(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-10-23
(54)【発明の名称】均一酵素結合イムノアッセイ
(51)【国際特許分類】
G01N 33/543 20060101AFI20241016BHJP
【FI】
G01N33/543 545Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024522175
(86)(22)【出願日】2022-10-07
(85)【翻訳文提出日】2024-06-06
(86)【国際出願番号】 US2022046083
(87)【国際公開番号】W WO2023064185
(87)【国際公開日】2023-04-20
(32)【優先日】2021-10-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
(71)【出願人】
【識別番号】300004500
【氏名又は名称】アイデックス ラボラトリーズ インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】IDEXX Laboratories, Inc.
【住所又は居所原語表記】One IDEXX Drive, Westbrook, Maine 04092, United States of America
(74)【代理人】
【識別番号】230104019
【氏名又は名称】大野 聖二
(74)【代理人】
【識別番号】100119183
【氏名又は名称】松任谷 優子
(74)【代理人】
【識別番号】100149076
【氏名又は名称】梅田 慎介
(74)【代理人】
【識別番号】100173185
【氏名又は名称】森田 裕
(74)【代理人】
【識別番号】100162503
【氏名又は名称】今野 智介
(74)【代理人】
【識別番号】100144794
【氏名又は名称】大木 信人
(74)【代理人】
【識別番号】100204582
【氏名又は名称】大栗 由美
(72)【発明者】
【氏名】ガグナー,ジェニファー
(72)【発明者】
【氏名】カーレ,ディラージ
(72)【発明者】
【氏名】パッチ,ダニエル,ウェイン
(72)【発明者】
【氏名】ペック,エヴァン,マイケル
(72)【発明者】
【氏名】サルター,ジェームズ,ロバート
(72)【発明者】
【氏名】ターメル,クリストファー,ピーター
(57)【要約】
本開示は、試料中の分析物の存在または量を決定する方法および該方法に使用するためのスライドに関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
試料中の分析物の存在または量を決定するためのスライドであって、
(i)第1のポリマー中に分散された結合パートナー-酵素コンジュゲートを含む第1の層であって、前記結合パートナー-酵素コンジュゲートは前記分析物に特異的である、第1の層と;
(ii)第2のポリマー中に分散された、分析物がその表面に結合した固体粒子を含む第2の層と;
(iii)第3のポリマー中に分散された、前記酵素の基質を含む第3の層と
を含み、前記基質と前記酵素の相互作用が検出可能なシグナルを生成する、スライド。
【請求項2】
前記結合パートナーが、抗体である、請求項1に記載のスライド。
【請求項3】
前記第1の層と前記第2の層の間または前記第2の層と前記第3の層の間の少なくとも一方に介在層をさらに含み、前記介在層が各層の間の試料の拡散を制限する、請求項1に記載のスライド。
【請求項4】
前記第1の層が、ポリエステル膜であり、前記ポリエステル膜の厚さが、約100μmである、請求項1に記載のスライド。
【請求項5】
前記第1のポリマー中に分散された前記結合パートナー-酵素コンジュゲートの濃度が、約5μg/mL~約50μg/mLの範囲である、請求項1に記載のスライド。
【請求項6】
前記結合パートナー-酵素コンジュゲート中の前記酵素が、ラッカーゼ、ベータ-ガラクトシダーゼ、ベータ-ラクタマーゼ、およびルシフェラーゼからなる群から選択される、請求項1に記載のスライド。
【請求項7】
前記結合パートナー-酵素コンジュゲート中の前記酵素が、ミセリオフトラ・サーモフィラ(Myceliophthora thermophila)、サーモセロマイセス・サーモフィラ(Thermothelomyces thermophila)、ボトリチス・アクラダ(Botrytis aclada)、ストレプトマイセス・シアネス(Streptomyces cyanes)、およびサーマス・サーモフィルス(Thermus thermophilus)からなる群から選択されるラッカーゼである、請求項1に記載のスライド。
【請求項8】
前記第2のポリマーが、細孔径0.8μmのポリカーボネートを有するポリカーボネートトラックエッチド(PCTE)メンブレンである、請求項1に記載のスライド。
【請求項9】
前記固体粒子が、直径約0.5μm~約5.0μmのラテックス粒子である、請求項1に記載のスライド。
【請求項10】
前記第2のポリマー中の、分析物がその表面に結合した前記固体粒子の濃度が、約5重量%~約30重量%の範囲である、請求項1に記載のスライド。
【請求項11】
前記第2の層の厚さが、約2μm~約20μmの範囲である、請求項1に記載のスライド。
【請求項12】
前記第3の層が、セルロースポリマーである、請求項1に記載のスライド。
【請求項13】
前記第3のポリマー中の前記基質の濃度が、約0.1重量%~約5重量%の範囲である、請求項1に記載のスライド。
【請求項14】
前記第3の層の厚さが、約25μm~約300μmの範囲である、請求項1に記載のスライド。
【請求項15】
前記結合パートナー-酵素コンジュゲート中の前記酵素が、ラッカーゼであり、前記基質が、TMBと二価酸との間で形成されたイオン対として存在する3,3’,5,5’-テトラメチルベンジジン(TMB)である、請求項1に記載のスライド。
【請求項16】
前記二価酸が、コハク酸、シュウ酸、マロン酸、グルタミン酸、アジピン酸、およびピメリン酸からなる群から選択される、請求項15に記載のスライド。
【請求項17】
前記二価酸が、コハク酸である、請求項16に記載のスライド。
【請求項18】
試料中の分析物の存在または量を決定するためのスライドであって、
(i)第1のポリマー中に分散された粒子の表面に付着した結合パートナー-酵素コンジュゲートを含む第1の層であって、前記結合パートナー-酵素コンジュゲートは前記分析物に特異的である、第1の層と;
(ii)第2のポリマー中に分散された前記酵素の基質を含む第2の層と
を含み、前記基質と前記酵素の相互作用が検出可能なシグナルを生成する、スライド。
【請求項19】
前記結合パートナーが、抗体である、請求項18に記載のスライド。
【請求項20】
前記第1の層と前記第2の層との間に介在層をさらに含み、前記介在層が、各層の間の試料の拡散を制限する、請求項18に記載のスライド。
【請求項21】
前記第1の層が、ガラス繊維膜である、請求項18に記載のスライド。
【請求項22】
前記第1のポリマー中の粒子の表面に付着した前記結合パートナー-酵素コンジュゲートの濃度が、約5μg/mL~約50μg/mLの範囲である、請求項18に記載のスライド。
【請求項23】
前記第1の層の厚さが、約50μm~約500μmの範囲である、請求項18に記載のスライド。
【請求項24】
前記第2の層が、セルロースポリマーである、請求項18に記載のスライド。
【請求項25】
前記第2のポリマー中の前記基質の濃度が、約0.1重量%~約5重量%の範囲である、請求項18に記載のスライド。
【請求項26】
前記第2の層の厚さが、約25μm~約300μmの範囲である、請求項18に記載のスライド。
【請求項27】
前記結合パートナー-酵素コンジュゲート中の前記酵素が、ラッカーゼであり、前記基質が、TMBと二価酸との間で形成されたイオン対として存在する3,3’,5,5’-テトラメチルベンジジン(TMB)である、請求項18に記載のスライド。
【請求項28】
前記二価酸が、コハク酸、シュウ酸、マロン酸、グルタミン酸、アジピン酸、およびピメリン酸からなる群から選択される、請求項27に記載のスライド。
【請求項29】
前記二価酸が、コハク酸である、請求項28に記載のスライド。
【請求項30】
試料中の分析物の存在または量を決定する方法であって、
(i)分析物を含有することが疑われる試料を用意するステップと;
(ii)前記試料を請求項1に記載のスライドの第1の層と接触させるステップと;
(iii)検出可能なシグナルが存在するかどうかを決定するステップと
を含む方法。
【請求項31】
前記検出可能なシグナルの強度を測定するステップをさらに含む、請求項30に記載の方法。
【請求項32】
試料中の分析物の存在または量を決定する方法であって、
(i)分析物を含有することが疑われる試料を用意するステップと;
(ii)前記試料を請求項1に記載のスライドの第1の層と接触させるステップと;
(iii)検出可能なシグナルが存在するかどうかを決定するステップと
を含む方法。
【請求項33】
前記検出可能なシグナルの強度を測定するステップをさらに含む、請求項32に記載の方法。
【請求項34】
試料中の分析物の存在または量を決定する方法であって、
(i)分析物を含有することが疑われる試料を用意するステップと;
(ii)前記試料を粒子の表面に付着した結合パートナー-酵素コンジュゲートと接触させて、前記粒子の表面に付着した結合パートナー-酵素コンジュゲートおよび前記試料を含む混合物を得るステップであって、前記混合物中の分析物は、前記粒子の表面から前記結合パートナー-酵素コンジュゲートを移動させることができる、ステップと;
(iii)前記混合物から前記粒子を分離して、粒子を含まない混合物を得るステップと;
(iv)前記粒子を含まない混合物を、ポリマー中に分散された前記酵素の基質を含むポリマーと接触させるステップと
を含み、前記基質と前記酵素の相互作用が検出可能なシグナルを生成する、方法。
【請求項35】
乾燥されたラッカーゼを含む試料中の分析物の存在または量を決定するための乾式スライド。
【請求項36】
前記ラッカーゼが、前記分析物に特異的な抗体にコンジュゲートしている、請求項35に記載のスライド。
【請求項37】
TMBおよびコハク酸をさらに含む、請求項36に記載のスライド。
【請求項38】
TMBおよびコハク酸を含む試料中の分析物の存在または量を決定するための乾式スライド。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2021年10月15日に出願された米国仮特許出願第63/256030号の利益を主張する。その内容は明示的に本明細書に組み込まれる。
【0002】
連邦政府による資金提供を受けた研究開発の記載
該当なし。
【0003】
コンパクトディスクによる提出資料の参照による援用
該当なし。
【背景技術】
【0004】
本技術は、スライドを使用し、洗浄ステップなどのいずれの分離ステップも要さない均一酵素イムノアッセイに関する。
【0005】
イムノアッセイは、物質の複雑な混合物を頻繁に含有する試験試料、典型的には溶液中の物質の存在または濃度を測定する技術である。典型的には、試験試料は血清または尿などの生体液である。イムノアッセイは、抗体または他のタンパク質が、1種または極めて限られたグループの分子に高い特異性で結合するユニークな能力に基づく。抗体に結合する分子は抗原と呼ばれる。イムノアッセイを行って抗原または抗体のいずれかの存在または濃度を測定することができる(すなわち、抗原または抗体のいずれかが分析物であり得る)。いずれの場合でも、アッセイの特異性は、分析物が、分析される試料中に存在し得る他の物質を除外して、その特異的結合パートナーに結合することができる程度に依存する。特異性の必要性に加えて、正確な測定を可能にするのに十分に高い分析物に対する親和性を有する結合パートナーを選択しなければならない。
【0006】
イムノアッセイの要件は、特異的結合イベントに応じて測定可能なシグナルを生成する手段である。これは、分析物がその結合パートナーに結合すると起こる、光散乱または屈折率などの一部の物理学的特性の変化を測定することによって達成することができる。多くのイムノアッセイは、検出可能な標識と会合している結合パートナーの使用に依存する。検出可能な標識と会合した結合パートナーはしばしばトレーサーと呼ばれる。放射性元素(ラジオイムノアッセイで使用される);酵素;蛍光、燐光、および化学発光色素;ラテックスおよび磁性粒子;色素結晶子;金、銀、およびセレンコロイド粒子;金属キレート;補酵素;電気活性基;オリゴヌクレオチド、安定なラジカルなどを含む多種多様な検出可能な標識が使用されている。このような検出可能な標識は、遊離トレーサーと結合トレーサーの分離後に、または結合イベントがトレーサーによって生成されるシグナルの変化をもたらすように系を設計することによって、結合イベントの検出および定量化を可能にする。
