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特表2024-538779ハイブリッド高強度低合金の冷間圧延および焼鈍された鋼帯ならびにその製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-10-23
(54)【発明の名称】ハイブリッド高強度低合金の冷間圧延および焼鈍された鋼帯ならびにその製造方法
(51)【国際特許分類】
   C22C 38/00 20060101AFI20241016BHJP
   C22C 38/14 20060101ALI20241016BHJP
   C21D 9/46 20060101ALI20241016BHJP
   C21D 1/18 20060101ALN20241016BHJP
   C21D 9/00 20060101ALN20241016BHJP
【FI】
C22C38/00 301S
C22C38/14
C21D9/46 J
C22C38/00 301T
C21D9/46 G
C21D1/18 C
C21D9/00 A
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024522263
(86)(22)【出願日】2022-10-14
(85)【翻訳文提出日】2024-06-12
(86)【国際出願番号】 EP2022078693
(87)【国際公開番号】W WO2023062210
(87)【国際公開日】2023-04-20
(31)【優先権主張番号】21202973.0
(32)【優先日】2021-10-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】500252006
【氏名又は名称】タタ、スティール、アイモイデン、ベスローテン、フェンノートシャップ
【氏名又は名称原語表記】TATA STEEL IJMUIDEN BV
(74)【代理人】
【識別番号】100120031
【弁理士】
【氏名又は名称】宮嶋 学
(74)【代理人】
【識別番号】100120617
【弁理士】
【氏名又は名称】浅野 真理
(74)【代理人】
【識別番号】100172557
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 啓靖
(72)【発明者】
【氏名】ジャン、ジョゼフ、カンパニエーロ
【テーマコード(参考)】
4K037
4K042
【Fターム(参考)】
4K037EA01
4K037EA02
4K037EA05
4K037EA09
4K037EA15
4K037EA18
4K037EA19
4K037EA23
4K037EA25
4K037EA27
4K037EA31
4K037EA36
4K037EB05
4K037EB06
4K037EB11
4K037FD04
4K037FE01
4K037FE02
4K037FE03
4K037FG01
4K037FJ05
4K037FM02
4K037GA05
4K037JA06
4K042AA25
4K042BA01
4K042CA02
4K042CA03
4K042CA09
4K042CA12
4K042CA14
4K042DA01
4K042DB07
4K042DC02
4K042DC03
4K042DD01
4K042DD05
4K042DE05
4K042DF01
(57)【要約】
本発明は、ハイブリッド高強度低合金の冷間圧延および焼鈍された鋼帯ならびに該鋼帯の製造方法に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
重量%で、
C:0.050~0.090、
Nb:0.030~0.060、
Mn:1.000~1.800、
S:最大0.015、
Si:0.050~0.300、
P:最大0.015、
Al_sol:0.020~0.080、
N:0.002~0.008、
Ca+REM:最大0.0050、
任意選択で、
B:0.0001~0.0010
Ti:最大0.050
のうちの1以上、および、
残部:鉄および不可避的不純物
からなる、ハイブリッド高強度低合金(HSLA)の冷間圧延および焼鈍された鋼帯であって、
前記鋼が、520~680MPaの引張強さRmと、460~580MPaの降伏強さRpとを有し、
Rp/Rmが、0.70~0.80であり、
前記鋼のミクロ組織が、
ポリゴナルおよび/またはアシキュラーフェライトを含む析出強化フェライトマトリックスと、
セメンタイトと、2~10%のマルテンサイトと、任意選択でパーライトおよびベイナイトのうちの1以上とを含む第二相と
を含み、
前記フェライトマトリックスの再結晶割合が、少なくとも85%である、前記鋼帯。
【請求項2】
前記フェライトマトリックスが、未再結晶フェライトを含む、請求項1に記載の鋼帯。
【請求項3】
前記フェライトマトリックスの再結晶割合が、少なくとも85%、好ましくは少なくとも87%である、請求項1~3のいずれか一項に記載の鋼帯。
【請求項4】
tの1/10の位置における前記フェライトマトリックスの平均結晶粒度が、4~8μmである、請求項1~3のいずれか一項に記載の鋼帯。
