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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-10-23
(54)【発明の名称】熱可塑性液晶ポリマーの調製方法
(51)【国際特許分類】
   C08G 18/38 20060101AFI20241016BHJP
【FI】
C08G18/38 076
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024521148
(86)(22)【出願日】2022-10-07
(85)【翻訳文提出日】2024-05-28
(86)【国際出願番号】 NL2022050569
(87)【国際公開番号】W WO2023059194
(87)【国際公開日】2023-04-13
(31)【優先権主張番号】2029336
(32)【優先日】2021-10-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】NL
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.PYTHON
(71)【出願人】
【識別番号】501276430
【氏名又は名称】テクニーシェ・ユニバーシタイト・アイントホーベン
(74)【代理人】
【識別番号】100105924
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 賢樹
(72)【発明者】
【氏名】ラガー、ショーン ジーン ダニエル
(72)【発明者】
【氏名】ムルダー、ダーク ヤン
(72)【発明者】
【氏名】シェニング、アルベルトゥス ペトラス ヘンドリクス ヨハネス
【テーマコード(参考)】
4J034
【Fターム(参考)】
4J034CA32
4J034CB02
4J034DA07
4J034HA01
4J034HA07
4J034HC03
4J034QB08
4J034QB19
4J034RA13
(57)【要約】
【解決手段】本発明は、熱可塑性液晶ポリマーの調製方法に関する。また、本発明は、チオウレタン、アミド、または直鎖ビスマレイミドハードセグメント、および液晶ソフトブロックを含有するセグメント化コポリマー、ならびにこれを含有する熱可塑性液晶エラストマー(LCE)アクチュエータに関する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱可塑性液晶ポリマーを調製する方法であって、
a)ジ(メタ)アクリルメソゲンモノマーと、二官能性チオールまたはアミン成分と、を反応させて、メソゲン二官能性ポリマーを調製する工程と、
b)a)の前記メソゲン二官能性ポリマーと、ビスアクリルアミド、イソシアナート、またはビスマレイミドと、二官能性チオール、アルコール、またはアミン成分と、を反応させて、前記熱可塑性液晶ポリマーを調製する工程と、を含む、
方法。
【請求項2】
工程a)において、一般式(1)によって表されるメソゲン二官能性ポリマーが、少なくとも液晶ビスアクリラートまたはビスメタクリラート成分(X)と、二官能性チオールまたはアミン成分(L-Z)と、を反応させることによって調製され、工程(b)において、一般式(2)によって表されるコポリマーが、工程(a)の前記メソゲン二官能性ポリマー(1)と、ビスアクリルアミド、イソシアナート、またはビスマレイミド(Y)と、二官能性チオール、アルコール、またはアミン成分(L-Z)と、を反応させることによって調製される、
請求項1に記載の方法。
【化1】
【請求項3】
Xが、少なくとも2つのビニル基、2つのアクリル基、もしくは2つのメタクリル基、または前記基のうちの2つの組合せを含有するメソゲンモノマーである、
請求項2に記載の方法。
【請求項4】
Xが:
【化2】
の群から選択される、
請求項3に記載の方法。
【請求項5】
L1およびL2は連結モノマーであり、Z1およびZ2はそれぞれ連結モノマー上の側基である、
請求項2~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
L1、L2、Z1、およびZ2が:
【化3】
の群から選択される、
請求項5に記載の方法。
【請求項7】
Yが:
【化4】
の群から選択されるモノマーである、
請求項2~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
以下の式:
【化5】
に従うチオウレタン、アミド、または直鎖ビスマレイミドハードセグメント、および液晶ソフトブロックを含有するセグメント化コポリマーであって、
式中、
Xは、液晶ビスアクリラートまたはビスメタクリラート成分であり、
(L-Z)は、二官能性チオールまたはアミン成分であり、
(Y)は、ビスアクリルアミド、イソシアナート、またはビスマレイミドであり、
(L-Z)は、二官能性チオール、アルコール、またはアミン成分であり、
kは、液晶ソフトセグメント中の繰返し単位の平均数であり、
mは、ハードセグメント中の繰返し単位の平均数であり、
nは、ポリマー中の繰返し単位の平均数である、
セグメント化コポリマー。
【請求項9】
-100℃~TのT、好ましくは前記セグメント化コポリマー内のメソゲンセグメントの等方化温度(T)未満のTを示す、請求項8に記載のセグメント化コポリマー。
【請求項10】
とTとの間のメソゲンセグメントの融点(T,LC)を示す、請求項8または9に記載のセグメント化コポリマー。
【請求項11】
請求項8~10のいずれか一項に記載のセグメント化コポリマーを含む、熱可塑性液晶エラストマー(LCE)アクチュエータ。
【請求項12】
溶融加工および熱プログラミングによる、請求項11に記載の熱可塑性液晶エラストマー(LCE)アクチュエータの調製。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱可塑性液晶ポリマーの調製方法に関する。また、本発明は、チオウレタン、アミド、または直鎖ビスマレイミドハードセグメント、および液晶ソフトブロックを含有するセグメント化コポリマー、ならびにこれを含有する熱可塑性液晶エラストマー(LCE)アクチュエータに関する。
【背景技術】
【0002】
刺激応答性LCEは、高速で可逆的な作動を実行することができ、そしてソフトロボット、スマートテキスタイル、マイクロ流体、および人工筋肉等の用途において、ソフトアクチュエータとして容易に使用される。巨視的な機械的応答が、共有結合架橋ネットワーク熱硬化性樹脂において、秩序化された状態からあまり秩序化されていない状態まで生じる。ゆえに、応答性LCEを熱等の外部刺激に曝すと、配向されたメソゲンベースのネットワークのディレクタフィールドに沿った収縮、およびこれに垂直な拡張が生じ、巨視的な形状変化が誘導される。刺激を除去した後に、初期の分子秩序が回復して、架橋ネットワークに起因して形状が回復する。アラインされたLCEを調製するための立証された方法は、最初に、部分的に架橋した材料を機械的に延伸してアラインメントを誘導してから、メソゲンの所望の分子配向にロックしたポリマーを完全に光架橋することによるものである。現在入手可能な材料は、大きな変形を示し、良好な機械的特性を有し、かつ十分に安定しているが、再加工して再利用することはできない。
