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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-10-23
(54)【発明の名称】精子エクステンダー培地
(51)【国際特許分類】
   C12N 5/076 20100101AFI20241016BHJP
   A01K 67/02 20060101ALI20241016BHJP
   C12N 5/07 20100101ALI20241016BHJP
【FI】
C12N5/076
A01K67/02
C12N5/07
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024521775
(86)(22)【出願日】2022-10-13
(85)【翻訳文提出日】2024-06-05
(86)【国際出願番号】 AU2022051229
(87)【国際公開番号】W WO2023060310
(87)【国際公開日】2023-04-20
(31)【優先権主張番号】2021903289
(32)【優先日】2021-10-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】AU
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TRITON
(71)【出願人】
【識別番号】516062950
【氏名又は名称】ミート アンド ライブストック オーストラリア リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000659
【氏名又は名称】弁理士法人広江アソシエイツ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ギブ,ザミラ
(72)【発明者】
【氏名】クライン,エリン
(72)【発明者】
【氏名】エイトケン,ロバート ジョン
【テーマコード(参考)】
4B065
【Fターム(参考)】
4B065AA90X
4B065AC20
4B065BB02
4B065BB04
4B065BB08
4B065BB12
4B065BB15
4B065BD12
4B065CA60
(57)【要約】
精子の液体保存中にウシ精子の受精能を延長するための精子エクステンダー培地が提供される。培地は、精子のための単糖エネルギー源を含む。1つ以上のαアミノ酸オスモライト又はβアミノ酸オスモライトは、モノアミノカルボン酸及びモノアミノスルホン酸から選択され、各々独立して、Hと、分岐C3及びより長い脂肪族鎖を除く、非極性で中性の脂肪族開鎖と、からなる群から選択されるR側基を有する。培地はまた、1つ以上の抗酸化剤と、精子生存率を維持するための生理学的に許容される無機塩と、を含み、pHを約7.0~約8.5の範囲に維持するために緩衝される。更に、実施形態において、培地は、約95mM未満のナトリウムイオンの濃度、及び約290mOsm/L~約400mOsm/Lの範囲のモル浸透圧濃度を有する。培地中の精子を含む調製物、培地を調製する方法、及び卵子を精子エクステンダー培地中に投与された精子と接触させることを含む卵子の受精のための方法も提供される。
【選択図】図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ウシ(bovine)精子(spermatozoon)の液体保存中に前記精子の受精能を延長するための精子エクステンダー(sperm extender)培地であって、
前記精子のための単糖エネルギー源と、
モノアミノカルボン酸及びモノアミノスルホン酸から選択される1つ以上のαアミノ酸オスモライト又はβアミノ酸オスモライトであって、各々独立して、Hと、分岐C3及びより長い脂肪族鎖を除く、非極性で中性の脂肪族開鎖(open aliphatic chain)と、からなる群から選択されるR側基を有する、1つ以上のαアミノ酸オスモライト又はβアミノ酸オスモライトと、
1つ以上の抗酸化剤と、
精子生存率を維持するための生理学的に許容される無機塩と、を含み、
前記培地が、前記培地のpHを約7.0~約8.5の範囲に維持するために緩衝され、前記培地が、約95mM未満のナトリウムイオンの濃度、及び約290mOsm/L~約400mOsm/Lの範囲のモル浸透圧濃度を有する、精子エクステンダー培地。
【請求項2】
各前記アミノ酸オスモライトが、独立して、非置換であるか、又はH以外の単一のR側基で一置換されている、請求項1に記載の精子エクステンダー培地。
【請求項3】
各アミノ酸オスモライトの前記R側基が、独立して、H、脂肪族C1-C2基、又は非分岐C3鎖のいずれかである、請求項1又は2に記載の精子エクステンダー培地。
【請求項4】
前記R側基が、独立して、H又はC1-C2アルキルのいずれかである、請求項3に記載の精子エクステンダー培地。
【請求項5】
各アミノ酸オスモライトが、独立して、HN-CH-COOH、HN-CH(R)-COOH、HN-C(R)-S(O)OH、及びHN-CH-CH-S(O)OHからなる群から選択される式を有し、式中、Rが、前記R側基であり、H以外である、請求項1~4のいずれか一項に記載の精子エクステンダー培地。
【請求項6】
前記1つ以上のアミノ酸オスモライトが、前記エクステンダー培地中のαアミノ酸及び/又はβアミノ酸(複数可)の少なくとも大部分を含む、請求項1~5のいずれか一項に記載の精子エクステンダー培地。
【請求項7】
前記1つ以上のアミノ酸オスモライトが、約5.96~約6.0の等電点を有する、請求項1~6のいずれか一項に記載の精子エクステンダー培地。
【請求項8】
前記1つ以上のアミノ酸オスモライトが、各々糖原性アミノ酸である、請求項1~7のいずれか一項に記載の精子エクステンダー培地。
【請求項9】
前記アミノ酸オスモライト(複数可)のうちの1つ以上が、L-アミノ酸である、請求項1~8のいずれか一項に記載の精子エクステンダー培地。
【請求項10】
前記1つ以上のアミノ酸オスモライトが、グリシン、L-アラニン、L-バリン、及び上記の組み合わせからなる群から選択される、請求項1~9のいずれか一項に記載の精子エクステンダー培地。
【請求項11】
ピルビン酸、乳酸、及び更なる有機オスモライトのうちの1つ以上から選択される1つ以上の薬剤を更に含む、請求項1~10のいずれか一項に記載の精子エクステンダー培地。
【請求項12】
ピルビン酸、乳酸、及びL-カルニチンを更に含む、請求項11に記載の精子エクステンダー培地。
【請求項13】
前記精子による前記単糖エネルギー源の取り込みを促進するための生理学的に許容される血糖降下剤を更に含む、請求項1~12のいずれか一項に記載の精子エクステンダー培地。
【請求項14】
前記血糖降下剤が、ロシグリタゾンである、請求項13に記載の精子エクステンダー培地。
【請求項15】
前記単糖エネルギー源が、フルクトース、グルコース、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項1~14のいずれか一項に記載の精子エクステンダー培地。
【請求項16】
前記1つ以上の抗酸化剤が、コエンザイムQ10を含む、請求項1~15のいずれか一項に記載の精子エクステンダー培地。
【請求項17】
精子抗凝集剤(複数可)、酸度調整剤(複数可)、緩衝剤(複数可)、及び抗菌剤(複数可)を更に含む、請求項1~16のいずれか一項に記載の精子エクステンダー培地。
【請求項18】
前記生理学的に許容される塩が、溶液中のK、Na、Ca2、Mg2、Cl、SO42-及びPO42-から選択されるイオンを提供するためのものである、請求項1~17のいずれか一項に記載の精子エクステンダー培地。
【請求項19】
前記精子の凍結保存の不在下で、3日を超える期間にわたって前記精子の受精能を維持するためのものである、請求項1~18のいずれか一項に記載の精子エクステンダー培地。
【請求項20】
前記精子の凍結保存の不在下で、少なくとも5日の期間にわたって前記精子の受精能を維持するためのものである、請求項1~19のいずれか一項に記載の精子エクステンダー培地。
【請求項21】
周囲温度での前記精子の液体保存のためのものである、請求項1~20のいずれか一項に記載の精子エクステンダー培地。
【請求項22】
前記周囲温度が、約17℃~約25℃の範囲にある、請求項1~21のいずれか一項に記載の精子エクステンダー培地。
【請求項23】
前記培地が、ヒツジ(Ovis aries)及びヤギ(Capra hircus)から選択される他の家畜動物の受精能を延長する、請求項1~22のいずれか一項に記載の精子エクステンダー培地。
【請求項24】
ウシ動物がBos taurus動物である、請求項1~22のいずれか一項に記載の精子エクステンダー培地。
【請求項25】
家畜動物の精子の調製物であって、前記精子が、請求項1~24のいずれか一項に記載の精子エクステンダー培地中にある、調製物。
【請求項26】
家畜動物の卵子を受精させるための方法であって、前記卵子を、請求項1~24のいずれか一項に記載の精子エクステンダー培地中に投与された前記動物の精子と接触させることを含み、前記卵子及び精子が同じ動物種類のものである、方法。
【請求項27】
