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特表2024-538782木工装置、特にスライディングテーブル丸のこ及び/又は縁貼機
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-10-23
(54)【発明の名称】木工装置、特にスライディングテーブル丸のこ及び/又は縁貼機
(51)【国際特許分類】
   B27G 19/02 20060101AFI20241016BHJP
   B27B 5/00 20060101ALI20241016BHJP
   B27B 5/20 20060101ALI20241016BHJP
   B27B 5/29 20060101ALI20241016BHJP
   B27G 5/00 20060101ALI20241016BHJP
   B27G 11/00 20060101ALI20241016BHJP
   B23D 47/00 20060101ALN20241016BHJP
【FI】
B27G19/02 Z
B27B5/00 Z
B27B5/20 B
B27B5/29 B
B27G5/00
B27G11/00 Z
B23D47/00 Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】有
(21)【出願番号】P 2024522299
(86)(22)【出願日】2022-10-14
(85)【翻訳文提出日】2024-06-12
(86)【国際出願番号】 EP2022078622
(87)【国際公開番号】W WO2023062183
(87)【国際公開日】2023-04-20
(31)【優先権主張番号】202021105583.9
(32)【優先日】2021-10-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521500395
【氏名又は名称】アルテンドルフ・ゲゼルシャフト・ミット・ベシュレンクテル・ハフツング
【氏名又は名称原語表記】Altendorf GmbH
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100189555
【弁理士】
【氏名又は名称】徳山 英浩
(72)【発明者】
【氏名】バルナー,カーステン
(72)【発明者】
【氏名】ノイフェルト,アンドレアス
(72)【発明者】
【氏名】ポーレ,ユリア
【テーマコード(参考)】
3C040
【Fターム(参考)】
3C040AA01
3C040FF00
3C040GG00
3C040HH22
(57)【要約】
本発明は、木工装置(2,102)、特にスライディングテーブル丸のこ(4)又は縁貼機(104)に関する。当該木工装置は、木工装置(2,102)に供給された加工物(10)を加工する機能を有する加工工具(8,108)を備える。本発明によれば、音声制御装置(12,112)が提案される。当該音声制御装置は、木工装置(2,102)の使用者の音声コマンド(14,114)を処理し、木工装置(2,102)を制御するための制御信号(16,116)を音声コマンド(14,114)から生成するように構成されている。木工装置(2,102)は、制御信号(16,116)に基づいて制御されるように構成されている。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
木工装置(2,102)、特にスライディングテーブル丸のこ(4)又は縁貼機(104)であって、
前記木工装置(2,102)に供給された加工物(10)を加工する機能を有する加工工具(8,108)を備え、
前記木工装置(2,102)の使用者からの音声コマンド(14,114)を処理し、前記木工装置(2,102)を制御するための制御信号(16,116)を前記音声コマンド(14,114)から生成するように設計された音声制御装置(12,112)を特徴とし、
前記制御信号(16,116)に基づいて制御されるように設計されている、
木工装置。
【請求項2】
前記木工装置(2)は、スライディングテーブル丸のこ(4)として設計され、
前記スライディングテーブル丸のこ(4)は、