【請求項5】
前記鋼が、少なくとも0.001重量%のチタン、好ましくは少なくとも0.005重量%のチタン、および/または、最大0.035重量%、好ましくは最大0.020重量%のチタンを含む、請求項1~4のいずれか一項に記載の鋼帯。
【請求項6】
前記鋼が、少なくとも0.0002重量%および/または最大0.0008重量%のホウ素、好ましくは最大0.0006重量%のホウ素を含む、請求項1~5のいずれか一項に記載の鋼帯。
【請求項7】
前記鋼が、最大0.010重量%のS、好ましくは最大0.005重量%のSを含む、請求項1~6のいずれか一項に記載の鋼帯。
【請求項8】
前記鋼が、最大0.085重量%のC、好ましくは最大0.080重量%のCを含む、請求項1~7のいずれか一項に記載の鋼帯。
【請求項9】
前記鋼が、少なくとも1.200重量%のMn、好ましくは少なくとも1.350重量%のMn、および/または、最大1.600重量%のMn、好ましくは最大1.550重量%のMnを含む、請求項1~8のいずれか一項に記載の鋼帯。
【請求項10】
前記鋼帯に、金属コーティング、好ましくは溶融コーティングによる金属コーティングが設けられている、請求項1~9のいずれか一項に記載の鋼帯。
【請求項11】
重量%で、
C:0.050~0.080、
Nb:0.030~0.050、
Mn:1.200~1.550、
S:最大0.010、
Si:0.050~0.300、
P:最大0.010、
Al_sol:0.020~0.050、
N:0.002~0.005、
Ca:最大0.0050、
任意選択で、
B:0.0001~0.0010
Ti:0.001~0.020
のうちの1以上、および、
残部:鉄および不可避的不純物
からなる、請求項1~10のいずれか一項に記載の鋼帯であって、
前記鋼が、520~680MPaの引張強さRmと、460~580MPaの降伏強さRpとを有し、
Rp/Rmが、0.70~0.80であり、
前記鋼のミクロ組織が、
ポリゴナルおよび/またはアシキュラーフェライトを含む析出強化フェライトマトリックスと、
セメンタイトと、2~10%のマルテンサイトと、任意選択でパーライトおよびベイナイトのうちの1以上とを含む第二相と
を含み、
前記フェライトマトリックスの再結晶割合が、少なくとも85%である、前記鋼帯。
【請求項12】
請求項1~11のいずれか一項に記載のハイブリッド二相鋼帯を製造するための方法であって、以下のステップ:
・鋼スラブまたは鋼帯を連続的に鋳造し、前記スラブまたは前記鋼帯を熱間圧延して熱間圧延鋼帯とするステップであって、
前記熱間圧延鋼帯が、重量%で、
C:0.050~0.090、
Nb:0.030~0.060、
Mn:1.000~1.800、
S:最大0.015、
Si:0.050~0.300、
P:最大0.015、
Al_sol:0.020~0.080、
N:0.002~0.008、
Ca:最大0.0050、
任意選択で、
B:0.0002~0.0006
Ti:0.001~0.050
のうちの1以上、および、
残部:鉄および不可避的不純物
からなる組成を有し、
前記熱間圧延鋼帯が、2.0~4.5mmの厚さを有し、
前記鋼帯がオーステナイトミクロ組織を有する間に、仕上げ圧延が行われる、前記ステップ;
・仕上げ圧延後の前記熱間圧延鋼帯を、好ましくは少なくとも30℃/秒の冷却速度で、冷却するステップ;
・冷却された前記鋼帯を500~660℃の巻き取り温度CTで巻き取り、巻き取られた前記鋼帯を周囲温度まで冷却するステップ;
・巻き取られた前記鋼帯を巻き戻した後、酸洗し、圧下率が少なくとも40%かつ最大80%の冷間圧延を行うステップ;
・冷間圧延された前記鋼帯の連続焼鈍を、
i.前記鋼帯を加熱するステップ;
ii.前記鋼帯を二相域焼鈍するステップ;
iii.二相域焼鈍された前記鋼帯を中間温度まで冷却するステップ;
iv.任意選択で、前記鋼帯を、前記中間温度で、5~100秒の時間t_oaの間、保持するステップ;
v.任意選択で、前記鋼帯を溶融コーティングするステップ;
vi.焼鈍された前記鋼帯中にマルテンサイト形成を誘発するのに十分な冷却速度で、前記鋼帯を焼鈍後巻き取り温度までさらに冷却するステップ;
vii.前記鋼帯を巻き取るステップ
により行うステップ;
ここで、前記鋼帯には、a)ステップvの溶融コーティングによる金属コーティング、または、b)ステップvii後の冷間塗着技術による金属コーティングが、任意選択で設けられ;
・任意選択で、コーティングされた前記鋼帯を0.05~3.00%の圧下率で調質圧延するステップ;
ここで、任意選択でコーティングされ、任意選択で調質圧延された前記鋼帯は、520~680MPaの引張強さRmと、460~580MPaの降伏強さRpとを有し、Rp/Rmは、0.70~0.80であり;
・コーティングされた前記鋼帯を巻き取るか、あるいは、コーティングされた前記鋼帯を鋼板またはブランクに切断するステップ;
・任意選択で、その後、コーティングされた前記鋼帯、鋼板またはブランクを、スタンピング、曲げ、深絞り等の冷間成形操作によって、あるいは、温間プレス成形または熱間プレス成形によって成形するステップ
