(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-10-23
(54)【発明の名称】赤外線画像化デバイス
(51)【国際特許分類】
G01J 5/02 20220101AFI20241016BHJP
G01J 1/04 20060101ALI20241016BHJP
G01J 1/02 20060101ALI20241016BHJP
G01J 5/0802 20220101ALI20241016BHJP
G03B 17/02 20210101ALI20241016BHJP
G03B 30/00 20210101ALI20241016BHJP
H04N 23/55 20230101ALI20241016BHJP
【FI】
G01J5/02 J
G01J1/04 B
G01J1/02 C
G01J1/02 Q
G01J5/0802
G03B17/02
G03B30/00
H04N23/55
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024521177
(86)(22)【出願日】2022-10-07
(85)【翻訳文提出日】2024-06-05
(86)【国際出願番号】 EP2022077974
(87)【国際公開番号】W WO2023057635
(87)【国際公開日】2023-04-13
(32)【優先日】2021-10-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】520342828
【氏名又は名称】リンレッド
(74)【代理人】
【識別番号】100114557
【氏名又は名称】河野 英仁
(74)【代理人】
【識別番号】100078868
【氏名又は名称】河野 登夫
(72)【発明者】
【氏名】ジョベール,ガブリエル
【テーマコード(参考)】
2G065
2G066
5C122
【Fターム(参考)】
2G065AA04
2G065AB02
2G065BA09
2G065BA12
2G065BA34
2G065BB25
2G066BA09
2G066BA23
2G066BA24
5C122DA16
5C122EA30
5C122FB15
5C122FB17
5C122FC06
5C122GE11
(57)【要約】
【解決手段】本明細書は、赤外線カメラ(210) を備えている赤外線画像化デバイス(200) に関する。赤外線カメラは、光軸(A) を有し、スペクトル領域の赤外線を通す透明要素(132) を通過するスペクトル領域の赤外線を検出するように構成されている。透明要素は、画像取込方向(C) に対して0°より大きく90°より小さいか又は0°より小さく-90°より大きい傾斜角(α)分、傾いている。赤外線画像化デバイスは、スペクトル領域の赤外線を通して透明要素及び赤外線カメラ間に配置され得る屈折要素(230) を更に備えている。屈折要素は、屈折要素のトンネル図における屈折要素の出口ファセット(234) に対応する仮想出口ファセットを有しており、仮想出口ファセットは、屈折要素の入口ファセット(232) と実質的に平行である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
赤外線画像化デバイス(200, 201, 300, 400, 500, 600)であって、
光軸(A) を有し、スペクトル領域の赤外線を通す透明要素(132) を通過する前記赤外線を検出するように構成されている赤外線カメラ(210, 510)を備えており、前記透明要素は、画像取込方向(C) に対して0°より大きく90°より小さいか又は0°より小さく-90°より大きい傾斜角(α)分、傾いており、
前記赤外線画像化デバイスは、前記スペクトル領域の赤外線を通し、前記透明要素(132) 及び前記赤外線カメラ(210, 510)間に配置され得る屈折要素(230, 330, 630) を更に備えており、前記屈折要素は、前記屈折要素のトンネル図における前記屈折要素の出口ファセット(234, 334, 634) に対応する仮想出口ファセット(234', 334', 634')を有しており、前記仮想出口ファセットは、前記屈折要素の入口ファセット(232, 332, 632) と実質的に平行であり、
前記透明要素(132) は、実質的に平坦で互いに平行な入口ファセット及び出口ファセットを有しており、取付台(134) によって囲まれており、前記取付台で壁(130) の開口部に挿入されるように適合されており、前記透明要素が挿入される前記壁の少なくとも一部が、前記透明要素と同一の傾斜角(α)分、傾いている、赤外線画像化デバイス。
【請求項2】
前記入口ファセット(232, 332, 632) は、前記屈折要素に入り込むスペクトル領域の赤外線を屈折させるように適合され、前記透明要素(132) に対向して配置されるように構成されており、
前記出口ファセット(234, 334, 634) は、前記屈折要素から出る前記赤外線を屈折させるように適合され、前記赤外線カメラ(210, 510)に対向して配置されており、
前記屈折要素(230, 330, 430) は、前記入口ファセットと前記出口ファセットとの間で前記赤外線を反射するように適合されている少なくとも1つの中間ファセット(236, 336, 636) を更に有している、請求項1に記載の赤外線画像化デバイス(200, 201, 300, 400, 500, 600)。
【請求項3】
前記中間ファセット(236, 336, 636) の内面(236B, 336B, 636B)は、前記内面における前記赤外線の反射を高めるように適合されている反射被覆体、例えば金属製の被覆体で覆われている、請求項2に記載の赤外線画像化デバイス(200, 201, 300, 400, 500, 600)。
【請求項4】
前記中間ファセットは、光学収差を補正するように適合されている少なくとも1つの表面、例えば自由曲面タイプの、例えば非軸対称の平坦でない表面を有している、請求項2又は3に記載の赤外線画像化デバイス。
【請求項5】
前記屈折要素(230, 330, 630) 及び前記赤外線カメラ(210, 510)は、前記屈折要素の屈折光軸(B) が前記赤外線カメラの光軸(A) と実質的に平行であるか又は実質的に一致するように互いに対して配置されている、請求項1~4のいずれか1つに記載の赤外線画像化デバイス(200, 201, 300, 400, 500, 600)。
【請求項6】
前記赤外線カメラ(210) の光軸(A) は、前記屈折要素の屈折光軸(B) に対して前記屈折光軸に垂直な方向(Z) にある距離(D) 分、偏移している、請求項5に記載の赤外線画像化デバイス(201, 300, 400) 。
【請求項7】
前記入口ファセット(232, 332, 632) の外面(232A, 332A, 632A)及び/又は前記出口ファセット(234, 334, 634) の外面(234A, 334A, 634A)は、反射防止膜で覆われている、請求項1~6のいずれか1つに記載の赤外線画像化デバイス(200, 201, 300, 400, 500, 600)。
【請求項8】
前記屈折要素(230, 330, 630) はプリズムであり、例えば色分散を生じさせないプリズムである、請求項1~7のいずれか1つに記載の赤外線画像化デバイス(200, 201, 300, 400, 500, 600)。
【請求項9】
前記プリズム(230, 330)はダブプリズムタイプであり、第1の基部(236, 336)と、前記第1の基部の表面積より小さい表面積を有する第2の基部(238, 338)と、前記第1の基部及び前記第2の基部を連結して前記第1の基部(236, 336)に対して第1の角度(β)分、傾いている第1の側面(232, 332)と、前記第1の基部及び前記第2の基部を連結して前記第1の側面に面し、前記第1の基部(236, 336)に対して第2の角度(-β)分、傾いている第2の側面(234, 334)とを含む底面が矩形状の切頭角錐形状を有し、前記第2の角度は前記第1の角度の反対であり、前記第1の角度(β)は0°より大きく90°より小さく、例えば30~60°の範囲内であり、
前記第1の側面は前記入口ファセットを形成し、前記第2の側面は前記出口ファセットを形成し、前記第1の基部は前記中間ファセットを形成している、請求項2を引用する請求項8に記載の赤外線画像化デバイス(200, 201, 300, 400, 500) 。
【請求項10】
前記プリズム(630) はバウエルンファイントプリズムタイプのハーフペンタプリズムであり、前記入口ファセットを形成する基部(632) 、前記基部に面して配置されて前記中間ファセットを形成する第1の側面(636) 、及び前記基部と前記第1の側面とを連結して前記出口ファセットを形成する第2の側面(634) を有しており、
