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  • 特表-製品、その用途、および方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-10-23
(54)【発明の名称】製品、その用途、および方法
(51)【国際特許分類】
   B32B 23/02 20060101AFI20241016BHJP
   B32B 23/12 20060101ALI20241016BHJP
【FI】
B32B23/02
B32B23/12
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024521836
(86)(22)【出願日】2022-10-11
(85)【翻訳文提出日】2024-05-28
(86)【国際出願番号】 FI2022050677
(87)【国際公開番号】W WO2023062276
(87)【国際公開日】2023-04-20
(31)【優先権主張番号】20216051
(32)【優先日】2021-10-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FI
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TWEEN
(71)【出願人】
【識別番号】523456711
【氏名又は名称】メッツァ スプリング オサケユキチュア
【氏名又は名称原語表記】Metsa Spring Oy
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100167623
【弁理士】
【氏名又は名称】塚中 哲雄
(72)【発明者】
【氏名】ヤルッコ ツオミネン
(72)【発明者】
【氏名】エミリア ヴァンスカ
【テーマコード(参考)】
4F100
【Fターム(参考)】
4F100AA03B
4F100AA07B
4F100AA08B
4F100AA19B
4F100AA20B
4F100AC10B
4F100AJ04A
4F100AJ04C
4F100AJ04D
4F100AK03B
4F100AK41B
4F100AK42B
4F100AN00B
4F100AT00E
4F100BA10B
4F100CA13B
4F100CA23B
4F100CC00B
4F100CC00E
4F100DD07
4F100DG01A
4F100DG01C
4F100DG01D
4F100DG02D
4F100DG06A
4F100DG06C
4F100DG06D
4F100EC032
4F100EH612
4F100EH762
4F100EJ022
4F100EJ082
4F100EJ172
4F100EJ242
4F100EJ422
4F100EJ432
4F100EJ462
4F100EJ822
4F100GB15
4F100GB16
4F100GB23
4F100GB66
4F100JA13A
4F100JB13B
4F100JB16B
4F100JC00B
4F100JD02
4F100JD03
4F100JD04
4F100JD05
4F100JK12
4F100JK16
4F100JM01B
4F100YY00
4F100YY00B
(57)【要約】
本発明の一態様によれば、セルロースおよび/またはリグノセルロース繊維材料を含み成形プロセスによって得られた繊維構造と、繊維構造の少なくとも1つの表面上の少なくとも1つのコーティング層などのコーティングとを備える製品が提供され、コーティングは、乾式コーティングプロセス、好ましくは粉体コーティングプロセスによって得られる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
製品であって、
セルロース繊維および/またはリグノセルロース繊維材料を含み、成形プロセスによって得られる繊維構造と、
前記繊維構造の少なくとも1つの表面上の少なくとも1つのコーティング層などのコーティング、
前記コーティングは、乾式コーティングプロセス、好ましくは粉体コーティングプロセスによって得られる、製品。
【請求項2】
前記コーティングは、前記製品の最上層または最下層を形成する、請求項1に記載の製品。
【請求項3】
前記製品は、平面繊維構造の反対側など、前記繊維構造の異なる表面に位置する少なくとも2つのコーティング層を備える、請求項1または2に記載の製品。
【請求項4】
前記製品は、前記コーティングと前記繊維構造との間に中間非繊維層をさらに備える、請求項1から3のいずれか一項に記載の製品。
【請求項5】
前記コーティングは、前記繊維構造の湾曲面または非水平面上に塗布される、請求項1から4のいずれか一項に記載の製品。
【請求項6】
前記コーティングは、非繊維コーティングであり、ポリオレフィン、ポリエステル、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリヒドロキシアルカン酸、またはポリ乳酸などの熱可塑性ポリマー材料または熱硬化性ポリマー材料を含むかまたはそれらからなる、請求項1から5のいずれか一項に記載の製品。
【請求項7】
前記コーティングは、熱可塑性生分解性ポリマー材料を含むかまたはそれらからなる非繊維層を備える、請求項1から6のいずれか一項に記載の製品。
【請求項8】
前記コーティングは、例えば少なくとも80wt%、例えば少なくとも90wt%などの、少なくとも50wt%の熱可塑性ポリマー材料または熱硬化性ポリマー材料を含む、請求項1から7のいずれか一項に記載の製品。
【請求項9】
前記コーティングは、バリア特性、視覚特性、機能特性、および/または触覚特性などの表面の機能特性を変更するように適合された機能性コーティングである、請求項1から8のいずれか一項に記載の製品。
【請求項10】
前記コーティングまたはその一部は、前記繊維構造の前記表面のバリア特性を高めるように適合され、前記バリア特性は、耐油性および耐グリース性、耐液体性、耐水性、耐水蒸気性、耐芳香性、耐ガス性、耐酸素性、風味バリア性の1つ以上が含まれる、請求項9に記載の製品。
【請求項11】
前記コーティングは、繊維構造の表面の硬度、微視的粗さ、巨視的粗さ、摩擦特性、触感特性、または色を変化させるように適合される、請求項1から10のいずれか一項に記載の製品。
【請求項12】
前記製品の乾燥重量は、5~900g/mの範囲、例えば100~800g/mの範囲、更に好ましくは200~600g/mの範囲である、請求項1から11のいずれか一項に記載の製品。
【請求項13】
前記コーティングの乾燥重量は、2~80g/m、例えば10~35g/mの範囲である、請求項1から12のいずれか一項に記載の製品。
【請求項14】
前記コーティングの厚さは、例えば2~50μmの範囲、例えば5~30μmなど、少なくとも1μmである、請求項1から13のいずれか一項に記載の製品。
【請求項15】
前記繊維構造は、プラスチック材料および樹脂を実質的に含まない、請求項1から14のいずれか一項に記載の製品。
【請求項16】
前記繊維構造は、多層繊維構造であり、少なくとも第1の繊維層および第2の繊維層を備え、各々は、セルロースおよび/またはリグノセルロース繊維材料を備える、請求項1から15のいずれか一項に記載の製品。
【請求項17】
前記第1の繊維層と前記第2の繊維層との間に、各々がセルロース繊維材料および/またはリグノセルロース繊維材料を含み、好ましくはケミサーモメカニカルパルプ(CTMP)または漂白ケミサーモメカニカルパルプ(BCTMP)などの機械パルプおよび/または損紙を備える、1つ以上の内側繊維層をさらに備える、請求項1から16のいずれか一項に記載の製品。
【請求項18】
前記セルロースおよび/またはリグノセルロース繊維材料は、漂白または未漂白化学パルプ、セミケミカルパルプ、機械パルプ、サーモメカニカルパルプ、化学ケミサーモメカニカルパルプ、漂白ケミサーモメカニカルパルプ、リサイクルセルロースおよび/またはリグノセルロース繊維、ミクロフィブリル化セルロースまたはナノフィブリル化セルロースなどのフィブリル化セルロース、ナノセルロース、損紙、セルロース副産物、再生セルロース繊維、および多年生または一年生植物に由来するセルロース繊維またはセルロース繊維の一部を含むその他のセルロース材料のうちの1つ以上を含む、請求項1から17のいずれか一項に記載の製品。
【請求項19】
前記繊維構造は、総乾燥物質に対して計算して少なくとも50wt%のセルロースおよび/またはリグノセルロース繊維材料を含む、請求項1から18のいずれか一項に記載の製品。
【請求項20】
前記繊維層の1つ以上または繊維構造全体は、発泡形成、水形成、ディップ形成、真空形成、プレス形成、熱形成、または乾式形成、あるいはそれらの任意の組み合わせによって得られる、請求項1から19のいずれか一項に記載の製品。
【請求項21】
前記繊維構造は、少なくとも1つの三次元非平面金型面を備える金型を使用して得られる三次元成形繊維構造であり、前記繊維構造は、前記三次元非平面金型面の形状に適合する三次元形状を示す、請求項1から20のいずれか一項に記載の製品。
【請求項22】
前記製品またはその一部は、カップまたはボウルの全体形状など、液体または流動性材料を保持するのに適した全体形状を有する、請求項1から21のいずれか一項に記載の製品。
【請求項23】
前記繊維構造は、少なくとも2つの繊維層を備える多層繊維構造であり、
前記繊維構造の全ての繊維層は、金型内での発泡形成法によって得られ、
前記乾式コーティングは、粉体コーティングを含む、請求項1から22のいずれか一項に記載の製品。
【請求項24】
乳製品、魚製品もしくは肉製品などの食品の包装または容器として、または医薬品もしくは化粧品の包装として、またはそれらの一部としての請求項1から23のいずれか一項に記載の製品の使用。
【請求項25】
食品の保存、取り扱い、準備または調理のための請求項1から23のいずれか一項に記載の製品の使用。
【請求項26】
セルロース繊維および/またはリグノセルロース繊維と水とを含む少なくとも1つの繊維組成物を準備するステップと、
金型内で、前記少なくとも1つの繊維組成物から繊維構造を形成するステップと、
成形繊維構造の表面の少なくとも一部に、乾式コーティング法、好ましくは粉体コーティング法によって、少なくとも1つのコーティング層などのコーティングを施すステップと、
を含む方法。
【請求項27】
前記形成ステップは、三次元金型を使用することによって前記少なくとも1つの繊維組成物から三次元繊維構造を形成することを含む、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
前記粉体コーティングプロセスは、前記繊維構造の前記表面に乾燥粉体を静電的に塗布し、塗布された粉体を好ましくは接触もしくは非接触加熱および/またはホットプレスによって硬化または溶融させてフィルムを形成することを含む、請求項26または27に記載の方法。
【請求項29】
コーティングされる繊維構造は、90~96%など、少なくとも90%の乾燥物質含有量を有する、請求項26から28のいずれか一項に記載の方法。
【請求項30】
前記乾燥粉体は、顔料、結合剤、およびさらに1つ以上の添加剤を含み、前記添加剤は、樹脂および充填剤、例えば重晶石、シリカ、炭酸塩、ケイ酸塩、水酸化アルミニウム、およびそれらの混合物の群から選択され得る、請求項26から29のいずれか一項に記載の方法。
【請求項31】
前記塗布は、噴霧を含む、請求項26から30のいずれか一項に記載の方法。
【請求項32】
前記硬化または溶融は、接触または非接触加熱、ホットプレス、IR硬化またはマイクロ波硬化、またはそれらの任意の組み合わせを含み、好ましくは、少なくとも80℃、例えば少なくとも120℃、例えば少なくとも150℃の温度への接触または非接触加熱を含む、請求項26から31のいずれか一項に記載の方法。