受精のインビトロ又はインビボでの方法である、請求項26に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、精漿から分離された精子(spermatozoa)の受精能を延長するための精子エクステンダー(sperm extender)培地に関する。本発明はまた、卵子のインビトロ又はインビボでの受精のためにエクステンダー培地中に維持された精子の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
オーストラリア北部及び他の遠隔地における肉牛群の遺伝子改良のための人工授精(AI)の使用は、地理的に隔離された農場で人工授精(AI)プログラムを実施することの物流上の制約、凍結保存精子の受精能の低下、及び発情同期化レジメンの限界によって制限される。凍結保存が解凍後の精子の生存率及び受精能に及ぼす有害な影響に加えて、凍結保存精子の使用は、特別な保存及び輸送要件、並びに液体窒素への依存を更に伴う。
【0003】
種牡馬用の精液エクステンダーであるINRA96(商標)(imv Technologies Group)は、以前に雄牛精子の液体保存に最適であるとされていたが、それにもかかわらず、室温でのウシ(bovine)精子の受精能は、最大約3日間維持されただけであった(Murphy,Murphy et al.2017)。これは多くの状況において十分であるとは言い難く、その適用が制限される。
【0004】
ウシ精子、並びにヒツジ及びヤギ等の他の家畜動物の精子の液体保存のためのエクステンダー培地に対する必要性が依然としてある。
【発明の概要】
【0005】
広義には、本開示は、精漿から分離された後の精子の液体保存のための精子エクステンダー培地の提供に関する。したがって、エクステンダー培地は、精液の凍結保存等のために精液試料に添加するための精液エクステンダー培地とは異なり、精漿の実質的な不在下で、新鮮な精子とともに使用するためのものである。
【0006】
本発明に到達する際に、本発明者らは、ウマ用INRA96(商標)エクステンダー培地が、限定された期間を超えて周囲温度でウシ精子の受精能を維持するには不十分であることを確認した。本発明者らはまた、彼らの研究グループが8年の期間にわたって開発した、最適化された独自のウマ用精子エクステンダー培地も、ウシ精子の生存率及び運動性を十分に維持することができないことを見出し、ウシ精子が、ウマのために開発された精子エクステンダー製剤によっては満たされない特定の要件を有することが示唆された。本発明者らは、彼らの独自のウマ用エクステンダー培地が、周囲温度での液体保存中にウシ精子の受精能を十分に延長するのに好適であると考えられていたため、この結果は予想外であった。
【0007】
更なる研究の結果として、本発明者らは、ウシ精子用に配合された精子エクステンダー培地中のオスモライト(複数可)としての特定のアミノ酸(複数可)の使用が、精子の凍結保存の不在下で、周囲温度/室温で新鮮なウシ精子の受精能を実質的に延長することができることを見出した。特に、本明細書に記載されるように、本発明者らは、ウシ精子の受精能が、INRA96(商標)の使用で以前に報告された周囲温度で3日をはるかに超えて延長され得、凍結保存精子と同等であるか又はそれより優れた受精能を有することを示した。本発明者らは、これが、3日より長い満足のいく精子の受精能力を保持しながら、凍結保存を用いずに周囲温度で、液体形態で保存されているウシ精子の最初の報告であると考える。
【0008】
しかしながら、本開示は、ウシ精子とエクステンダー培地のみを用いた精子エクステンダー培地の使用に限定されず、家畜のヒツジ及びヤギ等の他の反芻家畜動物の精子との使用にまで及ぶ。
【0009】
より具体的には、本発明の一態様では、ウシ精子の液体保存中に精子の受精能を延長するための精子エクステンダー培地が提供され、培地は、精子のための栄養溶液中に1つ以上のアミノ酸オスモライトを含み、1つ以上のアミノ酸オスモライトは、モノアミノカルボン酸及びモノアミノスルホン酸から選択され、各々独立して、Hと、分岐C3及びより長い脂肪族鎖を除く、非極性で中性の脂肪族開鎖(open aliphatic chain)と、からなる群から選択されるR側基を有し、培地は、培地のpHを約7.0~約8.5の範囲に維持するために緩衝され、培地は、約95mM未満のナトリウムイオンの濃度、及び約290mOsm/L~約400mOsm/Lの範囲のモル浸透圧濃度を有する。
【0010】
典型的には、栄養溶液は、精子のための1つ以上のエネルギー源を含む。
【0011】
少なくともいくつかの実施形態において、栄養溶液はまた、1つ以上の抗酸化剤を含むことができる。
【0012】
本発明の別の態様では、家畜動物の精子の液体保存中に精子の受精能を延長するための精子エクステンダー培地が提供され、動物は、ウシ、ヒツジ及びヤギ動物から選択され、培地は、
精子のための単糖エネルギー源と、
モノアミノカルボン酸及びモノアミノスルホン酸から選択される1つ以上のαアミノ酸オスモライト又はβアミノ酸オスモライトであって、各々独立して、Hと、分岐C3及びより長い脂肪族鎖を除く、非極性で中性の脂肪族開鎖と、からなる群から選択されるR側基を有する、1つ以上のαアミノ酸オスモライト又はβアミノ酸オスモライトと、
1つ以上の抗酸化剤と、
精子生存率を維持するための生理学的に許容される無機塩と、を含み、
培地は、培地のpHを約7.0~約8.5の範囲に維持するために緩衝され、培地は、約95mM未満のナトリウムイオンの濃度、及び約290mOsm/L~約400mOsm/Lの範囲のモル浸透圧濃度を有する。
【0013】
典型的には、本開示の実施形態において、各アミノ酸オスモライトは、独立して、非置換であるか、又はH以外の単一のR側基で一置換されている。
【0014】
典型的には、本開示による各アミノ酸オスモライトのR側基は、独立して、H、脂肪族C1-C2基、又は非分岐C3鎖のいずれかである。
【0015】
R側基がC2鎖である場合、C2鎖は、C1基で、典型的にはメチル基で一置換され得る。
【0016】
典型的には、R側基は、独立して、H又はC1-C2アルキルのいずれかである。
【0017】
典型的には、各アミノ酸オスモライトは、独立して、HN-CH-COOH、HN-CHR-COOH、HN-C(R)-SOOH、及びHN-CH-CH-SOOHからなる群から選択される式を有し、式中、Rは、R側基であり、H以外である。
【0018】
特に好ましい実施形態において、各アミノ酸オスモライトは、独立して、式HN-CH-COOH、HN-CH(R)-COOH、又はHN-CH-CH-SOOHのアミノ酸であり、最も好ましくは、式HN-CH-COOH又はHN-CH(R)-COOHのアミノ酸であり、式中、RはH以外である。
【0019】
典型的には、本発明による精子エクステンダー培地中で使用されるアミノ酸オスモライトは、約5.96~約6.0の等電点を有し、等電点は、アミノ酸が正味の電荷を有しないpHである。
【0020】
本発明の別の態様では、家畜動物であるウシの精子の液体保存中に精子の受精能を延長するための精子エクステンダー培地が提供され、培地は、精子のための栄養溶液中に1つ以上のアミノ酸オスモライトを含み、各上記アミノ酸オスモライトは、独立して、約5.96~約6.0の等電点を有し、培地は、培地のpHを約7.0~約8.5の範囲に維持するために緩衝され、培地は、約95mM未満のナトリウムイオンの濃度、及び約290mOsm/L~約400mOsm/Lの範囲のモル浸透圧濃度を有する。
【0021】
典型的には、本発明によって具現化された精子エクステンダー培地中の少なくとも1つのアミノ酸オスモライトは、濃度に関してエクステンダー培地中のαアミノ酸及び/又はβアミノ酸(複数可)の少なくとも大部分を含む。特に好ましい実施形態において、エクステンダー培地は、1つ以上のアミノ酸オスモライトを超えるあらゆる更なるαアミノ酸及び/又はβアミノ酸(複数可)を含まない。
【0022】
特に好ましい実施形態において、少なくとも1つのアミノ酸オスモライトは、グリシン、アラニン、バリン、タウリン、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される。
【0023】
本発明の別の態様では、ウシ精子の液体保存中に精子の受精能を延長するための精子エクステンダー培地が提供され、培地は、精子のための栄養溶液中に1つ以上のアミノ酸オスモライトを含み、1つ以上のアミノ酸オスモライトは、グリシン、アラニン、バリン、及びタウリンからなる群から選択され、培地は、培地のpHを約7.0~約8.5の範囲に維持するために緩衝され、培地は、約95mM未満のナトリウムイオンの濃度、及び約290mOsm/L~約400mOsm/Lの範囲のモル浸透圧濃度を有する。
【0024】
1つ以上のアミノ酸オスモライトの立体異性体が存在する場合、アミノ酸のL型が、一般に精子エクステンダー培地で使用される。
【0025】
典型的には、本発明による精子エクステンダー培地中の少なくとも1つのアミノ酸オスモライトは、糖原性アミノ酸である。
【0026】
より好ましくは、少なくとも1つのアミノ酸オスモライトは、グリシン、アラニン、バリン、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される。
【0027】
最も典型的には、少なくとも1つのアミノ酸オスモライトは、グリシンである。
