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▶ ベーリンガー インゲルハイム フェトメディカ ゲーエムベーハーの特許一覧

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-10-23
(54)【発明の名称】免疫原性ゲル組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 39/02 20060101AFI20241016BHJP
   A61K 39/112 20060101ALI20241016BHJP
   A61P 37/04 20060101ALI20241016BHJP
   A61P 31/04 20060101ALI20241016BHJP
   A61K 9/06 20060101ALI20241016BHJP
   A61K 47/36 20060101ALI20241016BHJP
   A61K 47/38 20060101ALI20241016BHJP
   A61K 47/10 20170101ALI20241016BHJP
【FI】
A61K39/02
A61K39/112
A61P37/04
A61P31/04 171
A61K9/06
A61K47/36
A61K47/38
A61K47/10
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024521835
(86)(22)【出願日】2022-10-28
(85)【翻訳文提出日】2024-04-10
(86)【国際出願番号】 IB2022060403
(87)【国際公開番号】W WO2023073640
(87)【国際公開日】2023-05-04
(31)【優先権主張番号】63/263,360
(32)【優先日】2021-11-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】63/264,615
(32)【優先日】2021-11-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】63/266,984
(32)【優先日】2022-01-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TRITON
(71)【出願人】
【識別番号】505258715
【氏名又は名称】ベーリンガー インゲルハイム フェトメディカ ゲーエムベーハー
【氏名又は名称原語表記】Boehringer Ingelheim Vetmedica GmbH
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100119013
【弁理士】
【氏名又は名称】山崎 一夫
(74)【代理人】
【識別番号】100111796
【弁理士】
【氏名又は名称】服部 博信
(74)【代理人】
【識別番号】100123766
【弁理士】
【氏名又は名称】松田 七重
(74)【代理人】
【識別番号】100137626
【弁理士】
【氏名又は名称】田代 玄
(72)【発明者】
【氏名】ハンソン ダニエル ブライアン
(72)【発明者】
【氏名】ネレム ジョエル リー
(72)【発明者】
【氏名】レイテ フェルナンド ロペス レイヴァス
(72)【発明者】
【氏名】ラストヴォルド ジャスティン ハワード
(72)【発明者】
【氏名】スポンハイム アマンダ マリー
【テーマコード(参考)】
4C076
4C085
【Fターム(参考)】
4C076AA09
4C076BB01
4C076CC06
4C076DD38
4C076EE30
4C076EE31
4C076FF17
4C085AA03
4C085BA07
4C085BA24
4C085CC07
4C085EE01
4C085GG08
(57)【要約】
経口投与のための免疫原ゲル組成物及び動物を免疫化する方法であり、方法は、動物病原体の抗原及び経口投与のためのゲル組成物を含む免疫原性ゲル組成物の治療有効量を動物に投与することを含む。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ローソニア・イントラセルラリス(Lawsonia intracellularis)抗原及び/又はサルモネラ属抗原並びに経口投与のために好適なゲル組成物を含む、免疫原性ゲル組成物。
【請求項2】
ローソニア・イントラセルラリス抗原及び/又はサルモネラ属抗原が、全細胞細菌である、請求項1に記載の免疫原性ゲル組成物。
【請求項3】
ローソニア・イントラセルラリス抗原が、改変生ローソニア・イントラセルラリスである、又はローソニア・イントラセルラリス抗原がローソニア・イントラセルラリスの無毒性単離菌若しくは弱毒化ローソニア・イントラセルラリスである、請求項1又は2に記載の免疫原性ゲル組成物。
【請求項4】
サルモネラ属抗原が改変生サルモネラ属である、請求項1に記載の免疫原性ゲル組成物。
【請求項5】
前記サルモネラ属がサルモネラ・コレレスイス(Salmonella Choleraesuis)及び/若しくはサルモネラ・ティフィムリウム(Salmonella Typhimurium)である、並びに/又は
サルモネラ属がサルモネラ・エンテリカ(Salmonella enterica)亜種エンテリカ血清型コレレスイス及び/若しくはサルモネラ・エンテリカ亜種エンテリカ血清型ティフィムリウムである、請求項1又は4に記載の免疫原性ゲル組成物。
【請求項6】
用量あたり約3.0~約9.0TCID50の改変生ローソニア・イントラセルラリスを含む、及び/又は用量あたり約1x105~約1x1010CFUのサルモネラ属を含む、請求項1~5のいずれか1項に記載の免疫原性ゲル組成物。
【請求項7】
粘稠性である、又は少なくとも50mPa・秒若しくは少なくとも50cPの粘度を有する、及び/或いは、香味剤及び/又は着色剤をさらに含む、請求項1~6のいずれか1項に記載の免疫原性ゲル組成物。
【請求項8】
水及び/若しくは接着増強剤及び/若しくはpH調整剤及び/若しくは安定剤を含む、並びに/又は、水、接着増強剤及び安定剤を含む、請求項1~7のいずれか1項に記載の免疫原性ゲル組成物。
【請求項9】
水、マルトデキストリン、セルロース、ゴム及び安定剤を含み、好ましくは安定剤はプロピレングリコールである、並びに/又は水、マルトデキストリン、ヘミセルロース抽出物、アカシアゴム及びプロピレングリコールを含む、並びに/又は、水、マルトデキストリン、ヘミセルロース抽出物、水安定化化合物、アカシアゴム、プロピレングリコール及び人工着色剤を含む、請求項1~8のいずれか1項に記載の免疫原性ゲル組成物。
【請求項10】
獣医学的に許容される担体をさらに含む、及び/又は、ワクチンゲル組成物である、請求項1~9のいずれか1項に記載の免疫原性ゲル組成物。
【請求項11】
動物病原体の抗原及び経口投与のためのゲル組成物を含む免疫原性ゲル組成物の治療有効量を動物に投与することを含む、前記動物を免疫化する方法。
【請求項12】
動物において動物病原体によって生じる臨床徴候を処置するか、又は予防する方法であって、動物病原体の抗原及び経口投与のためのゲル組成物を含む免疫原性ゲル組成物の治療有効量を前記動物に投与することを含む、方法。
【請求項13】
請求項1~10のいずれか1項に記載の免疫原性ゲル組成物の治療有効量を動物に投与することを含む、前記動物を免疫化する方法。
【請求項14】
動物においてローソニア・イントラセルラリス及び/又はサルモネラ属によって生じる臨床徴候を処置するか、又は予防する方法であって、請求項1~10のいずれか1項に記載の免疫原性ゲル組成物の治療有効量を前記動物に投与することを含む、方法。
【請求項15】
同じ種の非免疫化対照群の動物と比較して、動物の腸管における病変を低減させるための方法であって、請求項1~10のいずれか1項に記載の免疫原性ゲル組成物の有効量を前記動物に投与することを含む、方法。
【請求項16】
同じ種の非免疫化対照群の動物と比較して、動物の1日あたりの平均体重増加を増加させる方法であって、請求項1~10のいずれか1項に記載の免疫原性ゲル組成物の有効量を前記動物に投与することを含む、方法。
【請求項17】
動物病原体がブタ類、ウマ若しくはウシ病原体である、及び/又は動物病原体が細菌性ブタ類若しくはウシ病原体である、及び/又は動物病原体が腸疾患原因細菌若しくは粘膜疾患原因細菌である、
請求項11又は12に記載の方法。
【請求項18】
動物病原体の前記抗原が、粘膜若しくは腸活性抗原又は粘膜若しくは腸活性生免疫原性組成物又は粘膜若しくは腸活性生ワクチンである、請求項11、12及び17のいずれか1項に記載の方法。
【請求項19】
動物がブタ類、ウマ又はウシである、請求項11、12、17又は18のいずれか1項に記載の方法。
【請求項20】
動物がブタ、子ブタ、雌ブタ若しくはブタ類である、及び/又は動物が新生仔ブタ若しくは離乳前の子ブタである、請求項13~16のいずれか1項に記載の方法。
【請求項21】
免疫原性ゲル組成物が、生後1日以降、生後3日以降若しくは生後1週間以降若しくは生後2週間以降若しくは生後3週間以降に動物に投与される、又は免疫原性ゲル組成物が6日齢~20日齢の間に動物に投与される、請求項11~20のいずれか1項に記載の方法。
【請求項22】
免疫原性ゲル組成物が、経口及び/又は粘膜経路によって投与される、請求項11~21のいずれか1項に記載の方法。
【請求項23】
前記動物が前記免疫原性ゲル組成物を摂取できるように家畜小屋内で若しくは収容環境で免疫原性ゲル組成物を適用することを含む、及び/又は前記免疫原性ゲル組成物を母動物の下部の輪郭若しくは母動物の乳房に、家畜小屋内のマットに若しくは家畜小屋内のカップ若しくは容器に適用することを含む、
請求項11~22のいずれか1項に記載の方法。
【請求項24】
免疫原性ゲル組成物を母動物に局所的に適用すること、及び生後の動物若しくは離乳前の動物が前記免疫原性ゲル組成物を摂取できるようにすることを含む、並びに/又は、前記免疫原性ゲル組成物を母動物の下部の輪郭に局所的に適用することを含む、又は前記免疫原性ゲル組成物を母動物の少なくとも1個の乳首に局所的に適用することを含む、請求項11~23のいずれか1項に記載の方法。
【請求項25】
母動物が雌ブタである、及び/又は生後の動物が生後の子ブタである、及び/又は離乳前の動物が離乳前の子ブタである、請求項23又は24に記載の方法。
【請求項26】
免疫原性ゲル組成物がワクチンゲル組成物である、及び/又は免疫原性ゲル組成物が獣医学的に許容される担体をさらに含む、請求項11~25のいずれか1項に記載の方法。
【請求項27】
ゲル組成物が請求項7~10のいずれか1項に記載のゲル組成物である、請求項11~26のいずれか1項に記載の方法。
【請求項28】
請求項1~10のいずれか1項に記載のゲル組成物を含むマット。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
ローソニア(L.)イントラセルラリス(Lawsonia intracellularis)、ブタ増殖性腸炎(「PPE」)の原因因子は:ウサギ、フェレット、ハムスター、キツネ、ウマ並びにダチョウ及びエミューなど多様な他の動物を含む、実質的にすべての動物に影響を与える。L.イントラセルラリスは、ブタ類(swine)において全世界で最も流行性の腸内病原体であり、世界中でブタ類の生産に顕著な損失を生じている。