【請求項33】
前記形成は、水形成、発泡形成、ディップ形成、真空形成、プレス形成、熱形成、またはそれらの任意の組み合わせを含み、好ましくは発泡形成による、請求項26から32のいずれか一項に記載の方法。
【請求項34】
前記形成ステップの後および前記コーティングを塗布する前に、
前記構造を脱水するステップと、
前記脱水された構造をホットプレスして、成形された三次元繊維構造を得るステップと、をさらに含み、
前記ホットプレスは、例えば粉体塗装などの、直接乾式コーティングされるのに適した表面を生成する、請求項26から33のいずれか一項に記載の方法。
【請求項35】
前記コーティングされる繊維構造の乾燥物質含有量は、少なくとも60%であり、
コーティングを施した後、前記コーティングされた構造は、例えば2回目のホットプレスなど、ホットプレスされる、請求項26から34のいずれか一項に記載の方法。
【請求項36】
前記コーティングされる前記繊維構造の密度は、少なくとも700kg/mである、請求項26から35のいずれか一項に記載の方法。
【請求項37】
前記繊維構造は、少なくとも2つの繊維層を備える多層繊維構造であり、
前記繊維構造の各繊維層は、それぞれの繊維組成物を金型内で発泡形成することによって得られ、
前記乾式コーティングは、粉体コーティングを含有する、請求項26から36のいずれか一項に記載の方法。
【請求項38】
請求項26から37のいずれか一項に記載の方法によって得られる製品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コーティングされた繊維構造に関し、より具体的には、セルロース繊維および/またはリグノセルロース繊維を含むコーティングされた成形繊維構造に関する。
【背景技術】
【0002】
セルロース繊維および/またはリグノセルロース繊維を含む繊維構造および製品は、例えばウェットレイド法、エアレイド法、または成形法によって製造される。このような繊維構造は、もっぱらプラスチックベースの包装の代替として、包装技術で広く使用されている。
【0003】
板紙などのセルロース繊維材料で作られた包装材および容器に、バリアコーティングなどのさまざまなコーティングフィルムを塗布することが知られている。このようなコーティングフィルムの目的は、多くの場合、繊維構造に合わせて表面特性を調整したり、表面特性を強化したりすることである。
【0004】
バリアコーティングの適用は、通常、繊維基材の実際の製造後に別のプロセスで実行する必要がある。例えば、食品容器および包装は現在、容器の食品接触面に、ポリエチレンテレフタレートもしくはポリエチレン製の積層または押し出しバリアコーティングなどの、プラスチックもしくはワックスベースのバリアコーティングを備える紙もしくは板紙で作られている。
【0005】
既知のコーティングフィルムは、繊維製品などの製品の残りの部分へのコーティングフィルムの接着、ならびに製造時の乾燥および変換ステップ中、または輸送および保管中の湿度変化中にコーティングフィルムの機械的特性が劣化することに関連する多くの欠点を抱えている。例えば、コーティングは、コーティングが塗布される基材とは異なる方法で収縮し得る。収縮の問題は、バイオベースの水希釈コーティング組成物を使用する場合に特に重要である。
【0006】
一般的に水性コーティングは、再湿潤時の構造上の問題や再乾燥の必要性など、繊維基材に対して多くの課題および要件を提示する。別の課題としては、水蒸気や酸素などに対するガスバリアレベルが不十分なことが挙げられる。
【0007】
既知の方法によって三次元基材または物体上に滑らかなコーティングを準備すること、特に物体の側壁および底にコーティング材料を均一に分散させることは困難である。
【0008】
さらに、既知の深絞り成形プロセスでは、積層またはコーティングされた基材はプレスによって成形可能かつプロセス中にコーティングが割れないように十分な柔軟性をも備える必要があるため、課題に直面している。
【0009】
既知のコーティング方法では、高いバリア性と良好なヒートシール性を兼ね備えた三次元基材を作製することは困難である。
【0010】
本発明の目的は、既知の技術に存在する問題の少なくともいくつかを解決することである。
【発明の概要】
【0011】
本発明は、独立請求項の特徴によって定義される。いくつかの特定の実施形態は、従属請求項で定義される。
【0012】
本発明の第1の態様によれば、セルロースおよび/またはリグノセルロース繊維材料を含み成形プロセスによって得られる繊維構造と、繊維構造の少なくとも1つの表面上の少なくとも1つのコーティング層などのコーティングとを含む製品が提供され、コーティングは、乾式コーティングプロセス、好ましくは粉体コーティングプロセスによって得られる。
【0013】
第1の態様の様々な実施形態は、下記の箇条書きリストからの少なくとも1つの特徴を含み得る。
・コーティングは、製品の最上層または最下層を形成する。
・製品は、平面繊維構造の反対側など、繊維構造の異なる表面に位置する少なくとも2つのコーティング層を備える。
・製品は、当該コーティングと繊維構造との間に中間非繊維層をさらに備える。
・コーティングは、繊維構造の曲面または非水平面に塗布されている。
・コーティングは、非繊維コーティングであり、ポリオレフィン、ポリエステル、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリヒドロキシアルカン酸、またはポリ乳酸などの熱可塑性ポリマー材料または熱硬化性ポリマー材料を含むか、またはそれらからなる。
・コーティングは、熱可塑性生分解性ポリマー材料を含むかまたはそれらからなる、非繊維層を備える。
・コーティングは、少なくとも80wt%、例えば少なくとも90wt%の熱可塑性ポリマー材料または熱硬化性ポリマー材料を含む。
・コーティングは、少なくとも20wt%、例えば少なくとも60wt%のバイオベース材料を含む。
・コーティングは、40wt%未満など、80wt%未満の化石由来の材料を含む。
・コーティングは、バリア特性、視覚特性、機能特性、および/または触覚特性などの表面の機能特性を変更するように適合された機能性コーティングである。
・コーティングまたはその一部は、繊維構造の表面のバリア特性を高めるように適合されており、バリア特性には、耐油性および耐グリース性、耐液体性、耐水性、耐水蒸気性、耐芳香性、耐ガス性、耐酸素性、風味バリアのうちの1つ以上が含まれる。
・コーティングは、繊維構造の表面の硬度、微視的粗さ、巨視的粗さ、摩擦特性、触感特性、または色を変更するように適合される。
・製品は、5~900g/mの範囲、例えば100~800g/mの範囲、200~600g/mの範囲など、の乾燥坪量を有する。
・コーティングは、2~80g/mの範囲、例えば10~35g/mの乾燥坪量を有する。
・コーティングの厚さは少なくとも1μm、例えば2~50μm、例えば5~30μmの範囲である。
・繊維構造は、プラスチック材料および樹脂を実質的に含まない。
・繊維構造は、多層繊維構造であり、少なくとも第1の繊維層と第2の繊維層とを備え、各繊維層はセルロースおよび/またはリグノセルロース繊維材料を備える。
・製品は、さらに、第1の繊維層と第2の繊維層との間に1つ以上の内側繊維層を備え、各内側繊維層はセルロースおよび/またはリグノセルロース繊維材料を含み、好ましくはCTMPまたはBCTMPなどの機械パルプおよび/または損紙を含む。
・セルロースおよび/またはリグノセルロース繊維材料は、漂白または未漂白化学パルプ、セミケミカルパルプ、機械パルプ、サーモメカニカルパルプ、ケミサーモメカニカルパルプ、漂白ケミサーモメカニカルパルプ、リサイクルセルロースおよび/またはリグノセルロース繊維、ミクロフィブリル化セルロースまたはナノフィブリル化セルロースなどのフィブリル化セルロース、ナノセルロース、損紙、セルロース副産物、再生セルロース繊維、および多年生または一年生植物に由来するセルロース繊維またはセルロース繊維の一部を含むその他のセルロース材料のうちの1つ以上を備える。
・繊維構造は、総乾燥物質に対して計算して少なくとも50wt%のセルロースおよび/またはリグノセルロース繊維材料を含む。
・繊維層の1つ以上または繊維構造全体は、発泡形成、水形成、ディップ形成、真空形成、プレス形成、熱形成、または乾式形成、あるいはそれらの組み合わせによって得られる。
・繊維構造は、少なくとも1つの3次元非平面金型面を含む金型を使用して得られる3次元成形繊維構造であり、当該繊維構造は、当該3次元非平面金型面の形状に適合する3次元形状を示す。
・製品またはその一部は、カップやボウルの全体的な形状など、液体または流動性のある材料を保持するのに適した全体的な形状を有する。
・繊維構造は、少なくとも2つの繊維層を含む多層繊維構造である。
・繊維構造のすべての繊維層は、金型内での発泡形成法によって得られる。
・当該乾式コーティングは、粉体コーティングを含有する。
【0014】
本発明の第2の態様によれば、第1の態様による製品を、乳製品、魚類または肉製品などの食品の包装または容器として、または医薬品または化粧品の包装として、あるいはそれらの一部として使用する方法が提供される。
【0015】
本発明の第3の態様によれば、第1の態様による製品を食品の保存、取り扱い、準備または調理への使用が提供される。
【0016】
本発明の第4の態様によれば、セルロース繊維および/またはリグノセルロース繊維と水とを含む少なくとも1つの繊維組成物を準備するステップと、金型内で、当該少なくとも1つの繊維組成物から繊維構造を形成するステップと、粉体コーティング法などの乾式コーティング法によって、成形繊維構造の繊維表面の少なくとも一部にコーティングを施すステップとを含む方法が提供される。
【0017】
第4の態様の様々な実施形態は、下記の箇条書きリストからの少なくとも1つの特徴を含み得る。
・当該形成ステップは、三次元金型を使用して当該少なくとも1つの繊維組成物から三次元繊維構造を形成することを含む。
・当該粉体コーティングプロセスは、繊維構造の当該表面に乾燥粉体を静電的に塗布し、塗布した粉体を好ましくは接触または非接触加熱および/またはホットプレスによって硬化または溶融させてフィルムを形成することを含む。
・コーティングされる繊維構造は少なくとも90%、例えば90~96%の乾燥物質含有量を有する。
・コーティングされる繊維構造は、少なくとも50%、例えば少なくとも60%、例えば少なくとも70%、例えば50~99%の乾燥物質含有量を有する。
・乾燥粉体は、顔料、結合剤、およびさらに1つ以上の添加剤を含み、添加剤は、樹脂および充填剤、例えば重晶石、シリカ、炭酸塩、ケイ酸塩、水酸化アルミニウム、およびそれらの混合物の群から選択され得る。
・当該塗布は、噴霧を含む。
・当該硬化または溶融は、接触または非接触加熱、ホットプレス、IR硬化またはマイクロ波硬化、またはそれらの任意の組み合わせを含み、好ましくは少なくとも80℃、例えば少なくとも120℃、例えば少なくとも150℃の温度への接触または非接触加熱を含む。
・当該硬化または溶融は、80~300℃、例えば120~250℃の温度への接触または非接触加熱を含む。
・当該形成は、水形成、発泡形成、ディップ形成、真空形成、プレス形成、熱形成、乾式形成、またはそれらの任意の組み合わせを含み、好ましくは発泡形成による。
・この方法は、さらに、当該形成ステップの後、コーティングを施す前に、構造を脱水するステップと、脱水された構造をホットプレスして、成形された三次元繊維構造を得るステップとを含み、当該ホットプレスによって、粉体塗装などの乾式コーティングに直接適した表面が生成される。