【0028】
本開示の実施形態はまた、更なる有機オスモライト、精子による単糖エネルギー源の取り込みを促進するための血糖降下剤、精子抗凝集剤、緩衝剤、及び抗菌剤からなる群から選択される1つ以上の薬剤を含んでもよい。
【0029】
本明細書に記載の精子エクステンダー培地は、周囲温度での液体保存中にウシ精子の受精能を延長するための用途を有するが、他の実施形態において、精子エクステンダー培地は、ヒツジ及びヤギから選択される他の反芻家畜動物の精子の受精能を延長するために使用されてもよい。
【0030】
したがって、本開示の別の態様では、本明細書に記載の培地中での精子の液体保存中に家畜動物の精子の受精能を延長するための精子エクステンダー培地のための組成物が提供され、動物は、ウシ、ヒツジ、及びヤギ動物から選択され、組成物は、精子エクステンダー培地を提供するための所定量の水に添加するための、1つ以上のαアミノ酸オスモライト又はβアミノ酸オスモライト、1つ以上の抗酸化剤、及び精子生存率を維持するための生理学的に許容される無機塩を含む。組成物はまた、記載されるように、エクステンダー培地の他の成分(複数可)を含むことができる。
【0031】
別の態様では、家畜動物の精子の液体保存中に精子の受精能を延長するための精子エクステンダー培地を調製するための方法が提供され、動物は、ウシ、ヒツジ、及びヤギ動物から選択され、方法は、本開示によって具現化された精子エクステンダー培地を提供する際に、液体培地中で1つ以上のαアミノ酸オスモライト又はβアミノ酸オスモライトを混合することを含み、αアミノ酸オスモライト又はβアミノ酸オスモライトは、モノアミノカルボン酸及びモノアミノスルホン酸から選択され、各々独立して、本明細書に記載されるように、Hと、分岐C3及びより長い脂肪族鎖を除く、非極性で中性の脂肪族開鎖と、からなる群から選択されるR側基を有する。
【0032】
別の態様では、本開示による精子エクステンダー培地中に家畜の精子の調製物が提供される。
【0033】
典型的には、動物の精液は、本開示による精子エクステンダー培地に精子を再懸濁する前に、実質的に全ての精漿から精子を分離するために処理される。
【0034】
少なくともいくつかの実施形態において、精子は、精液を密度勾配で遠心分離して精漿から精液を分離し、本開示による精子エクステンダー培地に精子を再懸濁することによって調製され得る。
【0035】
本開示の別の態様では、家畜動物の卵子の受精のための方法であって、卵子を、本明細書に記載の精子エクステンダー培地中に投与された精子と接触させることを含み、精子は、卵子と同じ動物種類のものである、方法が提供される。この方法は、受精のインビトロ又はインビボでの方法(例えば、人工授精)を含むことができる。
【0036】
少なくともいくつかの実施形態において、本明細書に記載の精子の受精能は、精子の凍結保存の不在下で、3日を超える期間にわたって、典型的には、少なくとも5日間、少なくとも7日間、又は更には少なくとも10日間、周囲温度で本開示によるエクステンダー培地に保持され得る。
【0037】
家畜動物は、任意の品種の家畜牛(すなわち、Bos taurus、又は例えば、Bos indicus)であり得るか、又は家畜ヒツジ(Ovis aries)若しくはヤギ(Capra hircus)であり得、ウシ(cattle)は、Bovidae動物亜科のメンバーである
【0038】
本開示によるアミノ酸オスモライトのR側基に関連して本明細書で使用される場合、「脂肪族開鎖」という用語は、環を形成しないか、あるいはプロリン、トリプトファン、及びフェニルアラニン等の環状基若しくはアリール環基又は構造を含有しない直線又は分岐炭素鎖を意味し、環状炭素又はアリール基で置換された炭素側基(例えば、C1-C3基)を除外するものと解釈されたい。本発明を説明する目的のために、脂肪族開鎖という用語は、例えば、硫黄原子、又は酸素、窒素、若しくはリン(すなわち、O、N、又はP)から選択される他のヘテロ原子で置換されるか、又はそれに直接連結された炭素C1-C3基を除外し、したがって、例えば、システイン、ホモシステイン、及びメチオニンの硫黄含有R側基も除外すると解釈されたい。分岐脂肪族C3又はそれよりも長い(C4等)脂肪族鎖は、本開示によるウシ用エクステンダー培地から除外されるため、ロイシン及びイソロイシン等のアミノ酸も使用から除外される。
【0039】
本明細書に記載の精子エクステンダー培地を利用して、周囲温度で家畜動物の精子の受精能を延長することにより、精子の凍結保存の不在下で、精子調製物を収集して地理的な遠隔地に輸送するための物流上の障害を改善することができる。更に、本開示の1つ以上の実施形態に従って凍結保存の必要性を低減又は回避することにより、精子が周囲温度でより長い期間にわたって受精能を保持し得るだけでなく、精子の受精能が、対応する凍結保存精子よりも優れている場合がある。
【0040】
本明細書で使用される場合、精子の「受精能を延長する」とは、精子の生存率及び運動性を延長することを意味し、それによって、精子は、同じ動物種の卵子を受精させることが依然として可能である。
【0041】
本開示の文脈における「重量モル濃度」と比較した「容積モル濃度」に関する濃度の記述における差は、全ての実用的な目的のために無視することができる。したがって、「容積モル濃度」に関して本明細書に記載又は定義される濃度は、「重量モル濃度」に関して同じであるとみなされるべきである。すなわち、例えば、「XmOsm/L」の濃度は、全ての目的のために、関連する溶液又は培地の「XmOsm/kg」と同じであるとみなされるべきである。
【0042】
本明細書全体を通して、「含む(comprise)」という語、又は「含む(comprises)」若しくは「含む(comprising)」等の変化形は、記載される要素、整数若しくはステップ、又は要素、整数若しくはステップの群の包含を意味するが、任意の他の要素、整数若しくはステップ、又は要素、整数、整数若しくはステップの群の除外は意味しないことを理解されたい。
【0043】
本明細書に含まれている文書、行為、材料、デバイス、物品等のいかなる考察も、本発明の文脈を提供する目的のためだけのものである。これらの事項のいずれか又は全てが、先行技術の基礎の一部を形成していること、又は本出願の優先日前にオーストラリア若しくは他の場所に存在したものとして、本発明に関連する分野における共通の一般知識であったことの承認であるとはみなされないものとする。
【0044】
本開示の特徴及び利点は、添付の図面とともに、非限定的な実施形態の以下の詳細な説明から更に明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0045】
図1】真菌増殖を制御するためのナイスタチンを用いて又は用いずに、室温(RT)又は17℃のいずれかで8日間にわたってウシ用エクステンダー基礎液に保存したウシ精子(N=8)の(A)総運動性及び(B)前進運動性。
図2】5℃のINRA96(商標)及び室温のウシ用エクステンダー基礎液のいずれかで3日間及び7日間保存したウシ精子の総運動性及び前進運動性(左)、並びに生存率及び先体完全性(右)。*P≦0.05、**P≦0.01、***P≦0.001。
図3】可溶性アミノ酸、NaCl、又は塩化コリンから選択されるオスモライトを補充したウシ用エクステンダー基礎培地にRTで7日間保存した後の、保存されたウシ精子の総運動性及び前進運動性。NaCl対照と比較した有意差。*P≦0.05、**P≦0.01 ***P≦0.001。
図4】ウシ精液の採取中に精子への低温ショックを防ぐために、採取管の周りに簡素なウォータージャケットを使用していることを例解している。
図5】NaCl、塩化コリン、グリシン、バリン、又はアラニンを補充したウシ用エクステンダー基礎液に、RTで3日間、7日間、10日間、又は14日間保存した後の、保存されたウシ精子の総運動性及び前進運動性。NaCl対照と比較した有意差。*P≦0.05、**P≦0.01 ***P≦0.001 ****P≦0.0001。
図6】AndroMed(商標)中に凍結保存された精子と比較した、グリシン(82.2mM)を含有する新規ウシ用エクステンダー培地に7日間及び14日間保存した精子の総運動性及び前進運動性。異なる上付き文字は有意差を示す。個体差:新規7対Cryoの総運動性P≦0.0001、前進運動性P≦0.05;新規7対新規14の総運動性P≦0.001、前進運動性P≦0.05.いずれのパラメータについても、Cryoと新規14との間に有意差はない。
図7】AndroMed(商標)中に凍結保存された精子と比較した、グリシン(82.2mM)を含有する新規ウシ用エクステンダー培地に7日間及び14日間保存した精子を使用したIVF後の受精率(2つの前核を有する推定接合体のパーセンテージとして表される;2PN)。***は、P≦0.001を示す。
【発明を実施するための形態】
【0046】
本発明に到達する際に、本発明者らは、ウシ精子が、精子の液体保存中に、種牡馬精子と比較して受精能力の維持に驚くほど異なる要件を有すること、及び、本明細書に記載のウシ動物に由来するような精子の受精能力が、いくつかのアミノ酸オスモライトの使用によって、エクステンダー培地中で他と比較して顕著に延長され得ることを見出した。
【0047】
