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特表2024-538780試料を少なくとも2種類のポリアミドの1つに分類するシステムおよび方法
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  • 特表-試料を少なくとも2種類のポリアミドの1つに分類するシステムおよび方法 図1
  • 特表-試料を少なくとも2種類のポリアミドの1つに分類するシステムおよび方法 図2A
  • 特表-試料を少なくとも2種類のポリアミドの1つに分類するシステムおよび方法 図2B
  • 特表-試料を少なくとも2種類のポリアミドの1つに分類するシステムおよび方法 図2C
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-10-23
(54)【発明の名称】試料を少なくとも2種類のポリアミドの1つに分類するシステムおよび方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 21/359 20140101AFI20241016BHJP
   G01N 21/3563 20140101ALI20241016BHJP
【FI】
G01N21/359
G01N21/3563
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024522270
(86)(22)【出願日】2022-10-11
(85)【翻訳文提出日】2024-06-11
(86)【国際出願番号】 EP2022078186
(87)【国際公開番号】W WO2023061977
(87)【国際公開日】2023-04-20
(31)【優先権主張番号】21202116.6
(32)【優先日】2021-10-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】517267802
【氏名又は名称】トリナミクス ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
(74)【代理人】
【識別番号】100100354
【弁理士】
【氏名又は名称】江藤 聡明
(74)【代理人】
【識別番号】100167106
【弁理士】
【氏名又は名称】倉脇 明子
(74)【代理人】
【識別番号】100194135
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 修
(74)【代理人】
【識別番号】100206069
【弁理士】
【氏名又は名称】稲垣 謙司
(74)【代理人】
【識別番号】100185915
【弁理士】
【氏名又は名称】長山 弘典
(72)【発明者】
【氏名】ハンケ,ミヒャエル
【テーマコード(参考)】
2G059
【Fターム(参考)】
2G059AA01
2G059BB08
2G059EE01
2G059EE02
2G059EE12
2G059HH01
2G059JJ01
2G059KK04
2G059MM01
2G059MM03
2G059MM04
2G059MM05
2G059MM10
2G059MM17
(57)【要約】
試料(114)を少なくとも2種類のポリアミドの1つに分類する方法を開示する。
該方法は、以下の工程、
a) 少なくとも1種類のポリアミドを含む少なくとも1つの試料(114)を提供する工程、
b) 少なくとも1つの近赤外分光計装置(112)を使用して、試料(114)の少なくとも1つのスペクトルを取得する工程、
c) 少なくとも1つのスペクトルから少なくとも1つのピークを決定する工程、および
d) 少なくとも1つのスペクトルから決定された少なくとも1つのピークに応じて、試料(114)を少なくとも2種類のポリアミドの1つに分類する工程
を含む。
【選択図】図2B
【特許請求の範囲】
【請求項1】
試料(114)を少なくとも2種類のポリアミドの1つに分類する方法であって、以下の工程、
a) 少なくとも1種類のポリアミドを含む少なくとも1つの試料(114)を提供する工程、
b) 少なくとも1つの近赤外分光計装置(112)を使用して、前記試料(114)の少なくとも1つのスペクトルを取得する工程、
c) 前記少なくとも1つのスペクトルから少なくとも1つのピークを決定する工程、および
d) 前記少なくとも1つのスペクトルから決定された前記少なくとも1つのピークに応じて、前記試料(114)を前記少なくとも2種類のポリアミドの1つに分類する工程
を含む、方法。
【請求項2】
ポリアミドの種類がポリアミド6またはポリアミド6.6から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
工程d)が、スペクトルから決定された前記少なくとも1つのピークの位置に応じて前記試料(114)を分類することを含む、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
スペクトルが6250cm-1~6550cm-1の領域で取得される、請求項1または2に記載の方法。
【請求項5】
少なくとも1つの前処理工程を含み、該前処理工程が、工程c)が実施される前にスペクトルを前処理することを含み、該前処理工程が、散乱補正技術および微分技術からなる群から選択される少なくとも1つの技術を含む、請求項1または2に記載の方法。
【請求項6】
工程c)が実施される前にベースライン補正が実施される、請求項1または2に記載の方法。
【請求項7】
工程c)において、6300cm-1と6500cm-1の間の領域におけるピークが決定される、請求項1または2に記載の方法。
【請求項8】
前記試料(114)を分類することが、ピークの特性の少なくとも1つの数値を、少なくとも1つの予め定義された区間に割り当てることを含む、請求項1または2に記載の方法。
【請求項9】
前記ピークの特性が前記ピークの波数に対応する、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記試料(114)を分類することが、前記ピークの特性の前記少なくとも1つの数値を、少なくとも1つの第一の予め定義された区間または少なくとも1つの第二の予め定義された区間に割り当てることを含む、請求項8に記載の方法。
【請求項11】
前記ピークの特性の前記少なくとも1つの数値を前記第一の予め定義された区間に割り当てることまたは前記第二の予め定義された区間に割り当てることが、前記試料(114)を少なくとも2つの種類のポリアミドのうちの1つに分類することを含む、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
少なくとも1つの確認工程をさらに含み、該確認工程が、スペクトルのピークとは異なるスペクトルの少なくとも1つのさらなる特性に応じて前記試料(114)を分類することを含む、請求項1または2に記載の方法。
【請求項13】
前記確認工程が、少なくとも1つの第一の予め定義された波数区間内で少なくとも1つの第一の平均吸光度を決定することを含み、該確認工程が、少なくとも1つの第二の予め定義された波数区間内で少なくとも1つの第二の平均吸光度を決定することを含む、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
試料(114)を少なくとも2種類のポリアミドの1つに分類するためのシステム(110)であって、以下:
・ 試料(114)の少なくとも1つのスペクトルを取得するように構成されている、少なくとも1つの近赤外分光計装置(112)、および
・ 前記少なくとも1つのスペクトルから少なくとも1つのピークを決定し、前記少なくとも1つのスペクトルから決定された前記少なくとも1つのピークに応じて前記試料(114)を少なくとも2つの種類のポリアミドの1つに分類するように構成される、少なくとも1つの評価装置(116)
を備える、システム(110)。
【請求項15】
試料(114)を少なくとも2種類のポリアミドの1つに分類するための近赤外分光計装置(112)の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、試料を少なくとも2種類のポリアミドの1つに分類するための方法およびシステム、および試料を少なくとも2種類のポリアミドの1つに分類するための近赤外分光計装置の使用に関する。本方法およびシステムは、具体的には、ポリアミド試料の非破壊的且つ現場での分析に適用できる。しかしながら、本発明のさらなる応用分野が実現可能であろう。
【背景技術】
【0002】
ポリアミド(PA)試料、特にサブクラスPA6およびPA6.6の試料は、非常に類似した外観および機械的外観を示すことがある。そのため、プラスチックのリサイクル業者および製造業者は、この2種類のプラスチックを区別する手段を求めている。
【0003】
現在、分類対象であるポリアミドは、例えば、材料の異なる融点を用いる融点試験によって分析することができる。融点試験には、破壊的且つ時間がかかるという欠点があり得る。別の方法は、中赤外(MIR)分光計を用いたケモメトリック分析であろう。この場合、如何なる時間的な遅れもない迅速な現場での検査は不可能であり、そして高価な実験室装置が必要となる。
【0004】
よって現場での非破壊的分析技術が必要とされている。近赤外(NIR)分光法は、これを達成するための実行可能な経路を主に提供することができる。しかしなお、ポリアミド試料、具体的にはPA6またはPA6.6のいずれかのサブクラスに帰属するポリアミド試料のNIRスペクトル、特に1400nm~2500nmの範囲では、後者のサブクラスと異なるパラメータに関して、一般的に強い変動を示す。これらのパラメータは、具体的には、試料の色、表面テクスチャ、表面構造などであるか、またはこれらを含み得る。他のパラメータも可能である。
【0005】
Thermo Scientific社の装置「microPHAZIR PC」は、手持ち型のカーペット繊維識別に好適である。この装置に関する詳細は、以下、
https://www.thermofisher.com/order/catalog/product/MICROPHAZIRPC#/MICROPHAZIRPC.
