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特表2024-538727マボリキサフォルの合成およびその中間体
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-10-23
(54)【発明の名称】マボリキサフォルの合成およびその中間体
(51)【国際特許分類】
   C07D 401/12 20060101AFI20241016BHJP
   A61K 31/4709 20060101ALI20241016BHJP
   C07D 215/40 20060101ALI20241016BHJP
   A61P 35/00 20060101ALN20241016BHJP
【FI】
C07D401/12 CSP
A61K31/4709
C07D215/40
A61P35/00
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024521100
(86)(22)【出願日】2022-10-07
(85)【翻訳文提出日】2024-06-04
(86)【国際出願番号】 US2022046094
(87)【国際公開番号】W WO2023059903
(87)【国際公開日】2023-04-13
(31)【優先権主張番号】63/262,225
(32)【優先日】2021-10-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】524128523
【氏名又は名称】エックス4 ファーマシューティカルズ, インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【弁護士】
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】ハンセルマン, ロジャー
(72)【発明者】
【氏名】ブランズ, カレル マリー ジョゼフ
【テーマコード(参考)】
4C086
【Fターム(参考)】
4C086AA03
4C086AA04
4C086BC39
4C086GA07
4C086GA13
4C086GA16
4C086MA01
4C086ZB26
4C086ZC41
(57)【要約】
本発明は、C-X-C受容体4型(CXCR4)阻害剤マボリキサフォルを合成するための方法およびその中間体に関する。本発明は、マボリキサフォルを合成するための方法、およびその中間体に関する。マボリキサフォルおよびその薬学的に許容され得る組成物は、CXC受容体4型(CXCR4)阻害剤として有効であり、CXCR4に関連する様々な疾患、障害、または状態、例えば様々な癌を含む過剰増殖状態を処置するのに有用である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
マボリキサフォル:
【化51】
を調製するための方法であって、
(a)式Bの化合物:
【化52】
(式中、
は、適切なアミノ保護基であり、
は、適切なアミノ保護基である)
を提供するステップと、
(b)前記式Bの化合物をスルホン化して、式F-2aの化合物:
【化53】
(式中、
Mは、アルカリ金属から選択される金属である)
を形成するステップと、
(c)前記式F-2aの化合物を化合物F-1:
【化54】
またはその塩と縮合させて、式Qの化合物:
【化55】
を形成するステップと、
(d)前記式Qの化合物を還元して式Pの化合物:
【化56】
を形成するステップと、
(e)前記式Pの化合物を式F-3の化合物:
【化57】
(式中、
は、適切なベンゾイミダゾール保護基であり、
Lは、適切な脱離基である)
と反応させて、式Oの化合物:
【化58】
を形成するステップと、
(f)前記式Oの化合物を脱保護して式Nの化合物:
【化59】
を形成するステップと、
(g)前記式Nの化合物を脱保護して式Mの化合物:
【化60】
を形成するステップと、
(h)前記式Mの化合物を脱保護して式Kの化合物:
【化61】
(式中、
Aは酸であり、
nは、1、2または3である)
を形成するステップと、
(i)前記式Kの化合物を変換してマボリキサフォルを形成するステップと
を含む、方法。
【請求項2】
式B、F-2a、Q、P、OおよびNのR基がBocである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
式B、F-2a、Q、P、O、NおよびMの前記R基がBocである、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
式B、F-2a、Q、P、OおよびNの前記RおよびR基がBocである、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
式F-2aのMがナトリウムまたはカリウムである、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
式F-3およびOのR基がBocである、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
式F-3のL基がクロロである、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
、RおよびRの各存在がBocである、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
式K中のAが、TFA、HCl、HBr、HPOまたはHSOであり、nが1、2または3である、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
式K中のAがHSOであり、nが3である、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
ステップ(c)において、前記式Qの化合物が、単離されていない中間体である、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
ステップ(e)において、前記式Oの化合物が単離されていない中間体である、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
ステップ(b)における前記スルホン化が、前記式Bの化合物をMS(ここで、Mはアルカリ金属である)と反応させることにより達成される、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
前記アルカリ金属がナトリウムまたはカリウムである、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
ステップ(c)における前記式F-2aの化合物および前記式F-1の化合物の前記縮合が、適切な縮合触媒によって触媒される、請求項1に記載の方法。
【請求項16】
前記適切な縮合触媒がKPOである、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
ステップ(d)における前記還元が、前記式Qの化合物を、NaBH、NaCNBHおよびBHを含む群から選択される還元剤と反応させることにより達成される、請求項1に記載の方法。
【請求項18】
前記還元剤がNaBHである、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
ステップ(e)における前記反応が、前記式Pの化合物を式F-3aの化合物:
【化62】
と反応させることにより達成される、請求項1に記載の方法。
【請求項20】
、RおよびRが、Bocであり、ステップ(f)、(g)および(h)における前記脱保護が、TFA、HCl、HBr、HPOおよびHSOから選択される酸と前記式Oの化合物を反応させることにより、同時に達成されて、前記式Kの化合物を生成する、請求項1に記載の方法。
【請求項21】
前記酸がHSOである、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記式K中のAがHSOであり、nが3である、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
ステップ(i)における前記反応が、前記式Kの化合物を適切な塩基と反応させることにより達成される、請求項1に記載の方法。
【請求項24】
前記適切な塩基がNaOHである、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
式Kの化合物:
【化63】
(式中、
Aは酸であり、
nは、1、2または3である)
を調製するための方法であって、
(a)式Bの化合物:
【化64】
(式中、
は、適切なアミノ保護基であり、
は、適切なアミノ保護基である)
を提供するステップと、
(b)前記式Bの化合物をスルホン化して、式F-2aの化合物:
【化65】
(式中、
Mは、アルカリ金属から選択される金属である)
を形成するステップと、
(c)前記式F-2aの化合物を化合物F-1:
【化66】
またはその塩と縮合させて、式Qの化合物:
【化67】
を形成するステップと、
(d)前記式Qの化合物を還元して式Pの化合物:
【化68】
を形成するステップと、
(e)前記式Pの化合物を式F-3の化合物:
【化69】
(式中、
は、適切なベンゾイミダゾール保護基であり、
Lは、適切な脱離基である)
と反応させて、式Oの化合物:
【化70】
を形成するステップと、
(f)前記式Oの化合物を脱保護して式Nの化合物:
【化71】
を形成するステップと、
(g)前記式Nの化合物を脱保護して式Mの化合物:
【化72】
を形成するステップと、
(h)前記式Mの化合物を脱保護して、前記式Kの化合物を形成するステップと
を含む、方法。
【請求項26】
式B、F-2a、Q、P、OおよびNのR基がBocである、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
式B、F-2a、Q、P、O、NおよびMのR基がBocである、請求項25に記載の方法。
【請求項28】
式B、F-2a、Q、P、O、NおよびMのRおよびR基がBocである、請求項25に記載の方法。
【請求項29】
式F-2aのMがナトリウムまたはカリウムである、請求項25に記載の方法。
【請求項30】
式F-3およびOのR基がBocである、請求項25に記載の方法。
【請求項31】
式F-3のL基がクロロである、請求項25に記載の方法。
【請求項32】
、RおよびRの各存在がBocである、請求項25に記載の方法。
【請求項33】
式K中のAが、TFA、HCl、HBr、HPOまたはHSOであり、nが、1、2、または3である、請求項25に記載の方法。
【請求項34】
式K中のAがHSOであり、nが3である、請求項33に記載の方法。
【請求項35】
ステップ(c)において、前記式Qの化合物が、単離されていない中間体である、請求項25に記載の方法。
【請求項36】
ステップ(e)において、前記式Oの化合物が、単離されていない中間体である、請求項25に記載の方法。
【請求項37】
ステップ(b)における前記スルホン化が、前記式Bの化合物をMS(ここで、Mはアルカリ金属である)と反応させることにより達成される、請求項25に記載の方法。
【請求項38】
前記アルカリ金属がナトリウムまたはカリウムである、請求項37に記載の方法。
【請求項39】
ステップ(c)における前記式F-2aの化合物および前記式F-1の化合物の前記縮合が、適切な縮合触媒によって触媒される、請求項25に記載の方法。
【請求項40】
前記適切な縮合触媒がKPOである、請求項39に記載の方法。
【請求項41】
ステップ(d)における前記還元が、前記式Qの化合物をNaBH、NaCNBH、およびBHから選択される還元剤と反応させることにより達成される、請求項25に記載の方法。
【請求項42】
前記還元剤がNaBHである、請求項41に記載の方法。
【請求項43】
ステップ(e)における前記反応が、前記式Pの化合物を式F-3aの化合物:
【化73】
と反応させることにより達成される、請求項25に記載の方法。
【請求項44】
、RおよびRが、Bocであり、ステップ(f)、(g)および(h)における前記脱保護が、TFA、HCl、HBr、HPOおよびHSOから選択される酸と前記式Oの化合物を反応させることにより、同時に達成されて、前記式Kの化合物を生成する、請求項25に記載の方法。
【請求項45】
前記酸がHSOである、請求項44に記載の方法。
【請求項46】
前記式K中のAがHSOであり、nが3である、請求項45に記載の方法。
【請求項47】
式Pの化合物:
【化74】
(式中、
は、適切なアミノ保護基であり、
は、適切なアミノ保護基である)を調製するための方法であって、
(a)式Bの化合物:
【化75】
を提供するステップと、
(b)前記式Bの化合物をスルホン化して、式F-2aの化合物:
【化76】
(式中、
Mは、アルカリ金属から選択される金属である)
を形成するステップと、
(c)前記式F-2aの化合物を化合物F-1:
【化77】
またはその塩と縮合させて、
式Qの化合物:
【化78】
を形成するステップと、
(d)前記式Qの化合物を還元して前記式Pの化合物を形成するステップと
を含む、方法。
【請求項48】
式B、F-2a、QおよびP中のRがBocである、請求項47に記載の方法。
【請求項49】
式B、F-2a、QおよびP中のRがBocである、請求項47に記載の方法。
【請求項50】
式B、F-2a、QおよびP中のRおよびRがBocである、請求項47に記載の方法。
【請求項51】
式F-2a中のMがナトリウムまたはカリウムである、請求項47に記載の方法。
【請求項52】
ステップ(c)において、前記式Qの化合物が単離されていない中間体である、請求項47に記載の方法。
【請求項53】
ステップ(b)における前記スルホン化が、前記式Bの化合物をMS(ここで、Mはアルカリ金属である)と反応させることにより達成される、請求項47に記載の方法。
【請求項54】
前記アルカリ金属がナトリウムまたはカリウムである、請求項53に記載の方法。
【請求項55】
ステップ(c)における前記式F-2aの化合物および前記式F-1の化合物の前記縮合が、適切な縮合触媒によって触媒される、請求項47に記載の方法。
【請求項56】
前記適切な縮合触媒がKPOである、請求項55に記載の方法。
【請求項57】
ステップ(d)における前記還元が、前記式Qの化合物をNaBH、NaCNBH、およびBHから選択される還元剤と反応させることにより達成される、請求項47に記載の方法。
【請求項58】
前記還元剤がNaBHである、請求項57に記載の方法。
【請求項59】
式F-2aの化合物:
【化79】
(式中、
は、適切なアミノ保護基であり、
は、適切なアミノ保護基であり、
Mは、アルカリ金属から選択される金属である)を調製するための方法であって、
(a)式Bの化合物:
【化80】
を提供するステップと、
(b)前記式Bの化合物をスルホン化して、前記式F-2aの化合物を形成するステップと
を含む、方法。
【請求項60】
式BおよびF-2a中のRがBocである、請求項59に記載の方法。
【請求項61】
式BおよびF-2a中のRがBocである、請求項59に記載の方法。
【請求項62】
式BおよびF-2a中のRおよびRがBocである、請求項59に記載の方法。
【請求項63】
式F-2a中のMがナトリウムまたはカリウムである、請求項59に記載の方法。
【請求項64】
ステップ(b)における前記スルホン化が、前記式Bの化合物をMS(ここで、Mはアルカリ金属である)と反応させることにより達成される、請求項59に記載の方法。
【請求項65】
前記アルカリ金属がナトリウムまたはカリウムである、請求項64に記載の方法。
【請求項66】
式F-2の化合物:
【化81】
であって、式中、
は、水素、-C(O)R’、-C(O)OR’、-C(O)NR’R’’、-S(O)R’、-Si(R’)、または必要に応じて置換されている基であって、C~Cアルキル、C~Cハロアルキル、C~Cシクロアルキル、C~Cアルコキシ-C~Cアルキル、フェニル、アリールもしくはヘテロアリールから選択される必要に応じて置換されている基であり;
およびRは独立に、水素、-C(O)R’、-C(O)OR’、-C(O)NR’R’’、-S(O)R’、-Si(R’)、または必要に応じて置換されている基であって、C~Cアルキル、C~Cハロアルキル、C~Cシクロアルキル、C~Cアルコキシ-C~Cアルキル、フェニル、アリールもしくはヘテロアリールから選択される必要に応じて置換されている基であり;
R’およびR’’は、独立に、水素、またはC1~6脂肪族、3~8員飽和もしくは部分不飽和単環式炭素環、フェニル、8~10員二環式芳香族炭素環、窒素、酸素もしくは硫黄から独立に選択される1~2個のヘテロ原子を有する4~8員飽和もしくは部分不飽和単環式複素環、窒素、酸素もしくは硫黄から独立に選択される1~4個のヘテロ原子を有する5~6員単環式複素芳香環、または窒素、酸素もしくは硫黄から独立に選択される1~5個のヘテロ原子を有する8~10員二環式複素芳香環から選択される、必要に応じて置換されている基であり;
Mは、アルカリ金属から選択される金属である、
化合物。
【請求項67】
が水素である、請求項66に記載の化合物。
【請求項68】
Mがナトリウムまたはカリウムである、請求項67に記載の化合物。
【請求項69】
およびRが独立に、水素、BocまたはCbzである、請求項68に記載の化合物。
【請求項70】
およびRがBocであり、Mがナトリウムである、請求項69に記載の化合物。
【請求項71】
式Kの化合物:
【化82】
であって、式中、
Aは、HSOであり、
nは、1、2または3である、
化合物。
【請求項72】
nが3である、請求項71に記載の化合物。
【請求項73】
検出可能な量のトルエンをさらに含む、請求項71または請求項72に記載の化合物。
【請求項74】
前記トルエンの量が50ppm~1500ppmである、請求項73に記載の化合物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、マボリキサフォルを合成するための方法、およびその中間体に関する。
【0002】
関連出願の相互参照
本願は、2021年10月7日付で出願された米国仮特許出願第63/262,225号の利益を主張し、その全文は参照により本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0003】
発明の背景
