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特表2024-538758低解像度の磁気共鳴画像を使用した動き補正
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-10-23
(54)【発明の名称】低解像度の磁気共鳴画像を使用した動き補正
(51)【国際特許分類】
   A61B 5/055 20060101AFI20241016BHJP
【FI】
A61B5/055 376
A61B5/055 380
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024521803
(86)(22)【出願日】2022-10-04
(85)【翻訳文提出日】2024-05-14
(86)【国際出願番号】 EP2022077578
(87)【国際公開番号】W WO2023061808
(87)【国際公開日】2023-04-20
(31)【優先権主張番号】21201965.7
(32)【優先日】2021-10-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.JAVA
2.BLUETOOTH
(71)【出願人】
【識別番号】590000248
【氏名又は名称】コーニンクレッカ フィリップス エヌ ヴェ
【氏名又は名称原語表記】Koninklijke Philips N.V.
【住所又は居所原語表記】High Tech Campus 52, 5656 AG Eindhoven,Netherlands
(74)【代理人】
【識別番号】110001690
【氏名又は名称】弁理士法人M&Sパートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】ソマー カルステン
(72)【発明者】
【氏名】ウエルケル クリスチャン
(72)【発明者】
【氏名】シュルケ クリストフ ミハエル ジーン
(72)【発明者】
【氏名】ニールセン ティム
【テーマコード(参考)】
4C096
【Fターム(参考)】
4C096AA03
4C096AA04
4C096AB12
4C096AD13
4C096AD14
4C096BB32
4C096DA04
4C096DC06
(57)【要約】
本明細書では、機械実行可能命令120を記憶するメモリ110と、アップサンプリングニューラルネットワーク122とを備える、医療システム100、300について説明している。アップサンプリングニューラルネットワークは、第2の解像度より低い第1の解像度の、予備的磁気共鳴画像126を受信することに応答して、第2の解像度のアップサンプリングされた磁気共鳴画像130を出力するよう構成される。機械実行可能命令を実行することにより、計算システム104は、予備的k空間データ124を受信し(200)、予備的磁気共鳴画像を、予備的k空間データから再構成し(202)、臨床的k空間データ204を受信し(204)、予備的磁気共鳴画像をアップサンプリングニューラルネットワークに入力することに応答して、アップサンプリングされた磁気共鳴画像を受信し(206)、アップサンプリングされた磁気共鳴画像及び臨床的k空間データを使用して、動き補正された磁気共鳴画像132を提供する(208)。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
機械実行可能命令及びアップサンプリングニューラルネットワークを記憶するメモリであって、前記アップサンプリングニューラルネットワークが、第1の解像度の予備的磁気共鳴画像を受信することに応答して、前記第1の解像度よりも高い第2の解像度のアップサンプリングされた磁気共鳴画像を出力する、メモリと、
計算システムと
を備える、医療システムであって、前記機械実行可能命令を実行することにより、前記計算システムが、
対象者の関心領域を表す、前記第1の解像度の予備的k空間データを受信し、
前記予備的k空間データから前記予備的磁気共鳴画像を再構成し、
前記対象者の前記関心領域を表す、前記第2の前記解像度の臨床的k空間データを受信し、
前記予備的磁気共鳴画像を、前記アップサンプリングニューラルネットワークに入力することに応答して、前記アップサンプリングされた磁気共鳴画像を受信し、
前記アップサンプリングされた磁気共鳴画像及び前記臨床的k空間データを使用して、動き補正された磁気共鳴画像を提供する、
医療システム。
【請求項2】
前記医療システムが、磁気共鳴イメージングシステムをさらに備え、前記メモリが、予備的パルスシーケンスコマンド及び臨床的パルスシーケンスコマンドをさらに有し、前記予備的パルスシーケンスコマンドが、前記予備的k空間データを取得するために、前記磁気共鳴イメージングシステムを制御し、前記臨床的パルスシーケンスコマンドが、前記臨床的k空間データを取得するために、前記磁気共鳴イメージングシステムを制御し、前記機械実行可能命令を実行することにより、前記計算システムがさらに、
前記予備的パルスシーケンスコマンドを用いて、前記磁気共鳴イメージングシステムを制御することにより、前記予備的k空間データを取得し、
前記臨床的パルスシーケンスコマンドを用いて、前記磁気共鳴イメージングシステムを制御することにより、前記臨床的k空間データを取得する、
請求項1に記載の医療システム。
【請求項3】
前記予備的k空間データが、第1の磁気共鳴イメージングモダリティを使用して取得され、前記臨床的k空間データが、第2の磁気共鳴イメージングモダリティを使用して取得され、動き補正された前記磁気共鳴画像を提供することが、前記アップサンプリングされた磁気共鳴画像を使用して、シミュレーションされた磁気共鳴画像を提供することを含み、前記シミュレーションされた磁気共鳴画像が、前記第2の解像度及び前記第2の磁気共鳴イメージングモダリティを持つ、請求項2に記載の医療システム。
【請求項4】
前記シミュレーションされた磁気共鳴画像は、
前記第1の磁気共鳴イメージングモダリティが、前記第2の磁気共鳴イメージングモダリティと同一であることと、
前記アップサンプリングニューラルネットワークが、前記アップサンプリングされた磁気共鳴画像を、前記シミュレーションされた磁気共鳴画像として出力することと、
前記メモリが、前記アップサンプリングされた磁気共鳴画像を受信することに応答して、前記シミュレーションされた磁気共鳴画像を出力する、第2の解像度のモダリティ転換ニューラルネットワークをさらに有し、前記機械実行可能命令を実行することにより、前記計算システムがさらに、前記アップサンプリングされた磁気共鳴画像を、前記第2の解像度のモダリティ転換ニューラルネットワークに入力することに応答して、前記シミュレーションされた磁気共鳴画像を受信することと、
前記メモリが、前記予備的磁気共鳴画像を、前記第1の磁気共鳴イメージングモダリティから前記第2の磁気共鳴イメージングモダリティへ転換する、第1の解像度のモダリティ転換ニューラルネットワークをさらに有し、前記機械実行可能命令を実行することにより、前記計算システムがさらに、前記予備的前記磁気共鳴画像を、前記第1の解像度のモダリティ転換ニューラルネットワークへ入力することに応答して、転換された予備的磁気共鳴画像を受信し、前記アップサンプリングニューラルネットワークが、前記転換された予備的磁気共鳴画像を入力として受信することに応答して、前記アップサンプリングされた磁気共鳴画像を、前記シミュレーションされた磁気共鳴画像として出力することと
のうちのいずれか1つによって提供される、請求項3に記載の医療システム。
【請求項5】
前記アップサンプリングされた磁気共鳴画像及び前記臨床的k空間データを使用して、動き補正された前記磁気共鳴画像を提供することが、前記アップサンプリングされた磁気共鳴画像又は前記シミュレーションされた磁気共鳴画像を使用して、動き補正される前記磁気共鳴画像の動き補償再構成を実行することを含む、請求項1から4のいずれか一項に記載の医療システム。
【請求項6】
再構成されるべき動きのない画像として前記アップサンプリングされた磁気共鳴画像又は前記シミュレーションされた磁気共鳴画像を使用する前記動き補償再構成が最適化として実行される、請求項5に記載の医療システム。
【請求項7】
前記動き補償再構成が、少なくとも部分的に、前記臨床的k空間データから判定される位相マップを使用して、前記再構成されるべき動きのない画像の位相を判定することを含む、請求項6に記載の医療システム。
【請求項8】
前記機械実行可能命令を実行することにより、前記計算システムがさらに、
前記シミュレーションされた磁気共鳴イメージングデータ又は前記アップサンプリングされた磁気共鳴画像のフーリエ変換を実行することによって、シミュレーションされたk空間データを計算し、
前記シミュレーションされたk空間データを、前記臨床的k空間データと比較することによって、動きで破損したk空間データを検出し、
前記最適化を、前記動きで破損したk空間データに限定する、
請求項6又は7に記載の医療システム。
【請求項9】
前記アップサンプリングされた磁気共鳴画像及び前記臨床的k空間データを使用して、前記動き補正された磁気共鳴画像を提供することが、
前記シミュレーションされた磁気共鳴イメージングデータのフーリエ変換を実行することによって、シミュレーションされたk空間データを計算すること、
