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特表2024-538755がんを処置するための、抗PD-1抗体との組合せにおけるPD-L1及びCD137に対する多特異性結合剤
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  • 特表-がんを処置するための、抗PD-1抗体との組合せにおけるPD-L1及びCD137に対する多特異性結合剤 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-10-23
(54)【発明の名称】がんを処置するための、抗PD-1抗体との組合せにおけるPD-L1及びCD137に対する多特異性結合剤
(51)【国際特許分類】
   A61K 39/395 20060101AFI20241016BHJP
   A61P 11/00 20060101ALI20241016BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20241016BHJP
   A61P 35/04 20060101ALI20241016BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20241016BHJP
   A61K 47/18 20170101ALI20241016BHJP
   A61K 47/26 20060101ALI20241016BHJP
   C07K 16/28 20060101ALI20241016BHJP
   C07K 16/46 20060101ALI20241016BHJP
【FI】
A61K39/395 N
A61K39/395 D ZNA
A61K39/395 U
A61P11/00
A61P35/00
A61P35/04
A61P43/00 121
A61K47/18
A61K47/26
C07K16/28
C07K16/46
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024521343
(86)(22)【出願日】2022-10-05
(85)【翻訳文提出日】2024-06-05
(86)【国際出願番号】 EP2022077749
(87)【国際公開番号】W WO2023057535
(87)【国際公開日】2023-04-13
(31)【優先権主張番号】63/253,106
(32)【優先日】2021-10-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】63/257,901
(32)【優先日】2021-10-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TWEEN
(71)【出願人】
【識別番号】507316398
【氏名又は名称】ジェンマブ エー/エス
(71)【出願人】
【識別番号】524132081
【氏名又は名称】ビオンテック エスイー
(71)【出願人】
【識別番号】524061910
【氏名又は名称】エムエスディー インターナショナル ビジネス ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】弁理士法人平木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ムイク,アレクサンダー
(72)【発明者】
【氏名】ネールムベルガー,クリスティーナ
(72)【発明者】
【氏名】ペンチェヴァ,ノラ
(72)【発明者】
【氏名】ジュレ-クンケル,マリア,エヌ,
(72)【発明者】
【氏名】サヒン,ウグル
【テーマコード(参考)】
4C076
4C085
4H045
【Fターム(参考)】
4C076AA12
4C076BB13
4C076CC07
4C076CC27
4C076DD23
4C076DD51
4C076DD67
4C076EE23
4C085AA13
4C085AA14
4C085BB11
4C085BB36
4C085BB42
4C085DD62
4C085EE03
4C085GG02
4H045AA11
4H045AA20
4H045AA30
4H045BA10
4H045BA41
4H045DA76
4H045EA20
4H045EA28
(57)【要約】
本開示は、ヒトPD-L1及びヒトCD137に結合する結合剤を、ペムブロリズマブと組み合わせて使用して、腫瘍の進行を軽減又は防止するか、又はがんを処置する組合せ療法に関する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象において腫瘍の進行を軽減もしくは阻止するかまたはがんを処置するための方法における使用のための結合物質であって、該方法が、該対象に該結合物質を、プログラム死-1(PD-1)に結合する抗体、またはその抗原結合フラグメントの投与前に、投与と同時に、または投与後に投与することを含み、
ここで
該結合物質が、CD137に結合する第1結合領域ならびにPD-L1に結合する第2結合領域、
(a)配列番号2、3、および4にそれぞれ記載したCDR1、CDR2、およびCDR3配列を含む重鎖可変領域(VH)と、配列番号6、7、および8にそれぞれ記載したCDR1、CDR2、およびCDR3配列を含む軽鎖可変領域(VL)とを含む該第1結合領域、
ならびに
(b)配列番号12、13、および14にそれぞれ記載したCDR1、CDR2、およびCDR3配列を含む重鎖可変領域(VH)と、配列番号16、17、および18にそれぞれ記載したCDR1、CDR2、およびCDR3配列を含む軽鎖可変領域(VL)とを含む該第2抗原結合領域
を含み、かつ
該PD-1に結合する抗体が、配列番号43、44および45にそれぞれ記載したCDR1、CDR2およびCDR3配列を含む重鎖可変領域(VH)と、配列番号46、47および48にそれぞれ記載したCDR1、CDR2、およびCDR3配列を含む軽鎖可変領域(VL)とを含むか、または該PD-1に結合する抗体が、配列番号62、63および64にそれぞれ記載したCDR1、CDR2およびCDR3配列を含む重鎖可変領域(VH)と、配列番号65、66および67にそれぞれ記載したCDR1、CDR2、およびCDR3配列を含む軽鎖可変領域(VL)とを含む、
上記結合物質。
【請求項2】
前記PD-1に結合する抗体またはその抗原結合フラグメントが、配列番号49のアミノ酸配列に対して少なくとも85%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む重鎖可変領域、および配列番号50のアミノ酸配列に対して少なくとも85%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域を含む、請求項1記載の使用のための結合物質。
【請求項3】
前記PD-1に結合する抗体またはその抗原結合フラグメントが、配列番号49のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域、および配列番号50のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域を含む、請求項1および2のいずれか1項に記載の使用のための結合物質。
【請求項4】
前記PD-1に結合する抗体またはその抗原結合フラグメントが、配列番号51のアミノ酸配列を含む重鎖、および配列番号52のアミノ酸配列を含む軽鎖を含む、請求項1~3のいずれか1項に記載の使用のための結合物質。
【請求項5】
前記PD-1に結合する抗体がペムブロリズマブまたはそのバイオシミラーである、請求項1~4のいずれか1項に記載の使用のための結合物質。
【請求項6】
PD-L1がヒトPD-L1、特に配列番号40に記載した配列を含むヒトPD-L1であり、かつ/またはCD137がヒトCD137、特に配列番号38に記載した配列を含むヒトCD137である、請求項1~5のいずれか1項に記載の使用のための結合物質。
【請求項7】
前記結合物質の前記第1結合領域が、配列番号1または9に対して少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%、少なくとも99%、または100%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む重鎖可変領域(VH)、および配列番号5または10に対して少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%、少なくとも99%、または100%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域(VL)を含む、請求項1~6のいずれか1項に記載の使用のための結合物質。
【請求項8】
前記結合物質の前記第2結合領域が、配列番号11に対して少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%、少なくとも99%、または25 100%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む重鎖可変領域(VH)、および配列番号15に対して少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%、少なくとも99%、または100%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域(VL)を含む、請求項1~7のいずれか1項に記載の使用のための結合物質。
【請求項9】
前記結合物質の前記第1結合領域が、配列番号1または9に記載したアミノ酸配列を含む重鎖可変領域(VH)、および配列番号5または10に記載したアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域(VL)を含む、請求項1~8のいずれか1項に記載の使用のための結合物質。
【請求項10】
前記結合物質の前記第2結合領域が、配列番号11に記載したアミノ酸配列を含む重鎖可変領域(VH)、および配列番号15に記載したアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域(VL)を含む、請求項1~9のいずれか1項に記載の使用のための結合物質。
【請求項11】
以下(a)かつ(b)である、すなわち
(a)前記結合物質の前記第1結合領域が、配列番号1に記載したアミノ酸配列を含む重鎖可変領域(VH)、および配列番号5に記載したアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域(VL)を含み、
かつ
(b)前記結合物質の前記第2結合領域が、配列番号11に記載したアミノ酸配列を含む重鎖可変領域(VH)、およびい配列番号15に記載したアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域(VL)を含む、
請求項1~10のいずれか1項に記載の使用のための結合物質。
【請求項12】
前記結合物質が二重特異性抗体などの多重特異性抗体である、請求項1~11のいずれか1項に記載の使用のための結合物質。
【請求項13】
前記結合物質が全長抗体または抗体フラグメントの形式である、請求項1~12のいずれか1項に記載の使用のための結合物質。
【請求項14】
各可変領域が、3つの相補性決定領域(CDR1、CDR2、およびCDR3)ならびに4つのフレームワーク領域(FR1、FR2、FR3、およびFR4)を含む、請求項1~13のいずれか1項に記載の使用のための結合物質。
【請求項15】
前記相補性決定領域および前記フレームワーク領域が、アミノ末端からカルボキシ末端に向かって次の順、すなわちFR1、CDR1、FR2、CDR2、FR3、CDR3、FR4の順に配置されている、請求項13記載の使用のための結合物質。
【請求項16】
前記結合物質が、
(i)前記第1重鎖可変領域(VH)および第1重鎖定常領域(CH)を含む、前記第1重鎖可変領域(VH)および第1重鎖定常領域(CH)からなる、または本質的に前記第1重鎖可変領域(VH)および第1重鎖定常領域(CH)からなるポリペプチド、ならびに
(ii)前記第2重鎖可変領域(VH)および第2重鎖定常領域(CH)を含む、前記第2重鎖可変領域(VH)および第2重鎖定常領域(CH)からなる、または本質的に前記第2重鎖可変領域(VH)および第2重鎖定常領域(CH)からなるポリペプチド
を含む、請求項1~15のいずれか1項に記載の使用のための結合物質。
【請求項17】
前記結合物質が、
(i)前記第1軽鎖可変領域(VL)を含みかつ第1軽鎖定常領域(CL)をさらに含むポリペプチド、および
(ii)前記第2軽鎖可変領域(VL)を含みかつ第2軽鎖定常領域(CL)をさらに含むポリペプチド
を含む、請求項1~16のいずれか1項に記載の使用のための結合物質。
【請求項18】
前記結合物質が第1結合アームおよび第2結合アームを含む抗体であり、ここで該第1結合アームが、
(i)前記第1重鎖可変領域(VH)および第1重鎖定常領域(CH)を含むポリペプチド、ならびに
(ii)前記第1軽鎖可変領域(VL)および第1軽鎖定常領域(CL)を含むポリペプチド
を含み、
かつ該第2結合アームが、
(iii)前記第2重鎖可変領域(VH)および第2重鎖定常領域(CH)を含むポリペプチド、ならびに
(iv)前記第2軽鎖可変領域(VL)および第2軽鎖定常領域(CL)を含むポリペプチド
を含む、請求項1~17のいずれか1項に記載の使用のための結合物質。
【請求項19】
前記結合物質が、
(i)CD137に結合する能力がある前記抗原結合領域を含む第1重鎖および軽鎖、
ならびに
(ii)PD-L1に結合する能力がある前記抗原結合領域を含む第2重鎖および軽鎖
を含む、請求項1~18のいずれか1項に記載の使用のための結合物質。
【請求項20】
前記結合物質が、
(i)CD137に結合する能力がある前記抗原結合領域を含む第1重鎖および軽鎖、ここで該第1重鎖は第1重鎖定常領域を含み、かつ該第1軽鎖は第1軽鎖定常領域を含むものとする、
ならびに
(ii)PD-L1に結合する能力がある前記抗原結合領域を含む第2重鎖および軽鎖、ここで該第2重鎖は第2重鎖定常領域を含み、かつ第第2軽鎖は第2軽鎖定常領域を含むものとする、
を含む、請求項1~19のいずれか1項に記載の使用のための結合物質。
【請求項21】
前記第1および第2重鎖定常領域(CH)の各々が、定常重鎖1(CH)領域、ヒンジ領域、定常重鎖2(CH2)領域および定常重鎖3(CH3)領域のうちの1つ以上、好ましくは少なくともヒンジ領域、CH2領域およびCH3領域を含む、請求項16~20のいずれか1項に記載の使用のための結合物質。
【請求項22】
前記第1および第2重鎖定常領域(CH)の各々がCH3領域を含み、かつここでこれら2つのCH3領域が非対称性突然変異を含む、請求項16~21のいずれか1項に記載の使用のための結合物質。
【請求項23】
前記第1重鎖定常領域(CH)において、EUナンバリングによるヒトIgG1重鎖中のT366、L368、K370、D399、F405、Y407、およびK409からなる群より選択される位置に対応する位置にあるアミノ酸のうちの少なくとも1つが置換されており、かつ前記第2重鎖定常領域(CH)において、EUナンバリングによるヒトIgG1重鎖中のT366、L368、K370、D399、F405、Y407、およびK409からなる群より選択される位置に対応する位置にあるアミノ酸のうちの少なくとも1つが置換されており、かつここで該第1および該第2重鎖は同じ位置では置換されない、請求項16~21のいずれか1項に記載の使用のための結合物質。
【請求項24】
以下(i)または(ii)である、すなわち(i)EUナンバリングによるヒトIgG1重鎖中のF405に対応する位置にあるアミノ酸が前記第1重鎖定常領域(CH)中ではLであり、かつEUナンバリングによるヒトIgG1重鎖中のK409に対応する位置にあるアミノ酸が前記第2重鎖定常領域(CH)中ではRであるか、または(ii)EUナンバリングによるヒトIgG1重鎖中のK409に対応する位置にあるアミノ酸が前記第1重鎖中ではRであり、かつEUナンバリングによるヒトIgG1重鎖中のF405に対応する位置にあるアミノ酸が前記第2重鎖中ではLである、請求項23記載の使用のための結合物質。
【請求項25】
前記結合物質が、同じ第1および第2抗原結合領域ならびにヒトIgG1ヒンジ、CH2およびCH3領域を含む2つの重鎖定常領域(CH)を含む別の抗体と比較して、Fc媒介性エフェクター機能をより低い程度に誘導する、請求項1~24のいずれか1項に記載の使用のための結合物質。
【請求項26】
前記抗体が、非改変第1および第2重鎖定常領域(CH)を含むことを除き同一である抗体と比較してFc媒介性エフェクター機能をより低い程度に誘導するように、前記第1および第2重鎖定常領域(CH)が改変されている、請求項25記載の使用のための結合物質。
【請求項27】
前記非改変第1および第2重鎖定常領域(CH)の各々が、配列番号19または25に記載したアミノ酸配列を含む、請求項26記載の使用のための結合物質。
【請求項28】
前記Fc媒介性エフェクター機能を、Fcγ受容体への結合、C1qへの結合、またはFcγ受容体のFe媒介性架橋の誘導により測定する、請求項26または27記載の使用のための結合物質。
【請求項29】
前記Fc媒介性エフェクター機能をC1qへの結合により測定する、請求項28記載の使用のための結合物質。
【請求項30】
前記第1および第2重鎖定常領域が、前記抗体へのC1qの結合が野生型抗体と比較して減少する、好ましくは少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%、または100%減少するように改変されており、ここでC1q結合を好ましくはELISAにより判定する、請求項25~29のいずれか1項に記載の使用のための結合物質。
【請求項31】
前記第1および第2重鎖定常領域(CH)の少なくとも1つにおいて、EUナンバリングによるヒトIgG1重鎖中の位置L234、L235、D265、N297、およびP331に対応する位置にある1つ以上のアミノ酸がそれぞれL、L、D、N、およびPではない、請求項1~30のいずれか1項に記載の使用のための結合物質。
【請求項32】
EUナンバリングによるヒトIgG1重鎖中の位置L234およびL235に対応する位置が、前記第1および第2重鎖中ではそれぞれFおよびEである、請求項31記載の使用のための結合物質。
【請求項33】
EUナンバリングによるヒトIgG1重鎖中の位置L234、L235、およびD265に対応する位置が前記第1および第2重鎖定常領域(HC)中ではそれぞれF、E、およびAである、請求項31または32記載の使用のための結合物質。
【請求項34】
前記第1および第2重鎖定常領域両方の、EUナンバリングによるヒトIgG1重鎖中の位置L234およびL235に対応する位置がそれぞれFおよびEであり、かつここで(i)該第1重鎖定常領域の、EUナンバリングによるヒトIgG1重鎖中のF405に対応する位置がLであり、かつ該第2重鎖の、EUナンバリングによるヒトIgG1重鎖中のK409に対応する位置がRであるか、または(ii)該第1重鎖定常領域の、EUナンバリングによるヒトIgG1重鎖中のK409に対応する位置がRであり、かつ該第2重鎖の、EUナンバリングによるヒトIgG1重鎖中のF405に対応する位置がLである、請求項31~33のいずれか1項に記載の使用のための結合物質。
【請求項35】
前記第1および第2重鎖定常領域両方の、EUナンバリングによるヒトIgG1重鎖中の位置L234、L235、およびD265に対応する位置がそれぞれF、E、およびAであり、かつここで(i)該第1重鎖定常領域の、EUナンバリングによるヒトIgG1重鎖中のF405に対応する位置がLであり、かつ該第2重鎖定常領域の、EUナンバリングによるヒトIgG1重鎖中のK409に対応する位置がRであるか、または(ii)該第1重鎖の、EUナンバリングによるヒトIgG1重鎖中のK409に対応する位置がRであり、かつ該第2重鎖の、EUナンバリングによるヒトIgG1重鎖中のF405に対応する位置がLである、請求項31~34のいずれか1項に記載の使用のための結合物質。
【請求項36】
前記第1および/または第2重鎖の定常領域が、
(a)配列番号19または25に記載した配列[IgG1-FC]、
(b)(a)の配列の部分配列、例えば(a)に定義した配列のN末端またはC末端から始まる1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個または10個の連続するアミノ酸が欠失している部分配列、および
(c)(a)または(b)に定義したアミノ酸配列と比較して、最大で10の置換、例えば最大で9の置換、最大で8、最大で7、最大で6、最大で5、最大で4、最大で3、最大で2の置換または最大で1の置換を有する配列
からなる群より選択されるアミノ酸配列を含むか、または本質的に該アミノ酸配列からなるか、または該アミノ酸配列からなる、請求項16~35のいずれか1項に記載の使用のための結合物質。
【請求項37】
前記第1または第2重鎖の定常領域、例えば前記第2重鎖の定常領域が、
(a)配列番号20または26に記載した配列[IgG1-F405L]、
(b)(a)の配列の部分配列、例えば(a)に定義した配列のN末端またはC末端から始まる1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個または10個の連続するアミノ酸が欠失している部分配列、および
(c)(a)または(b)に定義したアミノ酸配列と比較して、最大で9の置換、例えば最大で8、最大で7、最大で6、最大で5、最大で4、最大で3、最大で2の置換または最大で1の置換を有する配列
からなる群より選択されるアミノ酸配列を含むか、または本質的に該アミノ酸配列からなるか、または該アミノ酸配列からなる、請求項16~36のいずれか1項に記載の使用のための結合物質。
【請求項38】
前記第1または第2重鎖の定常領域、例えば前記第1重鎖の定常領域が、
(a)配列番号21または27に記載した配列[IgG1-K409R]、
(b)(a)の配列の部分配列、例えば(a)に定義した配列のN末端またはC末端から始まる1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個または10個の連続するアミノ酸が欠失している部分配列、および
(c)(a)または(b)に定義したアミノ酸配列と比較して、最大で10の置換、例えば最大で9の置換、最大で8、最大で7、最大で6、最大で5、最大で4の置換、最大で3、最大で2の置換または最大で1の置換を有する配列
からなる群より選択されるアミノ酸配列を含むか、または本質的に該アミノ酸配列からなるか、または該アミノ酸配列からなる、請求項16~36のいずれか1項に記載の使用のための結合物質。
【請求項39】
前記第1および/または第2重鎖の定常領域が、
(a)配列番号22または28に記載した配列[IgG1-Fc_FEA]、
(b)(a)の配列の部分配列、例えば(a)に定義した配列のN末端またはC末端から始まる1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個または10個の連続するアミノ酸が欠失している部分配列、および
(c)(a)または(b)に定義したアミノ酸配列と比較して、最大で7の置換、例えば最大で6の置換、最大で5、最大で4、最大で3、最大で2の置換または最大で1の置換を有する配列
からなる群より選択されるアミノ酸配列を含むか、または本質的に該アミノ酸配列からなるか、または該アミノ酸配列からなる、請求項16~15のいずれか1項に記載の使用のための結合物質。
【請求項40】
前記第1および/または第2重鎖の定常領域、例えば前記第2重鎖の定常領域が、
(a)配列番号24または30に記載した配列[IgG1-Fc_FEAL]、
(b)(a)の配列の部分配列、例えば(a)に定義した配列のN末端またはC末端から始まる1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個または10個の連続するアミノ酸が欠失している部分配列、および
(c)(a)または(b)に定義したアミノ酸配列と比較して、最大で6の置換、例えば最大で5の置換、最大で4の置換、最大で3、最大で2の置換または最大で1の置換を有する配列
からなる群より選択されるアミノ酸配列を含むか、または本質的に該アミノ酸配列からなるか、または該アミノ酸配列からなる、請求項16~39のいずれか1項に記載の使用のための結合物質。
【請求項41】
前記第1および/または第2重鎖の定常領域、例えば前記第1重鎖の定常領域が、
(a)配列番号23または29に記載した配列[IgG1-Fc_FEAR]、
(b)(a)の配列の部分配列、例えば(a)に定義した配列のN末端またはC末端から始まる1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個または10個の連続するアミノ酸が欠失している部分配列、および
(c)(a)または(b)に定義したアミノ酸配列と比較して、最大で6の置換、例えば最大で5の置換、最大で4、最大で3、最大で2の置換または最大で1の置換を有する配列
からなる群より選択されるアミノ酸配列を含むか、または本質的に該アミノ酸配列からなるか、または該アミノ酸配列からなる、請求項16~40のいずれか1項に記載の使用のための結合物質。
【請求項42】
前記結合物質がカッパ(κ)軽鎖定常領域を含む、請求項1~41のいずれか1項に記載の使用のための結合物質。
【請求項43】
前記結合物質がラムダ(λ)軽鎖定常領域を含む、請求項1~42のいずれか1項に記載の使用のための結合物質。
【請求項44】
前記第1軽鎖定常領域が、カッパ(κ)軽鎖定常領域またはラムダ(λ)軽鎖定常領域である、請求項1~43のいずれか1項に記載の使用のための結合物質。
【請求項45】
前記第2軽鎖定常領域が、ラムダ(λ)軽鎖定常領域またはカッパ(κ)軽鎖定常領域である、請求項1~44のいずれか1項に記載の使用のための結合物質。
【請求項46】
前記第1軽鎖定常領域がカッパ(κ)軽鎖定常領域でありかつ前記第2軽鎖定常領域がラムダ(λ)軽鎖定常領域であるか、または前記第1軽鎖定常領域がラムダ(λ)軽鎖定常領域でありかつ前記第2軽鎖定常領域がカッパ(κ)軽鎖定常領域である、請求項1~45のいずれか1項に記載の使用のための結合物質。
【請求項47】
前記カッパ(κ)軽鎖が、
(a)配列番号35に記載した配列、
(b)(a)の配列の部分配列、例えば(a)に定義した配列のN末端またはC末端から始まる1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個または10個の連続するアミノ酸が欠失している部分配列、および
(c)(a)または(b)に定義したアミノ酸配列と比較して、最大で10の置換、例えば最大で9の置換、最大で8、最大で7、最大で6、最大で5、最大で4の置換、最大で3、最大で2の置換または最大で1の置換を有する配列
からなる群より選択されるアミノ酸配列を含む、請求項42~46のいずれか1項に記載の使用のための結合物質。
【請求項48】
前記ラムダ(λ)軽鎖が、
(a)配列番号36に記載した配列、
(b)(a)の配列の部分配列、例えば(a)に定義した配列のN末端またはC末端から始まる1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個または10個の連続するアミノ酸が欠失している部分配列、および
(c)(a)または(b)に定義したアミノ酸配列と比較して、最大で10の置換、例えば最大で9の置換、最大で8、最大で7、最大で6、最大で5、最大で4の置換、最大で3、最大で2の置換または最大で1の置換を有する配列
からなる群より選択されるアミノ酸配列を含む、請求項43~47のいずれか1項に記載の使用のための結合物質。
【請求項49】
前記結合物質が、IgG1、IgG2、IgG3、およびIgG4からなる群より選択されるアイソタイプである、請求項1~48のいずれか1項に記載の使用のための結合物質。
【請求項50】
前記結合物質が全長IgG1抗体である、請求項1~49のいずれか1項に記載の使用のための結合物質。
【請求項51】
前記結合物質がIgG1m(f)アロタイプの抗体である、請求項1~50のいずれか1項に記載の使用のための結合物質。
【請求項52】
前記結合物質が、
(i)CD137に結合する能力がある前記抗原結合領域を含む第1重鎖および軽鎖、ここで該第1重鎖は配列番号31に記載した配列を含み、かつ該第1軽鎖は配列番号32に記載した配列を含むものとする、
(ii)PD-L1に結合する能力がある前記抗原結合領域を含む第2重鎖および軽鎖、ここで該第2重鎖は配列番号33に記載した配列を含み、かつ該第2軽鎖は配列番号34に記載した配列を含むものとする、
を含む、請求項1~51のいずれか1項に記載の使用のための結合物質。
【請求項53】
前記結合物質がアカスンリマブまたはそのバイオシミラーである、請求項1~52のいずれか1項に記載の使用のための結合物質。
【請求項54】
前記結合物質がヒスチジン、スクロースおよびポリソルベート-80を含む組成物または製剤の形であり、かつpHが5~6である、請求項1~53のいずれか1項に記載の使用のための結合物質。
【請求項55】
前記結合物質が、約20 mMのヒスチジン、約250 mMのスクロース、約0.02%のポリソルベート-80を含み、かつpHが約5.5である組成物または製剤の形である、請求項1~54のいずれか1項に記載の使用のための結合物質。
【請求項56】
前記結合物質が、10~30 mgの結合物質/mL、例えば20 mgの結合物質/mLを含む組成物または製剤の形である、請求項1~55のいずれか1項に記載の使用のための結合物質。
【請求項57】
前記結合物質が請求項54~56のいずれか1項に定義した組成物の形であり、かつ投与前に0.9%NaCl(生理食塩水)で希釈される、請求項1~56のいずれか1項に記載の使用のための結合物質。
【請求項58】
前記対象がヒト対象である、請求項1~57のいずれか1項に記載の使用のための結合物質。
【請求項59】
前記腫瘍またはがんが固形腫瘍または固形がんである、請求項1~58のいずれか1項に記載の使用のための結合物質。
【請求項60】
前記腫瘍がPD-L1陽性腫瘍である、請求項1~59のいずれか1項に記載の使用のための結合物質。
【請求項61】
前記腫瘍またはがんが、黒色腫、卵巣がん、肺がん(例えば、非小細胞肺がん(NSCLC))、大腸がん、頭頸部がん、胃がん、乳がん、腎がん、尿路上皮がん、膀胱がん、食道がん、膵臓がん、肝がん、胸腺腫および胸腺がん、脳がん、神経膠腫、副腎皮質がん、甲状腺がん、他の皮膚がん、肉腫、多発性骨髄腫、白血病、リンパ腫、骨髄異形成症候群、子宮内膜がん、前立腺がん、陰茎がん、子宮頸がん、ホジキンリンパ腫、非ホジキンリンパ腫、メルケル細胞がんおよび中皮腫からなる群より選択される、請求項1~60のいずれか1項に記載の使用のための結合物質。
【請求項62】
前記腫瘍またはがんが、肺がん(例えば、非小細胞肺がん(NSCLC)、尿路上皮がん(膀胱、尿管、尿道、または腎盂のがん)、子宮内膜がん(EC)、乳がん(例えば、トリプルネガティブ乳がん(TNBC))および頭頸部の扁平上皮がん(SCCHN)(例えば、口腔、咽頭または喉頭のがん)からなる群より選択される、請求項1~61のいずれか1項に記載の使用のための結合物質。
【請求項63】
前記腫瘍またはがんが、肺がん、特に扁平上皮または非扁平上皮NSCLCなどの非小細胞肺がん(NSCLC)である、請求項61または62記載の使用のための結合物質。
【請求項64】
前記腫瘍またはがんが転移性である、例えば転移性NSCLCである、請求項61~63のいずれか1項に記載の使用のための結合物質。
【請求項65】
前記肺がん、特にNSCLCが、上皮増殖因子(EGFR)-感受性変異および/または未分化リンパ腫(ALK)転座/ROS1再構成を有していない、請求項61~64記載の使用のための結合物質。
【請求項66】
前記肺がん、特にNSCLCががん細胞を含み、かつPD-L1が、例えば免疫組織化学(IHC)により評価した場合に該がん細胞または腫瘍細胞の1%以上で発現されている、請求項61~65のいずれか1項に記載の使用のための結合物質。
【請求項67】
前記肺がん、特にNSCLCががん細胞を含み、かつPD-L1が、例えば免疫組織化学(IHC)により評価した場合に該がん細胞または腫瘍細胞の1%~49%で発現されている、請求項66記載の使用のための結合物質。
【請求項68】
前記肺がん、特にNSCLCががん細胞を含み、かつPD-L1が、例えば免疫組織化学(IHC)により評価した場合に該がん細胞または腫瘍細胞の50%以上で発現されている、請求項66記載の使用のための結合物質。
【請求項69】
前記対象が転移性疾患の事前の全身処置を受けていない、請求項1~68記載の使用のための結合物質。
【請求項70】
前記対象が、チェックポイント阻害剤、例えば、抗PD-1抗体または抗PD-L1抗体などのPD-1阻害剤またはPD-L1阻害剤による前処置を受けていない、請求項1~69のいずれか1項に記載の使用のための結合物質。
【請求項71】
前記対象が、抗4-1BB(CD137)抗体などの4-1BB(CD137)標的化物質による、抗腫瘍ワクチンによる、または自家細胞免疫療法による前処置を受けていない、請求項1~70のいずれか1項に記載の使用のための結合物質。
【請求項72】
前記腫瘍またはがんが、チェックポイント阻害剤による全身処置などの処置後に再発している、および/または不応性である、請求項1~68のいずれか1項に記載の使用のための結合物質。
【請求項73】
前記対象が少なくとも1ラインの事前の全身療法、例えば抗PD-1抗体または抗PD-L1抗体などのPD-1阻害剤またはPD-L1阻害剤を含む全身療法を受けている、請求項1~68および72のいずれか1項に記載の使用のための結合物質。
【請求項74】
抗PD-1抗体または抗PD-L1抗体などのPD-1阻害剤またはPD-L1阻害剤による、該PD-1阻害剤またはPD-L1阻害剤を単剤療法として、または併用療法の一環として投与する処置後に、前記がんもしくは腫瘍が再発している、および/もしくは不応性であるか、または前記対象が進行している、請求項1~68、72および73のいずれか1項に記載の使用のための結合物質。
【請求項75】
最後の前処置が、抗PD-1抗体または抗PD-L1抗体などのPD-1阻害剤またはPD-L1阻害剤による、該PD-1阻害剤またはPD-L1阻害剤を単剤療法として、または併用療法の一環として投与するものである、請求項1~68および72~74のいずれか1項に記載の使用のための結合物質。
【請求項76】
抗PD-1抗体または抗PD-L1抗体などのPD-1阻害剤またはPD-L1阻害剤による最後の処置中の進行からの期間が、8ヶ月以内、例えば7ヶ月以内、6ヶ月以内、5ヶ月以内、4ヶ月以内、3ヶ月以内、2ヶ月以内、1ヶ月以内、3週間以内、または例えば2週間以内である、請求項1~68および72~74のいずれか1項に記載の使用のための結合物質。
【請求項77】
最後の前処置の一環としての、抗PD-1抗体または抗PD-L1抗体などのPD-1阻害剤またはPD-L1阻害剤の最後の投薬からの期間が、8ヶ月以内、例えば7ヶ月以内、6ヶ月以内、5ヶ月以内、4ヶ月以内、3ヶ月以内、2ヶ月以内、1ヶ月以内、3週間以内、または例えば2週間以内である、請求項1~68および72~74のいずれか1項に記載の使用のための結合物質。
【請求項78】
以下(i)または(ii)、すなわち
(i)抗PD-1抗体もしくは抗PD-L1抗体による処置後のプラチナ製剤併用化学療法、または
(ii)プラチナ製剤併用化学療法後の抗PD-1抗体もしくは抗PD-L1抗体による処置
の間またはその後に、前記がんもしくは腫瘍が再発している、および/もしくは不応性であるか、または前記対象が進行している、請求項1~68および72~74のいずれか1項に記載の使用のための結合物質。
【請求項79】
前記対象が、タキサン系化学療法剤、例えばドセタキセルによるNSCLCの前処置などの、タキサン系化学療法剤、例えばドセタキセルによる前処置を受けていない、請求項1~78のいずれか1項に記載の使用のための結合物質。
【請求項80】
前記結合物質および前記PD-1に結合する抗体、またはその抗原結合フラグメントを、少なくとも1回の処置サイクルで投与し、各処置サイクルを3週間(21日)または6週間(42日)とする、請求項1~79のいずれか1項に記載の使用のための結合物質。
【請求項81】
1回用量の前記結合物質および1回用量の前記PD-1に結合する抗体、またはその抗原結合フラグメントを3週間毎に投与する(1Q3W)、請求項1~80のいずれか1項に記載の使用のための結合物質。
【請求項82】
1回用量の前記結合物質および1回用量の前記PD-1に結合する抗体、またはその抗原結合フラグメントを6週間毎に投与する(1Q6W)、請求項1~81のいずれか1項に記載の使用のための結合物質。
【請求項83】
1回用量の前記結合物質および1回用量の前記PD-1に結合する抗体、またはその抗原結合フラグメントを各処置サイクルの1日目に投与する、請求項1~82のいずれか1項に記載の使用のための結合物質。
【請求項84】
各用量および/または各処置サイクルで投与される前記結合物質の量が100 mgである、請求項1~83のいずれか1項に記載の使用のための結合物質。
【請求項85】
各用量および/または各処置サイクルで投与される前記PD-1に結合する抗体、またはその抗原結合フラグメントの量が200 mgである、請求項1~84のいずれか1項に記載の使用のための結合物質。
【請求項86】
各用量および/または各処置サイクルで投与される前記PD-1に結合する抗体、またはその抗原結合フラグメントの量が400 mgである、請求項1~85のいずれか1項に記載の使用のための結合物質。
【請求項87】
100 mg用量の前記結合物質および200 mg用量の前記PD-1に結合する抗体、またはその抗原結合フラグメントを3週間毎に投与する(1Q3W)、請求項1~86のいずれか1項に記載の使用のための結合物質。
【請求項88】
100 mg用量の前記結合物質および400 mg用量の前記PD-1に結合する抗体、またはその抗原結合フラグメントを6週間毎に投与する(1Q6W)、請求項1~87のいずれか1項に記載の使用のための結合物質。
【請求項89】
前記腫瘍またはがんがNSCLCであり、かつここでアカスンリマブまたはそのバイオシミラーである前記結合物質100 mg用量、およびペムボリズマブである前記PD-1に結合する抗体200 mg用量を3週間毎に投与する(1Q3W)、例えば各3週間の処置サイクルの1日目に投与する、請求項1~88のいずれか1項に記載の使用のための結合物質。
【請求項90】
前記腫瘍またはがんがNSCLCであり、かつここでアカスンリマブまたはそのバイオシミラーである前記結合物質100 mg用量およびペムボリズマブである前記PD-1に結合する抗体400 mg用量を6週間毎に投与する(1Q6W)、例えば6週間毎の処置サイクルの1日目に投与する、請求項1~88のいずれか1項に記載の使用のための結合物質。
【請求項91】
前記PD-1に結合する抗体、またはその抗原結合フラグメントを最初に投与し、続いて前記結合物質を投与する、請求項1~90のいずれか1項に記載の使用のための結合物質。
【請求項92】
前記結合物質を、静脈内(IV)注入を利用して最低30分かけて、例えば最低60分かけて投与する、請求項1~91のいずれか1項に記載の使用のための結合物質。
【請求項93】
前記結合物質を、静脈内(IV)注入を利用して30分かけて投与する、請求項1~92のいずれか1項に記載の使用のための結合物質。
【請求項94】
前記PD-1阻害剤を静脈内注入物として30分かけて投与する、請求項1~93のいずれか1項に記載の使用のための結合物質。
【請求項95】
以下(i)ならびに(ii)、すなわち
(i)CD137に結合する第1結合領域およびPD-L1に結合する第2結合領域、
(a)配列番号2、3、および4にそれぞれ記載したCDR1、CDR2、およびCDR3配列を含む重鎖可変領域(VH)と、配列番号6、7、および8にそれぞれ記載したCDR1、CDR2、およびCDR3配列を含む軽鎖可変領域(VL)とを含む該第1結合領域、
(b)配列番号12、13、および14にそれぞれ記載したCDR1、CDR2、およびCDR3配列を含む重鎖可変領域(VH)と、配列番号16、17、および18にそれぞれ記載したCDR1、CDR2、およびCDR3配列を含む軽鎖可変領域(VL)とを含む該第2抗原結合領域、
を含む結合物質、ならびに
(ii)PD-1に結合する抗体、またはその抗原結合フラグメント、ここで該抗体は配列番号43、44および45にそれぞれ記載したCDR1、CDR2およびCDR3配列を含む重鎖可変領域(VH)と、配列番号46、47および48にそれぞれ記載したCDR1、CDR2、およびCDR3配列を含む軽鎖可変領域(VL)とを含むか、または該抗体は配列番号62、63および64にそれぞれ記載したCDR1、CDR2およびCDR3配列を含む重鎖可変領域(VH)と、配列番号65、66および67にそれぞれ記載したCDR1、CDR2、およびCDR3配列を含む軽鎖可変領域(VL)とを含むものとする、
を含むキット。
【請求項96】
前記結合物質および/または前記PD-1に結合する抗体、もしくはその抗原結合フラグメントが、請求項1~94のいずれか1項に定義した通りである、請求項95記載のキット。
【請求項97】
前記結合物質、および前記PD-1に結合する抗体、またはその抗原結合フラグメントが、全身投与用、特に静脈内注射または注入などの注射または注入用である、請求項95または96記載のキット。
【請求項98】
対象において腫瘍の進行を軽減もしくは阻止するか、またはがんを処置するための方法における使用のための、請求項95~97のいずれか1項に記載のキット。
【請求項99】
前記腫瘍もしくはがんおよび/または前記対象および/または前記方法が、請求項1~94のいずれか1項に定義した通りである、請求項98に記載の使用のためのキット。
【請求項100】
対象において腫瘍の進行を軽減もしくは阻止するかまたはがんを処置するための方法であって、該方法が該対象に結合物質を、PD-1に結合する抗体、またはその抗原結合フラグメントの投与前に、投与と同時に、または投与後に投与することを含み、
ここで該結合物質が、CD137に結合する第1結合領域ならびにPD-L1に結合する第2結合領域、
(c)配列番号2、3、および4にそれぞれ記載したCDR1、CDR2、およびCDR3配列を含む重鎖可変領域(VH)と、配列番号6、7、および8にそれぞれ記載したCDR1、CDR2、およびCDR3配列を含む軽鎖可変領域(VL)とを含む該第1結合領域、
ならびに
(d)配列番号12、13、および14にそれぞれ記載したCDR1、CDR2、およびCDR3配列を含む重鎖可変領域(VH)と、配列番号16、17、および18にそれぞれ記載したCDR1、CDR2、およびCDR3配列を含む軽鎖可変領域(VL)とを含む該第2抗原結合領域、
を含み、かつ
ここで該PD-1に結合する抗体が、配列番号43、44および45にそれぞれ記載したCDR1、CDR2およびCDR3配列を含む重鎖可変領域(VH)と、配列番号46、47および48にそれぞれ記載したCDR1、CDR2、およびCDR3配列を含む軽鎖可変領域(VL)とを含むか、または該PD-1に結合する抗体が、配列番号62、63および64にそれぞれ記載したCDR1、CDR2およびCDR3配列を含む重鎖可変領域(VH)と、配列番号65、66および67にそれぞれ記載したCDR1、CDR2、およびCDR3配列を含む軽鎖可変領域(VL)とを含む、
上記方法。
【請求項101】
前記腫瘍もしくはがんおよび/または前記対象および/または前記方法および/または前記結合物質および/または前記PD-1阻害剤が、請求項1~94のいずれか1項に定義した通りである、請求項100記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヒトPD-L1及びヒトCD137に結合する結合剤を、ペムブロリズマブと組み合わせて使用して、腫瘍の進行を軽減又は防止するか、又はがんを処置する組合せ療法に関する。
【背景技術】
【0002】
CD137(4-1BB)は、TNFRファミリーのメンバーであり、CD8+/CD4+T細胞上、調節性T細胞(Treg)上、ナチュラルキラーT細胞(NK(T)細胞)上、B細胞上、及び好中球上の共刺激性分子である。T細胞上では、CD137は、構成的に発現されず、T細胞受容体(TCR)の活性化(例えば、腫瘍浸潤リンパ球(TIL)(Grosら、J. Clin Invest、2014、124(5):2246~59)上における)時に誘導される。その天然リガンドである4-1BBL又はアゴニスト抗体を介する刺激は、TRAF-2及びTRAF-1を、アダプターとして使用するシグナル伝達をもたらす。CD137による初期シグナル伝達は、核因子(NF)-κB経路及びマイトジェン活性化タンパク質(MAP)キナーゼ経路の活性化を最終的に結果としてもたらす、K-63ポリユビキチン化反応を伴う。シグナル伝達は、T細胞共刺激、増殖、サイトカイン産生の増大、成熟、及びCD8+ T細胞存続の延長をもたらす。CD137に対するアゴニスト性抗体は、多様な前臨床モデルにおいて、T細胞による抗腫瘍コントロールを促進することが示されている(Murilloら、Clin Cancer Res、2008、14(21):6895~906)。CD137を刺激する抗体は、T細胞の存続及び増殖を誘導し、これにより、抗腫瘍免疫応答を増強しうる。CD137を刺激する抗体は、先行技術において開示されており、ヒトIgG4抗体であるウレルマブ(AU2004279877)、及びヒトIgG2抗体であるウトミルマブ(Fisherら、2012、Cancer Immunol. Immunother.、61:1721~1733)を含む。
【0003】
プログラム死リガンド1(PD-L1、PDL1、CD274、B7H1)は、33kDaのI型1回膜貫通タンパク質である。選択的スプライシングに基づき、PD-L1の3つのアイソフォームについて記載されている。PD-L1は、免疫グロブリン(Ig)スーパーファミリーに属し、1つのIg様C2型ドメイン、及び1つのIg様V型ドメインを含有する。単離されたばかりのT細胞及びB細胞が発現させるPD-L1は、無視できる量であり、PD-L1を構成的に発現させるのは、CD14+単球のうちの小部分(約16%)である。しかし、インターフェロンγ(IFNγ)は、腫瘍細胞上のPD-L1を上方調節することが知られている。
【0004】
PD-L1は、1)活性化T細胞上におけるその受容体である、プログラム細胞死タンパク質1(PD-1)(CD279)に結合することにより、腫瘍反応性T細胞を寛容化すること;2)腫瘍細胞により発現されたPD-L1を介するPD-1シグナル伝達により、腫瘍細胞を、CD8+T細胞/Fasリガンド媒介性溶解に対して耐性とすること;3)T細胞により発現されたCD80(B7.1)を介する逆シグナル伝達により、T細胞を寛容化すること;及び4)誘導された調節性T細胞の発生及び維持を促進することにより、抗腫瘍免疫を妨げる。PD-L1は、黒色腫、卵巣がん、肺がん、及び結腸がんを含む多くのヒトがんにおいて発現される(Latchmanら、2004、Proc Natl Acad Sci USA、101、10691~6)。
【0005】
PD-L1遮断抗体は、PD-L1を過剰発現させることが公知であるいくつかのがん(黒色腫、NSCLCを含む)において、臨床活性を示している。例えば、アテゾリズマブは、PD-L1に対するヒト化IgG1モノクローナル抗体である。アテゾリズマブは、現在、多様な種類の充実性腫瘍を含むいくつかの適応のための免疫療法として臨床試験中であり(例えば、Rittmeyerら、2017、Lancet、389:255~265を参照されたい)、非小細胞肺がん適応及び膀胱がん適応について承認されている。PD-L1抗体であるアベルマブ(Kaufmanら、Lancet Oncol.、2016、17(10):1374~1385)は、転移性メルケル細胞癌を伴う成人患者及び12歳以上の小児科患者の処置について、FDAにより承認されており、膀胱がん、胃がん、頭頸部がん、中皮腫、NSCLC、卵巣がん、及び腎臓がんを含むいくつかのがん適応において、現在臨床試験中である。PD-L1抗体であるデュルバルマブは、局所進行型尿路癌適応又は転移性尿路癌適応について承認されており、複数の充実性腫瘍及び血液がんにおいて臨床開発中である(例えば、Massardら、2016、J Clin Oncol.、34(26):3119~25を参照されたい)。さらなる抗PD-L1抗体については、例えば、WO2004004771において記載されている。
【0006】
Hortonら(J Immunother Cancer.、2015、3号(増刊2号):O10)は、アゴニスト性4-1BB抗体の、中和性PD-L1抗体との組合せについて開示する。WO2019/025545は、結合剤、例えば、ヒトPD-L1に結合し、ヒトCD137に結合する二特異性抗体を提供する。
【0007】
しかし、当技術分野におけるこれらの進歩にもかかわらず、腫瘍の進行を防止するか、又はがんを処置する療法の改善が大いに必要とされている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明者らは、驚くべきことに、(i)ヒトPD-L1に結合し、ヒトCD137に結合する結合剤による刺激と、(ii)プログラム死-1(PD-1)に結合する抗体との組合せが、免疫応答を増幅することを見出した。
【課題を解決するための手段】
【0009】
したがって、第1の態様では、本開示は、対象における腫瘍の進行を軽減若しくは防止するか、又はがんを処置する方法における使用のための結合剤であって、前記方法が、プログラム死-1(PD-1)に結合する抗体又はその抗原結合性断片の投与の前に、これと同時に、又はこの後に、前記対象へと結合剤を投与するステップを含み、結合剤が、CD137に結合する第1の結合性領域、及びPD-L1に結合する第2の結合性領域を含み;