C-X-Cケモカイン受容体4型(CXCR4)は、フーシンまたは分化クラスター184(CD184)としても公知であり、クラスI GPCRまたはロドプシン様GPCRファミリーに属する7回膜貫通型Gタンパク質共役受容体(GPCR)である。通常の生理学的条件下では、CXCR4は複数の役割を果たし、主に造血系および免疫系で発現される。CXCR4は、はじめに、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)細胞侵入に関与する共受容体の1つとして発見された。その後の研究では、それが脳、胸腺、リンパ組織、脾臓、胃および小腸を含む多くの組織、ならびに造血幹細胞(HSC)、成熟リンパ球および線維芽細胞などの特定の細胞型においても発現されることが示された。以前はSDF-laと呼ばれていたCXCL12は、CXCR4の唯一の既知のリガンドである。CXCR4は、胚発生中ならびに損傷および炎症に応答した幹細胞の遊走を媒介する。細胞増殖性障害、アルツハイマー病、HIV、関節リウマチ、肺線維症などのヒト疾患におけるCXCR4の複数の役割が実証されている。例えば、CXCR4およびCXCL12の発現は、いくつかの腫瘍型で認められている。CXCL12は、癌関連線維芽細胞(CAF)によって発現され、腫瘍微小環境(TME)に高レベルで存在することが多い。乳房、卵巣、腎臓、肺および黒色腫を含む幅広い腫瘍型の臨床研究では、CXCR4/CXCL12の発現は、予後不良と関連し、CXCL12の発現部位であるリンパ節、肺、肝臓および脳への転移リスクの増加と関連している。CXCR4は、黒色腫細胞、特に、黒色腫幹細胞を代表すると考えられているCD133+集団で頻繁に発現される;インビトロ実験およびマウスモデルでは、CXCL12がそのような細胞に対して走化性であることが実証されている。
【0004】
さらに、現在、CXCL12/CXCR4軸が血管新生阻害剤に対する腫瘍応答性の消失または欠如(「血管新生エスケープ」とも呼ばれる)に寄与することを暗示する証拠がある。動物癌モデルでは、CXCR4機能の干渉によりTMEが変化し、腫瘍再血管新生の排除およびTreg細胞に対するCD8+T細胞の比の増加などの複数の機構によって腫瘍を免疫攻撃に対して感作させることが実証されている。これらの効果により、異種移植、同系およびトランスジェニック癌モデルにおいて、腫瘍量が大幅に減少し、全生存期間が増加した。Vanharantaら(2013)Nat Med 19:50-56;Gale and McColl(1999)BioEssays 21:17-28;Highfillら(2014)Sci Transl Med 6:ra67;Facciabeneら(2011)Nature 475:226-230を参照されたい。
これらのデータは、例えば細胞増殖性障害において、受容体の異常または望ましくない発現によって媒介される多くの疾患および状態を処置するための、CXCR4阻害剤に対するまだ対処されていない大きな必要性を強調している。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】Vanharantaら(2013)Nat Med 19:50-56
【非特許文献2】Gale and McColl(1999)BioEssays 21:17-28
【非特許文献3】Highfillら(2014)Sci Transl Med 6:ra67
【非特許文献4】Facciabeneら(2011)Nature 475:226-230
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
発明の詳細な説明
マボリキサフォルおよびその薬学的に許容され得る組成物は、CXC受容体4型(CXCR4)阻害剤として有効であり、CXCR4に関連する様々な疾患、障害、または状態、例えば様々な癌を含む過剰増殖状態を処置するのに有用である。本発明の方法および中間体は、マボリキサフォルの調製に有用であり、このマボリキサフォルは、例えば、Brandsの名義の米国特許出願第16/215,963号(米国特許第10,548,889号)に記載されており、この米国特許出願第16/215,963号(米国特許第10,548,889号)の全体は参照により本明細書に組み込まれる。本発明は、既存の方法での対応する中間体と比較して、単離、精製および/または取り扱いがより容易であり、かつ/あるいはより安定であるマボリキサフォルの合成のための特定の新規中間体に関する。さらに、そのような中間体は、改善された効率、再現性、純度、拡張性および製造可能性を特徴とするマボリキサフォルの合成方法を可能にする。特定の実施形態では、本化合物は、一般に、以下に示されるスキームIに従って、3つのフラグメントF-1、F-2およびF-3の組立てによって調製される。
スキームI
【化1】
【0007】
上記のスキームIにおいて、Rは、H、適切なヒドロキシル保護基であるか、または、それが結合している酸素原子と一緒になって、脱離基であり;RおよびRは、独立にHであるかまたは適切なアミノ保護基であり;Rは、Hまたは適切なベンゾイミダゾール保護基であり;Lは適切な脱離基であり;Mは、アルカリ金属から選択される金属である。
1.フラグメントF-1
【0008】
フラグメントF-1は、例えば、米国特許出願第16/215,963号(米国特許第10,548,889号);米国特許第7,354,934号;およびCrawfordら、Organic Process Research&Development,2008,12,823-830に記載されているように、当技術分野で公知の方法を使用して調製することができ;これらの各々の全内容は参照により本明細書に組み込まれる。
2.フラグメントF-2
【0009】
一実施形態によれば、本発明は、化合物F-2:
【化2】
(式中、
は、H、適切なヒドロキシル保護基であるか、または、それが結合している酸素原子と一緒になって、脱離基であり;
およびRは、独立に、H、または適切なアミノ保護基であり;かつ
Mは、アルカリ金属から選択される金属である)を提供する。
【0010】
脱離基は当技術分野で周知であり、それには、その全体が参照により本明細書に組み込まれるLeaving group,Gold Book,IUPAC.2009,ISBN978-0-9678550-9-7に詳細に記載されているものが含まれる。
【0011】
適切なヒドロキシルおよびアミノ保護基は当技術分野で周知であり、それには、その全体が参照により本明細書に組み込まれるProtecting Groups in Organic Synthesis,T.W.Greene and P.G.M.Wuts,3rd edition,John Wiley&Sons,1999に詳細に記載されているものが含まれる。
【0012】
特定の実施形態では、Rは、それが結合している酸素原子と一緒になって、エステル、エーテル、シリルエーテル、アルキルエーテル、アリールアルキルエーテル、およびアルコキシアルキルエーテルから選択される。そのようなエステルの例としては、ホルメート、アセテート、カルボネート、およびスルホネートが挙げられる。具体例としては、ホルメート、ベンゾイルホルメート、クロロアセテート、トリフルオロアセテート、メトキシアセテート、トリフェニルメトキシアセテート、p-クロロフェノキシアセテート、3-フェニルプロピオネート、4-オキソペンタノエート、4,4-(エチレンジチオ)ペンタノエート、ピバロエート(トリメチルアセチル)、クロトネート、4-メトキシ-クロトネート、ベンゾエート、p-ベンジルベンゾエート、2,4,6-トリメチルベンゾエート、トシレート、メシレート、トリフレート、あるいはカルボネート、例えばメチル、9-フルオレニルメチル、エチル、2,2,2-トリクロロエチル、2-(トリメチルシリル)エチル、2-(フェニルスルホニル)エチル、ビニル、アリル、およびp-ニトロベンジルなどが挙げられる。そのようなシリルエーテルの例としては、トリメチルシリル、トリエチルシリル、t-ブチルジメチルシリル、t-ブチルジフェニルシリル、トリイソプロピルシリル、および他のトリアルキルシリルエーテルが挙げられる。アルキルエーテルとしては、メチル、ベンジル、p-メトキシベンジル、3,4-ジメトキシベンジル、トリチル、t-ブチル、アリル、およびアリルオキシカルボニルエーテルまたは誘導体が挙げられる。アルコキシアルキルエーテルとしては、アセタール、例えばメトキシメチル、メチルチオメチル、(2-メトキシエトキシ)メチル、ベンジルオキシメチル、ベータ-(トリメチルシリル)エトキシメチルおよびテトラヒドロピラニルエーテルが挙げられる。アリールアルキルエーテルの例としては、ベンジル、p-メトキシベンジル(MPM)、3,4-ジメトキシベンジル、O-ニトロベンジル、p-ニトロベンジル、p-ハロベンジル、2,6-ジクロロベンジル、p-シアノベンジル、ならびに2-および4-ピコリルが挙げられる。
【0013】
一実施形態によれば、RはHである。
【0014】
特定の実施形態では、Rは、それが結合している窒素原子と一緒になって、以下に限定されるものではないが、アラルキルアミン、カルバメート、アリルアミン、アミドなど、例えば、t-ブチルオキシカルボニル(Boc)、エチルオキシカルボニル、メチルオキシカルボニル、トリクロロエチルオキシカルボニル、アリルオキシカルボニル(Alloc)、ベンジルオキシカルボニル(CBZ)、アリル、ベンジル(Bn)、フルオレニルメチルカルボニル(Fmoc)、アセチル、クロロアセチル、ジクロロアセチル、トリクロロアセチル、フェニルアセチル、トリフルオロアセチル、ベンゾイル、ピバロイルなどから選択される。
【0015】
一実施形態によれば、RはBocである。
【0016】
特定の実施形態では、Rは、それが結合している窒素原子と一緒になって、以下に限定されるものではないが、アラルキルアミン、カルバメート、アリルアミン、アミドなど、例えば、t-ブチルオキシカルボニル(Boc)、エチルオキシカルボニル、メチルオキシカルボニル、トリクロロエチルオキシカルボニル、アリルオキシカルボニル(Alloc)、ベンジルオキシカルボニル(CBZ)、アリル、ベンジル(Bn)、フルオレニルメチルカルボニル(Fmoc)、アセチル、クロロアセチル、ジクロロアセチル、トリクロロアセチル、フェニルアセチル、トリフルオロアセチル、ベンゾイル、ピバロイルなどから選択される。
【0017】
一実施形態によれば、RはBocである。
【0018】
別の実施形態によれば、RとRはいずれもBocである。
【0019】
一実施形態によれば、MはNaである。
【0020】
一実施形態によれば、MはKである。
【0021】
特定の実施形態では、本発明は、式F-2a:
【化3】
(式中、R、RおよびMは、単独でも組み合わせでも、本明細書で定義されるとおりである)の化合物を提供する。
【0022】
特定の実施形態では、本発明は、式F-2b:
【化4】
(式中、RおよびMは、単独でも組み合わせでも、本明細書で定義されるとおりである)の化合物を提供する。
【0023】
特定の実施形態では、本発明は、式F-2c:
【化5】
(式中、Mは本明細書で定義されるとおりである)の化合物を提供する。
【0024】
特定の実施形態では、本発明は、式F-2d:
【化6】
の化合物を提供する。
【0025】
化合物F-2dは、以下の実施例1に示すように、重亜硫酸塩と、対応するアルデヒドである化合物B-1とを用いて効率的に合成することができる。
【0026】
F-2dなどの式F-2の化合物は、単離、精製および保存が容易な安定した固体である。対応するアルデヒドである化合物B-1は、精製および保存が困難である。式F-2の化合物を使用すると、B-1を使用する場合と比較して、その後の合成ステップでより良好な収率が得られる。特定の実施形態では、式F-2の化合物は、以下に示すスキームIIに従って調製される:
スキームII
【化7】
【0027】
上記のスキームIIにおいて、R、R、RおよびMは、化合物F-2について上に定義されるとおりである。
【0028】
一態様では、本発明は、上記スキームIIに示されるステップに従って式D、C、B、AおよびF-2の化合物を調製するための方法を提供する。本式の化合物において、R、R、RおよびMは、化合物F-2について上に定義されるとおりである。
【0029】
ステップS-1では、化合物Eのアミノ基が適切な保護基で保護される。アミノ基に適した保護基は当業者に周知であり、化合物F-2について上に定義されるとおりである。特定の実施形態では、保護基は、Boc、Cbz、エチルオキシカルボニル、メチルオキシカルボニル、トリクロロエチルオキシカルボニル、アリルオキシカルボニル(Alloc)、アリル、ベンジル(Bn)、フルオレニルメチルカルボニル(Fmoc)、アセチル、クロロアセチル、ジクロロアセチル、トリクロロアセチル、フェニルアセチル、トリフルオロアセチル、ベンゾイルまたはピバロイルである。一実施形態では、保護基はBocである。アミノ基を保護するための方法は当業者に周知であり、それには、典型的には、アミノ基を有する化合物と、PGが保護基であり、LGが適切な脱離基である式PGLGの適切な試薬との間の反応が含まれる。例示的な反応としては、その全体が参照により本明細書に組み込まれるProtecting Groups in Organic Synthesis,T.W.Greene and P.G.M.Wuts,3rd edition,John Wiley&Sons,1999に詳細に記載されているものが挙げられる。特定の実施形態では、化合物Eは、Boc-Cl、Cbz-Clおよび(Boc)Oから選択される試薬と化合物Eを反応させることにより、保護される。一実施形態では、化合物Eは、(Boc)Oと化合物Eを反応させることにより、保護される。特定の実施形態では、保護は、CHCl、THF、DMFおよびMeCNから選択される溶媒中で行われる。一実施形態では、保護はMeCN中で行われる。特定の実施形態では、保護は、1~1.5モル当量の(Boc)Oを使用することにより行われる。一実施形態では、保護は、1~1.2モル当量の(Boc)Oを使用することにより行われる。一実施形態では、保護は、1.2モル当量の(Boc)Oを使用することにより行われる。特定の実施形態では、保護は、DMAPおよびピリジンから選択される触媒の存在下で行われる。一実施形態では、保護はDMAPによって触媒される。さらに別の実施形態では、保護は触媒を用いずに行われる。特定の実施形態では、保護は20~60℃で行われる。一実施形態では、保護は35~45℃で行われる。一実施形態では、保護は40℃で行われる。特定の実施形態では、保護は、反応混合物を0~2時間撹拌することにより行われる。一実施形態では、保護は、反応混合物を0~1時間撹拌することにより行われる。別の実施形態では、保護は、反応混合物を0~30分間撹拌することにより行われる。別の実施形態では、保護は、反応混合物を0分間撹拌することにより行われる。一実施形態によれば、反応は、米国特許出願第16/215,963号(米国特許第10,548,889号)に記載されているように行われる。一実施形態では、反応は、以下の実施例1のステップ1Aに記載されるように行われる。さらに別の実施形態では、化合物Dは、単離されていない中間体である。
【0030】
ステップS-2では、化合物Dの-NH-基が適切な保護基で保護される。-NH-基に適した保護基は当業者に周知であり、化合物F-2について上に定義されるとおりである。特定の実施形態では、保護基は、Boc、Cbz、エチルオキシカルボニル、メチルオキシカルボニル、トリクロロエチルオキシカルボニル、アリルオキシカルボニル(Alloc)、アリル、ベンジル(Bn)、フルオレニルメチルカルボニル(Fmoc)、アセチル、クロロアセチル、ジクロロアセチル、トリクロロアセチル、フェニルアセチル、トリフルオロアセチル、ベンゾイルまたはピバロイルである。一実施形態では、保護基はBocである。アミノ基を保護するための方法は当業者に周知であり、それには、典型的には、アミノ基を有する化合物と、PGが保護基であり、LGが適切な脱離基である式PGLGの適切な試薬との間の反応が含まれる。例示的な反応としては、その全体が参照により本明細書に組み込まれるProtecting Groups in Organic Synthesis,T.W.Greene and P.G.M.Wuts,3rd edition,John Wiley&Sons,1999に詳細に記載されているものが挙げられる。特定の実施形態では、化合物Dは、Boc-Cl、Cbz-Clおよび(Boc)Oから選択される試薬と化合物Dを反応させることにより、保護される。一実施形態では、化合物Dは、(Boc)Oと化合物Dを反応させることにより、保護される。特定の実施形態では、保護は、CHCl、THF、DMFおよびMeCNから選択される溶媒中で行われる。一実施形態では、保護はMeCN中で行われる。特定の実施形態では、保護は、1~1.5モル当量の(Boc)Oを使用することにより行われる。一実施形態では、保護は、1~1.2モル当量の(Boc)Oを使用することにより行われる。一実施形態では、保護は、1.2モル当量の(Boc)Oを使用することにより行われる。特定の実施形態では、保護は、DMAPおよびピリジンから選択される触媒の存在下で行われる。一実施形態では、保護はDMAPによって触媒される。さらに別の実施形態では、保護は触媒を用いずに行われる。特定の実施形態では、保護は20~60℃で行われる。一実施形態では、保護は35~45℃で行われる。一実施形態では、保護は40℃で行われる。特定の実施形態では、保護は、反応混合物を0~2時間撹拌することにより行われる。一実施形態では、保護は、反応混合物を0~1時間撹拌することにより行われる。別の実施形態では、保護は、反応混合物を0~30分間撹拌することにより行われる。別の実施形態では、保護は、反応混合物を0分間撹拌することにより行われる。一実施形態によれば、反応は、米国特許出願第16/215,963号(米国特許第10,548,889号)に記載されているように行われる。一実施形態では、反応は、以下の実施例1のステップ1Bに記載されるように行われる。別の実施形態では、化合物Cは、単離されていない中間体である。さらに別の実施形態では、ステップS-1およびS-2の両方が単一の反応容器内で行われる。
【0031】
ステップS-3では、化合物Cのアセタール基が脱保護される。アセタール基を脱保護する方法は当業者に周知であり、それには、典型的には、アセタール基を有する化合物と適切な酸との間の反応が含まれる。例示的な反応としては、その全体が参照により本明細書に組み込まれるProtecting Groups in Organic Synthesis,T.W.Greene and P.G.M.Wuts,3rd edition,John Wiley&Sons,1999に詳細に記載されているものが挙げられる。特定の実施形態では、化合物Cは、氷酢酸、pTSA、HClおよびHSOから選択される酸と化合物Cを反応させることにより、脱保護される。一実施形態では、化合物Cは、氷酢酸と化合物Cを反応させることにより、脱保護される。一実施形態では、氷酢酸が溶媒として使用される脱保護が行われる。特定の実施形態では、脱保護はNaClの存在下で行われる。特定の実施形態では、脱保護は20~60℃で行われる。一実施形態では、脱保護は25~45℃で行われる。一実施形態では、脱保護は30℃で行われる。特定の実施形態では、脱保護は、反応混合物を0~5時間撹拌することにより行われる。一実施形態では、脱保護は、反応混合物を1~4時間撹拌することにより行われる。別の実施形態では、脱保護は、反応混合物を2~3時間撹拌することにより行われる。別の実施形態では、脱保護は、反応混合物を3時間撹拌することにより行われる。特定の実施形態では、脱保護後の生成物は、ヘプタン中、25~55℃で1~3時間、脱色活性炭で処理される。一実施形態では、脱保護後の生成物は、ヘプタン中、35~45℃で1~2時間、脱色活性炭で処理される。一実施形態では、脱保護後の生成物は、ヘプタン中、40℃で1時間、脱色活性炭で処理される。一実施形態によれば、反応は、米国特許出願第16/215,963号(米国特許第10,548,889号)に記載されているように行われる。一実施形態では、反応は、以下の実施例1のステップ1Cに記載されるように行われる。さらに別の実施形態では、化合物Bは、単離されていない中間体である。