前記シミュレーションされたk空間データを、取得された前記臨床的k空間データと比較することによって、動きで破損したk空間データを検出すること、並びに
前記動きで破損したk空間データを再取得すること、及び/又は、前記対象者の動きに対して調整するために前記臨床的k空間データの前記取得を調整すること
を含む、請求項3又は4に記載の医療システム。
【請求項10】
前記アップサンプリングされた磁気共鳴画像及び前記臨床的k空間データを使用して、前記動き補正された磁気共鳴画像を提供することが、
前記シミュレーションされた磁気共鳴イメージングデータのフーリエ変換を実行することによって、シミュレーションされたk空間データを計算すること、
前記シミュレーションされたk空間データと、前記臨床的k空間データとを比較することによって、動きパラメータを判定すること、並びに
前記動きパラメータを入力として受信する、動き補正アルゴリズムを使用して、前記臨床的k空間データから、前記動き補正された磁気共鳴画像を再構成すること
を含む、請求項3又は4に記載の医療システム。
【請求項11】
前記予備的k空間データが、少なくとも部分的に、複数の磁気共鳴イメージングコイル要素から取得される、コイル校正k空間データであり、前記機械実行可能命令を実行することにより、前記計算システムがさらに、
前記コイル校正k空間データから、前記複数の磁気共鳴イメージングコイル要素のそれぞれについて、コイル画像を再構成し、
前記複数の磁気共鳴イメージングコイル要素のそれぞれについて、少なくとも前記コイル画像を結合することにより、前記予備的磁気共鳴画像を構築する、
請求項1から10のいずれか一項に記載の医療システム。
【請求項12】
前記予備的k空間データが、少なくとも部分的に、ボディコイルから取得される、請求項1から11のいずれか一項に記載の医療システム。
【請求項13】
前記予備的k空間データが、磁気共鳴フィンガープリンティングによるk空間データであり、前記予備的磁気共鳴画像が、定量的磁気共鳴画像である、請求項1から10のいずれか一項に記載の医療システム。
【請求項14】
計算システム及びアップサンプリングニューラルネットワークによる実行のための機械実行可能命令を有するコンピュータプログラムであって、前記アップサンプリングニューラルネットワークが、第1の解像度の予備的磁気共鳴画像を受信することに応答して、前記第1の解像度よりも高い第2の解像度のアップサンプリングされた磁気共鳴画像を出力し、前記機械実行可能命令を実行することにより、前記計算システムが、
対象者の関心領域を表す第1の前記解像度の予備的k空間データを受信し、
前記予備的前記磁気共鳴画像を、前記予備的k空間データから再構成し、
前記対象者の前記関心領域を表す、第2の前記解像度の臨床的k空間データを受信し、
前記予備的磁気共鳴画像を、前記アップサンプリングニューラルネットワークに入力することに応答して、前記アップサンプリングされた磁気共鳴画像を受信し、
前記アップサンプリングされた磁気共鳴画像及び前記臨床的k空間データを使用して、動き補正された磁気共鳴画像を提供する、
コンピュータプログラム。
【請求項15】
対象者の関心領域を表す、第1の解像度の予備的k空間データを受信するステップと、
予備的磁気共鳴画像を、前記予備的k空間データから再構成するステップと、
前記対象者の前記関心領域を表す、前記第1の解像度よりも高い第2の解像度の臨床的k空間データを受信するステップの前記解像度が、第1の前記解像度よりも高い、臨床的k空間データを受信するステップと、
前記予備的磁気共鳴画像を、アップサンプリングニューラルネットワークに入力することに応答して、アップサンプリングされた磁気共鳴画像を受信するステップであって、前記アップサンプリングニューラルネットワークが、前記第1の解像度の前記予備的磁気共鳴画像を受信することに応答して、前記第2の解像度の前記アップサンプリングされた磁気共鳴画像を出力する、アップサンプリングされた磁気共鳴画像を受信するステップと、
前記アップサンプリングされた磁気共鳴画像及び前記臨床的k空間データを使用して、動き補正された磁気共鳴画像を提供するステップと
を有する、医療イメージングの方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、磁気共鳴イメージングに関し、詳細には、磁気共鳴イメージングの際の動き補正に関する。
【背景技術】
【0002】
磁気共鳴イメージング(MRI)スキャナは、患者の体内の画像を生成する手順の一部として、原子核スピンを整列させるために、大きな静磁場を使用する。この大きな静磁場は、B0磁場、又は主磁場と呼ばれる。MRIを使用すると、対象者の様々な数量又は特性を、空間的に測定することができる。磁気共鳴イメージングにおける空間符号化は、MRIスキャナの送信コイルの制御に使用される無線周波(RF)波形(又はRFパルス)と、複数の空間選択的勾配パルス波形(勾配パルス)との結合を使用して実行される。磁気共鳴イメージングを実行する際の難しさは、画像を再構成するのに十分なデータを取得するために、相当な時間がかかる可能性があることである。MRI技法は、概して、対象者の動きの影響を受けやすい。
【0003】
米国特許出願公開第20130278263A1号は、複数の無線周波受信コイルを使用して取得される、磁気共鳴(MR)校正データについて開示しており、コイル感度マップと基準射影ベクトル(reference projection vector)との両方が、MR校正データに基づいて生成される。イメージング中に、追加のナビゲータ射影ベクトルが取得されるか、又はイメージングデータの一部を、ナビゲータ射影ベクトルとして使用することができる。部分並列イメージング(PPI)を実行して、ナビゲーション情報を増強することができる。ナビゲータ射影ベクトル及び基準射影ベクトルは、それぞれナビゲータ感度加重射影ベクトル(ナビゲータSWPV)及び基準感度加重射影ベクトル(基準SWPV)を生成するために、コイル感度マップを使用して感度重みづけされ、これらは、対象者位置情報を生成するために比較される。対象者の動きは、生成された対象者位置情報を使用して、予測的に又は遡及的に補償される。動き補償は、対象者の位置情報に基づいて、PPIのイメージングボリュームを調整することにより、予測的に実行される。
【発明の概要】
【0004】
本発明は、独立請求項に記載の医療システム、コンピュータプログラム、及び方法を提供する。実施形態は、従属請求項に記載されている。
【0005】
実施形態は、動き補正された磁気共鳴画像の提供を可能にするために、より低解像度の予備的磁気共鳴画像(スカウト画像など)を使用することにより、対象者の動きを補償する手段を提供する。これは、アップサンプリングニューラルネットワーク(超解像度ニューラルネットワーク)を使用して、予備的磁気共鳴画像を、アップサンプリングされた磁気共鳴画像に転換することにより実現される。次いで、アップサンプリングされた磁気共鳴画像は、臨床的k空間データから動き補正された磁気共鳴画像を提供するために、様々な動き補正方式で使用され得る。
【0006】
本発明は、一態様では、機械実行可能命令を記憶し、アップサンプリングニューラルネットワークも記憶するメモリを備える、医療システムを提供する。アップサンプリングニューラルネットワークは、第1の解像度の、予備的磁気共鳴画像を受信することに応答して、第2の解像度の、アップサンプリングされた磁気共鳴画像を出力するよう構成される。第2の解像度は、第1の解像度よりも高い。アップサンプリングニューラルネットワークは、したがって、アップサンプリングニューラルネットワークに入力された予備的磁気共鳴画像よりも高い解像度のアップサンプリングされた磁気共鳴画像を提供する。
【0007】
アップサンプリングニューラルネットワークは、画像処理用に構成されたニューラルネットワークである。アップサンプリングニューラルネットワークは、いくつかの例では、アップサンプラ又は超解像度ニューラルネットワークとして知られている。アップサンプリングニューラルネットワークを訓練する方法が知られている。場合によっては、敵対的生成ネットワークが使用されてもよい。ニューラルネットワークによるアップサンプリングは、画像処理用に構成された、畳み込みニューラルネットワークを使ってなされる。アップサンプリングニューラルネットワークは、第2の解像度の画像を取得し、次いで第2の解像度のこれらの画像を、第1の解像度に転換することで、データの訓練セットを作成することにより、訓練することができる。次いで、第1の解像度の画像と第2の解像度の画像とが対になった群を、例えば、深層学習に使用することができる。サブピクセル転換ニューラルネットワークを、下記で説明する概念実証(POC)研究に使用した。サブピクセル転換ニューラルネットワークは、アップサンプリングニューラルネットワークを実現するのに好適である。
【0008】
医療システムは、計算システムをさらに備える。計算システムは、機械実行可能命令を実行することにより、対象者の関心領域を表す、第1の解像度の予備的k空間データを受信する。計算システムは、機械実行可能命令を実行することによりさらに、予備的磁気共鳴画像を、予備的k空間データから再構成する。計算システムは、機械実行可能命令を実行することによりさらに、対象者の関心領域を表す、第2の解像度の臨床的k空間データを受信する。計算システムは、機械実行可能命令を実行することによりさらに、予備的磁気共鳴画像を、アップサンプリングニューラルネットワークに入力することに応答して、アップサンプリングされた磁気共鳴画像を受信する。計算システムは、最後に、機械実行可能命令を実行することによりさらに、アップサンプリングされた磁気共鳴画像及び臨床的k空間データを使用して、動き補正された磁気共鳴画像を提供する。