に見出される。
【0006】
Geller Y:「Using mems technology for cost effective recycling of plastics」,Proc.of SPIE、第6466巻、2007年、第646604-1-646604-07頁、XP040235480では、リサイクル産業用のプラスチック材料を効率的に識別するためのMicro-Electro-Mechanical-System(MEMS)ベースの手持ち型の材料分析装置の開発および実証について記載されている。
【0007】
JP2005-249624Aには、未知の高分子材料をそれぞれの材料種に正確に分類することができる光学スペクトルによるポリマーグループ分類法が記載されている。
【0008】
CN113049528Aでは、近赤外スペクトルベースの繊維コンポーネント識別方法およびモジュールが記載されている。近赤外スペクトルベースの繊維コンポーネント識別方法は、a)識別モデルを確立する工程、b)分類前の前処理を行う工程、およびc)分類および識別アルゴリズムを実行する工程、を含む。近赤外スペクトルベースの繊維コンポーネント識別モジュールは、繊維コンポーネント識別システムソフトウェアを含む。
【0009】
CN112693032Aには、廃プラスチックを回収するための高スループットインテリジェント選別方法が記載されている。この方法は以下の工程、(1)高スループットインテリジェント選別システムが配置され、そしてスクリーニングマニピュレーターがホッパーから層状に上から下へ順次配置されて多層赤外線スクリーニング生産ラインを形成する工程、(2)回収された混合廃プラスチック片があらゆる赤外線スクリーニングマニピュレーターに搬送され、スペクトル認識選別される工程、(3)工程(2)を繰り返し、回収された混合廃プラスチック片をあらゆる赤外線スクリーニングマニピュレーターに順次供給し、第一の選別サイクルを完了する工程、(4)あらゆる廃プラスチックが選別されるまで、残りの未認識混合廃プラスチックに対して後続の選別循環を実施する工程、および(5)単一コンポーネントの廃プラスチックを後続の再生処理に別途使用できるようにする工程、を含む。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】JP2005-249624A
【特許文献2】CN113049528A
【特許文献3】CN112693032A
【非特許文献】
【0011】
【非特許文献1】Geller Y:「Using mems technology for cost effective recycling of plastics」,Proc.of SPIE、第6466巻、2007年、第646604-1-646604-07頁、XP040235480
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
従って、本発明が対処する課題は、試料を少なくとも2種類のポリアミドの1つに分類するための方法およびシステムと、試料を少なくとも2種類のポリアミドの1つに分類するための近赤外分光計装置の使用とを提供することであり、これらはこの種の既知の方法およびシステムの欠点を少なくとも実質的に回避する。
【0013】
特に、ポリアミドの現場での非破壊的分析が可能になるとともに、少なくとも2種類のポリアミドへの信頼性の高い分類が可能となる、試料を少なくとも2種類のポリアミドの1つに分類するための方法およびシステムを提供することが望ましい。
【0014】
この問題は、独立特許請求項の特徴を備えた本発明によって解決される。個別にまたは組み合わせて実現することができる本発明の有利な展開は、従属請求項および/または以下の明細書および詳細な実施形態に示されている。
【0015】
本明細書で使用される場合、「有する」、「備える」、または「含有する」という用語、およびそれらの文法上の変形は、非排他的な方法で使用される。よって、「AはBを有する」という表現、および「AはBを備える」または「AはBを含有する」という表現は、B以外にAは1つ以上の追加のコンポーネント(component)および/または構成要素(constituent)を含有するという事実と、B以外に他のコンポーネント、構成要素、または要素がAに存在しない場合の双方を指し得る。
【0016】
本発明の第一の態様では、試料を少なくとも2種類のポリアミドの1つに分類する方法が開示される。本発明による方法は、以下の工程を含み、これらは、好ましくは、所定の順序または異なる順序で実行してよい。さらに、列挙されていない追加の工程が提供されることがある。明示的に別段の指示がない限り、いずれかまたはあらゆる工程を、少なくとも部分的に同時に実施することができる。さらに、いずれかまたはあらゆる工程は、少なくとも2回、特に繰り返して実施することができる。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明による方法は、以下の工程:
a) 少なくとも1種類のポリアミドを含む少なくとも1つの試料を提供する工程、
b) 少なくとも1つの近赤外分光計装置を使用して、その試料の少なくとも1つのスペクトルを取得する工程、
c) 少なくとも1つのスペクトルから少なくとも1つのピークを決定する工程、および
d) 少なくとも1つのスペクトルから決定された少なくとも1つのピークに応じて、試料を少なくとも2種類のポリアミドの1つに分類する工程
を含む。
【0018】
本方法は、具体的には、コンピュータ実装方法であってもよい。本明細書で使用する「コンピュータ実装方法」という用語は、限定するものではないが、少なくとも1つのコンピュータおよび/または少なくとも1つのコンピュータネットワークを含む方法を指し得る。コンピュータおよび/またはコンピュータネットワークは、本発明による方法の方法工程の少なくとも1つ、具体的には工程b)、c)およびd)の少なくとも1つを実行するように構成され得る少なくとも1つのプロセッサを含み得る。本方法は、完全に自動的に、具体的には、ユーザーとの対話なしに実行されてもよい。本明細書で使用される「自動的に」という用語は、限定するものではないが、少なくとも1つのコンピュータおよび/またはコンピュータネットワークおよび/または機械によって、特に手動操作および/またはユーザーとの対話なしに完全に実行されるプロセスを指し得る。
【0019】
本明細書で使用する「提供する」という用語は、所望の対象が利用可能となる方法の任意の工程を指す。よって本発明による方法の工程a)において、試料が利用可能となり得る。よって工程a)は、提供工程に相当し得る。本明細書でさらに使用される用語「試料」は、完全にまたは部分的にポリアミドを含む任意の物体を指す。具体的には、物体は、少なくとも1種類のポリアミドを含む、全体的または部分的な少なくとも1つの表面を有してよい。試料は任意の形状を有してよい。さらに、試料は、手持ち型の物体であってもよい。しかしながら試料は、移動不可能なコンポーネント、例えば建築コンポーネントであってもその一部であってもよい。よって以下にさらに詳細に記載する近赤外分光計装置は、具体的には、移動不可能なコンポーネントにできる手持ち型の近赤外分光計装置であってもよい。
