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特表2024-538749抗PD-L1/IL-10融合タンパク質を用いて疾患を処置する方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-10-23
(54)【発明の名称】抗PD-L1/IL-10融合タンパク質を用いて疾患を処置する方法
(51)【国際特許分類】
   A61K 39/395 20060101AFI20241016BHJP
   A61K 38/20 20060101ALI20241016BHJP
   A61P 37/04 20060101ALI20241016BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20241016BHJP
   A61P 31/12 20060101ALI20241016BHJP
   A61K 45/00 20060101ALI20241016BHJP
   A61K 47/55 20170101ALI20241016BHJP
   C07K 19/00 20060101ALN20241016BHJP
   C07K 16/28 20060101ALN20241016BHJP
   C07K 14/54 20060101ALN20241016BHJP
   C12N 15/13 20060101ALN20241016BHJP
   C12N 15/24 20060101ALN20241016BHJP
   C12N 15/62 20060101ALN20241016BHJP
【FI】
A61K39/395 U ZNA
A61K38/20
A61P37/04
A61P35/00
A61P31/12
A61K45/00
A61K47/55
C07K19/00
C07K16/28
C07K14/54
C12N15/13
C12N15/24
C12N15/62 Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024521297
(86)(22)【出願日】2022-10-07
(85)【翻訳文提出日】2024-04-23
(86)【国際出願番号】 US2022077756
(87)【国際公開番号】W WO2023060229
(87)【国際公開日】2023-04-13
(31)【優先権主張番号】63/254,116
(32)【優先日】2021-10-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521083094
【氏名又は名称】エリクシロン・イミュノセラピューティクス・(ホンコン)・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】フン-カイ・チェン
(72)【発明者】
【氏名】パンデラキス・アンドレイアス・コニ
(72)【発明者】
【氏名】ヒュイ-ウェン・シャオ
【テーマコード(参考)】
4C076
4C084
4C085
4H045
【Fターム(参考)】
4C076BB11
4C076BB13
4C076BB15
4C076BB16
4C076BB25
4C076BB29
4C076BB30
4C076BB31
4C076CC06
4C076CC07
4C076CC27
4C076CC35
4C076CC41
4C084AA02
4C084AA19
4C084BA41
4C084BA44
4C084DA12
4C084MA02
4C084MA55
4C084MA56
4C084MA58
4C084MA59
4C084MA60
4C084MA63
4C084MA65
4C084MA66
4C084NA05
4C084ZB09
4C084ZB26
4C084ZB33
4C085AA14
4C085AA25
4C085DD62
4C085EE03
4C085GG01
4C085GG02
4C085GG03
4C085GG04
4C085GG06
4H045AA10
4H045AA11
4H045AA30
4H045BA10
4H045BA41
4H045CA40
4H045DA02
4H045DA76
4H045EA20
4H045FA74
4H045GA10
4H045GA15
4H045GA26
(57)【要約】
本開示は、T細胞記憶応答の促進を介する、がん及び慢性ウイルス感染症の処置並びにがん再発の予防における、PD-L1抗体-IL-10融合タンパク質の使用を提供する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
必要とする対象においてT細胞記憶応答を促進するための、治療有効量のPD-L1抗体-IL-10融合タンパク質及び薬学的に許容される担体を含む組成物の使用。
【請求項2】
必要とする対象においてT細胞記憶応答を促進するための医薬の製造のための、治療有効量のPD-L1抗体-IL-10融合タンパク質及び薬学的に許容される担体を含む組成物の使用。
【請求項3】
必要とする対象におけるT細胞記憶応答の促進に使用するための、治療有効量のPD-L1抗体-IL-10融合タンパク質及び薬学的に許容される担体を含む組成物。
【請求項4】
必要とする対象においてがんを処置するための、治療有効量のPD-L1抗体-IL-10融合タンパク質及び薬学的に許容される担体を含む組成物の使用。
【請求項5】
必要とする対象においてがんを処置するための医薬の製造のための、治療有効量のPD-L1抗体-IL-10融合タンパク質及び薬学的に許容される担体を含む組成物の使用。
【請求項6】
必要とする対象におけるがんの処置に使用するための、治療有効量のPD-L1抗体-IL-10融合タンパク質及び薬学的に許容される担体を含む組成物。
【請求項7】
必要とする対象においてがん再発を予防するための、治療有効量のPD-L1抗体-IL-10融合タンパク質及び薬学的に許容される担体を含む組成物の使用。
【請求項8】
必要とする対象においてがん再発を予防するための医薬の製造のための、治療有効量のPD-L1抗体-IL-10融合タンパク質及び薬学的に許容される担体を含む組成物の使用。
【請求項9】
必要とする対象におけるがん再発の予防に使用するための、治療有効量のPD-L1抗体-IL-10融合タンパク質及び薬学的に許容される担体を含む組成物。
【請求項10】
必要とする対象において慢性ウイルス感染症を処置するための、治療有効量のPD-L1抗体-IL-10融合タンパク質及び薬学的に許容される担体を含む組成物の使用。
【請求項11】
必要とする対象において慢性ウイルス感染症を処置するための医薬の製造のための、治療有効量のPD-L1抗体-IL-10融合タンパク質及び薬学的に許容される担体を含む組成物の使用。
【請求項12】
必要とする対象における慢性ウイルス感染症の処置に使用するための、治療有効量のPD-L1抗体-IL-10融合タンパク質及び薬学的に許容される担体を含む組成物。
【請求項13】
少なくとも1つの追加の治療剤と共に使用するためのものである、請求項3、6、9又は12のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項14】
少なくとも1つの追加の治療剤がウイルスワクチンである、請求項13に記載の組成物。
【請求項15】
少なくとも1つの追加の治療剤が、阻害性免疫チェックポイント分子を標的とする抗体である、請求項13に記載の組成物。
【請求項16】
少なくとも1つの追加の治療剤が、造影剤;細胞傷害剤;血管新生阻害剤;キナーゼ阻害剤;共刺激分子遮断薬;接着分子遮断薬;抗サイトカイン抗体又はその機能的断片;メトトレキセート;シクロスポリン;ラパマイシン;FK506;検出可能な標識又はレポーター;TNFアンタゴニスト;抗リウマチ薬;筋弛緩薬;麻薬;非ステロイド抗炎症薬(NSAID);鎮痛薬;麻酔薬;鎮静薬;局所麻酔薬;神経筋遮断薬;抗菌薬;抗乾癬薬;コルチコステロイド;アナボリックステロイド;エリスロポエチン;免疫化;免疫グロブリン;免疫抑制薬;成長ホルモン;ホルモン補充薬;放射性医薬品;抗うつ薬;抗精神病薬;刺激薬;喘息薬;ベータアゴニスト;吸入ステロイド;エピネフリン又はその類似体;サイトカイン;サイトカインアンタゴニスト;免疫調節剤;HBV侵入阻害剤;ウイルスRNA阻害剤;遺伝子編集剤;HBsAg分泌阻害剤;ポリメラーゼ阻害剤;インターフェロン;ウイルス侵入阻害剤;ウイルス成熟阻害剤;ヌクレオシド逆転写酵素阻害剤;カプシドアセンブリ阻害剤/モジュレーター;cccDNA阻害剤;FXRアゴニスト;マイクロRNA;及びTLRアゴニストからなる群から選択される、請求項13に記載の組成物。
【請求項17】
非経口、皮下、筋肉内、静脈内、関節内、気管支内、腹部内、嚢内、軟骨内、体腔内、腔内、小脳内、脳室内、結腸内、頸部内、胃内、肝内、心筋内、骨内、骨盤内、心膜内、腹腔内、胸膜内、前立腺内、肺内、直腸内、腎臓内、網膜内、脊髄内、滑液嚢内、胸腔内、子宮内、膀胱内、ボーラス、経膣、直腸、頬側、舌下、鼻腔内及び経皮からなる群から選択される少なくとも1つの様式による投与のためのものである、請求項3、6、9又は12のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項18】
1日1回を上回る、少なくとも1日1回、少なくとも週に1回、又は少なくとも月に1回の使用のためのものである、請求項3、6、9又は12のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項19】
PD-L1抗体が、免疫グロブリン分子、Fv、ジスルフィド結合したFv、モノクローナル抗体、scFv、キメラ抗体、単一ドメイン抗体、CDRグラフト化抗体、ダイアボディ、ヒト抗体、ヒト化抗体、多特異性抗体、Fab、二重特異性抗体、Fab'断片、二特異性抗体、ヒンジ領域でのジスルフィド架橋により連結された2つのFab断片を含む二価断片のF(ab')2断片;VHドメイン及びCH1ドメインからなるFd断片;抗体の単一アームのVLドメイン及びVHドメインからなるFv断片、dAb断片、単離された相補性決定領域(CDR)、又は一本鎖抗体である、請求項1、2、4、5、7、8、10若しくは11のいずれか一項に記載の使用又は請求項3、6、9若しくは12のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項20】
PD-L1抗体が、リンカーを介してIL10と融合した重鎖(HC)を含み、場合により、リンカーが、配列番号74、75、76、77、78及び79から選択されるアミノ酸配列を含む、請求項1、2、4、5、7、8、10若しくは11のいずれか一項に記載の使用又は請求項3、6、9若しくは12のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項21】
(a)IL-10が、配列番号73、172、173、174、175、176、177、178、179若しくは180のアミノ酸配列を含む;
(b) IL-10が、そのサイトカイン活性を保持する、天然に存在するバリアント、若しくは操作されたバリアントである;
(c)IL-10が、そのサイトカイン活性を保持する、IL-10の合成的に修飾されたバージョンである;及び/又は
(d)IL-10が、1つ、2つ若しくは4つのIL-10ポリペプチドを含む、請求項1、2、4、5、7、8、10若しくは11のいずれか一項に記載の使用又は請求項3、6、9若しくは12のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項22】
IL-10が、野生型IL-10のアミノ酸に対して、104位、107位及びそれらの組合せにおけるアミノ酸上の置換を含む、請求項1、2、4、5、7、8、10若しくは11のいずれか一項に記載の使用又は請求項3、6、9若しくは12のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項23】
野生型IL-10が、配列番号73、172、173、174、175、176、177、178、179又は180と少なくとも80%、好ましくは少なくとも90%、より好ましくは少なくとも95%の同一性を有するアミノ酸配列を含む、請求項22に記載の使用又は組成物。
【請求項24】
置換が、
(a)R104Q;
(b)R107A、R107E、R107Q及びR107Dのいずれか1つ;又は
(c)それらの組合せ
を含む、請求項23に記載の使用又は組成物。
【請求項25】
置換が、R104Q/R107A、R104Q/R107E、R104Q/R107Q、又はR104Q/R107Dを含む、請求項24に記載の使用又は組成物。
【請求項26】
PD-L1抗体が、(i)第1の軽鎖相補性決定領域(CDR-L1)、第2の軽鎖相補性決定領域(CDR-L2)及び第3の軽鎖相補性決定領域(CDR-L3)、並びに(ii)第1の重鎖相補性決定領域(CDR-H1)、第2の重鎖相補性決定領域(CDR-H2)及び第3の重鎖相補性決定領域(CDR-H3)を含み、
(a)CDR-H1が、配列番号92及び123から選択されるアミノ酸配列を含み;
(b)CDR-H2が、配列番号109、114及び124から選択されるアミノ酸配列を含み;
(c)CDR-H3が、配列番号94及び110から選択されるアミノ酸配列を含み;
(d)CDR-L1が、配列番号53から選択されるアミノ酸配列を含み;
(e)CDR-L2が、配列番号54から選択されるアミノ酸配列を含み;
(f)CDR-L3が、配列番号55、112及び116から選択されるアミノ酸配列を含む、請求項1、2、4、5、7、8、10若しくは11のいずれか一項に記載の使用又は請求項3、6、9若しくは12のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項27】
(a)CDR-H1が、配列番号92のアミノ酸配列を含み、CDR-H2が、配列番号109のアミノ酸配列を含み、CDR-H3が、配列番号110のアミノ酸配列を含み、CDR-L1が、配列番号53のアミノ酸配列を含み、CDR-L2が、配列番号54のアミノ酸配列を含み、CDR-L3が、配列番号112のアミノ酸配列を含む;
(b)CDR-H1が、配列番号92のアミノ酸配列を含み、CDR-H2が、配列番号114のアミノ酸配列を含み、CDR-H3が、配列番号94のアミノ酸配列を含み、CDR-L1が、配列番号53のアミノ酸配列を含み、CDR-L2が、配列番号54のアミノ酸配列を含み、CDR-L3が、配列番号116のアミノ酸配列を含む;又は
(c)CDR-H1が、配列番号123のアミノ酸配列を含み、CDR-H2が、配列番号124のアミノ酸配列を含み、CDR-H3が、配列番号94のアミノ酸配列を含み、CDR-L1が、配列番号53のアミノ酸配列を含み、CDR-L2が、配列番号54のアミノ酸配列を含み、CDR-L3が、配列番号55のアミノ酸配列を含む、請求項26に記載の使用又は組成物。
【請求項28】
抗体が、配列番号111、115及び125から選択される配列に対して少なくとも90%の同一性を有する重鎖可変ドメイン(VH)アミノ酸配列;並びに/又は配列番号56、113及び117から選択される配列に対して少なくとも90%の同一性を有する軽鎖可変ドメイン(VL)アミノ酸配列を含み;場合により、