L.イントラセルラリスワクチンは、合衆国及びヨーロッパ(商標Enterisol(登録商標)Ileitis)において使用について承認されており、WO96/39629 A1及びWO2005/011731 A1に記載された生弱毒化L.イントラセルラリス単離菌に基づいている。
L.イントラセルラリス死菌ワクチンは、WO2009144088 A2、WO97/20050 A1及びWO2002/26250 A2などにおいて同様に記載された。
サルモネラ・エンテリカ(Salmonella enterica)亜種エンテリカ血清型コレレスイス(SC)及びサルモネラ・エンテリカ亜種エンテリカ血清型ティフィムリウム(ST)は、ブタ類における主要な病原体として同定された。STは、生育期又は仕上げ期のブタ(pig)における腸炎及び無症候性の生産量低減の主要な原因であり、環境的及び屠殺体の汚染の原因になる。人獣共通感染能のために、ヒトのサルモネラ症例の低減を最終的な目的として、屠殺体汚染を低減することを試みるSTに対する介入プログラムが、世界的に確立された。
【0002】
サルモネラ感染は、伝統的にはSCワクチン、例えば、ENTERISOL SC-54(登録商標)サルモネラ・コレレスイス(Salmonella Choleraesuis)ワクチン無毒性生培養物(Boehringer Ingelheim)を使用して処置されてきた。この製品は、両方とも本明細書に参照により組み込まれるUS5,436,001及びUS5,580,557に記載されている。
サルモネラ・ティフィムリウム(Salmonella Typhimurium)単離菌は、ドイツのImpfstoffwerk Dessau-Tornau(IDT)のサルモネラ・ティフィムリウム421/125を含む。この単離菌は、Ceva(Ceva Sante Animale)によって市販されるSALMOPORC、生サルモネラワクチンの活性成分として使用される。本発明の好ましいSTは、両方とも参照により組み込まれるDE2843295及びその同等US3,856,935によって記載されている。
さらに、サルモネラ・コレレスイス及びサルモネラ・ティフィムリウムの両方を含む、生サルモネラ・コレレスイス-ティフィムリウムワクチン(Enterisol(登録商標)Salmonella T/C)がある。
【0003】
生ローソニア・イントラセルラリスワクチン(Enterisol(登録商標)Ileitisなど)及び生サルモネラワクチン(ENTERISOL SC-54(登録商標)など)の両方は、経口水薬によって、又は飲料水によって経口で与えられる。
しかし、伝統的な経口水薬投与は、人件費が高く、ブタに対しストレスが多い、個別のブタの取り扱いを必要とする。
飲料水による投与を使用すると、まだ水を飲まない子ブタはワクチン接種されず、飲料水を介したワクチン接種は離乳前は不可能である。さらに、飲料水による投与は、多くのステップを含む。
しかし、一般に、早期のワクチン接種が動物を効率的に保護するために必要である。細菌性生ワクチンに関して、抗生物質は、前記細菌性生ワクチンの有効性を干渉する可能性がある。したがって、出生後できるだけ早く動物にワクチン接種し、哺乳期間中の投薬されていない時期の動物にワクチン接種すること(大部分のブタが抗菌薬を受けていない時期のワクチン接種)は有益であろう。
【0004】
さらに、米国養ブタ業界は、飼育場及び処理プラントに悪影響を与える深刻な労働力不足に悩まされている(https://nppc.org/issues/issue/agriculture-labor-issues/を参照されたい)。
したがって、個別の動物の取り扱いが低減され、労働力が低減され、動物に対するストレスが低減される、早期でさらに効率的なワクチン接種方法が必要である。
【発明の概要】
【0005】
本発明の説明
本発明の態様が記載される前に、本明細書において及び添付の特許請求の範囲において使用される場合、単数形「a」、「an」及び「the」は、文脈がそうでないと明らかに記す場合を除いて、複数の参照物を含むことに留意されたい。したがって、例えば、「1種の(an)抗原」への言及は複数の抗原への言及を含み、「ウイルス」への言及は、1種又は複数のウイルス及び当業者に周知のその等価物への言及であるなど。他に定義されない限り、本明細書において使用するすべての技術的及び科学的用語は、本発明が属する分野の当業者によって一般に理解されるのと同じ意味を有する。本明細書に記載されるものと同様の又は等価のあらゆる方法及び材料は、本発明の実行又は試験において使用され得るが、好ましい方法、デバイス及び材料がここに記載される。本明細書において述べられるすべての刊行物は、本発明に関連して使用され得る、刊行物において報告された細胞系、ベクター及び方法を記載し、開示する目的のために参照により本明細書に組み込まれる。本明細書のいかなる事柄も、先行発明の理由により、本発明がそのような開示に先行する権利を与えられないことの承認として解釈されない。
【0006】
本発明は、先行技術に内在する課題を解決し、当技術分野に確かな進歩を提供する。一般に、本発明は、ローソニア・イントラセルラリス抗原及び/又はサルモネラ属抗原並びに経口投与のために好適なゲル組成物を含む免疫原性ゲル組成物を提供する。
有利には、本明細書において提供される実験データは、動物がワクチンゲル組成物を摂取したことを開示する。生ローソニア・イントラセルラリス及びサルモネラゲルワクチンの取り込みは、従来の経口水薬適用と比較してさらに優れていた。さらに、ワクチンゲル組成物は、従来の適用方法と同様に効率的であった。
しかし、有利には動物は、投薬されていない時期(哺乳期間中)に、個別のブタの取り扱いがないか又は低減され、動物に対するストレスが低減されて早期にワクチン接種された。
用語「ゲル」は、当業者に十分周知である。さらに、用語「ゲル」は、下にさらに定義される。さらに、好適なゲルは、当業者に周知であり、商業的に入手できる、例えばUnderline(登録商標)ゲル(Animal Science Products、Nacogdoches、TX)。
用語「免疫原性組成物」は、免疫原性組成物が投与された宿主において免疫学的応答を誘発する少なくとも1種の抗原を含む組成物を指す。そのような免疫学的応答は、本発明の免疫原性組成物に対する細胞性及び/又は抗体媒介性免疫応答であり得る。好ましくは、免疫原性組成物は、動物病原体感染の1種又は複数種の臨床徴候に対する免疫応答を誘導し、より好ましくは、防御免疫を付与する。宿主は「動物」とも記載される。
【0007】
通常、「免疫学的応答」は、これだけに限らないが、以下の効果:本発明の免疫原性組成物に含まれる1種又は複数種の抗原に特異的に方向付けられた抗体、B細胞、ヘルパーT細胞、サプレッサーT細胞及び/又は細胞傷害性T細胞及び/又はガンマデルタT細胞の産生又は活性化の1種又は複数種を含む。好ましくは、宿主は、防御免疫学的応答又は治療的な応答のいずれかを呈する。
【0008】
「防御免疫学的応答」又は「防御免疫」は、感染した宿主によって通常示される臨床徴候の低減又は欠如、さらに短い回復時間及び/或いは感染した宿主の感染性の期間の減少又は組織若しくは体液中若しくは排出物のさらに低い病原体力価のいずれかによって実証される。
新規感染への抵抗性が増強される、及び/又は疾患の臨床的重症度が低減されるように宿主が防御免疫学的応答を呈する場合、免疫原性組成物は「ワクチン」と記載される。
本明細書において使用される場合「抗原」は、これだけに限らないが、宿主において、抗原又はその免疫学的に活性な構成成分を含む目的の免疫原性組成物又はワクチンへの免疫学的応答を誘発する構成成分を指す。抗原又は免疫学的に活性な構成成分は、微生物全体(不活性化された若しくは改変された生形態において)又はそのあらゆる断片若しくは一部分であってよく、宿主に投与された場合に、宿主において免疫学的応答を誘発できる。抗原は、その元の形態で、又は改変生ワクチン(MLV)と称される、弱毒化された生物としてのいずれかで完全な生きている生物であってよく、又は含んでもよい。抗原は、前記生物の適切なエレメント(サブユニットワクチン)をさらに含んでよく、それによりこれらのエレメントは、生物全体若しくはそのような生物の増殖培養物を破壊すること、及び所望の構造を生じる続く精製ステップによって、又は限定されないが細菌、昆虫、哺乳動物若しくは他の種などの好適な系の適切な操作によって誘導される合成工程、及び任意で続く単離及び精製手順によって、又は好適な医薬組成物を使用する遺伝材料の直接組込みによるワクチンを必要とする動物での前記合成工程の誘導(ポリヌクレオチドワクチン接種)によってのいずれかで生成される。抗原は、死菌ワクチン(KV)と呼ばれる適切な方法によって不活性化された生物全体を含んでよい。生物が細菌である場合、死菌ワクチンはバクテリンと呼ばれる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の一態様では、免疫原性ゲル組成物は、ローソニア・イントラセルラリス抗原及び経口投与のために好適なゲル組成物を含む。
本発明の一態様では、免疫原性ゲル組成物は、サルモネラ属抗原及び経口投与のために好適なゲル組成物を含む。
本発明の一態様では、免疫原性ゲル組成物は、ローソニア・イントラセルラリス抗原及びサルモネラ属抗原及び経口投与のために好適なゲル組成物を含む。
有利には、本明細書において提供される実験データは、ローソニア・イントラセルラリス抗原及びサルモネラ抗原は、ゲル組成物において投与される場合に組み合わされ得る(干渉(interreference)は観察されなかった)ことを示す。
本発明の一態様では、ローソニア・イントラセルラリス抗原及び/又はサルモネラ属抗原は、全細胞細菌(whole cell bacteria)である。
【0010】
ローソニア抗原
用語「ローソニア・イントラセルラリス」は、当業者に周知である。ローソニア・イントラセルラリスは、ブタ増殖性腸疾患(「PPE」)の原因因子である。
本発明の一態様では、ローソニア・イントラセルラリス抗原は、ローソニア・イントラセルラリス死菌又は改変生ローソニア・イントラセルラリスである。
本発明の一態様では、ローソニア・イントラセルラリス死菌は、ローソニア・イントラセルラリス死菌全細胞である。
L.イントラセルラリス死菌ワクチンは、WO2009144088 A2、WO97/20050 A1及びWO2002/26250 A2に記載された。
【0011】
あらゆる従来の不活性化法は、本発明の目的のために使用され得る。したがって、不活性化は、当業者に周知である化学的及び/又は物理的処置によって実施され得る。好ましい不活性化方法は、バイナリーエチレンイミン(BEI)へと環化された2-ブロモエチレンアミンヒドロブロミド(BEA)の溶液の添加を含む、環化バイナリーエチレンイミン(BEI)の添加を含む。好ましいさらなる化学的不活性化剤は、これだけに限らないがTriton X-100、デオキシコール酸ナトリウム、セチルトリメチルアンモニウムブロミド、β-プロピオラクトン、チメロサール、フェノール及びホルムアルデヒド(ホルマリン)を含む。しかし、不活性化は、中和ステップも含み得る。好ましい中和剤として、これだけに限らないがチオ硫酸ナトリウム、亜硫酸水素ナトリウムなどが挙げられる。