前記入口ファセット、前記中間ファセット及び前記出口ファセットは、例えば赤外線が前記出口ファセットの入射角と等しい角度で前記入口ファセットを通って屈折するように互いに向き合っている、請求項2を引用する請求項8に記載の赤外線画像化デバイス(600) 。
【請求項11】
前記屈折要素(230, 330, 632) の入口ファセット(232, 332, 632) の表面積は、前記透明要素(132) の表面積以上である、請求項1~10のいずれか1つに記載の赤外線画像化デバイス(200, 201, 300, 400, 500, 600)。
【請求項12】
前記屈折要素(230, 330, 632) の入口ファセット(232, 332, 632) は前記透明要素(132) と実質的に平行である、請求項1~11のいずれか1つに記載の赤外線画像化デバイス(200, 201, 300, 400, 500, 600)。
【請求項13】
前記出口ファセット(234) の表面積は、前記入口ファセット(232) の表面積と実質的に等しい、請求項1~12のいずれか1つに記載の赤外線画像化デバイス(200, 201, 400, 500)。
【請求項14】
前記出口ファセット(334, 634)の表面積は、前記入口ファセット(332, 632)の表面積より小さい、請求項1~12のいずれか1つに記載の赤外線画像化デバイス(300, 600)。
【請求項15】
前記赤外線カメラ(510) は、少なくとも1つのレンズ(518) 及びレンズ取付台を更に有しており、前記少なくとも1つのレンズは前記レンズ取付台によって保持されており、
前記少なくとも1つのレンズ(518) 及び/又は前記レンズ取付台は、前記屈折要素(230) の出口ファセット(234) に面するように適合されている切取面(517) を有しており、前記切取面(517) は、例えば前記出口ファセット(234) と実質的に平行である、請求項1~14のいずれか1つに記載の赤外線画像化デバイス(500) 。
【請求項16】
前記赤外線カメラ(210, 510)は、少なくとも1つのレンズ(218, 518)及びレンズ取付台(219) を有しており、前記少なくとも1つのレンズは前記レンズ取付台によって保持されており、
前記赤外線カメラは、前記スペクトル領域の赤外線を感知可能な画像センサ(214, 514)を有しており、
前記画像センサ及び前記少なくとも1つのレンズ(218, 518)は前記赤外線カメラの光軸(A) を定めており、前記画像センサは、実質的に前記少なくとも1つのレンズの画像焦点面に配置されている、請求項1~15のいずれか1つに記載の赤外線画像化デバイス(200, 201, 300, 400, 500, 600)。
【請求項17】
前記屈折要素(230) を前記壁(130) 又は前記取付台(134) に取り付けるように適合されている、前記屈折要素(230) を取り付けるための手段を備えている、請求項1~16のいずれか1つに記載の赤外線画像化デバイス(400) 。
【請求項18】
前記赤外線カメラ(210) と前記取付台(134) との間に接合部分を形成するように適合されている接合要素(440) を備えており、
前記接合要素は、前記透明要素(132) と前記赤外線カメラ(210) との間に前記屈折要素(230) を保持するように更に適合されている、請求項1~17のいずれか1つに記載の赤外線画像化デバイス(400) 。
【請求項19】
請求項1~18のいずれか1つに記載の赤外線画像化デバイス(200, 201, 300, 400, 500, 600)と、
スペクトル領域の赤外線を通す透明要素(132) と
を備えており、
前記赤外線画像化デバイスの赤外線カメラ(210, 510)は、前記透明要素を通過する前記スペクトル領域の赤外線を検出するように適合されており、
前記透明要素(132) は、画像取込方向(C) に対して0°より大きく90°より小さいか又は0°より小さく-90°より大きい傾斜角(α)分、傾いており、
前記透明要素(132) は、実質的に平坦で互いに平行な入口面及び出口面を有しており、取付台(134) によって囲まれており、前記取付台で壁(130) の開口部に挿入されており、
前記透明要素が挿入されている前記壁の少なくとも一部が、前記透明要素と同一の傾斜角(α)分、傾いている、赤外線画像化システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、一般に赤外線画像化の分野に関し、特に、赤外線を通すポートホールを通して赤外線カメラによって画像を検出する前記赤外線カメラに関する。
【背景技術】
【0002】
赤外線画像化の分野では、シーンの熱画像を取り込むように適合されている赤外線カメラ(IRカメラ)が使用されることがある。IRカメラは典型的には、画素アレイを形成する赤外線感知検出器のアレイを備えている。画素アレイの各画素は、画素で測定された温度を対応する電圧信号に変換し、電圧信号は、デジタル/アナログ変換器(ADC)によってデジタル出力信号に変換される。マイクロボロメータが、非冷却赤外画素アレイカメラに使用される画素の例であり、シーンの熱画像を取り込むように適合されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ある用途では、IRカメラが筐体内に配置されてもよく、又は少なくとも壁の後方に配置されてもよいため、IRカメラによって放射光が壁を通して検出される。この壁は、垂直方向に対してゼロ以外の角度で傾いてもよい。壁の材料が赤外線を通さない場合、壁は、赤外線を通す要素、例えばポートホールを有し、このポートホールは、IRカメラが前記ポートホールを通過する赤外線を受信し得るように配置されている。一般に、このようなポートホールは可能な限り最小の横寸法を有する。
【0004】
しかしながら、壁が傾いている場合、ポートホールも傾く。瞳孔が小さいポートホールが傾いていると、IRカメラによって取り込まれる画像に望まない口径食現象が生じる場合がある。すなわち、画像の縁部の輝度が低下する場合がある(言い換えれば、画像の縁部の不透明度が増す場合がある)。この現象は、ポートホール及びIRカメラ間の距離が長くなると悪化する場合がある。
【0005】
傾いた壁の後方に配置されるように構成されている赤外線カメラの口径食現象を制御する必要がある。
【0006】
実施形態は、上記の不利点の全て又は一部を克服する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
実施形態は、赤外線画像化デバイスであって、
光軸を有し、スペクトル領域の赤外線を通す透明要素を通過する前記赤外線を検出するように構成されている赤外線カメラを備えており、前記透明要素は、画像取込方向に対して0°より大きく90°より小さいか又は0°より小さく-90°より大きい傾斜角分、傾いており、
前記赤外線画像化デバイスは、前記スペクトル領域の赤外線を通し、前記透明要素及び前記赤外線カメラ間に配置され得る屈折要素を更に備えており、前記屈折要素は、前記屈折要素のトンネル図における前記屈折要素の出口ファセットに対応する仮想出口ファセットを有しており、前記仮想出口ファセットは、前記屈折要素の入口ファセットと実質的に平行である、赤外線画像化デバイスを提供する。
【0008】
前記透明要素は、好ましくは実質的に平坦で互いに平行な2つの表面である入口面及び出口面を有している。
【0009】
実施形態によれば、前記入口ファセットは、前記屈折要素に入り込むスペクトル領域の赤外線を屈折させるように適合され、前記透明要素に対向して配置されるように構成されており、前記出口ファセットは、前記屈折要素から出る前記赤外線を屈折させるように適合され、前記赤外線カメラに対向して配置されており、前記屈折要素は、前記入口ファセットと前記出口ファセットとの間で前記赤外線を反射するように適合されている少なくとも1つの中間ファセットを更に有している。
【0010】
実施形態によれば、前記中間ファセットの内面は、前記内面における前記赤外線の反射を高めるように適合されている反射被覆体、例えば金属製の被覆体で覆われている。
【0011】
実施形態によれば、前記中間ファセットは、光学収差を補正するように適合されている少なくとも1つの表面、例えば自由曲面タイプの、例えば非軸対称の平坦でない表面を有している。
【0012】
実施形態によれば、前記屈折要素及び前記赤外線カメラは、前記屈折要素の屈折光軸が前記赤外線カメラの光軸と実質的に平行であるか又は実質的に一致するように互いに対して配置されている。
【0013】
実施形態によれば、前記赤外線カメラの光軸は、前記屈折要素の屈折光軸に対して前記屈折光軸に垂直な方向にある距離分、偏移している。
【0014】
実施形態によれば、前記入口ファセットの外面及び/又は前記出口ファセットの外面は、反射防止膜で覆われている。
【0015】
実施形態によれば、前記屈折要素はプリズムである。例によれば、前記プリズムは色分散を生じさせない。
【0016】