・コーティングする繊維構造は、少なくとも60%の乾燥物質含有量を有する。
・コーティングを施した後、コーティングされた繊維構造をホットプレスし、例えば2回目のホットプレスを行う。
・コーティングする繊維構造の密度は、少なくとも700kg/mである。
・繊維構造は、少なくとも2つの繊維層を備える多層繊維構造である。
・繊維構造の各繊維層は、それぞれの繊維組成物を金型内で発泡形成することによって得られる。
・当該乾式コーティングは粉体コーティングを含む。
【発明の効果】
【0018】
(本発明の利点)
【0019】
本発明は、繊維基材、特に三次元繊維基材上に滑らかで均一なコーティング膜を作製することを容易にし得る。
【0020】
本発明は、基材上に良好で滑らかなコーティングを調製する目的で、例えば噴霧法などの乾式コーティング法によって、十分に滑らかな基材を得ることを容易にし得る。
【0021】
本発明は、バリア性、光学的特性、視覚的特性、および/または触覚特性などの表面特性が改善された繊維製品を提供し得る。
【0022】
コーティングフィルムの接着不足、特に繊維基材への接着に関連する問題を回避し得る。
【0023】
さらに、繊維基材への接着不足など、ヒートシール性に関連する問題を回避し得る。
【0024】
粉体塗装などの乾式コーティングは、湿式塗装プロセスに比べて多くの利点があり得る。塗装対象物に吹き付けられた粉体塗装組成物は回収して再利用できるため、湿式塗装プロセスに比べて廃棄物とコストを削減し得る。粉体塗装された物体が冷めたら、互いにくっつくことなく積み重ねられ得、押し付けられ得る。粉体塗装のプロセスは、湿式塗装のプロセスよりも迅速である。粉体塗装された表面は、通常、衝撃また曲げによるひび割れが発生しにくい。
【0025】
本発明は、成形繊維製品のコーティングまたは塗料におけるバイオベースの原材料の使用を容易にし得る。
【0026】
本発明は、接触加熱、オーブン加熱、マイクロ波加熱、IR(赤外線)加熱、またはそれらの任意の組み合わせなどのさまざまな方法によって、塗料などの乾式コーティングのフィルム形成を可能にし得る。
【0027】
本方法は、繊維基材の再湿潤に関連する問題を回避し得、より一般的には、既知の水性コーティング方法と比較して、水を使用する必要性(すなわち、水の消費量)が低減され得る。
【0028】
本方法では、コーティングは既存の製造ラインに統合されたステップで準備され得るため、別個の変換ステップは必要ない場合があり得る。
【0029】
本方法、特に粉体塗装は、断熱材などの機能性材料を表面に塗布することを可能にし得る。
【0030】
本方法によって、パターン付き表面を有する成形繊維製品を製造することが可能になる。
【0031】
本製品は、高耐熱性、不燃性、優れた形状追従性または寸法安定性、強度、機能性材料担持性、耐酸性、柔軟性の向上、ガスバリア性の向上、水蒸気バリア性の向上、または耐グリース性および/または耐水性のうちの1つ以上を提供し得る。
【0032】
本製品は、表示包装または温度管理包装に適し得る。
【0033】
本発明の構造および製品は、食品、医薬品、化粧品など、油分および/または水分を含むあらゆる製品の包装、提供、保管、および調製に使用し得る。
【図面の簡単な説明】
【0034】
図1】本発明の少なくともいくつかの実施形態に従ったコーティングされた繊維構造を概略的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0035】
本明細書で別途記載されている場合または文脈から明らかな場合を除き、本明細書で言及されているパーセンテージは、それぞれの組成物の総乾燥重量に基づく重量パーセントとして表される。
【0036】
組成物の乾燥物質含有量は、通常、組成物の総重量に基づく重量パーセンテージとして表す。
【0037】
本文脈において、「乾式コーティング」とは、通常、コーティング材料が乾燥状態で、例えば乾燥粒子、乾燥粉体、または乾燥塗料として表面に塗布または堆積される、任意の適切なコーティング方法を指す。
【0038】
本文脈において、「粉体塗装」とは、通常、実質的に乾燥した粉体または乾燥した塗料を、通常、静電塗装法によって表面に塗布または堆積させる塗装方法を指す。
【0039】
本文脈において、「コーティング」とは、同じコーティングプロセスまたは異なるコーティングプロセスで形成され得る1つ以上のコーティング層からなり得るコーティングを指す。
【0040】
現在の文脈では、耐水性などの「耐性」は、材料または層が問題の物質の浸透に抵抗することを意味する。好ましい実施形態では、材料または層は、撥水性などの「忌避性」を示し、これは、問題の物質が材料または層に容易に浸透し得ないことを意味する。より好ましい実施形態では、材料または層は、防水性などの「防止性」を示し、これは、当該物質が、当該材料または層を含む製品の通常の使用時に材料または層に浸透し得ないことを意味する。つまり、対象物質の浸透に対する耐性は、「耐性」<「忌避性」<「防止性」の順に高くなる。
【0041】
また、本文脈では、「耐性」という言及は「少なくとも耐性がある」という意味であり、つまり、材料または層は撥水性や防水性さえ示し得る。
【0042】
本発明は、新規成形およびコーティングされた繊維製品を提供する。製品の少なくとも一部は、発泡ベースのプロセスによって製造し得る。発泡形成によって、成形された多層構造の製造および個々の層の特性の調整が可能になるという利点がある。
【0043】
本発明によれば、製品は、セルロースおよび/またはリグノセルロース繊維材料を含み、成形プロセスによって得られた繊維構造と、繊維構造の少なくとも1つの表面上の少なくとも1つのコーティング層などのコーティングとを含み、コーティングは、乾式コーティングプロセス、好ましくは粉体コーティングプロセスによって得られたものである。
【0044】
コーティングは、単一のコーティング層からなり得、あるいは、コーティングは、互いに重なり合った2~10のコーティング層など、複数のコーティング層からなり得る。
【0045】
コーティングは、製品の最上部の露出面または層、あるいは最下部の露出面または層を形成し得る。
【0046】
コーティングは、製品の最上層または最下層の、通常、露出した非繊維層を形成し得る。
【0047】
製品は、平面繊維構造の反対側または三次元構造の異なる側など、繊維構造の異なる表面に位置する少なくとも2つのコーティングを含み得る。各コーティングは、1つ以上のコーティング層からなり得る。
【0048】
製品は、平面繊維構造の反対側または三次元構造の異なる側など、繊維構造の異なる表面に位置する少なくとも2つのコーティング層を含み得る。
【0049】
製品は、当該コーティングと繊維構造との間に、例えばプライマー層または炎前処理層などの中間非繊維層または繊維層を含み得る。
【0050】
一実施形態では、製品は、当該コーティングと繊維構造との間に表面精製層を備え得る。
【0051】
プライマー層は、ナノテクノロジーまたは微細構造化技術によって作製され得る。例えば、プライマー層は、ミクロフィブリル化セルロース(MFC)またはナノフィブリル化セルロース(NFC)を含み得る。
【0052】
製品は、本発明によるコーティングに加えて、さらなるコーティングを含み得る。本発明のコーティングは乾式コーティングプロセスによって製造され得るが、最終的なさらなるコーティングは、任意の手段、例えば湿式コーティングプロセスによって製造され得る。さらなるコーティングは、乾式コーティングプロセスによって製造された本発明のコーティングの下または上に位置し得る。
【0053】
一実施形態では、繊維構造の曲面または非水平面にコーティング層が塗布される。
【0054】
コーティングまたはその一部は、熱可塑性ポリマー材料または熱硬化性ポリマー材料を含み得る。
【0055】
通常、コーティングは非繊維層であり、ポリオレフィン、ポリエステル、コポリエステルエラストマー、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ナイロン、ポリヒドロキシアルカン酸、またはポリ乳酸(PLA)などの熱可塑性ポリマー材料または熱硬化性ポリマー材料を含むか、またはそれらからなる。ポリオレフィンは、ポリエチレンおよび/またはポリプロピレンを含み得る。
【0056】
いくつかの実施形態では、コーティングは、非繊維層であり、熱可塑性生分解性ポリマー材料を含むか、またはそれからなる。
【0057】
いくつかの実施形態では、コーティングは、非繊維層であり、熱可塑性バイオベースまたは非化石ベースのポリマー材料を含むか、またはそれからなる。
【0058】
一実施形態では、コーティング層は、少なくとも50wt%、例えば少なくとも80wt%、例えば少なくとも90wt%の熱可塑性ポリマー材料または熱硬化性ポリマー材料を含む。
【0059】
コーティングは、バリア特性、光学特性、視覚特性、および/または触覚特性などの表面の機能特性を変更するように適合された機能層を含み得る。
【0060】
コーティングは、繊維構造の表面のバリア特性を高めるように適合され得る。バリア特性には、油およびグリース耐性、液体耐性、耐水性、水蒸気耐性、芳香耐性、ガス耐性、酸素耐性、風味バリアのうちの1つ以上が含まれ得る。
【0061】
例えば、コーティングは、繊維構造の表面の硬度、微視的粗さ、巨視的粗さ、または摩擦特性を変更するように適合され得る。
【0062】
いくつかの実施形態では、コーティングは、偽造防止やセキュリティ目的などのために、色、金属化効果、色の渦巻き、波、液滴状の隆起、クレーター状の空洞、さまざまな透明度の縞、または3D効果などの視覚的および/または触覚的効果を表面にもたらすために使用され得る。
【0063】
いくつかの実施形態では、コーティングは、人工皮革表面、滑り止め表面、またはエンボス効果などの表面特性を提供する。
【0064】
さらに別の実施形態では、コーティングは、触覚仕上げ層、電気的または他の物理的刺激によって色を変更できる層、または反射率または深さの視覚的印象を与える層を提供し得る。
【0065】
製品の乾燥坪量は、5~900g/mの範囲、例えば100~800g/mの範囲、さらに好ましくは200~600g/mの範囲であり得る。
【0066】
コーティングの乾燥坪量は、2~80g/mの範囲、例えば2~35g/mの範囲、例えば10~30g/mの範囲であり得る。
【0067】
一実施形態では、コーティングの厚さは、少なくとも1μmであり、例えば2~20μmの範囲、例えば5~10μmである。
【0068】
いくつかの実施形態による繊維構造の構造について、下記で説明する。
【0069】
好ましくは、繊維構造は、総乾燥物質に対して計算して、少なくとも30wt%、例えば少なくとも50wt%、例えば50~95wt%のセルロースおよび/またはリグノセルロース繊維材料を含む。
【0070】
好ましくは、繊維構造は、プラスチック材料および樹脂を実質的に含まない。
【0071】
繊維構造は、単層繊維構造であり得る。
【0072】
あるいは、繊維構造は、多層繊維構造であり得る。多層繊維構造は、少なくとも2つの繊維層、例えば、第1の繊維層および第2の繊維層を備え、各繊維層は、セルロースおよび/またはリグノセルロース繊維材料を含む。
【0073】
製品は、第1の繊維層と第2の繊維層との間に、各々がセルロースおよび/またはリグノセルロース繊維材料を含む1つ以上の内側繊維層をさらに備え得る。
【0074】
層の繊維組成は、互いに異なっていてもよく、あるいは同じであってもよい。
【0075】
