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特表2024-538751優れた適応免疫細胞の集団を促進することによる養子細胞移入の増強
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  • 特表-優れた適応免疫細胞の集団を促進することによる養子細胞移入の増強 図1
  • 特表-優れた適応免疫細胞の集団を促進することによる養子細胞移入の増強 図2
  • 特表-優れた適応免疫細胞の集団を促進することによる養子細胞移入の増強 図3A
  • 特表-優れた適応免疫細胞の集団を促進することによる養子細胞移入の増強 図3B
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-10-23
(54)【発明の名称】優れた適応免疫細胞の集団を促進することによる養子細胞移入の増強
(51)【国際特許分類】
   C12N 5/078 20100101AFI20241016BHJP
   A61K 35/17 20150101ALI20241016BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20241016BHJP
   A61P 31/00 20060101ALI20241016BHJP
   A61P 29/00 20060101ALI20241016BHJP
   A61P 37/02 20060101ALI20241016BHJP
   C12N 5/0781 20100101ALI20241016BHJP
   C12N 5/0783 20100101ALI20241016BHJP
   C12N 5/10 20060101ALI20241016BHJP
   C07K 14/705 20060101ALN20241016BHJP
   C07K 14/725 20060101ALN20241016BHJP
   C07K 19/00 20060101ALN20241016BHJP
   C12N 15/12 20060101ALN20241016BHJP
   C12N 15/62 20060101ALN20241016BHJP
【FI】
C12N5/078
A61K35/17 ZNA
A61P35/00
A61P31/00
A61P29/00
A61P37/02
C12N5/0781
C12N5/0783
C12N5/10
C07K14/705
C07K14/725
C07K19/00
C12N15/12
C12N15/62 Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024521318
(86)(22)【出願日】2022-10-06
(85)【翻訳文提出日】2024-05-21
(86)【国際出願番号】 US2022077721
(87)【国際公開番号】W WO2023060212
(87)【国際公開日】2023-04-13
(31)【優先権主張番号】63/253,058
(32)【優先日】2021-10-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】524131903
【氏名又は名称】セルヴィエ インク.
(74)【代理人】
【識別番号】110003797
【氏名又は名称】弁理士法人清原国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ドゥマウティオズ,ニナ
【テーマコード(参考)】
4B065
4C087
4H045
【Fターム(参考)】
4B065AA94X
4B065AB01
4B065AC14
4B065CA24
4B065CA44
4C087AA01
4C087BB43
4C087BB64
4C087NA14
4C087ZB07
4C087ZB11
4C087ZB26
4C087ZB33
4C087ZB35
4H045BA10
4H045BA41
4H045CA40
4H045DA50
4H045FA74
(57)【要約】
【解決手段】
本開示は、ミトコンドリア増強免疫細胞、それらの組成物および治療的使用に関する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒト免疫細胞などの免疫細胞であって、
単離された生存可能なミトコンドリアで処理されていない免疫細胞、例えば、免疫細胞と比較して、(i)適応免疫細胞の生存率を増強する、(ii)前記適応免疫細胞の選択を促進する、または(iii)それらの組み合わせを行うのに有効な量の単離された生存可能なミトコンドリアで処置される、免疫細胞。
【請求項2】
ヒト免疫細胞などの免疫細胞であって、
外因性の単離された生存可能なミトコンドリアを含まない免疫細胞、例えば、ヒト適応免疫細胞と比較して、(i)適応免疫細胞の生存率を増強する、(ii)前記適応免疫細胞の選択を促進する、または(iii)それらの組み合わせを行うのに有効な量の、外因性の単離された生存可能なミトコンドリアなどの外因性のミトコンドリアを含む、免疫細胞。
【請求項3】
前記免疫細胞が、B細胞またはT細胞などのリンパ球、好ましくはCD8免疫T細胞またはCD4免疫T細胞などのT細胞である、請求項1または2に記載の免疫細胞。
【請求項4】
前記免疫細胞が、キメラ抗原受容体(「CAR」)もしくは人工T細胞受容体(「TCR」)サブユニット、またはそれらの組み合わせを含む、請求項1または2に記載の免疫細胞。
【請求項5】
前記免疫細胞が、in vitroまたはex vivoで産生される、請求項1または2に記載の免疫細胞。
【請求項6】
前記適応免疫細胞が、ヒトメモリーT細胞などのメモリーT細胞である、請求項1または2に記載の適応免疫細胞。
【請求項7】
前記適応免疫細胞が、エフェクターCD8 T細胞またはエフェクターCD4 T細胞などのエフェクター細胞、好ましくはヒトエフェクターCD4 T細胞またはヒトエフェクターCD8 T細胞である、請求項1または2に記載の適応免疫細胞。
【請求項8】
前記適応免疫細胞が、幹細胞様メモリー細胞、またはCD8メモリー様細胞などのメモリー様細胞である、請求項1または2に記載の適応免疫細胞。
【請求項9】
前記適応免疫細胞がナイーブ細胞である、請求項1または2に記載の適応免疫細胞。
【請求項10】
前記適応免疫細胞が組織常在性メモリー細胞(Trm細胞)である、請求項1または2に記載の適応免疫細胞。
【請求項11】
前記適応免疫細胞がメモリーCD8 T細胞である、請求項1、2、または6のいずれか一項に記載の適応免疫細胞。
【請求項12】
前記適応免疫細胞が、エフェクターメモリーCD8 T細胞、セントラルメモリーCD8 T細胞、またはそれらの組み合わせである、請求項1、2、6、または11のいずれか一項に記載の適応免疫細胞。
【請求項13】
前記適応免疫細胞が、Treg CD4 T細胞などの制御性(Treg)T細胞である、請求項1または2に記載の適応免疫細胞。
【請求項14】
ヒト免疫細胞、例えばヒト適応免疫細胞などの、請求項1~13のいずれか一項に記載の免疫細胞を含む集団。
【請求項15】
前記ミトコンドリアが真核細胞ミトコンドリアに由来する、請求項1~14のいずれか一項に記載の免疫細胞。
【請求項16】
前記ミトコンドリアがヒト細胞株に由来する、請求項1~15のいずれか一項に記載の免疫細胞。
【請求項17】
前記ミトコンドリアが健常ボランティアに由来する、請求項1~16のいずれか一項に記載の免疫細胞。
【請求項18】
前記ミトコンドリアが、がん患者などの患者に由来する、請求項1~17のいずれか一項に記載の免疫細胞。
【請求項19】
前記ミトコンドリアが、自己免疫疾患に罹患している患者などの患者に由来する、請求項1~18のいずれか一項に記載の免疫細胞。
【請求項20】
前記ミトコンドリアが、自己または同種異系である、請求項1~19のいずれか一項に記載の免疫細胞。
【請求項21】
前記ミトコンドリアが、遺伝子操作されたミトコンドリア、またはリポソームによって封入されたミトコンドリアもしくは特定の薬剤に結合されたミトコンドリアである、請求項1~20のいずれか一項に記載の免疫細胞。
【請求項22】
前記ミトコンドリアの有効量が、0.0001ng~2.5ng、例えば0.001ng~2.0ngである、請求項1~21のいずれか一項に記載の免疫細胞。
【請求項23】
請求項1~22のいずれか一項に記載の免疫細胞、例えば適応免疫細胞、または前記免疫細胞の集団と、少なくとも1つの薬学的に許容される担体と、を含む組成物。
【請求項24】
前記薬学的に許容される担体が、ヒト免疫細胞への送達用に製剤化される、請求項22に記載の組成物。
【請求項25】
前記組成物が、固形状または液体状で製剤化される、請求項23または24に記載の組成物。
【請求項26】
(i)請求項1~25のいずれか一項に記載の免疫細胞の生存率を増強する、(ii)前記免疫細胞の選択の促進する、またはそれらの組み合わせを行う方法であって、前記方法が、
(a)適応細胞(T細胞など)活性化を駆動することができる特異的活性化受容体アゴニスト抗体を含む無細胞培地中、in vitroで前記免疫細胞を活性化する工程と、
(b)前記免疫細胞を、単離された生存可能なミトコンドリアを含む医薬組成物に少なくとも5日間など、少なくとも3日間曝露する工程と
を含む、方法。
【請求項27】
(i)請求項1~26のいずれか一項に記載の免疫細胞の生存率を増強する、(ii)前記免疫細胞の選択を促進する、またはそれらの組み合わせを行う方法であって、前記方法が、
(a)任意選択で、IL-2などの組換えインターロイキンの存在下で、コーティングされたCD3/CD28ビーズを有する無細胞培地中、in vitroで前記免疫細胞を活性化する工程と、
(b)前記免疫細胞を、単離された生存可能なミトコンドリアを含む医薬組成物に、少なくとも5日間など、少なくとも3日間曝露する工程と
を含む、方法。
【請求項28】
必要とする対象を処置する方法における使用のための、請求項1~27のいずれか一項に記載の免疫細胞、例えばヒトT細胞などのヒト免疫細胞であって、前記方法が、前記対象に、請求項1~27のいずれか一項に記載の免疫細胞または前記免疫細胞の集団を投与する工程を含む、免疫細胞。
【請求項29】
がん、感染性、炎症性、または自己免疫疾患を処置する方法における使用のための、請求項1~28のいずれか一項に記載の免疫細胞、例えば、ヒトT細胞などのヒト免疫細胞。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本出願は、2021年10月6日に出願された米国仮出願第63/253,058号の利益を主張し、この文献は、あらゆる目的のために参照によりその全体が本明細書に援用される。
【0002】
分野
本発明は、生物医学の分野に関し、具体的には、がん、感染症、および自己免疫疾患の治療に有用な方法に関する。具体的に、本発明は、限定されないが、ミトコンドリア増強適応免疫細胞(mitochondria-enhanced adaptive immune cells)などのミトコンドリア増強免疫細胞を使用する治療的処置に関する。本発明は、がん、感染症、および自己免疫疾患の処置に使用するためのミトコンドリア増強免疫細胞に関する。具体的に、本発明の免疫細胞は、限定されないが、T免疫細胞またはin vitroで増殖したT細胞などの免疫細胞である。より具体的には、本発明の免疫細胞は、限定されないが、血液中を循環するCD8免疫細胞、腫瘍浸潤リンパ球(TIL)、操作されたT細胞、キメラ抗原受容体(CAR)T細胞、血液中を循環するCD4免疫細胞、免疫抑制制御性T細胞(immunosuppressive regulatory T cells)(Treg細胞)、エフェクターT細胞、メモリーT細胞、アルファ-ベータ T細胞(αβ T細胞)、およびガンマ-デルタ T細胞(γδ T細胞)などの免疫細胞である。ミトコンドリア増強免疫細胞は、改善された持続性、より高い生存率、および/または分化能(differentiation capacity)を有する。より具体的には、本発明は、改善された持続性、より高い生存能力、および/またはより高い分化能を有するミトコンドリア増強メモリーT細胞(例えば、外因性ミトコンドリアを移植されたメモリーT細胞)に関する。本発明のミトコンドリア増強メモリーT細胞は、例えば、混合集団(bulk population)中の高度に持続性のある細胞の割合の増強に起因して、養子細胞移入療法(adoptive cell transfer therapy)(ACT)における有効性の増加を示す。本発明はさらに、自己免疫疾患および移植された臓器または組織拒絶反応の処置のための改善された生存能力、および/またはより高い分化能を有する、ミトコンドリア増強免疫抑制制御性T細胞(Treg)(例えば、外因性ミトコンドリアを移植されたTreg CD4 T細胞)を提供する。本発明は、ミトコンドリア増強免疫細胞を含む医薬組成物に関する。本発明は、改善された持続性、より高い生存能力、および/またはより高い分化能を有する、特定の分化段階でより高い割合の免疫T細胞またはより高い割合の免疫T細胞の生成をもたらす細胞技術の有効性の増大に関する。
【背景技術】
【0003】
がんおよび自己免疫は、共通の起源を共有するが、反対方向に働く強力な力を発揮する。両疾患は、身体の免疫系の不全に起因する。がんは多くの場合、免疫系が欠損細胞および/または形質転換細胞を認識および/または攻撃する役割を果たせず、該細胞が分裂および増殖することを可能にしてしまったために、発症する。逆に、自己免疫、つまり、大腸炎およびループスなどの疾患をもたらす免疫応答の不全(faulty immune response)は、免疫系が誤って健常細胞を攻撃した場合に起こる。心臓、脳、神経、筋肉、結合組織、皮膚、眼、肺、腎臓、消化管、血球、および血管を含む、身体のほとんどの部分が、免疫系によって標的化され得る。
【0004】
がんは先進国における主要な死因のひとつであり、米国では2021年に190万人が新たにがんと診断され、60万8570人ががんにより死亡したと推定されている(https://www.cancer.org/content/dam/cancer-org/research/cancer-facts-and-statistics/annual-cancer-facts-and-figures/2021/cancer-facts-and-figures-2021.pdf)。世界保健機関(WHO)によると、がんは、世界中で主要な死因であり、2020年には約1,000万人が死亡したとされる(Ferlay J,Ervik M,Lam F,Colombet M,Mery L,Pineros M,et al.Global Cancer Observatory:Cancer Today.Lyon:International Agency for Research on Cancer;2020(https://gco.iarc.fr/today,accessed February 2021)。(がんの新規症例の観点から)2020年に最も多いがん罹患数は、乳がん(226万件)、肺がん(221万件)、結腸がんおよび直腸がん(193万件)、前立腺がん(141万件)、皮膚がん(非黒色腫)(120万件)、ならびに胃がん(109万件)であった。2020年に最も多いがんの死因は、肺(180万人)、結腸および直腸(935万人)、肝臓(83万人)、胃(769万人)、および乳房(685万人)であった。
【0005】
がんは、突然変異を獲得した欠陥細胞に起因し、これは正常な細胞周期チェックポイントを回避させる。経時的に、突然変異した細胞の過剰増殖は、様々な細胞型から構成される異種腫瘍塊(heterogenous tumor mass)を作り出す。運動能や浸潤能、がん細胞の生存に有利なように環境を調節する能力など、転移の特徴を獲得すると、がん細胞は体内で広がり、元の腫瘍床から離れた遠隔転移を起こし得る。
【0006】
免疫細胞は、がん細胞および病原体を検出、制御、および根絶するための重要な役割を果たす。Tリンパ球の表面上のT細胞受容体(TCR)は、主要組織適合遺伝子複合体(Major histocompatibility complex)(MHC)分子上に提示される抗原性ペプチドフラグメントを認識する。急性感染症の間、侵入病原体に対して特異的なナイーブT細胞は、MHC/抗原提示の状況においてそれらのTCRを介して活性化され、クローン的に増殖し(clonally expanded)、エフェクター細胞を生じさせる。直接的な殺傷(direct killing)を通じて、エフェクター細胞は、感染細胞の体内からの除去を媒介する。病原体クリアランス時に、引き起こされた免疫応答は収縮し(the mounted immune response contracts)、活性化されたCD8 T細胞の大部分のアポトーシスをもたらす。抗原特異的T細胞の一部はさらに分化して、個体に長期保護を提供するメモリーT細胞プールを生成する(図1)。注目すべきことに、メモリー細胞は、遭遇した病原体による再感染時に、増強された持続性、自己複製能、および効率的なリコール能などの異なる特徴を有する。同一の病原体による2回目の感染の場合では、メモリー細胞により誘発され、引き起こされた免疫応答は、ナイーブT細胞と比較して、より速く、より強く生じる(Vanja Lazarevic et al.,“T-bet:a bridge between innate and adaptive immunity”Nat Rev Immunol.2013 Nov;13(11):777-789)。
【0007】
興味深いことに、ナイーブCD8 T細胞、エフェクターCD8 T細胞、およびメモリーCD8 T細胞の代謝は異なることが示されている。ナイーブCD8 T細胞は静止しており、それらのエネルギー需要を供給するために酸化的リン酸化(oxidative phosphorylation)(OXPHOS)にほとんど依存している。活性化されると、エフェクターCD8 T細胞は解糖を優先し、それらのエフェクター機能およびクローン的増殖を維持する。実際、グルコース分子の分解は、それらの高い増殖度の要件を満たすために重要なビルディングブロックの生成に関与する。他方、メモリーCD8 T細胞は、OXPHOSおよび脂肪酸酸化(fatty acid oxidation)(FAO)に依存する。メモリー細胞はナイーブT細胞よりも多くのミトコンドリア質量を有することが示された。メモリー細胞がATP産生を維持するためにミトコンドリアに依存することは、メモリー細胞に生体エネルギー的な利点をもたらす。実際、メモリーCD8 T細胞は、呼吸予備能(the spare respiratory capacity)(SRC)として測定される呼吸予備力(respiratory reserve)の増強を示す(Gerritje J.W.van der Windt et al.;Immunity,2012 January 27;36(1):68-78;Guillermo O.Rangel Rivera et al.,Front.Immunol.,18 March 2021 |https://doi.org/10.3389/fimmu.2021.645242)。
【0008】
メモリーCD8 T細胞の異なるサブセットは、相補的な役割または局在化を有する。
とりわけ、幹細胞様メモリー、エフェクターメモリー、セントラルメモリー、および組織常在性メモリーを強調することができる。幹細胞様メモリーT細胞およびセントラルメモリーT細胞の両方は、接着を媒介し、かつ二次リンパ組織へのホーミングを可能にするL-セレクチンであるCD62Lを発現する。リンパ節(LN)に入るこの特異な能力は、その表面に様々な抗原を有する抗原提示細胞(APC)の最適化されたスクリーニング、およびセントラルメモリー細胞によって誘導される強力なリコール応答をもたらす。エフェクターメモリーT細胞は、血流への循環が制限されており、遭遇した病原体による再感染時に直接的な細胞傷害機能およびエフェクター機能を示す。逆に、組織常在性メモリー細胞は循環せず、代わりに皮膚、肺、および腸などの末梢組織に局在化し、多様な進入部位で病原体を効率的に遮断する。
【0009】
免疫系は、自己に耐性があり、かつ自己に対して反応しないように教育されており、その結果、がん細胞は、侵入する病原体と同じ強度で検出されない可能性がある。がん患者において、T細胞は通常、(i)抗原性が乏しいため、(ii)形質転換細胞が表現型的に異物でないため、(iii)がんにしばしば関連する全般的な免疫抑制状態のため、同系遺伝子形質転換細胞に対して乏しいか全く応答しない(Medler et al.,2015,“Immune response to cancer therapy:mounting an effective antitumor response and mechanisms of resistance”,Trends Cancer 1:66-75)。
【0010】
興味深いことに、チェックポイント遮断療法による特定の免疫抑制機構の標的化は、がんに対して引き起こされる免疫応答を増強する。さらに、がん細胞と浸潤免疫細胞との間の腫瘍部位において代謝競合(metabolic competition)が存在し得る。解糖へのがん細胞の高い依存度がしばしば観察され、腫瘍内環境(intra-tumoral environment)からの1つの燃料源であるグルコースの減少につながる。エフェクターCD8 T細胞において解糖に関与することができないことは、それらのエフェクター機能および殺傷能力に劇的な負の影響を有する。
【0011】
T細胞ベースの免疫療法は、がん患者の免疫系を使用して、それ自体の腫瘍塊を標的化する。免疫細胞は、腫瘍浸潤リンパ球(TIL)などの腫瘍から直接抽出されるか、または末梢血単核細胞(PBMC)などの血液から直接抽出される。正しい抗腫瘍特異性を有するTILは、細胞培養法および有効な殺傷能力によって選択することができる。血液から抽出されたCD8 T細胞は、キメラ抗原受容体(CAR)などによって、腫瘍反応性を獲得するように修飾することができる。TILまたはCAR-T細胞は、患者に再注入される前に強力な増殖を促進する、高用量のIL-2の存在下など、in vitroで培養され、これは養子細胞移入(adoptive cell transfer)(ACT)と呼ばれる方法である(Rohaan,M.W.,Wilgenhof,S.&Haanen,J.B.A.G.,“Adoptive cellular therapies:the current landscape”,Virchows Arch 474,449-461(2019)。ACTの1つの利点は、化学療法、放射線療法、および手術などの従来の療法と比較してその高い特異性にある。さらに、黒色腫および肺がんなど、いくつかのがんにおいて、自己TILを有するACTは、患者を処置するための最も効率的な方法を表す。従来の化学療法で処置された進行性黒色腫患者は、10%の全生存率を示す一方、ACT後、全生存率は41%に増加する(Larkin,James et al.“Overall Survival in Patients With Advanced Melanoma Who Received Nivolumab Versus Investigator’s Choice Chemotherapy in CheckMate 037:A Randomized,Controlled,Open-Label Phase III Trial.”Journal of clinical oncology:official journal of the American Society of Clinical Oncology vol.36,4(2018):383-390.doi:10.1200/JCO.2016.71.8023;Dafni,U et al.“Eficacy of acoptive therapy with tumor-infiltrating lymphocytes and recombinant interleukin-2 in advanced cutaneous melanoma:a systematic review and meta-analysis.”Annals of Oncology:official journal of the European Society for Medical Oncology vol.30,12(2019):1902-1913.doi:10.1093/annonc/mdz398)。同様に、CD19発現を標的化するCAR療法は、再発B細胞急性リンパ芽球性白血病(relapsed B-cell acute lymphoblastic leukemia)(B-ALL)、慢性リンパ性白血病(chronic lymphocytic leukemia)(B-CLL)、および非ホジキンリンパ腫(non-Hodgkin lymphoma)(NHL)に罹患した小児および成人において一貫して高い抗腫瘍効力を示し、完全寛解の割合は、異なる臨床試験において70~94%の範囲である(Wang et al.,2017,“New development in CAR-T cell therapy”,J Hematol Oncol 10:53;Morotti,M.,Albukhari,A.,Alsaadi,A.et al.,“Promises and challenges of adoptive T-cell therapies for solid tumours”,Br J Cancer 124,1759-1776(2021))。ACTは、がん、感染症、自己免疫疾患、炎症性疾患、および免疫不全を含む多種多様な疾患を処置するためのその可能性をまだ実現していない。にもかかわらず、ACT療法に関し、克服すべき障害は残ったままである。腫瘍浸潤T細胞を全く示さないか、または非常に少ない量の腫瘍浸潤T細胞を示す患者は、この療法から恩恵を得られないであろう。腫瘍は、「熱い(hot)」腫瘍、すなわち、T細胞浸潤のレベルが上昇した腫瘍、および「冷たい(cold)」腫瘍、すなわち、T細胞浸潤のレベルが低い腫瘍に類することができる。「熱い」腫瘍は、再注入前のin vitro増殖に十分な量のCD8 T細胞の採取に好ましいであろう。さらに培養TILは、ACT時に、強い抗腫瘍反応を誘導するために、エフェクター機能、増殖能力、および自己複製能を維持しなければならない。その結果、限られた増殖および自己複製能を有する細胞などの最終分化TILの注入は、患者の臨床転帰に関して有害である。重要なことに、記憶様表現型を示すTILの精選は、患者への移入後の抗腫瘍応答を改善する。抽出されたTIL内の1つのサブセットを標的化する現在の方法は時間がかかり、細胞の代謝が困難になり得、フローサイトメトリーによる選別などの表面蛍光標識を必要とし得る。
【0012】
血液悪性腫瘍に対する高い効力を実証するにもかかわらず、CAR-T細胞によって誘発される強い抗腫瘍応答は、しばしば毒性(すなわち、重篤なサイトカイン放出症候群および神経毒性)を伴う一方、CAR-Tの増殖および持続性が乏しい患者は、持続的な寛解率の低下を示す。まとめると、単純かつ効率的な様式で、メモリー様TILまたはCAR-T細胞を選択することは、媒介性応答の持続期間を改善する可能性により、臨床結果に劇的に有益となるであろう。
【0013】
大腸炎およびループスなどの疾患をもたらす免疫応答の不全である自己免疫は、免疫系が誤って健康な細胞を攻撃した場合に起こる。心臓、脳、神経、筋肉、結合組織、皮膚、眼、肺、腎臓、消化管血液細胞、および血管を含む、身体のほとんどの部分が免疫系によって標的化され得る。免疫系によって標的化される身体の部分に応じて変化するため、広範囲の自己免疫疾患が存在する。一般的な自己免疫疾患には、関節リウマチ、全身性エリテマトーデス、多発性硬化症、自己免疫性血管炎(autoimmune vasculitis)、重症筋無力症、悪性貧血、橋本甲状腺炎、1型糖尿病、炎症性腸疾患(IBS)、アジソン病、グレーブス病、シェーグレン症候群、乾癬、およびセリアック病が含まれる。現在まで、米国自己免疫関連疾患協会(American Autoimmune Related Disease Association)(AARDA)は、100を超える自己免疫疾患を分類しており、米国において3番目に多い種類の疾患である。実際、自己免疫疾患は、世界人口の5~10%、特に、男性よりも自己免疫疾患に罹患する可能性が2~10倍高い女性に罹患する。ほとんどの疾患はどの年齢で起こり得るが、いくつかの疾患は主に、小児期および青年期(例えば、1型糖尿病)、成人期中期(例えば、重症筋無力症、多発性硬化症)、または、高齢者(例えば、関節リウマチ、原発性全身性血管炎)の間に起こり得る(Wang et al.,2015,“Human autoimmune diseases:a comprehensive update”,J Intern Med 278:369-95)。
【0014】
制御性T細胞(Treg)はCD4 T細胞コンパートメントに属し、自己免疫疾患を制御、低減、または処置するための重要な役割を果たす。それらは、機能およびエネルギー需要を支えるために、ミトコンドリアに依存している。Tregは、引き起こされる免疫応答のバランスをとり、侵入する病原体に対する適切な応答を可能にし、免疫系によって標的化される組織損傷を回避または制限するように働く。それらは、(i)免疫細胞への直接結合によって、(ii)IL-10およびIL-35などの抗炎症性サイトカインを産生することによって、および(iii)生存シグナルIL-2についてより高い親和性で競合することによって、免疫応答を弱めるその役割を媒介する。ポリクローナルTreg療法は、ACTと同じ原理を使用し、その結果、抽出された自己Tregは、in vitroで増殖され、その後、患者に再注入され、免疫応答のバランスを回復させることを目的とする(Peter J.Eggenhuizen et al.,“Treg Enhancing Therapies to Treat Autoimmune Diseases”,Int J Mol Sci.2020 Oct;21(19):7015)。
【0015】
したがって、本発明の根底にある技術的問題は、血液からの持続性またはメモリー様TILおよびCD8 T細胞、またはCD4コンパートメントからのTregの選択のための新規治療および治療戦略を提供することである。本発明は、Treg療法のために選択されるACTまたはTregとの関連で使用される、より高い生存能力を有するCD8 T細胞のin vitroでの増殖後の割合を増加させることを目的とする。上記技術的問題の解決は、特許請求の範囲に特徴付けられる実施形態を提供することによって達成される。
【発明の概要】
【0016】
本開示は、ミトコンドリア増強免疫細胞、それらの組成物、および治療的使用に関する。
【0017】
本開示は、免疫細胞を提供し、該免疫細胞は、単離された生存可能なミトコンドリア、または外因性の単離された生存可能なミトコンドリアを用いて、適応免疫細胞、例えば、B細胞またはT細胞などのヒト適応免疫細胞、好ましくは、CD4免疫T細胞またはCD8免疫T細胞などのT細胞の生存率を高め、および/またはそれらの選択を促進するのに有効な量で処理され、適応免疫細胞、例えばヒト適応免疫細胞と比較して、単離された生存可能なミトコンドリア、または外因性の生存可能なミトコンドリアを用いて処理されない。いくつかの態様では、本開示のミトコンドリアは、セントラルメモリーCD8 T細胞およびエフェクターメモリーCD8 T細胞などの、メモリーCD8 T細胞の生存率を増強し、かつ/またはその選択を促進する。いくつかの他の態様では、生存可能なミトコンドリアは、Treg CD4細胞などの制御性T(Treg)細胞の生存を増強し、および/またはそれらの選択を促進するのに有効な量である。
【0018】
本明細書に提供されるのは、単離された生存可能なミトコンドリア、または外因性の単離された生存可能なミトコンドリアで処理された免疫細胞の組成物である。組成物は、1つ以上の薬学的に許容される担体をさらに含み得る。
【0019】
また、本明細書には、適応免疫細胞、例えばヒトT細胞などの免疫細胞または免疫細胞の集団の生存率を増強および/またはそれらの選択を促進する方法が提供され、該方法は、(a)適応細胞(T細胞など)活性化を駆動することができる特異的活性化受容体アゴニスト抗体を含む無細胞培地中でのin vitroでの免疫細胞の活性化する工程と、(b)免疫細胞を、単離された生存可能なミトコンドリアを含む医薬組成物に少なくとも3日間曝露する工程とを含む。いくつかの態様では、免疫細胞または免疫細胞集団の生存率を増強および/またはそれらの選択を促進する方法は、(a)任意選択でIL-2などの組換えインターロイキンの存在下で、コーティングされたCD3/CD28ビーズを有する無細胞培地中、in vitroで免疫細胞を活性化する工程、(b)免疫細胞を、単離された生存可能なミトコンドリアを含む医薬組成物に少なくとも3日間曝露する工程を、二者択一的に含む。
