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特表2024-538781ガンの処置の為の、フィーカリバクテリウム・プラウスニッツィと抗PD-1抗体、抗PD-L1抗体又は抗CTLA-4抗体との組み合わせ物
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  • 特表-ガンの処置の為の、フィーカリバクテリウム・プラウスニッツィと抗PD-1抗体、抗PD-L1抗体又は抗CTLA-4抗体との組み合わせ物 図1A
  • 特表-ガンの処置の為の、フィーカリバクテリウム・プラウスニッツィと抗PD-1抗体、抗PD-L1抗体又は抗CTLA-4抗体との組み合わせ物 図1B
  • 特表-ガンの処置の為の、フィーカリバクテリウム・プラウスニッツィと抗PD-1抗体、抗PD-L1抗体又は抗CTLA-4抗体との組み合わせ物 図1C
  • 特表-ガンの処置の為の、フィーカリバクテリウム・プラウスニッツィと抗PD-1抗体、抗PD-L1抗体又は抗CTLA-4抗体との組み合わせ物 図2
  • 特表-ガンの処置の為の、フィーカリバクテリウム・プラウスニッツィと抗PD-1抗体、抗PD-L1抗体又は抗CTLA-4抗体との組み合わせ物 図3
  • 特表-ガンの処置の為の、フィーカリバクテリウム・プラウスニッツィと抗PD-1抗体、抗PD-L1抗体又は抗CTLA-4抗体との組み合わせ物 図4
  • 特表-ガンの処置の為の、フィーカリバクテリウム・プラウスニッツィと抗PD-1抗体、抗PD-L1抗体又は抗CTLA-4抗体との組み合わせ物 図5A
  • 特表-ガンの処置の為の、フィーカリバクテリウム・プラウスニッツィと抗PD-1抗体、抗PD-L1抗体又は抗CTLA-4抗体との組み合わせ物 図5B
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-10-23
(54)【発明の名称】ガンの処置の為の、フィーカリバクテリウム・プラウスニッツィと抗PD-1抗体、抗PD-L1抗体又は抗CTLA-4抗体との組み合わせ物
(51)【国際特許分類】
   A61K 35/741 20150101AFI20241016BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20241016BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20241016BHJP
   A61P 35/02 20060101ALI20241016BHJP
   A61K 45/00 20060101ALI20241016BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20241016BHJP
【FI】
A61K35/741
A61P43/00 121
A61P35/00
A61P35/02
A61K45/00
A61K39/395 U
A61K39/395 T
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024522298
(86)(22)【出願日】2022-10-14
(85)【翻訳文提出日】2024-05-09
(86)【国際出願番号】 EP2022078723
(87)【国際公開番号】W WO2023062222
(87)【国際公開日】2023-04-20
(31)【優先権主張番号】21306448.8
(32)【優先日】2021-10-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522237139
【氏名又は名称】エクセリオム バイオサイエンス
(74)【代理人】
【識別番号】100118599
【弁理士】
【氏名又は名称】村上 博司
(74)【代理人】
【識別番号】100160738
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 由加里
(74)【代理人】
【識別番号】100166718
【弁理士】
【氏名又は名称】石渡 保敬
(72)【発明者】
【氏名】ソーコル,アリー
(72)【発明者】
【氏名】リュフィエ,ポーリーヌ
(72)【発明者】
【氏名】ハディダ,ベンジャミン
【テーマコード(参考)】
4C084
4C085
4C087
【Fターム(参考)】
4C084AA22
4C084NA05
4C084NA14
4C084ZB261
4C084ZB262
4C084ZB271
4C084ZB272
4C084ZC751
4C084ZC752
4C085AA14
4C085CC23
4C085EE03
4C087AA01
4C087AA02
4C087BC31
4C087CA09
4C087NA05
4C087NA14
4C087ZB26
4C087ZB27
4C087ZC75
(57)【要約】
本発明は、哺乳類の患者におけるガンを予防及び/又は処置する為に使用する為の組み合わせ物であって、受託番号I-4573の下にCNCMに寄託されたフィーカリバクテリウム・プラウスニッツィ(Faecalibacterium prausnitzii)細菌株と、少なくとも1つの免疫チェックポイント阻害剤、特には、抗PD-1モノクローナル抗体、抗PD-L1モノクローナル抗体及び抗CTLA-4モノクローナル抗体からなる群から選択される少なくとも1つのモノクローナル抗体との上記組み合わせ物に関する。そのような組み合わせ物が考慮される。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
哺乳類の患者におけるガンを予防及び/又は処置する為に使用する為の組み合わせ物であって、
受託番号I-4573の下にCNCMに寄託されたフィーカリバクテリウム・プラウスニッツィ(Faecalibacterium prausnitzii)細菌株と、
少なくとも1つの免疫チェックポイント阻害剤、特には、抗PD-1モノクローナル抗体、抗PD-L1モノクローナル抗体及び抗CTLA-4モノクローナル抗体からなる群から選択される少なくとも1つのモノクローナル抗体と
の前記組み合わせ物。
【請求項2】
前記免疫チェックポイント阻害剤が、抗PD-L1モノクローナル抗体又は抗PD-1モノクローナル抗体であり、特には抗PD-L1モノクローナル抗体である、請求項1に記載の、使用する為の組み合わせ物。
【請求項3】
前記哺乳類の患者が、霊長類及びヒトからなる群より選択される、請求項1又は2に記載の、使用する為の組み合わせ物。
【請求項4】
前記哺乳類の患者がヒトである、請求項1~3のいずれか1項に記載の、使用する為の組み合わせ物。
【請求項5】
前記哺乳類の患者が腸内細菌ディスバイオシスを有する、請求項1~4のいずれか1項に記載の、使用する為の組み合わせ物。
【請求項6】
前記ガンが固形腫瘍又は液性腫瘍であり、特には、線維肉腫、膀胱癌、乳癌、子宮頸癌、結腸直腸癌、腎臓癌、肺癌、リンパ腫、白血病、骨髄腫、黒色腫、神経芽細胞腫、ウィルムス腫瘍、口腔癌若しくは中咽頭癌、膵臓癌、前立腺癌、網膜芽細胞腫、甲状腺癌、子宮体癌、腺様嚢胞癌、副腎皮質腫瘍、軟骨肉腫、デスモイド腫瘍、線維形成性小円形細胞腫瘍、内分泌腫瘍、内胚葉洞腫瘍、類上皮血管内皮腫、ユーイング肉腫、腎腫、副腎腫瘍、アミロイドーシス、肛門癌、虫垂癌、胆管癌、神経膠腫、非横紋筋肉腫軟部組織肉腫(NRSTS)、傍脊椎肉腫、腎細胞癌、横紋筋肉腫、滑膜肉腫、骨癌、脳腫瘍、中枢神経腫瘍、子宮頸癌、食道癌、眼癌、眼瞼腫瘍、消化器癌、HIV/AIDS関連癌、涙腺癌、喉頭癌又は下咽頭癌、白血病、肝臓癌、髄膜腫、上咽頭癌、卵巣癌、卵管癌、腹膜癌、副甲状腺癌、陰茎癌、唾液腺癌、肉腫、非黒色腫皮膚癌、小腸癌、胃癌、精巣癌、胸腺腫及び胸腺癌、膣癌、及び外陰癌からなる群より選択される、請求項1~5のいずれか1項に記載の、使用する為の組み合わせ物。
