(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-10-23
(54)【発明の名称】シリカ補強ゴム組成物およびそれから作成される物品
(51)【国際特許分類】
C08L 9/00 20060101AFI20241016BHJP
C08K 3/36 20060101ALI20241016BHJP
C08K 5/548 20060101ALI20241016BHJP
C08K 3/06 20060101ALI20241016BHJP
C08L 15/00 20060101ALI20241016BHJP
C08K 5/40 20060101ALI20241016BHJP
B60C 1/00 20060101ALI20241016BHJP
【FI】
C08L9/00
C08K3/36
C08K5/548
C08K3/06
C08L15/00
C08K5/40
B60C1/00 Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024520967
(86)(22)【出願日】2022-10-06
(85)【翻訳文提出日】2024-05-21
(86)【国際出願番号】 US2022077711
(87)【国際公開番号】W WO2023060206
(87)【国際公開日】2023-04-13
(32)【優先日】2021-10-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
(71)【出願人】
【識別番号】508229301
【氏名又は名称】モメンティブ パフォーマンス マテリアルズ インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】Momentive Performance Materials Inc.
(74)【代理人】
【識別番号】100087642
【氏名又は名称】古谷 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100082946
【氏名又は名称】大西 昭広
(74)【代理人】
【識別番号】100195693
【氏名又は名称】細井 玲
(72)【発明者】
【氏名】パッパス,クリストファー
(72)【発明者】
【氏名】クルーズ,リチャード,ダブリュー
(72)【発明者】
【氏名】ポール,エリック,レイモンド
(72)【発明者】
【氏名】ライバ,アーロン
(72)【発明者】
【氏名】ヨーク,マイケル
【テーマコード(参考)】
3D131
4J002
【Fターム(参考)】
3D131AA01
3D131BA01
3D131BA05
3D131BA07
3D131BA12
3D131BA18
3D131BA20
3D131BC02
3D131BC13
3D131BC33
3D131BC51
4J002AC032
4J002AC081
4J002AC111
4J002DA037
4J002DA049
4J002DE100
4J002DJ016
4J002EF050
4J002EV169
4J002EX088
4J002FD016
4J002FD017
4J002FD030
4J002FD149
4J002FD159
4J002FD208
4J002GC00
4J002GM00
4J002GN01
(57)【要約】
少なくとも1つのジエン系ポリマー、沈降シリカ、メルカプト官能性アルキルアルコキシシランおよびブロック化メルカプト官能性アルキルアルコキシシランを含むカップリング剤パッケージ、脱ブロック化剤、硫黄を含む少なくとも1つの加硫化剤と少なくとも1つの促進剤を含む加硫パッケージ、およびスコーチ変性剤を含むゴム組成物が本願において提供される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ゴム組成物であって:
a.少なくとも1つのジエン系ポリマー;
b.沈降シリカ;
c.メルカプト官能性アルキルアルコキシシランおよびブロック化メルカプト官能性アルキルアルコキシシランを含む少なくとも1つのカップリング剤パッケージ;
d.少なくとも1つの脱ブロック化剤;
e.硫黄を含む少なくとも1つの加硫化剤および少なくとも1つの促進剤を含む加硫パッケージ;
f.少なくとも1つのスコーチ変性剤;および
g.任意選択的に少なくとも1つのフィラー
を含むゴム組成物。
【請求項2】
少なくとも1つのジエン系ポリマーは、少なくとも1つの官能基を含むジエン系ポリマー、官能基を含まないジエン系ポリマー、またはこれらの組み合わせである、請求項1のゴム組成物。
【請求項3】
少なくとも1つの官能基を含むジエン系ポリマーは式(I)の化合物であり:
【化10】
式中
Pは共役ジオレフィンまたは共役ジオレフィンおよび芳香族ビニル化合物の(コ)ポリマー鎖;
R
1は1から12の炭素原子を有するアルキレン基;
R
2およびR
3のそれぞれは独立して1から20の炭素原子を有するアルキル基、アリル基、またはアリール基;そして
k、mおよびnはそれぞれ整数であり、ここでnは1または2、mは1または2、そしてkは1または2、但しn+m+kは3または4の整数であり;
或いは式(II)の化合物であり:
【化11】
式中
Pは共役ジオレフィンまたは共役ジオレフィンおよび芳香族ビニル化合物の(コ)ポリマー鎖;
R
1は1から12の炭素原子を有するアルキレン基;
R2およびR
3のそれぞれは独立して1から20の炭素原子を有するアルキル基、アリル基、または6から12の炭素原子を有するアリール基;そして
jおよびhはそれぞれ整数であり、ここでjは1から3の整数、そしてhは1から3の整数、但しj+hは2から4の整数である、請求項1のゴム組成物。
【請求項4】
少なくとも1つの官能基を含むジエン系ポリマーは式(V)の化合物であり:
【化12】
式中
Pは共役ジオレフィンまたは共役ジオレフィンおよび芳香族ビニル化合物の(コ)ポリマー鎖;
R
1は1から12の炭素原子を有するアルキレン基;
R
2およびR
3のそれぞれは独立して1から20の炭素原子を有するアルキル基、アリル基、またはアリール基;そして
k、mおよびnはそれぞれ整数であり、ここでnは1または2、mは1または2、そしてkは1または2、但しn+m+kは3または4の整数である、請求項1のゴム組成物。
【請求項5】
少なくとも1つの官能基を含むジエン系ポリマーはさらに停止剤を含み、ここで停止剤は式(iii)のものであり:
【化13】
式中
R
1は1から12の炭素原子を有するアルキレン基;
R
2およびR
3は独立して1から20の炭素原子を有するアルキル基、アリル基、またはアリール基;
R
4、R
5、およびR
6のそれぞれは独立して1から12の炭素原子を有するアルキル基または6から12の炭素原子のアリール基、但しR
4およびR
5は共有結合を介して相互に結合してそれらが結合するケイ素原子と共に環を形成してよく;そして
k、mおよびnはそれぞれ整数であり、ここでnは1または2、mは1または2、そしてkは1または2、但しn+m+kは3または4の整数であり、
または式(IV)のものであり:
【化14】
式中
R
1は1から12の炭素原子を有するアルキレン基;
R
2およびR
3のそれぞれは独立して1から20の炭素原子を有するアルキル基、アリル基、またはアリール基;
R
4、R
5、およびR
6のそれぞれは独立して1から12の炭素原子を有するアルキル基または6から12の炭素原子を有するアリール基、但しR
4およびR
5は共有結合を介して相互に結合してそれらが結合するケイ素原子と共に環を形成してよく;そして
mは1または2の整数である、請求項2のゴム組成物。
【請求項6】
メルカプト官能性アルキルアルコキシシランは式(X)のメルカプトシランであり:
【化15】
式中
R
17は独立して1から6の炭素原子の直鎖アルキレン基または3から6の炭素原子の分岐鎖アルキレン基;
R
18のそれぞれは2から8の炭素原子の直鎖アルキレン基または3から8の炭素原子の分岐鎖アルキレン基;
R
19のそれぞれは独立して1から6の炭素原子の直鎖アルキレン基または3から6の炭素原子の分岐鎖アルキレン基;
X
1は-OR
20基、ここでR
20は1から4の炭素原子のアルキル基、-OR
21OH基、ここでR
21は2から8の炭素原子の直鎖アルキレン基または3から8の炭素原子の分岐鎖アルキレン基、またはX
1は-OR
22(OR
23)
cOR
224、ここでR
22は2から6の炭素原子の直鎖アルキレン基または3から6の炭素原子の分岐鎖アルキレン基、R
23のそれぞれは独立して2から4の炭素原子のアルキレン基、R
24は1から16の炭素原子の直鎖アルキル基または3から16の炭素原子の分岐鎖アルキル基、そしてcは1から20の整数;
X
2およびX
3は独立してX
1またはメチル;
X
4のそれぞれは独立してX
1またはメチル;そして
aは0から8の整数、但し
(iii)X
1およびX
2が-OR
20のとき、2つの-OR
20は共有結合を介して一緒に結合されて同じケイ素原子に結合された-OR
20-R
20O-基を形成して2から8の炭素原子、2つの酸素原子、およびケイ素原子を含む環状構造を形成してよく;そして
(iv)aが1から8でありX
3およびX
4が-OR
20のとき、2つの-OR
20基は共有結合を介して一緒に結合されて同じケイ素原子に結合された-OR
20-R
20O-基を形成して2から8の炭素原子、2つの酸素原子およびケイ素原子を含む環状構造を形成してよい、請求項1のゴム組成物。
【請求項7】
ブロック化メルカプト官能性アルキルアルコキシシランは式(XI)のブロック化メルカプトシランであり:
【化16】
式中
R
17は独立して1から6の炭素原子の直鎖アルキレン基または3から6の炭素原子の分岐鎖アルキレン基;
R
18のそれぞれは2から8の炭素原子の直鎖アルキレン基または3から8の炭素原子の分岐鎖アルキレン基;
R
19のそれぞれは独立して1から6の炭素原子の直鎖アルキレン基または3から6の炭素原子の分岐鎖アルキレン基;
X
1は-OR
20基、ここでR
20は1から4の炭素原子のアルキル基、-OR
21OH基、ここでR
21は2から8の炭素原子の直鎖アルキレン基または3から8の炭素原子の分岐鎖アルキレン基、またはX
1は-OR
22(OR
23)
cOR
24、ここでR
22は2から6の炭素原子の直鎖アルキレン基または3から6の炭素原子、好ましくは3の炭素原子の分岐鎖アルキレン基、R
23のそれぞれは独立して2から4の炭素原子のアルキレン基、R
24は1から16の炭素原子の直鎖アルキル基または3から16の炭素原子の分岐鎖アルキル基、そしてcは1から20の整数;
X
2およびX
3は独立してX
1またはメチル;
X
4のそれぞれは独立してX
1またはメチル;
Y
1のそれぞれは-C(=O)R
25または-C(=S)OR
25、ここでそれぞれのR
25は独立して1から16の炭素原子、より特定的には5から11の炭素原子、そしてさらにより特定的には6から9の炭素原子の直鎖アルキレン基、または3から16の炭素原子、より特定的には5から11の炭素原子、そしてさらにより特定的には6から9の炭素原子の分岐鎖アルキレン基;そして
aは0から8の整数、但し
(iii)X
1およびX
2が-OR
20のとき、2つの-OR
20は共有結合を介して一緒に結合されて同じケイ素原子に結合された-OR
20-R
20O-基を形成して2から8の炭素原子、2つの酸素原子、およびケイ素原子を含む環状構造を形成してよく;そして
(iv)aが1から8でありX
3およびX
4が-OR
20のとき、2つの-OR
20基は共有結合を介して一緒に結合されて同じケイ素原子に結合された-OR
20-R
20O-基を形成して2から8の炭素原子、2つの酸素原子およびケイ素原子を含む環状構造を形成してよい、請求項1のゴム組成物。
【請求項8】
ブロック化メルカプト官能性アルキルアルコキシシランとメルカプト官能性アルキルアルコキシシランの重量比が約0.25:1から約50:1である、請求項1のゴム組成物。
【請求項9】
少なくとも1つの脱ブロック化剤は式(XII)の化合物であり:
R
26[A
3-H]
d (XII)
式中:
R
26は1から30の炭素原子を含む1価または多価の有機ラジカルまたは水素、
A
3のそれぞれは独立して酸素、硫黄、または-NR
27基、ここでそれぞれのR
27は独立して1から30の炭素原子を含む1価または多価の有機ラジカルまたは水素;そして
dは1から100、好ましくは1から3の整数である、請求項1のゴム組成物。
【請求項10】
加硫化剤中の硫黄は、単体硫黄、硫黄供与化合物、およびこれらの組み合わせからなる群より選択される、請求項1のゴム組成物。
【請求項11】
少なくとも1つの促進剤は、ベンゾチアゾール、グアニジン誘導体、チオカルバメート、およびこれらの組み合わせからなる群より選択される、請求項1のゴム組成物。
【請求項12】
少なくとも1つのスコーチ変性剤は式(XIII)の化合物であり、
R
28
2NC(=S)SSC(=S)NR
28
2 (XIII)
式中
R
28は独立して1から12の炭素原子の直鎖アルキル基、3から12の炭素原子の分岐鎖アルキル基、5から12の炭素原子のシクロアルキル基、6から12の炭素原子のアリール基、または7から12の炭素原子のアラルキル基である、請求項1のゴム組成物。
【請求項13】
少なくとも1つのジエン系ポリマーは沈降シリカと反応性である、請求項1のゴム組成物。
【請求項14】
組成物はASTM D-1646法を使用して測定した約40MUから約150MUのムーニー粘度を有する、請求項1のゴム組成物。
【請求項15】
組成物はASTM D-1646法を使用して測定した約5分から約40分の3ポイント上昇時のムーニースコーチを有する、請求項1のゴム組成物。
【請求項16】
組成物はASTM D-412法を使用して測定した約5MPaから約25MPaの引張強度を有する、請求項1のゴム組成物。
【請求項17】
ゴム組成物であって:
(i)約100部のゴム、ここでゴムの重量は配合中に用いられ少なくとも1つの官能基を含むジエン系ポリマーのそれぞれの重量の合計と、配合中に用いられ少なくとも1つの官能基を含んでいないジエン系ポリマーのそれぞれの重量の合計の和である;
(ii)100部のゴム(i)当たり約5から約140重量部の沈降シリカ;
(iii)100部のゴム(i)当たり約1から約20重量部の、メルカプト官能性アルキルアルコキシシランおよびブロック化メルカプト官能性アルキルアルコキシシランを含むカップリング剤パッケージ;
(iv)100部のゴム(i)当たり約0.1から約20重量部の脱ブロック化剤;
(v)100部のゴム(i)当たり約0.1から約10重量部の、硫黄および少なくとも1つの促進剤を含む加硫パッケージ;および
(vi)100部のゴム(i)当たり約0.1から約5重量部のスコーチ変性剤を含むゴム組成物。
【請求項18】
シリカ、メルカプト官能性アルキルアルコキシシラン、ブロック化メルカプト官能性アルキルアルコキシシラン、および任意選択的に少なくとも1つのスコーチ変性剤を、硫黄を含む少なくとも1つの加硫化剤および少なくとも1つの促進剤を含む加硫パッケージと同時に、少なくとも1つのジエン系ポリマーに添加することを含む、組成物を調製するためのプロセス。
【請求項19】
組成物は、
a.約30%から約40重量%の少なくとも1つの官能基を含む少なくとも1つのジエン系ポリマー;
b.約30%から約40重量%の沈降シリカ;
c.約0.05%から約5重量%のブロック化メルカプト官能性アルキルアルコキシシラン;
d.約0.05%から約5重量%のメルカプト官能性アルキルアルコキシシラン;
e.約0.1%から約10重量%のスコーチ変性剤;および
f.任意選択的に硫黄を含む少なくとも1つの加硫化剤および少なくとも1つの促進剤を含む加硫パッケージを含む、請求項18のプロセス。
【請求項20】
組成物はゴム組成物である、請求項18のプロセスにより調製される組成物。
【請求項21】
ゴム組成物はタイヤ組成物である、請求項20のゴム組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、少なくとも1つのジエン系ポリマー、沈降シリカ、メルカプト官能性アルキルアルコキシシランおよびブロック化メルカプト官能性アルキルアルコキシシランを含むカップリング剤パッケージ、脱ブロック化剤、加硫パッケージ、およびスコーチ変性剤を含むゴム組成物、並びにその硬化組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
タイヤ会社は常に、タイヤの安全性、ハンドリング、トラクション、使用可能寿命、および産業的実現可能性に対して妥協することなしに、タイヤの転がり抵抗を低減させて自動車の燃費経済性を向上させるための、新たなゴム技術を模索している。この必要性を達成するための1つの手法は、シリカ補強ゴムを使用することであり、そこではシリカは、シリカフィラーと反応することができるアルコキシシリル基、並びに処理および/または硬化の間にゴムと反応することができる官能基を含有するカップリング剤を使用して、ゴムに対して結合される。
【0003】
多種多様のカップリング剤が使用されてきており、ケイ素系のカップリング剤の中には、アミノ官能性アルキルアルコキシシラン、ビス-(アルキルアルコキシシラン)ジスルフィド、ビス-(アルキルアルコキシシラン)ポリスルフィド、ブロック化メルカプト官能性アルキルアルコキシシラン、メルカプト官能化アルキルアルコキシシランが含まれている。これらのカップリング剤は一般に、非官能化溶液スチレンブタジエンゴムおよび沈降シリカについて使用されている。これらの組成物はカーボンブラック補強ゴムと比較して転がり抵抗を向上させるが、これらの組成物はしばしば、ハンドリングおよび摩耗といった他の特性の損失を被り、そして依然として転がり抵抗におけるよりさらなる向上のニーズを満たさない。
【0004】
さらに、タイヤの硬化前の処理の間にメルカプト官能性アルキルアルコキシシランを含有するシリカゴムコンパウンドを使用することは、歴史的に見て非常に困難であり、許容できない高いムーニー粘度をもたらし、またスコーチ変性剤の存在下においてさえもスコーチ安全性は不十分である。
【0005】
別の手法は、シリカ表面と相互作用可能な少なくとも1つの官能基を含む、ジエン系ゴムを使用することである。しかしながら、メルカプトアルキルアルコキシシラン、沈降シリカ、および少なくとも1つの官能基を含むジエン系ゴムを含有するゴム組成物の処理には、許容できないほど高いムーニー粘度および短いスコーチ時間が伴う。その結果として、好ましくないまたは許容できない加工特性がもたらされ、また混合、粉砕、押し出し、タイヤの構築、およびタイヤの硬化に困難性を生ずる。これらの問題点は通常、官能基を含むジエン系ゴムを含有するゴム組成物を工業化するについて、また殆どのメルカプト官能性アルキルアルコキシシラン化合物について禁忌である。従って、改善された転がり抵抗挙動を備えると共に、トレッド、グリップ(トラクションおよびブレーキング)、摩耗およびハンドリングといった他の主要な性能をバランスさせ、同時に高いムーニー粘度や不十分なスコーチ安全性といった工業的な処理困難性を克服するゴム組成物に対するニーズが存在する。
【発明の概要】
【0006】
本願に開示されるゴム組成物は:
(i)少なくとも1つのジエン系ポリマー;
(ii)沈降シリカ;
(iii)メルカプト官能性アルキルアルコキシシラン(iii)(a)およびブロック化メルカプト官能性アルキルアルコキシシラン(iii)(b)を含む、少なくとも1つのカップリング剤パッケージ;
(iv)少なくとも1つの脱ブロック化剤;
(v)硫黄を含む少なくとも1つの加硫化剤および少なくとも1つの促進剤を含む加硫パッケージ;および
(vi)少なくとも1つのスコーチ変性剤を含んでいる。
【0007】
幾つかの実施態様において、少なくとも1つのジエン系ポリマーは、少なくとも1つの官能基を含むジエン系ポリマー(i)(a)、官能基を含まないジエン系ポリマー(i)(b)、およびこれらの組み合わせからなる群より選択される。
【0008】
別の実施態様において、少なくとも1つのジエン系ポリマーは、少なくとも1つの官能基を含むジエン系ポリマーおよび官能基を含まないジエン系ポリマーである。
【0009】
他の実施態様において、少なくとも1つのジエン系ポリマーは、少なくとも1つの官能基を含むジエン系ポリマー(i)(a)である。
【0010】
幾つかの実施態様において、少なくとも1つの官能基は、アミノ基、アルコキシシリル基、スタニル基、ヒドロキシル基、チオール基、スルフィド基、チオイソシアネート基、イソシアネート基、イミノ基、ピリジノ基、エポキシ基、チオエポキシ基、チオケトン基、ケトン基、ケチミン基、イソシアヌル酸基、アミド基、シラザン基、ヒドロキシシリル(シラノール)基、シロキサン基、フタロシアニノ基、シラン-スルフィド基、カルボン酸基、カルボン酸エステル基、およびこれらの組み合わせからなる群より選択される。幾つかの実施態様において、少なくとも1つの官能基はアルコキシシリル基である。
【0011】
幾つかの実施態様において、少なくとも1つの官能基を含むジエン系ポリマーは、アミノ基、アルコキシシリル基、スタニル基、ヒドロキシル基、チオール基、スルフィド基、チオイソシアネート基、イソシアネート基、イミノ基、ピリジノ基、エポキシ基、チオエポキシ基、チオケトン基、ケトン基、ケチミン基、イソシアヌル酸基、アミド基、シラザン基、ヒドロキシシリル(シラノール)基、シロキサン基、フタロシアニノ基、シラン-スルフィド基、カルボン酸基、および/またはカルボン酸エステル基からなる群より選択される官能基を含む、溶液スチレンブタジエンゴムである。官能基は単独で使用可能であり、または例えばジエン系ポリマーの末端位置がアルコキシシリル基および1級アミノ基、またはアルコキシシリル基およびチオール基を含むことができるといったように、末端位置若しくはペンダント位置において組み合わせて2つの官能基末端または2つの官能基ペンダント基を形成することができる。
【0012】
幾つかの実施態様において、ジエン系ポリマーは沈降シリカと反応するものである。さらなる実施態様において、少なくとも1つの官能基を含むジエン系ポリマーは沈降シリカと反応する。幾つかの実施態様において、ジエン系ポリマーはアルコキシシリル基を含む溶液スチレンブタジエンゴムである。幾つかの実施態様において、ジエン系ポリマーは沈降シリカおよび/またはそれ自体と結合可能な少なくとも1つの官能基を含み、ダングリングエンドを減少させまたは排除する。ポリマーマトリックス中のそれぞれのジエン系ポリマー鎖(または1モルのポリマー)は、末端基またはポリマー鎖端部としても知られている2つのダングリングエンドを有する。ポリマー鎖端部がシリカ表面と反応性の化学基で官能化された場合には、ポリマー鎖端部とシリカ表面との間の共有結合によって、1つのダングリングエンドが本質的に排除されることになる。ダングリングエンドは架橋間のポリマー鎖長や共有結合した鎖末端に比べて自由度が大きいため、ポリマーマトリックスのヒステリシスに大きく寄与し、ゴムトレッドコンパウンドの転がり抵抗特性を悪化させる。
【0013】
幾つかの実施態様において、本願において開示する組成物中の、以下ではメルカプトシランと称するメルカプト官能性アルキルアルコキシシランは、アルカンに対して単一の共有結合を介して結合したチオール(メルカプタン)官能性およびアルコキシシラン官能性を有する2官能性シランである。
【0014】
幾つかの実施態様において、本願において開示するゴム組成物中の、以下ではブロック化メルカプトシランと称するブロック化メルカプト官能性アルキルアルコキシシランは2官能性シランであり、そこにおいて1つの官能基はチオール(メルカプタン)であり、そこではメルカプトの水素原子が別の基(以下では「ブロッキング基」と称する)で置換されており、そして別の官能基はアルコキシシリル基であり、ここでブロック化メルカプト基とアルコキシシリル基はアルカンに対して単一の共有結合を介して結合している。具体的には、シランはブロック化メルカプトシランであることができ、そこではブロッキング基は単結合を介して硫黄に対して直接に結合したアシル基を含んでいてチオエステル官能基を形成し、或いはそこではブロッキング基は単結合を介して硫黄に対して直接に結合したチオカルボキシル基であってザンテート官能基(-OC=S)S-を形成する。
【0015】