【0020】
また、本明細書には、免疫細胞、例えばヒトT細胞などのヒト免疫細胞、または免疫細胞の集団を、単離された生存可能なミトコンドリアで処理したもの、またはそれを必要とする対象を処置する方法において使用するための外因性の単離された生存可能なミトコンドリアからなるものが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】急性感染症に対して、引き起こされた免疫応答である。
図2】組織または培養細胞からミトコンドリアを単離するための1つの例示的なプロトコルの概略図である。
図3A】ミトコンドリア移植後9日目のセントラルCD8T細胞およびエフェクターメモリーCD8T細胞の割合の増加。ミトコンドリア移植時のセントラルメモリーCD8T細胞の倍率変化の割合。バルク集団からのCD8T細胞を、活性化後12日目に、100万のCD8T細胞ごとに、Qubit(商標)Protein Assayを用いて測定して、30μgおよび100μgの投与量レベルのミトコンドリアで、外因性ミトコンドリアを移植した。移植後9日目に、CD8T細胞を染色し、FACSLyric(BD Biosciences)を使用してフローサイトメトリーによって分析し、セントラルメモリー(CD62L+、CD45RA-、CD45RO+)およびエフェクターメモリー(CD62L-、CD45RA-、CD45RO+)として分類した。データは、3人のドナーの平均±SDとして提示される3つの独立した実験を表す。p<0.05、**p<0.01、***p<0.001、****p<0.0001。
図3B】ミトコンドリア移植後9日目のセントラルCD8T細胞およびエフェクターメモリーCD8T細胞の割合の増加。ミトコンドリア移植時のエフェクターメモリーCD8T細胞の倍率変化の割合。バルク集団からのCD8T細胞を、活性化後12日目に、100万のCD8T細胞ごとに、Qubit(商標)Protein Assayを用いて測定して、30μgおよび100μgの投与量レベルのミトコンドリアで、外因性ミトコンドリアを移植した。移植後9日目に、CD8T細胞を染色し、FACSLyric(BD Biosciences)を使用してフローサイトメトリーによって分析し、セントラルメモリー(CD62L+、CD45RA-、CD45RO+)およびエフェクターメモリー(CD62L-、CD45RA-、CD45RO+)として分類した。データは、3人のドナーの平均±SDとして提示される3つの独立した実験を表す。p<0.05、**p<0.01、***p<0.001、****p<0.0001。
【発明の詳細な説明】
【0022】
別段の定義がない限り、本明細書で使用されるすべての技術用語、表記法、および他の科学用語は、本発明が属する技術分野の当業者によって通常理解される意味を有することが意図される。いくつかの場合では、共通に理解される意味を有する用語は、明確にするために、および/または容易に参照するために本明細書で定義され、本明細書でのそのような定義の包含は、必ずしも、当該技術分野で概して理解されるものに対する差異を表すと解釈されるべきではない。本明細書で説明または参照される技法および手順は、概して、当業者によって、従来の方法論を使用して、よく理解され、通常採用され、例えば、Sambrook et al.,Molecular Cloning:A Laboratory Manual 4th ed.(2012)Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor,NYに記載される広く利用される分子クローニング法などである。必要に応じて、市販のキットおよび試薬の使用を伴う手順は、概して、特に断りのない限り、製造業者定義のプロトコルおよび条件(manufacturer-defined protocols and conditions)に従って行われる。
【0023】
本明細書で使用される場合、単数形「a」、「an」、および「the」は、文脈上明らかに別の意味を示していると判断されない限り、複数の指示対象を含む。「含む(include)」、「など(such as)」などの用語は、具体的に別段の定めのない限り、限定することなく包含を伝えることを意図している。
【0024】
本明細書で使用される場合、「含む(comprising)」という用語はまた、具体的に別段の指示がない限り、列挙された要素「からなる(consisting of)」実施形態、および列挙された要素「から本質的になる(consisting essentially of)」実施形態を具体的に含む。
【0025】
「約(about)」という用語は、示された値およびその値の上下の範囲を示し、包含する。特定の実施形態では、用語「約」は、指定値±10%、±5%、または±1%を示す。特定の実施形態では、「約」という用語は、指定値±指定値の1標準偏差を示す。
【0026】
「単離された(isolated)」という用語は、天然の状態または環境から変化または除去されたことを意味する。例えば、生きている動物または細胞に天然に存在する核酸またはペプチドは「単離」されないが、その天然状態の共存物質から部分的または完全に分離された同じ核酸またはペプチドは「単離」される。
【0027】
本明細書で使用される「ミトコンドリア(mitochondria)」または「ミトコンドリア(mitochondrion)」という用語は、例えば、細胞または細胞培養から単離/精製された外来真核細胞物質など、真核細胞物質を(本質的に)含まない生存可能なミトコンドリアを指す。したがって、最小量の細胞成分(ミトコンドリア以外)のみが、本明細書で使用されるミトコンドリア(の組成物)中に存在する。好ましくは、ミトコンドリア以外の細胞成分は、本明細書で使用されるミトコンドリア(の組成物)には存在しない。単離されたミトコンドリアは、好ましくは、実質的に精製された形態、例えば、その天然状態の共存物質から部分的にまたは完全に分離された形態で存在した。この意味で、本明細書で使用される「ミトコンドリア」は「単離ミトコンドリア(isolated mitochondria)」であり、「ミトコンドリア」および「単離ミトコンドリア」という用語は互換的に使用することができる。ミトコンドリアの単離には、例えば、反復示差遠心分離(repeated differential centrifugation)(DC)または密度勾配遠心分離(density gradient centrifugation)(DGC)による細胞下分画(subcellular fractioning)など、当該技術分野で公知の任意の技術を使用され得る。したがって、本発明のミトコンドリアは、好ましくは、生きているかまたは生存可能であり、負の膜電位を有する。本発明の意味では、「生きている(being alive)」とは、代謝または別の生物学的機能もしくは構造を有するかまたは維持することを意味する。
【0028】
本明細書で使用される場合、「生存可能なミトコンドリア(viable mitochondria)」という用語は、本明細書では、インタクトで(intact)、活性があり、機能し、呼吸能力のあるミトコンドリアである生存可能なミトコンドリアを説明するために使用される。いくつかの実施形態によれば、「生存可能なミトコンドリア」は、例えば、呼吸、ならびにATPおよび/またはタンパク質合成などの生物学的機能を示すミトコンドリアを指す。
【0029】
本明細書で使用される場合、「インタクトなミトコンドリア(intact mitochondria)」という用語は、本明細書全体を通して、インテジャー(integer)外膜および内膜、インテジャーな膜間空間、インテジャーなクリスト(内膜によって形成される)、およびインテジャーなマトリックスを含むミトコンドリアを説明するために使用される。あるいは、インタクトなミトコンドリアは、それらの構造および超微細構造を保存するミトコンドリアである。別の態様では、インタクトなミトコンドリアは、内膜に埋め込まれた活性呼吸鎖複合体I-Vを含有し、膜電位、およびATPを合成する能力を維持する。
【0030】
本明細書で使用される場合、「移植(transplantation)」という用語は、本明細書全体を通して、臓器、組織、細胞塊、個々の細胞、または細胞小器官をレシピエントに移植するプロセスを説明するための一般的な用語として使用される。「細胞移植(cell transplantation)」という用語は、本明細書全体を通して、少なくとも1つの細胞、例えば、本明細書に記載の増強された免疫細胞をレシピエントに移植するプロセスを説明するための一般的な用語として使用される。該用語は、輸血を含む、当該技術分野で公知の移植の全てのカテゴリーを含む。移植は、ドナーとレシピエントとの間の部位および遺伝的関係によって分類される。該用語は、例えば、自己移植(autotransplantation)(患者の1つの位置から同じ対象の同じまたは別の位置への細胞または組織の除去および移植)、同種移植(allotrnaplantation)(同じ種のメンバー間の移植)、および異種移植(xenotransplantation)(異なる種のメンバー間の移植)を含む。
【0031】
「ペプチド(peptide)」、「ポリペプチド(polypeptide)」、および「タンパク質(protein)」という用語は互換的に使用され、ペプチド結合によって共有結合されたアミノ酸残基を含む化合物を指す。タンパク質またはペプチドは、少なくとも2つのアミノ酸を含有する必要があり、タンパク質またはペプチド配列を含み得るアミノ酸の最大数に制限は課されない。ポリペプチドは、ペプチド結合によって互いに連結された2つ以上のアミノ酸を含む任意のペプチドまたはタンパク質を含む。本明細書で使用される場合、該用語は、当該技術分野において、例えば、ペプチド、オリゴペプチド、およびオリゴマーなどとも一般に呼ばれる短鎖と、当該技術分野において、多くの種類が存在するタンパク質と一般に呼ばれる長鎖との両方を指す。「ポリペプチド(polypeptides)」には、例えば、とりわけ、生物学的に活性なフラグメント、実質的に相同なポリペプチド、オリゴペプチド、ホモダイマー、ヘテロダイマー、ポリペプチドの変異体、修飾ポリペプチド、誘導体、類似体、融合タンパク質が含まれる。ポリペプチドは、天然ペプチド、組換えペプチド、またはそれらの組み合わせを含む。
【0032】
「抗体(antibody)」という用語は、本明細書においてその最も広い意味で使用され、抗原またはエピトープに特異的に結合する1つ以上の抗原結合ドメインを含む特定のタイプの免疫グロブリン分子を含む。この用語はまた、非免疫グロブリン抗原結合タンパク質分子、いわゆる抗体模倣物を含む。抗体は、具体的には、インタクトな抗体(例えば、インタクトな免疫グロブリンG、IgG)、抗体フラグメント(例えば、Fabフラグメント、単鎖Fv(scFv)、単一ドメイン抗体、V、V、VHH、NAR、タンデムscFv、ダイアボディ、単鎖ダイアボディ、DART、tandAb、ミニボディ、単一ドメイン抗体(例えば、ラクダ科動物VHH)、当業者に公知の他の抗体フラグメントもしくはフォーマット、および抗体模倣物(例えば、アドネクチン、アフィボディ、アフィリン、アンチカリン、アビマー、DARPin、ノッチンなど)を含む。抗体は、単一特異的、二重特異的、および多重特異的であり得る。
【0033】
「抗原結合ドメイン(antigen-binding domain)」という用語は、可変ドメインを介して抗原またはエピトープに特異的に結合することができる抗体またはT細胞受容体の部分を意味する。本明細書で使用する場合、「可変ドメイン(variable domain)」は、組換え事象から生じる可変ヌクレオチド配列を指し、例えば、活性化T細胞などのT細胞由来のT細胞受容体(TCR)配列のV、J、および/またはD領域を含むことができるか、あるいは抗体のV、J、および/またはD領域を含むことができる。「抗原結合フラグメント(antigen-binding fragment)」という用語は、抗原結合ドメイン、すなわち可変ドメインおよび超可変ループ、いわゆる相補性決定領域(CDR)を含有し、抗原およびその定義されたエピトープなどの標的への抗原結合フラグメントの認識および特異的結合を付与するのに十分な抗体もしくはTCRまたはその組換え変異体の少なくとも一部分を指す。抗原結合フラグメントの例には、Fab、Fab’、F(ab’)、およびFvフラグメント、単鎖(sc)Fv(「scFv」)抗体フラグメント、線状抗体、単一ドメイン抗体(「sdAb」と略される)(VまたはVのいずれか)、ラクダ科動物VHHドメイン(ナノボディ)、抗体フラグメントから生成された多重特異性抗体、およびTCRフラグメントが含まれるが、これらに限定されない。例示的な抗体および抗体フラグメントフォーマットは、Brinkmannら(MABS,2017,Vol.9,No.2,182-212)に詳細に記載されており、この文献は、教示するすべてについて参照により本明細書に援用される。
【0034】
「scFv」という用語は、可撓性ポリペプチドリンカーを介して抗体軽鎖(V)の可変フラグメントのN末端とC末端で連結された抗体重鎖(V)の可変フラグメントを含み、かつ単一のポリペプチド鎖として発現され得る融合タンパク質を指し、scFvは、それが由来するインタクトな抗体の特異性を保持する。
【0035】
scFvの文脈で使用される「リンカー(linker)」および「可撓性ポリペプチドリンカー(flexible polypeptide linker)」という用語は、可変重鎖領域と可変軽鎖領域とを連結するために、単独でまたは組み合わせて使用されるグリシンおよび/またはセリン残基などのアミノ酸からなるペプチドリンカーを指す。一実施形態では、可撓性ポリペプチドリンカーはGly/Serリンカーであり、アミノ酸配列(Gly-Gly-Gly-Gly-Ser)を含み、ここでnは1以上の正の整数である。例えば、n=1、n=2、n=3、n=4、n=5、n=6、n=7、n=8、n=9およびn=10である。一実施形態では、可撓性ポリペプチドリンカーには、(GlySer)または(GlySer)が含まれるが、これらに限定されない。別の実施形態では、リンカーは(GlySer)、(GlySer)、または(GlySer)の複数の反復を含む。また、WO2012/138475(参照により本明細書に援用される)に記載されるリンカーも本発明の範囲内に含まれる。
【0036】
抗体に関する「重鎖可変領域(heavy chain variable region)」または「V」(または、ラクダ科単一ドメイン抗体、例えば、ナノボディの場合、「VHH」)は、フレームワーク領域(FR)として知られるフランキングストレッチの間に挿入された3つのCDRを含有する重鎖のフラグメントを指し、これらのフレームワーク領域は、通常、CDRよりも保存されており、CDRを支持する足場を形成する。
【0037】
特定されない限り、本明細書で使用されるように、scFvは、例えば、ポリペプチドのN末端およびC末端に関して、いずれかの順序でVおよびV可変領域を有し得、scFvは、V-リンカー-Vを含み得るか、またはV-リンカー-Vを含み得る。
【0038】
「抗体重鎖(antibody heavy chain)」という用語は、抗体分子中に、天然に存在する立体構造(naturally occurring conformations)で存在する2種類のポリペプチド鎖のうち大きい方を指し、概して、抗体が属する免疫グロブリンクラスを決定する。
【0039】
「抗体軽鎖(antibody light chain)」という用語は、抗体分子中に天然に存在する立体構造で存在する2種類のポリペプチド鎖のうちの小さい方を指す。kappa(「κ」)およびlambda(「λ」)軽鎖は、2つの主要な抗体軽鎖アイソタイプを指す。
【0040】
「組換え抗体(recombinant antibody)」という用語は、例えば、細菌、酵母、植物、または哺乳動物細胞によって発現される抗体など、組換えDNA技術を用いて生成される抗体を指す。該用語はまた、抗体をコード化するDNA分子の合成によって生成され、そのDNA分子が抗体タンパク質、または抗体を特定するアミノ酸配列を発現する抗体を意味すると解釈される必要があり、DNAまたはアミノ酸配列は、利用可能、かつ当該技術分野において周知である組換えDNAまたはアミノ酸配列技術を使用して得られている。
【0041】
「抗原(antigen)」または「ag」という用語は、身体に外来の分子を指し、このようなものは、抗体またはT細胞受容体によって結合され得る病原体上に存在する。抗原は、抗原提示細胞(APC)によって提示され得、状況下で免疫応答を誘発し得る。
【0042】
当業者は、事実上すべてのタンパク質またはペプチドを含む任意の高分子が抗原として役立ち得ることを理解するであろう。さらに、抗原は、組換えDNAまたはゲノムDNAに由来し得る。当業者は、免疫応答を誘発するタンパク質をコード化するヌクレオチド配列または部分ヌクレオチド配列を含む任意のDNAが、本明細書で使用される「抗原」をコード化することを理解するであろう。さらに、当業者は、抗原が遺伝子の全長ヌクレオチド配列のみによってコードされる必要はないことを理解するであろう。本開示は、限定されないが、複数の遺伝子の部分ヌクレオチド配列の使用を含み、これらのヌクレオチド配列は、所望の免疫応答を誘発するポリペプチドをコード化するように様々な組み合わせで配列されることが一目瞭然である。さらに、当業者は、抗原が「遺伝子(gene)」によって全くコード化される必要がないことを理解するであろう。抗原が、化学合成によって生成され得るか、また、生物学的試料に由来し得るか、またはポリペプチド以外の巨大分子、例えば、脂質もしくは炭水化物であり得ることが一目瞭然である。このような生物学的試料には、組織試料、腫瘍試料、細胞、または他の生物学的成分を有する流体が含まれるが、これらに限定されない。
【0043】
「抗腫瘍効果(anti-tumor effect)」という用語は、例えば、腫瘍体積の減少、腫瘍細胞の数の減少、転移の数の減少、平均余命の増加、腫瘍細胞増殖の減少、腫瘍細胞生存率の減少、またはがん状態に関連する様々な生理学的症状の改善を含むがこれらに限定されない様々な手段によって明らかにすることができる生物学的効果を指す。「抗腫瘍効果」はまた、第一に、腫瘍の発生の予防における本発明のペプチド、ポリヌクレオチド、細胞、および抗体の能力によって明らかにされ得る。
【0044】
「免疫抑制効果(immunosuppressive effect)」という用語は、正常な免疫機能を阻害または妨害することができる生物学的効果を指す。
【0045】
「ヒト抗体(human antibody)」または「ヒトTCR(human TCR)」は、ヒトもしくはヒト細胞によって産生される抗体のアミノ酸配列に対応するアミノ酸配列を有するか、またはヒト抗体もしくはTCRレパートリーまたはヒト抗体/TCRコード配列(例えば、ヒト供給源から得られるか、またはデノボで設計される)を利用する非ヒト供給源に由来するものである。ヒト抗体およびTCRは、それぞれヒト化抗体およびTCRを特異的に除外する。
【0046】
抗体、TCR、またはその抗原結合フラグメントの標的分子への結合に関して、特定の抗原(例えば、ポリペプチド標的)または特定の抗原上のエピトープに対する、「結合(bind)」、「特異的結合(specific binding)」、「特異的に結合する(specifically binds to)」、「特異的(specific for)」、「選択的に結合する(selectively binds)」、および「選択的に(selective for)」という用語は、非特異的または非選択的相互作用(例えば、非標的分子との)とは測定可能に異なる(measurably different)結合を意味する。特異的結合は、例えば、標的分子への結合を測定し、かつそれを非標的分子への結合と比較することによって測定することができる。特異的結合はまた、標的分子上で認識されるエピトープを模倣する対照分子との競合によって決定することもできる。その場合、標的分子への抗体、TCR、またはその抗原結合フラグメントの結合が対照分子によって競合的に阻害される場合、特異的結合が示される。特異的結合は、本明細書で使用する場合、K値が10-6M、10-7M、10-8M、10-9M、または10-10M未満である親和性を指し得る。親和性は、表面プラズモン共鳴(surface plasmon resonance)(SPR)技術(例えば、BIACORE(登録商標))またはバイオレイヤー干渉法(例えば、FORTEBIO(登録商標))などの本明細書に記載されるものを含む、当該技術分野において公知の共通の方法によって測定することができる。
【0047】
「自己由来(autologous)」という用語は、後に個体に再導入される同じ個体に由来する任意の材料を指す。
【0048】
「同種異系(allogeneic)」という用語は、材料が導入される個体と同じ種の異なる動物または異なる患者に由来する任意の材料を指す。2つ以上の個体は、1つ以上の遺伝子座の遺伝子が同一でない場合、互いに同種であると言われる。いくつかの態様において、同じ種の個体に由来する同種異系物質は、抗原的に相互作用するには遺伝的に十分に異なり得る。
【0049】
「異種(xenogeneic)」という用語は、異なる種の動物に由来する移植片を指す。
【0050】
「処置する(treating)」(およびその変形、例えば「処置する(treat)」または「処置(treatment)」)という用語は、それを必要とする対象における疾患または疾病の自然経過を変更する試みにおける臨床的介入を指す。処置は、予防のため、かつ臨床病理の経過中に行うことができる。処置の望ましい効果には、疾患の発生または再発の予防、症状の緩和、疾患の任意の直接的または間接的な病理学的結果の減少、転移の予防、疾患進行速度の減少、疾患状態の改善もしくは緩和、および寛解もしくは予後の改善が含まれる。
【0051】
本明細書で使用される場合、「治療有効量(therapeutically effective amount)」は、組成物が投与される個体に有益な効果を提供するか、またはそうでなければ有害な非有益事象を低減するのに十分な組成物またはその活性成分の量である。本明細書における「治療有効用量(therapeutically effective dose)」は、それが投与される1つ以上の所望のまたは望ましい(例えば、有益な)効果をもたらす用量であって、そのような投与が所与の期間にわたって1回以上起こる用量を意味する。正確な用量は、処置の目的次第であり、公知の技術を使用して当業者によって確認可能である(例えば、Lieberman,Pharmaceutical Dosage Forms(vols.1-3,1992)、Lloyd,The Art,Science and Technology of Pharmaceutical Compounding(1999)、and Pickar,Dosage Calculations(1999)を参照されたい)
【0052】
本明細書で使用される場合、「キメラ抗原受容体(chimeric antigen receptor)」または「CAR」という用語は、刺激様式(stimulatory manner)で作用し、かつ免疫受容体チロシンベースの活性化モチーフ(immunoreceptor tyrosine-based activation motif)すなわち「ITAM」として知られるシグナル伝達モチーフを含み得る、一次細胞質シグナル伝達配列(「一次シグナル伝達ドメイン(primary signaling domain)」とも呼ばれる)に融合した抗原結合部分(例えば、少なくとも抗原結合ドメインまたはその抗原結合フラグメントを有するポリペプチド)を含む様々なポリペプチドに由来する組換えポリペプチドを指す。本発明において特に有用であるITAM含有一次細胞質シグナル伝達配列の例には、CD3ζ(ゼータ)、FcRγ(ガンマ)、FcRβ(ベータ)、CD3γ、CD3δ(デルタ)、CD3ε(イプシロン)、CD5、CD22、CD79a、CD79b、CD278(「ICOS」としても知られる)、およびCD66dに由来するものが含まれるが、これらに限定されない。CARは、典型的には、抗体型特異性またはTCR型特異性を有するTリンパ球などの、操作された免疫細胞を提供し、IL-2の産生、およびT細胞におけるシグナル伝達に続く標的細胞の溶解を含む、エフェクター細胞のいくつかまたは全ての機能を活性化する。
【0053】
本明細書に記載されるCARの抗原結合ドメインまたはその抗原結合フラグメントは、様々な形態で存在し得、例えば、抗原結合ドメインが、例えば、単一ドメイン抗体フラグメント(sdAb)もしくは重鎖抗体(HCAb)、単鎖Fv抗体(scFv)、天然由来または合成のいずれかを含む、連続したポリペプチド鎖の一部として発現され、抗原に結合する。本明細書に記載のCARの抗原結合ドメインまたはその抗原結合フラグメントは、本明細書に記載の抗体フォーマットまたは抗体フラグメントフォーマットのいずれかを含み得る。本明細書に記載のCARの抗原結合ドメインまたはその抗原結合フラグメントは、キメラまたは人工T細胞受容体(TCR)を含むがこれらに限定されない抗体に由来しない配列を含むことができる。これらのキメラ/人工TCRは、標的抗原を認識するポリペプチド配列を含み得、認識配列は、例えば、TCRまたはscFvに由来する認識配列であり得るが、これらに限定されない。細胞内ドメインポリペプチドは、T細胞を活性化するように作用するもの。キメラ/人工TCRは、例えば、Gross,G.,and Eshhar,Z.,FASEB Journal 6:3370-3378(1992),and Zhang,Y.,et al.,PLOS Pathogens 6:1-13(2010)に記載されている。
【0054】
「CAR-T細胞(CAR-T cell)」は、本明細書に開示される方法に従って形質導入され、かつCAR遺伝子を発現するT細胞であり、例えば、ゲノムにランダムに組み込まれるか、またはCCR5およびAAVS1遺伝子座、もしくはT細胞受容体α定常(TRAC)遺伝子座に意図的に組み込まれる。いくつかの実施形態では、T細胞は、CD4T細胞、CD8T細胞、またはCD4/CD8T細胞である。いくつかの実施形態では、T細胞は制御性T細胞である。いくつかの実施形態では、T細胞は、対象に関して自己由来、同種異系、または異種である。
【0055】
本明細書で使用される場合、「対象(subject)」という用語は、哺乳動物の対象を意味する。「対象」という用語は、免疫応答が誘発され得る、生きている生物(例えば、哺乳動物、ヒト)を含むことが意図される。例示的な対象には、ヒト、サル、イヌ、ネコ、マウス、ラット、ウシ、ウマ、ラクダ、ヤギ、ウサギ、およびヒツジが含まれる。特定の実施形態では、対象はヒトである。「患者(patient)」は、疾患、障害、もしくは疾病に罹患しているか、またはそれらを発症するリスクがあるか、あるいは本明細書に提供される組成物および方法を必要とする対象である。
【0056】
本明細書で使用される場合、「予防する(preventing)」とは、患者における疾患または疾病、例えば、腫瘍形成の予防を指す。例えば、腫瘍または他の形態のがんを発症するリスクがある個体が本発明の方法によって処置され、かつ後に腫瘍または他の形態のがんを発症しない場合、疾患は、その個体において、少なくともある期間にわたって予防される。
【0057】
本明細書で使用される場合、「CD19」という用語は、Bリンパ球抗原CD19、CD19分子(クラスター分化19)、Bリンパ球表面抗原B4、T細胞表面抗原Leu-12、およびCVID3は、ヒトにおいて遺伝子CD19によってコード化される膜貫通タンパク質である。ヒトにおいて、CD19は、形質細胞を除く全てのB系統細胞(B lineage cells)において、および濾胞樹状細胞(follicular dendritic cells)において発現される。CD19は、ヒトB細胞において2つの主要な役割を果たす。これは、細胞質シグナル伝達タンパク質を膜にリクルートするアダプタータンパク質として作用し、CD19/CD21複合体内で作用して、B細胞受容体シグナル伝達経路の閾値を減少させる。それがすべてのB細胞に存在することから、Bリンパ球の発生、リンパ腫診断のバイオマーカーであり、白血病やリンパ腫の免疫療法の標的として利用できる。
【0058】
「パッケージ挿入物(package insert)」という用語は、そのような治療用または診断用製品の使用に関する指示、使用法、用量、投与、併用療法、禁忌、および/または警告に関する情報を含む、治療用または診断用製品(例えば、キット)の市販のパッケージに慣習的に含まれる指示書を指すために使用される。
【0059】
「細胞傷害性薬剤(cytotoxic agent)」という用語は、本明細書で使用される場合、細胞機能を阻害または予防し、および/あるいは細胞死または破壊を引き起こす物質を指す。
【0060】
「化学療法剤(chemotherapeutic agent)」は、がんの処置に有用な化合物を指す。化学療法剤には、「抗ホルモン剤(anti-hormonal agents)」または「内分泌療法剤(endocrine therapeutics)」が含まれ、これらは、がんの成長を促進することができるホルモンの効果を制御、低減、遮断、または阻害するように作用する。
【0061】
「腫瘍(tumor)」という用語は、悪性であろうと良性であろうと、すべての新生物細胞の成長および増殖、ならびにすべての前がん細胞や前がん組織およびがん細胞やがん組織を指す。「がん(cancer)」、「がんの(cancerous)」、「細胞増殖性障害(cell proliferative disorder)」、「増殖性障害(proliferative disorder)」、および「腫瘍」という用語は、本明細書で言及される場合、相互排他的ではない。「細胞増殖性障害」および「増殖性障害」という用語は、ある程度の異常な細胞増殖に関連する障害を指す。いくつかの実施形態では、細胞増殖性障害はがんである。いくつかの態様では、腫瘍は固形腫瘍である。いくつかの態様では、腫瘍は血液悪性腫瘍(血液腫瘍)である。
【0062】
「医薬組成物(pharmaceutical composition)」という用語は、活性成分の生物学的活性を可能にし、かつ/またはその中に含有される生物学的実体(例えば、細胞)の生存率を維持もしくは改善して、対象を処置するのに有効であるような形態であり、および医薬組成物中に提供される量で対象に対して許容されないほど有毒である追加の成分を含有しない調製物を指す。
【0063】
「薬学的に許容される担体(pharmaceutically acceptable carrier)」という用語には、生理食塩水、溶媒、分散媒、コーティング、抗菌剤および抗真菌剤、等張剤、ならびに吸収遅延剤など、薬学的投与に適合するものが含まれる。いくつかの実施形態では、薬学的に許容される担体は、リン酸緩衝生理食塩水、生理食塩水、クレブス緩衝液(Krebs buffer)、タイロード溶液(Tyrode’s solution)、造影剤、もしくはオムニパーク、またはそれらの混合物である。「薬学的に許容される担体(pharmaceutically acceptable carrier)」という用語はまた、滅菌ミトコンドリア緩衝液(300mMスクロース、10mM K+-HEPES(カリウム緩衝(4-(2-ヒドロキシエチル)-l-ピペラジンエタンスルホン酸)、pH7.2)、1mM K+-EGTA(カリウム緩衝エチレングリコールテトラ酢酸、pH8.0)。該用語は、呼吸緩衝液(250mMスクロース、2mM KH2PO4、10mM MgCh、20mM K-15 HEPES緩衝液(pH7.2)、および0.5mM K-EGTA(pH8.0))をさらに含む。該用語は、T細胞培地、例えば、RPMI 1640培地GlutaMAX(商標)Supplement 500ml(ThermoFisher、61870010)をさらに含む。
【0064】
「調節する(modulate)」および「調節(modulation)」という用語は、列挙された変数を減少または阻害することか、あるいは、活性化または増加させることを指す。
【0065】
