(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-10-23
(54)【発明の名称】鏡像異性体の分離のための方法
(51)【国際特許分類】
C07D 403/04 20060101AFI20241016BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20241016BHJP
A61K 31/502 20060101ALI20241016BHJP
【FI】
C07D403/04
A61P35/00
A61K31/502
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024521079
(86)(22)【出願日】2022-10-06
(85)【翻訳文提出日】2024-06-05
(86)【国際出願番号】 US2022045898
(87)【国際公開番号】W WO2023059798
(87)【国際公開日】2023-04-13
(32)【優先日】2021-10-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2022-06-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522097810
【氏名又は名称】ミラティ セラピューティクス、インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】弁理士法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】アフマトヴィッチ、ミハル
(72)【発明者】
【氏名】クリューク、スヴィトラーナ
(72)【発明者】
【氏名】スニード、デイビッド
(72)【発明者】
【氏名】チェン、チャン
(72)【発明者】
【氏名】マルクス、マシュー
(72)【発明者】
【氏名】スミス、クリストファー
【テーマコード(参考)】
4C086
【Fターム(参考)】
4C086AA03
4C086AA04
4C086BC41
4C086GA07
4C086GA16
4C086MA01
4C086MA04
4C086ZB26
4C086ZC20
(57)【要約】
本発明は、N-Boc-L-フェニルアラニン、N-Boc-D-フェニルアラニン、及び同様のキラル酸を使用して、5-フェニル及び5-ナフチル置換4-(アミノメチル)-6-(1-メチル-1H-ピラゾール-4-イル)フタラジン-1(2H)-オンの鏡像異性体を分離するための方法に関する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(2M)-2-(4-(4-(アミノメチル)-1-オキソ-1,2-ジヒドロフタラジン-6-イル)-1-メチル-1H-ピラゾール-5-イル)-4-クロロ-6-シクロプロポキシ-3-フルオロベンゾニトリル(化合物M-2)及び(2P)-2-(4-(4-(アミノメチル)-1-オキソ-1,2-ジヒドロフタラジン-6-イル)-1-メチル-1H-ピラゾール-5-イル)-4-クロロ-6-シクロプロポキシ-3-フルオロベンゾニトリル(化合物P-2)鏡像異性体の混合物を分離する方法であって、
【化1】
(a)前記混合物をN-Boc-D-フェニルアラニンと接触させて、化合物M-2 N-Boc-D-フェニルアラニン塩及び化合物P-2 N-Boc-D-フェニルアラニン塩の混合物を形成する工程と、
(b)前記混合物を濾過して、前記化合物M-2 N-Boc-D-フェニルアラニン塩で濃縮された固相を得る工程と、
(c)前記固相を過剰なNH
3又は他の塩基と反応させて、2-(4-(4-(アミノメチル)-1-オキソ-1,2-ジヒドロフタラジン-6-イル)-1-メチル-1H-ピラゾール-5-イル)-4-クロロ-6-シクロプロポキシ-3-フルオロベンゾニトリルのM-鏡像異性体遊離塩基で濃縮された固体を得る工程と、を含む、方法。
【請求項2】
工程(a)における前記接触させることが、MeOH又はMeOH水溶液中で生じる、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
工程(a)における前記接触させることが、EtOH又はEtOH水溶液中で生じる、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記EtOH水溶液が、約90%のEtOH及び約10%の水(v/v)である、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
工程(a)における前記接触させることが、THF又はTHF水溶液中で生じる、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
工程(b)で得られた前記固相を追加の溶媒で1回以上洗浄して、化合物P-2 N-Boc-D-フェニルアラニン塩を除去する、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
工程(c)の前記反応が、イソプロピルアルコール溶液、又はイソプロピルアルコール及び水溶液中で生じる、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
工程(c)の前記反応が、遊離塩基化合物M-2で播種される、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
工程(c)で得られた前記濃縮された固体が、更なる濾過工程によって前記反応混合物から分離される、請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。。
【請求項10】
工程(c)で得られた前記濃縮された固体が、残留N-Boc-D-フェニルアラニンを除去するように設計された1つ以上のスラリー又は洗浄工程によって更に精製される、請求項1~9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
化合物P-2 N-Boc-D-フェニルアラニン塩で濃縮された工程(b)からの濾液を加熱して、化合物P-2及び化合物M-2のラセミ混合物又はほぼラセミ混合物を得る、請求項1~10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記混合物を分離して、純粋又は濃縮された化合物M-2 N-Boc-D-フェニルアラニン塩を得る、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
化合物M-2鏡像異性体及び化合物P-2鏡像異性体の混合物を分離する方法であって、
(a)前記混合物をN-Boc-L-フェニルアラニンと接触させて、化合物M-2 N-Boc-L-フェニルアラニン塩及び化合物P-2 N-Boc-L-フェニルアラニン塩の混合物を形成する工程と、
(b)前記固相を濾過して、前記化合物M-2 N-Boc-L-フェニルアラニン塩で濃縮された液相を得る工程と、
(c)前記化合物M-2 N-Boc-L-フェニルアラニン塩を塩基と反応させて、固体遊離塩基化合物M-2を得る工程と、を含む、方法。
【請求項14】
工程(a)における前記接触させることが、MeOH又はMeOH水溶液中で生じる、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
工程(a)における前記接触させることが、EtOH又はEtOH水溶液中で生じる、請求項13に記載の方法、
【請求項16】
前記EtOH水溶液が、約90%のEtOH及び約10%の水(v/v)である、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
工程(a)における前記接触させることが、THF又はTHF水溶液中で生じる、請求項13に記載の方法。
【請求項18】
工程(b)で得られた前記水相を濃縮乾固させて、固体化合物M-2濃縮N-Boc-L-フェニルアラニン塩を得る、請求項13~17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
工程(c)が、水及びジクロロメタンの懸濁液中で生じる、請求項1~18のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
工程(c)が、水及びジクロロメタンの懸濁液中以外で生じる、請求項1~18のいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
工程(c)で得られた前記濃縮された化合物M-2遊離塩基をスラリー化し、濾過して、ラセミ遊離塩基化合物2を除去し、溶液中の遊離塩基化合物M-2の割合を更に濃縮する、請求項1~18のいずれか一項に記載の方法。
【請求項22】
実質的に純粋な、又は濃縮された化合物M-2を得る方法であって、
(a)Boc保護化合物M-2及びBoc保護化合物P-2の混合物を得る工程と、
(b)前記Boc保護化合物M-2を前記Boc保護化合物P-2からクロマトグラフィーにより分離する工程と、
(c)前記Boc保護化合物M-2を脱保護する工程と、を含む、方法。
【請求項23】
化合物M-2のジアステレオマー過剰率を含有する試料を生成するための方法であって、化合物M-2 N-Boc-D-フェニルアラニン塩に対する化合物P-2 N-Boc-D-フェニルアラニン塩の第1の比率を有する混合物を加熱して、化合物M-2 N-Boc-D-フェニルアラニン塩に対する化合物P-2 N-Boc-D-フェニルアラニン塩の第2の比率を有する混合物を得ることを含む、方法。
【請求項24】
前記比率が、おおよそ、前記化合物M-2 N-Boc-D-フェニルアラニン塩及び化合物P-2 N-Boc-D-フェニルアラニン塩のラセミ混合物の比率である、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
前記混合物を分離して、純粋又は濃縮された化合物M-2 N-Boc-D-フェニルアラニン塩を得る、請求項23に記載の方法。
【請求項26】