幾つかの実施態様において、本願に開示されたゴム組成物におけるブロック化メルカプト官能性アルキルアルコキシシラン(iii)(b)のメルカプト官能性アルキルアルコキシシラン(iii)(a)に対する重量比は、約0.25:1から約50:1である。幾つかの実施態様において、本願に開示されたゴム組成物におけるブロック化メルカプト官能性アルキルアルコキシシラン(iii)(b)のメルカプト官能性アルキルアルコキシシラン(iii)(a)に対する重量比は、約0.5:1から約20:1である。幾つかの実施態様において、本願に開示されたゴム組成物におけるブロック化メルカプト官能性アルキルアルコキシシラン(iii)(b)のメルカプト官能性アルキルアルコキシシラン(iii)(a)に対する重量比は、約1:1から約10:1である。
【0016】
幾つかの実施態様において、本願に開示されたゴム組成物におけるブロック化メルカプトシランのメルカプトシランに対する重量比は、約0.25:1から約50:1である。
【0017】
幾つかの実施態様において、少なくとも1つのカップリング剤パッケージ(iii)は、ゴム100重量部当たりカップリング剤パッケージが約0.5から約20重量部、より特定的にはゴム100重量部当たりカップリング剤パッケージ(iii)が約1から約10重量部、そしてさらにより特定的にはゴム100重量部当たりカップリング剤パッケージ(iii)が約3から約8重量部の量で使用される。
【0018】
幾つかの実施態様において、スコーチ変性剤は、テトラメチルチウラムジスルフィド、テトラエチルチウラムジスルフィド、テトラプロピルチウラムジスルフィド、テトラブチルチウラムジスルフィド、テトラフェニルチウラムジスルフィド、テトラメチルチウラムモノスルフィド、ジベンジルジチオカルバメート亜鉛、およびテトラベンジルチウラムジスルフィド、およびこれらの組み合わせを含むスコーチ変性剤からなる群より選択されてよい。
【0019】
幾つかの実施態様において、スコーチ変性剤はチウラムジスルフィドスコーチ変性剤である。幾つかの実施態様において、スコーチ変性剤はテトラベンジルチウラムジスルフィドまたはテトラメチルチウラムジスルフィドである。
【0020】
幾つかの実施態様において、ゴム組成物は:
(i)約100部のゴム、ここでゴムの重量は配合物中で使用される少なくとも1つの官能基を含むジエン系ポリマー(i)(a)のそれぞれの重量の合計および少なくとも1つの官能基を含まないジエン系ポリマー(i)(b)のそれぞれの重量の合計を加算した合計重量である;
(ii)100部のゴム(i)当たりに約5から約140重量部の沈降シリカ;
(iii)100部のゴム(i)当たりに約1から約20重量部の、メルカプト官能性アルキルアルコキシシランおよびブロック化メルカプト官能性アルキルアルコキシシランを含むカップリング剤パッケージ;
(iv)100部のゴム(i)当たりに約0.1から約20重量部の脱ブロック化剤;
(v)100部のゴム(i)当たりに約0.1から約10重量部の、硫黄および少なくとも1つの促進剤を含む加硫パッケージ;および
(vi)100部のゴム(i)当たりに約0.1から約5重量部のスコーチ変性剤を含んでいる。
【0021】
100部のゴム(i)当たりの重量部についての単位は、しばしばphrとして示される。少なくとも1つの官能基を含むジエン系ポリマー(i)(a)のそれぞれの重量の合計は、100部のゴム(i)当たりの0から約100重量部、より特定的には100部のゴム(i)当たり約10から約100重量部、さらにより特定的には100部のゴム(i)当たり約20から約95重量部、そしてなおさらにより特定的には100部のゴム当たり約50から約90重量部を構成し、ここでゴム成分(i)の残りは少なくとも1つの官能基を含まないジエン系ポリマー(i)(b)の重量の合計である。
【0022】
幾つかの実施態様において、ゴム組成物は硬化される。
【0023】
本願に開示のゴム組成物は、少なくとも1つの官能基を含むジエン系ポリマー、沈降シリカ、メルカプト官能性アルキルアルコキシシランおよびブロック化メルカプト官能性アルキルアルコキシシランを含むカップリング剤パッケージ、およびチウラムジスルフィドスコーチ変性剤の間に相乗効果を示す。この相乗効果は異なる官能基を含む多くの異なるジエン系ポリマーについて観察され、低い転がり抵抗をもたらし、その一方で他の性能特徴は保持しまたは向上させる。幾つかの実施態様において、この相乗効果は高い性能指数値によって例証される。
【0024】
幾つかの実施態様において、本開示の組成物は、メルカプトシランを用いない同じ組成物と比較して、より高い性能指数値を有する。幾つかの実施態様において、この組成物は、ブロック化メルカプトシランを用いない同じ組成物と比較して、より高い性能指数値を有する。幾つかの実施態様において、この組成物は、官能性ポリマーが非官能性ポリマーに置き換えられた同じ組成物と比較して、より高い性能指数値を有する。
【0025】
本開示はさらに、本開示のプロセスによって調製された組成物を提供する。幾つかの実施態様において、本開示のプロセスによって調製された組成物は、ゴム組成物である。幾つかの実施態様において、ゴム組成物はタイヤを製造するために使用される。
【発明を実施するための形態】
【0026】
上記において、また詳細な説明全体を通じて使用するところで、以下の用語は特に明記しない限り、以下の意味を有することが理解されるべきである。
【0027】
特に明記しない限り、本願の特定の態様を説明する文脈(特に特許請求の範囲の文脈)において使用される用語「ある」および「あの」および「その」並びに同様の言及は、単数および複数の両方を包含するものとして解釈されうる。本願における値の範囲への言及は単に、その範囲内に含まれるそれぞれ別個の値に対して個別に言及する簡略的な方法としての役割を果たすことを意図している。本願において特に明記しない限り、それぞれの個別の値は、あたかもそれが本願で個別に言及されているかのようにして、明細書中に含まれる。
【0028】
さらにまた、「および/または」は本願において使用される場合、2つの特定された特徴または成分のそれぞれが、他方を伴ってまたは伴わずに具体的に開示されたものとして理解される。よって、本願で「Aおよび/またはB」のような言い方で用いられた「および/または」という用語は、「AおよびB」、「AまたはB」、「A(のみ)、および「B(のみ)」を含むことを意図している。同様に、「A、B、および/またはC」のような言い方で用いられた「および/または」という用語は、以下の態様:A、B、およびC;A、B、またはC;AまたはC;AまたはB;BまたはC;AおよびC;AおよびB;BおよびC;A(のみ);B(のみ);およびC(のみ)のそれぞれを包含することを意図している。
【0029】
理解されるように、本願で「含む」という用語を用いて態様が記載される場合、「からなる」および/または「から本質的になる」という用語で記載される他の点では同様の態様もまた提供されている。
【0030】
用語「ポリマー」は、主としてまたは全体的に、一体的に結合された大量の類似した単位(例えばモノマー単位)からなる分子構造を有する物質、化学的化合物または化合物の混合物を意味している。
【0031】
用語「官能化ジエン系ポリマー」は、「少なくとも1つの官能基を含むジエン系ポリマー(i)(a)」と同義であり、従って互換性がある。
【0032】
用語「非官能化ジエン系ポリマーは、「官能基を含まないジエン系ポリマー(i)(b)」と同義であり、従って互換性がある。
【0033】
本願で使用するところでは、用語「約」は測定において生ずる実験誤差の範囲を包含する。
【0034】
用語「エラストマー」は「ゴム」と同義であり、従って互換性がある。
【0035】
用語「加硫」は「硬化」と同義であり、従って互換性がある。
【0036】
「ブロック化メルカプトシラン」という表現は、部分加水分解物を含むことが理解されるべきである。ブロック化メルカプトシランの部分加水分解物は、その製造方法の幾つかからもたらされ、および/または特に高湿度条件下でのその貯蔵に際して生じうる。
【0037】
「カップリング剤」という表現は、ジエン系ポリマーとフィラーとの間に有効な化学的および/または物理的結合を確立することのできる剤を意味し、または2つのジエン系ポリマーの間に有効な化学的および/または物理的結合を確立することのできる剤を意味している。有効なカップリング剤は、例えばカップリング剤のシラノール基とフィラー表面のヒドロキシル(OH)基(例えばシリカの場合には表面のシラノール)との間、または1つのジエンポリマーに結合したシラノール基と別のポリマーのシラノール基の間、そして例えば、加硫(硬化)の結果としてジエン系ポリマーと物理的および/または化学的に結合することのできる硫黄原子のように、フィラーまたは2番目のジエン系ポリマーと物理的および/または化学的に結合可能な官能基を有する。
【0038】
用語「フィラー」は、ジエン系ポリマー(ゴム)に対して添加され、ゴムを増量しまたはエラストマーの網目構造を補強する物質を意味する。補強フィラーは、エラストマー組成物のジエン系ポリマーよりも弾性率が高く、エラストマーが歪まされた場合にジエン系ポリマーから歪みを吸収することのできる材料である。フィラーには、ファイバー、ニードル、ナノチューブ、粒子、およびシート状構造が含まれ、無機鉱物、シリケート、シリカ、クレイ、セラミック、カーボン、有機ポリマー、および珪藻土から構成されることができる。
【0039】
用語「炭化水素」は本願で使用するところでは、水素原子と炭素原子とを含む任意の化学構造を意味している。
【0040】
本願で使用するところでは、「アルキル」は直鎖、分岐鎖、および環状のアルキル基を含み;「アルケニル」は1つまたはより多くの炭素-炭素2重結合を含む任意の直鎖、分岐鎖、または環状のアルケニル基を含み、ここで置換位置は基の炭素-炭素2重結合または他の部分のいずれかであることができ;そして「アルキニル」は1つまたはより多くの炭素-炭素3重結合を含む任意の直鎖、分岐鎖、または環状のアルキニル基、および任意選択的に1つまたはより多くの炭素-炭素2重結合を含み、ここで置換位置は基の炭素-炭素3重結合、炭素-炭素2重結合または他の部分のいずれかであることができる。
【0041】
アルキル基の具体的で非限定的な例には、メチル、エチル、プロピル、およびイソブチルが含まれる。具体的で非限定的なアルケニルの例には、ビニル、プロペニル、アリル、およびメタリルが含まれる。具体的で非限定的なアルキニルの例には、アセチレニル、プロパルギル、およびメチルアセチレニルが含まれる。
【0042】
本願で使用するところでは、「アリール」は任意の芳香族系炭化水素であって1つの水素原子が除去されたものを含み;「アラルキル」は上述した任意のアルキル基であって1つまたはより多くの水素原子が同数の同様のおよび/または異なるアリール(本願で定義した)置換基で置換されたものを含み;そして「アレーニル」は上述した任意のアリール基であって1つまたはより多くの水素原子が同数の同様のおよび/または異なるアルキル(本願で定義した)置換基で置換されたものを含む。具体的で非限定的なアリール基の例にはフェニルおよびナフタレニルが含まれる。具体的で非限定的なアラルキル基の例にはベンジルおよびフェネチルが含まれる。具体的で非限定的なアレーニル基の例にはトリルおよびキシリルが含まれる。
【0043】
本願で使用するところでは、「アルキレン」はアルカンから2つの水素原子を除去することによって誘導された2価の飽和脂肪族ラジカルである。
【0044】
実施例以外において、または特に断りがない限り、本明細書および特許請求の範囲に記載された、材料の量、反応条件、時間の長さ、物質の定量化された特性およびその他を表現するすべての数値は、すべての場合において用語「約」によって修飾されているものとして理解される。
【0045】
本願で記載した任意の数値範囲は、その範囲内のすべての部分範囲、およびそうした範囲または部分範囲の種々の端点の任意の組み合わせを含むことが理解される。
【0046】
さらに、構成的、組成的および/または機能的に関連する化合物、材料または物質の群に属するものとして本明細書に明示的または黙示的に開示され、および/または請求項において記載されたすべての化合物、材料または物質は、その群の個々の構成因子およびそれらのすべての組み合わせを含むことが理解される。
【0047】
本開示の組成物はシリカゴムコンパウンドにおいて、少なくとも1つの官能基を含むジエン系ポリマー(i)(a)、ブロック化メルカプトシラン、メルカプトシラン、およびスコーチ変性剤の間に相乗効果を示し、この相乗効果は種々のジエン系ポリマー(i)(a)を用いて達成される。幾つかの実施態様において、この相乗効果は高い性能指数値によって例証される。
【0048】
ある態様において、ジエン系ポリマー(i)(a)、メルカプトシランおよびブロック化メルカプトシランを含む組成物は、混合の間にシリカの表面において反応する。ジエン系ポリマー(i)(a)およびメルカプトシランの両者は混合の間に、シリカとポリマーの化学的または物理的な結合を生成する。メルカプトシランのチオールの高い反応性は、混合の間にジエン系ポリマーとの結合をもたらしてよいが、しかしすべてのチオールがタイヤの商業的な製造について企図されたゴムの混合スキームの間に十分な反応時間を得られる訳ではない。
【0049】
本願において開示されるゴム組成物は:
(i)少なくとも1つのジエン系ポリマー;
(ii)沈降シリカ;
(iii)メルカプト官能性アルキルアルコキシシランおよびブロック化メルカプト官能性アルキルアルコキシシランを含むカップリング剤パッケージ;
(iv)脱ブロック化剤;
(v)硫黄および少なくとも1つの促進剤を含む加硫パッケージ;および
(vi)スコーチ変性剤を含む。
【0050】
幾つかの実施態様において、ゴム組成物は硬化される。
【0051】
幾つかの実施態様において、少なくとも1つのジエン系ポリマーは、少なくとも1つの官能基を含むジエン系ポリマー(i)(a)、官能基を含まないジエン系ポリマー(i)(b)、およびこれらの組み合わせからなる群より選択される。幾つかの実施態様において、少なくとも1つのジエン系ポリマーは、少なくとも1つの官能基を含むジエン系ポリマー(ia)の少なくとも1つと、官能基を含まないジエン系ポリマー(i)(b)の組み合わせである。
【0052】
幾つかの実施態様において、ゴム組成物は:
(i)ジエン系ポリマー、ここでジエン系ポリマーは少なくとも1つの官能基を含むジエン系ポリマー(i)(a)の少なくとも1つと官能基を含まないジエン系ポリマー(i)(b)の組み合わせである;
(ii)沈降シリカ;
(iii)メルカプト官能性アルキルアルコキシシラン(iii)(a)およびブロック化メルカプト官能性アルキルアルコキシシラン(iii)(b)を含む少なくとも1つのカップリング剤パッケージ;
(iv)少なくとも1つの脱ブロック化剤;
(v)単体硫黄および少なくとも1つの促進剤を含む少なくとも1つの加硫化剤を含む加硫パッケージ;および
(vi)少なくとも1つのスコーチ変性剤を含む。
ジエン系ポリマー(i)
【0053】
少なくとも1つの官能基を含むジエン系ポリマー(i)(a)
【0054】
少なくとも1つの官能基を含むジエン系ポリマー(i)(a)は、その官能基が、アミノ基、アルコキシシリル基、スタニル(スズ)基、ヒドロキシル基、チオール基、スルフィド基、チオイソシアネート基、イソシアネート基、イミノ基、ピリジノ基、エポキシ基、チオエポキシ基、チオケトン基、ケトン基、ケチミン基、イソシアヌル酸基、アミド基、シラザン基、ヒドロキシシリル(シラノール)基、シロキサン基、フタロシアニノ基、シラン-スルフィド基、カルボン酸基、カルボン酸エステル基、およびこれらの官能基の組み合わせからなる群より選択される化合物である。
【0055】
ある態様において、少なくとも1つの官能基を含むジエン系ポリマー(i)(a)は、官能基(単数または複数)をポリマーの一端に、ポリマーの両端に、ポリマーの一端およびポリマー主鎖のペンダントに、ポリマーの両端およびポリマー主鎖のペンダントに、またはポリマー主鎖のペンダントのみに含むことができる。ポリマー端部にある官能基(末端基)またはポリマー鎖内にある官能基(ペンダント基)は、ポリマーの一端またはポリマー主鎖のペンダントに存在することができる、1つの官能基、または2つまたはより多くの官能基であることができる。
【0056】
ある態様において、少なくとも1つの官能基を含むジエン系ポリマー(i)(a)は、溶液アニオン重合、無溶媒ラジカル重合、またはフリーラジカル乳化重合によって調製することができる。
【0057】
ある態様において、少なくとも1つの官能基を含むジエン系ポリマー(i)(a)はモノマーを重合することによって調製され、これには限定するものではないが、アルケニル基を含む芳香族化合物であって炭素-炭素2重結合が芳香族環と共役しているもの、および8から20の炭素原子の、1,3-ブタジエンまたはイソプレンのようなジエン、およびアルケニル基並びに官能基および/または保護された官能基を含む化合物が含まれる。保護された官能基とは、保護剤と反応して保護された官能基を形成する官能基であり、保護剤は重合反応に関与せずまたは重合反応における保護された官能基の関与を阻止するが、重合反応後には除去されて官能基を再生することができる。重合反応は開始剤によって開始され、停止化合物によって終了される。開始剤および/または停止化合物は、官能基および/または保護された官能基を含んでいてよい。
【0058】
ある態様において、少なくとも1つの官能基を含むジエン系ポリマー(i)(a)は、米国特許公開第2010/0186869A1、米国特許第7,342,070B2および/または国際公開WO2007/047943にしたがって調製可能であり、それぞれの全内容は参照によって本願に取り入れられる。少なくとも1つの官能基を含むジエン系ポリマー(i)(a)は、アルコキシシラン基並びに1級アミン基および/またはチオール基の少なくとも1つで官能化されたスチレンブタジエンゴムであることができる。このスチレンブタジエンゴムはスチレンとブタジエンを共重合することによって得られ、そしてスチレンブタジエンゴムがポリマー鎖に結合した1級アミノ基および/またはチオール基、並びにアルコキシシリル基を有することを特徴としている。アルコキシシリル基は、メトキシシリル基および/またはエトキシシリル基の少なくとも1つであってよい。1級アミノ基および/またはチオール基は、それがスチレンブタジエンゴムの鎖に結合される限り、重合開始末端、重合停止末端、スチレンブタジエンゴムの主鎖、および側鎖のいずれに結合されていてもよい。1級アミノ基および/またはチオール基は、重合開始末端または重合停止末端に導入されてよい。
【0059】
ある態様において、(コ)ポリマーゴムのポリマー鎖に結合されたアルコキシシリル基の含有量は、少なくとも1つの官能基を含むジエン系ポリマー(i)(a)のキログラム当たり好ましくは約0.5から約200ミリモル(mmol/kg)であり、より特定的には含有量は少なくとも1つの官能基を含むジエン系ポリマー(i)(a)の約1から約100mmol/kg、そして特に少なくとも1つの官能基を含むジエン系ポリマー(i)(a)の約2から約50mmol/kgである。
【0060】
少なくとも1つの官能基を含むジエン系ポリマー(i)(a)は、有機アルカリ金属および/または有機アルカリ土類金属を開始剤として使用して、炭化水素溶媒中でスチレンおよびブタジエンをアニオン重合によって重合し、保護基で保護された1級アミノ基および/または保護基で保護されたチオール基を有する停止剤化合物並びにアルコキシシリル基を添加して、重合が実質的に完了したときに停止剤をリビングポリマー鎖末端と反応させ、次いで、例えば加水分解または他の適切な手順によって脱ブロック化を行うことによって調製することができる。
【0061】
ある態様において、少なくとも1つの官能基を含むジエン系ポリマー(i)(a)は式(I)を有し:
【化1】
式中
Pは共役ジオレフィンまたは共役ジオレフィンおよび芳香族ビニル化合物の(コ)ポリマー鎖;
R
1は1から12の炭素原子を有するアルキレン基;
R
2およびR
3のそれぞれは独立して1から20の炭素原子を有するアルキル基、アリル基、またはアリール基;そして
k、mおよびnはそれぞれ整数であり、ここでnは1または2、mは1または2、そしてkは1または2、但しn+m+kは3または4の整数である、
または式(II)を有し:
【化2】
式中
Pは共役ジオレフィンまたは共役ジオレフィンおよび芳香族ビニル化合物の(コ)ポリマー鎖;
R
1は1から12の炭素原子を有するアルキレン基;
R
2およびR
3のそれぞれは独立して1から20の炭素原子を有するアルキル基、アリル基、または6から12の炭素原子を有するアリール基;そして
jおよびhはそれぞれ整数であり、ここでjは1から3の整数、そしてhは1から3の整数、但しj+hは2から4の整数である。
【0062】
保護された1級アミノ基およびアルコキシシリル基を有する停止剤は式(III)の任意の化合物であってよく:
【化3】
式中
R
1は1から12の炭素原子を有するアルキレン基;
R
2およびR
3のそれぞれは独立して1から20の炭素原子を有するアルキル基、アリル基、またはアリール基;
R
4、R
5およびR
6のそれぞれは独立して1から12の炭素原子を有するアルキル基または6から12の炭素原子を有するアリール基、但しR
4およびR
5は共有結合を介して相互に結合してそれらが結合するケイ素原子と共に環を形成してよく;
k、mおよびnはそれぞれ整数であり、ここでnは1または2、mは1または2、そしてkは1または2、但しn+m+kは3または4の整数である、
または式(IV)の任意の化合物であってよく:
【化4】
式中
R
1は1から12の炭素原子を有するアルキレン基;
R
2およびR
3のそれぞれは独立して1から20の炭素原子を有するアルキル基、アリル基、またはアリール基;
R
4、R
5およびR
6のそれぞれは独立して1から12の炭素原子を有するアルキル基または6から12の炭素原子を有するアリール基、但しR
4およびR
5は共有結合を介して相互に結合してそれらが結合するケイ素原子と共に環を形成してよく;
mは1または2である。
【0063】
停止剤は、保護された1級アミノ基およびアルコキシシリル基を有する化合物であり、技術分野において知られた種々の化合物のいずれであってもよい。ある態様において、停止剤は保護された1級アミノ基およびアルコキシシリル基を有する化合物であり、例えば、N,N-ビス(トリメチルシリル)アミノプロピル-メチルジメトキシシラン、1-トリメチルシリル-2,2-ジメトキシ-1-アザ-2-シラシクロペンタン、N,N-ビス(トリメチルシリル)アミノプロピルトリメトキシシラン、N,N-ビス-(トリメチルシリル)アミノプロピル-トリエトキシシラン、N,N-ビス(トリメチルシリル)アミノプロピルメチルジエトキシシラン、N,N-ビス-(トリメチルシリル)アミノエチルトリメトキシシラン、N,N-ビス-(トリメチルシリル)-アミノエチルトリエトキシシラン、N,N-ビス-(トリメチルシリル)アミノエチルメチルジメトキシシラン、およびN,N-ビス-(トリメチルシリル)アミノエチルメチルジエトキシシランを含んでいてよい。より特定的には、停止剤は1-トリメチルシリル-2,2-ジメトキシ-1-アザ-2-シラシクロペンタン、N,N-ビス-(トリメチルシリル)アミノプロピルメチルジメトキシシランまたはN,N-ビス-(トリメチルシリル)アミノプロピルメチルジエトキシシランである。
【0064】
1級アミンを得るための適切な後処理は、リビングポリマーのと保護された1級アミノ基およびアルコキシシリル基を有する化合物との反応の後に、保護基が除去されることを意味している。例えば、ビス-(トリアルキルシリル)保護基の場合、N,N-ビス(トリメチルシリル)アミノプロピルトリエトキシシランにおけるように、トリアルキルシリル基を除去するために加水分解が用いられ、1級アミンが残される。
【0065】
別の実施態様において、スチレンおよびブタジエンモノマーが重合されアルコキシシラン基およびチオールで官能化された溶液は、参照によって本願に全内容を取り入れる国際公開WO2007/047943に開示されている。少なくとも1つの官能基を含むジエン系ポリマー(i)(a)は式(V)を有し:
【化5】
式中
Pは共役ジオレフィンまたは共役ジオレフィンおよび芳香族ビニル化合物の(コ)ポリマー鎖;
R
1は1から12の炭素原子を有するアルキレン基;
R
2およびR