【0009】
アップサンプリングされた磁気共鳴画像は、動き補正された磁気共鳴画像を提供するために、様々なやり方で使用される。アップサンプリングされた磁気共鳴画像は、例えば、k空間に転換して戻し、臨床的k空間データ内の破損したk空間の領域の位置を特定するために使用することができる。これらの破損したk空間の領域は、特定されると、例えば医療システムを制御して、k空間データを再取得するか、又は破損したk空間データを補正する動作を実行するために使用することができる。
【0010】
医療システムは、別の実施形態では、磁気共鳴イメージングシステムをさらに備える。メモリはさらに、予備的パルスシーケンスコマンド及び臨床的パルスシーケンスコマンドを有する。予備的パルスシーケンスコマンドは、磁気共鳴イメージングシステムを制御して、予備的k空間データを取得するよう構成される。臨床的パルスシーケンスコマンドは、磁気共鳴イメージングシステムを制御して、臨床的k空間データを取得するよう構成される。計算システムは、機械実行可能命令を実行することによりさらに、予備的パルスシーケンスコマンドを使って磁気共鳴イメージングシステムを制御することで、予備的k空間データを取得する。
【0011】
計算システムは、機械実行可能命令を実行することによりさらに、臨床的パルスシーケンスコマンドを使って磁気共鳴イメージングシステムを制御することで、臨床的k空間データを取得する。この実施形態は、医療システムが、動き補正された磁気共鳴画像を提供する手段を備えているので、有益である。アップサンプリングされた磁気共鳴画像は、例えば、臨床的k空間データの、予測的動き補正と遡及的動き補正との両方に有用な場合がある。
【0012】
予備的k空間データは、別の実施形態では、第1の磁気共鳴イメージングモダリティを使用して取得される。本明細書で使用される磁気共鳴イメージングモダリティは、磁気共鳴画像を取得するために使用される、特定の種類のプロトコルの概念を包含する。例えば、磁気共鳴画像が取得されるときに、T1、T2、又は符号化される他の重みづけ係数など、様々な重みづけの選択肢がある。コントラスト又は他の画像特性に影響を与える、様々な繰返し回数も変更される。磁気共鳴イメージングモダリティは、当技術分野において又は一般的に、コントラストと呼ばれることが多い。臨床的k空間データは、第2の磁気共鳴イメージングモダリティを使用して取得される。動き補正された磁気共鳴画像を提供することは、アップサンプリングされた磁気共鳴画像を使用して、シミュレーションされた磁気共鳴画像を提供することを含む。シミュレーションされた磁気共鳴画像は、第2の解像度及び第2の磁気共鳴イメージングモダリティを有する。この実施形態は、解像度を増加させるだけでなく、k空間データを2回取得する際に、コントラスト又は構成が完全に相異なる場合でさえも、シミュレーションされた磁気共鳴画像を使用して、アップサンプリングされた磁気共鳴画像を提供するので、非常に有益である。これにより、例えば、第1の種類の予備的スキャンが、相異なるイメージングモダリティ、すなわちコントラストを使用している場合でさえも、臨床的磁気共鳴画像の動き補正を実現するのに役立つことで、有用となり得る。
【0013】
別の実施形態では、第1の磁気共鳴イメージングモダリティは、第2の磁気共鳴イメージングモダリティと同一である。この場合、様々なイメージングモダリティ、すなわちコントラスト間で、転換する必要はない。
【0014】
別の実施形態では、シミュレーションされた磁気共鳴画像は、アップサンプリングされた磁気共鳴画像を、シミュレーションされた磁気共鳴画像として出力するよう構成された、アップサンプリングニューラルネットワークによって提供される。この場合、例えば、スケーリングニューラルネットワークは、アップサンプリングと、イメージングモダリティ転換、すなわちコントラスト転換との両方を実行する。
【0015】
メモリは、別の実施形態では、アップサンプリングされた磁気共鳴画像を受信することに応答して、シミュレーションされた磁気共鳴画像を出力するよう構成された、第2の解像度のモダリティ転換ニューラルネットワークをさらに有する。第2の解像度のモダリティ転換ニューラルネットワークは、第2の解像度を有する磁気共鳴画像のモダリティ、すなわち「コントラスト」を転換するよう構成された、モダリティ転換ニューラルネットワークである。計算システムは、機械実行可能命令を実行することによりさらに、アップサンプリングされた磁気共鳴画像を、第2の解像度のモダリティ転換ニューラルネットワークに入力することに応答して、シミュレーションされた磁気共鳴画像を受信する。U-Net、F-Net、又は他の画像処理ニューラルネットワークなどのニューラルネットワークは、第2の解像度のモダリティ転換ニューラルネットワークを実現するのに好適である。第2の解像度のモダリティ転換ニューラルネットワークは、2つの相異なるモダリティを使用して、同じ対象者から2つの画像を取得することによって訓練される。この例では、予備的磁気共鳴画像が最初にアップサンプリングされ、次いで、第2のモダリティへの画像転換が実行される。
【0016】
メモリは、別の実施形態では、予備的磁気共鳴画像を、第1の磁気共鳴イメージングモダリティから第2の磁気共鳴イメージングモダリティに転換するよう構成された、第1の解像度のモダリティ転換ニューラルネットワーク(同様に実現され、訓練される)をさらに有する。計算システムは、機械実行可能命令を実行することによりさらに、予備的磁気共鳴画像を、第1の解像度のモダリティ転換ニューラルネットワークに入力することに応答して、転換された予備的磁気共鳴画像を受信する。アップサンプリングニューラルネットワークは、転換された予備的磁気共鳴画像を入力として受信することに応答して、アップサンプリングされた磁気共鳴画像を、シミュレーションされた磁気共鳴画像として出力するよう構成される。この例では、最初にコントラスト転換、すなわちモダリティ転換が実行され、次いで画像がアップサンプリングされる。
【0017】
第1の解像度のモダリティ転換ニューラルネットワーク及び第2の解像度のモダリティ転換ニューラルネットワークは、類似の構造を有し、類似のやり方で訓練される。
【0018】
別の実施形態では、アップサンプリングされた磁気共鳴画像及び臨床的k空間データを使用して、動き補正された磁気共鳴画像を提供することは、アップサンプリングされた磁気共鳴画像又はシミュレーションされた磁気共鳴画像を使用して、動き補正される磁気共鳴画像の動き補償再構成を実行することを含む。
【0019】
動き補償再構成は、別の実施形態では、アップサンプリングされた磁気共鳴画像又はシミュレーションされた磁気共鳴画像を、再構成されるべき動きのない画像の中間推定値として使用する、最適化として実行される。この実施形態は、アップサンプリングされた磁気共鳴画像又はシミュレーションされた磁気共鳴画像を、動きのない画像として使用することが、最適化の質を高めるばかりでなく、計算時間を短縮する手段を提供するので、有益である。
【0020】
動き補償再構成は、別の実施形態では、少なくとも部分的に臨床的k空間データから判定される位相マップを使用して、再構成されるべき動きのない画像の位相を判定することを含む。この実施形態は、アップサンプリングされた磁気共鳴画像から導き出されるk空間データの位相が不正確なので、有益である。したがって、アップサンプリングされた画像から振幅を取得し、元の臨床的k空間データから位相を取得することにより、改善された動き補正を実行することができる。
【0021】
計算システムは、別の実施形態では、機械実行可能命令を実行することによりさらに、シミュレーションされた磁気共鳴イメージングデータ又はアップサンプリングされた磁気共鳴画像の、フーリエ変換を実行することによって、シミュレーションされたk空間データを計算する。並列イメージング技法の場合、これには、シミュレーションされたイメージングデータにコイル感度マップを乗算し、これらの画像をフーリエ変換することが含まれ、このk空間は、次いで、コイル要素のそれぞれによって取得されたk空間データと直接比較することができる。
【0022】
計算システムは、機械実行可能命令を実行することによりさらに、シミュレーションされたk空間データを臨床的k空間データと比較することで、動きで破損したk空間データを検出する。計算システムは、機械実行可能命令を実行することによりさらに、動きで破損したk空間データに限定して最適化する。この実施形態では、臨床的k空間データの領域は、シミュレーションされたk空間データを用いて推定することができる。最適化の速度及び質は、破損したk空間データがあると検出された領域だけに限定して最適化することで、大幅に改善される。
【0023】
別の実施形態では、アップサンプリングされた磁気共鳴画像及び臨床的k空間データを使用して、動き補正された磁気共鳴画像を提供することは、シミュレーションされた磁気共鳴イメージングデータのフーリエ変換を実行することにより、シミュレーションされたk空間データを計算することを含む。上記で言及したように、並列イメージングでは、これには、シミュレーションされたイメージングデータにコイル感度マップを乗算し、これらの画像をフーリエ変換することが含まれ、これらのk空間は、次いで、コイル要素のそれぞれによって取得されたk空間データと直接比較することができる。