【0007】
しばしば分離イムノアッセイまたは不均一イムノアッセイと呼ばれる、分離ステップを要するイムノアッセイは、複数のステップ、例えば、未結合トレーサーからその結合パートナーに結合しているトレーサーを分離するための表面の慎重な洗浄を典型的には要する。分離ステップなしで実行される、シグナルが結合によって影響を受けるイムノアッセイは、均一イムノアッセイと呼ばれる。均一イムノアッセイは、単に試薬と試料を混合し、物理的測定を行うことによって行われる。均一イムノアッセイは不均一イムノアッセイよりも実施するのが容易である。
【0008】
使用される方法にかかわらず、イムノアッセイで生成されるシグナルの解釈には、試料媒体の特性を模倣した標準を参照することが要求される。定性的アッセイの場合、標準は、分析物を含まない参照試料および検出可能と考えられる最低濃度の分析物を有する陽性試料からなり得る。定量的アッセイには、公知の分析物濃度を有する追加の標準が要求される。試験試料のアッセイ反応と標準によって生成されるアッセイ反応の比較によって、試料中の分析物の存在または濃度に関してシグナル強度を解釈することが可能になる。
【0009】
イムノアッセイは競合であっても非競合であってもよい。競合イムノアッセイでは、試料中の抗体が、抗原と結合するのにトレーサー(すなわち、検出可能な標識に連結した抗体)と競合する。そのため、抗体に結合したトレーサーの量を測定する。競合イムノアッセイでは、抗体に結合したトレーサーの量が、試料中の抗体の濃度に反比例する。これは、試料中に大量の抗体がある場合、より多くの抗原が試料中の抗体に結合し、トレーサーに結合するために利用可能な抗原が少なくなるからである。
【0010】
「サンドイッチアッセイ」とも呼ばれる非競合イムノアッセイでは、試料中の抗原を表面に固定された抗体に結合させ、次いで、検出可能な標識に付着している二次抗体を抗原に結合させる。次いで、結合した検出可能な標識の量を測定する。競合イムノアッセイと異なり、非競合イムノアッセイでは、反応が試料中の抗原の濃度に正比例する。これは、抗原が試料中に存在しない場合、二次抗体上の検出可能な標識は結合しないからである。
【0011】
これらの技術は抗体-抗原結合パートナーに限定されない。同様のアッセイを、タンパク質(抗体ではない)を使用して実施して、タンパク質に特異的に結合する基質の存在または濃度を決定することができる。これらのアッセイにおけるトレーサーは、例えば、タンパク質に連結した検出可能な標識またはタンパク質に結合する分子に連結した検出可能な標識であり得る。
【0012】
イムノアッセイは、例えば、ガスクロマトグラフィー(GC)および高速液体クロマトグラフィー(HPLC)などの、試験試料中の物質の存在または濃度を測定する他の分析方法にしばしば関連する抽出および他の複雑な試料後処理手順および長いアッセイ時間を回避するので、これらの他の分析方法よりも有利である。
【0013】
しかしながら、改善の余地があり、例えば、より高い感度を示すイムノアッセイが、実施がより容易であり、および/または実施があまり高価でない。
【0014】
本発明のこれらのおよび他の特徴および利点は、本開示の残りの部分、特にその全てが本発明の原理を例として示す好ましい実施形態の以下の詳細な説明から明らかになるだろう。
【0015】
本出願におけるいずれの参考文献の引用も、このような参考文献が本出願に対する先行文献であるものと解釈されるべきではない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
本技術は、スライドを使用し、洗浄ステップなどのいずれの分離ステップも要さない均一酵素イムノアッセイに関する。本技術はまた、該アッセイに使用されるスライドに関する。
【課題を解決するための手段】
【0017】
一実施形態では、試料中の分析物の存在または量を決定する方法は、
(i)分析物を含有することが疑われる試料を用意するステップと;
(ii)試料を粒子の表面に付着した結合パートナー-酵素コンジュゲートと接触させて、粒子の表面に付着した結合パートナー-酵素コンジュゲートおよび試料を含む混合物を得るステップであって、混合物中の分析物は、粒子の表面から結合パートナー-酵素コンジュゲートを移動させることができる、ステップと;
(iii)混合物から粒子を分離して、粒子を含まない混合物を得るステップと;
(iv)粒子を含まない混合物を、ポリマー中に分散された酵素の基質を含むポリマーと接触させるステップと
を含み、基質と酵素の相互作用が検出可能なシグナルを生成する。
【0018】
一実施形態では、本方法は、2つの層を含むスライドを使用する。2つの層は、
(i)第1のポリマー中に分散された粒子の表面に付着した結合パートナー-酵素コンジュゲートを含む第1の層であって、結合パートナー-酵素コンジュゲートは分析物に特異的である、第1の層;および
(iii)第2のポリマー中に分散された酵素の基質を含む第2の層
であり、基質と酵素の相互作用が検出可能なシグナルを生成する。
【0019】
2つの層を含むスライドを使用して、試料中の分析物の存在または量を決定する方法は、
(i)分析物を含有することが疑われる試料を用意するステップと;
(ii)試料をスライドの第1の層と接触させるステップと;
(iii)検出可能なシグナルが存在するかどうかを決定するステップと
を伴う。
【0020】
一実施形態では、本方法は、3つの層を含むスライドを使用する。3つの層は、
(i)第1のポリマー中に分散された結合パートナー-酵素コンジュゲートを含む第1の層であって、結合パートナー-酵素コンジュゲートは分析物に特異的である、第1の層;
(ii)第2のポリマー中に分散された、分析物がその表面に結合した固体粒子を含む第2の層;および
(iii)第3のポリマー中に分散された、酵素の基質を含む第3の層
であり、基質と酵素の相互作用が検出可能なシグナルを生成する。
【0021】
2つの層を含むスライドを使用して、試料中の分析物の存在または量を決定する方法は、
(i)分析物を含有することが疑われる試料を用意するステップと;
(ii)試料をスライドの第1の層と接触させるステップと;
(iii)検出可能なシグナルが存在するかどうかを決定するステップと
を伴う。
【0022】
一実施形態では、本方法は、検出可能なシグナルの強度を測定するステップをさらに含む。
【0023】
一実施形態では、本方法はいずれの分離ステップも要さない。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】本明細書に記載される酵素結合免疫吸着測定法に使用されるスライドの一般的な構造を示す図である。
【
図2】本明細書に記載される酵素結合免疫吸着測定法が作用する原理を示す図である。
【
図3A】本明細書に記載される均一酵素イムノアッセイからのスライドの読み取り層を示す図である。
図3Aは、基質としてTBMを使用したアッセイにおける読み取り層を示す。
【
図3B】本明細書に記載される均一酵素イムノアッセイからのスライドの読み取り層を示す図である。
図3Bは、基質としてTMBとコハク酸との間のイオン対を使用したアッセイにおける読み取り層を示す。
【
図4A】本明細書に記載される酵素結合免疫吸着測定法に使用される2層スライドの一般的な構造を示す図である。
【
図4B】任意の両面テープ層および任意の支持層をさらに含む2層スライドの構造を示す図である。
図4Bでは、読み取り層が、固体PET支持体に付着したWhatman 595膜である。
【
図4C】任意の両面テープ層および任意の支持層をさらに含む2層スライドの構造を示す図である。
図4Cでは、読み取り層が、固体PET支持体上にコーティングされたセルロースポリマーである。
【
図5a】本方法がスライドを使用する原理を示す図であり、(i)粒子の表面に付着した結合パートナー-酵素コンジュゲートを含む層と、(iii)本明細書に記載される読み取り層とを含む。
【
図6】第1の水性試料と第2の水性試料の適用の間の時間、tの関数としての、第1の水性試料を、溶解性両面テープによって分離されている結合パートナー-酵素コンジュゲート層と読み取り層を有するスライドに適用し、引き続いて第2の水性試料を適用した場合に湿っている読み取り層の面積パーセントのプロットである。
【
図7】結合パートナー-酵素コンジュゲート層と読み取り層を有するスライドを用いて、SDMAを含有する試料をSDMAについてアッセイした場合の応答対SDMA濃度のプロットである。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本技術は、スライドを使用し、洗浄ステップなどのいずれの分離ステップも要さない均一酵素イムノアッセイを包含する。
【0026】
本技術はまた、酵素結合免疫吸着測定法に使用されるスライドを包含する。
【0027】
1.定義
「分析物」という用語は、この用語が本明細書で使用される場合、試料中のその存在または濃度を決定することを意図しており、結合パートナー(例えば、抗原または抗体)に結合する(すなわち、これと複合体を形成する)、生体液などの試料中に存在する分子(例えば、抗体または抗原)を指す。
【0028】
「複合体」は、この用語が本明細書で使用される場合、分子実体間の共有結合を伴わない2つ以上の分子実体(イオン性であっても帯電していなくてもよい)の会合によって形成される種である。複合体の例は、抗体と抗原の会合およびペプチドと受容体の会合である。
【0029】
「ハプテン」という用語は、この用語が本明細書で使用される場合、動物に注射した場合に抗体形成を誘導しないが、動物に注射した場合に担体タンパク質に連結して免疫応答を誘発する抗原(免疫原)を提供して、抗体の形成をもたらすことができる分子である。得られた抗体は、公知の抗体単離技術によって単離され得る。ハプテンは得られた抗体に結合する。
【0030】
「抗原」という用語は、本明細書で使用される場合、当技術分野で認識されている意味を有する、すなわち、体に導入した場合に、抗体の産生を刺激する物質である。
【0031】
「抗体」という用語は、本明細書で使用される場合、当技術分野で認識されている意味を有する、すなわち、抗原の体への導入のために産生されるタンパク質である。
【0032】
「結合パートナー」という句は、この句が本明細書で使用される場合、特異性を有して第2の分子に結合する分子を意味する。例えば、第2の分子が抗原/抗体であり得、「結合パートナー」が抗体/抗原であり得る。同様に、第2の分子が受容体のペプチドであり得、「結合パートナー」が受容体であり得るか、または第2の分子が受容体であり得、「結合パートナー」がペプチドであり得る。第2の分子が分析物であり得る。
【0033】
「特異性を有して」、「特異的に結合する」、「特異性を有して分析物に結合する」、「分析物に特異的である」という句、および同様の句は、本明細書で使用される場合、当技術分野で認識されている意味を有する、すなわち、結合パートナーが、分析物(または分析物のクラス)を認識し、他の非特異的分子に結合するよりも高い親和性でこれに結合する。例えば、他の非特異的分子よりも効率的に抗原に結合する、抗原に対して産生される抗体は、抗原に特異的に結合すると記載され得る。結合特異性は、例えば、酵素結合免疫吸着測定法(ELISA)、ラジオイムノアッセイ(RIA)、またはウエスタンブロットアッセイなどの当技術分野で公知の方法論を使用して試験することができる。非特異的分子は、分析物と共通のエピトープを共有しない分子である。
【0034】
「エピトープ」という句は、本明細書で使用される場合、分析物がその結合パートナーによって認識され、これに特異的に結合することができるように、分析物の1つまたは複数の決定基またはエピトープ部位を定義するような構造、空間、および極性配置を有する分析物の一部を意味する。「エピトープ部分」という句は、本明細書で使用される場合、エピトープ部分またはエピトープ部分を含む分子実体を意味する。
【0035】
「結合パートナー-酵素コンジュゲート」という句は、この用語が本明細書で使用される場合、検出可能な標識として作用する酵素に共有結合している結合パートナーを意味する。例えば、結合パートナー-酵素コンジュゲートは、抗原に特異的な抗体であって、検出可能な標識として作用する酵素にコンジュゲート(すなわち、共有結合)している抗体であり得る。抗原は、抗体が抗原に特異的に結合するように、抗体によって認識される1つまたは複数の決定基またはエピトープ部位(すなわち、「エピトープ部分」)を定義する原子の構造、空間、および極性配置を有する。
【0036】