【請求項7】
前記ガンが線維肉腫である、請求項1~6のいずれか1項に記載の、使用する為の組み合わせ物。
【請求項8】
前記受託番号I-4573の下にCNCMに寄託されたフィーカリバクテリウム・プラウスニッツィ(Faecalibacterium prausnitzii)細菌株及び前記少なくとも1つの免疫チェックポイント阻害剤、特には、抗PD-1モノクローナル抗体、抗PD-L1モノクローナル抗体及び抗CTLA-4モノクローナル抗体からなる群から選択される少なくとも1つのモノクローナル抗体、は、同じ組成で又は別々の組成で、好ましくは別々の組成で、前記哺乳類の患者に投与され、ここで、前記1以上の組成物は更に、生理学的に許容範囲内の媒体を含む、請求項1~7のいずれか1項に記載の、使用する為の組み合わせ物。
【請求項9】
前記組み合わせ物が更に、前記受託番号I-4573の下にCNCMに寄託されたフィーカリバクテリウム・プラウスニッツィ(Faecalibacterium prausnitzii)細菌株と異なる及び抗PD-1モノクローナル抗体、抗PD-L1モノクローナル抗体又は抗CTLA-4モノクローナル抗体と異なるところの少なくとも1つの追加の抗癌剤を含む、請求項1~8のいずれか1項に記載の、使用する為の組み合わせ物。
【請求項10】
前記少なくとも1つの追加の抗癌剤が、モノクローナル抗体又は二重特異性抗体からなる群から選択され、特には、
抗CD137モノクローナル抗体又は二重特異性抗体、抗TIM-3モノクローナル抗体又は二重特異性抗体、抗B7-H3モノクローナル抗体又は二重特異性抗体、抗CD134モノクローナル抗体又は二重特異性抗体、抗CD154モノクローナル抗体又は二重特異性抗体、抗LAG-3モノクローナル抗体又は二重特異性抗体、抗CD227モノクローナル抗体又は二重特異性抗体、抗BTNA3モノクローナル抗体又は二重特異性抗体、抗CD39モノクローナル抗体又は二重特異性抗体、抗CD73モノクローナル抗体又は二重特異性抗体、抗CD115モノクローナル抗体又は二重特異性抗体、抗SIRPアルファーモノクローナル抗体又は二重特異性抗体、抗SIRPガンマモノクローナル抗体又は二重特異性抗体、抗CD28モノクローナル抗体又は二重特異性抗体、抗NCRモノクローナル抗体又は二重特異性抗体、抗NKp46モノクローナル抗体又は二重特異性抗体、抗NKp30モノクローナル抗体又は二重特異性抗体、抗NKp44モノクローナル抗体又は二重特異性抗体、抗NKG2Dモノクローナル抗体又は二重特異性抗体、及びDNAM-1のモノクローナル抗体又は二重特異性抗体;並びに、
抗CTLA-4/抗PDL-1二重特異性抗体、抗CTLA-4/抗PD-1二重特異性抗体、及び抗PD-1/抗PD-L1二重特異性抗体
からなる群から選択される、
請求項9に記載の、使用する為の組み合わせ物。
【請求項11】
受託番号I-4573の下にCNCMに寄託されたフィーカリバクテリウム・プラウスニッツィ(Faecalibacterium prausnitzii)細菌株と、
少なくとも1つの免疫チェックポイント阻害剤、特には、抗PD-1モノクローナル抗体、抗PD-L1モノクローナル抗体及び抗CTLA-4モノクローナル抗体からなる群から選択される少なくとも1つのモノクローナル抗体と
の組み合わせ物であって、
前記組み合わせ物が、特には、請求項2、3、9及び10のいずれか1項に記載されたものである、前記組み合わせ物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、免疫学の分野に関し、より特には、フィーカリバクテリウム・プラウスニッツィ(Faecalibacterium prausnitzii)細菌株と免疫チェックポイント阻害剤との組み合わせ物に関し、特には、受託番号I-4573の下にCNCMに寄託されたフィーカリバクテリウム・プラウスニッツィ(Faecalibacterium prausnitzii)細菌株と、抗PD-1モノクローナル抗体、抗PD-L1モノクローナル抗体、及び/又は抗CTLA-4モノクローナル抗体との組み合わせ物、並びにヒトの医療におけるそれらの使用に関する。
【0002】
特には、本発明は、フィーカリバクテリウム・プラウスニッツィ(Faecalibacterium prausnitzii)細菌株と免疫チェックポイント阻害剤との組み合わせ物、特には、受託番号I-4573の下にCNCMに寄託されたフィーカリバクテリウム・プラウスニッツィ(Faecalibacterium prausnitzii)細菌株と、抗PD-1モノクローナル抗体、抗PD-L1モノクローナル抗体、及び/又は抗CTLA-4モノクローナル抗体、特には抗PD-1モノクローナル抗体及び/又は抗PD-L1モノクローナル抗体、との組み合わせ物、に関する。
【背景技術】
【0003】
ガンは、死因の第1位又は第2位にランクされている。2020年には、世界中で推定1,930万人が新たにガンに罹患し、およそ1,000万人がガンにより死亡した。世界のガン患者数は2040年に2,840万人になると予想されており、2020年から47%増加し、人口動態の変化により移行中の国(transitioning country)と移行済みの国(transitioned country)とにおける増加がさらに大きくなった。この分野において、処置が受けられない、又は処置が不十分であることがよくある。従って、ガンを処置する為の新しく且つ改良された治療法を開発する必要性が十分に認識されている。
【0004】
免疫療法は、多くのガンの治療において、特には慣用的な治療によっては現在効率的に治癒されないガンの治療において、真の希望を与えている。この処置は、腫瘍細胞に対して向けられたモノクローナル抗体、又は癌に対する免疫応答のチェックポイントの活性化剤若しくは阻害剤(免疫チェックポイント阻害剤(immune checkpoint inhibitors)の場合にICIとも呼ばれる)に対して向けられたモノクローナル抗体の投与から主に構成される。特には、細胞傷害性Tリンパ球関連抗原4(CTLA-4:cytotoxic T lymphocyte-associated antigen 4)、プログラム細胞死タンパク質(PD-1:programmed cell death protein)、又はプログラム死リガンド1(PD-L1:Programmed death-ligand 1)を標的とするICIを使用することによって、ガンの処置において大きな進歩が見られた。
【0005】
しかしながら、ほとんどの場合に、応答率は相対的に低いままである。事実、考慮されるガンに応じて、患者の40%~95%がICIに基づく処置に抵抗性である。逃避のメカニズムは複雑であり、現在、科学界によって熱心に研究されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従って、当技術分野においては、ガンを処置する為の効果的且つ改良された治療法を提供する必要性が依然としてある。
【0007】
特に、当技術分野において、免疫チェックポイント阻害剤(ICI)の有効性を改善する為の手段、特にはそのような処置に抵抗する腫瘍に対するそれらの有効性を高める為の手段、を提供する必要性がある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は特には、下記の項目に関する:
項目1
哺乳類の患者におけるガンを予防及び/又は処置する為に使用する為の組み合わせ物であって、
受託番号I-4573の下にCNCMに寄託されたフィーカリバクテリウム・プラウスニッツィ(Faecalibacterium prausnitzii)細菌株と、
少なくとも1つの免疫チェックポイント阻害剤、特には、抗PD-1モノクローナル抗体、抗PD-L1モノクローナル抗体及び抗CTLA-4モノクローナル抗体からなる群から選択される少なくとも1つのモノクローナル抗体と
の上記組み合わせ物。
【0009】
事実、受託番号I-4573の下にCNCMに寄託されたフィーカリバクテリウム・プラウスニッツィ(Faecalibacterium prausnitzii)細菌株のイン・ビボ(in vivo)投与が個体における腫瘍に対する免疫チェックポイント阻害剤の有効性を回復することができることを初めて示す。
【0010】
特には、本発明者等は、抗生物質の投与による腫瘍を有する個体の微生物叢の変化が、ICI治療の抗腫瘍効果、特には抗PD-L1治療の抗腫瘍効果、を損なうことを初めて確認し(Routy et al.,Science 359,91~97(2018))、及び単剤ICI療法に対する非反応者(すなわち、腫瘍がICIに基づく処置に対して抵抗性であるところの個体)の適切なモデルとして役に立つ。これに基づいて、本発明者等は驚くべきことに、受託番号I-4573の下にCNCMに寄託されたフィーカリバクテリウム・プラウスニッツィ(Faecalibacterium prausnitzii)細菌株を該個体に投与することにより、抗PDL-1の効力が有意に回復することを確認した。
【0011】
本発明において特に実施されるフィーカリバクテリウム・プラウスニッツィ(Faecalibacterium prausnitzii)、すなわち受託番号I-4573の下にCNCMに寄託されたフィーカリバクテリウム・プラウスニッツィ(Faecalibacterium prausnitzii)細菌株、が、その抗炎症特性についてこれまで知られていたことを考慮すると、そのような結果は非常に予想外である(国際公開第WO2017/129515号パンフレット)。逆に、本発明において、免疫チェックポイント阻害剤を必要とする個体において該免疫チェックポイント阻害剤の免疫刺激特性を増強する為のこの株の能力が初めて実証される。
【0012】
最近の研究により、腸内微生物叢(gut microbiome)が黒色腫患者における抗PD-1免疫療法に対する反応を調節することができること、及び抗PD-1療法に対する反応者の便を用いた糞便微生物叢移植(FMT:fecal microbiota transplantation)により、抗PD-L1療法を投与されたマウスの反応を改善することができたことが実証された(Gopalakrishnan et al.Science 359,97~103 (2018);Davar et al.,Science 371,595~602 (2021) et Baruch et al.Science 10.1126/science.abb5920 (2020))。これらの研究のいずれも、この結果をもたらす実際の作用機序を決定することはできず、特には、便中に存在する多数の細菌のうちのどれがこの改善された反応の原因であるか、及び所与の患者がICI治療に反応するかどうかの可能性についての何らかの洞察を提供する純粋なバイオマーカーがどれであるかを決定することができなかった。これらの研究に関連し且つ該研究によって識別されたもう1つの問題は、便の投与、特には抗PD-1/抗PD-L1療法に対する反応者からの便の投与、がその組成として再現できないことであり、特にそれの中に含まれる細菌の数と種類は、(i)ドナーごとに異なり、(ii)同じドナーにおいても時間の経過とともに変化することさえある。その上、糞便の微生物叢移植後の患者の微生物叢組成のドナー組成への変化は、特に抗生物質曝露後は、時間が経っても維持されない場合がある。
【0013】
従って、本発明者等は、免疫チェックポイント阻害剤の有効性を改善する為の、新しく効果的且つ完全に安全な方法、特には、そのような処置に抵抗する腫瘍に対する免疫チェックポイント阻害剤の有効性を高める為の手段、を初めて識別することに成功した。
【0014】
項目2:該免疫チェックポイント阻害剤が、抗PD-L1モノクローナル抗体又は抗PD-1モノクローナル抗体であり、特には抗PD-L1モノクローナル抗体である、項目1に記載の、使用する為の組み合わせ物。
【0015】
項目3:該哺乳類の患者が、霊長類及びヒトからなる群より選択される、項目1又は2に記載の、使用する為の組み合わせ物。
【0016】
項目4:該哺乳類の患者がヒトである、項目1~3のいずれか1項に記載の、使用する為の組み合わせ物。
【0017】
項目5:該哺乳類の患者が腸内細菌ディスバイオシス(intestinal microbial dysbiosis)を有する、項目1~4のいずれか1項に記載の、使用する為の組み合わせ物。
【0018】
項目6:該ガンが固形腫瘍又は液性腫瘍であり、特には、線維肉腫、膀胱癌、乳癌、子宮頸癌、結腸直腸癌、腎臓癌、肺癌、リンパ腫、白血病、骨髄腫、黒色腫、神経芽細胞腫、ウィルムス腫瘍、口腔癌若しくは中咽頭癌、膵臓癌、前立腺癌、網膜芽細胞腫、甲状腺癌、子宮体癌、腺様嚢胞癌、副腎皮質腫瘍、軟骨肉腫、デスモイド腫瘍、線維形成性小円形細胞腫瘍、内分泌腫瘍、内胚葉洞腫瘍、類上皮血管内皮腫、ユーイング肉腫、腎腫、副腎腫瘍、アミロイドーシス、肛門癌、虫垂癌、胆管癌、神経膠腫、非横紋筋肉腫軟部組織肉腫(NRSTS:non-rhabdomyosarcoma soft tissue sarcoma)、傍脊椎肉腫、腎細胞癌、横紋筋肉腫、滑膜肉腫、骨癌、脳腫瘍、中枢神経腫瘍、子宮頸癌、食道癌、眼癌、眼瞼腫瘍、消化器癌、HIV/AIDS関連癌、涙腺癌、喉頭癌又は下咽頭癌、白血病、肝臓癌、髄膜腫、上咽頭癌、卵巣癌、卵管癌、腹膜癌、副甲状腺癌、陰茎癌、唾液腺癌、肉腫、非黒色腫皮膚癌、小腸癌、胃癌、精巣癌、胸腺腫及び胸腺癌、膣癌、及び外陰癌からなる群より選択される、項目1~5のいずれか1項に記載の、使用する為の組み合わせ物。
【0019】
項目7:該ガンが線維肉腫である、項目1~6のいずれか1項に記載の、使用する為の組み合わせ物。
【0020】
項目8:該受託番号I-4573の下にCNCMに寄託されたフィーカリバクテリウム・プラウスニッツィ(Faecalibacterium prausnitzii)細菌株及び該少なくとも1つの免疫チェックポイント阻害剤、特には、抗PD-1モノクローナル抗体、抗PD-L1モノクローナル抗体及び抗CTLA-4モノクローナル抗体からなる群から選択される少なくとも1つのモノクローナル抗体、は、同じ組成で又は別々の組成で、好ましくは別々の組成で、前記哺乳類の患者に投与され、ここで、該1以上の組成物は更に、生理学的に許容範囲内の媒体を含む、項目1~7のいずれか1項に記載の、使用する為の組み合わせ物。
【0021】
項目9:該組み合わせ物が更に、該受託番号I-4573の下にCNCMに寄託されたフィーカリバクテリウム・プラウスニッツィ(Faecalibacterium prausnitzii)細菌株と異なる及び抗PD-1モノクローナル抗体、抗PD-L1モノクローナル抗体又は抗CTLA-4モノクローナル抗体と異なるところの少なくとも1つの追加の抗癌剤を含む、項目1~8のいずれか1項に記載の、使用する為の組み合わせ物。
【0022】