(2M)-2-(4-(4-(アミノメチル)-1-オキソ-1,2-ジヒドロフタラジン-6-イル)-1-メチル-1H-ピラゾール-5-イル)-3-フルオロ-3,4-ジヒドロナフタレン-1-カルボニトリルのN-Boc-D-フェニルアラニン塩である化合物。
【請求項27】
(2P)-2-(4-(4-(アミノメチル)-1-オキソ-1,2-ジヒドロフタラジン-6-イル)-1-メチル-1H-ピラゾール-5-イル)-3-フルオロ-3,4-ジヒドロナフタレン-1-カルボニトリルのN-Boc-D-フェニルアラニン塩である化合物;
【請求項28】
(2M)-2-(4-(4-(アミノメチル)-1-オキソ-1,2-ジヒドロフタラジン-6-イル)-1-メチル-1H-ピラゾール-5-イル)-3-フルオロ-3,4-ジヒドロナフタレン-1-カルボニトリルのN-Boc-L-フェニルアラニン塩である化合物;
【請求項29】
(2P)-2-(4-(4-(アミノメチル)-1-オキソ-1,2-ジヒドロフタラジン-6-イル)-1-メチル-1H-ピラゾール-5-イル)-3-フルオロ-3,4-ジヒドロナフタレン-1-カルボニトリルのN-Boc-L-フェニルアラニン塩である化合物;
【請求項30】
(2M)-2-(4-(4-(アミノメチル)-1-オキソ-1,2-ジヒドロフタラジン-6-イル)-1-メチル-1H-ピラゾール-5-イル)-4-クロロ-6-シクロプロポキシ-3-フルオロベンゾニトリルのN-Boc-D-フェニルアラニン塩である化合物;
【請求項31】
(2P)-2-(4-(4-(アミノメチル)-1-オキソ-1,2-ジヒドロフタラジン-6-イル)-1-メチル-1H-ピラゾール-5-イル)-4-クロロ-6-シクロプロポキシ-3-フルオロベンゾニトリルのN-Boc-D-フェニルアラニン塩である化合物
【請求項32】
(2M)-2-(4-(4-(アミノメチル)-1-オキソ-1,2-ジヒドロフタラジン-6-イル)-1-メチル-1H-ピラゾール-5-イル)-4-クロロ-6-シクロプロポキシ-3-フルオロベンゾニトリルのN-Boc-L-フェニルアラニン塩である化合物;及び
【請求項33】
(2P)-2-(4-(4-(アミノメチル)-1-オキソ-1,2-ジヒドロフタラジン-6-イル)-1-メチル-1H-ピラゾール-5-イル)-4-クロロ-6-シクロプロポキシ-3-フルオロベンゾニトリルのN-Boc-L-フェニルアラニン塩である化合物。
【請求項34】
(2M)-2-(4-(4-(アミノメチル)-1-オキソ-1,2-ジヒドロフタラジン-6-イル)-1-メチル-1H-ピラゾール-5-イル)-4-クロロ-6-シクロプロポキシ-3-フルオロベンゾニトリルのN-Boc-D-フェニルアラニン塩である結晶形態。
【請求項35】
(2M)-2-(4-(4-(アミノメチル)-1-オキソ-1,2-ジヒドロフタラジン-6-イル)-1-メチル-1H-ピラゾール-5-イル)-4-クロロ-6-シクロプロポキシ-3-フルオロベンゾニトリルの結晶形態A。
【請求項36】
(2M)-2-(4-(4-(アミノメチル)-1-オキソ-1,2-ジヒドロフタラジン-6-イル)-1-メチル-1H-ピラゾール-5-イル)-4-クロロ-6-シクロプロポキシ-3-フルオロベンゾニトリル塩酸塩の結晶形態A。
【請求項37】
(2M)-2-(4-(4-(アミノメチル)-1-オキソ-1,2-ジヒドロフタラジン-6-イル)-1-メチル-1H-ピラゾール-5-イル)-4-クロロ-6-シクロプロポキシ-3-フルオロベンゾニトリル塩酸塩の結晶形態B。
【請求項38】
アトロプ異性体の混合物を分離する方法であって、
(a)結晶化容器内に溶媒、第1のアトロプ異性体、及び第2のアトロプ異性体の混合物を形成することと、
(b)必要に応じて、前記混合物の温度を、前記第1のアトロプ異性体及び前記第2のアトロプ異性体が異なる溶解度を有する温度に調整することによって、液相及び固相を生成することであって、前記固相が、前記第1のアトロプ異性体の鏡像異性体過剰率を含有し、前記液相が、前記第2のアトロプ異性体の鏡像異性体過剰率を含有する、生成することと、
(c)前記液相の一部分を除去することと、
(d)前記除去された液相部分を、(b)における前記液相中の前記第1のアトロプ異性体の量と比較して、前記除去された液相中の増加した量の前記第1のアトロプ異性体を生成するのに十分な条件に供することと、
(e)(d)で生成された前記除去された液相を前記結晶化容器に戻すことと、
(f)前記第1のアトロプ異性体の結晶を単離することと、を含む、方法。
【請求項39】
前記アトロプ異性体が、式
【化2】
を有する化合物のものであり、式中、
A環が、
【化3】
であり、式中、B環への二環式A環の結合点が、環E上にあり、
前記B環が、6~10員アリール基、5~10員ヘテロアリール基、5~10員ヘテロシクロアルキル基、アミド基、スルホン基、スルホキシド基、オレフィン基、アミン基、又はエーテル基であり、それらの各々が、任意選択的に置換され、
Zが、N、CH、又はCR
1であり、
nが、0、1、2、3、又は4であり、
xが、0、1、又は2であり、
mが、0、1、2、3、又は4であり、
各R
1が、独立して、C1-C6アルキル、C1-C6アルコキシ、C3-C8シクロアルキル、C3-C8シクロアルキルオキシ、ハロゲン、シアノ、ヒドロキシ、アミノ、又はモノ-若しくはジ-C1-C
6アルキルアミノであり、
各R
2が、独立して、C1-C6アルキル、C1-C6アルコキシ、C3-C8シクロアルキル、C3-C8シクロアルキルオキシ、ハロゲン、シアノ、ヒドロキシ、アミノ、又はモノ-若しくはジ-C
1-C6アルキルアミノであり、
ただし、前記B環への前記A環の前記結合点までのA環オルト上の位置のうちの少なくとも1つが、R
1で置換されることを条件とする、請求項38に記載のアトロプ異性体の混合物を分離する方法。
【請求項40】
前記液相中の前記第2のアトロプ異性体の量が、所定のレベルを下回るまで、前記除去すること、供すること、及び戻すことが継続される、請求項38又は39に記載のアトロプ異性体の混合物を分離する方法。
【請求項41】
前記溶媒、前記第1のアトロプ異性体、及び第2のアトロプ異性体の前記混合物が、前記混合物中に第1のアトロプ異性体分解剤複合体及び第2のアトロプ異性体分解剤複合体を形成する分解剤を更に含み、
前記方法が、前記第1のアトロプ異性体分解剤複合体の結晶を、前記第1のアトロプ異性体を前記第1のアトロプ異性体分解剤複合体から分離することができる条件に供することを更に含む、請求項38~40のいずれか一項に記載のアトロプ異性体の混合物を分離する方法。
【請求項42】
前記第1のアトロプ異性体が、(2M)-2-(4-(4-(アミノメチル)-1-オキソ-1,2-ジヒドロフタラジン-6-イル)-1-メチル-1H-ピラゾール-5-イル)-4-クロロ-6-シクロプロポキシ-3-フルオロベンゾニトリル(化合物M-2)であり、前記第2のアトロプ異性体が、(2P)-2-(4-(4-(アミノメチル)-1-オキソ-1,2-ジヒドロフタラジン-6-イル)-1-メチル-1H-ピラゾール-5-イル)-4-クロロ-6-シクロプロポキシ-3-フルオロベンゾニトリル(化合物P-2)である、請求項38~41のいずれか一項に記載のアトロプ異性体の混合物を分離する方法。
【請求項43】
溶媒、第1のアトロプ異性体、及び第2のアトロプ異性体の前記混合物が、N-Boc-D-フェニルアラニンである分解剤を更に含む、請求項38~42のいずれか一項に記載のアトロプ異性体の混合物を分離する方法。
【請求項44】
前記溶媒が、MeOH又はMeOH水溶液である、請求項38~43のいずれか一項に記載のアトロプ異性体の混合物を分離する方法。
【請求項45】
前記溶媒が、EtOH又はEtOH水溶液である、請求項38~43のいずれか一項に記載のアトロプ異性体の混合物を分離する方法、
【請求項46】
前記溶媒が、約90:10(v/v)~約99:1(v/v)のEtOH/水である、請求項38~43のいずれか一項に記載のアトロプ異性体の混合物を分離する方法。
【請求項47】
(b)における前記調整することが、約20~25℃の温度に調整することである、請求項38~46のいずれか一項に記載のアトロプ異性体の混合物を分離する方法。
【請求項48】
(d)における前記供することが、約80~200℃の温度で加熱することを含む、請求項38~47のいずれか一項に記載のアトロプ異性体の混合物を分離する方法。
【請求項49】
前記接触させることが、
前記化合物M-2 N-Boc-D-フェニルアラニン塩で濃縮された固相と、
前記化合物P-2 N-Boc-D-フェニルアラニン塩で濃縮された液相と、を含むスラリーを生成し、
前記方法が、
前記液相の一部分を前記スラリーから分離することと、
前記液相を加熱して、化合物M-2 N-Boc-D-フェニルアラニン塩に対する化合物P-2 N-Boc-D-フェニルアラニン塩の比率を有する加熱された混合物を生成することであって、前記比率が前記加熱前の比率とは異なる、生成することと、を更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項50】
前記加熱後の前記比率が、おおよそ、前記化合物M-2 N-Boc-D-フェニルアラニン塩及び化合物P-2 N-Boc-D-フェニルアラニン塩のラセミ混合物の比率である、請求項49に記載の方法。
【請求項51】
前記加熱された混合物を冷却して、前記化合物M-2 N-Boc-D-フェニルアラニン塩で濃縮された固相及び前記化合物M-2 N-Boc-D-フェニルアラニン塩で濃縮された液相を含む、冷却された混合物を生成することを更に含む、請求項49又は50に記載の方法。
【請求項52】
前記加熱された混合物を前記冷却することが、前記加熱された混合物を前記スラリーと組み合わせることを含む、請求項51に記載の方法。
【請求項53】
結晶化モジュール、エピマー化モジュール、及び任意選択的な収集モジュールを含む、アトロプ異性体を分離するためのシステム。
【請求項54】
前記結晶化モジュールが、除去チャネル及び戻りチャネルによって前記エピマー化モジュールに流体的に接続されている、請求項53に記載のシステム。
【請求項55】