コーティングされる繊維構造、またはコーティングされる繊維構造の層は、乾式コーティングプロセスを容易にするのに適した顔料および/または充填剤などの添加剤を含み得る。例えば、当該添加剤は、コーティングされる構造または層の水分含有量、滑らかさ、および/または表面エネルギーを増加させ得る。添加剤を含む繊維層は、30~600g/m、例えば30~400g/g/mの範囲の坪量を有し得る。
【0076】
多層繊維構造にすることで、構造の圧縮性を調整しやすくなり得、これは乾式コーティングプロセスの観点から有利となり得る。
【0077】
セルロースおよび/またはリグノセルロース繊維材料は、化学木材パルプ、セミケミカル木材パルプ、機械木材パルプ、サーモメカニカル木材パルプ、ケミサーモメカニカル木材パルプ、漂白ケミサーモメカニカルパルプ、漂白セミケミカルパルプ、砕木パルプ、圧力砕木パルプ、石砕木パルプ、リサイクルセルロースおよび/またはリグノセルロース繊維、ミクロフィブリル化セルロースまたはナノフィブリル化セルロースなどのフィブリル化セルロース、ナノセルロース、損紙、セルロース副産物、再生セルロース繊維、およびセルロース繊維またはセルロース繊維の一部を含むその他のセルロースおよび/またはリグノセルロース材料の1つ以上を含み得る。
【0078】
パルプは漂白されたものでも、漂白されていないものでも、あるいはそれらの混合物でもよい。
【0079】
パルプは精製されたものでも未精製のものでも、あるいはそれらの混合物でもよい。
【0080】
化学パルプは、硫酸塩法、亜硫酸塩法、オルガノソルブ法などの任意の化学パルプ化法から得られるものであり得る。
【0081】
化学パルプは、漂白化学パルプを含み得る。
【0082】
機械パルプは、機械パルプ、サーモメカニカルパルプ(TMP)、ケミサーモメカニカルパルプ(CTMP)、漂白ケミサーモメカニカルパルプ(BCTMP)、セミケミカルパルプ、砕木パルプ(GW)、圧力砕木パルプ(PGW)、石砕木パルプ(SGW)、およびそれらの組み合わせなど、あらゆる機械パルプ化プロセスから得られるものであり得る。
【0083】
損紙は、トリミング損紙を含み得る。
【0084】
セルロース繊維材料および/またはリグノセルロース繊維材料は、非木材パルプを含み得る。
【0085】
一実施形態では、パルプは、カバノキ科(例えば、カバノキまたはポプラ)の樹木、ヤナギ科の樹木、ユーカリ、混合熱帯広葉樹またはマツ、または前述の任意の組み合わせなどの広葉樹から製造され得る。パルプはまた、トウヒやマツなどの針葉樹、またはそれらの組み合わせからも製造され得る。また、パルプは、広葉樹と針葉樹の組み合わせからも製造され得る。
【0086】
一実施形態では、パルプは、わら、アシ、アシガレイ、竹、サトウキビ、バガス、または任意のイネ科植物などの任意の一年生植物から製造し得る。
【0087】
一実施形態では、繊維構造またはその一部のセルロースおよび/またはリグノセルロース繊維材料は、総乾燥物質の10~50wt%の漂白広葉樹化学パルプおよび50~90wt%の漂白ケミサーモメカニカルパルプなどの漂白広葉樹化学パルプおよび漂白ケミサーモメカニカルパルプを含む。
【0088】
通常、製品の1つ以上の表面層は、漂白化学パルプ、例えば漂白広葉樹化学パルプ、例えば漂白シラカバ化学パルプなどの化学パルプを含み得る。
【0089】
一実施形態では、内側繊維層の1つ以上は、ケミサーモメカニカルパルプ(CTMP)または漂白ケミサーモメカニカルパルプ(BCTMP)などの機械パルプ、および/または損紙(例えば、総乾燥物質の60~95wt%のBCTMPおよび5~40wt%の損紙)を含み得るか、またはそれらからなり得る。
【0090】
一実施形態では、1つ以上の内側繊維層は、ケミサーモメカニカルパルプ(CTMP)または漂白ケミサーモメカニカルパルプ(BCTMP)などの機械パルプを含み得るか、またはそれらからなり得る。好ましくは、当該内側繊維層は実質的に損紙を含まない。
【0091】
いくつかの実施形態では、セルロースおよび/またはリグノセルロース繊維材料は、実質的にリグニンを含まないバージン漂白化学パルプなどのバージン木材パルプを含み、これによって、製品は調理、加熱、および安全な食品接触に特に適したものとなり得る。
【0092】
バージンパルプの利点は、残留インクやその他の望ましくない化学物質が含まれていないことである。リサイクルされた廃棄物には、化学物質や微生物の汚染物質が含まれていることが多く、安全な使用に影響を及ぼし得る。化学物質と微生物の混合物がリサイクル材料から浸出すると、さまざまな健康や環境への悪影響を引き起こし得る。個々の化合物の有害性だけでなく、他の化合物および微生物産物との相互作用にもよって、リサイクル材料の毒性およびその排出量が増加し得る。したがって、本発明は、リサイクル材料の使用を避けることが好ましい。
【0093】
漂白化学パルプなどの化学パルプの利点は、リグニンが実質的に含まれていないことである。リグニンを含むパルプは、材料の老化および黄ばみの影響を受けやすい場合があり得る。
【0094】
いくつかの実施形態では、セルロースおよび/またはリグノセルロース繊維材料は、例えば漂白または未漂白機械パルプなどのリグノセルロース繊維材料の形態のリグニンを含む。本発明は、繊維構造中にリグニンが存在することから利益を得ることができる。繊維構造の上にコーティング層があるため、最終的にリグニンを含む繊維材料または層は、周囲、例えば包装内の食品内容物から分離される。
【0095】
一実施形態では、繊維構造のセルロースおよび/またはリグノセルロース繊維材料またはその一部は、漂白された針葉樹化学パルプを含むか、またはそれからなる。
【0096】
一実施形態では、繊維構造のセルロースおよび/またはリグノセルロース繊維材料またはその一部は、漂白された広葉樹化学パルプを含むか、またはそれからなる。
【0097】
一実施形態では、繊維構造のセルロースおよび/またはリグノセルロース繊維材料またはその一部は、漂白された針葉樹化学パルプと漂白された広葉樹化学パルプの混合物を含むか、またはそれらからなる。
【0098】
成形繊維構造またはその一部を製造する場合、射出成形、真空成形、圧縮成形、トランスファー成形、押し出し成形、ブロー成形、ディップ成形、回転成形、発泡成形、積層、深絞り、熱形成、プレス形成、ハイドロフォーミング、吸引形成、密閉金型形成、開放金型形成、乾式形成、発泡形成、またはそれらの組み合わせなどの任意の適切な成形方法を適用し得る。
【0099】
現在の文脈では、「成形」と「形成」という用語は互換的に使用され得る。
【0100】
成形方法は、例えば、金型内乾燥、冷間および熱間プレス、較正プレス、曲げまたはせん断などの各種形成プロセス、または例えば、旋削、穴あけ、成形、研ぎ、ヒートシール、印刷または仕上げ、切断などの機械加工プロセス、またはそれらの任意の組み合わせなどの追加プロセスによって補完され得る。
【0101】
好ましい実施形態では、繊維構造の繊維層の1つ以上、または繊維構造全体が、金型内での発泡形成、水形成、または湿式形成のいずれかによって得られ、好ましくは金型内での発泡形成によって得られる。
【0102】
好ましくは、製品のすべての繊維層は、金型内での発泡形成によって得られる。
【0103】
繊維構造は、少なくとも1つの3次元非平面金型面を含む金型を使用して得られる3次元成形繊維構造であり得る。この場合、繊維構造は、当該3次元非平面金型面の形状に適合する3次元形状を示す。
【0104】
製品またはその一部は、カップまたはボウルの全体形状など、液体または流動性材料を保持するのに適した全体形状を有し得る。
【0105】
一実施形態では、製品の耐油性および耐グリース性OGRは、ASTM F119によって、60℃のオリーブオイルで測定され、10分超、通常10分から6時間、一例では3時間超など、「中等度」以上のレベルである。
【0106】
一実施形態では、製品の耐油性および耐グリース性OGRは、ASTM F119によって、60℃のオリーブオイルで測定され、6時間超、通常6から72時間、一例では3日超など、「中等度」以上のレベルである。
【0107】
一実施形態では、製品の耐湿性は、ISO 2528およびASTM E96によって標準条件23℃および50%RHで測定され、25g/m/d未満、通常100~250g/m/d、一例では150g/m/d未満などの「中程度」以上のレベルである。
【0108】
一実施形態では、製品の耐湿性は、ISO 2528およびASTM E96によって、標準条件23℃および50%RHで測定され、水蒸気透過率は、「良好」以上のレベル、例えば100g/m/d未満、通常10~50g/m/d、一例では30g/m/d未満である。
【0109】
本発明によって、例えば冷蔵食品の包装に適した良好なガスバリア性を得られ得る。一実施形態では、製品の酸素透過率は、ASTM D-3985によって、標準条件23℃、50%RHで測定され、「良好」以上のレベル、例えば100cm/m/d未満、通常50~100cm/m/dの範囲、または50cm/m/d未満である。
【0110】
冷蔵食品には通常、40~60cm/m/dのような高い酸素バリアが必要である。冷蔵食品には通常、1~1.5cm/m/dの水蒸気バリアが必要である。
【0111】
一実施形態では、製品のコーティングされた側または表面の吸水率は、ISO 535、5分後のコブ値によって測定され、100g/m未満、通常50~100g/m、一例では75g/m未満などの「中程度」以上のレベルである。
【0112】
一実施形態では、製品のコーティングされた側または表面の吸水率は、ISO 535、5分後のコブ値によって測定され、50g/m未満、通常5~50g/m、一例では15g/m未満などの「中程度」以上のレベルである。
【0113】
好ましくは、コーティングされる繊維構造の密度は、乾燥固形分重量/体積として計算して、300~1000kg/m、例えば350~800kg/m、例えば450~700kg/m、例えば500kg/mより大きい範囲である。
【0114】
一実施形態では、コーティングされる繊維構造の密度は、乾燥固形分重量/体積として計算して、700~1000kg/m、例えば750~950kg/m、例えば775~900kg/m、例えば800kg/mより大きい範囲である。
【0115】
いくつかの実施形態では、粉体コーティング層の存在によって、繊維構造の上に緻密で閉じた構造または表面層が形成される可能性があるため、繊維構造の密度は、500kg/m未満などの比較的低いものであり得る。
【0116】
いくつかの実施形態では、繊維構造の密度は、800kg/m未満、例えば700kg/m未満、例えば600kg/m未満であり得る。
【0117】
好ましくは、コーティングされる繊維構造の表面の滑らかさは、ISO 8791-2ベントセン法で測定して、50~3000ml/min、例えば100~1000ml/min、例えば150~600ml/分の範囲である。滑らかな表面を有する利点は、例えば噴霧法による粉体コーティングが容易になることである。
【0118】
一実施形態では、コーティングされる繊維構造の表面の滑らかさは、ISO 8791-2ベントセン法で測定して、10~1000ml/分、例えば20~500ml/分、例えば50~250ml/分の範囲である。コーティングされる繊維構造の表面の滑らかさは、400ml/分未満であることが好ましい。滑らかな表面を有することの利点は、例えば噴霧法による粉体コーティングが容易になることである。
【0119】
コーティングされる繊維構造またはその一部、例えば繊維構造の繊維層は、1つ以上の添加剤または添加化学物質を含み得る。一実施形態では、繊維構造の少なくともコーティングされる表面層またはコーティングされる表面部分は、1つ以上の添加化学物質を含む。
【0120】