【0024】
この実施形態はさらに、シミュレーションされたk空間データを臨床的k空間データと比較することによって、動きで破損したk空間データを検出し、次いで最終的に、対象者の動きを補償するために、動きで破損したk空間データを再取得すること、及び/又は臨床的k空間データの取得を調整することを含む。この実施形態では、シミュレーションされたk空間データは、動きで破損したk空間データを検出し、次いで、このデータを再取得させるために使用される。これは、k空間データがひどく破損して再構成するのが不可能又は望ましくない場合に、動き補正された磁気共鳴画像の優れた再構成を可能にする。
【0025】
別の実施形態では、アップサンプリングされた磁気共鳴画像及び臨床的k空間データを使用して、動き補正された磁気共鳴画像を提供することは、シミュレーションされた磁気共鳴イメージングデータのフーリエ変換を実行することによって、シミュレーションされたk空間データを計算すること、シミュレーションされたk空間データと臨床的k空間データとを比較することによって、動きパラメータを判定すること、並びに動きパラメータを入力として受信する、動き補正アルゴリズムを使用して、臨床的k空間データから、動き補正された磁気共鳴画像を再構成することを含む。動き補正アルゴリズムは、例えば、動き補正された磁気共鳴画像を再構成する前に、動きパラメータを使用して、臨床的k空間データの少なくとも一部の位置をずらすか、又は平行移動する。
【0026】
計算システムは、別の実施形態では、機械実行可能命令を実行することによりさらに、臨床的k空間データから予備的画像を再構成する。計算システムは、機械実行可能命令を実行することによりさらに、予備的画像とシミュレーションされた磁気共鳴イメージングデータとの間の、画像位置合わせを判定する。計算システムは、機械実行可能命令を実行することによりさらに、上記で説明した実施形態において、シミュレーションされたk空間データと臨床的k空間データとを比較するときに、この画像位置合わせを使用する。これは、例えば、予備的磁気共鳴イメージングの取得と臨床的磁気共鳴イメージングの取得との間の、対象者の動きを補償又は補正するために使用される。これは、例えば、臨床的k空間データのどの部分が動きで破損したかを検出する際に有用である。これは、シミュレーションされたk空間データと、動きで破損した画像である予備的画像とを位置合わせすることによって実行でき、シミュレーションされた画像を、破損した画像の主要な動きの状態に位置合わせする可能性が高い。(一方、動き部分が既知であると考えられ、アップサンプリングされた画像が動きパラメータの推定に使用される場合には、このステップは重要ではなく、推定された動きパラメータが、単に相異なるだけであろう。)
【0027】
第2の解像度は、別の実施形態では、第1の解像度より少なくとも1.5倍高い。
【0028】
第2の解像度は、別の実施形態では、第1の解像度より少なくとも2倍高い。
【0029】
第2の解像度は、別の実施形態では、第1の解像度より少なくとも3倍高い。
【0030】
第2の解像度は、別の実施形態では、第1の解像度より少なくとも4倍高い。
【0031】
予備的k空間データは、別の実施形態では、少なくとも部分的に、複数の磁気共鳴イメージングコイル要素から取得される、コイル校正k空間データである。計算システムは、機械実行可能命令を実行することによりさらに、複数の磁気共鳴イメージングコイル要素のそれぞれについて、コイル画像を再構成する。計算システムは、機械実行可能命令を実行することによりさらに、複数の磁気共鳴イメージングコイル要素のそれぞれについて、少なくともコイル画像を結合することにより、予備的磁気共鳴画像を構築する。この実施形態は、磁気共鳴画像の並列イメージング(センスイメージングなど)再構成を改善する手段を実現するので、有益である。
【0032】
予備的k空間データは、別の実施形態では、少なくとも部分的に、ボディコイルから取得される。この実施形態は、典型的には、ボディコイルで取得される低解像度画像を使用して、より高解像度の臨床的画像の動き補正を可能にするので、有益である。
【0033】
予備的k空間データは、別の実施形態では、磁気共鳴フィンガープリンティングによるk空間データである。予備的磁気共鳴画像は、定量的磁気共鳴画像である。この実施形態は、磁気共鳴フィンガープリンティングデータを、動き補正に使用できる、疑似磁気共鳴画像に転換するのが簡単なので、特に有益である。
【0034】
本発明は、別の態様では、計算システムが実行するための機械実行可能命令と、やはり計算システムが実行するためのアップサンプリングニューラルネットワークとを有する、コンピュータプログラムを提供する。コンピュータプログラムは、非一時的記憶媒体に記憶されてもよく、コンピュータプログラム製品であってもよい。アップサンプリングニューラルネットワークは、第1の解像度の、予備的磁気共鳴画像を受信することに応答して、第2の解像度の、アップサンプリングされた磁気共鳴画像を出力するよう構成される。第2の解像度は、第1の解像度よりも高い。
【0035】
計算システムは、機械実行可能命令を実行することによりさらに、対象者の関心領域を表す、第1の解像度の、予備的k空間データを受信する。計算システムは、機械実行可能命令を実行することによりさらに、予備的磁気共鳴画像を、予備的k空間データから再構成する。計算システムは、機械実行可能命令を実行することによりさらに、対象者の関心領域を表す、第2の解像度の、臨床的k空間データを受信する。計算システムは、機械実行可能命令を実行することによりさらに、予備的磁気共鳴画像を、アップサンプリングニューラルネットワークに入力することに応答して、アップサンプリングされた磁気共鳴画像を受信する。計算システムは、機械実行可能命令を実行することによりさらに、アップサンプリングされた磁気共鳴画像及び臨床的k空間データを使用して、動き補正された磁気共鳴画像を提供する。
【0036】
本発明は、別の態様では、医療イメージング方法を提供する。この方法は、対象者の関心領域を表す、第1の解像度の、予備的k空間データを受信するステップを有する。この方法は、予備的磁気共鳴画像を、予備的k空間データから再構成するステップをさらに有する。この方法は、対象者の関心領域を表す、第2の解像度の、臨床的k空間データを受信するステップをさらに有する。第2の解像度は、第1の解像度よりも高い。この方法は、予備的磁気共鳴画像をアップサンプリングニューラルネットワークに入力することに応答して、アップサンプリングされた磁気共鳴画像を受信するステップをさらに有する。アップサンプリングニューラルネットワークは、第1の解像度の、予備的磁気共鳴画像を受信することに応答して、第2の解像度の、アップサンプリングされた磁気共鳴画像を出力するよう構成される。この方法は、アップサンプリングされた磁気共鳴画像及び臨床的k空間データを使用して、動き補正された磁気共鳴画像を提供するステップをさらに有する。
【0037】
本発明の前述の実施形態のうちの1つ又は複数が、組み合わされる実施形態が相互に排他的ではない限り、組み合わせてもよいことを理解されたい。
【0038】
本発明の態様は、当業者によって理解されるように、装置、方法、又はコンピュータプログラム製品として具現化される。本発明の態様は、したがって、すべて本明細書では概ね「回路」、「モジュール」、若しくは「システム」と呼ばれる、完全にハードウェアの実施形態、完全にソフトウェアの実施形態(ファームウェア、常駐ソフトウェア、マイクロコードなどを含む)、又はソフトウェアの態様とハードウェアの態様とを組み合わせた実施形態の形をとる。本発明の態様は、さらに、コンピュータ実行可能コードがその上で具現化される、1つ又は複数のコンピュータ可読媒体において具現化された、コンピュータプログラム製品の形をとる。
【0039】
1つ又は複数のコンピュータ可読媒体の、任意の組合せが利用される。コンピュータ可読媒体は、コンピュータ可読信号媒体又はコンピュータ可読記憶媒体である。本明細書で使用される「コンピュータ可読記憶媒体」は、コンピュータデバイスのプロセッサ又は計算システムによって実行可能な命令を記憶する、任意の有形記憶媒体を包含する。コンピュータ可読記憶媒体は、コンピュータ可読非一時的記憶媒体と呼ばれることもある。コンピュータ可読記憶媒体は、有形コンピュータ可読媒体と呼ばれることもある。コンピュータ可読記憶媒体は、いくつかの実施形態では、コンピュータ処理デバイスの計算システムがアクセスできるデータを、記憶することもできる。コンピュータ可読記憶媒体の例には、フロッピディスク、磁気ハードディスクドライブ、固体ハードディスク、フラッシュメモリ、USBサムドライブ、ランダムアクセスメモリ(RAM)、読取り専用メモリ(ROM)、光ディスク、光磁気ディスク、及び計算システムのレジスタファイルが含まれるが、これらに限定されるものではない。光ディスクの例には、コンパクトディスク(CD)及びデジタル多用途ディスク(DVD)、例えばCD-ROM、CD-RW、CD-R、DVD-ROM、DVD-RW、又はDVD-Rディスクが含まれる。コンピュータ可読記憶媒体という用語は、コンピュータデバイスによって、ネットワーク又は通信リンクを介してアクセスできる、様々な種類の記録媒体も指す。データは、例えばモデム経由、インターネット経由、又は構内ネットワーク経由で取り出されてもよい。コンピュータ可読媒体上に具現化されるコンピュータ実行可能コードは、無線、有線、光ファイバケーブル、RFなど、又はこれらの任意の好適な組合せを含むがこれらに限定されるものではない、任意の適切な媒体を使用して送信される。