a)第1の結合性領域が、それぞれ配列番号2、3、及び4に示されたCDR1、CDR2、及びCDR3の配列を含む重鎖可変領域(VH)、並びにそれぞれ配列番号6、7、及び8に示されたCDR1、CDR2、及びCDR3の配列を含む軽鎖可変領域(VL)を含み;
b)第2の抗原結合性領域が、それぞれ配列番号12、13、及び14に示されたCDR1、CDR2、及びCDR3の配列を含む重鎖可変領域(VH)、並びにそれぞれ配列番号16、17、及び18に示されたCDR1、CDR2、及びCDR3の配列を含む軽鎖可変領域(VL)を含み、
PD-1に結合する抗体が、それぞれ配列番号43、44、及び45に示されたCDR1、CDR2、及びCDR3の配列を含む重鎖可変領域(VH)、並びにそれぞれ配列番号46、47、及び48に示されたCDR1、CDR2、及びCDR3の配列を含む軽鎖可変領域(VL)を含むか、又はPD-1に結合する抗体が、それぞれ配列番号62、63、及び64に示されたCDR1、CDR2、及びCDR3の配列を含む重鎖可変領域(VH)、並びにそれぞれ配列番号65、66、及び67に示されたCDR1、CDR2、及びCDR3の配列を含む軽鎖可変領域(VL)を含む、結合剤を提供する。
【0010】
第2の態様では、本開示は、
(i)CD137に結合する第1の結合性領域、及びPD-L1に結合する第2の結合性領域を含み、
a)第1の結合性領域が、それぞれ配列番号2、3、及び4に示されたCDR1、CDR2、及びCDR3の配列を含む重鎖可変領域(VH)、並びにそれぞれ配列番号6、7、及び8に示されたCDR1、CDR2、及びCDR3の配列を含む軽鎖可変領域(VL)を含み、
b)第2の抗原結合性領域が、それぞれ配列番号12、13、及び14に示されたCDR1、CDR2、及びCDR3の配列を含む重鎖可変領域(VH)、並びにそれぞれ配列番号16、17、及び18に示されたCDR1、CDR2、及びCDR3の配列を含む軽鎖可変領域(VL)を含む
結合剤;並びに
(ii)それぞれ配列番号43、44、及び45に示されたCDR1、CDR2、及びCDR3の配列を含む重鎖可変領域(VH)、並びにそれぞれ配列番号46、47、及び48に示されたCDR1、CDR2、及びCDR3の配列を含む軽鎖可変領域(VL)を含むか、又はそれぞれ配列番号62、63、及び64に示されたCDR1、CDR2、及びCDR3の配列を含む重鎖可変領域(VH)、並びにそれぞれ配列番号65、66、及び67に示されたCDR1、CDR2、及びCDR3の配列を含む軽鎖可変領域(VL)を含む、PD-1に結合する抗体又はその抗原結合性断片
を含むキットを提供する。
【0011】
第3の態様では、本開示は、対象における腫瘍の進行を軽減若しくは防止するか、又はがんを処置する方法における使用のための、第2の態様のキットを提供する。
【0012】
第4の態様では、本開示は、対象における腫瘍の進行を軽減若しくは防止するか、又はがんを処置する方法であって、PD-1に結合する抗体又はその抗原結合性断片の投与の前に、これと同時に、又はこの後に、前記対象へと、CD137に結合する第1の結合性領域、及びPD-L1に結合する第2の結合性領域を含み、
a)第1の結合性領域が、それぞれ配列番号2、3、及び4に示されたCDR1、CDR2、及びCDR3の配列を含む重鎖可変領域(VH)、並びにそれぞれ配列番号6、7、及び8に示されたCDR1、CDR2、及びCDR3の配列を含む軽鎖可変領域(VL)を含み;
b)第2の抗原結合性領域が、それぞれ配列番号12、13、及び14に示されたCDR1、CDR2、及びCDR3の配列を含む重鎖可変領域(VH)、並びにそれぞれ配列番号16、17、及び18に示されたCDR1、CDR2、及びCDR3の配列を含む軽鎖可変領域(VL)を含む
結合剤を投与するステップを含み、抗体が、それぞれ配列番号43、44、及び45に示されたCDR1、CDR2、及びCDR3の配列を含む重鎖可変領域(VH)、並びにそれぞれ配列番号46、47、及び48に示されたCDR1、CDR2、及びCDR3の配列を含む軽鎖可変領域(VL)を含むか、又は抗体が、それぞれ配列番号62、63、及び64に示されたCDR1、CDR2、及びCDR3の配列を含む重鎖可変領域(VH)、並びにそれぞれ配列番号65、66、及び67に示されたCDR1、CDR2、及びCDR3の配列を含む軽鎖可変領域(VL)を含む
方法を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】CD137×PD-L1二特異性抗体について予期される作用方式についての概略表示を示す図である。(A)PD-L1は、抗原提示細胞(APC)上のほか、腫瘍細胞上で発現される。負の調節性分子であるPD-1を発現させるT細胞に結合するPD-L1は、T細胞活性化シグナルを効果的に無効化し、T細胞の阻害を最終的にもたらす。(B)CD137×PD-L1二特異性抗体を添加したところ、阻害性PD-1:PD-L1相互作用は、PD-L1特異的アームを介して遮断され、同時に、二特異性抗体は、細胞間相互作用を介して、T細胞上で発現されたCD137に対するアゴニスト性シグナル伝達をもたらす結果として、強力なT細胞共刺激をもたらす。
図2】LPS成熟mDC、及び精製CD8+ T細胞によるMLRアッセイにおいて、ペムブロリズマブと組み合わされたGEN1046により誘導されたIL-2産生を示す図である。精製CD8+ T細胞を、単独の、若しくは組み合わせられたGEN1046(0.001~30μg/mL)、ペムブロリズマブ(0.01~100μg/mL)の存在下で、対照抗体の存在下で、又は任意の抗体の非存在下で(Txなし)、同種mDCと共に、5日間にわたり共培養した。IL-2の分泌は、Luminexにより解析した。示されるデータは、二連ウェルの平均IL-2±SDである。各個別のグラフは、3つのドナー対のうちの1つを表す。
図3】LPS成熟樹状細胞(mDC)、及び精製CD8+ T細胞による混合リンパ球反応 (MLR)において、ペムブロリズマブと組み合わされたGEN1046により誘導されたIFNγ産生を示す図である。精製CD8+ T細胞を、単独の、若しくは組み合わせられたGEN1046(0.001~30μg/mL)、ペムブロリズマブ(0.01~100μg/mL)の存在下で、対照抗体の存在下で、又は任意の抗体の非存在下で(Txなし)、同種mDCと共に、5日間にわたり共培養した。IFNγの分泌は、ELISAにより解析した。示されるデータは、二連ウェルの平均IFNγ±標準偏差(SD)である。各個別のグラフは、3つのDC/T細胞 ドナー対のうちの1つを表す。
図4】LPS成熟mDC、及び精製CD8+ T細胞によるMLRアッセイにおいて、ペムブロリズマブと組み合わされたGEN1046により誘導されたTNFα産生を示す図である。精製CD8+ T細胞を、単独の、若しくは組み合わせられたGEN1046(0.001~30μg/mL)、ペムブロリズマブ(0.01~100μg/mL)の存在下で、対照抗体の存在下で、又は任意の抗体の非存在下で(Txなし)、同種mDCと共に、5日間にわたり共培養した。TNFαの分泌は、Luminexにより解析した。示されるデータは、二連ウェルの平均TNFα±SDである。各個別のグラフは、3つのドナー対のうちの1つを表す。
図5】MC38細胞1×106個の、C57BL/6マウスへの皮下接種により確立されたMC38同系腫瘍モデルを示す図である。腫瘍が、64mm3の平均体積に達したら、マウスを無作為化し、単独の、若しくは組み合わせられたmbsIgG2a-PD-L1×4-1BB(5mg/kg)、抗マウスPD-1抗体(抗mPD-1;10mg/kg)、又はPBS(全て2QW×3)で処置した。A:示されるデータは、終了基準に達した動物についてのデータを繰り越した、処置群1つ(n=10)当たりの中央値腫瘍体積である。増殖曲線は、処置群内の動物のうち、生存を維持する動物が<50%となった場合(PBS、mbsIgG2a-PD-L1×4-1BB、抗mPD-1)に、又は35日目まで(mbsIgG2a-PD-L1×4-1BBの、抗mPD-1との組合せ)に打ち切った。矢印は、処置日を指し示す。B:腫瘍体積が、500mm3未満であるマウスの百分率として規定される無増悪生存率を、カプラン-マイヤー曲線として示す。マンテル-コックス解析を使用して、45日目における処置群間の生存率を比較した(表Y)。
図6】活性PD1/PD-L1軸を伴う抗原特異的T細胞アッセイにおける、GEN1046(DuoBody-PD-L1×4-1BB)、及び抗PD-1抗体であるペムブロリズマブについての増殖用量反応曲線の解析を示す図である。claudin-6特異的T細胞受容体(TCR)in vitro翻訳(IVT)RNA及びPD-1 IVT RNAを電気穿孔されたカルボキシフルオレセインスクシンイミジルエステル(CFSE)標識化T細胞を、(A)GEN1046(1~0.00015μg/mLの3倍系列希釈における)、又は(B)ペムブロリズマブ(0.8~0.00005μg/mLの4倍系列希釈における)の存在下で、claudin-6 IVT RNAを電気穿孔された未成熟樹状細胞と共に、5日間にわたりインキュベートした。CD8+ T細胞の増殖は、フローサイトメトリーにより測定した。示されるデータは、FlowJo software v10.7.1を使用して、抗体濃度の関数として計算された拡大指数である。誤差バー(SD)は、実験内の変動(1例の代表ドナーに由来する細胞を使用する、(A)における反復のn=3;(B)における二連のn=2である)を指し示す。曲線は、4パラメータ対数近似により当てはめ、EC50値及びヒル係数(表1及び2に示される)は、GraphPad Prism software v9.0を使用して決定した。
図7】抗PD-1抗体であるペムブロリズマブの非存在下又は存在下における、GEN1046による、PD-1の放出/PD-L1媒介T細胞の阻害、及びCD8+ T細胞増殖のさらなる共刺激を示す図である。claudin-6特異的TCR in vitro翻訳(IVT)RNA及びPD-1 IVT RNAを電気穿孔されたCFSE標識化T細胞を、一定濃度である0.8μg/mLのペムブロリズマブ又はアイソタイプ対照抗体であるIgG1-ctrlと組み合わせられた、0.2μg/mL、0.0067μg/mL、又は0.0022μg/mLのGEN1046の存在下で、claudin-6 IVT RNAを電気穿孔された未成熟樹状細胞と共に、5日間にわたりインキュベートした(n=3の個別のドナーに由来する細胞を使用する、条件1つ当たりのn=2とする技術的反復)。培地だけ、0.8μg/mLのIgG1-ctrlだけ、及び0.8μg/mLのペムブロリズマブだけを使用して、GEN1046の非存在下におけるベースラインの増殖を決定した。CD8+ T細胞の増殖は、フローサイトメトリーにより測定した。棒グラフは、FlowJo software v10.7.1を使用して計算される、表示の条件ごとの拡大指数についての平均±SDを表す。破線は、抗PD-1抗体であるペムブロリズマブの存在下におけるベースラインの増殖を表す。
図8】悪性充実性腫瘍を伴う対象において、GEN1046の安全性について査定するための、拡大コホートを伴う、ファーストインヒューマン、オープンラベルの用量漸増試験についての概略表示である。
図9】チェックポイント阻害剤による既往の治療を施されている対象(グレー線)、及びチェックポイント阻害剤ナイーブ患者(黒線)における無増悪生存率を示すウォーターフォールプロットである。
図10】臨床応答(PR)を伴う、CPI経験拡大コホート(GEN1046単剤療法)にわたる対象における、最後の既往の抗PD-(L)1からの時間を、安定(SD)又は進行(PD)を伴う対象と比較する図である。ウィルコクソン検定を使用して、奏効群を比較した。PR対PD:p=0.0017;PR対SD:p=0.034である。
図11】統合定量的システム薬理学(QSP)モデルにおいて、ペムブロリズマブと組み合わされた、100mg 1Q3W又は1Q6Wとして施された、GEN1046についての予測される部分奏効(PR)/完全奏効(CR)率を示す図である。
図12】2ラウンドにわたるCD3/CD28刺激後における、CD3+T細胞の枯渇表現型についての特徴付けを示す図である。(A)in vitro枯渇CD3+T細胞又はナイーブT細胞を、CD3/CD28ビーズで刺激した。IFNγの分泌は、ELISAにより解析した。示されるデータは、1例の代表的ドナー対による二連のウェルについての平均+標準偏差(SD)である。(B)ナイーブT細胞及びin vitro枯渇CD3+T細胞における、TIM3、LAG3、PD-1、及び4-1BBの発現は、フローサイトメトリーにより決定した。示されるデータは、バックグラウンド蛍光について補正された中央値蛍光強度(ΔMFI)である。(C)ナイーブT細胞及びin vitro枯渇CD3+T細胞における、Ki67の発現は、フローサイトメトリーにより決定した。
図13】成熟樹状細胞(mDC)と、in vitro枯渇CD3+T細胞(Tex)との混合リンパ球反応(MLR)において、ペムブロリズマブと組み合わされたGEN1046により誘導されたIFNγの分泌を示す図である。Texを、単独の、又は組み合わせられたGEN1046(0.001~30μg/mL)又はペムブロリズマブ(1μg/mL)の存在下で、同種LPS成熟DC(DC:T細胞の比を1:4として)と共に、5日間にわたり共培養した。抗体処置を伴わない(抗体を伴わない)か、又はbsIgG1-PD-L1×ctrl(30μg/mL)、bsIgG1-ctrl×4-1BB(30μg/mL)、IgG4アイソタイプ対照(1μg/mL)、又はIgG1-ctrl-FEAL(30μg/mL)により処置された共培養物を、対照として組み入れた。IFNγの分泌は、ELISAにより解析した。示されるデータは、4例の被験ドナー対のうち、1例の代表的ドナー対による二連のウェルについての平均+標準偏差(SD)である。
図14】mDCとTexとによるMLRにおける、GEN1046の、ペムブロリズマブとの組合せについての最高単剤(HSA)相乗作用スコアを示す図である。Texを、単独の、又は組み合わせられたGEN1046(0.001~30μg/mL)又はペムブロリズマブ(1μg/mL)の存在下で、同種LPS成熟DC(DC:T細胞の比を1:4として)と共に、5日間にわたり共培養した。示されるデータは、4例の被験ドナー対のうち、1例の代表的ドナー対(図13に示したドナーと同じドナー)についてのHSA相乗作用スコアである。>10のスコアは、このモデルにおける相乗作用を指し示す。
図15】MC38細胞1×106個の、C57BL/6マウスへの皮下接種により確立されたMC38結腸がんモデルを示す図である。腫瘍が、60mm3の平均体積に達したら、マウスを無作為化し、表示の抗体又はその組合せ(全て2QW×3)で処置した。A:示されるデータは、終了基準に達した動物についてのデータを繰り越した、処置群1つ(n=10)当たりの中央値腫瘍体積である。増殖曲線は、処置群内の動物のうち、生存を維持する動物が<50%となった場合(mIgG2a-ctrl-AAKR、mbsIgG2a-PD-L1×4-1BB、抗マウスPD-1抗体[抗mPD-1])に、又は60日目まで(mbsIgG2a-PD-L1×4-1BBの、抗mPD-1との組合せ)に打ち切った。下向き三角は、処置日を指し示す。B:腫瘍体積が、500mm3未満であるマウスの百分率として規定される無増悪生存率を、カプラン-マイヤー曲線として示す。マンテル-コックス解析を使用して、69日目における処置群間の生存率を比較した(表19)。
図16】腫瘍ナイーブマウスによる処置群及び対照群における、腫瘍が完全に退縮したマウスに対する(再)抗原投与を示す図である。抗体による処置の開始後121日目に皮下注射されたMC38腫瘍細胞1×106個により、マウスに(再)抗原投与した。示されるデータは、平均腫瘍体積±SEMである。
図17】MC38結腸がんモデルから切り出された腫瘍組織内で発現された細胞性免疫及び腫瘍マーカーについての定量的IHC/ISHデータを示す図である。C57BL/6マウスに、MC38細胞1×106個を接種した。腫瘍が、50~70mm3の平均体積に達したら、マウスを無作為化し、mbsIgG2a-PD-L1×4-1BB、抗mPD-1、又はこれらの組合せで処置した。腫瘍は、処置の開始後7日目(処置群1つ当たりのn=5)、又は14日目(処置群1つ当たりのn=5)に切り出した。切り出された腫瘍試料の一部が、IHC解析を実施するのに小さすぎる結果として、処置群1つ当たりの腫瘍の解析は4~5例となった。抗CD3抗体、抗CD4抗体、抗CD8抗体、又は抗PD-L1抗体を使用して、免疫組織化学(IHC)により、切り出された腫瘍の切片(4μm)を染色するか、又はin situハイブリダイゼーション(ISH)により、4-1BB若しくはPD-L2について染色した。IHCによるデータは、スライド内でカウントされた全細胞に対するマーカー陽性細胞%のほか、処置群ごとの平均±SEMとして描示する。ISHによるデータは、スライドごとのRNAscope Hスコアのほか、処置群ごとの平均±SEMとして描示する。
図18】MC38結腸がんモデルから解離された腫瘍組織に由来するCD8 T細胞サブセット内における、GzmB及びKi67の発現を示す図である。C57BL/6マウスに、MC38細胞1×106個を接種した。腫瘍が、50~70mm3の平均体積に達したら、マウスを無作為化し、mbsIgG2a-PD-L1×4-1BB、抗mPD-1、又はこれらの組合せで処置した。腫瘍は、処置の開始後7日目(処置群1つ当たりのn=5)に切り出し、単一細胞懸濁液へと解離し、フローサイトメトリーにより解析した。示されるデータは、個別のマウスについての、CD8+T細胞集団内のGzmB+細胞(A)、又はKi67+細胞(B)の百分率、及び処置群ごとの平均±SEMである。*p<0.05及び**p<0.01とするマン-ホイットニーによる統計学的解析を実施して、CD8+T細胞集団内のGzmB+細胞又はKi67+細胞の百分率を、処置群間で比較した。
図19】単剤としての、若しくは組み合わされたmbsIgG2a-PD-L1×4-1BB、抗mPD-1抗体、又は非結合性対照抗体であるIgG2a-ctrl-AAKRで処置されたMC38腫瘍を保有するC57BL/6マウスについての、末梢血中のサイトカインレベルを示す図である。末梢血試料は、ベースライン(処置の1日前[-1日目];点線)、及び各処置の2日後(2日目及び5日目)において採取した。サイトカイン解析は、ECLIAにより実施した。
【0014】
【表1】
【発明を実施するための形態】
【0015】
本開示について、下記で詳細に記載されるが、本明細書で記載される、特定の方法、プロトコール、及び試薬は変動しうるので、本開示は、これらに限定されないことが理解されるものとする。また、本明細書で使用される用語法は、特定の実施形態について記載することだけを目的とするものであり、付属の特許請求の範囲だけにより限定される、本開示の範囲を限定することは意図されないことも理解されるものとする。そうでないことが規定されない限り、本明細書で使用される、全ての技術用語及び学術用語は、当業者により一般に理解される意味と同じ意味を有する。
【0016】
以下では、本開示の要素について、より詳細に記載される。これらの要素は、具体的な実施形態と共に列挙されるが、さらなる実施形態を創出するように、任意の形及び任意の数で組み合わされうることを理解されるものとする。様々に記載される例及び好ましい実施形態は、本開示を、明示的に記載される実施形態だけに限定するようには解釈されないものとする。本記載は、明示的に記載される実施形態を、任意の数の、開示される要素及び/又は好ましい要素と組み合わせる実施形態を裏書きし、包摂するように理解されるものとする。さらに、本出願において記載される全ての要素の、任意の順列及び組合せは、文脈がそうでないことを指し示さない限りにおいて、本出願の記載により開示されると考えられるものとする。例えば、本明細書で使用される結合剤についての好ましい実施形態において、第1の重鎖が、配列番号23又は29に示されたアミノ酸配列[IgG1-Fc_FEAR]を含むか、又はこれらから本質的になるか、又はこれらからなり;本明細書で使用される結合剤についての別の好ましい実施形態において、第2の重鎖が、配列番号24又は30に示されたアミノ酸配列[IgG1-Fc_FEAL]を含むか、又はこれらから本質的になるか、又はこれらからなる場合;本明細書で使用される結合剤についてのさらなる好ましい実施形態において、第1の重鎖は、配列番号23又は29に示されたアミノ酸配列[IgG1-Fc_FEAR]を含むか、又はこれらから本質的になるか、又はこれらからなり;第2の重鎖は、配列番号24又は30に示されたアミノ酸配列[IgG1-Fc_FEAL]を含むか、又はこれらから本質的になるか、又はこれらからなる。
【0017】
好ましくは、本明細書で使用される用語は、「A multilingual glossary of biotechnological terms(IUPAC Recommendations)」、H.G.W. Leuenberger、B. Nagel、及びH. Kolbl編、Helvetica Chimica Acta、CH-4010 Basel、Switzerland(1995)において記載されている通りに規定される。
【0018】
本開示の実施は、そうでないことが指し示されない限り、化学、生化学、細胞生物学、免疫学、及び組換えDNA法の常套的な方法を援用するが、これらについては、当技術分野の文献において説明されている(例えば、「Organikum」、Deutscher Verlag der Wissenschaften、Berlin、1990;Streitwieser/Heathcook、「Organische Chemie」、VCH、1990;Beyer/Walter、「Lehrbuch der Organischen Chemie」、S. Hirzel Verlag Stuttgart、1988;Carey/Sundberg、「Organische Chemie」、VCH、1995;March、「Advanced Organic Chemistry」、John Wiley & Sons、1985;Roempp、「Chemie Lexikon」、Falbe/Regitz(Hrsg.)、Georg Thieme Verlag Stuttgart、New York、1989;「Molecular Cloning:A Laboratory Manual」、2版、J. Sambrookら編、Cold Spring Harbor Laboratory Press、Cold Spring Harbor、1989を参照されたい)。
【0019】
本明細書でそうでないことが指し示されないか、又は文脈により明らかに反証されない限りにおいて、本明細書で記載される全ての方法は、任意の適切な順序で実施されうる。本明細書で提供される、任意の例及び全ての例、又は例示のための表現(例えば、「など(such as)」)の使用は、本開示をよりよく例示することだけが意図され、他の形で特許請求される本開示の範囲に、限定を施すものではない。本明細書におけるいかなる表現も、本開示の実施に不可欠な、任意の、特許請求されていない要素を指し示すとは解釈されないものとする。
【0020】
本明細書における値の範囲の列挙は、範囲内に収まる各個別の値に、個々に言及することの縮約法として用いられることだけが意図される。本明細書でそうでないことが指し示されない限り、各個別の値は、本明細書で個別に列挙された場合と同様に、本明細書へと組み込まれる。
【0021】
いくつかの文献は、本明細書の本文を通して引用される。本明細書で引用される文献の各々(全ての特許、特許出願、学術刊行物、製造元の仕様、指示書などを含む)は、前出であれ、後出であれ、参照によりそれらの全体において本明細書に組み込まれる。本明細書におけるいかなる引用も、本発明が、既往の発明によるこのような開示に先行する権利が与えられていないことの容認として解釈されないものとする。
【0022】
定義
以下では、本開示の全ての態様に当てはまる定義が提供される。そうでないことが指し示されない限り、以下の用語は、以下の意味を有する。任意の、規定されていない用語は、当技術分野で認知された、それらの意味を有する。
【0023】
以下の本明細書及び特許請求の範囲を通して、文脈によりそうでないことが要求されない限りにおいて、「~を含む(comprise)」という用語、並びにこの変化形、例えば、「~を含む(comprises)」及び「~を含むこと(comprising)」は、言明されたメンバー、整数、若しくはステップ、又はメンバー、整数、若しくはステップの群の含有を含意するが、他の任意のメンバー、整数、若しくはステップ、又はメンバー、整数、若しくはステップの群の除外を含意するわけではないように理解されるものとする。「~から本質的になること」という用語は、任意の本質的な意義を有する、他のメンバー、整数、又はステップを除外することを意味する。「~を含むこと」という用語は、「~から本質的になること」という用語を包摂し、「~から本質的になること」という用語は、「~からなること」という用語を包摂する。したがって、本出願内の各出現において、「~を含むこと」という用語は、「~から本質的になること」又は「~からなること」という用語で置きかえられうる。同様に、本出願内の各出現において、「~から本質的になること」という用語は、「~からなること」という用語で置きかえられうる。
【0024】
「ある(a)」及び「ある(an)」及び「その」という用語、並びに本開示について記載する文脈で(とりわけ、特許請求の範囲の文脈で)使用される同様の言及は、本明細書でそうでないことが指し示されないか、又は文脈により明らかに反証されない限り、単数及び複数の両方を対象とするように解釈されるものとする。
【0025】
本明細書で使用される場合、「及び/又は」とは、他の特色又は成分を伴うか、又はこれを伴わない、2つの指定された特色又は成分の各々についての具体的開示として理解されるものとする。例えば、本明細書では、「X及び/又はY」とは、各々が、個別に示された場合と全く同様に、(i)X、(ii)Y、並びに(iii)X及びYの各々についての具体的開示として理解されるものとする。
【0026】
本開示の文脈では、「約」という用語は、問題の特色の技術的効果をなおも確認するのに当業者が理解する、精度の間隔を表示する。用語は、典型的に、指し示された数値からの、±5%、±4%、±3%、±2%、±1%、±0.9%、±0.8%、±0.7%、±0.6%、±0.5%、±0.4%、±0.3%、±0.2%、±0.1%、±0.05%の逸脱を指し示し、例えば、±0.01%の逸脱を指し示す。当業者により察知される通り、所与の技術的効果についての数値についてのこのような具体的逸脱は、技術的効果の性格に依存するであろう。例えば、天然の技術的効果又は生物学的技術的効果は、一般に、人為又は操作による技術的効果についての逸脱より大きな、このような逸脱をもたらしうる。
【0027】
本開示の文脈における「結合剤」という用語は、所望の抗原に結合することが可能な任意の薬剤を指す。本開示についてのある特定の実施形態では、結合剤は、抗体、抗体断片、又はこれらの構築物である。結合剤はまた、合成部分、改変部分、又は非自然発生部分、特に、非ペプチド部分も含みうる。このような部分は、例えば、所望の抗原結合性官能基又は抗原結合性領域、例えば、抗体又は抗体断片を連結しうる。一実施形態では、結合剤は、抗原結合性CDR又は抗原結合性可変領域を含む合成構築物である。
【0028】
本明細書で使用される「免疫チェックポイント」とは、免疫系の調節因子を指し、特に、T細胞受容体による抗原の認識の振幅及び質を調節する、共刺激性シグナル及び阻害性シグナルを指す。ある特定の実施形態では、免疫チェックポイントは、阻害性シグナルである。ある特定の実施形態では、阻害性シグナルは、PD-1と、PD-L1及び/又はPD-L2との相互作用である。ある特定の実施形態では、阻害性シグナルは、CD28の結合を置き換える、CTLA-4と、CD80又はCD86との相互作用である。ある特定の実施形態では、阻害性シグナルは、LAG-3と、MHCクラスII分子との相互作用である。ある特定の実施形態では、阻害性シグナルは、TIM-3と、そのリガンド、例えば、ガレクチン9、PtdSer、HMGB1、及びCEACAM1のうちの1つ以上との相互作用である。ある特定の実施形態では、阻害性シグナルは、1つ以上のKIRと、それらのリガンドとの相互作用である。ある特定の実施形態では、阻害性シグナルは、TIGITと、そのリガンドである、PVR、PVRL2、及びPVRL3のうちの1つ以上との相互作用である。ある特定の実施形態では、阻害性シグナルは、CD94/NKG2Aと、HLA-Eとの相互作用である。ある特定の実施形態では、阻害性シグナルは、VISTAと、その結合パートナー(複数可)との相互作用である。ある特定の実施形態では、阻害性シグナルは、1つ以上のSiglecと、それらのリガンドとの相互作用である。ある特定の実施形態では、阻害性シグナルは、GARPと、そのリガンドのうちの1つ以上との相互作用である。ある特定の実施形態では、阻害性シグナルは、CD47と、SIRPαとの相互作用である。ある特定の実施形態では、阻害性シグナルは、PVRIGと、PVRL2との相互作用である。ある特定の実施形態では、阻害性シグナルは、CSF1Rと、CSF1との相互作用である。ある特定の実施形態では、阻害性シグナルは、BTLAと、HVEMとの相互作用である。ある特定の実施形態では、阻害性シグナルは、アデノシン作動性経路の一部、例えば、CD39及びCD73によりもたらされる、A2AR及び/又はA2BRと、アデノシンとの相互作用である。ある特定の実施形態では、阻害性シグナルは、B7-H3と、その受容体との相互作用、及び/又はB7-H4と、その受容体との相互作用である。ある特定の実施形態では、阻害性シグナルは、IDO、CD20、NOX、又はTDOにより媒介される。
【0029】
本明細書では、「チェックポイント阻害剤」(CPI)及び「免疫チェックポイント(ICP)阻害剤」という用語は、同義に使用される。用語は、免疫チェックポイントを阻害する、特に、免疫チェックポイントの阻害性シグナルを阻害する分子、例えば、結合剤など、1つ以上のチェックポイントタンパク質を、全面的に、又は部分的に低減するか、阻害するか、これに干渉するか、若しくはこれを負にモジュレートするか、又は1つ以上のチェックポイントタンパク質の発現を、全面的に、又は部分的に低減するか、阻害するか、これに干渉するか、若しくはこれを負にモジュレートする分子、例えば、結合剤を指す。一実施形態では、免疫チェックポイント阻害剤は、1つ以上のチェックポイントタンパク質に結合する。一実施形態では、免疫チェックポイント阻害剤は、チェックポイントタンパク質を調節する、1つ以上の分子に結合する。一実施形態では、免疫チェックポイント阻害剤は、例えば、DNAレベル又はRNAレベルで、1つ以上のチェックポイントタンパク質の前駆体に結合する。本開示に従うチェックポイント阻害剤として機能する任意の薬剤が使用されうる。本明細書で使用される「部分的に」という用語は、レベル、例えば、チェックポイントタンパク質の阻害のレベルにおける少なくとも5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、又は99%を意味する。
【0030】
一実施形態では、チェックポイント阻害剤は、任意の化合物、例えば、免疫チェックポイントの阻害性シグナルを阻害する、任意の結合剤であることが可能であり、この場合、阻害性シグナルは、PD-1と、PD-L1及び/又はPD-L2との相互作用;CD28の結合を置き換える、CTLA-4と、CD80又はCD86との相互作用;LAG-3と、MHCクラスII分子との相互作用;TIM-3と、そのリガンド、例えば、ガレクチン9、PtdSer、HMGB1、及びCEACAM1のうちの1つ以上との相互作用;1つ以上のKIRと、それらのリガンドとの相互作用;TIGITと、そのリガンドである、PVR、PVRL2、及びPVRL3のうちの1つ以上との相互作用;CD94/NKG2Aと、HLA-Eとの相互作用;VISTAと、その結合パートナー(複数可)との相互作用;1つ以上のSiglecと、それらのリガンドとの相互作用;GARPと、そのリガンドのうちの1つ以上との相互作用;CD47と、SIRPαとの相互作用;PVRIGと、PVRL2との相互作用;CSF1Rと、CSF1との相互作用;BTLAと、HVEMとの相互作用;アデノシン作動性経路の一部、例えば、CD39及びCD73によりもたらされる、A2AR及び/又はA2BRと、アデノシンとの相互作用;B7-H3と、その受容体との相互作用、及び/又はB7-H4と、その受容体との相互作用;IDO、CD20、NOX、又はTDOにより媒介される阻害性シグナルからなる群から選択される。一実施形態では、チェックポイント阻害剤は、PD-1阻害剤、PD-L1阻害剤、PD-L2阻害剤、CTLA-4阻害剤、TIM-3阻害剤、KIR阻害剤、LAG-3阻害剤、TIGIT阻害剤、VISTA阻害剤、及びGARP阻害剤からなる群から選択される少なくとも1つのチェックポイント阻害剤である。一実施形態では、チェックポイント阻害剤は、遮断抗体、例えば、PD-1遮断抗体、CTLA4遮断抗体、PD-L1遮断抗体、PD-L2遮断抗体、TIM-3遮断抗体、KIR遮断抗体、LAG-3遮断抗体、TIGIT遮断抗体、VISTA遮断抗体、又はGARP遮断抗体でありうる。PD-1遮断抗体の例は、ペムブロリズマブ、ニボルマブ、セミプリマブ、及びスパルタリズマブを含む。CTLA4遮断抗体の例は、イピリムマブ及びトレメリムマブを含む。PD-L1遮断抗体の例は、アテゾリズマブ、デュルバルマブ、及びアベルマブを含む。
【0031】
「免疫グロブリン」という用語は、免疫グロブリンスーパーファミリーのタンパク質、好ましくは抗原受容体、例えば、抗体又はB細胞受容体(BCR)に関する。免疫グロブリンは、構造ドメイン、すなわち、特徴的な免疫グロブリン(Ig)フォールドを有する免疫グロブリンドメインにより特徴づけられる。用語は、膜結合型免疫グロブリンのほか、可溶型免疫グロブリンを包摂する。膜結合型免疫グロブリンはまた、一般に、BCRの一部である、表面免疫グロブリン又は膜免疫グロブリンとも称される。可溶型免疫グロブリンは、一般に、抗体と称される。
【0032】
免疫グロブリンの構造は、十分に特徴づけられている。例えば、「Fundamental Immunology」、7章(Paul,W.編、2版、Raven Press、N. Y.(1989))を参照されたい。略述すると、免疫グロブリンは、一般に、いくつかの鎖、典型的に、ジスルフィド結合を介して連結される2つの同一な重鎖と、2つの同一な軽鎖とを含む。これらの鎖は、主に、免疫グロブリンのドメイン又は領域、例えば、VL又はVL(可変軽鎖)ドメイン/領域、CL又はCL(定常軽鎖)ドメイン/領域、VH又はVH(可変重鎖)ドメイン/領域、及びCH又はCH(定常重鎖)ドメイン/領域である、CH1(CH1)、CH2(CH2)、CH3(CH3)、及びCH4(CH4)から構成される。重鎖定常領域は、典型的に、3つのドメインである、CH1、CH2、及びCH3から構成される。ヒンジ領域は、重鎖のCH1ドメインと、CH2ドメインとの間の領域であり、高度に可撓性である。ヒンジ領域内のジスルフィド結合は、IgG分子内の2つの重鎖の間の相互作用の一部である。各軽鎖は、典型的に、VL及びCLから構成される。軽鎖定常領域は、典型的に、1つのドメインであるCLから構成される。VH領域及びVL領域は、フレームワーク領域(FR)と称されるより保存的である領域を散在した、相補性決定領域(CDR)ともまた称される、超可変性を有する領域(又は構造的に規定されたループの配列及び/若しくは形態において超可変性でありうる超可変領域)へとさらに細分されうる。各VH及び各VLは、アミノ末端からカルボキシ末端へと、以下:FR1、CDR1、FR2、CDR2、FR3、CDR3、FR4の順序で配置された、典型的に、3つのCDR及び4つのFRから構成される(また、Chothia及びLesk、J. Mol. Biol.、196、901~917(1987)も参照されたい)。そうでないことが言明されるか、又は文脈により反証されない限りにおいて、本明細書におけるCDR配列は、DomainGapAlign(Lefranc MP.、Nucleic Acids Research、1999、27:209~212;並びにEhrenmann F.、Kaas Q.、及びLefranc M.-P.、Nucleic Acids Res.、38、D301~307(2010);また、インターネットのhttpアドレス:www.imgt.org.も参照されたい)を使用するIMGT規則に従い同定される。そうでないことが言明されるか、又は文脈により反証されない限りにおいて、本開示における定常領域内のアミノ酸位置の参照は、EU番号付けに従う(Edelmanら、Proc Natl Acad Sci USA.、1969年5月、63(1):78~85;Kabatら、「Sequences of Proteins of Immunological Interest」、5版、1991、NIH刊行物第91-3242号)。
【0033】
哺乳動物の免疫グロブリン重鎖には、5種類、すなわち、抗体の異なるクラス、すなわち、IgA、IgD、IgE、IgG、及びIgMに相当するα重鎖、δ重鎖、ε重鎖、γ重鎖、及びμ重鎖が存在する。可溶性免疫グロブリンの重鎖と対照的に、膜型免疫グロブリン又は表面型免疫グロブリンの重鎖は、それらのカルボキシ末端において、膜貫通型ドメイン及び短鎖細胞質ドメインを含む。哺乳動物では、2種類の軽鎖、すなわち、ラムダ軽鎖及びカッパ軽鎖が存在する。免疫グロブリン鎖は、可変領域及び定常領域を含む。定常領域は、免疫グロブリンの異なるアイソタイプ内で本質的に保存的であり、この場合、可変部分は、高度に多様であり、抗原認識を担う。
【0034】
本明細書では、「アミノ酸」及び「アミノ酸残基」という用語は、互換的に使用され、限定的には理解されない。アミノ酸とは、各アミノ酸に特異的な側鎖(R基)と共に、アミン(-NH2)官能基及びカルボキシル(-COOH)官能基を含有する有機化合物である。本開示の文脈では、アミノ酸は、構造的特徴及び化学的特徴に基づき分類されうる。したがって、アミノ酸のクラスは、以下の表の一方又は両方において反映されうる:
【0035】
【表2】
【0036】
【表3】
【0037】
本開示の目的で、アミノ酸配列(ペプチド、タンパク質、又はポリペプチド)の「変異体」は、アミノ酸挿入変異体、アミノ酸付加変異体、アミノ酸欠失変異体、及び/又はアミノ酸置換変異体を含む。「変異体」という用語は、全ての突然変異体、スプライス変異体、翻訳後修飾変異体、コンフォメーション、アイソフォーム、対立遺伝子変異体、種変異体、及び種相同体、特に、自然発生である変異体を含む。「変異体」という用語は、特に、アミノ酸配列の断片を含む。
【0038】
アミノ酸挿入変異体は、特定のアミノ酸配列内の単一のアミノ酸又は2つ以上のアミノ酸の挿入を含む。挿入を有するアミノ酸配列変異体の場合、結果として得られる産物についての、適切なスクリーニングを伴う、ランダムな挿入もまた可能であるが、1つ以上のアミノ酸残基が、アミノ酸配列内の特定の部位へと挿入される。
【0039】
アミノ酸付加変異体は、1つ以上のアミノ酸、例えば、1つ、2つ、3つ、5つ、10、20、30、50以上のアミノ酸による、アミノ末端融合体及び/又はカルボキシ末端融合体を含む。
【0040】
アミノ酸欠失変異体は、配列からの、1つ以上のアミノ酸の除去、例えば、1つ、2つ、3つ、5つ、10、20、30、50以上のアミノ酸の除去により特徴づけられる。欠失は、タンパク質の任意の位置における欠失でありうる。タンパク質のN末端及び/又はC末端における欠失を含むアミノ酸欠失変異体はまた、N末端切断変異体及び/又はC末端切断変異体とも呼ばれる。
【0041】
アミノ酸置換変異体は、配列内で除去される少なくとも1つの残基と、その場所に挿入される別の残基とにより特徴づけられる。1つのアミノ酸の、別のアミノ酸による置換は、保存的置換又は非保存的置換に分類されうる。アミノ酸配列内の相同なタンパク質若しくはペプチドの間で保存されない位置にある改変、及び/又はアミノ酸の類似する特性を有する他のアミノ酸による置きかえが優先される。好ましくは、ペプチド変異体及びタンパク質変異体におけるアミノ酸変化は、保存的アミノ酸変化、すなわち、同様に帯電したアミノ酸又は同様に帯電していないアミノ酸の置換である。保存的アミノ酸変化は、それらの側鎖内で類縁であるアミノ酸のファミリーのうちの1つの置換を伴う。本開示の文脈では、「保存的置換」とは、1つのアミノ酸の、同様の構造的特徴及び/又は化学的特徴を有する別のアミノ酸による置換、例えば、1つのアミノ酸残基の、上記の2つの表のうちのいずれかで規定された同じクラスの別のアミノ酸残基による置換である:例えば、ロイシンは、いずれも、脂肪族である、分枝状の疎水性残基であるので、イソロイシンで置換されうる。同様に、アスパラギン酸は、いずれも、小型の負帯電残基であるので、グルタミン酸で置換されうる。自然発生のアミノ酸は、一般に、4つのファミリー:酸性アミノ酸(アスパラギン酸、グルタミン酸)、塩基性アミノ酸(リシン、アルギニン、ヒスチジン)、非極性アミノ酸(アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、プロリン、フェニルアラニン、メチオニン、トリプトファン)、及び非帯電極性アミノ酸(グリシン、アスパラギン、グルタミン、システイン、セリン、トレオニン、チロシン)へと分けられる。フェニルアラニン、トリプトファン、及びチロシンは、場合によって、併せて、芳香族アミノ酸として分類される。一実施形態では、保存的アミノ酸置換は、以下の群:
・グリシン、アラニン;
・バリン、イソロイシン、ロイシン;
・アスパラギン酸、グルタミン酸;
・アスパラギン、グルタミン;
・セリン、トレオニン;
・リシン、アルギニン;及び
・フェニルアラニン、チロシン
の内部における置換を含む。
【0042】
本明細書で使用される「~位に対応するアミノ酸」という用語及び同様の表現は、ヒトIgG1重鎖内のアミノ酸位置の番号を指す。他の免疫グロブリン内の対応するアミノ酸位置は、ヒトIgG1とのアライメントにより見出されうる。したがって、別の配列内のアミノ酸又はセグメント「に対応する」1つの配列内のアミノ酸又はセグメントは、標準的な配列アライメントプログラム、例えば、ALIGN、ClustalW、又は同様の配列アライメントプログラムを、典型的に、デフォルトの設定で使用して、他のアミノ酸又はセグメントとアライメントされるアミノ酸又はセグメントであり、ヒトIgG1重鎖に対する少なくとも50%、少なくとも80%、少なくとも90%、又は少なくとも95%の同一性を有する。当技術分野では、配列又は配列内のセグメントを、どのようにアライメントし、これにより、本開示に従うアミノ酸位置に対応する配列内の位置を、どのように決定するのかが周知であると考えられる。
【0043】
本開示の文脈における「抗体」(Ab)という用語は、典型的な生理学的条件下、好ましくは、著明な時間、例えば、少なくとも約30分間、少なくとも約45分間、少なくとも約1時間、少なくとも約2時間、少なくとも約4時間、少なくとも約8時間、少なくとも約12時間、約24時間以上、約48時間以上、約3、4、5、6、7日間以上など、又は他の任意の関与性の機能的に規定された期間(例えば、抗体の抗原への結合と関連する生理学的応答を誘導するのに十分な時間、促進するのに十分な時間、増強するのに十分な時間、及び/若しくはモジュレートするのに十分な時間、並びに/又は抗体がエフェクター活性を動員するのに十分な時間)にわたる半減期で、抗原(特に、抗原上のエピトープ)に特異的に結合する能力を有する、免疫グロブリン分子、免疫グロブリン分子の断片、又はこれらのいずれかの誘導体を指す。特に、「抗体」という用語は、ジスルフィド結合により相互接続された少なくとも2つの重(H)鎖及び2つの軽(L)鎖を含む糖タンパク質を指す。「抗体」という用語は、モノクローナル抗体、組換え抗体、ヒト抗体、ヒト化抗体、キメラ抗体、及び前出のうちのいずれかの組合せを含む。各重鎖は、重鎖可変領域(VH)及び重鎖定常領域(CH)から構成される。各軽鎖は、軽鎖可変領域(VL)及び軽鎖定常領域(CL)から構成される。本明細書では、可変領域及び定常領域はまた、それぞれ可変ドメイン及び定常ドメインとも称される。VH領域及びVL領域は、フレームワーク領域(FR)と称されるより保存的である領域を散在した、相補性決定領域(CDR)と称される、超可変性を有する領域へとさらに細分されうる。各VH及び各VLは、アミノ末端からカルボキシ末端へと、以下:FR1、CDR1、FR2、CDR2、FR3、CDR3、FR4の順序で配置された、3つのCDR及び4つのFRから構成される。VHのCDRは、HCDR1、HCDR2、及びHCDR3(又はCDR-H1、CDR-H2、及びCDR-H3)と称される。VLのCDRは、LCDR1、LCDR2、及びLCDR3(又はCDR-L1、CDR-L2、及びCDR-L3)と称される。重鎖及び軽鎖の可変領域は、抗原と相互作用する結合性ドメインを含有する。抗体の定常領域は、重鎖定常領域(CH)及び軽鎖定常領域(CL)を含み、この場合、CHは、定常ドメインであるCH1、ヒンジ領域、並びに定常ドメインであるCH2及びCH3(アミノ末端からカルボキシ末端へと、以下:CH1、CH2、CH3の順序で配置される)へとさらに細分されうる。抗体の定常領域は、免疫グロブリンの、免疫系の多様な細胞(例えば、エフェクター細胞)及び補体系の成分、例えば、C1qを含む、宿主組織又は因子への結合を媒介しうる。抗体は、天然供給源に由来する無傷免疫グロブリンの場合もあり、組換え供給源に由来する無傷免疫グロブリンの場合もあり、無傷免疫グロブリンの免疫活性部分でありうる。抗体は、典型的に、免疫グロブリン分子の四量体である。抗体は、例えば、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体、Fv、Fab、及びF(ab)2のほか、単鎖抗体及びヒト化抗体を含む様々な形態で存在しうる。
【0044】
免疫グロブリン分子の重鎖可変領域及び軽鎖可変領域は、抗原と相互作用する結合性ドメインを含有する。本明細書では、「結合性領域」及び「抗原結合性領域」という用語は、互換的に使用され、抗原と相互作用する領域を指し、VH領域及びVL領域の両方を含む。本明細書で使用される抗体は、単一特異性抗体だけでなく、また、複数の異なる抗原結合性領域、例えば、2つ以上、例えば、3つ以上の異なる抗原結合性領域を含む多特異性抗体も含む。
【0045】
上記で指し示された通り、そうでないことが言明されるか、又は文脈により明らかに反証されない限りにおいて、本明細書における「抗体」という用語は、抗原結合性断片である、すなわち、抗原に特異的に結合する能力を保持する、抗体の断片を含む。抗体の抗原結合性機能は、全長抗体の断片により果たされうることが示されている。「抗体」という用語の中に包摂される抗原結合性断片の例は、(i)VLドメイン、VHドメイン、CLドメイン、及びCH1ドメインからなる一価断片である、Fab'断片若しくはFab断片、又はWO2007/059782に記載されている一価抗体(Genmab);(ii)ヒンジ領域におけるジスルフィド架橋により連結された2つのFab断片を含む二価断片である、F(ab')2断片;(iii)VHドメイン及びCH1ドメインから本質的になる、Fd断片;(iv)抗体の単一のアームのVLドメイン及びVHドメインから本質的になる、Fv断片;(v)VHドメインから本質的になり(Wardら、Nature、341、544~546 (1989))、また、ドメイン抗体とも呼ばれる(Holtら、Trends Biotechnol. 2003年11月、21(11):484~90)、dAb断片;(vi)ラクダ科動物分子又はNanobody分子(Revetsら、Expert Opin Biol Ther.、2005年1月、5(1):111~24);並びに(vii)単離相補性決定領域(CDR)を含む。さらに、Fv断片の2つのドメインである、VL及びVHは、個別の遺伝子によりコードされるが、VL及びVHを単一のタンパク質鎖とする合成リンカーによる組換え法を使用する接続が可能であり、この場合、VL領域とVH領域とは、対合して、一価分子を形成する(単鎖抗体又は単鎖Fv(scFv)として公知であり、例えば、Birdら、Science、242、423~426(1988);及びHustonら、PNAS USA、85、5879~5883(1988)を参照されたい)。このような単鎖抗体は、そうでないことが注記されるか、又は文脈により明らかに指し示されない限りにおいて、抗体という用語の範囲内に包摂される。このような断片は、一般に、抗体の意味の範囲内に包含されるが、総体として、各々独立に、本開示の固有の特色であり、異なる生物学的特性及び有用性を呈する。本明細書では、本開示の文脈において有用なこれらの抗体断片及び他の抗体断片のほか、このような断片の二特異性フォーマットについてさらに論じられる。そうでないことが指定されない限り、抗体という用語はまた、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体(mAb)、抗体様ポリペプチド、例えば、キメラ抗体及びヒト化抗体、並びに任意の公知の技法、例えば、酵素による切断、ペプチド合成、及び組換え法によりもたらされる、抗原に特異的に結合する能力を保持する抗体断片(抗原結合性断片)も含むこともまた理解されたい。
【0046】
作出される抗体は、任意のアイソタイプを所有しうる。本明細書で使用される「アイソタイプ」という用語は、重鎖定常領域遺伝子によりコードされる、免疫グロブリンクラス(例えば、IgG(例えば、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4)、IgD、IgA(例えば、IgA1、IgA2)、IgE、IgM、又はIgY)を指す。本明細書では、特定のアイソタイプ、例えば、IgG1が言及される場合、「アイソタイプ」という用語は、特異的アイソタイプ配列、例えば、特定のIgG1配列に限定されず、抗体が、配列において、他のアイソタイプよりこのアイソタイプ、例えば、IgG1に近いことを指し示すのに使用される。したがって、例えば、本明細書で開示されるIgG1抗体は、定常領域内に変異を含む、自然発生のIgG1抗体の配列変異体でありうる。