3のそれぞれは独立して1から20の炭素原子を有するアルキル基、アリル基、またはアリール基;そして
k、mおよびnはそれぞれ整数であり、ここでnは1または2、mは1または2、そしてkは1または2、但しn+m+kは3または4の整数である。
【0066】
式(V)を有する反応生成物は、リビングアニオンポリマーと、式(VI)を有するシラン-スルフィド停止剤(変性剤)の反応から調製される:
(R2O)bR34-(n+b)Si-[R1S-SiR4R5R6]n (VI)
式中
R1は1から12の炭素原子を有するアルキレン基;
R2およびR3のそれぞれは独立して1から20の炭素原子を有するアルキル基、アリル基、またはアリール基;
R4、R5およびR6のそれぞれは独立して1から12の炭素原子を有するアルキル基または6から12の炭素原子を有するアリール基、但しR4およびR5は共有結合を介して相互に結合してそれらが結合するケイ素原子と共に環を形成してよく;そして
nおよびbはそれぞれ整数であり、ここでnは1または2、bは1、2または3、但しn+bは2から4の整数である。
【0067】
保護基は、遊離のチオール基を生成する任意の反応、例えば加水分解またはエステル交換によって除去される。
【0068】
式(V)の化合物の代表的で非限定的な例には、(CH3O)3Si-(CH2)3-S-Si(CH3)3、(CH3CH2O)3Si-(CH2)3-S-Si(CH3)3、(CH3CHO)3Si-(CH2)2-S-Si(CH3)3、(CH3CH2O)3Si-CH2-S-Si(CH3)3、(CH3CH2O)3Si-CH2CH(CH3)CH2-S-Si(CH3)3、(CH3CH2O)2(CH3)Si-(CH2)3-S-Si(CH3)3、(CH3CH2CH2O)3Si-CH2-S-Si(CH3)2C(CH3)3、(CH3O)3Si-CH2-C(CH3)2-CH2-S-Si(CH3)2C(CH3)3、(CH3CH2O)3Si-CH2C(CH3)2CH2-S-Si(CH3)2C(CH3)3および(CH3CH2O)3Si-CH2C(CH3)2CH2-S-Si(CH3)2C(CH3)3が含まれる。
【0069】
ある態様において、リビングアニオンエラストマーポリマーは、イソプレンのホモポリマー、ブタジエンのホモポリマー、ブタジエンとスチレンのコポリマー、イソプレンとスチレンのコポリマー、ブタジエンとイソプレンおよびスチレンのターポリマー、およびこれらの組み合わせからなる群より選択される。
【0070】
別の実施態様において、リビングアニオンエラストマーポリマーは、ブタジエンのホモポリマーおよびブタジエンとスチレンのコポリマーからなる群より選択される。
【0071】
ジエン系ポリマー(i)を調製するのに有用なモノマーには、共役オレフィン、並びにα-オレフィン、内部オレフィン、環状オレフィン、極性オレフィン、および非共役ジオレフィンを含む群から選択されるオレフィンが含まれる。
【0072】
適切な共役不飽和モノマーは具体的には、1,3-ブタジエン、2-アルキル-l,3-ブタジエンのような共役ジエン、特に、イソプレン(2-メチル-l,3-ブタジエン)、2,3-ジメチル-1,3-ブタジエン、1,3-ペンタジエン、2,4-ヘキサジエン、1,3-ヘキサジエン、1,3-ヘプタジエン、1,3-オクタジエン、2-メチル-2,4-ペンタジエン、シクロペンタジエン、2,4-ヘキサジエン、1,3-シクロオクタジエンである。アルファオレフィンには、限定するものではないが、長鎖高分子アルファオレフィン、より特定的には芳香族ビニル化合物が含まれる。芳香族ビニル化合物には、スチレン、アルキル置換スチレン、例えば2-メチルスチレン、3-メチルスチレン、4-メチルスチレン、2,4-ジメチルスチレン、2,4,6-トリメチルスチレン、スチルベン、2,4-ジイソプロピルスチレン、4-tert-ブチルスチレン、ビニルベンジルジメチルアミン、(4-ビニルベンジル)ジメチルアミノエチルエーテル、Ν,Ν-ジメチルアミノエチルスチレン、tert-ブトキシスチレン、ビニルピリジン、およびこれらの混合物が含まれる。
【0073】
適切な極性オレフィンには、アクリロニトリル、メタクリレート、メチルメタクリレートが含まれる。適切な非共役オレフィンには、4から20の炭素原子を有するジオレフィン、特にノルボルナジエン、エチリデンノルボルネン、1,4-ヘキサジエン、1,5-ヘキサジエン、1,7-オクタジエン、4-ビニルシクロヘキセン、1,2-ジビニルベンゼン、1,3-ジビニルベンゼン、1,4-ジビニルベンゼンを含むジビニルベンゼン、およびこれらの混合物が含まれる。
【0074】
好ましい共役ジエンには、1,3-ブタジエン、イソプレン、およびシクロペンタジエンが含まれ、そして好ましい芳香族アルファオレフィンにはスチレンおよび4-メチルスチレンが含まれる。
【0075】
ジエン系ポリマー(i)(a)の非限定的な例には、特にブタジエンまたはイソプレンである共役ジエンのホモポリマー、並びに特にブタジエンまたはイソプレンである少なくとも1つの共役ジエンと、特にスチレンおよび4-メチルスチレンである芳香族アルファオレフィン、または特にジビニルベンゼンである芳香族ジオレフィンの少なくとも1つのとの、ランダムまたはブロックコポリマーおよびターポリマーが含まれる。特に好ましいのは、少なくとも1つの共役ジエンと、少なくとも1つの芳香族アルファオレフィンおよび/または脂肪族アルファオレフィンとの、特にブタジエンまたはイソプレンとスチレンおよび/または4-メチルスチレンとのランダムコポリマー、任意選択的にはターポリマーである。
【0076】
一般に、ジエンモノマー(単数または複数)の重合、またはジエンモノマー(単数または複数)のアルファオレフィンモノマー(単数または複数)との共重合は、アニオンリビング重合タイプの重合反応技術についてよく知られた条件、例えば約-50から約250℃、好ましくは約0から約120℃の温度において達成されてよい。この反応温度は、重合開始温度と同じであってよい。重合は、大気圧、大気圧未満、または500MPaまでの、または場合によってはこれを超える高圧において、連続的または不連続に行うことができる。好ましくは、重合は約0.01から約500MPa、最も好ましくは約0.01から約10MPa、そして特定的には約0.1から約2MPaの圧力で行われる。より高い圧力を印加してもよい。そうした高圧のプロセスにおいては、開始剤を使用して良好な結果を得ることもできる。
【0077】
溶液重合は通常、より低い圧力、好ましくは約10MPa未満において行われる。この重合は気相中において、並びに液体反応媒体中において実行することができる。重合は一般にバッチ式、連続的または半連続的な重合条件の下で行われる。重合プロセスは、例えば流動床または撹拌床反応器において気相重合として、形成されるポリマーが反応混合物に実質的に可溶な溶液重合として、形成されるポリマーが反応混合物に実質的に不溶な懸濁/スラリー重合として、または重合されるモノマーの過剰分が反応媒体として使用される、いわゆるバルク重合プロセスとして行うことができる。
【0078】
上述したモノマーの重合は典型的には、限定するものではないが、リチウム、ナトリウム、カリウム、またはマグネシウム原子の少なくとも1つを有する有機金属化合物のようなアニオン開始剤で開始され、こうした有機金属化合物は1から約20の炭素原子を有する。好ましくは、有機金属化合物は少なくとも1つのリチウム原子を有し、例えばエチルリチウム、プロピルリチウム、n-ブチルリチウム、sec-ブチルリチウム、tert-ブチルリチウム、フェニルリチウム、ヘキシルリチウム、1,4-ジリチオ-n-ブタン、l,3-ジ(2-リチオ-2-ヘキシル)ベンゼンの如きであり、そして好ましくはn-ブチルリチウムおよびsec-ブチルリチウムである。これらの有機リチウム開始剤は単独で、または2つまたはより多くの異なる種類の混合物として組み合わせて使用されてよい。
【0079】
使用される有機リチウム開始剤の量は、重合されるモノマーおよび生成されるポリマーの目標とする分子量に基づいて変動する;しかしながら、この量は典型的にはモノマー100グラム当たり約0.1から約5mmol、好ましくは約0.3から約3mmolであり、ここで100グラムのモノマーは重合可能なモノマーの合計である。
【0080】
ジオレフィン型のホモポリマー、コポリマーまたはターポリマーの共役ジオレフィン部分のビニル結合の含有量のような微細構造を調節するために、または共役ジエンモノマーを含有するコポリマーまたはターポリマーにおける芳香族ビニル化合物の組成分布調節するために、かくして例えばランダム化成分として作用するように、重合混合物は極性調整剤化合物を任意選択的に添加してもよい。極性調整剤化合物は例えば、限定するものではないが、ジエチルエーテル、ジ-n-ブチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコールジブチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールジエチルエーテル、プロピレングリコールジブチルエーテルのようなエーテル化合物、メチルテトラヒドロフリルエーテル、エチルテトラヒドロフリルエーテル、プロピルテトラヒドロフリルエーテル、ブチルテトラヒドロフリルエーテル、ヘキシルテトラヒドロフリルエーテル、オクチルテトラヒドロフリルエーテルのようなアルキルテトラヒドロフリルエーテル、テトラヒドロフラン、2,2-(ビス-テトラヒドロフルフリル)プロパン、ビス-テトラヒドロフルフリルホルマル、テトラヒドロフルフリルアルコールのメチルエーテル、テトラヒドロフルフリルアルコールのエチルエーテル、テトラヒドロフルフリルアルコールのブチルエーテル、アルファメトキシテトラヒドロフラン、ジメトキシベンゼン、および/またはジメトキシエタンおよび/またはトリエチルアミンのブチルエーテル、ピリジン、Ν,Ν,Ν',Ν'-テトラメチルエチレンジアミン、ジピペリジノエタン、Ν,Ν-ジエチルエタノールアミンのメチルエーテル、Ν,Ν-ジエチルエタノールアミンのエチルエーテル、および/またはΝ,Ν-ジエチルエタノールアミンのような3級アミン化合物である。
【0081】
極性調整剤化合物は典型的には、リチウム開始剤に対する極性調整剤化合物のモル比で約0.012:1から約5:1、しかし典型的には約0.1:1から約4:1、好ましくは約0.25:1から約3:1、そして最も好ましくは約0.5:1から約3:2の範囲内で添加される。
【0082】
重合は任意選択的に、極性調整剤化合物としてオリゴマー状のオキソラニルアルカンを用いて行うことができる。こうした化合物の例は、米国特許第6,790,921号および第6,664,328号に提示されており、これらはそれぞれ参照によって本願に取り入れられる。
【0083】
重合は任意選択的に、開始剤の反応性を増大させるために、ポリマーに導入される芳香族ビニル化合物をランダムに配置するために、または芳香族ビニル化合物の単鎖をもたらし、かくしてジエン系ポリマー(i)における芳香族ビニル化合物の組成分布に影響を与えるために、促進剤を含むことができる。
【0084】
適用可能な促進剤の例には、ナトリウムおよびカリウムアルコキシドまたはカリウムフェノキシド、例えばカリウムイソプロポキシド、カリウムt-ブトキシド、カリウムt-アミルオキシド、カリウムn-ヘプチルオキシド、カリウムベンジルオキシド、カリウムフェノキシド;イソ吉草酸、カプリル酸、ラウリル酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、リノレン酸、安息香酸、フタル酸、または2-エチルヘキサン酸のようなカルボン酸のカリウム塩;ドデシルベンゼンスルホン酸、テトラデシルベンゼンスルホン酸、ヘキサデシルベンゼンスルホン酸、またはオクタデシルベンゼンスルホン酸のような有機スルホン酸のカリウム塩;およびジエチルホスファイト、ジイソプロピルホスファイト、ジフェニルホスファイト、ジブチルホスファイト、ジラウリルホスファイトのような有機リン酸のカリウム塩が含まれる。これらのカリウム化合物は、リチウム開始剤の1.0グラム原子当量について約0.005から約0.5モルの量で添加されてよい。0.005モル未満が添加された場合には、典型的には十分な効果が達成されない。他方、カリウム化合物の量が0.5モルを超えると、鎖端部の変性反応の生産性および効率は著しく低下する。
【0085】
アルカリ金属アルコキシド化合物を重合開始剤と共に添加して、重合反応性を向上させてよい。アルカリ金属アルコキシド化合物は、アルコールと有機アルカリ金属化合物を反応させることによって調製することができる。この反応は、モノマー、好ましくは共役ジオレフィンモノマーおよび芳香族ビニル化合物モノマーの存在の下に、これらのモノマーの共重合に先立って、炭化水素溶媒中で実行してよい。
【0086】
アルカリ金属アルコキシド化合物は例示的に、テトラヒドロフルフリルアルコール、Ν,Ν-ジメチルエタノールアミン、Ν,Ν-ジエチルエタノールアミン、1-ピペラジンエタノールアミン、またはその他の金属アルコキシドによって表される。有機アルカリ金属化合物は好ましくは有機リチウム化合物であってよく、アルカリ金属アルコキシドを調製するためのアルコール化合物に対する反応物質として使用することができる。例えば、エチルリチウム、プロピルリチウム、n-ブチルリチウム、sec-ブチルリチウム、tert-ブチルリチウム、ヘキシルリチウム、およびこれらの混合物が挙げられる。これらの中でも、n-ブチルリチウムおよびsec-ブチルリチウムが好ましい。アルコール化合物と有機リチウム化合物のモル比は、約1:0.7から約1:5.0、好ましくは約1:0.8から約1:2.0、そして最も好ましくは約1:0.9から約1:1.2である。アルコール化合物に対する有機リチウム化合物のモル比が5.0を超えると、引張強度、耐摩耗性、およびヒステリシスの改善効果が損なわれる。他方、有機リチウム化合物のモル比が0.8よりも小さいと、重合速度が遅くなり生産性が著しく低下して、鎖端部の変性反応の効率性の低下がもたらされる。
【0087】
ポリマーの分子量およびポリマーの性質をさらに制御するために、カップリング剤または連結剤を用いてよい。例えば、非対称カップリングが望ましい場合には、ハロゲン化スズ、ハロゲン化ケイ素、スズアルコキシド、ケイ素アルコキシド、またはこれらの化合物の混合物を、重合に際して連続的に添加することができる。
【0088】
この連続的な添加は通常、重合の大部分が生じている領域とは別個の反応領域において行われる。カップリング剤は炭化水素溶媒、例えばシクロヘキサン中において、分散および反応のために適切な混合を行いながら、重合混合物に対して添加することができる。カップリング剤は典型的には、高度の変換がすでに達成された後にのみ添加される。例えば、カップリング剤は通常、85パーセントを超えるモノマー変換が実現された後にのみ添加される。カップリング剤の添加までには、典型的にはモノマーの変換が少なくとも90%に達していることが好ましい。
【0089】
一般的なハロゲン化物のカップリング剤には、4塩化スズ、4臭化スズ、4フッ化スズ、4ヨウ化スズ、4塩化ケイ素、4臭化ケイ素、4フッ化ケイ素、4ヨウ化ケイ素が含まれ、スズとケイ素の3ハロゲン化物、またはスズとケイ素の2ハロゲン化物もまた使用することができる。スズまたはケイ素の4ハロゲン化物と結合されるポリマーは最大で4本の手(または4つのポリマー結合鎖)を有し、スズおよびケイ素の3ハロゲン化物は最大で3本の手を有し、そしてスズおよびケイ素の2ハロゲン化物は最大で2本の手を有する。ヘキサハロジシランまたはヘキサハロジシロキサンもまたカップリング剤として使用可能であり、最大で6本の手を有するポリマーが得られる。有用なスズおよびケイ素ハロゲン化物のカップリング剤には、SnCl4、(R7)3SnCl、(R7)2SnCl2、SiCl4、(R7)3SiCl、(R7)2SiCl2、R7SiCl3、Cl3Si-SiCl3、Cl3Si-O-SiCl3、Cl3Sn-SnCl3、Cl3Sn-O-SnCl3が含まれ、ここでR7は1から12の炭素原子のアルキル基である。
【0090】
スズおよびケイ素アルコキシドのカップリング剤の例には、Si(OCH3)4、Sn(OCH3)4、Sn(OCH2CH3)4またはSi(OCH2CH3)4が含まれる。最も好ましいカップリング剤は、SiCl4、Sn(OCH3)4およびSi(OCH3)4である。
【0091】
ポリマーに結合するために、スズまたはケイ素化合物との組み合わせを任意選択的に使用することができる。スズおよびケイ素カップリング剤のそうした組み合わせを使用することにより、タイヤに使用するジエン系ポリマー(i)(a)について改善された性質、例えば低いヒステリシスを達成することができる。
【0092】
スズおよびケイ素のカップリング剤の組み合わせは、シリカおよびカーボンブラックの両者を含むタイヤトレッド化合物に使用することが特に望ましい。そうした場合には、ジエン系ポリマー(i)(a)のカップリングに用いられるケイ素化合物に対するスズのモル比は通常、約20:80から約95:5;より典型的には約40:60から約90:10、そして好ましくは約60:40から約85:15の範囲内にある。最も典型的には、100グラムのジエン系ポリマー(i)(a)当たりに、約0.01から約4.5ミリ当量の範囲のカップリング剤(スズおよびケイ素化合物)が用いられる。所望とするムーニー粘度を得るためには通常、100グラムのジエン系ポリマー(i)(a)当たりに、約0.01から約1.5ミリ当量のカップリング剤を用いることが好ましい。量がより多いと、末端反応基を含みまたはカップリングが不十分なポリマーが生成される傾向がある。リチウム開始剤の当量当たりにゼロから1当量未満の間のスズおよび/またはケイ素カップリング基が使用されると、残っているリビングポリマー部分をその後に官能化することが可能になる。例えば、スズまたはケイ素の4塩化物、またはこれらの化合物の混合物がカップリング剤として使用される場合、リビングリチウムポリマー鎖端の4.0モルごとに、0から1.0モル未満の間、好ましくは0から約0.8モルの間、そしてより好ましくは0から約0.6モルの間のカップリング剤が使用される。
【0093】
カップリング剤はシクロヘキサンのような炭化水素溶液中で、反応器中の重合混合物に対して、分散および反応のために適宜混合しながら添加することができる。
【0094】
溶液系の重合プロセスについて、重合は適切な溶媒、分散剤または希釈剤中で行われる。非配位性の不活性液体が好ましく、それには限定するものではないが、プロパン、ブタン、イソブタン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタンのような直鎖および分岐鎖炭化水素、シクロヘキサン、シクロヘプタン、メチルシクロヘキサン、メチルシクロヘプタンのような環状および環状脂肪族炭化水素、ベンゼン、トルエン、およびキシレンのような芳香族およびアルキル置換芳香族化合物、これらの異性体、これらの混合物、並びにペンタメチルヘプタンまたは鉱油留分、例えばライトガソリンまたはレギュラーガソリン、ナフサ、灯油または軽油が含まれる。フッ素化された炭化水素流体、例えば4から10の炭素原子を含むパーフルオロ化アルカンもまた適切である。
【0095】
さらに、重合プロセスにおいてモノマーまたはコモノマーとして作用してもよい、液体オレフィンを含む適切な溶媒には、プロピレン、1-ブテン、1-ペンテン、シクロペンテン、1-ヘキセン、3-メチル-1-ペンテン、4-メチル-l-ペンテン、ブタジエン、イソプレン、1,4-ヘキサジエン、1,7-オクタジエン、1-オクテン、1-デセン、スチレン、ジビニルベンゼン、エチリデンノルボルネン、アリルベンゼン、2-メチルスチレン、3-メチルスチレン、4-メチルスチレン、4-ビニルシクロヘキサン、およびビニルシクロヘキサンが含まれる。
【0096】
溶媒の混合物もまた適切である。芳香族炭化水素、例えばベンゼンおよびトルエンを使用することができる。
【0097】
少なくとも1つの官能基を含有する適切なジエン系ポリマー(i)(a)であって、官能基がアルコキシシラン基およびチオール基であるものは、例えばダウオレフィンコンパウンド社から商業的に入手可能であり、それらは国際公開WO2007/047943に記載された種類であり、その全内容は参照によって本願に取り入れられる。
【0098】
少なくとも1つの官能基を含むジエン系ポリマー(i)(a)は、米国特許公開第2013/0165578A1に従って調製可能であり、この公報の全内容は参照によって本願に取り入れられる。少なくとも1つの官能基を含むジエン系ポリマー(i)(a)は、鎖内で官能化されたポリブタジエンエラストマーであり、これは1,3-ブタジエンモノマーから誘導された鎖内繰り返し単位と官能化モノマーのコポリマーを、モノマー(1,3-ブタジエンモノマー、および任意選択的に、スチレンモノマーおよびイソプレンモノマー)の合計重量に基づいて約0.2から約1.5重量%の量で含んでいる。官能化モノマーは式(VII)の構造を有し:
【化6】
式中
R
9は水素または1から4の炭素原子のアルキル基;R
10は式(VIII)を有する官能基であり:
【化7】
式中pおよびoはそれぞれ整数であり、ここでpは2から10そしてoは0から10、または式(IX)を有し:
-(CH
2)
gNR
12
2 (IX)
式中
R
12のそれぞれは独立して1から10の炭素原子のアルキル基、6から10の炭素原子のアリール基、またはR
12基は酸素原子を介して別のR
12基に結合して窒素原子に結合した-(CH
2)
qO-(CH
2)
r-基を形成し、ここでqおよびrはそれぞれ整数であり、qは1から10およびrは1から10;そして
gは0から10の整数である。
【0099】
官能基モノマーの代表的で非限定的な例には、ピロリジンエチルスチレン、ビニルベンジルピロリジン、ビニルベンジルジメチルアミンが含まれる。
【0100】
ある態様において、鎖内の官能化されたポリブタジエンは、1,3-ブタジエンおよび/またはイソプレンから誘導された繰り返し単位、およびピロリジンエチルスチレン、ビニルベンジルジメチルアミン、およびビニルベンジルピロリジンの少なくとも1つを含んでいる。イソプレンの繰り返し単位は、例えば0から約25重量%、より特定的には約2から約15重量%を構成してよく、この重量%はコポリマーの合計重量に基づいている。
【0101】
ある態様において、官能化ポリブタジエンゴムは1,3-ブタジエンと官能化モノマーのコポリマーであり、共重合を開始させるためのn-ブチルリチウムを含む重合開始剤の存在下に、そして任意選択的に、ポリブタジエン鎖に沿った官能性モノマー単位の取り込みおよび/または分散を促進するための重合変性剤の存在下に、炭化水素溶媒中において1,3-ブタジエンと官能性モノマーのアニオン共重合によって調製される。この重合変性剤は、例えば限定するものではないが、テトラメチルエチレンジアミンである。
【0102】
別の実施態様において、少なくとも1つの官能基を含むジエン系ポリマー(i)(a)は、参照によって全体を本願に取り入れる米国特許第6,664,328号に従って調製されるところでは、シス1,4-異性体含有量を約30から約50パーセントの範囲で、トランス1,4-異性体含有量を約40から約60パーセントの範囲で含み、そしてビニル含有量が約5から約20パーセントの範囲にあり、ガラス転移温度(Tg)が約-85℃から約-95℃の範囲にあり、そして数平均分子量(Mn)は例えば約75,000から約350,000の範囲にあってよく、数平均に対する重量平均の分散性(MW/Mn)は例えば約1から約2.5、或いは約1.5から約2.5の範囲にあってよい。数平均分子量と重量平均分子量は、ASTM D6474-20、高温ゲル濾過クロマトグラフィによるポリオレフィンの分子量分布および平均分子量の決定のための標準試験法によって決定される。
【0103】
少なくとも1つの官能基を含むジエン系ポリマー(i)(a)は、その全内容を参照によって本願に取り入れるDE102013100009A1に開示されているように、官能基が少なくとも1つのケイ酸官能基と反応してケイ酸官能化ポリマーを形成するポリマーを含んでいる。特に、溶液重合された少なくとも1つの官能基を含むジエン系ポリマー(i)(a)はケイ酸と反応して、ケイ酸官能化スチレンブタジエンポリマーを形成する。これらのジエン系ポリマー(i)(a)は、摩耗特性に対して良好な影響を示す。
【0104】