【0040】
コンピュータ可読信号媒体は、その中で具現化されるコンピュータ実行可能コードを含む、例えばベースバンドで、又は搬送波の一部として伝播されるデータ信号を有する。かかる伝播される信号は、電磁気、光、又はこれらの任意の好適な組合せを含むがこれらに限定されるものではない、様々な形態のうちのいずれかをとる。コンピュータ可読信号媒体は、コンピュータ可読記憶媒体ではなく、命令実行システム、装置、又はデバイスが使用するか、又はこれらと共に使用するためのプログラムを、通信、伝播、又は転送できる、任意のコンピュータ可読媒体である。
【0041】
「コンピュータメモリ」又は「メモリ」は、コンピュータ可読記憶媒体の一例である。コンピュータメモリは、計算システムに直接アクセス可能な任意のメモリである。「コンピュータ記憶装置」又は「記憶装置」は、コンピュータ可読記憶媒体のさらなる一例である。コンピュータ記憶装置は、任意の不揮発性コンピュータ可読記憶媒体である。コンピュータ記憶装置は、いくつかの実施形態では、コンピュータメモリであってもよく、又はその逆もあり得る。
【0042】
本明細書で使用される「計算システム」は、プログラム、機械実行可能命令、又はコンピュータ実行可能コードを実行することができる、電子部品を包含している。「計算システム」の例を含む、計算システムへの言及は、場合によっては、複数の計算システム又は処理コアを含むと解釈されるべきである。計算システムは、例えば、マルチコアプロセッサである。計算システムは、単一のコンピュータシステム内の、又は複数のコンピュータシステム間に分散された、計算システムの集合も指す。計算システムという用語は、場合によっては、それぞれがプロセッサ又は計算システムを備える、コンピュータ処理デバイスの集合又はネットワークも指すと解釈されるべきである。機械実行可能コード又は命令は、同じコンピュータ処理デバイス内にあってもよく、又は複数のコンピュータ処理デバイスにわたって分散されていてもよい、複数の計算システム又はプロセッサによって実行されてもよい。
【0043】
機械実行可能命令又はコンピュータ実行可能コードは、プロセッサ又は他の計算システムに本発明の一態様を実行させる、命令又はプログラムを有する。本発明の態様の動作を実行するためのコンピュータ実行可能コードは、Java、スマートトーク、C++などのオブジェクト指向プログラミング言語、及び「C」プログラミング言語又は類似のプログラミング言語などの従来の手続き型プログラミング言語を含む、1つ又は複数のプログラミング言語の任意の組合せで書かれ、機械実行可能命令へコンパイルされたものである。コンピュータ実行可能コードは、場合によっては、高級言語の形式又は予めコンパイルされた形式であり、機械実行可能命令を実行中に生成する、インタプリタと併せて使用される。機械実行可能命令又はコンピュータ実行可能コードは、他の例では、プログラマブル論理ゲートアレイ用のプログラミングの形式である。
【0044】
コンピュータ実行可能コードは、ユーザのコンピュータ上で完全に、ユーザのコンピュータ上で部分的に、独立型のソフトウェアパッケージとして、ユーザのコンピュータ上で部分的且つ遠隔のコンピュータ上で部分的に、又は遠隔のコンピュータ又はサーバ上で完全に実行される。遠隔のコンピュータ又はサーバ上で実行されるシナリオでは、遠隔のコンピュータは、構内ネットワーク(LAN)若しくは広域ネットワーク(WAN)を含む任意の種類のネットワークを介して、ユーザのコンピュータに接続されるか、又は、外部コンピュータに接続される(例えば、インターネットサービスプロバイダを使用して、インターネットを介して)。
【0045】
本発明の態様が、本発明の実施形態による方法、装置(システム)、及びコンピュータプログラム製品の、流れ図及び/又はブロック図を参照して説明されている。流れ図、説明図、及び/又はブロック図の、各ブロック又はブロックの一部は、該当する場合、コンピュータ実行可能コードの形式の、コンピュータプログラム命令によって実施できることを理解されたい。さらに、相互に排他的でない場合は、相異なる流れ図、説明図、及び/又はブロック図のブロックの組合せが、組み合わされてもよいことを理解されたい。こうしたコンピュータプログラム命令は、汎用コンピュータ、専用コンピュータ、又は他の、機械を製造するためのプログラム可能なデータ処理装置の、計算システムに供給され、この結果、コンピュータの計算システム又は他のプログラム可能なデータ処理装置によって実行される命令は、流れ図及び/又はブロック図の1つ又は複数のブロックで指定された、機能/作用を実施する手段を作り出す。
【0046】
こうした機械実行可能命令又はコンピュータプログラム命令はまた、コンピュータ、他のプログラム可能なデータ処理装置、又は他のデバイスに、特定のやり方で機能するよう指示できる、コンピュータ可読媒体に記憶され、この結果、コンピュータ可読媒体に記憶された命令は、流れ図及び/又はブロック図の1つ又は複数のブロックで指定された機能/作用を実施する命令を有する製品を作り出す。
【0047】
機械実行可能命令又はコンピュータプログラム命令はまた、コンピュータ、他のプログラム可能なデータ処理装置、又は他のデバイスにロードされ、コンピュータ、他のプログラム可能な装置、又は他のデバイス上で一連の動作ステップを実行させて、コンピュータで実施されるプロセスを作り出し、この結果、コンピュータ又は他のプログラム可能な装置上で実行される命令が、流れ図及び/又はブロック図の1つ又は複数のブロックで指定された機能/作用を実施するためのプロセスを生成する。
【0048】
本明細書で使用される「ユーザインタフェース」は、ユーザ又は操作者が、コンピュータ又はコンピュータシステムと相互作用することを可能にするインタフェースである。「ユーザインタフェース」は、「ヒューマンインタフェースデバイス」とも呼ばれる。ユーザインタフェースは、操作者に情報又はデータを提供し、且つ/又は操作者から情報又はデータを受信する。ユーザインタフェースは、操作者からの入力をコンピュータが受信することを可能にし、コンピュータからユーザへ出力を提供する。ユーザインタフェースは、言い換えると、操作者がコンピュータを制御又は操作することを可能にし、またインタフェースは、コンピュータが、操作者の制御又は操作の結果を表示することを可能にする。ディスプレイ又はグラフィカルユーザインタフェース上でのデータ又は情報の表示は、操作者に情報を提供することの一例である。キーボード、マウス、トラックボール、タッチパッド、ポインティングスティック、グラフィックタブレット、ジョイスティック、ゲームパッド、ウェブカメラ、ヘッドセット、ペダル、有線グローブ、リモコン、及び加速度計を介したデータの受信はすべて、操作者からの情報又はデータの受信を可能にする、ユーザインタフェース構成要素の例である。
【0049】
本明細書で使用される「ハードウェアインタフェース」は、コンピュータシステムの計算システムが、外部のコンピュータ処理デバイス及び/又は装置と相互作用し、且つ/又はそれらの制御を可能にするインタフェースを包含する。ハードウェアインタフェースは、計算システムが、外部のコンピュータ処理デバイス及び/又は装置へ、制御信号又は命令を送信することを可能にする。ハードウェアインタフェースは、計算システムが、外部のコンピュータ処理デバイス及び/又は装置と、データ交換することも可能にする。ハードウェアインタフェースの例には、ユニバーサルシリアルバス、IEEE1394ポート、パラレルポート、IEEE1284ポート、シリアルポート、RS-232ポート、IEEE-488ポート、Bluetooth接続、無線構内ネットワーク接続、TCP/IP接続、イーサネット接続、制御電圧インタフェース、MIDIインタフェース、アナログ入力インタフェース、デジタル入力インタフェースが含まれるが、これらに限定されるものではない。
【0050】
本明細書で使用される「ディスプレイ」又は「表示デバイス」は、画像又はデータを表示するよう適合された、出力デバイス又はユーザインタフェースを包含する。ディスプレイは、視覚、音声、及び/又は触覚データを出力する。ディスプレイの例には、コンピュータモニタ、テレビ画面、タッチ画面、触覚電子ディスプレイ、点字画面、陰極線管(CRT)、蓄積管、双安定ディスプレイ、電子ペーパ、ベクトルディスプレイ、平面パネルディスプレイ、真空蛍光ディスプレイ(VF)、発光ダイオード(LED)ディスプレイ、電界発光ディスプレイ(ELD)、プラズマディスプレイパネル(PDP)、液晶ディスプレイ(LCD)、有機発光ダイオードディスプレイ(OLED)、プロジェクタ、ヘッドマウントディスプレイが含まれるが、これに限定されるものではない。
【0051】
K空間データは、本明細書では、磁気共鳴イメージングスキャン中に、磁気共鳴装置のアンテナを使用して、原子スピンによって放出される無線周波信号の、記録された測定値と定義される。磁気共鳴データは、断層撮影医療画像データの一例である。
【0052】
