(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-10-23
(54)【発明の名称】表示装置
(51)【国際特許分類】
G02F 1/1368 20060101AFI20241016BHJP
G02F 1/1343 20060101ALI20241016BHJP
G02F 1/13 20060101ALI20241016BHJP
【FI】
G02F1/1368
G02F1/1343
G02F1/13 505
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024521155
(86)(22)【出願日】2022-10-06
(85)【翻訳文提出日】2024-06-07
(86)【国際出願番号】 EP2022077785
(87)【国際公開番号】W WO2023057553
(87)【国際公開日】2023-04-13
(31)【優先権主張番号】102021126024.8
(32)【優先日】2021-10-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(31)【優先権主張番号】102022114155.1
(32)【優先日】2022-06-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】508066083
【氏名又は名称】ベーア-ヘラー サーモコントロール ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】100159499
【氏名又は名称】池田 義典
(72)【発明者】
【氏名】サンヒェツ カスティロ,アルバート
(72)【発明者】
【氏名】ホフマン,ウィレム
【テーマコード(参考)】
2H088
2H092
2H192
【Fターム(参考)】
2H088EA45
2H088MA02
2H088MA07
2H092JA24
2H092JB05
2H092NA01
2H092PA06
2H092QA06
2H192BB02
2H192BB03
2H192BB13
2H192BB21
2H192BB66
2H192BB91
2H192CB12
2H192JB04
(57)【要約】
表示装置が、複数の画素及び特殊な分割電極設計を有する液晶ディスプレイを備えることにより、IPS技術を用いて、画素内に広がる電界の強度及び均一性に影響を与えることが可能となる。これにより、輝度が最大で視野角範囲が対称のシェアモードから、輝度が低下し視野角範囲が非対称のプライベートモードに、また逆にプライベートモードからシェアモードに、各画素を切り替えることができる。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
特に車両用の表示装置であって、
複数の画素を有する液晶ディスプレイと、
駆動ユニットとを備え、
上記液晶ディスプレイが、一画素につき1つの電極群(12’,13’,13”,18’)及びこの電極(12’,13’,13”,18’)を駆動するための電子部品が配置されている透明なキャリア層(10)と、表示面を構成する透明な被覆層(22)と、上記キャリア層(10)と上記被覆層(22)との間の液晶層(24)とを有し、
各電極群(12’,13’,13”,18’)が、接地電位に接続可能な第1の電極面(12’)と、同様に上記接地電位に接続可能な2つの第2の電極面(13’,13”)とを有し、この第2の電極面(13’,13”)が、互いにかつ上記第1の電極面(12’)に対して電気的に絶縁されており、ともに上記第1の電極面(12’)に一致するように、上記第1の電極面(12’)の上方又は下方に並んで配置されており、
各電極群(12’,13’,13”,18’)が、上記第1及び第2の電極面(12’,13’,13”)から電気的に絶縁されて配置され動作電位に接続可能な第3の電極(18’)を有し、
上記駆動ユニットが、特に上記電子部品を有し、シェアモードにおいて、各画素又は選択された画素の上記第3の電極(18’)を上記動作電位に接続し、各画素又は選択された画素の上記第1の電極面(12’)を上記接地電位に接続し、プライベートモードにおいて、上記第1の電極面(12’)に加えて、各画素又は選択された画素の上記2つの第2の電極面(13’,13”)の一方を上記接地電位に接続し、
その結果、全画素の上記2つの第2の電極面(13’,13”)の一方に対向する視認方向から上記表示面を見た際、各画素又は選択された画素の上記2つの第2の電極面(13’,13”)のうち、上記視認方向に対向しない方が上記接地電位に接続されている上記プライベートモードよりも、上記シェアモードでは、上記液晶ディスプレイの上記表示面に表示された情報を、高コントラストで視認可能である表示装置。