【0012】
好ましいホルマリン不活性化条件として、約0.02%(v/v)~2.0%(v/v)、より好ましくは約0.1%(v/v)~1.0%(v/v)、またさらにより好ましくは約0.15%(v/v)~0.8%(v/v)、さらにより好ましくは約0.16%(v/v)~0.6%(v/v)、最も好ましくは約0.2%(v/v)~0.4%(v/v)の間のホルマリン濃度が挙げられる。インキュベーション時間は、病原体の抵抗性に依存する。一般に、不活性化工程は、好適な培養系において病原体の増殖が検出できなくなるまで実施される。
好ましくは、不活化ローソニア・イントラセルラリスは、本明細書の上記の濃度を好ましくは使用して、ホルマリン不活化される。
好ましいβ-プロピオラクトン不活性化条件として、約0.005%(v/v)~4.0%(v/v)、より好ましくは約0.05%(v/v)~2.0%(v/v)の間のβ-プロピオラクトン濃度が挙げられる。インキュベーション時間は、病原体の抵抗性に依存する。一般に、不活性化工程は、好適な培養系において病原体の増殖が検出できなくなるまで実施される。
【0013】
好ましくは、不活性化ローソニア・イントラセルラリスは、β-プロピオラクトンによって、好ましくは本明細書の上記の濃度を使用して不活性化される。
好ましくは、免疫原性組成物は、用量あたり細胞102~1014個のローソニア・イントラセルラリス死菌、より好ましくは用量あたり細胞104~1012個のローソニア・イントラセルラリス死菌、さらにより好ましくは用量あたり細胞106~1010個のローソニア・イントラセルラリス死菌を含む。
好ましくは、免疫原性組成物は、用量あたり25~2000μgの量のローソニア・イントラセルラリス死菌、より好ましくは用量あたり50~1000μgの量のローソニア・イントラセルラリス死菌、さらにより好ましくは用量あたり100~800μgの量のローソニア・イントラセルラリス死菌を含む。
本発明の一態様では、免疫原性ゲル組成物は、用量あたり細胞106~1010個のローソニア・イントラセルラリス死菌又は用量あたり100~800μgの量のローソニア・イントラセルラリス死菌を含む。
【0014】
本発明の一態様では、ローソニア・イントラセルラリス抗原は、改変生ローソニア・イントラセルラリスである。
本発明の一態様では、ローソニア・イントラセルラリス抗原は、ローソニア・イントラセルラリスの無毒性単離菌又は弱毒化ローソニア・イントラセルラリスである。
【0015】
用語「弱毒化された」は、病原性が低減した病原体を指す。本発明では、「弱毒化された」は「無毒性」又は「改変生」と同義である。本発明では、弱毒化された動物病原体(ローソニア・イントラセルラリス又はサルモネラ属など)は、動物病原体感染(ローソニア・イントラセルラリス又はサルモネラ属など)の臨床徴候を生じないが、標的動物において免疫応答を誘導することができるように病原性が低減されたものであり、弱毒化されていない動物病原体に感染し、弱毒化された細菌を受けていない「対照群」の動物と比較して、弱毒化された動物病原体に感染した動物において臨床徴候が発生頻度又は重症度において低減されていることも意味する場合がある。この文脈では、用語「低減する/低減された」は、上に定義された対照群と比較して少なくとも10%、好ましくは25%、さらにより好ましくは50%、またさらにより好ましくは60%、さらにより好ましくは70%、またさらにより好ましくは80%、またさらにより好ましくは90%、さらにより好ましくは95%、最も好ましくは100%の低減を意味する。したがって、弱毒化された、無毒性動物病原体株又は単離菌は、改変生動物病原体を含む免疫原性組成物への組込みのために好適であるものである。
【0016】
L.イントラセルラリスの病原性及び非病原性の弱毒化された細菌株は、当業者に十分周知である。例えばWO96/39629及びWO05/011731は、L.イントラセルラリスの非病原性の弱毒化された株及びその調製のための方法を記載する。
特にWO96/39629は、L.イントラセルラリスの弱毒化された細菌株の調製、及び寄託株ATCC55783を記載する。
WO05/011731は、L.イントラセルラリスの弱毒化された細菌株の調製、及び寄託株PTA-4926を記載する。
本発明の一態様では、無毒性単離菌はPTA-4926又はATCC55783である。
本発明の一態様では、ローソニア・イントラセルラリス抗原又は無毒性ローソニア・イントラセルラリス単離菌又は弱毒化ローソニア・イントラセルラリスは、Enterisol(登録商標)Ileitis中の抗原又は単離菌である。一般に、Enterisol(登録商標)Ileitisは、3週齢以降のブタに投与される。
【0017】
易感染性動物に投与される所要量は、好ましくは約3.0TCID50(50%組織培養感染量エンドポイント)/用量~約9.0TCID50/用量、より好ましくは約4.0TCID50/用量~約7.0TCID50/用量である。
本発明の一態様では、免疫原性ゲル組成物は、用量あたり約3.0~約9.0TCID50の改変生ローソニア・イントラセルラリスを含む。
本発明の一態様では、免疫原性ゲル組成物は、用量あたり約4.0~約7.0TCID50の改変生ローソニア・イントラセルラリスを含む。
本明細書において使用される場合、用語「用量あたり」は、これが動物あたりの用量であることを意味する。しかし、免疫原性ゲル組成物が家畜小屋内若しくは収容環境に居る数頭の動物への投与のためである場合、免疫原性ゲル組成物は、数用量を含む。したがって、家畜小屋にワクチン接種される、例えば10頭の動物が居る場合、免疫原性組成物は10用量を含む必要がある。好ましくは、免疫原性ゲル組成物は、すべての動物が適切な用量を受けることを確実にするように11、12又は15又は20用量などのさらに多い数の用量を含むであろう。
【0018】
サルモネラ抗原
用語「サルモネラ属」は、当業者に周知である。サルモネラ・コレレスイス(SC)及びサルモネラ・エンテリカ血清型(ser)ティフィムリウム(ST)は、生育期又は仕上げ期のブタにおける腸炎及び無症候性の生産量低減の主要な原因として同定された。ブタ類における臨床的なサルモネラ症は、S.コレレスイスによって生じる敗血症とサルモネラ・ティフィムリウムに関連する腸炎とに大きく分けられる。
本発明の一態様では、サルモネラ属抗原はサルモネラ属死菌又は改変生サルモネラ属である。
本発明の一態様では、前記サルモネラ属はサルモネラ・コレレスイス及び/又はサルモネラ・ティフィムリウムである。
本発明の一態様では、前記サルモネラ属は、サルモネラ・エンテリカ亜種エンテリカ血清型コレレスイス及び/又はサルモネラ・エンテリカ亜種エンテリカ血清型ティフィムリウムである。
【0019】
本発明の一態様では、サルモネラ属死菌はサルモネラ属死菌全細胞である。
従来の不活性化方法は、上に記載された。
本発明の一態様では、サルモネラ属はサルモネラ属死菌全細胞である。
本発明の一態様では、免疫原性ゲル組成物は、用量あたり細胞106~1010個のサルモネラ属死菌又は用量あたり100~800μgの量のサルモネラ属死菌を含む。
本発明の一態様では、サルモネラ属抗原は改変生サルモネラ属である。
本発明の一態様では、サルモネラ属抗原はサルモネラ属の無毒性単離菌又は弱毒化されたサルモネラ属である。
用語「弱毒化された」は、上に定義された。
【0020】
サルモネラ・コレレスイス及びサルモネラ・ティフィムリウムの非病原性の弱毒化された細菌株は、当業者に十分周知である。
サルモネラ・コレレスイス株は、US5,436,001及びUS5,580,557に記載されている。さらに、サルモネラ・コレレスイスの無毒性生培養物(ENTERISOL SC-54(登録商標)、Boehringer Ingelheim Vetmedica、Inc.)は、商業的に入手できる。
サルモネラ・ティフィムリウム単離菌は、ドイツのImpfstoffwerk Dessau-Tornau(IDT)のサルモネラ・ティフィムリウム421/125を含む。この単離菌は、ヨーロッパにおいてIDT Biologika GmbHによって市販されるSALMOPORC、生サルモネラワクチンの活性成分として使用される。本発明の好ましいSTは、両方とも参照により組み込まれるDE2843295及びその同等US3,856,935によって記載される。
さらに、サルモネラ・コレレスイス及びサルモネラ・ティフィムリウムの両方を含み商業的に入手できる生サルモネラ・コレレスイス-ティフィムリウムワクチン(Enterisol(登録商標)Salmonella T/C)がある。
【0021】
本発明の一態様では、サルモネラ属抗原又は無毒性サルモネラ・コレレスイス及び/若しくはサルモネラ・ティフィムリウム単離菌は、ENTERISOL SC-54(登録商標)及び/又はSALMOPORC及び/又はEnterisol(登録商標)Salmonella T/Cにおける抗原又は単離菌である。
本発明の一態様では、免疫原性ゲル組成物は、用量あたり約1x103~約1x1012CFUのサルモネラ属を含む。
本発明の一態様では、免疫原性ゲル組成物は、用量あたり約1x105~約1x1010CFUのサルモネラ属を含む。
ゲル組成物
本発明の一態様では、ゲル組成物は粘稠性である。
本発明の一部の態様では、ゲル組成物は、少なくとも約10、20、30、40、50、60、70、80、90、100、150、200、250、300、350、400、450、500、550、600、650、700、750、800cP(mPa・秒)又はこれより高い粘度を有する。
【0022】
本発明の一態様では、ゲル組成物は、少なくとも150mPa・秒(少なくとも150cP)の粘度を有する。
本発明の一態様では、ゲル組成物は、少なくとも100mPa・秒(少なくとも100cP)の粘度を有する。
本発明の一態様では、ゲル組成物は、少なくとも50mPa・秒又は少なくとも50cPの粘度を有する。本発明の別の態様では、ゲル組成物は、50cP(50mPa・秒)~150cP(150mPa・秒)の間の粘度を有する。本発明のさらに別の態様では、ゲル組成物は、50cP(50mPa・秒)~350cP(350mPa・秒)の粘度を有する。
【0023】
本発明の一態様では、ゲル組成物は、少なくとも25mPa・秒又は少なくとも25cPの粘度を有する。本発明の別の態様では、ゲル組成物は、25cP(25mPa・秒)~150cP(150mPa・秒)の間の粘度を有する。本発明のさらに別の態様では、ゲル組成物は、25cP(25mPa・秒)~350cP(350mPa・秒)の間の粘度を有する。
粘度の測定単位は、Pa・秒(パスカル秒)又はmPa・秒(ミリパスカル秒)である。従来の測定単位は、cP(センチポアズ)である。1センチポアズは、1ミリパスカル秒(1cP=10-3Pa・秒=1mPa・秒)である。
本発明の一態様では、ゲル組成物は、水及び/又は接着増強剤及び/又はpH調整剤及び/又は安定剤を含む。
本発明の一部の態様では、接着増強剤を含む組成物は粘稠性である。
【0024】