【0047】
IgG1抗体は、それらのうちのいずれかが、本明細書の実施形態の一部における使用に適する、アロタイプ(Jefferis及びLefranc、2009、mAb、1巻、4号、1~7頁)と称される複数の多型変異体において存在しうる。ヒト集団内において共通なアロタイプ変異体は、a、f、n、z、又はこれらの組合せにより名指されるアロタイプ変異体である。本明細書の実施形態のうちのいずれかでは、抗体は、ヒトIgG Fc領域を含む重鎖Fc領域を含みうる。さらなる実施形態では、ヒトIgG Fc領域は、ヒトIgG1を含む。
【0048】
本開示の文脈における「多特異性抗体」という用語は、異なる抗体配列により規定される少なくとも2つの異なる抗原結合性領域を有する抗体を指す。一部の実施形態では、前記異なる抗原結合性領域は、同じ抗原上の、異なるエピトープに結合する。しかし、好ましい実施形態では、前記異なる抗原結合性領域は、異なる標的抗原に結合する。一実施形態では、多特異性抗体は、「二特異性抗体」又は「bs」である。多特異性抗体、例えば、二特異性抗体は、本明細書の下記で記載される、二特異性抗体フォーマット又は多特異性抗体フォーマットのうちのいずれかを含む、任意のフォーマットの抗体でありうる。
【0049】
抗体の文脈で使用される場合の「全長」という用語は、抗体が、断片ではなく、天然において特定のアイソタイプについて通常見出されるこのアイソタイプのドメインの全て、例えば、IgG1抗体についての、VHドメイン、CH1ドメイン、CH2ドメイン、CH3ドメイン、ヒンジドメイン、VLドメイン、及びCLドメインを含有することを指し示す。
【0050】
本明細書で使用される「ヒト抗体」という用語は、ヒト生殖細胞系列免疫グロブリン配列に由来する可変及びフレームワーク領域並びにヒト免疫グロブリン定常領域を有する抗体を含むことが意図される。本明細書で開示されるヒト抗体は、ヒト生殖細胞系列免疫グロブリン配列によりコードされないアミノ酸残基(例えば、in vitroにおけるランダム突然変異誘発若しくは部位特異的突然変異誘発、又はin vivoにおける体細胞突然変異により導入された突然変異である、挿入又は欠失)を含みうる。しかし、本明細書で使用される「ヒト抗体」という用語は、別の非ヒト種、例えば、マウスの生殖細胞系列に由来するCDR配列が、ヒトフレームワーク配列へとグラフトされた抗体を含むことは意図されない。
【0051】
本明細書で使用される「キメラ抗体」という用語は、可変領域が、非ヒト種に由来し(例えば、齧歯動物に由来し)、定常領域が、異なる種、例えば、ヒトに由来する抗体を指す。キメラ抗体は、抗体の操作により作出されうる。「抗体の操作」とは、一般に、異なる種類の抗体の改変について使用される用語であり、当業者には、抗体操作のための工程が周知である。特に、キメラ抗体は、Sambrookら、1989、「Molecular Cloning:A laboratory Manual」、New York:Cold Spring Harbor Laboratory Press、15章において記載されている標準的DNA法を使用することにより作出されうる。したがって、キメラ抗体は、遺伝子操作された組換え抗体の場合もあり、酵素的に操作された組換え抗体の場合もある。キメラ抗体の作出は、当業者の知見の範囲内にあるので、キメラ抗体の作出は、本明細書で記載される方法以外の方法により実施されうる。ヒトにおける治療適用のためのキメラモノクローナル抗体は、非ヒト抗体、例えば、齧歯動物抗体について予期される抗体の免疫原性を低減するように開発される。キメラモノクローナル抗体は、典型的に、目的の抗原に特異的である非ヒト(例えば、マウス又はウサギ)可変領域、並びにヒト抗体重鎖定常ドメイン及び軽鎖定常ドメインを含有しうる。キメラ抗体の文脈で使用される「可変領域」又は「可変ドメイン」という用語は、下記で記載される、免疫グロブリンの重鎖及び軽鎖の両方のCDR及びフレームワーク領域を含む領域を指す。
【0052】
本明細書で使用される「ヒト化抗体」という用語は、ヒト可変ドメインに対する高レベルの配列相同性を含有するように改変された、ヒト抗体定常ドメイン及び非ヒト可変ドメインを含有する、遺伝子操作された非ヒト抗体を指す。これは、併せて、抗原結合性部位を形成する、6つの非ヒト抗体相補性決定領域(CDR)を、相同なヒトアクセプターフレームワーク領域(FR)へとグラフトすることにより達成されうる(WO92/22653及びEP0629240を参照されたい)。親抗体の結合親和性及び結合特異性を完全に再構成するために、親抗体(すなわち、非ヒト抗体)に由来するフレームワーク残基による、ヒトフレームワーク領域の置換(復帰突然変異)が要求されうる。構造的相同性モデル化は、フレームワーク領域内の抗体の結合特性に重要なアミノ酸残基を同定する一助となりうる。したがって、ヒト化抗体は、非ヒトCDR配列、場合により、非ヒトアミノ酸配列への1つ以上のアミノ酸復帰突然変異を含む、主にヒトのフレームワーク領域、及び完全ヒト定常領域を含みうる。場合により、好ましい特徴、例えば、親和性及び生化学的特性を伴うヒト化抗体を得るのに、必ずしも復帰突然変異ではないさらなるアミノ酸改変が適用されうる。
【0053】
本明細書で使用される、別のタンパク質、例えば、親タンパク質「に由来する」タンパク質は、タンパク質の1つ以上のアミノ酸配列が、他のタンパク質内又は親タンパク質内の1つ以上のアミノ酸配列と同一であるか、又は同様であることを意味する。例えば、別の抗体、結合アーム、抗原結合性領域、若しくは定常領域、又は親である抗体、結合アーム、抗原結合性領域、若しくは定常領域に由来する抗体、結合アーム、抗原結合性領域、定常領域などにおいて、1つ以上のアミノ酸配列は、他の抗体、結合アーム、抗原結合性領域、若しくは定常領域、又は親である抗体、結合アーム、抗原結合性領域、若しくは定常領域の抗体、結合アーム、抗原結合性領域、若しくは定常領域と同一であるか、又は同様である。このような1つ以上のアミノ酸配列の例は、VH CDR及びVL CDR、並びに/又はフレームワーク領域、VH領域、VL領域、CL領域、ヒンジ領域、若しくはCH領域のうちの1つ以上若しくは全てのアミノ酸配列を含むがこれらに限定されない。例えば、本明細書で、ヒト化抗体が、非ヒト親抗体「に由来する」と記載されうることは、少なくともVL CDR配列及びVH CDR配列が、前記非ヒト親抗体のVH CDR配列及びVL CDR配列と同一であるか、又は同様であることを意味する。本明細書で、キメラ抗体が、非ヒト親抗体「に由来する」と記載されうることは、典型的に、VH配列及びVL配列が、非ヒト親抗体のVH配列及びVL配列と同一であるか、又は同様でありうることを意味する。別の例は、本明細書で、特定の親抗体「に由来する」と記載されうることが、前記結合アーム又は抗原結合性領域が、典型的に、前記親抗体の結合アーム又は抗原結合性領域と同一であるか、又は同様であるVH CDR及び/若しくはVL CDR、又はVH配列及び/若しくはVL配列を含むことを意味する結合アーム又は抗原結合性領域である。しかし、本明細書の別の箇所で記載される通り、アミノ酸改変、例えば、突然変異は、所望の特徴を導入するように、CDR内に施される場合もあり、定常領域内に施される場合もあり、抗体内、結合アーム内、抗原結合性領域内などの別の箇所に施される場合もある。第1のタンパク質又は親タンパク質に由来する1つ以上の配列の文脈で使用される場合、「同様の」アミノ酸配列は、好ましくは少なくとも約50%、例えば、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、又は少なくとも約97%、98%、若しくは99%の配列同一性を有する。
【0054】
非ヒト抗体は、多数の異なる種、例えば、マウス、ウサギ、ニワトリ、モルモット、リャマ、及びヤギにおいて作出されうる。
【0055】
モノクローナル抗体は、常套的なモノクローナル抗体法、例えば、Kohler及びMilstein、Nature、256:495(1975)による標準的な体細胞ハイブリダイゼーション法を含む様々な技法により作製されうる。モノクローナル抗体を調製するための他の技法、例えば、Bリンパ球のウイルス性形質転換若しくは発がん性形質転換、又は抗体遺伝子のライブラリーを使用するファージディスプレイ法の援用が可能であり、当業者には、このような方法が周知である。
【0056】
このような非ヒト種におけるハイブリドーマの作製は、十分に確立された手順である。当技術分野では、融合体のための免疫化動物/非ヒト種の脾臓細胞を単離するための免疫化プロトコール及び免疫化法が公知である。融合パートナー(例えば、マウス骨髄腫細胞)及び融合手順もまた公知である。
【0057】
本明細書で使用される場合、文脈により反証されない限りにおいて、「Fabアーム」又は「アーム」という用語は、1つの重鎖-軽鎖対を指し、本明細書では、「半分子」と互換的に使用される。
【0058】
「抗原結合性領域を含む結合アーム」という用語は、抗原結合性領域を含む抗体分子又は抗体断片を意味する。したがって、結合アームは、例えば、6つのVH CDR配列及びVL CDR配列、VH配列及びVL配列、Fab断片若しくはFab'断片、又はFabアームを含みうる。
【0059】
本明細書で使用される場合、文脈により反証されない限りにおいて、「Fc領域」という用語は、免疫グロブリンの重鎖の、2つのFc配列からなる抗体領域を指し、この場合、前記Fc配列は、少なくともヒンジ領域、CH2ドメイン、及びCH3ドメインを含む。一実施形態では、本明細書で使用される「Fc領域」という用語は、抗体のN末端からC末端への向きに、少なくともヒンジ領域、CH2領域、及びCH3領域を含む領域を指す。抗体のFc領域は、免疫グロブリンの、免疫系の多様な細胞(例えば、エフェクター細胞)及び補体系の成分を含む、宿主組織又は因子への結合を媒介しうる。
【0060】
本開示の文脈では、多特異性抗体を含む抗体との関係で使用される、「Fc媒介エフェクター機能を、強くならない程度に誘導する」という用語は、抗体が、特に、IgG Fc受容体(FcガンマR、FcγR)への結合、C1qへの結合、ADCC又はCDCのリストから選択される、Fc媒介エフェクター機能を、(i)特に、前記抗体と同じ第1の抗原結合性領域及び第2の抗原結合性領域を含む、同じCDR配列、並びに(ii)ヒトIgG1のヒンジ領域、CH2領域、及びCH3領域を含む2つの重鎖を含むヒトIgG1抗体と比較して強くならない程度に誘導することを意味する。
【0061】
Fc媒介エフェクター機能は、FcγRへの結合、C1qへの結合、又はFcγRを介するFc媒介架橋の誘導により測定されうる。
【0062】
本明細書で使用される「ヒンジ領域」という用語は、免疫グロブリン重鎖のヒンジ領域を指す。したがって、例えば、ヒトIgG1抗体のヒンジ領域は、Kabat(Kabat、E. A.ら、「Sequences of proteins of immunological interest」、5版:US Department of Health and Human Services、NIH刊行物第91-3242号、662、680、689頁(1991))に示されたEU番号付けに従うアミノ酸216~230に対応する。しかし、ヒンジ領域はまた、本明細書で記載される他の亜型のうちのいずれかでもありうる。
【0063】
本明細書で使用される「CH1領域」又は「CH1ドメイン」という用語は、免疫グロブリン重鎖のCH1領域を指す。したがって、例えば、ヒトIgG1抗体のCH1領域は、Kabat(同上)に示されたEU番号付けに従うアミノ酸118~215に対応する。しかし、CH1領域はまた、本明細書で記載される他の亜型のうちのいずれかでもありうる。
【0064】
本明細書で使用される「CH2領域」又は「CH2ドメイン」という用語は、免疫グロブリン重鎖のCH2領域を指す。したがって、例えば、ヒトIgG1抗体のCH2領域は、Kabat(同上)に示されたEU番号付けに従うアミノ酸231~340に対応する。しかし、CH2領域はまた、本明細書で記載される他の亜型のうちのいずれかでもありうる。
【0065】
本明細書で使用される「CH3領域」又は「CH3ドメイン」という用語は、免疫グロブリン重鎖のCH3領域を指す。したがって、例えば、ヒトIgG1抗体のCH3領域は、Kabat(同上)に示されたEU番号付けに従うアミノ酸341~447に対応する。しかし、CH3領域はまた、本明細書で記載される他の亜型のうちのいずれかでもありうる。
【0066】
本開示の文脈では、「一価抗体」という用語は、抗体分子が、単一抗原分子に結合することは可能であるが、このために、抗原を架橋することは可能でないことを意味する。
【0067】
「CD137抗体」又は「抗CD137抗体」とは、抗原であるCD137に特異的に結合する、上記で記載された抗体である。
【0068】
「CD137×PD-L1抗体」又は「抗CD137×PD-L1抗体」とは、そのうちの一方が、抗原であるCD137に特異的に結合し、もう一方が、抗原であるPD-L1に特異的に結合する、2つの異なる抗原結合性領域を含む二特異性抗体である。
【0069】
本明細書で使用される「バイオシミラー(バイオ後続品)」という用語(例えば、承認された参照医薬品/バイオ薬物)は、参照医薬品の使用が承認及び意図され、承認(例えば、医薬品の安全性、純度、及び効力の点で、バイオ医薬品と、参照医薬品との間に、臨床的な有意差が見られないことの承認)が求められる、1つ以上の適切な使用条件下における、安全性、純度、及び効力を裏付けるのに十分な、(a)バイオ医薬品が、臨床不活性成分の些少な差違にもかかわらず、参照医薬品と高度に同様であることを裏付ける解析的研究;(b)動物研究(毒性についての評価を含む);及び/又は(c)1つ以上の臨床研究(免疫原性及び薬物動態又は薬力学についての評価を含む)によるデータに基づき、参照医薬品と同様であるバイオ医薬品を指す。一部の実施形態では、バイオシミラーであるバイオ医薬品と、参照医薬品とは、提起された表示において指示、推奨、又は示唆される1つ以上の使用条件について、1つ以上の同じ作用機構を利用するが、参照医薬品について、1つ以上の作用機構が公知である範囲に限る。一部の実施形態では、バイオ医薬品について提起された表示において指示、推奨、又は示唆される1つ以上の使用条件は、参照医薬品について、既に承認されている。一部の実施形態では、バイオ医薬品の投与経路、剤形、及び/又は強度は、参照医薬品の投与経路、剤形、及び/又は強度と同じである。バイオシミラーは、例えば、市販抗体と同じアミノ酸一次配列を有する、現在公知の抗体でありうるが、異なる細胞型内で作製される場合もあり、異なる作製法、精製法、又は製剤化法により作製される場合もある。
【0070】
本明細書の抗体の、所定の抗原又はエピトープへの結合の文脈で使用される「~に結合すること」又は「~に結合することが可能な」という用語は、典型的に、バイオレイヤー干渉法(BLI)を使用して決定された場合に、又は、例えば、リガンドとしての抗原及び解析物としての抗体を使用する、BIAcore 3000測定器において、表面プラズモン共鳴(SPR)技術を使用して決定された場合に、約10-7M以下、例えば、約10-8M以下、例えば、約10-9M以下、約10-10M以下、又は約10-11M若しくはそれ未満のKDに対応する親和性で結合することである。抗体は、所定の抗原又は近縁の抗原以外の非特異的抗原(例えば、BSA、カゼイン)への結合についてのそのKDの10分の1以下、例えば、100分の1以下、例えば、1,000分の1以下、例えば、10,000分の1以下、例えば、100,000分の1以下であるKDに対応する親和性で、所定の抗原に結合する。親和性がより高度である量は抗体のKDに依存し、その結果、抗体のKDが極めて低値(すなわち、抗体は高度に特異的である)である場合に、抗原に対する親和性が非特異的抗原に対する親和性より低度である程度が、少なくとも10,000倍となりうる。
【0071】
本明細書で使用される「kd」(秒-1)という用語は、特定の抗体-抗原相互作用の解離速度定数を指す。前記値はまた、koff値とも称される。
【0072】
本明細書で使用される「KD」(M)という用語は、特定の抗体-抗原相互作用の解離平衡定数を指す。
【0073】
2つの抗体は、同じ抗原に結合し、同じエピトープに結合する場合、「同じ特異性」を有する。被験抗体が、ある特定の抗原結合性抗体と同じエピトープを認識するのかどうか、すなわち、抗体が、同じエピトープに結合するのかどうかは、当業者に周知の異なる方法により調べられうる。
【0074】
抗体の間の競合は、交差遮断アッセイにより検出されうる。例えば、競合ELISAアッセイは、交差遮断アッセイとして使用されうる。例えば、標的抗原をマイクロ滴定プレートのウェル上にコーティングし、抗原結合性抗体及び候補物質である競合被験抗体を添加することができる。ウェル内における、抗原結合性抗体の、抗原への結合の量は、同じエピトープへの結合についてこれと競合する、候補物質である競合被験抗体の結合能と間接的に相関する。具体的に述べると、候補物質である競合被験抗体の、同じエピトープに対する親和性が大きいほど、抗原でコーティングされたウェルに結合する抗原結合性抗体の量は小さくなる。ウェルに結合する抗原結合性抗体の量は、抗体を、検出用標識化物質又は測定用標識化物質で標識化することにより測定されうる。
【0075】
抗原への結合について、別の抗体、例えば、本明細書で記載される重鎖可変領域及び軽鎖可変領域を含む抗体と競合する抗体、又は別の抗体、例えば、本明細書で記載される重鎖可変領域及び軽鎖可変領域を含む抗体の抗原に対する特異性を有する抗体は、本明細書で記載される前記重鎖可変領域及び/又は軽鎖可変領域の変異体、例えば、本明細書で記載される、CDR内の改変及び/又はある特定の程度の同一性を含む抗体でありうる。
【0076】
本明細書で使用される「単離多特異性抗体」は、異なる抗原特異性を有する他の抗体を実質的に含まない多特異性抗体を指すことが意図される(例えば、CD137及びPD-L1に特異的に結合する単離二特異性抗体は、CD137又はPD-L1に特異的に結合する単一特異的抗体を実質的に含まない)。
【0077】
本明細書で使用される「モノクローナル抗体」という用語は、単一分子組成の抗体分子の調製物を指す。モノクローナル抗体組成物は、特定のエピトープに対する単一の結合特異性及び親和性を提示する。
【0078】
本明細書で使用される場合、「第1のCH3領域と第2のCH3領域とのヘテロ二量体相互作用」という用語は、第1のCH3/第2のCH3ヘテロ二量体抗体内の第1のCH3領域と第2のCH3領域との相互作用を指す。
【0079】
本明細書で使用される場合、「第1のCH3領域と第2のCH3領域とのホモ二量体相互作用」という用語は、第1のCH3/第1のCH3ホモ二量体抗体内の第1のCH3領域と別の第1のCH3領域との相互作用、及び第2のCH3/第2のCH3ホモ二量体抗体内の第2のCH3領域と別の第2のCH3領域との相互作用を指す。
【0080】
本明細書で使用される場合、「ホモ二量体抗体」という用語は、2つの第1のFabアーム又は半分子を含む抗体を指し、この場合、前記Fabアーム又は半分子のアミノ酸配列は、同じである。
【0081】
本明細書で使用される場合、「ヘテロ二量体抗体」という用語は、第1のFabアーム又は半分子、及び第2のFabアーム又は半分子を含む抗体を指し、この場合、前記第1のFabアーム又は半分子のアミノ酸配列と、第2のFabアーム又は半分子のアミノ酸配列とは異なる。特に、前記第1のFabアーム/半分子のCH3領域、又は抗原結合性領域、又はCH3領域及び抗原結合性領域と、第2のFabアーム/半分子のCH3領域、又は抗原結合性領域、又はCH3領域及び抗原結合性領域とが異なる。
【0082】
「還元条件」又は「還元環境」という用語は、基質、例えば、抗体のヒンジ領域内のシステイン残基が、酸化されるより、還元される可能性が高い条件又は環境を指す。
【0083】
本開示はまた、多特異性抗体、例えば、例の二特異性抗体のVL領域、VH領域、又は1つ以上のCDRの機能的変異体を含む二特異性抗体についても記載する。二特異性抗体の文脈で使用されるVL、VH、又はCDRの機能的変異体は、やはり、二特異性抗体の各抗原結合性領域が、親である二特異性抗体の親和性及び/又は特異性/選択性のうちの少なくとも実質的な比率(少なくとも約50%、60%、70%、80%、90%、95%以上)を保持することを可能とし、場合によって、このような二特異性抗体は、親である二特異性抗体より大きな親和性、選択性、及び/又は特異性と関連しうる。
【0084】
このような機能的変異体は、典型的に、親である二特異性抗体に対する著明な配列同一性を保持する。2つの配列の間の同一性パーセントとは、2つの配列の最適のアライメントのために導入される必要があるギャップの数、及び各ギャップの長さを考慮するときに、配列により共有される、同一な位置の数の関数(すなわち、相同性%=同一な位置の数/位置の総数×100)である。2つのヌクレオチド配列又はアミノ酸配列の間の同一性パーセントは、例えば、ギャップ長ペナルティーを12とし、ギャップペナルティーを4として、PAM120重み付け残基表を使用する、ALIGNプログラム(バージョン2.0)へと組み込まれた、E. Meyers及びW. Miller、Comput. Appl.Biosci、4、11~17(1988)によるアルゴリズムを使用して決定されうる。加えて、2つのアミノ酸配列の間の同一性パーセントは、Needleman及びWunsch、J. Mol. Biol.、48、444~453(1970)によるアルゴリズムを使用しても決定されうる。
【0085】
本開示の文脈では、そうでないことが指し示されない限りにおいて、突然変異について記載するのに、以下:i)所与の位置におけるアミノ酸の置換は、例えば、タンパク質の409位におけるリシンの、アルギニンによる置換を意味するK409Rと書かれ;ii)特異的変異体について、任意のアミノ酸残基を指し示すコードであるXaa及びXを含む、特異的な3文字コード又は1文字コードが使用される表記法が使用される。したがって、409位における、リシンの、アルギニンによる置換は、K409Rとして表記され、409位における、リシンの、任意のアミノ酸残基による置換は、K409Xとして表記される。409位における、リシンの欠失は、K409*により指し示される。
【0086】
例示的な変異体は、主に、保存的置換により、親配列のVH及び/若しくはVL、並びに/又はCDRと異なる変異体を含み;例えば、変異体内の置換のうちの12、例えば、11、10、9つ、8つ、7つ、6つ、5つ、4つ、3つ、2つ、又は1つは、保存的アミノ酸残基置換である。
【0087】
本開示の文脈では、保存的置換は、表2及び3において規定されたアミノ酸のクラス内の置換により規定されうる。
【0088】
本明細書で使用される「CD137」という用語は、腫瘍壊死因子受容体スーパーファミリーメンバー9(TNFRSF9)ともまた称され、リガンドであるTNFSF9/4-1BBLに対する受容体である、CD137(4-1BB)を指す。CD137(4-1BB)は、T細胞の活性化に関与すると考えられる。CD137の他の同義語は、4-1BBリガンド受容体、CDw137、T細胞抗原4-1BB相同体、及びT細胞抗原ILAを含むがこれらに限定されない。一実施形態では、CD137(4-1BB)は、UniProt受託番号:Q07011を有するヒトCD137(4-1BB)である。ヒトCD137の配列はまた、配列番号37にも示される。配列番号37のアミノ酸1~23が、ヒトCD137のシグナルペプチドに対応する一方;配列番号37のアミノ酸24~186は、ヒトCD137の細胞外ドメインに対応し;タンパク質の残りの部分、すなわち、配列番号37のアミノ酸187~213及び214~255は、それぞれ膜貫通ドメイン及び細胞質ドメインである。
【0089】
「プログラム死-1(PD-1)」受容体とは、CD28ファミリーに属する免疫阻害性受容体を指す。PD-1(また、CD279としても公知である)は、主に、in vivoにおいて既に活性化されたT細胞上で発現され、2つのリガンドである、PD-L1(また、B7-H1又はCD274としても公知である)及びPD-L2(また、B7-DC又はCD273としても公知である)に結合する。本明細書で使用される「PD-1」という用語は、ヒトPD-1(hPD-1)、hPD-1の変異体、アイソフォーム、及び種相同体、並びに少なくとも1つのhPD-1との共通エピトープを有する類似体を含む。ヒトPD-1の配列はまた、配列番号39にも示される。「プログラム死リガンド-1(PD-L1)」とは、PD-1への結合時に、T細胞の活性化及びサイトカインの分泌を下方調節する、PD-1に対する2つの細胞表面糖タンパク質リガンドのうちの1つである(他のリガンドは、PD-L2である)。
【0090】
本明細書で使用される「PD-L1」という用語は、ヒトPD-L1(hPD-L1)、変異体、アイソフォーム、及びhPD-L1の種相同体、例えば、マカクザル(カニクイザル)、アフリカ象、イノシシ、及びマウスのPD-L1(例えば、それぞれGenbank受託番号:NP_054862.1、XP_005581836、XP_003413533、XP_005665023、及びNP_068693を参照されたい)、並びに少なくとも1つのhPD-L1との共通エピトープを有する類似体を含む。ヒトPD-L1の配列はまた、配列番号40にも示され、この場合、アミノ酸1~18は、シグナルペプチドであることが予測される。本明細書で使用される「PD-L2」という用語は、ヒトPD-L2(hPD-L2)、変異体、アイソフォーム、及びhPD-L2の種相同体、並びに少なくとも1つのhPD-L2との共通エピトープを有する類似体を含む。PD-1(PD-L1及びPD-L2)のリガンドは、抗原提示細胞、例えば、樹状細胞又はマクロファージ、及び他の免疫細胞の表面上において発現される。PD-1の、PD-L1又はPD-L2への結合は、T細胞活性化の下方調節を結果としてもたらす。PD-L1及び/又はPD-L2を発現させるがん細胞は、PD-1を発現させるT細胞をオフに切換えることが可能であり、これは、抗がん免疫応答の抑制を結果としてもたらす。PD-1と、そのリガンドとの相互作用は、腫瘍浸潤リンパ球の減少、T細胞受容体媒介性増殖の減少、及びがん性細胞による免疫回避を結果としてもたらす。免疫抑制は、PD-1の、PD-L1との局所的相互作用を阻害することにより反転され、PD-1の、PD-L2との相互作用も同様に遮断される場合に、効果は相加的となる。
【0091】
本明細書で使用される「機能不全性」という用語は、抗原の刺激に対する免疫応答性が低減された状態にある免疫細胞を指す。機能不全性は、抗原認識に対する非応答性、及び抗原認識を、下流のT細胞エフェクター機能、例えば、増殖、サイトカイン(例えば、IL-2)の産生、及び/又は標的細胞の殺滅へと翻訳する能力の機能障害を含む。
【0092】
本明細書で使用される「アネルギー」という用語は、抗原刺激に対する非応答性状態であって、T細胞受容体(TCR)を介して送達される、不完全であるか、又は不十分なシグナルから生じる非応答性状態を指す。T細胞アネルギーはまた、共刺激の非存在下における、抗原による刺激時にも生じうるが、この結果、細胞は、共刺激の文脈下に置かれてもなお、抗原による後続の活性化に対して不応性となりうる。非応答性状態は、IL-2の存在により無効化されうることが多い。アネルギー性T細胞は、クローン性拡大を経ず、エフェクター機能を獲得しない/クローン性拡大を経ないか、又はエフェクター機能を獲得しない。
【0093】
本明細書で使用される「枯渇」という用語は、免疫細胞枯渇、例えば、多くの慢性感染症及びがんにおいて生じる、持続的なTCRシグナル伝達から生じる、T細胞機能不全状態としてのT細胞枯渇を指す。「枯渇」は、それが、シグナル伝達の不完全又は欠損から生じるのではなく、持続的なシグナル伝達から生じるという点で、アネルギーと区別される。枯渇は、エフェクター機能の不良、阻害性受容体の持続的な発現、及び機能的なエフェクターT細胞又はメモリーT細胞の転写状態と顕著に異なる転写状態により規定される。枯渇は、疾患(例えば、感染症及び腫瘍)の、最適なコントロールを妨げる。枯渇は、外因性の負の調節経路(例えば、免疫調節性サイトカイン)、並びに細胞に内因性の負の調節経路(例えば、本明細書で記載される、阻害性免疫チェックポイント経路)の両方から生じうる。
【0094】
「T細胞機能の増強」は、T細胞が、持続的生物学的機能を有するか、若しくは生物学的機能を増幅するように誘導するか、仕向けるか、若しくは刺激するか、又は枯渇されたT細胞若しくは不活性T細胞を、再生するか、若しくは再活性化させることを意味する。T細胞機能の増強の例は、介入の前における、このようなレベルと比べた、CD8+ T細胞からの、γ-インターフェロンの分泌の増大、増殖の増大、抗原応答性(例えば、腫瘍の除去)の増大を含む。一部の実施形態では、増強のレベルは、少なくとも5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、100%、110%、120%、130%、140%、150%、200%以上である。この増強を測定する方式は、当業者に公知である。
【0095】
本明細書で使用される「阻害性核酸」又は「阻害性核酸分子」という用語は、1つ以上のPD-1タンパク質を、全面的に、又は部分的に軽減するか、阻害するか、これらに干渉するか、又はこれらを負にモジュレートする、核酸分子、例えば、DNA又はRNAを指す。阻害性核酸分子は、限定せずに述べると、オリゴヌクレオチド、siRNA、shRNA、アンチセンスDNA分子又はアンチセンスRNA分子、及びアプタマー(例えば、DNAアプタマー又はRNAアプタマー)を含む。
【0096】
本明細書で使用される「オリゴヌクレオチド」という用語は、タンパク質の発現、特に、PD-1タンパク質、例えば、本明細書で記載されるPD-1タンパク質の発現を低下させることが可能である核酸分子を指す。オリゴヌクレオチドとは、典型的に、2~50ヌクレオチドを含む短鎖DNA分子又は短鎖RNA分子である。オリゴヌクレオチドは、一本鎖の場合もあり、二本鎖の場合もある。PD-1阻害剤であるオリゴヌクレオチドは、アンチセンスオリゴヌクレオチドでありうる。
【0097】
アンチセンスオリゴヌクレオチドとは、所与の配列、特に、PD-1タンパク質の核酸配列(又はその断片)の配列と相補性である、一本鎖DNA分子又は一本鎖RNA分子である。アンチセンスRNAは、典型的に、mRNA、例えば、PD-1タンパク質をコードするmRNAに結合することにより、前記mRNAの、タンパク質への翻訳を防止するのに使用される。アンチセンスDNAは、典型的に、特異的な相補性(コード又は非コード)RNAをターゲティングするのに使用される。結合が生じると、このようなDNA/RNAハイブリッド体は、酵素であるRNアーゼHにより分解されうる。さらに、脊椎動物では、遺伝子ノックダウンのために、モルホリノアンチセンスオリゴヌクレオチドも使用されうる。例えば、Kryczekら、2006(J Exp Med、203:871~81)は、マクロファージ内のB7-H4の発現を特異的に遮断する結果として、腫瘍関連抗原(TAA)特異的T細胞を伴うマウスにおける、T細胞増殖の増大及び腫瘍体積の低減をもたらす、B7-H4特異的モルホリノをデザインした。
【0098】
本明細書では、「siRNA」又は「低分子干渉RNA」又は「低分子阻害性RNA」という用語は、互換的に使用され、相補性ヌクレオチド配列により、特異的遺伝子、例えば、PD-1タンパク質をコードする遺伝子の発現に干渉する、20~25塩基対を典型的な長さとする二本鎖RNA分子を指す。一実施形態では、siRNAは、mRNAに干渉し、これにより、翻訳、例えば、PD-1タンパク質の翻訳を遮断する。外因性siRNAのトランスフェクションは、遺伝子ノックダウンのために使用されうるが、とりわけ、急速に分裂する細胞内では、影響は、一過性の影響にとどまりうる。安定的トランスフェクションは、例えば、RNAの修飾により達成される場合もあり、発現ベクターを使用することにより達成される場合もある。当技術分野では、siRNAによる、細胞の安定的トランスフェクションに有用な修飾及びベクターが公知である。siRNA配列はまた、2つの鎖の間に短鎖ループを導入する結果として「低分子ヘアピンRNA」又は「shRNA」をもたらすようにも修飾されうる。shRNAは、Dicerにより、機能的siRNAへとプロセシングされうる。shRNAは、分解及び代謝回転の速度が比較的小さい。したがって、PD-1阻害剤は、shRNAでありうる。
【0099】
本明細書で使用される「アプタマー」という用語は、標的分子、例えば、ポリペプチドに結合することが可能な、典型的に、25~70ヌクレオチドの長さの一本鎖核酸分子、例えば、DNA又はRNAを指す。一実施形態では、アプタマーは、PD-1タンパク質、例えば、本明細書で記載されるPD-1タンパク質に結合する。例えば、本開示に従うアプタマーは、PD-1のタンパク質又はポリペプチド、又はPD-1のタンパク質又はポリペプチドの発現をモジュレートするシグナル伝達経路内の分子に特異的に結合しうる。当技術分野では、アプタマーの作出及び治療的使用が周知である(例えば、US5,475,096を参照されたい)。
【0100】
本明細書では、「低分子阻害剤」又は「低分子」という用語は、互換的に使用され、上記で記載された1つ以上のPD-1タンパク質を、全面的に、又は部分的に軽減するか、阻害するか、これらに干渉するか、又はこれらを負にモジュレートする、通例、最大で1000ドルトンである、低分子量の有機化合物を指す。このような低分子阻害剤は、通例、有機化学反応により合成されるが、また、天然の供給源、例えば、植物、真菌、及び微生物からも単離されうる。低分子量は、低分子阻害剤が、細胞膜を越えて、急速に拡散することを可能とする。例えば、当技術分野で公知の多様なA2ARアンタゴニストは、分子量が500ドルトンを下回る有機化合物である。
【0101】
「細胞ベースの治療」という用語は、疾患又は障害(例えば、がん性疾患)を処置することを目的とする、PD-1阻害剤を発現させる細胞(例えば、Tリンパ球、樹状細胞、又は幹細胞)の、対象への移植を指す。
【0102】
本明細書で使用される「腫瘍溶解性ウイルス」という用語は、in vitro又はin vivoのがん性細胞内又は過剰増殖性細胞内で選択的に複製し、これらの増殖を緩徐化させるか、又はこれらの死を誘導することが可能である一方、正常細胞に対する影響が見られないか、又は最小限であるウイルスを指す。PD-1阻害剤の送達のための腫瘍溶解性ウイルスは、阻害性核酸分子、例えば、siRNA、shRNA、オリゴヌクレオチド、アンチセンスDNA若しくはアンチセンスRNA、アプタマー、抗体若しくはその断片、又は可溶性PD-1タンパク質若しくは融合体であるPD-1阻害剤をコードしうる発現カセットを含む。腫瘍溶解性ウイルスは、好ましくは、複製コンピテントであり、発現カセットは、ウイルスプロモーター、例えば、合成の初期/後期ポックスウイルスプロモーターの制御下にある。例示的な腫瘍溶解性ウイルスは、水疱性口炎ウイルス(VSV)、ラブドウイルス(例えば、ピコルナウイルス、例えば、セネカバレーウイルス;SVV-001)、コックスサッキーウイルス、パルボウイルス、ニューカッスル病ウイルス(NDV)、単純ヘルペスウイルス(HSV;OncoVEX GMCSF)、レトロウイルス(例えば、インフルエンザウイルス)、麻疹ウイルス、レオウイルス、シンドビスウイルス、WO2017/209053において例示的に記載されているワクシニアウイルス(コペンハーゲン株、ウェスタンリザーブ株、ワイス株を含む)、及びアデノウイルス(例えば、Delta-24、Delta-24-RGD、ICOVIR-5、ICOVIR-7、Onyx-015、ColoAd1、H101、AD5/3-D24-GMCSF)を含む。PD-1阻害剤の可溶性形態を含む組換え腫瘍溶解性ウイルスの作出及びそれらの使用のための方法については、参照によりその全体において本明細書に組み込まれる、WO2018/022831において開示されている。腫瘍溶解性ウイルスは、弱毒化ウイルスとして使用されうる。
【0103】
本明細書では、「処置サイクル」は、結合剤の薬力学に起因する、結合剤の個別の投与量の加算の影響の範囲内にある時間、又は、言い換えれば、対象の全身から、投与された結合剤が本質的に除去された後の時間として規定される。小さな時間ウィンドウ内、例えば、内の2~24時間の範囲内の数時間、例えば、2~12時間以内における、又は同日における、複数回にわたる小用量の投与は、高用量の単回投与と同等でありうる。
【0104】
本文脈では、「処置」、「~を処置すること」、又は「治療介入」という用語は、状態、例えば、疾患又は障害に対抗することを目的とする、対象の管理及びケアに関する。これらの用語は、対象が患う、所与の状態のための、全スペクトルにわたる処置、例えば、症状若しくは合併症を緩和し、疾患、障害、若しくは状態の進行を遅延させ、症状及び合併症を緩和するか、若しくは和らげ、及び/又は疾患、障害、若しくは状態を治癒若しくは消失させるほか、状態を防止するのに、治療的に有効な化合物の投与であって、防止が、疾患、状態、又は障害に対抗することを目的とする、個体の管理及びケアとして理解され、症状又は合併症の発生を防止する、活性化合物の投与を含むことが意図される。一実施形態では、「処置」とは、症状又は疾患状態を、緩和するか、改善するか、停止させるか、又は根絶する(治癒させる)ことを目的とする、有効量の治療活性結合剤、例えば、本開示の治療活性抗体の投与を指す。
【0105】
本開示の結合剤による処置に対する応答のほか、これに対する耐性、これに対する不応答、及び/又はこれからの再発は、固形がんの治療効果判定基準;バージョン1.1(RECIST基準v1.1)に従い決定されうる。RECIST基準は、下記の表に示される(LD:最大幅)。
【0106】
【表4】
【0107】
「最良総合効果」とは、処置の開始から、疾患進行/再発までに記録された最良の応答(処置が開始されてから記録された最小の測定値が、PDのための参照として使用されるものとする)である。CR又はPRを伴う対象は、客観的応答例であると考えられる。CR、PR、又はSDを伴う対象は、疾患コントロール内にあると考えられる。NEを伴う対象は、非レスポンダーとしてカウントされる。最良総合効果とは、処置の開始から、疾患進行/再発までに記録された最良の応答(処置が開始されてから記録された最小の測定値が、PDのための参照として使用されるものとする)である。CR、PR、又はSDを伴う対象は、疾患コントロール内にあると考えられる。NEを伴う対象は、非レスポンダーとしてカウントされる。
【0108】
「奏効期間(DOR)」は、確認された最良総合効果が、CR又はPRである対象だけに当てはまり、客観的腫瘍応答(CR又はPR)についての最初の記録の時点から、最初のPD又は基礎がんに起因する死の日付までの時間として規定される。
【0109】
「無増悪生存(PFS)」とは、サイクル1における1日目から、任意の原因に起因する最初に記録された進行又は死までの日数として規定される。
【0110】
「全生存(OS)」とは、サイクル1における1日目から、任意の原因に起因する死までの日数として規定される。対象が、死亡したことが知られていない場合、OSは、対象が生存していることが知られた最後の日付(カットオフ日以前の)において打ち切られるものとする。
【0111】
本開示の文脈では、「処置レジメン」という用語は、健康を改善及び維持するようにデザインされ、構造化された処置計画を指す。
【0112】
「有効量」又は「治療有効量」という用語は所望の治療結果を達成するのに必要な投与量において、必要な期間にわたる有効量を指す。結合剤、例えば、多特異性抗体又はモノクローナル抗体などの抗体の治療有効量は、因子、例えば、個体の疾患状態、年齢、性別、及び体重、並びに結合剤が個体において所望の応答を誘発する能力に従い変動しうる。治療有効量はまた、結合剤又はその断片の、任意の毒性又は有害作用が、治療的に有益な効果により凌駕される量でもある。万一、初期用量では、患者における反応が不十分である場合、高用量(又は異なる、より局所的な投与経路により達成される、有効な高用量)が使用されうる。万一、ある用量により、患者において、望ましくない副作用が生じる場合、低用量(又は異なる、より局所的な投与経路により達成される、有効な低用量)が使用されうる。
【0113】
本明細書で使用される「がん」という用語は、細胞の増殖、増殖、分化、接着、及び/又は遊走の調節異常により特徴づけられる疾患を含む。「がん細胞」とは、急速で、コントロール不能な細胞の増殖により増殖し、新たな増殖を誘発した刺激が停止した後でも増殖し続ける、異常な細胞を意味する。
【0114】
本開示に従う「がん」という用語はまた、がんの転移も含む。「転移」とは、がん細胞の、その元の部位から、体内の別の部分への伝播を意味する。転移の形成は、極めて複雑な過程であり、悪性細胞の原発腫瘍からの解離、細胞外マトリックスへの浸潤、体腔及び血管に侵入するための内皮基底膜の透過に依存し、次いで、血液により搬送された後における、標的臓器への浸潤に依存する。最後に、標的部位における新たな腫瘍の増殖、すなわち、続発腫瘍又は転移性腫瘍は、血管新生に依存する。腫瘍細胞又は腫瘍の構成要素は、依然として存在し、転移の潜在的可能性を発現させうるため、腫瘍の転移は、原発腫瘍の除去の後であってもなお生じることが多い。一実施形態では、本開示に従う「転移」という用語は、原発腫瘍及び所属リンパ節系から遠く隔たる転移に関する「遠隔転移」に関する。
【0115】
本明細書で使用される、例えば、「~を低減する」、「~を阻害する」、「~に干渉する」、及び「~を負にモジュレートする」という用語は、レベルの、例えば、約5%以上、約10%以上、約15%以上、約20%以上、約25%以上、約30%以上、約40%以上、約50%以上、又は約75%以上の全体的低下を引き起こす能力を意味する。「~を阻害する」という用語又は同様の語句は、完全な阻害、又は本質的に完全な阻害、すなわち、ゼロへの低減、又は本質的にゼロへの低減を含む。
【0116】
一実施形態では、例えば、「~を増大させる」、「~を増強する」という用語は、少なくとも約10%、少なくとも約20%、少なくとも約30%、少なくとも約40%、少なくとも約50%、少なくとも約80%、又は少なくとも約100%の増大又は増強に関する。
【0117】
本明細書で使用される「生理学的pH」とは、7.5又は約7.5のpHを指す。
【0118】
本開示で使用される、「重量%」とは、グラム(g)単位の全組成物の全重量に対するパーセントとして表される、グラム(g)単位の物質量を測定する濃度単位である重量パーセントを指す。
【0119】
「TPS」又は「腫瘍比率スコア(tumor proportion score)」、という用語は、細胞膜上で、PD-L1を発現させる腫瘍細胞の百分率を指す。TPSは、典型的に、診断用抗ヒトPD-L1mAb、例えば、WO2014/100079において記載されている抗体である20C3及び抗体である22C3を使用する免疫組織化学的アッセイを使用して決定されうる、PD-L1を、任意の強度(弱い程度、中程度、又は強い程度)で発現させる新生物性細胞の百分率を含む。膜染色が存在する場合、部分的な膜染色を伴う細胞を含む細胞は、PD-L1を発現させると考えられる。
【0120】
「凍結」という用語は、液体の固体化、通例、熱の除去に関する。
【0121】
「~を冷凍乾燥させること」又は「冷凍乾燥」という用語は、それを凍結させることにより、物質凍結乾燥させ、次いで、周囲の圧力を低減して(例えば、15Paを下回る、例えば、10Paを下回るか、5Paを下回るか、又は1Pa以下に)、物質中の凍結された媒体が、固相から気相へと直接昇華することを可能とすることを指す。したがって、本明細書では、「~を冷凍乾燥させること」及び「~凍結乾燥させること」という用語は、互換的に使用される。
【0122】
本開示の文脈における、「組換え」という用語は、「遺伝子操作を介した作製」を意味する。本開示の文脈における一実施形態では、「組換え対象」は、自然発生対象ではない。
【0123】
本明細書で使用される「自然発生」という用語は、対象物が、天然で見出されうるという事実を指す。例えば、生物(ウイルスを含む)に存在し、天然の供給源からの単離が可能であり、実験室内で、人為により意図的に改変されていないペプチド又は核酸は、自然発生である。「天然で見出される」という用語は、「天然で存在する」を意味し、公知の対象物のほか、いまだ天然から発見及び/又は単離されていないが、将来において、天然の供給源から発見及び/又は単離されうる対象物を含む。
【0124】
本開示に従い、「ペプチド」という用語は、オリゴペプチド及びポリペプチドを含み、ペプチド結合を介して、互いと連結された、約2つ以上、約3つ以上、約4つ以上、約6つ以上、約8つ以上、約10以上、約13以上、約16以上、約20以上であり、最大で、約50、約100、又は約150の連続アミノ酸を含む物質を指す。「タンパク質」という用語は、大型のペプチド、特に、少なくとも約151アミノ酸を有するペプチドを指すが、本明細書では、「ペプチド」及び「タンパク質」という用語は、通例、同義語として使用される。
【0125】
「治療用タンパク質」は、対象へと治療有効量で施される場合に、対象の状態又は疾患状態に対して、肯定的な効果又は有利な効果を及ぼす。一実施形態では、治療用タンパク質は、治癒的特性又は緩和的特性を有し、疾患又は障害の、1つ以上の症状を、改善するか、軽減するか、和らげるか、反転させるか、これらの発生を遅延させるか、又はこれらの重症度を軽減するように投与されうる。治療用タンパク質は、予防的特性を有することが可能であり、疾患の発生を遅延させるか、又はこのような疾患若しくは病理学的状態の重症度を軽減するのに使用されうる。「治療用タンパク質」という用語は、全タンパク質又は全ペプチドを含み、また、これらの治療活性断片も指す。「治療用タンパク質」という用語はまた、タンパク質の治療活性変異体も含みうる。治療活性タンパク質の例は、ワクチン接種のための抗原及びサイトカインなどの免疫賦活物質を含むがこれらに限定されない。
【0126】
「部分」という用語は、小部分を指す。特定の構造、例えば、アミノ酸配列又はタンパク質に関して、その「部分」という用語は、前記構造の連続的小部分を指示する場合もあり、非連続的小部分を指示する場合もある。
【0127】
本明細書では、「一部」及び「断片」という用語は、互換的に使用され、連続的要素を指す。例えば、構造、例えば、アミノ酸配列又はタンパク質の一部は、前記構造の連続的要素を指す。組成物の文脈で使用される場合、「一部」という用語は、組成物の部分を意味する。例えば、組成物の一部は、前記組成物のうちの、0.1%~99.9%(例えば、0.1%、0.5%、1%、5%、10%、50%、90%、又は99%)に由来する任意の部分でありうる。
【0128】
アミノ酸配列(ペプチド又はタンパク質)に言及する場合の「断片」とは、アミノ酸配列の一部、すなわち、N末端及び/又はC末端において短縮されたアミノ酸配列を表す配列に関する。C末端において短縮された断片(N末端断片)は、例えば、オープンリーディングフレームの3'末端を欠く、切断型オープンリーディングフレームの翻訳により得られる。N末端において短縮された断片(C末端断片)は、例えば、切断型オープンリーディングフレームが、翻訳を誘発するのに用いられる開始コドンを含む限りにおいて、オープンリーディングフレームの5'末端を欠く、切断型オープンリーディングフレームの翻訳により得られる。アミノ酸配列の断片は、例えば、アミノ酸配列に由来するアミノ酸残基のうちの、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%を含む。アミノ酸配列の断片は、好ましくは、アミノ酸配列に由来する少なくとも6つ、特に、少なくとも8つ、少なくとも12、少なくとも15、少なくとも20、少なくとも30、少なくとも50、又は少なくとも100の連続アミノ酸を含む。
【0129】
本開示に従い、ペプチド又はタンパク質の一部又は断片は、好ましくは、それが由来したペプチド又はタンパク質の、少なくとも1つの機能的特性を有する。このような機能的特性は、薬理学的活性、他のペプチド又はタンパク質との相互作用、酵素活性、抗体との相互作用、及び核酸への選択的結合を含む。例えば、ペプチド又はタンパク質の薬理学的活性断片は、断片が由来したペプチド又はタンパク質の薬理学的活性のうちの少なくとも1つを有する。ペプチド又はタンパク質の一部又は断片は、好ましくは、ペプチド又はタンパク質のうちの、少なくとも6つ、特に、少なくとも8つ、少なくとも10、少なくとも12、少なくとも15、少なくとも20、少なくとも30又は少なくとも50の連続アミノ酸による配列を含む。ペプチド又はタンパク質の一部又は断片は、好ましくは、ペプチド又はタンパク質のうちの、最大で8つ、特に、最大で10、最大で12、最大で15、最大で20、最大で30、又は最大で55の連続アミノ酸による配列を含む。
【0130】
本明細書における、「変異体(バリアント)」とは、少なくとも1つのアミノ酸改変により、親アミノ酸配列と異なるアミノ酸配列を意味する。親アミノ酸配列は、自然発生のアミノ酸配列又は野生型(WT)アミノ酸配列の場合もあり、野生型アミノ酸配列の改変形の場合もある。好ましくは、変異体アミノ酸配列は、親アミノ酸配列と比較して、少なくとも1つのアミノ酸改変、例えば、1つ~約20のアミノ酸改変を有し、好ましくは、親アミノ酸配列と比較して、1つ~約10又は1つ~約5つのアミノ酸改変を有する。
【0131】
本明細書における、「野生型」又は「WT」又は「天然」とは、天然で見出されるアミノ酸配列であって、対立遺伝子変異体を含むアミノ酸配列を意味する。野生型のアミノ酸配列、ペプチド、又はタンパク質は、意図的に改変されていないアミノ酸配列を有する。
【0132】