【0032】
ステップS-4では、化合物Bのアルデヒド基が重亜硫酸塩付加物に変換される。アルデヒド-重亜硫酸塩付加物は当業者に周知であり、それには、その全体が参照により本明細書に組み込まれるKissaneら、Tetrahedron Letters,54(2013),6587-6591に詳細に記載されているものが含まれる。特定の実施形態では、Mは、NaまたはKである。他の実施形態では、MはNaである。アルデヒド基を重亜硫酸塩付加物に変換する方法は当業者に周知であり、それには、典型的には、アルデヒド基を有する化合物とアルカリ金属のメタ重亜硫酸塩との間の反応が含まれる。例示的な反応としては、その全体が参照により本明細書に組み込まれる、Kissaneら、Tetrahedron Letters,54(2013),6587-6591に詳細に記載されているものが挙げられる。特定の実施形態では、化合物Bは、Mがアルカリ金属である式Mの化合物と化合物Bを反応させることにより、重亜硫酸塩付加物に変換される。一実施形態では、化合物Bは、MがNaおよびKから選択される式Mの化合物と化合物Bを反応させることにより、重亜硫酸塩付加物に変換される。別の実施形態では、化合物Bは、MがNaである式Mの化合物と化合物Bを反応させることにより、重亜硫酸塩付加物に変換される。別の実施形態では、化合物Bは、MがKである式Mの化合物と化合物Bを反応させることにより、重亜硫酸塩付加物に変換される。一実施形態では、反応は、ヘプタン中の化合物Bを精製水中のMと反応させることにより行われる。特定の実施形態では、反応は、20~60℃で行われる。一実施形態では、反応は35~45℃で行われる。一実施形態では、反応は40℃で行われる。特定の実施形態では、0.5~0.8モル当量のMが4~8等分して添加される反応が行われる。一実施形態では、0.625モル当量のMが5等分して添加される反応が行われる。特定の実施形態では、反応は、反応混合物を25~60時間撹拌することにより行われる。一実施形態では、反応は、反応混合物を30~45時間撹拌することにより行われる。別の実施形態では、脱保護は、反応混合物を36時間撹拌することにより行われる。特定の実施形態では、生成物Aは、反応混合物を2~6時間かけて5~35℃に冷却することにより沈殿させられる。一実施形態では、生成物Aは、反応混合物を3~4時間かけて15~25℃に冷却することにより沈殿させられる。一実施形態では、生成物Aは、反応混合物を約3時間かけて20℃に冷却することにより沈殿させられる。特定の実施形態では、沈殿生成物Aは、5~35℃で、予め混合したTHFとn-ヘプタンの1:1混合物で洗浄することにより精製される。一実施形態では、沈殿生成物Aは、15~25℃で、予め混合したTHFとn-ヘプタンの1:1混合物で洗浄することにより精製される。一実施形態では、沈殿生成物Aは、20℃で、予め混合したTHFとn-ヘプタンの1:1混合物で沈殿生成物Aを洗浄することにより精製される。特定の実施形態では、沈殿生成物Aは、5~35℃で、例えば、1回、2回、3回、4回または5回、n-ヘプタンで沈殿生成物Aを洗浄することにより精製される。一実施形態では、沈殿生成物Aは、15~25℃で、例えば、1回、2回、または3回、n-ヘプタンで沈殿生成物Aを洗浄することにより精製される。一実施形態では、沈殿生成物Aは、20℃で、例えば、1回、2回または3回、n-ヘプタンで沈殿生成物Aを洗浄することにより精製される。特定の実施形態では、沈殿生成物Aは、MeCNで沈殿生成物Aを洗浄することにより精製される。特定の実施形態では、固体生成物Aは、窒素流、例えば温窒素下で乾燥させられる。いくつかの実施形態では、生成物Aは、窒素下、20~60℃で好適な期間、例えば約5~25時間乾燥させられる。一実施形態では、生成物Aは、窒素下、35~40℃で好適な期間、例えば約10~14時間乾燥させられる。一実施形態では、固体生成物Aは、窒素流下、38℃で、例えば約12時間乾燥させられる。一実施形態では、反応は、以下の実施例1のステップ1Dに記載されるように行われる。
【0033】
生成物Aは、ステップS-4から得られたまま使用されてもよく、またはヒドロキシル基は必要に応じて保護される。ステップS-5で、化合物Aのヒドロキシル基が適切なヒドロキシル保護基で保護される。ヒドロキシル基に適切な保護基は当業者に周知であり、化合物F-2について上に定義されるとおりである。ヒドロキシル基を保護するための方法は当業者に周知であり、それには、典型的には、ヒドロキシル基を有する化合物と、PGが保護基であり、LGが適切な脱離基である式PGLGの適切な試薬との間の反応が含まれる。例示的な反応としては、その全体が参照により本明細書に組み込まれるProtecting Groups in Organic Synthesis,T.W.Greene and P.G.M.Wuts,3rd edition,John Wiley&Sons,1999に詳細に記載されているものが挙げられる。
3.フラグメントF-3
【0034】
一実施形態によれば、式F-3の化合物は、以下に示すスキームIIIに従って調製される:
スキームIII:
【化8】
【0035】
一態様では、本発明は、上記スキームIIIに示されるステップに従って式GおよびF-3の化合物を調製するための方法を提供する。式H、GおよびF-3の化合物において、Rは適切なベンゾイミダゾール保護基であり;Lは適切な脱離基である。
【0036】
適切なベンゾイミダゾール保護基は、当技術分野で周知であり、それには、その全体が参照により本明細書に組み込まれるProtecting Groups in Organic Synthesis,T.W.Greene and P.G.M.Wuts,3rd edition,John Wiley&Sons,1999に詳細に記載されているものが含まれる。特定の実施形態では、Rは、それが結合している窒素原子と一緒になって、以下に限定されるものではないが、アラルキルアミン、カルバメート、アリルアミン、アミドなど、例えば、t-ブチルオキシカルボニル(Boc)、エチルオキシカルボニル、メチルオキシカルボニル、トリクロロエチルオキシカルボニル、アリルオキシカルボニル(Alloc)、ベンジルオキシカルボニル(CBZ)、アリル、ベンジル(Bn)、フルオレニルメチルカルボニル(Fmoc)、アセチル、クロロアセチル、ジクロロアセチル、トリクロロアセチル、フェニルアセチル、トリフルオロアセチル、ベンゾイル、ピバロイルなどから選択される。一実施形態によれば、RはBocである。
【0037】
上で定義されるように、Lは適切な脱離基である。適切な脱離基は当技術分野で周知であり、例えば、Advanced Organic Chemistry,J.March,5th Edition,John Wiley and Sons,2000を参照されたい。そのような脱離基としては、ハロゲン、アルコキシ、スルホニルオキシ、必要に応じて置換されているアルキルスルホニルオキシ、必要に応じて置換されているアルケニルスルホニルオキシ、必要に応じて置換されているアリールスルホニルオキシ、およびジアゾニウム部分が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0038】
適切な脱離基のさらなる例としては、クロロ、ヨード、ブロモ、フルオロ、メタンスルホニルオキシ(メシルオキシ)、p-トルエンスルホニルオキシ(トシルオキシ)、トリフルオロメタンスルホニルオキシ(トリフリルオキシ)、ニトロ-フェニルスルホニルオキシ(ノシルオキシ)、およびブロモ-フェニルスルホニルオキシ(ブロシルオキシ)が挙げられる。特定の実施形態では、Lはハロゲンである。他の実施形態では、Lは、必要に応じて置換されているアルキルスルホニルオキシ、必要に応じて置換されているアルケニルスルホニルオキシ、または必要に応じて置換されているアリールスルホニルオキシである。一実施形態によれば、Lはハロゲンである。さらに別の実施形態によれば、Lはクロロである。
【0039】
一実施形態によれば、スキームIIIの化合物F-3は、式F-3aの化合物:
【化9】
である。
【0040】
ステップS-6では、化合物Jと式Hの化合物との間で環化反応が行われる。o-アリーレンジアミンとカルボン酸またはその誘導体との間の酸触媒環化反応は、当業者に周知であり、例えば、E.C.Wagner and W.H.Millett,Benzimidazole,Organic Syntheses,(1943),Collective Volume 2,page 65を参照されたい。特定の実施形態では、化合物Jと式Hの化合物との間の環化反応は、ギ酸、HCl、HBr、HSOおよびHPOから選択される酸によって触媒される。一実施形態によれば、環化反応はHClによって触媒される。特定の実施形態では、環化反応は、水、DMFおよびMeCNから選択される溶媒中で行われる。一実施形態では、溶媒は水である。特定の実施形態では、環化反応は、1~3モル当量のクロロ酢酸を使用することにより行われる。一実施形態では、環化反応は、1~1.7モル当量のクロロ酢酸を用いて行われる。一実施形態では、環化反応は、約1.5モル当量のクロロ酢酸を用いて行われる。特定の実施形態では、環化反応は、約40~120℃で行われる。一実施形態では、環化反応は、約70~90℃で行われる。一実施形態では、環化反応は約80℃で行われる。特定の実施形態では、環化反応は、化合物Jと化合物Hとを約5~35時間互いに接触させることにより行われる。一実施形態では、環化反応は、化合物Jと化合物Hとを約15~25時間互いに接触させることにより行われる。別の実施形態では、環化反応は、化合物Jと化合物Hとを約20時間互いに接触させることにより行われる。特定の実施形態では、生成物Gは、反応混合物を約0~4時間かけて約0~25℃に冷却し、リン酸カリウム溶液を添加して反応混合物のpHを5~9に調整することにより沈殿させられる。一実施形態では、生成物Gは、反応混合物を約1~2時間かけて約5~15℃に冷却し、リン酸カリウム溶液を添加して反応混合物のpHを6.8~7.2に調整することにより沈殿させられる。一実施形態では、生成物Gは、反応混合物を約1時間10℃に冷却し、リン酸カリウム溶液を添加して反応混合物のpHを約7に調整することにより沈殿させられる。特定の実施形態では、沈殿生成物Gは、水で沈殿生成物Gを洗浄することにより精製される。洗浄は、必要に応じて、低温で、例えば0~25℃で行われる。洗浄は、必要に応じて、例えば1~7回、繰り返される。特定の実施形態では、沈殿生成物Gは、約5~15℃の水で沈殿生成物Gを合計2~5回洗浄することにより精製される。一実施形態では、沈殿生成物Gは、約10℃の水で沈殿生成物Gを合計3回洗浄することにより精製される。特定の実施形態では、沈殿生成物Gは、0~30℃のMeCNで沈殿生成物Gを2~10回洗浄することにより精製される。一実施形態では、沈殿生成物Gは、5~15℃のMeCNで沈殿生成物Gを5~8回洗浄することにより精製される。一実施形態では、沈殿生成物Gは、約10℃のMeCNで沈殿生成物Gを合計6回洗浄することにより精製される。特定の実施形態では、固体生成物Gは、窒素流下で乾燥させられ、これは必要に応じて低温で、例えば5から35℃で実施される。一実施形態では、固体生成物Gは、窒素流下、15~25℃で乾燥させられる。いくつかの実施形態では、生成物Gは、カールフィッシャー分析により、その含水量が25%w/w以下になるまで乾燥させられる。一実施形態では、生成物Gは、カールフィッシャー分析により、その含水量が15%w/w以下になるまで乾燥させられる。一実施形態では、固体生成物Gは、例えば、カールフィッシャー分析により、その含水量が15%w/w以下になるまで、約20℃の窒素流下で乾燥させられる。特定の実施形態では、固体生成物Gは、例えば、カールフィッシャー分析により、その含水量が5%w/w以下になるまで、約10~50℃の窒素流下で乾燥させられる。一実施形態では、固体生成物Gは、例えば、カールフィッシャー分析により、その含水量が5%w/w以下になるまで、約25~35℃の窒素流下で乾燥させられる。一実施形態では、固体生成物Gは、カールフィッシャー分析により、その含水量が5%w/w以下になるまで、約30℃の窒素流下で乾燥させられる。特定の実施形態では、固体生成物Gは、カールフィッシャー分析により、その含水量が1%w/w以下になるまで、約30~70℃の窒素流下で乾燥させられる。一実施形態では、固体生成物Gは、カールフィッシャー分析により、その含水量が1%w/w以下になるまで、約45~55℃の窒素流下で乾燥させられる。一実施形態では、固体生成物Gは、カールフィッシャー分析により含水量が1%w/w以下になるまで、約50℃の窒素流下で乾燥させられる。一実施形態では、反応は、以下の実施例2のステップ2Aに記載されるように行われる。
【0041】
ステップS-7では、化合物Gの-NH-基が適切なベンゾイミダゾール保護基で保護される。適切なベンゾイミダゾール保護基は当業者に周知であり、化合物F-3について上に定義されるとおりである。ベンゾイミダゾールの-NH-基を保護するための方法は当業者に周知であり、それには、典型的には、ベンゾイミダゾール部分と-NH-基とを有する化合物と、PGが保護基であり、LGが適切な脱離基である式PGLGの適切な試薬との反応が含まれる。例示的な反応としては、その全体が参照により本明細書に組み込まれるProtecting Groups in Organic Synthesis,T.W.Greene and P.G.M.Wuts,3rd edition,John Wiley&Sons,1999に詳細に記載されているものが挙げられる。特定の実施形態では、化合物Gは、Boc-Cl、Cbz-Clおよび(Boc)Oから選択される試薬と化合物Gを反応させることにより、保護される。一実施形態では、化合物Gは、(Boc)Oと化合物Gを反応させることにより、保護される。特定の実施形態では、保護は、CHCl、THF、DMF、およびMeCNから選択される溶媒中で行われる。一実施形態では、保護はDMF中で行われる。特定の実施形態では、保護は、1~2モル当量の(Boc)Oを使用することにより行われる。一実施形態では、保護は、1~1.6モル当量の(Boc)Oを使用することにより行われる。一実施形態では、保護は、1.4モル当量の(Boc)Oを使用することにより行われる。特定の実施形態では、保護は、DMAPおよびピリジンから選択される触媒の存在下で行われる。一実施形態では、保護はDMAPによって触媒される。さらに別の実施形態では、保護は触媒を用いずに行われる。特定の実施形態では、保護は、DIPEAおよびTEAから選択される塩基の存在下で行われる。一実施形態では、保護はDIPEAの存在下で行われる。特定の実施形態では、保護は約20~60℃で行われる。一実施形態では、保護は、約35~45℃で行われる。一実施形態では、保護は約40℃で行われる。特定の実施形態では、保護は、反応混合物を約5~30時間または完了するまで撹拌することにより行われる。一実施形態では、保護は、反応混合物を約10~20時間撹拌することにより行われる。別の実施形態では、保護は、反応混合物を約16時間撹拌することにより行われる。特定の実施形態では、保護後、反応混合物は、約20~60℃で少なくとも40分間、脱色活性炭で処理される。一実施形態では、保護後、反応混合物は、約35~45℃で少なくとも60分間、脱色活性炭で処理される。一実施形態では、保護後、反応混合物は、約40℃で約60~90分間、脱色活性炭で処理される。いくつかの実施形態では、生成物F-3は、約20~60℃の水を添加し、続いて反応混合物を冷却して結晶化をもたらすことによる、反応混合物からの直接結晶化により精製される。一実施形態では、生成物F-3は、約35~45℃の水を添加し、続いて反応混合物を冷却して結晶化をもたらすことによる、反応混合物からの直接結晶化により精製される。いくつかの実施形態では、反応混合物は、約30~120分かけて約34~36℃に冷却される。特定の実施形態では、生成物F-3は、約25~60℃の水を添加し、続いて反応混合物を約40~80分かけて約10~45℃に冷却することによる、反応混合物からの直接結晶化により精製される。一実施形態では、生成物F-3は、約40℃の水を添加し、続いて反応混合物を約60分かけて約35℃に冷却することによる、反応混合物からの直接結晶化により精製される。いくつかの実施形態では、生成物F-3の結晶化は、F-3を種材料として添加することにより促進される。いくつかの実施形態では、種材料は約25~45℃で添加され、続いて反応混合物が約5~75分かけて約20~45℃に冷却される。いくつかの実施形態では、種材料は約34~36℃で添加され、続いて反応混合物が約20~60分かけて約28~32℃に冷却される。一実施形態では、生成物F-3の結晶化は、F-3を種材料として約35℃で添加し、続いて反応混合物を約40分間かけて約30℃に冷却することにより促進される。いくつかの実施形態では、種材料としてのF-3の添加が繰り返され、続いて反応混合物が約20~40℃で約0~3時間撹拌される。いくつかの実施形態では、種材料としてのF-3の添加が繰り返され、続いて反応混合物が約28~32℃で約1~2時間撹拌される。一実施形態では、種材料としてのF-3の添加が繰り返され、続いて反応混合物が約30℃で約1.5時間撹拌される。いくつかの実施形態では、結晶化は、反応混合物を約1~6時間かけて約5~35℃にさらに冷却することにより開始される。いくつかの実施形態では、結晶化は、反応混合物を約3~4時間かけて約15~25℃にさらに冷却することにより開始される。一実施形態では、結晶化は、反応混合物を約3時間かけて約20℃にさらに冷却することにより開始される。いくつかの実施形態では、結晶化は、約5~35℃の水をさらに添加し、続いて反応混合物を少なくとも1時間撹拌することにより開始される。いくつかの実施形態では、結晶化は、約15~25℃の水をさらに添加し、続いて反応混合物を少なくとも3時間撹拌することにより開始される。一実施形態では、結晶化は、約20℃の水をさらに添加し、続いて反応混合物を約3時間撹拌することにより開始される。いくつかの実施形態では、結晶化は、反応混合物を約1~4時間にわたり約-5~15℃に冷却し、続いて-5~15℃で少なくとも1時間撹拌することにより開始される。いくつかの実施形態では、結晶化は、反応混合物を約2.5時間にわたり約0~5℃に冷却し、続いて0~5℃で少なくとも2.5時間撹拌することにより開始される。一実施形態では、結晶化は、反応混合物を約2.5時間かけて約2℃に冷却し、続いて約2℃で約2.5時間撹拌することにより開始される。特定の実施形態では、結晶化生成物F-3は、予め混合したDMFと水の約1:1~1:3の混合物で、必要に応じて約-5~15℃の低温で結晶化生成物F-3を洗浄することにより精製される。いくつかの実施形態では、結晶化生成物F-3は、予め混合したDMFと水の約1:2混合物で、必要に応じて約0~5℃の低温で結晶化生成物F-3を洗浄することにより精製される。一実施形態では、結晶化生成物F-3は、予め混合したDMFと水の約1:2混合物で、必要に応じて約2℃の低温で結晶化生成物F-3を洗浄することにより精製される。特定の実施形態では、結晶化生成物F-3は、約0~10℃の精製水で結晶化生成物F-3を洗浄することにより精製される。いくつかの実施形態では、結晶化生成物F-3は、約0~5℃の精製水で結晶化生成物F-3を洗浄することにより精製される。一実施形態では、結晶化生成物F-3は、約2℃の精製水で結晶化生成物F-3を洗浄することにより精製される。特定の実施形態では、結晶化生成物F-3は、例えば、カールフィッシャー分析により含水量が0.2%w/w以下になり、DMF含有量が0.4%w/w以下になるまで、50℃以下で真空下で乾燥させられる。いくつかの実施形態では、結晶化生成物F-3は、例えば、カールフィッシャー分析により含水量が0.2%w/w以下になり、DMF含有量が0.4%w/w以下になるまで、30℃以下で真空下で乾燥させられる。一実施形態では、結晶化生成物F-3は、カールフィッシャー分析により含水量が0.2%w/w以下になり、DMF含有量が0.4%w/w以下になるまで、28℃で真空下で乾燥させられる。一実施形態によれば、反応は、米国特許出願第16/215,963号(米国特許第10,548,889号)に記載されているように行われる。一実施形態では、反応は、以下の実施例2のステップ2Bに記載されるように行われる。