水平な加工物支持面(60)及びのこ溝(62)を有する加工物テーブル(58)と、
のこ溝(62)から突出可能に配置された丸のこ刃(64)を有するのこユニットと、
前記加工物(10)の横への案内を提供するように前記加工物支持面(60)の上を移動可能に配置された加工物ストッパ(44)と、
を備える、
請求項1に記載の木工装置(2)。
【請求項3】
前記音声制御装置(12)は、前記使用者に指示(20)を発するように設計された出力ユニット(18)を有する、請求項1又は2に記載の木工装置(2)。
【請求項4】
前記音声制御装置(12,112)は、外部装置(24)、特に外部オーディオユニット(24)と一方向及び/又は二方向に無線で通信するように設計されたデータ・インターフェース(22)を有する、請求項1~3のいずれか1つに記載の木工装置(2)。
【請求項5】
前記データ・インターフェース(22)は、
ブルートゥース(登録商標)、
無線ローカルエリアネットワーク(WLAN)、
及びデジタル強化無線電気通信(DECT)、
のデータ伝送規格のうち少なくとも1つによって通信するように設計されている、
請求項1~4のいずれか1つに記載の木工装置(2)。
【請求項6】
前記音声制御装置(12,112)は、使用者の前記音声コマンド(14)を認識し、前記木工装置(2)を制御するための制御信号(16)を前記音声コマンド(14)から生成するように設計され、
前記音声コマンド(14)は、
前記木工装置(2)の軸(28)の設定パラメータ(26)の初期入力及び/又は変更、特に前記軸(28)の寸法値の初期入力及び/又は変更、
前記木工装置(2)のクランプ工具(30)の作動、特に電気クランプ工具(30)の作動、
圧縮空気供給ユニット(32)の作動、
吸引ユニット(34)の作動、
及び前記加工物(10)の解放、特に前記加工物(10)が当てられる平行なストッパの解除による前記加工物(10)の解放、
のうち少なくとも1つである、
請求項1~5のいずれか1つに記載の木工装置(2)。
【請求項7】
前記木工装置(2)は、グラフィカル・ユーザ・インターフェース(38)を備え、
前記音声制御装置(12)は、使用者の前記音声コマンド(14)を認識し、前記音声コマンド(14)に基づいて前記ユーザ・インターフェース(38)を制御するように設計され、
前記音声コマンド(14)は、
前記ユーザ・インターフェース(38)によって表示される操作メニュー(40)の選択及び/又は前記操作メニュー(40)内の移動、
又は使用者支援システム(42)の音声制御、特に切断最適化支援システム(42)の音声制御、
である、
請求項1~6のいずれか1つに記載の木工装置(2)。
【請求項8】
前記音声制御装置は、加工される加工物又は加工される材料のための識別子の音声入力後、前記木工装置の少なくとも1つのストッパ及び/又は前記木工装置の1つの加工パラメータを自動的に調整するように設計されている、請求項1~7のいずれか1つに記載の木工装置(2)。
【請求項9】
前記音声制御装置(12)は、前記使用者に推奨動作(46)を発するように設計されている、請求項1~8のいずれか1つに記載の木工装置(2)。
【請求項10】
前記推奨動作(46)は、
加工される前記加工物(10)に関する推奨動作(48)、
前記木工装置(2)の操作に関する推奨動作(50)、
訓練情報(52)、特に操作の安全性を高めるための方法に関する訓練情報、
及び/又は前記加工物(10)の状態に関する情報、
のうち少なくとも1つを含む、
請求項9に記載の木工装置(2)。
【請求項11】
前記音声制御装置(12)は、1つ又は複数の使用者の状態(54)に応じて推奨動作(46)を発するように設計され、
前記使用者の状態(54)は、特に前記使用者の訓練の程度と相関する、
請求項1~10のいずれか1つに記載の木工装置(2)。
【請求項12】
前記木工装置(2)は、不良状態(56)を検出するように設計され、
前記音声制御装置(12)は、前記不良状態(56)に応じて、前記使用者への指示(20)の発出及び/又は前記使用者からの音声コマンド(14)の処理を行うように設計されている、
請求項1~11のいずれか1つに記載の木工装置(2)。
【請求項13】
前記指示(20)は、設定パラメータ(26)の確認、特にフォルト・ツリー形式での設定パラメータ(26)の複数段階の確認を含む、請求項1~12のいずれか1つに記載の木工装置(2)。