【0020】
本明細書でさらに使用される用語「ポリアミド」は、アミド結合で連結された繰り返し単位を有する任意のポリマーを指す。ポリアミドは天然および人工の両方で生じ得る。人工的に製造されたポリアミドは、段階成長重合または固相合成によって製造されてよく、例えばナイロン、アラミド、およびナトリウムポリ(アスパルテート)などの材料が得られる。合成ポリアミドは、その高い耐久性および強度から、繊維製品、自動車産業、カーペット、台所用品およびスポーツウェアによく使われている。合成ポリアミドは、その主鎖の組成により、脂肪族ポリアミド、ポリフタルアミド、および芳香族ポリアミドに分類される。
【0021】
脂肪族ポリアミドには、ポリアミド6およびポリアミド6.6が含まれ得る。ポリアミド6は、ナイロン6またはポリカプロラクタムと呼ばれることもある。ポリアミド6は、ε-カプロラクタムの開環重合によって形成される半結晶性ポリアミドを指し得る。ε-カプロラクタムを約533Kで窒素の不活性雰囲気中約4~5時間加熱すると、環が切断して重合を起こすことがある。重合中、各ε-カプロラクタム分子内のアミド結合は切断され、モノマーがポリマー骨格の一部となるにつれて、両側の活性基が2つの新しい結合を再形成する。各結合でアミド結合の方向が反転するポリアミド6.6とは異なり、ポリアミド6のアミド結合は同じ方向にあり得る。ポリアミド6は、具体的には繊維として提供され得る。ポリアミド6.6は、ナイロン6.6、ナイロン66、ナイロン6-6、ナイロン6/6またはナイロン6,6とも呼ばれることがある。ポリアミド6.6は、それぞれ6個の炭素原子を含む2つのモノマー、ヘキサメチレンジアミンおよびアジピン酸でできていてよい。ポリアミド6.6は、ヘキサメチレンジアミンとアジピン酸の重縮合によって合成してよい。等量のヘキサメチレンジアミンとアジピン酸を反応器中で水と合わせてもよい。これを結晶化させて、ナイロン塩、アンモニウム/カルボン酸塩混合物を作ることができる。ナイロン塩を反応容器に入れ、バッチ式または連続式で重合を行う。水を除去することにより、酸およびアミン官能基からアミド結合が形成され、重合反応が促進される。このようにして、溶融ポリアミド6.6が形成され得る。このポリアミドは、押出および造粒するか、または紡糸口金を通した押出および冷却してフィラメントを形成することにより、直接繊維に紡糸してよい。
【0022】
上記に概説したように、工程b)において、少なくとも1つの近赤外分光計装置を用いて試料の少なくとも1つのスペクトルを取得する。一般に使用されるように、用語「スペクトル」は、光学スペクトル範囲、特に赤外(IR)スペクトル範囲、特に近赤外(NIR)または中赤外(MidIR)スペクトル範囲の少なくとも1つの区画を指す。スペクトルの各部分は、信号波長または波数および対応する信号強度によって規定され得る光学信号によって構成され得る。本明細書で使用する用語「取得」は、事実及び/又はデータを確定し、結論付け、又は確認することを意味するものとして、当業者に理解される。よって「スペクトルを取得する」ことは、光信号を測定すること、具体的には、近赤外分光計装置の光信号を表すデータ点を記録し、そして任意に好適な記憶装置に記憶することに関連し得る。
【0023】
具体的には、工程b)は、特に波数にわたる吸光度信号を表すデータ点を決定し、そして任意に記憶媒体に記憶することを含み得る。「吸光度」という用語は、物質を透過する入射放射パワー対透過放射パワーの比の常用対数を指し得る。具体的には、吸光度は、物質を透過する入射スペクトル放射パワー対透過または反射スペクトル放射パワーの比の常用対数に対応するスペクトル吸光度を指し得る。分光法で使用される「波数」という用語は、単位距離(典型的にはセンチメートル(cm-1))あたりの波長の数として定義され得る。具体的には、スペクトルは、6250cm-1~6550cm-1の領域で取得できる。さらに、具体的には、スペクトルは、6150cm-1~6550cm-1の領域で取得できる。
【0024】
本明細書で使用する用語「分光計装置」は、信号強度を、スペクトルまたはその区画、例えば波長区間の対応する波長に関して記録することができる機器を指し得、信号強度は、好ましくは、さらなる評価のために使用できる電気信号として提供され得る。分光計装置は、具体的には、光学フィルタまたは分散素子の少なくとも1つから特に選択される少なくとも1つの光学素子を含んでよい。ここで、分散素子は、好ましくは、プリズム、グレーティング、長さ可変フィルタ又は干渉計の少なくとも1つから選択され得る。しかしながら、他の実施形態も可能である。光学素子は、入射光を受け取り、そして入射光を検出器アレイに転送するように設計されてもよい。さらに、光学素子は、入射光を構成波長信号のスペクトルに分離するように指定してもよい。
【0025】
さらに、分光計装置は、少なくとも1つの検出器アレイを含んでよい。検出器アレイは、具体的には、透明ギャップによって光学素子から分離されていてよく、そして複数の検出器素子から構成されていてもよい。各検出器素子は、構成波長信号の1つの少なくとも一部を受信するように指定されてもよい。さらに、検出器アレイは、構成波長信号の1つの少なくとも1つの一部による複数の検出器素子の照明に応じて、少なくとも1つの検出器信号を生成するように構成されてもよい。検出器素子は、好ましくは、光学素子の長さに沿って一次元マトリックスとして一列に配列されてもよいし、代替案として、特に、複数の列、特に、2、3、または4つの平行な列として、二次元マトリックスの形態で配列されてもよく、構成波長信号の強度の大部分を可能な限り受信する。さらに、代替的に、分光計装置は、特に干渉計などの可動部がある場合には、少なくとも1つの単一検出器から構成されてもよい。しかしながら、他の実施形態も可能である。
【0026】
本明細書でさらに使用される用語「光」は、一般に、通常「光学スペクトル範囲」と呼ばれ、可視スペクトル範囲、紫外スペクトル範囲および赤外スペクトル範囲の1つ以上を含む電磁放射線の区画を指す。「可視」という用語は、一般に、380nm~760nmの波長を有する電磁放射線を指す。「赤外」または「IR」という用語は、一般に、760nm~1000μmの波長を有する電磁放射線を指し、760nm~3μmの波長は、通常、「近赤外」または「NIR」と表記され、一方で3μm~15μmの波長は、通常、「中赤外」または「MidIR」と表記され、そして15μm~1000μmの波長は、「遠赤外」または「FIR」と表記される。本発明の典型的な目的に使用される光は、特に、IRスペクトル範囲、好ましくはNIRまたはMidIRスペクトル範囲の少なくとも1つの範囲の光であり、より好ましくは1μm~5μm、好ましくは1μm~3μm、特に1.5μm~1.6μmの波長を有する光であり、波数6250cm-1~6550cm-1にほぼ相当する。好ましくは、物体から出る光は、物体自体から発生することもできるが、任意に別の発生源、好ましくは少なくとも1つの照明光源を持つこともでき、この発生源から物体へ、そしてその後分光計装置に向かって伝播する。物体から分光計装置へ伝播する光は、物体および/または物体に接続された反射ユニットによって反射される光であってもよい。よってスペクトルは反射モードで取得され得る。あるいは、またはそれに加えて、光は少なくとも部分的に物体を透過し得る。
