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特表2024-538711エファビレンツ及びフルオキセチンを有効成分として含有するウイルス感染症の予防又は治療用薬学的組成物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-10-23
(54)【発明の名称】エファビレンツ及びフルオキセチンを有効成分として含有するウイルス感染症の予防又は治療用薬学的組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/536 20060101AFI20241016BHJP
   A61K 9/20 20060101ALI20241016BHJP
   A61K 9/48 20060101ALI20241016BHJP
   A61K 9/08 20060101ALI20241016BHJP
   A61K 9/10 20060101ALI20241016BHJP
   A61K 9/14 20060101ALI20241016BHJP
   A61K 9/107 20060101ALI20241016BHJP
   A61K 9/02 20060101ALI20241016BHJP
   A61K 9/16 20060101ALI20241016BHJP
   A61P 31/12 20060101ALI20241016BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20241016BHJP
   A61P 31/14 20060101ALI20241016BHJP
   A61K 31/138 20060101ALI20241016BHJP
   A61K 31/155 20060101ALI20241016BHJP
【FI】
A61K31/536
A61K9/20
A61K9/48
A61K9/08
A61K9/10
A61K9/14
A61K9/107
A61K9/02
A61K9/16
A61P31/12
A61P43/00 121
A61P31/14
A61K31/138
A61K31/155
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024520972
(86)(22)【出願日】2022-09-28
(85)【翻訳文提出日】2024-05-13
(86)【国際出願番号】 KR2022014517
(87)【国際公開番号】W WO2023058987
(87)【国際公開日】2023-04-13
(31)【優先権主張番号】10-2021-0132701
(32)【優先日】2021-10-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.Witepsol
2.TWEEN
(71)【出願人】
【識別番号】521138084
【氏名又は名称】メディエンス カンパニー リミテッド
【氏名又は名称原語表記】MEDIENCE CO., LTD.
【住所又は居所原語表記】33-30, Jongjari-ro, Dongsan-myeun, Chuncheon-si, Gangwon-do, 24409 Republic of Korea
(74)【代理人】
【識別番号】100121382
【弁理士】
【氏名又は名称】山下 託嗣
(72)【発明者】
【氏名】パク,ス ヒョン
(72)【発明者】
【氏名】キム,セッ ビョル
(72)【発明者】
【氏名】キム,ジョン フン
(72)【発明者】
【氏名】モ,ヨン ウォン
【テーマコード(参考)】
4C076
4C086
4C206
【Fターム(参考)】
4C076AA01
4C076AA11
4C076AA16
4C076AA22
4C076AA30
4C076AA31
4C076AA36
4C076AA49
4C076AA53
4C076BB01
4C076BB11
4C076BB29
4C076BB30
4C076CC35
4C076FF70
4C086AA01
4C086AA02
4C086BC72
4C086MA02
4C086MA03
4C086MA04
4C086MA17
4C086MA23
4C086MA31
4C086MA35
4C086MA37
4C086MA41
4C086MA52
4C086MA56
4C086MA60
4C086MA66
4C086NA14
4C086ZB33
4C086ZC75
4C206AA01
4C206AA02
4C206FA21
4C206HA31
4C206MA02
4C206MA03
4C206MA04
4C206MA37
4C206MA43
4C206MA55
4C206MA57
4C206MA61
4C206MA63
4C206MA72
4C206MA76
4C206MA80
4C206MA86
4C206NA14
4C206ZB33
4C206ZC75
(57)【要約】
本発明は、エファビレンツ及びフルオキセチンを有効成分として含有するウイルス感染症の予防又は治療用薬学的組成物に関する。エファビレンツ及びフルオキセチンを複合、混合又は併用投与する場合、並びに、エファビレンツ及びフルオキセチンにビグアナイド系化合物であるメトホルミンを追加して複合、混合、又は併用投与する場合、それぞれを単独で投与したときに比べてSARS-CoV-2を含む多様な人獣共通感染ウイルスに対して著しく高い抗ウイルス効能を示すことが確認され、前記エファビレンツ、フルオキセチン、及びビグアナイド系化合物は、ウイルス感染症の予防又は治療用組成物の有効成分として有用に使用することができる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ウイルス感染症の予防又は治療に使用するための複合、混合又は併用製剤として、エファビレンツを含む第1成分;及びフルオキセチンを含む第2成分を有効成分として含有する、ウイルス感染症の予防又は治療用薬学的組成物。
【請求項2】
ウイルス感染症の予防又は治療に使用するための複合、混合又は併用製剤として、エファビレンツを含む第1成分;フルオキセチンを含む第2成分;及びビグアナイド系化合物又はその薬学的に許容される塩を含む第3成分を有効成分として含有する、ウイルス感染症の予防又は治療用薬学的組成物。
【請求項3】
ビグアナイド系化合物は、メトホルミン、フェンホルミン、ブホルミン及びビグアナイドで構成された群から選択されるものである、請求項2に記載の薬学的組成物。
【請求項4】
エファビレンツを含む第1成分;及びフルオキセチンを含む第2成分の配合比が第1成分0.0000001重量部乃至10重量部:第2成分1重量部である、請求項1に記載の薬学的組成物。
【請求項5】
エファビレンツを含む第1成分;フルオキセチンを含む第2成分;及びビグアナイド系化合物又はその薬学的に許容される塩を含む第3成分の配合比が第1成分0.0000001重量部乃至10重量部:第2成分1重量部:第3成分0.01重量部乃至100000重量部である、請求項2に記載の薬学的組成物。
【請求項6】
ウイルスは、ベータコロナウイルス属(Betacoronavirus)及びその亜属、オルトハンタウイルス属(Orthohantavirus)、オルトポックスウイルス属(Orthopoxvirus)、フラビウイルス属(Flavivirus)、リッサウイルス属(Lyssavirus)及びバンダウイルス属(Bandavirus)で構成された群から選択された1種以上である、請求項1又は2に記載の薬学的組成物。
【請求項7】
ウイルスは、ウシコロナウイルス(Bovine coronavirus)、ヒトコロナウイルスOC43(Human coronavirus OC43、HCoV-OC43)、チャイナラッタスコロナウイルスHKU24(China Rattus coronavirus HKU24)、ヒトコロナウイルスHKU1(Human coronavirus HKU1、HCoV-HKU1)、マウスコロナウイルス(Murine coronavirus、M-CoV)、ミオデスコロナウイルス2JL14(Myodes coronavirus 2JL14)、第2型重症急性呼吸器症候群コロナウイルス(Severe acute respiratory syndrome coronavirus 2、SARS-CoV-2)及びその変異体、中東呼吸器症候群コロナウイルス(Middle East respiratory syndrome coronavirus、MERS-CoV)、第1型重症急性呼吸器症候群コロナウイルス(Severe acute respiratory syndrome coronavirus 1、SARS-CoV-1)、SARS関連コロナウイルス(Severe acute respiratory syndrome-related coronavirus、SARSr-CoV)、コウモリ由来SARS類似コロナウイルスWIV1(Bat