【請求項14】
前記音声制御装置(12)は、サービス技術者との連絡を確立するように設計されている、請求項1~13のいずれか1つに記載の木工装置(2)。
【請求項15】
前記木工装置(102)は、縁貼機(104)として設計され、
前記音声制御装置(112)は、使用者の前記音声コマンド(114)を認識し、前記縁貼機(104)を制御するための制御信号(116)を前記音声コマンド(114)から生成するように設計され、
前記音声コマンド(114)は、
前記縁貼機(104)の動作モード(162)の選択、特にグルーポットモード及び/又は特に温度の選択を含むエアトロニックモードの選択、
切削接合部の厚み(164)の設定、
縁部の厚み(166)の設定、
加工物の高さ(168)の設定、
前記縁貼機(104)の個々の切削カッター(170)の個別の起動及び/又は停止、
及び前記縁貼機(104)の切削厚み(172)の設定、
のうち少なくとも1つである、
請求項1~14のいずれか1つに記載の木工装置(102)。
【請求項16】
前記音声制御装置は、暗騒音を除去するためのフィルタ、及び/又は、例えば音声の音域、発話の音程、リズム、若しくは声色、又はこれらのパラメータの組合せの認識によって、個々の使用者の音声コマンドに注目するための学習機能を有する、請求項1~15のいずれか1つに記載の木工装置(102)。
【請求項17】
前記音声制御装置は、加工工程中に特定の設定を行うように設計されている、請求項1~16のいずれか1つに記載の木工装置(102)。
【請求項18】
前記音声制御装置は、加工工具の移動又は前記加工工具の停止状態を伝達する工具信号を受信し、音声コマンドを受け付け、
前記工具信号が前記加工工具の停止状態を伝達した場合、後者と音声コマンドの予め決められた第1リストとを比較し、
前記工具信号が前記加工工具の移動を伝達した場合、前記音声コマンドと、音声コマンドの予め決められた第2リストとを比較し、
受け付けた前記音声コマンドと、前記第1リスト又は前記第2リストからの予め決められた音声コマンドとの一致が検知された場合、前記音声コマンドを実行するように設計されている、
請求項1~17のいずれか1つに記載の木工装置(102)。
【請求項19】
木工装置(2,102)に送られた加工物(10)を加工工具(8,108)を用いて加工する木工方法であって、
少なくとも1つの音声制御工程(12,112)を特徴とし、
前記音声制御工程(12,112)において、
前記木工装置(2,102)の使用者からの音声コマンド(14,114)が、受け付け及び処理され、
前記木工装置(2,102)を制御するための制御信号(16,116)が、前記音声コマンド(14,114)から生成され、
前記木工装置(2,102)は、前記制御信号(16,116)に基づいて制御される、
木工方法。
【請求項20】
木工装置を制御するための音声制御の使用、特に加工パラメータ又は加工物ストッパの位置を設定するための音声制御の使用、特に請求項1~18のいずれか1つに記載の木工装置における音声制御の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、加工工具を備えた木工装置、特に、スライディングテーブル丸のこ又は縁貼機に関するものである。当該加工工具は、木工装置に供給された加工物を加工する機能を有する。
【背景技術】
【0002】
スライディングテーブル丸のこ型の木工装置は、従来技術としてよく知られている。スライディングテーブル丸のこは、丸のこ刃を使用して、特にパネル材、プロフィール等の加工物を正確な寸法に切断するために使用される。通常、縁貼機は、硬材、化粧縁材(veneer edges)、又はPVC縁材等の縁材をパネル材に接着するように設計されている。
【0003】
以下では、本発明は、丸のこ等の木工装置を参照して説明される。しかしながら、本発明の一態様によれば、本発明は、一般的に、木工装置ではなく加工工具又は工作装置、例えば、金属加工に使用される装置、建設産業で使用される装置、又は食品産業で使用される加工装置にも同様に適用されることができる。
【0004】