ある態様において、ケイ酸官能化スチレンブタジエンポリマーは、約10から約80重量%、より好ましくは約10から約70重量%のビニル含有量、および0から約50重量%、特に好ましくは0から約35重量%のスチレン含有量を有し、ここで重量%はジエン系ポリマー(i)(a)の合計重量に基づいている。
【0105】
シリカの官能化は本願において、ヒドロキシル基、エポキシ基、シロキサン基、フタロシアニン基、アミノシロキサン基、および/またはカルボキシ基との反応によって生ずる。官能基には、-OH、-COOH、-COCl、-SH、-CSSH、-NCO、アミノ基、エポキシ基、シリル基、シラノール基、またはポリシロキサンを含むシロキサン基が含まれる。シロキサン基はジエン系ポリマー鎖に対して、連結基を用いて、または用いずに結合される。
【0106】
シリル基、シラノール基、およびシロキサン基は、-ASiH2(OH)、-ASi(R13)2(OH)、-ASiH(OH)2、-ASiR13(OH)2、-ASi(OH)3、-ASi(OR13)3、-A(SiR13R14O)u-R15、-ASi(R15)3または-ASi(A1N(R15)2)v(OR13)w(R15)3-(v+w)であり、ここでR13およびR14のそれぞれは独立してアルコキシ基、1から12の炭素原子を含む直鎖アルキル基、3から12の炭素原子を含む分岐鎖アルキル基、5から12の炭素原子を含む環状アルキル基、6から12の炭素原子を含むアリール基、7から12の炭素原子を含むアルキルアリール基、7から12の炭素原子を含むアラルキル基、またはビニルであり、それぞれのR15は独立して1から12の炭素原子を含む直鎖アルキル基、3から12の炭素原子を含む分岐鎖アルキル基、5から12の炭素原子を含む環状アルキル基、または水素であり、u、vおよびwのそれぞれは整数であり、ここでuは1から1500、vは0から3、wは0から3であり、但しv+wは3未満または3に等しく;そしてAおよびA1のそれぞれは1から12の炭素原子のアルキレン基または共有単結合である。
【0107】
ある態様は、ケイ酸で官能化する前に、約150,000から約400,000、より特定的には約200,000から約300,000、そしてさらにより特定的には約225,000から約275,000の数平均分子量を有するジエン系ポリマー(i)を含んでいる。このジエン系ポリマー(i)(a)は、少なくとも1つの末端官能基が、スチレンブタジエンコポリマー、シス-1,4結合の含有量が90パーセントまたはそれを超えるブタジエンホモポリマー、シンジオタクチック-l,2-ポリブタジエン、イソプレンゴム、スチレンイソプレンコポリマー、またはブタジエンイソプレンコポリマーを含んでいる。
【0108】
末端官能基を備えたジエン系ポリマー(i)(a)として、その官能基は種々の化合物から、特にスズ化合物、アミノベンゾフェノン化合物、イソシアネート化合物、ジグリシジルアミン化合物、環状イミン化合物、アルコキシシランハロゲン化物化合物、グリシドキシプロピルアルコキシシラン化合物、およびネオジミウム化合物から誘導することができる。
【0109】
少なくとも1つの官能基を備えたジエン系ポリマー(i)(a)を調製するために使用されるリビングジエン系ポリマーは、官能化に先立つポリマーの数平均分子量(Mn)が、約150,000から約400,000、そしてより好ましくは約150,000から約250,000である。Mnが150,000未満の場合、十分な強度を発揮することができない。逆にMnが約400,000を超える場合には、ジエン系ポリマー(i)(a)は低い燃料消費特性を改善する効果が不十分となる。加えて、末端官能基に起因してジエン系ポリマー(i)(a)が相互に結合され、結果として分子量が2倍または3倍となっている場合には、その処理を行うことは困難である。数平均分子量と重量平均分子量は、ASTM D6474-20、高温ゲル濾過クロマトグラフィによるポリオレフィンの分子量分布および平均分子量の決定のための標準試験法によって決定される。
【0110】
ケイ酸官能化を含むジエン系ポリマー(i)(a)を調製するためには、共役ジエン化合物またはビニル置換芳香族化合物が、有機リチウム開始剤の存在下に共重合される。かくして得られた、共役ジエン化合物およびビニル置換芳香族化合物を含む共役ジエンポリマーおよびコポリマーは、ASTM D6474-20によって測定して約1,000から約300,000の初期重量平均分子量を有する。共役ジエンポリマーまたは共役ジエンコポリマーは、約1,000から約1,200,000、そしてより特定的には約10,000から約500,000の範囲内の重量平均分子量を有していてよい。
【0111】
有機リチウム開始剤が重合開始剤として使用される。有機リチウム開始剤は、少なくとも1つのリチウム原子を有する炭化水素化合物であり、その具体的な例にはエチルリチウム、プロピルリチウム、n-ブチルリチウム、sec-ブチルリチウム、tert-ブチルリチウム、フェニルリチウム、プロペニルリチウム、ヘキシルリチウム、1,4-ジリチオ-n-ブタン、およびl,3-ジ(2-リチオ-2-ヘキシル)ベンゼン、好ましくはn-ブチルリチウムおよびsec-ブチルリチウムが含まれてよい。これらの有機リチウム開始剤は単独で、または2つまたはより多くの異なる種類の混合物として組み合わせて使用されてよい。
【0112】
有機リチウム開始剤の量は、生成されるポリマーの目標とする分子量に基づいて変動するが、典型的には使用されるモノマーの合計重量100グラム当たり約0.1から約5mmol、好ましくは約0.3から約4mmolである。
【0113】
重合のための炭化水素溶媒の非限定的な例には、本願で使用するところでは、n-ブタン、イソペンタン、n-ヘキサン、n-ヘプタン、イソオクタン、シクロヘキサン、メチルシクロペンタン、ベンゼン、およびトルエン、好ましくはn-ヘキサン、n-ヘプタン、およびシクロヘキサンが含まれる。炭化水素溶媒はモノマーの1重量部当たりに約0.1から約25重量部の量で、より具体的にはモノマーの1重量部当たりに約1から約20重量部の量で、そしてさらにより特定的にはモノマーの1重量部当たりに約5から約15重量部の量で使用される。
【0114】
適切な共役ジエン化合物にはイソプレンおよび1,3-ブタジエンが含まれ、そして適切なビニル置換芳香族化合物にはスチレンおよびアルファメチルスチレンが含まれる。ジエン系ポリマー(i)(a)は、使用されるモノマーの合計重量に基づいて約10から100重量%の共役ジエンモノマーと0から約90重量%のビニル置換芳香族モノマー、より特定的には約20から約80重量%の共役ジエンモノマーと約20から約80重量%のビニル置換芳香族モノマー、そしてよりさらに特定的には約30から約50重量%の共役ジエンモノマーと約50から約70重量%のビニル置換芳香族モノマーを含んでいてよい。
【0115】
リビングジエンポリマーの端部は次いで、有機化合物であるカップリング剤の存在下に反応され、そこではカップリング剤は加水分解性シリル基のような、リビングポリマーのカルボアニオンと反応することのできる基を有している。
【0116】
ある態様はジエン系ポリマー(i)(a)であって、そこでは両末端が官能基を含んでいる。これらのジエン系ポリマー(i)(a)は、参照によってその全内容を本願に取り入れる米国特許第9,328,176B2に従って調製される。
【0117】
2官能性の開始剤は、モノ有機リチウム開始剤が非極性炭化水素溶媒および極性添加剤の存在下に反応器に添加され、それに続いてこの溶液に対してジビニル芳香族材料がゆっくりと添加されることを記載している、一般的な方法によって得るようにされてよい。2官能性開始剤の調製については、ジビニル芳香族材料の例は、1,3-ジビニルベンゼン、1,4-ジビニルベンゼン、1,3-ジイソプロペニルベンゼン、1,3-ジプロペニルベンゼン、1,4-ジイソプロペニルベンゼン、2,4-ジイソプロペニルトルエン、2,4-ジビニルトルエン、1,3-ジスチリルベンゼン、1,4-ジスチリルベンゼン、1,2-ジスチリルベンゼン、1,3-ジイソブテニルベンゼン、および1,3-ジイソペンテニルベンゼンからなる群より選択される;これらの化合物の中では、1,3-ジイソプロペニルベンゼンを選択するのが最も好ましい。
【0118】
有機リチウム開始剤の非限定的な例には、n-ブチルリチウム、sec-ブチルリチウム、およびt-ブチルリチウムが含まれる;2から2.5当量のt-ブチルリチウムが、1当量のジビニル芳香族材料に対して比例的に用いられるのが好ましい。
【0119】
さらに、非極性炭化水素溶媒が単独で、またはシクロヘキサンまたはシクロペンタンのような環状脂肪族炭化水素溶媒、或いはn-ヘキサンまたはn-ヘプタンのような脂肪族炭化水素溶媒との混合物として用いられてよい;これらの化合物の中で、シクロヘキサンを選択することが最も好ましい。
【0120】
極性添加剤の例には、ジアルキルエーテル、環状エーテル、およびトリアルキルアミンが含まれる。極性添加剤は、有機リチウム開始剤のリチウムイオン1当量に比例して約0.3から約2.0当量の範囲内、そしてより特定的には約0.5から約1.5当量の範囲内で用いられる。有機リチウム開始剤のリチウムイオン1当量に比例して、トリエチルアミンが約0.5から約1.5当量の範囲内で用いられることが好ましく、約0.7から約1.2当量の範囲内で用いられることがより好ましい。
【0121】
2官能性開始剤を調製するための最初の反応工程は、約-40から約40℃の温度において約1から約10時間、より好ましくは約-40から約20℃の温度において約1から約3時間行われる。2番目の反応工程は、そのようにして調製された2官能性開始剤が、共役ジエン-芳香族ビニルモノマーに対して非極性炭化水素溶媒および極性添加剤の存在下に添加されて、2官能性開始剤の一方の末端を活性化し、かくしてランダムコポリマーを合成することである。
【0122】
非極性炭化水素溶媒の好ましい例には、シクロヘキサン、n-ヘキサン、およびn-ヘプタン、またはその混合物が含まれる。環状エーテルおよびジアルキルエーテルは、0.2から5重量%という最も好ましい範囲においてランダム化剤として用いられる。
【0123】
さらに、4から8の炭素原子の共役ジエンモノマーは、1,3-ブタジエン、2-メチル-1,3-ブタジエン、1,3-ペンタジエン、または1,3-ヘキサジエンからなる群より選択されてよい。芳香族ビニルモノマーの非限定的な例には、スチレンまたはアルファメチルスチレンが含まれる。
【0124】
第2工程の反応は、約-40から約70℃の温度において、モノマーからポリマーへの変換が90パーセントを超えるまで行われる。好ましいのは反応を変換が95パーセントを超えるまで行うことであり、最も好ましいのは変換が99パーセントを超えるまで行うことである。第2工程の反応を介して調製されるランダムコポリマーにおいては、そのスチレン含有量が約10から約30重量%の範囲内にあることが好ましく、約15から約25重量%の範囲内にあることがより好ましい。さらに、ビニル含有量は約40から約70重量%の範囲内にあり、より好ましくは約40から約50重量%の範囲内にある。最後の第3工程の反応は、ランダムポリマーに対して極性材料が添加され、次いでポリマー両端の活性部位に求電子材料が添加され、かくして官能基を両末端に有するポリマーが形成されることである。
【0125】
エーテルおよび3級アミンは極性材料として使用することができる。極性材料の具体的な例には、ジエチルエーテル、ジ-n-プロピルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジ-n-ブチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、トリメチルアミン、トリエチルアミン、N',N,N',N'-テトラメチルエチレンジアミン、およびN,N,N',N',N''-ペンタメチルジエチレントリアミンが含まれる。1当量のリチウムイオンに比例して、100当量未満の、最も好ましくは10当量未満の極性材料を使用してよい。
【0126】
さらに、ポリマーの両末端に添加される求電子材料の例には、アミノケトン、アミノアルデヒド、チオアミノケトン、チオアミノアルデヒド、およびアミドが含まれる。求電子材料はポリマーに対して、1当量のリチウムイオンに比例して約0.5から約3当量の範囲内で添加される。特に、4-ジメチルアミノベンゾフェノン、4-ジエチルアミノベンゾフェノン、または4,4'-ビス-(ジエチルアミノ)ベンゾフェノンの場合には、1当量のリチウムイオンに比例して約0.8から約1.5当量が用いられることが最も好ましい。
【0127】
第3工程の反応は、約-40から約80℃の温度において約1から約6時間、そしてより特定的には約60から約80℃の温度において約1から約2時間行われる。
【0128】
この3工程反応から調製されるランダムコポリマーに適用可能な重量平均分子量は、約100,000から約500,000の範囲内、好ましくは約200,000から約400,000の範囲内にある。
【0129】
ある態様は、少なくとも1つの官能基を含むジエン系ポリマー(i)(a)を供給することであり、そこではポリマーは、スチレンモノマー、ブタジエンモノマー、およびエポキシアクリレートモノマーの乳化状態におけるラジカル重合、およびスチレン-ブタジエン-エポキシアクリレートコポリマーの開環によって調製される。こうした少なくとも1つの官能基を含むジエン系ポリマー(i)(a)は、参照によってその全内容を本願に取り入れる米国特許第9,328,176B2に従って調製される。こうしたジエン系ポリマーはシリカとブレンドされた場合に、ウェット制動特性および耐摩耗性に寄与する。
【0130】
重合反応に用いられるモノマーの中で、スチレンモノマーは、スチレン、メチルスチレン、およびジメチルスチレンから選択される1つまたはより多くであってよく、そしてモノマーの合計重量に基づいて約10から約50重量%、より特定的には約20から約40重量%の量で使用される。10重量%未満の量で使用される場合には、引張特性およびその他の機械的性質が不十分となりうる。他方、50重量%を超える量で使用される場合には、弾性や耐摩耗性が不十分となりうる。ブタジエンモノマーは、1,3-ブタジエンおよびイソプレンの1つまたはより多くであってよく、モノマーの合計重量に基づいて約45から約85重量%、そしてより特定的には約60から約80重量%の量で使用される。45重量%未満の量で使用される場合には、弾性や耐摩耗性が不十分となりうる。他方、85重量%を超える量で使用される場合には、引張特性およびその他の機械的性質が不十分となりうる。スチレンモノマーおよびブタジエンモノマーから生成されるコポリマーでは、ブタジエン単位はトランスまたはシスの構成配置を有してよい。
【0131】
エポキシアクリレートモノマーはグリシジルアクリレートまたはグリシジルメタクリレートであってよく、そして好ましくはモノマーの合計重量に基づいて約0.1から約10重量%、より特定的には約1から約8重量%、さらにより特定的には約2から約5重量%の量で用いられる。0.1重量%未満の量で使用される場合には、スチレン-ブタジエン-アクリレートコポリマーが有する親水性は不十分となりうる。他方、10重量%を超える量で使用される場合には、弾性が低下して強度が増大するため、処理が困難になりうる。
【0132】
技術分野において一般的に用いられているラジカル開始剤が使用されてよい。乳化重合において使用されるラジカル開始剤系は、過硫酸カリウムおよび過硫酸アンモニウムのような過硫酸塩、過酸化アセチルアセトン、過酸化ベンゾイル、過酸化ジクミル、p-メンタンヒドロペルオキシド、2,4-ジクロロ過酸化ベンゾイル、過酢酸t-ブチル、2,2'-アゾビス(イソブチルアミジン)ジヒドロクロリド、アゾビスイソブチロニトリル、過酸化水素、酸化還元系、硫酸第1鉄、その他から選択されて使用されてよい。
【0133】
スチレンモノマー、ブタジエンモノマー、およびエポキシアクリレートモノマーの重合においては、ヒドロキシル官能基がエポキシ環の開環に関与することができる。スチレンモノマー、ブタジエンモノマー、およびエポキシアクリレートモノマーのラジカル重合の最初の工程において、コポリマーを調製するために乳化状態が実行され、そして第2工程において、エポキシの環が酸性またはアルカリ性条件下に開環される。エポキシ環の開環の結果、コポリマーは1,2-ジヒドロキシルプロピル基を含むペンダントエステルを有することになる。
【0134】
ジエン系ポリマー(i)(a)の調製においては、ラジカル開始剤はモノマーの合計重量に基づいて、約0.05から約3重量部、そしてより特定的には約0.1から約2重量部の量で使用される。0.05重量部未満の量で使用される場合には、十分な重合が行われない場合がある。他方、3重量部を超える量で使用される場合には、低分子量のコポリマーが得られる場合がある。
【0135】
さらに、乳化剤として、アニオン性、カチオン性、またはノニオン性の界面活性剤が使用されてよい。アニオン性界面活性剤は、アルキル硫酸金属塩、アルキルアリルスルホン酸金属塩、アルキルリン酸金属塩、アルキル硫酸アンモニウム塩、アルキルアリルスルホン酸アンモニウム塩、アルキルアリールスルホン酸アンモニウム塩、アリルスルホン酸アンモニウム塩、またはアルキルリン酸アンモニウム塩から選択され使用されてよい。特定的には、ドデシルベンゼンスルホン酸、ロジン酸、脂肪酸、ラウリルスルホン酸、またはヘキサデシルスルホン酸の金属塩またはアンモニウム塩が使用されてよい。カチオン性界面活性剤には、塩化ドデシルトリメチルアンモニウムのようなテトラ置換されたハロゲン化アンモニウムが含まれる。ノニオン性界面活性剤は、ヒドロキシル末端炭化水素から出発したポリアルキレンオキシドポリマーである。
【0136】
乳化剤は、モノマーの合計100重量部に基づいて約0.1から約10重量部、より特定的には約1から約5重量部の量で使用される。
【0137】
さらに、ジエン系ポリマー(i)(a)の調製に際しては、8から20の炭素原子を有するメルカプタン化合物が分子量調節剤として使用されてよい。好ましくは、オクチルメルカプタン、デシルメルカプタン、ドデシルメルカプタン、およびヘキサデシルメルカプタンから選択される1つまたはより多くが使用されてよい。スチレン-ブタジエンコポリマーの平均分子量は、分子量調節剤の量を制御することによって調節してよい。メルカプタン系の分子量調節剤が、モノマーの合計100重量部に基づいて約0.001から約2重量部の量で使用される場合、高分子量のスチレンモノマー-ブタジエンコポリマーが調製されうる。他方、約0.5から約2重量部の量で使用される場合には、低分子量のスチレン-ブタジエンコポリマーが調製されうる。メルカプタン系の分子量調節剤が0.0001重量部未満の量で使用される場合には、ゲル化が生じうる。他方、2重量部を超える量で使用される場合には、物性の低下が生じうる。
【0138】
ジエン系ポリマー(i)(a)の調製に際しては、ジエチルヒドロキシルアミン、N-イソプロピルヒドロキシルアミン、モノエチルヒドロキシルアミン、ジメチルジチオカルバメートナトリウム、またはその他を重合停止剤として使用してよい。好ましくは、重合停止剤はモノマーの合計100重量部に基づいて約0.01から約2重量部、より特定的には約0.1から約1重量部の量で使用してよい。
【0139】
ジエン系ポリマーを調製する方法は複数の工程を含む。最初に、スチレンモノマー、ブタジエンモノマー、およびエポキシアクリレートモノマーが乳化状態で、約0から約70℃、より特定的には約15から約60℃において約4から約48時間ラジカル重合される。結果として、1モル当たり約100,000から約2,000,000グラム、より特定的には約200,000から約1,000,000グラムの平均分子量を有するスチレン-ブタジエンコポリマーが調製される。
【0140】
エポキシ基は、酸、塩基またはアミンのような求核剤の存在下に開環し、それによってシリカとの相溶性が改善される。酸は硫酸、リン酸、塩酸、酢酸、フッ酸またはその他であってよく、そして塩基は水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化アンモニウムまたはその他であってよい。好ましくは、開環剤である酸または塩基は、モノマーの合計100重量部に基づいて約1から約20重量部、より特定的には約2から約10重量部の量で用いられる。
【0141】
乳化重合によつて調製されるジエン系ポリマー(i)(a)は、約20から約2000ナノメートルの範囲内の粒子を有し、また1モル当たり約100,000から約3,000,000グラムの平均分子量を有し、そしてより特定的には約40から約1500ナノメートルで、1モル当たり約150,000から約2,000,000グラムの平均分子量を有する。
【0142】
ある態様は、少なくとも1つの官能基を含むジエン系ポリマー(i)(a)を供給することであり、そこでの官能基はスタニル官能基である。少なくとも1つの官能基を含むこのジエン系ポリマー(i)(a)は、参照によってその全体を本願に取り入れる米国特許第5,514.757号に従って調製可能である。モノマーのアニオン重合は、上記のようにして行われる。リビングアニオンポリマーは次いで、スズ化合物と反応される。有用なスズ化合物には、SnCl4、(R16)3SnCl、(R16)2SnCl2、SiCl4、(R16)3SiCl、(R16)2SiCl2、R16SiCl3、Cl3Si-SiCl3、Cl3Si-O-SiCl3、Cl3Sn-SnCl3、Cl3Sn-O-SnCl3、ここでのR16は1から12の炭素原子のアルキル基、Sn(OCH3)4またはSn(OCH2CH3)4が含まれている。最も好ましいカップリング剤はSiCl4、Sn(OCH3)4、およびSi(OCH3)4である。
官能基を含まないジエン系ポリマー(i)(b)
【0143】
幾つかの実施態様において、ジエン系ポリマーは官能基を含有しないジエン系ポリマーを含んでいてよい。
【0144】
他方のゴム成分である、官能基を含まないジエン系ポリマー(i)(b)は、技術分野において周知の加硫可能な、すなわち硬化性の適切なゴム(有機ポリマー)であり、記載された数多くの文献のうち2つの例を挙げれば「バンダービルトゴムハンドブック」R.F.Ohm編(バンダービルト社、コネチカット州ノーウォーク1990年)、および「ゴム産業マニュアル」T.Kempermann、S.KochおよびJ.Sumner編(バイエル社、ドイツ国レバークーゼン1993年)であり、これらは本願開示と矛盾しない範囲で全内容を本願に取り入れる。
【0145】
適切な加硫型ポリマーの代表的な例には、溶液重合で調製されたスチレンブタジエンゴム(S-SBR)、乳化重合で調製されたスチレンブタジエンゴム(E-SBR)、天然ゴム(NR)、ポリブタジエン(BR)、エチレン-プロピレンコポリマーおよびターポリマー(EP、EPDM)、並びにアクリロニトリル-ブタジエンゴム(NBR)が含まれる。本願のゴム組成物は、少なくとも1つのジエン系エラストマー、すなわちゴムを含んでいる。適切な共役ジエンはイソプレンおよび1,3-ブタジエンであり、適切なビニル芳香族化合物はスチレンおよびアルファメチルスチレンである。
【0146】
ジエン系ポリマー(i)(b)、すなわちゴムは、例えばシス-1,4-ポリイソプレンゴム(天然および/または合成、そして好ましくは天然ゴム)、乳化重合で調製されたスチレン/ブタジエンコポリマーゴム、有機溶液重合で調製されたスチレン/ブタジエンゴム、3,4-ポリイソプレンゴム、イソプレン/ブタジエンゴム、スチレン/イソプレン/ブタジエンターポリマーゴム、シス-1,4-ポリブタジエン、中ビニル含量ポリブタジエンゴム(35パーセントから50パーセントのビニル)、高ビニル含量ポリブタジエンゴム(50パーセントから75パーセントのビニル)、スチレン/イソプレンコポリマー、乳化重合で調製されたスチレン/ブタジエン/アクリロニトリルターポリマーゴム、およびブタジエン/アクリロニトリルコポリマーゴムの少なくとも1つから選択されてよい。やはり有用なのは、乳化重合で調製されて導かれ、20パーセントから28パーセントの結合スチレンという相対的に従来型のスチレン含量を有するスチレン/ブタジエン(E-SBR)、また幾つかの用途については、中から相対的に高の結合スチレン含量、すなわち30パーセントから45パーセントの結合スチレン含量を有するE-SBRである。乳化重合で調製され、ターポリマー中に2から40重量%の結合したアクリロニトリルを含むスチレン/ブタジエン/アクリロニトリルターポリマーゴムもまた、ジエン系ポリマーとして考慮される。