SARS-like coronavirus WIV1、Bat SL-CoV-WIV1)、コウモリコロナウイルスRaTG13(Bat coronavirus RaTG13)、ヘッジホッグコロナウイルス1(Hedgehog coronavirus 1)、アブラコウモリコロナウイルスHKU5(Pipistrellus bat coronavirus HKU5)、タケコウモリコロナウイルスHKU4(Tylonycteris bat coronavirus HKU4)、ストローオオコウモリコロナウイルスC704(Eidolon bat coronavirus C704)、ルーセットコウモリコロナウイルスGCCDC1(Rousettus bat coronavirus GCCDC1)、ルーセットコウモリコロナウイルスHKU9(Rousettus bat coronavirus HKU9、HKU9-1)、コウモリHp-ベータコロナウイルスZhejiang2013(Bat Hp-betacoronavirus Zhejiang2013)、アンデスオルトハンタウイルス(Andes orthohantavirus、ANDV)、アサマオルトハンタウイルス(Asama orthohantavirus、ASAV)、アシッカラオルトハンタウイルス(Asikkala orthohantavirus、ASIV)、バヨウウイルス(Bayou orthohantavirus、BAYV)、ブラッククリークカナルオルトハンタウイルス(Black Creek Canal orthohantavirus、BCCV)、ボウオルトハンタウイルス(Bowe orthohantavirus、BOWV)、ブルージュオルトハンタウイルス(Bruges orthohantavirus)、カノデルガディトオルトハンタウイルス(Cano Delgadito orthohantavirus、CADV)、カオバンオルトハンタウイルス(Cao Bang orthohantavirus)、チョクロオルトハンタウイルス(Choclo orthohantavirus、CHOV)、ダビエシャンオルトハンタウイルス(Dabieshan orthohantavirus)、ドブラバーベルグレドオルトハンタウイルス(Dobrava-Belgrade orthohantavirus、DOBV)、エルモロキャニオンオルトハンタウイルス(El Moro Canyon orthohantavirus)、フゴンオルトハンタウイルス(Fugong orthohantavirus)、フソンオルトハンタウイルス(Fusong orthohantavirus)、ハンターンオルトハンタウイルス(Hantaan orthohantavirus、HTNV)、済州オルトハンタウイルス(Jeju orthohantavirus)、ケンケメオルトハンタウイルス(Kenkeme orthohantavirus)、イスラビスタウイルス(Isla Vista virus、ISLAV)、カバロフスクオルトハンタウイルス(Khabarovsk orthohantavirus、KHAV)、ラグーナネグラオルトハンタウイルス(Laguna Negra orthohantavirus、LANV)、ムレショーウイルス(Muleshoe virus、MULV)、ルーシーオルトハンタウイルス(Luxi orthohantavirus)、マポラルオルトハンタウイルス(Maporal orthohantavirus)、モンタノオルトハンタウイルス(Montano orthohantavirus、MTNV)、ネコクリオルトハンタウイルス(Necocli orthohantavirus)、オックスボウオルトハンタウイルス(Oxbow orthohantavirus、OXBV)、ニューヨークウイルス(New York virus、NYV)、プロスペクトヒルオルトハンタウイルス(Prospect Hill orthohantavirus、PHV)、プーマラオルトハンタウイルス(Puumala orthohantavirus、PUUV)、ロビーナオルトハンタウイルス(Robina orthohantavirus)、ロックポートオルトハンタウイルス(Rockport orthohantavirus、RKPV)、リオマモレウイルス(Rio Mamore virus、RIOMV)、リオセグンドウイルス(Rio Segundo virus、RIOSV)、サンガソウオルトハンタウイルス(Sangassou orthohantavirus、SANGV)、スイスオルトハンタウイルス(Seewis orhtohantavirus)、ソウルオルトハンタウイルス(Seoul orthohantavirus、SEOV)、シンノンブレオルトハンタウイルス(Sin Nombre orthohantavirus、SNV)、タテネールオルトハンタウイルス(Tatenale orthohantavirus)、ティグライオルトハンタウイルス(Tigray orthohantavirus)、タイオルトハンタウイルス(Thailand orthohantavirus、THAIV)、トッタパラヤンウイルス(Thottapalayam virus、TPMV)、トポグラホフウイルス(Topografov virus、TOPV)、ツラウイルス(Tula orthohantavirus、TULV)、ヤクシオルトハンタウイルス(Yakeshi orthohantavirus)、アバチノマカカポックスウイルス(Abatino macacapox virus)、アクメタウイルス(Akhmeta virus)、アラスカポックスウイルス(Alaskapox virus)、ラクダ痘ウイルス(Camelpox virus、CMLV)、牛痘ウイルス(Cowpox virus)、エクトロメリアウイルス(Ectromelia virus)、サル痘ウイルス(Monkeypox virus)、アライグマ痘ウイルス(Raccoonpox virus)、スカンク痘ウイルス(Skunkpox virus)、アレチネズミ痘ウイルス(Taterapox virus)、ワクシニアウイルス(Vaccinia virus)、天然痘ウイルス(Variola virus)、ハタネズミ痘ウイルス(Volepox virus)、アポイウイルス(Apoi virus)、アロアウイルス(Aroa virus)、ベガザウイルス(Bagaza virus)、バンジウイルス(Banzi virus)、ボウボイウイルス(Bouboui virus)、ブカラサコウモリウイルス(Bukalasa bat virus)、カシパコレウイルス(Cacipacore virus)、カレイ島ウイルス(Carey Island virus)、カウボーンリッジウイルス(Cowbone Ridge virus)、ダカーコウモリウイルス(Dakar bat virus)、デングウイルス(Dengue virus、DENV)、エッジヒルウイルス(Edge Hill virus)、エンテベコウモリウイルス(Entebbe bat virus)、ガドジェットガリーウイルス(Gadgets Gully virus、GGYV)、イルヘウスウイルス(Ilheus virus)、イスラエルターキー脳髓膜脊髓炎ウイルス(Israel turkey meningoencephalomyelitis virus)、日本脳炎ウイルス(Japanese encephalitis virus、JE)、ジュガラウイルス(Jugra virus)、ジュチアパウイルス(Jutiapa virus)、カダムウイルス(Kadam virus)、ケドゴウウイルス(Kedougou virus、KEDV)、ココベラウイルス(Kokobera virus)、コウタンゴウイルス(Koutango virus)、キャサナー森林病ウイルス(Kyasanur Forest disease virus、KFD)、ランガトウイルス(Langat virus、LGTV)、跳躍病ウイルス(Louping ill virus)、メアバンウイルス(Meaban virus)、モドクウイルス(Modoc virus、MODV)、モンタナ筋炎白質脳炎ウイルス(Montana myotis leukoencephalitis virus)、マレー渓谷脳炎ウイルス(Murray Valley encephalitis virus、MVEV)、ウンタヤウイルス(Ntaya virus)、オムスク出血型ウイルス(Omsk hemorrhagic fever virus)、フォンフェンコウモリウイルス(Phnom Penh bat virus)、ポワサンウイルス(Powassan virus、POWV)、リオブラボーウイルス(Rio Bravo virus)、ロイヤルファームウイルス(Royal Farm virus)、サボヤウイルス(Saboya virus)、セントルイス脳炎ウイルス(Saint