一態様では、接着増強剤はポリビニルピロリドンである。他の態様では、接着増強剤は、直鎖若しくは分枝であり、架橋されており、生分解性ではなく、キサンタン、グアー、ペクチン、ガム、グアー誘導体、キトサン、デキストラン、マルトデキストリン、カラゲナン、デンプン、ポリエチレングリコール、アルブミン、セルロースエーテル、ヒアルロン酸、カルボキシメチルヒドロキシエチルセルロース、ヒロドキシプロピルセルロース、ゼラチン、ビニルアセテート、ポリビニルピロリドン-ビニルアセテートコポリマー、ポリビニルアルコール、ポリリン酸エステル、N-(2-ヒドロキシプロピル(hydroxyptopyl))メタクリルアミド(HPMA)コポリマー、ポリアクリル酸、ポリアクリルアミド、ポリオキサゾリン、ジビニルエーテル無水マレイン酸、ポリホスファゼン、前述のいずれかの誘導体及び置換物及び塩を含んで、これらの組合せからなる群から選択される、親水性ポリマー又はコポリマーである。別の態様では、接着増強剤は、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、ヒロドキシプロピルセルロース(HPC)、ヒドロキシエチルセルロース(HEC)及びカルボキシメチルセルロース(CMC)並びにこれらの塩の1種又は複数種を含むセルロースである。
【0025】
一部の態様では、接着増強剤は、最終濃度(w/v)約0.1%、0.2%、03%、0.4%、0.5%、0.6%、0.7%、0.8%、0.9%、1.0%、1.1%、1.2%、1.3%、1.4%、1.5%、1.6%、1.7%、1.8%、1.9%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%、10%、11%、12%、13%、14%、15%、16%、17%、18%、19%、20%、21%、22%、23%、24%、25%、26%、27%、28%、29%、30%、31%、32%、33%、34%、35%、36%、37%、38%、39%、40%、41%、42%、43%、44%、45%、46%、47%、48%若しくは49%又は、これらの間のあらゆる範囲、例えば、約0.5%~15%w/v、約0.5%~10%w/v、約0.5%~5%w/v、約0.5%~2%w/vである。
一態様では、接着増強剤は、最終濃度(w/v)約0.5%~15%w/vである。
【0026】
一部の態様では、接着増強剤は、直鎖若しくは分枝であり、架橋されている、及び/又は生分解性ではない親水性ポリマー又はコポリマーである。好適な接着増強剤として、誘導体及び置換物を含む、ポリビニルピロリドン、ポリビニルピロリドンビニルアセテートコポリマー、ワックス、ミネラルオイル、プラスチゲル(ミネラルオイルとポリエチレンとの混合物)、ワセリン、白色ワセリン、セラック、ベルサゲル(versagel)(流動パラフィン、ブテンエチレン/スチレン水素化コポリマーの混合物)、ポリエチレンワックス、微結晶性ワックス、ポリイソブテン、ポリビニルピロリドンビニルアセテートコポリマー及び不溶性ポリアクリレートコポリマー、キサンタン、グアー、ペクチン、ガム、グアー誘導体、キトサン、デキストラン、マルトデキストリン、カラゲナン、デンプン、ポリエチレングリコール、アルブミン、セルロースエーテル、ヒアルロン酸、カルボキシメチルヒドロキシエチルセルロース、ヒロドキシプロピルセルロース、ゼラチン、ビニルアセテート、ポリビニルピロリドン-ビニルアセテートコポリマー、ポリビニルアルコール、ポリリン酸エステル、N-(2-ヒドロキシプロピル)メタクリルアミド(HPMA)コポリマー、ポリアクリル酸、ポリアクリルアミド、ポリオキサゾリン、ジビニルエーテル無水マレイン酸、ポリホスファゼン及びこれらの組合せが挙げられる。
【0027】
好ましくは、接着増強剤は、マルトデキストリン及び/又はセルロース及び/又はデンプン及び/又はガムである。
一態様では、接着増強剤はデンプン又はセルロースをベースにする。
「pH調整剤」は、組成物のpHを所望の値にするために典型的には添加される。望ましいpH値は、約6~約8の間である。したがって記載される本発明の組成物は、約6~約8の間又は約6.5~約7.5の間の範囲のpH値を有するように製剤化され得る。好適なpH調整剤として、これだけに限らないが、アジピン酸、グリシン、クエン酸、水酸化カルシウム、メタケイ酸アルミン酸マグネシウム、リン酸二ナトリウム、リン酸ナトリウム、リン酸カリウム、塩化カリウム、クエン酸ナトリウム、乳酸カルシウム、コハク酸ナトリウム、グルタミン酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム及び炭酸水素カリウムの1種又は複数種並びにこれらの組合せが挙げられる。
【0028】
本明細書において使用される場合、「安定剤」は、組成物中の活性剤を安定化することを助ける薬剤である。安定剤として、これだけに限らないが、還元剤が挙げられる。使用され得る安定剤として、チオ硫酸ナトリウム、二亜硫酸ナトリウム、亜硫酸水素ナトリウム、亜硫酸ナトリウム、二酸化硫黄、亜硫酸水素アンモニウム及びチオ硫酸アンモニウムが挙げられる。チオ硫酸ナトリウムは、高い中和能力を有し、安全で腐食性でないと考えられることから好ましい。
用語「安定剤」は、キレート剤も包含する。キレート剤は、記載される本発明の組成物に、保存剤又は保存系を増強するために添加されてもよい。好ましいキレート剤は、例えば、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、EDTA誘導体又はこれらのあらゆる組合せなどの穏やかな薬剤である。
本組成物の組成物における使用のために好適な安定剤又は保存剤として、非限定的に、アルカノール、EDTA(エチレンジアミン四酢酸)二ナトリウム、EDTA塩、EDTA脂肪酸コンジュゲート、イソチアゾリノン、パラベン、例えばメチルパラベン及びプロピルパラベン、プロピレングリコール、ソルベート、ジアゾリジニル(diazolindinyl)尿素などの尿素誘導体の1種若しくは複数種、又はこれらのあらゆる組合せが挙げられる。
本発明の一態様では、ゲル組成物は、水、接着増強剤及び安定剤を含む。
本発明の一態様では、ゲル組成物は、水、接着増強剤及び安定剤及びpH調整剤を含む。
本発明の一態様では、ゲル組成物は、香味剤及び/又は着色剤をさらに含む。
【0029】
用語「着色剤」は、組成物が存在し、均一に適用され、適切に付着したことの視覚的合図を子ブタに、及び/又は視覚的確認を動物管理者に提供するために、記載される本発明の組成物において使用され得る。着色剤は、当業者に十分周知であり、ピグメント若しくは色素又はこれらの組合せを含む。好適な着色剤として、これだけに限らないが、FD&C着色剤、例えばFD&C青色1号、FD&C青色2号、FD&C緑色3号、オレンジB、シトラスFD&C赤色2号、FD&C赤色2号、FD&C赤色3号、FD&C赤色40号、FD&C黄色5号及びFD&C黄色6号が挙げられる。
【0030】
本明細書において使用される場合、用語「香味剤」は、動物又はブタ類において嗜好性及び/又は食味を改善する1種若しくは複数種の化合物又は混合物を指す。香味剤は、当業者に十分周知である。香味剤として、これだけに限らないが、栄養性及び非栄養性甘味剤、風味添加剤、副産物及び代替成分が挙げられる。例示の方法による、好適な風味材料として、これだけに限らないが、ショ糖、グルコース、サッカリンナトリウム、シクラミン酸ナトリウム、キシリトール、ペリラルチン(perillartien)、スクラロース、D-トリプトファン、アスパルルテーム、ジヒドロカルコンなど、人工果実香味料(例えば、イチゴ香味料)、血漿タンパク質(例えば、スプレー乾燥血漿タンパク質)、チーズ及びチーズ風香味料、乾燥ミルク、チョコレート及びチョコレート副産物が挙げられる。
【0031】
本発明の一態様では、ゲル組成物は、水、マルトデキストリン、セルロース、ガム及び安定剤を含み、好ましくは安定剤はプロピレングリコールである。
本発明の一態様では、ゲル組成物は、水、マルトデキストリン、ヘミセルロース抽出物、アカシアゴム及びプロピレングリコールを含む。
本発明の一態様では、ゲル組成物は、水、マルトデキストリン、ヘミセルロース抽出物、水安定化化合物、アカシアゴム、プロピレングリコール及び人工着色剤を含む。
本発明の一態様では、免疫原性ゲル組成物は、獣医学的に許容される担体をさらに含む。
本発明の一態様では、獣医学的に許容される担体は希釈剤である。
「希釈剤」として、水、生理食塩水、ブドウ糖、エタノール、グリセリンなどが挙げられる。等張剤として、塩化ナトリウム、ブドウ糖、マンニトール、ソルビトール及び乳糖がとりわけ挙げられる。安定剤として、アルブミン及びエチレンジアミン四酢酸のアルカリ塩がとりわけ挙げられる。
【0032】
本発明の一態様では、獣医学的に許容される担体は、生理学的緩衝液である。
本発明の一態様では、薬学的に許容される担体はリン酸緩衝生理食塩水である。
好ましくは、免疫原性組成物はショ糖ゼラチン安定剤をさらに含む。
好ましくは、免疫原性組成物は、例えばインターロイキン、インターフェロン又は他のサイトカインなどの1種又は複数種の他の免疫調節剤をさらに含み得る。本発明の文脈において有用なアジュバント及び添加物の量及び濃度は、当業者によって容易に決定され得る。
本発明の一態様では、前記獣医学的に許容される担体は、溶媒、分散媒、コーティング剤、安定化剤、希釈剤、保存剤、抗菌及び抗真菌剤、等張剤、吸着遅延剤、アジュバント、免疫刺激剤並びにこれらの組合せからなる群から選択される。
【0033】
一部の態様では、本発明の免疫原性組成物は、アジュバントを含有する。本明細書において使用される場合、「アジュバント」として、水酸化アルミニウム及びリン酸アルミニウム、サポニン、例えば、Quil A、QS-21(Cambridge Biotech Inc.、Cambridge MA)、GPI-0100(Galenica Pharmaceuticals、Inc.、Birmingham、AL)、油中水乳剤、水中油乳剤、水中油中水乳剤が挙げられる。乳剤は、特に、軽質流動パラフィン油(ヨーロッパ薬局方(Pharmacopea)型);イソプレノイド油、例えばスクアラン又はスクアレン;アルケン、特に、イソブテン又はデセンのオリゴマー化から生じる油;直鎖アルキル基を含有する酸の又はアルコールのエステル、さらに具体的には植物油、オレイン酸エチル、プロピレングリコールジ-(カプリレート/カプレート)、グリセリルトリ-(カプリレート/カプレート)又はプロピレングリコールジオレート;分枝脂肪酸又はアルコールのエステル、特にイソステアリン酸エステル、をベースにし得る。油は、乳液を形成するように乳化剤との組合せで使用される。乳化剤は、好ましくは非イオン性界面活性剤、具体的には、ソルビタン、マンニド(例えば、アンヒドロマンニトールオレート(anhydromannitol oleate))、グリコール、ポリグリセリン、プロピレングリコールと、オレイン酸、イソステアリン酸、リシノール酸又はヒドロキシステアリン酸とのエステル、これはエトキシル化されてもよい、及びポリオキシプロピレン-ポリオキシエチレンコポリマーブロック、特にPluronic製品、特にL121である。Hunter et al., The Theory and Practical Application of Adjuvants (Ed.Stewart-Tull, D. E. S.), JohnWiley and Sons, NY, pp51-94 (1995)及びTodd et al., Vaccine 15:564-570 (1997)を参照されたい。例示的アジュバントは、“Vaccine Design, The Subunit and Adjuvant Approach” edited by M. Powell and M. Newman, Plenum Press, 1995のページ147に記載されたSPT乳液、及び同書のページ183に記載された乳剤MF59である。