(a)抗体が、配列番号111に対して少なくとも90%の同一性を有するVHアミノ酸配列;及び配列番号113に対して少なくとも90%の同一性を有するVLアミノ酸配列を含む;
(b)抗体が、配列番号115に対して少なくとも90%の同一性を有するVHアミノ酸配列;及び配列番号117に対して少なくとも90%の同一性を有するVLアミノ酸配列を含む;又は
(c)抗体が、配列番号125に対して少なくとも90%の同一性を有するVHアミノ酸配列;及び配列番号56に対して少なくとも90%の同一性を有するVLアミノ酸配列を含む、請求項26に記載の使用又は組成物。
【請求項29】
抗体が、配列番号157、158及び160から選択される配列に対して少なくとも90%の同一性を有する重鎖(HC)アミノ酸配列;並びに/又は配列番号135、137及び141から選択される配列に対して少なくとも90%の同一性を有する軽鎖(LC)アミノ酸配列を含み;場合により、抗体が、
(a)配列番号157のHCアミノ酸配列、及び配列番号135のLCアミノ酸配列;
(b)配列番号158のHCアミノ酸配列、及び配列番号137のLCアミノ酸配列;
(c)配列番号160のHCアミノ酸配列、及び配列番号141のLCアミノ酸配列
を含む、請求項26に記載の使用又は組成物。
【請求項30】
抗体が、リンカーを介してIL10ポリペプチドと融合した重鎖(HC)であって、HC-IL-10融合アミノ酸配列が、配列番号134、136及び140から選択される配列に対して少なくとも90%の同一性を有する、HC;並びに配列番号135、137及び141から選択される配列に対して少なくとも90%の同一性のアミノ酸配列を有する軽鎖(LC)を含み;場合により、抗体が、
(a)配列番号134のHC-IL-10融合アミノ酸配列、及び配列番号135のLCアミノ酸配列;
(b)配列番号136のHC-IL-10融合アミノ酸配列、及び配列番号137のLCアミノ酸配列;又は
(c)配列番号140のHC-IL-10融合アミノ酸配列、及び配列番号141のLCアミノ酸配列
を含む、請求項26に記載の使用又は組成物。
【請求項31】
PD-L1抗体が、リンカーを介してIL10と融合した重鎖(HC)を含み、抗体が、(i)第1の軽鎖相補性決定領域(CDR-L1)、第2の軽鎖相補性決定領域(CDR-L2)及び第3の軽鎖相補性決定領域(CDR-L3)、並びに(ii)第1の重鎖相補性決定領域(CDR-H1)、第2の重鎖相補性決定領域(CDR-H2)及び第3の重鎖相補性決定領域(CDR-H3)を含み、
(a)CDR-H1が、配列番号1のアミノ酸配列を含み、CDR-H2が、配列番号2のアミノ酸配列を含み、CDR-H3が、配列番号3のアミノ酸配列を含み、CDR-L1が、配列番号5のアミノ酸配列を含み、CDR-L2が、配列番号6のアミノ酸配列を含み、CDR-L3が、配列番号7のアミノ酸配列を含む;
(b)CDR-H1が、配列番号9のアミノ酸配列を含み、CDR-H2が、配列番号10のアミノ酸配列を含み、CDR-H3が、配列番号11のアミノ酸配列を含み、CDR-L1が、配列番号13のアミノ酸配列を含み、CDR-L2が、配列番号14のアミノ酸配列を含み、CDR-L3が、配列番号15のアミノ酸配列を含む;
(c)CDR-H1が、配列番号17のアミノ酸配列を含み、CDR-H2が、配列番号18のアミノ酸配列を含み、CDR-H3が、配列番号19のアミノ酸配列を含み、CDR-L1が、配列番号21のアミノ酸配列を含み、CDR-L2が、配列番号22のアミノ酸配列を含み、CDR-L3が、配列番号23のアミノ酸配列を含む;
(d)CDR-H1が、配列番号25のアミノ酸配列を含み、CDR-H2が、配列番号26のアミノ酸配列を含み、CDR-H3が、配列番号27のアミノ酸配列を含み、CDR-L1が、配列番号29のアミノ酸配列を含み、CDR-L2が、配列番号30のアミノ酸配列を含み、CDR-L3が、配列番号31のアミノ酸配列を含む;
(e)CDR-H1が、配列番号33のアミノ酸配列を含み、CDR-H2が、配列番号34のアミノ酸配列を含み、CDR-H3が、配列番号35のアミノ酸配列を含み、CDR-L1が、配列番号37のアミノ酸配列を含み、CDR-L2が、配列番号38のアミノ酸配列を含み、CDR-L3が、配列番号39のアミノ酸配列を含む;
(f)CDR-H1が、配列番号41のアミノ酸配列を含み、CDR-H2が、配列番号42のアミノ酸配列を含み、CDR-H3が、配列番号43のアミノ酸配列を含み、CDR-L1が、配列番号45のアミノ酸配列を含み、CDR-L2が、配列番号46のアミノ酸配列を含み、CDR-L3が、配列番号47のアミノ酸配列を含む;
(g)CDR-H1が、配列番号92のアミノ酸配列を含み、CDR-H2が、配列番号109のアミノ酸配列を含み、CDR-H3が、配列番号110のアミノ酸配列を含み、CDR-L1が、配列番号53のアミノ酸配列を含み、CDR-L2が、配列番号54のアミノ酸配列を含み、CDR-L3が、配列番号112のアミノ酸配列を含む;
(h)CDR-H1が、配列番号92のアミノ酸配列を含み、CDR-H2が、配列番号114のアミノ酸配列を含み、CDR-H3が、配列番号94のアミノ酸配列を含み、CDR-L1が、配列番号53のアミノ酸配列を含み、CDR-L2が、配列番号54のアミノ酸配列を含み、CDR-L3が、配列番号116のアミノ酸配列を含む;又は
(i)CDR-H1が、配列番号123のアミノ酸配列を含み、CDR-H2が、配列番号124のアミノ酸配列を含み、CDR-H3が、配列番号94のアミノ酸配列を含み、CDR-L1が、配列番号53のアミノ酸配列を含み、CDR-L2が、配列番号54のアミノ酸配列を含み、CDR-L3が、配列番号55のアミノ酸配列を含む、請求項1、2、4、5、7、8、10若しくは11のいずれか一項に記載の使用又は請求項3、6、9若しくは12のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項32】
抗体が、配列番号4、12、20、28、36、44、111、115及び125から選択される配列に対して少なくとも90%の同一性を有する重鎖可変ドメイン(VH)アミノ酸配列;並びに/又は配列番号8、16、24、32、40、48、56、113及び117から選択される配列に対して少なくとも90%の同一性を有する軽鎖可変ドメイン(VL)アミノ酸配列を含み;場合により、
(a)抗体が、配列番号4に対して少なくとも90%の同一性を有するVHアミノ酸配列;及び配列番号8に対して少なくとも90%の同一性を有するVLアミノ酸配列を含む;
(b)抗体が、配列番号12に対して少なくとも90%の同一性を有するVHアミノ酸配列;及び配列番号16に対して少なくとも90%の同一性を有するVLアミノ酸配列を含む;
(c)抗体が、配列番号20に対して少なくとも90%の同一性を有するVHアミノ酸配列;及び配列番号24に対して少なくとも90%の同一性を有するVLアミノ酸配列を含む;
(d)抗体が、配列番号28に対して少なくとも90%の同一性を有するVHアミノ酸配列;及び配列番号32に対して少なくとも90%の同一性を有するVLアミノ酸配列を含む;
(e)抗体が、配列番号36に対して少なくとも90%の同一性を有するVHアミノ酸配列;及び配列番号40に対して少なくとも90%の同一性を有するVLアミノ酸配列を含む;
(f)抗体が、配列番号44に対して少なくとも90%の同一性を有するVHアミノ酸配列;及び配列番号48に対して少なくとも90%の同一性を有するVLアミノ酸配列を含む;
(g)抗体が、配列番号111に対して少なくとも90%の同一性を有するVHアミノ酸配列;及び配列番号113に対して少なくとも90%の同一性を有するVLアミノ酸配列を含む;
(h)抗体が、配列番号115に対して少なくとも90%の同一性を有するVHアミノ酸配列;及び配列番号117に対して少なくとも90%の同一性を有するVLアミノ酸配列を含む;又は
(i)抗体が、配列番号125に対して少なくとも90%の同一性を有するVHアミノ酸配列;及び配列番号56に対して少なくとも90%の同一性を有するVLアミノ酸配列を含む、請求項31に記載の使用又は組成物。
【請求項33】
抗体が、配列番号80、81、82、134、136及び140から選択される配列に対して少なくとも90%の同一性を有するHC-IL-10融合アミノ酸配列、並びに配列番号135、137、141、143、145及び147から選択される配列に対して少なくとも90%の同一性を有する軽鎖(LC)アミノ酸配列を含み;場合により、抗体が、
(a)配列番号80のHC-IL-10融合アミノ酸配列、及び配列番号143のLCアミノ酸配列;
(b)配列番号81のHC-IL-10融合アミノ酸配列、及び配列番号145のLCアミノ酸配列;
(c)配列番号82のHC-IL-10融合アミノ酸配列、及び配列番号147のLCアミノ酸配列;
(d)配列番号134のHC-IL-10融合アミノ酸配列、及び配列番号135のLCアミノ酸配列;
(e)配列番号136のHC-IL-10融合アミノ酸配列、及び配列番号137のLCアミノ酸配列;又は
(f)配列番号140のHC-IL-10融合アミノ酸配列、及び配列番号141のLCアミノ酸配列
を含む、請求項31に記載の使用又は組成物。
【請求項34】
(a)タンパク質が、MC/9細胞増殖を、少なくとも25%、少なくとも50%、少なくとも100%、少なくとも150%、少なくとも200%若しくはそれ以上上昇させる;
(b)タンパク質が、活性化CD8 T細胞からのIFNγ及びグランザイムB産生を、少なくとも25%、少なくとも50%、少なくとも100%若しくはそれ以上上昇させる;並びに/又は
(c)抗体が、28日目に測定される、CT26結腸がん及びEMT6乳がんから選択される同系マウス腫瘍モデルにおける腫瘍容積を、少なくとも25%、少なくとも50%、少なくとも75%若しくはそれ以上低下させる、請求項1、2、4、5、7、8、10若しくは11のいずれか一項に記載の使用又は請求項3、6、9若しくは12のいずれか一項に記載の組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、米国特許法第119条(e)項のもとで、参照によりその全体が本明細書に組み込まれている、2021年10月10日に出願した米国仮特許出願第63/254116号の利益を主張するものである。
【0002】
本開示は一般的に、PD-L1抗体-IL-10融合タンパク質を用いて疾患を処置する方法、特に、T細胞記憶応答の促進を介する、がん及び慢性ウイルス感染症の処置並びにがん再発の予防において、PD-L1抗体-IL-10融合タンパク質を使用する方法に関する。
【背景技術】
【0003】
がんは、身体の他の部に侵入又は拡散する潜在能力を有する異常な細胞増殖を含む、疾患の大群であり、死亡の主因をなす。がん細胞は、正常細胞から形質転換(発がん)するため、がん細胞が提示する抗原性表面タンパク質及び/又は糖タンパク質は、宿主生物体中での正常な非腫瘍細胞上に存在する抗原と同一であるか、又は非常に類似する。従って、宿主生物体の免疫系は、がん細胞を検出して正常細胞と区別することに苦労し得る。更に、がん細胞は、宿主免疫系の検出を回避する他の機構を採用し得る。
【0004】
プログラム細胞死リガンド1(PD-L1)は、阻害性チェックポイント分子であるPD1に結合して、妊娠中の適応免疫応答、自己免疫疾患、及び肺炎を含むその他の疾患状態を抑制する膜貫通タンパク質である。更に、PD-L1は、がん組織中で高度に発現しており、その発現レベルは、腫瘍悪性度と強く相関することが見出された。PD-L1の過剰発現、及び受容体タンパク質であるPD1へのその結合が、がん細胞の採用している、宿主生物体の免疫系による破壊を回避する機構にとって決定的であると見られている。
【0005】
インターロイキン10又は「IL-10」(サイトカイン合成阻害性因子、CSIF、IL-10、IL10A、GVHDS又はTGIFとしても公知)は、免疫調節及び炎症において多重効果を有するサイトカインである。IL-10は、Th1サイトカイン、MHCクラスII抗原、及びマクロファージ上での共刺激分子の発現を下方制御することが公知である。IL-10は、B細胞の生存、増殖及び抗体産生を増強させることも公知である。IL-10は、NF-κB活性を遮断することができ、JAK-STATシグナル伝達経路の調節に関与する。IL-10は、マクロファージ及びTh1 T細胞のような細胞により生成される炎症誘発性サイトカイン、例えば、IFN-γ、IL-2、IL-3、TNFα及びGM-CSFの合成を阻害することができる。IL-10は、抗原提示細胞の抗原提示能を抑制する強力な能力も発揮するが、特定のT細胞(Th2)及び肥満細胞に対して刺激的であり、B細胞の成熟及び抗体産生を誘導する。
【0006】
IL-10は、腫瘍転移の潜在的阻害剤、及びがん免疫療法において有用な免疫誘導剤と認められている。組換えマウスでは、IL-10の発現又はIL-10の投与が、原発巣での腫瘍細胞の増殖を制御して転移を減少させることが観察された。マウスモデルにおいて、PEG化された組換えマウスIL-10は、IFNγ、及びCD8+T細胞依存性抗腫瘍免疫を誘導することが示された。PEG化された組換えヒトIL-10は、細胞傷害性分子であるグランザイムB及びパーフォリンのCD8+T細胞分泌を高め、T細胞受容体依存性IFNγ分泌を増強することが示された。臨床試験では、PEG化組換えヒトIL-10(PEG-rHuIL-10、AM0010)が、実質的な抗腫瘍有効性を示し、免疫刺激サイトカインであるIFNγ、IL-18、IL-7、GM-CSF及びIL-4の用量滴定可能な誘導を引き起こすことが見出された。処置された患者は、活性化のマーカー、例えば、PD1、リンパ球活性化遺伝子3(LAG3)+を発現する末梢性CD8+T細胞の増加、及びFasリガンド(FasL)の上昇、及び血清TGFβの低下も示した。これらの発見は、IL-10処置が、ヒトにおいて、主に免疫刺激効果をもたらすことを示唆する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】米国特許第7,749,490号
【特許文献2】米国特許出願公開第2017/0015747号
【特許文献3】米国特許第6,171,586号
【特許文献4】国際公開第2006/044908号
【特許文献5】米国特許第6,267,958号
【特許文献6】米国特許出願公開第2005/0260186号
【特許文献7】米国特許出願公開第2006/0104968号
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】Sambrook等、Molecular Cloning-A Laboratory Manual(第2版)、第1~3巻、Cold Spring Harbor Laboratory、Cold Spring Harbor、N.Y.、1989年
【非特許文献2】Current Protocols in Molecular Biology、F. M. Ausubel等編、Current Protocols、a joint venture between Greene Publishing Associates, Inc.とJohn Wiley & Sons, Inc.(2011の増補)