を含む、前記方法。
【請求項13】
前記調質圧延の圧下率が、最大2.50%、好ましくは最大1.30%、より好ましくは最大0.80%、および/または、前記調質圧延の圧下率が、少なくとも0.10%、好ましくは少なくとも0.20%である、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
請求項1~11のいずれか一項に記載のハイブリッド高強度低合金(HSLA)の冷間圧延および焼鈍された鋼帯を製造するための、請求項12または13に記載の方法であって、
前記鋼帯が、重量%で、
C:0.050~0.080、
Nb:0.030~0.050、
Mn:1.200~1.550、
S:最大0.010、
Si:0.050~0.300、
P:最大0.010、
Al_sol:0.020~0.050
N:0.002~0.005、
Ca:最大0.0050、
任意選択で、
B:0.0001~0.0010
Ti:0.001~0.020
のうちの1以上、および、
残部:鉄および不可避的不純物
からなり、
前記フェライトマトリックスの再結晶割合が、少なくとも85%である、前記方法。
【請求項15】
請求項12~14のいずれか一項に記載の方法によって製造可能な、または、製造された、請求項1~11のいずれか一項に記載の鋼の、自動車用途における使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハイブリッド高強度低合金の冷間圧延および焼鈍された鋼帯ならびに該鋼帯の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
高強度低合金鋼(HSLA鋼)は、当技術分野でよく知られている。HSLA鋼は自動車産業でよく使用されている。HSLA鋼は、例えばVerband Der Automobilindustrie(VDA)の仕様で定義されている。2016年8月のVDA239-100材料仕様を参照している。VDAによれば、冷間圧延HSLA鋼は、例えばCR420LAのような鋼種番号で示され、ここで、CRは冷間圧延を表し、数字420は長手方向の降伏強さRp0.2(略してRp)の下限を表し、LAは低合金を表す。VDA仕様は、高強度を提供するために、標準的な合金元素C、Mn、SiおよびAlとは別に、TiおよびNbを含有するHSLA鋼の化学組成を規定している。しかしながら、仕様におけるこれらの範囲は依然として非常に広い。もう1つの関連する国際規格は、金属材料の引張試験に関するEN10002-1:2001である。
【0003】
薄いHSLA鋼帯、鋼板またはブランクは、通常、アルミニウムコーティングまたは亜鉛コーティングでコーティングされる。亜鉛コーティングが使用される場合、コーティングはしばしば、溶融亜鉛めっき(hot dip galvanised)または溶融亜鉛電気めっき(hot dip galvannealed)コーティングとして適用される。
【0004】
より高い強度レベルで冷間圧延されたHSLA鋼には、その強度が高いため、熱間圧延された鋼帯を広い範囲(wide dimensions)で比較的薄いゲージに冷間圧延することが難しいという欠点がある。
【0005】
国際公開第2016/030010号では、チタンおよびバナジウムを含有するHSLA鋼に基づいたCR460LAが提案されている。しかしながら、このグレードは、CR460LAの関連規格の機械的特性要件を満たしているが、冷間圧延および焼鈍された製品は、異なる方向(面内異方性)で機械的特性に大きな違いを受ける。さらに、バナジウムは、さらに大幅に変動する非常に高価な合金元素である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、広い範囲(wide dimensions)で比較的薄いゲージに冷間圧延でき、必要な強度を有するHSLA鋼板およびブランクを作製できるHSLA鋼帯を提供することである。
【0007】
本発明のさらなる目的は、必要な伸びを有するそのようなHSLA鋼帯、鋼板またはブランクを提供することである。
【0008】
本発明のさらなる目的は、機械的特性における面内異方性が低減されたそのようなHSLA鋼帯、鋼板またはブランクを提供することである。
【0009】
本発明の別の目的は、そのようなHSLA鋼帯の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的の1以上は、重量%で、
C:0.050~0.090、
Nb:0.030~0.060、
Mn:1.000~1.800、
S:最大0.015、
Si:0.050~0.300、
P:最大0.015、
Al_sol:0.020~0.080、
N:0.002~0.008、
Ca+REM:最大0.0050、
任意選択で、
B:0.0001~0.0010
Ti:最大0.050
のうちの1以上、および、
残部:鉄および不可避的不純物
からなる、ハイブリッド高強度低合金(H-HSLA)の冷間圧延および焼鈍された鋼帯であって、
前記鋼が、520~680MPaの引張強さRmと、460~580MPaの降伏強さRpとを有し、