【0034】
アジュバントのさらなる例は、アクリル酸又はメタクリル酸のポリマー及び無水マレイン酸とアルケニル誘導体とのコポリマーから選択される化合物である。有利なアジュバント化合物は、架橋された、特に糖又はポリアルコールのポリアルケニルエーテルと架橋されたアクリル酸又はメタクリル酸のポリマーである。これらの化合物は、用語カルボマーによって周知である(Phameuropa Vol. 8, No. 2, June 1996)。当業者は、少なくとも3個、好ましくは8個以下のヒドロキシ基を有し、少なくとも3個のヒドロキシルの水素原子が少なくとも2個の炭素原子を有する不飽和脂肪族ラジカルによって置き換えられたポリヒドロキシ化合物と架橋されたアクリルポリマーを記載する米国特許第2,909,462号も参照することができる。好ましいラジカルは、2~4個の炭素原子、例えばビニル、アリル及び他のエチレン性不飽和の基を含有するものである。不飽和ラジカルは、それ自体がメチルなどの他の置換基を含有し得る。名称Carbopol;(BF Goodrich、Ohio、USA)で販売されている製品は、特に適している。これらは、アリルスクロースと、又はアリルペンタエリスリトールと架橋されている。これらの内、述べられたCarbopol974P、934P及び971Pがある。最も好ましいのは、Carbopol971Pの使用である。無水マレイン酸とアルケニル誘導体とのコポリマーでは、無水マレイン酸とエチレンとのコポリマーである、コポリマーEMA(Monsanto)がある。水へのこれらのポリマーの溶解は、酸性溶液を生じ、それは、免疫原性、免疫学的又はワクチン組成物自体が組み込まれるアジュバント溶液をもたらすように、中和される、好ましくは生理学的pHに中和される。
【0035】
さらに好適なアジュバントとして、これだけに限らないが、RIBIアジュバントシステム(Ribi Inc.)、ブロックコポリマー(CytRx、Atlanta GA)、SAF-M(Chiron、Emeryville CA)、モノホスホリルリピドA、アブリジン脂質-アミンアジュバント、大腸菌(E.coli)由来熱不安定性エンテロトキシン(組換え又は他の方法)、コレラ毒素、IMS 1314若しくはムラミルジペプチド又は天然に存在する若しくは組換えのサイトカイン又はこれらの類似体又は内在性サイトカイン放出の刺激物質がとりわけ挙げられる。
【0036】
アジュバントが、用量あたり約100μg~約10mgの量で、好ましくは用量あたり約100μg~約10mgの量で、より好ましくは用量あたり約500μg~約5mgの量で、さらにより好ましくは用量あたり約750μg~約2.5mgの量で、最も好ましくは用量あたり約1mgの量で添加され得ることは予測される。代替的にアジュバントは、最終産生物の体積により約0.01~50容量%の濃度、好ましくは約2容量%~30容量%の濃度、より好ましくは約5容量%~25容量%の濃度、またさらにより好ましくは約7容量%~22容量%の濃度、最も好ましくは10容量%~20容量%の濃度であり得る。
本発明の一態様では、前記獣医学的に許容される担体は、水酸化アルミニウム、リン酸アルミニウム、サポニン、油中水乳剤、水中油乳剤、水中油中水乳剤、アクリル酸又はメタクリル酸のポリマー、無水マレイン酸とアルケニル誘導体とのコポリマー、RIBIアジュバントシステム、ブロックコポリマー、SAF-M、モノホスホリルリピドA、アブリジン脂質アミン、大腸菌由来熱不安定性エンテロトキシン(組換え又は他の方法)、コレラ毒素、IMS1314、ムラミルジペプチド及びこれらの組合せからなる群から選択されるアジュバントである。
【0037】
本発明の一態様では、前記獣医学的に許容される担体は、水中油中水乳剤又はカルボマーである。
本発明の一態様では、免疫原性ゲル組成物は、ワクチンゲル組成物である。
【0038】
処置方法の請求
さらに、本発明は、動物病原体の抗原及び経口投与のためのゲル組成物を含む免疫原性ゲル組成物の治療有効量を動物に投与することを含む、前記動物を免疫化する方法を提供する。
したがって本発明は、動物を免疫化する方法における使用のための、動物病原体の抗原及び経口投与のためのゲル組成物を含む免疫原性ゲル組成物であって、方法が、前記免疫原性ゲル組成物の治療有効量を前記動物に投与することを含む、免疫原性ゲル組成物を提供する。
【0039】
さらに、本発明は、動物において動物病原体によって生じる臨床徴候を処置するか、又は予防する方法であって、動物病原体の抗原及び経口投与のためのゲル組成物を含む免疫原性ゲル組成物の治療有効量を前記動物に投与することを含む、方法を提供する。
したがって本発明は、動物において動物病原体によって生じる臨床徴候を処置するか、又は予防する方法における使用のための、動物病原体の抗原及び経口投与のためのゲル組成物を含む免疫原性ゲル組成物であって、方法が前記免疫原性ゲル組成物の治療有効量を前記動物に投与することを含む、免疫原性ゲル組成物を提供する。
さらに、本発明は、動物を免疫化する方法を提供し、方法は、本明細書に記載の免疫原性ゲル組成物の治療有効量を前記動物に投与することを含む。
したがって、本発明は、動物を免疫化する方法における使用のための本明細書に記載の免疫原性ゲル組成物であって、方法が、前記免疫原性ゲル組成物の治療有効量を前記動物に投与することを含む、免疫原性ゲル組成物を提供する。
さらに、本発明は、動物においてローソニア・イントラセルラリス及び/又はサルモネラ属によって生じる臨床徴候を処置するか、又は予防する方法であって、本明細書に記載の免疫原性ゲル組成物の治療有効量を前記動物に投与することを含む、方法を提供する。
【0040】
したがって、本発明は、動物においてローソニア・イントラセルラリス及び/又はサルモネラ属によって生じる臨床徴候を処置するか、又は予防する方法における使用のための本明細書に記載の免疫原性ゲル組成物であって、方法が前記免疫原性ゲル組成物の治療有効量を前記動物に投与することを含む、免疫原性ゲル組成物を提供する。
さらに、本発明は、同じ種の非免疫化対照群の動物と比較して、動物の腸管における病変を低減させるための方法であって、本明細書に記載の免疫原性ゲル組成物の有効量を前記動物に投与することを含む、方法を提供する。
したがって、本発明は、同じ種の非免疫化対照群の動物と比較して、動物の腸管における病変を低減させるための方法における使用のための本明細書に記載の免疫原性ゲル組成物であって、方法が、前記免疫原性ゲル組成物の治療有効量を前記動物に投与することを含む、免疫原性ゲル組成物を提供する。
さらに、本発明は、同じ種の非免疫化対照群の動物と比較して、動物の1日あたりの平均体重増加を増加させる方法であって、免疫原性ゲル組成物の有効量を前記動物に投与することを含む、方法を提供する。
したがって、本発明は、動物の1日あたりの平均体重増加を増加させる方法における使用のための本明細書に記載の免疫原性ゲル組成物であって、方法は、前記免疫原性ゲル組成物の治療有効量を前記動物に投与することを含む、免疫原性ゲル組成物を提供する。
【0041】
有利には、本明細書において提供される実験データは、動物がワクチンゲル組成物を摂取したことを開示する。ゲルワクチン組成物の生サルモネラ及びローソニア・イントラセルラリス抗原の取り込みは、経口投与の従来の経口水薬の方法と比較してさらに優れていた。さらに、ワクチンゲル組成物は、従来の適用方法と同様に有効であった。
【0042】
しかし、有利には動物は、投薬されていない時期(哺乳期間中)に、個別のブタの取り扱いがないか又は低減され、労働力が低減され、動物に対するストレスが低減されて早期にワクチン接種された。
用語「予防する」は、それを必要とする又はそのような処置/予防法から利益を得る可能性がある動物又は動物の群れへの本発明の免疫原性ゲル組成物の有効量の投与を一般に含む。用語「処置」は、群れの1頭の動物又は少なくとも一部の動物が当該の動物病原体に既に感染しており、当該の動物が当該の動物病原体感染によって生じたか又はそれに関連する一部の臨床徴候を既に示している場合の、免疫原性組成物の有効量の投与を指す。用語「予防法」は、動物病原体での当該の動物のいかなる感染にも先行する動物への投与、又は少なくとも当該の動物若しくは動物の群れのいずれの動物も当該の動物病原体による感染によって生じるか若しくはそれに関連するいかなる臨床徴候も示していない場合の投与を指す。用語「予防する」及び「処置及び/又は予防法」は、本出願において互換的に使用される。
【0043】
本明細書において使用される場合、用語「有効量」は、組成物の文脈では、動物において感染又は疾患の事象の発生頻度を低減する、又は重症度を軽減する免疫応答の誘導を可能にする免疫原性ゲル組成物の量を意味する。そのような有効量は、集団において特定の動物病原体感染の発生頻度を減らすことができる、又は特定の動物病原体感染の臨床徴候の重症度を低減できる。具体的には、有効量は、用量あたりのTCID50を指す。代替的に、治療の文脈では、用語「有効量」は、疾患若しくは障害の重症度若しくは持続期間又はその1種若しくは複数種の症状を低減する若しくは改善する、疾患若しくは障害の進行を予防する、疾患若しくは障害の軽減を生じる、疾患若しくは障害に関連する1種若しくは複数種の症状の再発、進展、発症若しくは進行を予防する、又は別の治療若しくは治療剤の予防若しくは処置を増強若しくは改善するために十分である治療の量を指す。
本明細書において使用される場合、用語、ローソニア・イントラセルラリス感染の「臨床徴候」は、これだけに限らないが、1日あたりの平均体重増加(ADWG)の低下、体重増加のばらつきの増加、飼料要求率の増加、回腸及び/若しくは空腸及び/若しくは盲腸及び/若しくは結腸における肉眼的病変、下痢、死亡、検出可能な細菌量、ローソニア・イントラセルラリスの排出又はこれらの組合せを含む。
【0044】
本明細書において使用される場合、用語、サルモネラ属感染の「臨床徴候」は、これだけに限らないが、1日あたりの平均体重増加(ADWG)の低下、体重増加のばらつきの増加、飼料要求率の増加、回腸及び/若しくは空腸(Jeejnum)及び/若しくは盲腸及び/若しくは結腸における肉眼的病変、下痢、身体状態の悪化、抑うつ性若しくは嗜眠性の挙動、検出可能な細菌量、サルモネラの排出又はこれらの組合せを含む。
