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特表2024-538709補助セメント系材料の製造方法、およびそれから製造された補助セメント系材料
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  • 特表-補助セメント系材料の製造方法、およびそれから製造された補助セメント系材料 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-10-23
(54)【発明の名称】補助セメント系材料の製造方法、およびそれから製造された補助セメント系材料
(51)【国際特許分類】
   C04B 14/04 20060101AFI20241016BHJP
   C04B 18/16 20230101ALI20241016BHJP
   C04B 18/12 20060101ALI20241016BHJP
   C04B 20/00 20060101ALI20241016BHJP
   C04B 28/02 20060101ALI20241016BHJP
【FI】
C04B14/04 Z ZAB
C04B18/16
C04B18/12
C04B20/00 B
C04B28/02
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024520950
(86)(22)【出願日】2022-10-06
(85)【翻訳文提出日】2024-05-16
(86)【国際出願番号】 US2022045862
(87)【国際公開番号】W WO2023059777
(87)【国際公開日】2023-04-13
(31)【優先権主張番号】63/253,343
(32)【優先日】2021-10-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】515252684
【氏名又は名称】ソリディア テクノロジーズ インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】SOLIDIA TECHNOLOGIES, INC.
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100179866
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 正樹
(72)【発明者】
【氏名】ヴァヒット アタカン
(72)【発明者】
【氏名】マリオ ジョージ デイヴィッドソン
(72)【発明者】
【氏名】サダナンダ サフー
【テーマコード(参考)】
4G112
【Fターム(参考)】
4G112PA03
4G112PA25
4G112PA30
(57)【要約】
炭酸化補助セメント系材料を調製する方法は、炭酸化可能混合物を炭酸化して第1の炭酸化セメント系材料を得るステップと、第1の炭酸化セメント系材料を粉砕するステップと、粉砕された混合物を炭酸化して炭酸化補助セメント系材料を得るステップとを含む。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
炭酸化補助セメント系材料を調製する方法であって、前記方法は、
水を炭酸化可能材料に添加して炭酸化可能混合物を形成するステップであって、前記混合物の含水量が、約0.1重量%~約99.99重量%である、ステップと、
前記炭酸化可能混合物を約1分~約24時間かき混ぜるまたは撹拌するステップと、
前記炭酸化可能混合物を炭酸化して、第1の炭酸化セメント系材料を得るステップと、
前記第1の炭酸化セメント系材料を約0.1分~約60分間粉砕して、粉砕混合物を得るステップと、
前記粉砕混合物を約1分~約24時間炭酸化して、炭酸化補助セメント系材料を得るステップと、
を含み、
前記炭酸化可能混合物および前記粉砕混合物を炭酸化することが、約5体積%~約100体積%の二酸化炭素を含むガスを前記炭酸化可能混合物および前記粉砕混合物にそれぞれ流し、約1℃~約99℃の温度を維持して前記炭酸化補助セメント系材料を得ることを含む、炭酸化補助セメント系材料を調製する方法。
【請求項2】
前記炭酸化可能混合物の前記含水量が、約0.1重量%~約90重量%である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記方法は、複数の粉砕および湿潤サイクルと交互に行われる複数の炭酸化サイクルを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記粉砕混合物を炭酸化する前に、前記粉砕混合物を蒸気処理するステップをさらに含み、前記蒸気処理は、前記粉砕混合物を約20℃~約200℃の温度で蒸気またはスチームに曝露することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記炭酸化補助セメント系材料を約20℃~約500℃の温度で約1分~約24時間乾燥させるステップをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記混合物を解凝集させるステップをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
二酸化炭素を含むガスを排ガスから得るステップをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記粉砕は、ボールミル、垂直ローラーミル、ベルトローラーミル、造粒機、ハンマーミル、アトリションミル、粉砕ローラー、ピーリングローラーミル、エアスイープローラーミル、またはそれらの組み合わせから選択されるミルにおいて実行される、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
炭酸化の前に前記ガスを湿らせるステップをさらに含み、前記ガスを湿らせるステップは、前記ガスを熱水中でバブリングすることを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
二酸化炭素を含む前記ガスの流量が、炭酸化可能材料1キログラム当たり約1L/min/Kg~約6L/min/Kgである、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
二酸化炭素を含む前記ガスを流すことが、約1分~約24時間行われる、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記炭酸化補助セメント系材料の平均粒径(d50)が、約1μm~約25μmである、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記炭酸化補助セメント系材料のBET表面積が、約5m/g~約25m/gである、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
前記炭酸化補助セメント系材料の二酸化炭素吸収率は、約5%~約40%である、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
前記炭酸化可能材料が、一般式MMe、MMe(OH)、MMe(OH)、またはMMe(OH)・(HO)を有する少なくとも1つの合成配合物を含み、式中、Mは、反応して炭酸塩を形成し得る少なくとも1つの金属であり、Meは、炭酸化反応中に酸化物を形成し得る少なくとも1つの元素である、請求項1に記載の方法。
【請求項16】
Mが、カルシウムおよび/またはマグネシウムである、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
Meが、シリコン、チタン、アルミニウム、リン、バナジウム、タングステン、モリブデン、ガリウム、マンガン、ジルコニウム、ゲルマニウム、銅、ニオブ、コバルト、鉛、鉄、インジウム、ヒ素、硫黄、および/またはタンタルである、請求項15に記載の方法。
【請求項18】
a:bの比が、約2.5:1~約0.167:1であり、cが、3以上であり、dが、1以上であり、eが、0以上である、請求項15に記載の方法。
【請求項19】
前記炭酸化可能材料が、元素Siに対する元素Caのモル比約0.8~約3.0を有するケイ酸カルシウムを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項20】