【0147】
溶液重合で調製されたSBR(S-SBR)は典型的には、約5から約50パーセント、好ましくは約9から約36パーセントの範囲内にある結合スチレン含量を有する。ポリブタジエンエラストマーは例えば、少なくとも90重量%のシス-1,4-含有量を有することによって都合よく特徴付けられてよい。
【0148】
ゴム組成物の合計重量は、少なくとも1つの官能基を含むジエン系ポリマー(i)(a)の重量のそれぞれの合計と、官能基を含んでいないジエン系ポリマー(i)(b)のそれぞれの重量の合計の和である。ゴム組成物の合計重量は、ゴム100重量部に設定される。この重量はジエン系ポリマー(i)(a)および(i)(b)の重量のみを含んでおり、プロセス油、溶媒またはポリマーとブレンドされてよい他の添加剤の重量を含んでいない。ゴム100重量部のうち、少なくとも1つの官能基を含むジエン系ポリマー(i)(a)のそれぞれの合計重量は、ゴムの合計100重量部に基づいて(phr)ジエン系ポリマー(i)(a)が0から約100重量部、より特定的にはジエン系ポリマー(i)(a)が約5から約100重量部、さらにより特定的にはゴムの合計100重量部に基づいて(phr)ジエン系ポリマー(i)(a)が約20から約90重量部、そしてなおさらにより特定的にはゴムの合計100重量部に基づいて(phr)ジエン系ポリマー(i)(a)が約40から約80重量部であり、また官能基を含んでいないジエン系ポリマー(i)(b)のそれぞれの合計重量は、ゴムの合計100重量部に基づいてジエン系ポリマー(i)(b)が0から約100重量部、より特定的にはゴムの合計100重量部に基づいてジエン系ポリマー(i)(b)が0から約95重量部、さらにより特定的にはゴムの合計100重量部に基づいて(phr)ジエン系ポリマー(i)(b)が約10から約80重量部、そしてなおさらにより特定的にはゴムの合計100重量部に基づいて(phr)ジエン系ポリマー(i)(b)が約20から約60重量部である。
【0149】
幾つかの実施態様において、本開示の組成物は、重量で約20%から約50%、約25%から約50%、約30%から約50%、約35%から約50%、約40%から約50%、約45%から約50%、約20%から約45%、約25%から約45%、約30%から約45%、約35%から約45%、約40%から約45%、約20%から約40%、約25%から約40%、約30%から約40%、約35%から約40%、約20%から約35%、約25%から約35%、約30%から約35%、約20%から約30%、または約25%から約30%の少なくとも1つのジエン系ポリマーを含んでいてよい。
沈降シリカ成分(ii)
【0150】
1つの態様においては、沈降シリカ(ii)がシラン反応性フィラーとして使用される。好ましいシリカは窒素ガスを用いて測定したBET比表面積によって特徴付けられてよく、好ましくは約40から約600m2/gの範囲にあり、そしてより通常は約50から約300m2/gの範囲にある。好ましいシリカはまた、約100から約350、そしてより通常は約150から約300の範囲にあるジブチルフタレート(DBP)吸着値を有することによって特徴付けられてよい。さらにまた、シリカフィラー、並びに上述したアルミナおよびアルミノシリケートフィラーは、約100から約240の範囲にあるセチルトリメチルアンモニウムブロミド(CTAB)比表面積を有することによって特徴付けられてよい。CTAB比表面積は、セチルトリメチルアンモニウムブロミドを用いてpH9で測定される外部比表面積であり、ASTM D3849の方法を用いる。
【0151】
水銀細孔表面積は、水銀ポロシメトリー法によって決定される比表面積である。この方法によれば、粒状フィラーの被測定試料から揮発性物質を除去するための熱処理の後に、水銀は細孔内へと侵入することが可能とされる。典型的な設定条件は100mgの試料を包含し、105℃および雰囲気大気圧において2時間かけて揮発性物質を除去し、そして圧力は大気圧から2000バールまで変化させる。水銀ポロシメトリー法は、WinslowおよびShapiroがASTM会報39ページ(1959)に記載したところに従い、またはDIN66133に従って行われてよい。こうした方法については、CARLO-ERBA社のポロシメーター2000を使用してよい。典型的なシリカフィラーについての平均的な水銀細孔比表面積は、約100から約300m2/gの範囲にわたることができる。
【0152】
上述した水銀ポロシメトリー法によるシリカ、アルミナ、およびアルミノシリケートについての適切な細孔径分布は:細孔の5パーセントまたはそれ未満が10nm未満の径を有し;細孔の約60パーセントから約90パーセントが約10から約100nmの径を有し;細孔の約10パーセントから約30パーセントが約100から約1,000nmの径を有し;そして細孔の約5パーセントから約20パーセントが1,000nmを超える径を有する。
【0153】
シリカは、例えば電子顕微鏡で決定されるところで約0.01から約0.05μmの範囲内の平均最終粒径を有することが予測されてよいが、シリカ粒子の大きさはより小さくても、或いはより大きくてもよい。種々の商業的に入手可能なシリカが有用であり、例えば商標HI-SILを付してHI-SIL 190、210、243その他の表示のもとにPPGインダストリー社から市販されているシリカ;例えばZEOSIL1165MP、Zeosil195HR、およびZeosil Premium200MPの表示のもとにソルベイ社(以前はローディア社として知られていた)から市販されているシリカ;例えばVN2およびVN3、並びにUltrasil7000GRその他の表示のもとにエボニックインダストリー社から市販されているシリカ;および例えばHUBERSIL8745の表示のもとにフーバー社から市販されているシリカがある。
【0154】
1つの態様において、ゴム組成物が沈降シリカ(ii)および他のフィラーの両方を含有することが望ましい場合には、その非限定的な代表例は二酸化チタン、アルミナ、およびアルミノシリケート、クレイおよびタルクのようなケイ質材料、およびこれらの混合物である。不活性、すなわちシランと非反応性のフィラー(単数または複数)、例えばカーボンブラック、アセチレレンブラック、炭酸カルシウム、および硫酸バリウムを、シラン反応性粒状フィラー(単数または複数)(ii)と共に用いてよい。タイヤトレッドのようなゴム製品に用いるためには、シリカとカーボンブラックの組み合わせが特に有利である。アルミナは単独で、またはシリカと組み合わせて使用することができる。本願では用語「アルミナ」は、酸化アルミニウム、すなわちAl2O3を指している。フィラーは水和物または無水物の形態であってよい。ゴム組成物にアルミナを使用することは、例えば米国特許第5,116,886号および欧州特許0631982に記載されており、これらはそれぞれ全体を参照によって本願に取り入れる。
【0155】
別の実施態様において、沈降シリカ(ii)およびカーボンブラックをフィラー/強化顔料として、沈降シリカとカーボンブラックの重量比は少なくとも約3/1であることが多くの場合に好ましく、好ましくは少なくとも約10/1から約30/1までである。フィラーは約15から約95重量%の沈降シリカと、これに対応して約5から約85重量%のカーボンブラックを含むことができ、ここでカーボンブラックは約80から約150の範囲にあるCTAB値を有する。代替的には、フィラーは約60から約95重量%の沈降シリカと、これに対応して約40から約5重量%のカーボンブラックを含むことができる。沈降シリカとカーボンブラックフィラーは予めブレンドすることができ、または加硫ゴムの製造に際して一緒にブレンドすることができる。
【0156】
沈降シリカ(ii)は、ゴム100重量部当たり(phr)約5から約140重量部の量の沈降シリカが使用される。別の実施態様において、沈降シリカ(ii)は特定的には約40から約110phrの量で使用することができ、より特定的には約60から約80phrの量で使用することができる。カーボンブラックが使用される場合には、その量はゴム100重量部当たり約0.5から約50重量部のカーボンブラックと変化してよく、より特定的には約1から約10phr、そしてさらにより特定的には約2から約5phrである。カーボンブラックは、ゴム組成物に黒色を付与するため、紫外線(UV)安定剤として、そしてタイヤのような物品の使用から形成される静電気を放電するために使用される。
【0157】
他のフィラー、例えば二酸化チタン、クレイ、アルミネート、アルミノシリケートのようなケイ質フィラー、粒状酸化鉄およびその他は種々の添加レベルで使用可能であり、例えばゴム100重量部当たりフィラー約1から約50重量部、より特定的には約5から約25phrなどが含まれる。
【0158】
幾つかの実施態様において、本開示の組成物は、重量で約20%から約50%、約25%から約50%、約30%から約50%、約35%から約50%、約40%から約50%、約45%から約50%、約20%から約45%、約25%から約45%、約30%から約45%、約35%から約45%、約40%から約45%、約20%から約40%、約25%から約40%、約30%から約40%、約35%から約40%、約20%から約35%、約25%から約35%、約30%から約35%、約20%から約30%、または約25%から約30%の沈降シリカを含んでいてよい。
カップリング剤パッケージ(iii)
【0159】
少なくとも1つのカップリング剤パッケージは、メルカプト官能性アルキルアルコキシシランおよびブロック化メルカプト官能性アルキルアルコキシシランを含む。
【0160】
カップリング剤パッケージ(iii)は、メルカプトシラン(iii)(a)およびブロック化メルカプトシラン(iii)(b)を含む。
【0161】
1つの態様において、メルカプトシラン(iii)(a)は一般式(X)を有し:
【化8】
式中
R
17は独立して1から6の炭素原子の直鎖アルキレン基または3から6の炭素原子の分岐鎖アルキレン基;
R
18のそれぞれは2から8の炭素原子の直鎖アルキレン基または3から8の炭素原子の分岐鎖アルキレン基;
R
19のそれぞれは独立して1から6の炭素原子の直鎖アルキレン基または3から6の炭素原子の分岐鎖アルキレン基;
X
1は-OR
20基、ここでR
20は1から4の炭素原子のアルキル基、-OR
21OH基、ここでR
21は2から8の炭素原子の直鎖アルキレン基または3から8の炭素原子の分岐鎖アルキレン基、またはX
1は-OR
22(OR
23)
cOR
24、ここでR
22は2から6の炭素原子の直鎖アルキレン基または3から6の炭素原子の、好ましくは3の炭素原子の分岐鎖アルキレン基、それぞれのR
23は独立して2から4の炭素原子のアルキレン基、およびR
24は水素、1から16の炭素原子の直鎖アルキル基または3から16の炭素原子の分岐鎖アルキル基、そしてcは1から20の整数;
X
2およびX
3は独立してX
1またはメチル;
X
4のそれぞれは独立してX
1またはメチル;そして
aは0から8の整数、但し
(i)X
1およびX
2が-OR
20のとき、2つの-OR
20は共有結合を介して一緒に結合されて同じケイ素原子に結合された-OR
20-R
20O-基を形成して2から8の炭素原子、2つの酸素原子、およびケイ素原子を含む環状構造を形成してよく;そして
(ii)aが1から8でありX
3およびX
4が-OR
20のとき、2つの-OR
20基は共有結合を介して一緒に結合されて同じケイ素原子に結合された-OR
20-R
20O-基を形成して2から8の炭素原子、2つの酸素原子およびケイ素原子基を含む環状構造を形成してよい。
【0162】
別の実施態様において、メルカプトシラン(iii)(a)は式(I)の構造を有し、そこにおいてR17は1から6の炭素原子の直鎖アルキレン基または3から6の炭素原子の分岐鎖アルキレン基、X1は-OR20基であり、ここでR20は1から4の炭素原子のアルキル基、X2およびX3は独立してX1またはメチル、そしてaは0である。
【0163】
さらに別の態様において、メルカプトシランは式(I)の構造を有し、そこにおいてR17は独立して1から6の炭素原子の直鎖アルキレン基または3から6の炭素原子の分岐鎖アルキレン基、R18のそれぞれは2から8の炭素原子の直鎖アルキレン基または3から8の炭素原子の分岐鎖アルキレン基、R19のそれぞれは独立して1から6の炭素原子の直鎖アルキレン基または3から6の炭素原子の分岐鎖アルキレン基、X1およびX2は-OR20、ここでR20は1から4の炭素原子のアルキル基、そしてX1およびX2の2つの-OR20基は共有結合を介して一緒に結合されて同じケイ素原子に結合された-OR20-R20O-基を形成して2から8の炭素原子、2つの酸素原子およびケイ素原子基を含む環状構造を形成し、またはX1およびX2のそれぞれは-OR21OH基であり、ここでR21は2から8の炭素原子の直鎖アルキレン基または3から8の炭素原子の分岐鎖アルキレン基、X3およびX4は独立して-OR20基、ここでR20は1から4の炭素原子のアルキル基、-OR21OH基、ここでR21は2から8の炭素原子の直鎖アルキレン基または3から8の炭素原子の分岐鎖アルキレン基であり、但しX3およびX4が-OR20のとき、2つの-OR20基は共有結合を介して一緒に結合されて同じケイ素原子に結合した-OR20-R20O-基を形成してよく、2から8の炭素原子、2つの酸素原子およびケイ素原子を含む環状構造を形成し、aは1から8、好ましくは1から3である。
【0164】
メルカプトシラン(iii)(a)の代表的で非限定的な例には、3-メルカプト-1-プロピルトリエトキシシラン、2-メルカプト-1-エチルトリエトキシシラン、メルカプトメチルトリエトキシシラン、6-メルカプト-1-ヘキシルトリエトキシシラン、4-メルカプト-1-ブチルトリエトキシシラン、1-メルカプト-1-エチルトリエトキシシラン、3-メルカプト-1-プロピルメチルジエトキシシラン、3-メルカプト-1-プロピルジメチルエトキシシラン、3-メルカプト-1-プロピルトリメトキシシラン、2-メルカプト-1-エチルトリメトキシシラン、メルカプトメチルトリメトキシシラン、6-メルカプト-1-ヘキシルトリメトキシシラン、4-メルカプト-1-ブチルトリメトキシシラン、1-メルカプト-1-エチルトリメトキシシラン、3-メルカプト-1-プロピルメチルジメトキシシラン、3-メルカプト-1-プロピルジメチルメトキシシラン、3-メルカプト-1-プロピルトリプロポキシシラン、3-メルカプト-1-プロピルトリイソプロポキシシラン、3-メルカプト-1-プロピルトリブトキシシラン、4-(3,6,9,12,15-ペンタ-オキサオクタコシルオキシ)-4-エトキシ-5,8,11,14,17,20-ヘキサオクタ-4-シラトリトリアコンタン-1-チオール、3-(2-{3-[2-(3-メルカプト-プロピル)-5-メチル-[1,3,2]ジオキサシリナン-2-イルオキシ]-2-メチル-プロポキシ}-5-メチル-[1,3,2]ジオキサシリナン-2-イル)-プロパン-1-チオール;3-(2-{3-[2-(3-メルカプト-プロピル)-4,4,6-トリメチル-[1,3,2]ジオキサシリナン-2-イルオキシ]-2-メチル-プロポキシ}-4,4,6-トリメチル-[1,3,2]ジオキサシリナン-2-イル)-プロパン-チオール;3-(2-{3-[2-(3-メルカプト-プロピル)-4,4,6-トリメチル-[1,3,2]ジオキサシリナン-2-イルオキシ]-1,1-ジメチル-ブトキシ}-4,4,6-トリメチル-[1,3,2]ジオキサシリナン-2-イル)-プロパン-1-チオール;3-({3-[2-メルカプト-プロピル)-5-メチル-[1,3,2]ジオキサシリナン-イルオキシ]-2-メチル-プロポキシ}-ビス-[3-ヒドロキシ-2-メチル-プロポキシ]-シラニル)-プロパン-1-チオール;3-[{3-[{3-ビス-(3-ヒドロキシ-2-メチル-プロピル)-(3-メルカプト-プロピル)-シラニルオキシ]-1-メチル-プロポキシ}-(3-ヒドロキシ-2-メチル-プロポキシ)-(3-メルカプト-プロピル)-シラニルオキシ]-2-メチル-プロパン-1-オル;3-[[3-((3-ヒドロキシ-3-メチル-プロポキシ)-3-メルカプト-プロピル)-{3-[2-(3-メルカプト-プロピル)-5-メチル-[1,3,2]ジオキサシリナン-2-イルオキシ]-1-メチル-プロポキシ}-シラニルオキシ)-メチル-プロポキシ-(3-ヒドロキシ-2-メチル-プロポキシ)-3-メルカプト-プロピル)-シラニル]-2-メチルプロパン-1-オル;3-(2-{3-[2-(3-メルカプト-ブチル)-[1,3,2]ジオキサシリナン-2-イルオキシ]-プロポキシ}-[1,3,2]ジオキサシリナン-2-イル)ブタン-1-チオール;3-({3-[2-メルカプト-メチル)-5-メチル-[1,3,2]ジオキサシリナン-2-イルオキシ]-2-メチル-プロポキシ}-ジエトキシ]-シラニル)-メタン-1-チオール;3-[{3-[{3-ビス-(3-ヒドロキシ-2,2-ジメチル-プロピル)-(3-メルカプト-プロピル)-シラニルオキシ]-2,2-ジメチル-プロポキシ}-(3-ヒドロキシ-2,2-ジメチル-プロポキシ)-(3-メルカプト-プロピル)-シラニルオキシ]-2,2-ジメチル-プロパン-1-オル;3-[{3-[(メチル)-(3-ヒドロキシ-2-メチル-プロポキシ)-(3-メルカプト-プロピル)-シラニルオキシ]-2-メチル-プロポキシ}-メチル)-(3-メルカプト-プロピル)-シラニルオキシ]-2-メチル-プロパン-1-オル、およびこれらの組み合わせが含まれる。
【0165】
別の実施態様において、ブロック化メルカプトシラン(iii)(b)は一般式(XI)を有し:
【化9】
式中
R
17は独立して1から6の炭素原子の直鎖アルキレン基または3から6の炭素原子の分岐鎖アルキレン基;
R
18のそれぞれは2から8の炭素原子の直鎖アルキレン基または3から8の炭素原子の分岐鎖アルキレン基;
R
19のそれぞれは独立して1から6の炭素原子の直鎖アルキレン基または3から6の炭素原子の分岐鎖アルキレン基;
X
1は-OR
20基、ここでR
20は1から4の炭素原子のアルキル基、-OR
21OH基、ここでR
21は2から8の炭素原子の直鎖アルキレン基または3から8の炭素原子の分岐鎖アルキレン基、またはX
1は-OR
22(OR
23)
cOR
224、ここでR
22は2から6の炭素原子の直鎖アルキレン基または3から6の炭素原子、好ましくは3の炭素原子の分岐鎖アルキレン基、R
23のそれぞれは独立して2から4の炭素原子のアルキレン基、そしてR
24は1から16の炭素原子の直鎖アルキル基または3から16の炭素原子の分岐鎖アルキル基、そしてcは1から20の整数;
X
2およびX
3は独立してX
1またはメチル;
X
4のそれぞれは独立してX
1またはメチル;
Y
1のそれぞれは-C(=O)R
25または-C(=S)OR
25、ここでそれぞれれのR
25は独立して1から16の、より特定的には5から11の炭素原子の、そしてさらにより特定的には6から9の炭素原子の直鎖アルキレン基、または3から16の炭素原子の、より特定的には5から11の炭素原子の、そしてさらにより特定的には6から9の炭素原子の分岐鎖アルキレン基;そして
aは0から8の整数であり、但し
(i)X
1およびX
2が-OR
20のとき、2つの-OR
20は共有結合を介して一緒に結合されて同じケイ素原子に結合された-OR
20-R
20O-基を形成して2から8の炭素原子、2つの酸素原子、およびケイ素原子を含む環状構造を形成してよく;そして
(ii)aが1から8でありX
3およびX
4が-OR
20のとき、2つの-OR
20基は共有結合を介して一緒に結合されて同じケイ素原子に結合された-OR
20-R
20O-基を形成して2から8の炭素原子、2つの酸素原子およびケイ素原子を含む環状構造を形成する。
【0166】
別の実施態様において、ブロック化メルカプトシラン(iii)(b)は式(I)の構造を有し、そこにおいてR17は1から6の炭素原子の直鎖アルキレン基または3から6の炭素原子の分岐鎖アルキレン基、Y1は-C(=O)R25または-C(=S)OR25、ここでそれぞれのR25は独立して1から16の炭素原子、より特定的には5から11の炭素原子、そしてさらにより特定的には6から9の炭素原子の直鎖アルキレン基、または3から16の炭素原子の、より特定的には5から11の炭素原子の、そしてさらにより特定的には6から9の炭素原子の分岐鎖アルキレン基、X1は-OR20基であり、ここでR20は1から4の炭素原子のアルキル基、X2およびX3は独立してX1またはメチルであり、そしてaは0である。
【0167】
さらに別の態様において、ブロック化メルカプトシラン(iii)(b)は式(I)の構造を有し、そこにおいてR17は独立して1から6の炭素原子の直鎖アルキレン基または3から6の炭素原子の分岐鎖アルキレン基、R18のそれぞれは2から8の炭素原子の直鎖アルキレン基または3から8の炭素原子の分岐鎖アルキレン基、R19のそれぞれは独立して1から6の炭素原子の直鎖アルキレン基または3から6の炭素原子の分岐鎖アルキレン基、Y1は-C(=O)R25または-C(=S)OR25、ここでそれぞれのR25は独立して1から16の炭素原子、より特定的には5から11の炭素原子、そしてさらにより特定的には6から9の炭素原子の直鎖アルキレン基、または3から16の炭素原子の、より特定的には5から11の炭素原子の、そしてさらにより特定的には6から9の炭素原子の分岐鎖アルキレン基;X1およびX2は-OR20、ここでR20は1から4の炭素原子のアルキル基であり、そしてX1およびX2の2つの-OR20基は共有結合を介して一緒に結合されて同じケイ素原子に結合された-OR20-R20O-基を形成して2から8の炭素原子、2つの酸素原子およびケイ素原子基を含む環状構造を形成し、またはX1およびX2のそれぞれは-OR21OH基であり、ここでR21は2から8の炭素原子の直鎖アルキレン基または3から8の炭素原子の分岐鎖アルキレン基、X3およびX4は独立して-OR20基、ここでR20は1から4の炭素原子のアルキル基、-OR21OH基、ここでR21は2から8の炭素原子の直鎖アルキレン基または3から8の炭素原子の分岐鎖アルキレン基であり、但しX3およびX4が-OR20のとき、2つの-OR20基は共有結合を介して一緒に結合されて同じケイ素原子に結合した-OR20-R20O-基を形成してよく、2から8の炭素原子、2つの酸素原子およびケイ素原子を含む環状構造を形成し、aは1から8、好ましくは1から3である。
【0168】