項目10:該少なくとも1つの追加の抗癌剤が、モノクローナル抗体又は二重特異性抗体からなる群から選択され、特には、
抗CD137モノクローナル抗体又は二重特異性抗体、抗TIM-3モノクローナル抗体又は二重特異性抗体、抗B7-H3モノクローナル抗体又は二重特異性抗体、抗CD134モノクローナル抗体又は二重特異性抗体、抗CD154モノクローナル抗体又は二重特異性抗体、抗LAG-3モノクローナル抗体又は二重特異性抗体、抗CD227モノクローナル抗体又は二重特異性抗体、抗BTNA3モノクローナル抗体又は二重特異性抗体、抗CD39モノクローナル抗体又は二重特異性抗体、抗CD73モノクローナル抗体又は二重特異性抗体、抗CD115モノクローナル抗体又は二重特異性抗体、抗SIRPアルファーモノクローナル抗体又は二重特異性抗体、抗SIRPガンマモノクローナル抗体又は二重特異性抗体、抗CD28モノクローナル抗体又は二重特異性抗体、抗NCRモノクローナル抗体又は二重特異性抗体、抗NKp46モノクローナル抗体又は二重特異性抗体、抗NKp30モノクローナル抗体又は二重特異性抗体、抗NKp44モノクローナル抗体又は二重特異性抗体、抗NKG2Dモノクローナル抗体又は二重特異性抗体、及びDNAM-1のモノクローナル抗体又は二重特異性抗体;並びに、
抗CTLA-4/抗PDL-1二重特異性抗体、抗CTLA-4/抗PD-1二重特異性抗体、及び抗PD-1/抗PD-L1二重特異性抗体からなる群から選択される、
項目9に記載の、使用する為の組み合わせ物。
【0023】
項目11:受託番号I-4573の下にCNCMに寄託されたフィーカリバクテリウム・プラウスニッツィ(Faecalibacterium prausnitzii)細菌株と、
少なくとも1つの免疫チェックポイント阻害剤、特には、抗PD-1モノクローナル抗体、抗PD-L1モノクローナル抗体及び抗CTLA-4モノクローナル抗体からなる群から選択される少なくとも1つのモノクローナル抗体と
の組み合わせ物であって、
該組み合わせ物が、特には、項目2、3、9及び10のいずれか1項に記載されたものである、該組み合わせ物。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1A
図1B
図1C
図2
図3
図4
図5A
図5B
【発明を実施するための形態】
【0025】
定義
【0026】
本発明をより完全に理解するために、幾つかの定義が下記に記載されている。そのような定義は、文法的に等価なものを包含することが意図されている。
【0027】
語「抗体」は、本明細書において最も広い意味において使用される。「抗体」は、(i)Fc領域と、(ii)免疫グロブリンの可変領域に由来する結合ポリペプチドドメインとを少なくとも含むところの任意のポリペプチドを云う。従って、抗体は、全長免疫グロブリン、抗体、抗体結合体及び各々の断片を包含するが、これらに限定されるものでない。語「抗体」及び「免疫グロブリン」は、本明細書では互換的に使用されうる。
本明細書においてより特に考慮される抗体は、モノクローナル抗体、特には免疫チェックポイント阻害剤(ICI)モノクローナル抗体、より特には、抗PD-1モノクローナル抗体、抗PD-L1モノクローナル抗体及び抗CTLA-4モノクローナル抗体からなる群から選択されるモノクローナル抗体、特には抗PD-1モノクローナル抗体及び抗PD-L1モノクローナル抗体からなる群から選択されるモノクローナル抗体、である。
【0028】
本明細書において使用される場合に、語「モノクローナル抗体」は、実質的に均質な(すなわち、集団を含む個々の抗体は、少量で存在しうる天然に生じる変異を除いて同一である)抗体の集団から得られる抗体を云う。モノクローナル抗体は特異性が高く、単一の抗原に対して向けられる。その上、異なる決定基(エピトープ)に対して向けられた異なる抗体を典型的に含むところのポリクローナル抗体調製物とは対照的に、各モノクローナル抗体は抗原上の単一の決定基に対して向けられている。修飾語「モノクローナル」は、任意の特定の方法による抗体の産生を必要とするものとして解釈されるべきでない。例えば、本発明に従って使用されるべきモノクローナル抗体は、Kohler et al,Nature 256:495 (1975)によって最初に記載されたハイブリドーマ法によって作成されてもよく、又は組み換えDNA方法によって作成されてもよい(例えば、米国特許第4,816,567号を参照)。
「モノクローナル抗体」はまた、例えば、Clackson et al,Nature 352:624~628 (1991)又はMarks et al,J.MoI Biol.222:581~597 (1991)において記載されている技術を使用して、ファージ抗体ライブラリーから単離されてもよい。
【0029】
語「1つの二重特異性抗体」(bispecific antibody)又は「複数の二重特異性抗体(BsAbs:bispecific antibodies)」は、単一分子内で2つの抗体の抗原結合部位を結合する分子を云う。従って、二重特異性抗体は。2つの異なる抗原に同時に結合することができる。そのような抗体を取得する方法は、当業者によって周知である。
【0030】
本発明の文脈において、語「予防する」及び「予防」は、所与の現象、すなわち、本発明においてはガン、特には以降で詳述されているガン、のリスク又は該所与の現象の発生確率をより低い程度に低減することを意味する。
【0031】
本明細書において使用される場合、語「処置する」又は「処置」は、特定の障害又は状態に関連付けられた症状、すなわち、本発明においては、ガン、特には以降で詳述されているガン、の緩和及び/又は該症状の除去を包含する。
【0032】
本発明において、語「免疫チェックポイント阻害剤」(ICIとしてまた言及される)は、刺激されるときに免疫刺激に対する免疫反応を弱める可能性がある免疫系の重要な調節因子である免疫チェックポイントを標的とするところの一種の免疫調節抗がん剤を云う。ICIは、様々な形態、例えば、抗体(モノクローナル、二重特異性等)、RNAi分子、又はアンチセンス分子、であることができる。
【0033】
本発明において、「腸内細菌ディスバイオシス」(intestinal microbial dysbiosis)は、全体的な微生物叢プロファイル、代謝、又は特定の分類群のレベルに関して、バランスのとれた微生物叢(balanced microbiota)からの有意な逸脱として指定することが意図される。
【0034】
本発明に従う「生理学的に許容される媒体」は、投与される化合物の治療特性を保持しながら、処置される哺乳類の患者にとって生理学的に許容されるところの担体又は添加剤を意味する。1つの例示的な薬学的に許容される媒体は生理食塩水である。本発明の場合における他の生理学的に許容される媒体は、当業者に知られている。
【0035】
語「悪性細胞」、語「ガン細胞」及び語「腫瘍細胞」は、本明細書において互換的に使用されうる。本明細書において使用される場合に、「腫瘍細胞」は、イン・ビボ(in vivo)で自律的に過剰増殖する細胞を云う。腫瘍細胞の例は、(1)肉腫、例えば、骨肉腫及び軟部組織肉腫、(2)癌腫(carcinomas)、例えば、乳の癌腫、肺の癌腫、膀胱の癌腫、甲状腺の癌腫、前立腺の癌腫、結腸の癌腫、結腸直腸の癌腫、膵臓の癌腫、胃の癌腫、肝臓の癌腫、子宮の癌腫、子宮頸部の癌腫及び卵巣の癌腫、(3)リンパ腫、例えば、ホジキンリンパ腫及び非ホジキンリンパ腫、(4)神経芽細胞腫、(5)黒色腫、(6)骨髄腫、(7)ウィルムス腫瘍、(8)白血病、例えば、急性骨髄性白血病(AML:acute myelocytic leukemia)、慢性骨髄性白血病(CML:chronic myelocytic leukemia)、急性リンパ性白血病(ALL:acute lymphocytic leukemia)、及び慢性リンパ性白血病(CLL:chronic lymphocytic leukemia)、(9)神経膠腫、並びに(10)網膜芽細胞腫において含まれる細胞を包含する。