「増加する(increase)」、「活性化する(activate)」、および「増強する(enhance)」という用語は、列挙された変数の5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、87%、90%、95%、98%、99%、100%、1.5倍、2倍、2.5倍、3倍、3.5倍、4倍、4.5倍、5倍、5.5倍、6倍、6.5倍、7倍、7.5倍、8倍、8.5倍、9倍、9.5倍、10倍、15倍、20倍、25倍、30倍、35倍、40倍、45倍、50倍、55倍、60倍、65倍、70倍、75倍、80倍、85倍、90倍、95倍、100倍、またはそれより大きい増加を指す。
【0066】
「低減する(reduce)」および「阻害する(inhibit)」という用語は、列挙された変数の10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、2倍、3倍、4倍、5倍、10倍、15倍、20、倍25倍、30倍、35倍、40倍、45倍、50倍、60倍、70倍、80倍、90倍、100倍、またはそれより大きい減少を指す。
【0067】
「アゴナイズする(agonize)」という用語は、受容体の活性化に関連する生物学的応答を誘導するための受容体シグナル伝達の活性化を指す。「アゴニスト(agonist)」は、受容体に結合し、受容体をアゴナイズする実体である。
【0068】
「アンタゴナイズする(antagonize)」という用語は、受容体の活性化に関連する生物学的応答を阻害するための受容体シグナル伝達の阻害を指す。「アンタゴニスト(antagonist)」は、受容体に結合し、受容体をアンタゴナイズする実体である。
【0069】
「免疫細胞(immune cells)」という用語は、感染またはがんなどの疾患から生物を保護するための免疫系に属する細胞を指す。「免疫細胞(Immune cells)」は、自然免疫応答と適応免疫応答との間に分類される。
【0070】
「免疫細胞の集団(population of immune cells)」または「適応免疫細胞の集団(population of adaptive immune cells)」という用語は、免疫細胞または適応免疫細胞の異種群(heterogenous group )を指す。
【0071】
「エフェクターT細胞(effector T cell)」および「メモリーT細胞(memory T cell)」は、Tヘルパー(すなわち、CD4)細胞および細胞傷害性(すなわち、CD8)T細胞を含む。CD4エフェクターT細胞は、典型的には、B細胞の形質細胞およびメモリーB細胞への成熟、ならびに細胞傷害性T細胞およびマクロファージの活性化を含む、いくつかの免疫学的プロセスの発生に寄与する。CD8エフェクターT細胞は、典型的には、ウイルス感染細胞および腫瘍細胞を死滅させる。CD8メモリーT細胞は、典型的には、増強されたリコール能力を介して、再感染またはがん再発に対する長期保護を提供する。エフェクターT細胞に関するさらなる情報については、参照によりその全体が援用される、Seder and Ahmed,2003を参照されたい(Seder and Ahmed,2003,“Similarities and difference in CD4+ and CD8+ effector and memory T cell generation”,Nat Immunol 4:835-42)。CD8エフェクターメモリー細胞は、表面マーカーCD62L-、CD45RA+、CD45RO-を発現する。
【0072】
用語「セントラルメモリーT細胞」(「Tcm細胞」)は、表面マーカーCD62L+、CD45RA-、CD45RO+を発現する細胞を指す。CD62Lを構成的に発現するヒトTcm細胞は、高内皮細静脈(HEV)を通じた細胞溢出および二次リンパ器官のT細胞領域への遊走に必要とされる。Tcm細胞は、同じ抗原に2回目に遭遇した際に、リコール応答を効率的に媒介する。
【0073】
CD8エフェクターメモリー細胞などの「エフェクターメモリセル(effector memory cells)」という用語は、表面マーカーCD62L-、CD45RA-、CD45RO+を発現し、炎症を起こした末梢組織に遊走し、エフェクター機能を示すことができる細胞を指す。
【0074】
「メモリー様T細胞(memory-like T cells)」などの、「メモリー様細胞(memory-like cell)」という用語は、メモリー細胞の特徴および特性を示す細胞を指す。それらは、1つ以上の表面マーカー発現を模倣し、リコール能力の増強、生存率、自己複製などのメモリー細胞の少なくとも1つ以上の特徴を示し得る。例えば、急性感染症の存在下では、T細胞は、その表面発現および挙動に応じて記憶として分類することができる。いくつかのT細胞は、抗腫瘍応答中に記憶様特性を示す(Shiki Takamura,International Immunology,Volume 32,Issue 9,1 September 2020,Pages 571-581)。
【0075】
「Tscm細胞(Tscm cell)」または「幹細胞様メモリー細胞(stem cell-like memory cells)」という用語は、その最も早期かつ長期間持続する発生段階にあり、幹細胞様特性を示し、ナイーブT細胞とセントラルメモリーT細胞との間の遺伝子プロファイルを示すメモリー細胞を指す。幹細胞様メモリー細胞は、表面マーカーCD62L+、CD45RA+、CD45RO+を発現する。
【0076】
「Trm細胞(Trm cell)」または「組織常在性T細胞(tissue-resident T cell)」は、再循環することなく上皮および粘膜組織(皮膚、粘膜、肺、脳、膵臓、胃腸管)を占有する長期メモリーT細胞のサブセットを指す。Trm細胞は、血液、二次リンパ器官のT細胞ゾーン、リンパ組織、および非リンパ組織の間で再循環するセントラルメモリーT細胞(TCM)およびエフェクターメモリーT細胞(TEM)とは転写的に、表現型的に、および機能的に異なる。Trm細胞自体は、常在組織の特殊化のために多様な集団を表す。
【0077】
「ナイーブ細胞(naive cells)」という用語は、休止細胞(resting cells)であり、かつ活性化されていない細胞を指す。例えば、ナイーブT細胞は抗原に遭遇しておらず、APCによって提示されたペプチドをスクリーニングするために生体内を循環している。ナイーブT細胞は、表面マーカーCD62L+、CD45RA+、CD45RO-を発現する。
【0078】
「適応免疫細胞(adaptive immune cell)」という用語は、「適応免疫系(adaptive immune system)」または「後天性免疫系(acquired immune system)」に属し、かつ適応免疫において重要な役割を果たす細胞を指す。適応免疫細胞は免疫細胞のサブセットであり、高度に特殊化された全身性の細胞である。具体的に、リンパ球B細胞およびT細胞は、適応免疫細胞である。適応免疫細胞は、病原体を排除するか、またはそれらの成長を防止する機能を有することができる。適応免疫は、特定の病原体に対する初期応答後に免疫記憶(例えば、メモリーB細胞またはメモリーT細胞)を作り出すことができ、その病原体との将来の遭遇に対する応答の増強をもたらす。「適応免疫細胞(adaptive immune cells)」および「適応細胞(adaptive cells)」という用語は、互換的に使用することができる。
【0079】
「CD4 T細胞(CD4 T cell)」および「CD8 T細胞(CD8 T cell)」という用語は、それぞれCD4陽性T細胞およびCD8陽性T細胞を指す。「CD4 T細胞」、「CD4免疫T細胞(CD4 immune T cell)」、および「CD4免疫細胞(CD4 immune cell)」という用語は、互換的に使用することができる。「CD8 T細胞(CD8 T cell)」、「CD8免疫T細胞(CD8 immune T cell)」、および「CD8免疫細胞(CD8 immune cell)」という用語は、互換的に使用することができる。
【0080】
用語「制御性T細胞」または「Treg」は、例えば、エフェクターT細胞を抑制することによって免疫寛容(immunological tolerance)を調節する細胞を含む。いくつかの態様では、制御性T細胞は、CD4CD25Foxp3表現型を有する。いくつかの態様では、制御性T細胞は、CD8CD25表現型を有する。制御性T細胞に関するさらなる情報については、参照によりその全体が援用される、Nocentini et al.,Br.J.Pharmacol.,2012,165:2089-2099を参照されたい。本明細書で使用される場合、「制御性T細胞(Treg)」という用語は、好ましくは、免疫ホメオスタシスに重要であるCD4+T細胞のサブセットを示す。Tregは、その発生および抑制機能に必須である転写因子フォークヘッドボックスタンパク質P3(Foxp3)の発現によって定義される。Foxp3機能の喪失は、重篤なリンパ増殖性疾患および自己免疫をもたらす。自己免疫および炎症性疾患を予防することに加えて、Tregは、病原体に遭遇した際の、制御された免疫応答を確実にし、それによって免疫病態を予防する。逆に、Tregによる過剰な抑制は、病原体クリアランスを妨害し、慢性感染を促進し得る。加えて、Tregはまた、抗腫瘍免疫応答を抑制し、したがって、腫瘍進行を促進し得る。
【0081】
「樹状細胞(dendritic cell)」という用語は、ナイーブT細胞を活性化し、かつB細胞の増殖および分化を刺激することができるプロフェッショナル抗原提示細胞を指す。
【0082】
「[標的]の発現に関連する疾患」という語句には、[標的]の発現に関連する疾患または[標的]を発現する細胞に関連する疾病、例えば、がんもしくは悪性腫瘍などの増殖性疾患、または固形腫瘍もしくは血液腫瘍などの前がん疾病が含まれるが、これらに限定されない。[標的]の発現に関連する非がん関連適応症には、例えば、自己免疫疾患(例えば、ループス、関節リウマチ、大腸炎)、炎症性障害(アレルギーおよび喘息)、および移植が含まれるが、これらに限定されない。
【0083】
「刺激(stimulation)」という用語は、in vitroでの場合に、その同族リガンドまたは抗原非依存性CD3/CD28ビーズとの刺激ドメインまたは刺激分子(例えば、CARまたはTCR/CD3複合体)の結合によって誘導され、それによってシグナル伝達事象、例えば、限定されないが、TCR/CD3複合体を介したシグナル伝達を媒介する一次応答を指す。刺激は、特定の分子の発現の変化、および/または細胞骨格構造の再編成などを媒介することができる。
【0084】
「刺激分子(stimulatory molecule)」または「刺激ドメイン(stimulatory domain)」という用語は、T細胞シグナル伝達経路などの、シグナル伝達経路の少なくともいくつかの態様について刺激様式で(in a stimulatory way)、TCR/CAR複合体の一次活性化を調節する一次細胞質シグナル伝達配列を提供する、T細胞または操作された免疫細胞(例えば、CARを発現するように操作された免疫細胞)によって発現される分子またはその部分を指す。一態様では、一次シグナルは、例えば、TCR/CD3複合体とペプチドを負荷したMHC分子との結合によって開始され、これにより、増殖、活性化、分化などを含むがこれらに限定されないT細胞応答の媒介がもたらされる。一態様では、一次シグナルは、例えば、CAR(例えば、抗体フラグメントまたはキメラTCR)のその同族抗原またはエピトープへの結合によって開始される。
【0085】
「抗原提示細胞(antigen presenting cell)」または「APC」という用語は、主要組織適合複合体(major histocompatibility complexes)(MHC)と複合体形成した外来抗原をその表面上に提示するアクセサリー細胞(例えば、樹状細胞、マクロファージなど)などの免疫系細胞を指す。T細胞は、それらのT細胞受容体(TCR)を使用してこれらの複合体を認識し得る。APCは、典型的には抗原を処理し、それらをT細胞に提示するが、前処理された抗原性ペプチドを「負荷され(loaded)」得る。
【0086】
「細胞内シグナル伝達ドメイン(intracellular signaling domain)」は、この用語が本明細書で使用される場合、TCRまたはCAR発現T細胞のエフェクター機能などの免疫エフェクター機能を促進するシグナルの生成に関与する分子の細胞内部分を指す。「共刺激分子(costimulatory molecule)」という用語は、共刺激リガンド(costimulatory ligand)と特異的に結合し、それによってT細胞による共刺激応答、例えば、限定されないが、増殖を媒介する、T細胞上の同族結合パートナーを指す。共刺激分子は、効率的な免疫応答に必要とされ得る、抗原受容体またはそれらのリガンド以外の細胞表面分子である。共刺激分子としては、MHCクラスI分子、BTLAおよびTollリガンド受容体、ならびにDAP10、DAP12、CD30、LIGHT、OX40、CD2、CD27、CD28、CDS、ICAM-1、LFA-1(CD11a/CD18)、および4-1BB(CD137)が挙げられるが、これらに限定されない。共刺激細胞内シグナル伝達ドメインは、共刺激分子の細胞内部分であり得る。共刺激分子は、以下のタンパク質ファミリー、TNF受容体タンパク質、免疫グロブリン様タンパク質、サイトカイン受容体、インテグリン、シグナル伝達リンパ球活性化分子(SLAMタンパク質)、および活性化NK細胞受容体で表すことができる。このような分子の例には、CD27、CD28、4-1BB(CD137)、OX40、GITR、CD30、CD40、ICOS、BAFFR、HVEM、リンパ球機能関連抗原-1(LFA-1)、CD2、CD7、LIGHT、NKG2C、SLAMF7、NKp80、CD160、B7-H3、およびCD83と特異的に結合するリガンドなどが含まれる。細胞内シグナル伝達ドメインは、それが由来する分子の細胞内部分全体、または天然細胞内シグナル伝達ドメイン全体、またはその機能的フラグメントを含み得る。「4-1BB」という用語は、GenBank Acc.AAA62478.2として提供されているアミノ酸配列、または非ヒト種、例えばマウス、げっ歯類、サル、類人猿などからの同等の残基を有するTNFRスーパーファミリーのメンバーを指し、「4-1BB共刺激ドメイン」とは、GenBank Acc.AAA62478.2のアミノ酸残基214~255、または非ヒト種、例えばマウス、げっ歯類、サル、類人猿などからの同等な残基と定義される。
【0087】
「コード化する(encoding)」という用語は、ポリヌクレオチド中のヌクレオチドの特定の配列の固有の特性を意味し、遺伝子、cDNA、またはmRNAなどは、ヌクレオチドの定義された配列(例えば、rRNA、tRNA、およびmRNA)またはアミノ酸の定義された配列のいずれかおよびそれから生じる生物学的特性を有する、生物学的プロセスにおける他のポリマーおよび巨大分子の合成のための鋳型として役立つ。したがって、遺伝子、cDNA、またはRNAは、その遺伝子に対応するmRNAの転写および翻訳が細胞または他の生物学的系においてタンパク質を産生する場合、そのタンパク質をコード化する。そのヌクレオチド配列がmRNA配列と同一であり、かつ通常配列表で提供されるコード鎖と、遺伝子またはcDNAの転写の鋳型として使用される非コード鎖の両方は、その遺伝子またはcDNAのタンパク質または他の産物をコード化すると言及することができる。
【0088】
別段の定めがない限り、「アミノ酸配列をコード化するヌクレオチド配列(nucleotide sequence encoding an amino acid sequence)」は、互いの縮重バージョン(degenerate versions)であり、かつ同じアミノ酸配列をコード化する全てのヌクレオチド配列を含む。「タンパク質またはRNAをコード化するヌクレオチド配列」という語句はまた、タンパク質をコード化するヌクレオチド配列がいくつかのバージョンにおいて1つ以上のイントロンを含み得る程度にイントロンを含み得る。
【0089】
「内因性(endogenous)」という用語は、生物、細胞、組織、もしくは系に由来するか、またはその内部で産生される任意の物質を指す。
【0090】
「外因性(exogenous)」という用語は、生物、細胞、組織、もしくは系から導入されるか、またはその外側で産生される任意の物質を指す。患者の場合では、「外因性(exogenous)」という用語は、患者、ドナー、または細胞培養由来の物質を指し得る。例えば、患者の筋肉組織から単離され、その後、患者の自己由来または自家由来(autogenic)であり得る免疫細胞の集団に導入されるミトコンドリアは、外因性であると考えられる。「外因性ミトコンドリア(exogenous mitochondria)」という用語は、自己起源、同種起源、および/または異種起源から単離された任意のミトコンドリアを指し、供給源の性質は、組織、血液、または培養細胞の性質であり得る。
【0091】
「発現(expression)」という用語は、プロモーターによって駆動される特定のヌクレオチド配列の転写および/または翻訳を指す。
【0092】
本明細書で使用される場合、「発現ベクター(expression vector)」という用語は、転写され得る遺伝子産物の少なくとも一部をコード化する核酸配列を含有するベクターを指す。いくつかの場合において、RNA分子は、次いで、タンパク質、ポリペプチド、またはペプチドに翻訳される。他の場合では、これらの配列は、例えば、アンチセンス分子(antisense molecules)またはリボザイムの産生において翻訳されない。発現ベクターは、組換えポリヌクレオチドを組み込むコスミド、プラスミド(例えば、裸のものまたはリポソーム中に含まれるもの)およびウイルス(例えば、レンチウイルス、レトロウイルス、アデノウイルス、およびアデノ随伴ウイルス)を含む、当該技術分野において公知のすべてのものを含む。
【0093】
本明細書で使用される場合、「発現構築物(expression construct)」または「導入遺伝子(transgene)」は、遺伝子産物をコード化する核酸を含有する任意のタイプの遺伝子構築物として定義され、ここで、核酸コード配列(nucleic acid encoding sequence)の一部または全部は、ベクター中に挿入され得る。
【0094】
疾患、障害、または疾病に関して本明細書で使用される場合、「処置(treatment)」、「処置する(treat))」、「処置した(treated)」、または「処置する(treating)」という用語は、予防および/または治療を指す。
【0095】
「レンチウイルス(lentivirus)」という用語は、レトロウイルス科の属(genus of the Retroviridae family)を指す。レンチウイルスは、非分裂細胞(non-dividing cells)に感染することができるという点でレトロウイルスの中で特異であり、それらは宿主細胞のDNAにかなりの量の遺伝情報を送達することができるので、それらは遺伝子送達ベクターの最も効率的な方法の1つである。HIV、SIV、およびFIVはすべてレンチウイルスの例である。
【0096】
「レンチウイルスベクター(lentiviral vector)」という用語は、特に、Milone et al.,Mol.Ther.17(8):1453-1464(2009)に提供されるような自己不活性化レンチウイルスベクターを含む、レンチウイルスゲノムの少なくとも一部に由来するベクターを指す。
【0097】
「相同(homologous)」または「同一性(identity)」という用語は、2つのポリマー分子の間、例えば、2つのDNA分子もしくは2つのRNA分子などの2つの核酸分子の間、または2つのポリペプチド分子の間のサブユニット配列同一性を指す。2つの分子の両方におけるサブユニット位置が同じモノマーサブユニットによって占められる場合、例えば、2つのDNA分子のそれぞれの位置がアデニンによって占められている場合、それらはその位置で相同または同一である。2つの配列間の相同性は、マッチングまたは相同位置の数の直接関数(direct function)であり、例えば、2つの配列中の位置の半分(例えば、長さ10サブユニットのポリマー中の5つの位置)が相同である場合、2つの配列は50%相同であり、位置の90%(例えば、10個のうちの9個)がマッチングしているかまたは相同である場合、2つの配列は90%相同である。
【0098】
本発明の文脈では、通常存在する核酸塩基の以下の略語を使用する。「A」はアデノシン(adenosine)を指し、「C」はシチジン(cytidine)を指し、「G」はグアノシン(guanosine)を指し、「T」はチミジン(thymidine)を指し、「U」はウリジン(uridine)を指す。
【0099】
「作動可能に連結された(operably linked)」または「転写制御(transcriptional control)」という用語は、調節配列と異種核酸配列との間の機能的連結を指し、このことは、後者の発現をもたらす。
【0100】
免疫原性組成物の「非経口(parenteral)」投与という用語には、例えば、皮下(s.c.)、静脈内(i.v.)、筋肉内(i.m.)、鼻腔内もしくは胸骨内注射、腫瘍内、または注入技術が含まれる。
【0101】
「核酸(nucleic acid)」または「ポリヌクレオチド(polynucleotide)」という用語は、一本鎖または二本鎖のいずれかの形態のデオキシリボ核酸(DNA)またはリボ核酸(RNA)およびそのポリマーを指す。特に限定しない限り、該用語は、参照核酸と同様の結合特性を有し、かつ天然に存在するヌクレオチドと同様の様式で代謝される天然ヌクレオチドの公知の類似体を含有する核酸を包含する。別段の指示がない限り、特定の核酸配列はまた、その保存的に修飾された変異体(例えば、縮重コドン置換)、対立遺伝子、オルソログ、SNP、および相補配列、ならびに明示的に示される配列を暗示的に包含する。具体的には、縮重コドン置換は、1つ以上の選択された(または全ての)コドンの第3の位置が混合塩基および/またはデオキシイノシン残基で置換された配列を生成することによって達成され得る(Batzer et al.,Nucleic Acid Res.19:5081 (1991);Ohtsuka et al.,J.Biol.Chem.260:2605-2608(1985);and Rossolini et al.,Mol.Cell.Probes 8:91-98(1994))。本明細書で使用される場合、ポリヌクレオチドには、限定されるものではないが、組換え手段、すなわち、通常のクローニング技術およびポリメラーゼ連鎖反応(PCR)などを用いた、組換えライブラリーまたは細胞ゲノムからの核酸配列のクローニング、ならびに合成手段などを含む、当該技術分野で利用可能な任意の手段によって得られるすべての核酸配列が含まれるが、これらに限定されるものではない。さらに、ポリヌクレオチドは、ポリヌクレオチドの突然変異を含み、当該技術分野で周知の方法によるヌクレオチドまたはヌクレオシドの突然変異を含むが、これらに限定されない。核酸は、1つ以上のポリヌクレオチドを含み得る。
【0102】
「プロモーター(promoter)」という用語は、ポリヌクレオチド配列の特異的転写を開始することができる、細胞の転写機構または導入された合成機構によって認識されるDNA配列を指す。
【0103】
「プロモーター(promoter)/調節配列(regulatory sequence)」という用語は、プロモーター/調節配列に作動可能に連結された遺伝子産物の発現に使用することができる核酸配列を指す。いくつかの例では、この配列はコアプロモーター配列であり得、他の場合では、この配列は、遺伝子産物の発現に必要とされるエンハンサー配列(enhancer sequence)および他の調節エレメント(regulatory element)を含み得る。プロモーター/調節配列は、例えば、組織特異的様式で遺伝子産物を発現するものであり得る。
【0104】
「構成的プロモーター(constitutive promoter)」という用語は、遺伝子産物をコード化または特定するポリヌクレオチドと作動可能に連結された場合に、細胞のほとんどまたはすべての生理学的条件下で細胞において遺伝子産物を産生させるヌクレオチド配列を指す。
【0105】
「誘導性プロモーター(inducible promoter)」という用語は、遺伝子産物をコード化または特定するポリヌクレオチドと作動可能に連結された場合に、実質的にプロモーターに対応する誘導因子が細胞中に存在する場合にのみ、遺伝子産物を細胞中で産生させるヌクレオチド配列を指す。
【0106】
「組織特異的プロモーター(tissue-specific promoter)」という用語は、遺伝子をコード化するかまたは遺伝子によって特定されるポリヌクレオチドと作動可能に連結される場合、細胞がプロモーターに対応する組織型の細胞である場合にのみ、実質的に細胞において遺伝子産物を産生させるヌクレオチド配列を指す。
【0107】
本明細書で使用する場合、「形質転換体(transient)」とは、数時間、数日、または数週間の期間にわたる非組込み導入遺伝子の発現を指し、発現の期間は、ゲノムに組み込まれるか、または宿主細胞中の安定したプラスミドレプリコン内に含有される場合、遺伝子の発現の期間より短い。
【0108】
「シグナル伝達経路(signal transduction pathway)」という用語は、細胞のある部分から細胞の別の部分へのシグナルの伝達において役割を果たす多様なシグナル伝達分子間の生化学的関係を指す。「細胞表面受容体(cell surface receptor)」という語句は、シグナルを受け取り、細胞膜を横切ってシグナルを送ることができる分子および分子の複合体を含む。
【0109】
「実質的に精製された(substantially purified)」細胞という用語は、他の細胞型を本質的に含まない細胞を指す。実質的に精製された細胞はまた、天然に存在する状態で通常関連する他の細胞型から分離された細胞を指す。いくつかの例では、実質的に精製された細胞の集団は、細胞の同質な集団を指す。他の例では、この用語は、単に、天然の状態において天然に関連している細胞から分離された細胞を指す。いくつかの態様では、細胞は、in vitroで培養される。他の態様では、細胞は、in vitroで培養されない。
【0110】
「治療的(therapeutic)」という用語は、本明細書で使用される場合、処置を意味する。治療効果は、疾患状態の低減、抑制、寛解、または根絶によって得られる。
【0111】
「予防(prophylaxis)」という用語は、本明細書で使用される場合、疾患または疾患状態の予防または防御処置を意味する。
【0112】
本発明の文脈では、「腫瘍抗原(tumor antigen)」は、特定の過剰増殖性障害に共通する抗原を指す。特定の態様では、本発明の過剰増殖性障害抗原は、原発性黒色腫または転移性黒色腫、中皮腫、腎細胞がん、胃がん、乳がん、肺がん、卵巣がん、前立腺がん、結腸がん、子宮頸がん、脳腫瘍、肝臓がん、膵臓がん、腎臓がん、子宮内膜がん、および胃がんを含むがこれらに限定されないがんに由来する。
【0113】
「トランスフェクトされた(transfected)」または「形質転換された(transformed)」または「形質導入された(transduced)」という用語は、外因性核酸が宿主細胞に移入または導入されるプロセスを指す。「トランスフェクトされた」または「形質転換された」または「形質導入された」細胞は、外因性核酸でトランスフェクトされたか、形質転換されたか、または形質導入されたものである。細胞は、初代対象細胞およびその子孫を含む。
【0114】
「T細胞枯渇(T cell exhaustion)」および「枯渇T細胞(exhausted T cell)」は、低応答性T細胞または「機能不全」T細胞のいずれかを指す。
【0115】
「活性(activity)」または「免疫細胞の活性(activity of an immune cell)」は、特定の抗原を発現し、その抗原に特異的なTCRまたはサイトカイン産生によって検出される標的細胞に対する細胞傷害活性などの細胞エフェクター機能を指す。それはさらに、代謝活性、増殖および分裂する増殖性能および能力、消耗に抵抗する能力、ならびに抑制活性を指す。
【0116】
細胞または細胞集団の「生存率(survival)」という用語は、細胞持続性、細胞自己複製能、細胞耐久性を指すが、これらに限定されない。細胞生存率は、細胞の生存率および細胞プロセスの完全性を持続および維持するその能力を包含するプロセスとして定義することができる。生存メカニズム(survival mechanisms)は、細胞が適応し、複製、修復、および代謝などの細胞活性を継続することできることを確実にする。
【0117】
T細胞などの免疫細胞の「生存率の増強(enhancement of the survival)」という用語は、例えば、免疫細胞の以下の特性、(i)休止期および再刺激時に生存する能力、(ii)IL-7、IL-15などのインターロイキンに対する応答性(例えば、細胞は、それらのインターロイキンに応答する受容体の発現を増加させる必要があるため、生存するためのシグナルが少なくなり得る)、(iii)活性化誘導細胞死に対する抵抗性(AICD)、(iv)BCL-XL、BCL-2などの抗アポトーシス分子をアップレギュレートすることによるアポトーシスに対する抵抗性、(v)FasおよびFasL発現などのアポトーシス促進性分子(pro-apoptotic molecules)をダウンレギュレートすることによるアポトーシスに対する抵抗性、(vi)Bcl2、Bcl2l2、Mcl1、Bcl2a1d、Birc2、Birc3、Xiap、Cflarなどの特定の遺伝子の発現に影響を与え得る、エピジェネティックな修飾(epigenetic modifications)および転写改変(transcriptional alterations)、(viii)テロメアの長さの1つ以上の増強を示す。
【0118】
「選択を促進する(promoting the selection)」という用語は、免疫細胞または免疫細胞集団の大部分に対する免疫細胞の1つ以上のサブセットの量の増加および/またはいくつかの特性の増強を指す。
【0119】
「分化(differentiation)」または「細胞/細胞分化(cell/cellular differentiation)」という用語は、ある細胞型から別の細胞型に、典型的には、それだけではないが、あまり特殊化されていない型(幹細胞)からより特殊化された型に変化する細胞のプロセスを指す。分化、特に免疫細胞分化は、抗原曝露に応答して起こり得る。分化は、細胞のサイズ、形状、膜電位、代謝活性、およびシグナルに対する応答性を劇的に変化させ得る。
【0120】
「ミトコンドリアで処置された免疫細胞(immune cells treated with mitochondria)」という用語は、ミトコンドリアに曝露された、ミトコンドリアと密接に接触した、ミトコンドリアと共インキュベートされた、またはミトコンドリアと移植された免疫細胞を指し得る。「ミトコンドリア処置(mitochondrial treatment)」という用語は、細胞をミトコンドリアに曝露する行為、または細胞をミトコンドリアと密接に接触させる/配置する行為、または細胞をミトコンドリアと共インキュベートする行為、またはミトコンドリアを細胞に移植する行為を指す。
【0121】
「自己複製能(self-renewal capacity)」または「細胞自己複製能(cell self-renewal capacity)」という用語は、同じ細胞型の細胞を無制限に増やす細胞のプロセスを指す。自己複製は、母細胞のすべての特徴を分割および保持する能力である。自己複製は、細胞の数をほぼ同じにする。
【0122】
「リコール能力(recall capacity)」という用語は、迅速な増殖およびエフェクター細胞への分化をもたらす、メモリー細胞によって引き起こされる二次免疫応答を指す。このリコール応答は、感染症の程度を制御し、疾患を予防する上で重要である。
【0123】
「移植されたミトコンドリア(transplanted mitochondria)」という用語は、標的細胞に実質的に組み込まれた(例えば、細胞に部分的または完全に組み込まれた)外因性ミトコンドリアを指す。「ミトコンドリア移植(mitochondrial transplantation)」、「ミトコンドリアの移植(transplantation of mitochondria)」、または「ミトコンドリアの移入(transfer of mitochondria)」は、外因性ミトコンドリアを宿主細胞に組み込む/移入する行為を指す。