材料が、前記結晶化モジュールから連続的又は半連続的に除去され、前記エピマー化モジュールに直接的又は間接的に供給され、材料が、前記エピマー化モジュールから前記結晶化モジュールに少なくとも半連続的に戻される、請求項53又は54に記載のシステム。
【請求項56】
アトロプ異性体を分離するための方法であって、
結晶化モジュール内でより可溶性の低いアトロプ異性体を選択的に結晶化することと、
エピマー化モジュール内でより可溶性の高いアトロプ異性体をエピマー化することと、を含み、
可溶性材料が、前記結晶化モジュールから、直接的又は間接的に前記エピマー化モジュールに、連続的又は半連続的に提供され、前記エピマー化モジュールからの材料が、少なくとも半連続的に前記結晶化モジュールに戻される、方法。
【請求項57】
前記選択的に結晶化することが、前記結晶化モジュールに、溶媒、並びに第1及び第2のアトロプ異性体の混合物を導入することであって、前記第1のアトロプ異性体及び前記第2のアトロプ異性体が、前記溶媒中で異なる溶解度を有する、導入することと、任意選択的に、前記温度を調整して、前記可溶性の低いアトロプ異性体の結晶化を引き起こすことと、を含む、請求項56に記載の方法。
【請求項58】
前記エピマー化することが、前記より可溶性の高いアトロプ異性体を、増加した量の前記より可溶性の低いアトロプ異性体を生成するのに十分な条件に供することを含む、請求項56又は57に記載の方法。
【請求項59】
前記除去チャネルが、前記収集モジュールを含み、前記収集モジュールが、前記エピマー化モジュール及び前記結晶化モジュールに流体的かつ直接的に接続されており、前記戻りチャネルが、前記結晶化モジュール及び前記エピマー化モジュールに流体的かつ直接的に接続されている、請求項54に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2021年10月6日に出願された米国仮特許出願第63/252,973号、及び2022年06月15日に出願された米国仮特許出願第63/352,504号の優先権を主張し、これらの各々の開示は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0002】
本発明は、N-Boc-L-フェニルアラニン、N-Boc-D-フェニルアラニン、及び同様のキラル酸を使用して、5-フェニル及び5-ナフチル置換4-(アミノメチル)-6-(1-メチル-1H-ピラゾール-4-イル)フタラジン-1(2H)-オンの鏡像異性体を分離するための方法に関する。
【背景技術】
【0003】
以下の化合物1及び2などの、ある特定の5置換4-(アミノメチル)-6-(1-メチル-1H-ピラゾール-4-イル)フタラジン-1(2H)-オンは、軸性キラルであり、したがって、アトロプ異性体として存在する。化合物1、軸性キラル2-(4-(4-(アミノメチル)-1-オキソ-1,2-ジヒドロフタラジン-6-イル)-1-メチル-1H-ピラゾール-5-イル)-3-フルオロ-3,4-ジヒドロナフタレン-1-カルボニトリル、及び化合物2、軸性キラル2-(4-(4-(アミノメチル)-1-オキソ-1,2-ジヒドロフタラジン-6-イル)-1-メチル-1H-ピラゾール-5-イル)-4-クロロ-6-シクロプロポキシ-3-フルオロベンゾニトリルは、PRMT5の強力かつ選択的阻害剤である。
【化1】
【0004】
しかしながら、(以下に描写され、かつ(2M)-2-(4-(4-(アミノメチル)-1-オキソ-1,2-ジヒドロフタラジン-6-イル)-1-メチル-1H-ピラゾール-5-イル)-4-クロロ-6-シクロプロポキシ-3-フルオロベンゾニトリル(以下、化合物M-2)と命名することができる)化合物2のM-アトロプ異性体のみが薬理学的に活性である。
【0005】
化合物1及び化合物2における軸性キラリティは、フェニル部分(環A)と中央のN-メチルピラゾール(環B)との間の制限された回転の結果である。したがって、化合物1及び化合物2及びそれらの上流中間体を含む、この環A/環Bモチーフを共有する分子は、分解可能な鏡像異性体混合物として存在する。
【化2】
【0006】
化合物2の薬理学的に活性なM-鏡像異性体は、キラルクロマトグラフィーを介して得ることができる。この化合物は、97.3%の鏡像異性体過剰率の(M)鏡像異性体を有する材料を使用して25℃で測定した場合、比旋光度[α]D=35°(c=0.3、MeOH)を有する。
【0007】
ラセミ化合物2をもたらす合成は、国際公開出願第2021/050915A1号(2021年3月18日公開、参照により本明細書に組み込まれる)に記載されている。243ページのラセミ化合物4-230、195-196ページのカップリング方法4D、及び198ページの精製方法4-6を参照されたい。そのように合成されたラセミ化合物2中のM-及びP-鏡像異性体を、307ページの実施例16-7及び16-8のWO2021/050915A1に記載されるように分離した。キラルクロマトグラフィー分離のこのプロセスは、溶媒集約的であり、スケーラブルでなく、高価であるため、不利である。
【0008】
上述の欠点を考慮して、化合物1及び化合物2の純粋又は高濃縮M-鏡像異性体の合成に対する代替的アプローチが模索された。
【0009】
鈴木-宮浦クロスカップリング反応のエナンチオ選択的変異体が考慮されたが、少なくとも2つの主要な課題のために実行不可能であるとみなされた:(1)鈴木-宮浦反応に必要な高度にオルト置換されたビルディングブロックは、ラセミ方式であってもクロスカップリングすることが困難であり、(2)鈴木-宮浦反応に必要な高温は、これらの条件下で加速されるラセミ化のため、化合物2とは相容れない。
【0010】
化合物2のM-鏡像異性体を合成する既知の方法は、効率的でもスケーラブルでもなく、鈴木-宮浦クロスカップリング反応のエナンチオ選択的変異などの理論的に代替的アプローチが実行不可能であると排除されたため、化合物2のM-鏡像異性体、すなわち化合物M-2を得るための改善された効率的な方法が必要である。
【発明の概要】
【0011】
本発明は、以下のスキームによるキラル酸を使用したラセミ化合物2の分解を含む:
【化3】
【0012】
多数のキラル酸が試験されたが、本発明者らは当初、化合物1及び2のM-鏡像異性体及びP-鏡像異性体を十分に区別する塩を同定することができなかった。その後、ラセミ化合物1及び化合物2遊離塩基のM鏡像異性体成分及びP鏡像異性体成分と、ある特定のキラル酸(HA*)、具体的にはN-Boc-L-フェニルアラニン及びN-Boc-D-フェニルアラニンとの間の塩形成が、2つのジアステレオマー塩(M-A*及びP-A*)をもたらすことが予想外に発見された。個々の鏡像異性体とは対照的に、得られた化合物1及び化合物2の塩は、驚くべきことに、異なる物理化学的特性、例えば、異なる溶解度又は結晶性を有する。キラル酸HA*(N-Boc-L-フェニルアラニン及び/又はN-Boc-D-フェニルアラニン)が好適であることを発見した後、ラセミ体の分解は、2つのシナリオのうちのいずれかによって進行することが確認された:シナリオAでは、所望の化合物2の塩鏡像異性体(M-A*)は、より可溶性が低く、したがって、優先的に結晶化し、M-A*で濃縮された固体を提供する一方で、望ましくない化合物2の塩ジアステレオマー(P-A*)は、上清で拒絶される。シナリオBでは、望ましくない化合物2の塩ジアステレオマー(P-A*)は、より可溶性が低く、優先的に結晶化し、結果として、化合物2の塩M-A*で上清を濃縮する。
【0013】
本発明はまた、化合物1及び化合物2の塩を提供する。特に、本発明は、
(2M)-2-(4-(4-(アミノメチル)-1-オキソ-1,2-ジヒドロフタラジン-6-イル)-1-メチル-1H-ピラゾール-5-イル)-3-フルオロ-3,4-ジヒドロナフタレン-1-カルボニトリルのN-Boc-D-フェニルアラニン塩、
(2P)-2-(4-(4-(アミノメチル)-1-オキソ-1,2-ジヒドロフタラジン-6-イル)-1-メチル-1H-ピラゾール-5-イル)-3-フルオロ-3,4-ジヒドロナフタレン-1-カルボニトリルのN-Boc-D-フェニルアラニン塩、
(2M)-2-(4-(4-(アミノメチル)-1-オキソ-1,2-ジヒドロフタラジン-6-イル)-1-メチル-1H-ピラゾール-5-イル)-3-フルオロ-3,4-ジヒドロナフタレン-1-カルボニトリルのN-Boc-L-フェニルアラニン塩、
(2P)-2-(4-(4-(アミノメチル)-1-オキソ-1,2-ジヒドロフタラジン-6-イル)-1-メチル-1H-ピラゾール-5-イル)-3-フルオロ-3,4-ジヒドロナフタレン-1-カルボニトリルのN-Boc-L-フェニルアラニン塩、
(2M)-2-(4-(4-(アミノメチル)-1-オキソ-1,2-ジヒドロフタラジン-6-イル)-1-メチル-1H-ピラゾール-5-イル)-4-クロロ-6-シクロプロポキシ-3-フルオロベンゾニトリルのN-Boc-D-フェニルアラニン塩、
(2P)-2-(4-(4-(アミノメチル)-1-オキソ-1,2-ジヒドロフタラジン-6-イル)-1-メチル-1H-ピラゾール-5-イル)-4-クロロ-6-シクロプロポキシ-3-フルオロベンゾニトリルのN-Boc-D-フェニルアラニン塩、
(2M)-2-(4-(4-(アミノメチル)-1-オキソ-1,2-ジヒドロフタラジン-6-イル)-1-メチル-1H-ピラゾール-5-イル)-4-クロロ-6-シクロプロポキシ-3-フルオロベンゾニトリルのN-Boc-L-フェニルアラニン塩、及び
(2P)-2-(4-(4-(アミノメチル)-1-オキソ-1,2-ジヒドロフタラジン-6-イル)-1-メチル-1H-ピラゾール-5-イル)-4-クロロ-6-シクロプロポキシ-3-フルオロベンゾニトリルのN-Boc-L-フェニルアラニン塩を提供する。
【0014】
本発明はまた、上記Boc-フェニルアラニン塩の固体形態、特に(2M)-2-(4-(4-(アミノメチル)-1-オキソ-1,2-ジヒドロフタラジン-6-イル)-1-メチル-1H-ピラゾール-5-イル)-4-クロロ-6-シクロプロポキシ-3-フルオロベンゾニトリルのN-Boc-D-フェニルアラニン塩の結晶形態も更に包含する。
【0015】