磁気共鳴イメージング(MRI)画像又はMR画像は、本明細書では、k空間データ内に含まれる解剖学的データを再構成した、2次元又は3次元視覚化したものと定義される。この視覚化は、コンピュータを使用して実行することができる。
【0053】
以下で、本発明の好ましい実施形態を、ほんの例として、図面を参照しながら説明することにする。
【図面の簡単な説明】
【0054】
図1】医療機器の一例を示す図である。
図2図1の医療機器の使用方法を示す流れ図である。
図3】医療機器の別の一例を示す図である。
図4図3の医療機器の使用方法を示す流れ図である。
図5】方法の別の一例を示す図である。
図6】概念実証研究の結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0055】
これらの図において、同様の番号がつけられた要素は、同等の要素であるか、又は同じ機能を果たすかのいずれかである。機能が同等である場合、以前に論じられた要素は、後の図において必ずしも論じられないであろう。
【0056】
図1は、医療システム100の一例を示している。医療システム100は、コンピュータ102を備えるものとして図示されている。コンピュータ102は、同じ場所にあるか又は分散されている、1つ又は複数のコンピュータシステムを表すことを意図している。コンピュータ102は、任意選択のハードウェアインタフェース106、任意選択のユーザインタフェース108、及びメモリ110と通信する、計算システムを備えるものとして図示されている。計算システム104は、1箇所又は複数の場所にある、1つ又は複数の計算システムを表すことを意図している。計算システム104は、放射線科用のコンピュータシステム上にある、磁気共鳴イメージングシステムの制御システムに統合される場合があり、又はウェブベース若しくはクラウドベースのサービスとしても、利用可能である。ハードウェアインタフェース106は、計算システム104が医療システム100の他の構成要素と通信し、且つ/又は他の構成要素を制御することを可能にする。ハードウェアインタフェース106は、例えば、磁気共鳴イメージングシステムが存在する場合、計算システム104が、磁気共鳴イメージングシステムを制御することを、可能にするであろう。ユーザインタフェース108は、操作者又はユーザが、医療システム100の動作及び機能を制御するための手段を提供する。
【0057】
メモリ110は、計算システム104が利用可能又はアクセス可能な、様々な種類のメモリを表すことを意図している。メモリ110は、機械実行可能命令120を有するものとして図示されている。機械実行可能命令120は、計算システム104が、画像処理、数値計算、及び他の構成要素の制御など、様々なタスクを実行できるようにする命令である。メモリ110はさらに、予備的磁気共鳴画像126を受信して、アップサンプリングされた磁気共鳴画像130にアップサンプリングするよう構成された、アップサンプリングニューラルネットワーク122を備えるものとして図示されている。
【0058】
メモリ110はさらに、予備的k空間データ124を有するものとして図示されており、予備的k空間データはこの場合、例えば、ネットワークインタフェースを受信して記憶装置から取り出されるか、又は磁気共鳴イメージングシステムによって直接取得される。メモリ110はさらに、予備的k空間データ124から再構成された、予備的磁気共鳴画像126を有するものとして図示されている。メモリ110はさらに、臨床的k空間データ128を有するものとして図示されている。臨床的k空間データ128は、対象者の関心領域を表しており、第2の解像度を有する。予備的k空間データ124は、同じ関心領域を表しており、第1の解像度を有する。第2の解像度は、第1の解像度よりも高い。
【0059】
メモリ110は、予備的磁気共鳴画像126を入力することにより、アップサンプリングニューラルネットワーク122から得られた、アップサンプリングされた磁気共鳴画像130を有するものとして図示されている。アップサンプリングされた磁気共鳴画像130は、第2の解像度を有する。メモリはさらに、臨床的k空間データ128及びアップサンプリングされた磁気共鳴画像130を使用して再構成された、動き補正された磁気共鳴画像132を有するものとして図示されている。アップサンプリングされた磁気共鳴画像130は、臨床的k空間データ128を動き補正された磁気共鳴画像132に再構成するときに、動き補正を補助するために、様々なやり方で使用される。アップサンプリングされた磁気共鳴画像130は、例えば、k空間に転換され、これは、臨床的k空間データ128の破損した部分の、位置を特定するか又は判定するために使用される。アップサンプリングされた磁気共鳴画像130は、他の例では、動き補正された磁気共鳴画像132を再構成するための、基準画像として使用される。
【0060】
図2は、図1の医療システム100を動作させる方法を例示する、流れ図を示している。まず、ステップ200において、予備的k空間データ124が受信される。次に、ステップ202において、予備的磁気共鳴画像126が、予備的k空間データ124から再構成される。次いで、ステップ204において、臨床的k空間データ128が受信される。次に、ステップ206において、予備的磁気共鳴画像をアップサンプリングニューラルネットワーク122に入力することに応答して、アップサンプリングされた磁気共鳴画像130が受信される。次いで最後に、ステップ208において、アップサンプリングされた磁気共鳴画像130及び臨床的k空間データ128を使用して、動き補正された磁気共鳴画像132が生成される。
【0061】
図3は、医療システム300の別の一例を示している。図3に示されている医療システム300は、磁気共鳴イメージングシステム302をさらに備えることを除いて、図1に示された医療システム100と同様である。
【0062】
磁気共鳴イメージングシステム302は、磁石304を備える。磁石304は、磁石を貫くボア306を有する超伝導円筒形磁石である。様々な種類の磁石を使用することも可能であり、例えば、分割円筒形磁石、及びいわゆる開放型磁石の両方を使用することも可能である。分割円筒形磁石は、磁石の等平面へのアクセスを可能にするために、クライオスタットが2つの部分に分割されていることを除いて、標準的な円筒形磁石と同様であり、かかる磁石は、例えば、荷電粒子ビーム治療に伴い使用される。開放型磁石は、2つの磁石部分を有し、その一方は他方の上にあり、その間に対象者を収容するのに十分な大きさの空間を有する。2つの部分のエリアの配置は、ヘルムホルツコイルの配置と同様である。開放型磁石は、対象者があまり閉じ込められないので人気がある。円筒形磁石のクライオスタットの内側には、超伝導コイルが集合している。
【0063】
円筒形磁石304のボア306内には、磁場が磁気共鳴イメージングを実行するのに十分に強く且つ十分に均一である、イメージングゾーン308がある。視野309が、イメージングゾーン308内に図示されている。取得される磁気共鳴データは、通常、視野309に関して取得される。関心領域は、視野309と同一の場合もあり、視野309の部分的なボリュームの場合もある。対象者318は、対象者318の少なくとも一部がイメージングゾーン308及び視野309内にあるように、対象者支持体320で支持されているものとして図示されている。
【0064】
磁石304のイメージングゾーン308内の、磁気スピンを空間的に符号化するために、予備的磁気共鳴データの取得に使用される磁場勾配コイル310のセットも、磁石のボア306内にある。磁場勾配コイル310は、磁場勾配コイル用電源312に接続されている。磁場勾配コイル310は、代表的なものであることを意図している。磁場勾配コイル310は、典型的には、3つの直交する空間方向で空間的に符号化するための、3つの別個のコイルセットを備える。磁場勾配用電源は、磁場勾配コイルに電流を供給する。磁場勾配コイル310に供給される電流は、時間の関数として制御され、ランプ状又はパルス状である。
【0065】
イメージングゾーン308に隣り合って、イメージングゾーン308内の磁気スピンの向きを操作し、やはりイメージングゾーン308内の、スピンによる無線送信を受信するための、無線周波コイル314がある。無線周波アンテナは、複数のコイル要素を備える。無線周波アンテナは、チャネル又はアンテナとも呼ばれる。無線周波コイル314は、無線周波送受信機316に接続されている。無線周波コイル314及び無線周波送受信機316は、別々の送信及び受信コイル、並びに別々の送信機及び受信機によって置き換えられてもよい。無線周波コイル314及び無線周波送受信機316は、代表的なものであることを理解されたい。無線周波コイル314は、専用送信アンテナ及び専用受信アンテナを表すことも意図している。送受信機316も同様に、別々の送信機及び受信機を表してもよい。無線周波コイル314はまた、複数の受信/送信要素を備えてもよく、無線周波送受信機316は、複数の受信/送信チャネルを備えてもよい。
【0066】
送受信機316及び勾配コントローラ312は、コンピュータシステム102のハードウェアインタフェース106に接続されているものとして図示されている。これらの構成要素の両方だけでなく、位置データを供給する対象者支持体などの他の構成要素も、センサデータ126を供給する。
【0067】