【0027】
任意に、本方法は、少なくとも1つの前処理工程を含んでよい。具体的には、前処理工程は、工程c)が実施される前にスペクトルを前処理することを含んでよい。典型的に、NIRスペクトルは拡散および鏡面反射率、または直進透過率の混合を含む。スペクトルの形状は、様々な要因によって影響を受け得る。第一に、入射光の波長が異なると、試料による吸収が異なる場合があり、具体的には、これは試料自体の化学的性質に起因する。第二に、物質の粒子径の違いにより、光が波長に応じて異なる角度で偏ることが生じ得る。散乱効果は、光路長の違いと共に、NIRスペクトルのばらつきの主な原因となり得る。第三に、位置のばらつきおよび/または試料表面の凹凸による試料ごとの光路長の違いが生じ得る。散乱効果は、相加効果と相乗効果の両方の場合がある。相加効果、例えば経路長差は、垂直軸に沿ったスペクトルのベースライン変位を生じさせることがあり、一方で相乗効果は、スペクトルの局所的な傾きを修正することがある。よって「スペクトルを前処理する」という用語は、試料の化学的性質とは無関係であるが、特に試料の形態および測定形状に依存し得る影響を排除する、または少なくとも低減することを目的としたスペクトルの補正を指し得る。
【0028】
具体的には、前処理工程は、散乱補正技術、微分技術からなる群から選択される少なくとも1つの技術を含んでよい。
【0029】
散乱補正技術は、多重散乱補正(MSC)、標準正規変量変換(SNV)、ロバスト正規変量変換(RNV)、レンジスケーリング、パレートスケーリングからなる群から選択してよい。他の散乱補正技術も可能である。
【0030】
MSCは、基準スペクトルを必要とする場合がある。基準スペクトルは、理想的には散乱効果のないスペクトルを指す。例えば、平均スペクトルXを基準スペクトルとすることができる。粒子径および経路長の影響は試料ごとにランダムに変動し得るので、平均スペクトルはこれらの影響を合理的に低減し得る。具体的には、MSCは2工程で実施してよい。まず、各スペクトルXを平均スペクトルに対して回帰する:
【数1】
次に、補正されたスペクトルを計算する:
【数2】
【0031】
SNVは、個々のスペクトルに対して実施してよい。よって基準スペクトルは必要ない場合もある。SNV補正は、2工程で実施してよい。まず、各スペクトルXを、その平均
【数3】
の減算によって平均中心化する。次に、各平均中心化したスペクトルを、それ自身の標準偏差で除する:
【数4】
【0032】
RNVはSNVと同様の方法で機能し得る。平均値の代わりにパーセンタイル、特に選択可能なパーセンタイルが適用され得る。通常の標準偏差の代わりに、パーセンタイル未満の値の標準偏差を適用してよい。
【0033】
さらに、微分技術は、ノリス微分フィルタ、特に一次微分、特に二次微分、Savitzky-Golay微分からなる群から選択してよい。他の微分技術も可能である。
【0034】
ノリス微分フィルタは、Norris-Williams(NW)微分とも呼ばれることがある。ノリス微分フィルタは、有限差分におけるノイズの膨張を回避するように構成され得る。ノリス微分フィルタには、具体的には2つの工程が含まれる。まず、所定の点の数にわたる平均化を実行することにより、スペクトルが平滑化される:
【数5】
これにより、mは、現在の測定点iを中心とする平滑化ウィンドウ内の点の数に対応する。次に、一次微分について、所定のギャップサイズ(ゼロより大きい)を有する2つの平滑化された値の間の差を除する:
【数6】
二次微分について、点iにおける平滑化値と、どちらかの側のギャップ距離における平滑化値の差を2回除する:
【数7】
例示的に、ノリス微分フィルタの二次微分は、15ピクセルのウィンドウサイズで適用できる。15ピクセルのウィンドウサイズは、8cm-1のピクセル間隔が強制されるデバイスからのスペクトルに対して実施されるスペクトル標準化という非常に特殊な場合に適用される。よって、異なる間隔を選択すれば、全く異なるウィンドウサイズが必要となり得る。
【0035】
さらに、ベースライン補正は、工程c)が実施される前に実施してよい。ベースライン補正は、前処理工程の一部であってよく、または追加工程として実施してもよい。NIRスペクトルは、例えば照明角度または光路長の変化によって生じるベースラインオフセットおよび曲線傾向を示すことが多い。ベースライン補正は、NIRスペクトルを共通のベースライン上にリセットするように構成できる。具体的には、ベースラインは、フィッティング、具体的には線形フィッティングまたは多項式フィッティングによって計算できる。しかしながら、他の方法も可能である。その後、スペクトルからベースラインを除去することにより、ベースライン補正されたスペクトルが得られる。
【0036】
例示的に、反復制限付き最小二乗アルゴリズムを適用できる。このアルゴリズムは、一次平滑化、反復ベースライン抑制、および二次微分制約を伴う回帰を含み得る。例示的に、以下の正則化パラメータが適用できる:主平滑化の二次微分制約=6、二次平滑化の二次微分制約=4、正の残差の重み付け=0.1。しかし、他の正則化パラメータも可能である。
【0037】
特に、工程c)を行う前に、以下の工程を実施してよい:
i. 少なくとも1つのベースライン補正を実施する工程、
ii. 少なくとも1つの散乱補正を、具体的にはロバスト正規変量変換を行うことによって実施する工程、
iii. 少なくとも1つの微分技術を適用する、具体的にはノリス微分フィルタを適用する、より具体的にはノリス微分フィルタの二次微分を適用する工程。
【0038】
上記に概説したように、工程c)において、少なくとも1つのスペクトルから少なくとも1つのピークが決定される。本明細書で使用する「ピーク」という用語は、スペクトルの少なくとも1つの局所的な最大値またはその微分を指す。さらに、極大値の間の極小値、すなわち負のスペクトルの極大値もフィッティングできる。本明細書で使用する「ピークを決定する」という用語は、ピークの検出、ピークの発見、ピークの識別、ピークのフィッティング、ピークの評価のうちの1つ以上を含む任意のプロセスを指す。具体的には、この用語は、ピークの有無の判定などのピークの定性的な判定、および/またはピークの位置の判定などのピークの定量的な判定を指し得る。ピーク判定は、自動ピーク判定、すなわち、少なくとも1つのコンピュータおよび/またはコンピュータネットワークおよび/または機械によって実行されるピーク判定であってもよい。具体的には、自動ピーク判定は、手動操作またはユーザーとの対話なしに実行されてよい。具体的には、工程c)において、スペクトルの少なくとも一部のフィッティング手順が実行されてもよい。具体的には、フィッティング手順は、ピークを決定するための少なくとも1つの数学的演算および/または数学的アルゴリズムを使用することによって実行されてもよい。具体的には、フィッティング手順は、二次多項式の適用、具体的には、その一次微分のゼロクロス点の採用を含んでよい。具体的には、工程c)において、6300cm-1と6500cm-1の間の領域、具体的には6350cm-1と6450cm-1の間の領域におけるピークを決定してもよい。さらに、具体的には、工程c)において、6150cm-1と6500cm-1の間の領域のピークを決定してもよい。
