(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-10-23
(54)【発明の名称】癌の処置に使用するための置換ピリミジン-4(3H)-オン
(51)【国際特許分類】
A61K 31/513 20060101AFI20241016BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20241016BHJP
A61P 35/04 20060101ALI20241016BHJP
A61P 35/02 20060101ALI20241016BHJP
C07D 491/107 20060101ALI20241016BHJP
【FI】
A61K31/513
A61P35/00
A61P35/04
A61P35/02
C07D491/107
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024521099
(86)(22)【出願日】2022-10-06
(85)【翻訳文提出日】2024-05-24
(86)【国際出願番号】 US2022045875
(87)【国際公開番号】W WO2023059785
(87)【国際公開日】2023-04-13
(32)【優先日】2021-10-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2022-04-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】520427136
【氏名又は名称】ナビール ファーマ,インコーポレイティド
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100117019
【氏名又は名称】渡辺 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100141977
【氏名又は名称】中島 勝
(74)【代理人】
【識別番号】100138210
【氏名又は名称】池田 達則
(74)【代理人】
【識別番号】100134784
【氏名又は名称】中村 和美
(72)【発明者】
【氏名】ペドロ ベルトラン
(72)【発明者】
【氏名】カール ダムコウスキ
(72)【発明者】
【氏名】ジャスティン リム
(72)【発明者】
【氏名】カースティン シンケビシウス
(72)【発明者】
【氏名】アンナ ウェイド
(72)【発明者】
【氏名】エリ ウォレス
(72)【発明者】
【氏名】ローレン ウッド
(72)【発明者】
【氏名】デイビッド バン ベーンホイゼン
(72)【発明者】
【氏名】スザンナ ウェン
【テーマコード(参考)】
4C086
【Fターム(参考)】
4C086AA01
4C086AA02
4C086CB22
4C086GA16
4C086MA01
4C086MA04
4C086MA52
4C086NA05
4C086NA06
4C086NA10
4C086NA14
4C086ZB26
4C086ZB27
(57)【要約】
本開示は、対象における癌又は固形腫瘍(例えば、進行性又は転移性固形腫瘍)を、治療有効量の式(I)の化合物:
又は薬学的に許容される塩、水和物、溶媒和物、立体異性体、配座異性体、互変異性体、若しくはそれらの組み合わせで処置する方法であって、対象が、MAPK経路における1つ以上の変異及び/又はPTPN11における1つ以上の変異を有する、方法を提供する。特に、固形腫瘍は、進行性若しくは転移性KRAS変異固形腫瘍(例えば、KRAS G12C陽性固形腫瘍);進行性若しくは転移性NF1機能喪失(LOF)固形腫瘍若しくはBRAFクラスII/III変異固形腫瘍;又は脊索腫である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
癌を処置する方法であって、それを必要とする対象に、式(I):
【化1】
によって表される治療有効量の化合物、又は薬学的に許容される塩、水和物、溶媒和物、立体異性体、配座異性体、互変異性体、若しくはそれらの組み合わせを投与することを含み、前記対象が、(i)MAPK経路における1つ以上の変異(ただし、前記MAPK経路における1つ以上の変異は、V600X変異を含むBRAF変異以外である)、及び/又は(ii)PTPN11における1つ以上の変異を有する、方法。
【請求項2】
固形腫瘍を処置する方法であって、それを必要とする対象に、式(I):
【化2】
によって表される治療有効量の化合物、又は薬学的に許容される塩、水和物、溶媒和物、立体異性体、配座異性体、互変異性体、若しくはそれらの組み合わせを投与することを含み、前記対象が、(i)MAPK経路における1つ以上の変異(ただし、前記MAPK経路における1つ以上の変異は、V600X変異を含むBRAF変異以外である)、及び/又は(ii)PTPN11における1つ以上の変異を有する、方法。
【請求項3】
前記式(I)の化合物が、式(10b):
【化3】
によって表され、6-((3S,4S)-4-アミノ-3-メチル-2-オキサ-8-アザスピロ[4.5]デカン-8-イル)-3-(R
a)-(2,3-ジクロロフェニル)-2,5-ジメチルピリミジン-4(3H)-オンの名称を有する、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記対象が、KRAS G12C変異を含むKRAS変異を有する、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記癌又は前記固形腫瘍が、進行性又は転移性KRAS G12C陽性固形腫瘍である、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記固形腫瘍が、進行性又は転移性KRAS G12C陽性非小細胞肺癌(NSCLC)である、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記固形腫瘍が、進行性又は転移性KRAS G12C陽性固形腫瘍であり、ただし、前記固形腫瘍が、非小細胞肺癌(NSCLC)以外である、請求項5に記載の方法。
【請求項8】
前記癌又は前記固形腫瘍が、進行性又は転移性KRAS変異固形腫瘍である、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記対象が、KRAS、NRAS、HRAS、CRAF、BRAF、NRAF、MAPK/ERK、MAPKK/MEK、NF1、IGFR、EGFR、PDGFR、VEGFR、FGFR、CCKR、NGFR、EphR、AXLR、KEAP1、TIE受容体、RYK受容体、DDR受容体、RET受容体、ROS受容体、LTK受容体、ROR受容体、MuSK受容体、及びそれらの組み合わせにおける1つ以上の変異からなる群から選択されるMAPK経路における1つ以上の変異を有する、請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記癌又は前記固形腫瘍が、進行性又は転移性NF1 LOF固形腫瘍である、請求項1~3及び9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記癌又は前記固形腫瘍が、進行性又は転移性BRAFクラスII/III変異固形腫瘍である、請求項1~3及び9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記癌又は前記固形腫瘍が、脊索腫又は脊索肉腫である、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記対象が、EGFRエクソン19欠失、エクソン20挿入、L858X変異、T790X変異、C797X変異、G719X変異、L861X変異、S768X変異、E709X変異、又はそれらの任意の組み合わせを含むEGFR変異を有する、請求項1~9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記癌又は前記固形腫瘍が、進行性又は転移性EGFR陽性固形腫瘍である、請求項1~3及び13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記固形腫瘍が、任意選択で標準治療のEGFRチロシンキナーゼ阻害物質(TKI)療法で進行した、進行性又は転移性EGFR陽性非小細胞肺癌(NSCLC)である、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
標準治療又は治癒的療法が、前記癌又は前記固形腫瘍を処置するために利用することができない、請求項1~15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
前記対象が、十分な血液学的機能、腎機能、肝機能、及び血液凝固機能を含む十分な臓器機能を有する、請求項1~16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
a)前記対象が、化学療法、ホルモン療法、免疫療法若しくは生物学的療法、標的療法、又はそれらの組み合わせを含む癌療法で以前に処置されていないか、あるいは
b)前記対象が、化学療法、ホルモン療法、免疫療法若しくは生物学的療法、標的療法、又はそれらの組み合わせを含む癌療法を、前記式(I)又は(10b)の化合物による処置の開始前に、少なくとも約3週間又は前記癌療法において使用された薬剤の五(5)半減期のいずれか長い方の期間にわたって中止している、請求項1~17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
前記対象が、PTPN11(SHP2)、MEK、又はRAS Q61における1つ以上の更なる活性化変異を有していない、請求項1~18のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
前記対象が、進行中であるか若しくは積極的処置を必要とする更なる悪性腫瘍、原発性中枢神経系(CNS)腫瘍、活性CNS転移、及び/又は癌性髄膜炎を有していない、請求項1~19のいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
前記対象が、SHP2阻害物質で以前に処置されておらず、ただし、前記SHP2阻害物質が、前記式(I)又は(10b)の化合物以外である、請求項1~20のいずれか一項に記載の方法。
【請求項22】
前記処置が、1回以上の処置サイクルを含み、前記式(I)又は(10b)の化合物の前記投与が、前の処置サイクル後の用量漸増又は漸減を含み、前記用量漸増又は漸減が、用量制限毒性(DLT)評価によって決定される、請求項1~21のいずれか一項に記載の方法。
【請求項23】
前記式(I)又は(10b)の化合物の前記投与が、1~6回の用量漸増、任意選択で1~2回の用量漸減を含む、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
1回以上の処置サイクルの各々が、約28日の期間を有し、前記式(I)又は(10b)の化合物が、毎日投与される、請求項22又は23に記載の方法。
【請求項25】
前記治療有効量が、無塩及び無水ベースで、約10mg~約2000mg、約50mg~約2000mg、約80mg~約2000mg、約80mg~約1000mg、約80mg~約700mg、約80mg~約550mg、約80mg~約450mg、約80mg~約400mg、約80mg~約250mg、又は約80mg~約150mgの前記式(I)又は(10b)の化合物の総1日投与量である、請求項1~24のいずれか一項に記載の方法。
【請求項26】
前記治療有効量が、無塩及び無水ベースで、約80mg~約700mg、約80mg~約550mg、約80mg~約450mg、約80mg~約400mg、約80mg~約250mg、又は約80mg~約150mgの前記式(I)又は(10b)の化合物の総1日投与量である、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
前記治療有効量が、無塩及び無水ベースで、約80mg、約150mg、約250mg、約400mg、約450mg、約550mg、又は約700mgの前記式(I)又は(10b)の化合物の総1日投与量である、請求項25又は26に記載の方法。
【請求項28】
前記治療有効量が、無塩及び無水ベースで、約80mgの前記式(I)又は(10b)の化合物の総1日投与量である、請求項25~27のいずれか一項に記載の方法。
【請求項29】
前記治療有効量が、無塩及び無水ベースで、約150mgの前記式(I)又は(10b)の化合物の総1日投与量である、請求項25~27のいずれか一項に記載の方法。
【請求項30】
前記治療有効量が、無塩及び無水ベースで、約250mgの前記式(I)又は(10b)の化合物の総1日投与量である、請求項25~27のいずれか一項に記載の方法。
【請求項31】
前記治療有効量が、無塩及び無水ベースで、約400mgの前記式(I)又は(10b)の化合物の総1日投与量である、請求項25~27のいずれか一項に記載の方法。
【請求項32】
前記治療有効量が、無塩及び無水ベースで、約450mgの前記式(I)又は(10b)の化合物の総1日投与量である、請求項25~27のいずれか一項に記載の方法。
【請求項33】
前記治療有効量が、無塩及び無水ベースで、約550mgの前記式(I)又は(10b)の化合物の総1日投与量である、請求項25~27のいずれか一項に記載の方法。
【請求項34】
前記治療有効量が、無塩及び無水ベースで、約700mgの前記式(I)又は(10b)の化合物の総1日投与量である、請求項25~27のいずれか一項に記載の方法。
【請求項35】
前記式(I)又は(10b)の化合物が、経口投与される、請求項1~34のいずれか一項に記載の方法。
【請求項36】
前記式(I)又は(10b)の化合物が、1日1回、2回、3回、又は4回投与される、請求項1~35のいずれか一項に記載の方法。
【請求項37】
前記式(I)又は式(10b)の化合物が、1日1回投与される、請求項36に記載の方法。
【請求項38】
前記式(I)又は(10b)の化合物が、投与前の少なくとも約8時間及び投与後の少なくとも約2時間に食物を摂取しない対象に投与される、請求項1~37のいずれか一項に記載の方法。
【請求項39】
最大耐用量(MTD)及び/又は用量制限毒性(DLT)が、前記用量制限毒性(DLT)評価に従って決定される、請求項1~38のいずれか一項に記載の方法。
【請求項40】
前記治療有効量の式(I)又は(10b)が、前記癌又は前記固形腫瘍の体積を少なくとも約10%、約20%、約30%、約40%、約50%、約60%、約70%、約80%、又は約90%低減させる、請求項1~39のいずれか一項に記載の方法。
【請求項41】
前記治療有効量の式(I)又は(10b)が、前記癌又は前記固形腫瘍を安定化させる、請求項1~39のいずれか一項に記載の方法。
【請求項42】
前記癌又は前記固形腫瘍が、少なくとも約1カ月の期間にわたって低減又は安定化される、請求項40又は41に記載の方法。
【請求項43】
前記癌又は前記固形腫瘍が、約1~約12カ月、約1~約6カ月、約1~約3カ月、又は約1~約2カ月の期間にわたって低減又は安定化される、請求項40~42のいずれか一項に記載の方法。
【請求項44】
前記対象が、血漿薬物動態パラメータ及び/又は薬力学的パラメータを含む表3、表4、及び表5の1つ以上のパラメータに従って更に評価される、請求項1~43のいずれか一項に記載の方法。
【請求項45】
前記対象が、抗腫瘍応答と相関する1つ以上のバイオマーカーについて更に評価される、請求項1~44のいずれか一項に記載の方法。
【請求項46】
腫瘍を処置する方法であって、それを必要とする対象に、式(10b):
【化4】
によって表される治療有効量の化合物、又はその互変異性体を投与することを含み、前記対象が、(i)MAPK経路における1つ以上の変異(ただし、前記MAPK経路における1つ以上の変異は、V600X変異を含むBRAF変異以外である)、及び/又は(ii)PTPN11における1つ以上の変異を有する、方法。
【請求項47】
前記腫瘍が、進行性又は転移性KRAS G12C陽性非小細胞肺癌(NSCLC)である、請求項46に記載の方法。
【請求項48】
前記腫瘍が、進行性又は転移性KRAS G12C陽性固形腫瘍であり、ただし、前記固形腫瘍が、非小細胞肺癌(NSCLC)以外である、請求項46に記載の方法。
【請求項49】
前記腫瘍が、任意選択で標準治療のEGFRチロシンキナーゼ阻害物質(TKI)療法で進行した、進行性又は転移性EGFR陽性非小細胞肺癌(NSCLC)である、請求項46に記載の方法。
【請求項50】
前記腫瘍が、進行性又は転移性KRAS変異固形腫瘍である、請求項46に記載の方法。
【請求項51】
前記腫瘍が、進行性又は転移性NF1 LOF固形腫瘍である、請求項46に記載の方法。
【請求項52】
前記腫瘍が、進行性又は転移性BRAFクラスII/III変異固形腫瘍である、請求項46に記載の方法。
【請求項53】
前記腫瘍が、脊索腫又は脊索肉腫である、請求項46に記載の方法。
【請求項54】
前記治療有効量が、無塩及び無水ベースで、約450mgの前記式(10b)の化合物の総1日投与量である、請求項46~53のいずれか一項に記載の方法。
【請求項55】
前記式(10b)の化合物が、1日1回投与される、請求項46~54のいずれか一項に記載の方法。
【請求項56】
前記式(10b)の化合物が、経口投与される、請求項46~55のいずれか一項に記載の方法。
【請求項57】
対象における癌又は固形腫瘍を処置するためのキットであって、
式(I):
【化5】
によって表される治療有効量の化合物、又は薬学的に許容される塩、水和物、溶媒和物、立体異性体、配座異性体、互変異性体、若しくはそれらの組み合わせ、あるいは
式(10b):
【化6】
によって表される化合物、又はその互変異性体を、有効な投与のための説明書と共に含み、前記対象が、(i)MAPK経路における1つ以上の変異(ただし、前記MAPK経路における1つ以上の変異は、V600X変異を含むBRAF変異以外である)、及び/又は(ii)PTPN11における1つ以上の変異を有する、キット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2021年10月6日に出願された米国仮特許出願第63/252,970号及び2022年4月13日に出願された米国仮特許出願第63/330,529号に対する優先権を主張するものであり、これらはそれぞれ、あらゆる目的のためにその全体が本明細書に組み込まれる。
【0002】
連邦政府支援の研究開発の下で行われた発明に対する権利に関する陳述
該当なし
【0003】
コンパクトディスクで提出された「配列表」、表、又はコンピュータプログラムリスト付録の参照
該当なし
【背景技術】
【0004】
タンパク質チロシンホスファターゼ非受容体11型(protein-tyrosine phosphatase non-receptor type 11、PTPN11、Srcホモロジー-2ホスファターゼ(Src Homology-2 phosphatase、SHP2)としても知られる)は、PTPN11遺伝子によってコードされる非受容体型タンパク質チロシンホスファターゼである。このPTPは、ホスホチロシン結合ドメインとして機能する2つのタンデムSrcホモロジー-2(Src homology-2、SH2)ドメイン、触媒ドメイン、及びC末端テールを含む。基底状態では、このタンパク質は、典型的には、N末端SH2ドメインが活性部位を遮断している不活性な自己阻害型立体配座で存在する。リン酸化タンパク質のSH2ドメインへのサイトカイン及び成長因子結合によって媒介されるシグナル伝達によって刺激されると、自己阻害が解除され、これにより、活性部位がPTPN11基質の脱リン酸化に利用可能になる(MG Mohl,BG Neel,Curr.Opin.Genetics Dev.2007,17,23-30.KS Grossmann,Adv.Cancer Res.2010,106,53-89.W.Q.Huang et.al.Curr.Cancer Drug Targets 2014,14,567-588.C.Gordon et.al.Cancer Metastasis Rev.2008,27,179-192.)。
【0005】
PTPN11における生殖細胞系列変異及び体細胞変異は、触媒活性の機能獲得をもたらすいくつかのヒト疾患、例えば、ヌーナン症候群及びレオパード症候群;並びに若年性骨髄単球性白血病、神経芽種、骨髄異形成症候群、B細胞急性リンパ芽球性白血病/リンパ種、黒色腫、急性骨髄白血病、及び乳癌、肺癌、及び結腸癌などの複数の癌において報告されている(MG Mohl,BG Neel,Curr.Opin.Genetics Dev.2007,17,23-30)。最近の研究は、単一PTPN11変異が、マウスにおいてヌーナン症候群、JMML様骨髄増殖性疾患、及び急性白血病を誘導することができることを実証している。これらの変異は、N-SH2ドメインと触媒部位との間の自己阻害を破壊し、酵素の触媒部位への基質の常時アクセスを可能にする(E.Darian et al,Proteins,2011,79,1573-1588.Z-H Yu et al,JBC,2013,288,10472、W Qiu et al,BMC Struct.Biol.2014,14,10)。
【0006】
PTPN11は、ほとんどの組織において広く発現され、Ras-MAPK、JAK-STAT、又はPI3K-AKT経路を含む複数のシグナル伝達経路を介して、増殖、分化、細胞サイクル維持、上皮間葉転換(EMT)、分裂促進因子活性化、代謝制御、転写調節、及び細胞移動を含む多様な細胞機能に重要な様々な細胞シグナル伝達事象において調節的な役割を果たす(Tajan,M.et.al.Eur.J.Medical Genetics,2015,58,509-525.Prahallad,A.et.al.Cell Reports,2015,12,1978-1985)。
【0007】
更に、PTPN11/SHP2が腫瘍発生中の免疫回避に関与しており、したがって、SHP2阻害物質が癌患者において免疫応答を刺激する可能性があるという証拠が増えてきている(Cancer Res.2015 Feb 1;75(3):508-18.T Yokosuka T,J Exp Med.2012,209(6),1201.S Amarnath Sci Transl Med.2011,3,111ra120.T Okazaki,PNAS 2001,98:24,13866-71)。
【0008】
置換ピリミン-4(3H)-オン化合物は、2019年8月9日に出願された国際特許出願第PCT/US2019/045903号に開示されているような、以下の式:
【0009】
【0010】