Rp/Rmが、0.70~0.80であり、
前記鋼のミクロ組織が、ポリゴナル(polygonal)および/またはアシキュラー(acicular)フェライトを含む析出強化フェライトマトリックス(precipitation strengthened ferritic matrix)と、
セメンタイトと、2~10%のマルテンサイトと、任意選択でパーライトおよびベイナイトのうちの1以上とを含む第二相(second phase comprising cementite, between 2 and 10 % of martensite optionally accompanied by one or more of pearlite and bainite)と
を含む、前記鋼帯により達成される。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1図1A~Bは、(図1A)Nbおよび(図1B)NbTiのKlemmエッチング顕微鏡写真を示し、図1C~Dは、(図1C)Nbおよび(図1D)NbTiのNitalエッチング顕微鏡写真を示す。
図2図2Aは、KlemmエッチングされたNbサンプル(焼鈍温度=820℃)の鋼の顕微鏡写真中のマルテンサイトの分布を示し、図2Bは、ImageJソフトウェアによる処理後を示し、図2Cは、マルテンサイトのサイズ分布を示す。
図3図3は、典型的な実験による加熱および冷却の曲線を示す。
図4図4の表1は、「ハイブリッド」特性を備えた鋼種を製造するための焼鈍サイクルの効果とともに、合金元素の効果を示す。
【発明を実施するための形態】
【0012】
従来の二相鋼は、クリーンであり、その結果、延性のあるフェライトマトリックス中に分散したマルテンサイトのミクロ組織を有しており、延性と高い引張強さとの優れた組み合わせを提供する。二相鋼の特有の好ましい特性は、クリーンなフェライトとマルテンサイトとの間の、強度および延性の大きな違いから生じる。
【0013】
従来のHSLA鋼は、成形性および溶接性を維持するために、0.05~0.25%の炭素含有量を有する。他の合金元素としては、マンガンおよび少量の銅、ニッケル、ニオブ、窒素、バナジウム、クロム、モリブデン、チタン、カルシウム、希土類元素またはジルコニウムが挙げられる。銅、チタン、バナジウムおよびニオブは、強化の目的で添加され、炭素鋼のミクロ組織(通常、細粒フェライト-パーライト集合体である)を変化させ、ほぼ純粋なフェライトマトリックス中に合金炭化物の非常に微細な分散を生成して析出硬化フェライトを生成することを目的としている。
【0014】
本発明者は、慎重にバランスをとれば、ハイブリッドHSLAにおいて従来の二相および従来のHSLAの長所を組み合わせることが可能であることを発見した。このH-HSLAは、延性のあるクリーンなフェライトマトリックス中の硬質マルテンサイト相から生じる二相鋼の成形性と、析出硬化フェライト-パーライト集合体の強度とを組み合わせている。二相鋼の特有の好ましい特性は、クリーンなフェライトとマルテンサイトとの間の、強度および延性の大きな違いから生じるが、結晶粒微細化および析出強化によってフェライトを強化することは、常識では理解し難い。
【0015】
強化析出物の成長を抑制するために焼鈍の温度および時間が意図的に制限されている場合、フェライトマトリックスは未再結晶フェライトを含み得る。未再結晶フェライトの存在は、全体の強度に寄与し得るが、これは、ある程度の異方性の犠牲を生じ得る。異方性の程度を制限するために、再結晶割合(recrystallised fraction)は、好ましくは少なくとも85%、好ましくは少なくとも87%である。したがって、再結晶割合を制御することにより、異方性の程度および機械的特性値は、それに応じて調整され得る。
【0016】
フェライトマトリックス中に未再結晶フェライトがある程度存在することは、必要とされるより高い強度レベルの実現を可能とするため、非常に重要である。しかしながら、必要とされる低い異方性を考慮すると、それは高すぎない方がよい。フェライトマトリックスのミクロ組織の再結晶割合は、少なくとも85%、好ましくは少なくとも90%、より好ましくは少なくとも95%、より一層好ましくは少なくとも98%であることが好ましい。好ましくは、フェライトマトリックスの平均結晶粒度(average grain size)は、少なくとも4μmである。好ましくは、フェライトマトリックスの平均結晶粒度は、最大9μmである。好ましくは、フェライトマトリックスの平均結晶粒度は、4~8μmである。この平均結晶粒度は、鋼帯の表面直下である、厚さtの1/10の位置で測定される。
【0017】
鋼帯は、コーティングされていない状態、コーティングされた状態、または、調質圧延された状態で、特許請求の範囲に記載されている特性を備える。鋼帯は、任意選択の調質圧延(スキンパス圧延としても知られている)ステップにおいて、調質圧延され得る。鋼帯はまた、任意選択のコーティングステップにおいて、金属コーティングでコーティングされ得る。鋼帯はまた、任意選択の調質圧延および/または任意選択の金属コーティングの後でも、前述の機械的特性を備える。これは、スタンピング、曲げ、深絞り等の後続の成形操作、あるいは、温間プレス成形(warm press forming)または熱間プレス成形(hot press forming)の後に必ずしも当てはまるわけではない。