4.マボリキサフォルを調製するためのF-1、F-2、およびF-3の組立て
【0042】
フラグメントF-1、F-2aおよびF-3の組立てによるマボリキサフォルの調製は、以下のスキームIVに記載のように達成される。
スキームIV:
【化10】
【0043】
一態様では、本発明は、スキームIVに示されるステップに従って式Q、P、O、N、M、Kの化合物およびマボリキサフォルを調製するための方法を提供する。本式の化合物において、RおよびRは、式F-2の化合物について上に定義されるとおりであり、RおよびLは、式F-3の化合物について上に定義されるとおりであり、Aは、例えばTFA、HCl、HBr、HSO、HPOなどの酸から選択され、nは1、2または3である。
【0044】
特定の実施形態では、化合物Oは、式O-1:
【化11】
の化合物である。
【0045】
一実施形態では、本発明は、式K-1:
【化12】
の化合物を提供する。
【0046】
化合物K-1は、以下の実施例3に示されるように、O-1を硫酸と反応させることで、化合物O-1の3つのBoc基を同時に脱保護することにより合成することができる。いくつかの他の対イオンを用いてマボリキサフォルを結晶化させる試みは成功しなかったか、または吸湿性の高い生成物をもたらした。化合物K-1は安定な固体であり、単離、精製および保存が容易である。K-1を使用すると、他の塩形態を使用する場合と比較して、その後の合成ステップにおいてより良好な収率が得られる。ステップS-8では、式Qのイミンを調製するために、化合物F-1のアミノ基と式F-2aの化合物のアルデヒド基の重亜硫酸塩付加物との間での縮合反応が行われる。いくつかの実施形態では、化合物F-1は、その酸付加塩、例えば、塩酸塩である。一実施形態によれば、RはBocである。一実施形態によれば、RはBocである。別の実施形態によれば、RとRはいずれもBocである。アミンとアルデヒドの重亜硫酸塩付加物との間での縮合によるイミン形成は、当業者に周知であり、例えば、参照によりその全体が本明細書に組み込まれるExpedient reductive amination of aldehyde bisulfite adducts,Neelakandha S.Maniら、Synthesis,2009,volume 23,page 4032を参照されたい。特定の実施形態によれば、化合物F-1は、好適な条件下で化合物F-2aと反応させられる。例えば、いくつかの実施形態では、F-1は、リン酸カリウム水溶液などのホスフェート水溶液の存在下で、THFとn-ヘプタンの混合物中でF-2aと反応させられる。いくつかの実施形態では、反応は、約-15~15℃などの低温で行われる。いくつかの実施形態では、反応は、約-5~5℃などの低温で行われる。一実施形態では、化合物F-1は、THFとn-ヘプタンの混合物中、リン酸カリウム水溶液の存在下、0℃で化合物F-2aと反応させられる。特定の実施形態によれば、化合物F-2aは、1~60分間隔で1~10回に分けて反応混合物に添加される。いくつかの実施形態では、化合物F-2aは、10分以上間隔を空けて2~6回に分けて反応混合物に添加される。一実施形態では、化合物F-2aは、10分間隔で4回に分けて反応混合物に添加される。特定の実施形態によれば、反応混合物は、0~10時間撹拌される。いくつかの実施形態によれば、反応混合物は、1時間以上撹拌される。一実施形態では、反応混合物は、1.5時間撹拌される。一実施形態によれば、反応混合物の有機相は、直接ステップS-9に使用される。別の実施形態によれば、化合物Qは、単離されていない中間体である。一実施形態では、反応は、以下の実施例3のステップ3Aに記載されるように行われる。
【0047】
ステップS-9では、式Pのアミンを調製するために、式Qの化合物のイミン部分が還元される。一実施形態によれば、RはBocである。一実施形態によれば、RはBocである。別の実施形態によれば、RとRはいずれもBocである。アミンを調製するためにイミンを還元する方法は、当業者に周知であり、例えば、Expedient reductive amination of aldehyde bisulfite adducts,Neelakandha S.Maniら、Synthesis,2009,volume 23,page 4032-4036を参照されたい。特定の実施形態では、イミンQは、水-THF混合物などの好適な溶媒中、水素化ホウ素ナトリウムなどの好適な還元剤と反応させられる。反応は、必要に応じて、約-25~20℃などの低温で行われる。いくつかの実施形態では、イミンQは、水-THF混合物中、-10~0℃で水素化ホウ素ナトリウムと反応させられる。一実施形態では、イミンQは、水-THF混合物中、-5℃で水素化ホウ素ナトリウムと反応させられる。一実施形態では、イミンQは、塩化亜鉛の存在下で水素化ホウ素ナトリウムと反応させられる。特定の実施形態では、反応混合物は、0~5時間撹拌される。いくつかの実施形態では、反応混合物は、1時間以上撹拌される。一実施形態では、反応混合物は、1.5時間撹拌される。特定の実施形態では、アミンPは、沈殿によってHCl塩として単離される。いくつかの実施形態では、単離は、化合物PのHCl塩とtert-ブチルメチルエーテルとの混合物を、例えば、約-25~20℃に冷却することにより行われる。いくつかの実施形態では、アミンPは、化合物PのHCl塩とtert-ブチルメチルエーテルとの混合物を約-10~0℃に冷却することによる沈殿によってHCl塩として単離される。一実施形態では、アミンPは、化合物PのHCl塩とtert-ブチルメチルエーテルとの混合物を-5℃に冷却することによる沈殿によってHCl塩として単離される。特定の実施形態では、化合物PのHCl塩は、窒素流下、10~50℃で乾燥させられる。いくつかの実施形態では、化合物PのHCl塩は、窒素流下、25℃以上で乾燥させられる。一実施形態では、化合物PのHCl塩は、窒素流下、23℃で乾燥させられる。一実施形態によれば、反応は、米国特許出願第16/215,963号(米国特許第10,548,889号)に記載されているように行われる。一実施形態では、反応は、以下の実施例3のステップ3Bに記載されるように行われる。
【0048】
ステップS-10では、式Oの化合物を調製するために、式Pの化合物が式F-3の化合物と反応させられる。一実施形態によれば、RはBocである。別の実施形態によれば、RはBocである。一実施形態によれば、RはBocである。別の実施形態によれば、RとRはいずれもBocである。さらに別の実施形態によれば、Lはクロロである。さらに別の実施形態によれば、RとRはいずれもBocである。さらに別の実施形態によれば、R、RおよびRは、Bocである。アミンのN-アルキル化のための方法は当業者に周知であり、それには、典型的には、アミンと、AGがアルキル基でありLGが適切な脱離基である式AGLGの化合物との間の反応が含まれる。例示的な反応としては、その全体が参照により本明細書に組み込まれるAdvanced Organic Chemistry:Reactions,Mechanisms,and Structure(3rd ed.),Jerry March,New York:Wiley,ISBN 0-471-85472-7に詳細に記載されているものが挙げられる。特定の実施形態では、リン酸カリウムの存在下で、式Pの化合物が式F-3の化合物と反応させられる。特定の実施形態では、式Pの化合物は、トルエンと精製水の混合物中で式F-3の化合物と反応させられる。特定の実施形態では、ヨウ化ナトリウム、ヨウ化カリウムまたはヨウ化テトラブチルアンモニウムなどのヨウ化物源の存在下で、式Pの化合物が式F-3の化合物と反応させられる。特定の実施形態では、反応は、約20~75℃などの高温で行われる。いくつかの実施形態では、反応は、約35~45℃などの高温で行われる。一実施形態では、反応は40℃で行われる。特定の実施形態では、反応は、反応混合物を5~70時間撹拌することにより行われる。いくつかの実施形態では、反応は、反応混合物を30時間以上撹拌することにより行われる。一実施形態では、反応は、反応混合物を約30時間撹拌することにより行われる。特定の実施形態では、反応混合物は、15~90℃で2-メルカプト酢酸で処理される。いくつかの実施形態では、反応混合物は、45~55℃で2-メルカプト酢酸で処理される。一実施形態では、反応混合物は、50℃で2-メルカプト酢酸で処理される。一実施形態によれば、反応混合物の有機相は、直接ステップS-11に使用される。特定の実施形態によれば、化合物Oは、単離されていない中間体である。一実施形態によれば、反応は、米国特許出願第16/215,963号(米国特許第10,548,889号)に記載されているように行われる。一実施形態では、反応は、以下の実施例3のステップ3Cに記載されるように行われる。
【0049】
ステップS-11では、式Nの化合物を調製するために、式Oの化合物が脱保護されて、保護基Rを除去する。ベンゾイミダゾール保護基の脱保護方法は当技術分野で周知であり、それには、その全体が参照により本明細書に組み込まれるProtecting Groups in Organic Synthesis,T.W.Greene and P.G.M.Wuts,3rd edition,John Wiley&Sons,1999に詳細に記載されているものが含まれる。
【0050】
ステップS-12では、化合物Mを調製するために、式Nの化合物が脱保護されて、保護基Rを除去する。アミン保護基の脱保護方法は当技術分野で周知であり、それには、その全体が参照により本明細書に組み込まれるProtecting Groups in Organic Synthesis,T.W.Greene and P.G.M.Wuts,3rd edition,John Wiley&Sons,1999に詳細に記載されているものが含まれる。
【0051】
ステップS-13では、化合物Kを調製するために、化合物Mが脱保護されて、保護基Rを除去する。アミン保護基の脱保護方法は当技術分野で周知であり、それには、その全体が参照により本明細書に組み込まれるProtecting Groups in Organic Synthesis,T.W.Greene and P.G.M.Wuts,3rd edition,John Wiley&Sons,1999に詳細に記載されているものが含まれる。
【0052】
特定の実施形態では、化合物Oは、式O-1の化合物であり;3つのBoc基は、単一ステップで除去されて、式Kの化合物を調製する。一実施形態では、化合物O-1をHSOと反応させることにより化合物O-1の3つのBoc基が単一ステップで除去されて、式K-1の化合物を調製する。単一ステップで複数のBoc基を除去するための脱保護方法は当技術分野で周知であり、それには、典型的には、2またはそれを超えるBoc基を有する化合物をTFA、HCl、HBr、HSO、およびHPOから選択される酸と反応させることが含まれる。例示的な方法としては、その全体が参照により本明細書に組み込まれるProtecting Groups in Organic Synthesis,T.W.Greene and P.G.M.Wuts,3rd edition,John Wiley&Sons,1999に詳細に記載されているものが挙げられる。特定の実施形態では、化合物O-1は、n-ブタノール中、20~90℃でHSOと反応させられる。いくつかの実施形態では、化合物O-1は、n-ブタノール中、50~60℃でHSOと反応させられる。一実施形態では、化合物O-1は、n-ブタノール中、55℃でHSOと反応させられる。一実施形態では、化合物O-1を含有するステップS-10からの有機相は、n-ブタノール中でHSOと直接反応させられる。特定の実施形態では、化合物O-1は、反応混合物を0~10時間撹拌することにより、n-ブタノール中でHSOと反応させられる。いくつかの実施形態では、化合物O-1は、反応混合物を1時間以上撹拌することにより、n-ブタノール中でHSOと反応させられる。一実施形態では、化合物O-1は、反応混合物を1.5時間撹拌することにより、n-ブタノール中でHSOと反応させられる。特定の実施形態では、化合物O-1は、反応混合物をさらに0~10時間撹拌することにより、n-ブタノール中でHSOと反応させられる。いくつかの実施形態では、化合物O-1は、反応混合物をさらに4~5時間撹拌することにより、n-ブタノール中でHSOと反応させられる。一実施形態では、化合物O-1は、反応混合物をさらに4.5時間撹拌することにより、n-ブタノール中でHSOと反応させられる。特定の実施形態では、生成物K-1は、反応混合物を冷却することにより、例えば、1~30時間かけて約0~40℃に冷却することにより、反応混合物から直接沈殿させられる。いくつかの実施形態では、生成物K-1は、反応混合物を冷却することにより、例えば、10時間以上かけて約15~25℃に冷却することにより、反応混合物から直接沈殿させられる。一実施形態では、生成物K-1は、反応混合物を、例えば、約10時間かけて約20℃に冷却することにより、反応混合物から直接沈殿させられる。特定の実施形態では、生成物K-1は、窒素下、低温、例えば約5~45℃で濾過することによって単離される。いくつかの実施形態では、生成物K-1は、窒素下、低温、例えば約15~25℃で濾過することによって単離される。一実施形態では、生成物K-1は、窒素下約20℃で濾過することによって単離される。特定の実施形態では、沈殿生成物K-1は、ベンゼン、トルエン、キシレン、ヘキサン、ペンタン、ヘプタン、n-ヘキサノール、n-ヘプタノール、および/またはn-ブタノールなどの好適な非極性溶媒または非極性溶媒の混合物で洗浄される。いくつかの実施形態では、非極性溶媒の混合物は、トルエンとn-ブタノールとの約1:10~10:1体積/体積混合物の混合物である。いくつかの実施形態では、非極性溶媒の混合物は、トルエンとn-ブタノールの約4:1体積/体積混合物の混合物である。いくつかの実施形態では、沈殿生成物K-1は、約5~50℃の予め混合されたトルエンとn-ブタノールの4:1体積/体積混合物で洗浄される。一実施形態では、沈殿生成物K-1は、約20℃の予め混合されたトルエンとn-ブタノールの4:1体積/体積混合物で洗浄される。特定の実施形態では、沈殿生成物K-1は、約5~55℃のトルエンで洗浄される。いくつかの実施形態では、沈殿生成物K-1は、約15~25℃のトルエンで洗浄される。一実施形態では、沈殿生成物K-1は、約20℃のトルエンで洗浄される。特定の実施形態では、洗浄ステップ後、生成物K-1は、5~75℃の真空下で乾燥させられる。いくつかの実施形態では、洗浄ステップ後、生成物K-1は、35℃以下で真空下で乾燥させられる。一実施形態では、洗浄ステップ後、生成物K-1は、約30℃の真空下で乾燥させられる。一実施形態では、反応は、以下の実施例3のステップ3Dに記載されるように行われる。
【0053】
ステップS-14では、化合物Kを塩基と反応させることにより、式Kの化合物がマボリキサフォルに変換される。アミンの酸塩を対応する遊離アミンに変換する方法は当技術分野で周知であり、それには、典型的には、アミンの酸塩を適切な塩基と反応させることが含まれる。特定の実施形態では、化合物Kは、LiOH、NaOH、KOH、Ca(OH)、LiCO、NaCO、KCO、CaCO、LiHCO、NaHCO、KHCO、またはCa(HCOから選択される塩基と反応させられる。一実施形態によれば、化合物KはNaOHと反応させられる。一実施形態によれば、化合物KはNaOH水溶液と反応させられる。特定の実施形態では、化合物K-1は、水、トルエンおよびn-ブタノールの二相溶媒混合物中、NaOH水溶液と反応させられる。一実施形態によれば、NaOH水溶液は約1~7Mである。一実施形態によれば、NaOH水溶液は3.0Mである。いくつかの実施形態によれば、必要に応じたステップとして、化合物Kと塩基(NaOHなど)との反応後、水層がまだ約7~12のpHになっていない場合には、得られた二相反応混合物に窒素パージされた0.1~2M硫酸が添加されて、水層のpHを約7~12に調整する。一実施形態では、必要に応じたステップとして、化合物Kと塩基(NaOHなど)との反応後、水層がまだ約9.8~10.5のpHになっていない場合には、得られた二相反応混合物に窒素パージされた0.3M硫酸が添加されて、水層のpHを約9.8~10.5に調整する。別の実施形態によれば、化合物Kと塩基(NaOHなど)との反応後、水層がまだ約8~12のpHになっていない場合には、得られた二相反応混合物の水層のpHは約8~12に調整される。さらに別の実施形態によれば、化合物Kと塩基(NaOHなど)との反応後、水層がまだ約10のpHになっていない場合には、得られた二相反応混合物の水層のpHは約10.0に調整される。特定の実施形態では、化合物Kと適切な塩基との反応は、水層のpHを約9.8~10.5に調整した後、約5~55℃で行われる。いくつかの実施形態では、化合物Kと適切な塩基との反応は、水層のpHを約9.8~10.5に調整した後、約25~35℃で行われる。一実施形態によれば、反応は約30℃で行われる。特定の実施形態では、水層のpHを約9.8~10.5に調整した後、反応混合物は約5~100分間撹拌される。いくつかの実施形態では、反応混合物は、約30~60分間撹拌される。一実施形態では、反応混合物は45分間撹拌される。特定の実施形態では、反応混合物の有機層が分離され、トルエンの添加による共沸および5~65℃での真空蒸留により、n-ブタノールが除去される。いくつかの実施形態では、真空蒸留は35~45℃で行われる。一実施形態によれば、真空蒸留は40℃で行われる。別の実施形態によれば、トルエンの添加による共沸は、さらに1~5回繰り返される。さらに別の実施形態によれば、トルエンの添加による共沸は、さらに1回繰り返される。特定の実施形態では、生成物であるマボリキサフォルは、反応混合物を約5~65℃での真空蒸留により濃縮することによって沈殿させられる。一実施形態によれば、マボリキサフォルは、反応混合物を約35~45℃での真空蒸留により濃縮することによって沈殿させられる。別の実施形態によれば、マボリキサフォルは、反応混合物を約30℃での真空蒸留により濃縮することによって沈殿させられる。