又は薬学的に許容される塩、水和物、溶媒和物、立体異性体、配座異性体、互変異性体、若しくはそれらの組み合わせによって表される、PTPN11/SHP2に対して阻害活性を有する化合物のクラスを指し、式中、下付き文字a及びb、Y1、Y2、並びにR1、R2、R3、R4R5、R6、R7R8、R9、R10、R11、及びR13は、国際出願PCT/US2019/045903号に提供されている通りであり、同文書は、あらゆる目的のためにその全体が本明細書に組み込まれる。特に、置換ピリミン-4(3H)-オン化合物は、式(I):
【0011】
【0012】
又は薬学的に許容される塩、水和物、溶媒和物、立体異性体、配座異性体、互変異性体、若しくはそれらの組み合わせによって表される。特定の実施形態では、式(I)の化合物は、式:
【0013】
【0014】
によって表される化合物(10b)であり、6-((3S,4S)-4-アミノ-3-メチル-2-オキサ-8-アザスピロ[4.5]デカン-8-イル)-3-(Ra)-(2,3-ジクロロフェニル)-2,5-ジメチルピリミジン-4(3H)-オンの名称を有する。
【0015】
式(I)、特に式(10b)の化合物は、受容体型チロシンキナーゼ(receptor tyrosine kinase、RTK)媒介性分裂促進因子活性化タンパク質キナーゼ(mitogen activated protein kinase、MAPK)シグナル伝達経路において重要な役割を果たすチロシンホスファターゼである、Srcホモロジー-2ホスファターゼ(SHP2)(タンパク質チロシンホスファターゼ非受容体11型(PTPN11)としても知られる)の強力で選択的な経口活性アロステリック阻害物質である(Matozaki,2009)。MAPK経路の重要な構成成分には、低分子GTPase RAS、セリン/トレオニンプロテインキナーゼRAF、分裂促進因子活性化タンパク質キナーゼ(mitogen-activated protein kinase、MEK)、及び細胞外シグナル活性化キナーゼ(extracellular signal activated kinase、ERK)が含まれる。細胞において、SHP2は、上皮成長因子受容体(Epidermal Growth Factor Receptor、EGFR)などのRTKの細胞内ドメインにおけるリン酸化チロシン残基に結合し、下流のMAPKシグナル伝達経路の活性化をもたらす。
【0016】
RTK及びMAPK経路は、多くの細胞型において、外部増殖促進シグナルを細胞表面から核へ中継するように機能する。RTK並びにMAPK経路の構成成分、例えば、RAS及びRAFは、ヒト癌における変異によって頻繁に活性化され、恒常的経路活性化を生じる。いくつかのRTK及びMAPK経路阻害物質が、これらの経路の活性化が発癌促進因子である固形腫瘍の処置のために承認されており、RTKの阻害物質、例えば、EGFR変異型及び未分化リンパ腫キナーゼ(Anaplastic Lymphoma Kinase、ALK)変異型非小細胞肺癌(non-small cell lung cancer、NSCLC)それぞれに対するEGFRの阻害物質(例えば、エルロチニブ、ゲフィチニブ、アファチニブ、ダコミチニブ、オシメルチニブなど)、ALKの阻害物質(例えば、クリゾチニブ、セリチニブなど)、並びにBRAF変異型メラノーマに対するMEK阻害物質(例えば、トラメチニブ、コビメチニブ及びビニメチニブ)及びBRAF阻害物質(例えば、ベムラフェニブ、ダブラフェニブ、エンコラフェニブ)が含まれる。更に、様々なERK阻害物質及びKRAS阻害物質が臨床試験中であり、最初のKRAS G12C阻害物質であるソトラシブは、2021年に承認された。しかしながら、これらの経路阻害物質の各々に対する耐性が、臨床研究及び非臨床研究の両方において観察されており、これは、RTKを含む経路の他の構成成分の代償的な活性化又は上方調節によって頻繁に引き起こされる(Mainardi et al 2018、Ruess et al 2018)。
【0017】
式(I)又は(10b)の化合物を用いた研究を含む最近の研究は、SHP2阻害が非臨床腫瘍モデルにおいてRTK、MEK、及びKRAS阻害物質の活性を増強し得ることを示している。これらのデータは、SHP2の阻害が、これらの経路の治療阻害物質に対する適応耐性が発達した腫瘍を含む、RTKの活性化に依存している、及び/又は特定の発癌性RAS変異(例えば、KRASG12C)を有する腫瘍の成長を阻害する可能性を有することを示唆する。
【0018】
SHP2阻害は、無数の癌にわたってバックボーン併用薬になる可能性を有する。しかしながら、例えば、腫瘍がRTKとMAPK経路変化とを示す患者における単独療法剤としての、効果的かつ安全な治療剤が依然として必要とされている。本開示は、そのような必要性を満たすものである。
【発明の概要】
【0019】
本開示は、癌(例えば、固形腫瘍)を処置する方法を提供する。いくつかの実施形態では、本方法は、式(I)によって表されるSHP2阻害物質(例えば、本明細書に記載の化合物(10b))を、それを必要とする対象に投与することを含む。いくつかの実施形態では、対象は、非小細胞肺癌(NSCLC)などの固形腫瘍などの癌を有する。いくつかの実施形態では、対象は、1つ以上の変異、例えば、MAPK経路における1つ以上の変異及び/又はPTPN11における1つ以上の変異を有する。いくつかの実施形態では、対象は、V600X変異以外のMAPK経路における1つ以上の変異を有する。
【0020】
したがって、一態様では、本開示は、癌又は固形腫瘍を処置する方法を提供する。本方法は、それを必要とする対象に、式(I)によって表される治療有効量の化合物:
【0021】
【0022】
又は薬学的に許容される塩、水和物、溶媒和物、立体異性体、配座異性体、互変異性体、若しくはそれらの組み合わせを投与することを含み、対象は、(i)MAPK経路における1つ以上の変異(ただし、MAPK経路における1つ以上の変異は、V600X変異を含むBRAF変異以外である)、及び/又は(ii)PTPN11における1つ以上の変異を有する。
【0023】
いくつかの実施形態では、固形腫瘍は、進行性又は転移性KRAS G12C陽性非小細胞肺癌(NSCLC)である。いくつかの実施形態では、固形腫瘍は、進行性又は転移性KRAS G12C陽性固形腫瘍であり、ただし、固形腫瘍は、非小細胞肺癌(NSCLC)以外である。いくつかの実施形態では、固形腫瘍は、進行性又は転移性NF1機能喪失(loss-of-function、LOF)固形腫瘍である。いくつかの実施形態では、固形腫瘍は、任意選択で、オシメルチニブ、エルロチニブ、アファチニブ、ゲフィチニブ、又はダコミチニブなどの標準治療のEGFRチロシンキナーゼ阻害物質(tyrosine kinase inhibitor、TKI)療法で進行した、進行性又は転移性EGFR陽性非小細胞肺癌(NSCLC)である。いくつかの実施形態では、固形腫瘍は、進行性又は転移性KRAS変異固形腫瘍である。いくつかの実施形態では、固形腫瘍は、進行性又は転移性BRAFクラスII/II変異固形腫瘍である。いくつかの実施形態では、癌又は固形腫瘍は、脊索腫又は脊索の肉腫である。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1A】インビトロ酵素アッセイにおける化合物(10b)の代表的な用量反応曲線を示す。
図1A:野生型SHP2の酵素活性。
【
図1B】インビトロ酵素アッセイにおける化合物(10b)の代表的な用量反応曲線を示す。
図1B:SHP2ホスファターゼドメインの酵素活性。
【
図2A】化合物(10b)で処置したKYSE-520におけるPK/PD関係及びIC
50決定を示す。
図2A:PK/PD関係。
【
図2B】化合物(10b)で処置したKYSE-520におけるPK/PD関係及びIC
50決定を示す。
図2B:IC
50決定。
【0025】
【
図3】25mg/kg又は100mg/kg QD POでの化合物(10b)の単回投与又は5回投与のいずれかの4時間後、16時間後、及び24時間後のマウスのKYSE-520異種移植腫瘍におけるMPAS-plusシグネチャ遺伝子のmRNAレベルを示す。
【
図4】単回経口投与後の雄NOD/SCIDマウスにおける化合物(10b)曝露及びNSCLC HCC827細胞株のインビトロpERK IC
50を上回る持続時間の用量関係を示す。
【
図5】非小細胞肺癌(NSCLC)HCC827細胞株由来異種移植(cell line-derived xenograft、CDX)モデルを有する雌BALB/cヌードマウスにおける化合物(10b)の単独療法抗腫瘍活性を示す。
【
図6A】化合物(10b)処理後の、NCI-H358及びKYSE-520細胞株における細胞生存率効果、pERK阻害、及びDUSP6阻害を示す。
図6A:3D生存率。
【
図6B】化合物(10b)処理後の、NCI-H358及びKYSE-520細胞株における細胞生存率効果、pERK阻害、及びDUSP6阻害を示す。
図6B:pERK阻害。
【
図6C】化合物(10b)処理後の、NCI-H358及びKYSE-520細胞株における細胞生存率効果、pERK阻害、及びDUSP6阻害を示す。
図6C:DUSP6阻害。
【
図7】全てのCDXモデルにおける化合物(10b)の単独療法抗腫瘍活性を示す。
【
図8】進行性固形腫瘍を有する患者におけるSHP2阻害物質化合物(10b)の第1/1B相ファースト・イン・ヒューマン研究の設計を示す。拡大コホートA~Dは、進行性又は転移性KRAS G12C変異NSCLC(コホートA)、進行性又は転移性KRAS G12C変異非NSCLC固形腫瘍(コホートB)、進行性又は転移性NF1 LOF固形腫瘍(コホートC)、及び例えば進行性又は転移性オシメルチニブ耐性NSCLCを含む、利用可能な標準治療も治癒的療法もない、標準治療のEGFR TKI療法で進行した、進行性又は転移性EGFR変異NSCLC(コホートD)を含む。略語:BOIN=ベイズ最適間隔設計、EGFR=上皮成長因子受容体、FE=食物効果、IP=治験薬、LOF=機能喪失、NSCLC=非小細胞肺癌、PK=薬物動態、RP2D=推奨第2相用量、TKI=チロシンキナーゼ阻害物質。用量漸増への登録が最初に行われ、続いて、用量拡大及び任意選択のFE/PKサブ研究への同時かつ独立した登録が行われる。用量拡大及び任意選択のFE/PKサブ研究において投与されるIPの用量(すなわち、RP2D)は、データ全体の審査後のSRCの決定に基づいて調整され得る。FE/PK研究は、選択された施設のみで実施され得る。2つのPKコホートへの登録は、治験依頼者の裁量である。
【
図9】第1/1B相ファースト・イン・ヒューマン研究の用量漸増を示す。略語:EOT=処置終了、IP=治験薬、LD=最終投与、QD=1日1回、SRC=安全性審査委員会。処置期間は、休薬日のない一連の連続した28日間の処置サイクルからなる。各処置サイクルにおいて、IP(化合物(10b))はQDで摂取される。投薬を中断する理由がなければ、前のサイクルの完了後すぐに新しいサイクルを開始する。各用量コホートを用いて、処置の第1サイクル中に用量制限毒性について患者をモニタリングする。
【
図10】第1/1B相ファースト・イン・ヒューマン研究の用量拡大を示す。拡大コホートA~Dは、進行性又は転移性KRAS G12C変異NSCLC(コホートA)、進行性又は転移性KRAS G12C変異非NSCLC固形腫瘍(コホートB)、進行性又は転移性NF1 LOF固形腫瘍(コホートC)、及び例えば進行性又は転移性オシメルチニブ耐性NSCLCを含む、利用可能な標準治療も治癒的療法もない、標準治療のEGFR TKI療法で進行した、進行性又は転移性EGFR変異NSCLC(コホートD)を含む。略語:EGFR=上皮成長因子受容体、LOF=機能喪失、NSCLC=非小細胞肺癌、RP2D=推奨第2相用量、SRC=安全性審査委員会、TK=チロシンキナーゼ。処置期間は、休薬日のない一連の連続した28日間の処置サイクルからなる。各処置サイクルにおいて、IP(化合物(10b))はQDで摂取される。投薬を中断する理由がなければ、前のサイクルの完了後すぐに新しいサイクルを開始する。用量拡大において投与されるIPの用量(すなわち、RP2D)は、データ全体の審査後のSRCの決定に基づいて調整され得る。
【
図11】第1/1B相ファースト・イン・ヒューマン研究のサンプルFE/PKサブ研究を示す。略語:EOT=処置終了、FE=食物効果、IP=治験薬、LD=最終投与、PK=薬物動態、QD=1日1回、RP2D=推奨第2相用量、SRC=安全性審査委員会。処置期間は、休薬日のない一連の連続した28日間の処置サイクルからなる。各処置サイクルにおいて、IP(化合物(10b))はQDで摂取される。投薬を中断する理由がなければ、前のサイクルの完了後すぐに新しいサイクルを開始する。サブ研究において投与されるIPの用量(すなわち、RP2D)は、データ全体の審査後のSRCの決定に基づいて調整され得る。FE/PK研究は、選択された施設のみで実施され得る。2つのPKコホートへの登録は、治験依頼者の裁量である。FEコホートについての3日間のウォッシュアウトは、-1/+3日の幅を有する。
【
図12A】実施例6のコホート1~5における化合物(10b)の平均血漿濃度を示す。
図12A:サイクル1の1日目(C1D1)。点線は、インビボIC
50(1.5μM)及び予測有効Cmax(5.3μM)を表す。
【
図12B】実施例6のコホート1~5における化合物(10b)の平均血漿濃度を示す。
図12B:サイクル2の1日目(C2D1)。点線は、インビボIC
50(1.5μM)及び予測有効Cmax(5.3μM)を表す。
【
図13A】実施例6のコホート1~5における化合物(10b)のpERK阻害を示す。
図13A:コホート1。点線は、1.5μMのIC
50を表す。バーはPD(pERK%)を表し、黒丸はPKを表す。
【
図13B】実施例6のコホート1~5における化合物(10b)のpERK阻害を示す。
図13B:コホート2。点線は、1.5μMのIC
50を表す。バーはPD(pERK%)を表し、黒丸はPKを表す。
【
図13C】実施例6のコホート1~5における化合物(10b)のpERK阻害を示す。
図13C:コホート3。点線は、1.5μMのIC
50を表す。バーはPD(pERK%)を表し、黒丸はPKを表す。
【
図13D】実施例6のコホート1~5における化合物(10b)のpERK阻害を示す。
図13D:コホート4。点線は、1.5μMのIC
50を表す。バーはPD(pERK%)を表し、黒丸はPKを表す。
【
図13E】実施例6のコホート1~5における化合物(10b)のpERK阻害を示す。
図13E:コホート5。点線は、1.5μMのIC
50を表す。バーはPD(pERK%)を表し、黒丸はPKを表す。
【
図14】実施例7及び8に記載の第1/1B相ファースト・イン・ヒューマン研究の設計を示す。研究は、6つのコホートを含む用量漸増部分を含む。用量漸増部分に登録された患者は、KRAS G12C変異又はEGFR変異などのMAPK経路変化を有し、ただし、対象は、BRAF V600X又はRAS Q61Xなどの活性化変異を有さない。研究はまた、用量拡大部分を含む。用量拡大部分の両コホートは、進行性若しくは転移性KRAS変異固形腫瘍、進行性若しくは転移性NF1 LOF固形腫瘍、又は進行性若しくは転移性BRAFクラスII/III変異固形腫瘍を有する患者を含む。用量拡大部分のコホート1は、RP2Dを同定し、用量拡大部分のコホート2は、単回用量(決定される量)を使用する。略語:LOF=機能喪失、RP2D=推奨第2相用量、及びSRC=安全性審査委員会。処置期間は、休薬日のない一連の連続した28日間の処置サイクルからなる。各処置サイクルにおいて、化合物(10b)はQDで経口摂取される。投薬を中断する理由がなければ、前のサイクルの完了後すぐに新しいサイクルを開始する。用量拡大において投与される化合物(10b)の用量(すなわち、RP2D)は、データ全体の審査後のSRCの決定に基づいて調整され得る。
【発明を実施するための形態】
【0026】
I.概論
本開示は、癌又は固形腫瘍(例えば、進行性又は転移性固形腫瘍)を、対象において、治療有効量の式(I)の化合物、特に化合物(10b)で処置する方法を提供する。対象は、MAPK経路における1つ以上の変異を有し得る。MAPK経路における1つ以上の変異は、BRAF V600X変異、PTPN11における変異、及び/又はRAS Q61X変異などの活性化変異を除いてもよい。固形腫瘍は、進行性若しくは転移性KRAS変異固形腫瘍(例えば、KRAS G12C陽性非小細胞肺癌(NSCLC)又はNSCLC以外の進行性若しくは転移性KRAS G12C陽性固形腫瘍);進行性若しくは転移性NF1機能喪失(LOF)固形腫瘍若しくはBRAFクラスII/III変異固形腫瘍;又は進行性若しくは転移性EGFR陽性NSCLC、例えば、標準治療のEGFRチロシンキナーゼ阻害物質(TKI)療法で進行したか、若しくは標準治療も治癒的療法も利用可能でない可能性があるEGFR変異NSCLC、例えば、進行性若しくは転移性オシメルチニブ耐性NSCLCであり得る。癌又は腫瘍はまた、脊索腫などの肉腫であり得る。
【0027】
II.定義
本明細書で使用される場合、以下の用語は、示される意味を有する。
【0028】
「含む(comprise)」、「含む(include)」、及び「有する(have)」、並びにそれらの派生語は、本明細書において、包括的なオープンエンドの用語として互換的に使用される。例えば、「含む(comprising)」、「含む(including)」、又は「有する(having)」の使用は、含まれている(comprised)、有されている(had)、又は含まれている(included)いかなる要素も、動詞を含有する節の主語によって包含される唯一の要素ではないことを意味する。
【0029】
値の範囲が開示され、表記「n1...~n2」又は「n1...とn2との間」が使用され、n1及びn2が数である場合、別段の指定がない限り、この表記は、数自体及びそれらの間の範囲を含むことが意図される。この範囲は、端の値の間及び端の値を含む整数の範囲であっても連続的な範囲であってもよい。例として、「1mg~3mg(ミリグラム)」の範囲は、1mg、3mg、及び任意の数の有効数字までの、それらの間の全て(例えば、1.255mg、2.1mg、2.9999mgなど)を含むことが意図される。
【0030】
「塩」は、本開示の化合物の酸又は塩基塩を指す。薬学的に許容される酸付加塩の実例は、鉱酸(塩酸、臭化水素酸、リン酸など)塩及び有機酸(酢酸、プロピオン酸、グルタミン酸、クエン酸など)塩である。薬学的に許容される塩基付加塩の例としては、ナトリウム塩、カリウム塩、カルシウム塩、アンモニウム塩、有機アミノ塩、又はマグネシウム塩などが挙げられる。薬学的に許容される塩は非毒性であることが理解される。好適な薬学的に許容される塩に関する追加の情報は、参照により本明細書に組み込まれる、Remington’s Pharmaceutical Sciences,17th ed.,Mack Publishing Company,Easton,Pa.,1985に見出すことができる。
【0031】
「溶媒和物」は、非共有結合性分子間力によって結合された化学量論量又は非化学量論量の溶媒を更に含む、本明細書において提供される化合物又はその塩を指す。
【0032】
「水和物」は、水分子と複合体を形成している化合物を指す。本開示の化合物は、1/2個の水分子又は1~10個の水分子と複合体を形成し得る。
【0033】
不斉中心は、本明細書に開示される化合物中に存在する。これらの中心は、キラル炭素原子の周りの置換基の配置に応じて、記号「R」又は「S」によって示される。本開示は、ジアステレオマー、エナンチオマー、及びエピマー形態、並びにd-異性体及びl-異性体、並びにそれらの混合物を含む全ての立体化学的異性体形態を包含することを理解すべきである。化合物の個々の立体異性体は、キラル中心を含有する市販の出発物質から合成的に、あるいはエナンチオマー生成物の混合物の調製とそれに続くジアステレオマーの混合物への変換などの分離とそれに続く分離若しくは再結晶、クロマトグラフィー技術、キラルクロマトグラフィーカラム上でのエナンチオマーの直接分離、又は任意の他の適切な方法によって調製することができる。特定の立体化学の出発化合物は、市販されているか、又は種々の技術によって製造及び分割され得る。更に、化合物は、互変異性体として存在してもよい。全ての互変異性体が、本開示によって提供される。更に、本明細書に開示される化合物は、非溶媒和形態、及び水、エタノールなどの薬学的に許容される溶媒との溶媒和形態で存在し得る。一般に、溶媒和形態は、非溶媒和形態と等価であると考えられる。
【0034】
「互変異性体」は、本明細書で使用する場合、単独又は組み合わせにおいて、急速に相互変換する2つ以上の異性体のうちの1つを指す。一般に、この相互変換は十分に速いため、個々の互変異性体は別の互変異性体の非存在下で単離されない。互変異性体の量の比は、溶媒組成、イオン強度、及びpH、並びに他の溶液パラメータに依存し得る。互変異性体の量の比は、特定の溶液及び当該溶液中の生体分子結合部位の微小環境において異なり得る。互変異性体の例としては、ケト/エノール、エナミン/イミン、及びラクタム/ラクチム互変異性体が挙げられる。互変異性体の更なる例には、2-ヒドロキシピリジン/2(1H)-ピリドン及び2-アミノピリジン/2(1H)-イミノピリドン互変異性体も含まれる。
【0035】
配座異性体は、本明細書に開示される化合物中に存在する。式:
【0036】
【0037】
において、R1がアリール又はヘテロアリールである場合、アリール又はヘテロアリール基は、
【0038】
【0039】
によって表されるように、ピリミジノン部分に対して異なる立体配座で配向され得る。
これらの形態は、ピリミジノン部分に対するアリール又はヘテロアリール基の立体配座に応じて、記号「Sa」又は「Ra」によって示される。「Sa」及び「Ra」形態の例は、国際特許出願第PCT/US2019/045903号の実施例1~20に見出すことができ、これは、あらゆる目的のためにその全体が本明細書に組み込まれる。式(10b)の化合物は、実質的に「Ra」形態である。
【0040】
「薬学的に許容される」は、過度の毒性、刺激作用、及びアレルギー反応を伴わずに患者の組織と接触させて使用するのに好適であり、妥当なベネフィット/リスク比に見合っており、それらの意図された使用に効果的である化合物(塩、水和物、溶媒和物、立体異性体、配座異性体、互変異性体など)を指す。本明細書に開示される化合物は、本明細書に定義及び記載されるように、薬学的に許容される塩として存在し得る。
【0041】
「PTPN11阻害物質」は、本明細書において、国際特許出願第PCT/US2019/045903号に概略的に記載されているPTPN11アッセイ(例えば、実施例21の組換えヒトPTPN11タンパク質の酵素活性)又は本実施例1の組換えヒトSHP2タンパク質の酵素活性において測定される場合に、PTPN11活性に関して約100マイクロモル(μM)以下、より典型的には約50μM以下のIC50を示す化合物を指すために使用される。「IC50」は、酵素(例えば、PTPN11)の活性を最大半量レベルまで低下させる阻害物質の濃度である。特定の実施形態では、国際出願PCT/US2019/045903号に開示されている化合物は、PTPN11の阻害について約10μM以下のIC50を示し、更なる実施形態では、化合物は、PTPN11の阻害について約1μM以下のIC50を示し、なお更なる実施形態では、化合物は、PTPN11の阻害について約200nM以下のIC50を示し、なお更なる実施形態では、化合物は、PTPN11の阻害について約100nM以下のIC50を示し、なお更なる実施形態では、化合物は、本明細書に記載されるPTPN11アッセイにおいて測定される場合、PTPN11の阻害について約50nM以下のIC50を示す。特定の実施形態では、式(I)又は(10b)の化合物は、PTPN11(例えば、PTPN11-E76K変異酵素)の阻害について50nM以下のIC50を示す。