【0036】
本明細書において使用される場合に「ガン」(cancer)は、細胞の制御不能な異常増殖を意味し、及び細胞の該制御不能な異常増殖によって引き起こされる全ての周知の疾病をその範囲内に包含する。一般的なガンの非限定的な例は、線維肉腫、膀胱癌、乳癌、卵巣癌及び胃癌、子宮頸癌、結腸癌、子宮内膜癌、頭頸部癌、肺癌、黒色腫、多発性骨髄腫、白血病(例えば、骨髄性白血病、リンパ球性白血病、骨髄球性白血病、及びリンパ芽球性白血病)、非ホジキンリンパ腫、前立腺癌、直腸癌、悪性黒色腫、特には線維肉腫、を包含する。
【0037】
本明細書において考慮されるガンは、特には固形腫瘍又は液性腫瘍でありうる。
【0038】
特には、本発明のガン細胞は、線維肉腫、膀胱癌、乳癌、子宮頸癌、結腸直腸癌、腎臓癌、肺癌、リンパ腫、白血病、骨髄腫、黒色腫、神経芽細胞腫、ウィルムス腫瘍、口腔癌若しくは中咽頭癌、膵臓癌、前立腺癌、網膜芽細胞腫、甲状腺癌、子宮体癌、腺様嚢胞癌、副腎皮質腫瘍、軟骨肉腫、デスモイド腫瘍、線維形成性小円形細胞腫瘍、内分泌腫瘍、内胚葉洞腫瘍、類上皮血管内皮腫、ユーイング肉腫、腎腫、副腎腫瘍、アミロイドーシス、肛門癌、虫垂癌、胆管癌、神経膠腫、非横紋筋肉腫軟部組織肉腫(NRSTS:non-rhabdomyosarcoma soft tissue sarcoma)、傍脊椎肉腫、腎細胞癌、横紋筋肉腫、滑膜肉腫、骨癌、脳腫瘍、中枢神経腫瘍、子宮頸癌、食道癌、眼癌、眼瞼腫瘍、消化器癌、HIV/AIDS関連癌、涙腺癌、喉頭癌又は下咽頭癌、白血病、肝臓癌、髄膜腫、上咽頭癌、卵巣癌、卵管癌、腹膜癌、副甲状腺癌、陰茎癌、唾液腺癌、肉腫、非黒色腫皮膚癌、小腸癌、胃癌、精巣癌、胸腺腫及び胸腺癌、膣癌及び外陰癌からなる群から選択される癌に含まれている細胞であることができる。
【0039】
本発明に従う組み合わせ物
【0040】
上記された目的に応えるという観点から、特には、向上された効率が処置される生物体における観察可能な何らかの毒性と関連していないところの癌に対する新たな処置を提供する為に、本発明者等は、
受託番号I-4573の下に、2012年1月21日付けでパリ国立微生物カルチャーコレクション(CNCM:the Collection Nationale de Cultures de Microorganismes de l’Institut Pasteur de Paris)に寄託されたフィーカリバクテリウム・プラウスニッツィ(Faecalibacterium prausnitzii)細菌株と、
少なくとも1つの免疫チェックポイント阻害剤
の組み合わせ物を考え出した。
【0041】
本発明に従う免疫チェックポイント阻害剤(ICI)は、特には抗体、特には抗PD-1、抗PD-L1抗体又は抗CTLA-4抗体、でありうる。より特には、本発明に従う少なくとも1つの免疫チェックポイント阻害剤は、抗PD-1モノクローナル抗体、抗PD-L1モノクローナル抗体及び抗CTLA-4モノクローナル抗体からなる群から選択されるモノクローナル抗体でありうる。
【0042】
本発明に従う抗PD-1モノクローナル抗体は例えば、ニボルマブ(Nivolumab)、ペンブロリズマブ(Pembrolizumab)及びセミプリマブ(Cemiplimab)からなる群から選択されることができる。
【0043】
本発明に従う抗PD-L1モノクローナル抗体は例えば、アテゾリズマブ(Atezolizumab)、アベルマブ(Avelumab)及びデュルバルマブ(Durvalumab)からなる群から選択されることができる。
【0044】
本発明に従う抗CTLA-4モノクローナル抗体は、例えば、イピリムマブ(ipilimumab)、トレメリムマブ(tremelimumab)及びクアボンリマブ(quavonlimab)からなる群から選択されることができる。
【0045】
特には、本発明に従う組み合わせ物のICIは、抗PD-L1モノクローナル抗体又は抗PD-1モノクローナル抗体であってもよく、特には抗PD-L1モノクローナル抗体であってもよい。
【0046】
本発明の組み合わせ物に従う、受託番号I-4573の下にCNCMに寄託されたフィーカリバクテリウム・プラウスニッツィ(Faecalibacterium prausnitzii)細菌株は、単離された形態でありうる。本発明に従う「単離された形態」により、あらゆる糞便物質又は腸のサンプリングから単離された形態が意味される。従って、本発明の細菌株は、糞便微生物叢移植(FMT:Fecal Microbiota Transplant)の形態で患者に投与されない。腸内細菌叢から細菌を単離する方法は、当業者に周知であり、例えば、Foditsch et al.(PLoS One.2014;9(12):e116465)において示されている。
【0047】
本発明に従う哺乳類の患者は、霊長類及びヒトからなる群から選択され得、特にはヒトでありうる。
【0048】
本発明に従う哺乳類の患者は特には、腸内細菌ディスバイオシスを有しうる。
【0049】
本発明に従う組み合わせ物は更に、
該受託番号I-4573の下にCNCMに寄託されたフィーカリバクテリウム・プラウスニッツィ(Faecalibacterium prausnitzii)細菌株と異なる及び
抗PD-1モノクローナル抗体、抗PD-L1モノクローナル抗体又は抗CTLA-4モノクローナル抗体と異なる
ところの少なくとも1つの追加の抗癌剤を含みうる。
【0050】
該少なくとも1つの追加の抗癌剤が、モノクローナル抗体又は二重特異性抗体からなる群から選択され得、特には、抗CD137モノクローナル抗体又は二重特異性抗体、抗TIM-3モノクローナル抗体又は二重特異性抗体、抗B7-H3モノクローナル抗体又は二重特異性抗体、抗CD134モノクローナル抗体又は二重特異性抗体、抗CD154モノクローナル抗体又は二重特異性抗体、抗LAG-3モノクローナル抗体又は二重特異性抗体、抗CD227モノクローナル抗体又は二重特異性抗体、抗BTNA3モノクローナル抗体又は二重特異性抗体、抗CD39モノクローナル抗体又は二重特異性抗体、抗CD73モノクローナル抗体又は二重特異性抗体、抗CD115モノクローナル抗体又は二重特異性抗体、抗SIRPアルファーモノクローナル抗体又は二重特異性抗体、抗SIRPガンマモノクローナル抗体又は二重特異性抗体、抗CD28モノクローナル抗体又は二重特異性抗体、抗NCRモノクローナル抗体又は二重特異性抗体、抗NKp46モノクローナル抗体又は二重特異性抗体、抗NKp30モノクローナル抗体又は二重特異性抗体、抗NKp44モノクローナル抗体又は二重特異性抗体、抗NKG2Dモノクローナル抗体又は二重特異性抗体、及びDNAM-1のモノクローナル抗体又は二重特異性抗体;並びに、
抗CTLA-4/抗PDL-1二重特異性抗体、抗CTLA-4/抗PD-1二重特異性抗体、及び抗PD-1/抗PD-L1二重特異性抗体
からなる群から選択されうる。
【0051】
本発明に従う医薬的使用
【0052】
上述されているように、本発明は、その観点の1つに従うと、哺乳類の患者におけるガンを予防及び/又は処置する為に使用する為の組み合わせ物であって、