好ましくは、所与のアミノ酸配列と、前記所与のアミノ酸配列の変異体であるアミノ酸配列との類似性、好ましくは、同一性の程度は、少なくとも約60%、70%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、又は99%であろう。類似性又は同一性の程度は、好ましくは、参照アミノ酸配列の全長のうちの、少なくとも約10%、少なくとも約20%、少なくとも約30%、少なくとも約40%、少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、少なくとも約90%、又は約100%であるアミノ酸領域について与えられる。例えば、参照アミノ酸配列が、200アミノ酸からなる場合、類似性又は同一性の程度は、好ましくは、少なくとも約20、少なくとも約40、少なくとも約60、少なくとも約80、少なくとも約100、少なくとも約120、少なくとも約140、少なくとも約160、少なくとも約180、又は約200アミノ酸、一部の実施形態では、連続アミノ酸について与えられる。一部の実施形態では、類似性又は同一性の程度は、参照アミノ酸配列の全長について与えられる。配列類似性、好ましくは、配列同一性を決定するためのアライメントは、好ましくは、例えば、標準設定、好ましくは、EMBOSS::Needleにおいて、行列:Blosum62、Gap Open:10.0、Gap Extend:0.5を使用する、Alignを使用する、最良の配列アライメントを使用する、当技術分野で公知のツールによりなされうる。
【0133】
「配列類似性」とは、同一であるか、又は保存的アミノ酸置換を表すアミノ酸の百分率を指し示す。2つのアミノ酸配列の間の「配列同一性」とは、配列の間で同一なアミノ酸の百分率を指し示す。2つの核酸配列の間の「配列同一性」とは、配列の間で同一なヌクレオチドの百分率を指し示す。
【0134】
「~%同一な」及び「~%の同一性」という用語、又は同様の用語は、特に、比較される配列の間の最適のアライメントにおいて同一である、ヌクレオチド又はアミノ酸の百分率を指すことが意図される。前記百分率は、純粋に統計学的であり、2つの配列の間の差違は、比較される配列の全長にわたり、ランダムに分布する場合もあるが、必ずしもそうではない。2つの配列の比較は、通例、最適アライメントの後に、対応する配列の局所領域を同定するために、セグメント又は「比較域」に関して、配列を比較することにより実行される。比較のための最適アライメントは、手動で実行される場合もあり、Smith及びWaterman、1981、Ads App. Math.、2、482による局所相同性アルゴリズムを一助として実行される場合もあり、Needleman及びWunsch、1970、J. Mol. Biol.、48、443による局所相同性アルゴリズムを一助として実行される場合もあり、Pearson及びLipman、1988、Proc. Natl Acad. Sci. USA、88、2444による類似性検索アルゴリズムを一助として実行される場合もあり、前記アルゴリズム(Wisconsin Genetics Software Package、Genetics Computer Group、575 Science Drive、Madison、Wis.における、GAP、BESTFIT、FASTA、BLAST P、BLAST N、及びTFASTA)を使用するコンピュータプログラムを一助として実行される場合もある。一部の実施形態では、2つの配列の同一性パーセントは、United States National Center for Biotechnology Information(NCBI)によるウェブサイト(例えば、blast.ncbi.nlm.nih.gov/Blast.cgi)から入手可能である、BLASTNアルゴリズム又はBLASTPアルゴリズムを使用して決定される。一部の実施形態では、NCBIウェブサイト上のBLASTNアルゴリズムのために使用されるアルゴリズムパラメータは、(i)10へと設定された[Expect Threshold];(ii)28へと設定された[Word Size];(iii)0へと設定された[Max matches in query range];(iv)[1,-2]へと設定された[Match/Mismatch Scores];(v)[Linear]へと設定された[Gap Costs];及び(vi)低複雑度領域のためのフィルターの使用を含む。一部の実施形態では、NCBIウェブサイト上のBLASTPアルゴリズムのために使用されるアルゴリズムパラメータは、(i)10へと設定された[Expect Threshold];(ii)3へと設定された[Word Size];(iii)0へと設定された[Max matches in query range];(iv)[BLOSUM62]へと設定された[Matrix];(v)[Existence:11,Extension:1]へと設定された[Gap Costs];及び(vi)条件付き合成スコア行列補正を含む。
【0135】
同一性百分率は、比較される配列が対応する同一な位置の数を決定し、この数を、比較される位置の数(例えば、参照配列内の位置の数)で除し、この結果に100を乗ずることにより得られる。
【0136】
一部の実施形態では、類似性又は同一性の程度は、参照配列の全長のうちの、少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、少なくとも約90%、又は約100%である領域について与えられる。例えば、参照アミノ酸配列が、200アミノ酸残基からなる場合、同一性の程度は、少なくとも約100、少なくとも約120、少なくとも約140、少なくとも約160、少なくとも約180、又は約200アミノ酸残基、一部の実施形態では、連続アミノ酸残基について与えられる。一部の実施形態では、類似性又は同一性の程度は、参照配列の全長について与えられる。
【0137】
相同なアミノ酸配列は、本開示に従い、アミノ酸残基の、少なくとも40%、特に、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%の同一性を呈し、好ましくは、少なくとも95%、少なくとも98%、又は少なくとも99%の同一性を呈する。
【0138】
本明細書で記載されるアミノ酸配列変異体は、当業者によりたやすく調製されうる、例えば、組換えDNA操作によりたやすく調製されうる。置換、付加、挿入、又は欠失を有するペプチド又はタンパク質を調製するための、DNA配列の操作については、例えば、Sambrookら(1989)において詳細に記載されている。さらに、本明細書で記載されるペプチド変異体及びアミノ酸変異体は、公知のペプチド合成法を一助として、例えば、固相合成法及び同様の方法により、たやすく調製されうる。
【0139】
一実施形態では、アミノ酸配列(ペプチド又はタンパク質)の断片又は変異体は、好ましくは、「機能的断片」又は「機能的変異体」である。アミノ酸配列の「機能的断片」又は「機能的変異体」という用語は、それが由来するアミノ酸配列の特性と同一であるか、又は類似する、1つ以上の機能的な特性を呈する任意の断片又は変異体、すなわち、それが機能的に同等であることに関する。抗原又は抗原配列に関して、1つの特定の機能とは、断片若しくは変異体が由来するアミノ酸配列により提示される1つ以上の免疫原性活性である。本明細書で使用される「機能的断片」又は「機能的変異体」という用語は、特に、親分子又は親配列のアミノ酸配列と比較して、1つ以上のアミノ酸だけ変更されているが、やはり、親分子又は親配列の機能のうちの1つ以上を果たすこと、例えば、免疫応答を誘導することが可能なアミノ酸配列を含む変異体分子又は変異体配列を指す。一実施形態では、親分子又は親配列のアミノ酸配列における改変は、分子又は配列の特徴に、著明に影響を及ぼしたり、これを変更したりしない。異なる実施形態では、機能的断片又は機能的変異体の機能は、低減されうるが、やはり、著明に存在し、例えば、機能的変異体の免疫原性は、親分子又は親配列の、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、又は少なくとも90%でありうる。しかし、他の実施形態では、機能的断片又は機能的変異体の免疫原性は、親分子又は親配列と比較して増強されうる。
【0140】
名指されたアミノ酸配列(ペプチド、タンパク質、又はポリペプチド)「に由来する」アミノ酸配列(ペプチド、タンパク質、又はポリペプチド)とは、第1のアミノ酸配列の由来を指す。好ましくは、特定のアミノ酸配列に由来するアミノ酸配列は、この特定の配列又はその断片と、同一であるか、本質的に同一であるか、又は相同であるアミノ酸配列を有する。特定のアミノ酸配列に由来するアミノ酸配列は、この特定の配列又はその断片の変異体でありうる。例えば、本明細書における使用に適する抗原は、天然配列の所望の活性を保持しながら、それらが由来する自然発生配列又は天然配列から配列が変動するように変更されうることが、当業者により理解されるであろう。
【0141】
「単離」とは、天然状態からの変更又は除去を意味する。例えば、生存動物において天然で存在する核酸又はペプチドは、「単離」されていないが、その天然状態の共存物質から、部分的に、又は完全に分離された、同じ核酸又はペプチドは、「単離」されている。単離核酸又は単離タンパク質は、実質的な精製形態で存在する場合もあり、非天然環境内、例えば、宿主細胞内に存在する場合もある。好ましい実施形態において、本開示において使用される結合剤は実質的な精製形態である。
【0142】
「遺伝子改変」又は、簡単に、「改変」という用語は、細胞への、核酸のトランスフェクションを含む。「トランスフェクション」という用語は、核酸、特に、RNAの、細胞への導入に関する。本開示の目的では、「トランスフェクション」という用語はまた、核酸の、細胞への導入、又はこのような細胞による、核酸の取込みも含み、この場合、細胞は、対象、例えば、患者において存在しうる。したがって、本開示に従い、本明細書で記載される核酸のトランスフェクションのための細胞は、in vitroにおいて存在する場合もあり、in vivoにおいて存在する場合もあり、例えば、細胞は、患者の臓器、組織、及び/又は生物体の一部を形成しうる。本開示に従い、トランスフェクションは、一過性トランスフェクションの場合もあり、安定的トランスフェクションの場合もある。トランスフェクションの一部の適用のためには、トランスフェクトする遺伝子素材が、一過性に発現されるだけで十分である。RNAを細胞にトランスフェクトして、そのコードタンパク質を一過性に発現させることができる。トランスフェクション工程に導入される核酸は、通例、核内ゲノムへと組み込まれないので、外来核酸は、有糸分裂を介して希釈されるか、又は分解されるであろう。核酸のエピソーム内増幅を可能とする細胞は、希釈速度を大幅に低減する。トランスフェクトされた核酸が、細胞及びその娘細胞のゲノム内に、実際に存続することが所望される場合、安定的トランスフェクションが生じなければならない。このような安定的トランスフェクションは、ウイルスベースのシステム又はトランスポゾンベースのシステムを、トランスフェクションのために使用することにより達成されうる。一般に、抗原をコードする核酸が、細胞に一過性にトランスフェクトされる。RNAを細胞にトランスフェクトして、そのコードタンパク質を一過性に発現させることができる。
【0143】
本開示に従い、ペプチド又はタンパク質の類似体は、それが由来した前記ペプチド又はタンパク質の改変形態であり、前記ペプチド又はタンパク質の少なくとも1つの機能的特性を有する。例えば、ペプチド又はタンパク質の薬理学的活性類似体は、類似体が由来したペプチド又はタンパク質の薬理学的活性のうちの少なくとも1つを有する。このような改変は、任意の化学修飾を含み、タンパク質又はペプチドと関連する任意の分子、例えば、炭水化物、脂質、及び/又はタンパク質若しくはペプチドの、1つ以上の置換、欠失、及び/又は付加を含む。一実施形態では、タンパク質又はペプチドの「類似体」は、グリコシル化、アセチル化、リン酸化、アミド化、パルミトイル化、ミリストイル化、イソプレニル化、脂質化、アルキル化、誘導体化、保護/遮断基の導入、タンパク質分解性切断、又は抗体若しくは別の細胞リガンドへの結合から生じる改変形態を含む。「類似体」という用語はまた、前記タンパク質及びペプチドの、全ての機能的な化学的同等物へも拡張される。
【0144】
本明細書で使用される「活性化」又は「刺激」とは、検出可能な細胞増殖を誘導するのに十分に刺激された免疫エフェクター細胞、例えば、T細胞の状態を指す。活性化はまた、シグナル伝達経路の誘発、サイトカイン産生の誘導、及び検出可能なエフェクター機能とも関連しうる。「活性化免疫エフェクター細胞」という用語は、とりわけ、細胞分裂を経つつある免疫エフェクター細胞を指す。
【0145】
「プライミング」という用語は、免疫エフェクター細胞、例えば、T細胞が、その特異的抗原と最初に接触し、エフェクター細胞、例えば、エフェクターT細胞への分化を引き起こす過程を指す。
【0146】
「クローン性拡大」又は「拡大」という用語は、特異的実体が増加される過程を指す。本開示の文脈では、「拡大」という用語は、好ましくは、免疫エフェクター細胞が、抗原により刺激され、増殖し、前記抗原を認識する特異的免疫エフェクター細胞が増幅される、免疫学的応答の文脈で使用される。好ましくは、クローン性拡大は、免疫エフェクター細胞の分化をもたらす。
【0147】
本開示に従う「抗原」は、免疫応答を誘発する任意の物質、及び/又は免疫応答若しくは免疫機構、例えば、細胞性応答が方向付けられる任意の物質を対象とする。これはまた、特に、MHC分子の文脈で提示された場合、抗原が、抗原ペプチドへとプロセシングされ、免疫応答又は免疫機構が、1つ以上の抗原ペプチドに対して方向付けられる状況も含む。特に、「抗原」とは、抗体又はTリンパ球(T細胞)と特異的に反応する任意の物質、好ましくは、ペプチド又はタンパク質に関する。本開示に従い、「抗原」という用語は、少なくとも1つのエピトープ、例えば、T細胞エピトープを含む任意の分子を含む。好ましくは、本開示の文脈における抗原とは、場合により、プロセシングの後、免疫反応を誘導し、好ましくは、抗原(抗原を発現させる細胞を含む)に特異的な分子である。一実施形態では、抗原は、疾患関連抗原、例えば、腫瘍抗原、ウイルス抗原、若しくは細菌性抗原、又はこのような抗原に由来するエピトープである。
【0148】
「エピトープ」という用語は、分子内、例えば、抗原内の抗原決定基、すなわち、特に、MHC分子の文脈で提示された場合に、免疫系により認識される分子、例えば、抗体、T細胞、又はB細胞により認識される分子内の一部又はその断片を指す。一実施形態では、「エピトープ」は、抗体への特異的な結合が可能なタンパク質決定基を意味する。エピトープは、通例、表面分子群、例えば、アミノ酸又は糖側鎖からなり、通例、特異的な三次元構造特徴のほか、特異的な電荷特徴も有する。コンフォメーショナルエピトープと非コンフォメーショナルエピトープとは、前者への結合は、変性溶媒の存在下で失われるが、後者への結合は失われないという点で識別される。エピトープは、結合に直接関与するアミノ酸残基、及び結合に直接関与しない他のアミノ酸残基、例えば、特異的抗原結合性ペプチドにより、効果的に遮断されるか、又は覆われるアミノ酸残基(言い換えれば、特異的抗原結合性ペプチドのフットプリント内のアミノ酸残基)を含みうる。
【0149】
タンパク質のエピトープは、好ましくは、前記タンパク質の連続又は非連続部分を含み、好ましくは約5~約100アミノ酸の間、好ましくは約5~約50アミノ酸の間、より好ましくは約8~約0アミノ酸の間、最も好ましくは約10~約25アミノ酸の間の長さであり、例えば、エピトープは、好ましくは9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、又は25アミノ酸の長さでありうる。本開示の文脈におけるエピトープは、T細胞エピトープであることが特に好ましい。
【0150】
本明細書で使用される「場合による」又は「場合により」という用語は、後続において記載されるイベント、状況、又は状態が、生じる場合もあり、生じない場合もあり、記載が、前記イベント、状況、又は状態が生じる場合、及びそれが生じない場合を含むことを意味する。
【0151】
本明細書で使用される「連結された」、「融合された」、又は「融合体」という用語は、互換的に使用される。これらの用語は、2つ以上のエレメント又は構成要素又はドメインを、一体に接続することを指す。
【0152】
「疾患」(本明細書ではまた、「障害」とも称される)という用語は、個体の身体に影響を及ぼす、異常な状態を指す。疾患は、特異的な症状及び徴候と関連する医学的状態として解釈されることが多い。疾患は、元来、外部の感染源に由来する因子により引き起こされる疾患、例えば、感染性疾患の場合もあり、内的機能不全により引き起こされる疾患、例えば、自己免疫疾患の場合もある。ヒトでは、「疾患」は、罹患個体へと、疼痛、機能不全、苦痛、社会的問題、又は死を引き起こすか、又は罹患個体と接触する個体に、同様の問題を引き起こす、任意の状態を指すように、より広範に使用されることが多い。このより広い意味において、「疾患」は、場合によって、傷害、身体機能障害、障害、症候群、感染、孤発性症状、逸脱性挙動、並びに構造及び機能の非定型的変動を含むが、他の文脈において、他の目的では、「疾患」は、識別可能な類別であるとも考えられる。多くの疾患に罹患し、これらと共に生きることは、人生の見方を変更する場合があり、性格を変更しうるので、疾患は、通例、個体に、身体的影響を及ぼすだけでなく、また、情緒的影響も及ぼす。
【0153】
「治療処置」という用語は、個体の健康状態を改善し、個体の寿命を延長する(増大させる)/改善するか、又は個体の寿命を延長する(増大させる)、任意の処置に関する。前記処置は、個体における疾患を消失させ、個体における疾患の発生を停止又は緩徐化させ、個体における疾患の発生を阻害するか、又は緩徐化させ、個体における症状の頻度又は重症度を軽減し、現在のところ疾患を有するか、又はかつてこれを有したことがある個体における再発を減少させうる/個体における疾患を消失させる場合もあり、個体における疾患の発生を停止又は緩徐化させる場合もあり、個体における疾患の発生を阻害するか、又は緩徐化させる場合もあり、個体における症状の頻度又は重症度を軽減する場合もあり、現在のところ疾患を有するか、又はかつてこれを有したことがある個体における再発を減少させる場合もある。
【0154】
「予防処置」又は「防止処置」という用語は、個体において疾患が生じることを防止することが意図される、任意の処置に関する。本明細書では、「予防処置」又は「防止処置」という用語は、互換的に使用される。同様に、疾患の進行、例えば、腫瘍又はがんの進行の文脈における、「~を防止する方法」という用語は、個体において、疾患が進行することを防止することが意図される、任意の方法に関する。
【0155】
本明細書では、「個体」及び「対象」という用語は、互換的に使用される。「個体」及び「対象」という用語は、疾患又は障害(例えば、がん)に罹患しうるか、又はこれらに対する感受性がある、ヒト若しくは別の哺乳動物(例えば、マウス、ラット、ウサギ、イヌ、ネコ、ウシ、ブタ、ヒツジ、ウマ、又は霊長類)、又は鳥類(ニワトリ)、魚類、若しくは他の任意の動物種を含む、他の任意の非哺乳動物を指す。そうでないことが言明されない限り、「個体」及び「対象」という用語は、特定の年齢を表示せず、したがって、成人、老齢者、小児、及び新生児を包摂する。本開示についての複数の実施形態では、「個体」又は「対象」とは、「患者」である。
【0156】
「患者」という用語は、処置のための個体又は対象、特に、罹患個体又は罹患対象を意味する。
【0157】
本開示の態様及び実施形態
第1の態様では、本開示は、対象における腫瘍の進行を軽減若しくは防止するか、又はがんを処置する方法であって、プログラム死-1(PD-1)に結合する抗体又はその抗原結合性断片の投与の前に、これと同時に、又はこの後に、前記対象へと結合剤を投与するステップを含み、結合剤が、CD137に結合する第1の結合性領域、及びPD-L1に結合する第2の結合性領域を含み、
a)第1の結合性領域が、それぞれ配列番号2、3、及び4に示されたCDR1、CDR2、及びCDR3の配列を含む重鎖可変領域(VH)、並びにそれぞれ配列番号6、7、及び8に示されたCDR1、CDR2、及びCDR3の配列を含む軽鎖可変領域(VL)を含み;
b)第2の抗原結合性領域が、それぞれ配列番号12、13、及び14に示されたCDR1、CDR2、及びCDR3の配列を含む重鎖可変領域(VH)、並びにそれぞれ配列番号16、17、及び18に示されたCDR1、CDR2、及びCDR3の配列を含む軽鎖可変領域(VL)を含み、
抗体が、それぞれ配列番号43、44、及び45に示されたCDR1、CDR2、及びCDR3の配列を含む重鎖可変領域(VH)、並びにそれぞれ配列番号46、47、及び48に示されたCDR1、CDR2、及びCDR3の配列を含む軽鎖可変領域(VL)を含むか、又は抗体が、それぞれ配列番号62、63、及び64に示されたCDR1、CDR2、及びCDR3の配列を含む重鎖可変領域(VH)、並びにそれぞれ配列番号65、66、及び67に示されたCDR1、CDR2、及びCDR3の配列を含む軽鎖可変領域(VL)を含む
方法における使用のための結合剤を提供する。
【0158】
CD137及びPD-L1に結合する結合剤
一実施形態では、CD137は、ヒトCD137、特に、配列番号38に示された配列を含むヒトCD137である。一実施形態では、PD-L1は、ヒトPD-L1、特に、配列番号40に示された配列を含むヒトPD-L1である。一実施形態では、CD137は、ヒトCD137であり、PD-L1は、ヒトPD-L1である。一実施形態では、CD137は、配列番号38に示された配列を含むヒトCD137であり、PD-L1は、配列番号40に示された配列を含むヒトPD-L1である。
【0159】
第1の態様に従う結合剤についての一実施形態では、ヒトCD137に結合する第1の結合性領域は、配列番号1又は9に対する少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%、少なくとも99%、又は100%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む重鎖可変領域(VH)、及び配列番号5又は10に対する少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%、少なくとも99%、又は100%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域(VL)を含む。
【0160】
第1の態様に従う結合剤についてのさらなる実施形態では、ヒトPD-L1に結合する第2の結合性領域は、配列番号11に対する少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%、少なくとも99%、又は100%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む重鎖可変領域(VH)、及び配列番号15に対する少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%、少なくとも99%、又は100%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域(VL)を含む。
【0161】
第1の態様に従う結合剤についての一実施形態では、
a)ヒトCD137に結合する第1の結合性領域は、配列番号1又は9に対する少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%、少なくとも99%、又は100%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む重鎖可変領域(VH)、及び配列番号5又は10に対する少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%、少なくとも99%、又は100%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域(VL)を含み;
b)ヒトPD-L1に結合する第2の結合性領域は、配列番号11に対する少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%、少なくとも99%、又は100%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む重鎖可変領域(VH)、及び配列番号15に対する少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%、少なくとも99%、又は100%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域(VL)を含む。
【0162】
第1の態様に従う結合剤についての一実施形態では、ヒトCD137に結合する第1の結合性領域は、配列番号1又は9に示されたアミノ酸配列を含む重鎖可変領域(VH)、及び配列番号5又は10に示されたアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域(VL)を含む。
【0163】
第1の態様に従う結合剤についてのさらなる実施形態では、ヒトPD-L1に結合する第2の結合性領域は、配列番号11に示されたアミノ酸配列を含む重鎖可変領域(VH)、及び配列番号15に示されたアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域(VL)を含む。
【0164】
第1の態様に従う結合剤についての一実施形態では、
a)ヒトCD137に結合する第1の結合性領域は、配列番号1又は9に示されたアミノ酸配列を含む重鎖可変領域(VH)、及び配列番号5又は10に示されたアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域(VL)を含み;
b)ヒトPD-L1に結合する第2の結合性領域は、配列番号11に示されたアミノ酸配列を含む重鎖可変領域(VH)、及び配列番号15に示されたアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域(VL)を含む。
【0165】
第1の態様に従う結合剤についての一実施形態では、
a)ヒトCD137に結合する第1の結合性領域は、配列番号1に示されたアミノ酸配列を含む重鎖可変領域(VH)、及び配列番号5に示されたアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域(VL)を含み;
b)ヒトPD-L1に結合する第2の結合性領域は、配列番号11に示されたアミノ酸配列を含む重鎖可変領域(VH)、及び配列番号15に示されたアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域(VL)を含む。
【0166】
結合剤は、特に、抗体、例えば、多特異性抗体、例えば、二特異性抗体でありうる。結合剤はまた、全長抗体のフォーマットの場合もあり、抗体断片のフォーマットの場合もある。
【0167】
結合剤は、ヒト抗体又はヒト化抗体であることがさらに好ましい。
【0168】
各可変領域は、3つの相補性決定領域(CDR1、CDR2、及びCDR3)、及び4つのフレームワーク領域(FR1、FR2、FR3、及びFR4)を含みうる。
【0169】
相補性決定領域(CDR)及びフレームワーク領域(FR)は、アミノ末端からカルボキシ末端へと、以下:FR1、CDR1、FR2、CDR2、FR3、CDR3、FR4の順序で配置されうる。
【0170】
第1の態様についての一実施形態では、結合剤は、
i)前記第1の重鎖可変領域(VH)、及び第1の重鎖定常領域(CH)を含むポリペプチド、並びに
ii)前記第2の重鎖可変領域(VH)、及び第2の重鎖定常領域(CH)を含むポリペプチドを含む。
【0171】
第1の態様についての一実施形態では、結合剤は、
i)前記第1の軽鎖可変領域(VL)を含み、第1の軽鎖定常領域(CL)をさらに含むポリペプチド、並びに
ii)前記第2の軽鎖可変領域(VL)を含み、第2の軽鎖定常領域(CL)をさらに含むポリペプチドを含む。
【0172】
第1の態様についての一実施形態では、結合剤は、第1の結合アーム及び第2の結合アームを含む抗体であって、第1の結合アームが、
i)前記第1の重鎖可変領域(VH)、及び前記第1の重鎖定常領域(CH)を含むポリペプチド、並びに
ii)前記第1の軽鎖可変領域(VL)、及び前記第1の軽鎖定常領域(CL)を含むポリペプチド
を含み;第2の結合アームが、
iii)前記第2の重鎖可変領域(VH)、及び前記第2の重鎖定常領域(CH)を含むポリペプチド、並びに
iv)前記第2の軽鎖可変領域(VL)、及び前記第2の軽鎖定常領域(CL)を含むポリペプチド
を含む抗体である。
【0173】
第1の態様についての一実施形態では、結合剤は、i)CD137に結合することが可能である前記抗原結合性領域を含み、第1の重鎖が、第1の重鎖定常領域を含み、第1の軽鎖が、第1の軽鎖定常領域を含む、第1の重鎖及び軽鎖;並びにii)PD-L1に結合することが可能である前記抗原結合性領域を含み、第2の重鎖が、第2の重鎖定常領域を含み、第2の軽鎖が、第2の軽鎖定常領域を含む、第2の重鎖及び軽鎖を含む。
【0174】
第1の重鎖定常領域及び第2の重鎖定常領域(CH)の各々は、定常重鎖1(CH1)領域、ヒンジ領域、定常重鎖2(CH2)領域、及び定常重鎖3(CH3)領域、好ましくは、少なくともヒンジ領域、CH2領域、及びCH3領域のうちの1つ以上を含みうる。
【0175】
第1の重鎖定常領域及び第2の重鎖定常領域(CH)の各々は、CH3領域を含む場合があり、この場合、2つのCH3領域は、非対称的突然変異を含む。非対称的突然変異とは、前記第1のCH3領域及び第2のCH3領域の配列が、同一ではない位置において、アミノ酸置換を含有することを意味する。例えば、前記第1のCH3領域及び第2のCH3領域のうちの一方は、EU番号付けに従う、ヒトIgG1重鎖内の405位に対応する位置において、突然変異を含有し、前記第1のCH3領域及び第2のCH3領域のうちの他方は、EU番号付けに従う、ヒトIgG1重鎖内の409位に対応する位置において、突然変異を含有する。
【0176】
前記第1の重鎖定常領域(CH)内において、EU番号付けに従う、ヒトIgG1重鎖内のT366、L368、K370、D399、F405、Y407、及びK409からなる群から選択される位置に対応する位置におけるアミノ酸のうちの少なくとも1つは置換されており、前記第2の重鎖定常領域(CH)内において、EU番号付けに従う、ヒトIgG1重鎖内のT366、L368、K370、D399、F405、Y407、及びK409からなる群から選択される位置に対応する位置におけるアミノ酸のうちの少なくとも1つは置換されている。特定の実施形態では、第1の重鎖と、第2の重鎖とは、同じ位置において置換されていない(すなわち、第1の重鎖及び第2の重鎖は、非対称的突然変異を含有する)。
【0177】
第1の態様に従う結合剤についての一実施形態では、(i)EU番号付けに従う、ヒトIgG1重鎖内のF405に対応する位置におけるアミノ酸は、前記第1の重鎖定常領域(CH)内のLであり、EU番号付けに従う、ヒトIgG1重鎖内のK409に対応する位置におけるアミノ酸は、前記第2の重鎖定常領域(CH)内のRであるか、又は(ii)EU番号付けに従う、ヒトIgG1重鎖内のK409に対応する位置におけるアミノ酸は、前記第1の重鎖内のRであり、EU番号付けに従う、ヒトIgG1重鎖内のF405に対応する位置におけるアミノ酸は、前記第2の重鎖内のLである。
【0178】
第1の態様についての一実施形態では、結合剤は、同じ第1の抗原結合性領域及び第2の抗原結合性領域、並びにヒトIgG1のヒンジ領域、CH2領域、及びCH3領域を含む、2つの重鎖定常領域(CH)を含む別の抗体と比較して、強くならない程度に、Fc媒介エフェクター機能を誘導する。
【0179】
第1の態様に従う結合剤についての特定の一実施形態では、前記第1の重鎖定常領域及び第2の重鎖定常領域(CH)は、抗体が、改変されていない第1の重鎖定常領域及び第2の重鎖定常領域(CH)を含むことを除き、同一である抗体と比較して、強くならない程度に、Fc媒介エフェクター機能を誘導するように改変される。特に、前記改変されていない第1の重鎖定常領域及び第2の重鎖定常領域(CH)の各々又は両方は、配列番号19又は25に示されたアミノ酸配列を含みうるか、これらからなりうるか、又はこれらから本質的になりうる。
【0180】
Fc媒介エフェクター機能は、結合剤のFcγ受容体への結合、C1qへの結合、又はFcγ受容体に対するFc媒介架橋の誘導を測定することにより決定されうる。特に、Fc媒介エフェクター機能は、結合剤のC1qへの結合を測定することにより決定されうる。
【0181】
結合剤の第1の重鎖定常領域及び第2の重鎖定常領域は、C1qの、前記抗体への結合が、野生型抗体と比較して低減され、好ましくは、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%、又は100%低減されるように改変されている場合があり、この場合、C1qの結合は、好ましくは、ELISAにより決定される。
【0182】
第1の態様に従う結合剤についての一実施形態では、前記第1の重鎖定常領域及び第2の重鎖定常領域(CH)のうちの少なくとも1つにおいて、EU番号付けに従う、ヒトIgG1重鎖内の位置L234、L235、D265、N297、及びP331に対応する位置における1つ以上のアミノ酸は、それぞれL、L、D、N、及びPではない。
【0183】
第1の態様に従う結合剤についての一実施形態では、EU番号付けに従う、ヒトIgG1重鎖内の位置L234及びL235に対応する位置は、前記第1の重鎖及び第2の重鎖において、それぞれF及びEでありうる。
【0184】
特に、EU番号付けに従う、ヒトIgG1重鎖内の位置L234、L235、及びD265に対応する位置は、前記第1の重鎖定常領域及び第2の重鎖定常領域(HC)において、それぞれF、E、及びAでありうる。
【0185】
第1の態様に従う結合剤についての一実施形態では、第1の重鎖定常領域及び第2の重鎖定常領域の両方の、EU番号付けに従う、ヒトIgG1重鎖内の位置L234及びL235に対応する位置は、それぞれF及びEであり、この場合、(i)第1の重鎖定常領域の、EU番号付けに従う、ヒトIgG1重鎖内のF405に対応する位置は、Lであり、第2の重鎖の、EU番号付けに従う、ヒトIgG1重鎖内のK409に対応する位置は、Rであるか、又は(ii)第1の重鎖定常領域の、EU番号付けに従う、ヒトIgG1重鎖内のK409に対応する位置は、Rであり、第2の重鎖の、EU番号付けに従う、ヒトIgG1重鎖内のF405に対応する位置は、Lである。
【0186】
第1の態様に従う結合剤についての一実施形態では、第1の重鎖定常領域及び第2の重鎖定常領域の両方の、EU番号付けに従う、ヒトIgG1重鎖内の位置L234、L235、及びD265に対応する位置は、それぞれF、E、及びAであり、この場合、(i)第1の重鎖定常領域の、EU番号付けに従う、ヒトIgG1重鎖内のF405に対応する位置は、Lであり、第2の重鎖定常領域の、EU番号付けに従う、ヒトIgG1重鎖内のK409に対応する位置は、Rであるか、又は(ii)第1の重鎖の、EU番号付けに従う、ヒトIgG1重鎖内のK409に対応する位置は、Rであり、第2の重鎖の、EU番号付けに従う、ヒトIgG1重鎖内のF405に対応する位置は、Lである。
【0187】
第1の態様に従う結合剤についての一実施形態では、前記第1の重鎖及び/又は第2の重鎖の定常領域は、
a)配列番号19又は配列番号25に示された配列[IgG1-FC];
b)a)における配列の部分配列、例えば、a)で規定された配列のN末端又はC末端から順に、1つ、2つ、3つ、4つ、5つ、6つ、7つ、8つ、9つ、又は10の連続アミノ酸が欠失された部分配列;及び
c)a)又はb)で規定されたアミノ酸配列と比較して、最大で10の置換、例えば、最大で9つの置換、最大で8つ、最大で7つ、最大で6つ、最大で5つ、最大で4つ、最大で3つ、最大で2つ、又は最大で1つの置換を有する配列
からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む。
【0188】
第1の態様に従う結合剤についての一実施形態では、前記第1の重鎖又は第2の重鎖の定常領域、例えば、第2の重鎖は、
a)配列番号20又は配列番号26に示された配列[IgG1-F405L];
b)a)における配列の部分配列、例えば、a)で規定された配列のN末端又はC末端から順に、1つ、2つ、3つ、4つ、5つ、6つ、7つ、8つ、9つ、又は10の連続アミノ酸が欠失された部分配列;及び
c)a)又はb)で規定されたアミノ酸配列と比較して、最大で9つの置換、例えば、最大で8つ、最大で7つ、最大で6つ、最大で5つ、最大で4つ、最大で3つ、最大で2つ、又は最大で1つの置換を有する配列
からなる群から選択されるアミノ酸配列を含むか、又はこれらから本質的になるか、又はこれらからなる。
【0189】
第1の態様に従う結合剤についての一実施形態では、前記第1の重鎖又は第2の重鎖の定常領域、例えば、第1の重鎖は、
a)配列番号21又は27に示された配列[IgG1-F409R];
b)a)における配列の部分配列、例えば、a)で規定された配列のN末端又はC末端から順に、1つ、2つ、3つ、4つ、5つ、6つ、7つ、8つ、9つ、又は10の連続アミノ酸が欠失された部分配列;及び
c)a)又はb)で規定されたアミノ酸配列と比較して、最大で10の置換、例えば、最大で9つの置換、最大で8つ、最大で7つ、最大で6つ、最大で5つ、最大で4つの置換、最大で3つ、最大で2つ、又は最大で1つの置換を有する配列
からなる群から選択されるアミノ酸配列を含むか、又はこれらから本質的になるか、又はこれらからなる。
【0190】
第1の態様に従う結合剤についての一実施形態では、前記第1の重鎖及び/又は第2の重鎖の定常領域は、
a)配列番号22又は配列番号28に示された配列[IgG1-Fc_FEA];
b)a)における配列の部分配列、例えば、a)で規定された配列のN末端又はC末端から順に、1つ、2つ、3つ、4つ、5つ、6つ、7つ、8つ、9つ、又は10の連続アミノ酸が欠失された部分配列;及び
c)a)又はb)で規定されたアミノ酸配列と比較して、最大で7つの置換、例えば、最大で6つの置換、最大で5つ、最大で4つ、最大で3つ、最大で2つ、又は最大で1つの置換を有する配列
からなる群から選択されるアミノ酸配列を含むか、又はこれらから本質的になるか、又はこれらからなる。
【0191】
第1の態様に従う結合剤についての一実施形態では、前記第1の重鎖及び/又は第2の重鎖の定常領域、例えば、第2の重鎖は、
a)配列番号24又は配列番号30に示された配列[IgG1-Fc_FEAL];
b)a)における配列の部分配列、例えば、a)で規定された配列のN末端又はC末端から順に、1つ、2つ、3つ、4つ、5つ、6つ、7つ、8つ、9つ、又は10の連続アミノ酸が欠失された部分配列;及び
c)a)又はb)で規定されたアミノ酸配列と比較して、最大で6つの置換、例えば、最大で5つの置換、最大で4つの置換、最大で3つ、最大で2つ、又は最大で1つの置換を有する配列
からなる群から選択されるアミノ酸配列を含むか、又はこれらから本質的になるか、又はこれらからなる。
【0192】
第1の態様に従う結合剤についての一実施形態では、前記第1の重鎖及び/又は第2の重鎖の定常領域、例えば、第1の重鎖は、
a)配列番号23又は配列番号29に示された配列[IgG1-Fc_FEAR];
b)a)における配列の部分配列、例えば、a)で規定された配列のN末端又はC末端から順に、1つ、2つ、3つ、4つ、5つ、6つ、7つ、8つ、9つ、又は10の連続アミノ酸が欠失された部分配列;及び
c)a)又はb)で規定されたアミノ酸配列と比較して、最大で6つの置換、例えば、最大で5つの置換、最大で4つ、最大で3つ、最大で2つ、又は最大で1つの置換を有する配列
からなる群から選択されるアミノ酸配列を含むか、又はこれらから本質的になるか、又はこれらからなる。
【0193】
第1の態様についての一実施形態では、結合剤は、カッパ(κ)軽鎖定常領域を含む。
【0194】
第1の態様についての一実施形態では、結合剤は、ラムダ(λ)軽鎖定常領域を含む。
【0195】
第1の態様に従う結合剤についての一実施形態では、第1の軽鎖定常領域は、カッパ(κ)軽鎖定常領域又はラムダ(λ)軽鎖定常領域である。
【0196】
第1の態様に従う結合剤についての一実施形態では、第2の軽鎖定常領域は、ラムダ(λ)軽鎖定常領域又はカッパ(κ)軽鎖定常領域である。
【0197】
第1の態様に従う結合剤についての一実施形態では、第1の軽鎖定常領域は、カッパ(κ)軽鎖定常領域であり、第2の軽鎖定常領域は、ラムダ(λ)軽鎖定常領域であるか、又は第1の軽鎖定常領域は、ラムダ(λ)軽鎖定常領域であり、第2の軽鎖定常領域は、カッパ(κ)軽鎖定常領域である。
【0198】
第1の態様に従う結合剤についての一実施形態では、カッパ(κ)軽鎖は、
a)配列番号35に示された配列;
b)a)における配列の部分配列、例えば、a)で規定された配列のN末端又はC末端から順に、1つ、2つ、3つ、4つ、5つ、6つ、7つ、8つ、9つ、又は10の連続アミノ酸が欠失された部分配列;及び
c)a)又はb)で規定されたアミノ酸配列と比較して、最大で10の置換、例えば、最大で9つの置換、最大で8つ、最大で7つ、最大で6つ、最大で5つ、最大で4つの置換、最大で3つ、最大で2つ、又は最大で1つの置換を有する配列
からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む。
【0199】
第1の態様に従う結合剤についての一実施形態では、ラムダ(λ)軽鎖は、
a)配列番号36に示された配列;
b)a)における配列の部分配列、例えば、a)で規定された配列のN末端又はC末端から順に、1つ、2つ、3つ、4つ、5つ、6つ、7つ、8つ、9つ、又は10の連続アミノ酸が欠失された部分配列;及び
c)a)又はb)で規定されたアミノ酸配列と比較して、最大で10の置換、例えば、最大で9つの置換、最大で8つ、最大で7つ、最大で6つ、最大で5つ、最大で4つの置換、最大で3つ、最大で2つ、又は最大で1つの置換を有する配列
からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む。
【0200】
第1の態様に従う結合剤(特に、抗体)は、IgG1、IgG2、IgG3、及びIgG4からなる群から選択されるアイソタイプの結合剤である。特に、結合剤は、全長IgG1抗体でありうる。第1の態様についての好ましい実施形態では、結合剤(特に、抗体)は、IgG1m(f)アロタイプの結合剤である。
【0201】
第1の態様に従う結合剤についての好ましい実施形態では、結合剤は、
i)CD137に結合することが可能であり、第1の重鎖が、配列番号31に示された配列を含み、第1の軽鎖が、配列番号32に示された配列を含む前記抗原結合性領域を含む、第1の重鎖及び軽鎖;
ii)PD-L1に結合することが可能であり、第2の重鎖が、配列番号33に示された配列を含み、第2の軽鎖が、配列番号34に示された配列を含む前記抗原結合性領域を含む、第2の重鎖及び軽鎖を含む。
【0202】
第1の態様に従う使用のための結合剤は、特に、アカスンリマブ又はそのバイオシミラーでありうる。
【0203】
本明細書で好ましい実施形態では、各回の投与及び/又は各処置サイクルにおいて投与される結合剤の量は、
a)体重1kg当たり約0.3~5mg若しくは合計約25~400mg;及び/又は
b)体重1kg当たり約2.1×10-9~3.4×10-8モル若しくは合計約1.7×10-7~2.7×10-6モル
である。
【0204】
これらの実施形態に従い、mg/kg単位で規定された用量は、80kgである、結合剤が投与される対象の中央値体重に基づき、均一用量への変換が可能であり、この逆も可能である。
【0205】
各回の投与及び/又は各処置サイクルにおいて投与される結合剤の量は、特に、
体重1kg当たり約0.3~4.0mg若しくは合計約25~320mg;及び/又は
体重1kg当たり約2.1×10-9~2.7×10-8モル若しくは合計約1.7×10-7~2.2×10-6モル
でありうる。
【0206】
各回の投与及び/又は各処置サイクルにおいて投与される結合剤の量は、特に、
体重1kg当たり約0.38~4.0mg若しくは合計約30~320mg;及び/又は
体重1kg当たり約2.6×10-9~2.7×10-8モル若しくは合計約2.4×10-7~2.2×10-6モル
でありうる。
【0207】
各回の投与及び/又は各処置サイクルにおいて投与される結合剤の量は、特に、
体重1kg当たり約0.5~3.3mg若しくは合計約40~260mg;及び/又は
体重1kg当たり約3.4×10-9~2.2×10-8モル若しくは合計約2.7×10-7~1.8×10-6モル
でありうる。
【0208】
各回の投与及び/又は各処置サイクルにおいて投与される結合剤の量は、特に、
体重1kg当たり約0.6~2.5mg若しくは合計約50~200mg;及び/又は
体重1kg当たり約4.3×10-9~1.7×10-8モル若しくは合計約3.4×10-7~1.4×10-6モル
でありうる。
【0209】
各回の投与及び/又は各処置サイクルにおいて投与される結合剤の量は、特に、
体重1kg当たり約0.8~1.8mg若しくは合計約60~140mg;及び/又は
体重1kg当たり約5.1×10-9~1.2×10-8モル若しくは合計約4.1×10-7~9.5×10-7モル
でありうる。
【0210】
各回の投与及び/又は各処置サイクルにおいて投与される結合剤の量は、特に、
体重1kg当たり約0.9~1.8mg若しくは合計約70~140mg;及び/又は
体重1kg当たり約6.0×10-9~1.2×10-8モル若しくは合計約4.8×10-7~9.5×10-7モル
でありうる。
【0211】
各回の投与及び/又は各処置サイクルにおいて投与される結合剤の量は、特に、
体重1kg当たり約1~1.5mg若しくは合計約80~120mg;及び/又は
体重1kg当たり約6.8×10-9~1.0×10-8モル若しくは合計約5.5×10-7~8.2×10-7モル
でありうる。
【0212】
各回の投与及び/又は各処置サイクルにおいて投与される結合剤の量は、特に、
体重1kg当たり約1.1~1.4mg若しくは合計約90~110mg;及び/又は
体重1kg当たり約7.7×10-9~9.4×10-9モル若しくは合計約6.1×10-7~7.5×10-7モル
でありうる。
【0213】
各回の投与及び/又は各処置サイクルにおいて投与される結合剤の量は、特に、
体重1kg当たり約1.2~1.3mg若しくは合計約95~105mg;及び/又は
体重1kg当たり約6.8×10-9~8.9×10-9モル若しくは合計約6.5×10-7~7.2×10-7モル
でありうる。
【0214】
各回の投与及び/又は各処置サイクルにおいて投与される結合剤の量は、特に、
体重1kg当たり約0.8~1.5mg若しくは合計約65~120mg;及び/又は
体重1kg当たり約5.5×10-9~1.0×10-8モル若しくは合計約4.4×10-7~8.2×10-7モル
でありうる。
【0215】
各回の投与及び/又は各処置サイクルにおいて投与される結合剤の量は、特に、
体重1kg当たり約0.9~1.3mg若しくは合計約70~100mg;及び/又は
体重1kg当たり約6.0×10-9~8.5×10-9モル若しくは合計約4.8×10-7~6.8×10-7モル
でありうる。
【0216】
各回の投与及び/又は各処置サイクルにおいて投与される結合剤の量は、特に、
体重1kg当たり約0.9~1.1mg若しくは合計約75~90mg;及び/又は
体重1kg当たり約6.4×10-9~7.7×10-9モル若しくは合計約5.1×10-7~6.1×10-7モル
でありうる。
【0217】
さらに、各回の投与及び/又は各処置サイクルにおいて投与される結合剤の量は、特に、
体重1kg当たり0.3~4.0mg若しくは合計25~320mg;及び/又は
体重1kg当たり2.1×10-9~2.7×10-8モル若しくは合計1.7×10-7~2.2×10-6モル
でありうる。
【0218】
各回の投与及び/又は各処置サイクルにおいて投与される結合剤の量は、特に、
体重1kg当たり0.38~4.0mg若しくは合計30~320mg;及び/又は
体重1kg当たり2.6×10-9~2.7×10-8モル若しくは合計2.4×10-7~2.2×10-6モル
でありうる。
【0219】
各回の投与及び/又は各処置サイクルにおいて投与される結合剤の量は、特に、
体重1kg当たり0.5~3.3mg若しくは合計40~260mg;及び/又は
体重1kg当たり3.4×10-9~2.2×10-8モル若しくは合計2.7×10-7~1.8×10-6モル
でありうる。
【0220】
各回の投与及び/又は各処置サイクルにおいて投与される結合剤の量は、特に、
体重1kg当たり0.6~2.5mg若しくは合計50~200mg;及び/又は
体重1kg当たり4.3×10-9~1.7×10-8モル若しくは合計3.4×10-7~1.4×10-6モル
でありうる。
【0221】
各回の投与及び/又は各処置サイクルにおいて投与される結合剤の量は、特に、
体重1kg当たり0.8~1.8mg若しくは合計60~140mg;及び/又は
体重1kg当たり5.1×10-9~1.2×10-8モル若しくは合計4.1×10-7~9.5×10-7モル
でありうる。
【0222】
各回の投与及び/又は各処置サイクルにおいて投与される結合剤の量は、特に、
体重1kg当たり0.9~1.8mg若しくは合計70~140mg;及び/又は
体重1kg当たり6.0×10-9~1.2×10-8モル若しくは合計4.8×10-7~9.5×10-7モル
でありうる。
【0223】
各回の投与及び/又は各処置サイクルにおいて投与される結合剤の量は、特に、
体重1kg当たり1~1.5mg若しくは合計80~120mg;及び/又は