【0042】
本明細書で使用される場合、「組成物」は、特定の成分を特定の量で含む生成物、及び特定の成分の特定の量での組み合わせから直接的又は間接的に生じる任意の生成物を包含することが意図される。「薬学的に許容される」は、担体、希釈剤、又は賦形剤が製剤の他の成分と適合性でなければならず、そのレシピエントに有害であってはならないことを意味する。
【0043】
「薬学的に許容される賦形剤」は、活性剤の対象への投与及び対象による吸収を補助する物質を指す。本開示において有用な薬学的賦形剤としては、結合剤、充填剤、流動促進剤、崩壊剤、界面活性剤、滑沢剤、コーティング、甘味料、香味料、及び色素が挙げられるが、これらに限定されない。当業者は、他の薬学的賦形剤が本開示において有用であることを認識するであろう。
【0044】
「錠剤」は、コーティングを有する及び有さない固体医薬製剤を指す。「錠剤」という用語はまた、1つ、2つ、3つ、又はそれよりも多い層を有する錠剤を指し、前述のタイプの錠剤の各々は、1つ以上のコーティングを有していなくても、有していてもよい。いくつかの実施形態では、本開示の錠剤は、ローラー圧縮又は当該技術分野で公知の他の好適な手段によって調製され得る。「錠剤」という用語は、ミニ錠剤、溶解錠剤、咀嚼錠剤、発泡錠剤、及び口腔内崩壊錠剤も含む。錠剤は、式(I)又は(10b)の化合物及び1種以上の薬学的賦形剤(例えば、充填剤、結合剤、流動促進剤、崩壊剤、界面活性剤、結合剤、滑沢剤など)を含む。任意選択で、コーティング剤も含めることができる。錠剤製剤の重量%を計算する目的において、コーティング剤の量は計算に含まれない。すなわち、本明細書で報告される重量%は、コーティングされていない錠剤の重量%である。
【0045】
「投与すること」は、経口投与などによる、対象への化合物又はその形態の治療的提供を指す。
【0046】
「患者」又は「対象」は、本明細書で提供される医薬組成物の投与によって処置することができる疾患又は状態に罹患しているか又は罹患しやすい生物を指す。非限定的な例としては、ヒト、非ヒト霊長類(例えば、サル)、ヤギ、ブタ、ヒツジ、ウシ、シカ、ウマ、ウシ、ラット、マウス、ウサギ、ハムスター、モルモット、ネコ、イヌ、及び他の非哺乳動物が挙げられる。いくつかの実施形態では、対象は、ヒトである。いくつかの実施形態では、対象は、成人(例えば、少なくとも18歳)である。
【0047】
「治療有効量」は、同定された疾患若しくは状態を処置若しくは改善するために、又は検出可能な治療効果若しくは阻害効果を示すために有用な化合物又は医薬組成物の量を指す。正確な量は、処置の目的に依存し、臨床医、薬剤師などによって確認することができるであろう(例えば、Lieberman,Pharmaceutical Dosage Forms(vols.1-3,1992)、Lloyd,The Art,Science and Technology of Pharmaceutical Compounding(1999)、Pickar,Dosage Calculations(1999)、及びRemington:The Science and Practice of Pharmacy,20th Edition,2003,Gennaro,Ed.,Lippincott,Williams & Wilkinsを参照)。
【0048】
「処置する(treat)」、「処置すること(treating)」及び「処置(treatment)」は、任意の客観的又は主観的パラメータを含む、損傷、病状又は状態の処置又は改善における成功の任意の兆候、例えば、軽減;寛解;症状の軽減又は損傷、病状、若しくは状態が患者にとってより耐えられるものになること;変性又は減退の速度の遅延;変性の最終点における衰弱の軽減;患者の身体的又は精神的な健康の改善を指す。症状の処置又は改善は、客観的又は主観的パラメータ、例えば、身体検査、アッセイ(例えば、血液、血漿、又は尿などの対象の体液の分析)、画像解析、神経精神医学的検査、及び/又は精神鑑定の結果に基づき得る。
【0049】
「約」は、当業者であれば指定された値に合理的と同等であると考え得る、指定された値を含む値の範囲を意味する。いくつかの実施形態では、「約」という用語は、当該技術分野において一般的に許容される測定値を使用した標準偏差内を意味する。いくつかの実施形態では、約は、指定された値の+/-10%に及ぶ範囲を意味する。いくつかの実施形態では、約は指定された値を意味する。
【0050】
他に具体的に示されない限り、例えば錠剤製剤中の式(I)又は(10b)の化合物の含量は、無塩及び無水ベースで、式(I)又は(10b)の化合物の正規化された重量に基づいて計算される。すなわち、式(I)又は(10b)の化合物中の塩及び/又は水の含量は、計算に含まれない。
【0051】
「KRAS G12C阻害物質」は、本明細書で使用される場合、G12C変異型KRAS(Kirstenラット肉腫2ウイルス癌遺伝子ホモログ)における変異システイン12を選択的に改変することによって、KRASの合成又は生物学的活性を標的とするか、減少させるか、又は阻害する化合物を指す。KRAS G12C阻害物質は、KRAS G12Cキナーゼを少なくとも部分的に阻害してもよい。KRAS G12C阻害物質は、選択的KRAS G12C阻害物質(例えば、G12C変異を有するKRASに対して、G12D変異などの別の変異を有するKRASに対するよりも大きな選択性を有する)であってもよい。これらの場合、選択的KRAS G12C阻害物質は、他のKRAS変異に対する低い親和性と共に、KRAS G12Cに対する高い効力を有し得る。KRAS G12C阻害物質は、共有結合阻害物質(例えば、システイン12を共有結合的に改変することができる)であってもよい。KRAS G12C阻害物質は、非共有結合阻害物質であってもよい。KRAS G12C阻害物質は、KRASの不活性(「GDP」)形態に結合してもよい。KRAS G12C阻害物質は、KRASの活性(「GTP」)形態に結合してもよい。KRAS G12C阻害物質は、KRASの不活性(「GDP」)形態及び活性(「GTP」)形態の両方に結合してもよい。KRAS G12C阻害物質の例としては、ソトラシブ(AMG510)、アダグラシブ(MRTX-849)、MRTX1257、ARS-853、ARS-1620、JNJ-74699157(ARS-3248)、JDQ443、GDC-6036、JAB-21822、BI1823911、MK-1084、LY3537982、及びLY3499446が挙げられる。
【0052】
「KRAS陽性癌」は、KRAS遺伝子が再編成、変異、又は増幅された癌を指す。「KRAS G12C陽性癌」は、KRAS G12C遺伝子が再編成、変異、又は増幅された癌を指す。
【0053】
「KRAS阻害物質に対して耐性のある癌」及び/又は「KRAS阻害物質に対して耐性のあるKRAS陽性癌である癌」は、以前のKRAS阻害物質での処置に対して有利に応答できないか、あるいはKRAS阻害物質に対して有利に応答した後に再発(recur)又は再燃(relapse)するかのいずれかである癌又は腫瘍を指す。「KRAS G12C阻害物質に対して耐性のある癌」及び/又は「KRAS G12C阻害物質に対して耐性のあるKRAS G12C陽性癌である癌」は、以前のKRAS G12C阻害物質での処置に対して有利に応答できないか、あるいはKRAS G12C阻害物質に対して有利に応答した後に再発又は再燃するかのいずれかである癌又は腫瘍を指す。
【0054】
「神経線維腫症1型腫瘍発現、例えば、MEK阻害物質に対して耐性のある神経線維腫」又は「MEK阻害物質に対して耐性のあるNF1腫瘍」は、以前のMEK阻害物質での処置に対して有利に応答できないか、あるいはMEK阻害物質に対して有利に応答した後に再発又は再燃するかのいずれかであるNF1を指す。
【0055】
本明細書で使用される場合、「EGFR阻害物質」は、上皮成長因子受容体(EGFR)の合成又は生物学的活性を標的とするか、減少させるか、又は阻害する化合物を指す。EGFR阻害物質は、EGFRキナーゼを少なくとも部分的に阻害してもよい。EGFR阻害物質は、選択的EGFR阻害物質であってもよい。これらの場合、選択的EGFR阻害物質は、他の関連キナーゼに対する低い親和性と共に、EGFRに対する高い効力を有し得る。EGFR阻害物質の例としては、エルロチニブ、セツキシマブ、パニツムマブ、バンデタニブ、アファチニブ、ゲフィチニブ、オシメルチニブ、ネシツムマブ、ブリガチニブ、ネラチニブ、ダコミチニブ、アミバンタマブ(JNJ-61186372)、モボセルチニブ(TAK-788)、BLU-945、バルリチニブ、タルロキシチニブ、ポジオチニブ、及びラパチニブが挙げられる。
【0056】
「EGFR陽性癌」は、EGFR遺伝子が再編成、変異、又は増幅された癌を指す。
【0057】
「EGFR阻害物質に対して耐性のある癌」及び「EGFR阻害物質に対して耐性のあるEGFR陽性癌である癌」は、以前のEGFR阻害物質での処置に対して有利に応答できないか、あるいはEGFR阻害物質に対して有利に応答した後に再発又は再燃するかのいずれかである癌又は腫瘍を指す。
【0058】
「1つの(A)」、「1つの(an)」又は「1つの(a(n))」は、本明細書において置換基の群又は「置換基群」に関して使用される場合、少なくとも1つを意味する。例えば、化合物が「1つの(an)」アルキル又はアリールで置換されている場合、その化合物は、少なくとも1つのアルキル及び/又は少なくとも1つのアリールで置換されており、各アルキル及び/又はアリールは、任意選択で異なる。別の例では、化合物が「1つの(a)」置換基で置換されている場合、その化合物は、少なくとも1つの置換基で置換されており、各置換基は、任意選択で異なる。
【0059】
III.方法
一態様では、本開示は、癌又は固形腫瘍を処置する方法を提供する。本方法は、それを必要とする対象に、式(I)によって表される治療有効量の化合物:
【0060】
【0061】
又は薬学的に許容される塩、水和物、溶媒和物、立体異性体、配座異性体、互変異性体、若しくはそれらの組み合わせを投与することを含む。いくつかの実施形態では、対象は、MAPK経路における1つ以上の変異、例えばV600X変異を含むBRAF変異以外の変異を有する。いくつかの実施形態では、対象は、PTPN11における1つ以上の変異を有する。いくつかの実施形態では、式(I)の化合物は、単独療法剤として投与される。
【0062】
III-1:式(I)の化合物
式(I)の化合物は、薬学的に許容される塩の形態又は中性形態であり得、これらの各々は、任意選択で、溶媒和物又は水和物形態である。
【0063】
いくつかの実施形態では、式(I)の化合物は、薬学的に許容される塩の形態である。いくつかの実施形態では、式(I)の化合物の薬学的に許容される酸付加塩は、式(Ia):
【0064】
【0065】
(式中、HXは、薬学的に許容される酸付加物である)によって表される。
【0066】
許容される酸付加塩の例としては、無機酸(例えば、塩酸、臭化水素酸、硝酸、炭酸、一水素炭酸、リン酸、一水素リン酸、二水素リン酸、硫酸、一水素硫酸、ヨウ化水素酸、又は亜リン酸など)に由来する塩、及び有機酸(例えば、酢酸、プロピオン酸、イソ酪酸、マレイン酸、マロン酸、安息香酸、コハク酸、スベリン酸、フマル酸、乳酸、マンデル酸、フタル酸、ベンゼンスルホン酸、p-トリルスルホン酸、クエン酸、酒石酸、メタンスルホン酸など)に由来する塩が挙げられる。
【0067】
いくつかの実施形態では、式(I)の化合物は、中性形態である。
【0068】
いくつかの実施形態では、式(I)の化合物は、以下の式(10b)に示される立体化学を有する6-((3S,4S)-4-アミノ-3-メチル-2-オキサ-8-アザスピロ[4.5]デカン-8-イル)の実質的な部分を有する:
【0069】
【0070】
いくつかの実施形態では、式(I)の化合物は、実質的に、式(10b)に示されるRa立体配座である:
【0071】
【0072】
いくつかの実施形態では、式(I)の化合物は、式(10b):
【0073】
【0074】
によって表され、6-((3S,4S)-4-アミノ-3-メチル-2-オキサ-8-アザスピロ[4.5]デカン-8-イル)-3-(Ra)-(2,3-ジクロロフェニル)-2,5-ジメチルピリミジン-4(3H)-オンの名称を有する。
【0075】
いくつかの実施形態では、式(I)又は(10b)の化合物は、中性形態である。
【0076】
いくつかの実施形態では、式(I)の化合物は、式(10b)の化合物の1つ以上の対応するエナンチオマー、ジアステレオマー、及び/又は配座異性体を含み、これらはそれぞれ、以下の式によって表される:
【0077】
【0078】
いくつかの実施形態では、式(10b)の化合物は、キラル高速液体クロマトグラフィー(high-performance liquid chromatography、HPLC)によって測定される少なくとも約95面積%の純度を有する。いくつかの実施形態では、式(10b)の化合物は、キラル高速液体クロマトグラフィー(HPLC)によって測定される、約95面積%~約99面積%、約96面積%~約99面積%、約97面積%~約99面積%、又は約98面積%~約99面積%の純度を有する。いくつかの実施形態では、式(10b)の化合物は、約98面積%~約99面積%の純度を有する。
【0079】
いくつかの実施形態では、式(I)の化合物は、上記の式によって表される式(10b)の化合物の1つ以上の対応するエナンチオマー、ジアステレオマー、及び/又は配座異性体を含み、1つ以上の異性体の合計は、キラル高速液体クロマトグラフィー(HPLC)によって測定される約5面積%以下である。
【0080】
いくつかの実施形態では、式(I)の化合物中に存在する式(10b)の化合物の対応するエナンチオマー、ジアステレオマー、及び/又は配座異性体は、以下のような許容基準:エナンチオマー(3R、4R、Sa)≦0.5面積%、ジアステレオマー(3R、4S、Ra)≦1.2面積%、ジアステレオマー(3S、4R、Sa)≦0.5面積%、ジアステレオマー(3R、4R、Ra)≦0.5面積%、ジアステレオマー(3S、4S、Sa)≦0.5面積%、ジアステレオマー(3S、4R、Ra)≦0.5面積%、及びジアステレオマー(3R、4S、Sa)≦0.5面積%を満たし、これらの各々はキラル高速液体クロマトグラフィー(HPLC)によって測定される。いくつかの実施形態では、式(10b)の化合物は、少なくとも約95面積%の純度を有し、ここで、エナンチオマー(3R、4R、Sa)<0.5面積%、ジアステレオマー(3R、4S、Ra)<1.2面積%、ジアステレオマー(3S、4R、Sa)<0.5面積%、ジアステレオマー(3R、4R、Ra)<0.5面積%、ジアステレオマー(3S、4S、Sa)<0.5面積%、ジアステレオマー(3S、4R、Ra)<0.5面積%、及びジアステレオマー(3R、4S、Sa)<0.5面積%であり、これらの各々はキラル高速液体クロマトグラフィー(HPLC)によって測定される。いくつかの実施形態では、式(10b)の化合物は、約95面積%~約99面積%、約96面積%~約99面積%、約97面積%~約99面積%、又は約98面積%~約99面積%の純度を有し、ここで、エナンチオマー(3R、4R、Sa)<0.5面積%、ジアステレオマー(3R、4S、Ra)<1.2面積%、ジアステレオマー(3S、4R、Sa)<0.5面積%、ジアステレオマー(3R、4R、Ra)<0.5面積%、ジアステレオマー(3S、4S、Sa)<0.5面積%、ジアステレオマー(3S、4R、Ra)<0.5面積%、及びジアステレオマー(3R、4S、Sa)<0.5面積%であり、これらの各々はキラル高速液体クロマトグラフィー(HPLC)によって測定される。いくつかの実施形態では、式(10b)の化合物は、約98面積%~約99面積%の純度を有し、ここで、エナンチオマー(3R、4R、Sa)は検出されず、ジアステレオマー(3R、4S、Ra)は約0.86面積%であり、ジアステレオマー(3S、4R、Sa)は検出されず、ジアステレオマー(3R、4R、Ra)は約0.07面積%であり、ジアステレオマー(3S、4S、Sa)は検出されず、ジアステレオマー(3S、4R、Ra)は検出されず、ジアステレオマー(3R、4S、Sa)は検出されず、これらの各々はキラル高速液体クロマトグラフィー(HPLC)によって測定される。
【0081】
いくつかの実施形態では、式(I)、(Ia)、及び(10b)のいずれか1つの化合物は、溶媒和物及び/又は水和物形態である。
【0082】
III-2:対象
いくつかの実施形態では、対象は、ヒトである。いくつかの実施形態では、対象は、医師などの医療従事者のケアを受けている。いくつかの実施形態では、対象は、癌(例えば、本明細書に記載されるような)と診断されている。いくつかの実施形態では、対象は、固形腫瘍を含む癌を有する。
【0083】
対象は、適切な、臨床的に検証された及び/又はFDA承認された試験を使用する分子診断によって評価されるMAPK経路変化(例えば、BRAF V600X変異を除くMAPK経路変化)を有する、利用可能な標準治療も治癒的療法もない、進行性(例えば、原発性又は再発性)又は転移性癌又は固形腫瘍を有し得る。
【0084】
いくつかの実施形態では、対象は、RASタンパク質(例えば、KRAS、NRAS、又はHRAS)における変異を有する。いくつかの実施形態では、対象は、Q61X変異以外のRASタンパク質における変異を有する。いくつかの実施形態では、対象は、KRAS Q61X変異以外のKRASにおける変異を有する(例えば、対象は、KRAS Q61X以外のKRASにおける変異を特徴とする癌を有する)。いくつかの実施形態では、KRASタンパク質は、G12C、G12D、G12S、G12V、G12R、G12A、G13D、G13A、G13C、G13R、G13S、及び/又はG13V変異を含む(例えば、対象は、KRASにおけるG12C、G12D、G12S、G12V、G12R、G12A、G13D、G13A、G13C、G13R、G13S、及び/又はG13V変異を特徴とする癌を有する)。いくつかの実施形態では、対象は、KRAS G12C変異を含むKRAS変異を有する。いくつかの実施形態では、対象は、KRAS G12A変異、KRAS G12D変異、KRAS G12F変異、KRAS G12I変異、KRAS G12L変異、KRAS G12R変異、KRAS G12S変異、KRAS G12V変異、KRAS G12Y変異、KRAS G13D変異、又はそれらの組み合わせを含むKRAS変異を有する(例えば、対象は、KRAS G12C変異、KRAS G12A変異、KRAS G12D変異、KRAS G12F変異、KRAS G12I変異、KRAS G12L変異、KRAS G12R変異、KRAS G12S変異、KRAS G12V変異、KRAS G12Y変異、KRAS G13D変異、又はそれらの組み合わせを含むKRAS変異を特徴とする癌を有する)。
【0085】
いくつかの実施形態では、対象は、MAPK経路における1つ以上の変異を有し、ただし、MAPK経路における1つ以上の変異は、V600X変異を含むBRAF変異以外である。いくつかの実施形態では、対象は、NRAS、HRAS、CRAF、BRAF、NRAF、MAPK/ERK、MAPK/MEK、NF1、IGFR、PDGFR、VEGFR、FGFR、CCKR、NGFR、EphR、AXLR、KEAP-1、TIE受容体、RYK受容体、DDR受容体、RET受容体、ROS受容体、LTK受容体、ROR受容体、及びMuSK受容体における1つ以上の変異からなる群から選択されるMAPK経路における1つ以上の変異を有する。いくつかの実施形態では、対象は、NRASにおける変異を有する。いくつかの実施形態では、対象は、HRASにおける変異を有する。いくつかの実施形態では、対象は、CRAFにおける変異を有する。いくつかの実施形態では、対象は、BRAFにおける変異(V600X変異を除く)を有する。いくつかの実施形態では、対象はNRAFにおける変異を有する。いくつかの実施形態では、対象は、MAPK/ERKにおける変異を有する。いくつかの実施形態では、対象は、MAPKK/MEKにおける変異を有する。いくつかの実施形態では、対象は、NF1における変異を有する。いくつかの実施形態では、対象は、IGFRにおける変異を有する。いくつかの実施形態では、対象は、PDGFRにおける変異を有する。いくつかの実施形態では、対象は、VEGFRにおける変異を有する。いくつかの実施形態では、対象は、FGFRにおける変異を有する。いくつかの実施形態では、対象は、CCKRにおける変異を有する。いくつかの実施形態では、対象は、NGFRにおける変異を有する。いくつかの実施形態では、対象は、EphRにおける変異を有する。いくつかの実施形態は、対象は、AXLRにおける変異を有する。いくつかの実施形態では、対象は、KEAP-1受容体における変異を有する。いくつかの実施形態では、対象は、TIE受容体における変異を有する。いくつかの実施形態では、対象は、RYK受容体における変異を有する。いくつかの実施形態では、対象は、DDR受容体における変異を有する。いくつかの実施形態では、対象は、RET受容体における変異を有する。いくつかの実施形態では、対象は、ROS受容体における変異を有する。いくつかの実施形態では、対象は、LTK受容体における変異を有する。いくつかの実施形態では、対象は、ROR受容体における変異を有する。いくつかの実施形態では、対象は、MuSK受容体における変異を有する。
【0086】
いくつかの実施形態では、対象は、BRAFにおける変異(V600X変異を除く)を有する。いくつかの実施形態では、対象は、BRAFにおけるクラスII変異を有する。いくつかの実施形態では、対象は、BRAFにおけるクラスIII変異を有する。
【0087】
いくつかの実施形態では、対象は、EGFRにおける変異を有する。いくつかの実施形態では、対象は、EGFRエクソン19欠失、エクソン20挿入、L858X変異、T790X変異、C797X変異、G719X変異、L861X変異、S768X変異、E709X変異、又はそれらの任意の組み合わせを含むEGFR変異を有する。いくつかの実施形態では、対象は、EGFRエクソン19欠失、及び/又はエクソン20挿入を含むEGFR変異を有する。いくつかの実施形態では、対象は、EGFRエクソン19欠失を有する。いくつかの実施形態では、対象は、EGFRエクソン20挿入を有する。
【0088】