前記炭酸化可能材料が、CS(珪灰石または擬珪灰石)、C(ランキナイト)、およびCS(ビーライトまたはラーナイトまたはブレディジット)のうちの1つ以上から選択される離散的な結晶質ケイ酸カルシウム相のブレンドを全相の30質量%以上含み、Al、Fe、およびMgの金属酸化物を全酸化物質量の30%以下含む、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記炭酸化可能材料が、ケイ酸カルシウム水和物(C-S-H)、再生コンクリート、都市廃棄物、鉱山尾滓、またはそれらの混合物を含む、請求項19に記載の方法。
【請求項22】
前記炭酸化可能材料が、非晶質ケイ酸カルシウム相をさらに含む、請求項15に記載の方法。
【請求項23】
セメントまたはコンクリートを形成する方法であって、前記方法は、
請求項1に記載の方法に従って炭酸化補助セメント系材料を形成するステップと、
前記炭酸化補助セメント系材料を水硬性セメント組成物と組み合わせてセメント系材料混合物を形成するステップであって、前記セメント系材料混合物が、前記混合物における固体の総重量に基づいて、約1重量%~約99重量%の前記炭酸化補助セメント系材料を含むステップと、
前記セメント系材料混合物を水と反応させて前記セメントまたはコンクリートを形成するステップと、
を含む、セメントまたはコンクリートを形成する方法。
【請求項24】
前記セメント系材料混合物が、前記混合物中の固体の総重量に基づいて、約20重量%~約35重量%の炭酸化補助セメント系材料を含む、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
前記水硬性セメント組成物が、普通ポルトランドセメント(OPC)、スルホアルミン酸カルシウムセメント(CSA)、ビーライトセメント、または他のカルシウムベースの水硬性材料のうちの1つ以上を含む、請求項23に記載の方法。
【請求項26】
前記セメント系材料混合物に骨材を添加するステップをさらに含む、請求項23に記載の方法。
【請求項27】
前記セメントまたはコンクリートの強度活性度指数が、約75%~約120%であり、
前記強度活性度指数は、前記混合物中の固形分の総重量に基づいて、約0重量%の前記炭酸化補助セメント系材料を含む前記セメントまたはコンクリートの圧縮強度に対する、約20重量%の前記炭酸化補助セメント系材料を含む前記セメントまたはコンクリートの圧縮強度の比である、請求項23に記載の方法。
【請求項28】
前記第1の炭酸化セメント系材料の粉砕が、約5分~約60分間行われ、
それぞれのセメントまたはコンクリートの形成後7日目に測定したとき、前記第1の炭酸化セメント系材料を粉砕した後に得られる前記セメントまたはコンクリートの強度活性度指数が、粉砕せずに得られるセメントまたはコンクリートの強度活性度指数よりも約7%~約15%高く、
前記強度活性度指数は、前記混合物中の固形分の総重量に基づいて、約0重量%の前記炭酸化補助セメント系材料を含む前記セメントまたはコンクリートの圧縮強度に対する、約20重量%の前記炭酸化補助セメント系材料を含む前記セメントまたはコンクリートの圧縮強度の比である、請求項23に記載の方法。
【請求項29】
それぞれのセメントまたはコンクリートの形成後7日目に測定したとき、前記第1の炭酸化セメント系材料を約5分間~約10分間粉砕した後に得られる前記セメントまたはコンクリートの強度活性度指数が、粉砕せずに得られるセメントまたはコンクリートの強度活性度指数よりも約8.5%~約13%高い、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
前記セメントまたはコンクリートの形成後28日目に測定された前記セメントまたはコンクリートの強度活性度指数が、前記セメントまたはコンクリートの形成後7日目に測定された前記セメントまたはコンクリートの強度活性度指数よりも高く、
前記強度活性度指数は、前記混合物中の固形分の総重量に基づいて、約0重量%の前記炭酸化補助セメント系材料を含むセメントまたはコンクリートの圧縮強度に対する、約20重量%の前記炭酸化補助セメント系材料を含むセメントまたはコンクリートの圧縮強度の比である、請求項23に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本出願は、米国特許法第119条に準拠して2021年10月7日に提出された米国仮出願第63/253,343号の優先権の利益を主張し、その全内容を、参照によって完全に本明細書に記載されているように援用する。
【0002】
(技術分野)
本出願は、向上した二酸化炭素吸収率を有する粉砕された炭酸化補助セメント系材料の調製を対象とする。
【背景技術】
【0003】
本明細書において、文書、行為、または知識項目が参照または議論されている場合、この参照または議論は、その文書、行為、知識項目、またはそれらの組み合わせが、優先日において、公的に入手可能、周知、一般知識の一部であったか、もしくはさもなければ該当する法規定に基づく先行技術を構成すること、または本明細書が関係する任意の問題を解決する試みに関連することが知られていることを、認めるものではない。
【0004】
普通ポルトランドセメント(OPC)の製造は非常にエネルギーを大量に消費するプロセスであり、温室効果ガス排出の主な原因となっている。セメント部門は、産業用CO総排出量の中で第3に大きい産業用エネルギー消費者であり、第2に大きいCO排出者でもある。世界のセメント生産量は2019年に4.1Gtに達し、人為的CO総排出量の約8%に寄与すると推定されている。
【0005】
気候変動と闘う試みとして、国連気候変動枠組条約(UNFCC)の加盟国は、2015年12月に採択されたパリ協定を通じて、2030年までにCO排出量を20%から25%削減することに合意した。これは毎年の1ギガトンのCOを削減する目標に相当する。この協定に基づき、UNFCCは今世紀末までに地球の気温上昇を2℃以内に抑えることに同意した。この目標を達成するために、持続可能な開発のための世界経済人会議(WBCSD)セメント持続可能性イニシアチブ(CSI)は、「セメント産業における低炭素移行」(WBCSD-CSI)と呼ばれるロードマップを作成した。このロードマップでは、世界のセメント産業における4つの炭素排出削減手段を特定した。第1の手段は、エネルギー性能を向上させるために既存の施設を改修することによってエネルギー効率を向上させることである。第2は、二酸化炭素排出量の少ない代替燃料への切り替えである。例えば、バイオマスおよび廃棄物をセメント窯で使用して、炭素集約型の化石燃料の消費を相殺され得る。第3に、クリンカー係数またはクリンカー対セメント比の低減である。最後に、WBCSD-CSIは、炭素回収をセメント製造プロセスに統合するなど、新興の革新的な技術を使用することを提案する。
【0006】
したがって、CO排出量を削減する改善されたセメント生産が必要である。気候変動の地球規模の影響を軽減する。本開示は、炭素回収をセメント製造プロセスに統合する方法を開発することによって、EPAおよびUNFCCによって特定されたこれらの問題に対処しようと試みる。
【0007】
例えば、Solidia Technologies Inc.は、CO排出量を30%削減する低CO排出量クリンカーを開発した。しかし、このような材料を従来の水硬性コンクリート材料に統合して、普通ポルトランドセメント(OPC)などの水硬性セメントのクリンカーファクターを低減し、コンクリート中の補助セメント系材料(SCM)のようなそのような低CO排出材料を材料として使用することで環境のプラスの可能性をさらに高める必要性が存在する。本発明の開示を容易にするために従来の技術の特定の態様が議論されているが、出願人はこれらの技術的態様を決して放棄するものではなく、請求された発明は、本明細書で議論される従来の技術的態様の1つ以上を包含または含み得ると考えられる。
【発明の概要】
【0008】
本発明によって、上記の欠点が解決され、一定の利点が得られることが発見された。例えば、本発明の方法および組成物は、従来の水硬性セメントのクリンカー係数を低減することおよびセメントまたはコンクリート材料の製造に炭素回収を組み込むことの両方によって、補助セメント系材料(SCM)として水硬性セメントに添加する前に、炭酸化可能クリンカー、好ましくはしかし排他的ではなく、低CO排出クリンカーを、事前炭酸化する新規アプローチを提供し、二重に環境面でのメリットがもたらされる。スラリープロセス、循環炭酸化プロセス、非スラリー炭酸化プロセス(半湿式炭酸化プロセス)および高温炭酸化プロセスを含む、SCMを調製するための様々な例示的な方法は、米国仮出願第63/151,971号および第63/217,590号、ならびに対応する米国特許出願第17/675,777号および17/855,576号に記載され、これらの内容は、あたかも完全に本明細書に記載されているかのように参照によって援用される。