【非特許文献3】Antibody Engineering、第1巻及び第2巻、R. KontermannとS. Dubel編、Springer出版、BerlinとHeidelberg(2010年)
【非特許文献4】Monoclonal Antibodies: Methods and Protocols、V. OssipowとN. Fischer編、第2編、Humana Press(2014年)
【非特許文献5】Therapeutic Antibodies: From Bench to Clinic、Z. An編、J. Wiley & Sons、Hoboken、N.J.(2009年)
【非特許文献6】Phage Display、Tim ClacksonとHenry B. Lowman編、Oxford University Press、United Kingdom(2004年)
【非特許文献7】Naing, A.等、「PEGylated IL-10 (Pegilodecakin) Induces Systemic Immune Activation, CD8+ T Cell Invigoration and Polyclonal T Cell Expansion in Cancer Patients.」Cancer Cell 34、775~791頁.e3(2018年)
【非特許文献8】Gorby, C等「Engineered IL-10 variants elicit potent immunomodulatory effects at low ligand doses.」Sci Signal 13(2020年)
【非特許文献9】Yoon, S. I.等「Epstein-Barr virus IL-10 engages IL-10R1 by a two-step mechanism leading to altered signaling properties.」J Biol Chem 287、26586~26595頁(2012年)
【非特許文献10】Kindt等、Kuby Immunology、第6版、W.H. Freeman and Co.、91頁
【非特許文献11】Portolano等、J. Immunol. 150:880~887頁(1993)
【非特許文献12】Clarkson等、Nature 352:624~628頁(1991)
【非特許文献13】Remington's Pharmaceutical Sciences、第16版、Osol, A.編(1980)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
抗PD-L1/IL-10融合タンパク質に関する当技術分野でのこれまでの理解と対照的に、本開示は、抗PD-L1/IL-10融合タンパク質は、T細胞記憶応答を促進できるという驚くべき発見に基づき、がんの処置、がん再発の予防、及び慢性ウイルス感染症の処置のための組成物、及びその組成物の使用を提供する。理論に拘束されることなく、抗PD-L1/IL-10融合タンパク質は、前駆疲弊T細胞を介する持続的な記憶応答をもたらすと提案される。がん又は慢性ウイルス感染を有する患者では、抗PD-L1/IL-10融合タンパク質が、がん又はウイルス感染を処置し、且つがん再発又は慢性ウイルス感染を予防するT細胞記憶応答をもたらすと提案される。従って、本開示は、がん又は慢性ウイルス感染を有する患者に、前駆疲弊T細胞を介する持続的な記憶応答を促進するPD-L1抗体-IL-10融合タンパク質を投与する、処置の方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
一部の実施形態では、本開示は、必要とする対象においてT細胞記憶応答を促進するための、治療有効量のPD-L1抗体-IL-10融合タンパク質及び薬学的に許容される担体を含む組成物の使用を提供する。一部の実施形態では、本開示は、必要とする対象においてT細胞記憶応答を促進するための医薬の製造のための、治療有効量のPD-L1抗体-IL-10融合タンパク質及び薬学的に許容される担体を含む組成物の使用を提供する。一部の実施形態では、本開示は、必要とする対象におけるT細胞記憶応答の促進に使用するための、治療有効量のPD-L1抗体-IL-10融合タンパク質及び薬学的に許容される担体を含む組成物を提供する。
【0011】
一部の実施形態では、本開示は、必要とする対象においてがんを処置するための、治療有効量のPD-L1抗体-IL-10融合タンパク質及び薬学的に許容される担体を含む組成物の使用を提供する。一部の実施形態では、本開示は、必要とする対象においてがんを処置するための医薬の製造のための、治療有効量のPD-L1抗体-IL-10融合タンパク質及び薬学的に許容される担体を含む組成物の使用を提供する。一部の実施形態では、本開示は、必要とする対象におけるがんの処置に使用するための、治療有効量のPD-L1抗体-IL-10融合タンパク質及び薬学的に許容される担体を含む組成物を提供する。
【0012】
一部の実施形態では、本開示は、必要とする対象においてがん再発を予防するための、治療有効量のPD-L1抗体-IL-10融合タンパク質及び薬学的に許容される担体を含む組成物の使用を提供する。一部の実施形態では、本開示は、必要とする対象においてがん再発を予防するための医薬の製造のための、治療有効量のPD-L1抗体-IL-10融合タンパク質及び薬学的に許容される担体を含む組成物の使用を提供する。一部の実施形態では、本開示は、必要とする対象におけるがん再発の予防に使用するための、治療有効量のPD-L1抗体-IL-10融合タンパク質及び薬学的に許容される担体を含む組成物を提供する。
【0013】
一部の実施形態では、本開示は、必要とする対象において慢性ウイルス感染症を処置するための、治療有効量のPD-L1抗体-IL-10融合タンパク質及び薬学的に許容される担体を含む組成物の使用を提供する。一部の実施形態では、本開示は、必要とする対象において慢性ウイルス感染症を処置するための医薬の製造のための、治療有効量のPD-L1抗体-IL-10融合タンパク質及び薬学的に許容される担体を含む組成物の使用を提供する。一部の実施形態では、本開示は、必要とする対象における慢性ウイルス感染症の処置に使用するための、治療有効量のPD-L1抗体-IL-10融合タンパク質及び薬学的に許容される担体を含む組成物を提供する。
【0014】
一部の実施形態では、組成物は、少なくとも1つの追加の治療剤と共に使用するためのものである。他の実施形態では、少なくとも1つの追加の治療剤はウイルスワクチンである。他の実施形態では、少なくとも1つの追加の治療剤は、阻害性免疫チェックポイント分子を標的とする抗体である。一部の好ましい実施形態では、少なくとも1つの追加の治療剤は、造影剤;細胞傷害剤;血管新生阻害剤;キナーゼ阻害剤;共刺激分子遮断薬;接着分子遮断薬;抗サイトカイン抗体又はその機能的断片;メトトレキセート;シクロスポリン;ラパマイシン;FK506;検出可能な標識又はレポーター;TNFアンタゴニスト;抗リウマチ薬;筋弛緩薬;麻薬;非ステロイド抗炎症薬(NSAID);鎮痛薬;麻酔薬;鎮静薬;局所麻酔薬;神経筋遮断薬;抗菌薬;抗乾癬薬;コルチコステロイド;アナボリックステロイド;エリスロポエチン;免疫化;免疫グロブリン;免疫抑制薬;成長ホルモン;ホルモン補充薬;放射性医薬品;抗うつ薬;抗精神病薬;刺激薬;喘息薬;ベータアゴニスト;吸入ステロイド;エピネフリン又はその類似体;サイトカイン;サイトカインアンタゴニスト;免疫調節剤;HBV侵入阻害剤;ウイルスRNA阻害剤;遺伝子編集剤;HBsAg分泌阻害剤;ポリメラーゼ阻害剤;インターフェロン;ウイルス侵入阻害剤;ウイルス成熟阻害剤;ヌクレオシド逆転写酵素阻害剤;カプシドアセンブリ阻害剤/モジュレーター;cccDNA阻害剤;FXRアゴニスト;マイクロRNA;及びTLRアゴニストからなる群から選択される。
【0015】
一部の実施形態では、組成物は、非経口、皮下、筋肉内、静脈内、関節内、気管支内、腹部内、嚢内、軟骨内、体腔内、腔内、小脳内、脳室内、結腸内、頸部内、胃内、肝内、心筋内、骨内、骨盤内、心膜内、腹腔内、胸膜内、前立腺内、肺内、直腸内、腎臓内、網膜内、脊髄内、滑液嚢内、胸腔内、子宮内、膀胱内、ボーラス、経膣、直腸、頬側、舌下、鼻腔内及び経皮からなる群から選択される少なくとも1つの様式による投与のためのものである。一部の実施形態では、組成物は、1日1回を上回る、少なくとも1日1回、少なくとも週に1回、又は少なくとも月に1回の使用のためのものである。
【0016】
一部の実施形態では、PD-L1抗体は、免疫グロブリン分子、Fv、ジスルフィド結合したFv、モノクローナル抗体、scFv、キメラ抗体、単一ドメイン抗体、CDRグラフト化抗体、ダイアボディ、ヒト抗体、ヒト化抗体、多特異性抗体、Fab、二重特異性抗体、Fab'断片、二特異性抗体、ヒンジ領域でのジスルフィド架橋により連結された2つのFab断片を含む二価断片のF(ab')2断片;VHドメイン及びCH1ドメインからなるFd断片;抗体の単一アームのVLドメイン及びVHドメインからなるFv断片、dAb断片、単離された相補性決定領域(CDR)、又は一本鎖抗体である。一部の実施形態では、PD-L1抗体は、リンカーを介してIL10と融合した重鎖(HC)を含み、場合により、リンカーは、配列番号74、75、76、77、78及び79から選択されるアミノ酸配列を含む。
【0017】
一部の実施形態では、(a)IL-10は、配列番号73、172、173、174、175、176、177、178、179若しくは180のアミノ酸配列を含む;(b)IL-10が、そのサイトカイン活性を保持する、天然に存在するバリアント、若しくは、IL-10の操作されたバリアントである;(c)IL-10は、そのサイトカイン活性を保持する、IL-10の合成的に修飾されたバージョンである;及び/又は(d)IL-10は、1つ、2つ若しくは4つのIL-10ポリペプチドを含む。
【0018】
一部の実施形態では、IL-10は、野生型IL-10のアミノ酸に対して、104位、107位及びそれらの組合せにおけるアミノ酸上の置換を含む。一部の実施形態では、野生型IL-10は、配列番号73、172、173、174、175、176、177、178、179又は180と少なくとも80%、好ましくは少なくとも90%、より好ましくは少なくとも95%の同一性を有するアミノ酸配列を含む。一部の実施形態では、置換は、(a)R104Q;(b)R107A、R107E、R107Q及びR107Dのいずれか1つ;又は(c)それらの組合せを含む。一部の実施形態では、置換は、R104Q/R107A、R104Q/R107E、R104Q/R107Q、又はR104Q/R107Dを含む。
【0019】
一部の実施形態では、PD-L1抗体は、(i)第1の軽鎖相補性決定領域(CDR-L1)、第2の軽鎖相補性決定領域(CDR-L2)及び第3の軽鎖相補性決定領域(CDR-L3)、並びに(ii)第1の重鎖相補性決定領域(CDR-H1)、第2の重鎖相補性決定領域(CDR-H2)及び第3の重鎖相補性決定領域(CDR-H3)を含み、
(a)CDR-H1は、配列番号92及び123から選択されるアミノ酸配列を含み;
(b)CDR-H2は、配列番号109、114及び124から選択されるアミノ酸配列を含み;
(c)CDR-H3は、配列番号94及び110から選択されるアミノ酸配列を含み;
(d)CDR-L1は、配列番号53から選択されるアミノ酸配列を含み;
(e)CDR-L2は、配列番号54から選択されるアミノ酸配列を含み;
(f)CDR-L3は、配列番号55、112及び116から選択されるアミノ酸配列を含む。
【0020】
一部の実施形態では、
(a)CDR-H1は、配列番号92のアミノ酸配列を含み、CDR-H2は、配列番号109のアミノ酸配列を含み、CDR-H3は、配列番号110のアミノ酸配列を含み、CDR-L1は、配列番号53のアミノ酸配列を含み、CDR-L2は、配列番号54のアミノ酸配列を含み、CDR-L3は、配列番号112のアミノ酸配列を含む;
(b)CDR-H1は、配列番号92のアミノ酸配列を含み、CDR-H2は、配列番号114のアミノ酸配列を含み、CDR-H3は、配列番号94のアミノ酸配列を含み、CDR-L1は、配列番号53のアミノ酸配列を含み、CDR-L2は、配列番号54のアミノ酸配列を含み、CDR-L3は、配列番号116のアミノ酸配列を含む;又は
(c)CDR-H1は、配列番号123のアミノ酸配列を含み、CDR-H2は、配列番号124のアミノ酸配列を含み、CDR-H3は、配列番号95のアミノ酸配列を含み、CDR-L1は、配列番号53のアミノ酸配列を含み、CDR-L2は、配列番号54のアミノ酸配列を含み、CDR-L3は、配列番号55のアミノ酸配列を含む。
【0021】
一部の実施形態では、抗体は、配列番号111、115及び125から選択される配列に対して少なくとも90%の同一性を有する重鎖可変ドメイン(VH)アミノ酸配列;並びに/又は配列番号56、113及び117から選択される配列に対して少なくとも90%の同一性を有する軽鎖可変ドメイン(VL)アミノ酸配列を含み;場合により、
(a)抗体は、配列番号111に対して少なくとも90%の同一性を有するVHアミノ酸配列;及び配列番号113に対して少なくとも90%の同一性を有するVLアミノ酸配列を含む;
(b)抗体は、配列番号115に対して少なくとも90%の同一性を有するVHアミノ酸配列;及び配列番号117に対して少なくとも90%の同一性を有するVLアミノ酸配列を含む;又は
(c)抗体は、配列番号125に対して少なくとも90%の同一性を有するVHアミノ酸配列;及び配列番号56に対して少なくとも90%の同一性を有するVLアミノ酸配列を含む。
【0022】
一部の実施形態では、抗体は、配列番号157、158及び160から選択される配列に対して少なくとも90%の同一性を有する重鎖(HC)アミノ酸配列、並びに/又は配列番号135、137及び141から選択される配列に対して少なくとも90%の同一性を有する軽鎖(LC)アミノ酸配列を含み;場合により、抗体は、
(a)配列番号157のHCアミノ酸配列、及び配列番号135のLCアミノ酸配列;
(b)配列番号158のHCアミノ酸配列、及び配列番号137のLCアミノ酸配列;
(c)配列番号160のHCアミノ酸配列、及び配列番号141のLCアミノ酸配列
を含む。
【0023】
一部の実施形態では、抗体は、リンカーを介してIL10ポリペプチドと融合した重鎖(HC)であって、HC-IL-10融合アミノ酸配列が、配列番号134、136及び140から選択される配列に対して少なくとも90%の同一性を有する、HC;並びに配列番号135、137及び141から選択される配列に対して少なくとも90%の同一性のアミノ酸配列を有する軽鎖(LC)を含み;場合により、抗体は、
(a)配列番号134のHC-IL-10融合アミノ酸配列、及び配列番号135のLCアミノ酸配列;
(b)配列番号136のHC-IL-10融合アミノ酸配列、及び配列番号137のLCアミノ酸配列;又は
(d)配列番号140のHC-IL-10融合アミノ酸配列、及び配列番号141のLCアミノ酸配列
を含む。
【0024】