「検出可能な標識」という句は、本明細書で使用される場合、結合パートナー-酵素コンジュゲートの検出および定量を可能にする結合パートナー-酵素コンジュゲートの部分を意味する。例えば、結合パートナー(例えば、抗体)に共有結合している酵素の基質と接触すると変色をもたらすことができる酵素は、抗体および酵素を含む結合パートナー-酵素コンジュゲートの「検出可能な標識」である。
【0037】
結合パートナー-酵素コンジュゲートは、酵素にコンジュゲートした抗体であり得る。結合パートナー-酵素コンジュゲートは、酵素にコンジュゲートしたペプチドの受容体であり得る。結合パートナー-酵素コンジュゲートは、酵素にコンジュゲートした抗原であり得る。結合パートナー-酵素コンジュゲートは、酵素にコンジュゲートした受容体に特異的なペプチドであり得る。
【0038】
「実質的に含まない」という句は、本明細書で使用される場合、10%未満、好ましくは5%未満、より好ましくは2%未満、最も好ましくは1%未満を意味する。
【0039】
「比例する」という句は、本明細書で使用される場合、測定された値と何かの量との間の対応または関係が存在することを意味する。例えば、「シグナルの強度は試料中の抗原の濃度に正比例する」という句は、シグナルの強度が試料中の抗原の濃度に対応することを意味する。測定された値および量は線形相関し得る。
【0040】
「約」という用語は、本明細書で使用される場合、±10%、好ましくは±5%、より好ましくは±2%、最も好ましくは±1%を意味する。
【0041】
2.方法の説明
本技術は、試料中の分析物の存在または量を決定する方法に関する。本技術はまた、アッセイに使用されるスライドに関する。
【0042】
1.読み取り層を含むスライドを使用したアッセイ方法
一実施形態では、試料中の分析物の存在または量を決定する方法は、
(i)分析物を含有することが疑われる試料を用意するステップと;
(ii)試料を粒子の表面に付着した結合パートナー-酵素コンジュゲートと接触させて、粒子の表面に付着した結合パートナー-酵素コンジュゲートおよび試料を含む混合物を得るステップであって、混合物中の分析物は、粒子の表面から結合パートナー-酵素コンジュゲートを移動させることができる、ステップと;
(iii)混合物から粒子を分離して、粒子を含まない混合物を得るステップと;
(iv)粒子を含まない混合物を、ポリマー中に分散された酵素の基質を含むポリマーと接触させるステップと
を含み、
基質と酵素の相互作用が検出可能なシグナルを生成する。
【0043】
ポリマー中に分散された酵素の基質を含むポリマーは、本明細書において読み取り層と呼ばれる。読み取り層は、酵素が基質と相互作用すると、検出可能なシグナル(変色など)を生成する酵素の基質を含む。この実施形態では、検出ステップを除いて、全ての反応を、反応容器中、スライド外で実施することができる。
【0044】
この実施形態では、結合パートナー-酵素コンジュゲートを、分析物がその表面に付着した粒子と共にインキュベートする。結合パートナー-酵素コンジュゲートは、粒子の表面上の分析物と複合体を形成して、結合パートナー-酵素コンジュゲートがその表面に付着した粒子を提供する。その存在または量を決定するつもりである分析物を含有することが疑われる試料を、結合パートナー-酵素コンジュゲートがその表面に付着した粒子と合わせる。試料中の分析物は、粒子の表面に結合した分析物と競合して、分析物と結合パートナー-酵素コンジュゲートの複合体を形成する(すなわち、結合パートナー-酵素コンジュゲートが分析物に結合し、粒子から放出される)。次いで、得られた溶液のアリコートを、粒子を除去することなく、取り出し、読み取り層に適用する。酵素は読み取り層中の基質と相互作用して、検出可能なシグナル(例えば、変色)を形成する。
【0045】
粒子から分離された、分析物と結合パートナー-酵素コンジュゲートの複合体を読み取り層に適用すると、結合パートナー-酵素コンジュゲートが、基質との反応を触媒して、発色などのシグナルを生成し、これを測定する。読み取り層でシグナルを測定する。シグナルの強度は試料中の分析物の濃度に正比例する、すなわち、試料中の分析物濃度が高いほど、シグナルが強くなる。
【0046】
試料と粒子の表面に付着した結合パートナー-酵素コンジュゲートを、典型的には液体媒体中で接触させる。一実施形態では、液体媒体は水性媒体である。
【0047】
結合パートナーを酵素にコンジュゲートして結合パートナー-酵素コンジュゲートを得る多数の方法が存在する。
【0048】
一実施形態では、結合パートナーを酵素にコンジュゲートする方法は、結合パートナー(抗体であり得る)上のシステイン基を還元することによって、結合パートナー上にスルフヒドリル基を形成するステップを伴う。別の実施形態では、結合パートナーをN-スクシンイミジルS-アセチルチオアセテート(SATA)と接触させて、スルフヒドリル含有基を結合パートナー上の一級アミンに付加する。次いで、結合パートナーを酵素と接触させる。一実施形態では、酵素と結合パートナーのモル比は、約1:1~約20:1の範囲である。一実施形態では、酵素と結合パートナーのモル比は、約4:1~約12:1の範囲である。
【0049】
結合パートナーを酵素にコンジュゲートする他の方法も存在する。結合パートナーが抗体である場合、コンジュゲーションの方法は、例えば、SMCC(スクシンイミジル4-(N-マレイミドメチル)シクロヘキサン-1-カルボキシレート)ケミストリー、SPDP(スクシンイミジル3-(2-ピリジルジチオ)プロピオネート)ケミストリー、過ヨウ素酸ケミストリー、およびテトラジンクリックケミストリーを含む。これらの方法の各々を行うための説明書に試薬を含有するキットは、例えばThermoFisher Scientificから商業的に入手可能である。
【0050】
一実施形態では、結合パートナーは、抗体である。換言すれば、結合パートナー-酵素コンジュゲート層は、抗体-酵素コンジュゲート層である。抗体-酵素コンジュゲート層は、抗体-酵素コンジュゲートを提供するように、検出可能な標識として作用する酵素にコンジュゲートしている、抗原に特異的な抗体を含む。
【0051】
抗体は、当技術分野で認識されている技術を使用して、抗原に対する動物の免疫応答を発達させることによって得ることができる。典型的には、ハプテン(目的の分析物と共通のエピトープ部分を有する)をウシ血清アルブミンなどの担体タンパク質にコンジュゲートして免疫原(抗原)を得て、これを、一連の注射によって、ウサギ、マウス、またはヒツジなどの動物に投与し、次いで、慣用的な技術を使用して得られた抗体を単離する。免疫原を形成するために使用することができる他の例示的なタンパク質担体には、それだけに限らないが、キーホールリンペットヘモシアニン、卵オボアルブミン、ウシガンマ-グロブリン、およびチロキシン結合グロブリンが含まれる。あるいは、ハプテンを、ハプテンと反応性の官能基を含有する合成または天然ポリマー材料にコンジュゲートすることによって、抗原を形成することができる。
【0052】
最初に分析物がその表面に付着した粒子を形成し、次いで、分析物がその表面に付着した粒子を結合パートナー-酵素コンジュゲートと合わせることによって、結合パートナー-酵素コンジュゲートを粒子の表面に付着させる。
【0053】
分析物を付着させることができる粒子には、それだけに限らないが、ラテックス粒子が含まれる。一実施形態では、粒子は、分析物で受動的にコーティングされた約0.5μm~約5.0μmのラテックス粒子である。一実施形態では、粒子は、分析物で受動的にコーティングされた約1.0μm~約2.0μmのラテックス粒子である。様々なサイズのラテックスビーズを米国マサチューセッツ州ウォルサム所在のThermoFisher Scientificから購入することができる。
【0054】
一実施形態では、分析物を、タンパク質を介して粒子の表面に付着させる。一部の実施形態では、タンパク質は、G6PDHである。一部の実施形態では、分析物を最初にG6PDHにコンジュゲートし、分析物-G6PDHコンジュゲートを粒子の表面に非共有結合的に付着(コーティング)させる。特定の実施形態では、分析物は、MMAである。MMAのG6PDHへのコンジュゲーションおよびG6PDH-MMAコンジュゲートの粒子上へのコーティングの手順は、同時係属中の米国特許第11422136号に記載されている。
【0055】
ある実施形態は、分析物は、その表面に付着した固体粒子を包含する。
【0056】
ある実施形態は、結合パートナー-酵素コンジュゲートは、粒子の表面に付着した固体粒子を包含する。
【0057】
読み取り層は、酵素が基質と相互作用すると、検出可能なシグナル(変色など)を生成する酵素の基質を含む。酵素の基質をポリマー中に分散して、読み取り層を得る。
【0058】
読み取り層に適したポリマーには、それだけに限らないが、セルロースが含まれる。
【0059】
典型的には、読み取り層中の酵素の基質の濃度は0.1%~約2.0%の範囲である。
【0060】
一実施形態では、読み取り層の厚さは、約25μm~約300μmの範囲である。一実施形態では、読み取り層の厚さは、約50μm~約250μmの範囲である。一実施形態では、読み取り層の厚さは、約100μm~約200μmの範囲である。一実施形態では、読み取り層の厚さは、約150μmである。読み取り層の厚さは、部分的には、試料体積に依存する。例えば、試料が分析物の非常に希薄な溶液である場合、本方法はより大きな試料体積を要し、より大きな試料体積を収容するようにより厚い読み取り層が好まれる。
【0061】
読み取り層は、基質を溶媒に溶解/懸濁し、得られた溶液/懸濁液をポリマーの前もって形成されたシートに適用し、次いで、湿潤ポリマーを乾燥させることによって調製することができる。一実施形態では、溶液/懸濁液は、水溶液/水性懸濁液である。溶液/懸濁液中の基質の濃度は約0.05%~約1.0%の範囲である。一実施形態では、読み取り層は、ポリマーの前もって形成されたシートを基質の溶液/懸濁液に浸漬することによって、または基質の溶液/懸濁液をポリマーに適用し、次いで、ポリマーを例えば約45℃で約10分間~約15分間乾燥させることによって調製される。一実施形態では、ポリマーの前もって形成されたシートは、Whatman 595濾過膜(ニュージャージー州ローウェー所在のGE Life Sciencesから商業的に入手可能)である。Whatman 595濾過膜はセルロース膜である。
【0062】
一実施形態では、ポリマーの前もって形成されたシート(例えば、Whatman595またはWhatman 6またはWhatman 50濾過膜)を、ポリエチレンテレフタレート(PET)層などの透明支持層に付着させる。他の光学的に半透明の材料のシートを支持層として使用してもよい。感圧接着剤を使用してポリマーの前もって形成されたシートを固体支持層に付着させることができる。
【0063】
一実施形態では、読み取り層は、透明支持層を、基質およびポリマー(例えば、セルロース)を含む溶液/懸濁液でコーティングし、次いで、溶液/懸濁液から溶媒を除去することによって調製される。読み取り層の成分を、混合しながら溶媒中で合わせて、溶液/懸濁液を得て、得られた溶液/懸濁液を透明支持層に適用し、溶媒を除去して透明支持層の上に読み取り層を提供する。あらゆるコーティング方法を使用して所望の厚さでスライドの各層を提供することができる。適切なコーティング技術は、「Liquid Film Coating:Scientific principles and their technological implications」、Stephan F.KistlerおよびPeter M.Schweizer編、第一版、著作権1997 Springer Science+Business Media Dordrechtに記載されている。一実施形態では、ナイフコーターを使用して読み取り層を適用する。一実施形態では、ループコーターを使用して読み取り層を適用する。
【0064】
一実施形態では、支持層は、ポリエチレンテレフタレート(PET)である。典型的には、支持層の厚さは約15μm~約150μmの範囲である。一実施形態では、支持層の厚さは、約25μm~約125μmの範囲である。一実施形態では、支持層の厚さは、約50μm~約100μmの範囲である。一実施形態では、支持層の厚さは、約75μmである。
【0065】
一実施形態では、読み取り層を提供するための溶液/懸濁液は、以下の成分:約0.1~約1.0重量%、好ましくは約0.8重量%の濃度のコハク酸;約0.1~約0.2重量%、好ましくは約0.13重量%の濃度の酵素の基質(例えば、酵素がラッカーゼである場合、3,3’,5,5’-テトラメチルベンジジン(TMB));約0.9~約5重量%、好ましくは約3重量%の濃度のD4ヒドロゲル溶液(マサチューセッツ州ウィルミントンのAdvanSource Biomaterials Corpから商業的に入手可能);約24~約35重量%、好ましくは約27重量%の濃度のセルロース;および場合により約0~約3重量%の濃度のヒドロキシプロピルセルロース(HPC)を90%エタノール中で合わせることによって調製される。得られた溶液/懸濁液のpHは約3.5~約4.0の範囲である。