【0009】
例示的な実施形態は、炭酸化補助セメント系材料を調製する方法を対象とし、本方法は、水を炭酸化可能材料に添加して炭酸化可能混合物を形成することを含み、炭酸化可能混合物の含水量は、約0.1%~約99.9%である、炭酸化可能混合物を約1分~24時間かき混ぜまたは撹拌するステップと、炭酸化可能混合物を炭酸化して第1の炭酸化セメント系材料を得るステップと、第1の炭酸化セメント系材料を約0.1分~約60分間粉砕して粉砕混合物を得るステップと、粉砕混合物を約1分~約24時間炭酸化するステップを含み、炭酸化可能混合物および粉砕混合物を炭酸化することは、それぞれ約5体積%~約100体積%の二酸化炭素を含むガスを流し、約1℃~約99℃の温度を維持して炭酸化補助セメント系材料を得ることを含む。COの吸収率を最大化するために、炭酸化と粉砕とのステップを必要に応じて最大10回繰り返し得る。
【0010】
別の例示的な実施形態は、セメントまたはコンクリートを形成する方法を対象とし、本方法は、本明細書に記載の方法のいずれかによる炭酸化補助セメント系材料を形成するステップと、炭酸化補助セメント系材料と水硬性セメント組成物を組み合わせてセメント系材料混合物を形成するステップであって、セメント系材料混合物は、混合物中の固体の総重量に基づいて、約1重量%~約99重量%の炭酸化補助セメント系材料を含む、ステップと、セメント系材料混合物を水と反応させてセメントまたはコンクリートを形成するステップとを含む。
【0011】
本発明のこれらおよび他の特徴を、本発明を例示することを目的とするものであり、限定するものではない特定の実施形態の図面を参照して説明する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】ASTM C778に準拠するASTM砂と例示的な実施形態による粉砕方法を使用して調製された補助セメント系材料との混合物のモルタル流動の測定を表し、0.485の水対セメント比(w/c)を有する普通ポルトランドセメント(OPC)の20%置換で測定した。
図2】それぞれ7日後および28日後に、0.485のw/cを有するOPCの20%置換で測定された、例示的な実施形態による粉砕された補助セメント系材料のSAIを表す。
図3】本出願の実施例および比較例のCO吸収率を表す。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明のさらなる態様、特徴および利点は、下記の詳細な説明から明らかになるであろう。本明細書に記載される本発明の様々な個別の態様および特徴は、任意の1つ以上の個別の態様または特徴を任意の数で組み合わせて、本発明によって具体的に企図され包含される本発明の実施形態を形成することができることを理解されたい。さらに、特許請求の範囲に記載された特徴のいずれも、特許請求の範囲に記載された他の特徴のいずれかと、任意の数または任意の組み合わせで組み合わせることができる。このような組み合わせも、本発明に包含されるものとして明示的に企図される。
【0014】
本明細書で使用される場合、単数形「a」、「an」、および「the」は、文脈上明らかに別段の指示がない限り、複数形も含むものとする。
【0015】
本明細書で使用される場合、「約」は近似の用語であり、当業者には理解されるように、文字通り記載された量のわずかな変動を含むことが意図されている。このような変動には、例えば、合金または複合材料の構成要素または成分の量、または他の特性および特性を測定するために一般的に使用される技術に関連する標準偏差が含まれる。上記の修飾語「約」によって特徴付けられるすべての値も、本明細書に開示される正確な数値を含むことを意図している。また、すべての範囲には上限と下限が含まれる。
【0016】
本明細書に記載される任意の組成物は、そうでないことが明示的に示されない限り、本明細書に特定される様々な成分からなる、実質的にからなる、さらにはそれらを含む組成物を包含することを意図する。
【0017】
本明細書で使用される場合、変数の数値範囲の言及は、変数がその範囲内の任意の値、およびより広い範囲に含まれるすべての部分範囲に等しくあり得ることを伝えることを意図している。したがって、変数は、範囲の終点を含む数値範囲内の任意の整数値と等しくあり得る。例として、0~10の値を有すると記述されている変数は、0、4、2~6、2.75、3.19~4.47などであり得る。
【0018】
本明細書および特許請求の範囲において、文脈上明らかに別段の指示がない限り、単数形には複数の指示対象が含まれる。本明細書で使用されるとき、特に別段の指示がない限り、「または」という語は、「および/または」の「包括的」意味で使用され、「いずれか/または」の「排他的」意味では使用されない。
【0019】
別段の指示がない限り、本明細書の個々の特徴または実施形態の各々は、本明細書に記載される他の任意の個々の特徴または実施形態と制限なく組み合わせられ得る。このような組み合わせは、本明細書に組み合わせとして明示的に記載されているかどうかに関係なく、本発明の範囲内であると特に企図される。
【0020】
本明細書で使用される技術用語および科学用語は、別段の定義がない限り、本説明が関係する当業者によって一般的に理解される意味を有する。本明細書では、当業者に知られているさまざまな方法論および材料について言及する。
【0021】
本発明の補助セメント系材料を形成するために使用されるベース材料は、炭化可能である限り特に限定されない。本明細書で使用する場合、「炭酸化可能」という用語は、本明細書に記載の条件または同等の条件下で二酸化炭素と反応し、二酸化炭素を隔離できる材料を意味する。炭酸化可能材料は、天然に存在する材料であり得、前駆体材料から合成され得る。
【0022】
例示的な実施形態では、炭酸化可能材料は都市固形廃棄物(MSW)を含み得る。本明細書で使用する場合、MSWは、家庭や企業によって発生する廃棄物として定義されており、これには、食品、台所廃棄物、緑廃棄物、紙廃棄物、ガラス、ボトル、缶、金属、プラスチック、布地、衣類、電池、タイヤ、建物の瓦礫、建設および解体廃棄物、土、岩石、瓦礫、電子機器、コンピュータ機器、塗料、化学薬品、電球および蛍光灯、肥料、医療廃棄物などが含まれる。本発明で定義されるように、MSWには、未消化の食品残渣、粘液、細菌、尿素、塩化物、ナトリウムイオン、カリウムイオン、クレアチニン、他の溶解イオン、無機および有機化合物、ならびに水を含有する下水汚泥も含まれる。さまざまな形態におけるMSWは、純水および二酸化炭素よりも濃縮された形でCOおよび水を含有する。例えば、大型ゴミ箱1個に含まれる都市固形廃棄物の炭素含有量は、少なくとも15,000ポンドの二酸化炭素および700ガロンの水に相当する。純水およびCOとは異なり、都市固形廃棄物の長期保管には冷蔵や防腐剤は必要ない。さらに、都市固形廃棄物を分解現場に持ち込むために必要な輸送は最小限で済む。
【0023】
本出願の例示的な実施形態は、炭酸化補助セメント系材料を調製する方法を対象とし、この方法は、水を炭酸化可能材料に添加して炭酸化可能混合物を形成するステップであって、混合物の含水量は、約0.1重量%~約99.99重量%である、ステップと、炭酸化可能混合物を約1分~24時間かき混ぜまたは撹拌するステップと、炭酸化可能混合物を炭酸化して第1の炭酸化セメント系材料を得るステップと、第1の炭酸化セメント系材料を約0.1分~約10分間粉砕して粉砕混合物を得るステップと、約5体積%~約100体積%の二酸化炭素を含むガスを粉砕混合物に約1分~24時間流すことによって、混合物および粉砕混合物にそれぞれ流すことによって、炭酸化するステップと、約1℃~約99℃に加熱して温度を維持することによって、炭酸化補助セメント系材料を得るステップと、を含む。
【0024】