【0054】
特定の実施形態では、沈殿したマボリキサフォルは、反応混合物を約30~90℃に加熱することにより再度溶解させられる。この温度は溶解温度と呼ばれる。一実施形態によれば、溶解温度は約60~66℃である。別の実施形態によれば、溶解温度は約63℃である。いくつかの実施形態では、マボリキサフォルの溶液の温度は、溶解温度よりも0.5~5℃±0.5℃低く調整される。いくつかの実施形態では、マボリキサフォルの溶液の温度は、溶解温度よりも2.5℃±0.5℃低く調整される。この温度は種温度と呼ばれる。特定の実施形態では、反応混合物は、トルエン中のマボリキサフォルのスラリーを種温度±10℃で添加することにより種添加される。いくつかの実施形態では、反応混合物は、トルエン中のマボリキサフォルのスラリーを種温度±2℃で添加することにより種添加される。特定の実施形態では、反応混合物は種温度±5℃で0.5~5時間撹拌される。いくつかの実施形態では、反応混合物は、種温度±2℃で1時間以上撹拌される。一実施形態では、反応混合物は種温度±2℃で1時間撹拌される。特定の実施形態では、反応混合物は、約0.5~10時間かけて約20~60℃に冷却される。いくつかの実施形態では、反応混合物は、約2.5時間、または2.5時間以上かけて約38~42℃に冷却される。一実施形態によれば、反応混合物は、約2.5時間かけて約40℃に冷却される。特定の実施形態では、反応混合物は約38~42℃で約1時間、または1時間以上撹拌される。一実施形態によれば、反応混合物を約40℃で約1時間撹拌される。特定の実施形態では、反応混合物は、約0.5~10時間かけて約10~50℃にさらに冷却される。いくつかの実施形態では、反応混合物は、約2時間、または2時間以上かけて約28~32℃にさらに冷却される。一実施形態によれば、反応混合物は、約2時間かけて約30℃にさらに冷却される。特定の実施形態では、反応混合物は、約10~50℃で約0~10時間撹拌される。いくつかの実施形態では、反応混合物は、約28~32℃で約1時間、または1時間以上撹拌される。一実施形態によれば、反応混合物は、約30℃で約1時間撹拌される。特定の実施形態では、反応混合物は、10~100分かけて約10~40℃にさらに冷却される。いくつかの実施形態では、反応混合物は、50分、または50分以上かけて約23~27℃にさらに冷却される。一実施形態によれば、反応混合物は、約50分間かけて約25℃に冷却される。特定の実施形態では、反応混合物は、約10~50℃で約0.5~10時間撹拌される。いくつかの実施形態では、反応混合物は、約23~27℃で約2時間、または2時間以上撹拌される。一実施形態によれば、反応混合物は、約25℃で約2時間撹拌される。特定の実施形態では、反応混合物は、約0.5~10時間かけて約-10~15℃にさらに冷却される。いくつかの実施形態では、反応混合物は、約4時間、または4時間以上かけて約0~5℃にさらに冷却される。一実施形態によれば、反応混合物は、約4時間かけて約2℃に冷却される。特定の実施形態では、反応混合物は、-5~25℃で5~25時間撹拌される。いくつかの実施形態では、反応混合物は、0~5℃で8時間以上撹拌される。一実施形態によれば、反応混合物は約2℃で約12時間撹拌される。特定の実施形態では、生成物マボリキサフォルは、約-10~25℃での濾過によって単離される。いくつかの実施形態では、生成物マボリキサフォルは、約0~5℃での濾過によって単離される。一実施形態では、生成物マボリキサフォルは、約2℃での濾過によって単離される。特定の実施形態では、固体生成物マボリキサフォルは、約-5~25℃の窒素パージされたトルエンで洗浄される。いくつかの実施形態では、固体生成物マボリキサフォルは、約0~5℃の窒素パージされたトルエンで洗浄される。一実施形態では、固体生成物マボリキサフォルは、約2℃の窒素パージされたトルエンで洗浄される。特定の実施形態では、生成物マボリキサフォルは、真空下および窒素流下、約0.5~10時間乾燥させられる。いくつかの実施形態では、生成物マボリキサフォルは、真空下および窒素流下、約1時間、または1時間以上乾燥させられる。一実施形態では、生成物マボリキサフォルは、真空下および窒素流下、約1.5時間乾燥させられる。特定の実施形態では、生成物マボリキサフォルは、真空下および窒素流下、約10~75℃で乾燥させられる。いくつかの実施形態では、生成物マボリキサフォルは、真空下および窒素流下、45℃以下で乾燥させられる。一実施形態では、生成物マボリキサフォルは、真空下および窒素流下、約40℃で乾燥させられる。一実施形態によれば、反応は、米国特許出願第16/215,963号(米国特許第10,548,889号)に記載されているように行われる。一実施形態では、反応は、以下の実施例3のステップ3Eに記載されるように行われる。
【0055】
一態様では、本発明は、マボリキサフォル:
【化13】
を調製するための方法であって、
(a)式Bの化合物:
【化14】
(式中、
およびRは独立に、適切なアミノ保護基である)
を提供するステップと、
(b)式Bの化合物をスルホン化して、式F-2aの化合物:
【化15】
(式中、
Mは、アルカリ金属から選択される金属である)
を形成するステップと、
(c)式F-2aの化合物を化合物F-1:
【化16】
またはその塩と縮合させて、式Qの化合物:
【化17】
を形成するステップと、
(d)式Qの化合物を還元して式Pの化合物:
【化18】
を形成するステップと、
(e)式Pの化合物を式F-3の化合物:
【化19】
(式中、
は、適切なベンゾイミダゾール保護基であり、
Lは、適切な脱離基である)
と反応させて、式Oの化合物:
【化20】
を形成するステップと、
(f)式Oの化合物を脱保護して式Nの化合物:
【化21】
を形成するステップと、
(g)式Nの化合物を脱保護して式Mの化合物:
【化22】
を形成するステップと、
(h)式Mの化合物を脱保護して式Kの化合物:
【化23】
(式中、
Aは酸であり、
nは、1、2または3である)を形成するステップと、
(i)式Kの化合物を変換してマボリキサフォルを形成するステップと
を含む、方法を提供する。
【0056】
特定の実施形態では、式B、F-2a、Q、P、OおよびNのR基は、Bocである。一実施形態では、式B、F-2a、Q、P、O、NおよびMのR基はBocである。別の実施形態では、式B、F-2a、Q、P、O、NおよびMのRおよびR基はBocである。特定の実施形態では、式F-2aのMはナトリウムまたはカリウムである。特定の実施形態では、式F-3およびOのR基は、Bocである。特定の実施形態では、式F-3のL基はクロロである。特定の実施形態では、R、RおよびRの各存在は、Bocである。特定の実施形態では、式K中のAは、TFA、HCl、HBr、HPOまたはHSOであり、nは1、2または3である。一実施形態によれば、式K中のAはHSOであり、nは3である。特定の実施形態では、ステップ(c)で、式Qの化合物は、単離されていない中間体である。特定の実施形態では、ステップ(e)で、式Oの化合物は、単離されていない中間体である。特定の実施形態では、ステップ(b)におけるスルホン化は、式Bの化合物をMS(ここで、Mはアルカリ金属である)と反応させることにより達成される。一実施形態によれば、アルカリ金属はナトリウムまたはカリウムである。特定の実施形態では、ステップ(c)における式F-2aの化合物および式F-1の化合物の縮合は、適切な縮合触媒によって触媒される。一実施形態によれば、適切な縮合触媒はKPOである。特定の実施形態では、ステップ(d)における還元は、式Qの化合物を、NaBH、NaCNBHおよびBHを含む群から選択される還元剤と反応させることにより達成される。一実施形態によれば、還元剤はNaBHである。特定の実施形態では、ステップ(e)における反応は、式Pの化合物を式F-3aの化合物:
【化24】
と反応させることにより達成される。
【0057】
特定の実施形態では、R、RおよびRは、Bocであり、ステップ(f)、(g)および(h)における脱保護は、TFA、HCl、HBr、HPOおよびHSOから選択される酸と式Oの化合物を反応させることによって同時に達成されて、式Kの化合物を生成する。一実施形態によれば、酸はHSOである。別の実施形態によれば、式K中のAはHSOであり、nは3である。特定の実施形態では、ステップ(i)における反応は、式Kの化合物を適切な塩基と反応させることにより達成される。1つの実施形態によれば、好適な塩基はNaOHである。
【0058】
一態様では、本発明は、式Kの化合物:
【化25】
(式中、
Aは酸であり、
nは、1、2または3である)
を調製するための方法であって、
(a)式Bの化合物:
【化26】
(式中、
およびRは独立して、それぞれ独立に、適切なアミノ保護基である)
を提供するステップと、
(b)式Bの化合物をスルホン化して、式F-2aの化合物:
【化27】
(式中、
Mは、アルカリ金属から選択される金属である)
を形成するステップと、
(c)式F-2aの化合物を化合物F-1:
【化28】
またはその塩と縮合させて、式Qの化合物:
【化29】
を形成するステップと、
(d)式Qの化合物を還元して式Pの化合物:
【化30】
を形成するステップと、
(e)式Pの化合物を式F-3の化合物:
【化31】
(式中、
は、適切なベンゾイミダゾール保護基であり、
Lは、適切な脱離基である)
と反応させて、式Oの化合物:
【化32】
を形成するステップと、
(f)式Oの化合物を脱保護して式Nの化合物:
【化33】
を形成するステップと、
(g)式Nの化合物を脱保護して式Mの化合物:
【化34】
を形成するステップと、
(h)式Mの化合物を脱保護して式Kの化合物を形成するステップと
を含む、方法を提供する。
【0059】
特定の実施形態では、式B、F-2a、Q、P、OおよびNのR基は、Bocである。一実施形態では、式B、F-2a、Q、P、O、NおよびMのR基はBocである。別の実施形態では、式B、F-2a、Q、P、O、NおよびMのRおよびR基はBocである。特定の実施形態では、式F-2aのMはナトリウムまたはカリウムである。特定の実施形態では、式F-3およびOのR基は、Bocである。特定の実施形態では、式F-3のL基はクロロである。特定の実施形態では、RおよびRの各存在は、Bocである。特定の実施形態では、式K中のAは、TFA、HCl、HBr、HPOまたはHSOであり、nは、1、2、または3である。特定の実施形態では、式K中のAはHSOであり、nは3である。特定の実施形態では、ステップ(c)で、式Qの化合物は、単離されていない中間体である。特定の実施形態では、ステップ(e)で、式Oの化合物は、単離されていない中間体である。特定の実施形態では、ステップ(b)におけるスルホン化は、式Bの化合物をMS(ここで、Mはアルカリ金属である)と反応させることにより達成される。一実施形態によれば、アルカリ金属はナトリウムまたはカリウムである。特定の実施形態では、ステップ(c)における式F-2aの化合物および式F-1の化合物の縮合は、適切な縮合触媒によって触媒される。一実施形態によれば、適切な縮合触媒はKPOである。特定の実施形態では、ステップ(d)における還元は、式Qの化合物をNaBH、NaCNBH、およびBHから選択される還元剤と反応させることにより達成される。一実施形態によれば、還元剤はNaBHである。特定の実施形態では、ステップ(e)における反応は、式Pの化合物を式F-3aの化合物:
【化35】
と反応させることにより達成される。
【0060】
特定の実施形態では、R、RおよびRは、Bocであり、ステップ(f)、(g)および(h)における脱保護は、TFA、HCl、HBr、HPOおよびHSOから選択される酸と式Oの化合物を反応させることによって同時に達成されて、式Kの化合物を生成する。一実施形態によれば、酸はHSOである。別の実施形態によれば、式K中のAはHSOであり、nは3である。
【0061】
一態様では、本発明は、式Pの化合物:
【化36】
(式中、
およびRは独立に、適切なアミノ保護基である)
を調製するための方法であって、
(a)式Bの化合物:
【化37】
を提供するステップと、
(b)式Bの化合物をスルホン化して、式F-2aの化合物:
【化38】
(式中、
Mは、アルカリ金属から選択される金属である)
を形成するステップと、
(c)式F-2aの化合物を化合物F-1:
【化39】
またはその塩と縮合させて、式Qの化合物:
【化40】
を形成するステップと、
(d)式Qの化合物を還元して式Pの化合物を形成するステップと
を含む、方法を提供する。
【0062】
特定の実施形態では、式B、F-2a、QおよびP中のRはBocである。一実施形態では、式B、F-2a、QおよびPのR基はBocである。別の実施形態では、式B、F-2a、QおよびPのRおよびR基はBocである。特定の実施形態では、式F-2a中のMはナトリウムまたはカリウムである。特定の実施形態では、ステップ(c)で、式Qの化合物は、単離されていない中間体である。特定の実施形態では、ステップ(b)におけるスルホン化は、式Bの化合物をMS(ここで、Mはアルカリ金属である)と反応させることにより達成される。一実施形態によれば、アルカリ金属はナトリウムまたはカリウムである。特定の実施形態では、ステップ(c)における式F-2aの化合物および式F-1の化合物の縮合は、適切な縮合触媒によって触媒される。一実施形態によれば、適切な縮合触媒はKPOである。特定の実施形態では、ステップ(d)の還元は、式Qの化合物をNaBH、NaCNBH、およびBHから選択される還元剤と反応させることにより達成される。一実施形態によれば、還元剤はNaBHである。
【0063】
一態様では、本発明は、式F-2aの化合物:
【化41】
(式中、
およびRは独立に、適切なアミノ保護基であり、
Mは、アルカリ金属から選択される金属である)
を調製するための方法であって、
(a)式Bの化合物:
【化42】
を提供するステップと、
(b)式Bの化合物をスルホン化して、式F-2aの化合物を形成するステップと
を含む、方法を提供する。
【0064】
特定の実施形態では、式BおよびF-2a中のRはBocである。一実施形態では、式BのR基はBocである。別の実施形態では、式BのRおよびR基はBocである。特定の実施形態では、式F-2a中のMはナトリウムまたはカリウムである。
【0065】
一態様では、本発明は、式F-2の化合物:
【化43】
(式中、
は、水素、-C(O)R’、-C(O)OR’、-C(O)NR’R’’、-S(O)R’、-Si(R’)、または必要に応じて置換されている基であって、C~Cアルキル、C~Cハロアルキル、C~Cシクロアルキル、C~Cアルコキシ-C~Cアルキル、フェニル、アリールもしくはヘテロアリールから選択される必要に応じて置換されている基であり;
およびRは独立に、水素、-C(O)R’、-C(O)OR’、-C(O)NR’R’’、-S(O)R’、-Si(R’)、または必要に応じて置換されている基であって、C~Cアルキル、C~Cハロアルキル、C~Cシクロアルキル、C~Cアルコキシ-C~Cアルキル、フェニル、アリールもしくはヘテロアリールから選択される必要に応じて置換されている基であり;
R’およびR’’は、独立に、水素、あるいはC1~6脂肪族、3~8員飽和もしくは部分不飽和単環式炭素環、フェニル、8~10員二環式芳香族炭素環、窒素、酸素もしくは硫黄から独立に選択される1~2個のヘテロ原子を有する4~8員飽和もしくは部分不飽和単環式複素環、窒素、酸素もしくは硫黄から独立に選択される1~4個のヘテロ原子を有する5~6員単環式複素芳香環、または窒素、酸素もしくは硫黄から独立に選択される1~5個のヘテロ原子を有する8~10員二環式複素芳香環から選択される、必要に応じて置換されている基であり、
Mは、アルカリ金属から選択される金属である)
を提供する。
【0066】
特定の実施形態では、Rは水素である。特定の実施形態では、Mはナトリウムまたはカリウムである。特定の実施形態では、Rは水素、BocまたはCbzである。特定の実施形態では、Rは水素、BocまたはCbzである。一実施形態によれば、RはBocであり、Mはナトリウムである。一実施形態によれば、RはBocであり、Mはナトリウムである。別の実施形態によれば、RおよびRはBocであり、Mはナトリウムである。
【0067】
一態様では、本発明は、式Kの化合物:
【化44】
(式中、
Aは、TFA、HCl、HBr、HPOまたはHSOであり、
nは、1、2または3である)
を提供する。
【0068】
特定の実施形態によれば、nは3である。特定の実施形態によれば、AはHSOである。
化合物および定義
【0069】
本発明の化合物は、本明細書に一般的に記載されるものを含み、本明細書に開示されたクラス、サブクラス、および種によってさらに示されている。本明細書で使用される場合、特に指定されない限り、以下の定義が適用されるものとする。本発明の目的上、化学元素は、Periodic Table of the Elements,CAS version,Handbook of Chemistry and Physics,75th Ed.に従って同定される。さらに、有機化学の一般原理は、「Organic Chemistry」,Thomas Sorrell,University Science Books,Sausalito:1999、および「March’s Advanced Organic Chemistry」,5th Ed.,Ed.:Smith,M.B.and March,J.,John Wiley&Sons,New York:2001に記載されており、これらの全内容は参照により本明細書に組み込まれる。
【0070】