【0018】
任意選択の金属コーティングは、主に鋼帯の腐食に対する保護として機能する。
【0019】
本発明によるハイブリッドHSLAは、合金元素として、ニオブ(Nb)の添加と、任意選択でチタン(Ti)の添加とを必要とする。Nbの存在は、結晶粒の微細化および析出強化に必要である。任意選択のTiも析出強化に寄与するが、マンガン(Mn)やNbなどの他の元素の還元を可能にするマルテンサイトの形成にも役立つ。
【0020】
本発明による鋼はまた、一般的なHSLAグレードと比較して、より高濃度のシリコン(Si)を含有する。Siは、固溶強化元素として機能し、目標強度の達成を可能にする。しかしながら、Siは、フェライト促進元素であり、粘着性酸化物により熱間圧延鋼帯の表面に問題を引き起こすことが知られているため、その濃度は、鋼のミクロ組織中においてマルテンサイトを形成する能力を維持するために、かつ、良好な表面品質を維持するために、制限されるべきある。この表面品質は、熱間圧延鋼帯の表面だけでなく、冷間圧延鋼帯の表面、さらには亜鉛めっき鋼帯の表面にも関係する。炭素(C)の存在は、固溶体強化、炭化物の形成、ならびに、ベイナイトおよび特にマルテンサイト等の第二相の形成に必要である。0.090重量%を超える値では、硬質の第二相の体積が多すぎるリスクが増大し、0.050重量%未満では、硬質の第二相の体積が少なすぎるリスクが増大する。硬質の第二相の体積分率が高すぎるリスクを低減するために、鋼は、好ましくは最大0.085重量%のCを含み、より好ましくは最大0.080重量%のCを含む。また、炭素含有量が若干少なくなると、パーライトおよび/またはセメンタイトの量は減少する。
【0021】
通常の熱間圧延HSLA鋼は、熱間圧延中の再結晶の遅延によるマイクロ合金添加物(microalloying additions)の結晶粒微細化特性に依存し、程度は低いものの、析出硬化にも依存する。冷間圧延HSLA鋼は、析出硬化に依存し、程度は非常に低いものの、結晶粒微細化にも依存する。したがって、十分な成形性を備えた高強度の冷間圧延HSLA鋼を得ることが困難であることが判明している。国際公開第2016/030010号では、チタンおよびバナジウムを含有するHSLA鋼に基づいたCR460LAが提案されている。しかしながら、このグレードは、CR460LAの関連規格の機械的特性要件を満たしているが、冷間圧延および焼鈍された製品には、異なる方向の機械的特性(面内異方性)に大きな違いが生じる。
【0022】
元素C、Si、Nbおよび任意選択のTiと第二相とが適切な割合で存在することにより、高降伏応力、高伸びおよび低異方性というハイブリッド特性を備えた鋼種の製造が可能になる。したがって、本発明による鋼は、HSLA鋼と二相鋼との間のハイブリッドである。したがって、このハイブリッド特性は、析出強化(HSLAの側面)と、第二相、主にマルテンサイト(二相の側面)との複合効果(joint effect)によるものである。したがって、マルテンサイトの体積分率は非常に重要である。体積分率が低すぎる(<2%)場合、材料の挙動は、通常の標準HSLAグレードに近づく。体積分率が高すぎる(>10%)場合、材料の挙動は、降伏応力が低すぎる二相(DP)グレードに近づく。ハイブリッドHSLAの場合、0.70≦Rp/Rm≦0.80である。この比率が0.70未満の場合、鋼はDP鋼のように挙動し、降伏応力が低すぎる。この比率が0.80を超えると、鋼は標準HSLAと同様に挙動し、このグレードは低い全伸びおよび高い面内異方性を有する。2~10%のマルテンサイトの存在により、機械的特性の面内異方性を非常に大幅に除去できる。
【0023】
任意選択のTiの添加は、マルテンサイトの形成を促進し、それによりMnを削減できる一方、Nbは、結晶粒の微細化に使用される。Tiの存在は、低温(<850℃)での冷間圧延材料の焼鈍中の再結晶化にも役立つ。同様の焼鈍温度において、Tiを含まないHSLAは、再結晶化が少なく、より低い割合のマルテンサイトを含む。したがって、より高い異方性およびより低い伸び値を有することになる。Tiを使用しない場合は、より高温での焼鈍が必要とされ、Nb(C、N)析出物の粗大化により強度がより低くなる。鋼は、任意選択で、少なくとも0.001重量%のチタン、好ましくは少なくとも0.005重量%のチタン、および/または、最大0.035重量%、好ましくは最大0.020重量%のチタンを含む。
【0024】
本発明による鋼をホットスタンピングおよび直接焼入れ用途により適したものにするために、任意選択で、少量のホウ素(B)を鋼に添加してもよい。鋼は、好ましくは少なくとも0.0002重量%(=2ppm)および/または最大0.0010重量%(=10ppm)のホウ素、好ましくは最大0.0008重量%のホウ素、より好ましくは最大0.0006重量%のホウ素を含む。多すぎるホウ素は、多量のマルテンサイトおよびベイナイトの生成をもたらし、強度が増加しすぎて鋼の成形性が低下するため、CR460LAの要件をもはや満たせなくなる。