【0003】
永久架橋ポリマーネットワークに固有の制限を克服するための一戦略として、代わりに、動的共有結合を用いるものがある。開発された動的LCEネットワークのより多様な加工性を実証する動的共有結合ネットワークが報告されている。共有結合的に交換可能な当該ネットワークの分子構造の再配列は、触媒をしばしば必要とする化学反応によって促進される。動的共有結合ネットワークに基づくLCEアクチュエータは、融合および再プログラミングが可能である一方、プログラム可能な分子配向により溶融加工可能なLCEアクチュエータは、ポリマー溶融物を用いる従来の加工方法と適合する材料をさらに開発する新しい可能性をもたらす。
【0004】
永久的に架橋されたネットワークを回避するための代替戦略として、動的物理的架橋として超分子相互作用を導入することによるものがある。潜在的な超分子相互作用の中でも、水素結合が、最も魅力的な相互作用の1つとして浮上しており、可逆的な作動が可能な水素結合液晶(LC)ポリマーが、新興の研究領域となっている。しかしながら、今日まで、超分子架橋LCEアクチュエータは、多段階合成によって調製されているが、同時に組み込まれる刺激応答性の、再プログラム可能な、再加工可能な特性は、報告されていない。
【発明の概要】
【0005】
本発明の目的は、刺激応答性熱可塑性液晶ポリマーを用いることによって熱可塑性作動要素を提供することである。
【0006】
本発明は、添付の特許請求の範囲によって特徴付けられる。本目的は、チオウレタン(TU)、アミド、または直鎖ビスマレイミドハードセグメント、およびLCソフトブロックを含有するセグメント化コポリマーに基づく熱可塑性LCEアクチュエータによって達成される。
【0007】
本発明者らは、TUセグメントが、室温にて物理的に架橋したネットワークを形成する水素結合を含有し、十分な機械的完全性および優れた機械的特性を保証することを見出した。温度が高いほど、材料の熱可塑性挙動が回復し、溶融加工および熱プログラミングによるLCEアクチュエータの調製が可能になる(図1)。異なる長さのソフトLCオリゴマーブロックを有する熱可塑性LCEを一工程で合成し、これから構造、機械的特性、および作動性能に及ぼすブロックコポリマー組成物の効果を評価した。アゾベンゼンフォトスイッチの直接的な組込みにより、空気中および水中で光に応答してアクチュエータを可逆的に作動させることができる。加えて、熱可塑性LCE材料を、再加工することができるだけでなく、刺激によってトリガーされる異なる変形を示す別の形状に構成することもできる。
【0008】
熱可塑性作動要素は、特定の刺激(例えば、熱または光)に曝されると、その形状を可逆的に変化させる溶融加工可能ポリマーである。本発明は、所望の特性を達成するように材料および組成物を製造および加工する方法を含む。所望の特性として、ポリマーの熱機械的特性(例えば、弾性率および転移温度)、(メソ)相および転移温度、どの刺激(例えば、温度または光)に対してエラストマーが反応するか、ならびにエラストマーがその形状をどの程度変化させるか、または作用(作動歪みおよび応力)を発生させるかが挙げられる。
【0009】
液晶熱可塑性ポリマーを製造する本方法は、少なくとも液晶成分と、二官能性チオールまたはアミン成分と、を反応させることによって二官能性メソゲンオリゴマー(すなわち、(メタ)アクリラート、チオール、アルコール、またはアミン末端基を有する短いポリマー)が調製され、続いて、少なくとも二官能性メソゲンオリゴマーと、ビスアクリルアミド、もしくはビスマレイミド、またはイソシアナートと、二官能性チオール、アルコール、またはアミン成分と、を反応させることによってセグメント化コポリマーが調製される逐次付加反応を含む。
【0010】
ゆえに、本発明は、熱可塑性液晶ポリマーを調製する方法であって、
a)ジ(メタ)アクリルメソゲンモノマーと、二官能性チオールまたはアミン成分と、を反応させて、メソゲン二官能性ポリマーを調製する工程と、
b)a)のメソゲン二官能性ポリマーと、ビスアクリルアミド、イソシアナート、またはビスマレイミドと、二官能性チオール、アルコール、またはアミン成分と、を反応させて、熱可塑性液晶ポリマーを調製する工程と
を含む方法に関する。
【0011】
ゆえに、本発明は、逐次付加反応によって生成されるセグメント化熱可塑性液晶ポリマーに関し、一般式(1)によって表され、後にメソゲンセグメントと呼ばれるメソゲン二官能性ポリマーは、少なくとも液晶ビスアクリラートまたはビスメタクリラート成分(X)、および二官能性チオールまたはアミン成分(L-Z)を反応させることによって調製され、一般式(2)によって表され、後にハードセグメントと呼ばれるコポリマーは、少なくともメソゲン二官能性ポリマー(1)、ビスアクリルアミド、イソシアナート、またはビスマレイミド(Y)、および二官能性チオール、アルコール、またはアミン成分(L-Z)を反応させることによって調製される。
【0012】
【化1】
【0013】
一例では、熱可塑性液晶ポリマーは、-100℃~Tm、好ましくはメソゲンセグメントの等方化温度(T)未満のTを示す。
【0014】
一例では、熱可塑性液晶ポリマーは、TとTとの間のメソゲンセグメントの融点(Tm,LC)を示す。
【0015】
一例では、熱可塑性液晶ポリマーは、アゾベンゼン誘導体または別の発色団のいずれかが、メソゲンセグメント中の(X)によって表される成分として部分的もしくは完全に用いられるか、またはエラストマーに添加剤として加えられる場合、光応答性である。
【0016】
一例では、Xは、少なくとも2つのビニル基、2つのアクリル基、もしくは2つのメタクリル基、または前述の基のうちの2つの組合せを含有するメソゲンモノマーであり、Xは好ましくは:
【化2】
の群から選択される。
【0017】
一例では、L1およびL2は連結モノマーであり、Z1およびZ2はそれぞれ連結モノマー上の側基であり、L1、L2、Z1、およびZ2は好ましくは:
【化3】
の群から選択される。
【0018】
一例では、Yは好ましくは、
【化4】
の群から選択されるモノマーである。
【0019】
以下、本発明をより詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】溶融加工可能な材料としての熱可塑性PTUに基づく超分子架橋LCEアクチュエータの調製を示す。
図2】逐次付加反応および対応する組成物Sxを用いたセグメント化PTU LCE S1~S5の合成を示す。
図3a】セグメント化ポリチオウレタンLCE中の水素結合TUセグメントの分子表示を示す。
図3b】PTU LCE S1~S5のFTIRスペクトルを示し、破線によって示されるような遊離および水素結合TUアミンおよびカルボニル伸縮バンド領域を示す。
図3c】圧縮成形されたPTU LCE S1の温度依存性FTIRスペクトルを示す。
図4a】圧縮成形されたPTU S1~S5の温度の関数としてのDMA貯蔵弾性率(E’)および損失正接(tanδ)プロファイルを示す。
図4b】圧縮成形されたPTU S1~S5の室温での応力-歪み曲線を示す。
図4c】アラインしたPTU S1~S5の1D WAXSディフラクトグラムを示す。
図4d】プログラミング前のPTU S1の2D WAXSディフラクトグラムを示す。
図4e】プログラミング後のPTU S1の2D WAXSディフラクトグラムを示す。