炭酸化可能材料は、約0.1%~約99.99%、約0.1%~約90%、約0.1%~約80%、約0.1%~約70%、約0.1%から、約0.1%~約50%、約0.1%~約40%、約0.1%~約30%、約0.1%~約20%、約0.1%~約10%など、および0.1%、1.0%、0.5%~10%、0.5%~90%、10.5%、6.75%~9.25%など、これらの列挙された範囲のいずれかに該当する任意の値を有する量の含水量を含み得る。含水量の値は、範囲の端点を含む、上記の数値範囲内の任意の整数値または複数の値に等しくあり得る。
【0025】
炭酸化可能混合物は、約1分間~約15時間、約5分間~約14時間、約10分間~約13時間、約15分間~約12時間、約20分間~約11時間、約30分~約10時間、約1時間~約9.5時間、約1.5時間~約8時間、約2時間~約7.5時間、約2.5時間~約7時間、約3時間~約6.5時間、約3.5時間~約6時間、約4時間~約5.5時間、約4.5時間~約5時間など、かき混ぜまたは攪拌され得る。かき混ぜまたは攪拌の時間は、これらの範囲の終点を含む、上記の数値範囲内の任意の整数値または複数の数値に等し得る。
【0026】
上記方法における各ステップの順序は特に限定されず、かき混ぜまたは撹拌および炭酸化を同時に行い得、かき混ぜまたは撹拌および炭酸化を連続して行い得る。
【0027】
例示的な実施形態では、本明細書に記載の方法は、複数の粉砕サイクルと交互に行われる複数の炭酸化サイクルをさらに含む。複数の炭酸化サイクルの各々および複数の粉砕サイクルの各々の時間は、本出願に記載されているとおりであり得る。
【0028】
別の例示的な実施形態では、プロセスは、粉砕混合物を炭酸化する前に、粉砕混合物を蒸気処理することをさらに含み得、蒸気処理は、粉砕混合物を約20℃~約200℃、約40℃~約180℃、約60℃~約160℃、約80℃~約140℃、約100℃~約120℃などの温度で蒸気またはスチームに曝露することを含む。温度は、これらの範囲の終点を含む、上記の数値範囲内の任意の整数値または複数の値に等しくてもよい。粉砕混合物の蒸気処理は、粉砕混合物の炭酸化と同時に行うことも、粉砕混合物の炭酸化の前に行うこともでき、複数の蒸気処理工程を複数の粉砕工程と併用してもよい。
【0029】
別の例示的な実施形態では、プロセスは、炭酸化補助セメント系材料を、約5時間~約25時間、約5時間~約24時間、約6時間~約24時間など、約50℃~約150℃、約53℃~約140℃、約56℃~約130℃、約60℃~約120℃などの温度で乾燥させるステップ、および/または炭酸化可能混合物を炭酸化サイクルにさらす前に、炭酸化可能混合物を、約0.05インチ~約1.5インチ、約0.1インチ~約1インチ、約0.15インチ~約0.95インチ、約0.2インチ~約0.9インチ、約0.25インチ~約0.85インチ、約0.3インチ~約0.8インチ、約0.35インチ~約0.75インチ、約0.4インチ~約0.7インチ、約0.45インチ~約0.65インチ、約0.5インチ~約0.6インチなどの厚さを有する層に広げるステップ、および/または混合物を解凝集させるステップ、および/または複数の炭酸化サイクルの各々の後に、炭酸化可能混合物を再湿潤させてかき混ぜまたは撹拌するステップ、および/または炭酸化補助セメント系材料の複数の粉砕サイクル、および/または複数の炭酸化サイクル中にガスを供給する前に二酸化炭素を含むガスを湿らせるステップをさらに含み得、ガスを湿らせるステップは、ガスを熱水中でバブリングするステップを含む。上記の数値範囲の値は、これらの範囲の終点を含む、上記の数値範囲のいずれかの整数値または複数の数値に等しくあり得る。
【0030】
複数の粉砕サイクルの完了後の炭酸化補助セメント系セメントの平均粒径(d50)は、約1μm~約25μm、約2μm~約25μm、約4μm~約24μm、約6μm~約24μm、約7μm~約23μm、約8μm~約22μm、約9μm~約21μm、約10μm~約20μmなどであり得る。平均粒径(d50)は、これらの範囲の端点を含む、上記の数値範囲のいずれかの整数値または複数の数値に等しくあり得る。本出願に記載されている粒子サイズは、レーザー回折粒子サイズ分析装置を使用して測定される。
【0031】
本出願に記載の方法に従って調製された炭酸化補助セメント系材料のBET表面積は、約5m/g~約25m/g、約5m/g~約20m/g、約5m/g~約18m/g、約5m/g~約15m/g、約6m/g~約15m/g、約7m/g~約15m/g、約8m/g~約15m/g、約9m/g~約15m/gなどである。BET表面積は、これらの範囲の端点を含む、上記の数値範囲内の任意の整数値または複数の値に等し得る。本出願に記載されているBET表面積の測定には窒素吸着法が使用される。
【0032】
炭酸化に使用されるガスは、約5体積%~約100体積%、約10体積%~約100体積%、約20体積%~約100体積%、約30体積%~約100体積%、約40体積%~約100体積%、約50体積%~約100体積%、約60体積%~約100体積%、約70体積%~約100体積%、約80体積%~約100体積%、約90体積%~約100体積%、の二酸化炭素を含み得る。二酸化炭素含有量は、これらの範囲の端点を含む、これらの範囲内の任意の整数値または値に等しくあり得る。
【0033】
二酸化炭素を含むガスは、排ガスから得られ得る。しかしながら、二酸化炭素を含むガスはこれに限定されず、二酸化炭素を含む任意の適切なガス源を使用し得る。例えば、多くの産業用ガス供給業者は、タンク入り二酸化炭素ガス、圧縮二酸化炭素ガス、液体二酸化炭素をさまざまな純度で提供する。あるいは、二酸化炭素は、任意の適切な工業プロセスからの副生成物として回収することができる。本明細書で使用される場合、工業プロセスの副生成物からの二酸化炭素源は、概して「排ガス」と呼ばれる。排ガスは、炭酸化可能材料に導入される前に、必要に応じて精製などのさらなる処理を受け得る。非限定的な例として、二酸化炭素はセメント工場、発電所などから回収され得る。
【0034】
ガス流量計または校正バルブで測定した二酸化炭素を含むガスの流量は、炭酸化可能材料1キログラム当たり、約1L/min~約10L/min、約1.5L/min~約9L/min、約2L/min~約8L/min、約2.5L/min~約7L/min、約3L/min~約6L/minなどである。流量は、これらの範囲の端点を含む、これらの範囲内の任意の整数値または値に等しくあり得る。
【0035】
炭酸化プロセスは、約0.5時間~約24時間、約1時間~約24時間、約1.5時間~約20時間、約2時間~約15時間、約5時間~約10時間、約4時間~約6時間など、二酸化炭素を流すことを含み得る。ガスを流す時間は、これらの範囲の端点を含む、これらの範囲内の任意の整数値または値に等しくあり得る。
【0036】
二酸化炭素を含むガスは、約1℃~約99℃、約5℃~約90℃、約10℃~約85℃、約20℃~約80℃、約30℃~約70℃などの温度で炭酸化可能材料上に流され得る。温度は、これらの範囲の端点を含む、これらの範囲内の任意の整数値または値に等しくあり得る。
【0037】
1つ以上の添加剤、例えば、ポリカルボン酸エーテル(PCE)、糖などの分散剤、糖、クエン酸およびその塩などの凝結遅延剤、酢酸およびその塩、酢などの炭酸強化添加剤を、炭酸化可能材料に添加し得る。
【0038】
複数の粉砕サイクルは、ボールミル、垂直ローラーミル、ベルトローラーミル、造粒機、ハンマーミル、アトリションミル、粉砕ローラー、ピーリングローラーミル、エアスイープローラーミル、またはそれらの組み合わせで実行され得るが、これに限定されるものではなく、任意の適切な装置を使用し得る。
【0039】
炭酸材の所定の温度は、約50℃~約150℃、約55℃~約145℃、約60℃~約140℃、約65℃~約130℃、約70℃~約120℃、約75℃~約125℃、約85℃~約115℃などであり得る。温度は、これらの範囲の端点を含む、これらの範囲内の任意の整数値または値に等しくあり得る。
【0040】
炭酸化可能材料および水を含む混合物の開始液体対固体比(L/S)は、約0.01~約2.5、約0.01~約2.0、約0.02~約1.5、約0.03~約1.0、約0.04~0.09、約0.05~約0.8、約0.05~約0.6、約0.05~約0.45、約0.1~約0.25などであり得る。L/S比は、これらの範囲の端点を含む、これらの範囲内の任意の整数値または値に等しくあり得る。
【0041】
この方法を使用して調製された炭酸化補助セメント系材料のCO吸収率は、約5%~約40%、約8%~約35%、約10%~約30%、約12%~約25%、約14%~約20%、約16%~約18%であり得、ここで、CO吸収率は、炭酸化後のセメントの質量の変化率として測定される。二酸化炭素の吸収率は、これらの範囲の端点を含む、これらの範囲内の任意の整数値または値に等しくあり得る。