一部の実施形態では、PD-L1抗体は、リンカーを介してIL10と融合した重鎖(HC)を含み、抗体は、(i)第1の軽鎖相補性決定領域(CDR-L1)、第2の軽鎖相補性決定領域(CDR-L2)及び第3の軽鎖相補性決定領域(CDR-L3)、並びに(ii)第1の重鎖相補性決定領域(CDR-H1)、第2の重鎖相補性決定領域(CDR-H2)及び第3の重鎖相補性決定領域(CDR-H3)を含み、
(a)CDR-H1は、配列番号1のアミノ酸配列を含み、CDR-H2は、配列番号2のアミノ酸配列を含み、CDR-H3は、配列番号3のアミノ酸配列を含み、CDR-L1は、配列番号5のアミノ酸配列を含み、CDR-L2は、配列番号6のアミノ酸配列を含み、CDR-L3は、配列番号7のアミノ酸配列を含む;
(b)CDR-H1は、配列番号9のアミノ酸配列を含み、CDR-H2は、配列番号10のアミノ酸配列を含み、CDR-H3は、配列番号11のアミノ酸配列を含み、CDR-L1は、配列番号13のアミノ酸配列を含み、CDR-L2は、配列番号14のアミノ酸配列を含み、CDR-L3は、配列番号15のアミノ酸配列を含む;
(c)CDR-H1は、配列番号17のアミノ酸配列を含み、CDR-H2は、配列番号18のアミノ酸配列を含み、CDR-H3は、配列番号19のアミノ酸配列を含み、CDR-L1は、配列番号21のアミノ酸配列を含み、CDR-L2は、配列番号22のアミノ酸配列を含み、CDR-L3は、配列番号23のアミノ酸配列を含む;
(d)CDR-H1は、配列番号25のアミノ酸配列を含み、CDR-H2は、配列番号26のアミノ酸配列を含み、CDR-H3は、配列番号27のアミノ酸配列を含み、CDR-L1は、配列番号29のアミノ酸配列を含み、CDR-L2は、配列番号30のアミノ酸配列を含み、CDR-L3は、配列番号31のアミノ酸配列を含む;
(e)CDR-H1は、配列番号33のアミノ酸配列を含み、CDR-H2は、配列番号34のアミノ酸配列を含み、CDR-H3は、配列番号35のアミノ酸配列を含み、CDR-L1は、配列番号37のアミノ酸配列を含み、CDR-L2は、配列番号38のアミノ酸配列を含み、CDR-L3は、配列番号39のアミノ酸配列を含む;
(f)CDR-H1は、配列番号41のアミノ酸配列を含み、CDR-H2は、配列番号42のアミノ酸配列を含み、CDR-H3は、配列番号43のアミノ酸配列を含み、CDR-L1は、配列番号45のアミノ酸配列を含み、CDR-L2は、配列番号46のアミノ酸配列を含み、CDR-L3は、配列番号47のアミノ酸配列を含む;
(g)CDR-H1は、配列番号92のアミノ酸配列を含み、CDR-H2は、配列番号109のアミノ酸配列を含み、CDR-H3は、配列番号110のアミノ酸配列を含み、CDR-L1は、配列番号53のアミノ酸配列を含み、CDR-L2は、配列番号54のアミノ酸配列を含み、CDR-L3は、配列番号112のアミノ酸配列を含む;
(h)CDR-H1は、配列番号92のアミノ酸配列を含み、CDR-H2は、配列番号114のアミノ酸配列を含み、CDR-H3は、配列番号94のアミノ酸配列を含み、CDR-L1は、配列番号53のアミノ酸配列を含み、CDR-L2は、配列番号54のアミノ酸配列を含み、CDR-L3は、配列番号116のアミノ酸配列を含む;又は
(i)CDR-H1は、配列番号123のアミノ酸配列を含み、CDR-H2は、配列番号124のアミノ酸配列を含み、CDR-H3は、配列番号94のアミノ酸配列を含み、CDR-L1は、配列番号53のアミノ酸配列を含み、CDR-L2は、配列番号54のアミノ酸配列を含み、CDR-L3は、配列番号55のアミノ酸配列を含む。
【0025】
一部の実施形態では、抗体は、配列番号4、12、20、28、36、44、111、115及び125から選択される配列に対して少なくとも90%の同一性を有する重鎖可変ドメイン(VH)アミノ酸配列;並びに/又は配列番号8、16、24、32、40、48、56、113及び117から選択される配列に対して少なくとも90%の同一性を有する軽鎖可変ドメイン(VL)アミノ酸配列を含み;場合により、
(a)抗体は、配列番号4に対して少なくとも90%の同一性を有するVHアミノ酸配列;及び配列番号8に対して少なくとも90%の同一性を有するVLアミノ酸配列を含む;
(b)抗体は、配列番号12に対して少なくとも90%の同一性を有するVHアミノ酸配列;及び配列番号16に対して少なくとも90%の同一性を有するVLアミノ酸配列を含む;
(c)抗体は、配列番号20に対して少なくとも90%の同一性を有するVHアミノ酸配列;及び配列番号24に対して少なくとも90%の同一性を有するVLアミノ酸配列を含む;
(d)抗体は、配列番号28に対して少なくとも90%の同一性を有するVHアミノ酸配列;及び配列番号32に対して少なくとも90%の同一性を有するVLアミノ酸配列を含む;
(e)抗体は、配列番号36に対して少なくとも90%の同一性を有するVHアミノ酸配列;及び配列番号40に対して少なくとも90%の同一性を有するVLアミノ酸配列を含む;
(f)抗体は、配列番号44に対して少なくとも90%の同一性を有するVHアミノ酸配列;及び配列番号48に対して少なくとも90%の同一性を有するVLアミノ酸配列を含む;
(g)抗体は、配列番号111に対して少なくとも90%の同一性を有するVHアミノ酸配列;及び配列番号113に対して少なくとも90%の同一性を有するVLアミノ酸配列を含む;
(h)抗体は、配列番号115に対して少なくとも90%の同一性を有するVHアミノ酸配列;及び配列番号117に対して少なくとも90%の同一性を有するVLアミノ酸配列を含む;又は
(i)抗体は、配列番号125に対して少なくとも90%の同一性を有するVHアミノ酸配列;及び配列番号56に対して少なくとも90%の同一性を有するVLアミノ酸配列を含む。
【0026】
一部の実施形態では、抗体は、配列番号80、81、82、134、136及び140から選択される配列に対して少なくとも90%の同一性を有するHC-IL-10融合アミノ酸配列、並びに配列番号135、137、141、143、145及び147から選択される配列に対して少なくとも90%の同一性を有する軽鎖(LC)アミノ酸配列を含み;場合により、抗体は、
(a)配列番号80のHC-IL-10融合アミノ酸配列、及び配列番号143のLCアミノ酸配列;
(b)配列番号81のHC-IL-10融合アミノ酸配列、及び配列番号145のLCアミノ酸配列;
(c)配列番号82のHC-IL-10融合アミノ酸配列、及び配列番号147のLCアミノ酸配列;
(d)配列番号134のHC-IL-10融合アミノ酸配列、及び配列番号135のLCアミノ酸配列;
(e)配列番号136のHC-IL-10融合アミノ酸配列、及び配列番号137のLCアミノ酸配列;又は
(f)配列番号140のHC-IL-10融合アミノ酸配列、及び配列番号141のLCアミノ酸配列
を含む。
【0027】
一部の実施形態では、
(a)タンパク質は、MC/9細胞増殖を、少なくとも25%、少なくとも50%、少なくとも100%、少なくとも150%、少なくとも200%若しくはそれ以上上昇させる;
(b)タンパク質は、活性化CD8 T細胞からのIFNγ及びグランザイムB産生を、少なくとも25%、少なくとも50%、少なくとも100%若しくはそれ以上上昇させる;並びに/又は
(c)抗体は、28日目に測定される、CT26結腸がん及びEMT6乳がんから選択される同系マウス腫瘍モデルにおける腫瘍容積を、少なくとも25%、少なくとも50%、少なくとも75%若しくはそれ以上低下させる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1】抗PDL1/IL-10融合タンパク質が、混合リンパ球反応(MLR)においてT細胞活性化を高めることを例証する。ヒトCD4 T細胞をPBMCから単離し、抗PDL1/IL-10融合タンパク質(アベルマブ/IL10、HSYPP411C/IL10、YP7G/IL10、YP11F/IL10、YT7A/IL10、YT7H/IL10及びYT10H/IL10)の存在下、同種成熟DCと共培養した。5日目に、上清中のIFNγのレベルを、ELISA(Biolegend社)により測定した。
図2】腫瘍中での抗PDL1/IL-10融合タンパク質の蓄積を例証する。頭頸部扁平上皮がんHNSC/Q1-luc担腫瘍マウスからの、vivoTag680標識した抗PDL1/IL-10(150μg)の静脈内注射24時間後の(A)in vivo全身並びに(B)ex vivo脾臓及び腫瘍の蛍光画像。
図3】抗PDL1/IL-10が、T細胞応答を高めることを例証する。移植から7日後、同系結腸直腸がんCT26担腫瘍マウス(n=7)を無作為に振り分けて、次いで、IL10-Fc(3mg/kg)、抗PDL1/IL-10(6mg/kg)、又は抗PDL1/TGFbR(6mg/kg)で、週に2回、3週間にわたり処置した。処置後(29日目)、(A)IL-18 及び(B)CXCL9の血清レベルをELISA(Biolegend社)により測定した。平均値±SDを示す。*p<0.05、**p<0.01、***p<0.001
図4】腫瘍制御を向上させる抗PDL1/IL-10の能力は、腫瘍常在細胞の活性の上昇に依存したことを例証する。二次リンパ器官からのリンパ球移出を阻害するFTY720による共処置は、全てのマウスではないが一部のマウスでは抗腫瘍活性を低下させなかった。同系乳がんEMT6担腫瘍マウス(n=6)を、10日目に無作為に振り分けて、ビヒクル(1%エタノール)又はFTY720(2mg/kg、PO)で、毎日、2週間にわたり処置した。抗PDL1(10mg/kg)又は抗PDL1/IL-10(12mg/kg)を、11日目から、週に2回、4週間にわたり投与した。(A)腫瘍増殖を週に2回測定した。(B)生存曲線。平均値±SEMを示す。*p<0.05、**p<0.01、***p<0.001
図5】抗PDL1/IL-10処置は、その原発腫瘍から「治癒」したマウスにおける、その後の続発性腫瘍拒絶を可能にし、持続的なT細胞記憶保護を示す。移植から7日後、同系EMT6担腫瘍マウス(n=7)を無作為に振り分けて、抗PDL1(5mg/kg)、抗PDL1/IL-10(6mg/kg)、又は抗PDL1/TGFbR(6mg/kg)で、週に2回、3週間にわたり処置した。(A)原発腫瘍試験の生存曲線。(B)再負荷試験(rechallenge study)には、腫瘍「治癒」から5週間後(67日目)、治癒したマウス及びナイーブBalb/cマウス(n=5)にEMT6腫瘍細胞を移植し、4週間にわたり腫瘍増殖を監視した。平均値±SEMを示す。*p<0.05、**p<0.01、***p<0.001
図6】抗PDL1/IL-10変異体は、腫瘍増殖を制御し、T細胞応答を高めることを例証する。移植から7日後、同系結腸直腸がんCT26担腫瘍マウスを無作為に振り分けて、次いで、1mg/kgの抗PDL1/IL-10又は抗PDL1/IL10変異体(R107A、R104Q/R107A)で、週に2回、3週間にわたり処置した。(A)腫瘍増殖を週に2回測定した。(B)処置後(28日目)にCXCL9の血清レベルをELISA(Biolegend社)により測定した。平均値±SDを示す。*p<0.05、**p<0.01。
図7】抗PDL1/IL10処置した担腫瘍マウスから単離された腫瘍浸潤リンパ球(TIL)は、より優れたリコール応答を示すことを例証する。C57BL/6マウスにYUMM1.7-GP33メラノーマ細胞を接種し、9日目に、初期活性化Tcf7GFPP14 T細胞のi.v.養子細胞移入を行った後、10日目及び14日目に、PBS又は抗PDL1/IL-10の処置が続いた。PEX集団を更に選別し、LCMV-Arm再度負荷を与える(rechallenge)ためにナイーブ受容マウスに移入した。再度負荷を与える(rechallenge)と、抗PDL1/IL-10で処置されたTILは、PBS処置群と比べて、優れた免疫の質を発揮し、共阻害性受容体(A)PD1 及び、(B)TIM3の発現レベルの低下を、(C)PD-1+TIM3+LAG3+細胞集団の減少を伴った。PEX、前駆疲弊T細胞。
図8】抗PDL1/IL-10処置は、PEX依存性の持続的な腫瘍防御をブーストすることを例証する。0日目に、C57BL/6マウスにYUMM1.7-GP33腫瘍細胞を皮下接種し、6日目に、初期活性化Tcf7DTR-GFPP14 T細胞のi.v.養子移入を行った。担腫瘍マウスに更に、抗PDL1/IL-10を、8日目に開始し、腫瘍が検出不可能になるまで3日おきにi.p.投与した。3週間後、無腫瘍マウスに、PBS、又はTCF1+DTR発現細胞を1週間以内に除去するためにDTを3回、i.p.注射した後、B16-GP33細胞をs.c.接種した。腫瘍進行の陽性対照(ナイーブ)として、同齢ナイーブマウスに、B16-GP33メラノーマ細胞を接種した。(A)腫瘍増殖及び(B)無腫瘍生存を、4週間にわたり監視した。PEXの除去を伴わない、無腫瘍マウスの対照群(Ctrl)は、無腫瘍状態のままであるが、DT処置群では、再度負荷を与えて(rechallenge)から14~16日目に、B16-GP33腫瘍病変が認められ、抗PDL1/IL10誘導性の持続的な防御は、PEX依存性であることを示す。PEX、前駆疲弊T細胞。
【発明を実施するための形態】
【0029】
本開示は、T細胞記憶応答を促進できる抗PD-L1/IL-10融合タンパク質は、がんの処置、がん再発の予防、及びウイルス感染症、好ましくは慢性ウイルス感染の処置において有用であるという驚くべき発見に基づく、処置の方法及び関連する組成物を提供する。従って、本開示は、必要とする患者に抗PD-L1/IL-10融合タンパク質を投与する、がん、がん再発及びウイルス感染の処置の方法を提供する。方法及び組成物において有用な抗PD-L1/IL-10融合タンパク質は、T細胞記憶応答を誘導する、高める及び促進することができる。従って、より詳細に後記するように、処置の方法及び関連する組成物は、効果的にがんを処置する、がん再発を予防する及びウイルス感染を処置することができる、必要とする対象からの正常な免疫機能を促進する、及び/又はさもなければ回復することができる。
【0030】
術語及び技術
本明細書及び添付クレームに関して、単数形「a」及び「an」は、文脈が明らかに異なる指定をしない限り、複数の指示対象を含む。従って、例えば、「1つのタンパク質(a protein)」への言及は、2つ以上のタンパク質を含み、「1つの化合物(a compound)」への言及は、2つ以上の化合物を指す。「含む(comprise)」、「含む(comprises)」、「含む(comprising)」、「含む(include)」、「含む(includes)」及び「含む(including)」の使用は、交換可能であり、限定的であるとは意図されない。更に、様々な実施形態の記載が用語「含む(comprising)」を使用する場合、一部の具体的な場合には、一実施形態は、代わりに用語「から本質的になる(consisting essentially of)」又は「からなる(consisting of)」を使用して記載され得ることを当業者は理解すると理解されるべきである。
【0031】