【0039】
上記に概説したように、工程d)において、スペクトルから決定された少なくとも1つのピークに応じて、試料を少なくとも2種類のポリアミドの1つに分類する。本明細書で使用する「分類する」という用語は、少なくとも1つの試料に関連する少なくとも1つのパラメータに従って、少なくとも1つの試料を少なくとも2つのクラスに選別する、典型的には「分類プロセス」と示されるプロセスを指す。ここで、「クラス」という用語は、一般に、少なくとも1つの材料特性および/または試料の少なくとも1つの材料の化学構造によって互いに異なる可能性のある試料の異なる種類を指す。具体的には、ポリアミドの種類は、ポリアミド6、ポリアミド6.6から選択できる。しかし、他の種類のポリアミドも可能である。上記の記載を参照されたい。
【0040】
試料を分類することは、ピークの特性の少なくとも1つの数値を少なくとも1つの予め定義された区間に割り当てることを含んでよい。具体的には、工程d)は、スペクトルから決定された少なくとも1つのピークの位置に応じて試料を分類することを含み得る。具体的には、ピークの特性の数値は波数に対応し得る。それにより、予め定義された区間は、波数の予め定義された区間に対応できる。具体的には、試料を分類することは、スペクトルから決定された少なくとも1つのピークの位置を少なくとも1つの予め定義された区間に割り当てることを含んでよい。
【0041】
具体的には、試料を分類することは、ピークの特性の少なくとも1つの数値を、少なくとも1つの第一の予め定義された区間または少なくとも1つの第二の予め定義された区間に割り当てることを含んでよい。さらに、試料を分類することは、少なくとも1つの第三の予め定義された波数区間に波数を割り当てることを含んでよい。用語「第一の予め定義された区間」、「第二の予め定義された区間」および「第三の予め定義された区間」は、命名法として考慮されるのみでよく、命名された区間を番号付けまたはランク付けすることなく、順序を指定することなく、また複数の種類の第一の予め定義された区間、第二の予め定義された区間および第三の予め定義された区間が存在する可能性を排除するものではない。さらに、追加の予め定義された区間が存在してもよい。「予め定義された」という用語は、一般に、或る事象が発生または導入される前に決定され、記載され、または固定される性質を指し得る。具体的には、予め定義された区間の1つ以上のデフォルト値が使用され、評価装置のデータ記憶装置に記憶されることがある。さらに、予め定義された区間の値は、ユーザーによって手動で調整可能であってもよい。
【0042】
具体的には、第一の予め定義された区間には、6380cm-1と6397cm-1の間、具体的には6385cm-1と6395cm-1の間の波数が含まれてよい。さらに、第二の予め定義された区間には、6400cm-1と6430cm-1の間、具体的には6405cm-1と6425cm-1の間の波数が含まれてよい。さらに、第三の予め定義された波数区間には、6395cm-1と6405cm-1の間、具体的には6397cm-1と6400cm-1の間の波数が含まれてよい。しかしながら、他の区間も可能である。
【0043】
前処理に応じて、ピークは異なる場所にある場合がある。例えば、二次微分のピークは、一次微分または非微分スペクトルのピークから系統的にシフトすることがある。一般に、6200cm-1と6550cm-1の波数区間内のピークは決定可能である。実際の区間は、選択された前処理手順に大きく依存し得る。さらに、ピーク位置はスペクトルピクセル幅に依存し得る。異なる解像度の異なるNIR装置では、異なる値が得られる可能性がある。
【0044】
ピークの特性の少なくとも1つの数値を第一の予め定義された区間または第二の予め定義された区間に割り当てることは、試料を少なくとも2種類のポリアミドの1つに分類することを含み得る。具体的には、ピークの特性の少なくとも1つの数値を第一の予め定義された区間に割り当てることは、試料をポリアミド6.6に分類することを含み得る。さらに、ピークの特性の少なくとも1つの数値を第二の予め定義された区間に割り当てることは、試料をポリアミド6に分類することを含み得る。さらに、ピークの特性の少なくとも1つの数値の第三の予め定義された区間に割り当てることは、分類に失敗する可能性がある。具体的には、ピークの特性の少なくとも1つの数値は、ポリアミドの1つの種類に確実に割り当てることができない場合がある。
【0045】
任意に、本方法は、少なくとも1つの確認工程をさらに含んでもよい。確認工程は、スペクトルの少なくとも1つのさらなる特性、具体的にはスペクトルのピークとは異なるスペクトルのさらなる特性の少なくとも1つのさらなる数値に応じて試料を分類することを含んでよい。具体的には、確認工程は、少なくとも1つの第一の予め定義された波数区間内で少なくとも1つの第一の平均吸光度を決定することを含んでよい。さらに、確認工程は、少なくとも1つの第二の予め定義された波数区間内で少なくとも1つの第二の平均吸光度を決定することを含んでよい。具体的には、第一の予め定義された波数区間には、6294cm-1と6366cm-1の間の波数が含まれてよい。さらに、第二の予め定義された波数区間には、6406cm-1と6494cm-1の間の波数が含まれてよい。しかしながら、他の波数区間も可能である。
【0046】
用語「第一の予め定義された波数区間」および「第二の予め定義された波数区間」は、命名法として考慮されるのみでよく、命名された区間を番号付けまたはランク付けすることなく、順序を指定することなく、また複数の種類の第一の予め定義された波数区間および第二の予め定義された波数区間が存在する可能性を排除するものではない。さらに、追加の予め定義された波数区間が存在してもよい。第一の予め定義された波数区間および第二の予め定義された波数区間は、それぞれ、上記に概説したように、第一の予め定義された区間、第二の予め定義された区間、または第三の予め定義された区間と異なっていてもよいし、同等であってもよい。さらに、第一の予め定義された波数区間および第二の予め定義された波数区間は、それぞれ、上記に概説したように、第一の予め定義された区間、第二の予め定義された区間または第三の予め定義された区間と重複してもよい。
【0047】
確認工程は、少なくとも2つの第一の平均吸光度区間の1つに第一の平均吸光度を割り当てることを含んでよい。さらに、確認工程は、少なくとも2つの第二の平均吸光度区間の1つに第二の平均吸光度を割り当てることを含んでよい。
【0048】
少なくとも2つの第一の平均吸光度区間の1つに第一の平均吸光度を割り当てること、および/または少なくとも2つの第二の平均吸光度区間の1つに第二の平均吸光度を割り当てることは、試料を少なくとも2つの種類のポリアミドのうちの1つに分類することの確認につながり得る。