特定の実施形態によれば、前記プリズムはダブプリズムタイプであり、第1の基部と、前記第1の基部の表面積より小さい表面積を有する第2の基部と、前記第1の基部及び前記第2の基部を連結して前記第1の基部に対して第1の角度分、傾いている第1の側面と、前記第1の基部及び前記第2の基部を連結して前記第1の側面に面し、前記第1の基部に対して第2の角度分、傾いている第2の側面とを含む底面が矩形状の切頭角錐形状を有し、前記第2の角度は前記第1の角度の反対であり、前記第1の角度は0°より大きく90°より小さく、例えば30~60°の範囲内であり、前記第1の側面は前記入口ファセットを形成し、前記第2の側面は前記出口ファセットを形成し、前記第1の基部は前記中間ファセットを形成している。
【0017】
特定の実施形態によれば、前記プリズムはバウエルンファイントプリズムタイプのハーフペンタプリズムであり、前記入口ファセットを形成する基部、前記基部に面して配置されて前記中間ファセットを形成する第1の側面、及び前記基部と前記第1の側面とを連結して前記出口ファセットを形成する第2の側面を有している。例によれば、前記入口ファセット、前記中間ファセット及び前記出口ファセットは、赤外線が前記出口ファセットの入射角と等しい角度で前記入口ファセットを通って屈折するように互いに向き合っている。
【0018】
実施形態によれば、前記屈折要素の入口ファセットの表面積は、前記透明要素の表面積以上である。
【0019】
実施形態によれば、前記屈折要素の入口ファセットは前記透明要素と実質的に平行である。
【0020】
実施形態によれば、前記出口ファセットの表面積は、前記入口ファセットの表面積と実質的に等しい。
【0021】
実施形態によれば、前記出口ファセットの表面積は、前記入口ファセットの表面積より小さい。
【0022】
実施形態によれば、前記赤外線カメラは、少なくとも1つのレンズ及びレンズ取付台を更に有しており、前記少なくとも1つのレンズは前記レンズ取付台によって保持されており、前記少なくとも1つのレンズ及び/又は前記レンズ取付台は、前記屈折要素の出口ファセットに面するように適合されている切取面を有しており、前記切取面は、例えば前記出口ファセットと実質的に平行である。
【0023】
実施形態によれば、前記赤外線カメラは、少なくとも1つのレンズ及びレンズ取付台を有しており、前記少なくとも1つのレンズは前記レンズ取付台によって保持されており、
前記赤外線カメラは、前記スペクトル領域の赤外線を感知可能な画像センサを有しており、
前記画像センサ及び前記少なくとも1つのレンズは前記赤外線カメラの光軸を定めており、前記画像センサは、実質的に前記少なくとも1つのレンズの画像焦点面に配置されている。
【0024】
特定の実施形態によれば、前記少なくとも1つのレンズは、前記レンズ取付台に少なくとも部分的に囲まれている。
【0025】
実施形態によれば、前記透明要素は、取付台によって囲まれており、前記取付台で壁の開口部に挿入されるように適合されており、前記透明要素が挿入される前記壁の少なくとも一部が、前記透明要素と同一の傾斜角分、傾いている。
【0026】
前記透明要素は、前記壁の開口部によって解放された空間、すなわち前記壁の開口部に相当する空間に含まれていることが好ましい。例えば、前記透明要素は前記開口部の両側に横方向に突出していない。
【0027】
前記壁は、前記開口部の周りで傾斜角分、傾いていることが好ましい。例えば、前記壁は傾斜角分、完全に傾いている。
【0028】
特定の実施形態によれば、前記赤外線画像化デバイスは、前記屈折要素を前記壁又は前記取付台に取り付けるように適合されている、前記屈折要素を取り付けるための手段を備えている。
【0029】
特定の実施形態によれば、前記赤外線画像化デバイスは、前記赤外線カメラと前記取付台との間に接合部分を形成するように適合されている接合要素を備えており、前記接合要素は、前記透明要素と前記赤外線カメラとの間に前記屈折要素を保持するように更に適合されている。
【0030】
実施形態によれば、前記接合要素の少なくとも1つの内面は、前記接合要素によって前記赤外線カメラに向かう赤外線の放射を減少させるような形状を有する。
【0031】
実施形態によれば、前記接合要素の少なくとも1つの内面は、前記接合要素によって前記赤外線カメラに向かう赤外線の放射を減少させるように適合されている材料で形成されている。
【0032】
実施形態によれば、前記接合要素の少なくとも1つの内面は、前記接合要素によって前記赤外線カメラに向かう赤外線の放射を減少させるように適合されている被覆体で覆われている。
【0033】
実施形態によれば、前記接合要素は、例えば前記透明要素の取付台と相補的な形状によって、前記透明要素の取付台と係合するように適合されている第1の端部を有している。
【0034】
実施形態によれば、前記接合要素は、例えば前記赤外線カメラの少なくとも一部と相補的な形状によって、前記赤外線カメラと係合するように適合されている第2の端部を有している。
【0035】
実施形態によれば、前記接合要素は、前記取付台と係合するような形状を有する第1の端部と、前記赤外線カメラと係合するような形状を有する第2の端部とを有している。例えば、前記接合要素は、前記第1の端部及び前記第2の端部間に本体を有している。
【0036】
実施形態によれば、前記接合要素は、前記赤外線カメラの両側に組み立てられた2つの部分で形成されている。特定の実施形態によれば、前記接合要素は一体である。
【0037】
実施形態によれば、前記接合要素は中空の形状を有する。
【0038】
前記赤外線カメラが少なくとも1つのレンズ及びレンズ取付台を有している実施形態によれば、前記少なくとも1つのレンズは前記レンズ取付台によって保持されており、前記接合要素の第2の端部は、例えば前記レンズ取付台と相補的な形状によって、前記レンズ取付台と係合するように適合されている。
【0039】
前記赤外線カメラが少なくとも1つのレンズ及びレンズ取付台を有している実施形態によれば、前記少なくとも1つのレンズは前記レンズ取付台によって保持されており、前記接合要素及び前記レンズ取付台は一体である。
【0040】
実施形態によれば、前記接合要素は少なくとも1つの温度プローブを有している。例えば、前記少なくとも1つの温度プローブは、逸れた光束、例えば前記赤外線画像化デバイスから放射される逸れた光束を処理するためのモジュールに連結されている。
【0041】
実施形態によれば、前記赤外線画像化デバイスは、前記赤外線カメラを遮断するように適合されている着脱可能なシャッタ要素を備えており、前記シャッタ要素は、例えば前記接合要素に組み立てられている、及び/又は、前記屈折要素及び前記赤外線カメラ間に配置されている。例によれば、前記シャッタ要素は、前記赤外線カメラの前方にある前記シャッタ要素の表面で放射性被覆体により覆われている。
【0042】
実施形態によれば、前記接合要素は、前記赤外線カメラに面して、前記透明要素の近くに、例えば前記透明要素の取付台に接して配置されるように適合されている少なくとも1つの放射性内面を有している。例によれば、前記放射性内面は、例えば、前記赤外線カメラに面する表面で放射性被覆体により覆われている。
【0043】
実施形態によれば、前記接合要素は、前記透明要素の領域、例えば前記透明要素の縁部に面して配置されるように適合されている部分を有することにより、前記透明要素の領域と前記赤外線カメラとの間に遮蔽体を形成しており、前記部分は、前記赤外線カメラに面する放射面を有している。例によれば、前記放射面は放射性被覆体で覆われている。
【0044】
上述した2つの実施形態により、前記赤外線カメラの視野の領域、好ましくは意図する用途では重要でない領域で口径食を意図的に低下させることができ、視野の低下した領域に面する接合要素の内面の画像を形成することができる。従って、この視野の低下した領域の画像センサによって決定される温度は、逸れた光束の処理モジュールで使用され得る。
【0045】
実施形態によれば、前記赤外線カメラは、角度画素を含む画素アレイ画像センサを有しており、前記角度画素は、前記角度画素の視野内で画像センサに対向する前記接合要素の内部領域、例えば前記透明要素の周りに配置されるように適合されている内部領域から生じる光束を取り込むように適合されている。例によれば、前記内部領域は放射性被覆体で覆われている。
【0046】
角度画素とは、逸れた光束又は逸れた熱流束の検出画素を意味し、逸れた熱を有利に取り込むために、画素アレイの画像画素の視野に対して変更された視野を有する画素である。例えば、逸れた熱の夫々の検出画素は、画素アレイの各画像画素より大きな部分の逸れた熱を取り込むように配置されている。
【0047】
実施形態は、
実施形態に係る赤外線画像化デバイスと、
スペクトル領域の赤外線を通す透明要素と
を備えており、
前記赤外線画像化デバイスの赤外線カメラは、前記透明要素を通過する前記スペクトル領域の赤外線を検出するように適合されており、
前記透明要素は、画像取込方向に対して0°より大きく90°より小さいか又は0°より小さく-90°より大きい傾斜角分、傾いている、赤外線画像化システムを提供する。