【請求項2】
特に車両用の表示装置であって、
複数の画素を有する液晶ディスプレイ(23)と、
駆動ユニット(21)とを備え、
上記液晶ディスプレイ(23)が、一画素につき1つの電極群(12,26,28)及びこの電極(12,26,28)を駆動するための電子部品が配置されている透明なキャリア層(10)と、表示面を構成する透明な被覆層(22)と、上記キャリア層(10)と上記被覆層(22)との間の液晶層(24)とを有し、
各電極群(12,26,28)が、接地電位に接続可能な接地電極面(12)と、互いに独立して動作電位に接続可能な少なくとも2つの櫛歯電極(26,28)とを有し、各櫛歯電極(26,28)が第1の部位(26’,28’)を有し、この第1の部位(26’,28’)から複数の第2の部位(26”,28”)が延伸しており、上記2つの櫛歯電極(26,28)の上記2つの第1の部位(26’,28’)が互いに平行しており、上記櫛歯電極(26,28)の一方の第2の部位(26”,28”)が、それぞれ上記櫛歯電極(26,28)の他方の隣接する第2の部位(26”,28”)の間に延伸しており、
上記2つの櫛歯電極(26,28)が、互いにかつ上記接地電極面(12)に対して電気的に絶縁されて、上記接地電極面(12)上に配置されており、
上記駆動ユニット(21)が、特に上記電子部品を有し、プライベートモードにおいて、各画素又は選択された画素の上記2つの櫛歯電極(26,28)の一方を上記動作電位に接続し、シェアモードにおいて、各画素又は選択された画素の上記櫛歯電極(26,28)の両方を上記動作電位に接続し、
その結果、全画素の上記2つの櫛歯電極(26,28)の一方の上記第1の部位(26’,28’)に対向する視認方向から上記表示面を見た際、その第1の部位(26’,28’)が上記視認方向に対向しない各画素又は選択された画素の上記櫛歯電極(26,28)のみが、上記動作電位に接続されている、すなわち、その第1の部位(26’,28’)が上記視認方向に対向する各画素又は選択された画素の上記櫛歯電極(26,28)が、上記動作電位に接続されていない上記プライベートモードよりも、上記シェアモードでは、上記液晶ディスプレイの上記表示面に表示された情報を、高コントラストで視認可能である表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本PCT出願は、2021年10月7日付の独国特許出願第102021126024.8号及び2022年6月3日付の独国特許出願第102022114155.1号の優先権を主張し、その内容を本願出願の対象を構成するものとして援用する。
【0002】
本発明は、特に車両に使用するための表示装置であって、選択的にシェアモード又はプライベートモードで動作させることができる表示装置に関する。
【背景技術】
【0003】
特に車両におけるディスプレイの数やサイズは、増大し続けている。現在、他のディスプレイとは別体のディスプレイの形式として、またはドアツードアディスプレイ(door-to-door display)の乗員部分の形式として、ダッシュボード内又はダッシュボード上に乗員用のディスプレイを設置するという車両コンセプトが既に存在している。
【0004】
かなり以前から、表示面に表示された情報を、第三者が自由に見ることを制限するための対策が存在している。理想的には、意図した視認者のみが、画面内容を読み取ることができ、近くにいる人は、表示された情報を読んだり、理解したり、認識したりできないことが求められる。
【0005】
米国特許出願公開第2020/0073157号明細書及び米国特許出願公開第2013/0265514号明細書において、視野角範囲を制御可能な液晶ディスプレイが、2例記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】米国特許出願公開第2020/0073157号明細書
【特許文献2】米国特許出願公開第2013/0265514号明細書
【0007】
いわゆるIn-Plane-Switching(IPS)技術を用いた液晶ディスプレイは、特に効果的であることがわかっている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、シェアモード又はプライベートモードでの選択的動作を電子的に実現し、IPS技術を用いた特に車両用の表示装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するため、本発明により、特に車両用の表示装置が提案され、この表示装置は、本発明の第1の態様によれば、