いくつかの実施形態では、対象は、PTPN11における変異を有する。いくつかの実施形態では、対象は、E76K変異を含むPTPN11における変異を有する。いくつかの実施形態では、対象は、PTPN11における変異を有していない。いくつかの実施形態では、対象は、PTPN11におけるE76K変異を有していない。
【0089】
いくつかの実施形態では、対象は、固形腫瘍における応答評価基準(response evaluation criteria in solid tumors、RECIST)に従って測定可能な疾患を有する。いくつかの実施形態では、式(I)又は(10b)の化合物による対象の処置は、RECISTに従って測定可能な疾患状態の変化を引き起こす。
【0090】
いくつかの実施形態では、対象は、以下に定義及び記載される十分な血液学的機能、腎機能、肝機能、及び血液凝固機能を含む十分な臓器機能を有する:
血液学
● 絶対好中球数(absolute neutrophil count、ANC)≧1,500/mcL、
● 血小板≧100,000/mcL、及び
● ヘモグロビン≧9g/dL(輸血なしで2週間超、又は赤血球生成刺激剤(例えば、Epo、プロクリット)なしで6週間超)。
腎臓
● 推定腎糸球体濾過量≧60mL/min/1.73m2(慢性腎臓病疫学共同研究の式によって計算される)。
肝臓
● 血清総ビリルビン<2.0×施設内基準値上限(upper limit of normal、ULN)又は<3.0×施設内ULN(個体が治験責任医師によって確認されたジルベール症候群又は溶血性貧血の診断を有する場合)、並びに
● アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ/血清グルタミン酸-オキサロ酢酸トランスアミナーゼ(aspartate aminotransferase/serum glutamic-oxaloacetic transaminase、AST/SGOT)及び/又はアラニンアミノトランスフェラーゼ/血清グルタミン酸-ピルビン酸トランスアミナーゼ(alanine aminotransferase/serum glutamic-pyruvic transaminase、ALT/SGPT)≦2.5×ULN又は≦5×ULN(肝転移の存在下)。
血液凝固
● 国際標準化比(international normalized ratio、INR)又はプロトロンビン時間(prothrombin time、PT)≦1.5×ULN(患者が抗凝固療法を受けていない限り、かつPT又は活性化部分トロンボプラスチン時間(activated partial thromboplastin time、aPTT)が抗凝固剤の意図される使用の治療範囲内である限り)、及び
● 活性化部分トロンボプラスチン時間(aPTT)≦1.5×ULN(患者が抗凝固療法を受けていない限り、かつPT又はaPTTが抗凝固剤の意図される使用の治療範囲内である限り)。
【0091】
いくつかの実施形態では、式(I)又は(10b)の化合物の投与前に、対象は、いずれの化学療法による処置も、ホルモン剤(コルチコステロイドを含む)、生物学的薬剤若しくは標的薬剤などの他の治験療法による処置も3週間以上受けていないか、又は対象は、処置開始時に、ホルモン剤(コルチコステロイドを含む)、生物学的薬剤、若しくは標的薬剤から少なくとも5半減期にあるかのいずれか長い方である。
【0092】
いくつかの実施形態では、式(I)又は(10b)の化合物の投与前に、対象は、化学療法、ホルモン療法、免疫療法若しくは生物学的療法、標的療法、又はそれらの組み合わせを含む癌療法で以前に処置されていない。
【0093】
いくつかの実施形態では、化学療法、ホルモン療法、免疫療法若しくは生物学的療法、標的療法、又はそれらの組み合わせを含む癌療法を受けていたか又は受けている対象は、そのような癌療法(例えば、化学療法、ホルモン療法、免疫療法若しくは生物学的療法、標的療法、又はそれらの組み合わせ)を、式(I)又は(10b)の化合物による処置の開始前に、少なくとも約3週間(少なくとも約4週間など)又は癌療法において使用された薬剤の五(5)半減期のいずれか長い方の期間にわたって中止する場合、式(I)又は(10b)の化合物により処置される。
【0094】
いくつかの実施形態では、対象は、PTPN11(SHP2)、MEK、又はRAS(例えば、NRAS、HRAS、KRAS;例えば、Q61X変異)における1つ以上の更なる活性化変異を有していない。
【0095】
いくつかの実施形態では、対象は、進行中であるか又は積極的処置を必要とする更なる悪性腫瘍を有しておらず、更なる悪性腫瘍には、皮膚の基底細胞癌腫、治癒する可能性がある療法を受けた皮膚の扁平上皮癌腫、又は子宮頸部上皮内癌(in situ cervical cancer)が含まれる。いくつかの実施形態では、対象は、進行したか又は積極的処置を必要とする更なる悪性腫瘍を過去3年以内に有しておらず、更なる悪性腫瘍は、非黒色腫性皮膚癌、表在性尿路上皮癌腫、子宮頸部上皮内癌、又は研究の過程での再発のための処置を必要とすると予想されない任意の他の治癒的に処置された悪性腫瘍以外である。
【0096】
いくつかの実施形態では、対象は、原発性中枢神経系(central nervous system、CNS)腫瘍、活性CNS転移、及び/又は癌性髄膜炎を有していない。いくつかの実施形態では、対象は原発性中枢神経系(CNS)腫瘍を有していない。いくつかの実施形態では、対象は、活性CNS転移及び/又は癌性髄膜炎を有していない。
【0097】
いくつかの実施形態では、脳転移を有する患者は、i)脳転移が安定であり(式(I)又は(10b)の化合物の投与前の少なくとも4週間にわたり、イメージングによる進行の証拠がなく、任意の神経学的症状がベースラインに戻っている)、ii)対象に新たな又は拡大している脳転移の証拠がなく、iii)式(I)又は(10b)の化合物の投与前の少なくとも7日間、対象がステロイド及び/又は抗発作薬を使用していない場合(ただし、対象は癌性髄膜炎を有していない)、式(I)又は(10b)の化合物で処置される。
【0098】
いくつかの実施形態では、対象は、SHP2阻害物質(例えば、TNO-155、RMC-4630、RLY-1971、JAB-3068、JAB-3312、PF-07284892、又はERAS601)で以前に処置されていない。いくつかの実施形態では、対象は、式(I)又は(10b)の化合物で以前に処置されていない。いくつかの実施形態では、対象は、SHP2阻害物質で以前に処置されている。いくつかの実施形態では、対象は、式(I)又は(10b)の化合物で以前に処置されている。
【0099】
いくつかの実施形態では、式(I)又は(10b)の化合物の投与前に、対象は、CYP3A4及び/又はP-gp誘導物質又は阻害物質の強力な又は中程度の誘導物質又は阻害物質(薬草サプリメントを含む)のうちの1つ以上を以前に摂取しなかったか、又は摂取していない(例えば、付録3)。いくつかの実施形態では、式(I)又は(10b)の化合物の投与前に、対象は、併用薬の14日以内又は5半減期以内(いずれか長い方)に、シトクロムP450(CYP)3A4又はP糖タンパク質(P-gp)誘導物質の強力な又は中程度の誘導物質又は阻害物質(薬草サプリメント、又はグレープフルーツジュース、スターフルーツ、若しくはセビルオレンジを含有する食物製品を含む)のうちの1つ以上を以前に摂取しなかったか、又は摂取していない。
【0100】
いくつかの実施形態では、CYP3A4及び/又はP-gp誘導物質又は阻害物質の強力な又は中程度の誘導物質又は阻害物質(薬草サプリメントを含む)(例えば、付録3)のうちの1つ以上を摂取したか又は摂取している対象は、式(I)又は(10b)の化合物による処置の開始前及び式(I)又は(10b)の化合物の処置期間中に少なくとも約五(5)半減期の期間にわたってそのような処置を中止する場合、式(I)又は(10b)の化合物で処置される。
【0101】
いくつかの実施形態では、式(I)又は(10b)の化合物の投与前に、対象は、P-gp、BCRP、OATP1B1、OATP1B3、MATE1、及び/又はMATE2-Kトランスポーターの既知の基質である薬物を以前に摂取しなかったか、又は摂取していない。
【0102】
いくつかの実施形態では、P-gp、BCRP、OATP1B1、OATP1B3、MATE1、及び/又はMATE2-Kトランスポーターの既知の基質である薬物を摂取したか又は摂取している対象は、式(I)又は(10b)の化合物による処置の開始前及び式(I)又は(10b)の化合物の処置期間中にそのような処置を中止する場合、式(I)又は(10b)の化合物で処置される。
【0103】
式(I)又は(10b)の化合物による処置から恩恵を受け得る対象(例えば、第1/1B相ファースト・イン・ヒューマン研究に登録された対象)についての更なる組み入れ基準及び除外基準は、実施例7に記載される。
【0104】
いくつかの実施形態では、対象は、実施例7に記載の1)~10)の組み入れ基準の全てを満たす。いくつかの実施形態では、対象は、実施例7に記載の1)~10)の組み入れ基準の全てを満たし、ただし、対象は、実施例7に記載の1)~22)の除外基準のいずれも満たさない。
【0105】
III-3:癌/固形腫瘍
いくつかの実施形態では、癌は、膵臓癌;結腸癌;直腸癌;結腸直腸癌;乳癌;卵巣癌;子宮内膜癌;肺癌;前立腺癌;口腔及び咽頭(唇、舌、口、喉頭、咽頭)、食道、胃、小腸、大腸、肝胆管、骨、結合組織、皮膚、子宮頸部、子宮、子宮内膜体、精巣、膀胱、腎臓、並びに他の泌尿器組織の癌(腎細胞癌腫(renal cell carcinoma、RCC)を含む);眼、脳、脊髄、並びに中枢神経系及び末梢神経系の他の構成成分、並びに髄膜などの関連構造の癌;甲状腺及び他の内分泌腺の癌;ホジキン病;非ホジキンリンパ腫;多発性骨髄腫;並びに白血病(慢性リンパ性白血病(Chronic Lymphocytic Leukemia、CLL)、急性リンパ性白血病(Acute Lymphocytic Leukemia、ALL)、慢性骨髄性白血病(Chronic Myelogenous Leukemia、CML)、急性骨髄性白血病(Acute Myelogenous Leukemia、AML)、並びにリンパ球性、顆粒球性、及び単球性リンパ腫を含むリンパ腫を含む造血器悪性腫瘍から選択される。いくつかの実施形態では、癌は、腺癌腫、血管肉腫、アストロサイトーマ、聴神経鞘腫、未分化アストロサイトーマ、基底細胞癌腫、神経膠芽腫、軟骨肉腫、絨毛癌腫、脊索腫、頭蓋咽頭腫、皮膚黒色腫、嚢胞腺癌腫、内皮肉腫、胚性癌腫、上衣腫、ユーイング腫瘍、上皮癌腫、線維肉腫、胃癌(gastric cancer)、泌尿生殖器癌、多形性膠芽腫、頭頸部癌、血管芽腫、肝細胞癌腫、肝癌、カポジ肉腫、大細胞癌腫、平滑筋肉腫、白血病、脂肪肉腫、リンパ系癌、リンパ腫、リンパ管肉腫、リンパ管内皮肉腫、甲状腺髄様癌腫、髄芽腫、髄膜腫 中皮腫、骨髄腫、粘液肉腫 神経芽種、神経線維肉腫、乏突起神経膠腫、骨原性肉腫、卵巣上皮癌、乳頭癌腫、乳頭腺癌腫、傍神経節腫、副甲状腺腫瘍、褐色細胞腫、松果体腫、形質細胞腫、網膜芽細胞腫、横紋筋肉腫、皮脂腺癌腫、精上皮腫、皮膚癌、黒色腫、小細胞肺癌腫、非小細胞肺癌腫、扁平上皮癌腫、汗腺癌腫、滑膜腫、甲状腺癌、ブドウ膜黒色腫、及びウィルムス腫瘍から選択される。いくつかの実施形態では、癌は、乳癌、肺癌(例えば、非小細胞肺癌)、子宮内膜癌、食道癌、卵巣癌、結腸直腸癌、胃癌、扁平上皮癌腫、前立腺癌、及び膵臓癌から選択される。
【0106】
癌は、固形腫瘍又は液性腫瘍を特徴とし得る。いくつかの実施形態では、癌は、固形腫瘍を含む。
【0107】
癌又は固形腫瘍は、PTPN11阻害物質の処置に応答する任意の癌又は固形腫瘍であり得る。いくつかの実施形態では、癌又は固形腫瘍は、MAPK経路における1つ以上の遺伝子が再編成、変異、又は増幅された腫瘍である。いくつかの実施形態では、癌又は固形腫瘍は、MAPK経路における1つ以上の遺伝子が再編成、変異、又は増幅された腫瘍であり、ただし、腫瘍は、V600X変異を含むBRAF変異によって引き起こされるもの以外である。いくつかの実施形態では、固形腫瘍は、進行性又は転移性非小細胞肺癌(NSCLC)などの肺癌である。いくつかの実施形態では、固形腫瘍は脊索腫(脊索肉腫とも呼ばれる)である。
【0108】
いくつかの実施形態では、癌又は固形腫瘍は、RASタンパク質(例えば、KRAS、NRAS、又はHRAS)における変異を特徴とする腫瘍である。いくつかの実施形態では、癌又は固形腫瘍は、Q61X変異以外のRASタンパク質における変異を特徴とする。いくつかの実施形態では、癌又は固形腫瘍は、KRASにおける変異を特徴とする。いくつかの実施形態では、癌又は固形腫瘍は、KRAS Q61X変異以外のKRASにおける変異を特徴とする。いくつかの実施形態では、KRASタンパク質は、G12C、G12D、G12S、G12V、G12R、G12A、G13D、G13A、G13C、G13R、G13S、及び/又はG13V変異を含む(例えば、対象は、KRASにおけるG12C、G12D、G12S、G12V、G12R、G12A、G13D、G13A、G13C、G13R、G13S、及び/又はG13V変異を特徴とする癌を有する)。いくつかの実施形態では、癌又は固形腫瘍は、KRAS G12C変異を含むKRAS変異を特徴とする。いくつかの実施形態では、癌又は固形腫瘍は、KRAS G12A変異、KRAS G12D変異、KRAS G12F変異、KRAS G12I変異、KRAS G12L変異、KRAS G12R変異、KRAS G12S変異、KRAS G12V変異、KRAS G12Y変異、KRAS G13D変異、又はそれらの組み合わせを含むKRAS変異を特徴とする。
【0109】
いくつかの実施形態では、癌又は固形腫瘍は、KRAS G12C陽性癌又は固形腫瘍である。いくつかの実施形態では、固形腫瘍は、進行性又は転移性KRAS G12C陽性癌又は固形腫瘍(例えば、肺癌、結腸直腸癌、膵臓癌、尿路上皮癌腫、胃の癌(stomach cancer)、中皮腫、又はそれらの組み合わせ)である。いくつかの実施形態では、KRAS G12C陽性癌又は固形腫瘍は、非小細胞肺癌、小腸癌、虫垂癌、結腸直腸癌、原発不明の癌、子宮内膜癌、混合性型癌、膵臓癌、肝胆道癌、小細胞肺癌、子宮頸癌、胚細胞癌、卵巣癌、胃腸神経内分泌癌、膀胱癌、骨髄異形成/骨髄増殖性腫瘍、頭頸部癌、食道胃癌、軟部組織肉腫、中皮腫、甲状腺癌、白血病、又は黒色腫である。いくつかの実施形態では、癌は、小腸癌、虫垂癌、子宮内膜癌、肝胆道癌、小細胞肺癌、子宮頸癌、胚細胞腫瘍、卵巣癌、胃腸神経内分泌腫瘍、膀胱癌、骨髄異形成/骨髄増殖性腫瘍、頭頸部癌、食道胃癌、軟部組織肉腫、中皮腫、甲状腺癌、白血病、又は黒色腫である。いくつかの実施形態では、KRAS G12C陽性癌又は固形腫瘍は、非小細胞肺癌、結腸直腸癌、膵臓癌、虫垂癌、子宮内膜癌、原発不明癌、膨大部癌、胃癌、小腸癌、副鼻腔癌、胆管癌、又は黒色腫である。いくつかの実施形態では、固形腫瘍は、肺癌、結腸直腸癌、膵臓癌、尿路上皮癌、胃の癌、中皮腫、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される進行性又は転移性KRAS G12C陽性固形腫瘍である。いくつかの実施形態では、固形腫瘍は、進行性又は転移性KRAS G12C陽性非小細胞肺癌(NSCLC)である。いくつかの実施形態では、固形腫瘍は、進行性又は転移性KRAS G12C陽性固形腫瘍であり、ただし、固形腫瘍は、非小細胞肺癌(NSCLC)以外である。
【0110】
癌又は固形腫瘍はまた、KRAS G12C阻害物質(例えば、ソトラシブ(AMG510)、アダグラシブ(MRTX-849)、MRTX1257、ARS-853、ARS-1620、JNJ-74699157(ARS-3248)、JDQ443、GDC-6036、JAB-21822、BI1823911、MK-1084、LY3537982、及びLY3499446)の処置に対して耐性のある任意の腫瘍であり得る。いくつかの実施形態では、癌又は固形腫瘍は、KRAS G12C阻害物質に対して耐性がある。いくつかの実施形態では、癌又は固形腫瘍は、本明細書に定義及び記載されるKRAS G12C阻害物質に対する内因性及び/又は獲得耐性を特徴とする。いくつかの実施形態では、固形腫瘍は、KRAS G12C阻害物質に対して耐性のあるKRAS G12C陽性固形腫瘍である。いくつかの実施形態では、固形腫瘍は、KRAS G12C阻害物質に対する内因性及び/又は獲得耐性を特徴とするKRAS G12C陽性固形腫瘍である。いくつかの実施形態では、固形腫瘍は、ソトラシブ(AMG510)、アダグラシブ(MRTX-849)、MRTX1257、ARS-853、ARS-1620、JNJ-74699157(ARS-3248)、JDQ443、GDC-6036、JAB-21822、BI1823911、MK-1084、LY3537982、及びLY3499446からなる群から選択されるKRAS G12C阻害物質の処置に対して耐性がある。いくつかの実施形態は、固形腫瘍は、ソトラシブ(AMG510)に対して耐性がある。いくつかの実施形態では、固形腫瘍は、アダグラシブ(MRTX-849)に対して耐性がある。いくつかの実施形態では、固形腫瘍は、ソトラシブ(AMG510)、アダグラシブ(MRTX-849)、MRTX1257、ARS-853、ARS-1620、JNJ-74699157(ARS-3248)、JDQ443、GDC-6036、JAB-21822、BI1823911、MK-1084、LY3537982、及びLY3499446からなる群から選択されるKRAS G12C阻害物質の処置に対して耐性のあるKRAS陽性固形腫瘍である。いくつかの実施形態では、固形腫瘍は、ソトラシブ(AMG510)に対して耐性のあるKRAS陽性固形腫瘍である。いくつかの実施形態では、固形腫瘍は、アダグラシブ(MRTX-849)に対して耐性のあるKRAS陽性固形腫瘍である。いくつかの実施形態では、固形腫瘍は、ソトラシブ(AMG510)、アダグラシブ(MRTX-849)、MRTX1257、ARS-853、ARS-1620、JNJ-74699157(ARS-3248)、JDQ443、GDC-6036、JAB-21822、BI1823911、MK-1084、LY3537982、及びLY3499446からなる群から選択されるKRAS G12C阻害物質の処置に対して耐性のあるKRAS G12C陽性固形腫瘍である。いくつかの実施形態では、固形腫瘍は、ソトラシブ(AMG510)に対して耐性のあるKRAS G12C陽性固形腫瘍である。いくつかの実施形態では、固形腫瘍は、アダグラシブ(MRTX-849)に対して耐性のあるKRAS G12C陽性固形腫瘍である。
【0111】
いくつかの実施形態では、癌又は固形腫瘍は、NRAS、HRAS、CRAF、BRAF、NRAF、MAPK/ERK、MAPKK/MEK、NF1、IGFR、PDGFR、VEGFR、FGFR、CCKR、NGFR、EphR、AXLR、KEAP-1、TIE受容体、RYK受容体、DDR受容体、RET受容体、ROS受容体、LTK受容体、ROR受容体、MuSK受容体、それらの組み合わせにおける1つ以上の変異からなる群から選択されるMAPK経路における1つ以上の変異を有する対象における腫瘍である。いくつかの実施形態では、固形腫瘍は、NRAS、HRAS、CRAF、BRAF、NRAF、MAPK/ERK、MAPKK/MEK、NF1、IGFR、PDGFR、VEGFR、FGFR、CCKR、NGFR、EphR、AXLR、TIE受容体、RYK受容体、DDR受容体、RET受容体、ROS受容体、LTK受容体、ROR受容体、MuSK受容体、及びそれらの組み合わせにおける1つ以上の変異からなる群から選択されるMAPK経路における1つ以上の変異を有する対象における進行性又は転移性固形腫瘍である。いくつかの実施形態では、固形腫瘍は、NRASにおける変異を有する対象における進行性又は転移性固形腫瘍である。いくつかの実施形態では、固形腫瘍は、HRASにおける変異を有する対象における進行性又は転移性固形腫瘍である。いくつかの実施形態では、対象は、CRAFにおける変異を有する。いくつかの実施形態では、固形腫瘍は、NRAFにおける変異を有する対象における進行性又は転移性固形腫瘍である。いくつかの実施形態では、固形腫瘍は、MAPK/ERKにおける変異を有する対象における進行性又は転移性固形腫瘍である。いくつかの実施形態では、固形腫瘍は、MAPKK/MEKにおける変異を有する対象における進行性又は転移性固形腫瘍である。いくつかの実施形態では、固形腫瘍は、NF1における変異を有する対象における進行性又は転移性固形腫瘍である。いくつかの実施形態では、固形腫瘍は、IGFRにおける変異を有する対象における進行性又は転移性固形腫瘍である。いくつかの実施形態では、固形腫瘍は、PDGFRにおける変異を有する対象における進行性又は転移性固形腫瘍である。いくつかの実施形態では、固形腫瘍は、VEGFRにおける変異を有する対象における進行性又は転移性固形腫瘍である。いくつかの実施形態では、固形腫瘍は、FGFRにおける変異を有する対象における進行性又は転移性固形腫瘍である。いくつかの実施形態では、固形腫瘍は、CCKRにおける変異を有する対象における進行性又は転移性固形腫瘍である。いくつかの実施形態では、固形腫瘍は、NGFRにおける変異を有する対象における進行性又は転移性固形腫瘍である。いくつかの実施形態では、固形腫瘍は、EphRにおける変異を有する対象における進行性又は転移性固形腫瘍である。いくつかの実施形態では、固形腫瘍は、AXLRにおける変異を有する対象における進行性又は転移性固形腫瘍である。いくつかの実施形態では、固形腫瘍は、KEAP-1受容体における変異を有する対象における進行性又は転移性固形腫瘍である。いくつかの実施形態では、固形腫瘍は、TIE受容体における変異を有する対象における進行性又は転移性固形腫瘍である。いくつかの実施形態では、固形腫瘍は、RYK受容体における変異を有する対象における進行性又は転移性固形腫瘍である。いくつかの実施形態では、固形腫瘍は、DDR受容体における変異を有する対象における進行性又は転移性固形腫瘍である。いくつかの実施形態では、対象は、RET受容体における変異を有する。いくつかの実施形態では、固形腫瘍は、ROS受容体における変異を有する対象における進行性又は転移性固形腫瘍である。いくつかの実施形態では、固形腫瘍は、LTK受容体における変異を有する対象における進行性又は転移性固形腫瘍である。いくつかの実施形態では、固形腫瘍は、ROR受容体における変異を有する対象における進行性又は転移性固形腫瘍である。いくつかの実施形態では、固形腫瘍は、MuSK受容体における変異を有する対象における進行性又は転移性固形腫瘍である。
【0112】
いくつかの実施形態では、固形腫瘍は、BRAFにおける変異を有する対象における進行性又は転移性固形腫瘍である。いくつかの実施形態では、固形腫瘍は、V600X変異以外のBRAFにおける変異を有する対象における進行性又は転移性固形腫瘍である。いくつかの実施形態では、BRAF変異は、クラスII(例えば、中~高いキナーゼ活性及びRAS非依存性を有する)である。いくつかの実施形態では、BRAF変異は、クラスIII(例えば、損なわれたキナーゼ活性、上流シグナル伝達依存性、及び受容体型チロシンキナーゼ(RTK)阻害物質に対する感受性を有する)である。いくつかの実施形態では、固形腫瘍は、クラスIIのBRAF変異(例えば、V600X変異以外の変異)を特徴とするNSCLCである。いくつかの実施形態では、固形腫瘍は、クラスIIIのBRAF変異(例えば、V600X変異以外の変異)を特徴とするNSCLCである。