【0048】
実施形態によれば、前記透明要素は、取付台によって囲まれており、前記取付台で壁の開口部に挿入されており、前記透明要素が挿入されている前記壁の少なくとも一部が、前記透明要素と同一の傾斜角分、傾いている。
【0049】
前記透明要素は、好ましくは実質的に平坦で互いに平行な2つの表面である入口面及び出口面を有している。
【0050】
前記壁は、前記開口部の周りで傾斜角分、傾いていることが好ましい。例えば、前記壁は傾斜角分、完全に傾いている。
【図面の簡単な説明】
【0051】
前述及び他の特徴及び利点は、添付図面を参照して本発明を限定するものではない例示として与えられる特定の実施形態の本開示の残り部分に詳細に記載される。
【0052】
【
図1A】傾斜した壁の後方に配置された赤外線カメラの例を示す断面図である。
【
図1B】傾斜した壁の後方に配置された赤外線カメラの例を示す断面図である。
【
図2A】実施形態に係る赤外線画像化デバイスの例を示す断面図である。
【
図2B】
図2Aの赤外線画像化デバイスのプリズムのトンネル図である。
【
図2C】
図2Aの赤外線画像化デバイスの例の変形例を示す断面図である。
【
図3】実施形態に係る赤外線画像化デバイスの別の例を示す断面図である。
【
図4】実施形態に係る赤外線画像化デバイスの別の例を示す断面図である。
【
図5】実施形態に係る赤外線画像化デバイスの別の例を示す断面図である。
【
図6A】実施形態に係る赤外線画像化デバイスの別の例を示す断面図である。
【
図6B】
図6Aの赤外線画像化デバイスのプリズムのトンネル図である。
【発明を実施するための形態】
【0053】
同様の特徴が、様々な図面で同様の参照符号によって示されている。特に、様々な実施形態で共通の構造的特徴及び/又は機能的特徴は同一の参照符号を有する場合があり、同一の構造特性、寸法特性及び材料特性を有する場合がある。
【0054】
明瞭化のために、記載された実施形態の理解に有用な工程及び要素のみが示され詳述されている。特に光学系、例えばレンズ及びそれらの取付台、並びに画像センサ、例えばマイクロボロメータのアレイ又はフォトダイオードのアレイの形態のアレイ画像センサは詳述されておらず、本発明の分野の当業者によって知られている。
【0055】
特に示されていない場合、共に接続された2つの要素について言及するとき、これは、導体以外のいかなる中間要素も無しの直接接続を表し、共に連結された2つの要素について言及するとき、これは、これら2つの要素が接続され得るか、又は一若しくは複数の他の要素を介して連結され得ることを表す。
【0056】
以下の記載では、「前」、「後ろ」、「最上部」、「底部」、「左」、「右」などの絶対位置、若しくは「上方」、「下方」、「上側」、「下側」などの相対位置を限定する用語、又は「水平方向」、「垂直方向」などの方向を限定する用語について言及するとき、この用語は、特に指定されていない場合、図面の向き又は通常の使用位置にあるIR画像化デバイスを指す。
【0057】
「入力/出力」、「上流/下流」、「前/後ろ」、「の前方に/の後方に」という用語について言及するとき、デバイスにおける光線/放射光の伝播方向、すなわち透明要素から赤外線カメラへの方向を指す。
【0058】
角度値について言及するとき、これらの値は、図面では「+」記号が付いた四分の一円の矢印で表される三角方向で与えられることを理解する必要がある。従って、負の角度値は、時計回りの方向の角度に対応する。
【0059】
以下の記載では、水平方向X,Y及び垂直方向Zが赤外線カメラの基準フレームで定められている。
【0060】
「画像取込方向」について言及するとき、画像取込方向は、光線が透明要素及び屈折要素を横切った後、カメラの光軸と一致するか又は平行な、透明要素の上流の光線の光路を指す。
【0061】
透明要素又はポートホールの「屈折光軸」について言及するとき、透明要素又はポートホールの屈折光軸は、画像取込方向に放射された光線が、前記透明要素によって屈折した光路を指す。
【0062】
プリズムの「屈折光軸」について言及するとき、プリズムの屈折光軸は、画像取込方向に放射された光線が、透明要素によって屈折し、次に前記プリズムによって屈折した光路を指す。
【0063】
「プリズムのトンネル図」又は「トンネル図」について言及するとき、トンネル図は、プリズムを展開して得られた平面図を指し、プリズムの平面対称性によって展開を行い、対称面は、内部反射が生じるファセットである(展開モードでは、反射光軸は逸れない)。このような展開は、トンネル図を構築するために内部反射毎に行われる。言い換えれば、トンネル図は、プリズム内で前記プリズムの入口ファセット及び出口ファセット間を光線が通る光路を直線状に示す。従って、トンネル図では、仮想出口ファセットが定められているが、実際の入口ファセットも示されている。
【0064】
特に指定されていない場合、「約」、「略」、「実質的に」及び「程度」という表現は、該当する値のプラスマイナス10%、好ましくはプラスマイナス5%を表す。
【0065】
赤外線(IR)カメラの例が
図1A及び
図1Bに示されている。赤外線カメラ110 は、赤外線を感知可能な画像センサ114 を含むハウジング112 と、画像センサ114 の前方に配置され、IRカメラの使用スペクトル領域の赤外線を伝えることができる窓116 とを備えている。IRカメラの使用スペクトル領域は、例えば1~20μmの範囲内であり、好ましくは8~14μmの範囲内であり、又は8~12μmの範囲内である。画像センサはマイクロボロメータのアレイで形成されたアレイ画像センサであることが有利である。或いは、画像センサは、半導体材料に基づくフォトダイオードのアレイで形成されたアレイ画像センサである。
【0066】
IRカメラは、画像センサに画像を形成すべくカメラの使用スペクトル領域で動作可能な複数のレンズ118 (1つのレンズのみが示されているが、通常、複数のレンズが設けられている)を更に備えており(カメラはレンズの画像焦点面にある)、レンズは、ハウジング112 に組み立てられているレンズ取付台119 に保持されている。レンズ取付台119 は、窓116 が前記レンズ取付台及び画像センサ114 間に配置されるように配置されている。画像センサ及びレンズはカメラの光軸Aを定めている。図示されている例では、光軸Aは水平方向Xにある。
【0067】
IRカメラ110 が筐体内に配置されてもよく、又は少なくとも壁130 の後方に配置されてもよいため、IRカメラによって放射光が前記壁を通して検出される。このような筐体又は壁は、カメラの機械的及び/若しくは熱的保護機能、並びに/又は、カメラを環境から保護する機能、並びに/又は、空気力学的機能、並びに/又は、ユーザを保護する機能(例えば遮蔽物、特に風防)、又は(例えばカメラを覆うための)美的機能を満たしてもよい。
【0068】
壁130 は、図示されているように平坦な壁であってもよい。或いは、壁は、カメラの近傍に少なくとも1つの平坦な壁部分を局所的に有してもよい。
【0069】
壁は、赤外線を通さなくてもよく、画像の送信に適していなくてもよく、例えば、壁は粗くてもよく若しくは拡散性を有してもよく、又は、壁は、IRカメラの使用スペクトル領域の十分な質の赤外線を伝えなくてもよい。この場合、IRカメラの使用スペクトル領域の赤外線を通すポートホール132 が壁の開口部に挿入されてもよい。ポートホール132 は、例えばポートホール取付台134 を用いて壁に挿入されてもよい。
【0070】
ポートホール132 は、赤外線をIRカメラ110 に伝えるように適合されている。例えば、ポートホールは、硫化亜鉛(ZnS) 、セレン化亜鉛(ZnSe)、シリコン(Si)、ゲルマニウム(Ge)、フッ化バリウム(BaF2)、フッ化カルシウム(CaF2)、サファイア、カルコゲナイドガラス、又はIRカメラの使用スペクトル領域の赤外線を通すあらゆる他の材料の板から形成されてもよい。
【0071】
ポートホール132 は、(「瞳孔」と称される)所与の占有面積を有する2つの実質的に平行な表面によって特徴付けられ、2つの表面は、ある距離(厚さ分)隔てて離れている。2つの表面の寸法(瞳孔寸法)は、例えば1センチメートル又は十センチメートル程度であり、厚さは数ミリメートル程度である。
【0072】
ある用途では、壁130 及びポートホール132 は、垂直方向に対して角度θ分、傾いてもよい。角度θは、0~90°の範囲内、より具体的には30°~70°の範囲内、例えば約60°である。言い換えれば、壁130 及びポートホール132 は、水平方向Xで示されている画像取込方向Cに対して角度α分、傾いてもよい。角度αは角度θと相補的であり、従って0~90°の範囲内、より具体的には20°~60°の範囲内、例えば約30°又は約40°である。
【0073】