【0042】
本発明の例示的な実施形態によれば、炭酸化可能材料は、第1の濃度のMを有する第1の原材料を混合し、第2の濃度のMeを有する第2の原材料と反応させて、一般式MMe、MMe(OH)、MMe(OH)、またはMMe(OH)・(HO)を有する、少なくとも1つの合成製剤を含む反応生成物を形成することによって形成し得、Mは、反応して炭酸塩を形成し得る少なくとも1つの金属であり、Meは、炭酸化反応中に酸化物を形成し得る少なくとも1つの元素である。
【0043】
記載のように、第1の原材料中のMは、一般式MMe、MMe(OH)、MMe(OH)、またはMMe(OH)・(HO)を有する合成製剤中に存在する場合に炭酸塩となり得る任意の金属を含み得る。例えば、Mは、任意のアルカリ土類元素、好ましくはカルシウムおよび/またはマグネシウムであり得る。第1の原材料は、第1の濃度のMを有する任意の鉱物および/または副生成物であり得る。
【0044】
記載のように、第2の原材料中のMeは、一般式MMe、MMe(OH)、MMe(OH)、またはMMe(OH)・(HO)を有する合成配合物中に存在するとき、水熱不均化反応によって酸化物を形成し得る任意の元素を含み得る。例えば、Meは、シリコン、チタン、アルミニウム、リン、バナジウム、タングステン、モリブデン、ガリウム、マンガン、ジルコニウム、ゲルマニウム、銅、ニオブ、コバルト、鉛、鉄、インジウム、ヒ素、硫黄、および/またはタンタルであり得る。好ましい実施形態では、Meはシリコンを含む。第2の原材料は、第2の濃度のMeを有する任意の1つ以上の鉱物および/または副生成物であり得る。
【0045】
本発明の例示的な実施形態によれば、第1および第2の原材料の第1および第2の濃度は、第1および第2の原材料を所定の比で混合して一般式MMe、MMe(OH)、MMe(OH)、またはMMe(OH)・(HO)を有する所望の合成配合物を形成できるほど十分に高く、得られる合成配合物は炭酸化反応を受け得る。1つ以上の例示的な実施形態では、約2.5:1~約0.167:1の間のa:b比を有する合成配合物は、炭酸化反応を受ける。合成配合物は、cのO濃度を有し得、cは3以上である。他の実施形態では、合成配合物は、dのOH濃度を有得、ここで、dは1以上である。さらなる実施形態では、合成配合物はまた、eのHO濃度を有し得、ここで、eは0以上である。
【0046】
合成配合物は、炭酸化プロセスにおいて二酸化炭素と反応し、それによってMが反応して炭酸塩相を形成し、Meが反応して水熱不均化によって酸化物相を形成する。
【0047】
一例では、第1の原材料中のMは、相当な濃度のカルシウムを含み、第2の原材料中のMeは、相当な濃度のケイ素を含有する。例示的な実施形態では、第1の原材料は、約30%~約60%などの量のMを含み得、第2の原材料は、約30%~約60%などの量のMeを含み得る。二酸化炭素の吸収率は、これらの範囲の端点を含む、これらの範囲内の任意の整数値または値に等しくあり得る。
【0048】
したがって、例えば、第1の原材料は、第1の濃度のカルシウムを有する石灰石であり得、または石灰石を含み得る。第2の原材料は、第2の濃度のケイ素を有する頁岩であり得、または頁岩を含み得る。次いで、第1および第2の原材料を混合し、所定の比で反応させて、一般式(Ca(SiMe、(Ca(Si,Me(OH)、または(Ca(Si,Me(OH)・(HO)を有する少なくとも1つの合成配合物を含む反応生成物を形成し、Mは、反応して炭酸塩を形成し得るカルシウム以外の1つ以上の追加の金属を含み得、Meは、炭酸化反応中に酸化物を形成し得るシリコン以外の1つ以上の元素を含み得る。この例における石灰石と頁岩とは、得られる合成配合物が上記で説明したように炭酸化反応を受けることができるように、比a:bで混合され得る。得られる合成配合物は、例えば、a:bの比が1:1である珪灰石、CaSiOであり得る。しかしながら、Mが主にカルシウムであり、Meが主にケイ素である合成配合物の場合、約2.5:1~約0.167:1のa:bの比は、この範囲外では温室効果ガスの排出が削減されず、エネルギー消費や十分な炭酸化が起こらない可能性があり得るため、炭酸化反応を受け得ると考えられる。例えば、a:b比が2.5:1より大きい場合、混合物は、Mに富み、より多くのエネルギーおよびより多くのCOの放出が必要となる。一方、a:b比が0.167:1未満の場合、混合物はMeに富み、十分な炭酸化が起こらない場合があり得る。
【0049】
別の例では、第1の原材料中のMは、相当な濃度のカルシウムおよびマグネシウムを含む。したがって、例えば、第1の原材料は、第1の濃度のカルシウムを有するドロマイトであり得、またはドロマイトを含み得、合成配合物は、一般式(MgCa(Si,Meまたは(MgCa(SiMe(OH)を有し、Mは、反応して炭酸塩を形成し得るカルシウムおよびマグネシウム以外の1つ以上の追加の金属を含み得、Meは、炭酸化反応中に酸化物を形成し得るシリコン以外の1つ以上の元素を含み得る。別の例では、第1の原材料中のMeは、かなりの濃度のシリコンおよびアルミニウムを含み、合成配合物は、一般式(Ca(AlSi,Meまたは(Ca(AlSi,Me(OH)、(Ca(AlSi,Me(OH)または(Ca(AlSi,Me(OH)・(HO)を有する。
【0050】
約2.5:1のa:b比を有するポルトランドセメントと比較して、本発明の例示的な合成配合物は、CO発生量の減少をもたらし、合成配合物を形成するのに必要なエネルギーが少なくなるが、これについては下記でより詳細に説明する。CO発生量の削減およびより少ないエネルギー要件が達成される理由はいくつかある。まず、同量のポルトランドセメントと比較して、石灰石などの原材料が少なくなるため、変換されるCaCOの量が少なくなる。また、使用する原材料が少なくなるため、原材料を分解して炭酸化反応を起こすのに必要な熱(エネルギー)も減少する。
【0051】
上記と一致する炭酸化可能材料の他の具体例は、米国特許第9,216,926号明細書、米国仮出願第63/151,971号、および対応する米国特許出願第17/675,777号に記載されており、それらの全体を参照によって本明細書に援用する。
【0052】
さらなる実施形態によれば、炭酸化可能材料は、様々なケイ酸カルシウムを含む、実質的にそれからなる、または様々なケイ酸カルシウムからなる。組成物中の元素Caの元素Siに対するモル比は、約0.8~約1.2である。この組成物は、全相の約30質量%以上のCS(珪灰石または擬珪灰石)、C3S2(ランキナイト)、およびC2S(ビーライトまたはラルナイトまたはブレディジット)の1つ以上から選択される、離散的な結晶質ケイ酸カルシウム相のブレンドから構成される。ケイ酸カルシウム組成物は、全酸化物質量に対して約30%以下のAl、FeおよびMgの金属酸化物を有し、かつ約30℃~約95℃、または約30℃~約70℃の温度でのCOによる炭酸化で、約10%以上の質量増加を伴うCaCOの形成に適することを特徴とする。ケイ酸カルシウム組成物には、少量のC3S(エーライト、CaSiO)も含まれ得る。ケイ酸カルシウム組成物内に存在するC2S相は、α-CaSiO、β-CaSiOもしくはγ-CaSiO多形、またはそれらの組み合わせのいずれかで存在し得る。ケイ酸カルシウム組成物はまた、少量の残留CaO(石灰)およびSiO(シリカ)を含み得る。
【0053】
ケイ酸カルシウム組成物は、上記の結晶相に加えて、非晶質(非結晶)ケイ酸カルシウム相を含有する場合があり得る。アモルファス相には、原材料中に存在するAl、Fe、Mgイオンおよびその他の不純物イオンがさらに含まれ得る。これらの結晶質および非晶質ケイ酸カルシウム相はそれぞれ、COによる炭酸化に適している。ケイ酸カルシウム組成物はまた、少量の残留CaO(石灰)およびSiO(シリカ)を含み得る。
【0054】
これらの結晶質および非晶質ケイ酸カルシウム相は各々、COによる炭酸化に適する。
【0055】
ケイ酸カルシウム組成物はまた、一般式(Ca,Na,K)[(Mg、Fe2+、Fe3+、Al、Si)]を有するメリライト型鉱物(メリライト、ゲーレナイト、またはケルマナイト)などの不活性相を多量に含み得、一般式Ca(Al,Fe3+を有するフェライトタイプの鉱物(フェライト、ブラウンミラライト、またはCAF)を含み得る。特定の実施形態では、ケイ酸カルシウム組成物は、非晶質相のみから構成される。特定の実施形態では、ケイ酸カルシウムは、結晶相のみを備える。特定の実施形態では、ケイ酸カルシウム組成物の一部は、非晶質相で存在し、一部は結晶相で存在する。