【0025】
これらの鋼には、イオウ(S)およびリン(P)がほぼ不可避的不純物として含まれており、その量は、技術的および経済的に可能な限り低い値に制限されるべきである。鋼は、好ましくは最大0.010重量%のS、または、好ましくは最大 重量%のSを含む。また、鋼は、好ましくは最大0.010重量%のP、または、好ましくは最大0.005重量%のPを含む。
【0026】
マンガンは、オーステナイト形成元素であり、その含有量が多すぎると、マルテンサイト形成のリスクが高まる。特にシリコン含有量が本発明による鋼の場合のように低い場合には、それが当てはまる。Mn含有量が低すぎると、低すぎる強度値をもたらす。本発明による鋼は、好ましくは少なくとも1.200重量%のMn、より好ましくは少なくとも1.350重量%のMn、および/または、好ましくは最大1.600重量%のMn、より好ましくは最大1.550重量%のMnを含む。
【0027】
いくつかの用途でのエッジの伸びまたは曲げを改善するために、高強度低合金鋼種は、任意選択で、硫化物系介在物(sulphide inclusion)の制御により特定され得る。主に硫化マンガン介在物の形状および含有量を制御するために、特殊な製鋼手法が使用される。製造者はまず、超低イオウ製鋼手法(ultra-low sulphur steelmaking practices)を通じて硫化物系介在物を制限し得る。介在物の形状を制御するために、製造者は、溶鋼へのカルシウム(Ca)および/または希土類元素(REM、例えばCe)の添加も利用し得る。小さな球状粒子が好ましい。このため、任意選択のCa+REMは、硫化物系介在物の制御のための、鋼中のカルシウムと、Ce等の希土類元素との合計量を示す。存在する場合、これらの元素のいずれかの好適な最小量は、0.0005重量%である。
【0028】
冷間圧延および焼鈍された鋼帯には、任意選択で、金属コーティングが設けられ、金属コーティングは、好ましくは溶融コーティングによって形成されるが、PVD、CVDまたは電着等の冷間塗着技術(cold application techniques)も採用可能である。
【0029】
本発明の一実施形態において、金属コーティングは、亜鉛含有量が少なくとも99%(別段規定される場合を除き、すべてのコーティングのパーセンテージは重量%である)の溶融浴に鋼板を通過させることによって連続プロセスで形成される溶融亜鉛めっき(GI)コーティングであってもよい。金属コーティングは、亜鉛合金コーティングである。金属コーティングは、好適に調製された鋼表面上に連続コーティングプロセスで電解的に形成される、少なくとも99.9%の亜鉛含有量を有する電気亜鉛めっき(EG)コーティングであってもよい。
【0030】
金属コーティングは、少なくとも99%の亜鉛含有量を含有する溶融浴に、準備された鋼帯を浸漬し、その後の焼鈍の結果として鉄が亜鉛層に拡散することによって生成される亜鉛-鉄合金コーティングであってもよい。得られる亜鉛-鉄コーティングは、通常13質量%までの鉄含有量を有し、電気めっき(GA)コーティングと呼ばれる。金属コーティングは、シリコン含有量が8~11%の溶融アルミニウム浴に、準備された鋼帯を通過させることによって形成される、アルミニウム-シリコン(AlSi)コーティングであってもよい。
【0031】
金属コーティングは、マグネシウムおよびアルミニウムと合金化した溶融亜鉛浴に、準備された鋼帯を通過させることによって形成される、亜鉛-マグネシウム(MZ)コーティングであってもよい。好ましくは、亜鉛合金コーティング(FeAlバリア層を含む)は、0.3~4.0%のMgおよび0.3~6.0%のAlと、任意選択で最大0.2%の1以上の追加元素と、不可避的不純物と、残部である亜鉛とを含む。より好ましくは、コーティング中の合金元素の含有量は、1.0~2.0%のマグネシウムおよび1.0~3.0%のアルミニウムと、任意選択で最大0.2%の1以上の追加元素と、不可避的不純物と、残部である亜鉛とを含む。より一層好ましい実施形態において、亜鉛合金コーティングは、最大1.6%のMgおよび1.6~2.5%のAlと、任意選択で最大0.2%の1以上の追加元素と、不可避的不純物と、残部である亜鉛とを含む。
【0032】
第2の態様によれば、本発明は、本明細書に上記されたおよび請求項1~11のいずれか一項に記載された、本発明によるハイブリッド二相鋼帯を製造するための方法であって、以下のステップ:
・鋼スラブまたは鋼帯を連続的に鋳造し、前記スラブまたは前記鋼帯を熱間圧延して熱間圧延鋼帯とするステップであって、
前記熱間圧延鋼帯が、重量%で、
C:0.050~0.090、
Nb:0.030~0.060、
Mn:1.000~1.800、
S:最大0.015、
Si:0.050~0.300、
P:最大0.015、
Al_sol:0.020~0.080、
N:0.002~0.008、
Ca:最大0.0050、
任意選択で、
B:0.0002~0.0006
Ti:0.001~0.050
のうちの1以上、および、
残部:鉄および不可避的不純物
からなる組成を有し、