図5a】30℃および110℃でのLCEアクチュエータS1~S5(左側から右側)の画像を示す。
図5b】温度の関数としての対応する作動歪みを示す。
図5c】80℃に加熱したときに追加の錘(5g)をリフトするPTU LCE S5の画像を示す。
図5d】室温から80℃までの負荷(5g)によるPTU LCE S5のサイクル後の作動歪みを示す。
図5e】一定のバイアス応力(250kPa)下でのアラインしたLCE S1~S5の熱作動を示す。
図5f】LCE毎の最大作動歪み比および対応する作動作業能力を示す。
図6a】空気中での作動の画像を示す。
図6b】UV(紫色)および青色(青色)光照明中の空気および水の双方における時間の関数としてのアクチュエータの先端変位を示す。
図6c】アゾベンゼン誘導体の光誘起トランス-シス異性化を示す。
図7a】PTU LCE S5の再加工サイクルを示す。
図7b】室温での応力-歪み曲線を示す。
図7c】初期状態の試料および再成形された試料の、温度の関数としての作動歪みを示す。
図7d】温度に応じた、アラインしたLCE S5の、捻れたリボンへの再プログラミング、および対応する作動を示す。
図8】ポリドメインPTU LCEのFTITスペクトルs1~s5を示す。
図9】ハードセグメント含有量の関数としてのC=OH-bond/C=Ofree比を示す。
図10】PTU LCE S1~S5のDSCサーモグラフを示す。
図11】PTU LCE S1~S5の熱重量プロファイルを示す。
図12】交差偏光子下のプログラムされたPTU LCE S5のPOM画像を示す。
図13】ポリドメインPTU LCE S1~S5の1D WAXSディフラクトグラムを示す。
図14】ポリドメインPTU LCE S1~S5の2D WAXSディフラクトグラムを示す。
図15】プログラムされたPTU LCE S1~S5の2D WAXSディフラクトグラムを示す。
図16】PTU LCEを示す。
図17】PTU LCE S1~S5についてのq=1.43~1.46nm-1での2D WAXSパターンの方位角プロファイルを示す。
図18】ポリドメインPTU LCE S1~S5の1D MAXSディフラクトグラムを示す。
図19】光応答性PTU LCEの合成経路を示す。
図20】ポリドメイン光応答性PTU LCEのFTIRスペクトルを示す。
図21a】光応答性PTU LCEのDSCサーモグラフを示す。
図21b】光応答性PTU LCEのTGAプロファイルを示す。
図21c】光応答性PTU LCEのDMAを示す。
図21d】光応答性PTU LCEの応力-歪み曲線を示す。
【発明を実施するための形態】
【0021】
超分子架橋熱可塑性LCEを作出するために、主鎖LCポリマーを、逐次的なチオール-アクリラートおよびチオール-イソシアナート付加反応を用いて調製した。ワンポット法を用いて、LCソフトセグメント長が体系的に変更されたセグメント化PTU材料を合成した(図2)。まず、ホスフィン触媒(4)の存在下で、小過剰のジチオール(1)と等モル混合物のジアクリラートメソゲン(2および3)との間の求核性チオール-マイケル付加反応によって、チオール官能化LCオリゴマーソフトセグメントを合成した。続いて、同じフラスコ内で、合成されたチオール末端オリゴマーと、アミン触媒(6)によって媒介される脂肪族ジイソシアナート(5)との間の塩基触媒チオール-イソシアナート付加反応によって、プレポリマーを調製した。最終段階で、プレポリマーを二官能性チオール(7)と反応させて、直鎖LC PTUを得た。本発明者らの実験では、PTU LCEの命名法Sxは、ソフトLCセグメントの算出された平均長(Sx、すなわちメソゲンの数)を示す。LCセグメント鎖の平均長は、Carothersの式を用いた理論計算によって得られるジチオールと反応性メソゲンとの化学量論比によって、1から5つの繰返し(S1~S5)単位に制御した(表S1)。対照的に、ハードTUセグメント長は、一定に維持した(Mn、theo=487g mol-1)。さらに、ソフトセグメントの長さおよび含有量が、セグメントあたり1から5つのメソゲンに増大するにつれ、TUセグメント含有量はそれぞれ31から10重量%に低下する(表S2)。反応混合物を低温ジエチルエーテル中に沈殿させることによって、一連の白色ポリマーが、ほぼ定量的な収率で得られた。注目すべきは、2つの異なるジチオール(1および7)が熱可塑性PTU LCEの形成に用いられているのは、双方のセグメント内に1つのジチオールのみを組み込むと、ミクロ相分離の程度および材料の特性が劇的に低下したためであることである。
【0022】
合成された全ての材料について、フーリエ変換赤外分光法(FTIR)によって、2560および2270cm-1でのそれぞれチオールおよびイソシアナート伸縮バンドの消失によって示されるように、ポリマーの形成が確認された。加えて、TU部分の形成の成功を示す全ての材料について、特徴的なアミンおよびカルボニル振動が観察された。ゲル浸透クロマトグラフィ(GPC)からの全ての材料の観察された数平均分子量(85000~157000g mol-1)および比較的低い多分散性(2.0~2.7)は、ポリチオウレタンの合成の成功を示す(表S3)。
【0023】
PTU LCEの水素結合特性を、FTIR分光法によって調査した(図3図8)。TUセグメント中の水素結合の程度を、TUアミン領域(3200~3400cm-1)およびカルボニル領域(1600~1800cm-1)における吸収に割り当てた(図3b)。水素結合(N-H H-結合)および遊離(N-H遊離)TUアミン伸縮バンドが、それぞれ3315および3440cm-1にて観察された。N-H H結合伸縮バンドは、全てのPTU LCEについてシャープな振動として現れた一方、N-H遊離は、弱々しく観察され得、良好に組織化された水素結合TUセグメントの形成を示している。TUセグメントの秩序正しい水素結合(C=OH結合)および遊離(C=O遊離)カルボニル伸縮バンドが、それぞれ1638および1677cm-1にて観察された。予想されるように、水素結合TUアミンの吸収およびカルボニル伸縮振動は、LCE S5からS1までのTUセグメント含有量の増大と共に一貫して増大した。対照的に、遊離TUアミンの吸収は、TUセグメント含有量の増大と共に低下した。水素結合カルボニル基の吸収バンドは、遊離カルボニル基よりも大きく、対応する比(C=O H結合/C=O遊離)は、TUセグメント含有量と共に増大する(図9)。これらの結果は、TUセグメント濃度が高いほど、水素結合の程度が増大することを示唆しており、LCセグメント長が短いほど、LCセグメントとTUセグメントとの間のかなりの程度のミクロ相分離を示す。とはいえ、調製された試料は、TUセグメント中の超分子物理的架橋として作用する強い水素結合相互作用を示す。
【0024】