【0066】
一実施形態では、読み取り層を提供するための溶液/懸濁液は、約116.4mgのコハク酸を約6.08gの90%エタノール中で合わせ、混合しながら約19.7mgの3,3’,5,5’-テトラメチルベンジジン(TMB)を添加し、混合しながら約4.93gのD4ポリウレタンの9.13%溶液を添加し、混合しながら約4.09gのセルロースを添加することによって調製される。得られた溶液/懸濁液のpHは約3.5~約4.0の範囲である。
【0067】
次いで、得られた溶液/懸濁液を支持層上にコーティングし、溶液/懸濁液を乾燥させる。湿潤読み取り層の厚さは、典型的には約310μm~約320μmの範囲である。乾燥読み取り層の厚さは、典型的には約155μm~約160μmの範囲である。
【0068】
例示的な酵素には、それだけに限らないが、ラッカーゼ、ベータ-ガラクトシダーゼ、ベータ-ラクタマーゼ、およびルシフェラーゼが含まれる。一実施形態では、酵素はラッカーゼである。ラッカーゼは、ミセリオフトラ・サーモフィラ(Myceliophthora thermophila)、サーモセロマイセス・サーモフィラ(Thermothelomyces thermophila)、ボトリチス・アクラダ(Botrytis aclada)、ストレプトマイセス・シアネス(Streptomyces cyanes)、およびサーマス・サーモフィルス(Thermus thermophilus)を含む様々な真菌種および細菌種で生じる。例示的なラッカーゼは、ミズーリ州セントルイス所在のSigma Aldrichから商業的に入手可能なサーモセロマイセス・サーモフィラ(Thermothelomyces thermophila)から精製されたラッカーゼであり、conAセファロースカラムを使用して精製することができる。
【0069】
一実施形態では、ラッカーゼは、組換え的に発現されたラッカーゼである(例えば、サーモセロマイセス・サーモフィラ(Thermothelomyces thermophila)、ボトリチス・アクラダ(Botrytis aclada)、アスペルギルス・ニガー(Aspergillus niger)、ストレプトマイセス・シアネス(Streptomyces cyanes)、サーマス・サーモフィルス(Thermus thermophilus)由来のクローニングラッカーゼ遺伝子)。一実施形態では、サーモセロマイセス・サーモフィラ(Thermothelomyces thermophila)(NCBI参照配列XP_003663741.1)、ボトリチス・アクラダ(Botrytis aclada)(UniProtアクセッションH8ZRU2)、アスペルギルス・ニガー(Aspergillus niger)(NCBI参照配列XP_001392958.1)、ストレプトマイセス・シアネス(Streptomyces cyanes)(GenBankアクセッションADX97492.1)、またはサーマス・サーモフィルス(Thermus thermophilus)(UniprotアクセッションQ72HW2)由来のラッカーゼをコードするDNA配列を、pET28aベクターにクローニングし、大腸菌(E.coli)で発現させる。一実施形態では、ミセリオフトラ・サーモフィラ(Myceliophthora thermophila)(GenbankアクセッションAAE33170.1)由来のラッカーゼをコードするDNA配列を、ピキア・パストリス(Pichia pastoris)での発現に適したベクターにクローニングする。サーモセロマイセス・サーモフィラ(Thermothelomyces thermophila)、ボトリチス・アクラダ(Botrytis aclada)、アスペルギルス・ニガー(Aspergillus niger)、およびミセリオフトラ・サーモフィラ(Myceliophthora thermophila)由来のラッカーゼは真菌ラッカーゼであり、ストレプトマイセス・シアネス(Streptomyces cyanes)およびサーマス・サーモフィルス(Thermus thermophilus)由来のラッカーゼは細菌ラッカーゼである。
【0070】
一実施形態では、酵素は非哺乳動物酵素である。非哺乳動物酵素を使用することにより、有利にも、哺乳動物酵素の基質であり得るが、非哺乳動物酵素の基質ではない哺乳動物試料中に存在する化合物からの潜在的な干渉が回避される。好ましい実施形態では、試料は哺乳動物から得られ、酵素は非哺乳動物酵素である。
【0071】
好ましい実施形態では、非哺乳動物酵素は真菌ラッカーゼであり、基質はTMBである。真菌ラッカーゼは、TMBと反応して青色を形成する。青色の強度は、読み取り層に適用された結合パートナー-酵素コンジュゲートに比例し、これは試料中の分析物の量に正比例する。真菌ラッカーゼはまた、有利にも、空気中に存在する酸素を使用したTMBの酸化を触媒するので、酵素反応の補因子として過酸化水素を使用しなければならないことが回避される。
【0072】
一実施形態では、分析物は、抗原であり;結合パートナー-酵素コンジュゲートは、抗体-酵素コンジュゲートであり、抗体は、抗原に特異的であり;酵素は、非哺乳動物酵素である。好ましい実施形態では、分析物は、抗原であり;結合パートナー-酵素コンジュゲートは、抗体-酵素コンジュゲートであり、抗体は、抗原に特異的であり;酵素は、真菌ラッカーゼである。
【0073】
特に好ましい実施形態では、非哺乳動物酵素は、真菌ラッカーゼであり、基質は、TMBとコハク酸などの二価酸との間で形成されたイオン対である。イオン対の構造は、
【0074】
【0075】
適切な二価酸には、それだけに限らないが、コハク酸、シュウ酸、マロン酸、グルタミン酸、アジピン酸、およびピメリン酸が含まれる。コハク酸が好ましい二価酸である。
【0076】
TMBとコハク酸などの二価酸との間で形成されたイオン対を基質として使用すると、有利にも、読み取り層中の酵素とTMBの反応から生成される青色が、読み取り層の中心と比較して読み取り層の周縁でより強力な色が観察される「コーヒーリング」効果を示すのが回避される。よって、TMB単独を基質として使用する場合と比較して、TMBとコハク酸などの二価酸との間で形成されたイオン対を基質として使用した場合に、青色が読み取り層中により均一に分散される。
図3Aは、基質としてTBMを使用したアッセイにおける読み取り層を示し、
図3Bは、基質としてTMBとコハク酸との間のイオン対を使用したアッセイにおける読み取り層を示す。
図3を提供するために使用されたアッセイは、抗原としてのSDMAおよび抗体-酵素コンジュゲートを伴い、抗体がSDMAに対する抗体であり、酵素が真菌ラッカーゼであった。SDMAに対する抗体は、例えば、米国特許第8481690号に記載されている。
【0077】
一実施形態では、読み取り層は、ラッカーゼの活性を増加させるための活性剤をさらに含む。例示的な活性剤には、それだけに限らないが、2,2’-アジノ-ビス(3-エチルベンゾチアゾリン-6-スルホン酸(ABTS);3,5-ジメトキシ-4-ヒドロキシアセトフェノン;フェルラ酸;およびp-クマル酸が含まれる。
【0078】
一実施形態では、読み取り層は、酵素反応からのシグナルを増加させるための媒介物質をさらに含む。例示的な媒介物質には、それだけに限らないが、1-ヒドロキシベンゾトリアゾール(HBT)、2-ヒドロキシイソインドリン-1,3-ジオン(HPI);N-ヒドロキシ-N-フェニルアセトアミド(NHA);(2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-1-イル)オキシル(TEMPO);およびビオルル酸が含まれる。
【0079】
基質がTMBである一実施形態では、読み取り層は、Whatman 595セルロース膜を、約2.5以下のpHの100mMコハク酸中1000μg/ml TMBの溶液に浸漬し、次いで、膜を約45℃で約10分間~約15分間乾燥させることによって調製される。TMB-コハク酸溶液は2つの手順のいずれかによって調製することができる。
手順1:(i)所望の体積のTMB緩衝液(TMB濃度400μg/ml)(マサチューセッツ州ウォルサム所在のThermo Scientificから商業的に入手可能)を用意し、(ii)Thermo TMB緩衝液各1mL当たり、600μgの固体TMB(ミズーリ州セントルイス所在のSigma Aldrichから商業的に入手可能)を添加し、(iii)得られた溶液各1mL当たり、11.8mgのコハク酸を添加して、100mMコハク酸および1000μg/ml TMBの最終モル濃度を達成する。
手順2:(i)1200μLの0.5Mコハク酸を6mgのTMB粉末に添加し、(ii)4mLの脱イオン水を添加し、(iii)約30μLの1N HClを添加して、TMB溶液のpHを約2.4に調整し、(iv)脱イオン水を用いて溶液を約6mLの最終体積にして、100mMコハク酸および1000μg/ml TMBの最終モル濃度を達成する。
【0080】
一実施形態では、スライドは、下記のように、拡散層、反射層、およびカーボンブラック含有層のうちの1つまたは複数をさらに含む。
【0081】
2.(i)粒子の表面に付着した結合パートナー-酵素コンジュゲートを含む層と、(ii)読み取り層とを含むスライドを使用したアッセイ方法
一実施形態では、本方法は、2つの層を含むスライドを使用する。2つの層は、(i)粒子の表面に付着した結合パートナー-酵素コンジュゲートを含む層および(iii)読み取り層である。2つの層を含むスライドの概略図を
図4Aに示す。
図4Aでは、粒子の表面に付着した結合パートナー-酵素コンジュゲートを含む層はガラス繊維層であり、読み取り層はWhatman 595セルロース層である。
【0082】
本方法は、分析物を含有することが疑われる試料を、粒子の表面に付着した結合パートナー-酵素コンジュゲートを含む層に適用するステップを伴う。
【0083】
操作中、その存在または量を決定するつもりである分析物(抗原であり得る)を含有することが疑われる試料を、粒子の表面に付着した結合パートナー(抗体であり得る)-酵素コンジュゲートを含む層に添加すると、試料中の分析物(例えば、抗原)が、粒子の表面に付着した結合パートナー-酵素コンジュゲートを含む層中に存在する結合パートナー-酵素コンジュゲートと複合体を形成する。次いで、分析物と結合パートナー-酵素コンジュゲートの複合体が読み取り層に拡散し、結合パートナー-酵素コンジュゲート(分析物に結合している)上の酵素が基質との反応を触媒して、発色などのシグナルを生成し、これを測定する。シグナルは、読み取り層で測定される。
【0084】
シグナルの強度は試料中の分析物の濃度に正比例する、すなわち、試料中の分析物濃度が高いほど、シグナルがより強くなる。
【0085】
粒子の表面に付着した結合パートナー-酵素コンジュゲートを含む層は、ガラス繊維膜中に分散している粒子の表面に付着した結合パートナー-酵素コンジュゲートを含む。
【0086】
一実施形態では、結合パートナー-酵素コンジュゲートは抗原に特異的な抗体を含み、抗体は、検出可能な標識として作用する酵素にコンジュゲート(すなわち、共有結合)している(すなわち、結合パートナー-酵素コンジュゲート層が抗体-酵素コンジュゲート層である)。
【0087】
結合パートナー-酵素コンジュゲートを形成する方法は上に論じられている。
【0088】
結合パートナー-酵素コンジュゲートが粒子の表面に付着した粒子を形成する方法は上に記載される。
【0089】
粒子の表面に付着した結合パートナー-酵素コンジュゲートを含む層
粒子の表面に付着した結合パートナー-酵素コンジュゲートをガラス繊維膜中に分散させる。粒子の表面に付着した結合パートナー-酵素コンジュゲートを含む層を形成するのに適した例示的なガラス繊維膜は、約330μmの厚さを有するWhatman LF1フィルター(マサチューセッツ州マールボロ所在のCytivaから商業的に入手可能)である。
【0090】