【0124】
範囲.本開示全体にわたって、本開示の様々な態様は、範囲形式で提示することができる。範囲形式での記載は、単に便宜上および簡潔さのためであり、本開示の範囲に対する柔軟性のない制限として解釈される必要がないことを理解されたい。したがって、範囲の記載は、具体的に開示されたすべての可能な部分範囲、ならびにその範囲内の個々の数値を有すると見なされる必要がある。例えば、1~6などの範囲の記載は、1~3、1~4、1~5、2~4、2~6、3~6などの部分範囲、ならびにその範囲内の個々の数、例えば、1、2、2.7、3、4、5、5.3、および6を具体的に開示していると見なされる必要がある。別の例として、95~99%の同一性などの範囲は、95%、96%、97%、98%、または99%の同一性を有するものを含み、96~99%、96~98%、96~97%、97~99%、97~98%、および98~99%の同一性などの部分範囲を含む。これは、範囲の幅にかかわらず適用される。
【0125】
免疫細胞およびそれに関連する組成物の増強
以下、本発明をより詳細に説明する。具体的に、本発明は以下の項目に関する。
1.本開示は、単離された生存可能なミトコンドリアで処理されていない適応免疫細胞、例えばヒト適応免疫細胞と比較して、B細胞またはT細胞、好ましくはCD8免疫細胞またはCD4免疫細胞など、T細胞などの適応免疫細胞、例えば、ヒト適応免疫細胞の生存率を増強し、かつ/またはそれらの選択を促進するのに有効な量で、単離された生存可能なミトコンドリアで処理された免疫細胞、例えばヒト免疫細胞を提供する。
2.本開示は、単離された生存可能なミトコンドリアで処理されていない免疫細胞と比較して、適応免疫細胞、例えばメモリーT細胞のメモリー細胞分化および/またはメモリー細胞選択を促進するのに有効な量で、単離された生存可能なミトコンドリアで処理された免疫細胞、例えばヒト免疫細胞を提供する。
3.具体的に、本開示は、単離された生存可能なミトコンドリアで処理されていない免疫細胞、例えばヒト適応免疫細胞と比較して、メモリーCD8 T細胞の生存率を増強し、かつ/またはメモリーCD8 T細胞の選択を促進するのに有効な量で、単離された生存可能なミトコンドリアで処理された免疫細胞、例えばヒト免疫T細胞などのヒト免疫細胞を提供する。いくつかの特定の態様では、単離された生存可能なミトコンドリアは、単離された生存可能なミトコンドリアで処理されていない免疫細胞、例えばヒト適応免疫細胞と比較して、セントラルメモリーCD8 T細胞の生存率を増強し、かつ/またはセントラルメモリーCD8 T細胞の選択を促進するのに有効な量である。いくつかの他の特定の態様では、単離された生存可能なミトコンドリアは、単離された生存可能なミトコンドリアで処理されていない免疫細胞と比較して、エフェクターメモリーCD8 T細胞の生存率を増強し、および/またはエフェクターメモリーCD8 T細胞の選択を促進するのに有効な量である。
4.具体的に、本開示は、単離された生存可能なミトコンドリアで処理されていない免疫細胞、例えばCD4免疫細胞などのヒト適応免疫細胞と比較して、Treg細胞の生存率を増強し、かつ/またはTreg細胞の選択を促進するのに有効な量で、単離された生存可能なミトコンドリアで処理された免疫細胞、例えばヒトT免疫細胞などのヒト免疫細胞を提供する。
5.本開示はまた、外来性の単離された生存可能なミトコンドリアを含まない適応免疫細胞、例えばヒト適応免疫細胞と比較して、B細胞またはT細胞、好ましくはCD8またはCD4免疫細胞などのT細胞などの適応免疫細胞、例えばヒト適応免疫細胞の生存率を増強し、かつ/またはそれらの選択を促進するのに有効な量で、外来性の単離された生存可能なミトコンドリア(例えば、細胞に部分的にまたは完全に統合されたミトコンドリアを含む)を含む、免疫細胞、例えばヒト免疫細胞を提供する。
6.本開示はさらに、外因性の単離された生存ミトコンドリアを含まない免疫細胞、例えばヒト適応免疫細胞と比較して、適応免疫細胞、例えばメモリーT細胞のメモリー細胞分化および/またはメモリー細胞選択を促進するのに有効な量で、外因性の単離された生存ミトコンドリアを含む免疫細胞、例えばヒト免疫T細胞を提供する。
7.具体的に、本開示は、単離された生存可能なミトコンドリアを含まない免疫細胞、例えばヒト適応免疫細胞と比較して、メモリーCD8 T細胞の生存率を増強し、かつ/またはメモリーCD8 T細胞の選択を促進するのに有効な量で、外因性の単離された生存可能なミトコンドリアを含む免疫細胞、例えばヒトT免疫細胞を提供する。いくつかの特定の態様では、単離された生存可能なミトコンドリアは、外因性の単離された生存可能なミトコンドリアを含まない免疫細胞と比較して、セントラルメモリーCD8 T細胞の生存率を増強し、かつ/またはセントラルメモリーCD8 T細胞の選択を促進するのに有効な量である。いくつかの他の特定の態様では、単離された生存可能なミトコンドリアは、単離された生存可能なミトコンドリアを含まない免疫細胞と比較して、エフェクターメモリーCD8 T細胞の生存率を増強し、かつ/またはエフェクターメモリーCD8 T細胞の選択を促進するのに有効な量である。
8.具体的に、本開示は、外因性の単離された生存可能なミトコンドリアを含まない免疫細胞、例えばCD4免疫細胞などのヒト適応免疫細胞と比較して、Treg細胞の生存率を増強し、かつ/またはTreg細胞の選択を促進するのに有効な量で、外因性の単離された生存可能なミトコンドリアを含む免疫細胞、例えばヒトT免疫細胞などのヒト免疫細胞を提供する。
9.また、本明細書には、前記項目のいずれか1つに記載の免疫細胞、例えば、ヒト適応免疫細胞のヒト免疫細胞などを含む集団も提供される。
10.本開示はまた、単離された生存可能ミトコンドリアで処理されていない適応免疫細胞、例えばヒト適応免疫細胞と比較して、B細胞またはT細胞、好ましくはCD8免疫細胞またはCD4免疫細胞などのT細胞などの適応免疫細胞、例えば、ヒト適応免疫細胞の生存率を増強し、かつ/またはそれらの選択を促進するのに有効な量で、単離された生存可能ミトコンドリアで処理された、ヒト免疫細胞、例えばヒト適応免疫細胞などの免疫細胞、または免疫細胞の組成物を含む組成物を提供する。具体的に、組成物は、単離された生存可能なミトコンドリアで処理されていない免疫細胞、例えば、ヒト適応免疫細胞と比較して、セントラルメモリーCD8 T、エフェクターメモリーCD8 T細胞、またはそれらの組み合わせなど、メモリーCD8 T細胞の生存率を増強および/または選択を促進するのに有効な量で、単離された生存可能なミトコンドリアで処理された免疫細胞、例えば、ヒト免疫細胞を含む。具体的に、組成物は、単離された生存可能なミトコンドリアで処理されていないCD4免疫細胞などの免疫細胞、例えば、ヒト適応免疫細胞と比較して、Treg細胞の生存率を増強および/またはその選択を促進するのに有効な量で、単離された生存可能なミトコンドリアで処理されたヒト免疫細胞、例えば、ヒトT細胞などの免疫細胞を含む。
11.本開示は、単離された生存可能なミトコンドリアで処理されていない免疫細胞と比較して、適応免疫細胞、例えばメモリーT細胞のメモリー細胞分化および/またはメモリー細胞選択を促進するのに有効な量で、単離された生存可能なミトコンドリアで処理された免疫細胞を含む組成物、または免疫細胞、例えばヒト免疫細胞の組成物を提供する。
12.本開示は、免疫細胞を含む組成物または免疫細胞の組成物、例えばヒト免疫細胞を提供し、免疫細胞が、外因性の単離された生存可能なミトコンドリアを含まない適応免疫細胞、例えばヒト適応免疫細胞と比較して、B細胞またはT細胞、好ましくはCD8免疫細胞またはCD4免疫細胞などのT細胞などの、例えばヒト適応免疫細胞の生存率を増強し、かつ/またはそれらの選択を促進するのに有効な量で、外因性の単離された生存可能なミトコンドリアを含む。具体的に、組成物は、外因性の単離された生存可能なミトコンドリアを含まない免疫細胞、例えば、ヒト適応免疫細胞と比較して、セントラルメモリーCD8 T細胞、エフェクターメモリーCD8 T細胞、またはそれらの組み合わせなどのメモリーCD8 T細胞の生存率を増強し、かつ/またはそれの選択を促進するのに有効な量で、外因性の単離された生存可能なミトコンドリアを含む、免疫細胞、例えば、ヒト免疫細胞を含む。具体的に、組成物は、外因性の単離された生存可能なミトコンドリアを含まないCD4免疫細胞などの免疫細胞、例えばヒト免疫細胞と比較して、Treg細胞の生存率を増強し、かつ/またはその選択を促進するのに有効な量で、外因性の単離された生存可能なミトコンドリアを含む免疫細胞、例えばヒト免疫細胞を含む。
13.本開示は、免疫細胞、例えばヒト免疫細胞を含む組成物または免疫細胞、例えばヒト免疫細胞の組成物を提供し、免疫細胞は、単離された生存可能なミトコンドリアを含まない免疫細胞と比較して、適応免疫細胞、例えばメモリーT細胞のメモリー細胞分化および/またはメモリー細胞選択を促進するのに有効な量で、外因性の単離された生存可能なミトコンドリアを含む。
14.本開示は、ミトコンドリアで処理されていない免疫細胞、例えばヒト免疫細胞の集団と比較して、B細胞またはT細胞、好ましくはCD8免疫細胞またはCD4免疫細胞などのT細胞などの適応免疫細胞の集団、例えばヒト適応免疫細胞の集団の生存率を増強し、かつ/またはそれらの選択を促進するのに有効な量で、単離された生存ミトコンドリアで処理された免疫細胞、例えばヒト免疫細胞を含む組成物、または免疫細胞、例えばヒト免疫細胞の組成物を提供する。
15.本開示は、単離された生存可能なミトコンドリアで処理されていない免疫細胞の集団と比較して、適応免疫細胞、例えば、メモリーT細胞の集団のメモリー細胞分化を増強し、かつ/またはメモリー細胞選択を促進するのに有効な量で、単離された生存可能なミトコンドリアで処理された、免疫細胞、例えば、ヒト免疫細胞を含む組成物、または免疫細胞、例えば、ヒト免疫細胞の組成物を提供する。
16.本開示は、単離された生存可能ミトコンドリアで処理されていない免疫細胞、例えば、適応免疫細胞と比較して、セントラルメモリーCD8 T細胞、エフェクターメモリーCD8 T細胞、またはそれらの組み合わせなどのメモリーCD8 T細胞の集団のメモリー細胞分化を増強し、かつ/またはその選択を促進するのに有効な量で、単離された生存可能ミトコンドリアで処理された、T細胞などの免疫細胞、例えば、ヒトT細胞を含む組成物を提供する。いくつかの態様では、ミトコンドリアは、メモリー適応細胞、例えばセントラルメモリーCD8 T細胞、またはエフェクターメモリーCD8 T細胞の割合を少なくとも20%、好ましくは最後の30%、より好ましくは少なくとも50%増強することができる。
17.本開示はまた、免疫細胞、例えばヒト免疫細胞を含む組成物、または免疫細胞、例えばヒト免疫細胞の組成物を提供し、免疫細胞が、外因性の単離されたミトコンドリアを含まない免疫細胞、例えばヒト免疫細胞の集団と比較して、B細胞またはT細胞、好ましくはCD8免疫細胞またはCD4免疫細胞などのT細胞などの適応免疫細胞、例えばヒト適応免疫細胞の集団の生存率を増強し、および/またはそれらの選択を促進するのに有効な量で、外因性の単離された生存可能なミトコンドリアを含む。
18.本開示は、免疫細胞、例えばヒト免疫細胞を含む組成物、または免疫細胞の組成物を提供し、免疫細胞が、外因性ミトコンドリアを含まない免疫細胞、例えばメモリーT細胞の集団と比較して、メモリー細胞の分化を増強し、かつ/または適応免疫細胞の集団内の適応免疫細胞のメモリー細胞選択を促進するのに有効な量の外因性単離された生存ミトコンドリアを含む。
19.具体的に、本開示は、外因性の単離された生存可能なミトコンドリアを含まない免疫細胞、例えば適応免疫細胞と比較して、セントラルメモリーCD8 T細胞、エフェクター記憶CD8 T細胞、またはそれらの組み合わせなどのメモリーCD8 T細胞の集団の生存率を増強する、かつ/またはその選択を促進するのに有効な量で、外因性の単離された生存可能なミトコンドリアを含む、免疫細胞、例えばヒトT細胞などのヒト免疫細胞を含む組成物を提供する。いくつかの態様では、ミトコンドリアは、メモリー適応細胞、例えばセントラルメモリーCD8T細胞またはエフェクターメモリーCD8T細胞の割合を少なくとも20%、好ましくは少なくとも30%、より好ましくは少なくとも50%増強することができる。
20.前述の項目のいずれか1つに記載の組成物は、固形状または液体状、好ましくは液体状で製剤化することができる。
21.いくつかの態様では、前述の項目のいずれか1つに記載のメモリー免疫細胞(例えば、セントラルメモリーCD8 T細胞およびエフェクターメモリーCD8 T細胞)またはメモリー様細胞などの適応免疫細胞の生存率は、適応免疫細胞の自己複製能である。いくつかの他の態様では、前述の項目のいずれか1つに記載のミトコンドリアによって選択が促進された適応免疫細胞の増強された生存率は、改善された自己複製能である。
22.いくつかの態様では、前述の項目のいずれか1つに記載のメモリー免疫細胞(例えば、セントラルメモリーCD8 T細胞およびエフェクターメモリーCD8 T細胞)、またはメモリー様免疫細胞などの適応免疫細胞の生存率は、休止期および再刺激時の適応免疫細胞の生存能力である。いくつかの他の態様では、前述の項目のいずれか1つに記載のミトコンドリアによって選択が促進された適応免疫細胞の生存率の増強は、休止期および再刺激時の生存能力の改善である。
23.いくつかの態様では、前述の項目のいずれか1つに記載のメモリー免疫細胞(例えば、セントラルメモリーCD8 T細胞およびエフェクターメモリーCD8 T細胞)またはメモリー様免疫細胞などの適応免疫細胞の生存率は、IL-7および/またはIL-15のシグナル伝達などのインターロイキンシグナル伝達に応答する適応免疫細胞の能力にある。いくつかの他の態様では、前述の項目のいずれか1つに記載のミトコンドリアによって選択が促進された適応免疫細胞の生存率の増強は、IL-7および/またはIL-15のシグナル伝達などのインターロイキンシグナル伝達に応答する能力の改善である。
24.いくつかの態様では、前述の項目のいずれか1つに記載のメモリー免疫細胞(例えば、セントラルメモリーCD8 T細胞およびエフェクターメモリーCD8 T細胞)またはメモリー様免疫細胞などの適応免疫細胞の生存率は、適応免疫細胞が活性化誘導細胞死(AICD)に抵抗する能力にある。いくつかの他の態様では、適応免疫細胞の生存率の増強は、先行する項目のいずれか1つに記載のミトコンドリアによって選択が促進された適応免疫細胞の能力の改善に起因し、適応免疫の活性化誘導細胞死(AICD)に抵抗する能力の改善である。
25.いくつかの態様では、前述の項目のいずれか1つに記載のメモリー免疫細胞(例えば、セントラルメモリーCD8 T細胞およびエフェクターメモリーCD8 T細胞)、またはメモリー様免疫細胞などの適応免疫細胞の生存率は、BCL-XL、BCL-2などの抗アポトーシス分子をアップレギュレートすることによってか、または、FasおよびFasL発現などの、アポトーシス促進性分子をダウンレギュレートすることによって、アポトーシスに抵抗する適応免疫細胞の能力にある。いくつかの態様では、前述の項目のいずれか1つに記載のミトコンドリアによって選択が促進された適応免疫細胞の生存の増強は、BCL-XL、BCL-2などの抗アポトーシス分子をアップレギュレートすることによってか、またはFasおよびFasL発現などの、アポトーシス促進性分子をダウンレギュレートすることによって、アポトーシスに抵抗する能力の改善にある。
26.いくつかの態様では、前述の項目のいずれか1つに記載のメモリー免疫細胞(例えば、セントラルメモリーCD8 T細胞およびエフェクターメモリーCD8 T細胞)またはメモリー様免疫細胞などの適応免疫細胞の生存率は、Bcl2、Bcl2l2、Mcl1、Bcl2a1d、Birc2、Birc3、Xiap、およびCflarからなる群から選択される遺伝子の発現に影響を与えるエピジェネティックな修飾および転写改変を発現する適応免疫細胞の能力にある。いくつかの態様では、前述の項目のいずれか1つに記載のミトコンドリアによって選択が促進された適応免疫細胞の生存率の増強は、Bcl2、Bcl2l2、Mcl1、Bcl2a1d、Birc2、Birc3、XiapおよびCflarからなる群から選択される遺伝子の発現に影響を与えるエピジェネティックな修飾および転写改変を産生する能力の改善にある。
27.いくつかの態様では、前述の項目のいずれか1つに記載のメモリー免疫細胞(例えば、セントラルメモリーCD8 T細胞およびエフェクターメモリーCD8 T細胞)またはメモリー様免疫細胞などの適応免疫細胞の生存率は、適応免疫細胞がその長いテロメアを維持する能力にある。いくつかの態様では、前述の項目のいずれか1つに記載のミトコンドリアのその選択が促進された適応免疫細胞の増強された生存率は、単離された生存可能なミトコンドリアで処理されていないか、または外因性の単離された生存可能なミトコンドリアを含まない免疫細胞と比較して、長いテロメアを維持する改善された能力にある。
28.いくつかの態様では、前述の項目のいずれか1つに記載のメモリー免疫細胞(例えば、セントラルメモリーCD8 T細胞およびエフェクターメモリーCD8 T細胞)またはメモリー様免疫細胞などの適応免疫細胞の生存率は、単離された生存可能なミトコンドリアで処理されていないか、または外因性ミトコンドリアを含まない免疫細胞と比較して、適応免疫細胞が増殖するか、または持続性を示す能力、またはそれらの組み合わせにある。
29.いくつかの態様では、適応免疫細胞、例えば、前述の項目のいずれか1つに記載のメモリー免疫細胞(例えば、セントラルメモリーCD8 T細胞およびエフェクターメモリーCD8 T細胞)、またはメモリー様免疫細胞の生存率は、単離物生存可能なミトコンドリアで処理されていないか、または外因性ミトコンドリアを含まない免疫細胞と比較して、適応免疫細胞の消耗の減少にある。
30.いくつかの態様では、前述の項目のいずれか1つに記載の組成物は、医薬組成物である。いくつかの他の態様では、医薬組成物は、少なくとも1つの薬学的に許容される担体をさらに含む。いくつかの態様では、薬学的に許容される担体は、ヒト免疫細胞への送達用に製剤化される。いくつかの態様では、薬学的に許容される担体は、ヒト組織および/または臓器への送達用に製剤化される。薬学的に許容される担体には、薬学的投与に適合する、生理食塩水、分散媒、等張剤などが含まれるが、これらに限定されない。いくつかの態様では、薬学的に許容される担体は、リン酸緩衝生理食塩水、生理食塩水、クレブス緩衝液、タイロード溶液、造影剤、もしくはオムニパック、またはそれらの混合物である。いくつかの他の態様では、担体は、300mMスクロース、10mM K+-HEPES(カリウム緩衝(4-(2-ヒドロキシエチル)-l-ピペラジンエタンスルホン酸)、pH7.2)、1mM K+-EGTA、(カリウム緩衝化エチレングリコールテトラ酢酸、pH8.0)を含む緩衝液、250mMスクロース、2mM KH2PO4、10mM MgCh、20mM K-15 HEPES緩衝液(pH7.2)、および0.5mM K-EGTA(pH8.0)、またはRPMI1640培地GlutaMAX(商標)Supplement 500ml(ThermoFisher、61870010)を含む緩衝液である。
31.いくつかの態様では、前述の項目のいずれかに1つの記載の免疫細胞、例えば、適応免疫細胞などのヒト免疫細胞は、生物学的起源の血液および他の液体試料、固形組織試料、それに由来する細胞の組織培養物およびその子孫、生物学的試料から単離された細胞の群から選択される生体試料に由来する。
32.いくつかの態様では、前述の項目のいずれか1つに記載の免疫細胞は、生存可能な真核細胞から産生される。いくつかの他の態様では、免疫細胞は、in vitroまたはex vivoで産生される。
33.いくつかの態様では、前述の項目のいずれか1つに記載の免疫細胞、例えば、適応免疫細胞などのヒト免疫細胞は、同種免疫細胞または自己免疫細胞である。いくつかの態様では、免疫細胞は異種である。
34.いくつかの態様では、前述の項目のいずれか1つに記載の免疫細胞、例えば適応免疫細胞などのヒト免疫細胞は、間葉系幹細胞(mesenchymal stem cell)または人工多能性幹細胞(iPSC)を含む幹細胞から産生される。
35.いくつかの態様では、前述の項目のいずれかに係る免疫細胞は、好ましくは哺乳動物免疫細胞、より好ましくはヒト免疫細胞である。
36.いくつかの態様では、免疫細胞は、in vitroで、操作または増殖された天然の免疫細胞を含み得るが、これらに限定されない。
37.いくつかの態様では、前述の項目のいずれか1つに記載の免疫細胞は、好ましくは、Bリンパ球またはTリンパ球、好ましくはTリンパ球などの適応免疫細胞である。いくつかの態様では、適応免疫細胞は、in vitroで増殖されたBリンパ球またはTリンパ球、好ましくはin vitroで増殖されたTリンパ球である。
38.いくつかの態様では、前述の実施形態のいずれか1つに記載の免疫細胞は、限定されないが、アルファ-ベータT細胞(αβT細胞)、ガンマ-デルタT細胞(γδT細胞)、CD4免疫細胞、CD8免疫細胞、またはそれらの組み合わせなどのTリンパ球である。いくつかの態様では、Tリンパ球は、ナイーブT細胞、エフェクターT細胞、メモリーT細胞(例えば、組織常在性メモリー(Trm)細胞、Tscm細胞、セントラルメモリー細胞、およびエフェクターメモリー細胞)、メモリー様T細胞、またはそれらの組み合わせである。いくつかの他の態様では、T細胞は、好ましくはメモリーT細胞である。いくつかの態様では、前述の項目のいずれか1つに記載の免疫細胞、例えばヒト免疫細胞は、多能性幹細胞由来免疫細胞である。いくつかの他の態様では、Tリンパ球は、ヘルパーT細胞(T)、細胞傷害性T細胞(CTL)、調節性T(Treg)細胞、メモリーT細胞、またはそれらの組み合わせである。いくつかの他の態様では、T細胞は、好ましくは制御性T細胞(Treg)である。いくつかの態様では、免疫細胞は、粘膜関連インバリアントT細胞である。いくつかの他の態様では、免疫細胞は、血液中を循環するT細胞または腫瘍浸潤リンパ球(TIL)である。
39.いくつかの態様では、前述の項目のいずれかの免疫細胞は、好ましくは、血液中を循環するCD8 T細胞、腫瘍浸潤リンパ球(TIL)、例えばCD8 TIL、ナイーブCD8 T細胞、エフェクターCD8 T細胞、メモリーCD8 T細胞(例えば、Trm CD8 T細胞、Tscm CD8 T細胞、セントラルメモリーCD8 T細胞およびエフェクターメモリーCD8 T細胞)、メモリー様CD8 T細胞、またはそれらの組み合わせなどであるがこれらに限定されない、CD8 T細胞である。いくつかの好ましい態様では、CD8 T細胞はTILである。いくつかのより好ましい態様では、免疫細胞は、メモリーCD8 T細胞、特に、エフェクターメモリーCD8 T細胞、セントラルメモリーCD8 T細胞、またはそれらの組み合わせである。いくつかの好ましい態様では、免疫細胞は、メモリー様CD8 T細胞である。
40.いくつかの態様では、T細胞は、ナイーブCD4 T細胞、エフェクターCD4 T細胞(例えば、Th1、Th2、またはTh17)、メモリーCD4 T細胞、メモリー様CD4 T細胞、調節性CD4 T細胞(Treg)、血液中を循環するCD4 T細胞、腫瘍浸潤リンパ球(TIL)CD4 T細胞、またはそれらの組み合わせなどのCD4 T細胞である。好ましくは、CD4 T細胞はTreg細胞、例えばヒト調節性(Treg)CD4 T細胞である。
41.いくつかの態様では、前述の項目のいずれか1つに記載の免疫細胞、例えば、ヒト免疫細胞は、CAR-T細胞、例えば、CD8 CAR-T細胞などがキメラ抗原受容体(「CAR」)および/または人工T細胞受容体(「TCR」)サブユニットを発現する操作された免疫細胞が含まれるが、これらに限定されない。CAR T細胞は、典型的には、抗原結合部分(例えば、抗原結合ドメインまたはその抗原結合フラグメント)、膜貫通成分、およびその同族リガンド(cognate ligands)に結合する抗原結合部分に応答して免疫細胞を活性化するように選択された一次細胞質シグナル伝達配列を含む。いくつかの態様では、キメラ抗原受容体(CAR)の基本成分としては、以下、(1)腫瘍特異的モノクローナル抗体の可変重鎖(V)および可変軽鎖(V)は、T細胞受容体複合体由来のCD3ζ鎖とインフレームで融合される。(2)VおよびVは、通常、柔軟なグリシン-セリンリンカーを用いて互いに連結され、次いでスペーサー(例えば、CD8aストークまたはC2-C3定常ドメイン)によって膜貫通ドメインに結合されて、腫瘍抗原と容易に相互作用できるように細胞表面からscFvを伸長させる。いくつかの実施形態では、外因性ミトコンドリアを含む操作された免疫細胞は、CAR-T細胞である。
42.いくつかの態様では、CARまたは人工TCRサブユニットは、レンチウイルスまたはアデノウイルスまたはレトロウイルスなどのウイルス、ナノ粒子、あるいは標的化部分に作動可能に結合されたナノ粒子を使用して免疫細胞に導入される。いくつかの態様では、CARおよび/または人工TCRサブユニットをコード化する外因性ポリヌクレオチドは、in vitroで免疫細胞に導入される。いくつかの態様では、ベクターはウイルスベクターである。いくつかの態様では、ウイルスベクターは、レトロウイルス、レンチウイルス、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス、またはハイブリッドベクターに由来する。
43.いくつかの態様では、前述の項目のいずれか1つに記載の免疫細胞または免疫細胞の集団は、B細胞成熟抗原(腫瘍壊死因子受容体スーパーファミリーメンバー17としても知られるBCMA、TNFRSF17)、CD19、CD123、CD22、CD30、CD171、CS-1(CD2サブセット1、CRACC、SLAMF7、CD319、および19A24とも呼ばれる)、C型レクチン様分子-1(CLL-1またはCLECL1)、CD33、上皮成長因子受容体変異体III(EGFRvIII)、ガングリオシドG2(GD2)、ガングリオシドGD3、Tn抗原(Tn AgまたはGalNAca-Ser/Thr)、前立腺特異的膜抗原(PSMA)、受容体チロシンキナーゼ様オーファン受容体1(ROR1)、Fms様チロシンキナーゼ3(FLT3)、腫瘍関連糖タンパク質72(TAG72)、CD38、CD44v6、がん胎児性抗原(CEA)、上皮細胞接着分子(EpCAM)、B7H3(CD276)、KIT(CD117)、インターロイキン-13受容体サブユニットα-2(IL-13Ra2またはCD213A2)、Mesothelin、インターロイキン11受容体アルファ(IL-11Ra)、前立腺幹細胞抗原(PSCA)、プロテアーゼセリン21(TestisinまたはPRSS21)、血管内皮増殖因子受容体2(VEGFR2)、ルイスY抗原、CD24、血小板由来増殖因子受容体ベータ(PDGFR-ベータ)、 ステージ特異的胚性抗原-4(SSEA-4)、CD20、葉酸受容体アルファ、 受容体チロシン-タンパク質キナーゼERBB2(Her2/neu)、 細胞表面に関連するムチン1(MUC1)、 上皮成長因子受容体(EGFR)、 神経細胞接着分子(NCAM)、 プロスターゼ、 前立腺酸性ホスファターゼ(PAP)、 伸長因子2突然変異(ELF2M)、 エフリンB2、 線維芽細胞活性化タンパク質α(FAP)、 インスリン様成長因子1受容体(IGF-I受容体)、炭酸脱水酵素IX(CAIX)、 プロテアソーム(Prosome、Macropain)サブユニット、β型、9(LMP2)、 糖タンパク質100(gp100)、 ブレークポイントクラスター領域(BCR)からなるがん遺伝子融合タンパク質およびAbelsonマウス白血病ウイルスがん遺伝子ホモログ1(Abl)(BCR-Abl)、 チロシナーゼ、 エフリンA型受容体2(EphA2)、 フコシルGM1、 シアリルルイス接着分子(sLe)、 ガングリオシドGM3(aNeu5Ac(2-3)bDGalp(1-4)bDGlcp(1-1)Cer)、 トランスグルタミナーゼ5(TGS5)、 高分子量黒色腫関連抗原(HMWMAA)、 o-アセチル-GD2ガングリオシド(OAcGD2)、 葉酸受容体β、 腫瘍内皮マーカー1(TEM1/CD248)、 腫瘍内皮マーカー7関連(TEM7R)、 クローディン6(CLDN6)、 甲状腺刺激ホルモン受容体(TSHR)、 Gタンパク質共役受容体クラスCグループ5、メンバーD(GPRC5D)、 染色体Xオープンリーディングフレーム61(CXORF61)、 CD97、 CD179a、 未分化リンパ腫キナーゼ(ALK)、 ポリシアル酸、 胎盤特異的1(PLAC1)、 GloboHグリコセラミド(GloboH)の六糖部分、 乳腺分化抗原(NY-BR-1)、 ウロプラキン2(UPK2)、 A型肝炎ウイルス細胞受容体1(HAVCR1)、 アドレナリン受容体β3(ADRB3)、 パンネキシン3(PANX3)、 Gタンパク質共役受容体20(GPR20)、 リンパ球抗原6複合体、遺伝子座K9(LY6K)、 嗅覚受容体51E2(OR51E2)、 TCRガンマ交互読み取り枠タンパク質(TARP)、 ウィルムス腫瘍タンパク質(WT1)、 がん/精巣抗原1(NY-ESO-1)、 がん/精巣抗原2(LAGE-1a)、 黒色腫関連抗原1(MAGE-A1)、 染色体12pに位置するETS転座変異遺伝子6(ETV6-AML)、 精子タンパク質17(SPA17)、 X抗原ファミリー、メンバー1A(XAGE1)、 アンジオポエチン結合細胞表面受容体2(Tie2)、 黒色腫がん精巣抗原-1(MAD-CT-1)、 黒色腫がん精巣抗原-2(MAD-CT-2)、 Fos関連抗原1、 腫瘍タンパク質p53(p53)、 p53変異体、 プロステイン、 生存、 テロメラーゼ、 前立腺がん腫瘍抗原-1(PCTA-1またはガレクチン8)、T細胞1によって認識される黒色腫抗原(MelanAまたはMART1)、 ラット肉腫(Ras)変異体、 ヒトテロメラーゼ逆転写酵素(hTERT)、 肉腫転座ブレークポイント、 黒色腫アポトーシス阻害剤(ML-IAP)、 ERG(膜貫通プロテアーゼ、セリン2(TMPRSS2)ETS融合遺伝子)、 N-アセチルグルコースアミニル-トランスフェラーゼV(NA17)、 対ボックスタンパク質PAX-3(PAX3)、 アンドロゲン受容体、 サイクリンB1、 v-mycトリ骨髄細胞腫症ウイルスがん遺伝子神経芽細胞腫由来ホモログ(MYCN)、 RasホモログファミリーメンバーC(RhoC)、 チロシナーゼ関連タンパク質2(TRP-2)、 シトクロムP450 1B1(CYP1B1)、 CCCTC結合因子(ジンクフィンガータンパク質)様(BORISすなわちBrother of the Regulator of Imprinted Sites)、T細胞によって認識される扁平上皮がん抗原3(Squamous Cell Carcinoma Antigen Recognized By T Cells 3)(SART3)、 ペアードボックスタンパク質PAX-5(Paired box protein Pax-5)(PAX5)、 プロアクロシン結合タンパク質sp32(OY-TES1)、 リンパ球特異的タンパク質チロシンキナーゼ(LCK)、 Aキナーゼアンカータンパク質(A kinase anchor protein 4)(AKAP-4)、 滑膜肉腫、Xブレークポイント2(SSX2)、 糖化最終産物の受容体(Receptor for Advanced Glycation Endproducts)(RAGE-1)、 腎ユビキタス1(RU1)、 腎ユビキタス2(RU2)、 レグマイン(legumain)、 ヒトパピローマウイルスE6(human papilloma virus E6)(HPV E6)、 ヒトパピローマウイルスE7(HPV E7)、 腸由来カルボキシルエステラーゼ(intestinal carboxyl esterase)、 熱ショックタンパク質70-2突然変異(heat shock protein 70-2 mutated)(mut hsp70-2)、 CD79a、 CD79b、 CD72、 白血球関連免疫グロブリン様受容体1(LAIR1)、 IgA受容体のFcフラグメント(FCARまたはCD89)、 白血球免疫グロブリン様受容体サブファミリーAメンバー2(Leukocyte immunoglobulin-like receptor subfamily A member 2)(LILRA2)、 CD300分子様ファミリーメンバーf(CD300LF)、 C型レクチンドメインファミリー12メンバーA(CLEC12A)、 骨髄間質細胞抗原2(BST2)、 EGF様モジュール含有ムチン様ホルモン受容体様2(EGF-like module-containing mucin-like hormone receptor-like 2)(EMR2)、 リンパ球抗原75(LY75)、 グリピカン-3(GPC3)、 Fc受容体様5(FCRL5)、 および免疫グロブリンλ様ポリペプチド1(IGLL1の群から選択される抗原を含むCARまたは人工TCRサブユニットを含む。いくつかの態様では、前述の項目のいずれか1つに記載の免疫細胞または免疫細胞の集団は、第1、第2、第3、または第4世代のCARを含む。