Louis encephalitis virus)、サルビエヤウイルス(Sal Vieja virus)、サンペルリタウイルス(San Perlita virus)、サウマレッツリーフウイルス(Saumarez Reef virus)、セピックウイルス(Sepik virus、SEPV)、テンブスウイルス(Tembusu virus)、ダニ媒介型脳炎ウイルス(Tick-borne encephalitis virus、TBEV)、チュレニーウイルス(Tyuleniy virus)、ウガンダSウイルス(Uganda S virus)、ウスツウイルス(Usutu virus、USUV)、ウェッセルスブロンウイルス(Wesselsbron virus)、ウェストナイルウイルス(West Nile virus、WNV)、ヤオウンドウイルス(Yaounde virus)、黄熱ウイルス(Yellow fever virus)、ヨコセウイルス(Yokose virus、YOKV)、ジカウイルス(Zika virus)、狂犬病ウイルス(Rabies lyssavirus)及び重症熱性血小板減少症候群ウイルス(Sever Fever with Thrombocytopenia Syndrome Virus、SFTSV)で構成された群から選択された1種以上である、請求項6に記載の薬学的組成物。
【請求項8】
薬学的組成物は、錠剤、カプセル剤、注射剤、トローチ剤、散剤、顆粒剤、液剤、懸濁剤、内用液剤、乳剤、シロップ剤、坐剤、膣錠剤、及び丸剤で構成された群から選択された剤形に剤形化される、請求項1又は2に記載の薬学的組成物。
【請求項9】
エファビレンツを含む製剤;及びフルオキセチンを含む製剤;を含む、ウイルス感染症の予防又は治療用複合、混合又は併用剤キット。
【請求項10】
エファビレンツを含む製剤;フルオキセチンを含む製剤;及びビグアナイド系化合物又はその薬学的に許容される塩を含む製剤;を含む、ウイルス感染症の予防又は治療用複合、混合又は併用剤キット。
【請求項11】
複合、混合又は併用剤は、錠剤、カプセル剤、注射剤、トローチ剤、散剤、顆粒剤、液剤、懸濁剤、内用液剤、乳剤、シロップ剤、坐剤、膣錠剤及び丸剤で構成された群から選択された剤形に剤形化される、請求項9又は10に記載のウイルス感染症の予防又は治療用複合、混合又は併用剤キット。
【請求項12】
エファビレンツを含む第1成分;及びフルオキセチンを含む第2成分を個体に複合、混合又は併用投与する段階を含む、ウイルス感染症の予防又は治療方法。
【請求項13】
エファビレンツを含む第1成分;フルオキセチンを含む第2成分;及びビグアナイド系化合物又はその薬学的に許容される塩を含む第3成分を個体に複合、混合又は併用投与する段階を含む、ウイルス感染症の予防又は治療方法。
【請求項14】
ウイルス感染症の予防又は治療用薬学的組成物として使用するための、エファビレンツを含む第1成分;及びフルオキセチンを含む第2成分を有効成分として含有する、複合、混合又は併用製剤の用途。
【請求項15】
ウイルス感染症の予防又は治療用薬学的組成物として使用するための、エファビレンツを含む第1成分;フルオキセチンを含む第2成分;及びビグアナイド系化合物又はその薬学的に許容される塩を含む第3成分を有効成分として含有する、複合、混合又は併用製剤の用途。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エファビレンツ(efavirenz)を含む第1成分;及びフルオキセチン(fluoxetine)を含む第2成分を複合、混合又は併用製剤の有効成分として含有するウイルス感染症の予防又は治療用薬学的組成物に関する。また、本発明は、エファビレンツを含む第1成分;フルオキセチンを含む第2成分;及びビグアナイド(biguanide)系化合物又はその薬学的に許容される塩を含む第3成分を複合、混合又は併用製剤の有効成分として含有するウイルス感染症の予防又は治療用薬学的組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
コロナウイルス感染症-19(COVID-19)は、ベータコロナウイルス(β-coronavirus)のうち新しく発見された第2型重症急性呼吸器症候群コロナウイルス(Severe acute respiratory syndrome coronavirus 2、SARS-CoV-2)によって発生する急性呼吸器疾患であり、無症状から発熱、疲労感、咽喉痛、空咳、呼吸困難、下痢などの急性症状、急性呼吸困難症候群様相の肺炎、及び多臓器不全まで多様な臨床様相及び致死率を示し、2019年に発病して以来、2021年9月を基準にして全世界の2億1千万人を超える人々が感染しており、455万人を超える人々が死亡した。COVID-19は、インフルエンザより伝染性が強く、症状の発現後に感染が発生する普通の場合とは異なり、症状の発現前又は完全な無症状状態でも60%以上の高い感染力を示しており、感染者本人が認識していない状態でも恐ろしい伝播力を示すことによって統制がさらに難しいものとして知られている。現在、COVID-19においては、ワクチン接種を通じた集団免疫及び効果的な治療剤の開発のみが、伝播を遮断し、重症患者や死亡者を最小化できる唯一の解法として見なされている。
【0003】
前記COVID-19を始めとした人獣共通感染症(Zoonosis)は、動物と人との間に相互伝播される病原体によって発生する伝染病を言い、人獣共通感染症の病原体は、ウイルス、リケッチア、クラミジア、細菌、原虫、寄生虫を含めて世界的に数百個以上存在しており、これらを保有している宿主及び媒介体も非常に多様なものとして知られている。2000年以後に発生している主要な感染症流行の75%が動物から人に伝播されたものとして把握されており、人獣共通感染症は、人工生息地の拡大による人と動物との接触機会の増加、環境破壊と気候変化による異種間伝播、病原体の遺伝的変異及び組換えなどによる病原性の増加、宿主特異性変化などによって発生するものとして知られている。人獣共通感染症は、野生動物及び野生鳥類の不顕性感染で病原体が家畜又は人に直接伝播されたり、交通発達、旅行及び交易の増加などでさらに速く伝播されるという特徴を有し、今回のCOVID-19パンデミック(Pandemic)のように社会及び経済的に天文学的な損失を与え得るという危険性を有しているため、多様な人獣共通感染症の予防又は治療のための新しい予防又は治療法を導入する研究が切実な状況である。
【0004】
抗ウイルス薬は、人体に侵入したウイルスの作用を弱化或いは消滅させることによって、ウイルスによる感染症を治療する薬物であり、ウイルスの増殖を抑制する作用を有する。作用メカニズムによって、ウイルス付着及び浸透阻害薬と、ウイルス増殖阻害薬とに分類することができる。ほとんどの抗ウイルス薬は、ウイルス増殖に必要な多くの種類の酵素を阻害し、抗ウイルス作用を示す。
【0005】
一例として、FDA承認を受けたエファビレンツは、ヒト免疫不全ウイルス(Human Immunodeficiency Virus、HIV)逆転写酵素の活性部位付近の疎水性ポケット(hydrophobic pocket)に直接結合し、酵素の構造を変化させることによって酵素作用を抑制する。
【0006】
また、抗うつ薬は、うつ病と関連した神経伝達物質(セロトニン(serotonin)、ノルエピネフリン(norepinephrine)、ドーパミン(dopamine))の不均衡を調節し、うつ病の症状を改善する薬物であり、三環系抗うつ薬(Tricyclic antidepressants;TCAs)、モノアミン酸化酵素阻害薬(Monoamine oxidase inhibitors、MAOIs)、選択的セロトニン再取り込み阻害薬(Selective serotonin reuptake inhibitors、SSRIs)、セロトニン-ノルエピネフリン再取り込み阻害薬(Serotonin-norepinephrine reuptake inhibitors、SNRIs)などに分類され得る。
【0007】
三環系抗うつ薬は、神経細胞の末端でセロトニンとノルエピネフリンの再取り込みを遮断し、シナプス内の神経伝達物質の濃度を増加させ、うつ病の症状を改善する物質であり、選択的セロトニン再取り込み阻害薬は、神経細胞の末端で選択的にセロトニンの再取り込みを遮断し、シナプス内のセロトニンの濃度を増加させ、セロトニンの活性の増加によってうつ病の症状が緩和される物質である。選択的セロトニン再取り込み阻害薬は、三環系抗うつ薬に比べて副作用と安全性の面で優れており、抗うつ薬として最も多く使用されている。
【0008】
近年、これらの抗うつ薬におけるCOVID-19治療効果が検討されている。一例として、三環系抗うつ薬であるクロミプラミン(clomipramine)は、SARS-CoV-2が細胞内に侵入することを防止し、侵入後にもウイルス増殖を抑制する効果を有するものとして報告されており、選択的セロトニン再取り込み阻害薬であるフルボキサミン(fluvoxamine)は、COVID-19患者の主要な死亡原因であるサイトカインストーム(cytokine storm)を遮断する効果を有するものとして報告されている。