本明細書で使用される「脂肪族」または「脂肪族基」という用語は、完全に飽和しているかまたは1もしくはそれを超える不飽和単位を含む直鎖(すなわち、非分枝状)または分枝状の、置換もしくは非置換炭化水素鎖、あるいは、完全に飽和しているかまたは1もしくはそれを超える不飽和単位を含むが、芳香族ではなく(本明細書では「炭素環」、「脂環式」または「シクロアルキル」とも呼ばれる)、分子の残りとの単一の結合点を有する、単環式炭化水素または二環式炭化水素を意味する。特に指定のない限り、脂肪族基は、1~6個の脂肪族炭素原子を含む。いくつかの実施形態では、脂肪族基は、1~5個の脂肪族炭素原子を含む。他の実施形態では、脂肪族基は、1~4個の脂肪族炭素原子を含む。さらに他の実施形態では、脂肪族基は1~3個の脂肪族炭素原子を含み、さらに他の実施形態では、脂肪族基は1~2個の脂肪族炭素原子を含む。いくつかの実施形態では、「脂環式」(または「炭素環」または「シクロアルキル」)とは、完全に飽和しているか、または1もしくはそれを超える不飽和単位を含むが芳香族ではなく、分子の残りとの単一の結合点を有する、単環式C~C炭化水素を指す。適切な脂肪族基としては、直鎖状または分枝状の、置換または非置換のアルキル、アルケニル、アルキニル基、およびそれらのハイブリッド、例えば(シクロアルキル)アルキル、(シクロアルケニル)アルキルまたは(シクロアルキル)アルケニルなどが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0071】
本明細書で使用される場合、「二環式環」または「二環式環系」という用語は、任意の二環式環系、すなわち環系の2つの環の間に共通の1またはそれを超える原子を有する、飽和または1もしくはそれを超える不飽和単位を有する炭素環式または複素環式の環系を指す。したがって、この用語は、オルト縮合またはスピロ環などの任意の許容可能な環縮合を含む。本明細書で使用される場合、「ヘテロ二環式」という用語は、1またはそれを超えるヘテロ原子が二環の一方または両方の環に存在することを必要とする「二環式」のサブセットである。そのようなヘテロ原子は、環接合部に存在していてもよく、必要に応じて置換されていてもよく、窒素(N-オキシドを含む)、酸素、硫黄(スルホンおよびスルホネートなどの酸化形態を含む)、リン(ホスフェートなどの酸化形態を含む)、ホウ素などから選択されてもよい。いくつかの実施形態では、二環式基は、7~12個の環員(ring member)と、窒素、酸素または硫黄から独立に選択される0~4個のヘテロ原子とを有する。本明細書で使用される場合、「架橋二環式」という用語は、少なくとも1つの架橋を有する、任意の二環式環系(すなわち飽和または部分不飽和の炭素環式または複素環式)を指す。IUPACに定義されるように、「橋」とは、2つの橋頭を接続する、複数原子の非分枝鎖または1つの原子または原子価結合であり、「橋頭」は、3またはそれを超える骨格原子(水素を除く)に結合している、その環系の任意の骨格原子である。いくつかの実施形態では、架橋二環式基は、7~12個の環員と、窒素、酸素または硫黄から独立に選択される0~4個のヘテロ原子とを有する。このような架橋二環式基は、当技術分野で周知であり、それには、各基が任意の置換可能な炭素または窒素原子で分子の残りに結合している、以下に記載の基が含まれる。特に指定のない限り、架橋二環式基は、必要に応じて、脂肪族基について記載されたような1またはそれを超える置換基で置換される。加えて、または代替的に、架橋二環式基の任意の置換可能な窒素は、必要に応じて置換されている。例示的な二環式環としては、
【化45】
が挙げられる。例示的な架橋二環式化合物としては、
【化46】
が挙げられる。
【0072】
「低級アルキル」という用語は、C1-4の直鎖状または分枝状のアルキル基を指す。例示的な低級アルキル基は、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチルおよびtert-ブチルである。
【0073】
「低級ハロアルキル」という用語は、1またはそれを超えるハロゲン原子で置換されたC1-4の直鎖状または分枝状のアルキル基を指す。
【0074】
「ヘテロ原子」という用語は、1またはそれを超える酸素、硫黄、窒素、リン、またはケイ素(窒素、硫黄、リン、またはケイ素の任意の酸化形態;任意の塩基性窒素の四級化形態または;複素環式環の置換可能な窒素、例えば、N(3,4-ジヒドロ-2H-ピロリルの場合のように)、NH(ピロリジニルの場合のように)またはNR(N-置換ピロリジニルの場合のように)を含む)を意味する。
【0075】
本明細書で使用される「不飽和」という用語は、ある部分が1またはそれを超える不飽和単位を有することを意味する。
【0076】
本明細書で使用される場合、「二価のC1-8(またはC1-6)飽和または不飽和、直鎖状または分枝状の炭化水素鎖」という用語は、本明細書で定義される直鎖状または分枝状である二価アルキレン、アルケニレン、およびアルキニレン鎖を指す。
【0077】
「アルキレン」という用語は、二価アルキル基を指す。「アルキレン鎖」は、ポリメチレン基、すなわち-(CH-(ここで、nは正の整数、好ましくは1~6、1~4、1~3、1~2、または2~3である)である。置換アルキレン鎖は、1またはそれを超えるメチレン水素原子が置換基で置き換えられたポリメチレン基である。適切な置換基としては、置換脂肪族基について以下に記載されるものが挙げられる。
【0078】
「アルケニレン」という用語は、二価アルケニル基を指す。置換アルケニレン鎖は、1またはそれを超える水素原子が置換基で置き換えられた、少なくとも1つの二重結合を含むポリメチレン基である。適切な置換基としては、置換脂肪族基について以下に記載されるものが挙げられる。
【0079】
本明細書で使用される場合、「シクロプロピレニル」という用語は、以下の構造:
【化47】
の二価シクロプロピル基を指す。
【0080】
「ハロゲン」という用語は、F、Cl、Br、またはIを意味する。
【0081】
「アリール」という用語は、単独で、または「アラルキル」、「アラルコキシ」もしくは「アリールオキシアルキル」のようなより大きな部分の一部として使用され、合計5~14個の環員を有する単環式または二環式環系を指し、その系内の少なくとも1つの環は芳香族であり、その系内の各環は3~7個の環員を含む。「アリール」という用語は、「アリール環」という用語と互換的に使用され得る。本発明の特定の実施形態では、「アリール」とは、1またはそれを超える置換基を有していてもよい、以下に限定されるものではないがフェニル、ビフェニル、ナフチル、アントラシルなどを含む芳香環系を指す。本明細書で使用される場合、芳香環が1またはそれを超える非芳香環と縮合している基、例えばインダニル、フタルイミジル、ナフトイミジル(naphthimidyl)、フェナントリジニルまたはテトラヒドロナフチルなども、「アリール」という用語の範囲内に含まれる。
【0082】
「ヘテロアリール」および「ヘテロアラ-」という用語は、単独でまたはより大きな部分、例えば「ヘテロアラルキル」もしくは「ヘテロアラルコキシ」の一部として使用され、5~10個の環原子、好ましくは5、6または9個の環原子を有し;6、10、または14個のπ電子を環式配列内で共有し;炭素原子に加えて、1~5個のヘテロ原子を有する基を指す。「ヘテロ原子」という用語は、窒素、酸素、または硫黄を指し、窒素または硫黄の任意の酸化形態、および塩基性窒素の任意の四級化形態を含む。ヘテロアリール基としては、限定するものではないが、チエニル、フラニル、ピロリル、イミダゾリル、ピラゾリル、トリアゾリル、テトラゾリル、オキサゾリル、イソオキサゾリル、オキサジアゾリル、チアゾリル、イソチアゾリル、チアジアゾリル、ピリジル、ピリダジニル、ピリミジニル、ピラジニル、インドリジニル、プリニル、ナフチリジニルおよびプテリジニルが挙げられる。本明細書で使用される「ヘテロアリール」および「ヘテロアラ-」という用語には、ヘテロ芳香環が1またはそれを超えるアリール環、脂環式環、またはヘテロシクリル環と縮合しており、ラジカルまたは結合点がヘテロ芳香環上にある基も含まれる。非限定的な例としては、インドリル、イソインドリル、ベンゾチエニル、ベンゾフラニル、ジベンゾフラニル、インダゾリル、ベンゾイミダゾリル、ベンゾチアゾリル、キノリル、イソキノリル、シンノリニル、フタラジニル、キナゾリニル、キノキサリニル、4H-キノリジニル、カルバゾリル、アクリジニル、フェナジニル、フェノチアジニル、フェノキサジニル、テトラヒドロキノリニル、テトラヒドロイソキノリニル、およびピリド[2,3-b]-1,4-オキサジン-3(4H)-オンが挙げられる。ヘテロアリール基は、単環式であっても二環式であってもよい。「ヘテロアリール」という用語は、「ヘテロアリール環」、「ヘテロアリール基」または「ヘテロ芳香族」という用語と互換的に使用することができ、これらの用語のいずれにも、必要に応じて置換されている環が含まれる。「ヘテロアラルキル」という用語は、ヘテロアリールで置換されたアルキル基を指し、ここで、前記アルキル部分およびヘテロアリール部分は独立に、必要に応じて置換されている。
【0083】
本明細書で使用される場合、「複素環」、「ヘテロシクリル」、「複素環式ラジカル」および「複素環式環」という用語は互換的に使用され、飽和または部分的に不飽和のいずれかであり、炭素原子に加えて、上で定義されるような1またはそれを超える、好ましくは1~4個のヘテロ原子を有する、安定な5~7員単環式または7~10員二環式複素環部分を指す。複素環の環原子に関して使用される場合、「窒素」という用語は、置換されている窒素を含む。一例として、酸素、硫黄または窒素から選択される0~3個のヘテロ原子を有する飽和または部分不飽和環において、窒素は、N(3,4-ジヒドロ-2H-ピロリルの場合のような)、NH(ピロリジニルの場合のような)またはNR(N-置換ピロリジニルの場合のような)であり得る。
【0084】
複素環式環は、安定な構造をもたらす任意のヘテロ原子または炭素原子でそのペンダント基に結合することができ、任意の環原子が、必要に応じて置換され得る。そのような飽和または部分不飽和複素環式ラジカルの例としては、限定するものではないが、テトラヒドロフラニル、テトラヒドロチオフェニル、ピロリジニル、ピペリジニル、ピロリニル、テトラヒドロキノリニル、テトラヒドロイソキノリニル、デカヒドロキノリニル、オキサゾリジニル、ピペラジニル、ジオキサニル、ジオキソラニル、ジアゼピニル、オキサゼピニル、チアゼピニル、モルホリニルおよびキヌクリジニルが挙げられる。「複素環」、「ヘテロシクリル」、「ヘテロシクリル環」、「複素環基」、「複素環部分」、および「複素環式ラジカル」という用語は、本明細書では互換的に使用され、それには、ヘテロシクリル環が1またはそれを超えるアリール、ヘテロアリール、または脂環式環と縮合している基、例えばインドリニル、3H-インドリル、クロマニル、フェナントリジニル、またはテトラヒドロキノリニルも含まれる。ヘテロシクリル基は、単環式であっても二環式であってもよい。「ヘテロシクリルアルキル」という用語は、ヘテロシクリルで置換されたアルキル基を指し、ここで、前記アルキル部分およびヘテロシクリル部分は独立に、必要に応じて置換されている。
【0085】
本明細書で使用される場合、「部分不飽和」という用語は、少なくとも1つの二重結合または三重結合を含む環部分を指す。「部分不飽和」という用語は、複数の不飽和部位を有する環を包含することが意図されているが、本明細書で定義されるアリールまたはヘテロアリール部分を含むことは意図されていない。
【0086】
本明細書に記載されるように、本発明の化合物は、「必要に応じて置換されている」部分を含み得る。一般に、「置換されている」という用語は、「必要に応じて」という用語が先行するか否かにかかわらず、指定された部分の1またはそれを超える水素が適切な置換基で置き換えられていることを意味する。特に指定されない限り、「必要に応じて置換されている」基は、基の各置換可能な位置に適切な置換基を有することができ、任意の所与構造における一つより多くの位置が、ある特定の群から選択される一つより多くの置換基で置換され得る場合、置換基は、すべての位置で同じであっても異なっていてもよい。本発明により想定される置換基の組み合わせは、好ましくは、安定なまたは化学的に実現可能な化合物の形成をもたらすものである。本明細書で使用される「安定な」という用語は、その生成、検出、および、特定の実施形態では、その回収、精製、および本明細書に開示される目的のうちの1つまたは複数での使用を可能にする条件に供された場合に、実質的に変化しない化合物を指す。
【0087】
置換可能な炭素上の各必要に応じた置換基は、ハロゲン;-(CH0-4R°;-(CH0-4OR°;-O(CH0-4、-O-(CH0-4C(O)OR°;-(CH0-4CH(OR°);-(CH0-4SR°;R°で置換されていてもよい-(CH0-4Ph;R°で置換されていてもよい-(CH0-4O(CH0-1Ph;R°で置換されていてもよい-CH=CHPh;R°で置換されていてもよい-(CH0-4O(CH0-1-ピリジル;-NO;-CN;-N;-(CH0-4N(R°);-(CH0-4N(R°)C(O)R°;-N(R°)C(S)R°;-(CH0-4N(R°)C(O)NR°;-N(R°)C(S)NR°;-(CH0-4N(R°)C(O)OR°;-N(R°)N(R°)C(O)R°;-N(R°)N(R°)C(O)NR°;-N(R°)N(R°)C(O)OR°;-(CH0-4C(O)R°;-C(S)R°;-(CH0-4C(O)OR°;-(CH0-4C(O)SR°;-(CH0-4C(O)OSiR°;-(CH0-4OC(O)R°;-OC(O)(CH0-4SR-、-SC(S)SR°;-(CH0-4SC(O)R°;-(CH0-4C(O)NR°;-C(S)NR°;-C(S)SR°;-SC(S)SR°、-(CH0-4OC(O)NR°;-C(O)N(OR°)R°;-C(O)C(O)R°;-C(O)CHC(O)R°;-C(NOR°)R°;-(CH0-4SSR°;-(CH0-4S(O)R°;-(CH0-4S(O)OR°;-(CH0-4OS(O)R°;-S(O)NR°;-S(O)(NR□)R□;-S(O)N=C(NR□;-(CH0-4S(O)R°;-N(R°)S(O)NR°;-N(R°)S(O)R°;-N(OR°)R°;-C(NH)NR°;-P(O)R°;-P(O)R°;-OP(O)R°;-OP(O)(OR°);SiR°;-(C1-4直鎖状もしくは分枝状アルキレン)O-N(R°);または-(C1-4直鎖状もしくは分枝状アルキレン)C(O)O-N(R°)から独立に選択される一価置換基である。
【0088】
各R°は独立に、水素、C1-6脂肪族、-CHPh、-O(CH0-1Ph、-CH-(5~6員ヘテロアリール環)、または窒素、酸素、もしくは硫黄から独立に選択される0~4個のヘテロ原子を有する5~6員飽和、部分不飽和、もしくはアリール環であるか、あるいは、上記定義にかかわらず、2つの独立に存在するR°は、その介在原子(単数または複数)と一緒に、窒素、酸素、もしくは硫黄から独立に選択される0~4個のヘテロ原子を有する3~12員飽和、部分不飽和、もしくはアリール単環もしくは二環式環を形成し、これは=Oおよび=Sから選択されるR°の飽和炭素原子上の二価の置換基によって置換されていてもよい;あるいは、各R°は、ハロゲン、-(CH0-2、-(ハロR)、-(CH0-2OH、-(CH0-2OR、-(CH0-2CH(OR;-O(ハロR)、-CN、-N、-(CH0-2C(O)R、-(CH0-2C(O)OH、-(CH0-2C(O)OR、-(CH0-2SR、-(CH0-2SH、-(CH0-2NH、-(CH0-2NHR、-(CH0-2NR 、-NO、-SiR 、-OSiR 、-C(O)SR、-(C1-4直鎖状もしくは分枝状アルキレン)C(O)OR、または-SSRから独立に選択される一価の置換基で必要に応じて置換されている。
【0089】
各Rは独立に、C1-4脂肪族、-CHPh、-O(CH0-1Ph、または、窒素、酸素、もしくは硫黄から独立に選択される0~4個のヘテロ原子を有する5~6員飽和、部分不飽和、もしくはアリール環から選択され、ここで、各Rは非置換であるか、またはハロが先行する場合には、1またはそれを超えるハロゲンのみで置換されている;あるいは、ここで、飽和炭素上の必要に応じた置換基は、=O、=S、=NNR 、=NNHC(O)R、=NNHC(O)OR、=NNHS(O)、=NR、=NOR、-O(C(R ))2-3O-、または-S(C(R ))2-3S-から独立に選択される二価の置換基であるか、あるいは「必要に応じて置換されている」基の隣接する置換可能な炭素に結合した二価の置換基は、-O(CR 2-3O-であり、ここで、各々独立に存在するRは、水素、C1-6脂肪族、または、窒素、酸素、もしくは硫黄から独立に選択される0~4個のヘテロ原子を有する非置換の5~6員飽和、部分不飽和、もしくはアリール環から選択される。
【0090】
がC1-6脂肪族である場合、Rは、ハロゲン、-R、-(ハロR)、-OH、-OR、-O(ハロR)、-CN、-C(O)OH、-C(O)OR、-NH、-NHR、-NR 、または-NOで必要に応じて置換されており、ここで、各Rは独立に、C1-4脂肪族、-CHPh、-O(CH0-1Ph、または、窒素、酸素、もしくは硫黄から独立に選択される0~4個のヘテロ原子を有する5~6員飽和、部分不飽和、もしくはアリール環から選択され、ここで、各Rは非置換であるか、またはハロが先行する場合には、1またはそれを超えるハロゲンのみで置換されている。
【0091】
置換可能な窒素上の必要に応じた置換基は、独立に、-R、-NR 、-C(O)R、-C(O)OR、-C(O)C(O)R、-C(O)CHC(O)R、-S(O)、-S(O)NR 、-C(S)NR 、-C(NH)NR 、または-N(R)S(O)であり;各Rは、独立に、水素、C1-6脂肪族、非置換-OPh、または、窒素、酸素もしくは硫黄から独立に選択される0~4個のヘテロ原子を有する非置換の5~6員飽和、部分不飽和、もしくはアリール環であるか、または、2つの独立に存在するRは、その介在原子(単数または複数)と一緒に、窒素、酸素もしくは硫黄から独立に選択される0~4個のヘテロ原子を有する非置換の3~12員飽和、部分不飽和、もしくはアリール単環もしくは二環式環を形成する;ここで、RがC1-6脂肪族である場合、Rは、ハロゲン、-R、-(ハロR)、-OH、-OR、-O(ハロR)、-CN、-C(O)OH、-C(O)OR、-NH、-NHR、-NR 、または-NOで必要に応じて置換されており、ここで、各Rは、C1-4脂肪族、-CHPh、-O(CH0-1Ph、または窒素、酸素、もしくは硫黄から独立に選択される0~4個のヘテロ原子を有する5~6員飽和、部分不飽和、もしくはアリール環から独立に選択され、ここで、各Rは、非置換であるか、またはハロが先行する場合には、1またはそれを超えるハロゲンでのみ置換されている。
【0092】