材料を加熱すると、水素結合は、水素結合および遊離伸縮バンドのマイナーな変化によって示されるように、110℃までほぼ影響を受けないままである(図3c)。しかしながら、120℃では、スペクトルは、水素結合アミンの吸光度の突然の低下、および水素結合の解離開始と関連するカルボニル伸縮振動を示す。さらに温度を上げると、水素結合カルボニルピークは、200℃にて完全に消失するまで、徐々に低下し、かつより高い波数にシフトし、遊離カルボニルピークの徐々の増大を伴う。また、水素結合アミン振動が低下して、より高い波数にシフトした。これらの知見は、全てのPTUに当て嵌まり、3つの特徴的な温度を明らかにした。120℃未満の温度では、水素結合が維持され、物理的に架橋されたネットワークを形成し、熱作動時にその形状およびアラインメントを保存するような材料の機械的安定性を保証する。反対に、120℃~200℃では、水素結合が部分的に切断され、水素結合の熱可逆性により冷却時に固定されるLCEの歪み誘起アラインメントが可能になる。さらに、物理的架橋は、200℃にてほぼ完全に存在せず、溶融加工可能な能力を保証する(下記参照)。
【0025】
開発された材料の熱特性を、示差走査熱量測定(DSC)および熱重量分析(TGA)を用いて評価した。DSCサーモグラムは、加熱中に-15から-6℃に及ぶ転移を示し、これを、LCセグメントのガラス転移温度(Tg)に割り当てた(表S4および図10)。LCセグメント鎖長をS1からS5まで増大させると、LCセグメントの物理的架橋密度の低下およびセグメント移動度の増大に起因して、Tgはより低い温度にシフトする。TUセグメントドメインの吸熱溶融ピーク(Tm)が、164から177℃にて観察された。TUセグメント含有量をS5からS1まで増大させると、Tm下面積、従って遷移のエンタルピーも増大する。これらの結果は、PTU LCEにおける別個のLCセグメントおよびTUセグメントの存在を示した。さらに、LCセグメント含有量とは無関係に、35℃付近のLCE S3~S5について、発熱ピークが観察される。TGAプロファイルは、TUおよびエステル部分の分解に対応する全ての材料について、2つの転移を明らかにした(図11)。熱可塑性LCEは、ポリマーの分解に起因して、約245℃で1%の重量損失を示し、これは、所望の熱安定性を示す加工温度をはるかに超える。
【0026】
動的機械分析(DMA)を実行して、熱可塑性PTU LCEの動的粘弾性特性を特徴付けた(表S4)。サーモグラムでは、LCセグメントのα緩和に対応して、貯蔵弾性率(E’)変曲点および損失正接(tanδ)ピーク最大値が約10℃にて観察された(図4a)。さらに、LCE S3~S5について、肩部が約40℃にて観察された。65℃から150℃の間で、ゴム状プラトーが観察された。LCセグメント長を増大させて、TUセグメント含有量をS1からS5まで低下させると、α緩和転移はより低い温度にシフトし、そしてゴム状プラトー領域でのE’の大きさは一貫して低下する。この温度およびゴム弾性率の低下は、物理的架橋として作用するTUセグメントドメインの濃度の低下から生じる。結晶性TUセグメントドメインの溶融転移の開始は、材料が粘弾性流動領域に入るより高い温度でのtanδの明確な増大およびE’の低下によって明らかにされる。さらに温度を上げると、材料は粘性流動を示し、弾性特性が失われる。観察されたα緩和および溶融温度転移の傾向は、DSCにおいて得られたLCセグメントのTgおよびTUセグメントのTmと一致する。温度依存性FTIR測定と同様に、tanδのDMA温度プロファイルから、開発された材料が3つの異なる温度領域を示すことが分かる。ゴム状領域では、tanδは一定であり、このことは、物理的架橋が維持され、そして材料が共有結合架橋系として作用することを示している。粘弾性流動領域では、超分子ネットワークは部分的に破壊され、延伸時に材料の歪み誘導配向を可能にするが、より高い温度では、粘性流動に起因して、溶融加工可能になる。
【0027】
機械的特性およびLCセグメント長効果をさらに研究するために、引張試験を実行した(表S5)。応力-歪み曲線から、S1からS5へのLCセグメントサイズの増大と共にヤング率が低下することが観察され(図4b)、これは、DMAにおけるゴム状プラトーの観察された傾向と一致している。さらに、応力-歪み曲線におけるプラトー領域は、LCセグメント長が長いほど徐々に長くなる。破断伸びは増大し、それに応じて引張強度は低下する。これらの観察は、TUセグメント含有量の相対的低下に起因して、材料中の物理的架橋点の濃度がより低いことから生じる。応力-歪み曲線において観察されたプラトーは、ポリドメイン材料が延伸方向に沿って徐々に配向されるLCEに特徴的であり、アラインメントがプログラムされるアラインされたLCEの調製に不可欠である。
【0028】
開発された熱可塑性PTU LCEの可逆的形状モーフィング挙動を実証するために、アラインされたアクチュエータを最初に調製した(図1)。ポリドメイン試料を、材料を200℃にて圧縮成形することによって得た。この温度は、溶融転移をはるかに超え、かつ分解温度未満である。圧縮成形されたポリドメイン試料を、室温にて一軸に伸長させ(ε=100%)、続いて130℃にて30分間アニーリングした。ここで、この温度が水素結合解離の開始温度をほんの少し上回るときに、新しい物理的架橋が形成された。材料は、分子秩序が引き下げられる、より高い温度にてプログラムされるので、延伸された熱可塑性LCEは、室温に冷却されると、自発的に伸長する。これは、LCセグメントが、秩序化された中間相に自発的に組織化することに起因する。このプロセスの後に、結果として生じる配向されたLCEは、透明に見える(図1)。偏光光学顕微鏡法(POM)では、延伸された材料は、試料を交差偏光子間で45°回転させると、複屈折を示し、アラインメントを示した(図12)。
【0029】
分子配向およびセグメント構成を検証するために、アラインされたPTU LCEを、広角および中角X線散乱実験(WAXSおよびMAXS)により研究した。配向された試料を、外部から加えられる荷重なしで測定したことに留意することが重要である。広角ディフラクトグラムでは、LCセグメント鎖およびTUセグメント部分の散乱に起因して、q=10.2、14.5、17.2、および21.3nm-1での複数の回折ピーク、ならびに非晶質ハローが観察された(図4c)。TUセグメント含有量を31重量%(S1)から10重量%(S5)まで低下させると、回折はより弱くなった。したがって、これらのピークは、TU部分の散乱に対応すると考えられ、このことは、より高いTUセグメント含有量での良好に結晶化したTUドメインの形成およびLCEの結晶性の増大を示唆している。q=14.5および17.2nm-1での回折ピークは、それぞれ0.43および0.37nmのd間隔に対応し、これらは、水素結合方向で直交して、TU部分間の特徴的な分子間間隔に割り当て可能である。メゾ型ソフトセグメント鎖およびTUハードセグメント部分は双方とも、配向プロセス中に延伸すると、アラインされていないLCE(図13)と比較して、アラインされたLCE(図4c)の回折プロファイルにおけるより強い回折ピークによって示されるように、歪み誘起配向を経験する。最初のポリドメイン試料の2D WAXSディフラクトグラムは、リング形状の等方性パターンを示した。これは、セグメント化されたドメインのランダムな配向を示唆している(図4d;図14)。対照的に、配向されたLCEの広角2D X線回折パターンは、伸長方向に直交する、配向配置された典型的な回折スポットを示した(図4e;図15)。これらのパターンは、配向されたLCEのディレクタアラインメントによって促進される、良好に配向されたLCドメインおよびTUドメインの関連する散乱から生じる。また、アラインされた試料は、TU構造の散乱に起因して、延伸方向から60°の方位角にて、4点パターンを示す(図16)。