体重1kg当たり6.8×10-9~1.0×10-8モル若しくは合計5.5×10-7~8.2×10-7モル
でありうる。
【0224】
各回の投与及び/又は各処置サイクルにおいて投与される結合剤の量は、特に、
体重1kg当たり1.1~1.4mg若しくは合計90~110mg;及び/又は
体重1kg当たり7.7×10-9~9.4×10-9モル若しくは合計6.1×10-7~7.5×10-7モル
でありうる。
【0225】
各回の投与及び/又は各処置サイクルにおいて投与される結合剤の量は、特に、
体重1kg当たり1.2~1.3mg若しくは合計95~105mg;及び/又は
体重1kg当たり6.8×10-9~8.9×10-9モル若しくは合計6.5×10-7~7.2×10-7モル
でありうる。
【0226】
各回の投与及び/又は各処置サイクルにおいて投与される結合剤の量は、特に、
体重1kg当たり0.8~1.5mg若しくは合計65~120mg;及び/又は
体重1kg当たり5.5×10-9~1.0×10-8モル若しくは合計4.4×10-7~8.2×10-7モル
でありうる。
【0227】
各回の投与及び/又は各処置サイクルにおいて投与される結合剤の量は、特に、
体重1kg当たり0.9~1.3mg若しくは合計70~100mg;及び/又は
体重1kg当たり6.0×10-9~8.5×10-9モル若しくは合計4.8×10-7~6.8×10-7モル
でありうる。
【0228】
各回の投与及び/又は各処置サイクルにおいて投与される結合剤の量は、特に、
体重1kg当たり0.9~1.1mg若しくは合計75~90mg;及び/又は
体重1kg当たり6.4×10-9~7.7×10-9モル若しくは合計5.1×10-7~6.1×10-7モル
でありうる。
【0229】
各回の投与及び/又は各処置サイクルにおいて投与される結合剤の量は、
a)体重1kg当たり約1.1mg若しくは合計約80mg;及び/又は
b)体重1kg当たり約6.8×10-9モル若しくは合計約5.5×10-7モル
でありうる。
【0230】
各回の投与及び/又は各処置サイクルにおいて投与される結合剤の量は、
a)体重1kg当たり1.1mg若しくは合計80mg;及び/又は
b)体重1kg当たり6.8×10-9モル若しくは合計5.5×10-7モル
でありうる。
【0231】
本明細書では、各回の投与及び/又は各処置サイクルにおいて投与される結合剤の量は、
a)体重1kg当たり約1.25mg若しくは合計約100mg;及び/又は
b)体重1kg当たり約8.5×10-9モル若しくは合計約6.8×10-7モル
であることが好ましい。
【0232】
各回の投与及び/又は各処置サイクルにおいて投与される結合剤の量は、
a)体重1kg当たり1.25mg若しくは合計100mg;及び/又は
b)体重1kg当たり8.5×10-9モル若しくは合計6.8×10-7モル
であることも同様に好ましい。
【0233】
結合剤は、当技術分野で公知の任意の方式で、任意の経路により投与されうる。好ましい実施形態では、結合剤は、全身に、例えば非経口で、特に静脈内に投与される。
【0234】
結合剤は、本明細書で記載される任意の適切な医薬組成物の形態で投与されうる。好ましい実施形態では、結合剤は、注入の形態で投与される。
【0235】
本発明に従う使用のための結合剤は、静脈内(IV)注入、例えば、静脈内注入を、最小で30分間、例えば、最小で60分間にわたり使用することにより、例えば、静脈内注入を、30~120分間にわたり使用することにより投与されうる。好ましくは、本発明に従う使用のための結合剤は、静脈内(IV)注入を、30分間にわたり使用することにより投与される。
【0236】
結合剤は、PD-1阻害剤の投与の前に投与される場合もあり、これと同時に投与される場合もあり、この後で投与される場合もある。
【0237】
一実施形態では、結合剤は、PD-1阻害剤の投与の前に投与される。例えば、結合剤の投与と、PD-1阻害剤の投与との間の間隔は、少なくとも約10分間、例えば、少なくとも約15分間、少なくとも約20分間、少なくとも約25分間、少なくとも約30分間、少なくとも約35分間、少なくとも約40分間、少なくとも約45分間、少なくとも約50分間、少なくとも約55分間、少なくとも約60分間、少なくとも約90分間、又は少なくとも約120分間、及び最大で約14日間(最大で約2週間)、例えば、最大で約13日間、最大で約12日間、最大で約11日間、最大で約10日間、最大で約9日間、最大で約8日間、最大で約7日間(最大で約1週間)、最大で約6日間、最大で約5日間、最大で約4日間、最大で約3日間、最大で約2日間、最大で約1日間(最大で約24時間)、最大で約18時間、最大で約12時間、最大で約6時間、最大で約5時間、最大で約4時間、最大で約3時間、最大で約2.5時間、又は最大で約2時間でありうる。
【0238】
一実施形態では、結合剤は、PD-1阻害剤の投与の後で投与される。例えば、PD-1阻害剤の投与と、結合剤の投与との間の間隔は、少なくとも約10分間、例えば、少なくとも約15分間、少なくとも約20分間、少なくとも約25分間、少なくとも約30分間、少なくとも約35分間、少なくとも約40分間、少なくとも約45分間、少なくとも約50分間、少なくとも約55分間、少なくとも約60分間、少なくとも約90分間、又は少なくとも約120分間、及び最大で約14日間(最大で約2週間)、例えば、最大で約13日間、最大で約12日間、最大で約11日間、最大で約10日間、最大で約9日間、最大で約8日間、最大で約7日間(最大で約1週間)、最大で約6日間、最大で約5日間、最大で約4日間、最大で約3日間、最大で約2日間、最大で約1日間(最大で約24時間)、最大で約18時間、最大で約12時間、最大で約6時間、最大で約5時間、最大で約4時間、最大で約3時間、最大で約2.5時間、又は最大で約2時間でありうる。
【0239】
一実施形態では、結合剤は、PD-1阻害剤と同時に投与される。例えば、結合剤及びPD-1阻害剤は、両方の薬物を含む組成物を使用して投与されうる。代替的に、結合剤が、対象の1つの四肢へと投与され、PD-1阻害剤が、対象の別の四肢へと投与される場合もある。
【0240】
PD-1に結合する抗体
PD-1に結合する抗体又はその抗原結合性断片は、好ましくは、配列番号49のアミノ酸配列に対する少なくとも85%の配列同一性、例えば、少なくとも90%の配列同一性、95%の配列同一性、98%の配列同一性、又は99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む重鎖可変領域、及び配列番号50のアミノ酸配列に対する少なくとも85%の配列同一性、例えば、少なくとも90%の配列同一性、95%の配列同一性、98%の配列同一性、又は99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域を含む。
【0241】
本明細書で最も好ましい実施形態では、PD-1に結合する抗体又はその抗原結合性断片は、配列番号49のアミノ酸配列を含むか、これからなるか、又はこれから本質的になる重鎖可変領域、及び配列番号50のアミノ酸配列を含むか、これからなるか、又はこれから本質的になる軽鎖可変領域を含む。
【0242】
PD-1に結合する抗体又はその抗原結合性断片は、配列番号51のアミノ酸配列を含むか、これからなるか、又はこれから本質的になる重鎖、及び配列番号52のアミノ酸配列を含むか、これからなるか、又はこれから本質的になる軽鎖を含みうる。
【0243】
本発明に従い使用される、PD-1に結合する抗体は、好ましくは、PD-1と関連する阻害性シグナルを防止する。PD-1に結合する抗体は、好ましくは、PD-1と関連する阻害性シグナル伝達を破壊又は阻害する。
【0244】
本明細書で記載される、PD-1シグナル伝達の阻害又は遮断は、免疫抑制の防止又は反転、及びがん細胞に対するT細胞免疫の確立又は増強を結果としてもたらす。一実施形態では、本明細書で記載される、PD-1シグナル伝達の阻害は、免疫系の機能不全を軽減又は阻害する。一実施形態では、本明細書で記載される、PD-1シグナル伝達の阻害は、機能不全性免疫細胞の機能不全性を低下させる。一実施形態では、本明細書で記載される、PD-1シグナル伝達の阻害は、機能不全性T細胞の機能不全性を低下させる。
【0245】
一実施形態では、PD-1阻害剤は、PD-1と、PD-L1との相互作用を防止する。別の実施形態では、PD-1阻害剤は、PD-1と、PD-L2との相互作用を防止する。
【0246】
特に、PD-1に結合する抗体又はその抗原結合性断片は、キメラ化抗体、ヒト化抗体、又はヒト抗体である。
【0247】
好ましい実施形態では、PD-1に結合する抗体は、単離抗体である。
【0248】
理論により束縛されずに述べると、組合せ療法は、PD-1経路の完全な遮断を、4-1BBの、共時的な条件付き活性化と共にもたらすため、上記で規定された、CD137に結合する第1の結合性領域、及びPD-L1に結合する第2の結合性領域を、上記で規定された、PD-1に結合する抗体と共に含む結合剤の組合せは、応答率を増大させ、組合せ療法を施される対象における、応答の持続期間の改善をもたらすと考えられる。PD-1遮断抗体は、PD-L1及びPD-L2の両方との相互作用を遮断する。さらに、PD-1に結合する抗体を伴う組合せ療法は、結合剤により結合可能なPD-L1の量を増大させると考えられる。
【0249】
PD-1阻害剤は、特に、ペムブロリズマブ又はそのバイオシミラーでありうる。
【0250】
さらなる実施形態では、PD-1阻害剤は、配列番号49に示された配列を含むか、又はこれからなるか、又はこれから本質的になる重鎖可変領域(VH)、及び配列番号50に示された配列を含むか、又はこれからなるか、又はこれから本質的になる軽鎖可変領域(VL)を含む抗体である。PD-1阻害剤は、特に、配列番号51に示されたアミノ酸配列を含むか、又はこれからなるか、又はこれから本質的になる重鎖、及び配列番号52に示されたアミノ酸配列を含むか、又はこれからなるか、又はこれから本質的になる軽鎖を含む抗体でありうる。
【0251】
本開示の抗PD-1抗体は、好ましくはモノクローナル抗体であり、多特異性抗体、ヒト抗体、ヒト化抗体、又はキメラ抗体、単鎖抗体、Fab断片、F(ab')断片、Fab発現ライブラリーにより作製される断片、及び上記のうちのいずれかのPD-1結合性断片でありうる。一部の実施形態では、本明細書で記載される抗PD-1抗体は、PD-1(例えば、ヒトPD-1)に特異的に結合する。本開示の免疫グロブリン分子は、任意のアイソタイプ(例えば、IgG、IgE、IgM、IgD、IgA、及びIgY)、クラス(例えば、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA1、及びIgA2)、又はサブクラスの免疫グロブリン分子でありうる。
【0252】
本明細書で記載される抗原結合性断片(例えば、ヒト抗原結合性断片)は、Fab、Fab'、及びF(ab')2、Fd、単鎖Fvs(scFv)、単鎖抗体、ジスルフィド連結Fvs(sdFv)、並びにVLドメイン又はVHドメインを含む断片を含むがこれらに限定されない。単鎖抗体を含む抗原結合性断片は、可変領域(複数可)を、単独で、又は以下:ヒンジ領域、CH1ドメイン、CH2ドメイン、CH3ドメイン、及びCLドメインの全体又は部分と組み合わせて含みうる。本開示にはまた、可変領域(複数可)の、ヒンジ領域、CH1ドメイン、CH2ドメイン、CH3ドメイン、及びCLドメインとの任意の組合せを含む抗原結合性断片も含まれる。一部の実施形態では、抗PD-1抗体又はその抗原結合性断片は、ヒト、マウス(例えば、マウス及びラット)、ロバ、ヒツジ、ウサギ、ヤギ、モルモット、ラクダ科動物、ウマ、又はニワトリの抗PD-1抗体又はその抗原結合性断片である。
【0253】
一部の実施形態では、本明細書で提供される抗PD-1抗体又はその抗原結合性断片のCDR配列内のアミノ酸残基の番号付けは、Lefranc,M. P.ら、Dev. Comp.Immunol.、2003、27、55~77において記載されている、IMGT番号付けスキームに従う。
【0254】
PD-1に結合する抗体又はその抗原結合性断片はまた、共有結合的接合が、抗体の、PD-1への結合を防止しないように、改変された誘導体及び構築物、すなわち、任意の種類の分子の、抗体への共有結合的接合により改変された誘導体及び構築物も含む。例えば、限定を目的とせずに述べると、抗PD-1抗体の誘導体は、例えば、グリコシル化、アセチル化、PEG化、リン酸化、アミド化、公知の保護(protecting/blocking)基による誘導体化、タンパク質分解性切断、細胞リガンド又は他のタンパク質への連結などにより改変された抗体を含む。多数の化学的改変のうちのいずれかは、特異的化学的切断、アセチル化、ホルミル化、代謝によるツニカマイシンの合成などを含むがこれらに限定されない公知の技法により実施されうる。加えて、誘導体又は構築物は、1つ以上の非古典的アミノ酸を含有しうる。
【0255】
好ましくは、PD-1に結合する抗体又はその抗原結合性断片は、適量で投与される。各回の投与及び/又は各処置サイクルにおいて投与されるPD-1に結合する抗体又はその抗原結合性断片の量は、特に、前記PD-1阻害剤のうちの、5%を超える、好ましくは10%を超える、より好ましくは15%を超える、なおより好ましくは20%を超える、なおより好ましくは25%を超える、なおより好ましくは30%を超える、なおより好ましくは35%を超える、なおより好ましくは40%を超える、なおより好ましくは45%を超える、最も好ましくは50%を超えるPD-1阻害剤が、PD-1に結合する範囲の量でありうる。
【0256】
ある特定の実施形態では、PD-1に結合する抗体は、ペムブロリズマブ又はそのバイオシミラーであり、例えば、各回の投与及び/又は各処置サイクルにおいて投与されるPD-1阻害剤の量は、合計約10~約1000mg、例えば、合計約100~約600mg、例えば、合計約150~約600mg、合計約150~約500mg、合計約175~約500mg、合計約175~約450mg、合計約200~約450mg、又は、例えば、合計約200~約400mgである。
【0257】
ある特定の実施形態では、PD-1に結合する抗体は、ペムブロリズマブ又はそのバイオシミラーであり、例えば、各回の投与及び/又は各処置サイクルにおいて投与されるPD-1阻害剤の量は、合計10~1000mg、例えば、合計100~600mg、例えば、合計150~600mg、合計150~500mg、合計175~500mg、合計175~450mg、合計200~450mg、又は、例えば、合計200~400mgである。
【0258】
ある特定の実施形態では、PD-1に結合する抗体は、ペムブロリズマブ又はそのバイオシミラーであり、例えば、各回の投与及び/又は各処置サイクルにおいて投与されるPD-1に結合する抗体の量は、
合計約100~600mg;及び/又は
合計約6.84×10-7~4.11×10-7モル
である。
【0259】
ある特定の実施形態では、PD-1に結合する抗体は、ペムブロリズマブ又はそのバイオシミラーであり、例えば、各回の投与及び/又は各処置サイクルにおいて投与されるPD-1に結合する抗体の量は、合計約100~400mg;及び/又は合計約6.84×10-7~2.73×10-6モル、例えば、合計100~400mg;及び/又は合計6.84×10-7~2.73×10-6モルである。
【0260】
ある特定の実施形態では、PD-1に結合する抗体は、ペムブロリズマブ又はそのバイオシミラーであり、例えば、各回の投与及び/又は各処置サイクルにおいて投与されるPD-1に結合する抗体の量は、合計約200~400mg;及び/又は合計約6.84×10-7~2.73×10-6モル、例えば、合計200~400mg;及び/又は合計6.84×10-7~2.73×10-6モルである。
【0261】
ある特定の実施形態では、例えば、各回の投与及び/又は各処置サイクルにおいて投与されるPD-1に結合する抗体又はその抗原結合性断片の量は、合計約200mg又は約1.37×10-6モル、例えば、合計200mg又は1.37×10-6モルである。
【0262】
ある特定の実施形態では、PD-1に結合する抗体は、ペムブロリズマブ又はそのバイオシミラーであり、例えば、各回の投与及び/又は各処置サイクルにおいて投与されるPD-1に結合する抗体又はその抗原結合性断片の量は、合計約200mg又は約1.37×10-6モル、例えば、合計200mg又は1.37×10-6モルである。
【0263】
ある特定の実施形態では、例えば、各回の投与及び/又は各処置サイクルにおいて投与されるPD-1に結合する抗体又はその抗原結合性断片の量は、合計約400mg又は合計約2.73×10-6モル、例えば、合計400mg又は合計2.73×10-6モルである。
【0264】
ある特定の実施形態では、PD-1に結合する抗体は、ペムブロリズマブ又はそのバイオシミラーであり、例えば、各回の投与及び/又は各処置サイクルにおいて投与されるPD-1に結合する抗体又はその抗原結合性断片の量は、合計約400mg又は合計約2.73×10-6モル、例えば、合計400mg又は合計2.73×10-6モルである。
【0265】
PD-1に結合する抗体又はその抗原結合性断片は、当技術分野で公知の任意の方式で、任意の経路により投与されうる。投与の方式及び経路は、使用される抗体の種類に依存するであろう。好ましい実施形態では、PD-1に結合する抗体又はその抗原結合性断片は、全身に、例えば非経口で、特に静脈内に投与される。
【0266】
PD-1に結合する抗体又はその抗原結合性断片は、本明細書で記載される任意の適切な医薬組成物の形態で投与されうる。好ましい実施形態では、PD-1に結合する抗体又はその抗原結合性断片は、注入、例えば、静脈内注入の形態で投与される。
【0267】
処置される対象及び腫瘍又はがん
本開示に従い処置される対象は、好ましくは、ヒト対象である。
【0268】
好ましい一実施形態では、処置される腫瘍又はがんは、充実性腫瘍又は固形がんである。腫瘍又はがんは、転移性腫瘍又は転移性がんでありうる。
【0269】
好ましくは、腫瘍又はがんは、黒色腫、卵巣がん、肺がん(例えば、非小細胞肺がん(NSCLC))、結腸直腸がん、頭頸部がん、胃がん、乳がん、腎臓がん、尿路がん、膀胱がん、食道がん、膵臓がん、肝がん、胸腺腫及び胸腺癌、脳がん、神経膠腫、副腎皮質癌、甲状腺がん、他の皮膚がん、肉腫、多発性骨髄腫、白血病、リンパ腫、骨髄異形成症候群、子宮内膜がん、前立腺がん、陰茎がん、子宮頸がん、ホジキンリンパ腫、非ホジキンリンパ腫、メルケル細胞癌、並びに中皮腫からなる群から選択されうる。より好ましくは、腫瘍又はがんは、黒色腫、肺がん、結腸直腸がん、膵臓がん、及び頭頸部がんからなる群から選択される。
【0270】
特定の実施形態では、腫瘍又はがんは、肺がん(例えば、非小細胞肺がん(NSCLC)、尿路がん(膀胱がん、尿管がん、尿道がん、又は腎盂がん)、子宮内膜がん(EC)、乳がん(例えば、トリプルネガティブ乳がん(TNBC))、頭頸部扁平上皮がん(SCCHN)(例えば、口腔がん、喉頭がん、又は咽頭がん)、及び子宮頸がんからなる群から選択される。
【0271】
好ましくは、腫瘍は、PD-L1陽性腫瘍である。ある特定の実施形態では、PD-L1は、がん細胞又は腫瘍細胞のうちの≧1%において発現されることが好ましい。PD-L1の発現は、当業者に公知の技法を使用する決定が可能であり、例えば、免疫組織化学(IHC)により評価されうる。
【0272】
腫瘍又はがんは、特に、肺がんでありうる。肺がんは、非小細胞肺がん(NSCLC)、例えば、扁平上皮NSCLC又は非扁平上皮NSCLCでありうる。肺がんは、100,000人当たりの推定年齢標準化発生率を22.4例とする、2番目に最もよく見られる悪性腫瘍であり、男女のいずれについても、がんによる最大の死因である(Kantar、2021)。2020年には、全世界で、約2,206,771例の新たな肺がん症例、及び1,796,144例の死亡例が推定されている(GLOBOCAN、2020)。非小細胞肺がん(NSCLC)は、全症例のうちの85%~90%を占め、全病期にわたる5年生存率は約18%であり、転移性疾患はわずかに3.5%である(Jemalら、2011)(Kantar、2021;SEER、2018)。1Lの状況において、処置は、典型的に、腫瘍についての分子/バイオマーカー解析及び組織学に応じて、免疫療法、又はターゲティング療法と組み合わせた、白金ベースの化学療法からなる(NCCN、2021d)。より近年において、PD-1阻害剤及びプログラム死リガンド1(PD-L1)阻害剤の出現は、駆動性突然変異を伴わない患者についての転帰を改善した(非扁平上皮集団のうちの約62%、及び扁平上皮集団のうちの77%(Kantar、2021))。腫瘍がある特定の発がん性突然変異を保有しないか、又はチェックポイント阻害剤(CPI)選択肢のためのバイオマーカーを発現させない患者のために、さらなる処置代替法が必要とされている。応答を増強する補完的手法との新規の組合せは、この集団において満たされていない必要にさらに対処しうる。第2選択治療状況にある患者のために、SOCは、白金ベースの化学療法、CPI単剤療法、又は施された既往の治療に応じて、ラムシルマブを伴うか、又はこれを伴わないドセタキセルに限定される。第3選択治療(3L)状況にある患者のためには、化学療法による単剤療法が標準治療である。この集団において、毒性を制限し、効能を潜在的に増強するための新規の療法が必要とされている(NCCN、2021d)。
【0273】
腫瘍又はがんが、肺がんである一実施形態では、この腫瘍又はがんは、非小細胞肺がん(NSCLC)、例えば、扁平上皮NSCLC又は非扁平上皮NSCLCである。腫瘍又はがんは、特に、転移性がん、例えば、転移性NSCLCでありうる。
【0274】
腫瘍又はがんが、肺がん、特に、NSCLCである一実施形態では、腫瘍又はがんは、表皮増殖因子(EGFR)感作性突然変異、及び/又は未分化リンパ腫(ALK)転座/ROS1再配列を有さない。EGFR感作性突然変異とは、承認されているチロシンキナーゼ阻害剤(TKI)による処置に適する突然変異である。
【0275】
腫瘍又はがんが、肺がん、特に、NSCLCである一実施形態では、腫瘍又はがんは、がん細胞を含み、PD-L1は、がん細胞のうちの≧1%において発現される。このような発現は、当業者に公知である任意の手段及び方法、例えば、例えば、局所SOC試験(好ましくはFDA承認試験)により、又は中央検査室において決定される免疫組織化学(IHC)により決定されうる。
【0276】
腫瘍又はがんが、肺がん、特に、NSCLCである一実施形態では、腫瘍又はがんは、がん細胞を含み、PD-L1は、がん細胞のうちの1%~49%において発現される。このような発現は、当業者に公知である任意の手段及び方法、例えば、例えば、局所SOC試験(好ましくはFDA承認試験)により、又は中央検査室において決定される免疫組織化学(IHC)により決定されうる。
【0277】
腫瘍又はがんが、肺がん、特に、NSCLCである一実施形態では、腫瘍又はがんは、がん細胞を含み、PD-L1は、がん細胞のうちの≧50%において発現される。このような発現は、当業者に公知である任意の手段及び方法、例えば、例えば、局所SOC試験(好ましくはFDA承認試験)により、又は中央検査室において決定される免疫組織化学(IHC)により決定されうる。
【0278】
一実施形態では、対象は、転移性疾患に対する既往の全身処置を施されていない、すなわち、対象は、本発明に従う処置を施される前に、転移性疾患に対する任意の全身処置を施されていない。この実施形態に従い、腫瘍又はがんは、好ましくは、肺がん、例えば、NSCLCである。
【0279】
一実施形態では、対象は、チェックポイント阻害剤/免疫チェックポイント(ICP)阻害剤による既往の処置を施されていない、すなわち、第1の態様に従う処置の前に、対象は、ICP阻害剤による処置を施されていない。さらなる実施形態では、対象は、PD-1阻害剤又はPD-L1阻害剤、例えば、抗PD-1抗体又は抗PD-L1抗体による既往の処置を施されていない。これらの実施形態では、腫瘍又はがんは、好ましくは、肺がん、例えば、NSCLCである。
【0280】
さらなる実施形態では、対象は、4-1BB(CD137)ターゲティング剤、抗腫瘍ワクチン、又は自家細胞免疫療法による既往の処置を施されていない。一実施形態では、対象は、抗4-1BB(CD137)抗体による既往の処置を施されていない。これらの実施形態では、腫瘍又はがんは、好ましくは、肺がん、例えば、NSCLCである。
【0281】
他の実施形態では、腫瘍又はがんは、処置、例えば、チェックポイント阻害剤による全身処置の後で再発しており、不応性である/再発しているか、又は不応性である。
【0282】
対象は、少なくとも1つの既往の全身選択治療、例えば、PD-1阻害剤又はPD-L1阻害剤、例えば、抗PD-1抗体又は抗PD-L1抗体を含む全身治療を施されている場合がある。がん又は腫瘍は、特に、単剤療法又は組合せ療法の一部として投与されるPD-1阻害剤又はPD-L1阻害剤、例えば、抗PD-1抗体又は抗PD-L1抗体、PD-1阻害剤又はPD-L1阻害剤による処置の後で再発しており、不応性である/再発しているか、若しくは不応性であるか、又は対象は、この後で進行している。
【0283】
特定の実施形態では、本発明に従う処置は、既往の処置を施されている対象;例えば、上記で規定された通り、最後の既往の処置が、単剤療法又は組合せ療法の一部として投与されるPD1阻害剤又はPD-L1阻害剤、例えば、抗PD-1抗体又は抗PD-L1抗体、PD-1阻害剤又はPD-L1阻害剤による処置であった対象へと施される。最後の既往の処置は、上記で規定されたPD1阻害剤又はPD-L1阻害剤による処置でありうる。
【0284】
好ましくは、本発明に従う治療は、PD1阻害剤又はPD-L1阻害剤、例えば、抗PD-1抗体又は抗PD-L1抗体、PD-1阻害剤又はPD-L1阻害剤による最後の処置時における、この対象の進行からの時間が、8カ月間以下、例えば、7カ月間以下、6カ月間以下、5カ月間以下、4カ月間以下、3カ月間以下、2カ月間以下、1カ月間以下、3週間以下、又は、例えば、2週間以下である場合に、対象へと施される。
【0285】
類比により述べると、最後の既往の処置の一部としての、PD1阻害剤又はPD-L1阻害剤、例えば、抗PD-1抗体又は抗PD-L1抗体の最後の投与からの時間が、8カ月間以下、例えば、7カ月間以下、6カ月間以下、5カ月間以下、4カ月間以下、3カ月間以下、2カ月間以下、1カ月間以下、3週間以下、又は、例えば、2週間以下である場合に、本発明に従う治療を、対象へと施すことが好ましい場合がある。
【0286】
さらなる実施形態では、がん又は腫瘍は、再発しており、不応性である/再発しているか、若しくは不応性であるか、又は対象は、
i)抗PD-1抗体又は抗PD-L1抗体による処置に続く、白金併用化学療法、若しくは
ii)白金併用化学療法に続く、抗PD-1抗体又は抗PD-L1抗体による処置
の期間中に、若しくはこの後で進行している。
【0287】
これらの実施形態でもまた、腫瘍又はがんは、好ましくは、肺がん、例えば、NSCLCである。
【0288】
本発明に従う処置を施される対象は、特に、タキサン系化学療法剤による既往の処置;例えば、ドセタキセル又はパクリタキセル、例えば、タキサン系化学療法剤、例えば、ドセタキセルによる、NSCLCの既往の処置を施されていない対象でありうる。
【0289】
処置レジメン
結合剤及びPD-1阻害剤は、任意の適する形により投与されうる、例えば、静脈内投与、動脈内投与、皮下投与、皮内投与、筋内投与、リンパ節内投与、又は腫瘍内投与されうる。
【0290】
第1の態様についての一実施形態では、上記で規定された結合剤は、対象へと全身投与により投与される。好ましくは、結合剤は、対象へと静脈内注射又は静脈内注入により投与される。一実施形態では、結合剤は、少なくとも1つの処置サイクルで投与される。
【0291】
一実施形態では、PD-1に結合する抗体又はその抗原結合性断片は、特に、対象へと全身投与により投与される。好ましくは、PD-1に結合する抗体又はその抗原結合性断片は、対象へと静脈内注射又は静脈内注入により投与される。一実施形態では、PD-1に結合する抗体又はその抗原結合性断片は、少なくとも1つの処置サイクルで投与される。
【0292】
一実施形態では、上記で規定された結合剤、及びPD-1に結合する抗体又はその抗原結合性断片は、特に、対象へと全身投与により投与される。好ましくは、結合剤、及びPD-1に結合する抗体又はその抗原結合性断片は、対象へと静脈内注射又は静脈内注入により投与される。一実施形態では、結合剤、及びPD-1に結合する抗体又はその抗原結合性断片は、少なくとも1つの処置サイクルで投与される。
【0293】
一実施形態では、各処置サイクルは、約2週間(14日間)、3週間(21日間)、又は4週間(28日間)、5週間(35日間)、又は6週間(48日間)である。好ましい実施形態では、各処置サイクルは、3週間(21日間)である。他の好ましい実施形態では、各処置サイクルは、6週間(48日間)である。
【0294】
特定の実施形態では、上記で規定された結合剤の1回の用量、及びPD-1に結合する抗体又はその抗原結合性断片の1回の用量は、2週間ごとに(1Q2W)、3週間ごとに(1Q3W)、又は4週間ごとに(1Q4W)、5週間ごとに(1Q5W)、好ましくは3週間ごとに(1Q3W)投与又は注入される。他の実施形態では、上記で規定された結合剤の1回の用量、及びPD-1に結合する抗体又はその抗原結合性断片の1回の用量は、6週間ごとに(1Q6W)投与される。結合剤の量、及びPD-1に結合する抗体又はその抗原結合性断片の量は、好ましくは、上記で規定された通りである。
【0295】
一部の実施形態では、1回の用量又は各回の用量は、各処置サイクルの1日目に投与又は注入される。例えば、上記で規定された結合剤の1回の用量、及びPD-1に結合する抗体又はその抗原結合性断片の1回の用量は、各処置サイクルの1日目に投与されうる。
【0296】
一部の実施形態では、上記で規定された結合剤の100mgの用量、及びPD-1に結合する抗体又はその抗原結合性断片の200mgの用量は、3週間ごとに(1Q3W)投与される。
【0297】
他の実施形態では、上記で規定された結合剤の100mgの用量、及びPD-1に結合する抗体又はその抗原結合性断片の400mgの用量は、6週間ごとに(1Q6W)投与される。
【0298】
特定の実施形態では、アカスンリマブ又はそのバイオシミラーである結合剤の100mgの用量、及びペムブロリズマブ又はそのバイオシミラーである、PD-1に結合する抗体又はその抗原結合性断片の200mgの用量は、3週間ごとに(1Q3W)、例えば、3週間の各処置サイクルの1日目に投与される。
【0299】
特定の実施形態では、腫瘍又はがんは、NSCLCであり;アカスンリマブ又はそのバイオシミラーである結合剤の100mgの用量、及びペムブロリズマブ又はそのバイオシミラーである、PD-1に結合する抗体又はその抗原結合性断片の200mgの用量は、3週間ごとに(1Q3W)、例えば、3週間の各処置サイクルの1日目に投与される。
【0300】
他の実施形態では、アカスンリマブ又はそのバイオシミラーである結合剤の100mgの用量、及びペムブロリズマブ又はそのバイオシミラーである、PD-1に結合する抗体又はその抗原結合性断片の400mgの用量は、6週間ごとに(1Q6W)、例えば、6週間の処置サイクルごとの1日目に投与される。
【0301】
さらに他の実施形態では、腫瘍又はがんは、NSCLCであり;この場合、アカスンリマブ又はそのバイオシミラーである結合剤の100mgの用量、及びペムブロリズマブである、PD-1に結合する抗体又はその抗原結合性断片の400mgの用量は、6週間ごとに(1Q6W)、例えば、6週間の処置サイクルごとの1日目に投与される。
【0302】
PD-1に結合する抗体又はその抗原結合性断片が、まず投与され、これに続き、結合剤が投与される場合がある。代替的に、結合剤が、まず投与され、これに続き、PD-1に結合する抗体又はその抗原結合性断片が投与される。
【0303】
各回の投与は、最小で30分間にわたり、例えば、最小で60分間、最小で90分間、最小で120分間、又は最小で240分間にわたり投与又は注入されうる。
【0304】
結合剤は、特に、静脈内(IV)注入を、30分間にわたり、例えば、最小で40分間、最小で50分間にわたり、又は、例えば、最小で60分間にわたり使用することにより投与されうる。
【0305】
PD-1に結合する抗体又はその抗原結合性断片は、特に、30分間にわたる、例えば、最小で40分間、最小で50分間にわたる、又は、例えば、最小で60分間にわたる静脈内注入として投与されうる。
【0306】
上記で規定された結合剤、及びPD-1に結合する抗体又はその抗原結合性断片は、同時に投与されうる。代替的な好ましい実施形態では、結合剤及びPD-1阻害剤は、個別に投与される。
【0307】
上記で規定された結合剤、及びPD-1に結合する抗体又はその抗原結合性断片は、任意の適切な形態(例えば、それ自体としてのネイキッド形態)で投与されうる。しかし、結合剤及びPD-1阻害剤は、本明細書で記載される任意の適切な医薬組成物の形態で投与されることが好ましい。一実施形態では、少なくとも結合剤、及びPD-1に結合する抗体又はその抗原結合性断片は、個別の医薬組成物形態(すなわち、結合剤のための1つの医薬組成物、及びPD-1に結合する抗体又はその抗原結合性断片のための1つの医薬組成物)で投与され、好ましくは、結合剤、及びPD-1に結合する抗体又はその抗原結合性断片は、個別の医薬組成物形態(すなわち、結合剤のための1つの医薬組成物、及びPD-1に結合する抗体又はその抗原結合性断片のための1つの医薬組成物)で投与される。
【0308】
組成物又は医薬組成物は、担体、賦形剤、及び/又は希釈剤のほか、常套的技法、例えば、Remington、「The Science and Practice of Pharmacy」、19版、Gennaro版、Mack Publishing Co.、Easton、PA、1995において開示された技法に従う、公知のアジュバントを含む、医薬組成物に適する、他の任意の成分と共に製剤化されうる。薬学的に許容される担体又は希釈剤のほか、任意の公知のアジュバント及び賦形剤は、PD-1に結合する結合剤及び/又は抗体若しくは抗原結合性断片、並びに選び出された投与方式に適するものとする。医薬組成物の担体及び他の成分の適性は、選び出された化合物又は医薬組成物の所望の生物学的特性に対する著明な負の影響の欠如(例えば、抗原への結合に対する実質的影響未満の影響[10%以下の相対的阻害、5%以下の相対的阻害など])に基づき決定される。
【0309】
組成物、特に、上記で規定された結合剤による医薬組成物である、PD-1に結合する抗体又はその抗原結合性断片による医薬組成物は、希釈剤、充填剤、塩、緩衝剤、洗浄剤(例えば、非イオン性洗浄剤、例えば、Tween-20又はTween-80)、安定化剤(例えば、糖又はタンパク質非含有アミノ酸)、保存剤、可溶化剤、及び/又は医薬組成物中の組入れに適する他の材料を含みうる。
【0310】
薬学技術分野では、治療的使用のための、薬学的に許容される担体、賦形剤、又は希釈剤が周知であり、例えば、「Remington's Pharmaceutical Sciences」、Mack Publishing Co.(A. R Gennaro編、1985)において記載されている。
【0311】
医薬担体、医薬賦形剤、又は医薬希釈剤は、意図される投与経路及び標準的な薬学的慣行に照らして選択されうる。
【0312】
薬学的に許容される担体は、活性化合物、特に、上記で規定された結合剤、及びPD-1に結合する抗体又はその抗原結合性断片と生理学的に適合性である、任意の適切な溶媒、分散媒、コーティング、抗菌剤及び抗真菌剤、等張剤、抗酸化剤、及び吸収遅延剤、並びに全てのこれらの薬剤などを含む。
【0313】
(医薬)組成物で援用されうる適切な水性担体及び非水性担体の例は、水、生理食塩液、リン酸緩衝生理食塩液、エタノール、デキストロース、ポリオール(例えば、グリセロール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコールなど)、及びこれらの適切な混合物、植物油、例えば、オリーブ油、トウモロコシ油、ラッカセイ油、綿実油、及びゴマ油、カルボキシメチルセルロースコロイド溶液、トラガントガム、並びに注射用有機エステル、例えば、オレイン酸エチル、並びに/又は多様な緩衝剤を含む。薬学技術分野では、他の担体も周知である。
【0314】
薬学的に許容される担体は、滅菌注射用溶液又は滅菌注射用分散液の即席調製のための、滅菌水溶液又は滅菌分散液及び滅菌粉末を含む。当技術分野では、薬学的活性物質のための、このような媒体及び薬剤の使用が公知である。任意の常套的な媒体又は薬剤が、活性化合物に対して不適合である場合を除き、(医薬)組成物におけるその使用が企図される。
【0315】
本明細書で使用される「賦形剤」という用語は、本開示の(医薬)組成物中に存在しうるが、有効成分ではない物質を指す。賦形剤の例は、限定せずに述べると、担体、結合剤、希釈剤、滑沢剤、増稠剤、界面活性剤、保存剤、安定化剤、乳化剤、緩衝剤、芳香剤、又は着色剤を含む。
【0316】
「希釈剤」という用語は、希釈化及び/又は希薄化剤に関する。さらに、「希釈剤」という用語は、流体、液体、若しくは固体の懸濁体、及び/又は混合媒体のうちの、任意の1つ以上を含む。適切な希釈剤の例は、エタノール、グリセロール、及び水を含む。
【0317】
(医薬)組成物はまた、薬学的に許容される抗酸化剤、例えば、(1)水溶性抗酸化剤、例えば、アスコルビン酸、塩酸システイン、重硫酸ナトリウム、メタ重亜硫酸ナトリウム、亜硫酸ナトリウムなど;(2)油溶性抗酸化剤、例えば、パルミチン酸アスコルビル、ブチル化ヒドロキシアニゾール(BHA)、ブチル化ヒドロキシトルエン(BHT)、レシチン、没食子酸プロピル、アルファ-トコフェロールなど;及び(3)金属キレート剤、例えば、クエン酸、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、ソルビトール、酒石酸、リン酸などを含む場合もある。
【0318】
(医薬)組成物はまた、組成物中に、等張剤、例えば、糖、ポリアルコール、例えば、マンニトール、ソルビトール、グリセロール、又は塩化ナトリウムも含みうる。
【0319】
(医薬)組成物はまた、選び出された投与経路に適切な1つ以上のアジュバント、例えば、組成物の保管寿命又は有効性を増強しうる保存剤、保湿剤、乳化剤、分散剤、及び保存剤、又は緩衝剤も含有しうる。本明細書で使用される組成物は、化合物を、急速な放出に対して保護する担体、例えば、インプラント、経皮パッチ、及びマイクロカプセル化送達システムを含む制御放出製剤と共に調製されうる。このような担体は、ゼラチン、モノステアリン酸グリセリン、ジステアリン酸グリセリル、生体分解性ポリマー、生体適合性ポリマー、例えば、エチレン酢酸ビニル、ポリ無水物、ポリグリコール酸、コラーゲン、ポリオルトエステル、及びポリ乳酸を、単独で、又は蝋若しくは当技術分野で周知の他の材料と共に含みうる。このような製剤を調製する方法が当業者に公知であり、例えば、「Sustained and Controlled Release Drug Delivery Systems」、J. R.Robinson編、Marcel Dekker,Inc.、New York、1978年を参照されたい。
【0320】
「薬学的に許容される塩」は、例えば、薬学的に許容される酸、例えば、塩酸、硫酸、フマル酸、マレイン酸、コハク酸、酢酸、安息香酸、クエン酸、酒石酸、カルボン酸、又はリン酸を使用することにより形成されうる、例えば、酸添加塩を含む。さらに、薬学的に許容される適切な塩は、アルカリ金属塩(例えば、ナトリウム塩又はカリウム塩);アルカリ土類金属塩(例えば、カルシウム塩又はマグネシウム塩);アンモニウム塩(NH4 +);及び適切な有機リガンド(例えば、対アニオン、例えば、ハロゲン化物イオン、水酸化物イオン、カルボン酸イオン、硫酸イオン、リン酸イオン、硝酸イオン、スルホン酸アルキルイオン、及びスルホン酸アリールイオンを使用して形成される四級アンモニウム及びアミンカチオン)により形成される塩を含みうる。薬学的に許容される塩の例示的な例は、酢酸塩、アジピン酸塩、アルギン酸塩、アルギニン酸塩、アスコルビン酸塩、アスパラギン酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、安息香酸塩、重炭酸塩、重硫酸塩、重酒石酸塩、ホウ酸塩、臭化物塩、酪酸塩、エデト酸カルシウム、樟脳、カンファースルホン酸塩、カンシル酸、炭酸塩、塩化物塩、クエン酸塩、クラブラン酸塩、シクロペンタンプロピオン酸塩、ジグルコン酸塩、二塩酸塩、ドデシル硫酸塩、エデト酸塩、エジシル酸塩、エストレート、エシル酸塩、エタンスルホン酸塩、ギ酸塩、フマル酸塩、ガラクテート、ガラクツロン酸塩、グルセプト酸塩、グルコヘプトン酸塩、グルコン酸塩、グルタミン酸塩、グリセロリン酸塩、グリコシルアルサニル酸塩、ヘミ硫酸塩、ヘプタン酸塩、ヘキサン酸塩、ヘキシルレゾルシネート、ヒドラバミン、臭化水素酸塩、塩酸塩、ヨウ化水素酸塩、2-ヒドロキシエタンスルホン酸塩、ヒドロキシナフトエート、ヨウ化物塩、イソ酪酸塩、イソチオン酸塩、ヒドロキシナフトエート、ヨウ化物塩、イソ酪酸塩、イソチオン酸塩、乳酸塩、ラクトビオン酸塩、ラウリン酸塩、ラウリル硫酸塩、リンゴ酸塩、マレイン酸塩、マロン酸塩、マンデリン酸塩、メシル酸塩、メタンスルホン酸塩、硫酸メチル、ムチン酸塩、2-ナフタレンスルホン酸塩、ナプシル酸塩、ニコチン酸塩、硝酸塩、N-メチルグルカミンアンモニウム塩、オレイン酸塩、シュウ酸塩、パモ酸塩(エンボネート)、パルミチン酸塩、パントテン酸塩、ペクチン酸塩、過硫酸塩、3-フェニルプロピオン酸塩、リン酸塩/二リン酸塩、フタル酸塩、ピクリン酸塩、ピバル酸塩、ポリガラクツロン酸塩、プロピオン酸塩、サリチル酸塩、ステアリン酸塩、硫酸塩、スベリン酸塩、コハク酸塩、タンニン酸塩、酒石酸塩、テオクル酸塩、トシル酸塩、トリエチオジド、ウンデカン酸塩、吉草酸塩などを含むがこれらに限定されない(例えば、S. M.Bergeら、「Pharmaceutical Salts」、J. Pharm.Sci.、66、1~19頁(1977)を参照されたい)。薬学的に許容されない塩も、薬学的に許容される塩を調製するために使用される場合があり、本開示に組み入れられる。
【0321】
一実施形態では、本明細書で使用される結合剤及びPD-1阻害剤は、in vivoにおける適正な分布を確保するように製剤化されうる。非経口投与のための薬学的に許容される担体は、滅菌注射用溶液又は滅菌注射用分散液の即席調製のための、滅菌水溶液又は滅菌分散液及び滅菌粉末を含む。当技術分野では、薬学的活性物質のための、このような媒体及び薬剤の使用が公知である。任意の常套的な媒体又は薬剤が、活性化合物に対して不適合である場合を除き、組成物におけるその使用が企図される。他の活性化合物又は治療用化合物もまた、組成物へと組み込まれうる。
【0322】
注射のための医薬組成物は、典型的に、製造条件下及び保管条件下において無菌的であり安定でなければならない。組成物は、溶液、マイクロエマルジョン、リポソーム、又は高薬物濃度に適する他の秩序構造として製剤化されうる。担体は、例えば、水、エタノール、ポリオール(例えば、グリセロール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコールなど)、及びこれらの適切な混合物、植物油、例えば、オリーブ油及び注射用有機エステル、例えば、オレイン酸エチルを含有する水性溶媒の場合もあり、非水性溶媒の場合もあり、分散媒の場合もある。適正な流体性は、例えば、コーティング、例えば、レシチンを使用することにより、分散液の場合に要求される粒子サイズを維持し、界面活性剤を使用することにより維持されうる。多くの場合、組成物中に、等張剤、例えば、糖、ポリアルコール、例えば、グリセロール、マンニトール、ソルビトール、又は塩化ナトリウムを含むことが好ましいであろう。注射用組成物の遅延吸収は、組成物中に吸収を遅延させる薬剤、例えば、モノステアリン酸塩及びゼラチンを組み入れることによりもたらされうる。滅菌注射用溶液は、活性化合物を、適切な溶媒中に、要求量において、要求に応じて、例えば、上記で列挙された成分のうちの1つ又は組合せと共に組み込むのに続き、濾過滅菌を行うことにより調製されうる。一般に、分散液は、活性化合物を、基本分散媒と、例えば、上記で列挙された成分に由来する他の要求成分とを含有する滅菌媒体へと組み込むことにより調製される。滅菌注射用溶液を調製するための滅菌粉末の場合、好ましい調製方法は、あらかじめ滅菌濾過された溶液から、有効成分に、任意のさらなる所望の成分を加えた粉末をもたらす、真空乾燥及び凍結乾燥(冷凍乾燥)である。
【0323】
滅菌注射用溶液は、適切な溶媒中に、活性化合物を、要求量において、要求に応じて、上記で列挙された成分のうちの1つ又は組合せと共に、組み込むのに続き、濾過滅菌を施すことにより調製されうる。一般に、分散液は、活性化合物を、基本分散媒、及び上記で列挙された他の成分に由来する他の要求成分を含有する滅菌媒体へと組み込むことにより調製される。滅菌注射用溶液を調製するための滅菌粉末の場合、調製法の例は、有効成分に、任意のさらなる所望の成分を加えた粉末を、既に滅菌濾過されたその溶液からもたらす、真空乾燥及び凍結乾燥(冷凍乾燥)である。
【0324】
ある特定の実施形態では、本発明に従う使用のための結合剤は、ヒスチジン、スクロース、及びポリソルベート80を含み、pHが約5~約6、例えば、5~6である組成物又は製剤により製剤化される。特に、本発明に従う使用のための結合剤は、約20mMのヒスチジン、約250mMのスクロース、約0.02%のポリソルベート80を含み、pHが約5.5である組成物中又は製剤中の結合剤、例えば、20mMのヒスチジン、250mMのスクロース、0.02%のポリソルベート80を含み、pHが5.5である組成物中又は製剤中の結合剤でありうる。特定の実施形態では、製剤は、1mL当たりの結合剤約10~約30mg、例えば、1mL当たりの結合剤10~30mg、特に、1mL当たりの結合剤約20mg、例えば、1mL当たりの結合剤20mgを含みうる。
【0325】
本発明に従う使用のための結合剤は、上記で規定された組成物により提供され、次いで、投与の前に、0.9%のNaCl(生理食塩液)中で希釈されうる。
【0326】
第2の態様では、本開示は、
(i)CD137に結合する第1の結合性領域、及びPD-L1に結合する第2の結合性領域を含み、
a)第1の結合性領域が、それぞれ配列番号2、3、及び4に示されたCDR1、CDR2、及びCDR3の配列を含む重鎖可変領域(VH)、並びにそれぞれ配列番号6、7、及び8に示されたCDR1、CDR2、及びCDR3の配列を含む軽鎖可変領域(VL)を含み、
b)第2の抗原結合性領域が、それぞれ配列番号12、13、及び14に示されたCDR1、CDR2、及びCDR3の配列を含む重鎖可変領域(VH)、並びにそれぞれ配列番号16、17、及び18に示されたCDR1、CDR2、及びCDR3の配列を含む軽鎖可変領域(VL)を含む
結合剤;並びに
(ii)PD-1活性を阻害し、それぞれ配列番号43、44、及び45に示されたCDR1、CDR2、及びCDR3の配列を含む重鎖可変領域(VH)、並びにそれぞれ配列番号46、47、及び48に示されたCDR1、CDR2、及びCDR3の配列を含む軽鎖可変領域(VL)を含むか、又は抗体が、それぞれ配列番号62、63、及び64に示されたCDR1、CDR2、及びCDR3の配列を含む重鎖可変領域(VH)、並びにそれぞれ配列番号65、66、及び67に示されたCDR1、CDR2、及びCDR3の配列を含む軽鎖可変領域(VL)を含む、PD-1に結合する抗体又はその抗原結合性断片
を含むキットを提供する。
【0327】
第1の態様(特に、結合剤、及びPD-1に結合する抗体又はその抗原結合性断片に関する)に関して、本明細書で開示される実施形態もまた、第2の態様のキットに当てはまる。一実施形態では、キットは、少なくとも2つの容器を含み、この場合、それらのうちの1つが、結合剤(それ自体としての、又は(医薬)組成物の形態における)を含有し、第2の容器が、PD-1に結合する抗体又はその抗原結合性断片(それ自体としての、又は(医薬)組成物の形態における)を含有する。
【0328】
第3の態様では、本開示は、対象における腫瘍の進行を軽減若しくは防止するか、又はがんを処置する方法における使用のための、第2の態様のキットを提供する。第1の態様(特に、結合剤、PD-1阻害剤、処置レジメン、特異的腫瘍/がん、及び対象に関する)及び/又は第2の態様に関して、本明細書で開示される実施形態もまた、第3の態様の使用のためのキットに当てはまる。
【0329】
第4の態様では、本開示は、対象における腫瘍の進行を軽減若しくは防止するか、又はがんを処置する方法であって、PD-1に結合する抗体又はその抗原結合性断片の投与の前に、これと同時に、又はこの後に、前記対象へと結合剤を投与するステップを含み、結合剤が、CD137に結合する第1の結合性領域、及びPD-L1に結合する第2の結合性領域を含み;
a)第1の結合性領域が、それぞれ配列番号2、3、及び4に示されたCDR1、CDR2、及びCDR3の配列を含む重鎖可変領域(VH)、並びにそれぞれ配列番号6、7、及び8に示されたCDR1、CDR2、及びCDR3の配列を含む軽鎖可変領域(VL)を含み;
b)第2の抗原結合性領域が、それぞれ配列番号12、13、及び14に示されたCDR1、CDR2、及びCDR3の配列を含む重鎖可変領域(VH)、並びにそれぞれ配列番号16、17、及び18に示されたCDR1、CDR2、及びCDR3の配列を含む軽鎖可変領域(VL)を含み、
抗体が、PD-1活性を阻害し、それぞれ配列番号43、44、及び45に示されたCDR1、CDR2、及びCDR3の配列を含む重鎖可変領域(VH)、並びにそれぞれ配列番号46、47、及び48に示されたCDR1、CDR2、及びCDR3の配列を含む軽鎖可変領域(VL)を含むか、又は抗体が、それぞれ配列番号62、63、及び64に示されたCDR1、CDR2、及びCDR3の配列を含む重鎖可変領域(VH)、並びにそれぞれ配列番号65、66、及び67に示されたCDR1、CDR2、及びCDR3の配列を含む軽鎖可変領域(VL)を含む