本発明によって具現化された精子エクステンダー培地中で利用され得るアミノ酸オスモライトの例は、グリシン、アラニン、バリン、及びタウリンである。これらのアミノ酸の最初の3つは、αモノアミノカルボン酸であり、タウリン(2-アミノエタン-1-スルホン酸)は、本明細書に記載の好適なβモノアミノスルホン酸の一例である。グリシン及びタウリンは非置換であるが(したがって、それらのアミノ酸のR側基はHである)、アラニンのR側基はメチル(C1基)であり、バリンのR側基は1-メチル-エチル(置換C2鎖)である。グリシンの水素R基、並びにアラニン、バリン、及びタウリンの各々のR側基は、全て非極性の中性側基である。
【0048】
予想外に、グリシン、アラニン、及びバリンの非極性R側基に起因して非極性であると分類された7つの一般的な他のα-アミノ酸、すなわち、ロイシン、イソロイシン、プロリン、システイン、メチオニン、フェニルアラニン、及びトリプトファンは、室温でウシ精子の運動性を延長する能力を示さなかったか、又は比較的限定された能力を示したのみであった。同様に、以下の実施例に更に記載されるように、R側鎖に基づいて極性アミノ酸、塩基性アミノ酸、又は酸性アミノ酸に分類される残りの10個の一般的なα-アミノ酸については、比較的良くない結果が見られた。
【0049】
本開示による精子エクステンダー培地での使用のために選択される各アミノ酸オスモライトは、糖原性であることが特に好ましい。「糖原性」アミノ酸とは、トリカルボン酸(TCA)サイクル(クレブスサイクルとしても知られる)においてグルコース、ピルビン酸、又は中間体に変換され得るため、細胞エネルギーを提供するためのアデノシン三リン酸(ATP)の産生に利用され得るアミノ酸を意味する。したがって、有利には、糖原性アミノ酸は、オスモライトとして作用するだけでなく、ATPの産生のための炭素エネルギー源としても作用することができ、ウシ精子の運動性、ひいては受精能を延長する。
【0050】
本開示による精子エクステンダー培地に有用なアミノ酸オスモライト(複数可)は、典型的には、独立して、H、メチル、及び1-メチル-エチルから選択される単一のR側基を有する。本明細書に記載される2つ以上の好適な生理学的に許容されるアミノ酸オスモライトの混合物が利用されてもよいが、単一のそのようなαアミノ酸オスモライト又はβアミノ酸オスモライトのみが、培地中に存在してもよい。
【0051】
典型的には、本明細書に記載の精子エクステンダー培地に有用なアミノ酸オスモライトの等電点(pI)は、約5.96~約6.0である。例えば、グリシンのpIは5.97であり、アラニンのpIは6.0である。バリンのpIは5.96である。これは、イソロイシン(pI=6.02)、プロリン(pI=6.3)、システイン(pI=5.07)、メチオニン(pI=5.74)、フェニルアラニン(pI=5.48)、及びトリプトファン(pI=5.89)といった他の極性アミノ酸と対照的である(Lide DR,Handbook of Chemistry and Physics,72nd Edition,CRC Press,Boca Raton,FL,1991)。
【0052】
典型的には、本明細書に記載の実施形態において、本明細書に記載の培地中のαアミノ酸オスモライト及び/又はβアミノ酸オスモライト(複数可)の総濃度又は合わせた全体濃度は、一般に40mM~約150mM、より通常には約70mM~約90mMの範囲であり、典型的には、約75mM、76mM、77mM、78mM、79mM、80mM、81mM、82mM、83mM、84mM又は約85mMである。
【0053】
αアミノ酸オスモライト及び/又はβアミノ酸オスモライト(複数可)は、一般に、濃度に関して、エクステンダー培地中のαアミノ酸及び/又はβアミノ酸(複数可)の50%超、一般に、55%、60%、65%、若しくは70%超を含み、より通常には、培地中のαアミノ酸及び/又はβアミノ酸(複数可)の少なくとも約75%以上、80%以上、85%以上、90%以上、若しくは95%以上を含む。典型的には、1つ以上のアミノ酸オスモライトは、エクステンダー培地中のαアミノ酸及び/又はβアミノ酸(複数可)の100%を含む。
【0054】
特に好ましい実施形態において、1つ以上の更なる有機オスモライトをエクステンダー培地に含めることができ、例えば、L-カルニチン、コリン(典型的には塩化物塩として)、ミオイノシトール、他のαアミノ酸オスモライト及びβアミノ酸オスモライト、並びにそれらの組み合わせから選択され得る。例えば、L-カルニチンは、エネルギー産生のために長鎖脂肪酸を細胞のミトコンドリアに輸送することが知られており、抗酸化剤である。本明細書に記載の実施形態において、本発明のエクステンダー培地におけるアミノ酸オスモライト(複数可)と組み合わせたL-カルニチンの使用が特に好ましい。典型的には、本発明によるウシ用エクステンダー培地中の更なる有機オスモライト(複数可)の全体濃度は、約50mM~約150mM、より通常には約80~約110mM、好ましくは、約85mM~約105mMの範囲(例えば、85mM、86mM、87mM、88mM、89mM、90mM、91mM、92mM、93mM、94mM、95mM、96mM、97mM、98mM、99mM、100mM、101mM、102mM、103mM、104mM、又は105mM)である。
【0055】
ウシ精子のための任意の好適な単糖エネルギー源が、本発明によるエクステンダー培地に利用され得るが、本開示の少なくともいくつかの実施形態における単糖エネルギー源は、フルクトース、グルコース、ガラクトース、マンノース、及びそれらの組み合わせからなる群から選択され得る。典型的には、利用される単糖(複数可)は、約4mM~約10mM、より通常には、約5mM~約6mM、又は5.25mM~約5.75mM、好ましくは、約5.0mM~約5.6mMの総濃度(例えば、5.0mM、5.1mM、5.2mM、5.3mM、5.4mM、又は5.5mM、5.6mM、5.7mM、5.8mM、5.9mM、又は6.0mM)でエクステンダー培地中に存在する。
【0056】
エクステンダー培地はまた、精子による単糖(複数可)の取り込みを促進するために、1つ以上の生理学的に許容される血糖降下剤を含むことができる。ロシグリタゾンは、例えば、凍結保存を用いずに周囲温度でウマ精子の受精能を延長することが報告されているチアゾリジンジオン血糖降下剤であり、アデノシン5’-リン酸プロテインキナーゼ(AMPK)及びプロテインキナーゼB(Atk)の活性化因子である(Swegen et al.2016;Ortiz-Rodriguez,2019)。ロシグリタゾンは、ウシ用エクステンダー培地に利用され得る好ましい血糖降下剤であるが、本発明はそれに限定されず、任意の他の好適なチアゾリジンジオン、又はAMPK及び/若しくはAktを活性化することができる他のそのような薬剤を含む、他の血糖降下剤が利用されてもよい。典型的には、エクステンダー培地に使用される場合、血糖降下剤(複数可)は、約1mM~約60mM、より通常には約10mM~約50mM、より好ましくは約15~30mMの範囲、例えば、約15mM、20mM、25mM又は30mMの濃度で存在する。
【0057】
少なくともいくつかの形態のエクステンダー培地はまた、単糖(複数可)以外の1つ以上の有機炭素エネルギー源を含み得る。更なるそのようなエネルギー源の例としては、ピルビン酸ナトリウム等の、任意の生理学的に許容される塩の形態で添加され得るピルビン酸が挙げられる。存在する場合、ピルビン酸は、一般に、約0.5mM~約10又は20mMの濃度範囲で用いられる。より典型的には、ピルビン酸は、約3mM~約8mM、より通常には約4.5mM~約6.5mM、好ましくは約5mM~約6mMの濃度(例えば、5.0mM、5.1mM、5.2mM、5.3mM、5.4mM、5.5mM、5.6mM、5.7mM、5.8mM、5.9mM又は6.0mM)でエクステンダー培地中に存在する。
【0058】
本発明のエクステンダー培地の実施形態における抗酸化剤(複数可)の役割は、主に、フリーラジカル、特に、過酸化物、スーパーオキシド、ヒドロキシルラジカル、及び一重項酸素種等の活性酸素種(ROS)を除去することである。本発明によって具現化されたエクステンダー培地中で利用され得る好適な更なる抗酸化剤(複数可)には、コエンザイムQ10が含まれる。利用され得る他の抗酸化剤としては、α-トコフェロール、メラトニン、及びビタミンCが挙げられる。そのような更なる抗酸化剤は、典型的には、約10mM~約175mM、より通常には約90mM~約150mM、好ましくは、約100mM~約140mMの合計総濃度(例えば、100mM、105mM、110mM、115mM、125mM、130mM、135mM又は140mM)で存在する。
【0059】
本明細書に記載の精子エクステンダー培地に含めることができる精子のための別の炭素エネルギー源は、乳酸である。乳酸はまた、酸性度調整剤として作用することによってpHを維持するのに役立ち得る。典型的には、使用される場合、乳酸は、約10mM~約30mMの範囲、より通常には約15mM~約25mMの範囲の濃度(例えば、15mM、16mM、17mM、18mM、19mM、20mM、21mM、22mM、23mM、24mM又は25mM)でエクステンダー培地中に存在し得る。
【0060】