TU部分は、延伸時に配向方向に沿って配向される山形形状をとり、これが4点散乱をもたらすと考えられる。対応する散乱ピークが、q=10.2nm-1(d=0.62nm)にて観察され、TU部分の特徴的な長さを反映した。上記の観察は、材料が配向プロセス中にアラインされて、異方性LCEが生じることを示している。さらに、アラインされたLCEは、配向プロセス中に同じ程度の延伸を伴う0.39から0.43の間の秩序パラメータを示す(図17)。対照的に、アラインされていない試料は、試料の取扱いによって誘導される可能性が高い、配向秩序が非常に低い拡散ハローを示す。LCセグメントおよびTUセグメントの観察シグナルが重複していたので、秩序パラメータは、材料全体の測定値であることに留意されたい。中角度ディフラクトグラムの小角度領域では、ミクロ相分離形態の形成に起因して、ドメイン間の間隔に由来するピークが観察される(図4f)。LCセグメント長が増大するにつれて、ミクロ相分離セグメントのドメイン間間隔は、エラストマーS1およびS5について、それぞれ12.6nmから22.4nmに増大する。他方、LCセグメント長が増大するにつれて、TUセグメントの相対量が小さくなるので、シグナルの強度は引き下げられる。LCEをアラインする前後のMAXS回折プロファイルを比較すると、同様のドメイン間間隔の傾向が示され、これは、配向されたLCEを形成すると、ミクロ相分離形態が影響を受けないことを示している(図18)。明らかなドメイン間間隔は、熱可塑性LCEにおける可逆的スイッチングセグメントおよび超分子架橋としてそれぞれ作用するLCドメインおよび水素結合TUドメインからなる明確に定義されたミクロ相分離構造の形成を示す。
【0030】
配向された熱可塑性LCEの偏りのない可逆的形状変化が、30℃から110℃の間で加熱冷却されたときに観察され、32%の最大作動歪み比を示した(図5a、図5b)。130℃を超えて加熱すると、歪みによって誘導される配向が消失して、可逆的な作動挙動が失われる。したがって、LCEは、水素結合の程度が維持される110℃の最高温度まで加熱される(上記参照)。熱サイクル実験では、LCEは、加熱された場合に、プログラムされたディレクタフィールドと共に直ちに収縮して、冷却時に初期長に完全に回復した。LCセグメント長をLCE S1からS5まで増大させると、作動歪みの大きさが著しく増大する。これは、LC含有量がより高くなり、かつ材料の剛性が低下することに起因している。これは、LCセグメント含有量が熱作動挙動を支配することを示している。開発されたアクチュエータの即時の可逆的応答および持ち上げ能力を実証するために、LCE S5を、種々の重量を負荷しながら繰り返し加熱冷却した。負荷されたアクチュエータは、約80℃に加熱されると急速に収縮し、熱源を除去するとその初期長に完全に回復した(図5c)。さらに、5グラムの重量を負荷した熱可塑性LCEアクチュエータは、少なくとも5回の加熱冷却作動サイクルにわたって、完全に可逆的な作動を示し、超分子架橋アクチュエータの配向および熱安定性の維持を示した(図5d;ビデオS1)。荷重が5グラムから30グラムまで増大するにつれて、作動歪みは、最終的に試料がほとんど収縮しなくなるまで、徐々に低下した(ビデオS2)。さらに、配向熱可塑性LCEの熱作動性能を、DMA中の温度の関数として、250kPaの初期バイアス応力に曝したときに特徴付けた(図5e)。観察された作動は、以前に不偏作動について観察された全ての試料について、作動歪みの同様の傾向および大きさを示す。加えて、アクチュエータの作業能力を、LCE S5の32%の作動歪みに対応する102kJ m-3の最大エネルギー密度により算出した(図5f)。
【0031】
開発された熱可塑性材料の光駆動作動が、従来のLCポリマーアクチュエータにしばしば用いられるアゾベンゼンフォトスイッチの組込みによって実証される。ここでも、先に記載されるワンポット合成と同様に、光応答性LCEが、単にアゾベンゼン誘導体8(3モル%)をジアクリラートメソゲンと共に加えることによって、PTU S5(表S6)に基づいて合成される(図19)。重合を、GPCおよびFTIRによって確認した(表S7および図20)。
【0032】
一方、熱的特性および機械的特性を、DSC、TGA、DMA、および引張試験により特徴付けた(図21)。LCE膜は、アゾベンゼン誘導体の吸収に起因して、空気中のUV光(365nm)での照射時に、光源に向かって屈曲する(図6a、図6b;ビデオS3)。アゾベンゼン誘導体は、UV光の吸収を介して、その棒状トランス状態から屈曲シス異性体への光誘起異性化を経験する(図6c)。このトランス-シス異性化に伴い、異性体の高次構造変化に起因して分子秩序が破壊され、分子ディレクタと共に異方性の収縮および拡張を誘導することによって、吸収された光エネルギーを機械的作用に変換する。アゾベンゼン含有量が比較的高いことに起因して、フィルムの全体にわたってシス-トランス勾配が生成され、露出面が収縮して巨視的な屈曲が生じる。UV光を除去した後に、フィルムは部分的に屈曲が戻り(unbend)、その後、一時的に安定した状態のままである(図6a、図6b)。この部分的な屈曲戻り運動は、光熱効果の結果である可能性が最も高い。アゾベンゼンクロモフォアのUV光吸収が、光熱加熱およびフィルムの収縮をもたらし、光をオフにするとその一時的な変形状態に可逆的に拡張する。トランスアゾベンゼン部分の光誘起逆異性化は、青色光(455nm)への曝露によって直ちにトリガーされ得、機械的緩和および大きな屈曲戻り変形が生じる。しかしながら、青色光をオフにした後にのみ、フィルムはその初期状態に完全に屈曲が戻る。また、この挙動は、フィルムの光熱加熱をもたらす青色光に曝露されたときのアゾベンゼン発色団の光吸収に関連し得る。光応答性熱可塑性LCEの水中作動は、UV光および青色光の双方を除去した後の小さな屈曲戻り運動によって示されるように、生じた熱がその周囲に直ちに失われるので、アクチュエータの光誘起加熱をほとんど実証しない(図6b;ビデオS4)。加えて、水中の変形の振幅は、空気中よりも小さい。なぜなら、同じ光強度が、双方の周囲に用いられ、水の光吸収に起因して空気中の入射光の強度がより高くなるからである。これらの観察結果は、光機械的効果および光熱的効果の双方が、PTU LCEを含有するアゾベンゼンの光駆動作動に寄与し、前者は、空気中および水中の双方で光誘起作動を可能にする主因であることを実証している。
【0033】
最後に、水素結合モチーフの動的特性を利用して、LCE材料を再利用、再プログラム、かつ融合させることができ、物理的架橋を組み込むことの機能的利点を示している。再利用可能性を実証するために、PTU LCE S5の初期状態のフィルムを小片に切断して、最大2回再成形した(図7a)。再加工された材料は、応力-歪み曲線から観察されるように、同様の機械的特性を示し、破断伸びおよび引張強度の増大を伴った(図7b)。加熱冷却すると、初期状態の材料および再利用材料は、同じ作動挙動を示した(図7c)。アラインされたアクチュエータの形状を再プログラムすることによって、材料を再構成して再び作動させることができ、異なるタイプの変形を示す。サーマルプログラミング前に、アクチュエータの一端を固定しながら、他端を捻ることによって、ツイストリボンを得た(図7d;ビデオS5)。再プログラムされたアクチュエータは、加熱時に収縮して捻れが解かれ、それに伴って試料が僅かに屈曲する。冷却中、アクチュエータは、その形状および高次構造を、その初期設計に回復させた。加えて、2つのプログラムされた形状を互いに融合させて、単一のアクチュエータを形成することができることが示されている。例えば、プログラムされたストリップおよび捻れたリボンの端部同士を垂直に融合させて、可逆的な温度によってトリガーされる作動を示す異なる形状にする(ビデオS6)。再プログラミングおよび融合の容易さにより、より複雑な形状設計および付随する変形の製造が可能となる。