【0009】
そこで、本発明者等は、SARS-CoV-2を含む多様な人獣共通感染ウイルスに対する抗ウイルス効果により優れた物質の組み合わせを開発するために研究した結果、本発明の抗ウイルス薬であるエファビレンツと抗うつ薬であるフルオキセチンとの組み合わせが、人獣共通感染ウイルスに対する増殖阻害効果において著しい相乗作用を示すことを確認することによって、新しい混合、複合又は併用抗ウイルス薬を発明するに至った。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】Y Kato et al.,Clomipramine suppresses ACE2-mediated SARS-CoV-2 entry,https://doi.org/10.1101/2021.03.13.435221
【非特許文献2】EJ Lenze et al.,Fluvoxamine vs Placebo and Clinical Deterioration in Outpatients With Symptomatic COVID-19 A Randomized Clinical Trial,JAMA.2020;324(22):2292-2300
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
完全に新しい医薬品を開発、許可及び発売開始するまでには、薬の効果、副作用及び有害性を立証するために前臨床段階から3段階の臨床試験を行う必要があるため、多くの時間及び費用が発生する。このような幾何級数的な新薬開発費用を画期的に減少させるための解決策として、既存に安全性と効果が立証された医薬品を使用する薬物再創出が登場した。これにより、臨床試験費用を大きく減少できるだけでなく、副作用危険も少ないため、現在のCOVID-19の流行などの緊急状況でも患者に迅速に適用できると期待されている。
【0012】
したがって、本発明の目的は、既存の医薬品であるエファビレンツ及びフルオキセチンを有効成分として含有しながらも抗ウイルス効能に優れたウイルス感染症の予防又は治療用組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
前記目的を達成するために、本発明は、ウイルス感染症の予防又は治療に使用するための複合、混合又は併用製剤として、エファビレンツを含む第1成分;及びフルオキセチンを含む第2成分を有効成分として含有する、ウイルス感染症の予防又は治療用薬学的組成物が、ウイルスに対しては著しく優れた増殖阻害効果を示すことを発見し、前記第1成分及び第2成分を複合、混合又は併用製剤の有効成分として含有する薬学的組成物を提供する。
【0014】
本発明の他の様態では、ウイルス感染症の予防又は治療に使用するための複合、混合又は併用製剤として、エファビレンツを含む第1成分;フルオキセチンを含む第2成分;及びビグアナイド系化合物又はその薬学的に許容される塩を含む第3成分を有効成分として含有する、ウイルス感染症の予防又は治療用薬学的組成物を提供する。
【0015】
本発明のさらに他の様態では、エファビレンツを含む製剤;及びフルオキセチンを含む製剤;を含む、ウイルス感染症の予防又は治療用複合、混合又は併用剤キットを提供する。
【0016】
本発明のさらに他の様態では、エファビレンツを含む製剤;フルオキセチンを含む製剤;及びビグアナイド系化合物又はその薬学的に許容される塩を含む製剤;を含む、ウイルス感染症の予防又は治療用複合、混合又は併用剤キットを提供する。
【0017】
本発明のさらに他の様態では、エファビレンツを含む第1成分;及びフルオキセチンを含む第2成分を個体に複合、混合又は併用投与する段階を含む、ウイルス感染症の予防又は治療方法を提供する。
【0018】
本発明のさらに他の様態では、エファビレンツを含む第1成分;フルオキセチンを含む第2成分;及びビグアナイド系化合物又はその薬学的に許容される塩を含む第3成分を個体に複合、混合又は併用投与する段階を含む、ウイルス感染症の予防又は治療方法を提供する。
【0019】
本発明のさらに他の様態では、ウイルス感染症の予防又は治療用薬学的組成物として使用するためのエファビレンツを含む第1成分;及びフルオキセチンを含む第2成分を有効成分として含有する、複合、混合又は併用製剤の用途を提供する。
【0020】
本発明のさらに他の様態では、ウイルス感染症の予防又は治療用薬学的組成物として使用するためのエファビレンツを含む第1成分;フルオキセチンを含む第2成分;及びビグアナイド系化合物又はその薬学的に許容される塩を含む第3成分を有効成分として含有する、複合、混合又は併用製剤の用途を提供する。
【発明の効果】
【0021】
本発明に係るエファビレンツ及びフルオキセチンは、それぞれを単独処理した場合に比べて、複合、混合又は併用処理した場合にSARS-CoV-2を含む人獣共通感染ウイルスに対して相乗的に著しく高い抗ウイルス効能を示すため、これを有効成分として含有する薬学的組成物は、ウイルス感染症の予防又は治療に有用に使用することができる。
【0022】
また、追加的に、エファビレンツ及びフルオキセチンと共に、ビグアナイド系化合物であるメトホルミンを複合、混合又は併用処理した場合、それぞれを単独処理した場合や、メトホルミンとエファビレンツとの組み合わせ又はメトホルミンとフルオキセチンとの組み合わせで複合、混合又は併用処理した場合に比べて、相乗的に著しく高い抗ウイルス効能を示すため、これを有効成分として含有する薬学的組成物は、ウイルス感染症の予防又は治療に有用に使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】SARS-CoV-2感染後、1.5μMのエファビレンツ(Efavirenz、Efa)、1μMのフルオキセチン(Fluoxetine、Flu)及び/又は2.5mMのメトホルミン(Metformin、Met)を単独又は併用処理したベロE6(Vero E6)細胞のqPCR結果として、SARS-CoV-2のN遺伝子の相対的遺伝子数(Relative copy number)を示した図である。
図2】HCoV-OC43感染後、1.5μMのエファビレンツ及び1μMのフルオキセチンを併用処理したベロE6細胞のqPCR結果として、HCoV-OC43のN遺伝子の相対的遺伝子数を示した図である。
図3】SEOV感染後、1.5μMのエファビレンツ及び1μMのフルオキセチンを併用処理したベロE6細胞のqPCR結果として、SEOVのN遺伝子の相対的遺伝子数を示した図である。
図4】VACV感染後、1.5μMのエファビレンツ及び1μMのフルオキセチンを併用処理したベロE6細胞のqPCR結果として、VACVのN遺伝子の相対的遺伝子数を示した図である。
図5】ZIKV感染後、1.5μMのエファビレンツ及び1μMのフルオキセチンを併用処理したベロE6細胞のqPCR結果として、ZIKVのN遺伝子の相対的遺伝子数を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明をより詳細に説明する。
【0025】
本発明は、ウイルス感染症の予防又は治療に使用するための複合、混合又は併用製剤として、エファビレンツを含む第1成分;及びフルオキセチンを含む第2成分を複合、混合又は併用製剤の有効成分として含有する、ウイルス感染症の予防又は治療用薬学的組成物、エファビレンツを含む第1成分;及びフルオキセチンを含む第2成分を個体に複合、混合又は併用投与する段階を含む、ウイルス感染症の予防又は治療方法、及びウイルス感染症の予防又は治療用薬学的組成物として使用するためのエファビレンツを含む第1成分;及びフルオキセチンを含む第2成分を有効成分として含有する、複合、混合又は併用製剤の用途を提供する。
【0026】
また、本発明は、ウイルス感染症の予防又は治療に使用するための複合、混合又は併用製剤として、エファビレンツを含む第1成分;フルオキセチンを含む第2成分;及びビグアナイド系化合物又はその薬学的に許容される塩を含む第3成分を有効成分として含有する、ウイルス感染症の予防又は治療用薬学的組成物、エファビレンツを含む第1成分;フルオキセチンを含む第2成分;及びビグアナイド系化合物又はその薬学的に許容される塩を含む第3成分を個体に複合、混合又は併用投与する段階を含む、ウイルス感染症の予防又は治療方法、及びウイルス感染症の予防又は治療用薬学的組成物として使用するためのエファビレンツを含む第1成分;フルオキセチンを含む第2成分;及びビグアナイド系化合物又はその薬学的に許容される塩を含む第3成分を有効成分として含有する、複合、混合又は併用製剤の用途を提供する。
【0027】