値の範囲が提供される場合、文脈が明らかに異なる指定をしない限り、その範囲の上限値と下限値との間にある、間の各々の値の整数、及び間の各々の値の整数の各々の10分の1が、並びにその記載される範囲内の他の任意の記載される値又は間の値が、文脈が明らかに異なる指定をしない限り、本発明の範囲内に含まれると理解される。それらのより小さい範囲の上限値及び下限値は、独立にそのより小さい範囲に含むことができ、同じく本発明の範囲内に含まれ、該記載される範囲における任意の具体的に除外される極限の対象となる。該記載される範囲が、限界値の一方又は両方を含む場合、含まれるそれらの限界値の(i)一方又は(ii)両方を除いた範囲も本発明に含まれる。例えば、「1から50」は、「2から25」、「5から20」、「25から50」、「1から10」等を含む。
【0032】
一般的に、本明細書で使用する命名法、並びに本明細書に記載される技術及び手順は、当業者には十分に理解されており一般的に利用されるものを含み、例えば、Sambrook等、Molecular Cloning-A Laboratory Manual(第2版)、第1~3巻、Cold Spring Harbor Laboratory、Cold Spring Harbor、N.Y.、1989年(以降「Sambrook」);Current Protocols in Molecular Biology、F. M. Ausubel等編、Current Protocols、a joint venture between Greene Publishing Associates, Inc.とJohn Wiley & Sons, Inc.(2011の増補)(以降「Ausubel」);Antibody Engineering、第1巻及び第2巻、R. KontermannとS. Dubel編、Springer出版、BerlinとHeidelberg(2010年);Monoclonal Antibodies: Methods and Protocols、V. OssipowとN. Fischer編、第2編、Humana Press(2014年);Therapeutic Antibodies: From Bench to Clinic、Z. An編、J. Wiley & Sons、Hoboken、N.J.(2009年);並びにPhage Display、Tim ClacksonとHenry B. Lowman編、Oxford University Press、United Kingdom(2004年)に記載される一般的な技術及び方法である。
【0033】
本開示で引用される全ての刊行物、特許、及び特許出願、及び他の文書は、個々の刊行物、特許、特許出願、又は他の文書が、個別に、参照によりあらゆる目的のための本明細書に組み込まれていると示されるのと同程度に、参照によりその全体があらゆる目的のために本明細書に組み込まれている。
【0034】
異なる定義がない限り、本明細書で使用する技術用語及び科学用語は全て、本発明が関係する当業者が一般的に理解するのと同じ意味を有する。本明細書で使用する術語は単に特定の実施形態を記載するためであり、限定的であるとは意図されないと理解されるべきである。本開示を解釈する目的で、以下の、用語の説明が適用され、該当する場合、単数形で使用する用語は複数形も含み、逆もまた同様である。
【0035】
本明細書で使用する「PD-L1」(又は「PDL1」)は、膜貫通タンパク質であるプログラム細胞死リガンド1を指し、本明細書で使用するように、ヒト、カニクイザル、マウスのPD-L1タンパク質、及びそれらのタンパク質のいずれかのアイソフォームを含む。様々な例示的PD-L1タンパク質のアミノ酸配列が、当技術分野において公知であり、以下のTable 2(表2)及び添付の配列表において提示される。
【0036】
本明細書で使用する「IL10」又は「IL-10」は、サイトカイン合成阻害性因子(CSIF)としても公知のサイトカイン、インターロイキン10を指し、天然に存在するバリアント、そのサイトカイン機能を保持するインターロイキン10で、操作されたバリアント及び/又は合成的に修飾されたインターロイキン10も含むと意図される。様々な例示的IL-10ポリペプチド及び組換えIL-10融合構築物のアミノ酸配列が、以下のTable 1(表1)及び添付の配列表において提示される。サイトカイン機能を保持する、他の例示的な、操作された及び/又は修飾されたIL-10ポリペプチドは、当技術分野において公知である(例えば、米国特許第7,749,490号;米国特許出願公開第2017/0015747号;Naing, A.等、「PEGylated IL-10 (Pegilodecakin) Induces Systemic Immune Activation, CD8+ T Cell Invigoration and Polyclonal T Cell Expansion in Cancer Patients.」Cancer Cell 34、775~791頁.e3(2018年); Gorby, C等「Engineered IL-10 variants elicit potent immunomodulatory effects at low ligand doses.」Sci Signal 13(2020年);Yoon, S. I.等「Epstein-Barr virus IL-10 engages IL-10R1 by a two-step mechanism leading to altered signaling properties.」J Biol Chem 287、26586~26595頁(2012年)を参照)。
【0037】
本明細書で使用する「融合タンパク質」は、天然には存在しない構成で連結(又は「融合」)している2つ以上のタンパク質及び/又はポリペプチド分子を指す。本開示の例示的融合タンパク質は、ポリペプチドリンカーを介してそのC末端において免疫グロブリンFc領域ポリペプチドに共有結合したIL10ポリペプチドを含む「IL10-Fc」融合タンパク質を含む。本開示の融合タンパク質は、ポリペプチド又はタンパク質に、典型的にはリンカーを介して抗体の軽鎖(LC)又は重鎖(HC)の末端に共有的に コンジュゲート (又は融合)した抗体である「抗体融合物」も含む。本開示の例示的抗体融合物は、抗体重鎖のC末端からIL10ポリペプチドのN末端へと、15アミノ酸のポリペプチドリンカー(例えば、配列番号74)を介して組換えIL10ポリペプチドと融合した抗PD-L1抗体を含む。抗体融合物は、本明細書では「抗体/ポリペプチド(antibode/polypeptyde)」のように命名し、「Ab/IL10」又は「抗PD-L1/IL10」のように融合成分を示す。本明細書の他の場所で記載されるように、本開示の抗体融合物は、各重鎖C末端が、ポリペプチドリンカーを介してIL10ポリペプチドに連結されている、重鎖-軽鎖対の二量体複合体を含む全長IgG抗体を含み得る。様々な例示的融合タンパク質のアミノ酸配列は、以下のTable 2(表2)及び添付の配列表において提示される。
【0038】
本明細書で使用する「ポリペプチドリンカー」又は「リンカー配列」は、鎖の各末端が異なるポリペプチド分子に共有結合した2つ以上のアミノ酸の鎖で、異なるポリペプチドをコンジュゲートする又は融合するように機能する、2つ以上のアミノ酸の鎖を指す。典型的に、ポリペプチドリンカーは、5から30個のアミノ酸のポリペプチド鎖を含む。広範囲のポリペプチドリンカーが当技術分野において公知であり、本開示の組成物及び方法において使用され得る。本開示の組成物及び方法に含まれる例示的ポリペプチドリンカーは、典型的にはnが1から6である(GGGGS)n、(SSSSG)n、(GGGG)(SGGGG)n、(EAAAK)n、(XP)n、ENLYFQ(-G/S)、及び本明細書の他の場所で開示される他の特定のリンカー配列を含む。
【0039】
「抗PD-L1抗体」又は「PD-L1に結合する抗体」は、PD-L1を標的とする治療剤及び/又は診断剤として有用であるために十分な親和性でPD-L1に結合する抗体を指す。一部の実施形態では、 PD-L1とは無関係な非PD-L1抗原に対する抗PD-L1特異的抗体の結合の程度は、例えば、ラジオイムノアッセイ(RIA)又は表面プラズモン共鳴(SPR)により測定して、PD-L1に対する抗体の結合の約20%未満、約15%未満、約10%未満、又は約5%未満である。一部の実施形態では、本開示の抗PD-L1抗体は、<1μΜ、<100nM、<10nM、<1nM、<0.1nM、<0.01nM、又は<1pM(例えば、10-8M以下、例えば、10-8Mから10-13M、例えば、10-9Mから10-13M)の解離定数(KD)を有する。
【0040】
本明細書で使用する「T細胞記憶応答」は、T細胞が、その特異的抗原に以前に遭遇して応答した後、又はT細胞が、活性化T細胞から分化した後のT細胞の活性化を指す。例えば、腫瘍特異的メモリT細胞は、全T細胞量のほんの一部を構成するのみであるが、人間の一生涯にわたる腫瘍細胞の監視において重要な機能を果たす。腫瘍特異的メモリT細胞が、その特異的腫瘍抗原を発現する腫瘍細胞に遭遇した場合、メモリT細胞は、直ちに活性化されてクローン的に増殖する。活性化され増殖したT細胞は、エフェクタT細胞に分化して、腫瘍細胞を高い効率で殺滅する。メモリT細胞は、T細胞の長期における腫瘍抗原特異的応答の確立及び維持に重要である。本発明において、記憶応答を伴う活性化T細胞は、がん細胞上の抗原を特異的に認識するため、そのようなT細胞は、がん状態又は新生物状態を処置する、がんの再発、進行又は転移を予防することができ、同時に、がん細胞の防御機構を抑制する。
【0041】
本明細書で使用する「抗体」は、特定の抗原に特異的に結合するか、又は特定の抗原と免疫学的に反応性がある、1つ又は複数のポリペプチド鎖を含む分子を指す。本開示の例示的抗体は、天然抗体、全抗体、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、キメラ抗体、ヒト化抗体、ヒト抗体、多特異性(又はヘテロコンジュゲート)抗体(例えば二特異性抗体)、一価抗体、多価抗体、抗原結合抗体断片(例えば、Fab′、F(ab′)2、Fab、Fv、rIgG、及びscFv断片)、抗体融合物、並びに合成抗体(又は抗体ミメティック)を含む。
【0042】
「全長抗体」、「インタクト抗体」又は「全抗体」は、天然抗体構造と実質的に同様の構造を有するか、又は本明細書に定義されるFc領域を含有する重鎖を有する抗体、を指すために本明細書では交換可能に使用される。
【0043】
「抗体断片」又は「抗原結合断片」は、全長抗体と同じ抗原に結合できる、全長抗体の一部分を指す。抗体断片の例は、Fv、Fab、Fab'、Fab'-SH、F(ab')2;ダイアボディ;直鎖状抗体;一本鎖抗体分子(例えばscFv);及び抗体断片から形成される多特異性抗体、を含むがそれらに限定されない。
【0044】
抗体の「クラス」は、その重鎖によってプロセシングされる定常ドメイン又は定常領域のタイプを指す。抗体の5つの主要なクラス:IgA、IgD、IgE、IgG、及びIgMが存在し、それらのうちのいくつかは、サブクラス(アイソタイプ)、例えば、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA1及びIgA2に更に区分される。免疫グロブリンの異なるクラスに相当する重鎖定常ドメインは、それぞれα、δ、ε、γ及びμと呼ばれる。
【0045】
「可変領域」又は「可変ドメイン」は、抗原への抗体の結合に関与する、抗体重鎖又は軽鎖のドメインを指す。天然抗体の重鎖及び軽鎖の可変ドメイン(それぞれ、VH及びVL)は、一般的に同様の構造を有し、4つの保存されたフレームワーク領域(FR)及び3つの超可変領域(HVR)を含む各ドメインを伴う(例えば、Kindt等、Kuby Immunology、第6版、W.H. Freeman and Co.、91頁を参照)。単一のVH又はVLドメインが、抗原結合特異性を与えるために十分であり得る。更に、特定の抗原に結合する抗体は、相補的VL又はVHドメインのライブラリをスクリーニングするために、それぞれ、その抗原に結合する抗体からのVH又はVLドメインを使用して単離され得る(例えば、Portolano等、J. Immunol. 150:880~887頁(1993); Clarkson等、Nature 352:624~628頁(1991)を参照)。
【0046】
本明細書で使用する「相補性決定領域」又は「CDR」は、可変ドメインの超可変領域内の領域を指し、最大の配列多様性を有し、及び/又は抗原認識に関与する。一般的に、天然抗体は、6つのCDRを有する4本の鎖を含み、6つあるCDRのうち、3つは、重鎖可変ドメインVH(H1、H2、H3)中に存在し、3つは、軽鎖可変ドメインVL(L1、L2、L3)中に存在する。例示的CDR(CDR-L1、CDR-L2、CDR-L3、CDR-H1、CDR-H2及びCDR-H3)は、L1のアミノ酸残基24~34、L2の50~56、L3の89~97、H1の31~35、H2の50~65、及びH3の95~102において存在する(Kabat等、前記)。VH中のCDR-H1を除き、CDRは一般的に、超可変ループを形成するアミノ酸残基を含む。
【0047】
「フレームワーク」又は「FR」は、超可変領域(HVR)残基以外の可変ドメイン残基を指す。可変ドメインのFRは一般的に、4つのFRドメイン:FR1、FR2、FR3及びFR4からなる。従って、HVR及びFR配列は一般的に、VH(又はVL)中において次の順序:FR1-H1(L1)-FR2-H2(L2)-FR3-H3(L3)-FR4で現れる。
【0048】
本明細書で使用する「モノクローナル抗体」は、実質的に均一な抗体集団から得られる抗体を指す、即ち、集団を構成する個々の抗体は、起こり得るバリアント抗体を除いて、同一である、及び/又は同じエピトープに結合する(例えば、バリアント抗体は、自然に発生するか、又はモノクローナル抗体の産生中に生じる変異を含有し、一般的に少量存在する)。典型的には異なる決定基(エピトープ)に対する異なる抗体を含むポリクローナル抗体調製物とは対照的に、モノクローナル抗体調製物の各モノクローナル抗体は、抗原上の単一決定基に対するものである。従って、用語「モノクローナル」は、実質的に均一な抗体集団から得られる抗体の特徴を表し、いずれかの特別な方法による抗体産生を必要とするものとは解釈されない。例えば、使用されるモノクローナル抗体は、ハイブリドーマ法、組換えDNA法、ファージディスプレイ法、及びヒト免疫グロブリン遺伝子座の全部又は一部を含有する組換え動物を利用する方法を含むがそれらに限定されない様々な技術により作製することができ、モノクローナル抗体を作製するためのそのような方法及び他の例示的方法が、本明細書に記載される。
【0049】
「キメラ抗体」は、重鎖及び/又は軽鎖の一部分が特定の起源又は種に由来し、重鎖及び/又は軽鎖の残部は異なる起源又は種に由来する抗体を指す。
【0050】
「ヒト化抗体」は、非ヒトHVRからのアミノ酸配列及びヒトFRからのアミノ酸配列を含むキメラ抗体を指す。特定の実施形態では、ヒト化抗体は、FTVR(例えばCDR)の全て又は実質的に全てが非ヒト抗体のFTVR(例えばCDR)に相当し、且つFRの全て又は実質的に全てがヒト抗体のFRに相当する、少なくとも1つ、典型的には2つの可変ドメインの実質的に全てを含む。ヒト化抗体は、場合により、ヒト抗体に由来する抗体定常領域の少なくとも一部を含み得る。抗体、例えば、非ヒト抗体の「ヒト化型」は、ヒト化を経た抗体を指す。