【0049】
本発明のさらなる態様において、試料を少なくとも2種類のポリアミドの1つに分類するためのシステムが開示される。本明細書でさらに使用される用語「試料を少なくとも2種類のポリアミドの1つに分類するためのシステム」とは、上記に概説したように分光計装置に加えて、分光計装置の検出器アレイによって提供される検出器信号を評価することにより、物体のスペクトルに関連し得るスペクトル情報を決定するために指定される評価装置を含み得る機器を指す。
【0050】
システムは、少なくとも1つの近赤外分光計装置を含む。近赤外分光計装置は、試料の少なくとも1つのスペクトルを取得するために構成されている。近赤外分光計装置のさらなる詳細については、上記の説明を参照されたい。さらに、システムは少なくとも1つの評価装置を備える。評価装置は、少なくとも1つのスペクトルから少なくとも1つのピークを決定し、少なくとも1つのスペクトルから決定された少なくとも1つのピークに応じて試料を少なくとも2つの種類のポリアミドの1つに分類するように構成される。
【0051】
「評価装置」という用語は、一般に、近赤外分光計装置を作動させる、および/または近赤外分光計装置からの信号を記録する、および/または信号から試料の少なくとも1つの情報を導出する、および/またはこれらの信号の全部または一部を評価するように設計された任意のコンポーネントを指し得る。評価装置は、制御部または電子ユニットと呼ばれることもある。よって評価装置は、具体的には、電子コンポーネントであってよい、または電子コンポーネントを含んでよい。電子コンポーネントは、近赤外分光計装置による測定の実行、測定信号の記録、測定信号または測定データの保存、信号または測定データの他の装置への送信のうちの1つ以上のために構成されてもよい。よって電子コンポーネントは、具体的には、電圧計、電流計、ポテンショスタット、電圧源、電流源、信号受信器、信号送信器、アナログ-デジタル変換器、電子フィルタ、エネルギー蓄積装置、マイクロコントローラなどのデータ処理装置のうちの少なくとも1つで構成されてよい。電子コンポーネントの他の実施形態も可能である。電子コンポーネントは、具体的には、電子コンポーネントの要素が上に配置された少なくとも1つの回路基板から構成されてもよい。さらに、評価装置は、近赤外分光計装置に電気的に接触するように設計されていてもよい。
【0052】
具体的には、システムは、上述したように、または以下にさらに詳細に記載するように、試料を少なくとも2種類のポリアミドの1つに分類する方法を実行するように構成されてよい。
【0053】
本発明のさらなる態様では、試料を少なくとも2種類のポリアミドの1つに分類するための近赤外分光計装置の使用が開示される。
【0054】
さらなる態様において、本明細書に記載の実施形態のいずれか1つによる方法を実行するためのコンピュータ実行可能命令が含まれるコンピュータプログラム、具体的には、プログラムがコンピュータまたはコンピュータネットワーク、具体的には多重遷移監視用装置のプロセッサ上で実行される場合の方法工程b)~d)が開示される。
【0055】
よって一般的に言えば、本明細書で開示および提案されるのは、プログラムがコンピュータまたはコンピュータネットワーク上で実行されるときに、本明細書に含まれる実施形態の1つ以上において本発明による方法を実行するためのコンピュータ実行可能命令を含むコンピュータプログラムである。具体的には、コンピュータプログラムは、コンピュータ可読データキャリアに記憶され得る。よって具体的には、上記の方法工程の1つ、2つ以上、またはすべてでさえ、コンピュータまたはコンピュータネットワークを使用することによって、好ましくはコンピュータプログラムを使用することによって実行され得る。コンピュータは、具体的には、多重遷移監視のための装置に完全にまたは部分的に統合されていてもよく、コンピュータプログラムは、具体的には、ソフトウェアとして具現化されていてもよい。しかし代替的に、コンピュータの少なくとも一部は多重遷移監視用装置の外部に位置してもよい。
【0056】
本明細書でさらに開示および提案されるのは、プログラムがコンピュータまたはコンピュータネットワーク上で実行されるときに、本明細書に含まれる実施形態の1つ以上において本発明による方法、例えば上述の方法工程の1つ以上を実行するための、プログラムコード手段を有するコンピュータプログラム製品である。具体的には、プログラムコード手段は、記憶媒体、例えばコンピュータ可読データキャリアに記憶できる。
【0057】
本明細書でさらに開示および提案されるのは、記憶されたデータ構造を有するデータキャリアであって、該データキャリアは、コンピュータまたはコンピュータネットワークに、例えばコンピュータまたはコンピュータネットワークのワーキングメモリまたはメインメモリにロードされた後に、本明細書に開示される1つ以上の実施形態による方法、具体的には上述の方法工程の1つ以上を実行し得る。
【0058】
本明細書でさらに開示および提案されるのは、プログラムがコンピュータまたはコンピュータネットワーク上で実行されるときに、本明細書に開示される実施形態の1つ以上において本発明による方法、具体的には上述の方法工程の1つ以上を実行するための、機械可読キャリアに記憶されたプログラムコード手段を備えたコンピュータプログラム製品である。本明細書で使用される場合、コンピュータプログラム製品は、取引可能な製品としてのプログラムを指す。製品は、一般に、任意の形式で存在してよく、例えば紙形式またはコンピュータ可読データキャリア上に存在してもよい。具体的には、コンピュータプログラム製品は、データネットワーク上で配布されてもよい。
【0059】
本明細書でさらに開示および提案されるのは、本明細書に開示される実施形態の1つ以上による方法を実行するための、コンピュータシステムまたはコンピュータネットワークが読み取り可能な命令を含む変調データ信号である。
【0060】
本明細書でさらに開示および提案されるのは記憶媒体であり、データ構造が記憶媒体に記憶され、そしてデータ構造が、コンピュータまたはコンピュータネットワークの主および/または作業記憶媒体にロードされた後に、本明細書に開示される実施形態の1つ以上による方法の少なくとも工程b)、c)およびd)を実行するように適合される。
【0061】
具体的には、本明細書でさらに開示されるのは:
- 少なくとも1つのプロセッサを含むコンピュータまたはコンピュータネットワークであって、該プロセッサが、本明細書に記載の実施形態の1つによる方法の少なくとも工程b)、c)およびd)を実行するように適合されている、コンピュータまたはコンピュータネットワーク、および
- データ構造がコンピュータ上で実行されている間に、本明細書に記載の実施形態の1つによる方法の少なくとも工程b)、c)およびd)を実行するように適合された、コンピュータにロード可能なデータ構造
である。
【0062】