粒子の表面に付着した結合パートナー-酵素コンジュゲートは、粒子の表面に付着した結合パートナー-酵素コンジュゲートの溶液/懸濁液をガラス繊維膜上に直接スポットし、湿潤膜を乾燥させることによってガラス繊維膜中に分散させることができる。一実施形態では、溶液/懸濁液が水溶液/水性懸濁液である。一実施形態では、粒子の表面に付着した結合パートナー-酵素コンジュゲートの溶液/懸濁液が、Nordson EFDディスペンサー(ロードアイランド州イーストプロビデンス所在のNordson EFDから商業的に入手可能)を使用してガラス繊維膜上にスポットされる。一実施形態では、粒子の表面に付着した結合パートナー-酵素コンジュゲートの溶液/懸濁液が、約0.5%~約5%(w/v)の範囲の濃度を有する粒子の表面に付着した結合パートナー-酵素コンジュゲートの溶液/懸濁液を使用してガラス繊維膜上にスポットされる。一実施形態では、結合パートナー-酵素コンジュゲートが、約1%~約4%(w/v)の範囲の濃度を有する粒子の表面に付着した結合パートナー-酵素コンジュゲートの溶液/懸濁液を使用してガラス繊維膜上にスポットされる。一実施形態では、結合パートナー-酵素コンジュゲートが、約2%~約3%(w/v)の範囲の濃度を有する粒子の表面に付着した結合パートナー-酵素コンジュゲートの溶液/懸濁液を使用してガラス繊維膜上にスポットされる。粒子の表面に付着した結合パートナー-酵素コンジュゲートの溶液/懸濁液をガラス繊維膜に適用した後、膜を例えば約37℃で約30分間乾燥させる。
【0091】
典型的には、ガラス繊維膜中の粒子の表面に付着した結合パートナー-酵素コンジュゲートの濃度は5μg/mL~50μg/mLの範囲である。
【0092】
粒子の表面に付着した結合パートナー-酵素コンジュゲートを含む層の厚さは約200μm~約500μmの範囲である。一実施形態では、粒子の表面に付着した結合パートナー-酵素コンジュゲートを含む層の厚さは、約250μm~約400μmの範囲である。一実施形態では、粒子の表面に付着した結合パートナー-酵素コンジュゲートを含む層の厚さは、約300μm~約400μmの範囲である。一実施形態では、粒子の表面に付着した結合パートナー-酵素コンジュゲートを含む層の厚さは、約330μmである。粒子の表面に付着した結合パートナー-酵素コンジュゲートを含む層の厚さは、部分的には、試料体積に依存する。例えば、試料が分析物の非常に希薄な溶液である場合、本方法はより大きな試料体積を要し、より大きな試料体積を収容するように粒子の表面に付着した結合パートナー-酵素コンジュゲートを含むより厚い層が好まれる。
【0093】
読み取り層
読み取り層は上記のように形成することができる。
【0094】
一実施形態では、読み取り層は、上記のように、基質を溶媒に溶解/懸濁し、得られた溶液/懸濁液を、Whatman 595濾過膜(ニュージャージー州ローウェー所在のGE Life Sciencesから商業的に入手可能)などの、ポリマーの前もって形成されたシートに適用することによって調製される。この実施形態では、粒子の表面に付着した結合パートナー-酵素コンジュゲートを含むガラス繊維膜は、単にガラス繊維膜を読み取り層の上に配置し、プラスチックフレームなどのフレームを使用して保持された2つの層を一緒に保持することによって読み取り層に付着される。
【0095】
一実施形態では、粒子の表面に付着した結合パートナー-酵素コンジュゲートを含むガラス繊維膜は、2つの層の間で感圧接着剤を使用して読み取り層に付着される。
【0096】
一実施形態では、粒子の表面に付着した結合パートナー-酵素コンジュゲートを含むガラス繊維膜は、両面テープを使用して読み取り層に付着される。好ましくは、両面テープは溶解性両面テープである。このような構造を
図4Bに示す。
図4Bでは、粒子の表面に付着した結合パートナー-酵素コンジュゲートを含む層が、溶解性両面テープを使用してWhatman 595読み取り層に付着しているガラス繊維膜である。
図4Bでは、読み取り層が、光学的に透明なPET支持層の上に配置される。
図4Cは、溶解性両面テープを使用してセルロース読み取り層に付着しているガラス繊維膜中に粒子の表面に付着した結合パートナー-酵素コンジュゲートを含む同様の構造を示す。
図4Cでは、セルロース読み取り層が、光学的に透明なPET支持層上にコーティングされる。
【0097】
両面テープは、試料を粒子の表面に付着した結合パートナー-酵素コンジュゲートを含む層に適用した後、スライドの各層の間での試料の拡散を制限するように選択することができる。特に、両面テープは、試料中の分析物が、粒子の表面に付着した結合パートナー-酵素コンジュゲートを含む層中に存在する結合パートナー-酵素コンジュゲートと複合体を形成することができるように、十分な時間が経過するまで、粒子の表面に付着した結合パートナー-酵素コンジュゲートを含む層から読み取り層への試料の拡散を防ぐ。
【0098】
介在層を溶解するのに必要な時間は、少なくとも、介在層に適用される流体の体積、介在層の配合、および介在層の厚さに依存する。溶解性フィルムおよびテープが利用可能である。米国特許第7470397号は、診断装置用の崩壊性フィルムを開示している。米国特許第9441142号は、診断装置に使用するための粘着テープを開示している。米国特許第9937123号は、医薬用途または化粧品用途のための溶解性フィルムを開示している。診断装置に適した溶解性フィルムおよび接着剤は、ペンシルバニア州グレンロック所在のAdhesives Research,Inc.から入手可能である。好ましい実施形態では、介在層は、その内容が明示的に本明細書に組み込まれる、米国特許出願公開第2020/0172768号に記載されるような崩壊性/溶解性テープである。一実施形態では、介在標識は、ペンシルバニア州グレンロック所在のAdhesives Research,Inc.から商業的に入手可能な崩壊性/溶解性テープである。
【0099】
(i)粒子の表面に付着した結合パートナー-酵素コンジュゲートを含む層と、(iii)読み取り層とを含み、粒子の表面に付着した結合パートナー-酵素コンジュゲートを含む層と読み取り層が両面テープを使用して付着されており、支持層をさらに含むスライドを示す概略図を
図4Bおよび
図4Cに示す。
図4Bでは、読み取り層は、PET支持層上のWhatman 595膜である。
図4Cでは、読み取り層は、PET支持体上にコーティングされたセルロースポリマーである。
【0100】
スライドを使用した分析方法
操作中、その存在または量を決定するつもりである分析物(抗原であり得る)を含有することが疑われる試料を、粒子の表面に付着した結合パートナー(抗体であり得る)-酵素コンジュゲートを含む層に添加すると、試料中の分析物(例えば、抗原)が、粒子の表面に付着した結合パートナー-酵素コンジュゲートを含む層中に存在する結合パートナー-酵素コンジュゲートと複合体を形成する。次いで、分析物と結合パートナー-酵素コンジュゲートの複合体が読み取り層に拡散し、結合パートナー-酵素コンジュゲート(分析物に結合している)上の酵素が基質との反応を触媒して、発色などのシグナルを生成し、これを測定する。シグナルは、読み取り層で測定される。
【0101】
シグナルの強度は試料中の分析物の濃度に正比例する、すなわち、試料中の分析物濃度が高いほど、シグナルがより強くなる。
【0102】
上記のように、両面テープを使用して、試料を粒子の表面に付着した結合パートナー-酵素コンジュゲートを含む層に適用した後、スライドの各層の間での試料の拡散を制限することができる。特に、両面テープは、試料中の分析物が、結合パートナー-酵素コンジュゲートと複合体を形成することができるように、十分な時間が経過するまで、粒子の表面に付着した結合パートナー-酵素コンジュゲートを含む層から読み取り層への試料の拡散を制限する。
【0103】
一実施形態では、スライドは、下記のように、拡散層、反射層、およびカーボンブラック含有層のうちの1つまたは複数をさらに含む。
【0104】
図5Aは、方法がスライドを使用する原理を示しており、(i)粒子の表面に付着した結合パートナー-酵素コンジュゲートを含む層(
図5Aでは、「第1の層」および「コンジュゲート層」と呼ばれる)と、(ii)読み取り層(
図5Aでは、「第2の層」と呼ばれる)とを含む。ステップ(1)で、抗原がその表面に付着した粒子(G6PDH-MMA粒子)を抗体-酵素コンジュゲート(mAB-ラッカーゼ)と合わせる。この例示において、粒子の表面上の抗原はモノメチルアルギニン(MMA)である。MMAを、リンカーとしてグルコース-6-リン酸デヒドロゲナーゼ(G6DPH)を使用して粒子の表面に付着させる。G6PDH-MMA粒子とmAB-ラッカーゼを合わせ、37℃で10分間インキュベートし、洗浄して未結合mAB-ラッカーゼを除去して、粒子の表面に付着した抗体-酵素コンジュゲートを得る。ステップ(2)で、得られた粒子の表面に付着した抗体-酵素コンジュゲートをガラス繊維膜中に分散して、粒子の表面に付着した結合パートナー-酵素コンジュゲートを含む層(すなわち、「コンジュゲート層」)を得る。ステップ(3)で、SDMA(同様に抗体に結合する、すなわち、mABラッカーゼ)を含有する試料をコンジュゲート層に適用する。SDMAは、mAB-ラッカーゼへの結合について粒子上のMMAと競合して、mAb-ラッカーゼとSDMAの複合体を提供する。ステップ(4)で、得られたmAb-ラッカーゼ-SDMA複合体が読み取り層(すなわち、第2の層)に拡散し、mAB上のラッカーゼが読み取り層中の基質と反応して、試料中のSDMAの量に比例するシグナル(例えば、変色)を生成する。
図5bは、
図5aに記載されるプロセスを示す概略図である。
図5Bは、SDMAを含有する試料を、スライドの結合パートナー-酵素コンジュゲート層に適用することを示す。結合パートナー-酵素コンジュゲート層は、抗体-酵素コンジュゲート(mAB-ラッカーゼ)と合わされた、抗原がその表面に付着した粒子(G6PDH-MMA粒子)を含有している。G6PDH-MMA粒子とmAB-ラッカーゼを合わせ、37℃で10分間インキュベートし、洗浄して未結合mAB-ラッカーゼを除去して、粒子の表面に付着した抗体-酵素コンジュゲートを得る。得られた粒子の表面に付着した抗体-酵素コンジュゲートをガラス繊維膜中に分散させて、粒子の表面に付着した結合パートナー-酵素コンジュゲートを含む層を得る。SDMAを含有する試料を結合パートナー-酵素コンジュゲート層に添加すると、SDMAが、mAB-ラッカーゼへの結合について粒子上のMMAと競合して、mAb-ラッカーゼとSDMAの複合体を提供する。得られたmAb-ラッカーゼ-SDMA複合体は読み取り層(すなわち、第2の層)に拡散し、mAB上のラッカーゼが読み取り層中の基質と反応して、試料中のSDMAの量に比例するシグナル(例えば、変色)を生成する。
【0105】
図7は、結合パートナー-酵素コンジュゲート層および読み取り層を有するスライドを使用してSDMAについてアッセイした実験からの結果を示す。
図7は、結合パートナー-酵素コンジュゲート層および読み取り層を有するスライドを用いて、試料をSDMAについてアッセイした場合の、応答対SDMA含有試料中のSDMA濃度のプロットである。
図7は、応答(すなわち、シグナルの強度)が試料中のSDMAの濃度に比例する、すなわち、試料中のSDMA濃度が高いほど、応答がより強くなることを示す。
【0106】
3.(i)結合パートナー-酵素コンジュゲート層と、(ii)捕捉層と、(iii)読み取り層とを含むスライドを使用したアッセイ
一実施形態では、本方法は、3つの層を含むスライドを使用する。3つの層は、(i)結合パートナー-酵素コンジュゲート層、(ii)捕捉層、および(iii)読み取り層である。結合パートナー-酵素コンジュゲート層は、分析物に特異的な結合パートナーを含み、結合パートナーは、検出可能な標識として作用する酵素にコンジュゲート(すなわち、共有結合)している。捕捉層は、分析物分子がその表面に結合した固体粒子を含む。読み取り層は、酵素が基質と相互作用すると、検出可能なシグナル(変色など)を生成する酵素の基質を含む。
【0107】
一実施形態では、結合パートナー-酵素コンジュゲート層は抗原に特異的な抗体を含み、抗体は、検出可能な標識として作用する酵素にコンジュゲート(すなわち、共有結合)しており(すなわち、結合パートナー-酵素コンジュゲート層が抗体-酵素コンジュゲート層である)、捕捉層は、抗原分子がその表面に結合した固体粒子を含み、読み取り層は、酵素が基質と相互作用すると、検出可能なシグナル(変色など)を生成する酵素の基質を含む。この実施形態では、3つの層は、(i)抗体-酵素コンジュゲート層、(ii)捕捉層、および(iii)読み取り層である。スライドを均一酵素イムノアッセイ(ELISA)に使用して、試料中の抗原の存在または量を決定することができる。
【0108】
スライドを使用して試料中の分析物の存在または量を決定する方法は、単に、その存在または量を決定するつもりである分析物を含有することが疑われる試料を、結合パートナー-酵素コンジュゲート層に添加するステップを伴う。アッセイが作用する原理を、分析物が対称ジメチルアルギニン(SDMA)であり、抗体がSDMAに対する抗体であるアッセイについて
図2に示す。