本発明はまた、(2M)-2-(4-(4-(アミノメチル)-1-オキソ-1,2-ジヒドロフタラジン-6-イル)-1-メチル-1H-ピラゾール-5-イル)-4-クロロ-6-シクロプロポキシ-3-フルオロベンゾニトリル及び(2M)-2-(4-(4-(アミノメチル)-1-オキソ-1,2-ジヒドロフタラジン-6-イル)-1-メチル-1H-ピラゾール-5-イル)-4-クロロ-6-シクロプロポキシ-3-フルオロベンゾニトリル塩酸塩の結晶形態を包含する。より具体的には、本発明は、(2M)-2-(4-(4-(アミノメチル)-1-オキソ-1,2-ジヒドロフタラジン-6-イル)-1-メチル-1H-ピラゾール-5-イル)-4-クロロ-6-シクロプロポキシ-3-フルオロベンゾニトリルの結晶形態A、すなわち、化合物M-2の結晶形態Aを提供する。本発明はまた、(2M)-2-(4-(4-(アミノメチル)-1-オキソ-1,2-ジヒドロフタラジン-6-イル)-1-メチル-1H-ピラゾール-5-イル)-4-クロロ-6-シクロプロポキシ-3-フルオロベンゾニトリル塩酸塩の結晶形態A及び結晶形態Bも提供する。
【0016】
本発明はまた、(2M)-2-(4-(4-(アミノメチル)-1-オキソ-1,2-ジヒドロフタラジン-6-イル)-1-メチル-1H-ピラゾール-5-イル)-4-クロロ-6-シクロプロポキシ-3-フルオロベンゾニトリル及び(2M)-2-(4-(4-(アミノメチル)-1-オキソ-1,2-ジヒドロフタラジン-6-イル)-1-メチル-1H-ピラゾール-5-イル)-4-クロロ-6-シクロプロポキシ-3-フルオロベンゾニトリル塩酸塩の結晶形態、特に(2M)-2-(4-(4-(アミノメチル)-1-オキソ-1,2-ジヒドロフタラジン-6-イル)-1-メチル-1H-ピラゾール-5-イル)-4-クロロ-6-シクロプロポキシ-3-フルオロベンゾニトリルの結晶形態Aを生成及び単離するためのシステムを提供する。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】実施例1A及び1Bに記載されるような固体としての高濃縮又は純粋な化合物M-2の分離を示すフローチャートである。
【0018】
【
図2】実施例2に記載されるような液相中の高濃縮又は純粋な化合物M-2の分離を示すフローチャートである。
【0019】
【
図3】結晶化モジュール及びエピマー化モジュールを含む、本発明によるシステムの図である。
【0020】
【
図4】例示的な実施形態による1H qNMR分析である。
【0021】
【
図5】例示的な実施形態による、R-BINOLのHPLCクロマトグラムである。
【0022】
【
図6】例示的な実施形態による、S-BINOLのHPLCクロマトグラムである。
【0023】
【
図7】例示的な実施形態による、1時間の熟成後の上清のHPLCクロマトグラムである。
【0024】
【
図8】例示的な実施形態による、t=0でのフラッシュエピマー化からの溶出液のHPLCクロマトグラムである。
【0025】
【
図9】例示的な実施形態による、結晶化されたR-BINOLのHPLCである。
【0026】
【
図10】例示的な実施形態による、化合物M-2 Boc-D-フェニルアラニンのd
6-DMSO中の
1H NMRである。
【0027】
【
図11】MSMPR-SPACEの組み合わせを使用して達成された高速平衡を実証するチャートである。
【0028】
【
図12】結晶化モジュール(MSMPR)、収集モジュール又はタンク、及びラセミ化又はエピマー化モジュールを含む、本発明によるシステムの図である。この図では、
【数1】
は、溶液中のM-鏡像異性体を意味し、
【数2】
は、溶液中のP-鏡像異性体を意味し、
【数3】
は、結晶相のM-鏡像異性体を意味し、
【数4】
は、熱の適用を意味し、
【数5】
は、冷却の適用を意味する。
【0029】
【
図13】例示的な実施形態による、固体(D
S)における分布比を実証するチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0030】
本明細書で使用される場合、「アトロプ異性体」という用語は、単一結合の周りの妨害された回転の結果として存在する立体異性体を指す。そのような化合物では、立体歪み又は他の要因によるエネルギー差は、個々の配座異性体の単離を可能にするのに十分な高さの回転に対する障壁を作成する。
【0031】
本明細書で使用される場合、化合物M-1は、(2M)-2-(4-(4-(アミノメチル)-1-オキソ-1,2-ジヒドロフタラジン-6-イル)-1-メチル-1H-ピラゾール-5-イル)-3-フルオロ-3,4-ジヒドロナフタレン-1-カルボニトリル、すなわち、以下の構造
【化4】
化合物M-1を有する化合物を指す。
【0032】
本明細書で使用される場合、化合物P-1は、(2P)-2-(4-(4-(アミノメチル)-1-オキソ-1,2-ジヒドロフタラジン-6-イル)-1-メチル-1H-ピラゾール-5-イル)-3-フルオロ-3,4-ジヒドロナフタレン-1-カルボニトリル、すなわち、以下の構造
【化5】
化合物P-1を有する化合物を指す。
【0033】
本明細書で使用される場合、化合物M-2は、(2M)-2-(4-(4-(アミノメチル)-1-オキソ-1,2-ジヒドロフタラジン-6-イル)-1-メチル-1H-ピラゾール-5-イル)-4-クロロ-6-シクロプロポキシ-3-フルオロベンゾニトリル、すなわち、以下の構造
【化6】
化合物M-2を有する化合物を指す。
【0034】
本明細書で使用される場合、化合物P-2は、(2P)-2-(4-(4-(アミノメチル)-1-オキソ-1,2-ジヒドロフタラジン-6-イル)-1-メチル-1H-ピラゾール-5-イル)-4-クロロ-6-シクロプロポキシ-3-フルオロベンゾニトリル、すなわち、以下の構造
【化7】
化合物P-2を有する化合物を指す。
【0035】
化合物1及び化合物2のM-鏡像異性体とP-鏡像異性体との間に(物理的又は化学的特性の観点から)十分に大きな区別を提供することができる適切なキラル酸(HA
*)を同定することは、おそらく、化合物M-2について以下に示される、キラリティ軸とキラル対イオンとの間の空間的分離に起因して、困難であった。
【化8】
化合物1及び化合物2を用いた多数のキラル酸の広範な試験により、固体又は上清のいずれかの最小限のアップグレードがもたらされた。例えば、固体についての化合物2の鏡像異性体組成物が、試験された酸の大部分について40%~60%~60%40%の範囲であることが示されている表1を参照されたい。しかしながら、ある特定のキラル酸が、有望な分化をもたらすことが予想外に発見された。例えば、ある特定の実施形態では、N-Boc-L-フェニルアラニンは、溶媒に応じて、79%~21%の分化をもたらし、N-Boc-D-フェニルアラニンは、化合物2のP鏡像異性体及びM鏡像異性体の間に7%~93%及び2%~98%の分化をもたらした(表1、下部を参照されたい)。
【表1-1】
【表1-2】
【0036】
より具体的には、THFを溶媒とするN-Boc-L-フェニルアラニンは、他のキラル酸と比較して、化合物2の望ましくないP-鏡像異性体の有意な増加を生成した(P/M=79/21、58%ジアステレオマー過剰率(de))。N-Boc-D-フェニルアラニンを用いた同様の塩形成/結晶化実験により、化合物2のM-鏡像異性体が濃縮された(P/M=7/93、86%de)。この発見は、ラセミ体から化合物2のM-鏡像異性体を単離するための2つの相補的アプローチ:固体の濃縮を介したN-Boc-D-フェニルアラニンの使用(
図1)及び上清での濃縮を介したN-Boc-L-フェニルアラニンの使用(
図2)の開発につながった。
【0037】
本発明のある特定の態様では、分解プロセスで分離された望ましくないP-鏡像異性体をリサイクルして、化合物2の追加の鏡像異性体濃縮M-鏡像異性体を提供することができる。以下のスキームに概説されるプロセスは、入力として化合物2 Boc-D-フェニルアラニン塩のP-鏡像異性体を使用するそのようなアプローチを説明するが、化合物P-2 Boc-L-フェニルアラニン塩も同様に好適であろう。理論に束縛されるものではないが、このプロセスは、高温で、加速されたラセミ化を受けるアトロプ異性体の熱構成不安定性を利用すると考えられている。したがって、ある特定の実施形態では、化合物2のP-鏡像異性体で部分的に濃縮された混合物(例えば、P/M=85/15)をラセミ化し(例えば、P/M=49/51)て、分解工程のための追加のM-鏡像異性体を提供することができる。この手順は、冷却後に容易な鏡像異性体分離を可能にするために、P-鏡像異性体化合物2 Boc-D-フェニルアラニン塩を直接エピマー化する。
【化9】
【0038】
この手順は、望ましくない鏡像異性体を連続的にリサイクルして、追加の所望のM-2鏡像異性体を生成するために使用されることができる。したがって、例えば、望ましくないP-2鏡像異性体のリサイクルは、
(a)溶媒、例えば、水性エタノール、M-2、P-2、及びBoc-D-フェニルアラニンの混合物を結晶化容器内に形成して、化合物M-2 Boc-D-フェニルアラニン塩及び化合物P-2 Boc-D-フェニルアラニン塩を形成することと、
(b)混合物中に固相及び液相を形成することであって、固相が、化合物M-2 Boc-D-フェニルアラニン塩の鏡像異性体過剰率を含有し、液相が、化合物P-2 Boc-D-フェニルアラニン塩の鏡像異性体過剰率を含有する、形成することと、
(c)液相の一部分を濾過することと、
(d)濾過された液相部分を、(b)における液相中の化合物M-2 Boc-D-フェニルアラニン塩の量と比較して、濾過された液相中の増加した量の化合物M-2Boc-D-フェニルアラニン塩を生成するのに十分な条件に供することと、
(e)(d)で生成された、濾過された液相を結晶化容器に戻すことと、
(f)化合物M-2 Boc-D-フェニルアラニン塩の結晶を単離することと、を含むことができる。
【0039】
この手順では、冷却せずに(b)で固相が形成されない場合、プロセスは、混合物の温度を(a)から、化合物M-2 Boc-D-フェニルアラニン塩及び化合物P-2 Boc-D-フェニルアラニン塩が異なる溶解度を有する温度に調整することを含むことができる。
【0040】