現代の木工装置は、様々な設定装置を備える。当該設定装置によって、使用者は、手動で動作パラメータを調整することができる。しかしながら、のこ引き又は縁貼りの過程では、加工物をしばしば両手で保持又は案内する必要があるため、使用者は通常、木工装置の設定パラメータを変更することができない。したがって、木工装置の設定パラメータの変更は、常に実際ののこ引き又は縁貼りの前又は後に行われる必要がある。
【0005】
従来技術からよく知られる木工装置は、長年に亘って試用及び試験されてきたが、使いやすさ及び操作の選択肢の観点において、未だ改善の余地がある。
【0006】
独国特許出願公開第102017103866号明細書より、加工物加工システムの操作方法が、関連する加工物加工システムとともに、周知技術である。一般的に、公報は、音声認識システムの提供を提案するものである。しかしながら、後者は、加工工程中に加工物加工システムにおいて特定の設定を行うようには設計されていない。
【0007】
独国実用新案第20108813号明細書は、のこ引き材料ハンドリング装置に関する。当該装置においては、ハンドリングロボットが音声認識システムによって制御されることができる。しかしながら、当該音声認識システムも、加工工程中に加工物加工システムにおいて特定の設定を行うようには設計されていない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
この背景に対し、本発明の基本的な目的は、先行技術の直面した欠点が可能な限り解消されるような上述の型の木工装置を更に開発することにある。特に、加工物の加工工程において両手が塞がっている場合にも、使用者の使いやすさ及び操作の選択肢の改善を提供する木工装置を特定することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明によれば、木工装置の使用者からの音声コマンドを処理し、木工装置を制御するための制御信号を当該音声コマンドから生成するように設計された音声制御装置によって、上記の型の木工装置において、目的が達成される。木工装置は、制御信号に基づいて制御されるように設計されている。
【0010】
本発明は、音声制御装置の導入が、従来技術で知られる装置と比較において、木工装置の使いやすさ及び操作の選択肢を著しく改善し得るとの認識に基づく。長年の偏見に反し、このような音声制御装置は、木工装置の、安全とは一次的には関連しない機能及び設定パラメータを操作するために、スライディングテーブル丸のこ、縁貼機等の木工装置において使用可能である。これにより、使いやすさ及び加工物の加工速度が向上する。特に、設定パラメータは、実際ののこ引き工程中に調整されることができる。例えば、従来技術から知られる木工装置の場合、設定パラメータの調整には、のこ引き工程や加工工程を中断する必要があった。したがって、加工物の加工効率が向上し得る。
【0011】
さらに、本発明は、木工装置がスライディングテーブル丸のことして設計されていることを特徴とする。スライディングテーブル丸のこは、加工物テーブルと、のこユニットと、加工物ストッパとを備える。加工物テーブルは、水平な加工物支持面及びのこ溝を有する。のこユニットは、のこ溝から突出可能に配置された丸のこ刃を有する。加工物ストッパは、加工物の横への案内を提供するように加工物支持面の上を移動可能に配置されている。
【0012】
本発明によれば、既存の利点とは対照的に、スライディングテーブル丸のこに上述のような音声制御装置を設けることが初めて提案される。
【0013】
さらに、本発明は、音声制御装置が使用者に指示を発するように設計された出力ユニットを有することを特徴とする。そのため、換言すれば、音声制御装置によって、音声コマンドの受け付け及び後者の対応する加工のみならず、使用者への指示の出力も可能となる。このようにして、音声制御の相互的手段が実現される。使用者は、指示の出力によって支援されることができる。
【0014】
音声制御装置は、外部装置、特に外部オーディオユニットと一方向及び/又は二方向の様式で無線で通信するように設計されたデータ・インターフェースを有することが好ましい。これにより、例えば、使用者がいずれにせよ使用する通信ヘッドセットの形の労働安全装備を、データ・インターフェースを介して、好ましくは無線で、音声制御装置と通信するために使用することができる。このような無線の解決策が用いられる場合、使用者は、木工装置の周囲で自由に移動することができ、起こり得るケーブル接続に気を取られることがない。さらに、既存の通信ヘッドセットも、木工装置との通信に使用することができる。