コーティングされる繊維構造またはその一部、例えば繊維構造の繊維層は、タルク、粘土、炭酸カルシウム、および金属塩顔料、例えばアルミニウム三水和物、石膏、ケイ酸塩、シリカ化合物、および二酸化チタンなどの顔料、バリア剤、ラテックス結合剤、PVA(ポリビニルアルコール)、デンプン、およびCMC(カルボキシメチルセルロース)などの水溶性結合剤、AKD(アルキルケテンダイマーまたはアルケニルケテンダイマー)、ASA(アルケニルコハク酸無水物)、および樹脂などのサイズ剤、CMC、MFC(ミクロフィブリル化セルロース)、およびNFC(ナノフィブリル化セルロース)などの増強剤、の添加剤の1つ以上を含み得る。
【0121】
一実施形態では、添加剤は、CMC(カルボキシメチルセルロース)、MFC(ミクロフィブリル化セルロース)、NFC(ナノフィブリル化セルロース)、またはそれらの任意の組み合わせなどの増強剤を含む。
【0122】
一実施形態では、添加剤は、コーティングされる表面の滑らかさを高め得る顔料などの添加剤を含む。
【0123】
一実施形態では、コーティングされる表面は、繊維構造またはその表面に、アルキルケテンダイマー(AKD)および/またはデンプンなどの表面サイズ剤などの適切な添加剤、例えば疎水化剤を組み込むことによって、より疎水性になる。
【0124】
一実施形態では、繊維構造またはその表面に親水化剤などの適切な添加剤を組み込むことによって、コーティングされる表面の親水性が高められる。
【0125】
添加剤の量は、総乾燥物質から計算して、0.01~10wt%など、例えば0.1~8wt%、例えば1~5wt%などの、0.01~30wt%の範囲であり得る。
【0126】
一実施形態では、添加剤の量は、総乾燥物質から計算して0.01~40wt%の範囲であり得る。
【0127】
添加剤または化学物質は、形成ステップ、好ましくは発泡形成ステップの前に、例えば0.5~15%、例えば0.8~10%、例えば2~10%の濃度で繊維状原料またはスラッシュに添加され得、あるいは、形成前、好ましくは発泡形成前に、例えば繊維状スラッシュと混合される発泡体に添加され得る。
【0128】
一実施形態では、繊維構造またはその繊維層の少なくとも1つは、0.1~5wt%のタルクを含む。
【0129】
一実施形態では、繊維構造またはその繊維層の少なくとも1つは、0.1~5wt%のクレイを含む。
【0130】
一実施形態では、繊維構造またはその繊維層の少なくとも1つは、0.1~5wt%の炭酸カルシウムを含む。
【0131】
一実施形態では、繊維構造またはその繊維層の少なくとも1つは、分散ポリマー、ポリオレフィン、ポリエステル、他の熱可塑性ポリマー、ポリ乳酸などの生分解性ポリマー、デンプンおよびその誘導体、プラストマー、エラストマー、エチレンビニルアルコールの群、およびそれらの任意の誘導体、コポリマーおよび混合物から選択されるバリア剤を含む。
【0132】
一実施形態では、繊維構造またはその繊維層の少なくとも1つは、0.1~5wt%などの、0.1~10wt%の、分散ポリマーバリア剤などのバリア剤を含む。このようなバリア剤は、通常、繊維層の繊維構造の構造全体にわたってバリア特性を提供する。
【0133】
一実施形態では、繊維構造またはその繊維層の少なくとも1つは、スチレンブタジエンラテックス、スチレンアクリレートラテックス、ポリ酢酸ビニルラテックスなどのポリマーラテックス結合剤を0.1~5wt%含む。
【0134】
一実施形態では、繊維構造またはその繊維層の少なくとも1つは、0.1~5wt%のポリビニルアルコール(PVA)を含む。
【0135】
一実施形態では、繊維構造またはその繊維層の少なくとも1つは、0.1~5wt%などの、0.1~20wt%の、デンプンを含む。
【0136】
デンプンは、天然、変性、調理または膨潤したカチオン性デンプンであり得る。
【0137】
一実施形態では、繊維構造またはその繊維層の少なくとも1つは、0.1~5wt%のカルボキシメチル化セルロース(CMC)を含む。
【0138】
一実施形態では、繊維構造またはその繊維層の少なくとも1つは、0.1~20wt%の鉱物充填剤を含む。
【0139】
一実施形態では、繊維構造またはその繊維層の少なくとも1つは、総乾燥物質の0.1~20wt%の顔料を含む。好ましくは、コーティングされる表面層または表面部分は、0.1~20wt%の顔料を含む。
【0140】
一実施形態では、繊維構造またはその繊維層の少なくとも1つは、微結晶セルロース(MCC)、ナノセルロース、またはその他の強化セルロースなどの強化添加剤を0.1~20wt%含む。
【0141】
一実施形態では、繊維構造またはその繊維層の少なくとも1つは、ミクロフィブリル化セルロース(MFC)、ナノフィブリル化セルロース(NFC)、またはその他の強化セルロース、またはそれらの任意の組み合わせなどの強化添加剤を含む。
【0142】
一実施形態では、強化添加剤の量は、0.1~20wt%である。
【0143】
好ましくは、繊維構造またはその繊維層の少なくとも1つは、10wt%未満、例えば5wt%未満、例えば2wt%未満のワックス、プラスチック、およびフッ素化学物質を含む。一実施形態では、繊維構造またはその繊維層の少なくとも1つは、2wt%未満のワックスを含む。一実施形態では、繊維構造またはその繊維層の少なくとも1つは、2wt%未満、例えば1wt%未満のプラスチックを含む。一実施形態では、繊維構造またはその繊維層の少なくとも1つは、2wt%未満、例えば1wt%未満のフッ素化学物質を含む。
【0144】
いくつかの実施形態では、製品にはワックス、プラスチック、フッ素化学物質、特にプラスチックが実質的に含まれない。
【0145】
食品包装用途の製品の場合、添加剤および発泡化学物質は、食品接触材料または包装での使用が承認されているすべての添加剤の中から選択され得る。「食品接触材料」とは、包装や容器など、食品と接触することを意図したすべての材料および物品を指す。
【0146】
繊維構造またはその一部におけるバリア添加剤の量は、繊維層の総乾燥重量から計算して、1~10wt%、例えば5~8wt%の範囲であり得る。
【0147】
いくつかの実施形態では、コーティングまたはその一部は、第1のタイプのバリア特性を付与し、その下の繊維構造は第1のタイプのバリア特性とは異なる第2のタイプのバリア特性を付与し得る。例えば、コーティングまたはその一部は水バリア特性を付与し、繊維構造は油および/またはグリースバリア特性を付与し得る。
【0148】
いくつかの実施形態では、コーティングまたはその一部は、その下の繊維構造によって提供される油および/またはグリースバリア特性などのバリア特性を強化し得る。
【0149】
製品が乾式コーティングプロセスによって調製されたコーティングの下または上にさらなるコーティングを含む場合、当該さらなるコーティングによってもバリア特性が付与され得る。例えば、乾式コーティングプロセスによって調製されたコーティングは酸素バリア特性を付与する一方、湿式コーティングプロセスによって調製されたさらなるコーティングは水バリア特性などの異なるバリア特性を付与し得る。
【0150】
本発明のコーティング構造は、食品接触材料および物品に使用され得る。
【0151】
一実施形態では、本製品は、規制(EC)No1935/2004に準拠する。
【0152】
現在の構造および製品は、食品接触用途に加えて、または代わりに、他の多くの用途分野が考えられる。
【0153】
一実施形態では、少なくとも1つの繊維層は、変性ロジン、ワックス、オイル、またはポリマーなどのサイズ剤を含む。サイズ剤を使用する利点は、発泡形成構造への液体および/または水および/または湿気の望ましくない吸収を低減し得ることである。これによって、製品の耐湿性または耐水性が向上する。
【0154】
ワックスの例は、アルキルケテンダイマー(AKD)である。油の例は、アルケニル無水コハク酸(ASA)である。ポリマーサイズ剤の例は、スチレンアクリレートエマルジョン(SAE)である。
【0155】
好ましいサイズ剤は、AKDまたは同様のワックスである。
【0156】
本発明のいくつかの実施形態に適用可能なサイズ剤は、ロジンベースのサイズ剤など、カチオン性表面サイズ剤またはアニオン性表面サイズ剤であり得る。これらに加えて、またはその代替として、アルキルケテンダイマー(AKD)などのいくつかの反応性サイズ剤を表面サイズ剤として使用し得る。
【0157】
適切なカチオン性サイズ剤には、カチオン性デンプンおよびデンプン誘導体、ならびに対応する炭水化物ベースの天然ポリマーが含まれる。合成ポリマーのうち、例えばスチレン/アクリレートコポリマー(SA)、ポリビニルアルコール、ポリウレタン、およびアルキル化ウレタンを使用し得る。
【0158】
適切なアニオン性サイズ剤には、アニオン性デンプンおよびデンプン誘導体、ならびにカルボキシメチルセルロースおよびその塩などの対応する炭水化物ベースの天然ポリマー、メチルセルロースおよびエチルセルロースなどのアルキルセルロースが含まれ得る。合成ポリマーには、スチレン/マレイン酸コポリマー(SMA)、ジイソブチレン/無水マレイン酸、スチレンアクリレートコポリマー、アクリロニトリル/アクリレートコポリマー、同じ化学官能基を含有するポリウレタンおよび同様のラテックス製品が含まれ得る。
【0159】
一実施形態では、サイズ剤は、アルキルケテンダイマー(AKD)を含む。
【0160】
一実施形態では、顔料、結合剤、およびサイズ剤などの添加剤は、オーブン対応の製品に適合する。
【0161】
いくつかの実施形態では、製品または繊維構造は、1つのみの繊維層を備え得る。
【0162】
いくつかの実施形態では、製品は、少なくとも2つの繊維層、少なくとも3つの繊維層など、1~20の繊維層を備え得る。
【0163】
いくつかの実施形態では、製品は、コーティングと繊維構造との間に、プレコーティング層などの中間層を備える。
【0164】
中間層は、MFC、PVA、CMC、デンプン、タルク、もしくはそれらの組み合わせを含み得るか、またはそれらからなり得る。
【0165】
コーティングと繊維構造との間に中間層を使用する利点は、コーティングの接着性と機能性とが向上し得ることである。
【0166】
本発明の方法によって、コーティングされる繊維構造に滑らかな表面を得ることが可能となり、繊維構造上へのコーティング、特に粉体塗装層の塗布または付着が容易になる。
【0167】
コーティングおよび任意の中間層はすべて、通常、形成段階の後、好ましくはホットプレス段階の後に適用される。
【0168】
1つ以上の中間層は、ホットプレスステップの前、例えば形成ステップまたは成形ステップですでに準備されている場合があり得る。
【0169】
一実施形態では、コーティングは、ホットプレスの前、または2つのホットプレス段階の間に塗布される。したがって、ホットプレス中、施された熱の結果として、コーティング層はフィルム、通常は滑らかで連続したフィルムを形成する。このように、熱によって粉体コーティングが溶けてフィルムに変換される。この方法では、コーティングの露出面に、通常製品の最も外側の表面を形成する、エンボス構造またはその他のテクスチャ構造を調製することが可能になり得る。
【0170】
少なくとも2つのホットプレスステップを含むホットプレス段階は、最終製品の外面を滑らかにし得る。好ましくは、最終製品の外面または露出面のすべてが滑らかになり得る。
【0171】
例えば、第1のホットプレスステップでは、形成ステップで発生した水を除去し得、その後の第2のホットプレスステップでは、塗布された粉体コーティングからフィルム構造を生成し得る。
【0172】