また、化合物1のM-及びP-鏡像異性体のN-Boc-L-フェニルアラニン塩及びN-Boc-D-フェニルアラニン塩が、微分可溶性を実証したことも驚くべきことに発見された。
【0041】
化合物2のアトロプ異性体を分離することに加えて、本明細書に開示される方法は、生物学的に活性な化合物及びそのような生物学的に活性な化合物を調製するために有用な中間体を含む他の化合物のアトロプ異性体を容易に分離するために使用することができる。アトロプ異性体形態で存在し、本明細書に開示される方法を適用することができる化合物の具体例としては、[1,1’-ビナフタレン]-2,2’-ジオール及び6-フルオロ-7-(2-フルオロ-6-ヒドロキシフェニル)-(1M)-1-[4-メチル-2-(プロパン-2-イル)ピリジン-3-イル]-4-[(2S)-2-メチル-4-(プロパ-2-エノイル)ピペラジン-1-イル]ピリド[2,3-d]ピリミジン-2(1H)-オン、並びにこの化合物の製造に有用な合成中間体が挙げられる。
【0042】
ある特定の態様では、本発明は、アトロプ異性体の混合物を分離する方法(実施形態A)を提供し、本方法は、
(a)結晶化容器内に溶媒、第1のアトロプ異性体、及び第2のアトロプ異性体の混合物を形成することと、
(b)必要に応じて、混合物の温度を、第1のアトロプ異性体及び第2のアトロプ異性体が異なる溶解度を有する温度に調整することによって、液相及び固相を生成することであって、固相が、第1のアトロプ異性体の鏡像異性体過剰率を含有し、液相が、第2のアトロプ異性体の鏡像異性体過剰率を含有する、生成することと、
(c)液相の一部分を除去することと、
(d)除去された液相部分を、(b)における液相中の第1のアトロプ異性体の量と比較して、除去された液相中の増加した量の第1のアトロプ異性体を生成するのに十分な条件に供することと、
(e)(d)で生成された除去された液相を結晶化容器に戻すことと、
(f)第1の異性体の結晶を単離することと、を含む。
【0043】
ある特定の態様では、容器、溶媒、及び出発材料の温度、並びに溶媒の選択に応じて、より低い溶解度を有するアトロプ異性体は、冷却又は播種することなく結晶化する。必要に応じて、冷却及び/又は播種を採用して、固相及び液相を生成し得る。
【0044】
実施形態Aのある特定の態様では、アトロプ異性体は、式I(実施形態B)
【化10】
を有する化合物のものであり、式中、
A環が、
【化11】
であり、式中、B環への二環式A環の結合点が、環E上にあり、
B環が、6~10員アリール基、5~10員ヘテロアリール基、5~10員ヘテロシクロアルキル基、アミド基、スルホン基、スルホキシド基、オレフィン基、アミン基、又はエーテル基であり、それらの各々が、任意選択的に置換され、
Zが、N、CH、又はCR
1であり、
nが、0、1、2、3、又は4であり、
xは、0、1、又は2であり、
mが、0、1、2、3、又は4であり、
各R
1が、独立して、C1-C6アルキル、C1-C6アルコキシ、C3-C8シクロアルキル、C3-C8シクロアルキルオキシ、ハロゲン、シアノ、ヒドロキシ、アミノ、又はモノ-若しくはジ-C1-C
6アルキルアミノであり、
各R
2が、独立して、C1-C6アルキル、C1-C6アルコキシ、C3-C8シクロアルキル、C3-C8シクロアルキルオキシ、ハロゲン、シアノ、ヒドロキシ、アミノ、又はモノ-若しくはジ-C1-C
6アルキルアミノであり、
ただし、B環へのA環の結合点までのA環オルト上の位置のうちの少なくとも1つが、R
1で置換されることを条件とする。
【0045】
実施形態A及びBの特定の実施形態(実施形態C)では、液相中の第2のアトロプ異性体の量が所定のレベルを下回るまで、除去すること、供すること、及び戻ることが継続される(実施形態C)。
【0046】
実施形態A~Cの特定の実施形態(実施形態D)では、
溶媒、第1のアトロプ異性体、及び第2のアトロプ異性体の混合物が、混合物中に第1のアトロプ異性体分解剤複合体及び第2のアトロプ異性体分解剤複合体を形成する分解剤を更に含み、
方法が、第1のアトロプ異性体分解剤複合体の結晶を、第1のアトロプ異性体を第1のアトロプ異性体分解剤複合体から分離することができる条件に供することを更に含む。
【0047】
実施形態A~Dの特定の実施形態(実施形態E)では、第1のアトロプ異性体は、(2M)-2-(4-(4-(アミノメチル)-1-オキソ-1,2-ジヒドロフタラジン-6-イル)-1-メチル-1H-ピラゾール-5-イル)-4-クロロ-6-シクロプロポキシ-3-フルオロベンゾニトリル(化合物M-2)であり、第2のアトロプ異性体は、(2P)-2-(4-(4-(アミノメチル)-1-オキソ-1,2-ジヒドロフタラジン-6-イル)-1-メチル-1H-ピラゾール-5-イル)-4-クロロ-6-シクロプロポキシ-3-フルオロベンゾニトリル(化合物P-2)である。
【0048】
実施形態A~Eの特定の実施形態(実施形態F)では、溶媒、第1のアトロプ異性体、及び第2のアトロプ異性体の混合物は、N-Boc-D-フェニルアラニンである分解剤を更に含む。
【0049】
実施形態A~Fの特定の実施形態(実施形態G)では、溶媒は、MeOH又はMeOH水溶液である。
【0050】
実施形態A~Fの特定の実施形態(実施形態H)では、溶媒は、EtOH又はEtOH水溶液である、
【0051】
実施形態A~Fの特定の実施形態(実施形態I)では、溶媒は、約85:15(v/v)~約99:1(v/v)のEtOH/水である。
【0052】
実施形態A~Iの特定の実施形態(実施形態J)では、(b)における調整することは、約20~25℃の温度に調整することである。
【0053】
実施形態A~Jの特定の実施形態(実施形態K)では、(d)における供することは、約80~200℃の温度で加熱することを含む。
【0054】
式Iの特定のB環ヘテロアリール基としては、トリアゾリル、ピラゾリル、及びイミダゾリルが挙げられる。
【0055】
式Iの特定のB環ヘテロシクロアルキル基としては、ピリミジノニル、ピリジノニル、ピペラジニル、ピペリジニル、モルホリル、ピロリジニル、テトラヒドロンピラニル、2-オキソピリド[2,3-d]ピリミジン-1(2H)-イル、2-オキソ-3,4-ジヒドロ-1,8-ナフチリジン-1(2H)-イル、及び7-オキソ-5,6,7,8-テトラヒドロキノリン-8-イルが挙げられる。
【0056】
式Iの特定のB環アリール基としては、フェニル及びナフチルが挙げられ、これらの各々が、C3-C6アルキル、ヒドロキシ、シアノ、又はハロゲンのうちの1つ以上で任意選択的に置換されている。
【0057】
式Iの特定のA環基としては、C3-C6アルキル、ヒドロキシ、シアノ、又はハロゲンを有するB環への結合点に対して少なくとも1つのオルト位置で置換されたフェニル、ピリジル、ナフチルが挙げられる。
【0058】
本明細書に使用される一般的な略語は、
e.e.-鏡像異性体過剰率
d.e.-ジアステレオ異性体過剰率
e.r.-鏡像異性体比率
d.r.-ジアステレオ異性体比率
SFC-超臨界流体クロマトグラフィー
SPPS-固相ペプチド合成
Boc-tert-ブチルオキシカルボニル
DCM-ジクロロメタン
EtOAc-酢酸エチル
EtOH-エタノール
IPA、i-PrOH-プロパン-1-オール、イソプロピルアルコール
MeCN-アセトニトリル
MeOH-メタノール
Phe-フェニルアラニン
D-Phe-D-フェニルアラニン
L-Phe-L-フェニルアラニン
THF-テトラヒドロフラン
【0059】
したがって、本発明の一実施形態(実施形態L)では、化合物2のM及びP鏡像異性体の混合物を分離する方法であって、(a)混合物をN-Boc-D-フェニルアラニンと接触させて、M-鏡像異性体N-Boc-D-フェニルアラニン塩及びP-鏡像異性体N-Boc-D-フェニルアラニン塩の混合物を形成する工程と、(b)混合物を濾過して、M-鏡像異性体N-Boc-D-フェニルアラニン塩で濃縮された固相を得る工程と、(c)固相を過剰なNH3又は他の塩基と反応させて、M-鏡像異性体遊離塩基化合物2で濃縮された固体を得る工程と、を含む、方法が提供される。
【0060】
アルコール溶媒には、メタノール(MeOH)、エタノール(EtOH)、n-プロパノール、イソプロパノール、n-ブタノール、2-ブタノール、t-ブタノール、n-ペンタノール、2-ペンタノール、3-ペンタノール、n-ヘキサノールなどを含む、1~6個の炭素原子を有するアルコールが含まれるが、これらに限定されない。ある特定のそのような実施形態では、工程(a)における接触させることは、MeOH又はMeOH水溶液中で生じる。好適な水性メタノール混合物は、最大約25体積%の水を有する。
【0061】
ある特定のそのような実施形態では、工程(a)における接触させることは、EtOH又はEtOH水溶液中で生じる。バッチ処理に好適な水性エタノール混合物は、最大約30体積%の水を有する。バッチ処理のための好ましい水性エタノール混合物は、約90:10(v/v)のエタノール/水である。連続又は半連続処理の場合、0~15%(v/v/)の水を有するエタノールが好ましく、0~10%の水(v/v)がより好ましく、0~5%の水が特に好ましい。
【0062】
ある特定の実施形態では、工程(a)における接触させることは、純粋なTHF又はTHF/アルコール、例えば、THF/EtOHにおいて、10:1、9:1、8:1、7:1、6:1、5:1、4:1、又は3:1の体積比で生じる。
【0063】
ある特定のそのような実施形態では、工程(b)で得られた固相を追加の溶媒で1回以上洗浄して、P-鏡像異性体N-Boc-D-フェニルアラニン塩を除去する。
【0064】
ある特定のそのような実施形態では、反応させる工程(c)は、イソプロピルアルコール(IPA、i-PrOH)溶液、又はイソプロピルアルコール及び水溶液中で生じる。回収及び制御API形態を最大化するために、IPA水(例えば、90/10v/v)の水豊富な混合物が好ましい。所望のAPI形態(遊離塩基タイプA)は、水分活性αw≧0.13で最も安定である。ある特定の実施形態では、工程(c)溶液は、任意選択的に、M-鏡像異性体遊離塩基化合物2で播種される。
【0065】
ある特定の実施形態では、工程(c)で得られた濃縮された固体は、M-鏡像異性体濃縮遊離塩基化合物2が沈殿した後に反応混合物を濾過することによって得られる。