【0015】
さらに、本発明は、データ・インターフェースが、ブルートゥース(登録商標)、無線ローカルエリアネットワーク(WLAN)、及びデジタル強化無線電気通信(DECT)のデータ伝送規格のうち少なくとも1つを介して通信するように設計されていることを特徴とする。上述のデータ伝送規格は、音声制御装置への及び音声制御装置からの二方向なデータ伝送、特に音声データの伝送をより確実に行うために特に有効であることが証明されている。
【0016】
音声制御装置は、暗騒音を除去するためのフィルタを含むことにより、及び/又は、例えば音声の音域、発話の音程、リズム、若しくは声色(colouring)、又はこれらのパラメータの組合せの認識によって、個々の使用者の音声コマンドに注目する学習機能を含むことにより、更に改良され得る。この目的のために、音声制御装置は、特に、人工知能を用いた発話評価を行うことができ、これによって、他の受け付けた信号から1人の使用者の音声コマンドを識別することができる。これにより、操作の安全性が改善され、音声コマンドの誤った実行、例えば作業場において他人から発せられる大声によって引き起こされる音声コマンドの誤った実行を避けることができる。
【0017】
更に好ましい改良によれば、音声制御装置は、使用者の音声コマンドのうち少なくとも1つを認識し、木工装置を制御するための制御信号をこれらの音声コマンドから生成するように設計されている。当該音声コマンドは、木工装置の軸の設定パラメータの初期入力及び/又は変更、特に軸の寸法値の初期入力及び/又は変更、木工装置のクランプ工具の作動、特に電気クランプ工具の作動、圧縮空気供給ユニットの作動、吸引ユニットの作動、及び加工物の解放、特に加工物が当てられる平行なストッパの解除による加工物の解放である。
【0018】
当該プロパティを制御するための上記音声コマンドは、音声制御装置との使用に特に適していることが証明されている。上記音声コマンドは、のこ刃の動作、のこ刃の速度等の安全と強く関連するパラメータには通常は影響せず、代わりに、さもなくば手動で行う必要のある使用者の調整作業を軽減する。
【0019】
さらに、本発明は、木工装置がグラフィカル・ユーザ・インターフェースを備えることを特徴とする。音声制御装置は、使用者の音声コマンドを認識し、音声コマンドに基づいてユーザ・インターフェースを制御するように設計されている。当該音声コマンドは、ユーザ・インターフェースによって表示される操作メニューの選択及び/又は操作メニュー内の移動、又は使用者支援システムの音声制御、特に切断最適化支援システムの音声制御である。換言すれば、音声制御装置は、例えばメニューコマンドの形式であるグラフィカル・ユーザ・インターフェースと共に、又は支援システムの音声制御、例えば切断の最適化に役立つ支援システムの音声制御によって、ユーザ・インターフェースを制御するために使用され得る。
【0020】
実施の好適な形態によれば、音声制御装置は、加工される材料の音声入力後、木工装置の少なくとも1つのストッパ及び/又は木工装置の1つの加工パラメータを自動的に調整するように設計されている。したがって、使用者が特定の数値を記憶しておき、当該数値を木工装置に手動で設定する必要はもはやない。代わりに、木工装置の加工パラメータ、例えば切断速度(丸のこの場合、例えばのこ刃の速度)を設定したり、木工装置のストッパを保存された値に基づく所望値に設置したりするためには、加工物を指定する音声入力によって、又は加工工程における工程によって、加工される材料の発話のみで足りる。これにより、使用者の精神的負担が取り除かれ、誤った設定の可能性も低下する。
【0021】
