpHが2.5~3に調整され、そして溶液は清澄となった。pHを7.0~7.5に調整するため、1 M 水酸化ナトリウムが添加された。製剤は、インスリンの最終濃度およびDESの最終濃度がそれぞれ100 U/mLおよび0.5% (v/v)となるように、生理食塩水を添加することによって調整された。抗体製剤を調製するため、0.9% 生理食塩水中のおよそ40% (v/v)のDES溶液は、10M 水酸化ナトリウムを用いてpHが7.0~7.5に調整された。DES溶液は次に、抗体の最終濃度が7.9 mg/mLであり、かつDESの最終濃度が記載される濃度となるように、リツキシマブのバイオシミラーのストック(9.3 mg/mL)および/または生理食塩水を用いて製剤化された。
【0323】
インスリン-DES製剤の透過率を用いた安定性評価
インスリン-DES製剤の安定性を評価するために、透過率が使用された。プレートリーダーであるBioTek Synergy neo2を用いて540 nmの波長において取得された吸光度の測定値は、方程式1を用いてパーセント透過率に変換された。
この方程式は、ランベルト・ベールの法則から導かれており、吸光度をパーセント透過率に関連付けるものである。
【0324】
インスリン-DES製剤(formation)は、初期の透過率について最初に解析されて、製剤を調製した直後のインスリン凝集が存在しないことが確認された。続いて、最初のスクリーニングを通過した製剤は、黒色壁96ウェルプレートにプレーティングされ(3つの反復物)、そして、振とうしながら37℃でプレートがインキュベートされるという、ストレス負荷エイジングアッセイに供された。透過率の変化を経時的に評価するため、50時間にわたり、15分ごとに吸光度が読み取られた。コールドチェーンにおける安定性に関し、製剤は、連続的な振とうはせず、28日間にわたり4℃で、同様の様式で試験された。
【0325】
円二色性およびSDS-PAGEを用いたタンパク質の安定性評価
インスリン製剤および抗体製剤は、37℃で1時間インキュベートされ、それに続いて、10 mM リン酸ナトリウムpH 7.4を用いて透析された。円二色性(CD)およびSDS-PAGEのための準備として、透析後の濃度が紫外分光光度法を用いて(Thermo Scientific NanoDrop One)測定され、そして200μg/mLに調整された。CDは、200μLの試料が入った石英キュベット(Starna Cells Spectrosil Quartz 1-Q-1)をCD分光光度計(Jasco J-815)に収めることによって実施された。平均楕円率は190~250 nmと測定された。
【0326】
抗体の凝集を評価するため、プレキャストポリアクリルアミドゲル(BioRad TGX 4-15%)を収めた垂直型ゲル電気泳動装置(BioRad Mini-PROTEAN Tetra Cell)を用いて、製造元のプロトコルにしたがってSDS-PAGEが実施された。SDS複合体を形成させるため、試料は1Xレムリー緩衝液中で10分間70℃でインキュベートされ、その後ゲルにロードされた。30分の電気泳動後にゲルが取り出され、そしてクマシー色素を用いてタンパク質バンドが染色された。
【0327】
トランズウェル血管透過性試験
細胞死が生じない最大濃度を算出するため、MTS細胞生存性アッセイが実施された。HUVECは、供給元のプロトコルにしたがって培養され、継代され、そして10,000細胞/ウェルの密度で96ウェルプレートに播種された。一晩細胞接着を行わせた後、細胞は、新鮮HUVEC培地に溶解されたDESの連続希釈物で処理された。プレートは4時間インキュベートされ、その後、培地は吸引され、そして20% MTS試薬を含む新鮮培地と交換された。1時間後に、490 nmにおいて吸光度が測定された(BioTek Synergy neo2)。
【0328】
血管透過性を評価するため、トランズウェル細胞培養物を通過する移行についての実験が使用された。最初に、適切な24ウェルプレートトランズウェルインサートが、無菌条件下で0.1% ゼラチンを用いてコーティングされ、そして4℃で一晩保管された。過剰なゼラチンは、トランズウェルを倒置して除去され、そして滅菌PBSを用いて洗浄された。HUVECは、供給元のプロトコルにしたがって培養され、継代され、そして、250,000細胞/mL 培地である400μLが用いられて、トランズウェルインサートに播種された。次に、外側のウェルに600μLの新鮮培地を満たし、そして48時間にわたり増殖させた後で、実験を進行した。単層が形成された後で、培地は上側チャンバーから除去され、そして0.15% ILおよび0.9 U/mL インスリンを含む培地と交換されたが、これは、その後のインビボ試験において使用される濃度とインスリン対IL比とに備えるためのものであった。プレートは適切な細胞条件でインキュベートされ、そして、1時間にわたり10分ごとに、300μLの試料がプレートのウェルから採取されて、新鮮培地と交換された。試料はその後、適切に希釈されてELISAを用いて定量されるまで、4℃で保管された。
【0329】
細胞外マトリックスタンパク質の存在下での製剤の安定性
製剤の物理的安定性を評価するため、インスリンおよび抗体の流体力学的サイズが、ヒトI/III型コラーゲン(Advanced BioMatrix, Carlsbad, CA)の存在下で、動的光散乱法を用いて(DLS, Malvern)測定された。DESを用いたインスリン製剤およびリツキサン製剤は、それらそれぞれの臨床対照であるHumalogおよびリツキサン-生理食塩水とともに、コラーゲン対インスリンまたはコラーゲン対抗体の所定のw/w比で、コラーゲンの中性pH溶液に添加され、そして様々なタイムポイントにおいてサイズが測定された。
【0330】