本発明において、「予防」は、組成物の投与で発病を抑制又は遅延させる全ての行為を意味する。また、本発明において、「改善」又は「治療」は、組成物の投与により前記疾患の症状が好転することや、有利に変化する全ての行為を意味する。
【0028】
本発明において、「投与」は、任意の適切な方法で患者に所定の物質を提供することを意味し、本発明の組成物は、目的組織に到逹し得る限り、一般的な全ての経路を介して経口又は非経口投与され得る。また、組成物は、活性物質が標的細胞に移動し得る任意の装置によって投与され得る。
【0029】
本発明に係るビグアナイド系化合物は、メトホルミン、フェンホルミン(phenformin)、ブホルミン(buformin)及びビグアナイドで構成された群から選択されるものであり得る。
【0030】
本発明の一様態において、エファビレンツの濃度は0.001μM乃至10mMで、フルオキセチンの濃度は0.001μM乃至10mMであり得る。
【0031】
また、本発明の一様態において、追加され得るビグアナイド系化合物又はその薬学的に許容される塩の濃度は0.01μM乃至100mMであり得る。
【0032】
本発明の一様態において、エファビレンツ;フルオキセチン;及びビグアナイド系化合物又はその薬学的に許容される塩の本発明の医薬中の含量は、製剤形態などによって適宜選択され得る。
【0033】
本発明の一様態において、エファビレンツ、フルオキセチン及びビグアナイド系化合物又はその薬学的に許容される塩が一つの単一製剤に剤形化される場合、エファビレンツの含量は、全体の製剤に対して、一般的には約0.01wt%乃至約99.99wt%で、具体的には約0.01wt%乃至約90wt%で、好ましくは約0.1wt%乃至約90wt%で、さらに好ましくは約0.1wt%乃至約80wt%で、さらに好ましくは約0.1wt%乃至約70wt%であり、フルオキセチンの含量は、全体の製剤に対して、一般的には約0.01wt%乃至約99.99wt%で、具体的には約0.01wt%乃至約90wt%で、好ましくは約0.1wt%乃至約80wt%で、さらに好ましくは約0.1wt%乃至約70wt%で、さらに好ましくは約0.1wt%乃至約60wt%であり、ビグアナイド系化合物又はその薬学的に許容される塩の含量は、全体の製剤に対して、一般的には約0.00001wt%乃至約99.99wt%で、具体的には約0.00001wt%乃至約90wt%で、好ましくは約0.0001wt%乃至約90wt%で、さらに好ましくは約0.0001wt%乃至約80wt%で、さらに好ましくは約0.0001wt%乃至約70wt%である。
【0034】
一方、一つの単一製剤に配合される場合において、本発明の医薬中の第1成分であるエファビレンツ;及び第2成分であるフルオキセチンは、第1成分0.0000001重量部乃至10重量部:第2成分1重量部の重量比で配合され得る。また、一つの単一製剤に配合される場合において、本発明の医薬中の第1成分であるエファビレンツ;第2成分であるフルオキセチン;及び第3成分であるビグアナイド系化合物又はその薬学的に許容される塩は、第1成分0.0000001重量部乃至10重量部:第2成分1重量部:第3成分0.01重量部乃至100000重量部の重量比で配合され得る。
【0035】
本発明の一様態において、エファビレンツ;フルオキセチン;及びビグアナイド系化合物又はその薬学的に許容される塩がそれぞれ別途に製剤化されて併用される場合、エファビレンツの含量は、その含有製剤に対して、一般的には約0.01wt%乃至約99.99wt%で、具体的には約0.1wt%乃至約99.99wt%で、好ましくは約0.1wt%乃至約90wt%で、さらに好ましくは約0.1wt%乃至約80wt%で、さらに好ましくは約1wt%乃至約80wt%である。また、フルオキセチンの含有製剤内のフルオキセチンの含量は、その含有製剤に対して、一般的には約0.01wt%乃至約99.99wt%で、具体的には約0.1wt%乃至約99.99wt%で、好ましくは約0.1wt%乃至約90wt%で、さらに好ましくは約0.1wt%乃至約80wt%で、さらに好ましくは約1wt%乃至約80wt%である。また、ビグアナイド系化合物又はその薬学的に許容される塩の含量は、その含有製剤に対して、一般的には約0.01wt%乃至約99.99wt%で、具体的には約0.1wt%乃至約99.99wt%で、好ましくは約0.1wt%乃至約90wt%で、さらに好ましくは約0.1wt%乃至約80wt%で、さらに好ましくは約1wt%乃至約80wt%であり得る。
【0036】
一方、エファビレンツ;フルオキセチン;及びビグアナイド系化合物又はその薬学的に許容される塩がそれぞれ別途に製剤化されて併用される場合、担体などの添加剤の含量は、可変的ではあるが、各含有製剤に対して、一般的には約1wt%乃至99.00wt%で、具体的には約1wt%乃至約90wt%で、好ましくは約10wt%乃至約90wt%で、さらに好ましくは約10wt%乃至80wt%で、さらに好ましくは約10wt%乃至約70wt%であり得る。
【0037】
本発明に係るウイルスは、人獣共通感染ウイルスであり得、具体的には、ベータコロナウイルス属(Betacoronavirus)及びその亜属、オルトハンタウイルス属(Orthohantavirus)、オルトポックスウイルス属(Orthopoxvirus)、フラビウイルス属(Flavivirus)、リッサウイルス属(Lyssavirus)及びバンダウイルス属(Bandavirus)で構成された群から選択され得る。
【0038】
前記ベータコロナウイルス属(Betacoronavirus)及びその亜属の例としては、ウシコロナウイルス(Bovine coronavirus)、ヒトコロナウイルスOC43(Human coronavirus OC43、HCoV-OC43)、チャイナラッタスコロナウイルスHKU24(China Rattus coronavirus HKU24)、ヒトコロナウイルスHKU1(Human coronavirus HKU1、HCoV-HKU1)、マウスコロナウイルス(Murine coronavirus、M-CoV)、ミオデスコロナウイルス2JL14(Myodes coronavirus 2JL14)、第2型重症急性呼吸器症候群コロナウイルス(Severe acute respiratory syndrome coronavirus 2、SARS-CoV-2)及びその変異体、中東呼吸器症候群コロナウイルス(Middle East respiratory syndrome coronavirus、MERS-CoV)、第1型重症急性呼吸器症候群コロナウイルス(Severe acute respiratory syndrome coronavirus 1、SARS-CoV-1)、SARS関連コロナウイルス(Severe acute respiratory syndrome-related coronavirus、SARSr-CoV)、コウモリ由来SARS類似コロナウイルスWIV1(Bat SARS-like coronavirus WIV1、Bat SL-CoV-WIV1)、コウモリコロナウイルスRaTG13(Bat coronavirus RaTG13)、ヘッジホッグコロナウイルス1(Hedgehog coronavirus 1)、アブラコウモリコロナウイルスHKU5(Pipistrellus bat coronavirus HKU5)、タケコウモリコロナウイルスHKU4(Tylonycteris bat coronavirus HKU4)、ストローオオコウモリコロナウイルスC704(Eidolon bat coronavirus C704)、ルーセットコウモリコロナウイルスGCCDC1(Rousettus bat coronavirus GCCDC1)、ルーセットコウモリコロナウイルスHKU9(Rousettus bat coronavirus HKU9、HKU9-1)、及びコウモリHp-ベータコロナウイルスZhejiang2013(Bat Hp-betacoronavirus Zhejiang2013)を挙げることができるが、これに制限されるものではない。
【0039】