エクステンダー培地に利用され得る他の酸性度調整剤としては、典型的にはナトリウム塩として利用されるビカルボナート(例えば、約5mM~約45mMの濃度、より通常には約10mM~約40mM又は15~35mMの範囲、好ましくは約20mM~約30mMの範囲の濃度)が挙げられる。
【0061】
利用され得る緩衝剤としては、HEPES(4-(2-ヒドロキシエチル)-1-ピペラジンエタンスルホン酸)(例えば、Gibco)が挙げられ、通常、約1~5mM、より通常には約1mM~約3.0mM、最も好ましくは、約2mMの濃度で用いられる。HEPESは、本発明によるウシ用精子エクステンダー培地のpHを緩衝するために好ましく使用されるが、他の好適な従来の生理学的に許容される両性イオン緩衝剤又は両性イオン緩衝系が用いられてもよい。
【0062】
本明細書に記載の精子エクステンダー培地は、ポリビニルアルコール(PVA)等の精子抗凝集剤、ペニシリン、ストレプトマイシン、ゲンタマイシン及びアミカシン等の抗菌剤、並びにナイスタチン及びフルコナゾール等の抗真菌剤から選択され得る薬剤を更に含むことができる。
【0063】
エクステンダー培地における精子生存率を維持するための生理学的に許容される無機塩は、典型的には、カリウム、カルシウム、マグネシウム、及びナトリウムといった無機塩、例えば、それらの塩化物塩、リン酸塩、及び硫酸塩から選択される。エクステンダー培地に含めることができる特定の塩としては、KCl、CaCl、KHPO、MgSO、及びNaClが挙げられる。そのような塩は、例えば、細胞膜電位を維持し、細胞栄養所要量を提供するために、溶液中にK、Na、Ca2、Mg2、Cl、SO42-及び/又はPO42-のイオンを提供するために細胞及び胚培養培地で一般的に使用される。典型的には、ウシ用エクステンダー培地中のそれぞれの無機塩の濃度は、約1mM~約5mMの範囲である。マグネシウムは、精液中に比較的高い量で見出されるが、典型的には、約55mM~約65mMの範囲の濃度(例えば、55mM、56mM、57mM、58mM、59mM、60mM、61mM、62mM、63mM、64mM、又は65mM)で、本発明のウシ用精子エクステンダー培地(例えば、MgSOとして提供される)の少なくともいくつかの実施形態に提供される。
【0064】
しかしながら、以下に更に記載されるように、ナトリウムイオン濃度は、インビトロでの精子寿命に有害であると報告されており、本発明者らは、それが細胞恒常性を維持するためのNa/KATPaseの活性による細胞アデノシン三リン酸(ATP)レベルの枯渇に起因するものであると考える。本発明の実施形態において、ウシ用エクステンダー培地中のナトリウムイオンの濃度は、望ましくは、約95mM、90mM、85mM、又は80mM未満のレベル、より通常には、約70mM以下、65mM以下、60mM以下、及び最も好ましくは、約50mM以下のレベルまで最小化される。
【0065】
典型的には、培地は、エクステンダー培地で利用される緩衝剤(複数可)と酸性度調整剤(複数可)との組み合わせによって形成される緩衝系によって、約7.0~約8.5のpH範囲内に緩衝され、より好ましくは約7.5~約8.5のpH範囲内に緩衝される。培地のpHは、HCl又はKOH等の好適な酸又は塩基の使用により、この範囲内に調整することができるが、培地の最終pHは、使用される特定のアミノ酸オスモライト(複数可)によって決定される。
【0066】
精子エクステンダー培地のモル浸透圧濃度は、一般に、約290mOsm/L~約400mOsm/Lの範囲であり、より通常には、約290mOsm/L~約390mOsm/L、約380mOsm/L、370mOsm/L、360mOsm/L、350mOsm/L若しくは340mOsm/L、又は約300mOsm/L~約340mOsm/Lの範囲であり、例えば、300mOsm/L、305mOsm/L、310mOsm/L、315mOsm/L、320mOsm/L、325mOsm/L、330mOsm/L、335mOsm/L又は340mOsm/Lである。
【0067】
本開示による精子エクステンダー培地の構成成分の特定の濃度範囲が上に記載されているが、記載された濃度範囲の上限及び下限を有する関連構成成分の全ての濃度が、本明細書に明示的に提供されることが理解されるであろう。
【0068】
本明細書に記載されるように、本開示によって具現化された精子エクステンダー培地は、従来知られている凍結保存のような技術を用いたインビトロ又はインビボでの受精のために精子を使用するまで、凍結保存の不在下で、周囲温度で家畜動物の精子の受精能を延長するために使用され得る。特に好ましい実施形態において、精子エクステンダー培地は、精子の凍結保存の不在下で、3日を超える期間にわたって、好ましい実施形態において、少なくとも5日間、周囲温度で液体保存中の家畜動物の精子の受精能を維持することができる。
【0069】
典型的には、精液は、好適な採取容器(例えば、市販されている円錐形の不活性プラスチック製の遠心管)内の生理学的に許容される培地中に採取されるか、又はさもなければ、好適なそのような容器に採取され、選択された生理学的に許容される培地(例えば、好適な細胞培養液、又はウマ若しくはウシ用の精子エクステンダー培地)で希釈された後、好ましくは密度勾配遠心分離プロトコルを用いた遠心分離により精漿から精子が分離され、分離された精子が再懸濁され、更なる遠心分離により精子が1回以上洗浄され、使用されるまで周囲温度で液体保存するために本発明によって具現化された精子エクステンダー培地に最終的に再懸濁される。望ましくは、ウシ血清が採取される生理学的に許容される培地は、必要に応じて、例えば、約25℃~約37℃の範囲(例えば、30℃)の適切な温度まで予備加温される。洗浄ステップ(複数可)に使用される培地も、同様に予備加温することができる。特に好ましい実施形態において、本発明による精子エクステンダー培地は、精液が採取される生理学的に許容される培地としてだけでなく、洗浄ステップ(複数可)のためにも使用される。
【0070】
使用するまで精子が保存される周囲温度又は室温(RT)は、望ましくは、例えば、17℃~約25℃の範囲であり、好ましくは約22℃である。精子は、使用するまで、例えば、空調管理された部屋若しくは環境、又は、一般的に既知であるような従来の冷たいゲル若しくはアイスパックによって冷却された絶縁運搬容器に保存することができる。
【0071】
本明細書に記載の精子エクステンダー製剤は、本発明によるエクステンダー培地を形成するように一緒に添加又は混合されるために、固体(例えば、粉末として)又は部分的に固体の形態で提供され得る。例えば、二重蒸留水(ddHO)又は脱イオン水中に、培地のそれぞれの構成成分の所定濃度で最終体積に一緒に混合されるように、例えば、エクステンダー培地のいくつかの構成成分は、溶液で提供されてもよく、他の構成成分は粉末形態で提供されてもよい。更に、本発明による精子エクステンダー培地のいくつかの実施形態は、コエンザイムQ10及びロシグリタゾン等の構成成分を含んでもよく、これらは低い水溶性を有するため、好適な溶媒及び/又は熱を使用して事前に可溶化する必要があり得る。例えば、コエンザイムQ10を42℃のジメチルホルムアミドに溶解させる一方で、ロシグリタゾンを同じ温度のジメチルスルホキシド(DMSO)に溶解させて、後に使用するためのストック溶液を提供することができる。加えて、エクステンダー製剤の構成成分は、凍結乾燥させて、ddHO又は脱イオン水で再構成することができ、施設内で使用するために別々に提供される。
【0072】
本発明は、精子エクステンダー培地のいくつかの非限定的な例を参照して以下に更に説明されるが、本開示はそれに限定されず、本開示による実施形態は、家畜ヒツジ又はヤギの精子等の、液体保存中の他の反芻家畜動物種の精子の生存率を延長するために使用され得る。
【0073】
実施例1:精液エクステンダー培地の最適化
1.一般的な方法論
ウマ用精子エクステンダー培地INRA96は、Minitube Australia(Ballarat,Victoria,Australia)から購入し、実験1(セクション2を参照)で精子を単離するために使用したBoviPure(商標)(Nidacon International)は、Tek Event(Round Corner,NSW,Australia)から購入した。特に明記しない限り、他の全ての化学物質及び試薬は、Sigma-Aldrich(Castle Hill,NSW,Australia)から購入した。
【0074】
1.1 培地BWW
約310mOsm/Lのモル浸透圧濃度を有する、95mMのNaCl、4.7mMのKCl、1.7mMのCaCl2.2H2O、1.2mMのKH2PO4、1.2mMのMgSO4.7H2O、25mMのNaHCO3、5.6mMのD-グルコース、275μMのピルビン酸ナトリウム、3.7μl/mlの60%乳酸ナトリウムシロップ、50U/mlのペニシリン、50μg/mlのストレプトマイシン、緑膿菌の増殖を防止するための0.25mg/mlのゲンタマイシン(Aurich and Spergser 2007)、20mM HEPES、及び0.1%(w/v)ポリビニルアルコールを含有する、改変されたビガーズ・ウィッテン・ウィッティンガム培地(BWW)培地(Biggers,Whitten et al.1971)を、本研究を通して対照培地として使用した。
【0075】
1.2 勾配遠心分離