更に、ポートホールの瞳孔が可能な限り小さいことが望ましい場合がある。実際、壁によって占有される表面積は、ポートホール、場合によってはポートホール取付台によって占有される表面積によって減少することを考慮すると、このような減少により、壁が機能、例えば保護機能又は美的機能を満たす能力が低下する。更に、ポートホールの瞳孔を増大させると、壁の機械的な完全性が変わる場合がある。更に、ポートホールの瞳孔を形成するために使用される材料には無視できないコストがかかるが、瞳孔の大きさを減少させ、程度は低いがその厚さを減少させることによってコストを削減することが望ましい。
【0074】
しかしながら、ポートホールが傾いているときにポートホールの瞳孔の大きさが減少すると、IRカメラの(「FOV」として知られている)視野が制限されるという結果及び不利点があり、視野の端部の光線がポートホールの縁部によって遮断されるため、口径食現象が生じる。特に、垂直視野(VFOV)は、ポートホールの傾きにより水平視野(HFOV)に対して低下する場合がある。
【0075】
ポートホール及びIRカメラ間の距離が長くなると、口径食現象は悪化する。従って、IRカメラ110 及び壁130 間の間隔の制限内でIRカメラを可能な限りポートホールに近い位置に配置することが有利である(この制限は、
図1A及び
図1Bに点線の円で示されている)。この間隔は、傾斜角θが大きい(又は余角αが小さい)ほど、ますます小さくなる。
【0076】
更に、IRカメラ110 の光軸Aが、
図1Aに示されているように、ポートホール132 の屈折光軸B、すなわち、前記ポートホール内の屈折偏向後の光軸を中心とする場合、IRカメラは、非対称の垂直口径食、例えば垂直視野の上方部分に傾く口径食を示す場合がある。
図1Bに示されているように、IRカメラ110 の光軸Aをポートホール132 の屈折光軸Bに対して垂直方向に距離D分、偏移させることにより、対称的な口径食を得ることができる。しかしながら、このため、
図1A及び
図1Bを比較すると分かるように、IRカメラ及び壁間の間隔が更に減少するという影響を受ける場合がある。
【0077】
従って、口径食現象を制御するために赤外線カメラ及び傾斜壁間の間隔の制約を取り除く必要性がある。
【0078】
本発明者は、これらの必要性に対処し得る赤外線画像化デバイスを提供する。
【0079】
赤外線画像化デバイスの例が、以下に記載される。これらの例は非限定的であり、様々な変形例が、本明細書の指示に基づき当業者に想起される。
【0080】
図2Aは、実施形態に係る赤外線画像化デバイスの例を示す断面図であり、赤外線画像化デバイスは、壁130 の後方に示されている赤外線カメラ210 を備えている(壁は赤外線画像化デバイスの一部を形成しない)。
【0081】
図1A及び
図1Bに関連して記載されている赤外線カメラ110 と同様に、赤外線カメラ210 は、赤外線を感知可能な画像センサ214 を含むハウジング212 と、画像センサ214 の前方に配置され、IRカメラの使用スペクトル領域の赤外線を伝えることができる窓216 とを有している。画像センサはマイクロボロメータのアレイを有するアレイ画像センサであることが有利である。或いは、画像センサは、半導体材料に基づくフォトダイオードのアレイを有するアレイ画像センサである。
【0082】
本開示の残り部分では、簡潔さのために、IRカメラの使用スペクトル領域を「スペクトル領域」として表してもよい。
【0083】
IRカメラは、画像センサに画像を形成すべくスペクトル領域で動作可能な複数のレンズ218 を更に有しており、IRカメラはレンズの画像焦点面にある。レンズは、ハウジング212 に組み立てられているレンズ取付台219 に保持されており、レンズ取付台219 は、窓216 が前記レンズ取付台及び画像センサ214 間に配置されるように配置されている。画像センサ及びレンズは、実質的に水平方向Xで示されている、IRカメラの光軸Aを定めている。
【0084】
壁130 は、
図1A及び
図1Bに示されている壁と同様である。従って、壁130 は、(「透明要素」としても表される)ポートホール132 を有しており、ポートホールは、スペクトル領域の赤外線を通す。ポートホール132 は、壁130 の開口部にポートホール取付台134 を用いて挿入されている。壁は、遮蔽物、例えば風防であってもよい。壁は、筐体、例えば密閉型筐体、特に温度調節されるように適合されている密閉型筐体の壁であってもよい。
【0085】
例えば、ポートホールは、硫化亜鉛(ZnS) 、セレン化亜鉛(ZnSe)、シリコン(Si)、ゲルマニウム(Ge)、フッ化バリウム(BaF2)、フッ化カルシウム(CaF2)、サファイア、カルコゲナイドガラス、又はIRカメラによって使用されるスペクトル領域の赤外線を通すあらゆる他の材料で形成された板から形成されてもよい。
【0086】
壁130 及びポートホール132 は、実質的に水平方向Xで示されている画像取込方向Cに対して角度α分、傾いている。傾斜角αは、0~90°の範囲内、より具体的には20°~60°の範囲内、例えば約30°又は約50°である。
【0087】
透明要素、例えばポートホールが、実質的に平坦で互いに平行な2つの表面である入口面及び出口面によって特徴付けられていることが特定されている。更に、壁の傾斜角が、ポートホールの傾斜角、すなわち、少なくとも透明要素が壁に挿入されている位置でのポートホールの傾斜角に局所的に相当することが特定されている。
【0088】
赤外線カメラは、傾斜したポートホールを通してシーンの熱画像を取り込むように適合されている。
【0089】
IR画像化デバイス200 は、スペクトル領域の放射光を通す屈折プリズム230 (屈折要素)を更に備えている。屈折プリズム230 は、ポートホール132 及びIRカメラ210 間に配置されている。
【0090】
図示されているプリズム230 はダブプリズムである。プリズムは、第1の基部236 (大基部)と、前記第1の基部より小さい表面積を有して第1の基部236 と実質的に平行な第2の基部238 (小基部)と、第1の基部及び第2の基部を連結して第1の基部236 に対して角度β分、傾いている第1の側面232 (入口ファセット)と、第1の基部及び第2の基部を連結して第1の側面に面し、第1の基部236 に対して角度βの反対の角度-β分、傾いている第2の側面234 (出口ファセット)とを含む底面が矩形状の切頭角錐形状を有する。角度βは0°より大きく、90°より小さく、例えば30~60°の範囲内である。第1の側面232 が入口ファセットを形成し、第2の側面234 が出口ファセットを形成し、大基部236 が中間ファセットを形成している。
【0091】
図2Aに示されている例では、入口ファセット及び出口ファセットは実質的に同一の大きさであるが、これは、
図3に関連した記載で分かるように限定ではない。
【0092】
入口ファセット232 は、プリズムに入り込むスペクトル領域の赤外線を屈折させるように適合されており、透明要素132 に対向して配置されている。出口ファセット234 は、プリズムから出る赤外線を屈折させるように適合されており、赤外線カメラ210 の前方に配置されている。中間ファセット236 は、入口ファセット及び出口ファセット間で赤外線を反射するように適合されている。
【0093】
例によれば、プリズム230 が、傾斜したポートホール132 及び赤外線カメラ210 間に挿入され得るように、前記プリズム230 の角度βが選択されている。角度βは、壁の傾斜角αと実質的に等しいように選択されてもよい。この場合、プリズム230 の大基部236 は、
図2Cの構成で分かるように水平方向Xに配置されてもよい。しかしながら、これは限定ではなく、プリズム230 の大基部236 は、
図2Aで分かるように水平方向Xに対して傾いてもよく、プリズムの角度βは傾斜角αとは異なる。
【0094】
別の例によれば、角度βを与えて、赤外線カメラ210 は、プリズム230 の出口ファセット234 で屈折した赤外線を取り込むように配置されている。
【0095】
例によれば、プリズム230 の長さL、すなわち、プリズムの大基部236 のXY面における長さは、プリズムの屈折光軸Bが入口ファセット232 の中心及び出口ファセット234 の中心を通るように定められ得る。別の例によれば、プリズム230 の長さLは、プリズムの屈折光軸Bが入口ファセット232 の中心及び出口ファセット234 の中心に対して偏心するように定められ得る。
【0096】
図2Aに示されている例では、プリズム230 の屈折光軸Bが赤外線カメラの光軸Aと実質的に一致するように、プリズム230 及び赤外線カメラ210 が相対的に配置されているが、これは、
図2Cに関連した記載で分かるように限定ではない。
【0097】
ポートホール及びIRカメラ間にプリズム230 などの屈折要素を使用することにより、口径食現象、特に赤外線カメラ及びポートホール間の距離に関連する口径食現象を制限するために、IRカメラの視野の端部からの赤外線を狭くすることが可能である。このため、IRカメラの視野の端部の赤外線が、ポートホールの縁部によって遮断されるのを回避することが可能であるか、又は少なくともこの現象を制限することが可能である。このため、更に、壁の傾斜角αに関係なく、IRカメラ及び壁間の間隔の制約を取り除くことが可能であり、実質的に軽減することが可能である。IRカメラ及び壁間の間隔の制限は、