好ましくは、臨床徴候は、処置されていないか又は本発明に先行して利用可能であった免疫原性組成物を用いて処置されたが、その後に特定の動物病原体に感染した動物と比較して、発生頻度又は重症度において、少なくとも10%、より好ましくは少なくとも20%、またさらにより好ましくは少なくとも30%、さらにより好ましくは少なくとも40%、またさらにより好ましくは少なくとも50%、さらにより好ましくは少なくとも60%、またさらにより好ましくは少なくとも70%、さらにより好ましくは少なくとも80%、またさらにより好ましくは少なくとも90%、またさらにより好ましくは少なくとも95%、最も好ましくは100%低減される。しかし、「臨床徴候の発生頻度及び/又は重症度の低下」又は「臨床症状の低減」は、これだけに限らないが、野生型感染と比較した、群れにおける感染動物の数の低減、感染の臨床徴候を呈する動物の数の低減若しくは撲滅又は1頭又は複数頭の動物において存在するいずれかの臨床徴候の重症度の低下を意味する。
【0045】
本発明の一態様では、動物病原体はブタ類、ウマ又はウシ病原体である。
本発明の一態様では、動物病原体は細菌性ブタ類又はウシ病原体である。
本発明の一態様では、動物病原体は腸疾患原因細菌又は粘膜疾患原因細菌である。
腸疾患原因細菌又は粘膜疾患原因細菌は、当技術分野において十分周知であり、例示的にサルモネラ属、大腸菌、ローソニア・イントラセルラリス及びブラキスピラ菌種を包含する。
本発明の一態様では、動物病原体は、サルモネラ属、大腸菌、ローソニア・イントラセルラリス、ブラキスピラ菌種又はクロストリジウム菌種である。
本発明の一態様では、動物病原体の前記抗原は、粘膜若しくは腸活性抗原又は粘膜若しくは腸活性生免疫原性組成物又は粘膜若しくは腸活性生ワクチンである。
用語「粘膜又は腸活性抗原」は、前記抗原が粘膜及び/若しくは上皮細胞及び/若しくは腸細胞において免疫応答を生じる、又は粘膜若しくは胃腸管免疫系を活性化することを意味する。
【0046】
本発明の一態様では、動物病原体の前記抗原は、ブタ類又はウシ由来の粘膜又は腸活性抗原である。
用語「動物」は、マウス、ラット、モルモット、ウサギ、ハムスター、ブタ類、ヒツジ、イヌ、ネコ、ウマ、サル又はウシなどの哺乳動物を好ましくは指す。より好ましくは、動物はブタ類である。
用語「ブタ」又は「ブタ類」が、子ブタ、雌ブタ、未経産ブタ、成熟雄ブタなどを含むことは理解される。
【0047】
本発明の一態様では、動物はブタ類、ウマ又はウシである。
本発明の一態様では、動物はブタ、子ブタ、雌ブタ又はブタ類である。
本発明の一態様では、動物は新生仔ブタ又は離乳前の子ブタである。
本発明の一態様では、免疫原性ゲル組成物は、生後1日以降、生後3日以降又は生後1週間以降又は生後2週間以降又は生後3週間以降に動物に投与される。
本発明の一態様では、免疫原性ゲル組成物は、生後1日以降、生後3日以降、生後1週間以降又は生後2週間以降に動物に投与される。
本発明の一態様では、免疫原性ゲル組成物は、1週齢~3週齢の間に動物に投与される。
本発明の一態様では、免疫原性ゲル組成物は、6日齢~20日齢の間に動物に投与される。
本発明の一態様では、免疫原性ゲル組成物は、8日齢~18日齢の間、又は10日齢~16日齢の間に動物に投与される。
【0048】
本発明の一態様では、免疫原性ゲル組成物は、獣医学的に許容される担体をさらに含む。
本発明の一態様では、免疫原性ゲル組成物は、1回で又は2用量で投与される。
本発明の一態様では、免疫原性ゲル組成物は、複数用量で投与される。
本発明の免疫原性ゲル組成物の1用量の投与が有効であることはさらに示された。
本発明の一態様では、免疫原性ゲル組成物は、経口及び/又は粘膜経路によって投与される。
本明細書において使用される場合、用語「投与する」又は「投与」は、免疫原性ゲル組成物が動物に間接的に投与されることを意味する。免疫原性ゲル組成物は、前記動物が前記免疫原性ゲル組成物を摂取できるように、家畜小屋内で若しくは収容環境内のどこかで直接適用される。免疫原性ゲル組成物は、前記動物が前記免疫原性ゲル組成物を摂取できるように母動物に適用されてもよい。この方法によって、有利には動物は、投薬されていない時期(哺乳期間中)に、個別のブタの取り扱いがないか又は低減され、労働力が低減され、動物に対するストレスが低減されて早期にワクチン接種された。
【0049】
好ましくは、アプリケーターガン又はドレンチガンは使用される。好ましくは、60ml又は120ml又はさらに大きいアプリケーターガン又はドレンチガンは使用される。そのようなアプリケーターガン又はドレンチガンを使用することは、規定量の免疫原性ゲル組成物を動物(下部の輪郭(underline)など)に、又は家畜小屋(マットになど)に容易に適用できるようにする。
本発明の一態様では、方法は、前記動物が前記免疫原性ゲル組成物を摂取できるように家畜小屋内で又は収容環境で免疫原性ゲル組成物を適用することを含む。
免疫原性ゲル組成物が、動物の環境に又は家畜小屋内のいずれの場所に置かれてもよく、前記動物が前記免疫原性ゲル組成物を摂取できるようにすることは理解される。
【0050】
本発明の一態様では、方法は、前記免疫原性ゲル組成物を母動物の下部の輪郭若しくは母動物の乳房に、家畜小屋内のマットに又は家畜小屋内のカップ若しくは容器に適用することを含む。
好ましくは、免疫原性ゲル組成物は、マットに適用される。免疫原性ゲル組成物をマットに適用することは、個別のブタの取り扱いがなく、労働力が低減され、動物へのストレスが低減されて、取り扱いが容易で速いことから、有利である。
本発明の一態様では、方法は、前記免疫原性ゲル組成物を家畜小屋内のマットに適用することを含む。
本発明の一態様では、方法は、免疫原性ゲル組成物を母動物に局所的に適用すること、及び新生仔動物又は離乳前の動物が前記免疫原性ゲル組成物を摂取できるようにすることを含む。
本発明の一態様では、方法は、前記免疫原性ゲル組成物を母動物の下部の輪郭に局所的に適用することを含む、又は方法は、前記免疫原性ゲル組成物を母動物の少なくとも1個の乳首に局所的に適用することを含む。
【0051】
本発明の一態様では、母動物は雌ブタである。
本発明の一態様では、新生仔動物は新生仔の子ブタである。
本発明の一態様では、離乳前の動物は離乳前の子ブタである。
本発明の一態様では、前記方法は:同じ種の非免疫化対照群の動物と比較して:体重減少の低減、細菌量の低下、腸管の病変の低減、結腸の病変の低減、回腸及び/若しくは空腸の病変の低減、排出の低減、下痢の低減又はこれらの組合せからなる群から選択される有効性パラメーターの改善をもたらす。
好ましくは、前記病変は、肉眼で見える、及び/又は顕微鏡的病変を意味する。
用語「低減する」又は「低減」は、具体的な臨床徴候の発生率及び/又は重症度が、同じ種の非免疫化対照群の動物と比較して、少なくとも10%、好ましくは少なくとも20%、より好ましくは少なくとも30%、さらにより好ましくは少なくとも40%、さらにより好ましくは少なくとも50%、さらにより好ましくは少なくとも60%、さらにより好ましくは少なくとも70%、さらにより好ましくは少なくとも80%、さらにより好ましくは少なくとも90%、さらにより好ましくは少なくとも95%、最も好ましくは100%低減されることを意味する。
本発明の一態様では、免疫原性ゲル組成物はワクチンゲル組成物である。
本発明の一態様では、免疫原性ゲル組成物は獣医学的に許容される担体をさらに含む。
本発明の一態様では、ゲル組成物は本明細書に記載のゲル組成物である。
さらに、本発明は、本明細書に記載のゲル組成物を含むマットを提供する。
【0052】
開示
本開示は:
ローソニア・イントラセルラリス抗原及び/又はサルモネラ属抗原並びに経口投与のために好適なゲル組成物を含む免疫原性ゲル組成物
をさらに含む。
免疫原性ゲル組成物の前述の開示のいずれにおいても、前記ローソニア・イントラセルラリス抗原及び/又はサルモネラ属抗原は、全細胞細菌である。
免疫原性ゲル組成物の前述の開示のいずれにおいても、前記ローソニア・イントラセルラリス抗原は改変生ローソニア・イントラセルラリスである。
免疫原性ゲル組成物の前述の開示のいずれにおいても、前記ローソニア・イントラセルラリス抗原はローソニア・イントラセルラリスの無毒性単離菌又は弱毒化ローソニア・イントラセルラリスである。
【0053】
免疫原性ゲル組成物の前述の開示のいずれにおいても、前記免疫原性ゲル組成物は、用量あたり約3.0~約9.0TCID50の改変生ローソニア・イントラセルラリスを含む。
免疫原性ゲル組成物の前述の開示のいずれにおいても、前記サルモネラ属抗原は改変生サルモネラ属である。
免疫原性ゲル組成物の前述の開示のいずれにおいても、前記サルモネラ属はサルモネラ・コレレスイス及び/又はサルモネラ・ティフィムリウムである。
免疫原性ゲル組成物の前述の開示のいずれにおいても、前記サルモネラ属はサルモネラ・エンテリカ亜種エンテリカ血清型コレレスイス及び/又はサルモネラ・エンテリカ亜種エンテリカ血清型ティフィムリウムである。
免疫原性ゲル組成物の前述の開示のいずれにおいても、前記免疫原性ゲル組成物は、用量あたり約1x105~約1x1010CFUのサルモネラ属を含む。
【0054】
免疫原性ゲル組成物の前述の開示のいずれにおいても、前記ゲル組成物は、粘稠性である、又は少なくとも50mPa・秒若しくは少なくとも50cPの粘度を有する。
免疫原性ゲル組成物の前述の開示のいずれにおいても、前記ゲル組成物は、水及び/又は接着増強剤及び/又はpH調整剤及び/又は安定剤を含む。
免疫原性ゲル組成物の前述の開示のいずれにおいても、前記ゲル組成物は、水、接着増強剤及び安定剤を含む。
免疫原性ゲル組成物の前述の開示のいずれにおいても、前記ゲル組成物は、香味剤及び/又は着色剤をさらに含む。
免疫原性ゲル組成物の前述の開示のいずれにおいても、前記ゲル組成物は、水、マルトデキストリン、セルロース、ガム及び安定剤を含み、好ましくは安定剤はプロピレングリコールである。
免疫原性ゲル組成物の前述の開示のいずれにおいても、前記ゲル組成物は、水、マルトデキストリン、ヘミセルロース抽出物、アカシアゴム及びプロピレングリコールを含む。
【0055】
免疫原性ゲル組成物の前述の開示のいずれにおいても、前記ゲル組成物は、水、マルトデキストリン、ヘミセルロース抽出物、水安定化化合物、アカシアゴム、プロピレングリコール及び人工着色剤を含む。
免疫原性ゲル組成物の前述の開示のいずれにおいても、前記免疫原性ゲル組成物は、獣医学的に許容される担体をさらに含む。
免疫原性ゲル組成物の前述の開示のいずれにおいても、前記免疫原性ゲル組成物は、ワクチンゲル組成物である。
免疫原性ゲル組成物の前述の開示のいずれにおいても、前記
【0056】
本開示は:
動物病原体の抗原及び経口投与のためのゲル組成物を含む免疫原性ゲル組成物の治療有効量を動物に投与することを含む、前記動物を免疫化する方法
をさらに含む。
本開示は:
動物において動物病原体によって生じる臨床徴候を処置するか、又は予防する方法であって、動物病原体の抗原及び経口投与のためのゲル組成物を含む免疫原性ゲル組成物の治療有効量を前記動物に投与することを含む方法
をさらに含む。
【0057】
本開示は:
本明細書に記載の免疫原性ゲル組成物の治療有効量を動物に投与することを含む、前記動物を免疫化する方法
をさらに含む。
本開示は:
動物においてローソニア・イントラセルラリス及び/又はサルモネラ属によって生じる臨床徴候を処置するか、又は予防する方法であって、本明細書に記載の免疫原性ゲル組成物の治療有効量を前記動物に投与することを含む方法
をさらに含む。
本開示は:
同じ種の非免疫化対照群の動物と比較して、動物の腸管における病変を低減させるための方法であって、本明細書に記載の免疫原性ゲル組成物の有効量を前記動物に投与することを含む、方法