コラーゲンの存在下での製剤の物理的安定性は、蛍光偏光法(FP)を用いてさらに評価された。原理上は、関心対象の分子、この場合はおよそ5.8 kDaのインスリンは、結合している状態、この場合はおよそ300 kDaのコラーゲンと結合している状態と比べて、未結合の状態においては、そのブラウン回転とより小さい分子半径のために、より速く回転するはずである。インスリンが蛍光標識され、そして偏光によって励起されると、垂直偏光および平行偏光の放出を測定することが可能である。FP用に設計されたプレートリーダーは、mPとの単位を用いて、偏光性を生じさせる垂直偏光および平行偏光を測定することが可能であり、これが、蛍光標識されているタンパク質の結合状態を示す値である。より遅く回転する、結合しているインスリンは、回転するのに十分な時間を該複合体が有していないため、平行方向に発光し、そしてより高い偏光値を有することなる。未結合のインスリン、すなわち結合阻害は、より垂直側に寄り、かつ偏光値がより低いことによって、示される36。製剤は、Cy 5.5標識インスリンを用いて調製された。製剤は、所定のw/w比でコラーゲン溶液と混合され、そして、Molecular Devices社のFlexstation 3プレートリーダーを用いて蛍光偏光が検出された。
【0331】
インビボでの薬物動態実験およびバイオアベイラビリティ実験
実験は全て、ハーバード大学(Harvard University)において施設内承認されたプロトコルの下で実施された。試験は、350~550 gの体重である雄の非絶食成体ウィスターラットにおいて実施された。ラットは麻酔され、そして、t=0のタイムポイントとして、血液がK2 EDTA採取チューブに採取された。初回の採血後、ラットは頸背部に皮下注射を受けた。インスリンの試験に関し、ラットは、1 U/kgのHumalogまたはSPADE-インスリン製剤(両方とも濃度は3 U/mL)の投与を受けた。その後、注射から5分後、10分後、15分後、20分後、30分後、45分後、60分後、150分後、および240分後に血液が採取された。インスリンの濃度はその後、適切なELISAキットを用いて定量された。
【0332】
抗体の試験に関し、ラットは右脇腹に10 mg/kgの皮下注射を受けた。初日の血液試料は、注射から1時間後、3時間後、5時間後、8時間後、および11時間後に採取された。試験は継続され、そして注射から1日後、2日後、3日後、4日後、7日後、10日後、14日後、21日後、28日後、35日後、42日後、および49日後に、血液試料が1日1回採取された。その後、ELISAを用いてリツキシマブのバイオシミラーの濃度が定量された。
【0333】
インビボ毒性
健康な雌のBALB/cマウス(7~8週齢)は、頸背部に、DES溶液かまたはブランクである生理食塩水のいずれかの皮下注射を1回受けた。マウスは注射の1日後および7日後に安楽死させ、そして注射部位の皮膚組織(角質層から筋肉まで)が採取され、パラホルムアルデヒド中で固定され、そしてH&E染色用に薄切された。マウスの別のコホートは、DES溶液かまたはブランクである生理食塩水のいずれかの1日1回の皮下注射を4回受け、最後の処置から24時間後に安楽死させ、そして血液および主要な臓器が採取された。K2 EDTAでコートされた全血解析用チューブと、凝血活性化剤でコートされた血清解析用チューブの両方に、血液が採取された。凝血活性化剤チューブは2600 rcfで10分間遠心分離されて、血餅から血清が分離された。血液学的アッセイを行うまで、試料は氷上で維持された。採血後にマウスを安楽死させ、そして重要な臓器が採取され、PBSを用いて洗浄され、10% ホルマリンを用いて固定された。全血および血清は、包括的な全血球計算および血液化学的検査に関して解析され(IDEXX BioAnalytics, North Grafton, MA)、一方で臓器は固定され、そしてH&E染色用に薄切された。組織学切片は全てAxioScanを用いて画像化され、そしてハーバード大学メディカルスクール(Harvard Medical School)のげっ歯類組織病理学コア(Rodent Histopathology Core)において、熟練した組織病理学者によって判定された。
【0334】
統計解析
別途指定されない限り、データは、平均±平均値の標準誤差(SEM)として、GraphPad Prism 8を用いてプロットされた。2つより多いコホートを有する実験結果についての統計的有意性は、各群の平均が他の群ごとの平均と比較されたテューキー多重比較を伴う、分散分析(ANOVA)を用いて評価された。2つだけのコホートを有する実験結果についての統計的有意性は、両側t検定を用いて評価された。有意性の記号は、以下のp値を用いて分類されている:*p < 0.05、**p < 0.01、***p < 0.001、****p < 0.0001。
【0335】
参考文献
【0336】
(表4)DESアニオンの特性の表
【0337】
(表5)深共晶溶媒の略称の表
【0338】
(表6)SPADE-mAbのバイオアベイラビリティ試験における全てのタイムポイントの血清中濃度および曲線下面積(AUC)値において実施されたt検定についての、統計的有意値(p値)の表。有意性の記号は、以下のp値を用いて分類されている:*p < 0.05、**p < 0.01、***p < 0.001、****p < 0.0001。
【0339】
参考文献
図1A
図1B
図2
図3
図4A
図4B
図5
図6
図7-1】
図7-2】
図8-1】
図8-2】
図9-1】
図9-2】
図10-1】
図10-2】
図10-3】
図11-1】
図11-2】
図12A
図12B
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
【手続補正書】
【提出日】2024-06-06
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】配列表
【補正方法】追加
【補正の内容】
【配列表】
2024538700000001.xml
【国際調査報告】