44.いくつかの態様では、前述の項目のいずれか1つに記載の免疫細胞の特異的リンパ球活性化受容体アゴニストは、細胞模倣無細胞支持体(cell mimicking cell-free supports)にコンジュゲートされる。いくつかの態様では、細胞模倣支持体は常磁性ビーズである。
45.いくつかの態様では、先行する項目のいずれか1つに記載の免疫細胞は、抗腫瘍または免疫抑制および活性を有する当該技術分野で公知の細胞、例えばエフェクター細胞である。いくつかの他の態様では、免疫細胞は、免疫調節活性(immunoregulating activity)を有する細胞である。
46.前述の項目のいずれか1つに記載の単離された生存可能なミトコンドリアは、好ましくは呼吸コンピテントミトコンドリアである。
47.前述の項目のいずれか1つに記載の単離された生存可能なミトコンドリアの有効量は、標的細胞当たり0.0001ng~2.5ngのミトコンドリア、例えば、標的細胞あたり0.001ng~2.0ng、例えば0.01ng~1.5ngまたは0.05ng~1.0ng、例えば、0.1ng~0.5ngなどのミトコンドリアである。
48.前述の項目のいずれか1つに記載の単離された生存可能なミトコンドリアは、自己由来または同種異系ミトコンドリアであり得る。いくつかの他の態様では、それらは異種ミトコンドリアである。
49.いくつかの他の態様では、前述の項目のいずれか1つに記載の単離された生存可能なミトコンドリアは、新たに単離されるか、または事前に単離され、その後使用まで保存され、例えば、0℃未満の温度で保存され得る。
50.いくつかの態様では、前述の項目のいずれか1つに記載の単離された生存可能なミトコンドリアの供給源は、異なる性質のもの、例えば、組織、血液、より具体的には血液中を循環する細胞、または培養細胞であり得る。
51.いくつかの態様では、単離された生存可能なミトコンドリアは真核細胞ミトコンドリア。いくつかの態様では、ミトコンドリアはヒト細胞株に由来する。
52.いくつかの態様では、前述の項目のいずれか1つに記載の単離された生存可能なミトコンドリアは、健康なドナーに由来する。いくつかの態様では、単離された生存可能なミトコンドリアは、患者に由来する。いくつかの態様では、患者はがん患者である。いくつかの他の態様では、患者は、自己免疫疾患に罹患している患者である。いくつかの他の態様では、患者は、移植された患者である。いくつかの他の態様では、患者は、感染性および/または炎症性疾患に罹患している患者である。
53.いくつかの態様では、単離された生存可能なミトコンドリアは、遺伝子改変を有する自己由来または自己由来の生存可能なミトコンドリアであり得る。いくつかの態様では、単離された生存可能なミトコンドリアは、遺伝子改変を有する同種異系の生存可能なミトコンドリアであり得る。
54.いくつかの態様では、前述の項目のいずれか1つにおいて開示される単離された生存可能なミトコンドリアは、in vitroおよびin vivoの両方で、標的細胞、例えば、免疫細胞に送達され得る。
55.いくつかの態様では、前述の項目のいずれか1つにおいて開示される単離された生存可能なミトコンドリアは、in vivoまたはex vivoで、標的器官および/または組織に、例えば標的器官および/または組織の細胞に送達され得る。
56.いくつかの態様では、生存可能なミトコンドリアは、以下に記載される単離方法のうちの1つを使用することによって単離され、各方法は、(i)スブチリシンAなどのエンドペプチダーゼを使用することによって培養細胞、組織、または器官からミトコンドリアを単離する工程、または(ii)1つ以上のフィルターを通してミトコンドリアを濾過する工程、あるいは(i)スブチリシンAなどのエンドペプチダーゼを使用することによって培養細胞、組織、または器官からミトコンドリアを単離し、続いて(ii)1つ以上のフィルターを通してミトコンドリアを濾過する工程を含む。
57.いくつかの態様では、外因性の生存可能なミトコンドリアは、自己由来ミトコンドリアまたは同種異系ミトコンドリア、遺伝子操作されたミトコンドリア、またはリポソームによって封入されたか、もしくは特定の薬剤に結合されたミトコンドリアであるが、これらに限定されない。
58.いくつかの態様では、前述の項目のいずれか1つに記載のミトコンドリア、例えば単離された生存可能なミトコンドリアは、ミトコンドリアで処置されていない免疫細胞または免疫細胞の集団とそれぞれ比較して、適応免疫細胞または適応免疫細胞の集団の生存率を増強し、かつ/またはそれらの選択を促進することができ、ミトコンドリア処置後3日目、例えば、ミトコンドリア処置後3.5日目、または4日目から、好ましくはミトコンドリア処置後5日目から、例えばミトコンドリア処置後6日目、7日目、または8日目から、より好ましくはミトコンドリア処置後9日目から開始する。
59.いくつかの態様では、前述の項目のいずれか1つに記載のミトコンドリア、例えば、単離された生存可能なミトコンドリアは、外因性ミトコンドリアを含まない免疫細胞または免疫細胞の集団とそれぞれ比較して、適応免疫細胞または適応免疫細胞の集団の生存率を増強し、かつ/またはそれらの選択を促進することができ、免疫細胞へのミトコンドリアのミトコンドリア移植後3日目、例えば、ミトコンドリア移植後3.5日目または4日目から、好ましくはミトコンドリア移植後5日目から、例えばミトコンドリア移植後6日目、7日目、または8日目から、より好ましくはミトコンドリア移植後9日目から開始する。
60.いくつかの態様では、免疫細胞または免疫細胞の集団の生存の増強、例えば、前述の項目のいずれか1つに記載の単離された生存可能なミトコンドリアでの処置において選択される、適応免疫細胞または適応免疫細胞の集団の生存率の増強は、ミトコンドリアで処置されていない免疫細胞と比較して少なくとも1.2倍である。いくつかの態様では、それは、ミトコンドリアで処理されていない免疫細胞と比較して少なくとも1.3倍、例えば少なくとも1.5倍または2倍である。いくつかの態様では、それは、ミトコンドリアで処置されていない免疫細胞、例えば、適応免疫細胞、または免疫細胞の集団とそれぞれ比較して、1.2倍~50倍の範囲(倍数で表される)にあり、例えば、1.2~45、1.2~40、1.2~30、1.2~20、1.2~15、1.2~10、1.2~5、1.2~2.5、1.3~50、1.3~40、1.3~30、1.3~20、1.3~10、1.3~5、1.3~3.5、1.5~30、1.5~25、1.5~20、1.5~15、1.5~10、1.5~5、1.5~3、1.5~2.5、2~50、2~40、2~30、2~20、2~15、2~10、2~5、2~4、3~30、3~20、3~10、3~5、5~50、5~40、5~30、5~20、5~10、5~8、10~50、10~40、10~30、10~20、10~15、15~50、15~40、15~30、15~20、20~50、20~30、20~25、30~35、30~40、30~45、40~50である。
61.いくつかの態様では、免疫細胞または免疫細胞の集団の生存の増強、例えば、前述の項目のいずれか1つに記載の外因性ミトコンドリアを移植した際に選択される適応免疫細胞または適応免疫細胞の集団の生存の増強は、外因性ミトコンドリアを移植していない免疫細胞と比較して少なくとも1.2倍である。いくつかの態様では、それは、外因性ミトコンドリアを移植されていない免疫細胞と比較して、少なくとも1.3倍、例えば少なくとも1.5倍または2倍である。いくつかの態様では、これは、免疫細胞、例えば、外因性ミトコンドリアを含まない(例えば、移植されない)適応免疫細胞に対して、1.2倍~50倍の範囲(倍数で表される)にあり、例えば、1.2~45、1.2~40、1.2~30、1.2~20、1.2~15、1.2~10、1.2~5、1.2~2.5、1.3~50、1.3~40、1.3~30、1.3~20、1.3~10、1.3~5、1.3~3.5、1.5~30、1.5~25、1.5~20、1.5~15、1.5~10、1.5~5、1.5~3、1.5~2.5、2~50、2~40、2~30、2~20、2~15、2~10、2~5、2~4、3~30、3~20、3~10、3~5、5~50、5~40、5~30、5~20、5~10、5~8、10~50、10~40、10~30、10~20、10~15、15~50、15~40、15~30、15~20、20~50、20~30、20~25、30~35、30~40、30~45、40~50である。
62.本明細書では、前述の項目のいずれか1つに記載の免疫細胞または免疫細胞の集団の生存率を増強し、かつ/またはそれらの選択を促進する方法も提供され、該方法は、(a)適応細胞(T細胞など)活性化を駆動することができる特異的活性化受容体アゴニスト抗体を含む無細胞培地における、in vitroでの免疫細胞の活性化する工程、(b)免疫細胞を、単離された生存可能なミトコンドリアを含む医薬組成物に少なくとも3日間、例えば少なくとも5日間曝露する工程を含む。いくつかの態様では、前述の項目のいずれか1つに記載の免疫細胞または免疫細胞の集団の生存率を増強し、かつ/または選択を促進する方法は、(a)任意選択で、IL-2などの組換えインターロイキンの存在下で、コーティングされたCD3/CD28ビーズを有する無細胞培地において、in vitroで免疫細胞を活性化する工程、(b)免疫細胞を、単離された生存可能なミトコンドリアを含む医薬組成物に少なくとも3日間、例えば少なくとも5日間曝露する工程を二者択一的に含む。
63.また、本明細書では、前述の項目のいずれか1つに記載の免疫細胞または免疫細胞の集団のメモリー分化および/またはメモリー選択を促進する方法も提供され、該方法は、(a)適応細胞(T細胞など)活性化を駆動することができる特異的活性化受容体アゴニスト抗体を含む無細胞培地において、in vitroで免疫細胞の活性化する工程、(b)免疫細胞を、少なくとも3日間、例えば少なくとも5日間、前述の項目のいずれか1つに記載の単離された生存可能なミトコンドリアを含む医薬組成物に曝露する工程を含む。いくつかの態様では、前述の項目のいずれか1つに記載の免疫細胞または免疫細胞の集団のメモリー分化および/またはメモリー選択を促進する方法は、(a)任意選択で、IL-2などの組換えインターロイキンの存在下で、コーティングされたCD3/CD28ビーズを有する無細胞培地における、in vitroで免疫細胞を活性化する工程、(b)免疫細胞を、単離された生存可能なミトコンドリアを含む医薬組成物に少なくとも3日間、例えば少なくとも5日間曝露する工程を二者択一的に含む。
64.前述の項目のいずれか1つに記載の方法において使用される医薬組成物は、単離された生存可能なミトコンドリアを含み、該ミトコンドリアは、前述の項目のいずれか1つに開示されている。該方法で使用される医薬組成物に含まれる単離された生存可能なミトコンドリアの有効量は、標的細胞あたり0.0001ng~2.5ngのミトコンドリア、例えば0.001ng~2.0ng、例えば0.01ng~1.5ngまたは0.05ng~1.0ng、例えば、標的細胞あたり0.1ng~0.5ngのミトコンドリアである。いくつかの態様では、前述の項目のいずれか1つに記載の方法において使用される医薬組成物は、1つ以上の薬学的に許容される担体をさらに含む。担体には、生理食塩水、分散媒、等張剤など、リン酸緩衝生理食塩水、クレブス緩衝液、タイロード液、造影剤、オムニパック、300mMスクロースを含む緩衝液、 10mM K+-HEPES(カリウム緩衝(4-(2-ヒドロキシエチル)-l-ピペラジンエタンスルホン酸、pH7.2)、1mM K+-EGTA(カリウム緩衝化エチレングリコールテトラ酢酸、pH8.0)、250mMスクロース、2mM KH2PO4、10mM MgCh、20mM K-15 HEPES緩衝液(pH7.2)、および0.5mM K-EGTA(pH8.0)を含む緩衝液、またはRPMI1640培地 GlutaMAX(商標)Supplement 500ml (ThermoFisher、61870010)が含まれるが、これらに限定されない。医薬組成物は、ミトコンドリアで処理されていないまたはミトコンドリアを移植されていない免疫細胞と比較して、適応性メモリーまたはメモリー様免疫細胞の割合を少なくとも1.1倍、例えば1.2倍、1.3倍、1.5倍、または2倍増強するのに有効な量で、1つ以上の薬学的に許容される担体および単離された生存可能なミトコンドリアを含む。いくつかの実施形態では、メモリーまたはメモリー様免疫細胞の割合の増強は、1.1倍~100倍の範囲(倍数で表される)であり、例えば、1.1~99、1.1~90、1.1~80、1.1~70、1.1~60、1.1~50、1.1~40、1.1~30、1.1~20、1.1~10、1.1~5、1.1~2、1.1~1.8、1.1~1.5、1.2~99、1.2~90、1.2~80、1.2~70、1.2~60、1.2~50、1.2~20、1.2~10、1.2~5、1.2~2.5、1.3~90、1.3~80、1.3~70、1.3~50、1.3~40、1.3~30、1.3~20、1.3~10、1.3~5、1.3~1.5、1.4~100、1.4~95、1.4~90、1.4~80、1.4~70、1.4~60、1.4~50、1.4~30、1.4~25、1.4~20、1.4~10、1.4~5、1.4~3、1.4~2.5、1.5~99、1.5~95、1.5~90、1.5~80、1.5~70、1.5~60、1.5~50、1.5~50、1.5~40、1.5~30、1.5~20、1.5~10、1.5~5、1.5~2.5、2~99、2~90、2~80、2~70、2~60、2~50、2~40、2~35、2~30、2~20、2~10、2~5、2~4、2~2.5、3~99、3~90、3~80、3~70、3~60、3~50、3~40、3~30、3~25、3~20、3~10、4~99、4~80、4~70、4~60、4~50、4~55、4~25、4~20、4~15、4~10、5~100、5~80、5~50、5~30、5~20、5~10、5.5~9、5.5~7、10~90、10~50、10~20、20~100、20~50、25~40、20~35、30~100、30~50、40~100、40~70、40~60、40~50、50~100、50~90、50~80、50~70、55~65、60~80、75~90、75~100、80~90、80~85、85~100である。
65.必要とする対象を処置する方法において使用するための、前記項目のいずれか1項に記載の単離された生存ミトコンドリア、または外因性の単離された生存ミトコンドリアで処置された免疫細胞、例えば、ヒトT細胞などのヒト免疫細胞も本明細書において提供され、該方法は、対象に、前述の項目のいずれか1つに記載の免疫細胞、または免疫細胞の集団を投与する工程を含む。
66.本開示はさらに、がん、感染性疾患、炎症性疾患、または自己免疫疾患の処置における使用のための、前記項目のいずれか1つに記載の単離された生存ミトコンドリア、または外因性の単離された生存ミトコンドリアで処置される、免疫細胞、例えばヒトT細胞などのヒト免疫細胞を提供する。
67.また、本明細書において提供されるのは、組成物、例えば、単離された生存ミトコンドリアで処理された免疫細胞または外因性生存ミトコンドリアを含む免疫細胞を含む組成物などの、がん、感染性疾患、炎症性疾患、または自己免疫疾患の治療に使用するのに有効な量の、前記項目のいずれか1つに記載の組成物に係る医薬組成物である。
68.いくつかの態様では、前述の項目のいずれか1つに記載の、単離された生存可能なミトコンドリアで処理された、または外因性の単離された生存可能なミトコンドリアを含む免疫細胞または免疫細胞の集団は、必要とするヒト対象におけるがんの処置方法における使用に有効な量で医薬組成物中に製剤化される。
69.いくつかの態様では、前述の項目のいずれか1つに記載の単離された生存可能なミトコンドリアで処理された、または外因性の生存可能なミトコンドリアを含む免疫細胞または免疫細胞の集団は、必要とするヒト対象における自己免疫疾患の処置方法における使用に有効な量で医薬組成物中に製剤化される。自己免疫疾患には、多発性硬化症、糖尿病、過敏性腸症候群、セリアック病、クローン病、ループス、乾癬、関節リウマチが含まれるが、これらに限定されない。
70.いくつかの態様では、前述の項目のいずれか1つに記載の単離された生存可能なミトコンドリアで処置された、または外因性ミトコンドリアを含む免疫細胞または免疫細胞の集団は、必要とするヒト対象における炎症性疾患の処置方法における使用に有効な量で医薬組成物に製剤化される。
71.いくつかの態様では、前述の項目のいずれか1つに記載の単離された生存可能なミトコンドリアで処置された、または外因性ミトコンドリアを含む免疫細胞または免疫細胞の集団は、必要とするヒト対象における移植片対宿主病(graft vs host disease)(GvHD)の処置方法における使用に有効な量で医薬組成物に製剤化される。
72.いくつかの態様では、前述の項目のいずれか1つに記載の単離された生存可能なミトコンドリアで処置された、または外因性ミトコンドリアを含む免疫細胞、例えば抗腫瘍細胞、例えばCAR-T細胞、または免疫細胞の集団は、単離された生存可能なミトコンドリアで処置されないか、または外因性ミトコンドリアを欠く、同等の免疫細胞または同等の免疫細胞の集団よりも、腫瘍細胞をより効果的に、かつ/またはより長く殺傷することなど、腫瘍細胞を殺傷する際に使用するのに有効な量で、医薬組成物中に製剤化される。
73.いくつかの態様では、前述の項目のいずれか1つに記載の単離された生存可能なミトコンドリアで処置された、またはミトコンドリアを含む免疫細胞または免疫細胞の集団は、自己免疫疾患における使用に有効な量で、例えば、異常な免疫応答の軽減または予防における使用に有効な量で医薬組成物中に製剤化される。具体的に、自己免疫疾患の場合など、前述の項目のいずれか1つに記載の単離された生存可能なミトコンドリア処理された、または外因性の単離されたミトコンドリアを含む免疫細胞または免疫細胞の集団の異常な免疫応答は、単離生存可能ミトコンドリアで処理されていないかまたは外因性ミトコンドリアを欠いている同等の免疫細胞または同等の免疫細胞の集団の応答と比較した場合、軽度(より少ない)および/または完全に存在しない。
74.いくつかの態様では、前述の項目のいずれか1つに記載の単離された生存可能なミトコンドリアで処理された、または外因性ミトコンドリアを含む免疫細胞または免疫細胞の集団は、医薬組成物に製剤化され、自己細胞移植または同種異系細胞移植を介して、がんの処置を必要とするヒト対象においてがんを処置するのに有効な量で、がんの処置を必要とする対象に移植される。いくつかの態様では、同種異系細胞移植は、(a)ドナーから生存可能な血液のサンプルを得る工程、(b)工程(a)で得られた血液試料から免疫細胞を分離する工程、(c)免疫細胞に、CARまたは人工TCRサブユニットをコード化する1つ以上の外因性ポリヌクレオチドを形質導入する工程と、(d)任意選択で、免疫細胞を小分子と接触させる工程と、(e)修飾免疫細胞を、必要とする対象に投与する工程とを含む。
75.本開示はさらに、必要とする対象におけるがん、感染性疾患、炎症性疾患、または自己免疫疾患の処置における使用に有効な量で、前述の項目のいずれか1つに記載の薬学的に許容される担体に製剤化された単離された生存可能なミトコンドリアを含む薬学的組成物と同時投与するために、免疫細胞、例えばヒト免疫細胞、または免疫細胞の集団を提供する。単離された生存可能なミトコンドリアを含む医薬組成物の同時投与は、免疫細胞の投与前、投与と同時、または投与後であり得る。いくつかの態様では、医薬組成物は、それを必要とする対象への静脈内注射によって免疫細胞と同時投与される。いくつかの態様では、医薬組成物は、腫瘍内注射によって免疫細胞と同時投与される。いくつかの態様では、医薬組成物は、臓器内注射によって、または臓器特異的血管系(organ-specific vasculature)を介して免疫細胞と同時投与される。いくつかの態様では、対象は、急性リンパ芽球性白血病(ALL)、急性骨髄性白血病(AML)、胞巣型横紋筋肉腫(alveolar rhabdomyosarcoma)、膀胱がん(例えば、膀胱がん(bladder carcinoma))、骨がん、脳がん(例えば、膠芽細胞腫)、乳がん、肛門、肛門管、または肛門直腸のがん、眼のがん、肝内胆管のがん、関節のがん、頸部、胆嚢、または胸膜のがん、鼻、鼻腔、または中耳のがん、口腔のがん、外陰部のがん、慢性リンパ性白血病、慢性骨髄性がん、結腸がん、食道がん、子宮頸がん、線維肉腫、胃腸がん腫瘍、頭頸部がん(例えば、頭頸部扁平上皮がん)、ホジキンリンパ腫、下咽頭がん、腎臓がん、喉頭がん、白血病、液性腫瘍、肝臓がん、肺がん(例えば、非小細胞肺がんおよび肺腺がん)、リンパ腫、中皮腫、肥満細胞腫、黒色腫、多発性骨髄腫、鼻咽頭がん、非ホジキンリンパ腫、B慢性リンパ性白血病、有毛細胞白血病、バーキットリンパ腫、卵巣がん、膵臓がん、腹膜、網、および腸間膜がん、咽頭がん、前立腺がん、直腸がん、腎臓がん、皮膚がん、小腸がん、軟部組織がん、固形腫瘍、滑膜肉腫、胃がん、精巣がん、甲状腺がん、および尿管がんからなる群から選択されるがんを有する。
【0126】
T細胞
一実施形態では、外因性ミトコンドリアを含むか、または外因性ミトコンドリアによって増強される免疫細胞は、リンパ球と呼ばれる白血球の群に属するT細胞(Tリンパ球とも呼ばれる)である。リンパ球は通常、細胞性免疫に関与する。「T細胞」における「T」は、胸腺に由来するか、またはその成熟が胸腺によって影響を受ける細胞を指す。T細胞は、細胞の表面上に提示される抗原を認識するT細胞受容体(TCR)として知られる細胞表面タンパク質の存在によって、B細胞およびナチュラルキラー(NK)細胞などの他のリンパ球型と区別することができる。典型的な免疫応答の間、これらの抗原のT細胞受容体への結合は、MHC抗原提示との関連で、T細胞活性化をもたらす細胞内変化を開始する。
【0127】
T細胞は、T細胞受容体(TCR)、αβT細胞およびγδT細胞によって2つの群に分けられる。TCR2を有するαβT細胞は、主に細胞免疫および免疫調節を媒介する一方、TCR1を有するγδT細胞は、局所微小環境における免疫ホメオスタシスの維持に加えて、創傷治癒、損傷または形質転換した上皮細胞の除去および過剰な炎症の緩和において重要な機能を果たす。αβT細胞およびγδT細胞は、自己免疫疾患、腫瘍、および血管疾患において異なる役割を果たす。αβT細胞は末梢血単核細胞(PBMC)の65~75%からなる一方、γδT細胞は10%未満を占める。それらは、CD4およびCD8の異なる表面マーカーを発現し、例えば、αβT細胞の60%はCD4陽性であり、30%はCD8陽性であり、αβT細胞の1%未満が二重陽性(both positive)である。
【0128】
本明細書で使用される場合、「活性化T細胞(activated T cells)」という用語は、例えば、クラスIまたはクラスII主要組織適合(MHC)マーカーとの関連で提示されるような抗原決定基の認識によって、免疫応答(例えば、活性化T細胞のクローン増殖)を生じるように刺激されたT細胞を指す。T細胞は、抗原決定基、サイトカイン、および/またはリンホカインならびに分化細胞表面タンパク質のクラスター(cluster of differentiation cell surface protein)(例えば、CD3、CD4、CD8など、およびそれらの組み合わせ)の存在によって活性化される。分化タンパク質のクラスターを発現する細胞は、多くの場合、T細胞の表面上のそのタンパク質の発現について「陽性(positive)」であると言われる(例えば、CD3、CD4、またはCD8の発現について陽性の細胞は、CD3、CD4、またはCD8と呼ばれる)。CD3およびCD4のタンパク質は、T細胞におけるシグナル伝達に直接的および/または間接的に関与し得る細胞表面受容体または共受容体である。
【0129】
いくつかの実施形態では、外因性ミトコンドリアを含み、かつ/または外因性ミトコンドリアによって増強された免疫細胞は、CAR-T細胞集団を含む。いくつかの実施形態では、CAR-T細胞集団は、例えば、例えば、CD8、CD4、CD3、CD34などの特定のマーカー、受容体、または細胞表面糖タンパク質を発現する細胞型の少なくとも20%、30%、40%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、または99%を含むように選択または濃縮または精製される。
【0130】
いくつかの実施形態では、CAR-T細胞集団は、CD4およびCD8T細胞を含む。いくつかの実施形態では、CAR-T細胞集団は、少なくとも20%、30%、40%、50%、60%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、または99%のCD8T細胞を含むように濃縮される。いくつかの実施形態では、CAR-T細胞集団は、少なくとも80%のCD8T細胞を含むように濃縮される。いくつかの実施形態では、CAR-T細胞集団は、少なくとも90%のCD8T細胞を含むように濃縮される。したがって、いくつかの実施形態において、組成物中、遺伝子改変CD4T細胞よりも多くの遺伝子改変CD8T細胞が存在し、すなわち、CD4細胞のCD8細胞に対する比は、1未満、例えば、0.9未満、0.8未満、0.7未満、0.6未満、または0.5未満である。
【0131】
濃縮免疫細胞集団
いくつかの実施形態では、外因性ミトコンドリアを含むか、または外因性ミトコンドリアによって増強された濃縮細胞集団が提供され、該濃縮細胞集団は、特定の比率またはパーセンテージの1つ以上の細胞型を含むように選択されている。「細胞集団(cell population)」または「改変細胞集団(modified cell population)」とは、2個を超える細胞など、細胞の群を意味する。細胞集団は、同じタイプの細胞、またはそれぞれが同じマーカーを含む同質であり得るか、あるいは細胞集団は非同質であり得る。いくつかの例では、細胞集団は、対象から得られた試料に由来し、例えば、骨髄、臍帯血(umbilical cord blood)、末梢血、または任意の組織から調製された細胞を含む。いくつかの例では、細胞集団は、核酸と接触させられ、該核酸は、異種ポリヌクレオチド、例えば、キメラ抗原受容体をコード化するポリヌクレオチド、誘導性キメラアポトーシス促進性ポリペプチド、または共刺激ポリペプチド、例えば、キメラ骨髄分化一次応答88(MyD88)または切断型MyD88およびCD40ポリペプチドを含む。いくつかの例では、細胞集団および改変細胞集団は、異種ポリヌクレオチドを含む核酸と接触させた元の細胞の子孫である。細胞集団は、例えばCD8、CD4、CD3、CD34のような、特定のマーカー、受容体、または細胞表面糖タンパク質を発現する細胞タイプを、少なくとも20%、30%、40%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、または99%含むように選択、または濃縮、または精製され得る。
【0132】
患者の切除腫瘍からのTリンパ球の採取およびTIL細胞の濃縮
外因性ミトコンドリアによって増強されたTILなどのT細胞は、がん患者に由来し得る。TILは、切除した腫瘍から得られ、in vitroで増殖させる。適用される方法に依存して、TILの単離は、「選択された(selected)」または「若い(young)」TILの再注入をもたらす。簡潔に述べると、切除された腫瘍は、酵素消化などによって処理され、TILは増殖させられ、高用量のIL-2中で培養される。適切な数の細胞が、自己TILの再注入のために得られる必要がある。「選択された(selected)」TILは、腫瘍細胞認識時にサイトカイン産生について試験されるが、「若い(young)」TILの腫瘍反応性は評価されない。一般に、「選択された(selected)」TILは、がん患者に再導入される前に、培養から腫瘍反応性評価までに36日までを必要とする。注目すべきことに、「若い」TILの増殖プロセスは、10~22日間しか必要とせず、一方、「選択された」TILと比較して同等の臨床応答を示す。本開示によれば、外因性ミトコンドリアを移植されたTILは、任意の腫瘍から切除することができ、増殖、再注入のための任意のプロトコルが適用され得る。
【0133】
改変細胞集団における細胞型の選択、濃縮、または精製は、任意の適切な方法によって達成され得る。いくつかの実施形態では、CD8T細胞およびCD4T細胞の割合は、フローサイトメトリーによって決定することができる。いくつかの例では、MAC列が使用され得る。いくつかの例では、改変細胞集団は、対象への投与前に凍結および解凍され、生存細胞は、対象への投与前に特定の細胞型のパーセンテージまたは比率について試験される。
【0134】
いくつかの実施形態では、細胞集団は、CD8T細胞またはCD4T細胞の少なくとも20%、30%、40%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95、96、97、98、または99%を含むように選択または濃縮または精製される。
【0135】
本開示によれば、例えば、自己由来ミトコンドリア、同種異系ミトコンドリア、異種ミトコンドリア、封入ミトコンドリア、または適切な遺伝子改変を有する自己由来ミトコンドリアを含むミトコンドリア調製物は、濃縮T細胞に送達され得る。
【0136】
患者の血液からのTリンパ球の採取、およびT細胞の濃縮
外因性ミトコンドリアによって増強され、かつ/またはCARを発現するように操作されたT細胞などのT細胞は、任意の健康なドナーに由来し得る。ドナーは一般に成人(少なくとも18歳)であるが、小児もT細胞ドナーとして適している(Styczynski,2018,“Young child as a donor of cells for transplantation and lymphocyte based therapies”,Transfus Apher Sci 57:323-30)。ドナーからT細胞を得るための適切なプロセスの例は、(Di Stasi et al.,2011,“Inducible apoptosis as a safety switch for adoptive cell therapy”,N Engl J Med 365:1673-83)に記載されている。概して、T細胞は、ドナーから得られ、遺伝子改変および選択に供され、次いで、レシピエント対象に投与され得る。T細胞の有用な供給源は、ドナーの末梢血である。末梢血試料は、概して、白血球が濃縮された試料を提供するために白血球除去療法(leukapheresis)に供される。この濃縮試料(「ロイコパック(leukopak)」としても知られる)は、単球、リンパ球、血小板、血漿、および赤血球を含む多様な血液細胞から構成され得る。赤血球、血小板、単球、および腫瘍細胞のような夾雑物(contaminants)の排除は、当該技術分野で公知の方法を用いて一般に必要とされる多角的アプローチを必要とする。ロイコパックは、典型的には、静脈穿刺またはバフィーコート製品(buffy coat products)と比較して、より高い濃度の細胞を含有する。
【0137】
再発性がんを有する患者は、低いT細胞数を有し得、したがって、十分な自己T細胞を採取することを困難にする。この問題は、健常ドナーから採取された同種異系Tリンパ球を使用するなどにより、当該技術分野で公知の方法によって克服することができる。
【0138】