受託番号I-4573の下にCNCMに寄託されたフィーカリバクテリウム・プラウスニッツィ(Faecalibacterium prausnitzii)細菌株、より特には単離された形態の該細菌株、と、
少なくとも1つの免疫チェックポイント阻害剤、特には、抗PD-1モノクローナル抗体、抗PD-L1モノクローナル抗体及び抗CTLA-4モノクローナル抗体からなる群から選択される少なくとも1つのモノクローナル抗体と
の上記の組み合わせ物に関する。
【0053】
これらのICI、特にはこれらのモノクローナル抗体、は、本明細書全体を通じて記載されている。
【0054】
それを必要とする患者、例えば上述されたようなそれを必要とする患者、を処置する為に、本発明に従う組み合わせ物の治療的に有効な用量が投与されうる。
【0055】
本明細書における「治療的に有効な用量」とは、それが投与される効果を生み出す用量を意味する。正確な用量は処置の目的に依存し、既知の技術を使用して当業者によって確認可能であろう。
【0056】
用量は、医薬品として、例えば109コロニー形成単位(CFU:colony forming units)に等しい1日用量として、103~1012CFU、より好ましくは107~l011CFU、でありうる。
【0057】
用量はまた、医薬品として、例えば1010総細胞数(TCC:total cell count)に等しい1日用量として、104~1012TCC、より特には10812TCC、でありうる。
【0058】
用量はまた、本発明に従う抗PD-1及び/又は抗PD-L1モノクローナル抗体の体重1kg当たり0.001~100mg(mg/kg)又はそれよりも大きい範囲であってもよく、例えば、体重の0.1、1.0、5、10又は50mg/kgである。
【0059】
用量及び投与頻度は、より良好な耐性の為に、宿主の反応並びに注射の頻度に依存して適合されうる。
【0060】
例示のみを目的として、本発明による組み合わせ物の投与頻度は、連続5~15日間の毎日の投与であることができる。代替的には、該投与は、最長数ヶ月の期間、2、3、4、5、6又は7日ごとであることができる。本発明に従う組み合わせ物の、受託番号I-4573の下にCNCMに寄託されたフィーカリバクテリウム・プラウスニッツィ(Faecalibacterium prausnitzii)細菌株と免疫チェックポイント阻害剤(ICI)とは、同時に、又は別々に、例えば同日の間に別々に、又はさもなければ例えば、細菌株の投与とICIとの投与との間に少なくとも1日、若しくはさもなければそれよりも多い日数、をおいて別々に、投与されうる。
【0061】
当技術分野において知られているように、タンパク質の分解、全身送達及び局所送達、並びに年齢、体重、一般的な健康状態、性別、食事、投与時間、薬物相互作用、及び症状の重症度の調整が必要な場合があり、及び当業者によって日常的な実験により容易に決定される。
【0062】
本発明の組み合わせの投与は、様々な方法で、特には経口又は直腸的に行われうる。
【0063】
特定の実施態様において、本発明に従う結合物は、直腸経路又は経口経路による投与の為に適した形態である。
【0064】
上述されているように、本発明は、哺乳類の患者におけるガンを予防及び/又は処置する為に使用する為の組み合わせ物であって、
受託番号I-4573の下にCNCMに寄託されたフィーカリバクテリウム・プラウスニッツィ(Faecalibacterium prausnitzii)細菌株と、
少なくとも1つの免疫チェックポイント阻害剤、特には、抗PD-1モノクローナル抗体、抗PD-L1モノクローナル抗体及び抗CTLA-4モノクローナル抗体からなる群から選択される少なくとも1つのモノクローナル抗体と
の組み合わせ物に関する。
【0065】
受託番号I-4573の下にCNCMに寄託されたフィーカリバクテリウム・プラウスニッツィ(Faecalibacterium prausnitzii)細菌株と、少なくとも1つの免疫チェックポイント阻害剤、特には、抗PD-1モノクローナル抗体、抗PD-L1モノクローナル抗体及び抗CTLA-4モノクローナル抗体からなる群から選択される少なくとも1つのモノクローナル抗体、とは、同一の組成物内で組み合わせられてもよく、又は同時に若しくは連続的に投与されてもよい別個の組成物の形態で使用されてもよい。
【0066】
特定の実施態様において、受託番号I-4573の下にCNCMに寄託されたフィーカリバクテリウム・プラウスニッツィ(Faecalibacterium prausnitzii)細菌株と、少なくとも1つの免疫チェックポイント阻害剤、特には、抗PD-1モノクローナル抗体、抗PD-L1モノクローナル抗体及び抗CTLA-4モノクローナル抗体からなる群から選択される少なくとも1つのモノクローナル抗体、とは、別個の組成物で投与される。
【0067】
受託番号I-4573の下にCNCMに寄託されたフィーカリバクテリウム・プラウスニッツィ(Faecalibacterium prausnitzii)細菌株と、少なくとも1つの免疫チェックポイント阻害剤、特には、抗PD-1モノクローナル抗体、抗PD-L1モノクローナル抗体及び抗CTLA-4モノクローナル抗体からなる群から選択される少なくとも1つのモノクローナル抗体、とが別個の組成物で投与されるときには、該組成物は、同じ経路を通じて又は異なる経路を通じて、同時に又は別々に哺乳類の患者に投与されることができる。
【0068】
同時にとは、該組成物が、同時に、又は同じ日若しくは数日までに投与されることができることが理解される。
【0069】
別々にとは、該組成物は少なくとも数日、例えば少なくとも2日の違いをおいて投与されることができることが理解される。
【0070】
幾つかの実施態様において、本発明に従う、受託番号I-4573の下にCNCMに寄託されたフィーカリバクテリウム・プラウスニッツィ(Faecalibacterium prausnitzii)細菌株を含む組成物と、ICI、特には抗PD-1モノクローナル抗体、抗PD-L1モノクローナル抗体及び/又は抗CTLA-4モノクローナル抗体の組成物とは、液状の形態である。
【0071】
幾つかの実施態様において、本発明に従う、受託番号I-4573の下にCNCMに寄託されたフィーカリバクテリウム・プラウスニッツィ(Faecalibacterium prausnitzii)細菌株を含む組成物と、ICI、特には抗PD-1モノクローナル抗体、抗PD-L1モノクローナル抗体及び/又は抗CTLA-4モノクローナル抗体の組成物とは、固体の形態であり、それは凍結乾燥された形態を包含する。
【0072】
これらの組成物は、標準的な方法、例えば、Remington:The Science and Practice of Pharmacy (Lippincott Williams & Wilkins;Twenty first Edition,2005)において記載されている方法、に従って配合されうる。
【0073】
以前に示されているように、上述された組成物は、生理学的/医薬的に許容可能な媒体/添加剤を含む。語「生理学的に許容される」及び語「医薬的に許容される」は、本明細書において互換的に使用される。
【0074】
本発明の組み合わせ物は、他のセラピー又は治療法、例えば、抗生物質、細胞傷害性化学療法、小分子、他の生物学的製剤、放射線療法、手術等を包含する上記の他のセラピー又は治療法、で投与されてもよく、それらは、上記された追加の抗癌剤とは異なり、並びに、
受託番号I-4573の下にCNCMに寄託されたフィーカリバクテリウム・プラウスニッツィ(Faecalibacterium prausnitzii)細菌株と異なり、及び