【0034】
本発明者らは、セグメント化PTUに基づいて、新世代の溶融加工可能な超分子架橋LCEの開発に成功し、成形および延伸によってアクチュエータを得るための加工方法を実証した。明確なTUドメインの形成は、水素結合を介して材料中に超分子架橋を与え、作動中に所望の機械的安定性を実現するが、水素結合の可逆性は、プログラム可能な分子アラインメントを有する溶融加工可能な材料を可能にする。このアプローチは、ポリマー溶融物を用いる熱可塑性ポリマーの典型的な加工方法と一致しており、加熱時にネットワークの加工性を可能にすることによってLCEをアラインすることが可能となる。加熱されると、LCEアクチュエータは、負荷を持ち上げることができる可逆的収縮を経験する。材料の特性は、LCセグメント長を変えることによって体系的に制御することができる。アゾベンゼン誘導体を組み込むことによって、空気および水の双方における可逆的な光駆動作動が達成される。LCEフィルムの再加工が実証されており、外部刺激を加えると、異なる形状変化を示す別の形状へのアクチュエータの再構成が、再プログラミングおよび融合によって達成された。本発明者らは、これらの超分子架橋LCEが、(再)プログラム可能かつ再利用可能な刺激応答性材料に対する革新的なアプローチを提供すると予想している。これらのLCEの特性はさらに、共有結合架橋LCポリマーを調整するのに以前用いられていた反応性LC化学ツールボックスによって容易に調整かつ拡張することができる。
【0035】
4.実験セクション
材料:1,4-ビス-[4-(3-アクリロイルオキシプロピルオキシ)ベンゾイルオキシ]-2-メチルベンゼン(2)および1,4-ビス-[4-(6-アクリロイルオキシヘキシルオキシ)ベンゾイルオキシ]-2-メチルベンゼン(3)をMerckから得た。ジメチルフェニルホスフィン(4、99%)およびN,N-ジメチルアセトアミド(DMAc、≧99%)をSigma-Aldrichから購入した。2,2’-(エチレンジオキシ)ジエタンチオール(1、≧97%)、ヘキサメチレンジイソシアナート(5、≧98%)、トリエチルアミン(6、≧99%)、および1,6-ヘキサンジチオール(7、≧97%)を東京化成工業株式会社(TCI)から購入した。ジエチルエーテル(Et2O、≧99.5%)をBiosolveから得た。4,4’-ビス(6-アクリロイルオキシヘキシルオキシ)アゾベンゼン(8、≧95%)をSynthonから得た。全ての試薬を、さらに精製することなく、受け取ったまま用いた。
【0036】
合成手順:反応容器(100mL)に、DMAc中ジアクリラートメソゲン2および3(50重量%)をチャージして、50℃の不活性雰囲気下で完全に溶解するまで撹拌した。溶液を室温まで冷却して、撹拌しながらジチオール鎖エクステンダ1を加えてから、求核触媒4(0.1重量%)を加えた。結果として生じた反応混合液を、室温にて2時間反応させた。その後、DMAc中ジイソシアナート5(50重量%)を、オリゴマー混合液に直ちに加えてから、塩基触媒6(0.1重量%)を加えて、室温にて15分間撹拌した。この間、混合液は粘性になり、追加のDMAc(30重量%)をプレポリマー混合液に加えた。次に、ジチオール7を滴加して、添加完了後、反応混合液を60℃にて加熱して、一晩反応させた。粗混合を激しく撹拌しながら液低温Et2O(500mL)中に注いで、ポリマーを経時的に沈殿させた。生成物をフレッシュなEt2O(200mL)に加えて、一晩撹拌した。溶媒をデカントし、最終ポリマーを真空下40℃にて乾燥させて、白色の固体を得た(≧97%回収率)。合成された熱可塑性PTU LCEのモル比および配合を、補足情報(表S1、S2)に見出すことができる。最初の付加反応工程のメソゲン中にアゾベンゼン誘導体8をジアクリラートメソゲン2および3と共に加えることによって、光応答性PTU LCEを同じ合成手順に従って合成した(表S6および図19)。
【0037】
特性評価:4000~650cm-1の範囲にわたってダイヤモンド結晶を用いた減衰全反射(ATR)サンプリングアクセサリを備えたVarian 670 IR分光計により、FTIRスペクトルを、スペクトルあたり50回の走査および4cm-1のスペクトル分解能で記録した。特に明記しない限り、全てのスペクトルを室温にて記録した。得られたスペクトルを、Varian Resolutionsにより加工する。ゲル浸透クロマトグラフィ(GPC)を、PSS PFG(8×50mm、7μm)および2つのPFG linear XLカラム(8×300mm、7μm)を直列に備えたWaters HPLCシステムにより実行した。35℃の1,1,3,3,3-ヘキサフルオロ-2-プロパノール(HFIP)およびトリフルオロ酢酸カリウム(20mM)を、0.8mL min-1の流量にて供給される移動相として用いた。試料を、トリフルオロ酢酸カリウム(20mM)およびトルエン(20mM)と共にHFIP中に室温にて調製した。分子量を、ポリ(メチルメタクリラート)標準に対する屈折率ディテクタを用いて求めた。DSC測定を、密閉T-ゼロアルミニウム試料パンを備えるTA Instruments Q1000 DSC装置を用いて実行した。全ての走査を、10±1mgのポリマーにより、-50℃~200℃の温度範囲にわたって、窒素雰囲気下、10℃ min-1の加熱冷却速度にて行った。第2の加熱冷却サイクルを用いて、全ての試料のエンタルピーおよび転移温度を求めた。TGAを、4±0.5mgのポリマーによるTA instruments Q50装置により、28から800℃の温度範囲にわたって5℃ min-1の加熱速度にて実行した。圧縮成形フィルムから切り出した8×5.3×0.4mm3(L×W×T)の試料を、TA Instruments Q800装置により垂直引張モードでDMAを実行した。サーモグラフを、5℃ min-1の加熱速度、単一の1Hzの振動周波数、10μmの振幅、および0.01Nの予荷重により、-50℃から250℃まで測定した。500Nロードセルを用いて、Lloyd-Ametek EZ20引張試験機により応力-歪み曲線を得た。歪みは、(l-L)/Lとして定義され、式中、Lは初期長さであり、lは特定の時点での長さである。圧縮成形フィルムから断面積2×0.4mm2(W×T)のドッグボーン試験片を切り出して、20mmのゲージ長で、10mm min-1の伸長速度にて、破断するまで一軸に伸長した。X線散乱測定を、それぞれ0.154nmおよび1×108光子s-1の波長および束のX線光子を生成するGenix-Cu超低発散源を備えたGanesha実験装置により実行した。回折パターンを、172×172μm2の487×619ピクセルを有するPilatus 300Kシリコンピクセルディテクタを用いて得た。ベヘン酸銀を較正標準として用いた。試料からディテクタまでの距離は、広角(WAXS)構成では89mmであったが、中角度(MAXS)では、ディテクタは439.5mmにて作動した。収集したデータを削減して(reduced)、PyFAIソフトウェアパッケージによるカスタムPythonスクリプトを用いて分析した。式d=2π/qを用いて、D間隔を算出した。Kratky法を用いて、回折パターンから配向秩序パラメータを算出した。Leica DM2700 M顕微鏡および交差偏光子により、POMを実行した。