改変細胞集団における細胞型の選択、濃縮、または精製は、任意の適切な方法によって達成され得る。いくつかの実施形態では、CD8T細胞およびCD4T細胞の割合は、フローサイトメトリーによって決定され得る。いくつかの例では、MAC列が使用され得る。いくつかの例では、改変細胞集団は、対象への投与前に凍結および解凍され、生存細胞は、対象への投与前に特定の細胞型のパーセンテージまたは比について試験される。ロイコパックにおける、CD8細胞に対するCD4細胞の比は、典型的には2を超えるが、いくつかの実施形態では、本発明の組成物における、CD8細胞に対するCD4細胞の比は、2未満、例えば1.5未満である。いくつかの態様において、組成物中にCD4T細胞よりも多くのCD8T細胞が存在し、すなわち、CD8細胞に対するCD4細胞の比は、1未満、例えば、0.9未満、0.8未満、0.7未満、0.6未満、または0.5未満である。したがって、ドナー細胞から開始し、T細胞を産生する全体的な手順は、CD4T細胞と比較してCD8細胞T細胞を濃縮するように設計される。いくつかの実施形態では、T細胞の60%以上がCD8T細胞であり、いくつかの実施形態では、T細胞の65%以上がCD8T細胞である。CD3T細胞の集団内で、いくつかの実施形態では、CD8T細胞のパーセントは、55~75%、例えば、55%~65%、55%~70%、56~71%、63~73%、60~70%、59%~74%、65~71%、または65~75%である。いくつかの実施形態では、特定の細胞型と別の細胞型との比を含むように選択または濃縮または精製される細胞集団が提供され、例えば、CD8T細胞とCD4T細胞との比が、3:2、7:3、4:1、9:1、19:1、または39:1、あるいはそれ以上などである。いくつかの実施形態では、改変細胞集団は、少なくとも20%、30%、40%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95、96、97、98、または99%のCD8T細胞を含むように選択または濃縮または精製される。いくつかの実施形態では、CD8T細胞対CD4T細胞の比は、4対1、または9対1、あるいはそれ以上である。
【0139】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の共刺激ポリペプチドを含む遺伝子改変CD3T細胞の集団について、CD8T細胞のパーセントは、55~75%、例えば、55~65%、55~70%、56~71%、59~74%、63~73%、60~70%、60~75%、65~75%、または65~71%である。いくつかの実施形態では、CD8T細胞とCD4T細胞との比は、3:2、7:3、4:1、9:1、19:1、または39:1、あるいはそれ以上である。いくつかの実施形態では、共刺激ポリペプチドを含む改変細胞集団は、少なくとも20%、30%、40%、50%、60%、70%、75%、80%、85%、90%、95、96、97、98、または99%のCD8T細胞を含むように選択または濃縮または精製される。いくつかの実施形態では、CD8T細胞とCD4T細胞との比は、4対1、または9対1、あるいはそれ以上である。共刺激ポリペプチドは、CD27、ICOS、RANK、TRANCE、CD28、4-1BB、OX40、DAP10、MyD88、またはCD40などの1つ以上の共刺激シグナル伝達領域を含み得る。共刺激ポリペプチドは、CD27、ICOS、RANK、TRANCE、CD28、4-1BB、OX40、DAP10、MyD88、またはCD40によって活性化されるシグナル伝達経路を活性化する1つ以上の共刺激シグナル伝達領域を含み得る。共刺激ポリペプチドは、誘導性または構成的に活性化され得る。
【0140】
いくつかの実施形態では、本発明は、少なくとも80%、85%、90%、95、96、97、98、または99%がCD8T細胞である誘導性アポトーシス促進性ポリペプチドを含むCAR-T細胞集団を含む組成物および方法を提供する。いくつかの実施形態では、誘導性アポトーシス促進性ポリペプチドを含む改変細胞集団は、少なくとも80%のCD8T細胞である。いくつかの実施形態では、改変細胞集団は、誘導性アポトーシス促進性ポリペプチド90%CD8T細胞を少なくとも含む。
【0141】
いくつかの実施形態では、本発明は、少なくとも80%、85%、90%、95、96、97、98、または99%がCD8T細胞である、共刺激ポリペプチドおよび誘導性アポトーシス促進性ポリペプチドを含むCAR-T細胞集団を含む組成物および方法を提供する。いくつかの実施形態では、共刺激ポリペプチドおよび誘導性アポトーシス促進性ポリペプチドを含む改変細胞集団は、少なくとも80%がCD8T細胞である。いくつかの実施形態では、共刺激ポリペプチドおよび誘導性アポトーシス促進性ポリペプチドを含む改変細胞集団は、少なくとも90%がCD8T細胞である。
【0142】
本開示によれば、例えば、自己由来ミトコンドリア、同種異系ミトコンドリア、異種ミトコンドリア、封入ミトコンドリア、または適切な遺伝子改変が施された自己由来ミトコンドリアを含むミトコンドリア調製物は、遺伝子改変(例えば、CAR遺伝子の導入)が行われる前、それと同時、またはその後に、濃縮T細胞に送達され得る。
【0143】
ミトコンドリア
本発明は、少なくとも部分的には、単離されたミトコンドリアを、細胞培養物に添加することによってか、あるいはそれらを患者の組織または組織につながる血管にそれぞれ注入することによって、培養細胞または患者の組織に送達(移植ともいう)することができるという発見に基づくものである(Cowan et al.,2017,“Transit and integration of extracellular mitochondria in human heart cells”,Sci Rep 7:17450;McCully et al.,2017,“Mitochondrial transplantation:From animal models to clinical use in humans”,Mitochondrion 34:127-34)。
【0144】
ミトコンドリアは、目的の細胞にex vivoで送達することができる。目的の細胞には、本明細書に記載の培養細胞、予め操作された免疫細胞(例えば、CAR T細胞)、またはさらに操作され(例えば、CARもしくは人工TCRを発現するように)、かつ/または培養される(例えば、分化、活性化、処置、もしくはインキュベートされる)細胞のいずれかが含まれるが、これらに限定されない。ミトコンドリアは、Lipofectin(登録商標)など、合成リポソームを使用するリポソーム媒介性移入によってex vivoで送達することができる(Shi et al.,2008.“Mitochondria transfer into fibroblasts:liposome-mediated transfer of labeled Mitochondria into cultured cells”,Ethn.Dis.18:S1-43)。ミトコンドリアは、本明細書に記載の免疫細胞のいずれかなどの細胞の、ミトコンドリアとの共インキュベーション(すなわち、共培養)によって、2~24時間の期間にわたって、ex vivoで送達することができる(Masuzawa et al.,2013,“Transplantation of autologously derived mitochondria protects the heart from ischemia-reperfusion injury”,Am J Physiol Heart Circ Physiol 304:H966-82)。理論に束縛されることを望まないが、移植されたミトコンドリアは、アクチン依存性経路によって内部移行される。以前に心筋細胞で示されたようなミトコンドリアの内在化は、1時間の共インキュベーションで起こる可能性がある。(Pacak et al., 2015,“Actin-dependent mitochondrial internalization in cardiomyocytes:evidence for rescue of mitochondrial function”,Biol Open 4:622-6)。
【0145】
ミトコンドリアはまた、標的部位への直接注入によって、あるいは対象の冠動脈、対象の肺動脈、対象の肝門脈、対象の大膵動脈、対象の腎動脈、または対象の前立腺動脈などの臓器または組織特異的血管系を介した送達によって、臓器または組織に送達され得る。後者の場合、ミトコンドリアは下流の器官または組織に保持される。例えば、冠状動脈を介して投与される場合、ミトコンドリアはほぼ排他的に心臓に送達されるが(Shin et al.,2019,“Myocardial Protection by Intracoronary Delivery of mitochondria:Safety and Efficacy in the Ischemic Myocardium”,JACC:Basic to Translational Science Vol.4,No.8,2019)、ミトコンドリアは肺動脈を介して肺に送達され得るか、または腎動脈を通じた送達によって腎臓に送達され得る。ミトコンドリアの直接注射は、注射されたミトコンドリアの局所的濃縮を可能にする。注射に使用されるミトコンドリアの数は、標的臓器または組織のサイズ、ならびに意図される用途に応じて変動し得る。ミトコンドリアをホモジナイズ緩衝液に懸濁し、例えば、28~32ゲージの針を有するツベルクリンシリンジを用いて様々な部位に注射することができる(Emani et al.,2017,“Autologous Mitochondrial transplantation for dysfunction after ischemia-reperfusion injury”,J Thorac Cardiovasc Surg 154:286-9;McCully et al.,2017,“Mitochondrial transplantation:From animal models to clinical use in humans”,Mitochondrion 34:127-34)。
【0146】
in vivoでのミトコンドリア移植は、自己由来ミトコンドリアまたは異種ミトコンドリアの単回注入または連続注入を用いて行うことができ、直接的または間接的、急性または慢性の同種反応性、同種認識性、または損傷関連分子パターン分子は存在しない(Ramirez-Barbieri et al.,2019,“Alloreactivity and allorecognition of syngeneic and allogeneic mitochondria”,Mitochondrion 46:103-15)。
【0147】
理論に束縛されることを望まないが、実行可能な、呼吸コンピテントミトコンドリアは、エンドサイトーシスによって虚血組織および非虚血組織の両方に取り込まれる(Cowan et al.,2016,“Intracoronary Delivery of Mitochondria to the Ischemic Heart for Cardioprotection”, PLoS One 11:e0160889;Kesner et al.,2016,“Characteristics of Mitochondrial Transformation into Human Cells”,Sci Rep 6:26057;Cowan et al.,2017,“Transit and integration of cellular mitocellular mitochondondria in Human heart cells”,Sci Rep 7:17450)。
【0148】
熟練した医師は、比較的単純な医療手順を使用して、種々の目的のためにミトコンドリアを患者の組織および/または細胞に局所的におよび/または全体に分配することができる。ナノ粒子を含むいくつかの伝統的な治療レジメンと比較して、ミトコンドリアは毒性がなく、かついかなる実質的に有害な免疫応答または自己免疫応答も引き起こさないことがさらに注目される。
【0149】
いかなる理論にも拘束されることを意図しないが、注入されたミトコンドリアは、最初に内皮に付着することによって毛細血管壁を通って血管外遊出すると考えられる。それらが動脈に注射または注入された後、ミトコンドリアは血管の内皮を通過し、エンドソームアクチン依存性内在化プロセスを通して組織細胞によって取り込まれ得る。
【0150】
in vivoでのミトコンドリア移植は、本明細書で提供される外因性ミトコンドリア(例えば、外因性の単離された生存可能なミトコンドリア)と共に、本明細書で記載される目的の細胞のいずれかの同時投与を含むことができる。いくつかの実施形態では、外因性ミトコンドリアおよび目的の細胞は、患者における疾患を治療するための目的の細胞の所望の治療効果を促進または増強するために同時投与される。目的の細胞には、本明細書に記載の免疫細胞、培養細胞、予め操作された免疫細胞(例えば、CAR T細胞)、またはさらに操作される(例えば、CARもしくは人工TCRを発現するように)細胞のいずれかが含まれるが、これらに限定されない。外因性ミトコンドリアおよび目的の細胞が異なる医薬組成物に含まれる実施形態では、外因性ミトコンドリアの投与は、目的の細胞の投与前、投与と同時、または投与後に行うことができる。いくつかの態様では、外因性ミトコンドリアおよび目的の細胞の投与は、互いに約1ヶ月以内に行われる。いくつかの態様では、外因性ミトコンドリアおよび目的の細胞の投与は、互いに約1週間以内に行われる。いくつかの態様では、外因性ミトコンドリアおよび目的の細胞の投与は、互いに約5、4、3または2日以内に起こる。いくつかの態様では、外因性ミトコンドリアおよび目的の細胞の投与は、互いに約1日以内に行われる。いくつかの態様では、外因性ミトコンドリアおよび目的の細胞の投与は、互いに約12時間以内に行われる。いくつかの態様では、外因性ミトコンドリアおよび目的の細胞の投与は、互いに約6時間以内に行われる。いくつかの態様では、外因性ミトコンドリアおよび目的の細胞の投与は、互いに約3時間以内に行われる。いくつかの態様では、外因性ミトコンドリアおよび目的の細胞の投与は、互いに約2時間以内に行われる。いくつかの態様では、外因性ミトコンドリアおよび目的の細胞の投与は、互いに約1時間以内に行われる。いくつかの態様では、外因性ミトコンドリアおよび目的の細胞の投与は、互いに約30分以内に行われる。いくつかの態様では、外因性ミトコンドリアおよび目的の細胞の投与は、互いに約15分以内に行われる。いくつかの態様では、外因性ミトコンドリアおよび目的の細胞の投与は、互いに数分以内に行われる。いくつかの態様では、外因性ミトコンドリアおよび目的の細胞の同時投与は、外因性ミトコンドリアおよび/または目的の細胞の反復投与を含む。
【0151】
ミトコンドリアの単離
本明細書に記載の方法で使用するためのミトコンドリアは、任意の供給源から単離または提供すること、例えば、培養細胞または組織から単離することができる。例示的な細胞には、とりわけ、筋組織細胞、心臓線維芽細胞、HeLa細胞、前立腺がん細胞、酵母、およびそれらの任意の混合物が含まれるが、これらに限定されない。例示的な組織には、肝臓組織、骨格筋、心臓、脳、および脂肪組織が含まれるが、これらに限定されない。ミトコンドリアは、自己起源、同種起源、および/または異種起源の細胞または組織(例えば、生検材料)から単離することができる。いくつかの例では、ミトコンドリアは、遺伝子改変を有する細胞、例えば、修飾mtDNAまたは修飾核DNAを有する細胞から単離される。
【0152】
ミトコンドリアは、当業者に公知の任意の手段によって細胞または組織から単離することができる。一例では、組織試料または細胞試料は、採取され、次いでホモジナイズされる(homogenized)。均質化に続いて、ミトコンドリアは、反復遠心分離によって単離する(Kesner et al.,2016,“Characteristics of Mitochondrial Transformation into Human Cells”,Sci Rep 6:26057)。あるいは、細胞ホモジネート(cell homogenate)は、ナイロンメッシュフィルターを通して濾過することができる。ミトコンドリアを単離する典型的な方法は、例えば、McCully JD,Cowan DB,Pacak CA,Toumpoulis IK,Dayalan H and Levitsky S,“Injection of isolated mitochondria during early reperfusion for cardioprotection”,Am J Physiol 296,H94-H105 PMC2637784(2009);Frezza,C.,Cipolat,S.,&Scorrano,L,“Organelle isolation:functional mitochondria from mouse liver,muscle and cultured filroblasts”,Nature protocols,2(2),287-295(2007)、および“Products and Methods to Isolate Mitochondria”という題名のPCT出願(PCT/US2015/035584;WO 2015192020)、これらのそれぞれは、参照により援用される。
【0153】
治療において使用されるか、または医薬組成物に含まれるミトコンドリアは、自己起源、同種起源、または異種起源の細胞または組織から単離することができる。いくつかの場合では、ミトコンドリアは、対象の培養細胞または組織から採取され、これらのミトコンドリアは、同じ対象に投与して戻した(自己)。いくつかの他の場合において、ミトコンドリアは、第2の対象の培養細胞(例えば、ヒト心臓線維芽細胞)、または組織から採取され、これらのミトコンドリアは、第1の対象(同種異系)に投与される。いくつかの場合では、ミトコンドリアは、異なる種(例えば、マウス、ブタ、および酵母)(異種)由来の培養細胞または組織から採取される。
【0154】
本明細書に記載の方法の特定の実施形態では、ミトコンドリアは、異なる供給源を有し得、例えば、外因性ミトコンドリアは、自己由来、自家由来、同種異系、または異種であり得る。特定の実施形態では、ミトコンドリアは新鮮に単離されている(組織生検試料を採取した後から120分以内、好ましくは60分以内、より好ましくは30分以内)。いくつかの実施形態では、ミトコンドリアは単離され、その後、使用まで保存されている。特定の実施形態では、自己由来ミトコンドリアは、外因性mtDNAを有し得る。いくつかの実施形態では、ミトコンドリアは、対象の第一度近親者に(subject’s first-degree relative)由来する。いくつかの実施形態では、ミトコンドリアはカプセルに封入されている。
【0155】
いくつかの実施形態では、記載される方法は、投与前に、細胞から単離されたミトコンドリアを採取する工程を含む。単離されたミトコンドリアは、目的の細胞、例えば、本明細書に記載される免疫エフェクター細胞のいずれかに移植され得るか、または目的の細胞による処置と併せて対象に投与され得る。
【0156】
エンジニアリング発現構築物(engineering Expression Constructs)
いくつかの実施形態では、外因性ミトコンドリアを含むか、または外因性ミトコンドリアによって増強される免疫細胞は、本明細書で使用されるCARを発現するように操作されるなどのように操作され、「cDNA」という用語は、鋳型としてメッセンジャーRNA(mRNA)を使用して調製されたDNAを指すことが意図される。ゲノムDNAまたはゲノム、未処理または部分処理されたRNA鋳型から重合されたDNAとは対象的に、cDNAを使用する利点は、cDNAが対応するタンパク質のコード配列を主に含有することである。非コード領域が最適な発現に必要とされる場合、またはイントロンなどの非コード領域がアンチセンス戦略において標的とされる場合など、完全または部分的なゲノム配列が使用される場合がある。
【0157】
いくつかの実施形態では、核酸構築物、例えば、本明細書に記載のキメラ抗原受容体のいずれも、ウイルスベクター内に含まれる。特定の実施形態では、ウイルスベクターはレトロウイルスベクターである。特定の実施形態では、ウイルスベクターは、アデノウイルスベクターまたはレンチウイルスベクターである。いくつかの実施形態では、細胞をex vivoでウイルスベクターと接触させ、いくつかの実施形態では、細胞をin vivoでウイルスベクターと接触させることを理解されたい。したがって、発現構築物は、ベクター、例えばウイルスベクターまたはプラスミドに挿入され得る。提供される方法の工程は、任意の適切な方法を使用して実施され得、これらの方法は、本明細書に記載される、核酸を細胞に形質導入する方法、形質転換する方法、または別様に提供する方法を含むが、それらに限定されない。
【0158】
本明細書で使用される場合、「遺伝子(gene)」という用語は、機能的タンパク質、ポリペプチド、またはペプチドコード化ユニットとして定義される。理解されるように、この機能的用語は、ゲノム配列、cDNA配列、ならびに、タンパク質、ポリペプチド、ドメイン、ペプチド、融合タンパク質および/または突然変異体を発現するか、または発現するように適合される、より小さい操作された遺伝子セグメントを含む。
【0159】
プロモーターおよび他の調節エレメントは、それらが所望の細胞または組織において機能的であるように選択される。さらに、このプロモーターのリストは、網羅的または限定的であると解釈されるべきでなく、本明細書に開示されるプロモーターおよび方法と併せて使用される他のプロモーターである。
【0160】
CAR遺伝子などの発現構築物は、ウイルス媒介性組み込みなどを介してゲノムにランダムに組み込まれ得るか、またはCCR5およびAAVS1遺伝子座を含むがそれらに限定されないT細胞ゲノムなどの免疫細胞ゲノムの特定の部位、もしくはT細胞受容体α定常(TRAC)遺伝子座に意図的に組み込まれ得る。標的化組み込み(targeted integration)は、clustered regularly interspaced short palindromic repeats(CRISPR/Cas9)system、ジンクフィンガーヌクレアーゼ(ZFN)、および転写活性化因子様エフェクターヌクレアーゼ(TALEN)を含む、ヌクレアーゼ媒介ゲノム編集系などの遺伝子編集ツールを使用することができる(Liu et al.,2019,“Building Potent Chimeric Antigen Receptor T Cells With CRISPR Genome Editing”,Front Immunol 10:456)。
【0161】
共刺激
いくつかの実施形態では、外因性ミトコンドリアを含むか、または外因性ミトコンドリアによって増強される免疫細胞は、共刺激ポリペプチドを含む、CAR-T細胞などのCARを発現するように操作された免疫細胞である。いくつかの実施形態では、外因性ミトコンドリアを含むか、または外因性ミトコンドリアによって増強される免疫細胞は、共刺激ポリペプチドを含むCAR-T細胞である。CARは、CD28、4-1BB、OX40、ICOS、DAP10を含むが、これらに限定されないT細胞共刺激分子の細胞質部分に由来するものなどの共刺激ドメインを含むように操作され得(例えば、Carpenito et al.(2009)Proc Natl Acad Sci U.S.A.106:3360-3365;Finney et al.(1998)J Immunol 161:2791-2797;Hombach et al.J Immunol 167:6123-6131;Maher et al.(2002)Nat Biotechnol 20:70-75;Imai et al.(2004)Leukemia 18:676-684;Wang et al.(2007)Hum Gene Ther 18:712-725;Zhao et al.(2009)J Immunol 183:5563-5574;Milone et al.(2009)Mol Ther 17:1453-1464;Yvon et al.(2009)Clin Cancer Res 15:5852-5860を参照されたい)、これにより、CAR-T細胞が標的抗原のエンゲージメントの際に適切な共刺激を受けることを可能にする。
【0162】
本発明の共刺激ポリペプチドは、誘導性または構成的に活性化され得る。共刺激ポリペプチドは、CD27、ICOS、RANK、TRANCE、CD28、4-1BB、OX40、DAP10、MyD88、もしくはCD40などの1つ以上の共刺激シグナル伝達領域、または、例えば、その細胞質領域を含むことができる。共刺激ポリペプチドは、CD27、ICOS、RANK、TRANCE、CD28、4-1BB、OX40、DAP10、MyD88、またはCD40によって活性化されるシグナル伝達経路を活性化する1つ以上の適切な共刺激シグナル伝達領域を含むことができる。共刺激ポリペプチドには、腫瘍壊死因子受容体(TNFR)ファミリー(すなわち、CD40、RANK/TRANCE-R、OX40、4-1BB)、およびCD28ファミリーメンバー(CD28、ICOS)のNF-κB経路、Akt経路、および/またはp38経路を活性化する任意の分子またはポリペプチドが含まれる。複数の共刺激ポリペプチドまたは共刺激ポリペプチド細胞質領域が、本明細書で論じられる改変T細胞において発現され得る。
【0163】
いくつかの実施形態では、誘導性キメラシグナル伝達ポリペプチドは、例えば、4-1BBおよびCD28などの2つの共刺激ポリペプチド細胞質シグナル伝達領域、またはCD27、ICOS、RANK、TRANCE、CD28、4-1BB、OX40、DAP10からなる群から選択される1つもしくは2つ以上の共刺激ポリペプチド細胞質シグナル伝達領域を含む。
【0164】
ベクター
いくつかの実施形態では、外因性ミトコンドリア(例えば、自己由来、同種異系ミトコンドリア、異種ミトコンドリア、封入ミトコンドリア、または適切な遺伝子改変を伴う自家由来ミトコンドリアとして)を含むか、または外因性ミトコンドリアによって増強される免疫細胞の集団は、DNA、二本鎖RNA、一本鎖mRNA、または環状RNAベクターから産生されるCARまたは人工TCRサブユニットを含む。本明細書で提供されるベクターは、領域の位置や順序を変えたり、ある領域を別の領域に置き換えたりするために、当該技術分野で公知の方法を用いて改変され得ることが理解され、ベクターが、例えば、BCMA、CD123、CD20、CD22、CD30、CD33、EGFR、EGFRvIII、GD2、Her2、Mesothelin、MUC1、MUC16、NKG2D、NY-ESO-1、PRAME、PSCA、PSMA、ROR1などの1つ以上の標的抗原に特異的な抗原結合ドメインを、例えば、CAR構築物の一部としてコード化できる。ベクターはまた、本明細書で議論されるように、各ポリペプチド領域の適切な置換で修飾され得る。
【0165】
ベクターは、例えば、CD27、CD28、4-1BB、OX40、ICOS、RANK、TRANCE、およびDAP10からなる群から選択されるものなど、1つまたは2つ以上の共刺激ポリペプチド細胞質シグナル伝達領域を含む、共刺激ポリペプチド細胞質シグナル伝達領域を、例えばCAR構築物の一部として、コード化することができる。ベクターは、例えば、CARポリペプチドと共刺激ポリペプチドとの間のリンカーなどのCAR構築物の一部として、リンカーをコード化し得る。本発明のT細胞(例えば、CAR T細胞)などの操作された免疫細胞は、誘導性自殺遺伝子または自殺スイッチとしても知られる安全スイッチを発現し得、これは、所望される場合、例えば、移植片対宿主病(GVHD)が発症する場合、操作された免疫細胞をin vivoで根絶するために使用され得る。いくつかの例では、キメラ抗原受容体を発現する操作された免疫細胞は、オンターゲットオフ腫瘍毒性などの有害事象を誘発する患者に提供される。いくつかの治療的事例では、患者は、CAR改変細胞を使用する治療中にいくつかの陰性症状を経験し得る。いくつかの場合は、これらの療法は、部分的には健康な組織に対する非特異的攻撃に起因する有害事象をもたらした。いくつかの例では、治療用に操作された免疫細胞(therapeutic engineered immune cells)は、もはや必要とされ得ず、または治療は、指定の時間量にわたって意図され、例えば、治療用に操作された免疫細胞は、腫瘍細胞または腫瘍サイズを減少させるように作用され得、もはや必要とされ得ない。したがって、いくつかの実施形態では、操作された免疫細胞が、誘導性カスパーゼ-9ポリペプチドなどの安全スイッチも発現する核酸、細胞、および方法が提供される。当該技術分野で公知の他の自殺スイッチ系(suicide switch systems)には、(a)非毒性プロドラッグガンシクロビル(GCV)をGCV-トリホスフェートに変え、DNA複製を停止することによって細胞死をもたらす単純ヘルペスウイルス(HSV)-tk、(b)iCasp9が小分子AP1903に結合し、内因性アポトーシス経路を活性化する二量体化(dimerization)をもたらすこと、および(c)形質導入されたiNKT細胞において発現される、標的可能な表面抗原(例えば、CD20および切断型EGFR)は、関連するモノクローナル抗体の投与後に補体/抗体依存性細胞傷害活性(CDC/ADCC)を介して改変細胞を効率的に排除することを可能にすることが含まれるが、これらに限定されない。例えば、操作された免疫細胞の数を減少させる必要がある場合、誘導性リガンドは患者に投与され、それによって操作された免疫細胞のアポトーシスを誘導することができる。これらのスイッチは、操作された免疫細胞を根絶することが望まれる場合に供給され、かつ細胞死をもたらす(例えば、壊死またはアポトーシスを誘発することによって)薬剤などのトリガに応答する。これらの薬剤は、毒性遺伝子産物の発現をもたらすことができるが、操作された免疫細胞が、薬剤に応答して毒性形態に切り替えられるタンパク質をすでに発現する場合、より迅速な応答を得ることができる。
【0166】
選択マーカー
特定の実施形態では、発現構築物は、発現構築物中にマーカーを含めることによって、その発現がin vitroまたはin vivoで同定される核酸構築物を含む。このようなマーカーは、細胞に同定可能な変化を与え、発現構築物を含有する細胞の容易な同定を可能にする。通常、薬物選択マーカーを含めることは、クローニングおよび形質転換体の選択に役立つ。例えば、ネオマイシン、ピューロマイシン、ハイグロマイシン、DHFR、GPT、ゼオシン、およびヒスチジノールに対する耐性を付与する遺伝子は、有用な選択マーカーである。あるいは、単純ヘルペスウイルスチミジンキナーゼ(tk)などの酵素が使われる。細胞外非シグナル伝達ドメイン(extracellular,non-signaling domain)、または種々のタンパク質(例えば、CD34、CD19、LNGFR)を含有する免疫学的表面マーカーもまた使用することができ、磁気または蛍光抗体媒介選別のための簡単な方法を可能にする。使用される選択可能なマーカーは、遺伝子産物をコード化する核酸と同時に発現することができる限り、重要であるとは考えられない。選択マーカーのさらなる例には、例えば、GFP、EGFP、β-gal、またはクロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼ(CAT)などのレポーターが含まれる。
【0167】
リンカーポリペプチド
リンカーポリペプチドには、例えば、切断可能および非切断可能リンカーポリペプチドが含まれる。切断不可能なポリペプチドは、例えば、共刺激ポリペプチドの細胞質シグナル伝達領域と、キメラ抗原受容体(例えば、CD3ζ)のITAM部分との間で動作可能に連結され得る任意のポリペプチドを含み得る。リンカーポリペプチドには、例えば、約2~約30アミノ酸からなるものが含まれる(例えば、(GGGGS)などのフューリン切断部位(furin cleavage site)、またはグリシン-セリンリンカー)。いくつかの実施形態では、リンカーポリペプチドは、約2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、または30のアミノ酸からなる。いくつかの実施形態では、リンカーポリペプチドは、約18~22のアミノ酸からなる。いくつかの実施形態では、リンカーポリペプチドは20のアミノ酸からなる。いくつかの実施形態では、切断可能なリンカーは、集団中の改変細胞に外因性の酵素、例えば、トランスフェクションまたは形質導入によって細胞に導入されるポリヌクレオチドによってコード化される酵素によって、リンカーをコード化するポリヌクレオチドと同時にまたは異なる時点で、切断されるリンカーを含む。いくつかの実施形態では、切断可能なリンカーは、例えば、細胞において天然に発現される酵素、および、例えば、リゾチームなどの、細胞に天然のポリヌクレオチドによってコード化される酵素を含む、集団における改変細胞に対して内因性の酵素によって切断されるリンカーを含む。