加工物の加工前に加工パラメータ又はストッパの位置を設定するというこの任意選択に加えて、加工工程中に音声制御を使用して特定の設定を行うことも、利点となり得る。例えば、良好な加工結果を実現するために、又は作業員の怪我のリスクを低減するために、加工パラメータ又はストッパの位置を加工工程の終了直前に変更することがしばしば望まれる。そのため、例えば、加工工程の終了直前に、音声コマンドによって、切断速度又は切断の送り込み(送り速度)を増減することができる。さらに、工具とストッパとの間に挟まれた加工物におけるキックバックによる怪我のリスクを低減するために、丸のこの平行なストッパ等のストッパは、終了直前に、音声コマンドによって解除することができる。
【0022】
さらに、本発明は、音声制御装置が使用者に動作のための推奨を発するように設計されることを特徴とする。このような推奨動作は、望まれる加工物の加工の点で使用者を支援し、新たな作業員の訓練要件を軽減する。好適な実施の形態によれば、推奨動作は、加工される加工物に関する推奨動作、木工装置の操作に関する推奨動作、訓練情報、特に操作の安全性を高めるための方法に関する訓練情報、及び/又は加工物の状態に関する情報のうち少なくとも1つを含む。換言すれば、推奨動作を発することにより、訓練の少ない使用者も、高度な訓練を必要とせずに、木工装置を使用して加工物を短時間に高効率で加工することが可能となる。
【0023】
音声制御装置は、1つ又は複数の使用者の状態に応じて推奨動作を発するように設計されることが好ましい。使用者の状態は、特に使用者の訓練の程度と相関する。換言すれば、音声制御装置は、訓練の程度が様々な使用者に選択的に応じることができる。例えば、経験があり熟練した作業者の使用者の状態が選択された場合、推奨動作は、例えばほとんど使用されない加工物又は複雑な加工物が加工される場合にのみ、発せられることが好ましい。例えば、経験の浅い使用者の使用者の状態が選択された場合、推奨動作の数が大幅に増加することが好ましく、推奨動作は、経験のある使用者にとっては混乱を与え得るものの、日常的な作業にも発せられる。この点において、使用者の状態の選択によって、推奨動作の数を、必要とされるように、使用者の訓練の程度に応じて調整することが可能になる。
【0024】
さらに、本発明は、木工装置が不良状態を検出するように設計されることを特徴とする。音声制御装置は、不良状態に応じて、使用者への指示の発出及び/又は使用者からの音声コマンドの処理を行うように設計されている。つまり、装置の不良状態は、音響出力を介して使用者に伝達され得る。これにより、例えば、使用者の視線がその時にグラフィカル・ユーザ・インターフェースに集中していない場合にも、使用者に不良状態が通知される。さらに、音声制御装置は、使用者からの情報を要求したり、不良状態の対処方法について、使用者に情報を提供したりすることに使用され得る。
【0025】
さらに好ましくは、音声制御装置は、加工工具の移動又は加工工具の停止状態を伝達する工具信号を受信し、音声コマンドを受け付けるように設計されている。音声制御装置は、工具信号が加工工具の停止状態を伝達した場合、後者と音声コマンドの予め決められた第1リストとを比較するように設計されている。音声制御装置は、工具信号が加工工具の移動を伝達した場合、音声コマンドと、音声コマンドの予め決められた第2リストとを比較するように設計されている。音声制御装置は、受け付けた音声コマンドと、第1リスト又は第2リストからの予め決められた音声コマンドとの一致が検知された場合、音声コマンドを実行するように設計されている。この更なる改良により、加工工具が動作していないときの音声コマンドによる設定と、加工工具が動作しているときの音声コマンドによる設定とが区別されるので、怪我を引き起こし得る加工装備において安全な操作が可能となる。これにより、音声コマンドが加工工具の静止時にのみ実行され得るので、危険につながり得る加工工程の動作中に、使用者が音声コマンドの実行を引き起こすことを妨げることができる。通常、第2リストは、第1リストよりも少ない音声コマンドを含む。特別な場合、第2リストは、加工の進行中にあらゆる音声コマンドの実行が妨げられるように、完全に空にされ得る。
【0026】
さらに、本発明は、指示が設定パラメータの確認、特にフォルト・ツリー形式での設定パラメータの複数段階の確認を含むことを特徴とする。換言すれば、音声制御装置は、音声に基づいて、フォルト・ツリー方式で使用者に不良解決ロジックを案内するように設計されている。このことは、マニュアル等を調べる必要がないので、発生した任意の不良がしばしば更に迅速に是正され得ることを意味する。