前記熱間圧延された鋼帯が、2.0~4.5mmの厚さを有し、
前記鋼帯がオーステナイトミクロ組織を有する間に、仕上げ圧延が行われる、前記ステップ;
・仕上げ圧延後の前記熱間圧延鋼帯を、好ましくは少なくとも30℃/秒の冷却速度で、冷却するステップ;
・冷却された前記鋼帯を500~660℃の巻き取り温度CTで巻き取り、巻き取られた前記鋼帯を周囲温度まで冷却するステップ;
・巻き取られた前記鋼帯を巻き戻した後、酸洗し、40~80%の圧下率で冷間圧延を行うステップ;
・冷間圧延された前記鋼帯の連続焼鈍を、
i.前記鋼帯を加熱するステップ;
ii.前記鋼帯を二相域焼鈍(intercritically annealing)するステップ;
iii.二相域焼鈍した前記鋼帯を中間温度まで冷却するステップ;
iv.任意選択で、前記鋼帯を、前記中間温度で、5~100秒の時間t_oaの間、保持するステップ;
v.任意選択で、前記鋼帯を溶融コーティングするステップ;
vi.焼鈍された前記鋼帯中にマルテンサイト形成を誘発するのに十分な冷却速度、すなわち、臨界冷却速度より高い冷却速度で、前記鋼帯を焼鈍後巻き取り温度(post-annealing coiling temperature)までさらに冷却するステップ;
vii.前記鋼帯を巻き取るステップ
により行うステップ;
ここで、前記鋼帯には、a)ステップvの溶融コーティングによる金属コーティング、または、b)ステップvii後の冷間塗着技術による金属コーティングが、任意選択で設けられ;
・任意選択で、コーティングされた前記鋼帯を0.05~3.00%の圧下率で調質圧延するステップ;
ここで、任意選択でコーティングされ、任意選択で調質圧延された前記鋼帯は、520~680MPaの引張強さRmと、460~580MPaの降伏強さRpとを有し、Rp/Rmは、0.70~0.80であり;
・コーティングされた前記鋼帯を巻き取るか、あるいは、コーティングされた前記鋼帯を鋼板またはブランクに切断するステップ;
・任意選択で、その後、コーティングされた前記鋼帯、鋼板、またはブランクを、スタンピング、曲げ、深絞り等の冷間成形操作によって、あるいは、温間プレス成形または熱間プレス成形によって成形するステップ
を含む、前記方法にも具体化される。
【0033】
鋼の組成の重要性についてはすでに説明した通りである。さまざまな処理ステップはすべて、標準HSLAの特性と標準DPの特性との間の微妙なハイブリッドバランスの達成に貢献する。例えば、ベイナイトおよび特にマルテンサイト等の第二相を十分な量(ただし多すぎない)で形成するには、高い冷却速度が必要である。
【0034】
後続の処理ステップのために、熱間圧延鋼帯の開始状態を決定するという理由で、巻き取り温度も重要なパラメータである。巻き取り温度は、好ましくは最大650℃である。
【0035】
冷間圧延の圧下率は、最大75%であることが好ましく、最大70%であることがより好ましい。より低い冷間圧延の圧下率は、冷間圧延中の圧延力を制限し、それによって鋼帯の形状欠陥のリスクを軽減する。
【0036】
最初の冷間圧延ステップ後の連続焼鈍は、冷間圧延鋼帯の部分的なオーステナイト化を得るために、Ac1温度とAc3温度との間の温度に加熱して保持することを含む二相域焼鈍処理(intercritical annealing treatment)である。連続焼鈍後のミクロ組織は、ポリゴナルおよび/またはアシキュラーフェライトを含む析出強化フェライトマトリックスと;セメンタイトと、2~10%のマルテンサイトと、任意選択でパーライトおよびベイナイトのうちの1以上とを含む第二相と;を含み、フェライトマトリックスの再結晶割合は、少なくとも85%である。したがって、焼鈍後の冷却速度は、得られる連続焼鈍および冷間圧延された鋼帯においてオーステナイトからマルテンサイトへの変態を誘発するために、いわゆる臨界冷却速度よりも高くなければならない。この臨界冷却速度は、不安定なオーステナイトが安定なマルテンサイトに変態し得る最も遅い冷却速度として定義でき、通常の実験によって容易に決定できる。焼鈍後巻き取り温度がMf温度より低い場合、マルテンサイトは安定である。
【0037】
一実施形態において、調質圧延の圧下率は、最大2.50%、好ましくは最大1.30%、より好ましくは最大0.80%である。調質圧延の圧下率は、好ましくは少なくとも0.10%、より好ましくは少なくとも0.20%である。調質圧延の圧下率は、所望の最終特性、鋼帯形状および表面質感を得るために重要である。
【0038】
任意選択の調質圧延率は、最終特性と表面品質(平坦度、うねり、反り等の側面)との適切なバランスを得るために重要であり得る。そのバランスは常に同じであるとは限らない。場合によっては、鋼帯の平坦度の重要性が機械的特性より優先されることもあり(ただし、関連する規格によって課された要件が満たされている場合)、場合によっては、機械的特性が優先されることもある。化学的性質および加工を工夫することで、さまざまな要件のバランスを多少変えることができるが、常に関連する規格の要件内に収まる。ある調質圧延は、最大3.00%の調質圧延の圧下率(TRR)が必要とされる。しかしながら、より高いTRRは、鋼の成形性の可能性を損なうため、鋼帯の表面および形状の要件と強度および成形性の要件とのバランスをとるために、TRRをできる限り低くする必要がある。調質圧延の圧下率は、好ましくは最大2.50%、より好ましくは最大1.30%、より一層好ましくは最大1.00%である。調質圧延の圧下率は、好ましくは少なくとも0.10%、より好ましくは少なくとも0.20%、より一層好ましくは少なくとも0.50、より一層少なくとも0.65%である。