メモリ110は、磁気共鳴イメージングシステム302を制御して、予備的k空間データ124及び臨床的k空間データ128をそれぞれ取得するよう構成された、予備的パルスシーケンスコマンド330及び臨床的パルスシーケンスコマンド332を有するものとして図示されている。メモリはさらに、磁気共鳴画像のモダリティ、すなわちコントラストを転換するために使用される、モダリティ転換ニューラルネットワーク334を有するものとして図示されている。モダリティ転換ニューラルネットワークは、例えば、第1の解像度のモダリティ転換ニューラルネットワークの場合もあり、第2の解像度のモダリティ転換ニューラルネットワークの場合もある。
【0068】
予備的k空間データ124及び臨床的k空間データ128は、相異なるコントラストを使用して取得される。予備的k空間データ124は、例えば、スカウト画像又はパイロット画像として比較的低い解像度で取得された、単純な水素原子核密度(proton density)画像である。臨床的k空間データ128は、T1又はT2強調画像(T1 or T2 weighted image)など、別のコントラストを有する場合がある。モダリティ転換ニューラルネットワーク334は、アップサンプリングニューラルネットワーク122と共に使用される。2つのニューラルネットワークは例えば、様々なやり方で構成される場合がある。一例では、アップサンプリングニューラルネットワーク122が最初に使用され、次いで、モダリティ転換ニューラルネットワーク334が使用される(この場合、モダリティ転換ニューラルネットワーク344は、第2の解像度のモダリティ転換ニューラルネットワークである)。他の構成では、モダリティ転換ニューラルネットワーク334が最初に使用され、次いで、アップサンプリングニューラルネットワーク122が使用される(この場合、モダリティ転換ニューラルネットワークは、第1の解像度のモダリティ転換ニューラルネットワークである)。いずれの場合も、2つのニューラルネットワーク334、122を使用した結果、臨床的k空間データ128と同じモダリティ、すなわちコントラスト、及び同じ第2の解像度を有する、シミュレーションされた磁気共鳴画像336が得られる。次いで、シミュレーションされた磁気共鳴画像336又はアップサンプリングされた磁気共鳴画像130を使用して、臨床的k空間データを使った、動き補正された磁気共鳴画像が得られる。これは、例えば、動き補正される磁気共鳴画像132の、動き補償再構成を行うことによって実行される。動き補償再構成は、例えば、この再構成の際にアップサンプリングされた磁気共鳴画像130又はシミュレーションされた磁気共鳴画像336を、動きのない画像として使用する、最適化を実行する。
【0069】
図4は、図3の医療システム300を動作させる別の方法を例示する、流れ図を示す。まず、ステップ400において、予備的パルスシーケンスコマンド330を用いて、磁気共鳴イメージングシステム302を制御することにより、予備的k空間データが取得される。次いで、ステップ402において、臨床的パルスシーケンスコマンド332を用いて、磁気共鳴イメージングシステム302を制御することにより、臨床的k空間データ128が取得される。ステップ402の後、図1に示したステップ200、202、204、206、及び208が実行される。
【0070】
例では、少なくとも1つの専用ニューラルネットワーク(アップサンプリングニューラルネットワーク122、及び場合によってはモダリティ転換ニューラルネットワーク334)を使用して、低解像度の事前スキャン(予備的磁気共鳴画像126)を変換し、次に続く解剖学的スキャン(T1w、T2wなど)の高解像度推定値を得る方法を提示している。第1のステップでは、超解像度ネットワーク(アップサンプリングニューラルネットワーク122)が、事前スキャンデータを目標とする解像度(第2の解像度)までアップサンプリングする。第2のステップでは、専用ネットワークが、データを、目標とするコントラストに転換する。
【0071】
解剖学的スキャンのうちの1つの間に患者が動く場合、この転換された事前スキャンは、一例では、k空間の破損部分を特定し、関連する動きパラメータを推定するための、動きのない基準として使用される。この情報は、以下において、動き補償再構成で使用される。破損したk空間プロファイルの特定は、別法として、解剖学的スキャンのデータ取得中にリアルタイムで実行でき、これにより、適切なデータを再取得するよう誘導し、動きアーチファクトを低減する。
【0072】
患者の動きによる画質の劣化は、MRIの臨床応用において、最も頻繁に起こる問題の1つである。多くの患者は、スキャン全体を通して平静を保つことが困難である。動きアーチファクトの遡及的補正は、k空間の破損部分の正確な特定、及び/又は患者の動きを表すパラメータセットの推定に依存する。このタスクに関して以前に提案された方法は、堅牢性に欠けるか、又は極端に長い再構成時間を必要とする。破損したショットを特定し、動きパラメータを推定するための改善された方法により、特定及び推定の計算時間を大幅に短縮できる可能性がある。
【0073】
例では、Sense基準スキャン(SenseRefScan)などの事前スキャンデータを使用して、次の解剖学的スキャンの推定値を得る。これは、いくつかの例では、超解像度(アップサンプリングニューラルネットワーク)及びコントラスト転換(モダリティ転換ニューラルネットワーク)のための、2つの専用ネットワークを使用して実現される。結果として得られた、転換された事前スキャンデータは、次いで、k空間の破損した部分を特定し、且つ/又は動き補償再構成の一環として、関連する動きパラメータを推定するために使用される。
【0074】
例示的な方法の概要を、図5に示している。図5は、イメージング方法を図式的に表す流れ図を示している。この例では、予備的磁気共鳴画像126又は事前スキャンが、超解像度ネットワークとも呼ばれる、アップサンプリングニューラルネットワーク122に供給される。これにより、アップサンプリングされた事前スキャンとも呼ばれる、アップサンプリングされた磁気共鳴画像130が得られる。事前にアップサンプリングされた磁気共鳴画像130は、次いで、モダリティ転換ニューラルネットワーク334又はコントラスト転換ネットワークに供給される。これにより、転換された事前スキャン画像とも呼ばれる、シミュレーションされた磁気共鳴画像336が得られる。図5の例は、ただ単に、1つの可能性を示している。画像が、同じモダリティの画像である場合、シミュレーションされた磁気共鳴画像336を作成する必要がないので、モダリティ転換ニューラルネットワーク334を省くことができる。コントラスト転換ネットワーク334は、さらなる一例では、超解像ネットワーク122の前に適用される。この場合、転換された画像336が、次いで、アップサンプリングされた事前スキャン130にアップサンプリングされる。いずれの場合でも、転換された事前スキャン336は、臨床的k空間データ128と共に動き補正アルゴリズムに供給され、動き補正された磁気共鳴画像が計算される。
【0075】
第1のステップ(122)では、事前スキャンデータ(予備的磁気共鳴画像126)は、超解像度ネットワーク(アップサンプリングニューラルネットワーク122)を使用して、目標とする解像度(第2の解像度)に転換される。このタスクのために、様々なネットワークアーキテクチャ及び訓練設定を想定することができる。概念実証(POC)研究では、サブピクセル畳み込みニューラルネットワークが、4分の1にダウンサンプリングされた高解像度の自然画像のデータセットに関して訓練された。
【0076】
第2のステップでは、アップサンプリングされた事前スキャンデータ(アップサンプリングされた磁気共鳴画像130)は、専用のコントラスト転換ネットワーク(モダリティ転換ニューラルネットワーク334)を使用して、目標とするMRコントラストに転換される。このネットワークには、U Net、F-Netなどの様々な画像間アーキテクチャを使用することができる。好適なデータセットの作成は、複数のやり方で実現することができる。
【0077】
臨床的データベース内で、同一の幾何形状を含む、アーチファクトのないスキャン対を特定し、必要に応じて2つのスキャンの位置合わせを使用し、データベースを作成する。
【0078】
任意のMRコントラスト、すなわち、水素原子核密度、T1及びT2マップの順シミュレーション(forward simulation)を可能にするために、組織パラメータマップを含む定量的データセットを取得する。拡散、灌流などの追加の組織パラメータは、この方法を機能的なMRシーケンスに拡張するのに役立つ。
【0079】
同一の幾何形状を含む一致するスキャン対が利用できない場合、(対になっていない)スキャンの大きなデータセットも使用される。この場合、cycleGANネットワークアーキテクチャを使用することができる。スキャンパラメータ設定の修正(例えば、TE及びTRの変更)ごとに、専用のコントラスト転換ネットワークを訓練する必要がないように、転換ネットワークは、こうしたスキャン設定を追加の入力として組み込むよう設計することができる。かかる設計の1つの可能性は、ネットワークに適応型インスタンス正規化(AdaIn)層を含めることである。
【0080】
転換された事前スキャンデータ(以下、xで示される)は、次いで、動き補正モジュールで、事前情報として使用される。このモジュールでのデータ処理の、複数の実施態様が可能である。
【0081】