【0051】
本明細書で使用する「ヒト抗体」は、フレームワーク及びCDR領域の両方ともがヒト生殖細胞系列免疫グロブリン配列に由来する可変領域を有する抗体を含むと意図される。更に、その抗体が、定常領域を含有する場合、その定常領域もヒト生殖細胞系列免疫グロブリン配列に由来する。本発明のヒト抗体は、ヒト生殖細胞系列免疫グロブリン配列によってコードされないアミノ酸残基を含み得る(例えば、in vitroでのランダム若しくは部位特異的な変異導入によるか、又はin vivoでの体細胞変異によって導入された変異)。しかしながら、本明細書で使用する用語「ヒト抗体」は、他の哺乳類種、例えばマウスの生殖細胞系列由来のCDR配列をヒトフレームワーク配列上に移植した抗体を含むとは意図されない。
【0052】
「親和性」は、ある分子(例えば抗体)とその結合相手(例えば抗原)との間の単一結合部位が持つ非共有相互作用の総計の強度を指す。「結合親和性」は、結合対の一つ(例えば、抗体及び抗原)間の1:1相互作用を反映する固有結合親和性を指す。分子Xの、その相手Yに対する親和性は一般的に、平衡解離定数(KD)により表される。親和性は、本明細書に記載されるものを含む、当技術分野において公知の一般的方法により測定され得る。結合親和性の測定に関する、具体的な例証的且つ例示的な実施形態を以下に記載する。
【0053】
「特異的に結合する」又は「特異的結合」は、約1x10-7M以下の親和性値による、抗原への抗体の結合を指す。
【0054】
「処置(Treatment)」、「処置する(treat)」又は「処置する(treating)」は、処置される対象における障害の自然経過を変える試みにおける臨床的介入を指し、予防のため、又は臨床病理の過程においてのいずれかで行い得る。処置の望ましい結果は、障害の発生又は再発の予防、症状の緩和、障害の直接的又は間接的な病理学的帰結の軽減、転移の予防、進行速度の低下、疾患状態の改善又は緩和、及び寛解又は予後の改善を含み得るがそれらに限定されない。例えば、がん又はウイルス感染の処置は、がん若しくはウイルス感染を予防する、その進展を遅延させる、その進行を減速させる、又は根絶するための、PD-L1抗体-IL-10融合タンパク質を含む治療有効量の医薬組成物の対象への投与を含み得る。
【0055】
「医薬組成物」又は「組成物」又は「製剤」は、活性成分の生物学的活性が効果的であることを可能にする形態であり、且つ製剤が投与される対象にとって毒性である追加の成分を含有しない調製物を指す。
【0056】
本明細書で使用する「単独活性剤」は、処置される状態に関して対象を処置するための関連薬理効果を提供するか、又は提供すると予想される、その製剤中に存在する唯一の活性剤である、医薬製剤中の活性剤を指す。単独活性剤を含む医薬製剤は、製剤中における、例えば、薬学的に許容される担体のような、1つ又は複数の非活性剤の存在を除外しない。「非活性剤」は、その状態に関して対象を処置するために意図される関連薬理効果を提供する、或いは著しく寄与するとは予想されない薬剤である。
【0057】
「薬学的に許容される担体」は、投与される対象に対して非毒性である、医薬製剤中の活性成分以外の成分を指す。薬学的に許容される担体は、緩衝液、賦形剤、安定剤又は防腐剤を含むがそれらに限定されない。
【0058】
本明細書で使用する「治療有効量」は、治療又は予防の望ましい結果を達成するための活性成分又は活性剤(例えば医薬組成物)の量、例えば、対象において疾患、障害又は状態を処置する又は予防するための活性成分又は活性剤の量を指す。がん又はウイルス感染を有する対象の場合、治療剤の治療有効量は、ウイルス負荷、及び/又は対象において検出可能なウイルスAgの量を含む、がん又はウイルス感染と関連する症状の1つ又は複数をある程度低下させる、予防する、阻害する、及び/又は緩和する量である。がん又はウイルス感染の治療処置に関して、in vivo有効性は、例えば、症状の期間、重症度、及び/又は再燃、奏効率(RR)、奏効期間、及び/又は生活の質の評価により測定され得る。
【0059】
「対象」は、哺乳類を指し、霊長類(例えば、ヒト、及びサルのような非ヒト霊長類)、げっ歯類(例えば、マウス及びラット)、ウサギ、並びに飼育動物(例えば、ウシ、ヒツジ、ネコ、イヌ及びウマ)を含むがそれらに限定されない。
【0060】
本明細書で呼ばれる「必要とする対象」は、HBVキャリア、慢性HBV感染者、HBV持続感染者、又はHBVへの感染リスクがある者といったような、HBV感染者を含む。
【0061】
本明細書で使用する「免疫チェックポイント分子」は、免疫経路を調節するように機能することで、細胞への不必要な攻撃を防ぐ分子を指す。多くの免疫チェックポイント分子が、がん又はウイルス感染の処置における(例えば、ブロッキング抗体を用いた)免疫療法のための標的である。現在、免疫療法の標的とされる例示的免疫チェックポイント分子は、PD1、PD-L1、CTLA-4、TIGIT、LAG3、PVRIG、KIR、TIM-3、CRTAM、BTLA、CD244、CD160、LIGHT、GITR、4-1BB、OX40、CD27、TMIGD2、ICOS、CD40、CD47、SIRPa、NKG2D、NKG2A、TNFRSF25、CD33、CEA、Epcam、GPC3、CD200、CD200R、CD73、CD83、CD39、TRAIL、CD226及びVISTAを含む。
【0062】
様々な実施形態の詳細な記載
I. IL-10
ヒトIL-10サイトカインは、2つの178アミノ酸ポリペプチドサブユニットのホモ二量体タンパク質である。IL-10は、2つのIL-10受容体-1(IL-10Rαサブユニット)及び2つのIL-10受容体-2(IL-10Rβサブユニット)タンパク質からなる受容体複合体を介してシグナルを伝達する。従って、機能的受容体は、4つのIL-10受容体分子からなる。IL-10RαへのIL-10の結合は、JAK1及びTyk2による、IL-10受容体の細胞質側末端のリン酸化を介してSTAT3シグナル伝達を誘導する。IL-10は、主に単球によって産生され、そしてそれほどではないがリンパ球、つまりII型Tヘルパー細胞(TH2)、肥満細胞、CD4+CD25+Foxp3+制御性T細胞により、及び活性化T細胞及びB細胞の特定のサブセットにおいて産生される。IL-10は、PD1誘発に応じて、単球により産生され得る。下のTable 1(表1)は、本開示の実施例で使用されるヒトIL-10ポリペプチドのアミノ酸配列の概要を説明し、そしてそれらの配列を特定した。配列も添付の配列表に含まれる。
【0063】
【表1A】
【0064】
【表1B】
【0065】
天然に存在するヒトIL-10に加えて、IL-10のサイトカイン機能を保持する、様々な操作された及び/又は合成的に修飾されたIL-10ポリペプチドが当技術分野において公知である。PEG化IL-10、ペギロデカキンは、天然に存在するヒトIL-10の抗腫瘍性の免疫監視機能を保持することが示された。Naing, A.等、「PEGylated IL-10 (Pegilodecakin) Induces Systemic Immune Activation, CD8+ T Cell Invigoration and Polyclonal T Cell Expansion in Cancer Patients.」Cancer Cell 34、775~791頁(2018年)を参照。操作されたIL-10バリアントR5A11は、IL10R2に対してより高い親和性を示す、ヒトCD8+T細胞において高まったシグナル伝達活性を示す、及びCAR-T細胞の抗腫瘍機能を高めることが示された。Gorby, C等「Engineered IL-10 variants elicit potent immunomodulatory effects at low ligand doses.」Sci Signal 13(2020年)を参照。エプスタイン・バーウイルス(Epstein-Barr virus)からのIL-10は、IL-10R1に対するより弱い結合を有するが、ヒトIL10の免疫抑制性サイトカイン活性を保持する一方、一部の細胞による免疫刺激活性を誘導する能力は消失している。Yoon, S. I.等「Epstein-Barr virus IL-10 engages IL-10R1 by a two-step mechanism leading to altered signaling properties.」J Biol Chem 287、26586~26595頁(2012年)を参照。米国特許第7,749,490号及び米国特許出願公開第2017/0015747号は、MC/9細胞増殖アッセイにおいて低い免疫刺激活性を示す、操作されたIL-10変異体(例えば、F129S-IL10)を記載した。一般的に、一部のIL-10サイトカイン機能を保持する、いずれかの操作された又は修飾されたIL-10ポリペプチドが、本開示の抗PD-L1/IL10融合タンパク質組成物及び方法のいずれかにおいて使用できると考えられる。
【0066】
一部の実施形態では、IL-10は、野生型IL-10のアミノ酸に対して、104位、107位及びそれらの組合せにおけるアミノ酸上の1つ又は複数の置換を含むIL-10変異タンパク質であり得る。一実施形態では、置換は、R104Q;R107A、R107E、R107Q及びR107Dのいずれか1つ;又はそれらの組合せを含み得る。一部の実施形態では、本開示のIL-10変異タンパク質は、配列番号73、172、173、174、175、176、177、178、179又は180に対して少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%又は99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含み、且つ更に次のアミノ酸置換:(a)R104Q;(b)R107A;(c)R107E;(d)R107Q;(e)R107D;(f)R104Q/R107A;(g)R104Q/R107E;(h)R104Q/R107Q;及び(i)R104Q/R107Dに相当するアミノ酸置換を含む。
【0067】
III. 抗PD-L1抗体及び抗PD-L1/IL-10融合タンパク質
一部の実施形態では、本開示は、アミノ酸に関する、及び様々な周知の免疫グロブリンの特徴のヌクレオチド配列をコードする抗PD-L1抗体の構造を提供する(例えば、CDR、FR、VH、VLドメイン、並びに全長の重鎖及び軽鎖)。下のTable 2(表2)は、本開示の抗PD-L1抗体配列の概要を説明し、抗体融合物、及びそれらの配列を特定した。配列は、添付の配列表に含まれる。
【0068】
【表2A】
【0069】
【表2B】
【0070】
【表2C】
【0071】
【表2D】
【0072】
【表2E】
【0073】
【表2F】
【0074】
【表2G】
【0075】
【表2H】
【0076】
抗PD-L1抗体の医薬組成物及び製剤
本開示は、抗PD-L1抗体-IL-10融合タンパク質を含む医薬組成物及び医薬製剤も提供する。一部の実施形態では、本開示は、本明細書に記載される抗PD-L1抗体-IL-10融合タンパク質、及び薬学的に許容される担体、を含む医薬製剤を提供する。一部の実施形態では、抗PD-L1抗体-IL-10融合タンパク質は、医薬組成物の単独活性剤である。そのような医薬製剤は、望ましい純度を有する抗PD-L1抗体-IL-10融合タンパク質を、1つ又は複数の薬学的に許容される担体と混合することにより調製可能である。典型的に、そのような製剤は、水溶液として(米国特許第6,171,586号及び国際公開第2006/044908号)、又は凍結乾燥製剤として(米国特許第6,267,958号を参照)調製され得る。
【0077】
薬学的に許容される担体は一般的に、利用される用量及び濃度において、レシピエントに対して非毒性である。広範囲のそのような薬学的に許容される担体が、当技術分野において周知である(例えば、Remington's Pharmaceutical Sciences、第16版、Osol, A.編(1980)を参照)。本開示の製剤において有用である例示的な薬学的に許容される担体は、緩衝液、例えば、リン酸、クエン酸及び他の有機酸;アスコルビン酸及びメチオニンを含む抗酸化剤;防腐剤(例えば、塩化オクタデシルジメチルベンジルアンモニウム;塩化ヘキサメトニウム;塩化ベンザルコニウム;塩化ベンゼトニウム;フェノール、ブチル若しくはベンジルアルコール;アルキルパラベン、例えば、メチル又はプロピルパラベン;カテコール;レゾルシノール;シクロヘキサノール;3-ペンタノール;及びm-クレゾール);低分子量(約10残基未満の)ポリペプチド;タンパク質、例えば、血清アルブミン、ゼラチン若しくは免疫グロブリン;親水性ポリマー、例えば、ポリビニルピロリドン;アミノ酸、例えば、グリシン、グルタミン、アスパラギン、ヒスチジン、アルギニン若しくはリジン;単糖、二糖、及びグルコース、マンノース若しくはデキストリンを含む他の炭水化物;キレート剤、例えば、EDTA;糖、例えば、スクロース、マンニトール、トレハロース若しくはソルビトール;塩形成対イオン、例えば、ナトリウム;金属錯体(例えば、Zn-タンパク質錯体);並びに/又は非イオン界面活性剤、例えばポリエチレングリコール(PEG)を含み得るがそれらに限定されない。
【0078】
本開示の製剤において有用である薬学的に許容される担体は、間質薬物分散剤(Interstitial drug dispersion agent)、例えば、中性活性可溶性ヒアルロニダーゼ糖タンパク質(sHASEGP)(例えば、米国特許出願公開第2005/0260186号及び同第2006/0104968号を参照)、例えば、ヒト可溶性PH-20ヒアルロニダーゼ糖タンパク質(例えば、rHuPH20又はHYLENEX(登録商標)Baxter International, Inc.社)も含み得る。
【0079】
本明細書に開示される製剤は、抗PD-L1-IL-10融合タンパク質の他に製剤が投与される対象において、処置される特定の適応症に対する活性成分を必要に応じて含有してもよいとも考えられる。好ましくは、いずれかの追加の活性成分は、抗PD-L1抗体-IL-10融合タンパク質活性に対して相補的な活性を有し、それらの活性は、互いに悪影響を与えない。
【0080】
実施例を含む、本明細書の他の場所で記載されるように、本開示の抗PD-L1抗体は、がんの処置における改善された治療効果を提供するために、IL10ポリペプチドと組み合わせて使用してもよいことが示された。従って、一部の実施形態では、本開示は、がんの処置に有用である、PD-L1アンタゴニスト(例えば、抗PD-L1)及びIL10アゴニスト(例えば、IL10)を含む医薬組成物又は製剤を提供する。そのような医薬製剤又は組成物における、PD-L1アンタゴニストとしての本開示の抗PD-L1抗体の使用に加えて、他のアンタゴニストが使用され得るとも考えられ、shRNA、siRNA、miRNA、PD-L1の小分子阻害剤、又はそれらの組合せを含むがそれらに限定されない。そのような医薬組成物又は製剤において有用である、PD-L1の小分子阻害剤は、AUNP12(Aurigene社)、CA-170(Aurigene/Curis社)、及びBMS-986189(Bristol-Myers Squibb社)を含むがそれらに限定されず、臨床開発における公知の化合物を含み得る。本開示の抗PD-L1抗体の他に、IL10を含むそのような組合せ医薬組成物又は製剤において有用である他の公知の抗PD-L1抗体は、PD-L1に結合するいずれかの公知の抗体を含むことができ、当該抗体は、がんの処置に関する臨床開発で用いられる抗体、例えば、本明細書の他の場所で記載される、アテゾリズマブ、アベルマブ、デュルバルマブ、ロダポリマブ、FAZ053(BAP058-hum13)、及びMDX-1105を含み得る。。