【0066】
ある特定の実施形態では、濾過されたM-鏡像異性体濃縮遊離塩基化合物2沈殿物は、残留N-Boc-D-フェニルアラニンを除去するように設計された追加のスラリー又は洗浄工程によって精製される。
【0067】
実施形態Lの特定の実施形態(実施形態M)では、接触させることは、
化合物M-2 N-Boc-D-フェニルアラニン塩で濃縮された固相と、
化合物P-2 N-Boc-D-フェニルアラニン塩で濃縮された液相と、を含むスラリーを生成し、
方法が、
液相の一部分をスラリーから分離することと、
液相を加熱して、化合物M-2 N-Boc-D-フェニルアラニン塩に対する化合物P-2 N-Boc-D-フェニルアラニン塩の比率を有する加熱された混合物を生成することであって、この比率が加熱前の比率とは異なる、生成することと、を更に含む。
【0068】
実施形態Mの特定の実施形態(実施形態N)では、加熱後の比率は、おおよそ、化合物M-2 N-Boc-D-フェニルアラニン塩及び化合物P-2 N-Boc-D-フェニルアラニン塩のラセミ混合物の比率である。
【0069】
実施形態M又は実施形態Nの特定の実施形態(実施形態O)では、方法は、加熱された混合物を冷却して、化合物M-2 N-Boc-D-フェニルアラニン塩で濃縮された固相及び化合物M-2 N-Boc-D-フェニルアラニン塩で濃縮された液相を含む、冷却された混合物を生成することを更に含む。
【0070】
実施形態Oの特定の実施形態(実施形態P)では、加熱された混合物を冷却することは、加熱された混合物をスラリーと組み合わせることを含む。
【0071】
ある特定の実施形態では、P-化合物2 N-Boc-D-フェニルアラニン塩で濃縮された工程(b)からの濾液を使用して、P-及びM-化合物2 N-Boc-D-フェニルアラニン塩のラセミ混合物又はほぼラセミ混合物を得る。典型的には、これは、濾液を加熱して、ラセミ化を誘発することによって行われる。ラセミ化に続いて、好ましい溶媒条件下で化合物M-2 N-Boc-D-フェニルアラニン塩を沈殿させることができる。
【0072】
本発明の別の実施形態では、M-化合物2鏡像異性体及びP-化合物2鏡像異性体の混合物を分離する方法であって、(a)混合物をN-Boc-L-フェニルアラニンと接触させて、M-鏡像異性体N-Boc-L-フェニルアラニン塩及びP-鏡像異性体N-Boc-L-フェニルアラニン塩の混合物を形成する工程と、(b)固相を濾過して、M-鏡像異性体N-Boc-L-フェニルアラニン塩で濃縮された液相を得る工程と、(c)M-鏡像異性体N-Boc-L-フェニルアラニン塩を塩基と反応させて、M-鏡像異性体濃縮遊離塩基化合物2を得る工程と、を含む、方法が提供される。
【0073】
ある特定のそのような実施形態では、工程(a)における接触させることは、EtOH又はEtOH/水溶媒中で生じる。
【0074】
ある特定のそのような実施形態では、工程(a)における接触させることは、MeOH又はMeOH/水溶媒中で生じる。
【0075】
ある特定のそのような実施形態では、工程(a)における接触させることは、THF又はTHF/水溶媒中で生じる。
【0076】
ある特定のそのような実施形態では、工程(b)で得られた水相を濃縮乾固させて、固体M-鏡像異性体濃縮N-Boc-L-フェニルアラニン塩を得る。
【0077】
ある特定のそのような実施形態では、反応させる工程(c)は、水及びジクロロメタンの懸濁液中で生じる。
【0078】
ある特定のそのような実施形態では、反応させる工程(c)は、水及びジクロロメタンの懸濁液中以外で生じる。
【0079】
ある特定の実施形態では、工程(c)で得られた濃縮M-鏡像異性体遊離塩基化合物2を、例えばジクロロメタンでスラリー化し、濾過して、ラセミ遊離塩基化合物2を除去し、溶液中の更なる濃縮M-鏡像異性体遊離塩基化合物2を得る。
【0080】
ある特定の実施形態では、更に濃縮されたM-鏡像異性体遊離塩基化合物2溶液を濃縮して、固体の更に濃縮されたM-鏡像異性体遊離塩基化合物2を得る。
【0081】
別の実施形態では、本発明は、結晶化モジュール、エピマー化モジュール、及び収集モジュールを含むアトロプ異性体を分離するためのシステムを提供する。
【0082】
システムの特定の実施形態では、結晶化モジュールは、除去チャネル及び戻りチャネルによってエピマー化モジュールに流体的に接続されている。
【0083】
システムのある特定の実施形態では、除去チャネルは、収集モジュールを含み、収集モジュールは、エピマー化モジュール及び結晶化モジュールに流体的かつ直接的に接続されており、戻りチャネルは、結晶化モジュール及びエピマー化モジュールに流体的かつ直接的に接続されている。
【0084】
システムの他の特定の実施形態では、材料は、結晶化モジュールから連続的又は半連続的に除去され、エピマー化モジュールに直接的又は間接的に供給され、材料は、エピマー化モジュールから結晶化モジュールに少なくとも半連続的に戻される。
【0085】
本発明は、
結晶化モジュール内でより可溶性の低いアトロプ異性体を選択的に結晶化することと、
エピマー化モジュール内でより可溶性のアトロプ異性体をエピマー化することと、を含む、アトロプ異性体を分離するための方法であって、
可溶性材料は、結晶化モジュールから直接的又は間接的にエピマー化モジュールに連続的又は半連続的に提供され、エピマー化モジュールからの材料は、少なくとも半連続的に結晶化モジュールに戻される、方法を更に提供する。
【0086】
特定の実施形態では、選択的に結晶化することは、結晶化モジュールに、溶媒、並びに第1及び第2のアトロプ異性体の混合物を導入することであって、第1のアトロプ異性体及び第2のアトロプ異性体が、溶媒中で異なる溶解度を有する、導入することと、任意選択的に、温度を調整して、可溶性の低いアトロプ異性体の結晶化を引き起こすことと、を含む。
【0087】
特定の実施形態では、システムは、エピマー化モジュール(ラセマイザー(racemizer))と収集モジュール又はタンクとの間に結晶化モジュール(結晶器)を含む。
図12を参照されたい。この配置は、平衡に到達するのに必要な時間を大幅に短縮することができる。
図11を参照されたい。)。エピマー化モジュール(ラセマイザー)からのラセミ化された流れを結晶化モジュール(MSMPR容器(混合スラリー混合生成物反応器))に直接供給することにより、分解プロセスを結晶器内で最も望ましいレジームで動作させることができる。
図13を参照されたい。特定の理論に束縛されるものではないが、プロセスが、所望のジアステレオ異性体の最も高い達成可能な過飽和で動作するため、結晶化の動態が改善されると考えられる。加えて、結晶化は、密接にラセミの上清から生じるため、望ましくないジアステレオ異性体との格子置換が最小限に抑えられ、非常にジアステレオマー的に純粋な結晶が得られる(
図13)。
【0088】
特定の実施形態では、エピマー化することは、より可溶性の高いアトロプ異性体を、増加した量のより可溶性の低いアトロプ異性体を生成するのに十分な条件に供することを含む。
【実施例】
【0089】
以下の実施例は、本発明のある特定の実施形態を更に例示することを意図するものであり、本発明の範囲を限定することを意図するものではない。
【0090】
実施例1A:Boc-D-フェニルアラニンを使用して化合物2の固相M-鏡像異性体の割合を増加させるためのプロセス
【化12】
EtOH(700mL)及び水(80mL)の混合物を、23℃で4口丸底フラスコ中で調製した。ラセミ化合物2(65.0g、140mmol、1.00当量)及びBoc-D-Phe-OH(39.4g、153.8mmol、1.1当量)をフラスコに充填し、混合物を周囲温度で撹拌した。おおよそ15分後、固体の大部分が溶解して、淡黄色の懸濁液をもたらした。撹拌を20~25℃で16時間継続し、その間、反応混合物は徐々に濃厚な白色スラリーになった。懸濁液の試料を引っ張り、濾過した(濾過ケーキ:84.0%e.e.;濾液:-70.0%e.e.)。反応混合物を20~25℃で濾過し、濾過ケーキをEtOH(130mL)で洗浄して、66.5gの白色湿潤固体(濾過ケーキ:92.8%e.e.;濾液:-75.7%e.e.)を得た。湿潤ケーキを、23℃でEtOH(300mL)及び水(55mL)の混合物中で再懸濁させ、20~25℃で18時間撹拌した。懸濁液の試料を引っ張り、濾過した(濾過ケーキ:97.1%e.e.;濾液:60.7%e.e.)。スラリーを20~25℃で濾過し、濾過ケーキをEtOH(60mL)で洗浄して、46.5gの白色湿潤固体(97.5%e.e.、84.1%w/w、Q-NMRによる、38.3%アッセイ収率)を得た。
【0091】
実施例1B:遊離塩基化合物M-2(遊離塩基タイプA)を得るための、化合物2 Boc-D-フェニルアラニン塩のM-鏡像異性体の遊離塩基化のためのプロセス。
【化13】
THF(45mL)及び水(15mL)の混合物を、23℃で4口丸底フラスコ中で調製した。化合物2 Boc-D-Phe塩(10g、97.5%e.e.、Q-NMRによる84.1w/w%)を添加し、溶解させて、透明な淡黄色の溶液を得た。別の1Lの4口丸底フラスコにH2O(390mL)及びNH
3(25%w/w、10mL)を充填した。THF水溶液中の塩の溶液を、1Lの4口丸底フラスコに滴下した。添加中に白色固体の段階的な形成が起こった。得られた懸濁液を20~25℃で17時間撹拌した。スラリーを20~25℃で濾過し、濾過ケーキを水(2×40mL)で洗浄して、9.36gの白色湿潤ケーキを得た。湿潤ケーキを、IPA/水(10/90v/v、80mL)の混合物中で20~25℃で3時間再スラリー化し、濾過した。濾過ケーキを45℃で12時間乾燥させて、5.70gの白色固体(99.9%HPLC純度、97.5%e.e.、KFによる5.80%水、Q-NMRによる91.7%w/w、XRDによる遊離塩基タイプA、91.7%、97.8%単離収率)を得た。
【0092】
実施例2:Boc-L-フェニルアラニンを使用して、上清中の化合物2のM-鏡像異性体の割合を増加させるためのプロセス
【化14】