【0038】
製造手順:最初に、ポリマーを60℃にて少なくとも1時間乾燥させてから、加工した。次いで、材料を20×40×0.1mm3(L×W×T)の型に均一にロードして、両側をポリテトラフルオロエチレン(PTFE)保護シート(T=0.12mm)でカバーした。型を、Collin P200Eプレス内で200℃に加熱して、50バールの型圧力で5回のブレスサイクルに供した。最終圧縮成形プロセスを、100バール、200℃にて2分間実行し、その後、型を直ちに室温に急冷してポリドメインポリマーフィルムを形成した。圧縮成形したポリマーフィルムから寸法35×2×0.4mm3(L×W×T)のドッグボーン形状の試験片を切り出して、特注の延伸装置を用いて、伸長が100%に達するまで、室温にて一軸的に歪みを与えた。次いで、歪み試料を130℃に30分間加熱し、続いて歪みを維持しながら室温に冷却した。冷却中、アラインした試料は、最初に加えられた歪みを超えて自然発生的に伸長したことが認められた。最後に、特性評価および試験の前に48時間、アラインしたLCEを室温にてアニールした。再利用のために、フィルムを小片に切断して、前述の手順に従って圧縮成形した。アラインしたLCEの一端を、他端を固定しながら捻ってから、130℃に30分間加熱した後に、室温に冷却することによって、捻りリボンアクチュエータを得た。2つのアクチュエータの端部を重ね合わせて、200℃に2分間加熱することによって、融合を実行した。
【0039】
作動測定:ホットプレートの上部の黒色陽極酸化アルミニウムシート上に、アラインした試料を配置することによって、熱作動測定を実行した。30℃から110℃まで10℃間隔で徐々に昇温させることによって、試料を昇温させた。その後、試料を室温に冷却した。全ての試料を、完全加熱冷却サイクルに供して、作動測定前の熱履歴を消去した。カメラ(Olympus OM-D E-M10 Mark III)を用いて、各温度にて写真を撮影して、得られた画像を、ImageJを用いて解析した。ペーパークランプ(1.26g)により試料に種々の錘を取り付けて、ヒートガンを用いて80℃付近まで加熱して、ウエイト挙げ試験を行った。試料長を温度の関数として監視することによって、TA Instruments Q800 DMAにより作動歪みを測定した。8×1.3×0.3mm(L×W×T)の寸法を有する試料を、250kPaの初期バイアス応力(一定の力)下で、5℃ min-1の加熱速度にて-50℃から120℃までの制御された力モードで測定した。熱履歴が消去されたことを確実にするために、測定前に全ての試料を110℃に3分間加熱した。バイアス応力が、作動時に変化する試料の断面積によって決まることを考慮して、対応する作業能力を式1から算出した。
【0040】
作業能力=W/V=F_biasΔL/LWT=F_bias/WT・ΔL/L=σ_biasε_bias[kJ m^(-3)](1)
19.11×1.52×0.23mm(L×W×T)の寸法を有するアラインしたフィルムを、365nm(UV光、Thorlabs M365L2)または455nm(青色光、Thorlabs M455L3-C2)にて発光するコリメート光源から約10cmの距離にて吊り下げることによって、光駆動作動を実行した。LEDドライバ(Thorlabs DC4104)を用いて、LEDの光強度を制御した。空気中での光作動を、UVおよび青色光の強度をそれぞれ25.2mW cm-2および34.5mW cm-2に設定して、室温にて実行した。水中光作動について、試料を、水道水入りの透明な容器内に室温にて浸して、それぞれ20.1 mW cm-2および28.5 mW cm-2の強度のUVおよび青色光で照射した。光駆動作動を、カメラを用いて記録した(上記参照)。
【0041】
図1.溶融加工可能な材料としての熱可塑性PTUに基づく超分子架橋LCEアクチュエータの調製。モノマーのワンポット重合によりセグメント化ブロックコポリマーが得られ、得られた材料を圧縮成形するとポリドメインフィルムが得られる。材料を高温にて伸長させることによるその後のプログラミングにより、均一なディレクタフィールド(n)が可能となる。
【0042】
図2.逐次付加反応および対応する組成物Sxを用いたセグメント化PTU LCE S1~S5の合成。青色の矩形および灰色の棒は、それぞれTUセグメントおよびLCセグメントを表す。
【0043】
図3.a)セグメント化ポリチオウレタンLCE中の水素結合TUセグメントの分子表示。b)点線によって示されるような遊離および水素結合TUアミンおよびカルボニル伸縮バンド領域を示すPTU LCE S1~S5のFTIRスペクトル。c)圧縮成形されたPTU LCE S1の温度依存性FTIRスペクトル。黒色の矢印は、加熱による振動の増減を示している。
【0044】
図4.a)圧縮成形されたPTU S1~S5の温度の関数としてのDMA貯蔵弾性率(E’)および損失正接(tanδ)プロファイル。黒色の矢印は、対応する軸を示す。b)圧縮成形されたPTU S1~S5の、室温での応力-歪み曲線。c)アラインしたPTU S1~S5の1D WAXSディフラクトグラム。d)プログラミング前およびe)プログラミング後のPTU S1の2D WAXSディフラクトグラム。白色の矢印は、アラインメント方向を示す。f)アラインしたPTU S1~S5の1D MAXSディフラクトグラム。
【0045】
図5.a)30℃および110℃でのLCEアクチュエータS1~S5(左側から右側)の画像。b)温度の関数としての対応する作動歪み。c)80℃に加熱したときに追加の錘(5g)をリフトするPTU LCE S5の画像。d)室温から80℃までの負荷(5g)によるPTULCE S5のサイクル後の作動歪み。赤色および青色のボックスは、アクチュエータの加熱および冷却に対応する。e)一定のバイアス応力(250kPa)下でのアラインしたLCE S1~S5の熱作動。f)LCE毎の最大作動歪み比および対応する作動作業能力。
【0046】
図6a.空気中での作動の画像:(i)照射前の室温でのアクチュエータ。(ii)UV光(25.2mW cm-2)誘起屈曲運動;(iii)UV照射除去後のアクチュエータの一時的な安定状態;(iv)青色光(34.5mW cm-2)誘起屈曲戻り運動;(v)青色光の消灯後の初期状態への完全屈曲戻り。アクチュエータは、左側から照射されると、光源に向かって屈曲する。b)UV(紫色)および青色(青色)光照明中の空気および水の双方における時間の関数としてのアクチュエータの先端変位。番号付けした領域は、a)の画像に対応する。c)アゾベンゼン誘導体の光誘起トランス-シス異性化、および光に応答したアゾベンゼン部分の幾何学的変化から生じる可逆的な光駆動屈曲運動の概略図。灰色および橙色の棒は、LCおよび光応答性アゾベンゼン部分をそれぞれ表す。UV光への曝露は、より濃い橙色によって示される、フィルムにおける光吸収(すなわち、シス-トランス)勾配をもたらす。