【0056】
これらのケイ酸カルシウム相は各々、COによる炭酸化に適する。以降、炭酸化に適した離散的なケイ酸カルシウム相を反応相と呼ぶ。反応相は、組成物中に任意の適切な量で存在し得る。特定の好ましい実施形態では、反応相は約50質量%以上存在する。
【0057】
様々な反応相は、反応相全体の任意の適切な部分を占め得る。特定の好ましい実施形態では、CSの反応相は、約10~約60wt%で存在し、Cは約5~50wt%、CSは約5wt%~60wt%、Cは約0wt%~3wt%である。CSの反応相の量は、これらの範囲の端点を含む、これらの範囲内の任意の整数値または値に等しくあり得る。
【0058】
特定の実施形態では、反応相は、合計相の質量で、例えば、約40%以上、約45%以上、約50%以上、約55%以上、約60%以上、約65%以上、約70%以上、約75%以上、約80%以上、約85%以上、約90%以上、約95%以上などの、ケイ酸カルシウム系非晶質相を含む。非晶質相には、原材料中に存在する不純物イオンがさらに取り込まれ得ることに留意されたい。非晶質相のパーセンテージは、これらの範囲の端点を含む、これらの範囲内の任意の整数値または値に等しくあり得る。
【0059】
本明細書に開示されるケイ酸カルシウム組成物、相および方法は、ケイ酸カルシウム相の代わりに、またはケイ酸カルシウム相に加えてケイ酸マグネシウム相を使用するために採用できることを理解されたい。本明細書で使用される場合、「ケイ酸マグネシウム」という用語は、例えば、MgSiO(「フォルステライト」としても知られる)およびMgSi10(OH)(「タルク」としても知られる)およびCaMgSiO(「モンティセライト」としても知られる)を含む、マグネシウム-ケイ素含有化合物の群のうちの1つ以上から構成される、天然に存在する鉱物または合成材料を指し、これらの材料の各々は、1つ以上の他の金属イオンおよび酸化物(例えば、カルシウム、アルミニウム、鉄またはマンガン酸化物)、またはそれらのブレンドを含み得、または微量(1%)から約50重量%以上の範囲の量の天然または合成形態のケイ酸カルシウムを含み得る。
【0060】
上記と一致する炭酸化可能なケイ酸カルシウム材料の他の具体例は、米国特許第10,173,927号に記載されており、その全体を参照によって本明細書に援用する。
【0061】
さらに、セメント系材料には、ケイ酸カルシウム、炭酸カルシウム、および非晶質シリカを含み得る。非晶質シリカ含有量は、約5%~約50%、約8%~約45%、約8%~約40%、約9%~約40%、約10%~約40%、約20%~約40%であり得、非晶質シリカは、水酸化カルシウムと反応してケイ酸カルシウム水和物ゲルを形成する。非晶質シリカ含有量は、これらの範囲の端点を含む、これらの範囲内の任意の整数値または値に等しくあり得る。
【0062】
本明細書に記載されるセメントまたはコンクリートは、複数の結合要素を含み得、各結合要素は、コア(非炭酸化セメント)と、コアの周縁部を少なくとも部分的に覆う、シリカに富む第1の層と、第1の層の周縁部を少なくとも部分的に覆う、炭酸カルシウムおよび/または炭酸マグネシウムに富む第2の層と、を含む。本明細書で使用される場合、「シリカに富む」および「炭酸カルシウムおよび/または炭酸マグネシウムに富む」という用語は、それぞれ、シリカおよび炭酸カルシウムおよび/または炭酸マグネシウムの含有量がそれぞれの層の構成要素の合計質量または体積の50重量%または体積%を超えることを意味し得る。
【0063】
シリカに富む第1の層は、非晶質シリカを含み得る。シリカに富む層中の非晶質シリカの量は、Ca(OH)溶液中で混合物を硬化させずに調製されたセメントまたはコンクリート中の非晶質シリカの量よりも多い場合があり得る。
【0064】
シリカに富む層は、通常のポルトランドセメント(OPC)水和によって生成されるCa(OH)とさらに反応して追加のC-S-Hを形成し(ポゾラン反応)、補助セメント系材料からの炭酸カルシウムがOPCと反応してモノカーボネートを形成する。
【0065】
炭酸化可能材料は、約0.5~約1.5、約0.6~約1.4、約0.7~約1.3、約0.8~約1.2、約0.9~約1.1などの元素Siに対する元素Caのモル比を有するケイ酸カルシウムを含み得る。モル比は、これらの範囲の端点を含む、これらの範囲内の任意の整数値または値に等しくあり得る。
【0066】
炭酸化可能材料は、CS(珪灰石または擬珪灰石)、C(ランキナイト)およびCS(ビーライトまたはラーナイトまたはブレジット)のうちの1つ以上から選択される、離散的な結晶質ケイ酸カルシウム相のブレンドを、全相の質量で好ましくは約20%以上、約25%以上、約30%以上、約35%以上、約40%以上、約45%以上、約50%以上、約55%以上、約60%以上、約65%以上、約70%以上、約75%以上、約80%以上、約85%以上、約90%以上などで含み得、かつ、約99%以下、約98%以下、約97%以下、約96%以下、約95%以下などであり得る。離散的な結晶質ケイ酸カルシウム相のブレンドは、全酸化物質量に基づいて約50%以下、約45%以下、約40%以下、約35%以下、約30%以下、約25%以下、約20%以下、約15%以下、約10%以下、約5%以下など、のAl、FeおよびMgの金属酸化物を含み得る。離散的な結晶質ケイ酸カルシウム相のブレンドの量は、これらの範囲の端点を含む、これらの範囲内の任意の整数値または値に等しくあり得る。炭酸化可能材料は、非晶質ケイ酸カルシウム相をさらに含み得る。
【0067】
上記と一致する補助セメント系材料、その製造方法、およびそれらの普通ポルトランドセメントなどへの組み込みの他の非限定的な例は、米国仮出願第63/217,574号および対応する米国特許出願第17/854,778号に記載されており、その全体を参照によって本明細書に援用する。
【0068】
さらに、上記のポゾラン反応には、本質的なセメント特性を持たないが、水の存在下で水酸化カルシウムと化学的に反応して(または活性化される)セメント系化合物を形成し得るシリカ質またはアルミノシリカ質およびアルミナ質の材料を広く包含する「ポゾラン」が含まれる。ポゾラン材料を活性化可能な非晶質相とも呼ぶ。歴史的には、古代の建築慣行に不可欠なモルタルを作成するために、火山ガラス成分を含む天然素材が消石灰と組み合わせて使用されていた。現代では、多くのポゾラン材料が水硬性セメントと組み合わせて使用されている。これらには、フライアッシュ、高炉スラグ微粉末(GGBFS)、シリカフューム、有機焼却残留物(籾殻灰など)、反応性メタカオリン(焼成粘土)、焼成頁岩、火山灰、軽石、珪藻土などの物質が含まれる。
【0069】
コンクリート製品の体積型CO排出量の削減は、コンクリート中のポルトランドセメントの一部を置換する能力を持つさまざまな天然素材や工業副産物を含むこのようなポゾランの使用によって、最終的なコンクリート部材の強度に貢献しながら、多くの用途で可能になった。これらの材料は材料の強度に寄与するため、かなりの量、場合によっては最大80%のポルトランドセメントを置換し得る。
【0070】
典型的な水硬性セメント系におけるポゾランの反応は、単に水硬性セメント成分によって供給されるポルトランダイト(Ca(OH))とケイ酸(HSiO)との反応である。この反応によって、概して、一般的にCaHSiO・2HOと書かれるケイ酸カルシウム水和物(C-S-H)と呼ばれる化合物が生成される。実際には、CSH相は非常に多様なCa/Siモル比と非常に多様な結晶含水量を有し得る。ポゾラン反応のさらなる詳細は、米国特許第10,662,116号明細書に記載されており、その全体を参照によって本明細書に援用する。
【0071】