試料を少なくとも2種類のポリアミドの1つに分類する方法およびシステムは、先行技術に対してかなりの利点を有し得る。よって一般に、手持ち型NIR分光計装置を適用できる。コストが削減され、時間が節約され、そして特に研究室ベースのMIR分光計装置とは対照的に、柔軟な現場試験が実現され得る。NIR技術の使用により、特に確立された融点試験とは対照的に、非破壊分析が提供できる。
【0063】
要約すると、本発明の文脈では、以下の実施形態が特に好ましいと考えられる:
実施形態1:試料を少なくとも2種類のポリアミドの1つに分類する方法であって、以下の工程、
a) 少なくとも1種類のポリアミドを含む少なくとも1つの試料を提供する工程、
b) 少なくとも1つの近赤外分光計装置を使用して、その試料の少なくとも1つのスペクトルを取得する工程、
c) 少なくとも1つのスペクトルから少なくとも1つのピークを決定する工程、および
d) 少なくとも1つのスペクトルから決定された少なくとも1つのピークに応じて、試料を少なくとも2種類のポリアミドの1つに分類する工程
を含む、方法。
【0064】
実施形態2:工程b)が、特に波数にわたる吸光度信号を表すデータ点を決定し、そして任意に記憶媒体に記憶することを含む、先の実施形態による方法。
【0065】
実施形態3:工程d)が、試料を少なくとも2つの種類のポリアミドのうちの1つに分類することを含む、先の実施形態のいずれか1つによる方法。
【0066】
実施形態4:ポリアミドの種類が、ポリアミド6、ポリアミド6から選択される、先の実施形態による方法。
【0067】
実施形態5:工程d)が、スペクトルから決定された少なくとも1つのピークの位置に応じて試料を分類することを含む、先の実施形態のいずれか1つによる方法。
【0068】
実施形態6:スペクトルが、6250cm-1と6550cm-1の間の領域で取得される、先の実施形態のいずれか1つによる方法。
【0069】
実施形態7:スペクトルが、6150cm-1と6550cm-1の間の領域で取得される、先の実施形態のいずれか1つによる方法。
【0070】
実施形態8:試料のスペクトルが反射モードで取得される、先の実施形態のいずれか1つによる方法。
【0071】
実施形態9:少なくとも1つの前処理工程を含み、前処理工程は、工程c)が実施される前にスペクトルを前処理することを含む、先の実施形態のいずれか1つによる方法。
【0072】
実施形態10:前処理工程が、散乱補正技術、微分技術からなる群から選択される少なくとも1つの技術を含む、先の実施形態による方法。
【0073】
実施形態11:散乱補正技術が、多重散乱補正、標準正規変量変換、ロバスト正規変量変換からなる群から選択される、先の実施形態による方法。
【0074】
実施形態12:前記微分技術が、ノリス微分フィルタからなる群から選択される、先の2つの実施形態のいずれか1つによる方法。
【0075】
実施形態13:工程c)が実施される前にベースライン補正が実施される、先の実施形態のいずれか1つによる方法。
【0076】
実施形態14:工程c)において、6300cm-1と6500cm-1の間の領域、具体的には6350cm-1と6450cm-1の間の領域におけるピークが決定される、先の実施形態のいずれか1つによる方法。
【0077】
実施形態15:工程c)において、6150cm-1と6500cm-1の間の領域のピークが決定される、先の実施形態のいずれか1つによる方法。
【0078】
実施形態16:工程c)において、スペクトルの少なくとも一部のフィッティング手順が実行される、先の実施形態のいずれか1つによる方法。
【0079】
実施形態17:試料を分類することが、ピークの特性の少なくとも1つの数値を、少なくとも1つの予め定義された区間に割り当てることを含む、先の実施形態のいずれか1つによる方法。
【0080】
実施形態18:ピークの特性の数値がピークの波数に対応する、先の実施形態による方法。
【0081】
実施形態19:試料を分類することが、ピークの特性の少なくとも1つの数値を、少なくとも1つの第一の予め定義された区間または少なくとも1つの第二の予め定義された区間に割り当てることを含む、先の2つの実施形態のいずれか1つによる方法。
【0082】
実施形態20:第一の予め定義された区間に、6385cm-1と6395cm-1の間の波数が含まれる、先の実施形態による方法。
【0083】
実施形態21:第二の予め定義された区間に、6405cm-1と6425cm-1の間の波数が含まれる、先の2つの実施形態のいずれか1つによる方法。
【0084】
実施形態22:試料を分類することが、ピークの特性の少なくとも1つの数値を、少なくとも1つの第三の予め定義された区間に割り当てることを含む、先の3つの実施形態のいずれか1つによる方法。
【0085】
実施形態23:第三の予め定義された区間に、6397cm-1と6400cm-1の間の波数が含まれる、先の実施形態による方法。
【0086】
実施形態24:ピークの特性の少なくとも1つの数値を第一の予め定義された区間に割り当てることまたは第二の予め定義された区間に割り当てることが、試料を少なくとも2つの種類のポリアミドのうちの1つに分類することを含む、先の5つの実施形態のいずれか1つによる方法。
【0087】
実施形態25:少なくとも1つの確認工程をさらに含み、確認工程が、スペクトルのピークとは異なるスペクトルの少なくとも1つのさらなる特性に応じて試料を分類することを含む、先の実施形態のいずれか1つによる方法。
【0088】
実施形態26:確認工程が、少なくとも1つの第一の予め定義された波数区間内で少なくとも1つの第一の平均吸光度を決定することを含む、先の実施形態による方法。
【0089】
実施形態27:第一の予め定義された波数区間に、6294cm-1と6366cm-1の間の波数が含まれる、先の実施形態による方法。
【0090】
実施形態28:確認工程が、少なくとも1つの第二の予め定義された波数区間内で少なくとも1つの第二の平均吸光度を決定することを含む、先行する3つの実施形態のいずれか1つによる方法。
【0091】
実施形態29:第二の予め定義された波数区間に、6406cm-1と6494cm-1の間の波数が含まれる、先の実施形態による方法。
【0092】
実施形態30:試料を少なくとも2種類のポリアミドの1つに分類するためのシステムであって、以下:
・ 試料の少なくとも1つのスペクトルを取得するように構成されている、少なくとも1つの近赤外分光計装置、および
・ 少なくとも1つのスペクトルから少なくとも1つのピークを決定し、少なくとも1つのスペクトルから決定された少なくとも1つのピークに応じて試料を少なくとも2つの種類のポリアミドの1つに分類するように構成される、少なくとも1つの評価装置
を備える、システム。
【0093】
実施形態31:試料を少なくとも2種類のポリアミドの1つに分類するための方法を参照する先の請求項のいずれか1項による試料を少なくとも2種類のポリアミドの1つに分類するための方法を実行するように構成されている、先の実施形態によるシステム。
【0094】
実施形態32:試料を少なくとも2種類のポリアミドの1つに分類するための近赤外分光計装置の使用。
【0095】