図1は、本発明の少なくともいくつかの実施形態に従ったコーティングされた繊維構造を概略的に示している。この構造は、第1の繊維層1、第2の繊維層2、および第1の繊維層1と第2の繊維層2との間の内側繊維層3を備える。さらに、この構造は、第1の繊維層の上に、中間層4とコーティング5とを備える。他の実施形態では、中間層4は存在しない場合があり得る。いくつかの実施形態では、この構造は、第2の繊維層2の下の繊維層の反対側に第2のコーティング(図示せず)を備え得る。このような第2のコーティングと第2の繊維層2との間には、(第1)のコーティング5と第1の繊維層1との間と同様の方法で中間層が適用され得る。
【0173】
別の実施形態では、製品は、第1の繊維層1などの1つのみの繊維層、コーティング5、および必要に応じて中間層4を備える。
【0174】
さらに別の実施形態では、製品は、任意の中間層を含まない。
【0175】
いくつかの実施形態では、製品は内側繊維層を含まない。他の実施形態では、製品は、第1の繊維層1と第2の繊維層2との間に1つ、2つまたは3つの内側繊維層を含む。
【0176】
多層繊維構造は、最終構造に含まれるすべての繊維、通常コーティングされる繊維構造が発泡形成プロセスを経るようにして得られることが好ましい。
【0177】
発泡形成の利点は、より軽くて嵩高い製品を製造し得ることである。さらに、より均質な形成を達成し得る。発泡体を使用することによって、バッチプロセスで多層繊維層構造を容易に製造可能になる。つまり、すべての繊維層を同じ金型内で形成して金型内で多層スタックを形成し得、そのスタックは、ホットプレスされる。
【0178】
同じ金型内で多層繊維構造全体を脱水する利点は、層を個別に脱水する場合と比較して、脱水中にも層間の結合が強化される場合があり得ることである。
【0179】
いくつかの実施形態では、発泡体形成層に加えて、最終製品は、繊維構造の一部として水形成層をさらに備え得る。このような1つ以上の水で形成された層は、別個のプロセスで形成され得、ホットプレスによって発泡形成層または発泡形成多層構造と結合され得る。水形成の利点は、平坦または平面構造の準備が簡単であることである。水形成法では、通常、個々の繊維層が互いに独立して形成され、金型から取り出される。別個の金型も使用され得る。金型から取り出された後、繊維層はスタックに積み重ねられ、ホットプレスによって互いにおよび/または他の層に接合され得る。
【0180】
一実施形態では、繊維構造は、水形成プロセスによって調製され、互いに結合され、必要に応じて少なくとも1つの発泡形成繊維層に追加され、コーティングされる繊維構造を形成する、いくつかの繊維層を含む。
【0181】
いくつかの実施形態では、繊維構造は、水形成法単独によって形成され得る。
【0182】
一実施形態では、繊維構造は、発泡形成プロセスによって調製された1つ以上の内部繊維層を備える。
【0183】
一実施形態では、繊維構造全体は、発泡形成プロセスによって調製される。
【0184】
好ましくは、繊維構造は、少なくとも1つの三次元の非平面金型表面を含む金型を使用することによって得られる、三次元成形多層繊維構造であり、当該繊維構造は、当該三次元の非平面金型表面形状に一致する三次元形状を示す。
【0185】
例えば、製品は、カップ、皿、ボウル、鍋、クラムシェル、またはトレイの形状を有し得る。
【0186】
通常、製品は、食品または液体の包装もしくは容器、もしくは飲料用カップ、食品トレイもしくは皿などの食品または液体提供製品である。
【0187】
この製品は、食品、もしくは液体、もしくは飲料の、包装、保管、調理、および/または加熱に使用され得る。例としては、加熱を目的とした冷凍食品の包装、ヨーグルトの包装、新鮮な肉や魚のトレイなどがある。
【0188】
例えば、この製品は、食品などのさまざまな工業製品の包装用、肉、魚、チーズ、その他のスライス食品のコールドカットの包装トレイ用、食品、飲料、医薬品、化粧品、湿気や酸素に敏感な材料などの品目の保管および輸送用に使用され得る。
【0189】
いくつかの実施形態では、製品は、耐熱性クッション材または耐熱性シールド材として使用され得る。
【0190】
より一般的には、この製品は、油分や水分を含むあらゆる製品の包装や保管に使用され得る。
【0191】
一例では、製品は、化粧品の包装である。
【0192】
一例では、製品は、医薬品の包装である。
【0193】
この製品は、食品もしくは液体の包装として、または食品もしくは液体の提供製品として、またはベーキング製品として、あるいはそれらの一部として使用され得る。
【0194】
次に、いくつかの実施形態による乾式コーティングされた繊維構造の製造について説明する。
【0195】
この方法は、セルロース繊維および/またはリグノセルロース繊維と水とを含む少なくとも1つの繊維組成物を提供することを含む。金型の中で、当該少なくとも1つの繊維組成物から繊維構造が形成される。その後、成形繊維構造の表面の少なくとも一部にコーティング層が塗布される。当該コーティング層は、粉体コーティング法などの乾式コーティング法によって塗布される。
【0196】
好ましくは、当該形成ステップは、三次元金型を使用して当該少なくとも1つの繊維組成物から三次元繊維構造を形成することを含む。
【0197】
当該粉体塗装プロセスは、乾燥組成物、例えば粉体塗料などの乾燥粉体を繊維構造の当該表面に静電的に塗布し、塗布した粉体を好ましくは加熱によって硬化、溶融またはフィルム形成することを含み得る。
【0198】
熱可塑性粉体コーティング組成物などの乾燥組成物の塗布は、静電噴霧装置を使用することによって、または流動床コーティングまたはミニコーターを使用するなどの他の適切な手段または方法によって行われ得る。
【0199】
粉体塗料などの乾燥組成物は、通常、2~50μmの範囲にある平均粒子サイズを有する粒子を含み得る。
【0200】
いくつかの実施形態では、粉体塗料は、70~90℃の範囲である軟化温度Tを有し、120~180℃の範囲である融点を有し、通常180~220℃の温度で硬化する。
【0201】
いくつかの実施形態では、粉体塗料などの乾燥組成物は、180~240℃の温度で硬化される。
【0202】
有利なことに、コーティングは熱可塑性粉体コーティングを含み、これは、粉体を滑らかで連続したフィルムに溶かすのに十分な熱および時間のみを必要とし得る。
【0203】
コーティングの接着性、潤滑性、柔軟性、伸びなど、さまざまな特性を特定の用途に合わせて最適化し得る。熱可塑性コーティングの場合、粉体は物体や表面に塗布されると、さらに硬化や架橋を必要とせずに、これらの特性を本質的に示し得る。
【0204】
一実施形態では、コーティングされる繊維構造は、少なくとも60%、例えば少なくとも70%、例えば60~80%の乾燥物質含有量を有する。
【0205】
一実施形態では、コーティングされる繊維構造は、少なくとも60%、例えば60~95%の乾燥物質含有量を有する。
【0206】
一実施形態では、コーティングされる表面の当該少なくとも一部は実質的に乾燥している。例えば、コーティングされる繊維構造の最上層は、加熱により乾燥されるなど、実質的に乾燥し得る。
【0207】
当該表面に塗布される乾燥粉体は、顔料およびさらに1つ以上の添加剤を含み得、これらの添加剤は、重晶石、シリカ、炭酸塩、ケイ酸塩、水酸化アルミニウム、ラテックス、ナイロン、ポリエチレン、ポリエステル、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニルなどの樹脂、結合剤、および充填剤、ならびにそれらの混合物の群から選択され得る。
【0208】
一実施形態では、コーティング層は、噴霧によって当該表面上に生成される。本発明は、垂直面または曲面上に直接噴霧することによって粉体塗料コーティングを塗布することを可能にし得る。
【0209】
いくつかの実施形態では、コーティング層を塗布する間、コーティングされる繊維構造は、金属箔シートなどの金属材料で作られた物品の近くまたはその上に置かれる。このようにして、繊維構造は、十分な電荷を得る。
【0210】
コーティング層を生成するための他の手段、例えば、粉体コーティング法によってコーティングフィルムを別途調製し、その後、成形繊維構造の所望の表面に調製されたコーティングフィルムを貼り付けるかまたは押し付けることが、使用され得る。
【0211】
硬化または溶融またはフィルム製造は、接触または非接触加熱、ホットプレス、IR硬化またはマイクロ波硬化、またはそれらの任意の組み合わせを含み得、好ましくは少なくとも120℃、例えば少なくとも150℃の温度に加熱する。
【0212】
一例では、フィルム調製ステップは、乾燥粉体塗料または乾燥粒子などの塗布された乾燥組成物をIR溶融によって溶融する第1のステップと、その後の1つ以上のホットプレスステップによってフィルムを最終的に硬化または調製する第2のステップとを含む。
【0213】
好ましくは、フィルム製造ステップは、ホットプレスなどの接触加熱を含むか、または接触加熱からなる。
【0214】
一実施形態では、接触加熱などのフィルム調製ステップは、合計で2分未満、例えば1分未満の総期間を有し、必要に応じて、複数のステップに分割し得る。
【0215】
圧力は、硬化または溶融またはフィルム調製ステップ、例えば1つ以上のホットプレスステップにおいて加えられ得る。
【0216】
フィルム製造ステップ、例えばホットプレスステップでは、コーティング層にコーティングの片側または両側から熱を加え得る。例えば、熱は下方から繊維構造を通して加えられるか、またはコーティングの上方から加えられる。コーティングの各側から異なる加熱プロファイルを加え得る。
【0217】
ホットプレスでは、通常、ホットプレスされる構造の少なくとも片側の温度は、室温よりも高く、例えば少なくとも50℃、例えば少なくとも100℃、例えば150~240℃の範囲である。
【0218】
例えば、コーティングの上から加えられる温度は、少なくとも200℃になり得る。
【0219】
例えば、コーティングの下方から繊維構造を通して加えられる温度は100℃未満であり得る。
【0220】
ホットプレスでは、より高い圧力が加えられ得る。
【0221】
代替的にまたは追加的に、ホットプレスにおいて、大気圧未満の圧力、例えば60kPa以下の圧力が加えられ得る。
【0222】
ホットプレスは、2つ以上の連続したホットプレスステップを含み得る。当該ホットプレスは、2分未満、例えば30秒未満、例えば20秒未満の総期間を有し得る。
【0223】
ホットプレス中、プレスされる材料の片側または両側から熱が加えられる。一実施形態では、片側のみから熱が加えられる。
【0224】
例えば、ホットプレスは、同じ側から熱を加える2つのホットプレスステップを含み得る。あるいは、異なる側から熱を加える2つのホットプレスステップを含み得る。
【0225】
ホットプレスは、インパルス乾燥を含み得る。
【0226】
コーティングステップは、すべてのホットプレスステップの前に行われ得る。その場合、コーティングされる繊維構造の乾燥物質含有量は少なくとも30%であり得る。
【0227】
コーティングステップは、好ましくは2つのホットプレスステップの間に行われ、その場合、コーティングされる繊維構造の乾燥物質含有量は少なくとも60%であり得る。
【0228】
コーティングステップは、全てのホットプレスステップの後に実施し得る。この場合、コーティングされる繊維構造の乾燥物質含有量は、少なくとも80%、例えば少なくとも90%であり得る。
【0229】
いくつかの実施形態では、最終的なコーティングの厚さは、100μm未満、例えば70μm未満である。
【0230】
次に、繊維構造の発泡形成に関する実施形態についてさらに詳しく説明する。
【0231】
一実施形態では、コーティングされる繊維構造またはその一部は、発泡形成を利用して得られる。
【0232】