抗PD-1抗体、抗PD-L1抗体、又は抗CTLA-4抗体とも異なる。
とも異なる。
【0075】
特定の実施態様に従うと、本発明に従う組み合わせ物は、他の治療薬として、少なくとも1つの免疫抑制剤、例えば、グルココルチコイド、細胞増殖抑制薬(アザチオプリン、メトトレキサート)、抗体、又はイムノフィリンに作用する薬剤(シクロスポリン、タクロリムス、ラパミシン)、を更に含んでいてもよい。
【0076】
これらの他の治療薬は、受託番号I-4573の下でCNCMに寄託されたフィーカリバクテリウム・プラウスニッツィ(Faecalibacterium prausnitzii)細菌株と若しくは少なくとも1つの免疫チェックポイント阻害剤、特には抗PD-1モノクローナル抗体、抗PD-L1モノクローナル抗体及び抗CTLA-4モノクローナル抗体からなる群から選択される少なくとも1つのモノクローナル抗体、と同じ組成物で又は別個の組成物で哺乳類の患者に投与されることができる。
【0077】
特には、これらの他の治療薬は、受託番号I-4573の下でCNCMに寄託されたフィーカリバクテリウム・プラウスニッツィ(Faecalibacterium prausnitzii)細菌株と若しくは少なくとも1つの免疫チェックポイント阻害剤、特には抗PD-1モノクローナル抗体、抗PD-L1モノクローナル抗体及び抗CTLA-4モノクローナル抗体からなる群から選択される少なくとも1つのモノクローナル抗体、とは別の組成物で投与される。
【0078】
特定の実施態様において、本発明は、哺乳類の患者におけるガンを予防及び/又は処置する為の医薬品の調製の為の組み合わせ物であって、
受託番号I-4573の下でCNCMに寄託されたフィーカリバクテリウム・プラウスニッツィ(Faecalibacterium prausnitzii)細菌株と、
少なくとも1つの免疫チェックポイント阻害剤、特には、抗PD-1モノクローナル抗体、抗PD-L1モノクローナル抗体及び抗CTLA-4モノクローナル抗体からなる群から選択される少なくとも1つのモノクローナル抗体、と
上記の組み合わせ物の使用に関する。
【0079】
他の実施態様において、本発明は、哺乳類の患者におけるガンを予防/又は処置する方法であって、該方法が、
受託番号I-4573の下でCNCMに寄託されたフィーカリバクテリウム・プラウスニッツィ(Faecalibacterium prausnitzii)細菌株と、
少なくとも1つの免疫チェックポイント阻害剤、特には、抗PD-1モノクローナル抗体、抗PD-L1モノクローナル抗体及び抗CTLA-4モノクローナル抗体からなる群から選択される少なくとも1つのモノクローナル抗体、と
の組み合わせ物を該哺乳類の患者に投与することを含む上記の方法に関する。
【0080】
本発明はまた、医薬品として使用する為の組み合わせ物であって、
受託番号I-4573の下でCNCMに寄託されたフィーカリバクテリウム・プラウスニッツィ(Faecalibacterium prausnitzii)細菌株と、
少なくとも1つの免疫チェックポイント阻害剤、特には、抗PD-1モノクローナル抗体、抗PD-L1モノクローナル抗体及び抗CTLA-4モノクローナル抗体からなる群から選択される少なくとも1つのモノクローナル抗体、と
の上記組み合わせ物に関する。
【0081】
本発明は、下記の実施例によって更に示される。
【0082】
実施例:
【0083】
マウスにおける癌細胞株と腫瘍の誘発
【0084】
肉腫MCA-205腫瘍細胞株が、10%のFBS、1%のペニシリン-ストレプトマイシン、1mMのHEPESで補充されたDMEM中で、提供者の仕様書に従って、イン・ビトロ(in vitro)で培養された。
【0085】
肉腫MCA-205腫瘍細胞(500,000細胞/100μL/マウス)が免疫応答性C57Bl/6Jマウス(9週齢メス)の右脇腹に皮下接種された。
【0086】
動物グループ
【0087】
この研究の目的は、調節不全された微生物叢(dysregulated microbiota)を有するMCA205腫瘍担持マウスモデルにおける抗PD-L1抗体の抗腫瘍効果を回復する為に、受託番号I-4573の下でCNCMに寄託されたフィーカリバクテリウム・プラウスニッツィ(Faecalibacterium prausnitzii)細菌株の能力を評価することであった。
【0088】
微生物叢のディスバイオシス(microbiota dysbiosis)は、抗生物質(ABX)の投与によって誘発された。
【0089】
腫瘍接種の15日前に、該マウスの体重に従って無作為化され、そして、ABX処置グループとABX未処置グループとに割り当てられた。
【0090】
MCA-205肉腫細胞は、9週齢の雌のC57BL/6マウス(Charles River Laboratories)の側腹部に細胞を注射することによって、0日目に皮下接種された。腫瘍接種の5日目に、マウスが腫瘍体積に基づいて無作為化され、そして、ビヒクル処置グループと抗PD-L1+/-試験細菌処置グループとに割り当てられた。
【0091】
処置が、下記の通りに施与された(1グループ当たり10匹のマウス):
グループ1:抗生物質無し(ABX無し)且つ処置無し(ビヒクル:200μLのPBS/グリセロール,強制経口投与による,1日1回,腫瘍接種の6日後から開始して該試験の終了まで)。
グループ2:ABX無し+抗PD-L1+ビヒクルでの処置グループ:200μLのPBS/グリセロール,強制経口投与による,1日1回,腫瘍接種の6日後から開始して該試験の終了まで(42日目);及び抗PD-L1抗体,5mg/kg,腹腔内,1日1回,6、9、12及び15日目。
グループ3:抗生物質(ABX)での処置、及び処置無し(ビヒクル:抗生物質を組み合わせた飲料水溶液,腫瘍接種の14日前から開始して該試験の終了まで;並びに、200μLのPBS/グリセロール,強制経口投与による,1日1回,腫瘍接種の6日後から開始して該試験の終了まで)。
グループ4:抗生物質(ABX)での処置+抗PD-L1+ビヒクルでの処置グループ:抗生物質を組み合わせた飲料水溶液,腫瘍接種の14日前から開始して該試験の終了まで;抗PD-L1抗体,5mg/Kgで,腹腔内,1日1回,6、9、12及び15日目;並びに、200μLのPBS/グリセロール,強制経口投与による,1日1回,腫瘍接種の6日後から開始して該試験の終了まで。
グループ5:抗生物質(ABX)での処置+抗PD-L1+受託番号I-4573の下でCNCMに寄託されたフィーカリバクテリウム・プラウスニッツィ(Faecalibacterium prausnitzii)細菌株での処置グループ:抗生物質を組み合わせた飲料水溶液,腫瘍接種の14日前から開始して該試験の終了まで;抗PD-L1抗体,5mg/Kgで,腹腔内,1日1回,6、9、12及び15日目;並びに、PBS/グリセロール中の200μLの(1x1010のTCC)のCNCM I-4573菌株,強制経口投与による,1日1回,腫瘍接種の6日後から開始して該試験の終了まで。
【0092】
腫瘍細胞接種の5日後から開始して、各々10匹のマウスからなる全ての実験動物グループが、週に3回、30日目まで、下記のパラメータについてモニタリングされた:
・腫瘍サイズ:週に3回、身体診察によって測定された
・体重:腫瘍接種前に、週に1回、その後は週に3回モニタリングされた
・生存率:週に3回、カプランマイヤープロット(Kaplan-Meier plot)で表された。
【0093】
抗生物質処置(ABX)
【0094】