k空間の破損部分の特定は、フーリエ変換され、転換された事前スキャンと、取得された解剖学的データとを差し引くことにより、実現することができる。これらのデータセット間の大きな差は、動きによって破損したk空間部分に相当すると想定され、例えば閾値処理によって特定することができる。
【0082】
k空間の破損部分を再取得することを目的とする、リアルタイムでの動きアーチファクト低減技法において、この結果得られた情報を、動き補償再構成(下記参照)における事前情報として使用し、計算を簡略化及び高速化し、動きで破損したデータの棄却を含む反復再構成手法を導くことができる。ここでは、解剖学的スキャンが開始される前に、事前スキャンデータセットのすべての処理ステップを実行できることを利用でき、これにより、入ってくる解剖学的データの非常に高速な処理が可能となる。
【0083】
動きアーチファクトの遡及的補正は、動き補償再構成を使用して実行でき、以下のように表すことができる。
【数1】
ここで、yは、測定されたk空間データ、xは、再構成されるべき動きのない画像、Tθは、θによってパラメータ化された動き変換行列、Cは、コイル感度、Fは、フーリエ変換、Mは、適切なサンプリング行列を示す。動きのない画像xは不明なので、xの代わりに転換された事前スキャンデータxを使用することにより、動きパラメータθに関して、上記の問題が解決される。
【0084】
この方法の厄介な問題は、解剖学的スキャンの位相の正確な予測である。破損したプロファイルの検出はk空間で実行されるので、複雑なデータが必要である。この問題に対処するための、いくつかの手法が可能である。
【0085】
軽微な動きアーチファクトの場合、取得された、動きで破損したデータの位相を、転換された事前スキャン振幅データに単純に適用することができる。破損したプロファイルは、引き続き検出することができる。
【0086】
取得された、動きで破損したデータの位相における動きアーチファクトは、動きで破損したデータを事前スキャン振幅データと結合する前に補正される。軽微なアーチファクトの場合は、位相の単純な多項式フィットで十分な可能性がある。より深刻なアーチファクトの場合、専用の画像間ネットワークが、非常に正確なアーチファクトのない位相画像を生成することが判明している。
【0087】
の位相マップ
【数2】
は、結合された最小化問題
【数3】
を解くことによって、動きパラメータθと同時に推定することができ、結合された最小化問題は、パラメータθの成分がほとんどない場合、例えば剛体運動の場合には、反復的に解くことができる。
【数4】
は、動きで破損した画像の位相で初期化することができる。
【0088】
本発明の実現可能性を実証するために、志願者から得られた2D高解像度脳データを使用して、POC実験を実施した。結果を、図6に示している。
【0089】
図6は、動き補正の有効性を実証するためのシミュレーションで使用された画像を示している。画像600は、高解像度の2次元脳スキャンを示している。画像602は、4分の1にダウンサンプリングされた、600と同じ画像である。画像604は、画像600と同じ解像度の画像であるが、超解像度ニューラルネットワークを用いて画像602をアップサンプリングすることにより、構築されている。画像606は、単一ショットで、平行移動に起因するエラーを含む、動きで破損した画像を示している。画像608は、動きで破損したデータとk空間における超解像度ニューラルネットワークの出力との差を示しており、ここで、明るい垂直線は、動きで破損したショットに相当する。画像610は、差分画像608に対して、垂直方向にガウスフィルタを適用した結果を示している。画像612は、単一ショットで、回転に起因するエラーを含む、動きで破損した画像を示している。画像614は、動きで破損したデータとk空間における超解像度ニューラルネットワークの出力との差を示しており、ここで、明るい垂直線は、動きで破損したショットに相当する。画像616は、差分画像614に対して、垂直方向にガウスフィルタを適用した結果を示している。
【0090】
高解像度入力データ600は、最初に、4分の1にダウンサンプリングされた(画像602)。この低解像度の「事前スキャン」画像xは、次いで、入力データの推定値を得るために、自然画像で訓練された専用の超解像度ネットワークを使ってアップサンプリングされた(
【数5】
、604)。動き検出手法の感度を試験するために、エコートレイン数(echo train length)が28個のTSE読出しを想定し、単一ショットを、平行移動2ピクセル分(1.4mmに相当)608だけ破損した。アップサンプリングされた事前スキャンと、フーリエ領域における動きで破損したデータとを差し引くと、破損したプロファイル610に相当する垂直線が明確に示される。これらの破損したプロファイルの視認性を高めるために、ガウスフィルタを、読出し方向612に適用した。2°回転の場合の対応する結果を、下の行に示している(画像612から616)。
【0091】
説明したシステム及び方法の設計及び適用に関して、追加の特徴を考慮することができる。
【0092】
SENSE基準スキャンを使用する代わりに、分解能はより低いが解剖学的スキャンと同じコントラストを生成する、専用の高速事前スキャンを使用する。このようにして、コントラスト転換ステップを省いて、場合によっては関連するエラーを低減する、すなわち、非常に弱い動きに対する方法の感度を高める。
【0093】
検査の開始時に、単一の低解像度磁気共鳴フィンガプリンティング(MRF)による事前スキャンを実行することができる。次いで、得られた定量的な組織パラメータマップ(水素原子核密度、T1、T2、~)を使用して、その後のすべての解剖学的スキャンの低解像度推定値を得ることができる。やはりこのシナリオでも、図5のコントラスト転換ステップを省くことができる。
【0094】
本発明について、図面及び前述の説明で例示し、詳細に説明してきたが、かかる例示及び説明は、例示的又は代表的で限定的ではないと考えられるべきである。本発明は、開示している実施形態に限定されるものではない。
【0095】
開示している実施形態に対する他の変形形態は、特許請求の範囲に記載された発明を実践する上で、図面、開示、及び添付の特許請求の範囲を研究することにより、当業者が理解し、達成することができる。特許請求の範囲で、「有する」という単語は、他の要素も、他のステップも排除するものではなく、また単数形の要素は、複数を除外するものではない。単一のプロセッサ又は他のユニットが、特許請求の範囲に列挙された複数の項目の機能を果たす場合がある。特定の手段が相互に異なる従属請求項に列挙されているという単なる事実は、これらの手段の組合せが有利に使用できないことを示すものではない。コンピュータプログラムは、他のハードウェアと一体に、又は他のハードウェアの一部として供給される、光記憶媒体又は固体媒体などの好適な媒体に記憶/分散されてもよく、また、インターネット又は他の有線若しくは無線の電気通信システムなどを介して、他の形態で分散されてもよい。特許請求の範囲内のどの参照符号も、範囲を限定するものと解釈すべきではない。
【符号の説明】
【0096】
100 医療システム
102 コンピュータ
104 計算システム
106 任意選択のハードウェアインタフェース
108 任意選択のユーザインタフェース
110 メモリ
120 機械実行可能命令
122 アップサンプリングニューラルネットワーク
124 予備的k空間データ
126 予備的磁気共鳴データ
128 臨床的k空間データ
130 アップサンプリングされた磁気共鳴画像
132 動き補正された磁気共鳴画像
200 対象者の関心領域を表す、第1の解像度の、予備的k空間データを受信する
202 予備的磁気共鳴画像を、予備的k空間データから再構成する
204 対象者の関心領域を表す、第2の解像度の、臨床的k空間データを受信する
206 予備的磁気共鳴画像をアップサンプリングニューラルネットワークに入力することに応答して、アップサンプリングされた磁気共鳴画像を受信する
208 アップサンプリングされた磁気共鳴画像及び臨床的k空間データを使用して、動き補正された磁気共鳴画像を提供する
300 医療システム
302 磁気共鳴イメージングシステム
304 磁石
306 磁石のボア
308 イメージングゾーン
309 視野
310 磁場勾配コイル
312 磁場勾配コイルの電源
314 無線周波コイル
316 送受信機
318 対象者
320 対象者支持体
330 予備的パルスシーケンスコマンド
332 臨床的パルスシーケンスコマンド
334 モダリティ転換ニューラルネットワーク
336 シミュレーションされた磁気共鳴画像
400 予備的パルスシーケンスコマンドを用いて、磁気共鳴イメージングシステムを制御することにより、予備的k空間データを取得する。
402 臨床的パルスシーケンスコマンドを用いて、磁気共鳴イメージングシステムを制御することにより、臨床的k空間データを取得する
500 画像再構成アルゴリズム
600 高解像度基準画像
602 ダウンサンプリングされた画像
604 アップサンプリングされた画像
606 シミュレーションされた、動きで破損した画像(平行移動)
608 k空間における動きアーチファクト
610 画像空間における動きアーチファクト
612 動きで破損した画像(回転)
614 k空間における動きアーチファクト
616 画像空間における動きアーチファクト

図1
図2
図3
図4
図5
図6
【国際調査報告】