化合物2 ラセミ遊離塩基(1.8g、3.9mmol)及びBoc-L-Phe(1.03g、3.9mmol)を100mLのガラス容器に入れた。この混合物に、EtOH/水(90/10v/v、30mL)を25℃で添加した。得られたスラリーを、オーバーヘッド撹拌器を使用して、25℃で350rpmで撹拌した。最初の15分間、固体材料は溶解し、かすみ溶液をもたらした。反応混合物を20℃で24時間撹拌し続け、その間、厚い乳白色のスラリーを得た。反応混合物を濾過した。望ましくない鏡像異性体(合計の約75%)は、化合物P-2 Boc-L-Phe塩(-92%e.e.)として固体中で拒絶され、所望の鏡像異性体は、濾液中で化合物M-2 Boc-L-Phe塩(68%e.e.)として濃縮された。濾液を35℃で減圧下で回転蒸発乾固させ、黄色がかった固体として粗塩を得た。得られた粗塩を、飽和Na2CO
3を十分に含む、水(30mL)及びDCM(30mL)の混合物を使用して遊離塩基化し、8~10のpHを得た。混合物を25℃で4時間撹拌させた。有機層を分離漏斗を使用して分離し、35℃で減圧下で回転蒸発乾固させて、部分的にアップグレードされた化合物M-2を黄色がかった低結晶性固体(1.00g、68%e.e.、97%LC純度)として得た。遊離塩基の鏡像異性体純度を、DCM中のスラリー調節によって更にアップグレードした。固体をDCM(20mL)中に再懸濁し、25℃で約72時間撹拌した。残った固体を濾過し、ほぼラセミ化合物2(10%e.e.)であることを確認した。濃縮された濾液は、アップグレードされた化合物M-2(0.72g、94%e.e.、収率39%)を得た。
【0093】
実施例3:化合物2 Boc-D-フェニルアラニン塩流のP-鏡像異性体をリサイクルするためのプロセス
【化15】
実施例1Aに記載の分解プロセスからの第1の水性EtOH濾液(100g、3.9gの遊離塩基アッセイ、-65.4%e.e.)を、4口丸底フラスコに充填した。溶液を70~80℃で60時間加熱して、塩をラセミ化した。得られたほぼラセミ混合物(-6.0%e.e.)を、実施例1Aに記載される分解プロセスからの残りの液体流(50g、1.3gの遊離塩基アッセイ、40.6%e.e.;25g、0.5gの遊離塩基アッセイ、63.0%e.e.)と合わせて、減圧下で30~45℃で約30mLまで濃縮した。EtOH(50mL)を添加し、混合物を約30mLまで留去した。この操作をもう一度繰り返した。EtOH(50mL)を添加し、混合物を70~75℃で0.5時間撹拌した。混合物を室温まで冷却して、化合物M-2 Boc-D-Phe塩の結晶化を引き起こした。得られた懸濁液を、上清をアッセイすることによって更なる不飽和が観察されなくなるまで、20~25℃で熟成した。反応混合物を濾過し、得られた濾過ケーキをEtOH(10mL)で洗浄し、乾燥して、3.13gの化合物M-2 Boc-D-Phe塩を白色固体として得た(99.8%LC純度、96.0%e.e.、Q-NMRによる97.4%w/w、35%単離収率)。
【0094】
実施例4
高度な中間体IntAB及びInt
CDを、パラジウム触媒鈴木-宮浦反応を使用してカップリングして、Boc保護種のラセミ混合物を得た。所望のM-鏡像異性体Boc保護種を、分取キラルクロマトグラフィーを使用して、望ましくないP-鏡像異性体から分離した。最終の化合物2 M-鏡像異性体生成物は、Boc保護基の酸促進除去後に得られた。キラルクロマトグラフィー分離のこのプロセスは、溶媒集約的であり、スケーラブルでなく、高価であるため、不利である。
【化16】
【0095】
カップリング:ジオキサン(1.80L)中のIntAB(200g、479mmol、1.00当量)、IntCD(231g、575mmol、1.2当量)、及びK3PO4水溶液(1.5M、958mL、3当量)のA混合物に、次いで、Ad2-n-Pd-G3(24.4g、33.5mmol、0.07当量)をN2下で添加した。混合物をN2下で、80℃で16時間撹拌した。混合物を室温に冷却し、次いで、氷水(2.00L)に注ぎ入れ、30分間撹拌した。水相を酢酸エチル(2×1.00L)で抽出した。合わせた有機相をブライン(1.00L)で洗浄し、無水Na2SO4で乾燥させ、濾過し、真空中で濃縮した。残渣をカラムクロマトグラフィー(SiO2、石油エーテル/酢酸エチル=5/1~1/1)で精製して、ラセミ化合物2(192g、354mmol、70.0%収率)を淡黄色固体として得た。
【0096】
分取クロマトグラフィーによるキラル分離:ラセミ化合物2(3.00kg、5.31mol、1.00当量)をSFC(島津移動相:ヘキサン中の45%EtOH(0.1%NH3-H2O) 流量:140g/分 サイクル時間:9分、合計時間:4500分、単回注入量:16.0mL)により分離して、Boc-化合物M-2(1.37kg、2.42mol、45.6%収率、98.3%e.e.、98.2%純度)をオフホワイトの固体として得た。
【0097】
化合物M-2 HCl塩を生成するための最終脱保護:MeOH(1.00L)中のBoc-化合物M-2(200g、354mmol、1当量)の混合物に、HCl/MeOH(4M、250mL、2.82当量)を、N2下で20℃で一度に添加した。混合物を20~35℃で2時間撹拌した。反応混合物を減圧下で濃縮して、残渣を得、次いで、溶媒をEtOAcで3回切り替えた。残渣をEtOAc(1.00L、5.00V)中に懸濁し、15℃で16時間撹拌した。脱保護手順は、並行して7回(7)の反復で実施した。全てのバッチを合わせ、濾過し、濾過ケーキを、減圧下でオフホワイトの固体に乾燥させた。固体を脱イオン水/MeOH(12/1、10L)に添加し、3時間撹拌した。溶液を凍結乾燥させて、化合物M-2 HCl塩(1050g、2.09mol、99.1%純度、99.1%e.e.、84.5%収率)をオフホワイトの固体として得た。
1H NMR(400MHz,DMSO-d6):δ=12.9(s,1H),8.67(s,3H),8.42(s,1H),8.13-8.16(d,J=12Hz,1H),8.04(d,J=8.0Hz,1H),7.86-7.87(d,J=4.0Hz,1H),7.47-7.50(dd,J=4Hz,1H),4.35(s,2H),4.23-4.28(m,1H),3.79(s,3H),0.94-0.77(m,4H).
【0098】
実施例5
【化17】
カップリング:Cs2CO3(51.6g、158mmol、3.30当量)及びH2O(80mL)を、20~25℃で4口丸底フラスコに混ぜ合わせ、透明な溶液が得られるまで撹拌した。IntAB(20.86g、95.9%w/w、48.0mmol、1.00当量)、IntCD(23.58g、97.8%w/w、57.5mmol、1.20当量)、及びトルエン(240mL)を添加した。混合物を真空脱気し、N2で3回充填した。Ad2n-Pd-G3(0.88g、2.5mol%)を添加し、混合物を真空脱気し、N2で3回充填した。結果として生じた反応混合物を、N2下で57℃の内部温度に加熱した。27時間後、57℃でのプロセス中の試料の分析は、IntABの2.7%が残存し、ラセミBoc-化合物2の87.4%が形成されたことを示した。反応物を45~50℃に冷却した。システイン(4.0g、33mmol、0.69当量)及び2-MeTHF(40mL)を混合物に添加し、45~50℃で6時間撹拌を続けた。反応混合物をセライトの短いプラグを通して濾過し、濾過ケーキを2-MeTHF(100mL)で洗浄した。水相を分離した。合わせた有機相を17%のNaCl水溶液(2×100mL)で洗浄した。無水MgSO
4(20g)及び活性炭(4.0g)を有機溶液に添加し、得られた懸濁液を50℃で4時間撹拌した。固体を濾過し、廃棄物ケーキを2-MeTHF(100mL)で洗浄した。合わせた濾液を、30~60℃で約40mLの体積に、減圧下で濃縮した。MeOH(60mL)を添加し、約40mLの体積に達するまで蒸留を継続した。この操作を更に2回繰り返して、残留トルエン及び2-MeTHFを除去した。MeOH(140mL)を添加し、混合物を50~55℃で6時間撹拌した。混合物を20~25℃に冷却し、更に12時間撹拌した。得られたスラリーを濾過し、湿潤ケーキをMeOH(40mL)で洗浄した。得られた湿潤ケーキを60~65℃で16時間乾燥させて、ラセミBoc-化合物2を淡黄色の固体として得た(21.84g、80.7%収率、99.7%LC純度)。
【0099】
ラセミ体のBoc脱保護及び遊離塩基化:ラセミBoc化合物2(400g、708mmol)及びEtOAc(6.00L)を、10Lの4口丸底フラスコに、23℃で充填し、15分間撹拌して、材料を溶解させ、淡黄色の透明な溶液を得た。EtOAc中の4M HCl(2.0L、11当量)を、無色の固体が徐々に沈殿する間に、20~25℃で、撹拌された混合物に滴下した。結果として生じた懸濁液を、20~25℃で21時間撹拌し、その時点で、プロセス中の試料は、完全なBoc脱保護を示した(0.04%のBoc-化合物2が残存している)。スラリーを濾過し、湿潤ケーキをEtOAc(2×0.80L)で洗浄した。濾過ケーキを減圧下で50℃で2時間乾燥させて、ラセミ化合物2 HCl塩を無色の固体として得た(398g、定量的収率、99.2%LC純度)。ラセミ化合物2 HCl塩(398g)及びMeOH(4.00L)を、10Lの4口丸底フラスコに23℃で充填し、15分間撹拌して、白色の懸濁液を得た。混合物を、N2下で5~15℃に冷却した。MeOH(0.400L)中の7MのNH3の溶液を、N2下で5~15℃で混合物に滴下した。添加後、混合物を室温に温め、更に13時間撹拌した。混合物をN2下で10~15℃まで冷却し、1時間撹拌して、無色のスラリーを得た。固体を濾過により収集し、50℃で18時間乾燥させて、無色固体としてラセミ化合物2遊離塩基を得た(312.2g、96.0%w/w、99.7%LC純度、94.9%収率)。
【0100】
アトロプ異性体の分離:次いで、ラセミ化合物2遊離塩基を、実施例1A及び1Bに上述されるように処理して、所望の化合物M-2を得る。
【0101】
実施例6