方法を提供する。
【0330】
第1の態様(特に、結合剤、PD-1阻害剤、処置レジメン、特異的腫瘍/がん、及び対象に関する)に関して、本明細書で開示される実施形態もまた、第4の態様の方法に当てはまる。
【0331】
さらなる態様では、本開示は、対象における腫瘍の進行を軽減若しくは防止するか、又はがんを処置する方法であって、PD-1に結合する抗体又はその抗原結合性断片の投与の前に、これと同時に、又はこの後に、前記対象へとPD-1阻害剤を投与するステップを含み、
抗体が、それぞれ配列番号43、44、及び45に示されたCDR1、CDR2、及びCDR3の配列を含む重鎖可変領域(VH)、並びにそれぞれ配列番号46、47、及び48に示されたCDR1、CDR2、及びCDR3の配列を含む軽鎖可変領域(VL)を含むか、又は抗体が、それぞれ配列番号62、63、及び64に示されたCDR1、CDR2、及びCDR3の配列を含む重鎖可変領域(VH)、並びにそれぞれ配列番号65、66、及び67に示されたCDR1、CDR2、及びCDR3の配列を含む軽鎖可変領域(VL)を含み、
結合剤が、CD137に結合する第1の結合性領域、及びPD-L1に結合する第2の結合性領域を含み、
a)第1の結合性領域が、それぞれ配列番号2、3、及び4に示されたCDR1、CDR2、及びCDR3の配列を含む重鎖可変領域(VH)、並びにそれぞれ配列番号6、7、及び8に示されたCDR1、CDR2、及びCDR3の配列を含む軽鎖可変領域(VL)を含み、
b)第2の抗原結合性領域が、それぞれ配列番号12、13、及び14に示されたCDR1、CDR2、及びCDR3の配列を含む重鎖可変領域(VH)、並びにそれぞれ配列番号16、17、及び18に示されたCDR1、CDR2、及びCDR3の配列を含む軽鎖可変領域(VL)を含む
方法における使用のための、PD-1に結合する抗体又はその抗原結合性断片を提供する。
【0332】
第1の態様(特に、結合剤、PD-1阻害剤、場合による1つ以上のさらなる治療剤、処置レジメン、特異的腫瘍/がん、及び対象に関する)に関して、本明細書で開示される実施形態もまた、このさらなる態様の使用のためのPD-1阻害剤に当てはまる。
【0333】
本明細書で参照される文献及び研究の引用は、前述のうちのいずれかが、関連の先行技術であることの容認としては意図されない。これらの文献の内容についての、全ての言明は、本出願人らに入手可能な情報に基づくものであり、これらの文献の内容の正確さについての、いかなる容認も構成しない。
【0334】
本記載(以下の例を含む)は、当業者が、多様な実施形態を行い、使用することを可能とするように提示される。具体的なデバイス、技法、及び適用についての記載は、例としてだけ提供される。当業者には、本明細書で記載される例に対する多様な改変がたやすく明らかとなり、本明細書で規定される、一般的原理は、多様な実施形態の精神及び範囲から逸脱しない限りにおいて、他の例及び適用へも適用されうる。したがって、多様な実施形態は、本明細書で記載され、示される例に限定されることを意図されず、特許請求の範囲と符合する範囲を与えられるものとする。
【0335】
本開示の項目
1.対象において腫瘍の進行を軽減もしくは阻止するかまたはがんを処置するための方法における使用のための結合物質であって、該方法が、該対象に該結合物質を、プログラム死-1(PD-1)に結合する抗体、またはその抗原結合フラグメントの投与前に、投与と同時に、または投与後に投与することを含み、
ここで
該結合物質が、CD137に結合する第1結合領域ならびにPD-L1に結合する第2結合領域、
(a)配列番号2、3、および4にそれぞれ記載したCDR1、CDR2、およびCDR3配列を含む重鎖可変領域(VH)と、配列番号6、7、および8にそれぞれ記載したCDR1、CDR2、およびCDR3配列を含む軽鎖可変領域(VL)とを含む該第1結合領域、
ならびに
(b)配列番号12、13、および14にそれぞれ記載したCDR1、CDR2、およびCDR3配列を含む重鎖可変領域(VH)と、配列番号16、17、および18に記載したCDR1、CDR2、およびCDR3配列を含む軽鎖可変領域(VL)とを含む該第2抗原結合領域、
を含み、かつ
該PD-1に結合する抗体が、配列番号43、44および45にそれぞれ記載したCDR1、CDR2およびCDR3配列を含む重鎖可変領域(VH)と、配列番号46、47および48にそれぞれ記載したCDR1、CDR2、およびCDR3配列を含む軽鎖可変領域(VL)とを含むか、または該PD-1に結合する抗体が、配列番号62、63および64にそれぞれ記載したCDR1、CDR2およびCDR3配列を含む重鎖可変領域(VH)と、配列番号65、66および67にそれぞれ記載したCDR1、CDR2、およびCDR3配列を含む軽鎖可変領域(VL)とを含む、
上記結合物質。
【0336】
2.前記PD-1に結合する抗体またはその抗原結合フラグメントが、配列番号49のアミノ酸配列に対して少なくとも85%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む重鎖可変領域、および配列番号50のアミノ酸配列に対して少なくとも85%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域を含む、項目1に記載の使用のための結合物質。
【0337】
3.前記PD-1に結合する抗体またはその抗原結合フラグメントが、配列番号49のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域、および配列番号50のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域を含む、前述の項目のうちのいずれか1つに記載の使用のための結合物質。
【0338】
4.前記PD-1に結合する抗体またはその抗原結合フラグメントが、配列番号51のアミノ酸配列を含む重鎖、および配列番号52のアミノ酸配列を含む軽鎖を含む、前述の項目のうちのいずれか1つに記載の使用のための結合物質。
【0339】
5.前記PD-1に結合する抗体がペムブロリズマブまたはそのバイオシミラー(biosimilar)である、前述の項目のうちのいずれか1つに記載の使用のための結合物質。
【0340】
6.PD-L1がヒトPD-L1、特に配列番号40に記載した配列を含むヒトPD-L1であり、かつ/またはCD137がヒトCD137、特に配列番号38に記載した配列を含むヒトCD137である、前述の項目のうちのいずれか1つに記載の使用のための結合物質。
【0341】
7.前記結合物質の前記第1結合領域が、配列番号1または9に対して少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%、少なくとも99%、または100%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む重鎖可変領域(VH)、および配列番号5または10に対して少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%、少なくとも99%、または100%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域(VL)を含む、前述の項目のうちのいずれか1つに記載の使用のための結合物質。
【0342】
8.前記結合物質の前記第2結合領域が、配列番号11に対して少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%、少なくとも99%、または25 100%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む重鎖可変領域(VH)、および配列番号15に対して少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%、少なくとも99%、または100%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域(VL)を含む、前述の項目のうちのいずれか1つに記載の使用のための結合物質。
【0343】
9.前記結合物質の前記第1結合領域が、配列番号1または9に記載したアミノ酸配列を含む重鎖可変領域(VH)、および配列番号5または10に記載したアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域(VL)を含む、前述の項目のうちのいずれか1つに記載の使用のための結合物質。
【0344】
10.前記結合物質の前記第2結合領域が、配列番号11に記載したアミノ酸配列を含む重鎖可変領域(VH)、および配列番号15に記載したアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域(VL)を含む、前述の項目のうちのいずれか1つに記載の使用のための結合物質。
【0345】
11.以下(a)かつ(b)である、すなわち
(a)前記結合物質の前記第1結合領域が、配列番号1に記載したアミノ酸配列を含む重鎖可変領域(VH)、および配列番号5に記載したアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域(VL)を含み、
かつ
(b)前記結合物質の前記第2結合領域が、配列番号11に記載したアミノ酸配列を含む重鎖可変領域(VH)、および配列番号15に記載したアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域(VL)を含む、
前述の項目のうちのいずれか1つに記載の使用のための結合物質。
【0346】
12.前記結合物質が二重特異性抗体などの多重特異性抗体である、前述の項目のうちのいずれか1つに記載の使用のための結合物質。
【0347】
13.前記結合物質が全長抗体または抗体フラグメントの形式である、前述の項目のうちのいずれか1つに記載の使用のための結合物質。
【0348】
14.各可変領域が3つの相補性決定領域(CDR1、CDR2、およびCDR3)ならびに4つのフレームワーク領域(FR1、FR2、FR3、およびFR4)を含む、前述の項目のうちのいずれか1つに記載の使用のための結合物質。
【0349】
15.前記相補性決定領域および前記フレームワーク領域が、アミノ末端からカルボキシ末端に向かって次の順、すなわちFR1、CDR1、FR2、CDR2、FR3、CDR3、FR4の順に配置されている、項目13記載の使用のための結合物質。
【0350】
16.前記結合物質が、
(i)前記第1重鎖可変領域(VH)および第1重鎖定常領域(CH)を含む、前記第1重鎖可変領域(VH)および第1重鎖定常領域(CH)からなる、または本質的に前記第1重鎖可変領域(VH)および第1重鎖定常領域(CH)からなるポリペプチド、ならびに
(ii)前記第2重鎖可変領域(VH)および第2重鎖定常領域(CH)を含む、前記第2重鎖可変領域(VH)および第2重鎖定常領域(CH)からなる、または本質的に前記第2重鎖可変領域(VH)および第2重鎖定常領域(CH)からなるポリペプチド、
を含む、前述の項目のうちのいずれか1つに記載の使用のための結合物質。
【0351】
17.前記結合物質が、
(i)前記第1軽鎖可変領域(VL)を含みかつ第1軽鎖定常領域(CL)をさらに含むポリペプチド、および
(ii)前記第2軽鎖可変領域(VL)を含みかつ第2軽鎖定常領域(CL)をさらに含むポリペプチド
を含む、前述の項目のうちのいずれか1つに記載の使用のための結合物質。
【0352】
18.前記結合物質が第1結合アームおよび第2結合アームを含む抗体であり、ここで該第1結合アームが、
(i)前記第1重鎖可変領域(VH)および第1重鎖定常領域(CH)を含むポリペプチド、ならびに
(ii)前記第1軽鎖可変領域(VL)および第1軽鎖定常領域(CL)を含むポリペプチド
を含み、かつ該第2結合アームが
(iii)前記第2重鎖可変領域(VH)および第2重鎖定常領域(CH)を含むポリペプチド、ならびに
(iv)前記第2軽鎖可変領域(VL)および第2軽鎖定常領域(CL)を含むポリペプチド
を含む、前述の項目のうちのいずれか1つに記載の使用のための結合物質。
【0353】
19.前記結合物質が、
(i)CD137に結合する能力がある前記抗原結合領域を含む第1重鎖および軽鎖、ならびに
(ii)PD-L1に結合する能力がある前記抗原結合領域を含む第2重鎖および軽鎖
を含む、前述の項目のうちのいずれか1つに記載の使用のための結合物質。
【0354】
20.前記結合物質が、
(i)CD137に結合する能力がある前記抗原結合領域を含む第1重鎖および軽鎖、ここで該第1重鎖は第1重鎖定常領域を含み、かつ該第1軽鎖は第1軽鎖定常領域を含むものとする、ならびに
(ii)PD-L1に結合する能力がある前記抗原結合領域を含む第2重鎖および軽鎖、ここで該第2重鎖は第2重鎖定常領域を含み、かつ該第2軽鎖は第2軽鎖定常領域を含むものとする、
を含む、前述の項目のうちのいずれか1つに記載の使用のための結合物質。
【0355】
21.前記第1および第2重鎖定常領域(CH)の各々が、定常重鎖1(CH)領域、ヒンジ領域、定常重鎖2(CH2)領域および定常重鎖3(CH3)領域のうちの1つ以上、好ましくは少なくともヒンジ領域、CH2領域およびCH3領域を含む、項目16~20のいずれか1つに記載の使用のための結合物質。
【0356】
22.前記第1および第2重鎖定常領域(CH)の各々がCH3領域を含み、かつここでこれら2つのCH3領域が非対称性突然変異を含む、項目16~21のいずれか1つに記載の使用のための結合物質。
【0357】
23.前記第1重鎖定常領域(CH)において、EUナンバリングによるヒトIgG1重鎖中T366、L368、K370、D399、F405、Y407、およびK409からなる群より選択される位置に対応する位置にあるアミノ酸のうちの少なくとも1つが置換されており、かつ前記第2重鎖定常領域(CH)において、EUナンバリングによるヒトIgG1重鎖中T366、L368、K370、D399、F405、Y407、およびK409からなる群より選択される位置に対応する位置にあるアミノ酸のうちの少なくとも1つが置換されており、かつここで該第1および該第2重鎖は同じ位置では置換されない、項目16~21のいずれか1つに記載の使用のための結合物質。
【0358】
24.以下(i)または(ii)である、すなわち(i)EUナンバリングによるヒトIgG1重鎖中F405に対応する位置にあるアミノ酸が前記第1重鎖定常領域(CH)中ではLであり、かつEUナンバリングによるヒトIgG1重鎖中K409に対応する位置にあるアミノ酸が前記第2重鎖定常領域(CH)中ではRであるか、または(ii)EUナンバリングによるヒトIgG1重鎖中K409に対応する位置にあるアミノ酸が前記第1重鎖中ではRであり、かつEUナンバリングによるヒトIgG1重鎖中F405に対応する位置にあるアミノ酸が前記第2重鎖中ではLである、項目23記載の使用のための結合物質。
【0359】
25.前記結合物質が、同じ第1および第2抗原結合領域ならびにヒトIgG1ヒンジ、CH2およびCH3領域を含む2つの重鎖定常領域(CH)を含む別の抗体と比較して、Fc媒介性エフェクター機能をより低い程度に誘導する、前述の項目のうちのいずれか1つに記載の使用のための結合物質。
【0360】
26.前記抗体が、非改変第1および第2重鎖定常領域(CH)を含むことを除き同一である抗体と比較して、Fc媒介性エフェクター機能をより低い程度に誘導するように、前記第1および第2重鎖定常領域(CH)が改変されている、項目25記載の使用のための結合物質。
【0361】
27.前記非改変第1および第2重鎖定常領域(CH)の各々が、配列番号19または25に記載したアミノ酸配列を含む、項目26記載の使用のための結合物質。
【0362】
28.前記Fc媒介性エフェクター機能を、Fcγ受容体への結合、C1qへの結合、またはFcγ受容体のFe媒介性架橋の誘導により測定する、項目26または27記載の使用のための結合物質。
【0363】
29.前記Fc媒介性エフェクター機能をC1qへの結合により測定する、項目28記載の使用のための結合物質。
【0364】
30.前記第1および第2重鎖定常領域が、前記抗体へのC1qの結合が野生型抗体と比較して減少する、好ましくは少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%、または100%減少するように改変されており、ここでC1q結合を好ましくはELISAにより判定する、項目25~29のいずれか1つに記載の使用のための結合物質。
【0365】
31.前記第1および第2重鎖定常領域(CH)の少なくとも1つにおいて、EUナンバリングによるヒトIgG1重鎖中の位置L234、L235、D265、N297、およびP331に対応する位置にある1つ以上のアミノ酸が、それぞれL、L、D、N、およびPではない、前述の項目のうちのいずれか1つに記載の使用のための結合物質。
【0366】
32.EUナンバリングによるヒトIgG1重鎖中の位置L234およびL235に対応する位置が、前記第1および第2重鎖中ではそれぞれFおよびEである、項目31記載の使用のための結合物質。
【0367】
33.EUナンバリングによるヒトIgG1重鎖中の位置L234、L235、およびD265に対応する位置が、前記第1および第2重鎖定常領域(HC)中ではそれぞれF、E、およびAである、項目31または32記載の使用のための結合物質。
【0368】
34.前記第1および第2重鎖定常領域両方の、EUナンバリングによるヒトIgG1重鎖中の位置L234およびL235に対応する位置がそれぞれFおよびEであり、かつここで(i)該第1重鎖定常領域の、EUナンバリングによるヒトIgG1重鎖中のF405に対応する位置がLであり、かつ該第2重鎖の、EUナンバリングによるヒトIgG1重鎖中のK409に対応する位置がRであるか、または(ii)該第1重鎖定常領域の、EUナンバリングによるヒトIgG1重鎖中のK409に対応する位置がRであり、かつ該第2重鎖の、EUナンバリングによるヒトIgG1重鎖中のF405に対応する位置がLである、項目31~33のいずれか1つに記載の使用のための結合物質。
【0369】
35.前記第1および第2重鎖定常領域両方の、EUナンバリングによるヒトIgG1重鎖中の位置L234、L235、およびD265に対応する位置がそれぞれF、E、およびAであり、かつここで(i)該第1重鎖定常領域の、EUナンバリングによるヒトIgG1重鎖中のF405に対応する位置がLであり、かつ該第2重鎖定常領域の、EUナンバリングによるヒトIgG1重鎖中のK409に対応する位置がRであるか、または(ii)該第1重鎖の、EUナンバリングによるヒトIgG1重鎖中のK409に対応する位置がRであり、かつ該第2重鎖の、EUナンバリングによるヒトIgG1重鎖中のF405に対応する位置がLである、項目31~34のいずれか1つに記載の使用のための結合物質。
【0370】
36.前記第1および/または第2重鎖の定常領域が、
(a)配列番号19または25に記載した配列[IgG1-FC]、
(b)(a)の配列の部分配列(subsequence)、例えば(a)に定義した配列のN末端またはC末端から始まる1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個または10個の連続するアミノ酸が欠失している部分配列、および
(c)(a)または(b)に定義したアミノ酸配列と比較して、最大で10の置換、例えば最大で9の置換、最大で8、最大で7、最大で6、最大で5、最大で4、最大で3、最大で2の置換または最大で1の置換を有する配列
からなる群より選択されるアミノ酸配列を含むか、または本質的に該アミノ酸配列からなるか、または該アミノ酸配列からなる、項目16~35のいずれか1つに記載の使用のための結合物質。
【0371】
37.前記第1または第2重鎖の定常領域、例えば前記第2重鎖の定常領域が、
(a)配列番号20または26に記載した配列[IgG1-F405L]、
(b)(a)の配列の部分配列、例えば(a)に定義した配列のN末端またはC末端から始まる1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個または10個の連続するアミノ酸が欠失している部分配列、および
(c)(a)または(b)に定義したアミノ酸配列と比較して、最大で9の置換、例えば最大で8、最大で7、最大で6、最大で5、最大で4、最大で3、最大で2の置換または最大で1の置換を有する配列
からなる群より選択されるアミノ酸配列を含むか、または本質的に該アミノ酸配列からなるか、または該アミノ酸配列からなる、項目16~36のいずれか1つに記載の使用のための結合物質。
【0372】
38.前記第1または第2重鎖の定常領域、例えば前記第1重鎖の定常領域が、
(a)配列番号21または27に記載した配列[IgG1-K409R]、
(b)(a)の配列の部分配列、例えば(a)に定義した配列のN末端またはC末端から始まる1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個または10個の連続するアミノ酸が欠失している部分配列、および
(c)(a)または(b)に定義したアミノ酸配列と比較して、最大で10の置換、例えば最大で9の置換、最大で8、最大で7、最大で6、最大で5、最大で4の置換、最大で3、最大で2の置換または最大で1の置換を有する配列
からなる群より選択されるアミノ酸配列を含むか、または本質的に該アミノ酸配列からなるか、または該アミノ酸配列からなる、項目16~36のいずれか1つに記載の使用のための結合物質。
【0373】
39.前記第1および/または第2重鎖の定常領域が、
(a)配列番号22または28に記載した配列[IgG1-Fc_FEA]、
(b)(a)の配列の部分配列、例えば(a)に定義した配列のN末端またはC末端から始まる1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個または10個の連続するアミノ酸が欠失している部分配列、および
(c)(a)または(b)に定義したアミノ酸配列と比較して、最大で7の置換、例えば最大で6の置換、最大で5、最大で4、最大で3、最大で2の置換または最大で1の置換を有する配列
からなる群より選択されるアミノ酸配列を含むか、または本質的に該アミノ酸配列からなるか、または該アミノ酸配列からなる、項目16~15のいずれか1つに記載の使用のための結合物質。
【0374】
40.前記第1および/または第2重鎖の定常領域、例えば前記第2重鎖の定常領域が、
(a)配列番号24または30に記載した配列[IgG1-Fc_FEAL]、
(b)(a)の配列の部分配列、例えば(a)に定義した配列のN末端またはC末端から始まる1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個または10個の連続するアミノ酸が欠失している部分配列、および
(c)(a)または(b)に定義したアミノ酸配列と比較して、最大で6の置換、例えば最大で5の置換、最大で4の置換、最大で3、最大で2の置換または最大で1の置換を有する配列
からなる群より選択されるアミノ酸配列を含むか、または本質的に該アミノ酸配列からなるか、または該アミノ酸配列からなる、項目16~39のいずれか1つに記載の使用のための結合物質。
【0375】
41.前記第1および/または第2重鎖の定常領域、例えば前記第1重鎖の定常領域が、
(a)配列番号23または29に記載した配列[IgG1-Fc_FEAR]、
(b)(a)の配列の部分配列、例えば(a)に定義した配列のN末端またはC末端から始まる1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個または10個の連続するアミノ酸が欠失している部分配列、および
(c)(a)または(b)に定義したアミノ酸配列と比較して、最大で6の置換、例えば最大で5の置換、最大で4、最大で3、最大で2の置換または最大で1の置換を有する配列
からなる群より選択されるアミノ酸配列を含むか、または本質的に該アミノ酸配列からなるか、または該アミノ酸配列からなる、項目16~40のいずれか1つに記載の使用のための結合物質。
【0376】
42.前記結合物質がカッパ(κ)軽鎖定常領域を含む、前述の項目のうちのいずれか1つに記載の使用のための結合物質。
【0377】
43.前記結合物質がラムダ(λ)軽鎖定常領域を含む、前述の項目のうちのいずれか1つに記載の使用のための結合物質。
【0378】
44.前記第1軽鎖定常領域が、カッパ(κ)軽鎖定常領域またはラムダ(λ)軽鎖定常領域である、前述の項目のうちのいずれか1つに記載の使用のための結合物質。
【0379】
45.前記第2軽鎖定常領域が、ラムダ(λ)軽鎖定常領域またはカッパ(κ)軽鎖定常領域である、前述の項目のうちのいずれか1つに記載の使用のための結合物質。
【0380】
46.前記第1軽鎖定常領域がカッパ(κ)軽鎖定常領域でありかつ前記第2軽鎖定常領域がラムダ(λ)軽鎖定常領域であるか、または前記第1軽鎖定常領域がラムダ(λ)軽鎖定常領域でありかつ前記第2軽鎖定常領域がカッパ(κ)軽鎖定常領域である、前述の項目のうちのいずれか1つに記載の使用のための結合物質。
【0381】
47.前記カッパ(κ)軽鎖が、
(a)配列番号35に記載した配列、
(b)(a)の配列の部分配列、例えば(a)に定義した配列のN末端またはC末端から始まる1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個または10個の連続するアミノ酸が欠失している部分配列、および
(c)(a)または(b)に定義したアミノ酸配列と比較して、最大で10の置換、例えば最大で9の置換、最大で8、最大で7、最大で6、最大で5、最大で4の置換、最大で3、最大で2の置換または最大で1の置換を有する配列
からなる群より選択されるアミノ酸配列を含む、項目42~46のいずれか1つに記載の使用のための結合物質。
【0382】
48.前記ラムダ(λ)軽鎖が、
(a)配列番号36に記載した配列、
(b)(a)の配列の部分配列、例えば(a)に定義した配列のN末端またはC末端から始まる1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個または10個の連続するアミノ酸が欠失している部分配列、および
(c)(a)または(b)に定義したアミノ酸配列と比較して、最大で10の置換、例えば最大で9の置換、最大で8、最大で7、最大で6、最大で5、最大で4の置換、最大で3、最大で2の置換または最大で1の置換を有する配列
からなる群より選択されるアミノ酸配列を含む、項目43~47のいずれか1つに記載の使用のための結合物質。
【0383】
49.前記結合物質が、IgG1、IgG2、IgG3、およびIgG4からなる群より選択されるアイソタイプである、前述の項目のうちのいずれか1つに記載の使用のための結合物質。
【0384】
50.前記結合物質が全長IgG1抗体である、前述の項目のうちのいずれか1つに記載の使用のための結合物質。
【0385】
51.前記結合物質がIgG1m(f)アロタイプの抗体である、前述の項目のうちのいずれか1つに記載の使用のための結合物質。
【0386】
52.前記結合物質が、
(i)CD137に結合する能力がある前記抗原結合領域を含む第1重鎖および軽鎖、ここで該第1重鎖は配列番号31に記載した配列を含み、かつ該第1軽鎖は配列番号32に記載した配列を含むものとする、
(ii)PD-L1に結合する能力がある前記抗原結合領域を含む第2重鎖および軽鎖、ここで該第2重鎖は配列番号33に記載した配列を含み、かつ該第2軽鎖は配列番号34に記載した配列を含むものとする、
を含む、前述の項目のうちのいずれか1つに記載の使用のための結合物質。
【0387】
53.前記結合物質がアカスンリマブまたはそのバイオシミラーである、前述の項目のうちのいずれか1つに記載の使用のための結合物質。
【0388】
54.前記結合物質が、ヒスチジン、スクロースおよびポリソルベート-80を含む組成物または製剤の形であり、かつpHが5~6である、前述の項目のうちのいずれか1つに記載の使用のための結合物質。
【0389】
55.前記結合物質が、約20 mMのヒスチジン、約250 mMのスクロース、約0.02%のポリソルベート-80を含み、かつpHが約5.5である組成物または製剤の形である、前述の項目のうちのいずれか1つに記載の使用のための結合物質。
【0390】
56.前記結合物質が、10~30 mgの結合物質/mL、例えば20 mgの結合物質/mLを含む組成物または製剤の形である、前述の項目のうちのいずれか1つに記載の使用のための結合物質。
【0391】
57.前記結合物質が項目54~56のいずれか1つに定義した組成物の形であり、かつ投与前に0.9%NaCl(生理食塩水)で希釈される、前述の項目のうちのいずれか1つに記載の使用のための結合物質。
【0392】
58.前記対象がヒト対象である、前述の項目のうちのいずれか1つに記載の使用のための結合物質。
【0393】
59.前記腫瘍またはがんが固形腫瘍または固形がんである、前述の項目のうちのいずれか1つに記載の使用のための結合物質。
【0394】
60.前記腫瘍がPD-L1陽性腫瘍である、前述の項目のうちのいずれか1つに記載の使用のための結合物質。
【0395】
61.前記腫瘍またはがんが、黒色腫、卵巣がん、肺がん(例えば、非小細胞肺がん(NSCLC))、大腸がん、頭頸部がん、胃がん、乳がん、腎がん、尿路上皮がん、膀胱がん、食道がん、膵臓がん、肝がん、胸腺腫および胸腺がん、脳がん、神経膠腫、副腎皮質がん、甲状腺がん、他の皮膚がん、肉腫、多発性骨髄腫、白血病、リンパ腫、骨髄異形成症候群、子宮内膜がん、前立腺がん、陰茎がん、子宮頸がん、ホジキンリンパ腫、非ホジキンリンパ腫、メルケル細胞がんおよび中皮腫からなる群より選択される、前述の項目のうちのいずれか1つに記載の使用のための結合物質。
【0396】
62.前記腫瘍またはがんが、肺がん(例えば、非小細胞肺がん(NSCLC)、尿路上皮がん(膀胱、尿管、尿道、または腎盂のがん)、子宮内膜がん(EC)、乳がん(例えば、トリプルネガティブ乳がん(TNBC))および頭頸部の扁平上皮がん(SCCHN)(例えば、口腔、咽頭または喉頭のがん)からなる群より選択される、前述の項目のうちのいずれか1つに記載の使用のための結合物質。
【0397】
63.前記腫瘍またはがんが、肺がん、特に非小細胞肺がん(NSCLC)、例えば扁平上皮または非扁平上皮NSCLCである、項目61または62記載の使用のための結合物質。
【0398】
64.前記腫瘍またはがんが転移性である、例えば転移性NSCLCである、項目61~63のいずれか1つに記載の使用のための結合物質。
【0399】
65.前記肺がん、特にNSCLCが、上皮増殖因子(EGFR)感受性変異および/または未分化リンパ腫(ALK)転座/ROS1再構成を有していない、項目61~64記載の使用のための結合物質。
【0400】
66.前記肺がん、特にNSCLCががん細胞を含み、かつPD-L1が、例えば免疫組織化学(IHC)により評価した場合に該がん細胞または腫瘍細胞の1%以上で発現されている、項目61~65のいずれか1つに記載の使用のための結合物質。
【0401】
67.前記肺がん、特にNSCLCががん細胞を含み、かつPD-L1が、例えば免疫組織化学(IHC)により評価した場合に該がん細胞または腫瘍細胞の1%~49%で発現されている、項目66記載の使用のための結合物質。
【0402】
68.前記肺がん、特にNSCLCががん細胞を含み、かつPD-L1が、例えば免疫組織化学(IHC)により評価した場合に該がん細胞または腫瘍細胞の50%以上で発現されている、項目66記載の使用のための結合物質。
【0403】
69.前記対象が転移性疾患の事前の全身処置を受けていない、前述の項目に記載の使用のための結合物質。
【0404】
70.前記対象が、チェックポイント阻害剤、例えば、抗PD-1抗体または抗PD-L1抗体などのPD-1阻害剤またはPD-L1阻害剤による前処置を受けていない、前述の項目のうちのいずれか1つに記載の使用のための結合物質。
【0405】
71.前記対象が、抗4-1BB(CD137)抗体などの4-1BB(CD137)標的化物質による、抗腫瘍ワクチンによる、または自家細胞免疫療法による前処置を受けていない、前述の項目のうちのいずれか1つに記載の使用のための結合物質。
【0406】
72.前記腫瘍またはがんが、チェックポイント阻害剤による全身処置などの処置後に再発している、および/または不応性(refractory)である、項目1~68のいずれか1つに記載の使用のための結合物質。
【0407】
73.前記対象が少なくとも1ラインの事前の全身療法、例えば抗PD-1抗体または抗PD-L1抗体などのPD-1阻害剤またはPD-L1阻害剤を含む全身療法を受けている、項目1~68および72のいずれか1つに記載の使用のための結合物質。
【0408】
74.抗PD-1抗体または抗PD-L1抗体などのPD-1阻害剤またはPD-L1阻害剤による、該PD-1阻害剤またはPD-L1阻害剤を単剤療法として、または併用療法の一環として投与する処置後に、前記がんもしくは腫瘍が再発している、および/もしくは不応性であるか、または前記対象が進行している、項目1~68、72および73のいずれか1つに記載の使用のための結合物質。
【0409】
75.最後の前処置が、抗PD-1抗体または抗PD-L1抗体などのPD-1阻害剤またはPD-L1阻害剤による、該PD-1阻害剤またはPD-L1阻害剤を単剤療法として、または併用療法の一環として投与するものである、項目1~68および72~74のいずれか1つに記載の使用のための結合物質。
【0410】
76.抗PD-1抗体または抗PD-L1抗体などのPD-1阻害剤またはPD-L1阻害剤による最後の処置中の進行からの期間が8ヶ月以内、例えば7ヶ月以内、6ヶ月以内、5ヶ月以内、4ヶ月以内、3ヶ月以内、2ヶ月以内、1ヶ月以内、3週間以内、または例えば2週間以内である、項目1~68および72~74のいずれか1つに記載の使用のための結合物質。
【0411】
77.最後の前処置の一環としての、抗PD-1抗体または抗PD-L1抗体などのPD-1阻害剤またはPD-L1阻害剤の最後の投薬からの期間が、8ヶ月以内、例えば7ヶ月以内、6ヶ月以内、5ヶ月以内、4ヶ月以内、3ヶ月以内、2ヶ月以内、1ヶ月以内、3週間以内、または例えば2週間以内である、項目1~68および72~74のいずれか1つに記載の使用のための結合物質。
【0412】
78.以下(i)または(ii)、すなわち
(i)抗PD-1抗体もしくは抗PD-L1抗体による処置後のプラチナ製剤併用化学療法、または
(ii)プラチナ製剤併用化学療法後の抗PD-1抗体もしくは抗PD-L1抗体による処置
の間またはその後に、前記がんもしくは腫瘍が再発している、および/もしくは不応性であるか、または前記対象が進行している、項目1~68および72~74のいずれか1つに記載の使用のための結合物質。
【0413】
79.前記対象が、タキサン系化学療法剤、例えばドセタキセルによる前処置、例えばタキサン系化学療法剤、例えばドセタキセルによるNSCLCの前処置を受けていない、前述の項目のうちのいずれか1つに記載の使用のための結合物質。
【0414】
80.前記結合物質および前記PD-1に結合する抗体、またはその抗原結合フラグメントを、少なくとも1回の処置サイクルで投与し、各処置サイクルを3週間(21日)または6週間(42日)とする、前述の項目のうちのいずれか1つに記載の使用のための結合物質。
【0415】
81.1回用量の前記結合物質および1回用量の前記PD-1に結合する抗体、またはその抗原結合フラグメントを3週間毎に投与する(1Q3W)、前述の項目のうちのいずれか1つに記載の使用のための結合物質。
【0416】
82.1回用量の前記結合物質および1回用量の前記PD-1に結合する抗体、またはその抗原結合フラグメントを6週間毎に投与する(1Q6W)、前述の項目のうちのいずれか1つに記載の使用のための結合物質。
【0417】
83.1回用量の前記結合物質および1回用量の前記PD-1に結合する抗体、またはその抗原結合フラグメントを各処置サイクルの1日目に投与する、前述の項目のうちのいずれか1つに記載の使用のための結合物質。
【0418】
84.各用量および/または各処置サイクルで投与される前記結合物質の量が100 mgである、前述の項目のうちのいずれか1つに記載の使用のための結合物質。
【0419】
85.各用量および/または各処置サイクルで投与される前記PD-1に結合する抗体、またはその抗原結合フラグメントの量が200 mgである、前述の項目のうちのいずれか1つに記載の使用のための結合物質。
【0420】
86.各用量および/または各処置サイクルで投与される前記PD-1に結合する抗体、またはその抗原結合フラグメントの量が400 mgである、前述の項目のうちのいずれか1つに記載の使用のための結合物質。
【0421】
87.100 mg用量の前記結合物質および200 mg用量の前記PD-1に結合する抗体、またはその抗原結合フラグメントを3週間毎に投与する(1Q3W)、前述の項目のうちのいずれか1つに記載の使用のための結合物質。
【0422】
88.100 mg用量の前記結合物質および400 mg用量の前記PD-1に結合する抗体、またはその抗原結合フラグメントを6週間毎に投与する(1Q6W)、前述の項目のうちのいずれか1つに記載の使用のための結合物質。
【0423】
89.前記腫瘍またはがんがNSCLCであり、かつここでアカスンリマブまたはそのバイオシミラーである前記結合物質100 mg用量、およびペムボリズマブである前記PD-1に結合する抗体200 mg用量を3週間毎に投与する(1Q3W)、例えば各3週間の処置サイクルの1日目に投与する、前述の項目のうちのいずれか1つに記載の使用のための結合物質。
【0424】
90.前記腫瘍またはがんがNSCLCであり、かつここでアカスンリマブまたはそのバイオシミラーである前記結合物質100 mg用量、およびペムボリズマブである前記PD-1に結合する抗体400 mg用量を6週間毎に投与する(1Q6W)、例えば6週間毎の処置サイクルの1日目に投与する、項目1~88のいずれか1つに記載の使用のための結合物質。
【0425】
91.前記PD-1に結合する抗体、またはその抗原結合フラグメントを最初に投与し、続いて前記結合物質を投与する、前述の項目のうちのいずれか1つに記載の使用のための結合物質。
【0426】
92.前記結合物質を、静脈内(IV)注入を利用して最低30分かけて、例えば最低60分かけて投与する、前述の項目のうちのいずれか1つに記載の使用のための結合物質。
【0427】
93.前記結合物質を、静脈内(IV)注入を利用して30分かけて投与する、前述の項目のうちのいずれか1つに記載の使用のための結合物質。
【0428】
94.前記PD-1阻害剤を静脈内注入物として30分かけて投与する、前述の項目のうちのいずれか1つに記載の使用のための結合物質。
【0429】
95.以下(i)ならびに(ii)、すなわち
(i)CD137に結合する第1結合領域およびPD-L1に結合する第2結合領域、
(a)配列番号2、3、および4にそれぞれ記載したCDR1、CDR2、およびCDR3配列を含む重鎖可変領域(VH)と、配列番号6、7、および8にそれぞれ記載したCDR1、CDR2、およびCDR3配列を含む軽鎖可変領域(VL)とを含む該第1結合領域、
(b)配列番号12、13、および14にそれぞれ記載したCDR1、CDR2、およびCDR3配列を含む重鎖可変領域(VH)と、配列番号16、17、および18にそれぞれ記載したCDR1、CDR2、およびCDR3配列を含む軽鎖可変領域(VL)とを含む該第2抗原結合領域
を含む結合物質、ならびに
(ii)PD-1に結合する抗体、またはその抗原結合フラグメント、ここで該抗体は、配列番号43、44および45にそれぞれ記載したCDR1、CDR2およびCDR3配列を含む重鎖可変領域(VH)と、配列番号46、47および48にそれぞれ記載したCDR1、CDR2、およびCDR3配列を含む軽鎖可変領域(VL)とを含むか、または該抗体は、配列番号62、63および64にそれぞれ記載したCDR1、CDR2およびCDR3配列を含む重鎖可変領域(VH)と、配列番号65、66および67にそれぞれ記載したCDR1、CDR2、およびCDR3配列を含む軽鎖可変領域(VL)とを含むものとする、
を含むキット。
【0430】
96.前記結合物質および/または前記PD-1に結合する抗体、もしくはその抗原結合フラグメントが、項目1~94のいずれか1つに定義した通りである、項目95記載のキット。
【0431】
97.前記結合物質、および前記PD-1に結合する抗体、またはその抗原結合フラグメントが、全身投与用、特に静脈内注射または注入などの注射または注入用である、項目95または96記載のキット。
【0432】
98.対象において腫瘍の進行を軽減もしくは阻止するか、またはがんを処置するための方法における使用のための、項目95~97のいずれか1つに記載のキット。
【0433】
99.前記腫瘍もしくはがんおよび/または前記対象および/または前記方法が、項目1~94のいずれか1つに定義した通りである、項目98に記載の使用のためのキット。
【0434】
100.対象において腫瘍の進行を軽減もしくは阻止するかまたはがんを処置するための方法であって、該方法が、該対象に結合物質を、PD-1に結合する抗体、またはその抗原結合フラグメントの投与前に、投与と同時に、または投与後に投与することを含み、
ここで該結合物質が、CD137に結合する第1結合領域ならびにPD-L1に結合する第2結合領域、
(a)配列番号2、3、および4にそれぞれ記載したCDR1、CDR2、およびCDR3配列を含む重鎖可変領域(VH)と、配列番号6、7、および8にそれぞれ記載したCDR1、CDR2、およびCDR3配列を含む軽鎖可変領域(VL)とを含む該第1結合領域、
ならびに
(b)配列番号12、13、および14にそれぞれ記載したCDR1、CDR2、およびCDR3配列を含む重鎖可変領域(VH)と、配列番号16、17、および18にそれぞれ記載したCDR1、CDR2、およびCDR3配列を含む軽鎖可変領域(VL)とを含む該第2抗原結合領域
を含み、かつ
ここで該PD-1に結合する抗体が、配列番号43、44および45にそれぞれ記載したCDR1、CDR2およびCDR3配列を含む重鎖可変領域(VH)と、配列番号46、47および48にそれぞれ記載したCDR1、CDR2、およびCDR3配列を含む軽鎖可変領域(VL)とを含むか、または該PD-1に結合する抗体が、配列番号62、63および64にそれぞれ記載したCDR1、CDR2およびCDR3配列を含む重鎖可変領域(VH)と、配列番号65、66および67にそれぞれ記載したCDR1、CDR2、およびCDR3配列を含む軽鎖可変領域(VL)とを含む、
上記方法。
【0435】
101.前記腫瘍もしくはがんおよび/または前記対象および/または前記方法および/または前記結合物質および/または前記PD-1阻害剤が、項目1~94のいずれか1つに定義した通りである、項目100記載の方法。
【0436】
本開示のさらなる態様を本明細書中に記載する。
(実施例)
【0437】
[実施例1]
純化CD8 + T細胞および同種成熟樹状細胞(mDC)の共培養下でのサイトカイン分泌
方法
健常ドナー由来の単球およびT細胞
CD14+単球および純化CD8+ T細胞は、Precision MedicineまたはBioIVTから入手した。同種異系の混合リンパ球反応(MLRアッセイ)には同種異系ドナーのペアを用いた。
【0438】
単球の未熟樹状細胞への分化
ヒトCD14+単球は健常ドナーから得られた(上記を参照されたい)。未熟樹状細胞(iDC)へと分化させるために、T25培養フラスコ(Falcon、カタログ番号353108)を用いて、単球1~1.5×106細胞/mLを、10%非働化ウシ胎児血清(FBS;Gibco、カタログ番号16140071)、100ng/mL顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF;BioLegend、カタログ番号766106)および300ng/mLインターロイキン4(IL-4;BioLegend、カタログ番号766206)を添加したRoswell Park Memorial Institute(RPMI)1640完全培地(ATCC modification formula;ThermoFisher、カタログ番号A1049101)中で37℃にて6日間培養した。この6日の間に1回、培地を、添加物を含む新鮮培地に交換した。
【0439】
iDCの成熟
iDCを成熟させるために、細胞は、非付着性細胞を収集することにより回収し、計数して、10%FBS、100ng/mL GM-CSF、300ng/mL IL-4、および1×のリポ多糖(LPS;ThermoFisher、カタログ番号00-4976-93)を添加したRPMI1640完全培地中、1~1.5×106細胞/mLで、37℃にて、MLRアッセイの開始に先立って24時間インキュベートした。
【0440】
混合リンパ球反応(MLR)
MLRアッセイ開始の前日に、同種異系の健常ドナーから得られた純化CD8+ T細胞を融解した。細胞を、10%FBSおよび10ng/mL IL-2(BioLegend、カタログ番号589106)を添加したRPMI1640完全培地中に1×106細胞/mLとなるよう再懸濁し、37℃で一晩インキュベートした。
【0441】
翌日、LPS成熟樹状細胞(mDC、「iDCの成熟」を参照されたい)および同種異系の純化CD8+ T細胞を回収し、それぞれ4×105細胞/mLおよび4×106細胞/mLでAIM-V培地(ThermoFisher、カタログ番号12055091)中に再懸濁した。
【0442】
共培養では、96ウェル丸底プレート(Falcon、カタログ番号353227)を用いて、20,000個のmDCを、200,000個の同種異系の純化CD8+ T細胞と共に(DC:T細胞比 1:10)、AIM-V培地中で、GEN1046(0.001~30μg/mL)単独の存在下で、または研究用グレードのペムブロリズマブ(0.1~30μg/mLまたは0.1~100μg/mL)、bsIgG1-PD-L1×ctrl(30μg/mL)、bsIgG1-ctrl×4-1BB(30μg/mL)、アイソタイプコントロール抗体IgG4(100μg/mL)、もしくはIgG1-ctrl-FEAL(30μg/mL;表5)と組み合わせて前記GEN1046の存在下で、37℃にてインキュベートした。5日後、プレートを500×gで5分間遠心し、上清を各ウェルから新しい96ウェル丸底プレートに注意深く移した。
【0443】
MLRアッセイから回収した上清は、メーカーの指示に従って、Envision装置でAlpha Lisa IFNγキット(Perkin Elmer、カタログ番号AL217)を用いて、酵素結合免疫吸着測定法(ELISA)によりインターフェロン(IFN)γレベルを分析した。TNFαおよびIL-2は、Milliplex MAP- Human Cytokine/TH17 Panel(Millipore Sigma、カタログ番号SPR1526)の一環としてLuminex FLEXMAP 3D装置で測定した。
【0444】
【表5】
【0445】
結果
GEN1046は、3組のドナーペアにおいて、IgG1-ctrl-FEALと比較して、純化CD8+ T細胞および同種異系mDCの共培養でIL-2の分泌を誘導した(図2を参照されたい)。これに対して、ペムブロリズマブは、アイソタイプコントロールのIgG4抗体と比較して、IL-2のわずかな増加(<50 pg/mL)を誘導するのみであった。GEN1046およびペムブロリズマブに同時に暴露すると、GEN1046またはペムブロリズマブのいずれか一方のみと比較して、IL-2の強力な増加が誘導され、GEN1046単独と比べてIL-2の最大濃度は約2~3倍に増加した。
【0446】
それに加えて、GEN1046は、3組のドナーペアにおいて、IgG1-ctrl-FEALと比較して、純化CD8+ T細胞および同種異系mDCの共培養でIFNγの分泌を誘導した(図3を参照されたい)。同様に、ペムブロリズマブは、GEN1046と比較してより限定的な程度ではあるが、3組のドナーペアすべてにおいてIFNγ分泌を高めた。GEN1046およびペムブロリズマブに同時に暴露すると、GEN1046またはペムブロリズマブのいずれか一方のみと比較して、特にGEN1046の低用量(<1μg/mL)において、IFNγのさらなる増加が誘導された。
【0447】
さらに、GEN1046は、3組のドナーペアにおいて、IgG1-ctrl-FEALと比較して、純化CD8+ T細胞および同種異系mDCの共培養下でTNFαの分泌を誘導した(図4を参照されたい)。これに対して、ペムブロリズマブは、GEN1046と比べて限られた量のTNFαを誘導するのみであった。GEN1046およびペムブロリズマブへの同時暴露は、GEN1046単独と比較して、特に0.1μg/mLのGEN1046で、テストしたすべてのペムブロリズマブ濃度について、TNFαのわずかな増加を誘導し、効力の左シフトを示した。
【0448】
これらの結果は、GEN1046とペムブロリズマブとの併用が、mDC/CD8+ T細胞MLRアッセイにおいて、各抗体単独と比較して、IFNγ、IL-2、およびTNFαの分泌を増強することを示している。IFNγの増強はおもに低濃度のGEN1046で観察されたが、GEN1046とペムブロリズマブとの併用は、さまざまな濃度でIL-2の増強を示した。
【0449】
[実施例2]
MC38マウス結腸がんの腫瘍増殖
方法
MC38マウス結腸がん細胞は、10%不働化ウシ胎児血清を添加したダルベッコ改変イーグル培地中、37℃、5%CO2で培養した。対数増殖期の細胞培養物からMC38細胞を回収し、定量した。
【0450】
MC38細胞(100mL PBS中、腫瘍細胞1×106個)を雌C57BL/6マウス(Vital River Laboratories Research Models and Servicesより入手;実験開始時に6~8週齢)の右下側腹部に皮下注射した。