をさらに含む。
本開示は:
同じ種の非免疫化対照群の動物と比較して、動物の1日あたりの平均体重増加を増加させる方法であって、本明細書に記載の免疫原性ゲル組成物の有効量を前記動物に投与することを含む、方法
をさらに含む。
【0058】
方法の前述の開示のいずれにおいても、前記動物病原体はブタ類、ウマ又はウシ病原体である。
方法の前述の開示のいずれにおいても、前記動物病原体は細菌性ブタ類又はウシ病原体である。
方法の前述の開示のいずれにおいても、前記動物病原体は腸疾患原因細菌又は粘膜疾患原因細菌である。
方法の前述の開示のいずれにおいても、動物病原体の前記抗原は、粘膜若しくは腸活性抗原又は粘膜若しくは腸活性生免疫原性組成物又は粘膜若しくは腸活性生ワクチンである。
方法の前述の開示のいずれにおいても、前記動物はブタ、ウマ又はウシである。
【0059】
方法の前述の開示のいずれにおいても、前記動物はブタ、子ブタ、雌ブタ又はブタ類である。
方法の前述の開示のいずれにおいても、前記動物は新生仔ブタ又は離乳前の子ブタである。
方法の前述の開示のいずれにおいても、前記免疫原性ゲル組成物は、生後1日以降、生後3日以降若しくは生後1週間以降若しくは生後2週間以降若しくは生後3週間以降に動物に投与される、又は免疫原性ゲル組成物は6日齢~20日齢の間に動物に投与される。
方法の前述の開示のいずれにおいても、前記免疫原性ゲル組成物は、獣医学的に許容される担体をさらに含む。
方法の前述の開示のいずれにおいても、前記免疫原性ゲル組成物は、1回で又は2用量で投与される。
【0060】
方法の前述の開示のいずれにおいても、前記免疫原性ゲル組成物は、経口及び/又は粘膜経路によって投与される。
方法の前述の開示のいずれにおいても、前記方法は、前記動物が前記免疫原性ゲル組成物を摂取できるように家畜小屋内で又は収容環境で免疫原性ゲル組成物を適用することを含む。
方法の前述の開示のいずれにおいても、前記方法は、前記免疫原性ゲル組成物を母動物の下部の輪郭若しくは母動物の乳房に、家畜小屋内のマットに又は家畜小屋内のカップ若しくは容器に適用することを含む。
【0061】
方法の前述の開示のいずれにおいても、前記方法は、前記免疫原性ゲル組成物を家畜小屋内のマットに適用することを含む。
方法の前述の開示のいずれにおいても、前記方法は、免疫原性ゲル組成物を母動物に局所的に適用すること、及び生後の動物若しくは離乳前の動物が前記免疫原性ゲル組成物を摂取できるようにすることを含む。
方法の前述の開示のいずれにおいても、前記方法は、前記免疫原性ゲル組成物を母動物の下部の輪郭に局所的に適用することを含む、又は方法は、前記免疫原性ゲル組成物を母動物の少なくとも1個の乳首に局所的に適用することを含む。
方法の前述の開示のいずれにおいても、前記母動物は雌ブタである、及び/又は生後の動物は生後の子ブタである、及び/又は離乳前の動物は離乳前の子ブタである。
方法の前述の開示のいずれにおいても、前記方法は:同じ種の非免疫化対照群の対象と比較して、体重減少の低減、細菌量の低下、腸管の病変の低減、結腸の病変の低減、盲腸の病変における、回腸及び/若しくは空腸の病変の低減、排出の低減、下痢の低減又はこれらの組合せからなる群から選択される有効性パラメーターの改善をもたらす。
【0062】
方法の前述の開示のいずれにおいても、前記免疫原性ゲル組成物はワクチンゲル組成物である。
方法の前述の開示のいずれにおいても、前記免疫原性ゲル組成物は、獣医学的に許容される担体をさらに含む。
方法の前述の開示のいずれにおいても、前記ゲル組成物は、本明細書に記載のゲル組成物である。
本開示は:
本明細書に記載のゲル組成物を含むマット
をさらに含む。
【実施例
【0063】
以下の実施例は、本発明を例示することのみを意図する。それらは、いかなる方法によっても特許請求の範囲の範囲を限定しない。
【0064】
(実施例1)
MLVローソニア・イントラセルラリス又はサルモネラのさまざまな形態での投与後のワクチン排出の評価によるゲルワクチン取り込みの評価
本研究の目的は、ゲル製剤中で与え、収容環境の異なる場所で適用した経口ワクチンが、動物によって効率的に取り込まれるかどうか、及び経口水薬による経口投与の従来の方法と比較してどのようであるかを評価することである。
Enterisol(登録商標)Ileitis(商業的に入手できるローソニア・イントラセルラリス生ワクチン)をゲル組成物(Underline(登録商標)ゲルは商業的に入手でき、水、マルトデキストリン、プロピレングリコール、ヘミセルロース抽出物を含む、しかし他のゲル組成物も同様に好適である)と混合する。
処置群(1群あたりブタ40頭):
群1:Enterisol(登録商標)Ileitis、雌ブタの乳房にゲルで適用
群2:Enterisol(登録商標)Ileitis、カップにゲルで適用
群3:Enterisol(登録商標)Ileitis、マットにゲルで適用
群4:Enterisol(登録商標)Ileitis、経口水薬により適用
群5:非ワクチン接種、陰性対照
Enterisol(登録商標)Ileitisが経口MLV(改変生ワクチン)ローソニアワクチンであることから、ローソニア細菌は大便によって排出される。ワクチン取り込みの有効性を、当技術分野における標準的手順である定量的PCRによって、ワクチン接種されたブタによる大便中のローソニア・イントラセルラリスの排出を測定することによって評価する。
【0065】
【表1】

【0066】
さらなる実験では、別の経口MLV(改変生ワクチン)のゲルの投与を試験する。Enterisol(登録商標)Salmonella T/C(T/C)(商業的に入手できるサルモネラ生ワクチン)をゲル組成物(Underline(登録商標)ゲル、Animal Science Products、Inc.Nacogdoches、TXから商業的に入手できる)と混合する。ワクチンをゲルによって、又は経口水薬によって与え、ワクチン取り込みの有効性を大便中のサルモネラ細菌の排出を測定することによって評価する。
【0067】
処置群(1群あたりブタ24頭):
群1:非ワクチン接種、陰性対照
群2:Enterisol(登録商標)Salmonella T/C、マットにゲルで適用
群3:Enterisol(登録商標)Salmonella T/C、経口水薬によって適用
【0068】
【表2】

【0069】
結論:
ゲル製剤中で投与する経口ワクチンは、動物によって効率的に取り込まれる。
ゲル組成物中で投与されたMLVローソニア・イントラセルラリス又はMLVサルモネラの取り込みは、標準的経口水薬投与と比較して驚くべきことにさらに高かった。
【0070】
(実施例2)
ゲルによって経口投与され、ローソニア・イントラセルラリスチャレンジを伴ったMLVローソニア・イントラセルラリスの有効性の評価
本研究の目的は、Enterisolワクチンの経口投与のための手段としてのゲル組成物の有効性を評価することである。このアプローチを検証するために、ゲルを用いて経口で投与される場合のワクチン有効性を、実験的チャレンジによって評価する。Enterisol(登録商標)Ileitis(商業的に入手できるローソニア・イントラセルラリス生ワクチン)をゲル組成物(Underline(登録商標)ゲル、商業的に入手できる)と混合し、14~16日齢であるブタの分娩舎マットに適用する。ブタをワクチン接種の49日後にローソニア・イントラセルラリスを用いてチャレンジする。主要変数として、肉眼的病変、顕微鏡的病変、IHCスコアにおける個別のブタの差異を使用して、有効性を測定する。
雌ブタは、ローソニア・イントラセルラリスPCR陰性である。非ワクチン接種処置群の同腹仔は、ワクチンへの曝露を管理し、防ぐためにワクチン接種処置群とは別の分娩室に収容する。各処置は、4種の同腹仔から選択される6頭のブタを含む。研究は、Enterisol Ileitis(EI)の投与についてUnderlineゲルを評価する。この目的のために、3個の異なる処置群、1)非ワクチン接種、ローソニア・イントラセルラリスチャレンジ対照、2)EIゲル投与、3)EIゲル投与、4)EI経口水薬投与、を使用する。
【0071】
処置群
【表3】

【0072】
ワクチンを14~16日齢の子ブタに投与する。子ブタを21~24日齢で離乳される。ローソニア腸ホモジネートを用いたチャレンジを野生型単離菌を用いたワクチン接種7週間後に行う(チャレンジ用量、L.イントラセルラリス生物2.76x1010個/ブタ)。ワクチン有効性を肉眼で見える病変及び顕微鏡的病変によって評価する。空腸、回腸、盲腸及び結腸を腸疾患及びローソニア感染の肉眼的病変の特徴について調査し、スコア化する。肉眼で見える病変をルーブリック:0=肉眼的病変なし;1=粘膜又は漿膜の軽度の浮腫及び充血;2=浮腫、充血、網状の漿膜及び粘膜(肥厚);3=浮腫、充血、網状化した漿膜及び粘膜並びに粘膜の肉眼的肥厚;4=重度の肥厚粘膜大量出血又は壊死、に従って評価する。肉眼で見える病変の長さも記録する。遠位回腸を顕微鏡的病理組織学のためにホルマリン固定し、ローソニア・イントラセルラリスについての免疫組織化学(IHC)染色を以下のとおり5点スケールで評価する:0=ローソニア抗原非存在;1=クリプトの0~25%が抗原を含む;2=クリプトの25~50%が抗原を含む;3=クリプトの50~75%が抗原を含む;4=クリプトの75~100%が抗原を含む。ヘマトキシリン及びエオシン染色を以下のルーブリック:0=病変なし;1=局所的病変;2=多巣性の病変、3=びまん性、を用いて評価する。
【0073】
【表4】

【0074】
【表5】

【0075】
【表6】


結論:
改変生ローソニア・イントラセルラリスは、ブタの免疫処置のためにゲル組成物によって投与できる。経口水薬によって、又はゲルによって投与されたEnterisol(登録商標)Ileitisは、両方とも非ワクチン接種チャレンジ対照群と比較して肉眼的病変を低減し、IHCスコアを低減する。
【0076】
(実施例3)
サルモネラ・ティフィムリウムチャレンジを用いた、ゲルによって経口投与されたMLV Salmonella T/Cの有効性の評価
本研究の目的は、Underline(登録商標)ゲルによって投与したEnterisol(登録商標)Salmonella T/C(T/C)の有効性を評価することである。組成物を14日齢のブタの分娩舎マットに適用する。ワクチン接種28日後、ブタをサルモネラ・ティフィムリウムを用いてチャレンジする。有効性を、肉眼的病変、臨床徴候及びADWGにおける個別のブタの差異を使用して測定する。
【0077】
非ワクチン接種群の同腹仔をワクチン接種処置とは別の分娩室に収容し、これは、ワクチンへのいかなる潜在的な曝露も厳密な管理及び予防を可能にする。本研究は、雌ブタ飼育場でのEnterisol Salmonella T/Cの経口投与についてUnderlineゲルを評価する。この目的のために、3個の異なる処置群を使用する:1)非ワクチン接種サルモネラチャレンジ対照、2)Enterisol Salmonella T/Cゲル投与、3)Enterisol Salmonella T/C経口水薬投与。
【0078】
【表7】

【0079】