【0109】
図2に示されるように、その存在または量を決定するつもりである抗原を含有することが疑われる試料を、抗体-酵素コンジュゲート層に添加すると、試料中の抗原が、抗体-酵素コンジュゲート層中に存在する抗体-酵素コンジュゲートと複合体を形成する。抗体と抗体-酵素コンジュゲートの複合体、および任意の複合体化していない抗体-酵素コンジュゲートは捕捉層に拡散し、複合体化していない抗体-酵素コンジュゲートは固体粒子上の抗原と複合体を形成する。抗体と抗体-酵素コンジュゲートの複合体は読み取り層に拡散し、抗体-酵素コンジュゲート(抗原に結合している)上の酵素が、基質との反応を触媒して、発色などのシグナルを生成し、これを測定する。シグナルは、読み取り層で測定される。
【0110】
シグナルの強度は試料中の分析物の濃度に正比例する、すなわち、
図1に示されるように、試料中の分析物濃度が高いほど、シグナルがより強くなる。一実施形態では、シグナルの強度と試料中の分析物の濃度との間に線形関係がある。
【0111】
本方法は、有利には、洗浄ステップなどのいずれの分離ステップも要さない。
【0112】
結合パートナー-酵素コンジュゲート層
結合パートナー-酵素コンジュゲート層は、結合パートナー-酵素コンジュゲートを提供するように、検出可能な標識として作用する酵素にコンジュゲートされた、分析物に特異的な結合パートナーを含む。
【0113】
結合パートナー-酵素コンジュゲートをポリマー中に分散させて、結合パートナー-酵素コンジュゲート層を得る。結合パートナー-酵素コンジュゲート層に適したポリマーには、それだけに限らないが、ポリエステル、ポリプロピレン、ポリエチレンおよびポリアミドが含まれる。結合パートナー-酵素コンジュゲート層のための適切な材料は、好ましくはタンパク質に結合する傾向が低い。
【0114】
典型的には、ポリマー中の結合パートナー-酵素コンジュゲートの濃度は5μg/mL~50μg/mLの範囲である。
【0115】
結合パートナー-酵素コンジュゲート層の厚さは、典型的には約10μm~約250μm、好ましくは約50μm~約200μm、より好ましくは約70μm~約150μmの範囲である。結合パートナー-酵素コンジュゲート層の厚さは、部分的には、試料体積に依存する。例えば、試料が分析物の非常に希薄な溶液である場合、本方法はより大きな試料体積を要し、より大きな試料体積を収容するようにより厚い結合パートナー-酵素コンジュゲート層が好まれる。
【0116】
一実施形態では、ポリマーは、商品名Hollytex(登録商標)3254(フィンランドのAhlstrom Munksjoから商業的に入手可能)で入手可能なポリエステル膜である。一実施形態では、Hollytex(登録商標)3254の厚さは、約102μmである。
【0117】
結合パートナー-酵素コンジュゲート層は、結合パートナー-酵素コンジュゲートの溶液/懸濁液をポリマーに適用し、次いで、ポリマーを乾燥させることによって調製される。一実施形態では、溶媒は、水性溶媒である。溶液/懸濁液中の結合パートナー-酵素コンジュゲートの濃度は約1μg/mL~約10μg/mLの範囲である。一実施形態では、溶液/懸濁液中の結合パートナー-酵素コンジュゲートの濃度は、約2μg/mL~約8μg/mLの範囲である。一実施形態では、溶液/懸濁液中の結合パートナー-酵素コンジュゲートの濃度は、約5μg/mLである。一実施形態では、溶媒は、水性溶媒である。一実施形態では、溶媒は、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)である。一実施形態では、結合パートナー-酵素コンジュゲートを含有する溶液/懸濁液は、ポリビニルピロリドンおよび/またはスクロースをさらに含む。一実施形態では、約10μLの溶液/懸濁液を、ポリマー材料の約8ミリリットル直径のディスクに適用する。一実施形態では、結合パートナー-酵素コンジュゲート層の溶液/懸濁液をポリマーに適用した後、ポリマーを例えば約40℃で約20分間乾燥させる。
【0118】
一実施形態では、結合パートナー酵素コンジュゲート層は、ポリエステル膜、Hollytex(登録商標)3254(フィンランドのAhlstrom Munksjoから商業的に入手可能)を取り、PBS中約3% Tween-20の溶液(約0.5%~約5.0%の濃度を使用することができ;約0.5%が好ましい濃度である)を適用することによってこれを前処理して膜を親水性にすることによって調製される。前処理は、約10μLのTween-20溶液を約8mmポリエステルディスク上に分配し、次いで、ディスクを約40℃で約20分間乾燥させることによって達成される。次いで、結合パートナー酵素コンジュゲートを含有する約10μLの溶液をディスク上に分配し、ディスクを約40℃で約20分間乾燥させる。一実施形態では、結合パートナー酵素コンジュゲートを含有する溶液は、約5μg/mL(約2μg/mL~約5μg/mLの範囲)の濃度のリン酸緩衝生理食塩水(PBS)中結合パートナー酵素コンジュゲート、約1%ウシ血清アルブミン(BSA)、約0.5%スクロース、約0.5%トレハロース、約0.1% PEG6000、約10nMヒスチジン、約10nM酒石酸、約10mM Na2B4O7(四ホウ酸ナトリウム)、および約0.25% Zwittergent(登録商標)3-14(マサチューセッツ州バーリントン所在のMilliporeSigmaから商業的に入手可能)を含有する溶液である。ヒスチジンは任意選択であり、pHを制御するために使用される。セリンおよびグリシンなどの他のアミノ酸をヒスチジンの代わりに使用することができる。Zwittergent(登録商標)3-14をIgepal(登録商標)CA-630(ミズーリ州セントルイス所在のSigma Aldrichから商業的に入手可能)およびTween-20で置き換えることができる。クエン酸-リン酸緩衝液などの他の緩衝液をPBSの代わりに使用することができる。一実施形態では、結合パートナー酵素コンジュゲートは、抗SDMA抗体にコンジュゲートしたラッカーゼである。
【0119】
結合パートナー-酵素コンジュゲートを形成する方法は上に論じられる。
【0120】
例示的な酵素は上に記載される。
【0121】
捕捉層
捕捉層は、分析物分子がその表面に付着した固体粒子を含む。分析物分子が付着した固体粒子をポリマー中に分散させて、捕捉層を得る。分析物分子が付着した固体粒子はポリマーに捕捉され、スライドの他の層に拡散することができない。
【0122】
分析物分子を付着させることができる固体粒子は上に記載される。
【0123】
分析物粒子を固体粒子に付着させる方法は上に記載される。
【0124】
捕捉層のための適切なポリマーには、それだけに限らないが、ポリカーボネートが含まれる。一実施形態では、捕捉層は、約0.8μmの細孔径を有するポリカーボネートポリマーである。一実施形態では、ポリマーは、細孔径0.8μmのポリカーボネートトラックエッチド(polycarbonate track etched)(PCTE)メンブレン(ニュージャージー州ピスカタウェイ所在のGE Life Sciencesから商業的に入手可能)である。
【0125】
典型的には、ポリマーに適用される、分析物分子が付着した固体粒子の量は、5μLの粒子の1%(w/v)懸濁液~50μLの粒子の1%(w/v)懸濁液の範囲である。
【0126】
捕捉層の厚さは、約2μm~約20μm、好ましくは直径約5μm~約15μm、より好ましくは直径約7μm~約12μmの範囲である。捕捉層の厚さは、部分的には、試料体積に依存する。例えば、試料が分析物の非常に希薄な溶液である場合、本方法はより大きな試料体積を要し、より大きな試料体積を収容するようにより厚い捕捉層が好まれる。
【0127】
捕捉層は、分析物がその表面に付着した固体粒子の溶液/懸濁液をポリマーに適用し、次いで、ポリマーを乾燥させることによって調製される。一実施形態では、溶媒は、水性溶媒である。溶液/懸濁液中の、分析物がその表面に結合した固体粒子の濃度は、約0.2%~約2.0%の範囲である。その表面に付着した分析物の溶液/懸濁液をポリマーに適用した後、ポリマーを例えば約37℃で約20分間乾燥させる。
【0128】
一実施形態では、捕捉層は、抗原分子がその表面に付着した固体粒子を含む。抗原分子が付着した固体粒子をポリマー中に分散させて、捕捉層を得る。
【0129】
ある実施形態は、抗原がその表面に付着した固体粒子を包含する。
【0130】
ある実施形態は、ポリマー中に分散された、抗原がその表面に付着した固体粒子を包含する。
【0131】
一実施形態では、ポリマー中に分散された、抗原がその表面に付着した固体粒子は、リンカーとしてグルコース-6-リン酸デヒドロゲナーゼ(G6DPH)を使用して粒子の表面に付着されたSDMAで受動的にコーティングされた、約1μm~約2μmのラテックス粒子(すなわち、G6DPH-SDMAでコーティングされたラテックス粒子)である。一実施形態では、ポリマーは、細孔径0.8μmのポリカーボネートトラックエッチド(PCTE)メンブレン(ニュージャージー州ピスカタウェイ所在のGE Life Sciencesから商業的に入手可能)である。一実施形態では、Nordson EFDディスペンサー(ロードアイランド州イーストプロビデンス所在のNordson EFDから商業的に入手可能)を使用して、約18.5μLのG6DPH-SDMA粒子(50mMリン酸緩衝液pH7.3、2.5%スクロース中1% w/v粒子)をポリマーに適用する。
【0132】
別の実施形態では、ポリマー中に分散された、抗原がその表面に付着した固体粒子は、リンカーとしてグルコース-6-リン酸デヒドロゲナーゼ(G6DPH)を使用して粒子の表面に付着されたMMAで受動的にコーティングされた、約1μm~約2μmのラテックス粒子(すなわち、G6DPH-MMAでコーティングされたラテックス粒子)である。
【0133】
読み取り層
読み取り層は上記のように形成することができる。
【0134】
任意選択の介在層
一実施形態では、層は、例えば、両面テープなどの介在層によって分離される。一実施形態では、少なくとも結合パートナー-酵素コンジュゲート層は、介在層によって捕捉層から分離される。一実施形態では、少なくとも捕捉層は、介在層によって読み取り層から分離される。一実施形態では、結合パートナー-酵素コンジュゲート層は、介在層によって捕捉層から分離され、捕捉層は、介在層によって読み取り層から分離される。
【0135】
介在層は、試料を結合パートナー-酵素コンジュゲート層に適用した後、スライドの各層の間の試料の拡散を制限するように選択される。特に、結合パートナー-酵素コンジュゲート層と捕捉層との間の介在層は、試料中の分析物が結合パートナー-酵素コンジュゲート層中に存在する結合パートナー-酵素コンジュゲートと複合体を形成することができるように、十分な時間が経過するまで、結合パートナー-酵素コンジュゲート層から捕捉層への試料の拡散を防ぐ。同様に、捕捉層と読み取り層との間の介在層は、試料中の分析物と複合体を形成していない結合パートナー-酵素コンジュゲートが固体粒子上の分析物と複合体を形成することができるように、十分な時間が経過するまで、捕捉層から読み取り層への試料の拡散を防ぐ。
【0136】
試料中の抗原の量を決定するための、介在層を含むスライドの一般的な構造を
図1に示す。
【0137】
一実施形態では、介在層は両面テープである。典型的には、両面テープの厚さは、約10μm~約100μm、好ましくは約15μm~約90μm、より好ましくは約20μm~約80μmの範囲である。一実施形態では、両面テープの厚さは、約60μmである。
【0138】
最初に、両面テープは不透水性であるが、長期間水に曝露されると、テープは溶解する。テープが溶解するのに必要な時間は、テープの配合に依存する。溶解時間は数秒間から数分間まで変化し得る。一実施形態では、テープの溶解時間は、約1分間~約5分間の範囲である。一実施形態では、テープの溶解時間は、約2分間~約4分間の範囲である。適切な両面テープは上に記載される。
【0139】
一実施形態では、試料は、スライドに2回以上適用される。好ましい実施形態では、試料は、スライドに2回適用され、各適用は、期間tだけ離される。一実施形態では、期間tは、約5秒間~約10分間の範囲である。一実施形態では、期間tは、約1分間~約5分間の範囲である。一実施形態では、期間tは、約2分間~約3分間の範囲である。一実施形態では、各適用中に適用される試料の量は、約1μL~約100μLの範囲である。一実施形態では、各適用中に適用される試料の量は、約2μL~約50μLの範囲である。一実施形態では、各適用中に適用される試料の量は、約3μL~約25μLの範囲である。一実施形態では、各適用中に適用される試料の量は、約5μL~約15μLの範囲である。一実施形態では、各適用中に適用される試料の量は、約6μL~約11μLの範囲である。