【0451】
腫瘍の増殖はノギスを用いて週3回評価した。腫瘍体積(mm3)は、ノギスの測定値から([長さ]×[幅]2)/2として計算したが、ここで長さは腫瘍の最長寸法であり、幅は長さに対して垂直な腫瘍の最長寸法である)。
【0452】
投与は、腫瘍の体積中央値が64mm3に達した時点で開始した。マウスは、投与前に等しい平均腫瘍体積(64mm3)を有する群(n=10/群)に無作為に割り付けられた。投与日に、マウスに、mbsIgG2a-PD-L1x4-1BB(5mg/kg;注射量10μL/g体重;毎週2回、3週間[2QW×3])、抗マウスPD-1抗体(抗mPD-1;10mg/kg;注射量10μL/g体重;2QW×3;クローンRMP1-14;Leinco Technologies、カタログ番号P372)、mbsIgG2a-PD-L1x4-1BB(5mg/kg)と抗mPD-1(10mg/kg)との組み合わせ(2回に分けて注射[mbsIgG2a-PD-L1x4-1BBの後、20分後に抗mPD-1を注射]、注射量10μL/g体重;2QW×3)、または注射量10μL/g体重のPBSを腹腔内注射した(表6)。
【0453】
マウスは、病気の臨床徴候について毎日モニターした。体重測定は、無作為化後、週に3回行った。個々のマウスについて、腫瘍体積が1500mm3を超えたとき、または動物が愛護の観点でエンドポイントに達したとき(たとえば、マウスが20%を超える体重減少を示したとき、腫瘍が潰瘍形成[>75%]を示したとき、重篤な臨床徴候が観察されたとき、および/または腫瘍増殖がマウスの身体活動を阻害したとき)に実験を終了した。
【0454】
【表6】
【0455】
結果
PBSを投与したMC38担がんマウスでは、急速な腫瘍の増殖が観察された(図5A)。抗mPD-1(10mg/kg)またはmbsIgG2a-PD-L1x4-1BB(5mg/kg)を投与したマウスでは、腫瘍増殖の遅れが観察され、より顕著な腫瘍増殖の遅れがmbsIgG2a-PD-L1x4-1BBによって誘導された(図5A)。mbsIgG2a-PD-L1x4-1BB(5mg/kg)を抗mPD-1(10mg/kg;ともに2QW×3)と併用して投与したマウスでは、このモデルのいずれの薬剤も単独では完全な腫瘍退縮が観察されなかったのに対して、投与開始後21日目に6/10匹のマウスで完全な腫瘍退縮が観察された(図5A)。Kaplan-Meier解析によると、mbsIgG2a-PD-L1×4-1BBおよび抗mPD-1の併用投与は、PBS投与群(p<0.001)およびいずれかの抗体の単独投与群(p≦0.001)と比較して、腫瘍体積が500mm3より小さいマウスの割合として定義される無増悪生存期間の有意な延長を誘導した(Mantel-Cox;図5B、表7)。したがって、各薬剤の単剤療法で示された活性と比べて優越した(p<0.05)抗腫瘍効果として定義される、治療上の相乗効果が、この併用により観察された。
【0456】
これらの結果は、GEN1046と抗PD-1抗体との併用が、がん患者において抗腫瘍免疫反応をさらに増幅させて、持続的で深い臨床反応をもたらし、生存を高めると評価する根拠を与える。
【0457】
【表7】
【0458】
[実施例3]
活性PD1/PD-L1系による抗原特異的T細胞アッセイでGEN1046および抗PD-1抗体ペムブロリズマブの増殖用量反応を測定するための抗原特異的CD8 + T細胞増殖アッセイ
DuoBody-PD-L1x4-1BBまたはペムブロリズマブによるT細胞増殖の誘導を測定するために、活性PD1/PD-L1系による抗原特異的T細胞増殖アッセイを行った。
【0459】
HLA-A2+末梢血単核球(PBMC)は、健常ドナーから得られた(Transfusionszentrale, University Hospital, Mainz, Germany)。単球は、メーカーの指示に従って、抗CD14 MicroBeads(Miltenyi;カタログ番号130-050-201)を用いたmagnetic-activated cell sorting (MACS)法により、PBMCから分離した。末梢血リンパ球(PBL、CD14陰性画分)は、後でT細胞を分離するために凍結保存した。未熟DC(iDC)への分化のために、単球1×106個/mLを、5%ヒトAB血清(Sigma-Aldrich Chemie GmbH、カタログ番号H4522-100ML)、ピルビン酸ナトリウム(Life technologies GmbH、カタログ番号11360-039)、非必須アミノ酸(Life technologies GmbH、カタログ番号11140-035)、100 IU/mLペニシリン-ストレプトマイシン(Life technologies GmbH、カタログ番号15140-122)、1000 IU/mL顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF;Miltenyi、カタログ番号130-093-868)および1000 IU/mLインターロイキン-4(IL-4;Miltenyi、カタログ番号130-093-924)を含有するRPMI GlutaMAX(Life technologies GmbH、カタログ番号61870-044)中で5日間培養した。この5日の間に1回、培地の半分を新鮮な培地と交換した。iDCは非付着性細胞を集めることにより回収し、付着細胞は2mM EDTAを含有するPBSとともに37℃で10分間インキュベートすることにより剥離した。洗浄後、iDCは、今後の抗原特異的T細胞アッセイのために、10% v/v DMSO(AppliChem GmbH、カタログ番号A3672,0050)+50% v/vヒトAB血清を含有するRPMI GlutaMAX中で凍結保存した。
【0460】
抗原特異的CD8+ T細胞増殖アッセイを開始する前日に、同一ドナーの凍結PBLおよびiDCを融解した。CD8+ T細胞は、抗CD8 MicroBeads(Miltenyi、カタログ番号130-045-201)を用いたMACS法によりメーカーの指示に従ってPBLから分離した。BTX ECM(登録商標)830 Electroporation System装置(BTX;500V、1x3msパルス)を用いて、4mmエレクトロポレーションキュベット(VWR International GmbH、カタログ番号732-0023)内の250μLのX-Vivo15(Biozym Scientific GmbH、カタログ番号881026)中で、約10~15×106個のCD8+ T細胞に、クローディン6特異的マウスTCR(HLA-A2拘束性;WO 2015150327 A1に記載)のα鎖をコードするin vitro翻訳(IVT)-RNA 10μg、およびβ鎖をコードするIVT-RNA 10μg、ならびにPD-1をコードするIVT-RNA 10μgをエレクトロポレーションした。エレクトロポレーション後ただちに細胞を、5%ヒトAB血清を添加した新鮮なIMDM培地(Life Technologies GmbH、カタログ番号12440-061)に移し、37℃、5% CO2で少なくとも1時間休ませた。T細胞は、メーカーの指示に従って、PBS中1.6μMカルボキシフルオレセインスクシンイミジルエステル(CFSE;Invitrogen、カタログ番号C34564)を用いて標識し、5%ヒトAB血清を添加したIMDM培地中で一晩インキュベートした。
【0461】
上記のエレクトロポレーションシステム(300V、1x12msパルス)を用いて、250μLのX-Vivo15培地中で、全長クローディン-6をコードするIVT-RNA、1μg(GEN1046用量反応)または3μg(ペムブロリズマブ用量反応)を、最大5×106個の融解したiDCにエレクトロポレーションし、5%ヒトAB血清を添加したIMDM培地中で一晩インキュベートした。
【0462】
翌日、細胞を回収した。DC上でのクローディン-6およびPD-L1の細胞表面発現、ならびにT細胞上でのTCRおよびPD-1の細胞表面発現をフローサイトメトリーで確認した。DCは、Alexa647標識CLDN6特異的抗体(非市販;自社製造)および抗ヒトCD274抗体(PD-L1、eBioscienes、カタログ番号12-5983)で染色し、T細胞は、抗マウスTCRβ鎖抗体(Becton Dickinson GmbH、カタログ番号553174)および抗ヒトCD279抗体(PD-1、eBioscience、カタログ番号17-2799)で染色した。エレクトロポレーションしたDCは、96ウェル丸底プレート内の5%ヒトAB血清を添加したIMDM GlutaMAX中で、GEN1046(1~0.00015μg/mLの3倍連続希釈)の存在下、または臨床グレードのペムブロリズマブ(0.8~0.00005μg/mLの4倍連続希釈;キイトルーダ、Phoenix Apotheke、PZN 10749897)の存在下で、エレクトロポレーションしたCFSE標識T細胞とともに、1:10の比率でインキュベートした。CFSE希釈に基づくT細胞増殖のフローサイトメトリー分析は、5日後に、BD FACSCanto(商標名)IIまたはBD FACSCelesta(商標名)フローサイトメーター(Becton Dickinson GmbH)で行った。取得したデータは、FlowJoソフトウェアバージョン10.7.1を用いて解析した。処理条件ごとの増殖指数の値(培養全体の増殖倍数を決定する)を計算し、GEN1046またはペムブロリズマブの濃度の関数としてプロットした。用量反応曲線を作成し、GraphPad Prismバージョン9(GraphPad Software, Inc.)で4パラメータ対数フィットを用いてEC20、EC50、EC90、およびHill-Slope値を算出した。
【0463】
GEN1046の用量反応は、1~0.00015μg/mLの3倍連続希釈で分析し(図6A)、EC20、EC50、EC90、およびHill-Slope値を表8に示した。テストした4ドナーの平均EC50は0.0064μg/mLで、強い増殖誘導効果が認められた。
【0464】
ペムブロリズマブの用量反応は、0.8~0.00005μg/mLの4倍連続希釈で分析し(図6B)、EC20、EC50、EC90、およびHill-Slope値を表9に示した。テストした4ドナーの平均EC50は0.0149μg/mLで、強い増殖誘導効果が認められた。
【0465】
【表8】
【0466】
【表9】
【0467】
[実施例4]
抗PD-1抗体ペンブロリズマブの存在下または非存在下でのGEN1046によるPD-1/PD-L1関連T細胞抑制の解除および付加的なCD8 + T細胞増殖の同時刺激。
GEN1046と、抗PD-1抗体ペムブロリズマブまたはIgG1-ctrl抗体との併用によるT細胞増殖誘導を測定するために、活性PD1/PD-L1系による抗原特異的T細胞増殖アッセイを行った(一般的なアッセイの設定は実施例1と同様である)。すなわち、96ウェル丸底プレート内の5%ヒトAB血清添加IMDM GlutaMAX中で、クローディン-6-IVT-RNAをエレクトロポレーションしたDCを、クローディン-6特異的TCR-およびPD1-IVT-RNAをエレクトロポレーションしたCFSE標識T細胞とともに(比率1:10)、GEN1046の存在下で、一定濃度のペムブロリズマブまたはアイソタイプコントロール抗体IgG1-ctrlと組み合わせて、インキュベートした。GEN1046の3つの異なる濃度をテストしたが、これは以前の実験で決定された最適効果濃度、50%効果濃度、および最適下限効果濃度(0.2μg/mL >EC90;0.0067μg/mL≒EC50;0.0022μg/mL ≒EC20、実施例1、表1を参照されたい)に相当する。ペンブロリズマブおよびIgG1-ctrl抗体は、ペンブロリズマブのEC90値をはるかに上回る0.8μg/mLの濃度でテストした(実施例1、表2を参照されたい)。培地および0.8μg/mL IgG1-ctrlのみを用いてベースライン増殖を測定した。ペムブロリズマブ(0.8μg/mL)を追加のチェックポイント阻害コントロールとして使用した。CFSE希釈に基づくT細胞増殖のフローサイトメトリー分析は、BD FACSCanto(登録商標)IIまたはBD FACSCelesta(登録商標)フローサイトメーター(Becton Dickinson GmbH)を用いて5日後に行った。取得したデータは、FlowJoソフトウェアバージョン10.7.1を用いて解析した。処理条件ごとの増殖指数の値を計算し、GraphPad Prismバージョン9(GraphPad Software, Inc.)を使用してプロットした。
【0468】
PD-1およびクローディン-6特異的TCRを発現するCD8+ T細胞を、PD-L1および同種抗原を発現するDCとともにインキュベートした結果、テストした3ドナーすべてについて、培地のみ、およびIgG1-ctrl処理した培養物の増殖指数はわずかに1を上回り、最小限の増殖誘導となった(図7を参照されたい)。ペムブロリズマブを共培養環境に加えることによって、PD-1:PD-L1を介した抑制を解除すると、グラフの破線で示すように、増殖指数が軽度に上昇した。GEN1046の添加後、用量依存的であるだけでなく、より顕著なT細胞増殖の増加が観察され、中程度および低濃度の単一化合物処理条件と比較して、テストした最高濃度が最高の増殖誘導をもたらした。特に、最も低濃度の0.0022μg/mL GEN1046(ペムブロリズマブ併用なし)は、ペムブロリズマブのみのコントロールで記録された値と同等、またはそれ以下の増殖指数の値をもたらし、最適に及ばないPD-1:PD-L1チェックポイント阻害薬であることを示した。これとはまったく対照的に、ペムブロリズマブを併用したGEN1046のT細胞増殖誘導は、テストしたGEN1046の濃度にかかわらず、ペムブロリズマブ無添加のDuoBody-PD-L1x4-1BBよりも常に優れていた。ペムブロリズマブ併用条件と非併用条件の間の増殖指数の差は、中程度および低濃度のGEN1046で特に大きかった。特に、GEN1046濃度が最適に及ばない場合(0.0022μg/mL≒EC20)、ペムブロリズマブの添加は、CD8+ T細胞の増殖を誘導し、ペムブロリズマブのみのコントロールと比較して、かなり高い増殖指数が観察された。
【0469】
[実施例6]
悪性固形腫瘍を有する被験者におけるGEN1046の安全性評価のための拡大コホートに対するファースト・イン・ヒューマン非盲検用量漸増試験
本試験は、GEN1046(DuoBody(登録商標)PD-L1×4 1BB)の非盲検、多施設、第1/2a相安全性試験である。本試験は、ファースト・イン・ヒューマン(FIH)用量漸増試験(第1相)および拡大試験(第2a相)の2つのパートで構成される。用量漸増試験では、固形悪性腫瘍を有する被験者においてGEN1046を評価し、最大耐量(MTD)または最大投与量および/または第2相推奨用量(RP2D)を決定した。
【0470】
さらに拡大試験では、選定された固形腫瘍の拡大コホートにおいて、非小細胞肺がん(NSCLC)(PD-1/L1前治療およびPD-1/L1ナイーブ)、尿路上皮がん(UC)、子宮内膜がん(EC)、トリプルネガティブ乳がん(TNBC)(PD-1/L1阻害薬による前治療を受けた被験者およびそのような治療を受けていない被験者):および頭頸部扁平上皮がん(SCCHN)について、選択された用量の安全性、忍容性、PK、および抗腫瘍活性を評価する。
【0471】
【表10】
【0472】
試験デザインの図解を図8に示す。用量漸増試験および拡大コホートのさらなる開示、ならびに用量漸増試験の予備的結果は、国際特許出願WO 2021/156326に記載されている。
【0473】
拡大コホート(EC)AおよびB:転移性疾患に対する治療歴のないNSCLC:ペムブロリズマブと併用したGEN1046
拡大コホートECAおよびECBは、ペムブロリズマブと併用した100mg GEN1046を2つの異なる投与スケジュールで評価する:
ECAでは、100mg 1Q3WのGEN1046投与レジメンを200mg 1Q3Wのペムブロリズマブの投与レジメンとともに試験する。PK/薬力学的モデリングに基づいて、このGEN1046レジメンは、ピーク三量体形成および持続的な4-1BB活性化をもたらすと予想され、ペムブロリズマブとの併用で、標的/経路の両者の最適な関与および抗腫瘍効果の改善を可能にすることができる。
【0474】
ECBでは、100mg 1Q6WのGEN1046投与レジメンを400mg 1Q6Wのペムブロリズマブ投与レジメンとともに評価する。PK/薬力学的モデリングに基づいて、このGEN1046レジメンは、3週間の投与サイクルでの4-1BBの持続的活性化に対して、6週間の投与サイクルで4-1BBの間欠的/一過性の活性化をもたらすと予想される。4-1BBの一過性の活性化は、T細胞応答のリセットを可能にし、長期にわたるインターフェロンシグナル伝達を減少させることが期待されるが(Weber, E. W., et al. (2021), Science 372 (6537))、それは、持続的な4-1BB活性化による腫瘍浸潤CD8+ T細胞の疲弊を防ぎ、ペムブロリズマブとの併用により、効果の深さおよび奏功期間(DoR)の改善をもたらすことができる。
【0475】
200mg Q3Wおよび400mg Q6Wのペムブロリズマブ投与レジメンは、それぞれNSCLCに対する第1選択および第2選択のSOC治療として承認されている。
【0476】
投与の中止
被験者が投与中止基準の一つを満たすまで投与を継続する(下記を参照されたい)。
【0477】
選択基準
拡大コホートAおよびB
a. 転移性NSCLCであって、転移性疾患に対する全身治療レジメンの前治療を受けていない被験者。被験者はPD-1/L1阻害薬による前治療を受けていてはならない。被験者は、前回の前治療の際に、またはその後に、X線による検査で病勢進行が認められていてはならない。ただし、疾患が新たに診断された被験者については、これを要しない。
【0478】
b. 組織型を問わず、NSCLCを有する被験者が登録される。組織学的または細胞学的に非扁平上皮NSCLCと診断された被験者は、EGFR感作性変異および/またはALK転座/ROS1再構成を有していてはならない。EGFR感作性変異とは、承認されたTKIによる治療が可能な変異である。
【0479】
c. 被験者は、コア針生検もしくは切除生検で得られた新鮮な腫瘍サンプル、または転移性疾患と診断された時点で切除された腫瘍組織から得られたPD-L1の発現結果が、サイクル1の1日目(C1D1)より前に中央検査機関から入手可能でなければならない。
【0480】
d. 腫瘍は、中央検査機関の検査で判定された免疫組織化学検査(IHC)による評価で、腫瘍細胞の1%以上においてPD-L1発現を示す(TPS≧1%)。
【0481】
用量漸増および拡大について
3. 被験者は18歳以上の男性または女性でなければならない。
【0482】
4. 被験者は、試験に関連する評価もしくは手続きの前に、試験の目的および試験に必要な手順を理解していること、ならびに試験に参加する意思があることを示すインフォームドコンセント用紙(ICF)に署名しなければならない。
【0483】
5. 被験者は、RECIST 1.1に従って判定することができる病変を有していなければならない。
【0484】
6. 被験者は、Eastern Cooperative Oncology Group(ECOG)0-1でなければならない。
【0485】
7. 被験者は、以下の臓器機能および骨髄機能を有していなければならない:
a. 骨髄/血液機能:
絶対好中球数(ANC)≧1.5×109/L;ヘモグロビン≧9.0g/dL;血小板数≧100×109/L
b. 肝機能:
- 総ビリルビン≦正常上限値(ULN)
- ALT ≦1.5×ULN
- AST ≦1.5×ULN
- アルブミン≧30g/L
c. 凝固能:
- プロトロンビン時間(PT)/国際標準化比(INR)≦1.5
- 活性化部分トロンボプラスチン時間(aPTT)≦1.5×ULN(抗凝固療法なし)
- 抗凝固療法を受けている被験者は、PTおよびaPTTが抗凝固薬の使用目的の治療域内でなければならない。
d. 腎機能:
糸球体濾過量(GFR)≧45mL/分/1.73m2 - たとえば、MDRD(Modification of Diet in Renal Disease)簡易式:
GFR=186×(SCr-1.154)×(年齢-0.203)
による
(式中、SCrは血清クレアチニン値であってmg/dLで表される;被験者が女性の場合はこれに0.742を乗じる;被験者がアフリカ系アメリカ人の場合は1.212を乗じる(Levey et al., 1999))。
【0486】
12. A) 用量漸増パートでは、すべての被験者は、好ましくは進行した病期に由来する、サイクル1の1日目以前に採取された保存組織または新鮮な生検材料からの、腫瘍組織サンプル(ホルマリン固定パラフィン包埋ブロック/スライド)を提供しなければならない。
B) 拡大パートでは、すべての被験者は、直近の前治療の失敗/中止の後に採取された、腫瘍組織を含む、定められた新鮮な生検材料(ホルマリン固定パラフィン包埋[FFPE]ブロック/スライド)を提供しなければならない(気管支鏡ガイド下生検、細針吸引、細胞ブロック、細胞ペレット、凝血塊、骨髄、および細胞診標本は認められない)。
【0487】
除外基準
以下の基準のいずれかに該当する被験者候補は、試験への参加から除外される。
【0488】
1. 被験者が、以下を含むがそれに限定されない、制御されていない併発症を有する:
a. 初回投与の2週間前までに投与された、抗感染治療薬による静脈内治療を必要とする、継続中または活動性の感染症。
b. 症候性うっ血性心不全(New York Heart Associationによる分類でグレードIIIまたはIV)、不安定狭心症、または心不整脈。
c. 最適な医学的管理にもかかわらず、収縮期血圧160mmHg以上、および/または拡張期血圧100mmHg以上と定義される、コントロールされていない高血圧。
d. 免疫関連有害事象(irAE)のリスクを示唆する可能性のある全身的免疫抑制療法による治療を必要とする重大な自己免疫疾患の、継続中または最近(1年以内)の所見がある。
e. 免疫療法の前治療で治療中止をもたらした、グレード3以上のirAEの既往歴のある被験者は除外すべきである。グレード3未満で治療中止に至ったirAEを有する被験者は、治験依頼者と協議すべきである。
f. 筋炎、ギラン・バレー症候群、もしくは重症筋無力症の既往歴のある被験者は、進行度にかかわらず除外する。
g. 慢性肝疾患の既往歴または肝硬変の所見。
h. ステロイドを必要とする非感染性肺炎の既往歴、または現在肺炎を発症している。
i. GEN1046の初回投与前3ヵ月以内の、同種臓器移植(角膜移植を除く)、自家もしくは同種骨髄移植、または幹細胞レスキューの治療歴。
j. 重篤で治癒していない創傷、皮膚潰瘍(程度を問わない)、または骨折。
【0489】
2. すべての被験者は、新規または既存の中枢神経系(CNS)病変を記録するために、脳のコンピュータ断層撮影(CT)スキャンまたは磁気共鳴画像法(MRI)を受けなければならない。脳動静脈奇形、脳動脈瘤、脊髄圧迫(疾患による)、がん性髄膜炎、または脳卒中のいかなる既往歴も除外される。
a. スクリーニングの1ヶ月以上前の一過性脳虚血発作は認められる。
b. 新たに確認された、または既知の、不安定なCNS転移もしくは症候性CNS転移を有する被験者は除外される。治療歴のある脳転移を有する被験者は、再度の画像診断で、少なくとも28日間、X線画像上で安定している(すなわち、進行の形跡がない)ことを条件に参加することができる(ここで留意すべきは、再度の画像診断が試験スクリーニング中に実施されなければならないことである)。被験者は、臨床的に安定していなければならず、短期コルチコステロイド治療またはステロイド漸減療法を受けていないこと、またはC1D1前14日以内に定位放射線照射もしくは全脳照射を受けていないことが必要である。長期ステロイド治療は、C1D1前の14日間の投与量が安定していれば許容される(プレドニゾン1日10mg以下またはそれに相当するもの)。
【0490】
3. 事前の治療
a. 放射線治療:GEN1046初回投与前14日以内の放射線治療。緩和的放射線治療は許可される。
b. 下記に特に記載のある場合を除き、GEN1046投与前の抗がん剤治療(28日以内、または薬物半減期が少なくとも5回経過した後、のいずれか短い方)。例外として認められるのは、ビスフォスフォネート製剤(パミドロン酸、ゾレドロン酸など)およびデノスマブである。
c. 被験者が、GEN1046の予定される初回投与前28日以内に治験薬(治験ワクチンを含む)の投与を受けたか、侵襲的な治験用医療機器を使用したことがあり、または現在、介入試験に登録されている。
注:介入試験のフォローアップ段階にある被験者は、GEN1046の初回投与から28日以内に治験薬の投与を受けていないならば参加することができる。
d. GEN1046投与開始前3週間以内の弱毒生ワクチンによる治療歴。
e. 免疫抑制性コルチコステロイドの長期全身投与、すなわち、GEN1046の初回投与前14日以内で、プレドニゾンが1日10mgを超える、またはプレドニゾンの累積投与量が150mgを超える。補充療法(たとえば、副腎機能不全もしくは下垂体機能不全に対する、チロキシン、インスリン、または生理的コルチコステロイド補充療法)は全身治療の一形態とはみなされず、許容される。
f. GEN1046の初回投与の4週間前に顆粒球コロニー刺激因子(G-CSF)または顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF)の補充を受けたことがあるか、または長期にわたって輸血に依存している。
g. モノクローナル抗体(mAb)療法に対するグレード3以上のアレルギー反応の既往歴、および本試験の過程で投与される薬剤に対するアレルギーもしくは不耐性が判明しているか、または疑われること。
h. CPIを含む治療の開始後6週間以内に病勢進行により治療を中止した被験者。
i. 4-1BB(CD137)標的薬による治療歴。
j. 投与開始前12週間以内の、T細胞アゴニストまたは抗細胞傷害性Tリンパ球関連タンパク質4標的薬による治療歴。
【0491】
4. 以前の抗がん剤治療による毒性が、脱毛症、食欲不振、白斑、疲労、甲状腺機能亢進症、甲状腺機能低下症、および末梢神経障害を除いて、ベースラインレベルまたはグレード1以下に回復していない。食欲不振、甲状腺機能亢進症、甲状腺機能低下症、および末梢神経障害は、グレード2以下に回復していなければならない。
【0492】
5. 組み入れ診断以外の既知の過去または現在の悪性腫瘍であるが、以下を除く:
a. ステージ1B以下の子宮頸がん。
b. 非浸潤性基底細胞がんまたは扁平上皮がん。
c. 非浸潤性表在性膀胱がん。
d. 今のところPSAが検出されない前立腺がん。
e. BRCA1またはBRCA2陽性卵巣がん被験者における乳がん(乳がん拡大コホートには適用されない)。
f. CR期間が2年を超える治癒可能ながん。
【0493】
6. 被験者がGEN1046またはその医薬品添加物に対して既知のアレルギー、過敏症、または不耐性を有する。
【0494】
7. 被験者が、治験責任医師の見解では、参加することが被験者の最善の利益とはならない(たとえば、健康安心を損なう)状態にあり、または治験実施計画書で指定された評価を妨げ、制限し、もしくは混乱させうる状態にある。
【0495】
8. 被験者が、スクリーニング前4週間以内に(たとえば、全身麻酔を要するような)大手術を受けたことがある、または手術から完全には回復していない、または被験者が試験に参加することが予定されている時期に手術の予定が入っている。
注:予定されている手術が局所麻酔下で実施される被験者は参加することができる。
【0496】
9. ヒト免疫不全ウイルス(HIV)に対する血清反応陽性の既往歴。
【0497】
10. B型肝炎の既往歴/血清学的検査陽性(ワクチン接種もしくは自然感染回復による免疫、または免疫グロブリン療法による受動免疫を除く):
a. B型肝炎コア抗原に対する抗体検査陽性
および
b. B型肝炎表面抗原に対する抗体は検査陰性。
【0498】
11. 治癒していない進行中のC型肝炎感染の病歴。
【0499】
12. 被験者の試験への参加、または試験結果の評価に支障をきたす可能性のある、薬物乱用、医学的、心理学的、もしくは社会的状況。
【0500】
13. 被験者が以前、本試験で投与を受けたことがある。
【0501】
14. 被験者が妊娠中または授乳中の女性である。
【0502】
15. 被験者が、現地の処方情報にしたがってペムブロリズマブの使用に禁忌を有する。
【0503】
GEN1046の投与
GEN1046は、すべての手続きおよび評価が終了した後、21日間または42日間の各投与サイクルの1日目に、最低60分かけて点滴静注により投与される。
【0504】
ECAおよびECBにおいて、被験者は、ペムブロリズマブ200mg 1Q3Wと併用してGEN1046 100mg 1Q3Wの投与を受け(ECA)、またはペムブロリズマブ400mg 1Q6Wと併用してGEN1046 100mg 1Q6Wの投与を受ける(ECB)。
【0505】
ペムブロリズマブの投与
ECAおよびECB:投与前のすべての手続きおよび評価が終了した後、それぞれ、ペムブロリズマブ200mgまたは400mgを、3週間または6週間の各投与サイクルの1日目に投与する。
【0506】
ペムブロリズマブが最初に投与され、続いてGEN1046が投与される。ペムブロリズマブは30分かけて点滴静注で投与される。GEN1046の点滴を開始する前に点滴ラインをきれいにするために、ペンブロリズマブの投与後、速やかに生理食塩水で洗浄する必要がある。点滴間の間隔は、状況に応じて約30分またはそれ以上とする。ペムブロリズマブの減量は推奨されない。
【0507】
試験薬情報
GEN1046は、20mMヒスチジン、250mMスクロース、0.02%ポリソルベート80、pH5.5中で20mg/mLに調剤された、透明~乳白で、無色~淡黄色の溶液であって、0.9% NaCl(生理食塩水)で(その場で)希釈することができる輸液用濃縮製剤として供給される。
【0508】
ペムブロリズマブ(キイトルーダ(登録商標))点滴静注液は、無菌で防腐剤無添加の、透明~わずかに乳白で、無色~淡黄色の溶液であり、点滴静注には希釈が必要である。
【0509】
GEN1046のインフュージョンリアクション(IRR):Infusion-Related Reactions(輸注に伴う反応)
GEN1046 の投与に伴ってIRRを発現した被験者に対して:
- グレード1:IRRグレード1が発生した場合、点滴を中断する必要はなく、医師の厳重な管理のもと、治験責任医師の裁量で点滴速度を半分にして点滴を継続することができる。
- グレード2~3:IRRグレード2または3が発生した場合は、点滴を中断して、適切な医学的管理を開始しなければならない。1時間以内に症状がグレード1以下に回復した場合は、医師の厳重な管理のもと、治験責任医師の裁量により点滴速度を半分にして輸注を再開することができる。
o 臨床試験において、過去にグレード2または3のインフュージョンリアクションを発現した被験者は、前投薬を受けるべきである。その後の輸注でIRRを予防するための前投薬は、ローカルガイドラインに従って、治験責任医師の裁量で行うことができるが、抗ヒスタミン薬(たとえば、ジフェンヒドラミン50mgまたは同等の抗ヒスタミン薬)、アセトアミノフェン/パラセタモール(たとえば、アセトアミノフェン500~1000mgまたは同等のもの)を含んでいることが好ましく、さらに、必要と認められる場合には、被験者は、推奨最大用量である100mgプレドニゾンまたは同等のコルチコステロイドの投与を受けるべきである。
o 前投薬にもかかわらず、被験者が2回目のグレード3のIRRを起こした場合は、点滴を中止し、治療から離脱させなければならない。
- グレード4:アナフィラキシーまたはグレード4のIRRが生じた場合、GEN1046の投与を直ちに中止し、適当な薬物治療を行わなければならない。
【0510】
ペムブロリズマブのインフュージョンリアクション
ペムブロリズマブは、重篤な過敏症もしくはアナフィラキシーを含む、重篤な、または生命を脅かすIRRを引き起こす可能性がある。徴候および症状は通常、薬剤注入中または注入直後に発現し、おおむね注入終了後24時間以内に完全に消失する。
【0511】
【表11】
【0512】
投与の中止
被験者は、所定の投与中止基準(下記)のうち1つに当てはまるまで、それぞれ3週間または6週間の投与サイクルの1日目にGEN1046の投与を受ける。
【0513】
ECAコホートおよびECBコホートの被験者は、病勢が進行するまで、または所定の投与中止基準のうち1つに該当するまで、それぞれ、3週間の各投与サイクルの1日目、または6週間の各投与サイクルの1日目に、GEN1046と併用してペムブロリズマブの投与を受ける。GEN1046およびペムブロリズマブの両方を中止すべきである。治験依頼者のメディカルモニターが承認した場合のみ、被験者はGEN1046またはペムブロリズマブ単剤療法を継続することができる。両薬剤を中止した時点で、被験者は安全性のフォローアップ期間に移行する。
- 放射線画像での病勢進行、または放射線画像での病勢進行のiRECISTによる確認
- 臨床的進行
- 追跡不能
- 被験者が投与中止を要請する
- 死亡
- 試験投与の中止を必要とする許容できない有害作用
- 試験投与を中止することが被験者にとって最善であると治験責任医師が判断する
- 同意の撤回
- 妊娠
【0514】
有効性評価
すべての被験者はスクリーニング時に脳、胸部、腹部、および骨盤の画像診断を受ける。SCCHNを有する被験者には必ず頭頸部の画像診断が必要である。
【0515】
腫瘍イメージングはコンピュータ断層撮影法(CT)で得ることが好ましい。スクリーニングで最大5つの標的病変(臓器ごとに最大2つ)を特定し、試験期間を通じて追跡する。非標的病変も試験期間を通して評価する。スクリーニング時の初回腫瘍画像診断は、初回投与日前21日以内に行われる。施設はスクリーニング画像を再検討し、被験者がRECIST 1.1に従って測定可能な病変を有することを確認する。
【0516】
試験中の画像診断は、初回投与日から50週間の間は6週間ごと(±7日)、その後は12週間ごと(±7日)に、治験責任医師による病勢進行の評価(治験責任医師が、投与を継続してiRECISTに従うことを選択した場合を除く)、新たな抗がん剤治療の開始、同意の撤回、または死亡のいずれかが最初に発生した時まで、実施される。
【0517】
RECIST 1.1基準は、副次的評価項目の奏効評価に使用される(Eisenhauer et al., 2009, Eur J Cancer 45, 228-247.);iRECISTは、探索的評価項目の奏効評価に使用される(Seymour et al., 2017, Lancet Oncol 18, e143-e152)。治験責任医師がiRECISTの適用を選択した場合、病勢進行(PD)が確認されるまで投与を継続すべきである。
【0518】
奏効または新たな症状を確認するために、治験責任医師の判断でCTスキャンまたはMRIスキャンを追加で実施することができる。部分緩解(PR)または完全緩解(CR)を確認するための腫瘍画像診断は、奏効が最初に確認されてから少なくとも4週間後に実施する。
【0519】
iRECISTによる病勢評価
iRECISTはRECIST 1.1に基づいているが、免疫治療で観察される特有の奏効パターンを考慮して修正されている。本試験では、iRECISTは探索的評価項目として評価される(Seymour et al., 2017, Lancet Oncol 18, e143-e152)。
【0520】
iRECISTの病勢進行は、臨床的に安定した参加者において、PDの最初のX線画像による所見から少なくとも4~7週間後に確認されなければならない。病勢進行が確認されていない被験者は、臨床的に安定している限り、病勢進行が確認されるまで、GEN1046の投与を継続することができる。臨床的に安定している被験者は、以下の基準を満たす必要がある:
- 被験者は、GEN1046投与の継続から臨床的利益を得ていること(治験責任医師による評価)、ならびに急速な病勢進行を示さないことが必要である
- 被験者は、GEN1046投与に耐容性を示している
- 被験者は、安定したECOGステータスを示さなければならない
- 進行後の投与によって、疾患の進行による重篤な合併症(たとえば、迅速な治療を必要とする中枢神経系転移)を予防するための緊急介入が遅れることがない。
【0521】
臨床的に不安定な被験者は、X線画像上で病勢進行が最初に認められた時点で、GEN1046の投与を中止する。再撮影によって、iRECISTで確認された病勢進行(iCPD)が明らかである場合、被験者のGEN1046投与は中止される。
【0522】
ECOGパフォーマンスステータス
ECOGパフォーマンスステータスは、スクリーニングにおいて、各サイクルの1日目、および投与中止の来院時に、治験責任医師によって評価される。パフォーマンスステータスは、ECOGパフォーマンスステータスケールインデックスを用いてスコア化される(表12)。
【0523】
【表12】
【0524】
予備的結果および結論
- FIH試験の漸増フェーズで評価された25~1200mg Q3Wの用量は安全であり、全般的に良好な忍容性を示した。最大耐量(MTD)には達しなかった。
- 安全性データの予備的評価では用量依存性は認められず、有害事象(AE)の頻度に関して用量反応はないことが示された。
- RECIST v1.1に基づく奏効は、FIH 試験の用量漸増フェーズにおいて、GEN1046の用量80~200mg Q3Wで観察された。さらに、100mg Q3Wの用量での拡大においても奏効が観察された。
- 薬力学マーカーの持続的な調節([Ki67+]エフェクターメモリーCD8+ T細胞および全CD8+ T細胞の増殖、ならびにIFNγおよびIP-10レベルの増加)が、末梢血において200mg以下の用量レベルで観察された。これらのエンドポイントの調節の低下が、高用量レベル(≧400mg)で観察された。
- semi-mechanistic PK/薬力学モデル(WO 2021/156326の実施例13を参照されたい)は、三量体形成についてベルシェイプ型の反応を予測したが、それは100mg Q3W付近でピークに達した。三量体レベルとPD-L1 ROに関する標的結合とのバランスをとるために、GEN1046に対する最適な初期反応を提供しうる100mg Q3Wの用量が選択された。
- GEN1046単剤療法では、チェックポイント阻害薬による前治療歴のある被験者の無増悪生存期間(PFS)のほうが長かった(図9)。
- チェックポイント阻害薬による前治療歴のあるNSCLC被験者の、GEN1046単剤療法に対する臨床的奏効は、抗PD-1療法の最後の前治療からの期間と関連していた(図12)。
o GEN1046単剤療法が有効であったNSCLC被験者は、すぐ前の抗PD-1薬による治療がより最近のものである傾向を示した。
抗PD-1薬を含む治療からの期間が短いほど、残存する抗PD-1活性がGEN1046に対する反応を促進していることを示唆しているのかもしれない。これを支持するものとして、クリニックで抗PD-1薬による治療を受けた患者は、治療抗体による長期間のPD-1受容体占有を示し、その占有は200日を超えて持続する可能性がある(Brahmer et al., JCO 2010; 28(19): 3167-3175)。抗PD-1治療薬がPD-1受容体に結合したままであることは、GEN1046との結合に利用可能な遊離PD-L1分子の数を増やすことにつながる可能性がある。
抗PD-1活性の残存は、PD-1経路のより完全な遮断(PD-1とPD-L1およびPD-L2の両者との相互作用の遮断)を可能にすることもありうるが、これはポストCPI環境におけるGEN1046の生物学的活性にとって重要であるかもしれない。
より最近の抗PD-1治療は、たとえば抗腫瘍免疫応答を開始することによって、腫瘍微小環境に直接的な影響を与える可能性があり、抗PD-1治療中に進行した後すぐに、またはまもなくGEN1046を投与した場合、抗腫瘍免疫応答がGEN1046により増強される可能性がある。
o 奏効例は、PD-1+ CD8 T細胞の存在比率が「低い」ことを示したが、これは前治療の抗PD-1治療による受容体占有(RO)を反映している可能性がある。
o 反対に、非奏功例は、概してPD-1+ CD8 T細胞の存在比率が高いことを示し、これはより疲弊した表現型を示す可能性がある。
【0525】
[実施例8]
免疫チェックポイント阻害薬による標準的治療法で治療した後の再発/難治性転移性非小細胞肺がん患者を対象とした、GEN1046の単剤療法およびペムブロリズマブとの併用療法の第2相多施設共同無作為化非盲検試験
試験デザイン
本試験は、CPIを含む治療法による治療後の局所進行性または転移性NSCLCの成人患者を対象とした、GEN1046の単剤療法およびペムブロリズマブとの併用療法の安全性および有効性を評価する、第2相多施設共同無作為化非盲検試験である。
【0526】
本試験には約126名の被験者が登録され、120名(各群40名)の適格な被験者が以下に述べる投与群のいずれかに無作為に割り付けられる。被験者は、腫瘍におけるPD-L1発現を今後、中央検査機関で確認するために、新鮮な腫瘍組織および/または保存腫瘍組織を提供しなければならない。非扁平上皮組織型の被験者の割合は約70%を上限とする。無作為化は、PD-L1発現(TPS 50%以上vs 1%~49%)および組織型(扁平上皮vs非扁平上皮)により層別化される。
【0527】
A. 最初の2サイクルのGEN1046 100mg Q3Wに続いて、その後のサイクルではGEN1046 500mg Q6W
B. GEN1046 100mg Q3Wとペムブロリズマブ200mg Q3Wとの併用
C. GEN1046 100mg Q6Wとペムブロリズマブ400mg Q6Wとの併用
【0528】
事前に安全性を評価する導入期間(safety run-in)中に、6名の被験者をB群およびC群に登録する(各群3名)。これらの被験者は最低3週間、注意深くモニターされ、追跡される。これらのコホートのsafety run-inの終了後、収集されたデータ(関連するすべての安全性および臨床データを含むが、これに限定されない)を評価する。この検討の後、併用レジメンの忍容性が良好と判断された場合、A群、B群、およびC群の無作為化を開始する。
【0529】
被験者の治療は、被験者が以下に定義する投与基準の1つを満たすまで継続しなければならない。
【0530】
初回投与前のベースラインの時点、および試験投薬の初回投与から6、12、18、および24週間(±7日)後、さらにその後は9週間(±7日)ごとに、造影剤を用いたコンピュータ断層撮影(CT)、または磁気共鳴画像法(MRI)を実施する。CTまたはMRIは、病勢進行(治験責任医師による評価)、次の抗がん剤治療の開始、同意の撤回、または死亡のいずれかが先に生じるときまで、継続して得られる。固形がんの効果判定基準(RECIST)v1.1で定義される病勢進行は、最初に記録された病勢進行(PD)後に、追加の確認スキャンによって確認されなければならない。臨床的に不安定な被験者は、X線撮影で病勢進行が最初に認められた時点で試験投与を中止し、PDを確認するために度重なる画像診断を受ける必要はない。治療に対する反応の遅れが疑われる場合、治験責任医師は、被験者が臨床的利点を経験していれば、RECIST v1.1で定義された進行の時期を過ぎても投与を継続することができる。被験者がPDを経験した後は、死亡、同意の撤回、追跡不能、または試験終了のいずれかが最初に起こるまで、12週間ごとに生存状態が収集される。その後の抗がん剤治療およびそれに対する被験者の反応も収集される。RECIST v1.1で定義された進行を過ぎて投与している間、その後の進行を評価するためにiRECISTが使用される。
【0531】
試験デザインの理論的根拠
本試験は、CPIを含む療法による治療後の再発/難治性転移性NSCLCの成人患者を対象とした、GEN1046の単剤療法またはペムブロリズマブとの併用療法の安全性および有効性を評価する無作為化非盲検試験である。無作為化によって潜在的な割り付けバイアスを排除する一方、非盲検デザインが効率的なAE/SAEの管理を可能にする。PD L1発現レベルはペムブロリズマブの有効性と関連し、組織型は重要なベースライン疾患特性である。無作為化は、これら2つの要因について群間の均衡を確保するために層別化される。
【0532】
主な目的は、GEN1046の単剤療法およびペムブロリズマブとの併用療法について抗腫瘍活性の客観的奏効率(ORR)を評価することである。ORRは、NSCLCの概念実証試験において抗腫瘍活性を評価するための確立された有効性パラメータである。
【0533】
用量およびスケジュールの理論的根拠
GEN1046について用量100mg Q3Wを選択したのは、FIH試験、GCT1046-01の臨床データに基づいており、用量漸増フェーズにおいて61名の被験者を対象として、25~1200mg Q3Wの用量が評価された。さらに、PK/薬力学/有効性の関係を理解するために、4-1BB、GEN1046、PD-L1三分子複合体(三量体)形成、および腫瘍におけるPD-L1のRO(受容体占有)を予測するPK/薬力学モデルを開発した(実施例9を参照されたい)。
【0534】
要約すると、GEN1046の用量100mg Q3Wは、実施例7の用量漸増試験に基づいて選択された。
【0535】
投与群Aでは、GEN1046の活性化用量(100mg Q3Wを2サイクル)に続いてGEN1046の高い維持用量(その後のサイクルについて500mg Q6Wの投与)というレジメンを、以下に基づいてテストする:
- semi-mechanistic PK/薬力学モデルPK/薬力学モデルは、腫瘍における三量体形成がGEN1046の100mg Q3Wレジメンでピークに達することを示しており、これは継続的な4-1BB活性化をもたらすと予想されるので、最初の2サイクルの活性化用量として選択された。GCT1046-01試験において、拡大コホートの臨床データは、100mgQ3Wの用量が最初の2サイクルのうちに奏効をもたらしたことを示している。
- 最初の2サイクルの後、GEN1046 500mg Q6Wの維持レジメンが使用されることになるが、100mg Q3Wと比較して、投与サイクルを通じて比較的高いPD-L1 ROが得られ、結合した三量体を介して比較的程度は低いが間欠的な4-1BB活性化がもたらされると予測される。この用量は奏効期間(DOR)の改善をもたらすことが期待される。
【0536】
投与群BおよびCでは、GEN1046とペムブロリズマブとの併用療法を2種類の投与スケジュールで評価する:
- 投与群Bでは、GEN1046の100mg Q3Wレジメンをペムブロリズマブの200mg Q3Wレジメンとともにテストする。このレジメンでは、GEN1046は、最高の3量体形成および持続的4-1BB活性化をもたらすことが期待され、ペムブロリズマブとの併用で、標的/経路の両者の最適な結合、および抗腫瘍効果の改善を可能にすることができる。
- 投与群Cでは、GEN1046の100mg Q6Wレジメンをペムブロリズマブの400mg Q6Wレジメンとともに評価する。PK/薬力学モデルに基づいて、GEN1046は、3週間の投与サイクルでは持続的な4-1BB活性化であるのに対して、6週間の投与サイクルでは間欠的/一過性4-1BB活性化をもたらすと予想される。4-1BBの一過性の活性化は、T細胞応答のリセットを可能にして、長期的なインターフェロンシグナル伝達を減少させることが期待され(Weber, E. W., et al. (2021), Science 372 (6537))、持続的な4-1BB活性化による腫瘍浸潤CD8+ T細胞の疲弊を防ぐことが可能であり、ペムブロリズマブとの併用により、深達度およびDORの改善をもたらすことができる。
【0537】
ペムブロリズマブ200mg Q3Wおよび400mg Q6Wのレジメンは、それぞれNSCLCに対するSOC治療の第1選択薬および第2選択薬として承認されている。ペムブロリズマブ200mg Q3Wおよび400mg Q6Wは、同等の有効性および安全性プロファイルをもたらすことが期待される(Lala et al., 2020, Eur J Cancer 131, 68-75)。
【0538】
選択基準
1. 被験者は18歳以上でなければならない。
【0539】
2. 被験者は、組織学的または細胞学的にステージ4のNSCLCと確定診断され、転移性疾患に対する、抗PD-1/PD-L1 mAbを含む全身療法の前治療を少なくとも1回受けていなければならない。
注:被験者はNSCLCで承認された抗PD-1/PD-L1 mAbを少なくとも2回投与されていなければならない。
a. 被験者は、抗PD-1/PD-L1 mAbを単剤療法またはSOC併用療法として1回投与される治療中に、または治療後に増悪した。
b. 被験者は、抗PD-1/PD-L1 mAbの後のプラチナ併用療法の間に、またはその後に増悪した。
c. 被験者は、プラチナ併用療法後の抗PD-1/PD-L1 mAbの投与中または投与後に増悪した。
【0540】
3. 被験者は、スクリーニング中に中央検査機関で評価されたTPSのPD-L1腫瘍発現スコアが1%以上でなければならない。
【0541】
4. 被験者はRECIST v1.1により測定可能な病変を有していなければならない。
【0542】
5. ECOG(Eastern Cooperative Oncology Group)パフォーマンスステータス(PS)が1以下でなければならない。
【0543】
6. 被験者の平均余命が3ヵ月以上でなければならない。
【0544】
7. 被験者は、以下の臓器機能および骨髄機能を有していなければならない:
a. 絶対好中球数(ANC)≧1500/L。
b. 血小板数≧100,000/L。
c. ヘモグロビン≧9.0g/dL(無作為化前4週間以内に輸血がない場合)。
d. 総ビリルビン≦1.5×施設内正常上限値(ULN)(ただしジルベール症候群の場合を除き、その場合は、直接ビリルビン≦2×施設内ULN、総ビリルビン<3mg/dL)。