【0081】
本明細書の他の場所で記載されるように、一部の実施形態では、本開示は、PD-L1アンタゴニスト及びIL10アゴニストを含む、併用療法に使用するための医薬組成物又は製剤を提供する。一部の実施形態では、この組合せは、ポリペプチドリンカー、例えば、配列番号74、75、76、77、78又は79のリンカー配列を介して、IL10に共有的に融合した抗PD-L1抗体を有する抗PD-L1抗体融合物を含む単一医薬組成物又は製剤として提供され得る。同系マウスがんモデルの範囲で腫瘍容積を低下させるためのそのような抗PD-L1抗体融合物(例えば、PHS102/IL10)、及び医薬組成物におけるその使用を実証する例は、実施例を含む、本明細書の他の場所で提供される。抗PD-L1抗体融合物の生成、親和性成熟、及び特徴付けに関する詳細は、参照により本明細書に組み込まれているPCT公開番号国際公開第2021231741号に添付する実施例に見出され得る。
【0082】
一部の実施形態では、医薬組成物は、抗PD-L1抗体、及びがん処置のための追加の活性剤、例えば、免疫チェックポイント阻害剤を含む。そのような実施形態において有用なチェックポイント阻害剤は、免疫チェックポイント分子である抗原に対する特異性を持つ第2の抗体を含むがそれに限定されない。一部の実施形態では、第2の抗体は、PD1、LAG3、CTLA-4、A2AR、TIM-3、BTLA、CD276、CD328、VTCN1、IDO、KIR、NOX2、VISTA、OX40、CD27、CD28、CD40、CD122、CD137、GITR、ICOSから選択される免疫チェックポイント分子に対する特異性を持つ。少なくとも1つの実施形態では、医薬組成物は、抗PD-L1抗体と、免疫チェックポイント分子PD1に対する特異性を持つ抗体である追加の活性剤とを含む。本明細書に開示される、医薬組成物の実施形態において有用である、PD1に対する特異性を持つ例示的抗体は、ペンブロリズマブ、ニボルマブ、セミプリマブ、ピジリズマブ、ドスタルリマブ及びHX008を含むがそれらに限定されない。
【0083】
活性成分は、例えば、コアセルベーション技術によるか、若しくは界面重合により調製されたマイクロカプセル、例えば、それぞれ、ヒドロキシメチルセルロース若しくはゼラチンマイクロカプセル及びポリ(メチルメタクリレート)マイクロカプセルに、コロイド状薬物送達システム(例えば、リポソーム、アルブミンマイクロスフェア、マイクロエマルジョン、ナノ粒子及びナノカプセル)に、又はマクロエマルジョンに包括され得る。そのような技術は、Remington's Pharmaceutical Sciences、第16版、Osol, A.編(1980)に開示される。
【0084】
一部の実施形態では、製剤は、抗体及び/又は他の活性成分の徐放性調製物であり得る。徐放性調製物の適切な例は、抗体を含有する、疎水性固体ポリマーの半透性マトリクスを含み、そのマトリクスは、造形品、例えば、フィルム又はマイクロカプセルの形態である。
【0085】
典型的に、対象に投与される、本開示の製剤は無菌である。無菌製剤は、周知の技術を使用して、例えば、滅菌ろ過膜を通したろ過により、容易に調製され得る。
【0086】
抗PD-L1抗体-IL-10融合物を投与するための様式
処置の方法に従った、抗PD-L1抗体-IL-10融合物を含む組成物又は製剤の、必要とする対象への投与は、T細胞記憶応答を促進することによって、対象をがん、がん再発若しくはウイルス感染から守る及び/又はがん、がん再発若しくはウイルス感染を処置する治療効果を提供する。
【0087】
本開示の処置の方法に関する一部の実施形態では、抗PD-L1抗体-IL-10融合物組成物又は抗PD-L1抗体-IL-10融合物を含む製剤を、薬剤を全身に、又は所望の標的組織に送達するいずれかの投与様式により対象に投与する。全身投与は一般的に、所望の標的部位、組織又は器官への直接投与以外の部位における、抗体又はその製剤が、対象の循環系に入り、従って、代謝及び他の類似プロセスを受けるような、対象への、抗体のいずれかの投与様式を指す。
【0088】
従って、本開示の、T細胞記憶応答を促進することによる、がん、がん再発又はウイルス感染の処置の方法において有用な投与様式は、注射、注入、点滴及び吸入を含むがそれらに限定されない。注射による投与は、静脈内、筋肉内、動脈内、髄腔内、心室内(intraventricular)、嚢内、眼窩内、心内、皮内、腹腔内、経気管、皮下、表皮下、関節内、被膜下、くも膜下、脊髄内、脳脊髄内、及び胸骨内の注射及び注入を含み得る。
【0089】
本開示の方法による一実施形態では、抗PD-L1抗体-IL-10融合物が、非経口、皮下、筋肉内、静脈内、関節内、気管支内、腹部内、嚢内、軟骨内、体腔内、腔内、小脳内、脳室内、結腸内、頸部内、胃内、肝内、心筋内、骨内、骨盤内、心膜内、腹腔内、胸膜内、前立腺内、肺内、直腸内、腎臓内、網膜内、脊髄内、滑液嚢内、胸腔内、子宮内、膀胱内、ボーラス、経膣、直腸、頬側、舌下、鼻腔内及び経皮からなる群から選択される少なくとも1つの経路により、必要とする対象に投与され得る。一実施形態では、抗PD-L1抗体-IL-10を、必要とする対象に静脈内投与してもよい。
【0090】
一部の実施形態では、抗PD-L1抗体-IL-10の製剤は、抗体が、腸内での不活性化から守られるように調合されている。従って、処置の方法は、製剤の経口投与を含み得る。
【0091】
一部の実施形態では、本開示は、T細胞記憶応答を促進することによる、がん、がん再発又はウイルス感染の処置のための医薬としての、抗PD-L1抗体-IL-10を含む組成物又は製剤の使用を提供する。更に、一部の実施形態では、本開示は、T細胞記憶応答を促進することによる、がん、がん再発又はウイルス感染の処置のための医薬の製造又は調製における、抗PD-L1抗体-IL-10を含む組成物又は製剤の使用も提供する。更なる一実施形態では、医薬は、T細胞記憶応答を促進することによるがん、がん再発又はウイルス感染を処置するための方法であって、必要とする対象に、有効量の医薬を投与する工程を含む、方法に使用するためのものである。特定の実施形態では、医薬は、有効量の少なくとも1つの追加の治療剤又は処置を更に含む。
【0092】
更なる一実施形態では、医薬は、T細胞記憶応答を促進することによるがん、がん再発又はウイルス感染を処置するために有効な量の医薬を対象に投与する工程を含む、対象におけるT細胞記憶応答を促進することによるがん、がん再発又はウイルス感染の処置に使用するためのものである。
【0093】
T細胞記憶応答を促進することによる、がん、がん再発又はウイルス感染の処置には、本開示の組成物及び製剤に含有される抗PD-L1抗体-IL-10の(単独又は1つ若しくは複数の他の追加の治療剤と組み合わせて使用する場合の)該当する用量は、疾患の重症度及び経過、抗体が予防目的、又は治療目的で投与されるか、患者に投与された薬歴、患者の臨床歴及び抗体に対する応答、並びに担当医師の裁量を含む要素に依存する。
【0094】
一般的に、本開示の方法において有用な処置計画は、必要とする対象に対する医療関係者により決定され得る。本開示の抗PD-L1抗体-IL-10は、本明細書に記載される組成物及び製剤に含まれる場合、一度に又は一連の処置にわたって、患者に適切に投与され得る。様々な投与スケジュールが本明細書で考えられ、単回投与又は様々な時点にわたる複数回投与、ボーラス投与、及びパルス注入を含むがそれらに限定されない。
【0095】
本方法に関する一部の実施形態では、抗PD-L1抗体-IL-10を含む組成物は、必要とする対象に、1日1回超、少なくとも1日1回、少なくとも週に1回、又は少なくとも月に1回投与され得る。
【0096】
がん、がん再発又はウイルス感染の種類及び重症度に応じて、本開示の製剤中での約1μg/kgから15mg/kgの抗PD-L1抗体-IL-10が、例えば、1回又は複数回の別個の投与であれ持続注入であれ、ヒト対象への投与の初回候補量である。一般的に、抗体の投与量は、約0.05mg/kgから約10mg/kgの範囲にあり得る。一部の実施形態では、約0.5mg/kg、2.0mg/kg、4.0mg/kg又は10mg/kg(又はそれらのいずれかの組合せ)の1用量又は複数用量を患者に投与し得る。
【0097】
用量投与は、対象の状態に応じて、数日間以上にわたり維持され、例えば、投与は、がん、がん再発又はウイルス感染が、当技術分野において公知の方法により決定して、十分に処置されるまで続き得る。一部の実施形態では、初回に高負荷量を投与した後、1回又は複数回低用量を投与してもよい。しかしながら、他の投与計画が有用である場合もある。用量投与の治療効果の進行は、従来の技術及びアッセイにより監視され得る。
【0098】
従って、本開示の方法に関する一部の実施形態では、抗PD-L1抗体-IL-10の投与は、約1mg/kgから約100mg/kgの1日投与量を含む。一部の実施形態では、抗PD-L1抗体-IL-10の用量は、少なくとも約1mg/kg、少なくとも約5mg/kg、少なくとも約10mg/kg、少なくとも約20mg/kg、又は少なくとも約30mg/kgの1日投与量を含む。
【0099】
他の治療剤との併用処置方法
本発明による一実施形態では、方法は、少なくとも1つの追加の治療剤を投与する工程を更に含み得る。例えば、追加の治療剤は、抗PD-L1抗体-IL-10組成物と組み合わせて、必要とする対象に投与されることができ、例えば、抗PD-L1抗体-IL-10組成物と同時に;抗PD-L1抗体-IL-10組成物の投与前に;又は抗PD-L1抗体-IL-10組成物の投与後に投与され得る。一部の実施形態では、追加の治療剤は、がん、がん再発若しくはウイルス感染の追加の処置、又はがん、がん再発若しくはウイルス感染と関連する疾患若しくは状態の処置を含み得る。併用処置方法では、治療剤と組み合わせた、抗PD-L1抗体-IL-10組成物の投与により、治療剤の有効性が改善し得ると考えられる。理論に拘束されることなく、治療有効量の抗PD-L1抗体-IL-10組成物及び場合による追加の治療剤の投与後、がん、がん再発若しくはウイルス感染に対する免疫応答が、必要とする対象において誘導若しくはブーストされ得る;がんのサイズ若しくは重症度が低下し得る;ウイルスに関してセロコンバージョンが誘導され得る;又は必要とする対象におけるウイルスのウイルス負荷が、検出不可能であるレベルにまでさえも低下し得ると見られている。更に、ブーストされた免疫応答は、免疫系の活性を更に調節する抗体又はサイトカインの産生を含み得る。
【0100】
一実施形態では、ウイルスワクチンである少なくとも1つの追加の治療剤を投与する工程を含む方法を行う。本明細書の他の場所で記載されるように、併用処置方法において有用なウイルスワクチンは、予防のためのウイルスワクチン、並びにウイルスにすでに感染している対象の処置のための治療ワクチンを含み得る。一部の実施形態では、治療ワクチンは、DNAワクチン、ウイルスベクターワクチン、タンパク質ワクチン、及びマルチペプチドワクチンから選択される。
【0101】
本明細書の他の場所で記載されるように、阻害性免疫チェックポイント分子は、一部のウイルス感染並びにがんの処置の標的である。従って、一実施形態では、阻害性免疫チェックポイント分子を標的とする抗体である少なくとも1つの追加の治療剤を投与する工程を含む方法を行う。一部の実施形態では、阻害性免疫チェックポイント分子は、PD1、PD-L1及びCTLA-4から選択される。一部の実施形態では、阻害性免疫チェックポイント分子を標的とする抗体は、抗PD1、抗PD-L1及び抗CTLA-4から選択される。
【0102】
本発明による他の実施形態では、追加の治療剤は、治療剤;造影剤;細胞傷害剤;血管新生阻害剤;キナーゼ阻害剤;共刺激分子遮断薬;接着分子遮断薬;抗サイトカイン抗体又はその機能的断片;メトトレキセート;シクロスポリン;ラパマイシン;FK506;検出可能な標識又はレポーター;TNFアンタゴニスト;抗リウマチ薬;筋弛緩薬;麻薬;非ステロイド抗炎症薬(NSAID);鎮痛薬;麻酔薬;鎮静薬;局所麻酔薬;神経筋遮断薬;抗菌薬;抗乾癬薬;コルチコステロイド;アナボリックステロイド;エリスロポエチン;免疫化;免疫グロブリン;免疫抑制薬;成長ホルモン;ホルモン補充薬;放射性医薬品;抗うつ薬;抗精神病薬;刺激薬;喘息薬;ベータアゴニスト;吸入ステロイド;エピネフリン又はその類似体;サイトカイン;及びサイトカインアンタゴニスト;免疫調節剤からなる群から選択され得る。
【0103】
一部の実施形態では、追加の治療剤は、ウイルス侵入阻害剤、ウイルスRNA阻害剤、遺伝子編集剤、ウイルス抗原分泌阻害剤、ポリメラーゼ阻害剤、インターフェロン、ウイルス成熟阻害剤、ヌクレオシド逆転写酵素阻害剤、カプシドアセンブリ阻害剤/モジュレーター、cccDNA阻害剤、FXRアゴニスト、マイクロRNA、TLRアゴニスト、及び免疫調節薬から選択される。
【実施例
【0104】
本開示の様々な特徴及び実施形態を、例証的であり限定的ではないと意図される以下の代表的な実施例において例証する。当業者は、具体的な実施例が、その後に続く特許請求の範囲においてより十分に記載される本発明の例証にすぎないことを容易に理解する。本出願に記載されるどの実施形態及び特徴も、含有されるあらゆる実施形態と交換可能及び組合せ可能であると理解される。
【0105】
(実施例1)
二機能性抗PDL1/IL-10融合タンパク質の生成
A. 組換え抗PDL1/IL-10融合タンパク質の産生
組換えIL10-Fc融合タンパク質は、ヒトIgG1-FcのN末端に、14アミノ酸リンカーにより分離して、ヒトIL-10を遺伝的に融合することにより設計した。組換え抗PDL1/IL-10融合タンパク質は、抗PDL1(アテゾリズマブ、アベルマブ、デュルバルマブ、PHS102、HSYPP31F、HSYPP411C、YP7G、YP11F、YT6D、YT7A、YT7H又はYT10H)IgG1抗体断片のC末端に、14アミノ酸リンカーにより分離して、ヒトIL-10(WT、R107A又はR104Q/R107A)を遺伝的に融合することにより設計した。組換えタンパク質の分泌に必要とされるIL-2分泌配列が先行する所望の遺伝子断片は、Thermo遺伝子合成サービスを使用して得られ、哺乳類発現ベクターにクローニングした。融合タンパク質は、トランスフェクトしたExpiCHO細胞内で発現させた。
【0106】
B. 組換え抗体精製
抗体は、ExpiCHO-S細胞(Thermo Scientific社)内で一過性に発現させた。指数増殖期中、6×106個のExpiCHO-S細胞を、ExpiFectamine CHOトランスフェクションキット(Thermo Scientific社)により、20μgの、IL10-Fc又は抗PDL1/IL-10融合タンパク質をコードするベクターで一過性にトランスフェクトした。トランスフェクションから18~22時間後、ExpiFectamine CHOエンハンサ及びExpiCHOフィードをフラスコに添加した。細胞を8日間培養した。各培養の上清を遠心分離した後、0.45μmフィルタを通してろ過した。