複数の画素を有する液晶ディスプレイと、
駆動ユニットとを備え、
上記液晶ディスプレイが、一画素につき1つの電極群及びこの電極を駆動するための電子部品が配置されている透明なキャリア層と、表示面を構成する透明な被覆層と、上記キャリア層と上記被覆層との間の液晶層とを有し、
各電極群が、接地電位に接続可能な接地電極面と、互いに独立して動作電位に接続可能な少なくとも2つの櫛歯電極とを有し、各櫛歯電極が第1の部位を有し、この第1の部位から複数の第2の部位が延伸しており、上記2つの櫛歯電極の上記2つの第1の部位が互いに平行しており、上記櫛歯電極の一方の第2の部位が、それぞれ上記櫛歯電極の他方の隣接する第2の部位の間に延伸しており、
上記2つの櫛歯電極が、互いにかつ上記接地電極面に対して電気的に絶縁されて、上記接地電極面上に配置されており、
上記駆動ユニットが、特に上記電子部品を有し、プライベートモードにおいて、各画素又は選択された画素の上記2つの櫛歯電極の一方を上記動作電位に接続し、シェアモードにおいて、各画素又は選択された画素の上記櫛歯電極の両方を上記動作電位に接続し、
その結果、全画素の上記2つの櫛歯電極の一方の上記第1の部位に対向する視認方向から上記表示面を見た際、その第1の部位が上記視認方向に対向しない各画素又は選択された画素の上記櫛歯電極のみが、上記動作電位に接続されている、すなわち、その第1の部位が上記視認方向に対向する各画素又は選択された画素の上記櫛歯電極が、上記動作電位に接続されていない上記プライベートモードよりも、上記シェアモードでは、上記液晶ディスプレイの上記表示面に表示された情報を、高コントラストで視認可能である。
【0010】
本発明の第2の態様によれば、上記課題を解決するため、特に車両用の表示装置が提案され、この表示装置は、
複数の画素を有する液晶ディスプレイと、
駆動ユニットとを備え、
上記液晶ディスプレイが、一画素につき1つの電極群及びこの電極を駆動するための電子部品が配置されている透明なキャリア層と、表示面を構成する透明な被覆層と、上記キャリア層と上記被覆層との間の液晶層とを有し、
各電極群が、接地電位に接続可能な第1の電極面と、同様に上記接地電位に接続可能な2つの第2の電極面とを有し、この第2の電極面が、互いにかつ上記第1の電極面に対して電気的に絶縁されており、ともに上記第1の電極面に一致するように、上記第1の電極面の上方又は下方に並んで配置されており、
各電極群が、上記第1及び第2の電極面から電気的に絶縁されて配置され動作電位に接続可能な第3の電極を有し、
上記駆動ユニットが、特に上記電子部品を有し、シェアモードにおいて、各画素又は選択された画素の上記第3の電極を上記動作電位に接続し、各画素又は選択された画素の上記第1の電極面を上記接地電位に接続し、プライベートモードにおいて、上記第1の電極面に加えて、各画素又は選択された画素の上記2つの第2の電極面の一方を上記接地電位に接続し、
その結果、全画素の上記2つの第2の電極面の一方に対向する視認方向から上記表示面を見た際、各画素又は選択された画素の上記2つの第2の電極面のうち、上記視認方向に対向しない方が上記接地電位に接続されている、すなわち、各画素又は選択された画素の上記2つの第2の電極面のうち、上記視認方向に対向しない方が上記接地電位に接続されていない上記プライベートモードよりも、上記シェアモードでは、上記液晶ディスプレイの上記表示面に表示された情報を、高コントラストで視認可能である。
【0011】
本発明によれば、両態様に係る表示装置は、IPS技術を用いた液晶ディスプレイを備える。しかしながら、このとき、第1の態様において、プラス電極が複数の部位から構成されているのに対し、本発明に係る表示装置の第2の態様では、画素ごとにマイナス電極が複数の部位から構成されている。IPS技術において、液晶ディスプレイの各画素のそれぞれ複数の部位から構成されている一方の電極の個々の電極を選択的に異なる方法で駆動させることにより、駆動されていない電極に対向する視認方向から表示面を見た際のコントラストに影響を与えることができる。
【0012】
本発明に係る表示装置の第1の態様によれば、複数の画素が、それぞれ、1つの接地電極と、表示される情報に応じて駆動可能な複数のプラス電極とを有する。このプラス電極は、並んで配置されており、互いに電気的に絶縁され、接地電極に対して電気的に絶縁されている。典型的にはTFT技術により実装されたトランジスタを介して、所望の情報を表示するために供給された信号によって、両方のプラス電極が駆動されると、液晶層内に広がる電界の強度が最大になる。これにより、コントラストが最大になり、光の透過率が最大になる。これに対し、画素ごと又は選択された画素ごとに、一方のプラス電極のみが駆動されると、電界強度が下がり、コントラスト及びバックライト光の透過率が低下する。これは、特に駆動されていないプラス電極に対向する視認方向からディスプレイを見たときに、効果を奏する。