いくつかの実施形態では、繊維構造またはその繊維層の少なくとも1つは、繊維を含む繊維スラッシュを提供するステップと、繊維スラッシュの繊維を精製するおよび/または繊維スラッシュにバリア剤を添加するステップと、繊維スラッシュを発泡組成物に調整するステップと、成形などの、発泡組成物を金型内で形成するステップと、脱水するステップと、ホットプレスするステップと、を含む方法によって得られ得る。
【0233】
この方法では、繊維、水、空気、および1つ以上の発泡化学物質を含む発泡組成物が最初に提供される。発泡体はさらに、充填剤、添加剤、顔料、結合剤、増強剤、バリア分散剤およびサイズ剤を含み得る。
【0234】
使用される界面活性剤などの発泡化学物質は、非イオン性、アニオン性、カチオン性、または両性であり得る。界面活性剤の適切な量は、重量で約150~1000ppmである。アニオン性界面活性剤の例としては、アルファオレフィンスルホン酸塩、非イオン性界面活性剤の例としては、PEG-6ラウラミドがある。特定の例としては、ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)、Tween20、それらの混合物が挙げられる。Tween20には少なくとも40wt%のラウリン酸を含有し、残りは主にミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸からなる。
【0235】
好ましくは、発泡化学物質は、SDSなどの少なくとも1つの陰イオン界面活性剤を含むか、またはそれらからなる。粉体塗装は、塗装される表面に低い表面エネルギーを与え得る陰イオン界面活性剤を使用する場合に特に有利であり得る。
【0236】
通常、発泡体中の気泡のサイズ(気泡直径)は、約10~300μm、例えば20~200μm、通常は約20~80μmである。
【0237】
一実施形態では、泡内の気泡サイズ(気泡直径)は、少なくとも100μm、例えば100~200μmである。
【0238】
一実施形態では、発泡に適した組成物は、約0.5~7重量%の粘稠度(スラッシュ重量に対する繊維の量)を有する繊維スラッシュと、水および界面活性剤から形成される発泡とを混合することによって得られ、その空気含有量は、例えば20~80%、50~70体積%など、約10~90体積%、この場合、約0.1~3重量%の繊維含有量を有する発泡繊維スラッシュが生成される。
【0239】
一実施形態では、成形多層繊維構造は、セルロース繊維、水、空気および発泡剤、および必要に応じてバリア剤も含む、少なくとも1つの発泡繊維組成物から成形多層発泡構造を形成するステップと、好ましくは真空を適用することによって構造を脱水するステップと、脱水された構造をホットプレスして成形多層繊維構造を得るステップと、を含む方法によって得られる。多層繊維構造の繊維層の少なくとも1つは、実質的にその構造全体にわたってバリア特性を示す。
【0240】
本明細書において、「形成」、発泡組成物に金型内で三次元形状などの形状を与えるプロセスを指す。
【0241】
好ましい方法では、発泡繊維組成物は、金型に供給される。金型は、通常、金型の内面によって画定されるキャビティまたは内部空間を備える。キャビティ内で、供給された発泡組成物が成形される。
【0242】
発泡組成物を金型に供給して、ある量の発泡組成物、例えば発泡組成物の層を金型の少なくとも1つの内面上に提供し得る。この層は通常非平面であり、金型の内面上に存在し、当該表面の形状に適合する発泡組成物の厚さ、例えば実質的に一定の厚さとして理解され得る。
【0243】
通常、成形ステップは、金型の一部を互いに接近させることによって、金型の内部空間において当該繊維組成物を加圧することを含む。
【0244】
多層発泡繊維構造を形成するステップは、発泡形態の第1の繊維組成物を金型に供給することと、当該第1の繊維組成物を金型内で成形して第1の発泡繊維層を調製することと、を含み得る。その後、第1の繊維層を金型から取り外すことなく、発泡形態の第2の繊維組成物を金型に供給し、金型内で当該第2の繊維組成物を成形して、第2の発泡繊維層を調製することによってプロセスが継続される。その結果、金型内に2層の発泡繊維構造が得られる。
【0245】
特に明記しない限り、「金型の部分」とは、内部空間を画定する役割を果たし、したがって発泡繊維組成物の成形に寄与する金型の部分を指す。
【0246】
第2の発泡繊維層は、供給され、金型内の第1の発泡繊維層の上部または下に位置し得る。また、当該供給ステップはどちらの順序で実行されてもよく、第1の層または第2の層のいずれかを最初に金型内に形成してもよい。
【0247】
当該第1および第2の発泡繊維層を調製するために別個の金型を使用することによって繊維構造が得られ、得られた第1および第2の繊維層が当該ホットプレスステップで接合されることも考えられる。
【0248】
一実施形態では、金型への当該供給は、金型の内部空間または内部体積へ発泡形態の発泡繊維組成物を供給することを含み、当該内部空間は、金型の内面によって制限される。
【0249】
好ましくは、脱水ステップにおける真空の適用は、可能である。
【0250】
最終的な多層発泡繊維構造は、金型を開けることによって金型から取り出される。
【0251】
発泡組成物の供給および成形中に金型の各部分間の距離を調整可能であることが好ましい。
【0252】
第2の繊維組成物などをさらに金型内に供給し始める前に、通常、金型の部品を互いに遠ざけて、金型の内部空間を拡大する必要がある。内部空間の容積は、すでに供給された発泡体を成形するために、およびそれぞれ次に供給される発泡体のための空間を作るために、減少または拡大され得る。
【0253】
金型の内部空間の容積をすべて調整する場合、金型の一部の部分が静止したままになり得、一方、他の部分が移動する。
【0254】
一例では、当該接近中または当該拡大中に、金型の1つ以上の部分が静止したままであり、金型の1つ以上の他の部分が移動する。
【0255】
例えば、金型は、互いに向かい合うように配置され、互いに対して移動可能に配置される、2つの半金型などの2つのサブ金型を備え得る。サブ金型は、互いに近づけて繊維構造を成形し得る。サブ金型を相互に離して内部空間を拡大し、または、さらに遠くに移動して金型を開いて成形繊維構造を金型から取り出し得る。
【0256】
一例では、繊維構造は、2つの部分、すなわち、ネガ金型とポジ金型とを備える金型を使用することによって得られ得るこれらの金型は、2つの部分の間の成形空間または成形キャビティとも呼ばれる内部空間を包み込むように互いに向かい合うように配置され得る。成形または形成される組成物を成形空間に供給し、ネガ金型および/またはポジ金型を互いに近づけて、成形空間の形状に対応する形状を組成物に与える。「接近」とは、ポジ金型およびネガ金型の一方または両方を移動させることによって内部空間が減少するプロセスを指す。
【0257】
構造の脱水は、供給された発泡組成物を含有する金型の内部空間に真空を適用することによって実行され得る。
【0258】
脱水ステップはホットプレスステップの前に行われ、これによりコーティングされる最終繊維製品、すなわちすべての層が互いに結合された繊維構造が得られる。ホットプレスでは、温度は、通常、室温より高く、例えば少なくとも50℃、例えば少なくとも100℃である。
【0259】
成形繊維構造は、例えば真空、加熱、空気乾燥、高周波乾燥、マイクロ波乾燥、またはそれらの任意の組み合わせによって乾燥され得る。
【実施例
【0260】
(実施例)
【0261】
下記では、本発明のいくつかの実施形態に従ってドライコーティング層でコーティングされる繊維構造が一対の金型と呼ばれる2つの部分からなる金型を使用して発泡形成によって得られる実施形態について説明する。
【0262】
下記で説明する特徴および特徴の組み合わせはいずれも、本出願で前述した実施形態および代替案と組み合わせられ得る。
【0263】
この方法は、成形繊維構造を形成するためのものである。この方法では、層が発泡体で形成される。この層は最終製品の一部である。発泡体は「発泡組成物」とも呼ばれ、セルロース繊維および/またはリグノセルロース繊維、水、空気、および1つ以上の発泡化学物質を含む。発泡体には、例えば、充填剤、および増強剤剤、添加剤、顔料、着色剤、および結合剤などの他の通常の製紙用化学物質も含まれ得る。
【0264】
この層は一対の金型によって形成される。金型は、複数の部分金型からなり得る。
【0265】
原則として、一方の金型はネガ金型であり、もう一方の金型は対応するポジ金型である。このようにして、層の形成中に三次元形状が得られる。発泡体の水と空気とは、除去されなければならない。これは主に、金型間の距離を縮め、圧力を加えることによって行われる。圧力によって、金型の間に供給された発泡体から水、発泡化学物質、および空気が押し出される。金型の多孔質表面(金型成形された製品表面)は、繊維が残留層を形成しながら、水と空気の逃げ道を整える。
【0266】
発泡体は、金型の1つを介して供給され得る。金型は互いに距離があり、発泡体のための閉じたキャビティがある。これによって、発泡体の供給が早くなり、タイミングもより自由に選択され得る。
【0267】
発泡体は、両方の金型を介して供給され得る。
【0268】
この例では、対は、上金型と下金型とから形成され、上金型は移動可能であり、一方、下金型は固定されている。発泡体は、下金型を介して供給される。
【0269】
発泡体は、対が互いに離れているとき、または対が互いに対して移動しているときに供給され得る。これによって、形成サイクルが短縮される。例えば、上金型が上昇中でも発泡体を供給し得る。一方、対は、最初に互いに遠ざけられ得、その後のみに発泡体の供給を開始し得る。
【0270】
発泡体を金型に通すことによって、さらなる利点がもたらされる。単層だけでなく、積層プロセスによって複数の層を形成することも可能になった。形成された層は、形成後に対の内側から除去され得る。あるいは、層が形成された後、対は、互いに遠ざけられ得、さらなる層のためにさらに多くの発泡体が供給され得、その後、対を再び互いに近づけられる。ここでも、発泡体は、対が互いに離れているときに、すでに供給され得る。
【0271】
実際には、1~10のさらなる層、有利には2~4のさらなる層を形成し得る。形成およびプレス後、空気および結合していない水分が除去され、繊維構造が得られる。
【0272】
次の段階は、繊維に結合している水を除去するためのホットプレスである。ホットプレスの段階で最終的に層が共に貼りつく。複数のホットプレスステップを連続して適用し得る。
【0273】
驚くべきことに、第1の層の後に、さらなる層を第1の層のいずれかの側に形成し得る。換言すれば、発泡体は、先行の層のどちらの側に供給されてもよい。例えば、最初に1つの内側層を形成して本体層として機能させ、その後、さらなる1つの層を内側層の両側に形成して表面層として機能させ得る。したがって、合計3つの層が存在する。
【0274】
他の方法でも多層繊維構造を作製し得る。繊維構造は、2つの別々の金型対から得られた多層の部分繊維構造を組み合わせ得る。これら2つの対から形成された部分繊維構造を組み合わせ得、ホットプレスし得、単一の繊維構造を得る。例えば、1つの対において、1つの底層を有する1つの内側層が形成され得る。他方の対と同時に、1つの上層を備えた1つの内側層が形成され得る。これらの層を組み合わせると、4層の繊維構造が形成される。
【0275】
複数の層を迅速に形成して1つの繊維構造を構成することは、大きな利点である。発泡体は、第1の層の後にさらなる1つ以上の層を形成する前に交換され得る。異なる特性を有する発泡体は、1つの繊維構造の形成に使用され得る。このように、各層は、互いに異なり得る。繊維構造は、例えば、1種類の発泡体から形成された1つまたは2つの内側層を含み得る。その場合、別の種類の発泡体の少なくとも1つの外層があり得る。したがって、発泡体によって、繊維構造の断面形状が変化し得る。