【0168】
治療への応用
本明細書で提供される外因性ミトコンドリア、例えば外因性単離生存可能なミトコンドリアで増強された免疫細胞(自己由来ミトコンドリア、同種異系ミトコンドリア、異種ミトコンドリア、封入ミトコンドリアまたは遺伝子改変を伴うミトコンドリアが移植された免疫細胞など)は、標的が関与する任意の疾患または疾病の処置に有用であり得る。本出願が免疫細胞(結合剤特異的ではない)の一般的な適用を開示する場合、標的細胞分子として「腫瘍関連抗原」(「TAA」)を使用することができる。いくつかの実施形態では、疾患または疾病は、養子細胞療法による処置から利益を得ることができる疾患または疾病である。いくつかの実施形態では、疾患または疾病は、腫瘍である。いくつかの実施形態では、疾患または疾病は、細胞増殖性障害である。いくつかの実施形態では、疾患または疾病は、がんである。いくつかの実施形態では、疾患または疾病は、ウイルス感染である。いくつかの実施形態では、疾患または疾病は、自己免疫疾患である。
【0169】
いくつかの実施態様では、本明細書には、疾患または疾病の処置を必要とする対象において疾患または疾病を処置する方法が提供され、該方法は、対象に、本明細書に提供される外因性ミトコンドリアで増強された免疫細胞、例えば、ex vivoで外因性ミトコンドリアを事前に移植された免疫細胞を有効量で投与することによる。いくつかの実施態様では、本明細書には、疾患または疾病の処置を必要とする対象において疾患または疾病を処置する方法が提供され、該方法は、対象に、本明細書に提供される外因性ミトコンドリアと共に、免疫細胞を有効量で同時投与することによる。いくつかの態様では、疾患または疾病は、がんである。いくつかの態様では、疾患または疾病は、ウイルス感染症である。いくつかの実施形態では、疾患または疾病は、自己免疫疾患である。
【0170】
任意の適切ながんは、本明細書で提供される外因性ミトコンドリアで増強された免疫細胞で処置され得る。例示的な適切ながんとしては、例えば、急性リンパ芽球性白血病(ALL)、急性骨髄性白血病(AML)、副腎皮質がん、肛門がん、虫垂がん、星細胞腫、基底細胞がん、脳腫瘍、胆管がん、膀胱がん、骨がん、乳がん、気管腫瘍、原発不明のがん腫、心臓腫瘍、子宮頸がん、脊索腫、結腸がん、結腸直腸がん、頭蓋咽頭腫、腺管がん、胚性腫瘍、子宮内膜がん、上衣腫、食道がん、鼻腔神経芽細胞腫、線維性組織球腫、ユーイング肉腫、眼がん、胚細胞腫瘍、胆嚢がん、胃がん、胃腸カルチノイド腫瘍、胃腸間質腫瘍、妊娠性栄養芽細胞性疾患、神経膠腫、頭頸部がん、肝細胞がん、組織球症、ホジキンリンパ腫(HL)、咽頭下がん、眼内黒色腫、島細胞腫、カポジ肉腫腎臓がん、ランゲルハンス細胞組織球増殖症、喉頭がん、口唇および口腔がん、肝臓がん、上皮内小葉がん、肺がん、マクログロブリン血症、悪性線維性組織球腫、黒色腫、メルケル細胞がん、中皮腫、不顕性原発性を伴う転移性扁平上皮がん、NUT遺伝子を伴う正中管がん、口腔がん、多発性内分泌腫瘍症候群、多発性骨髄腫、真菌症、骨髄異形成症候群、骨髄異形成/骨髄増殖性腫瘍、鼻腔および傍鼻腔がん、鼻咽頭がん、神経芽細胞腫、非ホジキンリンパ腫(NHL)、非小細胞肺がん(NSCLC)、中咽頭がん、骨肉腫、卵巣がん、膵臓がん、乳頭腫症、傍神経節腫、副甲状腺がん、陰茎がん、咽頭がん、褐色細胞腫、下垂体腫瘍、胸膜肺芽細胞腫、原発性中枢神経系リンパ腫、前立腺がん、直腸がん、腎細胞がん、腎盂および尿管がん、網膜芽細胞腫、ラブドイド腫瘍、唾液腺がん、セザリー症候群、皮膚がん、小細胞肺がん(SCLC)、小腸がん、軟部組織肉腫、脊髄腫瘍、胃がん、T細胞リンパ腫、奇形腫、精巣がん、咽頭がん、胸腺腫および胸腺がん、甲状腺がん、尿道がん、子宮がん、膣がん、外陰部がん、およびウィルムス腫瘍。
【0171】
併用療法
いくつかの実施形態では、本明細書において提供される外因性ミトコンドリアで増強されたT細胞またはCAR T細胞などの免疫細胞は、少なくとも1つの追加の治療剤とともに投与される。外因性ミトコンドリアで増強された免疫細胞は、ex vivoで外因性ミトコンドリアを事前に移植された免疫細胞、またはin vivoで外因性ミトコンドリアが免疫細胞に移植されるように外因性ミトコンドリアと同時投与された免疫細胞を含み得る。任意の適切な追加の治療剤は、本明細書に提供される外因性ミトコンドリアで増強された免疫細胞と共に投与され得る。いくつかの態様では、追加の治療剤は、放射線、細胞傷害性薬剤、化学療法剤、細胞増殖抑制剤(cytostatic agent)、抗ホルモン剤、EGFR阻害剤、免疫刺激剤、抗血管新生剤、チェックポイント遮断剤、およびそれらの組み合わせから選択される。
【0172】
いくつかの実施形態では、追加の治療剤は免疫刺激剤を含む。
【0173】
いくつかの実施形態では、免疫刺激剤は、免疫細胞の阻害性受容体のシグナル伝達を遮断する薬剤またはそのリガンドである。いくつかの態様では、阻害受容体またはリガンドは、細胞傷害性Tリンパ球関連タンパク質4(CD152としても知られるCTLA-4)、プログラム細胞死タンパク質1(PD-1またはCD279としても知られる)、プログラム死リガンド1(PD-L1またはCD274としても知られる)、トランスフォーミング増殖因子β(TGFβ)、リンパ球活性化遺伝子3(CD223としても知られるLAG-3)、Tim-3(A型肝炎ウイルス細胞受容体2またはHAVCR2またはCD366)、ニューリチン、BおよびTリンパ球アテニュエーター(BTLAまたはCD272も)、キラー細胞免疫グロブリン様受容体(KIR)、およびそれらの組み合わせから選択される。いくつかの態様では、薬剤は、抗PD-1抗体(例えば、ペンブロリズマブまたはニボルマブ)、および抗PD-L1抗体(例えば、アテゾリズマブ)、抗CTLA-4抗体(例えば、イピリムマブ)、抗TIM3抗体、がん胎児性抗原関連細胞接着分子1(CECAM-1、さらにCD66a)、および5(CEACAM-5、またCD66e)、vset免疫調節受容体(さらに、VISRまたはVISTA)、白血球関連免疫グロブリン様受容体1(さらに、LAIR1またはCD305)、CD160、ナチュラルキラー細胞受容体2B4(さらに、CD244またはSLAMF4)、およびそれらの組み合わせから選択される。いくつかの態様では、薬剤はペンブロリズマブである。いくつかの態様では、薬剤はニボルマブである。いくつかの態様では、薬剤はアテゾリズマブである。
【0174】
いくつかの実施形態では、追加の治療剤は、PD-1とPD-L1との間の相互作用を阻害する薬剤である。いくつかの態様では、PD-1とPD-L1との間の相互作用を阻害する追加の治療剤は、抗体、ペプチド模倣体、および小分子から選択される。いくつかの態様では、PD-1とPD-L1との間の相互作用を阻害する追加の治療剤は、ペンブロリズマブ(Keytruda(商標))、ニボルマブ(Opdivo(商標))、アテゾリズマブ(Tecentriq(商標))、アベルマブ(Bavencio(商標))、ピジリズマブ、デュルバルマブ、BMS-936559、スルファモノメトキシン1、およびスルファメチゾール2から選択される。いくつかの実施形態では、PD-1とPD-L1との間の相互作用を阻害する追加の治療剤は、例えば、参照によりその全体が援用される、Weinmannら(Weinmann,2016,“Corrigendum:Cancer Immunotherapy:Selected Targets and Small-Molecule Modulators”,ChemMedChem 11:1576)に記載されるように、そのような活性を有することが当該技術分野において知られている任意の治療剤である。いくつかの実施形態では、PD-1とPD-L1との間の相互作用を阻害する薬剤は、本明細書に提供される抗体と同じ医薬組成物中に製剤化される。いくつかの実施形態では、PD-1とPD-L1との間の相互作用を阻害する薬剤は、本明細書で提供される抗体とは異なる医薬組成物に製剤化される。いくつかの実施形態では、PD-1とPD-L1との間の相互作用を阻害する薬剤は、本明細書で提供される抗体の投与前に投与される。いくつかの実施形態では、PD-1とPD-L1との間の相互作用を阻害する薬剤は、本明細書で提供される抗体の投与後に投与される。いくつかの実施形態では、PD-1とPD-L1との間の相互作用を阻害する薬剤は、本明細書で提供される抗体と同時に投与されるが、薬剤および抗体は、別々の医薬組成物で投与される。
【0175】
いくつかの実施形態では、免疫刺激剤(immunostimulatory agent)は、免疫細胞の共刺激受容体のアゴニストである。いくつかの態様では、共刺激受容体は、GITR、OX40、ICOS、LAG-2、CD27、CD28、4-1BB、CD40、STING、toll様受容体、RIG-1、およびNOD様受容体から選択される。いくつかの実施形態では、アゴニストは抗体である。
【0176】
いくつかの実施形態では、免疫刺激剤は、アルギナーゼ、インドールアミン-2 3-ジオキシゲナーゼ、またはアデノシンA2A受容体の活性を調節する。
【0177】
いくつかの実施形態では、免疫刺激剤はサイトカインである。いくつかの態様では、サイトカインは、IL-2、IL-5、IL-7、IL-12、IL-15、IL-21、およびそれらの組み合わせから選択される。いくつかの態様では、サイトカインはIL-2である。
【0178】
いくつかの実施形態では、免疫刺激剤は腫瘍溶解性ウイルス(oncolytic virus)である。いくつかの態様では、腫瘍溶解性ウイルスは、単純ヘルペスウイルス(herpes simplex virus)、水疱性口内炎ウイルス、アデノウイルス、ニューカッスル病ウイルス(NDV)、ワクシニアウイルス、およびマラバウイルスから選択される。
【0179】
追加の治療剤のさらなる例には、タキサン(例えば、パクリタキセルまたはドセタキセル)、白金剤(例えば、カルボプラチン、オキサリプラチン、および/またはシスプラチン)、トポイソメラーゼ阻害剤(例えば、イリノテカン、トポテカン、エトポシド、および/またはミトキサントロン)、フォリン酸(例えば、ロイコボリン)、あるいはヌクレオシド代謝阻害剤(例えば、フルオロウラシル、カペシタビン、および/またはゲムシタビン)が含まれる。いくつかの実施形態では、追加の治療剤は、フォリン酸、5-フルオロウラシル、および/またはオキサリプラチンである。いくつかの実施形態では、追加の治療剤は、5-フルオロウラシルおよびイリノテカンである。いくつかの実施形態では、追加の治療剤は、タキサンおよび白金剤である。いくつかの実施形態では、追加の治療剤は、パクリタキセルおよびカルボプラチンである。いくつかの実施形態では、追加の治療剤は、ペメトレキセドである。いくつかの実施形態では、追加の治療剤は、EGFR、RAF、またはMEK標的化剤などの標的化治療剤である。
【0180】
追加の治療剤は、任意の適切な手段によって投与することができる。いくつかの実施態様において、本明細書に提供される薬剤(medicament)、および追加の治療剤は、同じ医薬組成物に含まれる。いくつかの実施態様において、本明細書に提供される抗体、および追加の治療剤は、異なる医薬組成物に含まれる。
【0181】
本明細書に提供される抗体および追加の治療剤が、異なる医薬組成物中に含まれる実施形態では、抗体の投与は、追加の治療剤の投与前、投与と同時、および/または投与後に行うことができる。いくつかの態様では、本明細書で提供される抗体および追加の治療剤の投与は、互いに約1ヶ月以内に行われる。いくつかの態様では、本明細書で提供される抗体および追加の治療剤の投与は、互いに約1週間以内に行われる。いくつかの局面において、本明細書において提供される抗体および追加の治療剤の投与は、互いに約1日以内に起こる。いくつかの局面において、本明細書において提供される抗体および追加の治療剤の投与は、互いに約12時間以内に起こる。いくつかの局面において、本明細書において提供される抗体および追加の治療剤の投与は、互いに約1時間以内に起こる。
【0182】
使用方法
本明細書は、単離されたミトコンドリアまたは単離されたミトコンドリアの医薬組成物をex vivoで患者または同種異系ドナーの細胞に送達し、および/あるいはin vivoで患者の組織に送達する方法を提供する。理論に束縛されることを望むものではないが、ミトコンドリアは、アクチン依存性エンドサイトーシスを介して組織細胞または培養細胞によって取り込まれ、それによって、医薬組成物を細胞に直接送達する方法を提供する。非限定的な例示的な例では、ミトコンドリアは、例えば、2~24時間の期間にわたる、培養培地中の細胞(10/ウェル)とのミトコンドリア(100μg/ウェル)の共インキュベーションによって、標的免疫細胞に移植される。当業者は、ex vivoで免疫細胞に投与されるか、またはin vivoで患者の組織に投与されるミトコンドリアの投与量が、生存率(viability)、生存率(survival)、耐久性、自己複製能、および/または選択の最適化など、標的免疫細胞(単数または複数)を増強することに関して意図される結果に基づいて変動し得ることを認識できる。例えば、共インキュベーションによる、ex vivoで、ミトコンドリアの免疫細胞への送達において、ミトコンドリアの投与量は、標的細胞あたり0.0001ngのミトコンドリア~標的細胞あたり2.5ngのミトコンドリアであり得る。患者の組織へのin vivoでのミトコンドリアの送達において、1mLあたり1ミトコンドリア~1mLあたり10ミトコンドリアが送達され得る。
【0183】
本開示は、増強された免疫細胞(αβT細胞、γδT細胞、メモリー免疫細胞(例えば、セントラルメモリーCD8 T細胞、エフェクターメモリーCD8 T細胞、またはメモリー様T細胞)、Treg細胞(例えば、Treg CD4 T細胞)、CAR-T細胞など)を含む組成物を企図し、該細胞は、外因性ミトコンドリアを含むか、または外因性ミトコンドリアによって増強され、該外因性ミトコンドリアは、自己由来ミトコンドリア、同種異系ミトコンドリア、異種ミトコンドリア、封入ミトコンドリア、または遺伝子改変を伴う自家由来ミトコンドリアであり得る。これらの細胞は、抗腫瘍活性を有する当該技術分野で公知の任意のエフェクター細胞または自己免疫を予防することができる免疫抑制免疫細胞のいずれかであり得る。したがって、本明細書は、外因性ミトコンドリアを含むか、または外因性ミトコンドリアによって増強された免疫細胞、または外因性ミトコンドリアを含むか、または外因性ミトコンドリアによって増強された免疫細胞の医薬組成物を、患者の細胞および/もしくは組織、または同種異系ドナーに由来する細胞に送達する方法を提供する。外因性ミトコンドリアを含むか、または外因性ミトコンドリアによって増強された免疫細胞は、様々な形態のがん、腫瘍、および自己免疫疾患を含むがこれらに限定されない様々な疾患を処置するために使用することができる。
【0184】
いくつかの実施形態では、CAR T細胞の調製は、以下の工程を含み得る。
1.白血球除去療法によって患者の血液からTリンパ球を採取する。
2.密度勾配遠心分離、水簸(elutriation)、および免疫磁気ビーズ選択によるT細胞の濃縮。
3.エレクトロポレーション(electroporation)、レトロウイルス/レンチウイルス形質導入、またはヌクレアーゼ媒介ゲノム編集(例えば、標的細胞のゲノムへのCAR遺伝子の導入)を使用する遺伝子改変。
4.当該技術分野で公知の方法を用いた人工抗原提示系(抗CD8/抗CD28免疫磁気ビーズ/LV-APC)によるポリクローナル活性化によるCAR-T細胞の活性化および増殖。一貫性は、概して、cGMP(医薬品適正製造基準)による原材料およびプロトコルの標準化および検証によって達成される。
5.品質保証(Quality Assurance)-生存率、表現型決定、グラム染色、エンドトキシン、ならびに当該技術分野で公知の方法を用いたFDAガイドラインに準拠した細菌、真菌、およびマイコプラズマ汚染物質の試験。
6.製剤および投与(Formulation and Administration)-当該技術分野で公知の方法を用いて、臨床的に処方された用量および投与経路について試験する。治療用細胞の保存、パッケージング、輸送、受け取り、および投与は、概して、製品の安定性および保管の連鎖を維持する必要がある。
【0185】
特定の実施形態では、ミトコンドリア調製物は、(1)遺伝子改変(例えば、CAR遺伝子の導入)が行われる前に、(2)遺伝子改変が行われると同時に、または(3)遺伝子改変が行われた後に、免疫細胞に送達される。特定の実施形態において、ミトコンドリア調製物は、ex vivoでの遺伝子改変(例えば、CAR遺伝子の導入)が行われる前、(2)遺伝子改変が行われると同時に、または(3)遺伝子改変が行われた後に、ex vivoでの遺伝子改変を含む方法などにおいて、免疫細胞にex vivoで送達される。特定の実施形態では、ミトコンドリア調製物は、in vivoでの遺伝子改変(例えば、CAR遺伝子の導入)が行われる(例えば、in vivoでのウイルス媒介遺伝子改変)前に、免疫細胞にex vivoで送達される。理論に束縛されることを望むものではないが、工程(1)は、典型的には、免疫無防備状態のがん患者から採取された自己T細胞(疲弊T細胞または老化T細胞)の再生に重要である。ミトコンドリアは、0.2:1~5000:1の比で、例えば0.2:1、0.5:1、1:1、10:1、50:1、100:1、200:1、500:1、1000:1、または5000:1の比で、ex vivoで細胞と共インキュベートすることができる。
【0186】
免疫細胞活性をブーストするため、CAR-T細胞活性などのミトコンドリアもまた、in vivoで、(4)免疫細胞とともに患者に送達することができる。特定の実施形態において、ミトコンドリア調製物は、(1)in vivoでの遺伝子改変(例えば、CAR遺伝子の導入)が行われる前、(2)in vivoでの遺伝子改変と同時に、または(3)in vivoでの遺伝子改変後に免疫細胞にin vivoで送達される(例えば、in vivoでのウイルス媒介遺伝子改変)。特定の実施形態では、ミトコンドリア調製物は、ex vivoでの遺伝子改変(例えば、CAR遺伝子の導入)が行われた後に、免疫細胞にin vivoで送達される。本発明の特定の実施形態では、CAR-T細胞または他の免疫細胞は、全身(静脈内)注入を介して送達されるが、ミトコンドリアは、(5)腫瘍内注射を介して、(6)臓器内注射を介して、(7)組織内注射を介して、または(8)臓器特異的もしくは組織特異的血管系を介して送達される。
【実施例
【0187】
以下は、本発明の方法および組成物の例である。本明細書における一般的な説明から、様々な他の実施形態が実施され得ることが理解される。
【0188】
実施例1a.組織試料または培養細胞からのミトコンドリアの単離
組織試料または培養細胞からミトコンドリアを単離するために実験を行った。
【0189】
調製
以下の溶液を調製して、インタクトで生存可能な呼吸能力のあるミトコンドリアを単離した。本方法を用いてミトコンドリアを首尾よく単離するために、溶液および組織試料を氷上に保持して、ミトコンドリア生存率を保存する必要がある。氷上で維持した場合でさえ、単離されたミトコンドリアは、経時的に機能活性の低下を示す(Olson et al.,J Biol Chem 242:325-332,1967)。以下の溶液は、可能であれば、事前に調製される必要がある。
-1M K-HEPESストック溶液(KOHでpHを7.2に調整)。
-0.5M K-EGTAストック溶液(KOHでpHを8.0に調整)。
-1M KHPOストック溶液。
-1M MgClストック溶液。
-ホモジナイズ緩衝液(pH7.2)、 300mMスクロース、10mM K-HEPES、および1mM K-EGTA。4℃で保存した。
-1×PBS(ThermoFisher、10010031)
-100mLの10×PBSを1Lの再蒸留HO中にピペッティングすることによって、1×PBSを調製した。スブチリシンAストック(Subtilisin A Stock)は、2mgのスブチリシンAを1.5mLの微量遠心管(microfuge tube)に秤量することによって調製した。使用するまで-20℃で保存する。ホモジナイズ緩衝液(Homogenizing Buffer)において、2mg/mlで調製した。
【0190】
組織からのミトコンドリアの単離
組織解離および分画濾過を用いたミトコンドリアの単離における手順工程(procedural steps)を概説するスキームを図2に示す。骨格筋から採取した2つの6mm生検新鮮試料パンチ(biopsy fresh sample punches)を、gentleMACS Cチューブ(Miltenyi Biotec、Somerville、MA)中の5mLのホモジナイズ緩衝液に移し、gentleMACS(商標)Dissociator(Miltenyi Biotec)の1分間ホモジナイズプログラム(1-minute homogenization program)を使用して試料をホモジナイズした。スブチリシンAストック溶液(250μL)をgentleMACS Cチューブ中のホモジネートに添加し、氷上で10分間インキュベートした。ホモジネートを750×gで4分間遠心分離した(任意選択の工程として)。その後、ホモジネートを、氷上の50mLコニカル遠心管中で、予め湿らせた40μmメッシュフィルターを通して濾過した。濾液を、氷上の50mLコニカル遠心分離機中で、予め湿らせた新しい40μmメッシュフィルターを通して再濾過した。濾液を、氷上の50mLコニカル遠心管中で、予め湿らせた新しい10μmメッシュフィルターを通して、再び再濾過した。濾液を、氷上の50mLコニカル遠心管中で、予め湿らせた新しい6μmメッシュフィルターを通して再濾過した。得られた濾液を直ちに使用するか、または遠心分離により濃縮した。濃縮の場合では、濾液を1.5mLの微量遠心管に移し、9000×g、10分間、4℃で遠心分離した。上清を除去し、ミトコンドリアを含有するペレットを再懸濁し、1mLのホモジナイズ緩衝液に混合した。
【0191】
培養細胞からのミトコンドリアの単離
培養細胞から、例えばヒト心臓線維芽細胞(HCF)細胞株(ScienCell Research Laboratories,Carlsbad,CAから入手)からミトコンドリアも単離した。
【0192】
ヒト心臓線維芽細胞(HCF)細胞の培養
ヒト心臓線維芽細胞(HCF)を、供給業者の指示(ScienCell)に従って、ウシ胎児血清、線維芽細胞増殖サプリメント-2(fibroblast growth supplement-2)、および抗生物質(ペニシリン/ストレプトマイシン)溶液を含有する線維芽細胞培地-2(Fibroblast Medium-2)中で維持した。細胞を5%COの加湿雰囲気中、37℃で単層として維持し、90%コンフルエンス(confluence)に達した時点で継代した(passaged)。
【0193】
ヒト心臓線維芽細胞(HCF)細胞の調製
80%のコンフルエンシ(confluency)の2つのフラスコ(T150)からのHCF細胞をPBSで1回洗浄した。次いで、トリプシンを使用して、供給業者の説明書(ScienCell Research Laboratories,Carlsbad,CA)に従って細胞を剥離した。供給業者の説明書(ScienCell Research Laboratories,Carlsbad,CA)に従って、トリプシン中和溶液を添加することによって反応を停止させた。細胞を50ml遠心管に回収し、1000rpm(190×g)で5分間遠心分離した。上清を廃棄し、1×PBSで合計3回洗浄した。
【0194】
HCFとは異なる培養細胞の調製は、製造業者の指示に従って行われる必要がある。注目すべきことに、ミトコンドリアの供給源として使用される細胞は、接着性、半接着性、または懸濁状態であり得る。
【0195】
ミトコンドリア単離手順は、生検試料ではなくヒト線維芽細胞を使用したことを除いて、組織試料からミトコンドリアを単離するための手順と本質的に同じであった。
【0196】
あるいは、ミトコンドリアは、反復遠心分離によって単離することができる(Kesner et al.,2016,“Characteristics of Mitochondrial Transformation into Human Cells”,Sci Rep 6:26057)。手短に言えば、トリプシン処理により細胞を回収し、PBSに懸濁し、遠心分離(5分、250×g)を2回行った。ミトコンドリア単離手順を4℃または氷上で行った。遠心分離した細胞をミトコンドリア単離緩衝液(320mMスクロース、5mMトリス-HCl、pH7.4、2mM EGTA)に再懸濁し、Dounceホモジナイザーでホモジナイズした。核および細胞残屑を、3000×gで5分間の2回の遠心分離によって除去し、上清を回収した(任意選択の工程)。次いで、上清を12,000×gで10分間遠心分離し、ミトコンドリアペレットをミトコンドリア単離緩衝液に再懸濁した。ミトコンドリア濃度をブラッドフォードアッセイ(Bradford assay)により決定した。
【0197】
ミトコンドリア数
単離ミトコンドリアのアリコート(10μL)をMitoTracker Orange CMTMRos(5μmol/L、Thermo Fisher Scientific)で標識することによって、生存可能なミトコンドリア数を決定した。標識ミトコンドリアのアリコートをスライド上にスポットし、63× C-アポクロマト対物レンズ(1.2W Korr/0.17NA、Zeiss)を有するスピニングディスク共焦点顕微鏡を使用して計数した。ミトコンドリアをミトコンドリア特異的色素MitoFluor Green(Thermo Fisher Scientific)で対比染色した。自己蛍光およびバックグラウンド蛍光の測定のために、未染色細胞および組織を用いて適切な波長を選択した。簡潔には、1μLの標識ミトコンドリアを顕微鏡スライド上に置き、覆った。ミトコンドリア数を、MetaMorph Imaging Analysisソフトウェアを使用して、全標本領域をカバーする低(×10)倍率で決定した。
【0198】
実施例1b.培養細胞からのミトコンドリアの単離
培養細胞からミトコンドリアを単離するために実験を行った。
【0199】
調製
以下の溶液を調製して、インタクトで生存可能な呼吸能力のあるミトコンドリアを単離した。本方法を用いてミトコンドリアを首尾よく単離するために、溶液および組織試料を氷上に保持して、ミトコンドリア生存率を保存する必要がある。氷上で維持した場合でさえ、単離されたミトコンドリアは、経時的に機能活性の低下を示す(Olson et al.,J Biol Chem 242:325-332,1967)。以下の溶液は、可能であれば、事前に調製される必要がある。
-1M K-HEPESストック溶液(KOHでpHを7.2に調整)。
-0.5M K-EGTAストック溶液(KOHでpHを8.0に調整)。
-ホモジナイズ緩衝液(pH7.2)、 300mMスクロース、10mM K-HEPES、および1mM K-EGTA。4℃で保存した。
-1×PBS(ThermoFisher,10010031)
-スブチリシンAストックは、2mgのスブチリシンAを1.5mLの微量遠心管に秤量することによって調製した。使用するまで20℃で保存する。ホモジナイズ緩衝液中2mg/mlで調製した。
【0200】
ヒト心臓線維芽細胞(HCF)細胞の培養
ヒト心臓線維芽細胞(HCF)(ScienCell Research Laboratories,Carlsbad,CAから入手)を実施例1aに記載のように培養し、90%コンフルエンスに達した時点で細胞を継代した。
【0201】
HCFとは異なる培養細胞の調製は、製造業者の指示に従って行われる必要がある。注目すべきことに、ミトコンドリアの供給源として使用される細胞は、接着性、半接着性、または懸濁状態であり得る。
【0202】
培養細胞からのミトコンドリアの単離
培養細胞、例えばヒト心臓線維芽細胞(HCF)細胞株からミトコンドリアも単離した。HCF細胞の調製は、実施例1aの方法に従って行った。次いで、各フラスコからのHCF細胞を、gentleMACS C Tube(Miltenyi Biotec,Somerville,MA)中の5mLのホモジナイズ緩衝液に移し、gentleMACS(商標)Dissociator(Miltenyi Biotec)の1分間ホモジナイズプログラムを使用して試料をホモジナイズした。スブチリシンAストック溶液(250μL)をgentleMACS Cチューブ中のホモジネートに添加し、氷上で10分間インキュベートした。ホモジネートを、氷上の50mLコニカル遠心管中で、予め湿らせた40μmメッシュフィルターを通して濾過した。濾液を、氷上の50mLコニカル遠心分離機中で、新しい予め湿らせた40μmメッシュフィルターを通して再濾過した。濾液を、氷上の50mLコニカル遠心管中で、予め湿らせた新しい10μmメッシュフィルターを通して再び再濾過した。任意選択で、濾液を、氷上の50mLコニカル遠心管中で、新しい予め湿らせた5μmメッシュフィルターを通して再び再濾過した。得られた濾液を直ちに使用するか、または遠心分離により濃縮した。濃縮の場合では、濾液を1.5mLの微量遠心管に移し、4℃で5分間9500×gで遠心分離した。同じ遠心分離速度で3回の洗浄を行った。
【0203】
単離されたミトコンドリアの定量
単離されたミトコンドリアを実施例1bのホモジナイズ緩衝液に懸濁し、使用するまで氷上に保持した。様々な用量投与のための調製物中のミトコンドリアの量を、製造業者の指示に従って、Qubit(商標)Fluorometer(ThermoFisher Scientific / Invitrogen)を使用し、Qubit(商標)Protein Assay kitを用いて測定した。タンパク質濃度測定について、ミトコンドリアをPBS(ThermoFisher、10010031)に再懸濁した。ミトコンドリア投与量は、μgで表されるタンパク質含量に関して推定した。
【0204】
実施例2 T細胞単離、活性化および培養
CD8T細胞を健常ドナーのバフィーコートから単離した。末梢血単核細胞(PBMC)を、製造業者の指示に従ってFicoll Paque plus(Cytiva,17144002)を使用する密度勾配遠心分離によって採取した。EasySep(商標)Human CD8T Cell Isolation Kit(Stemcell,17953)およびthe Big Easy EasySep(商標)Magnet(Stemcell,18001)を使用して、PBMCからヒトCD8T細胞を回収した。単離されたCD8T細胞を、100U/mlの組換えヒトIL-2(Peprotech,200-02)の存在下で、Dynabeads Human T-Activator CD3/CD28(ThermoFisher,111.32D)を用いて1:1の比で活性化した。CD8T細胞を、1%L-グルタミン(ThermomFisher,25030024)、1%ペニシリン-ストレプトマイシン(10,000U/mL,Gibco,15140122)、1%非必須アミノ酸(NEAA,ThermoFisher,11140050)、1%ピルビン酸ナトリウム(ThermoFisher,11360070)、10%ウシ胎児血清、および0.1%の2β-メルカプトエタノール(Gibco,31350-010)を補充した、RPMI1640培地GlutaMAX(商標)Supplement 500mL(ThermoFisher,61870010)中で培養した。CD8T細胞を50万細胞/mLでプレーティングし、細胞が200万細胞/mLのコンフルエンシーに達した時点、または培地が黄色になった時点に分割した。
【0205】
実施例3.T細胞移植
CD8T細胞は、ミトコンドリア移植の24時間前に、24ウェルプレートに50万個/mLでプレーティングした。ミトコンドリアを単離したら、CD8T細胞を回収し、1500rpm(430×g)で5分間遠心分離した。上清を廃棄し、細胞を新鮮なT細胞培地に100万細胞/100μLの濃度で再懸濁した。T細胞培地を実施例2に記載する。移植したCD8T細胞を、24ウェルプレートの各ウェル中の200μLの最終容量のT細胞培地中のCD8T細胞の100万当たり10μg~100μgの範囲のタンパク質中、単離されたミトコンドリアと共に4時間インキュベートした。外因性ミトコンドリアおよびCD8T細胞の共インキュベーションの4時間後、ウェルあたり1.8mlの新鮮なT細胞培地を添加した。
【0206】
実施例4.ミトコンドリア標識および内在化