e. アラニンアミノトランスフェラーゼ(ALT)およびアスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ(AST)≦3×ULN。同時にアルカリホスファターゼが2.5×ULNを超えて上昇する場合、ALTおよびASTの値は≦1.5×ULNでなければならない。
f. 糸球体濾過量は、MDRD(Modification of Diet in Renal Disease)簡易式にしたがって、45mL/分/1.73m2以上である。
g. プロトロンビン時間(PT)/国際標準化比(INR)≦1.5×ULN(被験者が抗凝固療法を受けている場合を除く。その場合PTは抗凝固薬の使用目的の治療域内でなければならない)。
h. 活性化部分トロンボプラスチン時間(aPTT)≦1.5×ULN(被験者が抗凝固療法を受けている場合を除く。その場合aPTTは抗凝固薬の使用目的の治療域内でなければならない)。
【0545】
除外基準
以下の基準のいずれかに該当する被験者候補は、試験への参加から除外される。
【0546】
1. 既知のEGFR、ROS1、もしくはALK変異または遺伝子再構成を証明する文書。非扁平上皮組織型、または非扁平上皮および扁平上皮の混合組織型を有する被験者については、変異状態を証明する文書が入手できない場合、バイオマーカーパネル検査(BRAF、METex 14スキッピング、KRAS 変異、RET再構成、高レベルMET増幅、または NTRK遺伝子融合を含むが、これらに限定されない)のために、年齢を問わず、ホルマリン固定パラフィン包埋(FFPE)腫瘍組織を治験依頼者が指定する中央検査機関に提出する必要がある。バイオマーカーステータスが施設において原資料で確認できるまで、被験者を無作為化してはならない。
【0547】
2. 被験者が以下のいずれかの前治療を受けている:
a. NSCLCに対するドセタキセルによる前治療。
b. 4-1BB(CD137)標的薬、任意のタイプの抗腫瘍ワクチン、または自己細胞免疫療法による前治療。
c. GEN1046投与前28日以内の抗がん剤による治療。
d. ステージ4のNSCLCを治療するための治験薬。
e. GEN1046開始前30日以内の弱毒生ワクチンによる前治療。生ワクチンの例としては、麻疹、おたふくかぜ、風疹、水痘/帯状疱疹(水ぼうそう)、黄熱病、狂犬病、BCG(Bacillus Calmette-Guerin)、腸チフスワクチンが挙げられるが、これらに限定されない。注射用の季節性インフルエンザワクチンは一般的には死滅ウイルスワクチンであり、許容される;しかしながら、経鼻インフルエンザワクチン(FluMist(登録商標)など)は弱毒生ワクチンであり、認められない。SARS-CoV-2の実験的および/または承認されていないワクチン接種は許容されない。
f. GEN1046の初回投与前14日以内の放射線治療。被験者が30Gyを超える放射線治療を受けた場合、その治療介入による毒性および/または合併症から回復していなければならない。
g. 長期にわたる全身性免疫抑制性コルチコステロイドの投与、すなわち、初回GEN1046投与前14日以内で、プレドニゾロンが1日10mgを超える、またはプレドニゾロンの累積投与量が150mgを超える。補充療法(たとえば、副腎機能不全もしくは下垂体機能不全に対する、チロキシン、インスリン、または生理的コルチコステロイド補充療法)は、全身療法の一形態とはみなされず、許容される。
h. GEN1046の初回投与の4週間前に顆粒球コロニー刺激因子(G-CSF)または顆粒球/マクロファージコロニー刺激因子の補充を受けたことがあるか、または長期にわたって輸血に依存している。
【0548】
3. 被験者がGEN1046の予定初回投与前28日以内に侵襲的な治験用医療機器を使用したことがあるか、または現在、介入試験に登録されている。
【0549】
4. 被験者が、免疫CPIを含む投与開始後6週間以内に病勢進行により投与中止となった。
【0550】
5. 被験者が、本試験への登録の251日以上前に、抗PD-1/PD-L1 mAbの最終投与を受けた。
【0551】
6. 被験者が、組み入れ診断以外の、既知の過去または現在の悪性腫瘍を有する、ただし、非黒色腫皮膚がん;膀胱がん、胃がん、大腸がん、子宮頸がん/異形成、子宮内膜がん、黒色腫、または乳がんの上皮内(粘膜内)がん;および、治癒可能ながんであって、完全奏効期間が2年を超え、追加治療を必要としないか、または必要と想定されないがんを除く。
【0552】
7. すべての被験者は、新規または既存の中枢神経系(CNS)病変を記録するために、脳のCTスキャンまたはMRIを受けなければならない。脳動静脈奇形、脳動脈瘤、進行性脳転移、脊髄圧迫(疾患による)、または脳卒中の既往歴のある被験者は除外される。
【0553】
8. 既知の不安定な中枢神経系転移があり、進行中のがん性髄膜炎またはその既往がある被験者は除外される。過去に治療を受けた脳転移を有する被験者は、再度の画像診断により少なくとも28日間X線画像上で安定している(すなわち、進行の形跡がない)ことを条件に参加することができる(ここで留意すべきは、再度の画像診断が試験スクリーニング中に実施されなければならないことである)。被験者は臨床的に安定していなければならず、短期コルチコステロイド治療もしくはステロイド漸減療法を受けていないこと、またはC1D1前14日以内に定位放射線照射もしくは全脳照射を受けていないことが必要である。長期ステロイド療法は、C1D1前の14日間の投与量が安定していれば許容される(プレドニゾン1日10mg以下またはそれに相当するもの)。
【0554】
9. 被験者が、GEN1046またはその医薬品添加物に対して既知のアレルギー、過敏症、または不耐性を有する。
【0555】
10. 被験者が、現地の処方情報に従ってペムブロリズマブの使用に禁忌を有する。
【0556】
11. 被験者が、妊娠中の女性、授乳中の女性、または本試験に登録中もしくはGEN1046の最終投与後6ヵ月以内に妊娠する予定の女性である。
【0557】
12. 被験者が、本試験に登録中またはGEN1046の最終投与後6ヵ月以内に子供をもうける予定の男性である。
【0558】
13. 被験者が、活動性の間質性肺疾患または活動性の非感染性肺炎の所見を有する。
【0559】
14. 被験者が以下のいずれかに該当する:
a. 初回投与の2週間前までに投与された抗感染症療法による静脈内治療を必要とする、継続中または活動性の感染症。
b. 症候性うっ血性心不全(New York Heart Associationによる分類でグレードIIIまたはIV)、不安定狭心症、または心不整脈。
c. 最適な医学的管理にもかかわらず、収縮期血圧160mmHg以上、および/または拡張期血圧100mmHg以上と定義される、コントロールされていない高血圧。
d. irAEのリスクを示唆する可能性のある全身的免疫抑制療法による治療を必要とする重大な自己免疫疾患の、継続中または最近(6ヵ月以内)の所見がある。
e. グレード2以上の進行中の感覚神経障害または運動神経障害。
a. 重篤で治癒していない創傷、皮膚潰瘍、または骨折。
f. 被験者の試験への参加、または試験結果の評価に支障をきたす可能性のある、薬物乱用、医学的、心理学的、もしくは社会的状況。
【0560】
15. 被験者が以下のいずれかの既往歴を有する:
a. 免疫療法の前治療で投与中止をもたらした、グレード3以上のirAE。
b. 筋炎、ギラン・バレー症候群、または重症筋無力症(進行度を問わない)。
c. 肝疾患(アルコール性肝炎もしくは非アルコール性脂肪性肝炎、薬剤性もしくは自己免疫性肝炎、または肝硬変の所見など)。
d. GEN1046の初回投与前3ヵ月以内の、臓器移植(角膜移植を除く)、自家もしくは同種骨髄移植、または幹細胞レスキュー。
e. モノクローナル抗体療法に対するグレード3以上のアレルギー反応、および本試験の過程で投与される薬剤に対するアレルギーまたは不耐性が判明しているか、または疑われること。
f. 前治療に関連したグレード2以上の毒性(脱毛を除く)が継続している、ただし、AEが、治験責任医師の見解において臨床的に重要でない、および/または支持療法で安定している場合を除く。
【0561】
16. 被験者が大手術(たとえば、長期の回復期間を必要とする)を受けたことがあり、本試験に参加する前に、前のベースライン状態にまで完全には回復していない。
【0562】
17. 被験者が、ヒト免疫不全ウイルスHIVについて血清反応陽性の既往歴を有する。
【0563】
18. 被験者が、B型肝炎ウイルス(HBV)の既往歴/血清学的検査陽性を有する(ワクチン接種もしくは自然感染回復による免疫、または免疫グロブリン療法による受動免疫を除く):
a. B型肝炎コア抗原に対する抗体(抗HBc)検査陽性
および
b. B型肝炎表面抗原に対する抗体(抗HBs)検査陰性。
【0564】
19. 被験者が、治癒していない進行中のC型肝炎ウイルス(HCV)感染の病歴を有する。
【0565】
20. 被験者が、HBV(B型肝炎表面抗原[HBsAg]またはHBV DNA陽性として定義される)または既知の活動性HCVウイルス(HCV RNA[定性]の検出として定義される)感染の病歴を有する。
【0566】
21. 被験者が、治験責任医師の見解では、参加することが被験者の最善の利益とはならない(たとえば、健康で安心な状態を損なう)状態にあり、または治験実施計画書で指定された評価を妨げ、制限し、もしくは混乱させうる状態にある。
【0567】
試験薬の投与
試験薬は、以下の中止基準のうち1項もしくは複数項を満たすまで、表13に記載のように投与される。
【0568】
GEN1046およびペムブロリズマブは、資格を有する施設職員により点滴静注で投与される。薬剤の調製および取扱い中は、激しい混合または振盪を避けるべきである。本剤には抗菌防腐剤も静菌剤も含まれていないため、調製された溶液の無菌性を保証するために注意しなければならない。
【0569】
【表13】
【0570】
GEN1046単剤療法
投与群Aでは、最初の2投与サイクルは、GEN1046 100mg Q3Wを1日目に30分の点滴静注として投与する;その後、次の6週間の投与サイクルの1日目に、GEN1046 500mg Q6Wを30分の点滴静注として投与する。GEN1046の投与量の減量は認められない。
【0571】
GEN1046およびペムブロリズマブ
投与群Bでは、GEN1046 100mgおよびペムブロリズマブ200mgを毎回の3週間サイクルの1日目に投与する。
【0572】
投与群Cでは、GEN1046 100mgおよびペムブロリズマブ400mgを毎回の6週サイクルの1日目に投与する。
【0573】
ペムブロリズマブを最初に投与し、その後GEN1046が投与される。GEN1046の点滴を開始する前に点滴ラインをきれいにするために、ペムブロリズマブの投与後、速やかに生理食塩水で洗浄する。点滴の間隔は、状況に応じて約30分またはそれ以上とする。GEN1046および/またはペムブロリズマブの投与量の減量は認められない。
【0574】
試験薬の概要
GEN1046(20mMヒスチジン、250mMスクロース、0.02%ポリソルベート80、pH5.5中20mg/mLに調剤された)は、透明~乳白で、無色~淡黄色の溶液であって、0.9% NaCl(生理食塩水)で(その場で)希釈することができる溶液用濃縮製剤として供給される。
【0575】
ペムブロリズマブ(キイトルーダ(登録商標))点滴静注液は、無菌で防腐剤無添加の、透明~わずかに乳白で、無色~淡黄色の溶液であり、点滴静注には希釈が必要である。
【0576】
試験投与の中止
被験者の試験投与は、以下の場合には中止されなければならない:
- 投与中止を必要とする許容できないAE(有害事象)*
- 被験者のノンコンプライアンス
- 被験者からの試験投与中止の申し出*
- 妊娠
- 臨床的進行*
- 病勢進行(奏効基準による)
【0577】
生存状況
生存状況の評価は、GEN1046の最終投与日から始めて、被験者が死亡、または試験から離脱するまで継続して、12週間(±14日)ごとに行われる。この評価に対応できない被験者、または指定された家族が対応することができない被験者は「追跡不能」として登録される。
【0578】
被験者の試験からの離脱
被験者は、以下のいずれかの理由により試験から離脱することがある:
- 死亡
- 追跡不能
- 被験者の同意の撤回
- 試験終了
- 治験依頼者による試験終了
被験者が試験投与を中止し、PDが実証される前に試験から離脱した場合、投与終了時の評価を得るべきである。
【0579】
有効性評価
腫瘍縮小効果は、RECIST v1.1基準(Eisenhauer et al., 2009)に従って各施設で評価される。画像評価収集計画を以下に示す。さらに、可能であれば事前の腫瘍スキャン画像も収集する。
【0580】
画像データは、治験依頼者が指定する画像診断委託研究機関(CRO)により一元的に収集され、品質がチェックされる。各施設の治験責任医師による評価は、主要評価項目の解析および治療の意思決定に使用される。
【0581】
【表14】
【0582】
最初のRECISTで定義された病勢進行の後も試験治療を継続する被験者については、有効性評価を継続しなければならない。
【0583】
治験責任医師が評価したRECISTで定義された病勢進行がない状態で試験投与を中止した被験者については、RECISTで定義された病勢進行、次の抗がん剤治療の開始、同意の撤回、死亡、または追跡不能のいずれかが最初に起こるまで、試験中の画像診断を継続しなければならない。
【0584】
ベースラインの画像診断評価
画像診断の評価は、試験薬の初回投与から21日以内(C1D1より前の-21日目~-1日目)のスクリーニング/ベースラインにおいて行われる。すべての転移病変部位はベースラインにおいて標的病変または非標的病変として報告され、試験期間を通じて追跡される。
【0585】
主試験のICFに署名する前を含めて、治療開始前21日以内の被験者の通常の評価の際にすでに終了した画像診断評価は、本試験の技術的な画像要件を満たす場合に限って、本試験のベースライン画像とみなすことができる。無作為化後に得られた画像診断評価は、ベースライン画像とみなすことはできない。
【0586】
スクリーニングを含めて、予定されているすべての腫瘍画像診断には、胸部、腹部、および骨盤の完全な画像化が含まれていなければならない。腫瘍画像はヨード造影CTで撮影することが強く求められる。腹部および骨盤については、ヨード造影CTが禁忌である場合、または地域の診療施設がMRIを義務付けている場合は、MRIを使用してもよい。胸部の画像化はCTで行わなければならないが、ヨード造影が禁忌である場合には造影なしで行ってもよい。
【0587】
脳の画像化にはMRIが非常に好ましい方式である。脳転移が判明しているか、または疑われる場合には、ベースライン時に脳MRIを完了する。造影脳MRIが好ましいが、MRI造影が禁忌の場合は、造影なしのMRI、または造影あり/なしのCTでも差し支えない。
【0588】
以前放射線治療を受けたことのある潜在的に測定可能な病変は、測定不能病変とみなすべきである。しかしながら、以前に放射線治療を受けた病変が放射線治療後に明らかに進行している場合は、測定可能病変とみなすことができる。
【0589】
ベースライン後の画像診断評価
表14に記載された画像診断評価は、試験治療の中断もしくは実際の投与にかかわりなく、ベースライン時に使用されたのと同じ画像診断法を使用して実施される。試験中の画像診断は、最初の24週間は6週間(±7日)ごとに、その後は初回投与日から病勢進行(治験責任医師による評価)、次の抗がん剤治療の開始、同意の撤回、死亡、または追跡不能のいずれかが最初に起こるまで、9週間(±7日)ごとに実施される。画像診断評価は、試験薬の初回投与日を基準として予定され、試験薬による治療が一時的に控えられるかどうか、または予定外の評価が実施されるかどうかにかかわらず順守される。
【0590】
被験者の有効性評価をサポートするため、必要に応じて治験責任医師の判断により、試験期間中いつでも追加の画像診断評価を実施することができる。臨床的に病勢進行が疑われる場合はいつでも、次に予定された画像診断評価を待たずに、速やかに理学的検査および画像診断評価を行う必要がある。
【0591】
ベースライン時に評価された各病変は、試験期間を通じて一貫性のある比較ができるように、画像診断法および可能ならば同じ地域の放射線科医/医師によって評価されなければならない。進行が疑われるために予定外の画像診断評価が行われた場合、その後の画像診断評価は当初の画像診断スケジュールに従って行われるべきである。
【0592】
複合陽電子放出断層撮影(PET)-CTは、IV造影剤の利用を含めて、PETなしで行うCTと同様の診断画質である場合に限って、使用することができる。治験責任医師の判断により、RECIST 1.1に従ってPDを記録するためにFDG-PETスキャンを実施することができる。
【0593】
無増悪生存期間2
無増悪生存期間2(PFS2)は、初回点滴から、二次治療での客観的腫瘍進行まで、または何らかの原因による死亡までの期間と定義される。PFS2について、客観的腫瘍進行は、二次治療での治験責任医師の進行評価に基づいて判定される。この目的のために、開始/終了日、中止理由、および病勢進行の日付を含めて、その後の抗腫瘍療法が記録される。
【0594】
iRECISTによる病勢評価
iRECISTによる病勢進行の確認は、臨床的に安定している参加者において、PDの最初のX線診断所見から少なくとも4~7週間後に行われるべきである。病勢進行が確認されていない被験者は、臨床的に安定している限り、進行が確認されるまで試験治療を継続することができる。
【0595】
臨床的に安定している被験者は以下の基準を満たさなければならない:
- 被験者は、GEN1046またはGEN1046併用レジメンの継続による臨床的有用性を有していなければならず(治験責任医師の評価による)、急速な病勢進行を示してはならない。
- 被験者が試験治療に忍容性を示している。
- 被験者は、安定したECOGステータスを有していなければならない。
- 増悪後の継続投与が、病勢進行のせいで、重篤な合併症(たとえば、緊急治療を要する中枢神経系転移)を予防するための危急の治療介入を遅延させることはない。
【0596】
臨床的に不安定な被験者は、X線診断で病勢進行が最初に発生した時点で、試験治療を中止する。臨床的に不安定な被験者は、iRECISTによるPDを確認するために繰り返し画像診断を受ける必要はない;しかしながら、治験依頼者と相談の上、治験責任医師の判断で進行確認検査を受けることができる。
【0597】
再度の画像診断により、iRECISTで確認される病勢進行(iCPD)が明らかな場合には、被験者は試験治療を中止する。しかしながら、iCPD後に被験者が利益を得ている場合には、治験依頼者のメディカルモニターが、試験治療継続の例外を承認しなければならない。再度の画像診断により、iRECIST安定病変(iSD)、iRECIST部分奏効(iPR)、またはiRECIST完全奏効(iCR)が実証された場合、画像診断を6週間(±7日)ごとに継続し、被験者は試験治療を継続すべきである。
【0598】
予備的結果
2022年8月10日現在、治療群CのSafety run-inパートには4名の患者が登録され、4例目のDLT期間が終了した。評価可能な被験者においてDLTは報告されておらず、報告されたSAEはいずれも試験薬(GEN1046またはペンブロリズマブ)に関連するものではなかった。1例は部分奏効となり、1例は病勢が安定している。
【0599】
[実施例9]
薬物速度論/薬力学モデル
マルチコンパートメント生理学的薬物速度論(PBPK)モデルと、腫瘍微小環境および流入領域リンパ節で生じる腫瘍/免疫プロセスおよび相互作用を表す機構的システム生物学モデルとを組み合わせた、定量的システム薬理学(QSP)統合モデルが開発された。PBPKモデルは、FcRnを介したGNE1046の健常組織スペースおよび腫瘍スペースへの輸送および分布を、リンパ液の流れを介して血漿に戻ることを含めて、表現する。機構的システム生物学モデルは、腫瘍増殖、がん/免疫サイクル、ならびにGEN1046および抗PD1薬ペムブロリズマブの活性に直接関連するメカニズムに関与する、既知の生物システムを再現するように設計されている。このモデルは、これらの経路のパラメータ化のために、広範な文献、前臨床、薬物速度論、および薬力学的データを活用した。このモデルを用いて、主要なマーカー(ベースライン時のPD-1およびPD-L1発現など)において観察されるばらつきをカバーする仮想患者集団を作成し、GEN1046およびペムブロリズマブが単剤療法として、または併用で投与された場合の客観的奏効率(ORR)を予測した。モデルは、ペムブロリズマブ(文献データ)およびGEN1046単剤療法の臨床試験で観察された客観的奏効率(ORR)に基づいて検証された。評価は、GEN1046について、100mg Q3Wまたは100mg Q6Wの単剤投与で、または承認用量である200mg Q3Wまたは400mg Q6Wのペムブロリズマブとの併用投与で行った。
【0600】
ペムブロリズマブと併用して、100mg Q3WまたはQ6Wとして投与されたGEN1046では、部分奏効(PR)率および完全奏効(CR)率の両者において弱い用量依存関係が認められた。PR率およびCR率の予測は、GEN1046 100mgと300mg Q3Wの間で最大奏効を示す。さらに、予測は、Q3WもしくはQ6W投与の場合に、GEN1046とペンブロリズマブとの差が最小であることを示す(図11)。
【0601】
[実施例10]
LPS成熟樹状細胞およびin vitro疲弊T細胞の同種MLRアッセイにおけるサイトカイン分泌に対するペムブロリズマブと併用したGEN1046の効果
目的:混合リンパ球培養反応(MLR)アッセイにおいて、GEN1046とペムブロリズマブの併用がT細胞の疲弊化を逆行させることができるかどうかを解析するために、ヒト成熟樹状細胞(mDC)およびin vitro疲弊T細胞(Tex)の4組のユニークな同種ペアを、GEN1046単独、ペムブロリズマブ単独、または両抗体の併用存在下で共培養した。Tex上での阻害受容体の発現はフローサイトメトリーで測定し、インターフェロン(IFN)γの分泌は共培養の上清で評価した。
【0602】
(方法)
健常ドナーの単球およびT細胞
CD14+単球および純化CD3+ T細胞はBioIVTから入手した。MLRアッセイには4組のユニークな同種ドナーペアを使用した。
【0603】
単球の未熟樹状細胞への分化
ヒトCD14+単球は健常ドナーから得られた。未熟樹状細胞(iDC)への分化のために、1~1.5×106単球/mLを、T25培養フラスコ(Falcon、カタログ番号353108)内の、10%非働化ウシ胎児血清(FBS;Gibco、カタログ番号16140071)、100ng/mL顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF;BioLegend、カタログ番号766106)および300ng/mLインターロイキン(IL)4(IL-4;BioLegend、カタログ番号766206)を添加したRoswell Park Memorial Institute(RPMI)1640完全培地(ATCC modification formula;ThermoFisher、カタログ番号A1049101)中で、37℃にて6日間培養した。4日後、培地を新鮮な培地および添加物に交換した。
【0604】
iDCからmDCへの分化
MLRアッセイを開始する前に、非付着性細胞を集めてiDCを回収し、10%FBS、100ng/mL GM-CSF、300ng/mL IL-4、および5μg/mLリポ多糖(LPS;ThermoFisher、カタログ番号00-4976-93)を添加したRPMI1640完全培地中で、1~1.5×106細胞/mLを37℃で24時間インキュベートすることによってmDCに分化させた。
【0605】
T細胞の疲弊化
健常ドナーから得た純化CD3+ T細胞を融解し、5% FBSおよび10ng/mL IL-2(BioLegend, カタログ番号589106)を添加したAIM-V培地(ThermoFisher, カタログ番号12055091)に1×106細胞/mLで再懸濁した。疲弊化様の表現型を有するT細胞を作製するため、細胞を、ビーズ:細胞比1:1として、37℃、5%CO2で48時間、Dynabeads(商標名)Human T Activator CD3/CD28(Gibco, カタログ番号11161D)により2回刺激した。T細胞の疲弊化表現型は、下記のように、CD3/CD28再刺激に対する反応性低下(IFNγ分泌の欠如)によって確認された。抑制性受容体TIM3、LAG3、およびPD-1の高発現は、疲弊化表現型と合致した。2回の刺激後、疲弊CD3+ T細胞(Tex)を24時間休ませた。
【0606】
ナイーブコントロールとして、健常ドナーから得た純化CD3+ T細胞をMLRアッセイ開始の1日前に融解し、10% FBSおよび10ng/mL IL-2を添加したRPMI1640完全培地に1×106細胞/mLで再懸濁し、37℃で一晩インキュベートした。MLRアッセイに先立って、フローサイトメトリー用にナイーブT細胞およびTexの一定分量を回収した。
【0607】
フローサイトメトリー
Tex上の抑制性受容体をフローサイトメトリーで解析するため、細胞を400×g、5分間でペレット化し、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)で洗浄後、再度ペレット化し、LIVE/DEAD(商標名)Fixable Near-IR Dead Cell Stain(ThermoFisher Scientific、カタログ番号L10119、1:500希釈)またはViability Live/Dead Blue(ThermoFisher Scientific、カタログ番号L2305、1:500希釈)を添加した1mL PBS中に再懸濁して、暗所で4℃にて20分間インキュベートした。次に、細胞を洗浄し、ペレット化し、5%ヒト血清(Sigma、カタログ番号H4522)を含有するFACSバッファー(0.5%ウシ血清アルブミン[BSA, Sigma, カタログ番号A9576]および2mMエチレンジアミン四酢酸[EDTA、Invitrogen、カタログ番号15575-038]を添加したダルベッコリン酸緩衝生理食塩水[DPBS、Gibco、カタログ番号14190136])中に8×106細胞/mLとなるように再懸濁し、4℃で15分間インキュベートした。その後、2×105個の細胞を含む25μLを、Brilliant Stain Buffer Plus(BD Horizon、カタログ番号566385)を添加したFACSバッファーで希釈した表15に示す蛍光標識抗体を含む150μL染色ミックスを入れた新しい96ウェルプレートに移し、暗所で室温にて20分間インキュベートした。細胞をペレット化し、FACSバッファーで洗浄して、100μL Fixation Buffer(Biolegend、カタログ番号420801)に再懸濁し、暗所で4℃にて15分間インキュベートした。細胞を再度ペレット化し、洗浄してから、100μLのFACSバッファー中に再懸濁した。サンプルは、Cytek(登録商標)Auroraフローサイトメーター(Cytek Biosciences)で分析した。
【0608】
【表15】
【0609】
MLRアッセイ
mDC(「iDCからmDCへの分化」を参照されたい)を回収し、4×105細胞/mLとなるようにAIM-V培地中に再懸濁した。TexおよびナイーブCD3+ T細胞(「T細胞の疲弊化」を参照されたい)を回収し、4×106細胞/mLとなるようにAIM-V培地中に再懸濁した。mDCおよびTexの共培養物は、DC:T細胞比1:4または1:10で播種し(2×104のmDCを8×104または2×105 Texとともにインキュベートすることに相当する)、ペムブロリズマブ(1μg/mL;臨床製品ペムブロリズマブの非臨床/研究用グレード品;Selleckchem、カタログ番号A2005)もしくはGEN1046(0.001~30μg/mL)の単剤としての存在下で、または両薬剤の組み合わせの存在下で、AIM-V培地中、96ウェル丸底プレート(Falcon、カタログ番号353227)内で、37℃にて5日間培養した。bsIgG1-PD-L1×ctrl(30μg/mL)、bsIgG1-ctrl×4-1BB(30μg/mL)、IgG1-ctrl-FEAL(30μg/mL)、またはIgG4アイソタイプコントロール(1μg/mL)で処理した共培養物をコントロールとして含めた(表16)。並行して、mDCおよびナイーブCD3+ T細胞をDC:T細胞比1:10で共培養した培養物(2×104 mDCを2×105 T細胞とともにインキュベートしたものに相当する)を、1μg/mLペンブロリズマブとともに、およびペンブロリズマブなしで培養した。5日後、プレートを500×gで5分間遠心し、上清を各ウェルから新しい96ウェル丸底プレートに注意深く移した。
【0610】
回収された上清は、メーカーの指示に従って、Envision装置でAlphaLISA IFNγキット(Perkin Elmer、カタログ番号AL217)を用いて、酵素結合免疫吸着測定法(ELISA)によりIFNγレベルを分析した。
【0611】
【表16】
【0612】
最も高い単一薬剤(HSA)シナジー解析
各処理条件におけるサイトカイン濃度値は、バックグラウンド対照値(無処理対照ウェル)を差し引くことによって標準化し、アッセイにおける最大値に対するパーセンテージとして表示した。併用効果は、対応する濃度での単一薬剤の最大反応として定義される最も高い単一薬剤(Highest Single Agent, HSA)基準モデルを用いて、予想される反応と実測された反応を比較することにより定量化した。
【0613】
(結果および結論)
CD3/CD28ビーズによる2回の刺激後、T細胞は抗CD3および抗CD28の二重刺激に対して反応性が低下したが(図12A)、これはIFNγの分泌低下によって実証される疲弊した表現型と合致する。さらに、このT細胞はナイーブT細胞と比較して、抑制性受容体であるTIM3、LAG3およびPD-1の発現増加(図12B)、および増殖マーカーであるKi67の発現低下(図12C)を示したが、これは疲弊化様の表現型と一致する。
IFNγ分泌の減少もまた、mDCおよびナイーブCD3+ T細胞のMLRアッセイと比べて、mDCおよびTexのMLRアッセイにおいて明白であった(図13)。ペムブロリズマブまたは GEN1046の単剤投与は、IFNγ分泌を部分的に回復させた。0.1μg/mL以上のGEN1046と1μg/mLのペムブロリズマブとの併用は、上記のmDC:Tex MLRアッセイにおいて、単一薬剤の活性と比較して、IFNγの分泌をさらに高め(図13)、HSAモデルに基づく相乗効果を示した(図14)。これらのデータは、ペムブロリズマブと併用したGEN1046によって、疲弊したT細胞によるサイトカイン分泌の減少を部分的に回復させうることを示唆する。
【0614】
[実施例11]
mbsIgG2a-PD-L1×4-1BBと抗mPD-1との併用投与によるMC38マウス結腸がん腫瘍増殖における抗腫瘍活性
目的:C57BL/6マウスのMC38結腸がんモデルにおいて、mbsIgG2a-PD-L1×4-1BB抗体の単独での抗腫瘍活性、または抗mPD-1抗体との併用による抗腫瘍活性を検討すること。
【0615】
方法
MC38マウス結腸がん細胞は、10%不働化ウシ胎児血清を添加したダルベッコ改変イーグル培地中、37℃、5%CO2で培養した。対数増殖期の細胞培養物からMC38細胞を採取し、定量した。
【0616】
MC38細胞(100mL PBS中1×106個の腫瘍細胞)を雌C57BL/6マウス(Shanghai Lingchang Biotechnology Co., Ltd and Servicesより入手;実験開始時6~8週齢)の右下側腹部に皮下注射した。
【0617】
腫瘍の増殖はノギスを用いて1週間に3回評価した。腫瘍体積(mm3)は、ノギスの測定値から([長さ]×[幅]2)/2として算出したが、ここで、長さは腫瘍の最長寸法であり、幅は長さに対して垂直な腫瘍の最長寸法である。
【0618】
投与は腫瘍の平均体積が60mm3に達した時点で開始した。マウスは、投与前に平均腫瘍体積が等しい群(n = 10/群)に無作為に割り付けられた。投与日(週2回の投与を3週間[2QW×3])に、表17に示す抗体を10μL/g体重の注射量でマウスに腹腔内注射した。併用投与では、抗体は20分の間隔をおいて2回に分けて注射した(表17)。投与量は、MC38マウスモデルにおけるこれらの抗体に関するこれまでの経験をもとにした。
【0619】
マウスは病気の臨床徴候について毎日モニターした。体重測定は、無作為化後、1週間に3回行った。抗体およびそれらの組み合わせの忍容性は良好であり、マウスの体重は投与により最小限の減少(20%未満)を示し、むしろ増加していた。個々のマウスについて、腫瘍体積が1500mm3を超えたとき、または動物が愛護上のエンドポイントに達したとき(たとえば、マウスが20%を超える体重減少を示したとき、腫瘍が潰瘍形成[>75%]を示したとき、重篤な臨床徴候が観察されたとき、および/または腫瘍増殖がマウスの身体活動を阻害したとき)に実験を終了した。
【0620】
【表17】
【0621】
抗体治療後に腫瘍の完全な退縮を示したマウスに、治療開始から121日後にMC38腫瘍細胞を再接種(再チャレンジ)した。マウスは、最初の腫瘍細胞接種の反対側の側腹部に1×106個の新鮮なMC38腫瘍細胞の接種を受けた。腫瘍増殖の対照治療として、週齢をマッチさせたナイーブC57BL/6マウス群(n=6)に、同じ細胞培養からのMC38腫瘍細胞を接種した。
【0622】
結果
非結合性コントロール抗体mIgG2a-ctrl-AAKR(5 mg/kg)を投与したMC38マウスでは、急速な腫瘍の増殖が観察された(図15A)。抗マウスPD-1抗体(抗mPD-1;10 mg/kg)またはmbsIgG2a-PD-L1×4-1BB(5 mg/kg;図15A)を単剤で投与したマウスでは、腫瘍増殖の遅延が観察され、mbsIgG2a-PD-L1×4-1BBによってより顕著な腫瘍増殖の遅延が誘導された。mbsIgG2a-PD-L1×4-1BB(5mg/kg)を抗mPD-1(10mg/kg)と併用して投与した(両者とも2QW×3)マウスでは、腫瘍増殖は、各薬剤単独と比較してさらに遅延し(図15A)、治療開始後23日目に、4/10匹のマウスで腫瘍の完全な退縮が観察された(これに対して、mbsIgG2a-PD-L1×4-BBおよび抗mPD-1単独ではそれぞれ、1/10匹および0/10匹のマウスで腫瘍の完全な退縮が観察された;表18)。Kaplan-Meier解析によると、mbsIgG2a-PD-L1×4-1BBおよび抗mPD-1の併用治療は、コントロール抗体投与群と比較して(p<0.001)、ならびにいずれか一方の抗体単独と比較して(p<0.05)、腫瘍体積が500mm3より小さいマウスの割合として定義される無増悪生存期間の有意な延長をもたらした(Mantel-Cox;図15B、表19)。したがって、この併用では治療上の相乗効果が観察されたが、この相乗効果は、各薬剤の単独療法で示された活性と比較して優れた(p<0.05)抗腫瘍効果として定義された。
【0623】
腫瘍が完全に退縮したマウス、たとえば、観察期間中に腫瘍が完全に消失したマウス(表18)、および週齢をマッチさせた腫瘍のないナイーブマウス6匹からなる対照群は、抗体による治療の開始から121日目に、皮下注射されたMC38腫瘍細胞により(再)チャレンジを受けた。年齢をマッチさせた腫瘍のないナイーブマウス6匹からなる対照群は、同時にMC38腫瘍細胞の皮下注射を受けた。すべてのナイーブマウスにおいて、MC38腫瘍は腫瘍接種後24日目に1,500mm3まで増殖したが、再チャレンジを受けたマウスでは、再チャレンジ後35日間(MC38腫瘍細胞を最初に接種してから156日間)の全経過観察期間中、腫瘍の増殖は観察されず、免疫記憶の発達と一致した(図16)。
【0624】
これらの結果は、GEN1046の抗PD-1抗体との併用が、がん患者において抗腫瘍免疫応答をさらに増幅して持続的で強い臨床反応をもたらし、生存率を高めると評価する根拠をもたらすものである。
【0625】
【表18】
【0626】
【表19】
【0627】
[実施例12]
mbsIgG2a-PD-L1×4-1BBおよび抗mPD-1の併用は、別個の相補的な免疫調節作用を介して、MC38マウス結腸がん腫瘍モデルにおける抗腫瘍免疫を増強する
目的:実施例2および11に記載したように、抗mPD-1と併用したmbsIgG2a-PD-L1×4-1BBは、C57BL/6マウスのMC38結腸がんモデルにおいて、持続的反応を伴う強力な抗腫瘍活性を示した。したがって、このモデルを用いて、in vivoでのmbsIgG2a-PD-L1×4-1BBおよび抗mPD-1の併用の作用機序をさらに検討した。MC38を有するマウスにmbsIgG2a-PD-L1×4-1BB、抗mPD-1、またはそれらの組み合わせを投与した。
【0628】
方法
MC38結腸がんモデル
免疫組織化学およびフローサイトメトリー評価のために、2つの独立した研究からMC38マウス結腸がん腫瘍を収集し、mbsIgG2a-PD-L1×4-BBおよび抗mPD-1の単独療法および併用療法でのin vivo活性の特徴を明らかにした。
【0629】
実施例2および11に記載のように、MC38腫瘍モデルを確立した。MC38 SC腫瘍を有するマウスの処置は、腫瘍が50~70mm3の腫瘍体積に達したときに開始した。マウスは、投与前に、等しい平均腫瘍体積を有する群に無作為に割り付けられた。投与日(週2回、2週間[2QW×2])に、表20に示す抗体を、10μL/g体重の注射量でマウスの腹腔内に注射した。併用投与の場合、抗体は20分の間隔をおいて2回に分けて注射した(表20)。
【0630】
マウスは病気の臨床徴候を毎日モニターした。体重測定は無作為化後1週間に3回行った。投与開始後7日目または14日目に、腫瘍切除のためマウス(各群n=5)を安楽死させた。
【0631】
【表20】
【0632】
腫瘍組織の免疫組織化学的検査およびin situハイブリダイゼーション
腫瘍を切除し、ホルマリンで固定し、パラフィン包埋して切片化した(4μm)。組織学的評価のため、腫瘍切片を脱パラフィンし、Tissue-Tek Prisma Plus Automated Slide Stainer(Sakura)を用いてTissue-Tek Prisma H&E Stain Kit(Sakura [Torrance, CA], 6190)で染色した。腫瘍内のCD3+細胞、CD4+細胞、およびCD8+細胞を評価するために、Roche Ventana Discovery(DISC)自動免疫染色装置プラットフォームを用いて、切片を脱パラフィンし、CC1バッファー(Roche、950-124)を用いて抗原を回収し、続いて内因性ペルオキシダーゼをクエンチし(Dako Agilent, S2003)、ブロッキングバッファー(Roche、05268869001)により非特異的結合部位をブロックした。切片を一次抗体(表21に示す)とともにインキュベートし、抗ウサギ免疫組織化学検出キットを用いて検出した:CD3およびCD4には抗ウサギDISC、Omnimap (Roche、05269679001)のみ、CD8には順次DISC抗ウサギHQ(Roche、07017812001)およびDISCを使用し、抗HQ HRP Multimer(Roche、06442544001)の増幅で検出した。HRPは、3,3'-ジアミノベンジジン(ChromoMap DAB; Roche、05266645001)を用いてメーカーの指示に従って可視化した。腫瘍内のPD-L1+細胞を評価するために、Leica Bond Rx自動免疫染色装置プラットフォームを用いて、切片を脱パラフィンし、ER2バッファー(Leica Biosystems、AR9640)を用いて抗原を回収した後、内因性ペルオキシダーゼをクエンチし(Dako Agilent、S2003)、ブロッキングバッファー(Leica Biosystems、DS9800)で非特異的結合部位をブロックした。切片を一次抗体(表21に示す)とともにインキュベートし、抗ウサギ免疫組織化学検出キット(Leica Biosystems、DS9800)により、メーカーの指示に従って検出した。腫瘍内の4-1BB+細胞およびPD-L2+細胞を評価するために、遺伝子特異的mRNA分子を検出するための、対応するRNAscopeプローブ(それぞれACDBio、493658および447788)およびRNAscope検出キット(ACDBio、322150)を用いて、Leica Bond RxでRNAscopeアッセイを行った。すべてのアッセイにおいて、核はマイヤーヘマトキシリンとともにインキュベートすることにより対比染色した。染色特異性は、連続組織切片にアイソタイプ、陽性および陰性コントロール染色を組み込むことによって検証した。染色したスライドをホールスライドイメージング(Zeiss、Axioscan)に供し、ホールスライド画像をHaloソフトウェア(Indica Labs、Albuquerque、NM)にアップロードして、あらかじめプログラムされたソフトウェア解析ツールを用いて解析し、CD3+、CD4+、CD8+およびPD-L1+細胞を決定し(CytoNuclear v2.0.9)、4-1BB+およびPD-L2+細胞を決定した(ISH v4.1.3)。次に、CD3+細胞、CD4+細胞、CD8+細胞、およびPD-L1+細胞の定量データは、総細胞数に対するマーカー陽性細胞のパーセンテージとして表された。4-1BB+細胞およびPD-L2+細胞の定量データは、4つのRNAscope強度バケットを作成して、次式でHスコアを計算することにより、RNAscope Hスコアとして表された:Hスコア = [(0×0点の細胞%)+(1×1-3点の細胞%)+(2×4-9点の細胞%)+(3×10-15点の細胞%)+(4×16点以上の細胞%)];%は総細胞数に対する割合。
【0633】
【表21】
【0634】
腫瘍組織のフローサイトメトリー
解離した腫瘍細胞は、1μg/mL Mouse BD Fc Block(商標名)(Fcブロッキングバッファー;BD、カタログ番号553141)で4℃にて、暗所で10分間ブロックした。細胞表面マーカーの染色には、Fcブロッキングバッファーで希釈した表22に記載の蛍光標識抗体混合物(Ki67およびGzmBを除く)を細胞に添加し、遮光して4℃で30分間インキュベートした。細胞内染色(Ki67およびGzmB)のために、細胞は、Fix/Perm希釈バッファー(eBioscience、カタログ番号00-5223)で(1:4)希釈した200μL Fix/Perm濃縮液(eBioscience、カタログ番号00-5123)とともに、遮光してRTで30分間インキュベートすることによって、透過処理した。透過処理バッファー(eBioscience、カタログ番号00-8333)で2回洗浄した後、細胞は、透過処理バッファーで希釈したKi67抗体およびGzmB抗体(表22)とともに、遮光下、RTで30分間インキュベートした。最後に、細胞を250μL FACSバッファー(PBSに10% FBS [Gibco、カタログ番号10099-141]および40mM EDTA [Boston BioProducts、カタログ番号BM-711-K]を添加したバッファー)に再懸濁し、BD LSRFortessa(商標名)X20セルアナライザー(BD Biosciences、San Jose、CA、USA)で測定した。データは、Kaluza Analysis Softwareを用いて解析した。
【0635】
【表22】
【0636】
結果および結論
投与開始後7日目および14日目に、免疫組織化学検査(IHC)およびin situハイブリダイゼーション(ISH)により、腫瘍組織切片のT細胞サブセットおよび標的発現を評価し(図17)、投与開始後7日目に、フローサイトメトリーにより、解離した腫瘍組織のKi.67+増殖性およびGzmB+細胞傷害性腫瘍内CD8+ T細胞を評価した(図18)。
【0637】
mbsIgG2a-PD-L1×4-1BBおよび抗mPD-1を単剤として投与すると、投与後7日目および14日目に腫瘍内のCD3細胞の割合が高まった。mbsIgG2a-PD-L1×4-1BBと抗mPD-1との併用は、14日目にCD3+細胞の割合をさらに増加させた(図17A)。
【0638】
7日目に、投与群の間で、CD4+細胞の割合に差は認められなかった。これに対して、14日目には、CD4細胞の割合はPBS投与群と比較して、mbsIgG2a-PD-L1×4-1BBおよび抗mPD-1の単剤投与により増加し、mbsIgG2a-PD-L1×4-1BBと抗mPD-1との併用によってさらにもっと増加した(図17B)。
【0639】
CD8細胞の割合は、7日目および14日目の両者において、PBS群と比較してmbsIgG2a-PD-L1×4-1BBにより増加したが、抗mPD-1では増加しなかった。mbsIgG2a-PD-L1×4-1BBと抗mPD-1との併用は、mbsIgG2a-PD-L1×4-1BB単独と比べて同程度のレベルのCD8細胞を示したが、それは、CD8細胞の増加がmbsIgG2a-PD-L1×4-1BBによって駆動されることを示唆する(図17C)。
【0640】
7日目および/または14日目に、腫瘍内PD-L1およびPD-L2発現は、PBS投与マウスと比較して、単剤としてのmbsIgG2a-PD-L1×4-1BBおよび抗mPD-1によって増加した。一方、mbsIgG2a-PD-L1×4-1BBと抗mPD-1との併用では、腫瘍内PD-L1およびPD-L2のレベルがPBS投与マウスと同程度であって、そのような増加は見られなかった(図17D-E)。
【0641】
最後に、4-1BBの腫瘍内発現は、7日目にmbsIgG2a-PD-L1×4-1BBによって増加した。これに対して4-1BBの発現は、14日目に、単剤としての抗mPD-1、およびmbsIgG2a-PD-L1×4-1BBと抗mPD-1との併用によって減少した(図17F)。
【0642】
解離した腫瘍組織において、腫瘍内CD8+ T細胞集団の全体におけるGzmB+の割合は、mbsIgG2a-PD-L1×4-1BBと抗mPD-1の併用により、それぞれの単剤と比較して有意に増加することが判明し(図18A)、CD8+ T細胞の細胞傷害性の増加が示唆された。同様に、腫瘍浸潤CD8+ T細胞集団全体におけるKi67+の割合は、mbsIgG2a-PD-L1×4-1BBおよび抗mPD-1の併用により、それぞれの単剤のみと比較して高まっており、CD8+ T細胞増殖性の増加が示唆された(図18B)。
【0643】
これらの結果を合わせると、mbsIgG2a-PD-L1×4-1BBおよび抗mPD-1の併用は、mbsIgG2a-PD-L1×4-1BBまたは抗mPD-1の単剤投与と比較して、腫瘍免疫構成の明確かつ補完的な調節をもたらすことが示唆される。特に、mbsIgG2a-PD-L1×4-1BBと抗PD1の併用投与群において、増殖性および細胞傷害性CD8+ TILの頻度が高いことは、抗腫瘍活性の改善と関連しうるTILの機能性およびエフェクター機能の強化を示している。
【0644】
[実施例13]
mbsIgG2a-PD-L1×4-1BBを抗mPD-1抗体と併用投与したMC38腫瘍を有するマウスの末梢血のサイトカイン解析
目的:mbsIgG2a-PD-L1×4-BBを単独で、または抗mPD-1抗体と併用して投与された、MC38腫瘍を有するC57BL/6マウスの末梢血におけるサイトカイン濃度を検討すること。
【0645】
方法
実施例11に記載された実験において、MC38腫瘍を有するC57BL/6マウスから、以下の時点で血液サンプルを採取した:投与開始から-1日目(ベースライン;初回投与処置の前日)、2日目(初回投与の2日後)、および5日目(2回目の投与の2日後)。
【0646】
血漿サンプル中のサイトカインは、MESO QuickPlex SQ 120装置(MSD, LLC. R31QQ-3)で、V-PLEX Proinflammatory Panel 1 mouse Kit(MSD LLC、カタログ番号K15048D-2)および V-PLEX Cytokine Panel 1 mouse Kit(MSD LLC、カタログ番号K15245D-2)を用いて、メーカーの指示に従って電気化学発光法(ECLIA)により分析した。
【0647】
結果
mIgG2a-ctrl-AAKR(5mg/kg)または抗マウスPD-1抗体(抗mPD-1;10mg/kg)を単剤として投与したn匹のマウスでは、-1日目と比べて2日目または5日目に、IFNγ、TNFα、IL-2およびIP-10のレベルの変化は観察されないか、またはわずかであった(図19)。mbsIgG2a-PD-L1×4-1BB(5mg/kg)を投与したマウスでは、IFNγ、TNFα、IL-2およびIP-10の血漿中レベルは、2日目に増加し、5日目にさらに高まった。mbsIgG2a-PD-L1×4-1BB(5mg/kg)および抗mPD-1(10mg/kg)を併用投与したマウスにおいて、IFNγ、TNFα、IL-2およびIP-10のレベルの増加は、2日目および/または5日目に、それぞれの単剤と比較して増強された(図19)。5日目のIFNγ、TNFαおよびIP-10のレベルは、mbsIgG2a-PD-L1×4-1BBおよび抗mPD-1を併用投与したマウスでは、mIgG2a-ctrl-AAKR投与群および抗PD-1投与群の両者より高く、3倍を超えており、TNFαおよびIP-10のレベルは、mbsIgG2-PD-L1×4-1BB投与群より高く1.48倍を上回っていた(表23)。
【0648】
これらの結果は、GEN1046の抗PD-1抗体との併用が、がん患者において抗腫瘍免疫応答をさらに増大させると評価する根拠を与える。
【0649】
【表23】
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
【配列表】
2024538755000001.xml
【国際調査報告】