【0013】
2つのプラス電極が、それぞれ、各櫛の「歯」が交互に噛み合っている櫛歯構造を有する場合に、最適な効果が得られる。よって、各櫛歯電極が第1の部位を有しており、2つの櫛歯電極の第1の部位が、互いに平行している。各第1の部位から、複数の第2の部位が延伸しており、一方の櫛歯電極の隣接する2つの第2の部位の間に、他方の櫛歯電極の第2の部位の1つが延伸している。この電極設計は、IPS技術におけるLCD画素の電極設計と基本的に同じであるが、公知の背景技術とは決定的な違いがあり、公知の電極設計は、(典型的にはTFTトランジスタにより)別々に駆動可能な2つのサブ電極に分割されている。
【0014】
本発明に係る表示装置の概念の第2の態様において、プラス電極として、IPS技術における液晶ディスプレイにより公知である電極設計が採用され、この電極設計は、2つの櫛歯構造を有し、両方の櫛歯構造の第1の部位が、互いに電気的に接続されており、第1の部位からそれぞれ突出する第2の部位が、交互に現れ、交互に並んでいる。そして、マイナス電極は、複数の部位から構成されている。マイナス電極は、実質的に画素面を占めるマイナス電極面を有する。この第1のマイナス電極面の上方又は下方に、電気的に絶縁された状態で、分割された別のマイナス電極面が存在し、このマイナス電極面は、並んで配置され互いに電気的に絶縁されている2つ以上のマイナスサブ電極面を有する。そして、液晶層において画素内に形成される電界は、その強度についても、その画素面内での均一性についても、駆動されるマイナス電極面又はマイナスサブ電極面の選択により影響を受け得る。具体的には、2つのマイナスサブ電極面の一方のみが駆動されると、駆動されていないマイナスサブ電極面の領域における電界強度が、画素の残りの領域よりも小さくなることで、電界に非対称性が生じる。これが、駆動されていない第2のマイナスサブ電極面に対向する視認方向から表示面を見た際に、光の透過率とコントラストの両方に作用する。
【0015】
以下、2つの実施の形態を用いて、図面を参照しながら本発明を詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】
図1は、IPS技術におけるLCD画素の標準設計を示す模式断面図及び模式上面図である。
【
図2】
図2は、シェアモード用の駆動における第1の実施の形態に係る画素設計の変更形態を示す断面図及び上面図である。
【
図3】
図3は、プライベートモード用の駆動における第1の実施の形態に係る画素設計を示す模式断面図及び模式上面図である。
【
図4】
図4は、シェアモード用の駆動における第2の実施の形態に係る画素設計の変更形態を示す断面図及び上面図である。
【
図5】
図5は、プライベートモード用の駆動における第2の実施の形態に係る画素設計を示す模式断面図及び模式上面図である。
【
図6】
図6は、シェアモード(
図6左)及びプライベートモード(
図6右)での同乗者用ディスプレイの動作モードにおいて、運転者及び同乗者の視認状況の比較を示す図である。
【
図7】
図7は、シェアモード(
図7左)及びプライベートモード(
図7右)での同乗者用ディスプレイの動作モードにおいて、プライベートモード動作における同乗者用ディスプレイのバックライト光強度をさらに低下させた場合の運転者及び同乗者の視認状況の比較を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
他のすべての方向に情報が見えないようにしつつ、ディスプレイを好ましい一方向のみから視認できるようにするため、第三者によるディスプレイに表示された内容の読み取りを制限/防止するためのプライバシー保護技術が、既に何年も前から市場に存在している。この公知技術は、固定のプライバシー保護と切り替え可能なプライバシー保護の両方に基づいている。固定の場合、調光システム(すなわち、調光フィルム、プリズム等)をディスプレイのバックライトユニットに組み込むことで、プライバシー保護効果が得られる。切り替え可能なプライバシー保護については、通常光での照明の駆動とプライバシー保護照明の両方がサポートされるように、バックライトの設計が拡張されてきた。これらの対策により、視野角全体で輝度が低下するが、暗い空間状況では、人間の目の昼光再キャリブレーションに起因して、画像の視認性を低光度まで低下させることはできない。この場合、輝度が0.3cd/m2しかなくても画像は視認可能であり、プライバシー保護性能の低下につながる。