【0047】
図7.a)フィルムの切断および再成形を示すPTU LCE S5の再加工サイクル。b)室温での応力-歪み曲線、ならびにc)初期状態の試料および再成形された試料の、温度の関数としての作動歪み。d)温度に応じた、アラインしたLCE S5の、捻れたリボンへの再プログラミング、および対応する作動。
【0048】
表S1.熱可塑性PTU LCE S1~S5の合成に用いたモノマーのモル比。
【0049】
【表1】
【0050】
表S2.熱可塑性PTU LCE S1~S5の配合。Carothersの式を用いた理論計算によって得られるLCセグメントおよびTUセグメント長の繰返し単位数(n)。対応する理論数平均分子量(Mn,theo)、ならびにLCセグメントおよびTUセグメントの含有量。
【0051】
【表2】
【0052】
表S3.熱可塑性PTU LCE S1~S5のGPC結果。
【0053】
【表3】
【0054】
図8.ポリドメインPTU LCEのFTITスペクトルs1~s5。
【0055】
図9.ハードセグメント含有量の関数としてのC=OH-bond/C=Ofree比。
【0056】
表S4.熱可塑性PTU LCE S1~S5のDSCおよびDMA結果。
【0057】
【表4】
【0058】
図10.PTU LCE S1~S5のDSCサーモグラフ。第2の加熱ランを示す。
【0059】
図11.PTU LCE S1~S5の熱重量プロファイル。
【0060】
表S5.熱可塑性PTU LCE S1~S5の機械的特性の要約。
【0061】
【表5】
【0062】
図12.交差偏光子下のプログラムされたPTU LCE S5のPOM画像。交差した矢印は、偏光子方向(p)を示し、単一の矢印は、アラインした材料の分子ディレクタ(n)を示す。スケールバーは200μmである。
【0063】
図13.ポリドメインPTU LCE S1~S5の1D WAXSディフラクトグラム。
【0064】
図14.ポリドメインPTU LCE S1~S5の2D WAXSディフラクトグラム。観察される配向は、試料の調製およびハンドリングに起因する。
【0065】
図15.プログラムされたPTU LCE S1~S5の2D WAXSディフラクトグラム。アラインした材料の分子ディレクタは、水平である。
【0066】
図16.PTU LCE S1についてのq=1.00~1.05nm-1での2D WAXSディフラクトグラムの方位角プロファイル。
【0067】
図17.PTU LCE S1~S5についてのq=1.43~1.46nm-1での2D WAXSパターンの方位角プロファイル。特注のスクリプトによって方位角にKratky関数を当て嵌めることによって、秩序パラメータを得た。
【0068】
図18.ポリドメインPTU LCE S1~S5の1D MAXSディフラクトグラム。ソフトセグメント中のメソゲン間の間隔(d=4.6nm)に由来する追加のピークが、q=1.37nm-1にて観察される。試料のLCセグメント長が長いほど、シグナルは強い。
【0069】
表S6.光応答性熱可塑性PTU LCEの合成に用いたモノマーのモル比。
【0070】
【表6】
【0071】
図19.光応答性PTU LCEの合成経路。
【0072】
表S7.光応答性PTU LCEのGPC結果。
【0073】
【表7】
【0074】
図20.ポリドメイン光応答性PTU LCEのFTIRスペクトル。
【0075】
図21.光応答性PTU LCEのa)DSCサーモグラフ、b)TGAプロファイル、c)DMA、およびd)応力-歪み曲線。
図1
図2
図3
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図21
【手続補正書】
【提出日】2024-06-12
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱可塑性液晶ポリマーを調製する方法であって、
a)ジ(メタ)アクリルメソゲンモノマーと、二官能性チオールまたはアミン成分と、を反応させて、メソゲン二官能性ポリマーを調製する工程と、
b)a)の前記メソゲン二官能性ポリマーと、ビスアクリルアミド、イソシアナート、またはビスマレイミドと、二官能性チオール、アルコール、またはアミン成分と、を反応させて、前記熱可塑性液晶ポリマーを調製する工程と、を含む、
方法。
【請求項2】
工程a)において、一般式(1)によって表されるメソゲン二官能性ポリマーが、少なくとも液晶ビスアクリラートまたはビスメタクリラート成分(X)と、二官能性チオールまたはアミン成分(L-Z)と、を反応させることによって調製され、工程(b)において、一般式(2)によって表されるコポリマーが、工程(a)の前記メソゲン二官能性ポリマー(1)と、ビスアクリルアミド、イソシアナート、またはビスマレイミド(Y)と、二官能性チオール、アルコール、またはアミン成分(L-Z)と、を反応させることによって調製される、
請求項1に記載の方法。
【化1】
【請求項3】
Xが、少なくとも2つのビニル基、2つのアクリル基、もしくは2つのメタクリル基、または前記基のうちの2つの組合せを含有するメソゲンモノマーである、
請求項2に記載の方法。
【請求項4】
Xが:
【化2】
の群から選択される、
請求項3に記載の方法。
【請求項5】
L1およびL2は連結モノマーであり、Z1およびZ2はそれぞれ連結モノマー上の側基である、
請求項2~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
L1、L2、Z1、およびZ2が:
【化3】
の群から選択される、
請求項5に記載の方法。
【請求項7】
Yが:
【化4】
の群から選択されるモノマーである、
請求項2~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
以下の式:
【化5】
に従うチオウレタン、アミド、または直鎖ビスマレイミドハードセグメント、および液晶ソフトブロックを含有するセグメント化コポリマーであって、
式中、
Xは、液晶ビスアクリラートまたはビスメタクリラート成分であり、
(L-Z)は、二官能性チオールまたはアミン成分であり、
(Y)は、ビスアクリルアミド、イソシアナート、またはビスマレイミドであり、
(L-Z)は、二官能性チオール、アルコール、またはアミン成分であり、
kは、液晶ソフトセグメント中の繰返し単位の平均数であり、
mは、ハードセグメント中の繰返し単位の平均数であり、
nは、ポリマー中の繰返し単位の平均数である、
セグメント化コポリマー。
【請求項9】
-100℃~TのT、好ましくは前記セグメント化コポリマー内のメソゲンセグメントの等方化温度(T)未満のTを示す、請求項8に記載のセグメント化コポリマー。
【請求項10】
とTとの間のメソゲンセグメントの融点(T,LC)を示す、請求項8または9に記載のセグメント化コポリマー。
【請求項11】
請求項8または9に記載のセグメント化コポリマーを含む、熱可塑性液晶エラストマー(LCE)アクチュエータ。
【請求項12】
溶融加工および熱プログラミングによる、請求項11に記載の熱可塑性液晶エラストマー(LCE)アクチュエータの調製。
【国際調査報告】