【0027】
好適な更なる改良によれば、音声制御装置は、サービス技術者との連絡を確立するように設計されている。このようにして、例えば故障が検出又は是正できない場合にも、例えばサービスの電話番号を特定して、モバイル装置を使用して技術者に連絡したり、同様のことをしたりすることなく、サービス技術者との直接連絡が確立される。特に、木工装置は、技術者に木工装置の動作パラメータを提供するようにも設計されている。
【0028】
さらに、本発明は、木工装置が縁貼機として設計されていることを特徴とする。音声制御装置は、使用者の音声コマンドのうち少なくとも1つを認識し、縁貼機を制御するための制御信号を音声コマンドから生成するように設計されている。当該音声コマンドは、縁貼機の動作モードの選択、特にグルーポットモード及び/又は特に温度の選択を含むエアトロニックモードの選択、切削接合部の厚みの設定、縁部の厚みの設定、加工物の高さの設定、縁貼機の個々の切削カッターの個別のオン及び/又はオフ、及び縁貼機の切削厚みの設定である。
【0029】
音声制御装置の上記構成は、コマンドが装置に音声コマンドの形式で伝送可能であるならば、縁貼機の操作の快適性を向上させるために、上記音声コマンドが特に役立つという認識を利用するものである。これにより、使用者の労力が手動入力よりも低減され、全体の加工効率が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0030】
本発明の更なる特徴及び利点は、添付の特許請求の範囲及び以下の説明から生じる。以下の説明では、実施形態の例を概略図を用いて詳細に説明する。
【0031】
図1図1は、本発明に係る音声制御装置を有する、スライディングテーブル丸のことして設計された木工装置の実施形態の一例を示す透視図である。
図2図2は、本発明に係る木工装置のグラフィカル・ユーザ・インターフェースの一例を示す図である。
図3図3は、本発明に係る木工装置の推奨動作の実施形態の一例を示す概略図である。
図4図4は、縁貼機として設計された本発明に係る木工装置の実施形態の一例を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
図1は、スライディングテーブル丸のこ4として設計された木工装置2を示す図である。スライディングテーブル丸のこ4は、加工工具8を備える。加工工具8は、スライディングテーブル丸のこ4に供給された加工物10を加工するために設計されている。また、スライディングテーブル丸のこ4は、音声制御装置12も備える。音声制御装置12は、スライディングテーブル丸のこ4の使用者からの音声コマンド14を処理し、スライディングテーブル丸のこ4を制御するための制御信号16を音声コマンド14から生成するように設計されている。また、スライディングテーブル丸のこ4は、制御信号16に基づいて制御されるようにも設計されている。
【0033】
スライディングテーブル丸のこ4は、加工物テーブル58を備える。加工物テーブル58は、水平な支持面60と、のこ溝62を備える。また、スライディングテーブル丸のこ4は、のこユニットも備える。のこユニットは、のこ溝62から突出可能に配置された丸のこ刃64を有する。加工物ストッパ44は、加工物支持面60の上を移動可能に配置されている。加工物ストッパ44は、加工物10を横に案内する機能を有する。
【0034】
音声制御装置12は、使用者に指示20を出すように設計された出力ユニット18を有する。音声制御装置12は、データ・インターフェース22を更に有する。データ・インターフェース22は、外部装置24、特に外部オーディオユニット24と、一方向及び/又は二方向に無線で通信するのに適する。データ・インターフェース22は、ブルートゥース(登録商標)、無線ローカルエリアネットワーク(WLAN)、及びデジタル強化無線電気通信(DECT)のデータ伝送規格のうち少なくとも1つによって通信するように設計されている。
【0035】