図2Aの点線の円で示されているように、プリズムとIRカメラとの間に移されるが、プリズムによる屈折により、ポートホールの縁部の赤外線をIRカメラにより取り込むために前記IRカメラがプリズムに当接する必要がないため、制約が少なくなる。
【0098】
デバイスは、プリズムを壁、例えばポートホール取付台に組み立てるための手段(不図示)を備えている。
【0099】
図2Aのデバイス200 に関連して記載される以下の例の一又は複数は、実施形態に係るデバイスの別の例に更に適用されてもよく、例えば、
図6Aに関連して後述されるプリズム630 に更に適用されてもよい。
- 屈折要素、例えばプリズム230 は、ポートホール132 と同一の材料で形成されてもよい。
- 屈折要素、例えばプリズム230 は、硫化亜鉛(ZnS) 、セレン化亜鉛(ZnSe)、シリコン(Si)、ゲルマニウム(Ge)、フッ化バリウム(BaF
2)、フッ化カルシウム(CaF
2)、サファイア、カルコゲナイドガラスで形成されてもよい。
- 屈折要素の中間ファセットの内面、例えばプリズム230 の中間ファセット236 の内面236Bは、前記内面における赤外線の反射を高めるように適合されている反射被覆体、例えば金属製の被覆体で覆われてもよい。
- 屈折要素の中間ファセット、例えばプリズム230 の中間ファセット236 は、光学収差を補正するように適合されている少なくとも1つの表面、例えば自由曲面タイプの平坦でない非軸対称表面を有してもよい。
- 屈折要素の入口ファセットの外面、例えばプリズム230 の入口ファセット232 の外面232Aは、反射防止膜で覆われてもよい。
- 屈折要素の出口ファセットの外面、例えばプリズム230 の出口ファセット234 の外面234Aは、反射防止膜で覆われてもよい。
- 光学機能に関係のない屈折要素の表面、例えば、プリズム230 の小基部238 の外面及び/若しくは内面、並びに/又は大基部236 の外面は艶消しされてもよい及び/又は迷光防止機能に応じて構造化されてもよい。
【0100】
ダブプリズムは、光学収差及び色分散を抑えるという利点を有する。特に、このため、カメラによって取り込まれる画像のぼやけを制限可能な場合がある。この利点は、以下に説明されるように入口ファセットに対する出口ファセットの位置決めによるものである。
【0101】
図2Bは、
図2Aの赤外線画像化デバイスのプリズム230 のトンネル図である。
図2Bでは、プリズム230 を内部反射毎に仮想的に展開して、入口ファセット232 と平行な仮想出口ファセット234'を形成することにより、仮想プリズム230'が得られている。この構成により、プリズム230 に非分散特性が与えられる。
【0102】
図2Cは、
図2Aの赤外線画像化デバイスの例の変形例を示す断面図である。
図2Cの赤外線画像化デバイス201 は、カメラ210 の光軸Aがプリズム230 の屈折光軸Bから垂直方向Zに距離D分偏移している点で
図2Aの赤外線画像化デバイス200 とは主に異なる。このため、場合によっては、カメラ210 の視野を対称にし、上側の視野が下側の視野より優先されず、逆に下側の視野が上側の視野より優先されないことが可能になり得る。
【0103】
プリズム230 は、画像を光軸Aに対して180 °反転させることにより動作する。画像は、IRカメラのレンズによって更に180 °反転し、そのため、取り込まれるシーンの最初の向きが元の状態に戻される。例えば、下側の視野の優先を望む場合、図示されているようにシフトを下向きにしてもよく、逆に、上側の視野の優先を望む場合、シフトを上向きにしてもよい。
【0104】
図3は、実施形態に係る赤外線画像化デバイス300 の別の例を示す断面図であり、赤外線画像化デバイス300 は、ダブプリズム330 の小基部338 が大基部336 (中間ファセット)と平行ではない点で
図2Cの赤外線画像化デバイス201 とは主に異なる。結果として、入口ファセット332 の表面積は出口ファセット334 の表面積と同一ではない。しかしながら、プリズム330 のトンネル図の仮想プリズム330'で分かるように、仮想出口ファセット334'は常に入口ファセット332 と平行である。
【0105】
例によれば、入口ファセット332 は、ポートホール132 の瞳孔と実質的に等しい表面積を有してもよい一方、出口ファセット334 はより小さい表面積を有してもよい。
【0106】
例によれば、プリズムの屈折光軸Bが入口ファセット332 の中心及び大きさがより小さい出口ファセット334 の中心を通るように、プリズム330 の長さLは定められてもよい。
【0107】
図4は、実施形態に係る赤外線画像化デバイス400 の別の例を示す断面図であり、赤外線画像化デバイス400 は、赤外線カメラ210 とポートホール取付台134 との間に配置されている接合要素440 を更に備えている点で
図2Cの赤外線画像化デバイス201 とは主に異なる。接合要素440 は、前記赤外線カメラと前記ポートホール取付台との間に接合部分を形成するように適合されている。この接合要素は、ポートホール132 と赤外線カメラ210 との間に屈折プリズム230 を保持するように更に適合されている。
【0108】
接合要素440 により、光軸Aの方向(図示されている例における水平方向X)及び光軸Aに垂直な方向(図示されている例における垂直方向Z)において赤外線カメラ210 をポートホール132 に対して正確に配置し、プリズム230 をポートホール及び赤外線カメラに対して正確に配置することが可能になる。
図4に示されている例では、カメラ210 の光軸Aはプリズムの屈折光軸Bに対して垂直方向Zに偏移している。
図2Aと同様の別の例によれば、カメラの光軸Aはプリズムの屈折光軸Bと一致してもよい。
【0109】
図示されている接合要素440 は、外面が切頭円筒形状の剛性の一体要素であり、ポートホール取付台134 とIRカメラ210 との間に挿入されるように適合されている。図示されている接合要素440 は、
- ポートホール取付台134 と相補的な形状によって前記ポートホール取付台134 と係合するような形状を有し、ひいてはポートホール132 の周り全体で壁130 に組み立てられている第1の端部442 と、
- レンズ取付台219 と相補的な形状によって前記レンズ取付台219 と係合するような形状を有する第2の端部444 と、
- 第1の端部及び第2の端部間の本体446 と
を有している。
【0110】
代替例によれば、接合要素の第2の端部は、IRカメラのハウジング212 、又は、レンズ取付台219 及びハウジング212 の両方と係合するような形状を有してもよい。
【0111】
本体446 は、好ましくは所与のスペクトル領域の放射光を通さない覆いを形成している。従って、前記覆いは、壁130 の後方からの迷光であって、前記壁とIRカメラ210 との間の空間、例えばポートホール132 とIRカメラ210 との間の光路内に入り込む可能性がある迷光の全て又は一部を遮断するように適合されていることが好ましく、迷光は、画像センサ214 にゴースト画像を生成する可能性がある。
【0112】
保持リング447 は本体446 内に延びており、プリズム230 に当接してプリズム230 を保持し、ポートホール132 と赤外線カメラ210 との間の所与の位置で中心とするような形状を有する。保持リング447 は、入口ファセット及び出口ファセット以外のプリズムの表面に載置されており、例えば大基部及び/又は小基部、及び/又はY方向に垂直な一若しくは複数の側方ファセットに載置されていることが好ましい。
【0113】
図示されている例では、接合要素440 は、壁130 及び赤外線カメラ210 とは別の要素である。このため、例えば保守の場合、又は、赤外線カメラを別の壁の後方に配置するか若しくは異なる傾斜角で同一の壁の後方に配置することを可能にすべく接合要素を交換する必要がある場合、又は、例えば壁が使用中に損傷した場合に壁を交換する必要がある場合、壁及び/又はIR画像化デバイスの様々な要素の交換を容易にすることが可能である。
【0114】
図4は接合要素の実施形態の例を示しているが、以下に記載される他の構成例が接合要素に適用されてもよい。
【0115】
例によれば、接合要素は、レンズ取付台又は赤外線カメラのハウジングと一体であってもよい。
【0116】