別の例示的な実施形態は、セメントまたはコンクリートを形成するための方法を対象とし、本方法は、本明細書に記載の例示的な方法のいずれかに従って炭酸化補助セメント系材料を形成するステップと、炭酸化補助セメント系材料を水硬性セメント組成物と組み合わせて混合物を形成するステップであって、混合物は、混合物中の固体の総重量に基づいて、約1重量%~約99重量%の炭酸化補助セメント系材料を含む、ステップと、混合物を水と反応させてセメントまたはコンクリートを形成するステップと、を含む。混合物は、混合物中の固体の総重量に基づいて、重量で約20%~約35%の炭酸化補助セメント系材料を含み得る。混合物のさまざまな成分の量は、これらの範囲の端点を含む、これらの範囲内の任意の整数値または値に等しくあり得る。水硬性セメントは、通常ポルトランドセメント(OPC)、スルホアルミン酸カルシウムセメント(CSA)、ビーライトセメント、または他のカルシウムベースの水硬性材料のうちの1つ以上を含み得る。この方法は、混合物に骨材を添加することをさらに含み得、骨材は粗骨材および/または細骨材であり得る。得られたセメントまたはコンクリートは、基礎、路床、歩道、建築スラブ、舗装機、CMU、湿式鋳造タイル、分割擁壁、中空コアスラブ、その他の鋳造およびプレキャスト用途を含むがこれらに限定されないさまざまな用途に適し得る。得られたセメントまたはコンクリートは、石材用途に適したモルタルの調製での使用にも適し得る。
【0072】
炭酸化可能なケイ酸カルシウム材料の他の非限定的な例、および補助セメント系材料の追加の詳細、および上記と一致する通常のポルトランドセメントなどへのそれらの組み込みは、米国仮出願第63/151,971号および対応する特許出願第17/675,777号に記載され、その全体を参照によって本明細書に援用する。
【0073】
本出願に記載される方法のいずれかを使用して調製されるセメントまたはコンクリートの強度活性度指数(SAI)は、少なくとも約50%、約50%~約150%、約55%~約145%、60%~約140%、約65%~約135%、約70%~約130%、約75%~約120%などであり得、SAIはASTM C618に従ってモルタル混合物におけるOPCの20%置換で測定される。強度活性度指数は、混合物中の固形分の総重量に基づいて、約0重量%の炭酸化補助セメント系材料を含むセメントまたはコンクリートの圧縮強度に対する、約20重量%の炭酸化補助セメント系材料を含むセメントまたはコンクリートの圧縮強度の比である。強度活性度指数は、これらの範囲の端点を含む、これらの範囲内の任意の整数値または値に等しくあり得る。セメントまたはコンクリートの形成後28日以上で測定されるセメントまたはコンクリートの強度活性度指数は、セメントまたはコンクリートの形成後7日以下で測定されるセメントまたはコンクリートの強度活性度指数よりも高くなり得る。粉砕後の炭酸化補助セメント系材料を用いて製造されたセメントまたはコンクリートの強度活性度指数は、粉砕せずに炭酸化補助セメント系材料を用いて製造されたセメントまたはコンクリートの強度活性度指数よりも高い。
【0074】
炭酸化セメント系材料の粉砕が約5分~約10分間行われるとき、セメントまたはコンクリートの形成後約7日目に測定されるセメントまたはコンクリートの強度活性度指数は、約5%~約20%、約6%~約18%、約7%~約16%、約7.5%~約14%、約8%~約13%、約8.5%~約13%、約9%~約12%、などであり、例えば、炭酸化セメント系材料を粉砕せずにセメントまたはコンクリートの形成後7日目に測定したセメントまたはコンクリートの強度活性度指数よりも高い。
【0075】
本出願の実施例の結果が示すように、それによって炭酸化セメント系材料をさらなる炭酸化の前に粉砕する中間粉砕は、CO2の吸収率を増加させるだけでなく、シリカに富む層中の非晶質シリカを活性化し、シリカに富む層と普通ポルトランドセメント(OPC)の水和によって生成されるCa(OH)2との間でポゾラン反応を促進し、追加のC-S-Hを形成する。これによって、セメントまたはコンクリートは予想外に高い強度活性度指数を有し、その強度活性度指数は時間の経過とともに維持および/または増加する。
【0076】
本発明の原理、ならびにその特定の例示的な特徴および実施形態を、下記の非限定的な実施例を参照して説明する。
【実施例
【0077】
材料の加工-蒸気処理
【0078】
材料加工の一例としては、蒸気処理が挙げられる。この方法では、スチーマーを30℃~90℃の範囲の所定の温度に予熱する。10.0gの炭酸化可能な粉末材料と2.0gの水道水(L/S比=0.20)とを含むサンプルを、ジッパー付きプラスチックバッグの中で約1分間混練してよく混合し、次に、混合物の小片を既知の風袋を備えたアルミニウム鍋に素早く入れる。鍋を金属トレイに置き、その上にコーンを置いてスチーマーにセットする。蒸気処理を、温度68℃、圧力3psiのCOで行う。炭酸化時間は、ファン速度400rpmで60分である。サンプルを80℃で一晩乾燥させる。
【0079】
材料処理-撹拌
【0080】
材料処理の別の例には、撹拌が含まれる。この方法では、250gの炭酸粉末(固体)を遊星ボールミルで5分間粉砕し、582.5gの水道水と混合して、L/S比=2.33を有する混合物を調製する。混合物を、1552mL/minの流量の100%のCO下、60℃の温度で1時間、Rushtonインペラを用いて400rpmで撹拌する。炭酸化プロセスの最後に、スラリーを膜でろ過し、ウェットケーキを80℃で一晩乾燥させる。
【0081】
Solidia SCMの粉砕効果
【0082】
炭酸化Solidia SCMを、スラリー炭酸化プロセスを使用して製造し、乾燥して乾燥Solidia SCMを製造した。このようなSCMの6つのバッチを製造し、特性評価した。性能評価に影響を与えるバッチ間の変動を避けるために、製造された6つのバッチすべてをサードパーティのブレンド施設(Empire Blending「EB」)でブレンドした。実施例1~3のブレンド材料をRetch遊星ボールミルでそれぞれ1、5、および10分間粉砕し、続いてブレンド材料のモルタル性能を測定した。表1に、粉砕前のブレンド材料(EB1、比較例1)および実施例1~3の粉砕ブレンド材料についてBET法を使用して測定した粒径分布および表面積を示す。
【0083】
【表1】
【0084】
表1に示すように、粉砕によって非常に細かい材料が生成され、それに応じてBET表面積が増加する。
【0085】
表2は、普通ポルトランドセメント(OPC)(20%EB1ブレンド、比較例2)の20%置換(0.485の水対セメント比)、および1、5および10分(それぞれ実施例4~6)で粉砕した20%EB1でのモルタル流動性および圧縮強度性能をまとめたものである。ASTM C230に従って測定された流量データを、図1に示し、ASTM C618に従って測定されたSAIデータを、図2に示す。
【0086】
【表2】
【0087】
表2に示すように、補助セメント系材料を5分間粉砕しても水の需要はそれ以上増加せず、強度活性度指数は粉砕によって約10%増加する。これらの材料のCO吸収率をカルシウム計で測定し、表3および図3に示す。
【0088】
【表3】
【0089】
図3に示すように、複数の粉砕サイクルを実行するとき、COの吸収率が大幅に増加する。例えば、表3に示すように、合計75分の炭酸化時間で複数回の粉砕サイクルの後、COの吸収率は約125%増加する。
【0090】
表3および図3に示される結果は、炭酸化ステップ間の粉砕によって、短時間でCOの吸収率が増加することを示す。例えば、表3(実施例12および13)に示すように、5分間の粉砕によって、CO吸収率の約5%増加が達成される。
【0091】
上記で説明したように、これらの実施例で使用した炭酸化SCMは、スラリー炭酸化プロセスを使用して作成された。このプロセスでは、炭酸化可能材料と水のスラリーをトレイ内で乾燥させた。スラリープロセスのさらなる詳細は、米国仮出願第63/151,971号および対応する米国出願第17/675,777号に記載されており、その内容は参照によって本明細書に完全に記載されているかのように援用される。乾燥粉末をさらに1、5、および10分間粉砕した。そのままの乾燥した材料と粉砕した材料を、モルタル混合物中の20wt%のOPCで置換して、流動と強度の発現における粉砕の影響を評価した。表2は、粉砕されたEBサンプルの流動性能を示す。表2(実施例5)にも示されているように、7日間の強度活性度指数(SAI)は、1分間の粉砕後に約90%(粉砕なしの20%EB)から約98%まで実質的に増加し、5分以上粉砕すると100%を超える。
【0092】
材料の特性評価
【0093】
材料の粒径分布と表面積は、初期材料と加工材料とについてそれぞれレーザー回折とBET法とを使用して測定される。粒径および表面積の測定結果を表1に示す。スラリー法を使用して調製したSCMの特性をも表1に示す(比較例1)。
【0094】
モルタルの性能-流動測定
【0095】