また、前記オルトハンタウイルス属(Orthohantavirus)の例として、アンデスオルトハンタウイルス(Andes orthohantavirus、ANDV)、アサマオルトハンタウイルス(Asama orthohantavirus、ASAV)、アシッカラオルトハンタウイルス(Asikkala orthohantavirus、ASIV)、バヨウウイルス(Bayou orthohantavirus、BAYV)、ブラッククリークカナルオルトハンタウイルス(Black Creek Canal orthohantavirus、BCCV)、ボウオルトハンタウイルス(Bowe orthohantavirus、BOWV)、ブルージュオルトハンタウイルス(Bruges orthohantavirus)、カノデルガディトオルトハンタウイルス(Cano Delgadito orthohantavirus、CADV)、カオバンオルトハンタウイルス(Cao Bang orthohantavirus)、チョクロオルトハンタウイルス(Choclo orthohantavirus、CHOV)、ダビエシャンオルトハンタウイルス(Dabieshan orthohantavirus)、ドブラバ-ベルグレドオルトハンタウイルス(Dobrava-Belgrade orthohantavirus、DOBV)、エルモロキャニオンオルトハンタウイルス(El Moro Canyon orthohantavirus)、フゴンオルトハンタウイルス(Fugong orthohantavirus)、フソンオルトハンタウイルス(Fusong orthohantavirus)、ハンターンオルトハンタウイルス(Hantaan orthohantavirus、HTNV)、済州オルトハンタウイルス(Jeju orthohantavirus)、ケンケメオルトハンタウイルス(Kenkeme orthohantavirus)、イスラビスタウイルス(Isla Vista virus、ISLAV)、カバロフスクオルトハンタウイルス(Khabarovsk orthohantavirus、KHAV)、ラグーナネグラオルトハンタウイルス(Laguna Negra orthohantavirus、LANV)、ムレショーウイルス(Muleshoe virus、MULV)、ルーシーオルトハンタウイルス(Luxi orthohantavirus)、マポラルオルトハンタウイルス(Maporal orthohantavirus)、モンタノオルトハンタウイルス(Montano orthohantavirus、MTNV)、ネコクリオルトハンタウイルス(Necocli orthohantavirus)、オックスボーオルトハンタウイルス(Oxbow orthohantavirus、OXBV)、ニューヨークウイルス(New York virus、NYV)、プロスペクトヒルオルトハンタウイルス(Prospect Hill orthohantavirus、PHV)、プーマラオルトハンタウイルス(Puumala orthohantavirus、PUUV)、ロビーナオルトハンタウイルス(Robina orthohantavirus)、ロックポートオルトハンタウイルス(Rockport orthohantavirus、RKPV)、リオマモレウイルス(Rio Mamore virus、RIOMV)、リオセグンドウイルス(Rio Segundo virus、RIOSV)、サンガソウオルトハンタウイルス(Sangassou orthohantavirus、SANGV)、スイスオルトハンタウイルス(Seewis orhtohantavirus)、ソウルオルトハンタウイルス(Seoul orthohantavirus、SEOV)、シンノンブレオルトハンタウイルス(Sin Nombre orthohantavirus、SNV)、タテネールオルトハンタウイルス(Tatenale orthohantavirus)、ティグライオルトハンタウイルス(Tigray orthohantavirus)、タイオルトハンタウイルス(Thailand orthohantavirus、THAIV)、トッタパラヤンウイルス(Thottapalayam virus、TPMV)、トポグラホフウイルス(Topografov virus、TOPV)、ツラウイルス(Tula orthohantavirus、TULV)及びヤクシオルトハンタウイルス(Yakeshi orthohantavirus)を挙げることができるが、これに制限されるものではない。
【0040】
また、前記オルトポックスウイルス属(Orthopoxvirus)の例として、アバチノマカカポックスウイルス(Abatino macacapox virus)、アクメタウイルス(Akhmeta virus)、アラスカポックスウイルス(Alaskapox virus)、ラクダ痘ウイルス(Camelpox virus、CMLV)、牛痘ウイルス(Cowpox virus)、エクトロメリアウイルス(Ectromelia virus)、サル痘ウイルス(Monkeypox virus)、アライグマ痘ウイルス(Raccoonpox virus)、スカンク痘ウイルス(Skunkpox virus)、アレチネズミ痘ウイルス(Taterapox virus)、ワクシニアウイルス(Vaccinia virus)、天然痘ウイルス(Variola virus)及びハタネズミ痘ウイルス(Volepox virus)を挙げることができるが、これに制限されるものではない。
【0041】
また、前記フラビウイルス属(Flavivirus)の例として、アポイウイルス(Apoi virus)、アロアウイルス(Aroa virus)、ベガザウイルス(Bagaza virus)、バンジウイルス(Banzi virus)、ボウボイウイルス(Bouboui virus)、ブカラサコウモリウイルス(Bukalasa bat virus)、カシパコレウイルス(Cacipacore virus)、カレイ島ウイルス(Carey Island virus)、カウボーンリッジウイルス(Cowbone Ridge virus)、ダカーコウモリウイルス(Dakar bat virus)、デングウイルス(Dengue virus、DENV)、エッジヒルウイルス(Edge Hill virus)、エンテベコウモリウイルス(Entebbe bat virus)、ガドジェットガリーウイルス(Gadgets Gully virus、GGYV)、イルヘウスウイルス(Ilheus virus)、イスラエルターキー脳髓膜脊髄炎ウイルス(Israel turkey meningoencephalomyelitis virus)、日本脳炎ウイルス(Japanese encephalitis virus、JE)、ジュガラウイルス(Jugra virus)、ジュチアパウイルス(Jutiapa virus)、カダムウイルス(Kadam virus)、ケドウゴウウイルス(Kedougou virus、KEDV)、ココベラウイルス(Kokobera virus)、コウタンゴウイルス(Koutango virus)、キャサナー森林病ウイルス(Kyasanur Forest disease virus、KFD)、ランガトウイルス(Langat virus、LGTV)、跳躍病ウイルス(Louping ill virus)、メアバンウイルス(Meaban virus)、モドクウイルス(Modoc virus、MODV)、モンタナ筋炎白質脳炎ウイルス(Montana myotis leukoencephalitis virus)、マレー渓谷脳炎ウイルス(Murray Valley encephalitis virus、MVEV)、ウンタヤウイルス(Ntaya virus)、オムスク出血型ウイルス(Omsk hemorrhagic fever virus)、フォンフェンコウモリウイルス(Phnom Penh bat virus)、ポワサンウイルス(Powassan virus、POWV)、リオブラボーウイルス(Rio Bravo virus)、ロイヤルファームウイルス(Royal Farm virus)、サボヤウイルス(Saboya virus)、セントルイス脳炎ウイルス(Saint Louis encephalitis virus)、サルビエヤウイルス(Sal Vieja virus)、サンペルリタウイルス(San Perlita virus)、サウマレッツリーフウイルス(Saumarez Reef virus)、セピックウイルス(Sepik virus、SEPV)、テンブスウイルス(Tembusu virus)、ダニ媒介型脳炎ウイルス(Tick-borne encephalitis virus、TBEV)、チュレニーウイルス(Tyuleniy virus)、ウガンダSウイルス(Uganda S virus)、ウスツウイルス(Usutu virus、USUV)、ウェッセルスブロンウイルス(Wesselsbron virus)、ウェストナイルウイルス(West Nile virus、WNV)、ヤオウンドウイルス(Yaounde virus)、黄熱ウイルス(Yellow fever virus)、ヨコセウイルス(Yokose virus、YOKV)及びジカウイルス(Zika virus)を挙げることができるが、これに制限されるものではない。
【0042】
また、前記リッサウイルス属(Lyssavirus)の例として、狂犬病ウイルス(Rabies lyssavirus)を挙げることができるが、これに制限されるものではない。
【0043】
また、前記バンダウイルス属(Bandavirus)の例として、重症熱性血小板減少症候群ウイルス(Sever Fever with Thrombocytopenia Syndrome Virus、SFTSV)を挙げることができるが、これに制限されるものではない。