【0107】
プロテインA Sepharoseファストフロービーズ(GE Healthcare社)を用いて、トランスフェクトした細胞上清から抗体を精製した。抗体をロードしたカラムをPBSで洗浄し、次いで、0.1Mのグリシン(pH2.5)で1/10体積の1Mのトリス緩衝液(pH9.0)中へ直接溶出した。抗体含有画分を分取し、PBSに対して透析した。精製した抗体のクオリティを、還元剤の存在下及び非存在下でのSDS-PAGEにより調べた。
【0108】
抗PD-L1抗体融合物の生成、親和性成熟、及び特徴付けに関する詳細は、参照により本明細書に組み込まれているPCT公開番号国際公開第2021231741号に添付する実施例に見出され得る。
【0109】
(実施例2)
抗PDL1/IL-10融合タンパク質は、混合リンパ球反応(MLR)において、抗原提示細胞(APC)介在性T細胞活性化を高める
本実施例は、MLRにおいてT細胞活性化を高める、抗PDL1/IL-10の能力に関する試験を例証する。IFNγの産生の増加は、T細胞エフェクタ機能と関連することが知られている。
【0110】
材料及び方法:ヒト末梢血を健常ドナーから得た。Ficoll-Paqueプラス(GE Healthcare社)を使用した密度勾配遠心分離により、末梢血単核細胞(PBMC)を直ちに単離した。同種APCとして使用するために、抗ヒトCD14コンジュゲート磁性ビーズ(Miltenyi Biotec社)を使用して、ドナーAからCD14+単球をまず単離した。未成熟樹状細胞(DC)の生成には、10%FBSを補足したRPMI1640中で、GM-CSF(20ng/mL)及びIL-4(20ng/mL)を加えて、単球を6日間培養した。成熟DCの生成には、未成熟DCを、LPS(500ng/mL)で24時間処置した。成熟DCを、40μg/mLのマイトマイシンCにより37℃で30分間処置してから、T細胞と共培養した。
【0111】
抗ヒトCD4コンジュゲート磁性ビーズ(Miltenyi Biotec社)を使用して、ドナーBからCD4+T細胞を単離した。レスポンダーCD4 T細胞を、培地中に4×106細胞/mLで再懸濁し、50μLのT細胞を、DCのみ添加した(DC-only)ウェルを除く全てのウェルに添加した。スティミュレーターDCを、培養培地中に4×106細胞/mLで再懸濁し、50μLのDCを、CD4 Tのみウェル(CD4 T-only)を除く全てのウェルに添加した。0.1~2μgのIL10-Fc又は抗PDL1/IL-10(アベルマブ/IL10、HSYPP411C/IL10、YP7G/IL10、YP11F/IL10、YT7A/IL10、YT7H/IL10又はYT10H/IL10)融合タンパク質を含有する、更なる100μLの培養培地を、96ウェルU字底プレート中のCD4 T-DC培養に添加した。共培養を37℃でインキュベートした。5日後に、上清中に放出されたIFN-γレベルを、ELISA(Biolegend社)により、メーカー説明書に従って測定する。
【0112】
結果:図1に示すように、例示的なPDL1/IL-10融合タンパク質は、MLRアッセイにおいて、IL10-Fc対照と比べてT細胞活性化を高めることができることが観察された。
【0113】
(実施例3)
腫瘍中での抗PDL1/IL-10融合タンパク質の蓄積
本実施例は、HNSCモデルにおける腫瘍組織中で抗PDL1/IL-10が蓄積する能力に関する試験を例証する。
【0114】
材料及び方法:精製した抗PDL1/IL-10融合タンパク質(アベルマブ/IL10)を、近赤外線(NIR)蛍光色素標識キット(VivoTag 680XL、PerkinElmer社)を使用して、メーカー説明書に従って標識した。HNSC/Q1-2ルシフェラーゼは、親MTC-Q1(マウス口腔がん細胞株)からのルシフェラーゼ発現亜株であり、Kuo-Wei Chang博士(Department of Dentistry、National Yang Ming Chiao Tung University)が快く提供してくれた。腫瘍増殖に向けて、HNSC/Q1-2ルシフェラーゼ腫瘍細胞を同系C56BL/6マウスに皮下接種した。2週間の増殖期の後、HNSC/Q1-2ルシフェラーゼ担腫瘍マウスに、150μgのVivoTag680標識抗PDL1/IL-10(アベルマブ/IL10)を24hにわたり静脈内注射した後、Xenogen IVIS 100イメージングシステムを使用して、in vivo生物発光及び蛍光検出を行った。抗PDL1/IL10の体内分布には、腫瘍及び脾臓を含む、VivoTag680シグナルを有するマウス組織を単離し、Vectra Polarisイメージングシステム(Akoya Biosciences社)を用いた蛍光検査により、抗PDL1/IL-10の存在を確認した。
【0115】
結果:図2に示すように、抗PDL1/IL-10は、i.v.投与後、腫瘍内に特異的に蓄積するが、脾臓又は他の組織中には蓄積しないことが観察された。
【0116】
(実施例4)
抗PDL1/IL-10は、in vivoでT細胞応答を高める
本実施例は、抗PDL1/IL-10処置が、T細胞応答に関連するサイトカインの血清レベルを上昇させる能力に関する試験を例証する。
【0117】
材料及び方法:BALB/cマウス(6~8週齢)に、5×105個のCT26細胞(ATCC CRL-2638)を皮下移植した。8日後、腫瘍容積が50~100mm3に達したら、マウスを処置グループに無作為に振り分けた。次いで、PBSコントロール、3mg/kgのIL10-Fc(92kDa)、6mg/kgの抗PDL1/TGFbR(アベルマブ/TGFβR2、M7824、177kDa)、又は6mg/kgの抗PDL1/IL-10(アベルマブ/IL10、185.5kDa)を、週に2回、3週間にわたり、マウスに腹腔内(i.p.)注射した。29日目に血液試料を採取した。マウスCXCL9及びIL-18の血清レベルをELISAキット(Biolegend社)により測定した。
【0118】
結果:図3に示すように、IL-18の血清レベルは、抗PDL1/IL-10群では、対照群及び抗PDL1/TGFbR群と比べて大幅に上昇した。更に、CXCL9の血清レベルも他の3群と比べて大幅に上昇した。
【0119】
(実施例5)
腫瘍制御を向上させる抗PDL1/IL-10の能力は、腫瘍常在細胞の活性の上昇に依存した
本実施例は、抗PDL1/IL-10介在性腫瘍制御に関する腫瘍常在細胞の依存性の試験を例証する。
【0120】
材料及び方法:BALB/cマウス(6~8週齢)に、5×105個のEMT6細胞(ATCC CRL-2755)を皮下移植した。10日後、腫瘍容積が50~100mm3に達したら、マウスを処置グループに無作為に振り分けた。EMT6担腫瘍マウス(n=6)を、ビヒクル(1%エタノール、PO)又はFTY720(2mg/kg、PO)で、毎日、2週間にわたり処置した。PBSコントロール、抗PDL1(アベルマブ)(10mg/kg)又は抗PDL1/IL-10(アベルマブ/IL-10)(12mg/kg)を、11日目から、週に2回、4週間にわたり、i.p.注射で投与した。腫瘍容積を、週に2回、試験の終了まで、ノギス測定により測定した。
【0121】
結果:図4に示すように、抗PDL1/IL-10群では、抗PDL1群と比べて、腫瘍容積が小さく生存率が高く、抗PDL1/IL-10は、腫瘍制御に重要であることが示された。二次リンパ器官からのリンパ球移出を阻害するFTY720による共処置は、全てのマウスではないが一部のマウスでは、抗PDL1/IL-10の抗腫瘍活性を低下させなかった。
【0122】
(実施例6)
抗PDL1/IL-10処置は、持続的なT細胞記憶保護を生み出す
本実施例は、抗PDL1/IL-10が、持続的な抗腫瘍性の免疫応答を生み出す能力に関する試験を例証する。
【0123】
材料及び方法:BALB/cマウス(6~8週齢)の右後背部に、5×105個のEMT6細胞(ATCC CRL-2755)を皮下移植した。7日後、腫瘍容積が50~100mm3に達したら、マウスを処置グループに無作為に振り分けた。次いで、PBSコントロール、抗PDL1(5mg/kg)、抗PDL1/IL-10(6mg/kg)、又は抗PDL1/TGFbR(6mg/kg)を、週に2回、3週間にわたり、マウス(n=7)に腹腔内注射した。再度負荷を与える(rechallenge)試験(rechallenge study)には、腫瘍「治癒」から5週間後(67日目)、治癒したマウス及びナイーブBalb/cマウス(n=5)の左後背部にEMT6腫瘍細胞を皮下移植した。腫瘍容積を、週に2回、試験の終了まで、ノギス測定により測定した。
【0124】
結果:図5及びTable 3(表3)に示すように、抗PDL1/IL-10処置は、抗PDL1処置及び抗PDL1/TGFbR処置と比べて、高い生存率及び腫瘍増殖阻害を示した。同様に、再負荷試験(rechallenge study)には、5週間にわたり無腫瘍であった抗PDL1/IL10処置マウスを、EMT6細胞で負荷を与えた(challenged)。ナイーブマウスにおける100%腫瘍形成と比べて、どのマウスも翌月にわたり新しい腫瘍を形成させず、抗PDL1/IL10は、持続的、腫瘍特異的なT細胞応答及び記憶保護を誘発し得ることを示した。
【0125】
【表3】
【0126】
(実施例7)
抗PDL1/IL-10変異タンパク質は、腫瘍増殖を制御しT細胞応答を高める
本実施例は、抗PDL1/IL-10変異体が、腫瘍増殖を制御しT細胞応答を高める能力に関する試験を例証する。
【0127】
材料及び方法:BALB/cマウス(6~8週齢)に、5×105個のCT26細胞(ATCC CRL-2638)を皮下移植した。7日後、腫瘍容積が50~100mm3に達したら、マウスを処置グループに無作為に振り分けた。次いで、1mg/kgの抗PDL1/IL-10又は抗PDL1/IL-10変異体(R107A、R104Q/R107A)を、週に2回、3週間にわたり、マウスに腹腔内注射した。マウスCXCL9の血清レベルをELISAキット(Biolegend社)により測定した。
【0128】
結果:図6に示すように、抗PDL1/IL-10変異タンパク質である抗PDL1/IL-10_R107A及び抗PDL1/IL-10_QAは、抗PDL1/IL-10WTと同じ傾向の腫瘍増殖曲線を示した。更に、CXCL9の血清レベルも、コントロール群と比べて大幅に上昇し、抗PDL1/IL-10群では、IL-10WTであれIL-10変異タンパク質であれ、コントロール群と比べてT細胞応答を高めたことを示した。
【0129】
(実施例8)
抗PDL1/IL10処置した担腫瘍マウスから単離された腫瘍浸潤リンパ球(TIL)は、より優れたリコール応答を示す
本実施例は、抗PDL1/IL10処置した担腫瘍マウスから単離されたPEXは、より優れたリコール応答を示すことを例証する。
【0130】
材料及び方法:0日目に、C57BL/6マウスに、8×105個のYUMM1.7-GP33腫瘍細胞を皮下接種してから、生着後9日目に、2×106個の初期活性化Tcf7GFPP14 T細胞のi.v.養子移入を行った。P14 TCRを発現したT細胞は、リンパ球性脈絡髄膜炎ウイルス(LCMV)のgp33エピトープに対して特異的である。10日目及び14日目に担腫瘍マウスに、PBS(コントロール)又は125μgの抗PDL1/IL-10(アベルマブ/IL10)を更にi.p.投与した。15日目に腫瘍を採取した後、マーカーであるTCF7-GFP+PD-1+TIM3-に基づいて前駆疲弊CD8+TILを更に選別した後、ナイーブ受容マウスに移入した。翌日、TIL移入マウスを、LCMV-Arm(2×105CFU)で更に再度負荷を与えた(rechallenged)。最後に、脾臓を採取し、感染後8日目に、移入させた細胞を分析した。
【0131】
結果:図7は、再度負荷を与える(rechallenge)と、抗PDL1/IL-10で処置したTILは、PBS処置(コントロール)群と比べて、優れた免疫の質を発揮し、(A)PD1及び(B)TIM3の共阻害性受容体の発現レベルの低下、並びに(C)PD-1+TIM3+LAG3+細胞集団の減少を伴ったことを示した。
【0132】
(実施例9)
抗PDL1/IL-10処置は、前駆疲弊T細胞(PEX)依存性の持続的な腫瘍防御をブーストする
本実施例は、抗PDL1/IL-10ブーストされた持続的な腫瘍防御が、PEX依存性であることを例証する。
【0133】
材料及び方法:0日目に、C57BL/6マウスに8×105個のYUMM1.7-GP33腫瘍細胞を皮下接種し、生着後6日目に、4×106個の初期活性化Tcf7DTR-GFPP14 T細胞のi.v.養子移入を行った。担腫瘍マウスに更に、125μgの抗PDL1/IL-10(アベルマブ/IL10)を、8日目に開始し、腫瘍が検出不可能になるまで3日おきにi.p.投与した。3週間後、無腫瘍マウスに、PBS(コントロール)、又はTCF1+ジフテリア毒素受容体(DTR)発現細胞を1週間以内に除去するために1.5μgのジフテリア毒素(DT)を、3回i.p.注射した。最後に、全ての無腫瘍マウスに、2×105個のB16-GP33メラノーマ細胞をs.c.接種し、1日おきに腫瘍増殖を監視した。腫瘍進行のポジティブコントロールとして、同齢ナイーブマウスにも、B16-GP33細胞を接種した。
【0134】
結果:図8に示すように、腫瘍進行のポジティブコントロール(ナイーブ)として、同齢ナイーブマウスに、B16-GP33メラノーマ細胞を接種した。(A)腫瘍増殖及び(B)無腫瘍生存を、4週間にわたり監視した。前駆疲弊T細胞(PEX)の除去を伴わない、無腫瘍マウスの対照群(Ctrl)は、無腫瘍状態のままであるが、DT処置群では、再度負荷を与えて(rechallenge)から14~16日目に、B16-GP33腫瘍病変が認められ、抗PDL1/IL10誘導性の持続的な防御は、PEX依存性であることを示した。
【0135】
本発明の前記の開示は、明確さ及び理解のために、実施例及び例証として若干詳細に記載されたものの、本明細書に記載された実施例、記載及び実施形態を含む開示は、例証の目的のためであり、例示的であると意図され、本開示を限定すると解釈されるべきではない。本明細書に記載される実施例、記載及び実施形態に対する様々な改変又は変更を行うことができ、且つ本開示及び添付クレームの趣旨及び範囲内に含まれることが当業者には明らかである。更に、当業者は、本明細書に記載されるものに対して等価のいくつかの方法及び手順を認識する。全てのそのような等価物は、本開示の範囲内と理解され、且つ添付クレームにより網羅される。本発明の更なる実施形態が、以下の特許請求の範囲において記載される。
図1
図2
図3-1】
図3-2】
図4-1】
図4-2】
図4-3】
図5-1】
図5-2】
図6-1】
図6-2】
図7-1】
図7-2】
図8
【配列表】
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【国際調査報告】