さらに、音声制御装置12は、使用者の音声コマンド14のうち少なくとも1つを認識し、スライディングテーブル丸のこ4を制御するための制御信号16を音声コマンド14から生成するように設計されている。当該音声コマンドは、スライディングテーブル丸のこ4の軸28の設定パラメータ26の初期入力及び/又は変更、特に軸28の寸法値の初期入力及び/又は変更、スライディングテーブル丸のこ4のクランプ工具30の作動、特に電気クランプ工具30の作動、圧縮空気供給ユニット32の作動、吸引ユニット34の作動、及び/又は加工物10の解放である。
【0036】
また、スライディングテーブル丸のこ4は、グラフィカル・ユーザ・インターフェース38も備える。図2に示すように、音声制御12は、使用者からの音声コマンド14を認識し、音声コマンド14に基づいてユーザ・インターフェース38を制御するように設計されている。
【0037】
音声制御装置12は、加工する材料の音声入力後、スライディングテーブル丸のこ4の少なくとも1つのストッパ44を自動的に調整するように設計されている。木工装置2、特にスライディングテーブル丸のこ4は、不良状態56を検出するように設計されている。音声制御装置12は、不良状態56の機能として、使用者への指示20の発出、及び/又は使用者からの音声コマンド14の処理を行うように設計されている。
【0038】
指示20は、設定パラメータ26の確認、特にフォルト・ツリー形式での設定パラメータの複数段階の確認を含む。音声制御装置12は、サービス技術者との連絡を確立するようにも設計されている。
【0039】
図2は、ユーザ・インターフェース38の概略図である。ユーザ・インターフェース38は、操作メニュー40と、切断最適化支援システム42の形態の使用者支援システム42とを有する。音声制御装置12は、操作メニュー40の選択、及び/又は操作メニュー40内の移動(navigate)、及び/又は使用者支援システム42の音声制御の実行を目的とする使用者の音声コマンド14を認識するように設計されている。
【0040】
図3は、推奨動作46の概略に関する。推奨動作46は、加工される加工物10に関する推奨動作48、木工装置2の操作に関する推奨動作50、及び/又は訓練情報52、特に操作の安全性を高めるための方法に関する訓練情報、及び/又は加工物10の状態を含む。音声制御装置12は、1つ以上の使用者の状態54に応じて推奨動作46を発するように設計されている。使用者の状態54は、特に使用者の訓練の程度と相関する。
【0041】
図4は、縁貼機104として設計された木工装置102の概略図である。縁貼機104は、加工工具108と、音声制御装置112とを備える。音声制御装置112は、使用者の音声コマンド114のうち少なくとも1つを認識し、縁貼機104を制御するための制御信号116を音声コマンド114から生成するように構成されている。当該音声コマンド114は、縁貼機104の動作モード162の選択、特にグルーポットモード及び/又はエアトロニック(Airtronic)モードの選択、切削接合部の厚み164の設定、縁部の厚み166の設定、加工物の高さ168の設定、縁貼機104の個々の切削カッター170の個別のオン及び/又はオフ、及び縁貼機104の切削厚み172の設定である。特に、空気モードは、温度の選択を含む。
【符号の説明】
【0042】
2 木工装置
4 スライディングテーブル丸のこ
8 加工工具
10 加工物
12 音声制御装置
14 音声コマンド
16 制御信号
18 出力ユニット
20 使用者への指示
22 データ・インターフェース
24 外部装置(オーディオユニット)
26 設定パラメータ
28 軸
30 クランプ工具
32 圧縮空気供給ユニット
34 吸引ユニット
36 平行なストッパ
38 グラフィカル・ユーザ・インターフェース
40 操作メニュー
42 切断最適化支援システム
44 加工物ストッパ
46 推奨動作
48 加工される加工物に関する推奨動作
50 木工装置の操作に関する推奨動作
52 訓練情報
54 使用者の状態
56 不良状態
58 加工物テーブル
60 加工物支持面
62 のこ溝
64 丸のこ刃
66 加工物ストッパ面
102 木工装置
104 縁貼機
108 加工工具
112 音声制御装置
114 音声コマンド
116 制御信号
162 縁貼機の動作モード
164 切削接続部の厚み
166 縁部の厚み
168 加工物の高さ
170 切削カッター
172 切削厚み
図1
図2
図3
図4
【国際調査報告】