ブロック化メルカプトシラン(iii)(b)の代表的で非限定的な例には、トリエトキシシリルメチルチオホルメート、2-トリエトキシシリルエチルチオアセテート、3-トリエトキシシリルプロピルチオプロパノエート、3-トリエトキシシリルプロピルチオヘキサノエート、3-トリエトキシシリルプロピルチオ-(2-エチル)-ヘキサノエート、3-トリエトキシシリルプロピルチオオクタノエート、3-ジエトキシメチルシリルプロピルチオオクタノエート、3-エトキシジメチルシリルプロピルチオオクタノエート、3-トリエトキシシリルプロピルチオドデカノエート、3-トリエトキシシリルプロピルチオオクタデカノエート、3-トリメトキシシリルプロピルチオオクタノエート、3-トリアセトキシシリルプロピルチオアセテート、3-ジプロポキシメチルシリルプロピルチオプロパノエート、4-オキサ-ヘキシルオキシジメチルシリルプロピルチオオクタノエート、3-(2-{3-[2-(4-チア-5-オキソ-ドデシル)-5-メチル-[1,3,2]ジオキサシリナン-2-イルオキシ]-2-メチル-プロポキシ}-5-メチル-[1,3,2]ジオキサシリナン-2-イル)-4-チア-5-オキソ-ドデカン;3-(2-{3-[2-(4-チア-5-オキソ-ドデシル)-4,4,6-トリメチル-[1,3,2]ジオキサシリナン-2-イルオキシ]-2-メチル-プロポキシ}-4,4,6-トリメチル-[1,3,2]ジオキサシリナン-2-イル)-4-チア-5-オキソ-ドデカン;3-(2-{3-[2-(4-チア-5-オキソ-ドデシル)-4,4,6-トリメチル-[1,3,2]ジオキサシリナン-2-イルオキシ]-1,1-ジメチル-ブトキシ}-4,4,6-トリメチル-[1,3,2]ジオキサシリナン-2-イル)-4-チア-5-オキソ-ドデカン;3-({3-[2-チア-3-オキソ-デシル)-5-メチル-[1,3,2]ジオキサシリナン-イルオキシ]-2-メチル-プロポキシ}-ビス-[3-ヒドロキシ-2-メチル-プロポキシ]-シラニル)-2-チア-3-オキソ-デカン;3-[{3-[{3-ビス-(3-ヒドロキシ-2-メチル-プロピル)-(4-チア-5-オキソ-ドデシル)-シラニルオキシ]-1-メチル-プロポキシ}-(3-ヒドロキシ-2-メチル-プロポキシ)-(4-チア-5-オキソ-ドデシル)-シラニルオキシ]-2-メチル-プロパン-1-オル;3-[[3-((3-ヒドロキシ-3-メチル-プロポキシ)-4-チア-5-オキソ-ドデシル)-{3-[2-(4-チア-5-オキソ-ドデシル)-5-メチル-[1,3,2]ジオキサシリナン-2-イルオキシ]-1-メチル-プロポキシ}-シラニルオキシ)-2-メチル-プロポキシ-(3-ヒドロキシ-2-メチル-プロポキシ)-4-チア-5-オキソ-ドデシル)-シラニル]-2-メチルプロパン-1-オル;3-(2-{3-[2-(4-チア-5-オキソ-6-エチル-デシル)-[1,3,2]ジオキサシリナン-2-イルオキシ]-プロポキシ}-[1,3,2]ジオキサシリナン-2-イル)-4-チア-5-オキソ-6-エチル-デカン;3-({3-[2-チア-3-オキソ-オクチル)-5-メチル-[1,3,2]ジオキサシリナン-2-イルオキシ]-2-メチル-プロポキシ}-ジエトキシ]-シラニル)-2-チア-3-オキソ-オクタン;3-[{3-[{3-ビス-(3-ヒドロキシ-2,2-ジメチル-プロピル)-(4-チア-5-オキソ-ドデシル)-シラニルオキシ]-2,2-ジメチル-プロポキシ}-(3-ヒドロキシ-2,2-ジメチル-プロポキシ)-(4-チア-5-オキソ-ドデシル)-シラニルオキシ]-2,2-ジメチル-プロパン-1-オル;3-[{3-[(メチル)-(3-ヒドロキシ-2-メチル-プロポキシ)-(4-チア-5-オキソ-ドデシル)-シラニルオキシ]-2-メチル-プロポキシ}-メチル)-(4-チア-5-オキソ-ドデシル)-シラニルオキシ]-2-メチル-プロパン-1-オル、およびこれらの組み合わせが含まれる。
【0169】
幾つかの実施態様において、本開示の組成物におけるブロック化メルカプトシランは、ブロック化チオール官能性およびアルコキシシラン官能性を有する2官能性シランである。幾つかの実施態様において、ブロック化メルカプトシランはオクタノイルチオ-1-プロピルトリエトキシシランである。
【0170】
幾つかの実施態様において、本開示のプロセスにおけるメルカプトシランは、ブロック化チオール官能性およびアルコキシシラン官能性を有する2官能性シランである。幾つかの実施態様において、メルカプトシランはメルカプトプロピルトリエトキシシランである。幾つかの実施態様において、メルカプトシランは4-(3,6,9,12,15-ペンタ-オキサオクタコシルオキシ)-4-エトキシ-5,8,11,14,17,20-ヘキサオキサ-4-シラトリトリアコンタン-1-チオールである。
【0171】
幾つかの実施態様において、本開示のプロセスにおけるブロック化メルカプトシランとメルカプトシランの重量比は約75から約25である。幾つかの実施態様において、ブロック化メルカプトシランとメルカプトシランの重量比は約4.8から約1.6、約7から約0.35、約6.25から約0.7、約5.75から約1、約5.2から約1.3、約4.4から約1.9、または約3.6から約2.4である。幾つかの実施態様において、ブロック化メルカプトシランとメルカプトシランの重量比は約3である。幾つかの実施態様において、ブロック化メルカプトシランとメルカプトシランの重量比は約2.85から約3.15である。
【0172】
ブロック化メルカプトシランは、少なくとも1つの官能基を含むジエン系ポリマー(i)(a)および官能基を含まないジエン系ポリマー官能基(i)(b)といった加硫型有機ポリマー(単数または複数)と、沈降シリカのようなシラン反応性粒状フィラー(単数または複数)(ii)のためのカップリング剤である。メルカプトシラン(iii)(a)とブロック化メルカプトシラン(iii)(b)の混合物は、高い処理粘度、望ましいレベルに達しないフィラー分散性、および早過ぎる硬化(スコーチ)といったメルカプトシランの使用に典型的に随伴する有害な副作用を伴うことなしに、メルカプト基の高い性能を活用可能であるという点で特徴的である。これらの利点は、メルカプタン基が最初、望ましくない影響を及ぼすのに必要な量に満たない濃度であることによって実現される。ブロック化メルカプトシラン(iii)(b)は、そのブロッキング基の結果として、ゴム成分(単数または複数)と反応するようには利用できない。一般に、コンパウンド処理プロセスの最初の段階の間は、シラン-SiX1X2X3基とシラン反応性フィラーの反応のみが生じうる。かくして、混合の間はポリマーに対するフィラーの実質的なカップリングは妨げられ、それによって望ましくない早期の硬化(スコーチ)や、それに伴う望ましくない粘度の増大は最小限になる。早期の硬化を防止し、禁止し、または最小限とすることの結果として、処理、転がり抵抗、およびグリップのバランスといった、硬化型充填ゴムのより良好な性能を達成することができる。
【0173】
ブロック化メルカプトシラン(iii)(b)は混合の間にシリカ表面と反応することができるが、非製造混合段階の間は部分的または完全にブロックされたままであり、それによってジエン系ポリマーとの反応を阻止する。ジエンポリマーはブロック化メルカプトシラン(iii)(b)のチオール基と、ブロッキング基が除去された後においてのみ反応する。ブロッキング基の除去は、ブロック化メルカプトシランが求核剤と反応してチオール基を形成した場合に達成される。
【0174】
幾つかの実施態様において、少なくとも1つのカップリング剤パッケージ(iii)は、ゴム100重量部当たりカップリング剤パッケージが約0.5から約20重量部、より特定的にはゴム100重量部当たりカップリング剤パッケージ(iii)が約1から約10重量部、そしてさらにより特定的にはゴム100重量部当たりカップリング剤パッケージ(iii)が約3から約8重量部の量で使用される。
【0175】
幾つかの実施態様において、本願に開示されたゴム組成物におけるブロック化メルカプト官能性アルキルアルコキシシラン(iii)(b)とメルカプト官能性アルキルアルコキシシラン(iii)(a)の重量比は約0.25:1から約50:1である。幾つかの実施態様において、本願に開示されたゴム組成物におけるブロック化メルカプト官能性アルキルアルコキシシラン(iii)(b)とメルカプト官能性アルキルアルコキシシラン(iii)(a)の重量比は約0.5:1から約20:1である。幾つかの実施態様において、本願に開示されたゴム組成物におけるブロック化メルカプト官能性アルキルアルコキシシラン(iii)(b)とメルカプト官能性アルキルアルコキシシラン(iii)(a)の重量比は約1:1から約10:1である。
【0176】
幾つかの実施態様において、本願に開示されたゴム組成物におけるブロック化メルカプトシランとメルカプトシランの重量比は約0.25:1から約50:1である。
【0177】
幾つかの実施態様において、メルカプト官能性アルキルアルコキシシラン(iii)(a)は、ゴム100重量部当たりメルカプト官能性アルキルアルコキシシラン(iii)(a)が約0.1から約10重量部の範囲の量、より特定的にはゴム100重量部当たりメルカプト官能性アルキルアルコキシシラン(iii)(a)が0.5から約5重量部の範囲の量、そしてさらにより特定的にはゴム100重量部当たりメルカプト官能性アルキルアルコキシシラン(iii)(a)が1から3重量部の範囲の量で使用することができる。幾つかの実施態様において、ブロック化メルカプト官能性アルキルアルコキシシラン(iii)(b)は、ゴム100重量部当たりメルカプト官能性アルキルアルコキシシラン(iii)(b)が約0.1から約15重量部の範囲の量、より特定的にはゴム100重量部当たりブロック化メルカプト官能性アルキルアルコキシシラン(iii)(b)が約1から約10重量部の範囲の量、そしてさらにより特定的にはゴム100重量部当たりブロック化メルカプト官能性アルキルアルコキシシラン(iii)(b)が3から8重量部の範囲の量で使用することができる。
【0178】
幾つかの実施態様において、本開示の組成物は、重量で約0.01%から約10%、約0.05%から約10%、約0.1%から約10%、約0.5%から約10%、約1%から約10%、約2%から約10%、約5%から約10%、約7%から約10%、約0.01%から約7%、約0.05%から約7%、約0.1%から約7%、約0.5%から約7%、約1%から約7%、約2%から約7%、約5%から約7%、約0.01%から約5%、約0.05%から約5%、約0.1%から約5%、約0.5%から約5%、約1%から約5%、約2%から約5%、約0.01%から約2%、約0.05%から約2%、約0.1%から約2%、約0.5%から約2%、約1%から約2%、約0.01%から約1%、約0.05%から約1%、約0.1%から約1%、約0.5%から約1%、約0.01%から約0.5%、約0.05%から約0.5%、または約0.1%から約0.5%のメルカプトシランを含んでいてよい。
脱ブロック化剤(iv)
【0179】
沈降シリカ(ii)およびその他のシラン反応性フィラー(単数または複数)をジエン系ポリマー(単数または複数)(i)(a)および(i)(b)に結合するために、メルカプトシラン(iii)(a)とブロック化メルカプトシラン(iii)(b)の混合物を含むカップリング剤パッケージを反応させることが望ましい場合、少なくとも1つの脱ブロック化剤(iv)もまた、ゴム組成物に存在される。
【0180】
この脱ブロック化剤(単数または複数)(iv)は、約0.05から約20phrの範囲の量、より特定的には約0.1から約5phrの範囲の量、そして最も特定的には約0.5から約3phrの範囲の量で存在してよい。混合物中にアルコールまたは水が存在する(通常のように)場合には、加水分解または加アルコール分解によるブロッキング基の放出を開始および促進し、かくして対応する活性メルカプトシランが遊離されるように、触媒(例えば3級アミン、ルイス酸、またはチオール)を使用してよい。代替的には、脱ブロック化剤(iv)は十分に不安定な水素原子を含む求核剤であってよく、かくしてこの水素原子は元のブロッキング基の位置に転移して、対応する活性メルカプトシランをもたらす。かくして、ブロッキング基受容体分子があれば、求核剤からの水素とブロック化メルカプトシランのブロッキング基との交換が起こり、メルカプトシランおよびこれに対応する元のブロッキング基を含む求核剤誘導体が形成される。メルカプトシランから求核剤へのブロッキング基のこの転移は、例えば、最初の反応物質(ブロック化メルカプトシランおよび求核剤)に対して、生成物(メルカプトシランおよびブロッキング基含有求核剤)の熱力学的安定性が大きいことによって推進されうる。例えば、求核剤がN-H結合を含むアミンである場合、ブロック化メルカプトシラン(ii)(b)からのブロッキング基の転移は、メルカプトシランおよびアシル基に対応するアミドまたはザンテート基に対応するチオカルバメートをもたらす。
【0181】
ブロック化メルカプトシラン(iii)(b)に当初存在するブロッキング基、および用いられる脱ブロック化剤(iv)について重要なのは、最初は実質的に不活性な(有機ポリマーに対する結合の観点から)ブロック化メルカプトシラン(iii)(b)が、ゴムのコンパウンド化処理手順における所望の時点において、活性メルカプトシランへと実質的に変換されることである。それがブロック化メルカプトシラン(iii)(b)の一部のみを脱ブロック化して特定の配合物の加硫の度合いを制御するのであれば、求核剤の部分量(すなわち化学量論的に不足)を使用してよいことが留意される。
【0182】
水は脱ブロック化剤であることができ、また典型的にはフィラー上に水和水として存在し、またはヒドロキシル基の形でフィラーに結合されている。
【0183】
脱ブロック化剤(iv)は硬化パッケージに添加することができ、また代替的には単独成分として、コンパウンド化処理プロセスの任意の他の段階において添加することができる。脱ブロック化剤(iv)は単独の剤であることができ、または反応の副生物として現場で生成されることができる。
【0184】
1つの態様において、脱ブロック化剤(iv)は式(XII)を有し:
R26[A3-H]d (XII)
式中:
R26は1から30の炭素原子を含む1価または多価の有機ラジカルまたは水素、
A3のそれぞれは独立して酸素、硫黄、または-NR27基、ここでそれぞれのR27は独立して1から30の炭素原子を含む1価または多価の有機ラジカルまたは水素;そして
dは1から100、好ましくは1から3の整数である。
【0185】
より特定的には、R26のそれぞれは1から30の炭素原子を含む炭化水素から1つまたはより多くの水素原子を除くことによって誘導された基であり、任意選択的に酸素、窒素、硫黄、およびリンからなる群より選択された少なくとも1つのヘテロ原子を含み、そしてR26のそれぞれはアルキル基またはアリール基(dが1の場合)またはアルキレン基またはアリーレン基(dが2の場合)または-C(=NH)-基(dが2の場合)であり、そしてA3は-NR27-であり、ここでR27はフェニルまたは1から10の炭素原子のアルキル基、例えばジフェニルグアニジンである。
【0186】
上記の式による脱ブロック化剤(iv)の例は、水または1価アルコール若しくはグリコール若しくはポリオール、任意の1級または2級アミン或いはイミンまたはグアニジンのようなC=N2重結合を含むアミンを含むが、但しこうしたアミンは少なくとも1つのN-H(窒素-水素)結合を含んでいる。ゴムの成分として、数多くのそうしたグアニジン、アミン、およびイミンの具体的な例が技術的に周知であり、例えば本開示と矛盾しないところを参照によって本願に取り入れる、J.Van Alphenのゴム化学(プラスチックおよびゴム研究協会TNO、オランダ国デルフト1973年)に開示されている。幾つかの例には、N,N'-ジフェニルグアニジン、N,N',N''-トリフェニルグアニジン、N,N'-ジ-オルソ-トリルグアニジン、オルソビグアニド、ヘキサメチレンテトラミン、シクロヘキシルエチルアミン、ジブチルアミン、および4,4'-ジアミノジフェニルメタンが含まれる。
【0187】
エステルのエステル交換に使用される任意の一般的な酸触媒、例えばブレンステッド酸またはルイス酸を、触媒として使用することができる。
【0188】
ブロック化メルカプトシランのブロッキング基は、加硫用の化学品を低温で添加した後に、ゴムの高温での硬化の間に除去することができる。
【0189】
幾つかの実施態様において、本開示の組成物は、重量で約0.01%から約10%、約0.05%から約10%、約0.1%から約10%、約0.5%から約10%、約1%から約10%、約2%から約10%、約5%から約10%、約7%から約10%、約0.01%から約7%、約0.05%から約7%、約0.1%から約7%、約0.5%から約7%、約1%から約7%、約2%から約7%、約5%から約7%、約0.01%から約5%、約0.05%から約5%、約0.1%から約5%、約0.5%から約5%、約1%から約5%、約2%から約5%、約0.01%から約2%、約0.05%から約2%、約0.1%から約2%、約0.5%から約2%、約1%から約2%、約0.01%から約1%、約0.05%から約1%、約0.1%から約1%、約0.5%から約1%、約0.01%から約0.5%、約0.05%から約0.5%、または約0.1%から約0.5%のブロック化メルカプトシランを含んでいてよい。
加硫パッケージ(v)
【0190】
本願のゴム組成物に存在する加硫可能な成分(単数または複数)の加硫は、1つまたはより多くの硫黄含有加硫剤の存在下に行うことができ、その例には単体硫黄(遊離硫黄)または硫黄供与型加硫剤、例えば、ポリスルフィド重合体および硫黄オレフィン付加物が含まれる。他の有用な硫黄供与体には、例えばモルホリン誘導体が含まれる。そうした供与体の代表例には、例えば、限定するものではないが、ジモルホリンジスルフィド、ジモルホリンテトラスルフィド、ベンゾチアジル-2,N-ジチオモルホリド、チオプラスト、およびジスルフィドカプロラクタムが含まれる。
【0191】
選択された加硫剤(単数または複数)は従来、最終混合物に対して、または生産的ゴム組成物混合段階において添加されている。加硫剤は生産的混合段階において約0.1から約6phrの範囲の量で添加することができ、約0.5から約5phrの範囲が好ましく、そして幾つかの場合には約1.0から約3.0phrが好ましい。
【0192】
本願のゴム組成物に存在する加硫可能な成分(単数または複数)の加硫はまた、1つまたはより多くの加硫促進剤の存在下に行うことができる。加硫促進剤は加硫速度を増大させる化合物であり、加硫が低温で高い効率において進行することを可能にする。
【0193】
代表的で非限定的な例には、ベンゾチアゾール、グアニジン誘導体、およびチオカルバメートが含まれる。これらの、および他の種類の具体的な促進剤には、限定するものではないが、メルカプトベンゾチアゾール、ベンゾチアゾールジスルフィド、ジフェニルグアニジン、亜鉛ジチオカルバメート、アルキルフェノールジスルフィド、亜鉛ブチルザンテート、N-ジシクロヘキシル-2-ベンゾチアゾールスルフェンアミド、N-シクロヘキシル-2-ベンゾチアゾールスルフェンアミド、N-オキシジエチレンベンゾチアゾール-2-スルフェンアミド、N,N-ジフェニルチオウレア、ジチオカルバミルスルフェンアミド、N,N-ジイソプロピルベンゾチアゾール-2-スルフェンアミド、亜鉛-2-メルカプトトルイミダゾール、ジチオビス(N-メチルピペラジン)、ジチオビス(N-ベータ-ヒドロキシエチルピペラジン)、およびジチオビス(ジベンジルアミン)が含まれる。
【0194】
促進剤は、加硫に必要とされる時間および/または温度を制御し、また加硫物の性質を改善させるために使用されてよい。1つの態様では、単一の促進剤系、すなわち1次促進剤が使用されてよい。従来から好ましくは、1次促進剤(単数または複数)は合計量で約0.5から約4phr、好ましくは約0.8から約1.5phrの範囲内で使用されている。1次促進剤と2次促進剤の組み合わせも使用されてよく、ここで2次促進剤は加硫物を賦活し性質を改善させるために、より少量(例えば約0.05から約3phrの範囲)で使用される。遅延作用式の促進剤および/または加硫抑制剤もまた使用されてよい。適切な種類の促進剤には、アミン、ジスルフィド、グアニジン、チオウレア、チアゾール、スルフェンアミド、ジチオカルバメート、およびザンテートが含まれる。好ましくは、1次促進剤はスルフェンアミドである。2次促進剤が使用される場合には、2次促進剤は好ましくはグアニジン化合物またはジチオカルバメート化合物である。
【0195】
特定の態様において、加硫促進剤は単独で使用される。特定の態様においては、2つまたはより多くの加硫促進剤が組み合わせて使用される。グアニジン加硫促進剤の代表的で非限定的な例には、1,3-ジフェニルグアニジン、1,3-ジ-オルソ-トリルグアニジン、1-オルソ-トリルビグアニド、ジカテコールボレートのジ-オルソ-トリルグアニジン塩、1,3-ジ-オルソ-クメニルグアニジン、1,3-ジ-オルソ-ビフェニルグアニジン、および1,3-ジ-オルソ-クメニル-2-プロピオニルグアニジンが含まれる。幾つかの実施態様において、本開示の組成物における加硫パッケージは、硫黄およびスルフェンアミド1次促進剤を含んでいる。この促進剤はまた、-A3H基を有する場合、ジフェニルグアニジンの場合と同様に脱ブロック化剤(iv)としても機能することができる。
スコーチ変性剤(vi)
【0196】
ゴム組成物はスコーチ変性剤(vi)を含むことができる。特定の態様において、スコーチ変性剤はチウラムジスルフィドスコーチ変性剤である。幾つかの実施態様において、スコーチ変性剤は一般式(XIII)を有し:
R28
2NC(=S)SSC(=S)NR28
2 (XIII)
式中R28は独立して1から12の炭素原子の直鎖アルキル基、3から12の炭素原子の分岐鎖アルキル基、5から12の炭素原子のシクロアルキル基、6から12の炭素原子のアリール基、または7から12の炭素原子のアラルキル基である。
【0197】
代表的で非限定的なスコーチ変性剤の例には、テトラメチルチウラムジスルフィド、テトラエチルチウラムジスルフィド、テトラプロピルチウラムジスルフィド、テトラブチルチウラムジスルフィド、テトラフェニルチウラムジスルフィド、テトラメチルチウラムモノスルフィド、ジベンジルジチオカルバメート亜鉛、およびテトラベンジルチウラムジスルフィドが含まれる。
【0198】
スコーチ変性剤(vi)はゴム100部当たり(phr)スコーチ変性剤(vi)約0.05から約10重量部の範囲の量で使用することができ、より特定的にはゴム100部当たり(phr)スコーチ変性剤(vi)約0.1から約5重量部、そして幾つかの場合には、ゴム100部当たり(phr)スコーチ変性剤(vi)約0.15から約1.0重量部が好ましい。
【0199】
幾つかの実施態様において、本開示の組成物は、重量で約0.01%から約10%、約0.05%から約10%、約0.1%から約10%、約0.5%から約10%、約2%から約10%、約5%から約10%、約7%から約10%、約0.01%から約7%、約0.05%から約7%、約0.1%から約7%、約0.5%から約7%、約2%から約7%、約5%から約7%、約0.01%から約5%、約0.05%から約5%、約0.1%から約5%、約0.5%から約5%、約2%から約5%、約0.01%から約2%、約0.05%から約2%、約0.1%から約2%、約0.5%から約2%、約0.01%から約0.5%、または約0.01%から約0.05%のスコーチ変性剤を含んでいてよい。
他の成分
【0200】
粘着性付与樹脂が使用される場合には、その典型的な量はゴム100部当たり(phr)粘着性付与樹脂約0.1から約15重量部、そしてより特定的にはゴム100部当たり(phr)粘着性付与樹脂約0.5から約10重量部、通常はゴム100部当たり(phr)粘着性付与樹脂約1から約5重量部である。こうした粘着性付与樹脂、ロジンおよびその誘導体、テルペンおよび変性テルペン、脂肪族、環状脂肪族、および芳香族の樹脂、水素化炭化水素樹脂、およびこれらの混合物、テルペン-フェノール樹脂およびノボラックが含まれる。加工助剤の典型的な量は、ゴム100重量部当たり(phr)加工助剤が約1から約50重量部である。こうした加工助剤には例えば、芳香族系、ナフテン系、および/またはパラフィン系の処理オイルが含まれる。酸化防止剤の典型的な量は、ゴム100重量部当たり(phr)酸化防止剤が約1から約5重量部である。代表的な酸化防止剤は例えば、ジフェニル-p-フェニルレンジアミンおよび本開示と一致するところを参照によって本願に取り入れる「バンダービルトゴムハンドブック」(1978年)344-46ページに開示されたその他などであってよい。オゾン劣化防止剤の典型的な量は、ゴム100重量部当たり(phr)オゾン劣化防止剤が約1から約5重量部である。使用される場合にはステアリン酸などを含むことができる脂肪酸の典型的な量は、ゴム100重量部当たり(phr)脂肪酸約0.5から約3重量部である。酸化亜鉛の典型的な量は、ゴム100重量部当たり(phr)酸化亜鉛約2から約5重量部である。ワックスの典型的な量は、ゴム100重量部当たり(phr)ワックス約1から約5重量部である。多くの場合、マイクロクリスタリンワックスが使用される。ペプタイザーの典型的な量は、ゴム100重量部当たり(phr)ペプタイザー約0.1から約1重量部である。典型的なペプタイザーは、例えばペンタクロロチオフェノールおよびジベンズアミドジフェニルジスルフィドである。
【0201】
典型的にはブロック化メルカプトシラン(iii)(b)の合計量に対するアルキルシランのモル比が1/50から1/2となる範囲内での、カップリング剤パッケージに対するアルキルシランの添加は、ゴム組成物の処理およびエージングの、さらに良好な制御を促進する。
【0202】
別の実施態様において、本開示は:
約30%から約40重量%の少なくとも1つの官能基を含む少なくとも1つのジエン系ポリマー、
約30%から約40重量%の沈降シリカ、
約0.05%から約5重量%のブロック化メルカプト官能性アルキルアルコキシシラン、
約0.05%から約5重量%のメルカプト官能性アルキルアルコキシシラン、および
約0.1%から約10重量%のスコーチ変性剤を含む組成物を指向している。