実施形態33:少なくとも1つのプロセッサを含むコンピュータまたはコンピュータネットワークであって、該プロセッサが、試料を少なくとも2種類のポリアミドの1つに分類するための方法を参照する先の実施形態のいずれか1つによる試料を少なくとも2種類のポリアミドの1つに分類するための方法の少なくとも工程b)、c)およびd)を実行するように適合されている、コンピュータまたはコンピュータネットワーク。
【0096】
実施形態34:データ構造がコンピュータ上で実行されている間に、試料を少なくとも2種類のポリアミドの1つに分類するための方法を参照する先の実施形態のいずれか1つによる試料を少なくとも2種類のポリアミドの1つに分類するための方法の少なくとも工程b)、c)およびd)を実行するように適合された、コンピュータにロード可能なデータ構造。
【0097】
実施形態35:コンピュータプログラムであって、コンピュータ上で該プログラムが実行されている間に、試料を少なくとも2種類のポリアミドの1つに分類するための方法を参照する先の実施形態のいずれか1つによる試料を少なくとも2種類のポリアミドの1つに分類するための方法の少なくとも工程b)、c)およびd)を実行するように適合されている、コンピュータプログラム。
【0098】
実施形態36:コンピュータプログラムがコンピュータ上またはコンピュータネットワーク上で実行されている間に、試料を少なくとも2種類のポリアミドの1つに分類するための方法を参照する先の実施形態のいずれか1つによる試料を少なくとも2種類のポリアミドの1つに分類するための方法の少なくとも工程b)、c)およびd)を実行するためのプログラム手段を含む、コンピュータプログラム。
【0099】
実施形態37:前記プログラム手段がコンピュータ可読記憶媒体に記憶されている、先の実施形態によるプログラム手段を含むコンピュータプログラム。
【0100】
実施形態38:記憶媒体であって、データ構造が記憶媒体に記憶され、そしてデータ構造がコンピュータまたはコンピュータネットワークの主および/または作業記憶媒体にロードされた後に、試料を少なくとも2種類のポリアミドの1つに分類するための方法を参照する先の実施形態のいずれか1つによる試料を少なくとも2種類のポリアミドの1つに分類するための方法の少なくとも工程b)、c)およびd)を実行するように適合される、記憶媒体。
【0101】
実施形態39:プログラムコード手段を有するコンピュータプログラム製品であって、プログラムコード手段が、コンピュータ上またはコンピュータネットワーク上で実行されるときに、試料を少なくとも2種類のポリアミドの1つに分類するための方法を参照する先の実施形態のいずれか1つによる試料を少なくとも2種類のポリアミドの1つに分類するための方法の少なくとも工程b)、c)およびd)を実行するための、プログラムコード手段を有するコンピュータプログラム製品。
【0102】
本発明のさらなる任意選択の詳細および特徴は、従属請求項と関連して続く好ましい例示的な実施形態の説明から明らかである。この文脈において、特定の特徴は、単独で、または特徴を組み合わせて実施され得る。本発明は、例示的な実施形態に限定されるものではない。例示的な実施形態は、図に概略的に示されている。個々の図における同一の参照数字は、同一の要素または同一の機能を有する要素、あるいは、機能に関して互いに対応する要素を指す。
【図面の簡単な説明】
【0103】
図1図1は、本発明による試料を少なくとも2種類のポリアミドの1つに分類するためのシステムの例示的な実施形態を概略図で示す。
図2図2A~2Cは、あるシステムで得られた例示的な前処理されたPA6およびPA6.6スペクトルの比較(図2A)、4つの異なるシステムで測定された87のPA6/6.6試料の1253スペクトルにおける推定ピーク位置のヒストグラムプロット(図2B)、および区間[6294,6366]cm-1および[6406,6494]cm-1におけるピーク位置および平均吸光度を示す分布プロット(図2C)を示す。
【発明を実施するための形態】
【0104】
例示的な実施形態
図1は、試料114を本発明による少なくとも2種類のポリアミドの1つに分類するためのシステム110の例示的な実施形態を概略図で示す。
【0105】
システム110は、少なくとも1つの近赤外分光計装置112を備える。近赤外分光計装置112は、試料114の少なくとも1つのスペクトルを取得するように構成される。さらに、システム110は、少なくとも1つの評価装置116を備える。評価装置116は、スペクトルから少なくとも1つのピークを決定し、そしてスペクトルから決定された少なくとも1つのピークに応じて試料114を分類するように構成される。近赤外分光計装置112、評価装置116および試料114のさらなる詳細については、上記の記載を参照されたい。
【0106】
図2Aは、図1に概略的に示すシステム110で得られた例示的な前処理されたPA6およびPA6.6スペクトルの比較を示す。図2Aにおいて、前処理された吸光度Aは、波数νに応じて図示される。さらに、図2Bは、4つの異なるシステム110で測定された87のPA6/6.6試料の1253スペクトルにおける推定ピーク位置のヒストグラムプロットを示す。具体的には、図2Bにおいて、スペクトルの数Nは、ピーク位置νmaxに応じて示される。さらに、図2Cは、ピーク位置νmaxと、区間[6294,6366]cm-1および[6406,6494]cm-1における平均吸光度AおよびAを示す分布プロットである。
【0107】
図2Aに示すスペクトルを前処理した。具体的には、ベースライン補正を行った。さらに、ロバスト正規変量変換(パーセンタイル=25%)を用いて散乱補正を行い、ノリス微分フィルタ(二次微分、ウィンドウサイズ15ピクセル)を適用した。図2Aに示すように、このように前処理したスペクトルでは、6300cm-1と6500cm1の間の領域、特に6400cm-1の近くにピークが現れる。このピークは、解析的な記述(例えば二次の多項式)を用い、その一次微分のゼロクロス点を採用することでフィッティングすることができる。前処理したスペクトルのピークの位置を用いてPA6とPA6.6を区別した。後者のピークは、一般に、図2Aおよび2Bに示されるように、PA6.6ではPA6に比べて低い波数(高い波長)側にシフトしている。図2Aにおいて、太線はポリアミド6試料から得られたスペクトル、そして細線はポリアミド6.6試料から得られたスペクトルを示す。
【0108】
ピークプロフィルの翼に追加の特徴を加えることにより、すなわち、6294cm-1~6366cm-1および6406cm-1~6494cm-1の領域における前処理された吸光度の平均値を決定することにより、より安定した分類が達成された。次に、特徴分布は、例えば、サポートベクトル分類器または他の教師付き学習分類器によって適合させることができる。図2Cにおいて、PA6およびPA6.6にそれぞれ起因するスペクトル間の分離は、やはり明確に識別可能である。
【符号の説明】
【0109】
110 システム
112 近赤外分光計装置
114 試料
116 評価デバイス
図1
図2A
図2B
図2C
【国際調査報告】