【0018】
このようなプライバシー保護概念を車両に応用する場合、同乗者用の別体のディスプレイ又は例えばドアツードアディスプレイのディスプレイ領域の情報が、運転者に少なくともわずかに認識可能であるため、運転者の気が散り、危険な状況に陥りかねない。よって、改良されたプライベートモードに切り替え可能であることは、特に自動車への応用では、安全面に関して重要である。
【0019】
一方、他の対策においては、画素設計を異なる電気的な駆動モードに変換することにより、主にディスプレイパネルのプライバシー保護のみが重視されている。このような対策では、インセル型ディスプレイを実現することはできない。これらの対策では、輝度又はコントラスト比は低下するが、非常に強力な減光因子をバックライトに使用した場合のみ、画像の視認性の低下させることができるので、対象ユーザ向けの画質に多大な影響が出てしまう。
【0020】
これらの既存の対策は、主にエンドユーザ市場への応用に適しており、通常光条件下でプライバシー保護効果を得るには、非常に効果的である。しかしながら、夜間に車両を運転する場合など、環境光が比較的弱い場合、目が低光度に再適応してしまうため、プライバシー保護効果はあまり有効ではない。
【0021】
切り替え可能かつプライベートモードに最適な性能が、通常のシェア動作におけるディスプレイの性能を著しく低下させてしまうため、これらの対策は、光学性能の面で不利である。このことは、車両においても不利になる。車両の計器盤に一体化されたディスプレイの数に基づいて、これらのディスプレイを、同程度の光学性能を呈するように調整する必要がある。シェアモードにおいて車両内の残りのディスプレイと同程度の光学性能を実現できないようなプライバシー保護技術は、自動車への応用には適さない可能性がある。
【0022】
本発明により、離散タッチ技術及びインセル型タッチ技術を用いた応用において、改良されたプライバシー保護ディスプレイ効果と組み合わせて、自動車分野におけるディスプレイの付加価値を得るための解決策が提供される。ここで、本発明に係る画素設計により、ディスプレイ性能及び設計のIn-Cell互換性が、IPS型画素設計に基づいて保証される。本発明により提案されるデュアルモード画素設計は、特に車両への応用に関して以下の利点がある。
【0023】
画素は、シェアモード(通常モード又は第1の画素駆動モード)において、IPSに類似している。これにより、自動車分野で求められる高い光学性能を達成することができる。
【0024】
運転者位置の方向に選択的にコントラストを下げると同時に、同乗者位置における輝度及びコントラストレベルを保つために、画素駆動をプライベートモード(第2の画素駆動モード)に切り替えることができる。
【0025】
本発明の一実施の形態に係るディスプレイは、In-Plane-Switching(IPS)技術を利用しており、特に以下の要素を備える。
・LCD-TFTガラス
・LCDカラーフィルタガラス
・液晶
・配向層
・電子制御部(IC制御部、ルーティング、TFT、Gate on Panel)
【0026】
例えばタッチパネルやバックライトユニット、必要に応じて表示装置に一体化されたジェスチャ認識付きの近接センサシステム等のその他の要素も設けられていてもよいが、本発明には、基本的に関与しない。一般に設けられている偏光フィルタも、本発明では重要でないため、以下で言及することはない。
【0027】
カラーフィルタガラス及びIC制御部は従来型のものであり、ディスプレイに求められる機能や性能に応じて選択することができる。カラースケールは、例えば、カラーフィルタによって設定することができる。また、インセルIC制御型及び/又は別体のタッチパネルを実装してもよい。
【0028】
IPSディスプレイは、特に、視野角の広さに優れ、非常に高画質で最適な色表現に優れている。IPS型の標準的な画素設計は、薄膜トランジスタ(TFT)を有する。画素における電圧レベルを生成するため、映像信号(電圧レベル)が、画素の電極に印加される。そして、接地(Vcom)と格子上の電圧レベルとの電圧差により、液晶内の全電圧レベル(電界)が決まり、明確でよく制御されたグレースケールが生成される。
【0029】
この状態を
図1に示す。ここで、電極設計は、配置や数は設計によって異なり得るが、一画素につき複数の電極面を有するマルチドメイン型(V型、2つのドメイン、ジグザグ等)とすることができ、透過率及びコントラスト比について対称性が得られるとともに、色ずれレベルを低く抑えることができる。
【0030】
IPS技術における