【0140】
理論によって拘束されることを望むものではないが、試料の単回適用は両面テープを溶解するのに不十分であると考えられる。しかしながら、二度目の試料の適用はテープを溶解するのに十分である。よって、試料の第1の適用と試料の第2の適用との間の時間を変化させることによって、例えば、試料が結合パートナー-酵素コンジュゲート層から捕捉層に拡散する前に、試料中の分析物が結合パートナー-酵素コンジュゲート層中に存在する結合パートナー-酵素コンジュゲートと複合体を形成する時間を制御することが可能である。一実施形態では、介在層は、その内容が明示的に本明細書に組み込まれる、米国特許出願公開第2020/0172768号に記載されるような崩壊性/溶解性テープである。一実施形態では、介在標識は、ペンシルバニア州グレンロック所在のAdhesives Research,Inc.から商業的に入手可能な崩壊性/溶解性テープである。
【0141】
図6は、第1の水性試料を、溶解性両面テープによって分離されている結合パートナー-酵素コンジュゲート層と読み取り層を有するスライドに適用し、引き続いて第1の水性試料と第2の水性試料の適用の間の期間t後に、第2の水性試料を適用した場合の、湿っている読み取り層の面積パーセントのプロットである。読み取り層は湿っている場合、暗くなる。カメラを使用して読み取り層の湿り度を評価した。
図6は、第1の水性試料がテープを溶解し、水が読み取り層に到達するのを可能にするのに不十分であることを示す。しかしながら、期間t後の第2の水性試料の適用により、読み取り層の完全な湿潤がほぼすぐに完了する。溶解性両面テープの使用により、分析物を含有する試料が、読み取り層と接触する前に、結合パートナー-酵素コンジュゲート層にどれくらい長く残るかを慎重に制御することが可能になる。
【0142】
他の任意選択の層
スライドは、場合により、拡散層、反射層、およびカーボンブラック層のうちの1つまたは複数を含むことができる。
【0143】
拡散層
一実施形態では、スライドは拡散層をさらに含む。拡散層は結合パートナー-酵素コンジュゲート層の上にコーティングされる。拡散層は水透過性である。拡散層は水透過性であり、等方的で多孔性である、すなわち、層内のあらゆる方向に多孔性である。
【0144】
拡散層は、層の成分を混合しながら溶媒中で合わせて溶液/懸濁液を得て、溶液/懸濁液を結合パートナー-酵素コンジュゲート層に適用し、結合パートナー-酵素コンジュゲート層の上に拡散層を提供するように溶媒を除去することによって提供される。
【0145】
湿潤拡散層の厚さは、典型的には約100μm~約500μm、好ましくは約150μm~約450μm、より好ましくは約200μm~約400μm、最も好ましくは約250μm~約350μmの範囲である。乾燥の場合、拡散層の厚さは、典型的には約25μm~約250μm、好ましくは約50μm~約200μm、より好ましくは約75μm~約150μmの範囲である。拡散層の厚さは、一部は、試料体積に依存する。例えば、試料が分析物の非常に希薄な溶液である場合、アッセイはより大きな試料体積を要し、より大きな試料体積を収容するようにより厚い拡散層が好まれる。
【0146】
拡散層は、典型的には親水性ポリマーマトリックス中のセルロースの混合物である。適切な親水性ポリマーには、それだけに限らないが、ポリアクリル酸、ポリビニルピロリドン、ポリエチレングリコール、ポリエチレンオキシド、ポリビニルアルコール、ポリアクリルアミド、およびポリエチレンイミンが含まれる。拡散層は、有利には液体試料をスライド上に均一に拡散および分散させる。
【0147】
湿潤拡散層中のセルロースの量は、典型的には層の約1重量%~約20重量%、好ましくは5重量%~約15重量%、より好ましくは約10重量%の範囲である。乾燥の場合、乾燥拡散層中のセルロースの量は、典型的には層の約50重量%~約98重量%、好ましくは約60重量%~約95重量%、より好ましくは約70重量%~約90重量%の範囲である。一実施形態では、拡散層が100%セルロースである。一実施形態では、セルロースが約300μmの粒径を有する。
【0148】
拡散層はポリビニルピロリドン(PVP)を含み得る。湿潤拡散層中の重量によるPVPの量は、典型的には層の約0.5重量%~約10重量%、好ましくは約1重量%~約5重量%、より好ましくは約1.5重量%~約3重量%の範囲である。一実施形態では、湿潤拡散層中のPVPの量が約2重量%である。乾燥拡散層中の重量によるPVPの量は、典型的には層の約1重量%~約30重量%、好ましくは約5重量%~約25重量%、より好ましくは約10重量%~約20重量%の範囲である。一実施形態では、乾燥拡散層中のPVPの量が約17重量%である。
【0149】
拡散層はテトラメチルアンモニウムヒドロキシド(TMAH)または他の適切な塩基を含み得る。TMAHは拡散層のpHを調整するのに役立ち得る。理論によって拘束されることを望むものではないが、TMAHが、拡散層がスライド全体にわたって試料を迅速に吸収および拡散する能力を増加させると考えられる。湿潤拡散層中の重量によるTMAHの量は、典型的には約0.01重量%~約0.5重量%、好ましくは約0.025重量%~約0.25重量%の範囲である。一実施形態では、湿潤拡散層中のTMAHの量が約0.05重量%である。乾燥拡散層中の重量によるTMAHの量は、典型的には約0.08重量%~約4重量%、好ましくは約0.2重量%~約2重量%、より好ましくは約10重量%の範囲である。一実施形態では、乾燥拡散層中のTMAHの量が約0.4重量%である。
【0150】
一実施形態では、約10重量%のセルロース、約2重量%のポリビニルピロリドン(PVP)、約68重量%の水、約20重量%のエタノール、約0.06重量%のポリアクリル酸(PAA)、および約0.05重量%のテトラメチルアンモニウムヒドロキシド(TMAH)を含有する溶液/懸濁液を適用し、溶液/懸濁液から溶媒を除去することによって、拡散層を形成する。得られた乾燥拡散層は、約82.6重量%のセルロース、約16.5重量%のPVP、約0.5重量%のPAA、および約0.4重量%のTMAHを含有する。
【0151】
反射層
一実施形態では、スライドは反射層をさらに含む。反射層は結合パートナー-酵素コンジュゲート層の上にコーティングされる。一実施形態では、スライドは拡散層および反射層をさらに含む。スライドが拡散層と反射層の両方を含む場合、反射層は、拡散層と結合パートナー-酵素コンジュゲート層との間に配置される。
【0152】
反射層は、層の成分を混合しながら溶媒中で合わせて溶液/懸濁液を得て、溶液/懸濁液を結合パートナー-酵素コンジュゲート層に適用し、結合パートナー-酵素コンジュゲート層の上に拡散層を提供するように溶媒を除去することによって提供される。
【0153】
一実施形態では、反射層が酸化チタン(TiO2)を含む。典型的には、二酸化チタンが、湿潤反射層の約2重量%~約30重量%、好ましくは約5重量%~約20重量%、より好ましくは約10重量%~約20重量%の範囲の量で湿潤反射層中に存在する。一実施形態では、酸化チタンが、湿潤反射層の約14重量%の量で湿潤反射層中に存在する。典型的には、二酸化チタンが、乾燥反射層の約20重量%~約60重量%、好ましくは約25重量%~約55重量%、より好ましくは約30重量%~約50重量%の範囲の量で乾燥反射層中に存在する。一実施形態では、酸化チタンが、湿潤反射層の約42重量%の量で湿潤反射層中に存在する。
【0154】
酸化チタン粒子の平均粒径は、典型的には約10μm未満、好ましくは約5μm未満である。一実施形態では、酸化チタン粒子の平均粒径が約0.35μmである。
【0155】
酸化チタンは、他の反射材料で置き換えることができるか、またはこれと組み合わせて使用することができる。例示的な他の反射材料には、それだけに限らないが、硫酸バリウム、酸化亜鉛、粘土、およびケイ酸アルミニウムが含まれる。一実施形態では、反射材料が完全または部分的金属コーティング粒子である。適切な金属には、それだけに限らないが、アルミニウム、金、ニッケルまたは銀が含まれる。銀が好ましいコーティングである。これらの粒子は単独で、またはTiO2などの他の光反射材料と組み合わせて使用することができる。粒子(すなわち、コーティングされるコア)は、それだけに限らないが、固体および中空ガラス、ポリ(メチルメタクリレート)(PMMA)、ならびにシリカを含む様々な材料であり得る。適切な金属コーティング粒子は、例えば、Cospheric LLC(米国カリフォルニア州サンタバーバラ)から商業的に入手可能である。好ましい粒子は、例えばCospheric LLC製の銀コーティングシリカミクロスフェアである。
【0156】
一実施形態では、約7重量%のセルロース、約14重量%の二酸化チタン、および約79重量%のD4ヒドロゲル溶液(約16重量%の等量の低粘度HydroMed D4と高粘度HydroMed D4の混合物を含有する)、約90重量%のエタノール、および約10重量%の水)を含有する溶液/懸濁液を適用し、溶液/懸濁液から溶媒を除去することによって、層を形成する。得られた乾燥フィルタリング層は、約20重量%のセルロース、約42重量%の二酸化チタン、および約38重量%のHydroMed D4を含有する。HydroMed D4は、マサチューセッツ州ウィルミントンのAdvanSource Biomaterials Corpから商業的に入手可能である。
【0157】
カーボンブラック層は散乱光を吸収するので、スライドが以下に記載されるカーボンブラック層を含む場合、反射層が特に有利である。反射層は、有利にはカーボンブラック層が散乱光を吸収するのを防ぎ、感度の改善をもたらすように、カーボンブラック層から離れて検出器に戻る光を反射する。
【0158】
カーボンブラック層
一実施形態では、スライドは、カーボンブラック層をさらに含む。カーボンブラック層は、反射層の上にコーティングされ、反射層と拡散層との間に配置される。カーボンブラック層は、有利にはシグナルの強度測定に干渉する環境からの迷光をフィルタリングする光バリアとして作用する。カーボンブラック層はまた、潜在的にアッセイに干渉し得る分析物以外の試料中に存在する化合物に結合するように機能することができ、これらの他の化合物が読み取り層に拡散するのを防ぐ。
【0159】
カーボンブラックは、迷光をフィルタリングするための他の材料で置き換えることができるか、またはこれと組み合わせて使用することができる。例示的な他の材料には、それだけに限らないが、黒ラテックスビーズ、黒シリカビーズ、活性炭、C60、グラフェン、または赤ラテックスビーズなどの他の有色材料が含まれる。
【0160】
カーボンブラック層は、ポリマー中に分散したカーボンブラックを含む。カーボンブラック層のための適切なポリマーには、それだけに限らないが、ポリウレタン(マサチューセッツ州ウィルミントンのAdvanSource Biomaterials Corpから商業的に入手可能なHydroMed D4など)、ポリエチレンオキシド、シリコーン、ポリビニルアルコール、およびポリアクリルアミドが含まれる。一実施形態では、ポリマーは、HydroMed D4である。
【0161】
カーボンブラック層は、層の成分を混合しながら溶媒中で合わせて溶液/懸濁液を得て、溶液/懸濁液を反射層(または、反射層がない場合、結合パートナー-酵素コンジュゲート層)に適用し、反射層の上にカーボンブラック層を提供するように溶媒を除去することによって提供される。
【0162】
湿潤カーボンブラック層中のカーボンブラックの量は、典型的には層の約1重量%~約20重量%、好ましくは約1.5重量%~約15重量%、より好ましくは約2重量%~約10重量%の範囲である。一実施形態では、湿潤カーボンブラック層中のカーボンブラックの量は、層の約5重量%である。乾燥している場合、カーボンブラック層中のカーボンブラックの量は、典型的には層の約10重量%~約40重量%、好ましくは約15重量%~約35重量%、より好ましくは約20重量%~約30重量%の範囲である。一実施形態では、湿潤カーボンブラック層中のカーボンブラックの量は、層の約25重量%である。
【0163】
湿潤カーボンブラック層の厚さは、典型的には約50μm~約300μm、好ましくは約75μm~約250μm、より好ましくは約100μm~約200μmの範囲である。一実施形態では、湿潤カーボンブラックの厚さが約140μmである。乾燥の場合、カーボンブラック層の厚さは、典型的には約5μm~約30μm、好ましくは約7.5μm~約25μm、より好ましくは約10μm~約20μmの範囲である。一実施形態では、湿潤カーボンブラックの厚さが約14μmである。
【0164】