高品質の雄牛精子の選択は、45%及び90%の不連続Percoll(商標)(GE Healthcare、Castle Hill,Australia)又はBoviPure(商標)遠心分離勾配を使用して達成した。この手順のために、Percoll(商標)(90mL)に、10mLのHam’s F10溶液、370μLの乳酸ナトリウムシロップ、3mgのピルビン酸ナトリウム、210mgの炭酸水素ナトリウム、及び100mgのポリビニルアルコール(PVA)を補充した。この等張性Percoll(商標)溶液又はBoviPure(商標)をBWWで希釈し、不連続勾配を作製した(45%及び90%の等張性Percoll(商標)/BoviPure(商標):それぞれ、55%及び10%のBWW)。15mLの円錐遠心管(BDFalcon)中で、3mLの90%溶液を、3mLの45%溶液の下に重層した。
【0076】
1.3 精子の採取及び調製
本研究における動物材料の使用について、施設及びNew South Wales州政府の倫理的承認を確保した。本研究は、Charles Sturt University(Wagga Wagga,NSW,Australia)の機関で承認された施設で行われた、受精能が証明されている17頭の正常精子アンガス雄牛(3~7歳)からの射精液に基づいていた。電気射精によって精液を採取し、射精液を未希釈のままにした(実験1)か、又はINRA96で直ちに希釈した(2:1、エクステンダー:精液)(実験2及び3-セクション2及び3)。この初期希釈は、処理中に毒性の精漿タンパク質によって引き起こされる精子への損傷を軽減するのに有益であることが見出された(Bergeron and Manjunath 2006)。精液の採取及び希釈中、機器及びエクステンダー培地を30℃~37℃の温度に維持した。次いで、更なる処理の前に、希釈保存した精液の管を、研究室内で最大30分間、RT(約20~25℃)で保持した。実験1では、最大6mLの希釈保存した精液を直接遠心分離する(700×gで10分間)か、又はBoviPure(商標)勾配の上に重層し、700×gで20分間遠心分離し、実験2及び3では、最大5mLの希釈保存した精液をPercoll(商標)勾配の上に重層し、700×gで30分間遠心分離した。遠心分離後、精漿及び密度勾配培地を除去し、廃棄した。管の底部から精子を回収し、2mLのBWWに再懸濁し、BWWとともに遠心分離(500×gで5分間)することによって洗浄した。次いで、これらのペレット化された細胞を、実験用エクステンダー培地中で50×10精子/mLの濃度で再懸濁した。
【0077】
1.4 精子運動性分析
精子運動性は、以下の設定を使用したコンピュータ支援精子分析(CASA;IVOS、Hamilton Thorne、Danvers,MA)により客観的に決定した:負の位相コントラスト光学、60フレーム/秒の記録速度、70の最小コントラスト、4ピクセルの最小セルサイズ、0.17の低サイズゲート、2.9の高サイズゲート、0.6の低強度ゲート、1.74の高強度ゲート、10ピクセルの非運動頭部サイズ、135の非運動頭部の輝度、50μm/秒の前進性VAP閾値、20μm/秒の遅い(静的)細胞のVAP閾値、0μm/秒の遅い(静的)細胞のVSL閾値、及び75%の閾値STR。≧50μm/秒のVAP及び≧75のSTRを呈する細胞は、前進性とみなした。前進性細胞の平均VAPよりも高いVAPを有する細胞を「高速」とみなした。Lejaの標準的な20μm計数スライド(Gytech、Australia)及び37℃の段階温度を使用して、少なくとも5つのフィールドで少なくとも200個の精子を評価した。
【0078】
1.5 フローサイトメトリーによる生存率及び先体完全性の分析
精子試料の100μLアリコートを、遠心分離(300×gで3分間)によってペレット化し、FITC-PNA(0.8μg/mL)及びLIVE/DEAD Far Red Fixable Stain(0.5μL/mL;Molecular Probe、Australia)を含有する200μLのBWWに再懸濁し、37℃で20分間インキュベートした。染色後、精子を遠心分離によってペレット化し、フローサイトメトリー分析のためにBWWに再懸濁した。全てのフローサイトメトリーは、488nmのアルゴンイオンレーザーを用いてFACSCantoフローサイトメーター(BDBioscience、NJ,USA)を使用して行った。放射測定は、530/30バンドパスフィルタ(緑色/FL-1)及び>670ロングパスフィルタ(近赤外/FL-4)を使用して行った。前方散乱光/側方散乱光のドットプロットを使用してデブリをゲートアウトし、試料ごとに少なくとも10000個の細胞を分析した。全てのデータを、FACSDivaソフトウェア(BD Bioscience)を使用して分析した。精子は、先体が無傷の生存精子(緑色蛍光でも赤色蛍光のいずれでもない)、先体が損傷している生存精子(緑色蛍光のみ)、先体が無傷の死滅精子(赤色蛍光のみ)、又は先体が損傷している死滅精子(赤色及び緑色蛍光)のいずれかに分類された。
【0079】
1.5 統計分析
本研究で使用された全てのデータは、分析の前に正規分布について検定した。正規分布に適合するようにデータを変換することができない場合は、ノンパラメトリック検定を行った。全ての実験データは、JMP、バージョン14.0ソフトウェア(SAS Institute Inc.、Cary,NC)を用いて一元配置ANOVAによって分析した。著しい処理効果がANOVAによって特定された場合(α=0.05)、平均比較を行った。全ての実験において、様々な処理培地に保存された精子のパラメータ間の差異は、平均値のペアワイズ比較のためのスチューデントのt検定を使用して特定した(α=0.05)。
【0080】
2.実験1-精子調製プロトコルの最適化及び雄牛精子に対する独自の種牡馬用エクステンダー培地の試験
本研究の目的は、本発明者の研究グループによって8年間にわたって開発されている独自の周囲温度向け種牡馬用精子エクステンダー(以下「独自の」ウマ用エクステンダー培地と称される)中で、ウシ精子を室温(RT)で効果的に保存することができるかどうか、及びBoviPure(商標)遠心分離ステップを使用して死滅細胞、精漿、及び微生物汚染物質から高品質の精子を単離することが、RTで保存中の精子寿命に有益であるかどうかを確認するための予備調査を実施することであった。INRA96(商標)は、ウシ精子の液体保存に最適であることが以前に報告されている市販の種牡馬用精液エクステンダーであり(Murphy,Murphy et al.2017)、本研究の対照培地として利用した。
【0081】
6頭の雄牛からの精子を上に概説したように処理し、17℃で3日間の液体保存後にCASA運動性分析を行った。
【0082】
遠心処理と精子保存培地との間の統計的交互作用は観察されなかったため、更なる分析のためにデータをプールした。INRA96(商標)に保存された精子の前進運動性及び総運動性は、独自のウマ用エクステンダー培地に保存されたものよりも著しく高く(総運動性及び前進運動性は、それぞれ、71対31%及び63.3対27%;P≦0.0001)、BoviPure(商標)を使用した精子の単離は、直接遠心分離に単独と比較して有意に改善された総運動性及び前進運動性をもたらした(それぞれ、59.1対43.5%及び52.2対38.1%;P≦0.01)。
【0083】
これらの結果は、ウシ精子が明らかに、ウマ精子と比較してインビトロ保存中の特有の要件を有することを示す。加えて、本発明者らは、密度勾配遠心分離を使用したウシ精子の単離が、保存中の精子の質を著しく改善したことを観察した。BoviPure(商標)及びPercoll(商標)勾配によってウシ精子を処理することが実際に精子の質を改善すると報告している他の報告もあるが(Arias,Andara et al.2017;Samardzija,Karadjole et al.2006a;Samardzija,Karadjole et al.2006b)、液体保存を意図した精子に対する密度勾配遠心分離の長期的な影響を示している研究はない。このステップは、残りの生存細胞の酸化ストレスに寄与する死滅細胞及び死滅しかけた細胞を除去するだけでなく(Aitken、Naumovski et al.2015;Upreti、Jensen et al.1998)、生の射精液中に存在し得る微生物及びウイルス汚染物質を著しく減少させる(Galuppo、Junior et al.2013;Varela、Rey et al.2018)、精子をより高い温度で保存する場合に重要なステップである。
【0084】
3.実験2-ウシ精子の液体保存のためのエクステンダー培地要件の決定
独自のウマ用エクステンダー製剤に保存された雄牛精子の運動性が、INRA96(商標)ウマ用精液エクステンダーに保存されたものよりも著しく低かったという、上記の実験1の結果に基づいて、RTで24時間後のウシ精子の運動性に異なる構成成分が与える影響を調査するための研究が行われた。
【0085】
とりわけ、pH、重炭酸ナトリウム含有量、ピルビン酸ナトリウム用量、及びオスモライト源(例えば、NaCl、L-カルニチン、塩化コリン)を含む、一般的な細胞培地パラメータ及び成分の影響を本研究中に観察した。
【0086】