【0044】
本発明の一様態において、製剤は、錠剤、カプセル剤、注射剤、トローチ剤、散剤、顆粒剤、液剤、懸濁剤、内用液剤、乳剤、シロップ剤、坐剤、膣錠剤及び丸剤で構成された群から選ばれる剤形に剤形化され得るが、これに限定されず、必要によって適切な剤形への剤形化が可能である。
【0045】
また、本発明は、エファビレンツ;及びフルオキセチンの複合、混合又は併用製剤を含む、ウイルス感染症の予防又は治療用併用剤キットを提供する。
【0046】
また、本発明は、エファビレンツを含む製剤;フルオキセチンを含む製剤;及びビグアナイド系化合物又はその薬学的に許容される塩を含む製剤;を含む、ウイルス感染症の予防又は治療用複合、混合又は併用剤キットを提供する。
【0047】
本発明の一様態において、エファビレンツ、フルオキセチン、ビグアナイド系化合物、これらの含量、含量比及びウイルス感染症に対する説明は、前記ウイルス感染症の予防又は治療用薬学的組成物に対する説明と同一であるため、これについての具体的な説明は省略する。
【0048】
本発明において、エファビレンツ、フルオキセチン及びビグアナイド系化合物は、薬学的に許容される塩の形態で使用可能であり、塩としては、薬学的に許容される遊離酸(free acid)によって形成された酸付加塩が有用である。酸付加塩は、塩酸、硝酸、リン酸、硫酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸、亜硝酸又は亜リン酸などの無機酸類と、脂肪族モノ及びジカルボキシレート、フェニル置換アルカノエート、ヒドロキシアルカノエート及びアルカンジオエート、芳香族酸類、脂肪族及び芳香族スルホン酸などの無毒性有機酸とから得る。このような薬学的に無毒な塩類としては、硫酸塩、ピロ硫酸塩、重硫酸塩、亜硫酸塩、重亜硫酸塩、硝酸塩、リン酸塩、リン酸一水素塩、リン酸二水素塩、メタリン酸塩、ピロリン酸塩、塩化物、臭化物、ヨウ化物、フッ化物、酢酸塩、プロピオン酸塩、デカン酸塩、カプリル酸塩、アクリル酸塩、ギ酸塩、イソ酪酸塩、カプリン酸塩、ヘプタン酸塩、プロピオル酸塩、シュウ酸塩、マロン酸塩、コハク酸塩、スベリン酸塩、セバシン酸塩、フマル酸塩、マレイン酸塩、ブチン-1,4-ジオン酸塩、ヘキサン-1,6-ジオン酸塩、安息香酸塩、クロロ安息香酸塩、メチル安息香酸塩、ジニトロ安息香酸塩、ヒドロキシ安息香酸塩、メトキシ安息香酸塩、フタル酸塩、テレフタル酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、トルエンスルホン酸塩、クロロベンゼンスルホン酸塩、キシレンスルホン酸塩、フェニル酢酸塩、フェニルプロピオン酸塩、フェニル酪酸塩、クエン酸塩、乳酸塩、ヒドロキシ酪酸塩、グリコール酸塩、リンゴ酸塩、酒石酸塩、メタンスルホン酸塩、プロパンスルホン酸塩、ナフタレン-1-スルホン酸塩、ナフタレン-2-スルホン酸塩、及びマンデル酸塩を含む。
【0049】
本発明に係る酸付加塩は、通常の方法、例えば、本発明の化合物を過量の酸水溶液中に溶解させ、この塩を水混和性有機溶媒、例えば、メタノール、エタノール、アセトン又はアセトニトリルを用いて沈澱させて製造することができる。また、この混合物から溶媒や過量の酸を蒸発させて乾燥させたり、又は析出された塩を吸入・ろ過させて製造することもできる。
【0050】
また、塩基を用いて薬学的に許容可能な金属塩を作ることができる。アルカリ金属又はアルカリ土類金属塩は、例えば、化合物を過量のアルカリ金属水酸化物又はアルカリ土類金属水酸化物溶液中に溶解させ、非溶解化合物塩をろ過し、ろ液を蒸発・乾燥させて得る。このとき、金属塩としては、ナトリウム、カリウム又はカルシウム塩を製造することが製薬上に適している。また、これに対応する銀塩は、アルカリ金属又はアルカリ土類金属塩を適当な銀塩(例:硝酸銀)と反応させて得る。
【0051】
前記組成物を製剤化する場合、普通使用する充填剤、増量剤、結合剤、湿潤剤、崩壊剤、界面活性剤などの希釈剤又は賦形剤を用いて製造される。
【0052】
経口投与のための固形製剤には、錠剤、丸剤、散剤、顆粒剤、カプセル剤、トローチ剤などが含まれ、このような固形製剤は、一つ以上の本発明の化合物に少なくとも一つ以上の賦形剤、例えば、澱粉、炭酸カルシウム、スクロース(sucrose)、ラクトース(lactose)又はゼラチンなどを混ぜて調剤される。また、単純な賦形剤以外に、マグネシウムステアレートタルクなどの潤滑剤も使用される。経口投与のための液状製剤には、懸濁剤、内用液剤、乳剤又はシロップ剤などが含まれるが、頻繁に使用される単純希釈剤である水、リキッドパラフィン以外に、様々な賦形剤、例えば、湿潤剤、甘味剤、芳香剤、保存剤などが含まれ得る。
【0053】
非経口投与のための製剤には、滅菌された水溶液、非水性溶剤、懸濁溶剤、乳剤、凍結乾燥製剤、坐剤などが含まれる。
【0054】
非水性溶剤及び懸濁溶剤としては、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、オリーブオイルなどの植物性油、エチルオレートなどの注射可能なエステルなどが使用され得る。坐剤の基剤としては、ウイテプゾール(witepsol)、マクロゴール、ツイン(tween)61、カカオ脂、ラウリン脂、グリセロール、ゼラチンなどが使用され得る。
【0055】
本発明に係る組成物は、薬学的に有効な量で投与する。本発明において、「薬学的に有効な量」は、医学的治療に適用可能な合理的な受恵/危険の割合で疾患を治療するのに十分な量を意味し、有効用量レベルは、患者の疾患の種類、重症度、薬物の活性、薬物に対する敏感度、投与時間、投与経路、排出比率、治療期間、同時に使用される薬物を含む要素及びその他の医学分野によく知られている要素によって決定され得る。本発明の組成物は、配合された個別治療剤として投与されたり、他の治療剤と併用して投与されてもよく、従来の治療剤とは順次に又は同時に投与されてもよく、単一又は多重投与されてもよい。上記の各要素を全て考慮した上で、副作用なしで最小限の量で最大効果が得られる量を投与することが重要であり、これは、当業者によって容易に決定され得る。
【0056】
具体的には、本発明に係る化合物の有効量は、患者の年齢、性別、体重によって変わり得る。一般には、体重1kg当たり0.01mg乃至100mg、好ましくは0.1mg乃至10mgを毎日又は隔日投与したり、1日1回乃至3回に分けて投与することができる。しかし、前記投与量は、投与経路、疾患の重症度、性別、体重、年齢などによって増減可能であるため、如何なる方法でも本発明の範囲を限定しない。
【0057】
本発明の一様態において、エファビレンツを含む第1成分;及びフルオキセチンを含む第2成分、又はエファビレンツを含む第1成分;フルオキセチンを含む第2成分;及びビグアナイド系化合物又はその薬学的に許容される塩を含む第3成分は、混合、複合又は併用し、ウイルス感染症の治療を必要とする対象に投与される。前記言及したウイルスの感染症を含む多様なウイルス感染症が本発明に係る方法によって治療され得る。
【0058】
本発明の具体的な実施例において、本発明者等は、エファビレンツ、フルオキセチン及びビグアナイド系化合物の複合、混合又は併用製剤に対する抗ウイルス効能を確認するために、ベロE6細胞をSARS-CoV-2に感染させた後、エファビレンツ及びフルオキセチンと共に、ビグアナイド系化合物であるメトホルミンを追加的に複合、混合又は併用処理することによってqPCRを行った。その結果、それぞれを単独処理した場合や、メトホルミンとエファビレンツとの組み合わせ又はメトホルミンとフルオキセチンとの組み合わせで複合、混合又は併用処理した場合に比べて、エファビレンツ及びフルオキセチンを複合、混合又は併用処理した場合に優れた抗ウイルス効果を示すことを確認した。また、エファビレンツ及びフルオキセチンと共に、メトホルミンを追加的に複合、混合又は併用処理した場合、より優れた抗ウイルス効果を示すことを確認した。
【0059】
また、ベロE6細胞をHCoV-OC43、SEOV、VACV及びZIKVに感染させた後、エファビレンツ及びフルオキセチンを複合、混合又は併用処理することによってqPCRを行った結果、優れた抗ウイルス効果を示すことを確認した。
【0060】
本発明において、対象は、ウイルス感染症の治療を必要とする哺乳動物である。一般に、対象は、ヒトウイルス感染症患者である。本発明の一様態において、対象は、ヒトではない霊長類などの非ヒト哺乳動物、モデルシステムに使用された動物(例えば、薬剤のスクリーニング、特徴化及び評価に使用されるマウス及びラット)及びその他の哺乳動物、例えば、ウサギ、ギニーピッグ、ハムスター、イヌ、ネコ、チンパンジー、ゴリラ、サルなどの類人猿類動物であり得る。
【0061】