図1の標準的な画素設計は、従来より、TFTパネル10を有し、その上に、一画素につき1つの(駆動ユニット30を介して接地されている)接地電極もしくは接地電極面12が配置されている。電気絶縁性の絶縁層14により接地電極面12から離隔して、TFTトランジスタ20を介して駆動される(駆動ユニット21を参照)単一の電極18の「指」16が設けられている。TFTパネル10の上方に、TFTパネル10から離隔して、液晶ディスプレイのカバーガラス22が設けられており、液晶24が、TFTパネル10とカバーガラス22との間に設けられている。
【0031】
本発明の第1の態様(
図2及び
図3参照)によれば、この電極設計は、単一電極の画素設計と比較して、2つの(サブ)電極に分割されている。各サブ電極(本実施の形態では、櫛歯電極26,28として形成されている)には、別々のTFTトランジスタ20’,20”が接続されている。ディスプレイをシェアモードで動作させる場合、画素が駆動される際に両方のTFTが選択される。ここでは、IPS型の標準的な設計に対して、標準的な電界が生成される(
図2参照)。
【0032】
プライベートモードにおいて、2つのTFTトランジスタ20’,20”の一方が制御ユニットにより遮断されると、電界が変化する(
図3)。ここでは、シングル液晶ドメイン方向が好ましく、これにより光学特性が非対称になる。とりわけ画素の輝度透過率が、コントラスト比と同様に、視野角全体で減少する。ここで、運転者位置におけるコントラストが最小になる程度まで、画素の電極形状を最適化してもよい。期待される非対称のコントラスト比(CR)を
図3に示し、標準的な対称のCRを
図2に示す。
【0033】
この画素設計、特に本第1の態様(第1の実施の形態)に係る電極設計は、駆動ユニット21により映像信号又は情報の表示に関わる信号が印可されるプラス電極が、複数に分割されている点で、標準IPS設計とは異なる。本実施の形態において、上記電極18は、2つの櫛歯電極26,28に分割されており、この櫛歯電極26,28は、互いに電気的に絶縁され、TFTトランジスタ20’,20”により選択的に駆動可能である。
図2は、2つの櫛歯電極26,28を同時に駆動することにより、画素内の電界が、比較的強く均一に形成されている様子を示している。このような画素の動作において、画素は、シェアモードで駆動される。
図2の透過率及びコントラストプロファイルは、100%の光透過率及び比較的広く対称な視野角範囲を示している。
【0034】
画素をプライベートモードで動作させると、2つの櫛歯電極26,28のうち、一方のみが作動される。このとき、画素内の液晶領域に形成される電界は弱まり、非対称である。したがって、得られる透過率が低下し、視野角範囲が狭まり、さらに片側にずれる。よって、
図3に示す状況について、ディスプレイの左側にいる視認者は、ディスプレイの視認領域が非常に制限されることになる。(
図3に示すように、櫛歯電極28に代えて)他方の櫛歯電極26を単独で駆動することにより、ディスプレイの右側にいる視認者に対して、プライベートモードが起動される。よって、保護機能の方向は、2つの櫛歯電極26,28の一方の駆動を選択することにより、変化させることができる。
【0035】
第2の実施の形態(
図4及び
図5)における設計は、(IPS標準設計と同様に)単一格子マルチドメイン電極設計を有する単独のTFT20から構成される。しかしながら、Vcom電極設計(接地電極又は接地電極面)は、第2のVcom電極面分だけ拡張されている。第2のVcom2電極は、絶縁層を介して、標準Vcom1上に設置されている。Vcom2は、非対称方向への選択的なVcom駆動を組み込むため、シングルドメイン又はデュアルドメインとすることができる。そして、Vcom1及びVcom2は、シェアモードでの動作用には、IPS型駆動に類似した全電界を発生させ(
図4)、プライベートモードでの動作用には、選択的な非対称性を与える全電界を発生させる(
図5)ように、調整することができる。この電気駆動における非対称性が、画素の視野角全体にわたるコントラスト及び輝度性能における非対称性につながる。ここで、画素の電極形状は、運転者位置でコントラストが最小になるように最適化してもよい。
【0036】
図4に、このシェアモードでの動作における別の画素設計を示す。接地電極設計は、第1の接地電極面12’を有し、この第1の接地電極面12’上に、絶縁層14’により離隔されて第2の接地電極面13が配置されており、さらに第2の接地電極面13上には、櫛歯構造を有する非分割のプラス電極18’が、同様に絶縁層14”により離隔されて配置されている。この第3の電極18’の設計は、標準IPS画素のプラス電極の設計と同様である。本実施の形態において、第2の接地電極面13は、2つのサブ接地電極面13’,13”に分割されている。(第3の電極18’と同時に駆動される)第1の接地電極面12に加えて、2つのサブ接地電極面13’,13”の両方又は一方を選択的に駆動する(駆動ユニット30を参照)ことによって、強度と均一性(対称性、非対称性)の両方について、画素内の液晶に対する電界が影響を受け、上述のように、シェアモードとプライベートモード(