1,1’-ビ-2-ナフトール(5.71g、19.9mmol、1当量)を、磁気撹拌棒を備えたエルレンマイヤーフラスコに添加した。80mLのトルエンをフラスコに添加した。次いで、フラスコをホットプレート上で80℃に、撹拌しながら加熱した。(1R、2R)-ジアミノシクロヘキサン(2.28g、19.9mmol、1当量)を熱いBINOLに添加し、スラリーを迅速に均一相に遷移させた。均一になった後、結晶が形成され始め、加熱を止め、混合物を室温まで冷却させ、1時間熟成させた。HPLC分析のために、上清の試料を収集した。試料は、R-BINOLのXYZ及びS-BINOLのXYZを含有した。IDEXからの20μmステンレス鋼HPLCフィルタをトルエンに浸した。これを、1/8インチの外径のPFAチューブ(内径1/16インチ)によってEldex Optos Model3計量ポンプに接続した。ポンプを、PFAチューブ(外径1/8インチ、内径1/16インチ)によってステンレス鋼プラグフロー反応器(3.5mL、外径1/8インチ、内径0.09インチ)に接続した。Swagelok1/8インチ圧縮継手を使用して、チューブをしっかりと接続した。プラグフロー反応器(PFR)の出口を、IDEXからの250psiばね式背圧レギュレータに接続した。流れはbprから流出し、エルレンマイヤー結晶化フラスコに戻った。プラグフロー反応器を200℃に加熱された鉱油に浸し、ステンレス鋼フィルタ及びPFRを通してBINOL溶液をポンピングする前に、リサイクルループを純粋なトルエンで予め充填して、リサイクル手順の開始を容易にした。リサイクルループを駆動するポンプを3mL/分の速度で作動させ、リサイクルを30時間連続して実行した。その後、フラスコ中の固体を濾過した。固体を5mLのトルエンで洗浄し、乾燥するまでフィルタ上に放置した。7.88gの白色の固体が得られた。複合体は、BINOL、ジアミン、及びトルエン(MW492g/mol)の1:1:1混合物であった。試料を1H qNMR分析のために提出して、アッセイ重量パーセントを達成した(
図4)。スペクトルは、文献に報告されているものと一致した。それは、BINOL、ジアミン、及びトルエンの1:1:1の複合体の99.6アッセイ重量%に対応する81.0%アッセイ重量%のBINOL/ジアミノシクロヘキサン複合体の99.6%であった。アッセイ調整単離収率は、80%である。キラルHPLC分析のために試料を採取した。試料は、R-BINOLの99.65%及びS-BINOLの0.35%(99.3%ee)を示した(
図5~
図9)。
【表2】
【0102】
実施例7:バッチ分解
【化18】
rac-化合物2(1.0当量)及びBoc-D-Phe(1.1当量)をEtOH:水(90:10v/v、12V)中に室温で溶解させた。得られた過飽和混合物に0.5%w/wの化合物M-2 Boc-D-フェニルアラニン塩を播種し、化合物M-2 Boc-D-フェニルアラニン塩の優先的な結晶化が完了するまで、約22℃で平衡化する一方、上清は、望ましくない鏡像異性体塩(化合物P-2 Boc-D-フェニルアラニン塩)で濃縮された。結晶性固体を濾過により分離し、EtOH水溶液(85:15v/v、10V)中で追加の再スラリーを実施して、追加のキラルアップグレードを達成した(標的:キラルHPLCによる≧95.5%の鏡像異性体過剰率[e.e.])。EtOH水溶液中の化合物P-2 Boc-D-フェニルアラニン塩及び化合物M-2 Boc-D-フェニルアラニン塩の混合物からなる母液を(標的:キラルHPLCによる<20%の鏡像異性体過剰率[e.e.])70~80℃で24~48時間熱ラセミ化した。化合物M-2 Boc-D-フェニルアラニン塩の追加の収穫を、上記のように熟成及び再スラリーを繰り返すことによって得た(標的:キラルHPLCによる≧95.5%の鏡像異性体過剰率[e.e.])。得られた結晶性固体を約45℃で乾燥させると、化合物M-2 Boc-D-フェニルアラニンがオフホワイトの固体として合わせて60%の収率で得られた(第1の収穫:37%収率、2回目の収穫:23%収率)(
図10)。
【表3】
【0103】
実施例8:連続分解
ラセミ化合物2(92.4重量%、10.82g、21.5mmol)を、100mLのEasyMax反応器中で、エタノール及び水混合物(EtOH:水98:2v/v、100mL)中に懸濁させた。固体Boc-D-フェニルアラニン(6.25g、23.6mmol、1.1当量)を添加し、結果として得られた厚いスラリーを、室温でオーバーヘッド撹拌器を使用して600rpmで撹拌した。10分以内に、ほぼ全ての固体が溶液に入れられ、薄い黄色がかった懸濁液が得られた。したがって、得られた化合物M-2 Boc-D-フェニルアラニン塩の過飽和溶液に結晶性化合物M-2 Boc-D-フェニルアラニン塩(78mg、0.0050当量)を播種し、室温での効率的な撹拌で平衡化させた。約16時間後、結晶の厚いスラリーを得た。キラルLCによる上清の分析は、39.7mg/mLの化合物P-2 Boc-D-フェニルアラニン塩(約40mg/mLの平衡溶解度)及び3.7mg/mLの化合物M-2 Boc-D-フェニルアラニン塩(約4mg/mLの平衡溶解度)を有する91.5%の化合物P-2及び8.5%の化合物M-2-(83%e.e.)を示した。混合物が平衡に近いことを確認した後、連続分解を開始した。IDEXからの20μmステンレス鋼HPLCフィルタを、エタノール水混合物中の化合物M-2 Boc-D-フェニルアラニン塩の厚いスラリーを含有する結晶化容器(100mL EasyMax反応器)に浸した。それを、外径1/16インチのPFAチューブ(内径0.03インチ)によってSyrris Asia Syringe Pumpに接続した。ポンプを、PFAチューブ(1.5mL、外径1/16インチ、内径0.03インチ)から作られたプラグフロー反応器に接続した。プラグフロー反応器(PFR)の出口を、IDEXからの250psiばね式背圧レギュレータに接続した。流れは、bprから流出し、結晶化容器に戻った。プラグフロー反応器を、160℃に加熱した鉱油中に浸した。リサイクルループを駆動するポンプを0.75mL/分の速度で作動させ、リサイクルを14.5時間連続して実行した。断続的なHPLCサンプリングを実施した。14.5時間後、化合物P-2 Boc-D-フェニルアラニン塩及び化合物M-2 Boc-D-フェニルアラニン塩(それぞれ、5.4mg/mL及び4.3mg/mL)のほぼ同一の上清濃度によって示されるように、連続溶解の生産段階を完了した。結晶器からのスラリーを濾過した。濾過ケーキを完全に溶出させ、風乾させて、87%収率のオフホワイトの粉末(14.43g、94.2重量%、90%d.r.、98.0%LC)として技術的な化合物M-2 Boc-D-フェニルアラニン塩を得た。温度サイクル(20~40℃)で6時間、EtOH水溶液(EtOH:水95:5v/v、10V)中で追加の再スラリーを行うと、キラル純度(96.6d.r)が、液体への5%の生成物損失を犠牲にしてアップグレードした。
【0104】
実施例9:連続分解(別個の結晶化及び収集モジュール)
別個の結晶化及び収集モジュールを有する連続分解のためのセットアップを
図12に描写する。
【0105】
Boc-d-フェニルアラニン(1.37g、5.16mmol、1.20当量)をEtOH:水98:2v/v(20mL、10体積)に溶解させた。ラセミ化合物2(90.0重量%、2.22g、4.30mmolアッセイ)を、よく撹拌されたBoc-d-フェニルアラニンの溶液に少しずつ添加した。以下のラセミ化合物2のアリコートを、電荷間の溶解時間を考慮して添加した:222mg(部分1、t=0)、245mg(部分2、t=14分)、267mg(部分2、t=36分)。得られたかすみ溶液に、化合物M-2 Boc-d-フェニルアラニン塩結晶(6mg、t=42分)を播種した。時間の経過とともに結晶成長が観察され、流体スラリーが得られた。残りのラセミ化合物2を、少しずつ添加した:290mg(t=82分)、233mg(t=101分)、271mg(t=179分)、694mg(t=131分)。得られた厚い混合物をEtOH:水98:2v/v(20mL、10vol)(t=144分)で希釈して、流体スラリーを得た。収集モジュール(タンク)にスラリーを充填した。収集モジュールからの上清をフィルタ(20μm、焼結金属)を通してエピマー化モジュール(ラセマイザー)(150~160℃)に吸引し、2分間の滞留時間(0.75mL/分の流量、1.5mLのラセマイザー容積)を与えた。ラセミ化された出力を、十分に撹拌された結晶化モジュール(結晶器)に送り、化合物M-2 Boc-d-フェニヤラニン塩の急速な結晶化が行われ、懸濁液(スラリー)が得られた。スラリーを、その体積を約10mLに維持しながら、結晶器から蠕動的に移した(ポンプは図示せず)。結晶器における平均滞留時間は、約13分(10mL、0.75mL/分)であった。スラリーを収集モジュールに戻し、サイクルを完了した。ポンピングプロセスを5時間連続して実施し、その時点で、望ましくないP-鏡像異性体の上清濃度は、プロセスが平衡に達したことを示す所望のM-アトロプ異性体の濃度と実質的に一致した。システムの内容物を濾過し、得られた濾過ケーキを空気乾燥させて、化合物M-2 Boc-d-フェニルアラニン塩をオフホワイトの粉末(2.25g)として得た。
【0106】
ラセマイザーと収集モジュールとの間に結晶化モジュールを配置すると、平衡に達するまでの時間が大幅に短縮された(
図11)。
【0107】
この例では、
図12に示されるように、装置は、エピマー化モジュール(ラセマイザー)の直接下流及び収集モジュール(収集タンク)の上流の比較的小さな結晶化モジュール又は容器(結晶器)を含む。エピマー化モジュール又はラセマイザーからのラセミ化された流れ、すなわち、過熱ループを収集モジュールに直接供給することにより、分解プロセスの動作が、結晶化モジュール内の最も望ましい条件の下で進行することが可能になる。
図13を参照されたい。
* * *
【0108】
本発明をその特定の実施形態と関連付けて説明してきたが、その実施形態は更に修正が可能であり、本出願は、一般的に、本発明の原理に従った本発明の任意の変形、使用、又は改変を包含することが意図され、本発明が属する技術内の既知の又は日常的な実施の範囲に入り、上記に示される及び以下の添付の請求項の範囲に入る本質的な特徴に適用され得る本開示からの乖離を含むものと理解されよう。
【国際調査報告】