【0039】
冷間圧延および焼鈍されたハイブリッド二相鋼帯を製造する方法は、任意選択で、金属コーティングの形成を含み、好ましくは、溶融コーティングによって形成されるが、PVD、CVDまたは電着等の冷間塗着技術も採用可能である。
【0040】
別の態様によれば、本発明は、本発明に従って製造された鋼の、自動車用途における使用にも具体化される。本発明による鋼の自動車用途は、車体構造、内側および外側パネル、ドアならびにトランククロージャーにおける用途、シャーシまたはサスペンション、あるいは、車輪、燃料タンク、ステアリングおよびブレーキシステムにおける用途からなり得るが、これらに限定されない。自動車用途は、乗用車における用途、または、トレーラー、トラック、電車、土木建築用車両等の他の車両における用途であってもよい。
【実施例
【0041】
実施例および図面
以下、以下の非限定的な実施例および図面を用いて本発明を説明する。
【0042】
冷間圧延および焼鈍された製品
図4の表1に示す結果および考慮された焼鈍サイクルは、「ハイブリッド」特性を備えた鋼種を製造するための焼鈍サイクルの効果とともに、合金元素の効果を示す。高すぎるNb、TiまたはCの含有量は、Rp/Rm>0.8の鋼種を与え、高い割合の非再結晶領域を含有する。Si濃度の低下は、VDAの強度仕様に達することを困難にする。NbとNbTi合金との比較は、Tiを含むサンプルの方が、強度が高く、より高いマルテンサイトのパーセンテージおよびより高い再結晶度の形成のため、焼鈍温度の変化の影響を受けにくいことを示す。
【0043】
図1A~Bは、(図1A)Nbおよび(図1B)NbTiのKlemmエッチング顕微鏡写真を示す。マルテンサイトは、顕微鏡写真上で明るいスポットとして現れる。サンプルは800℃で焼鈍された。図1C~Dは、(図1C)Nbおよび(図1D)NbTiのNitalエッチング顕微鏡写真を示し、800℃で焼鈍したサンプルのポリゴナルフェライト(再結晶化+未再結晶化)、アシキュラーフェライト、ならびに、パーライトおよびセメンタイト析出物の存在を示す。
【0044】
図1に示すように、エッチングされたサンプルの顕微鏡写真では、マルテンサイトが白いスポットとして現れる。エッチングは、標準的なKlemmエッチング(サンプルの表面を光学グレードまで研磨し、Klemmエッチング液(チオ硫酸ナトリウム飽和水溶液と1gのメタ重亜硫酸カリウム1gとの溶液)で数秒間表面をエッチングし、その後、エタノールで洗浄)によって実施した。これらのスポットは、マルテンサイト析出物のパーセンテージおよびその平均サイズを決定するために、科学画像を処理および分析するためのオープンソースソフトウェアImageJ(https://imagej.nih.gov)を使用して分析した。エッチングされた画像は黒白画像に変換され、ソフトウェアはKlemmエッチングされたNbサンプル(焼鈍温度=820℃)の鋼の顕微鏡写真中のマルテンサイトの分布を決定する(図2A参照)。図2Bは、ImageJソフトウェアによる処理後、図2Cは、マルテンサイトのサイズ分布である。
【0045】
本発明による鋼のミクロ組織の光学的評価は、ミクロ組織の高度な再結晶化が、バランスのとれた特性の実現のための重要な寄与因子であることを明らかにする。EBSD測定により、光学測定値の正確性が確認された。SEM条件は、15kV、120μmアパーチャ、高電流オンであった。EBSD条件は、作動距離16mmおよびスキャン速度100fpsであった。300×1000μm(ステップサイズ0.5μm)および200×200μm(ステップサイズ0.2μm)のスキャンも同様の結果を与えた。
【0046】
【表1】
【0047】
【表2】
【0048】
ホットスタンピング
本発明による鋼は、ホットスタンピング用途にも適している。これは、NbおよびNbTi組成物をダイレクトホットスタンピングプロセスに供することで実証される。典型的なt-Tスケジュールは、次のとおりである:サンプルは再加熱炉で900℃まで5~7分間加熱された。次いで、サンプルが炉から取り出され、冷却される前に、炉とホットプレスとの間の移動中に5~10秒間空気中で冷却された。典型的な実験による加熱および冷却の曲線が図3に示される。このような曲線では、ホットプレスはおよそ800℃で行われる。
【0049】
ホットプレス後のNbTiグレードは、さまざまな市販グレードと同等の機械的特性を有する(表4および5参照)。これらの結果は、本発明による鋼種の多用途性を強調し、これはバランスのとれた組成およびミクロ組織の結果である。
【0050】
【表3】
【0051】
【表4】
図1A-1D】
図2
図3
図4
【国際調査報告】