【0113】
癌又は固形腫瘍はまた、NRAS、HRAS、CRAF、BRAF、NRAF、MAPK/ERK、MAPKK/MEK、NF1、IGFR、PDGFR、VEGFR、FGFR、CCKR、NGFR、EphR、AXLR、KEAP-1、TIE受容体、RYK受容体、DDR受容体、RET受容体、ROS受容体、LTK受容体、ROR受容体、MuSK受容体、及びそれらの組み合わせにおける1つ以上の変異からなる群から選択されるMAPK経路における合成又は生物学的活性を標的とするか、減少させるか、又は阻害する阻害物質(例えば、MEK阻害物質:コビメチニブ、トラメチニブ、ビニメチニブ、ミルダメチニブ、セルメチニブ;BRAF阻害物質:ソラフェニブ、レゴラフェニブ、ベムラフェニブ、エンコラフェニブ、ダブラフェニブ)の処置に対して耐性のある任意の腫瘍であり得る。いくつかの実施形態では、固形腫瘍は、NRAS、HRAS、CRAF、BRAF、NRAF、MAPK/ERK、MAPKK/MEK、NF1、IGFR、PDGFR、VEGFR、FGFR、CCKR、NGFR、EphR、AXLR、KEAP-1、TIE受容体、RYK受容体、DDR受容体、RET受容体、ROS受容体、LTK受容体、ROR受容体、MuSK受容体、及びそれらの組み合わせからなる群から選択されるMAPK経路における合成又は生物学的活性を標的とするか、減少させるか、又は阻害する阻害物質に対して耐性がある。いくつかの実施形態では、固形腫瘍は、NRAS、HRAS、CRAF、BRAF、NRAF、MAPK/ERK、MAPKK/MEK、NF1、IGFR、PDGFR、VEGFR、FGFR、CCKR、NGFR、EphR、AXLR、KEAP-1、TIE受容体、RYK受容体、DDR受容体、RET受容体、ROS受容体、LTK受容体、ROR受容体、MuSK受容体、及びそれらの組み合わせからなる群から選択されるMAPK経路における合成又は生物学的活性を標的とするか、減少させるか、又は阻害する阻害物質に対する内因性及び/又は獲得耐性を特徴とする。いくつかの実施形態では、固形腫瘍は、NRAS、HRAS、CRAF、BRAF、NRAF、MAPK/ERK、MAPKK/MEK、NF1、IGFR、PDGFR、VEGFR、FGFR、CCKR、NGFR、EphR、AXLR、KEAP-1、TIE受容体、RYK受容体、DDR受容体、RET受容体、ROS受容体、LTK受容体、ROR受容体、MuSK受容体、及びそれらの組み合わせからなる群から選択されるMAPK経路における合成又は生物学的活性を標的とするか、減少させるか、又は阻害する阻害物質に対して耐性のある、MAPK経路における1つ以上の変異を有する対象における腫瘍である。いくつかの実施形態では、固形腫瘍は、NRAS、HRAS、CRAF、BRAF、NRAF、MAPK/ERK、MAPKK/MEK、NF1、IGFR、PDGFR、VEGFR、FGFR、CCKR、NGFR、EphR、AXLR、KEAP-1、TIE受容体、RYK受容体、DDR受容体、RET受容体、ROS受容体、LTK受容体、ROR受容体、MuSK受容体、及びそれらの組み合わせからなる群から選択されるMAPK経路における合成又は生物学的活性を標的とするか、減少させるか、又は阻害する阻害物質に対する内因性及び/又は獲得耐性を特徴とする、MAPK経路における1つ以上の変異を有する対象における腫瘍である。
【0114】
いくつかの実施形態では、固形腫瘍は、進行性又は転移性NF1 LOF固形腫瘍である。
【0115】
いくつかの実施形態では、固形腫瘍は、進行性又は転移性BRAFクラスII/III変異固形腫瘍である。いくつかの実施形態では、固形腫瘍は、進行性又は転移性BRAFクラスII変異固形腫瘍である。いくつかの実施形態では、固形腫瘍は、進行性又は転移性BRAFクラスIII変異固形腫瘍である。
【0116】
いくつかの実施形態では、癌又は固形腫瘍は、肉腫である。いくつかの実施形態では、癌又は腫瘍は、脊索腫又は脊索の肉腫である。
【0117】
いくつかの実施形態では、固形腫瘍は、EGFR陽性固形腫瘍である。いくつかの実施形態では、固形腫瘍は、進行性又は転移性EGFR陽性固形腫瘍(例えば、胆道癌、脳癌、乳癌、子宮頸癌、結腸直腸癌、食道癌、胃癌、頭頸部扁平上皮癌腫(head and neck squamous cell carcinoma、HNSCC)、肺癌、膵臓癌、甲状腺癌、又はそれらの組み合わせ)である。いくつかの実施形態では、固形腫瘍は、進行性又は転移性EGFR陽性非小細胞肺癌(NSCLC)である。いくつかの実施形態では、固形腫瘍は、任意選択で標準治療のEGFR TKI療法で進行した、進行性又は転移性EGFR陽性非小細胞肺癌(NSCLC)である。いくつかの実施形態では、固形腫瘍は、標準治療のEGFR TKI療法で進行した、進行性又は転移性EGFR陽性非小細胞肺癌(NSCLC)である。
【0118】
固形腫瘍はまた、EGFR阻害物質(例えば、選択的EGFR阻害物質又はEGFR/HER2二重阻害物質)の処置に対して耐性のある任意の腫瘍であり得る。いくつかの実施形態では、固形腫瘍は、EGFR阻害物質(例えば、エルロチニブ、セツキシマブ、パニツムマブ、バンデタニブ、アファチニブ、ゲフィチニブ、オシメルチニブ、ネシツムマブ、ブリガチニブ、ネラチニブ、ダコミチニブ、アミバンタマブ(JNJ-61186372)、モボセルチニブ(TAK-788)、BLU-945、バルリチニブ、タルロキシチニブ、ポジオチニブ、又はラパチニブ)に対して耐性がある。いくつかの実施形態では、固形腫瘍は、EGFR阻害物質に対する内因性及び/又は獲得耐性を特徴とする。いくつかの実施形態では、固形腫瘍は、EGFR阻害物質に対して耐性のあるEGFR陽性固形腫瘍である。いくつかの実施形態では、固形腫瘍は、EGFR阻害物質に対する内因性及び/又は獲得耐性を特徴とするEGFR陽性固形腫瘍である。いくつかの実施形態では、固形腫瘍は、EGFR阻害物質に対するEGFR依存性及び/又はEGFR非依存性耐性を特徴とする。
【0119】
実施形態のいずれか1つでは、標準治療又は治癒的療法は、本明細書に記載されるように、固形腫瘍を処置するために利用することができない。
【0120】
III-4:処置サイクル及び用量調整
式(I)又は(10b)の化合物による処置は、1回以上の処置サイクル(例えば、1~6回の処置、例えば少なくとも1、2、3、4、5、又は6回以上の処置サイクル)を含み得る。いくつかの実施形態では、処置は、1回以上の処置サイクル(例えば、少なくとも1、2、3、4、5、又は6回以上の処置サイクルなどの1~6回の処置)を含む。いくつかの実施形態では、処置は、少なくとも2、3、4、5、又は6回以上の処置サイクルを含む。いくつかの実施形態では、処置は、2~6回の処置サイクルを含む。いくつかの実施形態では、処置は、3~6回の処置サイクルを含む。いくつかの実施形態では、処置は、4~6回の処置サイクルを含む。いくつかの実施形態では、処置は、5~6回の処置サイクルを含む。いくつかの実施形態では、処置は、6回の処置サイクルを含む。
【0121】
前の処置サイクル後、式(I)又は(10b)の化合物の用量を調整することができる(例えば、用量漸増又は漸減)。用量調整は、安全性評価(例えば、用量制限毒性(dose-limiting toxicity、DLT)評価)に少なくとも部分的に基づいてもよい。いくつかの実施形態では、式(I)又は(10b)の化合物の投与は、前の処置サイクル後の用量漸増又は漸減を含み、用量漸増又は漸減は、用量制限毒性(DLT)評価によって決定される。いくつかの実施形態では、式(I)又は(10b)の化合物の投与は、安全性評価が実施例7の許容基準を満たす場合、前の処置サイクル後の用量漸増を含む。いくつかの実施形態では、式(I)又は(10b)の化合物の投与は、安全性評価が実施例7の許容基準を満たす場合、第1の処置サイクル後の第2の処置における用量漸増を含む。いくつかの実施形態では、式(I)又は(10b)の化合物の投与は、安全性評価が実施例7の許容基準を満たす場合、第2の処置サイクル後の第3の処置における用量漸増を含む。いくつかの実施形態では、式(I)又は(10b)の化合物の投与は、安全性評価が実施例7の許容基準を満たす場合、第3の処置サイクル後の第4の処置における用量漸増を含む。いくつかの実施形態では、式(I)又は(10b)の化合物の投与は、安全性評価が実施例7の許容基準を満たす場合、第4の処置サイクル後の第5の処置における用量漸増を含む。いくつかの実施形態では、式(I)又は(10b)の化合物の投与は、安全性評価が実施例7の許容基準を満たす場合、第5の処置サイクル後の第6の処置における用量漸増を含む。いくつかの実施形態では、式(I)又は(10b)の化合物の投与は、実施例7の基準に従って、第2の処置サイクル後の第3の処置における用量漸減を含む。いくつかの実施形態では、式(I)又は(10b)の化合物の投与は、実施例7の基準に従って、第3の処置サイクル後の第4の処置における用量漸減を含む。いくつかの実施形態では、式(I)又は(10b)の化合物の投与は、実施例7の基準に従って、第4の処置サイクル後の第5の処置における用量漸減を含む。いくつかの実施形態では、式(I)又は(10b)の化合物の投与は、実施例7の基準に従って、第5の処置サイクル後の第6の処置における用量漸減を含む。いくつかの実施形態では、式(I)又は(10b)の化合物の投与は、実施例7の基準に従って、処置サイクル内の用量漸減を含む。
【0122】
いくつかの実施形態では、式(I)又は(10b)の化合物の投与は、1~6回の用量漸増、任意選択で1~2回の用量漸減を含む。いくつかの実施形態では、式(I)又は(10b)の化合物の投与は、1~6回の用量漸増を含む。いくつかの実施形態では、式(I)又は(10b)の化合物の投与は、1~5回の用量漸増を含む。いくつかの実施形態では、式(I)又は(10b)の化合物の投与は、2~5回の用量漸増を含む。いくつかの実施形態では、式(I)又は(10b)の化合物の投与は、3~5回の用量漸増を含む。いくつかの実施形態では、式(I)又は(10b)の化合物の投与は、4~5回の用量漸増を含む。いくつかの実施形態では、式(I)又は(10b)の化合物の投与は、5回の用量漸増を含む。いくつかの実施形態では、式(I)又は(10b)の化合物の投与は、1~2回の用量漸減を含む。いくつかの実施形態では、式(I)又は(10b)の化合物の投与は、一(1)回の用量漸減を含む。
【0123】
いくつかの実施形態では、1回以上の処置サイクルの各々は、約28日の期間を有し、式(I)又は(10b)の化合物は、毎日投与される。いくつかの実施形態では、第1の処置サイクルは、約28日の期間を有し、式(I)又は(10b)の化合物は、毎日投与される。いくつかの実施形態では、第2の処置サイクルは、約28日の期間を有し、式(I)又は(10b)の化合物は、毎日投与される。いくつかの実施形態では、第3の処置サイクルは、約28日の期間を有し、式(I)又は(10b)の化合物は、毎日投与される。いくつかの実施形態では、第4の処置サイクルは、約28日の期間を有し、式(I)又は(10b)の化合物は、毎日投与される。いくつかの実施形態では、第5の処置サイクルは、約28日の期間を有し、式(I)又は(10b)の化合物は、毎日投与される。いくつかの実施形態では、第6の処置サイクルは、約28日の期間を有し、式(I)又は(10b)の化合物は、毎日投与される。
【0124】
III-5:治療有効量/投与
いくつかの実施形態では、治療有効量は、無塩及び無水ベースで、約2000mg以下の式(I)又は(10b)の化合物の総1日投与量である。いくつかの実施形態では、治療有効量は、無塩及び無水ベースで、約10mg~約2000mg、約50mg~約2000mg、約80mg~約2000mg、約80mg~約1000mg、約80mg~約700mg、約80mg~約550mg、約80mg~約400mg、約80mg~約250mg、若しくは約80mg~約150mgの式(I)若しくは(10b)の化合物、又はその中の任意の有用な範囲の総1日投与量である。いくつかの実施形態では、治療有効量は、無塩及び無水ベースで、約80mg~約700mg、約80mg~約550mg、約80mg~約450mg、約80mg~約400mg、約80mg~約250mg、若しくは約80mg~約150mgの式(I)若しくは(10b)の化合物、又はその中の任意の有用な範囲の総1日投与量である。
【0125】
いくつかの実施形態では、治療有効量は、無塩及び無水ベースで、約2000mg以下の式(10b)の化合物の総1日投与量である。いくつかの実施形態では、治療有効量は、無塩及び無水ベースで、約10mg~約2000mg、約50mg~約2000mg、約80mg~約2000mg、約80mg~約1000mg、約80mg~約700mg、約80mg~約550mg、約80mg~約400mg、約80mg~約250mg、若しくは約80mg~約150mgの式(10b)の化合物、又はその中の任意の有用な範囲の総1日投与量である。いくつかの実施形態では、治療有効量は、無塩及び無水ベースで、約80mg~約700mg、約80mg~約550mg、約80mg~約450mg、約80mg~約400mg、約80mg~約250mg、若しくは約80mg~約150mgの式(10b)の化合物、又はその中の任意の有用な範囲の総1日投与量である。いくつかの実施形態では、治療有効量は、無塩及び無水ベースで、約80mg、約150mg、約250mg、約400mg、約450mg、約550mg、又は約700mgの式(10b)の化合物の総1日投与量である。いくつかの実施形態では、治療有効量は、無塩及び無水ベースで、約80mgの式(10b)の化合物の総1日投与量である。いくつかの実施形態では、治療有効量は、無塩及び無水ベースで、約150mgの式(10b)の化合物の総1日投与量である。いくつかの実施形態では、治療有効量は、無塩及び無水ベースで、約250mgの式(10b)の化合物の総1日投与量である。いくつかの実施形態では、治療有効量は、無塩及び無水ベースで、約400mgの式(10b)の化合物の総1日投与量である。いくつかの実施形態では、治療有効量は、無塩及び無水ベースで、約450mgの式(10b)の化合物の総1日投与量である。いくつかの実施形態では、治療有効量は、無塩及び無水ベースで、約550mgの式(10b)の化合物の総1日投与量である。いくつかの実施形態では、治療有効量は、無塩及び無水ベースで、約700mgの式(10b)の化合物の総1日投与量である。
【0126】
一般に、式(I)又は(10b)の化合物は、経口投与され得る。いくつかの実施形態では、式(I)又は(10b)の化合物が経口投与される。いくつかの実施形態では、式(I)の化合物が経口投与される。いくつかの実施形態では、式(10b)の化合物が経口投与される。いくつかの実施形態では、錠剤製剤の式(I)の化合物が経口投与される。いくつかの実施形態では、錠剤製剤の式(10b)の化合物が経口投与される。
【0127】
一般に、式(I)又は(10b)の化合物は、1日1回又は複数回(例えば、2、3、又は4回以上)投与され得る。いくつかの実施形態では、式(I)又は(10b)の化合物は、1日1回、2回、3回、又は4回投与される。いくつかの実施形態では、式(I)又は(10b)の化合物は、1日1回投与される。いくつかの実施形態では、式(I)又は(10b)の化合物は、1日2回投与される。いくつかの実施形態では、式(10b)の化合物は、1日1回、2回、3回、又は4回投与される。いくつかの実施形態では、式(10b)の化合物は、1日1回投与される。いくつかの実施形態では、式(10b)の化合物は、1日2回投与される。
【0128】
式(I)又は(10b)の化合物は、式(I)又は(10b)の化合物が、無塩及び無水ベースで、少なくとも約1mg、5mg、10mg、20mg、30mg、50mg、90mg、100mg、120mg、180mg、200mg、300mg、400mg、又は500mgの量で存在する、1種以上の用量強度(dosage strength)の経口剤形であり得る。いくつかの実施形態では、経口剤形は、1種以上の用量強度の錠剤製剤である。錠剤製剤のいくつかの実施形態では、式(I)又は(10b)の化合物は、各錠剤中に、無塩及び無水ベースで、1~1000mg、1~750mg、1~500mg、1~250mg、30~1000mg、30~750mg、30~500mg、30~200mg、30~180mg、30~120mg、30~90mg、50~1000mg、50~750mg、50~500mg、50~250mg、100~1000mg、100~750mg、100~500mg、100~250mg、200~1000mg、200~750mg、200~500mg、300~1000mg、300~750mg、300~500mg、400~1000mg、400~750mg、500~1000mg、500~750mg、600~1000mg、5~250mg、又は5~100mgの量で存在する。錠剤製剤のいくつかの実施形態では、式(I)又は(10b)の化合物は、各錠剤中に、無塩及び無水ベースで、約5mg、10mg、30mg、50mg、100mg、150mg、200mg、250mg、300mg、400mg、500mg、600mg、700mg、800mg、900mg、又は1000mgの量で存在する。錠剤製剤のいくつかの実施形態では、式(I)又は(10b)の化合物は、各錠剤中に、無塩及び無水ベースで、約30mg、50mg、又は100mgの量で存在する。
【0129】
式(10b)の化合物は、式(10b)の化合物が、無塩及び無水ベースで、少なくとも約1mg、5mg、10mg、20mg、30mg、50mg、90mg、100mg、120mg、180mg、200mg、300mg、400mg、又は500mgの量で存在する、1種以上の用量強度の経口剤形であり得る。いくつかの実施形態では、経口剤形は、1種以上の用量強度の錠剤製剤である。錠剤製剤のいくつかの実施形態では、式(10b)の化合物は、各錠剤中に、無塩及び無水ベースで、1~1000mg、1~750mg、1~500mg、1~250mg、30~1000mg、30~750mg、30~500mg、30~200mg、30~180mg、30~120mg、30~90mg、50~1000mg、50~750mg、50~500mg、50~250mg、100~1000mg、100~750mg、100~500mg、100~250mg、200~1000mg、200~750mg、200~500mg、300~1000mg、300~750mg、300~500mg、400~1000mg、400~750mg、500~1000mg、500~750mg、600~1000mg、5~250mg、又は5~100mgの量で存在する。錠剤製剤のいくつかの実施形態では、式(10b)の化合物は、各錠剤中に、無塩及び無水ベースで、約5mg、10mg、30mg、50mg、100mg、150mg、200mg、250mg、300mg、400mg、500mg、600mg、700mg、800mg、900mg、又は1000mgの量で存在する。錠剤製剤のいくつかの実施形態では、式(10b)の化合物は、各錠剤中に、無塩及び無水ベースで、約30mg、50mg、又は100mgの量で存在する。錠剤製剤のいくつかの実施形態では、式(10b)の化合物は、各錠剤中に、無塩及び無水ベースで、約30mgの量で存在する。錠剤製剤のいくつかの実施形態では、式(10b)の化合物は、各錠剤中に、無塩及び無水ベースで、約50mgの量で存在する。錠剤製剤のいくつかの実施形態では、式(10b)の化合物は、各錠剤中に、無塩及び無水ベースで、約100mgの量で存在する。
【0130】
いくつかの実施形態では、式(10b)の化合物は、1日1回投与されて、約2000mg以下の式(10b)の化合物の総1日投与量を提供する。いくつかの実施形態では、式(10b)の化合物は、1日1回投与されて、無塩及び無水ベースで、約80mg~約700mg、約80mg~約550mg、約80mg~約450mg、約80mg~約400mg、約80mg~約250mg、又は約80mg~約150mgの式(10b)の化合物の総1日投与量を提供する。いくつかの実施形態では、式(10b)の化合物は、1日1回投与されて、無塩及び無水ベースで、約80mg、約150mg、約250mg、約400mg、約450mg、約550mg、又は約700mgの式(10b)の化合物の総1日投与量を提供する。いくつかの実施形態では、式(10b)の化合物は、1日1回投与されて、無塩及び無水ベースで、約450mgの式(10b)の化合物の総1日投与量を提供する。
【0131】
いくつかの実施形態では、式(10b)の化合物は、本明細書に記載されるように、1回以上の処置サイクルの各々の間に1日1回投与される。いくつかの実施形態では、式(10b)の化合物は、本明細書に記載されるように、1回以上の処置サイクルの各々の間に1日1回投与されて、無塩及び無水ベースで、約450mgの式(10b)の化合物の総1日投与量を提供する。
【0132】
一般に、式(I)又は(10b)の化合物は、食物を摂取しない対象に投与されることが推奨される(例えば、用量が摂取された後の2時間の絶食が続く、一晩の絶食(最低8時間)後)。対象は、投与の前後一(1)時間を除いて水を飲むことができ、投与時に水(例えば240mL)が与えられる。いくつかの実施形態では、式(I)又は(10b)の化合物は、投与前の少なくとも約8時間及び投与後の少なくとも約2時間に食物を摂取しない対象に投与される。いくつかの実施形態では、式(10b)の化合物は、投与前の少なくとも約8時間及び投与後の少なくとも約2時間に食物を摂取しない対象に投与される。いくつかの実施形態では、式(10b)の化合物は、食物を摂取している、及び/又は絶食していない対象に投与される。
【0133】
III-6:有効性
第1/1B相ファースト・イン・ヒューマン研究は、実施例7に要約されるように、対象における固形腫瘍を低減又は安定化させるための式(10b)の化合物の安全性、忍容性、及び有効性を評価することができる。
【0134】