本発明の一様態において、前記薬学的組成物は、ウイルス感染症患者の治療のために、単独で又は手術、ホルモン治療、薬物治療及び生物学的反応調節剤と併行して使用されることもある。
【0062】
併せて、本発明は、ウイルス感染症の予防及び治療用薬学的組成物として使用するためのエファビレンツ;及びフルオキセチンの複合、混合又は併用製剤用途、及びウイルス感染症の予防及び治療用薬学的組成物として使用するためのエファビレンツ;フルオキセチン;及びビグアナイド系化合物及びその薬学的に許容される塩の複合、混合又は併用製剤用途を提供する。
【0063】
以下、本発明を実施例及び実験例によって詳細に説明する。
【0064】
ただし、下記の実施例及び実験例は、本発明を例示するものに過ぎず、本発明の内容が下記の実施例及び実験例に限定されることはない。
【0065】
<実施例1>細胞培養及びウイルス感染
ベロE6細胞(ATCC No.CRL-1586、ATCC、米国)を10%のウシ胎児血清(Fetal Bovine Serum、FBS)、1%のペニシリン/ストレプトマイシン(Penicillin/Streptomycin)及びL-グルタミン(L-glutamine)が含有されたダルベッコ改変イーグル培地(Dulbecco’s modified eagle medium、DMEM)に5%CO下の37℃で培養した。
【0066】
前記<実施例1>の継代培養後、培養容器内のベロE6細胞が約70%乃至80%程度培養されたとき、必要な用量を計算し、段階希釈した所定のウイルスを5%CO下の37℃で48時間にわたって感染させた。
【0067】
<実験例1>エファビレンツ、フルオキセチン及び/又はビグアナイド系化合物のSARS-CoV-2に対する抗ウイルス効能確認
前記<実施例1>で培養されたベロE6細胞を第2型重症急性呼吸器症候群コロナウイルス(Severe acute respiratory syndrome coronavirus 2、SARS-CoV-2)(NCCP No.43326、KDCA、韓国)に感染させてから2時間後、原液(1:1)の1.5μMのエファビレンツ、1μMのフルオキセチン、及び/又は2.5mMのビグアナイド系化合物であるメトホルミンを単独又は併用処理したり、又はこれらを1:10及び1:100で希釈して単独又は併用処理した。48時間後、下記の実験例<1-1>によって抗ウイルス効能を確認した。対照群としてのMock群はウイルスに感染させておらず、SARS-CoV-2群は、エファビレンツ、フルオキセチン及び/又はメトホルミンの代わりにPBSで処理した。
【0068】
<1-1>リアルタイムポリメラーゼ連鎖反応(Quantitative real time polymerase chain reaction、qPCR)を用いたSARS-CoV-2増殖阻害効果確認
前記<実験例1>の細胞を1%ベータ-メルカプトエタノール(beta-mercaptoethanol)が添加されたRLTバッファー(beffer)に入れて溶解させ、ジエチルピロカルボン酸(Diethyl pyrocarbonate、DEPC)で処理した水に50μlのRNAを抽出した後、通常の方法でSARS-CoV-2のN遺伝子(gene)をqPCRで増幅することによって遺伝子発現レベルを分析した。
【0069】
その結果、エファビレンツ、フルオキセチン及びメトホルミンのそれぞれを単独処理したグループ、エファビレンツ及びメトホルミンを併用処理したグループ、及びフルオキセチン及びメトホルミンを併用処理したグループに比べて、エファビレンツ及びフルオキセチンを併用処理したグループの相対的遺伝子数が著しく減少することを確認できた。また、エファビレンツ、フルオキセチン及びメトホルミンを併用処理したグループは、SARS-CoV-2増殖阻害効果により優れることを確認できた(図1)。
【0070】
<実験例2>エファビレンツ及びフルオキセチンのHCoV-OC43に対する抗ウイルス効能確認
前記<実施例1>で培養されたベロE6細胞をヒトコロナウイルス-OC43(Human coronavirus OC43、HCoV-OC43)に感染させてから2時間後、原液の1.5μMのエファビレンツ及び1μMのフルオキセチンを併用処理することを除いては、<実験例1>と同一の方法によって抗ウイルス効能を確認した。対照群は、エファビレンツ及びフルオキセチンの代わりにPBSで処理した。
【0071】
<2-1>qPCRを用いたHCoV-OC43増殖阻害効果確認
前記実験例<1-1>で前記<実験例2>の細胞を用いることを除いては、実験例<1-1>と同一の方法によって遺伝子発現レベルを分析した。
【0072】
その結果、エファビレンツ及びフルオキセチンを併用処理したグループの相対的遺伝子数は、PBSを処理した対照群の相対的遺伝子数に比べて著しく減少することを確認できた。これを通じて、エファビレンツ及びフルオキセチンが優れたHCoV-OC43増殖阻害効果を有することが分かる(図2)。
【0073】
<実験例3>エファビレンツ及びフルオキセチンのSEOVに対する抗ウイルス効能確認
前記<実施例1>で培養されたベロE6細胞をオルトハンタウイルス属(Orthohantavirus)に属する都市型のソウルオルトハンタウイルス(Seoul orthohantavirus、SEOV)に感染させてから2時間後、原液の1.5μMのエファビレンツ及び1μMのフルオキセチンを併用処理することを除いては、<実験例1>と同一の方法によって抗ウイルス効能を確認した。対照群は、エファビレンツ及びフルオキセチンの代わりにPBSで処理した。
【0074】
<3-1>qPCRを用いたSEOV増殖阻害効果確認
前記実験例<1-1>で前記<実験例3>の細胞を用いることを除いては、実験例<1-1>と同一の方法によって遺伝子発現レベルを分析した。
【0075】
その結果、エファビレンツ及びフルオキセチンを併用処理したグループの相対的遺伝子数は、PBSで処理した対照群の相対的遺伝子数に比べて著しく減少することを確認できた。これを通じて、エファビレンツ及びフルオキセチンが優れたSEOV増殖阻害効果を有することが分かる(図3)。
【0076】
<実験例4>エファビレンツ及びフルオキセチンのVACVに対する抗ウイルス効能確認
前記<実施例1>で培養されたベロE6細胞をオルトポックスウイルス属(Orthopoxvirus)に属するワクシニアウイルス(Vaccinia virus、VACV又はVV)に感染させてから2時間後、原液の1.5μMのエファビレンツ及び1μMのフルオキセチンを併用処理することを除いては、<実験例1>と同一の方法によって抗ウイルス効能を確認した。対照群は、エファビレンツ及びフルオキセチンの代わりにPBSで処理した。
【0077】
<4-1>qPCRを用いたVACV増殖阻害効果確認
前記実験例<1-1>で前記<実験例4>の細胞を用いることを除いては、実験例<1-1>と同一の方法によって遺伝子発現レベルを分析した。
【0078】
その結果、エファビレンツ及びフルオキセチンを併用処理したグループの相対的遺伝子数は、PBSで処理した対照群の相対的遺伝子数に比べて著しく減少することを確認できた。これを通じて、エファビレンツ及びフルオキセチンが優れたVACV増殖阻害効果を有することが分かる(図4)。
【0079】
<実験例5>エファビレンツ及びフルオキセチンのZIKVに対する抗ウイルス効能確認
前記<実施例1>で培養されたベロE6細胞をフラビウイルス属(Flavivirus)に属するジカウイルス(Zika virus、ZIKV)に感染させてから2時間後、原液の1.5μMのエファビレンツ及び1μMのフルオキセチンを併用処理することを除いては、<実験例1>と同一の方法によって抗ウイルス効能を確認した。対照群は、エファビレンツ及びフルオキセチンの代わりにPBSで処理した。
【0080】
<5-1>qPCRを用いたZIKV増殖阻害効果確認
前記実験例<1-1>で前記<実験例5>の細胞を用いることを除いては、実験例<1-1>と同一の方法によって遺伝子発現レベルを分析した。
【0081】
その結果、エファビレンツ及びフルオキセチンを併用処理したグループの相対的遺伝子数は、PBSで処理した対照群の相対的遺伝子数に比べて著しく減少することを確認できた。これを通じて、エファビレンツ及びフルオキセチンが優れたZIKA増殖阻害効果を有することが分かる(図5)。
【産業上の利用可能性】
【0082】
本発明では、エファビレンツ及びフルオキセチンを複合、混合又は併用投与する場合、並びに、エファビレンツ及びフルオキセチンにビグアナイド系化合物であるメトホルミンを追加して複合、混合、又は併用投与する場合、それぞれを単独投与したときに比べてSARS-CoV-2を含む多様な人獣共通感染ウイルスに対して著しく高い抗ウイルス効能を示すことを確認したことから、前記エファビレンツ、フルオキセチン、及びビグアナイド系化合物は、ウイルス感染症の予防又は治療用組成物の有効成分として有用に使用することができる。
図1
図2
図3
図4
図5
【国際調査報告】