本明細書において、「薬学的に許容され得る塩」という用語は、妥当な医学的判断の範囲内で、過度の毒性、刺激作用、アレルギー反応などを伴わずに、ヒトおよび下等動物の組織と接触しての使用に適しており、合理的な利益/リスク比に合った塩を指す。薬学的に許容され得る塩は、当技術分野で周知である。例えば、S.M.Bergeらは、参照により本明細書に組み込まれるJ.Pharmaceutical Sciences、1977、66、1-19に薬学的に許容され得る塩を詳細に記載している。本発明の化合物の薬学的に許容され得る塩には、適した無機および有機酸ならびに無機および有機塩基に由来するものが含まれる。薬学的に許容され得る無毒の酸付加塩の例は、塩酸、臭化水素酸、リン酸、硫酸および過塩素酸などの無機酸と、または酢酸、シュウ酸、マレイン酸、酒石酸、クエン酸、コハク酸またはマロン酸などの有機酸と形成されるか、あるいは、イオン交換などの当技術分野で使用される他の方法を使用することにより形成されるアミノ基の塩である。他の薬学的に許容され得る塩としては、アジピン酸塩、アルギン酸塩、アスコルビン酸塩、アスパラギン酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、安息香酸塩、重硫酸塩、ホウ酸塩、酪酸塩、樟脳酸塩(camphorate)、カンファースルホン酸塩、クエン酸塩、シクロペンタンプロピオン酸塩、ジグルコン酸塩、ドデシル硫酸塩、エタンスルホン酸塩、ギ酸塩、フマル酸塩、グルコヘプトン酸塩、グリセロリン酸塩、グルコン酸塩、ヘミ硫酸塩、ヘプタン酸塩、ヘキサン酸塩、ヨウ化水素酸塩、2-ヒドロキシ-エタンスルホン酸塩、ラクトビオン酸、乳酸塩、ラウリン酸塩、ラウリル硫酸塩、リンゴ酸塩、マレイン酸塩、マロン酸塩、メタンスルホン酸塩、2-ナフタレンスルホン酸塩、ニコチン酸塩、硝酸塩、オレイン酸塩、シュウ酸塩、パルミチン酸塩、パモ酸塩、ペクチン酸塩、過硫酸塩、3-フェニルプロピオン酸塩、リン酸塩、ピバル酸塩、プロピオン酸塩、ステアリン酸塩、コハク酸塩、硫酸塩、酒石酸塩、チオシアン酸塩、p-トルエンスルホン酸塩、ウンデカン酸塩、吉草酸塩などが挙げられる。
【0093】
好適な塩基に由来する塩としては、アルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、アンモニウム塩およびN(C1-4アルキル)塩が挙げられる。代表的なアルカリもしくはアルカリ土類金属塩としては、ナトリウム、リチウム、カリウム、カルシウム、マグネシウムなどが挙げられる。さらなる薬学的に許容され得る塩は、適切な場合、ハロゲン化物、水酸化物、カルボキシレート、サルフェート、ホスフェート、ニトレート、低級アルキルスルホネートおよびアリールスルホネートなどの対イオンを使用して形成された、無毒のアンモニウム、第四級アンモニウム、およびアミンカチオンを含む。
【0094】
特に明記されない限り、本明細書に示される構造は、構造のすべての異性体(例えば、エナンチオマー、ジアステレオマーおよび幾何学的(または立体配座的))形態;例えば、各不斉中心のRおよびS配置、ZおよびE二重結合異性体、ならびにZおよびE配座異性体を含むことも意味する。したがって、本発明の化合物の単一の立体化学異性体ならびにエナンチオマー、ジアステレオマーおよび幾何学的(または立体配座的)混合物は、本発明の範囲内である。特に明記されない限り、本発明の化合物のすべての互変異性型は、本発明の範囲内である。さらに、特に明記されない限り、本明細書に示される構造は、1またはそれを超える同位体富化原子が存在するという点のみが異なる化合物を含むことも意味する。例えば、重水素または三重水素による水素の置き換え、あるいは13Cまたは14C富化炭素による炭素の置き換えを含む、本発明の構造を有する化合物は、本発明の範囲内である。そのような化合物は、例えば、分析ツールとして、生物学的アッセイにおけるプローブとして、または本発明による治療剤として有用である。特定の実施形態では、提供される化合物の弾頭部分Rは、1またはそれを超える重水素原子を含む。
【0095】
本明細書で使用される場合、「阻害剤」という用語は、測定可能な親和性でCXCR4に結合および/またはCXCR4を阻害する化合物と定義される。特定の実施形態では、阻害剤は、約100μM未満、約50μM未満、約1μM未満、約500nM未満、約100nM未満、約10nM未満または約1nM未満のIC50および/または結合定数を有する。
【0096】
本明細書で使用される「測定可能な親和性」および「測定可能に阻害する」という用語は、本発明の化合物またはその組成物およびCXCR4を含む試料と、前記化合物またはその組成物の非存在下でCXCR4を含む等価な試料との間の、CXCR4活性の測定可能な変化を意味する。
【実施例
【0097】
実施例1:スルホネート付加物F-2dの合成:
スキームV:
【化48】
ステップ1A:D-1の調製
ジエチル-4-アミノブチルアセタール(E)(1.00重量、1.00当量)を容器Aに入れる。アセトニトリル(10.0容量、7.8重量)を入れ、温度を20℃に調整する。混合物を40℃に加熱する。反応混合物を減圧下35~45℃で6.0容量に濃縮する。
【0098】
アセトニトリル(5.0容量、3.9重量)を35~45℃で入れる。反応混合物を減圧下35~45℃で6.0容量に濃縮する。このステップを以下に記載されるように1回繰り返す。
【0099】
アセトニトリル(5.0容量、3.9重量)を35~45℃で入れる。反応混合物を減圧下35~45℃で6.0容量に濃縮する。20℃に冷却する。
【0100】
ジ-tert-ブチルジカーボネート(1.1当量、1.5重量)をドラムに入れ、続いてアセトニトリル(0.4容量、0.3重量)を入れ、完全に溶解するまで撹拌する。反応混合物を減圧下35~45℃で6.0容量に濃縮する。
【0101】
このジ-tert-ブチルジカーボネートのアセトニトリル溶液を、20℃を維持しながら容器Aに入れる。アセトニトリル(1.5容量、1.1重量)をラインのリンス液(line rinse)として溶液に入れ、20℃で30~60分間撹拌する。
【0102】
4-ジメチルアミノピリジン(0.076重量、0.10当量)を20℃で容器Aに入れる。溶液を40℃に加熱する。反応混合物を減圧下で5.0容量に濃縮する。アセトニトリル(5.0容量、3.9重量)を溶液に入れる。反応混合物を減圧下で5.0容量に濃縮する。
【0103】
得られたD-1の溶液は単離せずに次の反応に使用する。
ステップ1B:C-1の調製
【0104】
アセトニトリル(2.0容量、1.6重量)を35~45℃でステップ1AのD-1の溶液を含有する容器Aに入れる。
【0105】
ジ-tert-ブチルジカーボネート(1.4当量、1.9重量)をドラムに入れ、続いてアセトニトリル(10.0容量、7.8重量)を入れ、完全に溶解するまで撹拌する。このジ-tert-ブチルジカーボネート溶液を容器Aに入れ、反応物の容量を7.0容量に維持しながら真空下35~45℃で2~6時間蒸留する。アセトニトリル(3.0容量、2.4重量)を、ラインのリンス液として真空下35~45℃で蒸留しながら20~40分間にわたって入れて、反応物の容量を7.0容量に維持する。
【0106】
ジ-tert-ブチルジカーボネート(0.14当量、0.19重量)をドラムに入れ、続いてアセトニトリル(1.0容量、0.74重量)を入れ、完全に溶解するまで撹拌する。このジ-tert-ブチルジカーボネート溶液を20~40分にわたって容器Aに入れる。アセトニトリル(0.3容量、0.24重量)を、ラインのリンス液として真空下35~45℃で蒸留しながら10~20分間にわたって入れて、反応物の容量を7.0容量に維持する。
【0107】
反応混合物を、真空下35~45℃で蒸留することにより5.0容量に濃縮する。
【0108】
n-ヘプタン(7.5容量、5.1重量)を反応混合物に入れ、反応混合物を減圧下40℃で5.0容量に濃縮する。このステップを以下に記載されるように1回繰り返す。
【0109】
n-ヘプタン(7.5容量、5.1重量)を反応混合物に入れ、反応混合物を減圧下40℃で5.0容量に濃縮する。
【0110】
脱色活性炭(0.2重量)を溶液に入れ、40℃で1~2時間撹拌する。反応混合物を40℃で濾過する。n-ヘプタン(2.0容量、1.4重量)を反応容器に入れ、20℃で5~15分間撹拌した後、ラインのリンス液としてフィルターに入れる。濾液と洗浄液を合わせ、必要に応じて20℃に調整する。
【0111】
得られたC-1の溶液は単離せずに次の反応に使用する。
ステップ1C:B-1の調製
【0112】
15%v/v酢酸(2.0容量)を、ガス発生に注意して、ステップ1BからのC-1の溶液が入っている容器Aに、温度を20℃に維持しながら入れ、20℃で10分間撹拌する。20℃で15分間、相を分離させる。水相を排出して廃棄し、有機相は容器A内に保持する。このステップを以下に記載されるように1回繰り返す。
【0113】
15%v/v酢酸(2.0容量)を、20℃を維持しながら入れ、20℃で10分間撹拌する。20℃で15分間、相を分離させる。水相を排出して廃棄し、有機相は容器A内に保持する。
【0114】
反応物を30℃に調整する。温度を30℃に維持しながら、4%w/w塩化ナトリウム溶液(2.1容量)を容器に入れる。氷酢酸(4.1容量、4.3重量)を、30℃を維持しながら容器に入れる。反応混合物を、温度を30℃に維持しながら2時間撹拌する。
【0115】
精製水(6.0容量)を30℃で入れる。内容物を30℃で5~10分間撹拌し、相を分離し、上方の有機相を容器A内に保持する。下方の水相を容器Bに入れる。
【0116】
精製水(4.0容量)を30℃で入れ、温度を30℃に維持しながら5~10分間撹拌する。30℃で相を分離し、上方の有機相を容器A内に保持する。下方の水相を容器Bに入れる。
【0117】
合わせた水相が入っている容器Bの温度を30℃に調整する。n-ヘプタン(2.0容量、1.4重量)を容器Bに入れ、温度を30℃に維持しながら5~10分間撹拌する。相を30℃で15分間にわたって分離する。上方の有機相を容器Aに入れ、下方の水相を容器Bに再度入れる。このステップを、以下に記載されるようにさらに2回繰り返す。
【0118】
n-ヘプタン(2.0容量、1.4重量)を容器Bに入れ、温度を30℃に維持しながら5~10分間撹拌する。相を30℃で15分間にわたって分離する。上方の有機相を容器Aに入れ、下方の水相を容器Bに再度入れる。
【0119】
n-ヘプタン(2.0容量、1.4重量)を容器Bに入れ、温度を30℃に維持しながら5~10分間撹拌する。相を30℃で15分間にわたって分離し、下方の水相を排出して廃棄し、上方の有機層を容器Aに入れる。
【0120】
合わせた有機相を、容器A内で減圧下、10~20℃で3.0容量に濃縮する。溶液を新しいHDPEドラム(単数または複数)に移し、n-ヘプタン(0.5容量、0.4重量)を用いて20℃でラインをリンスする。ドラムを均質化し、「n-ヘプタン中のB-1溶液」として保存し、単離することなく次の反応に使用する。
ステップ1D:F-2dの調製
【0121】
上記のアッセイに基づいて新しい1.00重量を計算する。
【0122】
ステップ1Cからの「n-ヘプタン中のB-1溶液」(1.00重量、1.00当量、w/wアッセイで補正、約3.0容量)を適切な容器に入れる。THF(3.0容量、2.7重量)を入れる。反応混合物を40℃に加熱する。
【0123】
精製水(0.02容量、0.02重量)、続いてメタ重亜硫酸ナトリウム(0.125当量、0.08重量)を、40℃で投入孔を介して固体として入れる。得られた混合物を40℃で30~35分間撹拌する。このステップをさらに4回繰り返し、以下に詳述するように合計5回に分けて試薬を添加した。
【0124】
精製水(0.02容量、0.02重量)、続いてメタ重亜硫酸ナトリウム(0.125当量、0.08重量)を、40℃で投入孔を介して固体として入れる。得られた混合物を40℃で30~35分間撹拌する。
【0125】
精製水(0.02容量、0.02重量)、続いてメタ重亜硫酸ナトリウム(0.125当量、0.08重量)を、40℃で投入孔を介して固体として入れる。得られた混合物を40℃で30~35分間撹拌する。
【0126】
精製水(0.02容量、0.02重量)、続いてメタ重亜硫酸ナトリウム(0.125当量、0.08重量)を、40℃で投入孔を介して固体として入れる。得られた混合物を40℃で30~35分間撹拌する。
【0127】
精製水(0.02容量、0.02重量)、続いてメタ重亜硫酸ナトリウム(0.125当量、0.08重量)を、40℃で投入孔を介して固体として入れる。得られた混合物を40℃で36時間撹拌する。
【0128】
反応混合物を目標の一定速度で3~4時間かけて20℃に冷却する。反応混合物を20℃で1~2μmの布で濾過する。
【0129】
温度を20℃に維持しながら、予め混合したTHF(0.5容量、0.5重量)とn-ヘプタン(0.5容量、0.3重量)の混合物で固体を洗浄する。以下に詳述するように、このステップをさらに3回繰り返した。
【0130】
n-ヘプタン(2.0容量、1.4重量)をラインのリンス液として用いて固体を洗浄し、濾過ケークに20℃で適用する。
【0131】
n-ヘプタン(2.0容量、1.4重量)をラインのリンス液として用いて固体を洗浄し、濾過ケークに20℃で適用する。
【0132】
アセトニトリル(2.0容量、1.6重量)をラインのリンス液として用いて固体を洗浄し、濾過ケークに20℃で適用する。
【0133】
固体を窒素流下38℃で12時間乾燥させる。
【0134】
残留溶媒含有量を決定する。合格基準:アセトニトリル≦2.0%w/w、n-ヘプタン≦2.0%w/wおよびテトラヒドロフラン≦2.0%w/w。
【0135】
化合物F-2dの収率:52~69%。
【0136】
H NMR(400MHz、d-DMSO):δ5.22(s,1H)、3.77(s,1H)、3.45(t,2H)、1.70(m,2H)、1.44(m,20H)。13C NMR(400MHz、d-DMSO):δ152.6、83.2、82.0、46.5、29.6、28.1、26.0。FTIR(波数、cm-1)3294、1721、1738、1367、1233、1180、1135、1109、1045。
実施例2:F-3aの合成:
スキームVI:
【化49】
ステップ2A:G-1の調製
【0137】
J(1.00重量、1.00当量)を容器Aに入れる。精製水(1.0容量、1.0重量)を容器Aに入れ、必要に応じて温度を20℃に調整する。濃塩酸(4.0当量、3.0容量、3.6重量)を、温度を20℃に維持しながら容器Aに入れる。容器Aの内容物を15~25℃に維持しながら、精製水(0.5容量、0.5重量)を用いてラインをリンスする。
【0138】
クロロ酢酸(1.3重量、1.5当量)および精製水(1.0容量、1.0重量)を容器Bに入れ、必要に応じて温度を20℃に調整する。完全に溶解するまで撹拌する(予想では10~20分)。
【0139】
容器Aの温度を20℃に維持しながら、クロロ酢酸溶液を容器Aに入れる。15~25℃の精製水(0.5容量、0.5重量)で容器Aのラインをリンスし、容器Bに20℃で入れる。反応混合物を80℃に加熱する。反応混合物を80℃で20時間撹拌する。
【0140】
反応混合物を1.5時間かけて10℃に冷却する。10℃を維持しながら一定速度を目標として、47%w/wのリン酸カリウム溶液(6.0容量)を60分間にわたって入れる。反応温度を10℃に維持しながら、47%w/wのリン酸カリウム溶液を入れることにより、反応混合物のpHをpH7.0に調整する。予想投入量は、2.0~3.5容量の47%w/wリン酸カリウム溶液である。
【0141】
スラリーを10℃に維持しながら30分間以上撹拌し、pHを再確認する(合格基準pH7.0)。反応混合物を10℃で20μmの布を通して濾過する。濾過ケークを10℃の精製水(1.0容量、1.0重量)で洗浄する。このステップを、以下に記載されるようにさらに3回繰り返す。
【0142】
反応容器内の濾過ケークを精製水(10.0容量、10.0重量)で10℃で45分間~90分間スラリー洗浄する。混合物を10℃で20μmの布を通して濾過する。
【0143】
反応容器内の濾過ケークを精製水(10.0容量、10.0重量)で10℃で45分間~90分間スラリー洗浄する。混合物を10℃で20μmの布を通して濾過する。
【0144】
反応容器内の濾過ケークを精製水(10.0容量、10.0重量)で10℃で45分間~90分間スラリー洗浄する。混合物を10℃で20μmの布を通して濾過する。
【0145】
濾過ケークを10℃の精製水(1.0容量、1.0重量)で洗浄する。濾過ケークを、以下に記載されるようにさらに5回精製水で洗浄した。
【0146】
濾過ケークを10℃の精製水(1.0容量、1.0重量)で洗浄する。
【0147】
濾過ケークをアセトニトリル(2×1.3容量、2×1.0重量)で10℃で洗浄する。
【0148】
フィルター上の濾過ケークを、真空下および濾過ケークを通る強い窒素流下で、カールフィッシャー分析による含水率が15.0%w/w以下になるまで20℃で乾燥させる。
【0149】
フィルター上の濾過ケークを、真空下および濾過ケークを通る強い窒素流下で、カールフィッシャー分析による含水率が5.0%w/w以下になるまで30℃で乾燥させる。
【0150】
フィルター上の濾過ケークを、真空下および濾過ケークを通る強い窒素流下で、カールフィッシャー分析による含水率が1.0%w/w以下になるまで50℃で乾燥させる。
【0151】
化合物G-1の収率:約75%。
ステップ2B:F-3aの調製
【0152】
ジ-tert-ブチルジカーボネート(1.85重量、1.4当量)を容器Aに入れ、続いてN,N-ジメチルホルムアミド(2.6重量、2.7容量)を入れ、溶解が達成されるまで20℃で20分間撹拌する。N,N-ジイソプロピルエチルアミン(0.08重量、0.11容量、0.1当量)を容器Aの内容物に20℃で添加する。容器Aの内容物を40℃に加熱する。
【0153】
G-1(1.00重量)を容器Bに入れ、続いてN,N-ジメチルホルムアミド(5.2重量、5.5容量)を入れ、14℃に調整する。
【0154】
G-1/DMF溶液を容器Bから容器Aに40℃で5時間にわたってほぼ一定の速度で入れる。容器Aを40℃に維持しながら、N,N-ジメチルホルムアミド(0.4重量、0.4容量)を用いてラインをリンスする。得られた反応混合物を40℃で16時間撹拌する。
【0155】
脱色活性炭(0.20重量)を入れる。混合物を40℃に調整し、40℃で60~90分間撹拌する。
【0156】
反応混合物を40℃で容器Bの中に清澄化(濾過)する。N,N-ジメチルホルムアミド(0.9重量、1.0容量)を容器Aを介して入れ、40℃で濾過する。温度を40℃に維持しながら、精製水(3.5容量)を、合わせた濾液に60分間にわたって入れる。必要に応じて、混合物を30~60分間かけて35℃に冷却する。
【0157】
F-3a(0.02重量)を種材料として35℃で入れる。34℃で1.5時間撹拌した後、結晶化を確認する。スラリーを40分間かけて30℃に冷却する。
【0158】
F-3a(0.02重量)を種材料として30℃で入れる。30℃で1.5時間撹拌した後、結晶化を確認する。
【0159】