実施例4.1-染色単離ミトコンドリア(Stained Isolated Mitochondria)を用いたT細胞移植
CD8T細胞を、ミトコンドリア移植の24時間前に、24ウェルプレートに50万細胞/mLで播種する。ミトコンドリアを実施例1bに記載の手順に従って単離する。次いで、ミトコンドリアを、実施例1bのホモジナイズ緩衝液中、200nMのMitotracker Red CMXRos(ThermoFisher,M7512)およびMitotracker Green FM(ThermoFisher,M7514)を用いて37℃で10~15分間染色する。染色したミトコンドリアの3回の洗浄を、実施例1bのホモジナイズ緩衝液を用いて9500×g、5分間、4℃で行い、最後の洗浄の上清を対照として保存する。CD8T細胞を回収し、1500rpm(430×g)で5分間遠心分離する。上清を除去し、細胞を新鮮なT細胞培地に100万細胞/100μLで再懸濁する。T細胞培地を実施例2に記載する。染色したミトコンドリアをT細胞に(直ちに)添加して、24ウェルプレートのウェルあたり200μLの最終容量を得る。染色したミトコンドリアの最後の洗浄を、対照の非移植CD8T細胞と等容量で添加する。染色したミトコンドリアの組み込みは、移植の5分後から24時間後に、フローサイトメトリー(例えば、FACSLyric(BD Biosciences)で取得したデータ)によって、または蛍光顕微鏡法(Keyence microscope,BZ-X810)によって評価する。4時間より長い外因性ミトコンドリアおよびCD8T細胞の共インキュベーションの場合、ウェルあたり1.8mlの新鮮なT細胞培地を添加する。
【0207】
実施例4.2-ミトコンドリア移植後の染色
移植したCD8T細胞を、24ウェルプレートの各ウェル中の最終容量200μLのT細胞培地中のCD8T細胞の100万当たり10μg~100μgの範囲のタンパク質の単離ミトコンドリアと共に4時間インキュベートする。外因性ミトコンドリアおよびCD8T細胞の共インキュベーションの4時間後、ウェルあたり1.8mlの新鮮なT細胞培地を添加する。ミトコンドリア呼吸および質量を、共インキュベーションの24時間後に移植細胞において評価する。色素Mitotracker Red CMXRos(ThermoFisher,M7512)およびMitotracker Green FM(ThermoFisher,M7514)を、1%ペニシリン-ストレプトマイシン(10,000U/mL,Gibco,15140122)、5%ウシ胎児血清を補充した、フェノールレッドを含まないRPMI1640培地(ThermoFisher,11835030)中で最終濃度100nMに希釈する。100万のCD8T細胞あたり100μlの染色を添加し、染色を37℃で15分間行う。次いで、細胞をFACS緩衝液(1×PBS(ThermoFisher、10010031)、2%FBS、1%EDTA 0.5M(Sigma-Aldrich,E6758))を用いて1500rpm(430×g)で5分間2回洗浄する。上清を廃棄し、CD8T細胞を300μLのFACS緩衝液に再懸濁し、FACS機(FACSLyric,BD Biosciences)で取得する。
【0208】
実施例5.ミトコンドリア移植時のin vitroでのメモリーCD8T細胞の割合の増加
メモリーT細胞の割合を、健常ドナーから単離し、かつ続いて培養したCD8T細胞への外因性ミトコンドリア移植後9日目にフローサイトメトリーによって評価した。
【0209】
手順
(i)T細胞単離、活性化、および培養を、実施例2に記載されるように行った。
(ii)ミトコンドリアの単離 実施例1bに前述したように、ヒト心臓線維芽細胞(HCF)からミトコンドリアを単離した。単離されたミトコンドリアを実施例1bのホモジナイズ緩衝液に懸濁し、使用するまで氷上に保持した。様々な用量投与のための調製物中のミトコンドリアの量を、製造業者の指示に従って、Qubit(商標)Fluorometer(Thermo Fisher Scientific/Invitrogen)を使用し、Qubit(商標)Protein Assay Kitを用いて測定した。ミトコンドリア投与量は、μgで表されるタンパク質含量に関して推定される。
(iii)移植後9日目、抗ヒトCD45RA APC(Biolegend,304112)、抗ヒトCD45RO PB(Biolegend,304223)、および抗ヒトCD62L FITC(Biolegend,304804)を用いて、製造業者の指示に従って氷上で染色を行った。表面式に応じて、CD8T細胞は、ナイーブ(CD62L+、CD45RA+、CD45RO-)、幹細胞様メモリー(CD62L+、CD45RA+、CD45RO+)、セントラルメモリー(CD62L+、CD45RA-、CD45RO+)、エフェクターメモリー(CD62L-、CD45RA-、CD45RO+)またはエフェクター(CD62L-、CD45RA+、CD45RO-)として分類した。異なるサブセットの部分は、未処理CD8T細胞と、外因性ミトコンドリアを移植されたCD8T細胞との間で比較される。
【0210】
結果
ミトコンドリア移植後9日目のセントラルメモリーCD8T細胞およびエフェクターメモリーCD8T細胞の割合の増加
移植されたミトコンドリアが混合集団からのメモリーCD8T細胞の生存率および/または分化および/または選択に有利に働く能力を調べるために、活性化後12日目に、ミトコンドリアを、100万のCD8T細胞あたり30μgおよび100μgの用量レベルでCD8T細胞に移植した。移植後9日目に、CD8T細胞を染色し、FACSLyric(BD Biosciences)を使用してフローサイトメトリーによって分析し、ナイーブ(CD62L+、CD45RA+、CD45RO-)、幹細胞様メモリー(CD62L+、CD45RA+、CD45RO+)、セントラルメモリー(CD62L+、CD45RA-、CD45RO+)、エフェクターメモリー(CD62L-、CD45RA-、CD45RO+)、またはエフェクター(CD62L-、CD45RA+、CD45RO-)として分類した。
【0211】
図3に示すように、未処理のCD8T細胞と比較して、ミトコンドリア移植の際に、セントラルメモリーCD8T細胞およびエフェクターメモリーCD8T細胞の割合が明らかに増加している。セントラルメモリーCD8T細胞およびエフェクターメモリーCD8T細胞の有意な増強が、30μgおよび100μgの用量のミトコンドリアで検出された。
【0212】
実施例6.ミトコンドリア移植の際のin vivoでのメモリーCD8T細胞の割合の増加
エフェクターT細胞およびメモリーT細胞の割合を、急性感染症に対して引き起こされた免疫応答において経時的に評価する。オボアルブミン(OVA)ペプチドに拘束されたCD45.1マウスOT-I T細胞を活性化し、外因性ミトコンドリアを移植し、続いてCD45.2 C57/B6マウスに注射し、その後リステリア-OVAに感染させる。処置群を、ミトコンドリアを移植していないOT-I T細胞の引き起こされた免疫応答と比較する。
【0213】
手段
(i)マウスCD8T細胞の単離は、EasySep(商標)マウスCD8T細胞単離キット(StemCell,Cat.#19853)に従って行う。T細胞の活性化および増殖は、CD3/CD28 Dynabeads(Gibco,Cat.#11456.D)を1対1の比で、組換えIL-2(50U/ml)で使用することによって実施する。CD8T細胞を50万細胞/mLでプレーティングし、細胞が200万細胞/mLのコンフルエンシーに達した時点、または培地が黄色になった時点で分割する。
(ii)OT-Iマウスのミトコンドリアの単離 ミトコンドリアを、実施例1aにおいて前述したように骨格筋から単離する。単離されたミトコンドリアを実施例1aのホモジナイズ緩衝液に懸濁し、使用するまで氷上に維持する。ミトコンドリアの量は、様々な用量投与のための調製において、製造業者の指示に従って、Qubit(商標)Fluorometer(ThermoFisher Scientific/Invitrogen)を使用し、Qubit(商標)Protein Assay Kitを用いて測定される。ミトコンドリア投与量は、μgで表されるタンパク質含量に関して推定される。
(iii)マウスCD8T細胞を、活性化後7日目に、実施例3に前述したように移植する。
(iv)マウス(CD45.2)に、24時間前に移植した20,000個のOT-I CD8T細胞(CD45.1)を注射し、続いて、2,000個のコロニー形成単位(cfu)のリステリア-OVAを感染させる。CD8T細胞の持続性およびメモリー分化を、動物の血液(7日目、14日目、21日目)および臓器(21日目の脾臓、リンパ節(LN))において経時的に評価する。血液または処理された臓器からの染色 LIVE/DEAD Fixable dye Aqua DEAD(ThermoFisher,L34957)、抗マウスCD8α PE/Texas Red(Abcam ab25294)、抗マウスCD45.1BV650(BD 563754)、抗マウスCD45.2BV421(BD 562895)、抗マウスKLRG1 PE-Cy7(BioLegend 138415)、抗マウスCD127 PE(BioLegend 121111)、抗マウスCD44 APC-Cy7(BD 560568)、抗マウスCD62L PerCP/Cyanine5.5(BioLegend 104431)。リステリア-OVAに対するOT-I T細胞の引き起こされた免疫応答は、短命エフェクター細胞(SLEC)(KLRG1+ CD127-および/またはCD44+ CD62L-)およびメモリー前駆細胞(MPEC)(KLRG1-CD127+および/またはCD44+ CD62L+)として分類される。
(v)サイトカイン産生を、ペプチド再刺激後4時間(OVAペプチド)の屠殺日(the day of sacrifice)に評価する。細胞をホモジナイズした脾臓から回収し、LNを96ウェルプレートにプレーティングする。細胞を、10μMのSIINFEKL(OVA)ペプチドまたはPMA/イオノマイシンと共に30分間インキュベートし、続いてGolgistop(BD)およびGolgiplug(BD)の存在下で、さらに4時間再刺激する。細胞を回収し、固定し、細胞内サイトカイン染色のために透過処理し、抗マウスIFNγ PerCP/Cyanine5.5(BioLegend 505821)、抗マウスTNFα Pacific Blue(BioLegend 506318)、抗マウスIL-2 PE(BioLegend 503807)、および抗マウスGranzyme B FITC(BioLegend 515403)産生を評価する。
【0214】
結果
外因性ミトコンドリア移植は、引き起こされた免疫応答中のメモリー細胞の形成および持続を促進する。
経時的に、マウス短命エフェクター細胞(SLEC)(KLRG1+ CD127-および/またはCD44+ CD62L-)の割合が減少し、メモリー前駆細胞(MPEC)(KLRG1-CD127+および/またはCD44+ CD62L+)が、移植されたOT-1 CD8T細胞を注射されたマウスにおいて増加する。ペプチド再刺激時、外因性ミトコンドリアを有する処置群におけるOT-I CD8T細胞のサイトカイン産生は、未処置群と比較してより高い。
【0215】
実施例7.ミトコンドリア移植の際の、in vitroでの、TILからのメモリー様CD8T細胞の割合の増加
培養ヒトTILへの外因性ミトコンドリア移植後、経時的にメモリー様T細胞の割合をフローサイトメトリーで評価した。
【0216】
手段
(i)TILの単離および培養 外科的に切除された腫瘍塊を、IV型コラゲナーゼ(Sigma Aldrich)およびPulmozyme(Roche)などの酵素を用いて消化して、単細胞懸濁液を生成する。TILは、前述したように高用量のIL-2で増殖される(van den Berg JH,et al.J Immunother Cancer 2020;8:e000848,doi:10.1136/jitc-2020-000848)。TIL CD8T細胞の割合がバルクTIL集団の中で十分である場合、CD8T細胞の単離を実施例2に記載されるように行う。
(ii)ミトコンドリアの単離 ミトコンドリアを、実施例1bに前述したように、ヒト心臓線維芽細胞(HCF)から単離する。単離されたミトコンドリアを実施例1bのホモジナイジング緩衝液に懸濁し、使用するまで氷上に維持する。ミトコンドリアの量は、様々な用量投与のための調製において、製造業者の指示に従って、Qubit(商標)Fluorometer(ThermoFisher Scientific/Invitrogen)を使用し、Qubit(商標)Protein Assay Kitを用いて測定される。ミトコンドリア投与量は、μgで表されるタンパク質含量に関して推定される。
(iii)移植後4時間~2週間の範囲において、経時的に、抗ヒトCD45RA APC(Biolegend,304112)、抗ヒトCD45RO PB(Biolegend,304223)、および抗ヒトCD62L FITC(Biolegend,304804)を用いて、製造業者の指示に従って氷上で染色を行う。表面発現に応じて、CD8T細胞は、ナイーブ(CD62L+、CD45RA+、CD45RO+)、幹細胞様メモリー(CD62L+、CD45RA+、CD45RO+)、セントラルメモリー(CD62L+、CD45RA-、CD45RO+)、エフェクターメモリー(CD62L-、CD45RA-、CD45RO+)、またはエフェクター(CD62L-、CD45RA+、CD45RO-)として分類される。異なるサブセットの部分を、対照と外因性ミトコンドリアを移植したTIL CD8T細胞との間で比較する。
【0217】
結果
ミトコンドリア移植後の記憶様TIL CD8T細胞の割合の増加
バルク集団からのTILへの外因性ミトコンドリアの移植は、メモリー様TILの生存および選択を促進する。
【0218】
実施例8.担がんマウスで再投与した、あるいは急性感染時に移植されたTILの養子細胞移植移入は、リコール反応の増強を示す
OVA発現腫瘍から抽出および単離されたOT-I TILに外因性ミトコンドリアを移植する。in vitroでの培養後の選択されたメモリー様TILの特性を評価するために、処置TILまたは未処置TILを養子移入し、腫瘍を有するマウスに、または急性感染時に再投与する。OVAで制限された担がんマウスにおいて、OT-I TILsのリコール能力は、腫瘍の成長、マウスの生存率、がん瘤(cancer mass)およびリンパ系臓器に浸潤した移入細胞の持続性を測定することによって経時的に評価される。急性感染症の状況において、OT-I TILは、動物に養子移入され、続いてOVA発現ウイルスまたは細菌に感染させた。引き起こされた免疫応答を、移植されたTILと未処置のTILとの間の血液およびリンパ器官において経時的に評価する。
【0219】
手段
(i)マウスTILの生成および抽出 CD45.2 C57/B6マウスに、片側腹部に200,000個のOVA発現腫瘍細胞を皮下移植(engrafted subcutaneously)する。生着(engraftment)の6日後、100,000個のCD45.1 OT-I T細胞を静脈内に養子移入する。生着の21日後および/または適切な腫瘍サイズに達した時点で、腫瘍を回収し、製造業者の指示に従って、Tumor Dissociation Kit(130-096-730,Miltenyi Biotec)を用いて解離させる。腫瘍からマウスCD8T細胞を選択するために、EasySep(商標)マウスCD8T細胞単離キット(StemCell,Cat.#19853)に従って単離を行う。OT-I TILをさらに選択するために、FACSに基づく細胞選別をLIVE/DEAD-、CD45.1+、CD8+に従って行う。
(ii)マウスOT-Iからのミトコンドリアの単離 ミトコンドリアを、実施例1aにおいて前述したように骨格筋から単離する。単離されたミトコンドリアを実施例1aのホモジナイズ緩衝液に懸濁し、使用するまで氷上に維持する。ミトコンドリアの量は、様々な用量投与のための調製において、製造業者の指示に従って、Qubit(商標)Fluorometer(ThermoFisher Scientific/Invitrogen)を使用し、Qubit(商標)Protein Assay Kitを用いて測定される。ミトコンドリア投与量は、μgで表されるタンパク質含量に関して推定される。
(iii)マウスCD8T細胞を、実施例3において前述したように移植する。
(iv)腫瘍を有するマウスにおける再投与 CD45.2 C57/B6マウスに、片側腹部に200,000個のOVA発現腫瘍細胞を皮下移植する。生着の5日後、5Gyの全身照射を適用する。生着の6日後、10,000個の移植CD45.1 OT-I TILを静脈内に養子移植する。腫瘍増殖を、キャリパー(caliper)を用いて2~3日毎に測定する。製造業者の指示に従って、生着の21日後および/または適切な腫瘍サイズに達した時点で、腫瘍を回収し、腫瘍解離キット(Tumor Dissociation kit)(130-096-730,Miltenyi Biotec)を用いて解離させる。腫瘍における浸潤およびリンパ器官における持続性を、以下の染色によるフローサイトメトリーによって評価する:LIVE/DEAD Fixable dye Aqua DEAD(ThermoFisher,L34957)、抗マウスCD8α Pe/Texas Red(Abcam ab25294)、抗マウスCD45.1 BV650(BD 563754)、抗マウスCD45.2 BV421(BD 562895)、抗マウスKLRG1 PE-Cy7(BioLegend 138415)、抗マウスCD127 PE(BioLegend 121111)、抗マウスCD44 APC-Cy7(BD 560568)、抗マウスCD62L PerCP/Cyanine5.5(BioLegend 104431)。
(v)急性感染症に対する再投与 マウス(CD45.2)に、移植の1日後、10,000個のOT-I TIL(CD45.1)を注射し、続いて2,000cfuのリステリア-OVAを感染させる。OT-I TILの持続性およびメモリー分化を、動物(7日目、14日目、21日目)および臓器(脾臓、21日目のLN)の血液中で経時的に評価する。血液または処理された臓器からの染色 LIVE/DEAD固定色素Aqua DEAD(ThermoFisher,L34957)、抗マウスCD8α Pe/Texas Red(Abcam ab25294)、抗マウスCD45.1 BV650(BD 563754)、抗マウスCD45.2 BV421(BD 562895)、抗マウスKLRG1 PE-Cy7(BioLegend 138415)、抗マウスCD127 PE(BioLegend 121111)、抗マウスCD44 APC-Cy7(BD 560568)、抗マウスCD62L PerCP/シアニン5.5(BioLegend 104431)。リステリア-OVAに対するOT-I TILのリコール免疫応答は、短命エフェクター細胞(SLEC)(KLRG1+ CD127-および/またはCD44+ CD62L-)およびメモリー前駆細胞(MPEC)(KLRG1-CD127+および/またはCD44+CD62L+)として分類される。
【0220】
結果
移植されたTILは、腫瘍を有するマウスにおいて、急性感染時にリコール能力の改善を示す。
担がんマウスまたは感染マウスにおいて再投与された移植されたTILは、担がん動物における持続性の増強、リコール能力の改善および腫瘍制御の改善によって示されるように、メモリー細胞の顕著な特徴を示す。
【0221】
実施例9.移植されたCD8 T細胞は、生存シグナルについて競合する増強された能力を有する
移植されたT細胞が生存シグナルについて効率的に競合する能力を評価するために、処理された細胞と未処理の細胞との同時移植を同じ宿主内で実施する。オボアルブミン(OVA)ペプチドに対して制限されたCD45.1マウスOT-I T細胞は活性化され、外因性ミトコンドリアで移植されるが、CD45.1.2 OT-I T細胞は移植されない。CD45.1処置OT-IおよびCD45.1.2未処置OT-IをCD45.2 C57/B6マウスに同時移入し、続いてListeria-OVAに感染させた。処置群は、同じ宿主内でミトコンドリアを移植されず、かつ限定された生存シグナルについて競合するOT-I T細胞の引き起こされた免疫応答と比較される。
【0222】
手段
(i)マウスCD8 T細胞単離は、EasySep(商標)マウスCD8 T細胞単離キット(StemCell,Cat.#19853)に従って行う。T細胞の活性化および増殖は、CD3/CD28 Dynabeads(Gibco,Cat.#11456.D)を1対1の比、および組換えIL-2(50U/ml)で使用することによって実施する。CD8 T細胞を50万細胞/mLでプレーティングし、細胞が200万細胞/mLのコンフルエンシーに達した時点で、または培地が黄色になった時点で分割する。
(ii)OT-Iマウスのミトコンドリア単離 ミトコンドリアを、実施例1aにおいて前述したように骨格筋から単離する。単離されたミトコンドリアを実施例1aのホモジナイズ緩衝液に懸濁し、使用するまで氷上に維持する。ミトコンドリアの量は、様々な用量投与のための調製において、製造業者の指示に従って、Qubit(商標)Fluorometer(ThermoFisher Scientific/Invitrogen)を使用し、Qubit(商標)Protein Assay Kitを用いて測定される。ミトコンドリア投与量は、μgで表されるタンパク質含量に関して推定される。
(iii)マウスCD8 T細胞を、活性化後7日目に、実施例3に前述したように移植する。
(iv)マウス(CD45.2)に、移植の1日後、10,000個のOT-I CD8 T細胞(CD45.1)、および未処置の10,000個のOT-I CD8 T細胞(CD45.1.2)を注射する。続いて、マウスを2,000cfuのListeria-OVAに感染させる。CD8 T細胞の持続性およびメモリー分化を、動物の血液(7日目、14日目、21日目)および臓器(21日目の脾臓、LN)において、経時的に評価する。血液または処理された臓器からの染色:LIVE/DEAD Fixable dye Aqua Dead(ThermoFisher,L34957)、抗マウスCD8α Pe/Texas Red(Abcam ab25294)、抗マウスCD45.1 BV650(BD 563754)、抗マウスCD45.2 BV421(BD 562895)、抗マウスKLRG1 PE-Cy7(BioLegend 138415)、抗マウスCD127 Pe(BioLegend 121111)、抗マウスCD44 APC-Cy7(BD 560568)、抗マウスCD62L PerCP/Cyanine5.5(BioLegend 104431)。Listeria-OVAに対するOT-I T細胞の引き起こされた免疫応答は、短命エフェクター細胞(SLEC)(KLRG1+ CD127-および/またはCD44+ CD62L-)およびメモリー前駆細胞(MPEC)(KLRG1- CD127+および/またはCD44+ CD62L+)として分類される。
【0223】
結果
制限された生存シグナルについて競合する移植細胞の能力の増強
外因性ミトコンドリアを移植されたOT-I T細胞は、急性感染症後の限られた生存シグナルについてより良好に競合する。その結果、血液およびリンパ器官中を循環する処置T細胞の割合は、未処置T細胞と比較して、増強される。
【0224】
実施例10.ミトコンドリア移入は、in vivoでのCAR-T細胞の持続性を増加させる
健常ドナー由来のバルクCD8 T細胞に外因性ミトコンドリアを移植し、経時的に培養して、セントラルメモリーおよびエフェクターメモリーT細胞を選択する。健常ドナー由来のCD8 T細胞を形質導入して、抗CD19 CAR-T構築物(抗CD19scFv-FLAG-CD28-CD3ζ,Promab)を発現させる。ミトコンドリアで処理したまたは処理しなかったCAR-T細胞の引き起こされた免疫応答を、B細胞リンパ腫のマウス異種移植片モデルにおいて評価する。
【0225】
手段
(i)CAR-T細胞培養を、実施例2に記載されるように実施する。
(ii)ミトコンドリア単離 実施例1bに記載の手順に従って、ヒト心臓線維芽細胞(HCF)からミトコンドリアを単離する。
(iii)単離されたミトコンドリアの定量化 ミトコンドリア投与量は、実施例1bに記載される手順に従って、μgで表されるタンパク質含有量に関して推定される。
(iv)実施例3の手順に従うCAR-T細胞移植。30μgまたは100μgの量のミトコンドリアをCAR-T細胞に移植する。
【0226】
リンパ腫モデル
9週齢の雌NOD/SCIDマウス(非肥満糖尿病、 T細胞、マクロファージおよびNK細胞が欠損、 Taconic,Denmark)に、ヒトバーキットリンパ腫CD19Raji細胞(2.5×10細胞/マウス)を皮下(s.c.)注射する。腫瘍が60~100mmのサイズに達した時点で、動物を処置群に無作為化し、等しい腫瘍サイズを有する群あたり5~8匹のマウスを処置のために選択する。動物は、10個の模擬形質導入T細胞、または抗CD19 CAR-T細胞、またはミトコンドリア増強抗CD19CAR-T細胞の静脈内注射(i.v. injections)を受けた。腫瘍サイズを、キャリパー様機器を用いて二次元で測定する。個々の腫瘍体積(V)は、式V=0.56×(長さ+幅)によって計算される。腫瘍体積が1,500mmのヒトエンドポイントに達したら、頸部脱臼によって動物を屠殺する。ソフトウェアプログラムPRISM(GraphPad)を用いてKaplan-Meier生存プロットを作成し、ログランク(log-rank)(Mantel-Cox)検定を用いて生存曲線を比較する。
【0227】
白血病モデル
Jackson Laboratoriesから購入した、8週齢の雄性NSG(NOD/SCIDガンママウス、 T細胞、B細胞、およびNK細胞が欠損している)マウスを、滅菌ケージ内のビバリウムに収容する。100μLのPBS中のRaji/Luc-GFP細胞(10)を、インスリンシリンジを用いて外側尾静脈を介して静脈内注射する(0日目として指定)。6日目に生物発光イメージングによってルシフェラーゼ活性を測定して、腫瘍量を評価する。7日目に、10個の模擬形質導入T細胞、抗CD19 CAR-T細胞、またはミトコンドリア増強抗CD19 CAR-T細胞を100μLのPBS中で調製し、インスリンシリンジを用いて静脈内注射する。腫瘍進行を、IVISイメージングシステムを用いた生物発光イメージングによってモニターする。60日目に、生存マウスを安楽死させ、脾臓および骨髄細胞を回収し、総容積2mLのフローサイトメトリー(FACS)緩衝液(2%FCSを補充したPBS)に再懸濁する。次いで、200マイクロリットルの細胞懸濁液を抗ヒトCD3 PEおよび抗ヒトCD45 APC抗体で標識し、フローサイトメトリーによって分析して、ヒトT細胞のパーセンテージを決定する。
【0228】
非増強CAR-T細胞または対照CAR-T細胞と比較して、外因性ミトコンドリアで増強されたCAR-T細胞は、処置マウスにおいてより高い抗腫瘍活性(より長い生存期間の中央値)を示す。
【0229】
実施例11.in vitroでのTreg生存および選択に対するミトコンドリア移植の影響
健常ドナーから単離し、かつ続いて培養したCD4 T細胞混合集団への外因性ミトコンドリア移植後の経時的なフローサイトメトリーによって、Tregの割合を評価する。
【0230】
手段
(i)CD4 T細胞の単離、活性化、および培養 CD4 T細胞は、健常ドナーのバフィーコートから単離される。末梢血単核細胞(PBMC)を、製造業者の指示に従って、Ficoll Paque plus(cytiva,17144002)を使用する密度勾配遠心分離によって採取する。EasySep(商標)Human CD4 T Cell Isolation Kit(Stemcel,l17952)、および“The Big Easy”EasySep(商標)Magnet(Stemcell,18001)を使用して、PBMCからヒトCD4 T細胞を回収する。単離されたCD4 T細胞を、Dynabeads Human T-Activator CD3/CD28(ThermoFisher,111.32D)を用いて、1対1の比で、100U/mlの組換えヒトIL-2(Peprotech,200-02)の存在下で活性化する。CD4 T細胞を、1%L-グルタミン(ThermomFisher,25030024)、1%ペニシリン-ストレプトマイシン(10,000U/ml,Gibco,15140122)、1%非必須アミノ酸(NEAA,ThermoFisher,11140050)、1%ピルビン酸ナトリウム(ThermoFisher,11360070)、10%ウシ胎児血清、および0.1% 2β-メルカプトエタノール(Gibco,31350-010)を補充したRPMI1640培地GlutaMAX(商標)Supplement(ThermoFisher,61870010)中で培養する。CD4 T細胞を50万細胞/mlでプレーティングし、細胞が200万細胞/mlのコンフルエンシーに達した時点で、または培地が黄色になった時点で分割する。
(ii)CD4 T細胞移植 CD4T細胞を、活性化後1日目~20日目に、10μg~100μg/mlの範囲のCD4 T細胞の種々の用量のミトコンドリアと共に移植する。
(iii)CD4 T細胞の移植後の染色 1日~20日の範囲で、CD4 T細胞を染色し、様々な時点でフローサイトメトリーによって分析する。製造業者の指示に従って、抗ヒトCD45RA APC(BioLegend,304112)、抗ヒトCD45RO PB(BioLegend,304223)、抗ヒトCD25 FITC(BioLegend,302604)、および抗ヒトCD127Pe(BioLegend,351304)を用いて、氷上で染色を行う。言及したマーカーの表面発現に応じて、CD4 T細胞は、ナイーブ(CD25-、CD127+、CD45RA+、CD45RO-)、Treg(CD25+、CD127-、CD45RA+、CD45RO-)、セントラルメモリー(CD25+、CD127+、CD45RA-、CD45RO+)、エフェクターメモリー(CD25-、CD127+、CD45RA-、CD45RO+)、またはエフェクター(CD25+、CD127-、CD45RA+/-、CD45RO+/-)として分類される。異なるサブセットの部分を、対照と外因性ミトコンドリアを移植したCD4 T細胞との間で比較する。加えて、Treg集団におけるFOXP3のレベルを、ミトコンドリア移植後に、製造業者の指示に従って、True-Nuclear Human Treg Flow Kit(BioLegend,320027)を使用して評価する。
【0231】
結果
外因性ミトコンドリアの移植は、CD4T細胞の混合集団からのTreg選択を促進する
ミトコンドリア移植の際に、Tregは、外因性ミトコンドリアで処置されていないCD4 T細胞と比較して、混合集団においてより高い割合で見られる。この選択方法を用いて、自己免疫疾患を処置する養子細胞療法のためのCD4 T細胞の混合集団からのTregの割合を増加させることができる。
【0232】
参照による援用
本明細書に引用される全ての特許および非特許刊行物の開示全体は、あらゆる目的のために参照によりその全体がそれぞれ援用される。
【0233】
他の実施の形態
上記の開示は、独立した有用性を有する複数の別個の発明を包含し得る。これらの発明の各々をその好ましい形態(複数可)で開示したが、本明細書における開示および図示のような特定の実施形態は、多数の変形が可能であるため、限定的な意味で考慮されるものではない。本発明の主題は、本明細書に開示される様々な要素、特徴、機能、および/または特性の全ての新規かつ非自明の組み合わせ、および部分的組み合わせを含む。以下の特許請求の範囲は、具体的に、新規かつ非自明と見なされる特定の組合せおよび部分的組合せを指摘する。特徴、機能、要素、および/または特性の他の組み合わせおよび部分的組み合わせで具現化される発明は、本出願において、本出願からの優先権を主張する出願において、または関連出願において主張され得る。そのような請求項はまた、異なる発明を対象とするか、または同じ発明を対象とするかにかかわらず、および元の請求項と比較して範囲がより広いか、より狭いか、等しいか、または異なるかにかかわらず、本開示の発明の主題内に含まれると見なされる。
図1
図2
図3A
図3B
【国際調査報告】