治療有効量の式(I)又は(10b)の化合物の投与は、対象における固形腫瘍を低減させ得るか又は実質的に排除し得る。いくつかの実施形態では、治療有効量の式(I)又は(10b)は、固形腫瘍を実質的に排除する。いくつかの実施形態では、治療有効量の式(I)又は(10b)は、固形腫瘍の体積を少なくとも約10%、約20%、約30%、約40%、約50%、約60%、約70%、約80%、又は約90%以上低減させる。いくつかの実施形態では、治療有効量の式(I)又は(10b)は、固形腫瘍の体積を、約10%~約90%、約10%~約80%、約10%~約70%、約10%~約60%、約10%~約50%、約10%~約40%、約10%~約30%、約10%~約20%、約20%~約90%、約20%~約80%、約20%~約70%、約20%~約60%、約20%~約50%、約20%~約40%、約20%~約30%、約30%~約90%、約30%~約80%、約30%~約70%、約30%~約60%、約30%~約50%、約30%~約40%、約40%~約90%、約40%~約80%、約40%~約70%、約40%~約60%、約40%~約50%、約50%~約90%、約50%~約80%、約50%~約70%、約50%~約60%、約60%~約90%、約60%~約80%、約60%~約70%、約70%~約90%、約70%~約80%、約80%~約90%、又はその中の任意の範囲のサイズにおいて低減させる。いくつかの実施形態では、治療有効量の式(I)又は(10b)は、固形腫瘍の体積を約10%、約20%、約30%、約40%、約50%、約60%、約70%、約80%、又は約90%低減させる。いくつかの実施形態では、治療有効量の式(10b)は、固形腫瘍の体積を約10%、約20%、約30%、約40%、約50%、約60%、約70%、約80%、又は約90%低減させ、ここで、式(10b)の化合物は、1日1回投与されて、無塩及び無水ベースで、約450mgの式(10b)の化合物の総1日投与量を提供する。
【0135】
治療有効量の式(I)又は(10b)の化合物の投与は、対象における固形腫瘍を安定化させ得る。いくつかの実施形態では、治療有効量の式(I)又は(10b)は、固形腫瘍を安定化させる。いくつかの実施形態では、治療有効量の式(10b)は、固形腫瘍を安定化させ、ここで、式(10b)の化合物は、1日1回投与されて、無塩及び無水ベースで、約450mgの式(10b)の化合物の総1日投与量を提供する。
【0136】
治療有効量の式(I)又は(10b)の化合物の投与は、ある期間(例えば、1~12カ月)にわたって対象における固形腫瘍の低減又は安定化を維持し得る。いくつかの実施形態では、固形腫瘍は、治療有効量の式(I)又は(10b)の化合物を用いて、少なくとも約1カ月の期間にわたって低減又は安定化される。いくつかの実施形態では、固形腫瘍は、治療有効量の式(I)又は(10b)の化合物を用いて、少なくとも約2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、又は12カ月の期間にわたって低減又は安定化される。いくつかの実施形態では、固形腫瘍は、約1~約12カ月、約1~約6カ月、約1~約3カ月、又は約1~約2カ月の期間にわたって低減又は安定化される。
【0137】
いくつかの実施形態では、対象は、血漿薬物動態及び/又は薬力学的プロファイルを含む全体的な評価を提供するために、1つ以上の試験(例えば、表3、表4、及び表5による試験)によって更に評価される。そのような試験の例は、例えば、実施例7の表3、表4、及び表5に記載される。
【0138】
いくつかの実施形態では、対象は、1つ以上のバイオマーカーと抗腫瘍応答との相関を決定するために、1つ以上のバイオマーカーについて更に評価される。そのような評価の例は、実施例7の表3、表4、及び表5に記載される。
【0139】
III-7:経口剤形
式(I)又は(10b)の化合物を含む経口剤形は、1種以上の薬学的に許容される担体及び/又は賦形剤を含む任意の経口剤形であり得る。経口調製物としては、患者による経口摂取に好適な錠剤、丸剤、散剤、糖衣錠、カプセル剤、液剤、トローチ剤、カシェ剤、ゲル剤、シロップ剤、スラリー剤、懸濁剤などが挙げられる。
【0140】
式(I)又は(10b)の化合物を含む経口剤形の調製に関して、薬学的に許容される担体は、固体又は液体のいずれかであり得る。固体形態の調製物としては、散剤、錠剤、丸剤、カプセル剤、カシェ剤、坐剤、及び分散性顆粒剤が挙げられる。固体担体は、希釈剤、香味剤、結合剤、保存剤、錠剤崩壊剤、又はカプセル化材料としても作用し得る1種以上の物質であってもよい。製剤化及び投与のための技術の詳細は、科学文献及び特許文献に十分に記載されており、例えば、Remington’s Pharmaceutical Sciences,Maack Publishing Co,Easton PA(「Remington’s」)の最新版を参照されたい。「」
【0141】
散剤では、担体は細かく分割された固体であり、これは細かく分割された有効構成成分との混合物である。錠剤では、有効構成成分は、好適な割合で必要な結合特性を有する担体と混合され、所望の形状及びサイズに圧縮される。
【0142】
散剤、カプセル剤、及び錠剤は、好ましくは5%又は10%~70%の活性化合物を含有する。好適な担体は、炭酸マグネシウム、ステアリン酸マグネシウム、タルク、糖、ラクトース、ペクチン、デキストリン、デンプン、ゼラチン、トラガカント、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、低融点ワックス、ココアバターなどである。「調製物」という用語は、活性化合物と、カプセル剤を提供する担体としてのカプセル化材料との製剤を含むことが意図され、ここで、他の賦形剤を伴うか又は伴わない有効構成成分は、担体によって取り囲まれ、したがって担体は有効構成成分と会合している。同様に、カシェ剤及びトローチ剤が含まれる。錠剤、散剤、カプセル剤、丸剤、カシェ剤、及びトローチ剤は、経口投与に好適な固体剤形として使用することができる。
【0143】
好適な固体賦形剤としては、これらに限定されないが、炭酸マグネシウム;ステアリン酸マグネシウム;タルク;ペクチン;デキストリン;デンプン;トラガカント;低融点ワックス;ココアバター;炭水化物;ラクトース、スクロース、マンニトール、又はソルビトールを含むがこれらに限定されない糖類、トウモロコシ、コムギ、イネ、ジャガイモ、又は他の植物由来のデンプン;メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、又はカルボキシメチルセルロースナトリウムなどのセルロース;及びアラビア、トラガントなどのガム;並びにゼラチン及びコラーゲンを含むがこれらに限定されないタンパク質が挙げられる。所望であれば、崩壊剤又は可溶化剤、例えば、架橋ポリビニルピロリドン、寒天、アルギン酸又はその塩、例えば、アルギン酸ナトリウムが添加されてもよい。
【0144】
糖衣錠コアには、アラビアガム、タルク、ポリビニルピロリドン、カーボポールゲル、ポリエチレングリコール、及び/又は二酸化チタン、ラッカー溶液、並びに好適な有機溶媒又は溶媒混合物も含有し得る濃縮糖溶液などの好適なコーティングが提供される。製品識別のため、又は活性化合物の量(例えば、投与量)を特徴付けるために、染料又は顔料が錠剤又は糖衣錠コーティングに添加されてもよい。この剤形の医薬調製物はまた、例えば、ゼラチンで作られた押し込み型カプセル、並びにゼラチン及びグリセロール又はソルビトールなどのコーティングで作られた密封軟カプセルを使用して経口で使用され得る。押し込み型カプセルは、ラクトース又はデンプンなどの充填剤又は結合剤、タルク又はステアリン酸マグネシウムなどの滑沢剤、及び任意選択で安定剤と混合された式(I)又は(10b)の化合物を含有し得る。軟カプセルでは、式(I)又は(10b)の化合物は、安定剤と共に又は安定剤を伴わずに、好適な液体、例えば、脂肪油、流動パラフィン、又は液体ポリエチレングリコールに溶解又は懸濁され得る。
【0145】
坐剤の調製に関して、脂肪酸グリセリド又はココアバターの混合物などの低融点ワックスは最初に融解され、式(I)又は(10b)の化合物は、例えば撹拌によって、その中に均一に分散される。次いで、溶融した均一混合物を都合のよいサイズの型に注ぎ、放冷し、それによって固化させる。
【0146】
液体形態の調製物としては、溶液、懸濁液、及びエマルジョン、例えば、水又は水/プロピレングリコール溶液が挙げられる。
【0147】
経口使用に好適な水溶液は、式(I)又は(10b)の化合物を水に溶解し、必要に応じて好適な着色料、香味料、安定剤、及び増粘剤を添加することによって調製され得る。経口使用に好適な水性懸濁液は、細かく分割された有効構成成分を、天然又は合成のガム、樹脂、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、アルギン酸ナトリウム、ポリビニルピロリドン、トラガカントガム及びアカシアガムなどの粘性材料、並びに天然に存在するホスファチド(例えば、レシチン)、アルキレンオキシドと脂肪酸との縮合生成物(例えば、ステアリン酸ポリオキシエチレン)、エチレンオキシドと長鎖脂肪族アルコールとの縮合生成物(例えば、ヘプタデカエチレンオキシセタノール)、エチレンオキシドと脂肪酸及びヘキシトールに由来する部分エステルとの縮合生成物(例えば、モノオレイン酸ポリオキシエチレンソルビトール)、又はエチレンオキシドと脂肪酸及び無水ヘキシトールに由来する部分エステルとの縮合生成物(例えば、モノオレイン酸ポリオキシエチレンソルビタン)などの分散剤又は湿潤剤と共に水中に分散させることによって作製することができる。水性懸濁液はまた、エチル又はn-プロピルp-ヒドロキシベンゾエートなどの1種以上の保存剤、1種以上の着色剤、1種以上の香味剤、及びスクロース、アスパルテーム、又はサッカリンなどの1種以上の甘味剤を含有し得る。製剤は、容積モル浸透圧濃度について調整され得る。
【0148】
使用直前に経口投与のための液体形態の調製物に変換されることが意図される固体形態の調製物も含まれる。そのような液体形態としては、溶液、懸濁液、及びエマルジョンが挙げられる。これらの調製物は、有効構成成分に加えて、着色料、香味料、安定剤、緩衝剤、人工及び天然甘味料、分散助剤、増粘料、可溶化剤などを含有してもよい。
【0149】
油性懸濁液は、式(I)又は(10b)の化合物を落花生油、オリーブ油、ゴマ油、若しくはヤシ油などの植物油、又は液体パラフィンなどの鉱油、あるいはこれらの混合物に懸濁することによって製剤化され得る。油性懸濁液は、蜜蝋、固形パラフィン、又はセチルアルコールなどの増粘剤を含有し得る。甘味剤、例えば、グリセロール、ソルビトール、又はスクロースが、口当たりのよい経口調製物を提供するために添加されてもよい。これらの製剤は、アスコルビン酸などの抗酸化剤の添加によって保存することができる。注射用油性ビヒクルの一例として、Minto,J.Pharmacol.Exp.Ther.281:93-102,1997を参照されたい。式(I)又は(10b)の化合物を含む医薬製剤はまた、水中油型エマルジョンの形態であり得る。油相は、上記の植物油若しくは鉱油、又はこれらの混合物であり得る。好適な乳化剤としては、アカシアガム及びトラガカントガムなどの天然に存在するガム、大豆レシチンなどの天然に存在するホスファチド、モノオレイン酸ソルビタンなどの脂肪酸及び無水ヘキシトールに由来するエステル又は部分エステル、並びにモノオレイン酸ポリオキシエチレンソルビタンなどのこれらの部分エステルとエチレンオキシドとの縮合生成物が挙げられる。エマルジョンはまた、シロップ剤及びエリキシル剤の製剤と同様に、甘味剤及び香味剤も含有し得る。そのような製剤はまた、粘滑剤、保存剤、又は着色剤も含有し得る。
【0150】
III-8:実施形態
一態様では、本開示は、腫瘍を処置する方法であって、それを必要とする対象に、式(10b)によって表される治療有効量の化合物:
【0151】
【0152】
又はその互変異性体を投与することを含み、対象が、(i)MAPK経路における1つ以上の変異(ただし、MAPK経路における1つ以上の変異は、V600X変異を含むBRAF変異以外である)、及び/又は(ii)PTPN11における1つ以上の変異を有する、方法を提供する。
【0153】
いくつかの実施形態では、本開示は、進行性又は転移性KRAS G12C陽性固形腫瘍を処置する方法であって、それを必要とする対象に、式(10b)によって表される治療有効量の化合物:
【0154】
【0155】
又はその互変異性体を投与することを含み、対象が、(i)MAPK経路における1つ以上の変異(ただし、MAPK経路における1つ以上の変異は、V600X変異を含むBRAF変異以外である)、及び/又は(ii)PTPN11における1つ以上の変異を有する、方法を提供する。
【0156】
いくつかの実施形態では、本開示は、進行性又は転移性非小細胞肺癌(NSCLC)を処置する方法であって、それを必要とする対象に、式(10b)によって表される治療有効量の化合物:
【0157】
【0158】
又はその互変異性体を投与することを含み、対象が、(i)MAPK経路における1つ以上の変異(ただし、MAPK経路における1つ以上の変異は、V600X変異を含むBRAF変異以外である)、及び/又は(ii)PTPN11における1つ以上の変異を有する、方法を提供する。
【0159】
いくつかの実施形態では、本開示は、進行性又は転移性KRAS G12C陽性非小細胞肺癌(NSCLC)を処置する方法であって、それを必要とする対象に、式(10b)によって表される治療有効量の化合物:
【0160】
【0161】
又はその互変異性体を投与することを含み、対象が、(i)MAPK経路における1つ以上の変異(ただし、MAPK経路における1つ以上の変異は、V600X変異を含むBRAF変異以外である)、及び/又は(ii)PTPN11における1つ以上の変異を有する、方法を提供する。
【0162】
いくつかの実施形態では、本開示は、進行性又は転移性KRAS G12C陽性固形腫瘍(ただし、固形腫瘍は、非小細胞肺癌(NSCLC)以外である)を処置する方法であって、それを必要とする対象に、式(10b)によって表される治療有効量の化合物:
【0163】
【0164】
又はその互変異性体を投与することを含み、対象が、(i)MAPK経路における1つ以上の変異(ただし、MAPK経路における1つ以上の変異は、V600X変異を含むBRAF変異以外である)、及び/又は(ii)PTPN11における1つ以上の変異を有する、方法を提供する。
【0165】
いくつかの実施形態では、本開示は、進行性又は転移性NF1 LOF固形腫瘍を処置する方法であって、それを必要とする対象に、式(10b)によって表される治療有効量の化合物:
【0166】
【0167】
又はその互変異性体を投与することを含み、対象が、(i)MAPK経路における1つ以上の変異(ただし、MAPK経路における1つ以上の変異は、V600X変異を含むBRAF変異以外である)、及び/又は(ii)PTPN11における1つ以上の変異を有する、方法を提供する。
【0168】
いくつかの実施形態では、本開示は、進行性又は転移性BRAFクラスII/II変異固形腫瘍を処置する方法であって、それを必要とする対象に、式(10b)によって表される治療有効量の化合物:
【0169】
【0170】
又はその互変異性体を投与することを含み、対象が、(i)MAPK経路における1つ以上の変異(ただし、MAPK経路における1つ以上の変異は、V600X変異を含むBRAF変異以外である)、及び/又は(ii)PTPN11における1つ以上の変異を有する、方法を提供する。
【0171】
いくつかの実施形態では、本開示は、進行性又は転移性BRAFクラスII/II変異固形腫瘍を処置する方法であって、それを必要とする対象に、式(10b)によって表される治療有効量の化合物:
【0172】
【0173】
又はその互変異性体を投与することを含み、対象が、(i)MAPK経路における1つ以上の変異(ただし、MAPK経路における1つ以上の変異は、V600X変異を含むBRAF変異以外である)、及び/又は(ii)PTPN11における1つ以上の変異を有する、方法を提供する。
【0174】
いくつかの実施形態では、本開示は、脊索腫を処置する方法であって、それを必要とする対象に、式(10b)によって表される治療有効量の化合物:
【0175】
【0176】
又はその互変異性体を投与することを含み、対象が、(i)MAPK経路における1つ以上の変異(ただし、MAPK経路における1つ以上の変異は、V600X変異を含むBRAF変異以外である)、及び/又は(ii)PTPN11における1つ以上の変異を有する、方法を提供する。
【0177】
式(10b)の化合物は、セクションIII-1:式(I)の化合物に従って記載される。いくつかの実施形態では、式(10b)の化合物は、セクションIII-1に記載される実施形態のいずれか1つである。
【0178】
対象は、セクションIII-2:対象に従って記載される。いくつかの実施形態では、対象は、セクションIII-3:対象に記載される実施形態のいずれか1つである。いくつかの実施形態では、対象は、KRAS G12C変異を有する。
【0179】
固形腫瘍は、セクションIII-3:癌/固形腫瘍に従って記載される。いくつかの実施形態では、固形腫瘍は、セクションIII-2:癌/固形腫瘍に記載される実施形態のいずれか1つである。いくつかの実施形態では、固形腫瘍は、進行性又は転移性KRAS G12C陽性非小細胞肺癌(NSCLC)である。いくつかの実施形態では、固形腫瘍は、進行性又は転移性KRAS G12C陽性固形腫瘍であり、ただし、固形腫瘍は、非小細胞肺癌(NSCLC)以外である。いくつかの実施形態では、固形腫瘍は、進行性又は転移性NF1 LOF固形腫瘍である。いくつかの実施形態では、固形腫瘍は、任意選択で標準治療のEGFRチロシンキナーゼ阻害物質(TKI)療法で進行した、進行性又は転移性EGFR陽性非小細胞肺癌(NSCLC)である。いくつかの実施形態では、固形腫瘍は、進行性又は転移性BRAFクラスII/II変異固形腫瘍である。いくつかの実施形態では、癌又は固形腫瘍は、脊索腫又は脊索の肉腫である。
【0180】
処置サイクル及び用量調整は、セクションIII-4:処置サイクル及び用量調整に従って記載される。いくつかの実施形態では、処置サイクル及び用量調整は、セクションIII-4:処置サイクル及び用量調整に記載される実施形態のいずれか1つである。
【0181】
式(10b)の治療有効量及び/又は投与は、セクションIII-5:治療有効量/投与に従って記載される。いくつかの実施形態では、式(10b)の治療有効量及び/又は投与は、セクションIII-5:治療有効量/投与に記載される実施形態のいずれか1つである。いくつかの実施形態では、治療有効量は、無塩及び無水ベースで、約450mgの式(10b)の化合物の総1日投与量である。いくつかの実施形態では、式(10b)の化合物は、1日1回投与されて、無塩及び無水ベースで、約450mgの式(10b)の化合物の総1日投与量を提供する。いくつかの実施形態では、式(10b)の化合物は、1日1回経口投与される。いくつかの実施形態では、約450mgの総1日投与量の式(10b)の化合物は、1日1回経口投与される。
【0182】
有効性は、セクションIII-6:有効性に従って記載される。いくつかの実施形態では、治療有効量及び/又は投与は、セクションIII-6:有効性に記載される実施形態のいずれか1つである。いくつかの実施形態では、治療有効量の式(10b)は、固形腫瘍の体積を約10%、約20%、約30%、約40%、約50%、約60%、約70%、約80%、又は約90%低減させ、ここで、式(10b)の化合物は、1日1回投与されて、無塩及び無水ベースで、約450mgの式(10b)の化合物の総1日投与量を提供する。いくつかの実施形態では、治療有効量の式(10b)は、固形腫瘍を安定化させ、ここで、式(10b)の化合物は、1日1回投与されて、無塩及び無水ベースで、約450mgの式(10b)の化合物の総1日投与量を提供する。
【0183】
IV.キット
別の態様では、本開示は、対象における癌又は固形腫瘍を処置するためのキットであって、式(I)によって表される治療有効量の化合物を、有効な投与のための説明書と一緒に含み、式(I)の化合物及び対象がそれぞれ、本明細書に定義及び記載されている通りである、キットを提供する。
【0184】
対象は、セクションIII-2:対象に従って記載される。いくつかの実施形態では、対象は、セクションIII-2:対象に記載される実施形態のいずれかである。
【0185】
癌及び/又は固形腫瘍は、セクションIII-3:癌/固形腫瘍に従って記載される。いくつかの実施形態では、癌及び/又は固形腫瘍は、セクションIII-3:癌/固形腫瘍に記載される実施形態のいずれかである。
【0186】
式(I)の化合物は、セクションIII-1:式(I)の化合物に従って記載される。いくつかの実施形態では、式(I)の化合物は、セクションIII-1:式(I)の化合物に記載される実施形態のいずれかである。いくつかの実施形態では、式(I)の化合物は、式(10b)の化合物である。
【0187】
いくつかの実施形態では、キットは、式(I)又は(10b)の化合物の投与のための説明書を含む。いくつかの実施形態では、キットは、式(10b)の化合物の投与のための説明書を含む。いくつかの実施形態では、そのような説明書には、安全規定並びに式(I)又は(10b)の化合物の投与のタイミング及び量に関する指示が含まれる。いくつかの実施形態では、そのような説明書には、安全規定並びに式(10b)の化合物の投与のタイミング及び量に関する指示が含まれる。
【0188】
【0189】
【0190】
VI.実施例
実施例1:組換えヒトSHP2タンパク質のインビトロ酵素活性
実験手順
タンパク質精製:完全長ヒトSHP2(アミノ酸1~597)又はヒトSHP2のホスファターゼドメイン(アミノ酸Ala237~Ile529)の組換えDNAを、N末端6×Hisタグの後にTEVプロテアーゼ部位を含有するように改変したpET30ベクター(Sigma#69909-3)にクローニングした。発現ベクターを大腸菌BL21(DE3)(NEB#C2527H)に形質転換した。タンパク質を以下の手順によって発現及び精製した。50mLの一晩培養物からの細菌細胞を、6Lのテリフィックブロス培地に接種した。大腸菌培養物が0.7のOD600に達したら、温度を18℃に下げ、組換えタンパク質の発現を0.5mM IPTGの添加によって誘導した。一晩インキュベートした後、F9-6×1000 LEXローターを備えたSorvall Lynx 6000(Thermo Fisher)遠心分離機において20,000rpmで45分間遠心分離することによって細胞を回収した。細胞ペレットを精製まで-80℃で保存した。凍結細胞ペレットを、Roche completeプロテアーゼ阻害剤(Sigma#5056489001)、DNase(20μg/mL、Gol Biotechnology#D-300-5)、及びリゾチーム(0.5mg/mL、Gold Biotechnology#L-040-25)を含有するpH7.5の50mM HEPES、500mM NaCl、5mMイミダゾール、5%(v/v)グリセロール、及び0.5mM TCEPに再懸濁した。Branson digital sonifierを使用して60%振幅で5分間超音波処理することによって、細胞を氷上で溶解した。F2-12×50 LEXローター及びSorvall Lynx 6000(Thermo Fisher)遠心分離機を使用して、デブリを20,000rpm、4℃で1時間ペレット化した。上清を、2mLのNi-NTA-アガロース樹脂(Qiagen#30230)を含有するカラムに充填した。カラムを100mの50mM HEPES、500mM NaCl、5mMイミダゾール、5%(v/v)グリセロール、0.5mM TCEP、pH7.5緩衝液で洗浄し、続いて100mLの50mM HEPES、500mM NaCl、30mMイミダゾール、5%(v/v)グリセロール、0.5mM TCEP、pH7.5緩衝液を使用する第2の洗浄工程を行った。SHP2タンパク質を、50mM HEPES、500mM NaCl、250mMイミダゾール、5%(v/v)グリセロール、0.5mM TCEP、pH7.5を用いて溶出した。SHP2タンパク質を含有する画分をプールし、10mgのSHP2タンパク質毎に1mgのTEVでTEVプロテアーゼを添加した。その後、タンパク質溶液を、50mM HEPES、500mM NaCl、5mMイミダゾール、5%(v/v)グリセロール、0.5mM TCEP、pH7.5に対して4℃で一晩透析して、イミダゾールを除去し、Snakeskin透析チューブ(Thermo Fisher#68100)を使用して、TEVプロテアーゼに6×Hisタグを切断させた。タンパク質溶液をNi-NTAカラムに通し、6×Hisタグが切断されたSHP2タンパク質を含有するフロースルーを回収した。このタンパク質溶液を、120mL S75サイズ排除カラム(G.E.life sciences#17104401)を使用して、20mM Tris、100mM NaCl及び2mM TCEP、pH7.5中で更に精製した。Amicon Ultra遠心濃縮器(Sigma#UFC901096)を使用してタンパク質を10mg/mLに濃縮し、急速凍結した。タンパク質アリコートを-80℃で必要になるまで保存した。最終生成物は、SDS-PAGEで測定して98%純粋であった。SHP2タンパク質の濃度を、72770M-1cm-1のSHP2タンパク質について計算されたモル消散係数を使用して、280nm波長での吸光度から決定した。