スラリーを目標の一定速度で3.5時間かけて20℃に冷却する。20℃で3時間撹拌する。精製水(1.0容量)を入れ、60分間にわたって温度を20℃に維持する。
20℃で3時間撹拌する。
【0160】
スラリーを2.5時間かけて2℃に冷却する。2℃で2.5時間撹拌する。20μmの布を通して濾過し、さらなる濾液が通過しなくなるまで吸引乾燥する。予め混合したN,N-ジメチルホルムアミド/精製水(2.0容量、1:2v:v)で固体を2℃で洗浄する。固体を精製水(2×3.0容量)で2℃で洗浄する。KFが0.2%w/w以下、N,N-ジメチルホルムアミドが0.4%w/w以下になるまで28℃で真空下で乾燥させる。
【0161】
化合物F-3aの収率:62~70%。
実施例3:マボリキサフォルの合成:
スキームVI:
【化50】
ステップ3A:イミンQ-1の調製
【0162】
容器Aに、精製水(8.7容量、8.7重量)を入れ、続いてリン酸カリウム(5.52当量、5.3重量)を少量ずつ入れ、15℃に冷却する。テトラヒドロフラン(4.3容量、3.8重量)およびn-ヘプタン(2.2容量、1.5重量)を容器Aに入れ、二相混合物を0℃に冷却する。F-1(1.00当量、1.00重量)を、0℃を維持しながら2回に分けて容器に入れる。
【0163】
F-2d(1.10当量、1.95重量)を、0℃を維持しながら4回に分けて容器に入れ、各回の間隔を確実に10分空ける。得られた二相混合物を0℃で1.5時間撹拌する。層を分離する前に、0℃で45分間おいて層を分離させる。容器A内の上方の有機相を保持する。
【0164】
得られたQ-1の溶液は単離せずに次の反応に使用する。
ステップ3B:アミンP-1の調製
【0165】
容器Bに、テトラヒドロフラン(6.0容量、5.3重量)を入れ、15℃に調整する。塩化亜鉛(1.5当量、0.92重量)を、10~30℃を維持しながら容器Bに4回に分けて入れる。容器B中の反応混合物を15℃に調整する。混合物を15℃で1時間撹拌する。水素化ホウ素ナトリウム(1.0当量、0.17重量)を15℃を維持しながら2回に分けて容器Bに入れる。容器B中の反応混合物を15℃に冷却する。混合物を、15℃を維持しながら1時間撹拌する。容器B中の反応混合物を-5℃に冷却する。
【0166】
ステップ3Aからの容器Aに保持されたQ-1の有機溶液を-5℃に冷却する。
【0167】
容器A中の有機溶液を、-5℃を維持しながら1~2時間にわたって容器Bに入れる。テトラヒドロフラン(1.0容量、0.9重量)をラインのリンス液として容器Aに入れ、-5℃に調整する。容器Aの内容物を、-5℃を維持しながら容器Bに移す。
【0168】
容器B中の得られた反応混合物を、-5℃を維持しながら1.5時間撹拌する。
【0169】
精製水(4.5容量、4.5重量)および氷酢酸(1.0当量、0.27重量、0.26容量)を、洗浄された容器Aに入れ、0℃に冷却する。容器Bの内容物を、0℃を維持しながら1~2時間にわたって容器Aに入れる。テトラヒドロフラン(1.0容量、0.9重量)を容器のリンス液として容器Bに入れ、0℃に冷却し、0℃を維持しながら容器Aに移す。
【0170】
容器A中の得られた混合物を30℃に加温する。容器A中の得られた混合物を30℃で1時間撹拌する。層を30℃で15分間静置した後、層を分離する。上方の有機相を保持する。
【0171】
保持した有機相を15℃に冷却する。10~30℃の25%w/wアンモニア溶液(3.0容量)を容器に入れる。反応混合物を20℃に冷却する。容器に20℃で25%w/w塩化アンモニウム溶液(3.0容量)を入れ、1時間撹拌する。層を20℃で15分間分離し、上方の有機相を保持する。保持した有機相を20℃で10%w/w塩化ナトリウム溶液(3.0容量)で10分間洗浄する。層を20℃で10分間静置した後、分離し、上方の有機相を容器内に保持する。
【0172】
tert-ブチルメチルエーテル(0.5容量、0.4重量)を有機相に入れる。混合物を5℃に冷却する。5℃で目標とする一定速度で1時間かけて、塩酸水溶液(予想:約9.0容量)を用いて反応混合物のpHをpH5に調整する。混合物を5℃で45分間撹拌する。水相のpHを測定し、値がpH5であることを確認する。
【0173】
塩化ナトリウム(2.1重量)を5℃で反応混合物に入れ、すべてが溶解するまで混合物を撹拌する。反応混合物の温度を20℃に調整する。層を20℃で分離し、有機相を容器内に保持する。テトラヒドロフラン(1.5容量、1.3重量)を、20℃を維持しながら入れる。
【0174】
20℃で24%w/w塩化ナトリウム溶液(7.5容量)を容器に入れ、10分間撹拌する。層を20℃で分離し、有機相を容器内に保持する。このステップを、以下に記載されるようにさらにもう1回繰り返す。
【0175】
20℃で24%w/w塩化ナトリウム溶液(7.5容量)を容器に入れ、10分間撹拌する。層を20℃で分離し、有機相を容器内に保持する。
【0176】
保持された有機相を35℃に加熱し、35℃を維持しながら混合物を減圧下で6.0容量に濃縮する。
【0177】
テトラヒドロフラン(15.0容量、13.2重量)を、35℃を維持しながら入れる。混合物を、35℃を維持しながら減圧下で6.0容量に濃縮する。
【0178】
テトラヒドロフラン(15.0容量、13.2重量)を、35℃を維持しながら入れる。混合物を、35℃を維持しながら減圧下で11.0容量に濃縮する。
【0179】
混合物を-5℃に冷却する。tert-ブチルメチルエーテル(10.0容量、7.4重量)を、-5℃を維持しながら1時間にわたって入れる。混合物を-5℃で1.5時間撹拌する。固体を-5℃で、1~2μmの濾布で濾過する。固体を、置換洗浄として、-5℃で、予め混合したテトラヒドロフラン(1.9容量、1.7重量)およびtert-ブチルメチルエーテル(3.1容量、1.9重量)で洗浄する。
【0180】
固体を-5℃でtert-ブチルメチルエーテル(5.0容量、3.7重量)で洗浄する。
【0181】
フィルター上の固体を窒素流下、23℃で乾燥させる。
【0182】
化合物P-1の収率:76~87%。
ステップ3C:化合物O-1の調製
【0183】
容器Aに、精製水(2.0容量、2.0重量)を入れ、続いてリン酸カリウム(3.3当量、1.54重量)を、15℃以下を維持しながら慎重に少量ずつ入れる。トルエン(4.5容量、3.9重量)を15℃以下に維持しながら容器に入れる。必要に応じて、温度を10℃に調整する。
【0184】
P-1(1.00当量、1.00重量)を10℃を維持しながら2回に分けて容器に入れる。反応混合物を10℃で15分間撹拌する。
【0185】
F-3a(1.1当量、0.64重量)を、等分して4回で10℃で入れ、各回の間隔を確実に10分空ける。
【0186】
ヨウ化テトラブチルアンモニウム(TBAI)(0.20当量、0.16重量)を入れる。反応混合物を40℃に加熱する。反応混合物を40℃で30時間撹拌する。
【0187】
予め混合した2-メルカプト酢酸(0.40当量、0.08重量、0.06容量)およびトルエン(0.5容量、0.4重量)を40℃で20分間にわたって容器Aに入れる。40℃でトルエン(0.5容量、0.4重量)を用いてラインをリンスする。反応混合物の温度を50℃に調整する。混合物を50℃で2.5時間撹拌する。
【0188】
容器Aの温度を20℃に調整する。20℃を維持しながら精製水(3.0容量、3.0重量)を入れる。反応混合物を20℃で15分間撹拌し、新しい清浄なHDPE容器に移す。20℃でトルエン(0.5容量、0.4重量)を用いてライン/容器をリンスする。反応混合物を、1μmフィルターを通して20℃で清浄な容器Aの中に清澄化(濾過)する。容器およびフィルターをトルエン(0.5容量、0.4重量)を用いて20℃で洗浄する。層を20℃で15分間分離させ、上方の有機層(有機層1)を保持する。
【0189】
水層をトルエン(2.5容量、2.2重量)を用いて20℃で15分間洗浄する。層を20℃で15分間分離させる。上方の有機層(有機層2)を保持する。
【0190】
有機層1と有機層2とを合わせ、温度を20℃に調整する。合わせた有機層を10%w/w塩化ナトリウム溶液(5.0容量)で20℃で15分間洗浄する。層を20℃で15分間静置する。上方の有機層を保持する。
【0191】
得られたO-1の溶液は、単離せずに次の反応に使用する。
ステップ3D:化合物K-1の調製
【0192】
n-ブタノール(2.4重量、3.0容量)を容器Bに入れ、5℃に調整する。濃硫酸(1.1重量、5.0当量、0.6容量)を、15℃以下に維持しながら容器Bにゆっくり入れる。15℃以下に維持しながら、トルエン(0.4重量、0.5容量)を用いてラインをリンスする。容器Bの温度を25℃に調整する。
【0193】
容器B内のn-ブタノール/硫酸溶液を55℃に加熱する。(ステップ3Cからの)容器Aからの有機層を、55℃に維持しながら60~90分間にわたって容器B内のブタノール/硫酸溶液に入れる。トルエン(1.3重量、1.5容量)をラインのリンス液として容器Aに入れ、55℃に維持しながら容器Bに移す。容器Bの内容物を55℃で1.5時間撹拌する。
【0194】
容器B内の混合物を55℃で4.5時間撹拌する。容器Bの内容物を10時間かけて20℃に冷却する。スラリーを窒素下、20℃で1~2μmの濾布で濾過する。濾過ケークを、予め混合したトルエン(3.5重量、4.0容量)およびn-ブタノール(1.0容量、0.8重量)で20℃で洗浄する。濾過ケークをトルエン(4.3重量、5.0容量)で20℃で洗浄する。固体を真空下30℃で乾燥させる。
【0195】
アッセイ用に出力重量を補正する。50~55%w/wと予想される。
【0196】
化合物K-1の収率:89~92%。
ステップ3E:マボリキサフォル原薬の調製
【0197】
容器AにK-1(1.00当量、1.00重量、HPLCアッセイ用に補正)を入れ、続いて窒素パージされた精製水(2.0重量、2.0容量)を入れ、必要に応じて、温度を20℃に調整する。窒素パージされたトルエン(12.0重量、14.0容量)を、20℃に維持しながら溶液に入れる。窒素パージされたn-ブタノール(0.8重量、1.0容量)を、20℃に維持しながら、溶液に入れる。二相混合物を30℃に加熱する。窒素パージされた3.0M水酸化ナトリウム水溶液(6.2当量、5.9容量)を30℃に維持しながら入れる。pHを確認する(12~13と予想される)。30℃に維持しながら、窒素パージされた0.3M硫酸溶液(予想では2.5容量まで)を用いて水層のpHをpH10.0に調整する。混合物を30℃で45分間撹拌する。
【0198】
pHを測定して、値がpH10.0であることを確認する。
【0199】
層を30℃で30分間静置し、層を分離し、容器内に有機相を保持し、水層を別の容器(容器C)に排出する。
【0200】
予め混合したトルエン(4.1重量、4.7容量)とn-ブタノール(0.24重量、0.3容量)を別の容器に入れ;内容物を30℃に加熱し、容器Cからの水層を入れる。必要に応じて、温度を30℃に調整し、30℃で5~10分間撹拌する。相を30℃で10~15分間分離させる。水相を排出して廃棄し、有機相を容器A内の有機相に合わせる。
【0201】
窒素パージされた精製水(2.0重量、2.0容量)を、温度を30℃に維持しながら有機層に入れ、30℃で5~10分間撹拌する。相を30℃で10~15分間分離させる。容器内に有機相を保持したまま、水相を排出して廃棄する。保持された有機溶液を40℃に加熱する。得られた有機相を40℃での減圧蒸留によって7.0容量に濃縮する。
【0202】
窒素パージされたトルエン(13.0重量、15.0容量)を混合物に入れ、40℃での真空蒸留により溶液を7.0容量に濃縮する。このステップを、以下に記載されるようにさらに1回繰り返す。
【0203】
窒素パージされたトルエン(13.0重量、15.0容量)を混合物に入れ、40℃での真空蒸留により溶液を7.0容量に濃縮する。
【0204】
窒素パージされたトルエン(7.0重量、8.0容量)を40℃で混合物に入れ、55℃に加熱し、熱い反応混合物を窒素下で1μmフィルターを通して清澄化する。
【0205】
清澄化された窒素パージトルエン(1.7重量、2.0容量)をラインおよび容器のリンス液として40℃で混合物に入れる。溶液を40℃で真空蒸留により7.0容量に濃縮する。蒸留の終わりに、生成物は沈殿していると予想される。混合物を63℃に加熱する。
【0206】
温度を60.5℃に調整する。このバッチをメインバッチと呼ぶ。
【0207】
種材料(0.02重量)を新しい清浄な容器に入れる。清澄化された窒素パージトルエン(0.09重量、0.10容量)をこの種材料に入れ、穏やかに振盪する。
【0208】
温度を60.5±2℃に維持しながら、メインバッチにスラリーを播種する。反応物を60.5±2℃で1時間撹拌する。
【0209】
40℃に2.5時間冷却する。反応物を40℃で1時間撹拌する。
【0210】
2時間かけて30℃に冷却する。反応物を30℃で1時間撹拌する。
【0211】
25℃に50分間冷却する。反応物を25℃で2時間にわたって撹拌する。
【0212】
4時間かけて2℃に冷却する。混合物を2℃で12時間撹拌する。
【0213】
混合物を2℃で1~2μmの布で濾過する。濾過ケークを清澄化された窒素パージトルエン(2.0容量、1.7重量)で2℃で洗浄する。濾過ケークを真空および窒素流下で1.5時間乾燥させる。
【0214】
乾燥仕様が達成されるまで、真空および窒素流下、40℃で固体を乾燥させる。
【0215】
最終化合物マボリキサフォルの収率:72%。
【0216】
マボリキサフォルの再結晶のために、トルエンを再結晶溶媒として、必要に応じてブタノールまたはメタノールなどの溶解助剤とともに使用すると、ジクロロメタンおよび酢酸イソプロピルを使用する場合と比較して利点が見出された。本発明者らは、これらの溶媒がAPIと反応しないことを見出した。したがって、本発明者らは、この変更によって、本発明者らが観察した不純物A(イミン)、B(N-ホルミル)およびC(アセトアミド)の大幅な減少がもたらされたものと考えている。
【0217】
いくつかの実施形態では、マボリキサフォル組成物は、7000、6000、5000、4500、4450、4000、3500、3000、2500、2000、1750、1700、1650、1600、1550、1500、1450、1400、1350、1300、1250、1200、1150、1100、1050、1000、950、900、850、800、750、700、650、600、550、500、450、400、350、300、250、200、150、100もしくは50ppmまたはそれ未満のトルエンを含む。いくつかの実施形態では、マボリキサフォル組成物は、検出可能な量のトルエンを含む。いくつかの実施形態では、マボリキサフォル組成物は、検出可能な量のトルエン~1350ppmのトルエンを含む。いくつかの実施形態では、マボリキサフォル組成物は、検出可能な量のトルエン~4450ppmのトルエンを含む。いくつかの実施形態では、マボリキサフォル組成物は、1750ppmのトルエン~4450ppmのトルエンを含む。いくつかの実施形態では、マボリキサフォル組成物は、1500ppmのトルエン~2500ppmのトルエンを含む。いくつかの実施形態では、マボリキサフォル組成物は、1800ppmのトルエン~2200ppmのトルエンを含む。いくつかの実施形態では、マボリキサフォル組成物は、1900ppmのトルエン~2100ppmのトルエンを含む。
【0218】
いくつかの実施形態では、トルエンは、X4P-001を単離するための結晶化溶媒として使用される。特定の実施形態では、X4P-001遊離塩基中の残留トルエンの仕様は、マボリキサフォル組成物が4500ppm以下を含むようなものである。他の実施形態では、マボリキサフォル組成物は、4000ppm、3500ppm、3000ppm、2500ppm、2000ppm、1750ppm、1700ppm、1650ppm、1600ppm、1550ppm、1500ppm、1450ppm、1400ppmまたは1350ppm以下のトルエンを含む。いくつかの実施形態では、一日曝露許容量(PDE)アプローチが使用される。一日曝露許容量(PDE)という用語は、薬物中の残留溶媒の薬学的に許容され得る摂取量として定義される。例えば、Guidance for Industry:Q3C Impurities:Residual Solvents published by the Department of Health and Human Services,Food and Drug Administration(FDA)を参照されたい。
【0219】
本発明者らは、三硫酸塩K-1などの式Kの硫酸塩を使用して、優れた純度のマボリキサフォル製剤(マボリキサフォル遊離塩基を含む)を単離するための本プロセスに関連する多くの利点を見出した。特に、K-1は、最初の脱保護生成物(すなわち、化合物OのBoc保護基の除去から得られる粗マボリキサフォル)のフォワード処理における使用に対して好適に安定で非吸湿性の塩であった。マボリキサフォルの有用な塩形態を調製するための本発明者らの努力は、複数の対イオンのスクリーニングにもかかわらず、ほとんど成功しなかった。マボリキサフォルの結晶塩形態を調製することは困難であった。実際に結晶化した塩の多くは吸湿性が高かった。このことは当技術分野で周知であり、記載されている。例えば、国際公開第2003/055876号は、マボリキサフォルの臭化水素酸塩を記載しており、参照により本明細書に組み込まれる。参照により本明細書に組み込まれる米国特許第7,723,525号は、マボリキサフォルの塩形態を調製する多くの試みを記載しており、多くが吸湿性に関連する問題に悩まされていることが第2欄第4~10行に記述されている。特に、臭化水素酸塩、塩酸塩などのマボリキサフォルの単純な酸塩は吸湿性に悩まされた。米国特許第7,723,525号に記載の本発明の1つの目的は、臭化水素酸塩または塩酸塩よりも吸湿性が低く、安定性が高いマボリキサフォルの安息香酸塩を提供することである(第3欄第55~65行)。米国特許第7,723,525号は、4-ヒドロキシベンゾエート、4-アミノベンゾエート、4-ヒドロキシベンゼンスルホネートなどの安息香酸塩の群が所望の特性を有していたことを教示している(第5欄第3~9行)。しかしながら、他の塩の特性は予測不可能であり、多くは上記のように吸湿性に悩まされていた。一硫酸塩の形成は、米国特許第7,723,525号の実施例1に記載されているが、その吸湿性および安定性は記載も示唆もされていない。同様に、三硫酸塩が言及されているが、そのような塩は調製されておらず、その特性が決定も予測もされていない。
【0220】
好ましい特性を有するマボリキサフォルの塩形態をスクリーニングする予測不可能性を考慮すると、三硫酸塩などの式Kのマボリキサフォルの硫酸塩形態が、現在進行中の臨床試験で使用するためのマボリキサフォル原薬へのフォワード処理に望ましい特性および適合性を示したことは驚くべきことであり、予想外であった。これらの2つの利点(安定性およびフォワード処理への適合性などの望ましい特性)は、どちらも事前に予測することができなかった。
【国際調査報告】