7.5~8.5のpHが、総運動性及び前進運動性の両方にとって好ましいことが見出された。0mM、0.275mM、5mM、10mM、及び20mMのピルビン酸ナトリウム濃度を評価した。ピルビン酸ナトリウムの不在と、評価した0.275mM~20mMの各試験濃度との間で、精子の運動性に有意差は観察されなかった。
【0087】
NaClは、培養培地中で最も一般的に利用されるオスモライトであるが、発明者らは最近、L-カルニチン又は塩化コリン等の代替オスモライトが、RTでの液体保存中に精子の寿命をより良好に維持し得ることを見出した。特に、本研究において、発明者らは、NaClの50%をL-カルニチン(100mM)又は塩化コリン(95mM)のいずれかで置き換えたときに、ウシ精子の総運動性及び前進運動性の両方が改善されたことを見出した。
【0088】
CASAによって決定される24時間の印でのフィールド条件下では、評価された濃度(0~100μM)でのロシグリタゾン用量、糖源(例えば、グルコース、フルクトース、スクロース、又はラフィノース)、又はコエンザイムQ10の著しい影響は記録されなかった。しかしながら、試験試料を連日にわたって主観的に監視し、最大の精子寿命を呈する処理(事実上、光学顕微鏡下で評価したときに、全ての細胞が不動になるのに最も長くかかったもの)を、ウシ用エクステンダー基礎液に含めるために選択し、本発明者らは、これがウシ用エクステンダー基礎液での使用に好適であると考えた。基礎液の構成成分を下の表1に列挙する。
【表1】
【0089】
4.実験3-ウシ用エクステンダー基礎液とINRA96との比較
ウシ用エクステンダー基礎液を、INRA96(商標)に保存された冷蔵(5℃)精子に対して試験した。基礎液の追加の処理は、17℃又はRT(20~25℃)のいずれかで精子を培地に保存し、上記の実験1及び実験2中に散発的に観察された真菌の増殖を阻害するためのナイスタチン(100U/mL)を用いて又は用いずに補充することであった。合計8頭の雄牛からの精子を上記のように処理し、8日間にわたって24時間ごとにCASA運動性測定を行い、3日目及び7日目に冷蔵精子を評価した。全ての試料については3日目に、最適化された雄牛精子のエクステンダー処理については7日目に、先体完全性分析を行った。
【0090】
RTでウシ用エクステンダー基礎培地に保存された雄牛精子の総運動性及び前進運動性は、1週間の保存にわたって著しく低下しなかった(図1)。RT保存温度(ナイスタチンなし)は、他のいずれの処理よりも一貫して高い結果をもたらしたが、これらは保存の3日目にのみ有意であり、RT及びRT+ナイスタチン処理の両方の前進運動性は、両方の17℃での処理よりも著しく高いことが観察された。
【0091】
INRA96(商標)に保存された冷蔵精子と比較した場合、3日及び7日の保存後、総運動性及び前進運動性は、ウシ用エクステンダー基礎液において著しく高かった。先体完全性及び生存率についても同様のパターンが観察された。3日間の保存後(冷蔵後の精子受精能の最大値と考えられる)、ウシ用エクステンダー基礎液に保存された精子は、INRA96(商標)に保存された冷蔵精子よりも著しく高い生存率及び先体完全性を有していた(図2)。
【0092】
これは、室温でのウシ精子の液体保存の成功を実証する最初の研究であり、INRA96(商標)に3日より長く保存された冷蔵ウシ精子のインビトロ評価を行った最初の研究であると考えられる(Murphy,Eivers et al.2018)。
【0093】
丸々1週間の室温での保存にわたって、ウシ用エクステンダー基礎培地に保存された精子の運動性に著しい低下がなかったという事実は、これらの細胞の受精能が維持され、人工授精(AI)プログラムにおける使用に好適であることを示唆している。
【0094】
実施例2:ウシ用エクステンダー培地の開発及び受精研究
1.精液の採取及び処理
雄牛精液(動物は、Charles Sturt University、Wagga Wagga,NSW,Australiaで飼育された)を電気射精によって採取し、ウマ用INRA96(商標)精液エクステンダーで2:1(エクステンダー:精液)に直ちに希釈し、更に処理する前に室温(RT)で維持した。次いで、希釈保存した精液を不連続(45/90%)Percoll(商標)勾配上に重層し、700×gで30分間遠心分離して、以下に記載する保存実験に使用される高品質の精子を単離した。高品質のペレット化した精子を、次いで、改変されたビガーズ・ウィッテン・ウィッティンガム(BWW)培地に再懸濁し(Gibb et al.,2014)、遠心分離(300×gで5分間)によって再び洗浄した。次いで、ペレット化した精子を、各実験に記載される様々な製剤に再懸濁し、それらが評価されるまで、暗所で、5mLのSarstedt社製の検体ポットにRT(21~23℃)で保存した。
【0095】
2.ウシ精子の運動性に関する異なるアミノ酸の比較
塩化ナトリウムは、恒常性のためのNa/K-ATPaseの使用に起因して、インビトロでの哺乳動物の星状細胞の寿命に有害であることが示されており(Silver and Erecineska,1997)、種牡馬精子保存用培地中のNaClの除去は、改善されたエネルギー(ATP)保持により細胞寿命を著しく改善することができる(Gibb et al.,2015,Gibb et al.,2016)。本発明者らはまた、NaClをL-カルニチン等の有機オスモライトに置き換えることが、種牡馬(Gibb et al.,2015,Gibb et al., 2016)及び雄牛(Klein et al.,2019)の両方の精子の保存中に有益であり得ることを以前に示している。本発明に至る際に、本発明者らによって、ウシ用エクステンダー培地中のオスモライト(複数可)として使用するための可溶性アミノ酸の適合性をスクリーニングするための研究が行われた。
【0096】
本研究は2部構成で行われた。第1部は、可溶性アミノ酸(n=10頭の雄牛の分割射精からの精子)のスクリーニングであり、第2部は、最も成功した3つのアミノ酸(n=9頭の雄牛の分割射精液からの精子)のみを使用して第1部の結果を確認することであった。塩化ナトリウム及び塩化コリンをオスモライト対照として使用した。塩化コリンは、前述のナトリウムポンプの機能によるATP損失を悪化させない、非代謝的に活性なオスモライトである(Gibb et al.,2015)。
【0097】
試験アミノ酸又は塩化コリンのいずれかを添加した基礎液に41.1mMのNaClが含まれていないことを除いて、上記のウシ用エクステンダー基礎液(実施例1、実験3)を、これらの評価の目的で利用した。試験アミノ酸を82.2mMの最終濃度まで基礎液に添加し、対照は、41.1mMの最終濃度までNaCl又は塩化コリンのいずれかを含有していた。溶液の初期pHは7~10と様々であり、KOH又はHClのいずれかで7.5~8.0に調整した。全ての試験培地に100U/mlのナイスタチンを補充して、真菌の増殖を制御した。精子の運動性を、実施例1のように評価した。
【0098】
研究の第1部では、室温(RT)での7日間の液体保存後に運動性を評価した。研究の第2部では、RTでの3、7、10及び14日間の液体保存で精子の運動性を評価した。JMP v14ソフトウェア(ANOVA)を使用して再びデータを分析した。
【0099】
研究の第1部で、異なるオスモライトがウシ精子の運動性に与える影響の初期評価の結果を図3のグラフに示す。グラフ内の列番号によるそれぞれの試験物質のアイデンティティは、以下の通りである。1.アスパラギン、2.メチオニン、3.グリシン、4.タウリン、5.スレオニン、6.ロイシン、7.リジン、8.プロリン、9.システイン、10.アルギニン、11.セリン、12.塩化コリン、13.トリプトファン、14.バリン、15.NaCl、16.ヒスチジン、17.アラニン、18.フェニルアラニン、19.グルタミン、20.アスパラギン酸、21.チロシン、22.グルタミン酸、及び23.イソロイシン。利用したアミノ酸は、D形態及びL形態を有しないタウリン及びグリシン以外の全てのL-アミノ酸である。
【0100】
図3から、グリシン(処理番号3)、タウリン(処理番号4)、又はアラニン(処理番号17)のいずれかを使用した浸透圧的にバランスのとれた培地に保存された精子の総運動性及び前進運動性は、NaCl(処理番号12)及び塩化コリン(処理番号15)対照の両方を含む他の全ての処理よりも著しく高かったことがわかる。バリン(処理番号14)を含有する試験培地に保存された精子もまた、残りの処理よりも実質的に良好な総運動性及び前進運動性を示したことが見て取れる。ウシ精子は、液体保存の3日目に、タウリンを含有するエクステンダー基礎液においてより良好な総運動性及び前進運動性を示すが、精子は、14日目に、バリンを含有する溶液において、タウリンよりも良好な運動性を有することが発明者らによって見出された(日付は示さず)。
【0101】
全ての群における全体的な運動性の低さは、採取時の精子の低温ショックによるものであると考えられた。本研究の第2部は、精液採取条件の最適化(以下のセクション3を参照)の後に実施され、再びNaCl及び塩化コリンを対照として用いた。
【0102】