【0191】
SHP2酵素アッセイ:完全長ヒトSHP2野生型酵素又はSHP2ホスファターゼドメインのホスファターゼ活性を、蛍光性6,8-ジフルオロ-4-メチルウンベリフェリルホスフェート(6,8-difluoro-4-methylumbelliferyl phosphate、DiFMUP;Molecular Probes#D6567)を基質として使用して測定した。化合物(10b)のストック溶液を調製し、続いてDMSO(Sigma#D2650)に1:3連続希釈した。化合物をアッセイ緩衝液(62.5mM HEPES、125mM NaCl、1mM EDTA、1.25mM TECP、0.1%BSA)に更に希釈し、アリコートを384ウェル黒色プレート(Greiner#784900)に分注して、最終DMSO濃度を0.5%未満とした。精製完全長SHP2タンパク(250pM)を、1μMビスチロシルリン酸化ペプチド(配列:H-LN(pY)IDLDLV(dPEG8)LST(pY)ASINFQK-NH2)を含有するアッセイ緩衝液中漸増濃度の化合物(10b)(10点希釈、最大50,000nMの最終濃度)と共に、又はそれを伴わずに、室温で30分間インキュベートした。DiFMUP(50μM)を室温で添加して、アッセイ緩衝液中20μLの最終反応容量にすることによって、反応を開始した。1時間後、Envisionプレートリーダー(Perkin Elmer)を使用してDiFMUP蛍光シグナルを測定した(Ex:340/Em:460)。SHP2ホスファターゼドメインを用いたアッセイを、1μMビスチロシルリン酸化ペプチドをアッセイに用いなかったこと以外は同様にして、200pM SHP2237-529を用いて行った。
【0192】
データ分析:用量反応曲線を、IC50回帰曲線フィッティング(GeneData Screenerソフトウェア)を使用して分析した。曲線を、阻害物質を含まない高対照及び基質を含まない低対照に対して正規化した。最大半量阻害濃度(IC50)を決定し、アッセイ結果をChemCart(DeltaSoft)ソフトウェアにアップロードした。
【0193】
結果
化合物(10b)はインビトロにおいて精製ヒト完全長SHP2タンパク質の酵素活性を抑制する
完全長SHP2野生型酵素は、自己阻害立体配座をとる。ホスファターゼ活性及びその後の化合物媒介阻害を評価するために、SHP2のSH2ドメインに結合し、ホスファターゼ活性のアロステリック活性化を誘導するビスチロシルリン酸化ペプチドの存在下で酵素アッセイを行った。このアッセイ条件下で、化合物(10b)は、用量依存的にSHP2活性を強力に阻害し、13.2±10.6nMのIC50を示した。
【0194】
図1Aは、インビトロ酵素アッセイにおける、1μMビスチロシルリン酸化ペプチドの存在下でのSHP2活性の化合物(10b)媒介阻害の代表的な用量反応曲線を示す。用量反応曲線は、1つの代表的な実験における2回の反復からの平均±SEMを表す。化合物(10b)は、34回の独立した試験機会から計算された13.2nM±10.6nM(平均±SD)のIC
50を示した。
図1Aに示されるように、化合物(10b)は、インビトロ酵素アッセイにおいて、組換え完全長SHP2野生型酵素の活性を強力に阻害する。
【0195】
化合物(10b)はSHP2ホスファターゼドメインのインビトロ酵素活性を抑制しない
図1Bは、インビトロ酵素アッセイにおける、ヒトSHP2のホスファターゼドメインのホスファターゼ活性に対する化合物(10b)の用量反応曲線を示す。用量反応曲線は、1つの実験における6回の反復からの平均±SEMを表す。50μMまでの化合物(10b)は、SHP2ホスファターゼドメインの酵素活性を抑制しなかった。
図1Bに示されるように、化合物(10b)は、インビトロ酵素アッセイにおいて、ホスファターゼドメインを含有する切断形態のSHP2の活性を阻害しない。
【0196】
結論
化合物(10b)は、精製完全長ヒトSHP2野生型酵素の強力な阻害物質であり、13.2±10.6nMのIC50を示す。それは、ホスファターゼドメインを含有する切断型SHP2の酵素活性を抑制せず、ホスファターゼドメインの外側の領域が化合物(10b)結合に必要であることを示唆している。
【0197】
実施例2:化合物(10b)の選択性
化合物(10b)(1μM)の活性を、419のヒトキナーゼのパネル(疾患関連変異バリアントのセットを含む)に対して評価した。活性部位特異的競合結合アッセイを使用してキナーゼとの化合物相互作用を測定するDiscoverX製のKINOMEscan(商標)プラットフォームを使用してアッセイを行った。対照値の35%未満のキナーゼへのリガンド結合の置換を有意であるとみなす。試験した419のキナーゼのうち、以下の4つのキナーゼのみがこのレベルの置換に達した:プロテインキナーゼC eta(PRKCH)、対照の34%;大腫瘍抑制キナーゼ1(Large tumor suppressor kinase 1、LATS1)、対照の32%;一般制御非抑制性2キナーゼ(General control nonderepressible 2 kinase、GCN2)、対照の21%;及び造血前駆細胞キナーゼ1(Hematopoietic Progenitor Kinase 1、HPK1)、対照の4.4%。
【0198】
HPK1キナーゼについて用量反応曲線を作成し、このキナーゼへの結合に関する化合物(10b)のKdは、9.8μMであると決定された。HPK1は、造血細胞制限セリン/トレオニンキナーゼであり、いかなる主要臓器においても発現されない。HPK1は、c-Jun N末端キナーゼ(c-Jun N-terminal kinase、JNK)の活性化に関与しており、HPK1の遺伝子破壊は、T細胞及び樹状細胞の抗腫瘍免疫応答を増強することが報告されている(Hu et al 1996、Sawasdikosol et al 2012)。
【0199】
化合物(10b)の活性を、分光蛍光生化学アッセイを使用して、14の完全長ヒトホスファターゼのパネルに対しても評価した。これらのアッセイは、Eurofins Panlabsプラットフォームを使用して行った。これらのホスファターゼのいずれの有意な阻害も、10μM化合物(10b)で観察されなかった。この濃度で、化合物(10b)はヒトSHP-1のいかなる阻害も実証しなかった。
【0200】
キナーゼ及びホスファターゼスクリーニングに加えて、化合物(10b)(10μM)を、Eurofins Cerepプラットフォームを使用して、73の受容体及びイオンチャネル並びに12の追加の酵素のパネルに対しても試験した。このスクリーニングにおいて、50%超の阻害又は刺激は、有意な効果であるとみなされる。この大きさの影響は、研究された標的のいずれについても観察されなかった。
【0201】
これらの結果は、化合物(10b)が有意なオフターゲット活性を有さないSHP2の選択的阻害物質であることを示す。
【0202】
化合物(10b)がhERGカリウムチャネル電流を阻害する可能性を、手動ホールセルパッチクランプ技術を使用して、チャイニーズハムスター卵巣(Chinese hamster ovary、CHO)細胞においてインビトロで評価した。hERG cDNAを安定にトランスフェクトし、活性なhERGカリウムチャネルを発現するCHO細胞をガラスカバースリップ上に播種し、0.3、1、3、10、30、及び100μMの濃度の化合物(10b)を含有しない及び含有する、hERG電流の電気生理学的記録のための培養皿に入れた(n=3/濃度)。
【0203】
標準的な全細胞記録技術を用いて、単一細胞からHERGチャネル電流を記録した。細胞を-80mVの保持電位で電圧固定した。hERG電流を+20mVで5秒間脱分極することによって活性化し、その後、電流を-50mVに5秒間戻して不活性化を除去し、脱活性化テール電流を観察した。この工程中に観察されたHERGチャネルを通るK+テール電流を、連続浴灌流下で安定化させた。次いで、定常状態ブロックが達成されるまで、細胞を化合物(10b)で表面灌流した。3つの連続した重畳可能な電流記録が収集された時に定常状態に達したとみなした。シサプリドを実験においてhERG阻害の陽性対照として使用して、hERG細胞の正常な応答及び良好な品質を確実にした。
【0204】
化合物(10b)は、0.3~30μMの濃度でhERGチャネル活性に対する効果を有さなかった。100μMで、化合物(10b)は、ビヒクル対照(DMSO)と比較してhERG活性を25.7%阻害し、100μM超のIC50を示した。対照的に、シサプリドは0.1μMでhERG電流を50%超阻害した。
【0205】
実施例3:化合物(10b)の単回用量薬物動態
化合物(10b)(遊離塩基)の薬物動態(PK)パラメータを、雌CD-1マウス、雌C57BL/6マウス(POのみ)、雄Sprague Dawleyラット、雄ビーグル犬、及び雄カニクイザルにおける単回静脈内(IV)及び経口(PO)投与後に決定した。化合物(10b)のPK特性の更なる評価を、雌CD-1マウス、雄Sprague Dawleyラット及び雄ビーグル犬における、10~300mg/kg(マウス及びラット)及び1~100mg/kg(イヌ)に及ぶ用量範囲にわたる単回用量PO投与後に得た。特に断りのない限り、静脈内投与溶液は、20%DMSO-60%PEG400-20%水中で調製し、経口投与溶液は、水中0.5%メチルセルロース中の懸濁液として調製した。血漿濃度プロファイルを、複合サンプリング法を使用したマウスにおける研究(すなわち、マウス1匹当たり3回のサンプリング;9マウス/群)を除いて、投与後24時間までの個々の動物における連続サンプリングから生成した。化合物(10b)は、CD-1マウスにおいて中程度の血漿クリアランス(1.54L/h/kg)を示し、Sprague Dawleyラット、ビーグル犬、及びカニクイザルにおいて低い血漿クリアランス(それぞれ、0.61、0.51、及び0.36L/h/kg)を示した。定常状態での見かけの分布容積は、種にわたって中程度であり、2.74L/kg(サル)~6.05L/kg(ラット)の範囲であった。終末相消失半減期(T1/2)値は、CD-1マウス、Sprague Dawleyラット、ビーグル犬、及びカニクイザルについて、それぞれ2.21、9.18、8.23、及び6.44時間であった。1~100mg/kgの用量で経口投与した後、化合物(10b)は種にわたって比較的急速に吸収され、平均Tmax値は投与後0.25~3.67時間の範囲であった。CD-1マウス及びSprague Dawleyラットにおいて投与された最高用量である300mg/kgでは、平均Tmax値は、マウスでは0.25時間のままであったが、ラットでは8時間まで増加した。対応する静脈内用量よりも3~30倍高い経口用量について報告された見かけの経口バイオアベイラビリティは、種にわたって中程度~高度(51.2~115%)であった。曝露は、種にわたって用量レベルの増加と共に増加し、マウス及びイヌでは用量比例的に、ラットでは用量比例よりも大きく増加した(投与量の30倍増加に対しAUCの80倍増加)。
【0206】
【表2】
a Sprague Dawley、及び
b平均T
max値
【0207】
実施例4:KYSE-520腫瘍における化合物(10b)のインビボ薬力学
化合物(10b)による処置は、KYSE-520異種移植腫瘍におけるDUSP6 mRNAレベルを用量依存的に抑制する
KYSE-520(EGFRamp)細胞をNSGマウスに皮下移植し、ノギス測定によりモニタリングして340mm3の平均腫瘍体積まで成長させた。この時点で、動物を無作為化し、ビヒクル、化合物(10b)25mg/kg又は化合物(10b)100mg/kgでPO処置した。単回投与の4、16、及び24時間後に血漿及び腫瘍サンプルを採取した。化合物(10b)血漿濃度及び腫瘍pERKレベルを測定した。データは、平均±SEMを表す。N=4マウス/群。
【0208】
皮下KYSE-520腫瘍を有する雌NSGマウスを、25mg/kg又は100mg/kgの化合物(10b)の単回経口投与で処置した場合、腫瘍におけるDUSP6 mRNAレベルの用量依存的及び時間依存的抑制が観察された。単回投与の4時間後、化合物(10b)による処置は、25mg/kg及び100mg/kgの両方において、DUSP6 mRNAレベルを強力に抑制した(90%超の抑制)。単回投与の16時間後、化合物(10b)による処置は、25mg/kgにおいてDUSP6 mRNAレベルを中程度に抑制し(50%未満の抑制)、100mg/kgにおいて、DUSP6 mRNAレベルを有意に抑制した(50%超の抑制)。単回投与の24時間後、いずれの処置もDUSP6 mRNAレベルを有意には抑制しなかった。
【0209】
化合物(10b)処置によるDUSP6 mRNAの用量依存的抑制も観察された。重要なことに、DUSP6 mRNAレベル(
図2A中の実線)と化合物(10b)の血漿濃度(
図2A中の破線)との間に逆相関が観察された。両方の用量について、血漿濃度が投薬の4時間~24時間後まで減少するにつれて、腫瘍DUSP6 mRNAレベルは経時的に増加した。まとめると、データは、化合物(10b)による処置がKYSE-520腫瘍におけるDUSP6 mRNAレベルを用量依存的に抑制し、腫瘍DUSP6 mRNAレベルが血漿中の化合物(10b)濃度と逆相関したことを示唆している。
【0210】
図2A~
図2Bは、化合物(10b)で処置したKYSE-520におけるPK/PD関係及びIC
50決定を示す。
図2A:PK/PD関係、及び
図2B:IC
50決定。
【0211】
化合物(10b)は、KYSE-520異種移植腫瘍におけるMPAS-plus遺伝子のmRNAレベルを用量依存的に抑制する
DUSP6 mRNAレベルに加えて、他のMAPK経路遺伝子を配列決定分析によって調べた。MPAS(MAPK pathway activity score、MAPK経路活性スコア)シグネチャは、MAPK経路活性を反映する10個の遺伝子のシグネチャである。この遺伝子シグネチャは、腫瘍におけるERK阻害物質GDC-0994の薬力学的効果を評価するために臨床で使用されている。MPASシグネチャに基づいて、複数の細胞株モデルにわたってSHP2阻害物質によって調節される10個のMPAS遺伝子及び3つの更なるMAPK標的化遺伝子(ETV1、EGR1、及びFOSL1)を含む13の遺伝子シグネチャ(「MPAS-plus」)を開発した(データは示さず)。
【0212】
皮下KYSE-520腫瘍を有する雌NSGマウスを、25mg/kg又は100mg/kgの化合物(10b)の単回経口投与又は5回投与で処置した場合、腫瘍におけるMPAS-plusシグネチャの用量依存的及び時間依存的抑制が観察された。全体として、大半のMPAS-plus遺伝子のmRNAレベルは、単回投与及び5回目の投与の両方の4時間後に最も強力に抑制され、血漿濃度が減少するにつれて、抑制は4時間から24時間まで減少した(
図3)。化合物(10b)の単回投与及び5回投与の両方による処置後に、DUSP6に加えて、多くの遺伝子で用量依存的抑制が観察された(例えば、処置後16時間のETV1、ETV4、及びPHDLA1)。KYSE-520腫瘍において、これらの13個の遺伝子のうち、いくつかの遺伝子は化合物(10b)によってより強力に抑制され(例えば、DUSP6及びSPRY4)、いくつかの遺伝子は化合物(10b)によってより少なく抑制された(例えば、CCND1及びEPHA2)。生物学的適応は、FOSL1などのいくつかの転写物において、DUSP6よりも明らかであるようであった(単回投与処置の16時間後と5回目の投与の16時間後とを比較されたい)。配列決定分析からのDUSP6 mRNAデータ(
図3)は、qRT-PCRからのものと同一であった。DUSP6を含むMPAS-plusシグネチャを評価することは、臨床試験における異種患者腫瘍におけるMAPK経路シグナル伝達の全体的な活性を捕捉するのに有利であり得る。
【0213】
実施例5:HCC827(EGFRex19del及びEGFRamp)CDXモデルにおける化合物(10b)のインビボ薬力学
雄NOD/SCIDマウス(n=3/群)に、単回用量の1、3、10、30、及び100mg/kgの化合物(10b)を強制経口投与により投与した。各投与の0.25、1、2、4、8、及び24時間後に血漿を採取し、各投与の24時間後に脳を採取した。化合物(10b)濃度をLC-MS/MSで測定した。
【0214】
図4は、単回経口投与後の雄NOD/SCIDマウスにおける化合物(10b)及びインビトロNSCLC HCC827 pERK IC
50を上回る持続時間の用量関係を示す。平均C
maxは、用量に比例して増加した(用量1、3、10、30、及び100mg/kgについてのC
maxは、それぞれ160、507、2033、4873、及び13900ng/mLであった)。AUC
infは、用量に比例して増加した(用量1、3、10、30、及び100mg/kgについてのAUC
infは、それぞれ1031、3530、13047、30596、及び123116hr
*ng/mLであった)。用量1、3、10、30、及び100mg/kgについての24時間での総脳/血漿レベルは、それぞれ0.35、0.31、0.30、0.31、及び0.37であった。化合物(10b)のAUC及びC
maxは、用量に比例して増加し、化合物(10b)が、試験した用量範囲において、吸収、結合、クリアランスのいずれに対しても濃度依存的効果を有さないことを示す。24時間での化合物(10b)の平均総脳/血漿レベルは0.33であり、これもまた化合物(10b)が試験した用量範囲において脳分布に対して濃度依存的効果を有さないことを示している。
図4に示すように、10mg/kgの化合物(10b)は、NSCLC HCC827細胞株のインビトロpERK IC
50を上回る標的濃度範囲を16時間維持するのに十分であった。
【0215】
EGFRエクソン19欠失(EGFR
ex19del)及びEGFR増幅(EGFR
amp)を有する非小細胞肺癌(NSCLC)HCC827細胞株由来異種移植(CDX)モデルを有する雌BALB/cヌードマウスにおける化合物(10b)の単独療法抗腫瘍活性を評価するために、インビボ有効性研究を行った。マウス(n=10/群)に、示されたレベルの化合物(10b)を1日目から28日目まで毎日経口投薬し、腫瘍体積の用量依存的低減が観察された。
図5は、化合物(10b)の単独療法抗腫瘍活性を示す。全ての群にQD、PO投薬した。二元配置混合効果ANOVA:
*p<0.0001対ビヒクル。
【0216】
図5に示すように、3、10、及び30mg/kg化合物(10b)群は、ビヒクル群と比較して、それぞれ41%、84%、98%の腫瘍増殖抑制率(tumor growth inhibition、TGI)で、統計的に有意な単独療法抗腫瘍活性を有した。100mg/kg化合物(10b)群もまた、ビヒクル群と比較して、60%の平均腫瘍退縮で、統計的に有意な単独療法抗腫瘍活性を有した。このモデルにおける化合物(10b)のED
90は10mg/kgであり、pERK IC
50を上回る約16時間がこの異種移植モデルにおける有効性を駆動することが確認された。体重に対する処置の影響はなく、全ての処置が良好な忍容性を示した。
【0217】
実施例6:様々な細胞株における化合物(10b)のインビボ薬力学
活性なMAPKシグナル伝達を有するヒト腫瘍細胞株のパネルにおける化合物(10b)の効力を評価した。9つの濃度の化合物(10b)で8日間処理した後、CellTiter-Glo(CTG)発光を測定することによって、3D培養系における細胞生存率を評価した。pERKタンパク質レベル及びDUSP6 mRNAレベルを、それぞれ均一時間分解蛍光(homogeneous time resolved fluorescence、HTRF)及び定量的ポリメラーゼ連鎖反応(quantitative polymerase chain reaction、qPCR)によって測定することによって、MAPK経路シグナル伝達を評価した。化合物(10b)処理後に、KRAS
G12C変異細胞株であるNCI-H358、及びEGFR増幅(EGFR
amp)細胞株であるKYSE-520において、強力な用量反応性細胞生存率効果が観察された(
図6A)。これらの生存率効果は、pERK阻害(表2、
図6B)及びDUSP6阻害(
図6C)と相関した。更なるEGFR変異細胞株HCC827及びNCI-H1975においても、強力なpERK及び生存率効果が観察されたが、SHP2阻害に対する耐性を付与することが示されている変異であるNRAS
Q61Kを含有する細胞株であるNCI-H1299においては、最小限の効果が観察された。
【0218】
【0219】
インビボ有効性研究を行って、細胞株由来異種移植(CDX)モデルのパネルにわたる化合物(10b)の単独療法抗腫瘍活性を評価した。示されたCDX腫瘍を有する免疫抑制マウス(n=5~10/群)に、21~33日間、100mg/kgの化合物(10b)を毎日経口投薬し、ビヒクル群と比較して統計的に有意な化合物(10b)の有意な単独療法抗腫瘍活性が、全てのCDXモデルにおいて観察された(
図7)。KRAS
G12C変異CDXモデルMIA PaCa-2及びNCI-H358では、それぞれ74%の腫瘍増殖抑制率(TGI)及び50%の平均腫瘍退縮が観察された。EGFR変化を有するモデルでは、EGFR増幅(EGFR
amp)KYSE-520モデルにおいて77%のTGIが観察され、EGFRエクソン19欠失(EGFR