アンピシリン(Sigma - 1mg/mL)、ストレプトマイシン(Sigma - 5mg/mL)及びコリスチン(Carbosynth - 1mg/mL)からなる抗生物質溶液が、1%のスクロース(Sigma)を補充された飲料水で毎週調製され、そして冷蔵された。ケージボトルは週に一度交換された。
【0095】
本発明の試験された細菌
【0096】
受託番号I-4573の下でCNCMに寄託されたフィーカリバクテリウム・プラウスニッツィ(Faecalibacterium prausnitzii)細菌株が、PBS/グリセロール中ですぐに使用できるように調製された。処置が腫瘍接種後の6日目に開始され、そして、試験期間中ずっと維持され、該処置は1日1回(週末を含む)行われた。
【0097】
処置が、マウス1匹当たり、1日当たり200μLの強制経口投与によって実施され、これは、1用量当たり1010のTCCに相当する。
【0098】
抗PD-L1
【0099】
抗PD-L1処置が、100μg(20gのマウスの場合)の抗PD-L1抗体(5mg/Kg)を腹腔内に投与することによって施与された。腫瘍細胞接種後の6、9、12及び15日目に処置が4回繰り返された。抗PD-L1抗体(クローン10F.9G2-BioXCell)が、滅菌PBSで、1mg/mLの濃度に希釈された。次に、ストック溶液が等分され(1日の処置の為の量)、そして、4℃で保存された。
【0100】
実施例1:抗PD-L1媒介応答に対するABXの効果
【0101】
グループ1、グループ2、グループ3及びグループ4に従うMCA-205腫瘍担持マウスの30日間にわたる生存率が最初に調べられた。
【0102】
得られた結果が、図1Aにおいて表されている。
【0103】
30日後、グループ2では生存マウスの割合が90%であったのに対して、グループ4ではこの割合はわずか40%であり、抗生物質投与による微生物叢の変化により、抗PD-L1処置の抗腫瘍効果が損なわれることが実証された。
【0104】
これはまた図1B及び図1Cにおいて示されており、同じ4つのグループからのマウスの腫瘍体積が測定された。
【0105】
グループ4(ABX+抗PD-L1)からのマウスの平均腫瘍体積は、グループ2(抗PD-L1)からのマウスの平均腫瘍体積よりも有意に高かった。
【0106】
この結果はまた、抗PD-L1処置の抗腫瘍特性に対する抗生物質による微生物叢の変化の悪影響を実証している。
【0107】
実施例2:ABX媒介応答に対する本発明に従う細菌株の効果
【0108】
グループ2、グループ4及びグループ5からのMCA-205腫瘍担持マウスの26日間に亘る腫瘍体積の変化がまた調べられた。
【0109】
得られた結果が、図2及び図3において表されている。
【0110】
26日後、グループ4のマウスの平均腫瘍体積は1000mm3を超えていたのに対して、グループ5における対応する値は統計的に劣っており、わずか約500mm3であり、グループ2からのマウスの場合に観察されたものと同様であった。
【0111】
試験されたマウスのサバイバル・プログレッション(survival progression)がまた、実験の間に測定された。
【0112】
得られた結果が、図4において表されている。
【0113】
30日後、抗生物質(ABX+抗PD-L1)で処置されたグループ4からの個体のうち40%のみが生存した。対照的に、グループ5の個体の90%は、本発明に従う細菌株の投与の故に30日後においてもまだ生存していた。この%は、図1Aにおけるグループ2で得られた%と同じである。
【0114】
微生物叢のディスバイオシスを有する腫瘍担持マウスをPD-L1と組み合わせた本発明に従う細菌株で処置されるときに、サバイバル・プログレッション(survival progression)が抗PD-L1のみと比較して有意に改善される。
【0115】
これらの結果は、本発明に従う細菌株が抗PD-L1処置の抗腫瘍効果を有意に改善する能力を実証している。
【0116】
従って、これらの結果は、本発明に従う細菌株が非応答者におけるICIの抗腫瘍効果を救済する可能性を有するという事実を実証している。
【0117】
実施例3:調節不全された微生物叢(dysregulated microbiota)を有するMCA205腫瘍担持マウスモデルに対する本発明に従う細菌株の抗腫瘍効果に関する相補的研究
【0118】
上記で詳述されたものと同一のプロトコルが、MCA205腫瘍担持マウスの下記の2つのグループ(1グループ当たり10匹のマウス)に実行される:
グループ3’(上記されたグループ3と同じ):抗生物質(ABX)での処置、及び処置無し(ビヒクル:抗生物質を組み合わせた飲料水溶液,腫瘍接種の14日前から開始して該試験の終了まで;並びに、200μLのPBS/グリセロール,強制経口投与による,1日1回,腫瘍接種の6日後から開始して該試験の終了まで)。
グループ6:抗生物質(ABX)での処置+受託番号I-4573の下でCNCMに寄託されたフィーカリバクテリウム・プラウスニッツィ(Faecalibacterium prausnitzii)細菌株での処置グループ:抗生物質を組み合わせた飲料水溶液,腫瘍接種の14日前から開始して該試験の終了まで(D42);並びに、PBS/グリセロール中の200μL(1x1010のTCC)のCNCM I-4573菌株,強制経口投与による,1日1回,腫瘍接種の6日後から開始して該試験の終了まで(D42)。
【0119】
腫瘍細胞接種の5日後から開始して、各々10匹のマウスからなる全ての実験動物グループが、週に3回、42日目まで、下記のパラメータについてモニタリングされた:
・腫瘍サイズ:週に3回、身体診察によって測定された
・体重:腫瘍接種前に、週に1回、その後は週に3回モニタリングされた
・生存率:週に3回、カプランマイヤープロット(Kaplan-Meier plot)で表された。
【0120】
抗生物質溶液は上記されたものと同一であり、アンピシリン(Sigma - 1mg/mL)、ストレプトマイシン(Sigma - 5mg/mL)、及びコリスチン(Carbosynth - 1mg/mL)からなり、1%のスクロース(Sigma)を補充された飲料水で毎週調製され、そして、冷蔵された。ケージボトルは週に一度交換された。処置は、腫瘍接種の14日前に開始され、そして試験全体を通じて継続された。
【0121】
受託番号I-4573の下でCNCMに寄託されたフィーカリバクテリウム・プラウスニッツィ(Faecalibacterium prausnitzii)細菌株が、前述されたように、すなわち、PBS/グリセロール中ですぐに使用できるように調製された。処置が腫瘍接種後の6日目に開始され、そして、試験期間中ずっと維持され、該処置は1日1回(週末を含む)行われた。
【0122】
処置が、マウス1匹当たり、1日当たり200μLの強制経口投与によって実施され、これは、1用量当たり1010のTCCに相当する。
【0123】
結果
【0124】
グループ3’(ABX+ビヒクル)及びグループ6(ABX+CNCM I-4573)に従って、MCA-205腫瘍担持マウスの26日に亘る平均腫瘍体積及び生存率が調べられ、その結果が、図5A及び図5Bに夫々表されている。
【0125】
実験の終わりに、このデータは、マウスがABXで処置された場合に、CNCM I-4573単独では、平均腫瘍体積のプログレッション(mean tumor volume progression)又は生存率(survival proportion)のいずれにおいても利点が観察されないことを示す。
【0126】
図1A
図1B
図1C
図2
図3
図4
図5A
図5B
【国際調査報告】