図5参照)との間で切り替えることができる。
【0037】
サブ接地電極面13’,13”により分割された画素のVcom2接地電極面の非対称性により、非対称のコントラスト比が調整される。最小コントラストは、横軸上で得られ、運転者位置に調整することができる。ここで、シェアモードでは、IPS型の特性が得られるのに対し、プライベートモードでは、非対称かつ低いコントラストにより、ディスプレイPIDの横の位置、例えば運転者位置からの画像の視認性が低下するが、ディスプレイPIDの前にいる視認者(例えば、同乗者)には概ね十分である(
図6中の運転者と同乗者との間のCIDディスプレイ、及び同乗者の前のPIDディスプレイについての比較を参照)。
【0038】
どちらの画素設計も、自動車分野におけるディスプレイの標準TFT製造プロセスと相性が良く、インセル技術について標準化されたセグメント化Vcom設計とも互換性がある。
【0039】
同様にプライベートモードとシェアモードとの間で切り替え可能なバックライトユニット(例えば、2022年6月3日付の独国特許出願公開第102022114153.5号明細書、発明の名称「Anzeigevorrichtung,insbesondere
fuer ein Fahrzeug,zum Anzeigen von Information mit umschaltbarem Teilungs- und Privat-Modus」を参照。その内容も本PCT出願の対象を構成するものとして援用する)の輝度プロファイルを、本発明に係るプライベートモードとシェアモードとの間で切り替え可能なプロファイルであって、画素レベルでのコントラスト及び視野角制限のプロファイルと組み合わせることにより、画像の視認性と注意散漫の減少という自動車分野におけるプライバシー保護のレベルに対する要求を満たすことができる。このことは、
図7中の比較に示されている。
【0040】
シェアモードとプライベートモードとの間で切り替えるため、切り替え可能なプライバシー保護機能付きのディスプレイにおいて、本発明に記載の通り、この切り替えは、手動でも自動でも行うことができる。自動車への応用において、例えば、運転者を観察するカメラにより、運転者が同乗者ディスプレイ又は同乗者ディスプレイ領域の方向を見たことが検出された場合に(アイトラッキング)、シェアモードからプライベートモードに自動的に切り替わることは有用である。また、同乗者ディスプレイ又は同乗者ディスプレイ領域に「動画」が表示されている場合に、自動的にプライベートモードに切り替わることも有用となり得る。このように、シェアモードからプライベートモードへの自動切り替えについて、様々な手法が存在する。したがって、自動的にシェアモードに戻すことも可能である。座席占有認識付きの車両においては、助手席に誰もいないことが検出された場合は、プライベートモードへの自動切り替えを省略することができる。
【0041】
本発明の概念は、切り替え不能なプライバシー保護機能(常時プライベートモード)と組み合わせることもできる。そのようなプライバシー保護概念の例が、発明の名称「Anzeigevorrichtung,insbesondere fuer ein Fahrzeug,zum Anzeigen von Information mit asymmetrischer Hinterleuchtung」のPCT特許出願(代理人整理番号:222366WO。本PCT出願と同日に出願)並びに2021年10月7日付の独国特許出願公開第102021126025.6号明細書及び2022年6月3日付の独国特許出願公開第102022144165.9号明細書に記載されており、その内容も本PCT出願の対象を構成するものとして援用する。
【符号の説明】
【0042】
10 TFTパネル
12 接地電極面
12’ 第1の接地電極面
13 接地電極面
13’ サブ接地電極面
13” サブ接地電極面
14 電気絶縁性の絶縁層
14’ 絶縁層
14” 絶縁層
18 電極
18’ 第3の電極
20 TFTトランジスタ
20’ TFTトランジスタ
20” TFTトランジスタ
21 TFT用駆動ユニット
22 カバーガラス
23 液晶ディスプレイ
24 液晶
26 櫛歯電極
28 櫛歯電極
30 (Vcom1及びVcom2用)駆動ユニット
【国際調査報告】