有利な例によれば、接合要素は、流体を通さない密閉部をポートホール取付台及びIRカメラ間に形成するように適合されてもよい。このため、ポートホールとIRカメラとの間の空間で前記接合要素に含まれるガス、例えば空気の組成の変化を減少させることが可能であり得る。例えば、このため、可能な限り一定の画質を提供するように、又は少なくとも画質の変化を制限するように、前記空間内の湿気、粒子及び/又はほこりを減らし得る場合がある。例えば、ポートホールとIRカメラとの間の空間は、接合要素に囲まれる前に窒素、低濃度の粒子及び/又はほこりで飽和している場合がある。このため更に、プリズムが特定の環境条件から保護され得る。例によれば、プリズムは、強い熱光学特性を有する材料で形成されてもよく、部分的に温度調節される必要があってもよい。例によれば、プリズムは水溶性材料で形成されてもよく、相対湿度が高い環境の場合には劣化から保護される必要がある。
【0117】
例によれば、接合要素の少なくとも第1の内面は、IRカメラの使用スペクトル領域内で吸収する材料から形成されているか、又は前記使用スペクトル領域内で吸収する被覆体で覆われている。
【0118】
例によれば、接合要素の少なくとも第2の内面は、IRカメラの使用スペクトル領域内で反射する材料から形成されている、例えば金属製であるか、又は前記使用スペクトル領域内で反射する被覆体、例えば金属製の被覆体で覆われている。
【0119】
例によれば、接合要素は、IRカメラの使用スペクトル領域内で吸収する材料から形成されているか又は前記使用スペクトル領域内で吸収する被覆体で覆われている少なくとも第1の内面と、前記使用スペクトル領域内で反射する材料から形成されている、例えば金属製であるか、又は前記使用スペクトル領域内で反射する被覆体、例えば金属製の被覆体で覆われている少なくとも1つの第2の内面とを有している。
【0120】
第1の内面及び第2の内面は、例えば、迷光への露出に応じて及び/又はこれらの内面に影響を与える可能性がある温度勾配に応じて画定されている。
【0121】
例によれば、接合要素の内面の全て又は一部は、前記接合要素によってIRカメラに向かう迷光の放射を制限するような形状を有しており、例えばカメラに向かって傾斜した接合要素の内面は減少するか又は除外される。
【0122】
例によれば、接合要素は、前記接合要素によってカメラに向かう迷光の放射を制限するように適合されている少なくとも1つの構造体、例えば遮蔽体、マスク及び/又はライトトラップタイプの構造体を前記接合要素の内部に有している。構造体は、接合要素の光軸の周りに規則的に配置された構造体(若しくは複数の構造体)であってもよく、又は接合要素の光軸の周りに不規則に配置された複数の構造体であってもよい。
【0123】
例によれば、接合要素は、熱伝導性が低い材料、例えば熱伝導率が10 W・m-1・K-1より低い材料で形成されている。このため、ポートホールとIRカメラとの間の断熱性及びプリズムの断熱性を有利にすることが可能である。実際、ポートホールの周りの環境は、特に壁の外側の状況に応じて温度変化を受ける場合があり、温度変化は、特に逸れた熱流束を発生させることにより、赤外線カメラの性能を低下させる、及び/又は、(画素アレイ赤外線カメラでは)画素アレイの様々な画素間の応答の不均一性を生じさせる場合がある。例えば、壁が、温度調節が可能な筐体の一部である場合、筐体内の温度調節及び接合要素による断熱の組み合わせにより、赤外線カメラの性能を向上させることが可能である。
【0124】
例によれば、接合要素は少なくとも1つの温度プローブを有している。温度プローブは、前記接合要素の内部に配置され得ることが好ましいが、前記接合要素の外部に配置されてもよい。例えば、温度勾配を決定し得るために、複数の温度プローブが接合要素の様々な位置に配置されてもよい。
【0125】
例によれば、少なくとも1つの温度プローブは、逸れた光束、すなわち、赤外線カメラによって取り込まれるがシーン以外の少なくとも1つの源から生じる光束、例えばデバイス及び/又はポートホールから放射される逸れた光束を処理するためのモジュールに連結されている。逸れた光束の処理モジュールは、例えば逸れた光束を補正することにより、シーンから本質的に生じる光束を決定するために、画像処理モジュールに含まれてもよく又は画像処理モジュールに連結されてもよい。
【0126】
或いは、逸れた光束の全て又は一部が、温度プローブを使用せずに決定されてもよく、このため、赤外線画像化デバイスが簡素化される。例えば、接合要素は、
- 赤外線カメラに面して、透明要素の近くに、例えば透明要素の取付台に接して配置されている少なくとも1つの放射性内面であって、例えば、赤外線カメラに面する表面で放射性被覆体により覆われている前記放射性内面、及び/又は
- 透明要素の領域、例えば前記透明要素の縁部と赤外線カメラとの間に遮蔽体を形成するように、透明要素の領域、例えば前記透明要素の縁部に対向して配置されている部分であって、赤外線カメラに対向し、例えば放射性被覆体により覆われている放射面を有する前記部分
を有してもよい。
【0127】
例によれば、赤外線カメラは、角度画素を含む画素アレイ画像センサを有してもよく、角度画素は、前記角度画素の視野内で画像センサに対向する接合要素の内部領域、例えば透明要素の周りに配置されている内部領域から生じる光束を取り込むように適合されており、内部領域は、例えば放射性被覆体で覆われている。
【0128】
逸れた熱流束の検出画素を有する赤外線カメラの例、このような赤外線カメラの較正方法の例、及び、このような赤外線カメラにより取り込まれる画像の補正方法の例は、国際公開第2019/234215号パンフレット及び国際公開第2019/234216号パンフレットに記載されている。
【0129】
接合要素の実施形態のこれらの例及び他の例は、同一の出願人によって2021年9月24日に仏国特許第2110092 号で出願された「赤外線画像化デバイス」に記載されている。
【0130】
図5は、実施形態に係る赤外線画像化デバイス500 の別の例を示す断面図であり、赤外線画像化デバイス500 は、赤外線カメラ510 の少なくとも1つのレンズ518 がプリズム230 の出口ファセット234 に面する切取面517 を有している点で
図2Aの赤外線画像化デバイス200 とは主に異なる。図示されていないレンズ取付台も切り取られている。このため、赤外線カメラ510 を可能な限りプリズム230 の近くに配置することが可能である。必要に応じて、赤外線カメラ及びプリズム間の距離を減少させることにより、赤外線カメラとポートホールとの間の光学距離が減少し、口径食現象を更に低下させることが可能である。例によれば、切取面517 は実質的に出口ファセット234 と平行である。
【0131】
レンズ切取部分は、レンズの光学性能を低下させないように構成されていることが好ましい。例によれば、切り取られているレンズが、例えば自由曲面タイプの少なくとも1つの平坦でない光学面を有する。平坦でない光学面は少なくとも非軸対称であることが好ましい。
【0132】
図6Aは、実施形態に係る赤外線画像化デバイス600 の別の例を示す断面図であり、赤外線画像化デバイス600 は、屈折要素がダブプリズムの代わりにバウエルンファイントプリズム630 である点で
図2Aの赤外線画像化デバイス200 とは主に異なる。
【0133】
バウエルンファイントプリズム630 は、入口ファセットを形成する基部632 、基部に面して配置されて中間ファセットを形成する第1の側面636 、及び基部と第1の側面とを連結して出口ファセットを形成する第2の側面634 を有するハーフペンタプリズムである。入口ファセット632 はポートホール132 に面して配置されている。出口ファセット634 は赤外線カメラ210 に面して配置されている。プリズム630 のファセット632, 634, 636 は、赤外線が出口ファセットの入射角と等しい角度で入口ファセットを通って屈折するように互いに向き合っている。
【0134】
赤外線カメラ210 は、プリズム630 の出口ファセット634 で屈折する赤外線を取り込むように配置されている。
【0135】
図示されている例では、プリズム630 の屈折光軸Bが赤外線カメラの光軸Aと実質的に一致するように、プリズム630 及び赤外線カメラ210 が相対的に配置されている。
【0136】
別の例によれば、カメラ210 の光軸Aは、プリズムの屈折光軸Bから垂直方向Zに偏移してもよい。
【0137】
プリズム630 などの屈折要素をポートホール及びIRカメラ間に使用することにより、
図2Aのプリズム230 と同様に、IRカメラの視野の端部からの赤外線を狭くして、口径食現象、特に赤外線カメラ及びポートホール間の距離に関連する口径食現象を制限することが可能である。このため、IRカメラの視野の端部の赤外線が、ポートホールの縁部によって遮断されるのを回避することが可能であるか、又は少なくともこの現象を制限することが可能である。このため更に、壁の傾斜角αに関係なく、IRカメラと壁との間隔の制約を取り除くことが可能であり、実質的に軽減することが可能である。
【0138】
図2A~2C、
図4及び
図5のデバイスに関連して記載されている他の特徴及び例はバウエルンファイントプリズムに適合され得る。
【0139】