【0203】
幾つかの実施態様において、組成物はさらに、硫黄を含む少なくとも1つの加硫化剤および少なくとも1つの促進剤を含有する、加硫化剤を含んでいる。タイヤ産業において一般的に使用されているものを含む、任意の加硫化剤および加硫促進剤を使用してよい。加硫促進剤の例には、限定するものではないが、グアニジン、スルホンアミド、チアゾール、チウラム、ジチオカルバメート、チオウレア、およびザンテートが含まれる。特定の態様において、加硫促進剤は単独で使用される。特定の態様においては、2つまたはより多くの加硫促進剤が組み合わせて使用される。グアニジン加硫促進剤の例には、1,3-ジフェニルグアニジン、1,3-ジ-オルソ-トリルグアニジン、1-オルソ-トリルビグアニド、ジカテコールボレートのジ-オルソ-トリルグアニジン塩、1,3-ジ-オルソ-クメニルグアニジン、1,3-ジ-オルソ-ビフェニルグアニジン、および1,3-ジ-オルソ-クメニル-2-プロピオニルグアニジンが含まれる。幾つかの実施態様において、加硫化剤中の硫黄は、単体硫黄、硫黄供与体化合物、およびこれらの組み合わせからなる群より選択される。幾つかの実施態様において、組成物はまた、硫黄およびスルフェンアミド1次促進剤を含んでいる。
【0204】
単一の性能指数値(または性能指標、すなわち「PIV」)は、ゴムコンパウンドの幾つかの性能を集めて平均化することにより組成物の利点を表す値であり、タイヤおよびゴム産業における種々の重要な態様を表している。PIVが重要である主たる理由は、ゴムコンパウンドの性能が相互依存性を有しているためである。すなわち、多くのゴムコンパウンドの性能は、ゴムコンパウンドの別の性質に負の影響を及ぼすことによってのみ、改善可能だからである。例として、2官能性シランについて、転がり抵抗特性の改善はゴムの加工特性を犠牲にするというトレードオフが知られている。従って、性能指数値によって表される組成物についての幾つかの性能特性の改善されたバランスは、組成物の発明性を例証することになる。
【0205】
性能指数値または性能指標またはPIVは、開示の全体において互換的に使用されている。
【0206】
性能指数値を構成する性能項目を表1に示す。
【表1】
【0207】
性能指数、または複数の性能指数は、ゴム組成物を評価するために使用することができる。例えば、米国特許第10,494,510号は、ゴム組成物を評価するためにこうした値を開示しており、複数の性能指数の中には転がり抵抗およびグリップ性能が含まれている。
【0208】
幾つかの実施態様において、ゴム組成物はASTM D-1646法を使用して測定された約40MUから約150MUのムーニー粘度を有していてよい。さらなる態様において、ゴム組成物は約120MUから約140MUのムーニー粘度を有していてよい。別の実施態様において、ゴム組成物は約40MUから約100MUのムーニー粘度を有していてよい。幾つかの実施態様において、ゴム組成物は約40、約45、約50、約55、約60、約65、約70、約75、約80、約85、約90、約95、約100、約105、約110、約115、約120、約125、約130、約135、約140、約145、または約150MUのムーニー粘度を有していてよい。
【0209】
幾つかの実施態様において、ゴム組成物はASTM D-1646法を使用して測定した3ポイント上昇時のムーニースコーチが約2分から約40分であってよい。さらなる態様において、ゴム組成物は3ポイント上昇時のムーニースコーチが約30分から約40分であってよい。別の実施態様において、ゴム組成物は3ポイント上昇時のムーニースコーチが約20分から約30分であってよい。幾つかの実施態様において、ゴム組成物は3ポイント上昇時のムーニースコーチが約2、約5、約10、約15、約20、約25、約30、約35、または約40であってよい。
【0210】
幾つかの実施態様において、ゴム組成物はASTM D-412法によって測定した引張強度が約5MPaから約25MPaであってよい。さらなる態様において、ゴム組成物は引張強度が約15MPaから約20MPaであってよい。別の実施態様において、ゴム組成物は引張強度が約10MPaから約15MPaであってよい。幾つかの実施態様において、ゴム組成物は引張強度が約5、約10、約15、約20、または約25MPaであってよい。
【0211】
幾つかの実施態様において、ゴム組成物はASTM D-2240法を用いて測定したショアA硬度がショアA約50からショアA約80であってよい。さらなる態様において、ゴム組成物はショアA硬度がショアA約55からショアA約65であってよい。別の実施態様において、ゴム組成物はショアA硬度がショアA約65からショアA約75であってよい。幾つかの実施態様において、ゴム組成物はショアA硬度がショアA約50、約55、約60、約65、約70、約75、または約80であってよい。
【0212】
幾つかの実施態様において、ゴム組成物はASTM D-7121を使用して測定した0℃における反発弾性が約5から約20であってよい。さらなる態様において、ゴム組成物は0℃における反発弾性が約5から約10であってよい。別の実施態様において、ゴム組成物は0℃における反発弾性が約10から約15であってよい。幾つかの実施態様において、ゴム組成物は0℃における反発弾性が約5、約10、約15、または約20であってよい。
【0213】
幾つかの実施態様において、ゴム組成物はASTM D6049 03(2017)を使用することにより測定したDMA(動的粘弾性測定)TS(温度掃引)tanδ最大値が約0.50から約1.00であってよい。さらなる態様において、ゴム組成物はDMA TS tanδ最大値が約0.50から約0.75であってよい。別の実施態様において、ゴム組成物はDMA TS tanδ最大値が約0.75から約1.00であってよい。幾つかの実施態様において、ゴム組成物はDMA TS tanδ最大値が約0.50、約0.55、約0.60、約0.65、約0.70、約0.75、約0.80、約0.85、約0.90、約0.95、または約1.00であってよい。
【0214】
幾つかの実施態様において、ゴム組成物はASTM D-6601を使用することにより測定したRPA(ゴム加工性測定)SS(ひずみ掃引)60℃でのtanδ最大値が約0.05から約0.20であってよい。さらなる態様において、ゴム組成物はRPA SS60℃tanδ最大値が約0.05から約0.10であってよい。別の実施態様において、ゴム組成物はRPA SS60℃tanδ最大値が約0.10から約0.20であってよい。幾つかの実施態様において、ゴム組成物はRPA SS60℃tanδ最大値が約0.05、約0.06、約0.07、約0.08、約0.09、約0.10、約0.11、約0.12、約0.13、約0.14、約0.15、約0.16、約0.17、約0.18、約0.19、または約0.20であってよい。
【0215】
幾つかの実施態様において、ゴム組成物はASTM D6049 03(2017)を使用することにより測定したDMA TSの60℃でのtanδが約0.05から約0.20であってよい。さらなる態様において、ゴム組成物はDMA TS60℃tanδが約0.05から約0.10であってよい。別の実施態様において、ゴム組成物はDMA TS60℃tanδが約0.10から約0.20であってよい。幾つかの実施態様において、ゴム組成物はDMA TS60℃tanδが約0.05、約0.06、約0.07、約0.08、約0.09、約0.10、約0.11、約0.12、約0.13、約0.14、約0.15、約0.16、約0.17、約0.18、約0.19、または約0.20であってよい。
【0216】
幾つかの実施態様において、ゴム組成物はASTM D-5963を使用することにより測定したDIN摩耗が約70mm3から約130mm3であってよい。さらなる態様において、ゴム組成物はDIN摩耗が約80mm3から約100mm3であってよい。別の実施態様において、ゴム組成物はDIN摩耗が約100mm3から約120mm3であってよい。幾つかの実施態様において、ゴム組成物はDIN摩耗が約70mm3、約75mm3、約80mm3、約85mm3、約90mm3、約95mm3、約100mm3、約105mm3、約110mm3、約115mm3、約120mm3、約125mm3、または約130mm3であってよい。
ゴム組成物を調製するためのプロセス
【0217】
幾つかの実施態様において、本開示は、少なくとも1つのジエン系ポリマー(i)、シリカ(ii)、メルカプトシラン(iii)(a)およびブロック化メルカプトシラン(iii)(b)を含むカップリング剤パッケージ、少なくとも1つの脱ブロック化剤(iv)、促進剤および硫黄を含む加硫パッケージ(v)、並びにスコーチ変性剤(vi)を含む組成物を含有するゴム組成物を提供する。ゴム組成物は、例えばオープンロールミルまたはバンバリーミキサーといったゴム混練機を使用して成分を混練し、そして混合物を加硫するといった、公知の方法によって調製してよい。本開示のゴム組成物は種々のタイヤ部品について使用してよく、特に例えばトレッドやサイドウォールに適している。
【0218】
ゴム組成物から形成されるタイヤは、ゴム組成物を使用して通常の方法によって製造可能である。具体的には、必要とされる種々の添加剤を含有する未加硫のゴム組成物がタイヤ部品、例えばトレッドの形状に押し出され、次いでタイヤ製造装置で従来の手法において他のタイヤ部品と組み立てられて未加硫のタイヤが構築される。未加硫のタイヤは加硫装置においてヒートプレスされてタイヤが製造される。幾つかの実施態様において、空気入りタイヤまたは非空気入りタイヤをゴム組成物から製造することができる。こうした空気入りタイヤは、例えば乗用車、トラックおよびバス、または二輪車、或いは高性能タイヤに使用することができる。本願で使用するところでは、高性能タイヤとは特に、自動車レース用のレース用タイヤを含む、グリップ性能に優れたタイヤを指している。それらは氷上での性能に優れており、よって冬用のスタッドレスタイヤとして適切である。
【0219】
本開示のプロセスは、シリカ(ii)、メルカプトシラン(iii)(a)、およびブロック化メルカプトシラン(iii)(b)を少なくとも1つのジエン系ポリマー(i)に添加することを含んで組成物を調製し、ここでジエン系ポリマー(i)は少なくとも1つの官能基を含む少なくとも1つのジエン系ポリマー(i)(a)および/または官能基を含まない少なくとも1つのジエン系ポリマー(i)(b)を含んでいる。
【0220】
幾つかの実施態様において、ブロック化メルカプトシランとメルカプトシランの重量比は1より大きい。幾つかの実施態様において、本開示の組成物におけるブロック化メルカプトシランとメルカプトシランの重量比は約1、約2、約3、約4、約5、約6、約7、約8、約9、約10、約11、約12、約15、約20、約25、または約30である。幾つかの実施態様において、本開示の組成物におけるブロック化メルカプトシランとメルカプトシランの重量比は約10から約1、約10から約2、約10から約3、約10から約4、約10から約5、約10から約6、約10から約7、約10から約8、約10から約9、約9から約1、約9から約2、約9から約3、約9から約4、約9から約5、約9から約6、約9から約7、約9から約8、約8から約1、約8から約2、約8から約3、約8から約4、約8から約5、約8から約6、約8から約7、約7から約1、約7から約2、約7から約3、約7から約4、約7から約5、約7から約6、約6から約1、約6から約2、約6から約3、約6から約4、約6から約5、約5から約1、約5から約2、約5から約3、約5から約4、約4から約1、約4から約2、約から約3、約3から約1、約3から約2、または約2から約1である。
【0221】
幾つかの実施態様において、少なくとも1つのカップリング剤パッケージ(iii)は、ゴム100重量部当たりカップリング剤パッケージ約0.5から約20重量部、より特定的にはゴム100重量部当たりカップリング剤パッケージ(iii)約1から約10重量部、そしてさらにより特定的にはゴム100重量部当たりカップリング剤パッケージ(iii)約3から約8重量部の量で使用される。
【0222】
幾つかの実施態様において、本願に開示されたゴム組成物におけるブロック化メルカプト官能性アルキルアルコキシシラン(iii)(b)とメルカプト官能性アルキルアルコキシシラン(iii)(a)の重量比は約0.25:1から約50:1である。幾つかの実施態様において、本願に開示されたゴム組成物におけるブロック化メルカプト官能性アルキルアルコキシシラン(iii)(b)とメルカプト官能性アルキルアルコキシシラン(iii)(a)の重量比は約0.5:1から約20:1である。幾つかの実施態様において、本願に開示されたゴム組成物におけるブロック化メルカプト官能性アルキルアルコキシシラン(iii)(b)とメルカプト官能性アルキルアルコキシシラン(iii)(a)の重量比は約1:1から約10:1である。
【0223】
幾つかの実施態様において、本開示のゴム組成物におけるブロック化メルカプトシランとメルカプトシランの重量比は約0.25:1から約50:1である。
【0224】
幾つかの実施態様において、メルカプト官能性アルキルアルコキシシラン(iii)(a)は、ゴム100重量部当たりメルカプト官能性アルキルアルコキシシラン(iii)(a)が約0.1から約10重量部、より特定的にはゴム100重量部当たりメルカプト官能性アルキルアルコキシシラン(iii)(a)が約0.5から約5重量部、そしてさらにより特定的にはゴム100重量部当たりメルカプト官能性アルキルアルコキシシラン(iii)(a)が約1から約3重量部の範囲にわたる量で使用することができる。幾つかの実施態様において、ブロック化メルカプト官能性アルキルアルコキシシラン(iii)(b)は、ゴム100重量部当たりブロック化メルカプト官能性アルキルアルコキシシラン(iii)(b)が約0.1から約15重量部、より特定的にはゴム100重量部当たりブロック化メルカプト官能性アルキルアルコキシシラン(iii)(b)が約1から約10重量部、そしてさらにより特定的にはゴム100重量部当たりブロック化メルカプト官能性アルキルアルコキシシラン(iii)(b)が3から8重量部の範囲にわたる量で使用することができる。
【0225】
幾つかの実施態様において、プロセスはスコーチ変性剤(vi)を他の加硫用化学品と同時に添加することを含んでいる。幾つかの実施態様において、スコーチ変性剤(vi)を他の加硫用化学品と同時に添加する工程は、シリカ(ii)、メルカプトシラン(iii)(a)、およびブロック化メルカプトシラン(iii)(b)を少なくとも1つのジエン系ポリマー(i)(a)および/または少なくとも1つのジエン系ポリマー(i)(b)に添加する工程の後である。幾つかの実施態様において、スコーチ変性剤(vi)を他の加硫用化学品と同時に添加する工程は、最終混合である。
【0226】
実際には、硫黄で加硫されるゴム物品は典型的には、ゴムおよび各種の成分を連続的且つ段階的な仕方で熱機械的に混合し、続いてコンパウンド化されたゴムを成型および硬化して加硫された製品を形成することによって調製される。最初に、ゴムおよび各種の成分の上記混合のために、典型的には加硫化剤および加硫促進剤(まとめて「硬化剤」)を除いて、ゴム(単数または複数)および種々のゴムコンパウンドの添加剤が典型的には少なくとも1つの、そして多くの場合(シリカ充填低転がり抵抗タイヤの場合)には2つの、予備的熱機械混合段階(単数または複数)において適切なミキサーでブレンドされる。脱ブロック化剤およびスコーチ変性剤は、予備的熱機械混合段階または最終混合段階のいずれかで添加することができる。こうした予備的混合は、非製造ミキシングまたは非製造混合工程または段階と呼ばれる。こうした予備的混合は通常、約100℃までから約200℃、そして多くの場合は約140℃までから約180℃の温度において行われる。こうした予備的混合段階に続いて、場合によっては製造混合段階と呼ばれる最終混合段階において、加硫剤(単数または複数)、予備的熱機械混合段階において添加されていなければ脱ブロック化剤(単数または複数)、予備的熱機械混合段階において添加されていなければスコーチ変性剤(単数または複数)、および恐らくは1つまたはより多くの追加的な成分が、スコーチングと呼ばれることもある硬化性ゴムの早期の硬化を阻止または遅延させるために、予備的混合段階において用いられた温度よりも低い温度である典型的には約50℃から約130℃の範囲内の温度において、ゴム組成物と混合される。このゴム混合物は、ゴムコンパウンドまたはゴム組成物として様々に呼称され、典型的には上記した種々の混合工程の間に実行されるプロセス中間ミル混合の間または後に、例えば約50℃またはそれ未満の温度へと冷却されることが可能とされる。ゴムを成型し硬化することが望ましい場合には、ゴムは少なくとも約130℃および約200℃までにおいて適切な金型内に配置され、脱ブロック化メルカプトシランのメルカプト基および任意の他の加硫化剤(単数または複数)、例えばゴム混合物中に存在していてよい遊離の硫黄源(単数または複数)による、ジエン系ポリマー(単数または複数)の加硫が行われる。
【0227】
熱機械的混合の意味するところは、ゴムコンパウンド、すなわちゴムとゴムコンパウンド化成分の組成物が、ゴムミキサーにおいて高剪断条件下で混合され、そこにおいて混合の結果として、主としてゴムミキサーにおけるゴム混合物内の剪断および関連する摩擦に起因して自己生成的に加熱されることである。混合および硬化プロセスにおける種々の工程においては、幾つかの化学反応が生じてよい。
【0228】
最初の反応は比較的速い反応であり、フィラーとメルカプトシランおよびブロック化メルカプトシランのアルコキシシリル基との間で生ずると考えてよい。こうした反応は、例えば約120℃の比較的低い温度において生じてよい。本願において考えられる2番目および3番目の反応は、メルカプトシランの脱ブロック化、およびその後に例えば約140℃を超える高温で生ずる、脱ブロック化後のメルカプトシランを含むメルカプトシランの硫黄部分と、硫黄で加硫可能なゴム(単数または複数)との間で生ずる反応である。
【0229】
別の硫黄源も用いられてよく、例えば、単体硫黄S8の形態である。硫黄供与体は本願では硫黄含有化合物と見なされ、約140から約190℃の範囲内の温度において遊離の、すなわち単体硫黄を放出する。こうした硫黄供与体の例は、限定するものではないが、ポリスルフィド加硫促進剤およびオルガノシランポリスルフィドであってよく、ポリスルフィド連結中に少なくとも2つの連結した硫黄原子を備えている。混合物に対する遊離硫黄源の添加量は、上述したブロック化メルカプトシランの添加とは比較的独立に、選択の問題として制御または操作することができる。かくして例えば、硫黄源の独立した添加はその添加量によって、またゴム混合物に対する他の成分の添加に対する添加順序によって操作されてよい。
【0230】
1つの態様において、ゴム組成物は以下を含むプロセスによって調製される:
a)少なくとも1つの予備的混合工程において、第1の高温、例えば約140℃から約200℃、好ましくは約160℃から約190℃、そしてより好ましくは約155℃から約170℃となるまで、以下を適切な時間、例えば20分、好ましくは約4から約15分にわたり熱機械的に混合する:
少なくとも1つの官能基を含む少なくとも1つのジエン系ポリマー(i)(a)および/または官能基を含んでいない少なくとも1つのジエン系ポリマー(i)(b)、例えばその100重量部;
沈降シリカ(ii)、例えば約5から約140phr(ゴム100重量部当たりの重量部)、好ましくは約25から約110phr、または沈降シリカおよび他のフィラーの混合物;
少なくとも1つのメルカプトシラン(iii)(a)および少なくとも1つのブロック化メルカプトシラン(iii)(b)の混合物であるカップリング剤パッケージ(iii)、例えばこの混合物(カップリング剤パッケージ(iii))の合計量で約1から約20phr;
そして任意選択的に脱ブロック化剤(iv)および/またはスコーチ変性剤(vi)の一部または全部;
b)最終の熱機械的混合工程において、(a)から得られる混合物を、第1の高温よりも低い第2の高温、例えば約50℃から約130℃において、適切な時間、例えば約30分まで、そして好ましくは約1から約3分、工程(a)に含まれていなければ少なくとも1つの脱ブロック化剤(iv)の好ましくは約0.05から約20phr、工程(a)に含まれていなければ少なくとも1つのスコーチ変性剤(vi)、そして加硫パッケージの約0.1から約10phrとブレンドし;そして任意選択的に、
c)工程(b)からの混合物を第3の高温、例えば約130℃から約200℃において、適切な時間、例えば約5から約60分にわたり硬化する。別の実施態様において、上述したプロセスはまた、タイヤまたは加硫可能なゴムと、本願記載のプロセスに従って調製したゴム組成物から構成されるトレッドとのアセンブリを調製し、そしてこのアセンブリを約130℃から約200℃の範囲内の温度において加硫する付加的な工程を含んでいてよい。
【0231】
1つの態様において、ゴム組成物は以下を含むプロセスによって調製される:
a)少なくとも1つの予備的混合工程において、第1の高温、例えば約140℃から約200℃、好ましくは約160℃から約190℃、そしてより好ましくは約155℃から約170℃となるまで、以下を適切な時間、例えば20分、好ましくは約4から約15分にわたり熱機械的に混合する:
少なくとも1つの官能基を含む少なくとも1つのジエン系ポリマー(i)(a)および官能基を含んでいない少なくとも1つのジエン系ポリマー(i)(b)、例えばその100重量部;
沈降シリカ(ii)、例えば約5から約140phr(ゴム100重量部当たりの重量部)、好ましくは約25から約110phr、または沈降シリカおよび他のフィラーの混合物;
少なくとも1つのメルカプトシラン(iii)(a)および少なくとも1つのブロック化メルカプトシラン(iii)(b)の混合物であるカップリング剤パッケージ(iii)、例えばこの混合物(カップリング剤パッケージ(iii))の合計量で約1から約20phr;
そして任意選択的に脱ブロック化剤(iv)および/またはスコーチ変性剤(vi)の一部または全部;
b)最終の熱機械的混合工程において、(a)から得られる混合物を、第1の高温よりも低い第2の高温、例えば約50℃から約130℃において、適切な時間、例えば約30分まで、そして好ましくは約1から約3分、工程(a)に含まれていなければ少なくとも1つの脱ブロック化剤(iv)の好ましくは約0.05から約20phr、工程(a)に含まれていなければ少なくとも1つのスコーチ変性剤(vi)、そして加硫パッケージの約0.1から約10phrとブレンドし;そして任意選択的に、
c)工程(b)からの混合物を第3の高温、例えば約130℃から約200℃において、適切な時間、例えば約5から約60分にわたり硬化する。別の実施態様において、上述したプロセスはまた、タイヤまたは加硫可能なゴムと、本願記載のプロセスに従って調製したゴム組成物から構成されるトレッドとのアセンブリを調製し、そしてこのアセンブリを約130℃から約200℃の範囲内の温度において加硫する付加的な工程を含んでいてよい。
【0232】
さらに別の態様において、ゴム組成物は種々の物品の製造に使用することができる。例えば、それはトレッド、サイドウォール、ビードおよびその他のような種々のタイヤコンパウンドのために使用することができる。こうしたタイヤは公知の、そして技術分野における当業者に容易に明らかな種々の方法によって構築し、形成し、成型し、硬化することができる。その他にはホース、ベルト、ローラー、絶縁ジャケット、工業製品、靴底、ブシュ、減衰パッド、およびその他が含まれる。
【0233】
本発明は以下の実施例を参照することによってより良好に理解されてよく、そこにおいて部およびパーセントは特記しない限り重量基準である。
実施例
【0234】
ゴム組成物を調製するための成分は以下の通りである:
【0235】
官能化されていない溶液スチレンブタジエンゴムは、トリンセオ社(Trinseo dba Synthos S.A.)から入手可能なSprintanTMSLR4630と呼ばれるオイル伸展されたポリマーであり、ムーニー粘度(ML1+4(100℃))55MU、結合スチレン量25.0%、ビニル含有量62.0%、TDAE(処理済み蒸留芳香族抽出物)油量37.5phr、そして乾燥ポリマーのガラス転移温度-19℃を有している。.