【0276】
驚くべきことに、繊維構造は、追加の加熱なしで形成され得る。発泡体は含水率が低く空気を多く含有するため、水分は効率よく除去され得、繊維構造は、形成後の形態を保つ。同時に、発泡体は、形状が維持され、エネルギー消費が低くなる。
【0277】
発泡体の温度は15~45℃の範囲、有利には25~35℃の範囲に維持される。必要に応じて、発泡体および/または金型を冷却して、温度を安定して十分に低く保ち得る。
【0278】
このような低温では、繊維は、水分を含有したままである。ホットプレス中、水分は、水および蒸気として排出され、これはまた滑らかな表面を提供し、内部結合に寄与して固体層状繊維構造を形成する。
【0279】
対が互いに離れ始めるとすぐに、発泡体は、金型内部空間に供給される。対が再び互いに近づくと、供給は止まり、対から水が排出される。同時に空気も除去される。
【0280】
プレスによる水と空気との除去は、真空によって促進される場合があり得る。
【0281】
単層の繊維構造を形成し得るが、この方法は、多層を形成する場合に有利である。
【0282】
発泡体は、水、空気、繊維、発泡化学物質から作製される。発泡体は、問題となる繊維の小さな部分または粒子を含有する。また、発泡体の生成を促進し発泡体の形状を維持するために発泡化学物質が使用される。
【0283】
繊維は、その起源および組成が大きく異なり得る。例えば、木材繊維または植物繊維(例えば、わら、バガスおよび竹の繊維)を使用し得るが、人造のセルロース繊維も可能である。
【0284】
適切な発泡体では、水、繊維、および添加剤は、発泡体の気泡壁に均一に分散されている。発泡体は、非凝集性の不均一繊維原料であり、発泡体の空気が繊維およびその他の原料を形成プロセスに運ぶ。発泡体を使用すると、繊維の保持力も非常に高くなる。実際には、繊維の99%超が、担体媒体としての厚い発泡体から形成された繊維構造中に残る。
【0285】
添加剤は、目的に応じて異なる保持特性を有し得る。
【0286】
繊維構造を複数の層で形成することによって、構造の特性をさまざまな方法で調整し得る。例えば、繊維構造の基本構造と表面特性とは、異なる発泡体組成で形成される場合があり得る。実際には、各層は、独自のプロセスパラメータと原材料とを有し得る。例えば、繊維構造の剛体は、安価な繊維で形成され得、表面層は、高品質の繊維で形成され得る。水性繊維スラリーを使用する既知のプロセスと比較して、発泡体では繊維密度がはるかに高くなる。同時に、循環する気泡壁内の水の量も大幅に少なくなり、形成時の水の除去が容易になる。水の量が少ない発泡体によって、高速なプロセスサイクルが可能になる。
【0287】
繊維構造の異なる層の発泡体の割合またはタイプの交換が可能な場合があり得る。
【0288】
特に真空が使用されている場合、発泡体は、金型空間内に十分に迅速に供給され得る。
【0289】
適切な発泡体では、気泡は分離せず、繊維は均一に分散される。形成中、発泡体は、2つの金型間の金型内部空間に分配または供給される。金型内部空間の体積は、必要な層の厚さに応じて調整され得る。
【0290】
例えば、次の層の形成は、先行の層のどちらの側でも行われ得る。また、対が離れている間に発泡体の供給がすでに始まっている場合があり得る。これは、離隔中に、空気が発泡体の前の空間に入ることができずに、金型の空間が即座に発泡体で満たされるため、有利である。
【0291】
発泡体は、金型を通って金型の内部空間に供給される。「金型内部空間」とは、一対の金型間の空間を指す。
【0292】
真空もまた使用され得る。真空は、水および空気の除去に役立つ。真空は、発泡体を供給している間でも適用され得、遅くとも対が互いに接近し始めたときに適用され得る。形成中、金型空間は減少するが、形成後の実際のプレスステップほどではない。さらに、形成された層を所望の金型の表面(内面)上で真空下に保持し、前の層の選択された側にさらなる層を形成することが可能である。
【0293】
繊維構造を均一に形成するために最適な発泡構造を制御するために、加熱なしで形成を行い得る。実際には、形成は、実質的に一定のプロセス温度、有利には15~45℃で行われる。一対の金型に加えて、この温度は、発泡系全体でも維持され得、高い製品品質を実現するための最適な気泡サイズまたは発泡品質が確保される。このようにして、発泡体の寿命を延ばし得る。また、蒸気より空気を除去しやすく、層が損傷されず、プロセスが安定する。実際には、発泡体は、50%を超える空気、有利には55~75%の空気を含む。
【0294】
形成時の最適な発泡体の気泡サイズは、直径10~500μm程度、好ましくは直径50~150μmまたは100~200μmであり得る。
【0295】
驚くべきことに、本発明の発泡プロセスは、既知の水性スラリー形成プロセスと比較して、高い粘稠度と良好な形成とを同時に達成する。当該水ベースのプロセスは、粘稠度がはるかに低く、凝集のために形成が不十分であるため、より長い加熱および脱水時間を必要とする。
【0296】
積層繊維構造は、互いの上部に層として形成される。脱水ステップにおいて、水は、形成構造から金型を通して除去される。層構造は、遅くともホットプレスで結合される。
【0297】
積層繊維構造は、必要に応じた順序で形成され得る。換言すれば、形成は、内側層のいずれから開始してもよいし、表層のいずれから開始してもよい。
【0298】
層の相互の結合は、層の界面を通した脱水によって開始され得る。
【0299】
層の結合は、その後のホットプレスステップで継続され、あるいは遅くともホットプレスステップで起こり、繊維構造内で発生する熱および蒸気、ならびに層を通過する蒸気によって、層間の結合も強化される。
【0300】
層化は同じ繊維で実行され得るが、異なる層では異なる添加剤を使用され得る。
【0301】
ホットプレスは、複数の別個のホットプレス段階を含み得る。熱風または放射加熱またはインパルス乾燥、好ましくは、インパルス乾燥は、繊維構造をホットプレスおよび/または乾燥するために適用され得る。
【0302】
ホットプレスステップの後、高温での任意の追加の乾燥ステップが続き得る。
【0303】
この方法には、繊維、水、空気、および発泡化学物質から発泡体を生成することが含まれる。前述したように、発泡体の特性は変化し得る。さらに、この方法には、相互の距離が変化する一対の金型を使用することが含まれる。換言すれば、金型間の距離は、変化し得る。実際には、発泡体を供給した後、金型を押し付けて水と空気とを除去し、それによって繊維構造を形成する。
【0304】
さらに、この方法は、層を形成するために金型の間に発泡体を供給することをさらに含む。単一の層は、繊維構造を構成し得るが、有利には、繊維構造は複数の層を含み得る。発泡体は、金型が互いに離れているときでも、また金型の対を互いに相対的に移動させるときにも、供給され得る。これによって、プロセスサイクルが短縮され、プロセスと繊維構造とを調整する際の選択肢が増える。
【0305】
この方法は、閉じた金型空間を作成し、閉じたキャビティのような金型空間に大量の発泡体を供給することを含み得る。成形繊維構造は、対から取り出され、ホットプレスに移される。
【0306】
有利には、この対は、上部金型と下部金型とを含む。下金型が固定配置されていながら上金型は可動であるか、あるいは上金型が固定配置されていながら上金型は可動であるか、またはさらにあるいは両方の金型が可動である。
【0307】
閉じた金型空間では、形成中に金型が互いに離隔し得る。離れた後、対は、さらに発泡体が入る空間を与える。
【0308】
実際には、金型間の距離は10~100mm、好ましくは20~80mmである。一実施形態では、金型間の距離は少なくとも5mmである。概して、層が厚ければ厚いほど、距離は長くなる。発泡体の流量は、中程度に保たれる。実際の流量は、毎秒1~3メートルである。
【0309】
前述したように、対の各金型がいくつかの同一の部分金型またはサブ金型を備える形成方法によって、いくつかの同一の繊維構造を並行して得ることができる。
【0310】
各部分またはサブ金型には発泡体が均等に充填される。したがって、成形繊維構造は均一であり、プロセスは迅速である。
【0311】
金型空間に発泡体を充填した後、プレスすることで水分と空気とを除去する。繊維が金型表面に蓄積する間、水と空気とは、金型表面を通過し得る。水の除去は、真空によって促進され得る。水の除去は、対向する金型によって加えられる過剰圧力によっても促進され得る。
【0312】
開示される本発明の実施形態は、本明細書に開示される特定の構造、プロセスステップ、または材料に限定されないが、しかし、関連技術の当業者によって認識されるように、その等価物に拡張されることを理解されたい。また、本明細書で使用される用語は、特定の実施形態を説明する目的のみに使用されており、限定することを意図していないことも理解されたい。
【0313】
本明細書全体にわたる「一実施形態」または「ある実施形態」への言及は、その実施形態に関連して説明される特定の特徴、構造、または特性が本発明の少なくとも1つの実施形態に含まれることを意味する。したがって、本明細書全体の様々な場所に現れる「一実施形態において」または「ある実施形態において」という語句は、必ずしもすべてが同じ実施形態を指すわけではない。
【0314】
本明細書で使用される場合、複数の品目、構造要素、構成要素、および/または材料は、便宜上、共通のリストで提示される場合がある。ただし、これらのリストは、リストの各要素が別個の一意の要素として個別に識別されるかのように解釈される。したがって、そのようなリストの個々の要素は、反対の表示なしに、共通のグループ内での表現のみに基づいて、同じリストの他の要素と事実上同等であると解釈されるべきではない。さらに、本発明のさまざまな実施形態および例は、そのさまざまな構成要素の代替案とともに本明細書で参照され得る。このような実施形態、実施例、および代替案は、互いの事実上等価物として解釈されるべきではなく、本発明の別個の自律的な表現として考慮されるべきであることを理解されたい。
【0315】
さらに、記載された特徴、構造、または特徴は、1つ以上の実施形態において任意の適切な方法で組み合わせられ得る。下記の説明では、本発明の実施形態の完全な理解を提供するために、長さ、幅、形状などの例などの多くの具体的な詳細が提供される。しかしながら、当業者は、本発明が、1つ以上の特定の詳細がなくても、あるいは他の方法、構成要素、材料などを用いて実施できることを認識するであろう。場合によっては、本発明の態様を分かりにくくすることを避けるために、既知の構造、材料、または動作については詳細に図示したり説明したりしていない。
【0316】
前述の例は、1つ以上の特定の用途における本発明の原理を説明するものであるが、進歩性に影響を及ぼすことなくおよび本発明の原理および概念から逸脱することなく、形態、使用法、および実装の詳細において多数の変更を加え得ることは当業者には明らかであろう。したがって、下記に記載の特許請求の範囲による場合を除き、本発明が限定されることは意図されていない。
【0317】
この文書では、動詞「備える」および「含む」は、言及されていない機能を除外したりその存在を要求したりしないオープンな制限として使用されている。従属請求項に記載された特徴は、別段の明示的な記載がない限り、相互に自由に組み合わせられ得る。さらに、この文書全体での「a」または「an」、つまり単数形の使用は複数形を排除するものではないことを理解されたい。
【産業上の利用可能性】
【0318】
本発明は、少なくとも粉体塗装成形繊維品の製造において産業上利用可能である。
【符号の説明】
【0319】
1 第1の繊維層
2 第2の繊維層
3 内側繊維層
4 中間層
5 コーティング
図1
【国際調査報告】