一実施形態では、約4.7重量%のカーボンブラック、約95.3重量%のD4ヒドロゲル溶液(約16重量%の等量の低粘度HydroMed D4と高粘度HydroMed D4の混合物、約90重量%のエタノール、および約10重量%の水を含有する)を含有する溶液/懸濁液を適用し、溶液/懸濁液から溶媒を除去することによって、カーボンブラック層を形成する。得られた乾燥カーボンブラック層は、約24重量%のカーボンブラックおよび約76重量%のHydroMed D4を含有する。
【0165】
上述のように、スライドがカーボンブラック層を含む場合、スライドは、好ましくは反射層も含む。
【0166】
これらの任意選択の層およびこれらがどのように形成されるかの説明は、同時係属中の米国特許出願公開第2022/0082501号に記載されている。
【0167】
典型的には、スライドの総厚さは550μm未満、好ましくは500μm未満である。
【0168】
一実施形態では、スライドが、目的の分析物を含有する液体試料を装置の開口部に適用し、次いで、液体を、毛管輸送ゾーンを介して乾式スライドに運搬する装置の一部である。このような装置の例示的な例は、米国特許第4323536号および同第5726010号に記載される。
【0169】
4.方法の一般的な特徴
分析物の分子量は広範囲にわたって変化し得る。典型的には、分析物の分子量が50ダルトンより高い。低分子である分析物については、分析物の分子量が典型的には約50~約4000ダルトン、好ましくは約100~約2000ダルトンの間である。分析物がタンパク質などのより大型の分子である場合、分子量は2000ダルトンより高くてもよい。分析物がタンパク質などのより大型の分子である場合、分子量は4000ダルトンダルトンより高いこともあり得る。本方法は、タンパク質などの大きな分子(例えば、2000ダルトンを超える分子量)である分析物にうまく機能する。
【0170】
本方法を使用して多種多様な分析物をアッセイすることができる。例示的な分析物には、それだけに限らないが、小分子(例えば、対称ジメチルアルギニン(SDMA)、非対称ジメチルアルギニン(ADMA)、モノメチルアルギニン(MMA)、メラミン、抗体、T4、β-ラクタム抗生物質(ペニシリンなど)、サルファ薬、セファロスポリン、およびステロイド(例えば、プロゲステロンおよびコルチゾール))、ベータアミノイソ酪酸、シスタチン、線維芽細胞増殖因子、およびクラステリンが含まれる。
【0171】
好ましい実施形態では、分析物は、抗原であり、結合パートナーは、抗原に特異的な抗体である。
【0172】
一実施形態では、分析物は、SDMAである。SDMAの構造は、
【0173】
【0174】
一実施形態では、分析物は、メラミンである。
【0175】
一実施形態では、分析物は、T4である。
【0176】
一実施形態では、分析物は、コルチゾールである。
【0177】
一実施形態では、分析物は、プロゲステロンである。
【0178】
一実施形態では、分析物は、シスタチン-Bである。
【0179】
一実施形態では、分析物は、モノメチルアルギニンである。
【0180】
一実施形態では、分析物は、維芽細胞増殖因子である。
【0181】
一実施形態では、分析物は、抗生物質である。例示的な抗生物質には、それだけに限らないが、アモキシシリン、アンピシリン、セファセトリル、セフキノム、セファゾリン、セフォペラゾン、セフチオフル、セファレキシン、セファロニウム、クロキサシリン、デスアセチルセファピリン、ジクロキサシリン、ナフシリン、オキサシリン、セファピリン、デスフロイルセフチオフル、セフロキシム、およびペニシリンが含まれる。
【0182】
一実施形態では、分析物が、欧州連合によって要求される、牛乳において試験しなければならない抗生物質からなる群から選択される1種または複数の抗生物質である。
【0183】
一実施形態では、分析物が、ペニシリンG(ベンジルペニシリン)、アンピシリン、アモキシシリン、オキサシリン、クロキサシリン、ジクロキサシリン、ナフシリン、セファピリン、デスアセチルセファピリン、セフチオフル、デスフロイルセフチオフル、セフキノム、セファロニウム、セファゾリン、セファセトリル、セファレキシン、セフロキシム、およびセフォペラゾンからなる群から選択される1種または複数の抗生物質である。
【0184】
一実施形態では、分析物が、米国食品医薬品局によって要求される、牛乳において試験しなければならない抗生物質からなる群から選択される1種または複数の抗生物質である。
【0185】
一実施形態では、分析物が、ペニシリンG(ベンジルペニシリン)、アンピシリン、アモキシシリン、クロキサシリン、セファピリン、セフチオフル、およびデスフロイルセフチオフルからなる群から選択される1種または複数の抗生物質である。
【0186】
一実施形態では、分析物は、ペプチドであり、結合パートナーは、ペプチドに特異的な受容体である。
【0187】
一実施形態では、分析物は、ペニシリンであり、結合パートナーは、ペニシリン結合タンパク質である。
【0188】
一実施形態では、分析物は、ステロイドであり、結合パートナーは、ステロイドに特異的なステロイド結合タンパク質である。
【0189】
一実施形態では、試料が水溶液である。
【0190】
一実施形態では、試料が尿である。
【0191】
一実施形態では、試料が血清である。
【0192】
一実施形態では、試料が牛乳である。
【0193】
一実施形態では、試料が唾液である。
【0194】
一実施形態では、試料が血漿である。
【0195】
一実施形態では、試料が全血である。
【0196】
一実施形態では、試料が汗である。
【0197】
一実施形態では、試料が涙である。
【0198】
一実施形態では、試料が脊髄液である。
【0199】
一実施形態では、試料が糞便試料または糞便抽出物である。
【0200】
一実施形態では、試料は、哺乳動物から得られる。
【0201】
典型的には、試料サイズは、約1μL~約100μLの範囲である。
【0202】
試料中の分析物の濃度は広範囲にわたって変化し得る。一般的に、試料中の分析物の濃度は約1ng/mL~約400ng/mLの範囲である。より濃縮された試料を適切な希釈剤で簡単に希釈してアッセイに適した濃度を有する希釈された試料を得ることができることが容易に理解されるだろう。本方法は、極めて高感度であり、一部の分析物については、1ng/mLと低い濃度の分析物を検出するために使用することができる。
【0203】
実施例
本発明は、本発明の数個の態様の例示として意図されている実施例に開示される具体的な実施形態によって範囲が限定されるものではなく、機能的な等価ないずれの実施形態も本発明の範囲内にある。実際、本明細書に示され、記載されるものに加えた本発明の様々な修正が当業者に明らかであり、添付の特許請求の範囲の範囲に入ることが意図されている。当業者の眼内にある、現在公知であるまたは後に開発される全ての等価物の置換を含む、本発明のこのようなバリエーション、および実験設計における配合の変更または微量の変更は、本明細書に組み込まれる本発明の範囲に入ると考えられる。
【実施例1】
【0204】
ラッカーゼの抗SDMA抗体へのコンジュゲーション
以下の方法を使用してラッカーゼを抗SDMA抗体にコンジュゲートすることができる。
【0205】
ステップ番号1:ラッカーゼ遊離チオールのキャッピング
3mLのラッカーゼの溶液(PBS(リン酸緩衝生理食塩水)、pH7.4中9.1mg/mL、Sigma-Aldrichから商業的に入手可能であり、ConAカラム(ThermoFisher Scientificから商業的に入手可能)を使用して精製した)に、36μLのヨードアセトアミド溶液(DMSO中100mg/mL)を添加した。得られた溶液を箔で覆い、室温で1時間くるくる回転させた。キャッピングされたラッカーゼをPBS、pH7.4中4℃で透析し、4LのPBSと3回交換した。透析後、280nmで吸光度を測定することによって(吸光係数:2.1=1.0mg/mL)、ラッカーゼの濃度を決定した。濃度は9.0mg/mLと決定された。
【0206】
ステップ番号2:SMCCによるラッカーゼの活性化
3mLの濃度9.0mg/mLのキャッピングされたラッカーゼの溶液に、76μLのスルホ-SMCC(スルホスクシンイミジル4-(N-マレイミドメチル)シクロヘキサン-1-カルボキシレート)(Sigma-Aldrichから商業的に入手可能)溶液(DMSO中20mg/mL)を添加した。得られた溶液を室温で1時間くるくる回転させた。活性化されたラッカーゼをPBS、pH7.4中4℃で透析し、4LのPBSと3回交換した。透析後、280nmで吸光度を測定することによって(吸光係数:2.1=1.0mg/mL)、ラッカーゼの濃度を決定した。濃度は8.5mg/mLと決定された。
【0207】
ステップ番号3:DTTによる抗SDMA抗体の還元
3mLの抗SDMA抗体の溶液(PBS、pH7.4中5.4mg/mL、ミズーリ州フェントンのLeinco Technologiesから購入)に、30μLの0.5M EDTA溶液および12μLのDTT(ジチオトレイトール)溶液(脱イオンH2O中500mM、no weigh format)を添加した。得られた溶液を室温で1時間くるくる回転させた。溶離液としてPBS、pH7.4+5mM EDTAを使用して、脱塩サイズ排除PD-10カラム(Sigma-Aldrichから商業的に入手可能)を使用して、得られた溶液を精製した。画分を0.5mLアリコートで回収した。280nmでの吸光度を使用して、タンパク質の存在を決定した。タンパク質を含有する画分を合わせ、280nmで吸光度を測定することによって(吸光係数:1.37=1.0mg/mL)、濃度を決定した。濃度は2.5mg/mLと決定された。
【0208】
ステップ番号4:ラッカーゼの抗SDMA抗体へのコンジュゲーション
PBS+5mM EDTA中2.5mg/mLの2mLの還元された抗SDMA抗体に、2.4mLの8.5mg/mLのPBS中活性化ラッカーゼを添加した。溶液を4℃で18時間くるくる回転させた。次いで、2μLの脱イオンH2O中0.5M L-システイン溶液を添加して、反応物をクエンチした。抗SDMA抗体とのラッカーゼコンジュゲートの得られた溶液を30分間くるくる回転させ、次いで、さらに使用するまで4℃で保存した。
【実施例2】
【0209】
MMAコーティング粒子上へのラッカーゼ抗SDMAコンジュゲートのコーティング
以下の方法を使用して、MMAコーティング粒子にラッカーゼ抗SDMAコンジュゲートをコーティングした:
【0210】
材料
1.ラッカーゼ-抗SDMAコンジュゲート、1.33mg/mL抗SDMA、
2.G6PDH-MMA、12.5当量、1.0μm、pH5.2 MES緩衝液
3.キャリブレータ希釈液、1% BSA、200mMリン酸緩衝液、0.1% Proclin、pH=7.4、
4.1×洗浄緩衝液、DI H2O中0.1% Tween
5.血清キャリブレータ、活性炭処理イヌ、0.2μm濾過、0μg/dL、7μg/dL、14μg/dL、30μg/dL、100μg/dL、
6.TMB溶液-0.5μg/mL TMB、50mMコハク酸、1:1 PBS、pH=3.5。
【0211】
以下の手順を使用して、上記のラッカーゼ-抗SDMAコンジュゲートとMMA-G6PDHでコーティングされたラテックス粒子との間で免疫複合体を形成した:
1.746μLの1.34% G6PDH-MMA粒子を遠心管に入れた;
2.13300rpmで2分間遠心分離し、上清を除去した;
3.400μLのキャリブレータ希釈液を添加し、ピペット操作によって粒子を再懸濁した;
4.1分間超音波処理した;
5.60μLのラッカーゼ-抗SDMAコンジュゲート(全固形分=2%)を添加し、37℃で10分間インキュベートした;
6.13300rpmで2分間遠心分離し、上清を除去した;
7.500μLの1×洗浄液で洗浄し、上記のように遠心分離し、上清を除去した;
8.ステップ7の洗浄をさらに2回繰り返した。
【0212】
以下のように、競合アッセイプロトコルを使用して、免疫複合体粒子が首尾よく形成され、活性であることを確認した:
1.500μLのキャリブレータ希釈液を粒子に添加し、再懸濁し、2分間超音波処理した(2%固形分);
2.50μLの複合体化粒子を管に分配し、上記のように遠心分離し、上清を除去した;
3.異なるレベルのSDMAを含有する50μLの試料を添加した。粒子を再懸濁し、短時間ボルテックスした;
4.37℃で90秒間インキュベートし、上記のように遠心分離した;
5.25μLの試料を96ウェルプレートにプレーティングした;
6.175μLのTMB溶液を添加し、645nmにおいて37℃で15分間読み取った。
【0213】
引用されている全ての参考文献の開示全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【国際調査報告】