モルタル(ASTM砂とセメント系材料との混合物)の流れを、セメントと砂とのASTM C109比によるOPCの20%(w/c 0.485)置換レベルで測定した。図1に粉砕材料の流れを示す。100%OPCモルタルの流量に匹敵する20%、35%、および50%の置換レベルでは、水需要の増加は観察されなかった。
【0096】
モルタルの性能-圧縮強度
【0097】
流動用に作られたモルタルは、圧縮強度測定用にも鋳造された。図2は、モルタルの強度活性度指数(SAI)を示す。SAIは、SCMモルタル20%置換時の圧縮強度とOPC100%モルタルの圧縮強度との比である。すべてのモルタルキューブは、温度と湿度が制御された環境で鋳造される。
【0098】
少なくとも1回の粉砕サイクルを含む、本出願に記載された炭酸化プロセスによって製造されたSolidia SCMは、スラリープロセスを使用して製造されたSCMよりも表面積がはるかに小さかった。材料を粉砕すると、28日目に強度活性度指数が向上した。表面積が小さいにもかかわらず、粉砕材料の強度活性度指数は、スラリープロセスを使用して製造されたSCMと同等であった。
【0099】
本発明の範囲から逸脱することなく、上記の方法および組成物に様々な変更を加えることができるため、上記の説明に含まれるすべての事項は、限定的な意味ではなく例示として解釈されることが意図される。本明細書で使用される成分、成分、反応条件などの量を表す数値は、本明細書で特定される正確な数値を包含するものとして解釈されるとともに、すべての場合において用語「約」によって修飾されるものと解釈される。記載される数値範囲およびパラメータにもかかわらず、本明細書に記載される主題の広範な範囲は近似値であり、記載される数値は可能な限り正確に示される。ただし、それぞれの測定技術で見られる標準偏差から明らかなように、いかなる数値にも本質的に特定の誤差または不正確さが含まれ得る。本明細書に記載されている特徴はいずれも、「means」という用語が明示的に使用されない限り、米国特許法第112条第6項を援用するものとして解釈されるべきではない。
図1
図2
図3
【手続補正書】
【提出日】2024-06-06
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
炭酸化補助セメント系材料を調製する方法であって、前記方法は、
水を炭酸化可能材料に添加して炭酸化可能混合物を形成するステップであって、前記混合物の含水量が、約0.1重量%~約99.99重量%である、ステップと、
前記炭酸化可能混合物を炭酸化して、第1の炭酸化セメント系材料を得るステップと、
前記第1の炭酸化セメント系材料を約0.1分~約60分間粉砕して、粉砕混合物を得るステップと、
前記粉砕混合物を炭酸化して、炭酸化補助セメント系材料を得るステップと、
を含み、
前記炭酸化可能混合物および前記粉砕混合物を炭酸化することが、約5体積%~約100体積%の二酸化炭素を含むガスを前記炭酸化可能混合物および前記粉砕混合物に流し、約1℃~約99℃の温度を維持して前記炭酸化補助セメント系材料を得ることを含む、炭酸化補助セメント系材料を調製する方法。
【請求項2】
前記方法は、複数の粉砕および湿潤サイクルと交互に行われる複数の炭酸化サイクルを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記粉砕混合物を炭酸化する前に、前記粉砕混合物を蒸気処理するステップをさらに含み、前記蒸気処理は、前記粉砕混合物を約20℃~約200℃の温度で蒸気またはスチームに曝露することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記炭酸化補助セメント系材料を約20℃~約500℃の温度で約1分~約24時間乾燥させるステップをさらに含み、前記炭酸化補助セメント系材料を乾燥させることが、任意に、前記炭酸化材料を粉砕することの前に行われる、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記混合物を解凝集させるステップをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
二酸化炭素を含むガスを排ガスから得るステップをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記粉砕は、ボールミル、垂直ローラーミル、ベルトローラーミル、造粒機、ハンマーミル、アトリションミル、粉砕ローラー、ピーリングローラーミル、エアスイープローラーミル、またはそれらの組み合わせから選択されるミルにおいて実行される、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記炭酸化補助セメント系材料の平均粒径(d50)が、約1μm~約25μmである、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記炭酸化補助セメント系材料のBET表面積が、約5m/g~約25m/gである、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記炭酸化補助セメント系材料の二酸化炭素吸収率は、約5%~約40%である、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記炭酸化可能材料が、一般式MMe、MMe(OH)、MMe(OH)、またはMMe(OH)・(HO)を有する少なくとも1つの合成配合物を含み、式中、Mは、カルシウムおよび/またはマグネシウムであり、Meは、シリコン、チタン、アルミニウム、リン、バナジウム、タングステン、モリブデン、ガリウム、マンガン、ジルコニウム、ゲルマニウム、銅、ニオブ、コバルト、鉛、鉄、インジウム、ヒ素、硫黄、および/またはタンタルである、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
a:bの比が、約2.5:1~約0.167:1であり、cが、3以上であり、dが、1以上であり、eが、0以上である、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記炭酸化可能材料が、元素Siに対する元素Caのモル比約0.8~約3.0を有するケイ酸カルシウムを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
前記炭酸化可能材料が、CS(珪灰石または擬珪灰石)、C(ランキナイト)、およびCS(ビーライトまたはラーナイトまたはブレディジット)のうちの1つ以上から選択される離散的な結晶質ケイ酸カルシウム相のブレンドを全相の30質量%以上含み、Al、Fe、およびMgの金属酸化物を全酸化物質量の30%以下含む、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記炭酸化可能材料が、ケイ酸カルシウム水和物(C-S-H)、再生コンクリート、都市廃棄物、鉱山尾滓、またはそれらの混合物を含む、請求項13に記載の方法。
【請求項16】
前記炭酸化可能材料が、非晶質ケイ酸カルシウム相をさらに含む、請求項11に記載の方法。
【請求項17】
セメント、モルタルまたはコンクリートを形成する方法であって、前記方法は、
請求項1に記載の方法に従って炭酸化補助セメント系材料を形成するステップと、
前記炭酸化補助セメント系材料を水硬性セメント組成物と組み合わせてセメント系材料混合物を形成するステップであって、前記セメント系材料混合物が、前記混合物における固体の総重量に基づいて、約1重量%~約99重量%の前記炭酸化補助セメント系材料を含むステップと、
前記セメント系材料混合物を水と反応させて前記セメント、モルタルまたはコンクリートを形成するステップと、
を含む、セメント、モルタルまたはコンクリートを形成する方法。
【請求項18】
前記セメント系材料混合物が、前記混合物中の固体の総重量に基づいて、約20重量%~約35重量%の炭酸化補助セメント系材料を含む、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記セメントまたはコンクリートの強度活性度指数が、約75%~約120%であり、
前記強度活性度指数は、前記混合物中の固形分の総重量に基づいて、約0重量%の前記炭酸化補助セメント系材料を含む前記セメントまたはコンクリートの圧縮強度に対する、約20重量%の前記炭酸化補助セメント系材料を含む前記セメントまたはコンクリートの圧縮強度の比である、請求項17に記載の方法。
【国際調査報告】