ex19del)及びEGFR増幅(EGFR
amp)HCC827モデルにおいて60%の平均腫瘍退縮が観察された。有意な抗腫瘍有効性は、EGFR阻害物質に対する獲得耐性を有する2つのCDXモデルにおいても観察された。MET増幅(MET
amp)を介してエルロチニブ及びオシメルチニブなどのEGFR阻害物質に対する獲得耐性を有するHCC827-ER CDXモデルにおいて84%のTGIが観察され、EGFR
L858R及びEGFR
T790M変異を有し、オシメルチニブに対する耐性を付与する操作されたEGFR
C797S変異も有するNCI-H1975-OR CDXモデルにおいて87%の平均腫瘍退縮が観察された。体重に対する処置の影響はなく、全ての処置が良好な忍容性を示した。
【0220】
【0221】
【0222】
【0223】
【0224】
【0225】
【0226】
【0227】
【0228】
表3の略語及び脚注
略語:AE=有害事象、ALT/SGPT=アラニンアミノトランスフェラーゼ/血清グルタミン酸-ピルビン酸トランスアミナーゼ、aPTT=活性化部分トロンボプラスチン時間、AST/SGOT=アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ/血清グルタミン酸-オキサロ酢酸トランスアミナーゼ、CA125=癌抗原125、CEA=癌胎児性抗原、cfDNA=循環遊離デオキシリボ核酸、CPK=クレアチンホスホキナーゼ、CR=完全奏効、CT=コンピュータ断層撮影、DLT=用量制限毒性、ECG=心電図、ECHO=心エコー図、ECOG=米国東海岸癌臨床試験グループ、EOT=処置終了、ET=早期終了、FE=食物効果、FSH=卵胞刺激ホルモン、HBV=B型肝炎ウイルス、HCV=C型肝炎ウイルス、HIV=ヒト免疫不全ウイルス、ICF=インフォームドコンセント用紙、INR=国際標準化比、IP=治験薬、LD=最終投与、MRI=核磁気共鳴画像、MUGA=多重ゲート取得スキャン、NA=適用不可、PBMC=末梢血単核細胞、PET=陽電子放出断層撮影、PK=薬物動態、PR=部分奏効、PSA=前立腺特異的抗原、PT=プロトロンビン時間、QTcF=フリデリシアの補正式を用いたQT、SAE=重篤有害事象、SRC=安全性審査委員会。
a.投与前に収集した。
b.前日のIP投与のおよそ24時間(±3時間)後である投与前に収集した。
c.投与前及びIP投与の4時間後(全ての時点±15分)に収集した。投与前評価における更なるタイミングについては脚注aaを参照されたい。
d.投与前、IP投与の0.5時間(±5分)、1時間、2時間、4時間、及び6時間後(別段の指定がない限り全ての時点±15分)に収集した。
e.サイクル2の1日目のIP投与の2~6時間後の投与後(センターでのスケジューリングの利用可能性に応じて±7日)及びEOT追跡来院時(±7日)に収集する。
f.投与前、IP投与の2及び4時間後(全ての時点±15分)に収集した。
g.投与前及びIP投与の2時間後(全ての時点±15分)に収集した。
h.病歴及び身体検査を確認し、C1D1の最初の投与の前に生じた可能性がある任意の所見については更新すべきである。
i.前の7日に行われない限り。
j.投薬前に確認される適格性。
k.生年月日、性別、身長、人種、民族性を含む。
l.関連する病歴、現在の医学的状態、腫瘍学的履歴(例えば、診断、癌の程度、以前の抗癌療法)、放射線歴を含む。
m.スクリーニング時及びEOT/ET時に実施される完全な身体検査;他の来院時に実施される短縮検査(例えば、治験責任医師の判断に従って指示される症状);完全検査及び短縮検査のどちらも体重を含む。
n.患者の履歴毎の有害事象は、医師の検査時に収集される。
o.重篤AEは、インフォームドコンセントの時点から収集されるべきである。疾患の進行のみに起因する死亡は、SAEとして報告されるべきではなく、全ての死亡と同様に、関連するCRFページに記録しなければならない。
p.閉経後状態を確認すべき、外科的に不妊でない女性。
q.外科的に不妊でないか又は閉経後と確認されていない女性;全ての時点での血清検査。
r.全血球数、分画、血小板。
s.グルコース、総タンパク質、アルブミン、電解質[ナトリウム、カリウム、塩化物、総CO2]、カルシウム、リン、マグネシウム、尿酸、ビリルビン(総、直接)、ALT/SGPT、AST/SGOT、アルカリホスファターゼ、クレアチニン、血中尿素窒素、CPK、コレステロール、乳酸デヒドロゲナーゼ[注:検査は、スクリーニング検査では絶食させて、全ての投与前検査では絶食させて行うべきである]。
t.例えば、cfDNA。
u.IPは、28日サイクルにわたって1日1回投与され、SRC審査に基づいて代替投薬スケジュールが実施されない限り、全てのサイクルにおいて同様に投与される。IPは、少なくとも8時間の一晩の絶食後に摂取されるべきであり、用量が摂取された後、2時間の絶食が続く。
v.投与中断がサイクルの終わりに起こり、IPが次のサイクルの初日の前に再開されない場合、次のサイクルの初日は、IPが再開される日となる。IPが15日間連続して中断される場合、患者はIPから永久的に中断されるべきである。
w:C1D1来院は、月曜日、火曜日、水曜日、又は木曜日に行われるべきである。
x.DLT評価期間に適格であるために、患者は、28日間の評価期間内に21用量を摂取する必要がある。
y.再病期診断スキャン(CT、MRI、又はPET-CT)は、2サイクル毎(すなわち、8週間毎)に行う。確認スキャンもまた、客観的奏効(すなわち、PR又はCR)の最初の記録の少なくとも4週間後に得られる。得られるスキャンの種類は、疾患に適切な、治験責任医師の裁量によるものである。しかしながら、研究期間にわたって同じ方法が使用されるべきである。幅(C3D1±7日及びその後のサイクル±7日)により、疾患スキャン評価を可能にした。全てのスキャンは局所的に読み取られる。
z.関連腫瘍マーカー(例えば、CA125、PSA、CEA)は、最初の2サイクルの完了後、2サイクル毎に1回、必要に応じて、再病期診断スキャンと同じスケジュールに従って評価される。
aa.投与前の血液、化学、血液凝固、及び尿検査評価は、予定された来院の2日前までに実施され得る。スクリーニング評価がC1D1の前48時間以内に実施される場合、これらの結果は、反復評価を必要とせずにベースライン(投与前評価)として使用されてもよい。
bb.幅(±3日)により、サイクル2から開始する各MUGA/ECHO評価を可能にした。
cc.患者がその後のサイクルを継続しない(すなわち、研究を継続しない)場合であっても、患者は、2時間PK及び薬力学的サンプルを除いて、全ての1日目の来院手順を依然として受けるべきである。
dd.実行可能な場合(スクリーニング、サイクル2の1日目[±7日]及びEOTフォローアップ来院[±7日])、研究に登録された全ての患者について新鮮腫瘍生検を採取すべきである。新鮮腫瘍生検がスクリーニング中に実行可能でない場合、登録から1年以内に採取された保存用腫瘍生検が使用され得る。治験責任医師と相談して、医療モニターの裁量で腫瘍生検を得ることができない場合であっても、患者が登録され得る。腫瘍生検の採取が行われない患者の登録は、医療モニターによってケースバイケースで取り扱われる。腫瘍組織サンプルの採取及び取り扱いに関する詳細については、Lab Specimen Manualを参照されたい。
ee.患者内用量漸増を受けている患者は、新しい用量レベルでの第1サイクル中にサイクル1評価スケジュールを受けるが、PK採取は行わない。
ff.EOT追跡来院から4週間以内に完了しない限り。
gg.生存データに加えて、長期追跡調査は、疾患応答及び二次性悪性腫瘍の収集を含む。
【0229】
【0230】
【0231】
表4の略語及び脚注
略語:AE=有害事象、ALT/SGPT=アラニンアミノトランスフェラーゼ/血清グルタミン酸-ピルビン酸トランスアミナーゼ、aPTT=活性化部分トロンボプラスチン時間、AST/SGOT=アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ/血清グルタミン酸-オキサロ酢酸トランスアミナーゼ、CA125=癌抗原125、CEA=癌胎児性抗原、cfDNA=循環遊離デオキシリボ核酸、CPK=クレアチンホスホキナーゼ、CT=コンピュータ断層撮影、ECG=心電図、ECHO=心エコー図、ECOG=米国東海岸癌臨床試験グループ、EOT=処置終了、ET=早期終了、FSH=卵胞刺激ホルモン、HBV=B型肝炎ウイルス、HCV=C型肝炎ウイルス、HIV=ヒト免疫不全ウイルス、ICF=インフォームドコンセント用紙、INR=国際標準化比、IP=治験薬、LD=最終投与、MRI=核磁気共鳴画像、MUGA=多重ゲート取得スキャン、PET=陽電子放出断層撮影、PK=薬物動態、PSA=前立腺特異的抗原、PT=プロトロンビン時間、QTcF=フリデリシアの補正式を用いたQT
a.用量拡大についての評価及び研究継続については表3を参照されたい。RP2DでC1D1用量を開始するための幅:LD+2から5日まで(2日間のウォッシュアウト+追加の3日まで)。
b.C0D1において、患者は、絶食状態で化合物(10b)を投与される(投薬前の最低8時間及び投薬後の2時間に食物なし)。C0D8において、患者は、高脂肪/高カロリー食の後の摂食状態で化合物(10b)を投与される。用量拡大の間(すなわち、C1D1から開始)、化合物(10b)は絶食状態で投与される。
c.腎排泄評価のための尿は、投与の0~8時間後、投与の8~24時間後、投与の24~48時間後、及び投与の48~72時間後に採取されるべきである。
d.前の7日に行われない限り。
e.実行可能な場合、研究に登録された全ての患者について新鮮腫瘍生検を採取すべきである。新鮮腫瘍生検がスクリーニング中に実行可能でない場合、登録から1年以内に採取された保存用腫瘍生検が使用され得る。治験責任医師と相談して、医療モニターの裁量で腫瘍生検を得ることができない場合であっても、患者が登録され得る。腫瘍生検の採取が行われない患者の登録は、医療モニターによってケースバイケースで取り扱われる。腫瘍組織サンプルの採取及び取り扱いに関する詳細については、Lab Specimen Manualを参照されたい。
f.関連する病歴、現在の医学的状態、腫瘍学的履歴(例えば、診断、癌の程度、以前の抗癌療法)、放射線歴を含む。
g.生年月日、性別、身長、人種、民族性を含む。
h.腫瘍学的履歴、放射線歴を含む。
i.スクリーニング時及びEOT/ET時に実施される完全な身体検査;他の来院時に実施される短縮検査(例えば、治験責任医師の判断に従って指示される症状);完全検査及び短縮検査のどちらも体重を含む。
j.患者の履歴毎の有害事象は、医師の検査時に収集される。
k.病歴及び身体検査を確認し、C0D1の最初の投与の前に生じた可能性がある任意の所見については更新すべきである。
l.重篤AEは、インフォームドコンセントの時点から収集されるべきである。疾患の進行のみに起因する死亡は、SAEとして報告されるべきではなく、全ての死亡と同様に、関連するCRFページに記録しなければならない。
m.閉経後状態を確認すべき、外科的に不妊でない女性。
p.グルコース、総タンパク質、アルブミン、電解質[ナトリウム、カリウム、塩化物、総CO2]、カルシウム、リン、マグネシウム、尿酸、ビリルビン(総、直接)、ALT/SGPT、AST/SGOT、アルカリホスファターゼ、クレアチニン、血中尿素窒素、CPK、コレステロール、乳酸デヒドロゲナーゼ[注:検査は、スクリーニング検査では絶食させて、全ての投与前検査では絶食させて行うべきである]。
q.例えば、cfDNA。
r.投与前に収集した。
s.前日のIP投与のおよそ24時間(±3時間)後の投与前に収集した。
t.患者は、絶食状態で化合物(10b)を投与される(投薬前の最低8時間及び投薬後の2時間に食物なし)。
u.患者は、高脂肪/高カロリー食の後の摂食状態で化合物(10b)を投与される。
v.投与前の血液、化学、血液凝固、及び尿検査評価は、予定された来院の2日前までに実施され得る。スクリーニング評価がC0D1の前48時間以内に実施される場合、これらの結果は、反復評価を必要とせずにベースライン(投与前評価)として使用されてもよい。
w.投与前及びIP投与の4時間後(全ての時点±15分)に収集した。投与前評価における更なるタイミングについては脚注vを参照されたい。
x.投与後のサンプリングのための時間幅(適用可能な場合):0.5時間(±5分)、1時間~8時間の時点(±15分)、24時間~72時間の時点(±3時間)。
【0232】
【0233】
【0234】
表5の略語及び脚注
略語:AE=有害事象、ALT/SGPT=アラニンアミノトランスフェラーゼ/血清グルタミン酸-ピルビン酸トランスアミナーゼ、aPTT=活性化部分トロンボプラスチン時間、AST/SGOT=アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ/血清グルタミン酸-オキサロ酢酸トランスアミナーゼ、CA125=癌抗原125、CEA=癌胎児性抗原、cfDNA=循環遊離デオキシリボ核酸、CPK=クレアチンホスホキナーゼ、CT=コンピュータ断層撮影、ECG=心電図、ECHO=心エコー図、ECOG=米国東海岸癌臨床試験グループ、FSH=卵胞刺激ホルモン、HBV=B型肝炎ウイルス、HCV=C型肝炎ウイルス、HIV=ヒト免疫不全ウイルス、ICF=インフォームドコンセント用紙、INR=国際標準化比、IP=治験薬、LD=最終投与、MRI=核磁気共鳴画像、MUGA=多重ゲート取得スキャン、PET=陽電子放出断層撮影、PK=薬物動態、PSA=前立腺特異的抗原、PT=プロトロンビン時間、QTcF=フリデリシアの補正式を用いたQT
a.用量拡大についての評価及び研究継続については表3を参照されたい。RP2DでC1D1用量を開始するための幅:LD+5から10日まで。
b.投与後のサンプリングのための時間幅:0.5時間(±5分)、1時間~8時間の時点(±15分)、24時間~72時間の時点(±3時間)。
c.患者は、絶食状態で化合物(10b)を投与される(投薬前の最低8時間及び投薬後の2時間に食物なし)。
d.腎排泄評価のための尿は、投与の0~8時間後、投与の8~24時間後、投与の24~48時間後、及び投与の48~72時間後に採取されるべきである。
e.実行可能な場合、研究に登録された全ての患者について新鮮腫瘍生検を採取すべきである。新鮮腫瘍生検がスクリーニング中に実行可能でない場合、登録から1年以内に採取された保存用腫瘍生検が使用され得る。治験責任医師と相談して、医療モニターの裁量で腫瘍生検を得ることができない場合であっても、患者が登録され得る。腫瘍生検の採取が行われない患者の登録は、医療モニターによってケースバイケースで取り扱われる。腫瘍組織サンプルの採取及び取り扱いに関する詳細については、Lab Specimen Manualを参照されたい。
f.投薬前に確認される適格性。
g.生年月日、性別、身長、人種、民族性を含む。
h.関連する病歴、現在の医学的状態、腫瘍学的履歴(例えば、診断、癌の程度、以前の抗癌療法)、放射線歴を含む。
i.スクリーニング時及びEOT/ET時に実施される完全な身体検査;他の来院時に実施される短縮検査(例えば、治験責任医師の判断に従って指示される症状);完全検査及び短縮検査のどちらも体重を含む。
j.患者の履歴毎の有害事象は、医師の検査時に収集される。
k.重篤AEは、インフォームドコンセントの時点から収集されるべきである。疾患の進行のみに起因する死亡は、SAEとして報告されるべきではなく、全ての死亡と同様に、関連するCRFページに記録しなければならない。
l.閉経後状態を確認すべき、外科的に不妊でない女性。
m.外科的に不妊でないか又は閉経後と確認されていない女性;全ての時点での血清検査。
n.全血球数、分画、血小板。
o.グルコース、総タンパク質、アルブミン、電解質[ナトリウム、カリウム、塩化物、総CO2]、カルシウム、リン、マグネシウム、尿酸、ビリルビン(総、直接)、ALT/SGPT、AST/SGOT、アルカリホスファターゼ、クレアチニン、血中尿素窒素、CPK、コレステロール、乳酸デヒドロゲナーゼ[注:検査は、スクリーニング検査では絶食させて、全ての投与前検査では絶食させて行うべきである]。
p.例えば、cfDNA。
q.投与前に収集した。
r.病歴及び身体検査を確認し、C0D1の最初の投与の前に生じた可能性がある任意の所見については更新すべきである。
s.投与前の血液、化学、血液凝固、及び尿検査評価は、予定された来院の2日前までに実施され得る。スクリーニング評価がC0D1の前48時間以内に実施される場合、これらの結果は、反復評価を必要とせずにベースライン(投与前評価)として使用されてもよい。
t.前の7日に行われない限り。
u.前日のIP投与のおよそ24時間(±3時間)後の投与前に収集した。
v.投与前及びIP投与の4時間後(全ての時点±15分)に収集した。投与前評価における更なるタイミングについては脚注sを参照されたい。
【0235】
用量制限毒性(DLT)は、疾患進行又は併発疾患に明らかに関連し、研究の第1サイクル(28日間)中に生じる毒性を除く、以下の基準のいずれかを満たすAE又は異常な検査値として定義される:
● 以下の例外を除く、アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ/アラニンアミノトランスフェラーゼ(AST/ALT)及び/又はビリルビンの、7日を超えて持続するグレード3、又は任意の期間のグレード4の臨床検査値異常:
○ ベースラインでグレード1のAST/ALT(>ULN~3×ULN)を有する患者については、>7.5×ULNのAST/ALT値をDLTとみなす。
○ ベースラインでグレード2のAST/ALT(>3×ULN~>5×ULN)を有する患者については、AST/ALT値>10×ULNをDLTとみなす。
● 以下を除くグレード3以上の非血液学的毒性:
○ 十分な支持療法を伴う72時間未満のグレード3の悪心、嘔吐、又は下痢。
○ 1週間未満持続するグレード3の疲労。
○ 臨床的に複雑ではなく、自然に又は従来の医学的介入によって解消する、72時間未満持続するグレード3の電解質異常。
○ 72時間未満持続し、膵炎の徴候に関連しないグレード3のアミラーゼ又はリパーゼ。
● 患者が先天性高ビリルビン血症を有さない限り、Hyの法則の基準を満たす(すなわち、≧2×ULNの総ビリルビン及びアルカリホスファターゼ<2×ULNを伴う≧3×ULN ALT及び/又はAST)。
● 7日超のグレード3の好中球減少。
● グレード4の好中球減少。
● 発熱性好中球減少症[ANC<1000/mm3、単一の口腔温度>38.3℃(101°F)又は少なくとも1時間間隔で測定された2つの連続した口腔温度≧38℃(100.4°F)を伴う]。
● グレード2以上の出血を伴うグレード3の血小板減少症。
● グレード4の血小板減少症又は血小板輸血を必要とする血小板減少症。
● グレード4の生命を脅かす貧血。
● グレード5の毒性。
● SRCによる審査に従ってDLTとみなされ得る任意の他のグレード3以上の臨床的に有意又は持続的な毒性。
【0236】
【0237】
【表9】
Oken MM,Creech RH,Tormey DC,et al.Toxicity and response criteria of the Eastern Cooperative Oncology Group.Am J Clin Oncol 1982;5(6):649-655。
【0238】
【0239】
【0240】
【0241】
【0242】
【0243】
【0244】
【0245】
【0246】
実施例8:第1/1B相ファースト・イン・ヒューマン研究の初期結果
初期結果は、実施例6の第1/1B相ファースト・イン・ヒューマン研究のコホート1~5からのものであった。
【0247】
化合物(10b)の安全性
化合物(10b)は、化合物(10b)が80mg、150mg、250mg、400mg、及び550mgでそれぞれ1日1回投薬されたコホート1~5において良好な忍容性を示した。投薬された19人の患者において、化合物(10b)のリスク又はベネフィットに影響を与える安全性所見は報告されなかった。九(9)例の処置下発現重篤有害事象(SAE)が7人の患者で報告され、そのいずれも化合物(10b)による処置に関連するとは考えられなかった。有害事象(AE)は研究中止をもたらさず、用量制限毒性(DLT)は生じなかった。顕著な処置下発現有害事象(TEAE)を表6に列挙する。
【0248】
【0249】
化合物(10b)の薬物動態(PK)プロファイル
化合物(10b)は、化合物(10b)が550mgで1日1回投薬されたコホート5において薬物動態曝露の継続的な増加を有することが見出された。データを表7A及び表7Bに示す。
【0250】
【表13】
AUC/DはAUClastを使用して計算した。
括弧内のt
1/2値は、注意して解釈されるべきである(大きな外挿AUCに関連する)。
*PK来院中に活動性胃炎(H.pyloriに起因する)を有した1人の対象は、範囲外のPK値を示し、平均計算から除外した。
a:N=1
【0251】
【表14】
括弧内のt
1/2値は、注意して解釈されるべきである(大きな外挿AUCに関連する)。a:N=1
【0252】
図12A~
図12Bは、実施例6のコホート1~5における化合物(10b)の平均血漿濃度を示す。
図12A:サイクル1の1日目(C1D1)、及び
図12B:サイクル2の1日目(C2D1)。点線は、インビボIC
50(1.5μM;KYSE-520異種移植DUXP 6 IC
50は656ng/mLである)、及び予測有効Cmax(5.3μM)を示す。
【0253】
化合物(10b)のpERK阻害
化合物(10b)は、コホート5(550mg)においてより深いPBMC pERK阻害を有することが見出された。阻害の約95%が投与の4時間後に観察され、阻害は投薬後24時間持続した。
【0254】
図13A~
図13Eは、実施例6のコホート1~5における化合物(10b)のpERK阻害を示す。
図13A:コホート1、
図13B:コホート2、
図13C:コホート3、
図13D:コホート4、及び
図13E:コホート5。点線は、1.5μMのIC
50を表す。バーはPD(pERK%)を表し、黒丸はPKを表す。
【0255】
要約
要約すると、化合物(10b)の臨床PK/PDプロファイルは、非臨床データと一致する。化合物(10b)を、表8に示すように、他のSHP2阻害物質(例えば、TNO-155及びRMC-4630)と比較する。
【0256】
【0257】
化合物(10b)のプロファイル及び投薬スケジュールは、忍容可能な用量で優れた標的濃度範囲を提供しながら、組み合わせに対する投薬柔軟性を提供することができる。
【0258】
上述の発明を、明確な理解を目的として図示及び例示によっていくらか詳細に記載してきたが、当業者は、添付の特許請求の範囲内にてある特定の変更及び修正が実施できることを理解するであろう。加えて、本明細書に提供される各参考文献は、各参考文献が参照により個々に組み込まれるのと同程度に、その全体が参照により組み込まれる。本出願と本明細書に提供される参考文献との間に矛盾が存在する場合、本出願が優先するものとする。
【国際調査報告】