雌ブタはサルモネラ属PCR陰性である。ワクチンを子ブタに14~16日齢で投与する。子ブタを21~24日齢で離乳させる。サルモネラチャレンジ(ティフィムリウム)をワクチン接種の4週間後に行う(3.51010cfu/mL用量のサルモネラ・エンテリカ血清型ティフィムリウムUK-1、1mL鼻腔内(鼻孔あたり0.5mL))。ワクチン有効性を臨床徴候の低減及び腸管の病変の低減によって評価する。
【0080】
【表8】

【0081】
【表9】

【0082】
【表10】

【0083】
結論:
改変生サルモネラは、ブタの免疫処置のためにゲル組成物によって投与され得る。経口水薬によって、又はゲルによって投与されたEnterisol(登録商標)Salmonella T/Cは、非ワクチン接種対照ブタと比較して結腸の病変(肉眼的)を低減する。さらに、非ワクチン接種対照ブタと比較して、1日あたりの平均体重増加が有意に多い。
【0084】
(実施例4)
ゲルによって経口投与し、ローソニア・イントラセルラリスシーダー(seeder)チャレンジを用い、MLVサルモネラワクチンとの組合せで、及び従来の水投与と比較したMLVローソニア・イントラセルラリスの有効性の評価
本研究の目的は、Enterisol(登録商標)Ileitis(商業的に入手できるローソニア・イントラセルラリスワクチン)の経口投与のためのゲル組成物の有効性を評価することである。このアプローチを検証するために、14~19日齢のブタへ分娩舎マットに適用したゲル(Underline(登録商標)ゲル、商業的に入手できる)を通じて経口投与される場合のワクチンの有効性を、病原性ローソニア・イントラセルラリスを含有する腸ホモジネートを用いて12週齢でチャレンジしたシーダーブタへの曝露による実験チャレンジによって評価する。本研究の第2の目的は、14~19日齢のブタへ分娩舎マットに適用したゲル(Underline(登録商標)ゲル、商業的に入手できる)によって投与するEnterisol(登録商標)IleitisとEnterisol Salmonella T/C Salmonella T/C(商業的に入手できるサルモネラ・ティフィムリウム、サルモネラ・コレレスイスワクチン)との混合物に続く、病原性ローソニア・イントラセルラリスを含有する腸ホモジネートを用いて12週齢でチャレンジしたシーダーブタへの曝露による実験チャレンジを研究することである。ゲル投与処置を、非ワクチン接種チャレンジ対照処置及び6週齢で与えた水を通じた従来の経口投与によるEnterisol(登録商標)Ileitisワクチン接種と比較する。ワクチン有効性を体重増加及び死亡率における個別のブタの差異によって測定する。
【0085】
【表11】

【0086】
チャレンジに先行して、非ワクチン接種、水ワクチン接種群及びシーダーになるブタを、MLVワクチンへの曝露を予防するためにゲルワクチン接種処置群とは別に収容した。ワクチン接種処置群を群間のデンマークバイオセキュリティのために複数の囲いに分離した。離乳後にすべてのブタに3FLEX(登録商標)をワクチン接種した。シーダーチャレンジのために、シーダーブタを元の囲いに残し、ブタ1頭あたりローソニア・イントラセルラリス生物およそ3.7x1010個のチャレンジ用量を経口で与えた後に14日間ラバーマットを与えた。処置群のチャレンジのために、離乳48日後(研究70日目)に、4つの処置群のブタを、最終的な囲い位置あたり、処置あたりブタ6~7頭で各囲いで均衡させて処置群と混合した。シーダーブタ3頭をブタの間でのローソニア・イントラセルラリスのチャレンジを促進するためのラバーマットと共に囲いに入れた。処置群のシーダーブタ曝露及びチャレンジをゲルワクチン接種後70日間、及び水ワクチン接種後42日間行った。ブタのチャレンジ及び混合後に死亡率を最終体重研究エンドポイントまで測定した。除去又は重度の健康問題を有したブタも測定した。すべてのブタを、ワクチン接種前の14日齢で処置群に割り当てる際(研究0日目)、84日齢での処置の混合の際(研究70日目)及び162日の出荷日齢(研究148日目)に体重測定した。
【0087】
【表12】

【0088】
【表13】

【0089】
14~19日齢でゲルによって投与されたEnterisol(登録商標)Ileitisは、有効であり、非ワクチン接種チャレンジ群と比較して顕著に重い体重、より多い1日あたりの平均体重増加、及び少ない死亡率をもたらした。このレベルの有効性は、改善されていないにしても、Enterisol(登録商標)Ileitisの従来の水投与と同様であった。さらに、Enterisol(登録商標)IleitisをEnterisol Salmonella T/Cを含むゲルと混合した場合、得られたワクチン組合せも有効であった(干渉は観察されなかった)。
【手続補正書】
【提出日】2024-04-10
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ローソニア・イントラセルラリス(Lawsonia intracellularis)抗原及び/又はサルモネラ属抗原並びに経口投与のために好適なゲル組成物を含む、免疫原性ゲル組成物。
【請求項2】
ローソニア・イントラセルラリス抗原及び/又はサルモネラ属抗原が、全細胞細菌である、請求項1に記載の免疫原性ゲル組成物。
【請求項3】
ローソニア・イントラセルラリス抗原が、改変生ローソニア・イントラセルラリスである、又はローソニア・イントラセルラリス抗原がローソニア・イントラセルラリスの無毒性単離菌若しくは弱毒化ローソニア・イントラセルラリスである、請求項1又は2に記載の免疫原性ゲル組成物。
【請求項4】
サルモネラ属抗原が改変生サルモネラ属である、請求項1に記載の免疫原性ゲル組成物。
【請求項5】
前記サルモネラ属がサルモネラ・コレレスイス(Salmonella Choleraesuis)及び/若しくはサルモネラ・ティフィムリウム(Salmonella Typhimurium)である、並びに/又は
サルモネラ属がサルモネラ・エンテリカ(Salmonella enterica)亜種エンテリカ血清型コレレスイス及び/若しくはサルモネラ・エンテリカ亜種エンテリカ血清型ティフィムリウムである、請求項1又は4に記載の免疫原性ゲル組成物。
【請求項6】
用量あたり約3.0~約9.0TCID50の改変生ローソニア・イントラセルラリスを含む、及び/又は用量あたり約1x105~約1x1010CFUのサルモネラ属を含む、請求項1に記載の免疫原性ゲル組成物。
【請求項7】
粘稠性である、又は少なくとも50mPa・秒若しくは少なくとも50cPの粘度を有する、及び/或いは、香味剤及び/又は着色剤をさらに含む、請求項1に記載の免疫原性ゲル組成物。
【請求項8】
水及び/若しくは接着増強剤及び/若しくはpH調整剤及び/若しくは安定剤を含む、並びに/又は、
水、接着増強剤及び安定剤を含む、請求項1に記載の免疫原性ゲル組成物。
【請求項9】
水、マルトデキストリン、セルロース、ゴム及び安定剤を含み、好ましくは安定剤はプロピレングリコールである、並びに/又は
水、マルトデキストリン、ヘミセルロース抽出物、アカシアゴム及びプロピレングリコールを含む、並びに/又は、
水、マルトデキストリン、ヘミセルロース抽出物、水安定化化合物、アカシアゴム、プロピレングリコール及び人工着色剤を含む、請求項1に記載の免疫原性ゲル組成物。
【請求項10】
獣医学的に許容される担体をさらに含む、及び/又は、
ワクチンゲル組成物である、請求項1に記載の免疫原性ゲル組成物。
【請求項11】
動物病原体の抗原及び経口投与のためのゲル組成物を含む免疫原性ゲル組成物の治療有効量を動物に投与することを含む、前記動物を免疫化する方法。
【請求項12】
動物において動物病原体によって生じる臨床徴候を処置するか、又は予防する方法であって、動物病原体の抗原及び経口投与のためのゲル組成物を含む免疫原性ゲル組成物の治療有効量を前記動物に投与することを含む、方法。
【請求項13】
請求項1に記載の免疫原性ゲル組成物の治療有効量を動物に投与することを含む、前記動物を免疫化する方法。
【請求項14】
動物においてローソニア・イントラセルラリス及び/又はサルモネラ属によって生じる臨床徴候を処置するか、又は予防する方法であって、請求項1に記載の免疫原性ゲル組成物の治療有効量を前記動物に投与することを含む、方法。
【請求項15】
同じ種の非免疫化対照群の動物と比較して、動物の腸管における病変を低減させるための方法であって、請求項1に記載の免疫原性ゲル組成物の有効量を前記動物に投与することを含む、方法。
【請求項16】
同じ種の非免疫化対照群の動物と比較して、動物の1日あたりの平均体重増加を増加させる方法であって、請求項1に記載の免疫原性ゲル組成物の有効量を前記動物に投与することを含む、方法。
【請求項17】
動物病原体がブタ類、ウマ若しくはウシ病原体である、及び/又は
動物病原体が細菌性ブタ類若しくはウシ病原体である、及び/又は
動物病原体が腸疾患原因細菌若しくは粘膜疾患原因細菌である、
請求項11又は12に記載の方法。
【請求項18】
動物病原体の前記抗原が、粘膜若しくは腸活性抗原又は粘膜若しくは腸活性生免疫原性組成物又は粘膜若しくは腸活性生ワクチンである、請求項11又は12に記載の方法。
【請求項19】
動物がブタ類、ウマ又はウシである、請求項11又は12に記載の方法。
【請求項20】
動物がブタ、子ブタ、雌ブタ若しくはブタ類である、及び/又は動物が新生仔ブタ若しくは離乳前の子ブタである、請求項13~16のいずれか1項に記載の方法。
【請求項21】
免疫原性ゲル組成物が、生後1日以降、生後3日以降若しくは生後1週間以降若しくは生後2週間以降若しくは生後3週間以降に動物に投与される、又は免疫原性ゲル組成物が6日齢~20日齢の間に動物に投与される、請求項11~16のいずれか1項に記載の方法。
【請求項22】
免疫原性ゲル組成物が、経口及び/又は粘膜経路によって投与される、請求項11~16のいずれか1項に記載の方法。
【請求項23】
前記動物が前記免疫原性ゲル組成物を摂取できるように家畜小屋内で若しくは収容環境で免疫原性ゲル組成物を適用することを含む、及び/又は
前記免疫原性ゲル組成物を母動物の下部の輪郭若しくは母動物の乳房に、家畜小屋内のマットに若しくは家畜小屋内のカップ若しくは容器に適用することを含
母動物が雌ブタである、及び/又は生後の動物が生後の子ブタである、及び/又は離乳前の動物が離乳前の子ブタである、
請求項11~16のいずれか1項に記載の方法。
【請求項24】
免疫原性ゲル組成物を母動物に局所的に適用すること、及び生後の動物若しくは離乳前の動物が前記免疫原性ゲル組成物を摂取できるようにすることを含む、並びに/又は、
前記免疫原性ゲル組成物を母動物の下部の輪郭に局所的に適用することを含む、又は前記免疫原性ゲル組成物を母動物の少なくとも1個の乳首に局所的に適用することを含
母動物が雌ブタである、及び/又は生後の動物が生後の子ブタである、及び/又は離乳前の動物が離乳前の子ブタである、
請求項11~16のいずれか1項に記載の方法。
【請求項25】
免疫原性ゲル組成物がワクチンゲル組成物である、及び/又は
免疫原性ゲル組成物が獣医学的に許容される担体をさらに含む、請求項11~16のいずれか1項に記載の方法。
【請求項26】
ゲル組成物が請求項7~10のいずれか1項に記載のゲル組成物である、請求項11~16のいずれか1項に記載の方法。
【請求項27】
請求項1に記載のゲル組成物を含むマット。
【国際調査報告】