バウエルンファイントプリズムは、光学収差及び色分散を制限するという利点を有し、カメラによって取り込まれる画像のぼやけを制限するのに役立ち得る。この利点は、以下に説明されるように入口ファセットに対する出口ファセットの位置決めによるものである。
【0140】
図6Bは、
図6Aの赤外線画像化デバイスのプリズムのトンネル図である。この図では、プリズム630 を内部反射毎に仮想的に展開して、入口ファセット632 と平行な仮想出口ファセット634'を形成することにより、仮想プリズム630'が得られている。この構成により、プリズム630 に非分散特性が与えられる。
【0141】
ダブプリズムと比較すると、バウエルンファイントプリズムを使用することにより、よりコンパクトになり、特に材料費の削減を可能にするという利点がある。
【0142】
様々な実施形態及び変形例が記載されている。当業者は、これらの様々な実施形態及び変形例のある特徴が組み合わされてもよいと理解し、他の変形例が当業者に想起される。特に、全ての実施形態は、赤外線カメラの光軸と屈折要素の屈折光軸との間のオフセットの有無にかかわらず実施されてもよい。更に、実施形態では、画像センサのハウジング及びレンズ取付台は一体であってもよい。
【0143】
最後に、記載されている実施形態及び変形例の実際の実施は、上述した機能的な表示に基づく当業者の技能の範囲内である。
【手続補正書】
【提出日】2024-06-10
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
赤外線画像化デバイ
スであって、
光
軸を有し、スペクトル領域の赤外線を通す透明要
素を通過する前記赤外線を検出するように構成されている赤外線カメ
ラを備えており、前記透明要素は、画像取込方
向に対して0°より大きく90°より小さいか又は0°より小さく-90°より大きい傾斜
角分、傾いており、
前記赤外線画像化デバイスは、前記スペクトル領域の赤外線を通し、前記透明要
素及び前記赤外線カメ
ラ間に配置され得る屈折要
素を更に備えており、前記屈折要素は、前記屈折要素のトンネル図における前記屈折要素の出口ファセッ
トに対応する仮想出口ファセッ
トを有しており、前記仮想出口ファセットは、前記屈折要素の入口ファセッ
トと実質的に平行であり、
前記透明要
素は、実質的に平坦で互いに平行な入口ファセット及び出口ファセットを有しており、取付
台によって囲まれており、前記取付台で
壁の開口部に挿入されるように適合されており、前記透明要素が挿入される前記壁の少なくとも一部が、前記透明要素と同一の傾斜
角分、傾いている、赤外線画像化デバイス。
【請求項2】
前記入口ファセッ
トは、前記屈折要素に入り込むスペクトル領域の赤外線を屈折させるように適合され、前記透明要
素に対向して配置されるように構成されており、
前記出口ファセッ
トは、前記屈折要素から出る前記赤外線を屈折させるように適合され、前記赤外線カメ
ラに対向して配置されており、
前記屈折要
素は、前記入口ファセットと前記出口ファセットとの間で前記赤外線を反射するように適合されている少なくとも1つの中間ファセッ
トを更に有している、請求項1に記載の赤外線画像化デバイ
ス。
【請求項3】
前記中間ファセッ
トの内
面は、前記内面における前記赤外線の反射を高めるように適合されている反射被覆体、例えば金属製の被覆体で覆われている、請求項2に記載の赤外線画像化デバイ
ス。
【請求項4】
前記中間ファセットは、光学収差を補正するように適合されている少なくとも1つの表面、例えば自由曲面タイプの、例えば非軸対称の平坦でない表面を有している、請求項2又は3に記載の赤外線画像化デバイス。
【請求項5】
前記屈折要
素及び前記赤外線カメ
ラは、前記屈折要素の屈折光
軸が前記赤外線カメラの光
軸と実質的に平行であるか又は実質的に一致するように互いに対して配置されている、請求項1~
3のいずれか1つに記載の赤外線画像化デバイ
ス。
【請求項6】
前記赤外線カメ
ラの光
軸は、前記屈折要素の屈折光
軸に対して前記屈折光軸に垂直な方
向にある距
離分、偏移している、請求項5に記載の赤外線画像化デバイ
ス。
【請求項7】
前記入口ファセッ
トの外
面及び/又は前記出口ファセッ
トの外
面は、反射防止膜で覆われている、請求項1~
3のいずれか1つに記載の赤外線画像化デバイ
ス。
【請求項8】
前記屈折要
素はプリズムであり、例えば色分散を生じさせないプリズムである、請求項1~
3のいずれか1つに記載の赤外線画像化デバイ
ス。
【請求項9】
前記プリズ
ムはダブプリズムタイプであり、第1の基
部と、前記第1の基部の表面積より小さい表面積を有する第2の基
部と、前記第1の基部及び前記第2の基部を連結して前記第1の基
部に対して第1の角
度分、傾いている第1の側
面と、前記第1の基部及び前記第2の基部を連結して前記第1の側面に面し、前記第1の基
部に対して第2の角
度分、傾いている第2の側
面とを含む底面が矩形状の切頭角錐形状を有し、前記第2の角度は前記第1の角度の反対であり、前記第1の角
度は0°より大きく90°より小さく、例えば30~60°の範囲内であり、
前記第1の側面は前記入口ファセットを形成し、前記第2の側面は前記出口ファセットを形成し、前記第1の基部は前記中間ファセットを形成している、請求項2を引用する請求項8に記載の赤外線画像化デバイ
ス。
【請求項10】
前記プリズ
ムはバウエルンファイントプリズムタイプのハーフペンタプリズムであり、前記入口ファセットを形成する基
部、前記基部に面して配置されて前記中間ファセットを形成する第1の側
面、及び前記基部と前記第1の側面とを連結して前記出口ファセットを形成する第2の側
面を有しており、
前記入口ファセット、前記中間ファセット及び前記出口ファセットは、例えば赤外線が前記出口ファセットの入射角と等しい角度で前記入口ファセットを通って屈折するように互いに向き合っている、請求項2を引用する請求項8に記載の赤外線画像化デバイ
ス。
【請求項11】
前記屈折要
素の入口ファセッ
トの表面積は、前記透明要
素の表面積以上である、請求項1~
3のいずれか1つに記載の赤外線画像化デバイ
ス。
【請求項12】
前記屈折要
素の入口ファセッ
トは前記透明要
素と実質的に平行である、請求項1~
3のいずれか1つに記載の赤外線画像化デバイ
ス。
【請求項13】
前記出口ファセッ
トの表面積は、前記入口ファセッ
トの表面積と実質的に等しい、請求項1~
3のいずれか1つに記載の赤外線画像化デバイ
ス。
【請求項14】
前記出口ファセッ
トの表面積は、前記入口ファセッ
トの表面積より小さい、請求項1~
3のいずれか1つに記載の赤外線画像化デバイ
ス。
【請求項15】
前記赤外線カメ
ラは、少なくとも1つのレン
ズ及びレンズ取付台を更に有しており、前記少なくとも1つのレンズは前記レンズ取付台によって保持されており、
前記少なくとも1つのレン
ズ及び/又は前記レンズ取付台は、前記屈折要
素の出口ファセッ
トに面するように適合されている切取
面を有しており、前記切取
面は、例えば前記出口ファセッ
トと実質的に平行である、請求項1~
3のいずれか1つに記載の赤外線画像化デバイ
ス。
【請求項16】
前記赤外線カメ
ラは、少なくとも1つのレン
ズ及びレンズ取付
台を有しており、前記少なくとも1つのレンズは前記レンズ取付台によって保持されており、
前記赤外線カメラは、前記スペクトル領域の赤外線を感知可能な画像セン
サを有しており、
前記画像センサ及び前記少なくとも1つのレン
ズは前記赤外線カメラの光
軸を定めており、前記画像センサは、実質的に前記少なくとも1つのレンズの画像焦点面に配置されている、請求項1~
3のいずれか1つに記載の赤外線画像化デバイ
ス。
【請求項17】
前記屈折要
素を前記
壁又は前記取付
台に取り付けるように適合されている、前記屈折要
素を取り付けるための手段を備えている、請求項1~
3のいずれか1つに記載の赤外線画像化デバイ
ス。
【請求項18】
前記赤外線カメ
ラと前記取付
台との間に接合部分を形成するように適合されている接合要
素を備えており、
前記接合要素は、前記透明要
素と前記赤外線カメ
ラとの間に前記屈折要
素を保持するように更に適合されている、請求項1~
3のいずれか1つに記載の赤外線画像化デバイ
ス。
【請求項19】
請求項1~
3のいずれか1つに記載の赤外線画像化デバイ
スと、
スペクトル領域の赤外線を通す透明要
素と
を備えており、
前記赤外線画像化デバイスの赤外線カメ
ラは、前記透明要素を通過する前記スペクトル領域の赤外線を検出するように適合されており、
前記透明要
素は、画像取込方
向に対して0°より大きく90°より小さいか又は0°より小さく-90°より大きい傾斜
角分、傾いており、
前記透明要
素は、実質的に平坦で互いに平行な入口面及び出口面を有しており、取付
台によって囲まれており、前記取付台で
壁の開口部に挿入されており、
前記透明要素が挿入されている前記壁の少なくとも一部が、前記透明要素と同一の傾斜
角分、傾いている、赤外線画像化システム。
【国際調査報告】