【0236】
カーボンブラック活性官能化溶液スチレンブタジエンは、トリンセオ社から入手可能なSprintanTMSLR4601と呼ばれる乾燥ポリマーであり、ムーニー粘度(ML1+4(100℃))50MU、結合スチレン量21.0%、ビニル含有量62.0%、油量なし、そして乾燥ポリマーのガラス転移温度-25℃を有している。
【0237】
シリカおよぴカーボンブラック活性官能化溶液スチレンブタジエンは、トリンセオ社から入手可能なSprintanTMSLR4602と呼ばれる乾燥ポリマーであり、ムーニー粘度(ML1+4(100℃))50MU、結合スチレン量21.0%、ビニル含有量62.0%、油量なし、そして乾燥ポリマーのガラス転移温度-25℃を有している。
【0238】
ブタジエンゴムはネオジム(Nd)で触媒された高シスポリブタジエンであり、チーメイ社から商品名KIBIPOL登録商標HBR PR-040Gの下に入手可能であり、ムーニー粘度(ML1+4(100℃))の範囲が39~49MUであり、cis-ブタジエン含有量>97%、そしてビニル含有量<1%である。
【0239】
沈降合成アモルファスシリカは、ソルベイ社(以前はローディア社として知られていた)から商品名ZEOSIL登録商標1165MPの下に入手可能な高分散シリカ(HDS)マイクロパールであり、窒素でのBET比表面積165m2/gを有している。
【0240】
カーボンブラックは、東海カーボンCB社からハーウィック(Harwick Standard)社経由で入手可能なN330と呼ばれる中程度の補強用黒色フィラーであり、窒素でのBET比表面積78m2/gを有している。
【0241】
シラン1はオクタンチオ酸S-[3-(トリエトキシシリル)プロピル]エステル、CAS No.220727-26-4であり、モメンティブ(Momentive Performance Materials)社から、商品名Silquest*NXT*シランの下に入手可能である。
【0242】
シラン2は3-トリエトキシシリルプロパン-1-チオール、CAS No.13814-09-6であり、モメンティブ社から商品名Silquest*A-1891シランの下に入手可能である。
【0243】
プロセスオイルは処理済み蒸留芳香族抽出物(TDAE)油であり、H&Rグループから商品名Vivatec500の下に入手可能である。
【0244】
加工助剤はゴム可溶性の高分子量脂肪酸の亜鉛石けんであり、ストラクトール社から商品名Struktol登録商標A60の下に入手可能である。
【0245】
劣化防止剤1はN-(1,3-ジメチルブチル)-N'-フェニル-p-フェニレンジアミンであり、ハーウィック社から商品名Stangard登録商標6PPDの下に入手可能である。
【0246】
劣化防止剤2はパラフィンブレンドのマイクロクリスタリンワックスであり、アクロケム社から商品名AKROWAX登録商標5084の下に入手可能である。
【0247】
劣化防止剤3は2,2,4-トリメチル-1,2-ジヒジロキノリンポリマーであり、ハーウィック社から商品名Stangard登録商標TMQの下に入手可能である。
【0248】
賦活剤1は酸化亜鉛であり、ハーウィック社から酸化亜鉛CR-40の下に入手可能である。
【0249】
賦活剤2はステアリン酸であり、ハーウィック社から商品名ステアリン酸F-2000の下に入手可能である。
【0250】
硬化剤は硫黄であり、ジョージアガルフサルファ社から商品名Rubber Makers Sulfurの下に入手可能である。
【0251】
促進剤はN-シクロヘキシル-2-ベンゾチアゾールスルホンアミドであり、ハーウィック社から商品名KEMAI CBS GRの下に入手可能である。
【0252】
粘着性付与樹脂は不飽和芳香族オレフィンとジオレフィンの重合から誘導される、またナフサの熱分解から誘導されるジオレフィンの重合から誘導される不飽和芳香族炭化水素樹脂であり、アクロケム社から商品名AKROCHEM登録商標P-90レジンの下に入手可能である。
【0253】
スコーチ変性剤はテトラベンジルチウラムジスルフィドであり、アクロケム社から商品名AKROCHEM登録商標Accelerator TBzTDの下に入手可能である。
【0254】
加硫された(硬化された)本願のゴム組成物を評価するための試験手順を以下に、ASTMまたはDIN法によって記載する(表2):
【表2】
【0255】
転がり抵抗はRRと略称され、ひずみ掃引はSSと略称され、温度掃引はTSと略称され、ゴム加工性測定はRPAと略称され、そして動的粘弾性測定はDMAと略称される。
比較例1
ゴム組成物の調製および評価
【表3】
【表4】
【0256】
ゴム組成物は成分を以下のようにして、103立方インチ(1690cc)のチャンバ容積を備えたBANBURY登録商標(モデルBR-1600、ASTM 3182認定ラボミキサー、ファレル社)ミキサーで混合することによって調製される。ゴムの混合は3段階で行われる。
【0257】
ミキサーはローター速度75rpmおよび温度130°F+/-10°F(55℃)に設定し、冷却水を使用してこの温度に保持した。マスターバッチ1と呼ばれる第1の混合段階において、ゴムポリマーはミキサーに添加され、40秒間ラム加圧して混合される。シリカの半量とシラン1および/またはシラン2がミキサーに添加されて50秒間ラム加圧して混合され、ここでシラン1はNXT*シランであり、シラン2はSilquest*A-1891である。シリカの残量とカーボンブラックおよびプロセスオイルを除くマスターバッチ1の他の成分が添加され、257°F(125℃)の温度まで混合される。カーボンブラックおよびプロセスオイルがミキサーに添加され、275°F(135℃)の温度まで混合される。すべての材料が混合チャンバに確実に添加されるように、ミキサーはスイープされる。成分は95rpm未満の速度で302°F(150℃)の温度まで混合され、その温度で90秒間保持される。合計の混合時間は420から430秒の間である。
【0258】
材料は混合チャンバから取り出され、約140°F(60℃)の温度に設定された2本ロールミル(2本シリンダーのロールミル、ファレル社)で混練分散加工される。ゴムは一方のシリンダーの周囲に巻き付くようにされ、2つのシリンダーの間のニップに回転するゴムのバンクを形成する。ゴムがミルから取り出されるに際しては、巻き付けられた状態で混練分散加工中のゴムのクロスカットが、1インチ幅のリボンから始まり、1回転あたり1インチで左から右に行われる。この混練分散加工段階は5回繰り返され、次いで周囲温度まで冷却するようにされる。混練分散加工されたゴムはマスターバッチ1として指定され、これは非生産的混合段階である。
【0259】
マスターバッチ2、または再混練分散加工工程と呼ばれる第2の混合段階において、マスターバッチ1のゴム組成物はミキサーに再度チャージされる。ミキサー速度は75rpm、ミキサー温度は140°F+/-10°F(60℃)、そして混合時間は40秒である。温度は275°F(135℃)に昇温され、その温度で30秒間保持される。ミキサーはスイープされる。ゴムは次いで302°F(150℃)の温度まで95rpm未満の速度で混合され、その温度で90秒間保持される。合計の混合時間は300から315秒の間である。
【0260】
材料は混合チャンバから排出され、約140°F(60℃)の温度に設定された2本ロールミル上で混練分散加工される。ゴムは一方のシリンダーの周囲に巻き付くようにされ、2つのシリンダーの間のニップに回転するゴムのバンクを形成する。ゴムがミルから取り出されるに際しては、巻き付けられた状態で混練分散加工中のゴムのクロスカットが、1インチ幅のリボンから始まり、1回転あたり1インチで左から右に行われる。この混練分散加工段階は5回繰り返され、次いで周囲温度まで冷却するようにされる。混練分散加工されたゴムはマスターバッチ2として指定され、これは非生産的混合段階である。
【0261】
マスターバッチ3、または最終混合(FM)と呼ばれる第3の混合段階においては、ミキサーの温度は100°F+/-10°F(38℃)にセットされる。マスターバッチ2および加硫用化学品が硬化剤と共にミキサーにチャージされ、50rpmで混合される。ゴムは200°F(93℃)の温度に到達するまで混合され、次いでその温度において170秒の合計混合時間にわたって保持される。ゴムはさらに、温度が212°F(100℃)に到達するまで75rpm未満の速度で混合される。ゴムは合計で210から215秒の間にわたって混合される。
【0262】
混合の後、マスターバッチ3は混合チャンバから排出され、約140°F(60℃)の温度に設定された2本ロールミル上で混練分散加工されてシートが形成され、次いで雰囲気温度まで冷却される。このシートは、ムーニー粘度やムーニースコーチといった未硬化物特性を測定するために使用される。
【0263】
シートは硬化される。硬化条件は160℃で20分間である。硬化したシートはゴム組成物の硬化物特性を測定するために使用される。
【0264】
ゴム組成物の評価には、性能指数値が用いられる。性能指数値はまずそれぞれの指標について、ゴム組成物について測定された指標性能値(PIPi)の比を求めることによって計算される。加工性指標1(ムーニースコーチ、3ポイント上昇)、ハンドリング指標2(ショアA硬度)、グリップ指標3(0℃における反発弾性)、およびグリップ指標4(DMA TS tanδ最大値)についての性能指標特性(PIP
i)の比は、測定された性能指標値の値(PIP
i)を対照ゴム組成物について測定された指標値(PIP
io)で割ることによって計算される。加工性指標5(ムーニー粘度、ML(1+4)100℃)、転がり抵抗指標6(RPA SS 60℃tanδ最大値)、転がり抵抗指標7(DMA TS 60℃tanδ)、摩耗指標8(DIN摩耗)についての性能指標特性(PIP
i)の比は、対照ゴム組成物について測定された性能指標の値(PIP
io)を、測定された性能指標の値(PIP
i)で割ることによって計算される。性能指数を計算するための数式は:
【数1】
式中
PIP
iはゴム組成物について番号iを有する指標特性の値;
PIP
ioは対照ゴム組成物について番号iを有する対照指標特性の値であり、対照ゴム組成物はシラン1を含有し;そして
iは指標特性の数である。
【0265】
実施例によるデータは異なる重量比を有するシラン1および2の組み合わせ、および官能化ポリマーの使用の相乗効果をサポートしている。例えば、コンパウンド11~15についての性能指数は対照コンパウンド1~14と比較した場合に、個別のシランと比較してシラン1および2のブレンドにより改善があることを示しており、コンパウンド1~14において使用されているSSBRはシリカについて非官能性であり、コンパウンド11~15に使用されたSSBRはシリカについて官能性である。これらの性能指数値は、シラン1および2の両方を備えた官能性ポリマーゴム組成物が、非官能化ポリマーおよびシラン1または2のみをベースとしているゴム組成物と比較した場合に、摩耗、転がり抵抗、グリップ、およびハンドリングといった多くの重要なパラメータにおける改善をもたらすことを示している。さらに実施例のΔTanδ(0℃~60℃)の値が、本発明の利点を示している。シラン1および2のブレンドは、シラン1またはシラン2のみを含有しているゴム組成物に対して、ΔTanδ(0℃~60℃)の値が改善されることを示している。さらななる利点が、0℃におけるウェットトラクションtanδについて観察される(メトラビブ社-温度掃引60℃で0.5%、2%dsa)。本発明の組成物は、ウェットトラクション性能における統計的に有意な向上を示している。本発明の組成物はまた、シラン1のみを含有するゴム組成物またはシラン2のみを含有するゴム組成物が、シラン1およびシラン2の両方を含有するゴム組成物よりもウェットトラクション指標が悪い(値が低い)点で、相乗効果を示している。
実施例2
3-(2-エチルヘキサノイルチオ)-1-プロピルトリエトキシシランの調製
【0266】
反応器は、機械撹拌インペラ、添加漏斗、熱電対、窒素入口、およびガス出口を装着した5リットルの丸底反応フラスコから構成されていた。ガス出口は、プロセスによって放出される硫化水素をトラップするための水酸化ナトリウム水溶液のスクラバーに供給されていた。熱電対には電子温度コントローラが装着されていた。生成物から残留水を除去するために、ストリッピング装置もまた組み立てられた。この装置は熱電対および5プレートのバブルプレート(オルダーショウ)カラムを装着した1リットルの丸底フラスコから構成されていた。このカラムにはショートパス蒸留ヘッドが装着されており、これに対して蒸留物を収集するための収集フラスコが装着されていた。機械的な真空ポンプを介してヘッドに対して真空が適用された。ドライアイスで冷却されたコールドトラップが蒸留ヘッドとポンプの間に配置されて、揮発性物質が捕捉される。電子圧力ゲージによって、コールドトラップと真空ポンプの間の絶対圧力がモニターされる。フラスコの内容物は、マグネティックスターラーバーと撹拌モーターで撹拌された。
【0267】
反応フラスコには最初に、785グラムの45%硫化水素ナトリウム水溶液(NaSH6.30モル)および脱イオン水(676グラム;37.5モル)が仕込まれた。この混合物はメカニカルスターラーでゆっくりと撹拌され、その後テトラブチルアンモニウムブロミドの結晶(0.0057モル;3.7グラム)が添加された。撹拌が5分間継続され、透明な黄色い均一な溶液が生成された。添加漏斗に2-エチルヘキサノイルクロリド(471グラム;2.89モル)を入れた。次いでまず25mLの量の2-エチルヘキサノイルクロリドを反応器に導入した。続いて起こった反応はゆっくりであった。反応器の温度を次いで48℃に昇温した。次いで第2の量として約55mLの2-エチルヘキサノイルクロリドを添加漏斗から導入し、その結果ガス(硫化水素)が遊離され、このことはスクラバーにおいて観察された泡立ちによって示された。次いで2-エチルヘキサノイルクロリドの滴下による添加が開始され、硫化水素の一定の泡立ちをもたらす速度で維持した。この添加は2.5時間後に完了した。
【0268】
電子温度コントローラの設定温度は95℃に設定し、反応器の内容物の撹拌を継続した。温度が79℃に到達した時点で、さらにテトラブチルアンモニウムブロミドの結晶(11グラム;0.017モル)を添加し、それは迅速に溶解した。次いで3-クロロ-1-プロピルトリエトキシシラン(682グラム;2.83モル)を全部一度に反応器に添加した。撹拌速度は毎分635回転に増大して維持した。約10分以内に温度は95℃に到達し、95℃で一定に落ち着く前に短時間2~3℃上昇した。2時間後、外部加熱および撹拌を停止した。混合物は2つの別個の相へと迅速に分離した。
【0269】
反応器の内容物は直ちにまだ熱いうちに、カニューレチューブを介して分液漏斗に移した。この液体は3つの個別の層へと素早く分離した。一番下の水性層と真ん中の層は流去して廃棄した。次いで、残った有機相の約2/3を直ちにストリッピング装置に移した。フラスコの内容物をゆっくりと撹拌しながら、絶対圧力の読み取りが0.5トルになるまで、真空を徐々に加えた。十分な沸騰の結果、蒸留物は収集されなかった。主に残留水からなる蒸気は、トラップにおいて固体として収集された。沸騰が終わると、温度は徐々に昇温された。約90℃において、カラムの下方の部分に凝縮物が現れ始めた。温度はその後160℃まで昇温され、その間に蒸留物が収集容器に収集された。収集される追加の液体がなくなった時点で、ストリッピングは停止された。蒸留フラスコの残りの内容物は冷却するようにされ、そして得られた曇りのある無色に近い液体は傾瀉されて、最終的に透明で無色に近い液体製品と白色沈殿の薄い層とが残る結果となった。分液漏斗の残りの有機相はその後、同様の仕方で処理した。
【0270】
最終生成物は最初にガスクロマトグラフィー(GC、面積%)および質量分析(GCMS)によって分析し、所望の生成物が得られたことが確認された。純度は既知の量の内部標準(ヘプタデカン)を含有する生成物のガスクロマトグラフィー(GC、質量%)によって測定された。この生成物の組成は:3-(2-エチルヘキサノイルチオ)-1-プロピルトリエトキシシラン(目標生成物)96.03%、3-クロロ-1-プロピルトリエトキシシラン1.94%、3-メルカプト-1-プロピルトリエトキシシラン0.79%、ビス(3-トリエトキシシリル-1-プロピル)ジスルフィド(TESPD)0.18%、および未溶出の重量物(殆どはシロキサン)1.06%であると決定された。
実施例3
アミル-(3-トリエトキシシリル-1-プロピル)ザンテートの調製
【0271】
反応器は、窒素バブラーを装着した水凝縮器、添加漏斗、テフロンコーティングされたマグネティックスターラーバー、マグネティック撹拌モーター、および電子温度コントローラによって制御される加熱マントルを備えた、250mLの3つ口丸底フラスコから構成された。
【0272】
3-クロロ-1-プロピルトリエトキシシラン(12.2グラム;0.5モル)を反応器に仕込んだ。カリウムアミルザンテート(10.1グラム;0.05モル)およびヨウ化カリウム(1.6グラム;0.01モル)が反応フラスコへと添加され、その間に塊が形成されるのを防ぐために激しく撹拌した。ヨウ化カリウムは事前に乳鉢と乳棒を用いて粉砕して微粉末にされていた。混合物を撹拌し、加熱を行った。温度は175℃に設定した。アリコートを取り出してガスクロマトグラフィーでトレースを得ることにより、反応の進行をモニターした。GCトレースによれば、175℃での3時間の加熱の後に、未溶出の成分の形成が増大するのに加えて、生成物の僅かに26%が得られた。
【0273】
本明細書で言及したすべての刊行物、特許、および特許出願は参照を行うことによってそれらの全体が、個々の刊行物、特許、または特許出願のそれぞれの全体が参照を行うことによって具体的かつ個別に取り入れられると示された場合と同程度に取り入れられる。本出願における用語が参照によって取り入れられた文書におけるものと異なる定義であることが見出された場合には、本願において提示された定義がその用語についての定義として用いられる。
【国際調査報告】