上述したように、ウシ用エクステンダー基礎液をグリシン、バリン、又はアラニンのいずれかで補充した場合、RTでの保存の3~10日目には、精子に運動性の著しい喪失は見られなかったが、14日目までには運動性が著しく低下していた。グリシン、バリン、又はアラニンのいずれかに曝露された精子の運動性は、全ての時点でどちらの対照よりも著しく高かった。14日目までに、グリシン含有培地に保存された精子の総運動性及び前進運動性のNaCl対照との差は、他の2つのアミノ酸処理よりも非常に有意であった(図4)。したがって、グリシンは、バリン及びアラニンの各々と比較して、ウシ精子のための好ましいオスモライトであるとみなされた。
【0103】
NaClを添加せずに(すなわち、表1に示される製剤中に41.1mM濃度のNaClを含まない)いずれかのグリシン(82.2mM)を補充したエクステンダー基礎液を含むエクステンダー培地は、以下において「新規ウシ用エクステンダー培地」と称される。
【0104】
3.精液採取条件の最適化
すぐ上に記載したように、低い周囲温度が精子の質に影響を与え、全ての処理にわたって低い運動性をもたらすことが明らかになった。このため、実験の第2部(第1部の2週間後に実施)では、図5に概略的に例解されるように、37℃の水で満たされたウォータージャケット内の予備加温した管への精液の採取を含む、試料を確実に保温するための追加の手順が取られた。
【0105】
4.殺真菌剤の比較
室温での精液試料の保存は、冷蔵及び凍結保存の場合のように熱的制約によって抑制されない微生物汚染によって複雑になる。ナイスタチンは、真菌の増殖を阻害するためにウマ用精子エクステンダー培地で使用されてきたが、この殺真菌剤は雄牛精子に有害であり得ることが示唆されている(Foote,2002)。より最近の研究では、抗真菌剤フルコナゾールが、酵母汚染を抑制するのに有効である一方で、雄羊精子に有害な影響を及ぼさないことが示されている(Othman et al.,2016)。したがって、以前に使用された用量のナイスタチン(100U/mL)がウシ精子の運動性に与える影響を、2つの用量のフルコナゾール(12.5mg/L及び25mg/L)とともに、抗真菌剤を有しない対照に対して比較した。
【0106】
精液は、上記の通りに採取、処理、及び保存した(実施例2、セクション1.1)。82.2mMの最終濃度までグリシンを補充した(培地のpHは7.9)記載されるようなエクステンダー基礎液(実施例2、実験2)中で、1、3、7、10及び14日間RTで保存した後、上記のようにCASAを使用して精子の運動性を評価した。JMP v14ソフトウェア(ANOVA)を使用してデータを分析した。
【0107】
いずれの処理間にも有意差は観察されなかった。フルコナゾール(25mg/L)は、保存に有害な影響を及ぼさず、より効果的な増殖の阻害剤であるため(Othman et al.,2016)、残りの実験でエクステンダー製剤に利用された。
【0108】
実施例3:凍結保存精子と比較した、新規ウシ用エクステンダー培地に保存された雄牛精子の運動性及び受精能
82.2mM(かつNaClを含有しない)の最終濃度までグリシンを補充したウシ用エクステンダー基礎液(実施例2、実験2)に7日間及び14日間保存されたウシ精子の機能性及び受精能を、AndroMed(商標)精液エクステンダー(Minitube Australia Pty Ltd、Smythesdale,Victoria,Australia)で標準的な市販プロトコルを使用して凍結保存した精子と比較するために研究を実施した。精子を採取して処理した後(実施例2、セクション1)、2つのアリコートに分割し、凍結保存するか、又は新規ウシ用エクステンダー培地にRT(ポリスチレンボックス中22℃)で保存した。
【0109】
7日間及び14日間保存した後、精子を(実施例1の通りに)運動性について分析し、IVFに使用した。IVF研究では、食肉処理場由来の卵母細胞を組織培養培地199(TCM-199)+ウシ血清アルブミン(BSA)で22~24時間成熟させ、剥離して受精させた。精子の添加後18~20時間の2前核率(2PN)を使用して受精能を測定した。推定接合子を4%のPFAで固定し、0.3%のTriton-Xで透過化し、DAPIで染色し、蛍光顕微鏡法を使用して評価した。運動性及び受精データは、JMP v14ソフトウェア及びANOVAを使用して分析した。
【0110】
保存の7日後、グリシンを含有する新規ウシ用精子エクステンダー培地に保存された精子の総運動性及び前進運動性は、凍結保存精子のものよりも著しく高かった(総運動性及び前進運動性は、それぞれ、P≦0.0001及び0.05)。保存の14日目までに、新規ウシ用エクステンダー培地に保存された精子の運動性は著しく低下したが、それらは依然として凍結保存精子の運動性に類似していた(図6)。しかしながら、新規ウシ用エクステンダー培地は、少なくとも10日間、精子の寿命及び受精能を支持することが判明した。
【0111】
同様のパターンで、凍結保存精子と比較して、新規エクステンダー培地に7日間保存された精子のインビトロ受精率が高かったが(44対34%の受精卵母細胞)、恐らく試料サイズを考慮すると有意に高いわけではなく、14日目までには、受精率は、凍結保存精子を使用して得られた受精率よりも著しく低かった(図7)。IVFシステムを使用したこれら2つの保存処理間の比較は、精子を凍結及び解凍する行為が、精子が卵母細胞を認識し、結合して受精する能力を獲得する成熟の最終段階である受精能獲得プロセスを模倣する変化を誘導する、という事実によって若干混乱する。このため、精子を解凍する際、精子は、卵との共インキュベーションの前に、新鮮な精子を利用した場合に必要になるのと同じ大規模な化学的に誘導される受精能獲得を受ける必要はない。受精能獲得は、人工授精後に女性生殖管で自然に起こるプロセスである。しかしながら、発明者らは、新規ウシ用精子エクステンダーに保存されたウシ精子の受精能獲得様変化の欠如が、人工授精(AI)後の精子の寿命に有利であると考える。
【0112】
要約すると、本研究では、温度を制御するための特定のデバイスを使用することなく、RTでウシ精子を保存した。これにより、現場での使用のための冷蔵及び凍結保存精子の輸送に関連する物流上の制約が著しく軽減される。更に、新規ウシ用エクステンダー培地は、いずれの機能も喪失することなく少なくとも10日間、また、凍結保存精子と比較して同等の又は優れたインビトロ受精能を伴って7日間、雄牛精子を室温で保存することを可能にした。本発明者らは更に、凍結保存を回避することで、人工授精後のウシ生殖管内における精子の寿命を改善することができると考える。
【0113】
実施例4:人工授精(AI)研究
82.2mMのグリシンを含有する新規ウシ用精子エクステンダー培地に保存された精子の受精能を小規模フィールド試験で確認した。この試験では、3頭の雄牛から電気射精によってウシ精液を採取した。45/90の不連続BoviPure(商標)密度勾配を使用して高品質の精子を選択し、新規ウシ用エクステンダー培地に約5000万/mLの濃度で再懸濁し、暗所において周囲温度(約22℃)で保存した。保存された精子は、7日後に総運動性又は前進運動性の著しい低下を示さなかった(総運動性(TM):83.3±3.06対73±3.18;前進運動性(PM):82.8±2.83対70.9±3.97;それぞれ、0日目及び7日目でP>0.05)。7日目に、0.5mLの授精用量(15.75~18.75×10の前進運動精子)を使用して、2歳の未交尾の未経産牛18頭に対して、発情同期化後に定時AIを行った。
【0114】
授精後33日目の超音波妊娠診断で、18頭の雌のうち14頭が妊娠していることが確認された。
【0115】
実施例5:更なる人工授精(AI)研究
発情同期化に続いて、12頭の未経産牛に対して更なる定時人工授精(AI)のフィールド試験を行った。試験は、Cessnock,New South Wales,Australia近郊で実施された。端的に述べると、電気射精によって単一のSanta Gertrudis雄牛から精液を採取し、高品質の精子を選択し、実施例4に記載のプロトコルに従って、82.2mMのグリシンを含有する新規ウシ用エクステンダー培地中約5000万/mlの濃度で、周囲室温(約22℃)で7日間保存した。この場合も同様に、保存された精子は、7日後に総運動性又は前進運動性の著しい低下を示さなかった。7日目に未経産牛に授精し、授精後35日目に、超音波妊娠診断で、未経産牛のうち6頭が妊娠していることが示された。妊娠した未経産牛は全て、2022年8月末に出産した。全ての子牛は、生存出産であり、健康であった。
【0116】
Santa Gertrudisは、ゼブー牛及びヨーロッパ牛の両方に由来するタウリン-インディシン(indicine)のハイブリッド牛の品種であり、強いBos indicusの特性を有する。本発明の試験では、妊娠した未経産牛のうち3頭は純血のサンタガートルーディス、2頭はBos taurus(Friesian交雑種)、1頭はBrahman/Santa Gertrudis交雑種であった。
【0117】
本試験は、Bos indicusの精子を、受精能を保持しながら、本発明によって具現化された新規ウシ用エクステンダー培地中で7日間、周囲温度で保存することができ、Bos indicus未経産牛が、精子を利用した定時AIを用いて妊娠を達成することができることを示すものである。
【0118】
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図1A
図1B
図2
図3
図4
図5
図6
図7
【国際調査報告】